1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年五月十六日(木曜日)
午前十時十八分開会
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委員の異動
五月十五日
辞任 補欠選任
桧垣徳太郎君 安田 隆明君
柴立 芳文君 矢野 登君
五月十六日
辞任 補欠選任
安田 隆明君 小山邦太郎君
矢野 登君 柴田 栄君
辻 一彦君 竹田 現照君
出席者は左のとおり。
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委員長 剱木 亨弘君
理 事
佐田 一郎君
竹内 藤男君
大矢 正君
藤井 恒男君
委 員
植木 光教君
小笠 公韶君
大谷藤之助君
小山邦太郎君
柴田 栄君
細川 護煕君
阿具根 登君
小野 明君
竹田 現照君
辻 一彦君
林 虎雄君
中尾 辰義君
国務大臣
通商産業大臣 中曽根康弘君
政府委員
公正取引委員会
事務局長 吉田 文剛君
通商産業省生活
産業局長 橋本 利一君
中小企業庁次長 小山 実君
事務局側
常任委員会専門
員 菊地 拓君
説明員
大蔵省銀行局総
務課長 米山 武政君
労働省職業安定
局雇用政策課長 鈴木新一郎君
労働省職業安定
局失業保険課長 関 英夫君
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本日の会議に付した案件
○特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る十五日、桧垣徳太郎君及び柴立芳文君が委員を辞任され、その補欠として安田隆明君及び矢野登君が選任されました。
また、本日、安田隆明君が委員を辞任され、その補欠として小山邦太郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/1
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002・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/2
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003・辻一彦
○辻一彦君 特繊法について二、三点質問したいと思います。
この前、中小企業庁設置法の一部改正案についても触れたんですが、若干重複している点もあると思います。
第一は、いままで産地における構造改善事業が進められてきましたが、これについての問題点を二、三点伺ってみたいと思います。
一つは、特定繊維産業構造改善臨時措置法、われわれは特繊法と言っておりますが、これが進められて、繊維産業の産地における体質改善には、各産地でそれぞれの役割りを私はかなり果たしたと思うんです。しかし、階層的に見るときに、いろんな問題があると思います。そこで、この特繊法が過去階層的にどういう進行状況にあるか、この点についてまずお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/3
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004・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 特定織布について見ますと、四十二年度から四十八年度第一次計画までの保有台数別規模の構造改善事業への参加状況を見ますと、参加企業数が三千二百五十八企業のうち、二十台以下が千六十二企業で三〇%強、二十一台以上百台以下が千六百五十四企業で五〇%強、百一台以上が五百四十二企業で二〇%弱となっておりまして、御指摘のとおり、小規模企業の参加率は必ずしも高いとは言えません。これは新設織機を助成対象とする場合に、過剰織機対策として団体法に基づく一対一の織機廃棄に加えて、平均新設一台に対して〇・六台の織機を廃棄することを義務づけていたこと、いわゆる上のせ廃棄ということでございます。
それから、生産規模の適正化を促進するために一定規模以上、おおむね広幅生地織物では織機百台から三百台、広幅先染め織物では五十台前後、特殊織物、別珍、コールテン、帆布等では、二十五台前後以上の企業またはグループであることを助成要件とした等により、零細中小企業が参加しにくくなったことによるものと思われます。このために、新構造改善事業においては上のせ廃棄の義務を廃止することとしたほか、原則として、従業員五人以下の小規模繊維企業に対して弾力的な特別の融資制度を設けるようにいたしまして、小規模企業の参加を特に心がけておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/4
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005・辻一彦
○辻一彦君 いまの御答弁で、小さいところに構造改善が進められにくかったという事情は一応わかります。しかし、たとえばこの通産から出された資料を見ますと、綿、スフで天龍社の関係ですね。これは静岡にありますが、ここにおいて五台以下からずっと区切って、五百台以上というふうに区切られておりますが、この中身を見ますと、織の台数において、わりと四十台以下ぐらいの小規模のところにかなりな構造改善が行なわれている、こういうように思います。たとえば、その数字は四十台以下までを足しますと八九・四%、約九〇%に及んでおるわけです。ところが、福井、石川というように——この綿のほうでは泉州、播州とありますが、天龍社は綿関係でありますから、絹、人繊関係の石川、福井を見ますと、これは小さいほうには非常に少ない。たとえば石川の場合は一六・四%、それから福井の場合は若干上がっておりますが、これはまあ六九・六、約七〇%ぐらいになっております。こういうように産地によってかなりなむらがあるわけですが、この間の事情は一体どういうようになっているか、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/5
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006・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 天龍社と福井につきましては、いまお話しのように、若干規模的に企業参加数も異っておりますが、これはさだかにわかりませんが、それぞれの産地の特殊事情、あるいは生産する製品の事情等から、結果としてかようなことになったのではなかろうかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/6
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007・辻一彦
○辻一彦君 この出された資料によって、いま局長の答弁もあるように、産地の特殊性もあろうと思いますし、それから結果の数字も出ております。しかし、金額の面において私は調べてみると、もっと違った傾向といいますか、あるいは階層的な点でかなりもっと明確にわかると思うんです。この主要産地に過去膨大な構造改善資金が出ておりますが、それが階層的にどう流れておるかということについての資料的な把握がなされておるかどうか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/7
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008・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 金額的にどのような分布になるのかという数字は、いま持ち合わせておりませんが、ただ、企業規模が大きくなれば、それだけ投資規模も大きくなるであろう、あるいは設備の規模自体も大きくなるであろうといったようなところから推定いたしますと、この企業参加数の分布よりも、より重点企業以上に資金的の配分が厚くなっておるのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/8
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009・辻一彦
○辻一彦君 たとえばこれは私、すべての産地を調べてみる余裕はなかったんですが、昨年、参議院の決算委員会が北陸地方産地を視察に参りました。そのときに、たまたま私も同行を、求められて行きましたが、福井の産地で言いますと二百台以上の企業、台数に対して大体過去なされた構造改善資金の五四%が流れておりますね。それから、数字的に企業数のほうにちょっと合わせてみますと、五十台以下では九・四%、こうなっていますが、かりにこれを四十台以下というようにすれば、おそらく七、八%と、こういうようになると思うんですね。そうすれば、天龍社の場合でも数字ではかなり上がっている。福井産地もそうですが、金額からいうと零細な四十台以下あるいは三十台、二十台以下というのは全く微々たるものになると思うんですね。特繊法の改正案、本法が、これがこの結果を補うものであるということは私はわかりますが、そういう零細小企業の構造改善に手が届かないから、これに対して対策を立てようという声はいままでずいぶんいろんな場合に強かったと思うんです。そこで、こういう構造改善資金がどう階層的に流れておるかというようなことを、実態を、金額でも数字的にきちっと把握をして、その上に私は政策の立案というものがされるべきであると思いますが、その点、やることはたいへんけっこうでありますが、これを裏づける数字等においてどうも不備なように思いますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/9
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010・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 今後、さらに御指摘のような数字について把握いたし、それを今後の新しい構造改善の方向に生かしていきたいと思います。
ただ、一言申し上げておきたいのは、中小企業あるいは小規模零細対策に対しまして、特段の配慮を払うことも当然のことでございますが、産地全体として、あるいはそれぞれの繊維の業種全体としてどうあるべきかといったような観点、これはゆるがせにできない問題でございます。ただ、かといって、そういった中小零細のほうが助成措置が薄くなるということは問題でございます。むしろ今度の構造改善でも、小規模零細に限って特段の措置を講ずるように配慮いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/10
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011・辻一彦
○辻一彦君 もちろん、言われるように産地においては中堅どころですね。中以上というそういうところも大事でありますから、それに力を入れられるということは、当然私はいいことだと思います。しかし、これは繊維だけに限らず、こういう小企業対策を立てる場合に、数字的にもっと具体的なものをつかんで、その上に政策立案ということがされないと、声はいろいろありますから、それを参考にしてやられるということはたいへんいいんですが、そういう点の具体的な数字における把握が必ずしも十分でない、こういうように思いますが、今後繊維には限りませんが、このような小企業の対策において十分な調査に基づく数字をより整備する必要があると、こう思いますが、この点、大臣、こういう面における調査をさらに強化をされるかどうか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/11
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012・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 零細なものほどこういう景気のひずみの波動を受けるわけでございますから、御指摘のとおり、零細なものについては特に実態を把握するようにつとめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/12
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013・辻一彦
○辻一彦君 第二に、若干改正案の具体的な中身を二、三お伺いをいたしたい。
この改正案によりますと、異業種間のグループを今度考えていることが一つの大きな特徴になると思うんです。いままでは同業種の間のグループとか、これが異業種間に及ぶということが一つの柱であると思います。ところが各産地を見ますと、従来、縦によって大企業や大手商社の系列化ということがずっと行なわれてきている。これは不況に際して、チョップ制なんかによって系列に入っている場合は安全であるというような面もありますが、しかし、中小企業のあり方からするとかなり問題のあるところじゃないか。それが、いままでずいぶんと縦の系列強化という形で行なわれてまいったと思います。そこで、今度の改正案によって異業種間のグループ化ということは、いままでの縦を今度は横に大手企業や大手商社が系列化をするおそれはないか、そういうことによって、中小企業の本来の分野が圧迫されるというか、狭められることはないか、そういう懸念を感ずるのでありますが、これについてどうお考えになるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/13
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014・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 異業種間の連係による構造改善と申しますか、知識集約化の方向というのは、これは大中小あるいは業種を問わず、大きな繊維産業の方向かと考えておるわけでございます。で、御承知のことかと思いますが、こういった方向につきましては、一部の大手企業あるいは大手商社等につきましては、自分の力でそういったグループ化を進めておるというのが現状でございます。したがいまして、今回の構造改善のねらいといたしましては、さような、自力で知識集約化を進め得る企業を除きまして、いわゆる中小企業、中堅企業に対しまして、国が手厚い助成を与えることによってそういう方向に進ませたい。また、それによって大企業グループに対する対抗力と申しますか、拮抗力をつけたい。こういう趣旨で今回の構造改善事業を考えておるわけでございますので、御指摘のような大企業による、あるいは大商社による系列支配の強化というものについては、いろんな面でこれの排除のための措置を考えておるわけでございます。
法案に基づいて申し上げますと、第四条の規定によりまして構造改善事業計画を作成し、大臣の承認を求めるために提出してくるわけでございますが、この構造改善計画の中に、取引関係等詳細に記載させることによりまして、そういったことをまず未然に防止するチェックをしてみたい。そういった構造改善計画を承認いたした後におきましても、なお問題がある場合には、法案第八条によりますところの大臣の指導、助言の規定によりまして、直接これをチェックしていく。さらにこちらの勧告、助言を聞かない場合には、第五条の規定によりまして、四条に基づいて承認いたしました計画についてもこれを取り消す場合も考えておる。そういった法制上の手続はもとより、平素から当方といたしましても行政的に、御指摘のような事態が発生しないように、あるいは発生するようなおそれのある場合には、これを排除するような方向で対処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/14
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015・辻一彦
○辻一彦君 まあ、たてまえは私はそのとおりで、どうしてもやってもらわなくちゃならないと思いますが、従来の構革におきましても、縦の系列化をやれというようなことは何も言っていないはずですが、現実に資本を通して系列化が行なわれている、こういう点もありますから、この点は本法の適用、まあ成立すれば、適用にあたっては十分気をつけてもらいたいと思います。
もう一つ、改正案の重点の一つに、取引改善が大きな柱になっておると思いますが、これは具体的にどういうことを考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/15
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016・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 繊維産業というのは、申すまでもなく非常に古い産業でございますし、あるいはそれぞれの産地におきましていろんな製品をつくっておる。こういった事情から、繊維業界における取引条件というものがきわめて非近代的と申しますか、前近代的な取引形態が残っておる。あるいは、いまもお話がございましたような、大企業がその総体的に有利な地位を利用して不当な取引条件を課しておると、こういう場合が間々あるわけでございまして、特に今日のように不況が深刻化してまいりますと、たとえば、工賃の低下といったようなところで問題が必要以上に大きくなってくるといったようなことがございます。さようなところから、現行構造改善法では十分なし得なかった取引改善の問題を、今回お願いいたしております構造改善のもとで極力前向きに解決をはかっていきたい、かように考えておりまして、方法論といたしましては、繊維関係における取引改善協議会といったようなグループをつくりまして、この中で、学識経験者を中心に、取引関係の実態の把握と改善の方向について検討していただく。その場合に、関係の業界の意見、実情も十分反映し得るように措置してまいりたいと考えておるわけでございます。
それからいま一つは、取引改善を実現するためには、やはりそれだけの経済的な力と申しますか、大手との間の力の差をカバーする必要があるということで、本年度から新しく商工中金の中に取引改善のための融資制度を設けたい。金額といたしましては、百六十九億予定いたしておりますが、この資金の使途といたしましては、たとえば糸買い品売りにかわるような場合の資金だとか、あるいは組合で共同販売をする場合の資金だとか、そういった資金につきまして、商工中金融資をつけることによりまして経済的なアンバランスを是正して、実質的に取引改善の実があがるようにということで措置いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/16
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017・辻一彦
○辻一彦君 この取引改善に関連して、いま各産地では、加工費のダウンによって付加価値の適正配分を求める声が非常に強いわけですね。私は、取引改善の中身には当然こういう問題が含まれなければならないと思いますが、たとえば全国の綿、スフ、絹、人繊の集会が東京で過日あって、そのときにも非常に強いこの声が出ております。それから過日、福井の産地でも、千四、五百人の方がはち巻き姿で集まってこの実態を訴えていましたが、全国あるいはその地方産地において出た一、二をあげてみますと、たとえばワイシャツの場合ですね、千八百円で出るものが、生地代が原価を見ると三百円、縫製工費が五百円、中間商社が四百円、小売りマージン六百円で、流通マージンが千円になる。大体千八百円のうち千円は流通のマージンになっていると、こういう指摘がありました。それから婦人のスーツを見ると、一万八千円の価格のものが、これが生地代が三千円、縫製工賃が三千六百円、同じように中間商社五千四百円、小売りマージン六千円で、流通マージンが一万一千四百円と。千八百円に対して千円のいわゆる流通マージン。一万八千円に対して一万一千円の流通マージン。大体似たようなパーセントになっておるんですが、この糸を織って、そして加工賃によって織布業を営んでいる業界からすれば、あまりにもこの中における加工費というものがほんのわずかにすぎないと、こういうことで、付加価値の適正配分を要求する声が非常に強いです。
そこで、取引委員会といいますか、改善委員会というか、こういうものはこのような付加価値の適正配分問題をどう扱っていく考えか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/17
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018・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 現在、工賃の決定方式を見ておりますと、大体発注者が市況あるいは市場価格の見通し等を前提といたしまして、どちらかというと一方的にきめておるというような傾向が強いかと思います。この点につきましては、やはり工賃につきましては、原価主義と申しますか、コストを十分洗いまして、コストをベースとしての工賃決定というのがやはり原則的な態度として必要かと思います。もちろん、コストが全部価格に通るようであれば、きわめてこれは平穏無事の場合が多いわけでございますが、中にはそういったコストが通らないという場合も間々あるわけでございます。いずれにいたしましても、ただ、工賃をきめる場合に、コストというものを度外視してきめるということはやはり適当でない、かように考えておりますので、先ほど申し上げました協議会の場で、現在の工賃の実態等を調査いたしまして、できるだけ原価主義というものをベースにして工賃決定が行なわれるように指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/18
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019・辻一彦
○辻一彦君 これは、それが行なわれるようになれば私は大きな前進だと思うんですね。いま言われるように、原糸、原料の糸はメーカーが原価計算に基づいて値段をきめてくれるから、これはもうその値段で買わざるを得ない。それから納めるところの品物のほうは、結局、向こうのほうで値段がきめられて言われた値段で納めざるを得ない。そうすれば、織布業といいますか、賃織り加工やっているようなところは、そういう意味で一番弱いしわ寄せを受けるわけなんですね。だからそういう意味におきましては、この原価主義なんというのはことばだけであって、実際は全部きめられたもので納入せざるを得ぬ。機を動かせば逆に赤字が出る、こういう実態がいまありますね。それでも隣がやっているから、機動かさぬと、自転車操業じゃないが、さびしいといいますか、とにかく赤字が出ても動かさざるを得ないということで、赤字は覚悟の上で動かしているような状況があります。そういう中で私は、原価主義がその基本になり適正な工賃がきめられるようになれば、これはいまの繊維産業の産地の中のたいへんな問題を解決することになると思いますが、これを強力に取引改善委員会の中で取り上げられる用意があるのか、また、具体的にそれを強く調査をし、取り上げていくようなどういう手だてをお考えになっているのか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/19
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020・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 方向としては、御指摘のような形で協議会で検討してまいりたいと思いますが、ただ、ここで一、二つけ加えて申し上げておきたいことは、これはもう先刻先生御承知のとおり、繊維産業というのはきわめて市況性が強いという問題がございます。これは原綿、原毛といった天然の原料に、しかもそれを輸入に依存しているといったような事情と、それから繊維製品、これは衣料部門におきましては、当然のことながら消費者の嗜好によってまた変わってくるというようなところから、市況性が強く、また、景気変動に非常に敏感に左右される業種であるということと、それからいま一つは、やはり流通部門と申しますか、これはひとり繊維の流通部門に限らないわけでございますが、製造部門に比べまして、どちらかというと近代化がおくれている。したがって、コストの上昇をそのまますぐに最終製品にプラスしていかなくちゃいけないといったような実情もございますので、そういった面での物的流通面の近代化と申しますか、たとえば在庫管理をコンピュータライズするとか、あるいは配送センターをつくっていくとかいったような、物的面も含めまして流通部門の近代化もはかっていく必要がある、こういった問題、こういった対策も兼ね合わせながら、いずれにいたしましても、やはり工賃である以上その原価というものはあるわけでございますから、そういった原価を離れて、全く原価を無視して一方的にきめるということは適当でない、かように考えておりますので、十分と協議会の場で検討してまいりたい、また検討を依頼してまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/20
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021・辻一彦
○辻一彦君 この加工賃に原価主義をとって適正な加工賃を確保してほしいというのは、これはもう非常な強い念願でありますから、本法成立によって取引改善委員会が行なわれた場合に、これは特に重点的に取り上げてもらうようにぜひ願いたいと思います。
もう一つ、改正案の中で、先ほどもちょっと触れましたが、本法の重要な点は、先ほど大臣答弁のように、いままで手が届かなかった零細小企業にも構造改善の手が伸びるように、しかも、それは一対一という形で台数を減らすんじゃなしに改革をやっていく、こういう点で、これはいろんな念願がかなり入っていった前進したものであろうと思います。そこで、小さな企業、機屋が構革をやろうとする場合に、事業協同組合は零細な機屋等が百軒とかでつくっている、そういう事業協同組合においても構造改善の事業の窓口としてやっていけるのかどうか、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/21
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022・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 今回の新しい構造改善事業を進める母体といたしましては、中小企業の代表的な組合でございます事業協同組合、商工組合、協業組合、企業組合、こういったものを実施主体ということで考えております。したがいまして、これらの組合の構成員の規模については問題にしないということでございまして、御指摘のように、小規模の事業者が四人以上集まりまして事業協同組合をつくって、法案の四条にいうところの事業計画を作成し、それを通商大臣の承認を受け、助成の対象としていくということは可能であるというよりも、そういったところを一つの大きなポイントとしております。ただ、業種によりましては、従来の産地組合でいったほうがいいというところと、あるいは縫製、メリヤス業のようなところではむしろ事業協同組合でやったほうがいい、これは千差万別でございますので、それぞれの業界の実態に合わせて近代化、構造改善を進めていくべきだろうと考えております。
なお、ついでと申すと何でございますが、そういった事業協同組合ができないような小規模零細事業、原則としまして従業員五人以下の零細企業につきましては、設備の近代化、あるいは技術指導面におきまして特別の配慮を加えたい。具体的には、四条にいうところの構造改善事業計画をつくらなぐとも、中小企業振興事業団の特別金融ができるような措置もあわせ講ずることにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/22
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023・辻一彦
○辻一彦君 次に、大臣が二十分までしかおられないということなので、私、当面のどうしても伺いたい問題に入りたいと思います。
当面の各産地における繊維業界の問題は、緊急に融資対策の手を打ってほしいということが第一であると思います。この間、東京の綿、スフ、絹、人繊の全国の集会、あるいは私が出ました福井産地における千四、五百人集会等においても同様、この問題が強く出されておりました。私、参考にそこへ出た強い意見をちょっと紹介をして質問に入りたいと思います。
これは過日の、五月十一日に福井の産地で行なわれた集会でありますが、この業界を代表してこういう声が出ておりました。
昨年からの無暴な織物の輸入並びに政府の総需要抑制策により、販売は極度に減退し、異常在庫は日ごとに増大し、流通段階は、完全にマヒしてしまいました。
福井県織布業界は、その八二%が賃織り形態の中小零細企業であり、織り工賃の収入がそのすべてでありますが、この織工賃が昭和四十五年以前のベースに落ち込み、昨年同期に比べ、いずれも五〇%以下に転落しております。ものによっては工費ゼロまたは赤字必至のものさえ余儀なくされています。
昨年のいまごろと比較して一例を申しますと、ナイロンタフタ(一九〇本三十六吋)一疋の工賃は、昨年五月には千百四十円、九月には千四百円でありましたものが現在は四百円ないし五百円となっています。また人絹朱子は、昨年五月に千百三十円でありましたものが現在三百二十円、ナイロンクレポン三十六吋などは二千四百円が二百十円と極端な落ち込みを示しております。その上、三月以降極端な先行き不安から、商社等の仮需要が全く陰をひそめ、六−七月の受注はいまだに五〇%にも達していない状況であります。これら業界の不況に対し、政府の施策は総需要抑制策を基本とする極度の金融引き締め、相次ぐ公定歩合の引き上げ、各種公共料金の引き上げなど、全く追い打ちをかける結果となっており、さらに三〇%の人件費、及び平均五〇%の副資材の値上げを受け、業界は実に惨たんたる状況に追いこまれております。
これは私は、どこの産地にも大小の差はありましても、ほぼ共通したようなものがあるんじゃないかと思います。
そこで、そういう声を背景にして、政府機関のほうにおいてもいま中小企業についての融資をいろいろと検討されておるようでありますが、第一に大臣にお伺いいたしますが、総需要抑制という大筋の基本方針は、これは私は大事なことであると思います、いまの段階でも。しかし、その中でいま読み上げましたように、また、御存じのような中小企業におけるこの倒産、赤字ということが非常に強くなってきている。こういう中で中小企業金融の緩和ということが考えられなくてはならないと思いますが、そういうことをどうお考えになっているか。その中で、特に四−六月にかなりな検討を進められ、また、一昨日の御答弁でも、上のせ二千億を下回らないと、こういう御答弁を一応伺いましたが、かなり日が迫ってきておりますので、ほぼ固まりつつあるとするならば、およそ四−六にどのくらいの上のせをして中小企業の金融対策をやるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/23
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024・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) さきに三月の年度末に五百五億円の特別のワクを三機関からつくってもらいましたが、さらに四−六の情勢にかんがみまして、五千五百億円のワクを三機関からつくってもらうことにいたしました。しかし、それだけでも足りないようでありますから、さらに第二四半期の分を繰り延べる、その金額を千五百億円から二千億円の間ぐらいはぜひ確保したい。先般は二千億円を下らないということで努力するということを申し上げましたが、その後、大蔵省との折衝の過程を見ますと、なかなか先方は頑強でございまして、二千億円を下らざるというのはややむずかしくなってきました。そこで、千五百億円から二千億円の間ぐらいはぜひ確保したい、こういう考えで、五千五百億円プラスいまのワクというものを四−六の間に確保したいと思っております。そのうちの相当部分を繊維に回す、五千五百億円のうち約千五百億円見当は繊維に回すと。それから、追加分として繰り上げの分についても、かなりの分を繊維のほうに回す、それから、いわゆる繊維の中で大企業でもなければ中小企業でもない中堅企業というものは、滞貨のもたれで非常に苦しんでおりますが、それらにつきましては、市中金融機関を通じまして個別指導によって融資のめんどうを見るように、これは行政指導をもって大蔵省と話し合いをいたしまして、個別ケースとして解決していくように手配をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/24
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025・辻一彦
○辻一彦君 二千億を下回らずという御発言がちょっと弱気になられたようでありますが、これはひとつ最大限の努力を、こういう中小企業の要請にこたえるようになお努力をお願いしたいと思います。
そこで、追加について繊維産業関係にかなりな部分を回すという御発言でありますが、金額の面は全部出ないとしても、そのうちの何割程度繊維産業の融資に回す考えか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/25
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026・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、何割程度というところまではまだ申し上げる段階に至っておりませんが、繊維産業の状況等を見まして、いまわれわれが既存の手当てをした分で、足りない分につきましては、最大限充当するように努力してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/26
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027・辻一彦
○辻一彦君 大蔵省にちょっと伺いますが、おられますか。——いま大臣答弁のように、市銀のほうは、中堅企業は市中銀行を通してやられるというお話でありますが、政府機関のほうは零細中企業、しかし、大企業の中にある中堅企業には市中銀行という線が出ておりますが、どれぐらいをこの市中銀行には四−六で融資をされる考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/27
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028・米山武政
○説明員(米山武政君) ただいま大臣のおことばがありました中堅企業でございますが、通産省あるいは業界等からもいま話を聞いているところでございまして、事情はそれぞれの関係の銀行によく伝えてございますが、まだそれが幾らというふうには固まっておりません。いまお話を聞きながら、市中銀行をいろいろ行政指導している最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/28
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029・辻一彦
○辻一彦君 大蔵省は、いつごろ通産省とお話し合いになって結論を出されるつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/29
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030・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 中堅企業に関する分は、私が御答弁で申し上げましたように、一定のワクを設けると、そういう考えではなくして、個別的にケース・バイ・ケースでその企業の状況を把握して、必要と思う分を個別的に行なうと、そういう了解で大蔵省と話しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/30
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031・辻一彦
○辻一彦君 それから、融資のワクがきまっても、それを十分生かし切れないということがあります。というのは、中小企業の場合に、かなりいままで融資を受けているというか、借金をしている。だから担保の点であるとか、いろいろな点において、これ以上融資を受けるにはかなり条件緩和等がないとなかなか容易でない。そういう点で、せっかくそのワクがきまっておりてきても、いよいよこれを借りるという段階になると、小さい場合にはなかなか借り切れないという場合が起こり得ると思いますが、十分このきまったワクを活用できるためにどういうような具体策を保障されておるのか。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/31
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032・小山実
○政府委員(小山実君) 御指摘のとおり、ワクができました場合に、それが十分零細企業まで流れるようにというためには、一つは担保の問題がございます。で、この問題につきましては、先般、本委員会でも御審議いただきましたが、中小企業信用保険法の改正によりまして、無担保保険、あるいは特別個別保険の保険限度額が引き上げられましたし、それからまた、倒産関連保証の対象として、業種全体として非常に売れ行き不振で不況になる場合に、それを指定して別ワク限度を設けるという制度もつくっていただきましたので、繊維業につきましては、必要に応じてその対象として指定をするというようなことも考えまして、その担保力の強化ということに十分留意してまいりたいというふうに考えております。
また、三機関の中でも国民金融公庫は、特に零細企業向けの金融機関の窓口として非常に大きな機能を果たしておりますので、全体の中でもその国民金融公庫について十分資金ワクの確保に留意すると、こういうような手段を通じまして、信用補完あるいは国民金融公庫のワクの確保、さらには例の無担保、無保証の小企業経営改善資金というようなものをいろいろ組み合わせまして、十分零細企業に資金が流れるような配慮をしてまいりたいと、このように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/32
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033・辻一彦
○辻一彦君 それについてはもう少し伺いたいと思いますが、あとでもう少しお伺いしたいと思います。
通産大臣のおられる間にあと二、三点お伺いしますが、第一は、いままでなされたこの長期低利融資関係の償還返済の期限というものを延ばしてほしいという、これは返そうとする時期になると、こういう不況の状況になって、なかなか融資をかりに新しく受けても、すぐそれを返済のほうに回したのでは実際として助からないと、こういう点で返済期限の延期あるいは猶予と、こういうことは強く要求されております。そういう点で、この延期を十分考えるべきでないかと思いますが、この点どういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/33
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034・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は手配済みでございまして、借金の返済の猶予、それから税の同じく延納、この二つにつきましては、もう二カ月ぐらい前に大蔵省とも相談をいたしまして、各企業の実態に応じて相談に乗ってやるようにと、そういうことを大蔵省にお願いをし、大蔵省のほうからも、たしか現地に対しては指示済みであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/34
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035・辻一彦
○辻一彦君 私もそれらは承知しておりますが、大蔵、通産両通達も課長名ですか、詳しいことが府県にも出ていると伺っております。そこで、ケースによって延期をするということであると思いますが、かなりきびしくやればうんと狭くなっちゃうし、ある程度緩和をすればかなりこの中にかかると思うんです。ケース・バイ・ケースであろうと思いますが、との程度このケースによって——ケースによって認めるというのはむずかしいことですが、かなりな数を自主的に延期をするような考えを持っておられるのか、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/35
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036・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) ぴたりとしたお答えになるかどうかと思いますが、特定織布業を例に引きまして申し上げますと、四十二年から四十八年にかけまして、これは中小企業振興事業団のいわゆる近代化融資の金でございますが、返済期間がきておった額がその間八十二億五千一百万、このうち返済猶予をいたしましたものが七十五億四千万、実に九一%の返済猶予率になっております。そういったところがら、きわめてきめこまかく実態に応じてケース・バイ・ケースと言いながら、かなりの返済猶予を実施いたしておるというのが現実ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/36
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037・辻一彦
○辻一彦君 次に、製品の滞貨問題についてお伺いいたします。
御存じのように、繊維製品が各産地に非常に滞貨をしている。農村の農協の倉庫までも借りて、とにかく繊維製品を置いているというような産地があるわけですが、それぐらい滞貨をしております。そこで、荷が動かないとどうにもならないという状況がありますが、この溝貨凍結の融資が考慮されているというように聞いておりますが、具体的にこの滞貨凍結の融資をどう考えておられるのか、この点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/37
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038・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) いわゆる滞貨の凍結ということばがどのようなことを意味するかというのは、なかなかむずかしい問題でございますが、先ほど来お話が出ております政府三機関の四−六のワク、あるいは七月以降の繰り上げ分と、これもやはり在庫手当てと申しますか、滞貨手当て資金にもなるかと思いますが、特に私たちがこの金融の点で滞貨問題、過剰在庫問題について強く希望いたしておりますのは、先ほど市中銀行で三千二百億の中小企業向けの特別ワクが設定されておるということでございますが、この資金を極力こういった過剰在庫手当て資金として活用いたしたい。たとえば組合ベースでまとめて金を借りて在庫手当てをする、非常に有力な金融措置になるかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/38
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039・辻一彦
○辻一彦君 この滞貨凍結融資というのはたいへんむずかしいことばで、正確な表現ではないかもしれませんが、要はこの在庫に対する手当てという問題ですね。そこで、この大手の商社にこういう融資が流れたとしても、荷が動いてもこれはあまり中小企業の産地に必ずしも荷が大きく動いていくということにはなかなかならないのじゃないか、そういう点で産元の商社等にもこういう手当てを十分考えるべきであるという意見がありますが、いまの御発言の中にはそういうものは当然含まれておると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/39
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040・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) それぞれの産地からのお話の中には、いわゆる商社金融が詰まってきたがために、仮需と申しますか、中間流通段階の注文が減ってきているという訴えも耳にいたしておるわけでございますが、ただ、現在の繊維に対する不況対策というものにつきましての性格は、やはり総需要抑制下、金融引き締め下におけるところの例外的な措置として考える必要があるんではなかろうか。一般的に金融政策が見直しをされる段階には来ておらない。その段階における特殊な事情、特殊な不況ということで例外的に金融措置を考えるといたしますならば、できるだけやはり効果はあるかもしれませんが、流通段階での資金手当てということよりも、むしろ紡績、織布、メリヤス、染色以降、そういった生産段階での資金手当て、いわゆる休業資金あるいは在庫手当て資金といったものに第一義的に重点を置いて考えていくべきだろうというのが当面の対処のしかたでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/40
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041・辻一彦
○辻一彦君 それは生産段階に重点を当然置くべきであると思いますから、それはけっこうだと思います。
そこで、さきに通産大臣は、旅先並びに衆議院の商工委員会において、過剰な製品を買い上げて開発途上国の援助に充てたい、こういう御発言がありましたが、中身を拝見すると、従来の円借款といいますか、それぞれの援助のワク内程度にとどまるようでありますが、積極的に滞貨を政府が買い上げて途上国に積極的な援助に使うとか、回していくと、こういうお考えはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/41
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042・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう方向に結果的には持っていきたいと思っております。ただ、これらの問題は相手国の主権、相手国の要請というものが主になって、相手国のニーズに応じてやらないと、わが国から押しつけがましくやるべきものではございません。この辺は非常に取り扱いは慎重を要しますけれども、相手国との間でわがほうがうまく合意がつけば、そういう方面に積極的に努力することはお互いにいいことになると思っております。現にバングラデシュにそういうことをやったことがございまして、これは喜こばれました。南ベトナムにもそういうものはございます。
現在、各国の間でそういう可能性のあるところを考えてみますと、バングラデシュは、四十九年四月から五十年十二月までの間に借款供与をやっておりますが、人繊の綿及び糸、綿織物等、総額九十億円の内数として、これは品物その他はもし先方に要望があればこの中から出てくる。もちろんこれはコマーシャルベースで話が進んで、それを政府が受けてやるという形に以下なっておるものでございます。南ベトナムは、四十九年四月から五十年三月までの間において絹織物、人繊の綿、糸、織物、毛織物、綿糸、綿織物等、総額八十二・五億円の内数になっております。インドネシアが四十八年の八月から四十九年九月までの間において絹糸、絹織物、人繊の糸、織物、ニット生地、綿糸及び綿織物、衣類等総額百四十億円の内数、それから、ビルマが四十八年七月から四十九年十二月までの間において綿織物、人繊の綿、糸、衣類等総額四十六・二億円の内数、エジプトが四十八年七月から五十年六月の間において繊維糸、総額三十・八億円の内数。以上のほかラオスに毛布、衣類、韓国に合繊綿等があります。
これらはそういう可能性として選び出されたもので、これらについて現地政府の要望等を取りつけて、両方の合意がうまくできればぜひそういうふうに積極的に努力したいと、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/42
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043・辻一彦
○辻一彦君 その場合に、先方からもちろんニーズがなければいかぬのでありますが、申し込みがあるまで待っているのか、あるいは、こちらからより積極的に働きかけてそういうニーズを掘り起こしていくかまえなのか、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/43
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044・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) もちろんこれは、こういうものがございますがいかがでございましょうと、ニーズを掘り起こすように積極的に努力すべきものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/44
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045・辻一彦
○辻一彦君 もう一歩進めて、国際的にいろんな非常災害が、気象の異常とか、いろいろ出ますね。そういうときに緊急に援助物資を国連等から、あるいは各国から要請される場合があるわけですが、これは食糧の問題もありますが、衣料の問題も私はかなりあると思うんです。そこで、そういう国際的な災害等の非常に備えて備蓄といいますか、非常に備えてこの繊維製品を政府が買い上げて、いま災害の点も考慮して用意をしていく、こういう一歩進んだ積極的な考え方はないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/45
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046・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) それは非常な深謀遠慮であるように思いますけれども、いまの財政事情その他を考えて、そのためにストックを買い上げて持っておくということは、ちょっとむずかしいのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/46
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047・辻一彦
○辻一彦君 これは、今後の財政の中でなお検討していただきたいと思います。
もう一つ輸入の問題に入りますが、こまかい数字はあとで局長のほうからお伺いすることにしまして、大まかにお伺いしたいんですが、昨年におけるこの繊維製品で綿布、それから合化繊、衣料というものがかなりな倍数にのぼっておりますが、その実態をちょっと簡単に聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/47
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048・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 四十八年の繊維貿易は、輸出が三十二億ドル、輸入が三十九億ドル、収支バランスが逆転いたしましたが、この原因は輸出が前年比一三%増にとどまったのに対して、輸入が約二倍という最近にない著しい伸びを示したものであります。しかしながら、これは羊毛、綿花等海外に依存せざるを得ない原料の輸入約二十億ドルを含んだ数字でありまして、製品だけを比較した場合には、輸入約十七億ドル、輸出約二十七億ドル、相変わらず輸出が輸入を上回っております。このような輸入が大幅な伸びを示したのは、原料輸入における羊毛価格の急騰による輸入金額増のほか、製品輸入においても織物、二次製品等が大幅に増加したことが大きな原因となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/48
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049・辻一彦
○辻一彦君 このきのう出された資料を見ますと、製品において繊維製品は去年一年間で前年対比三・一二倍、綿織物三・一四倍、合繊織物七・二二倍、衣類三・六四倍とこういうふうになっておりますね。これを見ると、この綿布から合繊衣類というものが、いずれも三倍から七倍をこえるところまで大量に輸入されたという事実が明らかであろうと思います。そこで、なぜこういう大量の輸入が行なわれたのか、この点についての見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/49
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050・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 背景といたしましては、やはり開発途上国における繊維産業の急速な成長ということがあるかと思います。それに加えまして、昨年の特殊な事情といたしまして、昨年、ちょうどいまごろから景気が非常に上昇過程に入って、需要が強くなってきておったということと、それから、二月から為替の変動制に入りまして、その間、円高基調で推移いたしまして、輸入する立場から非常に有利な条件になっておったということ。それから三つ目には、物価問題と申しますか、国際的に価格が上昇してまいりまして、それが通貨価格の上昇、こういうことであったろうかと思いますが、いま申し上げましたような特殊事情はあるにせよ、ベースにはやはり開発途上国における急速な繊維産業の成長ということは、見のがすことのできない事実かとも考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/50
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051・辻一彦
○辻一彦君 日本のほうから資本を出して合弁をやる、そして、そこの生産が上がる、そういう状況は、これはあとでもお伺いしますが、あると思います。しかし綿布にせよ、合繊織物、衣類というものが三倍から七倍にわたって輸入をされたというのは、非常に全体の中から見れば、秩序性を失ったかなり無理な輸入でないかと、こう思います。この傾向は、放任しておけば私は、今後ともこういう形で続いていくのではないかという懸念を持ちます。おとといの本委員会における参考人からも、一部の方からは輸入の規制をやるべきであると、こういう強い意見も出ました。大部分の方は秩序ある輸入という表現でもって、やはり輸入の状況について何らかの秩序性を与えるべきであると、こういう見解が強く述べられておったと思います。
そこで、大臣にお伺いしたいのですが、こういう状況の中で、強い意見の輸入規制というものの声をどうお考えになるのか、あるいは、秩序ある輸入というものに対して具体的にどういうようにお考えになっておるのか、これらの声にどう具体的に対処されるのか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/51
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052・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 輸入制限や輸入割り当てということは、国際的にもすぐ大きく響きまして、ガットの精神その他から見ましていかがかと思われます。アメリカがそういう保護主義をやったので、われわれが一番先頭に立って攻撃を加えたほうで、日本全体の貿易立国という面から見ますと、できるだけ輸出、輸入を自由化していくということは大事でありますから、繊維についても、そういう考え方を一貫していくことは今後の交渉においても大事ではないか、いよいよバイラテラルの二国間交渉をやるという前でもありますから、アメリカとの関係がすぐ出てくる矢先きでございますから、そういう点は非常に慎重にやらなければいかぬと思っております。ただ、秩序ある輸入という考え方は賛成でありまして、日本の滞貨の状況をよく見ながら、貿易商社その他についていろいろ指導し、助言し、勧告する、そういうことをやっていきたいと思います。最近の情勢を見ますともう三月からは輸入が激減しておりまして、これは明らかに国内需要を見ましていろいろな買い控え等が起こってきている現象ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/52
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053・辻一彦
○辻一彦君 大筋秩序ある輸入は賛成とございますので、それは具体的にどうするかについてはあとでお伺いしたいと思います。
大臣にもう一点お伺いしたいのは、操短問題ですが、各産地で赤字倒産寸前というこういう状況の中で、中小企業、零細企業の場合、何らかの自主操短をやらないと、とても共倒れになってどうにもならないと、こういう声が非常に強い。しかし、これは独禁法との関係もありましてなかなかむずかしいところでありますが、この産地の状況、不況の状況から推して、何らかの自主的な操短の必要があると思われますが、この必要性をどういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/53
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054・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 最近の繊維産業の不況状況にかんがみまして、業種業態に応じて、特に中小企業性業種については、申し出があればその必要性、有効性の認められる場合には、中小企業団体の組織に関する法律等を活用の上、生産調整等について前向きに検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/54
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055・辻一彦
○辻一彦君 ちょっと質問がしにくいのですけれども、続けてお願いしたいと思います。前に返るかもわからないのですが、御容赦願いたいと思います。
いま、団体法に基づいて前向きに考えていきたいという大臣の見解でありますが、これは非常に複雑な、頻雑な手続があるとも聞いておりますが、それを待っておると、実際的に時間が少な過ぎてどうにもならぬ、こういう声も聞きますが、そういうような懸念はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/55
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056・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) やはり、本来的に国際競争の維持という大原則があるわけでございまして、それに対して一定の補強要件を備えている場合には例外的に共同行為を認めよう、こういう趣旨でございますので、やはり、法律に定められた要件を充足している旨の挙証というものがどうしても必要になってくるかと思います。ただ、御指摘のように、いつまでたっても、あるいはそれにじんぜん日を過ごすようなことがあれば問題でございますので、業界のほうからそういう必要性を感じ、そういう申請書が提出される場合には、関係各省庁とも連携をとりながら、できるだけ早くそういう共同行為が実施できるように私たちもっとめていきたい、対処していきたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/56
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057・辻一彦
○辻一彦君 この問題は、私たちは、一面においては独禁法を強化をしてほんとうの公正な取引が採用されなくちゃならぬと、そういう点をいつも強調しているところでありますから、なかなかむずかしい問題であります。しかし、利益があがり過ぎて、そしてもうかり過ぎているとか、そういう中で問題になるのと、それからもう赤字で、首つり自殺まで実際出て、そういう中で何とかしなくちゃどうもならぬと、小さいところでは自主操短といいますか、休みの日をたくさんとってやっているけれども、それだけではどうもならぬと、こういう状況にあるもんですから、趣といいますか、事情は私非常に違うと思うんです。決して独禁法の性格を弱めようとか、そういう点からの発想ではない、これは明らかにしておきたいと思います。
そこで、具体的にこの産地において、法の手続ということでありますが、この団体法のこれに基づいて手続をしていくといいますか、取り組む場合に、通産のほうではかなりこれに対して好意的な指導といいますか、助言というものができるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/57
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058・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) やはり第一次的にはその申請者のほうのデータの提出、あるいは趣旨説明といったようなことになるかと思いますが、ただ、先ほど来先生も勉強しておられますように、繊維産業——産地における不況状態というものはきわめて深刻になっておるという一般情勢というものは、当然われわれも知悉しておりますし、かたがた、産地ごとにいろいろ平素からも調査を進めておるわけでございますので、そういった点につきましては、御趣旨を生かし得るような方向で対処できるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/58
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059・辻一彦
○辻一彦君 公取お見えになっておりますか。——これは私、公取にお聞きしていいかどうかは、自分でちょっと疑問に思う点、疑問といいますか、迷う点があるのですが一せっかく見えておりますので、一言伺っておきたいと思います。
というのは、福井の産地のほうで、前にも不況のときに、どうもこうもならぬというので一部こういう動きがあったんですが、いろいろ御意見もあってやはり見合わせたということであります。そこで、いまのようなこういう極端な不況、これはこの間も話に出ておりましたが、いままでならば繊維産業といってもいろいろたくさんの種類がありますから、一つ悪いとほかのほうは少しいいということで相カバーし合えた。しかし、今度はもう全部にわたっている。これは福井の産地でも、いままでは織布関係やいろいろ業界別に集会がありましたが、二十何団体という繊維関係の産業が全部集まって、あれだけ集まっての集会というようなことはかってなかったと思いますが、それだけこの繊維の関係は全部の業界に不況が及んでおると思います。かなり、かなりといいますか、きわめて深刻ですが、そういう状況の中で、操短問題は法的に触れるとか触れないとかということでなしに、かなり幅のある解釈によっていまのような不況に対処できるような道があるのかどうかですね、公取にはシロかクロかという聞き方でないと御答弁が出ないと思うんでありますが、たいへんむずかしい質問になりますが、その点どうお考えになるか、一言お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/59
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060・吉田文剛
○政府委員(吉田文剛君) 非常にむずかしい御質問でございますが、従来公取としましては、一斉休機というような、一斉操短といいますか、これは原則としてやはり独禁法に違反するおそれがあるという態度でございまして、どうしても不況が一般的になって業界自体が非常にお困りだというような場合は、団体法の規定によりましてこれは主務大臣の認可、それから公取の協議という形でおやりになっていただきたいというのが基本線でございます。ただ、具体的にどういうやり方で一斉操短をおやりになるのか、その具体的なやり方を見ませんと、そのほかに配慮的なやり方、考慮のしかたはないかとおっしゃられても、これは困るわけでございますが、それはやはりケース・バイ・ケースによって、競争の実質制限になるかならないかということの判断にかかってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/60
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061・辻一彦
○辻一彦君 これはシロかクロかを聞かなくちゃならないのに、こういう聞き方をするのがむずかしいと思いますから、これでとどめます。まあ、この業界の実態だけはよく理解をしておいていただきたいと思います。
それから局長、もう一つございますが、構革事業によってジェットルームというか、非常に高速の機械が入って、これは三交代をやっておるんですね。で、もう夜昼なしにといいますか、三交代でやる。そうすると生産は非常に上がる。この償却に追われるから、早くこの元を返さなくちゃならないと、こういう事情があろうと思います。しかし、片やそのジェットルームー——高速による三交代が進み、片方では日曜日、休日、余分の日も少しでも休んで自主操短をやろうといって機を休めながらやっている。これでは全体の産地としてとてもつり合いがとれないんですが、私は、構革事業の三交代のこの問題は一つの問題点であろうと思いますが、今日のこういう操短問題等が出ている中で、この三交代の問題なんかはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/61
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062・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 先生御承知のように、現在の構造改善法なるものは、四十年当時の非常な不況事態に際会しまして、四十二年度から実施に移されたわけでございます。その当時の問題意識といたしましては、国内にも非常に過剰設備があったということと、今日ほどではなかったわけでございますが、発展途上国で非常な追い上げが出てきておる。しかも賃金は安くと、また、三交代を実施しているといったようなところから、わが国においてもやはり三交代制を実施しなくちゃいけないんではなかろうか、これは織布にとどまらず、メリヤスにとどまらず、紡績業界においても同じようなことで三交代制を進める。しかも、その三交代制を進めましても、二交代のときよりも人手が少なくて済むようにといったようなところから、超近代化、超自動化設備を入れたわけでございます。
その時点におきましても、やはりおっしゃるように優秀な設備というものはフル回転させたいという、これはまあ人情でもあるわけでございますので、そういったところから需要の動向と見合わせまして、先ほどもちょっと話が出ました、たとえば新設一台に対して従来の一対一のスクラップ・アンド・ビルドのルールに加えまして平均一・六台と、いわゆる上のせ廃棄といったようなことも実施しまして、さような三交代制を実施をいたしましても、需要が折り合いがっくようにといったようなことで、上のせ廃棄ということも実施いたしたわけでございます。これは一面では、先ほども先生からも御指摘がありましたように、中小零細企業ではなかなか一・六台廃棄するわけにはまいらないということで、現行の構造改善に参加しづらかったという面もあるわけでございます。
それから反面、当時、数年前異常にやはり開発途上国における繊維産業の成長というものが予想外に強いといったようなところから、昨今の需給が異常を来たしておるというようなことにもなっておるわけでございますが、私といたしましては、やはり三交代制というものはこの段階でやめるわけにはまいらないのではなかろうか。ますます競争力が落ちていく。もちろん、適正な国際分業という問題もあるかと思いますし、あるいはある程度の輸入ということも確保せざるを得ないと思いますが、しかし、いわゆる一億の国民衣料として繊維産業というものを考えていった場合に、現在でもものによって二割ないし三割まで輸入が入ってきておるわけでございますが、将来の問題として外貨事情もあわせ考えていきますと、やはり国際競争力と申しますか、輸出競争力といったような単刀直入的なことばは別といたしましても、そういった発展途上国の追い上げにも十分たえ得るように繊維産業というものを導いていく必要があるんじゃなかろうか。
さようなことも考え合わせますと、この時点で三交代制をやめるということはやはりいかがかと私は考えるわけでございます。特に市況の変化と申しますか、景況の変化に非常に敏感に動くわけでございまして、いま非常に過剰でございますが、また早晩供給のほうが不足するといったようなことも、やはり考えておく必要があるかと思います。そういった意味合いも含めまして、私はこの段階で、三交代制をどうのこうのというまだ段階に至っていないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/62
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063・辻一彦
○辻一彦君 じゃ、公取はけっこうです。
前にちょっと返ってたいへん恐縮ですが、先ほど秩序ある輸入という点で通産大臣のほうから、前向きにこれは取り組んでいきたい、こういう御答弁でございました。
そこで、秩序ある輸入を実際にやっていくためには、考えていくためには、具体的にどういうことを裏づけとして考えているのか。若干報道された点では、調査云々とか、いろいろなことが出ておりますが、これらの点について具体的に考えておられることについてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/63
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064・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) まず、当該産業の実態把握ということが非常に大切かと思います。その一つといたしまして、インボイス統計の整備を現在進めておるわけでございますが、繊維産業はいままでどちらかと申しますと、やはり輸出型産業ということで成長してまいっておりますので、輸出関係の統計というのは非常に整備されておるわけでございますが、事輸入に関すると非常に大づかみの統計しかない。たとえば、しぼりだとかというものにつきましても、あるいはちりめん等につきましても、それぞれの個別アイテムじゃなくて、絹織物といった非常に大きなワク組みでしかつかんでない、こういう状況でございますので、輸入インボイスにつきましてもっと細分いたしまして、少なくとも輸出統計と同じような形で実態が把握できるようなものに整備いたしたい。現在作業中でございまして、ことしの一月にさかのぼってさような統計の整備をし、かつ、これを活用できるように持っていきたいということでございます。
それから第二点は、近隣諸国と申しますか、開発途上国における生産体制の実情、あるいは輸出体制、こういったものをやはりつぶさに調査する必要があるのではなかろうか。こういった国につきましては、どちらかと言えば、統計の整備がまだ十分なされていないといったような面もございまして、なかなか実態の把握が困難でございますが、さようなところからジェトロに依頼するとか、あるいは、今回構造改善事業協会につくるべく準備をいたしております情報センター等を活用いたしまして、近隣諸国の繊維事情、一言で申し上げてどの程度輸出体制を固めつつあるか、こういったことを調査いたしたい、かように考えておるわけでございまして、こういう実情把握を踏まえまして、輸入業者、関係業者等の指導を進めたい。さらに、先ほど先生も少し触れられましたわけでございますが、海外投資につきましても、これは内外での調和ということも非常に大切でございますので、十分事前にチェックし得るようにしてまいりたい。さようなことをもって秩序ある輸入を実現いたしたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/64
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065・辻一彦
○辻一彦君 そこで、いまもちょっと触れられましたが、海外における繊維関係の資本輸出といいますか、投資の実態についてちょっと御報告いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/65
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066・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 本年一月末現在で、繊維関係の海外投融資は六億ドル強になっております。これは、わが国からするところの全体の投融資は百億ドルをこえておるわけでございますが、それに対しては六%前後、それから、製造業だけに限って申し上げますと二割ぐらいに相当するかと考えております。で、地域別に見ますと、東南アジアが六五%、中南米が二五%、最近はどちらかと申しますと、中南米向けの投融資が増加しているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/66
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067・辻一彦
○辻一彦君 その資本の海外への投資によって合弁会社であるとか、いろいろ企業ができてきますね。それが今度は逆に対日輸出といいますか、逆輸入、こちらから言えば逆輸入ということになりますが、その実態はどんなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/67
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068・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) ただいま申し上げましたような海外投資企業の生産実績、あるいは日本に対する輸出実績というような正確な統計はないわけでございまして、実態の把握は非常にむずかしいわけでございますが、一、二申し上げますと、わが国から海外投融資をいたしております千二百四十八社、これは繊維工業にかかわらず、全社でございますが、これを対象にアンケート調査をいたしましたところ、いわゆるその地域におけると申しますか、進出先における消費、それから日本以外の第三国への輸出、それから日本への輸出と、この三つに分けまして調査いたしました結果、繊維産業につきましては百五社の回答が二ざいまして、その数字によりますと、日本向け輸出は二・五%という数字が出ております。
それからいま一つ、お隣の韓国からわが国にいろいろと輸入が入ってきているわけでございますが、これを業種別と申しますか、綿織物あるいは毛織物、絹織物、こういったふうに品目別に韓国からの輸入額とわが国の生産と比較いたしますと、これは一、二例外がございますが、大体二ないし四%程度というのがわが国における生産に対する韓国からの輸入比率と、かような数字になっておるわけでございます。そういったところから、十分な数字というものは持ち合わせないわけでございますが、いまのところ逆輸入というのはさほど大きな量にはなっていないのではないか。
ただ、昨年来ふえました輸入は、むしろそういった開発途上国における生産体制が強化されまして、そのための輸入増というふうに解釈いたしておるわけでございますが、ただ、海外投資につきましては、そういった逆輸入の問題もさることながら、相手国に対してもやはり過度の警戒、過度の摩擦を与えるといったようなことがあってはならないということから、それぞれの海外投資につきましては、現在OECDの資本自由化コードに従いまして、一部銀行業を除いても自由化はされているわけでございますが、わが国の経済に重大な影響を及ぼすというものについては、各省庁と連携をとりまして事前に十分チェックをしておるし、今後もさような形で慎重に調整してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/68
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069・辻一彦
○辻一彦君 いまの数字では、対日輸出、逆に言えば逆輸入二・五%程度と、そう大きくないということですが、これはまあ断わられているように、資料が必ずしもまだ整備されていないと。そういう上における数字なので、これでもって心配がないと、こういうふうには私は言えないと思います。
そこで、これからの合弁進出等にあたって、現地で生産されたものについては、この逆輸入と言いますか、対日輸出と言いますか、こういうものをある程度規制するとか、まあこれは数字でとか、あるいは量でとか、いろんな形で押えるとか、資本進出にあたってそのようなチェックをするというようなことはお考えになっていないのか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/69
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070・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 自由化されているわけでございますから、法的に規制するというわけにはまいらないわけですが、事前チェックの段階におきましては、ある程度規模の大きいものについては縮小改定させるとか、あるいは本邦への輸入を大きく期待しているようなものについては、それを修正させるとか、いわゆる行政指導ベースで国内の繊維産業に急速な影響を与えないように指導はいたしておりますし、今後もそういった方向でやっていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/70
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071・辻一彦
○辻一彦君 それからもう一つ、先ほどもちょっとお触れになりましたが、去年のような形で大量に繊維製品を開発途上国から買うと。スポット買いと言いますか、一時的に買えば、次も買ってくれるだろうという、こういう期待があって設備がある程度ふやされる。しかし、状況によってまたすっぱりやめてしまうということになりますと、非常に海外における不信をそういう意味では買うことになる。その点でも秩序性というものが非常に大事だと思うんですが、この点について、私は、海外における不信感を高める一因に大きくなる懸念を持ちますが、これはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/71
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072・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 事実、御指摘のような問題もあるかと思います。特に昨年、繊維製品につきましては、三倍もの輸入、それの反動として、四十九年におきましては非常に輸入が減る傾向もすでに見え始めているわけでございまして、そういった面から、日本の市場を期待してやっておる国といたしましては、日本の不況をそのまま自分の国へも持ち込むといったようなことにもなりかねない問題であることは事実かと思います。そういった意味からも、先ほど来お話が出ております秩序のある輸入ということは、国内産業だけではなくて、やはり開発途上国のこれからの開発テンポとの関係もございまして、より真剣に取り組んでいくべき問題ではなかろうかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/72
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073・辻一彦
○辻一彦君 こういう問題についてちょっと聞きますと、すでに通産のほうではメーカーや商社、あるいは資本進出をするそういうところとも若干の接触をしながら、こういう点については話し合いをしているということも聞いておりますが、商社あたり等の活動についてのこういう面からの規制といいますか、チェックをしていくということがたいへん日本の信用度を確保するという点からも大事だと思いますが、この点、行政指導の面で強力に働きかけられる考えはあるのかどうか、この点ひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/73
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074・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 現に、問題のある産品につきましては、輸入商社等に働きかけと申しますか、再三にわたって強く指導と申しますか、警告を発しておる、あるいはかたがた国内における生産需給といったようなものにつきましても、詳細に事情を話しまして、そういったことをよく認識した上での輸入ということを働きかけておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/74
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075・辻一彦
○辻一彦君 これは、ぜひ強化をしてもらいたいと思います。
最後に私、もう一つ、これは参考人からもいろいろな意見が出ておったのでありますが、手形のサイト問題、これについて二、三お伺いいたしたいと思います。
この間も率直なお話が出ておりましたが、原糸を買う場合、この場合には六、七十日で権利がとられる、手形で。しかし、製品を売る段になると二百日、二百十日、台風手形でやるほど長くなって、しかも権利がない、こういうことで文句を言えばだめになっちゃうということでは、間にはさまれてたいへんな苦労を、困っているという実態であろうと思います。そこで、手形サイトは一体、現在中小企業関係で、繊維関係でどのぐらいになっておると把握されているか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/75
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076・小山実
○政府委員(小山実君) 中小企業庁で下請の動向を調査しております最近の資料によりますと、三月で繊維関係は百一・三日ということになっておりますが、これはいま申し上げましたように、この調査対象の全部の平均でございますので、具体的なケースにおきましては、これよりもっと長いものもあるだろうというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/76
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077・辻一彦
○辻一彦君 二百日とか、こういう手形はかなり出ている実態として把握されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/77
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078・小山実
○政府委員(小山実君) 先ほども申し上げました動向調査とは別でございますが、中小企業庁で三千企業につきまして下請に対する特別調査を行ないましたが、そのうち手形の期間が非常に長くてというものは約三十数件ございましたが、その中に繊維は四件入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/78
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079・辻一彦
○辻一彦君 各産地で手形が延びてたいへん困っている実態、私は多いと思うのです。そこで、この下請代金支払遅延等防止法というのがありますが、これによっていままでこれを発動していろいろ規制をした例がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/79
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080・小山実
○政府委員(小山実君) 下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、年度別にその調査を行なった件数を申し上げますと、四十六年度が一万三千五百三十二事業所、四十七年度が一万四千二百二十七事業所、四十八年度が一万五千六百八事業所でございまして、その調査の結果、違反の疑いが濃いという理由によりまして、同法の第九条の規定に基づきまして、立ち入り検査を実施いたしました件数は、四十六年度で三百八十八件、四十七年度で三百九十九件、四十八年度は四月かち十二月まででございますが、三百七十二件、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/80
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081・辻一彦
○辻一彦君 立ち入り検査をした結果、違反ということが明らかになった場合にどうされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/81
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082・小山実
○政府委員(小山実君) 立ち入り検査の結果、違反の事実がございました場合には、まず、行政指導によりまして改善をさしておりますが、それでもなお解決しない場合には、公正取引委員会に訴追の請求をいたします。その結果、公正取引委員会から勧告が出されました件数が、四十五年度におきましては五十二件、四十六年度は五十六件、四十七年度は四十一件、それから四十八年度四月から十二月末では十七件、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/82
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083・辻一彦
○辻一彦君 調査をした場合は一万五千にものぼって、そのうち三百七十幾つの違反事実というので、非常に率は低いようですが、実態は六十日以内というような手形はなかなか、ほとんどの場合ないのが実態でないか。だから、調べようによって私はこの率というのは、まだまだほんとうは高くなるのでないかと、こう思いますし、特にこういう状況の中では、先ほど申し上げたように、原料を仕入れるほうは、これはまあなるべく短くと責められる、払ってもらう場合は、これは非常に長くなる、これはもういままで再三繰り返されてきたことですね。そこで、こういう違反の事実が調べた結果においても、公にされている数もかなりあるというふうな形で、この問題について通産省として、あるいは中小企業庁として全般的にこういう企業に対して、あるいは府県等を通していろいろな通達や、あるいは行政指導の強化とか、こういうことをされておるのかどうか、この点されておれば、その事実をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/83
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084・小山実
○政府委員(小山実君) 昨年の石油問題の発生以来、決済条件の悪化によりまして経営基盤の弱い下請企業が不利益を受けるということについては、十分留意する必要があるということで、私どもといたしましては、先ほど申し上げました代金法の通常やっております調査のほかに、上場親企業に対しまして約千企業を対象にいたしまして特別調査を実施するとか、あるいは下請企業に対しても、三千企業につきまして特別調査を行なうというような方法で、親企業と下請企業と両方の調査を通じて、いろいろなそういう違反の起こらないように実態把握につとめるということも行なってまいりました。また、親企業者団体等に対しましても、公正取引委員会と連名で代金法の原資について再三にわたり通達を行なうというようなことで指導してまいっておるのでございますが、今後ともこれらの手段を通じまして取り締まりの強化に一そうの努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/84
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085・辻一彦
○辻一彦君 各地方に通産局がありますね。そこでこういう問題について具体的に行政指導する担当官はかなりおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/85
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086・小山実
○政府委員(小山実君) 現在、通産局の職員のうち、下請関係に専門に従事しておりますのは約十六名でございますが、いろいろなこういう検査等を行ないます場合にはとても足りませんので、ほかの仕事に従事している者を臨時に応援を求めて補強しているという段階でございますが、なお、今年度中小企業庁に小規模企業部がふえること等によりまして、中小企業庁に二十二名、通産局に二十八名の増員をしていただきましたが、その中でもある程度の者は、四名は下請関係に配属をしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/86
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087・辻一彦
○辻一彦君 地方の通産局がありますね。ここにもこういう専門担当官を配置されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/87
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088・小山実
○政府委員(小山実君) ただいま申し上げましたのは、地方の通産局の職員でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/88
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089・辻一彦
○辻一彦君 私、それぞれ努力しておられると思うんですが、現実に産地で聞く状況は、ちょっとこのパーセントぐらいの違反と言いますか、中身じゃないと思うんですね。非常に率が高いというか、ほとんどこれにひっかかるような私は内容だと思うんです。だから、そういう人員も中小企業庁の一部設置法改正によって増員されるとすれば、ぜひ私はこれは強化をして、この中小企業が上と下にはさまれて非常に困っている、こういう状況を一つでも解決をぜひしてもらいたいと思います。そういう点について一そうの努力を願っておきたいと思います。今度の小規模企業部が新設されることによって、この面特に強化される見通しはさらにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/89
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090・小山実
○政府委員(小山実君) 機構といたしましては、小規模企業部は再三御説明を申し上げておりますように、小規模企業の方たちのいろいろ苦情なりあっせん依頼を受けてその処理をするということでございますから、その体制といたしましては、その窓口になる小規模企業部と、従来この種のことをやっております下請関係の部課と連携を十分とりながら処理をすることに相なろうかと思います。
それから、下請関係で私ども平素いろいろな指導をしておりますときに一番むずかしい問題は、確かに個別に紛争がございましたら、私どものほうなり通産局にお話があれば、できるだけ個別のケースについてあっせんをし、紛争の問題の解決に努力をしておるわけでございますけれども、一つは力関係から、私どもにその実態を申し出られることが、ある意味では親企業との将来の関係に非常にむずかしい問題が出てくるといいますか、という点があるようでございまして、なかなか私どもは、こういう実際に書面で調べている、で、その調査の結果出てくる実態よりは、あるいはほんとうのことはもっといろいろ問題があるのかもしれない。そういうことを十分頭に置きながらできるだけ努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/90
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091・辻一彦
○辻一彦君 大体私、伺いたいことをお伺いいたしました。一番最初の問題で、もう少し中小企業に対するこの数字的なデータ等の整備をぜひ力を入れてもらって、政策の実際とはそういう数字の上に基づいてさらに一そうやっていただきたいということをお願いしたい、この点を要望して質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/91
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092・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十五分休憩
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午後一時十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/92
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093・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
午前に引き続き特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/93
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094・中尾辰義
○中尾辰義君 一昨日は、午前午後にわたりまして業界の代表の方の御意見を拝聴いたしたわけでありますが、今回の構造改善の法案に対しましては賛成である、ただしその前に、当面の不況対策を何とかしてもらわないことには構造改善どころの騒ぎではないというような御意見が異口同音にあったわけであります。
そこでまず、最初に通産大臣にお伺いしますが、いまの総需要抑制、金融引き締めで、どこへ行っても金詰まりの話、単に繊維業界だけでございませんで、中小あらゆる業界に限って、今後いまの経済政策、景気対策、一体いつごろから好転してくるのか、これをやはり企業の存廃をかけて、政府の動きをじっと見ているわけであります。
そこで通産大臣に、これからの景気は一体どうなっていくのか。大蔵大臣等の話を聞きますというと、とにかく昨年の年末来の狂乱物価といいますか、異常な物価の値上がりがありまして、一応は品不足、いわゆる需給の関係だけは落ちついたけれども、石油をはじめいろいろなコスト要因によりまして、まだこれから物価は上がっていくと。上がるようなものは、公共料金をとりましても、まず電力が上がる。そうすると、電力を使いまするところのいろいろな基礎物資、たとえば鉄鋼、アルミ、そういうものが上がるでありましょうし、さらに電気を使っている私鉄、電鉄、それからトラックの運賃、それからガス代、予算の面において決定しているものは消費者米価、こういうものがこれから次々と上がっていくわけです。したがって、そういうような値上がりを今後控えておる関係上、そう簡単には金融をゆるめるわけにはいかない、当面はこれは引き締めは堅持をしていくと、こういうような御意見のようでございますが、一体との辺から一これはむずかしいところでしょうが、それは私は、通産大臣は閣僚の一人として、また、産業界を預かっている大臣としての御意見をお伺いするわけです。実は、きょうもそこに傍聴の方もいらっしゃるのですが、これは実際商売の面から言ってもどうなるのか、非常に関心もあるわけでありますし、われわれもそう思っております。その辺のところをまず通産大臣にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/94
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095・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 最近の景気の状況を見ますと、総需要抑制策及び個別物資対策の効果が非常に出まして、鎮静が実体経済面に非常に浸透して、鎮静ということよりも局面によっては冷えてきている、こういう情勢の模様であります。
生産、出荷、在庫を見てみますと、四十九年三月におきましては、生産は前年同期に対して伸びが五・六%、これが昨年の七−八月は一九%ぐらいであったものが五・六%で、前期に対して比べて見るとマイナス〇・七%と減っておるわけであります。出荷にいたしましても、同じく前期に比べて見てマイナス四・六%、前年同期に比べて見ると、出荷はマイナス〇・八%、これは減っております。在庫を見てみましても、前期に比べて見てプラス六・六%、前年同期比に対して一二・五%、在庫が非常にふえてきておる。昨年の七月ぐらいになると在庫がマイナス三・三%で減少しておったわけであります。いまは在庫が著増しておる。この著増の率を見ましても、一月が〇・四、二月が六・四、三月が一二・五と、こういう加速度的にふえてまいってきております。在庫の指数を見てみますと一〇二・七でございまして、四十五年を一〇〇といたしますと、この一〇二・七という数字を調べてみると、四十七年の七−九月が一〇五・三、四十七年の七月というのは不況のさなかでございます。それに近いぐらいに在庫が指数としては追ってきておる。計数的に見ますと、景気は一部ではもう冷えてきつつある、こういうことが言えると思います。
そして需給要因から、今度は物価問題がコスト要因に移転してきたということも事実であると思います。しかし、このコスト要因で春闘があり、それから電力があり、それから米価があり、私鉄運賃があり、国鉄運賃があり、そのほか諸般の物資等が出てまいるという情勢を見ると、新しい均衡水準形成へのための調整過程がことし一ぱいは続くと考えざるを得ないと思います。米価やその他の問題が、秋までこれは長引いて継続していくと考えるわけでございます。そうすると、ことし一ぱいは調整過程が続くと見ると、やはり引き締めをゆるめるということはよほど警戒をしながら、状況を見つつ現実に即応してやっていかなければならない。特に、たとえば繊維のように非常に苦しい業界に対して局面的に、局部的に引き締めを調整するということは、将来は考えられると思いますけれども、全面的な総需要抑制、あるいは引き締めというものを一律に解除するときというのは、いまのところまだ見当はつかないのではないか、そういうように思います。
この中で、景気について希望を少し持たせ得るものは輸出があると思います。輸出の伸びは次第に好調を加えてきつつありまして、日本の引き締めが浸透すればするだけ輸出のほうに転化しているという可能性があって、これが景気に対する一まつの明るさを持ってくる条件であると思います。こういうことで、ことしは大体物価問題が最大の問題でございますから、物価問題の水準の移行をよく見つつ局部的に手当てをして調整をしていくと。しかし、全般的にはことし全体が新しい均衡水準への調整過程であるから、引き締めを緩和するということはいまのところまだ予想することはむずかしい、こういう情勢であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/95
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096・中尾辰義
○中尾辰義君 いま、今度の政府の最大の政策は物価を何とか安定しなきゃならぬと、そういうことでありますが、一面から言いますと、物価高に至ったというのはこれは何といいましても政府・自民党の責任でありまして、去年、おととしあたりからの非常な成長経済のあり方、さらに輸出振興によってため過ぎた過剰ドル、そのドルがまた円に変わって、国内にいわゆる過剰流動性というものが何兆円に及んでばらまかれている。そしてどんどん物価が上がった。ところが、去年あたりから石油問題で頂点に達して、今度は物価が上がったから下げなきゃならぬ、下げるには締めなきゃならぬ、こういうことになっておるわけです。ですから、その締めの犠牲になっているのが中小企業者であり、その中で繊維業者はこれは最大の犠牲者である、こういうような筋書きになるわけでして、その責任は、何と言ってもこれは政府・自民党にある。
そうですから、物価を下げるために、まあしばらくの間は引き締めは続けていきますよ、こういうことですが、業者のほうからこれは考えますというと、まあ毎月毎月千件ぐらいは倒れておる。倒れておるのも中小企業だけでしょう。大企業で倒れたのをまだ聞いたことないですよ。そこで、非常に今度お願い一お願いではありますか、ほんとうは政府がみずからこれは申しわけなかったという態度で救済策を講じなければ、物価を下げるんだから中小企業はどうでもいいと、そうはいかないと思いますね。まあ、かつて池田勇人元の総理は、中小企業は少々倒れてもどうのこうのというような話がありましたが、今度の田中内閣は、そういうことがあっては相ならぬと私は思います。
そういう意味から、中小企業の一番要望されているのは、とにかく当面何とかしてくれと、これがいろいろ要望書で来ておるわけです。まず最初に金を何とかしてくれないかということであり、その金の面は、先ほど午前中にも話がありましたが、中小企業金融公庫はじめ政府三機関で一応四−六は五千五百億は出すと、それで足りなければ追加——追加といいましても、これも第二四半期の分を千五百億円ほど追加しましょうと、こういうことでしょう。私は、この千五百億円出したからこれで皆さんは何とかしなさいよと、こう言われても困るんじゃないかと思うんです。それで全部救われるかというと、そうはいかないと思うんですよ。中堅企業等は、民間市中銀行から何とかケース・バイ・ケースで適応策をやるように行政指導をするという午前中の話でした。
そこで、これは大蔵省に聞きますが、政府の三機関のほうはわかりましたが、ところが、おそらくそれだけじゃ足るまいだろうと思うんです。ですから、民間の中小企業専門のいわゆる相互銀行だとか信用金庫、そういうところに対するところの中小企業向けの融資に対する指導、これはどういうふうになっていくのか、その辺まずお伺いしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/96
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097・米山武政
○説明員(米山武政君) 民間の金融機関の中で、特に中小企業専門機関と言われます相互銀行、信用金庫等、これはもっぱら中小企業に融資しているわけでございますが、これらの金融機関につきましても都市銀行、地方銀行と同様に、やっぱり総需要対策のための金融引き締め措置としまして、日本銀行の窓口指導の対象となっているわけでございます。特に相互銀行はほとんど大部分、信用金庫につきましても上位約二十行程度は、これは日本銀行の窓口指導の対象となりまして、そこで一応ワクをきめられているわけでございますが、先ほど大臣からもお答えありましたように、やはり全体の引き締め、きびしい引き締めの中でも中小企業対策、健全な中小企業にしわが寄ることのないように、やはり中小企業対策ということはいつも頭に入れておかなければいけませんので、ただいまの相互銀行、信用金庫等につきましても、都市銀行、地方銀行等より窓口指導の締め方というのはだいぶ緩和されておりまして、中小企業のほうにはそう被害がなるべく及ばないようにやられておるわけでございます。
抽象的に申しましても何でございますが、たとえば、四十九年の現在四−六の窓口規制のきつさでございますが、都市銀行は、前年度同月同期に比しまして増加額が一五%、約二八%削減になっておりますが、相互銀行の場合には、増加額が約三・五%程度の削減にとどめ、それから、上位の信用金庫についても同様に締め方はゆるくしておる、こういうふうな形で、中小企業専門金融機関につきましてはその態度は緩和される、こういうふうな配慮がなされているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/97
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098・中尾辰義
○中尾辰義君 そうしますと、中小金融機関は前年度の同期の約倍ぐらい融資の手当てができると、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/98
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099・米山武政
○説明員(米山武政君) ただいまお答え申しましたように、たとえば都市銀行の場合には、ちょうど前年同月同期四十八年の四−六は、貸し出しの市中増加額は九千九百六十三億円となっておるのが、本年度の四−六は、その約一六%減に相当します八千四百億円に増加額を押えられているわけでございますが、相互銀行はその押え方がはるかにゆるくなっておりまして、昨年の四−六月は二千八百五十億円の増加額を三・五%減の二千七百五十億円と、こういうふうに削減率も非常に小さく、そういう面で配意されている、こういうふうに申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/99
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100・中尾辰義
○中尾辰義君 私は勘違いしておりました。そうすると、結局は民間の中小企業専門の信用金庫、相互銀行等も昨年の四−六の伸び率よりか約三%ぐらい減っているということですね。そういうことになりますと、おそらく信用金庫や相互銀行に行きましても、窓口で締められる可能性が相当ある。そうすると、えてして中小企業金融公庫なり、商工中金なり、国民金融公庫なりにどうしてもこれは融資の申し込みが集中してくるというような結果になるわけですが、これは通産大臣、千五百億で大体何とか十分であると、こういうふうにお考えなのか、それで足らぬやつは倒れてもよろしいとおっしゃるのか、その辺いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/100
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101・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) とりあえず、五千五百億の中で繊維関係に千五百億見当充当する。それから第二四半期の分を繰り上げて、その中からかなりの部分をまた繊維のほうにも回す。そのほか、一般市中銀行についても約三千二百億円のワクを大体見当としてつくってもらいまして、これは個別に企業ごとに融資をしてもらう、中小企業に対して。そういう市中銀行向けの指導も実はしておるわけでございます。しかし、そういうようなものを動員して、それでもどうしても足りないという場合がありますならば、これはまた増加するというふうに機宜に応じた処置をとるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/101
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102・中尾辰義
○中尾辰義君 大体わかりましたが、これは大蔵大臣がうんと言わぬことには通産大臣だけでは出ないので、その辺のところはひとつがんばってもらいたいと思います。
それから、けさも大体全般にわたりまして質疑がありましたもので、私も補足的に少しお伺いしますが、今度の繊維のだぶつき、在庫が滞積しているということは、一つは海外からの輸入が相当ふえておる、そういうことでありまして、おとついの参考人の方の御意見も、秩序ある輸入を何とかやってくれと、こういうことでありまして、おととしぐらいは秩序ある輸出ということがこの委員会でもやかましかった、今度は秩序ある輸入のほうに変わっているのです。それで、けさほども答弁がございましたが、これは口に言うのは簡単ですよ、実際。それでけさの答弁にも、今後具体的にはどうするのか、それはいまから調査し、統計もきちっと整備をして、それから結論を出そうということですが、そういうような統計資料というようなものがそろってみても、これは結局どういうふうになるのですか一具体的に。業界の話し合いに通産省も入って、業界の話し合いでそこのところをこの程度にきめようとおっしゃるのか、その辺のところをもう少し説明を加えてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/102
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103・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 秩序ある輸入というのは、実現の問題、御指摘のようになかなかむずかしい点があろうかと思います。ただ、直接的な輸入制限ということは慎重に配慮する必要がありますので、輸入を秩序正しくやろう、これは午前中も申し上げましたように、国内の関連業界のみならず、日本に輸出を計画いたしております近隣開発途上国においても同じよりな影響があるということから、真剣に取り組みたいと思っております。
たとえば、いまインボイス統計の例で申し上げますと、絹織物一本で輸入数量がわかっても、細分化されてない限り、具体的にどの産地にどのような影響を与えるか、あるいは与えているかということの判断はきわめて困難なわけでございますので、これを少なくとも輸出統計並みの細分化した項目として整理したい、かたがたいまこれは検討の段階でございまして、インボイス統計となりますと、若干時期としてはおそいわけでございますから、一番いいのは契約段階、成約段階で何とか手が打てないかということで、現在検討を続けておるわけでございます。これだとだいぶ前の段階と申しますか、通関以前の段階においての判断材料をとることができるということでもございますので、統計的整備がむずかしければアンケート的な方法でもやれないかということで、検討を続けておるわけでございます。
いずれにいたしましてもそういったデータをベースにいたしまして、当面的に需給動向というものを関係業者によく説明をする、あるいは話を聞かせる。昨年の需給が逼迫いたしました際に、繊維品につきましても需給協議会というのをつくって、現在これはそのまま生きておるわけでございますが、そういった場でもこれは生産業者、輸入業者、あるいは消費者等も入っておるわけでございますが、そういった場で、一般的に検討を続けていくというのもまた一つの方法かと考えております。長期的な問題といたしましては、やはり海外と申しますか、近隣の開発途上国の経済実勢、あるいは生産体制、あるいは輸出の動向といったものも、これはあわせて調査していく必要があるかと思います。少なくとも当面的には、そういった統計の整備によってかなりの実効のある措置を期待できるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/103
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104・中尾辰義
○中尾辰義君 ですから、統計の整備とか、そんなものはけさも聞いたんですよ。契約の段階で何とかならないか、この何とかならないかというようなところを私は聞きたいのであって、具体的に何とかならないかというのはこれは話し合い、行政指導か何かで輸入を押えると、こういうことになるのですか、その辺ちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/104
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105・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) おっしゃるとおり、法的措置としてでの問題ではございませんので、需給の動向というものを頭に置いて輸入を最終的に各社が決定するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/105
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106・中尾辰義
○中尾辰義君 それはなかなかそう簡単にいかないような気がしますが、それは皆さんの要望でもありますので、ひとつよろしく頼みます。それから、ちょっと労働省の方が時間がありませんので、お伺いしておきます。
業界の要望にもありましたが、いま丹後あたり——私は京都におりますし、西陣、丹後はよく知っておりますが、あるいは栃木県あたりにいたしましても織機を休んで、従業員等を一時帰郷さしている、そういうような状態でありまして、完全に会社をやめれば失業保険をもらえるわけですけれども、会社に籍があって一時休むわけです。その間、業者として幾らか給料と見合って補償しているわけですが、この補償の点につきまして、非常にまあ業者としても負担が大きいのであります。それで、これも何とかならないか、できたら政府が相当な補助金なりいろんな保険なりの方法でひとつやってもらえぬかという要望でありますが、これはどういうふうなことをお考えになっていらっしゃるのか、まず最初に通産省のほうから……。あとで労働省に聞きますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/106
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107・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 中小企業についてレイオフの問題などがよく議題になるわけでございますが、御承知のように、事業主の責任において休む場合には、少なくとも賃金の六〇%を給付しなければならないということが規定がございまして、そういったところから、中小企業としましては一時帰休、あるいは若干でも仕事を休んだほうがいいと思うような場合にも、なかなかその給付が十分なし得ないために無理に操業を続けていく、そのためにますます悪化させていくといったような問題もございますので、現在国会で御審議になっている、労働省から出しております雇用保険法あたりが成立してまいりますと、その点におきましてかなりのプラスをもたらすものと、われわれとしても期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/107
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108・関英夫
○説明員(関英夫君) お答え申し上げます。
ただいまお話しになりましたとおり、現在国会に御提案申し上げ、御審議いただいております雇用保険法案におきましては、従来の失業給付のほかに付帯的な事業といたしまして雇用改善事業、能力開発事業、雇用福祉事業という三つの事業をいたすことにいたしておりますが、その中の雇用改善事業におきまして「景気の変動、国際経済事情の急激な変化、その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合における失業を予防するために必要な助成及び援助を行なう」と、こういうような雇用調整のための事業を新しく盛り込んでおります。ただ、この雇用保険法は、たとえ成立いたしました場合におきましても、現行の失業保険法を全面的に変える問題でございますので、施行の準備に時間がかかりますので、施行時期は五十年四月一日ということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/108
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109・中尾辰義
○中尾辰義君 それで中身について説明願いたいんですよ。いわゆる雇用調整交付金のこの中身はどうなっているのか、中身ですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/109
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110・関英夫
○説明員(関英夫君) 具体的な中身につきましては、法律が成立いたしましてから詳しく基準をきめると、で、来年度予算として具体化していく、こういうことになりますが、立案の過程から私ども関係の審議会等、あるいは国会の審議を通じまして申し上げております、現在考えております基準といたしましては、先ほど申し上げましたような、経済上の理由により休業を余儀なくされた場合に、事業主が平均賃金の六〇%以上の休業手当を支払った場合に、それを大企業については二分の一、中小企業につきましては三分の二補てんすると、こういうことによりまして事業主の経費負担を軽減し、解雇といいますか、そういう事態をできるだけ予防したい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/110
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111・中尾辰義
○中尾辰義君 そうしますと、まあかりに平均賃金が九万円とした場合に、その三分の二、つまり六万円を政府が補てんしてやると、あと三万円を事業主が払うと、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/111
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112・関英夫
○説明員(関英夫君) 平均賃金九万円の労働者に対しましては、労働基準法の上で最低限その九万円の六割を支払わなければならない、こういうことになっておりますから、事業主が最低限支払わなければならない金額は、九万円ですと五万四千円になると思います。で、五万四千円を事業主が支払う場合に、その二分の一を補てんしていく、こういう考え方でございます。ただ、この雇用保険法ができますまでの現在におきましても、事業主は労働基準法上少なくとも五万四千円は払わにやならぬわけですから、その半分を今度新しく補てんしていこうというわけですから、私ども実際の指導といたしましては、従来の六〇%の上に少しでも上積みして、現実に労働者に渡る休業手当が六割を上回るようになるように指導を強めていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/112
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113・中尾辰義
○中尾辰義君 大体失業保険並みということですな。まあいま隣で審議しておりますけれども……。
それで、この法律は施行が来年の四月から施行ですが、いまの一時帰休の方には間に合わぬわけです。ところが、いま何とかやってくれぬかと、こういう要望ですが、この点はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/113
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114・関英夫
○説明員(関英夫君) 雇用保険法が成立いたしました場合に、来年までの間に具体的にそういう事情が生じてきました場合には、私ども来年から施行されるものと同じような内容のものを、現行失業保険制度のワク内におきまして実際上措置するように考えていきたいというふうに思っております。
具体的に申し上げますと、現行失業保険制度にも、福祉施設というものが失業給付の事業に付帯して行ない得るようになっておりますので、その辺を活用することを考えていきたいとうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/114
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115・中尾辰義
○中尾辰義君 そうしますと、まあ零細企業なんかで今日失業保険に入っておらない人は、これはどうなるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/115
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116・関英夫
○説明員(関英夫君) 現在、製造業等につきましては、全規模につきまして適用することになっております。ただ、現在失業保険制度が適用になっておりませんのは、商業、サービス等の五人未満、それから農林水産業、こういうものでございます。ただ、これも五十年四月からは強制適用にするように雇用保険法案ではなっております。製造業につきましては、現在、規模の大小を問わず適用することになっております。たまたま適用の漏れがあるという場合も、現実にはごく零細な企業の場合にはあり得るかと思いますが、そういう場合にはそれがわかりますれば、少なくとも二年ぐらいは遡及して適用するということで、労働者の保護に欠けることのないように現行制度でなっておりますので、もし万一適用漏れが見つかりました場合には、直ちに適用していくという実際上の措置が可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/116
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117・中尾辰義
○中尾辰義君 けっこうです。
それから、通産省にお伺いしますが、この要望書にも安定操業の維持と公平な付加価値の配分の確保と、こういうふうに出されておるわけです。これはもう御承知のとおりに、流通過程におきまして非常に高いものになってきておりますし、その流通の問題が一つの大きな障壁にもなっているわけでありますが、この辺のところを今後何らかの対策を講じておやりになりますのか、その辺お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/117
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118・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 繊維産業におきまして、安定操業を阻害している理由は幾つかあると思います。その中の一つの大きな問題点は、いわゆる市況性という問題になるかと思います。今度お願いいたしております構造改善によりますと、異工程間あるいは異業種間の連携をはかって、消費者情報というものを生産段階にフィードバックしていくというような考えをとっております。したがいまして、この方向で知識集約化を進めることによりまして、従来のように工程が分断されておって、糸屋は糸をつくるだけ、織物は織物という段階では、どうしてもやはり消費者の情報はつかみづらい。それだけに一段と市況性を強めるという結果になっております。そういった面から、市況性を脱却していく。もちろん原綿、原毛といったように天然の原料を使っておりますから、その意味合いにおける市況性というものは完全に払拭し切れないと思いますが、今後の知識集約化の方向で、繊維が宿命的に持っておる市況性というものをだんだん解決していく方向に持っていきたい、かように思っておるわけでございます。
それから、付加価値配分の問題になりますと、これは具体的にはやはり取引改善の問題になるかと思います。一つには、いろいろと契約が不分明であったり、あるいは不当返品といったような問題もございます。そういったこともございますので、これに対する対策というものを強力に進めていく必要があるのではなかろうかということで、午前中にも申し上げましたように、取引改善のための協議会をつくりまして、そこでルールづくりをする。あるいは自主性の回復と申しますか、いままで賃加工、委託加工の立場にあった企業が、自主生産をするために必要な資金といったものを、商工中金を通じて融資していくというような方途をもちまして、安定操業並びに付加価値の配分の適正化ということを今回の構造改善の大きなねらいといたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/118
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119・中尾辰義
○中尾辰義君 それから、これも要望にもありましたが、織機の過剰設備の買い上げを何とかしてくれぬかということです。これはまあ先般のドル・ショックのあともあったわけですが、今度のこの構造改善では過剰設備の買い上げ、こういうものは全然ないわけでして、わずかに中小企業団体法による一対一のスクラップ・アンド・ビルドが義務づけられておる。しかし、一部の専門家では、もっと過剰設備を買い上げて抜本的な対策をこの際講じたらどうかという意見もありますし、また、業界のほうからの要望もあるわけですから、これに対する御意見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/119
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120・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 過剰設備の処理につきましては、現在、構造改善事業の一環としてその促進につとめてきたところでございますが、また反面、四十六年度からは日米交渉に伴ういわゆる臨繊特の一環として過剰設備の処理をやってきた。さようなところから、昨年の秋に出ました答申でも、いまの段階では、政府が助成する形で過剰設備を廃棄する必要はなくなったのではなかろうかといったようなことも言っております。
ただ、御指摘のように、将来ともにやはり過剰設備が発生するということに対しましては、十全の警戒を払う必要もございますので、本法案の四条にいう構造改善事業計画を進める場合にも、十分そういった点に注意していきたいと思いますし、あるいはいま御指摘の、団体法によるところの一対一のスクラップ・アンド・ビルドのルールというものは今後とも続けてまいりたい。ただ、将来の問題としまして、繊維産業の将来、非常にむずかしい問題を含めております。したがいまして、どうしてもやはり政府が助成する形で過剰設備を処理する必要があるといったような事態においては、全くそういったことを考えないというわけではございませんで、情勢の推移、変化というものを見ながら再検討いたしたいと思いますが、当面のところは政府助成の形をとらずに、団体法にいうところの一対一の廃棄で進めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/120
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121・中尾辰義
○中尾辰義君 それから今度の法案ですが、昭和四十二年から始まりました特定繊維工業の構造改善、これは七カ年目標でやったわけですけれども、あんまりこの結果が芳しくない。それで、今度は対象の業種を広げて、五年間延ばしてほしい、こういうことですが、これは七年間に芳しくないという結果ですが、なぜ芳しくなかったのか。また、うまくいったところもあれば、どうもうまくいかないところもあろうかと思いますが、その辺の理由はどうなのか。また、地域的に見てどの辺がうまくないのか。それから、今度は五年延ばしてくれと。この五年延ばしたらはたしてうまくいくのか。その辺のところを一括してお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/121
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122・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 現在やっております構造改善というのは、御承知のとおり、設備の更新、企業の集約化と、言ってみますと、ハード部門の強化とスケールメリットをねらってここ数年実施してきておるわけでございます。そういった点から、従来の労働集約的な繊維産業がかなり資本集約的な産業に脱皮し得たというふうに私たちは理解しておるわけでございます。
時間の関係もございますので、ひとつ労働生産性を例にとって申し上げますと、紡績につきましては、一こうりつくるのに、四十二年当時におきましては四・二人かかったわけでございますが、四十八年時点では二・六人にまで向上いたしております。それから綿、スフ織物につきましては、一人一年間の生産量が二万八千平米であったものが、四万平米に上昇しておる。それから絹、人繊織物につきましては、−同じく八千平米のものが一万三千平米に上がっておる。こういったことで、そういったハード面での近代化効果というものはかなり強く出ておるというふうに私たちは理解いたしておるわけでございますが、ただ、問題といたしましては、同一業種内における構造改善を実施したために、いわゆる工程分断をそのまま残してきておる。したがいまして、消費者情報をフィードバックするという点においてやはり問題があったのではなかろうか。あるいは、小規模零細企業がなかなかこの現行の構造改善に乗りづらかったといったような点も一つの反省点かと思います。
それから、先ほど御指摘になりました取引改善の問題につきましても、現行法では必ずしも十分できてなかったといったような反省のもとに、今回は、むしろハード面での成果を踏まえまして、ソフト面での繊維産業のいわゆる知識集約型産業への脱皮を促進していきたい、かように考えておるわけでございます。
それから、地域的に問題があったのではないかという御指摘でございますが、これにつきましては、産地的に別に特段の問題があったというふうには解釈いたしておりませんが、織布業につきまして一般的に申し上げますと、上のせ廃棄、一対一の原則に対しまして、新鋭設備一台導入するにあたって一・六台廃棄するといったような、いわゆる上のせ廃棄なるものを義務づけたということと、それから、スケールメリットを追求するという立場からいたしまして、生産規模の適正化を促進いたしますために、また、産地事情なり生産品種によって若干異なってくるわけでございますが、たとえば広幅の白生地織物につきましては、織機が百台から少なくとも三百台ぐらいと、かようないわゆる助成要件といたしまして適正規模化を条件にしておったといったようなところから、一般的に零細と申しますか、中小企業の中でも小さいほうの企業の方が現在の構造改善には乗りづらかったといったようなことがあったかと思います。そういったことを反省いたしまして、今回お願いいたしております構造改善では、むしろいま申し上げたような点に大きな重点を志向いたしまして、繊維工業全体の近代化と申しますか、知識集約化を促進してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
それから、五年でどうかという問題でございますが、これは率直に申し上げますと、繊維産業にかかわらず、一般に構造改善を実施する場合に、大体五年というのが通例の期間になっておりますので、それにならって今度の構造改善も五年という期限を切ったわけでございます。ただ、今度の構造改善におきましては、従来の四業種から全業種に及ぼしたということ、それから同一業種間ではなく、異業種間の連係動作をその構造改善計画の基本に置いているといったようなところで、関係の業界におきまして非常にまた努力を必要とする部門もあるわけでございます。さような点から、私たちといたしましても、できるだけ助成措置を講じまして、極力五年内に目的を達成できるようにいたしたい。ただ、むずかしい問題でございますから、拙速をとうとぶわけにもまいりませんが、反面、開発途上国の急速な追い上げという問題もございますので、現在のところ、私たちといたしましては、この五年間に所期の目標を達成いたしたい、そのための万般の努力をいたしたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/122
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123・中尾辰義
○中尾辰義君 それじゃ時間がありませんので、最後に大臣に、これは衆議院の答弁にも関係していますが、例の多国間の協定のことですが、衆議院の答弁では、通産大臣は、ガットを中心とした多国間の協定を締結しようということで、一応協定締結というところまでこぎつけた、これは成功であったと思う、今後は二国間協定の問題が出て、対EC及び対米というような問題についてわれわれの国益を大いに守って、しかも国際協調の実をあげるような成果を生むように努力していかねばならぬと思っておる、こういう答弁があったわけですが、一昨年の参議院の附帯決議におきましては、「一九七三年九月末の国際綿製品長期取極期限切れを機に、化合繊・毛を含む全繊維を対象とする多国間協定に切替えようとの動きがあるが、これを回避するよう努めること。」、こういうふうにあるわけですが、その間の事情をひとつ説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/123
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124・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 多国間協定が切れますと同時に、また二国間協定も期限がまいりますので、一昨年来これをどういうふうに処理するか苦心をしてまいりました。業界の各団体の意見も伺いまして、国益を守りながら多国間協定を結ばざるを得ないだろう、内容によりけりであるということでいろいろお打ち合わせもして、日本の国益を守るという基本的立場に立って訓令案を与え、そしていろいろ交渉したところでございます。最近、多国間の協定の内容はセーフガードを中心にして、そしてやや、公正な第三者機関がこれを判定するという形になりましたから、私はまあまあの成果ではないかと思っております。アメリカは、著しくこれに反対しておりましたが、最後にはヨーロッパより日本のそういう方向に同調したものでございます。この多国間協定を踏まえまして、今度は日米あるいはECとの関係の二国間協定ということに入るわけでございますから、よく日本の関係各団体の意見も聞いて繊維事情の国際的変化をわきまえ、かつ国内情勢もよく検討しまして、日本の国益を踏まえた二国間の交渉に入る準備をしてまいりたい、日本の関係業者間の意見はよく調整いたしまして、それを的確に把握した上で交渉に立つ場合には立たせたい、こう考えていま準備している最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/124
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125・藤井恒男
○藤井恒男君 午前からいろいろ質疑がかわされて、大かたの問題がもう出尽くしておると思いますので、できるだけ重複する面を避けて御質問申し上げたいと思うのです。
最初に、ただいま御質問のあったばかりの問題でございますが、要するに、ことしの一月一日から発効すべき繊維製品の国際貿易に関する取りきめ、これが三月十五日の閣議で決定を見たわけですが、いま質問の趣旨は、前参議院における商工委員会の附帯決議と、多国間協定を締結するに至った条件というものは相違しておるわけだから、その間の事情変更についての説明をお願いしたいという趣旨のものであったと思うのだけど、それはあまり大臣触れられておらなかった。それはそれでいいとして、今後、むしろこの妥結に伴って交渉しなければならない二国間取りきめ、つまり対米、対EC関係との交渉にあたって、まあ国益を尊重して対処したいというだけの答弁だったのだけど、対米、対EC関係に対する二国間交渉にあたって、業界内におけるコンセンサスを現在とり得ておるのかいなか。業界間にかりにコンセンサスをとり得ていないとするなら、どの辺に問題があるのか、そういった点を踏まえて、少し具体的にこれからの二国間交渉についての見きわめをひとつ説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/125
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126・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 先ほど大臣もお答えいたしましたように、対米交渉に先立ちまして、現在業界のコンセンサスをはかるべくいろいろと努力をいたしておるわけでございます。率直に申し上げまして、御承知のとおり、かつてのLTAあるいは毛・化合繊協定に基づきましての輸出の実績でございますが、ワクに対してやはりかなりの未達を残しておる。この現実をどういうふうに解釈するかというところが一つの問題の分かれ目ではなかろうかと思います。
と申しますのは、そこまでワクが未達である以上、いまさらバイラテラルを結ぶ必要がないのではないかという意見と、また反面、いままで十数年にわたりまして、好むと好まざるとにかかわらずLTAのもとに対米輸出が規制されてきておった。その実績を将来どう生かしていくかということによりまして、いま申し上げたワクの未達ということに対する考え方が、第一次的にやはり変わってくるわけでございます。具体的には、協定にいうところの第三条のセーフガードベースでいくのか、それとも四条にいうところの二国間協定でいくのかいう問題になってくるわけでございます。ただ、これはいまのところ絶対的な対立というわけではございませんで、それぞれが一番ふさわしい対米交渉のあり方を求めるための試行錯誤を重ねている過程である。将来、近い将来必ずその意見というものは、業界全体としても調整がつくものとわれわれも期待し、また、その方向で努力をいたしておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/126
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127・藤井恒男
○藤井恒男君 日米繊維交渉を結ぶときに一番懸念されたことと、日米繊維協定を結んだその後の実態、いまおっしゃった未達ですね。これはだれもが当初思っておったこととかなり相違したと思うのです。もちろん、それは品目によって多少の相違はあると思いますけど、総じて言うなら、これほどの未達が出るとは思っていなかった。この辺の事情はそれぞれの経済事情などもございましょうけど、私はそれだけじゃない、単なるこれは経済的要因、あるいは国内における需給関係という問題だけじゃなかろうと思う。もっと本質的な問題としてとらえてみる必要があろうし、これからの対米貿易という点を考えても、私は大体似たような傾向を歩んでいくんじゃなかろうかという気もするわけだけど、局長あたりではどのように見ておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/127
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128・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 予期と違って未達ワクを多く残したという点、いろいろ理由もあるかと思いますが、大きな一つはやはり日本の繊維産業の国際競争力、これが開発途上国に比べまして、少なくともコスト的には非常に後退を余儀なくされたのではなかろうかという問題が一つございます。それから、ここ一、二年を振り返ってみますと、国内の需給動向が非常に目まぐるしい変化を続けておるという問題もございますし、国際通貨制度と申しますか、為替レートが非常に動いたといったようなことも影響いたしまして、初年度以外は二年度、三年度と——三年度は目下まだその途中にあるわけでございますが、十分そのワクを満たすところまでの輸出ができなかった大きな原因ではなかろうかというのが、私の判断でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/128
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129・藤井恒男
○藤井恒男君 いずれにいたしましても、私の仄聞するところでは、必ずしも主要の業界の間にあって、これからの二国間の取りきめ等について完全に意見の合意を見ておるとは思っておりません。やはり、この辺のコンセンサスを十分得て二国間協定に当たっていただきたいということを、特にお願いしておきたいと思います。内容についてはまあ省略いたしたいと思います。
次に、本法についての問題ですが、二年有余にわたって検討された結果として、七〇年代の繊維産業のあるべき姿を求めて、本法が現在まさに審議を終了して、成案を得ようかという状況に立ち至っているわけですが、本法は、旧来の繊維産業における構造的欠陥を是正する唯一最後のチャンスであろうと私は思っておるわけです。
従来の構造改善対策というものは、繊維素材から製品という、いわゆる製品化の流れを軽視して、紡績、織布、染色、あるいは縫製、こういったような段階別の横割りの施策であったわけです。その点私はいろいろ問題があったと思うわけですが、この今回の改正法案によって知識集約化を柱とした縦の結びつきを重視したということは、一般的な繊維というものの流れを見て評価すべきであろうというふうに私は思っております。しかし、今回のねらいとするこういった方向というのは、従来の横割り施策というものにならされてきた行政、あるいはこれを受けとめるところの業界にとっては、なじみにくいという面がたくさんあるんじゃないだろうか。それだけに、今回のこの法案が通ったといたしましても、その運用というものについては十分意を配しておかなければ、効果を生むことができないというふうに思うわけです。逆に、運用というものについてよろしきを得るなら、私は、画期的な効果というものをまた期待することも可能であろうというふうに思っております。
そこで私は、基本的な問題について一、二お伺いしますが、その一つは通産大臣は、繊維工業審議会の意見を聞いて、繊維事業者に対する基本指針というものを策定するということになっております。これは私は、本法における、基本的な基準になるものですから、背骨であろうというふうに思っておるわけですが、この基本指針というものについて、今後の繊維産業の構造改善の方向づけというものをきめるわけですから、現在手元に持っておるところの基本指針なるものについてのお考えを聞かしてもらいたい。
同時に、生活産業局から出ておる新繊維産業構造改善対策という解説書が出ておりますが、これは私、まれに見るよくできたものであろうというふうに思っております。たいへんわかりやすいし、親切にできておるわけですが、この中にも、あるいはその他の役所から出る文章の中にもひんぱんに使われることばに、知識集約ということばがありますね。本法の柱になるのもそうでありますが、あるいはファッション化というようなことば、このことばは現在もう慣例語みたいになっておるものの、非常に範囲の広い受けとめ方を各人各様にしておる。まして、今回は、これまでの特定繊維の構造改善措置法に乗れなかった中小零細企業が喜んで今度の本法の成立を望んでおるし、これに乗ってこようとしておるわけですが、そういった方たちをも含めて、知識集約化というものについてのやはりはっきりした定義と言いますか、考え方を明示しておく必要があろう。
学者なども、いろいろ本法についてのコメントを出しておるわけだけど、それぞれに知識集約化なるもののことばの解釈をしておるし、あるいはファッション化産業という解釈についても、それぞれの受け方によって違うわけですね。そういった人たちがいろいろな講演会とか講習会に出て、私は、繊維産業のあるべき姿としての知識集約化をこう見ます、あるいはこちらの人は、ファッション化産業とはかくかくいうものでございます。地場における地方の経営者はそれを聞いて、これは絶対唯一のものだという解釈のもとに自分なりの絵を描いて、そして本法を見詰めている。で、できたものとは全然かみ合わないというようなことにも私なりかねないというふうに思うのです。そういった意味で、少なくとも役所が考えておる、そして本法にいうところの知識集約化とはこういうものですよ、あるいはファッション化産業というものはこういうものですよと、それを踏まえて基本指針というものはこういう絵になるんですよということを、やはり本法が施行される前に明示しておったほうが、私は親切であろうというふうに思いますので、あえてこの辺について最初にお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/129
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130・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 「(基本指針)」といたしまして、基本計画と書かなかった理由は、これはガイドラインというそういう性格を持たせるために誘導目標となる基本的な事項と、そういう意味で書いてあるのでございます。
一口に繊維工業と言っても、業態は多種多様であり、業者間の結びつきも非常に複雑多種であり、その内容を個別、具体的、定量的に定めることは非常にむずかしい。一般的、抽象的、定性的にならざるを得ないと思うのであります。そういうような点から目標年度における繊維工業のマクロ的な計画を定めなかったというのは、マクロ計画をつくってみても、知識集約化という観点から見た場合、これを個々の構造改善事業計画の具体的承認基準とはなしがたい、法定計画することの意味が特に認められない、そういう意味から非常に大まかなガイドライン、定性的に考えておるものであります。
そこで、基本指針の内容として考えておりますのは、まず第一は、わが国繊維工業の構造上の問題点を考えておることです。零細性、工程間の分断と賃加工生産形態、それから上流偏重、量産偏重、輸出依存、流通経路の迂回性、それから市況性ということです。で、現行の構造改善事業は、このような構造上の問題点はすべてに応じることができておりません。特に将来性という点についていろいろ考えるべき問題があるわけであります。また、今後のわが国の繊維工業は、繊維品の品質、数量、価格及び安全性等に関する国民的要請に十分に応じ得る体制を確立するとともに、合理的な国際分業を推進し得る産業への脱皮をはかる必要があります。このためには、これまでのような繊維工業の資本集約化だけでは十分ではなく、知識集約化を進める必要があると思っております。
新商品または新技術の開発という点に関しては、異業種間の提携によって消費者情報を的確に収集または処理する機能の強化をはかる、高品質の製品を開発する機能、技術を開発する機能等を強化する必要がある。こういうような考えに立って、この場合、高品質の製品の開発機能、技術開発機能の中には、デザインとか色彩というような外観、着ごこち、取り扱いやすさ、各種の強度等を広く含んで考えなきゃならぬと思っております。
さらに、設備の近代化という点については、省力化、合理化、公害防止、機械設備の導入を積極的に行なう必要がありますし、機械設備の導入を行なうにあたっては、老朽設備の廃棄につとめる必要もあります。
生産または経営の規模、または方式の適正化という観点に関しましては、生産または経営の規模の適正化の問題があります。事業の共同化等を推進することによって、それぞれの生産品種に応じた生産規模の適正化をはかるとともに、販売力、原材料の購買力、市場開拓力、技術開発力を含めた総合的な企業力の強化、すなわち、経営全体の規模の適正化を進める必要があります。
次に、生産または経営の方式の適正化という問題があります。共同事業を行なうとする異業種の事業者の有する生産設備の種類、能力等の間にバランスがとれている等、生産設備の組み合わせが適切なものであるとともに、共同商品開発研究所の設立、計算事務の共同化、ブランドの統一といった経営方式についても、その適正化をはかる必要があります。
最後に、取引関係の改善に関する事項がございます。賃加工形態からの脱却、商品の仕入れ、管理、販売等に関する諸契約の文書化、価格の決定の方法、納品検査の方法、返品の方法、その他の取引条件についての改善、それから共同購入、共同販売における取引条件の改善、その他繊維工業の構造改善に関する重要事項、たとえば福利厚生施設の充実、給与体系の合理化、雇用条件の改善等の労働者に関する事項、産業公害の防止、あるいは一般消費者の利益の保護等に関する事項、こういうようなことを基本指針の内容として一応現在のところ考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/130
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131・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 私から知識集約化ということについてお答えいたしたいと思います。
このことばが一般的に使用されるようになりましたのは、四十六年の五月に、七十年代の通商産業政策の基本はいかにあるべきかという大臣諮問に対しまして、産業構造審議会から中間答申が出たわけでございますが、その中で使われ出した、こういうことでございまして、じゃ、その知識集約化とはどういうことかというと、なかなかむずかしい問題でございますが、知的活動を中心とした経済活動を促進するということではなかろうか。その場合の知的活動と申しますのは、研究開発、デザイン、専門的判断、各種マネージンメント、このほかにも高度の経験、知識にささえられた技能発揮、こういったものを含めまして広く経済活動について知的能力の行使をさす、こういう定義づけをいたしておるわけでございます。これだけでもなかなかわかりづらいわけでございますが、これを具体的に繊維に当てはめて申し上げますと、やはり繊維産業としては、発展途上国の追い上げに対しまして、今後わが国独自の商品分野というものを開発していく必要があるんじゃなかろうか。
と申しますのは、発展途上国の商品といたしましては、主としてやはり豊富、底廉な労働力を背景とした製品が多うございますが、これに対しましてわが国では需要が多様化し、個性化し、高級化いたしておりますので、これに即応できるようなより価値の高い高級品、中級品を中心とした商品分野の開発を進めていく。
別のことばで申し上げますと、多品種少量生産、高付加価値化を進めると同時に、流通を含めた企業グループのシステム化、こういう形になるかと思います。先ほど、ファッションということばを先生お使いだったわけでございますが、そういった意味合いにおきましては、いうところのハイファッションではなくって、マスファッションといったようなものがこれに該当してくるかと思うわけでございます。
若干、商品的に具体的に申し上げますと、分繊糸を使った極薄の織物、たとえば女性のブラウス用に使う織物とか、あるいはスプリングコート用のツィードに使うための特殊衣装の撚糸による織物だとか、一例ではございますが、こういった分野の商品を開発していくということのための知的活動、こういうことになるかと思います。
そういった知識集約化を進めるにあたりまして、今回の法案で考えているタイプは三つございまして、一つは、すでに単一事業を行なっております商工組合あるいは事業協同組合が、自分の事業と異なる種類の事業を行なっている他の商工組合あるいは事業協同組合等の団体と提携してやっていく場合が一つでございます。それから第二は、現に異なる二つ以上の種類の事業をあわせ行なっておる商工組合等が構造改善事業を行なっていく場合。それから三つ目は、いま申し上げたようなもののほかのケースといたしましては、出資して新しい会社をつくる、あるいは合併して新しい発足を遂げていく。こういった三つのタイプが考えられるわけでございますが、そのいずれの分野におきましても、やはり事業相互の関連性というものを重視いたしまして、これは省令で規定いたすことにいたしております。
それから、それぞれの業界におきましては、自分の実態に合わせまして検討を進めておるようでございまして、たとえば綿、スフ織物業界におきましては、従来のようにやはり工業組合と申しますか、構革組合を中心とした構造改善を適当と考えておるようでございますし、一方、メリヤス業あるいは縫製業におきましては、産地単位のものよりも、事業協同組合方式をとったほうがむしろ実態に合うといった方向で検討いたしておるというふうに私どもも聞いておるわけでございます。
いずれにいたしましても、そういった方向で織維産業を、従来の労働集約型産業から資本集約型産業まで脱皮してきたわけでございますが、この効果をさらに踏まえて、知識集約型産業として脱皮さしていくというのが大きな方向になってくるかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/131
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132・藤井恒男
○藤井恒男君 知的活動を中心にしたものでいくのだということになれば、いままでの繊維産業がきわめて稚拙であり幼稚であるということにこれなるわけだけど、それはことばのあやだと思いますが、いずれにしましても、私自身、今度の産構審の答申並びにそれに対するコメントなど、いろいろ調べた上で各産地、各業界にこのアンケートをとってみた。小さな産地も各業界もすべて新法についてもろ手をあげて賛成だと、早期の実現をお願いしますということだけど、そのあとに続く希望などをずっと調べてみますと、まさに同床異夢といいますか、てまえみそに今度のこの法案を解釈しておる向きが多いのです。生活産業局としては、事前に地方の通産局を通じて説明会などもやったようですけど、まだまだこの七〇年代のあるべき姿という、そのあるべき姿というものが完全に見詰められていない。したがって、せっかくこれほどみんなが早く成立をと願っている本法案の趣旨というものをよく徹底させなければ、法案が通ったからやれやれというんじゃなくて、これからの問題として、もう少しかみくだいて、ほんとうに十台、二十台の織機を動かしている機屋のだんな衆にも、なるほどこういう姿が展望されるのだなというPRのしかたを十分やっていただきたい。そうしなければ決してこの法案になじんでこない。まして、一昨日の参考人のときにもデータを示されたように、縫製業の場合には九九%が零細企業であるという状況の中で、その人たちが全部参加してくるわけですからね。よっぽど考えて説明しなければ、いまの局長のようなお話をされても私はチンプンカンプンで、みんな何を言っておるのかさっぱりわからぬことになりかねないと思う。よくこの辺のところは省内ででも意見を戦わして、みんなが得心できるようなPRの資料をつくってあげてもらいたいと、このことを特に私、お願いしておきたいと思います。
それから一昨日、紡績、綿工連、あるいは絹人繊、染色、タオル、縫製、それから二つの労働団体からいろいろ本法ということよりも、それぞれの置かれておる業界の今日的な問題と、それに対する希望などを聞かしてもらったわけです。午前中の辻さんや中尾さんの御質問でほぼこれらについては解明されておると思いますから、私は抜けておる点を補足してこの際お聞きしておきたいと思うんです。最初に、緊急融資の問題、それから企業の借り入れ残金に対する償還猶予の問題についてはもう質問が出ておるわけですが、確認の意味で一言だけお聞きしておきたいんです。
緊急融資については、とりあえず四−六について五千五百億のうち千五百億を繊維に回す、あるいは繰り上げ分千五百億ぐらいは確保したい、それ以外に、中堅企業に対しては市中銀行でおよそ三千二百億ほどのものを振り向けたいということであったわけですが、この場合に、これはお願いですが、せっかく中小企業信用保険法で担保力を補完する形が今回とられたわけですから、十分これを活用して、現在も中小の場合には担保力が全然ないわけですから、あたたかい、行き届いた配慮をするように、それぞれの関係機関に御伝達いただきたいと思うんです。
それから、既往の返済猶予の問題については、税の延納、あるいはケース・バイ・ケースによる猶予措置をやれということは、早く大臣のほうから書状が出ておることを私も拝見しておるわけですが、いままでも返済猶予がかなりたまっておることも事実です。しかし、今回これをやるにあたってケース・バイ・ケースということになると、ともすればこれは企業ごとということになっていくわけですね。企業ごとに返済猶予の手続をとるということは、口で言ったらたやすい。ケース・バイ・ケースでやるんだからと言っても、実際は非常にむずかしい。したがって、できればせめて産地ごとぐらい、商工組合なら組合でもいいんだけど、組合を対象にするか、産地ごとぐらいに私はまとめてこの返済猶予という措置がとれないものか。名個ばらばらに、たとえば知多の産地なら、おまえのところ、どっかへ行くなら一人で行けよということになると、これはなかなかできるものじゃないから、知多なら知多、あるいは播州なら播州、泉南なら泉南というように産地を区切って償還猶予ということがやれぬかどうかですね。置かれておる立場も、個々の企業というより産地ぐるみの問題が現在浮き彫りに出ておるわけですから、それを大きくすれば村ごとということになっていくわけですから、その辺のことだけひとつ聞いておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/132
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133・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) けさほどもお答えいたしたわけでございますが、四十二年−四十八年の期間における猶予率は、すでにケース・バイ・ケースと言いながら九〇%若干上回っておるといったような状況でもございますし、かたがた、この金というのはまた還流いたしまして、新しい貸し付けの財源にもなるというような点もございますので、やはり一律、一括というのはなかなかむずかしいかと思います。
そこで、先生の御提案の産地ごとにということになるわけでございますが、もちろん、組合が一括して金を借り入れまして、それを組合員にレンタル方式で設備として渡し、一定期間たったところへ所有権の移転を行なうといったような、いわゆる組合借り入れという形をとっている場合におきましては、そういったことも可能かと思います。また、半面からいたしますと、これは中小企業振興事業団についてでございますが、こんなに猶予率が高いというのは、そういった組合の転貸方式をとっておる、一括借り入れ方式をとっておるといったところからさように出てきておるんだと思いますが、ただ、それ以外のものにつきましては、一括もしくは産地としてまとめてということになると、なかなか現実論としてもむずかしい問題がございます。したがって、ケース・バイ・ケースと申しておりますが、事実上出先の通産局等においても、あるいは府県庁等においても、そういった実情に応じて十分お手伝いしながら銀行とも話し合いをすると、また、問題があるものについては本省のほうにも上げてくるようにといったようなことで指導いたしておりますので、要は、企業を倒産に追い込まないような形で猶予をどういうように続けていくかということかと思いますので、実情に応じて十分と配慮してまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/133
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134・藤井恒男
○藤井恒男君 これは通り一ぺんに考えておるんだよと、だからケース・バイ・ケースで処理しますというだけでは下までおりませんから、その辺はよくひとつ考えてくださいよ。ほんとうに現場で仕事をされる人に、このことをよく通知してやらなければ、下まで通らないという危惧があるわけです。これはそういった意味でとどめておきたいと思います。
それから、現在中小が一番困っておるのは、何といっても在庫の問題なんです。在庫については、どうして在庫ができたんかというようなことは、もう私ここでは申し上げませんけれども、具体的な措置として、とりわけたくさん在庫をかかえておる綿布ですね、七億ほどの輸入に泣いておるわけです。泉南で、過日、綿布を焼いてしまったという状況が出ました。これは私は、率直に申し上げてまことに遺憾なことだと思うんです。そこに置かれておる業者の立場というものは、それほどまでしなければならないせっぱ詰まった感情というのは理解できますけど、しかし、ものを大切にしようという現在の世相の中にあって、勤労の結晶として生み出した貴重な綿布を灰にしてしまうということはこれはいけないことだと、この辺について私、その業者だけを責めるんじゃなくて、行政指導に当たっている通産省もやっぱり考えてもらわなければいかぬと、えりを正すべきだと思うんです。あれは業者がかってに焼いたんじゃ私は済まされないと思う。しかしまあ、これはできてしまったことです。
そこで、それほどせっぱ詰まっておるという状況にあるわけですから、綿織の方たち、それから同じように困っているタオルの方たちと一緒に厚生省に参りました。たとえば、現在政府機関によって保護されているところの施設の子供さんたちが、大体百五十万ほど日本におるわけですね。それ以外に寝たきり老人もいらっしゃるし、あるいは老人ホームもある。要するに、社会福祉として厚生省が管轄している老人あるいは身障者、あるいは子供さん方、こういった人たちの繊維の需要というものはばく大なものなんです。したがって何とか、片方は綿にしてもタオルにしても、在庫をかかえて上げも下げもならぬという状況にある。片方は、社会福祉として一方そういった人たちに対する需要がある。しかも月々製品は上がっていく。そして国民の税金でそういった人たちに物を渡していかなければならない。こういう状況があるわけですから、バングラデシュとか外のことよりも、わが国の中でこの問題を措置したらいかがなものかということを提言いたしまして、厚生省としてもたいへんいいお話であるということで、さっそく通産省のほうにもお願いしたような次第なんです。その後、これについてどういうふうな動きになっておるか、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/134
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135・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) ただいま御指摘の問題につきましては、先日、当方から厚生省の関係部局に対しまして繊維の不況の現状、あるいはそれに対して現在とりつつある対策等を十分に説明してまいってきたわけでございますが、聞くところによりますと、厚生省におきましては、いわゆるそういった社会福祉施設等でどのような種類の繊維をどの程度必要とするか、さっそく検討に入っておるというふうに聞いておりますので、これができるだけ早く実現することを期待し、また、われわれとしても、今後引き続きまして厚生省と十分コンタクトをとっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/135
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136・藤井恒男
○藤井恒男君 大臣、これはひとつ大臣に私お願いしますが、簡単な数字で申し上げますと、ことし三月の綿布のメーカー在庫は、前年同月比に比して一九三%、たいへんな在庫ですね。一方、いま申したタオルは六三%になる。しかもこれらの業界は、ほとんどは中小零細企業であるという状況にあるわけです。私、たいへんこれはうまくいけば、今後はスポットの今日的な問題じゃなく、継続したものとしてやっていきたいと思うんだけど、この本法が施行された場合の姿がかけるわけですね。
たとえば、寝たきり老人のところでおしめがたくさん要るんだとすれば、私はいま綿織りの人たちと、あるいはこっちのその他の加工業者が一緒になってそれを供給する体制ができる、すなわち、異業種間の結合がそこで生まれてくるわけです。いままで中小零細では、異業種間の結合といったって非常にむずかしいけれども、そいつが生まれる。しかもそれが中間マージンをカットして、産地から直接厚生省のそれぞれの施設へ製品が流れていくとしたら、市場価格よりはやはり安い品物が流れていくということになる。それが社会福祉につながっておるという状況になる。そして、先ほど子供さんだけでも百五十万おるということでかなりな需要がある。そうすれば、いままで好不況の波に絶えず洗われておったこの種の織物の業界というものが、月々コンスタントに安定操業の基礎ができる、非常に私はいいことだと思うんです。そういった意味で、大臣もおそらく否定なさるまいと思うわけだけど、直接大臣から厚生大臣のほうにお話しいただいて、厚生省としても長年、いままでこれらの流通経路というものを持っておられると思うんですよ。新たにここに組み入っていくわけですから、社会保障についてのそれぞれの審議会、委員会なども既存のものがあるわけですから、なるべく早い形で、まずトライアルにこれをやってみる、できればそれを継続的なものに積み上げていく、そうすれば、ユーザーである社会福祉の関係者も安いものが手に入るし、一方、供給側も現在の在庫調整もできるし、将来にわたって安定的に安い品物を社会福祉として供給できる、こういうことになるわけだから、せっかくのひとつ御努力をいただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/136
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137・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 厚生大臣に相談をしてみます。問題は、財源という問題があるだろうと思うんです。そういう財源の点について大蔵省その他とも関係もございますから、アイデアとしては、私はけっこうなアイデアであろうと思いますから、よく相談してみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/137
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138・藤井恒男
○藤井恒男君 ぜひお願いします。
それから、せんだって新聞紙上で拝見したんだけど、局長は、滞貨の買い入れについては政府で直接手を入れることはできないけど、民間で買い上げの機関をかりに設置するなら、その機関に対して融資することはやぶさかじゃないというふうな発言をなさっておる記事を私、見たんだけど、これはそのとおり、額面どおり理解してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/138
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139・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 私が衆議院のほうの委員会で申し上げましたのは、いわゆる中小企業に対する金融についていろいろお話が出ておるわけでございますが、たとえば毛紡績業あるいは染色業、あるいは縫製業等の一部につきましては、巨大企業ではないわけでございますが、いわゆる非中小企業ということで、中小関係の機関からの資金融通ができないものがある。そういったものにつきましては、市中銀行にそれぞれの取引銀行を通じて必要な在庫手当て資金を確保できるようにやってみたいと、かように申し上げたわけでございまして、特別の買い上げ機関云々といったことにつきましては、発言いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/139
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140・藤井恒男
○藤井恒男君 それじゃその次に、手形サイトに対する質問もたくさん出ましたので省略しますが、一つだけ、通産省としてのお考えをお聞きしたいんです。
それは、先ほど中小企業庁のほうからのお話でも、四十六年から歴年調査したものだけで年々一万件ある。しかもその中から、立ち入り検査したものだけでも歴年四百件という数字が出てきたわけです。で、大体手形サイトは、参考人の陳述にもありましたけれども、そのときも私、申したんですが、直接中小零細企業者の戸口に行って訪ねると、手形サイトの問題で泣いておるということを言われるわけだけど、だからといって、この支払い遅延防止法に基づいて措置するかといえば、報復措置をおそれてみんな泣き寝入りしておる、そして、手形サイトの長期化というものがもはや
一般化されておるというのが現状です。したがって、書面調査、あるいは出てきたものについてはそれじゃ立ち入り検査もしてみましょう、あるいは悪質なものは公取に持っていってみましょうということでは、この慢性化した手形サイトの問題を解決することにはならない。だから、この辺のところを取引改善ということについて協議会もつくるということですから、さっそく手を加えることだとは思いますが、十分考えてもらいたいと思うんです。
同時に、この取引改善についてもいろいろ意見が出ておりました。通産省でつくったところのこの資料の中にも、全くこの取引改善での現在の問題点というのがよくまとめられておるんです。で、取引契約の不明確、期日や運賃、経費などについて契約それ自体が不明確だと、先ほど大臣が文書にしろと言われたわけだけど、これらもまさにそのとおりだし、あるいは歩引きの強要、見本引きの強要、不当返品、一方的キャンセル、代金手形サイトの長期化、派遣店員の強要、宣伝費の割り当て転嫁、支払うべき代金にかかわる物品の押しつけ、委託販売制度の強要、まさにそのとおりですね。これだけ調べ上げておられるわけだから、私は、今後、これを改善協議会を設置して善処していくというようなことになっておるわけですけど、もう少し今日的な問題、日々の問題として積極的に地方においてこの種の問題について割って入るということができないのかどうかを、手形サイトの問題並びに取引関係の問題としてお聞きするんです。
同時に、もう一つ、あわせて宿命的にこの種の不当不正な取引の中に泣かされておる業界、宿命的な業界の仕組みがある。染色業界についても、あるいは二次加工メーカーについてもサンドイッチの状況にある。置かれておる立場が受託業である。だから受託して、そしてそれを納めるわけですから、見込み生産もできない。そうすると、結局、上からも下からも押しつけられて動きが取れぬというこの宿命を何とか脱皮しないことには、私は、本質的な解明につながらないというふうに思うわけですね。糸買い商品売りという俗なことばがありますけれども、要するに、ほんとうの意味で一本立ちするという形にまで持っていかなければ、このことは解決しない。単なる加工賃かせぎという域を出ないわけです。この辺のところもあわせてお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/140
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141・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) まず、取引改善につきまして、個別的なケースについて調整なり行政指導をしてみたらどうかという御趣旨でございますが、これにつきましては、私たちもその方向で努力いたしたいと思います。ただ、一つ注意しておかなくちゃいけませんのは、こういう問題がいわゆる商業取引での面での問題であるということでございまして、やはり警察取り締まり的な取り締まりをやることによって二度目、三度目の注文が出てこなくなるといったことになりますと、結局、角をためて牛を段すようなことになってもまずい。かといって、また放置しておくべき性格の問題でもないといったようなところから、いわゆる取引改善のための協議会をつくりたいということでございますが、ここではルールづくりをするというふうに申し上げておりますが、これはことばをかえますと、やはりそういったものが一般化されていく方向で持っていく。個別のものについてやりますと、あとでそれに対する報復措置といったようなことになりますと、問題はむしろ大きくなってしまう。われわれといたしましてはルールをつくり、かつそれを一般的なものに持っていく。もちろん、なかなかなまやさしい問題ではないかと思いますが、一般化していく方向において取引改善の歩を進めていくというのが、いろんな面を考えてもきわめて大切な方法ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
それから受託加工、いわゆる下請問題につきましては、一つには、自立していこうという企業に対しましては商工中金で百六十九億の金を準備いたしまして、そういった必要とする資金を融通していきたいと考えておるわけでございますが、半面、これもまた考えておかなくてはいけないのは、それぞれの個々の企業の実力と申しますか、経済的あるいは技術的能力等も十分考えませんと、むしろ結果としてマイナスになる場合もございます。そういった場合におきましては、結果的にはやはり取引条件を改善していくというような対処のしかたも、むしろ現実的な問題の解決方法ではなかろうかと考えておりますが、いずれにいたしましても、今回の構造改善の実施にあたりましては、取引条件の改善といった点に大きなポイントを置いて実施してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/141
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142・藤井恒男
○藤井恒男君 それ以外に商品取引所の改善に関する問題があるわけです。この商品取引所の問題については、すでに定期市場小委員会というものから答申が出されて、改革の方向が示されておるわけですが、繊維について言うなら、少なくとも諸外国の状態とわが国の状態とは違うわけですね。諸外国で見ますと、天然繊維原料が定期市場に上場されておるわけですが、繊維製品の上場されている例はあまりない。わが国の場合は繊維製品が中心となっておるわけで、これはわが国の繊維産業の構造自体の問題として、また、市況産業としての位置づけをしてきた政策上のある意味での欠陥じゃないかと私は思うわけです。とにかく、今日の取引所のあり方を見てみますと、たとえば高値に際しての規制があっても、安値の場合にはどうするのか、不明確である、投機の対象ということになる、こうなってくると、生産性の向上とは無縁のものとなって、物価対策という面からも私好ましくないというふうに思いますので、いずれ、商品取引所のあり方というものがいずれかの場所で論議されることと思いますが、繊維について繊維の立場からこの商品取引所のあり方についてどのように考えておるか。私は抜本的に改善していくべきだという考え方を持っておるのですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/142
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143・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 今回の商品取引所に関連いたします答申につきましては、いろいろ制度改善の基本的方向は打ち出されておるわけでございます。たとえば、「固定化している現在の上場商品に関し、経済の実態に即応させるため、上場商品の法定主義を改める等上場及び廃止手続を簡素化すること。」といったような方向も示されておりますし、ただいま御指摘になりました市場管理につきましては、「市場の推移に即応した市場管理対策の自動的な発動基準を予め策定しておくこと。」これは上限、下限を言っておるのじゃなかろうかと思いますが、こういった基本的方向を示されておりまして、その中で、法律を必要とするものにつきましてはできるだけ早い通常国会で、あるいは、法律を要さないものについてはできるだけ早く実施に移していくというふうに聞いておるわけでございます。
繊維につきましても、いま申し上げたような方向でいろいろ検討する必要があるかと思いますが、上場商品をどういうふうに繊維製品について整理していくかということは、それぞれにやはりメリット、デメリットがございますので、いわゆる公正な価格形成ということのほかに、リスクのヘッジといったような問題もございます。それを今度は糸製造メーカーの立場から、あるいはそれを使用する機屋、あるいはメリヤス業の立場からどう考えたらいいか、また、これは景気の好不況によっても情勢も変わってくるといったような問題でもございますので、そういったメリット、デメリットといったものを十分検討いたした上でないと、なかなか軽々に結論を出し得ない問題ではなかろうかと考えておるわけでございますが、引き続きこれを所管する局のほうとも十分連携をとりながら検討いたしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/143
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144・藤井恒男
○藤井恒男君 答申の中に、構造改善推進の過程においては企業の転廃も予想されるが、再就職確保等労働不安の解消のため十分配慮する必要があるということが明確に示されておるわけです。百七十五万の人たちが繊維産業でめしを食っておるわけでございまして、きわめて重要な問題だと思うのです。この点については所管が労働省であろうと思いますので、労働省のほうからこれに対応する考え方をお聞きしておきたい。操短一時帰休等に対する休業補償の問題は、先ほどの御答弁がありましたので省略いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/144
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145・鈴木新一郎
○説明員(鈴木新一郎君) 今回の繊維工業の構造改善事業は、われわれ雇用面から見ましても、ここに働かれる方の雇用の安定あるいは改善に終局的には役立つというものでございまして、私どもとしましても大いに御協力申し上げて、この事業が円滑に進むようにしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
具体的に現在考えております措置でございますが、一つは、この過程でできるだけ離職者が出ないようにすることがまず大切だと思いまして、こういう事業転換を行なう場合には、必然的に従業員に対する職業転換のいろいろな訓練、これを十分におやりになっておりますので、その辺の助成措置を構じてまいりたいと、これをまず考えております。
それから第二点は、不幸にして一時的にしろ離職者が出た場合には、われわれの持っております組織あるいはいろいろな制度を使いまして、できるだけ早く再就職の道を講じていきたい、このように考えておりますが、特に私ども考えておりますのは就職困難の方、おそらく高年齢の方が困難だろうと思います。こういう方については、そういう方たちを雇い入れる事業主に対しては、雇用奨励金というのを支給してこの推進をはかっていきたい。現在この制度は一私どもとしては身体障害者とか、あるいは同和対策とか、まあ言ってみれば、私どもとしては一番重点対策としてやっておる対象にこれを支給しておるわけでありますが、そういうものを支給しまして万全の措置を講じていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/145
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146・藤井恒男
○藤井恒男君 俗に繊維産業といえば婦人労働、そして繊維産業といえば若年労働者というふうに見がちでありますが、繊維産業の中で九十数%を占める中小企業は、一度ごらんいただきたいと思うのだけど、まさに中高年齢就職所という観を呈しておるわけです。ほとんどといっていい方がもう中高年齢層です、中小企業の場合は。これは大多数なんです。だから、一般的にいわれていることを実態が非常に違う。いまおっしゃったようなことなどはたいへん私はいいことだと思うし、ぜひ御努力いただきたいというふうに考えます。
この陳述の中には、そのほかに企業の海外進出のあり方、中堅企業の育成の問題、織物等における輸出の振興策を講ずべきだというような貴重な御意見などもたくさんありましたが、橋本局長も同席しておられましたから、時間もないのでここでは省略します。ひとつそれらのことについても今後の課題として善処をお願いいたしたいと思います。
あまり時間がございませんから先に移りますが、無籍の問題について現状をひとつお聞きしておきたいと思います。たいへん混乱する中で無籍織機が大量に発生し、その後、無登録織機登録の特例法が施行されたわけです。したがって、それに照らして現在どうなっておるか、その状況をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/146
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147・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) 無籍織機につきましては、さきの第七十一国会で成立いたしましたいわゆる織機の登録の特例等に関する法律に基づきまして、昨年九月の十七日から十一月の三十日の間に届け出を受けております。その後四十八年十一月十六日から十二月の十五日の間におきまして登録申請が行なわれ、事業計画及び資金計画は三月二十日付で通産大臣の認可を出しておるわけでございます。届け出されました織機の台数は約十六万台、今後五年間に織機の縮小計画と申し上げますか、廃棄計画は約五万五千台ということになっております。
かようなことを前提といたしまして、今後無籍織機の取り締まりにつきましては、再びこういった無籍織機が発生いたさないように十分監視体制を強化いたしますと同時に、違反者に対しましては戒告、公表等を徹底すると同時に、状況によっては事業停止の命令を発動する、かような方向で十分に取り締まりをはかっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/147
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148・藤井恒男
○藤井恒男君 私は、今日的な問題としてまだ五万五千台の織機を過剰にかかえておる。需給バランスの上から見てこの特例法に基づく措置を厳格に施行していくということは当然であろうと思うのです。ただ、一つだけ今度新しくできる法律が五年の時限立法として生まれていくわけですけれども、これがうまく作動して、いわゆる七十年代における新しい繊維産業像というものが誕生していくというような、状況になった場合には著しく環境が変わってくる。最終需要構造も変わるし、国内外の対応する状況も変わってくるし、そうなった場合に、設備——これは織機によらず登録制というものがはたして有効であるか否かということについても私は研究しなければならない問題であろうというふうに思います。しかし、これはここで議論しておれば今日の問題と先の問題と混同して変なかっこうになるというふうに思いますから、どうか役所のほうで十分な研究の素材にしておいてもらいたいというふうに思います。
具体的な質問を申し上げますが、ファッション化に対応した人材の養成、あるいは衣料サイズの統一、さらには自動縫製システムの開発など大型プロジェクトの完成、これらに対する政府資金の投入ということが必要であろうと私は思います。プロジェクトの助成、専門機関の設立助成という形において。それについてのお考え。
二つ目は、今回の施策でも情報センターの創設、情報センターそのものについてもその意義、運営などについて、いまだに業界間のコンセンサスが形成されていないという問題はありますけれども、それはそれとして、情報収集分析体制の強化というものがはかられていくわけですが、一方で繊維の生産流通動態調査など、政府流計の簡素化というものが進められておるわけです。この基礎データを整理していくという傾向がある、縮少整理していくという意味ですよ。これとの関係は少し矛盾するんではないだろうかというふうに思うわけですが、これは情報センターに移管していくものなのかどうか、その辺を明確にしておいてもらいたいと思うのです。私は、情報化の傾向をたどる場合に、基礎データを整理縮小していくということ、これはいかがなものであろうかというふうに思います。
それから、従来から最も重要な問題の一つとして指摘されつつ、ほとんど実際には手を染めることなく過ごされてきた繊維流通の問題です。これは大方の方も指摘されましたし、参考人からもるる陳述があったわけですが、要するに消費者嗜好の重要性が増すにつれて、流通の合理化問題というものが最も繊維産業にあっては大切じゃないだろうか。カッターシャツ一枚の中に占めるほんとうの意味の素材というものは一体どれだけのものなのかということを、カッターシャツだけでなく、繊維製品について一々これを明示して国民に知うすなら、国民はたいへんな怒りを持つだろう、非常に迂回した流通経路という中から不当に国民は高い品物を買わされておる。そして、直接その製品をつくる人たちが不当に押えられておる。品物を右から左に動かすことによって利を得る者、直接つくっておる者が利を得ない。そして、それを消費する者が多額の負担をする。この商習慣、流通というものを繊維が特に複雑なものにしておりますし、迂回し過ぎておるというふうに思うのです。これはもう抜本的にメスを入れなければいけない。ある場合には、ある段階の人たちに泣いてもらうようなこともなければいかぬのじゃないだろうか。みんながということであれば、私は、これは流通経路の簡素化というものはできないというふうに思います。そういう意味で、思い切って集中仕入れ機能を持った大型販売店を育成するとか、専門店のチェーン化などを推進しなければならないし、実際に契約にならぬというような繊維業界特有の商習慣などについても改善して、流通コストの減少をはかる努力が必要であろうというふうに思います。
以上、三点についてお考えをお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/148
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149・橋本利一
○政府委員(橋本利一君) まず第一番目に、商品開発センター等に対する助成でありますが、これにつきましては、中小企業振興事業団を通じて二分六厘の融資を実施したいと考えております。
それから、人材養成につきましては、これは一つには、小規模事業者に対しまして技術指導といったようなことを考えておりますし、かたがた今回の構造改善で一等重要な、反面一等弱い部門であるアパレルにつきまして、いわゆるアパレルのシステム、技術開発のための委員会といったところで、今後のアパレル技術の開発、あるいは推進の方向というものを検討してまいりたいと考えておりますので、一面、その一環としてもこの人材養成問題に対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
それから、二つ目の繊維統計の整備の問題につきまして、簡素化し過ぎるのではないかという御趣旨でございます。まあ統計に一つきましては当然のことながら、早くかつ正確にといった要請もあるわけでございます。早くするためには、やはり簡素化していかなくちゃいけないという要請が出てくるわけでございますが、一面、サンプル手法がだんだん進んできてはおりますが、結果としてもまた、正確さを失うということになると問題でもございますので、この点につきましては、慎重に対処してまいりたいと考えておりますが、先ほど先生御指摘の、情報センターができた場合にこの統計を移しかえるかどうかという点につきましては、これはやはり政府統計として従来からの継続性という問題もございます。かたがた、都道府県等を通じて集計をいたしておるという問題もございますので、これは従前どおりやはり政府統計として実施すべき性格のものかと考えております。
それから、三番目の流通対策の問題でございますが、流通一般について言われることでもありますが、特に繊維における流通におきましては、きわめて複雑多岐であるということは言われております。これは繊維産業が、申し上げるまでもなく非常にピラミッド型の構成をとっておる、しかもその流通が製品になってからのいわゆる横の流通だけではなくて、生産、加工段階における縦の流通といったような問題もございますので、言われるように複雑多岐あるいは迂回的であるということになるかと思いますが、御指摘のように、やはり流通部門と申しますのは、生産段階に対してはもとより最終一般消費者に対しても非常にかかわり合いの大きい問題でございますので、先ほど来お話が出ております取引改善の対策を進めると同時に、物的流通面での近代化ということも大きく取り上げるべき問題かと思います。そういった方向で流通対策を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/149
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150・藤井恒男
○藤井恒男君 最後にお聞きします。
一つは、これはいろいろ議論の分かれるところだと思いますから、御検討いただきたいと思うんですが、通産省から出たこの資料の中に「マクロ繊維需給見とおし」ていうのがあるわけです。昭和四十七年のたとえば輸入比率は九・四%、要するにこれは内需に占める輸入の割合ですけれど、これが五十八年には二六%ということが予測されておるわけです。その中間の五十三年には一九・三%。で、この二六%もの輸入ということになると、アメリカにおける輸入規制のときは、アメリカ国内の消費量に対するウエートは六・五%ぐらいだったと思うんです。それでアメリカは、これはまあ政治問題かもわからぬけど、あれだけの騒ぎをしておるわけですが、昭和五十八年に二六%もの輸入品を日本でかかえるということになると、私はたいへんな問題が出てくるだろうと、価格の決定方式の問題から商品の流れから、あるいは仕入れ業者あるいはメーカー、すべてがもうたいへん混乱する。まあ一挙に二六%ということじゃないから、それに順応していくこともあるかもわからないけど、しかし、四分の一が外国から買った品物で日本の衣生活はまかなわれておるということは、私はたいへんなことだろうと思うんです。したがって、この面における検討を、これはおたくが出されておる資料ですから、マクロの見通しは。十分即応するものを持っておかなければいけないというふうに思います。十分の御検討をお願いします。
時間がないから、この面は私の意見は省略いたします。
最後に、これはお願いでございますが、大臣にお答えいただきたいんですけど、繊維産業がきわめて零細性であるということはもう御存じのとおりだと思うんです。先ほどもちょっと触れたように、そういった零細中小企業というものを含めた形で本法は施行されていくわけです。したがって、本法の施行にあたっては、私はいたずらに分掌主義に走らずに、産地ごとぐらいに分けて、その産地の態様に応じた弾力的な法の運用をお願いしたい。そうしなければ、この本法で大臣が基本施策を、指針を設定する、そして、それぞれの地方からそれに見合うものを持ってこいということになるわけだけど、私はなかなかなじめないと思うんですよ。ことにこの横割り行政から縦割り行政への転換、あるいは中小零細も含めた異業種間のグルーピングというような問題は、私たいへんに問題があろうと思います。だから、十分なじむまでの間、弾力的な運用ということを考えなければ絵にかいたもちになりかねないということを危しますので、この辺について大臣のお考えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/150
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151・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 御指摘のとおり、産地の実情に応じた弾力的措置は必要であると思います。本法成立の暁にはその辺をよく考えまして、実情に即した措置をとるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/151
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152・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/152
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153・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 速記を起こしてください。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/153
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154・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、辻一彦君及び矢野登君が委員を辞任され、その補欠として竹田現照君及び柴田栄君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/154
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155・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 他に御発言もなければ、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/155
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156・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/156
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157・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定しました。
大矢君から発言を求められておりますので、これを許します。大矢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/157
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158・大矢正
○大矢正君 ただいま可決されました特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御質問を願います。
案文を朗読いたします。
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
今日、繊維工業は輸入の急増及び消費者需要の著しい減退によつて企業倒産の続出等の深刻な不況の事態にあることにかんがみ、政府は速やかにかかる事態を打開するため繊維事業者の資金需要に十分応えるとともに、本法施行にあたり次の諸点につき十分な措置を講ずべきである。
一、公正な取引条件の確保を目的として設置が予定される取引改善協議会の運用にあたつては、関係各方面に期待に応えるよう万全を期するなど取引改善について強力な指導を行うこと。
二、繊維製品の輸入増加が国内の繊維市場を脅かし、不況を一層深刻なものにしていることにかんがみ、その実態を調査するとともに秩序ある輸入体制の確立に努めること。
三、中小需細企業の事業転換にあたつては、必要な指導と転換資金の確保等に遺漏なきを期するとともに、その際従事者に就職の不安を与えないようにきめこまかい対策を講ずること。
四、消費者情報収集機能を強化することによって消費者の嗜好に即応した商品を供給するための体制を早急に確立すること。
五、繊維工業の構造改善事業を円滑に推進してその効果をあげるため、特に中小需細及び中堅企業への資金の確保に努めること。
右決議する。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/158
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159・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) ただいま大矢君から提出されました附帯決議案を議題として、採決を行ないます。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/159
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160・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 全会一致と認めます。よって、大矢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し通産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中曽根通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/160
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161・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重して、対策に万遺憾なきを期する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/161
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162・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/162
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163・剱木亨弘
○委員長(剱木亨弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214461X01519740516/163
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