1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十一年十月十五日(金曜日)
午前十時三分開議
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○議事日程 第七号
昭和五十一年十月十五日
午前十時開議
第一 災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸
付けに関する法律の一部を改正する法律案
(災害対策特別委員長提出)
第二 昭和五十一年度の公債の発行の特例に関
する法律案(第七十七回国会内閣提出衆議院
送付)
第三 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/0
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001・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
日程第一 災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)を議題といたします。
まず、提出者の趣旨説明を求めます。災害対策特別委員長工藤良平君。
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〔工藤良平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/1
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002・工藤良平
○工藤良平君 ただいま議題となりました災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。
わが国は、自然的条件から世界でも有数の災害国であり、連年風水害等により幾多のとうとい人命と貴重な財産が失われておりますことは、まことに遺憾にたえないところであります。特に最近における災害の傾向は、異常と言われる豪雨等により、がけ崩れ、地すべり、土砂流出等、局地的災害が著しく、また、都市周辺の土地利用の伸展で、中小河川、都市河川のはんらんが頻発しており、とれがため個人災害の面で悲惨な事態が繰り返されているのであります。
こうした個人災害に対する救済制度といたしましては、第七十一回国会におきまして、災害により死亡した者の遺族に対し災害弔慰金を支給し、また、災害により損害を受けた世帯に対し災害援護資金を貸し付ける措置を議員立法により講じたところでありますが、その後、第七十四回国会におきまして、災害弔慰金の支給限度額の引き上げ等の改正を経て今日に至っているのであります。
しかるに、近時における激甚な個人災害の増大と著しい社会経済情勢の変化の中で、再度災害弔慰金の支給額及び災害援護資金の貸付額の引き上げとその支給及び貸し付けの基準緩和等について強い要望が寄せられているのが実情であります。
かかる状況にかんがみ、個人災害救済に関する制度拡充の一環として、災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律の一部を改正する法律案の草案を作成し、立法化を図ろうと決意した次第であります。
次に、その草案の要旨を御説明申し上げます。
第一は、災害弔慰金の支給限度額の引き上げについてであります。本法第三条第三項は、災害弔慰金の支給について、「死亡者一人当たり百万円を超えない範囲内で死亡者のその世帯における生計維持の状況を勘案して政令で定める額以内」となっておりますが、この「百万円」を「百五十万円」に改めるものとすることであります。
第二は、本法改正の遡及適用についてであります。改正後の本法第三条第三項の規定は、昭和五十一年九月七日以後に生じた災害に関してさかのぼって適用するものとすることであります。
なお、災害援護資金の貸付額につきましては、現在一災害における一世帯当たりの限度額は百万円を超えない範囲内と政令で定められておりますが、弔慰金の支給額の引き上げに対応して、災害援護資金の貸付限度額につきましても所要の政令改正が行われることを期待するものであります。
当委員会におきましては、昨十月十四日草案を審査し、内閣の意見を聴取した上、全会一致をもって、これを委員会提出の法律案とすることに決定いたしました。
なお、草案審査の過程で政令内容に触れ、災害による世帯主以外の死亡者に対する弔慰金についても現行額の五〇%相当を引き上げること、また、災害援護資金について資金枠を二〇%程度増額し、家屋の流失、全壊等激甚な損害に重点を置き、貸付額の引き上げに努めること等が明らかになりました。
以上でありますが、過日の台風第十七号による多くの犠牲者の御冥福と災害地の一日も早い復旧を祈りながら、本法律案が速やかに可決されますようお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/2
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003・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/3
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004・河野謙三
○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/4
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005・河野謙三
○議長(河野謙三君) 日程第二 昭和五十一年度の公債の発行の特例に関する法律案(第七十七回国会内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長岩動道行君。
〔岩動道行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/5
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006・岩動道行
○岩動道行君 ただいま議題となりました昭和五十一年度の公債の発行の特例に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、五十一年度の租税収入の動向等にかんがみ、財政運営に必要な財源を確保し、国民生活の安定に資するため、財政法第四条第一項ただし書きの規定によるいわゆる建設国債のほか、予算をもって国会の議決を経ております金額、三兆七千五百億円の範囲内で特例公債の発行ができることとするほか、所要の規定を設けようとするものでありまして、御承知のとおり、前国会におきまして本院で継続審査となったものであります。
前国会の本委員会におきましては、政府に対する質疑のほか、公聴会を開会して意見を聴取いたしました。
今国会におきましては、総理大臣を初め、政府当局に対し、国債の大量発行下における財政運営のあり方、中・長期財政計画策定と予算の単年度主義との関係、国債の個人消化を促進するための中期国債を発行することの問題、また、国債の償還計画並びに中期国債発行に伴う償還計画の問題中期税制構想のあり方、五十二年度所得税減税の意図の有無等について質疑が行われたほか、参考人の意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑終局について採決いたしましたところ、多数をもって質疑は終局することに決しました。
次いで、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して大塚喬委員、公明党を代表して矢追秀彦委員、日本共産党を代表して渡辺武委員、民社党を代表して栗林卓司委員より、それぞれ反対、自由民主党を代表して中西一郎委員より賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、本案について採決の結果、可否同数となりましたので、国会法第五十条後段の規定により委員長これを決し、本案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の各派共同提案により、政府は特例公債依存の財政から脱却するため財政収支の改善に努めるべきである等の附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/6
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007・河野謙三
○議長(河野謙三君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。村田秀三君。
〔村田秀三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/7
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008・村田秀三
○村田秀三君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました昭和五十一年度の公債の発行の特例に関する法律案について、反対の立場から討論を行うものであります。
すでに執行後半年余を経ております昭和五十一年度予算は、わが国の経済、金融並びに税制、財政のあり方について抜本的な転換を迫るほどの重要な意義を内包しておると思うのであります。
すなわち、昨年度歳入欠陥を補てんするための特例国債二兆二千九百億の発行に続いて、国債発行総額は特例国債三兆七千五百億円を含めて七兆二千八百億円の巨額に上る深刻な赤字財政、借金財政に転落したのであります。
このことは、一言にして、今日まで無計画に続けられた高度経済成長政策の帰結であると断言できるのでありますが、同時にまた、昭和四十一年建設公債の導入による財政転換を図って以降、拡大する財政規模に対応するにその財源を安易に国債に依存してきた財政当局の怠慢にあったと断ぜざるを得ないのであります。
確かに、経済社会の発展と国民生活の多様化、近代化による財政需要の増大に応じて財政の果たすべき役割りは重要であり、財政が景気の調整に機能すべきであることについては当然でありましょう。しかしながら、昨年以降の財政の混乱を見るとき、それが極度の景気の落ち込みに原因があったと理解を示したとしても、その景気の落ち込み自体、これまでの経済財政の失敗によるものと指摘しなければならないのであります。いまこそ、今日まで続けられた高度経済成長政策を転換し、それを支えてきた税、財政、金融制度の改革を行い、赤字財政から一日も早く脱却し、健全財政を確立し、将来にわたる日本経済の安定成長を図る重要な時期と言って過言でありません。
しかるに、この法案の審議を通じて明らかになったことは、危機的認識の欠如の上に、相変わらずこれまでのパターンを継続し、国債による安易な財源調達を計画し、制度改革など積極的に取り組む姿勢もなく、国民大衆の犠牲を将来にまで保証するがごとき態度に終始したのであります。いまや三木内閣は、完全に予算編成能力、経済運営能力の欠如した禁治産内閣と称して過言でないと思うのであります。
以下、数点の具体的反対理由を明らかにするものであります。
まず第一は、本法案自体、財政法違反ではないかということであります。
いまさら申すまでもなく、財政法四条主文は、一般財源は公債によって調達することを厳に禁止をいたしております。このことは、財政民主化の理念に立って、放漫財政を戒め、その歯どめとして重要な意味が存在すると考えられるのであります。財源調達を安易に公債に依存することは、「取るべきところから税金を取らず、徴税の不公平をもたらす」とは、これまでもしばしば言われてきたのであります。まさに今日の事態がそれでありましょう。したがって、この財政法の理念からすれば、当初予算の一般財源に公債を充当することは明らかに間違いであると厳しく指摘しなければなりません。ましてや、特例公債を数年間常態として見込むことは、財政法を死文化、形骸化するものであり、断じて容認できないのであります。
第二の理由は、本来の財源対策としての税制改革を行わず、安易な借金政策を続けていることであります。
公債が導入された四十年代の国債政策の指針とされた国債依存率五%の目標は忘れ去られ、たかだか十年の間にいまや三〇%に達し、五十一年度期末国債残高は予算総額二十四兆円に匹敵する二十三兆円余に達していることは、まさに異常と言わざるを得ないのであります。この事態は、財政法の精神と規定を無視した自民党政府の放漫な大企業優先の税、財政政策の帰結であり、その責任であると存ずるのであります。
「入るをはかって出るを制す」とはよく言われ、これが健全財政堅持の原則であることに変わりはありません。だとすれば、本年のごとく、歳出の節減は不可能に近く、しかも歳入不足を当然見込まれるとするならば、財源の主要をなす税制の見直しこそ着手すべき機会であったと思うのであります。天下に悪名高い租税特別措置を見ても、東京都が公表した新財源構想研究報告にも指摘されたとおり、法人税関係、利子配当所得税、有価証券取引税等、現行税制の中でさえ三兆円を超える取り不足があるのではないかとの疑いが国民の間に存在し、富の偏在も目立つ今日、税の不公平を是正し、所得の再分配を可能にするためにも抜本的な税制改革を行うべきにもかかわらず、相も変わらず安易に国債に依存したことは厳しく批判をしなければならないと思うのであります。
第三は、国債費の著しい増加と償還財源及び償還計画の不明確な点であります。
今年度の国債費は一兆六千六百億円の巨額に上り、前年度比五一%増であります。政府の財政収支試算によれば、それが推計であるとしても、五十五年度国債残高は五十一兆円と試算され、公債金収入六兆五千二百億円に対し国債費は四兆四千二百億円、国債収入の七〇%が国債費に充当され、国債償還のために国債発行をするという悪循環を続けるのみであります。もし公債財政から早期に脱却する意図がありとすれば、具体的に国民の理解、納得できる計画を明示すべきでありましょう。それなければ、インフレを期待し、それを政策として容易に償還を図る意図ありと断ぜざるを得ないのであります。
第四は、国債の市中消化の問題とインフレ抑制策であります。
国債はインフレをもたらすものとして国民の不安は増すばかりであります。政府はこれまで、国債は建設国債に限定し、市中消化を原則にする限りその心配はないと説明を続けてまいりました。がしかし、すでに特例国債は多額に上り、また、個人消化率も一〇%程度にとどまっておると言われ、日銀の国債保有高は五兆円を優に超えており、これまでよりも一層インフレ高進の危険があるにもかかわらず、日銀政策委員会の民主的改善、公社債市場の整備など金融制度の改革をないがしろにしていることは問題と思うのであります。
第五の反対理由は、多額な国債発行が地方財政及び民間の資金需要に多大の影響を与えることであります。
地方財政の深刻なことは国以上であり、地方債に依存せざるを得ないにもかかわらず、国債と競合し、中期割引債の発行ともなれば、なお条件の格差によって地方債市場が狭められることとなり、自治体の資金調達はより困難になりましょう。国民生活優先の財政を考えるならば、地方財政の充実こそ急務であるべきにもかかわらず、これを放置しておることは、国民生活無視の金融政策と言わざるを得ないのであります。
最後に、この特例法を含みとする財政計画全体が、国民の利益を著しく侵害するであろうということであります。
国民は、安定した経済下において、失業もなく、より豊かな生活を求めてやまないところであることは自明でありましょう。しかし、本年度の財政の性格は、これまでの高度成長期に構築された大企業優先、輸出振興型であり、公共投資は道路、港湾など産業設備の充実を優先し、国民生活の安定向上に資する社会資本の整備を怠り、また、中期財政収支試算に見られるとおり、振替支出の漸減を企図し、福祉充実を望む国民の声とは大きく乖離しているのであります。
特に問題なのは、所得税減税が見送られることであり、税の不公正がさらに拡大されることであります。減税と言っても、これまで常に物価調整の範囲にも満たなかったのでありますが、それすら実施しないとすれば、社会保険料の引き上げも含めて、五十年度収入三百万円の標準家庭の負担増は四・三%から五%、全体で実質約二千五百億円の増税であるとも言われ、物価上昇にあえぐ勤労国民の生活は日々切り下げられているということでありましょう。財政破綻の責任を勤労国民に転嫁し、その犠牲の上に収支を改善し、大企業の利益をあくまでも追求しようとする政策は断じて容認できないのであります。
かかる観点に立ちまして、私は本法案に反対の意を明確にし、討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/8
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009・河野謙三
○議長(河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。
これより採決をいたします。
表決は記名投票をもって行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
議場の閉鎖を命じます。
氏名点呼を行います。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/9
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010・河野謙三
○議長(河野謙三君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
〔投票箱閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/10
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011・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/11
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012・河野謙三
○議長(河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十七票
白色票 百二十六票
青色票 百十一票
よって、昭和五十一年度の公債の発行の特例に関する法律案は可決されました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百二十六名
安孫子藤吉君 青井 政美君
青木 一男君 井上 吉夫君
伊藤 五郎君 岩動 道行君
石破 二朗君 石本 茂君
糸山英太郎君 稲嶺 一郎君
今泉 正二君 岩上 妙子君
上田 稔君 上原 正吉君
植木 光教君 江藤 智君
遠藤 要君 小笠 公韶君
小川 半次君 大島 友治君
大鷹 淑子君 大谷藤之助君
岡田 広君 岡本 悟君
長田 裕二君 加藤 武徳君
鹿島 俊雄君 梶木 又三君
片山 正英君 金井 元彦君
上條 勝久君 亀井 久興君
川野 辺静君 河本嘉久蔵君
神田 博君 木内 四郎君
木村 睦男君 久次米健太郎君
久保田藤麿君 楠 正俊君
熊谷太三郎君 黒住 忠行君
剱木 亨弘君 源田 実君
古賀雷四郎君 後藤 正夫君
郡 祐一君 佐々木 満君
佐多 宗二君 佐藤 信二君
斎藤栄三郎君 斎藤 十朗君
坂野 重信君 迫水 久常君
山東 昭子君 志村 愛子君
塩見 俊二君 嶋崎 均君
新谷寅三郎君 菅野 儀作君
鈴木 省吾君 世耕 政隆君
園田 清充君 高田 浩運君
高橋 邦雄君 高橋 誉冨君
高橋雄之助君 橘直 治君
棚辺 四郎君 玉置 和郎君
土屋 義彦君 寺下 岩蔵君
寺本 廣作君 戸塚 進也君
徳永 正利君 内藤誉三郎君
中西 一郎君 中村 太郎君
中村 禎二君 中村 登美君
中山 太郎君 永野 嚴雄君
夏目 忠雄君 鍋島 直紹君
西村 尚治君 温水 三郎君
橋本 繁蔵君 秦野 章君
初村滝一郎君 鳩山威一郎君
林 ゆう君 林田悠紀夫君
原 文兵衛君 桧垣徳太郎君
平井 卓志君 平泉 渉君
福井 勇君 福岡日出麿君
藤井 丙午君 藤川 一秋君
藤田 正明君 二木 謙吾君
細川 護煕君 堀内 俊夫君
前田佳都男君 増田 盛君
増原 恵吉君 町村 金五君
丸茂 重貞君 宮崎 正雄君
宮田 輝君 最上 進君
望月 邦夫君 森下 泰君
八木 一郎君 矢野 登君
安井 謙君 安田 隆明君
柳田桃太郎君 山崎 竜男君
山本茂一郎君 山内 一郎君
吉田 実君 吉武 恵市君
亘 四郎君 有田 一寿君
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反対者(青色票)氏名 百十一名
阿具根 登君 青木 薪次君
赤桐 操君 茜ケ久保重光君
秋山 長造君 案納 勝君
上田 哲君 大塚 喬君
加瀬 完君 粕谷 照美君
片岡 勝治君 川村 清一君
神沢 浄君 久保 亘君
工藤 良平君 栗原 俊夫君
小谷 守君 小柳 勇君
小山 一平君 佐々木静子君
沢田 政治君 志苫 裕君
杉山善太郎君 鈴木美枝子君
鈴木 力君 瀬谷 英行君
田中寿美子君 竹田 四郎君
対馬 孝且君 辻 一彦君
鶴園 哲夫君 寺田 熊雄君
田 英夫君 戸叶 武君
戸田 菊雄君 中村 波男君
野口 忠夫君 野田 哲君
野々山一三君 羽生 三七君
浜本 万三君 福間 知之君
藤田 進君 前川 旦君
松本 英一君 宮之原貞光君
村田 秀三君 目黒今朝次郎君
森 勝治君 森下 昭司君
矢田部 理君 安永 英雄君
吉田忠三郎君 和田 静夫君
阿部 憲一君 相沢 武彦君
内田 善利君 太田 淳夫君
柏原 ヤス君 上林繁次郎君
黒柳 明君 桑名 義治君
小平 芳平君 塩出 啓典君
白木義一郎君 鈴木 一弘君
田代富士男君 多田 省吾君
中尾 辰義君 二宮 文造君
原田 立君 藤原 房雄君
三木 忠雄君 峯山 昭範君
宮崎 正義君 矢追 秀彦君
矢原 秀男君 山田 徹一君
岩間 正男君 上田耕一郎君
小笠原貞子君 加藤 進君
春日 正一君 神谷信之助君
河田 賢治君 沓脱タケ子君
小巻 敏雄君 近藤 忠孝君
須藤 五郎君 立木 洋君
塚田 大願君 内藤 功君
野坂 參三君 橋本 敦君
星野 力君 安武 洋子君
山中 郁子君 渡辺 武君
柄谷 道一君 木島 則夫君
栗林 卓司君 三治 重信君
田渕 哲也君 向井 長年君
和田 春生君 青島 幸男君
市川 房枝君 喜屋武眞榮君
下村 泰君 野末 陳平君
松岡 克由君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/12
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013・河野謙三
○議長(河野謙三君) 日程第三 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について、提出者の趣旨説明を求めます。石田運輸大臣。
〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/13
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014・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
国鉄は、過去百年間、国内輸送の大動脈として、国民生活の向上と国民経済の発展に寄与してまいりました。今日全輸送機関の中で国鉄が占める輸送割合は逐年低下し、かつての独占的地位は薄れてきてはおりますが、鉄道としての特性を発揮できる輸送分野もなお多く存在するものと思われます。すなわち、国鉄は、わが国の交通体系の中で今後とも都市間旅客輸送、大都市圏旅客輸送及び中長距離・大量貨物輸送について重点的にその役割りを果たすとともに、国鉄の本来の使命から見て、これらの分野以外の分野を含めた全体につきまして独立採算制を指向した自立経営を行っていくことが強く期待されるものであります。
一方、国鉄の財政は、昭和三十九年度に赤字に転じて以来、急速に悪化の傾向をたどってまいりました。このため、政府におきましては、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法に基づき、昭和四十四年度及び昭和四十八年度の二度にわたって国鉄の財政再建に関する基本方針を決定し、各種の対策を鋭意推進してまいったところであります。
しかしながら、その後、輸送構造の変化、運賃改定のおくれ等による収入の不足と人件費及び物件費の大幅な上昇等による経費の増高のため、国鉄財政は改善の兆しを見せず、昭和五十年度には約九千百億円の減価償却後損失を生じ、繰越欠損金は三兆一千億円を超えるに至り、昭和四十八年度を初年度とする現行財政再建計画の目標を達成することはきわめて困難な状況に立ち至っております。
このような現況にかんがみ、政府といたしましては、この際現行の財政再建対策が十分にその目的を達成できなかった原因について反省を加え、抜本的な再建対策を策定して、これを強力に実施していく必要があると考え、昨年末に日本国有鉄道再建対策要綱を閣議了解いたしました。
今回の国鉄再建に当たりましては、国鉄自身が安易な経営に陥ることのないよう厳しい姿勢のもとに国民に対して責任ある経営体制を確立することが再建を達成するための基本であり、このためには、労使関係を速やかに正常化することを初め、責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律を確立するとともに、組織・人事制度の抜本的改革を行うことが必要であると考えております。
次に、国鉄の財政問題につきましては、その収支の均衡を速やかに回復し、以後これを維持していくことをもって基本方針といたしております。このため、国鉄の業務運営の合理化その他の経営の改善を図る一方、いわゆる過去債務の処理を初めとする国の助成措置の強化とあわせて、平均約五〇%の運賃改定を実施しようとするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、国有鉄道運賃法の改正の内容について申し上げます。
第一に、鉄道の普通旅客運賃につきましては、その賃率をおおむね五五%引き上げ、現行賃率では営業キロ一キロメートルごとに、六百キロメートルまでの部分については五円十銭、六百キロメートルを超える部分については二円五十銭となっておりますのを、六百キロメートルまでの部分については七円九十銭、六百キロメートルを超える部分については三円九十銭に改定することといたしております。
第二に、航路の普通旅客運賃につきましては、鉄道の普通旅客運賃とほぼ同程度の改定を行うことといたしております。
第三に、貨物につきましては、車扱貨物運賃の賃率をおおむね五九%引き上げることといたしております。
なお、これらの改定によりまして、おおむね三七%の増収が得られる見込みとなっております。
次に、日本国有鉄道法の改正の内容について申し上げます。
第一に、国鉄は、その事業の収支の均衡の速やかな回復及び維持を図るとともに、その業務の適正な運営を図ることにより、その経営の健全性を確立するよう努めなければならないことを明らかにいたしております。
第二に、国鉄に対して経営の改善に関する計画の作成及び実施を義務づけるとともに、運輸大臣が経営改善計画の変更その他経営の改善に関し必要な事項について指示をすることができることといたしております。
第三に、政府は、昭和五十年度末の国鉄の長期債務のうち、累積赤字相当額の一部について、その償還が完了するまでの毎年度、その償還額を無利子で貸し付けるとともに、その利子を補給することができることといたしております。
第四に、前述の貸付金の償還が完了するまでの間、国鉄は、特定債務整理特別勘定を設けて他の勘定と区分計理を行うとともに、収入支出予算についても他の勘定と区分することといたしております。
第五に、国鉄は、前事業年度から繰り越された損失があるときは、運輸大臣の承認を受けて、資本積立金を減額して整理することができることといたしております。
第六に、政府は、国鉄経営の健全性の確立のため必要があると認めるときは、財政上の措置その他の措置を講ずるよう特別の配慮をすることといたしております。
また、以上の措置に伴い、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法は廃止することといたしております。
なお、衆議院におきまして、この法律案中、国有鉄道運賃法の改正につきましては、本年六月一日から施行することといたしておりましたのを公布の日の翌日から施行することと修正され、あわせて本年七月から営業を廃止した大畠−小松港間の航路運賃の削除が行われており、また、日本国有鉄道法の改正及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の廃止につきましては、本年四月一日から施行することといたしておりましたのを公布の日から施行することと修正されるとともに、改正後の日本国有鉄道法に基づく長期資金の無利子貸し付け等の助成措置の適用等について所要の経過措置が新たに設けられております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/14
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015・河野謙三
○議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。瀬谷英行君。
〔瀬谷英行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/15
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016・瀬谷英行
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について、若干の質問を行います。
国鉄の赤字は、昭和三十九年度以降今日に至るまで十二年間、雪だるま式にふえ続け、いまや累積で実に三兆一千億という破局的な事態に立ち至りました。病人なら手おくれの重体であります。こんなになるまで放置しておいた政治的責任は、きわめて重大であると言わなければなりません。
赤字の続いた過去十二年間に二度にわたり国鉄の財政再建計画が立てられましたが、何の効果もなく、ますます悪い状態で今日に至りました。同じ失敗を再三繰り返さないために、基本的な問題をまず総理に伺いたいと思います。
それは、国鉄が現行の法と制度を踏襲して、なお独立採算制を堅持することが可能と思うかどうかであります。過去の再建計画の失敗は、いまのシステムの中で独立採算制を維持することは不可能であることを二度にわたり証明いたしました。もし漫然とその場しのぎの運賃値上げで国鉄財政の立て直しが可能と考えたならば、遠からず、今回の再建計画も失敗であったことを認めざるを得ないでしょう。国鉄の長期債務残高は実に六兆八千億、それに対する支払い利子だけで年間五千億、運賃改定による増収分は五千億でありますから、結局、たまりたまった借金の利息分にしか当たらないのであります。
赤字の原因は、国鉄の運賃水準が低かっただけではありません。多くの構造的な問題があります。
第一に、国鉄営業キロの四〇%を占める地方ローカル線があります。いわゆる赤字ローカル線で、もっぱら過疎地帯を走っております。どう手を尽くしても、だれに任せても絶対に赤字を免れることはできません。私鉄はもちろん、地方自治体も引き受けず、かといってやめるわけにもいかないのであります。これに対する国からの補助がわずか百七十億、まさに二階から目薬であります。
第二に、貨物輸送の衰退があります。これは設備投資の不足から輸送力の立ちおくれを招き、合理化による不便、不自由が利用者を遠ざけたことも影響しております。利用者は、要員の縮減で不便になった国鉄よりも、多少高くとも便利なトラックを選びます。合理化や時代の変革による貨物輸送の落ち込みを、年に一度か二度のストライキのせいにするのは的外れと言うべきであります。
第三に、独立採算制を原則とするならば本来負担する必要のない各種の公共負担があります。これは、国鉄の犠牲で国及び公の施策を肩がわりをしているわけであります。
第四に、このような赤字の原因が多岐にわたっているにもかかわらず、必要な投資を国の出資ではなく莫大な借入金で賄っております。そして、借金がふえればふえるほどその利息も遠慮なくふえることは、これまた当然であります。かくして国鉄は、かせいでもかせいでも、そのかせぎがことごとく借金の利息に吸い取られる仕組みになってしまいました。かつての国鉄総裁であった某氏が、これでは国鉄は吉原の遊女と変わりがない、休みなしに働いても借金がふえるばかりだと慨嘆した話が伝えられております。提案の趣旨説明にあるように、「独立採算制を指向した自立経営」を国鉄に期待するならば、赤字の原因を生み出している構造的な諸問題を迅速に一つ一つ片づけていかなければならないと思われます。そうでなければ、幾ら運賃の値上げを繰り返しても、しょせん穴のあいたバケツに水をくみ込むにも等しく、たまるわけがないであります。
国鉄の監査委員会は「日本国有鉄道監査報告書」を毎年発表しております。この報告書によれば、赤字ローカル線については、徹底的な合理化と、運営の形態、運賃のあり方等についての検討、適切な助成措置が要望され、過去債務に対する措置としては、国の出資への振りかえ、たな上げ等がこれまた要望されております。そして、「国鉄の運賃上のいわゆる公共負担については、今後、それぞれの内容に応じて整理し、基準及び在り方について検討のうえ、その必要に応じ国において負担されるべきであると考える。」と述べております。絶体絶命の財政危機に追い込まれた国鉄の赤字問題についての見解としてはすこぶる悠長で、さながら火事が終わってから消防署に電話をかけるような感じがするのでありますが、遠回しな言い方であっても、過去債務、公共負担、地方交通線等、構造的赤字要因については国の責任において措置することを要望しているのであります。
ただ、政府は、監査委員会の指摘する中で最も肝心な独立採算制維持のための条件を取り入れておりません。取り入れているのは、徹底した合理化と企業努力という言葉だけであります。しかしながら、赤字の最も大きな要因となっている構造上の問題をたな上げして、一生懸命働けと言うだけでは事は解決いたしません。よいたとえではありませんが、かごの鳥と言われた吉原の遊女に対して企業努力と合理化を求めても、借金の解消と苦界から抜け出す策にはならなかったと思うのであります。いかに国鉄が公益事業であろうとも、借金をして仕入れた品物を原価より安く割り引いて売るような方法を続ける限り、総裁を大蔵省から迎えようとも、あるいはまた日銀から連れてこようとも、絶対に黒字経営にならないはずであります。国民の鉄道としての国鉄をどうするか、公共企業体か独立採算制か、あるいはまた鉄道省か、過去十年の経験の中から、できることとできないことははっきりしたはずであります。当面を糊塗するその場しのぎの策で何とかなるだろうというやり方では、財政の再建は不可能と断言してもよいと思います。国の動脈としての使命もそれでは果たし得ないでしょう。国鉄をどうするのかという基本的なテーマに対する三木総理の決断と見解を明確に表明をしていただきたいと思います。
次に、国鉄総裁の権限と当事者能力の問題について伺いたいと思います。
本年二月、藤井国鉄総裁は辞表を提出しました。正確には、自民党タカ派の諸君から執拗ないやがらせを受けて詰め腹を切らされたと聞いております。その真偽のほどはともかく、藤井前総裁辞任の後は後任総裁がしばらく決まりませんでした。三月になってやっと高木現総裁が口説き落とされました。要するに、この間八方手を尽くしても総裁のなり手が見つからなかったのであります。内閣改造のたびに大臣になりたい人は幾らでもいるのに、国鉄総裁を引き受けようという人は、現役はもちろん、OBの中にすら出てこないというのは一体どういうことでしょうか。これは、いかに国鉄総裁が割りの悪い仕事であるかを自民党の諸君がよく知っている証拠であります。
財政は常に火の車で、ろくに権限はなく、腕をふるいたくとも自主性はなく、まかり間違って大事故でもあれば一身に責任を負わなければなりません。政府にとってまことに好都合な責任の防波堤のような存在にすらなっております。おまけに、赤字のゆえをもってボーナスも返上していると聞いております。いまの高木総裁がどういう心境と、いかなるめぐり合わせで総裁を引き受けられたかわかりませんが、要するに、よほど奇特な人でないとこの職にはだれもつかないのではないかと案じられます。果たしてこれでいいのでしょうか。私は、高木総裁個人に同情して言っているのではありません。この重要な責任あるポストがだれからも敬遠をされる状態でいいのかという疑問があるからあえて言うのであります。いかなるポストでも、責任が重ければ重いほど権限もつり合いがとれなくてはなりません。前段で申し上げたことと関連をしてきますが、国鉄の最高責任者が当事者能力ゼロの状態にあることはきわめて不自然であります。当事者能力を強化して経営者としての権限を保証すべきではないでしょうか。その上に立って労働組合に対するスト権も回復すべきであります。それが労使の責任を持った円満なルールを確立する道にも通ずることになると思います。総理の決断を期待をしたいと思いますが、どうでしょうか。
次に、運輸大臣にお伺いをしたいと思います。
東京から大臣の地元、秋田までは、ちょうど西に向かって大阪までの距離に匹敵いたします。ところが、東京−大阪間は新幹線で三時間、夜の夜中でない限り何時に東京駅に行ってもほとんど待たずに乗れます。日帰りも可能であります。飛行機の便も同様であります。ところが、秋田の場合は、一日に何本もない特急ですら七、八時間を要します。日帰りはとても無理です。お盆や年末年始ともなれば大変な混雑を呈し、上野駅には徹夜の行列ができます。距離は同じでも、便、不便の違いは月とスッポンほどであります。大臣の地元なので秋田を例に出しましたが、大まかに言って、東京から西と、上野駅を基点とする東北、上信越地方では、その交通政策において先進国と発展途上国くらいの差異があるような気がいたします。駅を比較してみても、西の玄関東京駅を応接間とすれば、北の玄関上野駅はさながら物置同然であります。人口密度の相違が交通政策に反映するのはある程度はやむを得ないにしても、極端な地域間の格差は解消すべきではないでしょうか。そのためにも、東北新幹線や上越新幹線の工事を急ぎたいとお答えになるかもしれませんが、新幹線と新線の建設については慎重を期すべきではないかと思うのであります。莫大な設備投資が国鉄の長期債務を形成するのに少なからぬ役割りを果たしていることを忘れてはなりません。また、これから計画、着工される新幹線は東海道、山陽新幹線のようにドル箱となり得るかどうかは疑問であります。将来計画は別としても、さしあたっては在来線の整備と複線、電化を急ぎ、輸送力を強化することが地域住民の期待にも沿い、国鉄が利用者を取り戻す近道ではないかと思われますが、大臣の見解を求めたいと思います。
次に、国鉄を財政危機のどろ沼から救い出すには、もちろん膨大な債務からの解放が急務でありますが、既成の概念を一掃して、思い切った発想の転換を図るべきではないでしょうか。国鉄本来の目的は、人や物を安全に迅速に確実に運ぶことにあるわけであります。したがって、そのための手段としては、レールの上に車両を動かすことに限定して考えることなく、必要に応じて船を用い、場合によってはレールを外して専用道に転換し、地域によってはモノレールを使う等、幅のある選択を可能にすべきだと思います。しかし、事業の計画や実行は人がやることでありますから、人の和はすべてに優先をいたします。合理化の名のもとに要員の削減を行い、生産性向上の名のもとに労働組合の切り崩しや不当労働行為が行われた過去の失敗が職場の人間関係を荒廃に導いたことを忘れてはならないと思います。労働行政の経験豊かな大臣から、労使関係の正常化についての見解も伺いたいと思います。
社会党は、経営改善のための具体策として経営委員会、地域の輸送改善のため利用者の意見を反映できる交通委員会の設置、活用を提案しておりますが、経営及び運営の民主化のためこのような組織を考慮する気はないか。また、既設の国鉄監査委員会、鉄道建設審議会、運輸審議会等が民主的に十分その機能を果たしているかどうか、改善の余地はないか、ありとすればどうすればいいかといったような点についてもお答えいただきたいと思います。
最後に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
大臣は、国鉄の財政が火の車に油を注いだような状態にあることを最もよく承知をされていると思います。ヨーロッパでも鉄道に対する国の助成が日本以上に積極的であることを御承知のことだと思います。道路、橋梁、港湾、空港、埠頭と同様に、国鉄の場合も、線路、道床、鉄橋、トンネル等は国の施設として出資することが当を得ているとお考えにならないでしょうか。もしそれが行われれば、長期債務六兆という巨額には上らなかったはずであります。また、通行税が五十年度で四十億、市町村納付金が百五十一億、国鉄から納められております。しかし、通行税は切符の中に含まれているわけであります。財政上どうにもならないで四苦八苦をしている国鉄から通行税を取り上げる、あるいは市町村納付金、これは赤字ローカル線の地域の市町村では、特に国鉄の納付金が欲しいために線路を外すことに反対をするというようなことも聞いておるのでありますけれども、これらもやはり本来国鉄が負担をすべきことではないと思うのであります。公共負担と関連をしてまいりますが、一例として挙げてみましても、通行税や市町村納付金といったような問題が出てまいります。国鉄の上前をこれ以上はねるというようなことは、これは一考の余地があるのではないかと思いますので、それらの点につきましても、大蔵大臣のお考えをお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/16
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017・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 瀬谷君にお答えをいたします。
この破局的な赤字に対する責任問題にもお触れになりました。国鉄のこのような赤字になったのには幾つかの原因がある。一つには、やはり運賃の水準が低いということが事実であるんですね、これは。諸物価の値上がりに比べて国鉄の運賃は低い水準にあることは事実である。その上に輸送の構造的な変化がありますね。貨物とか地方交通だとかに顕著である。こういうふうな原因がある上に、また近くは運賃の値上げというものが一年半ばかりおくれたこと、それから人件費の高騰というものが非常に顕著であったということでもあり、急激に赤字をふやしたわけでございますが、しかし、瀬谷君の言われるように、こういう状態に持ってくるまでに、もう少しやっぱり抜本策を講じなければならなかったのではないかというお説に対しては、やはり反省すべき点が私はあると思う。まあしかし、今度は相当思い切った再建策でございまして、瀬谷君も御承知のように、国鉄自身がやっぱり徹底的な合理化をやると。また、過去の赤字の、累積赤字と申しますか、二兆五千億円のたな上げをすると。また、やむを得ない点は国鉄運賃の改定を願うという、こういう三本柱になっておるわけでございますから、この期にこそ国鉄は再建されなければならぬと考えておるわけでございます。
独立採算制の点についていろいろお話がございました。まあ、公共企業体というものが独立採算制というたてまえを外して全部国の財政的負担ということになりますれば、これはやはり経営というものに対する責任というものが明白になってまいりませんから、たてまえは崩すべきではないけれども、しかし、国鉄の健全な自立経営に持っていくためには、相当やはり国としてもこれを助けなければならぬと私は思います。今年もそういう意味で相当助けておるわけでございますから、どの程度、どの問題にということについては、今後検討をすべき問題だと思います。
また、瀬谷君は、貨物あるいはまた地方の赤字路線などに言及しまして、運賃だけ上げたのでは抜本的に国鉄の再建にならないではないか——確かにやっぱり貨物というものについては、これは非常な輸送構造の変化というものが一番効いておるのですが、しかし、やはり中距離あるいは遠距離の貨物輸送というものに対しては、もう少しやっぱり体質改善をすれば貨物の点においても今日のような状態というものから改善の余地はあると私は思うのですね。地方の地方路線、問題の路線が多いわけですから、今後の地方路線の建設というものは相当厳密な検討がなされなければならない。しかし、地方路線というものは必ずしも鉄道によらなくてもいいような場合もあるわけですから、そういう場合には地域の意向なども聞いて、そして、これはほかのものに変わっていくというようなやり方も検討せなきゃなりませんでしょうし、あるいはまた、この地方の路線に対してはいろいろ国としてもめんどうをみなきゃならぬ面もある。こういうことで、この問題はいまのままで置いたならば瀬谷君の言われる面がございますが、改善の余地を持っておるので、やはりそういう面について、これは赤字の一つの大きな原因にもなっておるわけですから、今後改善をしていくべきである。
またもう一つは、当事者能力あるいはスト権の問題、お話がございましたが、この問題はまさしく一つの大問題であります、現在は国鉄は当事者能力を持ってないわけですから。そういうことで、この問題、スト権の問題などについては、過去公務員の審議会などを通じて、あるいはまた専門委員会——専門懇談会ですか、専門家懇談会、十年もこの問題は論じて、なかなかやはり結論を得なかった問題でございますが、いつまでもこれを放置することはできないと、こういうことで、この問題を根本的に解決をしようという政府の意図のもとに、今回、昨日も私は会議を開いたわけです。
それは何かといえば、国鉄の当事者能力、あるいはまたスト権の問題もう一つは公共企業体という経営のあり方、こういう根本の問題についてメスを入れたいということで、専門家の意見も徴する必要がございますので、中山教授を議長に願って、小さく部会を設けて、その部会長の会議をきのうやったわけです。そうして、この当事者能力あるいはまたスト権の問題というものを論じ合ったわけでございますが、これは各方面の専門家を委嘱したわけでございまして、相当な顔ぶれの方々に御参加を願っておるわけでございますから、そういう結論も政府は参考にしながら、いま瀬谷君の御指摘になった当事者能力、スト権の問題に対して、できるだけ早く、今度は政府としてのこの問題に対する決着をつけたいという考えでございます。
他は関係大臣からお答えをいたします。
〔国務大臣石田博英君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/17
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018・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私に対する一番最初の御質問は、地方の格差が激し過ぎるじゃないかと、新幹線や新線建設よりは在来線の整備、複線化が先でないかという御意見でございます。私ども、実際、秋田へしょっちゅう帰り、たまに新幹線に乗れば、いま御指摘の事実、身にしみて痛感をいたします。揺れも、ひがむわけじゃありませんが、どうも北に行くと揺れがひどいような気がいたします。
そこで、新幹線あるいは在来線の計画は、すでに新線建設審議会におきまして議決を得ているものでありますので、この計画自体を変更するということは、これは現在では困難でございますが、その後の経済情勢の変化、あるいは財政能力その他を勘案いたしまして、実施の面で十分な配慮を加えつつ、在来線の整備、強化に努めたいと思っております。
それから次に、国鉄の経営全体として発想の転換が必要じゃないか——全く同感でありまして、汽車を動かしてさえいればいい、戦前などは恐らくほとんど金利の要る金を使わないで経営してきたんじゃないかと思うわけであります。そういう従来の物の脅え方から、鉄道の持っておりまする資産その他をできるだけ効率的に運用する、そして鉄道だけでない新しい収益を求めていくということも必要であると考えます。
しかし、いかなることをやるのにも人間関係が一番基礎であり、重要でございます。スト権の問題については、いま総理からも御答弁がありましたが、私は、たびたび労働行政をお預かりした経験で私個人なりの意見は持っております。しかし、中山先生を議長とする審議会がいま御検討中でございます過程において私見を申し述べることは適当でないと思いますので、遠慮をさしていただきたいと存じます。ただ、一番大切なのは現場の人間関係だろうと思うのでありまして、従来のこの労使関係の改善その他について企てられる委員会とかあるいは監査会というようなものが、余りえらい人ばかり集め過ぎて現場の声が正確に反映しないきらいがあるように思いますので、そういう方向の運営に心がけたいと思っております。
それから、経営委員会、監査委員会等を新たに設ける必要がないか、また、現在の新線建設審議会を改組する必要がないか、こういう御意見でございます。一体、国鉄の経営、運営を改善するためにどういう形態の指導機関が適当であるかということは、いましばらく検討を要する面があると思います。というのは、かつて経営委員会があった時代があるのでありますが、その実際的効果が余り期待できなかったのでありまして、やはり実際的効果が上がるような制度をできるだけ速やかに求めたいと考えておる次第でございます。
ただ、路線を、在来線を整備しあるいは複線化をいたしますについても、それぞれの事情による国の援助もむろん期待しなきゃなりませんが、何はおいても国鉄の経営の健全化が急がれますので、そのためにも本法案の一日も早い成立に御協力をお願いを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/18
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019・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、国鉄の財政が今日のような状況でございますので、通行税でございますとか、市町村納付金というようなものは廃止すべきでないかという御質問でございます。で、国が負担すべきでないかという御質問でございます。結論から申しますと、こういう個々の負担につきましては、他との均衡上国鉄におかれても負担をしていただく必要があるのではないかと思いますが、財政全体の対策といたしましては、国としてそれぞれ配慮してまいることは当然であろうと考えております。すなわち、通行税でございますけれども、これは消費税体系を崩すことのないためにも国鉄にがまんしていただかなければならぬと思います。また、市町村の納付金でございますけれども、国鉄の資産は民有鉄道同様重要な資産でございまするし、一般企業の固定資産税の負担と同様、この負担に耐えていただくよりほかに道はないと思います。
ただ、いま申しましたように、財政全体、国鉄財政が累卵の危うきにあることは、私どももよく承知いたしておるわけでございますので、過去においてたびたび対策が講ぜられたわけでございますけれども、瀬谷さんが御指摘のように、見るべき成果が上がらないということでございまして、政府は、今年度の予算編成の際に大きな決心をいたしまして、過去債務につきまして、二兆五千四百四億という大胆な過去債務のたな上げを実行することにいたしましたほか、工事費の助成、ローカル線の助成等もあわせて実行することにいたしたことは、御案内のとおりでございます。
この政府の国鉄に対する助成は欧州諸国に比べて菲薄でないかという御指摘でございますけれども、これはそれぞれの国の国有鉄道の経営の条件が違うわけでございますから、一概にフラットに比較することは無理だろうと思いますが、私どもといたしましては、精いっぱい国鉄の財政につきましては責任ある処置を講じておるものと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/19
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020・河野謙三
○議長(河野謙三君) 三木忠雄君。
〔三木忠雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/20
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021・三木忠雄
○三木忠雄君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び国有鉄道法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
従来、国鉄はわが国における公共交通機関として重要な役割りを果たしてきたのでありますが、いまや国鉄財政は破綻に瀕し、重大な局面を迎えるに至っております。この国鉄財政をいかにして立て直すか、
〔議長退席、副議長着席〕
その再建への成否が、国民生活とわが国経済に重要な影響を及ぼすからであります。したがって、この国鉄問題は現下の重要な政治課題であり、もはや国鉄一企業の問題として解決できるものではありません。わが国経済の基調は安定成長に移行し、国の経済計画等の見直しが行われるなど、経済社会情勢は大きく変化しております。しかも、今後における労働力問題、エネルギー問題等を考えれば、これら社会的、経済的諸問題と整合性を持った総合交通体系が確立されなければならず、この総合交通体系の中において、国鉄がいかなる使命を果たすべきか、その輸送分野が明確に位置づけられ、その上で国鉄財政の再建が図られなければなりません。ここに総合的な交通体系の確立が緊急の課題として要求されるものと考えますが、総理並びに運輸大臣の明快な答弁を求めるものであります。
質問の第二は、政府の国鉄再建計画で果たして国鉄の再建ができると考えているのか。総理に伺いたい。
総理もすでに御存じのとおり、国鉄は昭和三十九年度に赤字に転落をして以来、昭和四十四年の第一次再建案、それから昭和四十八年の第二次再建案と、二度にわたる再建計画が立てられましたが、いずれも、目的を達成するどころか、二年を待たずして、その再建計画は失敗し、その後の国鉄財政は悪化の一途をたどって、ついに国鉄は破産状態になったのであります。私は、第一次、第二次再建案とも、国会の審議を通して、この政府の再建案では国鉄の再建は不可能であるとして具体的に指摘してまいりましたが、政府は一向に耳をかさず、今日の状態に至らしめた政府の責任はきわめて重大と言わなければなりません。
そこで、私は総理にお聞きしたいのは、閣議了解された今回の国鉄再建計画によって国鉄は完全に再建可能とお考えなのかどうか、もし再建不可能な場合の責任はどうとられる考えなのか、総理にお伺いしたいのであります。
質問の第三は、国鉄財政悪化の要因である地方交通線の経営、公共負担の是正、貨物輸送問題、過去債務等に対する政府の措置についてであります。
まず、地方交通線の経営についてであります。地方交通線九千二百キロの経営成績を五十年度区分損益計算書で見てみますと、収入五百六十四億円に対し、経費は二千八百二十九億円、純損失は二千二百五十五億円となっております。しかし、この地方交通線における経営収支を大幅な運賃値上げや合理化努力によって均衡させることは困難であり、そこから生ずる赤字は一種の公共負担的なものであります。したがって、ナショナルミニマム確保のため、地方交通線の赤字は国が負担すべきであると考えます。なお地方閑散線の代替交通への移行や廃止等、合理化については政府の責任において、地元住民を含めた審議機関を設けるなど、地域住民の意見の反映に努力すべきであります。しかるに、政府は、日本国有鉄道再建対策要綱において、国の積極的な支援のもとに国鉄の責任においてその取り扱いを検討することとしております。五十一年度予算においてわずかに百七十二億円の特別交付金を支出するにすぎないのであります。これでは国鉄財政再建の具体的解決策とは言えず、国鉄財政の立て直しは不可能であります。したがって、地方閑散線問題は国鉄の手から政府の手に移し、関係自治体とその対策を講ずべきと思いますが、この点についての運輸大臣の見解を伺いたい。
さらに、この地方閑散線対策に当たっては、いわゆる政治路線と言われる赤字路線の新線建設問題があります。この赤字路線の建設をそのままにしては国鉄の負担はますます大きくなり、財政援助を進めるとすれば、それは底なしの状態になってしまいます。今後この赤字路線の建設についてはいかに対処される考えなのか、伺いたい。また、現在の新幹線建設計画を抜本的に再検討する考えはないか、運輸大臣にあわせてお尋ねいたします。
次に、国鉄の公共負担の是正についてであります。
いわゆる国鉄の公共負担は、五十年度において四百九十九億円となっており、公社発足以来の累計は実に一兆三千三百二十一億円に上っております。従来、国鉄は利益追求の企業ではないので公共負担に応ずるのは当然であるとされてきましたが、これら公共負担は、福祉政策、文教政策あるいは通産、農林政策的な見地から行われるもので、現在の国鉄財政の状況からすれば、もはや国鉄が負担すべきものではなく、国が負担すべきものと考えます。このような国が負担すべきものは国が負担するということを明確に区分し、その上で国鉄財政の改善が図られるようにすることが必要であると考えますが、総理並びに運輸大臣はいかなる見解をお持ちであるか、お伺いいたします。
次に、貨物輸送問題についてであります。
近年における貨物輸送の衰退は、国鉄の経営収支にも大きな影響を与えており、ちなみに四十九年度鉄道客貨別経営成績を見ますと、貨物収入二千三百九十九億円に対し、その原価は六千四百五十一億円、赤字額は四千五十二億円で、貨物輸送の赤字が国鉄財政危機の大きな要因となっております。それだけに、この貨物部門の再建は国鉄再建策の最重要の柱として位置づけられてしかるべきものであり、われわれは、貨物ターミナルの整備等輸送力増強のための近代化、合理化を図り、トラックまたは海上輸送との調整を進めるとともに、大企業に対する営業割引制度の廃止、生鮮食料品を初めとする生活必需物資の割引制度の強化など、料金体系の整備等が必要であると考えます。この貨物輸送の今後のあり方に対し、政府はいかに対処していかれるか、運輸大臣の答弁を求めます。
次に、過去債務等に対する措置についてであります。
五十年度末における国鉄の繰越欠損金は三兆一千六百十億円、長期負債は六兆七千七百九十三億円の巨額に達しております。この膨大な繰越欠損金、長期負債は、これまでの各種公共負担の賦課、地方交通線の経営あるいは国の高度経済成長政策に伴う輸送力増強のための設備投資資金を借り入れに依存してきたなど、政府の失政によって生じたものであり、この過去債務等をそのままにして国鉄財政の再建を図ることは不可能であり、また、国鉄がこれを引き続いて負担していく合理性も認められません。
政府は、今回五十年度末の国鉄の長期債務のうち、累積赤字相当額の一部約二兆五千四百億円の債務について、その償還額を無利子で貸し付けるとともに、その利子を補給することとしましたが、過去債務等対策費としては全く不十分なものであり、いま一度全額国庫肩がわりという過去債務の完全処理を検討する考えはないのかどうか、大蔵並びに運輸両大臣の答弁を願います。
質問の第四は、国鉄運賃値上げの物価への影響についてであります。
今回、政府は五〇・三%という無謀な国鉄運賃の値上げを提案しております。この五〇・三%の値上げが消費者物価に及ぼす影響を政府では〇・五%程度としておりますが、公共料金の主柱をなす国鉄運賃が値上げされた場合の波及効果、あるいは心理的影響を考えますと、はかり知れないものがあります。一時の狂乱物価はようやく鎮静化したものの、消費者物価は依然として一〇%近い上昇を続けております。この国鉄運賃値上げが諸物価高騰を誘発し、インフレの再燃を招くことは必至であり、不況に苦しむ国民をますます窮地に追い込むことは明白であります。
それにもかかわらず、あえて国鉄運賃値上げを強行することは、三木内閣が政治公約として掲げた物価安定への挑戦をみずから放棄するものであると言わざるを得ません。しかも、この値上げにより国鉄財政の再建が達成されるという保証は全然なく、国民の上に苛酷な運賃値上げのみが残るものと考えます。政府は、この値上げ案によって物価の安定、国民生活の安定を確保する決意があるかどうか、総理並びに経企庁長官の答弁を求めるものであります。
最後に、国鉄の労使関係の正常化について質問いたします。
政府は、国鉄の再建は労使の協調がなければ達成できないと、労使関係の正常化を唱えております。しかし、この労使関係の正常化はスト権付与の問題を離れてはあり得ません。政府はさきの専門委員会懇談会の答申を隠れみのとし、労働者の基本的権利であるスト権をいまだに与えておりません。のみならず、公共企業体等基本問題会議の意見を求めることとし、いたずらに結論を引き延ばしております。わが党は、健全な労使関係を築くために、長年の懸案であるスト権付与については、労働基本権と公企体の社会的使命を十分に考慮した上で、条件をつけスト権を付与すべきであると考えています。しかしながら、国鉄再建期間中は、労使の紛争については労使双方が極力スト回避への努力をすることを期待しております。したがって、スト権問題はいまや検討の時期ではなく、総理がスト権付与の決断をすべきときであります。この点について総理の明快なる答弁を求めます。
また、政府は、国鉄職員の賃上げに関する仲裁裁定の実施に当たって、賃上げは国鉄運賃値上げ法案の成立が前提だとして、公労法十六条を発動して、裁定を実施するかどうかを議決案件として提案しております。しかし、その仲裁裁定の実施は政府の義務であり、値上げ法案とは当然切り離して処理すべきものと思いますが、あわせて答弁を求めるものであります。
以上、国鉄の再建は国民的課題であり、その再建策は国民のコンセンサスが得られるものでなければなりません。しかるに、今回の政府の再建案は、再建に名をかりた運賃値上げ案にほかなりません。政府は、本法案を撤回し、抜本的な具体的解決策を国民に示し、与野党一致で賛同できる国鉄再建案を策定すべきことを強く申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/21
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022・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 三木君にお答えをいたします。
第一の御質問は、総合交通体系というものが必要ではないかと。言われるとおりだと思います。政府も昨年末に、この国鉄の再建案というものが閣議で審議をされましたときにこれを明らかにしたわけで、それは何かといえば、この日本の総合交通の中で鉄道というものが持つ役割り、旅客の面においては都市間の旅客輸送、大都市圏の旅客輸送、貨物の点においては中長距離の大量貨物輸送というものを国鉄が受け持つ。まあ三木君も御承知のように、欧米諸国では鉄道の営業キロ数は減らしていく傾向にあるわけであります。一番顕著なのは西独であります。イギリスもそうであります。しかし、日本の立地的な、あるいは人口、こういう点から考えてみて、私は、日本はやはりそういうふうな鉄道の持っておる総合交通における役割りというものは欧米とは多少事情が違うと思っております。だから、国鉄というものが今後この経営というものも安定をし、国民に対するサービス、旅客、貨物の点においても、国民に満足のいくような改善がなされていくならば、総合交通の上における国鉄の役割りは諸外国に比して非常に私は重いものがあると、こう考えて、悲観的には見ていないわけでございます。
次に、この赤字の原因ということは、瀬谷君のときにもお話ししましたから繰り返しませんが、とにかく、いままでの国鉄の再建というものが、少し、根本的な再建というものが——根本的な再建よりも、そのときそのときで処理したというそしりは免れない点もあると思います。そういう点で、今回は、先ほどから申し上げておりますように、国鉄自身も思い切ってやっぱり経営の合理化もやると、また、政府の方としても、あるいは過去の二兆五千億にわたる累積赤字をたな上げする、あるいは地方鉄道に対しては地方特別交付金を出したり、工事補助金を出したり、国としてもいろいろと国鉄の再建に対して協力をし、なおかつ、それでは国鉄の再建はできませんから運賃の改定を願うということで、従来にない、政府も腰を据えた国鉄再建案でございますから、この再建案というものが国会の御承認を得て成立をすれば、国鉄の再建は可能であると考えておるわけでございます。
それから、公共負担の問題について御質問がございました。三木君の言われるように、この赤字の国鉄にいろいろ公共負担を負わすことは無理ではないかというお話はよくわかるわけですが、この問題については、国鉄を健全な経営体にするために、今後国としてもできるだけやはり協力をする必要があることは申すまでもございませんが、この問題はなかなか、いろいろ複雑な問題を含んでおりますので、今後どのようにして、どういう程度そういう問題に対して国鉄の負担を軽減していくかということは、十分に検討いたしていく問題だと思います。
また、労使関係ということですが、国鉄の再建、この根底にあるものは、労使関係が正常な関係に戻るということが国鉄再建の基本であることは、三木君と考えは同じでございます。そのためにスト権というものが必要であるというお立場。私はスト権ばかりでもないと思いますね。やはり公共企業体というものが、この機会に、公共企業体——国鉄ばかりじゃなしにほかにもあるわけですが、このあり方というものを根本的に考えてみたらどうだ、公共企業体のあり方。それからもう一つは、当事者能力というものが、スト権の場合でも、いろいろ交渉して、やむを得ずストに移るというのではないんですから、初めからスケジュールみたいな形になっておるんですから、これはやっぱり労働関係としては正常な形ではない、当事者能力をやっぱり国鉄自身が持たなければならぬわけでありますから、当事者能力、こういうものをいろいろ検討して、そしてスト権の問題というものをあわせて検討しなければ、スト権問題だけを取り出してやるということは根本的な解決にならないんではないかと。先ほど瀬谷君にもお答え申したように、きのうも私はその会議をやったわけで、いま中山伊知郎氏を議長にして、専門別の、公共企業体別の部会を設けて、学識経験者、専門家を委嘱して、そうしてこの三つの問題について取り組んでもらっておるわけでございますから、そういう結論も参考にしながら今度は政府は決着つけたい、この問題に。そういう考えでございますので、しばらくの時間的な猶予を願いたいわけでございます。
仲裁裁定の御質問もございましたが、政府は昭和三十二年以来仲裁裁定を誠実に履行してきておるわけで、公労法三十五条の規定というものを政府が尊重していくというのは方針は変わらないわけで、予算上なかなかそれが困難だということで国会の議決をお願いをしたわけでございますが、国鉄に対する再建についても、いろいろ慎重審議の中においても御審議を今後促進していただけると、こういう確信のもとに、仲裁裁定の実施は、これは完全に実施ができるという見通しでございます。
お答えをいたしました。(拍手)
〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/22
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023・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私に対する御質問の中で、新幹線の建設を見直すべきではないか、あるいは地方ローカル線の問題、あるいは公共負担の問題、そういうことであろうと思うのでございますが、まだ政府部内で十分検討して取りまとめているわけではございませんけれども、国有鉄道が独立採算制の堅持を求められる以上は、これはやはり採算に合わないものを強制されては、それは実行できないわけでございますので、従来、国鉄の経営が健全であり、また、非常に豊かであった時代に行ってまいりました各種の公共負担、あるいは政策負担、こういうものはそれぞれ政策実施部門が担当してもらうのが運輸省の立場でございます。そういう方向に向けて努力をいたしたいと思います。
それから、地方ローカル線の問題は、運輸省あるいは国鉄が中心になるのではなくて、政府の責任において行うべきでないかという御意見でございまして、これは私どもにとっては大変ありがたい御意見でございますが、これは私どもの責任においてやるというよりも、関係する方面が広いので、いわば運輸省が幹事役になってこの問題の処理に当たると。無論、国家の大きな御協力が必要であることは、これは言うまでもございません。
それからもう一つ、過去債務についての御意見でございまして、基本的には、赤字の部分は私は後の時代の人に残すべきではないと思います。しかし、施設や財産として残っておる部門については、これはやはり利用者——後の利用者の方々を含めて、利用者の負担にまつべきものだと思うのでありますが、その中に、国鉄として、独立採算制の上から言って、簡単に言えば迷惑なものもたくさんあるわけでございますので、そういう点については、今後やはり政策的な結果として、政策負担として考えていただくように関係方面の御協力を得たいと思っておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/23
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024・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質疑は、長期債務を政府が肩がわりすべきではないかという御趣旨の御質問でございました。仰せのように、五十年度末の国有鉄道の長期債務残高六兆八千二百四十一億円ございます。そのうち、固定資産その他の資産で見合うものが四兆三千億ばかりございます。したがって、先ほど申し上げました二兆五千四百四億というものにつきましては政府がこれをたな上げに応じまして、元利とも肩がわりと同様の経済効果を持つところの措置を講じようとするのが今度の再建計画の柱になっておるわけでございます。究極的にこれを肩がわりすべきでないかという御意見——三木さんの御意見でございますけれども、ともかく、二十年間にわたりまして元利ともこの分につきましては一般会計が責任を持って処理しようということでございまして、究極的にどのようにこのものを処理するかということは、これを経過してみまして決めなければならぬものと思いますけれども、私といたしましては、国有鉄道がりっぱに再建いたしまして、その名誉におきまして、こういった問題につきましては前向きの健全な処理が行われるようになることを期待いたしたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/24
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025・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
私に対する質問は、この値上げは物価に重大な影響がある、それで物価政策は一体大丈夫かと、こういうことでございますが、三木さん御指摘のように、今回の運賃改定は、かなり物価、特に消費者物価に影響するんです。〇・五%程度の大きな影響があるわけであります。いま、国鉄ばかりでなくて、電信電話料金の問題もある。そういう公共料金引き上げ問題は、物価政策から見ると、まことにいま頭の痛い問題なんでありますが、しかし、この改定を避けて通るわけにはいかない。そこで公社当局では一挙に大幅にというような要請でありましたけれども、これを段階的にということで、まあしかし、そう言いましても五〇%という高率になるわけでありますが、まあ、こういうような料金改定問題がなければ、物価政策はわりあいに今日は楽なんです。ことしの消費者物価目標は八%程度の上昇と、こういうことを申しておるわけでございまするけれども、このようなことがなければ、もっとずっと低くていいんです。しかし、それを避けて通るわけにはいかぬということで、そうしておりまするけれども、その八%程度という目標を設定するに当たりましては、その前提といたしまして、国鉄につきましては、ただいま御審議を願っておるこの法律案、また電信電話料金につきましても御審議中のあの改定案、これを前提といたして八%というわりあいに高い目標を設定いたしておりますので、これを御承認願いましても、物価目標にはいささかの影響もないんだということを御了承願いたいと存じます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/25
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026・前田佳都男
○副議長(前田佳都男君) 岩間正男君。
〔岩間正男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/26
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027・岩間正男
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係各大臣に質問いたします。
今日、国鉄の財政は五十年度末で累積赤字三兆一千六百十億円、長期債務残高六兆七千七百九十三億円という数字に見られるように、重大な危機に直面しております。
政府は、この財政危機を口実として、この物価高の折に値上げ法案の強引な成立を図っております。しかし、国鉄は赤字になった昭和三十九年以来、すでに四十一年、四十四年、四十九年と三回の値上げをしており、しかも値上げの提案に当たって、常に、この値上げによって財政も輸送力も改善されると強弁し続けてきたのであります。ところが、この結果は、現在の莫大な赤字と長期負債の激増なのであります。このことは、現在緊急に必要なことが運賃の値上げではなくて、国鉄経営の抜本的な、民主的な再建であることをはっきり示しているではありませんか。運賃の問題は、この抜本的な再建策を確立して後に民主的に決定すべきであります。総理の明確な答弁を求めます。
しかも、政府は、このような再建策を真剣に検討しようとしないどころか、むしろ運賃法定制度を廃止し、国民の目の届かないところで運賃を自由に上げられるようにしようとさえしておるのであります。運輸大臣は、国民に負担を強要するだけで、国鉄の再建をむしろ妨げるこのような措置をとらないことをここで約束すべきであると思いますが、見解を伺います。
また、政府は、仲裁裁定について、値上げ法案が通らなければ責任は持てないなどと開き直っています。卑劣な態度と言わなければなりません。仲裁裁定は当然即時完全に実施しなければなりません。そして、国鉄の当面の財政問題は、政府がいま提案した法案の中で国鉄への助成措置を決めている第五十四条の五から八までを運賃値上げと切り離して、独立した法案として緊急上程し、二千四百四十一億円の助成を実現させること、また、国鉄に対する短期貸付金について当面の必要額を承認することによって解決すべきであります。政府の明確な答弁を求めます。
わが党は、すでに四十八年六月、国鉄再建のための抜本的、民主的政策を提案し、また最近も、一層具体的な政策、「国鉄を民主的に再建する道」を発表しました。以下、私はこの立場に立って政府の見解をただしたいと思います。
第一に、国鉄に対する国の費用負担についてであります。
政府は国鉄に対し、昭和四十六年度から五十年度までの五年間で三兆三千七百十三億円、国鉄の経営能力をはるかに超えた莫大な設備投資を押しつけながら、わずかに四千四百七十一億円の出資を行ったにすぎません。
西ドイツやフランスでは、一九六五年から一九七四年までの十年間に、それぞれ営業収入に対して三八・九%、五六・二%もの支出を国が行っているのでありますが、わが国では、わずかに六・七%にしかすぎないのであります。これでは国鉄が莫大な累積債務と金利負担のために破産状態となるのも当然ではありませんか。政府は、国鉄に厳しい独立採算制を押しつけていますが、これが国鉄の公共性を損なうものであり、根本的な誤りであることは、何よりも今日の国鉄のこの深刻な危機が示しているではありませんか。国鉄の路盤や線路、駅舎などの基礎施設は、国道と同じように公共施設であり、国の財産であります。このような基礎施設や改良費を国道と同様に国が負担することは、公共企業である国鉄に対する国の当然の義務であります。
また、身体障害者割引や米麦などの政策等級割引による国鉄の公共負担は、国の政策によって行われているものであり、当然国が補償すべきものであります。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
また、政府は、六兆八千億円の過去債務のうち、わずか二兆五千四百億円について無利子貸し付けと利子補給を行おうとしているにすぎません。国の責任で生まれたこの過去債務は政府の責任で計画的に解消をすべきだと考えますが、大蔵並びに運輸大臣の責任ある答弁を求めるものであります。
第二に、大企業に有利な現在の運賃体系と優遇措置を改めることについてであります。
政府は、受益者負担などの口実で、新幹線や大都市通勤列車などではコストを超えた旅客運賃で黒字を出しながら、大企業製品の貨物輸送では、もともと低い運賃に加えて、大口荷主に対する営業割引などで出血サービスを続けております。このため、貨物輸送による赤字額は、四十一年度から四十九年度までに一兆七千七百十四億円、同期間の国鉄赤字の約八割を占めているという実情であります。このような大企業奉仕の料金体系こそ国鉄の経営破綻の重大な原因であることは議論の余地がありません。また、国鉄は現在、到着日時が明確な貨物の特急、急行、物資別専用列車などに対して、特急料金など、当然取るべき料金を取っていないという大企業奉仕の政策を行っております。これらに対しても旅客と同様に料金を新設するなど、政府は直ちに大企業貨物に対する運賃・料金を適正に改めるべきだと考えるが、どうですか。答弁を求めます。
また、国鉄は、貨物輸送近代化の名のもとに、主として大企業の利用する物資別基地や臨海鉄道の建設に投資の六〇%も費やし、その上、日本オイルターミナルに対する二十四万平米を初め、莫大な用地を無償で提供し、また、本来会社が負担すべきこれらの固定資産税をまで支払うという、手放しの奉仕ぶりを示しています。このような大企業に対する優遇措置は、公平の立場から許さるべきではありません。当然廃止すべきであると思いますが、運輸大臣にその意思があるかどうか、明確な答弁を求めるものであります。
第三に、国鉄はこれまで、全国新幹線網の建設や在来の幹線の高速貨物輸送への転換など、営利主義、大企業本位の設備投資を進め、同時に、一般国民にとって必要な貨物駅は、昭和三十五年度の三千六百駅から五十年度の一千六百三十四駅に半減させ、全国五千二百の旅客駅のうち二千百四十二駅を無人化し、ローカル線を廃止するなどの政策を続けてまいりました。また、保安を怠り、主要幹線二十七線区のほとんど全線が保守目標基準以下という危険きわまりない状態に置かれています。このため、政府の自動車優先政策とも相まって、いまや総貨物輸送量における国鉄のシェアは一三%にまで落ち込むという状態になっており、通勤通学などでも国民は大きな迷惑を受けているのであります。このような政策は直ちにやめるべきであります。
国鉄は、安全、低公害、省エネルギーという点でも、すぐれた公共的な大量輸送機関です。この特性を十分に発揮して国民に奉仕できるよう、いまこそ大企業本位、営利主義の国鉄の投資規模を適正に圧縮するとともに、その優先順位を、ローカル線を含めて、国民の足を十分保障でき、また、国民の小口貨物、地場産業、農業、漁業の貨物輸送を十分に保障できるものに改めなければなりません。また、国の輸送体系を、モータリゼーション優先でなく、それぞれの輸送機関の特性が全面的に発揮できるような総合的、民主的なものに改め、陸上貨物輸送における国鉄の役割りを高める具体的な対策を立てなければなりません。これこそ国鉄の民主的再建の道であると思いますが、総理並びに運輸大臣の責任ある答弁を求めます。
最後に、いま国民は、ロッキード疑獄の徹底究明と生活の防衛をこの臨時国会に切実に求めております。私は、ロッキード幕引きに対してはもとより、物価値上がりにますます拍車をかけるこの運賃値上げ法案にあくまで反対する意思を表明して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/27
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028・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 岩間君にお答えをいたします。
第一番の御質問は、この赤字の根源は何であるかということで、これに対する抜本的解決策というものに対しての御質問であったと思いますが、赤字の根源は、瀬谷君の御答弁にも申したように、とにかく輸送構造の変化もあり、運賃が諸物価に比較して非常に低水準であったことは事実でございます。昭和九年から十一年、一番物価が安定しておるときの物価、今日では大体千倍でありますが、国鉄の運賃は三百三十倍と三分の一ですから、その物価の値上がりだけ国鉄の運賃を値上げしろと言っておるのではないのですが、非常に物価の値上がりに比べて国鉄の運賃は低い水準に置かれている。しかし、人件費の高騰は、人件費は低い水準でないわけですから、どうしてもそこにやっぱり赤字というものが生まれてくる原因もある。運賃の改定というものが一年半ばかり予定よりもおくれたこともございまして、そういうことでございますが、今度は、一つには国鉄自身が経営を思い切って合理化する。国としても二兆五千億円余の過去における累積赤字に対してこれをたな上げし、また、工事費の補助もする。あるいは地方線に対しては、地方交通に対しては特別交付金も出すということで、国も相当に財政面から国鉄の再建に力を入れておる。その上にもってきて、それだけではカバーできませんから、鉄道を利用される方々にも応分の負担を願いたい、こういうわけで、まあ三本柱のような形で国鉄の再建を図りたいということでございますから、この機会に国鉄は再建を可能であるというふうに考えておるわけでございます。
それから、仲裁裁定の問題については、先ほどお答えしたように、政府はこれを履行しようということに対する原則はいささかも変わりはございません。また、国鉄に対しての基礎的な施設、国が全部こういうものは負担せよというような御趣旨のお話でございましたが、また、この鉄道に対する国の補助率が低いではないかと、西独などの例をとってお話しになりましたが、日本には日本としての諸条件があるわけでございますから、それを総合的に考えなけりゃいかぬので、単純に国の補助というものを、率として低いということだけでは論じられないわけでございまして、やはり基礎的な施設に対しては受益者に御負担を願う。これはやはり基礎的な施設というものは鉄道が動いていくための大きな資産の投資でございますから、御負担を願うということでございまして、やはりある程度汽車を、貨物にしても旅客にしても、利用しておる方々に御負担を願わないと、利用しておられる人と、ない人と同じようなという状態では不公平になりますので、そういう意味で、やはり受益者に御負担を願うというたてまえは維持しなければならぬと考えておるわけでございます。
それから、公共的な負担に対しては、先ほどお答えをしたとおりに、政府としても、できるだけのことは今後とも協力をしていきたいという考えでございますが、どの程度、あるいはまた、いつという問題は、いろいろ検討を要すべき問題がございます。
それからまた、大企業本位、大企業本位と常に言われるわけでございますが、国鉄は大企業本位でやっておるわけではないので、貨物の荷主とかあるいは物資の種類によって区別は何もつけておるわけでございませんから、大企業と中小企業とを区別するというふうな、そういうふうな運賃のたてまえではないわけで、一口に大企業、大企業本位と言いますけれども、日本の産業構造はそんなに、これは大企業、これは中小企業と岩間君が言われるほど、そんな単純な産業構造ではない。やはり大企業といったって中小企業がなければ大企業は成立しないし、中小企業はまた大企業というものとの関連がなけりゃ中小企業は生きられないんですから、そんなに大企業と中小企業のようなものを、こう、産業構造の中で二つ分けて考えることは観念的に過ぎると私は思うんです。国鉄は何にも大企業本位の営業をやっておるわけではないということを御承知願いたいのでございます。
それから、国鉄は今後、やはり日本も自動車とかトラックとかいうものの競争の相手があるわけでございますから、必ずしも手放しで楽観はできないけれども、よその国に比べれば、鉄道の持っておる総合交通体系における役割りというものは日本は一番あるのではないか。現に欧米諸国は全部営業のキロ数を減らしておる。日本だけですよ、ふえておるのがね。そのことは、やはり鉄道というものに対する総合交通の上における依存度というものが高いからであると私は思いますが、今後鉄道というものが、先ほど申したように、大都市圏の旅客輸送、あるいは都市間の旅客輸送、中長距離の貨物輸送と、こういうところでいろんな大きな役割りを日本の輸送の構造の中で持っておると思いますから、いままでのやり方というものに対して改善を加えなけりゃならぬ余地もありますけれども、国鉄の持っておる役割りというものは、非常に国民生活の上における大きな役割りを持っておりますから、この国鉄再建法案が国会の御審議を得て成立をし、そして国鉄再建というものを一つの軌道に乗せて、労使関係を正常化して、国民の足としての国鉄、往年の信用ある、世界で最も信用のあった国鉄という状態に返さなければならぬという決意でございます。(拍手)
〔国務大臣石田博英君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/28
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029・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私に対する第一の御質問は、国鉄運賃の法定主義をやめるべきではないと、こういう御質問であります。まあ御質問というか御意見。ただし、一方において、国鉄その他公社の総裁の当事者能力、経営者の当事者能力の問題が出ております。当事者能力を付与しようとすれば、運賃の法定主義とこれは相対立する問題でございますので、その関連において考慮をいたしたいと存じます。
それから、外国と日本との国庫の負担率の比較がございましたが、詳細は委員会等でお答えいたしたいと思いますが、西ドイツは他の諸国に比べてほぼ倍額くらい、つまり一番いい例を挙げて日本と比較をされているのでありまして、日本も決して高い方ではありませんけれども、西ドイツよりは低いことは認めますが、他の諸国に比べてはそう低いとは思っておりません。
それからまあ大企業、先ほど総理の答弁もございましたが、国鉄の運賃は荷主の規模別で決めておるのではありません。品物の量、質によって決定をいたしております。
それから、その次の臨海鉄道や物資別基地に対して土地の無償貸与や、あるいは固定資産税を国鉄が負担をしているという問題、これは確かに御指摘の事実、あるいはわれわれが考えても疑問とするところがございますので、検討をいたしたいと存じます。
その次に、貨物駅や地方線の問題が出ましたが、これは地方の実情、その後における、設置した後における経済情勢の変化等を勘案し、同時に、その地方の人々の御意見を伺いながら実施をいたしたいと考えます。
また、国鉄の投資内容、特に新幹線とかあるいは新線の建設というようなものを制御して、在来線その他の整備を行うようにすべきでないか。現在、新幹線及び新線の建設は、先ほども瀬谷さんにお答えいたしましたとおり、すでに新線建設審議会で決定をされたものでありますので、これをにわかに計画そのものを否定はできませんが、実施の面におきまして、できるだけ広く国民の各位に御利用いただくように効果ある運用をいたしたい。資産等についても同様の考えでございます。
それから、国鉄が特に貨物輸送においてだんだんだんだん圧迫をされている、これは事実であります。これを立て直すのに、静かに反省すれば、サービスが民間のトラックその他に比べて悪いという事実、これは改善しなきゃならぬと思います。
それから、トラックその他は玄関まで届くのでありますが、鉄道と小運送との間の連絡にやはり問題があるように思います。しかし、エネルギー経済から見れば一番安上がりが船で、二番目が鉄道で、三番目がトラック、自動車でありますから、私は、そういう見地から見れば、日本のように熱エネルギーを持たない国における鉄道の役割り、使命、将来性、これは十分あると確信をいたしておりますが、これにはまず皆様方の御理解と同時に、国鉄自体がやっぱり発想を転換して、そうしてその使命感に燃えて努力をすることにあると考えております。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/29
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030・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質疑は、国鉄の基礎施設の建設費は全額国費で負担すべきじゃないかという御質疑でございました。この問題は、他の交通施設とのバランスを考慮いたしますと、国が全額を負担すべきものであるとは私は考えません。ただ、基幹施設は非常に巨額に上りまするし、また、その懐妊期間も非常に長いというものでございまするので、岩間さんも御指摘がございましたように、政府は出資金、国鉄に対する出資をいたしたり、あるいは工事費の補助をいたしてこれに対応いたしておるわけでございます。
それから、第二の御質疑は過去債務の処理でございますが、これは瀬谷議員にも三木議員にもお答え申し上げたところでございますけれども、六兆八千億に上がる長期債務残高のうち、二兆五千四百億円をたな上げいたしまして、一般会計の責任で処理することにいたした。政府といたしましては、国鉄が運賃その他合理的な経営条件が満たされるならば、少なくとも再建の基盤はこれで確立できるのではないかというように考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/30
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031・前田佳都男
○副議長(前田佳都男君) 和田春生君。
〔和田春生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/31
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032・和田春生
○和田春生君 私は、ただいま上程されております国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について、民社党を代表し、質問を行いたいと思います。
いまや事実上破算状態にある国鉄の財政を立て直し、国民の国鉄として正常な機能を回復する方策につきましては、すでに多くの機会に論ぜられ、問題点は出尽くしていると言ってもよいかと思います。その細部にわたる技術的問題はさておきまして、基本的には、まず長期累積債務のたな上げと、それに伴う利子補給を行うことであります。次に、ローカル線の赤字に対して財政補償を行うことであります。第三には、適正な運賃を策定することであります。第四としては、企業としての経営責任を確立することであり、そして特に重要な点としては、荒廃した労使関係を改革し、職場の規律を徹底することであります。当面の国鉄再建は、以上五つの課題をどのように解決するかにかかっていると言わなければなりません。
しかし、ここに提出されました政府原案をつぶさに検討してみますに、従来に比して多少前進した内容を認めるにやぶさかではございませんが、以上の点のいずれについても不徹底かつ中途半端でありまして、とりわけ運賃の改定案は非現実的なものであると言わなければなりません。これでは机上において数字のつじつま合わせばできましても、国鉄の財政再建はとうていおぼつかないと考えるわけでございます。したがいまして、仮に政府・与党の多数の力で本提案を強行したといたしましても、日ならずして挫折し、根本的な手直しを迫られることは必至であります。むしろ、そのことにつきましては、政府及び国鉄当局が、たてまえではなく本音ではよく承知しているところではないかと思うのであります。
そこで、以下八つの点にわたりまして三木総理初め関係大臣の所信をただし、これから始まる本院の審議に臨む政府の態度を確かめたいと思います。
質問の第一は、膨大な負債で身動きができず、利払いだけでも一日約十五億円、これは実に一分間につき百万円にも及ぶ国鉄を身軽とするため、この際、約七兆円に達する累積債務を全額たな上げする考えはないかということであります。
その第二は、国鉄自身の経営責任に帰することのできないローカル線の赤字につきまして、このローカル線を維持する限りは、その赤字に見合うだけの財政補償をする考えはないかということであります。
そこで、質問の第三といたしまして、以上二点についてこれを行う考えがあるとするならば、関係予算の補正をいつ、いかなる規模で行うこととするかをお尋ねをいたしたいと存じます。
もし、その考えがないというのであれば、政府提案による国鉄財政の立て直しが軌道に乗るという確信の根拠を具体的にお聞きをしたい。また、それがならなかった場合、その政治責任をどのようにとるか。これが質問の第四であります。
第五は、運賃値上げ案についてでございます。
政府提案どおりに実施をいたしますれば、同一地区間におきまして、新幹線よりもはるかに速い航空運賃の方が国鉄よりもずっと安くなる、あるいは並行する私鉄の運賃に対し、ところによっては国鉄運賃が三倍にもなるという状態を招くわけであります。このバランスをとるために国鉄以外の運賃をもし引き上げることとすれば、物価への影響率は政府が示した試算をはるかに超え、インフレ再燃の引き金となることは避けられないところでございます。したがって、このような案は物価政策上大きな問題であるばかりではなく、国鉄にとっても利用者を多く逃がしてしまって、自殺的行為にも通ずるものと言わなければなりません。まことに無謀な案であります。もしこれがこのまま実施されれば、一番困るのは実は国鉄そのものであり、かえって再建の妨げとなると言わざるを得ません。しかし、現行運賃が実勢から見て低きに失し、国鉄財政を大きく圧迫している現実も否定はできませんので、実際的な修正として政府案のおおむね二分の一程度にこれを抑える必要があると思いますが、本院審議におきまして、その修正に応ずる用意があるかをお尋ねをいたしたいと思います。
質問の第六は、国鉄の企業経営のあり方についてであります。もし独立採算制の公社として国鉄を存続するとすれば、現状のままではどうにもならないことは何人の目にも明らかなところでございます。企業体としてのメリットと、そして経営責任を生かして健全な国鉄とするために、政府はどのような方策を考えているかをお尋ねをいたしたい。
第七は、天下周知のとおり、国鉄の職場は荒廃し、まじめに働く職員がやる気をなくしつつある憂うべき傾向についてでございます。企業現場の管理体制が弛緩をし、中には人民管理的な組合の不当な干渉に当局側が迎合することをもって労使関係がよくなったと称しているようなごまかしも見られることははなはだ遺憾であります。
労使関係には二つの面があります。一つは、団体的労働関係としての使用者対労働組合の関係であります。もう一つは、組織を正しく動かして労務管理を徹底していくということであります。後者は、まさに当局側、使用者側の責任に属することでございます。その職制が乱れ、職場規律が弛緩しているところに利用者国民の大きな批判があることを率直に反省すべきであると思います。
このような人の面がきちんと整えられない限り、幾ら金をつぎ込みましても、穴のあいたタンクに油を入れるのと同じでありまして、いかなる再建策も功を奏さないでありましょう。政府は国鉄の監督者としていかなる措置を講じてきたか、また、国有鉄道におけるこのような事態の責任をどのように感じているかを質問いたしたいと思います。
最後に、質問の第八として、今年度仲裁裁定の取り扱いに触れたいと思います。
本件について政府がとった態度は、仲裁裁定を運賃値上げの人質として、国会に責任を転嫁する、まことに不当なものでございました。現行公労法体系に対する批判はありますけれども、現行法が存在する限りは、強制仲裁制度は言うまでもなくスト禁止の代償措置であります。ストライキが自由な民間にありましては、こういう制度はないのであります。したがって、違法のストライキが払うべき代償は仲裁裁定を放棄することが筋道であります。あくまでも法を守る組合と、その組合員たる国鉄職員のためにこそ仲裁裁定は完全に実施されなければならないと思います。政府は当初からそのけじめをはっきりつけて仲裁裁定に対処すべきであったと思いますが、政府の態度と所信のほどをお伺いいたしたいと思います。
以上、八点にわたり質問を行いましたが、もとより問題はこれのみではございません。輸送構造の変化に対応する総合交通体系の確立を初めといたしまして、重大な多くの課題があります。しかし、この国鉄の最大のピンチを目の前にいたしまして、まず具体的な効果が期待をされ、できるところから手をつけなければならないわけであります。そういう観点に立ちまして、私の提案を含めた質問は、政府と国鉄当局がやる気にさえなればすぐにでも着手できることであり、国民大衆大方の御同意を得られるものであると信じて疑いません。
この点につきまして、いま私が申し上げた質問に三木総理に特にお願いをいたしたいと思うのですが、先ほど来の御答弁を聞いておりますと、三木総理のお得意とするレトリックで答弁を脚色をしているようであります。そういうことでなく、抽象論で問題をすりかえるのではなくて、明確かつ具体的な総理並びに関係大臣各位の御答弁を切に期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/32
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033・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 和田君にお答えをいたします。
この再建案で、これが再建できなかったときの責任はどうとるのかという御質問。この再建案は和田君も相当の前進とは認めるけれども、不徹底であるという言葉でこの再建案を批判をされた。前進は和田君もお認めになっておるとおりでございます。それは何かといえば、一つには、国鉄というものをできるだけ合理化をやる。国としても過去の資産形成の——これはまあ赤字は別であります、資産として残っているんですから。しかし、赤字として残っておるものは、これはもうそれがいつまでもずっと国鉄の財政の中にのしかかってくれば、これはどうにもならぬわけですから、いわゆる過去の累積赤字に対してはこれをたな上げする。あるいはまた、工事補助金であるとか、地方交通に対しては特別交付金と、こういうものに対して相当財政のてこ入れをしましたね。その上にもってきて、それだけではカバーできないから、まあ和田君から言わせれば非常に大幅ということで、確かに大幅であることは事実でございますが、これはいままで運賃の改定というものはなかなか——私はこういう改定は小刻みにやってきた方がいいと思うんですが、これが阻まれてきて一遍になったわけで、ちょっと額としては大きい感じがいたすわけでございますが、そういう御負担を願って、この三本柱でやろうというわけでございますから、二年間でこの国鉄の収支は均衡を図るという目的は達成できるものと。しかし、和田君もお触れになりましたが、労使関係というものが真に正常化されて、この再建案でひとつやろうということも大きな背景としては必要でございまして、そういう意味において、労使関係の正常化というものは再建に欠かせない一つの基本であることは、和田君の御指摘のとおりでござます。
また、この値上げという問題について、消費者物価などに対して非常に破局的な影響を与えるのでないかという御懸念でしたが、われわれも、物価の安定というものはこの内閣が一番気をつけてまいっておる点でございまして、この運賃の値上げの影響というものは消費者物価へのはね返りは〇・五というふうに計算をしておるわけで、こういうことも、年度末には八%程度に消費者物価を持っていこうという中には、その影響も織り入れ済みでございます。そういうことで、また、この運賃の改定によって利用者が多少減るということも計算をしたものでございます。そういうことで、物価問題のはね返りというものに対しては御懸念のようなことのないようにしようという配慮は、当初から十分加えたものでございます。したがって、この機会にこの運賃改定の修正に応ずるかどうかということに対しては、修正に応ずる考えはございませんので、どうか原案で成立ができますように御協力を願いたいわけでございます。
それから、仲裁裁定のことでございますが、まあ人質にとったというお話でございましたが、人質にとるというような考え方は無論ないわけで、これはもう昭和三十二年以来政府が実施してきておるし、公労法第三十五条という重みは十分に知っておるわけでございますから、これは政府は完全に実施したいという方針には変化はございませんが、政府に許されておる予算の範囲内では、どうもこれが仲裁裁定を実施できる財源がないということで、国会の議決、こういう歳入面なども、収入面なども勘案して、国会の御審議を願っておるわけでございますが、しかし、参議院においても慎重審議の上、懸案解決のために皆が御協力を願えるということでございますから、賛否はともかくも、この国鉄再建案は国会の議決を得るものと信じておりますから、仲裁裁定の完全履行ということに対してはいささかの懸念も持っていないものでございます。
お答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/33
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034・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私に対し——私御指名ではございませんが、私がお答えすべき筋の第一は、運賃の値上げの限界であろうと思うのです。値上げは確かに限界がございます。国鉄というのは、電電公社その他と違って、独占ではございませんので、値上げの率が高くなれば競争力をそれだけ失うことは、これは言うまでもございません。したがって、これを再建する場合に値上げだけに頼ることは間違いであることは、和田さんの御意見と全く一緒でございます。しかし、いま総理から答弁がございましたように、今回の再建案は、在来債務のたな上げと、そして値上げと、両方を兼ね合わせて二年間で健全経営を求めようというのでございますので、どうか原案のまま成立するように御理解をいただきたいと存じます。
その次に、独立採算制を要求される企業体としての国鉄は、現在の状態のもとにおいては非常にむずかしいという御質問。これはたびたびお答えを申し上げておりますように、国鉄は三十八年までは黒字であり、昭和の初め以前は、これは日本最大の優良企業であったのでありまして、その時代にわれわれが受け持たされた公共負担その他を、まあ現在膨大な赤字を抱え、債務を抱え、経常的にも赤字になっております状態でそのまま負担をしろというのは、私は健全経営を求めることと相矛盾すると思っております。したがって、あくまで健全経営を求めるならば、運賃コストに合わない部分については当該政策担当者が負担をすべきものだと考えております。ただ、まだ政府間の意見がまとまっておりませんが、運輸省としてはそういう方向で努力をいたしたいと存じております。
それから、労使関係の荒廃にお触れになりましたが、私どもも、やはり国鉄の再建の基本的要素は労使の協力であり、規律の厳守であろうと思います。特に現場部門において、管理者と一般職員との間の労使関係の意思の疎通を図り、規律を確立する、これが肝要であろうと考えておりますので、その方向に向かって国鉄とともに努力をするつもりでございます。
仲裁裁定は、労働大臣からお答えがあると思います。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/34
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035・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、累積債務の全額たな上げする用意はないかという御質疑でございます。
企業にとりまして、どれだけ自己資本があり、どれだけ他人資本があるかということは、企業によってそれぞれ違いますけれども、要は、健全な資産の裏づけが、その自己資本、他人資本合わせまして、あるかということであろうかと思うのでございまして、国鉄の場合、先ほど御説明申し上げましたように、四兆三千億の長期債務に見合う健全な資産はあると私どもは考えておるわけでございますので、二兆五千億余りをたな上げすることによって再建の基盤はできるという想定のもとに再建案を考えたことでございます。したがって、累積債務の全額たな上げを目的とした補正を考える用意はございません。
第二の御質問は、ローカル線の赤字に見合う財政補償をする用意はあるかという御質問でございました。
ローカル線問題は、もともとモータリゼーション、それから地方の過疎化が進む環境におきまして、国鉄が地方住民の利便のためにそのローカル線の経営を維持していく上におきまして、自立経営の上からどれだけの負担に耐えられるかという限度を計量いたしまして、国がそれではどれだけめんどうを見さしていただけばいいかという見当をつけるのがこの地方ローカル線問題だと思うのでございますが、これの検討には、相当むずかしい問題でございまして、時間を要することでございます。したがって、この国鉄再建計画を練るに当たりまして、今年度一年は、とりあえず腰だめで臨時応急の措置として百七十二億円は計上しておこうということにいたしたわけでございますが、これは暫定的な思想でございます。したがって、目下検討をいたしておりまする検討が固まってまいりますと、行政措置、財政措置をこれに応じて考えてまいることは当然のわれわれの責任であろうと思っております。(拍手)
〔国務大臣浦野幸男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/35
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036・浦野幸男
○国務大臣(浦野幸男君) 先ほど総理大臣から、仲裁裁定に対する完全実施の決意のほどが示されたわけでありまするが、あるいは重複するかもしれませんけれども、私から補足御答弁をさしていただきたいと思います。
いま申されましたように、仲裁裁定が完全実施されなきやならないということは、私もあくまで意見は同じでございまするが、しかし、国会の予算審議権との調整を図るために、公労法第十六条において予算上実施不可能な場合の仲裁裁定の取り扱いが定められておることは御承知のとおりでございます。そこで、仲裁裁定については、政府は、御承知のように、昭和三十二年以来これを完全実施してまいりました。今回の国鉄の仲裁裁定についても、公労法第三十五条の精神を踏まえまして、完全実施のためにできる限りの努力をいたしておるところでございまするが、一方、国鉄の経営——先ほどからお話がありましたが、経営の抜本的な立て直しを図るために運賃改定等を内容とする法案がいま国会において審議中であります。で、現在の段階におきましては、仲裁裁定の実施は予算上可能であるとは断定できないのでございます。可能であるとは断定できないのでございます。そこで、公労法第十六条の規定に基づいて、仲裁裁定に関する案件を本国会に付議したのであります。本国会におきましては、運賃改定等の法案の取り扱いについては、今後審議が促進されまして、同法案が成立するものと信じております。したがって、その場合には仲裁裁定についても完全実施が可能になるものと期待し、今後とも最大の努力を払っていきたいと思っております。(拍手)
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/36
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037・前田佳都男
○副議長(前田佳都男君) これにて質疑は終了いたしました。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107815254X00819761015/37
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