1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年五月十日(金曜日)
午後一時十六分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 森中 守義君
理 事
田口長治郎君
原 文兵衛君
矢山 有作君
委 員
菅野 儀作君
寺本 広作君
中村 登美君
鶴園 哲夫君
小平 芳平君
高山 恒雄君
沓脱タケ子君
政府委員
環境政務次官 藤本 孝雄君
環境庁長官官房
長 信澤 清君
環境庁大気保全
局長 春日 斉君
環境庁水質保全
局長 森 整治君
中小企業庁計画
部長 吉川 佐吉君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
説明員
資源エネルギー
庁石油部精製流
通課長 松村 克之君
参考人
元三重県環境汚
染解析プロジェ
クトチーム総括
責任者 吉田 克巳君
元水島工業地域
大気汚染調査委
員会委員 森口 実君
川崎市公害局長 寺部 本次君
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本日の会議に付した案件
○大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査(瀬戸
内海埋立て問題に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/0
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001・森中守義
○委員長(森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
大気汚染防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案につきまして元三重県環境汚染解析プロジェクトチーム総括責任者吉田克巳君、元水島工業地域大気汚染調査委員会委員森口実君、川崎市公害局長寺部本次君、以上三名の参考人の方々から御意見を伺います。
この際、参考人の皆さまに一言ごあいさつを申し上げます。
皆さまには御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆さまからの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考に資したいと存じております。何とぞよろしく御協力をお願いいたします。
これより参考人の各位に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上お一人二十分程度でお述べを願い、参考人各位の御意見の陳述が全部終わりましたあと、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じますので御了承願います。
それでは吉田参考人からお願いいたします。吉田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/1
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002・吉田克巳
○参考人(吉田克巳君) 私、ただいま御紹介にあずかりました元三重県環境汚染解析プロジェクトチームの総括をいたしておった者でございます。この三重県環境汚染解析プロジェクトチームといいますのは、三重県が出しました公害防止条例に基づいて硫黄酸化物の総量規制を行なうために設けられたものでございますので、その間、総量規制に関連した事項について、経験した点について述べさせていただきたいと思います。
実は、三重県は四日市という公害で最も有名な地域をかかえておるわけでございますが、そこの中で一番最初に問題になりましたのは、磯津地域の患者がたくさん出たという問題であるわけでございます。
この磯津地域のすぐ近くに、当時私どもの大学でありました三重県立大学の付属病院がございましたので、私もその地域の患者さん方を何回か拝見したこともございまして、非常に同情を禁じ得ない問題であると、そういうように考えておったわけですが、なぜこの地域にそういう問題が起こるのかということを考えてみますと、その当時の工場の配置あるいは排煙拡散、そのほか公害防止上の対策というものが非常にまずくなっておる、こういうことが一番大きな原因でございまして、特に排煙がストレートに磯津地域に流入するような気象学的な関係があるということが、一番大きな問題として出ておったわけです。この問題に対しまして当時、黒川調査団といわれております厚生、通産両省の調査団がございまして、私もその調査団の一員であったわけですが、この問題が、先ほど申しましたようなそういう工場と地域住民との間の、排煙拡散そのほかの関係が非常にまずいということが指摘されておったわけです。
こういうようなことがおそらく原因の一つであったと思うのですが、昭和四十三年に現在の大気汚染防止法が出たときに、いわゆるK値規制法というものが入っておりまして、こういうようなストレートに煙が高濃度のまま住居地域へ侵入するというようなことが排除できるような法律が新しく出たわけでございますが、この法律が施行されていく過程でこの磯津地域のような問題は逐次緩和されてくる、そういうことがあったわけでございまして、たとえば磯津地域でも、昭和四十三年ごろには、かつての昭和三十五、六年から四十年ごろまでの患者発生に比べますと、その発生率がかなり下がるということが実際にございまして、一つの効果をおさめておったわけでございますが、しかし、逆に今度はいわゆる汚染範囲の拡大といいますか、そういう高煙突拡散に伴う一つのマイナス点、こういうようなものも出てきておったわけでございます。
たとえば四日市地域では、現在の環境基準にほぼ該当する汚染濃度であります〇・五ミリグラム以上、過酸化鉛法といわれる方法ではかって〇・五ミリグラム以上といわれるエリアが、昭和四十一年には四日市市の二六%であったわけですが、それがだんだんふえてきまして、昭和四十二年には二八・八、それが昭和四十五年には六六・四%までふえる。高濃度地点というのはなくなっていったけれども、逆に一定のレベル以上の広い汚染は制御しきれない、そういうような点があったわけでございます。この理由の一番大きなものはやはり工場、特に煙突が集積する、非常に狭いエリアにたくさんの高煙突が立つ、これに対して制御がしきれない、こういう点があったわけでございます。
昭和四十七年に、私どもの大学が県立大学であったということもございまして、当事の田中県知事、現在衆議院議員の方ですが、その知事のほうから、公害センターの責任者を引き受けるようにという発令がございまして、私この問題をどう解決していくかということを考えたわけでございますが、一つの大きな問題は、先ほど申しましたように、狭い地域にたくさんの排出源が集まる、特にコンビナートというようなものの場合には当然そういうことが起こってくるわけでして、したがいまして、それに対してK値規制だけで処理するには非常に限界がある。やはり四日市なら四日市という地域のエリアの中で全体の排出量がどこまで出せるのかということを逆にはっきりさせて、その限界点をこさないような方法、そういうものをつくっていく必要があるのではないか、現在のことばで言えば総量規制ということになるわけでございますが、そういうことを考えたわけでございます。当時私、県の公害審議会の大気関係の責任者をしておりましたので、この審議会の中でそういうような条例改正という問題を取り上げたわけでございます。昭和四十六年の十月に県条例を改正しまして、こういういわば総量規制ができるような形の条例に変える、そういうことを考えたわけでございます。
四日市地域の大気汚染は、皆さん御承知のように、住民の中に当時までにかなり多数のいわゆる閉塞性肺疾患、これの患者者が出ておったわけでございまして、急速にこの発生を根絶させる、これがやはり何といっても最も大きな問題点であるわけでございまして、そういう意味ではできる限り早くそういう規制の転換を行なう必要があると、こういうように考えまして、先に規制条例を出しておいて、そしてその具体的な内容、つまり環境容量と申しますか、全体の総量、それと各企業に与えられる総量のワク、そういうものを並行して出す一求める。そのためにプロジェクトチームを設定する、こういう考えで四十七年の四月にプロジェクトチームを発足させたわけでございます。
この場合にどういう問題があるかということでございますが、まで第一番の問題は、地域住民の吸っておる大気の性状、こういうものをどこのレベルまで切り下げるか、こういう問題がございます。こういう問題は、御承知のようにたとえば環境基準というようなことばであらわされますように、住民の健康といわば直結したものでなければいけないわけでございまして、この点に公害防止技術の可能性とか経済的な問題、そういうようなものがからんでくるわけでございますが、しかし、そういうような問題の有無にかかわらず、できる限り安全な側にとられるということが必要なわけでございまして、これを当初〇・〇二八PPM、最終的には〇・〇一七PPMというラインを考えたわけでございます。
それから第二の非常に重要な点は、これが地域内のどの地域でもどの地点でもそういう値が保証される、これが非常に重要な点でございます。御承知のように、大気汚染を観測する場合には幾つかの地点を選んで観測点を設けるわけですが、その観測されておる所だけが下がっておるのではいけないわけでして、地域内のどの地点でもそういうことが保証し得る見通しを立てる必要がございます。そのためにどういう考え方あるいは方法をとるかということがあるわけでございますが、そういう意味でいわゆるシミュレーション方式、つまりどの煙突からどれだけ出したときには実際の地上濃度がどういうふうになるか、こういうことをシミュレートさせる、そういうことで地域内をくまなく検討する、こういうことを考えたわけでございます。最終的には、一番問題のある地域では二百五十メートル置きに計算をする、そういうようなことをやったわけでございますが、そういういわば地域内濃度をどの場所でも制御できるような規制を設定をする、そういう意味でシミュレーション方式の導入ということを考えたわけでございます。
そのほかいろいろなことがございますが、たとえば、実際にそういうものをやる場合に一番効率的な方法、これはやはり一つの工場というのはたくさんの排煙源を持っておるわけですが、そのうち大きいものに対して集中的に投資をさせる、そういうことが非常に効果をあげる上でも有効でございますので、そういう意味で、従来の大気汚染防止法とかえて、工場ごとに規制を加える。従来の大気汚染防止法ですと煙突ごとに加えられておるわけですが、工場のトータル値として規制を加える、こういうことを考えたわけでございます。これは現実に工場に排煙脱硫装置を大幅に導入させる一つのきめ手になるわけであろう、こういうように考えたわけでして、結果的にはそういう効果があったわけでございます。
昭和四十七年の七月にいわゆる四日市公害訴訟の判決がございまして、ここの判決で、企業に対していわゆる結果の予測義務、予知義務というものが判決理由の中に出されたわけでございます。これはやはり企業が経済活動を行なう上で、そこから起こる結果というものをあらかじめ予測する義務がある、その予測義務を遂行していなかった、こういうところに問題があるんだと、そういうことが出ておったわけでございますが、これは外からながめてみますと、企業にそういう予測義務があるのは当然でございますが、同時にやはり地方自治体、この側にも住民保護の観点からいえば、そういう経済活動に対する予測義務というのは当然あるわけでございます。そういう問題を確実に果たしていくためには、先ほど申しましたような大気汚染の予測技術の向上、それからそれを実際にやっていくということが非常に大事になるわけでございまして、この点では総量規制において、たとえばシミュレーション作業というようなものがこういう四日市判決の予測義務にも対応するものであろうと、そういうように考えたわけでございます。
実際には、昭和四十七年の十一月に硫黄酸化物につきましては報告を出しまして、四十八年、翌年の二月に規則をつくりまして、これを施行したわけでございます。
その効果でございますが、四日市地域では、昭和四十二年から四十六年ごろまで年間ほぼ十万トンぐらいの硫黄酸化物が出ておったわけでございますが、それを昭和四十七年に六万九千トン、昭和五十二年には三万二千トンまでカットする、こういう内容を盛っておるわけでございますが、すでにその年次的な施行に入っておりますので、先ほど申しました四日市地内の硫黄酸化物の濃度がその間どういうように変わっておるかということを御参考までに申しますと、たとえば先ほど申しました新しい環境基準〇・〇一七PPM、過酸化鉛法でいきますと約〇・五ミリグラム前後、これ以上のエリアが、昭和四十五年には、先ほど言いましたように六六・四%あったわけでございますが、総量規制を施行しました第一年度にこれが四七・四%、第二年度つまり昨年でございますが、二六・八%で、汚染面積を約三分の一まで縮小することができた。最終的にはこれが当然ほぼゼロにならないといけないわけでございますが、この調子で下がっていけば、おそらく昭和五十年ないし五十一年には〇%に到達できるであろう、こういうように考えられるわけでございます。それから一ミリグラム以上のエリア、PPMでいいますと大体〇・〇三PPM以上のエリア、これが昭和四十五年には、二八・九%あったわけでございますが、規制の第一年度に、高いところが一番早く効果が出てくるわけですが、七%、約四分の一に縮小しまして、第二年度に三・七%まで下がった、こういうことがございます。そういう意味では、こういう形の規制は、そういういわゆる広域汚染といいますか、広いエリアに対する汚染の制御という点では非常に効果がある、こういうように考えられるわけでございます。
ただ、総量規制というのは単に硫黄酸化物だけに対して考えられるべきものでもございませんし、また人体被害という点から考えても、御承知のように閉塞性肺疾患の発生ということは、これは硫黄酸化物だけではなく窒素酸化物、オゾン、そういうような汚染物と複合して現実にはあらわれておる。現在の日本の大気汚染地域ではやはり硫黄酸化物、ばい煙、窒素酸化物、オキシダント、こういうようなものを複合的に考えていく必要が医学的にも疫学的にもあるわけでございまして、したがってこういうような問題をどのようへ制御していくか、硫黄酸化物と同じようにこれを規制して、一刻も早く地域住民に対する環境基準の確保、こういうことを実現しなければならないわけでございまして、そういう意味では窒素酸化物に対する総量規制、これが当然次の段階として急速に実現される必要があると思いますし、また光化学オキシダントに対する規制策、こういうようなものも将来の、できる限り速急に手をつけなければならない。大きな問題点であろう、こういうように考えるわけでございます。
いままでの私の経験から若干申し上げた次第でございますが、従来の規制法に比べますと基本的に違った性格あるいは効果というものを持っていることは確かでございまして、世界的にも類例のない規制法であるということになるかと思いますが、しかし、一刻も早くこういうことが全国的に施行されるべきである、こういうように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/2
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003・森中守義
○委員長(森中守義君) どうもありがとうございました。
次に森口参考人からお願いいたします。森口参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/3
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004・森口実
○参考人(森口実君) 最初に私個人のことを申し上げて失礼なんでございますけれども、私は昭和四十年から、当時厚生省に公害課がありましたときから、厚生省の公害課と一緒になりまして大気の拡散実験というものを行なってまいりました。これは将来できるであろうと思われます煙突の高さから、エアトレーサーといいますが、自然の条件では存在しないガスなり粒子なりを放出いたしまして、それが地上でどのような濃度を持ち、どういうところが濃くなるかというような実験をいたします。その中でいろいろな煙の広がり方と気象条件あるいは地形の条件、そういうものを調べてきたわけでございます。
水島地域につきましても、実は厚生省の調査をいたしておりまして、私は文献や紙に書いてあるところのいわゆる大気拡散というものではなしに、むしろはだでその煙の拡散を感じてきた、水島地区につきましては特にはだで感じてきたということがいえると思います。そういう関連もございまして、今度水島地区につきまして、許容総量をきめたい、その作業に参加してほしいというお話がございましたので、一昨年でございましたか、私は気象庁の研究所におりますけれども、環境庁と岡山県の依頼によりまして、水島地域の許容総量をどうやって算出するかという作業をしてきたわけでございます。
私の仕事自体は、気象と、特に大気の拡散、それからその拡散を実際に応用いたします拡散モデルというような仕事をしております。いま申し上げました拡散モデルといいますのは、先ほどの吉田先生のほうのお話でもシミュレーションということばが出てまいりましたけれども、煙突から出ます汚染質が地上にどのような影響を与えるかということを、定性的ではなしに定量的に推定しようということで、数学的に再現をするという作業でございます。
それにつきましては、特にアメリカで六、七年前から研究が始まっておりまして、わが国でも、四年ほど前から活発にこの大気拡散モデルの研究というものが進められております。それを大ざっぱに分けますと、私どもは定常的とか非定常的とかということばを使っておりますけれども、たとえば海岸で風が五メートルで吹いてくる。その風が、同じ方向で内陸まで五メートルで吹いているというふうな気象条件を考えた場合、これは私どもに言わせますと定常場とか均質場ということばで呼んでおりますけれども、そういった条件での拡散モデル、もう一つは、海岸では海風が二メートルで吹いているけれども、内陸のほうは逆に山から風が吹いてくるというような、その地域全体の風が一様でないような場合、気象条件が均質でないような場合、これを非定常場とか非均質場と呼んでおりますけれども、そういった場合のモデル、その二つに分けられると思います。
従来、いろいろと大気汚染の予測あるいはシミュレーションをおやりになっているケースを見ますと、先ほど申し上げました定常場あるいは均質場の大気汚染モデルをお使いになっている例が大部分でございます。きょうこれから私お話しますのは、それよりも一歩進めまして、非定常的あるいは非均質的な場についてのアプローチと申しますか、モデルの導入を考えるということでございます。
あまり技術的なむずかしい話は避けまして、あとでもう一度この問題は触れたいと思いますけれども、さて、岡山県の水島地域に参りまして、いろいろ県から実情をお伺いいたしますと、当初開発計画におきましては、正確な数字ではございませんけれども、たぶん一万八千ノルマル立米ぐらいのSOxの、これは時間当たりの排出量でございますけれども、排出が見込まれていた。ところが、一昨年の時点でいろいろ植物被害、これは硫黄酸化物によるところの被害とは断定できませんけれども、大気汚染によると思われますところの被害がすでに発生している。それから呼吸器疾患も、わずかでございますけれども増加の傾向がある。そういうところからかんがみまして、開発の途上におきまして、六千ノルマル立米でいまとどめているんだ、しかもその六千ノルマル立米の値でさえ、いわゆる硫黄酸化物にかかわりますところの環境基準は達成できない現状である。さらに昨年でございましたか、新環境基準ができまして、従来の環境基準の約三分の一というきびしい環境基準になるということがあらかじめ想定されましたので、そういう新しい環境基準、より厳格な、より低濃度に対する環境基準に対しますところの許容総排出量、岡山県水島地域におきますところの許容総排出量がどのくらいであったらよろしいのか、どのくらいにとどめるべきなのかということの計算をしてほしいということでございます。
私、気象の立場で見ますと、岡山県水島地域がございます瀬戸内といいますのは、非常に気候が温暖でございまして、住むにはまことにけっこうな気象条件なんでございますけれども、あそこにいらっしゃった方は御存じだと思いますけれども、いわゆる瀬戸の朝なぎ、夕なぎという、風がぴたりととまるという現象がございます。一般的に申し上げまして風の非常に弱い地域でございまして、先ほど申し上げました非均質場あるいは非定常場というような気象条件が起こりやすい場所でございます。そういうことを踏まえまして作業に移ってきたわけでございます。
作業の手順から申しますと、まずどういう煙突がどういう位置にあって、どのくらいの汚染質を排出しているかということを正しく把握しなければなりません。この値がいいかげんでございますと、あとの作業の値もみんないいかげんになってまいります。そういう硫黄酸化物につきましてどのくらいの量が出るかということは、実測値もございましたし、ある程度の推算ができるわけでございますけれども、一番問題になりますことは、煙突から出ますガスが温度をもっております、それからスピードをもっておりますために、いわゆる物理で申し上げます慣性を持っておりまして、煙突の高さからすぐに煙が広がるのではなしに、かなり上空にまで上昇いたしましてから風に流されて拡散する。その高さを私どもは有効煙突高と呼んでおりますけれども、その有効煙突高が、その地域の気象条件あるいは汚染質を排出いたしますところの煙突の条件によって変わってまいります。
御承知だと思いますけれども、現在の大気汚染防止法の中で、硫黄酸化物にかかわりますいわゆるK値規制の中にはこの有効煙突高の式が入っておりまして、ボサンケの(I)式というのを使っておりますけれども、これは法律上風速六メートルという気象条件のもとで計算することになっております。私どもこの法律が出る前から、あるいは出てからあとも、はたしてこの有効煙突高の式が正しいかどうかというチェックをやってまいりました。その結果を申し上げますと、風速六メートルの気象条件で実際に有効煙突高をはかりますと、かなりよく合います。現在の大気汚染防止法に使われております有効煙突高の式は、かなりよく合います。ところが、風が弱い場合でございますと、実際の有効煙突高よりも非常に高く推定してしまう。過大評価をしてしまう。逆に風が六メートル以上でございますと低く計算をしてしまうというような欠陥がございます。
いま水島地域につきまして、計算で大気汚染濃度を推定する場合に、風速六メートルだけが合うという有効煙突高の式を使うわけにまいりません。そのために、この有効煙突高の式はどういう式がいいか、これは煙突の規模にもよりますし、気象条件によるということは先ほど申し上げたわけでございますけれども、水島地域におきます煙突条件を考えまして、最もいい有効煙突高の式をきめていったわけでございます。なおその際には、幾つかの有効煙突高の式がございますけれども、それによって全部計算いたしまして、有効煙突高の計算の違いというものが実際の濃度の推定値にどのぐらいの影響を及ぼすかというような検討もしてまいりました。
このような作業過程によりまして有効煙突高の計算式を決定するということを終わりまして、次は煙突からどのくらいの汚染質が出るかということを先ほど申し上げましたけれども、これも実は時間によりまして、季節によりましてかなり変動をいたします。二十四時間操業の工場ですとあまり変化はございませんけれども、それ以外の工場でございますと、たとえば煙突が日中しか稼働していない、夜は休んでいる。それから暖房用のボイラーその他でございますと、冬は動いているけれども夏は動いていないというようないろいろな条件がございます。そこら辺をきめこまかく調査いたしまして、区分けいたします。最終的に分けましたのは、暖房期と非暖房期、それから日中と夜というような四つのカテゴリーに分けました。
それから次に気象条件でございますけれども、これも風向、風速という皆さん方が一番よく御存じの気象条件がございますけれども、これは気象庁ですでにはかっておりますのは、大部分は地上の風向、風速でございます。ところが、水島地域などに参りますと、実際の有効煙突高といいますのが三百メートル、四百メートルというのはざらにあると言っても過言でないほどで、すなわち、私どもが感じております風とは違ったものによって上空で汚染質が流され、あるいは広げられているいとうことが考えられます。幸いに水島地域ではそういう気象条件が比較的豊富にございましたので、そういう上空の風向、風速につきましてもいろいろと調査をいたしまして、それを有効に使っていこうということを考えてまいりました。
いま申し上げました風向、風速といいますのは、よごれた空気を運ぶ役目をいたしますけれども、同時にそれを薄める役目もいたします。しかし特に薄めるのに効果がありますのは、大気の安定度というものでございます。ところが、この大気の安定度につきましてはなかなか実測のデータがございません。たとえば百メートル当たり上空にいきますと何度気温が下がるかというデータがほしいわけでございますけれども、それにつきましてはなかなかデータがございません。ただ統計的には、上空のほうが風が強くて、私どもが生活しております地表面のほうが風が弱い。どのくらいの関係にあるかということはわかっております。そういうデータも利用いたしました。が、やはり一番肝心の、煙を薄めるほうの気象条件、私どもは拡散パラメターと呼んでおりますけれども、そのほうがなかなかずばりこれだときめることがむずかしいわけでございます。
従来は、いろいろ地上で気象観測をしたり、あるいは文献の中で一番もっともらしいと思われますところのパラメターを使いまして予測をしてまいりました。これは私自身もそういうことをやってまいりましたし、日本の国だけじゃなしに諸外国でもみんなそのようなかっこうでやってまいりましたけれども、私どもこの水島地域について考えましたことは、計算のしっぱなし、結局予測のしっぱなしでは、これは住民の方々も不安を抱くでしょうし、企業の方々も、実際に稼動したあとで煙突を高くしろとか燃料をかえろといわれるのは非常に困られるという話も聞いておりますので、やはり正しい、住民の方も納得し企業のほうも納得できるような客観的なデータを出していきたい。それにはまず、現在ありますところの濃度が説明できないような計算手法は使ってはならない。いま出現しております濃度が正しく再現できるような拡散モデルをつくっていこうということでございます。
幸いに、最近は自治体あるいは国でも硫黄酸化物につきましては測定網がかなり整備されておりまして、そのデータも蓄積されておりますので、いろいろな気象条件におきますところの濃度が統計的に計算することができます。一方では気象条件から推定いたしますところの計算をいたしまして、一方では実測値からの統計値を使いまして、最終的に実測値に合うところのいわゆる拡散パラメターを一つ一つきめていく。これは非常に手間のかかる作業でございますけれども、先ほども言いましたような事情で、経費あるいは時間ということはあと回しにいたしまして、非常にこまかい条件の中で実測値に合うような拡散モデルをつくっていったわけでございます。
その中で、最初に申し上げましたようないわゆる定常的あるいは均質的な場におきますところの拡散モデルと、それから非定常的、非均質的な場におきますところの拡散モデル、その両方を導入せざるを得なかったわけでございます。なぜかと言いますと、先ほども言いましたように、岡山県水島地域におきましては風の弱い頻度が非常に高い。その場合には、海岸で海風が吹いていても内陸は吹いていないわけでございまして、よごれが内陸まで到達しない場合もある。風向自体もふらふらしておりまして、はっきり南風だ、北風だと言えない場合がございます。そういったものをどういうモデルで再現するか。それにつきましてはいろいろ考えましたけれども、結局、パフモデルと呼ばれておりますけれども、パフモデルという新しいモデルを導入いたしまして、風速一メートル以下の気象条件につきましてはパフモデルで計算し、風速一メートル以上のものにつきましては定常場あるいは均質場を考えましたところのブルームモデルと呼ばれているものを導入いたしました。
そういう表に出ませんいろいろ陰の苦労をいたしまして、結局出てまいりますのが季節平均値であるとか、年平均値であるとかという値でございます。実際に環境基準のほうは二十四時間値あるいは一時間値という値でございますので、本来の目的から申しますと、比較的悪い気象条件におきまして環境基準値をオーバーしないような発生源の状態をつくっていかなければいけないわけでございますけれども、なかなかいまの技術、あるいはいまの情報量をもってしましては、短い時間の予測というのは危険がございます。危険があるというよりも、それだけの精度を情報量とか式自体が持っていないわけでございまして、そういう中であまり危険なことをするよりも、平均的な状態、非常に長い時間での平均値を予測するというほうはかなりの信憑性がございますので、そのほうを目的にいたしました。
ただし、その長期間の平均値と環境基準値との対応はやはり見なければいけない。そのために実測値を、岡山県では大体二十カ所で測定しておりますけれども、二十カ所の測定値を使いまして、一時間値あるいは二十四時間値と年間平均値あるいは季節平均値とはどのような関係にあるか、それを統計的でございますけれども、統計的な数学モデルにあわせまして関係を求めていったわけでございます。そういう、結局私どものやりました作業では年間平均値を再現していったのでございますけれども、目的はやはり環境基準値を少なくとも達成するということでございますので、そういう統計的な手法から近づいていったという経過でございます。
さてそういうことで、とにかく現在の濃度につきましてはかなり、かなりと言いますと、いままであまり例を見ないほどの精度で濃度を再現できました。そういう再現いたしますと、そこでは拡散モデルもできておりますし、それから拡散パラメターもできております。ですから、そこに煙突の条件を入れてまいりますと、どういう煙突はどのくらいの影響があるかということは、全地域について計算ができるということになります。
しかも、将来の問題につきましては、昭和五十年を目標にいたしまして、昭和五十年の発生源の状態はどのようであるかというような、将来の発生源の増加あるいは燃料使用量の増加ということを見越しまして五十年のいわゆる煙源モデル、五十年にはどのような状態になるかという発生源のモデルをつくりまして、それを使って、先ほど言いました実測値を説明できる拡散モデルによって五十年度の濃度を計算いたします。そうしますと、その五十年度の煙源の状態であれば、おそらくこういう濃度が出現するであろうという予測が可能になります。そういう予測をいたしまして、昭和五十年におきましてもなおかつ環境基準値を守れるような発生源の状態はどのようにすべきであるかというようなフィードバックをしていったわけでございます。
その結果出てまいりましたのが、たとえば年平均値が〇・〇二五でございますと大体三千八百ノルマル立米、〇・〇二でございますと三千二百ノルマル立米、それから現在のいま施行されております大気汚染防止法の環境基準値、すなわち一時間値〇・一PPM、一日平均値〇・〇四PPMをどの地域でも達成できるような年平均値といいますのは、水島地域におきましては〇・〇一五PPMというのが実測値から出ておりますので、その〇・〇一五PPMに対応しますところの硫黄酸化物の総排出量は幾らかと申しますと、大体二千四百ノルマル立米ということになりました。そういうことで、最終的には、昭和五十年においてもなおかつ環境基準値を達成できる水島地域の許容総排出量は約二千四百ノルマル立米である。これは、当初全然そういうことを考えておりません排出量に比べますと八分の一ぐらい、非常にきびしい条件になると思いますけれども、そのくらいに押えませんと環境基準値は達成できないということになってきたわけでございます。
くどくどとむずかしいことを申し上げましたけれども、問題は、やはりこまかく計算をいたしまして、気象のほうでも十分納得でき、あるいは濃度のほうでも納得できるようなそういう拡散モデルをつくって、結果的には住民の方も安心していただくし、企業の方々でもはっきりした方針ができて、それによって対策を講じられるというような手法が一応水島地域において、一応でございますけれども、この段階で開発されたということでございます。
なお私は、必ずしもこの水島地域の拡散モデルが最高だとは思っておりません。その後各地でいろいろ計算をしてまいりまして、よりよい、より正確なモデルがどんどん改善中でございますけれども、年平均値あるいは季節平均値というような比較的長い間の平均値を対象にいたしまして、濃度の再現をして、それから予測をするという技術につきましては、現在の段階でかなりいい線、十分これは住民の方々も納得できるであろうし、企業の方も納得して、あとの規制に応援していただけるというように考えておるわけでございます。
どうもむずかしい話で恐縮でございますが、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/4
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005・森中守義
○委員長(森中守義君) どうもありがとうございました。
最後になりましたが、寺部参考人からお願いいたします。寺部参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/5
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006・寺部本次
○参考人(寺部本次君) 川崎市の総量規制方式を条例化して現在施行をしておりますが、これにつきまして若干申し述べてみたいと思います。
なおその前に、公害防止条例は、川崎市におきまして、申し上げるまでもなく公害の防止、絶滅をはかる目的で昭和四十七年三月に制定になったわけでございますが、その若干の経緯を申し述べますと、まず川崎市の大気汚染状況でございますが、昭和四十年から四十二年ごろは大師地区というところで〇・一一PPMというような、当時非常に高濃度なものが記録されております。なお、その後若干濃度が下がりましたのですが、四十五年に〇・〇六PPM、これはいずれも年平均でございます。それで現状はどうかと申しますと、四十八年の平均で〇・〇四PPMでございます。もう一つ南部地域で田島地区というのがございますが、そこにおきます測定で四十五年に〇・〇八PPM、ここは現在四十八年平均で見ますと〇・〇五PPMでございます。それで公害病患者等の認定患者数も現在約千八百名というような状況でございますが、昭和四十六年に市長から公害対策審議会にこの規制方法についての諮問、四十七年一月に答申等がございまして、それから四十七年の三月に条例が制定になり、四十七年の十月から細部の施行規則を公布したわけでございます。
この条例の中心をなすものは、大気汚染等環境汚染の浄化の手法といたしまして、環境目標値をきめること、その目標値を達成するために地区別の許容排出総量をきめること、それに基づきまして個々の規制基準をきめる、これらを相互に関係づけることによりまして規制の体系化をはかったものでございます。大気汚染につきましては、まず硫黄酸化物と粉じんにつきましてきびしい環境目標値を設定いたし、地区別総量規制方式によって規制基準を制定いたしました。
ここでは硫黄酸化物の総量規制につきまして要点を御説明申し上げます。
この手法の基本的な考え方は、汚染物質の排出源と、その排出の環境濃度との関係というものを見るわけでございますが、市の全域を二キロメーター平方すなわち四平方キロメーターのグリッドに区分する、一つのます目にずっと切りまして、そこにおきます硫黄酸化物の濃度及び排出量等を調査いたしました。それでその環境濃度と排出量、さらにその排出されたものの排出源の状況によります拡散等も含めまして、いろいろその関係を求める作業をしたわけでございます。
この間、特に拡散の問題につきましては、本日ここにおいでになります森口先生にもいろいろ御指導、御協力をいただいておりますが、そのような非常に細部の計算等をいたしまして、市の各地域に影響を及ぼす、市内のもののみならず市に影響を及ぼすと考えられます隣接都市の排出源もそれぞれ考慮したものでございます。御承知のように川崎市は、多摩川に沿ってずっとウナギの寝床のように細長くございますので、東京の特に大田区、品川区を含め、また横浜の鶴見区等もいろいろと計算等には入れまして、各グリッドごとに有効汚染負荷量というもの、言いかえれば実際にその地域にどのくらいの量が落ちてきて濃度に影響するかというようなものを計算したものでございます。
発生源につきましては、有効煙突高によりまして低煙源、高煙源とに大別して、一定の拡散モデルによって煙突からの排出量を風下方向に配分し、各グリッドごとの汚染負荷率としたものでございます。風向の影響につきましては、低煙源の場合は八方位の風向頻度を使用し、高煙源につきましては地上百四十二メーターの十六方位の風向頻度を用いました。このように算出しました各グリッドごとの硫黄酸化物有効汚染負荷量と、各グリッドごとの硫黄酸化物濃度と対応させまして、一定の関係を求めました。そうすることによりまして、環境濃度をどれだけにするためには、その一つのます日ごとの濃度、そこに落ちてくる濃度はどれだけにしなくてはいけないかという有効汚染負荷量がきまり、それから実際に排出量というものをきめまして、そのワクぎめをしたわけでございます。
次に各メッシュの環境濃度を目標値、これは現在の国の環境目標値に相当するものでございますが、年間平均いたしますと〇・〇一二ぐらい、実際の目標値は日平均で〇・〇五PPM、一時間値で〇・一一PPMというようなことになりますが、それをきめ、さらにそれに到達するための中間目標値をまずきめまして、中間目標値にするためにその関係式から実際にどれだけの有効汚染負荷量になるかということを各ます目ごとに計算をいたしました。そのます目ごとに四平方キロごとに計算したものを、市内を三つに区分いたしまして、まず南部の臨海地区を中心といたしまして、市の行政区画から申しますと、川崎区の大師、田島支所管内と申しますか、そういったところを一つの区域にする、それから中央の部分を一つに区切る、それから北部のほうを区切るというようなふうに三つに区分いたしまして、その地区に年間の硫黄酸化物の排出量はこれだけにしなくてはいけないというものをきめたわけでございます。したがいまして、硫黄酸化物の量で申しますと、実際には南部のほうの大師、田島地区というのは非常に排出量が多いわけでございまして、昭和四十五年の排出量が全市で十三万二千百トンということになっておりますが、そのうち大師、田島地区で十二万七千トンという数字がございます。
それで、それを地区別許容排出総量でまず段階的にこの量を条例の中できめたわけでございまして、まず四十九年の一月一日、本年の一月一日から五十年の十二月三十一日までに、この南部の大師、田島地区におきましては四万四千六百トン、年間でございますが、それ以下にする。それはカット率で申しますと六三%のカットでございます。それをさらに五十一年の一月一日以降は二万一千七百トン以下にする。これは四十五年に比較いたしまして八二%のカット率でございます。あと、川崎の中央地区や幸区のほうにつきましても六九%カット、それから北部の中原、高津、多摩という各地区におきましては平均三五%というようなカットの方式をとって、まず地区別許容排出総量をきめたわけでございます。この量は、五十一年におきまして中間目標値といたしまして、川崎の南部地区でただいま申し上げましたようにかなり濃度の高い地区がございますが、これを〇・〇三PPM以下にする、それから川崎の中央地区、幸区のほう、これも同じでございます。それから北部を〇・〇一二PPM以下にするというような中間目標値を達成するには、地区別許容排出総量をこのようにしなくてはならないという数値でございます。この計算の中におきましては、やはり高煙源等につきましては広域に影響する問題もございますので、隣接都市の削減率は市と同じような削減率というようなものを一応用いております。
次に、発生源に対する個々の規制基準でございますが、これは各地区別の熱量の使用量の総計というもの、いわゆる総使用熱量と地区別の許容排出総量との比率を基礎として算出した使用熱量千キロカロリー当たりの硫黄酸化物排出量・グラムというものを単位といたしまして、規制基準を制定したものでございます。工場におきますこの熱量がふえれば総排出量はふえるではないかという疑問がありますが、これは条例の排出基準のただし書きにおきまして、四十五年を基礎といたしまして熱量がふえればそれだけ規制基準をきびしくするというようなファクターをかけることになっておりますので、総量規制を守るというように制定されております。
それで、実際にこういうふうに規定したわけでございますが、工場におきます亜硫酸ガスの排出量の監視につきましては、昭和四十七年に公害監視センターに発生源亜硫酸ガス自動監視システムというものをつくりまして、大手のまず四十二工場の燃料使用量、硫黄酸化物の排出量を自動測定し、それをテレメーターによりまして監視センターで全部を記録し、即刻わかるようになっております。
以上が川崎市における地区別総量規制方式と監視方法の大要でございますが、これらの手法も、学問的には未開拓な分野も若干はあろうかと思いますし、また運営にあたっては、理論と実際という問題におきましてはやはり試行錯誤を予想される点もございます。いずれにいたしましても、昭和五十一年の中間目標値達成につきまして、比較検討、その適合性等を吟味しながら、許容排出総量及び規制の方途についてさらに絶えず見直しを行なってまいりまして、その実効を期してまいりたいと、かように考えている次第でございます。
このような経験から、今回、国におきましての大気汚染防止法の改正案というものにつきまして拝見しますと、総量規制を主眼といたしたものでございまして、今後のわが国の大気汚染対策の推進に非常に有益なものと評価いたしておるものでございます。
二、三、意見と申しますか、要望になりますか、そういう感じたことを申し述べますと、総量規制の具体的な手法につきまして、目的は同じでございますが、四日市、水島、川崎等それぞれ地域の地理的あるいは社会的特性というものもあろうかと思いますので、全国一律ということではなくて、それぞれ地域の特殊性に見合った手法というものを十分配慮されたいというようなことを感じております。この点と、さらに川崎市ですでに実施している総量規制、これは三重県等も同じかと思いますが、こういうものの実績が法律の上で十分活用されるように念願しておる次第でございます。
こういう点につきまして、現在の法案におきましてはそれぞれ配慮されているように承っておりますので、そういうことは心配ないかと思いますが、そういう規制と同時にやはり重要なことは、大気汚染対策については規制とともに燃料の低硫黄化、排煙脱硫、さらに今後は排煙脱硝等の技術開発等裏づけになるものが非常に必要でございます。国のレベルでますますそういう点が推進されるよう、私どもとしては強く要望いたしておる次第でございます。いずれにいたしましても、今回の総量規制を主眼とした法案が早く施行されまして、現実的にこういうものが推進されることが意義深いものと感じておる次第でございます。
以上で私の説明並びに意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/6
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007・森中守義
○委員長(森中守義君) どうもありがとうございました。
以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/7
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008・鶴園哲夫
○鶴園哲夫君 こういうことをお伺いしたいのですけれども、そういう総量規制をやっていらっしゃいます川崎市の場合で、どうしても企業のほうは防止に対していろいろの施設をするだろうと思うのですけれども、そういうものを一体どの程度のものというふうに見ていらっしゃるか。どの程度の金をかけて防止のための施設をやっていらっしゃるのだろうか、大まかな推定金額ですね。
それから市で、局があってやっていらっしゃるわけですが、市そのものが年間にどの程度の予算でもってやっていらっしゃるのだろうか、こういうことをお尋ねをしたいわけです。
それからもう一つは、総量規制で半分に減らしていく、あるいはさらに五分の一に減らしていくということになって、企業そのものはそれぞれ公害防止施設に投資をしなければならないということになるだろうと思うのですけれども、川崎市の場合に、工場が新しく増設をされていったり、新しい工場が建っていくというようなことはどうなっているのか。私ども気にいたしておりますのは、総量規制をやりましてそれぞれ工場ごとに規制をいたしますとというと、どうしても外のほうに、川崎市以外のところに工場を持っていくということになるのではないかという懸念をするわけです。その点について、川崎市の場合もそうでありますが、また三重の四日市の場合につきましても、どうなっているのかという点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/8
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009・寺部本次
○参考人(寺部本次君) 企業の公害防止対策の費用につきましては、ちょっと手元に資料がないのでお答えいたしかねます。御了承いただきたいと思います。
市の予算につきましては、この二、三年、毎年大体六億ないし八億程度でございます。特に監視センターをつくって発生源亜硫酸ガスのテレメーター等をした場合には、おおよその金額でございますが、監視センターの発生源亜硫酸ガス監視システムが大体三億、それから環境濃度のテレメーターが、一部補充するのが約一億、建物が約一億ということで、大体四十七年はそういう施設に五億ぐらいかかっております。それから昨年度は公害研究所を建設いたしまして、そういうものの建設費が大体二億ぐらい占めております。その中にもちろん人件費も入ってございまして、四十四年公害課が公害部になったころ約四十名ぐらいの人員が、四十六年十月に公害局になりまして、公害局の人員といたしまして百二十名になっておりますので、そういう人件費等も含まれております。これはおおよその予算等の概算でございます。
それから企業の見通しでございますが、総量規制でワクぎめをしてございますので、熱量の使用量、エネルギーの使用量等については制限をいたしておりませんが、各工場についてのSO2の発生量につきましては、かなりの制限をぴたり受けておりますので、エネルギーがふえればそれだけ硫黄分の率の少ないものでないと使用できないということになっております。これは既設のものについてでございます。
しからば新設はどうかというわけでございますが、ごく簡単に申しまして新設はきわめて困難、不可能に近いぐらい困難だといえると思います。条例の上からは、既存のものよりもきびしい設備基準等の規制をしております。その設備基準あるいは規制基準という新設後に対する基準に合格するということは必要条件でありますが、やはり今後はさらにそういうものについては、いろいろと先ほど来お話のありましたように、総量規制、シミュレーションとかいろいろな角度からのものも検討をしていく、いわゆる環境アセスメント等の必要も当然あろうかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/9
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010・吉田克巳
○参考人(吉田克巳君) 総量規制をやった場合に、企業のほうでのコストが非常にかさむであろう、こういうことは当然予測されるわけでございます。どの程度のものかということは、実は私現在行政責任者でもございませんので、非常に申しわけないのですが、具体的な数字というのはちょっとあげかねるのですが、ごく一般的に概算しますれば、たとえば四日市地域で現在四百万キロリットルぐらい燃料を使っております。これの大部分が排煙脱硫クラスのものを持ち込む必要が出てくるわけでございます。そうしますと、年間でおそらく百億ぐらいはかかるであろうということは一応の予測としてはできるわけです。そして私の聞いておりますのでは、四日市地域では現在硫黄酸化物の総量規制のほかに、窒素酸化物と排水の総量規制が予定されております。それで四日市で一番大きな石油化学のあるメーカーの話では、これを全部完成するのに約二百五十億ぐらい必要であろうというような話を聞いております。したがって、負担額としてはそのあたりのオーダーにおそらくいくであろう、そういうように思います。
それから先ほどお話がございました、総量規制をしいた場合に新増設についてどういうことになるのか、こういうことがお話に出たわけですが、これに対処する方法としては、ごく大ざっぱに言って私は二つあると思います。一つは、先ほど川崎の寺部先生のほうが申されましたような、新設に対して非常にきびしい別途の基準をかける、そういうことによってこれを抑制していく。それからもう一つは、もう頭から禁止してしまう。そういう二通りの方法があると思います。結果的には、両者いずれも似たような効果になるのではないかと思うのですが、三重県の場合には、地域を指定しまして工場の新設の禁止条例を設けた、こういうことでございます。
既存の工業地帯、たとえば川崎あるいは四日市あるいは大阪、こういうようなところが逐次総量規制に入った場合には、これは今後の日本の工場新設といいますか、そういう動向には非常に大きな影響を与えるであろう、そういうことは予測されると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/10
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011・矢山有作
○矢山有作君 一つお伺いしたいのですが、いま規制をされておるのは大体硫黄酸化物だけのように思いましたが、お話の中で、窒素酸化物その他の有害物質等についてもやはり規制をやらなければならぬというようなお話が出たわけですけれども、それぞれのお三人方が関係されたところで、そういった窒素酸化物その他の有害物質についての規制をやるというような考え方がおありでしょうか。また、やるとするならどういう段取りで進めていかれるか、この点お伺いしたいのです。
それからもう一つ、東京都がこの前調査した結果を見ておりますと、硫黄酸化物あるいは窒素酸化物その他の有害物質の排出の状況について、大気汚染の寄与率というのは自動車の排出ガスが大体七割ぐらい占めておると、こういうふうなことを言われておるわけです。そうすると、自動車の排出ガスというものを抜きにしては考えられないのではないか、そういうふうに考えますので、それぞれの地域で総量規制をやられるときにこの問題をどういうふうにお考えになってやられたか、これが第二点であります。
それからもう一つは、環境容量の算定方式というのは、今度の改正案では政令にまかされておって、きめられてないわけなんです。そこで、いろいろな算定方式があるんだと思いますが、現在の段階で、皆さんのほうでこういう算定方式が一番理想的だとお考えになるようなことがあればお教え願いたいと思います。
それから排出の許容限度がきまりますと、それをそれぞれの工場なり事業場なりに割り当てをされるわけでありましょうから、そういう割り当てをするときにいろいろな方法があると思うのです。先ほども一つの方法についてお話が出ておりましたが、その割り当てをするのに一体どういう、方法を考えられるのか、これもいま皆さんの中で、それぞれこれが理想的だと思われておるようなことがあればお教えをいただきたい。
以上の点についてひとつお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/11
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012・吉田克巳
○参考人(吉田克巳君) いまお尋ねのあった点でございますが、人体影響を防止する、そういう観点から考えますと、医学的に見ましても単に硫黄酸化物の総量規制だけでは目的を達成できないであろうと、私そういうように考えておるわけでございます。他の汚染物に対してどういうように考えていくか、これが御指摘のように大きな問題点だと思います。
私個人の考えといいますか、まず当面行なうべき問題は、窒素酸化物の総量規制の導入であろうと思います。技術的にも、ほかの汚染物に比べれば規制技術上も、硫黄酸化物よりかはむずかしいが、オキシダントなんかの場合に比べれば実行可能であると思います。そういう意味で窒素酸化物の総量規制を次の段階として取り上げるべきではないか。これによってオキシダントの防遇に当然効果を期待することもできるわけでございますので、これが取り上げられるべき大きな問題点ではないかと思います。そのほかに粒子状物質、いわゆるばいじん、これについてもこういう方策を導入することが可能だと思います。光化学オキシダントについては現在考えられておりますような総量規制そのままで導入できるかどうかは、これは技術的にいましばらく研究する必要があるのではないかと思いますが、先ほど申しましたような窒素酸化物、ばいじん、こういうものについては当然早急に考えるべきであろう、こういうように思います。
それから第二に自動車の問題でございますが、これは窒素酸化物の抑制を考える場合に非常に重要な問題になると思います。
先ほど東京都の例が引かれておったわけでございますが、三重県の四日市の場合のことを申しますと、窒素酸化物の排出総量が自動車と工場とで、四日市の場合には東京とだいぶん違いまして、ほぼ一対九、工場が九、自動車が一、こういう割合でございます。それに対して地表寄与率、つまり人間が住んでおります地表へやってくる窒素酸化物が相互にどういう寄与割合になっておるか、これは一定のモデルでシミュレートして算出することができるわけでございますが、これが、ブロックによって違いますが、平均をいたしますとほぼ四対六、自動車が約四、工場が約六、この差は片一方が高煙源拡散であるというために起こることでございますが、大体それくらいの割合になっておる。こうなりますと、工場で窒素酸化物を防止する、それから自動車で防止する、この両者が一種の競合関係になるわけでございまして、どっちが負担すべきかという、そういう問題が起こってくると思います。
これは技術的、科学的に判断するというよりか、むしろ政治、経済的な問題だと思うのですが、三重県の場合、私がプロジェクトをやっておりましたときには、やむなく現状を固定してその割合で規制をするという、そういうことで処理計画をつくっていったわけでございますが、基本的にはこの相互間の社会的負担、こういうことが問題になると思います。あるいは経済的にどちらが有利であるかというような問題も起こり得ると思います。特に自動車の場合には、たとえば道路のつくり方、引き方、そういうようなものによって大幅に変わってきます。たとえば四日市のような地域でございますと、市内を東京−大阪間を貫通する道路が、国道が二本通っておりますが、そこを通る車の大半は四日市には用事がない。そういう車はよその地域を回せば、それだけ地域の窒素酸化物の制御計画は立てやすくなる、こういうことがあるわけでございまして、したがってこれは環境問題だけではなくて、もっと高い立場、道路政策や国土の運用政策、こういう側で配慮していくことによって規制上非常に大きな利益が得られるであろうと、こういうような問題もあると思います。こういうようなことは、今後真剣に考える必要のある問題ではないかと思います。
窒素酸化物の場合には自動車が入りますので、地域によってそういうように非常に違う。たとえば先ほど言及されました東京都の場合と四日市の場合は、いわば両極端ではないかと思います。工場が非常に多い地域と、自動車が非常に多い地域、その間に全国の各地域というのが散らばっておるわけでございますが、そういうようなことをよく見て、そして可能ならばそういう道路問題とか交通政策とか、そういうような問題も含めて規制が総合的な観点で考えられる、これが非常に望ましい点ではないかと思います。
それから三番目に環境容量の算定方式のお話があったわけでございますが、これは私よりも森口先生のほうが御専門ですのであれですが、現在いろいろな方式がございますが、こまかいところは違うかもしれませんが、基本的には、先ほど森口先生がおっしゃいましたように、いわゆる拡散方程式というものを中心にして考えていくわけでございます。もちろん、この拡散式にもいろんなタイプがございます。そういうどのタイプのを使うかということはいろいろ議論があると思いますが、一番ポイントは、私は、先ほど森口さんのほうからもお話ございましたが、実測値との適合性というものに常に配慮していく、これで結局きまってくるのではないか。つまり、頭の中であるいはコンピューターの中だけで動かせる式では、これでは実際に困るわけでございまして、実際に観測される値を最もよく説明する、これでないと、計画を立ててその計画どおりにやっていっても下がらない。でごまかしたのじゃないかと、こう言われても、これはまさにそのとおりでございまして、ここに一つ大きな問題点があるということになるわけですので、やはりその点では先ほど森口先生がおっしゃったように、既存のデータがたくさんあるわけでございますから、そういうものに対して最も忠実に説明可能な方式、そういうことがとられるべきである、こういうように思います。
三重県のプロジェクトの場合にも、最も説明可能な、一番何といいますか、既存のデータに対して適合性の高い式をさがすということをまずやって、そしてその一番高いものを使う、こういうかっこうで処理しておるわけですが、これが一つのポイントではないか。現在使われております式でかなり最近は適合性が高くなっておりますので、そういうことを念頭に置いてきめられるべきではないか、そういうように思います。
それから、環境容量をきめたあとに割り当てをどうするか、これも非常に大きな問題です。これに対するきまった考え方というのは出ておらぬわけです。原理的には私いろんなことを考えられると思いますが、現実問題としてこれを考えた場合には、われわれプロジェクトの場合には、大企業から小企業へ一種の傾斜方式というのをやったわけでございます。現実にはこれを利用する以外に現在の時点では方法がないのではないかと思いますが、大きな企業はカット率が大きい、小さい企業はカット率が小さい。その場合に具体的にどういう傾斜をとるか、これも一つの大きな問題で、社会的な判断を加えざるを得ないと思うわけですが、私がプロジェクトを運営しておりましたときには、一応小さい企業、小さい企業でも汚染地域で運営しておる小さい企業は、たとえば間接脱硫で得られるような重油、それを使うというのは、一つの社会的義務ではないか、そういうように考えて一方を固定する。具体的な数字から言いますと、S分で一・四あたりへいくと思います。それから大企業は、現在われわれが持っている技術の中の最高のもの、これは排煙脱硫法だと思いますが、これですと大体〇・三%あたりまではゆっくり到達できるはずでございます。その間の大きさの企業はその傾斜に沿って社会的に負担をする、そういうようなことを考えて施行したわけでございますが、ほかにも考え方というのはいろいろあるかと思います。この問題が一つの問題であるということは確かに事実だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/12
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013・森中守義
○委員長(森中守義君) 森口、寺部両参考人、この点につきましてもし御意見ございましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/13
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014・森口実
○参考人(森口実君) 最初に窒素酸化物の件でございますけれども、御承知のように、現在環境基準が定められておりますのは二酸化窒素、いわゆるNO2でございます。実際に煙突ないし自動車から出てまいりますところのかっこうのものは一酸化窒素、いわゆるNOでございます。そういうところで実際出ましたNOが空気中で酸化されまして二酸化窒素、いわゆる環境基準の対象の汚染質になるわけでございますけれども、いま窒素酸化物といいましてもいわゆる環境基準をお考えになっての、すなわち二酸化窒素をお考えになっての問題でございますと、私どもの専門でもなかなか、途中に化学反応が入ってまいりますので、しっかりした濃度の再現というのはむずかしいと思います。ただ、いわゆる一酸化窒素と二酸化窒素を一緒にしまして窒素酸化物全体として考えていただけるということでございますと、先ほど来私お話しましたいわゆる拡散モデルで、これはたとえば自動車におきますところの拡散モデルも十分ございますし、それから煙突の拡散モデルも先ほどお話したようにいろいろあるわけでございまして、出ました窒素酸化物が地上にどのような影響を与えるかというのが、同じような計算手法でできるわけでございます。
実際に窒素酸化物につきましての総量規制をどこでやったかというお話でございますけれども、私はあまりそのほうのことを知りませんので、私の聞いている範囲では、いまここにいらっしゃいます吉田先生のところの四日市でありますとか、あるいは大阪府でありますとか、つい最近、二、三日前でございますけれども、川崎市でございますとか、これは実際に動いておりませんけれども、一応方針を出されたという話を聞いております。私が実際に参加いたしましたのは最後の川崎市でございますけれども、きょうは局長さんがお見えになっていらっしゃいますので、また補足していただきたいと思います。
ただ、技術的な問題といたしましては、いろいろ調査いたしましたところが、いわゆる固定発生源と申しますか、煙突から出ます窒素酸化物の量のほうが、川崎市の場合でございますけれども、自動車から出ます量よりもはるかに多うございます。実際に大気に排出されるのは多うございますけれども、地上に対する影響になりますと、それが逆転いたしまして、何せ自動車は目と鼻の先を走っているものでございますから直接的な影響を受けまして、私どもの生活しております地上に対します影響といいますのは、むしろ自動車のほうが多いという計算結果になっております。
あとの規制の話は局長さんからお話しいただくとしまして、問題は自動車でございますけれども、何せ自動車のほうも、拡散計算に使いますところの情報というのがかなり不確かでございまして、道路ごとにどのぐらいの台数がどういうかっこうで走っているかという調査も、まだ各都市で十分ではないと思います。東京あたりは非常に熱心にやっておりますし、いま申し上げました総量規制をおやりになった都市については一応の情報が出ておりますけれども、それにしましても固定発生源から得られます情報に比べますと、はるかに不確かな、あやしいといってもいいぐらいのデータしかないと思います。そういうことで、将来窒素酸化物の規制をされる場合には、ぜひ自動車のほうの情報もしっかりとっていただければ、同じような方法で計算ができますし、それからその寄与率に応じまして、どこをどのくらい削減したらいいかというような計算もできると思います。
三番目の環境容量の算定方式でございますけれども、これは私実はきょうは水島地域の元委員として出ておりますので、いまの行政ということを考えながら先ほどお話したわけでございますけれども、研究者としての立場もございますので、研究者としての発言を許していただけるとすれば、まだまだ未解決の問題が非常に多うございます。その手法につきましては幾つかの使える手法がございますけれども、問題は、その中に入れます情報というのが、先ほどもちょっと上空の風の状態がわからないとか、大気安定度がわからないとか話をいたしましたけれども、その材料が非常に貧弱でございます。どんな優秀なコックさんでも、材料がなければいい料理ができないのと同じように、どんなにりっぱな拡散モデルがありましても、その中に入れます材料が不確かでございますと結果はよくございません。そういうことを踏まえまして、材料は非常に貧弱であるということを踏まえまして考えた場合、私個人といたしましては、やはり平均値、非常に長い間の平均値を対象に計算するということは、いまの段階では最大努力として一番可能な、しかも一番納得のいける線が出る算定方式ではないか。
もう一歩譲りましても、最悪条件でのいわゆるシミュレーションと申しますか、再現といいますのはいろいろな条件が入ってまいります。たとえば、御承知だと思いますけれども、気温の逆転層の問題とか、先ほど申しました場所によって風が全然違うとか、そういういろいろ複雑な条件を入れなければなりませんので、最悪条件での推定というのはかなり無理なんで、年間何回出るかというような確率を考えてのシミュレーションだったら可能だと思います。
それから、先ほども私も申し上げましたし、吉田先生もお話になりましたけれども、実測値をよく合うモデルだったらよろしい、確かにそのとおりなんでございますけれども、実はその内容が実は問題であります。全部ひっくるめて合うという言い方と、一つ一つの積み重ねの結果が合うという言い方と両方あると思います。私はもちろん全部計算結果が合うということが必要でございますけれども、もう一つその内容が、どういう気象条件のときの濃度が説明できているかという内容が問題だと思います。
ですから、幸いに水島の場合には非常にデータが豊富でございましたので、いろいろな条件についての計算ができましたけれども、はたして同じような手法がどこでもできるかといいますと、これはちょっと疑問視せざるを得ない。結局、材料に応じまして一番適当で一番合理的な拡散モデルというのが出てくると思います。ただ、そういいましてもいろいろな拡散式がありまして、それをどれを使ってもけっこうですというわけには、おそらく国の法律でお示しになる場合にはいかないと思いますので、私どもとしては一応基準になるようなモデルを出しまして、それから特殊な地形の条件あるいは特殊な気象条件の場合、この場合にはこういう拡散モデルがあるという指示をすれば、各自治体で努力なさって、おそらく私どもの希望するような実測値をいろいろな条件で実証できるような、そういうモデルをつくっていただけるというように私自身は考えております。
それから最後の割り当てでございますけれども、これもいま申し上げました拡散モデルを使いますと、ある煙突がどこの場所にどのくらいの濃度を与えているかというのが計算ができますから、その濃度に応じまして削減をいたしますと、環境目標値を達成する濃度にするには、Aという煙突が何%、Bという煙突が何%というのは数学的に出てまいります。出てまいりますけれども、それをそのままで使えるかといいますと、たとえばおふろ屋さんの煙突に脱硫装置をつけるわけにまいりません。そういう実際面の問題、これは私も専門ではないのであまり申し上げにくいのですけれども、実際の行政的な面を考えますと、多少大企業といいますか高煙突をお持ちになっている企業のほうで、実際の対策ができない中小企業の分も受け持ってもらわざるを得ないだろう。これは社会的な考え方でおそらくそうならざるを得ないだろう。しかも、ただそういう抽象的な考え方だけではなくて、現在K値規制というのがございます。K値規制の中ではやはりそういう考え方は導入されておりまして、いわゆる燃料消費量の多い企業が必ずしもそれに比例して硫黄酸化物の排出量が多いというわけではございません。多い企業ほど厳格に削減されております。そういう実態がございますので、そういういままでの行政をおやりになった実態も踏まえて、しかもこの拡散シミュレーションで行ないました計算結果も入れながら、最も合理的な削減方式ができるのではないかと思いますけれども、現在の段階では、まだ私そこまで手をつけておりません。
一応、いま環境庁の費用で富士地域と、それから岩国、大竹地域をサンプルといたしまして、具体的な規制方式をやったときにどういう問題が起こるか、あるいは割り当てを変えた場合にどういう結果になるかというようなトライアルをやっておりますので、その結果が出ますと、はたして現実的にそれが可能な割り当てであるかどうかというような面も出てまいりますので、近い将来には、おそらく一番合理的な割り当て方式というのがきめられるというように確信しております。
大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/14
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015・寺部本次
○参考人(寺部本次君) NOxの問題は、率直に申しまして、公害対策行政においてこれほどむずかしい問題はないと、かように感じておるわけでございます。一昨年この問題だけにしぼって世界じゅうかけめぐってみましたが、教わるところはありません。日本の研究のほうが、いろいろと各地で進んでいるというふうな感じでございました。
しかしながら、私のほうも市の条例におきまして硫黄酸化物を一定の方法で規制しておるとほぼ似たような方向に向かって努力をしなくてはいけない、こういう面で公害対策審議会に諮問し、また事務局としてそういう努力を重ねております。また、ここにおいでになっておる森口先生にも、拡散やいろいろな面で御指導、御協力をいただいておりますが、地区別の量等の算定等は一応やっておりますが、これから規制基準等につきましてどうするかという問題これはきわめてむずかしい問題でございまして、いまの時点では行政の立場としてどうこう申し上げかねますが、早急に努力するように、目下五里霧中でやっておるというような申し上げ方しかできないと思います。
それで自動車の問題ですが、これは森口参考人からお話のありましたとおり、自動車との関係はただいまお話のあったとおりでございまして、地区別には寄与率が非常に高いということでございます。簡単に申しますと、川崎の工場全部、固定発生源がないと仮定しても、現在の自動車の状況では環境基準の達成はおぼつかないというのが計算結果でございます。
それから排出許容限度の割り当て等につきましては、一応私ども川崎市でやっておりますのは、最初に申し上げましたように、カロリー当たりのグラムというようなものを用いておりますが、これは硫黄酸化物について申し上げますと、やはりおもなる発生源は燃料でございます。そのほか製鉄その他いろいろ製造関係もございますが、そういう例外を除くと、圧倒的に多い主たるものは燃料でございますので、それを、燃料のキロリッター当たりとか重量当たりに幾らという方法もありましょうし、私どものようなカロリー単位にいたしましても、これはほぼ同じような意味合いだと思いますので、そういった方法が望ましいのではなかろうかと思います。個々の大企業、中小、いろいろな割り当てというものにつきましては、やはりある程度のランキングを実情に即していくような方法を現在実施しておりますし、また吉田先生からお話のあったとおり、同じような意見でございます。
簡単でございますが、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/15
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016・小平芳平
○小平芳平君 だいぶ時間もたちましたので、簡単にお尋ねをいたしたいと思います。
初めに吉田先生が、四日市の公害訴訟判決のあった当時、総量規制すべきだ、国として法を改正し総量規制すべきだと強く主張しておられたことを私思い出すわけでございます。それからずいぶん長い月日がたって、ようやくここに国として総量規制を盛り込む大気汚染防止法の改正案がいま提出され、審議ということになったわけであります。吉田先生のこの今回の政府提案に対する御意見、あるいは御批判等もございましたら、お聞かせいただければたいへん幸いだと思います。
それからもう一つは、先ほど吉田先生のお話では、四日市では窒素酸化物の総量規制をやる、近く実施するというふうに伺ったのですが、また、それは非常にむずかしいことであるということも述べておられたわけですが、実際具体的にそういうことが可能かどうか、あるいは外国等の例もあわせてお教えいただければ幸いだと思います。要するに窒素酸化物の規制が可能かどうかということ。
それから森口参考人にお尋ねしたいことは、拡散モデルについてのお話をずっと伺いましたが、私たちがしろうと考えで、たとえば水島地区と他の地区との拡散がどの程度違いがあるか、どうも上空何百メーターということが私たちにはぴんときませんものですから、こう地上に立って感ずるには、どうもあの水島地区のようなところは非常に拡散しにくくて、もっとしやすいところもあるのじゃないかというふうに感じますが、そういうような点をしろうとにわかるようにお教えいただいたら、たいへん幸いだと思います。
それから寺部参考人にお尋ねしたいことは、四日市、水島、川崎等の総量規制をすでに実施した、この経験を国が十分生かすべきだということを先ほどお話しなさいました。私たちもきわめてそのことは大事なことだと思います。したがいまして、もうひとつ具体的に、実際川崎でおやりになった経験上、国がこれからやろうとする場合ぜひともこの経験を生かすべきだという点がございましたら、お聞かせいただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/16
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017・吉田克巳
○参考人(吉田克巳君) 最初の御質問でございますが、私今回大気汚染防止法が改正になるということについては、非常にいいことというとあれですが、非常にいいことであると思います。それで私、現段階ではでき得る限り早くこれを実施していただくということが一番重要ではないか。法律的には、この法律として盛られておる具体的な、たとえば先ほど御質問がございましたシミュレーションの問題とか、それから割り当ての問題とか、こういうようなものがございますが、法案としては私はこれでけっこうだと思います。でき得る限り早く実施に移されることが望ましいのではないか。法案としては、私自身四日市の経験からいって十分に内容を持っておると、そういうように思います。
〔委員長退席、理事矢山有作君着席〕
それから窒素酸化物の問題でございますが、これが可能かどうか、こういう問題につきましては、私自身はこう考えるわけでございますが、いわゆる可能か不可能かという両極端をとって考えるのではなくて、医学的に考えてこの規制はどうしても必要である、技術的にもし不可能であるならばこれを可能にする方法を考える、これが基本的には一番大事な問題ではないかと、そう思います。たとえば米国のマスキー法なんかも、技術を誘導するという目的であの法律ができているように聞いております。そういう意味では、私は現在窒素酸化物について、これを誘導するような法的措置を設ければ、これは可能になるのであろうと、そういうように考えます。
現に三重県では、この十月に条例を出す予定でおるわけですが、それにあたって、われわれチームでメーカーをたくさん呼びまして、そして今後の開発予定、そういうようなものもずっと調べたわけでございますが、したがって、ある年月を置いて法的に誘導すれば可能であると、こういうように考えております。そういう立場から窒素酸化物の総量規制は行なう、こういうように考えておるわけでございます。したがいまして国としても、もちろん年月の設定のしかたということについては慎重に考える必要があると思いますが、そういう誘導するような措置をとっていただく、これが一つのポイントではないかと、こういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/17
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018・森口実
○参考人(森口実君) 先ほどのお話でございますけれども、最初に申し上げましたように、水島地域といいますのは非常に風が、一般的なことばで言いますと風が非常に弱うございまして、普通気象観測ではかれます風速といいますのは、風をはかる測器によって違うのでございますけれども、水島地域の場合には非常に風の弱い、たとえば〇・三メートルぐらいまでもはかれる測器を使っております。そういう測器ではかりまして風のない時間を調べますと、ぜいぜい数%なんでございますけれども、一般の気象観測で使っております測器ではかりますと、大体臨海部で三〇%以上、内陸では七〇%近くが風がないという状態、普通の測器ではかれないという状態、ですから先生がおっしゃったように、非常に拡散しにくいということは言えると思います。
そういうためにパフモデルを導入したわけでございますけれども、確かに地域的に申しますと、瀬戸内でも、特に湾の中に入りました地域はそういう地域が多うございまして、みさきの先端にあるような都市、たとえば宇部でございますとか、そういうところは比較的風があります。ですから、拡散能力からいいますと、海に出ておりますみさきのほうが拡散能力が多うございまして、中に入り組んだところほど拡散能力が悪いわけでございます。
ただ、そこで一つその拡散能力という問題になりますけれども、いま私どもまつ先に考えておりますのは、やはり環境容量ということが出発点だったと思います。そういう観点からいたしますと、拡散能力のいい場合は、ではどんどん出していいかどうかという問題が一つあると思います。それは、一つ具体的に申しますと、高煙突をつくりまして、煙突が高いほど一ぱい出していいというような指導をいままでやってきたために、汚染地域がだんだん広がってきたというのは、これはいなめない事実だと思います。何とか環境容量でそういう現象、いわゆる汚染の広域化を食いとめようという基本的な考え方はあるわけでございまして、そういう基本的な考え方からいたしますと、拡散能力のいい場所だったら一ぱい出していいかどうかという問題に返ってくると思います。
むしろ、水島のように拡散能力の弱いところを設定いたしまして、その中での排出許容量をきめる。それはその地域だけに影響があって、ほかの地域はほとんど影響がないわけでございますから、そういう姿のほうが基本的な考え方からいいますと望ましい。自分のところは拡散能力があって、自分の地域はきれいだけれども、実はその汚染は隣に移っているわけであります。汚染自体はほとんど解決されていないわけなんで、そういう面からやはり考えていかなければいけないのではないかというように考えます。
話をもとに戻しまして、いろいろな拡散モデルがあるわけで、いま水島地域につきましては、先ほど言いましたような風が弱いという条件で一つの一番適当なモデルを探りましたけれども、たとえばそれを川崎地域で同じようにやっていいかどうかという問題は、これはまた別問題でございます。ただ基本的な、先ほど申しましたように標準的な拡散モデル、これはおそらく大部分の場合に現在の濃度を証明できるであろうという拡散モデルはございます。ただ、例外的に高濃度になったり、年間に何回か出ないような高濃度を再現できるようなモデルになりますと、やはり材料が十分にないとできませんから、実はモデルの選定ということが一つ問題になると思います。しかし、国で政令を出しまして、スタンダードのモデルを出して、それ以外に付属的なほかのいろいろな地形条件、気象条件の複雑な場合にはこうしなさいという指示は与えられるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
〔理事矢山有作君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/18
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019・寺部本次
○参考人(寺部本次君) 川崎市におきます経験ということで簡単に申しますと、地区別許容総量をきめて規制基準をきめるという手順というものが一応骨子になっておるわけでございますが、いろいろこういう方式が食い違いまして、排出総量の算出等がちぐはぐに出るというようなことは、計算方式等が異なればもちろん異なるわけでございますが、そういうものにつきまして、私どものやったような方式を一つの参考にして、検討を十分いただきたいということでございます。これは、大気汚染の場合は、法律的にものを見なくてはいけないという場合と、また、しかもそれが局所的なものとの両方の観点からいろいろ見ていかなくてはいけないむずかしい問題がございますが、市におきます総量規制でそれなりの効果がいまあがりつつあるという現状でございますので、それがスムーズに法律に乗っかっていくようなことを特に希望いたすものでございます。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/19
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020・沓脱タケ子
○沓脱タケ子君 それでは最後のようですから簡単にお伺いをしたいのですが、まず第一点は吉田参考人にお伺いをいたしたいのですが、これはいままでの委員からいろいろとお尋ねが出ておりますように、私どもも窒素酸化物、ばいじんその他の汚染物質の中で、さしあたり窒素酸化物、ばいじん等の人体影響というものをたいへん心配をしているわけです。そういう点で吉田参考人にお伺いをしたいのは、亜硫酸ガス、硫黄酸化物の問題につきましては、大体濃度がずっと高濃度汚染地域でも減っておりますし、そこでの公害病患者等の推移等もはっきりしておるのですけれども、硫黄酸化物だけが濃度が下がっても、患者が減っておらないという現実があるわけですね。そういう中で、特に窒素酸化物、ばいじん等の人体影響というものが非常に心配をされておるわけでございますが、その点についての影響度、現在考えられている範囲での医学的な御見解など、わかります範囲で詳しくお伺いをしたいというふうに思っております。
それから寺部参考人にお伺いをしたいわけでございますが、いろいろお伺いしたいと思っていたのですけれども、時間の関係もございますので限ってお伺いをしたいと思うのですが、いま出されております大気汚染防止法の一部改正案というのは、地方団体ですでに先取りをしてやられておる行政水準の後追い行政だと、これは報道関係からもいわれておりますように、客観的にはそうなっているわけですね。そういう点で、先ほど参考人から要望的御意見ということで出されておりましたけれども、全国一律でなくて、それぞれの地域の特殊性に見合った手法でやれるように考えてほしいというふうな御要望、それから川崎、三重等がすでにあげている実績、これの活用をしてもらいたいんだ、活用されるようにというふうな御意見を拝聴したわけですけれども、たいへんな問題だというふうに思っているわけです。もし政府の政令等で定められる水準が、すでに先行、先取りしておる行政地域とのギャップができる場合に、これは特に川崎から寺部参考人、行政担当者として出ていただいておるわけですけれども、その地域ではたいへんな問題になろうかと思うわけでございますが、そういう観点で、具体的にどういう点がというふうなことが御指摘をいただければ伺わせていただきたい。
私どもが考えておりますことでも、法案の中身等から見ましても、たとえば窒素酸化物の総量規制が条例化されている地域では、これがもし法令で指定をされない場合に、そういった問題がどういうふうになるんだろうかという心配も出てまいりますし、あるいは特に十四条等で書かれておりますように、特定工場になってから六カ月間は適用しないというふうな、この六カ月の適用空白期間が、もしいま実施しているところでそっくりそのまま適用されたらどういうふうになるのだろうかというふうな心配などもございますので、そういった運用上の問題等も含めて、御意見を率直にお伺いできましたらたいへんありがたいというふうに思っておるので、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/20
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021・吉田克巳
○参考人(吉田克巳君) ただいまの御質問の趣旨は、現在硫黄酸化物の濃度というのは全般的に下降してきておる、それに対して窒素酸化物というのは現在わずかずつ、あるいは地域によってはかなりな上昇がある、こういうことについて、硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん、こういうようないろいろな汚染物が人体影響、特に閉塞性疾患の患者に対していわばどういうような寄与率で働いておるかと、こういう御質問だと思うのです。
率直に申しまして、これは非常にむずかしい問題でございまして、何といいますか、ちょっとお答えしにくいのでございますが、一つの問題は、従来は御承知のように硫黄酸化物が主体であったわけです。四日市でも、観測を始めた昭和三十年代の終わりのころでは、硫黄酸化物と窒素酸化物との間には、これは一けた近い差があったわけです。現在はもうほとんど同じレベルへいまきていますが、そういうように非常に大きな差があった。したがって疫学的あるいは医学的な研究というものは、そういう現実の上で実は組み立てられておるわけです。したがいまして、疫学的に窒素酸化物の寄与度がどの程度かというようなことを知るすべもなかった、率直に言って。そういうことがある。現在はそういう状況ではございませんので、こういう問題は今後研究を強力にやればある程度わかるだろう、そういうことが考えられると思います。むしろそういう点では、お答えにならないかとも思いますが、これから医学研究者が非常に配慮すべき問題点の指摘ではないかと、そういうように思うわけです。
この大きな根拠になるかどうかはわかりませんが、たとえばモルモットなんかに汚染物を吸わせて実験的にぜんそくをつくる、あるいは慢性気管支炎をつくらせる、こういうのを見ますと、窒素酸化物と硫黄酸化物、この場合はNO2とSO2ですが、これが大体同じぐらい、あるいは若干NO2が高い、これが実験的な現在での報告でございます。だから、非常に割り切って考えれば、似たような寄与度を持っておるのであろう、だからSO2が減ってもNO2が残れば、残っておるだけの有害性はある、こう見るのが至当ではないか、こういうように思います。
この問題をもっとはっきりさせるためには、たとえば現在環境庁で総合指標の研究というようなことが行なわれておりますが、こういうような総合指標を研究していく過程で、先ほど申しましたように、現在たとえば疫学的にこういうものが相互にどういう寄与度を持っているかということは、汚染の実態からいって前よりかははっきりさせる条件が出てきておる。そういうことはあると思いますので、そういうような総合指標の研究というようなことをもっと強力にやる、そういうことによってある程度そういうものについて見当をつけるというようなことも可能になってくるのじゃないか。非常に楽観的な言い方かもしれませんが、そういう条件はある。そういうものができれば、同時にそれは規制の受容性の目安としても非常に役に立つであろう。たとえばSO2とNOxとをどういうような係数をかけて寄せてくるかというような、そういうインデックスが出てきた場合に、地方自治体なり何なり規制をする立場の人は、自分が何をどれぐらい規制しなければいけないかという判断にも有効であるということは考えられますので、そういうような問題の研究を急速に進めるというようなことも、これに対する一つの返事といいますか、重要な問題じゃないかと、そういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/21
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022・寺部本次
○参考人(寺部本次君) 実際の運用面についての御質問でございますが、私はこの法案を拝見いたしまして、一応指定地域のきめ方、政令できめるような場合も一つの地区を二つ以上に分けるとか、いろんな規定がされておりますので、非常にそういう面では配慮がされておると思いますが、実際は運用面につきまして、都道府県知事がばい煙総量削減計画をきめるというような場合に、公害対策審議会とかあるいは市町村長の意見を聞くとか、そういういろいろな段階がございますが、こういう面で強力に意見を申し上げると同時に、そういう意見も吸い上げていただくというような、運営面で十分太いパイプと申しますか、意思の疎通する、現状に見合ったような方向でいろんなものを、細部をきめていただきたいということでございます。
どういう場合が一番困るか、ギャップかというのは、やはりいろいろな数値が計算方法によって違うというようなことが一番困るわけで、それなりの理由があればまた別でございますが、川崎市で総量規制をやっているよりもうんと甘いような規制基準が法律でできるということはあり得ないと思いますけれども、まあ仮定すれば、そういうちぐはぐがあるとこれはやっぱり困りますので、そういう面のないような協議を十分して、あるいは意見を申し上げるとか、吸い上げていただくとか、そういったようなことは運用上は起こるかと思いますが、そういう面も、この法案で拝見いたしますと、そういうものができるように見受けられますので、今後の運用については十分私どももしげく国や県との連絡はとってまいりたい、かように考えております。ものによっては指定都市等におまかせいただくような面も若干あってもいいのではないかと思いますが、これは具体的にどうこうというのは、いまちょっと申し上げかねますけれども、運営につきましては十分そういう面で連絡をとってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/22
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023・森中守義
○委員長(森中守義君) 他に御発言もなければ、以上をもちまして参考人に対する質疑は終了することといたします。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。このあとも本委員会の使命達成のためになお一そうの御協力をお願いいたしまして、お礼のことばといたします。
ありがとうございました。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/23
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024・森中守義
○委員長(森中守義君) 速記を起こして。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/24
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025・森中守義
○委員長(森中守義君) 次に、公害及び環境保全対策樹立に関する調査のうち、瀬戸内海埋め立て問題に関する件を議題といたします。
環境庁当局から発言を求めておりますので、これを許します。森水質保全局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/25
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026・森整治
○政府委員(森整治君) お手元に配付いたしました資料について御説明をいたしたいと思います。
昨日、瀬戸内海環境保全審議会におきまして、「瀬戸内海環境保全臨時措置法第十三条第一項の埋立についての規定の運用に関する基本方針」につきまして御答申をいただきました。これにつきまして御報告を申し上げたいと思います。この件につきましては、昨年の十二月二十四日に諮問をいたしまして、企画部会に諮問事項が付議されまして、企画部会は四回、それから専門委員会は三回、昨日、総会におきまして答申がまとまったということでございます。
要点だけ申し上げます。
最初の答申文の、なお書きでございますが、ここに、瀬戸内海における臨時措置法が全会一致の議員立法で制定された経緯にかんがみ、「瀬戸内海における埋立ては厳に抑制すべきであると考えており、やむを得ず認める場合においてもこの観点にたって別紙の基本方針が運用さるべきである」ということを冒頭に、全体の考え方として述べております。それから次のページにいきまして、「また」以下でございますが、「別紙の内容を具体的なものとするため引続き調査審議を行うこととしている」といっておりまして、この答申が中間報告の性格を持っておるものであるということを明らかにしておるわけでございます。なぜ中間報告であるかにつきましては、基本方針の御説明の際にあわせて申し上げます。したがいまして、今後のこの基本方針の運用については、処分の状況について報告してください、政府のほうで報告してくださいということをいっております。これが全体的な考え方でございます。
以下、その「やむを得ず認める場合」の埋め立てにつきましては、この前文につきましてはあくまでも法律の精神を書いてあるわけでございまして、「基本計画が策定されるまでの間、瀬戸内海における埋立ては、すでに悪化せる瀬戸内海の環境に影響を及ぼすものであるという認識に立ち、瀬戸内海の環境の一そうの悪化を防止するため、」公有水面埋立法の免許なり承認にあたっては「下記事項を十分配慮すること。」ということで、「記」以下が述べられておるわけでございます。
具体的に申しますと三つの項目がございます。1と2と3とございます。
全体の構成を申しますと、この第一の一は、埋め立てする場合全般につきまして、各項目ごとにチェックする項目を並べまして、それが十分配慮されていることを確認せよということをいっております。いかなる埋め立てについてもこれはやらなければいけないということが一でございます。
次の二ページでございますが、まん中に2とございますが、2に書いてございますのは、ここにございますように自然公園法の特別保護地区ですとか、水産資源保護法による保護水面ですとか、鳥獣保護法の特別保護地区、文化財のあるようなところというようなことを列挙いたしております。それからこれは漁業法に基づきますが、瀬戸内海漁業取締規則で藻場等の引き網漁業禁止区域を定めております。そういうようなものにつきましては極力避け、またこれに準じて配慮するということを述べておるわけでございます。
それから三番目は、三ページでございますが、海域を——これは次のページの別表をお開きいただきたいのですが、瀬戸内海全体といってもいろいろ条件が違うのじゃないかということで二十三の、これは塩分濃度で分けまして海域を二十三に分けまして、一つの要点としましてCODの濃度、要するに濃度が高いか低いかという指数を、平均を一〇〇にいたしまして指数をとったのが(A)でございます。それから滞留度指数、これは海水の交換がどうかということで、平均を一〇〇にいたしまして指数をとっております。これが(B)でございます。それから(C)は海岸面積当たりの、いわゆるよくもらい公害ということがございます、中国筋のほうからよごれたものが四国のほうへくるとかそういうような問題がございますので、海岸線当たりのCODの濃度を出して、それを平均を一〇〇にいたしまして指数をとる。この(A)、(B)、(C)それぞれを百点といたしまして、平均が三百点満点、その三百点満点を上回るところを指定海域、こういう観念をとっております。三百点以下がその他ということでございます。
それで3に戻っていただきますと、三百点、要するに平均よりもよごれなり滞留度なりが著しいというのは、大阪湾の奥の部分と播磨灘の北部、それから播磨灘の中央部で香川県側、水島灘、それから燧灘のうちの愛媛県側、安芸灘、広島湾ということで七海域を指定をしまして、これにつきましては三ページの右に書いてございます「留意事項」、「公害防止・環境保全に資するもの、水質汚濁防止法による特定施設を設置しないもの又はは、汚濁負荷量の小さいもの。」、こういうようなものに適合しない埋め立ては、できるだけ避けるように配慮してくださいということを具体的に述べたということでございます。
もう一回繰り返して申しますと、一番最初に精神が書いてある。それから答申のところへ精神を書いた。それから基本方針、埋め立てる場合に、1で、すべてどんな埋め立てでも、それは公共目的でも、埋め立てる場合には一の要件を全部チェックしなさい。それから2は、具体的に藻場だとか自然公園だとかそういうようなところは避けてください。それから3に、各海域を分けまして、よごれのひどいところはなるたけ公共目的みたいなものに限定してくださいよ、こういうような書き方のスタイルになっておるわけでございます。
時間がございませんから詳細は省略させていただきますが、この一ページの中で、チェックすべき項目としまして「海域環境保全上の見地」が一つ、それから「自然環境保全上の見地」、これが一つ、それから二ページにいきまして「水産資源保全上の見地」という三つの点に触れておりますが、たとえて申しますと「海域環境保全上の見地」で、埋め立てをいたしますと海岸線がなくなる、海岸線がなくなると海水の自浄能力が下がるだろう、そういうものの「周辺海域の水質への影響の度合いが軽微である」ということをチェックしてください、こういうことでございます。「軽微」とは何であろうという問題が出てまいります。これは非常に要するに抽象的である。委員会でしばしば議論をいたしましたけれども、ともかく埋め立てをいまストップしておるので、ともかく何とか方針を出しませんと埋め立てが野放しになってしまうから、とりあえず抽象的なものを出すということで、「軽微」というのは、先ほど申しました今後具体的に定量化をするために審議をしていくというのが、この委員会の先ほど申しました中間報告というようなゆえんでございます。この他「軽微」というのがたくさん出てまいります。そういうような趣旨で、暫定的な中間的な報告という性格のものとして御説明が会長からございました。
以上、簡単でございますけれども、説明にかえさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/26
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027・森中守義
○委員長(森中守義君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/27
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028・森中守義
○委員長(森中守義君) 再び大気汚染防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/28
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029・高山恒雄
○高山恒雄君 時間も制約されておりますので簡単にお聞きしたいと思いますが、この大気汚染防止法の一部改正にあたりまして、前回の審議の場合にも指摘がございましたように、環境庁としてはもっと基本的な問題を整理して、そうして事前に防止するということにつとめなければならぬのではないかという気が私はしておるわけです。むろん、総量規制の基準で相当義務を負わなくてはならぬという法の改正にはなっておりますけれども、これではやはり環境庁としては後手後手の手を踏まざるを得ないのではないか、こういうふうに考えるわけです。
一つの例を申し上げますが、建設省は公団法の一部改正法を今国会に提出しております。その内容を見ますと、二十五万人都市を中心としてトラックターミナルを建設していこう、公団事業として開設しよう、こういうことです。しかも、そのターミナルにおいて貨物を一定の場所でドッキングする、こういう考え方です。二十五万都市を中心に全国的に六十カ所をつくろうという予定を持っておるわけです。現段階ではまず四十四カ所。そうなりますと、一カ所にターミナルができますと、少なくとも自動車の公害、あるいはまた騒音、振動とか、こういう問題が必ず起こってくることはもう火を見るより明らかではないかと私は思う。したがって、いろいろこの法案の問題で私は質問もしたのですが、そういうターミナルをつくるとするならば専用道路を設けるべきだという質問に対して、現段階では専用道路をつくる発想はないようであります。そうしますと、二十五万都市に一つのターミナルに貨物自動車を入れて、そうして三台の自動車で分散して二十五万都市に配達する。こういうことになりますと、旧来の道路をやはり使用するということになれば、少なくとも公害が起こるということを想起しなければならぬ、こういうふうに思うのです。建設省はこれに対して、環境庁とも十分相談して、そういう公害が出ないような方向でできるだけつとめてやっていきたい、こういう答弁はいたしておりますが、こういう法案が出る場合の環境庁としての考え方、姿勢、そういう問題を打ち合わせされておるのか、全然なしに法律だけが出てきておるのか、この点ひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/29
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030・春日斉
○政府委員(春日斉君) 先生の御指摘になりました問題でございますが、それより先に、私どもは各種の公共事業の実施にあたりましては、まず公害の発生というような、環境保全上重要な支障をもたらすようなことがないように配慮するということが基本でございます。したがいまして環境に及ぼす影響等の調査、環境アセスメントということば、あるいは環境事前影響調査ということば、いろいろございますが、いずれにいたしましても十分事前の調査研究をするということが必要であり、そうしなければならないことにいま相なっておるわけでございます。
したがいまして、道路公団がトラックターミナルを設置する場合にも、当然のことでございますが、あらかじめ環境に与える影響について調査をしているわけです。そうして設置個所の選定、環境保全に十分配慮をする。そしてこれらの問題につきましては環境庁と十分な打ち合わせをいただくということでございまして、自動車公害を生じないように、これは対策を講ずべきものと私どもは了解しておるわけでございます。今後ともこういった趣旨が十分徹底いたしますように、関係の行政機関あるいは道路公団と協議ないし指導をしてまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/30
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031・高山恒雄
○高山恒雄君 考え方は私は賛成でございますが、したがって環境庁から見て公害が発生するおそれがあるという場合は、環境庁の見解として、私が申し上げるように、それは専用道路で公害のない方法をとるべきだ、こういう主張もやって公害を防止していこうと、こういうふうにとってもいいですか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/31
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032・春日斉
○政府委員(春日斉君) 事前にそのターミナルの位置あるいは規模、それから道路、先生が御指摘になりましたような専用道路の問題も含めまして、環境上きわめて好ましくないものにつきましては設置しないように、これは勧告なり話し合いなり事前に申し上げるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/32
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033・高山恒雄
○高山恒雄君 それではもう一つお聞きしたいのですが、これは御承知でしょうが、中小企業近代化促進法に事業の共同化、工場等の集団化ということで法律に盛られております。したがって、この工場の集団化というのは至るところにできておりますが、きょうの参考人の話にもありましたように、ばい煙等あるいはまた硫黄酸化物の発生等に基づく大気汚染というようなものは、どうしてもこれは問題化になるわけです。通産省関係では、この法律に環境に関する問題としての規制は何もないわけです。集団化するということは、ただ企業の運営上の合理化をはかるために集団化しておるわけですね。だからこういう問題も、現実に実施されておりますたとえば栃木県の縫製団地というのがありますが、下水道はなるほど完備いたしております。しかし暖房、冷房等におけるものは個々の企業がやっておるということです。したがって、集団団地ですから少なくともこれは公害の発生が起こっておる。あるいは福井県の染色集団団地、あるいは愛知県における鉄鋼集団団地、いろいろな団地がございます。これはすべて企業本位に、企業の合理化をはかるために集団団地ということを通産省は奨励してきたわけです。現にまだこれからもやろうという地域、敷地その他も多分にございます。
こういう点を考えますと、きょう参考人の方が経験されたことの発表をされていろいろわれわれも参考になったのですが、四日市にいたしましても、あるいはまた川崎にしても、すべてやっぱり工場密集地帯を中心とする大気汚染度というものが出ておるわけです。そうすると、結果的には環境庁としては、できておるものに対する、あとから追いかける、追跡予防をやっていこうと、こういうことになるのではないかと私は思うのです。そういう点はやはり全般的な、通産省関係ならば通産省関係におけるところのあらゆる法律に対して、環境基準的なものが盛り込んでない法律はそれを改正をさせるとか、こういう行き方を少なくとも環境庁はやるべきじゃないかということを私は強く感ずるわけですが、こういう面に対してはどういうふうにお考えになるのか。
先般の説明でも、いろいろ設備からいえば自動測定器を取りつけさせるとか、あるいはまた燃料の精錬したいいものを使わすとか、こういうふうに言っておられますけれども、つくってしまってからの問題は、なかなか団地等においては困難なんですよ。あるいは脱硫装置なんかをつけるなんていったらぼう大な金が要って、そういうものを背負うだけのなにはありませんよ。ところが集団でやれば、政府がある程度の助成をして脱硫装置をつくるということはできるはずなんです。そういう点をどうお考えになっているのか。検討をする必要が私はあると思いますが、どうお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/33
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034・春日斉
○政府委員(春日斉君) 先生のただいまの御指摘はまことに適切な御指摘でございまして、私どもも常にそういった方向で今後の集団化の問題等は処していかなければならないものと考えております。
要するに、私どもはわが国の深刻な公害問題を解決いたしますためには、たとえ国民経済の健全な発展を目的とした中小企業の共同化、集団化、こういうことでありましても、公害の防止には十分な配慮がなさるべきことは言うまでもございませんし、またこういった集団化あるいは共同化によってはじめて、これは先生の御指摘にもありましたように、個々の中小企業では果たし得なかった公害対策というものができる可能性もあるわけでございますので、こういったことを事前に十分配慮をしてまいりたいと考えております。したがいまして、近代化促進法に基づいて行なわれます共同化、集団化の過程の中で、所要の公害防止の対策が講じられまして、その結果といたしまして、いろいろな公害規制法の基準に適合することがなる、これが一番望ましいわけでございますので、十分私どもは関係省庁と相談いたしまして、できる以前に事前のアセスメントを行ない、指摘をし、指導してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/34
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035・高山恒雄
○高山恒雄君 通産省にお聞きしますが、現在の中小企業近代化促進法には、そういったことはないわけですね。したがって、その地域において県の申請があり、かつまた援助をしながらやるということになれば、結果的には、なかなか集団化というのは、三人や五人ならまとまる可能性がございますけれども、やっぱり二十、二十五というような数になりますと、なかなか公害に対する防止設備をやるということには意見がまとまらないと思うのですね。現在ですら、ようやくにして下水だけが共同範囲内の規格に入るわけです。冷暖房等は全然もう別個、個々の会社が思い思いにやっておるというのが、この工場の集団化になっておるわけです。したがって今後、こういう問題に対して通産省としてはどういうふうにお考えになっておるのか、一応お聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/35
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036・吉川佐吉
○政府委員(吉川佐吉君) お答えいたします。
御指摘のように近促法の計画の中には、公害防止計画というのは直接的には現在のところ入れられるということになっておりませんが、私どもとしては、この問題の重要性にかんがみまして、一般計画の一部として取り入れることは可能である、こういうふうに考えておるわけでございます。そして現在団地化計画を推進しておりますのは、直接的には都道府県でございます。それで、これに対して低利融資二・七%・十五年、六五%というのを事業団、都道府県で共同して出しておるわけでございますが、当然この際に周辺地域への影響というものは十分配慮して実施するように指導してまいってきております。国としてもこの点は、いま申し上げました都道府県、さらに中小企業者にも十分今後とも強力な指導を行なっていきたいというふうに考えております。現実的には、団地計画の中には公害防止計画を含めている例というのはかなりございます。今後この傾向はますます増加すると思いますが、先生の御指摘も十分考慮いたしまして強力に指導してまいりたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/36
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037・高山恒雄
○高山恒雄君 主体は県がやっております、あなたのおっしゃるとおりですが、しかし、金融と同時に、通産省としては促進しておるんですよ、これは。やれと、こういう指導をしておるわけですね。したがって今後もやることになると私は思います。また、やるべきだと思いますが、ただし、従来のような地域面積では、なかなか大気汚染の防止にはならないのじゃないか。もっと広大な土地を必要とし、かつまた環境をよくしなくちゃならぬのじゃないかと、こう思うのです。それにはやっぱり現状、集団化をやろうといって買収された土地も至るところにありますね、それで狭ければもっと拡張させるとか、環境衛生を十分考えた敷地も必要とするならばそういう指導要領に変えていかなければ、つくってからはなかなか困難なんですね。そういう点は次官、どういうふうにお考えになっているのか、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/37
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038・藤本孝雄
○政府委員(藤本孝雄君) ただいまの先生の御意見につきましては全く同感でございますので、そのような趣旨で今後指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/38
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039・高山恒雄
○高山恒雄君 これはまだ決定じゃありませんけれども、陳情が来ておるから一応お尋ねしておきたいのですが、前回質問もございましたが、鹿児島の奄美大島の枝手久島、ここを中心に東亜燃料工業株式会社が石油精製工場を設置しようという下見聞ですか、そういうことになっておる。どうも県もそれに賛同しておるような陳情をわれわれは受けるわけなんです。これはその地域のその村は大体賛成をしておるのではないかと思うのです。その村が賛成をして、県知事が了承するということになれば、もう決定するということになるわけですね。地域住民の意見も聞いたということになると思うのです。そういうことになれば、政府としてもこれは承認せざるを得ない。歯どめがないわけですから。民主的にそういうふうにきまってくるならば、通産省としても、いや理屈をつけて反対だというわけにはいかぬと思うのですね、特別な歯どめがないわけですから。
こういう場合、これは環境庁にお聞きしたいのですが、私は資料を見せてもらって、大体奄美大島を中心として八カ所の国定公園にしようという予定地になっておるわけですね。国定公園にもなっておりますが、また予定地としても出されております。ところが、この枝手久島ですか、ここを中心にやった場合大体九キロ範囲内に、国定公園の予定地として目下大体政府としては考えておられるようですが、その地域が大体九キロ範囲内にわたるわけですね。そうしてもっと大きくいきますと十五キロぐらいに、公害がかりに影響するとするならば十五キロぐらいを見ていかなくてはいかぬということにもなろうかと思うのですね。それで、こういう国が国定公園というような指定をいまやろうとしておる最中に、しかも一つの島として石油精製工場を建設していこうというようなことが起こった場合、一体この海域全体から見てこれは汚染ということは必至だと、われわれしろうとが考えてもそういうことを感ずるわけです。こういう地域には、基本的に環境庁としてはどういうふうな考えをもっておられるのかという点をまずお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/39
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040・藤本孝雄
○政府委員(藤本孝雄君) 環境と開発ということにつきましての私どもの基本的な考え方は、この二つのうちどちらかという二者択一的な考え方ではございませんで、両方を何とか両立させていきたいと、こういう考え方でございます。したがいまして、もし開発が認められる場合におきましては、環境が保全されるというワクの中で認められなければならないわけでございます。
先生御指摘の問題につきましては、私どもまだ具体的な規模、計画につきまして存じておりませんけれども、場所につきましては御承知のように自然公園区域外でございますので、いまの法律上から申しますと、自然公園法では規制ができない、こういうことになるわけでございます。しかし、たてまえはたてまえでございまして、私どもの考え方といたしましては、当該のこの石油基地ができることによりまして自然公園内に悪い影響が生ずるというようなことになりますと、これは問題でございますから、そういう観点からのチェックもできるわけでございますし、また、御承知の環境アセスメントという、そういう事業が周辺の環境にどの範囲、どの程度影響を及ぼすかということを事前に評価をいたします環境アセスメントを十分に徹底してやるように指導をいたしまして、環境保全上問題がないように十分注意をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/40
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041・高山恒雄
○高山恒雄君 次官のおっしゃる点は、十分注意するということですから理解はできますが、通産省としては、この実地検査が終わってもしやろうとする場合、村が賛成をし、県知事もそれに了承をするということになれば、むろん公害に対する設備その他も十分注意して許可せざるを得ないという場面に追い込まれていくのではないかという感じを私はしておるのです。いまの法律ではこれらの歯どめはないです。村が賛成をし、そうして地域住民の声として村長が賛成をし、県知事がそれに賛同するということになれば、これは通産省はいやというわけにはいかぬと思うんですね。
私が申しますのは、大体奄美大島を中心としまして、徳之島まで入れると十七、八万になると思いますが、奄美大島を中心として十四、五万としますならば、そこに八カ所の国定公園の予定地として見込まれておるこの奄美大島の環境を生かすことが、大前提にならなくちゃいかぬのじゃないかという私は考え方をしておるわけです。そういう点を通産省としてはどういうふうにお考えになったのか。たとえば村長が地域住民の声だといって了承し、県知事も賛成してきたけれども、奄美大島全体が反対をしておる。こういうことになれば、その村だけが賛成して、奄美大島全域の地域住民は反対しておるというような場合、これは通産省はどういうふうにお考えになるか、通産省の考えをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/41
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042・松村克之
○説明員(松村克之君) 枝手久島に企業が進出の計画を持っておりまして、現在地元との交渉等が進められているわけでございますけれども、それの石油業法上の許可ということになりますと、まず第一に企業からの申請というものが必要でございます。現在のところではまだそういった申請は出されていないわけでございますが、申請がなされました場合に、いま先生がおっしゃった関係のことについて申し上げますれば、許可の要件として、一つは全体として当該年度、たとえば五十四年ないし五十五年のころにそれだけの精製設備が必要かどうかということをまず一つ検討することが、これは全体として必要になるわけでございます。
それから個別の問題について申し上げますと、枝手久島の場合に当該村が賛成をしておる、しかし周囲の町村等がこれについて必ずしも賛成でない場合に、それを全体としてどう判断するかというのは、一義的に申しますれば、これはそれこそその辺の判断をなさるのが県であろうというふうに私どもとしては考えております。したがいまして、県知事がそれらの関係町村の意向をどういうふうに評価されるかということが非常に大きな判断の材料になるのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
それからもう一つの御質問のございました、そういう八つの国定公園の候補の島があるところで一体どういうふうに考えるかということでございますが、公害問題につきまして、石油業法の精製設備の許可におきましては、公害問題については関係の公害諸法規を守ることは当然でございますけれども、それ以外に、やはり現在可能である最大限の公害防止装置、設備といったようなものをつけることが、これはもう企業として当然の義務であろうというふうに判断しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/42
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043・高山恒雄
○高山恒雄君 そういう御答弁ですから、島全体の地域住民の代表者としては心配をしておるわけです。大体この地域は漁業の最も盛んな地域なんですね。したがって、十五キロ圏内ということを中心に考えてみますと、この辺の漁業、かりに間違いがあって石油タンクに事故があったとかというような場合になると、もう漁業権の問題はこれは重大な問題であると同時に、生活問題にやはりからんでくるという強い意見を島全体として持っておるわけですね。したがって県知事が、おっしゃるように、全島の住民の方の意見を十分調整をとるということが可能ならいいですけれども、陳情に来た人に私は、皆さん方はまだ確定もしてないのにそうあわてる必要ないじゃないですか、今日のように環境がやかましくなっておる時代ですから、そう心配せんでもいいではないですかと、こういうふうに話をしたところが、きまってからではもうだめだ、したがって事前の対策を立てて絶体反対するということで、全島の代表ですね、これが見えたわけです。
私は、そういう意味からいって非常に複雑な情勢にある。したがって環境庁も、むろん近代的な設備でそういう公害はないという安定した企業として設置されるということにはなるでしょうけれども、しかし、万が一にも間違いがあった場合は相当の範囲内における公害ということをやはり考えていかなくてはいけない。したがって私は、奄美大島全域に対する、国定公園の予定地としてもう現在大体きまっておるのですから、こういう点はできるだけ避けるべきでないかと思いますが、環境庁としてこういう問題に取り組んでいただく場合、慎重に地域住民に納得のいく方法でやってもらうことを切に要望して、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/43
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044・森中守義
○委員長(森中守義君) いまの高山委員の質問に対して環境庁のほうから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/44
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045・藤本孝雄
○政府委員(藤本孝雄君) 先ほど高山先生の御質問に対しまして環境庁としての考え方を申し上げたわけでございますが、重ねての先生の御意見につきましては、われわれといたしましても周辺の環境の保全に万遺漏のないように十分に注意をしてまいりたいと考えております。また、そういうことがわれわれの使命でもあるわけでございまして、私も地元の方から陳情を受けておりまして、一度ぜひ見に来てもらいたいというようなお話もございまして、島全体の環境の保全ということにつきまして十分に配慮をしてまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/45
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046・鶴園哲夫
○鶴園哲夫君 いまの高山委員の質問に関連いたしまして、私もあらためてこの問題はこの委員会で質問をしたり論議をしたりしなければいけないと思っているのですけれども、きょうは自然保護の関係の方はいらっしゃらないわけですね——。
いま高山委員のほうからお話がありましたですが、いまきめようとしておる、あるいはきまっておる国定公園は、大部分は海中の国定公園なんです。それがいま言う八キロとかあるいは十五キロの範囲内には全部入ってしまう。そこへ埋め立てをして、そしてたいへん大きなものを、予定としては五十万バーレルというふうに言っておるのですけれども、瀬戸内海にある石油精製工場の半分ぐらいがこの枝手久島に行くという、たいへんでっかい話になっているわけですね。そうなりますと、これは海中国定公園は昨年きまったのですかね、国定公園になっておるわけで、いま住民は、高山さんもおっしゃるように、盛んに国定公園の関係もあって陳情に来ているわけです。ですから、環境庁としてもこういう問題についての検討をやっていただきたい。どういう影響といっても、これまた先の話でね、先の話なんだけれども、いま言っておかないというと、そのときになったのじゃどうにもならぬということで住民としては一生懸命になっておるわけですから、そういう意味で検討してもらいたいと思いますね。海流調査はまだやってないようです。海流調査はやってないようですけれども、海中国定公園のところにすぐ近接してやるわけですから、これはえらい話になっちゃうという感じがしますね。
それからもう一つ、さっき通産省の石油部精製流通課長の方から話がありましたが、私はこの間もこの席上で伺ったように、いまあります三億キロリッターの精製能力、それにプラスして、昨年凍結にはなっておりますけれども、百十三万バーレルという、精製能力にしますと三千万キロリッターというのですが、それで三億三千万キロリッター、その上にまたプラスしてつくろうというのですから、流通課長がおっしゃるように五十二、三年になって、とてもいまの日本の外貨の事情でそんなものが輸入されるなんて、とうてい私は考えられない。まあ全然考えていないのですけれどもね。ですけども、これは住民には非常に大きな問題なんですよ。ですから環境庁として、これは国定公園に指定されたわけですから、検討もしていただきたいということを申し上げて、いずれまたあらためてこの問題をやりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/46
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047・信澤清
○政府委員(信澤清君) 自然保護局長がおりませんので私から申し上げたいと思います。
お話しのように奄美国定公園、本年二月にすでに指定をいたしております。主体は、お話しにございましたように海中公園でございまして、その意味で、先ほど高山先生のお話しのように八カ所ほど分かれて指定されておる、こういう状態でございます。
そこで、お話にございます石油精製所の問題でございますが、政務次官からお答え申し上げましたように、やはり事前に十分環境に対する影響を評価する、こういうことが必要かと思います。ただしその手法について、それじゃいまお話しのように水質等に対する影響、海域に対する影響について十分な調査の手法等が確立されているかどうか、またチェックポイント等が明らかになっておるかどうかということになりますと、実は環境庁も目下その辺についていろいろ研究を進めている段階でございまして、さような意味合いで、私どもといたしましては、おおむね本年六月一ぱいぐらいまでに、少なくとも最小限度この種の事業をやります場合のチェックリスト、チェック項目並びにその手法等について審議会から御答申をいただく、こういうことを予定いたしておりますので、さっそくこの問題について、そういったきめられた手法で県なりあるいは当該企業なりが必要な調査を行ない、その結果を私どものほうへ持ってきてもらう、こういう措置をさっそくとることにいたしたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214205X01019740510/47
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048・森中守義
○委員長(森中守義君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
午後四時十四分散会
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