1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年四月十七日(木曜日)
午前十時十一分開議
出席委員
委員長 天野 光晴君
理事 内海 英男君 理事 梶山 静六君
理事 唐沢俊二郎君 理事 井上 普方君
理事 浦井 洋君
亀岡 高夫君 三枝 三郎君
田村 良平君 中尾 宏君
廣瀬 正雄君 増岡 博之君
三ツ林弥太郎君 三原 朝雄君
佐野 憲治君 阪上安太郎君
北側 義一君
出席政府委員
建設政務次官 中村 弘海君
建設大臣官房長 高橋 弘篤君
建設省計画局長 大塩洋一郎君
建設省計画局参
事官 大富 宏君
委員外の出席者
参 考 人
(経済評論家) 飯田久一郎君
参 考 人
(東京工業大学
教授) 石原 舜介君
参 考 人
(大阪市立大学
講師) 梶浦 恒男君
参 考 人
(早稲田大学教
授) 篠塚 昭次君
参 考 人
(宅地開発協議
会理事・愛知県
知事) 仲谷 義明君
建設委員会調査
室長 曾田 忠君
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委員の異動
四月十七日
辞任 補欠選任
大村 襄治君 三原 朝雄君
塩谷 一夫君 増岡 博之君
浜田 幸一君 亀岡 高夫君
林 義郎君 廣瀬 正雄君
松野 幸泰君 三ツ林弥太郎君
同日
辞任 補欠選任
亀岡 高夫君 浜田 幸一君
廣瀬 正雄君 林 義郎君
増岡 博之君 塩谷 一夫君
三ツ林弥太郎君 松野 幸泰君
三原 朝雄君 大村 襄治君
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三月二十九日
国土利用計画法の運用に関する請願(正示啓次
郎君紹介)(第一九〇二号)
四月九日
建築物による日影規制に関する請願(浦井洋君
紹介)(第二一六八号)
同(瀬崎博義君紹介)(第二一六九号)
同(松本善明君紹介)(第二一七〇号)
同月十四日
建築物による日影規制に関する請願外一件(大
久保直彦君紹介)(第二三二七号)
同(北側義一君紹介)(第二三二八号)
不動産管理に関する法律制定に関する請願(森
下元晴君紹介)(第二五〇四号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
四月十七日
不動産管理に関する法律制定に関する請願(森
下元晴君紹介)(第四八四号)
は委員会の許可を得て取り下げられた。
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本日の会議に付した案件
宅地開発公団法案(内閣提出、第七十二回国会
閣法第四三号)
不動産管理に関する法律制定に関する請願(森
下元晴君紹介)(第四八四号)の取り下げの件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/0
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001・天野光晴
○天野委員長 これより会議を開きます。
この際、請願取り下げの件について、お諮りいたします。
本委員会に付託されております請願中、第四八四号、不動産管理に関する法律制定に関する請願について、四月二日付をもって紹介議員森下元晴君から取り下げ願いが提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/1
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002・天野光晴
○天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/2
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003・天野光晴
○天野委員長 次に、内閣提出、宅地開発公団法案を議題といたします。
本日御出席をお願いしました参考人は、経済評論家飯田久一郎君、東京工業大学教授石原舜介君、大阪市立大学講師梶浦恒男君、早稲田大学教授篠塚昭次君、宅地開発協議会理事仲谷義明君であります。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございます。ただいま本委員会におきましては、宅地開発公団法案を審査いたしておりますが、本案につきまして参考人の方々の忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。
なお、御意見の御開陳は、お一人十五分間程度にお願いすることとし、後刻委員からの質疑の際、十分お答えくださるようお願い申し上げます。
なお、御意見の開陳は、飯田参考人、石原参考人、梶浦参考人、篠塚参考人及び仲谷参考人の順序でお願いいたします。
まず飯田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/3
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004・飯田久一郎
○飯田参考人 ただいま御紹介にあずかりました飯田でございます。宅地開発公団の設立について私見を申し述べたいと思います。
わが国の住宅水準が先進国の中で最も低いということは、その最大の原因は宅地の入手難、またはその価格の異常な高さというところにあると言われております。このことについてはすでに十数年前から指摘されまして、さまざまな施策が講ぜられてきたのでありますが、遺憾ながら見るべき効果がなく、最近まで宅地価格は急上昇の一途をたどり、その供給不足も一向に解消していないのであります。それに加えまして、近ごろになりますと、大規模な宅地開発あるいは公共住宅の建設というようなことをやりますと、学校、上下水道等公共施設の整備に財政負担が非常に重くなり過ぎるというようなことなどを理由にいたしまして、地元の地方公共団体がそれに反対するという事例も著しくふえてまいりまして、宅地の供給はますます困難になっておるというような状況でございます。
一方、最近地価がある程度鎮静しているということを言われておりますが、これも過去の不況時における地価の動き、あるいは最近の経済の他の部門におきまする状況を見ますと、やはり強い総需要抑制策の力によるところが大きいと考えられるのでありまして、景気が回復すれば再び上昇に転ずるおそれは相当あり、現にその徴候が一部であらわれているわけであります。
その上、今後の景気浮揚策の重点を住宅建設に置くというようなことを考えますと、ここで早急に宅地の供給増大と価格の安定ということを図る必要があることは当然でありまして、これまで成績が余り上がらなかったということや、先ほど申し上げましたような地方自治体の拒否反応というような新しい課題が出てきたことを考えますと、政府としても何か新しい工夫をこの問題についてする必要がある。その具体的な手段として宅地開発公団を設立しようというようなことを考えておられるのは、それなりに理由があるように思われるのであります。
では、この公団の新設によって政府が期待しておられるような効果が果たして上げられるんでありましょうか。その点になりますと、実は私は疑問を感ぜざるを得ない。この公団の設立と並行いたしまして、地価の抑制について別の対策を立てるということなしに、このままでこの公団を設立いたしましても、従来の住宅公団の宅地部門に対していわゆる屋上屋を架するというような結果に終わるおそれが非常に強いような気がいたすわけであります。
最大の疑問点は、果たしてこの公団が目的としているような大規模な宅地の入手ができるかということであります。
先ほども地価の鎮静は経済情勢によるところが大きいというふうに申し上げましたが、一部の企業あるいは不動産業者等が、金繰りに追われて投げ売りをする、一ころの時価に比べれば非常に安い価格で土地を売っておるという現象があります一方で、もとからの所有者、たとえば農家の人たちというものは決して安い価格で土地を売ろうということを考えていないというようなことがあるのでありまして、このようにもとからの所有者がいわゆる売る気を持っていないという状態の中で、特にこれから次第に景気が回復し、金融が緩和されていく中で、果たして何百ヘクタールというような土地をまとめて買うことができるのかということになりますと、大変疑問だと言わざるを得ないのであります。もっとも、そういう土地の入手は市街化調整区域において行うのであれば、これはすでに市街化区域への編入を考えて先買いをしているというような企業その他がございますのでそこでまとめてある程度土地を買うことは、これは可能かと思われます。
ただ、こういう市街化調整区域において大規模な宅地開発をいたしますということは、いわゆる線引きの趣旨からいっても、また国土利用計画に関する国民の信用を傷つけるという点においてもまた思惑買いをした人たちを救済するということにつながるおそれがある点でもやはり好ましくないことではないか。したがって、開発は市街化区域における開発を主体として行うべきだと考えるわけでありますが、そうなりますと、いま申し上げましたとおり非常にこれはむずかしい。
もしこういう大規模な開発がむずかしいということになれば、この宅地開発公団の特色の一つでありまする交通機関の整備あるいは公共施設の整備をみずから行うというようなことの意義も薄くなり、これではいわゆる行政の簡素化という要請が強い中で、その要請に逆行して新しい機構をつくるよりも、むしろいまある住宅公団の宅地部門を資金なりあるいは人員の面で補強する、あるいはいわゆる公共施設あるいは交通機関の整備についても、関係各方面がさらに緊密な協力をするということで済ましてしまった方がむしろ適切ではないかというように考える次第であります。
もっとも、先ほど申し上げましたとおり、この公団の設立と並行して新しい効果的な地価対策というものを打ち出すのでありますれば話が別であります。宅地開発が非常に急務であるという点から言って、もしそのような対策が実施されて大規模な宅地開発が十分可能であるということになれば、これはそのために別個の機構をつくる、宅地開発公団というものをつくってそれに専念させるということもまた考慮に値するように考えるのであります。
では、いま申し述べましたいわゆる効果的な地価対策というのは何かということについて、簡単に次に申し述べてみたいと思います。
ところで、これまで宅地開発が、これは公共的なものあるいは民間のものを問わず、どうもうまくいかなかったということの原因はどこにあるのかということを申しますと、簡単に申しますと、これは宅地という名前の製品、農地や山林というものを原材料にいたしましてそれを造成してつくり上げる宅地という製品の供給増大あるいは価格の安定ということだけに目を奪われまして、その原材料である農地、山林、原野というようなものをいかに安く手に入れるか、そういうものの供給をいかに増大させるかということについて、どうも十分な配慮がされていなかったという点にあると思われるのであります。
申すまでもなく、宅地を造成するためには、それと同じ面積の農地なり山林なり原野なりを買ってこれを造成しなければなりません。ところがこの造成というものは、その技術の進歩に大きな期待はできないので、結局宅地を安く大量に供給しようとすれば、原材料である農地、山林を安く手に入れなければならぬ、そのためにはそういうものの供給をふやすようにしなければならないということなのでありますが、この場合普通の商品でありますと、材料が足りなければこれを生産すればいいじゃないか、あるいはこれを輸入すればいい、そういうことが活発になるような手だてを講ずれば自然に価格も安くなる、供給もふえるわけでありますが、土地の場合は宅地の原材料である農地、山林の場合は生産することも輸入することもできない。したがって、何か別の方法でそういうものの供給をふやすということを考えなければならないわけでありますが、そのことについてこれまで何の手だてもなかったと申してはちょっと言い過ぎになりますが、少なくとも十分な手だてをされていなかった。そこに問題があるわけであります。
これまでやってきたことはといいますと、住宅公団なりあるいは民間デベロッパーが、売る気も持っていないような農地や山林の所有者のところへ出かけていって、何とかこれを売ってくれと頼み込む。しかも場合によると、複数の人たちがそこに競争して買いに行く。これではそういう土地を持っている人たちがますます強気になり、売り措しむようになる。高いものを買わなければならぬ。その結果として、でき上がった製品である宅地も結局高いものになる。しかも十分な量を供給できないというようなことになってきたのは、全く当然のことと言わなければならないわけであります。
さて、こういうように宅地の大量供給、安価な供給のためには、その原材料である農地、山林の供給をふやす、そういうものの売り物をふやすということが必要なわけでありますが、それにはどうすればいいか。これはなぜそういうものの供給が少ないかということの原因を考えて、これを除去することが必要だと思われるのであります。
御承知のとおり、わが国の地価というのは、ヨーロッパの十倍以上と言われております。これは生産の手段としても生活の手段としても非常に割り高である。したがって、もし生産や生活の手段であると考えるとすれば、これを売ってもっと別のものに買いかえた方がはるかに得なわけであります。ところが現実にはこれまで、また現在でも、土地を進んで売ろうなんという人はほとんどいない。いやそれどころか、土地を売ってもいいという程度の人もほとんどいない。これはなぜかと言いますと、人々は土地を生産や生活の手段というよりも、まず最良の財産である。財産保有の最も有利な手段であるというふうに考えているとろ に原因があると思われるのであります。戦後三十年ほどの間、地価が一貫して急上昇を続けまして、その結果土地を持っているということが、ほかの預金なりあるいは有価証券なりその他どういう資産を持っておるよりも、はるかに安全で有利であるということが事実によって証明された。その結果国民が、土地というものは最も有利なものである、最も有利な資産であればそれを手放してそれでもっとそれよりも不利なたとえば銀行預金、現金というようなものにかえるのは、これはそういう理由は全くないということを考えるようになった。そこに宅地だけでなくて農地にしてもあるいは山林にしても、すべての土地について売り物がない、売り物が非常に少ない、または買いに行ってもなかなか売ってくれないという原因があると思われるのであります。
さて、こういうふうに土地の売り物がないということの原因が、土地が最良の資産であるということにあるといたしますと、結局土地の売り物をふやすというためには、そういう土地が最良の資産であるという状態を消滅させるということが必要であって、それ以外に道はないと思うのであります。そしてまた逆にそういうことをすれば、土地の売り物はふえ、いわゆる供給はふえてくる。たとえば宅地造成をしようと思って買いに行っても、その買いに行った土地の所有者が喜んで売ってくれるというような状態が生まれてくる、こういうふうに思われるわけであります。
ところで、そういう土地から最も有利な財産だという性格をなくす方法は二つあります。
第一は、これは固定資産税などの土地保有税を強化するという方法であります。これを重くすれば、仮に土地が若干上がっても、その利益というものは税金によって相当相殺されてしまう。またそれだけでなく、毎年毎年税金を現金で払うということは、これは地主にとっては大変厄介なこと
であるというような点で、土地の財産としての妙味、財産としての有利さが減ってくるということであります。
この保有税の強化につきましては、一昨年、土地税制の改正ということが行われまして、その際若干の前進を見たのでありますが、遺憾ながらこれは大変中途半端なものであって、まだ土地が最も有利な財産であるというような性格をなくすというところにはほど遠い状況にあるのであります。
次に、第二の方法として、土地が最も有利な資産であるということをなくする方法としては、地価の規制ということがあります。地価を規制いたしまして、その上昇率をたとえば普通預金の利率程度以上に認めないということをいたしますと、いますでにわが国の場合は土地が非常に割り高になっているために、それを使って得られる収益の利回りというものは非常に低いわけでありますから、結局土地を持っているということは、むしろ有価証券や銀行の定期預金をしているよりも損であるという状態が生まれる。そうなれば、やはりこれは土地を手放して預金でもした方がいいというようなことを考える人がふえてくる、これが第二の方法であります。
昨年の暮れから施行されております国土利用計画法はまさにこの趣旨に沿ったものでありますが、この法律もいまのところ残念ながら、たとえば地価の上昇は一年に一〇%ぐらい認める、これは定期預金の利子なんかよりもはるかに高いわけでありますが、そういうようなことになってる。また、そういう上昇の規制も現実には十分効果的に実施できないような状態にある。たとえば坪数の小さい土地を売ってもこれは全く野放しになっておるというような点で、これはまた土地の最も有利な資産であるという性格を変えるまでには至っていないのであります。
したがって、土地の供給をふやす、土地の売り物をふやすというためには、こういう土地の有利さを相当程度なくすようにする必要があります。そのためには、たとえばいまの国土利用計画法に
ついて言いますと、少なくとも市街化区域全体ぐらいは規制区域に指定して、そこの取引は一切許可制にする。しかもその場合、その地価の上昇は年に三%、すなわち普通預金の利率程度に抑えるということが必要でありまして、それに土地の保有税というものをもう少し強化する。これは庶民に悪影響が及んでは大変でありますから、一般の所有者、それから普通の農民、あるいは借地人、借家人というものには悪影響を与えないような措置を講じた上で、大土地所有に対してだけはかなり重い税をかけるというようなことによって、それによって初めて土地というもの、これは財産として持っていわゆる労せずして利益を得るには不適当なものである。それならばよけいに持っている土地はこの際売っておこうというような形でもって土地の売り物がふえてくる。土地を売ってもいいという気が皆さんに起ってくるということが期待できるわけであります。
ところで、そういう地価規制にしても、保有税の強化にいたしましても、それをやるためには地価の適正な評価というものが必要であります。ところが幸いにこの地価の適正な評価をするための制度は現在あるわけであります。これは全国の土地の一筆ごとについて行われておる固定資産税の土地の評価でありまして、この評価を利用すればいいわけでありますが、ただ現在は遺憾ながら評価が時価よりも低過ぎる。また市町村によってかなりばらばらになっておるという点がありまして、これをそのまま利用するわけにはまいりませんが、ちょうど来年の一月に、三年目ごとに行う評価がえの時期が参りますので、この時期を利用して、この固定資産税の評価というものも、いわゆる地価公示制のもとの公示価格程度の適正なもの、時価によったものに変えるということを行って、それを土台にして先ほどから申し上げますような保有税の強化、あるいは地価の規制というものを行うべきだと私は考えるわけであります。もっともそういう保有税の強化なり、あるいは地価の規制というものを直ちに行うことには問題があるということでありますれば、この評価の是正、評価の適正化ということだけはこの際やるべきだと思われます。これをやっておけば、必要に応じていつでも保有税の強化も、またあるいは地価の規制もできる。その場合はいわゆる職員の増加という問題もなければ、不公平な課税という問題もなくなるわけでありますから、せめて固定資産税の評価の適正化、それによって国あるいは地方自治体による土地の評価の統一が行われるわけでありますが、それだけでもこの際やっておくべきである。それをやっておけば、やはり国民の土地に対する観念がかなり変わってくる。これはこんなものができてしまってはいつ地価規制が強化されるかわからぬ、あるいは保有税が強化されるかわからぬということで、土地が最良の資産であるという考え方が相当変化して、非常に土地が買いやすくなるということになるわけであります。
以上のように、ここで宅地開発公団を新設するのであれば、せめて土地の評価の適正化ということだけはぜひやっていただきたい、それでないと、せっかく新しい公団をつくられても、従来の住宅公団のやってきたことと余り違わないことになるのじゃないか、こういうふうに思う次第でございます。
御静聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/4
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005・天野光晴
○天野委員長 次に、石原参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/5
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006・石原舜介
○石原参考人 私は、現在審議中の宅地開発公団法が成立した場合に期待されます効果としまして、大きな点を三つばかり挙げたいと思います。
その第一は、都市基盤施設整備を中心としまして、市街化調整区域を主体にこういうような大量、計画的な開発をするということは、問題になっております市街化区域におきましても逆にそれを刺激しまして、宅地供給の促進だとかあるいは生産緑地の整備というようなことで、より健全な市街地を形成していくという刺激剤になるというふうに考えるわけでございます。
第二の点としましては、国土利用計画法に制定されておりますように規制の強化がいろいろ行われてまいりましたので、多少一時的に宅地の供給が促進されたような感がございますけれども、長期的に見ますとやはり供給は冷え込むおそれが多分にございますので、当然規制に合わせて供給促進策を考えなければいけないということでございます。そういう意味から、これを補完するものとしまして、こういう計画的な大量供給がぜひとも必要であるということを感ずるわけで、これによって初めて宅地政策が健全な規制と供給という両輪がうまく回転していくような姿になるのではないかというふうに考えるわけでございます。
第三点といたしましては、現在の宅地供給におきまして非常に問題になっております地元公共団体との関係でございますけれども、これがいろいろ工夫されまして、この法案内におきまして連携が強化され、非常にいままで問題になっております開発に伴う諸問題を積極的に解決を図っていこうという姿勢が示されておりますので、そういう点からも、こういう形から健全な市街地形成に役立つものだというふうに考えるわけでございます。
このような、大きく三つの点から、この法案の趣旨に関しましては私は賛成でございます。
〔委員長退席、梶山委員長代理着席〕
しかし全部が全部よろしいというわけではございませんで、やはりその運営に当たりましては種種留意していただきたい点がございます。その留意していただく点につきまして、五点ばかり挙げてみたいと思います。
まず第一点でございますが、これは皆さんも御承知のとおり、都市勤労者にとりまして大変住宅の取得が困難になってきております。もちろん、宅地債券等を通じましていろいろ今回宅地取得を容易にしようという方途は講ぜられておりますけれども、何分にも地価の高騰あるいは建築費の暴騰によりまして、年収に対しましても五倍以上の支出をしなければ住宅が取得できないというような現状にございます。そういうことから、一部には非常にあきらめムードといいますか、住宅の取得をあきらめてしまうというような現象も出てきておりまして、昨年私が東京都の区部につきまして区民の方々が住宅選好に対してどういうような選好態度を示すかという調査を行いました。その結果、非常に残念なことでございますけれども、庭だとかあるいは緑とかという環境に対します選好が非常に弱いのでございます。そして、こういうものをあきらめてしまって、住宅の大きさあるいは通勤の便益を何とか確保したい。もうそれだけでも何とか確保するのが精いっぱいだというようなことで、それを選好順位として非常に高く挙げているということが言えるわけでございます。
それほど現在の宅地問題というのは、環境を逆に悪化させるような状態に置かれておりまして、これを何とかいい姿へ持っていくためには、相当公共的に援助をして、そして公園や緑地を整備していかなければいけない、あるいは通勤のためのいろいろな施設もあわせて整備を図っていかなければ健全な市街地育成はできないというふうに考えられることでございます。
しかし、これらの費用がそのまま宅地価格に添加されますと、分譲価格がそれなりに非常に高くなりまして、住民から見ますと手の届かない価格になるおそれがございますので、十分その点の補助体系の整備を図っていただきまして、できるだけこれらの整備費が宅地価格に添加されないような方策を考えていく必要があるのではないか、かように考えるわけでございます。
なお、宅地債券に関しましても、物価の上昇その他による影響がございますので、この不安感を取り除くために、物価上昇分については国が補てんするというような措置を講じたり、あるいは宅地債の購入に関しましては特別の税制上の優遇措置を講ずるというようなことをあわせて行いまして、国民に希望を持たせるようにしてもらいたいと思います。
また、公団は土地を卸売りするというようなことをねらいにしておりますけれども、一定割合はやはり直接供給というようなことをいたしまして、宅地債券以外におきましても、土地を一部賃貸というような形にぜひ持っていってもらいたいというふうに思うわけでございます。
しかし、こういう賃貸制度ということになってまいりますと、現在の宅地開発公団で期待されております資本額ではとうていそれをカバーすることはできません。そこで、大都市にある事業所に協力を呼びかけまして、それらに一部の拠出金並びに課税その他の財源を求めまして、宅地開発公団で賃貸が一部行えるような制度を将来考えていくことが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。
第二点は、今日宅地供給におきまして焦眉の急と言われております地元地方公共団体との関係でございます。
本公団法で期待される効果の第三点としてこの点を述べましたけれども、これをさらに発展していくためには、地方公共団体が喜んでこのような大規模宅地開発に協力していけるような体制をつくっていかなければいけないのではないかと思います。それには、もちろん財政面の改善ということは当然でございますけれども、あわせて健全な市民生活の確立が行えるようなことを考えておかなければいけないと思います。
この公団は、特定公共施設を直接施行する権限が与えられ、また当面の財政負担を軽減する措置が講ぜられておりますし、これらの立てかえ施行に当たっては、償還条件等に対しまして改善が行われ、あるいは基金の設置等支出面に対しましては非常に配慮が行われておりますけれども、しかし、一面収入面に対する配慮が若干欠けている面がございます。特にこの公団法の法律の範囲を収入面は超えるということもございますけれども、しかし、運用によってはこの収入を増大させる方途も十分配慮できるというふうに考えるわけでございます。
たとえば宅地の供給に当たりましても、特定階層に供給が傾斜するというようなことになりまして、公共施設等におきましても集中的な需要が発生するような、今日までの住宅公団等の開発のようなことのないように、わりあい幅広い階層へ供給を行っていくというのも一つの方法かもわかりません。
それからさらには、一部に事業所等の誘致を行い、この事業所に対しまして宅地を供給するという特定分譲方式というようなものも考えまして、一体的な都市の育成ということを図っていくこともまた必要ではないかというふうに考えられるわけでございます。
さらに、健全な市民生活を確保していくために、現在最も深刻な問題になっております水と交通ということに関しましては、これを解決するための権能がこの公団に与えられておりますが、それが開発区域にとどまることなく、より広くその周辺にその効果が波及するような配慮が必要だと思います。そしてまた、関連公共施設も既成市街地との関連で開発区域の枠を超えた非常に柔軟な整備ができるような体質へこの公団をぜひひとつ持っていっていただきたい。そういうことによって、市町村が喜んでこの公団を受け入れ、健全な市民生活の確保を一段と図っていくことができるのではないかというふうに期待するわけでございます。
第三点は、日本住宅公団並びに地域振興整備公団との関連でございます。
特に日本住宅公団との関連においては、屋上屋を重ねる観が一部に感ぜられるのは否めないところだというふうに思います。しかし、住宅公団は現在の賃貸住宅を主体とする整備が主任務でござ
いますので、どうしてもこの開発に当たっては、住宅という枠を越えてなかなか整備の手を伸ばしていくことができないわけでございます。それが実は地方公共団体がこの住宅公団を拒否するという大きな原因を招いているのではないか、かように考えるわけでございます。
そこで、それでは住宅公団にこの宅開公団と同じような権能を与えればよろしいではないかということになるわけでございますけれども、もしもそういうことになってまいりますと、より大きな都市基盤施設整備ということが中心になってまいりますので、その業務というものは非常に膨大になり、しかもまた、こういうことが主任務になってまいりますと、住宅というものはその一部というようなことになってまいりまして、日本住宅公団の持っています本来の任務から多少逸脱するおそれがありますので、ここで別人格の、非常に強い都市基盤整備を中心とする公団を設立する趣旨がそこら辺にあるのではないかというふうに私は思うわけでございます。
そういうことになってまいりますと、その分担をはっきりさせまして、そしてこの都市施設整備を中心としまして、その中で住宅公団が賃貸住宅の建設、あるいは公営住宅におきましてもその建設や、あるいは一般住宅の建設などを同時に行うようにしまして、健全な社会環境ができるように、いろいろな階層の人が入ってこられるようにというようなことをすることが大切ではないかということを考えてみますと、住宅公団だけの手ではとてもそこまで問題解決ができないというふうに考えられますので、この公団を設立するのが適切であるというふうに考えるわけでございます。
しかし、とはいっても、この健全な市街地形成ということを考えてみますと、これはやはりその地域あるいは地方公共団体との関連が非常により密になってまいりますので、その位置の決定あるいは開発の範囲土地利用の内容、こういうものに関しましては、この地方との協議を十分重ねて、国が責任を持って行えるような制度にしていかなければいけないというふうに考えるわけでございます。
そうすると、当然そこに、国が責任を持ってということは、それだけ補助率あるいはいろいろな補助裏の採択率、こういうものに関しましても特別の配慮を行っていけるよう十分注意していただきたい。かように考えまして、国家的な援助体制の強化を特にお願いしておきたい、かように考えるわけでございます。
第四点は、環境破壊に対する問題でございます。
理論的には需要の絶対量が一定である場合には、これを一定地域に配分するのにどうしたらよいか、環境破壊を最も最小にする方法はどうかということを数式的に仮に解くとするならば、仮にその水準が一定という仮説のもとでは、これを疎に均等配分するのが一番自然環境容量の内でおさまるということで、これが一番環境破壊が少ないということになろうかと思います。
しかしこの過程は、いま申しましたように、自然環境の許容量が等しいという仮説の上に立脚した論理でありまして、もしも現在のように宅地開発が非常に低水準で、しかも先ほど申しましたように、周囲条件にはとても手が回らないような住民のふところぐあいでは、疎の状態にあればあるほど環境悪化を招くという逆の結果もまた考えられるわけでございます。
それに対しまして、公団は集中開発ということで、集積が大きいだけ破壊の度合いも大きいのではないかというふうに考えられますが、これはある面においては真でございます。たとえば河川の汚濁に関しましても、その河川沿岸に人口が集中的に配置されますと、自然浄化能力を越えてしまう汚水の排出が当然考えられるわけでございます。こういうことで、たとえば河川の水質基準BODで一〇ppmというようなことにしようといたしますと、下水道の浄化槽から排出されます水の濃度というものは一〇〇ppm程度になりますので、どうしてもこれを希釈しなければいけないということになるわけでございます。そうすると、その排出量が大きいと、これは河川容量に合わないということになる危険性がありますので、神戸市等におきましても、環境容量ということで一つの河川流域の人口抑制というような方策を打ち出しているのも、そこら辺に理由があろうかというふうに思えるわけでございます。
そういう意味から、集中ということにつきましてはおのずからある程度限度がございます。その限度をうまく事前に調査をし、そしてそのアセスメントのもとにこれを配置するということは、これは計画配置の場合には可能でございます。ですから、事前にこの自然条件を十分配慮しながら計画的に開発するならば、かえってこういう廃棄物の管理も十分行え、そして土地利用上に明確な区分をその面からも明示できますので、農業環境や自然環境を保全するというような点にもこういう計画開発の必要性が出てまいりまして、総合的に見まして、より環境破壊を縮小する方策であるというようなこともまた考えられるわけでございます。そういう点がございますので、開発に当たりましてはぜひ環境アセスメントを事前に行い、十分その辺のことを考慮して開発に当たっていただきたい、かように考えるわけでございます。
第五点として考えられますのは、民間宅地業者との関連の問題でございます。
かつてわが国の日本住宅公団が発足いたしまして、公団の住宅としまして標準設計あるいは新しい住まい方の提案などを行い、また台所用品等の規格化を進めてまいりまして、それが今日の住宅を改善していく上に非常に大きな役割りを果たしてきたことは事実でございます。
それと同様に、今日非常に世論の反発を受けております宅地開発に対しまして、自然の保全あるいは新しい宅地のあり方としましての宅地水準、道路網のあり方、こういうようなことを積極的に提案をいたしまして、一般市民へ宅地のあり方を提示すると同時に、業者もこれを範とするようなことを行っていけば、国全体の宅地水準をより向上させていく手だてになるのではないか、かように考えます。
それと同時に、街路設備やあるいは植栽等におきましても、この宅地開発公団の整備に伴いまして相当安定需要をつくり出すことができますので、一般価格への安定というようなこともあり、その健全な姿での普及を図っていくことができますので、この宅地開発公団によって、より一般の開発を向上させることが可能だというふうに考えます。
また、民間業者に関しましても、一部の土地をコンペその他によって民意をくみ取るというようなことをすると同時に、民間事業の推進もあわせて図っていくことが必要だと思います。この宅地開発公団だけですべての宅地が供給できるということは不可能でございますので、民間業者の健全な育成ということも十分あわせて考えておいていただきたいと思います。そのために経営面での多少のチェックはやむを得ないことだと思いますが、関連公共施設等に関しましては公団と同じような方式をあるいは適用できるように措置を講ずるということが必要ではないかと思いますが、今後の宅地開発全般における国家の管理が十分できるような体制をつくり上げていただくということを期待しております。
以上の諸点から、公団が一日も早くでき、国民が喜んで将来を期待するというようなりっぱなものができますよう、その運営につきまして十分の配慮をお願いをして、私の意見を終わりにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/6
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007・梶山静六
○梶山委員長代理 次に、梶浦参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/7
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008・梶浦恒男
○梶浦参考人 大阪市立大学におります梶浦です。意見を五点ぐらい述べさせていただきます。
初めに、非常に基本的な問題につきまして三点ぐらいお話ししたいというふうに思いますが、一つは、この宅地開発公団法ができましてこの種の大規模な宅造を進めてまいりますと、大都市のいま進んでおります肥大化した膨張がさらに進みまして、ひずみの大きい一点集中型の大都市がさらに著しいものになるのではないかというふうに思うわけです。
この宅開公団によります開発は、大規模な宅地開発を進めて、そこと都心を鉄道で結ぶというパターンをとっております。これは大阪の千里ニュータウンで日本で初めてその種の開発が進められたわけでございますが、こういうことをどんどんと進めて郊外に大規模な開発を進めてまいりますと、大都市の膨張がますます強められまして、長時間通勤を強いられる都市生活になっていくと同時に、都心の部分での都市構造がやはりいびつなものになって都市生活全体が快適なものでなくなってくるということがあろうかと思います。現在の東京、大阪のような肥大都市がさらに著しい矛盾を内包するということになるかと思います。
第一点としましては、この種の公的なニュータウン開発が行われますと、その沿線やあるいは周辺に民間その他のスプロールがさらに進んでまいります。それが都心への人口集中をさらに進めることになってまいります。
あるいは第二点に、ニュータウンと結ぶ鉄道が都心に入りますと、その入るターミナル部分に非常に巨大な過密集積をした地点が形成されてまいります。東京で申しますれば新宿、池袋、あるいは大阪で申しますれば梅田、難波、そういったところに地下街が著しく発達し、高密度な集積を持ったターミナルがどんどんとできておりますけれども、こういうものができ上がる基礎には、郊外の大規模な開発とそこの人たちが都心に依存する、そういう都市生活が開発の中でできていくわけでございます。
こういう大規模な地下街というのは非常に災害の危険を含んでいるし、また非常にハンディキャップを持った人たちの、たとえば階段の登りおりとかそういう苦痛を生み出す。すばらしい都市空間ではないと思います。こういう都心の過密をさらに進めるという問題があります。
三番目にはニュータウンが必ずしも快適な都市生活をつくり出さないという側面がございまして、生活圏がニュータウンと都心を結ぶ非常に広域的なものになることによって、たとえば生活施設の利用効率が非常に落ちるというようなことが、私は千里ニュータウンの調査をいたしましたけれども、購買施設やあるいは交通施設その他に見られます。
こういうふうに、現在住宅政策その他を考えましたときに、人口を抑制していく、大都市へのかかわりを持った人口を少なくしていくということが基礎として非常に大切でございまして、これは住宅宅地審議会の住宅部会の中間報告でも基礎としてこういうことが重要だということを指摘されておりますけれども、私も全くそのように思います。
この宅地開発公団による開発というのは、大都市の中からそういう大都市に通勤する人口を郊外に移して、そして移した後にさらにほかから人口が埋まっていくという形で都市が膨張していくことになろうと思います。
しかし、工場だとかそういうものを移して職住近接の都市にするのだという御意見がございますけれども、それは副次的なものだろうと思います。もしそういうことであれば鉄道をつくる必要はないので、セルフコンテインの職住の都市をつくっていくということで、これは別の課題になっていくと思うのです。やはり中心となるのは通勤の人口を生み出していくことになろうかと思いますので、こういう人口の集中を抑えていくということが大切な中でこの種の開発をすることに大いに疑問を持つ次第であります。
第二点でございますが、全国的な組織であります公団が大規模な宅地開発をすることは、私は、現在のいろいろな住宅政策の上からした重要な課題からすると、むしろ逆の方向ではないか。私はむしろ、現在の住宅政策というのは市町村段階が宅地の供給その他の重点を進めていく、重点を持ったものになっていかなければいけないのじゃないかと思っております。現在公共住宅の建設が市町村拒否に遭ってなかなか進まないという状況が出ておりますけれども、これは市町村が拒否する理由というのは、関連公共費の負担というようなことが非常に大きゅうございますけれども、それだけではなくて、そういう大規模な宅地開発が行われた後の各種の行政サービスの負担が大きいとか、あるいは緑だとか文化財をこれ以上壊したくないとか、あるいは人口がとにかくふえてもらっては困るのだというふうな意見が非常に多うございまして、そうして市町村の町づくりの計画に合わせてやはり自分のところで自主的に住宅の将来の建設のあり方なり人口のあり方なりを考えていきたいのだという意見が出てきているわけでございます。宅地開発公団法というのは全国的にそういう住宅供給を進めていく形でございますので、私はそういう自治体が進めていこうとしているものと逆行するのではないかと思うわけです。
自治体がこういう傾向を強めておりますのは、やはり住宅問題というのが、単に物的な一個の建築体を供給することで解決するのではなくて、いろいろな施設を含み、都市施設を含み、それからまた日照やさまざまな環境水準を町として整備していくということの中で現在の住宅問題が解決されるのでありまして、その町を整備し、建設するだけじゃなくして、これがずっとその後も一定の水準を持ちながら管理、運営されていくということが、長期にわたってそこに住んでいる人たちの住宅問題を解決していくものになるわけでございまして、そういう点から考えますと、そういうことを進めていくのは、これはやはり住民に一番密着した自治体であります地方自治体だというふうに思うわけであります。そこがやはり住宅供給なり人口の配分の実権を持つということが、現在のいろいろ出ております住宅問題を解決していく上での重要なポイントかというふうに思います。
この点は、先ほども言いました住宅宅地審議会の住宅部会の中間報告でも、「今後の住宅建設は良好な街づくりの一環として行われる必要があり、したがって住宅供給に係る計画策定にあたっては、住環境の整備と一体となった即地的な積み上げによる計画を中心とすべきである。」そして、「地方公共団体が公共住宅の供給及び管理の責任を負うものと考えられる。」というふうに申しております。やはりこういう方向というのは、私、現在の住宅問題を考えましたときに、大切な方向ではなかろうかというふうに考えるわけです。
第三点は、非常に重要な問題でございますが、宅地を公的な力でつくり上げて、それを個人に分譲するというのは大いに問題があるというふうに思っております。新住法というのは、収用権をもちましてある人の個人所有にあります土地を取り上げまして、そしてほかの人の個人所有に変えていくわけです。私は法律のことはよくわかりませんが、こういうことが許されていいのかどうか、大いに疑問でございます。ある人の財産を公権力によって収用し、ほかの人に預けるということですね、ほかの人の所有に変えるということがあっていいのかどうかということです。
しかも、これが公共性が非常に強いということであれば別でございますが、私はその点非常に疑問がございまして、たとえば千里で宅地分譲が行われておりますけれども、ここの調査では、非常に高所得者が入っておりまして、とても一般庶民というような人、そういう一般庶民の住宅に困っている人が住宅難を解決するために宅地を分譲されているというような実態ではございません。むしろ高所得者の財産を援助していくような、ふやすような手助けをしているのではないかというような感さえございます。
で、持ち家を持ちたいという人がいるから、それに対してこういう宅地分譲をしていくのだという考え方には、私は二つばかりちょっと飛躍があるのじゃないかというふうに思うのです。
一つは、各種の調査の中で、持ち家を持ちたいという調査の回答が出てくるというのは、現在の社会の中で、賃貸住宅の安くてそして比較的家族が成長した人たちに対応するような住宅が供給されてない、特に公共的な賃貸住宅の供給が薄くて、そういう住宅に入れない、それからまた、このインフレの非常にひどいところで自分の財産を保持していこうとするならば、やはり不動産に投資するのが一番有利だというこの社会的な条件の中で、それからまた、社会保障なりが十分発達してないようなこの国で、将来のことを考えますと、やはり不動産を自分で持つということが非常に大切な条件に置かれているわけです。その中で持ち家という志向が出てくるわけでございますね。これは、家を持っている人たち、持ち家を志向する人たちの意見を聞きますと、アンケートをとりますと、その辺がよく出ておりまして、子供の将来のためだとかあるいは生活の安定を図るためだとか、そういうためにやはり持ち家を持つんだというような回答が多うございます。
時間がございませんから次に進みますが、四番目には現実的な問題を少し指摘したいと思います。
一つは、現在住宅公団があって、そこでこの種の宅地開発ができるのに、どうして新公団をつくるのかというその必要性が私にはどうもよくわからないわけでございます。住宅公団で宅造を進めていけばいいのではないかというふうに思うわけです。
住宅公団が手いっぱいだという御議論があるようでございますが、現在のスタッフで手いっぱいだというのは、これはあたりまえのことなんではないかと思います。それはスタッフをふやしていけばいいし、現在の公団でできない理由、問題点というものを調べて、それを整備していく方法をとればいいのであって、新公団をつくる必要はないのではないか。そういう点では、この公団におられる、実際に住宅建設その他に携わっておられる方々の御意見というのは非常に貴重だと思うのですが、住宅公団の労働組合が昨年の二月に行われましたアンケート調査がございますが、これは必ずしも組合員とは限りませんで、係長以上の職員の方千七百人にアンケートを行っておりますが、この回答で、設立の必然性なしというのが五七%もございます。過半数を占めてございまして、必要性ありというのはそれほど多いものではございません。また、新公団が発展するだろうかという見通しについては、六四%がこれは困難じゃないかというふうに答えております。
また、同じ公団の労働組合の大阪支部でことしの四月に組合員のアンケートを行っておりますけれども、宅地開発公団が必要だというふうに考えているのは一〇%、住宅公団で十分だというふうに答えているのは七四%の高い比率になっております。実際に住宅建設に携わってこられたこの種の方々の御意見を尊重するということも非常に大切ではないかというふうに思います。こういう回答が出てくることを考えてみなければならないのではないかというふうに思います。
それからもう一つ、五番目は、果たしてこういう宅開公団というようなものをつくりまして開発適地があるのだろうかという疑問でございます。
私関西におりますが、関西では三十キロから四十キロくらいのところでこの種の開発をなさるということでございますけれども、私は、ほかの調査でございますが、最近大阪及び兵庫県の地方自治体をいろいろ聞いて回りましたけれども、そこのほとんどの自治体の意見というのは、もうこれ以上人口をふやしたくないのだ、特に四十キロ圏くらいの中の自治体の意見というのは、これはもうほとんど人口をふやしたくない、関連公共費の負担がどうこうというよりも、それをもっと超えて、とにかく人口をふやしたくないのだという意見が多いわけでございます。これがほとんどでございます。そういう自治体の圧倒的意見の中でこの種の開発がこれ以上できるのだろうかどうだろうかということは大いに疑問を持っております。
そういうことをやるよりは、むしろ現在の住宅公団でこなしていけばいいのであって、そこに行き詰まる問題があれば、それを解決する手だてを考えればいいというふうに思います。
以上のような意見を持っておりまして、新公団をつくる必要性はないし、つくってもどうもうまくいきそうにない、それだけでなくて、より各種の問題を生み出すのではなかろうかというふうに思います。そういう意味で新公団をつくるべきではないのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/8
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009・梶山静六
○梶山委員長代理 次に、篠塚参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/9
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010・篠塚昭次
○篠塚参考人 早稲田大学の篠塚です。私は、この宅開公団の問題につきまして、少し土地住宅政策の基本にかかわる問題点で意見を述べさせていただきたいと思っております。
この土地住宅に関する問題は、日本では御存じのように日露戦争のときからすでにずっと続いてきておるのです。今日事新しく起こった問題ではありませんので、何か当面の問題としてこの問題を取り上げるのは問題がある。これはすでにヨーロッパにおきましても、十九世紀の後半以来学界のこういう問題に対する取り組みの基本的な方向は固まっておるわけで、それは結局土地というものを所得の低い層に優先的に配分するという方針で、この問題はヨーロッパの土地立法の歴史を動かしてきておるわけです。日本でこの問題を考えようとする場合に、結局その基本的な問題の本質は、日本に特有な問題というものは原則として存在しない。したがって、ヨーロッパが一世紀の歳月をかけて形成発展してきた土地問題に対する対策というものは、やはり十分尊重をし、耳を傾けていく必要があるのではないか。その結果、結論として言わなければならないことは、効果のある方策を早急に実施すべきである、効果のあるかないかわからないようなこと、あるいはすでにヨーロッパの歴史の中で効果がないということがわかっているようなことを、改めて法の上に実現することはむだであるということなんです。
そこで、ヨーロッパの土地住宅政策は、いま申し上げましたように、所得の低い層に土地空間というものを優先的に配分するということですが、特に母と子の生活の安定ということが土地住宅政策の歴史の中心をなしておるのです。われわれ働き盛りの年代の者は、ねぐらがありさえすればそれほど土地空間に対する要求は強くない。ところが、小さな子供やそれを育てる母親にとっては土地空間というものは、われわれ外に出て働いている者には想像のできないほど重要な生活の本拠であって、これは所得が低ければ低いほどそれに対する需要の度合いというものが強まってくるわけです。住宅公団や公営住宅はそういう理念を掲げて発足したわけですけれども、果たしてこの宅地開発公団はそういう要求を実現することができるかどうか。
先ほど石原参考人の方から、所得の年収の五倍を超える経費を用意しなければマイホームを持つことがむずかしいというお話がございましたけれども、全くそのとおりである。あるいはもっと深刻ではないか。たとえば昭和四十八年度の住宅困窮世帯調査によりますと、住宅困窮世帯の六、七割の年収は百六十万円ということになっておるようです。そうすると、これを五倍しましても年収八百万円ですから、今日八百万円で首都圏の中で良好なマイホームを求めるということは恐らく相当に絶望的な状態ではないか。そうなると、年収の十倍以上ということになりまして、通常の経済法則ではもはや購入することができない。
この問題は、一見すると需要と供給の調節によって解決できる問題であるかのような誤解を抱く人が非常に多い。普通の工場生産の商品の場合でも単純な需要と供給で社会生活や経済の原則で動いていないことは、独禁法の改正の問題を見れば明らかなとおりなんですけれども、土地については、これらの工場生産商品の性格をはるかに越えた独占的な性格が非常に強い。しかもその独占というものが、その土地を独占することによって普通の経済法則を越えた利潤を予定するために独占というものが続いておるというところに大きな問題があります。したがって、この問題は単純な経済効果の問題を越えて、すでに人道的な問題に到達しておるのです。したがって、十九世紀のヨーロッパの土地問題に対する取り組みの基本的姿勢が、所得の低い層、特に母と子の生活の本拠を安定させようということ自身の中に、所得の問題を越えて人道的な見地というものが土地住宅問題を処理する基本にならなければならないということをはっきり示しているということが言える。
さてそうすると、結局、土地住宅政策の基本は持ち家政策でいくのか公共賃貸住宅でいくのかという、現実的な政策の選択の問題になってくるのです。
この問題は、もちろん持ち家政策で処理することができれば国の財政的負担も自治体の財政的負担も軽くて済むわけですから、これが一番いいことは疑いを入れない。ところが土地というものは必ず通常の所得階層の賃金水準を超えるという形でその価格が形成されます。地価が下落するということは、昭和初期のパニックのような異常な金融恐慌があったようなときでなければ原則としてあり得ない。国土利用計画法の制定以来、地価がやや下落ないし鎮静化に向かっているという情報もマスコミ等でしばしば伝えられておりますけれども、これは私の見るところでは、国土利用計画法の功績ではなくて、やはり金融引き締めの単純な結果であるというふうに考えてほぼ間違いないのではないか。したがって、最近の金融政策の転換、特に景気刺激のために土地住宅に対する公共投資の促進、これらは必ず地価を刺激して再び上昇傾向を促進するに違いない。そのときに国土利用計画法がいかに無力であるかということが恐らく実証されるだろうというふうに私は考えておるのです。
したがって、持ち家政策というものは、それ自体が土地住宅というものに対する自由主義的な経済の原則を適用しようとする考え方であって、しばしばヨーロッパにおいても保守党の政策の中でこれが取り上げられてきております。しかしそれにもかかわらず、ヨーロッパにおける一般的な土地住宅に関する経過を検討してみますと、必ず公共賃貸住宅の優先主義というものが常にその底流に働いておる。したがって、低所得層あるいは中間所得層に対してはあくまで公共賃貸住宅を優先させるという住宅政策が、これは単なる選択の問題ではなくて決定的な政策として常に浮かび上がってきておるのです。
この点、日本ではしばしば持ち家に対する庶民の関心が強い。低所得層でも持ち家を希望するという傾向が指摘されております。これはまさにそのとおりであって、日本の低所得層でも、たとえば二十坪の土地に十坪の家が売り出されますと、借金をしながらそのマイホームを購入しようと殺到してきます。しかし、この庶民の中にある持ち家志向性というのは、本来土地住宅政策の中で出てくる持ち家政策とは違いまして、これは現在の公共賃貸住宅や民間の木賃アパートの居住条件というものがいかに劣悪であるかということの反映であって、本来の持ち家政策とは性格が異なるものなんです。
農村、特に土地問題を処理しようとするときにもう一つ問題となるものに、農地に対する買収の方法がいつも法律上の問題として浮かび上がってきておるのです。恐らく、この宅開公団が予定している作業も、市街化調整区域の中で相当広い農地を買収するということを予定しているのだろうと思いますけれども、なかなか、この買収に成功する可能性はない。結局、かなり高い地価で土地を買収しなければならないだろう。そうすると、この宅開公団が造成して分譲する土地の価格というのは、本質的には自由経済の法則をもっと悪い形で適用する結果になり、普通のサラリーマンがこの土地を入手したとしても、その上に自分の資金によって建物を建築するだけの余力は恐らく残らないであろう。したがって、これからの住宅政策としては、やはり土地と同時に、その上に建つところの建物そのもの、上物も同時に一つの空間という概念によって配分する政策が必要であるというふうに私は考えております。
現在の住宅ローンを利用して民間デベロッパーの土地を購入している階層を見ましても、そのほとんどが大企業の部課長クラスであって、普通の中小企業に働く勤労者、サラリーマンあるいは中小企業の従業員等は、ほとんどそのようないわゆるマイホームと呼ばれるような住宅に入居できる可能性はありません。土地住宅政策というのは、その土地、住宅を購入するために自分では資金が準備できないという階層をやはり優先させて考えていってあげるべきものではないであろうかというふうに考えます。したがって、宅開公団というものが土地購入、造成費その他の諸経費を一つの原価として計算して、これを住宅困窮者に配分しようという、その考え方自身は確かに評価できる点がないとは言えませんけれども、だれがその土地を購入するかということが問題である。そうすると、結局その土地を購入できるものは、普通の労働者、サラリーマンの収入を超える所得のある層に限定されてしまうであろう。
それからまた、もう一つ土地の大きな開発を進める際に考えておかなければいけないこととして気になるのは、土地の需要圧力というものが現在の法体系を前提としてしか考えられていないという点に大きな問題がある。
たとえば、一つの日照紛争などが起こりますと、どういう経過をたどるか。外から見ておりますと、大体半分以上の人はその土地を立ち退いてほかに移ろうという動きを必ず始める。もっと露骨なのは、立ち退くための経費をよこせという形でマンションの業者と交渉を始めている。つまり、都市のさまざまな日照の阻害であるとか排気ガスであるとか騒音であるとか、環境の悪化によって現在の土地や建物を離れなければならないという、これが需要圧力の相当の部分を占めているのではないか。
それからもう一つは、都市住民の過半数は借地借家人階層を形成しております。
東京には三百万戸の家がありますけれども、二百万戸は借家ということになっておるのです。これは公共賃貸住宅を含めた数字ですけれども、残る持ち家の百万戸の中には借地人階層がおるわけですから、東京ないしその周辺の居住者の七割以上は借地借家人階層であると考えることができる。そうすると、これらの借地借家人階層としては、地代、家賃の負担が地価の上昇に連動した形で立法が存在しておりますので、高い地代、家賃を払うならば、結局最後に土地や家が残るマイホームの方が得であるという、この選択によって土地を求める層が相当に多い。したがって、これもまた土地に対する需要圧力増大の大きな要因になっていると考えられるのです。
したがって、このような需要圧力の解消としては、都市の内部における現在の環境の整備を思い切ってやることである。それから、借地借家人階層に対する借地法や借家法の改正を思い切って実現することによって、現在の土地空間の中で居住の安定を保障してやることが必要ではないか。そうでなくて、現在の劣悪な法的、物理的、自然的な環境条件を放置したままで、土地の需要圧力があるという理由のもとに都市の周辺に巨大な開発をするということは、その開発自体のもたらす環境破壊もさることながら、都市の内部における環境の整備を怠らせる大きな要因になりはしないかということを私はいつも恐れております。
したがって、宅開公団といたしましては、そういう点を配慮して、むしろ早急に現在の環境整備に何らかの根本的な改善の方途を講ずるように努力すべきであって、そのためには現在の住宅公団をフルに活用することが必要ではないか。特に土地空間の配分については所得の低い層を対象とすべきであって、現在の住宅公団も、その建物の建築資金の中に、御存じのように、民間金融資金を大幅に導入しております。これについては国の利子補給等が行われておりますけれども、そのような民間金融資金の住宅公団資金への流入の結果、結局住宅公団自身もいろいろと事業の範囲に制約を受けざるを得ない結果が出てきているように思われる。したがって、この宅開公団については土地だけを供給する、もちろん、供給された土地を住宅公団が手に入れて建物を建てるということもあると思います。あるいは地方自治体がその土地を手に入れて公営住宅を建てるということもあり得ると思いますけれども、やはり土地と建物は一体として一つの空間を形成し、人間の生活の本拠をなすものであるという前提のもとに考えていくことが必要ではないか。そう考えてみると、むしろ住宅公団の現在の機能を拡大強化することによって、新しい住宅政策の理念を担わせる主体として住宅公団をよみがえらせることが必要であろう。
この場合に特に注意しなければいけないことは、宅開公団の設立によって一挙に大量の宅地が開発されるかのように誤解する人がありますけれども、私はそういうふうには思うわけにはいかない。それは現在の住宅公団の宅地開発部門の作業がやや停滞ぎみであるということは私もよく承知しております。しかしこれは、地価の暴騰によって土地の入手がきわめて困難になったという国の土地政策の欠陥がそのまま住宅公団の宅地開発作業停滞の決定的な要因である。それと同時に、環境破壊に対する各地域住民の反発というものに対する住宅公団の対応の姿勢が依然として難渋している点に問題がある。もちろんこれはどこかで最終的に解決しなければなりませんけれども、地域住民の環境破壊に対する要望を力によって押し切って宅地開発をする時期にはまだ到達していないであろう。特に宅地開発公団の問題の中で、環境アセスメントに対する原則が導入されていない。したがって、この環境アセスメントに関する原則を除外した状態のままで宅地開発をやろうとしても、恐らく地域住民との力の対決だけが待ち構えていて、住宅公団の宅地開発の作業が停滞しているその事情を宅地開発公団も改めて思い知らされる結果になることは疑いを入れない。
したがって私は、宅地開発公団の設立は、現在の土地住宅政策に関するビジョンがきわめて不安定である、それから環境アセスメントに対する配慮が依然として欠落している、こういう点のもとで宅地開発公団を設立することは望ましいことではないというふうに考えております。
細かい問題については、後ほどあるいは御質問等があるかと思いますので、そのときにまた私の意見を述べさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/10
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011・梶山静六
○梶山委員長代理 次に、仲谷参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/11
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012・仲谷義明
○仲谷参考人 皆様方からそれぞれお話もございましたので、私からは簡単に意見を申し上げたいと存じます。
土地の問題につきましては、いろいろなことをそれぞれ考えてみて、いままでもやってきているわけでございますけれども、なかなかこれはという決め手はございません。一つだけでうまくやるということはなかなか困難であろうと存じます。それだけに、今回の宅地開発公団もいままでの弱点を補うにはどうしたらいいかという点からできた一つの考え方であろうというふうに存じておりますが、私どもの立場から申し上げますと、大規模な宅地開発もやはり必要はあるというふうに考えております。
私はいま名古屋に住んでおりますけれども、大都市周辺部におきますいわゆるスプロール化と申しますか、これは昭和三十年代半ばぐらいからどんどん始まったわけでございますけれども、この集中というのがようやくおさまりかけたとはいいながら、名古屋市なら名古屋市の周辺の都市をながめてみますと、いかにもこれは都市というにはお粗末ないろいろな要素がございます。このままほうっておいた場合には何か不安定な一種の吹きだまりみたいなかっこうになっていくのではなかろうか。そういうふうに考えてみますと、あと二十五年たつと二十一世紀ということになりますけれども、後世の人から見て、どうも二十世紀の終わりごろやった仕事というものは大ざっぱであったというような批判を受けるのじゃないかという感じがいたしております。
それからまた、大都市そのものにつきましても、社会増の方はとまって、そして先ほどもお話がありましたように、いわゆる人口抑制策とかあるいは人口の誘導についての規制とか、これは私もいろいろな角度から考えてはいるのですが、言うはやすく行うは大変むずかしいことでございます。しかし、私どもの県でも新しい計画はかなりそういうことを盛り込んでやろうと思っておりますが、それにもかかわらず、社会増はある程度とめれても自然増というものはとめれません。それだけでもなかなか大変な数字になってくるようでございます。したがいまして、住宅難というものは大都市においてもやはり問題として残っておる。こういうふうに考えてみますと、大都市あるいは大都市周辺地域について、いままでの手法を延長するだけでいい知恵が直ちに浮かび出るということはなかなか困難であろうというふうに考えるわけでございます。
しかもなお、この住宅問題というのは、単なる建物があって土地があってその上に住むということではなくて、やはり人間の生活そのものについての一種の心のよりどころであるわけでございますだけに、私どもとしては相当大胆な考え方がこれからも必要ではなかろうかというふうに思いますけれども、いままでのやり方を少し反省してながめてみますと、民間デベロッパーというものがかなり中心になってやられてまいりました。そして最近のいろいろな諸情勢から、今度は民間デベロッパーの活躍もぐっと落ち込んで鎮静化してきております。しかし、私どもが基本的に考えますことは、民間は民間の活力を利用すること、これは大変結構ではございますけれども、どうも民間でおやりになります場合には、町づくりといいますか、公的な面との調整が大変いままでまずかったということでございます。
〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕
したがいまして、国土利用計画法とかあるいは都道府県、市町村等でやっております諸計画とのいわゆる整合性、これが大変にむずかしい、あるいはうまくいっていない、あるいはまた先ほど来お話しありますように、関連の公共施設あるいは公益施設の整備との関係において、ときにいろいろなトラブルが起こってまいります。そういう点の問題がございますが、それにもかかわらず国民の土地に対する必要性というものは高いものがございます。
そうなりますと、ともすれば民間デベロッパーに頼っていますと、安いもので悪いもの、あるいは先ほどのお話にあったようなやや高級なもので相当上の層をねらったもの、こういうものがとかくでき上がりがちでございまして、本当に必要のあるところへいかないおそれがございます。あるいはまたいわゆる環境保護等につきましても民間デベロッパーの努力もかなりされてはおりますが、どうも十分ではない。
こういうふうに考えますと、やはり限界があるわけでございまして、最近いろいろな日本住宅公団あるいは都道府県とか市町村というような地方公共団体あるいは住宅供給公社、それぞれの知恵でやっているんですが、それぞれの問題にやはりそれぞれの難点がございます。
したがって、そういう点について何らかの補う必要があるではなかろうか、こういうふうに考えてまいりますと、今回の宅地開発公団のあり方というものの中には、その不十分さについて着目をして、かなりの程度で補える努力がなされている。しかし、これは完全だというふうに私は決して申し上げません。まだまだ問題点はあろうと思いますけれども、一般論からいえば、一つは、より強力な公的機関をつくるということが大都市周辺においては必要であろう、そういう意味でこの法案は大きな意味があるわけでございます。そしてまた先行的に、かつ計画的に町づくりを行うことを通して、宅地の大量供給を図ろうという両方の調整を図っていくことが今度はどうもある程度できそうだという一つの期待を私は持っております。
したがいまして、今度の公団法で評価できる点としましては、一つは地元公共団体との協調体制を強く打ち出していることでございます。地元公共団体を加えた協議会の設立、あるいは地方公共団体からの非常勤理事を入れる、あるいはさらにそれ以上のお考えがあるかもしれませんが、要するに従来の日本住宅公団も私どもといろいろなおつき合いはございました。しかし何か一つやはり違ったあれであるという感じがありましたのが、今度はいわば向こうから近づいてくるという感じでございまして、これは私は一つの評価すべき点であろうと思います。
二つ目には、従来大規模な宅地開発等で府県なり市町村が困っておったいろんな財政負担問題、これの軽減のための措置がかなり大胆に講じられているということでございます。これは私はやはり評価していいことではなかろうかと思います。
三番目に評価すべき点は、やはり足と水の問題。この点について公団みずからがときには乗り出そうという意気込みが見えている。これはなかなかむずかしい問題があろうと私は存じますけれども、その姿勢というものについては評価すべきではなかろうか、こんなふうに考えるわけでございます。
したがいまして、私は、三大都市圏にとって、こういう公団というものが、一挙に初めから活動はできないでしょうけれども、徐々に仕事を進めていかれる場合には、やはり相当大きな効果というものも将来としては期待できるのではないかと存じます。
しかし、私としても若干危惧がありますので、その二、三の点だけ申し上げておきますと、一つは、愛知県なんかにおきましても、桃花台ニュータウンというようなかなり大規模な宅地開発事業を行っておりますが、こういう事業と地元市町村との調整、これは大変むずかしい問題がございます。そして県と市町村との間においていろいろなやりとりもあり、市町村のためにわれわれ努力いたしているわけでございますが、そういうものと今度の公団との差が余りにもひどくなりますと、われわれがやろうとしておる新しい宅地開発の問題がかえってむずかしくなる。だから、整合性というように言えるかもしれませんが、ある程度はバランスがとれてないと困るわけでございます。したがって、そういう点もお忘れのない配慮を建設省にぜひお願いを申し上げたいと存じます。
あるいはまたそれに類似したことで、地元市町村におけるいろいろな学校とか保育所等の国庫補助率の問題あるいは超過負担の解消の問題、こういう細かい点についても配慮をしていただくと同時に、あるいは宅地開発との関係の河川改修あるいはバイパス道路の建設というような、いわゆるそれに付帯する事業についての財政負担に対する配慮、こういう問題について公団法でお考えになるとすれば、それ以外の県なり市町村がいろいろやっておる事業についても相当な配慮がないと、公団ではこうやっているじゃないかというようなことが全国至るところに波及した場合には、ほかの方にブレーキがかかるということにもなりますので、その点の御配慮をお願い申し上げたいと存じます。
最後に、五百ヘクタール以上というようなことが言われているというふうに聞いておりますが、私は、三大都市圏でときには五百ヘクタール以上の適地もあるかもしれませんけれども、それに余り深くこだわり過ぎて、ただ大きければいいのだというだけではなくて、これは住宅公団とのいろいろな調整もありましょうけれども、その辺についてもひとつ弾力的な運用ができるようなこともお願いを申し上げておきたいと存じます。
いずれにいたしましても、私は、この公団によって都市対策が一挙に解決するというような大きな期待はいたしてはおりませんけれども、いまのままではやはり問題が残る、それを当面解決するにはこの公団法というものは一つの大きな位置づけとして評価できる。このような意味から私は、やはり賛成の立場から御意見を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/12
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013・天野光晴
○天野委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/13
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014・天野光晴
○天野委員長 これより質疑に入ります。
なお、質疑の際には参考人を御指名の上お願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。唐沢俊二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/14
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015・唐沢俊二郎
○唐沢委員 参考人各位におかれましては、御多忙のところ、貴重な意見を聞かしていただきまして、本当にありがとうございました。
二、三伺いたいのですが、まず石原参考人にお伺いいたします。
石原先生は、三点を挙げて宅開公団設立に賛成せられたようでありますが、宅開公団の宅地開発事業は、市街化調整区域を主体に計画的に開発整備することで、これは市街化区域にもよい刺激になるとおっしゃいましたけれども、逆に市街化区域の整備を放置してスプロールを大都市周辺の外縁部に拡大しやしないかという懸念も反面あるわけであります。その点について簡単にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/15
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016・石原舜介
○石原参考人 この点につきましては、私は、特に市街化区域内におきまして、地主等が土地の売り惜しみというのがわりあい高いわけでございます。それからまた、基盤整備も若干おくれております。そういうことで、市街化調整区域と申しましても、やはり市街化区域と何らかの関係のある区域でございますので、極端な外縁的発展はそれほどできないのではないか。そういう点では、計画の位置決定等に関しまして十分調整を図っていけば、これらの点も十分カバーできるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/16
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017・唐沢俊二郎
○唐沢委員 もう一点、石原先生にお伺いをいたします。
先生は、今後の宅地開発全般は、ある程度国が責任を持って管理できる体制をつくり上げていくべきであるというお考えのように拝聴いたしております。現在、民間デベロッパーが果たしている役割りが約八割ぐらいあると思います。私は自由主義者ですから、できれば民間が主体で、足らざるを政府が補うというのが至当だと思うわけでありますけれども、今後の公的開発と民間開発のシェアは端的にどのくらいが妥当であるというふうにお考えになっておるのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/17
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018・石原舜介
○石原参考人 この点に関しましては、私、確固たる意見というものはございませんが、おっしゃるように、現在のところは約七割ないし八割ぐら
いが民間でございます。しかし、国が今後責任を持たないといけないというのは、宅地の高騰その他を、国土法にありますように、ある程度規制、管理していくというようなことを強化し、並びに
この宅地開発自体に対しましても、ある程度の援助をするかわりに、その見返りとしてある程度の管理が必要だと申し上げているわけで、その国家的な管理と申し上げた前段の部分は、公団と類似した公共施設整備に対する援助を行う場合にはある程度の国家的管理が必要だという意味で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/18
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019・唐沢俊二郎
○唐沢委員 どうもありがとうございました。
次に、梶浦先生にお伺いいたしたいと思います。先生は非常に基本的な問題を挙げられましたが、私、その基本的な問題についてお伺いいたしたいと思います。
先生は、ニュータウンの開発は大都市への人口集中を認めているものではないか、あるいはそれを助長するものではないかというお考えだろうと思うのです。それは私、理論的というか理想論から言えば、先生のおっしゃるとおりだと思います。しかし、残念ながら諸外国でも、特に先進国におきましては、大都市への人口の集中というのは避け得ないというような観点に立って施策を立てております。したがいまして、それは何かと言いますと、ニュータウンの開発であり、ニュータウンから都心――都心といいますか市街地の中心へ運ぶ交通機関、新交通システムの発達に私はつながっておると思うのです。ですから、市街地に臨接するところを開発した場合は、アメリカのPRTとか、それからドイツのトランスアーバンの構想がそうだと思うのです。そうしますと、先生のおっしゃるように、大都市の周辺には適地はないではないかということが出てくるわけですね。そうしますと、今度は遠くにニュータウンをつくる。そうしてフランスのアエロトランとかドイツのトランスラピッドみたいに、超高速で都会の真ん中へ乗り入れさせるというやり方、二つやっておりますね。しかし、後の方も、先生のおっしゃるように、昼間は大都市に人口が集中するから、大都市にはそれを消化する能力がないではないかとおっしゃるので、確かに先生のおっしゃるのは私は一理はあると思うわけであります。しかし、いま申し上げましたように、大都市への人口集中はもう世界的現象なんだ。しかも、このように国際競争が激化すると、大港湾のあるところに工場をつくらないと国際競争力はなくなるんだというような問題もあるわけですね。そうしますと、先生のおっしゃる基本的な問題に立ち返って、果たして大都市への人口集中がいけないのかどうかという問題になります。
それから、さもなければ、地方へ人口を分散するには一体どうしたらいいか。その解決策がなければ、やはり政府とかあるいは地方自治体の仲谷さんみたいな知事さんは一体何をやっておるのか。そうすると、大都市に現在住んでいる人の住宅難を解決して、健康で文化的な生活を送らせる。さらに、都市周辺のスプロール化を防ぐというためには、何かやらなければならないと思うのです。
そういう意味で、いま愛知県知事さんがいみじくも一歩前進であると言われた、私もそのとおりだと思うのです。諸外国でもそういう手だてをしているときに、日本だけがニュータウンの建設もやらぬ、新交通システムの開発もやらないということでは、国家として国民に対して十分な責任と義務を果たしたことにならないと思うのです。その点につきまして、先生は、これは世界的な傾向であってやむを得ないとお考えなのか、世界的傾向に相反した方がよろしいというお考えなのか、基本的な問題についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/19
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020・梶浦恒男
○梶浦参考人 大問題なんですけれども、世界がそうだから日本もやれというのは、それだけではちょっと私、疑問に答えるのにどう答えていいのかわからないのですが、大都市への人口集中、それがしかし日本の場合は非常に異常でございまして、非常に短期間のうちに非常に異常に人口が集中させられている。私は、この宅地開発公団法というのは、少なくとも大都市における住宅問題の解決のために出されてきているものであれば、それを解決するときの方策として、やはりそのことがさらに人口を集中するようなものになってはならない。やはり人口を抑制していくということ、この人口の集中の傾向を弱めるような政策があってしかりであって、それをより進めるような政策になってはならないんじゃないかということでございます。
それからもう一つは、現在の日本における大都市というもののつくり方が、東京だとか大阪のように、大都市への人口集中が多いということだけじゃなくて、それが非常に一点集中型の都市構造を持っているわけでございます。大阪だったら大阪の都心部、東京だったら東京の都心部に郊外からずっと人口が集まってくるという、非常に遠距離通勤をして集まるというような都市の構造になっているところに、その構造のあり方というのに非常に大きな問題があるし、そういうものを進めていくような開発の仕方なのではないか。もっとそれぞれの職住の近接した町のつくり方というものを、やはり大都市における構造としても考えていかなければならないんじゃないか。
それから、都市への人口の集中をどういうふうにおさめていくかという問題につきましては、やはり産業政策その他非常に広い観点からの考え方が必要でございまして、特に農業だとかあるいは漁業だとかあるいは各種の地場産業、そういったものの振興その他と結びついた政策が必要でございまして、そういう観点から、いままでの高度経済成長型の政策というものでは、都市への人口集中ということがより進むことになるんではないかというふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/20
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021・唐沢俊二郎
○唐沢委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/21
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022・天野光晴
○天野委員長 井上普方君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/22
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023・井上普方
○井上(普)委員 先生方、御苦労さまでございます。貴重な御意見を拝聴いたしまして、本当にありがたく存じております。
飯田参考人にちょっとお伺いしますが、地価対策が一番大事だ。結局、住宅公団の宅地部門を強化すればいいんであって、屋上屋を重ねるようなものではないか、こうおっしゃっておられるわけです。しかし、これはあとの先生方にもその点御意見がありましたのでお伺いしたいと思うのですが、実際住宅公団が膨大になり過ぎて、パーキンソンの法則じゃないですが、どうも効果的に動いていないという点に私どもは非常に大きな不満を実は持っておるわけなんであります。したがいまして、この屋上屋をそれでは一体どうすればいいかという点につきまして、御意見がありましたらお伺いしたいということが一つでございます。
それから、先生、地価対策につきまして十分お話がございましたが、本公団直接の問題ではちょっとございませんので、この辺にいたしておきたいと思います。
それから、石原参考人にお伺いしたいのですが、特に一定割合を、宅開公団でつくった分を賃貸にしろ、こういう御主張があったわけです。私どもは、この宅開公団のつくる住宅は個人分譲にすべきじゃない、少なくとも特定分譲ぐらいは認められるけれども、ほとんど全部を集合住宅にしてしまえ、そして、公団、公社あるいはまた公共賃貸住宅に全部してしまうのが本当じゃなかろうかという考え方を実は持っておりますし、また主張いたしておるところなんでございますが、この点についての御意見をひとつお伺いしたいと思います。
それから、梶浦参考人にお伺いしたいのですが、先生のおっしゃるのを承っておりますと、都市の再開発に精力を全部集中しろという御議論になるのじゃなかろうか、私はこのように思うのです。しかし、御存じのとおり、都市再開発というのは非常にむずかしい問題がございます。特に住民パワーの問題等々もありますので、具体的にどういうように都市再開発をすれば効果的であるか、御意見があれば承りたいと存じます。
特に都市への人口集中は、どうも人類の発生以来都市へ人間が集まる習性があるようなんで、これをおっしゃるように高度成長政策によって急激に人口を集中させたところに大きな問題がある。しかしながら、さてこれを分散させるということになれば、工業分散あるいはまた産業分散ということにならざるを得ないので一いかにしてこれを解決するかということに私らの非常にむずかしい問題としていま当面しておるわけですが、現実にニュータウンをつくる、ベッドタウンをつくるということに反対される以上は、いまの都市のこの住宅難を緩和されるには一体どうすればいいか、この点を、先生は都市再開発をやれとおっしゃるのであれば、具体的にどういうふうにした方が効果的にできるのだということをひとつお伺いしたいと思うのです。
それから篠塚参考人にお伺いしたいのですが、先生の環境アセスメントにつきましての御意見、実は私どもこの点をおろそかにしておりました。で、先生の御意見によって、なるほどこれはもうわれわれまことにうかつであったのでございますけれども、この点につきましてひとつもう少し御意見を承りたいと思います。
それから、最後に仲谷参考人にお伺いしたいのですが、機構につきまして、非常勤理事を入れられたので非常に地方自治体の意見というものが入れられるということをおっしゃっておられます。日本住宅公団におきましても、管理委員会というのをつくっております。事実、大阪府の知事あるいは東京都の知事あたりもこれに参画しておるのでございますけれども、この管理委員会は実施の議決機関みたいな形になっています。これは今度の場合、地方自治体を非常勤理事として入れようということになっておるのですが、果たしてどちらがいいのか。
執行機関とすれば、役人さんからすれば、ともかくほかから、自治体に容喙させぬ方が実はいいんじゃないかという気がいたすわけなんでございます。公団といいますものが、実は政府の執行機関ではありながら議会にも参考人としてしか呼べないというような状況で、国民の声あるいは住民の声というものを十分に取り入れられる組織になってない、そこに私どもは実は大きな不満を感じますし、独善性がそこに出てきておるのではなかろうかと思うのです。したがって、ここらあたりを仲谷参考人はどういうように考えられて住民との調和を、意見をいかに吸い上げていくかという機構についてひとつ御意見を承りたいと思います。
さらに、五百ヘクタール以上についてもう少し弾力的にやりなさいという御意見、私どもも全く賛成です。したがいまして、実施されておる知事さんとしましては、特に宅開公団がこのたび非常に有力な武器を持ちながらやっていくので、五百ヘクタールをうんと下げた方がいいと私自身は思っておるのです。したがいまして仲谷参考人に、どれくらいまで下げればいいか、ここらあたりひとつお伺いいたしたいと存ずるのでございます。
以上、まことに雑駁な質問でございますが、お答え願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/23
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024・飯田久一郎
○飯田参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。
私は無条件に宅開公団の新設が必要ではないと言っているわけではないのでございます。ただ、現状のままでは安く大量の土地を手に入れることはなかなかむずかしいのではないか。もし手に入れることが可能な場合は、これはすでに調整区域の中で思惑買い的な形で買われている土地だけではないか。そのことはやはり思惑買の救済につながる点でおもしろくない。それを除けばなかなか買えないのではないか。これは先ほど別の参考人からの御意見もありましたが、市街化区域だけでなく調整区域の中でも、旧来の所有者の所有地をまとめて買うということは非常にむずかしいのではないか。そうなると、いまの住宅公団の宅地部門をもうちょっと強化しておやりになるだけでもやれるんじゃないか。
ただ基本的には、私はもっと大規模な宅地供給というのが必要だと思っております。ですから、それのできるような地価対策が実行できれば、これは新しい組織をつくることも十分考慮に値するのではないか、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/24
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025・石原舜介
○石原参考人 勤労者にできるだけ安く住んでいただくためには、やはりどういうような開発をしましても、これを取得するということになりますと頭金その他相当金がかかる、だから、せっかく国が保有するものですから、それをできるだけ賃貸形式にしてやっていった方が本質的には正しいだろうというふうに私は思っております。
しかし、そこに原資の問題がございまして、現在五億程度の資本金で始まるという額は、余りにも事業に対して僅少過ぎる。とてもこれでは賃貸はできない。ですから賃貸をしていくということに対しましては、やはり別に原資を考えなければいけない。私はそういうことで、大都市の企業体は何らかのこれによる利益を受けるわけでございますので、その大都市の事業所に何らかの形で税金をかけるとかあるいは拠金を求めるとかいうようなことをしまして、それによって資本を拡大していかないと賃貸にはなかなかできない。ですからできるだけ、努力の範囲としまして一定割合というようなことで、せめてそこまででも近づけていくような姿勢を示してもらいたいというようなことで一定割合ということを申し上げたわけでございます。
それでは全部集合住宅にしてしまったらどうかというお話でございますが、これを公営、公団住宅だけで仮に全体を覆うということになりますと、これはやはり社会的なひずみがでてまいりますし、そして需要の偏在化といいますか、特殊な年齢階層が集中いたしますので、たとえば児童の問題などにしましても、学校が急激に必要性が出てくるとか、いろいろなことがございますので、やはり社会的に考えますと、ある程度のバランスをとった開発をするためには幾つかの階層が介在する方がよろしいと思いますので、なるほど現在では公営住宅なんか建ちにくい環境にありますので、当然これはその面に対しての責任を果たすということはございますけれども、これを全面的にするということになりますと、やはり社会的にはちょっとまずい点が出てくるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/25
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026・梶浦恒男
○梶浦参考人 十五分という短い時間でございましたので、私、基本的な話をいたしましたものですから、何か大都市への人口集中のことだけをどうも主張したようにとられているようですが、いまの御質問と関連してもう少しお話し申し上げますと、現在の大都市の住宅問題を見てまいりますと、たとえば大阪の場合を例にとりますと、二百五十万余りの住宅がございますが、そのうちの四十万戸が大体戦前に建った住宅でございます。また残りの二百万戸のうちの半分が民営借家でございますが、それの八割というのは二室以下のいわゆる木造のアパート、文化住宅というふうに大阪では言っておりますけれども、そういう非常に零細な小住宅でございます。この小住宅というのは高度経済成長期に、三十年代、四十年代の前半に建ちまして、大阪で申しますと、豊中とか茨木とか寝屋川とかあるいは東大阪とか、ずっと大阪市の周辺部を取り巻いた衛星都市にびっしりと建ちならんでおるわけでございます。しかもこのストックは、現在十年ぐらいたつ中で急速に荒廃化してきておりまして、実際これは調査していただくとわかると思いますが、われわれも調査いたしておりますけれども、たとえばたんぼを非常に簡単に造成したようなところでございますので、一階の押し入れなんというのはもう湿気でびしょびしょになる、そしてまた日が差さない、通風が悪いというような、住宅問題の集中した地点になってございます。やはりこういうところの問題を、しかもそういうところで家族がふえてきておりまして、先ほど御指摘ありましたような自然増がこう
いうところに発生してきておるわけでございまして、それに対しての対策をしていかなければならない、これがやはりいま住宅政策の中心になっていると思うわけです。
そういう点で、開発の考え方をどういう点を基本にして進めていけばいいかということでございますが、私は四点あるのじゃないかと思います。
一つは、そういう問題を進めていくときには、どうしても開発をしなければならない地域があるわけでございますから、先ほど私が意見を申しましたように、やはり住民と一番結びついた市町村が主体になって住宅の供給をしていくということが第一点。
それから第二点が、環境と一体となった町づくりという観点の中で住宅の供給を行っていく、そういう環境を整えていくということとあわせて進められなければならないというのが第二点。
それから第三点が、そういう現在の住宅のストックに対する対策というものと、たとえば今後新開発をしていくとすれば、そのフローの住宅供給というものを密接に結びついた形にする。たとえばこういう宅地開発公団法だとかあるいは住宅公団等で開発されたとしても、そこにおける住宅開発があったとしても、そこに入る人たちというのは再開発からの受けざらとして進めていくというような、そういうフローとストックの対策の結合ということが第三点として重要だろう。
それから第四点としては、再開発というのはそこに住んでいる人たちの住まいを変えていくわけでございますから、やはりどうしてもその再開発過程への住民参加という問題が原則になろうと思います。
この四点をもって都市の住宅の開発を、たとえばいま豊中市の庄内地域で行われておりますような手法を、もっと進みやすい形で援助していくようなことが必要ではないか。それとは別に、調整区域への開発というものはやはりがんこに否定をして、市街化区域の中で比較的小規模な新供給をしていく方策を考えるべきではないか。大規模なそしてかなり短期間のいままで行われましたニュータウン開発というのはいろいろな弊害を持っているのでありまして、小規模に、かなり時間をかけて、そこで出てきた諸問題をやはり市町村なりあるいは住民の知恵をそこに結集をして解決をしていく、長い期間をかけて問題を一つ一つ点検し解決していくというような開発の仕方が適切ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/26
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027・篠塚昭次
○篠塚参考人 環境アセスメントの問題について簡単に私の意見を述べたいと思います。
都市の開発という問題がでてくるその反面としては、いまの環境の悪いところから環境のよいところに移りたいという願望が、先ほども申し上げましたように、土地の需要圧力のかなり大きな要因をなしているだろう。そうすると、現在の都市の内部において日照とか騒音とか排気ガスのような環境基準そのものがはっきりと確立していない、こういう単純な都市の環境問題をそのまま放置した状態で新しい土地の開発をするということになりますと、もう一つたとえばこの宅開公団で予定されているものに山林の開発があると思うのです。それから、はっきりしませんけれども、海浜地の埋め立てという問題があり得るだろう。この問題については、現在自然科学者を含めて森林生態学等の研究者が、森林の開発がその森林を中心とする生態系にいかなる影響を与えるかという研究に最近かなり本格的に取り組みを始めておるのは御存じのとおりだと思います。東京の場合でも海浜地が東京湾の埋め立てという形で数年来大きな問題を起こしており、これ以上東京湾の埋め立てをすると生態系に顕著な影響を与えるだろうということで、東京湾の埋め立てについてはかなり学界で強い異論がでておることも御存じだろうと思うのです。
従来この環境アセスメントは、産業立地などを行いますときに、その工場の操業から関連地域にいかなる影響を与えるかというわりと単純な、ある意味では化学的な形での環境アセスメントが中心であったと思いますけれども、これからはそのような単純な産業立地の問題ではなくて、新しい住宅地を開発するというときには、十万、二十万という大きな人口を擁する都市をそこに形成するということになりますと、それらの十万、二十万あるいは三十万というような大きなニュータウンのもたらす周辺の居住環境に対する影響力を事前に厳密に評価しておくことが必要ではないか。
そのための組織は、いまのところ日本ではきわめて未熟であって、政党の中には環境アセスメントに対する案を最近準備されているところがあり、あるいは日本弁護士連合会では数年来環境アセスメントの立法のために研究会を続けております。そこで出た仮の――これは別にそれらの研究会の結論を御紹介するわけではありませんけれども、自治体の開発に対する拒否権というものを保障することが必要であるということが強くうたわれておるのです。今度の宅開公団を拝見いたしますと、どうもこの宅開公団は地方自治体との協議、話し合いという制度は予定しておるようでありますけれども、地方自治体のこの開発に対する拒否権というものは与えていない。もちろん自治体というものが開発に何でもかんでも反対すべきだというふうには私は考えてはおりません。それは自治体というものが反対する理由があれば反対すべきであり、反対する理由がないなら反対してはならないというふうに考えておるのです。この宅開公団が今度予定している事業の中に関連公共施設を整備するということがうたわれておる。これは恐らく鉄道を敷いたりあるいは水の問題を解決したりあるいは小学校の建設予定地を提供したりというふうなことで、従来地方自治体が住宅公団の団地などを誘致するときにちゅうちょするに至った原因の解消ということが宅開公団の中では予定されているに違いないというふうに考えております。しかし、それらの問題はそれだけで各地域における環境問題を最終的に解決することにはならない。やはりこの宅開公団はどうしても物理的なコンクリートの受けざらを用意させるというところに主眼が行っていて、どうも環境に対する配慮というものは後回しにされるのではないか。少しよくない表現をすると、がむしゃらな開発ということが予定されるおそれがある。特に坪十万円の宅地を分譲するという二とが、坪十万円の宅地を保証するというようなことが、国土利用計画法案のときに一部の新聞に流されたことがあると記憶しておりますけれども、果たして坪十万円の土地を供給できるものかどうか、結局、恐らくその最優先候補地としては海浜地の埋め立てを行うということが予想される。あるいは私の憶測かもしれませんけれども、東京湾は数年来ゴミの埋め立て等によりましてノリその他の漁場が全滅状態になり、あれだけの、比較的空から見ると小規模の埋め立てで三千人の漁民が漁業権を失っておる。それらの漁民の中には、最近の新聞で御存じのように、アサリの漁場にひそかに押し入って密漁をする。補償金はもらったけれども食いつぶしてしまった。そういうふうな気の毒な漁民というものがかなり東京湾の沿岸には存在するというふうにわれわれは推定しておるのです。これらの埋め立ては、もちろん漁民の漁業権という制度上の権利を失わせるということにとどまらず、結局東京湾を中心とする海の生態系に顕著な影響を与えるのでなはいか。
私の参加している日本土地法学会では、昨年の十月に東京湾の湾内を船に乗りまして視察調査をしたことがありますけれども、御存じのように東京湾の中はこれらの埋め立てによりましてほとんど海水が黒くよどんでおりまして、普通の生物はなかなか生息することは困難ではないか。これは単に海浜地だけではなくて、森林の開発をやる場合にも、今度は森林における生態系の問題が必ず出てくる。日本土地法学会では、来月森林生態学の研究者を集めて学会でシンポジウムをやることにしてあるのですけれども、いまようやく日本の自然科学や社会科学が環境の事前評価の問題と本格的に取り組み始めたやさきにおいて、そのような配慮を除外した状態で宅地開発の原則を前進させることはやはり私としてはちゅうちょせざるを得ない。そして、その当面の制度上の保障としては、私は宅開公団そのものに全面的にちゅうちょしておりますけれども、万一これを実施しようとする場合には、やはり地方自治体の拒否権というものを現段階においては保障する必要があるのではないか。
自治体の首長は、その所属する立場のいかんにかかわらず、やはり地域の生活環境の保護について責任を負っている人であるわけですから、それらの意見を最終的には、単なる話し合いないし話し合いがつかなかったという状態で開発を押しつけていくことは、後で取り返しのつかない結果をもたらすのではないか。そのような形での開発を押しつけようとすると、必ず地域住民の強い抵抗を呼び起こすことが予想される。幾ら開発だけを制度上決定をしても、いつまでたっても土地の造成も上物の建物も建たないという状態が続いていくだろう。これからは、開発を説得する場合には、やはり環境アセスメントが最も優先的な説明の根拠として援用されることが必要ではないか。そのような制度上の当面の保証としては、地方自治体の拒否権が必要である。
この問題は、イギリスの一九六七年の土地委員会法における開発についても、自治体の首長の拒否権を保障をしております。西ドイツにおいても、連邦建設法あるいは都市建設促進法などにおいては、最終的に開発の許可の権限を州及び市町村の長の権限にかぶせておりまして、単純にこれらの民間や公企業による開発を押し切るということには大きな制約をかけているというふうに私は理解をしております。そういうふうな意味で、環境アセスメントを中心として、もう少し自治体の自主性というものを考えていく必要があるだろう。
特にこれは憲法の九十二条との関係で、私は自治体には拒否権を与えることがきわめて必要であるというふうに考えておるのです。御存じのように、憲法九十二条は地方自治に関する法、制度等を創設する場合には地方自治の本旨を尊重せよということを明確にうたっておる。この憲法九十二条の地方自治の本旨を尊重せよということは、今日の開発に対する各種の住民運動を見ておりますと、ようやく日本でも市民の中に次第にその条項が浸透、定着し始めてきている。もちろん、これによって開発が延滞することもあり得ると思います。中にはよく実情を理解しない反対運動というものもあるかもしれない。しかし、その場合の説得の根拠としては、まず環境を破壊するものでないということはどうしても説明の義務があり、そのような説明が結果として受け入れられ得るかどうかということの最終的な判断権というものは地方自治体の首長に最後まで残しておくべきではないか。
先ほど仲谷参考人が――仲谷さんは愛知県の知事さんで自治体の首長ですから、私は知事に拒否権を与えるべきであるというふうな御発言があり得るかと思っておりましたところが、お話し合いの制度が保障されているということで一応御了解されているようですけれども、やはり地域によっては必ずしもそういうふうに話し合いだけに安易に依存することができないところも少なくないというふうに私は考えておりますので、ぜひこの点は宅開公団法についての問題の中で御配慮いただくべきではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/27
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028・仲谷義明
○仲谷参考人 機構の問題と開発規模の問題についての御質問でございますが、私は根っからの地方自治論者でございます。したがって、地方自治を尊重していく、これはもう基本的に考えておりますが、観念論だけの地方自治でも困るわけで、現実的に一体どの辺を目指すかというのがやはり一番重要な問題であろうと存じます。したがって、機構の問題につきましても、私は協議会方式、これも結構だと思います。ただ、非常勤理事に自治体から入れるということを保証されておる。これは私は大きい進歩だと思います。やはり執行機関の中に入るということでございます。
しかも私は、参考人で意見を申し上げましたときに、その協議会方式あるいは非常勤理事などというふうに申し上げたのですが、「など」の中には若干の含みがございます。これはやはり地方自治体に理解の深い人が常勤理事等に入ることは好ましいことであるというふうには考えてはいるのですけれども、「など」という表現の中でそれを申し上げたつもりでございます。
いずれにしましても私は、自治体と公団とは一体になって作業をしていくものだというふうに理解をしておりますし、拒否権の問題について御答弁するのはちょっと筋違いかと思いますが、私は権利で万事解決しなくても、いまの自治体の首長たとえば愛知県で言えば愛知県知事ですね、私が絶体困ると言えば公団でおやりになろうと思ってもできません。これは自信をもって言い切ることができます。そう簡単にできるものではありません。みんなの声が集まって、それを代表して知事ができませんと言ったら、そうできるものではありません。だからその点は私はそう心配は要らないというふうに考えております。
それから、その次の開発規模の問題でございますが、私は「弾力的に」という表現を申し上げました。これは具体的な数字についてまだこれからいろいろ詰めなければならない問題がきっとおありでしょう。ですから、私の一私見を簡単に申し上げて、後でその数字にこだわっていろいろなことがあっても困る。それからもう一つは、一律にということについて私は若干疑義があるために、「弾力的に」とこれまた二つの意味で申し上げたわけです。東京圏においてはこの程度、大阪圏においてはこの程度、名古屋圏においてはこの程度というようなことは私なりに頭にあるわけでございますけれども、これを数字として責任を持って申し上げると、あれはあんなことを言ったというようになっても困ると思いますが、五百に決してこだわらないようにというような意味で申し上げたわけでございますので、御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/28
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029・天野光晴
○天野委員長 浦井洋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/29
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030・浦井洋
○浦井委員 梶浦先生にお尋ねしたいのですが、先生は五つの論点を挙げられたわけですが、その中で三つが基本的な問題だということなんで、その最初の三つについてそれぞれお尋ねをしたいわけです
新公団に限らず、大規模な開発宅造によって、既存の大都市がむしろいまのやり方では肥大化するのではないか。そして一点集中型を拡大させるこれはいままでの当委員会での新公団法の質疑の中でも政府もやはりベッドタウンにならざるを得ないだろうというようなことで、私はそうなるだろうと思うわけです。そこで、そうなってきた場合に先生は、鉄道が敷かれる、スプロールが進行する、あるいは既存の大都市の特にターミナル部分が非常に過密化して防災上も問題があるという点を指摘された。これも私そのとおりだと思うのですが、特に問題は、新しくできるベッドタウン、工業団地ができるのでニュータウン的な部分もあると政府は言っておるわけでございますが、実質はやはりベッドタウンだろうと思うのです。このベッドタウンで先生は千里の例を挙げられた。
そこで、千里でいろいろ調査をされたそうでありますけれども、たとえば鉄道の効率が落ちるとか、それからむしろ物価が高くなるとかいうようなことを聞いておるわけでございまして、そういう調査の例なんかを引きながら、こういう形でつくられたニュータウンと称する実質上ベッドタウンがどういうようなかっこうになるだろうかということについて少し詳しくその辺のことをお尋ねをしたいというふうに思うわけです。それと調整区域の開発については先ほどちょっと触れられたのでもう少し何か御意見があればその点をお知らせいただきたい。それからそうであるならばということで、大都市への人口の流入の規制については先生はどういうふうに考えられているのか、この点を、一番目の基本問題についてお尋ねしたいと思います。
それから二番目は、新公団ができた場合に、新公団が全国的に宅地開発をやるというようなことはいまの時代から言って逆行ではないか、むしろ自治体が主体になってやるべきではないか、これは私もそう思うわけですが、そうやる場合に、果して国の責任としては、一体どういうようなことを国としての心づもりとして持つべきか、あるいは具体的な施策としてどういうようなものを考えるべきか、自治体だけではとうていできないわけですから、国の責任は具体的にはどうなるのかという辺についてお聞きしたい。
それから第三の問題でありますけれども、個人所有の土地を公的権限で買い上げてそれを個人に分譲する、これは大いに問題だということなんですが、そのときにやはり千里の例を挙げられて、千里ニュータウンでむしろ世間一般の所得水準よりも高所得者が入居しておるというお話があったわけなんですが、この辺の実例、これも何か調査をされたそうですけれども、それをひとつお知らせ願いたい。
それから、そういうような千里の例などから見て、この新公団法ができた場合に、果たしていまも話が出ております坪十万円というようなかっこうで庶民が入れるのかどうかというような点について、もう少し突っ込んだ御意見をお聞きしたいと思います。
そこで、それに関連をいたしまして、それでは持ち家政策、持ち家を希望する人がおることは事実であるわけなんですが、その人たちの分析があって、そしてほとんどは公共賃貸住宅でそれが整備をされるならばやれるのではないか。と言っても、持ち家希望の方があり、あるいは持ち家というものが全然必要でなくなるわけではないわけで、そういう点で先生は持ち家に対してはどういうような考え方でおられるのか。いまの政府のどこから見ても持ち家中心主義の住宅政策についてどう考えるか、さらにあるべき持ち家政策というのはどういうものかというような点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/30
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031・梶浦恒男
○梶浦参考人 盛りだくさんでございますが、一つ一つ……。
一番最初に、千里の調査の例ということでございますが、私実は千里における購買施設の調査をしたことがございます。その調査をしますと、千里における商店は大変サービスが悪いし、物が高いし、不便である。店舗の方を調べますと、非常に売り上げが少ないということなんです。これは一般的な市街地に此べて非常に少ない。なぜかということなんですが、われわれ一カ月間家計調査をしまして、千里居住者がどこで物を買うのかということを調べました。これは四十六年の十一月でございます。もう三年半ほど前の調査でございますが、その調査では千里居住者の購買地点というのは二五・六%が千里外でございます。だから実に四分の一以上を千里外で消費しているわけでございます。これは物を買うだけでございまして、そのほかの購買地点と関係ない消費は含めておりませんが、物を買いにいくのに四分の一を千里外にしているわけでございます。こういうふうな千里外の消費が非常に多くなっているということが千里の商店街の経営を圧迫するような一つの条件になっているということ。もう一つは、ベッドタウンでございまして住宅都市になっているわけで、そこに住んでいる人たちの圧倒的部分が大阪の都心に向かって毎日通勤するという形になっておりますが、ベッドタウンなために昼間にはそこに一般市街地のような事業所とかなんとかというものはないわけで、昼間の消費というものがほとんどないわけでございます。一般市街地では、たとえばそこを居住の用に供する人たちの消費と、昼間そこでいろいろな生活をしている、働いている人たちの消費が店舗にかかるとすれば、その一方が全く抜けてしまっているわけです。そのために非常に店舗の収入が低いということになってくるわけで、一般市街地に比べましてかなり商店が成り立ちにくい条件がそういうことの中で発生してくるわけでございます。ですから、これは人口当たりの店舗の数が減ってくるということになってくるわけで、特に一戸建て等の住宅地をずっとまんべんなく開発しますと、店舗までの距離が非常に遠いものになっていくわけでございます。ですから、こういうニュータウンを住宅都市として開発したとき持っている矛盾点というのがあるのじゃないか。これは千里では購買施設の問題だけじゃなくて、病院だとか学校だとかその他いろいろな問題がございますけれども、例として購買施設のお話をしました。
そのほかに、たとえば鉄道なんかも、これは朝夕の片一方だけの利用というのは非常に多くなるわけですが、昼間は非常にがらがらでございますし、朝夕も反対方向の車は非常にあくわけでございます。これは鉄道だけじゃなくて、ニュータウン内のバスにつきましても非常に偏った利用のされ方になるわけで、そういう非常に単機能の都市というものをつくってまいりますと、施設の効率が非常に落ちる、施設の効率が非常に悪いという結果を招くことになります。
それから第二点の、調整区域の開発についてというお話でございますが、調整区域というのは、都市における生鮮食料品の供給基地としての農地、都市農地を守っていくという意味から、また都市における緑地というものを確保していくという意味から、がんとして守る必要があるのじゃないか。ここで開発というのは、たとえ二十ヘクタールを超えたものであっても許可すべきではないのじゃないかというふうに考えております。ちょっとこれは簡単に、そのほかのことがございますので…
それから、都市への流入の規制についてはどう考えるかということでございますが、これは私は、工場移転というような話がいろいろ出たりしますけれども、問題は事業所だと思います。やはり都市における事業所の立地を規制し、あるいはそれを地方分散していくというそこのポイントのところをしないと、工場を移転してもまたその後にそういう形の集中が入ってまいりますので、これをしないと効果はないというふうに思います。
それから、自治体に対して具体的施策の援助はどうなのか、市町村に対する具体的施策の援助はどうかということでございますが、私は先ほどから、市町村が中心となって住宅経営の政策を進めていくべきだというふうに主張いたしましたが、しかし、現在の市町村にはなかなかそういうものを進めていくだけの力がないというのが現状でございます。これに対してはやはりいろいろな財源あるいはいろいろな援助が必要だと思いますが、中でも市町村の計画に基づいた住宅地の整備というものを進めていくときに、マンパワーの問題ですね、人員を、そういうことをやっていける技術者をどういうふうにして確保していくのかというような点で、そういう点でのたとえば全国的な住宅公団でありますとか、あるいは府県段階でのその種の技術者の援助というものがやはりあり得ていいんじゃないかというふうに考えております。
それから、千里の宅地分譲を受けた者の収入階層の問題でございますが、これも同じ調査でございまして、昭和四十六年の十一月一カ月間収入、支出を家計簿をつけてもらった調査でございますが、その結果で申し上げますと非常に高うございまして、宅地分譲の方の一カ月の収入は十八万八千円になっております。これは三年半前の収入でございますが、そのときの公営の賃貸層というのは十万でございます。だから一・九倍でございます。約二倍。それから公団、公社の賃貸は十三万七千円。これでも一・四倍ぐらいの収入階層が宅地分譲を受けているということでございます。これは大体年収にいたしますとこの時点で三百万円以上のクラスということに当てはまっております。ですからこれは現在に直しますと四百万、五百万の年収、月収も二十万を超える、三十万近いというような収入の階層ではないかというふうに思います。
どうしてこういうことになるかと申しますと、宅地の入手というのはどういう形で行われているかと申しますと、あれは特に住宅に困っている人ということは余り関係ないわけで、資金が用意できるかということと、それから抽せんに当たるかどうかということで宅地分譲を受けられるわけです。これは何にも住宅難と関係ないのです。だから宅地を欲しいという人だったら、資金があってくじに当たればいいわけですから、みんな殺到するのはあたりまえのことでございまして、中には自分の奥さんあるいは子供の名義でどんどんと並ぶわけでございます。これは資金の用意ができれば、たくさん並ばせれば並ばすほどくじの運は高くなる、くじの率は高くなりますから、そういう形で受けて入っておられる方が多い。だから、千里の入居者の中にはほかにおうちを持っている方だっているわけでございます。だから住宅難の解決なんかには役立っていない、むしろそういう資金のある方が非常に適当なところに宅地を確保するために手助けしているような形になっているわけでございまして、そういう中でたとえば特別分譲というような不正が行われたりしているわけでございます。だから、その宅地の供給を望む声があるからするというのは、住宅難の解決と一見結びついたようですが、そこはものすごく短絡して、間の大切なところが抜けているというふうに思います。しかも、これは坪十万というお話でございますが、そういう宅地供給を安くすれば安くするほどその社会的不公正は増大するということになるのだと思うのです。その財産が安く手に入るわけでございますから。だから、そういう宅地を安く供給してすばらしい住宅地をつくればつくるほど社会的不公正を増大するという矛盾をこういう宅地供給の宅地分譲というものは持っている、こういうものをなさってはいけないというふうにぼくは思います。
それから、たくさんございますが、持ち家政策をどうすべきかというお話でございますが、私も確かにこの持ち家というものに対しての国家的な施策というものがなくていいというふうには考えないわけでございます。しかしその前提は、先ほど申しましたように、現在持ち家を欲しいというふうに言っておられる方の中には、やはり安くて住みやすい賃貸住宅の供給がないから、やむなくどうしても住宅問題を自力で解決しようとすれば何とか持ち家をしがみついても得なければならないというところにあるわけで、ですからその前提としては、やはり大量のそういう公共の賃貸住宅を供給するということが前提でございます。
その上で、しかし、一戸一戸のその入居者の持っております資金を活用していくというような意味ではやはり分譲住宅というのは有効であろうと思うわけですが、そのときには、大切なことは、私は何も宅地を分譲する必要はない、上物だけでいいのではないかというふうに思うわけです。というのは、持ち家というのは借家に比べまして確かにいろいろと自分の好みに応じて手を加えられたり増改築ができたり好きなデザインにできるというような利点があるわけで、それは上物の住宅でありまして土地には関係ないことでございます。土地は何も賃貸でもあるいは持ち地でもこれは一向に関係がないわけでございますから、持ち家政策に対する援助と申しましても、何も下の土地を持たせる必要はない、そのメリットはないんじゃないかということが一つでございます。
そして、それじゃ持ち家政策を国家的な施策として進めていくときのメリットというのは、私は住宅のストックとして非常にいい住宅のストックをふやしていく、都市の中にいい住宅のストックをふやしていくというために分譲住宅に対しての国家的な施策を行い、そしてそのかわりに、やはりその住宅の建設に対しては、たとえば一定の規模、一定の水準を持っているかどうかというような規制をしていく。それとともに、将来やはり起こってくるであろういろいろなその地域の町づくりに対しての要求にこたえ得るような対策があわせてとれやすいような形態にしておくことがいいのではないか。
そういう意味では私、土地を公共的に持っているというようなものも一つのポイントになるかと思います。現在いろいろ都市再開発なんかやっていくときに非常に難点になっておりますのはやはり土地の問題でございまして、ここを持っておることによって、公共がたとえばそれを持っておれば、そういう再開発なり住宅地の整備が非常にやりやすくなるわけでございまして、たとえば土地利用の規制だとかあるいは宅地の細分化を阻止するとかあるいはいろんな用途変化をさせないというような、そういうふうな規制をとりやすいようにしておいた方が将来とも町を管理運営していくのに都合がいいのではないかというふうに考えております。だから、一度公的な所有にしたものを再び私的な所有にするということですばらしい町はつくり上げにくい条件にしていくのではないかというふうに思いますので、持ち家対策というのはそういう形で住宅に対して行っていく、公的な方からの条件はその住宅に対してする、宅地に対しては公的な供給というのはしないというのがいいのではないかというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/31
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032・天野光晴
○天野委員長 北側義一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/32
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033・北側義一
○北側委員 本日は参考人の先生方にいろいろ貴重な意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。
まず、いろいろ先に委員の方が聞かれましたので簡単に二、三の点だけお伺いしてまいりたい、かように考えております。
まず、飯田先生にお伺いしたいのですが、先生は新公団の発足の前提条件としての土地対策、これが必要であろうと、このような御意見であったと思うのですが、そこで、いわゆる保育税の強化にいたしましても、固定資産税ですね、これの強化をする場合に、やはり全般的な、たとえば十坪とか三十坪程度のそういう固定資産税の強化ということになりますと、非常に一般の方が負担が重くなるわけです。そういう点で、やはり一定規模というものが必要であろうと思うのですが、一定規模以上というその一定規模を大体どれくらいの見当で考えたらいいのか、これが一点です。
それから、固定資産税の評価がえが来年行われるわけですが、その際、一筆単位に全部地価公示価格ですか、実際の価格、実価としてやったらいいじゃないか。ただし、この実価につきましても、やはり固定資産税を払う側の立場がありますので、それをどのようにこれから利用していくかというその利用の仕方が非常に大事であろう、こう思うわけです。そういう点についてのお考えをお伺いしたいと思うわけです。
それから、石原先生にお伺いしたいのですが、先生は宅地債券については物価上昇分の補給をするような考え方を持ったらいいだろう、こういうお考えをお聞かせいただいたわけですが、全く私もそのとおりに思うのです。たとえば先般起こりました住宅債券の特別住宅の問題でも、事実上は建築費の資材の上昇におきまして七百十四万円が一千百五十万円ぐらいになっておるわけですね。そうしますと、やはりこれも特別な事情があったと思うのですが、そういうことをやった場合に他との不公平が出てくるんじゃないか、これをどのように考えたらいいのかという点で先生のお考えをお聞きしたいと思うのです。
それから三番目、梶浦先生にお伺いしたいと思うのですが、先生のおっしゃるとおり、持ち家志向、その中には、現在の賃貸住宅が非常に狭いので当然持ち家志向というものがあらわれてくるんだ、こういう先生の御意見でありますが、一体そうした場合、たとえば公的機関が大きい家族を抱えた賃貸住宅を仮にこれから公営なり公団でつくっていく場合に、一体どれくらいの広さが適当なのかということと、どうしても広くなりますと高家賃になってまいりますので、まずそれに対する対処はどのようにしたらいいか、このような問題についてお考えがありましたらお伺いしたいと思うのです。
それから、篠塚先生にお伺いしたいと思うのですが、先生の言われたこと、全く大賛成であります。そこで私お伺いしたいのは、まあ住宅についても経済的見地より人道的問題としてこれを取り上げるべきである。こういう御意見、全く賛成であります。
そこで、この持ち家及び公的住宅、やはりこれはある程度の配分というものが必要であろうと思うのです。たとえばその配分を、今度第三次住宅建設五カ年計画がいま練られております。こういう場合に先生のお考えとして、一体公的新住宅はどれくらいの。パーセント、持ち家住宅はどれくらいのパーセント、そのようなお考えがありましたらひとつお伺いしたいと思うのです。
それとあわせて、仮に持ち家の場合、先ほど先生の言われたとおり、大体大企業の部課長以上の人が住宅ローンを使っておる、なるほど全くそのとおりであろうと思うのです。たとえば一千万円、九・四の利子で借りますと二十年払いで月平均九万三千四十八円ですか、このような膨大な金額になってくるわけです。これではとてもじゃないが一般の庶民では手が届かないわけです。その場合に、持ち家を仮に何%かにする場合に、その持ち家に対する対策をどうすべきかという、そういう御意見がありましたらひとつお伺いしたいと思うのです。
あわせて、公的資金住宅を大量に建設する場合に一番問題になるのは、先ほどから話に出ておりますとおり、公共公益関連施設の超過負担及びこれ以上人口をふやしたくない、こういういろいろな問題があるわけですが、こういうむずかしい問題を、たとえば公的資金住宅を大量に建てる場合にどのように解決すべきか、そういう御意見がありましたら、ひとつお伺いしたいと思うのです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/33
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034・飯田久一郎
○飯田参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。
第一点として、保有税の強化というのは必要かもしれぬけれども、すべての土地所有者に保有税を強化することは抵抗が非常に強くて実行はむずかしいのじゃないかという御質問がございましたが、まことにそのとおりでございます。一昨年の土地税制の改正におきましても、やや大衆課税の色彩が強かったということが結果的に十分な強化ができなかったということの原因だと思いますが、その点を考えまして、私は、今日相当な人が零細なものではあっても土地を持っておるという状況から見まして、たとえば時価にして宅地であれば三千万とかあるいは五千万ぐらいの土地を持っておる人には特別に安い税率を適用する、そして、たとえば昨年の税負担よりもふえないようにする。農地の場合は、これはまた農地の特殊性を考えまして、むしろそのまた何倍か、たとえば二億とか三億とかいうような時価の農地を持っておる人には、やはり同じように安い税率を適用して農業の経営に支障が起こらないようにする。そしてそれを超して持っている人、これは主として企業だと思いますが、中にはもちろん個人もある、あるいは大都市の中心部に近いところにある農地の場合、こういう場合にはそれを超えてくるわけでありますが、そういうところに対しては、時価評価に対して、たとえば現在の税率を適用する、そしてその人たちにできるだけひとつ土地を吐き出していただくということが適当ではないかと思います。これは面積でという考え方もございますが、面積ではむしろ不公平になりまして、たとえば時価何百万という土地を持っている人が坪数は少ないということで非常に安い税率を適用を受けるというようなことは望ましくない、やはりその所有地の全体の価額、値打ちを基準にして、安い税率の適用を受ける部分とそうでない部分とを区別すべきだと思います。
それから第二点の評価の問題でございますが、これは実は地価公示制の公示価格と同じような形で評価をするとは申しましても、大体地価公示制の公示価格自身が、率直に言わしていただければ、必ずしも非常に十分な根拠があるものではないという点がございますので、若干は不正確といいますか、特に土地を持っておる方から言えば、おれのところはこんなはずじゃないというような結果が出てくると思われます。しかし大体のことは、これは現実に公示価格あるいは鑑定価格というものがありますし、また、大蔵省が相続の場合に評価するというようなこともありまして、皆さんそれを承知しておられるわけでありますから、これはできるわけです。ただ、いままでのように意識的に安い課税をやる、あるいは市町村がかなりばらばらにやっておるというようなことがあるために、現状は非常に不合理なものになっておりますが、これはやる気になれば別に法律を改正しなくてもやれることであるし、また、地方税法自身は適正な価格で評価すべきということを法律の中で明示しておるわけでありますから、その法律の趣旨に従って今度実行すればいいわけであります。
ただこの場合に一つつけ加えておきたいと思いますのは、やはり先ほど申し上げましたとおり、ある程度不正確になりまして、地主の皆さんが不満があるという点がありますので、これをカバーいたしますために、私は台湾でやっております台湾方式というものを採用したらいいのじゃないかと思う。ということは、まず一応たとえばあなたの土地は十万円ですよというふうに評価をしておいて、これに異議がある人、あるいは固定資産税、都市計画税というものは安い方がいいと思う人は、それよりも一割なら一割、あるいは場合によっては二割ぐらい引き下げることができる。ただし、そういうふうに安くした場合には、売る場合には逆にいわゆる価格規制に引っかかって高くは売れなくなる。その価格を基準にして物価の上昇を若干は顧慮するというような形で市価よりは安くなる。逆に、税金は少し重くても、自分の土地は高く見ておいてほしい、将来売ることがあるときにはなるべく高く売りたいという人には、その評価した価格にプラス一〇%あるいは二〇%ぐらいまでは御本人の意思によってこれを修正することを認める。現実に台湾でこれに似たことをやっておりまして成功しているわけでありますが、これに似たことをやれば、現在でも固定資産税の評価というのは、御承知のとおり、全国何千万筆を一筆ごとに各市町村がやっておるわけですから、その方式によって地主の皆さんに大体満足していただけるのじゃないか、こんなふうに思う次第でございます。
以上、お答えいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/34
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035・石原舜介
○石原参考人 宅地債券に対しまして物価上昇分を補てんしたらどうかという意見が、多少ほかとの関連において不公平を発生するのではないかという御質問がございます。これは、宅地債券そのものに対しましてどのように解釈するかということが一つございます。これはやはり債券でございまして、長期のある程度の契約のもとに行われている問題でございますので、その損保がなされるというのは、この契約内容はむしろ現物として物を供給することを担保しているわけであります。そうしますと、これを履行しないということ、せんだってのような事態が発生いたしますと、やはり債券というものに対してのいわば内容が多少契約事項と違反するおそれがある。ですから、その程度の物価上昇によって発生する混乱は、やはり国家が保証して行う契約でございますので、当然それだけの保証はしておかなければいけないであろうということを考えます。
それは原則としてそう考えるわけでございまして、しかしそうは言っても、ほかとのかかわり合いが問題だろうということがございますが、やはりこれは個人の財産形成でございまして、預金その他の内容を見ましても、将来のため、老後のためというような費目で預金をしているという人が預金額の中で占める割合がわりあい高いわけでございます。そういうものから見ますと、こういう宅地債というのは、その人の老後の生活の安定を目的とするために購入するものでございます。そういうものに対しまして、一般に預金に対します物価の上昇に対して若干の補てんをしていこうというようなことがいま考えられておりますが、それと同じように、基本的なこういう国民にとりましては大切な財産の一つの形成に対しまして、これが社会的影響によって変動を受けるというようなことを強く受けないように多少の干渉をしていくというのが、当然行うべき問題じゃないかと思います。その場合には、また額が問題になります。心ずしも全額保証ということにこれは結びつく問題ではないと思います。ですから、その点にはやはりおのずから限度がございますので、その限度額というのがいかようになるか、これは現在のところは百五十万とかあるいは二百万程度が適切じゃないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/35
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036・梶浦恒男
○梶浦参考人 どれくらいの住宅の広さが必要かというお話でございますが、都市における住宅ストックの規模を一律に上げていくというのはなかなか大変でございますけれども、やはり公営住宅、公共的な住宅が目指すべき水準というのは、公室とそれから私室、家族に合った私室を、少なくとも四畳半以上の私室を持った住宅を家族に見合った形で与えていくというような、たとえば公室としましては六畳なり八畳とかいうような形の水準までは必要ではないかというふうに思っております。それによってある程度の住生活の水準、秩序が保たれるようなことが必要ではないか。
それに対して、それでは高家賃にどういうふうに対処していくかということでございますけれども、公営住宅の場合では、たとえばいま起こっておりますいろいろな超過負担、こいいうものはやはりどうも納得いきませんし、一切やめるべきではないか。させないようにすること。それと関連公共費の負担というのが非常に大きく、たとえば公社住宅なんかの場合にも非常に大きく関係してきておりますので、この辺をやはり国なりあるいは府県なりで家賃にかけない形でやっていく、この宅地関発公団法と別な形でそういうものを与えていく必要があるのではないか。それから公団につきましては、これは民間資金によってやっていくということでなくて、以前ありましたように、国の資金をそこに投入してやっていくという形をとるべきであって、そのことによってかなり家賃を下げることができるのじゃないかというふうに思います。そういうふうな家賃の現在の体系全体を下げていくような政策とともに、現在公団がとろうとしておる応能家賃というのは私余り賛成しませんけれども、たとえば収入の一〇%未満ぐらいでの収入に応じた家賃の支払ということも考えていくことがあっていいのじゃないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/36
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037・篠塚昭次
○篠塚参考人 持ち家と公営住宅の比率をどのくらいにすべきかという御質問ですが、私はできれば全部公営住宅にすべきであると思いますけれども、少なくとも七、八割は公営住宅が占めていくべきであろう。この問題は人口と土地の面積との関係から考えていくべきで、ヨーロッパにおける持ち家政策をとっている国、あるいはそういう経済段階にある国の人口や土地の面積とを比較しますと、日本の場合には、どうしても海岸寄りにしか平地がありませんので、公営住宅の比率を高めることは物理的に必要である。大体その倍率は、公営住宅の比率としてはイギリス、ドイツなどの二倍以上でなければならないだろう。そうすると、ドイツ、イギリスなどでは過半数の住宅が公営住宅になっておりますので、その倍率からいくとほとんど一〇〇%日本では公営住宅でなければならないだろう。
そうすると、その建設資金などが一体どうなるか。公団住宅の場合には、御存じのように原価主義をとっておりますけれども、公営住宅はかなり公共負担というものがかかっております。しかし、これはヨーロッパの土地住宅政策を見ておりますと、必ず土地増加税という制度を連動させておりまして、その土地でもうけた者から利潤を吐き出させることによってそれを土地対策に利用するという方策で、広い意味では土地問題の自給自足的な解決、悪い表現をすると、毒をもって毒を制するという形で処理をしてきており、財政的な困難はそれほど自治体にも国にもヨーロッパの場合はかかっていないというふうに考えていいと思います。日本の場合にも、民間デベロッパーや一部都市周辺の農家の中には、個人で億という単位の預金を農協などに持っておる農家がある。もちろん農民も長い間苦しい生活を続けてきたわけですから、多少息抜きの余裕を持つということは結構なことであると思いますが、今日の彼らの収益率というものは、通常、人間社会で許される利潤の範囲をはるかに超えるものであって、これは相当の率で課税していいのではないか。
それで、この問題については、御存じのように、税制によって解決すべきであるというやり方と、公権力によって土地収用方式で処理すべきだという二つの考え方が学界には対立をしております。一つは、わかりやすく言うと、内科的な処理方法で、もう一つは、外科的な処理方法と言うことができるだろうと思うのです。税制によって処理すべきだというのは、要するに内科的な方法であり、土地の収用方式によるべきであるというのは、外科的な方法であると言うことができると思いますが、この内科的に処置できるのは、やはり早期発見、早期治療という段階であって、もう外科的に処置をしなければならない段階に移行したときには、内科的な方策はとり得ない、とってはならないのだというふうにぼくは考えておるのです。
日本の場合には、現在、御存じのように、もはや税制によってこれを解決できる段階には全くないというふうに言っていいと思います。ヨーロッパでも、十九世紀の末から土地収用方式によって土地問題との取り組みを続けてきており、現在では、日本で考えるほどの住宅難は、ドイツ、フランス、イギリスにはありません。私も数年間、家族とともにフランス、ドイツに最近住んだことがありますけれども、日本の住宅事情とは比較にならないほどの余裕がある。そういうところで持ち家政策論が出てくることについては、私は強く反対する必要はないのだというふうに考えておりますけれども、日本は約一世紀土地対策に関する施策がおくれており、今日ではほとんど手おくれの状態であって、外科的以外に方法はないというふうに考えております。しかし、外科的に処置を行うときに、その手術費用ぐらいは内科的に税制によって徴収するというふうにすると、外科手術もうまくいくだろうというふうに見ることができると思います。
それから、この宅地開発公団法案について、先ほどの自治体の拒否権という問題は、地価との関係でいろいろむずかしい問題が出てくると思いますが、昨年これが国会に提案されましたときは、たしか国土総合開発法案とまとめて提案されて御審議いただいた法案ではないかというふうに記憶しておるのです。あの国総法は、御存じのように、かなり大きな修正を受けて利用計画法になりましたけれども、その国土総合開発法案の中には、内閣総理大臣の指示権というものがあり、これが都道府県知事に対する中央集権的な土地問題に関する支配というふうに受け取られて、各地の自治体ではいろいろな反対の意見が強く行われておったと思うのです。この宅地開発公団法案の中で、結局自治体の首長に拒否権が与えられていないというその発想の中には、例の国土総合開発法案の中にあった内閣総理大臣の指示権、それに対する自治体首長の拒否権がないというその発想方法が依然として残ってしまったのではないか。むしろ国総法が批判を受け、事実上つぶれてしまったその原点に立ち返って、宅開公団法案をもう一度再検討していただくべきではないか。それから、その前提としては、土地政策について、もう少し先進ヨーロッパ諸国に客観的に学ぶべきであるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/37
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038・北側義一
○北側委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/38
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039・天野光晴
○天野委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本案審査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
次回は、明十八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107504149X01119750417/39
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