1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十二年三月十六日(水曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 大野 明君
理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君
理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君
理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君
理事 石田幸四郎君 理事 河村 勝君
北川 石松君 原田昇左右君
藤本 孝雄君 古屋 亨君
堀内 光雄君 三塚 博君
太田 一夫君 久保 三郎君
兒玉 末男君 斉藤 正男君
田畑政一郎君 草野 威君
宮井 泰良君 薮仲 義彦君
小林 政子君 中馬 弘毅君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 田村 元君
出席政府委員
運輸政務次官 石井 一君
海上保安庁長官 薗村 泰彦君
海上保安庁次長 間 孝君
委員外の出席者
運輸委員会調査
室長 鎌瀬 正己君
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委員の異動
三月三日
辞任 補欠選任
兒玉 末男君 栗林 三郎君
同日
辞任 補欠選任
栗林 三郎君 兒玉 末男君
同月五日
辞任 補欠選任
斉藤 正男君 井上 普方君
同日
辞任 補欠選任
井上 普方君 斉藤 正男君
同月七日
辞任 補欠選任
草野 威君 浅井 美幸君
同日
辞任 補欠選任
浅井 美幸君 草野 威君
同月十日
辞任 補欠選任
北川 石松君 稻葉 修君
三塚 博君 松野 頼三君
森下 元晴君 白浜 仁吉君
同月十一日
辞任 補欠選任
久保 三郎君 佐野 憲治君
同日
辞任 補欠選任
佐野 憲治君 久保 三郎君
同月十二日
辞任 補欠選任
宮井 泰良君 岡本 富夫君
薮仲 義彦君 広沢 直樹君
小林 政子君 不破 哲三君
同日
辞任 補欠選任
岡本 富夫君 宮井 泰良君
広沢 直樹君 薮仲 義彦君
不破 哲三君 小林 政子君
同月十四日
辞任 補欠選任
太田 一夫君 藤田 高敏君
田畑政一郎君 大出 俊君
宮井 泰良君 二見 伸明君
薮仲 義彦君 岡本 富夫君
同日
辞任 補欠選任
大出 俊君 田畑政一郎君
藤田 高敏君 太田 一夫君
岡本 富夫君 薮仲 義彦君
二見 伸明君 宮井 泰良君
同月十五日
辞任 補欠選任
兒玉 末男君 阿部 昭吾君
田畑政一郎君 石野 久男君
草野 威君 広沢 直樹君
宮井 泰良君 近江巳記夫君
同日
辞任 補欠選任
阿部 昭吾君 兒玉 末男君
石野 久男君 田畑政一郎君
近江巳記夫君 宮井 泰良君
広沢 直樹君 草野 威君
同月十六日
辞任 補欠選任
稻葉 修君 北川 石松君
小沢 辰男君 原田昇左右君
白浜 仁吉君 森下 元晴君
松野 頼三君 三塚 博君
同日
辞任 補欠選任
原田昇左右君 小沢 辰男君
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三月十一日
海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
五八号)
同月七日
気象通報所の全廃中止等に関する請願(菊池福
治郎君紹介)(第一〇八四号)
同(北山愛郎君紹介)(第一一五八号)
同(栗林三郎君紹介)(第一一五九号)
東京都多摩地底における個人タクシーの免許基
準緩和等に関する請願(大野潔君紹介)(第一
〇八五号)
同月八日
潮岬測候所の気象業務充実に関する請願(石田
幸四郎君紹介)(第一二二一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第
五八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/0
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001・大野明
○大野委員長 これより会議を開きます。
海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。田村運輸大臣。
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海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/1
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002・田村元
○田村国務大臣 ただいま議題となりました海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
海上保安官に協力援助した者等の災害給付につきましては、従前から、本法により必要な措置を講じてきたところであります。本法に基づく給付は、国家公務員災害補償法に基づく給付を参酌して行うこととされておりますが、昨年五月、傷病補償年金制度の創設を内容とする国家公務員災害補償法の一部改正が行われ、本年四月一日から施行されることとなっております。国家公務員につきましてこのような給付内容の改善が行われることにかんがみ、海上保安官に協力援助した者等の災害給付制度につきましても、同様に給付の充実を図ろうとする次第であります。
次に、この法律案による改正の内容につきまして御説明申し上げます。
海上保安官に協力援助した者等が負傷し、または疾病にかかったため療養する場合には、休業給付を支給しておりますが、長期間にわたり療養する者のうち実質的に廃疾状態にある者に対しては、むしろ、休業給付にかえて障害給付に準ずる給付を行うことが適当であり、そのような給付として新たに傷病給付を創設するものであります。
以上が、この法律案を提出する理由であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/2
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003・大野明
○大野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/3
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004・大野明
○大野委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、これを許します。堀内光雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/4
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005・堀内光雄
○堀内委員 ただいま御提案なされました海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。
私はたまたま海を持たない山梨県の選出でございまして、本日のこの法案とは何かそぐわない取り合わせのようにも感じられるのでありますが、山国の人間も海の問題について非常に大きな関心を持っております。同時に、海上保安庁の皆様の平素の並み並みならぬ御労苦に対して、常に深甚なる敬意と理解を持っていますことを認識していただく意味を含めまして、あえて質問させていただくわけでございます。
先ほどの趣旨説明の中で明らかなように、本日の法律案は、海の治安や海難救助など非常に幅の広い海上保安官の活動に協力援助をいただき、その行為のために災害を受けられた民間人に対する給付をさらに充実させるものでありますが、この法律案の持つ性格と趣旨を理解させていただく上から、第一に伺いたいのは、海難救助の発生状況であります。最近におきますところの一年間の救助を求められた船舶の救助の状況、こういうものはどうなっておりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/5
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006・間孝
○間政府委員 お答え申し上げます。
昭和五十年の一年間におきまして起こりました海難の中で、その海難が発生いたしました時点におきまして救助が必要であるというふうに考えられましたような海難、これを海上保安庁では要救助海難というふうに称しておりまして、この統計をとっているわけでございますが、これを昭和五十年の一年間について見ますと、総数で二千四百二十一隻の海難が発生いたしております。これは最近の五カ年間の傾向に比較いたしてみますと、最近の五カ年間では最高が二千六百五十七隻でございまして、この五十年の二千四百二十一隻というのは最近の五カ年間の中では一番少ない数字でございます。おおむね二千五百隻の線を上下しておるというのが現状でございます。
さらにこの救助の状況について申し上げますと、海上保安庁は巡視船あるいは航空機をもってその救助に当たるわけでございますが、海上保安庁の船あるいは航空機がみずから救助いたしました隻数が六百五十二隻でございます。このほかに、海上保安庁以外の人によるところの救助が九百九十六隻でございます。また、その残りの中で、救助を必要としないでみずから自分の力で港にたどりついたというような船が三百六十八隻ございまして、救助ができなくて全損あるいは行方不明になった隻数が四百五隻でございます。
海難の救助の状況は大体以上のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/6
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007・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの数字を伺いますと、海上保安庁が主体となって救助をいたしました船舶・は、全体の二千四百二十一隻中六百五十二隻ということで、わずかというか二七%にすぎないわけでありまして、海上保安庁以外の者が作業に当たって救助をした船舶が全体の四一%、意外に多い数字であるということがわかります。ただいまの説明の中に四百五隻の全損、行方不明という数字がございましたけれども、この四百五隻の船舶の乗組員は恐らく海上にほうり出されて遭難者ということになって救助をされたのだというふうに理解をいたしますが、この全損船舶の乗組員の救助の状態についてお知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/7
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008・薗村泰彦
○薗村政府委員 いまの救助の人員は次長からお答えいたしますが、これは注釈になるのですけれども、海上保安庁は三〇%足らずしか救助してないじゃないかという数字は、ちょっと説明が入りますので、これはまず船を主体に考えておりまして、人命のみを救助したというのはこれと別になっておるというのが一点でございます。
それから、海上保安庁以外の救助あるいは自力救助ということになりましても、海上保安庁が現場へ行って最後までその船を助けたという数字が三〇%足らずでございますけれども、もちろんSOSが入ったり海難の情報が入りましたら、海上保安庁はすぐに自分のところで船を出しますと同時に、また付近の航行船舶に通信で、近くにおる船はないか、すぐ助けに行ってくれということで通信でやりますし、そういういろいろな手配をして救助に当たっておるということでございまして、現場まで行って最後まで救助したというのが六百五十二隻、こういう数字に実はなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/8
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009・間孝
○間政府委員 全損、行方不明の船舶とそれから死亡あるいは行方不明になられた方の数字でございますが、昭和五十年の一年間におきまして、海難によりまして亡くなられた方あるいは行方不明になられた方は四百十九人でございます。この中には、全損あるいは行方不明という形にならなくて、船そのものは救助はされましたけれども、その乗組員で一部亡くなられたという方も含んでおるわけでございます。
海上保安庁の統計でただいま手元にございます統計では全損、行方不明になった四百五隻の船とそれから五十年の一年間におきますところの死亡、行方不明者の四百十九人というこの数字とをうまく突き合わせる資料が手元にございませんので、はっきり申し上げられないのでございますけれども、私どもの経験から申し上げますと、全損、行方不明になった船の乗組員の方の非常に多くの方が死亡あるいは行方不明者になっておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/9
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010・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの海上保安庁の長官のお話、御趣旨よくわかっておりまして、民間の協力も非常に大きいという意味を申し上げたことでございまして、海上保安庁の力が少ないじゃないかということを申し上げているわけではございませんので、その点は御了承をいただきたいと思います。
ただいまの説明の中で、全損の船舶、四百五隻の船舶の乗組員に関連するものとしまして、「海上保安の現況」という資料の三十六ページを見ますと、五十年の全損になった船舶四百五隻に乗り組んでいた者の遭難人員は二千五百九十一人ということが出ております。そのうち海上保安庁によって救助された者二百八十六人、自力で助かった者七百七十人、海上保安庁以外の者によって救助された者が千二百八十四人、こう出ております。これを見まして、海上保安庁以外の者に救助された者が実に全体の五〇%に達しているということになっております。周囲を海に囲まれております非常に広大な日本の周囲の海上というもの、この保安を全うするためには民間人の協力がいかに大事なことかが、この一事を見てもわかるのではないかというふうに思います。
それで、この民間人の献身的な協力による救助活動によりまして災害を受けて、本日のこの法律の適用を受けた人はどのくらいになっているかをお知らせをいただきたいと思います。特にこの法律が昭和二十八年四月一日に施行されておりますが、それからいままでの総数と、この五カ年間の適用人員というものを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/10
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011・間孝
○間政府委員 この法律が二十八年に施行されたわけでございますが、その後、以来今日まで、この法律の適用の対象になりました被災者、災害を受けられた方の総数は、百三人でございます。
これを最近の五カ年について申し上げますと、昭和四十七年が一名、四十八年はございません、四十九年が二名、五十年が三名、五十一年が一名、したがいまして最近の五カ年間だけをとってみますと合計が七名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/11
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012・堀内光雄
○堀内委員 総数で百三人という方々がこの法律によって救済をされたということになるわけでありまして、非常に意義のある法律だと思いますが、
〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕
同時に、専門の海上保安官が救助活動を通じまして災害を受けて、そして国家公務員災害補償制度の適用を受けられた数はどのくらいになっておりますか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/12
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013・間孝
○間政府委員 ただいま御質問のございました、海上保安庁の職員で業務上の災害を受けた方、こういう人の数でございますが、最近の五カ年間をとって申し上げますと、昭和四十六年が四十五名でございます。四十七年が七十七名、四十八年が六十二名、四十九年は六十三名、五十年が五十五名でございまして、これらの職員は、ただいま御質問にもございましたような、海難救助などの現場におきましての救助活動の際に負傷したという人がかなりございますが、そのほかに、日ごろの業務上の過労に起因いたしまして心臓病などのような病気で死亡したというふうなものもこの中には含まれています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/13
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014・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの御説明のように、海上保安官という専門の訓練を受けた保安官にいたしましても、五十年には五十五人というような多数の災害者を出しているわけでございまして、まして一般の人々にとっては、大変危険な状態の中で、危険を冒しての救助活動ということになると思うわけでございます。災害を受けた人々に対して万全を期することが当然だというふうに思うわけでございますが、今回のこの災害給付に関する法律の改正を行うことになった経緯と理由について教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/14
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015・間孝
○間政府委員 この海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律、この法律は、先生も御承知のとおり、海難救助あるいは海上におきますところの犯罪の捜査等に民間の方が協力をされ、その結果死亡されたあるいは病気になられた、けがをされた、そういう方に対しまして必要な災害の給付をいたしておる法律でございますが、この法律に基づきますところの給付は、公務員の災害補償法に基づきますところの給付制度を参酌して決めるというふうになっておるわけでございます。
そこで、現在この法律に基づいて決められております給付制度を簡単に申し上げますと、死亡された方に対しましては、葬祭料と遺族に対しますところの一時金あるいは年金が支給されるという形になっております。それから、負傷された方あるいは病気になられた方に対しましては、まず第一に療養給付というのがなされます。これは、けがやあるいは病気の治療費の支給でございまして、医者代あるいは入院費あるいは看護人の手当、病院への移送費というようなものがこれによって支給されるわけでございます。
そのほかに、病気になられた方が治療中に仕事につけないということのために収入が得られないというような場合には、休業給付というものが支給されることになっておりまして、これはその方の収入に対して六〇%の割合のものが支給されることになっております。
次に、そういう負傷された方、病気になられた方が治療が終わりました段階におきまして、なお障害が後に残るというような状態の方、こういう方に対しましては、一時金あるいは年金が、障害給付という性格の年金が支給される形になっておるわけでございます。
そこで、今回この改正におきましては、先ほど提案の趣旨説明にございましたように、新たに傷病給付制度を設けるということにいたしたわけでございますが、この傷病給付と申しますのは、療養が継続中の方につきましても、かなりけがの程度あるいは病気の程度が重くて、将来廃疾状態が残るであろうというふうに思われるような方があるわけでございまして、そういう方に対しましては、現在では療養が終わらないと、先ほど申し上げました障害給付という年金が支給されないわけでございますけれども、実体的に廃疾状態にあるような方につきましては、療養が継続中であってもそれと同じような年金を支給する方が適当ではないかというふうな観点から、昨年五月に国家公務員災害補償法の一部が改正されまして、その中で新たに傷病補償年金制度が設けられることになりまして、これはことしの四月一日から施行されるということに実はなっておるわけでございます。現在御審議いただいております海上保安官の協力援助者に対する災害給付法も、国家公務員災害補償法の給付制度を参酌して決めるということでございますので、今回私どもの法律につきましても、これを改正いたしまして、傷病補償制度を取り入れようということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/15
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016・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの御説明にございましたように、海上保安官に協力をして、そのために災害を受け、療養中の方、特に廃疾状態の方に対しての傷病給付制度を設けて救済をするということ、非常に適切なことで、今回の改正がまことに適切なものだということを了解したわけでございますが、一つ疑問に思いますのは、国家公務員の場合は給与体系が一本になっております。はっきりしております。したがいまして、災害補償に際しましても、年金その他明確にできると思うのでありますが、一般社会人、特に船員、漁船の船員というような場合には非常にばらばらでございます。この法律で支給される各種の給付金の基礎となる給付基礎額と申しますか、こういうものは何を基準にするかということ、つまりこの法律と国家公務員災害補償法との関係というものは何によってつながっているかということを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/16
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017・間孝
○間政府委員 御指摘のように、確かに民間人の場合におきましては収入が非常に千差万別でございまして、何を基礎にして補償を決めるかということは、この法律を施行いたす上におきましての一つの大きな問題でございます。
そこで、現在この法律に基づきまして支給されますところの給付額につきましては、給付の基本額とそれから最高額という二本の線を決めておりまして、現在ではこの給付の基本額というものは一日四千二百円を基礎にしておるわけでございます。そして最高額は七千二百円と決めております。この四千二百円あるいは七千二百円と申しますのは、実は一般人の方につきましては収入がまちまちでございますけれども、これを国家公務員に引き直してみまして、一つの適当な線を引いたということでございます。具体的に申し上げますとこの基本額の四千二百円は、海上保安官におきまして中型の巡視船、海上保安庁におきまして普通沿岸の海難救助に当たる一番数の多い巡視船でございますが、この中型の巡視船の乗組員の中で科員と申します、つまり士官ではなく、士官の下にある一般の職員でございますが、この科員の給料、具体的に申し上げますと公安職の五等級の七号俸の給与を一日当たりの額に引き直したものが四千二百円になるわけでございます。それから最高額につきましては、同じく中型の巡視船の船長の給与、これは同じく公安職の特三等級の十号俸の給与の額を一日当たりに引き直したものが七千二百円でございます。こういう海上保安官に協力いたしまして海難救助に当たるような民間の方は、大体船の乗組員あるいは漁船の船員、漁業者の方、こういう方が大部分でございまして、おおむね過去の例から見ましても、この範囲内あるいは基本額をさらに下回るような方が多いわけでございますので、私ども、この額がこの法律に基づきまますところの給付額としては妥当なものではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/17
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018・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの号俸給に照らし合わせての額はわかったのですが、この額というものは何によって定められているかということを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/18
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019・間孝
○間政府委員 これは法律の施行令、つまり政令でございますが、施行令によりまして定めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/19
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020・堀内光雄
○堀内委員 政令によってこの金額を定めるということでございます。この法律で取り上げております海上保安官と同じように、警察官あるいは消防官、こういう立場の方々に民間人が協力を行った際に災害を受けた人に対して、この法律と同じような趣旨の法律がそれぞれ規定されていると思うわけであります。たとえば、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律というものがございます。これは、どれも、どの行為も甲乙つけがたいようなとうとい行為に伴って起きた災害だというふうに思うわけでございまして、これらの横のベースと申しますか、給付の基準になる給付基礎額というものは、相互に同一の基準あるいは同一歩調で政令によって織り込まれることになっているのですか、どうですか。その辺をひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/20
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021・間孝
○間政府委員 御指摘のとおりでございます。
警察官に協力をいたしました方に対する災害給付法に基づきます政令におきましても、ただいま私が申し上げましたと同じ額を決めてございます。ただ、警察官の協力援助者につきましては、国と地方公共団体双方がこの給付責任に任ずるというふうに法律上決められておりまして、国が給付責任に任ずるような場合には、この政令に基づきますところの額でいく、それから地方公共団体が給付責任に任ずる場合には、それぞれの条例で決めるということになっておるわけでございますが、いずれにいたしましてもこの給付額は横並びで均衡がとれるように決めることにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/21
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022・堀内光雄
○堀内委員 警察官の場合にも、海上保安官に対して協力した場合にも、横の線において同じような、同一基準額が出されるというようなことで大体歩調が合っているというような御説明でありますが、この協力する行為ということを一つ考えますと、海上保安官に協力する場合、警察官に協力した場合、こういう行為は一つ一つの場所だとか性格、内容というようなものは違うかもしれませんが、本質的にも全く同じ性質のものだというふうに私は思うわけであります。そういう意味でまた、給付額もただいまの御説明のように同じような額を基準にしているということを考えましたときに、この別々の法律によってこれを運営されているという理由、これは何かちょっとおかしい感じがするわけでございます。元来もとになる、この法律のよって来ったところの国家公務員災害補償法というものは一本になっておるわけでございますし、その枝でありますところのそれぞれの協力した者の災害に対する補償という法律が別々になっている理由はどういうわけかということと、一本化できないものかということをちょっと承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/22
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023・間孝
○間政府委員 大変ごもっともな御指摘だというふうに思うわけでございますが、現在こういう国の職員あるいは地方公共団体の職員に対して協力をした場合の災害給付の制度といたしましては、この海上保安官に対するもの、警察官に対するもの、それから同じくただいま国会におきまして御審議をいただいております裁判所の証人の被害に対するもの、それからさらに消防団あるいは水防団といったような方々の災害給付法がございまして、大体同じような制度を設けておるわけでございます。ただ、これらがそれぞれ協力する相手方が異なりまして、警察官の場合あるいは海上保安官の場合あるいは裁判所の証人の場合、それぞれの業務との関連で決められておるというふうなことがございまして、適用事案の内容が若干異なっておるという点があるわけでございます。たとえば、海上保安官と警察官におきましては、海難救助あるいは陸上におきましては山岳の救助あるいは交通事故の救助、こういった点で非常に似通っておりますし、あるいは犯罪の捜査、これも似通っておりますが、この場合には、給付の責任の主体が海上保安官の場合には全部国である。警察官の場合には国と地方公共団体と両方に分かれておるというところに違いがございますし、それから裁判官の証人となりますと、これはちょっとその仕事の中身が違うという点がございます。そういったことがございまして、これまで別個の法律によって処理するという形になってきておるわけでございます。これを一本化したらどうかという点につきましては、そういう立法論として一つの考え方は確かにあると思うのでございますけれども、これまでいろいろな制度がそれぞれの違った沿革をもちまして制定されてきておるという経緯がございますので、現在の段階におきましては、それぞれ別個にこういう制度を、改正をお願いしておるというような状況でございます。ただし、その制度の運用の面につきましては、これはその間にそごがあってはならないのは当然でございますので、各省間で緊密な連絡をとって仕事を進めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/23
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024・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの御説明でいままでの沿革、法律のよって来ったところ、そういうようなものから何か一本化はいまのところできていない、別々になってしまっているというふうに理解をいたしました。しかし、いろいろの給付の規定というものは足並みをそろえて行っているということでございますから、実際の問題としては問題点はないと思うのですが、ただ、現実に後遺症の何級というような認定をする場合、こういう問題では法の運用で微妙な違いが出てくることもあり得るのではないかというふうな危惧もあるわけでございます。そういう意味から、将来はやはり一本化すべき方向に向かって御検討を願いたいというふうに思うわけでございます。
次に、傷病給付の廃疾の認定というものを療養開始後一年半を経過した時点で行うということになっておりますけれども、これの一年半という時点をとらえた理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/24
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025・間孝
○間政府委員 この傷病給付の適用の開始を一年半経過後というふうにいたしますのは、この法律に基づきますところの政令、施行令によって今後決めることに実はなるわけでございますけれども、今回のこの提案の理由になりました国家公務員災害補償法におきまして、この傷病補償年金の支給の開始を療養開始後一年六カ月を経過して治らない場合というふうに決めておるわけでございますので、これにならって決めるというのが私どもの法律のたてまえであるわけでございます。その点から、今回この法律に基づきますところの傷病給付の支給開始も療養開始後一年六カ月を経過して治らない場合ということにいたすわけでございます。
実体的に申し上げますと、この災害を受けて療養を開始されてから一年六カ月もたってなお治らないというような方につきましては、大体廃疾の程度がかなり重くて、仮に将来それが治っても後遺症が残るというふうな重症の方が多いわけでございますので、まずこの一年六カ月というのが一つの線としてつくられておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/25
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026・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの一年六カ月の期間を定めた理由はわかりました。いろいろの制度、規定があるわけでありますが、次に、私の素朴な感覚なんですが、この協力援助法の適用を受けた人が、先ほど承りますと二十八年からですと百三人という数なんですが、この数年をとらえてみますと、五年間にわずか七人ということになっております。これは数が少ない方がいいことではございますが、救難の実績は非常に多くなっているにもかかわらず、給付実績がまことに少ないということは、そのとおりであるならば非常に結構なことでありますが、少し考え過ぎかもしれませんが、手続が非常にめんどうだとかあるいは繁雑なことが多いというようなことで適用を受ける人が少ないということはないだろうかというふうに疑問を持つわけでございまして、災害給付の手続というようなものがどんなようなぐあいに、どういう地域で行われるようなことになっておりますか、それについて御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/26
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027・間孝
○間政府委員 災害給付の手続についてお答え申し上げます前に、最近五カ年間の給付実績が非常に少ないということにつきまして、私どもも過去この法律が施行されました当時はわりあいに多かったのに、どうして最近は少なくなっているのだろうかという点を非常に関心を持って調べたのでございます。具体的に申し上げますと、過去におきましてはわりあいに民間の方が救助に当たられまして、その救助に当たった船そのものが、また二次遭難と申しますか、同じく転覆を起こすとかいうふうなことで、乗っておった方が一遍に被害を受けられるというふうなケースが比較的実は多かったようでございます。その関係で過去においては一年間に十人程度災害を受けられたということが年によってございますが、それが最近にはそういうケースがほとんどございませんで、大体見ますと、船に乗っておって救助作業中に船が揺れたために転倒して打撲傷を負ったとか、あるいは船べりで手をはさんで指をけがされたとか、そういった程度の方が多い。その点が過去と最近との救助の実態に違いがあるようでございます。
次に、手続的なことについて申し上げますと、まずこういう災害が発生いたしました場合には、海上保安官が現場におりまして協力援助したというふうな場合には、その協力を求めた海上保安官の報告に基づきまして、それぞれの海上保安部から管区の保安本部長に報告書が提出されます。そして、それぞれにつきまして、災害の実態を審査いたしまして認定を行うということになるわけであります。海上保安官が現場にいないような場合には、災害を受けられた本人の方、あるいは遺族の方からこれこれの災害があったということの報告を出していただきまして、そしてこれをただいまと同じように、管轄の保安部を経由いたしまして、管区の保安本部長に報告書が提出される、そこでその災害の認定を行うわけでございます。ここでその災害の認定が行われまして、これは明らかにこの法律に基づいて給付が行われるべき災害であるというふうに確定いたしますと、その通知が御本人の方に参りまして、そうして、その御本人の方から改めて実際に給付の申請をしていただく。たとえば、医療費についてはどれだけの医療費がかかったからそれについての給付をしてほしい、あるいは年金についてはこれこれの年金を支給してほしい、こういう申請が出されるわけでございます。これをそれぞれの管区の本部長が内容の審査をいたしまして、決定するという手続を経ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/27
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028・堀内光雄
○堀内委員 その管轄の保安部というお話でありましたけれども、数にするとどれぐらいあるのですか。その地域が日本じゅうにずっと海に面するところに網羅されていて、申告をする者が大変な手続を踏まなくて済むようなものになるかどうか、その場所についてのひとつ御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/28
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029・薗村泰彦
○薗村政府委員 保安部は全国で六十五ございます。一番北の端で申しますと稚内の保安部、それから東で根室海峡の保安部、それから対馬のところでありますと厳原保安部、一番南と西の端でありますと石垣の保安部、合計六十五ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/29
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030・堀内光雄
○堀内委員 六十五あれば大体の守備範囲として守れるではないかと思いますが、やはり災害を受けた方たちが遠くまで出向いていくような形、それだけはできるだけ少なくしていただきたいと思います。ぜひとも立法の趣旨に沿って、有効に利用できるような面で、手続の面でも煩瑣なことはできるだけ避けていただくように御指導いただきたいというふうに思うわけでございます。
最後に、運輸大臣にお伺いいたしたいと存じます。
先ほどの報告にもありましたように、海難救助の実績を見ておりますと、民間依存度というものが非常に高い感じがするわけでございます。そこへもってきまして、いま領海十二海里という問題が出現をいたしてまいりました。そして現在、法改正が進められている状態でございます。領海が広くなることで海上保安庁の警備水域というようなもの、これはやはり拡大されるのではないかというふうに思います。既存の保有船艇で、これからいろいろ出てまいります、漁船の保護というようなものを初めとして、領海の警備の仕事に追われてまいりますと、海難救助の面で、いままで以上にかえって民間に依存する面が多くなるのではないかというような点を危惧するものでございます。
元来が、海難救助というものは、海上保安庁の警備体制が万全を期して、民間の協力というものは補助的な存在にしなければならないものだというふうに思います。しかし、現状でも海難救助の大きな割合というものが民間協力に頼っておりますし、そのためにこの法律の存在が大きな意味を持ってきているということにもなっていることを考えますときに、一方では巡視船宗谷が非常に老朽化をしてきていると承っております。海上保安庁の今年度の予算要求という中には、大型巡視船、ヘリコプター搭載の巡視船というようなものを二隻要求をなさったにもかかわらず、一隻に削られて、それも二年度にまたがるというような状態というふうに承っておりまして、まことに寒心にたえない次第でございます。私は、海上保安庁の海難救助体制の拡充に、装備の面、整備の面、船艇の面、こういうものにもっと積極的な形で取り組んで、それを実現をさせる必要があると考えているのでございますが、運輸大臣のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/30
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031・田村元
○田村国務大臣 まさにおっしゃるとおりであります。海上保安庁は、従来からも海上保安業務に万全の備えをいたしてまいりました。現在巡視船艇三百十隻、航空機三十四機という勢力でありますが、いま御指摘のあったように、五十二年度予算案の御審議をお願いしておるところでありますけれども、ヘリコプター搭載巡視船を初め、相当の強化をすることになっております。しかし十二海里時代だ、二百海里時代だという、日本を取り巻く海の環境が激変しつつありますので、私は、もちろん現有勢力では心もとないという意味ではありませんけれども、より以上強化をして、民間の方々に御迷惑をおかけしたり、いわんやとうとい犠牲を払っていただくことのないように、今後も巡視船艇、航空機等の強化をどんどんと図っていきたい、こう考えておる次第でございます。私は、大臣になりまして保安庁担当ということになりましたが、いままで実は二十年間、保安庁の問題と取り組んでまいりました。昔から見ればまさに画期的な、今昔の感にたえないような感じでございますが、しかし何と申しましても、日本の海の守り、すなわち海上保安業務は、今後も保安庁が一身にしょってやっていかなければならぬことでありますので、御趣旨のとおり万全を期して今後の、つまり五十三年度も、四年度も、五年度も、その先も、予算要求に大いにがんばっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/31
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032・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの運輸大臣の非常に積極的なお考え、救難体制確立に対する姿勢というものを承りまして、非常に意を強ういたした次第でございます。今後ますます海上保安庁の治安あるいは救難体制というものの充実が図られてまいるものと推察するわけでございまして、そういう意味では民間依存のケースが減少していくものと思うわけでございますが、しかし、いま現在を考えますと、現実に治安の問題、海難救助の問題、これに民間人の果たしている役割りというものは非常に大きいものがあるわけでございまして、民間の、献身的な海難救助というものに対する協力者、これがばかをみるようなことになっては困ると思うわけでございます。そういう意味からも、この法律のさらに一層の充実と円滑な運用というものを必要とすることになってくると思うわけでございますが、運輸大臣に、今後に対する御方針というようなものを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/32
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033・田村元
○田村国務大臣 まさに仰せのとおりでありまして、この法律によって一段と、一種の補償体制と申しますか、それが強化されるわけでございますが、これをもって能事終われりとなすものではありません。本来保安庁がなさねばならぬ仕事に民間の方々に御協力賜る、あるいは保安庁の手の届かなかったところで御協力を賜る。またそのために気の毒なことになったというようなことに対しては、どの程度でいいんだというような目盛りはございません。これからも、事あるたびにこういう対策について強化をしていくことは当然のことであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/33
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034・堀内光雄
○堀内委員 ただいまの運輸大臣のお話を承りまして、この法律の制度のますますの充実を図っていただきたいと思うわけでございます。海上保安庁の治安、救難体制の充実というもの、また海上保安庁のますますの御活躍をお祈り申し上げ、民間人の協力者に災害の起きた場合の十分な御援助というものを心よりお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/34
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035・加藤六月
○加藤(六)委員長代理 次回は、来る二十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108003830X00519770316/35
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