1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年三月七日(木曜日)
午前十時十七分開会
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委員の異動
三月六日
辞任 補欠選任
稲嶺 一郎君 桧垣徳太郎君
濱田 幸雄君 高田 浩運君
志村 愛子君 中西 一郎君
古賀雷四郎君 西田 信一君
竹内 藤男君 青木 一男君
細川 護煕君 山崎 五郎君
木村 睦男君 船田 譲君
黒住 忠行君 玉置 猛夫君
三月七日
辞任 補欠選任
高田 浩運君 鍋島 直紹君
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出席者は左のとおり。
委員長 土屋 義彦君
理 事
河本嘉久蔵君
藤田 正明君
成瀬 幡治君
多田 省吾君
栗林 卓司君
委 員
嶋崎 均君
鍋島 直紹君
田中寿美子君
辻 一彦君
戸田 菊雄君
鈴木 一弘君
野末 和彦君
政府委員
大蔵政務次官 柳田桃太郎君
大蔵大臣官房審
議官 岩瀬 義郎君
事務局側
常任委員会専門
員 杉本 金馬君
参考人
日本銀行総裁 佐々木 直君
日本銀行理事 渡邊 孝友君
日本銀行理事 藤本 厳三君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○租税及び金融等に関する調査
(当面の財政及び金融等に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/0
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001・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨六日、志村愛子君、稲嶺一郎君、木村睦男君、細川護煕君、古賀雷四郎君、竹内藤男君、濱田幸雄君、黒住忠行君が委員を辞任され、その補欠として中西一郎君、桧垣徳太郎君、船田譲君、山崎五郎君、西田信一君、青木一男君、高田浩運君、玉置猛夫君が選任されました。
また、本日、高田浩運君が委員を辞任され、その補欠として鍋島直紹君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/1
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002・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
租税及び金融等に関する調査のため、本日、日本銀行総裁及びその他の役職員の出席を求めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/2
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003・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/3
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004・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。
当面の財政及び金融等に関する件について、参考人の方々から御意見を聴取いたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/4
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005・戸田菊雄
○戸田菊雄君 もう時間がありませんから、要点だけ聞いてまいりたいと思いますが、第一点は、非常にこの異常物価高騰で、預金の目減り問題が非常に問題になっておるわけですけれども、当然日銀の立場からすれば、貯蓄を奨励しているわけですから、そういう預金に対して、まあ、この国民の損害補償という、こういうその防止策については、やはり旗振りの先頭に立たなければいけないのじゃないだろうか、こういうように考えるのですけれども、何かそういう面で、日銀として、この目減りの補償策ですね、具体的に検討されておるかどうか、その点をひとつ第一点としてお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/5
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006・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいま御指摘の点は、私どもも非常に心配しておるところでございます。昨年の四月以来、四回にわたりまして預金金利の引き上げを実行いたしましたのも、そういうようなことについてのいろいろ考え方から出ておる面がずいぶん大きいわけでございます。さらに、まああれでよろしいというものでもないわけでありまして、預金の優遇策について目下いろいろの方向で検討いたしております。ただ、この辺の影響がいろいろのところへ具体的に出てまいりますので、そういう点を考えますと、なかなか問題が簡単でございません。まだ研究中の段階でございます。ただ、この問題につきましては、もういまさら申し上げるまでもなく、物価の騰勢をできるだけ早くとめるということが第一義である、これがわれわれとしては目下最大の急務と考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/6
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007・戸田菊雄
○戸田菊雄君 検討中だということは、大体大蔵省の吉田局長も、本件については、衆議院の大蔵委員会の中で、金利体系全体を見直すというのは、なかなか困難だけれども、何か特定の一部の預金等については具体的な検討措置をすべきであるということを言われている。総裁も、大体この考えには同じようでございますけれども、そこで、具体的な問題をお伺いするわけですけれども、たとえば、いま大蔵省でいろいろ検討されているといわれるマル優貯金に対して、一部、七・二五%、これを二%程度引き上げて、預金金利というものを引き上げて、目減り防止策にしてはどうかというような具体的な問題の検討に入っているという状況ですが、これは、同時に、やはり総裁のほうでも、こういう具体的な内容についてそれぞれ検討されておるわけでしょうか。その辺の作業はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/7
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008・佐々木直
○参考人(佐々木直君) この問題は、日本銀行が直接具体的にやる問題でもございません。結局は、大蔵省が中心になって実行されることと思いますが、そういう、ただいまお話がございましたような具体的な問題については、大蔵省と一緒にいま検討をいたしておりますので、その点は、銀行局長のお考えなども、いまのわれわれの検討の一つの案として具体的に相談をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/8
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009・戸田菊雄
○戸田菊雄君 検討の終了時期といいますか、いわば目減り補償政策が具体的に出てくるという時期はどの辺と考えておられるわけでしょうか、一応のめどを置いてやっているのだろうと思うんですけれども。そういうものがなければ、いまの国民の大多数の皆さんの要望にこたえるということにはならないと思うんですけれども、その辺は、時期的なめどがあると思うんですけれども、一体それはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/9
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010・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 残念ながらまだ時期をはっきり申し上げる段階まで来ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/10
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011・戸田菊雄
○戸田菊雄君 国民春闘といわれる大闘争、そういう状況にいまあるわけですけれども、この中でも強く要請をされておるわけですね。大体、大蔵省あたりでは四月一日見当に目途を置いて一応幾つかの案を具体的に、単にマル優を中心とか、そういうことだけではなくて、幾つかの案を検討されておると、こういうふうに聞くわけですが、当然私は、日銀総裁として、総裁もそれらについては直接タッチはしないまでも、おおむねこの作業動向については知っておるのではないかと思うんです。四月一日程度という、こういう具体的な話もあるんですけれども、これは早めたほうがいいと思うんですけれども、そういう面について総裁はどう判断をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/11
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012・佐々木直
○参考人(佐々木直君) できるだけ早いほうがいいと存じておりまして、目下鋭意研究中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/12
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013・戸田菊雄
○戸田菊雄君 それから第二点は、現在政府は金融引き締め政策を一貫して推し進めておるわけですけれども、この中で、どうも私は理解しにくいのは、やはり財投資金等についても、当然金融引き締め政策の対象に私は入れるべきじゃないか。そういうために、日銀としては、それらのコントロールをやはりやるべきじゃないか、こういう考えを持つんですが、たとえば四十九年ですね、これは予算でも明らかなように、総額において七兆九千二百三十四億円、前年比一四%増、こういう状況になっておりますね。この資金融資源は、主としてやっぱり零細貯金その他にたよっていることは、もういま私が申し上げるまでもないと思うんです。たとえば、郵便貯金三兆五百億、それから、厚生年金が一兆五千九百億、あるいは国民年金が二千四百億——等々が主要な財源になっておるわけです。それで、これらの融資体制は、すべて——すべてとは言いませんけれども、それは政府機関関係にも行きますから。しかし、民間対象として行くものは、何といっても一つは、日本開発銀行から融資をされる、これが総体においてことしは三千九百八十億の借り入れ、それで融資は、貸し付けは五千九百億、こういうことになっておる。それから日本輸出入銀行、これの資金運用部資金からの借り入れが五千五百六十五億で、貸し付けが七千九百億、こういう膨大なものにのぼっていっているわけですね。ですから、当然これらも、一般市中銀行の金融引き締め、そして各業者に対する引き締め政策をそれぞれやっている。片方では過剰流動性というものを吸収する対策をいろいろな形でやっている、そういうときですから、この財投資金の融資体制というものも、それなりに引き締め体制の中に入れて、総合的な均衡政策というものをとっていくのが至当ではないか。これがはずれております。昨年あたりは農協資金等についてまでいわば網をかけてやっておるわけですから、そういうことは今日必要ではないかと思うのですけれども、これらに対する総裁の御見解はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/13
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014・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまの御質問は、輸出入銀行、開発銀行、こういう政府の金融機関で、中小企業関係でない金融機関、こういうものの融資のあり方についてのお話かと思いますのですが、輸出入銀行につきましては、御承知のように、日本の国際収支の関係、それから、海外投資の関係、そういうようなことで、相当長期的な計画でやっているものがございまして、こういうものは国内の金融とはやや違う要請のもとに動いておりますので、こういう点は、ちょっといまの引き締めと、普通の金融機関の引き締めの態度とは違うものもあろうかと思います。ただ、開発銀行のほうにつきましては、総体としての運営については、ただいま御指摘のように、国内の金融としての総体の中で見ていく必要がございます。ただ、政府が負担するのが適当であるという部分が、どれだけであるかということについての判断を加えることが必要でございますけれども、総体としては、国内金融の流れの中で、実際の運営態度はきめられるべきだと、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/14
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015・戸田菊雄
○戸田菊雄君 これは総裁、具体的なコントロール方式というものは何か総裁のほうで考えられておりませんですか、総体的な資金をですね。これ大多数が大企業というか、とにかく大資本に向けられてやられているわけですから、これは日本開発銀行にしても、輸出入銀行にしても、すべてそういうものを対象にして、主として設備投資資金、こういうものに変えられていっていると思うのですね。ですから、そこはやはり、いま大企業は相当手元資金が私はまだまだ余裕があると見ているのですね。そういうものに対して、やはり財投から年々計画的に、それぞれの銀行を通じまして、ことに零細貯金その他を資源にした金融を、潤沢な資金融資ができるという、こういう問題について私はもう少し考えるべきだろうと思いますし、さらにいま日本の大企業というのは、何といっても借金でもって運用しているという、こういう状況ですね。諸外国には見られない、自己資本一五%ないし二〇%、そういうやっぱり企業努力を含めて、もう少しこの過保護体制というものを解いて、そして力をつけていくような形に行かなくちゃいかぬと思うのですよ。それはまあ別にしましても、私は、そういう点が今日のやはり投機体制、そういうものを生み出していると思うのですが、もう少し強い態度で日銀が、これらのコントロール体制、やはり政府にものを言っていくという、こういうものがいまほど必要な時はないのではないだろうか、こう思うのですけれども、そういう点についてどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/15
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016・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 輸出入銀行も、開発銀行も、ともに具体的なプロジェクトを考えて、それに対する融資をやっておるわけでございます。具体的なそういう投資の案件自身の選び方が適当であるかどうかということになってまいると思います。たとえば、輸出船でございますとか、国内の船会社のつくっております船、こういうものに輸銀と開発銀行が金を出しておるわけです。こういうものは、日本の海運政策との関連あるいは日本の貿易政策との関連で考えられなければならないんだと思いますが、そういうような具体的なプロジェクトとの関連で、資金の供給が行なわれておりますので、正直に申し上げまして、日本の銀行がこの両行の具体的な貸し出しについて、発言をしたことはいままではございません。
ただ、いまの御趣旨につきましては、特に、国内金融については、全体としての金融政策の中で考えてもらいたいという、こういう方向については考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/16
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017・戸田菊雄
○戸田菊雄君 それから第三点は、日本はこれまで米国を中心とした金廃貨あるいは金価格の引き上げ、こういうものに対して、常に反対の立場をアメリカと同様貫いてきたわけですけれども、今回EC地域における金価格の暴騰、もうすでに一オンス百六十七ドルぐらいになっておると思いますが、この一年間で少なくとも百ドル以上引き上げがされておる。こういう状況になって、大蔵省としましても、大体骨子三点だと思いますが、EC地域内その他二カ国間債務決済のための金価格引き上げを、原則として認めてもよいと。第二点は、ただし現在の自由金価格は、投機によって実勢以上につり上げられているので、通貨当局間の金取引に適用する金価格は、現在の市場価格以下の水準にとどめる。第三点は、金価格引き上げはSDR——国際通貨基金特別引き出し権等の価値基準の設定後とすると、こういう条件のもとに、現在のEC地域内における各国の金暴騰というものを容認をしようと、こういう態度にいっているようでございまするけれども、日銀総裁は、このことについてどう御判断しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/17
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018・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまお話がございました大蔵省の考え方も、まだ、何といいますか、結論に達したとは聞いておりません。御承知のように、いまの金価格というものは、非常に投機的な動きをいたしておりまして、あまりに乱高下をいたしておりますので、いまの相場を前提として、具体的な、あるいは安定的な今後のやり方を決定するのは、時期が適当ではないと思っております。したがいまして、この金問題については、いろいろな意見が各国から出ておりますけれども、まだそれが具体的に各国の間の相談として取り上げられるというところまでは参っておらないようでございます。ECの中で、お互いの国際収支の決済をいたしますときに、いまのような金の価格の状態でございますから、決済手段の中から金をはずしております。ところが、金が外貨準備の相当な部分である国では、金をはずされると、決済に困る事態がありますので、そういう点から、この前からECの中の決済には金を使いたいという話が出ております。しかし、現実の問題として、各国の総裁の話なんかを聞きますと、やっぱり金を支払いに立てることには非常にちゅうちょがあるようでございまして、現にいまフランスなどは、ユーロ市場から相当多額のドルを取っております。それで、それを国際収支の決済に使うという方策をとっております。こういうような関係から見ますと、金の、要するに国際決済のために充てる場合の価格の決定ということは、おそらくもう少し先の問題ではないか。したがいまして、私どもとしても、ここでこの問題について最後の結論、考え方を固めるというのには時期が早い、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/18
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019・戸田菊雄
○戸田菊雄君 EC地域の金暴騰というのは、一つは、やっぱり石油危機発生、これが起因していることは間違いないと思うんです。したがって、国際通貨情勢の変化も織り込んだ金政策の変更、こういうことでわれわれは受け取るのが妥当かどうか、これは見解として承りたいんですが、そういう状況にあるかと思います。したがって、日本の場合ですと、金価格引き上げを実現されると、一つは、金の公的価値こういうものが一つは形骸化していくんじゃないか、いわゆるフロート化される、こういう状況になると思うんですね。かりにいま三条件で、大蔵省等が再評価を見込んだということになりますると、一体、日本の場合はどういう状況になっていくのか、金に対して。こういう問題については総裁はどう今後の見通しとして御判断なされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/19
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020・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまのお話は、もし金の評価がえがあったときに、日本においては国内でどういう状況が出てくるかという点だと存じますが、日本の場合には、御承知のように、金の保有量がそう多くはございませんが、それでも、相当多額の評価益が出てまいると思います。問題は、その評価益をどういう使い方をするかという問題になってこようかと思うのでございますが、実は最近、金の評価がえをしようという場合に、欧州各国で反対論の一番有力なものは、それによる評価益というものが、インフレーションの源になる、それが非常にいまのような経済環境の中では危険であるということから、反対がずいぶん強いわけであります。そういう味意で、おそらくいまのような状況でございますと、この評価益というものは、何というか、たな上げと申しますか、直接購買力へ転化しない方向で処理されるということによって、国内の経済への影響をできるだけ遮断することが政策的には必要になってくるのじゃないか、こう考えられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/20
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021・戸田菊雄
○戸田菊雄君 これらについての最終態度は、いつごろに大体日銀等も含めて打ち出すつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/21
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022・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまも御指摘がございましたように、最近の金価格というものが、国際的な商品相場の投機的な動きと一緒の動きをしておりまして、その帰趨と申しますか、行き先がまだちょっと見当がつきませんので、したがって、金問題について、最後的な結論を出すのはもう少し時間がかかるのではないか、国際的なインフレ的な動きがある程度鎮静しないと、なかなか落ちついた姿が見当がつかないように思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/22
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023・戸田菊雄
○戸田菊雄君 時間ありませんからこれで終わりますが、第四点は、この金融引き締めの解除についてですけれども、これは現行の金融引き締め政策が一挙にやっていくというようなものじゃないですから、いずれは解除される。その解除するに引は、総裁としてどういう条件が整ったら、金融き締め政策というのを解除するのか、そういう内容についてもしお考えがあれば示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/23
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024・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 今回の金融引き締め、もうずいぶん長く続いておりますけれども、その効果が出てまいりましたのは、まず最初に、金融関係の指標について出てまいりました。それが昨年の秋の終わりごろからでございます。
それから、物価の面につきましては、去年の秋ぐらいにある程度落ちつきが出始めておりましたところに、石油問題が起こってまいりまして、すっかり調子が変わってしまっておる。したがって、物価の点につきましては、十二月、一月の急騰ということから、引き締め政策の効果がちょっとまるでつかみにくくなってしまっておりました。ようやく二月に入りまして、中旬の卸売り物価が横ばいになってまいりました。この辺で外発的な理由、すなわち石油価格の高騰とか、銅の価格の海外における高騰とか、そういう海外要因以外の国内の需要の面からくる物価の高騰については、ほぼ勢いが落ちついてきたという見当がついてきたのでございます。ただ、物価につきましては、御承知のとおり、第二次の石油価格の引き上げの影響が、電力料金その他に及んでまいりますので、これで物価が落ちついたとは申せませんが、これとてもやはり、外的な要因からきた物価の上昇と考えられます。したがって、どうも物価の具体的な水準から申しますと、物価問題は安心だというところまではまだきたわけではございません。したがって、ここ当面は、金融関係の指標は目立って落ちついてきましたけれども、まだ金融引き締めを緩和するという時期には参っておらないように思います。当面は、物価上昇を押える。少なくとも国内の需要の面から物価が上がってくることをとめるということを、当面ここしばらくの間は続けざるを得ない。したがいまして、今後の引き締め解除のきっかけと申しますものは、第一に問題の、物価水準の動きいかんということが第一でございます。
それから、あとは、国内の経済の実体的な動き、それが物価とのかね合いでどう動いてまいりますか、そういう点で判断をいたしたいと思います。
設備投資が落ちつくか、落ちつかないかという点でございますが、これは現在新しい機械の受注などが非常に伸び悩んでおります。これは金融引き締めの影響が出ておるとも思いますし、それからもう一つは、最近の価格高騰により、設備投資の費用が非常に上がっておりますので、こういうような点から、いま発注が見送られている面があろうと思います。そういうことで、設備投資の面から金融の緩和のきっかけがつかみにくいという状態ではございません。繰り返して申し上げることになりますが、物価の落ちつきいかんということが、やはり金融緩和の最大の関心の的ではないか、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/24
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025・戸田菊雄
○戸田菊雄君 総裁がおっしゃられた、いわば物価鎮静を焦点に置いているということ自体、私も全くそうだろうと、こう判断しているわけですけれども、ただ、どうしても、政治的判断等が中に介在をしてくると思うんですね。たとえば、この七月に参議院選挙が行なわれますから、あるいはこの各企業の、プレッシャー団体がいろいろなことで言ってくる。どうもいままでの金融引き締め解除については、国民が疑惑を持つようなそういうしるしが多かったと、私は思うのですけれども、今回もまたそういうことが主になって解除されていくというようなことになれば、これはたいへんだと思う。文字どおりいま総裁がおっしゃられるように、物価鎮静というものは根底からそれこそくつがえされる、こういう状況になってくると思いますが、そういう御心配は全くございませんか。やはり、国民の立場に立って一貫してそういう姿勢で貫くと、途中どんな各種団体のいろいろな圧力があっても、それはやっぱり一貫して押し通す、こういうことになっておりましょうか。
それからもう一つは、そういう状況でいって、いま非常に中小企業の金融切迫がきておるわけでありますけれども、こういうものに対しては私は、政策的に特別措置をやはりとるべきだと、こういうふうに考えます。最近新聞等で、五百億以上の金融特別措置を大蔵省は手を打ったというふうなことがございますけれども、やはりこれは別途政策で救済措置をはかるべきだ、これも緊急を要する事態だと私は思うんです。それと、この金融引き締め政策ですね、こういうものの解除体制については、やはり物価鎮静を焦点に据えて、あくまでも各種団体の圧力や政治的判断で、参議院選挙があるからと、こういうことではいけないんじゃないかと思いますが、その辺に対する総裁の態度を伺って、私は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/25
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026・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 私どもが物価を問題にし始めましたのは一昨年の秋からでございまして、あのときにすでに私どもとしては、窓口指導について警戒的な態度をとってまいっておったわけです。昨年一年は、正直に申しまして、日本銀行としては物価との戦いを終始続けてきたものがございます。したがいまして、こういうわれわれのいままでのやり方、態度から考えましても、ここで物価を落ちつけなかったら、一体何をしてきたかわからないわけです。したがって、今後の金融政策のあり方につきましても、物価の鎮静を第一義にするということは、もう絶対に動かすべからざる筋であると思います。ただ、御指摘がありましたように、中小企業に対しましては、それぞれやはり具体的な問題がございます。産業別にもございますし、個々の企業についてもありますので、私どもとしては、取引金融機関と絶えず連絡をとり、ことに地方では、日本銀行の支店長を中心といたしますいろいろのそういう組織をつくっておりまして、具体的な問題について個々の手当てをするという体制を整えております。この点につきましては、最近、銀行、信託、長期信用銀行などにおきましても、特別な基金をつくって対策を講じておるというようなことでございますし、それから、政府金融機関も、年度末の手当ても準備しておられるようであります。こういう問題につきましては、われわれとして具体的な個々の問題としてやってまいって、大筋をくずさないで、対処してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/26
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027・田中寿美子
○田中寿美子君 私、ちょっと質問の順序を変えまして、さっき戸田委員が貯蓄の目減りのことをおっしゃいましたので、それに関連して一、二点だけ最初お伺いいたします。
貯蓄の減価のことについて、この委員会でずいぶん何回も議論されました。大蔵省も減価していることを認めているし、経済企画庁もそういう数字を出しておりますですね。それで、ことに四十八年度の個人の預貯金の総額は六十一兆円をこしている。そうして経済企画庁が四十八年度の経済見通しを修正いたしまして、先日提出をしましたところによりますと、消費者物価は一四%年度平均で上がったことになっている。そうしますと、個人の預貯金総額に消費者物価の上昇率を掛けて、大体、減価を計算することになるわけですが、そうすると、もう八兆円も去年は目減りしているということになるわけです。で、日銀と言えば、まあ一般の者には何かすばらしい大きな殿堂の中で、総裁なんというのは、たいへんお偉い方だというふうに思っているけれども、一般の大衆とのかかわり合いというのは、自分たちの零細な、これはもう調べてわかりますように、一世帯当たり昨年度でも二百十万円、しかも、預貯金は百四十七万円、借入金がその中で百三十二万円もあるという状況で貯金しているわけですね。ですから、大衆から見れば、ほんとうに貯金の減価に対する怒りがもう一ぱいなわけなんです。それで、経験的に、感覚的に、一般消費者は自分の使う貨幣が目減りしていることを憤慨していますし、まして貯蓄がどんどん減っていくということについて憤慨しているわけなんですが、日銀総裁は、二月の十三日、記者団との会見で、あまり貯蓄が目減りしていくので、その対策は何とかしなきゃいけない、せめて貯蓄だけでも特別に優遇することを考えるべきだと思っているんで、貯蓄に関する限り、まあ期限を切るかもしれないけれども、利子を、金利を一〇%ぐらいに、あるいは二けた台に乗せるべきだというような意味のことをおっしゃっているようですけれども、総裁、そういうお考えがありますかということと、それから大蔵大臣ともそういう話し合いをしたことがあるというようなことが新聞紙上で見られたんですけれどもね、そういう話し合いが進みつつあるのですか、どうですか、そのことを最初にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/27
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028・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 先ほどもお尋ねがございまして、お返事申し上げましたが、私どもとしましては、預貯金というものの優遇について、何かいい方策を考えたいということで、目下検討をいたしております。私が二月十三日に申しましたことも、そういう趣旨で申し上げたわけであります。ただ、一〇%以上というような具体的な数字は申したことはないつもりでおります。それから、大蔵大臣とはもちろんこういう問題についてお話をしております。それで先ほども申し上げましたように、この問題は、大蔵省と私のほうと一緒に検討いたしておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/28
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029・田中寿美子
○田中寿美子君 預貯金に限って利子を上げるということは可能でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/29
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030・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 非常に大きなものはできないかと思いますけれども、ある限界の中では不可能ではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/30
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031・田中寿美子
○田中寿美子君 総裁がそうお考えになっているんであれば、少なくとも貸し付け金利のほうはそのままにしておいて、預貯金に関して利率を上げるということは可能だという考え方で検討していらっしゃると、こういうふうに考えてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/31
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032・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 先ほど景気の最近の状況について申し上げました、ああいうことから考えまして、いまここで総体としての金利水準を上げるということは、必ずしもいまの時点においては適当でないと、そういう判断からまいりますと、そういう環境の中で、預貯金の優遇をいたしますということになりますと、これだけ独立した動かし方でないと、具体的にはできないわけでございます。ただ、独立した形でやりますと、どうも幅が小さくなる。そこのところがいまわれわれとしていろいろ検討しておる点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/32
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033・田中寿美子
○田中寿美子君 この問題はあまりやっている時間がありませんけれども、どこの国でもインフレに対処して預貯金に対する優遇策をいろいろと考えているようです。もう総裁御存じだと思いますけれども、西ドイツで長期貯蓄預金の優遇策というのをやっておりますね。これは期間が相当長いものに関して、それから、階級別に低所得層のもの、それから家族数なんかに対応して割増金をつける制度ですね、これ財形貯蓄ですけれども、こういうようなことは、これはもう一般会計のほうから財政が支出することだと思うんですが、そういうことすら考えている国もあるし、ほかの国もあること御存じのとおりだと思います。総裁は、金融政策の面での責任者でいらっしゃいますから、ですけれども、大蔵省当局などとは、絶えず日本の経済政策に関しても建言をしていらっしゃると思いますので、このような点も御参考に考えてみていただきたいということ、私は、いま要望だけにこれはしておきます、おそらくそういうことは考えられないとおっしゃると思いますので。
それで、私、最初にお伺いしたいと思っておりましたのは、昨日、日銀の統計局が発表されましたものですね、主要なる企業、それから中小企業の短期経済観測調査というのをなさったその結果を発表なさいましたですね。それで私、日銀からこれを取り寄せて見せていただいたわけなんですが、そこで私、総裁の経済見通しを伺いたいわけなんです。この調査結果によりますと、日銀が発表なすったのを、これ私はテレビで聞いていたんですが、マクロ的に見て、日本の経済は落ちついていくんではないかというような立場からの発表でございました。政府の金融引き締め政策が功を奏したからこういうふうになったんではないかというふうに考えていらっしゃると思うんですが、そこで総裁、さっきちょっとお触れになりましたけれども、設備投資が横ばいになってきたとか、それから金融の逼迫度が、逼迫感といいますか、それがだんだん少なくなってきたとか、それから、需要の超過感といいますか、みんなこれいままで行き過ぎていたものが、だんだんダウンしてきたというような発表になっておりますんですが、これらを参考にしてお考えになった場合、四十八年度の成長率ですね、経済成長率、それから物価の上昇率などをどういうふうにお考えになるか、意見を聞かしていただきたいわけです。これはいろんな考え方があって、政府のほうでは、四十九年度見通しは、成長率実質二・五%、名目が一二・九という発表をしておりますね。それから物価のほうは、卸売り物価が年間で一四・六、消費者物価が九・六というふうな見通しを出しているわけなんですが、一年間の見通しというのは無理だというふうにおっしゃるなら、上期の見通しというようなもの、日銀は、企業から当たって相当詳しいデータをとっていらっしゃるわけですから、見通しを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/33
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034・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 四十八年度の見通しにつきましては、もうだいぶ終わりに近づいておりますが、これはおそらく政府の見通しよりも成長率なんかも少し上回るんではないかという感じがいたします。
それから、四十九年度につきましては、二・五の実質成長率を政府は見通しております。これは一時、油の問題が非常に輸入量が落ちてくるというような予想のときには、二・五もあぶないんではないかというようなことでございましたが、これは最近の油の輸入の実績から申しますと、大体この程度はいくのではないかと思います。ただ、この二月に実行いたしました私のほうの短期経済観測で、四十九年度全体をあの資料から政府の見通しを見直すというのには、少し材料が不足でございます。今度の短観の特徴は、ことしの一−三ではそれほど経済の需要超過とか、そういったような動きに大きな変化はないが、四月−六月には、それにある程度の変化が出てくるのではないかという予想が入っているということが特徴でございます。したがいまして、私は、四十九年度の経済成長率につきまして、政府の見通しをただいま変更するというだけの資料は今度の短観からは出てまいらない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/34
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035・田中寿美子
○田中寿美子君 そうしますと、大体政府の実質二・五、名目一二・九という成長率、そのくらいだろうというお考えでしょうか。いろいろ経済研究所の発表によりますと、実質成長率ゼロという人もありますね。それから、実質成長率一番高いところで八まで見ている人もあるわけなんですけれども、この調査の御発表になりましたのによりますと、全体として需要のほうも停滞してきたということになっているし、それから引き締めが浸透してきて、企業の金融逼迫感がこれも後退してきている。それから設備投資の計画のほうも横ばいになりつつある。それから、労働力の不足感のほうも後退しつつあるというふうなことがある。これは伸びていないということじゃないですね。この調査の結果ですね、在庫不足感にしても、不足感がないというわけじゃなくて、不足感が非常にひどかったものが、後退しているというような書き方ですね、全体に。ですから、幾らか伸びてはいるけれども、いままでほどひどい状況じゃないと、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/35
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036・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 去年の夏からのいわゆる物不足ということで、非常にいろいろな商品についての、需給関係について逼迫感がみなぎっておりました。それがここへきてだんだん緩和してきて、要するに需要と供給とのバランスがとれつつあるということだと思います。したがって、そういう意味からいいますと、物価にもいい影響が出てくるでございましょうし、それから、経済の全体の運営につきましても、非常にあっちこっちにネックがあったのが解けてくると、こういうふうに見られると思います。したがいまして、そういう環境は、一応ゆるやかな経済成長には適当な環境であろうかと思います。ただ、いまやっとそういうような供給不足が解けてまいった段階でございますから、ここでまた非常に高い経済成長が始まり、それがさらに需要の増大につながってまいりますと、せっかく緩和した需給関係がまたこわれるということになりますので、いまのそういうような需給のバランスを維持するという考え方で、経済の運営が行なわれますれば、ゆるやかな経済成長は可能ではないか、したがって、政府の見通しの二・五の実質成長率というものも可能ではないか、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/36
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037・田中寿美子
○田中寿美子君 そうしますと、政府の考えている物価上昇率も、大体、その成長率に対応して計算されているわけですから、大体、消費者物価指数が年間九・六というようなことも可能じゃないかというふうに総裁は考えていらっしゃるんじゃないかなと私は想像しているわけです。
で、公定歩合ですけれども、十二月の二十五日に、最後にまあ九%にしましたですね。先ほど、公定歩合の引き上げで、金融引き締めで、その効果が大体秋の終わりごろから出始めていたところへ、石油ショックで、またひどくなったと、そこで九%まで引き上げたんだというような御説明になっていたと思うんですが、そうしますと、引き締めの効果というのは、結局、公定歩合九%に引き上げたということで、その効果が出てきたと、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/37
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038・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 具体的な金融政策といたしましては、昨年の一月に預金準備率の引き上げを実行いたしましてから、数次にわたりまして準備率の引き上げ、公定歩合の引き上げを実行いたしました。したがいまして、先ほど私が御説明申し上げました、去年の秋の終わりごろから、金融指標の上にはっきり効果が出てきたと申しましたのは、そういう年初来重ねてまいりました政策の効果が出てまいったと存じておるということでございます。したがいまして、十二月の公定歩合の二%引き上げは、その上にさらに、十一月、十二月に見られました石油問題をきっかけとする非常に異常な物価の高騰、これを当面の対象として実は実行したわけでございます。で、私どもとしては、その十二月の終わりの大幅な公定歩合の引き上げが、具体的には二月の卸売り物価に反映してきたと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/38
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039・田中寿美子
○田中寿美子君 それで、今後のことですけれども、先ほど、物価が一番大事なんであって、物価の上昇がずっと緩和してきたならば、金融の引き締めも緩和することがあり得るというふうに、私は御説明を受け取っていたわけなんですけれども、その預金準備率や公定歩合ですね、いま相当のところまできました、西欧並みに近くなっているんじゃないかと思うんですけれども、これは今後また引き下げることもあり得るということになりますか。私は、全体として日本の金利体系というのは非常に低かったと思うんです。それが高度経済成長の大きな推進力になってきたと思うんですね。いまようやく西欧並みぐらいまでになってきたと。この状況を今後続けていこうとするのか、つまり、ある意味で高金利的な体制をとっていくのか、それともやっぱり公定歩合も準備率もまた下げていくという方向をとられるのかどうかということを、総裁の方針をお伺いしたいんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/39
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040・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 当面は、先ほど申し上げましたように、物価の鎮静ということが最大の目標でございますので、いまの引き締め体制に手を加えるつもりはございませんが、将来いろいろ経済の情勢が変わってまいりましたときには、公定歩合の引き下げもあり得ますし、それから場合によっては、預金準備率の引き下げもあり得ると思います。しかしそれは、あくまでも非常に経済の情勢が変わってきたときの問題でございまして、いまの状態で、もうすぐ公定歩合の引き下げを論ずるという雰囲気の中ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/40
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041・田中寿美子
○田中寿美子君 それはわかるんですけれども、全体に金利が低いんじゃないかという議論がされておりますね。たとえば長洲教授なんかは、預金金利は現在のものにさらに一〇%ぐらい上乗せするべきじゃないかというようなことを言っているわけです。預金金利を上げると、貸し付けのほうも上げなければならないというふうにいつも大蔵省のほうは言われて、ですから、預金金利を上げることを非常に拒否してこられたわけですけれども、いまさっきのお話では、預貯金に関する限りは何か方法を考えたいと思っているという態度をおとりになっているんですが、将来について、金利政策は私は過去のような状況であっていいものかどうか疑問を持っているわけなんです。そのことが物価高になってしまうと非常に困るわけですが、インフレじゃなくて、物価が高くて、そして国民の生活を安定させるということができれば、それは私は、あまりに過去に、これこそ大企業が幾らでも借りて、投資できるような状況をつくり上げ過ぎていたと思うものですから、その辺をどうお考えになるのかということ。
それから、結局いま日銀の調査によりましても、生産設備の不足感も、雇用の不足感も二月で峠を越しつつあると、だから、設備投資はもう今後は、これまでのようなふえ方はしないだろうということをおっしゃっているんだろうというふうに思いますが、それを確認したいということ。
それから、雇用の不足も、これまでほどは感じられないという意味は、別にすぐに失業が出たという意味ではないだろう、雇用不足感というのがこれまでほどひどくは感じられていないという中身ですね、それはどういうことなのかということをちょっと御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/41
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042・佐々木直
○参考人(佐々木直君) いまの金利水準が、預金金利などを考えますと、もう下げる余地はあまりないのではないかというようなお話かとも思いますが、まあ預金金利の動かし方と、そのほかの金利の動かし方をどういうふうに調整するかという問題は確かにあると思います。預金金利というものは、やはり下げるのはなかなかむずかしい性質を持っております。その点は私どももその経験をしております。そういう意味で、今度もし景気全体の問題から、金融緩和あるいは公定歩合引き下げという問題が起こりました場合にも、預金金利をそのときにどうするかという点につきましては、そのときの情勢でよほどよく考えなければならないのではないかと思っております。
それから、大企業の借り入れの問題でございますが、高度成長のときに、大企業を中心に設備投資が行なわれ、それが相当な部分借入金によってまかなわれたということは事実でございます。ただ、御承知のように、ここまでまいりますと、公害の問題その他で、大きな設備投資というものは一時のようにはもう行なわれないというふうに考えられますので、そういう面からの大企業の借り入れというものは、一時に比べてやはり落ちついてくるものというふうに考えております。まあ、これが全体の設備投資の落ちつきにつながるものであると考えております。
それから、雇用の問題でございますが、最近の雇用の需給関係、労力の需給関係の緩和と申しますのは、求人の数がやや落ちてきたということで、求人と求職とのバランスが緩和したのでございまして、職を求める人に職がないというような緩和ではございません。いままで一人の人を二人の人間が求めるということであったのが、一人の人に対して一人半ぐらいな要求になってきたという程度の変化でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/42
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043・辻一彦
○辻一彦君 関連。
総裁にちょっとお伺いしますが、きのう参議院の本会議で、私、個人の預貯蓄金ですね、これの目減りを大蔵大臣に質問したんですが、そのときに、時点の取り方と、物価の率をどう見るかによって違うんですが、五十二兆、そしてその目減りは約四兆四千億という、こういう答弁がきのうなされましたが、これに農協の個人預金とか、そういうものを含めるかどうか、いろんな問題があると思うんですが、総裁として、先ほど御答弁があったと思うんですが、私ちょっと、出ていませんので、お伺いしたい。
それは、四十八年三月時点において、個人の預貯蓄が約六十二兆円、それが一年間でどのくらい目減りをしたと、こう計算されるか、それを一言お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/43
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044・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ちょっと私、具体的な数字を用意しておりませんでしたので、さっそく調べて、御答弁後ほど申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/44
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045・田中寿美子
○田中寿美子君 それではまだ時間が少し残っておりますので——次の問題に入るだけの時間がないと思ったものですから、差し控えたんですけれども、実は午後のほうまで譲りたいと思いますけれども、通貨の発行量のことなんですね。
最近日銀の理事をおやめになった吉野俊彦さんですね、おやめになってからいろいろ講演をなすったり、書きものをお書きになったり、私もラジオの放送で伺っていたんですけれども、こんなに通貨の量がふえていたんでは、これはもうしようがない、こういうインフレを早くとどめなければ、絶対に国民生活の安定とか、物価の安定ということはないということを盛んにおっしゃっていて、通貨の発行量を縮小しなくちゃいけないということをおっしゃっているわけなんです。前回の大蔵委員会のときに、大蔵大臣は、通貨の発行量も、一月末ぐらいは二七、八%もあったけれども、二月になって、二月の中旬の段階で二〇%ぐらいまで発行の伸び率が落ちてきたというふうにおっしゃっているんだそうですね。一体通貨の発行増ですね、それはどのくらい、何をめどにして適当だというふうに総裁はお考えになりますか。つまりどのくらい、私、おそらくGNPに対して考えなきゃならないと思うんですが、どのくらいだったら適当な発行量だというふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/45
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046・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 経済成長率と銀行券の伸び率との関係につきましては、なかなかその間に数字的にはっきりつかまえられる関連性がございません。やはり経済というものは全くこう安定と申しますか、静態の形というものはございませんで、絶えず上昇したり、それがまた多少落ちてきたりという波を描いておりますので、なかなか経済成長率と通貨の間の具体的な関連性がつかまえにくいのでありますが、ただ、いままでの経験から申しますと、やはり銀行券の前年同期比伸び率が一〇%台をはずれますと、と申しますことは二〇%の上になってまいりますと、やはりそれが経済の過熱に通ずるというような経験をいたしております。ただ、最近のように、物価が特殊な動きをしておりますときに、銀行券の伸び率がどれぐらいが適正であるかということは、平時のものの考え方ではなかなか計算し得ないものがあるように思います。ただいまお話がございましたように、最近の銀行券の伸び率が大体前年同期比二〇%になっておりまして、この一両日は一九%台に落ちてきておりますけれども、こういう姿が、この大きな物価上昇のもとで実現できたということは、やはりこれは消費自体が量的にも落ちてきている証拠ではないかというふうに考えております。
したがって、この数字の評価のしかたとしては、私どもとしてはずいぶん下がっている。数字は二〇%という、まあ平時から考えますと高いレベルではございますが、それは相当な低落であるというふうに考えております。先ほどもちょっとお話が出ました、マネーサプライトのM2と申します定期預金を加えたものの伸び率が一五%台に落ちておるということも、非常にやはり総体としてのマネーサプライの伸びが落ちついてきており、これは平時とほとんど変わらない姿であるというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/46
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047・田中寿美子
○田中寿美子君 通貨の増加率がどのくらいだったら適正なのかということは、私どもには全然、たいへんむずかしい問題ですけれども、それでも感覚的に、最初に申し上げましたように、お礼で買えるものがたいへん下がっているということで、これはたいへん増発し過ぎているんではないかというふうに感じるわけなんですけれども、これ、いろんな説がありますですね、だから、その学者によって、アメリカのフリードマン教授なんかは、アメリカだったら四%だと、それから、加藤寛孝教授、あの人なんかは、フリードマン方式を日本にあてはめたら一二%ぐらいの増が適量だというようなことを言っていらっしゃる。それから元の宇佐美日銀総裁は、一五%こしたら大騒ぎしたもんだと、その後すごい経済成長率を上げちゃったもんですから、一五%ぐらいはたいした、軽くそれをオーバーしてしまったわけですね。それで、去年の八月は三一・四%の伸び、九月が三一・九、十月が二三・九、十一月が二一・二、十二月に落ちてきた。これ、現金通貨だけじゃなくて、預金通貨まで入れればずいぶん、まあ実際に通貨の流通しているものまで含めればたいへんなものになっているわけなんですけれども、日銀としても、いま設備投資の傾向も下がってきた、全体におさまりつつあると、金融引き締めの効果があらわれてきたとお考えになっているときに、やっぼりその通貨について政策をちゃんとお持ちになるべきじゃないかなというふうに思うのですけれども、佐々木総裁はどういうふうに、どのくらい、いまちょっとおっしゃったけれども、どのくらいまでなら適量だというふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/47
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048・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 実は、現金通貨、それから預金通貨全体を加えましたものの、いわゆるマネーサプライの増加額を調整する問題は、これは各国の中央銀行がひとしく悩んでおる問題でございます。フリードマンさんのように、たとえば年率五%のマネーサプライトの増加を続ければ、経済は非常に安定して成長するんだというお話がありますが、現実にその五%というような、ある具体的な目標を立てて、それを常に維持するというようなことは、なかなかできないのでございます。その点は同じ学説を持っておられた、いまのアメリカの連邦準備制度の総裁バーンズさんが現実に自分で経験しておられまして、そういう意味では、国の総体の経済活動の最後のしりである金融決済、それをコントロールするということは、結局経済全体をコントロールしなければできないことではないかと思います。
そういう意味で、私どもも、たとえば日銀券、現金通貨の流通高が幾らが適量であるというふうに、具体的な目標を立てて金融の運営はなかなかでき得ません、正直に申し上げまして。ただ、多過ぎる、少な過ぎるという感じ、いままでは残念ながら多過ぎる場合ばかりでございますが、多過ぎるのに対して、どの程度の手を打っていき、どこまで落ちてきたら打った手を排除するか、そういうような、何といいますか、そのときの実態に応じたやり方しか現実にはでき得ないのでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、普通の状態でございますと、銀行券の増発率が二〇%になっておりますことは、やはり警戒が必要であると思います。ただ、繰り返しますが、いまのような物価高が現実にもう起こってしまっておるもとにおいて、この二〇%をどう評価するか、これは私は、平時と比べて二〇%は決して高いとは思いません。相当思い切って、通貨の流通高は落ちてきていると思います。しかしながら、もちろんこれでいいというものではございません。私の申し上げましたのは、どういう評価をするかという評価のしかたの問題だと思います。おそらく銀行券の伸び率はまだもう少し落ちるのではないだろうかという感じをただいまは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/48
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049・鈴木一弘
○鈴木一弘君 昨年の一月十六日の預金準備率の引き上げから、金融引き締めが始まってきたわけですけれども、もうすでに一年以上も経過しております。特に四・二五%から、去年の四月から急激に公定歩合も引き上がって九%になった。預金準備率も五回も引き上げられたわけですけれども、いまの総裁の答弁から伺っておりますと、かなりの効果が出てきたというように考えられるわけです。ですが、まだまだほんとうの効果があるというようには思っていらっしゃらないのか、それとも、その辺の評価のことを伺いたいのです。どの程度に、まだこれからもう少し、先ほどの話ですと何だか引き締めるような、状況によってはまたゆるめるようなというような感じしか私は受け取れないのですけれども、どう評価していらっしゃるのか。落ちつくのはいつごろと見ていらっしゃるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/49
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050・佐々木直
○参考人(佐々木直君) さっきも申し上げましたように、この一年間の引き締めの効果は、金融面ではマクロで見ます限りにおいては相当さいてきでおります。したがいまして、当面これ以上金融面のいろいろな数字から考えて、さらに金融を引き締めなければならぬとは思っておりません。現金通貨の問題でも、預金通貨の問題でも、相当伸び率が落ちてきておりますし、それから、企業の手元流動性もいままでの最低のところまで落ちてきておるということから見ましても、これ以上追い打ちをかける必要があるとは思っておりません。ただ、しかし、先ほども申し上げましたが、物価の水準というものを考えますときに、この一年のわれわれの努力、これが物価を鎮静させることにあったことを考えますと、ここで引き締めの役目が済んだという考え方はまだとれない現状でございます。先ほどいろいろお話がございました二月に実施いたしました経済の短期観測、これの数字をいろいろなアンケートの結果を見ますと、四−六には相当落ちつきが出てくるというような見方が多いわけでございます。したがいまして、いまの物価の問題さえある程度落ちつきが出てまいりましたら、その時点では引き締めの効果が十分出たという判断ができるかと思いますが、これはすべて先の問題でございまして、当面としましては、いまの引き締め態度を維持するということでまいる。ただ、総体のワクの中で企業により、産業により跛行性がございますので、その跛行性の是正をしていくという程度のことで、金融政策としてはまいるのが適当であると、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/50
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051・鈴木一弘
○鈴木一弘君 跛行性の問題と、いま一つには手元流動性がかなりなくなってきたというお話があったんです。確かに、土木、建築、繊維、そういうところは相当きびしいと、しかし一方、まだ石油とか鉄鋼ということになりますと、これは豊かではないかという、いま言われたような、素材メーカーの問題と今度は加工といいますか、実際の業者との間に、総裁の言われた跛行性のあること確かだと思うんです。その点をどういうふうに持っていくかということ。一方はどうしても過剰流動性どころか、過少流動性になってくるというようなことも、いまの御答弁の中でもマネーサプライの増加率が低下してきたとか、あるいは現・預金比率が低下したとか、倒産も非常に多いわけですから、増大していると、そういうことから、ものによっては過少流動性になっているわけですよね。こういう点についてどう対処していくかということが、これからの金融問題がむずかしいと思うんです。一番かじとりのたいへんなところだと思うんです。わずかのところで生き延びる中小企業も生き延びなくなってしまう。一体、当然しぼらなければならないところがしぼり切れないという、いろいろ対処のしかたで、五百億円減らしたとかなんとかと出ておりますけれども、日銀の決定が。その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/51
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052・佐々木直
○参考人(佐々木直君) その手元流動性の多いか少ないかということ、これは預金、それから現金でございますが、こういうものにつきまして、金融政策で直接コントロールすることはできませんので、結局は、余裕がある企業には銀行が金を貸さない。非常に苦しくなったところには、その貸さないことによってできた余裕をそちらに回すということによって、銀行の貸し出しを通じて調整するしかないわけでございます。したがって、そういう点につきましては、私、中央銀行としての政策で具体的に入ってまいりますので、ある限界がございます。したがって、われわれができますことは、総体のワクをきめておいて、その中で占める企業、あるいは産業と、ある程度めんどうを見てあげてほしい企業の種類をこちらから伝達するということで、その取引先、日本銀行の取引先の金融機関の調整を期待するということになっております。これは私、昨日、ぶつかった例でございますが、わりあいに金繰りの楽な企業の社長さんが、おととい突然、自分のほうの商手のワクをいきなり切られてしまった。こんな乱暴な話があっていいものかということを私に訴えられましたが、しかし、そうしなければ、苦しいところに回せないので、総体の引き締めラインを維持しながら、調整するためにはそういうことをやらざるを得ないわけです。ですから、そういうお話を聞きますと、ただいま申し上げましたようなわれわれの趣旨が、金融機関によって実行されているということを感じたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/52
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053・鈴木一弘
○鈴木一弘君 いままでもたびたび言われてきていることなんですけれども、金融引き締めということになると、一番被害を受けるのは、どうしても——いま総裁がある会社の話をして、商業手形のワクが急に減ったという話がございました。そうやって片一方ではめんどうを見ているのだという、そういうお話なんですけれども、やはり中小零細企業、下請企業が一番被害を受けることは、いままでのことでもはっきりしています。そういうことで、特に原材料が上がった、人件費そのほかということで、一方は上がっているし、しかも、需要のほろが落ち込んできている。一体この三月、四月、そういうところをどうやろうということが、非常にいまたいへんな問題になるわけです。これは大蔵省がやることであると総裁言われるかもしれませんけれども、日銀としてもそういう点の考えですね、おとといの大蔵大臣の答弁でも、中小企業に対しての、政府関係三機関に対してのワクの拡大をやっておられるようですけれども、その点は日銀それ自体として、いまのような、抽象的というとおかしいのですけれども、手を打たれたと、それ以外に考えられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/53
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054・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 日本銀行の信用を直接供給して問題の解決をはかるということは、中央銀行の性格として不適当であると思います。ただ先ほども申し上げましたけれども、中小企業の問題は、具体的な案件として、私どものほうの支店長を中心にいろいろ連絡機関を持っておりまして、そうして取引金融機関との間に入って問題の解決をはかるというような扱いにいたしております。中央銀行の政策で解決できる性質の問題とはちょっと違うように考えられるのでございます。当面、実は、三月がいろいろ年度末でもございますし、心配されておったのでございますが、いままでわれわれが各方面からとっております情報によりますと、三月末に非常に大きな問題が起こるとは考えられません。もちろん全然問題なしにいくとは思いませんけれども、まずまずは無事に年度末が迎えられるのではないかという見通しをいま立てております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/54
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055・鈴木一弘
○鈴木一弘君 総裁、ことしに入ってからの金融市場の資金不足ですね、これは五千四百億にのぼるとかいわれているわけです。前年同期のときが二千七百四十七億円の資金余剰があったということ、そうすると、差し引き七千億も八千億も減ってきているということですから、これは確かに引き締めが相当の効果を出したということも一応わかるんでありますけれども、中小企業に対する金融状況というものはどう把握していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/55
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056・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまのお話がございました去年の一−三と、ことしの一−三との比較あるいは一−二の二カ月かとも思いますが、これの差額が、実は去年の一月はドルの再切り下げの前でございまして、非常にかけ込み輸出が多かったようなことで、外為会計が多額の払い超過になっておりました。ところが、ことしの一月は、御承知のように、一月二十三日に一ぺんに七億ドル以上のドルの取引が行なわれたということで、外為会計が非常に大幅な引き揚げ超過になっております。したがって、去年の外為会計の払い超過と、ことしの揚げ超過とのプラスマイナスの差額が非常に大きいものですから、資金不足が非常に大きく出ておりますが、この不足は、主として貿易会社、それから大企業、そういうところの貿易関係の分が大きいわけでございまして、そういう意味で、ことしの揚げ超が大きいほど、いま申し上げました特殊なものを除いたところの資金不足は大きくなっておらないと思います。
そういうことから、いまの中小企業につきましての金繰りにつきましては、それほどいま三月になりまして苦しいというところまではきていないと思います。特に、最近の特徴は、物不足で非常に悩んでおりますために、いままではとかく金融引き締めのときに見られます支払い条件の悪化ということが非常に少ないわけでございます。したがって、いつもの引き締め時期に比べますと、中小企業のほうで手形のサイトが延びるとか、そういう面の苦しみはいつもの引き締め時期よりは少ないように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/56
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057・鈴木一弘
○鈴木一弘君 確かにいま言われるように、日銀の経済統計月報を見ても、取引停止処分の負債金額、原因別を見ると、一番多いのは融手操作、高利金融というのが多いようです。二百九十五件もありますけれども、そのほかの売り上げ不振とかコスト高とか回収困難とかというのもかなりあるようですけれども、おっしゃるとおりだと思います。しかし私は、金融引き締めをやる、引き締めていくというのに、どうしてもほとんどが日銀で扱われていきますのは各銀行の窓口を通じ、また、預金準備率の引き上げというように、銀行コントロールというかっこうになるわけでございますからね。そうすると、一般の中小企業ということになれば、そこのところへお金を借りたり、金融的操作をしなきゃならない。それができなきゃ高利へ走らなきゃならないわけでありますから。
しかし一方で、私は、先ほども戸田委員からありましたけれども、商社や大手石油会社の問題が衆議院の予算委員会でも追及され、超過利得がうんと問題になってきました。そういうこともいままでの過剰流動性の最も大きかったのがそういうところであろうということの一つの証拠だと思うんですけれども、それにもかかわらず、市中銀行だけじゃなく、政府関係の金融機関からも多額の融資というものがものによっては、たとえば輸銀とか開銀とかということが先ほど戸田委員の質問にあるわけです。
預金、貯金とこう言われていて、一方で預金というものはかなりの金額があるわけですけれども、一方でまた預金がそれに匹敵するような大きな流動性を持っていっているわけですからね。それがどういうように動いていくかということで、せっかくの引き締めもしり抜けになることはもうはっきりしているわけですよ。
そういう点は、これは日銀のいまコントロールじゃございません、それは大蔵省の問題でございますから私はわかりませんと言われればこれっきりのことですけれども、これは総裁、一つには、そういう貯金のいわゆるお金の流れというものを何とか考えなければならない。そうしなければ今後効果的な、まあ今回だけじゃなく今後も状況に応じては金融引き締めや、金融操作をやらなければならないわけでありますから、そういう点についてはもうノーコントロールではいけないときがくるんじゃないかなという感じがしているわけですけれども、いかがお考えですか。そうでないとやっぱり大企業だけが守られちゃうことになるわけです、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/57
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058・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいまの御指摘の問題は輸銀、開銀のことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/58
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059・鈴木一弘
○鈴木一弘君 それだけじゃなくて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/59
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060・佐々木直
○参考人(佐々木直君) それ以外と申しますと、財政投融資ではその中から公共事業のほうに向いているものもあります。公共事業のほうに向いているものは、今度の四十九年度の予算では相当今度は調整をされると思います。それからあと政府系の中小金融機関、こういうところに出るものはこれはまたいまのような環境では相当ふやしていかなければならない。
そのほかにもいろいろおそらく御指摘のような問題があろうと思いますが、私どもとしては、そういう面が国内の金融引き締め体制のじゃまになるような運営が行なわれますことには非常に反対でございまして、そういうようなもし具体的な例が出てまいりますならば、それに対しては政府に十分申し入れをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/60
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061・鈴木一弘
○鈴木一弘君 非常に答弁がしにくいことはよくわかるんですけれども、銀行のほうの預金の金と、郵便貯金の金と二つの大きなお金の流れがあるわけですけれども、それが平等にというとおかしいですけれども、コントロールされるということがこれから必要じゃないかということなんですよ。その点輸銀に限る——限るというのじゃなくて、公共投資にも向かわれるでしょうし、あるいは鉄鋼等そういうところにも出ている金にもなっていくわけですから、その点を、ただの、いままでのような金融引き締めの窓口規制とか、そういうことだけでは押え切れないお金の流れが別にあるということですよ。これはよほど考えていかなければならないと思います。そういうことについての御意見を承りたかったわけです。
もう一つは、大蔵省と日銀で、大手十一行の銀行の特別検査による銀行融資と余剰資金の実態調査、二十六業種、百十余社の過去二年間のバランスシートを調べて、土地とか有価証券とか在庫の増減、そういう点をずっと資金面から調べるということが伝えられております。これには相当な期待を持っているわけでございますから、その検査の実情についてどうなのか、その点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/61
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062・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 先ほどの金融調整の問題はおっしゃるとおりでございまして、そういう政府の郵便貯金の使われ方も、もちろん全体の金融調整の中で大事な項目でございますし、それからまたそのほかの農業系統機関の問題なんかもずいぶんあるわけでありまして、そういう意味では確かに御指摘のように、われわれとしては、普通の金融機関だけを考えた金融調整ではだんだんそのウエートも落ちてきておりますので、十分今後考えていかなければならぬ点だと存じております。
それから、ただいまの銀行を通じます企業金融の調査でございますが、これは非常に問題が広範でございまして、ただいまは、こちらが調査いたします項目について書類をつくってもらっておる段階でございまして、今月の中旬ごろからそういう報告がだんだん出てまいります。その出てまいりましたのをまず見まして、それを見ながら今度は具体的な調査に出向く、こういうふうに非常にこまかい調査でございますので、金融機関もどの程度取引先を具体的に把握しておるか、おそらく金融機関でもなかなか勉強が必要だと思います。そういう意味で、時間には相当な期間が必要でございましょう。おそらくある程度見当がつきますのは四月に入ってからではないかというふうに予想いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/62
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063・鈴木一弘
○鈴木一弘君 これは公表をなさるのかどうか、公表はぜひしていただきたいということがだれもが願っていることだと思います。その点を一つお伺いをしたいと思います。
それからもう一つは、こういう調査をやられるのはほんとうの例の過剰流動性がものすごく問題になった時点のときにさっとこうやるべきだったんじゃないかという気がしてならないわけです。だいぶこう締まってまいりましてから、それは跛行性の調査や何かには非常にいいかもしれませんけれども、そういう点はいかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/63
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064・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 結果についてはできるだけ公表をする予定でおります。
それから時期の問題、おっしゃることもよくわかりますが、やはりどうも金融がゆるんでおるときにはなかなかああいう措置がとりにくいものでございまして、あるいはもっと早くやればよかったかとも存じますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/64
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065・鈴木一弘
○鈴木一弘君 ここで、金融問題でなくて金の問題でちょっとお伺いしたいわけでが、石油価格の高騰あるいは金相場の続騰、こういうことで国際通貨問題に重大な影響を受けてきている、こういうことが確かに次から次へと通貨問題へ悪影響を与えるものが流れてきているわけですけれども、続発していますけれども、こういうことについて、国際的にインフレ経済になっていることは確かです。いままでの通貨制度を変えなければならないというところにどうしてもくるんではないかということが、いろんな形で、おのおのの国ごとのエゴもあると思いますけれども、あらわれてきているわけですけれども、どういうふうに通貨制度の改革について考えておられますか、今後の。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/65
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066・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 国際通貨制度の改革につきましては、御承知のように、最近はC20という組織で検討が行なわれております。去年の秋ナイロビのIMFの総会のときにもこの会議が開かれましたし、さらに去る一月の半ばごろにもローマでこのC20の会議がございました。油の問題が起こってからの各国の国際通貨制度に対する考え方は、やはりこれによりまして非常に各国の国際収支が変わってまいりますので、そういう新しい国際収支の見通しを立てないと、長期的な制度の改正の問題もなかなか触れられないということで、当面必要な問題を解決していくということで、例のSDRの価値をどういうふうにきめるかという問題、それから今後こういう問題を検討するのに、IMFの組織を強化すると申しますか、そういうような問題、そういう当面の必要の問題を取り上げるというふうに変わってまいっております。したがいまして、それを裏返しますと、結局長期にわたる根本的な改正は、もう少し時間をかけて考えていくということになろうかと思います。そういう意味で、各国がいまやっておりますような為替相場のフロートは当分続くというふうに考えざるを得ないのであります。
それから、金の問題でございますが、最近の金の価格の上昇は、先ほども申し上げましたように、非常に投機的なものでございまして、ちょうど世界で砂糖が上がったり、小麦が上がったり、亜鉛が上がったりしているのと同じような動き方をしているような感じもございます。したがって、通貨の価値の基準に金を使うというような考え方で、金の価格を決定するような環境ではいまないというふうに考えております。そういうことで、いまの国際通貨制度の基本に金の問題を持ち込んで解決するということはなかなかむずかしいことになっておりまして、私の個人的な感じを申し上げますと、金の廃貨の傾向は、今度のような価格の急変動によって一そう強められておるのではないかという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/66
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067・鈴木一弘
○鈴木一弘君 総裁の金廃貨の傾向が強められているというのですけれども、長期にわたる通貨安定の問題については、ここのところではちょっとということで、いわゆる金廃貨、SDRの確立ということになっていくわけですけれども、それが延びているということは、逆に言うと、総裁が言う金廃貨の方向が強まっていると言いながら、一方では、いわゆる当座何とかしなければならないという問題があるわけでしょう。それは、その金価格についての再検討ということになるわけですけれども、わが国として、日銀総裁として、その金の公定価格の引き上げ、こういうことに対してはどういうふうにお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/67
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068・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 先ほど私が国際通貨制度の問題について基本的な解決が延びているというふうに申し上げましたが、ただ、当面の解決を要する問題として、SDRの価値をどうするかという問題については具体的な進歩があったわけでございます。と申しますのは、やはり国際的にもSDRを使わなければならない時期がきている、そういうことから、SDRの価値の規定が必要になってきておるわけでございます。したがって、いま当面の問題としては、国際決済に金を使うという問題の前に、SDR決済が先行するのではないか、こういうような環境であろうと思います。
それから、金の公定価格の変更につきましては、いまの段階ではどういうふうに変えていいのか、変えるにしても、ちょっといまの時価があまりに乱高下いたしまして標準にならない、そういうことから見ますと、公定価格の変更ということは、当面はちょっと無理ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/68
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069・鈴木一弘
○鈴木一弘君 そうすると、総裁の意見のようでありますと、いまフランスそのほかの国が要求しているような金の公定価格の引き上げというよりも、むしろ早くSDRの価値を、各国通貨の裏づけでやるか何でやるかわかりませんけれども、やって、そうして金を一刻も早く廃貨にしたい。そういっても実際に金を保有していて、それの通貨の中に、勘定に入れているわけでありますから、そういうところの多い国ほどそれについては、これは総裁、抵抗してくるでしょうしね。その点、わが国の主張はわかりますけれども、国際協調の中ではどういうふうに、どこまでも突っぱっていかれる予定でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/69
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070・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 問題は、金の廃貨の内容であろうかと思いますが、御指摘のように、世界の国々の中、特に、欧州の国では、準備の中に金を相当たくさん持っておりますから、そういう準備の中から金を追い出すということができるものではない。問題は、そういう準備を国際収支の決済に充てるかどうかという問題であろうかと思います。国際収支の決済に充てるときに初めて幾らで渡すかということが問題になってきて、そこに、公定価格と申しますか、どういう価格というふうにきめるかという各国の話し合いが必要になってくるのではないだろうか。ですから、私が先ほど申し上げました廃貨という問題は、そういう国際収支決済に具体的に使われるという可能性は当面はちょっと無理ではないかということを申し上げました。いまの準備の中からそれをはずすということは、御指摘のようにとうていできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/70
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071・鈴木一弘
○鈴木一弘君 時間ですからこれで終わりにいたしますが、わが国の外貨準備高が減ってきて、ここでインパクトローンを許したり、いろいろなことがあるようでありますが、一方では、輸出の振興ということで輸出がだいぶ伸びてきている。そこで、国の内外でこういうふうになってまいりますと、輸出振興で外国と摩擦が起こることもできるでしょうし、いろいろなことが考えられるわけですけれども、為替管理の体系、システムといいますか、これの改定を必ずまた求められるようなときがくるだろうという感じがしてならないわけですが、いままでと違った形にこれをしなければいけないというふうに改善すべきことをして、各国との協調をはからなければならないと思うんですけれども、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/71
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072・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 日本の場合には、経常収支では大体まあバランスがとれておるといいますか、均衡をしておるのでありますが、資本収支で非常な赤字が出ております。こういう状態では、やはり資本収支に対してある程度の為替管理を行ないますことはこれはやむを得ないことでございまして、これはOECDのコードから申しましても、もちろん限界がございますけれども許されることだと思います。ただ御承知のように、いままでは非常に受け取り勘定が多かったものですから、資本収支につきまして出るほうはわりあい自由にして、入るほうをとめておったわけでございますが、最近の状態が非常に変わってまいりましたので、入るほうをある程度自由化し、出るものについては、きわめて例外的ではございますけれども、押えていくという方向に変わってきております。もちろん御指摘のように、総体としてはできる限り自由化する方向へもっていくべきだという筋につきましては、私どもも全く同様に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/72
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073・栗林卓司
○栗林卓司君 幾つかお伺いしたいと思いますけれども、お話伺っておりまして、金融引き締めはだいぶきいてきたという一つの節に差しかかってきたんではないだろうかという気もするんですけれども、そこで、先ほど来のお話の物価問題なんですが、これがかくも深刻になるのは、全面的な物価の洗いがえに近い変化になってしまっていることじゃないかと思うんです。これを円の対外価値でどう見るかというのは、ほんとうは議論になるんでしょうけれども、幸か不幸かフロートしているわけですから、しばらくそうそう悩まなくても済むかもしれません。
そこで国内ではどうかというと、ほとんどの全商品が洗いがえに近い形で物価が変わってきている中で、その相対的な関係がどう落ちついていくのか、水準の問題とあわせて相対的な価格関係がどう落ちつくのか、これがこれからの物価問題ではなかろうかという気がするんですが、そこの中で、金融政策というのはどういう役割りが期待され果たし得るのか、なぜいま申し上げたかといいますと、いま一応物価が、たとえば、卸売り物価でも二月で若干横ばいに近い形になったとおっしゃるんですけれども、幾つかの不安定な要素を将来にかかえての暫定的な安定だと思うんです。
まあ、あげてみますと、海外資源の価格動向、これは石油だけじゃございません、よくわかりません。さらに、公共料金政策もずいぶんとひずんだ形になっておりますからいつの日か国鉄、電力、米とまた出てくるでありましょうし、賃金政策の推移によっては、また、これがどうなっていくのか、そういう中で、適正な相対価格関係をどう維持させていくかという金融政策を考えますと、どうも常識的にはいまの金融引き締めを相当長いこと続けていかざるを得ないんじゃないかという気がしてならないんです。
ただ一つ、そこでお伺いしたいのは、とにかく全面的な物価の洗いがえなんです。その中で新しい価格水準と価格体系ができ上がってくる。でき上がってくる作業の中で、いまの金融引き締めが一つの予見としてセットされてくるということになりますと、今日の、高い金利政策というのは、中期的には続くものとまず覚悟せざるを得ないんではないかという気がするんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/73
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074・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 確かにただいま御指摘のように、いまの総体としての価格の洗いがえ、この場合に、金融政策がその中でどういう役割りを果たし得るかと申しますと、結局は、その金融政策の性格から申しまして、総需要を抑制して、需要の面から価格の上昇というものが起こらないようにしておくというような、きわめて受け身の役割りしか果たし得ないだろうと思います。石油の価格が上がったので、どれぐらい電力料金が上がるか、あるいは第二次製品がどれぐらい上がるかというような洗いがえの場合に、金融というものは直接的には何もタッチできない、そういう意味から申しますと、この洗いがえにどれぐらい時間がかかるか、その時間のかかる間は、金融政策としては受け身ではございますけれども、いまの姿勢をくずすわけにはいかない、そういう時間がある程度続くと思います。われわれとしては、できるだけそういう予見される価格の洗いがえはなるべく早くやってもらったほうが、物の値段についての人々の気持ちを安定させると思いますけれども、しかし、これとてももちろんそんな短期間でできるものではございません。したがって、ただいま御指摘のように、いまの金融政策の姿勢が当分は続かざるを得ないと、私どももさように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/74
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075・栗林卓司
○栗林卓司君 全くそのとおりだと私も思うんですけれども、ただ、それを続けていくときに、いろんな困った問題というのが付随的に出てくるのではあるまいか。これは私自身はわからないものですからお伺いするのですけれども、従来から物価といいますと、卸売り物価を中心にして考えていたわけです。これは、国民経済というたいへん大きな舞台で政策論議をする場合には、これは卸売り物価にどうしても話はならざるを得ないだろうと思うのです。ただ、全般的な洗いがえの中で、しかも、金融としてはタイトな環境をセットして今後ころがしていくんだというときに、一つ考えられますのは、消費者物価を通ずる資金調達手段というものがあるんではないか。これは私の想像で言っているんではなくて、これはちまたから聞いてきた話ですから、それをもって全般だと申し上げるわけにはいかないのですけれども、だんだん資金が詰まってくる、こうなっりてくると、値上げをすれば、そこで資金が結果として調達できちゃう。これは可能な品物と、そうじゃない品物とある。国民生活上買わなければどうしようもないものは、大体単価は何百円と小さいわけですから、百円、二百円積んだからといっても、しようがないということで買わざるを得ない。そこで、浮いた値上げ額というのは、実はその分野における資金調達手段になっちゃう。こういう可能性というものが出てきやすまいか。これは簡単なんです。人為的にパニック状況をつくって、奥さんあなた今度一つですよと言えば可能性になっちゃう。こういうことが弊害としてすでに起こっているという話私よく聞くのですけれども、その分野についてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/75
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076・佐々木直
○参考人(佐々木直君) どうもこれは金融政策の問題ではないかと思いますが、確かに物が不足するという環境の中で値上げが行なわれ、したがって、消費者に直結している店の売り上げ代金が伸びるということで、お金がそういう人たちの手元にゆとりができたという事実は確かにあると思います。ただそれが、金融をする手段として行なわれたという表現が適当であるか、やはり商売ですから、もうけられるときに、もうけたという利潤追求のほうがきっかけであったのか、そのところは非常に見方があると思います。いろいろ資金の偏在、金融引き締めの跛行性、そういうものが出てきておりますのも、いま御指摘のようなものが大きな規模でもあったということから出てきておるように思います。したがって、今度は、先ほどもお話がございました、金融機関を通ずる企業の資金調査においても、そういう点は十分調べなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/76
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077・栗林卓司
○栗林卓司君 金融問題と関係がないんじゃないかとおっしゃったんですけれども、実はいま言われた資金の偏在ということでからんでくるんじゃないか。で、先ほど総裁は、そういったものを個々に見ながら、あなたのところはゆとりがあるから、今度お金を貸すわけにいかぬ、限りがあるんだから、今度こっちに回すのだとおっしゃいました、そのとおりだと思うのです。ただ、これを非常に単純化して、こういう見方は間違っているのかもしれませんけれども、単純化して見ますと、いま言われた資金の偏在が可能になるところには、貸し出しは少なくなります。耐久消費財を中心にして、なかなかもって消費者物価とかね合いの資金獲得操作ができないところは、確かに資金に困るわけですから、回ってまいります。というと、結局は、物価の値上がりというものを、一つの資金偏在手段といいますか、調達手段といいますか、それをしながら、こちらのほうはそんなかっこうで自己金融をやっている。耐久消費財を中心にして、いわゆるメーカーといわれている層については、従来の貸し出しワクを広げながら、そちらにお金が流れていく。そういう資金の流れというのができ上がってしまわないんだろうか。なぜ、そうなるかというと——なぜ、そういう資金の偏在ができてしまうのかということではないかと思うんです。よくこれもちまたで聞く話ですけれども、最近はもう銀行に預金もしないんだと、どうするんだと聞きますと、直接民間金融でやっちゃって、金利は一割以上取れるからけっこうなんですというような話で、相当だぶついているんだという話も聞くんです。問題は、こういったものを金融政策としてどう整理しておいでになるかという意味なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/77
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078・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 町の金融につきましては、確かにそういうもので、相当な大きな資金が動いておることは事実でございますが、ただ、どうも私どもとして、なかなか個々は調べにくいもので、現実にはその実情を十分把握はいたしておりません。ただ、いままでの例から申しましても、確かに金融が締まりますと、とかくそちらの資金が多くなる、ということは、結局金利が上がるから出し手が出てくるんだと思います。そういう面からいって、最近、そういういわゆる町の金融で行なわれております量がいままでよりもふえているということはあり得ることだと思いますが、それ以上ちょっと私もはっきりつかまえておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/78
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079・栗林卓司
○栗林卓司君 私も断片的なことですから、自信を持って申し上げているわけではないんです。ただ、いま総裁が言われたように、とかく金融引き締めになると、金利水準が上がるんで出し手もふえてくる、町の金融というものが多くなってくるという仕組みは、それは想像できることですとおっしゃっておりました。
いま私が実はお伺いしたいのは、資金の偏在、これは吸収してしまうほうが一番いいわけだと。それを全部一元的に可能なら管理しながら、しかも、これから全面的な物価洗いがえというかってないような困難な経済環境の中で、どう誤りなくかじを取るかという話になってくると、なおのこと、そんなものはできるだけ吸い上げてしまいたいと、こうなるんですけれども、ただ、そこでいつも言われることですけれども、障害になるのは、金利の硬直性ではないんだろうか。従来からなぜこれが続いてきたというのは、個々に伺えば、ごもっともな理由ばかりなんです。しかし、ここで金融機関としては、先ほどおっしゃったように、受け身の形で環境をセットするしかない。そのとおりなんですけれども、本来の金融機能として最もきくはずの手段をいましばっているわけです。これでよろしいんだろうかということにどうしてもいかざるを得ないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/79
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080・佐々木直
○参考人(佐々木直君) 確かに御指摘のように、日本では金利体系というものが非常に動きにくくなって、弾力性を欠いております。これはいまもお話のありましたように、いろいろないきさつ、いろいろな沿革がございまして、こういうことになっておるのでありますが、ただ、金融市場における金利だけは非常に弾力的になっております。金融市場と申しますのは、たとえば手形の売買市場、それからコール市場、こういうところでは、現実にすでに一二%というような金利が出現しておるわけでございます。ドイツあたりは預金金利などがずいずん自由化されておりますから、金融市場におけるそれだけの個々の金利が上がりますと、それならば預金にもある程度高い金利をつけても同じじゃないか、要するに、他の金融機関から借りるときの金利が一二%ならば、個人から借りる金利でも一〇%でいいじゃないかということになっておる。ただ、日本では公社債市場というものが、まだ何といいましても発展の度が中途でございます。金融緩和期にある程度成長が進みましたけれども、まだ決して十分ではございません。そういうような点、その他の点から、長期金利との関係で、短期金利もまた頭が押えられるというようなこともございまして、いまのような状態になっているわけでございますが、これはわれわれ長年非常に希望し、努力しながら、実現できておりませんけれども、できるだけ機会をつかまえて、金利体系の弾力化を進めていく必要があると、こういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/80
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081・栗林卓司
○栗林卓司君 お話はそのとおりだと思うんですけれども、ただ、昨年秋以来、果敢な物価への戦いを展開してまいりましたとおっしゃったんですけれども、その戦いを展開する主たる戦場の一つが、積年の課題であったこの分野ではないんだろうか。公社債市場はこのままでよろしいんだろうか。で、なぜ資金の偏在が起こるかということも、個々に詰めていけば、公社債市場が育っていないための、素朴に言えば、土地代金の問題もあるのかもしれませんし、それやこれやという問題もありながら、いま、たいへんひずんだ金融環境ができ上がってしまっているんじゃないか。それもこれもなぜいま問題にしなければいけないかというと、卸売り物価だけならばまだ理屈は言いやすいんです。消費者物価の段階まで問題にしなければいかぬということになると、よほど、そこまでおりた、きめのこまかい金融政策をしていかなければいけないんでしょうし、その個別の窓口指導というにしては、とても不可能だし、大体、そこまで突っ込んでやるべきかどうか私も疑問なんですけれども、それよりは、金利機能や、あるいは公社債市場なり、本来の金融機能というものを完備していく戦いを早急に進めるべきではないんだろうか。いろいろなところに問題があるのはよくわかる。しかし、いま直面している事態というのは、そんななまやさしい事態ではないんではないだろうかと思いまして、できれば、どのような決意でこの問題を、しかも、どのような見通しで、期間の中で、たとえ、若干のしこりがあっても取り組んでおいでになるのかどうか、ぜひお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/81
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082・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいま、また消費者物価の点御指摘がございましたが、その消費者物価の値上げによって金をつくるという、そういうような金融のしかたについて、金融政策を実行する者の立場からどう考えるかということで御質問かと思いますが、それを、集まった金を高い金利の、たとえば、債券を持っていって、それで吸収するということが、金融を調整する手段としてできれば、御説の、おっしゃる趣旨も通るかと思うんですが、その点では、実は、有価証券市場の一部には、相当高い利回りのものがすでに出ております。それは、結局、新発債と既発債の利回りの食い違いという形で、また公社債市場にむずかしい問題を投げかけておりますけれども、現実に、そういう、ある程度ゆとりができた金を吸収するための投資物件というものはある程度は現実にございます。ただし、いまの御指摘のようにしてできた資金というのは、なかなか、そういう確定利付き債券の場に入ってこない傾きがございまして、それによって問題が解決するとは思いませんけれども、一応、いまの市場には、相当高利回りの有価証券の取引があるということは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/82
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083・栗林卓司
○栗林卓司君 それでは、最後に一つだけお伺いしたいと思いますけれども、ただ、いまの消費者物価の過程で、自己金融機能ということを、何か値上げで、たいへんエキセントリックなケースだけお考えかもしれませんけれども、実は、この間調べていてびっくりしましたのは、たまたま飼料が値上がりしたということがありました。これは、いろいろな政策をからめながら、去年から数回にわたって上げてあるわけです。まあ、倍近くと言うとちょっと言い過ぎですけれども、上がってきた。小売りの上がりを見ますとほとんど動いてないんです。大体一三%前後。ほんとうは、利益の絶対額から言えば、それだけふくらんでいるわけです。これと同じ状況というのは流通各部門にあるんではないか。そういったものが、手形サイトを短縮しても、わりあい困らないで、資金が流れている面にもいくんではないか。そういう資金の偏在というものが起こってしまう。それについてもきめ手がないんですね、どう見ても。そこで、何とか、金融機能は、考えてみたらあっちこっちしばってあったから、ちゃんとした姿にすれば、そこで補い得る部分もあるんではなかろうか。そのときに、では、いまの中小金融機関をどうするのか、長期金利との関係をどうするのか、あるいは公社債の関係をどうするか、これも従来は議論だけでよかったんですけれども、ここまでくれば議点で申し論では済まないんではなかろうかという上げさしていただきます。
最後に一つお伺いしたいのは、これは、昨年末でございましたか、円の先物をめぐって外為銀行のほうで投機的な動きがあったということで、日銀のほうでたいへん外為銀行各社をしかりおいたということを新聞で拝見いたしました。ああいう行動というのは、なぜ起こるんでしょう。一部で聞きますと、それは、お客さんであるところから頼まれたものを取り次いだだけで、何も外為銀行が悪いわけではありませんという話も聞きますし、しかし、やっぱり、そこで一つの投機的な動機に銀行みずからも巻き込まれていく傾向というのは避けがたく存在したんだろうか。あの件についてお考えをひとつお伺いして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/83
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084・佐々木直
○参考人(佐々木直君) ただいま御指摘の件は、ことしの一月二十三日のことであろうと思います。これは、一日でドルが東京市場だけで七億ドル以上取引されました。その相当な部分は、日本銀行が、政府の外為会計の代理人として売ったわけであります。それで、このような大きな取引が行なわれた背景というものは、確かに、フランスが共同フロートから離脱いたしましたために、二十一、二十二の二日間、東京の為替市場休みました。したがって、三日分の取引が二十三日に集中したということもありましたけれども、しかしその額が、普通に考えられます一日の取引額の三倍よりは相当大きく、それで私どもとしては、やはり、それはもちろん、バックにはそれぞれ払うべき金があり、あるいは受け取るべき金があって、そのしりとして出てきたのかもしれませんが、その取引について、やっぱり円がもっと下がるかもしれないということから、結局、支払い急ぎ、受け取り繰り延べという操作が行なわれたと思います。ですから、十五日、二十日先に払っていいものを、きょう払ってしまうというようなことによる資金の需要というものもあったと思います。そういうようなことから、そういうドルを買った額が、ほかの銀行よりも飛び抜けて大きかった銀行に対して、とにかくドルを買うのには円が要るわけでございますから、これだけの金融引き締めの中でそれだけ円の余裕があるなら、それはわれわれのほうに返してほしい。あの日は一日で二千億円の外貨代金の支払いが要ったわけですから、それだけの余裕があるはずはございません。結局、現実にどういうことが起こったかといいますと、法律のあれによって積む必要のある準備預金を一日くずしまして、二千億円くずして払った、そういうようなことから見まして、やはり度の過ぎたそういう外貨の手当てをした銀行は、やはり手元の余裕があると判断されてもしかたがないではないかということで、ああいう措置をとりました。それで私どももそういうような特殊な措置をとったことは初めてでございますし、その後の成り行きを心配しておったのでございますが、その後ばったりドル買いがとまってしまった、二月などは全然なかったというような姿。ということは、もちろんほかのいろいろな理由もございますが、いかに一時的に早手回しに外貨が買われたかということをあらわしておる、その後の動きから申しまして、あの措置は適当であったというふうに判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/84
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085・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 佐々木総裁には、本日御多忙中にもかかわらず長時間にわたりまして貴重な参考意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
午後零時十五分休憩
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午後一時四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/85
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086・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/86
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087・田中寿美子
○田中寿美子君 午前中、総裁のお時間が短こうございましたので、私もだいぶはしょりましたんですが、今回発表されました日銀の短期経済観測調査のその結果のことで、もう少し御説明願いたい点がございます。
マクロ的に見て、日本の経済は落ちついていくのではないかというお考え方、そのマクロ的にという意味は、長期的に、総体的にと、こういうふうな意味でございましょうか。つまり、言いかえれば、四十九年度全般にわたってそういう方向に行くんではないかというお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/87
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088・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) いまおっしゃられました御質問のとおりでございまして、この短期経済観測ということで大勢を判断いたしますと、全体として、この先行き観といたしまして、製品の需給関係もだんだん需要超過という度合いが落ちていく状況でございますし、設備投資意欲というものも、現に鎮静いたしておりますけれども、強くないと、そういうことからいたしまして、全体として落ちつく方向にあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/88
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089・田中寿美子
○田中寿美子君 調査は、二月の時点でなすって、そして十月−十二月期の実績、それから四十九年一−三月期の予測、それから四月−六月期の予測でおとりになっておりますね。それで、その結果として、午前中も申しましたような傾向が出ていると、そういうことから推していくと、これほど大騒ぎになっていたGNPの伸び、それから物価の上昇率、卸売り物価並びに消費者物価、両方ともまあ落ちついていくんじゃないかというような期待感を与えると思うんですが、そういうふうに解釈してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/89
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090・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) あの短観調査の結果で申し上げますと、現時点ではなお全体として需給関係、まだ需要超過の状態がございますけれども、その先行きとしましては、ただいま申し上げましたように、だんだんその点が変わっていく、たとえば、業況をどう見るか、いままでは、まだ現時点では、業況はいいと判断しているほうが多いんでございますけれども、これが次の期を予測しますと、今度は悪いというものがふえてくるとか、製品需給判断についても同様でございまして、いまの基調的態勢といたしましては、そういう方向にあるということが申し上げられます。ただ、その後にいろいろまだ予想される問題もあることはあるわけでございまして、物価などについて申しますと、第二次石油値上げの影響がどう出てくるかというような問題は含んでおりますけれども、まあ、主として金融財政の引き締めの効果が現にあらわれつつあると、そう考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/90
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091・田中寿美子
○田中寿美子君 この中に、原材料在庫水準に対する判断は、ほとんどすべての業種で不足感が一致しているというふうに報告されておりますね。ですから、原材料に関しては、そういう楽観的な見通しはないということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/91
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092・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 現時点、この二月時点での調査におきましては、その時点では、ちょうど石油問題の発生というようなこともございました、その感じがまだ残っているということもあったんだと存じますけれども、なお、原材料在庫の不足感は、おっしゃるとおりむしろ強まっているというのが調査結果でございますけれども、先行きといたしましては、やはりその点もだんだん改まっていくと、それが特に製品需給が弱まってまいりますと、また、それからの影響が出てくると、まあそういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/92
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093・田中寿美子
○田中寿美子君 ですから、ペンディングな要素はまだまだあると思うんですけれどもね、それで、先行き需要が減退するとの判断から不足感は後退したものの、業種によりかなりの跛行性を示しているということがありますね。で、不足感がまだ非常に大きい業種というのは、どういうものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/93
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094・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 製品在庫判断からいたしますと、やや不足感が弱いのは、製品在庫水準といたしましては繊維とか、非鉄、それから電気機械、それから自動車、そういったところでございますし、なお、この時点で不足感が先行きもなお強く見ておりますのは、化学、それから石油精製あるいは紙パルプ、窒業と、そういった業種でございますけれども、それらも、なお、だんだん不足感というもの、それ自体はレベルダウンしていると、そういう状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/94
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095・田中寿美子
○田中寿美子君 中小企業のほうはどうですか。これ、調査対象のうち、中小企業は二千百七十七社になっていますね。主要企業五百十社ですね。その中で、傾向として同じような傾向が出ているのかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/95
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096・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 中小企業も大体同じ傾向でございます。ただ、設備投資などにつきましては、大企業よりも早目にスローダウンするといいますか、テンポが落ちている状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/96
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097・田中寿美子
○田中寿美子君 跛行性で、業種別にいまあげられたような出版とか印刷とか、それから化学、石油精製、パルプ、紙、窯業というふうに言われたけれども、それの中で、中小企業のほうで在庫不足だとか、それから原材料の不足感というのは、大企業に比べてどういう状況にございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/97
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098・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 大体似たような傾向でございますが、供給超過というのを申し上げますと、食料品関係、あるいは先ほど、大企業でもそうでしたが、繊維関係並びに繊維加工関係が主でございまして、需要超過といたしますと、紙とか、紙の加工品、化学、それから窯業、それから鉄鋼、非鉄という、そういったものも現時点では需要超過というふうに判断いたしております。ただ、これも先ほど申し上げましたように、この次の期という予測でまいりますと、それら需要超過の業種もだいぶ少なくなりまして、そこでなお目立ちますのは紙と紙加工品及び化学関係と、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/98
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099・田中寿美子
○田中寿美子君 調査の結果の報告ですからそのとおりだろうと思いますけれども、第二次の石油値上げがある可能性、いまもう目に見えているわけですね。それがどう響くか。それから、需要超過の面が、いま繊維なんかでも、中小企業でも幾らか落ちてきているけれども、でも全体としては大企業と同じような傾向をたどっているというふうに言われるけれども、たとえば、繊維工業そのものでは需要超過が相当まだ強いかもしれないけれども、これはそれが織物になって、そしてわれわれ消費者のところに渡ってくる面ではいまやもうセール、半額セールとか、そういうことを続けなければならないほどたくさん品物をかかえている状況でございますね。ですから、跛行性という場合に、おそらくそういう面までの調査がされているのかどうか、ちょっとこれだけでは私、わからないのですけれども、全体として、マクロ的に見て、経済が落ちつくというふうな判断をされておりますので、その判断にのっとって、一時うわさされた第六次の公定歩合の引き上げということはもうすっかりあり得ないと、消えてしまったと、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/99
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100・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) まだまだむずかしい問題も残っておる状況でございますので、引き締めは堅持していく必要はあると考えておりますけれども、現段階、現時点でその効果を着実にあげていくということを主眼といたしまして、現時点で第六次公定歩合引き上げというようなことは考えておらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/100
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101・田中寿美子
○田中寿美子君 それでは、通貨の発行量の問題、先ほど、午前中問題にしたところなんですけれども、私たちの感じでは通貨の適正量ということを考えるときに、国際通貨のことをひとつ非常に大事に考えていられる。
それからもう一つは、通貨価値を安定させるという意味では、卸売り物価が上がるか下がるかということが非常に重大な関心になっていたと思うんですね。それで、それに適応して通貨を発行してこられたというような感じがして、私ども一般の消費者物価に関しては、あまり考慮にこれまでは入っていなかったのじゃないかという気がするわけです。それは政府もそうであって、消費者物価も三十五年以降ずっと上がっていたのですけれども、そうして定期預金の利率よりは、消費者物価の上がっているようなときがあっても、それを問題にして心、あまり貯蓄の減価のことも取り上げてももらえなかったわけです。それが一昨年以来の卸売り物価の高騰がどんどん続いていき、そうして昨年からのこのひどい狂乱的な消費者物価の上昇と、そういうことがあって、急に消費者物価の問題も考慮の中に入ってきているような気がするのですけれども、日銀が通貨を発行する際の一番大事な目標といいますか、それはどういうところに置いていられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/101
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102・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 日本銀行といたしましては、通貨価値の維持安定ということを任務としているわけでございますので、その場合に、通貨価値と申しますと、対内価値と対外価値というふうに分けられようかと思いますけれども、その対内価値を何で見るかということになるのでございますが、これはいろいろな指標はございますが、卸売り物価指数で見たり、消費者物価指数で見たりすることができるということで、要するに、それらを総合して考えるということになると存じます。そういうことで全体の経済の運行状況、その中で、特に、物価の安定ということを重視して考える。その場合に物価は、金融政策の直接及びやすいのは卸売り物価で、消費者物価に対しては、卸売り物価を通じて安定の効果を働かせるという面がございますのと、消費者物価は、金融政策以外の面、よくいわれます流通機構だとか、その他のいろいろな関係で直接影響を及ぼしにくい面があるということで、端的に申しますと、できるだけまず卸売り物価を安定させる。そうして、それに応じて波及的に消費者物価も落ちついてくる。そういうことをねらっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/102
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103・田中寿美子
○田中寿美子君 いままで卸売り物価が上昇したら金融を引き締める、低下すると緩和するというようなやり方をとってきていたと思うのですが、通貨の価値の安定という場合に、消費者物価の安定というものを、今後は相当——直接日銀が消費者物価に介入するということではありませんけれども、卸売り物価が上がるということは、消費者物価を非常に引き上げていくという観点で、しかも、消費者物価の上がり方がたいへんいろいろな要素が作用しておかしくなったということから考えますと、過去に公定歩合を引き上げたり、預金準備率を引き上げたのは、いつも卸売り物価が高くなってきたというのでやっていたような気がしますが、今後、消費者物価というものの安定というのも、日銀のする金融政策の中で、十分考慮に入れるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/103
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104・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 私どもとしても、消費者物価の動向、非常に重要なものと考えている次第でございます。最終的に直接国民に影響がありますのは、この消費者物価でございますので、結局は、消費者物価を可及的に落ちつかせるということが重要だと考えるわけでございます。そこで、まあ金融政策の運営について、ただ卸売り物価だけを見ていたというわけではございませんで、これは申し上げるまでもないと思いますけれども、そういった物価の全体の動き、またさらには、国際収支との関係とか、まあ、全体を総合して、このままいけば卸売り物価も上がり、消費者物価も上がるというふうに思われたときは引き締めを行なうと、そういう考え方でございます。ただ、現実に、先生御指摘のとおり、これまで消費者物価が——最近でこそ卸売り物価は非常に安定しておりますけれども、最近までは非常に急騰したわけでございますが、その間におきましても消費者物価はじりじり上がってきておったわけでございます。これも決して好ましいことであったとは思いませんけれども、そして私どもそのこと自体にも常に注目はしておったのでございます。ただ、先ほど申しましたように、直接金融で及びにくい面、それから、いろんなこれは理論とか見方がございますけれども、一般の所得水準の上昇に伴って、サービス業などの料金はどうしても上がるんだと、そういう見方もありまして、消費者物価を直接押えるというのはなかなか容易ではない。まず、金融としてできますことは、総需要を押えて、それによって消費者購買力が少しでも落ちれば、その面からも消費者物価への影響はあり得るわけであります。それと産業投資を押えて、直接的には卸売り物価により強く響き、それが消費者物価に効果を及ぼすというふうに考えてきているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/104
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105・田中寿美子
○田中寿美子君 と申しますのは、まあ日銀は、大蔵省と一緒になってずっと貯蓄を奨励していらっしゃるわけなんです。で、それぞれ零細な庶民の貯蓄が、日銀やら大蔵省の号令でどんどん集められていて、そしてこれが財投なんに使われているわけですからね。ですから、確かに消費者というのは、卸売り物価が落ちついているからだいじょうぶですよ、だいじょうぶですよと言われながら、消費者物価が上がることの犠牲を受けてきているわけです。この際、日銀の金融政策の中にもそれは十分考えに入れてほしいということを御要望申し上げたいと思います。
で、それに関連しまして、日銀券のその発行限度の問題なんですけれどもね、これは日銀法によって限度額が、限度は大蔵大臣が限度額を決定するということになっている。で、限度外の発行の際には、これは、また大蔵大臣の承認を得るということになっておりますね。ところが、これまで、四十年以降を見ますと、限度以上に発行したということはないようですね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/105
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106・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 限度超過発行は何回もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/106
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107・田中寿美子
○田中寿美子君 四十年以降ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/107
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108・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) ずっと毎年ございます。そして、それが十五日をこえて発行を継続する場合は認可を受けるということで、認可を現に受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/108
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109・田中寿美子
○田中寿美子君 日銀の経済統計月報によりますと、四十年以降は、最高発行限度額内ですね、全部。まあ、四十九年の私まだわかりません。ですけれども、まあ、限度額をこえて発行したということはない。つまり、言いかえれば、限度額というのはたいへん余裕をもってきめられているような気がするんですけれどもね。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/109
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110・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) むしろ限度額は低目にきめられておりますので、毎年年末にはもう必ずかなりの発行超過を来たすのでございます。先生御指摘のは、おそらく平均発行高、月中の平均発行高だろうと存じますが、平均発行高ですと、あるいは限度超過にまではいかなかったと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/110
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111・田中寿美子
○田中寿美子君 ということは、年間には限度額をこえて発行していることもあって、そうして十五日をこえて税金を納めたこともあるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/111
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112・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) これまでほとんど連年、毎年そういう状況でございます。特に年末、銀行券はまあ御承知のとおりでございますが、月の中でもふえたり減ったり、かなり幅がございますが、特に年末は急激にふえますので、限度額というものは、それは当然そのときは超過してもやむを得ないんだという考え方でつくられていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/112
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113・田中寿美子
○田中寿美子君 私は平均額で見ておりましたものですからね、最高発行限度額、年間のそれに比べてですね、平均発行高で、こえているときは全然ないものですから、そういうことはないのかなと思ったんです。それで、もしそうであれば、発行限度額をきめているということはあまり意味がないような気がしたわけですね。
そこで、日銀の金融政策についてなんですが、まあ日本銀行は、銀行の銀行ですし、国の銀行ですから、ですから、国民全体の利益を目ざして金融調整していくという義務があると思うのです。そこでもう一度、もう何回か言われてきましたけれども、日銀の金融政策の一番の何というのですか、ポイントといいますかね、金融政策をするにあたっての目標というのはどういうところにあるかということを、もう一度あらためて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/113
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114・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) それは、一言で申しますと通貨価値の安定と、維持安定ということであろうかと存じます。まあ日銀法で申しますと、「通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成」ということを目的とされておりますけれども、これを一言に要約しますと、まあ、通貨価値の維持安定だと考えております。そのためにどういう考えでやっていくかと申しますと、その通貨価値の安定をどういうふうに見ていくかということで、ただいま申しましたような物価の安定、それから、国際収支の均衡といいますか、適当なる状態、それから生産と雇用と、まあ通常大きく分けますと、こういう各面がそのときそのときにおいて適正、順調にいくと、つまり、通貨価値の安定というワク内でできるだけ生産、雇用の増大をはかっていく、国際収支の均衡を維持していくと、そういうことが私どもの任務だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/114
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115・田中寿美子
○田中寿美子君 つまり、国際収支の安定といいますか、国際通貨価値を維持していくこと、それから、国内の通貨価値を安定させていくということ、それから、いまおっしゃったその雇用の問題もおっしゃいましたね。これは中央銀行の役割りとして雇用を安定させる、完全雇用というようなこと。で、こういうふうな目的があるとすれば、通貨が減価していっては、私はならないと思うのですがね。それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/115
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116・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) その点はおっしゃるとおりでございます。通貨価値の維持安定ということが最大の目的でございますから、できるだけそれに努力しているつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/116
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117・田中寿美子
○田中寿美子君 で、まあ日銀の金融政策、まあ個別のというか、具体的なそのときときの政策というものをだれが決定するかという問題なんですけれどね。ちょうど昨年の参議院の予算委員会のおりに副総裁が出席されたことがございます。ちょうどそのころ、あれは四月だったと思いますが、預金準備率を引き上げるということがうわさされていたことがある。で、経済企画庁長官が小坂さんでしたけれども、預金準備率を引き上げるべきだということを言われておりましたので、私そのときに、政府のほうが先に準備率を引き上げるとか、公定歩合を引き上げるとかいうことを言うべきものではないはずだと、本来日銀のほうがそれを決定するはずのものなんだけれども、どうしてそういうことを政府のほうが先にアドバルンを上げるのかということをお尋ねしたら、副総裁が、それはもちろん国の銀行だから、経済政策は政府と日銀とが互いに相談しながらやっていくことであるから、だから、経済閣僚がそういうことを言われてもおかしいことはないんだと。結局いよいよ何日の日に何%上げるかということを決定するのが、日銀の義務であるみたいなことをおっしゃったんですが、それでよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/117
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118・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 私どもとしましては、ただいまお話しの預金準備率の引き上げとか、引き下げとかいう決定は、法律の定めるところによりまして、大蔵大臣の認可は要りますけれども、決定は日本銀行独自にすべきものだと考えております。ただ、金融政策といいましても、先ほど申し上げた金融の使命も、金融政策としての見地からのことを申し上げたのでございまして、これはもちろんいろんな他の経済政策と密接なかかわり合いはございますので、いろいろな御意見がそれぞれのところからあるということは十分あり得ると思いますけれども、決定は、私どもの政策委員会で独自にきめていくというふうに知っておりますし、そうあるべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/118
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119・田中寿美子
○田中寿美子君 私も、日本銀行が、政府から中立であるなんというふうには思っておりません。だから、政府の経済政策と、うらはらになって金融面で調整をとっていくという役割りをしていらっしゃるぐらいのことはわかるんですけれども、もう少し自主性があっていいんじゃないかという気がするわけなんですね。日銀にはわざわざ政策委員会がつくられている。金融制度調査会の答申もあるわけなんですけれども、政策委員は、そうそうたる人が名前連ねていらっしゃるわけなんですが、日銀の政策委員というのは、一体どういう働きをしていらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/119
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120・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 政策委員会は、日本銀行の最高の意思決定機関でございまして、法律に定める事項、まあ、日本銀行の最も重要な仕事でございます公定歩合の上げ下げとか、いまの預金準備率の上げ下げ等は、すべて政策委員会で決定することになっております。そういう意味で、必ず政策委員会におはかりして、その政策委員会の決定できめていただくというふうにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/120
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121・田中寿美子
○田中寿美子君 事実上はあまり機能していないというふうに私は聞いておりますが、ほとんど政府と日銀の首脳部というか、理事ですね、理事さんたちが実際の運営に当たっていらっしゃるわけですが、がきめたことを政策委員会がオーケーするだけだというふうに伺っておりますけれども、日銀が政治的に中立であるというふうに私は思わないけれども、どういうふうに政治的に中立であるかどうかということを決定するのは、政府の介入がどのくらい行なわれているかということで、私はきめるべきだと思うわけなんです。それは、現行の日銀法の第四十二条から第四十七条までに政府の監督の規定がありますね。第四十三条で「主務大臣ハ日本銀行ノ目的達成上特二必要アリト認ムルトキハ日本銀行二対シ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得」と。必要であると認めるときは必要な命令を出すことができるんだから、これは何でもできるようになっていると思いますが、だから、事実上政府が、日銀の政策にも干渉することができるようになっていると思うんですね。その中でも日銀法第二十五条ですね、「日本銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ信用制度ノ保持育成ノ為必要ナル業務ヲ行フコトヲ得」というのがありますね。大体、日銀法というのはものすごく古くさい。これは昭和十七年ですか、できたのは。戦時立法みたいな法律で、何べんか日銀法の改正が問題になってきたんだけれども、それが改正できない理由はどこにあるのかと、私も思いますけれども、例の昭和四十年ですね、山一証券に対する日銀の無制限、無担保、無期限の特別融資をしましたね。ああいったようなことすら起こるんで、あのときは、いまの田中総理大臣が大蔵大臣、宇佐美日銀総裁だったわけですね。そういうことまで行なわれるということだと、日銀の主体性というものが、非常に私は問題だと思うわけなんです。このごろ宇佐美さんが発言していらっしゃるものを読みますと、たいへん自分は自主性を持っていたということをよく言っていらっしゃいますけれども、その辺で、公定歩合の引き上げ、それから預金準備率の引き上げと、それから、今後の金融政策に対して、もう少し自主性を日銀が持ってもいいのではないかというふうに思うのですがね。その辺を内部にいらっしゃって、どんなにお感じになっており、そしてどのように自主性を発揮しているというふうな御説明がありましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/121
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122・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 日本銀行は十分な自主性を持ってやっていないという御批判でございますが、私ども中にいる者といたしましては、十分自主的に考えて自主的にやっているつもりでございます。これはどういうことからそういう御批判が出るか、そのうちの一つには、たとえば新聞でどちらが先にそれを言ったかというようなことなどもだいぶあろうかと思いますけれども、たとえば、公定歩合の問題などはどちらからも漏れるべき問題ではないわけでございますし、そういうことではなくて、実態的には、私どもいまこそ公定歩合を上げるべきだという考えを持ちますれば、直ちにそういう手続をとるわけでございます。ただ、その間におきまして、政府は全体の情勢をどう考えているかとか、それに対してはどういう考えであるかとかいうようなことは、常時、思想統一といいますか、見解を合わせ、もしそこに考えの違いがあれば、できるだけ考えを詰めていくというふうな努力はいたしております。しかし、私どもがすべきでないということを、単に政府から言われたからするとか、私どものこうしたいということが政府に認められずについにできないというようなことはこれまでのところございませんでした。あの山一証券の問題なども、これは法律上無担保ということであれば、日本銀行の本来業務に入っていないから認可を受けるということが必要であっただけでございまして、これもあのときの情勢を考えて、日本銀行としても、あのへたをいたしますとたいへんな金融恐慌につながるおそれすらあるという判断のもとに、応急措置としてはああいうことをいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/122
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123・田中寿美子
○田中寿美子君 非常に政治的な判断に立たれるわけなんですね。だから私は、日銀と日本の大蔵当局とが相反するものだなんてもちろん考えておりませんので、絶えず協議していらっしゃるんだということはわかりますけれども、政府の支配のもとに従属するというようなことが絶対にないようにしていただきたいということなんです。
もう一点だけ。金融引き締めをずいぶんやっている。窓口規制をしている。それから、選別融資などを指導している。ところが、日銀貸し付けのほうはこれは制限ないでしょう。貸し付けは幾らでも出している。そうすると、窓口規制のほうはするけれども、日銀貸し付けのほうには制限がないということですね、私は、どうもこの辺よくわからないので説明していただきたいのですがね。貸し付けはどんどんふえているわけなんです。これはどういうことを意味しているのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/123
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124・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) よく窓口指導といわれておりますけれども、これは貸し出しのワクを設ける。と申しますのは、市中銀行についてでございます。市中銀行がたとえば一−三月の期間の間の貸し出しの増加額をこの範囲に、たとえば都銀で申しますと、一−三月に八千七百億円ですか、それをこの間三百億円削減いたしましたから八千四百億円の増加にとどめるというのが、いわゆる窓口指導としてやっていることでございます。そして、いま貸し出しとおっしゃいましたのは、日本銀行からの貸し出しだと存じますが、日本銀行の貸し出しと申しますのは、市中銀行と日本銀行との間の貸し出しでございまして、いまの市中銀行の貸し出しは、市中銀行と企業、市中銀行のお客さん、企業との関係の貸し出しでございまして、それは必ずしもつながらないのでございます。日銀から借りてそちらへ貸すというのではございません。
で、日本銀行と市中銀行との関係と申しますと、これは金融市場というものとの関係で生じてまいりますので、たとえば、きょう税金の引き揚げが千億円あったと、そうしますと、多くの方はかねがね市中銀行に預金しておきましたのを、預金から引き出して国庫に納める、そうしますと、銀行としては、その日は少なくとも、預金支払い資金が要ると、中には税金まで借りて払っているというような企業もあったと思いますけれども、簡単に預金をおろして、国民なり企業が税金を納めたとしますと、その銀行の預金が減って、国庫の預金がふえるわけでございますが、その預金の支払い資金というものは、銀行は何らかの形で調達しなけりゃならないわけでございますが、そこで銀行間の貸借、コール取引というようなものが生ずるわけでございますが、究極的に現金の金融をするのは日本銀行しかないということで、税金が現金で払われなければならないという意味におきましては、きょうほかの動きが何にもなくて、銀行券の増減もきょうはなかったと、とにかく千億円の税金納期で引き揚げがあったとなりますと、その日はそれだけの資金を、日銀は何らかの形で金融機関、金融市場に供給しなきゃならないわけでございます。それでただいまのところ、それでも貸し出しという形で出しますことは極力押えておりまして、これが今度は日本銀行と市中銀行、これも大手の都市銀行十行ばかりでございますが、との間には貸し出し限度というものが別途ございまして、それはもう三十七年秋からそういう限度を設定しておりますけれども、そしてかつ、当初一兆二千億ぐらいだった限度をどんどん減らしまして、ただいまは八千何百億円という程度に、これはもう常時残高としてもそれをこえてはならないという限度としてやっておりますので、ここのところ日本銀行の貸し出しというものはふえておりません。月の中でさっき申しましたような金融のフレで日本銀行のそういうところへの貸し出し残高があるときは三千億円になったり、七千億円になったりというような動きがございますが、その限度をこえての貸し出しということはございません。しかし、先ほど申しましたように、そういう金融市場の関係で、その日その日としては、日本銀行は現金の供給の任務がございますので、そういうものは各市中の持っております債券の買い入れとか手形の買い入れとかいう、いわゆるオペレーションというもので主として供給している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/124
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125・田中寿美子
○田中寿美子君 私、しろうと考えで見ますと、公定歩合を引き上げ、預金準備率を上げて、だから、各銀行からの日銀への預金はふえざるを得ないわけになっていますね、準備率を上げているから。だけれども、一方銀行への貸し出しについては、貸し出し額というのは増加しておりますね、実際に額としては。そうではないですか。限度額があって、それをこえてはいないというお話ですけれども、私は、その貸し出し額が増加をしているんでは、何かしり抜けのような気がしたもので、そこのところの理屈がよくわからなかったものですから、説明していただきたいと思ったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/125
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126・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 日銀貸し出しの残高の動きでございますが、これは時によって動きがございますが、先ほど申しましたのは、一般貸し出しということでございまして、これはほとんど増加しておりません。ただ、季節的な動きとしまして、昨年じゅうで見ますと、昨年の一月の残高は九千億ぐらいでございまして、一番少ないときが五月の四千億ぐらいで、また、ことしの一月は九千億になったというような動きはしておりますが、これは先ほどの限度を置いている都銀以外のものも含まっておりますので、限度を置いております都銀のほうは、年末の一時期を別といたしますと、限度をこえていることはございません。ずっと八千五百億円以下というようなところでおさまっているのでございます。
この間において若干貸し出しが全体としてふえたことがございますが、それは輸入関係の貿易金融でございまして、それはほとんど制度的に、輸入がふえて、ユーザンスといいます支払い猶予期間の間だけの金融を円でつける、その金は、日本銀行から貸してもいいという制度をずっと続けてきておりましたので、輸入の増大とともにそれはふえ続けていた時期がございます。しかし、これも昨年の十二月からその残高を減らしていくということでいま減らしている次第でございます。
そういうことで、貸し出しということだけとってみますと、ふえていないと申し上げていいと思うんですけれども、しかし、日銀じゃ資金を何も供給していないかと言われますと、債券買い入れとか、手形買い入れとか、オペレーションでかなりの金額の資金供給をしているというのが実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/126
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127・成瀬幡治
○成瀬幡治君 時間がございませんから、簡単にお尋ねしたいと思います。
第一は、先ほども、日銀法をまつまでもなく、貨幣価値の維持ということにあるわけでございますが、そこで、総需要を抑制して物価を下げる、これも貨幣価値の維持だと、あるいは硬直しておる金利を少し何とかしたらどうだろうという、預金金利等、金利の硬直化を少し是正していきたいということにあると思いますけれども、しかし、よく考えてみると、ここ何年もそうですが、金利では目減りがもうカバーできないというところにきておると思います。
そこで、日銀として、目減りに対して、あれこれいろいろなことはいいわけですから、元金の目減りに対して、独自の方策を立てる、私はそういうところにきておるんじゃないかと思う。そういうことは考えられぬというのか。目減りしたものに対して金利でどうこうするとか、そういうことじゃなくて、元金そのものが現実に減ってきておるわけです。たとえば、生命保険を二十年も三十年もかけてきたと、全くもう目減りはひどいものですよ。ですから、この目減りプロパーに対する対策というものを、日銀は検討しておるかどうか、それが第一でございます。
それから二つ目にお尋ねをしたい点は、たとえば、石油危機とかいうようなことがあってきたとか、いろいろなことがございますが、私は、もう経済というものが非常に国際化してきたと思うんです。この次に何が出てきて、どうなってくるかというようなことですね。なるほど、七一年のニクソンショック以来から日本政府がとってきた金融政策が、あのときはよかれと思ったけれども、今日考えてみたら、全く間違いであったということが言えると思う。そういう反省があると思うんです。そこで、そういう中でもう国際化してきておるわけですから、私は、日銀の海外調査活動と申しましょうか、そういうようなことが非常に大切だと、そういうふうに考えるわけでございます。そこで、そういう国際化に対してどういう対処のしかたというようなものをとっておみえになるのか、これが二つ目です。
それから、これは三つ目といっちゃ少し第一と関連してまいりますけれども、俗説かもしれませんけれども、いままで日本経済をこういうふうに持ってきて、このインフレにきてしまったのは、いままでとってきた低金利政策というものが、諸悪の根源であると、債務者を利得させるという、そういう政策というものが諸悪の根源であるという意見を持っております。それに対する私は、見解を三つ目としてお聞きしたい。
それから四つ目に申し上げてお聞きしたい点は、今後、一体、日本の円は国際的にどうなっていくのか。それはフロートしておるのですから、どうなっていくのか。一体、日銀は三百円で介入するのか、二百九十円で介入してくるのか、三百二十円で介入してくるのかどうか、今後の円の一体動きというものがどうなるかという見通しを持っておみえになるのか。それと関連して、ドルは一体、外貨保有はどんな形になっていくだろう、どんな形になっていくという、大体、長期の見通しじゃなくても、あるいは非常に困難かもしれませんけれども、大づかみな見通しというものをお聞きしたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/127
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128・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 第一の、いわゆる目減りの問題でございますが、これはもう基本的には、何と申しましても、こういった物価の上昇を来たしているということがまことに遺憾なことでございまして、それに対して、何としても私どものなすべきことは、少なくとも金融政策の面からとしてできる限りのことをして、できるだけすみやかにこれを落ちつかせるということしかお答えできないのではないかと思います。目減りそのものをどういうふうに計量し、どういうふうに補うかということは、考えるとしましてもなかなかむずかしい問題でございまして、金利では補えないと先生おっしゃいましたが、確かに現実の物価上昇率と金利との関係ではそういうことでございますが、基本的にはそういうことで、物価をできるだけ安定さしていくということに、われわれとしてはわれわれなりの最大限の力を注ぐ、と同時に、金利の面でも考えるということで、先般来金利はかなり弾力化して大幅に引き上げ、それにつれて、預金金利としましてもかってないほどの高い金利に持ってきている。なお、それで不十分だという御意見が多いことも承知しているわけでございますけれども、そういう考え方でいるわけでございます。
それから第二の、国際化の問題でございますが、確かにあのときはニクソンショック——われわれとしても未経験な面があったと存じます。当時は、国際収支が黒字が大き過ぎて困るという国際収支、そういったような均衡、あるいは不況の打開というようなこともあったわけでございます。いまから振り返ってみて、その後にやや行き過ぎを生じたということも言えるわけでございますが、問題はあったかと存じます。これに関連しまして、国際化に関連しての日本銀行の海外調査活動でございますが、これにつきましては、もう以前からニューヨーク、ロンドン、パリ、フランクフルト、香港と、そこには海外駐在員を置いております。ロンドン、ニューヨークには、六、七名ずつ置いておりますので、かなり私どものほうには有益な情報が入っております。それと同時に、また、最近、ここ数年でございますけれども、国際間の中央銀行同士の話し合い、つき合いというものが非常に密接でございまして、毎月一回必ず総裁級の集まりがバーゼルでございまして、これには私どもの総裁あるいは理事が必ず出席いたしまして、かなり突っ込んだ話し合い、それから情報の聴取、そういうようなこともいたしております。そういう点は、できるだけの努力をしている次第でございます。
それから第三の、これまでの低金利政策が誤りではなかったかということは、高度成長政策というものとも非常に関連があると思うのでございます。日本の所得水準全体が低いときに、できるだけの高度成長をしていこうとする場合には、ある程度金融はゆる目にし、金利もできるだけ低いほうがいいという考え方はあったと思います。それでも、日本の金利が国際的にいつも低かったかと申しますと、国際的にいえば、従来ずいぶん低い時期が多かったのでございますので、金利というものはそう無理ができるものではございませんので、当然資金の需給からきまってくる面がございますので、そう意識的に無理な低金利政策をとったとも思いませんけれども、過去何年か高度成長政策と、金利政策というような考え方で、また、現実に高度成長ができた、物価の上昇があまりなしに高度成長ができた時期もあったと思うのでございます。ここになってまいりまして、特に、石油問題の発生もございますが、そうでなくても、かねてそう考えていた次第でございますけれども、だんだんここまで成長が遂げられますと、成長率がだんだん低く、そう無理な高度成長というのはできないということになってまいりますと、金利政策なんかもおのずから考え方がそこに変わってこようかと思います。ただいまはもう引き締めの最中でございますから、できるだけ金利も上げ、そして金融を締めるということが基本でございます。今後におきましては、やはり資金需給の実勢に応じて、金利は弾力的に考えていくというのがほんとうではなかろうかと存じます。
第四の円の問題については藤本理事のほうから申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/128
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129・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) 四番目の御質問でございますが、日本の円は、これからどうなっていくのかという点でございますが、御承知のように、一月の二十三日ごろまででございますか、ずいぶん長い間にわたりまして、日本の為替市場ではドルに対する要需が非常に強かったわけでございます。それに対しまして、外為会計からドルを売り向かっていったわけでございます。ところが、その後もうすでに一月以上、一月半近く経過しておるわけでございますが、その後は全くその必要がないといっていい状況に変わってきておるわけでございます。現実に私どもがドルを売り向かっておりましたときには、為替相場一ドル三百円程度を目安としまして操作をしておりましたのでございますが、最近は、実際には二百九十円前後、円が特に高くなりましたときには二百八十円近くまで円が強くドルが安くなりました。たとえばけさで申しますと、二百八十七円程度の相場でございます。そういうことで、非常に落ちついた状況が出てきておるわけでございます。
それじゃこれが今後どうなっていくのかということでございますけれども、あるいは介入を全くしないでいいのか、あるいはするのかどうかということだと思いますが、これに対しましてのお答えでございますけれども、これはたいへんむずかしいわけでございまして、もちろん将来の情勢次第というふうに割り切って申しますれば、そう申し上げる以外にないわけでございますが、それじゃ、将来どういう情勢が考えられるかということであろうと思います。これにつきましては、為替市場のドル需給というものは、突き詰めていきますと、日本の国際収支がどんなふうな姿になっていくかということに帰省するわけだと思います。御承知のように、最近の情勢でいきますと、貿易収支は黒字でございますが、貿易外収支がかなりの赤字、資本収支が相当大幅な赤字、したがって、国際収支全体としては、かなりの赤字という姿が続いておるわけでございます。
この姿が今後かなり変わっていくかどうかという問題だと思いますが、御承知のように、昨年の秋から石油問題が発生をいたしまして、石油問題は、もちろん国内に非常に大きな影響を及ぼしつつあるわけでございますけれども、国際収支のサイドにも非常に大きな影響があるわけでございまして、あれだけ大きく値段が上がってまいりますと、貿易収支の上に相当大きな負担が出てくるということでございましょう。しかし、それにいたしましても、この問題につきましては、非常に不安定と申しますか、見通しにくい不透明な要因がたくさんございまして、なかなかはっきりしたことが申し上げにくいわけでございます。ただ、その石油関係の赤字がそのまま貿易収支の赤字になり、国際収支の赤字になっていくというふうには私どもは考えておりません。やはりそれに対応しまして、輸出価格の引き上げというものもかなり期待できると思いますし、それを含めまして、輸出の先行きというものにつきましても、決して悲観的な見方を私どもはいたしておりません。それに、何と申しましても、この資本収支の赤字に対しまして、為替管理でもって相当考え方をここにきて変えておるわけでございまして、従来黒字時代にとりました外資の流入を押え、流出を促進するという考え方を昨年秋以来大きく方向転換をいたしております。そういう意味で、資本収支の赤字幅も、おそらく相当大きく減っていくであろう、これもまたなかなか見通しにくい要素がたくさんあるわけでございますけれども、そういう意味で、決して私ども国際収支の先行きをそれほど悲観しておるわけではございません。
ただ、そういう状況のもとでそれではどのくらいのレベルになるか、円の相場がどういう水準になるかということになりますと、これは私どもは、そういう意味で、幾ら幾らというふうには申し上げにくいわけでございますが、おおむね現在の水準からそれほど大きく乖離しなくて済むんではないだろうかという感じを持っております。また、もう一つこれは、いわばその意図として、意図的に申し上げますと、いろいろ要因ございますけれども、二つと申し上げたがいいと思うことがあるわけでございますが、一つは、先ほど申しましたように、日本のいまの姿は経常は黒である、あるいは貿易は黒であるが資本が赤だ、そういう状況のもとで、為替相場というものを全く放置しておきますと、まあ、資本の状況によって非常に極端な相場が出てくる、それがはたして適当であるかどうかという観点、問題点が一つあると思います。
それからもう一つは、これはもうよくいわれることでございますけれども、日本の貿易ばかりでございません、対外取引の大部分は外貨で行なわれておるわけでございます。特に、ドルで行なわれておるわけでございます。したがいまして、相場が非常に大きく動きますと、乱高下と申しましょうか、そういう状況が出てまいりますと、やはり対外取引の安定というものが期待できないわけでございますので、そういった観点も入れまして、やはり相場というものに対しては、円相場につきましては、ある程度の介入はしていくべきではないかというふうに考えております。これもまあ最初に申し上げました国際収支の基本的な姿がどうなっていくかということできめられるわけでございますので、そういうサイドも入れながら、基本的な動向にあわせて相場水準を探っていくというふうにいたしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
それからもう一つ、ドルの保有がどうなるかという御質問があったと思いますが、ドル保有と申しますと、結局、外貨準備ということになろうかと思います。これにつきましては、先ほど国際収支につきまして申し上げたことから申し上げられることでございますけれども、やはりいまの水準が絶対的に動かない、あるいはそう大きくフレがないというふうには申し上げかねますけれども、確かに石油問題があって、国際収支につきましてもかなりの赤字要因というものが考えられますが、一方で資本収支につきましての為替管理の考え方の修正、それがだんだん具体的な数字になって出てまいると思いますし、それから、これもまたよくいわれることでございますが、石油産出国にたまりますドル——外貨というものが、当然これは米国市場なりユーロダラー市場なり、そういったところに還流してまいりまして、そういったものを利用する余地というものもだんだんできてくるわけでございますので、そういう意味で日本の持っておりますドル保有、外貨準備のレベルというものが、将来大きく減っていくというふうな感じを現在のところ私どもは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/129
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130・成瀬幡治
○成瀬幡治君 私は、第一点のことにからんで一言だけ申しておきますが、いわゆる預金者が損して、借金をした人が得するということがいかぬと思うのです。確かにいまの異常なものを押えなくちゃならぬ、そういうときだから、物価安定に全力をあげるよということもわからぬわけじゃないです。しかし、ずっと戦後これだけきちまって、全くもう目減りしておるということは事実なんですから、私は、もう日銀政策委員会としてなり、あるいは日銀が内々準備すべきことは何かといえば、やはり目減り対策というものをひとつ考えていくという、そういうときがきておるじゃないか、また、そういうことをせなくてはいかぬではないか、諸外国でもやっておるじゃないか、いやそうじゃない、何にもやらぬよ、このまんまいくんだよ、日銀は目減りが、貨幣価値の維持は、ことばでは言うけれども、実際は何にもせぬよということになってくると、企業間はもうインフレマインドですよ、だれが何と言ったって、資源は人口増、文化の発展からいってマクロ的に見れば資源が不足するということは百も承知しているんですよ。だから、インフレマインドでいっちまうと思うのです。高度成長じゃなくなってくるわけですよ。ですから、私は、そういうことを真剣に考えなくちゃならぬということを主張するわけです。したいのですよ。それと歯車が合わずに、いや、そうじゃない、物価なんだ、そっちは知らぬよと言うけれども、私は日銀本来の姿勢に返って、本来の使命を果たす対策というものの検討に入った、入るという姿勢が大切じゃないかということで申し上げておるわけです。意見は全く間違っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/130
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131・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) ただいまの先生の御意見、その御趣旨は非常によくわかるのでございますけれども、そのいわゆる目減り対策ということで、どういうことが考えられるか、実は外国でもあまりその例を聞いておりませんが、なかなかむずかしい問題で、そういう時代であるからこそ、できるだけもう過去に例を見ないくらいの、高い金利水準に引き上げてきたということが言えるのでございますけれども、なおなし得ることがあるとすれば考えたいのでございますけれども、いわゆるその目減りということにまっこうからそれにこたえる方法というのは、ちょっといまのところ私どもとしては考えられないのでございまして、とにかく今後においてできるだけなるべくすみやかに、これはもちろん政府などの施策と相まってということでございますけれども、物価を安定さしていくということで、私どもはその任務につとめたい、そう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/131
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132・多田省吾
○多田省吾君 渡邊理事に二点お尋ねしたいのでございますが、先ほどと重複いたしますけれども、こういう現在のような狂乱物価のもとでは、卸売り物価が三六・七%、消費者物価も二三・一%も上昇している、超インフレの時代でございます。しかも、原油価格の引き上げに伴って、石油製品の価格の引き上げも時間の問題のような姿になっているわけでございますから、今後とも卸売り物価、消費者物価が下がるということはまず考えられないような状況でございます。こういうときには、私は、やはり金利体系の手直しは当然のことであり、こういう金融資産の著しい目減りや、減価を考えれば、預金金利の大幅の引き上げということはどうしてもこれは必要である。大蔵大臣なんかは、外国の例をあげますと、西ドイツやイギリスなんかは大口の預金だけに一四・四%とか一五%の金利はついているが、小口においてはそんなについていないのだというような御答弁がありますけれども、やはり日本においては小口の預金が非常に多いわけでございまして、国民全体がこういう預金でございます。そうして、西ドイツなんかでは、財形貯蓄に非常に政府が有利な条件でやっておりますので、勤労者は恵まれておりますけれども、わが国においては、そういう財形貯蓄においてすら非常に不利な条件でございます。そういったことを考えますと、これはやはり国民を守るためには金利体系の手直しというのは、これは当然行なわなければならない、このように思うわけです。これが一点ですね。
それから高金利の国債発行ということが問題になっておりますけれども、そういったことをやるお考えがあるのかどうか、これを日銀でどう考えておられるのか、その点をお尋ねしたいと思っています。こういう低金利政策では、国民は通貨価格の下落に伴って換物運動に走らざるを得ないような姿になるんじゃないか、こういうおそれがあります。その点はどう考えておるのか。
それから、藤本理事に二点お尋ねしたいんですが、先ほどの御答弁で、大体のことはわかったんですが、四十九年度の原油輸入のために、外貨は百五十億ないし二百億ドル必要であると予想されております。いまのお話では、まあ輸出価格も上げられますので、国際収支の面からもそんなに心配はないというふうなお考えを述べられましたけれども、やはりサウジアラビアなんかでは、原油価格をもう少し引き下げようというような話もありますけれども、この原油価格高騰という基調は変わらない、このように思います。そういう点から見て、私は、そんなに心配ないどころか、やはり相当な心配がある、このように思うわけです。しかも、原油価格の引き上げに伴って石油製品価格の引き上げも時間の問題になっておりますので、この値上げが実施されると、これはもう卸売り物価にも相当直撃されるんじゃないか、これが消費者物価にもはね返り、物価狂乱の再現が非常に心配されるわけでございます。こういった点でもどのようにお考えになっているのか。
それから第二点は、まあアラブ諸国、石油輸出国ではこういう原油価格の引き上げに伴ってドルが相当入り込む。世銀のマクナマラ氏なんかの話によりますと、これは報道で知ったんですが、一九八〇年ごろにはアラブ諸国に四千億ドルぐらいたまるんじゃないか、あるいは一九八五年ごろには八千億ドル、すなわちあらゆるドルが全部たまってしまうんじゃないか、こういうような報道も、一部なされておりますけれども、この点はどのようにお考えになっているかお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/132
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133・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 第一の、金利全体系の是正を要するのではないかという点でございますけれども、私どもも、高度成長ということから安定成長へ、そして当面としては、何といってもインフレの抑制ということでございますので、そういう見地から、金利を、公定歩合を五回にわたって引き上げ、特にあの第五次公定歩合の引き上げ、二%の引き上げをいたしたときには、かなり思い切って引き上げをしたつもりでございます。
で、これは申し上げるまでもございませんけれども、金利体系となりますと、預金金利、貸し出し金利と両面ございますので、通常の金融政策から考えますと、預金金利を上げれば、貸し出し金利を上げるということを考えなければならない。その貸し出し金利は、いまどの程度が適当であるか、そういう見地から考えなければならないわけでございまして、そういう見地から考えられる限りにおいて、いま高金利をとっていると、そう申し上げてよろしいんじゃないかと思いますが、そこに、さらにこれに加えて、先生のおっしゃるような御趣旨から、何か考え得ないかということにつきましては、よい方法があれば、とは考えますけれども、いずれもなかなかむずかしい点がございますので、いま何とも申し上げかねる状況でございます。
国債につきましても、これまでの金利引き上げにつれまして、国債金利は引き上げられてきたわけでございますけれども、この後において、さらに高金利の国債を出すかどうかについては、やはり他の金利への波及というものがございますので、これは大蔵省の問題でございますけれども、いま何も私ども聞いておりませんし、やはり現時点ではなかなかむずかしい問題があるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/133
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134・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) 四十九年度の石油の輸入が、日本の国際収支にどの程度の影響を与えるか、それをどういうふうに評価するかというお話でございます。これは、政府の四十九年度の経済見通しからいきまして、私の記憶に誤りなければ、約百五十億ドル程度の石油の輸入を見込んでおると思います。いまの年度、四十八年度が約七十億ドルだと推定をいたしますと、約八十億ドルの石油の輸入関係の赤字増加要因が考えられるわけでございます。これは先ほどお話がございましたように、原油の値段がはたしていまのようなレベルをそのまま維持していくのかどうか、それから、そういう政府の見通しの前提になっております原油の輸入量がああいう数字で適当かどうかという問題になろうかと思うわけでございますが、まあ、そこらあたりが、非常に不透明な要素があるわけでございまして、なかなかむずかしいところだと思います。ただ、いま申し上げましたようなそういう前提に立って考えましても、八十億ドルそのものが全部そのままで国際収支上の負担増加になるわけではないと思うわけでございまして、一つは、やはり輸出の増加であろうかと思います。
輸出と申しますものは、当然のことでございますが、将来の海外の需要の動向がどうであるかということと、それから国内の政策動向がどういうふうに動くかということと、二つの面から考えなければいけないと思うわけでございます。まあ、いずれのサイドもなかなか困難な要素が見通しにくいところでございますけれども、先ほど来お話がございますように、国内では総需要の抑制策が進められておるわけでございまして、こういうサイドからいきまして、輸出は促進されるに違いないと思います。たとえば、その輸出の先行指標でございます輸出信用状の数字で見ましても、一月は、昨年の一月に比べまして約四〇%の増加であったと思いますし、二月で見ましても、約三七%の増加でございました。そういう意味合いにおきまして、将来の輸出というものは、かなり大幅にふえるということが考えられないわけではございません。
それともう一つは、国内の引き締めというものが進んでいけば、これはいま輸入が非常に大きく伸びておりますけれども、この中には、もちろん量の増加と価格の上昇と、二つの要因がございますけれども、少なくとも量的に見て大きく伸びていくという状況ではなくなると思います。そういうサイドがございまして、必ずしも八十億ドルというものが、そのまま国際収支の赤字増加の要因になるわけではございません。
それにもう一つ、先ほど申しましたが、資本取引に対します為替管理のあり方を転換をいたしますことによって、ある程度の資本収支の赤字の削減、黒字の達成ということが考えられないわけではございませんので、数字的にどの程度かということを申し上げることは、たいへん困難でございますけれども、原油の輸入量が、この石油問題の発生によります原油の輸入額の増加そのものが、国際収支の負担になるわけではないというふうに考えておるわけでございます。
それからもう一つの御質問の、オイルダラーと申しますか、石油産出国に世界の国際流動性が大きくたまっていくという問題でございますが、これをどう考えるかという問題でございますけれども、たいへんむずかしい問題でございます。特に、八〇年とか八五年とか、いま先生がお触れになられましたような、そういう長い視野で数字的にいま考えるということは非常に困難でございます。ただ、よく言われますように、少なくともことしはどうか、来年はどうかというふうに、もう少し短い射程で考えてみますと、たとえば、最近でもよく国際会議などで議論されるところでございますが、ことし石油産出国に六百億ドルとか七百億ドルとかいう大きさでもって石油代金がたまり、一方、先進国、それから石油を産出しない後進国にそれに相当する赤字が出てくるんだということはよく言われます。こういう問題は、実は私は、こういうことを申し上げてははなはだ口幅ったいわけでございますが、これは算術の問題だと思います。算術的に計算をすれば、なるほどそのとおりになるんだろうと思いますけれども、しかし、はたしてほんとうにそうなるであろうか。そうなりますと、国際金融の上でも、非常に大きなフリクションが出てくるわけでございまして、こういう大きさが、そのまま国際金融上の金の動きというものに反映をするということになりますと、非常に大きな問題が出てくると思います。ただ、そのとおりになるかどうかは、私個人としては、やや疑問に思いますけれども、しかし、何がしかそういった産油国に外貨がたまり、非産油国に外貨の不起が生ずるということは、程度の差はあれ、ある程度起こらざるを得ないと思います。しかし、こういったものも、産油国にたまりました外貨も、それをそのまま保有しておくわけではございませんで、当然それは米国の市場でございますか、ユーロ市場でございますか、それは産油国側の判断によってきまるところだと思いますけれども、何らかの形で還流をせざるを得ない。還流しなければ、世界全体としてのバランスはとれないはずでございまして、私は、何らかの形で、そういう資金の還流が行なわれるに違いないと思います。ただ、そういった姿が、ことしはそういうことで済みましても、来年はどうか、再来年はどうかへさらにその先はどうか、こういう不均衡な状態が長く続いてそれでいいのかという問題は、確かにあろうかと思います。これは、私どものような実務家の立場に立ちますと、もっと現実的に考えなければいけないところでございまして、いまここで八〇年の段階をどういうふうに考えるかという点になりますと、たいへんむずかしい問題で、私は、ちょっとお答えをする能力がないと申し上げざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/134
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135・多田省吾
○多田省吾君 いま、渡邊理事から、金利体系の手直しは、非常に貸し出し金利との問題もあってむずかしいというお答えがあったわけです。わが国の金融構造を抜本的に変更するためには、理論としては高金利の国債発行、それからもう一つは、大幅な金利引き上げと、こういうことが考えられるのでありますけれども、私は、こういう高金利の国債発行には反対でございますが、どうしても、成瀬委員からも先ほど質問がありましたけれども、戦後以来の低金利政策ですね、しかも、世界一のこういう物価高騰、こういう姿から見て、どうしてもこれは国民に犠牲をものすごくしいている現状からかんがみまして、どうしても、これは中小企業の貸し出し金利の問題等はまた別個に対策を考えることにしましても、やはり金利体系の手直しはこれは当然行なわなければならない、このように私は思うわけです。それに対してどうお考えなのか、再度ひとつお尋ねしたい。
それからもう一つは、いま原油価格の引き上げに伴って石油製品価格の引き上げが時間の問題とされておりますけれども、日銀としては、卸売り物価の動向も重視しているわけでございますから、こういう石油製品価格の引き上げに伴う物価狂乱の再現という危険性、これを日銀当局としてどのように考えておられますか。この二点をまたお尋ねしたいと思います。
また最後に、藤本理事に、金の問題を一問お尋ねして終わりたいと思いますが、先週の欧州市場で、自由金相場が公定価格の四倍をこえる一オンス百八十ドルをこす相場が出現し、急騰しましたけれども、国際通貨としての金の位置づけは現在こんとんとしております。昨年の国際決済銀行の中央銀行総裁会議でも、各国通貨当局が、その手持ちの金を自由市場で売却することを認め、また、金の公定価格一オンス四二・二二ドルは、当然、抜けがら同然となっているわけでございます。これは、決して単なる商品投機のたぐいではなくて、非常に残念なことでありますけれども、このインフレでも減価しない金というものがまた見直されてきているという証拠ではないかと思います。で、いま言われている金の公定価格廃止の問題、それからEC諸国が言っている公定価格の引き上げの問題、これを日銀当局としてどう受けとめておられるのか。
それから、わが国は、残念ながら、いままで手持ち金資産は非常に少ないわけでございまして、今後ますます不利になると思いますけれども、先進諸国と比較してどの程度の手持ちで、どうお考えになっておられるのか、これをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/135
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136・渡邊孝友
○参考人(渡邊孝友君) 金利体系の是正ということについて再度のお話でございますが、基本的には、もう先ほどから申し上げておるところでございまして、私どもとしては、かなり思い切った高金利政策をとっているということが一つでございますが、この上に何かくふうが加え得ることがあれば、少しでもできることがあれば検討したいと、そういう気持ちはございますけれども、ただ、なかなか、実際問題として非常にむずかしいということを痛感しておることも事実でございます。ただ、そういう私どもの気持ちだけを申し上げさしていただきたいと思います。
そこで、次に、物価の今後の問題でございますけれども、この前の石油の第一次の値上げのときには、これは供給量が、石油が二割も三割も減るかもしらぬといった異常な前提で、何といいますか、一種の異常状態、異常心理状態、そういう中でああいうことが起こったのでございまして、まことに残念なことだったように思いますけれども、今後につきましては、ただいま、この二月——きわめて当面の一時的なことを申し上げて恐縮ですけれども、この二月に入りましたら、私は、卸売り物価についてはかなり落ちついていると申し上げていいんだと存じます。結果的には、二月も四%近い物価上昇率に統計的にはなると思いますけれども、そのうち二%というものは、いわゆる、私ども、げたと申しまして、一月末までに上がった、それを受けて、二月の初めから受け継いだ結果として、二月中物価が横ばいでまいりましても二%は上がるという計算上のものでございまして、二月中でどうであったかとなりますと、一応、その二%を引いて考える。そうしますと、あと二%弱の上昇でございますが、これにつきましても、高い値段の原油がもうすでにどんどん日本に着いていると。その船が着くごとに、卸売り物価指数は上がる仕組みになっておりまして、国内でまだ石油製品の高値の販売、それに伴う値上げされた製品の販売はございませんけれども、高い石油が着いたということだけで上がりました分が、一・七、八%あるかと思います。そうしますと、かりに、それを除いてみますと、国内需給だけの関係の物価は〇・幾つ——〇・一、二、三ぐらいのところに二月はとまったということが言えようかと存じます。
これには、もちろん、金融引き締め、それに伴う設備投資の鎮静あるいは消費の鎮静化、特に自動車の売き行きなどの激減というようなこともございますし、また、政府の各種行政指導による価格の引き下げの御指導というようなことに負うところもかなりあるのでございますが、当面としては、これはかなり落ちついてきている。私どもとしては何とかこれを続けていきたい。そこへ第二次石油価格の引き上げがある、これがどう影響するかということでございますが、あの第一次のときのような、石油供給量の削減という問題はそこにはないわけでございますし、それから、政府の御指導もだんだん徹底してまいってきておりますので、確かに、原油が上がれば石油製品価格の引き上げが必要でございましょうが、その第二次製品、第三次製品となりますと、これまでの引き上げによって吸収できる分もあり得るんではないかと。そういうことになりますと、結局、対策よろしきを得れば、第二次原油価格の値上げのほうが幅が大きいんでございますけれども、物価への影響はできるだけ少なく、可及的に少なくとどめることが可能ではなかろうか。
それに対応しまして、私ども金融の立場の者としましては、値上げをしたいと思っても、その値上げは通らないというような金融環境をつくっていくということが重要でございまして、第一次の場合は、もう石油のほとんどまあ絶対的不足といいますか、もう幾らでもいい、とにかく石油を入れてくださいというような業界の態度でございましたけれども、その点は落ちついておりますので、値上げもしにくい状態、まあ、企業の先ほどの短期観測なんかで見ましても、だんだんそういう弱気も出ている次第でございますので、このまま金融引き締めを堅持することと、また政府のそういった指導の徹底ということと相まちまして、物価が安定に向かうことを期待している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/136
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137・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) その次の、金についての御質問でございますが、確かに、ここのところにまいりまして、金問題について見直しをしたらどうかという機運が出ておるように思います。その大きな背景の一つは、ヨーロッパ、特にEC各国におきまして、通貨当局間で債権債務の決済をいたしますときに、実際問題として、市場の金の値段と、それから各通貨当局の評価との間に、大きなギャップがありますために、金が通貨当局間で決済手段として使われていない、いわば一種の、金準備が凍結状態にあるわけでございまして、そういう状況がこれでいいのかどうかという反省に問題が発しておるんだろうと思います。
そこで、この問題について、私どもがどう考えるかということでございますが、一つには、確かに、そういう問題は、考えられることは確かでございますが、御承知のように、いまも御指摘ございましたが、ヨーロッパにおきます、自由市場におきます金の相場というものは、最近急激に上がっておりまして、もっともきのうあたりはやや落ちつきぎみでございましたが、それでも一オンス百六十ドルという非常に高い水準でございます。しかも、水準が高いばかりでなくて、日々の相場の変動がきわめて激しいわけでございます。したがいまして、ここで、先ほど申し上げましたように、通貨当局があるレベルの価格をきめる、つまり、いまの四十二ドル何がしという公定価格を上げるということが、一つ方法としては考えられると思いますけれども、いまのように、こういうふうに大きく乱高下します価格を、こういう状況のもとで、ある一定のレベルに価格を上げるということは、私は、実際問題としては非常に困難じゃないかという感じがいたします。やはり、事態がもう少し落ちついてこなければ、金価格の改定ということは、実際はなかなか困難ではなかろうかという、これは私見でございます、見通しでございますからあれでございますが、そういうことが一つ考えられます。
それからもう一つ、これももちろん私見でございますけれども、かりに金価格というものを変えるとするならば、いまの市場相場を前提において、頭において変えるとして、したがって、非常に大幅な金価格の引き上げが行なわれるといたしますと、それはおそらく世界全体の金の、金準備の評価益というものを非常に大きくつくるわけでございます、現実化するわけでございまして、それが世界全体、わが国ばかりでなくて、世界全体がまあインフレに悩んでおるわけでございますから、そういうインフレ状況に対して、どんな影響を及ぼすであろうかということを考えるわけでございまして、まあ、かれこれ考えてみまして、私どもとしましては、確かに金についてのその見直しの機運が出てきておりますが、その討議の状況、議論の方向がどういう方向に進んでいくかということを十分見きわめた上で態度をきめるべきで、そう軽々に動くべきではないんではないかという感じを持っております。
それから、日本の手持ちの金が幾らあるかというお話でございますが、これは、この国際統計で明らかなように、ドルに換算いたしまして、昨年末で八億九千百万ドルございますこれはもちろん公定価格での換算でございますけれども。この量は諸外国に比べて決して大きなものではございません。むしろ少ないほうに属するわけでございまして、昨年末でございますから、わが国の外貨準備、対外準備は百二十二億ドルあったわけでございます。したがいまして、それに対して、いま申し上げました金の額は、八・三%程度の割合になるわけでございます。私の記憶がまた間違っていますといけないのでございますが、昨年末で、フランスは約五〇%金を持っておったと思います。それから、ドイツはわりあいに対外準備の中で金の占める割合の低い国でございますが、それでも約一五%を持っておったと記憶しております。まあそういう国に比べてみまして、日本の金保有率が低いことは明らかでございます。
問題は、なぜこういうふうな比率になっておるのか、こういう事態になっておるのかということだと思いますけれども、これは一つは、わが国の外貨準備がこれだけ大きく——昨年の三月来相当大きく減少はしておるわけでございますが、それにいたしましても、こういうレベルになりましたのは、わりあいに最近のことでございまして、二、三年前まではそういう、金準備を大きく充実する外貨準備上の余力というものが大きくなかったという背景があるわけでございます。それから、その後、もう一つは、外貨準備がふえてまいります時期に至りますと、御承知のように、アメリカは金兌換の停止をするということで、公定価格でもって金を買い入れ、金準備の充実をはかっていくということは、情勢として許されなくなったわけでございまして、そういう状況が重なりまして、いまのような姿が出ておると私は理解をいたしております。
それから、たいへん恐縮でございますが、先ほど、この前の御質問につきまして、私、一つだけ申し上げることを忘れておりました。つけ加えさしていただきたいと思いますが、それはオイルダラーというものが、産油国に非常に大きく集積され、それが一方で、当然、それに見合う赤字が石油を産出しない国に生ずる、それでその間がどうなるか、これを数字的に、しかも、長い見通しではなかなか申し上げられません、私はそういう見識ございませんが、当面の問題としても非常に大きな問題であって、しかし、それはしょせん、その持っておる国は、ほかに投資の方法としては、アメリカなり、ユーロ市場なりということであるから、資金のリフローというものは行なわれるはずだというふうに申し上げましたが、それは単に自然にほっておいて、そうなればそれでいいと申し上げておるわけではございませんで、これもまた御承知のことだと思いますけれども、IMFであるとか、世界銀行であるとかというところで、そういうオイルダラーをどういうふうに還流させて資金の必要な国にピュックしていくかということが、現に研究をされ、討議が進んでおるわけでございます。しかも、また、単にそういう国際機関だけ、IMFとか、世界銀行だけでなく、各国の主要国の中央の銀行の間におきましても、たとえば、ユーロ市場に出てまいりますそういうオイルダラーというものを、どういうふうに取り入れていくか、そういうものをいかにマネージしていくかということの研究、検討が進んでおるわけでございまして、世界全体として、国際的な協力のもとで、こういった問題がだんだんと望ましい姿で解決されていくに違いないと思います。その量としては、確かに大きなものでございましょうが、それを各国間の、通貨当局の間の協調と英知とでもって、十分に解決していけるものだと思っております。そのことだけつけ加えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/137
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138・栗林卓司
○栗林卓司君 国際通貨なり経済の問題を中心にして、若干お伺いしたいと思うんですけれども、この一年間のたいへん激しい変化の中でどういうぐあいにごらんになっているか、一つ、二つお伺いしたいと思うんですけれども、一つは、アメリカの国際収支が急速な改善を見せました。いまいましい気もしないではないんですけれども、それはそれとして、こういう見方ができるんでしょうかということなんです。従来から、アメリカの慢性赤字というのは、世界の過剰流動性の原因になってきた。それが改善されたわけですから、過剰流動性が改善され、流動性が従来の水準に比べて引き締まる方向にきた。この傾向がさらに続けば、おそらくその傾向は強まるであろうと見てよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/138
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139・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) ドルの過剰流動性が、だんだんそういった状況が修正されつつありますことは、御指摘のとおりでございまして、それは、ドルの各国通貨に対する為替相場の推移を見ることによって、最も端的に理解できるわけでございまして、御承知のように、昨年末ごろから顕著にドルの、他国通貨に対します相場が堅調になっておりまして、回復をしておるわけでございます。それは、日本円とドルとの関係におきましても、明らかに出ておるわけでございます。そういう意味で、ドルは確かに価値を回復しております。したがって、そういう意味で、ドルの過剰流動性というものは、姿はだんだん修正されつつあるということは事実だと思います。
それでは、今度は、過少流動性という状況が出てくるかどうかということだと思いますけれども、この問題につきましては、なかなか見通しを立てることは困難でございますけれども、問題は、なぜそんなにドルが強くなったのか。それを、したがって、将来どう考えるかというふうに考える道行きも一つあろうかと思うんでございますが、その一番大きなドルの回復の要因は、やはりスミソニアン、それから、昨年二月−三月にわたりますフロートの結果として、各国通貨がドルに対して強くなった。ドルがそれだけ切り下がったわけでございますが、それがアメリカの貿易収支——特に、貿易収支は顕著な改善を示しておるわけでございますが、そういう結果としてドルが非常に強くなったことは、これはもう一番大きな要因としてあげていいかと思うんでございます。
それにもう一つつけ加わりました大きな要素は、これまた昨年の末起こりました石油問題でございます。御承知のように、石油問題というのは世界全体の問題でございますが、あの問題の各国の国際収支、したがって、各国通貨の対外価値に及ぼす影響というものは、国によってさまざまでございます。日本のように石油の海外依存度の非常に高い国は、先ほど来御議論がございましたように、非常に大きく影響を受けるはずでございます。ところが、アメリカは御承知のように、わりあいにその影響が少ない国でございまして、カナダとかアメリカという国は非常に少ない国。したがって、その程度の差からいきましても、ドルというものはほかの通貨に比べまして、日本円なりヨーロッパ通貨に比べまして、主要国通貨に対しまして強さを増しておるということが指摘できるんだと思います。したがいまして、こういう状況が今後どうなるかということでございますが、あの二番目に申し上げました石油問題につきましては、これからその影響——インパクトというものが出てくるわけでございますから、ドルにとっては非常にそういう意味ではいい条件、環境が今後も続くであろうということは言えると思います。
それからもう一つは、最初に申し上げました、ドルが他国通貨に対して切り下げをした、それがアメリカの貿易収支の改善に非常に大きな意味合いを持った、それが今後どう考えられるかということでございますが、これは御承知のとおりに、現在の主要国通貨はすべて変動相場制のもとにあるわけでございまして、したがって、この変動相場制のもとでこれからドルがどんな地位を占め、どんなふうな強さを示していくかということでございまして、これは、先ほども御質問をいただきましたけれども、なかなか明確には、日本の場合でもお答えできないように、これははなはだむずかしい問題でございましょう。しかし、それにいたしましても、石油問題がこれだけ大きくなっておりまして、その影響を受ける度合いが、アメリカが相対的に小さいという点に着目をいたしますと、やはり、これから当分の間、少なくとも当分の間はドルは強いという状況が続くんではなかろうかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/139
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140・栗林卓司
○栗林卓司君 先の見通しは必ずしもおっしゃるように楽観的に私は思えないんですが、それはそれとして、一つは、アメリカの国際収支の改善ということがおっしゃった原因によって起こったわけです。もう一つは、激しい変化、いままさに起こりつつある変化は、先ほど来のように、産油国にドルが集中し始めてきた、この傾向というのは、産油国の通貨というのは、基軸通貨ではないわけですから単なる移動であって、国際流動性という面では、それをふやす働きはまずしないであろう。そのかわり、これが還流するかどうかということになると、いろいろな議論がこれから必要なわけですから、どうなるかわからぬにしても、流動性をたいへんタイトにする要素として当面働くと見ざるを得ないであろう。
そこで一口に言うと、日本なりECからドルが米国とアラブ産油国に移ったかっこうになるわけですが、しからば、日本なりEC各国がどういう経済政策をとるかというと、何が何でも必死に引き締めざるを得ない。しかも、これまではアメリカの赤字のおかげで世界貿易の伸びに従った流動性の補給がされてきましたけれども、それをどうするかという議論も実は煮詰まっておらない。そうすると、これはたいへん見方が分かれるのですけれども、ある見方に立って考えると、むしろわれわれはデフレに向かって歩いているのではないかという観測も成り立たないこともないわけです。その点で参考人の御意見と各国の印象などはどんなものなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/140
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141・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) その石油問題というものが、各国の経済に対してデフレ的な影響を持つものなのか、インフレ的な影響を持つものなのか、これは世界的に最近大いに議論されておる問題でございまして、御指摘のとおり、両サイドが強調されております。ところが、この問題に対しまして、それでは、デフレサイドを強調いたしまして大いにインフレ政策をやる、石油価格が上がるのはちょうど産油国に税金を取られるようなもので、税金を取られればデフレになるのだから、国内でそれを相殺するような措置を各国はとるべきではないかという議論が行なわれておるわけでございますが、それは、実は私は、そういうサイドを全く否定するわけではございませんけれども、それはどちらかといえば間違っておるのではないか。というのは、そういうサイドは否定できませんけれども、いまわれわれが当面しておる事態というものは、やはり大きな物価騰貴でございます。インフレーション、物価の上昇でございます。これに対して価格なり物価の安定をはかるということが一番大事な問題でございまして、ここでいま起こっておるのはデフレ現象、これからおそれるべきはデフレ現象、これに対していまからもうデリフレーション政策をやるべきだということは、私はとても日本の立場では賛成できないわけでございます。
ただ、もう一つ言えますことは、石油価格の非常に大きな上昇によりまして、各国の国際収支が程度の差はあれ大きな打撃を受ける。したがって、それに対処するために、どうすればいいかということになりますと、それじゃどんどん引き締めをして、あるいは為替相場をどんどん切り下げて対処すべきだということになりますと、それはあまりにもそれぞれの自国本位の政策に過ぎるんではないかと思います。起こっておる問題は、世界全体の問題でございます。したがって、一つの国に起こっておる国際収支の悪化であるならば、当然そういうデフレ政策を徹底してやっていくべきだと思いますけれども、いまの問題は、そういう石油を産出しない国が、全部極端なデフレをやってそれで片づくかといいますと、それで片づかない、お互いがそれだけ貧乏になるだけだと思います。したがいまして、一月にローマで行なわれました二十カ国会議で出ておりますコミュニケにも明らかなように、こういう石油の情勢に対して何をやるべきかといったらば、少なくとも、各国は競争的な為替相場の切り下げはやるべきじゃない。それから、輸入制限であるというような為替制限、経常取引に対する為替制限はやるべきじゃないのだということを言って、みんなが合意しておる、これは世界全体が合意をしておる。
したがって、残る道は、そういう状況のもとで何をやるべきかということになりますと、先ほど来御質問のございますような、石油産出国にたまりました資金——ドルというものをいかにして還流をさせ、それをいかにうまく配分をするかという問題でございます。それは先ほど申し上げましたとおりに、いま、さらにまたこれから大いに議論が始まるところだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/141
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142・栗林卓司
○栗林卓司君 インフレになるかデフレになるか、はっきりしているのは、どっちになったって日本として得な目はないということだと思います。どっちになったって救われないのはわが日本であって、どちらになるにもせよ、どうやってこれから生き抜いていくのかを真剣に考えざるを得ないのじゃないかという気がするのですけれども。
そこで、オイルダラーですけれども、何とか還流の道をというごくふうはわかるのですけれども、これはひとつ理解できないのでお教えいただきたいのですけれども、そうやって還流の作業をすることと、各国の外貨準備高の関係というのは決してくっつきませんね。なるほど、だんだんこう減ってまいりますから、借金してもっともだといっても、これは実物経済の動きを伴わないわけですから、時間とともにもう破局にいくことはわかり切っている。日本だけではなくて、かりにたとえば、それは開発途上諸国に貸してあげなさい、開発途上諸国にわれわれは日本の製品を売るのですといったって、開発途上諸国そのものはやがてどうしようもなくってしまう。その意味で、還流というお話よくわかるのですけれども、実物経済の動きを伴わない還流は、やがて時間の経過とともにデッドロックにいかざるを得ない。そこで、外貨準備高との関係をどう見ておいでになりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/142
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143・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) いまのお話でございますが、実はその外貨準備高に入ります前に、その前段の問題でございますけれども、還流さえすればそれでいいという問題では決してないと思います。還流にしましても、いろいろな還流のしかたがあるわけでございます。ごく短期の金で還流する場合もあるでしょうし、非常に長期の建設資金として還流する場合もあるでしょう。その場合の金利その他の条件がどうであるかという問題もあるわけでございます。しかし、その還流だけでまた解決するものでないということも明らかだと思うのです。だから、そういう還流をはかりながら、その間に経済構造を変えていく、つまり高い石油というエネルギー源に依存する度合いを修正していくという、いわばこれはかなりある程度長い目で見た——私が申し上げるのはたいへん口幅ったいことでございますけれども、そのそれぞれの国の経済構造のあり方そのものを変えていくのだ、新しい石油価格というものに適応するような構造に変ていくのだという作業が、大いに精力的に進められなければいけないのだと思います。これは、私は、中央銀行の一員として申し上げるらちを大いに、はるかに越えておると思います。たいへん失礼でございますが、まあそういうふうに申し上げざるを得ないと思います。
あとのほうの点でございますが、外貨準備というものとどういうふうに関連するか、これは国によっていろいろ違いがございますでしょうから、わが国をとって考えますと、これはずっと先ほど来お話がございましたように、国際収支そのものがどんなふうな道行きをたどるであろうかということに関連するわけでございまして、その際に申し上げましたように、確かに大いに警戒をしなければいけないけれども、それほど大いに悲観をしなければならないほど極端な状況というものが考えられるかということになりますと、私はやや疑問があるというふうに申し上げたのでございます。
いずれにいたしましても、外貨準備のレベルは、ある程度の影響をあるいは受けざるを得ないかもしれませんが、そんなに大きな影響は受けないで済むのじゃなかろうかというような感じを持っておりますことと、それからもう一つは、やはり外貨準備というものは、これは非常に割り切った、観念論でたいへん恐縮でございますけれども、あるレベルをどうしても維持しなければいけないのだというふうな問題ではないと思います。むしろ大事なのは、絶対額ではなくて、流れだと思います。フローとして望ましい動きをしておるということが一番大事であると思います。残高が大事でないとは決して申し上げませんけれども、それはいわばフローの問題に比べれば第二次的な問題であると思いますが、フローとして考える。そのフローがもし非常に大きな影響を受けるようであるならば——私はそれほど大きな影響は受けないと思いますが、受けるのであれば、やはりいま当面のことは何をやるべきかというならば、しゃにむに飢餓輸出をしろということよりも、資本を導入するということのほうが、より適当な方策ではなかろうか。そういう状況、今後の状況次第でございますが、その状況に応じてそのときそのときに適切な為替政策をとっていけば、日本としてそんなにむずかしい、困難な非常にむずかしい事態になるとは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/143
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144・栗林卓司
○栗林卓司君 各国の経済構造、産業構造を変えなければいかぬというのは全くそのとおりでありまして、それから問題は、次の新しいエネルギー資源が見つかるまでの混乱であるということもおっしゃるとおり、ただしこれには二けたの年数がかかるであろうということがよくいわれている。その間をどう生きていくかという話になるわけですけれども、その前提そのものがなかなかむずかしい。おっしゃるように還流のしかたもいろいろある、産業構造の転換の一環として位置づけながらということもお含めでしょうけれども、資本導入もあるじゃないか、ただ、その資本導入というのは、かりにオイルダラーとしますと、全く新しいニューパワーである。それがどのような国際勢力のもとにおいて入ってくるのだろう。しかも、それは全世界また見ていくのでしょうから、開発途上諸国を含めてどんな戦略を持っていくのであるか。そういったことも、全部見ていかないといけないのじゃないか。
先の見通しのことですから、ここで悲観、楽観を言い合ってみてもしかたがないのですけれども、最後に一つお伺いしたい気がしますのは、とにかく情勢激変になってしまった。ついこの間までは、スミソニアン協定のあと、どういうぐあいに新しい国際通貨秩序をつくるかということについて、世界の合意ができつつあるような印象を受けております。昨今になりますと、幸か不幸か、もうフロートしてしまったのだ、当時、為替レートの調整の問題、準備資産の問題あるいは流動性の問題と、こむずかしく言っていた話は大体もう消えてしまったので、このままずっと国際通貨の前には、新国際秩序をどうつくるかという問題に真剣に取り組んでいこうではあるまいかというぐあいに世界が変わってきたのじゃなかろうかという気がするのです。
ここで印象をひとつ伺いたいのと、かりにそういったものを背中にしょいながら、お仕事をされていくわけですけれども、何といっても、必要なものは国力だ。残念ながら資源並びに技術開発力を中心にした国力はいまや乏しくなりつつあります、両方とも。残るものは一億の知恵と力だと、こういうことにいまなるわけですけれども、この知恵と力を、じゃ国際的な発言力にどうやって生かしていくかということになると、これとてもりょうりょうたる感があるのじゃないか。そこで、今後、そういうむずかしい中で、どういう方法で日本の国際発言力を強化していこうとお考えになっているのか、この点を伺って終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/144
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145・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) たいへんむずかしい御質問でございまして、私がいまの御質問に答えられるとは思いません。ただ、いまのお話の中で、国際通貨制度の改革問題がもうすっかりあれはもうだめになってしまったというふうには、実は私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/145
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146・栗林卓司
○栗林卓司君 だめじゃなくて、たな上げです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/146
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147・藤本厳三
○参考人(藤本厳三君) たな上げと申しますか、そういう議論をやっておる過程で、火急に処理を要する問題が生じたということだと思います。そういう意味で、ああいう長期的な通貨制度改革問題が時期が幾らか延びたということは言えると思いますが、これはなくなったわけではございませんし、たな上げでしょうか、その表現は私よくわかりませんけれども、それよりも、この石油問題によって、国際通貨の面で非常に大きな変動が起こった、あるいは起こりそうだ、起こりつつあるんだということ、これに対してどういうふうに対処していくべきか、いったらいいかということでございまして、これはどちらかと申しますと、いわば中間的な問題の重要性が増してきたんだというふうに私は理解をしておるわけでございまして、したがいまして、従来、通貨制度改革問題の、いろいろなあれには眼目がございますけれども、たとえば、あれは安定的な為替相場制度というものを前提に置いて組み立てられているわけですけれども、そういう安定的な為替相場制度というものがいま期待できなくなった、この石油問題のために期待できなくなったということはこれは明らかだと思います。したがいまして、こういった大きな問題がだんだん解決されていきます、あるいは落ちついていきますまでの間は、いま当面必要な問題を、その必要度に応じて解決していくという、どっちかと申しますと、よく言われますが、レボリューショナルでなくて、エボリューショナルに対処していかなければいけないのだというふうに言われていますが、私もまさにそのとおりだと思います。そういうことでございまして、決してなくなっている問題ではございませんで、私どもやはりその時期をつかまえて、やはり安定的な国際通貨制度というものの建設のために大いに努力をしていかなければいけないと思います。
それからもう一つ、じゃ、日本としてどういう心がまえでそういったものに対処するのか、あるいは国際的な発言権を確保し、拡大していくのかという問題だと思いますけれども、これは世界的な問題を世界的な視野で考えるというのは当然のことであります。これはもう申し上げるまでもないわけでございますが、やはり何と申しましても、国際的なそういう問題に対する発言力のバックにありますものは御指摘のとおり国力でございます。国力が大いに落ちた、落ちつつある、こういう仰せでございますが、それがそのとおりにいたしましても、われわれは大いに国力の回復に努力しなければいけない、その国力を回復することによって、将来の国際金融のあり方というものに対する日本の発言力を強めていくという方向に努力すると申し上げるべきであると思います。たいへん抽象的なお答えで申しわけございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X00919740307/147
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148・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
渡邊、藤本両参考人には、本日、お忙しい中にもかかわらず、御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四分散会
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