1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十九年三月十四日(木曜日)
午前十時三分開議
出席委員
委員長 伊能繁次郎君
理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君
理事 中山 利生君 理事 村田敬次郎君
理事 山本弥之助君 理事 三谷 秀治君
片岡 清一君 亀山 孝一君
木村武千代君 住 栄作君
前田治一郎君 武藤 嘉文君
井岡 大治君 岩垂寿喜男君
小川 省吾君 細谷 治嘉君
多田 光雄君 林 百郎君
小川新一郎君 小濱 新次君
折小野良一君
出席政府委員
自治大臣官房審
議官 山下 稔君
自治省税務局長 首藤 堯君
委員外の出席者
参 考 人
(全国知事会
神奈川県知事) 津田 文吾君
参 考 人
(全国市長会
豊中市長) 竹内 義治君
参 考 人
(全国町村議会
議長会 日の出
村議会議長) 岡部 光佑君
参 考 人
(京都府八幡町
長) 山中 末治君
参 考 人
(横浜市議会議
員) 桜井 康信君
参 考 人
(早稲田大学講
師) 荻田 保君
参 考 人
(立教大学教
授) 和田 八束君
参 考 人
(関西学院大学
教授) 橋本 徹君
参 考 人
(関東学院大学
教授) 坂入長太郎君
地方行政委員会
調査室長 日原 正雄君
—————————————
委員の異動
三月十一日
辞任 補欠選任
愛野興一郎君 松浦周太郎君
同日
辞任 補欠選任
松浦周太郎君 愛野興一郎君
同月十二日
辞任 補欠選任
愛野興一郎君 早川 崇君
片岡 清一君 大野 市郎君
島田 安夫君 江崎 真澄君
住 栄作君 灘尾 弘吉君
保岡 興治君 松澤 雄藏君
同日
辞任 補欠選任
江崎 真澄君 島田 安夫君
大野 市郎君 片岡 清一君
灘尾 弘吉殿 住 栄作君
早川 崇君 愛野興一郎君
松澤 雄藏君 保岡 興治君
同月十三日
辞任 補欠選任
谷口善太郎君 林 百郎君
—————————————
三月十一日
消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第七
七号)
地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出第七六号)(予)
同月十三日
昭和四十二年度以後における地方公務員等共済
組合法の年金の額の改定等に関する法律等の一
部を改正する法律案(内閣提出第七九号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
四〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/0
-
001・伊能繁次郎
○伊能委員長 これより会議を開きます。
内閣提出にかかる地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案について参考人から意見を聴取することにいたしておりますが、まず、全国知事会、神奈川県知事津田文吾君、全国市長会、豊中市長竹内義治君、全国町村議会議長会、日の出村議会議長岡部光佑君、京都府八幡町長山中末治君、横浜市議会議員桜井康信君、早稲田大学講師荻田保君の方々に御出席をお願いいたしております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人の皆さまには御多用中のところ、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに参考人の方々から御意見を約十五分程度お述べいただきまして、次に、委員諸君からの質疑に対し、御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは最初に、津田参考人にお願いいたします。津田神奈川県知事。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/1
-
002・津田文吾
○津田参考人 神奈川県知事の津田でございます。
議員各位におかれましては、地方行財政の諸問題につきまして、日ごろから深い御理解と御協力を賜わっておりますことを、まず、この席をおかりしまして、深く感謝申し上げる次第であります。
本日は、明年度の地方税法の一部改正案につきまして意見を申し述べるようにとのことでございますが、私は今回の改正法案に賛成の立場から、関連する地方税財政の諸問題を含めまして意見を述べさせていただきたいと存じます。
最近、私どもに対する住民の要望は、高福祉社会の実現を期待して著しく増加してきております。私どもといたしましては、このような住民の強い要望にこたえて、立ちおくれている生活関連社会資本の整備、社会福祉施策の充実等の積極的な推進の必要に迫られており、今後、地方財政の重要性はますます高まっていくものと思われます。したがって、このような事態に対処していくためには、地方税の充実強化に重点を置き、地方交付税についても、所要額の確保につとめ、今後の地方財源の充実拡大をはかっていかなければならないと存じます。
このような観点から見ますと、明年度の地方税法改正案の内容は、かなり改善されており、一応の評価をしてよいのではないかと考えております。しかしながら、国は、国税についての政策減税と同趣旨により、地方税の減税を行なうこととしておりますが、これに伴う地方財源の補てん措置が十分でありません。減税自体は、住民の要請にこたえるためのものとして賛意を表するものでありますが、反面、地方財政の現状にかんがみますと、その減収による自主財源の低下につきましては、政策減税を立案する国の責任においてこれを防ぎ、補てんするというルールを確立する必要があると存じます。将来は、十分この点御配慮を願いたいものと存じます。
まず、法人課税でありますが、これにつきましては、社会資本の充実をはかる見地から、法人税及び法人住民税の税率の引き上げが行なわれ、法人の税負担も国際水準並みに強化することとされたことは、私どものかねてからの要望が取り入れられたものであり、賛意を表したところでありますが、ただ、今回の措置により、都道府県分の税率が低下したのは遺憾であり、今後、法人課税に対する国と地方との現行配分比率を抜本的に改めることにより、地方への配分を拡大する必要があると存じます。
また、地方道路整備の特定財源につきましては、地方道路税、自動車取得税及び自動車重量税の増税という形で充実されることになりましたが、長年引き上げを要望してきております軽油引取税、これは私の記憶するところでは、昭和三十九年にきめられたそのままの姿で据え置かれておると存じますが、私どもといたしましては、この点、この引き上げの要望にこたえていただけなかったのはきわめて残念なことだと存じます。地方の道路事業費中に占める道路特定財源比率は、国に比べかなり低いことを考慮され、今後当然に、軽油引取税の増徴についても、ぜひとも配慮していただく必要があると存じます。
次に、今後のとるべき方策について、要望を含めて、述べさせていただきたいと存じます。
まず、その一は、都道府県の公害対策経費が年々増大しており、これに対応する財源措置として公害対策の目的税をぜひ創設する必要があるということであります。このことにつきましては、重油消費税等に関連いたしまして地方制度調査会においても意見が出され、知事会としても要望しているところでありまして、今後よろしく御検討をお願い申し上げたいと存じます。
その二は、知事会が繰り返し要望しております事業税の課税標準のあり方の問題についてであります。御承知のように、事業税の課税標準は、一部の業種を除き、所得金額によることとされておりますが、事業活動に対して賦課するという事業税の物税としての性格から見て問題がありますので、付加価値なり収入金額なり、その他の外形基準の導入について、今後十分な検討をお願いしたいと存じます。
その三は、今回見送られた事務所事業所税の創設を実現する必要があるということであるということであります。これは全国の都道府県全体にかかわる税金ではありませんけれども、人口、企業等の著しい集中により、都市機能の低下が目立っており、大都市及びその周辺地域の税源の充実をはかるということで、ぜひ将来の実現を期待する次第であります。
その四は、国の租税特別措置についてでありますが、租税特別措置が地方税に及ぼす影響は非常に大きいので、常に既得権化や慢性化を排除する方向で検討を加えるとともに、国の行なう特別措置が自動的に地方税に影響を及ぼすことのないようにすることがぜひ必要であろうかと存じます。その点、よろしくお願いを申し上げる次第であります。
最後に、この機会に明年度の地方財政の運営についてお願い申し上げておきたいと存じます。
明年度の地方財政の運営につきましては、地方公共団体といたしましても、きびしい経済情勢に対処し、この危機を克服していくため、国の総需要抑制の方針に沿って努力しているところであります。しかしながら、地方公共団体においては、前にも申し上げましたとおり、社会福祉施策の充実、生活関連公共施設の整備、高校急増対策、さらには緊急民生安定対策等、住民サイドに立った行政需要の要請が、きわめて強く、これらの要請にこたえるための財源確保対策に苦慮している実情であります。このような状況にかんがみ、今後の社会経済情勢に即応して、最近の諸物価の高騰に伴う地方超過負担の解消措置でありますが、これは御承知のように、国におきまして、昭和四十七年の時点で、ある特定の項目につきまして実態調査が行なわれ、四十八年度と四十九年度、二カ年度にわたって解消措置が講ぜられつつあるわけでありますけれども、その後の異常な物価の高騰ということによって、さらに超過負担が新しい形で加わってきておるという点についての御配慮をお願いしたいと思うのであります。
なお、そのこととあわせましてぜひお願いしたいことは、地方債計画の弾力的運用ということであります。これにつきましては、前年度、四十八年度と総ワクにおいて、あまり増額の措置がとられていないようでありますけれども、内容的に見ますと非常に問題が含まれている。特に一般公共事業債に対する充当率等は、六〇%が二〇%に急減する、こういうことであります。そうなりますと、それは勢い地方の一般財源でそれを負担せざるを得なくなる、こういう新しい事態が困った形で出てくるわけであります。今後の地方税の収入の見通しがきわめてきびしく、しかも不安定な形に置かれておるわけでありますので、今後の推移いかんによっては、あらためて検討をし直していただきたい。この点、特に地方所要財源の今後の確保措置としてひとつ格段の御配慮をお願いをしておきたいと思うのであります。
本県の例でまことに恐縮でございますが、高等学校の急増ということに例をとってみましても、神奈川県だけで昭和五十五年までに約六十校ふやさなければいけない。しかも計算上、一学年十二学級という、三学年でありますから三十六学級という大規模の高校、計算をしてもそれだけの高校をふやしていかなければいけないということであります。そうしますると、毎年七校、八校、あるいは八校、九校ずつ一つの県でふやしていかなければいけない。土地の取得だけでも、御案内のような地価の状況からいたしまして、二十億あるいはそれ以上かかるわけであります。それに上ものの建物の費用を加えますと、三十億、三十数億、へたしますと一校に四十億近いものがかかる。これを一体何でまかなっていくのかということになりますと、やはり地方債のワクを弾力的に運用をいたされまして、そういった異常な事態、税収が、私どもが地方財政計画で考えられているようなその程度の収入も得られなくなったということになりますとこれはたいへんなことでありますので、そういった際に対する備えといたしましても、この地方債というものをもう少し幅のある形で、ひとつお考えおきを願いたいものだと思います。
以上、いろいろ申し上げたいことをかいつまんで申し上げたのでありますが、時間の関係もございますので、その他申し上げたいこともあるのでありますが、この程度にさしていただきたいと思います。
なお、最後に、地方税法の改正案は、地方の条例改正等の諸手続を急ぐ必要がございますので、ぜひ年度内の早い時期にその成立を期していただきたいと存じます。
以上、都道府県の立場から率直に所信を申し上げた次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/2
-
003・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、竹内参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/3
-
004・竹内義治
○竹内参考人 御紹介をいただきました全国市長会を代表いたしまして公述を申し上げます。
まず、先生方に地方行財政の問題につきましていろいろ御配慮を賜わっておりますことを、市長会といたしまして感謝を申し上げます。
私は、本改正案に賛成の立場で公述を申し上げたいと思います。
今回の改正は、多年、都市が要望しておりました法人税割の増強、道路目的財源の充実等、都市財源の充実強化に、ある程度税制改正で強化されてまいりました点は、私ども高く評価をいたしている点でございます。また、個人住民税の課税最低限の引き上げ等、住民負担の均衡を内容といたしておるのでございまして、この法律案には賛成をいたしておるものでございます。
そこで、ただいまも知事さんが申されましたように、特に先生方にお願い申し上げたいのは、今回の税制改正の中で、特に固定資産税の小住宅軽減措置につきましては、非常に複雑な課税手続を必要といたします。御承知のように、固定資産税の課税につきましては四月一日に縦覧をしなければなりません。したがって、私どもといたしましては、年度内の早い時期にこれらの成立をお願いいたしませんと、やはり税金を課税する面につき値して適当ではないような状態が生まれることを必配するものでございます。特に今回の税制の改正手続及びそれらの計算につきましては、電子計算機を使いましても非常に複雑な手続を要しますので、その点、実際の事務を取り扱いまする末端地方自治団体の立場をひとつ御考慮賜わりまして、この法律案の御制定にあたられましては実情に即した審議をひとつお願いを申し上げたい。特にこの点、お願いを申し上げる次第でございます。
そこで、今回の税制改正につきまして、いろいろ私どもが多年御要望申し上げておる点につきましてなお十分でないような点がございますので、その点を率直に申させていただきたいと思います。
都市税源としての法人所得に対しまする法人税割を増強されましたことはまことにありがたいのでございますが、御承知のように、法人所得に対しまする実効税率の中におきまする市町村分はいままでは二・七二%程度でございました。今回の改正で四%に引き上げられたのでございますが、なお国税の三三・〇四%、都道府県の一二・四三%に比べまして非常に低い数値でございます。御承知のように、都市はいろいろな企業を集中しております。またそのために要しまするいろんなサービスも必要でございます。それから起きてまいりまする住民の人口集中に対応いたしまする社会資本の充実も必要でございます。さらに今後の問題といたしまして、都市におきまする弾力的な税源といたしまして、法人税割をさらに強化をいただきたいということをお願いを申し上げるものでございます。
次いで、個人住民税の問題について少し申し上げてみたいと思います。
個人住民税の課税最低限の引き上げは、これは所得税の最低限の引き上げとも関連をいたしまして、私どもは当然行なわれる措置であろうと思います。ただ、この結果こういう現象が起きております。昭和四十七年度の自治省の御調査によりましても、登録人口に対しまする所得税割を納めている人の比率が三〇%以下の市町村が七八・九%にも達するということ、言いかえれば、均等割だけの市民だけと申しても過言でないような市町村が非常に多くなっている。所得割を取ろうにもそういう階層がおらない小さな市町村もたくさんあるということでございます。そういうところは均等割だけである。あとは全部交付税でまかなっていかなければならぬ、こういう状態が生まれてまいります。
その点につきましてはいろいろと税制調査会等でも御検討をいただいておるところでざざいますが、御承知のように、現行均等割といいますのは昭和二十九年に改正されて以来今日までずっと据え置きでございます。二十九年の改正で、人口五十万以上は年六百円、五万から五十万までは四百円、五万未満の都市は二百円。まあ、今日の物価から考えてみまして、市町村の会員と申しますか、会員の会費みたいなものでございますが、年に二百円払ったら市町村の会員であらゆるサービスの供与を全部受けられる、こういうことでは市町村財政はどうにもならない。しかし、この均等割を引き上げますと、最も所得の低いところだけ増税という形になりますので、市長会のほうでも、直ちにもっとこれをふやしてもらわなければ困るという市町村もございますし、あるいはそういう今日の状態から見て増税をするのは望ましくないという問題もございまして、結論は得ておりませんが、ただ、多くの小さな市町村におきましては、こういうことではもう住民と税金でつながるような負担分任の問題というものは全く軽視されてしまうので、この際に住民税の均等割の性格をもう一度洗い直してもらって、抜本的に住民税そのものを再検討すべきではないだろうか。一体、負担分任の精神と納税とはどこでかみ合うのか。二百円というような少額で——今日町内会費でも百五十円、二百円を取るわけです。PTAの会費でも百円ぐらい取るわけです。年に二百円という数字というものがはたして適当なのかどうか、ここらあたりは将来の問題としてひとつ御検討を賜わりたい、かように考えるわけです。そのような、ことに過疎零細市町村の立場におきまする税制もひとつお考えを賜わりたい、かように考えるわけであります。
その次、もう一つは、根本的な問題でございますが、固定資産税につきましては、評価がえの結果、大都市近郊におきましては急激な課税負担が行なわれましたので、今回負担調整措置が行なわれまして、私どももこの点については賛意を表しておるわけでございます。
ただ問題点は、非常に複雑な固定資産税の体系になってまいりました。小住宅、あるいは個人の非住宅用のもの、あるいは法人の持つもの、このように非常に複雑な税制体系になってまいりました。さらに加えて、国の土地政策から土地保有税も実施される。また農地課税の問題もある。非常に目的別に税率が複雑になってしまっておりまして、賦課事務がたいへん困難でございます。そこで固定資産税の問題につきましては、国のほうでは、一つは土地政策の面からとらえられておる、あるいは地価対策の面から考えられる土地税制、あるいは住宅政策とからみ合った土地家屋の税制、こういう面からとらえられるのと、本来市町村の安定した財源として、税源としてとらえられる面と、いろいろなものがこんがらがってしまって、今日のような複雑な体系になっておるものと承知いたしておるわけです。
こういう状態が続きますと将来は非常に混乱を招くと思いますので、やはりこの際に、もちろん今日の状態でございますから、土地対策あるいは住宅対策、地価対策というものを無視することはできませんが、固定資産税の税制そのものにつきましては、あらゆる点から、五十一年の評価がえまでに確固たる御方針をひとつ御確立を賜わりたいと、かように考えるわけでございます。非常に私ども困りますのは、いろいろな面であれしますのは、減税するのかと思ったら評価がえで今度増税する。増税して上がり過ぎたらまた下げる。まるでアップダウンクイズみたいに上げたり下げたり、これでは住民も困りますので、ひとつ安定した税制体系をお願い申し上げたい、かように考えるわけでございます。
その次に、今回私どもが見のがすことのできない大きな問題点は、電気ガス税が分離されたことでございます。もちろん、電気ガス税が分離されたのはいろいろな御経過があると思いますけれども、私どもといたしましては、都市的性格の上から所得課税の補完的な財源として安定した財源でございます電気ガス税が分離されたことは、将来電気税は発電所税とのからみ合いで、ある程度これは別な体系に持っていかれるんじゃないだろうか、あるいはまた物価その他の面からこういうものは減税されるものではないだろうか、こういう心配を持っております。こういう点は、市町村の安定した財源として、現在程度の税率をもって、もうあまりいじくらないようにお願いを申し上げたい、かように考えるわけでございます。
なお、先ほど知事さんも申されましたように、根本的には、都市へ集中いたしまする産業、人口の集中に対応いたしまして、大都市はもういまやどうにもならない状態まできております。これを回復するためには大都市の再開発手段以外に方法がないと思います。そのためには、やはり大都市の集積の利益をもって集まってまいりまする法人企業その他等に対しましてはある程度ごしんぼういただいて、大都市地区所在の事務所、事業所に対しては一定の課税を行ない、これを原資といたしまして大都市の都市秩序を回復する必要が早急にあると考えます。この点に関しましては国会の附帯決議もあるようでございますので、ぜひ実現をされますようお願い申し上げます。
さらに、最後でございますが、今日の石油事情でございますのでたいへんむずかしい問題でございましょうが、これまた知事さんがおっしゃいましたように、道路目的財源といたしましての燃料課税の強化でございます。特に燃料課税につきましては、市町村はその恩恵にあずからないわけでございます。しかし、全国にございまする市町村道の整備は最も立ちおくれた社会資本の状態でございますので、したがって、燃料課税につきまして御検討を賜わる際におきましては、市町村道の充実強化を十分できますように御配慮を賜わりたいと思います。
以上、はなはだ簡単でございましたが、供述を終える次第でございます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/4
-
005・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、岡部参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/5
-
006・岡部光佑
○岡部参考人 全国町村議長会の岡部でございます。
地方行政委員会の諸先生方には、町村行財政対策推進につきまして日ごろから格別の御配慮をいただいておりますことを、この機会に厚く御礼を申し上げます。
地方税法改正案につきまして意見をということでございまするが、ただいままでに知事さん、市長さんからいろいろと御発言がございましたので、私がつけ加えることはあまりございませんが、町村議長会で日ごろからお願いを申し上げておりますことについて二、三申し上げてみたいと存じます。
御案内のとおり、現在の異常経済のもとで、明年の財政運営はたいへんきびしく困難なものが予想されます。特に町村は、立ちおくれのはなはだしい生活関係社会資本の整備充実をはじめ、社会福祉諸施策の充実、過疎過密対策の推進等、住民生活に直結した緊急課題をかかえまして、財政需要の増加は避けられないところでございます。そこで、かねがね私どもは町村の自主財源の充実を要望しているところでございまするが、どうしても町村は有力な税源が乏しい関係もありまして、町村の自主財源は年々低下し、最近では一八%程度の低率に落ち込んでいる状況でございます。
したがいまして、今後増加する財政需要に対応するためには、市町村の税収入の総量を拡充強化していただくとともに、税源配分だけでは財源確保が困難な一般町村につきましては、その他の面での配慮、すなわち地方交付税の配分、地方債の配分、国庫補助率の引き上げ等各種の財政措置を通じまして町村財源強化をお願いする次第でございます。この点、政府でもいろいろと御配慮をいただいておりまするが、なお今後ともよろしくお願いを申し上げます。
次に、今回の地方税制改正で、大幅な個人住民税、固定資産税等の減税が予想されておりまするが、これは最近の物価上昇、生活費の増高に対応して個人負担の軽減をはかるものとして理解はできるところでございます。ただ、個人住民税の課税最低限が大幅に引き上げられますと、町村における住民税納税義務者が大幅に減少します。広く地域社会の経費を分担する住民税の性格が薄れてまいります。そこで、一方においては、十数年来据え置きとなっておりまするところの均等割を適正な額に引き上げるという論議もございまするので、あわせて住民税の適正なあり方を今後御検討をいただきたいと存じます。
また、減税を行なう反面、法人課税を引き上げて市町村税源の充実をはかることとされておりますが、私どもの要望を実現していただくものといたしまして賛成でございます。
なお、電気ガス税につきましては、かねてから市町村の数少ない安定した税源として、その税源確保を要望してきております。今回の税制改正で免税点の引き上げ、ガス税の税率引き下げ等が行なわれまするが、将来ともこの税は市町村の財源として確保していただくことを切にお願い申し上げます。
さらに、はなはだしく整備がおくれておりまする市町村道路の目的財源強化をかねてからお願いしているところでございまするが、今回の改正で自動車取得税、自動車重量譲与税等市町村道を重点とした財源強化がはかられておりますことは、私どもの期待に沿うところでございます。
以上、簡単に申し上げましたが、私は本法案に賛成をいたします。できるだけすみやかに御決定いただくようお願い申し上げまして終わります。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/6
-
007・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、桜井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/7
-
008・桜井康信
○桜井参考人 私は横浜で市会議員を十五年やっております。本日は地方行政委員会にお招きをいただきましたことをまず心から厚く御礼を申し上げたいと思います。
すでに、指定都市の立場からは毎年精密なデータを差し上げまして関係方面にお願いを申し上げておりますので、かなり御理解をいただけておるものだと考えております。そういう意味で、特に大都市財源の拡充につきまして特段の御配慮を賜わりたいと思うわけであります。
四十九年度には事務所事業所税の成立が望まれると期待しておったのでありますが、昨年来の石油危機、資源問題をめぐる、さらには物価問題に入ってまいりまして、企業の超過利得がどうのこうのという論争に巻き込まれまして、切なる都市の再開発財源が見送られる形になることは非常に残念でございます。このような情勢のもとでこそ、原則的かつ正確なデータに基づく税財源の基本的な制度論につきましての御論議をいただきたいと思うわけでございます。
私、横浜でございますので、横浜の例から申し上げますが、いま横浜市のかかえております問題は、先ほど県知事の津田さんのほうからもお話がございましたが、それは目をおおうばかりの実情なんでございます。おそらくこのことは、俗に筆舌に尽くしがたいという表現がございますけれども、ことばで語り尽くすことができない実情であるということを、まあ、御理解いただきたいと申し上げてもしょせん御理解はいただけないかと思いますが、とにかく一年間に入ったり出たりする人が五十万人、これは昨年、一昨年の実績でございますが、四十九万数千人ですから約五十万人、そして差し引き十万前後が落ちつくという形であります。平均して年間十万人ずつふえてくる。しかし、十万ふえるというためには、五十万の出入りがあってその年に十万ふえるという形でございます。これはもう人口圧力というものはそれだけでたいへんなものであるということ——先ほど過疎地域の悩みが訴えられました。過疎の裏返しの過密の実態は、過疎とは別な意味でまさに押しくらまんじゅうでございます。
先ほど高校の必要性が知事から訴えられましたけれども、横浜市では一年間に義務教育の小中学校を五十校つくらなければなりません。毎年五十校の土地を引き当てていく。小中高校まで全部含めますと、一年間に、仙台市が持っている義務教育施設諸学校の数に匹敵するのだそうでございまして、そんなばかなことがあるかときっとおっしゃられるに違いございませんけれども、これは事実なんでございます。したがいまして、ここ数年、横浜市におきますところの義務教育費関係、これは、何はなくとも義務教育だけはという形で来ておりますので、義務教育関係の経費は年々倍増でございます。ことしも義務教育小中学校の建設費だけで百十八億を組んでおります。
さらに、過密というものは、人間がふえること、それに伴ってごみの問題、さらには下水の問題1いま横浜市で一番負担の重くなってきておりますのは、第一に義務教育、第二にごみの問題でございます。第三が河川改修でございます。河川改修、要するに下水でございます。たれ流しからどうやって解放されるのか、さらには下水道そのものの整備、こういったものに税金のほとんど、あるいは起債のすべてをつぎ込んで、なお住民の要求を満たし得ないというのが実情でございます。私たちは五大戦争と呼びまして、水資源の問題、公共用地を含めまして土地の問題、さらには交通混乱を乗り切るための交通戦争、ごみ戦争、さらには、これはもう全国的な問題でございますが、特に東京湾中心の公害の激発についての対策、この五つの問題を五大戦争という形で、まさに戦争下の非常な決意でものごとに処すというような政治姿勢で臨んでいるということでございます。
そういう中でことしは法人税の引き上げがされることになりました。したがいまして、この法人税引き上げに伴いまして、横浜市にもいささか税の還元があるわけでございますが、お手元の資料にもございますように、横浜市域に還元されます部分は、わずかに、全国平均で六・六になっておりますけれども、地域によりましては五%、六%という計算が出ております。
たいへん皆さんにお騒がせをいたしました金沢埋め立て、横浜埋め立てに、臨海部に工場をつくるわけですけれども、その中で本牧、根岸、非常に風光明媚な、横浜の特徴ともいわれました本牧、根岸地域の海面を埋めまして工場をつくりました。そして、これは高度成長政策の前段で行なわれた作業でございますけれども、設備投資を受けて都市力の増強をはかるためにと、当時の平沼市長さん、引き続きまして半井市長さんがたいへんな犠牲を払われまして、周辺住民も横浜市民も、先祖代々の海を、風光明媚な土地を捨てまして、これを工場に変えたのでありますけれども、その工場からいま、昨年の実績でございますけれども、これは正確なものとは言いかねますけれども、大法人六社、その他入れますと十二社ほどございますけれども、そこから上がってくる税金、法人企業が利益の中からこの地域に、横浜市に還元してくれる額はわずかに十三億五千九百万。県税に入ってまいりますのは七十五億でございます。国には百五十億が入っていきます。これはもう端的に、本牧、根岸の埋め立てはできました、工場も、近代化された工場が企業活動を活発に行ないまして、わが国の生産性の向上に大きく貢献したことは事実が示すとおりでございます。その利益の還元が、この率でまいりますとわずかに六%に満たない。たった六%なんです。国と県に全部いってしまう。もちろんそれは形を変えまして別な角度で還元される形にはなっておりますけれども、そのお金は少なくとも市政全般の経費に充てられるわけでありまして、この工場周近の都市整備財源に使うことは許されません。まず、道路が、ごみが、学校が、住宅が、その工場がそこに進出するための公共的経費というものは、私たち短時日でとても計算できませんでしたけれども、ばく大な経費を伴っておりますことは、先ほど申し上げましたように、横浜市全体としても、義務教育の関係に一年に五十校も手当てをしなければならない、ごみの施設の建設費に五十億、百億を、年々倍額を投入しなければならぬという事実に示されておるわけであります。
このように、せっかく父祖伝来の土地を国策に従いまして、工業立市という形で歴代市長が御尽力をいただきました成果は、税源、財源といたしましてはわずかに十三億そこそこ、これに対しましてそれの十数倍の額が国に入っていってしまう、こういう税のあり方がはたしてこれでいいのでしょうかということです。これはだれに聞きましても納得のいかないことだろうと思います。
そういう意味で、法人の所得の、法人収益の配分割合について、せめて、六・六%という全国平均の数字ですが、一割まで引き上げてくださいという要求、これがはたして無理な要求なんでしょうか。せめて一割と言っているのです。二割、三割と言っているのじゃありません。その程度のことはぜひお考えをいただきたいと思うわけでございます。これは税制全体の問題でござます。
さらに、国定資産税の不合理という点について私は申し上げてみたいと思います。
固定資産税は、いまの固定資産税のこれは特に税率と申しますより評価の方法でございます。まず基準値が定められてその評価がされて、それに従ってそれぞれの土地の評価がきめられていくわけですけれども、この基準値は商業収益性を中心にきめられる。そこで商売を営むことによってどれだけの利益があるか、いわゆる道路に面して路線価方式ということで、かど地が一番有利ということになっております。駅に近いという、人通りが一番多いところのかど地というのが一番高いのだというきめ方でございます。それを基準にして住宅は幾ら、工場地帯は幾らというきめ方をしております。少なくとも専用埠頭、岸壁を持ち、そして工業用水を持ち、高速道路を配置された、まさに工業立地のこの土地の評価が、商業収益性を基準としたいまのようなきめ方でいいのでしょうか。そして、収益を目的としない住宅地の課税、すべてが一つの基準をもとにされております。少なくとも工業立地の工業地域の中では工業の収益性についてはどうか、それこそ集積の利益がそこにどのくらいあるのか、何年かかってこれを社会に還元しようとするのか、あるいは商業地域において、あるいは全く営利を目的としない住居地域における課税のあり方、こういう問題についてもやはり根本的にお考え直しをいただかなければならぬのではなかろうかと思うわけでございます。
最後に申し上げたいと思います。それは都市計画事業を行なう場合の財源でございます。先ほど申し上げましたように、人口増による人口圧力、急増圧力というものは、まさに満員電車の押しくらまんじゅうそのものであります。ああいう状態を解消していくためには絶対量をふやさなければなりません。風通しをよくしなければなりません。要するに、公園にしても、道路にしても、じんかい施設にしても、量的確保が先であります。しかも、それらはすべて都市計画道路網を中心にして配置されることが望ましいと思いますけれども、横浜におきます都市計画道路は全くみじめな状態に置かれております。
そして、この道路事業を行ないますときに、全体の計画が示されるけれども、財源については全然提案をされない。まず先に計画があって、その次にこま切れで財源が割り当てられてくる。非常にむずかしい用地交渉を行なって、財源調達の道、この道路を使って、どのような形でだれが利益を得、だれが不利益をこうむり、したがってどういう形の配分が適当かということを、国会の場で議論するのではなくて、少なくともその地方議会がきめることが望ましい、かように考えるものでございます。少なくとも自治の名にふさわしい必要事業につきましては、事業そのものでは都市計画審議会なり建設省の認可を得ながらやっていくわけですから、その必要財源の調達について地方議会に自決権を、みずから決定する権限をお与えいただきたいと思うわけでございます。
以上、地方税法改正の提案理由を読ませていただきまして、趣旨はまことにけっこうでございまするが、私たちの意思が、ことごとくとは申し上げませんが、少なくともくみ入れられ、改善の方向に向かっておりますのかどうか、皆さま方に私たちの立場を申し上げまして、今後の御審議の中で御決定を賜わりたいと思います。賛成とも反対とも、私には実情がよくわかりかねますので、提案されております法案につきましての態度は発表いたしかねますけれども、横浜市の実情を通じまして、過密における実態を克服していくための財源確保について、皆さま方の格別の御配慮をいただきたいと思うわけでございます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/8
-
009・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、山中参考人にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/9
-
010・山中末治
○山中参考人 ただいま御紹介賜わりました京都府の八幡町長の山中末治でございます。
日ごろは先生方には種々地方公共団体の税財政制度、行政制度等につきまして御高邁な御配慮を賜わりまして、この席をおかりいたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。
本日は、地方税法の一部を改正する法律案関係につきまして意見を申し述べるようにと、こういう御連絡をいただきました。問題は非常に多いわけでございますが、私も町長をさせていただきましてから約十八年ほどになりますけれども、その中で、現地で、表現は悪うございますが、どろまみれになってやってまいりました行政の中から体験しましたことを申し上げて、先生方の全力をあげての制度の改正をお願い申し上げたい、このように存ずる次第であります。したがいまして、どろくさい発言になるかもわかりませんし、またポピュラーなものでないかもわかりませんが、いなかで日々町村行政を進めさせていただいております者の立場ということでひとつごしんしゃくを賜わり、お許しを願いたい、このように存ずる次第でございます。
まず第一点目につきましては、国と地方を通じての租税収入の分配の状況であります。租税全体のうち、国が六八%を収入され、地方は三二%を収入していることになっております。これに対しまして「実際の財政需要につきましては、」もう先生御承知のように、地方が七一%を必要とし、国は二九%となっているのが実情でございます。昭和四十七年度の決算の数値であります。
国は、みずから収入されました税の中から交付税や支出金という形で、地方の不足分を地方に渡していただいております。この形は原則的には変則ではなかろうかというふうに私は感ずるわけであります。財源調整に必要な交付税は別としまして、地方の仕事量にふさわしい税源を地方に与えていただきますように格段の御尽力、御理解をお願い申し上げたい、このように存ずるわけであります。
私どもは、ほんとうの地方自治というのは、住民がみずから出したお金に責任を感じて、みずからのためにどうそれを使っていくのかということを十分相談をして、そして住民がきめていく、こういう自主性が現在の地方公共団体の中でもっともっと出てこなければ、いろいろなものが障害として出てき、地方公共団体は混乱を増してくるのではなかろうかというふうに存じます。
基本的な、根本的な問題としましては、地方税源の抜本的な充実を目的とした国と地方との間の税源の再配分、これを第一に希望いたすわけでございますが、インフレによりまして地方財源が実質的に激減をしている今日におきまして、一そうそのことを痛切に感ずるわけでございます。
今回の地方税法改正案では、住民税におきまして、障害者等の非課税限度額や控除額の引き上げ、配偶者等の控除額の引き上げ等が措置をなされるようになっております。これらの措置によりまして、収入金額が二百万円の給与所得者の住民税個人所得割は、都道府県民税、市町村民税を含めまして、夫婦と子供一人で一五・五%、夫婦と子供二人で二〇・七%軽減をされることになるわけでございまして、私どもが早くから願っておりました問題について、一歩前進していただきましたことをほんとうにありがたく存じておるわけでございます。
ただ問題は、これは四十七年と四十八年と同じ所得であった場合にまさしくこれで軽減されるということでございまして、ことしの課税の基礎となります昨年の所得は一昨年と比べて二〇%近く上昇している状態を見てまいりますと、これではたして所得の低い人たちの税が昨年よりも実質的に減るのかどうか、市町村の現場にありまして、住民の方から素朴な疑問を寄せられた場合に、町長はその回答に苦しんでいるというのが実情でございます。
その上に、インフレによりまして消費者物価は二月時点で対前年度二三・一%も上昇しています。この物価の上昇率と一五・五%あるいは二〇・七%という税の軽減率を並べてみますときに、何かむなしい感じをぬぐい去ることができないわけであります。町長としまして、一円でも財源がほしい、こういう立場が一方にある反面、住民の生活をどうして守っていくのかということの立場があるわけでありまして、私たち町村長の頭の中、行政の中で非常に混乱をするものであります。したがいまして、住民税等の減免につきましてはさらに委員会の中で御検討を賜わりまして、減免の率を引き上げていただきたい、このように存ずるわけであります。
インフレのすみやかな終息をはかることが第一でございますけれども、物価が鎮静するまでの間、減税についても弾力的な運用をおはかり願いたいと存ずるわけであります。その場合、地方財源をそこなわない措置として、交付税の政府への借り入れ千六百七十九億六千万円、これの運用、充当等も御配慮願いたい、このように存ずるわけでございます。
三番目には、市町村民税法人税割の標準税率が百分の十二・一に、また制限税率が百分の十四・五に改正をされる案となってございます。引き上げるという思想につきましては、これも賛意を表する次第でございますが、現行制度でも改正案でも、この法人税割の税率は法人の大小にかかわらず均一化されているという点に問題があるのではなかろうか、このように存じます。中小企業保護の立場から、法人税と同様、地方税におきましても、小法人には低く、大法人には高く区分した率を設けられるべきではなかろうか、このように存じます。
なるほど、均等割には差がございますが、その額そのものが現在の貨幣価値から見れば全く問題にならないほど低い均等割の額ではなかろうかと存ずるわけであります。したがいまして、現在にふさわしい均等割の額の引き上げも、これは法人についてでありますが、考慮をしていただきたい。
また、現在小法人と大法人との区分は、資本金または出資金が一千万円で線が引かれておるわけでございますが、この線も、貨幣価値の変動と中小企業保護の立場から、線をもっと引き上げるべきではなかろうか、このように存ずるわけであります。これが第三点目でございます。
その次には、法人に関します税に関連をいたしまして、現在超過利得税の創設が論議をされておるやに聞き及んでおります。私どもは、超過利得税をどういう形で収入をしていくのかという御論議はいろいろ聞かせていただいておるわけでございますが、この超過利得税を支出していく場合の論議を地方行政委員会の先生方にお願いを申し上げたいというふうに存ずるわけであります。
この税は、申し上げるまでもなくインフレによります利得に課する税でございます。ところで、そういうインフレ下におきます国、都道府県、市町村等の影響を考えてみますと、これはあるいはことばが過ぎるかもわかりませんが、国のほうは、年間総予算主義ということで、特別大きな問題等がない限りは年度当初に予算の編成をいたされます。年間それで運営をしていただくわけでございますが、市町村の場合は、住民からのいろいろな要望がほぼ毎日やってまいります。いわゆる財政需要というものが非常に強く市町村に働きかけてくるわけでございます。勢い、市町村におきましては、年間総予算主義ということを考えておりましても、そのつど補正財源を見つけ出しては、住民の要望に対して少しでも沿っていかなければならないという状態が生まれてきております。
なお片面、収入の面におきましては、国の方へはインフレによりますところの自然増というものは非常に多く入ってまいります。ところが市町村の場合は自然増というものはほとんど限られてきている。片方では収入が、自然増がどんどん入ってくる。もちろんこれで、先生方御承知のように、今日まで国債の減額等にも充てられたという経過がありますが、それでもなお国のほうには財源が自然増として歳入を多く見込まれてくる。市町村の場合にはそれと逆で、むしろ市町村民税なんかの場合には昨年度の所得によりまして本年度の税収がきめられているということになってきますと、昨年からことしにかけてのインフレによるところの収入の増加、これが税金として町村に響いてくるのはことしになります。ことしインフレの進んでおりますことに対する税収の伸びは来年にならなければ市町村に入ってこない、こういう一年おくれの矛盾もございます。進行いたしますインフレによる財政需要の増大に対しまして、一年おくれの地方市町村におきますところの収入の問題とあわせて、この超過利得税の支出の問題につきまして先生方の御検討をわずらわしたく、また国の自然増の面につきましては、市町村に交付金等による方法で、財政技術的に問題はいろいろありましょうけれども、ひとつ改善をお願い申し上げたい、このように存ずる次第でございます。
次に、地方税と人口急増の関係につきまして、問題点をお聞きいただきたいと存じます。それは、特に大きな税源であります住民税と固定資産税の課税基準日が、課税年度の属する年の一月一日現在になっている点であります。
私どもの町は、昭和四十五年の国勢調査から昨年の十月までの三年間に、二万三千人が人口四万人にふくれ上がっております。ほとんど倍近く三年間で人口が増加しておりまして、その増加率は七四%であります。こういう人口急増市町村でございまして、この人口増加に対しましては、転入者の居住とともに即刻行政経費が必要となってまいることは諸先生方御存じのとおりであります。
ところが、学校等の施設の整備、これはその人人が町に住まれる前から先行して建設をしなければなりません。これに対しまして、この人口増加がもたらす税収入は、一月以降に完成した家に転入居した人については住民税も固定資産税も、先ほど申し上げましたように翌年度以降にしかなりません。住民税についてみますと、本人は私どもの町に住民という立場で住んでおられるにもかかわらず、税金は昨年に住んでおられた市町村等に納まっていくわけであります。町長としましては、その前に住んでおられた市町村に出向きまして、その分を何とかもらいたいというような気持ちで一ぱいでございます。これにつきましては、合理的な改善方法の一つとして交付税等で見られるということになっておりますけれども、この交付税の人口増分が全く私どもの期待に沿うところまで来ておらないというような実情でございます。この点につきまして、税財源と人口急増の問題につきましても、日ごろ先生方にいろいろとごしんしゃくを願っているところでございますが、この際に再び御要望申し上げまして、妥当な結論を導き出していただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
私の町の場合、四十九年度の試算では、全国平均増加率三・五%相当の八百人分、千四百五十万円が全く根拠なくこの交付税の中で割り落としをされている、その上に数千人に及ぶ年度途中の増加人口が、必要な財源、いわゆる数千万円を持たぬままに、従来からの住民の方からいただいた乏しい財源を食っていっているというような状況でございます。現行の地方税制と交付税制はそういう二面を持っているのでございます。その上に、交付税では四十八年度の土地開発基金のように、国調以後の増加人口分が全く見られないという費目も存在しているのでございまして、この問題の解決なくしては、住宅建設に対します市町村の拒否の姿勢というのはまだまだ改まらないだろうというふうに存ずるわけであります。人口急増市町村の立場も最後に申し上げまして、この問題の解決をお願い申し上げる次第でございます。
したがいまして、今回地方税法の一部を改正する法律案関係につきまして意見を申し述べる機会をお与えいただきまして、私としましては先刻申し上げましたように、私どもの要望久しいものが一歩実現をされつつあるという点につきまして、非常にありがたく、敬意を表し、賛意を表する次第でありますが、私どもが市町村の現場におきましてかかえております問題点、解決していただきたい問題がまだまだたくさんございますので、先生方によろしくお願いを申し上げて、意見の開陳といたしたいと存じます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/10
-
011・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、荻田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/11
-
012・荻田保
○荻田参考人 ただいま五人の方から御意見の御開陳がございましたが、いずれの方も日夜第一線の地方行政に携わっておられまして、現実に即した切実な御意見をお述べになったわけでございますが、私は立場が違いまして、全く机上論になりまして、しかも未熱なことでございますけれども、せっかくお招きをいただきましたので、私の考えていることを率直に申し上げて役目を終わらしていただきたい、こう思います。
まず、最初に結論を申しますれば、現段階においてはこの改正案は適切なものでありまして、すみやかに成立することを私は望んでおります。先ほど来皆さま方から申されましたように、現実に行政をやっていかれる上においては、この法律は成立しただけではいけないのでありまして、それぞれの行政手続を要します。それが年度初めに及んでおりますので、ぜひともすみやかに年度内に成立して、行政上円滑に進むようになることが好ましいのではないか、よけいなことかもしれませんが、そういう感じを持っております。
そこで、今回の地方税制の改正案でございまするけれども、これは私は、最近の改正に比べまするとかなり大きな案だと思います。
まず、きわめて多額の減税が行なわれております。ちょっと調べましたところ、差し引きして千七百億円の減税でございます。これは、去年が千二百億、おととしが九百億でございますから、かなり大きいのでございます。その上に、いま申しましたのは差し引きした減税額でございますが、減税額と増税額と分けますと、いずれもかなり大きい。減税で三千六百億円、増税で千九百億円、これはかなり大きなものであります。これだけのことをやるのについては、あとで申しますようにそれぞれ理由があることでありまして、まあ適切じゃないか、こう考えております。
まず、減税の問題でございまするけれども、一つの考え方としましては、来年度の財政の基本政策は総需要の抑制ということにあります。そういう見地からいたしますと減税というのは必ずしも好ましいことではない。やはり税は取るだけ取って、なるべく公債の発行額を減らせるということが好ましいと思いまするが、これが減税ということになっている、ここに一つの問題があると思います。
それから第二には、いわゆる高福祉高負担ということがいわれております。いわゆる総需要の抑制ではありますけれども、社会福祉等の関係は充実していくということでございます。それならばやはり高福祉高負担であって、ある程度の税の高いことはがまんしなければならない、こう考えるのであります。ところがこれが減税になっております。
したがいまして、総体として考えますれば、必ずしも減税ということがいま申しました二点の理由から申しますと好ましくない。ところが、最近における物価高騰によります国民の生活費の向上ということが生活圧迫を来たしております。したがいまして、これに対する減税ということは行なわなければならない。この額が私はかなり高いのじゃないかと思う。したがいまして、この意味においての減税ということはやらざるを得ない。したがって、これは、いわゆる減税とは申しておりますけれども、いわゆる税制の物価騰貴に伴う調整というような意味において取り上げるべきではないか。したがいまして、これくらいのいわゆる調整があってもしかるべきじゃないか、こう考えます。
それから一方、地方財政というものは、先ほど来皆さま方からお述べになっておりまするように、こういう情勢でありましても非常に増大するのであります。したがって、これに応ずるだけの財源が必要であります。そのためには地方税源、ことに市町村税源というものの充実が必要であります。その方向に沿った今度の改正案でございますから、私はこれは好ましいのじゃないか、こう考えるわけであります。これが総額から見ましての感想でございます。
次に、その内容でございまするが、私の見ますところでは三つの柱があるようでございます。
第一が個人関係の税金の軽減でございます。これは、住民税の所得割、それから個人事業税、それから固定資産税のうちの個人住宅用土地、それからガス税、こういう面に及んでおります。これは先ほど申しましたように、生活費の高騰ということに対して対処するためにはやむを得ないところじゃないか、こう考えるわけでございます。
それから第二は法人関係の増税でございます。これは先ほど来申しておりますように、減税はするけれども地方財源は確保していくという趣旨から、できるだけの増税をはかる。そのためには比較的担税力のあるところに持っていく、こういう意味におきまして、国際比較からいたしましても法人関係の負担が少ないということから、ここに増税の財源を求めることは私は適当だ、こう考えております。このために、市町村民税の法人税割、それから法人関係の住民税、事業税についての引当金の整理、それから特別措置の整理、それから耐用年数の合理化というようなことにおいてもかなりの増税が行なわれておりますが、こういうことは私は好ましいのじゃないか、こう考えます。
第三番目は道路目的財源の充実でございます。このために自動車取得税の増税が行なわれております。それから、これは直接地方税ではございませんけれども、譲与税として自動車重量税、ガソリン税の増税が行なわれております。これも私は好ましいのじゃないか。やはりこういう段階におきましても、この交通戦争に対処するのにはどうしても道路整備そのものをやっていかなければならない。そのためには財源が要る。それを税に求める。ことに市町村においてはこれから大いに市町村道の充実をしていかなければならない。しかるにもかかわらず与えられている目的税が少ないということから、ここに求めることは適当じゃないかと思います。ただちょっと残念なことは、軽油引取税の税率の引き上げが行なわれていないことでございます。これは物価対策等配慮された措置だと思いますけれども、私はこれはやったほうがよかったと考えますから、近い将来においてお考えいただければけっこうじゃないか、こう考えます。
以上が今度の税制についての三本の柱でございます。これに基づいていろいろ改正が行なわれているのでございますが、そのおもなるものについて取り上げまして感想を申し上げたいと思います。
まず、個人住民税でございまするけれども、これは課税最低限が引き上げになっております。これは先ほど来申しておりますように、生活費の高騰等からして当然のことだと思いまするが、この場合、いつでも問題になりますのは所得税との比較の問題でございます。この所得税との比較を、自治省方面におきましてはことしの住民税と去年の所得税とで比較されておりますけれども、私はどうもそういう比較のしかたが好ましくない。やはり、去年の課税標準を使うことは使いましても、納めるのはことしの所得から納めるのでありまするから、ことしならことしで国税も地方税もつかまえて比較すべきだ、こう考えます。そういたしますと、私の計算では四十九年度は六七・四%、つまり国税の課税最低限に対しまする地方税の比率は六七・四%でございます。去年が七七・二%でございましたから、かなりこれは下がったことになる、開いたことになります。これがさらに現行のまま平年度化いたしますれば六六・四%になって、さらに開くことになります。
この所得税と住民税との課税最低限が開くことについては適当でない、理想としてはこれを引きつけるべきだ、一緒にすべきだと、こういう御議論がかなりあるようでありますけれども、私はこれに全く不賛成なんでありまして、私はもっともっと開いたほうがいい、こういう感じを持っております。やはり、住民が負担分任の精神に基づいてみんなの経費を持ち出すという住民税と、所得配分政策を大いに取り込んだ国税、所得税とにおいては、そこに課税最低限に大きな開きがあって差しつかえないと思います。ただし、そうは申しましても、課税最低限の絶対額を低いものからとれということを決して申しているのではございません。先ほど来申しておりますように、生活費が向上し、しかも国民所得が上昇した今日においては、やはりこれはどんどん上げていくべきだ、住民税といえども上げるべきだ、こう思います。したがって、今回引き上げられたことは当然のことだと思いまするが、これをもっと拡大したらどうかということでございますけれども、これは私は限度があると思います。
その理由としましては、第一に、これを引き上げますとそれだけ減税額が出ます。その減税額をほっておくことは地方団体の財政上許しません。したがって、かわりの財源を求めなければいけない。そうすると、かりに住民税の課税最低限を引き上げて減税額が出る。その穴埋めを固定資産税でやるとか事業税でやるとか、こういう議論になってきます。電気ガス税でやるとか、何でやるか知りませんけれども、そういう議論になってきます。そうなってきますと、やはり税体系としては好ましくない。所得税系統のものにある程度求めていかなければいけないのじゃないか、こういう感じがいたします。
それから第二に、これは先ほど市の代表の方からも申されましたように、市町村によっては住民税所得割を納める者が非常に少なくなってしまう。それでは負担分任の精神を持っているところの住民税の価値がなくなるじゃないか、こういうことでございます。この点に私は賛成でございます。そのような意味において、私は、先ほど来申しておりますように、生活費の向上、所得の向上に応じて住民税の課税最低限を引き上げていくことは適当でありまするけれども、これを極端に引き上げるということには不賛成でございます。
したがいまして、これはつけたりでございまするけれども、先ほどちょっとどなたかお触れになりましたような、いわゆる均等割というものについてくふうを要するんじゃないか。一律引き上げというんじゃなくて、何らかの方法によって引き上げないと、これは非常に時代おくれしたものになってしまっている。やはりこれはある程度やるべきじゃないか。そのかわり、所得割の課税最低限は引き上げる、こういう考え方があってしかるべきじゃないか、こう思うわけでございます。これが個人住民税についてであります。
それから次に事業税でありますが、これについて、かなり大幅な個人事業税についての事業主控除の引き上げが行なわれました。これは現在のいわゆる生活費の向上というようなことから見てやむを得ないところと思いまするけれども、私は、事業税というものがいわゆる物税であるということを考えますると、ここに限度があるように思われます。したがって、ここをそうやたらに上げるべきじゃない。いわんや、国税においてとられましたところのみなし法人課税、これは地方税には持ち込むべきではない、こう考えます。したがいまして、これはまた大きな改革案になりまするけれども、事業税についてはやはり付加価値税的なものにするということ、これは私自身が、個人的な郷愁かもしれませんけれども、シャウプ勧告のときやろうとしてできなかったことでありまするが、それがいずれの日かに実現することを私は望んでおる次第であります。しかし、これは大きな改正でございますから、来年度どうという問題ではございません。
次に固定資産税でございまするが、これについて、小規模な住宅地についての軽減が行なわれることになりました。これは私はやむを得ないと思っております。しかしながら、これもやはり物税であります以上、そうやたらに差をつけるべきではない。個人的な事情をそう物税に持ち込むべきではない。したがってこの程度が限度だ。それよりも、この今回の改正の附則にございますように、五十一年度ですか、いわゆる見直しをして、固定資産税についてすっきりした形にする、こういうふうに法文に出ておりますが、これは私はぜひやってもらいたい。私に言わせれば、少しくいろいろな雑音が入り過ぎている。やはりもう少し固定資産税というような物税はすっきりした形にするのが適当だ。これは五十一年度ですかに実行されることを期待しておる次第でございます。
それから、これは地方税法の改正案そのものには直接関係はございませんけれども、例の生産緑地の問題でございます。これは都市計画法の改正ですか、それで出ております。これは私は大いに賛成でございます。やはり市街化区域内においても将来とも緑地として残すべきものがある。その場合に、農業をやりつつ残す、いわゆる生産緑地という考え方があってしかるべきだと思います。したがって、これについては安い税金を取るということは私はよいと思います。しかし、これが乱用されて、いわゆる市街化区域内の宅地並み課税というものがしり抜けになるようなことにならぬようにしていただきたい、こう考えるわけでございます。
それから次に事務所事業所税でございますが、これはやはり大都市の特殊な財政需要、それから受けるところの行政における受益というようなことを考えますると、これはつくったほうがいいと思います。今回できなかったことは残念に思っております。したがって、将来なるべく早い機会に実現できるように御配慮願いたいと思います。と同時に、大都市において法定外普通税としてこういうものは先駆的に取ったほうがいいんじゃないかという感じがいたしまするから、大いに勇気を出してもらいたいと思います。
それから最後には特別措置の整理でございますが、これはもうたびたび言われておりますように、大いに整理することが地方税としては好ましいと思いますが、その中で、ことしできました発電所関係のもの、これはまことにけっこうなことだったと思います。それから見ましても一特別措置というものは無理なところがあるので、やはりこれは全部取ったほうがすっきりした形になる。その一例がこの発電所に対するものであって、大いにけっこうだと思います。
電気税なんか非常に免税規定が多いのですけれども、これなんかも私は非常に無理だと思います。大いに整理していただきたい。まあ、私のことを申しても恐縮ですけれども初めこういうつもりで電気税の免税ができたんじゃなかったはずだったと私は記憶しております。これはつまり、電気でも、いわゆるモーターに使うとかなんとかに使うとかいう、ただ使い方が多いというだけじゃなくて、電気分解であるとか電気炉であるとか、そういう電気そのものが材料になっているようなものだけを免税にするということであったのが、いつの間にかどんどん需要がふえてきて多くなっているのは、これは好ましくないと思います。大いに徹底的に整理していただきたい、こう感ずるわけでございます。
以上、簡単でございますが、私の感ずるところを申し上げました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/12
-
013・伊能繁次郎
○伊能委員長 これにて、ただいま御出席の参考人からの意見の御開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/13
-
014・伊能繁次郎
○伊能委員長 これより参考人に対する質疑を行なうのでありますが、時間の都合上、初めに順次質疑を行ない、その後参考人の方々からまとめて御答弁をいただきたいと存じます。山本弥之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/14
-
015・山本弥之助
○山本(弥)委員 それでは、時間を制約されておりますので簡単に御質問申し上げたいと存じます。
いろいろ貴重な意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。
第一点は、ことしの税制改正は、国、地方を通じまして大幅な改正であったわけでありますが、しかし国と地方税の配分につきましては、依然として従来の比率をそのまま踏襲されておるということでありますが、私は、やはりこういう大きな改正の際には、地方税の配分を、自主財源の充実という意味において確保すべきである、こういうふうに考えるわけでありまして、この点につきまして、各参考人の御意見を承りたいと思います。
それから次に、従来でも超過課税ということは、中堅市といいますか、中堅よりむしろ町村に近い市、そういうところが中心になりまして法人住民税を中心に超過課税が行なわれておるわけでありまして、市町村の比率からいきますと相当高いのでありまして、法人税割につきましては、市町村数は千三百九十五市町村というふうに、自治省からいただいた資料にはそうなっておりまして、四二%以上が超過課税をしておる。これはそれぞれの自治体が自主的にやっておるわけでありまして、ただいま荻田さんからも、多年要望しております事業所あるいは事務所税につきましては法定外普通税として断行すべきであるというような御意見があったわけであります。私は、この超過課税につきましては、こういう非常に経済的に混乱をしておる実態においては、府県にしても市町村におきましても十分その地域の実態を把握しておられると思うので、したがって、住民税にいたしましても、住民税は個人住民税、法人住民税がありますが、これらにつきまして、やはり英断的に地域の実情にふさわしいような超過課税に踏み切るべきだと思っております。
ただ、不均一課税につきましては、いただいております資料では一市だけしか実施をしておらぬようであります。これは私も事情をつまびらかにいたしておりませんが、ことに資産課税が非常に優遇されておる現実からいいますと、法定外普通税かあるいは不均一課税によりまして、当該地方公共団体の実情に応じて不均一課税を活用するということが必要ではなかろうか、こういう感じがするわけでありまして、この点につきまして各参考人から御意見を承りたいと思います。
まだ質問がございますが、時間の関係がございますので、この二点につきましてお伺いいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/15
-
016・伊能繁次郎
○伊能委員長 多田光雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/16
-
017・多田光雄
○多田委員 参考人の皆さん、どうも御苦労さまです。
四、五点簡単にお伺いしたいと思いますが、四十九年度の地方税の伸び率を二九・七%と大幅に見込んでいるわけですが、過去の実績に照らして、各地方自治体としてどの程度の伸び率と考えておられるのか、これをひとつ第一に伺いたいと思うのです。
それから第二番目は、国の一兆四千億にのぼる政策減税に伴って、このはね返り分ですね、地方の減税分、この差額はどの程度になるものなのか、これもひとつ伺いたいと思います。あわせて、減税分を一般財源で見ろというふうなあれもありますけれども、どういうようなやり方がいいのかということも含めて御意見を聞きたいと思います。
それから三番目は、租税特別措置の件ですが、一つは、国税の租税特別措置によって地方税の減収額がここ数年どのくらいになっておるのかということです。実際の影響はどの程度出ておるのか、これもひとつ簡単でよろしいのですが、お聞かせ願いたいと思います。
次に、いまに関連してですが、租税特別措置については撤廃の声も非常にあるわけですけれども、どのような方策をとったほうがよろしいとお考えなのか、これをひとつ伺いたいと思います。
それから電気ガス税につきまして、先ほど竹内さんからですか話があった、電気とガスの分離についてちょっと御不満のような、御懸念がございましたけれども、この点もう少し詳細にお聞かせ願いたいというふうに思います。
それから不均一課税の問題ですが、これはいまお話もございましたが、二、三のところで検討されているということも聞いておりますけれども、この不均一課税をかけなければならない実態、それからその考え方、これについてひとつお伺いをしたいと思います。
その四点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/17
-
018・伊能繁次郎
○伊能委員長 小川新一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/18
-
019・小川新一郎
○小川(新)委員 私は高福祉高負担の問題についてお尋ねしますが、高福祉高負担という理論は、現在の物価高とかいまの税配分の不均衡の中から、住民が行政サービスというものに納得していない、住民税が高過ぎるという声すらある中で、高福祉をやるために高負担するんだという考え方について、いま御意見が二つに分かれたような考え方を私は持っておるのです炉、まずその点について一つお尋ねしたいと思ます。
二番目は固定資産税の問題ですけれども、固定資産税の見方は、固定資産税の持っている収益性にかかるものなのか、そのものにかかるものなのかということで議論が相当分かれると思います。固定資産税の考え方ですね、固定資産そのものにかかる税金なのか、固定資産の持つ収益性にかかる問題なのかという点で、固定資産税の考え方が相当違ってまいります。これは先ほどお話が出ましたような、市街化調整区域、市街化区域内の宅地並み課税という問題にも触れてまいりますので、この点は皆さんはどうお考えになっていらっしゃるのか、二点目としてお尋ねしたいと思います。
それから三番目は、事務所事業所税等の問題については御意見が全く一致しております。私は、さっき横浜の例をほんとうによく聞かしていただいたのですけれども、こういうような事務所事業所税を設けることによって大都市問題が解決する、その問題だけで都市開発の目的税にするということは私は不賛成なんです。もっと大きな立場から大都市問題というものを考えなければならない。その問題については、事務所事業所税というものも一つの理論ではございますが、もっと大きな抜本的な立場から大都市問題を考えていくということを考えております。その辺のところは横浜の方から特に聞きたいのでございますけれども、これだけで横浜の問題が解決するとは考えておりませんので、御意見があればさらにお尋ねしたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/19
-
020・伊能繁次郎
○伊能委員長 折小野良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/20
-
021・折小野良一
○折小野委員 二、三御質問申し上げます。
まず最初に津田さんにお伺いいたしますが、御存じと思いますけれども、東京都におきまして事業税の不均一課税をしようといたしております。それにつきまして津田さんの率直な御意見をお聞かせいただきたいと思ます。
次に岡部さんにお願いいたしますが、過疎地域の税収、これがなくてどこも非常に困っておるわけなんでございます。日の出村が過疎地域かどうか十分には承知いたしておりませんけれども、町村財源と申しますか、あるいは過疎対策の財源と申しますか、そういうような面で、こういうものに課税をしたらというような何か御見解がございましたらお知らせいただきたいと思います。
次は桜井さんにお伺いいたしますが、先ほど来公害目的税というお話がございました。公害をいろいろ現地でごらんになり、またいろいろと苦慮しておいでになるだろうと思いますが、横浜の場合に、公害目的税というものをつくるということがありますならば、どういうものを対象にして公害目的税を設定したらいいのか、お考えをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/21
-
022・伊能繁次郎
○伊能委員長 細谷治嘉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/22
-
023・細谷治嘉
○細谷委員 荻田さん、二点御質問したいのです。
一つは、個人住民税の課税最低限に関連する負担分任の問題であります。均等割を上げろ、こういうことでありますけれども、荻田さんはどのくらい均等割を上げるべきだというふうにお考えになっておるのか。
問題は、所得税と住民税の課税最低限を比較するのは現年度で比較しろ、これは私も賛成であります。全く現実的でない前年度の課税であって、一年前のやっと比べて、いや八〇%でございます、今度は九〇%になりました、こういうことをいっておるわけですけれども、これは税の場合に、平年度に幾らになるとかなんとかということではなくて、おっしゃるとおり私も賛成でありますが、荻田さんの御意見を聞きますと、低所得者に対しては考えてやらなければならぬけれども、ほんとうの腹のところは負担分任ということに非常にウエートを置いて、現実の問題としては低所得者からもそれを取れ、こういう御意見が腹の中におありになるんじゃないか、こう受け取りました。そうでないと、低所得者には軽減しなさい、負担分任は強行しなさいということになりますと、具体的なお話を聞きませんと抽象論のから回りになってしまうのではないか、こう思います。
これに関連して、負担分任ということをおっしゃるならば、あなたも当時自治省におられて、その責任がまだあったころだと思いますけれども、御承知のように、所得税というのは所得再配分の機能というものを考えてたくさんの段階を設けてある。市町村の住民税についても、所得税ほどじゃありませんけれども、若干所得再配分の機能を持っております。ところが三十七年に、都道府県の個人住民税について、やはり所得税と市町村の個人住民税との間ぐらいの、負担分任ということも考えながら、間くらいの段階を設けた税制ができたわけですね。ところがそれは実行されないままに、一ぺんにいまの二段階比例税率制になっておるわけです。そういうことであるならば住民に一番近いところが市町村でありますから、市町村に対しては確かに応益主義、負担分任というのが一番ウエートがかかっていいはずであります。それよりも遠い都道府県の個人住民税に対して二段階比例税率というのは、これは税の体系としては、国、府、県、市町村との間に矛盾があるのじゃないか、こう私は思うのですよ。この辺をどう考えるか。
それから第二点は個人事業税、物税ということでありますけれども、現実には物税じゃないです。昔あった営業税的なもの、収益課税ですね。この税の性格というものが非常にぼけておる。そうかと思いますと、医師の社会保険料に対する租税特別措置というものはまともに七二%かぶせてしまう。こういうふうな形でいろいろ問題があります。これに対して、こういう税の性格からいろいろな矛盾を解決するには付加価値税、いまの西欧でやられておる付価価値税ではなくて、シャウプ勧告に基づく、あなたがっくりまして二十七年ぐらいから実行することになっておりました、これも法律だけつくって、市町村や県で条例をつくって、いざ実行しようと準備しておった段階で一夜にしてくずれた、あなたのことばでいえば、意思と違ってできなかったといって、郷愁があるとおっしゃっていますけれども、私はあれならば税の性格は一応位置づけられると思う。いまの事業税というのはやはり税の性格からして問題がある。そういう意味においてはすきっとすべきである。そういう意味では、付加価値税を取り入れるならば、西欧式の付加価値税じゃなくて、やはりあの当時取り入れた付加価値税というのが採用される可能性があってもいいんじゃないか、こういうふうに思うのです。この辺についてひとつ一刀両断の御意見を聞かしていただきたい。その辺はっきりしていませんから、きちんとしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/23
-
024・伊能繁次郎
○伊能委員長 ただいま五委員から参考人の皆さんに対する御質問がございましたが、前三人は参考人全般に対する御質疑であり、あとのお二人は特定の参考人に対する御質疑でございますので、そのおつもりで、特に御意見ある方々から御答弁をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/24
-
025・津田文吾
○津田参考人 それでは、お名ざしをいただきましたうちでは私が最初であったようでございますので、折小野委員のお尋ねにお答えを申し上げたいと思います。
東京都では法人事業税につきまして、いわゆる不均一課税と申しましょうか、標準税率を上げましていわゆる超過課税をやりまして、その中でいわゆる大企業を除く企業に対しましてはもとどおりというか、引き下げる、こういう、言ってみれば不均一の課税、そういう措置をしようとしているが、それに対してどう思うか、こういうことであります。具体的に東京都のなされようとしていることに対して、隣の自治体の首長である私が云云というのはいかがかと思いますけれども、あえて意見を尋ねられましたので、一般的な見解ということでひとつお受けとめ願いたいと思うのであります。
税法の現在の解釈といたしましては、特別の財政理由というか、事由というものがないのにそれをやるということは、全体の国、地方を通じる課税秩序というか、あるいは課税体系というか、そういうものにやはり支障を来たすのではないか。したがいまして、これはやはりできるだけ狭い解釈、自治省等で加えられております解釈といたしまして、災害等が起きたということでその自治体に特別の財政需要が出てきて、それまで与えられている財政的な財源措置ではしのぐことができない、こういう非常事態に際して許される措置ではないか、このように考えるのであります。したがいまして、いわゆる過疎過密というようなことで、過密をかかえているからたいへんだ。それで企業は、特に大企業が集積の利益を得ている、それに対して市民大衆は集積の不利益をこうむっているんだというようなことで、その不利益に対していろいろ手当てをしていかなければいかぬから特別の事由があるんだ、こういうことになりますと、非常に解釈がぼけてくると思うのであります。
では、どこまでが過密の非常措置として許されるのかということになりますと、非常にその限界線というのはむずかしいと思うのであります。そういう意味におきまして、そういった問題に対しましては、先ほども申し上げましたように、どこまでもやはり国と地方の財政の関係を御調整をいただいた地方財政計画というものの中におきまして、これは全国全体を貫く計画ではありますけれども、その中にやはり過密というものに対する措置を十分織り込んでいただく。それでその中から税法の改正等が必要とあれば、標準税率を変えていただく、上げていただく、こういうことでやっていただくのが正攻法ではないか、私はそのように考えております。
したがいまして、先ほど神奈川県のいろいろなことも申し上げましたけれども、神奈川県もこれは火の車であります。そこで、現在、国のほうで考えられていることが、今後の本県における地方税の収入の関係にどういうふうに国の考え方が出てくるのか、その出てき方いかんによっては、これはやはり地方財政計画そのものを練り直していただく、また税法等についても特別の御措置をいただく、あるいは地方債の計画等を先ほど申し上げましたようなことで手当てをしていただくということが、その時点にいってどうしてもお願いできない、お願いしてもやっていただけないということであれば、神奈川県といえどもやっぱりみずからを守らなければいかぬわけであります。住民の福祉なり何なりを責任をもりて預かっているわけでありますからやっていかなければいかぬわけでありますけれども、しかし、その国なり地方のお互いの努力というものをこれからまだやっていか有ればいかぬわけです。それをやらないで、この時点で特別の事由があるからということは、私の見解からは出てこないわけであります。以上をもって特に御指名の点についてのお答えとさせていただきます。
そのほかの委員各位からの御質問も、私からお答えしたほうがよろしいようなこともいろいろあったかと思いますが、他の参考人の方々もおられますので、特に国と地方の税源の配分でありますが、これは今度のような地方税法の大幅な改正にあたっては特に配慮さるべきではなかったのか、こういうお尋ねでありますが、私も全く同感の意を表したいわけであります。特に今回画期的な、法人課税というものが国際水準並みに引き上げられるということになったのでありますが、その引き上げから出てくる増収分というものは国のほうに相当の部分が入るわけであります。なおまた市町村にも多少の配慮がなされているようでありますが、都道府県には全然配慮がなされていない。むしろ率の上では減率ということにさえなっておるのであります。そういう意味におきまして、やはりこういう場合におきましては、特にふやす場合におきまして、従来からお願いしている国と地方の税源の配分ということにつきまして、特段の配慮をお願いしたいものだ、かように考えるわけであります。
ほかの諸点につきましては市町村関係が多かったと思いますので、ひとまず私からは以上のようにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/25
-
026・竹内義治
○竹内参考人 お答えを申し上げます。
まず第一に、国と地方の財源配分の問題について、もっと強化を訴えるべきでないかという御質問でございます。これはごもっともでございまして、私たちも多年それを要望いたしておるわけでございます。にもかかわらず、今回の税制改正は、増減税を差し引きましてあまりそういう比率が変わっていないではないかという御意見でございます。結果的にそういうことに相なっておると思いますが、私ども多年主張しておりますのは、地方財政全般の中でやはりこの問題を市長会でも議論をいたしておるところでございます。何と申しましても地方財政の中で一番大きなウエートを占めますのは税金でございますが、さらにもっと大きなウエートを占めておりますのはやはり交付税と国庫補助負担の問題でございます。この三つがメニューのように一つのものにからみ合ってきておるわけでございます。簡単に言いますれば、たとえば国庫負担率を引き上げますと、それの地方財源の充当率が今度は下がってくる、その分だけは交付税から割り落としてしまうというような問題もございますので、この三つをからめまして、私たちは地方財源の充実をお願いしておるわけであります。
本年度の予算では、先生方の御努力によりまして、たとえば人口急増地域におきまする負担率の増加、あるいは下水道財源におきまする市町村財源の軽減のための国庫負担率の増高等、一面非常に進んだ点が見られておるわけであります。それだけまた一面、交付税の面におきましては、それらの事業費算入がはずされまして計算に入らない部分もできますが、全体のグロスで計算いたしますと、やはり一応財政計画では私たちも前進は見られておると思うわけでございます。
ただ遺憾な点は、非常に物価が上昇しておりますので、現在のような国庫負担制度では、幾ら補助率を上げましても、予算単価をふやしてもらいましても、どうにもならないところへ来ておるということであります。たとえば学校の建築の場合は、率直にいいまして、昨年四月比で比べますと七〇%くらい建築費が上がっております。国の財政措置でふえましたのは、現在の補助基本額で計算をしましても三〇%くらいでございます。これではどうにもならぬわけです。学校が建たぬわけです。そういうところのもっと根本的な問題は、やはり一つは物価の鎮静でございましょうけれども、実情に見合った国庫負担制度、補助制度、特に義務教育施設のように、どうしてもこうしても、総需要抑制であろうがなかろうが、生徒が入ってくれば収容しなければならないような問題があるという現実でございます。むろん私たちは、今度の国、地方の配分を通じまして最も強く願ったのがこの国庫負担補助制度でございますが、一定の前進を見ましたけれども、それは全く今日の物価上昇からは水のあわになってしまって、何にもならぬといえばまことに非礼になって申しわけございませんが、現在実際に請負にかけようといたしますと、どうにもこうにもならない状態になってきている。その補てん財源すらどうにもならないというのが現実の問題でございます。したがって、税の問題で解決する長期的な問題もございますが、このような事態におきましては、私はやはり負担補助制度、超過負担の問題を早急に実情に合わすように御措置をいただきませんと、地方公共団体におきまする、特に市町村の基礎的な行政についてはどうにもならなくなるという不安を持っておりますことは、いま御指摘のような点から、国と地方の財源配分の上で特に強調して申し上げたいと思うわけでございます。
〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕
それから超過課税の問題でございますけれども、住民税等におきまして超過課税をいたしておる市町村も多いではないか、もっとこういうのは英断的にやってはどうかという御主張でございます。御主張は法人税にかかわるものであろうと思いますが、個人のものにつきましては、先年国会でも御論議されましたように、給与に関する所得から生じてまいりますものは全国的に超過課税を解消するように御配慮賜わったところでございまして、私は大都市の近くに住んでおりますが、どこに住んでおっても税金の計算は一緒だということが望ましいことであることは当然でございます。
法人税の問題につきましてはいろいろ御議論のあるところでございますが、現行の税制から考えれば、ある特定の非常に財政力のあるところが法人課税を強化いたしますと、その分は損金計算をされますから、今度は法人税そのものが減る。それがさらに地方交付税に影響してくる。そういたしますと、結局法人課税の中で力関係の作用が動いてくるのではないだろうか。やはり、財政秩序を保つためには、国、地方を通じまして一定のルールが必要でなかろうかと私は感じておるわけであります。私のほうのような都市でございますと、ほとんど住宅地でございますから、法人課税を強化しようと思いましてもなかなか困難な問題もございます。いろいろ問題点があろうと思いますが、やはり法人課税の問題につきましては、法人全体を、国税、府県税、地方税を全部ひっくるめた中でどう配分されるべきか、そこらあたりに一つ問題点があろうかと私は感じておるわけでございます。
それからなお、御質問ございました、一体今度の減税あるいは増税でどんな結果になるかということでございます。これは私、全国の資料をいま直ちに持っておりませんので、豊中市の例でまことに非礼でございますが、具体的に申し上げますと、豊中市の四十九年度の税収見込みをやってみましたら、個人市民税につきましては六億五千五百六十三万五千円減収になります。その反面、法人税は三億六千八百十二万七千円増税されます。差し引きいたしまして、住民税で二億八千七百五十万八千円が改正前の税率から計算いたしますと減るということになるわけです。税制改正では法人税が強化されましたけれども、豊中市の場合に例をとってみますと、なおかつ現行税制より二億八千七百万円減収になる、こういう計算になっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/26
-
027・中村弘海
○中村(弘)委員長代理 参考人の方に申し上げますが、本会議の開会時間が迫っておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/27
-
028・竹内義治
○竹内参考人 時間が、委員長さんから御注意がございましたので、数字は後日資料で差し上げたいと思いますので、この程度で終わらせていただきますが、特に私の名ざしでございました電気ガス税の問題につきまして、私が懸念いたしております点は、昨年突如といたしまして発電所税が発表されました。この発想の中には、全国の電気税の中から一部を国税として吸い上げて、これを発電所を設置する地域の財源に引き当てようという考えがあるやに承っておるわけです。こういう全国的な財源を特定な地域に財源配分の形でおやりになるということは、税制のたてまえでなしに、国の政策として国税の中でお考えをいただきたい。そういう布石があるために電気ガス税を分離される、こういうことでは、私たちはこれには賛成をいたしがたいものでございます。そういう発電所税等が設けられて、発電所そのものから、課税されたものを当該関係市町村に配分されることには異論ございませんが、全国的な財源であります電気税の一部を国税として吸い上げ、特定の地域に傾斜配分をするということであれば、そのような措置は、政策的な面は国税の、別の分野で御考慮を賜わりたい、こう考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/28
-
029・中村弘海
○中村(弘)委員長代理 本会議の開会が迫っておりますので、参考人の御答弁は後刻書面をもって御提出願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/29
-
030・多田光雄
○多田委員 先ほど質問して、ちょっと早口で言いましたので、私のほうからもう一度委員部のほうに質問事項を出しますので、ひとつそれは後日書面でいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/30
-
031・中村弘海
○中村(弘)委員長代理 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼申し上げます。
この際、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。
午前十一時五十八分休憩
————◇—————
午後一時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/31
-
032・伊能繁次郎
○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、本案について参考人から意見を聴取いたします。
ただいま出席をいただいております参考人は、立教大学教授和田八束君、関西学院大学教授橋本徹君、関東学院大学教授坂入長太郎君の三名の方方でございます。
この際、参考人各位にごあいさつ申し上げます。
定刻におくれまして、たいへん恐縮でございました。参考人の方々には御多用中のところ、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
なお、議事の順序は、初め参考人の方々から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に、委員諸君からの質疑に対し、御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、和田参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/32
-
033・和田八束
○和田参考人 和田でございます。
四十九年度の地方税法の改正に関連いたしまして、若干私見を申し上げたいと思います。
御承知のように、昨今の物価上昇はきわめて著しいものがありまして、そのもとで、国民生活の各分野におきましてかなりの被害が出、また生活が圧迫されてきているわけであります。そうした状況のもとで、従来からいわれておりました福祉政策をさらに拡大発展させていくということがますます必要になってきていると存じます。
〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕
地方財政の拡充問題も、そうした条件のもとで福祉政策を進めていくためには特に重要になってくるものと考えるわけであります。
具体的に福祉政策を進めていく中心になるのは何といいましても地方自治体でありますので、その地方自治体に財源が十分に付与されてこの福祉政策が拡大していくということが、国民生活にとって何よりも必要なことではないかというふうに考えるわけです。従来の、この財源あるいは権限が中央に集中する形で行なわれましたいわゆる高度成長型の財政政策に対して、地方分権を強化することによって福祉政策に転換していくということがさらに重要な課題になってきているのではないかというふうに思います。そのような立場から、四十九年度の地方税法の改正問題を幾つかの点から見てみたいと思います。
まず第一に、個人住民税の問題であります。住民税の個人所得割の問題であります。
住民税に対しましては、国の所得税改正と足並みをそろえて、課税最低限の引き上げを中心とするところの減税が行なわれたわけであります。しかしながら、従来所得税と住民税の課税最低限の格差ということが問題になっていたわけでありますが、今回の課税最低限の引き上げ状況も、その点からいいますと所得税との格差を縮めるまでに至っていないという点がまず問題になるのではないかというふうに考えます。所得税の課税最低限は百五十万円に引き上げられるわけですけれども、住民税のは約百万円ということでありまして、四十八年の所得税課税最低限百十四万円と今回の改正案とを比べてみましても、なお四十八年度の所得税課税最低限に及ばないということでございますので、これはやはりこの両者の格差というものがなお存在しているわけでありまして、所得税、住民税を合わせた所得課税の負担の均衡という観点からは、この住民税の課税最低限の少なくとも所得税並みへの引き上げということが必要になるのではないかというふうに考えます。
人的控除の引き上げを所得税と住民税とを比べてみましても、所得税におきましては基礎控除、配偶者控除、扶養控除のそれぞれ控除額がすべて二十四万円ということで一致するような形に改正案で行なわれるようになっておりますけれども、住民税のほうは基礎控除十八万円、配偶者控除十八万円、扶養控除十四万円ということで、配偶者控除と扶養控除との差が住民税については存在しているわけであります。所得税においては各控除の金額の差が解消されているにもかかわらず、なぜ住民税のほうではされないのかというあたりのところは疑問に思う点であります。もちろん所得税における各控除の格差がないということの根拠自体もそれほど明確なものではないわけですけれども、所得税においてそのように同一の控除額になったにもかかわらず、住民税のほうでは配偶者控除と扶養控除との間に差があるということについてはかなり疑問があるわけであります。
そういうふうな結果、むしろ住民税においては所得上昇によって増税になっているわけでありまして、かりに所得が二〇%上昇すると仮定いたしまして、四十八年度二百万円の所得の人が四十九年度において二百四十万円の所得になるといたしますと、所得税では約一万四千円の減税になるわけですけれども、住民税のほうでは五千五百円の増税になるということでありまして、結果的に見ますと、こういう物価上昇下で名目所得が上がることは必然的な傾向でありますので、住民税のほうは減税ではなくて増税である、こういう結果にならざるを得ないわけであります。
これは所得税、住民税あわせていえることでありますけれども、インフレ下での名目所得の上昇によって負担が上昇することを調整することが、今日における税制の中心的な課題にならなければならないわけでありまして、住民税において、名目所得上昇による調整すらできていないことはきわめて大きな問題であって、いわゆる福祉税制といいますか、あるいはインフレ下での租税政策としてはきわめて疑問に思うところであります。
それから第二点といたしまして、固定資産税の問題があるわけです。
固定資産税に関しましては、四十八年の評価がえと、四十八年における軽減措置に関する措置の改正によりまして、かなり負担が急増する形になってきております。ことに都市の郊外地域において、地価上昇の激しい地帯の一般住宅地の負担増が非常に著しく、上昇してきているわけであります。こうした状況を反映いたしまして、今回の改正案では、いわゆる小規模住宅というものを想定いたしまして、二百平方メートル以下の住宅用地に対しては、従来、課税標準を価格の二分の一としていたものをさらにその二分の一とする、すなわち四分の一として、その税額は四十八年度水準に据え置くという措置がとられたわけであります。こうした措置は、四十八年以来の負担急増に対する対策としては一応評価し得るものであって、このような形で、特に一般住宅用の宅地に対する税負担を軽減緩和していくことはぜひとも必要なことであろうと思います。しかしながら、こうした状況を見ましても、今日の小規模住宅に対する固定資産税のあり方というものがさらに再検討されなければならないという問題になってきているように思います。
その一つの問題は、固定資産税においても基礎控除を導入すべきであるという議論が従来もあったわけでありまして、この問題がますます重視されなければならないのではないか。今回の二百平方メートル以下の小規模住宅用地に対する課税標準の引き下げ措置は、二百平方メートル以上の住宅用地については二百平方メートルまでについてそれを適用するということでありまして、ある意味では基礎控除的な考え方といってさしつかえないわけでありまして、従来、固定資産税においては、これは物税であるので、基礎控除的な考え方はなじまないものであるといわれていた論拠が、部分的にもせよここでは失われているのではないかというふうに考えるわけであります。この点からいいますと、固定資産税におきまして、小規模住宅に対しては基礎控除を導入するか、ないしは所得との間に何らかの関連を持たせて、低所得者に対しては減免措置をすることが必要になってくるのではないか。
またさらに、こうした固定資産税における問題が多く出てまいりますのは、わが国の住宅政策の不備あるいは住宅対策上の欠陥というものがここにあらわれているわけでありまして、持ち家層に対してだけこのような優遇措置をするのではなくて、一般の民間借家あるいは公的借家の居住者に対しても一定の住居費を保障していくというふうな、いわゆる住宅におけるシビルミニマムの思想が拡大されていかなければならないのではないか。固定資産税の問題も、そういった住宅問題全般の中で考えられなければならない問題ではないかと考えるわけであります。
それから三番目に、法人住民税の問題に移りたいと思います。
法人に対する住民税所得割に関しましては、法人税の引き上げとあわせて税率の改定が行なわれているわけであります。つまり、市町村住民税率は若干引き上げ、府県法人住民税率は若干引き下げるという形になっておりまして、これは都市税源の拡充を目的とするものであるというふうにいわれ、さらに市町村への配分を強化したものである、こういうふうに考えることができるわけであります。この点は、従来特に都市団体から法人税の移譲を求める要望が非常に強かったわけでありまして、そういう点が一部実現されたということであり、また具体的に都市政策を行ない、住民福祉を担当しているところの市町村への配分を強化したということは評価できる点だろうと思います。
しかしながら、その移譲分が必ずしも十分ではないということは指摘されなければならないわけでありまして、当初自治省が構想していたところでも、府県、市町村合わせて一四・七%の税率を二一・四%に持っていくという構想も発表されていたわけでありまして、それに対して改正案のほうでは一七・三%までということでありますので、このあたりはやや後退しているといわざるを得ないわけであります。そうした点で、住民税率の市町村への配分強化によるところの移譲分の拡大ということ自体は評価し得るわけですけれども、そうした方向をさらに強める必要があるのではないかと考えるわけです。
第四に、その問題とも関連するわけですけれども、かりに、いま言いましたように地方財政を拡充するために国と地方との財源配分を変更して、地方に対する移譲を強化するといたしますと、単に法人税だけではなくて、所得税の移譲も考えるべきではないかと考えるわけです。所得税自体は、総収入額からいいましても法人税と並ぶ収入額を持っているわけでありまして、これを地方自治体に移譲するということは、財源的にも非常に寄与するところが大きいわけですけれども、さらに所得税を一本化することによって、従来国の所得税に比べて税率等においてかなり不公平が目立っているところの地方税を一本化することによって、国、地方あわせた所得課税の公平化をはかることができる。あるいは最初に申し上げました課税最低限の開きにつきましても、これを是正することができる。
〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕
あるいはこうしたインフレ経済下における収入の弾力性をはかるための現年度課税を行なうこともできるという幾つかのメリットがあるわけであります。また、この分離課税によって地方自治体の収入になり得ない部分の捕捉も可能になる。あるいは所得課税の地域社会との関連が非常に明確になるわけでありますので、納税者の財政に対する関心度も高まるのではないか、こういうふうに思いますので、所得税の移譲というものを強化する必要があるのではないかというふうに考えるわけです。
それから第五番目には、やはり問題は関連するわけですけれども、都市税制の確立ということをさらに強力に進める必要があるのではないか。
今回の改正案では、法人住民税の移譲というものにおいて一部それが実現されたかのように見受けられるわけですけれども、従来いわれておりました事務所事業所税等は見送りになっております。しかし、実際に都市税制を確立して、そして都市の社会的費用といいますか、あるいは過密の弊害を是正するための財源を創出するという目的からいいますと、所得に対する課税だけではなくて、ある程度外形標準によるところの課税も必要になってくるわけでありまして、事務所事業所税等の新設というものが考えられなければならないのではないか。もちろん事務所事業所税自体、かなり問題点も多いわけですけれども、十分実態に即したような形で創設することは可能でありますので、この点、検討されるべきであるというふうに考えます。
それから第六番目には、これらの問題も含めまして、自治体の課税権における自主性の確立ということが必要になってくるのではないかと思います。
いわゆる超過課税の問題といいますのは、大都市団体を中心にいたしまして各自治体で考えられているわけでありますが、こうしたことが税法上あるいはその解釈上、必ずしも十分に認められていない現状でありますけれども、都市政策を進める上での都市団体の財政上の特別の必要性というものはますます必要になってきているわけでありまして、また財政民主主義の立場からいいましても、地方自治体の条例による課税権の確立ということが地方自治の発展のためにぜひとも必要なところでありますので、自治体の課税権の自主性という問題を特に考慮すべきではないかというふうに考えるわけであります。
以上、簡単でありますけれども、地方税法の改正に関連いたしまして私見を申し述べさせていただきました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/33
-
034・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、橋本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/34
-
035・橋本徹
○橋本参考人 地方税法の一部改正案について意見を述べるようにとの御指名でございますが、平素地方税制について考えておりますことに基づきまして、今般の税制改正案に関する意見を述べ、御参考に供したいと存じます。
今般の改正案、私は原則として賛成でございますが、なお不満が残ります。その不満の残る部分と賛成する部分について順次述べてみたいと思います。
昨年来、地方税あるいは地方財政に関しまして注目すべき事柄が生じております。それは、かねてから地方制度調査会や税制調査会におきまして、地方税の充実強化、とりわけ都市税源の充実強化について献策が進められておりますが、その中で、地方といいますか、あるいは民間と申しますか、たとえば東京都の新財源構想研究会が「大都市財源の構想」あるいは「新しい個人住民税」といった報告を出しておるようでございますし、また、私の参加しております大阪府地方税財政研究会、これは研究会でありますが、ここでも「大都市圏域における税源拡充構想」といったようなものを提案しております。このような都市税源あるいは大都市圏財源についての献策が出ますゆえんのものは、言うまでもなく都市財政がきわめて窮迫しておるといった証左であろうと思います。
財政需要の増大につきましてはくどくどと説明するまでもございませんが、国民経済あるいは国民生活におきまして、公共部門に期待される役割りはますます増大することは否定できないことでありますが、それに関する財源を確保する必要があるわけであります。かつて地方制度調査会の答申の中に、「いうまでもなく、この財源は国民が税等を通じて負担するものであり、したがって、福祉社会を実現するためには、今後国民の負担がある程度増大することはやむを得ないものと考えられる。」このように述べておりますが、私はこの考え方を支持するものでありまして、税負担水準を全く変えずに、ただ単に国と地方の財源を配分がえをすればいいという考え方とは異なることを初めに明らかにいたしまして、今般の地方税改正案についての基本的な考え方を述べたいと思うわけであります。
私は、地方税というのは次のような基本的な原則を持つべきであると思います。
第一は自治、言いかえれば負担分任の原則、第二は公平の原則、第三は中立性の原則、第四は税務行政上の原則であると思います。
まず、地域社会建設の費用は地域住民がみずから負担するのが地方自治であります。地方税をもって負担分任の精神を具現すべきであると考えます。何かといえばすぐ国庫負担金を増せばいいといったような議論がございますが、国庫負担金といえども究極的には国民の負担する税でございます。みずからの地域社会を建設する費用を他の地域の住民に求めようというふうに考えているのでしょうか。私は、地域住民は、みずから負担した地方税であってこそ、それによってまかなわれた地方の財政支出から得られる便益と、そしてみずからの負担した税とを比較考量することによって、地方財政を監視し、そして地方自治を見守っていくことができる、かように考えます。その場合には、たとえば減税して公共サービスが減少したほうがいいのか、それとも増税して公共サービスがふえたほうがいいのか、賢明に地域住民は批判し、見守ることができると思うわけであります。それが、国庫負担金だとかあるいは地方交付税だとかいったような財源でありますと、往々にして地域団体ないしは住民は、いわばその資金コストがゼロであるというふうに考えまして、負担がなければ無限の需要を表明すると思われるわけであります。不急不要の需要に歯どめをかけることもできない、かように考えます。もちろん、ここで私が申します地域住民というのは、個人であれ法人であれ、それは問いません。
ところで、こういった住民選好は地域によって、自然条件あるいは経済社会構造、風俗習慣、気質まで違うことによってそれぞれ異なるものと思われますので、最近は地域間の公平とか画一化とかがあまりに強調され過ぎて、税制が画一化しておりますが、いま少し地方自治、地方分権主義を確立するためには、地方税に自主性を取り戻すべきであると基本的に考えます。
こういった第一の自治の原則という点から、今般の税制改正で地方税の、とりわけ市町村法人税の配分が強化された、税率が引き上げられたことについて賛成をしたいと思います。なお、不満が残りますのは個人住民税であります。国税と地方税とを通じて再配分をいたしまして、個人住民税を強化すべきであると基本的には考えております。
実はそれは第二の公平の原則とも関連いたします。公平と申しますのは言うまでもなく負担の公平でありますが、二つの意味合いがあると思います。税金でございますので、負担能力に応じて、いわゆる応能原則に応じて公平に負担すべきであるというのは当然でありますが、これは個人からいたしますれば、国税と地方税を通じて総合的な負担が公平であるべきという意味であります。これはあくまでも追求すべきでございます。現行の税制では所得課税が最適でありますが、所得を総合的に包括的に把握した上で、所要の控除や課税最低限の引き上げ、そして累進税率を適用してこの負担の公平をはかるべきでありまして、しかもそれは所得の再分配、すなわち社会保障と結びつきまして、高所得から低所得へ所得を移転する手段にも役立ちます。それからまた、今日ではビルトイン・スタビライザーと申しますか、税制を通じて経済の安定機能を強化することにも役立ちます。
しかし、地方税は、とりわけ個人住民税は課税標準を所得にとっておるからといって、全体としての所得税とは意味合いが違うと考えます。先ほど申しましたように、国税としての所得税と地方税としての所得税と地方税とを通じての所得の負担が公平であれば個人にとってはいいわけでありますから、私見でございますが、住民税は比例税率ないしはゆるやかな累進税率でよかろうか、かように私は考えております。
なお、これは二次的な副次的なメリットもございます。私は現在大都市圏域の住民でもございますが、たとえば大阪の大都市圏域の都市を事例にとりますと、転入した住民を都市は選ぶことはできません。ところが最近では公営住宅の建設お断わりといったような議論さえも出ております。これはなぜかと申しますと、御承知のように、住民税が所得階層ごとに分布が異なりますと、地域間に非常に開きが出ております。個人納税義務者一人をとりましても、芦屋市のごときは納税義務者一人当たり八万何がし、そして中心都市の大阪では一万八千といったような事態でございます。このようないわば税源のドーナツ現象というのを生じているということについて、御注目をしていただきたいと思うわけであります。
ところで、公平の原則というのはもう一つございます。それは公共サービスの受益に応じて負担をするという応益原則、これも公平の原則の一つの側面であります。地方団体のサービスは、国の責任において行なわれます社会保障等の所得再分配等の仕事を別にいたしますと、日常生活に密着した対人サービス、それから生活環境の整備、そして治山治水や産業基盤の整備といった四つぐらいのものがあろうかと思いますが、最近の住民は、所得水準が上昇し、消費水準が上昇いたしますと、安全、健康、そして利便、快適、文化、教育といったような対人サービス、それから生活環境の整備について非常に多くの要求を持っております。こういった資源配分の分野で公共部門が分担する仕事がふえてまいりますが、こういった公共サービスに対する個人の選好というものを考えますと、たぶん個人所得に対する需要の弾力性はほぼ一程度と考えていいと思います。すなわち、所得が上がったからといって、よりよけいに公共サービスを要求するのではなくて、大体所得に比例して公共サービスを要求する。そういたしますと、先ほど申しました比例税率という意味の根拠が与えられるわけであります。
それからまた、生活環境の整備を通じまして、地域内の家屋や土地の利便性が増加することは否定できないわけであります。したがって、そういった公共サービスの費用を地域内の土地や家屋の価格に応じて配分するというのは公平の原則に合致すると思いますが、その意味で固定資産税が価格に応じて課税されておるわけであります。ただ現状は、先ほども和田さんが御指摘になりましたが、大都市圏において非常に土地の価格が上昇いたしました。ある意味では投機的な要素さえも入りまして、非常に価格が上昇しているわけでありますが、そうなりますと、原則として価格に応じて課税すると申しましても、今般の住宅用地に関する調整措置は適当と思うわけであります。
ただ、これを市町村財源の充実という見地から見ますと若干問題が残るわけでありまして、こまかい数字は省きますが、今般の固定資産税のそういった調整によります市町村税の減収と、それから都市税源充実という名前であらわれました法人税収の増加とが、初年度においてほぼ見合っておるという現状に注目いたしますと、今後市町村税の中核としての固定資産税の位置を確保するためにも、精力的に固定資産税のあるべき姿を追求していただきたいと願う次第でございます。
また、治山治水や産業基盤の整備の費用というものは、これは一種の中間生産財として企業活動の経費を節減するものであります。かつて税制調査会が、「事業がその活動によって地方団体の各種の施設を利用し、その他の行政サービスの提供を引き受けておるところから、これに必要な経費を分担すべきである」といったような考え方を述べておりますが、このような公共サービスの費用を事業活動が負担する応益原則をわれわれは評価したいと思います。そうなりますと、今日のような所得基準を持った課税標準というのは問題があります。私、私見でございますが、外形標準、それも付加価値その他の外形標準を導入すべきであります。あるいはまた従業員や、顧客の消費活動というようなものを外形標準として取り上げる消費課税や、雇用税的なものもあってもいいわけであります。
今般の事業税改正におきまして、保険事業について課せられる区分が引き上げられましたが、そういう見地からは、私これも評価したいと思いますが、不満の残りますと申し上げましたのは、大都市圏域における事業活動が公共サービスによる集積の利益の上に多くのものを享受し、また一方では交通混雑とか公害という外部不経済を排出しておるにもかかわらず、事務所事業所税といったものが見送られたと申しますか、それからまたそういった事態に対応すべき府県税の事業税の増徴とか、あるいは課税標準の見直しが見送られたところが非常に不満の残るところでありまして、今後事業税の課税標準の検討も含めまして、事業税のあるべき姿を御追求願いたい、かように思うわけであります。
第三に、中立性の原則でありますが、租税はもともと資源配分の効率をゆがめないように中立性の原則が追求されます。いわゆる租税特別措置によって経済を刺激することの必要性はあるかもしれませんが、経済というものは国民経済全般としてつかまえるべきでありまして、それを理由にして地方税源を侵食するということは問題が残ります。もちろんいろいろな政策目的、たとえば貯蓄奨励とか新築住宅奨励とかいったいろいろなことがございましょうが、これによって地方税源を侵食すべきではなくて、その意味では今般の固定資産税の課税標準の特例、たとえば発電所に関する特例措置の廃止などについて非常にけっこうだと思いますが、今後とも租税特別措置の見直しをしていただきたい、かように考えます。
租税特別措置というのは、もし必要があれば国税における法人税、所得税において調整すべきものであります。これは私見でありますが、かりに新築住宅についての固定資産税の減免の必要があれば、それは所得税の税額控除項目にすればいいわけでありまして、何も地方団体の固定資産税を減免する必要はない、かように思います。もっとも、そうなりますとそれでは電気税の非課税措置項目はどう思うかと言われるかもしれませんが、中立性の原則という意味は、生産財には課税しないほうが中立的でございますので、この点は租税特別措置と考えるべきではなくて、生産財には消費税はかけないほうがいいという意味で、転嫁等の見地からは非課税項目があるのは当然だ、かように思います。
最後に、税務行政上の原則でありますが、地方税につきましてはとりわけ、納税者の協力を得やすい、そしてまた税務行政上の経費がかからないようなことが要求されると思います。そのためには、もっと税制がわかりやすいもの、あるいはまた手数のかからないもの、別な言い方をすれば透明度の強いもの、こういったものが要求されます。十年来の固定資産税の土地の課税に関する改正を見ておりますと、納税者にとってはきわめて煩瑣で、不満が残ります。私ども専門に研究しておる者にとりましても、相次ぐ課税の変化、とりわけ農地に関する固定資産税の問題につきましては、それぞれのお立場があって御意見も出ているんだろうと思いますけれども、土地を持たない者にとりましては非常に納得のいかない税制の最たるものであります。国会において成立した固定資産税を自治体において造反したという記事さえ出ておりますが、このようなことは国民に対する税の信頼性を失わせるものでございます。もちろん、住民が納得するためには、負担の公平の確保と、そして税の正しい使い道を住民に対して知らしめるということであろうと思いますが、その意味では、使い道の広報の必要性を痛感するものであるわけですが、税制そのものをもっとはっきりとしたものにしていただきたい、かように思います。
以上、今後とも地方自治を推進して、住民の行政需要に応ずるために一そう地方税の充実強化をはかることを願いまして、税制改正案に賛意を表するとともに、意見の開陳を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/35
-
036・伊能繁次郎
○伊能委員長 次に、坂入参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/36
-
037・坂入長太郎
○坂入参考人 坂入でございます。
地方税法の改正案について若干の意見を申し上げます。
異常な物価上昇に伴いまして、四十九年度の国の財政は、総需要抑制政策によりまして前年度の財政の伸び率より圧縮編成されているのでございます。これに伴いまして、四十九年度地方財政計画におきましては、国庫支出金のうち公共事業費の圧縮、地方交付税の千六百八十億円の減額、起債削減等によりまして、地方財政計画は、四十八年度の伸び率が二三・八%であったのに対しまして一九・四%の伸び率に押えているのでございます。これは、国の財政が持ちますところの景気調整機能を地方財政にも負荷させていることによるものでございます。
地方財政計画による歳入構成比を見ますと、地方税が四一・四%であり、そのほか地方譲与税とか地方交付税を加えますと、地方団体の自主財源は六二・四%となっております。しかしながら、この数字で地方団体の自主財源の充実がなされたと見るのは適当ではないと思います。
次に、歳出計画を見ますと、人件費、公債償還費、一般的な経費といった義務的経費が時節柄増大しているのでございます。そして、歳出全体といたしましては、そのような義務的な経費が増大したのに対してそれだけ投資的な経費が圧縮されております。
それで政府は、投資的な経費のうち地方単独事業等に資金配分の重点を置いたといっておりますけれども、現在の異常な狂乱物価によりまして、事業量それ自体は低下せざるを得ないと思います。
また超過負担につきましても、その解決策がとられているとはいえ、必ずしも十分な措置ではございません。公共投資の抑制政策によりまして、国庫補助金の圧縮は超過負担の増加をもたらす可能性が強いわけでございます。超過負担の増大は、起債の抑制と相まちまして、一般財源の圧迫要因となることが今後予想されるのでございます。
このように、地方財政は歳出増の要因がたくさんあるのに対しまして、国庫支出金、交付税の減少、起債削減等の国の財政政策によって、収入は逆に減少していると見るべきでございます。したがって、地方団体は財源の側面から消極的なサービスをせざるを得なくなりまして、開店休業の宣言という事態に追い込まれているといたしますれば、それはいわゆる地方自治の危機であると言うことができると思います。
地方団体の役割りは、申し上げるまでもなく、中央におきますところの計画の委譲を受け、全国共通の一定水準によりますところのサービスを提供するほか、地域住民に対しましてシビルミニマムを充足する立場から、いろいろな地域の特殊性を反映したサービスを提供する実施機関が地方団体であるわけでございます。このような意味におきまして、地方団体においては経費の効率的な使用をはかる、これは当然でございます。と同時にまた、中央の統制と集権化から、地方団体に都市運営、いわゆる町づくりの権能を持たせ、一般財源を充実させ、地域住民に対するサービスを拡充させることが、とりもなおさず地方自治を発展させることになると思うのでございます。
このような立場から、提案されておりますところの地方税法の一部改正法律案につきまして、若干の問題点と意見を申し述べたいと思います。
住民税の課税最低限についてでございます。
四十九年度における国の税制改正案の主要な点は、所得税の大幅減税と、法人税、登録税、自動車関係諸税の増税でございます。地方税におきましては、所得税の改正に沿いまして住民税の負担軽減をはかるために、課税最低限の引き上げを行なっております。所得税の課税最低限は標準世帯で四十九年度、初年度分百五十万七千円で、現行より三十八万六千円引き上げられております。これに対して住民税のそれは百一万六千円で、十五万一千円引き上げられているにすぎません。
課税最低限の国税と住民税との格差につきましては、これまで国会におきましても、いろいろな機関でも論議がなされているわけでございますが、要するに、住民税の課税最低限を国税に比べて低く押えているのは、地方税収をある程度確保するという、こういうような考え方によるものではないかと思われるのでございます。しかしながら、国民の納税意識の立場から見ますと、国税と地方税との税負担が所得に対して重いか軽いかの判断が基準となっているのでありますから、国と地方との課税最低限の統一が望まれているわけでございます。納税者の立場からすれば、国税の課税最低限が標準世帯の最低生活水準を意味するといたしますれば、住民税の課税最低限は最低生活水準に達しない階層に対しても課税することになるわけでありますから、現在のようなインフレ過程におきましては、低所得者階層に対して逆に重い税負担となるわけでございます。このような意味合いにおきまして、住民税の課税最低限を大幅に引き上げて、負担の軽減をはかるべきであると思います。
次に、法人住民税割について申し上げます。
現行の法人税割は法人税額を課税標準として、その税率を、道府県民税は五・六%、市町村民税は九・一%、合計一四・七%となっております。ところで、最近におきますところの地方団体における住民サービスの増加等によりまして、地方団体の財政需要は増大しているのでございます。他方、市町村の税収に占める法人所得課税の割合を見てまいりますと、ここ数年来減少傾向を示しているのでございます。このような状態に対しまして、市町村税源、特に都市税源の充実が主張されております。政府税制調査会もこの必要性を指摘しているわけでございます。今回の改正案におきましては、道府県民税五・二%、市町村民税一二・一%、合計一七・三%の引き上げがなされているわけでございます。
法人住民税につきましては、四十八年四月現在におきまして広島とか福岡など八百四十六の市町村が最高限度の課税をしております。今回の地方税制の改正案におきましてこの最高限度が一四・五%になりますので、横浜市等は企業規模によるところの課税率差を設けまして、いわゆる中小企業と大企業との間に課税率格差を設けまして、限度一ぱいの法人住民税の超過課税を考えているようでございます。いわゆる大都市の自主財源充実がこの面において拡大されるものと思われるわけでございますが、これはまた一面においていわゆる不均一課税の問題を提起をするわけでございまして、批判のある課税でございます。しかしながら、私は現在の地方財政の実情から見まして、このような措置は地方団体の自衛措置としてやむを得ないものではないだろうかと思う次第でございます。
次に、法人事業税について若干申し上げたいと思います。
地方団体の自主財源開発対策といたしまして法人事業税を二%引き上げ、中小企業には低く、大企業には重くという不均一課税を導入いたしまして、大企業に対する超過課税をする動きが現在拡大しているようでございます。東京都の場合、たとえば一二%から一四%に二%引き上げますと、初年度において東京都は九十億円、平年度において五百億円の増税が期待をされるといわれております。大阪の場合は二百億円と試算されておりますし、千葉県の場合は十二億三千六百万円の増収が期待されるわけでございます。この法人事業税の引き上げは道府県にとって、自主財源の確保という立場から、たとえ交付税が減額されましてもなお余りあるもので、魅力のある財源開発となっているようでございます。
しかしながら、事業税の増徴はそれだけ法人税収入を減少させるのでございまして、交付税の財源がそれだけ減少するわけでございます。試算によりますれば、東京都の場合、五百億円の増徴がなされますと法人税収入が二百億円減収になり、交付税が六十四億円減少するといわれております。そのほか、東京都の場合、都下の市町村の法人住民税が減少するわけでございます。このように見てまいりますと、大きな地方団体の自主財源確保というものは結局弱い地方団体にしわ寄せされることになるわけでございまして、ここに問題があるのでございます。したがって、弱い団体に対してはある程度の救済措置をとるべきではないかと思います。
次に、電気ガス税について申し上げます。
電気ガス税は十七年に、戦時下の消費抑制及び戦費調達を目的として創設された戦時立法でございます。戦後一時廃止されましたが、二十三年、地方税法として登場したものでございます。
今回の改正案におきましては、電気ガス税を電気税とガス税に分離し、ガス税の税率を百分の五に引き下げ、免税点を二千七百円にする、電気税は税率を百分の六とし、免税点を千二百円に引き上げようとするものでございます。
電気ガス税は、御承知のように、現代生活におきましては生活必需品でございます、そして個人消費に対して賦課される税金でございますが、他面におきまして生産企業に対しては免税等の措置がとられ、企業優遇がなされているのでございます。したがって、このような企業優遇措置の改廃をすることが望ましいと思います。
さらにまた、政府は電気ガス税の標準世帯に対しますところの負担、影響につきましては、生活費の中に〇・〇二%程度であるからきわめて軽いものである、だから電気ガス税を徴収しても家計にはそれほど影響しないということ、及び徴収方法が料金に加算されて徴収されるので取りやすいということ、税収が安定しているなど、こういうような理由から存続しているわけでございます。しかしながら、私は、電気ガス税は生活必需品課税であるということ、それはいわゆる大衆課税でもあるわけでございまして、中世の窓税といいますか、煙突税、これと同じような意味合いを持つところの税金であると思うのでございます。本来ならば電気ガス税は廃止すべき税ではないかと思います。今回の改正によりまして消費者の負担軽減をはかったとしても、いま申しましたような意味合いにおいてその本質は少しも変わっていないと思うわけでございます。
以上、地方税法の改正案のうちおもな点につきまして私見を申しましたが、いままで申したように、たとえば個人の税負担を軽減していけば当然地方団体の固有財源がそれだけ減少することになるわけでございます。したがって、それに代替するところの措置を考えなければなりません。これは基本的には国と地方との事務分担の調整でありますとか、国と地方との財源配分について調整をすることが望ましいわけでございます。また、このような問題につきまして、東京都の新財政研究会の報告にありますように、所得税と住民税の配分を等分にすることもいわゆる国と地方との財源配分の問題でありますので、検討課題ではないかと思います。
それからさらに、地方団体の自主財源確保につきまして、たとえば指定都市から提案されておりますところの事務所事業所税でありますとか、そのほかの幾つかの地方自主財源充実の案が提案をされておりますので、このような提案を早急に検討をすべきではないかと思います。要するに、地方団体にある程度の自主財源を与えまして、このような自主財源の充実を通じて中央集権的な地方財政を改善をして、地方団体の独自の住民サービス、それは、いわゆる地域間における特色を持ったところの住民サービスの提供を行なわせることが、地方自治の発展の上に必要であると思うわけでございます。
以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げさせていただいたわけでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/37
-
038・伊能繁次郎
○伊能委員長 それでは、参考人各位に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
なお、質疑の際には参考人の御氏名をお示し願います。
小川省吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/38
-
039・小川省吾
○小川(省)委員 三人の先生には、たいへん有益な御意見をお聞かせいただいてありがとうございました。
まず、最初に和田先生にお伺いをいたしたいと存じます。
特に私、御質問を申し上げるところの基本は、国民生活を安定させ住民の福祉を守っていくのには、何といっても地方自治を確立をしなければなりませんし、地方自治の確立というのは、市町村における自主財源を強化をしなければならぬというふうに思っているわけでございます。そういう点でのお話を伺ったわけでありますが、そういう基本に基づきまして若干お伺いいたしますので御教授をいただきたいと存じます。
それは、最後にちょっとお触れになりましたけれども、やはり租税法定主義と自治体の自主的な課税権の問題についてでございます。いま東京はじめ大都市では、先生方のお話の中にもありましたように、非常に集中集積による財政需要に迫られておりますので多大な支出をしておるわけであります。集中集積のメリットを受けるのは大企業等であって、一般住民や自治体はデメリットやそのあと処理の膨大な財政支出に追われているのが実態でございます。そういう意味で、東京をはじめとして、いわゆる自主的な課税権を行使をしよう、あるいはしていこうとする団体が非常にふえておるわけでございますけれども、相変わらず国ではこれに対して、違法ではないけれども適切ではないというふうなことを言われているわけであります。私どもは、地方の自治体のいわゆる自主的な課税権というものが、当然現在の国民の需要にこたえていくために必要だというふうに思っています。そういう点では、条例による課税権というのがありますけれども、地方税法の中でいわゆる法的に定めていく、立法政策上当然そういう措置をとるべきではないのかというふうに実は考えているわけでありますけれども、その点について、最後にちょっとお触れになったわけでありますが、もう少し詳細にお伺いをいたしたいと思います。
それから、大きな問題なんですが、いわゆる税源の再配分に関しての問題であります。今度の税法の改正の中でも、法人税の所得割等の配分等で、市町村に対する税源を若干なりとも強化したのは評価できるというふうなおことばですし、私どももそう思っているわけでありますが、国と地方との税源の再配分の問題をどのように考えていったらいいのか、あるいは県と市町村とにおける税源の配分についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと存じます。
あと一点は、三番目といたしましては、三人の先生ともお触れにならなかったわけでありますが、もちろん今回の改正の中に出ておりませんけれども、実は国保税に関連をする問題であります。国保税といいますか、国保のいわゆる料金でございますか、いずれにしても現状の中では国保税という税の形で税収をされているところが多いわけでありますけれども、特に最近では国保が赤字になってきておりますし、一般会計をつぎ込んでもまだまだたいへんだというような状態であるわけであります。特に、社会保障制度が国民の要望に基づいて充実をされてまいりましたわけでありますけれども、たとえば老人医療費の無料化というふうになりますと、その七割を国保で持って、残りの三割を負担していくという、政策自体にも実は問題があるわけでありますけれども、国が老人医療費の無料化という政策を打ち出す場合には、そういうものは少なくとも国民健康保険などによらないで、国が当然財源的な措置をしていかなければ、これは国保が軒並みに赤字になってくる。今後、乳幼児の医療の無料化でありますとか、あるいは難病対策等の問題で、当然社会保障の充実等に追い込まれてくる情勢でありますので、それらに対する理解といいますか、国の政策がはたしてそういう状態でいいのかというふうに考えておりますので、その辺についての御解明をお願いをいたしたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/39
-
040・和田八束
○和田参考人 ただいま最初に、いわゆる地方自治体の自主課税の問題と申しますか、あるいは租税法律主義との関連であったと思うのですけれども、私は法律の専門家ではございませんので法律的な問題については申し上げることができないわけでありまして、その点は差し控えたいと思うわけです。
しかし、財政問題として見ましても、現在のこの財政需要のあり方というものを見てみますと、昭和三十年以来の著しい地域変動によりまして、地域的にかなり内容が違っておりますし、その水準も異なってきているのではないかというふうに考えるわけであります。つまり、大都市とそれから農村地域あるいは過疎地域との需要の内容、水準というものは非常に違っておりまして、こうしたものを全国一律と申しますか、あるいは画一的に財政運営を行なっていくということは、かえってそれぞれの地域にとってはマイナスになるのではないか。つまり、都市においては都市問題が解決されませんし、逆に過疎地域においては過疎問題が解決されないというふうなことになってまいりますので、この際、地方財政のあり方としては、そういった画一的なあり方ではなくて、地域の実情に応じた財源とそれから財政支出というものを、それぞれの地方自治体が自主的に判断して行なえる、こういう余地を拡大していかなければ、都市問題といい、過疎問題といい、解決できないのではないかというふうに考えるわけです。
そういった点からいいますと、地方税法を基礎にいたしまして全国画一的な課税が行なわれている、もちろん一部例外的な部分もありますけれども、原則的に画一的に行なわれているということは、今日のこの国民生活に対して地方財政が対応していくという立場からいって、きわめて問題があるのではないかというふうに考えるわけです。そういう意味で、地域の実情に応じた課税の方法というものがそれぞれの地方自治体によって追求されるということ、こういう原則が確立されるべきではないかというふうに考えるわけであります。
また、地方財政と同様に地方税制におきましても、住民の参加といいますか、あるいは住民と地方自治体とが一体となって地方税財政のあり方を考えていくということが必要でありまして、一口に言いまして、財政における民主主義といいますか、あるいは税制における民主主義といいますか、そうした立場からいいましても、地方住民の要望に沿って、あるいは地方住民のあり方に沿って地方税制を考えていくということが、それぞれの地方自治体に大きくまかされていいのではないかというふうに考えるわけであります。地方税法自体の中にも、自治体の条例によって課税を行なうというふうなことが述べられているわけでありますから、そうした意味合いで、税制におきましても条例の地位というものをもっと高く見るような方向というものが、財政的な観点から見て必要ではないかというふうに考えるわけであります。
それから、国と地方の財源の配分、それから県と市町村の配分のあり方ということでありますけれども、国と地方のあり方の原則からいいますと、地方自治体に対する財源の配分を思い切って強化をして、そして財政の配分におきましても地方自治体の権限を強化していくということが、国民生活に対する財政のあり方として必要であるというふうに考えるわけであります。
財政の基本をどういうふうに見るのかということにつきましては、いろいろな見方というものがあると思いますけれども、今日のわが国のこの現状からいたしますと、国民の基本的な生活権を守っていくといいますか、あるいはシビルミニマムを拡充していくということが財政にとって当面最も大きな課題になっていると思いますので、そのほかの課題というものももちろんあるわけですけれども、いま言いました主要な課題に沿ってこの財政のあり方というものを考えるべきではないか。福祉というのは国民の具体的な生活に立脚しなければいけないわけでありますので、そうした具体的な生活状況に立脚してきめのこまかい行政が行なえ、そして住民の要望も取り入れられるというふうなことから考えますと、やはり地方自治体がその主たる担当者でなければならないというふうに考えますので、地方自治体に財源を大幅に配分する、いわゆる財政における地方分権主義というものを確立する必要があるのではないか。そしてその場合の主体といいますものはやはり市町村であろうというふうに考えるわけであります。
県と市町村との関係でいいますと、市町村中心の財政主義というものが必要になってくるのではないかというふうに考えるわけであります。もちろん、県自体の行政的な役割りというものもそれ相応にあるというふうに思いますけれども、いま言いましたような、具体的な住民生活に立脚した福祉行政を推進するという立場からいいますと、やはり財政的にも最も弱い地位に置かれているところの市町村の財源拡充というものが、当面はもっと中心にならなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。したがいまして、先ほど私が所得税の移譲というふうなことを申し上げましたけれども、この場合におきましては市町村へ移譲するということが基本にならなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。
それから三番目に国保税のお話でございましたけれども、こういった社会保険関係の負担というものがいわゆる税外負担として次第に高くなってきておるわけでありまして、租税負担のほうは減税等におきまして考慮されているわけですけれども、地方におきましても国保税等の社会保険関係の負担というものはむしろ高まってくる傾向にあるわけでありまして、そうした点も国民の負担の問題として、その適切なあり方というものが考えられなければならないのではないか。ことに国保税の場合には、課税標準といたしまして住民税が採用されているところがかなりあるわけですけれども、この住民税自体、税率の構造などにおきまして十分な累進構造になっていないということ、それから所得の捕捉におきましても、給与所得者と事業所得者あるいは資産所得者との間の格差が大きいというような問題が反映いたしまして、どちらかといいますと勤労者に対して重くかかるような形になってしまっているわけであります。こうしたことも、この住民税のあり方の問題にも関連いたしますけれども、なお国保税の課税標準のあり方というふうなことにつきましても再検討が必要なのではないか、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/40
-
041・小川省吾
○小川(省)委員 どうもありがとうございました。
橋本先生にちょっとお伺いをいたします。
私の受けとめ方があまり適切ではなかったのかもしれませんけれども、個人住民税の関係ですが、所得税と意味合いが違うので、比例税率といいますか、あるいはまたゆるやかな累進税率がよいのだというふうに思いますというふうなお話であったと思うのです。そういう形で所得に応じて分担をして、公共サービスを享受をするわけでありますが、公共サービスとシビルミニマムとの関連ですね。当然シビルミニマムがあって、それにこたえるような公共サービスが行なわれなければならぬというふうに思いますが、公共サービスとシビルミニマムとの関連についてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/41
-
042・橋本徹
○橋本参考人 私が所得税と住民税と比較いたしまして、所得税は所得の再分配を主としてねらい、累進的に課税されるべきである、住民税は、所得を課税標準にとるにいたしましても、地域の公共サービスに対する住民の選好は、弾力性はほぼ一くらいに考えて、ですからたとえば百万円の所得の人がかりに十万円とするならば一千万円の人は百万円といったような、そういう比例的な税率でいいんじゃないか。納税者の負担の公平というのは、所得税と住民税を合算した総税負担額が累進的になればいい、そういう形で所得税を住民税のほうに移譲することによって地方財源の充実もはかれる、こういった意味を申し上げたわけであります。
お尋ねの、シビルミニマムについてどのように考えるかということでありますが、今日のシビルミニマムということば、ずいぶん新語のようですけれども、国民がどの地域におりましても、どこに住んでおっても、国民としてある限度の生活水準を確保すべきサービスが国の手で行なわれておるべきであるということについては、私もさように思います。それをシビルミニマムということばでいうのか、ナショナルミニマムということばでいうのか、これは別だと思います。とりわけ今日、都市生活をする際に、私の感じでは、個人個人の健康を確保するためのサービス、それから、やはり都市における住居生活がたいへんだと思いますので、住居生活に対するサービス、それから教育に対するサービス、そして最後に交通に対するサービス、こういったものが、都市の住民を問題にいたしますと非常に重要になってくると思います。
そこで、そのようなものを提供する役割りが、現在の地方財政の仕組みの中で、すべて地方団体の財政支出で行なわれるとは考えません。今日の交付税制度等にもございますように、先ほど申しました、どの地域においても最低限度のそういったサービス水準を確保するためのおっしゃるようなシビルミニマムという意味であれば、それを確保するようなものが全財源の中である程度そこへ投入されるべきである。私が、日常生活に密着した地方サービスが、その地域地域によって特性があるではないかと申しましたのは、当然そのシビルミニマムの上に乗ってくるいろいろな特性といったようなものがある、こういう意味でございます。ですから、もし住民税を比例税にして、その結果税収が足りないというようなことになるとすると全く私の意図と違うわけでありまして、十分に税収を確保するという意味での比例税の主張でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/42
-
043・小川省吾
○小川(省)委員 ありがとうございました。
坂入先生にお伺いをいたしますが、住民税の課税最低限を引き上げるべきだということを言われました。私どもそういう主張を常々委員会の中で言っているわけでありますが、私どもがいろいろ自治省の説明を聞いても、まあ、年々改善はされてきているわけでありますけれども、これを少なくとも前年度の所得税の課税最低限まで少なくとも同一にしなければならぬという主張をいたしているわけでありますが、なかなかそこのところまでいっていないわけです。そういう意味では何としても国の態度に対して私ども納得できないわけですが、いわゆる応益原則といいますか、それぞれ地域における分担の問題というものは均等割等もあるわけでございますから、そういう意味で、これを近づけていくためにどのようないわゆる国に対するやり方をやっていったらよろしいのか、先生のお考えを若干お聞かせをいただきたいと思います。
あと一つは、事務所事業所税の問題は、先生方、皆さんおっしゃったわけですが、私どもも当然事務所事業所税を一日も早く創設をすべきだというふうに思っています。今回の法人税の所得割税率にしたところで、これは全体的な問題であって、大都市におけるところの財源の充実という問題ではない。全体的の中で、たまたま大都市が比較的法人が多いわけでありますからそういう形になるだけであって、大都市に対する、財源需要にこたえるために当然新設をしなければならぬというふうに思います。確かにそういう意味では今回の措置は都市に対する財源付与になっているわけですが、これではやはりほんとうの意味で、評価できるにしても、大都市の要請にこたえていないというふうに私ども実は思っているのです。先生もそういう意味でおっしゃられたのだろうと思いますが、その点についてもう一回ちょっとお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/43
-
044・坂入長太郎
○坂入参考人 ただいまの御質問の趣旨と私の趣旨と大体同じようなことだと思います。
先ほど申しましたように、私自身が住民税の課税最低限の引き上げを言っております一番基本的な考え方、これはいわゆる賃金原則から導き出されておりまして、いわゆる労働賃金それ自体というものは、労働者の労働力の再生産に要しますところの消費資料の価値によって決定されなければならない。労働者及びその家族が文化的な道徳的な生活をするために必要な、そのときそのときの生活必需品の価格、こういうものが基準になるのがいわゆる最低生活費の問題であるかと思います。住民税あるいは課税最低限の問題を見る場合におきまして、必ずしも政府あるいは地方団体におきますところの課税最低限の明快な考え方というものはないわけでございまして、この程度であれば生活ができるであろうということだと思います。そこで問題になりますことは、所得税におきますところの課税最低限は大幅に引き上げられており、そして地方税におけるところの住民税の課税最低限は、先ほど和田先生のお話にありましたように、逆に逆進的な形になっているわけでございます。そういうような意味合いにおいて、住民税の課税最低限をできるだけ引き上げていかなければならない、こういう立場で課税最低限の引き上げを強く主張するわけでございます。それからもう一つ、たとえば先ほども触れました均等割の問題等もあるわけでございますが、要するに、住民に対して課税最低限を越えるような課税というものは福祉の立場から望ましくない、こういう立場で課税最低限の引き上げを強く言っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/44
-
045・小川省吾
○小川(省)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/45
-
046・伊能繁次郎
○伊能委員長 小濱新次君。
〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/46
-
047・小濱新次
○小濱委員 最初に、税財源の配分につきまして和田教授にお尋ねをしていきたいと思います。
先ほども思い切った財源の配分ということを考えるべきであるという御意見を拝聴したわけでございますが、この税財源の配分は、御存じのように歳入の面では国が七、地方が三の割合、また歳出面では国が三、地方が七の割合になっているわけですが、自治権を保障し、福祉政策を推進するためには、その配分はどのくらいが適当とお考えになっておられるか、ひとつ御見解をお伺いをしたいと思います。
続いて、あと坂入教授に二点お願いをしたい、こう思います。
これは基本的な考え方になるかしれませんが、今回政府は、公共事業の削減など総需要抑制策をとっているわけですが、この政策が地方自治体にストレートに反映するようになっているわけでございます。これでは住民の要望する事業まで一律に削減されており、住民福祉の立場から好ましくないと私どもは考えているわけですが、このように国の政策が地方自治体にもろに反映する政策についてどのようにお考えになっておられるか、御専門の立場からひとつお答えをいただきたいと思います。
もう一点ございます。これも御意見の中に出ておったわけですが、東京都など大府県で法人事業税の不均一課税を行なおうとしているわけでございます。そこで、御説明では、市町村の法人住民税の減少を招き、交付税も実質的減額をされるという、弱小団体に影響を及ぼすということの御説明でございましたけれども、市町村が緊縮予算で四苦八苦をしているという御説明が午前中もいろいろとございました。それにまたさらに減額を迫られるということは、これは問題であると私どもは考えているわけですが、そこでお伺いしたいことは、法人事業税、法人住民税のあり方についてどのようにお考えになっておられるか。この二点についてお答えをいただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/47
-
048・和田八束
○和田参考人 国と地方の財源配分の割合が、どのくらいが適当であろうかというふうなお話でございましたけれども、これは必ずしもぱっと言うことができないわけでありまして、まず国と地方との事務配分の問題がございまして、原則的に本来国が行なうべき行政事務については国が国の財源で行ない、地方自治体が行なうべき行政事務については原則的に地方自治体の財源でもって行なえというふうな原則によって事務配分が適切に行なわれて、その上で財源の配分が確定するというふうになるのではないかというふうに思うわけであります。しかしながら、今日直ちに、国、それから県、市町村との間で、適切な事務配分のあり方に従って再配分するということはなかなか困難なことでありまして、戦後も長らくそういうことが言われておりましたけれども、必ずしも直ちに行なうことができにくいところがあるというふうなことがあるわけであります。しかしながら、実態といたしますると、地方自治体の実際に担当しております行政が、いまもお話がございましたように全体の七割ぐらいまでございますので、そうした実態にかんがみて財源を拡大していくというふうな方向がとられなければならないというふうな意味合いでありまして、何対何であればいいということが、直ちに数字でもって言うことはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけです。
それからまた、よく言われますのは、半分半分といいますか、五〇対五〇ぐらいの割合にしたほうがいいのではないかというふうに言われておりますけれども、これもそういった意味合いでの根拠があってというよりも、むしろ一定の段階的目標としてその程度を一応踏まえて先へ進みたいというふうなことであろうと思うわけであります。また、フィフティー・フィフティーの配分であるというふうになりましても、これは言ってみればマクロの数字でありまして、国とそれから地方自治体全体の財源の配分関係でありまして、御承知のように、地方自治体の数というものはいま三千数百あるわけでありまして、それらの自治体それぞれによってまた事情が異なってくるわけであります。したがいまして、配分率だけでは問題は片づかないのではないかというふうに考えるわけです。
さらに財源配分の問題でありますけれども、財源を配分することにいたしますと、今日でもこれは主として都市団体の側から多く意見が出ているわけでありますけれども、そういたしますと、いわゆる地方自治体間の財源のアンバランスというものはかえって拡大する結果になるわけでありまして、そこで、税財源だけではなくて、一般の財源としての地方交付税のあり方というものが同時にそこでは考えられなければならないわけでありまして、地方交付税の総ワクのあり方あるいは地方交付税の配分のあり方というものが同時にそこでは取り上げられなければいけないわけであり、また地方交付税の配分のあり方というふうなものも今日のようなやり方ではなくて、地方自治体の代表者によって自主的に再配分が行なわれるというふうな形にならなければならないと私は考えるわけであります。そういう意味で、一般財源全体として、地方交付税と税財源、両者を合わせて、具体的にそれぞれの地方自治体がその財政需要に応じられるかどうかということが最終的には検討されなければならないのではないか、このように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/48
-
049・坂入長太郎
○坂入参考人 小濱先生の御質問にお答え申し上げます。
最初の、第一点の問題は、政府の景気調整政策が地方財政にいろいろマイナスの影響を与えておる、こういうようないわゆる仕組みがよろしいかどうか、適当であるかどうかというような意味合いかと存じます。
私は、最近の異常な経済の実態からいたしまして、国が景気調整政策をとる、総需要抑制政策をとるということについては異論はないわけでございます。この総需要抑制政策は、言いかえれば国の事業をできるだけ削減をして、そして景気の刺激を避けるということが一つと、それからもう一つは、いわゆる異常に物価が騰貴をしておるということと、資材の不足というような問題もあるわけでございまして、資源の配分の面から見まして、国が事業量をそれだけ減少すれば、国の消費するところの資源が民間に回るべきである。そうなれば民間のほうの事業、特に地方の公共事業というものがそれだけ資材の入手がしやすくなるわけでございます。こういうような意味合いにおきまして、今回の総需要抑制政策におきましては、国が大幅に引き締めると同時に、たとえば起債等の面を削減をしまして、地方それ自体が住民の要望によって、福祉の充実、いわゆる地域的なサービスを行なわなければならないところの投資分を減少させておるということについて、政府の政策が非常に間違っておる、こういうような考え方でございます。要するに、地域の住民の最も切望するところの公共的な投資については優先的に、いまの異常な状態においても行なわせるべきではなかったか、このように考えるわけでございます。
それから第二点の、いわゆる法人住民税ないしは法人事業税でございますが、これは当然法人が受けるところの課税でございます。それから、この制度は私は別にいい悪いを申すわけではございません。ただ問題なのは、最近の企業の流れ、企業の経営の態度からいたしまして、いわゆるつくった物の不足というようなことで非常に大きく不当な利益をおさめているような状態が実情でございます。こういうようなことからいいましても、今回各地方団体がとっておりますところの超過税率適用というふうなことについては、ある程度現在の社会の流れの中におきまして是認をされるべきものであると思うわけであります。ただ問題なのは、こういうような税のほかに、法人税も増徴になっておりますし、法人の国及び地方の全体の税負担が異常に高まるということ、これが次の段階におきまして、法人の立場からすればそれを商品に転嫁をするおそれがあるわけでございます。現在の大法人は税金を商品に転嫁しておるというのは常識でございますので、この点についての調整をはかるということができれば、大企業等に対する超過税率を用いての課税というものは当然行なうべきである、このように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/49
-
050・中山利生
○中山(利)委員長代理 折小野良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/50
-
051・折小野良一
○折小野委員 三先生のお話をお伺いいたしましたが、一問ずつ御質問いたしたいと思います。
まず和田先生。所得税の地方移譲という御意見をお伺いいたしました。御存じのとおりに、現在地方交付税という形において所得税の三二%、これが地方に移譲されておるわけであります。したがって、先生の御意見は現在の三二%の交付税率を引き上げよという御意見でございますか。あるいはまたそれとは別個な所得税の単独の移譲措置を講ぜよ、こういうふうにおっしゃるのでございますか。その辺をお伺いいたしたいと思います。
それから次は橋本先生にお伺いいたしますが、地方税の原則として四つほどおあげいただきました。その中で、最初の地方自治の原則、これは具体的にはいわゆる負担分任の精神ということでございますが、これが現在の制度の中であらわれておりますのは住民税の均等割である、こういうふうに通常考えられるわけでございます。ところが現在の均等割はきわめて低い金額である。しかも特に個人につきましては二十九年にきめられたまま今日まで至っておる。今日の物価あるいは貨幣価値、こういうような面からいきまして、おっしゃるような負担分任の精神を具現するような制度であるのかどうか。またそういう点からいきまして、はたして現在の住民税の均等割が適当なのかどうか、あるいはそれがどの程度にあったらいいというふうにお考えになっておるのか、その点をお伺いいたします。
それから坂入先生にお伺いいたしますが、電気ガス税について御意見をお伺いをいたしました。一面において生活費に課税すべきではないという基本的な考え方があろうかと思っております。そしてまた、現実問題として電気ガス税、特に電気税ですが、これは地方にとってみますと最も普遍的な財源である。しかも最も取りやすい財源である、こういうことなんでございます。現実にはその辺を何とか調整しなければならないということになるわけなんでございましょうが、先生ひとつ、制度的な調整と申しますか、そういう面についてお考えをお持ちでございましたらお聞かせをいただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/51
-
052・和田八束
○和田参考人 ただいまのお話ですけれども、所得税の移譲の問題といいますのは幾つかの点から問題になっているのではないかと思います。
一つは、端的にいって財源問題でありまして、四十九年度の収入見込みでも四兆七千億円程度の財源があるということになっておりますので、そうした財源が地方自治体に配分されるならばかなり配分割合が変わるであろうという意味合いで、この財源問題から移譲問題が出されてきているということだろうと思います。
それからもう一つは、税制の公平の問題でありまして、公平の問題と財源とはある意味では結びついているわけでありますけれども、先ごろの東京都の新財源構想研究会の「新しい個人住民税について」というような答申を見ましても、この公平の問題と財源の問題とがあわせて考えられておるわけであります。これは、所得税と住民税との課税最低限の格差の問題、これが一本化することによって解決し得る。それから税率における累進構造の低さといいますか、累進度の低い実態というものが住民税のほうにはあるわけでありまして、この問題が解決できる。それから分離課税によるところの、地方自治体の収入にならない資産性所得も地方自治体の財源として把握できるという点もあるわけであります。それからさらに、問題になっております現年課税の問題というのがありまして、この点も同時に解決し得るということになろうかと思います。これは公平の問題というよりも、むしろ財政問題というふうにかりにいってもよろしいかと思うのですけれども、そうした問題があるわけであります。それからさらに、納税者にとっては、やはりそれぞれの納税者が負担した租税が自分たちの身近で支出される、使われているという、こういう納税者の財政に対する関心度を高めるという意味合いからもこの問題は考えられるのではないかというふうにいわれているわけでありまして、いずれの点からいいましても、私はそれに賛成したいわけであります。
地方財源として移譲する場合には法人税か個人所得税かという問題があるわけでありますけれども、法人税に比べますと所得税のほうが普遍性に富んでいるわけであります。いずれの地域におきましても、その住民がそこに生活しているという意味合いで、はるかに普遍性に富んでおりますし、またいわゆる安定性におきましても、法人税のような景気によるところの変動性が少ないという意味合いで地方税に適しているのではないかというように考えるわけであります。これを東京都の新財源構想研究会のように五十対五十で移譲するか、あるいはほとんど一〇〇%に近いところまで移譲するかということはともかくといたしまして、かりにそのように移譲した場合に、交付税の財源に対して一定の反映があるということは言うまでもないところであります。そのままにしておきますと、当然交付税財源のほうが少なくなるということになるわけであります。
しかし、この場合には交付税の基本的な制度そのものが変わらざるを得ないわけでありまして、今日の税制を前提にいたしまして、三税の三二%というのが交付税率としてきめられているわけでありますから、そうした基本的な税制が変更される場合には、交付税のワクといいますか、交付税率というものは基本的に再検討されなければならないことは当然であります。また、交付税率という形で一定の、国税にリンクさせてその交付税財源をきめておくという、こういう制度自体が妥当かどうかということも問題があるわけでありまして、むしろ下からの積み上げ方式によるところの一般財源の補てんという形にしていくということのほうが望ましいわけであります。
それからさらに、交付税の財源がそれによって少なくなるのではないかというお話もあるかもしれませんけれども、しかしながら、この所得税を移譲することによってかなり多くの自治体が不交付団体になることは明らかでありまして、特に大都市地域においては不交付団体になるわけであります。大都市の周辺地域のいわゆる衛星都市におきましてはこれは必ずしもそうはなりませんけれども、大都市団体においては今日のように交付団体であるという実態そのものがおかしいわけでありまして、これらは財源的に自立して当然であって、財源的に自立する方向に持っていくべきである。そういたしますと、不交付団体になった分については当然交付税財源が浮くということになるわけでありまして、交付税を集中的に、過疎地域でありますとかあるいは財源の貧困団体に対して大幅に配分を高めるということが可能になってくるのではないか、このように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/52
-
053・橋本徹
○橋本参考人 地方自治の原則について均等割との関係をどう考えるかということでございますが、私、申し述べましたのは、地方自治の原則というのは、必ずしも均等割だけで具現しようというのではなくて、住民税あるいは事業税にしても、地域においてその地域社会を築き上げておる、法人、個人を問わず、住民がその地域社会を自分の負担した税金でするということであります。ただし、それを最も端的にあらわすのが均等割であるという説については私もそのように考えます。およそ、税金というものを単に負担だけからとらえる点について、私はそう考えないので、負担と公共サービスに対応してとらえなければ、負担の面からとらえますと非常に問題が起こるわけです。その意味では、住民税の中にはある意味では会費と申しますか、地域社会をつくり上げておる会費的な要素も多分にあるわけであります。そういう意味で考えますと、税金を負担の面だけからとらえる説からはおそらく廃止論が出てくると思いますが、私は公共サービスと対応して住民税というのを考えたいのでございますので、当然均等割を是認すべきである、こう思います。
そうしますと、一年間に大都市で六百円、県民税と合わせて七百円、中小都市で年間四百円というもの、あるいは県民税と合わせて五百円というものが——資料によりますと、均等割だけの納税義務者が三千六百万人ほどいる。所得割の納税義務者が三千三百万人ほどいる。こういう差があるわけでありますが、均等割だけをもし徴収するといたしますと、おそらく徴税費用にも満たないというようなことですから、現在の物価情勢、所得水準等から考えて、応分の負担引き上げが議論としては出てくる。たとえば、それはわれわれがきめることじゃないと思いますけれども、かりに六百円が二千円になったからといって、それを負担が上がったという議論はあまりにも近視眼的な議論であると思います。
ただ問題は、現在の所得に対する考え方が、諸外国では、イギリスにおいてもアメリカにおいても、タックスクレジットだとか逆所得税だとかいったように、ある一定水準の所得までは税金を返していってその所得を積み上げていこう、そこから所得税を取ろう、こういう思想が世界的に一般化しつつある。そうしますと、そういう理想的な形を言わしていただければ、一つの逆所得税等を実行して所得分配を公平にしておいて、その上で、二度手間ですけれども、皆さん二千円なら二千円の住民税を出してもらいましょう。そうすると、自分が出して、公共サービスを受けて、地域社会を築いていくという、ほんとうに地域を愛する気持ちも出てくる。
一方で、所得の把握が非常に問題がある。先ほど和田さんからも出ましたが、たとえば譲渡所得等が抜かれていったりしておりますので、税源そのものがほんとうの意味の所得じゃない。課税所得そのものがほんとうの意味での所得じゃないという問題があったりいたします。そこでそういうときに、均等割だけという納税義務者は比較的勤労者の、しかも多分に若年労働者とかあるいは婦人労働者とかいったような所得の低い人でございますので、そこにかけるのは政治的にいかがであるか。いわばそれは税の理論ではなくて、政治的なあるいは国民感情といいますか、そういうものを重視しますと、一方でそういう廃止論も出てくるだろうと思います。あるべき姿としては、所得分配を公平にした上で、公共サービスに対する財源を住民が出すということは、自治の精神を具現する意味においてきわめて望ましいことだ、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/53
-
054・坂入長太郎
○坂入参考人 電気ガス税についてのお尋ねでございますけれども、お答え申し上げます。
現在の電気ガス税は、先ほど申しましたように生活必需品でございますので、私は廃止が望ましいと思っております。と同時に、余談になりますけれども、たとえば水道の場合におきまして、地方団体が特別会計を持っておりますが、非常に赤字が出ておりまして、これから水道を引く人たちに対して分担金を非常に多く取っておる。こういうようなこともいわゆる税外課税のようなことで、好ましいことじゃないと思うわけでございます。
そこで、電気ガス税を廃止をして、それにかわるべき税があるかどうかというようなお尋ねかと思うわけでありますが、いますぐ電気ガス税を廃止して、それに対応するところの税の構想があるわけではございません。たとえば、思いつきでございますけれども、家庭で使う電気は生活必需品でございますし、企業で使うところの電力はこれは生産の材料でございます。そういたしますと、それ以外で使うところの電気、いわゆる娯楽的なものに使う電気、あるいはネオンサインとか、こういうようなものについてはそれに対して税を取ってもよろしいのじゃないだろうか、こんなような感じを持つわけでございます。十分なお答えになってないかと思いますが、これで御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/54
-
055・折小野良一
○折小野委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/55
-
056・中山利生
○中山(利)委員長代理 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
次回は、明十五日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107204720X01419740314/56
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。