1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十九年三月二十七日(水曜日)
午前十時四十一分開会
―――――――――――――
委員の異動
三月二十六日
辞任 補欠選任
桧垣徳太郎君 安井 謙君
三月二十七日
辞任 補欠選任
安井 謙君 桧垣徳太郎君
―――――――――――――
出席者は左のとおり
委員長 土屋 義彦君
理 事
河本嘉久蔵君
藤田 正明君
成瀬 幡治君
多田 省吾君
栗林 卓司君
委 員
青木 一男君
柴田 栄君
嶋崎 均君
茜ヶ久保重光君
竹田 四郎君
田中寿美子君
戸田 菊雄君
野末 和彦君
国務大臣
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
政府委員
環境庁企画調整
局長 城戸 謙次君
大蔵政務次官 柳田桃太郎君
大蔵大臣官房審
議官 大倉 眞隆君
大蔵省主税局長 高木 文雄君
大蔵省関税局長 大蔵 公雄君
大蔵省銀行局長 吉田太郎一君
大蔵省国際金融
局長 松川 道哉君
国税庁次長 吉田冨士雄君
事務局側
常任委員会専門
員 杉本 金馬君
説明員
大蔵省主税局税
制第二課長 福田 幸弘君
厚生省社会局更
生課長 角田 耕一君
通商産業省貿易
局為替金融課長 佃 近雄君
運輸大臣官房政
策計画官 相良 英明君
運輸省自動車局
整備部管理課長 南 正彦君
労働者労働基準
局賃金福祉部企
画課長 川口 義明君
建設省計画局宅
地部宅地開発課
長 吉田 公二君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、
徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/0
-
001・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案。
以上三法案を便宜一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/1
-
002・田中寿美子
○田中寿美子君 大きな政策的な問題については、大蔵大臣がお見えになってからお尋ねしたいと思うんですが、主税局長に、税の自然増収額のことを最初お尋ねしたいと思うんですが、四十七年、四十八年、四十九年度の自然増収額は幾らになっておりますか。そして、その中の所得税の自然増収額、あるいはその他に関しての数字を初めにお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/2
-
003・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 四十七年度が八千二百六十二億円、そのうち所得税が一これは他に自然減収みたいなものがありますので、所得税だけのほうが大きくて、八千四百六十二億円。四十八年度が二兆五千六百五十六億円、うち所得税が一兆一千五百九十六億円です。四十九年度全体が三兆六千八百五十四億円、うち所得税が一兆九千九百八十一億円。これはお手元にお配りいたしました提出資料のナンバー2、「最近五年間の自然増収額と減税額の比較」というところの一番上の欄をごらんいただきたいと思います。その数字をいま続み上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/3
-
004・田中寿美子
○田中寿美子君 ちょっと、いまいただいたばかりなんで、まだ目を通していないわけなんで、いままで出された資料から見ているわけなんですけれども、私どもの手元に入っている資料から見ているわけです。
それで、そうしますと、自然増収額の計算ですね、計算のしかたはどうやってお出しになるのか、もう一度お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/4
-
005・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) それでは四十九年度を例にとって申し上げます。これもお手元に配ってございます「昭和四十九年度税制改正の要綱租税及び印紙収入予算の説明」という、こういう印刷物のまん中に青い紙が入っておりますが、このあとの――二ページに大体のことをまず書いてございますが、たとえば、源泉所得税でございますと、給与所得については、前年度に比べ、賃金約一八%の上昇を見込んで算定をいたしております。利子所得は、預金の増加見込み等に基づいて算定をいたしておりますし、配当所得は、配当率の動向等を勘案しております。申告所得税でございますと、申告の種類別に、生産、消費の動向を勘案いたしまして、営業所得につきましては、前年に対し一五%程度増加するものと見込んでおります。法人税につきましては、政府経済見通しによる鉱工業生産、物価水準等を勘案いたしまして、多少端数がございますが、概括的に見まして、四十九年度の法人の申告税額は、前年度の約一割ふえるものというふうに見ておるわけでございます。
以下、きわめて大筋だけでございますが、この二ページに記載してあるとおりでございます。
それでその細目は、同じ印刷物の七ページ、「第4各税の見積り方法」というところに、記載をしてあるところをごらんいただきますれば、大要はおわかりいただけるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/5
-
006・田中寿美子
○田中寿美子君 要するに、前年度の税収の実績に、その次の年の、たとえば物価上昇率だとか、それからその名目成長率を掛けて出すわけでしょう。いまおっしゃいましたように、その経済見通しなんか、法人税なんか、全部、経済見通しを基礎にして計算を出していらっしゃるのだと思いますね。それで過去にも、その自然増収額というのは、当初の見通しと、いつも、あとは実績が違ってまいりましたですね。そうして、その分を減税に充てておいでになるべきものだろうと、私、思うわけなんですけれども、で、四十七年度、いま、八千四百六十二億ということですね、これは私が手元に持っておりました資料では、これは財政金融統計月報から、調査室のつくったものでございましたけれども、これで見ますと、四十七年度を五千七百三十二億、これ当初の自然増収見込み額なんでございましょうね、そうしますと、減税額は四十七年度、四十八年度、そうして四十九年度ですね、これはいま提出されておりますけれども、もう一度念のためおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/6
-
007・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 四十七年度の自然増収を、どの数字をとるかというのは、ちょっと複雑でございまして、いつもの年と変わっております。と申しますのは、いわゆる四十六年度に年内減税がございました。それで四十七年度の数字の見方といたしましては、四十六年度の年内減税、二回目の減税は、本来ならば、四十七年度の減税を繰り上げて実施をしたんだという考え方を、私どもとっておりますので、そのいわゆる年内減税がない場合の自然増収は八千二百六十二億、うち所得税の自然増収が八千四百六十二億でございました。そういう考え方をとりませんで、やはり、この年内減税は、法律的には四十六年度内に成立をいたしておりますから、そういう意味で、四十六年度と考えますと、全体の自然増収は、いま田中委員がおっしゃいました五千七百三十二億という数字になります。減税額は、四十七年度は所得税の自然増収額八千四百六十二億について申しますと、二千五百三十億になりますし、それを四十六年度税制というふうに考えて、所得税の自然増収を五千九百三十二億と置きますと減税額はゼロになります。四十八年度のほうの所得税の減税額は三千百五十億でございます。四十九年度が一兆四千五百億ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/7
-
008・田中寿美子
○田中寿美子君 いま御説明で、四十六年度に年度内減税をした分は、本来、四十七年度分のはずであったという御説明でございますが、もしそれを四十六年度の減税とすれば減税はゼロになると、ゼロどころか増税になっているんじゃないですか。四十八億の増税ということに私の資料ではなっております。それから四十八年度、二兆五千六百五十六億の自然増収額に対して三千三百五十五億ですね、減税は。で、これの比率が、自然増収額に対する減税の額の比率は一三・一%、四十七年度をいまの計算でして減税ゼロにいたしますと、減税ゼロどころか増税になっている、四十八億。そうすると、〇・八%の増税になっているわけですね。それから四十九年度の見通し、予算では三兆六千八百五十四億の自然増収額、それに対して減税額が合計で一兆二十億となりますと、これ、減税の比率は二七・一となりますね。こんなふうに、自然増収額が相当あるにもかかわらず、減税の比率が少なくなってみたり、それから増税になってみたり、たいへん原則がないような気がするんですが、自然増収額というのは、税金の取り過ぎですよね、簡単にいえば。だから、当然のこととして減税をしなければならないはずなのに、ここのところはどうしてこういうふうになったのか。そこを御説明いただきたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/8
-
009・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) まず、先ほどお尋ねの歳入見積り額の算定の方法は、御指摘のように、経済見通しに基づいて算定をいたしております。これは必ずしも税だけではございませんので、予算のいろいろな分野におきまして、やはり、経済見通しに基づいた算定が行なわれております。
自然増収というのが取り過ぎであるという御指摘でございますが、私は、そういうふうには考えません。経済が大きくなります。経済が大きくなりますと、所得でいいましたら個人の収入はふえますから、そのふえた分に対応して、去年より収入が一割ふえれば、やはり、その一割多い収入に対応して所得税を納めていただくというのが筋道ではなかろうか。法人税につきましても、法人の所得がふえましたならば、それに応じて法人税をよけい納めていただくというのが筋道ではなかろうかというのがまず第一原則ではないかと思います。ただ、問題は、最近の経済の実態が、年々ほとんど例外なしに、名目の伸びが実質の伸びを上回っておりますから、その意味におきましては、名目が実態を上回っている部分については、おっしゃるように、税の構造が当初予期したのとは違う結果を招く。特に、所得税のように累進構造をとっております場合には、その制度がつくられました際に考えておりましたような、予定しておりましたような再分配機能というものとは異なる再分配機能を営む結果になる、結果的には累進がいわばきつくなるといいますか、実質的にそういう意味で影響がくるわけでございます。その意味で、名目が実質を上回るような経済状態の場合は、自然増収額の一部につきまして、実質的なむしろ増税ともいうべきものが生じますので、その部分については手直しをする必要があるわけでございまして、その意味で所得税の減税は、戦後ほとんど、数回の例外を除いて毎年行なわれているということでございます。
で、もし自然増収がそもそも取り過ぎであるという考え方をとりますというと、経済は大きくなるに対応して、財政も大きくなっていかざるを得ないわけでございますけれども、その漸次大きくなってまいります財政の追加あるいは増加所要歳出をまかなうに足るだけの歳入の調達ができなくなりまするので、やはり自然増加が毎年当然に減税に回されるべきだという考え方は、税が財政の財源であるというたてまえ上、とりがたいのではないかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/9
-
010・田中寿美子
○田中寿美子君 私、いま四十七、四十八、四十九のところでお尋ねしているわけなんですが、この三年間というのは、名目成長率と実質とはたいへんな違いが出てきておりますね。それですから、自然増収額も非常に飛躍的に大きくなっておる。四十八年度は、三千三百五十五億の減税しかやっていないけれども、四十八年度の経済見通しというのは大きく狂っているわけですね。これは経企庁でも、閣議決定で見通しをお変えになった。たとえば物価は、消費者物価は一四・〇%に見直しております。それから名目成長率は、実質六・四に対して二一・九というふうに見直している。ですから、たいへん名目成長率が大きいので、自然増収額というのが非常に大きく出てくるわけです。だから、これはあとでお尋ねしようと思っておりましたけれども、物価調整減税の問題とも関係してきますけれども、その実質と名目の間が大きく離れていないときは、年々減税をやらなくとも、ためてやったらいいだろうと思われますけれども、このように毎年毎年、成長率がひどく、名目が大きくなり、実質との間に乖離ができてくるという場合に、私は、四十八年度の減税額というものは非常に少ないと思うんですが、これはどういうふうに御説明いただきますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/10
-
011・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 四十八年度は、二十年来といわれているような、たいへんな物価の騰貴でございますから、そういう意味におきまして、経済見通しにおきます当初の経済見通しと、実績との間に非常に大きな乖離が出たわけでございます。したがいまして、所得税のあり方につきましても、四十八年度の所得税の減税を考えましたときの諸元が変わったわけでございますので、そういう意味においては、結果といたしまして、私どもが考えておった状態とは違った経済が現出をしたということでございます。
その場合に、それでは状態が違ったのだからやり直しをすべきである、考え方を変えた組み立てをすべきであるというお考えはきわめて一般的によく言われておるところでもございますし、それは十分理解し得るところでございます。しかしながら、反面におきまして、経済政策的に考えまするならば、所得税の減税は景気刺激的でございます。所得税の減税が行なわれるということは、可処分所得がふえるということでございますから、それだけ消費刺激的になるわけでございまして、経済政策的には、景気が沈滞をしたときに減税を通じて景気を刺激すべきであるし、それから景気が過熱をしたときには、むしろ増税をして吸収すべきであるということになるわけでございまして、さればこそ、四十六年にいわゆるニクソンショック直後に景気の沈滞が起こりましたときに年内減税ということが行なわれたわけでございまして、不景気のときに年内減税が行なわれたわけでございます。これは、景気刺激のためであったわけでございます。その裏返しから言いますと、四十八年のように景気が過熱になりましたときには、経済政策的には減税を行なうことは適当でない、むしろそれがさらに景気を過熱させる大きな要因となるというふうに考えられるわけでございます。しかし、一方においては、冒頭に申しましたように、物価が上がればそれだけ生活が容易でなくなるという面がございます。特に、サラリーマンのように、給与が上がります場合はまだしも、年金生活者であるとか、預金で生活を依存しているというような方々にとっては収入の増がありませんから、非常に生活を圧追することになりますから、その意味でやはり減税をすべきだという議論もあるわけでございまして、この議論につきましては、政府部内等におきましても十分論議をいたしまして、その上で、両者の考え方の上に立って、四十八年度においては、どちらかというと、いまの二つの考え方のうち、経済政策に主体を置いた考え方で減税を行なわない、むしろまとめて四十九年度に減税をするという考え方に従ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/11
-
012・田中寿美子
○田中寿美子君 これは大臣にお尋ねしたいと思っていることなんですけれども、東畑税調会長も、この四十九年度の減税案をつくったときに、石油ショックの前であった、そうして物価の上昇率がこんなにひどくなるとは考えていなかったので、こういう状況になれば、四十九年度内にもう一度の追加減税の必要があるというふうなことを言っておられるわけですね。自然増収額も、三兆六千八百五十四億というのは、これはやっぱりもっともっとふえるだろうと思われるだろうと思われます。それから四十八年度内の二兆五千六百五十六億、これももっとふえるのではないですか、どうですか。つまり、これは全部いままでの経済見通しで計算をして推算していらっしゃるわけなんですね。だから、実質的にいえだ、きっともっとふえると思うのです。その辺はどんなに思っていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/12
-
013・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) ちょっとただいまお触れになりました、東畑税制調査会長は、四十九年度内にも追加して減税を行なうべきだという意見を持っておられるというふうにお触れになりましたが、新聞報道等によりますと、確かにそのような御発言があったやに、少なくとも新聞報道の見出しでは出ておりましたけれども、速記録その他によりますとそういうふうな御発言はございません。東畑先生が言っておられますのは、今度の減税は非常に大規模なものであるので、今回のような減税を行なえば、数年間はこの所得税構造でよろしいのではないかと考えておったけれども、このように物価の大きな変動があるというとそうはいかなくなったと、追っかけまた所得税の見直しというものが必要であるというふうにおっしゃっておりまして、四十九年度に行なうべきであるというふうにはおっしゃっておりませんで、念のため申し上げておきます。私のほうで速記録その他で調べました結果も、そういうふうになっております。
それから四十八年度、四十九年度にさらに自然増収がふえるのではないかということでございますが、四十八年度につきましては、現在の歳入見積もりは、昨年の補正予算を提出いたしました時点におきますところの、経済の実態をベースにして組みました。その後今日まで、つまり十一月から三月までの間にさらに経済の実態が変わっておりますから、御指摘のように若干の自然増収があるものと考えております。自然増収と申しますか、いまの補正予算計上額よりは追加するといいますか、収入がむえるものと思っております。
四十九年度はどうなるかは、これは全くわかりませんわけでございまして、過去におきましても四十六年度に経験をいたしましたように、当初に見込んだだけの収入が得られなかった、したがって、補正予算で減額をしたということもあるわけでございまして、日本の場合に最近非常に経済がある意味で不安定でございますし、また、巷間いまの経済情勢が鎮静をして、場合によると行き過ぎになりはしないか、冷却し過ぎになりはしないかというようなこともいわれておるわけでございますから、四十九年度についてどういうふうになりますかは、私どもまだちょっと見通せないという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/13
-
014・田中寿美子
○田中寿美子君 四十八年度の自然増収額はさらにあるだろうということは、お認めになったと思うのです。
それから東畑会長は、参議院の大蔵委員会にもおいでになりまして、それでその点はやはり私たちがお尋ねしたわけなんです。つまり、四十九年度内の追加減税が必要ではないかとおっしゃったのではないかと。それ、私もいまここへその議事録を持っていないのですけれども、四十九年度あるいは五十年度に大幅の減税もまたしなければならないような状態があるのではないか、というふうに御意見をお述べになったように私は記憶しているのですが、その点は議事録を調べてみないとわかりませんから、そんなことで争ってもしようがないのですけれども、私の聞きたいのは、むしろ主税局長の考え方なんですね。もちろん、税調会長が答申をなさったら、それに沿って今後の税制対策をお立てになるのだということは考えますけれども、しかし、こんなに物価がひどく上がっている状況では、石油ショックの前に立てた案ではとてもこのままではいかないだろう。その際には、やっぱりいまの経済政策の面からとおっしゃった。経済政策的な考えということですけれども経済政策的な考え方からも、また社会政策的な考え方からも、当然のこととして減税をもっとしていくこいうことと、それから減税だけでない、いろいろな方法があると思います。税の再配分の機能というのがありますから、そういう点を考えなければならないんではないかと、そういう考え方を主税局長は持っていらっしゃるのかどうかということで、景気過熱云々の問題だけでなくて、そのままにしておりますと今年度のベースアップも相当の比率になるんではないかと想像されるわけなんですけれぞも、どうしても所得税の額が非常に大きくなりはしないかというふうに思われるものですから、そういうときには、やはり追加減税も考えられるし、あるいはその次の年の大幅な減税も考えられるんではないか、この点についての主税局長のお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/14
-
015・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 一つには、このような異常な物価高を招来するというときには、いろいろな意味で財政が考え直しをしなきゃならぬという要素が出てまいるわけでございます。いろいろの物価対策のための歳出需要のいうものもふえてまいりますし、生活保護を受けている、生活保護法の適用を受けているような、貧困家庭対策というものもいろいろまた追加して考えられなきゃならないような事態も起こらないとは限りませんし、いろいろな年金生活者のための施策というようなことも考えられなきゃならぬような事態も起こってくるわけでございまして、四十九年度の予算におきまして、公共事業費等は前年同額でありますにもかかわりませず、社会保障等は三〇%に及ぶ対前年度増加額を示すような予算になりましたのも、四十八年度から四十九年度へかけての変化が大きかったからにほかならないと思うわけでございます。税はやはり財源調達ということが最大の目的のものでございますから、そういうことで物価の変動が起きました場合に、財政が膨張をする、またその膨張が、そういう経済情勢のもとにおいては真にやむを得ない方面に充てられるのであるということを考えまするならば、財政の立場からいたしますと、やはり自然増収がありましたからといって、直ちにそれがまず減税に充てらるべきであるという考え方はとり得ないのではないかと思うわけでごじいます。しかしながら、納税者でない方々、言ってみれば、課税最低限以下である方々のための対策をとるに足るだけの財源がありまして、それでなお余裕があれば、それは納税者の中の比率的低所得層を主眼に置いた減税というようなことが考えられる場合があり得るかもしれないというふうには考えます。しかし、そういうときに、何をまずなすべきかといえば、あと追いの対策をとることも必要ではございますけれども、何よりもまず物価を安定させるということに全力を傾注すべきものでございますから、そういう意味におきましては、景気刺激的な政策をとるということは、税に限らず、金融の面につきましても、財政の面につきましても望ましくないわけでございまして、現在のような財政構造をとっているときには、もし何らかの意味において自然増収があれば、たとえば年度途中におきましても公債発行を減額をするというような努力をいたすべきものではなかろうか。問題は、現状においていろいろひずみが出たから、そとひずみを直すために追加して減税を行なうということと、現状を解決をするために、総需要対策をとるということが相矛盾をするわけでございます。私どもとしては、財政の景気に及ぼす影響というものをやはり相当強く重視して考えておりますので、税を担当いたします私どもといたしましても、やはりそういう意味での税の機能ということを、こういう変動期にこそ考えなければいけないわけでございますから、経済政策的立場というものを重視して考えるということにならざるを得ない。もちろんそれでは納税者のいろいろな生活面でのことは考えないのかということになりますけれども、それも考えないというわけではございませんけれども、財政の景気調整機能というものについては、相当なウェートを置いて考えるのが私どもの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/15
-
016・戸田菊雄
○戸田菊雄君 ちょっと関連。物価調整減税についてですね、今回の自然増収の中でこれは何%ぐらい物価調整減税に回しておるんでしょうが、その内容をちょっと説明してくれませんか。
それからこれはちょっと筋違いかもしれませんけれども、先ほどの答弁で主税局長が、可処分所得云々ということを言われましたけれども、これは可処分所得の給与所得者の平均はどのぐらいと見ているんですか、いま。それをひとつわかっておったら教えていただきたい。
それから石油危機以降、大体昨年の十二月以降でもいいと思うのですが、この以降の物価上昇の上昇割合ですね。これはどの程度に見ておるのか、平均で。その辺はちょっとどういう見解を立てておられるか、三つ、ちょっと教えていただきたい発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/16
-
017・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 物価調整減税という概念は、それを頭に置いて幾らの減税をいたしましたということではございませんので、減税のあり方を考えまして、片や物価との関係ではどういうことになるかという意味で、物価に対応して課税最低限を調整をいたしましたならば、幾らの減税をなすべきことになるかという額を、いわば物価調整減税所要額と呼んでいるわけでございますが、その額は、四十九年度における消費者物価の上昇率九・六%ということを前提にして考えますと、二千二百六十億円ということになります。
可処分所得の数字は、四十八年十二月に発表されました国民所得統計が一番新しい数字かと思います。それによりますと、昭和四十六暦年において四十八万九千五百八十円という数字が出ておりますが、これは一人当たりでございます。なお御参考までに申しますと、そのときの課税最低限は独身の給与所得者の場合当所三十八万二千円、いわゆる年内減税後三十九万二千円ということになっております。
それから消費者物価の石油危機以後の物価の動向につきましては、これは私ども特別な税の立場で別の数字を持っておるわけではございませんので、例の日銀で出しております卸売り物価指数とか総理府で出しております消費者物価指数というもので見ておるわけでございまして、それ以外の数字は特に持っておりません。御存じのように、卸売り物価で申しますと、十一月が一二二・三と
いう水準から最近の二月には二二七・〇というふうに変わっておりますし、消費者物価で申しますと、十一月の一一五・九という数字から、この一月の一三三・一という数字にたいへん非常なスピードで変わっておりますが、私どもも、ものを判断いたしますときの材料といたしましては、やはりこの卸売り物価なり消費者物価の指数というものを頭に置いて作業をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/17
-
018・戸田菊雄
○戸田菊雄君 いま局長の言われました物価調整として約二千三百六十億円、これはあくまでも政府の経済見通しですね、物価上昇九・六%、こういうものを土台にして計算をしておる、こういうことでありますが、そういうことになりますると、いまちょっと明確なこの四十八年度の総決算はできておりませんが、消費者物価で約一五%くらいこえることがもう明らかなんですね。まあいろいろとこの対策としては物価安定ということをやっておりますけれども、この物価上昇でいけば、いま急速に、これは政府の――総理や大蔵大臣はいろいろ言っておりますけれども、私はもう大体、今回のこの石油の各製品その他もう全部値上げをするという状況からいけば、あるいは私鉄も値上げをする、電力料金も値上げをする、まあこれは参議院選挙等もあって、政治配慮があっていろいろ抑制措置はとっておりますけれども、しかしもうとても、九・六%なんかでいけないという情勢だけははっきりしているのじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけですね。だからいういう面について、いま予算編成上歳入面の主たる所得税の検討をやっているわけですけれども、これは遠からず何らかの形で、東畑会長が言ったか言わないか、私そのとき出ていませんからわかりませんけれども、これは追加減税の措置必要ではないか、同じように物価調整減税も含めてやっていく必要があるのじゃないだろうか、これは政策面にもかかわる問題だかもしれませんけれども、事務当局の最高責任者としても、そういう点はやっぱり検討しておく内容じゃないだろうか、こういうふうに考えますが、その辺の見解をひとつ明確にお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/18
-
019・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 四十九年の物価がどういう推移になるか、消費者物価として九・六%でおさまるかどうかというのは相当むずかしい問題だと思います。しかし、むずかしい問題ではございますけれども、私どもといたしましても、大蔵省全体として、所管行政を通じてあらゆる努力をしなければならないことであろうかと思います。おかけで、この二月の卸売り物価指数の動向は非常に安定的でございまして、三月上旬の数字を見ますと、横ばいのような状態になっております。ただ非常に心配なのは、三月上旬の数字では〇・三でございましたか、四でございましたか、卸売り物価は上がっておりますが、その上がりました原因の九六%までが国際商品物価上昇ということによる影響になっております。つまり、国内は一応いまとまっておりますが、国際的に金属材料等の、鉱物資源等の価格が上がったということが三月上旬の卸売り物価指数に影響いたしております。そういうことに象徴的にあらわれますように、国際的に非常に物価が不安定になっておりますから、その意味において、私どももなかなか容易なことではない、いろいろな影響がいろいろな形で出てくるだろうというふうに思われますし、いま当面とられております物価政策は、いろいろこの政府の行政指導等によりまして、やや無理に押え込んであるという傾向がございますから、そしてこれはそう長続きするはずのものでございませんから、ここ一、二旬のやっと落ちついた状態というものがいつまで続き得るかということが非常に問題でございまして、それの影響で卸売り物価水準がどういくかということによって、消費者物価水準も必ずや影響されるわけでございますから、御指摘のように九・六におさめますのには相当な努力が要るわけでございまして、いろいろ心配をしておるところでございます。ただし、それがかりにうまくいかないと、思うように物価が落ちつかないということになりました場合にも、所得税の減税を追加してやらなきゃならぬほどの事態になるかどうかということについては戸田委員とは、若干目解が遠うわけでございます。
と申しますのは、一例を課税最低限にとりましても、最近十年間ぐらいの課税最低限の改善幅は、毎年一一%ぐらいでございます平均で。それに対しまして、四十九年の改善幅は三四%でございます。これは、必ずしも物価対策を意識して行なわれた減税ではございませんので、むしろ所得税の構造をある程度直そうということで考えられたものでございますけれども、そうかといって当然に物価対策的な意味としても役立ち得るわけでございますので、この九・六という消費者物価の上昇率が若干見込み違いになりましても、三四という大きな幅で課税最低限の改善がなされております。これは課税最低限だけでございますから、ほかの点も含めまして考えますならば、今度の所得税の大きな幅の減税は、相当程度の物価の変動に耐え得るものであるというふうに考えております。ただ、むしろそれよりも問題は、物価が上がりましたならば、意図いたしました所得税の本来の姿としての改善をはかろうと考えましたことが、意図どおりにはいかなくなったと、実質的な意味での減税というものが、十分当初考えていたほどには行なわれないことにとどまってしまう結果になったということになろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/19
-
020・田中寿美子
○田中寿美子君 いま物価調整減税の話が出ましたので、そのことについてなんですけれども、あくまでもいま九・六%というその四十九年度の物価上昇率にとどめたいというのは、これは努力目標だということでございますね。それで、それの計算をしているわけなんですが、四十七年、八年、九年の物価調整減税額というのを見ますと、物価調整減税という考え方は、所得税の課税最低限を、消費者物価の上昇率に見合って、それだけ調整していくのだと、それに必要な所要額というふうに考えられると思うのですけれども、四十七年度八百九十億、これは物価上昇率五・三%の予想でございましたね。で、実質的が五・二だと、これ政府統計そうです。それから四十八年度は、千三百七十億の物価調整額、これは物価上昇率五・五%の計算でございますね。これがもうすでに政府の見通しで一四・〇に修正されているわけでしょう。ですから、そこで物価上昇率は、すでにたいへん違っている。そうしますと、四十八年度の千三百七十億というこの物価調整減税は、実際には、もう計算をしたら、これずっとこの倍以上にもならなければならないものじゃないかと思うんですけれども、その辺でどうですか、つまり四十八年度の千三百七十億の物価調整減税額というのは、実際的に五・五%の上昇率で計算したものであるから、一四・〇というその政府の見通しの修正で計算しますと、もうはるかに食い込んでしまっている、物価調整になっていない、ここだけでもふやす必要があるんではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/20
-
021・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 数字をまず申し上げますと、四十八年度は消費者物価の上昇率が五・五であるということを見込んでおりました。そのときに、いわゆる物価調整の趣旨で減税をするとすれば、幾ら減税すべきであったかという数字は、御指摘のように千三百七十億でございます。ところで、最近の見通しでは、消費者物価上昇率が一四であるということでございますから、五・五のところを一四に置きかえて計算し直してみますと、その所要額は三千四百九十億ということになるわけでございまして、その意味におきましては、四十八年度は、物価調整の観点からいえば、非常に不十分な減税であるということが言えるということは、卸指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/21
-
022・田中寿美子
○田中寿美子君 それで、その分をどうするのかということなんですけれども、ですから、私どもが四十八年度の年度内にもさらに追加減税が必要だということを主張したのはそういうところにあるんで、すでに物価調整分が食い込んでしまっていると、そこで、その食い込んだ部分を、さらに四十九年度の物価調整額ですね、九・六%の計算で二千二百六十億になっているわけですけれども、そこのところにそれは加えなければならないものではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/22
-
023・戸田菊雄
○戸田菊雄君 それともう一点。
先ほど言われました二千二百六十億円というのは、一兆四千五百億のその給与所得のね、この減税割合からいけば一六%見当になるんですね、おおむね。それは、その物価調整等含めて、今後の物価上昇の割合を見通した内容でそういうことを算定しているのかどうか、その点を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/23
-
024・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) まず、田中委員のお尋ねでございますけれども、もし年々年々の減税を、物価に合わした減税を行なうべきであるということになれば、田中委員御指摘のような考え方が成り立ち得るのではないかというふうに思います。ただ、毎年毎年の減税は、毎年毎年の物価調整減税要求額よりは、はるかに大きくなっておるわけでございまして、十年なら十年を長期で見ていただければ、そのための物価調整減税所要額と実質のこの所得税の減税の大きさとは、はるかに所得税の減税の大きさのほうが大きいわけでございますから、いまと十年前と比べていただきますと、その間に物価が上がりましたにしましても、所得税は相対的に軽減をされておるということは明らかでございます。でございますから、問題は、物価と減税との関係は短期の問題として見れば、これにもこまかい議論をすればいろいろな議論がございますけれども、まあ大ざっぱな議論として言う限りにおいては、御指摘のように、四十八年度の減税が、物価調整所要額との関連においてはなはだ不満足なものである、不十分なものであるということは言えますし、その単年度でものごとを勝負をつけるということであれば、何らかの意味において手直しが必要であるということも言えましょうけれども、そうなりますと、今度は、減税は物価との関係だけで考えなければいいのかということになるわけでございますが、やはり物価との関係だけでは不十分でございまして、経済が伸び、名目でなしに実質で所得がふえていきます場合にも、ある程度のゆとりを持った生活ができるようにするためには、物価の上昇率を上回るような、むしろ減税が行なわれることが望ましいわけでございますから、そういうことで、今日まで長年減税が行われてきておりますので、長期的には問題はないのではないかというふうに考えております。
それから戸田委員のほうの御質問の、二千二百六十億の、いわゆる九・六%の場合の物価調整減税額という数字はございます。それから片方、一兆四千五百億という減税がございます。その率が一五%強になるということは御指摘のとおりでございますが、私どもは、その両者の数字の間には何らかの関連がないというふうに考えております。ただ、毎年の減税を考えます場合に、物価調整減税所要額というものが幾らぐらいになるであろうかということは、一応その減税規模を考えます場合に、サンドチェックをするためには計算はいたしております。そしてそこにある程度の両者に合理性がなければならない。私は、先ほど申中委員に対する答えをして、毎年毎年必ずしも物価調整減税所要額だけはきちっと減税をしなければならないというわけではないのだと、もう少し長期に見ていただきたいと申し上げましたけれども、しかし、やはりそこのところは、できるならば、計画を立てますときには、両者を見比べておく必要があるわけでございまして、二つの数字の見比べは絶えずやっておりますけれども、この二千二百六十億という数字を頭に置いて、一兆四千五百億というふうな関係にはないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/24
-
025・戸田菊雄
○戸田菊雄君 いま局長が言われましたように、物価調整減税の合理性をどこに求めるかということですね。三十九年の税調答申の中では、物価上昇がはなはだしくなってきたやや前兆ですけれども、当時あの税調答申では、物価調整減税として五%以内やりなさいというような答申が三十九年に私は出ておると思う、記憶ですけれども。ですから、そういうものを一定の土台として、今日までやはり主税当局としても、物価調整減税というものを取り扱ってきたと思うのですね。ですから、そういうことを考えますと、今日非常に物価高騰がおびただしいということになれば、やはり一定の物価調整減税に対する合理性をきちっとしておかなくちゃいかぬと思うのですね。だから、今回のこの九・六%、これは経済見通しの上に立ってやったんでしょうけれども、実質の減税総体の中では、一六%以上の物価調整減税に該当する、こういうことであるならば、推測がましいことだけれども、おおむね四十九年度はそれ以上の物価上昇、こういうことになるんじゃないか。これは大体主税局長、当たっているんですよ。政府が見通しておる経済成長率、いわば名目成長、実効成長、これらをずっと計算をしていきますと、その乖離率というのは大体一五、六%上回っておる。そういう状況になっていますから、これがストレートですべて物価上昇とは言いませんけれども、そういう面をいろいろと判断をしますると、何らかの角度でやりり合理性を求める一定の基準というものをきちっとしておきませんと、われわれは一体何を目標に今後物価調整減税というものをやらせるべきか、あるいはまた実行していくべきかということになってくると思いますから、その辺の見解を明らかにしておいていただきたいのですが、どうでしょうか、見解は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/25
-
026・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) まず、減税の規模をどのようにきめるべきかということは、二つの角度からチェックされるべきものであるというふうに考えております。一つは、いま戸田委員お触れになっておりますように、税制の角度から見て、税の問題としてどのようにあるべきかということでチェックさるべきものでございましょう。しかし、同時に、何と申しましても、税は財源調達の手段でございますから、歳出歳入を通じた財政のあり方ということとの関係において減税も考えられなければならないというふうに思うわけでございます。歳出をどの程度伸ばさざるを得ないか、あるいは伸ばすべきであるか、それから、公債発行のあり方がどのようであるべきかということと、減税がどのようにきめられるべきか、増税がどのようにあるべきかということは、三者いわば同時決定のような形で考えられなければならないというふうに思うわけでございまして、毎年の減税は、必ずしも税自体のあり方の立場だけできめられるということにはならないということを申し上げておきたいと思います。
しかし、そうは申しましても、やはり税といえども、いかに国民の義務であると申しましても、実態的に無理があればいけませんし、それから、いろんな意味での不公平が出てはいけませんということもありますので、物価が動いております時期には、やはり絶えず物価をにらみ合わした毎年の調整措置が必要になるということは間違いのないところでございまして、そういう趣旨で、税制調査会等におきましても、絶えず、税制を考えるときに、物価のことはにらみ合っておかなければならないという御指摘を、受けているのは、そういう意味であるというふうに考えておるわけでございます。
その場合に、一番、税制の中で物価との関連で敏感に考えなければならないのは所得税でございますし、所得税の中で一番物価との関連で注意を払っていなければならないのは人的控除の問題であると思います。人的控除の水準、現在、今度の改正で基礎控除、配偶者控除、扶養控除の水準を二十四万円に改めるようにお願いをいたしておりますが、人的控除ということが、サラリーマンであろうと、事業所得者であろうと、すべての人を通じての、いわば課税の限界を示すものでございますから、物価が上りましたならば、その限界を直すという必要があるわけでございまして、そういう意味におきまして、人的控除の水準を考えますときには、やはり物価の動向というものに注意を払う必要があるということではなかろうかと思います。今回、基礎控除、配偶者控除につきましては、三万円――二十一万円から二十四万円まで三万円上げておりますが、また、扶養控除につきましては、他のいろいろなことも考えまして、十六万円から一挙に二十四万円まで八万円上げておりますが、これは、従来の毎年の税制改正における上げ幅が、大体毎年一万円であった、改善幅が一控除につき一万円程度であったということに比べますれば、かなり飛躍的な改善であったと思っております。私どもは、実はそれを一挙に大幅に改善をいたしますにつきましては、必ずしも物価のことを頭に置いて、物価のことだけに頭を置いてそういう大幅の改善をしたわけではなくて、むしろ税の構造の問題として、この際思い切って上げさしていただいたわけでございますけれども、そのかなり思い切って上げさしていただいたことの意味が、物価が上がりましたために、影が薄れたといいますか、そういう感じになっていることは事実でございますけれども、しかし、幸か不幸か、今回相当大幅な減税を人的控除についてもやらしていただきましたから、相当なる物価の激動にも耐え得る構造になっていろというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/26
-
027・戸田菊雄
○戸田菊雄君 きょうは私本来じゃありませんから、これであれしますけれども、ただ、局長ね、資料をちょっと出していただきたいのですけれども。それは、一つは、いま局長が指摘をされましたように、人的控除ですね。これの積算基礎、昨年度は一万円、今年度は三万円、財源があれば三万円になっていくのか、そういう内容がいままでの論争の中でも明確にされておりませんから、その積算基礎を明確に出したしていただきたい、それが一つ。
それからもう一つは、これは法人関係でありますけれども、資料をいただきまして、14の資料でありますが、「法人企業の引当金・準備金、特別償却等の利用状況一昭和四十七年度一」こうありますが、これの中で、「法人税法による分の」の減税、あるいは「租税特別措置法による分」と、こうなっております。ことに金融保険業、大体、貸倒引当金残高でもって八千五百五十八億円、こうずっとありますが、この中身を詳細にひとつ資料でいただきたいんですよ。たとえば租税特別措置法による分で、価格変動準備金残高で千二百二十二億、これは金融保険業の関係ですね。この場合には、株式その他があるんだろうと思うんですが、そういう内訳を詳細資料でもって出してもらいたい。それから同じように法人税法による分についても、各項目ごとの内訳を明確にひとつ資料として出していただきたいと思うんです。増はわかるのですから、引き出しをですね、内容。それはよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/27
-
028・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 第一の御要請の二十一万円を二十四万円に、なぜ三万円にしたかという理由でございますが、それは何か積算基礎みたいなものがあって、それを三万円にした、過去においてはこういうわけで一万円にしたというわけではございません。むしろ問題は、課税最低限の水準がどうあるべきかということでございます。二十四万円であれば、四人家族であれば九十六万円ということになります。三人家族であれば七十二万円ということになります。で、そういう給与所得者と事業所得者を通じて、課税最低限がどのくらいであるべきかと、そうして、その家族構成との関係で、どういうふうに考えたらよろしいか、家族構成が大きいほうが比例的にふえるというのが、今度のように基礎控除、配偶者控除、扶養控除の額を同額にいたしました場合には、一人なら二十四万円、二人なら四十八万円、三人なら七十二万円、四人なら九十六万円というふうに、比例的にふえますから、家族構成を人数に比例的にふえるように、今度の場合はなるわけでございますし、前の場合のように、本人と配偶者が二十一万円で、扶養者は十六万円という場合には、相対的には一人もしくは夫婦家族が有利であって、子供がふえていっても二十一万円ふえないで十六万円しかふえないという関係になりますから、子供さん、あるいはおとうさん、おかあさんを扶養しておられる家族については、課税最低限が、今度の制度に比べますれば、相対的に不利な構成になっているということでございます。
そこで、その二十一万円とか、二十四万円とかいう数字に意味があるというよりは、どちらかと申しますと、それを合わせました数字、さらに最もいま問題でございます給与所得者、納税者の数としても非常に問題が多く、かつ源泉徴収制度その他を通じ、収入金額が完全にいわば把握をされておるサラリーマンについては、今度は給与所得控除のあり方と、それから、いまの人的控除のあり方と、組み合わせまして考えますと、夫婦子二人で今度の場合でございますと、初年度百五十万円、平年度百七十万円に、いわば課税最低限がなると、その課税最低限の重大なる構成要素を人的控除がなしておるという意味があるわけでございまして、その意味で、それをどの程度改善するかということを頭に置きまして、それで額をきめておるわけでございまして、二十一万円とか二十四万円とかいう額自体が、何らかの意味において一種の積み上げ計算であるという形にはなっておらないわけでございます。したがいまして、それは資料という形で何らかをお示しするものは実はないわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
それからいまの法人のほうの貸倒引当金、退職引当金等の数字でございますが、この数字は、備考にございますように、国税庁会社標本調査報告によって出しておるものでございまして、この標本調査報告のデータでさらに分解でき得るものがあればできないわけではないのでございますけれども、戸田委員が御要求がございます数字、どういうふうな分類をお求めかは私よくわかりませんが、その分類が統計にございません場合には、ちょっと統計的には出しようがないと。もともとこれだけの業種分類にしておりますから、おそらく委員がおっしゃるのは、これをもっと業種別に分けろとか、あるいはどういう計算基礎かということかと思いますが、統計的には非常に困難だと、御要求をもう少し詳しく伺わしていただきまして、何らかの形で他の統計資料等から、何らかの推計等を行なえということであれば、あるいはできるかもしれませんけれども、あとでその御要求の内訳を詳しく教えていただいて、出せるものは出すということにさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/28
-
029・田中寿美子
○田中寿美子君 物価調整減税のこと、もう一つで終わりたいと思うんですけれども、さっき物価上昇だけを考えて減税するわけではない、それは当然のことだと思います。構造的な問題がいっぱいあるわけですから、税の不公平とか――私たちのほうから見たら不公平だとか、あるいは負担の不公平だとか、あるいは逆進性とか、いろいろありますから。そうですけれども、大蔵省が物価調整減税額というのを提出していらっしゃるわけですね、計算して出していらっしゃるわけなんです。こういうことは、ほかの国にはないと聞いているわけで、なぜそういうことがあるかと言えば、たいへん毎年毎年物価の上昇率が激しいからで、どうしたって減税せざるを得ないと、もし物価調整減税をしなかったら増税になっていくと、こういうことがあるからやらざるを得ないんじゃないかと思うわけなんですね。それで三十八年でしたか、税調の答申で、物価調整減税の計算の方式といいますか、数式が出されましたね。あのときの数式だと、毎年の自然増収のうち、所得の上昇、物価の上昇及び所得税の弾性値が得られればこういう数式ができる、そしてその数式で計算をすると、実質上の負担増加額が約三〇%になると、自然増収のうち。だから、それだけは調整していかなければならないというようなことを言っているわけですね。そういう数式をいまは用いていらっしゃるのかどうか、いまは一体物価調整減税をどういうふうにしてはじき出していらっしゃるのかということを伺いたいと思います。
それから、いま国会提出されていらっしゃる物価調整減税額というのは、先ほど申しましたように、すでに四十八年度の物価の上昇率からすれば、もう非常に不十分で、調整分を食い込んでいるということ、それから一そのことはもうお認めになったわけですから、それでは、その物価調整減税額の計算は、どういうふうな計算をしていらっしゃり、そしていまおっしゃるように、あんまり意味がないみたいな話になりますと、こんなもの出す意味が一体どこにあるかのというふうに言いたいわけなんですね。ですからその辺を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/29
-
030・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 三十八年、三十九年ごろは、税制調査会で減税のあり方をどのようにすべきかということがたいへん議論をされました。それは、当時まだ税が今日に比べましたならば、もっともっと重い時代でございました。にもかかわりませず、片っ方においては、やはり歳出の充実をはかるべきだという議論がございました。いわば、自然増収を歳出に回すべきや、それとも減税に回すべきや、また、その分界点をどこに置くべきやということが非常に活発に議論されたわけでございます。今日とたいへん事情が違いますのは、当時は、いわゆる健全財政主義と申しますか、国債を発行しない前提での財政でございましたから、減税を大きくやれば、その結果当然に歳出が自然増収マイナス減税分だけしか歳出がふやせないということになりますので、歳出増加要請の議論と、減税の議論が、そこで直にぶつかっておったということでございましたから 非常にそこに激しい議論が展開されるという背景があったわけでございます。御存じのように、四十一年から国債を発行するということに財政の方針が切りかえられまして、今日まで十年近くに及んでおるわけでございますので、減税論議をいたしますときに、そこらのところについては、決して以前と様子が全く変わったということではございませんけれども、今度はむしろ、国債発行のあり方との関連において、非常にそこのところの議論があり得るわけでございますけれども、やはりそこは何と申しましても、健全財政主義の場合のように、ぴしゃっとつじつまが、その減税と、自然増収とで合わなきゃならないというときに比べますと、言ってみれば、深刻さが今日はやや軽減されておるということに事情が変わったということが言えると思います。したがいまして、実は四十年代に入りましてからは、税制調査会におきましても、あまりその減税をどの程度にすべきかという減税規模論というものを三十八、九年時代ほどには論議されないという状態でございます。今回一兆五千億というような大きな減税ができることになりましたけども、もしあれが三十年代でありましたならば、なかなかそういう歳出増加要因との衝突があって、そこのところでの論議が盛んになったかと思います。
それから、なぜこういう資料を意味がないというのに出すかということでございますが、これは率直に言わしていただきますと、私どもあまりそれほど重きを置いていないのでございますが、毎年衆議院の予算委員会におきまして、予算の審議との関連で、必要資料の提出要求が出ておりますけれども、その際に、やはり重要項目の一つとして、毎年慣例的にこの数字の提出を衆議院予算委員会のほうから要求されております関係もあり、それから、そのことは昔ほどの重要性はないといたしましても、人的控除の水準のあり方等をきめるときには、改善幅を考えますときには、私どもも事務的にもやはり一応の検討はするわけでございますので、そういう計算をいたしておるわけでございます。
次に、どういう計算かということでございますが、計算のやり方は、課税最低限を構成いたします基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、給与所得控除、白色事業専従者控除の、四十九年度の場合でございますと、四十八年度の実績見込み額を出します。それで、それに消費者物価の上昇率を掛けます。そうしますと、四十九年度なら四十九年度に改善すべき額、物価の上昇に応じてそういった諸控除をふやすべき額というものが出てまいります。それは所得としての絶対額でございますから、それを今度は減税所要額に直します場合には、税率を乗じまして税額に直す必要があるわけでございます。そこで、その出てきました額に限界税率を掛けます。で、その出てまいりましたものから、普通平年度の減税と初年度の減税に差がありますから、新しい税制改正をいたしませんでも、初年度減税額と平年度減税額の差額だけは、前年度減税の効果として幾らか減税が出ますから、その減税額を引きます。そのようにして算出いたしましたものが、物価調整のための減税としてという角度で必要な調整額ということで把握できるであろうという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/30
-
031・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時四十分まで休憩いたします。
午後零時二分休憩
―――――・―――――
午後零時四十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/31
-
032・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案。
以上、三法案を便宜一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/32
-
033・田中寿美子
○田中寿美子君 午前中に、高木主税局長といろいろとこまかいことについて質疑いたしておりましたんですけれども、まず、大蔵大臣には、私、今度の税三法について、この改正案についての姿勢みたいなことを最初にお尋ねしたいと思うんです。
今回の一兆四千五百億減税ですね、これは確かにいままでにない大幅の減税だと思います。ですけれども、最初は二兆円減税ということを田中総理が非常にアドバルーンをあげていらっしゃったわけなんです。これは福田大蔵大臣が行政管理庁長官当時は、二兆円減税なんていうのは非常に――これはそんな減税よりは物価抑制だということを主張していらっしゃったと思います。で、減税はインフレに拍車をかける、だから、そんな二兆円減税なんてとんでもないというようなおことばを私は幾つかの新聞紙上でも拝見しておりました。その後蔵相におなりになりますときに、これまでの経済政策は白紙に戻すと。そして、しかし、二兆円減税の趣旨は生かすというふうに変更されたわけなんですけれども、その心境の変化といいますか、福田大蔵大臣は、安定成長路線の主張者だと思うんですけれども。それで、だから、一兆四千五百億ぐらいに押えたとおっしゃるかもしれないのですけれども、相当の減税をするようにお考えが変わられたのかどうか。その辺を最初に聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/33
-
034・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) いわゆる二兆円減税という構想が、田中総理から発表されましたのは昨年の秋ごろだったと思います。そのころ、私は、お話のように行政管理庁長官をしておったんですが、新聞等で伝えられるところを見ますと、昭和四十九年度には四兆円ぐらいの自然増収が見込まれる。そこで、そのおおよそ半額を所得税減税に使いたい。給与所得者を中心として、所得税の大幅の減税をすると、こういう内容のむのであったというふうに理解いたします。
そこで、私は、いまお話もありましたが、まあ二兆円減税、これはすばらしい大構想とは思いましたが、そのころ私は、一方物価問題がどういうふうになりいくであろうということにつきまして、非常な危惧を持っておったわけです。もう立ちおくれというかになっておるが、もうそれにしても、いまからでもおそいことはない。ほんとうの物価抑制対策に取り組まなけれりゃならぬ。非常にその問題を若慮しておった時期でありますが、そういう時期に、二兆円減税というような大規模な所得税減税を行なうと、そういうことになったら、物価対策との関係をどういうふうに調整するんだろう、物価調整減税、これはもうもとよりしなけりゃならぬ問題、しかし、それをこえて大幅な減税をする、また、新聞の論説、あるいは記事等におきまして重役減税というようないろいろ御批判も受けるという内容を持ち、しかも、大規模な減税をやるということ、これにつきましては、私は、率直に申し上げまして若干の疑問を持っておったわけです。
そういう経過がありますが、私がはからずも十一月の末に大蔵大臣に就任するということになりまして、就任に際しましては、 田中首相との間に、すべてのいままでの行きがかり、これは行きがかりという中には、公共投資というような問題もあります。あるいは二兆円減税というような問題もあると、いろいろあるんですが、行きがかりにとらわれないで、ひとつ事を事態に即応する形できめましょうやと、こういうことだったんですが、私は、そういう立場で、税の構想をどういうふうにするかということを考えたんですが、もう当時はすでに国民が、二兆円減税というのでたいへんな期待をしておった、これを引っ込めるということになる。そういうことになると、これはまた非常な失望を国民各位に与えるんじゃないか、そういうふうに考えまして、とにかく行きがかりにとらわれず、いろんな施策の考え直しをやったんですが、この二兆円減税だけはまあとにかくやらざるを得ない、こういうふうに考えてその実施の方針を固めたわけでございます。ところが、改造内閣では、総需要抑制政策を本格的に進める、そうすると、経済もいままでのような調子じゃいくまい、また、給与水準もその前に見通されたようなわけにもいかない。そうしますと、自然増収というのが四兆円をかなり上回るという秋ごろの見通しが大幅に変わってくるわけなんです。そうしますと、その四兆円を上回る自然増収のとき構想いたしました所得税大減税のその骨格をそのまま採用いたしましても、昭和四十九年度における財源所要額は、これは一兆四千五百億円、それから、昭和五十年度、平年度における所要額は一兆七千億になる。ですから、二兆円減税の構想並びにその内容につきましては、これはもう修正しないんです。そのまま取り入れた。が、しかし、その税を執行する背景となる経済情勢が変わってくるということで、税収入の見積もりも変われば、また、減税による減税減収額、これの見積もりも変わってくる、こういうことになったわけであります。まあいろいろ考えてみましたが、政治的判断といたしまして、二兆円減税はそのままこれを執行することが適切であると、こういう判断をした、これがいきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/34
-
035・田中寿美子
○田中寿美子君 ちょっとついでのことのようですが、二兆円減税構想はそのまま踏襲したというおことばで、平年度二兆円になるという。私、この平年度というのは、この間も東畑会長が、平年度が実行されたのは十年間に一ぺんぐらいしかない。いつでも平年度と初年度を出すわけですね。実際は、四十九年度一兆四千五百億、そして毎年物価が上がり、いままではたいへんな成長率も上がってきたわけで、毎年毎年減税をするようになっておったんで、平年度というのはほとんど意味ないような形なのに、いつでも、この資料を見ましても、私は複雑で困るのですよ。控除額を見ても、平年度のほうで見ると、とっても課税最低限も百七十万なんてなるけれども、そうじゃないという。ちょっとその辺を、二兆円じゃないけれども、まあ二兆円に近いもので、そして二兆円というようなイリュージョンを与えるような気がするのです。ここいらを、たいへんしろうとっぼい議論ですが、その翌年度を幾らというふうにできないものでしょうか。これは計算もたいへんだと思うのですけど、そうしなければだめですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/35
-
036・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ税は、初めからこれは平年度だと、こういうふうにすれば、それはまあそういうことにつきましては、これは国民は非常にはっきり減税というものを理解される、また減税がフルに動くのですから、歓迎もされるだろうと、こういうふうに思うわけでありますが、いまの税の仕組みが、これがそれを許さないという事情もあるのです。それから、予算全体をつくる、そういう立場からの制約というものもあるわけです。たとえば所得税につきましては、一月から十二月までが昭和四十九年度の所得税課税の対象になる。そうするとどうしても、法律のほうが皆さんの御協力のもとにこれが三月一ぱいに通るということになるとすると、四月一日施行、こういうことになるものですから、三カ月分がどうしても欠けることになる。そこで初年度、平年度、そういう問題が出てくるんです。まあそういうこと。それから、時によりましては、ことしはそんな減税をするわけにもいかぬという、財政あるいは予算、そういう立場からの制約というものもありまして、これはまあ半年分は初年度にやって、十二カ月分は二年度にやろうなんというような考えも出てくるわけです。とにかくいまの所得税体系からいいますと、所得税につきまして、なかなか平年度という観念をなくしまして、そして初めの年からフルにやるというのは、法体系から非常にむずかしい、そういう事情があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/36
-
037・田中寿美子
○田中寿美子君 まあそのことは、だから、一般の庶民が、税がわかりにくいということの一つの例になるわけなんですね。それで、たとえば独身者が今度課税最低限現行四十五万円から七十七万円に引き上げられました。だけど実際はことしはこれだけですというふうに、ほんとうのことを教えなきゃいけないし、夫婦と子供二人で現行百十五万円が百七十万円になりました、でも実際はそれよりもっと低いものだということ。何かまぼろしの減税みたいな部分があるように思いますので、こういうこと、これはまあこの前東畑会長も言っておられたけれども、毎年毎年減税の答申をしなきゃならないような情勢になって、相当長期に税制をきちっと計画を立てることができれば、そういうふうに絶えず毎年複雑なことをやらないでも済むのではないかというような意味のことをちょっとおっしゃっておりましたんで、今後もまあ税制改正していくときに、もっとわかりやすいものにするということが必要じゃないかと思います。
それで、まあ大蔵大臣が、この大幅な減税に踏み切られたその裏づけは一体何だったろうかということなんですけれども、いま四兆円の自然増収が見込まれていたときの二兆円減税構想というふうにおっしゃいましたが、先ほどの、午前中主税局長と少し議論したんですけれども、経済見通しはたいへん狂ってきているわけですね。で、四十八年度が、もうすでに物価も五・五%の見通しが一四%に修正されておりますね、政府のほうで。それから成長率も二〇%ですかに見通しが修正されているわけですね。そういう状況の中で自然増収は必ず伸びがある、四十八年度にすでに伸びがあるんではないか。で、そのことは先ほど高木主税局長も、たぶんそういうことになるんではないかというふうにお認めになっていたわけなんですがね。
それでさらに四十九年度なんですけれども、名目成長率一二・九、実質二・五というのが政府の見通し、それから物価上昇率九・六、これらはみんな努力目標だと思うわけなんですがね。実際には、私は名目成長率はもっと高くなるんじゃないかと思われます。実質のほうがどんなふうになるのか、つまり実質と名目の間が非常にかけ離れてきておりますですね。そうしますと税収というのは相当にふえるんではないかと。さらに、このごろ卸売り物価が横ばいしたとか、物価は鎮静しつつあるということを大臣、極力宣伝してらっしゃいますけれども、それは一つは参議院選挙対策かと私は思うんですけどね。実際に石油の値上げがあり、さらに電力その他、それから公共料金の値上がりもあるわけで、四十九年度内の物価上昇率はすごくまた大きくなるのじゃないかと心配がされるわけなんですね。で、そういう中で、やはり自然増収額が伸びたら、これはやっぱりもう一度追加減税をしなけりゃならないような状況になりはしないかと思うんですが、その辺はどうなんでしょう。大臣は、総需要抑制政策を非常に強く押し出していらっしゃるけれども、しかし、一方減税も必要だし、まあ庶民の側からいいますと、減税も社会保障も両方ほしいわけですね。そういう点について、自然増収の伸び、それに対して税の追加減税も考えられるかどうか。特に、四十八年度内に、すでに先ほどちょっと議論しましたけれども、物価調整減税額と、その大蔵省当局が計算しているものはすでに破綻しているわけですね、四十八年度分は。もう食い込んでしまっているわけです。先ほどの計算ですと、物価調整減税額は千三百七十億で五・五%の物価上昇率で計算している。ですから、それが政府の修正で一四%でしょう。そうしますと、計算しますと、物価調整減税額だけでも三千四百九十億というふうになるわけですから、それだけもう食い込んでいる。それで私どもは、四十八年度内にもう一ぺん減税せよということを要求したくらいなんでございますね。ですから、それが食い込んでくるということと、それから四十九年度の見通しも九・六でおさまるとはちょっと思われない。で、こういうことが起こった場合に、まず物価調整減税に関しては、これは手直しが必要なんじゃないかということについて、先ほど主税局長は、そうしなけりゃならないかもしれないというふうにおっしゃいましたけれども、大蔵大臣はその辺をどういうふうにお思いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/37
-
038・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 今度の財政、これからの財政、それから四十九年度の予算、それを通じまして非常に問題になるのは、これからの物価が一体どういうふうに動いていくかという点だろうと思うんです。ほかの成長率でありますとか、そういう点は実質二・五%という見方をしておりますが、大体そういう線にいくんじゃないか、そういうふうに思いますが、物価がどういうふうになっていくかということは、この経済見通しをつくった後、一、二月の動き、それから今月になってからの感じ、そういうものからいいまして、特に、この消費者物価のほうに非常に危惧を感ずるんですが、しかし、万難を排してこの目標を実現しなけりゃならぬというのが政府の立場でございます。そこで、消費者物価がしかし政府の努力にもかかわらずこれが九・六%の水準以上に上がったと、こういうことになりますと、これが賃金にも関係してまいります。また事業活動の名目の額にも関係してくるわけであります。そういうことで、税収の見積もりに狂いが出てくる、つまり自然増収というものが出てくるということにもなるわけです。
ところが、一方におきまして、経済界は異常なこの物価高騰のもとに、たいへんこう昨年の暮れあたりははでな状態になったんですが、これから総需要抑制政策を進めていくこと、こういうことになりますと、その企業の収益状態はどうなるか、三月期決算はかなりのものであろうが、しかし、そういう情勢のもとにおいて九月期決算はどうなるか、こういう問題もあり、いま私どもは、二・五%の実質成長でまあ卸売り物価は約一四%、それから消費者物価は九・六%、そういう伸びを見ておりますが、その基礎に立った法人税収入というものが、ひょっとするとまた減る要因となってあらわれてくるかもしれぬ、自然減収であります。自然増収、自然減収を合わしましてどういうかっこうになりますか、いままあ予断を許さない、こういう状況かと、こういうふうに思うわけでありますが、まあいずれにいたしましても、かりにこの自然増収が差し引きして出てきた、こういう場合に、物価調整減税を四十九年度においても行なうかと、こういうお尋ねでございますが、まあ四十九年度税制は、これは東畑会長もこれは言っておるように、この減税規模の減税やれば、当分の間もう減税はせぬでもまずまずもてるという程度の規模のものであります。ですから、かりに自然増収が多少あったから、四十九年度においても物価調整減税をまた追っかけてやるということにするという考え方はいまは持っておりません。おりませんが、そういう規模なんかの問題もあります。自然増収の規模なんかの問題もあります。そういうことであるし、それからまたそういう自然増収が見通し得るという段階になった場合のこの経済の動き、それに対応してのこの財政のかじのとり方、そういう問題もありますから、まあ非常に大きなこの経済上の変化、そういうことは私は考えておりませんけれども、もし万一そういう状態があった際には、いろいろな立場を踏まえて検討すべき問題である。そういう際において税をどうするかということも、一つ念頭に置かなければならぬ問題である、そういうふうにいま考えておりますが、ただいまのところは、物価調整減税を重ねて行なうということは予断いたしておりませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/38
-
039・田中寿美子
○田中寿美子君 念のため、この前東畑会長こちらに、大蔵委員会にお出になりました。で、衆議院のほうで、二兆円減税、いまの減税構想は石油ショックの前の構想であって、これほど物価が狂乱的に上がるとは思わなかったので、こういう状況であれば、あるいは四十九年度内に追加減税しなければならないということも考えられるというようなことを言われたというふうに新聞紙上で拝見しましたものですから、それでそのことを会長にお尋ねしたわけです。そのときに追加減税をしなければならないと、はっきりは言わなかったけれども、しかし、石油ショックの前の状況で考えたこの減税規模ですね、はたして妥当かどうかということは見直さなきゃならないかもしれないというふうにやはりおっしゃったわけなんです。それは、四十九年度内とは限らない、あるいは五十年度に再び大幅の減税をしなければならないかもしれないというような一それは仮定のことですけれども、おっしゃっているわけで、それはいま大臣も非常に大幅の自然増収があればそれは考えなければならないというふうにまあお考えだろうと思います。
そこで、福田大蔵大臣は、安定成長路線を唱えていらっしゃる。で、田中総理大臣は、もともとパイを大きくして、高度成長ですか、拡大成長主義者でいらっしゃるわけなんですね。で、いまこの減税に関しては全く同じ立場に立ったというふうな御説明だと思いますけれども、経済政策全体に関してですね、田中総理の言われるように、つまりパイを大きくして、まあ列島改造論に象徴されていると思うのですけれども、あれを国総法というような形で実現していこうと考えていらっしゃる。そういう政策に、大蔵大臣もやはり全く同じお考えを持っていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/39
-
040・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ私は、今回の経済混乱、この前のような状態は、今後はとても実現はできない、また、それを実現することは妥当ではない、こういう考え方なんです。つまり石油で見られるように資源的制約というものが出てきておるわけであります。それから、今回こんな苦い目にあったこの物価問題、このような状態を再び繰り返しちゃならぬという物価政策上の制約というものがある。それからもう一つは国際収支です。国際収支という問題は、国民が直接生活には関連してこない問題であるもんですから、わりあいに無関心になっておりますが、これは物価問題よりも、より深刻な問題になってきておるわけです。そういう主として三つの要素、なお加えれば、まあ公害とか環境の保全とか、そういうこともあろうかと思いますが、主としてこの三つのことを考えただけでも、もう高い成長というものはとうていこれは許されない。やっぱり私は、国際水準並みが一番いいと思うんでありますが、その辺を目安にした経済のかじとりということに、ほんとうにもうふん切りをつけなければならぬと、こういうふうに考えておるのでありまして、おそらく田中首相も、そういう考え方をとるであろうし、とらざるを得ないと思います。その辺につきましては、大体意見の統一ができつつある、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/40
-
041・田中寿美子
○田中寿美子君 閣内で大蔵大臣でいらっしゃいますから、その政策は総理と一つでなければやれないと、私思いますが、大蔵大臣、減税の際に、国債の減額のほうを考えるべきだという考え方をだいぶお出しになっていたと思うんですね。それで、経済社会基本計画によりますと、国債の発行額はどんどんふやしていくことになっていますね、五年後に相当のところまで。だから、これはむしろ拡大成長路線をとっていたと思うんです。で、きのうですか、参議院の予算委員会で、小野議員が、経済企画庁長官に、成長率ですね、経済新基本計画のあの中の五カ年後の成長率を九%前後というのを、五、六%に下げなきゃならないんじゃないかということを質問したときに、そういうふうにしなきゃならないんじゃないかというふうに言われたというふうに私はテレビで聞いておりました。それで、その国債発行について大蔵大臣は昭和四十一年に、戦後の、私たちがたいへん責め立てましたけれども、赤字国債を発行した御本人、導入なさった御本人なんですが、その後国債の発行額というのはどんどんふえておりますね。四十九年度で二兆一千六百億、たいへん膨張した国債を持っているわけなんですけれども、国債というのは、今度は国債の減額をすべきだという考え方を大蔵大臣お持ちかどうか。つまり国債というのは税金を先取りされているようなものですね、国民から見ますとね。その政策をやはり今後膨張させていこうと思っていらっしゃるのか、減額をさせようと思っていらっしゃるのか、縮小の見込みがあるのか。いま残高は、四十八年度七兆六千億ですね。四十九年度末には十兆円になる、こういう状況ですね。どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/41
-
042・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十一年に国債を初めて本格的に発行するということになったんですが、そのとき田中さんなんかにもたいへん御批判、おしかりも受けたわけですが、私はあの国債発行政策というのはうまくいったと思っているんですよ。あのときは多額の公債を発行した、しかし、その後公債は漸減しております。そして四十五年でありましたか、もう予算の中での公債依存率というのは五%ぐらいになりました。それで、もう来年あたりは国債を発行しないんですかというような御質問を受けるような状態になった。私は、それに対しまして、公債火種論といって、火種を少し残しておくんだと、こういう答えをいたしたくらいな状態で、公債はずっと健全な姿で着実に漸減をしておる。
それから、それを背景としての経済状態はどうだったかというと、一〇%をこえる経済成長を実現し得たにもかかわらず、この物価は、まあかなり安定した形で、成長の高さに比べますと定定した形で五、六%消費者物価の上昇、卸売り物価は横ばいと、こういう状態で推移する。同時に国際収支のほうも、だんだんだんだんと改善されてまいりまして、私が大蔵大臣をやめる四十五、六年のころなんかは漸増いたしまして、五、六十億ドルというところまでくるとか、これはまだ日本の戦後の経済史、財政史においては最も順調な推移をした時期ではないか。ですから、私は、公債悪という考え方は持っておりません。おりませんけれども、これはどうも公債というものを発行するということは、これは財源を安易に調達する、こういうことになり、これがまた刺激――その財源を使用していろいろな事業を行なうということが経済の拡大につながっていると、こういう傾向をとるものですから、私は本年度、まあ四十九年度ですね、四十九年度二兆円をこえる公債発行額になったことはこれはちょっと心残りというか、遺憾に存じております。まあ当初、昨年の秋ごろ、大蔵大臣就任以前はこれは二兆円減税、これは規模を縮小する、あるいはずらす、そういうことをいたしましても、公債の発行額をかなり減らすべきだというふうに考えておりましたが、諸般の政治的事情を考えますと、二兆円減税をやらなきゃならぬ、そうすると、公債の発行額は、二兆円をこえるということになった。まあやむを得ないことだったというふうに思いますが、これからの財政運営においては、二兆円をこえるというような多額の公債に依存するという姿は健全じゃない、漸次これを減らしていくということを考えなきゃならぬ、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/42
-
043・田中寿美子
○田中寿美子君 ちょっと事実についてですけれども、これは主税局長のほうにお聞きしますが、国債発行額四十六年度以降のずっと見ていますけれども、毎年ふえているわけですよね。漸減はしていないと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/43
-
044・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 五年度までは下がっている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/44
-
045・田中寿美子
○田中寿美子君 五年度までは下がって、六年度からは――つまり非常に高度成長の激しい段階広財源調達のためにどんどん国債発行していったと。そして経済社会基本計画でも、今後国債の発行はふやしていくという方針だったんですけれども、いまの大蔵大臣のお話を聞いておりますと、国債発行はある程度どのくらいの規模がいいと思っていらっしゃるのかも伺いたいんですが、ある程度でそれは縮小の方向をとろうというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。減税との関係もあることですし、事実のほうをまず……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/45
-
046・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 公債の発行額は四十年から一ぺん漸次ふえまして四十二年がピークで七千九十四億ということになっております。四十三年から漸次減りまして、四十五年が一番底になりまして、三千四百七十二億、予算全体の中に占める率が四・一%というところまで一ぺん減りまして、四十六年からふえましたのは、ただいまご指摘のとおりで、四十六年が一兆一千八百七十一と、四十七年が一兆九千五百ということでございまして、いままでの歴史においては、四十七年の一五・二%というのが一番高い率になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/46
-
047・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) いま主税局長からお述べになったような次第なんです。つまり、予算ベースで言いますと、四十一年に七千三百億の公債費、それから四十二年が八千億、四十三年六千四百億、次が四千九百億、次が四千三百億、次も四千三百億、こういうふうになりまして、四十七年からまたふえるような傾向になってきておるわけです。
そこで、依存度を見ましても、四十一年が一六・九、次が一六・二、次が一〇・九、次が七・二、次が五・四、次が四・五と、こういうふうになりまして、それで、私は、この前大蔵大臣をやりましたその末期に、もう公債の発行は来年はゼロにするんですかと、こういう御質問を受けまして、それで私はゼロにするという考えは持っておりませんと、というのは、ゼロにしちゃってまたしばらくたって再び公債を発行するというときにまた非常にいろいろ論議や影響があると、そういうふうに考えまして、火種を残すと、で、火種というのはどのくらいのワクだと言うから、それは二、三千億でしょうと言うのですが、まさにその状態までこれはきたわけなんです。ですから、これは心がけますればできることであるというふうに思いますが、これからもそういう方向を心がけてまいりたいと、そうすべきだと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/47
-
048・田中寿美子
○田中寿美子君 こういうインフレのひどい時期に、国民の側から見ますと、たいへん重税感があるわけですね、それで減税もしてほしいと、それからもう一つは、重税感の大きなのは、社会保障だとか振替所得が十分にないということがあるわけです。それで大蔵大臣は、社会保障費三六%ふやしたといつもお答えになって、たいへんふやしたというふうにおっしゃっていますけれども、これを国民所得との比率で見ますと、四十六、七、八、九の間、ほとんどちょっとしか変わっていないんです。これは社会保障費は、四十六年が二・〇、四十七年が二・二、四十八年が二・四、四十九年が二・七ですね、少し。で、まだたいへんその辺では比率は低いわけです。振替所得は少し上がってきました。それでも四十六年が五・五、四十七年五・九、四十八年六・一、そして四十九年の見込みが七・三になっているのですね。で、そういうふうにやっぱり国民が納めた税金が国民の暮らしを守る形で戻ってくるという比率が、もっともっと進んでいかなければならないと私は思うんですよ。そのことが、やっぱり重税感をとっていくと思います。で、税の負担率を国際比較してたいへん低いというふうにいつもおっしゃるけれども、あの数字だけじゃ中身はわからないんです。で、いろいろ問題があるんですが、ですから、大臣のお考えでは、安定成長路線をとっていくということを具体的に述べていただくと大体一体どういうことになりますか。たとえば成長率は幾らぐらいだろうとか、それから物価の上昇率はどれくらいにとめたいとか、公債発行額の割合だとか、それから税の負担率、国民所得比ですね、どのくらい。社会保障費、振替所得、こういうものがどのくらいを目ざしていったらいいというふうにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/48
-
049・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) これからの経済運営といたしますと、その経済規模の問題が一つあると思うんです。それから他方においてその内容の問題があると思うんです。
規模の問題につきましては、先ほども申し上げましたが、物価を安定させる、それから国際収支を均衡を維持すると、それから資源、これとの調整を万全を期すと、この三つのことを考えていきますと、自然これはいままでの成長率よりも非常に低いものになるだろうと思います。私は、その低いという水準は、これは率でいうんじゃなくて、大体国際水準、先進工業国の平均的水準と、こういうことを考えてやっていかなければならぬだろうと、こういうふうに思います。
それから内容といたしましては、やはりこれは国民総所得の配分の問題になるわけでございますが、いままでの高度成長は、毎年毎年経済が成長発展していく、そうすると、その発展の成果を、次の成長に投入するわけです。つまり設備投資主導型経済、こういう形をとるわけなんです。私は、いまわが国の経済のスケールはここまでとにかく来、その規模におきましては世界で三位とまでいわれるようになってきておる。この規模のほうはほどほどにしてよろしいと、経済成長の求めるものは何であるかというと、次の成長ではないはずです。この成長を成果として、われわれの社会をいかに健全なものにつくり上げるかということにあるはずなんです。その目的意識に立ち返りまして、国づくりということに専心するということだろうと思います。やはりいまお話がありましたが、そういう中におきまして、振替所得をこれを増強しなければならぬと、これは非常に大事な問題になってくるであろうと、それから振替所得と関連しながら、われわれの生活環境の整え、そういうものが大事になってくるのではあるまいか、そういうふうに思います。
そういうことで、生産中心、設備投資主導型、その経済を福祉社会といいましょうか、そういう健全な社会の建設を目ざす内容の施策、そういうところに重点を置く、そういう経済運営を考えなければならぬだろうと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/49
-
050・田中寿美子
○田中寿美子君 具体的に数字をお出しいただくのは無理かと思いますので控えますけれども、そのような福祉社会を実現するためには、国民が働いて納める税金が、せっかく減税しても、たいへん重圧感がある、重税感がある、そういうものをなくすことをひとつ税の面ではぜひしていただかなければならぬと思うんです。それで、この税の負担率を数字だけで外国と比べて一九・九だから低いんだというだけでは納得できないわけなんですね。税の中身を検討してみなければいけない。で、四十九年度の税収の構成を見ますと、所得税が三一二%、法人税が三四%、印紙収入その他三三%、大体三、三、三ぐらいの割合にとってあるわけですけれども、その中で、庶民が納める税金の比率が私はたいへん問題がここにあるというふうに思うわけなんです。一つは、所得税の逆進性のことなんです。これは前回も成瀬委員のほうから主税局長のほうに御質問ありましたことなんですけれども、東京都でとりました一これは法人税もそうだし、それから個人住民税、所得税に地方税なんか全部まぜたものですね、そういうものなんかも計算してみると、たいへん逆進性があるということで、それに対して大蔵省当局はそんなことはないと、あれは数字をかってにいじってやったんだということで、高木局長がそういうふうにお答になっているのを新聞で見たわけです。そこで、資料をお願いしたわけですね。それできょう出していらっしゃるわけなんですけれども、これ所得税、住民税とそれから法人税関係と、両方を出してきていただいているんですけれども、やっぱりこれを見ましても、たいへん、ことに所得税のほうは、衆議院の村山喜一委員の要求で一千万円以上のものを出してくださったそうですね。これで見ますと、一千万円以上から急速に逆進的になっているわけです、これは所得税と住民税と両方合わせたものですね。それから申告所得のほうでも、そういう逆進性が見られるんです。これも大蔵省からの資料をいただいたので見ますと、一千万円以上から二千万円の所得階層から上、あとはだんだん逆進性が出てきているわけです。
それから、きょうお出しになりました、これも法人税の負担割合ですね、13のところですね。これで見ましても、やっぱり一億円超百億円と、これはずいぶん荒っぽい分け方で、もっとこまかく分けてみないとわかりにくいんですけれども、それにしましても、一億円超百億円、百億円以上という順序に逆進性がやっぱり出ているわけなんです。そのことをお認めになるかどうか、そうしてそのような逆進性というものが、幾つもいろいろな税金を払っている関係から重税感を庶民に持たしているということ、それから一方、大企業への優遇措置がたくさんあると、あるいは高額所得者に優遇措置があるというようなことですね、そういう問題について、これを正していく方向に法人税の累進課税をやっていこうというふうなお考えがないかどうか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/50
-
051・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 所得税の問題につきましては、私どもも新聞報道を通じて、東京都で逆進という問題が議論されておるやに聞いております。しかし、それは当然あの統計表から見ればそうなるわけでございます。と申しますのは、所得の大きさに応じて分類をいたしました。その所得の大きさに応じて、今度納めた額が幾らか、こういう表にしまして率を出します。現在、所得の大きい方というのはどういう方かといいますと、土地を売った方が所得が大きいわけでございます。したがいまして、土地を売った方が所得の大きい階層のところに入っておりますから、その方が土地の税金は、いま四十八暦年までは一五%で済んでおりますから、非常に低いという姿に出るのは当然でございまして、そのことは、所得税制が逆進性だとかなんとかいうことではないのでございまして、土地税制が分離課税の比例税率になっておるということの結果だけのことでございます。でございますから、土地税制が比例税制になっておる、分離比例税制になっておることがいいかどうかということ、これはもう非常に大問題でございまして、大いに議論していただく必要がありますが、そのことと所得税の逆進ということは別のことではないかというふうに考えるわけでございます。
それから法人税につきましては、東京都のやはりこれ、資料として出たものは、これは前にも申し上げたかもしれませんが、法人税額の欄がいわゆる算出税額というもので計算されませんで、納付税額というもので計算されておりますから、したがって、源泉所得税その他外国税額控除というようなものが非常に働きますところの、資本金の大きいといいますか、規模の大きい会社の場合には、別に、所得税という名において税金を納めておるわけでございますから、法人税のほうが少なくなるわけでございまして、その意味で、あの表は、ある意味でちょっと錯覚に陥っている点があるわけでございます。ただし、そういう表になっておりますにつきましては、私どもにも多分に責任があるわけでございまして、あの数字のベースになっております、国税庁で発行いたしておりますところの「法人企業の実態」という印刷物に、法人税の税負担として、算出税額でなくて、納付税額が出ておりますものですから、ほかに、算出税額については、統計表が出て対外的に発表されておりませんものですから、そこで国税庁が出した数字で表をおつくりになるのはある意味では当然でありまして、この点は私ども直していかなければなるまいと思っております。
それから私どもが、本日お手元に差し出しました資料で、資本階級別に見て、やはり大法人のほうは低くなっているではないかという御指摘がございますけれども、これはもともと法人税は比例税率でございます。で、もう一つは、配当軽課という制度がございますから、配当については、所得のうち配当に充てました部分は三六・七五%でなしに、二六%になっておりますから、資本金額の大きいに従って税が安くなるというかっこうになっております。しかし、そういうふうになっておりますにもかかわりませず、四十七年度で見ますと、大体、各資本階級別に三四%ぐらいのところに並んでおりますから、逆進性というには当たらないではないかというのが、私どもの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/51
-
052・成瀬幡治
○成瀬幡治君 ちょっと関連して。
大臣、非常に問題になりますのは、東京都がああいうことをやりまして、しかも、今度東京都独自が、法人事業税の問題を一四にすると、二%上げるわけです。その理論根拠は、一つは、財源がないという問題もございましょうけれども、逆累進になっているじゃないかというのも一つの大きな理論根拠なんです。そうしますと、今度各地方都市が財源確保、いろんな大義名分を立ててやってまいりますと、せっかく国税と地方税を通しての税体系というものがどうなっていくかという問題、その根本は、地方が悪くなくて、やはり税は、一つは公平であるということが、富の再配分ということが一つあると思う。そうしましたときには勤労所得と資産所得との問題が、いかにかみ合って再配分されるかというところに議論をしていったときに、並行線というかもしれませんけれども、富の再配分を約して果たしていない、いわゆる勤労所得のほうがどうも重くて、たとえば分離課税になっておる配当・利子等のものは、なるほど法人擬制説で議論はございましょうけれども、そういうようなところに一つ問題点があると思う。これを私たちは整理してもらわなくちゃならぬと思います。
そこで、それでは法人は、一体、表面税率は別として、実効税率はどうなっておるかという議論をしようとすると、さっぱりその資料がないと、これは国税庁のほうでどうやらこうやらという話になってくるわけです。ですから、実際問題として、一つの例だけ、大臣、例をとりますと、法人税法によるところの貸倒準備金は、これだけの積み立てがあるということが出るわけです、表に。それが一体銀行なのか、銀行は少なくとも担保を取り、歩積み両建てでなおかつ要るのかと、あるいは価格変動準備金というのがある。価格変動準備金は、金融業と保険業と、こうなっておる。そうすると、それは信託や保険は確かに株券を持っておるだろうからなるだろうが、さて、それじゃ保険業務なり、信託業務がどれだけ株を保有して、銀行は安定株だと、こう言うけれども、どれだけ株を持っているか、実態と合うかどうかということもわれわれは知りたいわけです。それが知ろうとしてもそういう資料がないということが一つ。また、そういうことについて議論をさせるために資料をとろうという意欲もいままでどうも税調にもなかった、大蔵省にもなかったということが言いたいわけなんです、われわれは。ですから、大臣、今度私は前向きにいままでやったことがいい悪いの議論ではなくて、前向きにお互いひとつ税は公平でなければならぬと、しかも、資産所得よりも勤労所得、働くということをおろそかにするような税制であってはたいへんだと思うのです、これがびまんしていったら。ですから、そういうような意味で、ひとつお互いがまじめに前向きに議論をするために、私は、いままでの税調に対する資料なり、あるいは大蔵省がとろうとしている資料なりというものを真剣にひとつ考えていく必要があると思います。そういう意味で過般、戸田君もけさほど資料要求を、ここにされておる資料要求に関連してやったのだ。そうしたら、さてそれが出るか出ないかというと、大体出さぬ方向であり、出ない。あるいはあるかもしれぬけれども、出すと都合悪いので、出さぬというのが本音か、そこら辺のところがちょっとわかりかねるのですね。大臣、、そういう私の気持ちはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/52
-
053・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 税のような問題は、これはいろんな政党があるわけでありますが、これはもうイデオロギーだ何だというような問題の非常に薄い問題でありますから、これは各党、各派がこれは相談し合ってほんとうにコンセンサスができるという形になればこれは私は一番いいと思うのです。ですから、資料なんかも政府はできるだけ皆さんにごらん願って、そして適切な御判断をお願いするということがいいと思います。ただ、特別措置による減税額というようなことになりますと、これは理論的にはこういう特別措置をやったらこのくらいに減収になろう、こういう減税になろう、こういう推計はできる。ところが、今度実績調査ということになって、この特別措置なかりせばどのくらいの増収があったであろう、その特別措置があるがゆえにこうなるというのは、これはなかなかもうちょっと考えられても非常に把握がむずかしいことじゃないか、そういうふうに思うのです。ですから、これは政策判断の資料としては、理論的にはこのくらいになるであろう、こういうことを基礎といたしまして御検討願うというほかはなかろうと、こういうふうに思うのです。
法人税でもいろんな特別措置だ何だかがからみ合いまして、そしてそれが一つの法人所得というものになってくるわけでありまして、その法人所得収入から控除された経費の中、そういう中におきましていろんな要因がある。それが特別措置なかりせば一体どうなるのだということ、これはなかなか捕捉しがたいと思うのですが、まあひとつ御協力をぜひお願いしたいと思いますし、そのためにできるだけの資料は私どもは用意しなければならぬと、こういうふうに思いまするけれども、いま問題にされました特別措置、その実績をどういうふうにとらえるかということになりますと、なかなかむずかしい問題だ、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/53
-
054・成瀬幡治
○成瀬幡治君 私は、資料もらっております。「法人の資本金に対する税負担割合」国税で四十六年と四十七年をもらっております。これは東京都の出された資料に反論をするために出されたものなんです。特にそれは何かというと、法人税額の算定税額と納付税額、そこで資料としては納付税額が発表になっておって、算定税額が出ておらぬ。いままで出しておらなかったのだから、東京都が納付税額をつくったために逆累進が多くなってしまった。だから、そこで二ポイント、三ポイント違うのだと、こういうことで出された。いままでこういう資料出されなかったことは、法人の配当の益金不算入。外国のいろいろなもの。そういうものがあってやらなかった。そういうものがやろうとすればすぐ出てくるわけです。だから、なかなか容易じゃないとおっしゃることもわかるが、やろうとすればすぐ出てくると思うのです。ですから私は、早急にひとつやって、そしてわれわれも、あなた方の側に立っての議論、資料を持っての議論がしたいというのが、私らの率直な考えなんです。資料なしで議論しておるわけです、端的には。そこが非常に問題なんですから、そういう点では、相当私はわれわれにも隠さずに出してもらいたい、こう思っておるわけです。やろうとすればすぐできるのではないか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/54
-
055・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 基本的には成瀬委員のおっしゃるとおりでございまして、ぜひそういう方向に持っていきたいと思います。それで、その算出税額と納付税額の関係の例などが最もいい例でございますが、実ははなはだお恥ずかしい話でございますけれども、主税局と国税局の間で非常に議論をいたしました。統計を変えるということについては、統計を担当している人というのはどうしても保守的になる関係がありまして、なかなか変えられなかったわけでございますが、法人の実態の報告書の中に、四十七年版から算出税額のほうも載せるようにほぼいま国税庁との間で話し合いをいたしております。統計の仕事は国税庁の仕事でございまして、全部いま法人につきましては電算機処理をいたしております関係で、統計を申告書からキーパンチャーがカードに打ち込むわけでございますので、その欄の数が非常にふえますと、それなりにいろいろな、何といいますか、キーパンチャーの数をふやすとかなんとかいうところまでまいるものでございますから、御要請がありましてから、それをなるほどということで、実行に移しますまでたいへん時間がかかるので、私どもも歯がゆく思っておりますが、方向といたしましては多少そういう経費がかかりましても当然やるべきことでございますから、その種の統計の整備につとめたいと思います。
実は、昭和三十年代の末から、約十五年間にわたりまして、統計を簡素化をいたしまして、それによって浮いてくる職員で調査のほうを充実をするということに専念をしてまいりましたので、だいぶ昔に比べましてかえって統計が荒いものになっておるわけでございますが、最近は機械処理が可能になりましたので、そこの基本的な考え方を国税庁のほうで直してもらって、所要のファクターを電子計算機に覚えさせるということに方向がえをしなければならないというふうに思っております。何しろ法人の数が百三十万ございますから、一割抽出でやりましても十三万のカードを打たなければならない。ところが、特別措置の該当する会社というのは非常に少ないものですから、そのカードに穴を打つために欄だけうんとたくさんつくらなければならないということになりますので、なかなか国税庁の言うのももっともな点もございまして、時間がかかっている次第でございますけれども、基本方向はまさにおっしゃるとおりでございますから、そういう方向で国税庁と話し合いを進めまして、統計整備に専念いたしたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/55
-
056・多田省吾
○多田省吾君 私は、最初に大臣に所得税減税について二、三お尋ねしたいと思います。
まず最初に、昭和四十八年度、いわゆる補正予算後の自然増収が三千億円ほどあると聞いておりますけれども、私たちは、これを四十八年度内減税をしてほしいという強い希望がありますが、どうやら大蔵大臣のほうは国債発行の減額に使いたいような意向でございますが、もしこういう自然増収があった場合は大蔵大臣はどのようになさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/56
-
057・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 現在までの租税収入の収納の速度、こういうことを調べてみますと、四十八年度は、これは暮れの補正予算に、自然増収の当時の見込み額全部を充てたわけでございますが、その後においても、若干のまた増収が見込まれるんじゃないか、そういうふうに考えます。その若干の額というのが具体的にはどのくらいになるだろうということは、まだつかみがたい状況でございますが、そう多額のものを期待するというわけにはいかない。そこで、年度内減税を考えるかというお話でございますが、まだそういう不確定な税収見積もりの状態、しかも、その増収額もそう多額ではないというような状態のもとにおきまして、また再度――再度というか、追っかけて減税をするというのもどうかと、減税問題につきましては、とにかく四十九年度にかなり思い切った大減税をいたしますので、まあ四十八年度といたしますと、ここで一体みということにいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/57
-
058・多田省吾
○多田省吾君 先ほど田中委員の質問に答えられて、四十九年度のいわゆる物価調整減税としての追加減税、それに対して大蔵大臣は非常に大きな経済上の変化があれば考えようという御答弁があったわけです。じゃ、その非常に大きな経済上の変化というのは、たとえば実質成長が石油の順調な輸入があって、たとえば二・五%の予定から五%とか六%に実質成長がなったのか、あるいはいまのような二〇%以上の消費者物価の高騰がこの一年間続くというようなそういう事態、あるいはその結果としての大幅な自然増収があったと、こういうときをさして非常に大きな経済上の変化と、このようにおっしゃっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/58
-
059・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 先ほど田中さんに対しましてお答えしたのは、ただいまは追加減税ということは考えておりませんと、ただし、非常に大きな経済上の変化があった場合には、財政全体をいろいろ考え直さなきゃならぬ。そういう中で、減税問題も当然頭に置かなきゃならぬと、こういうことを申し上げたわけでありまして、アクセントは減税を考えておりませんというところに置いておるわけなんです。東畑会長も今度の四十九年度所得税減税は非常に大幅のものである。これは当分の間これでもっと、こういうふうに言っているんです。ただ当分の間もつとはいいましても、経済上のいろんな変化がある、ことに昨年の暮れなんかはああいう状態があったということを考えますと、そうするとこの当分の間というその当分の間というのが、どうも東畑さんが当初言っておったような当分の間じゃない、もっと短かくなるんだと、こういうような感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/59
-
060・多田省吾
○多田省吾君 実は、当委員会でも、数日前に東畑会長が参考人として来られて、いまの大臣おっしゃったように、四十九年度は非常に大きな減税をするので、数年間はやる必要がないと思っていたけれども、衆議院の大蔵委員会でも質問があり、また参議院の大蔵委員会でも、こういった二三・一%というような物価高騰が続くならば、これは昭和五十年度あたりも所得税減税考えなくちゃいかぬなと、こういう答弁があったわけです。ですから私も、どうも大臣は四十九年度は追加減税をやるお気持ちがないように見えるわけです。しかし、東畑会長は昭和五十年度のいわゆる所得税減税につきましては、やっていきたいというような見解を述べたわけです。また、さらに昭和五十年度のことをいま申し上げるのは早いと思いますけれども、東畑会長の個人的な意見としては、われわれの質問に答えて、たとえば分離課税、これは非常に税調でも問題があったと、だから、早急に、個人的見解としてはそういったものはなくしたいと、こう言っているわけです。たとえば配当所得、分離課税を含む選択課税ですね。これも標準世帯で平年度で、本来ならば百五十万円までは免税なんですけれども、配当所得者は三百五十七万円まで免税ということで二百七万円も差があると、非常に、先ほども質問がありましたように、高額所得者とのいわゆる逆累進性が高まっているということ、あるいは土地資産のいわゆる譲渡額の分離課税、これも昭和五十年度まで続くわけですが、この結果一千万円以上の所得のある人はほとんど逆累進になっているわけです。こういったことは非常に不公平でないかということで、こういった分離課税はなくしたいと、個人的見解を述べておられる。さらに、法人の配当軽課課税についても、そういったものはなくして、法人税一本にしていきたいというような個人的見解も述べられているわけでございますけれども、大蔵大臣としては、こういった分離課税をなくすという、東畑会長の個人的見解に対してどのように思われていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/60
-
061・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税はあくまでも個人の所得を総合いたしましてそれに課税をすると、これが公平だろうと思います。租税はどこまでも公平の原則でいかなきゃならぬ。そこで、これに対しましては、二つの大きな例外があるわけです。いまこれが御指摘の、一つは配当・利子に対する分離課税の問題、それからもう一つは、不動産所得に対する分離課税の問題だと、こういうふうに考えます。これはそのいずれもがちょうど五十年がこの特例措置の期限になるわけであります。そこで本年、四十九年度税制では手をつけておりませんけれども、五十年度税制という際には、これをどうしてももう見直しをしなきゃならぬと、こういうことになってきておるわけであります。
まず、土地の譲渡所得に対する分離課税問題、これはいままでの経過等を見ると、利害得失相半ばしたというようなところもあるように見ておるんです。ですから、これは何とか根本的な改正を考えなきゃいかぬだろうというふうに考えます。
それから利子・配当になりますると、これは技術的に非常にむずかしい点があるわけであります。その辺をどういうふうに措置するか、もしこの仕組みを変えるということができないというふうな場合において、その税率を一体どうするかと、こういうような問題もあろうかと思いますが、とにかくこれは租税は公平でなきゃならぬ、そういう原則に立ちましてやっていきたい、さように考えます。
それから法人税につきましては、いろんな特別措置がある。特別措置というものは、これはもう異例な措置でありますので、毎年毎年見直しをしていきたい、こういうふうに考えますが、四十九年度税制でも、その見直しをやっておるんですが、五十年度以降におきましても、これは大いにこれを進めてまいりたい、そういう際に配当軽課というような問題もあります。しかし、この配当軽課の問題はこれは法人税の基本に関する問題でありまして、法人税というものを根本的にどうするかと、こういう問題と関連いたしますので、ちょっと簡単な問題じゃないんです。しかし、今後の検討問題といたしまして取り組んでまいりたいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/61
-
062・多田省吾
○多田省吾君 次に、けさの新聞に一斉に出たわけでございますが、いわゆる日商岩井の輸入木材価格上のせ事件につきましては、すでに二月二十五日衆議院物価集中審議の段階で、わが党の坂井議員が、外材明細表を示して、日商岩井が五立方メートル当たり百五十ドルを上のせしたという暴利を追及いたしまして、それで社長も、これは社会に還元いたしますと、この便乗値上げを認めているわけでございますけれども、昨二十六日この価格上のせ分は、実は海外現地法人への逆送金だったと、こういう発表を記者会見でなされたわけでございますけれども、これは非常に重大な問題だと思います。この上のせに関しては、当然これは社会に還元してもらわなければならない、これはそれだけ木材の価格をつり上げたわけでございますから当然だと思います。しかし、もう一方、これに対してやはりもう一つの法律違反という、いわゆるその容疑があるわけですね。このような実態を伴わない輸入代金の送金が横行すれば、外貨送金を規制する外為法がしり抜けになるばかりでなくて、これはやみ送金でございますから、支払の制限及び禁止条項の外為法第二十七条及び債権に関する制限及び禁止の外為法三十条に違反するほか、さらに虚偽申告の禁止条項に当たる関税法百十三条の二にも抵触すると、このように思いますけれども、大臣はこれはどのようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/62
-
063・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) この問題は、まだ的確な事実をつかんでおりませんで、正確な所見を申し上げかねる段階なんですが、新聞に報道されたところによりますと、多田さん御指摘のように、どうも税法上の問題がある、また関税法上の問題もからまっておる、あるいは為替管理法の問題が起きてくる、いろんな問題もあるかもしれない、こういうふうに思うんですが、鋭意この問題につきましては実情を調査中なんです。その調査のわかったところだけ政府委員のほうから申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/63
-
064・大蔵公雄
○政府委員(大蔵公雄君) ただいま大臣、御説明いたしましたように、関税法上もし実際に輸入した価格よりも高い申告であろうが、安い申告であろうが、インボイスに書かれました金額が実際の価格よりも違った数字が記載してございましたらば、これは関税法上の御指摘のような違反になりまして、これは虚偽申告ということになるわけでございます。現在、日商の件に関しまして、これが虚偽申告であるかどうかという点に関しまして、日商岩井を呼びまして、東京税関あるいはほかの――木材がかなり多数の税関を通して輸入をされておりますので、現在これを調査をいたしておる段階でございまして、各税関にわたっておりますので、多少の日時がかかるかと思いますけれども、鋭意調査中でございます。もし高額申告なり、低額申告なりがなされておりましたならば、これが虚偽申告に該当することは御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/64
-
065・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 通産省、来ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/65
-
066・佃近雄
○説明員(佃近雄君) 先ほど大臣がお答えになりましたように、現在私どものほうでも調査中でございますが、私どもの関連で申しますと、本来貨物の輸入代金でないものを、輸入代金として送金したということになりますと、これはやはり法令違反になると思います。そういうことで現在私どものほうでも調査しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/66
-
067・多田省吾
○多田省吾君 調査をしているという段階ですから、その調査を待ちたいと思いますけれども、結局、日商岩井は一〇〇%出資の子会社であっても、現地法人である以上は、現地で得た利益は現地法人の利益として計上すべきであって、したがって、現地の米国社について、会計監査したアメリカの公認会計士から、二百万ドル、約六億円は現地法人利益として計上しなければ脱税行為になるということで指摘をされておるわけです。これはほんとうにこういう問題になりますと、国際問題にもなりかねないと思います。
それからもう一つは、四十七年度の利益については、これが事実ならば、国税庁に二重払い納税しているということになりまして、その差額は結局国民の負担ということになっているわけでございます。こういった問題が非常に起こっているわけでございますが、もしこういうことが事実であるならば、いま政府が基準づくりを進めている反社会的行為の範疇に当然入ると思いますけれども、この点を大臣としてどう思われるか。これはもし事実なら外為法あるいは関税法違反になるわけであります。また、こういうものが、日商岩井の一商社に限らず、今後多国籍化を進めるわが国の企業に対する法体系に新たな問題を投げかけると思いますけれども、この法体系の整備をどのように大臣として考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/67
-
068・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 日商岩井の問題は、個別案件といたしまして、いま鋭意調査をいたしておりますので、具体的事項についての見解は遠慮さしていただきたい、こういうふうに思いますが、こういう事件が頻発するわけです。そういう間におきまして、そういう行為は反社会的行為である、それに対しましては、それぞれ制裁規定があるわけなんです。つまり、法律でみんなきまっているのです。関税法に違反すれば関税法の罰則規定がある、税法に違反いたしますれば、重加算を取られるというようなこと、さらに進んでは訴追を受ける、刑事事件まで発展する、こういう制度になっております。為替管理法におきましても同様であります。ですから、事実を調査いたしまして、それらに該当するというケースにつきましては、それぞれ法の定むるところによって制裁を加える、こういうほかはない。
ところが、この国会でいろいろ問題になっておりますのは、そういう法に定められた制裁以外に、行政上の制裁、そういうことが考えられるんじゃないかという話であります。私も考えてみましたが、やっぱり行政上の制裁というものを考えたほうがよろしい。そこで、まず考えられますのは、国家金融機関がこれらの企業に対しまして融資する態度についてであります。そこで、いま関係各省との間で、どういうルールにするかということを打ち合わしておるわけでありますが、これは、そういう行政的制裁を加えるということになりましても、それがいかに行政的であるにしましても、やはり社会的には反社会的行為をしたというらく印を押すということになりますので、よほど基準というものは慎重でなければならぬし、また一方、たとえば、輸出入銀行なんかについていいますと、外国におけるプロジェクトなんかに対しまして融資をするというようなこともあるのです。その融資をとめるということが、国策上どうかというような判断につながる問題もありまして、一般的に判断するわけにはいかぬということもあります。そういうようなことでルールづくり、これは少し手間どったのでありまするが、もう数日中か、おそくも来週ぐらいには関係各省との間の話もできようかと、こういう段階まで煮詰まってきておる、そういう事情であることを御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/68
-
069・多田省吾
○多田省吾君 最後に、関税局長にお尋ねしたいんですけれども、「関税参考書」の中に、昭和四十八年の密輸入といたしまして食料品四十五億二千六百二十万九千円、これは豚肉等の密輸入肉の総価額だと、このように出ているわけです。これは私の思うのに、きのう公判が行なわれたいわゆる輸入豚肉に対する差額関税制度を悪用しての脱税をトーメンが全面的に起訴事実を認めたわけでございますが、その仕入れ価格が約六億百万円、そして関税差額約四千八百万円を脱税したのもこの中に含まれておると思いますけれども、そのほかに四十五億というような巨額な密輸入が一体ほかにどういうものがあったのか、お知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/69
-
070・大蔵公雄
○政府委員(大蔵公雄君) 関税参考書に書いてございますように、四十八年の食料品の密輸入四十五億二千六百万円のうち、いわゆる豚肉関連の脱税に関します輸入価格の総額は四十四億九千一百万円でございます。四十五億二千六百万円のうちの四十四億九千一百万円は豚肉関連の脱税事件でございまして、御指摘のようにトーメンの公判が昨日行なわれたわけでございますが、そのほか私どもといたしましては、豚肉関連の脱税事件に関しまして告発いたしましたのが九件あるわけでございます。九件ございまして、そのうちの一つに、トーメンが入っているわけでございまして、九件の合計――通脱税額にいたしまして一千万円以上の法人を告発をいたしまして、それ以下の小口の分は、通告処分によって処理をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/70
-
071・多田省吾
○多田省吾君 その八社の名前、早口でけっこうですからおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/71
-
072・大蔵公雄
○政府委員(大蔵公雄君) 告発をいたしました会社の名前は、イトマン、トーメン、兼松江商、日本ハイネ・ブラザーズ、ゼンチク、東京丸一、丸紅、日畜、野崎産業、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/72
-
073・多田省吾
○多田省吾君 大臣に最後にお尋ねしたいのですけれども、先ほど来、日商岩井に関して法律違反というもし事実があるならばそういう政府の行政上のいわゆる懲罰をやるのかどうかお尋ねしたわけでございますが、こういった会社あげての豚肉関税の脱税なんかも、これは私は非常に反社会的行為だと思いますが、これは当然こういったものも基準づくりを進めている反社会的行為の範疇、行政的な処罰をする中に入ると思うんですが、大臣の御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/73
-
074・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) いまその基準づくりの中で一つ問題になっておるのは、いつからの問題を取り上げるか――いま多田さんの頭にある問題は、おそらく一、二年前ぐらいに起こった事件じゃないかと思うんですが、そこで、そこまでさかのぼってやるということになると、これはまあずいぶん問題もあろうかと、こういうふうに思いますので、今度取り上げようとする問題は、これを石油危機の時点以後の問題にするかどうか、いまそれを相談しているところなんですが、あんまりこれを一年も二年も前にまでさかのぼってやるという考え方は、どうも妥当ではないんじゃないか、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/74
-
075・栗林卓司
○栗林卓司君 租税三法の質疑ですから、いろいろお伺いしたいことあるのですけれども、時間がたいへん限られておりますので、自動車関係諸税の問題にしぼって大臣の御所見を伺いたいと思います。で、今回の自動車関係諸税の増税について、理由としては、資源の節約あるいは消費の抑制ということがいわれておりますけれども、最初にお伺いしたいのは、関係諸税の増税をきめたときに、今日の自動車の生活販売状況を予測しておいでだったかどうか。なぜお伺いするかといいますと――若干数字を申し上げます。
去年の十二月から対前年比で自動車の生産販売がたいへん落ち込んだということがいわれております。しかし、それは去年が異常に高かったんだという見方をされがちなんですけれども、なるほど一月を見ますと、去年に比べて国内登録約一三%ばかり落ち込んでおりますけれども、前々年に比べてはなおかつ一八%ばかり上回った数字になっております。問題はこれからなんです。二月になりますと、前年に比べて三七%落ち込み、前々年に比べても一五%落ち込みました。三月はまだ月末が出ておりません。二十日現在で比べますと、前年同月同日比でいって四四・六%の減。前々年比で比べて二八%の減。しかも、前々前々年比、昭和四十五年に比べても二一%減になりました。これは大臣御承知のように、三月というのは、ふだんの月とは状況が違います。決算月ですから、当然販売を追い込もうという従来の傾向が見られました。また、四月からは関係諸税が上がるということですから、かけ込み需要も本来は期待される月であるはずなんです。前回、自動車重量税が新設されたときには、そのかけ込み需要が確かに見られました。その三月が、昭和四十五年に比べてもなおかつ二一%も落ち込んでしまった。この冷え方というのは、なみなみならないものではないかという状況を、関係諸税の増税を、消費抑制、資源節約という観点でおきめになったときに予測されておいでだったでしょうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/75
-
076・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 率直に言いまして、落ち込みは見通しておったのです。しかし、この程度まで落ち込むとはもうほんとうに思わなかったのです。先日、二月の登録台数なんか見てみますと、日産なんかでいうと内需のほうは半分ぐらいになっておる。これはまあいろいろの見方があります。いままでまあ相当自動車が行き渡った、そういう一区切りの時期に来ておる。それからまた、交通環境というか、道路なんかの整備は、自動車の増加に伴っておらぬ、自動車は買ったけれどもあまり便益でないというような状態、そこへかてて加えて総需要抑制政策、こういうことで、それがやはり国民の消費態度にかなり影響をしてきておる。こういういろんな要因が積み重なっておるように思うのでありますが、まあこんなに早く、しかも激しく響いてくるであろうということは予想しなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/76
-
077・栗林卓司
○栗林卓司君 そこで、来月、再来月からさらに総需要抑制政策あるいは心理的な要因も加えて税が需要をさます役割りを果たしながら上のせされるわけです。この影響を一体どう見ていったらいいのだろうか。ただ私は、あらかじめ申し上げますけれども、物価対策として総需要抑制政策を進めることは、これは反対をしておりません。そうすべきだと思う。また、ある程度のひずみが出てもという覚悟でこれは取り組むべきだと思うのです。しかし、それが異常な冷え込みになってきた。かてて加えてその個別商品群に対して抑制的な力を持つ税をのせていってほんとうにいいのか。なぜこう伺うかといいますと、釈迦に説法ですけども、自動車の場合は、中で働いている人の数というのは、ほかの産業に比べてきわめて高い。四十五年の経済企画庁調査でも、直接従事すると見られるものが百十六万人。関連を含めますと、通産省の工業統計表等によれば三百六十一万六千名。これは四十五年の雇用者数のうちで約一一%に当たります。で、その生産販売がこれだけ異常に落ち込んで、なおかつ、税の影響が強まってくる。片方では物価対策ということがあるとしても、片方では倒産あるいは失業の対策を政府として講じておかなくてよろしいのか、その点についてはいかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/77
-
078・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) これはかなり重大な問題化しておると、こういうふうに思うわけであります。しかし、税の問題につきましては、これはまあ一リッター百円だと、こういう標準価格になりますが、その中で五円八十銭、これが今回の増税による分でありまして、しかも、増税後のこのガソリンに対する税の負担割合というものは、これは国際的に見ましても非常に軽いんです。フランスあたりでは五十五円、西ドイツでは五十七円、そういうような水準でありますが、わが日本は増税後でも三十四円五十銭と、こういうことになるので、この税がこの落ち込みに響いておるという感触は私は持っておりません。先ほど申し上げましたようないろんなこの要因で、こういう激しい状態になってきたんだと、こういうふうに思いますが、まあ自動車産業というものは、わが国の産業系列の中で非常に重要なものでありますので、これに万一のことがあるというようなことがあっては相ならぬと、こういうふうにまあ考えております。
一方輸出のほうは、私は内需が不振であるというのに反比例いたしまして伸びていくだろうと、こういうふうに思うのです。しかし、これとても急に伸ばしますとまた諸般、諸外国からの反撃が予想される、そういうことになったらたいへんですから、そういうことをよく注意しながら輸出努力というものがなされるべきかというふうに思いますが、とにかく道路整備、その状況との調整、あるいはまあ自動車を各個人がかなりの程度持ち込んでおると、こういうような状態になっておるというような諸条件も考えてみますると、そう安易な考え方も私はできないと思うのです。よほどくふうをこらしてもらわなきゃならぬだろうと、こいうふうに思いますが、この産業は非常に大事な産業でありますので、国としてもこれに万一のことがあるというようなことは断じてないように、その対策はとらなきゃならぬと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/78
-
079・栗林卓司
○栗林卓司君 税負担についてくふうをこらさなきゃいかぬというのは、後ほどまた委員会の中で、各担当の方に伺いたいと思うのですけれども、ただ、いま異常な落ち込みの中でいろんな問題が出てきたら、また慎重に対処しようというような感触でおっしゃったんですけれども、実は私、経済企画庁に、自動車の生産が一〇%落ちた場合、二五%落ちた場合、五〇%落ちた場合、どのような経済成長率、あるいは失業率の影響があるかという質問をしたんです。作業をしてもらいましたら解答できない。現在、企画庁が持っている中期モデルではその役をなさないといって嘆いておりました。ですから、これまでは供給面の制約とかなんとかということはなかったですから、あの中期モデルでも将来を見通すことができたんでしょうけれども、これからは構造自体を直していかないと役に立たぬのだといっておりました。ということは、われわれはいま盲目飛行をしかけているということだと思います。では一体、車の生産が半分に減って失業率がどのぐらい出るかというと、ほんとうに資料がないんです、悲しいことに。で、あちこちさがしてみると、ある団体がつくった資料によると、自動車産業の直接従事が四十七万二千人、狭義の関連で二十三万六千人、広義に広げますと三十万人、合わせて約百万名の失業が、もしかりに半分に減ったとしたら、生産が半分に減ったとしたら出るかもしれないという資料が、わずかにあるだけなんです。そこで、輸出のほうはとおっしゃいましたけれども、輸出のほうも、ヨーロッパのほうが日本車の輸入に対してたいへん神経を立てていることはもう御案内のとおりです。
で、アメリカはどうかといいますと、今月末に全米自動車労組の代表が日本に参ります。どういう理由で来るかといいますと、何とか対米輸出を規制してくれないかという下交渉に来るんです。御案内のように、向こうの公聴会では、全米自動車労組約百六十万人、政治に対する発言力は、日本の労働組合の比ではありません。これは何とか保護立法をしろということをいま働きかけつつあります。ニクソンショック以来のアメリカのやり方というのを見ていて、私はこんな感じがするんですけれども、最初は頼んでまいります。こちら-が理屈を言っておりますそのうちに、向こうはたまりかねて何がしかの手を打ってくる。昨年一年間、アメリカの国際収支はなるほど見かけ回復いたしました。輸入原油値上げの影響を受けるのは日本だけではなく、アメリカの原油輸入量というのは日本の一割増しであります。そういう環境の中で、日本の自動車の輸出を伸ばすということになると、何といってもアメリカ市場というのは従来の例です。それがおっしゃるように、安易に見通していいんだろうか。しかも、国内需要というのは、なるほど税の影響でこうなっておるとは私は思いません。しかも、今回の増税の影響というのは来月以降出るんです。まだ出てないんです。かく至ったほんとうの理由というのは、いわゆる耐久消費財の屈折点という問題だと思います。この回復には相当の期間を要するとまず覚悟をしなければいけないのかもしれません。ですから、税をいじってよろしいのかとお伺いし、ですから、失業の心配をいまからしておかなくてよろしいのか。元来、自動車産業というのは、本来レイオフというものを必然的に伴っている産業形態です。これまでは、上にのぼる一本調子でしたからその心配はなかった。それでよろしいのかということを、やっぱりあらためてお伺いしなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/79
-
080・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ先ほど申し上げましたように、税から見ますと五円八十銭。ですから、これが私は自動車のこの登録台数の減少というものに響いておるということには全然考えておりませんし、またこれは、国際社会の中におけるガソリン税依存、そういう依存度というようなことから考えましても、非常に低位なことでありますので、その方面には問題はないと。問題があるとすれば、これは私は、こういう急激な勢いで自動車が落ち込んだ、その本質を一体どういうふうに見るかということだろうと、こういうふうに思うんです。その辺をよほどよく見通しまして、自動車産業の今後のあり方、そういうものを立てていかなけりゃならぬし、同時に、やはり自動車産業は、わが日本とすると非常に重要な産業でありますので、政府といたしましても、この自動車産業の推移というものを十分注意し、かつ必要とする対策につきましては、これに協力していくということだろうと思うんです。まあ税について今回の問題を論ずるというのは、私はいささか思い過ごしじゃあるまいかそういうふうな感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/80
-
081・栗林卓司
○栗林卓司君 なぜ五円何十銭とおっしゃるのかよくわからないんですけれども、ガソリン税は確かにそれしか上がらないんですけれども、あと上がるものが自動車重量税があり、取得税があり、重量税に至っては約倍近い水準で上がるわけです。年間負担で見ても、それは何万というけたであるわけです。ですから、五円何十銭とお考えられてはたいへん困るんですけれども、政府として大いに心配しながら検討したいというのは、まことにもってそのとおりにしていただきたいと思いますし、今回、自動車重量税関係、重量税も含めて関係諸税をいじるというときに、あらためてわれわれも痛感させられたのは、その種の資料というのはほとんどございません。じゃそういったものをどうやって集めていったらいいかということも含めて、片方では不測の事故に対する対策も周到に打たれながら、政治のかじとりをお願いしたいと思います。
最後に一つだけ、物価問題との関係で御所見を伺いたいんですけれども、時間がありませんから長くは申しません。
自動車に関するコストアップというものが流通コストを引き上げることは理の当然なんです。したがって、では、どのぐらい流通コストが占めているか、古い資料ですけれども、生鮮魚介類の場合は七五%が流通コスト、野菜が五四%、肉が七二%、果物が四八%等々という数字があります。ここの内訳を昭和四十年の日本交通政策研究所の資料によって分けてみますと、大まかにいって半分が商業マージン、残り半分のさらに半分、二五%というのが全部運送費です。今回のガソリン代の値上げも含め、しかも、自動車重量税というのは、車を保有している限り取られていくわけです。それやこれやも含め、流通コストに必ずやこれははね返る。具体的にどこでどうという追っかけはできません、これだけ広範な影響力を持っているものについては。しかし、間違いなく流通コストを高め、消費者物価にはね返ってくる。これは卸売り物価の問題ではなくて、消費者物価の問題、そういう問題意識で今回の税を五円何十銭だけではなくて、大幅に上げられました。ここだけ伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/81
-
082・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) これは正式には、今度の自動車関連諸税の増徴は、これは資源、公害、そういうことを見詰めてやっておるのだというふうに言っておるわけでありますが、しかし、率直に申しますともう一つあるんです。これはいわゆる二兆円減税、これは自然増収だけでは財源が足りない、こういう問題がありまして、その財源充足のための重要なる役割りをこの自動車関連諸税に受け持っていただきたい、こういうこともあるわけなんです。そういうようなことですが、まあ何ですね、この輸送コストというのは、これはもう軽視できないと思うんです。四十九年度あたりは、国民総所得が百兆円だ、輸送関連経費がまあ十四、五兆円ぐらいはあるだろう、こういわれますから、これはなかなか輸送コストが一体どうなるかということについては、これは軽視できない、物価対策上。そういうふうに思いますが、まあその問題につきましては、総需要抑制というような立場から、コスト要因を消すとか合理化するとかそういう努力をして、物価政策上支障のないようなことにしようということなんですが、本質的な問題として、輸送コストというものが、わが国の物価体系の中で非常に大きな問題である、これに着目をしなきゃならぬという点につきましては、全く私も同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/82
-
083・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 大臣ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/83
-
084・多田省吾
○多田省吾君 主税局長にお尋ねしたいんですが先ほど成瀬委員から、資本金階級別法人税負担割合についての御質問があったわけですが、その中で、昭和四十六年度のいわゆる法人税の納付税額は二兆三千四百十六億円であり、算出税額は二兆五千四百八十三億円だ、この差額がちょうど二千六十七億円あるわけですが、そのうち百六十五億円は試験研究費の税額控除と出ております。ですから、残りの一千九百二億円は外国税額控除と、それから利子・配当の源泉徴収所得税額控除との二つになっておりますけれども、それぞれその内訳を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/84
-
085・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) いますぐ照会をいたします、ここに持っておりませんから。しかし、出ておるのでございますから、照会をしてお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/85
-
086・多田省吾
○多田省吾君 先ほども日商岩井の外国脱税の問題があったわけですけれども、法人の外国税額というのはおよそどれほどなんですか、大体でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/86
-
087・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) すぐ、いまそれを全部二点調べてお答えをいなします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/87
-
088・多田省吾
○多田省吾君 先ほど日商岩井の昭和四十七年度に二重課税したような話がありますけれども、それは事実でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/88
-
089・吉田冨士雄
○政府委員(吉田冨士雄君) 先ほど大臣がお答えいたしましたように、現在大阪国税局で調査中でございまして、しかも、個別案件でございますので、内容についてはまだ申し上げられないのですが、一般論といたしまして私ども考えましてもかなりいろいろな点で通常考えましてどうかなという感じがいたすわけですが、問題は結局、所得自身がどちらに帰属するか、日本の法人に帰属するのか、現地法人に帰属するのかという認定の問題だと思います。この認定の、客観的な認定をする際のいろいろな資料、ここをどう読むかという問題でございまして、これをいま鋭意調査中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/89
-
090・多田省吾
○多田省吾君 もし外国に六億円を納めるとすれば、昭和四十七年度のいわゆる納入が二重になった場合、これはその差額は返すわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/90
-
091・吉田冨士雄
○政府委員(吉田冨士雄君) 一般的にこういう場合には、まず、こちらのほうが所得ありと認定いたしまして税金を納められておりまして、それからあといろいろ取引関係で一体価格は幾らだったのかというところでまたそこに更生があった場合には、向こうのほうの会社としてまた何か新しくアメリカのほうの税務当局が動かなければそういう問題はないわけでございます、かりに動いた場合、たとえば赤字補てんで現地の法人に送金するといったような場合があった場合にも、それがこちらの利益の送金であれば、そこはわれわれの目から見ましたら、明らかにこちらのほうの利益の贈与としての処分でございますので、むしろ新しく寄付金の課税の問題が起こってくるという問題があるんじゃないかと考えておりますが、これは全く一般論でありまして、事実関係の認定は非常に微妙な点がありますので、なお鋭意調査中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/91
-
092・多田省吾
○多田省吾君 先ほど成瀬委員からも質問があったわけですが、この資本金階級別法人税負担割合ですね、大蔵省の試算では、昭和四十六年度、さらに昭和四十七年度も本日出していただいたわけで、非常にまあ急いでいただいたわけでございますが、こんなに早くできるんだったら、私は、ほんとうに申しわけないんですけれども、この三階級だけじゃなくて、いわゆる九階級も、昭和四十六年度、四十七年度とできるんじゃないかと思うのですが、この資料をぜひともひとつ三ヵ月、六カ月かかってもやはり審議のためにはいただきたいと思うのですが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/92
-
093・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) お手元にお持ちの東京都の数字と、それから私どもがお出ししております数字との比較の問題でございますが、所得の金額それから法人の税額、それらはこの法人企業の実態という統計に出ておりますから、それはこの階級区分別にその本に、公にされております出版物に出ておりますので、それを出すことが可能でございます。ただ、言ってみれば、写しただけという数字になるわけでございます。
で、問題は、もろもろの特別措置によりますところの減収額計算のところでございまして、なかんずく特別償却ということになりますと、計算がなかなかたいへんなのでございます。と申しますのは、特別償却というのは、ことしかりに百億なら百億だけ特別償却をやるといたしますと、それは翌年度からの普通償却が百億減るという形になますから、特別償却がどれだけ法人税負担を減らしているかということになりますと、実質的には税の納める時期がうしろへずれるということでありまして、言ってみれば、金利負担軽減メリットがあるというのが特別償却の意味でございます。
そこで、特別償却のメリットを税負担上どのように見たらよろしいかということを考えます場合には、お手元に差し出しました資料の(注)の4に書いてございますように、その年の特別償却の実施額から耐用年数の経過とともに普通償却費から取り戻される額を推計して控除して算出するという方式をとるのが、税負担として特別償却メリットを計算するやり方として正しいというふうに私どもは考えております。この耐用年数の経過とともに普通償却費から取り戻される額を推計する方式というのが、かなりこまかい計算になってまいるわけでございまして、それがために実は四十六年度、四十七年度の「資本金階級別法人税負担割合」という表を従来しばしば各委員会に求められておりましたけれども、作業にたいへん時間がかかるということでごかんべん願っておったわけでございますが、やはり償却特別措置についてのいろいろ議論をしていただくには、先ほど成瀬委員から御指摘があり、私が基本的にはその方向で処理したいと申しましたような気持ちで、手間がかかりましても、時間がかかりましてもやるべきであるということで、一昨年の暮れから昨年の春にかけましていろいろ計算をいたしまして、それで特別償却を出す方式をつくったわけでございます。昨年そういうことで一回やりましたから、四十七年のほうは比較的早くお出しすることができるようなったわけでございますが、これをこういうこまかい資本階級区分別にやるということになりますと、その階級区分の数だけ倍する作業をいたさなきゃならぬことになりますので、その辺はもともとこの表をつくる、つくらないで、衆議院の大蔵委員会でいろいろ議論がございました。理事会等で議論をしていただきます際に、作業がなかなかたいへんだということの関連で、こういう資本階級区分でやるということで、まあ理事会で与野党の間でお話し合いを願いまして、この程度の荒さでよいからということでおきめいただいた経緯もございますので、この問題については他の点については統計からとれるものについてはこまかい階級区分別に出してもよろしいかと思いますけれども、この部分のように新たに作業を要しますものについてはひとつごかんべんをいただきたいというふうに思うわけでございます。この部分が出ませんと、実は全体としての6欄の、次のA+C+D+E分のB-Fの数字というものが階級別に出てこないということになるわけでございまして、基本的にはだんだんこまかい資料を出すことに私どもももちろん異論はないわけでございますが、事のいわば重要性、緊急性に応じてだんだん作業をそっちのほうに投入をしていくということにさしていただきたいというふうに考えますので、この場においてこの表を各欄について、資本階級別をこまかくするということについては、言ってみれば、直ちにはやってみましょうというわけにまいらぬということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/93
-
094・多田省吾
○多田省吾君 確かに東京で出したのはこの「法人企業の実態」という表をそのまままる写しにしたので、いわゆる納付金額と算出金額の間に差が生じたと、したがって、百億円以上の実際の法人税は三四・四%であるにもかかわらず、東京都で算出しているのは二八・一〇%と、その間約六・三%もひずみが生じているわけです。それからもう一つは、やはり利益会社と欠損会社の差別をここで設けていないというようなことも承りましたけれども、この租税特別措置による減価償却費というのは「法人企業の実態」の表の中に、一六五ページに九段階に分けて書いてあるわけです。その表で計算しますと、資本金一億円以下では千四百六億三千五百万円、これが確かに四百六十五億円と、約三分の一ぐらいになっておりますし、一億円から百億円未満までがこの実態表では千三百二億二百万円ですか、ところが、大蔵省で出された特別償却のところは五百六十三億円と、それから百億円以上のところでは、国税庁総務課で出された表によりますと二千五百二十三億二千三百万円と出ておりますが、実際は、そういう複雑な計算によりますと、千三百五十二億円ですが、確かにこのように違いがあるわけです。しかし、各層別に見ますと、まあ三分の一ないし二分の一ということで大体出ておりますから、大体の傾向というものはわかるのだろうと思います。それによりますと、やはりたとえば租税特別措置がない場合の法人税率はどの程度になるかと申しますと、昭和四十六年度では一億円以下が三三・六%、百億円以上が三一・〇%と逆累進になっているわけでございますが、昭和四十七年度では、いろいろな租税特別措置の改廃等もございまして、ほとんど同じになっているわけですね、一億円以下と百億円以上では。しかし、実態を見ますと、やはり私は、資本金が一千万円から五千万円の間あたりが一番課税が重いのじゃないかと、このように思われるわけです。ですから、その辺を調べたいと思っても、この三段階では出てきません。そしてあたかも一億円から百億円の間が一番重税であるかのようにこの表では出てまいります。しかし、九段階に分けますと、どうしても一千万円から五千万円程度の中小企業が一番重い税負担に苦しんでいるのじゃないか、このように思えるわけです。ですから、非常にたいへんでございましょうけれども、やはりこういった九段階の明細表がありませんと、一体どの程度の中小企業が一番たいへんなのかという実態が出てまいりませんし、やはり中小企業には、二八%の軽減率も課されているわけでございますが、その恩典がもう全然実際の法人税負担割合に出てこないということとあれば、これはたいへんな問題だろうと思うのです。そういう意味で、この三段階だけの実態では、私はその内容が詳しく論ぜられないという意味で、九段階のをできれば出していただきたいということを申し上げたのですが、どうも作業が困難であるというようなお答えでございます。非常に残念でなりません。
この租税特別措置以外でも、この法人企業の実態表を見ますと、たとえば貸倒引当金なんかも銀行を中心にいたしまして、一年間だけでふえた分が二千七百六十五億円でございまして、これは期末残高が一兆八千四百三十七億円に及んでおりますし、退職給与引当金、これも法人税の本法にある問題でございますが、これも一兆九千七百十二億円、一年でふえた分が三千三百二十八億円、あるいは計算によっては二千六百五十億円というような計算もございます。それからそのほかやはり本法にありますところの受取配当益金不算入額、これも国税庁発行のこの実態表を見ますと、二千六百二十六億三千九百万円というような実態がございまして、そのほとんど、いまあげたような三つは、そのほか特別措置の中にある価格変動準備金、こういったものも考えますと、中小企業はほとんどこの恩典にあづかっていない。また利用もなかなかできないという現伏でございますし、もう百億円以上の大会社は、たとえば退職給与引当金にしましても、貸倒引当金にしましても、ほとんど九〇%以上利用している。こういう実態がございます。ですから、これは法人税の本法に関する問題でありますけれども、こういった問題も加味すると、確かにいろいろな状況を考えましても、一千万円前後の中小企業と、百億円以上の大企業を考えた場合に、法人税の実際の負担額は四%か五%中小企業のほうが重いと、このように思えるわけです。ですから、私たちは、やはり法人税に累進課税を課すべきであるし、また多段階的に改めるべきであるということを主張しているわけです。
また東京都のように法人事業税を増額しようというような考えも起こってくるわけです。こういういろいろのことを考えますと、私はどうもたいへんでも九段階の資料がほしいと、またそれで論じないと実態がわからないと、このように思うわけでございます。私の言った一千万円から五千万円程度の中小企業が一番実際には税負担が重いんではないか、こういう私の意見に対して、主税局長はどのように考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/94
-
095・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) おっしゃるように中小企業の場合には、たとえば経理の専門家がおらない、税法について明るくないというようなことがございますために、いろいろな制度がございましても、必ずしもそれを活用していないという場合が間々あるわけでございます。まあ漸次、法人会とか、そういう納税問題について関心を持つ民間団体が発展をしてまいりました。そういうところでは、いろいろ相互に勉強会をやったり、そういうことでだんだんそういう特例とか、その他の措置を勉強されて、いろいろの制度の活用につとめるという方向に進んではおります。しかし、総論的には、多田委員御指摘のような面がないとは言えないわけでありまして、そういう点で、御指摘のような階層というものについてどういう実質負担になっているかということは、当然私どもも十分勉強しなきゃならぬことでございますので、いま直ちにここでどういうふうな分類で、どうやって表を作成いたしましょうかということについて、どういう表で御提出申し上げる、九段階の区分で御提出申し上げるということはちょっとお約束いたしかねますけれども、基本的にそのような疑問をお持ちであることはわかりますし、私ども自身も、そこらは課題の一つであると考えますので、何らかの形でそういう表をつくれないものか、作業の負担があまり著しくふえない、しかし、また同時に、ある程度の正確度を持ったものでなきゃならぬという前提のもとに少し研究をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/95
-
096・多田省吾
○多田省吾君 途中でございますけれども、私はまた明日の質問まで保留させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/96
-
097・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 先ほど御指摘がありました外国税額控除額と、それから源泉所得税の額との関係の数字につきましては、合計額の中の分類がちょっと別の統計をもって推計しなきゃならぬようでございますので、明日までちょっとお待ちをいただきたいのでございますが、お願いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/97
-
098・栗林卓司
○栗林卓司君 先ほどの質問に続いてお伺いしたいと思いますが、大臣のほうから、実は、自動車関係諸税を上げることはもう一つの理由があったんだ、二兆円減税というのは財源がたいへんですから、片方でも自動車の税金を上げながら二兆円減税ということで考えた面もありますと、財源の面でちょうど見合いになっている説明をされました。この点について大蔵省のほうから補足して、あるいは確認の意味でお話が伺えれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/98
-
099・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 四十九年度の減税を考えます場合に、四十八年度の税制改正以来、所得税の減税を相当ウエートを置いて考えるべきであろう、それからもう一つは、法人税の税率を上げるべきであろうということを考えたわけでございますが、これは四十六年の八月に出されました政府の税政調査会の答申の中におきましても、全体の税負担水準は、社会保障等を充実する必要から、漸次引き上げていくことがやむを得ないとしても、その場合に、所得税の場合には、累進構造をとっている関係もあり、今後とも相当ひんぱんに減税を行なうべきであろうし、法人税の税率は、現在国際水準に比べてかなり差があるので引き上げるべきであろうという答申をいただいて以来の流れをくんだものでございます。その場合に、この四十六年の八月の長期答申におきましては、間接税のウエートが漸次低下をしてきていると、十年間に約一〇%低下しているということが一つの問題になりました。このまま放置するならば、間接税のウェートがどんどん下がっていくであろうということから、間接税に相当てこ入れをする必要があるということが、やはり四十六年の八月の長期答申に出されたわけでございまして、当委員会におきましても、毎度御説明いたしておりますとおり、四十八年度におきましては、間接税のウエートが大体三〇%くらいにまで下がっていったわけでございます。で、四十六年の八月の答申では、場合によりましたならば、個別消費税でなくて、一般消費税体系に移ることも検討すべきであるということであったわけでございますけれどもその場合に、具体的に付加価値税というような問題になりますと、われわれの国民の間における・何といいますか、拒絶反応が強いということがございますので、なかなかそこまでまいりません。
そこで、若干とも間接税について見直しを絶えず行なっていくべきであるというふうに考えているわけでございまして、本年度は印紙税と重量税とガソリン税とをお願いするということになったわけでございますが、この所得税の減税と法人税の増税と間接税の若干の手直しということが一つのセットになって私どもの頭の中で動いておったわけでございまして、大臣が申しましたのは、あたかもその自動車関係諸税の引き上げによってと、所得税の大規模の減税とは直に結びついているような感じの説明ぶりでございましたけれども、私どもの気持ちといたしましては、それだけでなくて、法人税の増税も含めまして、全体として、一方において一兆四千五百億の減税はいたしますけれども、ネットの減税としては一兆であるということで仕組みを考えた経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/99
-
100・栗林卓司
○栗林卓司君 直間の関係で、間接税を増税する、あるいは比率を高めるという議論はよくわかるんですけれども、そういう検討をするときに、実際の税負担というのが、国民の階層別に見てどんなぐあいになっていくんだろうかという検討は当然すべきだと思うんです。この自動車の場合には、あらかじめ申し上げますけれども、する材料は政府にはなかったんではないか。したがって、大ワクとして何千何百億円という見合いの検討はしたかもしれませんし、結果として直間比率がこうなったという検討はしたかもしれませんけれども、それが所得階層別にどういう影響を持っているかという検討は、私は、しなかったと理解するんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/100
-
101・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 率直に申しまして、日本の間接税の場合には、最終消費者価格に吸収されているといいますか、織り込まれております関係もありまして、所得階層別にどういうふうに間接税を負担をしていただいているかということを算出する統計表がなかなか十分ないわけでございまして、間接税の、御指摘のような所得階層別影響ということについての研究は十分には行なっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/101
-
102・栗林卓司
○栗林卓司君 今後の課題として――一般消費税の場合は、これは別です、一律ですから。個別の物品に関して間接税を強化していくということになると、それがきわめて奢侈的である、もういやだったらすぐでもやめてもらってけっこうだというものはこれは別です。生活に対する関連度が非常に高いものについては、所得階層別にどういう影響が出るかは当然検討しなければいけない課題だと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/102
-
103・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) なかなか満足な資料が得られませんので、資料としてお配りをしたり、御説明をしたりすることにたえるようななかなかいい統計がないのでございますけれども、アプローチの方法としては、家計の消費支出に関する総理府の調査がございますので、そういうものから、何とかこの傾向を知ることはできないかというようなことを、事務屋といたしましては内々検討はしてみておりますが、この家計費調査というものの調査の対象になっている戸数がかなりまだ少ないというようなこともありまして、グロスの数字については統計学的に十分たえ得るものでありましても、間接税負担というような問題との関連について、その統計をとり、利用することができるほどには、統計上の母集団の数が小さいというようなことがありまして、またそれにたえるだけのこまかいブッキングを調査対象の方々にお願いをするということについては、当該統計の担当であります総理府統計局に異論があるというようなことがございまして、私どもも、それは何かしなければならぬ問題であるということを承知はいたしておりますけれども、まだこれだと、こういう方法だというところまで結論を得るような、御報告申し上げるようなところまできてないというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/103
-
104・栗林卓司
○栗林卓司君 今回の自動車関係諸税の増税も、額として見るとたいへんに大きな額であることは御存じのはずです。しかし、これをだれが負担するかというと、国民が負担せざるを得ないわけです。一部法人が使っている自動車ももちろんあると思います。じゃ国民がどうやって負担するかというときに、検討しなければいけない課題でございますけれどもということで、国税だけで――国税だけでといいますか、地方に回すのははずしても、千八百億円もの増税がされていいのか。
本来、自動車の保有状態、あるいは利用状態について管理をする職にあるのは運輸省だと思います。で、運輸省に質問をいたしました。しかし、所得階層別保有状況については調べておりませんという返事でした。そのとおりかどうか、一ぺん確認したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/104
-
105・南正彦
○説明員(南正彦君) お答えいたします。
ただいま自動車の登録車量、これにつきましての所得階層別の数字がわからぬかという話でございますが、自動車の登録は、御承知のように、登録事項として、所得というようなプライバシーに関する問題は、登録事項といたしておりません。その結果わからないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/105
-
106・栗林卓司
○栗林卓司君 これはよくお考えいただきたいのですけれども、登録の場合には確かにそういうアイテムがございません、プライバシーに触れますからというのですが、登録という事実によって担税力ありと認めて税がかけられているのです。担税力があるかないかということは、だれも立証したことはないのです。何となく車を持てるぐらいだから担税力があるだろうと。運輸省でも、いまのお話で、調べる手だてがない。大蔵省のほうとすると、理屈は確かに調べなければいけないのだけれども、そういうデータが運輸省にないのですから、あるはずがない。ここでもう議論がストップする。それじゃもうしょうがないんで、一つの資料を使わせていただきます。ある四十八年三月現在の資料を見て、こういう数字が出ていますけれども、どうでしょうかということでまず伺います。
勤労世帯、農業世帯、この二つだけを取り出してみますと、全国平均の自家用自動車普及率がどのぐらいかと言いますと四二・三%。問題は、この勤労世帯、農業世帯を見て、全国平均以上に自家用自動車を持っているのはどこの地方なのか。持っている地方というのは、一番高いのが東海の五二%、北陸が四五・五%、同じような数字で四国、中国、甲信越と、地方のほうが多いのです。じゃ車のふえたといっている阪神、京浜はどうかというと、阪神の自家用自動車の勤労世帯、農業世帯の保有率は阪神で二八・七%、京浜で二五・六%。では一体農業世帯でどのぐらい車を持っているかと言いますと、全国平均で言えば八〇・六%。言い直しますと、農業世帯の八〇・六%が今回の自動車関係諸税の増税によって税負担がふえるということです。勤労世帯はどうかと言いますと、年収百万円から百五十九万円、これが三九%です、全体の中で。百万円未満なおかつ一一%持っていて、合わせますと五〇%が百六十万円未満の年収層なんです。ほんとうはこの数字がおかしいというなら、おかしいという数字を政府がお出しになる責任があると思うんだけれども、ない以上しかたがありません、これを信用して話を進めていただくしかない。
そのときに、今回二兆円減税を確かにやりましたけれども、その減税幅というのはどんな分布であるかは御承知だと思います。自動車保有の中で百万円未満が一一%、百万円から百五十九万円が三九%、合わせて五〇%、半分です。年収も少ないのになぜ使っているんだという話はあとにしますけれども、こういう分布になっているのだということと、先ほど言われたグロスの直間比率の話とはどうにもかみ合わないのじゃないでしょうか。この数字を見て大蔵省としてはどのようなお考えをお持ちになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/106
-
107・福田幸弘
○説明員(福田幸弘君) 確かに自動車の保有状況についての統計は正確といいますか、詳細のものはございませんが、われわれとして検討いたしました資料といたしましては、経済企画庁の消費動向予測調査、これがございます。これは世帯保有状況ということで三八・七%というのが四十八年十一月の数字として出ております。その三八・七%につきまして、これは経済企画庁調査局の調べでございますが、所得階層別の保有状況を調べておりますが、二百四十万以上のところで五四・〇という数字が出ておりますが、この所得階層自体のとらまえ方についてはやはり問題があったと思います。あと、総理府統計局家計調査というものがございます。これは四十七年につきまして、自動車等関係費の支出が消費支出の中で約二・六一%を占めておるという数字がございます。この二・六一%の階層別の分布というのを同じく総理府統計局で調べておりますが、これは第一分位から第五分位までの区分によって調べておりますが、二・六一というものが第四分位のところあたりでは二・七七と、やはり上のほうで高くなっているという傾向は出ておりますが、この分位の刻み方等については同じく問題があろうかと思います。いま御説明のございましたのは自工会の調べによります四十八年三月の数字と思います。乗用車の台数、トラック、バスの台数、これについては二千二百九十三万台、この前提で自家用、営業用の車ではわかるわけでございますが、これを勤労世帯、農業世帯と案分するところについては、その案分の基礎がなかなかむずかしいという問題がございます。
で、勤労世帯六百六十一万台につきまして所得階層別の分布を調べておるようでございますが、いま御指摘のような九十九万ごろまでで一一%、百万から百五十九万のところで三九%という、下のほうに相当分布が厚いという調査の数字がございますけれども、この調査方法がサンプルの取り方、さらにこれは呼び出し調査によってやっておるようでございますが、返答のない場合さらに所得の金額を正確に把握し得るかという調査自体の難点等がございます。したがって、その辺の階層別の刻みというのは調査上非常に問題があるかと思いますが、今後の問題として正確をはかる必要がございますが、各地万別の分布状況、これについては数字はまだ承知しておりませんけれども、地方のほうで下の階層に多いという傾向はあるかもしれませんけれども、これをチェックする資料は持っておりません。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/107
-
108・栗林卓司
○栗林卓司君 自動車の税金問題というのは、何となく自動車というものの持っている雰囲気があるのですが、これは国民が納めているという税金の議論をしている感じが出ないのでたいへん困るんです。これはある雑誌に出ておりましたけれども、最近とにかく物価が上がって資源がなくなったという前置きの中で、それなのに安月給のサラリーマンが車を買いガソリンを浪費してゴルフに出かけたりすると首をかしげるような時代云々ということが書いてある。で、マイカーということばがよく言われるように、何となく車というのは不要不急で、やっぱりぜいたく品で、使うとすればレジャーなんだと。私が言いたいのは、こういうものが何の立証もされていない。一番困るのは、は、マイカーというとある日本語です。これが行政的にのってくると、運輸省で言っている白ナンバーです。自家用自動車が即なる。じゃ普通マイカーというのは、レジャーにたくさん使っているんだ、ずいぶんぜいたくなことをやっているじゃないかという話で、もしマイカーという概念をつかまえたとすると、それはどのぐらいの割合なのか。その使用目的別の内訳ということも、ほんとうは調べないことには、間接税をそれについてふやしたらいいかどうか。なべ、かまといいますと、だれだって生活の必需品ですから、なべ、かまに物品税くっつけるといったら相当な騒ぎ。同じように、ほんとうに車が要らないんなら、税はつけてもかまわない。要るんだったら、どのぐらい要るかという検討がされなければいけないと思うんですけれども、現在これを調べる役割りをもし各官庁の中でしょうとしたら、やはり運輸省ということになるのです。使用目的別に自家用自動車がどんなに使われているか、 これを質問したら、回答はできません、調べておりませんということです、この辺はどういう事情なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/108
-
109・南正彦
○説明員(南正彦君) お答えします。
先ほど申し上げましたことにも関連いたしますが、自家用登録自動車の登録事項には、使用目的という形では入れておりません。別の角度から調査をいたそうといたしますと、申請者の自由によって使用目的なりというように書かれますから、その申請そのものを信用してその数字を集計するという形をとらざるを得ないと思います。正確な数字というものはなかなか出せないわけでございます。たとえばマイカーと言われるものをとってみましても、たとえば商業用に自分の家業に使うというものが主体であるのか、あるいは家族がいろいろなものに利用するという場合が主体なのか、そういうのはなかなか個人ではいずれが主であるかということの判断ができにくいものもある。したがって、客観的な調査資料とするにはむずかしいということも考えまして、現在やっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/109
-
110・栗林卓司
○栗林卓司君 そんなことなんですけれども、主税局長にお伺いしますけれども、間接税を上げていく、これは将来の一つの大きな課題だと思うのです。そのときに、それがどういう性格の商品なのか、生活との結びつきがどうなのかということは、平たくいえば利用目的、利用態様ですけれども、調べざるを得ない。現在はいまのように使用目的というものが入っていないからわからぬということなんですけれども、この点は至急研究する必要があると思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/110
-
111・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) お尋ねの点については、私どもも自動車に限りませず、他の間接税の増税問題等も関連いたしまして、いろいろ統計の整備また統計までいきませんでも、ある種の調査ということをやる必要があるということは、理屈としてはよくわかるのでございますし、私ども自体も気にしているところなのでございます。ただ、ただいま運輸省の担当官との間のおやりとりでおわかりいただけますように、一体具体的にどういう調査を、どういう方法でやりましたならば、目的に沿うようなものができますかということになりますと、非常にむずかしい。なかなかだれが怠けているとかなんとかということじゃなしに、具体的に調査技術として非常にむずかしいという関係にあるかと思います。たとえばよく問題になります物品税の対象品目の税負担の問題等を議論いたします際にも、われわれももう少し何かその種の所得の大きさと品物の関連というようなものについての何らかの資料があったならば、より的確に問題の処理に当たれるのではないかということを感ずることがよくあるわけでございますが、そのときも同様に、何か調査をしようと思っても、うまい方法が見つからないということできているわけでございます。お気持ちはわかるのでございますし、われわれもそう思っているのでございますけれども、ここで何か少なくとも将来の問題としてでも調査してみましょうということを申し上げても、はたしてそういうことができるかどうか、非常に、言ってみれば、自信がないということでございますので、われわれもそういう気持ちを持っておりますから、今後とも何かそういう具体的方法の発見につとめてみたいと思いますが、やりますとか、やりませんとかというところまではちょっと申し上げかねるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/111
-
112・栗林卓司
○栗林卓司君 そうすると、端的にお伺いしますけれども、自家用自動車、まずこれに限って先ほど来伺っているわけですけれども、自家用自動車というのは、生活の必需品としての色合いが濃い、端的に言えば、生活の必需品なんだという認識をされておりますか、されておられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/112
-
113・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) それは、まあこの自動車の問題を議論するときに、しばしば論議される点でございます。最近は道路も整備されてまいりましたし、昔ならばとても通勤距離内になかったという地域から、比較的低収入層の方でも自動車をもって通勤が可能であるからということで、地方の工場等においてかなり遠距離のところから通ってきておられる。それに自動車を使う、しかも、それを自家用として使うというような場合がどんどんふえておることから考えますと、その方にとっては少なくとも足でありますから、生活必需品的な要素を非常に強めてきている部面があると思うのでございます。また、小規模の事業者等におきましても、比較的若い方々が自動車操縦技術を身につけるということが一般化してまいりました関係で、むしろ運送業者に頼んで物を運んでもらうよりは、たとえ利用度が低くても、自家用車を持って物を運ぶほうが、その事業の遂行上有利であるというような場合もできてきておるわけでございます。したがって、自動車の使用の態様が、時代とともに著しく変わってきたということは言えると思いますが、それでは、それはいわゆる他の物品税等の場合の概念でいきまして、よく奢侈品だという概念がございますが、そういったものに当たるかどうかというと、必ずしも奢侈品には当たらない。しかし、物品税の課税対象の概念としてよく論じております便益品といいますか、そういうような品物には当たるということは言えるのではないかというふうに思います。で、一がいに自家用車全体をとらまえて、それがどういう性格のものかということはなかなか言いにくいわけでございまして、個別個別の使い方、それからその家における、消費体における事情というようなものによってそこは違うのであって、なかなか現在自動車は必需品である、あるいは自動車は奢侈品であるというふうに、自家用車について性格づけをきちっとするということは、きわめて場合場合によって違いますがゆえに、困難ではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/113
-
114・栗林卓司
○栗林卓司君 そこで、ほんとうはじゃどういったぐあいに利用しているかという話になると、わからぬものですから議論がいつもとまるのですけれども、自動車が一番いけないのは、お互いに税の問題でも議論しようと思っても、コンセンサスの場が大体ないのですね、材料がないのですから。
そこで、いたしかたありません。例を出しながらお伺いするわけですけれども、便益品である――ことばはどうでもいいんです。とにかくこれは必需性が非常に高い。平たく言うと、車を手離すことができない、そういう使い方をしている人、片方では、場合によっては車を使わなくてもほかの手段があればやめてもいい、こう二通りに分けた場合に、必需性の高い人たち、この人たちと低い人たちに画一的に同じ税を課してよろしいのか、この点はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/114
-
115・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) まあよろしいかどうかというのはちょっと問題でございますけれども、間接税の場合には、やはりどうしてもそこはその人の使われ方というようなことによって負担区分を分けるということは困難でございますので、一律にいかざるを得ない。そこのところは、やはり間接税の弱点といえば弱点であろうかと思います。実質的にその使われ方によって差をつけるということは、ごく特殊な場合、たとえば明らかに営業用にしか使われない品物については、物品税を課税しないというようなものの考え方がございますが、同一の商品が、いろいろな場合に使われる場合に、どうやってその差をつけるかという技術は、いまの税法ではなかなか間接税について見つからないというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/115
-
116・栗林卓司
○栗林卓司君 ですからほんとうはいまのお話をとっていくと、だから、間接税はそうちょこまかと変えてもらっては困るし、著しい増税をすることも避けていかなければいけないのでしょう。ただし、いろいろな使い方をすると、業務上必要云々というお話がありましたけれども、いわゆる自家用自動車で一番一般的に例が出る通勤という問題を考えてみても、自動車しか通勤手段がない、しかも、住宅事情は御案内のとおり。そのときに、どうしますか。やっぱりそこで税の負担が出てまいります。しかも、この物価高の中で、維持費を含めて必要経費も逆進的にきいてまいります。しかも、所得階層が低いと、今回の課税最低限引き上げの恩恵にもあずかれません。じゃ、車以外にどうやって通うかといったら、車しかない。この場合に、営業用に準じた一つの特別な取扱いというものが当然求められてはきませんか。もしそれが行政的に可能であればという条件はつきますが。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/116
-
117・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) その問題はやはり、何も税だけでは、ないのではないかと思います。自動車を保有し、使用することによる負担全体をどういうふうに税の上でとらえるかということであって、自動車にかかわる、あるいは燃料にかかわる税の問題という形ではなしに、自動車の代金なり、あるいはガソリン等の代金なりをひっくるめて、通勤費としてどういうふうにかかっておるのか。そしてその通勤費を、今度は所得税の問題としてどのように処理をすべきかという問題ではないかと思うわけでございます。まあ、今回、燃料税にいたしましても、重量税にいたしましても、引き上げることについて非常に問題ありというふうに感じますのは、いままさに栗林委員から御指摘を受けましたように、足としてそれを使わざるを得ない、特に、通勤のために使わざるを得ないという場合に、どういうふうに考えるかという問題だと思いますけれども、まあそこのところは、私どもは、今回は、ちょうど所得税のかなり大規模な組み立てがえを行ないまして、給与所得控除について意識的に相当大幅の拡大を行ないました。従来はまあ収入の二割を引きますというのが第一原則でありましたところを、四割まで引きますということになったわけでございますので、そういう意味においてサラリーマンの必要経費の、概算的控除であるところの給与所得控除を拡大をいたした際でございますから、若干の負担増を来たしました場合にも、ある程度そこは、自動車を通勤に使っておられる方に、言ってみれば、説明がつくというか、申しわけが立つというか、そういう関係にあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。青ナンバーではなくて白ナンバーで事業に使われる場合には、自動車にかかる経費がふえました場合は、たてまえといたしましては、事業の必要経費がふえるという形になりますから、原則としてそれは控除項目に入ってくる。それからサラリーマンのほうの場合には、そこが一律の控除でございますから、通常のときでございますと、もし給与所得控除の仕組みを変えないでおいて、自動車通勤費の負担がふえるという形の税制改正をいたしますと、そこのつながりといいますか、一貫した説明がつきにくいというかっこうになるわけでございますが、何もそれを強く意識したわけでもございませんけれども、今回は所得税のそういう組み直しを行ないましたから、サラリーマンの方にも負担増にはなりますけれども、ある程度はそういう仕組みでがまんを、していただけるということもあるのではないかというふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/117
-
118・栗林卓司
○栗林卓司君 いまのようにおっしゃるためには、自家用自動車の階層別所有分布と、実際の所得の分布と所得税の刻み方の分布、これが合っているという前提があるんです。先ほど一つの資料として申し上げましたように、年収百万未満でも勤労者、農家世帯として、全体の保有のうちの一一%ぐらいを占めているということになると、いまのお話は当たらない。そうは言っても、これは認知がされたデータではありませんので、これから議論を発展させることができないのはほんとうに残念です。ただ、いまの主税局長のお話というのは、 そこのところががっちりされてなかったら実は直らない、組み立てることがたいへんむずかしい議論なんです。これも認知されてないデータをしょうがなくて使うわけですけれども、車というのは手放すことができるかという単純な質問を、自家用自動車を持っている人に聞きますと、手放したら暮らしに困る、絶対手放せないという答えをする人が相当量いました。管理職、事務技術職、労務職と三種類に分けて、それぞれの回答率を見ると、何も管理職が給与が高くて、事務技術職が中間で、労務職が安いなどと頭からきめるわけではありませんけれども、おおむねそういう所得分布であることは事実だと思います。そのときに、車を手放したら生活に困ると答える率が一番高いのは実は労務職なんです。その次は事務技術職で、一番困らないのは管理職。しかしここから次の分析はもう不可能です。どこにその人が住んでいるのか、どういう交通環境で暮らしているのかということできまってくるわけですから、これだけでものは言えないけれども、こういう数字もあるんですよということは申し上げておきたいと思います。
そこで問題は、一般のサラリーマン勤労者がどういったぐあいに自家用車を使っているんだということを労働省に通勤手段という意味でお伺いしますと、これがまた回答不可能。なぜ労働省はこういった調査はしないんですか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/118
-
119・川口義明
○説明員(川口義明君) 労働省では労災補償などの必要性から関連いたしまして、通勤途上の災害状況といったふうな調査はいたしておりますが、労働省の調査は主として事業場の労働条件のほうを調査いたしますので、対象がストレートの関係でつかみにくいといういきさつ等もございまして、現在のところその実態は把握してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/119
-
120・栗林卓司
○栗林卓司君 ほんとうはそれだから困るんです。いまの、何で手放せないんだということで中身を聞きますと、いろんな理由があるんですけれども、一つの理由は、終電車に間に合わないというんです。酔っぱらって間に合わないわけじゃないんですよ。労働者というのは昼間働いているだけじゃないんです。交代勤務をやると電車に乗れないんですよ。それが一体どのぐらいの率がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/120
-
121・川口義明
○説明員(川口義明君) 交代制勤務労働者の割合は、三十人以上の事業所を調べました労働時間制の調査によりますと、全体で一二・五%となっています。その中には二交代、三交代、いろいろございますが、総体としては四十八年九月の調査で一二・五%、約八分の一でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/121
-
122・栗林卓司
○栗林卓司君 この一二・五%の中には、住んでいるところが自分の作業所とたいへん近い鉱山が入っていますから、普通職住が遠隔化しているだろうと想像される製造業を見ますと一六%、運輸、通信関係を見ると二三・六%、電気、ガス、水道、熱供給業を見ると一二・九%、全部が全部車、自家用車を使っているとは言いませんよ。しかし、深夜の交通手段がないために不合理な交代制勤務をとっている例は私はたくさん知っております。地方によってはやっぱり自家用車で通わざるを得ないのです。しかも、深夜の足が公的輸送機関で存在するかといったら、タクシーしかない。あとは自転車か足です。所得水準のいかんにかかわらず、やっぱり車がなければ通えないやという話は当然だと思います。ということもあらためて大蔵省に伺うわけですけれども、高額所得者について重役減税をやったからおまえたちがまんしろとおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/122
-
123・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) いや、そういう趣旨ではなくて、給与所得控除は、御存じのように、たとえば先ほどから御指摘の百万、百五十万という収入階層について見ました場合に、いままでは原則二割という控除率であったわけでございますけれども、それを四割ということになりまして、控除率がかなり拡大をしたわけでございます。で、それを考えていただきますれば、百五十万、二百万というあたりの給与所得者の概算控除率がふえておるわけでございますから、その意味におきましては、その種の方々の所得税負担はやはりかなりの軽減になっておるわけでございます。で、金額的には確かにもともと納めていただいております税金の額が少ないわけでございますから、実額で幾ら少なくなったかということになりますと、百五十万円ぐらいの階層の場合に、夫婦子供二人のところで大体三万円ぐらいの負担でありましたのが、今度はゼロになるということでございます。したがいまして、その額と片方のいろいろの通勤費負担の増加というものとが見合うか見合わないかというようなこまかい議論になりますと、十分御説明しきれるわけではございませんけれども、総体的にはやはりそういう軽減もございますということで、ある程度の説明はできる関係にあるのではないかということを先ほど申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/123
-
124・栗林卓司
○栗林卓司君 またあらためてこちらも申し上げるわけですけれども、車というのはマクロじゃないんです。もともとミクロの交通手段です、自動車というものは。だからマクロで論ずるというのは基本的に誤りなんです。で、輸送機関というと大量公的輸送機関がまず連想されます。これが補い得ない非常にローカルな小さい部分の、数字でいいますと百キロメートル未満、その面の交通をどうやって確保するかというのが自家用自動車の問題なんです。営業用、私用を問いません。したがって、千差万別の使い方がされているんで、労働省でも通勤状況も調べていない。それから、それは通勤手当の問題でしょうとおっしゃいましたけれども、百も御承知のように、現在の税の取り扱いではそういう配慮はされておりません。そういった意味で、ミクロの問題なんだということは、ここまで税を高めてきたらひとつ御了解をいただきたいと思います。しかも、ここまで保有台数がふえてきたら、この巨大な税項目の中で、この税の特別控除という発想がなぜ出てこないか。もちろん一部はあります。だれが見たって、それはそうだ、なければたいへんだという人がいるんです。だれかというと、たとえば足が不自由になって車のおかげで動けるようになった身障者です。特別の税の配慮がされています。それじゃ一体何台ぐらい車を使っているか、厚生省に伺いましたけれども、全然調査もしていない。どういうことなんですか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/124
-
125・角田耕一
○説明員(角田耕一君) お答えを申し上げます。
昨年秋以来の石油危機がありまして、身体障害者は、先生が御指摘のように、自動車は足がわりになるものでございまして、したがいまして、その燃料の確保という必要が生じましたので、目下都道府県を通じまして自動車の所有状況を調査中でございます。確たる数字はまだ十数県きり参っておりませんので、全国の数字はまだ出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/125
-
126・栗林卓司
○栗林卓司君 そういったものは厚生省として調べる必要はないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/126
-
127・角田耕一
○説明員(角田耕一君) 足がわりの身体障害者については、こういう石油危機というようなことになりますと、調べる必要はあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/127
-
128・栗林卓司
○栗林卓司君 今回の自動車関係諸税の増税というのは、石油これだけ使いますよということをはずしても、二万円おそらくこえるでしょう、一年間の負担額。で、身障者の方々がどういう所得階層別に分布されているのか、これはまた一がいにきめかねる問題ではありますけれども、決して少ない負担増ではない。しかも、従来から負担している水準そのものがまたべらぼうに高い。で、たまたま身障者を思いつきましたから質問しているんであって、同じような車を生活の必需品としてお感じの不幸な家庭というのはずいぶんあるんです。ほんとうはそういったところも調べるべきなんですね。一がいにマイカーだ、自家用自動車だというぐあいにやれる問題ではない。しかも、何とこれだけ、先ほど来申し上げているように、たとえば東京周辺とってみても、自家用自動車の問題が交通手段、通勤手段として使われてくるかというと、過去五年刻みぐらいに考えますと、スプロール現象の拡大はまことにはなはだしいものです。三十年から三十五年ぐらいですと、人口が
一番ふえてきたピークの圏というのは都心から数えて十キロから二十キロ圏、四十年から四十五年は何と三十キロ圏から四十キロ圏にわたって人口がふえてきた。どんなものができるかというと、団地ができるわけです。団地はどうかといいますと、四十一年から四十五年、団地が建設されたのはほとんどが都心から考えて三十キロ圏から五十キロ圏に集中をしております。じゃ一体どうやって通うのか。そのときに、ではこれに対して建設省がどういう行政指導をしているかというと、作文はあります。現実にある団地ができる、収容人員が何世帯、したがって、面の交通としてこれだけ需要が発生するから、したがってかくかくであるという計算をそれぞれしながら、いかなる団地についても行政指導しているわけではないと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/128
-
129・吉田公二
○説明員(吉田公二君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、大都市地域におきます住宅宅地の需要、非常に旺盛でございますが、これに対します供給が、現実には公的機関によります集合住宅、あるいはニュータウンというような形で供給されます場合には、ある程度既成市街地から離れたところに大規模な団地というような形で建設されるものが多くなっていることは事実でございます。
で、この指導のしかたでございますが、こういった住宅地が形成されますことに伴いまして、当然その交通という問題が出てまいるわけでございまして、それは都心、いわゆる母都市と結ぶ交通、あるいは鉄道との二次交通、こういったもの全体にからんでくるわけでございますが、建設省といたしましては、全体的な交通との調整につきまして運輸当局と相談をして連絡をとっていることはもちろんでございますが、個々の住宅公団でございますとか、あるいは府県、県の公社等の大規模な開発を行ないます場合には、個別にそれぞれの交通機関と調整をさせるということを指導してまいっております。また、民間の開発等につきましても、四十三年に改正いたしました都市計画法におきましては、大規模な開発を行なう場合、これは規模として四十ヘクタールという基準にいたしておりますが、こういう開発を行なう場合には、鉄道事業者と事前に協議することを開発許可の前提として義務づけるような措置もとってございます。そういうことで、たとえば例として申しますと、南多摩ニュータウンでございますとか、あるいは千里ニュータウン、その他洋光台、港南台等々、非常に大きな規模の開発になりますと、鉄道の建設とあわせてやってくるものもございます。そのほか、私鉄との調整をとってやっておるものも多々ございます。ただ、先生御指摘になられましたように、一切すべての団地が全部そういった鉄道と完全に連動すぐにできるかといいますと、やはりその中にある程度の差はあるわけでございます。それで第二次交通としてのバスの問題になるわけでございますが、新しくできましたニュータウンというような場合には、いわゆるラッシュ時間に非常に集中して需要があって、昼間においては需要が低いというような面もございまして、なかなか採算に乗りにくい面もございまして、この面の打開には、建設省といたしましても、運輸省と調整いたしましていろいろの解決策を講じてきたわけでございます。
それで、現在までにこういったニュータウン関係の交通ということで措置してまいりましたことは、これは施策はすべて運輸省の施策でございまして、これに対して建設省は御協議、御協力してきているわけでございますが、たとえばニュータウン関係の鉄道につきましては、ニュータウン鉄道の助成方式ということで、昭和四十七年から公共団体等が行ないます場合には、地下鉄と同じような方式で行ないますいわゆる地下鉄式の補助方式、それから民鉄、いわゆる私鉄が行ないますニュータウン線の建設につきましては、鉄建公団が行なってこれを低利で譲渡するという方式、こういったものも逐次整備されつつございます。また、バスの運行につきましては、これも運輸省が四十八年度から始めました新住宅地バス路線対策運行費補助金という制度によりまして、不採算の団地関係の交通、これも千戸以上の規模のものを対象として考えておりますが、こういうものにつきましては、欠損の出る当初の二年間について国庫補助をするというような制度もつくられておりまして、逐次拡充の道を講じつつあるような現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/129
-
130・栗林卓司
○栗林卓司君 建設省と運輸省と両方にお伺いしたいんですけども、団地をつくる、そのときに公的な、バスを使ったサブシステムも含めて、交通網を完備をするんだとおっしゃるわけだけれども、その住民のニードにこたえるためにはどういう条件が必要だと考えて仕事をされていますか、建設省と運輸省それぞれに伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/130
-
131・吉田公二
○説明員(吉田公二君) 現在大都市地域等を中心として、住宅需要あるいは宅地需要というものが、やはり本質的にはその母都市に依存した形でございますので、相当多くの部分がその通勤交通に依存するわけでございます。でございますから、団地ができました場合に、これが母都市に一定の時間の中で通勤ができるということは一応不可欠の要素でございますので、公的の住宅団地等を開発する場合には、そうした最低の需要がまかなえなければならないという前提で必要条件の整備に各施行主体が努力をしていると、こういった状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/131
-
132・相良英明
○説明員(相良英明君) ただいまの先生の御質問に対しまして、運輸省側としての考え方を申し上げます。
私ども、ただいま建設省のほうから説明がございましたように、ある一定以上のニードがあります場合には、優先的に既存の補助方策等を活用いたしまして、鉄道の建設あるいはそのサブシステムとしての公共交通機関の整備ということを行なってまいっております。また、たとえばバス路線をまかなうに足りないような需要があるような場合等につきましては、タクシーの相乗り制といったようなものを活用いたしまして、今後とも住宅と勤務先というものの連結をはかってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/132
-
133・栗林卓司
○栗林卓司君 全部国民をますに詰めて運べばいいんだっていう感じがするんです、いまの話聞いていると。どういう需要があるのかということで、どうも先ほど来の税の議論も全部そうなんですけれども、ミクロの議論なんだ、国民一人一人の暮らしの問題なんだと、口をすっぱくして言ったってなかなかぴんとしていただけないんですけれどもね。じゃ、ヨーロッパのほうは日本よりは多少民主的な国になっていますから、どういう需要があるんだという調査ぐらいやっているようです。そこで、一体皆さんどのぐらいだったらがまんして歩きますかと聞いたら、スウェーデンのある調査では五百メートルから六百メートルだったら歩いてもいいよという答えが出たんです。雨が降ったらいやだ。雨が降っていたら二百メートル。零下でも二百メートルというようなことで、大体五百メートル前後ぐらいが普通すなおに歩く距離なんだと。ということは、五百メートルないし、まあ五百メートルぐらいでしょう、そのぐらいの間隔にバスストップがないといかぬということなんです。しかも、それだけの非常にきめのこまかい交通網が二十四時間動いていなきゃいかぬのです。採算が合うわけがないじゃないですか。ですから、ところによって、場所によってきめこまかな交通対策を組むしかない。これが私はほんとうは交通という問題に取り組む出発点だと思うんです。何かといえば向こうが千戸以上だったら鉄道引っ張ります。それじゃだめなんです。しかも、東京周辺部で自家用自動車を使っている人たちに何の目的で使いますかと言うと、相当高い率が用足し、買いものなんです。ずいぶんぜいたくなことをするじゃないかという話になるかもしれませんけれども、これがどのぐらい必需性が高いかといいますと、いわゆるレジャー性のものは石油ショック以来がたんと落ちたんです。ところが用足し、買いものというのはほとんど落ちてない。なぜ落ちてないのか。なぜ周辺部にスーパーマーケットができているのか。なぜスーパーマーケットを拠点にして行政指導価格がやられているのか。買いに行ったほうが安いんです。それを考えますと、周辺の暮らしというのはいまでは車と切っても切れない縁になっている部分が相当ある。全部が全部だとは言いません、中にはまるきりおれはレジャーだと言う人もいるかもしれない。しかし、これもある調査によれば、まるっきりレジャーに使っているのは自家用車のうちのわずかに五%ぐらい、はでな車に乗っているからたいへん目立つかもしれませんけれども、せいぜいそんなものです。残りのこまかい使い方について、一体どうなんだということを各省とも何も調べてない。あるものはますに詰めて運べばいい、そこで大蔵省のほうに参りますと直間比率が直ればいい、所得減税一兆四千五百億円との見合いにおいて千八百億円のバランスがとれればいい。しかも、所得階層別の内訳はやっぱりわからない。しかも、そうやって車を使っている人は組織されてませんからデモも組めなきゃ文句も言えないというのがいまの姿じゃないのか。しかも、その結果どうなるかといいますと、もう時間が長くなり過ぎて御迷惑ですからやめますけれども、これは今度は、いま私はプライベートに使っている自家用自動車の例ばっかり引いてきたんですけれども、同じこれだけの時間をかげながら、私は営業用に使っている自家用自動車の説明もできぬのです。やっぱり離すわけにいかぬ。そうなってきたら、これは必ず流通コストにはねます、消費者物価にはね返ってくる。そうすると低額所得者というのは物価が上がって逆進性はつく、税金はたいしてまけてもらえない、二交代勤務やっていて、しょうがないから昼夜ころがしているというのにまた税金がかかってくる。しかも、片一方では営業用の自家用トラックのおかげで流通コストが上がってまた物価が上がる。二重三重の責め苦じゃないか。なぜこんな話が、きわめてけげんな顔をして皆さんがお聞きになる話になってしまうかというと、車というものを中心にした交通についてどこの省だって調べてないんです。あるものは、おそらくそうではないとおっしゃるかもしれませんけれども、さっき雑誌の切り抜き読んだようなもんです。所得の安い者が車買いやがってゴルフに行くとは何だ、これは形を変えた貧乏人は麦を食えという思想でしかないですよ。で、こんなことを言っていてもしかたがないんですけれども、ひとつ確認の意味で、主税局長にお伺いしますけれども、とにかく自動車というものは利用形態がたくさんあるし、相当な部分が必需品化していることをまず御確認いただきたいと思います。
二番目は、その実態について政府が調査をしていないこともいままでのやりとりでおわかりのように御確認をいただきたい。じゃ税が上がったからといって、ほかのことにかえるかといってもかわる交通手段も周辺部、郡部に行けば満足にない。これに対して今回の自動車関係諸税の増税というのはきわめて画一的に行なわれる、したがって、これだけの大幅な間接税の増税をするにしては、慎重な配慮を欠き過ぎたと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/133
-
134・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) ただいまの三点の御指摘の点は、いずれも御指摘のとおりでございまして、特に、私どもそれと異なる意見を申し上げることはございません。で、ただ今回の増徴につきましては、一つには、大臣に対する御質問の際にお触れになったところでございまして、最近非常に自動車の販売が落ちておるという問題がございます。で、このことはいかなる意味を持つかというのは非常に重要でございまして、耐久消費財の普及進度の接点にきたのではないかとお触れになりましたが、その点は非常に重要な問題であると思います。私どもは、昨年の夏から冬にかけましてこの制度を論議をいたしております際には、そういう意味で自動車の普及といいますか、そういう点がある折れ曲がり点に差しかかっているという認識は十分持っておりませんでした。むしろ現在の状況からいたしますならば、道路交通の事情等からいたしますならば、若干むしろ消費抑制的な方向であってしかるべきではないかというような感じを持っておったことは事実でございます。その上に石油問題が起こってまいりました。そういうことからいたしますならば、こういう石油問題がなかったときに比べまして、さらに一そう石油消費の抑制ということについて考えられなければならないということがありました。消費の抑制なり、資源の節約なりという見地からも、この際この程度の増税であればお許し願えるんではないかというふうに判断をいたしておるわけでございます。しかしながら、そもそも全体といたしまして、経済社会基本計画も見直さなければなりません。そういたしますと、道路計画も見直しになります。特に、ガソリン税の場合には目的税でございますから、そちらのほうの見当がついてまいりませんならば、本来あるべき姿というものも最終的には決定できませんという情勢になってまいりました。そこで、いわばきわめて暫定的な形で、四十九年度の道路関係予算が、四十八年度予算と横並びであるということをひとつ見ながら、それからもう一つは、第七次道路計画との関連で、四十八年度の予算が四十七年度までと比べまして急激にふえました関係で、道路関係の予算の中に占めますところの特定財源比率が、四十八年度以来急激にダウンいたしましたということを一つ要素として考えました。四十八年度横並びである四十九年度におきましても、大体四十七年度までと同じ程度の特定財源比率ということで考えていったらどうかということで、いまの程度の所要額を算定をいたしたわけでございました。で、そのことが、一年間にどの程度自動車の使用者の負担増になるかということについて、それが耐え得るものであるかどうかということも、一応の検討はいたした次第でございます。
もう一つは、基本的に、特に燃料税につきましては、三十九年以来据え置きになっております関係上、ガソリン価格の中に占めます税負担率というものは非常に下がってきておるわけでございます。間接税の中で従価税 お値段に従って率をきめる従価税方式の場合と違いまして、従量税方式をとります場合には、やはり何年かに一ぺんは税率を改定する必要があるわけでございまして、そういたしませんと、相対的にものの値段が上がっていくこととの関連で、税負担率が下がっていくわけでございます。確かにガソリン税は決して安いわけではございませんけれども、しかし、一方から申しますと、三十九年には、現在の税率がきまりました程度には、小売り価格中に占めるガソリンの税負担率は六二%という非常に高い率であったわけでございますが、最近ガソリンの値段が上がった関係もございますけれども、今度百円になりまして、三四%程度になるわけでございまして、そこらを総合的に見まして、この程度の引き上げはやむを得ないのではないかというふうに考えたわけでございます。
しかしながら、いま非常に問題が不安定な状態にあることは事実でございます。道路計画のほうも不安定でございますし、ガソリンの値段のほうも不安定でございますし、自動車の使用が、場合によりますと、伸び率が屈折点に差しかかっているかもしれないという点でも不安定でございます。今後はそういうことをよく見直さなきゃならないという趣旨も含めまして、今回の引き上げは、二年間という暫定的なものでやってみたらどうかということにいたしましたのも、その辺を踏まえてのことであることをお含み願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/134
-
135・栗林卓司
○栗林卓司君 どうしてもそういった話になっていくわけですし、そういった話のほうがなじみがいいんですけれども、私が何で先ほど来申し上げているかというと、自動車産業あるいは経済全般ということから一切離れて、実際に国民がどんな暮らしをしているのかというどころに立って見直さないと、自動車関係諸税というのは実態が浮かんでこないんですということを再々言っているわけです。自動車産業というのは大切な産業だと大臣言われましたけれども、造船がある、鉄がある、自動車がある、それそれ内需、外需――輸出、国内含めて大きな役割りをしているわけですけれども、自動車の場合の一番の違いというのは、製品は国民に直接触れておるんです。ですから、自動車関係諸税というのは、自動車産業問題なんだ、そう短絡してお考えにならないように。これはあくまでも国民の問題であり、労働者の問題である。都心、周辺、郡部、そして地方、それぞれ異なった環境の中で起こっている問題なんだということを一番申し上げたかったわけです。
そこの中で言いたいのは、ほかの各省庁も同じですけれども、そういった目で、自動車の利用実態というのをもうそろそろ徹底的に洗ってみたらどうですか。もう二千六百万台からになってきている。そうなれば、自動車ということで何となくマイカーで一括していい問題ではないと思います。ナンバープレートだって緑と白の二種類だけでいいのかという話だってほんとうはあるはずだということも含めて、それぞれにお考えいただきたいと思うんです。
そうは言っても、産業問題がないとは言いません。これは一番最初に大臣に申し上げたとおりで、三月二十日現在というのは、昭和四十五年に比べてなおかつ二割落ちている。やっぱりここで感ずるのは、自動車が内需の屈折点に達するというのは二年前ぐらいにいわれていたんです。ところが過剰流動性がある、あるいはいわゆる調整インフレ政策がされるということで、景気の過熱が起こりました。したがって、ほんとうは将来へ属する需要まで去年一年間で相当先取りしちゃったんです。耐久消費財で一ぺん買ったらずいぶん持つわけです。東京周辺――先ほど来引用している資料ですけれども、そこの資料を見ておもしろいのは、あなたは新車を買っていますか、中古車を買っていますかと聞きますと、新車を買っている率がべらぼうに高い。というほど将来の需要の伸びまで先取りしちゃったんじゃないか。それを考えますと、いまの屈折というのは相当底冷えがしてくるんじゃないかと内心感じておるのです。
しかも、それだけでは済まない。先ほど来国民生活の話をしました。産業ということになったらほんとうは税だけではない。ガソリンが上がる。しかも、諸物価のはね返りで車の価格まで上がる。この上がり率というのは高い。当然需要に影響しないわけにはまいりません。その上にまた税を上のせするわけですから、正気ですかと私はほんとうは言いたい。しかも、来年になりますと五十年マスキー規制がいよいよ入ってまいります。四月以降はニューモデル、十二月からは継続生産車、このことによって車の値段というのは、いままでない部品をつけるわけですから安くなる理屈はありません。どのぐらい高くなると大蔵省ではごらんになっていますか。検討していないというなら検討していないでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/135
-
136・福田幸弘
○説明員(福田幸弘君) どういう形で公害対策車が完成するかが見込みにくいものですから、金額的にも正確ではございませんが約一割ぐらいではないかという見当でございまして、価格が上がるということは頭にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/136
-
137・栗林卓司
○栗林卓司君 正しくは、これは運輸省のほうにお調べいただいたんですけれども、一〇%から二〇%近く上がるんじゃないか、燃費のほうは一〇%から一五%ぐらい悪くなるんじゃないかというのが大まかないまの見通しでございますと言っておるんですよ。これはアメリカのEPAの調査によりますと、やっぱり一〇%以上コストが上がるであろう。向こうの二、三年前の資料で三百五十ドルアップといっておりましたから、大体一割以上。
ただ問題は、そういう動きに対して関心を持ってくださいということです、大蔵省として。産業問題ということになったらその話になります。それがさらに屈折点を深めていく。そのときに、いま今回の増税だけではなくて、これまでの五年ないし六年間で新車価格に匹敵するほどの自動車関係諸税をどうやっていじっていくのか、極端に言うと下げていくのかという局面に私は直面せざるを得ないんじゃないか。将来のことですから議論はしませんけれども、そういった可能性があるということと、そうなった場合に、先ほど来おっしゃっている産業への配慮という意味で、自動車関係諸税を抜本的に見直す御用意がございますか。
あまり質問が長くなっても恐縮ですから、最後にそれだけ伺ってこの次の機会に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/137
-
138・高木文雄
○政府委員(高木文雄君) 先ほど来申しておりますように、ただいまマスキー法関係のことをまたお触れになりましたけれども、それも含めまして、非常に問題は流動的であるといいますか、安定的でないということは間違いない事実でございます。そういう意味で、不安定でございますから、自動車関係諸税は絶えずいろいろな角度から見直しを行なわなければならないという点については、栗林委員の御指摘のとおりだと思います。
なお、先ほど来の御議論で一言触れさしていただきたいと思いますが、確かに自動車の利用者はいろいろな形態になっております。通勤の足の場合もありますし、身障者のように全く足になっている場合もありますし、通勤の足の場合にも、団地等の遠距離通勤の場合であるとか、それから農村地帯においてかなり遠方から工場その他に通う場合であるとか、いろんな場合があるわけでございます。
そういう事情を背景にして、どういうふうに一般に国民の方々は見ておられるかということについては、私どもも関心を持ったわけでございますが、適当な方法がございませんので、内閣の広報室を通じていろいろ調べてみたわけでございますが、これはサンプル数が非常に低いので、その意味においてどの程度の、何といいますか、これをたよりにして行政判断をしてよろしいかということについては、非常に問題がございますが、このときの調査の結果では、全体としては七割近い方々が若干自動車の所有者に負担をさらに求めてもいいのではないかということであり、当然のことながら自動車を持たない方々のほうは大体七割余りがそういう意見でありましたけれども、自動車を持っておられる方々も、四五%までは、何らかの財源を自動車関係利用者に求めてもいいのではないかという意見を出されたという事実がございます。しかし、これは一つには、もともと調査の対象人員があまりにも少ないということが一つと、それからもう一つは、この調査時点が、今回の石油危機の問題が起こります前でございましたので私どもも何もこの調査を根拠にしてガソリン税、自動車重量税を引き上げてもいいんだということを申し上げるつもりはございませんけれども、やはり先ほど来の御指摘のように、自動車関係者がどういうふうに車を利用しているかというふうなことも、またきわめて重要なポイントでございますけれども、そしてそれがまた所得階層別にどうなっているかというようなことも問題でございますが、自動車を持たない人方は一体どういうふうにこのものごとを国民の一人として判断しておられるかというあたりの問題もあるわけでございまして、今後の問題を考えます際にも、何らかの形で、どういう形式で調査をしたら、一体国民の世論的なものが求められるかということが非常に問題でございますけれども、そういう広く利用者、非利用者を通じて、この問題にどういう感じを持っておられるかということを調査をしたりいたしまして、また先ほど来御指摘の点も、できますならば、何らかの形で調査をいたしまして、今後の方針をきめるときの参考にさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/138
-
139・栗林卓司
○栗林卓司君 最後に、例のアンケートの点お触れになりましたんで、私のあれを拝見した意見を申し上げておきたいと思うんですけれども、確かにアンケート対象の数が少ない、それをここで問題にしません。ただ印象深かったのは、アンケートをされた中で、車を持っておる人の率のが多いんですね。半分以上が実際に車を所有しているわけです。というほどみんな持ってきたんだなという感じがまず一つしました。それから自動車の抑制について税を課することどうだと言ったら、いまおっしゃった比率で賛成だと言いました。これは、その気持ちは私もよくわかる。ここで一つ私が申し上げたいのは、どんな税にしますかと言ったら、大半が燃料税でしょう。これはたしかそのはずですよ。燃料課税を希望されていたはずです。そこで私が、これは実際に車を利用している人たちの人情の機微がある。燃料税というのは公平に映るんですね。長くドライブをしている人も、短い人も、車を持っているがゆえに同額というのはどう考えたってわからない。長い時間利用する人は、やっぱりよけいに車で道も道路もいためるわけだから税は負担しなさい、短くしか動かさない人はやっぱり税負担は少なくていいという公平感が裏にある。ですから、税をとっていいと。だからしたがって、車の保有そのものにかかわる重量税を倍増ということにはそのアンケートからはならないんです。しかも、ガソリン消費がどうなっているかと言いますと、これはラフな数字ですから正確かどうかわかりませんけれども、一九七二年アメリカを見ますと、年間台当たりガソリン消費量というのは大体三キロリットル、日本はどうかと言いますと、乗用車だけ抜き出してみますと、一・二二キロリットル。十年前、昭和三十七年に比べますと、三十七年が二・六五、何と五四%もガソリンを使わなくなってきている。したがって、ガソリンだったらまかして、もっと効果的に車を利用するという気持ちが背後にあるものですから税を取ることは考え方としてけっこうです。しかし、それはあくまでも燃料税という走行距離に比例した取り方でないと不公平ではないかというのが、私はアンケートの中に出ている気持ちだと思う。それと、だから、保有にかかわる車検のつど持っていかれる自動車重量税とイコールなんだということにはならないんじゃないか。それが先ほど来申し上げている個々の使い方が一体どうなのかということとからんでくるので、私は、あの資料はたいへん興味深く拝見しましたし、あそこの中で、もっと取ってもよろしいということの意見もよくわかります。ほかの資料で規制を強化していいかと言うと、大半の人は交通規制は強化すべきだと、みんなそう言う。裏返してみますと、それほど車は手放せなくなってきた。ですから、画一的ということで、さっき車を持たない人はどうするかと言われました。よく出る議論ですけれども、アメリカはたいへん車を持っている。ところが一軒で二台持っているのが大体二五%、一軒一台持っているのが五〇%、残り二五%は交通貧困者であって車を持っていない。この人たちの足をどう確保するのかというのが、最近の議論であることはおっしゃるまでもございません。しかし、このことと、地方においてはやはり自動車によらざるを得ない、線路を敷設する、パスをするといったって、あの広域経済圏の面の交通機関としては車しかない。東京二十三区の中で車というのはどだいこれはおかしい。では周辺部はどうか、郡部はどうか、これも議論としては、昭和四十六年の例の自動車重量税の配分をめぐって臨時閣僚協議会が総合交通体系を発表しました、考え方を。あそこの中でもはっきり線路は引いている。必需性が地方によってどう変わるのか、それに対して需要をどうやって誘導していくのか、作文はとっくにできている。ですから、一律に上げる、それは直間比率でこうこうだという議論は、私にはとうてい理解できない。ただ、おっしゃったように、産業対策ということになれば、今度は別な意味で申し上げたいことはたくさんあります。それはどうかということになると、これから車の生産販売がどこまで冷えていくのか、三月は別として、四月から六月、七-九の危機をどうやって渡っていくのかということになると、よほど目を開いて状況を見ておいていただきたい、これだけを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/139
-
140・土屋義彦
○委員長(土屋義彦君) 三法案に対する本日の質疑はこの程度といたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107214629X01319740327/140
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。