1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年五月十二日(金曜日)
午後一時三十分開会
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委員の異動
五月十二日
辞任 補欠選任
茜ケ久保重光君 寺田 熊雄君
柳澤 錬造君 三治 重信君
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出席者は左のとおり。
委員長 三木 忠雄君
理 事
安田 隆明君
山崎 竜男君
目黒今朝次郎君
太田 淳夫君
委 員
井上 吉夫君
伊江 朝雄君
石破 二朗君
江藤 智君
木村 睦男君
佐藤 信二君
高平 公友君
平井 卓志君
瀬谷 英行君
寺田 熊雄君
矢田部 理君
田代富士男君
内藤 功君
三治 重信君
山田 勇君
衆議院議員
発 議 者 足立 篤郎君
国務大臣
運 輸 大 臣 福永 健司君
政府委員
内閣法制局長官 真田 秀夫君
警察庁長官官房
会計課長 大高 時男君
運輸省航空局長 高橋 寿夫君
事務局側
常任委員会専門
員 村上 登君
衆議院法制局側
法 制 次 長 大竹 清一君
説明員
警察庁警備局参
事官 近藤 恭二君
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本日の会議に付した案件
○新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法
案(衆議院提出)
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001・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。
まず委員の異動について御報告いたします。
本日、茜ケ久保重光君及び柳澤錬造君が委員を辞任され、その補欠として寺田熊雄君及び三治重信君が選任されました。
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002・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/2
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003・寺田熊雄
○寺田熊雄君 本法の第三条第八項によります家屋などの工作物の除去、これが所有権に対する侵害である、法益の侵害であるということはお認めになるんでしょうね。これは疑いないと思いますが、いかがでしょうか。提案者とそれから運輸大臣、法制局長官のお三方にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/3
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004・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) 法律解釈の問題、法理論の問題でございますから、衆議院の法制局の方から答弁さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/4
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005・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) この第八項が財産権に制約を加えておるという点は、おっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/5
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006・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 本法案は議員提案でもございますが、政府に対して御質問でございます。政府の方から法制局長官が参っておりますので、私は法制局長官が述べる意見に従うことにいたします。御了承をいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/6
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007・真田秀夫
○政府委員(真田秀夫君) お答えを申し上げたいと思いますが、実は本法案の中身については直接タッチしたわけでございませんが、配付されました法案を読んでみますと、この第三条第八項が財産権に対する制約を加えるものであるということについては、そのとおりであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/7
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008・寺田熊雄
○寺田熊雄君 侵害という言葉を私が用いましたことに対して、衆議院の法制局、それから法制局長官、いずれも制約というような言葉を使われたのでありますけれども、いま制約とおっしゃるのは、憲法二十九条の「財産権は、これを侵してはならない。」という、その侵害にはなるというんですか、ならないというんですか、その点をはっきりしていただきたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/8
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009・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) この第二十九条の第一項の「侵してはならない。」という意味を、字義どおり、財産権については一切もう手を触れちゃいかぬよと、こういう意味に理解するならば、侵していると、こういうように言わざるを得ませんが、侵しているということの中身をどう理解するか、そこで先ほど申し上げましたように、制約は加えられていると、こういうように申したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/9
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010・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ただいまその侵害のあり方だという趣旨で、文字どおり解釈すれば侵害にはなるけれども、内容があるので制約だというような答弁のようでありますが、あなたのおっしゃるのは何か補償を前提にして、補償があるから完全な侵害ではないと、それはやはり侵害が補償によって償われるから、そこで制約になると、こういう趣旨で言われるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/10
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011・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) その私が申し上げました制約ということは、憲法第二十九条の第二項の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」、これにまさに該当しているという意味におきまして、財産権そのものがあらゆる場合に、フリーにかつ完全な意味で保障されるということにつきましては公共の福祉に適合するように法律で決められると、その中身として制約があり得る、こういう趣旨で申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/11
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012・寺田熊雄
○寺田熊雄君 なるほど使用禁止というものが制約ということは、まあわからないではないけれども、壊してしまうというようなことが侵害にならないということはとうてい了解しがたいし、第二項の財産権の内容を定めるということの中に、除去してしまうというようなことまでも含むなどということはとうてい考えられないことですね。それじゃあなたは財産権の内容を定める、公共の福祉に応ずるように定めるということが、その除去までも含むというふうにお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/12
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013・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) お答えします。
結論はさようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/13
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014・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それはなぜこの場合に取り壊しが公共の福祉に従う所有権の内容の規定だというふうに言われるんです。あなたは何かこれがたとえば破壊活動者の集合、破壊活動をするおそれのある者の集合だということだけで、それが取り壊しするようなことができると言うならば、それでは考えてごらんなさい、偽造紙幣を自分の家で製造する者、同じことじゃないですか。しかし、いまの刑事法秩序では偽造紙幣を製造する者があったとしても、その偽造紙幣を製造する器具は、これは押収し没収はできるけれども、家屋を取り壊したり没収したりするようなことができる道理がない。暴力団が親分の家に銃砲刀剣類を持って武装して集まったって、いまの刑事罰秩序ではその暴力団の親分の家を壊すわけじゃない。田中角榮氏がロッキードから金をもらうというようなことを平然とその家でやったって田中角榮氏の家を没収したり取り壊したりすることができるわけじゃない。犯罪がその家屋の中で行われたとしてもその家屋を没収したり取り壊ししたりするようなことはいまの刑事罰秩序ではないんですよ。それをそこまで至らなくて、単純に何か破壊活動をするおそれがあるという者が集合するだけでその家を取り壊してしまうようなことが、どうして憲法のこの二十九条の二項でできますか。余りにも拡大解釈じゃないか。これはどうですか、提案者御自身にお伺いいたしますが、確信を持っていまの刑事罰秩序と比較考量してみてもそれが少しもおかしくないということが確信を持って断言できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/14
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015・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) 先ほどの連合審査会でも同じ質問がございました。私どもは四党共同提案の協議の過程で、いやしくも憲法違反のそしりを受けてはならない、慎重の上にも慎重を期しまして協議しました。正直申し上げれば、私は原案の立案者でございますが、私が最初つくった原案はもっと乱暴なものでございました。そうして、さっきもお答えしたように、衆議院法制局はもちろん、内閣法制局その他関係方面で十分御検討を願った上で、この案ならば憲法違反の疑いを受けない、こういう確信を得て提案をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/15
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016・寺田熊雄
○寺田熊雄君 いまの衆議院法制局次長の御答弁などを伺いますと、本当に日本の憲法を守るというような法律家としての良心をお持ちとはとうてい考えられないんですよ。これはもうそういう議員の強い希望に迎合した憲法解釈だとわれわれは断ぜざるを得ないですね。
これはどうなんでしょうかね、こういう家を取り壊すというようなことが、これは行政上の必要から生じたことであるんですけれども、家を壊すということが財産権の制約であれ侵害であれ、言葉の使い方は別として、法益が非常に損なわれることであるということだけは、これはお認めになるんでしょうがね。そういう法益に対する被害を国民に与え、それはあなた方がおっしゃる秩序のためだと言うんですけれども、まあいわば包括的な概念で言うと秩序罰に当たると思いますが、それはおわかりでしょうね。これは提案者、お答えができればしてください、できなければ法制局で結構ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/16
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017・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) 私どもはきのうからたびたびお答えしているとおり、この立法措置によって初めて日本の平和と民主主義が守れるというふうに考えておりますので、憲法の許す範囲内においてこの処置はぜひとりたいということで立法をいたしました。
なお、法理的な問題は私は専門じゃございませんから、隣の専門家に答えさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/17
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018・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) お答えします。
ただいま、言葉をあげつらって悪いようでございますが、秩序罰とおっしゃいましたが、私どものこの立法の仕組みは、行政上であろうとも、いわゆる罰として除去する、こういう意識で立法しているんじゃございません。要するに財産権を保障するという一つの憲法のねらいと、それから公共の福祉、他の面における公共の福祉の要請、これはやはり両方が両立すればそれにこしたことはないんですが、その上の比較検討の問題として財産権がどの程度まで引き下がってもらえるか、受忍をしてもらえるか、こういう問題として理解いたしておりますので、破壊活動者に何かある種の罰を加えるからつぶすのだ、こういう意識ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/18
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019・寺田熊雄
○寺田熊雄君 破壊活動者じゃないんです。その破壊活動者の集合の用に用いられる家屋の所有者に対する関係です。ですから、あなた方はすべて私の質問の趣旨をよく理解して答えていただきたい。先ほども法制局長官にお尋ねをしたのです。その集合する人とそれからその家屋の所有者とが別人であることが、もうこの本件の場合には非常に多いわけですからね。第三者の所有権の侵害ということを前提して私どもは議論している。ここで先ほども法制局長官と議論をいたしましたけれども、この最高裁判所の判例というものをここで読んでみます。いかに実質においてこの最高裁判所の判例に違反するかということを皆さんにおわかりいただきたいと思うんです。これは昭和三十七年十一月二十八日、大法廷の判決であります。これは、旧関税法の百十八条が、密輸出をした、その密輸出罪を構成した貨物はこれはもちろん没収いたしますが、この貨物を積んだ船舶も没収するという規定があったわけであります。それが密輸出した人とその船舶の所有者とが別人であっても没収するという規定であったわけでありますけれども、最高裁判所は、それを憲法三十一条違反とし、二十九条違反としてこの大法廷の判決で破棄しているわけでありますが、この場合の家屋の除去、取り壊しということと、それが所有者に与える被害と没収とでは、なるほど補償というものはあっても財産権に対する侵害という点ではいささかも異ならない。たとえば、家屋を壊された者がその家屋の時価をもらったって、建て直すまでの居住を不可能にせしめられたその被害であるとか、精神的な被害であるとか、新しい家を建てる場合に必要とする財産的な支出であるとかいうことを考えれば、取り壊されるというようなことは、その建物の時価が補償されたとしたって少しもそれは実質的な補償にはならないわけですね。だから、それは財産権に対する大変な被害であるという点については没収の場合と大同小異である、そのことを前提にして私は論議しているわけです。この判決は、「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法二九条一項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同三一条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁護、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。」、つまり、後でどういう救済が、つまり、補償のような救済が与えられることとは別個の問題だというまで言い切っておるわけですね。この最高裁判所の判決がいかに憲法三十一条の適正手続と保障という規定を尊重して国民の財産権を擁護しようとしているかということがおわかりになると思う。先ほど法制局長官は、刑事罰と何か民事的な秩序罰とは違うというようなことでこれを逃げられたけれども、私は余りにも政府なり、当局者に対する何というか、迎合の、法律家としてはあり得べからざる議論だと思う。あなたがどうしていまの家屋の取り壊しと所有権の没収と、片方は刑事処分だから、片方は行政上の措置だからということを言われるけれども、所有権の侵害ということに関しては変わりはないわけです。また、公共の福祉といっても、密輸入とか、密輸出というものを防止しようとする国家の目的と、航空の安全を期待しようとする国家の目的とひとしく国家にとっては大切なことなんで、その間に差異があろうはずがない。どうしてあなたはこの最高裁判所の判例に、第三者、家屋の所有者の意見も聞かず、弁解も聞かず、防御の機会を全く与えることなしにそれを取り壊してしまうことが憲法三十一条に違反しないということが言い切れるでしょうか。あなたの良心的なお答えを期待して、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/19
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020・真田秀夫
○政府委員(真田秀夫君) 午前中の合同審査の際にも御質問に応じて私からお答え申し上げましたが、御引用の最高裁判所の判例のあることも十分承知しております。その判例が第三者所有の物の没収、つまり、第三者没収を行うについて以前の判例を変更いたしまして、ただいま御指摘のように、告知、弁解、防御の機会を与えないで第三者の所有物を別の被告人の刑事手続において没収することは憲法三十一条の許容するところではないという判例になったわけなんです。そのことはよく私も存じております。
ところで午前中にも申し上げましたが、この憲法三十一条は、本来的にはやはり刑事事件についての国民の権利の保障に関する規定でございまして、三十一条ばかりでなく、三十五条あたりもそういうことでございますが、三十五条につきまして例のまた最高裁判所の判例がございまして、これはいわゆる川崎民商事件と称されるものですが、その三十五条につきましても、これも実は最高裁判所はこの規定も本来的には刑事司法に関する規定であるけれども、しかし行政処分であるからと言って全然この三十五条の底に流れている精神を無視していいものではないと、やはりできるだけ尊重しなさいということを言っているわけなんです。つまり最高裁判所の判例でも、刑事事件と行政事件とではやはり重みが違うといいますか、憲法からながめている保障の中身がやはり差異があっていいんだということを、これは正面からははっきりは言っておりませんけれども、よく読めばそういう趣旨は出ているわけなんです。そこで行政処分についても憲法の三十五条の底に流れている法意はなるべく尊重しなさいということはそのとおりで、したがって、私は最高裁判所の判例の趣旨を類推しまして、三十一条についても同じように行政処分であるからといってデュー・プロセスの原理を無視していいものだとは考えておりません。それは午前中にはっきり申し上げたとおりでございます。ただ、行政処分の場合と司法処分の場合とでは、いま申しましたように、おのずからその性格が違う。つまり刑事事件の場合にはその当該被告人なり、あるいは第三者の没収の場合にはその第三者の何らかのやはり責任を追及するという制度なんですね。ところが行政処分の場合には行政目的のために、つまり言いかえれば公共の福祉を維持するためにやむを得ずある程度の不利益をその所有者なり関係人に課すると、それは社会の安全を保つためいわば保安的な内容のものであって、刑事事件そのものではないと、ただ精神において三十五条の底に流れる趣旨をよくくみ取りなさいと、こういう程度なんです。
そこで、どこまでその事前の手続を尽くせばいいかということになりますと、それは行政処分というのは非常に中身も多種多様でございますし、それから与える不利益の内容も千差万別であるし、またそれによって守ろうとする公益の重みも、これもいろいろ程度があるわけでございますから、そういう諸般の事情を勘案して、それでまた当該行政処分を発動するに必要な要件、事実の明白性なり、あるいは行政処分を行わなければならない緊急度なり、そういうものを総合勘案して、その事前手続の丁重さの程度を考えればよろしいという立法裁量の働く面であるというふうに考えるわけでございまして、それは午前中にるる申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/20
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021・寺田熊雄
○寺田熊雄君 内閣法制局長官にこれ以上の答弁を期待することは無理だと思います、この法案の立案に参画してないと言われるんだから。しかし、ここではっきり申し上げたいのは、この三十一条が、単に刑罰についてのみの規定ではないと、「刑罰以外に、国家権力によって個人の権利、利益を侵害する場合をも包含しているものと解すべきであると考える。」。これは法制局長官などの大先輩である入江俊郎さん、これは、裁判官としての入江さんがこの判決の補足意見として述べておるところであります。これを読んでみますと、「憲法三一条にいわゆる法定手続の保障は、単に形式上法律で定めれば、それで本条の要請を満たしたものというものではなく、たとえ法律で定めても、その法律の内容が、近代民主主義国家における憲法の基本原理に反するようなものであれば本条違反たるを免れず、単に手続規定のみについてでなく、権利の内容を定めた実体規定についても、本条の保障ありと解すべきであり、更に本条は単に刑罰についてのみの規定ではなく、「若しくは自由を奪われ」という中には、刑罰以外に、国家権力によって個人の権利、利益を侵害する場合をも包含しているものと解すべきであると考える。」、こういう特に補足意見を前に法制局に長官としておられた、法律専門家の入江さんが言っておられる。
さらに、この東大の小林直樹教授、これもやはりこの憲法三十一条が、「デュー・プロセスとは、今日多くの学者が解しているように、「公正と賢明のミニマムの水準」をみたすような手続を意味する、」と、「「その他の刑罰」としているところからいえば、厳格な意味での刑罰にかぎらず、それに準ずる身体の自由の拘束、したがって行政手続をもふくむと解した方が、本条の趣旨に適合するであろう。また、ここにいう「刑罰」とは固有の意味の刑罰にかぎらず、過料のような秩序罰や執行罰をふくむとみてよい(同趣旨、註解、宮沢、」——宮沢教授のことです。「鵜飼、」——鵜飼教授のことである。「和田等)」——これも和田教授のことです。だからいま憲法学者はこれが単に刑事罰だけじゃなくして、一切の行政罰あるいは秩序罰、ただ過料というような軽いものさえも入るというのですからね。まして家室を取り壊すというような重大な法益の侵害がこの憲法三十一条の趣旨に含まれるということは疑いがない。
それを本法は、全くその所有者の意見も聞かない、防御の機会など全く与えないで取り壊してしまうというのですから、いかにこれが憲法三十一条の適正手続の保障に反するかが明らかだと思うのですね。これはどうして、なぜ所有者の意見、弁解を聞かず、いささかも防御の機会を与えようとしなかったのか。これは提案者に伺いたいと思います。いや、これは提案者に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/21
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022・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) 先ほど来繰り返し申し上げておりますように、私どもはいやしくも憲法違反の疑いを残してはならないということから相当慎重に検討が重ねられまして、いま寺田さんは一発で除去するとか、撤去するとかいう方に話を進めていらっしゃいますが、最終的にはそういう場合もあり得ることはこの法案に明記しておりまするけれども、何と言いましても、まず空港の安全を図るためにこうした暴力集団の集合の場所になる、あるいは凶器その他を準備する場所になる、こういうものを使用禁止をして、そうして空港の安全を図る、それをどうしても言うことを聞かなければ封鎖をする、そしてそれが保障されないという事実がある場合に限って除去することができるというふうに三段に進めているわけでありますから、何と言いますか、むやみやたらに除去するというわけのものではない。私どもも十分その点は配慮してこの立法をしたということについては御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/22
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023・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ただこれが配慮が足りないというふうに申し上げるのは、いいですか、あなた方が破壊活動をなすおそれがあるものとして使用禁止命令をお出しになるとしますね。所有者は、いや、家に来ている者は破壊活動なんかする者じゃありませんよと、これは私どもの援農の人々です。また、私どもに賛成してデモをしようとして、憲法二十一条の「表現の自由」の範囲内で応援をするために来てくれた人ですと言ってがんばるかもしれません。また、それが事実であるかもしれません。しかし、そういう弁明を聞かないんですよ。意見も聞かないんですよ。だから、運輸大臣と所有者との間に事実の認識で対立する場合というものは十分考えられる。たとえば石橋副委員長が自分の家に自分たちの懇意な者を寄せるとしますか、警察当局は、あれは破壊活動者だと言う。石橋さんは、いや、これは私どもの主張には賛成しているけれどもデモをするのです、破壊活動なんかしませんよと言ったって、そういう弁明は聞かないんですよ。この法律では聞く必要はないんだ。そうして命令をし、聞かないからと言って壊しちゃう。だから憲法三十一条違反だと申し上げるわけですよ。おわかりですか、足立先生。なぜそれで意見を聞き弁明の機会を与えず、また防御の機会を与えなかったかというのは、そこにあるわけですよ。あなた方の御主張と運輸大臣の認定と所有者の考え方と違う場合があり得るでしょう。これはお認めになるでしょう、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/23
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024・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) これは先ほど来衆議院法制局からも、それから法制局長官からもるるお話がありましたとおり、その守るべき公共の福祉ということは、私はいまの成田の周辺の状況を考えますと、これ以上重大な状況はないというふうに判断をしております。まあそれが感情的過ぎるとおしかりを受ければそれまででございますがね。したがって、先ほど来お話のあったとおり、財産権の制約ということが相当程度行われることは結果として起こりますが、これはもうやむを得ない犠牲だというふうに判断をしてこの法案を提出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/24
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025・寺田熊雄
○寺田熊雄君 もう全然私のお尋ねしたところにお答えいただいてないんですよ。私は、取り壊される家屋の所有者は、ここに集っている人は私どもの同志であるけれども、破壊活動はいたしませんよと、そんなものじゃありませんよと言う——事実そうかもしれない。しかし運輸大臣は、警察の情報を資料として、これは何にも証拠が要らないのだから、情報を資料として——いや破壊活動をするおそれがあるんだといって、使用禁止を聞かないから撤去ということに踏み切るかもしれない。それが憲法三十一条に違反すると、なぜその弁明をお聞きになる手続きを踏まなかったかと、別段、弁明を聞く手続を踏んだって、あるいはその防御の機会を与えたって、そんなにおくれるわけじゃないでしょう。それを聞かずに問答無用でやるという内容の法案だから私は憲法違反じゃないかと申しておるんです。あなたは、いやいまの成田の状態はそのぐらいの犠牲はやむを得ないと言うけれども、とんでもないことですよ。やっぱり成田が騒然としているから、何やっても構わないんだというような考え方で法律をおつくりになったら困るんですよ。それは憲法九十九条の憲法遵守義務に違反するわけですよ。相手が——無法の状態が仮にあったとしても、こっちが無法なことやっていいということにならぬのですよ、午前中申し上げたように。これは技術的な問題じゃないんですよ。提案者の足立先生に何回も申し上げるけれども、法制局次長がどういう迎合的な答弁をするか私は知りません。しかし、これは提案者が最も心すべき内容のことですよ。なぜ弁明を聞く手続を置かなかったか、なぜ防御の機会を与える手続をこの法案の中に盛らなかったか、それは憲法三十一条の適正手続の保障という憲法のこの基本的人権を守るための大切な、宝のような規定を少しも意識しなかった、少しも尊重しなかったことになりゃしませんかといってお尋ねしているんですから、これは技術的な問題じゃありません。提案者の確信のほどをお伺いするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/25
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026・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) いまこの静かな場で、法律専門家の寺田さんのお話を伺っていますと、それなりに聞こえるわけでございますが、私どもが用意した法案で対処しようとしている事態は、先ほど真田法制局長官からもお話がありましたとおり、その緊急性といいますか、そういうものに対処して、実効を上げる措置を立法化しなければ、成田の空港の安全、大ぜいの人の人命の保障、まあもっと大きく言えば、平和と民主主義を守ることができないというふうに判断をしたわけでございまして、まあ私どもとしてはこの程度のことはどうしてもやらなければ効果が上がらないというふうに考えております。
それで、いまのその所有者と占有者が違う場合、確かに法律的に言えば問題のあることは私も常識としてわかります。わかりますが、それを認定する場合には、いまあなたがおっしゃるような、たとえば善良な農民が集まってそこに住まっておったというようなものをむやみやたらに除去するというような事態は絶対に私はあり得ないと思うのでありまして、何回かそういう事犯が繰り返され、そして禁止命令を出しても、封鎖をしても、どうしようもないという場合に初めて除去ということが行われるような仕組みに慎重に私どもも配慮をしておるわけでございますので、その事実認定の問題については慎重を期してもらうべきだと私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/26
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027・寺田熊雄
○寺田熊雄君 事実認定の場合に慎重を期するということは、これは当然のことなんですね。ただ、この法案は、所有者が自分の同志を集め、そしてその人々は絶対にその違法な活動はしませんよと、これは憲法二十一条に保障された表現の自由を単に行使するだけでありますと、また事実そうであって、所有者は確信しておる、そういう場合でさえも運輸大臣の認定によっては、これは禁止命令が出し得るわけです。これはあるいは運輸大臣のようなりっぱなお方はそういうことはしないとおっしゃるかもしれない。しかし、いまのこの立法というものは、りっぱな、絶対にしないであろうような、聖人のようなお方がこの法を運用することを前提にしているんじゃないんですよ。乱用する人が出れば乱用されるというようなおそれがあったんではいけないというのでしぼりをかけるわけですよ。いいですか、聖徳太子のような人が裁判するならば、全部あらゆる犯罪を無期懲役に処するということが可能にならしめてもいいわけですよ。しかし裁判官といえども権力を乱用するから、犯罪ごとにその刑の上限を定めておるわけです。そんなことはおわかりでしょう。だから必要なことはやはり財産権に対する非常な侵害をする場合には、少なくもその人間の意見を聞き、それからどうしても運輸大臣が違うといった場合には、いや違いはしませんよと、調べてみてくれというその弁解なり防御の機会を与えなければいけませんよというのが私のあなた方にお尋ねしていることですよ。あなた方はあくまでもいまの状態ではその程度のことはやむを得ない、やむを得ないと言う。それではこれは回答になりません。それでは依然としてこれが憲法三十一条違反の法律であると、そういう疑義は少しも払拭されていないですよ。むしろいよいよわれわれはあなたがたの答弁では憲法三十一条違反であるという確信を深めるだけです。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/27
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028・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) ただいまは憲法二十九条それから三十一条が議論の論点になっておりますので、提案者が憲法二十九条と三十一条についてどのような考え方をして立法したかという点について補足して御説明申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/28
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029・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まあいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/29
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030・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) まず憲法二十九条の問題でございまするが、端的に申しますと、公共の福祉という観点から、最終的にはこの除去をするというような規制が財産権保障の上から許されるかということであります。具体的にこの法案に即して申しますと、たとえば団結小屋と言われているものにつきましてこの規制をするに足りる公共の福祉が認められるかということであろうかと思います。そこでまず私どもの考え方といたしましては、この新空港の安全確保という……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/30
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031・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ちょっと待って。三十一条のだね、弁解を聞かずに、防御の機会を与えずにやることが三十一条違反になりやしないかと言って聞いているのだから、よけいなことを言わないで、その点お答えなさいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/31
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032・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) 三十一条の方にしぼってお答えしてよろしゅうございますか——この三十一条の問題でございますが、先ほど来私どもの先輩であった入江先生、それから小林教授その他の方の御意見を御披露なさいまして、一般論としては私どももそれに従って物事を考えているわけでございますが、今度のこの立法は、やっぱりいささかまだ違うというように考えておるわけでございます。それはどう違うかと申しますると、この新空港の安全確保というものをこの法律の目的といたしておりまするが、この新空港の安全確保をどうしてもやらなければならぬということが現時点においてはいわば一つの絶対的な要請である、こういう考え方を一つ立てております。そうして新空港の安全を確保するためには、例の三月の二十六日でしたか、起きましたあのような事態は、再びそういうものは起こしちゃいかぬ、またあのような事態はいわゆる通常の市民社会レベルの状態を超えたきわめて異常な事態であると、こういう認識を前提にいたしまして、その上に立って憲法三十一条の法定手続というものを考える必要があろうかと、こう思っております。申すまでもなく、元来は刑事手続に関する規制であるのでございまするが、先ほど来の各先生方のお話にもありますように、その精神をくみまして、行政手続においてもできる限りこの精神を及ぼすべきであるとする考え方が定着していることはもう御案内のとおりでございます。しかしながら、この法案で取り上げておりまするように、きわめて特殊の場合におきまして、具体的には財産権の制限を受ける側に対しまして、先ほどおっしゃいましたように、告知をするとかあるいは弁明の機会、こういう機会を与えると、そういう慎重な手続を経て権限発動をするべきだということが一番問題になっておるわけでございます。ところが、この法案の状況を見ますると、この法案が適用される場合におきましては、暴力主義的破壊活動者のこれまでの行動、あるいは今後予想をされる行動から見ますると、そのような手続を踏んでおりますると非常に時間がかかる。しかも時間がかかった上で行政上の効果が全く期待できないと、こういうことは容易に予想できるところであります。こういう事態を踏まえまして使用禁止命令やあるいは場合によって封鎖が行われるわけでありまするが、それだけではどうしても効果が十分でないというようなとき、いわば事態が急を要している、緊急であるというようなこと、そして市民社会レベルの……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/32
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033・寺田熊雄
○寺田熊雄君 簡単に。時間がないから簡単に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/33
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034・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) 状態を超えるような事態が再び招来することを避けることがどうしても必要である、そういうときにはきわめて厳しい、この八項にありまするような要件のもとに所定の手続を踏まないと、こうしてもこれはやむを得ないものとして憲法上許容されると、かような考え方に立ちまして、先ほど来おっしゃっておる所定の手続を書かなかった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/34
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035・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ただいまの長々とした御説明を伺いますと、結局あなたのおっしゃることは空港の安全を確保する必要があるということと、意見を聞いている暇がないと、こういうことの二つに尽きますよ。そうでしょう。一体、この憲法三十一条というものは、あなたの結論によると、何か行政目的によっては無視していいということになる。それから、急ぐんだと言うけれども、あなたの御説明自体でも矛盾があるのは、いいですか、命令をする、封鎖をする、聞かないから撤去ですとこう言う。それじゃ命令をする段階で聞いたっていいじゃないか。命令、封鎖、撤去と一度にいっちゃうんじゃないんだから、命令をして聞かないから封鎖をして、聞かないから撤去と、時間があるじゃありませんか。なぜその間にでも意見を聞かないの。あなたの答弁自体からもそれは矛盾があると思う。いいですか。いきなりぱっと壊すとすれば、これはもう乱暴もはなはだしくて、こんなことをやったらもう憲法秩序も何もあったものじゃありません。だけれども、あなたの御答弁だって、命令、封鎖とだんだんにやっていくんだと言う。だんだんにやっていくその時間の間に意見を聞き一防御の機会を与えたらいいじゃありませんか。全然あなた方の御答弁自体がもうなってないんですよ。しかも緊急の場合といえどもと言うけれども、災害が発生している場合ですよ、災害対策基本法の七十八条、災害が発生した場合においていろいろな処置ができることになっておる、そのときでも第八十一条は「都道府県知事若しくは市町村長文は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、それぞれ公用令書を交付して行なわなければならない。」ということを言っている。この場合には災害が発生しているんじゃないんだ。おそれがあるというような場合で、その命令というものは所有者が全然あずかり知らぬような官報で出てしまうと、こういうんだから。所有者がわかっていればやるけれども、それだって口頭かもしれない。それからどういうことを伝達するのかというその規定はない。口頭でぽっと言ったって、そんなことは聞いた聞かないなんというので、内容だって非常に不明確でしょう。そういう点の配慮がこの法律には全然ないんですよ。それから伝染病予防法なんかを見てみますと、伝染病が、ペストが発生していると、それこそこれは大変緊急を要するときだけれども、それでさえも汚染建物の処分というのは——これは伝染病予防法の十九条の二ですけれども、「消毒方法ノ施行ヲ不適当ト認ムルトキハ都道府県知事ハ関係市町村会ノ意見ヲ聴キ厚生大臣ノ認可ヲ得テ其ノ建物ニ対シ別段ノ処分ヲ行ヒ」云々という規定がある。つまり日本の憲法がまだ施行されていない、国民の基本的人権なんというものに対する配慮の足りなかった時代においてさえも、立法機関はそれだけの国民の権利を保全するための配慮というのをしているわけですよ。ところがこの法案というものは、ともかく空港の安全さえ守ればいいんですということで、全くそういう国民の基本的な権利、財産権を守るなんということに対する配慮がない。憲法三十一条などを守ろうとする熱情も何もない。こんな法案が許されていいんだろうかというのが私どもの考え方ですよ。われわれだって何も過激分子の味方するものじゃない。だれだって空港の必要性は認めるし、安全にそれは開港してほしいけれども、相手が無法だからといってわれわれが無法なことをやっていいわけじゃないんです。われわれはやはり憲法を守り、法秩序に従って対策を立てなきゃいけない、こういうことなんですよ。もうそんなあなたのような迎合の法律論は聞きたくない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/35
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036・矢田部理
○矢田部理君 委員長、ちょっと関連質問。議事進行についてでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/36
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037・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは関連質問の後で、やはり提案者の足立先生にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/37
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038・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) ちょっと待って。いまの答弁の方を先に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/38
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039・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) これは何回も繰り返すことになって恐縮ですが、先ほど真田法制局長官の答弁の中にもございましたが、財産権はやはり公共の福祉にかなうものでなければならないという、それは法律で定めるということでございまして、私どもは価値判断というか現場の認識の問題にもかかわると思いますが、きのう警察当局から答弁した中に、公団敷地の中のいわゆる団結小屋の撤去について手間暇がかかり過ぎるじゃないかという御質問がございまして、あのときの説明はたしか、何といいますか、所有者あるいは管理者、こういうものがなかなか判明しないので手間暇がかかっているという意味の答弁があったように思っております。私どももあの現場の状況をいろいろ聞きまして、この法案の立案に当たりましては、いまおっしゃるような手続を踏めばなおよろしいということは十分わかっておりますが、しかしそれを踏んでおりますと、空港の安全確保という緊急事態に対処することはほとんど不可能になってしまうということで、しかも公共の福祉の尊重、公共福祉を守ることが財産権尊重の憲法上からも一つの前提になっているという点に着目いたしまして、緊急事態に対処するための立法としてこの法案を考えたわけでございまして、この法律論につきましては、とても専門家の寺田さんにはかないません。乱暴だと言われればその非難は甘んじて受けますが、私どもは何としてもこの立法によってこの空港の安全を図り、そして日本の民主主義を守りたい、こういう決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/39
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040・矢田部理
○矢田部理君 進行についてでありますが、先ほどの法制局の答弁は黙過することのできない内容だと思うんですよ。法律論ではなくて政治論を先行させた。しかも内容は空港の安全性というのを絶対価値にし、時間がないということをさらに補強理由として憲法を越えようとする議論をしているわけであります。これは当委員会としてそういう発言は断じて認めるわけにはいきません。それを撤回するかしないかということをはっきりさしていただきたいと思うし、ああいう発言をそのままわれわれは受け取るわけにはいかないということで、進行についての御協議をしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/40
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041・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) 憲法三十一条の問題をどう考えるかにつきまして、この法律が前提としておりまする事情を申し上げたわけでございます。したがいまして、憲法三十一条の部分につきまして申しますと、先ほども申し上げましたが、これは元来刑事手続であること、したがいまして、この手続をとらない場合に直にそれがこういう行政関係法規におきまして違憲になるということはないと思います。しかしながら、先ほどの入江先生を初め各教授方がおっしゃっているように、可及的、できる限りその法定保障手続はとるべきであるというのを行政関係法規においても取り入れるという考え方が前提になっておることはもちろんであります。しかしながら、それぞれの法案が目的としている状況におきましてこの手続をとるかとらぬか、これは判断の分かれるところであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/41
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042・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 いま議事進行でそういう発言がありました。私も聞いておって、あなたが絶対視という言葉を使っておったんでありますが、私も憲法以上の絶対視だと錯覚するぐらいのショックを受けました。したがって、休憩をして、いま言った議事録をとって、あなたがいま釈明したことと前段の発言が合っているかどうかということを含めて、それ以後議事進行するという点で、議事録をとって確認すると。そうでなければ前の発言は撤回すると、どちらかはっきりしてもらいたいと、こう思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/42
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043・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/43
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044・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/44
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045・大竹清一
○衆議院法制局参事(大竹清一君) お答えしますが、ただいま先生からこの絶対視というところを取り上げられました。これは考えようによりまして、ちょっと誤解を生ずるおそれもございまするので、その部分は、きわめて重要な、というようなところに訂正さしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/45
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046・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ただ最後に、これ以上発言することができませんので、もう一度私は提案者並びに運輸大臣に申し上げたいんですけれども、いまるる申し上げましたように、この家屋の使用禁止命令、これは御承知のように、全く所有者の意見、また、占有者の意見も聞きませんよね。占有者や使用者というものは、自分たちは、あなた方が御認定になるように、破壊活動などするものではありませんと、どういう根拠であなた方はそういうふうな御認定をなさるんですかという反駁さえも許されないし、自分を弁明することも許されないし、ましてそれを何か法的な手続で防御することも許されないわけですね。ですから、もう全く行政権の専断に委ねられているわけです。しかも行政権は、いろいろな法律にありますように、一定の資料による証明さえも要求されていないわけです。その資料が果たしてあるか、全く独断の認定か、それはこの法の問うところではないわけですね。だから、行政権の専断によって、それに従わない善良な農民の家屋でさえも、あるいは現にいま団結小屋の中には公民館もありますけれども、それなんかが取り壊わされてしまうというような、非常な基本的人権の侵害がこの法案によっては十分行われる危険性というものが非常に多いわけですよ。それを私は強調したわけです。ですから、これはもう明らかに憲法違反だというように私どもは確信して疑いませんけれども、その点を踏まえて、この大勢いかんともしがたいというところまできておりますからして、恐らく多数決でこの憲法違反の法律ができ上がってしまうでしょう、しかし、そういうおそれというものがあるということだけは十分心得ておいていただきたい。その点、運輸大臣の御決意なり所感なりをお伺いして私の質問を終わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/46
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047・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 寺田さんのただいまの御意見よく伺っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/47
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048・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 きのうの質問の中で、この法案を運用すればパイプラインであるとかあるいは燃料暫定輸送の国鉄の施設、そういうところもいわゆる航空機能の確保という点から工作物に指定すると、そういうふうな発言がありました。逆にお伺いしますが、パイプラインの問題について本当にスムーズに三年以内に開通する見通しがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/48
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049・高橋寿夫
○政府委員(高橋寿夫君) いわゆる本格パイプラインにつきましては、現在千葉市を中心といたしまして地元との話し合いを続けております。最近の情勢を申し上げますと、千葉市の市議会においてもほぼ意見がまとまっているように伺っております。その他沿線の市町村につきましても、意見をまとめまして着工をいたすことができまするならば、三年間で完成できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/49
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050・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 私の知っている範囲では、今度の新しいパイプラインの問題についても地域住民と非常にやはり問題が介在すると、そういう話を承っております。そうしてこのパイプラインの施設、その問題について住民と公団側にいろいろなジグザグが今後あると思うのですが、そういうジグザグがあった際にはこの法案との関係はどうなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/50
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051・高橋寿夫
○政府委員(高橋寿夫君) いわゆる本格パイプラインの問題でございますが、これは少なくとも本格パイプラインの施設ができなければこの法律案の対象になり得ることはありません。それから、本格パイプラインができ上がったという場合に、でき上がった以後におきまして、その本格パイプラインの付近に団結小屋ができたという場合には、この法律の適用対象になることがあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/51
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052・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 じゃ、いまのは確認しておきます。
それから騒音問題は特定空港措置法がこの前できたわけでありますが、しかし、騒音問題は多くの問題を抱えておるわけです。この騒音問題で住民が集まっていろんな行動を起こしたり、あるいは空港公団に交渉したり、そのために一カ所に集まって皆さんが話し合いをする。たまたまそれが民間のアパートの一室を借りて行われた、そこから行動を開始したと。そういうことを反復しながら空港公団やあるいは運輸省に会ったと、そういう行動を起こす際にこの法案との関係はどうなんですか。提案者にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/52
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053・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) 私どもは、いま目黒さんがお挙げになった、アパートを使って、そこを集合の場所にして、何といいますか、暴力活動の拠点にするというようなことは、正直に申し上げて全く想定をしておりませんでした。何といいますか、とりあえずは空港周辺三キロ、これは法律で明らかにして、誤解のないようにして、拡大解釈ができないようにしようということでやったわけですが、ただ、いま航空局長が答えたように、たとえばパイプラインが引かれた、そして機能を発揮し始めたという段階で、その機能を阻害する目的でパイプラインの付近に団結小屋等がつくられて、そこを拠点にして活動を始めるということになれば、これは恐らく政令で追加指定ということになると思いますので、いまお話しの、何といいますか、アパートなどを想定はしておりませんが、これは、何といいますか、実際、事実認定の問題になってくると思いますので、立法がされた後で行政府の判断でどうしてもこれを使用禁止なり、封鎖なり、あるいは除去なりしなければ安全が守れないという場合にはこの法律が動く可能性はあると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/53
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054・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 いや、私はこの法案読んでみますと、時間がないからやらなかったんですが、あなたは俗称「団結小屋等」と提案のときに言いましたね。「等」の中には、いわゆる破壊分子が集まって相談をしたり、合議をしたり、行動を起こそうとしたり、そういうものが含まれるのだ——きのうの論争で工作物という定義について大分議論されましたね。工作物の中には、いろんな議論がありましたけれども、やはりアパートあるいは公民館あるいは普通の民家、そういうものもやっぱり含まれるというふうに提案者の方は提案しているんじゃありませんか。それを団結小屋、団結小屋というふうに、団結小屋へ表現を一点に集中させて、問題が一般の市民に、「おそれ」という名目で、しかも警察が一方的に判断するという、そういう意味の中でこの法案が拡大されていく可能性ということについてはきわめて提案者はあいまいもことして逃げているんですよ。私は、この点は当然この法案からいくと含まれるんだなあと、こう思ったんですが、提案者はあくまでも含まれないと、こういう提案なんですか。それならそれらしくこれはここで確認しておきたいと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/54
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055・足立篤郎
○衆議院議員(足立篤郎君) これはあくまでも緊急立法でございまして、もうきのうからくどくお答えしているように、現在置かれているあの成田空港周辺の異常な事態、これに対処するのが目的でございます。ただ、いま目黒さんがおっしゃるように、将来仮にこの法律が効果を上げまして成田空港周辺は静穏を取り戻したといたしましても、ねらいがまた別の方へいって同じようなことが繰り返されるということになりますと、成田空港の機能に致命的な影響を与えるようなものについては、これは運輸大臣の方が今度は判断をさるべき問題だというふうに思っています。
なお、いま例示として公民館のお話がありました。さっき寺田さんの最後の御意見の中にも公民館をどうするんだというお話がありました。これはもうこの場でございますから、私も一国会議員として、同僚の皆さん方でございますから、正直に申し上げますと、私が書きおろした原案は、使用禁止、それを聞かなければ除去と、相当乱暴な案を書きおろしたわけであります。ところが、警察当局その他から現状を詳しく聞きますと、あの団結小屋と称される、いま三十四ですか、あります中に、三つばかりその地域の住民が日ごろ使う公民館が——これは了解のもとかどうか知りませんが、現実、団結小屋に変わってしまっておるということも聞きました。しかし、これはいわば地域の公共の建物でございますから、これまで仮に使用禁止命令を出して、言うことを聞かなきゃ公民館までぶち壊してしまうということはどうもこれは穏やかでないという考え方から、先ほど申し上げた四党協議の場でだんだんと慎重な検討が加えられた結果「封鎖」という一段階を入れたのでありまして、立法者の趣旨としては公民館等は除去する気持ちはございません。本当にこの使用禁止が保障されるというための封鎖をするという段階にとどめるべきものであるというふうに考えて、そういう三段の処置を決めたということを正直に白状いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/55
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056・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 それからもう一つ、これは警察側にお伺いしますが、開港後の警備隊については、常駐警備隊を置くとかという話を新聞で見たのですが、この問題はどうなんですか。その問題と、開港時に一万四千名の警官隊を動員しているということでありますが、この一万四千名の警官隊と常設警備隊という関係はどういう関係になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/56
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057・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 開港後の警備情勢につきましてただいまから軽々に判断はしにくいわけでございますが、三月二十六日前後の状況から考えますと、開港があったからすぐに現地の情勢が平穏になるというふうなことも考えられない面がございます。そこで開港時警備の、一万三千というふうに私ども申しておりますけれども、一万三千の体制をいつまでもこれは維持することはもちろんできませんし、開港後の恒常的な警備に責任を持つという考え方から、やはり一万五千程度の常設の空港警備隊を現地に準備いたしまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/57
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058・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 一万五千……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/58
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059・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 失礼いたしました。千五百名でございます。大変間違いましてどうも……。千五百の空港警備隊を体制として整備することを考えて、ただいま準備中でございます。そういう体制で空港周辺の警備に責任を持ちたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/59
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060・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 これは時間がなかったので聞けなかったのですが、新聞その他の報道によると、千五百名と言いましたね。千五百名の常設警備隊の問題については、お金の面、組織の面、自治体との関係の問題などなどを通じて、それからいま警察庁が千葉県出身の若い方に協力を呼びかけているけれども、そんな恐ろしい空港警備隊に、私は千葉に帰って暮らすよりも、のんびり現地でやった方がいいと言ってなかなか千葉県出身の若い隊員が集まらないということも聞いているのですが、このままでいくと早くて十月、大体来年の三月か四月ごろまでかかるのではないか、こう言われているのですが、仮にそのように常備隊が集まらないという段階では、口すべったように、一万五千名をずっと常備隊をつくるまで置くのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/60
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061・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 千五百名の空港警備隊はなるべく早く体制が整うように努力中でございますけれども、御指摘のようにすぐにはなかなか体制は整いませんので、それまでは情勢との兼ね合いを十分に判断いたしまして、必要な応援体制を含めて最小限度の責任を持てる警備の体制をつくりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/61
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062・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 その際に、おととい運輸大臣が反対同盟の委員長に会っても、なかなか農民が納得しない、こう言っておるのですが、そういう農民の反発などの関係についてはおたくさんたちはどういう分析をしているのですか。過激派、過激派と言って過激派に一点集中させて世論を誘導しようとしていますがね、その世論の誘導だけではどうにもならない問題が発生する可能性があるのですよ。そういうものについて警備上どういう分析をしてますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/62
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063・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 警察は、起きてまいります情勢に対して、あるいは現在生じております事態に対して対応する組織であって、そういうものが基本的な警察の出動のあり方でございます。したがいまして、警察が体制を整えなければならないような情勢があります場合には、やはり最小限度責任の持てる体制はとらざるを得ないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/63
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064・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 そうすると、いま、千五百名の常設警備隊ができるまでは流動的であるけれども、いまは一万四千ですか、一万四千の警官隊をそのまま置く場合もあるだろうし、情勢によっては一万になる場合もあるだろうし、五千になる場合もあるだろう、そういう現に動員される警官隊をてこにして警備をやっていくと、そういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/64
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065・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 応援しております警察部隊というものも、それぞれ府県において重要な治安の任務に任じておるわけでございます。そういう中から、非常に貴重な警察官を応援という形で千葉県に集中しておりますのは、それだけ千葉県の空港周辺の事態が重要な状態であるということでございますけれども、したがいまして、空港周辺の状態が少しでもこれが事態が変わって改善されますならば、なるべくそれぞれの府県の本来の任務に戻したいというのが私どもの考えでございまして、一万三千の部隊をいつまでもこのままとどめておくというふうなことは考えておりません。情勢に応じた必要最小限度の責任を持てる体制のみ維持したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/65
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066・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 最後に、運輸大臣、いま警備側の説明を聞くと、しょせんは、当面は一万三千とか一万五千とかという機動隊を使って突破できるとしても、長い目で見れば結局は地元の皆さん、農民の皆さん、地域の皆さん、あるいは空港関係者の皆さん、われわれ運輸委員も含めて、そういう方々全体の理解と協力がなければ、開港はしても、開港後の安全と警備という問題については保障がないんじゃありませんか。どんなに提案者がりっぱな提案をしたって、結局はずっと長い目で見るとそこに落ちついてしまう。そうしますと、やっぱり私は、これは四党提案だから四党に云々ということでなくて、根本的な政策の責任は政府にあると、こう思うんですよ。政府としてどういう考えであるか、ひとつ大臣の見解を聞かせてもらいたい、こう思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/66
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067・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 保障はないという目黒さんの表現でございますが、見方によってはそういうことも言えるかと思いますが、私は、いずれにしてもいまお話しのような幾多の困難は、これはよく私も認識しておるつもりでありますが、そういう困難を克服して、よき日本、よき成田周辺であらしめたいと、切に念願するものであります。そういう観点から、私は、現状は現状といたしまして、あらゆる努力をいたしまして、いまも申し上げましたようなよき事態を招来するように、政府はあらゆる努力をしなければならぬ。そういう意味において、いまお話しのように、もとより政府に責任がございます。この責任を全うすべく一生懸命にやらなければならぬと思いますし、同時に、私は日本国民全体の良識を信頼したいんです。いまのような議論ばっかりで、いつになってもどうにもならぬということのみを考えておったんじゃ、わが国の将来は大変なことになると私は思います。そういう意味で、いろいろお話もいただきましたが、私どもが一生懸命に責任を感じ、いろいろまあ皆さんに御厄介になりますが、第一に、政府がそういう責任を感じて今日以後に対処していかなければならない。この立法が、これからどうなりますか、これはこれといたしまして、あらゆる事態のもとにおいて一生懸命に精進していかなければならぬと、強くそれを感ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/67
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068・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 持ち時間が過ぎておりますが、お許し願って、いままで提案者にずっと聞いてきたんですが、運輸大臣なり警察庁の方は、法案ができるまではと言って、いろいろ答弁されました。もう時間の問題で、いまから採決に入るという話でありますが、私は、まだ成立しませんが、運輸大臣に、あるいは警察庁、本来なら長官が来ていれば一番いいんですけれども、警察の側にひとつお願いなり見解を聞きたいんですが、きのうからずうっと議論されておるように、私たちはこの法案が前例となって、いま申し上げた公害の問題であるとか、あるいは住民運動、あるいはきのう申し上げた労働運動、そういうものにずうっと拡大されていく、前例となって、突破口となって、そういうことを非常に心配し、危惧するものであります。同時にまた、いま団結小屋の話がありましたけれども、その団結小屋など、そして、「おそれ」ということを含めて、やはり一般の民間の方々、アパートの一室、そういうところまで、いろんなまあ寺田先生が具体例を連合審査で言われましたけれども、そういうふうに拡大されていくということを非常に危惧するものであります。したがって、きのうの答弁では、今日の段階では、この法律に定めた空港とそれから三キロ以内、こういう法定された地域だという話もありました。したがって、今後のこの法律の運用、特に政令の制定などについては十分に私は今後とも、この憲法論議もまだ不十分でありますから法務委員会の議論、あるいは運輸委員会の議論、あるいは労働問題でもありますから社会労働委員会の議論、そういう議論に十分に耳を傾けて、われわれが危惧するようなことのないように、やっぱり最後の認定者である運輸大臣並びに運輸省に十分な人権を尊重する私は措置をお願いしたいし、同時に、これに協力関係で最もいろんな資料を提供する警察側については、やはり本法案の緊急性ということは一面あるとしても、いままで議論された問題点について十分配慮した私は法運用をしてもらいたい。少なくとも新たな問題を起こす際には、運輸、法務、社労、地方行政と、このぐらいの意見を十分聞いた上で判断をするというぐらいの慎重さがあってほしいということを、私は、いま採決しようとする法案でありますから、法案が成立しますと直ちに手が届く運輸大臣並びに非常に関係の深い警察庁側にひとつ私の質問に対する見解を聞いて、私の質問を終わりたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/68
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069・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 目黒さんは、いままさに採決をしようとする瞬間、という表現をなさいました。その意味においては一つの歴史的瞬間であるような気も私はいたします。お話の中にも、その種の意味も含めてお話があったんでございます。この立法は、私はよくよく異例のことであると考えております。したがって、——まあ厳密に言えばまだできていないのでございますからでございますが、そういうことばっかり言っておりますと目黒さんのいまの御質問に、ないし御意思の御表明にお答えするゆえんにならないから、そういう表現を御了承いただきたいのでありますが、よくよく異例であろうと思います。こういう異例のことが幾つもあってはならぬと私は思います。そこで、目黒さん御指摘のように、いろいろ拡張解釈をされたり、こういうことが後幾つか続いていくというようなことではならぬとおっしゃる点は、目黒さんに劣らず私も強く念願するところでございます。したがって、人権尊重等についてはお話のようにわれわれは強く厳しく考えていかなければならないと、ぜひそうあらねばならぬと、こういうように考えます。いやしくも乱用等があってはならぬと思います。私はそういうことを重々心得て、いま、これからのことは目黒さんのお言葉をおかりすれば、間もなくこれに対して当委員会としての決をつけられるかのように伺ったのであります。いずれにいたしましても目黒さんを初め皆さんがきょうはいろいろお話をなさいました。よく伺っております。私は私なりに責任の重大なるを感じて、今後皆さんからもまあまあと言っていただけるようにするように、誠心誠意努力をさしていただきたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/69
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070・近藤恭二
○説明員(近藤恭二君) 運輸省に協力してまいりますに当たって、十分に配慮いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/70
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071・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/71
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072・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/72
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073・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案に対し反対する立場で討論をいたします。
討論に入る前に、本法案は憲法との関連及び運用の問題について、時間的制約から十分に疑問が解明されないままに今時点を迎えておりまして、はなはだ不十分であります。したがって、われわれ社会党は現地調査、参考人の喚問、特に憲法学者との議論あるいは十分な連合審査などが相当に必要であると考えますから、そういう意味ではまだまだ継続審議をすべきだ、そういう考えを基本的に持っております。したがって、そういう点から言いますと、ここで審議を打ち切り採決ということについては反対でありますけれども、諸般の情勢からこれに臨みたいと思っておりますが、こういうやり方については前例にすることなく、大事な問題は十分な議論をして、たとえ議員立法であろうとも十分な時間を要したいということをまず冒頭に申し上げておきたいと存じます。
それから、時間の関係で前段を抜きにして、反対の第一の理由は、本法案が財産権、住居の不可侵権、黙否権などの基本的な権利を保障した憲法に違反する疑いがあるという点をまず反対の第一の点として挙げておきたいと存じます。
第二の理由は、本法案が政治的乱用の危険性のきわめて高い点であります。特に、きょう行われた第二条の第二項の「行うおそれがある」あるいは暴力主義の要件の縛り、これについてはほとんど十分でないままに、このままでいくならば空港の建設に反対する意思を持つ主婦、農民、市民あるいは労働者は、将来暴力主義的破壊活動を万一行うかもしれないという予断のもとに、いろんな制約を受ける可能性が十分ありますので、基本的人権を尊重する立場からもこういう危険性を含む法案には賛成するわけにはまいりません。
反対の第三の理由は、「規制区域」の問題であります。本法案の「規制区域」は単に空港周辺にとどまらず、政令の運用によっては東北から関西まで広範囲にわたる区域の設定が可能であります。また、同時に質疑を通じて明らかになったことは、暫定燃料輸送の国鉄施設までも空港の機能保全の名目で対象にされ、国鉄の労使関係までに不当介入させる危険性を持っていることでありまして、断じて容認するわけにはまいりません。さらに、工事着手の目途もない第二期工事を含めてみたり、あるいは団結小屋から逆算をして合理性を持たない外側三千メートルを設定したその不十分さにわれわれとしては同意できないわけであります。
反対する第四の理由は、運輸大臣に権限集中の問題であります。もう私から申し上げるまでもなく、この法案についてはすべての面で運輸大臣あるいは運輸大臣の命ずる職員がその執行の任に当たります。土地収用法、公共用地の取得に関する特別措置法における収用委員会、あるいは破防法における法安審査委員会のような第三者機関を排除し、運輸大臣に全能の権限を集中していることはどうしてもわれわれとしては危険性を感ぜざるを得ません。私権の制限を通じ、究極的に集会、結社、表現の自由を制限する重要なものであり、工作物に対する使用制限など行政機関にゆだねる問題であり、憲法に違反する疑いがあります。また、政権担当者に認定権を与えることは、行政の中立性を失い、固有の政治観に基づいて独善的な認定が行われる危険性をはらんでいることを指摘しながら、これもこの法案に賛成できません。
反対する最後の第五の理由は、地元農民、住民の政府に対する不信感の増大であります。新空港は第二期工事、パイプライン工事についても今日工事の目標が立たないままいま開港しようとしております。この問題が解決しなければ、開港してもこの空港はいわゆる欠陥空港のそしりを免れません。今後のパイプラインあるいはその他の問題についても住民との話し合いが必要でありますが、現在話し合いの機運が高まっておる今日の情勢の中で本法案を成立させることは、地元農民、住民に政府の力の対決、こういう問題を与え、不信感を増大させ、今後の話し合いの解決の道を絶望に追い込む可能性を持っております。先ほど指摘したとおり、このままでは開港されたとしても、開港後の安全と警備に重大な支障があるということを断ぜざるを得ません。
時間がありませんからこれ以上申しませんが、こういう問題点を指摘すると、どうしてもこの法案についてはわれわれとしては賛成できない、撤回を要求して討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/73
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074・内藤功
○内藤功君 私は日本共産党を代表して、本法案に反対の討論を行うものであります。
私は、今回の新立法のきっかけとなった管制塔襲撃事件に対する政府、警察当局の対処、この問題についての深刻な反省の上に責任を明らかにして、現行法を十分に活用して、暴力行為に対する徹底的な対処をすることが現在最も必要であり、前提だと思うのであります。本法案のごときはその必要性が認められませんし、また法案の内容には幾多の重大な疑念があります。
第一の理由は、現行法による取り締まり捜査においてすべての手を尽さず、手抜かりがきわめて多いということであります。昨日私は当委員会の質疑において、三月二十六日の管制塔襲撃事件に関連して、当日の警察当局の警備について六点にわたる疑問点を指摘しました。第一に、通報に接し直ちに出動しなかった理由。第二に、第九ゲートの要衝を容易に突破せしめた理由。三番目に、第八の二ゲート侵入を許した理由。四番目に、マンホールの検索をしなかった理由。五番目に、管制塔正面玄関を警官があけろとたたき、暴力集団がそれに追随して侵入するのを許したというこの大きな疑念についてどうなのか。六点目に、管制塔に入った警官隊が一たん最上階まで上りながら戻っていった奇怪な行動について。これらの六点についての弁解を聞きましたが、これらを聞いてもかえって疑問が深まるばかりで、当日の警備のずさんさをはっきりさせたのであります。もし部隊の指揮官のミスが一つだけではなくてこれだけ重なれば、それは単なるミスとはとうてい考えられないのであります。
わが党は、現行法による可能なあらゆる合法的措置をもって暴力集団の徹底した規制をとらず、特定建築物を対象とした非常時立法の必要だけを強調する態度は断じて認められないのあります。
第二の理由は、この法律を審議するに当たって、運輸省、警察当局を初め政府側が審議に必要だとして要求した資料を提出していないという問題であります。団結小屋の詳細についての資料は今日まで提出されておりません。これでは法案を十分に審議することを初めから保障しないということにつながり、法案提案者並びに政府の態度ははなはだ無責任と言わなければなりません。これに加うるに、ただ十二日までに成立させる、どこで決まったか知りませんが、そのことを至上命令として、全体の質疑時間はきわめて少なく、このような重大な法案を明らかにするには審議を尽くしたと言えないことは、はなはだ遺憾であります。
第三の理由は、この法案が治安立法、非常時立法的色彩を持っているという点であります。
昨日、私の質疑に対し、「暴力主義的破壊活動者」の概念、「おそれ」の概念がきわめてあいまいであり、拡大解釈によって一般国民が被害をこうむるおそれのあることも明らかになったのであります。たとえば「規制区域」内にある建物が「暴力主義的破壊活動」なるもののために使われ、あるいはその「おそれ」があるときは、運輸大臣の権限で弁明の機会を与えることなく、司法的抑制もなしに撤去できるなど、その最たるものであり、手続においても著しく適正を欠くものであります。
私どもは以上三点の理由により本法案に反対するものであります。
最後にわが党は、過激派暴力集団の盲動と破壊活動に対しては、かかる新立法によるのではなく、政府が根本的にその甘やかし、泳がせ、利用してきた政策をきっぱりとやめて、その根絶のために規制並びに適正なる取り締まりを行うことをあわせて要求し、私の反対討論を終わるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/74
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075・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/75
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076・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/76
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077・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/77
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078・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108413830X01119780512/78
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