1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月十日(木曜日)
午前十時二分開議
出席委員
委員長 有馬 元治君
理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君
理事 今井 勇君 理事 丹羽 雄哉君
理事 池端 清一君 理事 村山 富市君
理事 平石磨作太郎君 理事 塩田 晋君
伊吹 文明君 稲村 利幸君
小沢 辰男君 古賀 誠君
斉藤滋与史君 自見庄三郎君
谷垣 禎一君 友納 武人君
中野 四郎君 長野 祐也君
西山敬次郎君 野呂 昭彦君
浜田卓二郎君 藤本 孝雄君
箕輪 登君 渡辺 秀央君
網岡 雄君 河野 正君
多賀谷眞稔君 竹村 泰子君
永井 孝信君 森井 忠良君
大橋 敏雄君 沼川 洋一君
橋本 文彦君 森本 晃司君
塚田 延充君 浦井 洋君
小沢 和秋君 菅 直人君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 渡部 恒三君
出席政府委員
内閣法制局第四
部長 工藤 敦夫君
厚生政務次官 湯川 宏君
厚生大臣官房長 幸田 正孝君
厚生省公衆衛生
局長 大池 眞澄君
厚生省公衆衛生
局老人保健部長 水田 努君
厚生省医務局長 吉崎 正義君
厚生省保険局長 吉村 仁君
社会保険庁医療
保険部長 坂本 龍彦君
委員外の出席者
文部省大学局医
学教育課長 佐藤 國雄君
社会労働委員会
調査室長 石黒 善一君
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委員の異動
五月十日
辞任 補欠選任
藤本 孝雄君 熊川 次男君
田中美智子君 小沢 和秋君
同日
辞任 補欠選任
熊川 次男君 藤本 孝雄君
小沢 和秋君 田中美智子君
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五月十日
医療・年金の改悪反対、充実改善に関する請願
(高沢寅男君紹介)(第四三三〇号)
同(田中美智子君紹介)(第四四三五号)
国民に対する医療改善に関する請願(坂口力君
紹介)(第四三三一号)
国立病院・療養所の統合等反対、医療従事職員
の増員に関する請願(上原康助君紹介)(第四
三三二号)
同(柴田弘君紹介)(第四三三三号)
同(森井忠良君紹介)(第四三三四号)
同(上坂昇君紹介)(第四四三六号)
同(瀬崎博義君紹介)(第四四三七号)
同(瀬長亀次郎君紹介)(第四四三八号)
同(竹村泰子君紹介)(第四四三九号)
同(辻第一君紹介)(第四四四〇号)
医療保険の改悪反対等に関する請願外一件(天
野等君紹介)(第四三三五号)
同(小沢貞孝君紹介)(第四三三六号)
同(小渕正義君紹介)(第四三三七号)
同(柴田弘君紹介)(第四三三八号)
同(高沢寅男君紹介)(第四三三九号)
同(永江一仁君紹介)(第四三四〇号)
同(安田修三君紹介)(第四三四一号)
同(山中末治君紹介)(第四三四二号)
同(岡本富夫君紹介)(第四四四二号)
同(上坂昇君紹介)(第四四四三号)
同(左近正男君紹介)(第四四四四号)
同(佐々木良作君紹介)(第四四四五号)
同(東中光雄君紹介)(第四四四六号)
同(山下八洲夫君紹介)(第四四四七号)
同(山本政弘君紹介)(第四四四八号)
医療保険制度の改悪反対等に関する請願(森井
忠良君紹介)(第四三四三号)
同外一件(多賀谷眞稔君紹介)(第四四四九号
)
医療保険の抜本改悪反対に関する請願(村山富
市君紹介)(第四三四四号)
同(森井忠良君紹介)(第四三四五号)
同(森中守義君紹介)(第四三四六号)
同(河野正君紹介)(第四四五四号)
同(多賀谷眞稔君紹介)(第四四五五号)
医療保険制度の改善に関する請願(天野等君紹
介)(第四三四七号)
同外四件(稲葉誠一君紹介)(第四三四八号)
同(岩垂寿喜男君紹介)(第四三四九号)
同(岡田春夫君紹介)(第四三五〇号)
同(河野正君紹介)(第四三五一号)
同外二件(左近正男君紹介)(第四三五二号)
同(沢田広君紹介)(第四三五三号)
同(柴田弘君紹介)(第四三五四号)
同(新村勝雄君紹介)(第四三五五号)
同(高沢寅男君紹介)(第四三五六号)
同外二件(沼川洋一君紹介)(第四三五七号)
同(村山富市君紹介)(第四三五八号)
同(森井忠良君紹介)(第四三五九号)
同(森中守義君紹介)(第四三六〇号)
同(安田修三君紹介)(第四三六一号)
同(山口鶴男君紹介)(第四三六二号)
同(山中末治君紹介)(第四三六三号)
同(上野建一君紹介)(第四四五八号)
同(浦井洋君紹介)(第四四五九号)
同(小川省吾君紹介)(第四四六〇号)
同(岡崎万寿秀君紹介)(第四四六一号)
同(経塚幸夫君紹介)(第四四六二号)
同(工藤晃君紹介)(第四四六三号)
同外二件(左近正男君紹介)(第四四六四号)
同外一件(柴田睦夫君紹介)(第四四六五号)
同(多賀谷眞稔君紹介)(第四四六六号)
同(林百郎君紹介)(第四四六七号)
同(東中光雄君紹介)(第四四六八号)
同(不破哲三君紹介)(第四四六九号)
同外一件(藤木洋子君紹介)(第四四七〇号)
同(正森成二君紹介)(第四四七一号)
同(武藤山治君紹介)(第四四七二号)
同(山口鶴男君紹介)(第四四七三号)
同(山下八洲夫君紹介)(第四四七四号)
同(山本政弘君紹介)(第四四七五号)
年金・医療・雇用保険の改悪反対、充実改善に
関する請願(高沢寅男君紹介)(第四三六四号
)
同(沼川洋一君紹介)(第四三六五号)
同(吉原米治君紹介)(第四三六六号)
同(上坂昇君紹介)(第四四七六号)
同(田中美智子君紹介)(第四四七七号)
同(山下八洲夫君紹介)(第四四七八号)
同(山本政弘君紹介)(第四四七九号)
健康保険・年金制度改悪反対に関する請願(坂
口力君紹介)(第四三六七号)
同(橋本文彦君紹介)(第四四八二号)
療術の制度化促進に関する請願(池田行彦君紹
介)(第四三六八号)
同(古賀誠君紹介)(第四三六九号)
男女雇用平等法・パート労働法の制定に関する
請願(坂口力君紹介)(第四三七〇号)
重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(池田行
彦君紹介)(第四三七一号)
同(稲村利幸君紹介)(第四三七二号)
同(梶山静六君紹介)(第四三七三号)
同(浜野剛君紹介)(第四三七四号)
同(足立篤郎君紹介)(第四四八六号)
同(海部俊樹君紹介)(第四四八七号)
身体障害の範囲拡大等に関する請願(唐沢俊二
郎君紹介)(第四四二九号)
二分脊椎症児者医療の充実改善等に関する請願
(唐沢俊二郎君紹介)(第四四三〇号)
食品の安全対策に関する請願(橋本龍太郎君紹
介)(第四四三一号)
医療・年金・雇用保険の抜本改悪反対等に関す
る請願(林百郎君紹介)(第四四三二号)
社会福祉の充実等に関する請願(不破哲三君紹
介)(第四四三三号)
医療保険の改悪反対に関する請願(元信堯君紹
介)(第四四三四号)
国民医療改善に関する請願外二件(柴田睦夫君
紹介)(第四四四一号)
医療保険制度の改悪反対、充実改善に関する請
願(河野正君紹介)(第四四五〇号)
同(多賀谷眞稔君紹介)(第四四五一号)
児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(上田
卓三君紹介)(第四四五二号)
同(梅田勝君紹介)(第四四五三号)
国民年金法改正促進に関する請願(橋本龍太郎
君紹介)(第四四五六号)
同(林義郎君紹介)(第四四五七号)
健康保険の本人給付引き下げ反対等に関する請
願(竹村泰子君紹介)(第四四八〇号)
仲裁裁定完全実施に関する請願(森中守義君紹
介)(第四四八二号)
国立腎センター設立に関する請願(柴田睦夫君
紹介)(第四四八三号)
医療保険の抜本改悪反対、その充実改善に関す
る請願(佐藤祐弘君紹介)(第四四八四号)
児童扶養手当法の一部を改正する法律案の撤回
に関する請願(東中光雄君紹介)(第四四八五
号)
健康保険本人の十割給付堅持、予防等給付の改
善に関する請願(柴田睦夫君紹介)(第四四八
八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第二二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/0
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001・有馬元治
○有馬委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚田延充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/1
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002・塚田延充
○塚田委員 今回の健康保険法の改正につきましては、今までの審議の過程では、特に被用者保険本人の一部負担の導入につきまして種々の議論が交わされてきたわけでございます。この改定の目的は医療費の適正化のためと言われているわけですが、この制度は、診療側から見ますと、診療内容の手の内を明かす仕組みになってしまう。また患者側から見た場合には、診療費の一部を支払うということで、医者にかかる機会を少なくせざるを得ないことであるわけでございます。したがって、それが診療の抑制になり、国民の健康を無視したものと言われているわけですけれども、提案者であります厚生省によりますと、医療費の節減にもなって、現在及び今後の厳しい財政事情を考えるとそうせざるを得ないし、またそれが国家としての利益にもなるんだ、仕方がない、このような説明をしているわけでございます。
しかし、私は、国民の健康に関する重大な問題を財政の面からのみとらえて安易に改革してよいかどうか、大きな疑問を持っておりまして、ずばり私はこの改革案に反対でございまして、政府は、関係者の英知を集めた協議を再度し直して、さらに世論の動向を踏まえて、国民にもう一度練り直した形で再提案すべきじゃなかろうか、このように考えております。
その世論の動向と申せば、さきの総選挙におきましても、この健保法いわゆる改悪という動きが世論の反発を受けまして、それゆえに形勢が不利と見た中曽根総理は、慎重に再検討するとまで言明せざるを得なくなったわけでございまして、それでも結局のところ与党は過半数を割ってしまった、これは御存じのとおりでございます。そのいわば総理の公約、慎重再検討がほとんどされないで、最初から削り代と思われるようないわゆる二割のやつを一割にする、この一部負担ですね、このような削り代を譲るのみの譲歩で済ませているということは、一般の国民を初め関係者をだまし討ちにした、このようなものじゃないかと私は考えるわけでございます。
ここで、現在の世論の状況を考えてみますと、まず改正反対の請願が既に千百七十六件、これはきのう現在でございますけれども国会に提出されておりまして、これは通常の法案の例においては異例と言われるくらい数の多い請願数になっているわけでございます。また、地方議会におきましても慎重審議を要請する、これはずばり改悪反対という意味だと思うのですけれども、四十七都道府県のうち三十六都道府県から、決議案が政府に出されておるはずでございます。そして全国の市町村から、四月二十四日現在では千四十六件もの同様の反対決議がなされているわけでございます。さらに、この健保法改正をめぐる論議としては、医療の供給側、それから医療を受ける側、両方とも反対の声が強い。さらに、国会の論議といいましょうか政治勢力の中においても、私ども野党も、これは待つべきじゃないかということで反対しておる。ところが与党の自民党の中でさえも、伝えられるところによりますと、二十一世紀の国民医療を考える会というようなもので、これは今後ふえるのか減るのか知りませんけれども、自民党議員のうちの四割に達する方々が批判的な態度をとりつつある。このように、関係者こぞって反対しておるわけでございます。ということは、世論の動向は厚生省にとりまして四面楚歌といってもいいんじゃないかと思いますが、そんな中でこのような不備なままの改正案を通すということは、去る四月十九日にこの委員会で塩田委員が指摘しましたとおり、中曽根内閣の命取りになる危険性も持っておる可能性もある。
こういうわけですので、渡部大臣にお尋ねしますけれども、このように国民のためを考え、また政局の安定といいましょうか、私は中曽根さんを応援するわけじゃないけれども、中曽根内閣のためにも、すなわち両方のためにも勇気を持って、この改革案については一たん引っ込めて見直した方がいいんじゃないかというふうに直言すべきだと私は考えておりますが、大臣、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/2
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003・渡部恒三
○渡部国務大臣 先生からいろいろ御心配をちょうだいいたしておりますが、私どもは、考えに考え抜いたあげく、長期にわたって国民の健康を守るための医療保険制度を揺るぎなきものにするためには、この方法が最善のものであると考え改革案を出しておりますので、今こそ政府は、国民のために勇気を持って、この国会でこの法案を成立させていただくようにお願いを申し上げなければならない、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/3
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004・塚田延充
○塚田委員 医療保険制度はどうあるべきか、これは古くから、理論的にも実際的にも議論が交わされてきたわけでございます。本質的には、いつでも、どこでも、だれでも適切な医療を受けられることが医療制度の目的であり、現行の保険制度は、それを経済的側面から相当程度まで支える形になっていることは事実でございます。ところが医療行政の面から見ますと、経済上のシステムであるこの保険制度が、逆に医療のあり方そのものを規制し縛りつける、そんな形になってしまっているんじゃないか、このように判断するわけでございます。
保険の診療費の出来高払い制度において、技術と物の関係、すなわち正当な技術料が低く抑えられている嫌いがありますので、それを薬価差による利益に頼らざるを得ない、このようなゆがみが強く出つつあるということが指摘されているわけでございます。このゆがみが、一般国民の目から見ますと、医療機関は不当にもうけ過ぎているんじゃないかと映る原因の一つとなっておりますし、一方、実際には、医療機関の経営の実態は薬価基準のある程度の引き下げなども行われたために悪化している、これにつながっていると思います。
今回の健康保険法改定の目的の一つに医療費の適正化ということが強く打ち出されているのですけれども、お尋ねしますが、適正化と抑制とはどう違うのでしょうか。また、正当に国民の生命や健康を守る医療費自体がふえていくこと、これは悪いことなのでしょうか。この辺見解をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/4
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005・渡部恒三
○渡部国務大臣 私は、医療費の適正化というものは、必要な受診は妨げない、しかしむだな医療費は節減していただく、こういうことだというふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/5
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006・塚田延充
○塚田委員 最近医療機関の経営が悪化していると伝えられておりますが、最近三カ年ぐらいで結構ですが、医療機関の倒産件数と、公的病院で結構ですけれども、黒字、赤字がどのように推移しているのか、その状況をお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/6
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007・吉崎正義
○吉崎政府委員 医療機関の倒産の状況でございますけれども、これは民間の調査機関による数字でございますが、負債額一千万以上のものにつきまして、昭和五十五年に三十九件、五十六年三十五件、五十七年四十三件、五十八年四十七件となっております。
なお、一般的な経営状況についてもお話しがございましたが、最近は、黒字を計上しておりますのが、これは公的病院についてでございますけれども、五十五年度四五%、五十六年度三三%、五十七年度三七%となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/7
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008・塚田延充
○塚田委員 そのように経営もかなり悪化する傾向があるというわけでございますが、これは要するに、医療保険の診療報酬の支払い体系におきまして、技術料を正しく評価することに欠けていることから生ずるこの医療制度のいわばゆがみが、このような悪化をもたらしているものと言えるのじゃないでしょうか。四月二十七日に厚生省が発表いたしました「今後の医療政策の基本的方向」の中でも、技術料重視ということはうたっているわけですけれども、幾ら私が読んでみてもこれはお題目だけなんです。
それではお伺いしますが、現行制度ではこの技術料がどのように正当に評価されていないと考えているのか、また、将来のビジョンとしては報酬体系の中でどういう比重で位置づけられるべきであると具体的に考えておられるのか、この辺御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/8
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009・吉村仁
○吉村政府委員 現在の診療報酬が技術料を軽視しておる、私どもはそうは考えておりません。重視の仕方が十分であるかどうかという点においては、やはりそれは議論のあるところであろうと思います。したがって、現在の診療報酬の支払い体系におきまして、技術の点数とそれから物に対する評価と二つあるわけでありますが、今後、物の対価というようなものよりも技術料に対する対価というようなものに重点を置いて診療報酬の合理化を図っていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/9
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010・塚田延充
○塚田委員 被用者本人の医療費が、受診が家族と同じ程度でありながら高くなっている、このようなことを厚生省は指摘し、それゆえに今度の改定案において、その合理化の一環として本人の自己負担を求めるんだという説明をしておりますが、このように二割なり何なり高くなっているという原因は何でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/10
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011・吉村仁
○吉村政府委員 原因といたしましてはいろいろなことが考えられると思いますが、私どもはやはり、医療費についての負担がないということが、診療の内容を若干過剰にさせたり、むだな診療というようなものを誘発する一つの原因になっておる、こういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/11
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012・塚田延充
○塚田委員 この高くなっている原因の中に、薬代であるとか検査料が必要以上に多く出てきて、これが二、三割高くなるという分析が一部でされているようですが、それは事実でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/12
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013・吉村仁
○吉村政府委員 事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/13
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014・塚田延充
○塚田委員 それが事実ならば、その薬代である。とか検査料が割高といいましょうか過剰になる、この面のみを改善する、これが先決だと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/14
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015・吉村仁
○吉村政府委員 医療のゆがみを正す方法としてはいろいろあると思います。現在の薬づけ医療、検査づけ医療、そういうことが指摘されておりますので、例えば薬だけに一部負担をかけるあるいは検査だけに一部負担をかける、こういうようなやり方ももちろんあると思うのでありますが、私どもは、薬をたくさん使えば使うほど収入が上がる、検査をすればするほど収入が上がる、こういう診療報酬の仕組みそのものを改正することが必要であろう。一部負担の問題といたしましては、家族あるいは国保等において定率の一部負担をやっておるわけでありますから、やはり定率の一部負担の方が全体としての医療費の額というようなものもわかりやすい、そういうことから医療費そのものがある程度透明度を増していく、こういうようなことから、全体に対して一割の定率負担を課する方が一部負担の方法としては適当なのではないか、こういうように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/15
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016・塚田延充
○塚田委員 今の局長の御答弁によると、本来そのものずばりの対処的な方法はあるにはあるのだけれども、全体的な別な方法を講じた、それが自己負担の導入であるというわけですが、言葉をかえれば角を矯めることによって牛を殺すといいましょうか、本体そのものを困らせるというのが今度の改定案じゃないか。言うならば筋違いのことをやっているんじゃないか。やはり本丸なら本丸を攻めればいいのであって、別なところへのしわ寄せによってそれを実現しようというのはお門違いと考えるのですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/16
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017・吉村仁
○吉村政府委員 一部負担についてはいろいろな考え方があることは事実でありますが、私ども、一つの試算といたしまして、都道府県別に本人と家族の一件当たりの診療費を比較した資料を持っております。例えば大阪というようなものをとってみますと、家族の診療費の一・八倍ぐらいが本人の一件当たりの診療費であります。なぜ家族と本人の場合に一・八倍の差が出てくるのかということにつきましては、いかに考えましても合理的な説明がつかないわけでありまして、やはりただということがそういうことを招いておるのではないか、こういうように考えざるを得ない。したがって、医療費の一部負担として考えますならば、やはり全体の医療費に対して定率の一部負担がかかる方が、医療費についての透明度を増し適正化をするためにいい方法ではないか、こういうように考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/17
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018・塚田延充
○塚田委員 被用者本人の場合、特に工場労働者の場合を考えてみますと、受診の機会が勤労時間の拘束時間の関係上今でも自由には行けない、上可の許可を得てからでなければ行けないというように、実質的には制限されるような状態にあることが実情だと思うのです。そこに自己負担がさらに導入されますと、心理的にも受診の機会が抑制されることになることはまず間違いなかろうという気がいたすわけでございます。これが、比較的自由に診療を受ける機会を持つことができる国民健康保険の被保険者とか、または家族の方々との大きな違いじゃないかと思うのです。この辺の事情を無視といいましょうか軽視するということは、勤労者の健康管理にマイナスとして作用して、健康の維持増進を行政目的としております厚生省の本来的な福祉政策と違ってくる面が出てくると思うのですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/18
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019・吉村仁
○吉村政府委員 工場労働者だけの受診率を取り出したものは私ども持ち合わせておりませんが、一部負担があるかないかによって工場労働者が職場を休んで医療機関に行くことが困難になる、こういうようには私どもは考えておりません。それは恐らく、受診をするかしないかというのは患者の心理もございますが、やはり医療機関への利便度みたいなものに左右されるのではないか、こういうように私どもは考えておるわけでありまして、一部負担ができたから今までより工場労働者が医療機関へ行くことが困難になる、こういうようには考えておりません。必要な受診は現在でも妨げられておるとは思いませんし、今後も、工場労働者に限って必要な受診が抑制されるというように考える根拠は私どもは持ち合わせていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/19
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020・塚田延充
○塚田委員 保険制度は一種の経済的な契約だと思います。この契約の当事者の片方が、もう片っ方の契約者の意思を無視して、その不利益になるように一方的に契約内容を変更するということは、常識的に言えば商道徳と申しましょうか、経済ルールから言えばルール違反だ、このような側面も持っていると思うのですが、このルール違反的な面を厚生大臣、いかがお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/20
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021・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは、国民を代表する国会で御審議をちょうだいして、法改正によって行われなければならないということが、今の先生の御指摘のような問題をすべて解決しておることだと思います。 一方的に政令でこれを政府がやるとか、そういうことであれば先生の御指摘の点も理由があると思いますけれども、この法改正は、御承知のように今先生がお話しになりましたいわゆる被用者保険加入者のそういう代表者、あるいは使用側のそういう人が代表している社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会、そういう審議会の答申を経て我々が国会に法案を提出し、なおかつ、また国民を代表する先生方に御審議をちょうだいして成立するものでありますから、その時点でそのような問題はすべて解決する、過去にもそういう例がしばしば行われてきたということで御了承賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/21
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022・塚田延充
○塚田委員 ただいまの大臣の答弁によりますと、一方的にならないようにするには、国会の審議で正当に契約内容が変更されるならばこれはルール違反にならないであろうという御説明ですが、となりますと、国会審議、すなわち委員会の審議であれ本会議の審議であれ、いわゆる単独採決とか強行採決をするということはルール違反と申しましょうか、正当な審議を経ないということになるので、それはやらないことを意味する、このように解釈してよろしいでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/22
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023・渡部恒三
○渡部国務大臣 大臣が答弁する範囲を超えておる問題だと思いますが、私も一人の政治家として、これは議会民主政治の一人の政治家として、やはり憲法によって多数決の原理というものが議会政治の中で最終的の決定要件でございますから、審議を尽くした後多数決で決定されるのは当然であろうと思いますが、これは私、厚生大臣としての答弁ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/23
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024・塚田延充
○塚田委員 厚生省にお尋ねしますが、給付率を引き上げた例は過去に何度かありますので、その際の医療費の増加など財政に及ぼす影響に関する予想、これをつくる手法は厚生省でもかなり確立され、整っているのではないかと思います。ですけれども、過去の例において事前に立てたその予想と実績の差異が大きく食い違ったことがあるのかどうか、その辺の実情、そして今回は今まで例のなかった引き下げになるわけでございますから、その影響の度合いをそれなりに計算しているようでございますが、私としてはこの影響度の予測が小さ過ぎるような気がするのです。もし医療費がぐっと削減される、この削減の予想が予想よりも実績が大幅だった場合、組合健保と他の例えば国民健康保険の間で黒字幅がさらに拡大してしまう、財政事情の健全化といいましょうか黒字赤字幅の差が拡大する。そうなりますと、その分将来の統一をやりづらくしてしまう。先ほどの基本的方向によりますと六十年代後半には統一をしたいと言っておるけれども、それを妨げるワンステップになるという逆なことをしてしまう結果になりはしないか心配するのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/24
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025・吉村仁
○吉村政府委員 一部負担の導入による波及効果の問題でございますが、一つは、なかなか的確な計測というものは難しいわけでございます。いずれにいたしましても仮定の計算の域を出ないというのが正直なところであります。つまり、給付率を下げる場合に、俗に言いますと金目で左右されるような診療、ただならふえ、一部負担がかかれば減る、こういうような診療がどの程度あるのかというのは本当に私どももわかりません。正直なところはわかりません。したがって、私どもが今回波及効果をはじくに当たりまして用いましたのは、長瀬係数というものを使って、長瀬係数というのは本来なら給付率が上がるときの係数なんでございますが、下がるときの係数はないということで一応長瀬係数を用いて、かつ、その八割程度に見込んでおります。なぜ八割に見込んだかと申しますのは、老人保健法で一部負担を導入いたしましたが、その際の実績と長瀬係数との比較をしてみたわけでありますが、その実績を使って八割というように算定をしたわけであります。
それから、第二の御指摘の、もしおまえたちの計算が違っておったならば健保組合がますます豊かになり、政府管掌がそれほどでもなくなる、あるいは制度間格差が広がっていって将来の給付率統一のためのマイナスになるのではないかという御指摘がございましたが、私どもは、今回の一部負担の増によりまして保険料率は下がる、そしてその保険料率が下がる部分を退職者医療の方へ持っていこう、こういう政策をとろうとしておるわけでございまして、仮にその余裕度に違いがございましても退職者医療の方に持っていくわけでございますので、全体としては負担の公平というものにつながり、それが将来の給付率の統一につながっていくものだ、その方向に対してマイナスになるというようには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/25
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026・塚田延充
○塚田委員 さて、これまでの委員会の審議において、今回の健康保険法改定の提案が、まず第一には唐突過ぎる、第二には財政つじつま合わせの面からのみ考え出された案、すなわち言うなれば動機が不純である、第三は、したがって医療制度をどう改善し、医療保険制度をどう位置づけ、どういう形にするのか、将来展望とのかかわり合いがはっきりしてない。すなわち言うなれば目的が不明確であるとこの委員会において指摘されてきたわけでございます。これに対して厚生大臣は、中長期ビジョンを作成し提出すると約束をされ、私たち委員も、そのビジョンが国民の合意を得られるような納得のいくものならば、その達成のためのステップとして、今回の健康保険法改定の提案について慎重に審議することもしようじゃないか、このように言ってきたわけでございます。
まず言葉遣いの件ですが、中長期ビジョンという言葉遣い、それがどうして、今度提出されたものはビジョンという名をつけなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/26
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027・渡部恒三
○渡部国務大臣 今回、将来に向かって私どもが考える、国民の健康を守っていくための幅広い見地からの医療問題に対する考え方を提示したのでございますが、サブタイトルに「二十一世紀をめざして」、これが今先生のおっしゃるビジョンと同じような意味であると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/27
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028・塚田延充
○塚田委員 私はそうは受け取れないのですけれども、ビジョンはビジョンとしての言葉の定義がある、このように考えます。ビジョンというのはすなわちあるべき望ましい見取り図といいましょうか姿を描くものですけれども、方向という言葉は単にこういうことを考えていますよということを示すだけなわけです。したがって、このたび厚生省が示された「今後の医療政策の基本的方向」というのは、私たち委員が要求して、大臣がそうしましょうと言ったビジョンではないのじゃないか、このように考えます。しかも、私たちが求めたビジョンというのは学者が描くような理想状態ではなくて、今回の健保法改定の提案が、そのビジョン、すなわち将来のあるべき姿の中でどういう途中位置になっているのかを知ることによって、この健保法改定の是非を判断しよう、そのための資料として求めたわけです。ですから、私たちが求めたビジョンというのは、最終案であるビジョンであると同時に、それに至る達成手段、時系列的なものを含めた経過を示した具体的な実施計画案でなければいけなかったわけです。そう考えますと、渡部大臣、いかがでしょう。これは、この委員会で今までビジョンを出すと言っていたことを考えますと、約束違反とかまたは約束不履行というふうに私は考える。これでは、この委員会においてこの健保法の改定案について約束違いだから審議を続けるわけにはいかない、私はこのように考えるわけです。そういうわけで、私ども各党、各委員があれほど繰り返し繰り返し要求しており、大臣も認めておられた、私が今再度説明し直した、実施計画案的な要素を持った将来の展望であるビジョンを早急に再作業して再提出してほしいのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/28
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029・渡部恒三
○渡部国務大臣 私どもが今度世に問いました医療問題に対する考え方、これをよく読んでいただけると御理解願えると思いますが、予算委員会に引き続いてこの社会労働委員会と、私が厚生大臣に就任してこの国会で、各党の皆さんからいろいろ質問の形で提案を受けたりした問題等で、私どもで納得できるものはほとんどその内容に含んでおるつもりでございます。先生の党からも、例えば今後の高齢化社会に備えての医師、歯科医師等の適正規模のあり方とか、あるいは福祉施設と医療施設の中間施設的問題の必要性とか、あるいは老人対策とか、いろいろの提案をちょうだいしておりますが、そのほとんどを今度の我々の提案している考え方に取り入れております。
具体性が欠けるのではないかという御批判、これはございます。これは政府が出すということになりますと、当然その責めを負うものであり、予算的な裏づけ等も必要なものでありますから、そういうものについて現在の財政状態なり経済状態の中で明確な数字なり年限を区切って申し上げるというのは、これは容易な問題でないのでありますが、しかしそれにしても、医療保険についても先生方のたびたびの御指摘、また私の答弁、そういうものを十分勘案した上で、これは将来やはり今の国保の皆さん方の七〇%の給付というものを八〇%に上げていかなければならないということで、かなり私どもは、清水の舞台から飛びおりるような気持ちで具体的な年限、数字等も出しておりますので、これは見方によっていろいろ議論があるのは当然でありますが、政府という立場で、私どもは先生方の御意見を最大限に盛り込んで今回出しておりますので、ぜひその点は御理解をちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/29
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030・塚田延充
○塚田委員 何度もこの「基本的方向」を読みかえしてみたんですけれども、やはり考え方とかいうのを漏れがないように、きちんと全部網羅的に挙げてあることは確かに挙げてあります。しかしながら、私たちが求めたのはより具体的なあるべき姿を鳥瞰図、見取図として示すことであって、こういう考え方もあるというのを、今まで何回も蒸し返されたことを抜け目なく羅列しただけでは意味がないと私は考えます。
それで、今大臣は、中には実施計画と申しましょうか、年代を明記したものもあると言うのですけれども、確かに年代を明記したものがありますが、これは一割負担を求めるとか二割負担を求めるとかいうような、いわゆる国民にとって負担がふえる方のみが明記されているのみであって、政府側と申しましょうか国民のためになるようなことについては、項目を挙げているけれども、いつまでにどのような形でやるということは全然書いてない。それから具体性という問題で言えば、これはいいことじゃないかと思うのですが、成人病の対策につきましてはかなり具体的にこの病気を何割減らすようにするというように、何割というような具体的な数字を挙げておられる。具体性があるのはこの二つだけなんですね。そういう意味においてビジョンという名には値しない、私はこのように考えておりますが、それはしばらくおくといたしまして、それではその中身について二、三お聞きしたいと思います。
「給付の八割程度への統一」とありますが、これは実質給付率の意味でしょうか、それともいわゆる表面的な給付率を言うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/30
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031・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは今後いろいろの検討の課題は残されておりますが、私どもの考えは国保を七割から八割に上げていく。これは今社会の中で大変恵まれない条件に一番ある方の引き上げでありますから、これはぜひ先生からも多少は褒めていただいて激励を賜りたいと思って出しておるのでありますが、これは後から政府委員から具体的な答弁をさせますが、これは高額療養費制度あるいは公費負担、いろいろありますから、八割よりは実質的には余計政府が給付することになるというふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/31
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032・吉村仁
○吉村政府委員 八割程度というのはフラット部分の高さで考えるのか、実質給付率で考えるのかという御質問だと思います。
私ども確かに、フラット部分を八割にいたしまして、高額療養費制度を加味いたしますと実質給付率は八割四分だとか八割三分だとか、あるいは高額療養費の設け方いかんによりましては八割五分というような実質給付率になるわけでございまして、高額療養費のやり方いかんによって八割にプラスされる部分の高さというのは変わってくるわけでございます。したがって、その辺をどうするかということをまだ私どもとしても決めかねておりますので、これは将来検討することにいたしまして、給付の目標としては八割程度というようなことで表現をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/32
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033・塚田延充
○塚田委員 今の御答弁で、八割程度というものの前提はフラットな給付率であるということがわかったわけですが、それに対しまして、それならばフラットな給付率は八割程度という程度ではなくて、八割以下にならないようにする、この辺改善をお願いできたらと思います。
そして、もう一つお聞きし、また同時にお願いしたいことは、この件について六十年代後半ということですが、後半といいますと、五年間といいますか六年間といいましょうか、幅、アローアンスが広過ぎて漠然とし過ぎます。やはり国民を安心させるためにも、できれば六十五年までとか六十六年までとか、もう少しはっきりした表現の仕方をしていただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/33
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034・吉村仁
○吉村政府委員 一つだけ。私はフラットを八割にして高額療養費をそれにプラスする、こう言ったわけではございませんので、それも含めていろいろ考えてまいりますということを申し上げたわけでございます。
それから、いつ実現をするんだ、こういうことでの御質問でございますが、私ども、給付率を統一する場合の一番ネックになるのは国民健康保険だと思うわけでございます。そこで、国民健康保険の給付率というものを八割程度に持っていくためには、保険料率を上げるかあるいは国庫負担率を引き上げるかあるいは各医療保険制度間の財政調整をするか、そういう具体的な財政の裏づけがないと、何年度に国保について八割程度に持っていくかということがなかなか言いにくい点がございます。
私ども、国庫負担の率を引き上げることによって八割給付ができるというように展望するのは少し甘い、こういうように考えておりますし、また、それでは全体的に財政調整をやっていくというのは非常に容易な道ではない、それもなかなか困難な道でございます。それから、国保の保険料を上げるというのもこれも非常に難しい問題を含んでおりますので、その辺の条件というものを少し眺めながら、具体的にいつ国保の給付率を八割程度にしていくかということを考えていかなければならぬわけでございまして、その辺の決断がまだつきかねるというのが現在の事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/34
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035・塚田延充
○塚田委員 繰り返しの質問になりますが、この給付率の定義なんです。ずばり実質給付率なのかフラット給付率なのか。これが実質給付率ということでしたら今でも既に八〇・三%かそのくらいになっておる、こういう計算ができておるわけであって、全然将来に向かっての改善というか、ビジョンにはなってないわけであります。これはフラットな給付率だと解釈してよろしいと私は思うのですが、いかがですか。それをはっきりさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/35
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036・吉村仁
○吉村政府委員 私ども現在の給付率が八〇・三だと申しますのは、仮に全保険を統合したと仮定いたしまして現在の保険料並びに国庫負担でいかほどの給付ができるか、これを試算してみますと八〇・三ぐらいの給付率になる、こういうことでございます。これから保険料率を上げる、こういう前提に立ては八〇・三の給付率はもちろん上げることができますし、また、高額療養費を加味することによって仮に八四%くらいの実質給付率を保つんだという結論が出るならば、その部分だけは保険料率を上げなければならぬ、こういうことになるわけで、それは一つの選択の問題ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/36
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037・塚田延充
○塚田委員 この文言につきましては、どの制度をとってみても、家族であれ本人であれ給付率が八割程度になるように統一するんだ、このように解釈してよろしゅうございますね、それしか読み取れないわけですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/37
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038・吉村仁
○吉村政府委員 私ども、基礎的には一応八割給付というものを頭に描いております。被用者保険本人の給付率につきましても八割給付を一つの目標にしております。また全保険、退職者医療等につきましても八割給付を実施するということでお示ししておりますので、その点につきましては八割給付が一つの基礎的な給付であることは間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/38
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039・塚田延充
○塚田委員 次に、話題を変えまして、「なぜ、いま医療保険を改革するのでしょうか」、このパンフレットは御存じのはずでございます。これについてお尋ねいたしますが、なぜ発行人または編集人、これは厚生省のはずでございますけれどもこれを明記しなかったのか、その理由をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/39
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040・吉村仁
○吉村政府委員 別に隠し立てをしようと思って書かなかったわけではございません。特段の理由はないわけでございますが、私どもがつくって私どもが配布しておる、その責任を免れようという気持ちは全くございません。私どもが配るときには、これは私どもがつくったものである、こういうことを言ってお配りをしたものでございます。
なお、前の委員会でこれは怪文書だ、こういう御指摘もございましたので、新しいパンフレットには厚生省の保険局の名前を記入してお配りをしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/40
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041・塚田延充
○塚田委員 このパンフレットの配布の対象はだれと申しましょうかどういう団体をお考えになっているのか。それからこの配布の方法とかルートはどのようにお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/41
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042・吉村仁
○吉村政府委員 印刷の部数は当初大体五千部。刷ったわけでありますが、資料の求めがあった方に配布した。そして、主として国会関係の方々に配布をいたしました。したがってあるルートを通じてどこどこに流した、こういうようなことではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/42
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043・塚田延充
○塚田委員 国会関係者を主な目的としておるというならば、なおさら厚生省の責任と言いましょうか発行人を明記して出すべきであり、それがないところに不純な動機と言いましょうか、何かあるのじゃないかという気がしてしょうがないのですが、それはさておきたいと思います。
このパンフレットの中の4というところでございますが、その中に「自らのポケットマネーで飲食する場合に比べ、会社の交際費で飲食する場合のほうが、費用が高額となるのと同様です。」、このような表現があるわけでございまして、これはかなり不穏当な表現だろうと私は思います。会社勤めのビジネスマンの営業活動を言うならば誹誇し愚弄するような形になっております。それから翻って考えてみますと、この論旨から考えてみた場合、組合健保など被用者本人を、ただだったならばどんどんやるというような性悪説をありありとむき出しに規定しているわけでございまして、この内容は取り消すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/43
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044・吉村仁
○吉村政府委員 私の友人にも会社の経理を担当しておる人間がたくさんおりますが、その人たちの話を聞いてみましても、自分のポケットマネーで飲む場合と会社の経費で飲む場合は会社の経費で飲む方が高くつく。これはなぜそうなるのかわかりませんが、やはり一種の人間のさがみたいなものではないか。現在の保険におきましても保険の費用が現物給付で払われる、こういうことになっておりますので、自分のポケットマネーといいますか自分のぶところから金を支出する場合とただで受けられる場合の費用というものは若干心構えも違うし、その額においても自然に変わってくるのではないか。俗に世の中で言われるように「ただほど高いものはない」ということわざもございますが、やはりただということは費用を高めることになる。これはどうしても人間のさが、性質、人間性、何も人間が性悪だと言うつもりはございませんが、どうも人情としてそっちの方に赴きやすいということは事実だろうと私どもは考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/44
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045・塚田延充
○塚田委員 一般論としてはわからないわけでもございませんが、これが厚生省が発行したとなりますといわば公文書でございます。その公文書においてこのような俗論といいましょうか俗っぽいことを打ち出すということは、やはり不随当過ぎるのではないかと私は考えます。だから、こういう面があるからこそ、それをいわば怪文書と言われるごとく、責任を明確にしないで、厚生省としての公文書扱いをしないで、だれが出したかわからぬような形でこのパンフレットを出した、こんな感じがいたします。
それでは、続きましてこのパンフレットの7番、これも問題でございます。この7番をもとに私はこれから御質問申し上げたいと思います。
この7番、かなりいいことを申しているわけでございまして、保険は患者の負担が過大になることを防ぐ、すなわち家計が崩壊しないようにするのが目的だと言い切っておるわけでございまして、これは結構でございます。問題は、患者の負担が最高でも月五万四千円どまり、これなら家計が崩壊しない、このように言っているところに本質的な問題が潜んでいるわけでございます。
そこで、お尋ねいたしますが、自己負担額はどのような考え方、基準によって算定しているのか。そして、家計崩壊を防ぐ目的に月五万四千円ならば合っているとお考えなのか。お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/45
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046・吉村仁
○吉村政府委員 現在の高額療養費制度の負担額は、高額療養費制度そのものが四十八年にできたわけでありますが、そのときの入院の医療費、それから標準報酬の平均というようなものを勘案いたしまして、三万円に決めたわけであります。四十八年に三万円に決めたわけでありますが、その後の所得の伸び、あるいは消費者物価指数の伸び、あるいは給与の伸びというようなものを勘案して順次改定をしてまいって、現在時点では五万一千円になっておる。そして、同じようなルールに従いまして計算したところ、五十九年度から五万四千円になる。こういう計算をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/46
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047・塚田延充
○塚田委員 私の質問の後段の、月五万四千円ならばこのパンフレットの第7項目に言うように家計崩壊を防ぐ目的に十分であると考えているのかどうか。どういう計算基礎によってそれを出したのか。単に今までの経緯ではなくて、家計崩壊を防ぐという保険本来の目的に照らし合わせてどう考えるのか、お聞きしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/47
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048・吉村仁
○吉村政府委員 私どもが五万四千円というものを出した根拠は今御説明を申し上げたとおりでございますが、私ども、五万四千円が家計崩壊になるかどうかというのは保険制度だけで考えるべき問題ではない、こういうように考えておるわけでございます。例えば税金の還付制度もございますし、また低所得者に対する例えば世帯更生資金の貸し付け制度もございますし、また長期重病の場合には公費負担医療制度というようなものもございます。それから、現在の国民の貯蓄水準からいいましても、一世帯当たり六百万円というような貯蓄額になっておるようでございますが、そういうところを総合的に勘案いたしまして家計の崩壊はまあないではないか、こういうように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/48
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049・塚田延充
○塚田委員 五万一千円を五万四千円に改定しようとするのは、所得の伸びであるとか物価指数を考えて、まあ計算値上ふやしたというような御説明だと思うのですが、それならば、低所得者の自己負担限度額を今度の改定で一挙に倍増させたこの根拠、理由はどういうことなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/49
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050・吉村仁
○吉村政府委員 現在の高額医療費制度は各制度でかなりばらばらになっております。健保の家族の場合には五万一千円でございますが、日雇健康保険の場合は三万九千円、それから国民健康保険の場合には、普通は五万一千円、それから低所得者の場合には三万九千円、そして健保の家族の低所得者の場合には一万五千円、こういういろいろな数値になっております。私どもは、日雇労働者健康保険で三万九千円という水準で高額療養費の額が設定されておる、こういうことも考え合わせまして、この制度が発足したときの三万円というものに低所得者の場合は合わせ、そのほかの場合には五万四千円にするのが全体の公平としていい線ではないか、こういうように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/50
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051・塚田延充
○塚田委員 いわゆる大病、難病などをした、こんな場合にはかなり長期の入院になると思うのです。例えば一年間入院したとしますと、年間ベースでいえば六十四万八千円を自己負担しなければいけないわけです。これを民間給与の実態と比較してみますと、男子の平均年間給与が二百万円から四百万円の層が五十七年度において五三%くらい占めるわけでございますので、例えば年収三百万の人が大病して一年間入院した場合、その人の可処分所得というのは、これは五十八年度の計算ですが、二百六十九万六千九百九十円となっております。そこから六十四万八千円を支払いますと、実際に家族に残る収入というのは二百四万八千九百九十円しかなりません。これは月に直すと十七万円程度です。生活保護費が五十八年度の場合一級地で月額十八万二千二百九円ですから、生活保護家庭以下になってしまうわけです。おわかりになりますね。これでも保険本来の目的、すなわち将来の不確実な危険出費に備えて常々掛金を払っていく制度である、このように大臣は自信を持って言えますか。お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/51
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052・吉村仁
○吉村政府委員 今御指摘のような例で計算をいたしますと、先生御指摘のとおりであろうかと思います。ただ、今御指摘の例で五万四千円というのは、本人にいたしますと一月五十四万円の医療費になるわけでございますが、五十四万円以上の医療費がかかるような疾病で一年間も入らなければならないという場合があったとすれば、これは公費負担の対象になるような疾病の場合が多いのではないか、私はこういうように思います。確かに計算をすればおっしゃるとおりでございますが、実際問題として、その方が生活保護に陥ってしまうというケースは極めてまれなのではないかというように考えております。私ども、現在の高額療養費制度があらゆる疾病に対して有効に、完全に働くということを断言するものではございませんが、少なくとも全体の医療政策で物事を考えていけば、高額療養費制度を五万四千円にしたからといって家計が崩壊するようなケースというものは、極めてまれなのではないかというように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/52
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053・塚田延充
○塚田委員 それではお伺いしますが、五十六年度でも五十七年度でも結構ですけれども、三カ月以上入院、六カ月以上入院、一年以上入院、これの患者の実数をお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/53
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054・吉村仁
○吉村政府委員 五十七年の四月分で申し上げますと、医療保険における総入院患者数が百十九万四千人でございます。そのうち、三カ月以上六カ月未満の入院患者さんが九万九千人、先ほど申し上げました百十九万四千人のうちの八二二%でございます。それから、六カ月以上一年未満は七万六千人、六・四%でございます。一年以上というのが二十四万六千人、二〇・六%、こういうことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/54
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055・塚田延充
○塚田委員 それらの方々の医療費が自己負担額で五万四千円を超えるかどうかわからないとしても、かなりの負担をされている方が今言った実数で言うと十万を超える、大変なニーズだと思うのです。これらの方々に対する救済を考えなくちゃいかぬというわけですけれども、その中で特徴的なものとして、血友病患者のケースがあると思うのです。この場合は、もうずばり月間の医療費が数十万かかり、自己負担限度額までは払わなければいけない形になる。五万四千円は常に持っていかなければいけない。そしてこれは遺伝性であり、慢性であり、いわば一生ものであり、一生にわたって毎月五万四千円ずつ払っていく、これは大変なことだと思うのです。血友病患者、特殊な例かもしれませんけれども、また数においてはまだ限度があるかもしれませんけれども、そういう特定の方々を救済するということは非常に大切なことだと思うのですが、この血友病患者につきまして、特別に何らかの温かい救済の措置をとっていただけるかどうか、渡部厚生大臣の御配慮ある御答弁をいただけたらと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/55
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056・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは、今先生からいろいろ御心配をちょうだいいたしております。私も全く同感でありまして、今回の一割負担、この法律を成立させていただくことによって、これは本当にお困りのような方がないように配慮をしていくことは私どもとして当然のことでございます。
血友病の問題、先生からも、また先生の同志の先生方からもたびたび聞いております。これが、今検討してみますと、これは法律事項でなしに政令事項でやれる問題等もありますので、今先生御指摘のような問題は、この健康保険法が成立した後、そのためにそういう方がお困りにならないようなできる限りの配慮を努めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/56
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057・塚田延充
○塚田委員 血友病患者に対する大臣のこれからの格段の御配慮をいただけるという御答弁、本当にありがとうございました。
さて、大病で入院した場合、厚生省は、負担が五万四千円どまりならば家計崩壊はしないとパンフでも宣伝され、今また局長も崩壊しないはずだというようなことを言っているわけでございますけれども、私は先ほど例証を申し上げたように、勤労者にとっては場合によっては保護世帯以下に転落する危険性があるんだよ、数がどうかということは別としても、そういう危険性を全勤労者がはらんでしまう。これについて厚生省はじっくりと高額療養費の問題について再検討していただきたいと思うのですが、実は私が今例証したような問題程度ではないのです。このような大病、難病で長期入院する場合、ほとんどのケースにおいて差額ベッド料を払わなければいけないとか、付添看護人を雇わなければいけないとかいうケースが非常に多いわけでございまして、これがいわゆる保険外負担というわけでございます。
付添看護人を雇った場合、一日約一万円かかります。労働省の調査によりますと、今いわゆる家政婦及び付き添いの看護家政婦と申しましょうか、こういう方々が十四万名ほど登録されておるそうですけれども、そのほとんどが付添看護人として働いておられるというように、大ざっぱではございますけれども聞いております。となると、付添看護料の負担をされている方々がとにかく数万人という大きな数で存在しているわけでございまして、極端な例でございますけれども、一年間付添看護人をつけた場合、これで三百六十万円、そして今言った自己負担額が六十四万八千円、これは文句なしに、保護世帯すれすれとかいうのじゃなくてその家庭は完全に破壊される、こういうわけでございまして、この高額医療費、すなわち自己負担の限度額については厚生省として徹底して再検討していただきたいと思うのです。
これは大臣が常々明言されておりますように、困った人に温かい援助の手を差し伸べると同時に、国民が生命や健康、そして生活に困らないように安心できる制度を充実させる、こうおっしゃっているわけですから、この大臣の福祉行政の目的にかない、かつ、保険というのは困ったときに、困ったというのは本当に困ったときに助けてもらう相互扶助の制度であるという本来の趣旨に合うように、この自己負担限度額というのは、五万一千円を五万四千円に上げるのが妥当かどうかとかいうようなそんなレンジで検討するのじゃなくて、徹底して、これは半分でもいいじゃないか、三分の一でもいいじゃないか、このくらいのいわゆる発想を変え、視点を変えた方法で再検討してもらうことが、厚生省が言うようなこの第7項目、すなわち家計の崩壊を防ぐのが健康保険でございますと自信を持って言えるようにしていただきたいと思うのですが、大臣、この件について御見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/57
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058・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは私もたびたび申し上げておりますように、今回私どもが一割負担ということをお願いしておりますのは、将来にわたっての我が国の医療保険制度を揺るぎないものにするために、医療費の節減あるいは社会保障の本来的な意味に戻って負担と給付の公平、あるいは制度間の公平、社会保険制度を正しい方向に持っていくあるいは国民の健康管理に対する関心を強めていただく、そういういろいろな意味合いを持ってお願いしておるわけでございますが、この一割負担のために、今先生が御心配のような、健全なサラリーマン家庭が大変な重い病気を持つことによって崩壊するというようなことはあってはならないことでありますから、この法案をまず成立させていただくこと、そしてそれまでの先生方の御指摘等を私どもは謙虚に考えて、この法改正のためにお困りの方が出ることのないように、高額療養費の問題の仕組みあるいは難病等に対する公費負担の問題、こういうものを含めて幅広く、各党の先生方の御意見を十分に尊重しながら、私どもでとり得る可能な範囲の努力を続けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/58
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059・塚田延充
○塚田委員 保険局長にお伺いしますが、この高額療養費につきまして、世帯単位であるとか年単位での限度額をぜひ考えていただきたいと思うのです。例えば一世帯当たり年三十万というような限度を設けるとか、またこれが制度がややこしくてやりづらいというのならば年末調整みたいな形もあるかもしれませんけれども、いずれにせよ家族単位であるとかロングレンジによる徹底した限度額、家庭崩壊を防ぐためのぎりぎりの低い自己負担限度額をぜひ設定するように御努力いただきたいのですが、局長としての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/59
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060・吉村仁
○吉村政府委員 現在の高額療養費制度というものは、御指摘のように患者個人、一月、一医療機関というように、現在の診療報酬の請求のスタイルそのものを基礎として動いております。つまりレセプトがそういうように個人単位であり、暦月であり、医療機関単位ということでできておりまして、それを基礎にして動いております。したがって、例えばレセプト方式がコンピューター化されるというようなことならばかなり事務処理が易しいわけでございますが、現在は手作業で一枚一枚の紙をめくりながらやっておる、そしてその一枚一枚のレセプトが積もり積もって一年間八億四千万枚というようなことになっておるわけでございますので、その仕組みというものを少し変更しない限り、今先生御指摘のように、世帯合算あるいは年末の還付というものを完璧にやるということが非常に困難なシステムになっておることは事実でございます。
したがって、私どもの対応としてはレセプト方式を改めるというのが一つの方向であろうと思いますし、またコンピュータリゼーションを進めていくというのが一つの方向であろう、これが基本的な方向であろうと思います。ただ、そうは申しましても、それにはかなりの時間がかかりますので、現実的な対応といたしましては、現状を前提としてどこまでできるかそのぎりぎりの可能性を追求して、先生御指摘のような点の実現に近づけるように最大限の努力をしてみたい、私どもはこう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/60
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061・塚田延充
○塚田委員 システム上、事務上、大変難しい問題があるようではございますけれども、保険とは何ぞやといういわゆる庶民の常識的な考え方、これを生かすのが保険でございますので、その趣旨を生かすためには、この高額療養費が大きなかぎを握っていると思うのです。となりますと、事務が云々というよりは、その保険制度の本来の趣旨、すなわち精神、それをどのように酌み取るかという問題でございますので、私は、事務上の問題というよりはその精神そのものをぜひ再検討していただけたらと思っております。
それでは質問の方向を変えまして、減額査定分の患者への返還という問題について質問申し上げたいと思います。
去る四月二十四日、某大新聞によりますと、レセプトの減額査定分のうち、本来なら自己負担金を支払った患者に相当額を還付すべきなのに、実際はほとんど還付されていない。本来なら患者が還付を受けるべき額は、二十三年間で積もり積もって総計一子億円を超えるのじゃなかろうかと報道されております。渡部厚生大臣はこの記事を読んでおられるはずですが、所管大臣として、この件についてどう受けとめられ、同時に、この件を知って以来本件に対してどう処置すべきと事務当局に指示されたか、お聞かせいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/61
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062・渡部恒三
○渡部国務大臣 私も新聞を読ませていただいて、確かに理論的には大変な矛盾であります。ただ、その後事務当局からいろいろ説明を聞きますと、これは理論上矛盾であることは何人も認めざるを得ない厳粛な事実でございますが、これをどう改善していくかということになりますと、これは非常に困難な問題が物理的にあるようであります。今事務当局と話をしまして、これは何らかの改善策がないものかということを検討させておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/62
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063・塚田延充
○塚田委員 この新聞報道の事実があったことを認められたようなわけでございますが、このように本来患者に還付されるべきものが医療機関にとどまっているわけでございまして、このとどまったお金は法律的に見てどういう性格のものなのか。すなわちその法律的な所有権と申しましょうかまたは請求権と申しましょうか、これはだれが持っており、また現在占有しておる方はどのような義務を負うか。このような法律的な側面につきまして、これは法制局でしょうか、しかるべき法律関係当局の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/63
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064・工藤敦夫
○工藤政府委員 今先生の御指摘ございました健康保険ですとかあるいは国民健康保険といった医療保険の各法におきまして、そこで一部負担金の計算の基礎となる医療費の額、これは、保険者あるいはその委託を受けております支払基金、そういったところの査定が行われまして、これに格別の異論がない場合には、その査定によるものがその基礎となるというふうに考えております。したがいまして、患者が支払うべき一部負担金も、この額をもとに算定されるべきものというふうに考えられます。したがいまして、一部負担金として今先生が御指摘のような既に支払った額がこれを超過する、それがいわば医療機関のもとに残っているというふうなときには、理論上考えますれば、その性格というものはいわゆる不当利得という法的な地位にあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/64
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065・塚田延充
○塚田委員 その後の同新聞の報道によりますと、医療機関側は、簡単に言えば、患者に返還するには及ばないと主張している向きもあるようでございます。この件について、法制局は、法律上の解釈から見ましてどうお考えになるのか。そして厚生省としては、これは三十五年でしょうか、この問題につきまして還付するのが筋である、だからそのように医療機関に通達をしているわけでございますが、この新聞報道によると、医療機関側からそれが無視された、もしくは反論された形ですけれども、厚生省としてはどうお考えになるのか。両省の御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/65
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066・工藤敦夫
○工藤政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、患者にはいわゆるその超過分につきましての不当利得の返還請求権がある、それに対しまして、医療機関としてはこれに応ずべき義務があるというふうに、法的には、いわゆる民法七百三条から申し上げればそういうことになるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/66
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067・吉村仁
○吉村政府委員 私どもも現在、法制局の工藤部長が申されましたように、法的根拠としてはそのとおりであろうと思います。法的な根拠が乏しいというようなことはない、したがって、その点につきましては私どもも異論がございません。
ただ、実務的に申しますと、一部負担を支払うのは診療を受けたときに払うわけでございます。そして、その翌月に医療機関から支払基金に請求があって、その月に審査をして支払いはその翌月に大体支払われる、こういうことでございますので、一部負担を払う時期と査定が行われる時期とが離れておる、こういうややこしさがあるわけでございまして、非常にその査定額が大きくて、当然返す、こういうような額が大きい場合には確かに私は返すべきであろうと思いますし、返すのに実務上の問題というのは余りないのではないか、こう思うのでありますが、例えば計算間違いがあって百円ぐらい査定された、こういう場合だってあるわけでございます。その場合には、例えば医療費にして百円だとすれば、患者負担というのは仮にその三割としますと三十円、一割の場合なら十円、こういうことになるわけですが、その十円もぎりぎり言えば不当利得であり、返還すべきである、こういうことにはなるわけですが、十円を二カ月、三カ月たった後、正確にその支払った患者との関係で調整をしていくということは、非常に実務的にも困難、煩わしい点があることはひとつ御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/67
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068・塚田延充
○塚田委員 法制局の見解によりまして、このような本来患者に還付すべきものが医療機関が預かっている形になるのは、不当利得的なものであり、患者に請求権があるということははっきりしたわけでございます。
今後考えてみた場合、同様に、同様というよりは、さらにこれからはハイペースでこのような還付すべきものが出てくるのじゃなかろうか、それは審査が強化されるとかいうことになりますとそういうことになると思います。ところが、実際的には、一たん払ってしまった患者はそのような事実が起きていることを知る由もなかなかないというようなことで、結局今までと同様に、うやむやの形で医療機関に預かってもらう形になってしまう。しかし、考えてみればこれは不当利得みたいなものだということでございますので、患者に対してどのようにこれを周知させるか。事務上、大変難しい手続、問題点があると思いますけれども、この辺、患者の請求権を生かすために実効ある何らかの方法、または医療機関に対する指導をお願いしたいのですが、局長の方から、今後の対策についてどのようなことをお考えになっているのか、または検討していくのか、もう一度お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/68
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069・吉村仁
○吉村政府委員 先ほど申し上げましたように、非常に実務上の困難さ、あるいは費用と便益とのバランスみたいなものも考えた場合に、非常に査定額が多い場合、幾ら以上というのは今直ちに申し上げられませんが、非常に査定が大きくなって、患者の支払った一部負担金と査定額とが非常にかけ離れておる場合には、保険者の方から患者に通知をさせるようにやっていきたい、こういうように思っております。さしあたりその辺から始めて、医師会に対してもそういう指導をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/69
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070・塚田延充
○塚田委員 この件は、何も医療機関が不当利得をしてほくそ笑んでいるわけではなくて、預かってかえって迷惑を受けており、痛くない腹を探られておるという面もあるかと思いますので、そのようなことができるだけ解消できるように、患者に対する通知方法などをぜひよろしくお願いしたいと思います。
次に、自由診療と申しましょうか、その辺についてちょっとだけ御質問したいと思います。
昭和五十八年二月から老人保健法が施行されたことに伴いまして、いわゆる老人病院に関する新しい診療報酬が設定されました。これは特例許可老人病院と特例許可外老人病院に区分し、病院に応じた診療報酬がそれぞれ設定されているわけでございます。また、今度のこの健康保険法改定案の中でも、特定承認保険医療機関については、厚生大臣の定める費用の算定方法により診療報酬が定められるようでございます。
これらを総合して考えてみますと、厚生省は医療機関ごとに診療報酬を設定する方向に進んでいるように感じられるのですけれども、このような方法をとることによって国、病院、そして患者から見たそれぞれの場合のメリット、デメリットはどの辺にあるのか。また、今の国会に提出されようとしております医療法の中に、第二次医療圏とか第三次医療圏の設定が考えられているようでございます。これと診療機関ごとの診療報酬の設定と関連があるのかどうか、医務局長の立場から、同時に保険局長の立場からそれぞれ考え方をお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/70
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071・吉崎正義
○吉崎政府委員 特定承認医療機関の件であろうかと存じますけれども、御指摘にもございましたように、一般的に医療を一次医療、二次医療、三次医療というふうに分けるのが通例でございます。これは医療の内容と医療機関と必ずしも一致いたしませんけれども、そのように分けるのが通例でございますが、そういうふうに分けますと、特定承認医療機関は広い意味での三次医療に属する、このように考えます。私どもの承知しておりますところでは、現在のところ大学病院というものを考えておるというふうに聞いておりますが、そうだとするならば今のように申し上げることができようかと存じます。それで、特定承認医療機関の具体的なことにつきましては、これから中医協で御審議になるというふうに承知をしておりますので詳細はわかりませんけれども、三次医療機関がこれになるのかどうか、細部の検討を待って考えてまいりたい、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/71
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072・吉村仁
○吉村政府委員 特定承認医療機関の問題につきましては、私どもは高度先端技術を行い得るスタッフを持ち、かつ、設備を持つ病院というものを頭の中に描いております。それに該当するものとして、具体的には大学病院というようなものを中心に考えておるわけでございますが、これは別に私ども、自由診療の範囲を拡大しようとかあるいは将来にわたりまして保険給付の範囲を縮減しよう、こういうようなことを考えておるわけではございませんで、保険医療としては従来どおり必要かつ適切な医療は全部保険で給付する、保険医療として給付をいたしたい。しかし、なおかつ、そういたしましてもやはり、高度先端技術としてまだ保険に取り入れるに至らない医療というものが存在するわけでございまして、そういうような医療と保険診療との調整を図るために、今回の特定承認保険医療機関等の制度を取り入れたわけでございます。その医療機関がどういう分類になるんだという御質問でございますが、今医務局長がお答えいたしましたように大学病院を予定しておりますので、第三次の医療機関というジャンルに入ることになろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/72
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073・塚田延充
○塚田委員 それでは、退職者医療制度についてお伺いいたします。
まず、この退職者医療制度を組合健保サイドではなくて国民保険サイドに持っていったその根拠、理由、これを教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/73
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074・吉村仁
○吉村政府委員 従来、退職者医療制度につきましては、ぜひこれを創設すべしという御意見が強うございました。ただその場合、なぜ今まで退職者医療制度ができなかったか、こういう経緯とその問題を考えてみましたときに、一つは、退職者医療制度を受ける資格をどう決めるか、それは被保険者期間と関連するわけでございますが、その被保険者期間というのはかなり長い期間になりますので、その確認の方法として効率的な方法がなかなか見つからないというのが一つの問題でございました。これにつきましては、私ども、今度、年金受給者ということで解決をつけたつもりでございます。
それから第二番目は、給付期間をどうするか。やはり退職者医療制度ということになりますと退職後一生涯給付を行うべきだ、こういうことになるわけでございますが、退職後一生涯面倒を見るというのでは少し長過ぎるではないかという意見があったわけでございます。しかしながら、今日においては老人保健法ができまして、七十歳以上は老人保健法で見るということになりましたので、七十歳まで見ればよろしいということで、給付期間というものがある程度合理的に設定できるようになった。これが第二の問題の解消した理由であります。
それから第三は、いずれにいたしましても、企業を退職した退職者というのは全国に散在するわけでございます。そうすると、全国に散在する退職者を把握いたしまして退職者医療制度を適用し、保険料を徴収し、そして給付をする、こういうことになるわけでございますが、そういう事務の管理ができるのは国民健康保険しかないのではないか、これを仮に被用者サイドでやるということになりますと膨大な機構が必要になる、こういうことで国保の窓口を借りる方がいいんではないか、こういうように考えたわけであります。
それから第四番目の問題として、これは最大の問題なんでありますが、退職者医療の費用負担をどうするかというのが今までの最大の問題であったわけでありますが、最終保険者だということにすると負担は不公平になる、こういうことでありますし、非常に理論的に言いますならば、雇用期間に応じて負担をしてもらう、分担をしてもらうというのが一番理想的な姿なんだろうと思いますが、それも実務的になかなか難しい、こういうことで、退職者医療にかかる総費用を被用者保険全体で負担をする、財政力に応じて負担をしていただく、こういうことで従来退職者医療制度の実現を阻んでおりました条件を解消できる、こういうように私どもは考えて、今回の退職者医療制度を御提案申し上げておるわけであります。
したがって、国保のサイドでやるか、被用者保険サイドでやるかというのは難しい問題でありますが、割り切りとしては被用者保険サイドでやるべき性質の保険であろうと思いますけれども、実務上やはり国保の窓口を借りざるを得ない、こういうことで、国民健康保険の窓口を借りる形で退職者医療制度を考えてみたというのが今回の私どもの考え方でございます。
〔委員長退席、今井委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/74
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075・塚田延充
○塚田委員 一部のマスコミの報道によりますと、健保組合の方にこの退職者医療制度による退職者給付を認めるというようなニュースが流れたことがございますが、これにつきまして厚生省はどう考えているのか、そのような事実があるのかないのか、お教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/75
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076・吉村仁
○吉村政府委員 先生御指摘の問題につきましては、健保組合の事務処理上の問題あるいは財政面における能力の問題等いろいろ絡むと思いますので、健保連が主張するような退職者医療制度の単独実施というものについては、これは慎重に検討をしなければならない、こういうように思っております。私どもがそれに合意をした、こういう事実はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/76
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077・塚田延充
○塚田委員 それでは、この退職者医療制度におけるいわゆる拠出側、健保組合側ですけれども、これのいろいろな発言の場をどのようにするつもりでいるのか、この辺の保証についてお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/77
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078・吉村仁
○吉村政府委員 退職者医療制度についての拠出者の意向を反映すべし、こういうことは審議会の御意見にもございました。そこで、私どもとしては、社会保険審議会の所掌事務に新たに退職者医療に対する拠出金に関する事項を加えて、社会保険審議会の場でひとつ御議論を願う、こういうようにいたしますならば拠出者の意向が反映される、こういうように考えた次第であります。それが第一でございます。それからまた、現在、国民健康保険事業の運営に関する協議会が各市町村に、国民健康保険運営協議会ということで設けられておりますが、この協議会において拠出者側の意見を反映できるようにメンバーに参加してもらうとかあるいは特別の部会を設けるとか、そういう方法につきまして検討をいたしております。
いずれにいたしましても、拠出者の意向が反映できるような仕組みそのものはいろいろな形でつくってまいりたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/78
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079・塚田延充
○塚田委員 この制度において本人の給付率を八割とした根拠、理由は何ですか。いわゆる被用者本人、今まで組合健保だった場合は自己負担ゼロ、今度提案されている改定でも被用者本人一割ですけれども、整合性を欠くような気もいたしますが、八割と決めつけた根拠をお示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/79
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080・吉村仁
○吉村政府委員 これは先ほど大臣が申し上げました将来ビジョンとも関係するわけでございますが、将来の給付率を八割程度というものを頭に描きながら私どもは物を考えておるわけであります。したがって、確かに国民健康保険の中で退職者が先に突出をするということについては問題があるわけでありますが、将来被用者保険の本人につきましても八割に持っていくという展望を持っている以上は、退職者の本人については八割をまず実現をしよう、国民健康保険の中で突出するのは問題があるにしても八割に持っていこう、こういうことで、将来の展望も考えながら一応八割という形で提案をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/80
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081・塚田延充
○塚田委員 将来の展望が八割程度での統一ということでそれに合わせだということですが、現在の健康保険法改定案によれば、そのステップとして現実的には九割というようになっておりますので、そのステップに合わせて九割とすることも可能じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。その方が整合性があると思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/81
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082・吉村仁
○吉村政府委員 確かに形式的にはそういう議論も成り立ち得ると思うのでありますが、少なくとも被用者保険本人につきましては十割を将来八割に下げていく、一挙にそこまで持っていくのは問題だということで、五十九年度と六十年度は九割、こういうことで一応私どもは考えておるわけであります。
一方、退職者につきましては、現在の給付率は七割でございますので、七割を八割に上げていくということでありますので、これを被用者保険本人のように、一たん九割に上げでまた八割に下げていくというのではやはり少し問題があるのではないか、したがって、将来展望で八割ということを頭の中に描いておるわけでありますので、八割のところへそろえていくのが適当なのではないか、こういうことで、私どもは、退職者本人につきましては下から給付率を上げていくということ、それから被用者保険本人については十割から下げていく問題ですので、退職者本人については八割程度で物を考えてもそれほど不公平だということにはならないのではないかということで、八割を御提案しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/82
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083・塚田延充
○塚田委員 将来展望として八割を考え、それでは急過ぎるから、ショックを和らげる意味でワンステップ置いて九割とするというのが、今回の被用者本人に対する厚生省から言わせれば配慮であるというわけですが、この退職者につきましても、いわゆる上から考えるか下から考えるかの差ではございますけれども、本来なら七割に落ちるものを八割でストップさせるんだ、救済だという考え方もあります。これは、上から考えた場合は今まで十割だったものが一挙に八割に落ちる。それでは苦しいから九割にとどめておこうという考え方も十二分にあるはずなんですが、いかがでしょう。
〔今井委員長代理退席、稲垣委員長代理
着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/83
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084・吉村仁
○吉村政府委員 給付率の問題につきましては、いろいろな考え方が確かに御指摘のようにあると思います。
ただ、私どもとしては、今回の退職者医療制度の費用の大部分は現役の被保険者並びに事業主の負担によって賄う、こういう制度の立て方をしておりますので、退職者についても我々と同じように九割にして、我々が八割になった段階で八割に引き下げていこうという、非常に温情あふるる現役の方々がそうおっしゃるのなら、それも一つの負担の方法ではあるが、しかしそれだけは負担がふえるわけでありますので、どういう選択をされるのがいいのか、こういう問題になろうかと思います。
ただ、そうは申しましても、七割から一挙に九割に持っていかなくても、七割から八割の線でとどめ、そして、将来全国民を通じて八割というような線で医療保険の給付率を統一していくのが適当だとすれば、やはり七割から引き上げる場合には八割が適当なんで、九割にしてまた八割に下げるというよりは八割でとどめておく方が適当なんではないか、こういうように私どもは考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/84
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085・塚田延充
○塚田委員 現行の保険制度は八つに分立されているわけですけれども、それぞれに対する国庫負担、これもまたばらばらでございまして、その負担をどのようにするのか、基本的な考え方があると思うのです。その基本的な考え方についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/85
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086・吉村仁
○吉村政府委員 現在の医療保険に対する国庫負担の考え方としましては、各医療保険制度間の財政力の強弱に応じて負担をする、こういう考え方が一つあろうかと思います。つまり、財政を調整するための国庫負担という考え方が一つある、こういうように思います。それから、国保等におきましては事業主負担がないためにその事業主負担の肩がわりをする、こういうような考え方の国庫負担もあろうかと思います。私どもは、いずれにいたしましても財政力の強弱、それから今申し上げました事業主負担の有無、そういうようなものを全体的に考えて国家負担を考えていくべきだ、こう考えております。したがって、退職者医療制度につきましては被用者保険のグループがこれは負担をする、こういう仕組みにしたわけでありますが、被用者保険全体のグループとしての財政力を考えますならば国庫負担の必要はない、こういうように考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/86
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087・塚田延充
○塚田委員 国庫負担においてそれぞればらつきがあるというのは財政調整の意味合いも非常に強いということでございますが、そのようなわけならば、この退職者医療制度にも国庫負担を入れることはオーケーじゃないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/87
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088・吉村仁
○吉村政府委員 ただいま申し上げましたように、この退職者医療制度の費用は被用者保険制度全体が負担をしていこう、こういう制度でございます。で、被用者保険全体の財政力というものを考えました場合に、財政力の足腰は非常に強いわけでございますので、国庫負担を入れる必要はないようなグループだ、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/88
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089・塚田延充
○塚田委員 それでは、質問を変えます。精神病院に関する諸事件につきましてお尋ねしたいと思います。
一昨日のマスコミ報道によりますと、また精神病院の一つであります群栄会・田中病院において不祥事件が起きたと報道されております。この事件は、表面に出た事象としましては、患者が事件を起こしたことになっており、以前起きました宇都宮病院のように病院の職員の方が事件を起こしたというのとは別になっているわけでございます。ところが、その起きた根本原因というのは、その病院におきまして医療法違反による過剰入院の事実であるとか、また医師であるとか医療従事者が規定よりも不足しているとか、そしてそれらを背景として看護士、医療従事者が患者に対してふだんから暴行を行っておるということでございまして、今回の田中病院と宇都宮病院は結局のところ同根、同じ原因に基づいて発生しているものと思われます。
この群栄会・田中病院において医師及び医療従事者が規定よりも不足しているということが報道されておりますが、いつからそういう状態になっているのか、過去の実地調査の内容について御教示いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/89
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090・吉崎正義
○吉崎政府委員 当該病院につきましては、最も最近はことしの二月二十日に医療監視を行っております。その時点で医師が必要数十人に対しまして七人で、三人不足であります。看護職員は必要数七十八人に対しまして五十二人で、二十六人の不足でございます。薬剤師、必要数五人に対し二人で、三人不足でございました。そこで、所轄保健所長よりことしの三月十五日でございますが、病院長あてに医療従事者不足の改善通知を行ったところでございまして、病院側では、そういう職員の不足に対して極力充実に努める旨を申し述べておりますけれども、御指摘のございました事件もございましたので、五月八日、さらに詳細な調査を県に求めておるところでございます。その報告を待って適切なる対処を行ってまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/90
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091・塚田延充
○塚田委員 ただいまの御説明によりますと、二月の時点で既に精神衛生法とかもしくは医療法に違反しているという事実があったわけでございまして、それを県当局は認知、確認したわけでございます。ところが、例によって例のごとしと申しましょうか、改善命令といいましょうか指示をしたのみにとどまっておる。きちんとした監督指導が結局のところ行われなかった。だから、たった二カ月か三カ月のタイムラグではございますけれども、またまた不祥事件が起きてしまったというような経過をたどっているのではないかと思うわけでございます。となりますと、つまるところ、違反事実、望ましくない事実を確認できてからスピーディーにその改善処置を命ずる、させる、このことがきちんとできていないことが根本的な医療行政の欠陥であり、このような事件がまたまた宇都宮事件に続いて、世論がこれほど注目しているにもかかわらず起きてしまうというような順送りに陥ったものと思います。このように、せっかく実地調査をして実情を認識しても手を打つのが結果的には遅いのではないかと私どもは考えているわけですけれども、これを今後どのように改善していこうと考えているのか、お答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/91
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092・吉崎正義
○吉崎政府委員 医療監視でございますが、これは前回にも他の委員のお尋ねにお答えしたことがあるのでございますけれども、病院の水準を確保いたしますために、構造、設備でありますとか、清潔な状況でありますとか、諸帳簿の整備状況でありますとかを調査するわけでございます。それで、職員の数でございますけれども、これは水準として決めておるわけでございまして、精神病院でもこの水準を上回っているところも実はあるのでございます。ですけれども、一般的には下回っているのが多い、残念な状況になっております。御指摘のございましたように、宇都宮病院とかそれからこの病院をよく調査いたしまして、どこにそういう原因があるのかよく分析をして、今後そういうことのないように、重点的に医療監視を行う等の措置を講じてまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/92
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093・塚田延充
○塚田委員 報徳会宇都宮病院の事件について、国会での質疑を通じまして厚生省としてはいろいろと改善の方向を示してくれたわけですけれども、県及び厚生省として、本件に着手以来現時点まで、何をどのように処置し、そしてそれがどのような効果を上げたのか、具体的に時系列的に報告をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/93
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094・大池眞澄
○大池政府委員 宇都宮病院の問題につきましては、かねて委員会においても御説明申し上げましたような県の医療監視並びに実地指導を繰り返し強力に実施いたしまして、当該病院におきますところの当面改善できる点については早急な改善をし、また入院中の患者につきましても県において実地審査を実施するということで、現在これを継続中でございますが、まず措置入院の患者について着手をいたしまして、その百六十一名全員について、これまでに措置の要・不要を判断していただいたわけでございます。それに基づきまして、現在県の段階において逐次、その措置解除、同意入院への切りかえ等の手配を進めている最中でございます。
また、この宇都宮病院問題を契機として現在いろいろと事実解明、その原因究明、これは捜査の手も入っている点もございまして、そういった点も含めて現在その究明を行っている最中でございますけれども、そういった中から、その背景にある先生の御指摘のようないろいろな問題点を解明して、現在行っております県、国の指導で一層強化できる点、改善を要する点等判明し次第、これを取りまとめ、何らかの形でまた県に対する指導強化対策として通達のような形で示したい。
また、いろいろと提起されておる問題について、問題によりましては医療上のいろいろな論議を呼ぶような問題点もございますけれども、ある種のガイドライン的なものの検討にも着手したいというようなことで、現在準備を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/94
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095・塚田延充
○塚田委員 報徳会宇都宮病院に関する質疑の際に、措置入院患者について徹底して再審査すべきである、このような指摘が委員側から強くて、それに基づいて、確かに宇都宮病院については今局長がおっしゃられたように徹底した処置をとって、そのための成果が上がっていることは事実として認めたいと思います。
ところが、そのときに、こういう件は宇都宮病院だけではなくてあちこちで潜在的にあり得るのだから、全国の精神病院について即刻にでも同様の手を打ったらいかがかというような強い提案があったわけでございますけれども、この田中病院について、措置入院患者についていわゆる再監査というか審査をしたのかどうか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/95
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096・大池眞澄
○大池政府委員 群馬県の衛生環境部からの報告を受けた時点で、まだ県としては現在立入検査等調査を実施している最中でございまして、報道等で報じられているような暴力の事実等についても現在まだ調査中というような段階でございます。
今後、その調査の把握された事実に基づいて必要な、適切な、厳正な措置というものが考えられるわけでございますが、まだ現在調査中ということでございますので御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/96
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097・塚田延充
○塚田委員 ただいまの委員会審議は医療の問題に対する審議でございますけれども、医療において、病気になってから治療するということも大切だが、それ以上に予防が大切である。起きないようにすること、病気にならないようにすることが大切である。これはだれもがわかっていることでございます。これが行政面で見た場合、事件が起きてから調査する、また処置をする、改善を行う、これでは困るわけでございまして、何とかそういうことが起きないように事前に予防策を講ずる。そういう意味で、この宇都宮事件を契機に同じようなことを繰り返さないように処置をしなければいけないということは、厚生省も百も御承知になっていたはずでございまして、またその審議において、だからこそ他の精神病院についても徹底して再指導を行うべきである、手を打つべきである、このように言ったわけでございますけれども、それはやりますと言っても、結局半年かかる、一年かかる、数年かかるというのでは、その間にまたまた同じ事件が起きてくる。その一つの例が今回の田中病院の件じゃないかと思うのです。
そういう意味におきまして、宇都宮病院事件の審議において指摘されたとおり、全国の精神病院に対して徹底的にすぐ各県ともしかるべき調査及び改善策をしますよう、今まで以上の格段の努力を厚生省としてはしてほしい、このように考えます。
さて、今の件と関連いたしますけれども、厚生省の実地指導に関する通知によりまして各県を指導しており、その各県が実地調査をした調査結果が毎年四月にきちんと厚生省に届いておるものと思います。この報告書を分析し、問題がある件、そして問題のある病院が判明できるように報告を求めているわけですから、それが判明できた場合には、即刻それについて、県を通じても結構ですけれども、具体的な処置をすべきだと考えますが、どうもそれが不徹底なんじゃないかというような気がいたします。
そこで、厚生省に要求いたしますが、各県から出ております最新の実地調査報告書を再チェックいたしまして、その中で指摘されておるもしくは記載されておる、問題がある、すなわち医療法もしくは精神衛生法に違反しておるとかいうような事実が報告されておる、そういう個別の件数、件名、これを各都道府県別に、そして具体的な病院名を挙げて、委員会あてに提出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/97
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098・大池眞澄
○大池政府委員 ただいま御指摘の実地指導の全国の各県別の実施報告の件でございますが、現在、精神病院に対する実地指導は各都道府県において行うわけでございますが、それぞれの県によりましていろいろな方法を講じておるわけですが、多くのところにおきましては計画的に、年間一巡できるようなそういう形で実施しておるわけでございます。
で、実効上国がその報告を受けておりますのは、国が同様に計画的に、各都道府県に対しまして指導監査を個別に行うわけでございますけれども、そのときに、その報告を徴するというような形でもろもろの資料を提出してもらう一環として、その報告を一括受けとめて指導監査に活用しておる、こういう現状でございます。したがいまして、ある時点で断面的に全国を概括するというような形では実効上報告をとっておりませんものですから、今先生のお求めではございますが、ちょっと統計的な数字として何が何%というような形では整理できない、こういう中身になっておるわけでございます。
それから、もう一点申し上げますのは、精神衛生の行政指導としての実地指導、これは医療法に基づく医療監視と相並んで、相補ってというような形で同時または別個に行っている、これは地域の実情に応じて適切に行われているわけでございますが、その際、医療監視で指摘された問題についてはこちらの実地指導では特に触れてない。したがってその報告にあらわれないというようなこともございますし、また書類の簡素化を図っておるものでございますから、指摘事項、それから改善状況というようなものについても非常に簡潔な記載で、例えば医師不足、それに対する改善指導を文書で行ったというような記載でございますので、その不足の程度はちょっと掌握できないというような記載方法に今なっておるわけでございます。それは個別の県において公衆衛生監査官等の監査スタッフにおいていろいろと総合的にやりとりをして、その県自体の指導監査の方法が十分であるかどうかということは包括的にはその資料を使っていろいろやっておるわけでございますが、個別の医療施設ごとにそれが比較できるような形での様式になっておらぬという点でございますので、先ほどのお求めのような資料の提出というのは困難でございますので、御理解をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/98
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099・塚田延充
○塚田委員 精神病院に対する厚生省からの、と同時に、県からの指導監督のやり方に、スピードの面、そして内容の細かさの面、または実態を本当に把握しているかどうかという真偽の面などについていろいろ問題があるような気がいたします。そして、厚生省としては、各県から報告書を求めているようですが、そのフォームにも不備があるんじゃないかと推察しているわけでございます。これらの問題につきましてはまた別途意見を申し上げることにいたしまして、とにかく精神病院については宇都宮病院が出て、また田中病院が出た、またどこそこの病院が出るかもわからぬ、そのような非常に危険な状態にありますので、ここは徹底してスピーディーに、かつ、実質的に指導監督されますよう、形式的に、実地指導をやっているから云々とか、報告書が来たからどうのこうのとか、その記載内容がこうだったから云々というようなありきたりの指導では、国民が安心して厚生省に対して医療行政をお任せすることができない、このような不信感を持たれる危惧があると思いますので、厚生省としては徹底的に、怠慢というそしりを受けないように全力を挙げて精神病院の指導に当たっていただきたいと思います。
これをもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/99
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100・稲垣実男
○稲垣委員長代理 浦井洋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/100
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101・浦井洋
○浦井委員 私も、まず最初に、怪パンフとか怪文書とか言われておるこのパンフレットを少し問題にしたいのですが、早速この新版を取り寄せてみました。今保険局長言われたように、新しい版は大きくなって「厚生省保険局」、こう書いてあるわけです。さらに余分にこういうのが入っております。大臣、御存じですか。これが余分に入っておりますけれども、中身は全く変わってないわけですね。先ほどもいろいろと御意見があったようでありますけれども、例えば私が指摘したいのは5審とか6番の辺ですね。特に漫画が悪いです。わざわざ漫画をこう書いて、例えば5のところでも、サラリーマンの本人が十割給付でたばこを吸って寝そべっておるのを、そばの自営業者であるとかサラリーマンの奥さんがそれをにらみつけておる。こういうような描き方が果たして漫画に値するのか。しかも、厚生省が責任を持って出した文書についておる漫画と言えるのか。私はこれは非常に義憤を感ずるというか、非常にけしからぬというように思うわけであります。
6番目を見ますと、今度は国民の三割の十割給付のサラリーマンが、お酒を飲んだような格好でかばんをぶら下げて帰ってくるわけです。それを今度は、国保の加入者であるとかサラリーマンの家族の方がこれまたうらやましそうにながめておる。これを特に国会関係にまくというわけでしょう。こういうようなふまじめな漫画をなぜ描くのかと、私はまず最初に大臣並びに保険局長に強く申し上げたいわけなんです。サラリーマンの奥さんというのは、主人が十割給付であるから喜んでおられるわけでしょう。それを一括して、サラリーマンの本人十割給付、三割の方がここにおるんだ、あとはサラリーマンの奥さんも含めて七割のところにおって、そして、非常にうらやましがったりあるいはサラリーマンの本人を憎々しげににらんでおる。これは何ですか。この七割給付は、五割から七割になってきて、サラリーマンの被扶養者の場合で言えば、これからもっと上げてもらおう、しかし政府がなかなか上げないので、政府に対して怒っている漫画ならわかりますよ。十割給付の人に対して怒っているというようなこんな漫画の描き方、漫画というのはアイロニーといいますか風刺をきかして、見る人の肺腑をつくようなものでなければならぬ。それをこんな汚い漫画を描いておる。こういうパンフレットはもう即刻回収すべきだと私は思うのですが、大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/101
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102・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは十割給付のサラリーマン、いわゆる被用者保険の方、これに対して、農家の皆さんとか零細な商工業の皆さんとかこれは七割給付、世の中に「乏しきを憂えず、等しからざるを憂える」とかいろいろなことわざがありますが、七割給付の方から見れば十割給付の方がうらやましい、これはもう当然だろうと思います。だから、今先生御指摘のように七割給付の方が十割にいけば一番いいわけでしょうけれども、現在の政府の財政状態、あるいは被保険者の保険料の負担の問題その他のことを勘案すると、これは現在はとてもそういうところにいかないということで、大変恐縮ではあるが今十割給付の被用者保険の皆さん方に一割御負担をお願いしたい、こういうことを私どもは申し上げておるわけでありまして、したがって、この漫画で七割給付の方が十割の方をうらやましいと思っていることは恐らく間違いないだろうと思いますけれども、ただ、この表現の方法に、サラリーマンというのは、一般的なサラリーマンのシンボルということになるとかばんを持っておる、これはサラリーマンらしいが、たばこは余計だったような気も私もしますが、まあしかし、一般的にはサラリーマンの大半の方がたばこを吸っているわけで、これがいいか悪いかという議論は別ですが、余分だと言えば余分なような気がいたしますが、とりたてて目くじら立てておしかりを受けるような性質のものではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/102
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103・浦井洋
○浦井委員 いや、私は目くじらを立ててしかりたいと思うのです。大臣はうまいこと、うらやましがっているというふうにそこだけ言われたのです。5番目は十割給付の人に対して怒っているわけです。これはまさに自営業者とサラリーマンの方、そしてこの一番向かって右の方はこのサラリーマンの奥さんだと思うが、こういう方々の一家の家庭を分断し、人々を対立抗争させる、そういうような構図になっておるわけです。この漫画を見て、あなた方の理屈を私は聞いているわけではないのです。こういうことを、こういう漫画の載った文書を、しかも国会の良識のある国会議員やらあるいは秘書の皆さん方に配るということ自身が私は不見識だし、これはもう侮辱するものだと思うのですよ。これは保険局、吉村さんですか。この新版は何部刷られたんですか。これは両方合わせてどれくらいお金がかかっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/103
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104・吉村仁
○吉村政府委員 今回のパンフレットの印刷部数でございますが、当初五千部刷りまして、さらに求めが非常に多いので五千部増刷をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/104
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105・浦井洋
○浦井委員 費用は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/105
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106・吉村仁
○吉村政府委員 その費用は約百三十万円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/106
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107・浦井洋
○浦井委員 まさに国費のむだ遣いであります。税金のむだ遣いであります。これはもう直ちに回収をして廃棄をしなければならぬ。例えばこういう、ちょっとまともらしい数字の入ったのが追加されておるわけでありますけれども、これも都合のよい数字を抽出して出しておるだけなんです。日本の国の国民所得に対する社会保障費がまだ低いことであるとか、あるいは政管健保が黒字になっていることであるとか、あるいはいろいろな推計が、これまでも医療費の推計がかなり誤っておるわけでありますが、そういうことについては全く触れずに、自分たちの都合のよい数字やら理屈だけを並べて、しかもそれをオーバーに誤って誇張したような漫画をつけておるような、そういう文書は即刻回収して廃棄する。大臣、よろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/107
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108・渡部恒三
○渡部国務大臣 これは、私も今ちょっとこの漫画を見せていただいたのですが、これを全部よく読んでおりますん。これからよく読んでみまして、先生御指摘のように不穏当な部分があればこれは出さないようにしようと思っておりますが、やはり先生方は先生方で、これはかなり、我々の方で聞いておりますと、ときには先生方の議論に都合のいいような部分をとってなかなか誇大におっしゃる場合もありますし、私どもも、政府の立場で今度の改革案を出しておるわけでありますから、我々が出しておるこの法案というものを国民の皆さんに正しく理解していただきたいという余りに、これは保険局で努力したその熱意というものは御了承いただきたいと思いますが、内容についてはよく読んだ後検討させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/108
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109・浦井洋
○浦井委員 我々は、あなた方が正しくPRしようということまで妨げようというそういう権限はないですよね。我々も、我々の主張を述べてここで議論を闘わすわけなんです。しかし誇張したり間違ったりしたらいかぬですよ。これは後で、きょうの午後にお聞きしますけれども、11ページにも「多様なニーズに対応」ということで、「高度最先端医療にも素早くこたえます。」、今までこの委員会の中でもまだ余り議論されておりませんけれども、実態はこうではないのですよ。これは午後もやりますけれども、だからそういう点で、今大臣、漫画は読んでいただいても見ていただいても結構ですけれども、漫画も含めてよく検討をしていただきたい。
そういうことで、今まさに健康保険のいわゆる改正案というものが国会も含めて国民の注目の的になっておるわけでありますけれども、やはり我々は国民の声を十分に聞く必要があると思うのであります。国民の皆さん方が注目をしておる証拠に、四月の連休前の時点でちょっと数字を申し上げてみますと、各地方自治体の議会の反対決議が非常に大きな数字であります。四十八都道府県のうちの三十八都道府県、それで、そこに住んでおられる人口は日本の国の人口の八二%以上、それから自治体が全部で三千二百二十二あるわけでありますけれども、その中で千百五自治体の議会が反対決議をされて、そして政府に意見書を出してきておられる、こういうことですよね。大臣のおられる福島県では九十自治体があるんですか、そのうちの七十二までが反対の決議を出してきておられる。大臣の選挙区の福島二区では市が四つあるそうでありますが、その四つとも反対の決議をされておられる。これはもう大臣もよく御承知だと思う。それから、衆参両院議長に対する健康保険のいわゆる改正、改悪に反対をしてこれは成立させないようにしてほしいという請願が、これは正確な数字は今のところわかりませんけれども、これは推計でありますけれども、もう五百万から六百万人の方が署名を寄せてきておられる。こういう国民の声あるいは地方のそれぞれの議会の声を大臣は一体どのように考えておられますか。
しかも、もう一つ申し上げておきますと、きのう私が申し上げたのですけれども、この間の二十四日ですか、二十四日の二十一世紀の国民医療を考える会というのは、与党の中でも非常にたくさんの方が集まられて、慎重審議を求めておられる。その方々が今度はあす十一日に第二回の会合をやられる。けさの新聞によりますと、これは与党の党本部ではなしに、どうもそこをシャットアウトされたような感じでホテルでやる、それでもやるんだという気勢を上げておられる。こういう状況を大臣は一体どう思っておられるのか。私は、この際潔く、この健保の改悪案は政府みずからの手によって撤回すべきだと思うのです。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/109
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110・渡部恒三
○渡部国務大臣 御指摘のように、私の郷里の市町村等でも健保法について慎重な審議を行ってほしいというような決議が随分行われておるということをお聞きしまして、私も政治家でございますから多少心配になって、今度選挙区に帰ってみました。地方議会の議員の皆さん等にも随分お目にかかりましたが、国のために今こそおまえは命がけで健保法を通せという非常な激励を各方面の方から承って、安心して国会に帰ってきたようなわけでございます。
これは、私は今反省してみますと、一割負担というものが先に議論の中でそれだけで出てしまったものですから、昔の政治のことわざに「新税は悪税なり」というようなこともありますので、今まで十割だったのを一割負担しなければならないならそれは反対だということになったわけだと思います。
今日、我が国の置かれている財政的背景なり、あるいは医療費が年々一兆円ずつ伸びておる現実なり、また高齢化社会がやってくる中で、保険料を上げないで適正な医療費によるところの今日の医療保険制度というものを揺るぎないものにしなければならないとか、そういうことをよく勉強していただくと、やはり一割負担はやむを得ないのだな、こういうふうになっていただけるのが大部分でございます。私も、ついせんだっても、この医療保険の改正に反対する医師、歯科医師の若い人たちとお目にかかって話をしましたが、お目にかかったときはほとんどの方が反対で、私をつるし上げよう、こういうことでしたが、二時間くらい話をしますと、なるほどそうか、それならばおまえは勇気を持ってやれ、こう言ってくれるので、浦井先生も早くそうなっていただきたいと私は願望しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/110
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111・浦井洋
○浦井委員 その、よく勉強していただければわかりますという一つの手段がこれでしょう、国会関係筋に求めに応じて出しておりますという。しかも先ほど指摘したような誇大あるいは誤りがある。これではだめですよ。だから、今二割とか一割の自己負担の問題が出ましたが、これはやはり最大の問題なんですよ。今まできょうで毎木曜日、三回目の定例日の健保の審議でありますけれども、たくさんの論点がこの点について出されておると思うのです。
多少整理してみますと、重い病気の方あるいは所得の低い方に対する打撃が非常に大きい、だから社会保障本来の目的であるところの所得再配分機能を果たし得なくなるのではないか。それから、健保制度始まって以来六十年間十割給付を続けてきた歴史の重みが国民の中に定着しておるのではないか。それから三番目に、一家の大黒柱である場合が多い被保険者本人、この人たちに対する定率カットというのは、その人に対する打撃だけではなしに家族全体に大きな打撃を与えるという論点。それから、そもそも医療保険というのはどんな病気になっても、軽い病気でも重い病気でも十割給付があるから、普段からサラリー二十万円の方で大体月々六千五百円くらいのかなり高い保険料を払っておられるようでありますけれども、かなり高い保険料が掛け捨てを覚悟して支払われておる、だれも不満を言わぬ。そういう方たちが病気になったときに、うちのお父ちゃんは保険で、今一部負担がありますけれども、十割給付だから安心して医者にかかれるのだ、こういう期待感なり安心感があるからだ、これは私は非常に強い理由だと思いますよ。それから、医療機関の側から言えば受診率が低下をする、そうすればやはり早期受診、早期発見がおくれてかえって病気が重症化して、そして医療費が高くつくではないか。こういう意見がきのうの日医の参考人の方からも出ております。さらにもう一つ、六番目に、そもそも健康保険というのはビスマルクのあめとむちではありませんけれども、労働者の労働力を保全し再生産するためにつくられてきた。だから各国とも、大体労働災害なども含めてそれを見るというところから出発してきた。日本の場合それが労災保険になって独立をして、分離をしたわけであります。しかし、今の労働の態様から見ると、特に被保険者本人の場合は、かなりの部分が職場の環境によって病気がつくられている場合が多いわけであります。これは私が十六年間保険医をやっておりました経験から申し上げましても、大臣の奥さんは歯医者さんだそうでありますが、恐らく歯科でも同じようなことが言えると私は思うのです、医科よりはそのウエートが軽くても。ほとんどの方は、もちろん家庭環境にもよりますが、被保険者本人の場合は職場の環境によっていろいろ肉体的な、精神的なひずみが出てきておる。だから、労災保険の業務外ということであっても実際には職業起因性というものは否定できぬと私は思う。そういう被保険者本人に、十割給付であった保険者本人の定率カットというのは私は許せぬと思うわけであります。こういう論点がある。私、この問から議事録をくったりしながら総括してみますと、以上の六つぐらい論点があると思うのです。これはどの一つをとってももっともな意見でありまして、こういう点で、大臣は反論をされるでしょうけれども、そこのところを十分に考えてこの法案の処理を考慮しなければならぬのではないかと思うのですが、簡単にひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/111
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112・渡部恒三
○渡部国務大臣 先生の御質問も相当長かったので簡単に一言でお答えできるとは思いませんが、七割給付より八割給付、八割給付より九割給付、これが望ましいという点では私は先生と意見は同じだと思います。ただ、それを可能にせしめるためには財政というものがあるわけですから、お金が天から降ってくるわけではありませんから、保険者の皆さん方の保険料を高くするか、あるいは国費の医療費に対する支出を多くするか、あるいは今の単価の医療費を下げるか、そういうそれぞれの選択を選ばざるを得ないわけです。その中で先生のは、二番の国から金を出せばいい、こういう議論になるのでありましょうけれども、国から出すといっても、中曽根さんが出すわけでも私が出すわけでもありません、国民の皆さんのとうとい税金から出すわけであります。今の財政状態、またここ当分の財政状態を考えますと、今三兆九千億ほど医療費として国民の税金からの支出がなされておると思いますが、これをさらに拡大していくことに全体的な国民的合意が得られるかという問題がありますし、また保険料を引き上げるということになりますと、自分の健康に大変に注意をして全然お医者さんにもかかったことはないという被保険者もいっぱいいるわけであります。現にそういう被保険者の方には、おれは一度も医者に行ったこともない、病院に行ったこともないのに保険料が高くなって困るという国民の声もあるわけでありますから、そういうことを総合した中で、今回は、我が国の社会保険制度の中で一番恵まれた条件にある被用者保険本人の皆さん方に一割の御負担をお願いしたいということで、これはまさに、現在十割給付だった方に一割御負担を願うのでありますから、被用者保険の本人の皆さん方には恐縮ですが、ただ国全体の財政、またこのままでいけば医療費が年々ふえていって保険財政の面で大変なことになる、そういうような全体を考えながら一割負担というものを私どもはお願いしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/112
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113・浦井洋
○浦井委員 大臣は財政問題だというふうに言われるわけですが、実際の今度のいわゆる改正案というのは、私はかなり広範かつ系統的といいますか、全面的といいますか、単なる財政問題から出発してはおらないと思う。しかし、私はきょうは午前中は三十分しか時間をとっておりませんので、二巡目で財政問題をやりたいと思うのですが、一言だけ言いますと、きのうの参考人の方々も、政府の選択肢が少な過ぎるのではないか、こういうことを午前中の参考人は特に強調されておったわけであります。だから、この財政の問題は後でまたやりたいと思うのです。それから、ここに「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方 保険局長吉村仁」こういうふうに書いてありますから、これに対する反論もやらなければならぬと思います。
そこで二点だけ。これも先ほど来議論をされておりますが、一つは高額療養費、これの現行制度は不備が多いので、いろんな方法がありますけれども、私は、家族全員の年間における自己負担額の合算額を対象にしなさい、そういうように提案をしたいと思う、それはなかなかコンピューター化が難しいが、やればできる。やればできるということであれば、それは一体いつごろをめどにしてやれるような状態になるのか。それまでは、少なくとも今度のいわゆる改正案の五万四千円はやめて五万一千円に据え置いておきなさい。低所得者には今度の上がり方が強いので、これはもっと十分に考慮をしなければならぬという提案をしたいと思います。それが一つ。
それからもう一つの問題は、昭和三十五年の二月十五日に、厚生省と日医、日歯との間の申し合わせ事項がある。指導監査の問題でありますが、指導を徹底した上で監査を行う、こういう申し合わせは今も生きておるのかどうかということを聞いておきたいのであります。
なぜ聞くかといいますと、医療費の適正化ということを政府が打ち出すものですから、今医科、歯科を問わず減点審査、監査、こういうものが非常にふえてきているわけでありまして、これが診療担当者の意欲を失わせて、萎縮診療、粗診粗療、こういうことになっているわけです。大臣も奥さんに聞いていただいたらおわかりになると思うのですが、私の十六年間の経験からいっても、自分が自信を持って投薬をし注射をした、それに経済的な目的でずっと赤鉛筆を入れられるということは、もう全く大きな心理的なダメージを受けるし、その後の診療担当者の意欲を失わせるものであります。だから、この審査、監査というのは慎重にやらなければならぬ。この間の中野診療所の場合には、指導をやっておる中で過剰だということで、保険医の資格の取り消しというところまで事態が進んでおるわけですから、そういう、指導をやっておる中で監査に切りかえてはさっとやられるというようなことになれば、またぞろ、昭和三十五年当時、この申し合わせができたゆえんである開業医などの中で自殺者が出るというようなこともあるわけでありますから、ひとつそこは慎重にやるということ、この二点をお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/113
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114・渡部恒三
○渡部国務大臣 御指摘の高額療養費の問題、これは非常に大事な問題だと私は思います。
私がこの法案に反対する方とお話をしてみると、私と話をしたほとんどの方は高額療養費制度の存在を知らないでおられて、一割負担ということになれば、百万円かかれば十万円になるのか、一千万円かかれば百万円になるのか、これは大変だ、これは現行制度の中では五万一千円で打ちどめになっておる、それならまた話が違うな、こういうようなことがいろいろありました。
私が幾たびか申し上げておるのは、国の現在置かれている実情の中で、また将来にわたってこの医療保険制度というものを維持していくために、被用者保険本人の方に一割の御負担を願うということでありますから、そのために、本当にお困りの方が、病気になっても長い入院ができないで退院しなければならないというようなことがあっては困りますから、そういうことのないような努力というものは当然政治がなさなければならないことであります。これは今までも、この委員会あるいは予算委員会等で、与野党を含めて各党の皆さん方からそれぞれ貴重な御意見をちょうだいいたしておりますので、これらの御意見を十分踏まえた上で、この法案に浦井先生にも御賛同願って成立して実施するときには、今の先生のようなお考えも貴重なものとして十分に参考にさせていただいて、御心配をできるだけ少なくするような配意をしてまいりたいと思います。
それから二番目の問題は、これも非常に難しい問題であります。この委員会でも、一方では、濃厚診療、乱診乱療について困ったことだから監査、審査をもっと厳しくしろ、厚生省はなまぬるいぞというおしかりを受ける場合もありますし、また今先生のように、余り厳しくやるなという意味かどうかわかりませんが、いろいろな御意見があります。その辺がやはり、直接政治の責めを負い、直接行政の責めを負う立場の者の非常に難しい問題だと思います。
私は、幾たびも申し上げておるように、本来、医師、歯科医師の皆さん方は国民の健康を守る第一線に立って働いておられる方なのでありますから、我々がその先生方を御信頼申し上げて、そこに自由診療、出来高払い制度というものが見事に花を吹いていけるもの、こういうふうに解釈しておるのでありますが、現実にはやはり国民の皆さんがまゆをひそめるような事案があるわけでありますから、私ども行政に携わる者としては、不正というようなものが許されるはずのものでもありませんし、また年間一兆円近くも医療費が増大しているということで、むだな医療費がないか、むだに薬が使われてないか、むだに検査が行われてないか、そういうことに目を光らせていくのも国民の皆さん方の声にこたえる行政でもありますので、その辺は非常に難しい問題だと思いますが、国民の皆さん方の声を最大公約数に尊重し得るような行政を指導してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/114
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115・吉村仁
○吉村政府委員 第二番目の、日本医師会と厚生省の指導監査に関する申し合わせが現在も生きておるか、こういう御質問でございますが、これは生きております。ただし、不正請求の事実があると思われるとか、あるいは診療の中身に著しい過剰なものがある、こういう明らかな場合には指導を経ないで直ちに監査ができるというように変わってまいっております。しかし、私どもとしては、やはり指導というものの重要性は十分考えておるわけでありまして、直ちに監査をする、こういうことはよほどの場合でないとやらないつもりであります。論より証拠、中野診療所でも三回指導をしてその後監査をしたわけであります。私はああいう場合には直ちに監査をしてもいいケースではないかと思っておりますが、やはり行政というものは慎重に運ぶ必要があるということで、指導をし監査をしたわけでありますが、それが逆になまぬるいではないか、こういう御批判も仰いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/115
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116・浦井洋
○浦井委員 小沢和秋議員とかわらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/116
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117・稲垣実男
○稲垣委員長代理 この際、関連質疑を許します。小沢和秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/117
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118・小沢和秋
○小沢(和)委員 私は、関連質問でありますので、日雇労働者健康保険の問題に絞ってお尋ねをしたいと思うのです。
今回の改正で、日雇健康保険の赤字対策として、政府管掌の健康保険にこれを吸収するということになりました。これは私はやむを得ない措置だと思うのでありますけれども、考えてみれば、もともと日雇い労働者は収入が低いし、また中高年齢者が多い、もともとこういうような人たちだけの集団では、幾ら努力をしても収支が相償うような保険の運営ということはできなかったのじゃないだろうかと思うのです。こういう人たちだけの保険をつくってここまで赤字を大きくしてしまったということについては、私は政府にも大きな責任があるのじゃなかろうかと思うのですが、大臣、その点の反省はどのようにお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/118
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119・坂本龍彦
○坂本政府委員 日雇労働者健康保険制度が、低所得の方を中心にいたしまして運営をされてきておりましたために、過去相当額の赤字を年々生んでまいってきていることは今御指摘のとおりでございます。しかし、この制度も、発足当初の考え方としては、必ずしも恒常的に赤字になるという考え方でできたものではございませんで、やはり一つの社会保険制度として、ある程度安定した運営も可能であるという考え方でスタートはしておると思います。その後、いろいろな事情によりまして結果的にはかなり大幅な赤字を生んできたということにはなっておりますが、その間におきましても、各種の対策を講じまして赤字についてもできるだけ縮小を図るようにという努力はいたしてまいってきておりますが、何分にも客観的事情が、この制度の運営をなかなか容易ならしめるところまでいかなかったということでございます。
今回も、そういう意味におきまして、今後はこのようないつも赤字の出る制度というものではないような形にいたしたい、こういう考え方で制度改正を企画したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/119
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120・小沢和秋
○小沢(和)委員 今も部長自身が、低所得者の人たちだということをお認めになりましたけれども、やはり日雇健康保険を扱うという場合には、この人たちが本当に恵まれない層の人たちであるということをしっかり踏まえた上で議論をしていかなくちゃならぬと私は思うのです。そのことを確認する意味でちょっと数字をひとつ出していただきたいと思うのですけれども、組合健保、それから政管健保、日雇健保、これはそれぞれ平均するとおよそどのくらいの月収の層の人たちということになるか、ちょっと教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/120
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121・坂本龍彦
○坂本政府委員 平均月収の比較でございます。
最初に健康保険組合の平均でございますが、例えば五十七年五月の数字でございますが、二十二万三千二百十九円という数字でございます。
それから、政管健保の平均でございます。これはやはり同じ五十七年の五月でございますが、十七万八千二百八十円ということになっております。
次に、日雇健保につきましては、実は健保組合、政管健保のように月収という観点での直接の把握ができませんので、これはある程度推計数字ということになるわけでございますが、平均賃金日額を調査の結果出しまして、それと一月間の平均就労日数を出しまして、一応これを掛け合わせた数字が大体平均月収という線に近いのではなかろうか。直接、この平均賃金日額と平均就労日数の個人ごとのクロスが実は数字としてございませんので、こういう操作をいたしたわけでございますが、それによりますと、五十七年五月の一定期間の平均賃金日額と、多少時期はずれておりますが、五十六年四月から五十七年三月の平均就労日数とを掛け合わせました結果が十万三千二百円、こういう数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/121
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122・小沢和秋
○小沢(和)委員 今の数字を出していただいただけでも、どんなに日雇健康保険の被保険者の人たちが劣悪な状態に置かれているかということは明らかだと思うのです。
そこで、私も今度の改正によってどういうふうに変わってくるかということを勉強してみまして、中には、家族の入院の場合の給付が七割が八割になるというような改善もある。これは私は評価できると思うのです。それから分娩費とか出産手当金などというのも改善されるわけだが、しかし、中高年者が大部分である人たちに分娩費を改善したというのは余り手柄にもならぬのじゃないだろうかと思うのですけれども、しかしそれはそれで改善だと思うのです。しかし、療養期間あるいは傷病手当金、高額療養費などが後退する、この後退というのはかなり大きな打撃を与えることになるのではないかと私は思いますので、これらの点についてそれぞれ若干質問をしてみたいと思うのです。
まず、療養期間の問題ですけれども、これまでは、日雇健保に加入している方が発病したら五年間療養を保障されたわけでしょう。ところが今度は、加入期間が一年未満であった場合は一年間、一年以上あった場合五年ということになるというのですけれども、中高年になれば成人病の方などがどうしても多い、そうすれば療養の期間がかなり長引いてくるという傾向から見て、今までは五年間が無条件で保障されてきたものが一遍に一年というような人がたくさん出てくるということは、これまた余りにひどい話じゃないか、五年が一年ですからね。この点をどうお考えになってこういう改正をされたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/122
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123・坂本龍彦
○坂本政府委員 今回の日雇健保の改正の基本的考え方は、これはもはや独立の制度としては今後とも運営続行が極めて困難であるということから、同じ被用者保険として健康保険の体系の中に日雇労働者の人たちを取り入れて給付をしようということでございます。
そういたしますと、健康保険の中でございますから、一般の常雇いの健康保険の被保険者の方との均衡ということがまず問題になるわけであります。そういう観点から給付あるいは保険料等々につきまして一般の被保険者との均衡をとりつつ、しかも日雇い労働者という雇用形態に特有のいろいろな事情を勘案し、そうして実質的な均衡のとれた内容にしようということを考えたわけでございます。
今具体的に御指摘になりました療養の給付期間でございますが、これの考え方は、まず現在の健康保険の一般の方は被保険者資格がある限りは療養の給付が受けられるわけでございますが、もし退職して被保険者資格がなくなった場合には、その退職前一年の間継続して被保険者期間があった場合に限り療養の給付開始後五年までは給付を受けられる、しかしそれがなければ退職と同時に給付は切れる、こういう仕組みでございます。この日雇労働者健康保険の改正に当たりましても、その辺のバランスを考えまして、健康保険の場合でも一年間継続して加入しておれば給付が五年出る、したがってこの日雇い労働者の場合も受給期間を一年以上継続して満たしておれば五年は支給するということにいたしたわけでございます。一方において、一般の彼保険者の場合にはその条件を満たさない限り退職と同時に給付がなくなるわけでございますけれども、そこはやはり日雇い労働者の就労の特殊性と申しますか、同じようにすぐに療養の給付を打ち切るというのは少し無理があろうというふうに考えまして、少なくとも一年は給付を続けるということにしようと考えたわけでございまして、一般の被保険者とのバランスを基本に置きながら、一方において日雇い労働者の方の就労の実態等も配慮しながらこういう措置をとったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/123
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124・小沢和秋
○小沢(和)委員 今あなたが言われたように、これは健康保険法の第五十五条で規定している、退職した労働者が病気で療養しているときには五年間引き続いて治療が受けられるというのと横並びというか、均衡ということで考えられたわけでしょう。ところが、日雇い労働者というのは、もともと就労が非常に不安定なものですからときどき無資格の期間が発生したりするのです。今度この規定によってそういうようなときに一年しか受けられないようになる。だから、日雇い労働者がやめた場合にこの規定の恩恵を受けるというケースよりは、退職するのじゃなくて、長期的に見れば日雇い労働者として健康保険を今までもう十年とか二十年受けてきた、今後も元気な限りは働いて生きていかざるを得ないというような人たちが、退職者と横並びになってしまうのは私はこれは逆に均衡を欠くのではないかと思うのです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/124
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125・坂本龍彦
○坂本政府委員 退職という表現が、日雇い労働者の場合には適切でなかったかもしれません。
健康保険と日雇健康保険との均衡という考え方についてでございますけれども、現在、一般の常雇いの方については雇用関係にあるということで、被保険者資格というものがはっきり確認できるわけでございます。日雇い労働者の場合には日々雇用でございますから、これは同じような考え方で日々の雇用関係だけで判断するわけにはいかないということで、現行制度でも、前二カ月あるいは前六カ月間の就労日数によって一定の日数以上就労したという実績があればそこにおいて受給資格を認める、この受給資格が大体一般の被保険者の被保険者資格に当たるような構成にいたしまして制度をつくっておるわけであります。したがって、今私の御説明としては、受給資格が一年続いた場合に五年の給付をいたしましょう、そしてその受給資格が切れたという月があった場合に、それを一般の被保険の場合の退職と同じそれに相当するものとして扱っていこう、こういう仕組みにしようとしておるわけでありますので、日雇い労働者の場合退職という言い方は必ずしも当てはまらないかと思いますが、一般の被保険者の退職に当たるような形で受給資格がない場合。——ついでにちょっと補足させていただきますと、したがって途中で切れましてもまた受給資格が発生する場合がございます。その後働きに出て所定の日数を満たした、そのときにはまた療養の給付も受けられる、こういうことになっておりますので、実質的には均衡はとれているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/125
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126・小沢和秋
○小沢(和)委員 今あなたも言われたように、日雇い労働者というのは日々雇用ですから、したがって病気で倒れたら全く保障がないわけです。それに対して政管健保の人は、組合健保に比べれば悪いとかいうふうに言われるけれども、しかし病気で倒れたときは一応現職のままで、治療したり休職したりあるいはそれがいよいよ長引いたときにだって退職金ぐらいまだもらえるかもしれない、そういう意味でいえば日雇い労働者と比べれば一応余裕があるわけです。
ところが、日雇い労働者の人たちというのは、今も言いましたように今後も元気な限りは働きたいと思っておっても、倒れたら後どうなるかわからない。だから、私がさっきから言っているように、一年の保障で終わるかあるいは五年間もらえるかということは非常に重要な意味を持つわけなんです。だからあなたが言われるように、時々切れても続いていけばずっと治療できますよというのだけれども、病気で倒れてしまったときその人たちは一年で切れてしまうわけです。だから、精神的にもこれは非常に大きな不安の材料になるのです。だからそこのところを考えて、その人たちの不安を解消するために、長期的に観察すれば時々切れても何十年と日雇健康保険で今までやってきた人だということは調べてみればわかるわけですから、そういうような人にはその実態を考えて五年ということを保障してやるぐらいのことは、あなた自身も認めるように、日雇いの人たちが低所得で非常に不安定な状態に置かれているというこの特殊性から考えてみたら、私はそれぐらいのことはやってしかるべきだと思うのです。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/126
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127・坂本龍彦
○坂本政府委員 私どもも、そういう点については今回の改正の際にいろいろと検討は尽くしたわけでございます。しかし、先ほどから申しておりますように、一般の被保険者との均衡ということから考えますと、ここで、一年の継続した受給資格期間がなくとも一年間は給付をするという点について十分な配慮をいたしたという考え方でございまして、私どもの検討の結果といたしましては、やはり一般の被保険者との均衡、さらに日雇い労働者の就労の実態の双方から考慮して、この考え方は最も妥当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/127
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128・小沢和秋
○小沢(和)委員 日雇い労働者の人たちの実態をいろいろ調べてみると、どんなに本人が努力しても、この一年間の連続した資格というのは取れないような仕組みの中で働いている人たちというのも中にはいるのですよ。例えば私の地元などでは、いわゆる失対事業の中でも開就とか特開というように言われるような制度事業、これなどは年間十カ月しか就労させないということになっているわけです。だから就労するときは一カ月二十二日だとか四日だとか就労しますけれども、ゼロというような月が二カ月ぐらい続く。そうすると、年間でいったら二百二十日くらい働く人でも、実際私が調べてみましたら、年間二百十九日働いている人でも、二カ月続いて無資格になるというような人がおるのです。そのほかにも、例えば山の中で山林労働しているような人も冬場は働けない。この人だって永久にそういう資格を取れない。あるいはギャンブルですがボートとか競輪、あんなところで働いている人というのは文字どおり十三日とか十四日とか、月間のこの資格ぎりぎりのところで働いている。だからちょっと何かあったらすぐ飛ぶのです。だから、こういうような人たちというのは、私は恐らく何万ではなくて相当多くの十何万とかいうぐらい、そういうような不安定な方がいるのじゃないかと思うのですよ。
大臣、今やりとりをいろいろ聞いていただいたけれども、あなたも地元にこういうような不安定就労者がきっといると思うんですよ。その人たちの不安定さ、今後の保障というのが全くないというような状態を考えてみたら、この込もう少し考えなければならぬのじゃないかとお思いになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/128
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129・渡部恒三
○渡部国務大臣 一つ一つの問題をお聞きしますと、それはお気の毒だなとか、この辺はよく考えなければならないのかなという面が出てくると思うのですけれども、制度というものは全体のバランスという中で行われておるものでありますから、今政府委員から答弁したようなことで御理解をちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/129
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130・小沢和秋
○小沢(和)委員 いや、そういうようなことでは実際にはこの人たちは全く救われないんですよ。私は、個別のごく例外的な話をしているのじゃないのです。日雇い労働者というのは大半の人たちが、そういう非常に不安定、そして低所得、一番気の毒な人たちであるわけですよ。だから、私は、この点についてはあなた方がもう一度考慮をしていただくように特にこの機会に要求しておきたいと思います。
それから、この機会に傷病手当のことについてもお尋ねをしておきたいと思うのです。
これまでは傷病手当金は日給のほぼ六割に相当するぐらいの金額が出ておったわけですね。ところが今度は、月収に計算をし直してその三十分の一の六割、一日当たりをこういう計算にするわけでしょう。そうすると、働く日数が非常に不安定で少ない人たちは非常に大幅な減額ということになるのじゃないでしょうか。この点とういうふうに検討されましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/130
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131・坂本龍彦
○坂本政府委員 傷病手当金につきましても、基本的には健康保険の考え方と均衡をとった考え方に立っております。現在の傷病手当金は働いた日の賃金日額の平均の六割を、最高六カ月までは毎日、病気で働けない日に支給するということでございまして、通常、一月のうちに三十日丸々働かない場合にも、傷病手当金だけは三十日全部支給ができるような仕組みになっております。
しかしながら、そういう制度のもとでは、結果的には、就労した場合の月収よりも傷病手当金の額がむしろそれを上回るというようなケース、これは多少極端でありますけれども、そういうケースも理論的にはあり得るわけでございまして、一方、健康保険の方の傷病手当金というのが、三十日間の一日当たりの平均的報酬をもとにして、その六割を毎日、休業期間中支給する、こういうことでございますので、日雇い労働者の場合も今回、健康保険の中に取り入れるに当たりましては月収の月一日当たり、これまでのように働いた日の一日当たりでなくて、一月間に働いた総賃金を三十で割って、月の一日当たりの平均収入、これの六割ということにいたしまして、一般の被保険者との均衡をとることにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/131
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132・小沢和秋
○小沢(和)委員 今もまた健康保険の一般の人たちとのバランスということを言われたわけでありますけれども、今度、健康保険の一般の人たちも最低保障を三万円から六万八千円まで引き上げるわけでしょう。そうすると、こういうような人たちの中でも、実際のふだん働いていたときに近い額とかをもらえるような人たちというのは何十万とか出てくるのじゃないですか。これはおとといここで審議をした雇用保険の場合にでも、そういうような六割の支払いということになると同じような現象が起こるというようなことが指摘をされたのですけれども、一番低い人たちについてある程度ここまでは保障しようじゃないかというような考え方を持ち出せば、そういうようなことというのは現象として起こってくるのですけれども、しかしそれは、そういう極端に低い人たちを実際に働けない期間何とか少しでも生活を見ようという趣旨からするならば、そういうようなことが現象的に起こったからといってそれは矛盾であるとか、けしからぬとかそういうようなことにはならないのじゃないかと思うんですよ。
で、今も言いましたように、雇用保険法については、相変わらず考え方としては一日の実際の収入の六割、それから労災の保険についても同じように一日の実収のほぼ六割ということでやられているわけですから、こっちの方のバランスからいっても、この健康保険の傷病手当金だけが今までよりも大きくマイナスになって収入が減るようになるということは、これはだれが考えてみても、そっちのバランスからいったっておかしいのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/132
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133・坂本龍彦
○坂本政府委員 最初に、健康保険の方の最低保障とおっしゃいましたけれども、これは標準報酬の下限のことをおっしゃったのだというふうに思っております。傷病手当金自体には最低保障という考え方はございませんので、その基礎となる賃金の一番最下限を上げるという結果によって給付額も結果的に一番下の金額が上がることは事実でございますが、同時に、それによって保険料の負担の方も最下限の場合の金額が上がってまいります。したがいまして、この保険料負担と給付と両方にかかる最低の基礎賃金をどういうふうにするかということになりますと、これはやはり、実際に低い賃金の方がいる場合に保険料も含めてこれを高くするということにはいろいろ問題があろうかというふうに考えるわけでございます。したがって、傷病手当金の最低保障という考え方は現在の制度の考え方としてはないというふうに考えております。
それから、失業保険の関係でございますが、これは若干細かいことになろうかと思いますけれども、支給日数が必ずしも三十日丸々ということではないようでございまして、納付日数によって、これが多くなってまいりますと少し支給日数が加わるが、実質的には相対的に割合が減ってくるというような仕組みになっておると私は記憶しておりましたので、そういう意味においても、いろいろバランスのとり方、考え方はございますが、私どもの考え方は先ほど申し上げましたようなことで、現行の健康保険との兼ね合いからいって妥当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/133
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134・小沢和秋
○小沢(和)委員 ぼつぼつ時間が来たようですから、あと一、二だけちょっとお尋ねをして終わりたいと思うのですけれども、月収の六割という考え方でいくと、健康保険の被保険者である日雇い労働者というのは必ず失業保険にも入っているわけですよ。同じように二カ月二十八枚、六カ月七十八枚ですかという形で入っている。だから、日雇いの健康保険による傷病手当金をもらっておった人は、こっちのあぶれた日には必ず失業保険金をもらっておる。だから、月収という考え方でていくなら、この人たちはあぶれた日には失業保険の給付をもらうということも含めて、それでこういう非常に不安定な最低の生活を維持しておるという実態があるわけですよ。だから、あなた方が月収、月収と言うのだったら、非常に不十分であるけれども、こういうような月収も制度化されておるという点でこの六割ということも考えてやらなければ、実際、一カ月に十何日しか働かないというようなわずかなその月収だけに着目して六割ということにしたのでは、全くこれは生活の保障にならないんじゃないかという点で、強くこの点の改善をお願いしたい。
それからもう一つは、高額療養費の問題ですが、これも一問だけ申し上げるというと、今までは日雇い労働者は全部三万九千円ということで線を引かれておったわけでしょう。ところが今度は、いわゆる低所得者だけがこの三万九千円で、残りの人は一般と同じように五万四千円の高額療養費ということになる。ところが、低所額者というからどれくらいかと思ったら、非課税世帯というのでしょう。非課税といったら、日雇い労働者でも今はほとんど非課税というのはない。大体は均等割ぐらい以上に皆なるというのです。そうしたらほとんどの人が五万四千円になるのです。一遍にここもまたぱっと上がる。だから、あなた方はさっきから、日雇い労働者と一般の健康保険とのバランス、バランスということを言われるけれども、実際には非常に低い人たちが制度的に見るならこんなにひどいことになるのです。この辺、ぜひもう私としてはもとのような制度に戻してもらいたいけれども、運用の面で救える点があれば救うということも含めて考え方をお尋ねしたいと思うのです。なんなら大臣が答えてください。基本的なその辺はどうかということをさっきから私はお尋ねしているわけですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/134
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135・坂本龍彦
○坂本政府委員 高額療養費につきましては、これは全医療保険制度の横並びで考えていくべきであろうと思うわけでございます。したがいまして、日雇労働者健康保険、健康保険あるいは共済組合、国民健康保険、それぞれにつきまして同じような基準で設定をしておるわけでございます。それぞれの制度におきまして低所得の方がおられるわけでございますので、低所得の方とそれからそれよりもう少し所得の多い人との均衡という問題があろうかと思いますが、日雇労働者健康保険特有の問題という考え方は今回はとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/135
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136・小沢和秋
○小沢(和)委員 これで終わりますけれども、大臣、日雇健康保険が一般の健康保険に吸収されたことによって、こんなにいろいろな点で今までに比べるとうんと悪くなるのです。だから私は、少しでも運用の面で改善して、この人たちを救える点があれば救えるようにぜひ真剣に検討してもらいたいと思うのですが、大臣、その点の所信だけ一言、もう一遍改めてお尋ねします。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/136
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137・渡部恒三
○渡部国務大臣 今悪い面を御指摘いただいて、冒頭では先生に評価していただいたように、我々も過去のことを随分と反省しまして今回の改正に持ち込んだわけですから、これは全体としては先生にもお褒めをいただいたということで、こういう仕事はやりがいがあるなと思っておるのですが、しかし個々の面では、今先生から御指摘のような問題点があることも今十分に承知をいたしましたので、今後運用面等で本当にお困りの方をお救いする方法があればできる限り勉強してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/137
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138・小沢和秋
○小沢(和)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/138
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139・稲垣実男
○稲垣委員長代理 この際、暫時休憩いたします。
午後一時三十四分休憩
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午後四時四十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/139
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140・有馬元治
○有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。浦井洋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/140
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141・浦井洋
○浦井委員 特定療養費の部分についてお聞きしたいんですが、きのうの参考人質疑でも、余りこの項目については審議をしておらぬというふうに参考人の社保審のメンバーの方が言われておったし、また日医の参考人で中医協のメンバーの方は、こんな仕事を中医協に押しつけられてもなかなかやれぬというようなことを言われておったわけですし、非常に不透明な、いわゆる今度の改正案の中では最も不透明な部分ではないか。そこで、その底にどんな意図があるのかということがわかりにくいので、少し詳しく質問をしたいと思います。
まず大臣に、午前中の質疑の中で私の質問に答えて、自由診療出来高払いを堅持するんだというようなことを言われた。これは現物出来高払いということを指されているわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/141
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142・渡部恒三
○渡部国務大臣 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/142
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143・浦井洋
○浦井委員 そこでお尋ねしたいんですけれども、今度のいわゆる改正案なるものを見ますと、今大臣の言われた現物給付を定めておるところの健康保険法四十二条に、「(其ノ者ノ選定ニ係ル特別ノ病室ノ提供其ノ他ノ厚生大臣ノ走ムル療養ニ係ルモノヲ除ク)」という括弧書きがついてきておるわけです。そして四十四条が新しく設けられて、そこで特定療養費がずっと列挙されておるわけですよね。そういう格好になってきておりまして、結局、今大臣が言われた現物出来高払いの現物の方のところが、括弧書きでそれを除くということで、現物給付方式が法体系上か知らぬけれども一部分カットされた、修正された、あるいは一部分否定されたというふうに言えるんではないですかね。
それともう一つ、この調査室のいただいた資料によりますと、昭和十七年に法律第三十八号という格好で初めてこの現物給付の項が出てまいりまして、戦争をまたいでずっとそのままであって、今度初めて 老人保健のときはちょっと別ですよ。しかし、今度初めてこの現物給付のところに括弧書きが出てきて、これは、現物給付の部分的な否定あるいは一部修正のような格好になるというふうにとられても仕方がないじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/143
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144・吉村仁
○吉村政府委員 私ども、今回特定療養費制度というものを設けたわけでありますが、それは現物給付主義を否定しようというものではございません。ただ、今先生御指摘の四十三条の規定は、一つの立法技術的な観点からそういう規定をしたわけでございます。
その趣旨を申し上げますと、現在の保険医療におきましては、保険診療の範囲内の医療とそれから範囲外、つまり保険で認められていない医療とを同時に行った場合には全額自費診療にする、つまり根っこから全部自費診療だ、これが現物給付の取り扱いでございます。したがって全額自費診療にしてもよろしいわけでありますが、私どもは、今後高度先端医療というようなものがどんどん出てまいります場合に、そういうものをやれば全部自費だというよりは、保険で見れるところは保険で見る、そして保険で認められてない部分だけは自費で見るという格好にする方が、せっかく保険料を払っておるわけですから保険給付で見られる部分は保険給付で見たらいいではないか、私どもはそう思うわけです。そして、そういうことから今回の特定療養費というものを設けたわけでございますが、その場合に立法技術的な制約からと先ほど申し上げましたが、それは、現物給付方式の場合には医療というものを現物で給付するというのが現物給付ということでございます。したがって、医療というものを給付するわけですから、その医療についてここからここは給付外だというわけにはまいりません、医療の現物ですから。したがって、現物給付方式をとろうとすれば必ずオール・オア・ナッシングになってしまうというのが現物給付の特徴でございます。ところが差額徴収というのは料金の問題で、ここまでは保険で見るけれどもここから先は保険で見ないという料金の問題になるわけでございまして、例えば入院料でも、特別室に入るという行為を二つに分けるのではなしに、特別室に希望があれば入ってもよろしい、しかしその場合の料金というのは普通室の料金を払います、普通室と特別室との料金の差というものは患者の負担にしてください、これが差額徴収でございます。
そこで、両者を調和するためには、結局費用の問題だから、療養費の形をとって療養費の支給をいたします、しかし保険で見る部分はこれは代理請求あるいは委任払いというような形で、現在の現物給付方式と全く変わらないような仕掛けで払う。これは現在家族の給付というのは理論的には家族療養費ですから、そういう形を利用して、差額徴収というものを一つ法律の規定にしたというのが今回の法律の規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/144
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145・浦井洋
○浦井委員 今保険局長からるる説明がありまして、現物給付は否定しない、しかし医療に線引きをするのが難しいので云々というようなことでありますが、それであれば、今言われたように家族、被扶養者の場合は療養費払いが基礎にあって、そして代理請求なり委任代行払いというような格好になっておる、そういう違いがあるわけですよ。だから、なぜ今まで現物給付が原則であった被保険者本人に、療養費払いを基礎にした被扶養者の方式を持ってきたのかという疑問が残るわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/145
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146・吉村仁
○吉村政府委員 例で御説明して申しわけありませんが、東京から神戸に行かれるまでにグリーン車で行くか、普通車で行くかという二つのやり方があるわけですが、グリーン車で行くというのは保険の給付内にしていないと仮にいたします。普通車で行かれるなら全部費用を保険で持ちます。こういう場合に、それじゃみんな普通車に乗らなければならぬかというと、やはり希望によってはグリーン車に乗りたい人もおられると思うのです。その場合に、それじゃグリーン車へ乗るのだから全部自費でおやりなさいというやり方と、グリーン車と普通車の料金の差額は自分で持ってください、こういうやり方と二つあると思うのです。私どもは今回のやり方で、普通車の料金はグリーン車にお乗りになってもお払いをいたします、しかしグリーン車と普通車の差額は御本人の負担にしてください、例えて言えばそういうようなことを考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/146
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147・浦井洋
○浦井委員 保険局長は実態論を言われたのですが、私は理念の上で問題があるというように思うのです。というのは、午前中もちょっと申し上げたのですけれども、被用者保険、健康保険というのは、本来、雇用されておる者が、国と資本家の負担によって、保険事故が起こったときに医療給付を受けるということから出発をして、それだから初めは被保険者本人だけであった。それが途中から被扶養者が入ってきて、それで療養費払いを基礎にした代理請求制度に乗っかって、事実上現物給付みたいな格好で五割から七割に来たわけですね。だからそういうことからいけば、被扶養者の今置かれているそういう形というのは、社会保障の理念あるいは公的医療保険の理念から言うたらやはりおくれておる、後進性の残っておる部分ではないか。だから近代国家になるにつれて、やはり被扶養者についても現物給付の方に近づけていく。事実国民健康保険の場合は、戦後新しくなったときには加入者は全部現物給付になって、そして三割自己負担、一部負担、こうなっておるわけでしょう。それを今回、被保険者本人にそのおくれた部分を、私は後進性の部分だと思うのですが、おくれた療養費払い制度を基礎にした代理請求制度を、なぜわざわざ特定療養費という格好で適用したのかというその理念を私は問うておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/147
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148・吉村仁
○吉村政府委員 健康保険法というのは古い法律でございますので、いろいろな変遷を経て改正をされてきております。したがって、形はそうでございますが、実際の適用と申しますか健康保険の実態からいいますと、これは家族療養費といっても現物給付と同じ運用をしておるわけで、だれも現在、家族の給付が現物給付でなしにあれは療養費払いなんだ、こういうふうに思っている人はいないくらい現物給付化しているのだと思うのです。しかし、健康保険の規定を見ればそれは明らかに療養費払いの形になっておるのです。しかしそれは、私は理念がどうのこうのという問題よりも、実際にそういう形で医療の保障がされておるならばそれはそれでいいんではなかろうか、こういうように思います。
現に今回も、今先生が問題にされております健康保険法の四十二条の規定と同じ規定を国民健康保険にも入れて、それはそういう形で同じような扱いをしたい、こういうことでございまして、私どもは、それを入れたことによって現物給付の原則を崩して療養費払いの方に移行するんだ、こういうようには考えておりません。理念としてやはり現物給付というものが現実的だ。もし療養費払いの方が理念ならば、代理請求だとか委任払いだとかいうのは認めない方がいいわけでございまして、私どもは、保険が適用される部分は現物給付として従来どおりに扱う、ただ保険の適用にならぬ部分の料金だけをひとつ患者の負担にする、こういうように考えただけで、理念上はそれほど変わってないのじゃないかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/148
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149・浦井洋
○浦井委員 だから私は、被保険者本人に療養費払いを基礎にした代理請求のやり方を部分的に入れてきたのが理念的に後退だと言っているわけで、それは今吉村さんが言われたように、国保の加入者にもそれが入ってきたというのは問題だというふうに指摘をしておきたいわけです。
そこで、それでは、今事実上否定されたわけでありますけれども、例えば今度の改正案で、四十四条の三項ですかその代理請求のことが書いてあるのは。その代理請求の項を取り除けば、特定療養費というのは療養費払いに簡単に移行できるわけですね。そういうことは絶対にしないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/149
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150・吉村仁
○吉村政府委員 するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/150
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151・浦井洋
○浦井委員 渡部厚生大臣や吉村保険局長が在任の間だけでなしに、今後とも日本の医療保険はそういうことには絶対ならぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/151
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152・吉村仁
○吉村政府委員 どういう人が厚生大臣になられ、どういう人が保険局長になるのか予測がつきませんので確言できませんが、現物給付の伝統というものは堅持されるものだと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/152
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153・浦井洋
○浦井委員 吉村さんに信じていただくだけではちょっとまだ物足らぬわけだ。というのは、ここに中医協が五十五年四月十七日に出した資料があるのですけれども、「医療経済に関する理論的実証的研究」、特別研究として「沖縄の医療」、こういうことで、本土復帰前の琉球政府の資料なのですが、これを琉球政府から厚生省を経てその当時いただいたわけでありますが、これを見ますと、復帰前の沖縄県は療養費払い制度であって、そこでは受診率が非常に低い、それから医療保険の財政状況は物すごいよい、こういう格好のデータが、中医協が出しておられる委託研究の中にあるわけです。だから、こういうことになると大変なことになる。
それはある開業医の話ということで、簡単に読み上げてみますと、「復帰前は、政府管掌健康保険で、現物給付ではなく、本人が当初診療所の窓口で現金で全額医療費を支払い、後で二ドル以上の金額のものは政府が償還するというものであった。あちらこちらで手間がかかり、現金を受領するのは容易ではない。それゆえ、高額でない限り、患者は保険給付請求手続を行わず、せっかく診療機関は患者のために診療費証明書を作成しても受領に来ない者が多かった。」「こういう状態であるから、患者は個人負担を覚悟する者が多く、よほどのことがない限り受診せず、また保険給付受給手続を嫌った。」云々というような話が出ておる。こういうことを絶対本土で繰り返してはならぬというふうに私は思うわけでありますが、これは大臣も保険局長も私と同じ意見でしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/153
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154・吉村仁
○吉村政府委員 私は実は、今読み上げられました沖縄の一番初めの医療保険をつくるときに、沖縄へ行っていろいろ苦労をした経験を持っております。なぜ療養費払いになったかといいますと、一つは、沖縄の医師会が現物給付にすることに反対でありました。それからもう一つは、やはり沖縄に医療機関が非常に少なかった、したがって、現物給付をやるにしても離島においては現物給付の受けようがない、そういう不公平が沖縄県全体にあったわけでございまして、それで立法府とも行政府とも医師会とも話をいたしまして、療養費払いで医療保険を又タートさせる以外に手がない、こういうことでやったわけでございます。今のような、医師会が賛成をし、医療機関の数がふえていったならばそのときには現物給付にしようということで、また最後は現物給付に現在なったわけでございまして、やはりそれは、現物給付の方が原則であるということについては私どもはかたくそう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/154
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155・浦井洋
○浦井委員 これは私は間接的に聞いたのですけれども、お父ちゃんの医療費を稼ぐために、奥さんやら娘さんが米軍の兵士のオンリーさんになったりしてお金を稼いだというようなエピソードも複数以上聞いておるわけで、絶対こういうことが起こらぬように、ぜひ現物給付方式を堅持していただきたいと思うのですが、一言だけ大臣にひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/155
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156・渡部恒三
○渡部国務大臣 私は、大臣に就任しまして、やはり前の大臣、我々の所属している政党の前の大臣が発言しておることはこれは十分に尊重すべきものと考えてやっておりますから、私の後に大臣になった人でも同じことだと思いますので、自由民主党の内閣が続く限り信頼していただいてよろしいとこう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/156
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157・浦井洋
○浦井委員 そこで、その特定療養費ですね。きのうの参考人質疑の中で、日経連から出てこられた参考人の今宮さんという方は中医協のメンバーなんですよね。その方は、この法律が通った後中医協でいろいろ審議をするけれども、やはり老人保険法のときのようなマルメを主体にした特掲診療料のようなものを期待しておるということを、ちょっとただならぬ発言をされておるわけですよ。だから、私がここで聞きたいのは、その特定療養費について今の診療報酬点数表ですね、これと別建ての点数表を作成する意図があるのかどうか。なぜそんなことを言いますかというと、あなた方が今度提出しておられる四十四条の中に、二項で「勘案シテ」というのがあるでしょう。「勘案シテ」は辞書を引いてみたら考えるということらしいですよ。考えてということは少なくとも同一ではないということも可能性としてあるわけなんです。わざわざ「勘案シテ」という文言が入っておるのは、これはおかしい、あるいは別建ての診療報酬点数表をつくるのではないかという疑念を持ってお尋ねをするわけです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/157
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158・吉村仁
○吉村政府委員 保険診療が適用される部分につきましては現行の診療報酬で処理をする、この基本は変わりません。ただ、特定療養費というのは、先ほど申し上げましたように現行の療養の給付とは別の給付ということが法律の規定上そう書いてあるわけでございますので、それにつきましてはやはり法形式上別個に根拠規定を置いたというにすぎないので、その特定療養費の診療報酬につきましては現行の診療報酬に基本的にのっとったものになる、こういうように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/158
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159・浦井洋
○浦井委員 また疑うようで悪いのですが、その最後が、基本的にのっとったものになるというふうに考えておる、これは全く同じものを適用するということなんですかね。そうではないのですか。私がしつこく言うのは、これは、老人保健法が通った後で特掲老人診療料というのが出てきて、医療法の特例を悪用して老人病院というカテゴリーがつくられて、それが特例許可病院と特例許可外病院になって、そのことが、厚生省にしてみたらはしご受診が減ってよかったというふうに自画自賛しておられるけれども、一番最近号の朝日新聞なんかの出しておる「モダンメディシン」なんか見ますと、やはりこの間私が指摘したように、老人病院、特に特例許可外病院というのが老人の終末処理施設になりつつある。これは大臣に予算委員会で私は言いましたけれども、終末病院、この特集が出ておるのですよ。かなり長く、編集部の責任で。だから、そういうような国会で審議をされてない、中医協マターということになってしまって、中医協で勝手に厚生省の意図するところにだあっと行ってしまいはへんやろか。そこの疑念が、私は老人保健法の後の生々しいのがまだ頭に残っていますから、そういうことは絶対にないということを吉村局長に約束をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/159
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160・吉村仁
○吉村政府委員 診療報酬というのは中医協で決めるものでございまして、中医協というのは、先生御承知のように、診療担当者側と支払い側と公益委員から成っておるわけでございまして、役人が勝手に診療報酬をつくってそれを強行するというようなものではございません。したがって、今先生がおっしゃいましたように、老人の診療報酬につきましても、これは中医協で審議をされ、診療担当者も納得された上での診療報酬でございますので、私ども、中医協で診療報酬を審議していただく過程におきまして診療担当者の意向も十分聞くわけでございますので、ひとつ御心配なさらないようにしていただいて結構なのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/160
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161・浦井洋
○浦井委員 中医協で決めるのではないわけですよね。大臣が諮問をして、建議という方法もありますけれども、大臣が諮問をして、そして審議をしてもらって答申を得る、それで大臣が告示をする、こういう格好になるわけでしょう。だからやっぱり、大臣は大臣でなかなかよう勉強されて大したものだと思うのですけれども、やっぱり保険局サイドの影響力というのは大きいわけですから、だから諮問案をつくるのはやっぱり保険局でつくるわけですからね、そこでもってはっきりとした保証がないといかぬ。というのは、きのう日医の参考人の吉田という先生ですが、吉田先生は、私が特定療養費について、先生、中医協の委員やけれどもどうですかと言って尋ねたら、そうしたら、そんなものを中医協で私はやっていく自信ないですよと言って、既にお手上げなんですよね。そうしたら保険局の思うようになるでしょうが。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/161
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162・吉村仁
○吉村政府委員 中医協の委員の個人的な御見解については私も口を差し挟むあれはございませんが、しかし、やはり中医協の委員というのは、診療側の代表として中医協にお出になって、診療報酬が日本の医療の進展のために役立つように、かつまた、日本の医療機関の経営が安定をするように、そしてまた、技術を尊重するような形で仕組まれるように、いろいろ御意見を言われる立場の方でございますので、そういうことはないと思います。まだなられたばっかりだからそういうことを謙虚におっしゃったのかもしれませんが、私は必ず立派な御意見をお述べになるものだと確信をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/162
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163・浦井洋
○浦井委員 とにかく疑念をぶつけて、保険局サイドのはっきりとした返答を得なければいかぬですからね、こういう問題については。
そこで今、先ほども吉村さんはもう既にちょっと説明されたのですけれども、特定承認保険医療機関の問題、これはもういろいろ聞かれておるのを省略いたしますと、要するに知事に申請をして許可をとる、こういう格好になるわけですね。その場合に、そうすると、具体的に聞きますと国立循環器センターとか国立がんセンターとか、これは前に名前が出ていました。それから腎センターも出ていましたかな。それから大学附属病院、東大とか京大クラスでやるわけですか、それとも私立も含めまして八十七大学すべてに行き渡りそうですか、この辺はどうですか。それとも旧帝大、大帝大といいますか、こういうところだけになりそうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/163
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164・吉村仁
○吉村政府委員 今のところ、そういうように旧帝大だけに限るとかそういう気持ちは持っておりません。本当に特定承認医療機関として、高度先端技術を実施し得る人的なスタッフと設備とを持っておる医療機関と大学病院というものを頭に置いておるわけでございます。全国の大学病院が百五十三カ所ございますが、その百五十三カ所全部指定をするということでもございませんし、また私立大学を排除するつもりもございませんし、とにかく個々の医療機関ごとに、その高度先端技術を実施できる機能や特性というものを勘案して承認をしてまいりたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/164
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165・浦井洋
○浦井委員 吉村保険局長の話を聞いておると、大学病院というのは本来高度先端の医療をやるところと違うんですかね。そこで、ここは特定承認保険医療機関であり、ここは非特定承認医療機関であるというようなこと、何か自己矛盾するみたいな感じがするんですがね。これは別にお答えを得ようとは思いませんが。
もう一つの問題は、大学病院全体を指定するのか、それとも特別なことをやっておる特別な科だけを指定するというような格好になるのか、その辺はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/165
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166・吉村仁
○吉村政府委員 私どもは医療機関全体をとらえて考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/166
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167・浦井洋
○浦井委員 科でなしに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/167
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168・吉村仁
○吉村政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/168
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169・浦井洋
○浦井委員 それで、もう一つ、これは確認みたいなものですが、そうすると、これは特定機関というふうに省略をして表現しますが、その特定機関として指定された大学病院なりの療養というのは、これはすべて特定療養費が適用されるわけですね、腹痛であっても感冒であっても。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/169
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170・吉村仁
○吉村政府委員 法律上は、その特定医療機関で受ける風邪や腹痛でも特定医療費の対象ということに相なります。ただし私どもは、療養担当規則で、特定医療機関におきましても、通常の医療を行う場合には患者から一部負担以外の費用を取ってはならぬ、こういうように書きたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/170
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171・浦井洋
○浦井委員 だから、その差額徴収はそれでよいと思うのですよ、あなたの言われるように。しかし前の疑念、例えば療養費払いになったりあるいは別建ての特定療養費の診療報酬体系がいずれ出てきたりしたような場合には、これは大変なことになるのです、こういう仕組みをつくると。
ちょっと吉村さん、あなたは、去年の三月二十二日にある健保組合で講演をされて、このときはかなり吉村さんは好きなことを言われておるんですが、ちょっと読み上げてみますと、
開業医には開業医にふさわしい点数表を作ってもいいし、大学病院には大学病院にふさわしい点数表を作ればいい。総合病院と百ベッドぐらいの病院にはそれなりの点数表があってもいい。事業主医局、これなんですよね。事業主医局や僻地の国保診療所は点数単価,でなく、予算で行っていく総額請負方式があってもいいと思う。
従って、病院の施設あるいは医療機関の施設毎に少し点数のやり方を変えてはどうかという意見を持っており、成案を得たら中医協に示したい。
大学病院をひとつ取り出して、特別の診療報酬体系を大学病院について考えるならば、そういう考えも成立すると思う。今後保険医療機関の種別を十分考えながら、その種別に応じた点数表を考えていくのが、診療報酬合理化のひとつの路線あるいは政策の選択のやり方ではないかと思っている。こういうふうに、かなり思い切ったことを言われておるわけです。私が命ずっと、るる吉村さんに疑念を尋ねたその疑念の根源はこの辺に一つあるわけなんですね。こういう考え方は、それなら保険局長は止揚されたわけですか。アウフヘーベンされたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/171
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172・吉村仁
○吉村政府委員 一つの考え方として私は十分あり得る考え方だと思って、今でも思っておりますが、やはりそういう考えを述べましても余り賛成者を得られませんでした。したがって、今先生が読み上げられた私の意見について余り賛成の向きがございませんでした。したがって、やはりいろいろな意見を聞いてやるべきものでございますので、私ども、今私がお答えをしておるようなことで処理をしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/172
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173・浦井洋
○浦井委員 一応この考え方は賛成者が少なかったので今は否定をしておる、こういうふうに理解をしておきます。
そこで、特定承認保険医療機関、特定機関での高度医療、これは問題で、高度先端というのは一体どこで線引きするのかという問題が出てくるわけであります。きのうの日医の参考人も、その線引きが不可能だというふうに言われておる。これは医務局長、これから五年かあるいは十年ぐらいの間に日本の医療の技術革新というのはどれぐらいまで進むものなんですかね。特に中曽根内閣としてはがん撲滅十カ年戦略ですか、何かそういう重点目標も決めておられる、えらい力を入れておられるわけですね。かなりな部分が高度先端になってくるのではないか、私はそう思うのですが、簡単に、答えられる範囲で、医務局長から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/173
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174・吉崎正義
○吉崎政府委員 十年ぐらいの間にどれぐらい医療に関する科学技術が進むか。いや、これはどうもまことに難しいお尋ねでございまして、私のよくお答えできる範囲ではございませんけれども、非常に進むと思います。
例にもお挙げになりました対がん十カ年総合戦略でございますが、これはがんの本態解明を図ることを目的としておりますけれども、研究にはやはり波があるようでございまして、がんの本態解明について、たまたま上り坂のところへこういう十カ年総合戦略を立てることは極めて有意義である、研究者の方々の御評価も得ておるところでございます。したがいまして、私どもの期待といたしましては、がんの本態はほぼこの期間内に解明されるのではないかと大いなる期待を持っておりまして、これが予防、診断及び治療に反映されてくるだろうと思います。
そのほかにつきましては、例えばNMRというふうなものも現に始まっておりますが、こんなものも実用化されるでございましょうし、その他いろいろな新しい診断、治療技術が実用化されるのではないかと思います。材料科学等も進歩をいたしますので人工臓器等も大いに開発される、そういうことが期待されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/174
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175・浦井洋
○浦井委員 大学病院というのは言うまでもなく研究、教育、それから高度な医療、一般医療、いろいろありますね。これは線引きできるのですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/175
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176・吉村仁
○吉村政府委員 高度先端技術は何かということは、これは線引きはできると私どもは考えております。
例えば、私どもが予定といいますか、今行われているうちでどういうものを高度先端医療と考えておるかということについて申し上げますと、例えば診断技術で考えてみますと、内視鏡化レーザー診断というようなものが考えられるわけでございますし、治療技術の中では、がんの温熱療法、それから衝撃波による尿路結石破砕療法あるいは補助人工心臓、数え上げてもそういうような技術があるわけでございまして、これを保険に導入することができるまでの間、高度先端技術として、こういうものをやっておられる大学を指定して特定医療機関とする、こういうことは十分できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/176
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177・浦井洋
○浦井委員 その場合に、その高度先端だというところの標準料金みたいなものをつくられるわけですか。
それから、ちょっと突拍子もない話ですけれども、その高度先端の部分というのは自己負担になるわけでしょう。それに附加給付は適用されるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/177
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178・吉村仁
○吉村政府委員 まず附加給付の問題でございますが、これはその健保組合でどう考えるかという問題と関係すると思いますが、附加給付というのはやはり保険給付の中身について付加をするということになるのだろうと思います。したがって、保険給付外のものについて附加給付を認めるというのは保険法の概念からいっていかがなものかというよう−に考えます。
それから、高度医療の料金でございますが、これは私ども、一応その料金は医療機関と患者との相対の関係で決めるべきものだ、こういうように考えております。患者の同意が必要でありますし、また患者が希望するものでなければならぬ。そして、その内容と額というようなものについて公示をさせる、表示をさせる、こういうようなことについても考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/178
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179・浦井洋
○浦井委員 文部省、来ておられますか。−文部省の医学教育課長にお聞きしたいのですが、今保険局長のお話をよく聞いておられて、直接おたくの所管になるわけですけれども、大学附属病院における今までの実態ですわ。例えばCTが保険点数が設定されるまで一定の期間があった、あるいは例えば名古屋大学とか東海大学などで骨髄移植が集中的に研究され行われた、今は点数がありますけれども、こういうのは者どういうふうになっておったわけですか。一般的に、あるいは法則的なものがあればあったでお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/179
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180・佐藤國雄
○佐藤説明員 お答えいたします。
先生御承知のように、国立大学というところにおける特殊性から、従来から、差額病床とかあるいは分娩に係る費用とか、そういった特定の文部大臣の承認を得たものについては料金を定めて患者から徴収しているわけでございますけれども、一般的には、その他の経費につきましては学用患者経費あるいは科学研究費等で見てきているわけです。私立大学におきましても、その附属病院においてはやはり科学研究費やあるいは教育研究等の学校のお金、校費というもので負担をしてきているわけでございますけれども、先ほど先生おっしゃいました個別の問題で、名古屋大学の骨髄移植につきましては全額学用患者経費で見ました。また、CTの問題につきましては、非常に古いことでございましてはっきりしたことはよくわかりませんけれども、学用患者経費で見ていたところと、一部には準用したといったような報告を受けているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/180
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181・浦井洋
○浦井委員 非常に複雑な問題ではありますけれども、文部省にお尋ねしますが、今ここである程度こういう輪郭がはっきりしてきたこの特定機関というものが今後つくられて、私も調べてみたのですけれども、確かに従来は、今課長を言われたように、学用患者費であるとかあるいは一般研究費であるとかあるいは無料奉仕みたいなもので、今まで比較的患者負担は少なかったと思いますが、これが特定機関という格好でぴしっと指定され線引きがされると、トータルとしてはやはり患者負担というのは今までよりもふえないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/181
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182・佐藤國雄
○佐藤説明員 私、ただいまのお尋ねにつきましては、どうなるか具体的によくわかりませんが、御承知のように財政的な面でも国立大学も逼迫しておりますし、また私立大学の方の附属病院というところもなかなか経営が問題である。そういうようなことで、大学病院側としては、高度の医療の問題につきまして中医協の方に大学病院の関係者が事情を御説明をしたというようなことでございまして、今度の高度医療につきましての具体的な内容は中医協の方の意見を聞いて定める、こういうふうに今厚生省の方でお話しになっておりますので、具体的にどういうふうに結果が出てくるかということにつきましては、ただいまの時点ではお答えしかねるというふうな感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/182
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183・浦井洋
○浦井委員 いろいろ聞いてきたのですけれども、私はやはりどうも疑念が晴れぬわけであります。効率性、安全性が確立をされ、普及度がまだもう一息であるのが高度先端に入るのだ、そういうことですね吉村さん、この前から言われたのは。それで、普及度が一定度のところまで来れば保険点数を設定するということでありますが、まとめて言いますと、老人病院ができた、今度は特定承認保険医療機関ができるという格好で、病院のランクづけがまたランクが一つふえるのではないか。それから、今までは大体、大学附属病院での高度な医療であっても、無理をしながらでも、とにかく学用患者費用だとか一般研究費で充当して、あるいは無料奉仕で充当して患者負担がなかったのが、今度ははっきり患者負担が出てくるということ。それから、特定機関と非特定機関との間で、やれる手術とやれない手術、やれる手技とやれない手技みたいなものが出てきて、かえって普及度がおくれるのではないか。医学医療の発展がおくれるのではないか。そこへ持って来て、私は、四十四条の三項の代理請求の項を取っ払えば療養費払いができるというところにやはりひっかかるわけなんですよ。だからそういう点で、学用患者の費用だとかあるいは一般研究費をふやすというようなやり方でやっていくべきではなかろうかと私は今でも思っておるわけであります。
それで、もう一つ証拠を挙げてみますと、これが警戒を要しなければならぬというのは、これは保険局でしょうけれども、去年の十一月十七日に社保審の全員懇談会に出された資料の中で、これは大学病院等については「保険医療上の取り扱いについてそのあり方を見直す」という項があるわけですね。その項は「医療費適正化の強力な推進」という項目の中に入っておるわけなんです。だから、私がなかなか疑念が晴れないのも、吉村さんも聞いておられてもっともだろうと私は思うわけなんです。いろいろ言われるけれども、結局は医療費抑制の一つの手段ではなかろうか、この疑念がまだ晴れぬでおるのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/183
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184・吉村仁
○吉村政府委員 まず、特定療養費の制度につきましては、先ほどからるる申し上げておりますように、保険診療と保険で認められていない診療との間を調整しようということでございます。例えば人工透析というのが現在保険診療の中に取り入れられておりますが、この人工透析の技術の経過というものを追ってみますと、昭和三年に人へ適用をしておるのです。そして昭和二十年になってやっと救命に成功をした。そして、日本の国内に導入されたのは昭和二十九年でございます。それからいろいろな周辺技術の開発等がございまして、保険に導入したのは昭和四十二年でございますが、二十九年から四十二年の間は人工透析をやれば全額自費になるわけですわ。それをそうではなしに、保険で見れるところは保険で見ましょう、しかし人工透析のそこの部分の技術だけはまだ保険に取り入れられてないのですから自己負担をしてください、これが今回の制度でございまして、全額を自費負担にするのと人工透析の部分だけを自己負担にするのとどちらがいいかと言えば、私どもは人工透析の部分だけを自己負担にする方がいいのではないか、こういう考え方で物事を考えておるというのが一つであります。
それから、私どもが概算要求の時点におきまして、大学病院の取り扱いというものを医療費適正化の一つの項目として取り上げておるわけでありますが、やはり大学病院における普通の診療を見ましてもかなり濃厚診療でございます。普通の医療機関と比べましてかなり高い程度の診療が行われておる。高い程度というのは濃厚度が大きいといいますか、注射の施用につきましても、あるいは投薬におきましても、検査におきましても大学病院というものは一般の医療機関より高いわけであります。したがって、それが教育あるいは研究のために行われている部門もあろうか、私どもはこう思っておるわけでありますが、そういう部分と保険診療との関係というものはやはりきっちりした方がいいのではないか、保険料で払うべき分野と研究費なり教育費で払う分野とは本来は明確に分けるべきなんではないかというように考えてみたわけであります。しかも大学病院では、教育の機関ですから、そこで習った診療の中身というものを、その学生が卒業すれば普通の医療機関へ行ってそのとおりをするわけですから、やはり大学病院におきましては保険診療は保険診療として正しい診療というようなものも教育をしてもらいたいと、こういう私どもの気持ちがあったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/184
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185・浦井洋
○浦井委員 るる説明されたわけですけれども、逆に言えば、人工透析なんかも保険点数の設定が十三年かかっておるわけでしょう。
これは日経メディカルであります。四月二十三日号だから最新号だろうと思うのですが、ここでは東北大学の葛西という先生が「中心静脈栄養は四十三年ごろから本格的に研究され、それが四十五年には確立した。しかし、それが健保で認められたのは五十年ごろ。それでも、これは早い方だった。ともかくこの十年の医学の進歩はものすごい。技術的に確立しても保険で認められないという事例は今後、ますます増えていく」、こういうふうに予想しておるわけなのです。
それからある病院、郡山市の坪井病院の院長さんは、「教育、研究と医療とは画然と分け、別々のファンドで扱うのが理想かもしれない。だが、受け皿となるファンドを十分整備しないまま、無理に線引きをしては、大学医療にとって決してプラスにはならないだろう」、さらにそこで編集記者が書いておるのは、「老人保健法で老人医療費に歯止めをかけた厚生省が、次のターゲットとして、医学の進歩に目を向け、差額徴収で増大要因を押し込め始めたとも言えるからだ。その結果として、差額部分がどんどんふくらむという心配もある。」、こういう危惧を日経メディカルの記事は書いておるわけであります。
だから、これはなかなか大変なことだ。私ははっきり言いまして医療費抑制策の一つだと思うので、この部分は撤回しなさいという要求を持っておるわけでありますが、時間もあれですから、もう一つの一般保険医療機関の中での差額徴収といいますか特定療養費について、ついでに尋ねておきたいと思います。
これは、部屋代と歯科材料を当面は指定をするわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/185
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186・吉村仁
○吉村政府委員 私どもは今のところそう考えておりますが、そのほかに、新開発の治療材料の一部みたいなものがあるいはあり得るかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/186
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187・浦井洋
○浦井委員 まず一つの批判は、やはり差額ベッドというのを規制をしていくという方向で今まで厚生省は指導してこられた。その結果、これはもう数字をそちらから言ってもらったらいいのですけれども私が言いますが、五十六年に私大の差額ベッドが一万床あったのが、五十七年、五十八年は大体六千五百床ぐらいに減ってきた、これでよろしいですね。数字は合っていますね。だから、そういう形でとにもかくにも保険外負担が減ってきておる。これを百八十度指導方針を転換するのではないかというのが私の素朴な疑問であります。
この間からの吉村さんの返答では、法的な裏づけをきちんとさせた方が規制しやすいというような表現をされておるのですが、私はそれはようわからぬ。それなら、この法律がもし通ったならば、あるいはこの通達を政省令に格上げするか、あるいは何かそんな強制力を裏づけさせるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/187
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188・吉村仁
○吉村政府委員 中医協でもってそういうような方がよかろうというようなことならば、そういたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/188
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189・浦井洋
○浦井委員 そこで、もう一つの問題は、今のは新開発の材料を指定するやもしれぬということだったのですね。そういう中で私が心配するのは、患者の選定が適当と大臣が定める療養の中に、いろいろな技術料が入ってこないだろうかという心配であります。例えば技術料は、これは今のところはないですか、吉村さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/189
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190・吉村仁
○吉村政府委員 技術料の差額徴収については、すべしという議論とすべきでないという議論がございます。確かに、現在の診療報酬の一番の問題というのは技術差がないというところに問題があることは事実なのです。これを差額徴収という形でやれという御意見もあることは事実でございますが、私どもはやはりこの点は慎重に考えなければならない問題だ。したがって現在のところ、差額徴収の方式を利用して技術料にかかわる差額徴収をやろう、こういう考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/190
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191・浦井洋
○浦井委員 大体おわかりだろうと思うのですけれども、大臣、技術料は慎重に取り扱いたい、中医協にもそういうようにお願いしたい。それから、当分の間は技術料は考えないということなんですが、これは絶対ではないわけなんで、初診料であるとか入院看護料であるとかあるいは給食料というようなものが、この患者の選定が適当とあなたが定める療養の中に入ってくるかもわからぬ。
例えばどんなことが起こるかといいますと、例えば給食料を特定療養費に指定するということになりますと、患者の選定によるわけですから、若い骨折の患者さんなんかで、毎日毎日お金出すよってにビフテキ食いたいというようなことになる。そうしたら病院の方は、この患者さんには毎日ビフテキ、そのかわり一日二千円給食差額をもらうのだ、この患者さんはどんぶり御飯で普通の給食だ、無料だというような格好で収拾がつかぬようになる。どう言いますか、治療の均等性が損なわれると言いますか入院管理ができぬようになるわけですよね、給食料がそういうふうになると。看護料が指定されるとどないなりますか。これはその看護婦さん気に入ったから、お金出すよってにわしの専属になってくれというのが出てくる。こういうことが現実に起こらないとは言えぬわけなんですね。診察料が指定されるとどないなるか。これはアメリカでやられているそうですけれども、きのうも日経連の参考人が言われておったのですが、定額制の医療費をつくれ。DRGのことなんでしょうね。そこでは、安い保険料を掛けておる健康保険しか持っていない人は、盲腸の手術でもお医者さん一人だ、差額を出せばあるいは高い保険料を掛けておる健康保険を持っておる人は、お医者さんはメスをとる人と麻酔医と二人、もっと高い場合には三人の医者がやる。そういう医療における差別、負担能力に応じて医療に差別が出てくる、こういうことが考えられるわけで、これは絶対に技術料というものを特定療養費に指定したらいかぬというふうに私は思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/191
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192・渡部恒三
○渡部国務大臣 よく武見さんの時代等から、学問、研究の努力が保険に認められないというような議論等もありまして、これは確かにすぐれた医療技術、そうでない医療技術、こういうものが均等の技術料というものにはいろいろ今まで、矛盾ではないかというような議論はあったと思います。しかし現実的に行政でこれをやる場合、この人はすぐれている技術だからこれは高いとか、この人はすぐれてない技術だから低いとか、こういうことは極めて困難でないか。ですから、浦井先生の御心配のようなことにはなっていかないのではないかという感じをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/192
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193・浦井洋
○浦井委員 一応大臣は否定されたわけなんですが、そういうことが私は非常に危惧されるわけです。ウナギどんぶりではないけれども、並みのどんぶりと上のどんぶりと特のどんぶり、高い金を出せば特のどんぶりが食える、庶民は並みのどんぶり、この考え方が、あなたの前の大臣の林さんが出された「医療標準の概念の導入」というところにつながるのではないですかね。だから私は非常に危険だと思う。「ニューフロンティアの育成」というようなことを言われておる。あの文章はもう廃棄されたわけですか、吉村さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/193
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194・吉村仁
○吉村政府委員 廃棄という意味がよくわかりませんが、あの「視点と方向」のことを言っておられるのだと思いますが、あれは林厚生大臣の一つのお考えだろうと私どもは思っております。酌み取って行政の中に入れられるものと、理念としてお示しになったものと、個人的な見解としてお示しになったものがいろいろとないまぜになっておると思いますが、一つの見識ある文章であったというように私どもは評価をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/194
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195・浦井洋
○浦井委員 「あった」という過去形であれば、現在はこれは実用価値はない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/195
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196・吉村仁
○吉村政府委員 文章がそうであったということでございまして、その中に盛られている考え方について、やはり参考にすべきものは十分ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/196
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197・浦井洋
○浦井委員 いよいよ総論部分に近づいてきたわけであります。
私は今のは少し専門的になり過ぎたかなとも思うのですが、今までこういう議論がこの委員会の場でなかったのであえてやったわけでありますが、特定療養費の項については私はまだまだ疑念が晴れぬわけであります。午前中にもこのパンフレットを読み上げましたけれども、この11の項に「多様なニーズに対応」して「高度最先端医療にも素早くこたえます。」、こういうふうにきれいには書いてありますけれども、これはちょっと書き過ぎというか、あえて言うたらちょっとペテンくさいという感じがまだ晴れぬわけであります。だから、こういう漫画を中心としたパンフレットは撤回をしなさい。それと同時に、特定療養費の項については、何遍も言いますけれども、きのうも中医協の委員になられた日医の参考人も、こんなのを持ってこられても中医協としては困ります、あるいは社保審の委員できのう参考人として出てこられた方も、私たちはもうほとんど論議をしませんでしたというようなことさえも言っておられる。あるいは、もう一つ証拠を見せましょうか。
これは一番最近の「週刊社会保障」でありますけれども、ここでは著名な社会保障学者であります佐口卓先生がこんなことを言っておられる。「吉村理論を受けて、五十九年度概算要求の考え方が、五十八年の九月の段階で正式に出てきた。あれが、今度の改正法案では、一部がガラッと変わった。差し替えのようにバサッと変わったのは、例の高額所得者の医療保険の適用除外を引っ込めて、俗称「特定療養費制度」を入れてきた。あれは何だろうかということです。話によると、あれは、一晩で差し替えたとかいわれていますが。」こういう表現にまでなるわけですよね。だから非常に不透明、不分明であるわけですよ、この特定療養費の項というのは。だからきのうの参考人もそういうふうに言われておる。国会に法案を出す前に一割、二割自己負担あるいは退職者医療、国費の削減、こういうことについては余り議論されていないですね、きのう聞いてみたら。日雇健保の廃止と退職者医療くらいが懇談会で議論されたくらいで、法案としてまとまった格好で議論されてない。まして特定療養費というような項目についてはほとんど御存じないというのが社保審の委員の実情であり、それを今度、もしこの法案が通って中医協に持ち込まれたら、中医協の方もお手上げになる。これはもう一遍原点に返って撤回をして、特に特定療養費の項なんて私は極めて巧妙な手段だと思うのですけれども、もしこれをやりたいならば、もう一遍そういう政府の諮問機関にはっきりと公明正大にかけてよう揉んでもらう、私はそれが適当だと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/197
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198・吉村仁
○吉村政府委員 佐口さんの見解というのは、私のあずかり知るところではございません。
それから、差額徴収の問題については四十六年の社会保障制度審議会の意見書に明確に書いてあるわけであります。差額徴収を保険の中に取り入れろということで書いてあるわけでありまして、差額徴収の問題が突如として出てきたと私どもは思っておりません。制度審議会の御意見というようなものを私どもは今回の法案の中に取り入れたつもりでございまして、制度審議会の四十六年の意見書をお読み願えれば私どもの今回の案というものがその意見書に沿ったものであるということがおわかりになる、こういうように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/198
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199・浦井洋
○浦井委員 少しまとめてみたいと思うのです。
私、今までるる質問をしてまいりましたけれども、最後に、吉村保険局長の社会保障なり医療保険に対する考え方をもう一つ尋ねておきたいと思うわけであります。
八二年、おととしの七月に第二臨調の第三次答申が出てまいりました。そこで軽費医療というのは受益者負担で、こういうテーゼといいますか、こういうものが出てまいりました。そこから後、きのうも申し上げたんですけれども、吉村さん、あなたは特に去年の春以来、医療費亡国論であるとかあるいは医療費効率逓減論であるとか医療費需給過剰論であるとか、こういうことをあっちこっちで言っておられるわけであります。これに呼応したような格好で、先ほど私が申し上げたように、林前大臣が昨年の八月に、「視点と方向」という格好で問題を提起された。その中に「医療標準の概念の導入」であるとか「ニューフロンティアの育成」というようなことがあるわけなんですが、ここに私、もう一つ資料を持ってきておるわけなんです。
これは、去年の九月十二日に社保審の全員懇談会に出された、厚生省の「医療保険制度の改革に向かって」、「概算要求の考え方」、この未定稿というのがある。ずっと読んでいきますと、この中で自由診療というところが非常に目立つわけです。「特殊な医療技術・治療方法、特別の快適さやサービスなど給付外医療(=自由診療)に対するニーズも増える。これらの部分が、長い目で見ると、医療の内容等を豊富にさせ、医学医術の牽引車ともなる。」、こういうふうに書いてある。これが九月十二日の文章であります。ところが今度は、十一月十七日になりますと、やはり社保審に提出した厚生省保険局の「医療保険制度の改革に向かって−五十九年度概算要求の考え方」の中ではこれがかなり省略をされて、「特殊な医療技術、特別の快適さやサービスなど給付外医療(=自由診療)に対するニーズも増える。これらに対する保険適用については、一定の社会的評価を加えた上で決定する。」、こういうふうに簡略化されておるといいますか、これは何で簡略化したのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/199
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200・吉村仁
○吉村政府委員 どうして簡略化したか今記憶にございませんが、別に簡略化したわけではございません。私どもは、大学診療の先端医療技術等が医学の進歩をリードしていくということは間違いないだろうと思っております。それを全部自費診療に任せるのがいいのか一保険診療プラス自費診療という形でやるのか、医学の進歩、医術の進歩をどちらがより多く支えておるかということを考えましたときに、やはり保険診療プラス自費診療という方式を考えた方がより望ましいのではないか、こういうことでございます。そこで、どういう形で考えていくべきかということを恐らく九月から十一月までにはいろいろ部内でも検討をしたつもりであります。
そこで、先ほどからお答えしておるようなことで物事を考えてきたわけでありますが、別に基本的な考え方が変わった、こういうことではないような気がいたします。ただ内容を詰めていきますと文章としては少しずつ変わっていく、これはもうやむを得ないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/200
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201・浦井洋
○浦井委員 この十一月十七日の社保審に提出された文章が、多少変わってはおりますけれども、今回のいれゆる改正案がほぼここからとられておるというふうに思えるわけですよ。その中には、そうすると自由診療も給付外医療も肯定をされておるわけなんです。ところが四月の二十七日でしたか、中長期ビジョン「今後の医療政策の基本的方向(厚生省試案)二十一世紀をめざして」、この中にはその自由診療のことは全く触れられておらぬわけですよ。そうするとこれは、自由診療云々というのはこの四月二十七日段階では否定されるわけですか。どこかに書いてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/201
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202・吉村仁
○吉村政府委員 一つは「バイオテクノロジー等先端技術の研究開発の促進と保健医療分野への活用」、こういうようなことが書いてございますが、その辺はそういうニュアンスを含んでおると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/202
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203・浦井洋
○浦井委員 そうすると、保険外医療、自由診療というような考え方、したがって「医療標準の概念の導入」とか「医療におけるニューフロンティアの育成」というような考え方というのは、これは今は顔を出さないけれども、今後社会の変化、いろんな条件の変化によってぼちぼちゃっていこうということですか、端的に聞きますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/203
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204・吉村仁
○吉村政府委員 やっていくことが適当ならばやっていくのが、これはやはり行政の責任ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/204
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205・浦井洋
○浦井委員 そこで、あなたの考え方がほぼわかってきたわけであります。私が厚生省、特に保険局の考え方をずっと経過を追ってみますと、これは私の考えですが、医療保険の改悪の仕方、というとどぎつい言い方だが、あるいは規制の仕方には、三段階あると思う。これは石原信吾さんが言っておられるのですね。一つは、やはり不正の摘発とか監視を強化するというような、むだとかあるいは不正の排除をやる。それからその次の段階は、医療提供方式を効率化する、合理化する。しかしそれでも、高齢化が続くし、技術革新が続くだろうから医療費はふえ続けていくだろう。だから、医療保険のどこかから国が手を引きたいんだ、手を引こう、これが私は三つの考え方だろうと思うのです。一次元、二次元、三次元というような格好で言ってもいいですけれども。だからその三つの、三次元のところではやはり自然に自己負担をふやす、あるいは私的保険にその部分をゆだねるとか、あるいは、大臣は現物給付方式は堅持すると言われるけれども、一割自己負担、二割自己負担というのは、理念では後退ではないけれども実際には現物給付の後退である。そういう一次元、二次元、三次元のものが、社会の反応を見ながら、世間の反応を見ながら適当なところをピックアップして、それで盛られてきたのが今あなた方が出しておられるいわゆる健康保険の改正案であるというふうに言わざるを得ぬと思うわけであります。
ところが、これは、資本主義社会ではなかなかうまいことできておりまして、私どもが入手した資料によりますと、生命保険資本がこの健康保険の改正を手ぐすね引いて待っておるわけなんです。
例えばこういう資料があります。四月の二十日、生命保険協会理事会が行われた。これは社長連中の集まりであるそうでありますけれども、理事会終了後の朝食会で、大蔵省保険部の幹部がこういう発言をしておるわけです。ある理事からの、健保改正によって生じる医療費自己負担分を実損てん補する商品を認めてほしい旨の要望に対して、大蔵省としては前向きに検討したいが、厚生省との摩擦を避けるため、時期を見て検討すべきと思う、厚生省に、健保で貯えない医療費分を民間で補完してほしいと言わせてから動き出すのが最適である、なお損保も同様商品を検討中である、こういうふうに言っている。こういうこと、大臣なり吉村さんは御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/205
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206・吉村仁
○吉村政府委員 存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/206
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207・浦井洋
○浦井委員 大臣はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/207
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208・渡部恒三
○渡部国務大臣 今初めてお聞きしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/208
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209・浦井洋
○浦井委員 だから、私が言いたいのはそういうことなんですよ。あなた方が、たとえ部分的にどこか善意なところがあったとしても、言い方がちょっとあれかもわからぬですけれども、あったとしても、全体としての流れというのはやはり公的社会保障、公的医療保険の後退につながる。それを待っておるようにして、私的保険がずっと蚕食していこうという体制を今整えつつあるわけなんです。そういう中であなた方のこの行政のかじ取りが間違うと、日本の社会保障、公的医療保険というのは大変な状態になるというふうに私は指摘をしたいわけであります。
最後に申し上げますけれども、こういう野党も全部反対をする、与党の中でも、あす何か二十一世紀の医療を考える含みたいなものがあってかなり気勢が上がる、それから全国の各自治体の三分の一以上が議会で反対決議をする、署名ももうすぐ一千万になるだろう、こんな健康保険の改悪をやったらあかんという声が日本国じゅうに今はうはいとして巻き起こってきているわけですよ。だから、この際大臣は、政治家としてきちんと判断をして、深くこの健康保険の改悪案を撤回をして、もう一遍国民の立場に立った医療なり医療保険制度の改善のためのよい案を、厚生大臣として責任を持って出してくるということをここでひとつお約束をしていただいて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/209
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210・渡部恒三
○渡部国務大臣 浦井委員の大変専門的な、よく勉強をしていらっしゃる御意見に私も耳を傾けて今まで聞いておりましたけれども、お言葉を返して恐縮ですけれども、これは医療費のむだを省く、これはやはり国民の皆さんも非常に強い我々に対する要望を持っていらっしゃる。支払っておるお金はやはり労働者、勤労者の皆さんからちょうだいしておる、これは企業からもちょうだいしておりますが、そういう保険料であり、また足りない部分を国が補てんしておりましても、これも国民の皆さんの汗を流して働いた税金でありますから、これをできるだけ効果的にまた節減していく、具体的に言えば、必要な受診を妨げるものではないけれども、むだな医療はなくするように努力していく、こういう私どもの努力は、これは浦井先生からも評価され、称賛されてよろしいのだろうと思っております。これらの面をいろいろ考えに考え抜いたあげく、これはかつての高度成長時代のように、毎年毎年税収が黙って伸びていってお金が使える時代なら、これはまた一つの考え方があったでありましょうが、残念ながら日本の経済は当分低成長が続いていくであろう。しかも国の財政は極めて厳しい状態の中で「増税なき財政再建」という国民的合意の仕事を私ども進めておるわけでありますから、そういう中で被用者保険本人の皆さん、いわば現在の健康保険の制度の中では一番恵まれておる条件の方に一割の御負担をお願いし、しかも、そのことによってあの低額所得の人が医療を受けられないとか、あるいは健全な家庭が病気が続出することによって破壊されるというようなことがないように、私ども高額療養費制度あるいは難病に対する公的負担、こういうものを検討して私ども進めておるのでありますから、今回お願いをしておる私どもの改革案が、今日の時点であらゆる知恵を絞って考えたあげく、できるだけ国民全体の皆さん方の負担をこれ以上余り重くしないようにして、しかも国民の健康を守っていき、また戦後三十八年、わずかの期間の間に国民の平均寿命を三十歳近くも伸ばしてきた我が国の医療制度の発展と、この保険制度を二十一世紀の未来にまで揺るぎないものにするために私ども考えた最善の案でございますので、どうぞ浦井先生もこれに御賛同賜りますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/210
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211・浦井洋
○浦井委員 一言反論だけして。
健康保険本人に一割、二割の自己負担させることがむだを省くということであれば、三十八年の歴史を言われたんですけれども、日本国民一億人は六十年間十割給付を続けてむだばかりやってきたことになるんですよ。そんなあほな話はないですよ。
これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/211
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212・有馬元治
○有馬委員長 菅直人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/212
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213・菅直人
○菅委員 この健康保険法の改正案が提出をされまして社労での審議に入っているわけでありますけれども、きょうで各党が一応最初の何人かが一巡をする、さらにこれから二巡、三巡と審議が続くわけでありますけれども、一応その一巡の最後を私が質問さしていただくわけですが、普通にトリというのは紅白歌合戦でも大変光栄ある立場でありまして、国会の場合最後がそういう立場がどうかわかりませんけれども、精いっぱい、この法案の内容について大臣の考えをお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
まず最初に、たしか今月の初めごろの一般質疑の中で、私は大臣に一つお尋ねをいたしました。それに対して大臣から十分な返答をいただいてない一番大きな問題について、もう一度お尋ねをしたいと思います。
それは、この五十九年度の予算というものは、政府案が提出されそして衆参を通過をしている、それに厚生省の予算が含まれていて、この健康保険法と深い深いかかわりがあるわけでありますけれども、来年度以降、今のようなゼロないしはマイナス五%シーリングという形で厚生省の予算が果たして組めるんだろうか、またこの改革案そのものもそうしたことを見通した上で出されているのか、それともとりあえずことしだけでも、来年度予算だけでもつじつまが合えばいい、そういう立場で出されているのか、これはそうした将来の見通しとも大変かかわりが深い問題だと思います。そういう点で、将来といってもそんなに一足飛びに二十一世紀がやってくるわけじゃありませんで、五十九年度の次はやはり六十年度でありますから、六十年度あるいは六十一年度の厚生省予算が、今のようなゼロシーリングないしマイナスシーリングで組めるというふうにお考えになっているかどうか、その点を再度大臣にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/213
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214・渡部恒三
○渡部国務大臣 この点は、率直に言って私も大臣に就任しまして非常に心配をしておりましたし、また与党の社会部会関係の先生方にも大変御心配をいただいておるところでございます。しかし、いろいろ検討をいたしました結果、今回の改正案を通していただければ、医療保険に対する国民の皆さんの負担は現行水準程度にとどめて、何とか苦労をして、工夫をして、これ以上後退することのないように予算をつくっていかなければならないという決意を私は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/214
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215・菅直人
○菅委員 今大臣は、これ以上の負担を国民に強いることなく来年度以降の厚生省予算が組めるという意向を示されたと理解できるわけですが、そうしますと、負担の問題はもちろんですが、これから給付の問題に次第に入っていくわけですけれども、いわゆる負担が重くならないからといって福祉のサービスが低下をしたんでは、これは負担を大きくしないという積極的な意味はないわけでして、私がお聞きしたいのは、負担なり、あるいは医療で言えば給付、あるいは他の問題でも、そういう社会保障のサービスを低下させることなく来年度予算が組んでいけるとお考えかどうか、重ね保て伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/215
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216・渡部恒三
○渡部国務大臣 もとより私は、この委員会でも予算委員会でもたびたび答弁をいたしておりますけれども、今回被用者保険の皆さん方に原則二割、今年、来年一割という御負担をお願いするということは、将来展望としては、社会保障の本来的なあり方である給付と負担の公平化、制度間の格差の是正という目標を持つものでありますから、これは今六十年代後半というふうに考えておりますが、この次お願いするのは国保の七割給付を八割にするような時期に早く持っていきたいという考え方でありまして、これは給付内容を落とすというようなことは考えておりません。むしろそれ以上に、今回の改正案を通していただいて、さらに今後は難病の公費負担の問題とかそういうものにより積極的に取り組んでいかなければならないし、それには強い決意で来年度も大蔵省に対して予算編成に厚生大臣としては臨みたい、また、皆さん方の御支援、御協力もお願いしたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/216
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217・菅直人
○菅委員 ただいまの大臣の発言は大変に重要な意味を持っていると私は思います。
今大臣が言われたことは、今回の改正案はともかくとして、今後については少なくとも給付の水準を下げないで、あるいは国保の場合のように七割を八割にいつの時点がで上げることを含めて、そういう展望の中で来年度の予算を組みたい、こういうことを非常に力強三言われたことそれ自体については、私は大変評価したいと思います。
そういうことに立って、せんだって発表された「今後の医療政策の基本的方向−二十一世紀を目指して」というものに、そうした大臣の考え方が盛り込まれたものと考えるとしたときに、いろいろな問題点が出てこようと思います。そういう点で、これからのいわゆる中長期ビジョンの全体の内容について、少し詰めた話をしていきたいと思います。
まず第一に、「給付の八割程度への統一」ということがこの医療保険制度の改革の中に述べられているわけです。そして、この給付率については、きょうの他の委員の方の質問にもありましたけれども、そこをもうちょっとはっきりさせていきたいと思います。
そこで、まずお聞きしたいのは、現在の医療に関する給付率、フラットな部分だけでなくて、実質的な給付率を各制度ごとにちょっと言っていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/217
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218・吉村仁
○吉村政府委員 まず政府管掌健康保険でございますが、本人の給付率が九八%でございます。それから家族が七六・九%でございます。平均をいたしまして八九・八%。それから組合健保の本人が九七・四%、家族が八四・一%、これは附加給付を入れております。そして平均は九一・〇%。共済組合が本人九七・七%、家族が八五・一%、これも附加給付が入っております。そして平均で九一・七%でございます。国保は七八・六%の実質給付率になっております。・発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/218
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219・菅直人
○菅委員 それに加えて、老人保健の給付率と、今言われたもののトータルをした給付率の水準を述べていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/219
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220・吉村仁
○吉村政府委員 老人保健分を含めますと八九・一%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/220
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221・菅直人
○菅委員 その八九・一%というのは五十八年度だと思いますが、じゃ五十九年度の見通しもあわせて言っていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/221
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222・吉村仁
○吉村政府委員 五十九年度は、老人保健も含めますと八八・一%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/222
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223・菅直人
○菅委員 大臣、この数字をぜひ頭に入れていただきたいのです。つまり、五十八年度の実質の給付率は、今局長が言われたように、現在もう既に八九・一%という水準にあるということなんです。来年の予算案あるいはこの法律案、これは本当に戦後初めて給付率が下がるという形で提案されているわけで、それ自体はまた後ほど問題にしますけれども、それにしても八八・一%という数字になっているわけです。
そこで問題になるのが、この中長期ビジョンの中身なんです。つまりこの中身に「給付の八割程度への統一」ということが述べられているのは、先ほど大臣が言われたように、国民健康保険の七割給付を八割にしましょうという意味で言われている数字であれば、これは給付の上限になるわけです。しかし、もしこれがトータルの平均の実質の給付率を八割程度に下げましょうということを意味しているとすれば、これはもう大幅な切り下げということを意味するわけですね。だから、同じ文章でとり方によって全く違う意味を持っているわけです。ここを明確にしていただかないと、先ほど一番最初に聞きました、今回はいろいろと御負担をかけますけれども、しかし今後は全体として上げていきたいと言われたことが、この中身と一致してくるのかこないのかの大きな分かれ目になるわけです。こういうところを含めて、この八割程度への統一というのは、今言いました数字の中で言えばどの部分が八割程度ということを言っているのか、この意味内容について明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/223
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224・渡部恒三
○渡部国務大臣 概括的に私の頭にあるのは、現在被用者保険本人が十割、家族の場合は外来七割、入院八割、今度退職者医療を創設をさせていただくとこれが八割、国保加入者が七割、こういう給付率になっておりますから、これらを将来全部八割程度にしたいという考えてあります。同時に、老人医療については四百円負担しているけれども、全額給付ということになるのかな、まあ十割という今の老人保健の考え方を続けていく。さらにまた、財政的な余裕が少しでも出てくれば、あるいはできるだけ財政の確保に努めて難病その他の公費負担というようなものはできるだけ拡大をしていきたいという考えてありますから、いわゆる給付率としては八割、そしてそういうものを先生に計算していただけるものであれば、それは当然プラスアルファになっていく、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/224
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225・菅直人
○菅委員 もう一度念を押して申しわけないのですが、今大臣が言われた意味は、きょう朝以来の議論の表現で言えば、フラットな部分を七十歳未満の人については八割程度にそろえたい、老人保健は実質上九八%ですからほぼ十割、それに高額療養費などの上乗せというものは当然につく、それが、今大臣が考えられているこの中長期ビジョンの八割程度という意味内容だ、こう理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/225
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226・渡部恒三
○渡部国務大臣 そのように御理解をしていただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/226
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227・菅直人
○菅委員 それじゃ、これはもう要らない質問かもしれませんが、ちょっと気になるので伺います。
きょう朝以来局長が八〇・三%というのを何度が言われていました。今の保険料か何かを合わせるとこの程度になるという、この数字は何なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/227
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228・吉村仁
○吉村政府委員 私ども八割程度と申しておりますのは、老人保健を除いた医療保険の給付率を八割程度、八割のフラット・プラス高額療養費制度、大臣が今お答え申し上げましたのはそういう意味でございます。そのほかに八〇・三という数字を申し上げておりますが、これは現時点におきまして仮に全保険を統合したといたします。そうすると、現在の保険料並びに国庫負担でいかほどの給付ができるか、国民医療費の何%に当たるかというとそれが八〇・三になる、こういうことでございます。したがって、現在の保険料の負担、それから現在の五十九年度に予定しております国庫負担率でいかなる給付ができるか、全保険を統合した上でいかなる給付ができるかというと八〇・三相当の給付ができる保険料の水準であり、国庫負担の水準である。それは言いかえてみれば、保険料と国庫負担で持ち得る給付率は幾らかというと八〇・三%程度だ、こういう。ことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/228
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229・菅直人
○菅委員 そこがおかしいんですよ。先ほど老人込みだと五十八年度八九・一と言われて、さっき言われませんでしたが、私がいただいている数字だと、老人を外しても給付率の実質が八五・九という数字を厚生省から聞いています。それと今局長を言われた八〇・三というのは、この差はかなり大きいのですね、五・六というのは。そうすると、保険料と国庫支出以外に、何か大きな額で計算に入ったり入らなかったりするものがあるのかないのか。 。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/229
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230・吉村仁
○吉村政府委員 それは公費負担医療でございます。
国民医療費全体を仮に一〇〇といたしますと、保険の負担が八〇・三。これは保険料と保険に対する国庫負担とを全部足しますと八〇・三%になるわけであります。そして公費負担医療というのがございます。これが七・六%でございます。そして患者負担というのが、国民医療費を相手にいたしておりますので、保険の患者負担とさらに自費診療のものが入っております。それが一二・一%、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/230
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231・菅直人
○菅委員 ちょっと今の説明でも十分にわかりかねるのですが、当然公費部分というのも将来同じようにやっていったとすれば入るのでしょう。それはどういうことなんですか。公費部分は公費部分で今でもお金が出ているわけですよね。生活保護にしろ、あるいはほかの費用が。そうすると、先ほどの現実が八九・一という数字とこの八〇・三という数字が大幅に違っておるというのはどういうことか、もう一度お尋ねしますけれども、ちょっとわかりやすく言っていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/231
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232・吉村仁
○吉村政府委員 五十九年度の姿で今申しておるわけでございますが、私ども医療保険だけで物事を考えると、結局保険料と保険に対する国庫負担とで給付を賄う、こういうことにならざるを得ないわけであります。そうすると、それは国民医療費に対して八〇・三%程度の給付ができる、こういうことになるわけであります。そのほかに公費負担医療があるわけですから、例えば結核や精神の公費負担というものをどかっとふやすとかあるいは難病に対する公費負担というのを非常にふやすとすれば、この先ほど申しました七・六のところが非常に上がるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/232
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233・菅直人
○菅委員 もう一回確認をしますけれども、そうすると、先ほど言いました八九・一とか八八・一というのは実質上の医療保険の給付率じゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/233
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234・吉村仁
○吉村政府委員 老人保健を含めて言え、こうおっしゃいましたものですから。老人保健の医療費というのは七割相当分は保険で持っておるわけでございます。あとの三〇%部分は国庫負担と地方負担、つまり公費で持っておるわけでございます。したがって、老人保健を含めた給付率は幾らか、こういうことをおっしゃいましたので、五十九年度は八八・一%になる、こう申したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/234
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235・菅直人
○菅委員 これは少し数字のマジックがあるような気がするんですね。つまり今の局長の言われ方は、私の理解が間違っていれば指摘いただきたいんですけれども、今健康保険のいろいろな制度の中で保険料が集まる、あるいは医療保険制度に対して今までで言えば国の支出が国保に四五とか政管に一六・四とか出ている、そういうものを集めて、それでトータルの日本の医療費の中でそれが何割占められるかといえば八〇・三になる、そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/235
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236・吉村仁
○吉村政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/236
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237・菅直人
○菅委員 いや、だからおかしいというんですよ。当然それには、現在老人の一〇%はほかから出ているわけですよ、自治体から五、五と。そして国から二〇出ているわけですよ。あるいは生活保護の医療費も出ているわけですよ。ですから、何か今のを集めたら八〇・三にすればぴったり平等になるかといえば、極端に言いまして全員を八〇・三%の実質給付率にしたとしたら、老人保健のいわゆる公費分はゼロになる、あるいは生活保護関係の医療費はいわゆる国庫負担はゼロになる、そういう数字じゃないですか、この八〇・三というのは。そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/237
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238・吉村仁
○吉村政府委員 そうではございません。保険の給付のカバレージは八〇・三だと、こういうわけでございまして、そのほか公費負担等を入れると八八・一%。
要するに、国民医療費を五十九年度の具体的な数字で申し上げますと、国民医療費が十四兆八子八百億と私どもは推計をしております。その中で保険料並びに保険に対する国庫負担で賄うものが十一兆九千四百億でございます。これが十四兆八千八百億に対して八〇・三になる。そのほかに今おっしゃいました公費負担があるわけでございます。これが一兆一千四百億でございます。それが七・六%に相当する。したがって、国民医療費の十四兆八千八百億のうち保険と公費、つまり自分の金でない、患者負担でない費用で賄うものは十一兆九千四百億と一兆一千四百億を足しました十三兆八百億でございまして、そのカバレージは八七・九%というような姿になるわけでございます。そのほかに患者負担が一兆八千億ございますが、これは保険の一部負担と全額自費というものもございます。それを含めた額でございますが、これが一二・一%ということでございます。したがって、全額自費も含めまして考えますと、国民医療費のうちの八〇・三%は保険がカバーする経費である、そして七・六%は保険以外の公費負担でカバーする経費である、残りが保険の患者負担、それから全額自費の患者負担、要するに患者負担の額、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/238
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239・菅直人
○菅委員 内容的には大体了解をしましたけれども、そうすると、もう一回確認をしますが、普通は患者の立場で言えば、例えば老人保健で言えば給付率は十割だと思っているわけですね。しかし今の局長の言い方だと、保険がカバーしているのは七割だ、あとは公費だ、そういう表現になるわけですね。ですから、そのあたりがどうも、この文章の「給付」というのと使われている「給付」というのが非常に混乱をしていると思うのですね。
もう一回改めてもとの話に戻りますが、そうすると「給付の八割程度への統一」というのを、先ほどの確認をしますと、フラットな部分を考えていると言われたということはそれで理解というか了解をしたのですけれども、そうしますと、患者の立場になれば、あるいは被保険者の立場になれば、公費部分も含めてカバーをしてもらっているわけですから、保険は減らさなかったけれども公費部分はがばっと削ったというのでは、当然実質的には大きく削られたのと同じわけですから、それも含めて公費部分についても大きな変化を考えているのではなくて、あくまで今局長の言われた意味の保険部分について、何といいましょうか、それのフラットな部分だというふうに理解するということでよいかどうか、最後に確認だけ、もう一回お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/239
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240・吉村仁
○吉村政府委員 私どもが長期ビジョンで申しております八割程度というのは、医療保険だけの給付率について申し上げておるわけであります。そこで今度は、医療保険の給付率の八割程度の意味内容になるわけでございますが、フラット・プラス高額療養費制度、こういうことになるわけでございまして、高額療養費制度というものをどう仕組むかによりまして、実質給付率というのは違ってくるわけであります。また、高額療養費の対象になる病気が非常に多い場合には給付率は自動的に高くなる、しかし高額給付の対象になる患者が仮にいないとすれば本当に八割になってしまう、こういうことであります。現に国民健康保険におきましては、フラット給付は七割でございますが、実質給付率は現在は先ほど申し上げました七八・六%になっておりますが、八・六%というのは、高額療養費によって支給された費用を足しますと七八・六%になる、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/240
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241・菅直人
○菅委員 これは私自身もですし、あるいはこの間の審議の中でも、この給付率という問題がいろいろな数字で語られていて多少混乱があったかと思いますが、今の中で大体はっきりしてきたと思いますけれども、大臣が先ほど言われたように、国民から言えば、この部分は保険に属した費用であるとか公費であるとかいうよりは、実質的にどれだけ保険なり公費でカバーをされているかというトータルで見るわけですから、そういう中で最初に言われた、今後についてはそれ以上に水準を下げることを考えていないということについては、ぜひ守っていただきたいということを述べて、さらに話を続けていきたいと思います。
今、高額療養費制度の問題がちょうど話題に出たわけですけれども、やはり中長期ビジョンといいましょうか、この中で「高額療養費制度の仕組みの改善」という言葉が入っているわけです。そして、これを少し説明した説明書の中には「高額療養費支給制度については、社会保険事務全体の動向を考慮しつつ、昭和六十年度以降、家計の医療費負担能力により適切に対応する仕組みに改善する。」と、方向を示されている。まずこの意味について、どういうことを意図されているのか、具体的に述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/241
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242・吉村仁
○吉村政府委員 現在高額療養費の制度はレセプトを基礎にしておりますので、個人、そして暦月、そして一医療機関単位になっております。したがって、現在の医療保険の給付のやり方を前提にすればそういうやり方をせざるを得ないという制約があるわけでありますが、一方、それでは二つの医療機関にかかった場合、あるいは一世帯で二人医療費がかかった場合、あるいは月がまたがった場合、そういう場合に負担がふえるわけであります。そこで、そういう問題を解決する必要があるのではないか、こういうことで高額療養費支給制度の仕組みを私どもは改善をいたしたい、そして家計の負担というものを軽くいたしたい、こういう考え方でおるわけでございます。
ただ、「社会保険事務全体の動向を考慮しつつ、」というのは、今触れましたように、現在の高額療養費支給制度はレセプトを基礎に動いておりますし、また、そのレセプトがコンピューター化されていないために手作業、そして紙を基礎に動いておる。その紙が一年間に八億四千万枚に上るということでございます。そういうレセプト単位、またコンピューター化されていない手作業、あるいは膨大な紙を前提にして物事を考えますとなかなか改善が難しいわけでございまして、社会保険事務全体を少しずつ合理化しながら考えていかなければならぬ、こういうように基本的には思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/242
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243・菅直人
○菅委員 そうすると、そういうことを含めて今レインボー計画と呼ばれるようなコンピューター化の計画もあると聞いておりますけれども、そういう計画の進行などと含めて、これはいつごろにはそういった改善をやりたいとお考えなのか、特にコンピューター計画の完成を待たなくてもできると考えておられるのか、やはりそれを待たなければできないと考えておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/243
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244・吉村仁
○吉村政府委員 完璧に処理するためにはコンピューター化が必要だと思います。コンピューターにつきましては、全保険のコンピューター化は十年ぐらいの期間で行いたい、こう思っておるわけでございます。
そこで、それじゃ十年河清を待たねばならぬか。百年ではないのですが、十年河清を待たねばならぬかというと、私はやはりそれは待っておられないと思います。そこで、現状を前提としながら、できる範囲の合理化というものはどういう点にあるか、どういうことができるかという、できる限界ぎりぎりのところをひとつ追求をしてみたい、そしてそれで実施をしてみたい、こういうように考えておるわけであります。これは法律が通りました段階で直ちに着手をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/244
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245・菅直人
○菅委員 今局長が言われたようなレセプト単位、個人単位、一月単位というのが、ある部分で非常に過重な負担を生んでいる、あるいは生む可能性を持っているということの改善という意味は私も大変賛成ですので、それはぜひできるところからやるという今の方針でお願いしたいと思います。
しかし、もっと根本的な問題として、今回の法案の中で、高額療養費の額を引き上げられる形で法案が出されておるわけです。しかし、保険の根本が、軽い病気には多少薄くても重い病気には手厚くするということだとすれば、ある意味で、ある部分の負担をお願いしようというときに、その重い病気に一番かかわる高額療養費もさらに負担をというのはおかしいのではないか。何回も物価水準がというふうに言われておりますけれども、それは逆であって、逆に今回こそ五万一千円を思い切って四万円とかに引き下げる、そういう英断があっていいのじゃないか。これはぜひ大臣にそういう意見についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/245
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246・渡部恒三
○渡部国務大臣 私は、たびたびお答え申し上げておりますように、今回この一割負担というものはどうしてもお願いをしなければならぬ。しかし、この一割負担のために、低所得者の皆さん方が重い病気にかかって生活が破綻してしまうとか、あるいは健全な家族が病人が続出することによって破壊されてしまうとか、そういうことのないように配慮していくというのも厚生大臣に与えられた大きな課題であるというふうに考えておりますので、今の高額療養費の問題は、政令で定める事項でもございますので、この委員会の審議を通じていただいた皆さん方の御意見、各党の皆さん方の御意見に謙虚に耳を傾けて、この法案を通していただいた時点で皆さん方に御理解を得られるようなできる限りの配慮をしてみたい。
今いろいろ仕組み等の内容については保険局長からお話しがありましたが、菅先生のきょうの御意見もしっかりと私の頭に刻み込んで、この法案を通していただいた時点での政令策定に当たってはそのような御要望もできる限りこれを実現していくような方向で努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/246
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247・菅直人
○菅委員 その前提条件であるこの法案云々ということはまさにこの問題ですから別として、今の大臣の高額療養費制度について前向きといいますか、私がいっそ引き下げたらということを申し上げたことに対して検討の幅に入っているというふうに理解をして、さらに次の問題に移りたいと思います。
この「医療保険制度の改革」という中にもう一つ財源の調整、いわゆる財政調整という問題が書かれております。昨年生まれた老健法にしろ、今回出されている退職者医療制度にしろ、ある意味では財源調整的な効果を非常に大きく持っている。私の見方で言えば、逆に、そのためにそういう制度をつくったという側面も、それは言われて仕方がないと思うわけですけれども、ここに書かれている「財源の調整等による負担の公平化」という表現の中に、昨年の老健法、そして今出されている退職者医療制度にさらに加えて、何かほかの、もっと何かやらなきゃいけないんだということを考えておられるのか、もしおられるとしたらどういうことを考えておられるのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/247
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248・吉村仁
○吉村政府委員 現在、私どもは、今回の法案を通していただくことに全力を尽くしておるわけでございまして、退職者医療制度というものは、今先生は財政調整ととられないことはない、こうおっしゃいましたが、そういう側面を持っております。
そこで、今後、全制度を通じて給付を一元化していく措置をとる場合に、その財源というものを考えましたときに、形式的に言いますと、どうしても保険料の引き上げで対処をするか、国庫負担の強化で対処するか、あるいは財政調整なり、医師会等で言っております統合というようなことで対処をするか、そういう方法しかないわけでございます。
そこで、どういう方法をとるかということにつきましては、私ども老人保健法を実施し、また退職者医療制度を実施しようとしておるわけで、その成果あるいはその経緯を見てやはり考える必要があろうと思っております。しかし、いずれにしましても財源の調整等の措置が必要であることは事実であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/248
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249・菅直人
○菅委員 そこで、今の財源の調整問題というのはこの法案の骨幹にもなり、今後の展望にもなることですので、次の問題の中でさらに突っ込んでいきたいと思うのです。
私、この数年間、この社会労働委員会に席を置いて、健康保険制度のかなり急激な変化というものを審議に加わる形で見てまいりました。そういう中で、今回の法律もそうですけれども、国民健康保険というものが常にある意味での一方の主体になっている。というのは、国民健康保険がいろいろと体質的に弱い、高齢の人が多い、あるいは所得の低い人が多い、だから国の補助も必要だ、だから実質的な財政調整である老健法での拠出金も被用者保険から必要だ、だから退職者医療制度も必要だという、その一方の主人公は実は国民健康保険であった、また現在あると思うわけです。そういう中にあって、国民健康保険というものが、いろいろなデータやいろいろな説明を伺っても、確かに今申し上げたような高齢化、低所得等々の弱い面があることは認めます。また認めた上で、しかしそういうものに何らか別の対応をすれば、この範囲ならば国民健康保険がなかり自立してやっていけるという何か条件を考えなければいけないのじゃないか。それでないと幾らやっても、いや、まだ足りません、まだ足りませんということになる、あるいはまだこういう問題があります、ああいう問題がありますということになって、そこに、幾ら言っても何か行ったり来たり議論がしている部分があるように感じるわけです。
そこで、私がまずお聞きしたいのは、今回の改正が成立をしたら、私自身は今回の改正案は余りにも問題が多過ぎて賛成はできないという立場でありますけれども、もし仮に今回の改正案が成立した場合に、国民健康保険は財政的に見て、中期的に例えば五年ないし七、八年の展望で自立てきるというふうに見通されるのか、それともまた一、二年たったらやはりまだ足りませんとか、また何かでやらなければいけないというふうなほんのこの一、二年だけの問題と見通されているのか、その点をまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/249
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250・吉村仁
○吉村政府委員 私どもは、今回の改正によって、国民健康保険も合理的な基盤の上に立って運営されるようになる、こういうように期待をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/250
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251・菅直人
○菅委員 今のはどういう意味の答えなのか。それは期待は私だって期待をしているわけでして、ですから、それが中期的に見て財政的に自立をできると思うのか、思った展望の中で出されておるのか。というのは、これは決して疑うとか疑わないじゃなくて、昨年老人保健法が出たわけです、それが成立したわけです。退職者医療問題は議論の中にありましたけれども、数年間はこれでやってみるのだろうと思っていた途端に、この制度が私の感じ方で言うと唐突にやってきたというか、議論は以前からありましたけれども出てきたことを考えて、また来年になってみたらここまでやっていただいたけれどもまだ足りません、やはりここは何としてでもということで出てきたら、中期的な展望どころか短期的な展望にもならない。そこでもう一遍改めて、せめて五年ぐらい、三年ぐらいでもいいです、やれると考えて出されているのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/251
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252・吉村仁
○吉村政府委員 もちろん私どもは、今回の改正案の枠組みは六十年代の半ばまではこの枠組みでいける、こういうように考えております。
ただ、国民健康保険の問題につきましては、今回国庫補助制度を変えたわけでございます。その影響がどう出るか、また退職者医療制度の実施に伴う影響がどう出るかということについてはまだ計測不可能な点が若干はあるわけでございまして、多少の修正というものはあるいは必要になるかもわからぬというような気持ちは持っております。〔「大筋として自信あり」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/252
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253・菅直人
○菅委員 今大筋として自信ありということが後ろの方から聞こえてきましたが、そう理解していいのならいいのですが、大筋として自信がありそうな、そうでもなさそうな御返答なので、実際はそのあたりをもうちょっと詰めてみたいと思います。
ちょっとこの資料を配ってください。——この資料は、厚生省からいただいた数字を私なりに並べ変えてみただけのものなんですけれども、この間国保のあり方を私なりに考えてみて、現在老人保健法で七十歳以上については事実上制度が別になっている。そして、今回の制度がもし成立をしたとすれば、退職者で六十九歳までの人には財政的には全く別になる。そうすると、国民健康保険の中で、一つの仮説として七十歳以上の人の財政負担を全く別にしたとする、そして退職者については退職者医療が例えば受け持つとする、そのときに残った中で財政的に一体どうなっているんだろうか、つじつまが合っているんだろうか合ってないんだろうかということを考えて、いろいろと厚生省の皆さんにも手伝っていただいてつくってみたんですが、つまり現在、この図で見ていただくと、国保の医療費の中で国庫から国保に出されている額は、五十九年度の予算案によれば一兆九千六十四億だ、この図でいうDプラスEがそういう数字だ。そして今度は、国保から老人保健に出されている拠出金、これが一兆二千四百十四億だ。そうすると、これでもしこの七十歳未満の人たち、どう表現したらいいのでしょうか、それだけを考えてみると、ここでいいますB、Bというのは図面がない方にはちょっとあれですが保険料の若者分、七十歳未満の人の保険料は自分たちで、七十歳以下で使います。しかしそのかわりに、Dの部分の七十歳未満が使っている国保の支出と同じ額だけ老人に振りかえましょう。そうすると、正確にはDという金額からBという金額を引いた数字が出ればいいのですが、なかなか数字が出ないものですから大ざっぱな数字で、老人分の保険料の額というのはさほど大きくないそうですので、約七千億円、この七十歳未満の人たちが、もし自分たちの保険料と自己負担と残りを国庫負担でやろうと思ったときには、その程度でやれるのではないか、このように理解をしているわけですけれども、まずその理解でよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/253
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254・吉村仁
○吉村政府委員 大体今おっしゃったような数字になるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/254
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255・菅直人
○菅委員 つまり大臣、これはちょっとわかりにくいのですけれども、国から国保が一兆九千億もらうわけですね。それから、国保から老人に一兆二千億をとにかく最終的には出しておるわけです。だから、その一兆二千億出しているのを、例えば国から全部もらうとすれば残りは約七千億になるということですね。ということは、先ほど申し上げたように、七十歳以上の人と退職者を除いた人たちで、七千億分の国庫補助があれば一応財政的には成り立つというのが現実の今の状態だ。それを新しい、例えば新国保というふうにでも名づけたとして、その範囲で自立できる道を考えたらどうか。それは七千億が適切なのか、やはりどうしてももうちょっとふえていくのか、もうちょっと経営努力というか運営努力をすればあるいはこんなには要らないのか、そういうこともはっきりしてくる。そのように考えるのですけれども、この範囲での自立ということを考えたとして、どう思われるか。つまり、それでもやはりこういう弱い点があるから難しいとお考えなのか。いや、そういうふうに七十歳以上が切り離され、退職者が切り離されれば、国民健康保険はそれなりの補助金があれば、それほどどんどん補助金をふやさなくても十分やっていけるというふうに考えられるか、その点について御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/255
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256・吉村仁
○吉村政府委員 確かに、先生御指摘のような新国保の方だけをとって考えてみますと、国庫負担のあり方を含めて考えやすい形の整理にはなるであろうというようなことではないかと思います。その点は先生御指摘のとおりであります川
しかし、この図で見ますと、老人の方はほとんど全部国費あるいは公費になってしまうわけでございまして、老人分を国保から切り離せば、それは残った方は合理化されるけれども、老人の方が果たしてうまくいくのかどうか、そこがやはり財源構成の問題として全体から考えてどうだろうかという点がございますし、老人の医療費についてなぜ全部国費で持たなきゃならぬのか、やはりそういう問題が残るのではなかろうか。したがって、新国保の方はかなり評価できるにいたしましても、妙な部分は全部国費に回していいところだけ新国保だ、ちょっとこういうような印象を受けるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/256
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257・菅直人
○菅委員 私は、それは若干の誤解があると思うのです。老人医療というのは、まさにそれは釈迦に説法でしょうけれども、ほかからもお金はずっと入っているわけですよ。ここはあくまで国保の中での拠出部分がこういう数字で出てきているだけであって。それから、今言ったのは、難しいところだけ国保にというのではなくて、なくてというよりは、現実の数字が実はこういうことなわけですよ。それが何かごちゃごちゃになっているから、国保も苦しい苦しいと言いながら一生懸命拠出金も出しているようなかっこうになっている。しかし、実際上は国から入ってきた額よりも拠出している額の方が少ないわけですから、現在の姿そのものを冷静に言えば、今私が申し上げたような、新国保と老人にはさらに国庫から一兆二千億出ているのと同じ構造になっているということを認識して、まず話の進め方として、その新国保部分はやっていけると見通せるのかどうかということをお伺いしたわけですが、今の局長の話では、頭の部分を除いて言えば、その部分だけなら十分にその可能性があると言われたと理解するわけです。私は、老人の問題はそれこそ二巡目か三巡目にでもまたゆっくり、これは大問題ですからやりたいと思いますが、この問題をさらに進めていきたいのです。
実は、昨日の参考人の意見を伺った中で、人吉の市長に質問をしたわけです。つまり今の自治体というのは国保の保険者という立場があるわけですね。それから、あたりまえのことですけれども、人吉市なら人吉市の全住民に対して責任を持っている。全住民の健康に対してある程度の責任を持っているという立場があるわけです。私は参考人に、いわゆる健康事業、ヘルス事業は、国保に入っている人と入っていない人について何か特に、国保に入っている人にはここまでやっているけれども、一般の人はここまでだという差があるのかと聞いたのです。そうしたら参考人は、いや、そんなことは考えてもみません、国保の制度や何かいろんな制度を組み合わせて、あくまで全住民に対してやっていますという答えなんです。自治体の長としては当然の立場だと思うのですね。そこで、これはまだ私も必ずしも確信はないのですけれども、今の国保が自治体を保険者、ヘルス事業ではない方の保険、いわゆるインシュアランスの方の保険事業の保険者としているのは果たして適するんだろうか。もしかしたら、いわゆる金目の計算なんかを中心とした保険者というものは政府がやるのかどこかがやって、ヘルス事業はもちろん大変重要な事業ですから、自治体が実施の第一線として、国保に入っている人はもちろん、もちろんというか、国保に入っている人もいない人も、家族も何もかも含めて全部にある意味では一律にやる、老健法の四十歳以上というのもそういう考え方には立っているわけですから。そうすると、ヘルス事業は自治体だけれども、いわゆる保険事業の主体としての保険者としては自治体が適切なんだろうかどうだろうかということを考えているわけです。その点についての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/257
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258・吉村仁
○吉村政府委員 国保の保険の単位というものをどう考えるかというのは、非常に難しい問題でございます。確かに先生おっしゃるように、インシュアランスの方はひとつ全国で一元化をした方が、保険料の格差の是正にもなるし危険分散の程度も広がるという点は御指摘のとおりでありますが、一方、保険集団は大規模になればなるほど経営効率というものが低下することも事実であります。それからもう一つ、地域保険の場合には、やはり医療機関の偏在等もございまして、医療を受けるための条件にかなり差があるんではないか。それが証拠に、各市町村ごとに医療費の格差がかなりあるわけでございます。そこで、全国一本の国保を考えて保険料も統一をするとすれば、医療費といいますか医療を受ける受益の面から、少し不公正あるいは格差というものが生じ過ぎるんではないか、こういうようなことも考えられるわけでありまして、私どもは、現在市町村を基礎にしておりますのは、保険料の負担と医療費あるいは医療を受ける便益とのバランスが市町村を単位にするのが一番適当なんではないかということで、市町村単位にしておるのでございます。理論的に全国にした方がいいという考え方もこれはもちろん考えられる方式でございますが、なかなかそこまでよう踏み切れない、こういうのが私どもの現在の気持ちであります。
また、ヘルスの事業とインシュアランスの事業は、確かに片一方は健康保持のためのいろいろな事業でございますし、片一方は医療費を賄う財政の問題ですから、切り離して切り離せないことはもちろんないわけでありますが、現在の国民健康保険の実態を見てみますと、ヘルスの事業を一生懸命やっている市町村の医療費というものは下がっておるわけでありまして、やはりヘルスの事業とインシュアランスの事業というものは密接に関係しておるんだろう、こう思います。そこで、ヘルスも片一方でにらみながら、また国民健康保険の財政あるいは医療費というものも片一方でにらみながら、両方をにらみながらできるのは、やはり市町村という単位が一番好ましいんではないかというように私どもは思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/258
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259・菅直人
○菅委員 この点は、ここで決着がつくとはもちろん思ってないし、一つの考え方ですので、もう二、三点今局長の言われたことについて質問をしたいのです。
局長みずから、保険料の差が非常に大きいということを言われたわけです。言われた上ですから、私の方でいただいている数字を見ますと、保険料が高いところは一人当たりが五万七千百五十三円、一番安いところが五千八百四十八円、ちょうど十倍ぐらいの格差があるわけですね。何でこんな格差があって成り立つんだと言いましたら、今局長が言われたようなことを厚生省ではいつも言われるのですけれども、今の局長の返答はちょっと話が逆だと私は思うのですね。つまり医療機関が偏在をしている、医療機関が少ないから医者にかかる率が少ない、だから医療費も少なくなって、だから医療保険も小さいんだ、そういうのは自治体がやった方がいいんだと言われているけれども、医療機関が偏在をしているということそれ自体は国の責任なわけですね。何度も大臣も答えられているように国の責任なわけです。まさにどこでも必要な医療が受けられるような体制をつくらなければいけないというのは、基本的に国の責任であって、その責任まで、小さな市町村に自分で病院を持てとかなんとかということまで、これはなかなか難しいわけですよ。そうすると本来は、義務教育と同じように考えれば、ある程度のところにはちゃんと医療機関があって病気になったらかかれるようにすべきで、医療機関がないからかからない、かからないから医療費も少なくて、保険料も小さくて、それでいいんだというのは逆であって、そういう状態は必ずしも望ましくはないのであって、ちゃんとした形で医療機関が配置され、それなりの受診があって、そして健康で長生きをしてもらう、これが一番望ましいと思うんです。そういうふうに考えると、私は、医療費が大きく差があり、保険料が大きく差があるということは、また医療機関が偏在をしているということは、基本的には国の責任でそれを解消していく。解消するまでに確かにサービスの差があるから、国としても地域的に多少保険料の差をそういう意味で設けるというのは、それは国の責任として考えてもいいかもしれないけれども、だから自治体がやった方が適切だというのは、私は若干話が逆になっているように思うわけです。
それから、さらに申し上げますと、今自治体が、きのうの参考人も言われていましたけれども、国保が赤字になった場合は一般会計から繰り入れているわけですね、ある部分を。これも考えようによったら、国保に加入していない住民の人から言えば、それはまあ自分たちの自治体だから仕方がないという考えも成り立つかもしれないけれども、何か年をとってひょっこり自分の町にやってきた人の医療費まで持たされているという意味では、必ずしもぴしっと来ないわけですね。
それからさら言えば、経営主体が小さいというのは確かに努力のしがいがあるということで、私もその点は確かに一つの考慮すべき要素だとは思います。思いますけれども、もう一つの点は、やはり自治体というのは政府です。小さな政府です。政治主体です。ですから、健康保険組合とかのように一種の民間団体的な要素じゃないんですね。ですから、私は、いろんな市長とか市議会議員の人に会って話をしても、この国保の問題が一番頭を痛めるんだ、余りぎしぎしやると地元医師会からちょっとにらまれる、かといってぎしぎしやらないと国保料を上げようと言ってもなかなか反対が強くて上げられない、かといって一般会計から入れようと思ってもそんなに財政は豊かじゃない、何とかこの問題を、自分たちの責任に任されてもこれはもう本当に困るんだという意見もよく聞くわけです。
そういうことも勘案して考えると、その実施主体が小さいということがプラスになる面は私も否定しませんので、何が何でも外した方がいいとまだ確信は持って言えませんけれども、一つの検討課題として、そういう保険者として自治体が果たして適切なのかどうか、その点についてぜひ検討していただきたい。そのことを申し上げて、これはもうお願いだけにして、さらに国保の運営の経営努力の実情について話を続けていきたいと思います。
まず伺いたいのは、いわゆる運営努力の問題として、この数年間厚生省も力を入れられている運動の中に、通知運動がありますね。この通知運動の現状が政管健保や組合健保との比較で国保についてどうなっているか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/259
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260・吉村仁
○吉村政府委員 まず、国保について申し上げます。
国保における医療費の通知は、五十七年度の数字でございますが、三千二百七十二の保険者がございますが、そのうち三子二百五十四の保険者が実施をしております。実施率は九九・四%ということでございます。
それから政管は、これは実施回数等に問題はございますが、一応各年度で一・五カ月分の医療費を全被保険者に通知をする、こういうことでやっております。
それから組合健保につきましては、これは五十六年度末の数字でございますが、実施率は八七・三%の実施率になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/260
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261・菅直人
○菅委員 大臣、今の数字をちょっと、数字の中身はいいんですが、比較だけ頭に入れていただきたいんです。
今の厚生省の話を聞くと、国保は三千二百七十二の保険者、実施主体のうち三千二百五十四、九九・四%が通知運動をやっている。やっている、やっていると言われる組合健保が八七%だ。それだけ見れば、国保の方がたくさん、しっかりやっているように見受けられるわけです。しかし、実はこの後の問題があるんですが、例えば東京都が実際やっている状況について説明していただけますか。どういうふうにやっているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/261
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262・吉村仁
○吉村政府委員 東京都は保険者数が六十四ございます。そして、実施をしている保険者数は六十四でございますので、全部やっておるということに一応実施率では出てまいるわけでございますが、この中身を見てみますと、一年間で一回通知をするという保険者が六十三で、二回通知をするというのが一保険者ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/262
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263・菅直人
○菅委員 それからどの範囲をしていますか。全部やってないはずですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/263
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264・吉村仁
○吉村政府委員 全世帯ではなしに、一部を抽出してやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/264
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265・菅直人
○菅委員 どのくらいか、わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/265
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266・吉村仁
○吉村政府委員 申しわけありませんが、ちょっとわかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/266
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267・菅直人
○菅委員 これは私も確実に聞いていませんが、とにかく五割とか六割という数字ではなくて、一割とか二割という数字なんですね。つまり、世帯数の国保加入者の中の例えば二割の人に年一回やっている。それで数字で言えば実施率一〇〇%で出るわけです。去年一年間で、私はちょっと内科にも行きました、外科にも行きました、歯医者さんにも行きました、いろいろかかるでしょう。それがどういう形で表現されてくるか。私も国保に入っておりますけれども、一度としてまだ通知を受けたことがないので、見ておりません。それでも一応一〇〇%という実施率であらわれるわけです。
ここに、各都道府県の数字を全部持っています。だから、先ほど三千二百七十二の保険者がやっていると言うけれども、通知回数で言えば、一年間に一回とか二回とか三回というのが多くて、精いっぱいで四回以上、五回以上なんというのはもう全体で、これは足してみなければわかりませんが、一割か二割あるかないかという状況なわけですね。そういう点で、通知運動の現状だけをとらえてみても、必ずしも国保が経営努力をしているというふうには残念ながら言えないんじゃないか。
それから、これは数字が非常に難しいのですが、いわゆる国保税、国保の収納率の問題も必ずしも住民税に比べて高くない、あるいは所得把握の問題もなかなか難しい、こういう状況なわけですね。そういうことを含めてもう一度、先ほど新国保構想というのを私の仮の案として、一つのたたき台として提出をしたんですが、私は、そういういろんな高齢化とか低所得とかという条件は、それはそれなりにカバーする必要はある、確かに若年でカバーしなければいけない、しかし、それ以外の部分についての通知運動の問題、収納率の問題、所得把握の問題は、これは国保が国保として努力をしなければいけない問題じゃないか。それによって、その範囲だけでも自立できるということをつくっていかない限り、毎年毎年この委員会で新しい制度を導入して、さらに、さらに、さらにということになりかねないんじゃないか、こう思うんですけれども、このあたり大臣に、この国保のあり方についてどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/267
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268・渡部恒三
○渡部国務大臣 非常に難しい問題で、今先生御指摘の問題を傾聴しておったのでありますが、単位の問題にしましても、私は正確な知識でありませんけれども、岩手県の沢内村ですか、これは村長さんが大変なヘルス事業をやっておられて、結果的には国保の財政も非常によくなっておるということを聞いたことがありますが、行政指導というものほかえって、そういう小さいものの方が徹底して行われる場合はまた努力した政策効果があらわれる場合があります。また、今先生御指摘のように大都会になりますと、これはなかなか行政指導というものはいろいろな努力をしても徹底していかない面がございます。そういう意味では、国保の単位というのは、さっき政府委員から答弁があったようにしていくしかないのかななどとも私、今聞いておったのでありますけれども、残念ながら今直ちに、国保をこういうふうにして、ここできっちりと歯どめをかけていくということを申し上げられるような具体的な勉強が私の頭脳の中にはないわけでありますけれども、基本的には、先生が何度か申されておりますように、ここでまた、これまでのことをやって足りなくなったからまたどうというようなことはなかなか困難になっていく面もありますが、しかし同時にまた、保険制度というものは強い者が弱い者を助けていくということで進んでいかなければならないという考え等もありますので、これらの考え方を総合していって、歯どめがかかるような国保の自立努力と申しますか、これから自立していけるような具体的な方策というものを探求してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/268
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269・菅直人
○菅委員 ちょっと追加的ですけれども、国保の中で保険料部分と国庫負担部分の大体の比率が、大ざっぱでいいですからわかっていればどうなりますか。国保の中で保険料部分と国庫の支出部分、大体大ざっぱでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/269
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270・吉村仁
○吉村政府委員 現在、医療費ベースで物を申し上げますと七七%程度が給付費になります。そして医療費の四五%程度が国庫負担、こういうことになっておりますので、保険料は医療費の三二%程度が保険料、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/270
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271・菅直人
○菅委員 国庫支出は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/271
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272・吉村仁
○吉村政府委員 国庫補助率は四五%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/272
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273・菅直人
○菅委員 つまり四五対三二ということですね。つまり大臣、今国保というのは、さっき保険料が差があるとかいろいろ言われましたけれども、実質上保険料収入、保険税収入よりは国庫カバーの額の方が大きいわけですよ。ですから、自治体が小さくやればいいというのは確かにあるのですが、実際の財政基盤で言えば、実は既に国営的要素の方が自治体運営よりはもう大きいわけなんです。そういう中でどうこの制度を考えていくかということなわけですね。今の議論の中を含めて、つまりいろいろな制度が今健康保険制度には分立をしている。これはいろいろな経緯の中で分立をしているということももちろんありますけれども、必ずしも制度そのものを統合したらうまくいくとは私自身は思っていないのです。あくまで制度は、それぞれ分立した中で、自分たちがカバーする責任分野あるいはカバーする問題と、それから必要ならばそれに加えた財政調整、これは特に老人の問題に対して、一種の世代間財政調整になるかもしれませんが、必要があるだろうと私は思います。ただ、制度そのものは、それぞれの制度が自立できる制度で、その条件をつくっていった方が、先ほど来のいろいろな経営努力の問題も含めて効果的なんじゃないか、このように思うわけでして、今後さらにそういう制度を考えられるとき、国保の問題にぜひ新しい視点で見ていただきたいと思うわけです。
それに多少関連して一つだけ申し上げたいのは、そういう意味で、組合健保が国保などに比べて制度的なメリットがいろいろ言われているわけですが、現在組合健保というのは、同一企業で健康保険組合をつくる、あるいは同一業種で健康保険組合をつくるという形ですが、さらに地域的に、例えばある町の商店街が集まってそこで一つの地域的な健康保険組合をつくるというようなことももっとあっていいんじゃないかと思いますけれども、そういう地域的健康保険組合の推進ということについてどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/273
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274・吉村仁
○吉村政府委員 ある、一定の地域について健保組合の設立を認めろ、こういう要望がかなりあります。したがって、私どもは、それが成立する余地があるかどうかということを現在鋭意検討しております。
私ども、今回の改正案の基礎として組合健保主義というものはなるべく推進したい、こういうことを考えておるわけでございまして、地域健保もその一つの方策としていろいろな角度から検討しておるのが今の現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/274
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275・菅直人
○菅委員 それでは、多少話が変わりますけれども、きょう朝来の審議の中でも別の委員の方が取り上げておられましたけれども、医療費の減額査定をしたときの患者への返還の問題、これについていろいろと報道もされているわけですが、厚生省として、まずこの実態、どの程度の金額といいましょうかあるいは範囲といいましょうか、どのように実態を把握しておるのか、まず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/275
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276・吉村仁
○吉村政府委員 五十七年度で申し上げますと、国保連、それから支払基金で合計いたしますと、査定額は医療費全体で千四百億になっております。このうち被保険者の一部負担にかかわる額は五十億から六十億程度と推計をされます。
なお、最近の十年間の査定額のうちで、被保険者の一部負担にかかわる部分を推計いたしますと約三百八十億程度ではないか、こう考えられます。そして、この間の医療費総額は約九十兆円でございますので、その九十兆円に対しまして〇・〇四二%程度だと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/276
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277・菅直人
○菅委員 そうすると、一年間で五十億近い金額ということであるわけですが、国立病院の場合、こういう査定が出た場合にどうされているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/277
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278・吉崎正義
○吉崎政府委員 国立病院におきましては、もとより患者から請求がありますれば返還をすることといたしておりますけれども、その返還の実態の詳細につきましては、率直に申し上げまして把握ができておりません。返還しておる件数は非常に少ないのではないかと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/278
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279・菅直人
○菅委員 文部省にもおいでいただいていると思いますが、大学病院では実情はどうであるか。ついでですから、今後どうされるつもりかもお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/279
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280・佐藤國雄
○佐藤説明員 従来から、国立大学の病院における診療報酬の請求事務につきましては、適正に実施するようにかねてから指導はしてきておるわけでございますけれども、先生御指摘の件につきましては、患者から請求があれば返還するということでございますけれども、その実態については私ども定かに掌握はしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/280
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281・菅直人
○菅委員 これは、国立病院にしても大学病院にしてもあるいは他の病院もそうでしょうが、請求があれば返還するといっても、それは患者の側からすれば、そういう減額査定が起きたということ自体のわかる機会というのは大変まれなケースじゃないか。例えば、高額療養費なんかで返還がある場合の数字がどうも違うとか、あるいは通知運動で違ってくるとか、何かなければわからないわけでして、きょう朝来の審議の中で、それは繰り返しませんが、法制局も、これはもう明らかな医療機関の不当利得だ、当然返還をすべき性質のものだと言われ、局長も、その点ははっきりしている、後は実務的な問題だというふうに言われたと思うのです。これを被保険者に知らせる何らかの手段を講じられる予定があるか、あるいはどういう形で講じられるか、その辺についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/281
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282・吉村仁
○吉村政府委員 けさほど申し上げましたように、私ども、やはりこの問題はきっちり整理をするべき性質の問題だ、こういうように考えておりますが、なかなか実務上の問題もある。そこで、私どもとしては、非常に査定額が高かったようなケースにつきましては通知をするというようなところから始めていきたい、こういうように考えております。これは、先生もちょっとお触れになりましたが、高額療養費の支給と関係するところでございますので、高い医療費についてはひとつ考えなければなりませんし、また、高い医療費で高い査定を受けた場合、あるいは医療費はそれほど高くはなくても査定額が非常に高かった場合、そういうようなものについては、やはり患者に保険者の方から通知をするような何らかの仕組みというものを考えていきたい。ただ、非常に高いところから始めさせてもらいたいというような気持ちを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/282
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283・菅直人
○菅委員 これは、確証というかそういうあれはないのですが、福岡県かどこかで通知票というようなものをつくってやっているというようなこともちょっと耳に挟んだのですが、何かそういう具体的な事例で厚生省が把握をされている例はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/283
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284・吉村仁
○吉村政府委員 具体的には把握をしておりませんが、コンピューターを導入しておる市町村がかなりございます。国保の関係でコンピューターで処理をしておるところがございます。例えば浦和市等は全部コンピューターで処理をしておるわけでありますが、そういうところでは十分可能なのではなかろうか、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/284
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285・菅直人
○菅委員 実務的に高いものからというのは理解できないわけではありませんけれども、高額療養費の問題で言えば五万一千円という額ですから、かなり高いレベルなわけですね。ですから、五円とか三円とかまでを全部ぴっしりというのはなかなか無理でも、例えば千円程度を返還額が超える場合は返還をする、あるいはそういうことをちゃんと通知をするというのが本来の常識的な線じゃないかと思いますが、そのあたり、究極的といいましょうか、どの程度まで、どのくらいの時期までには持っていきたいということをお考えですか。大ざっぱなところでいいですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/285
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286・吉村仁
○吉村政府委員 それも含めて検討をさしていただきます。ただ、先生は今千円という金額をおっしゃいましたが、査定額が千円の場合だと、負担額はその一割でございますので、百円返すということになるわけであります。百円の返還を処理するために通知をしたりいたしますと、経費もそれに見合うぐらいの額になる、こういうような状態が起こるわけでございます。もし千円が返還額だとすれば、これは一万円査定をされることですから、それはやはり通知をすべき性質の額になるだろうと私は思います。
ただ、その辺をどういう手順でどういう金額から始めるかという御質問でございますが、これについては、私ども、先ほど申し上げましたような線に従って少し検討さしてもらって、逐次実施に移していきたい、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/286
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287・菅直人
○菅委員 私が申し上げたのは、返還額が千円という程度を一つの常識的な線として私なりの考えを申し上げたので、そういうところで、今の局長の答弁のようにどこに線を引かれるかあるいはどういう手順かは、できるだけ余り遅くならない時期に手当てが進められるようお願いをしておきたいと思います。
それでは、残りの時間も多少短くなってきたのですが、今回の改正の中で一つの大きな問題であります退職者医療制度について、幾つかお伺いをしたいと思います。
この退職者医療制度というものの考え方については、私も、長い間会社勤めをしてやめた人がすぐ国保に移らなければいけないという実態というのは何か矛盾を感じておりましたし、そういう場合に、退職者を現役のメンバーがある程度カバーするという制度はあっていいのじゃないかと、私自身そういう考え方を持っておりました。しかし、昨年老健法が成立をしたというような、状況が一つ変化をしたということ、あるいは今回の退職者医療制度そのものの中身を見てみますと、そういう基本的な考えは考えとして、果たして今回導入を提案されている退職者医療制度が本当に長期的に見ていいものになるんだろうか、そういう点では大変に危惧を感ぜざるを得ないわけです。
そこで一つ、問題の整理としてお伺いしたいのは、退職者医療というのはこれは被用者保険と考えていいのか、それとも国保との間での財政調整というふうに考えるべきなのか、考え方の一つの整理なんですけれども、その点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/287
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288・吉村仁
○吉村政府委員 これは私ども、被用者保険の制度だと観念をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/288
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289・菅直人
○菅委員 被用者保険という考え方でいくならば、私はやっぱりちょっと乱暴ではないか。確かにかつて被用者であった人というのを年金制度で一つの区分をするというのは、いろいろ知恵を使われたのでしょうけれども、普通の考えで言えば、今まで被用者であった人がやめた、その人をカバーしていく、そういう意味では被用者保険としてそれをつくり育てていくと考えれば、新規発生分あたりからやっていくのが自然であって、それ以外に財政調整的な問題が問題としてあるとすればそれは別問題であって、財政調整ではなくて、被用者保険の本来のあり方からすれば、これは保険者、被用者保険といっても労使が構成しているわけですから、そうすると、そこからやめていく、まさにそこから退職していく人が一つのものを構成するということから言えば、もう十年前にやめた人もあるいは五年前にやめた人も、あるいは幾つかの職場をかわっていってやめた人も、何もかも全部、どこかにはいたはずだからといってくくっちゃうというのは、多少制度的に何か無理があるのではないか。これが実は、この制度の責任体制の問題とも絡んで、一体だれが責任を持つのかということにも絡むわけですが、その点についてのお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/289
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290・吉村仁
○吉村政府委員 退職者医療制度につきましては、昭和四十年ぐらいから設けるべしという御意見が出ておったわけで、いろいろ役所でも検討をしてきたわけでございます。ただ、その場合に、退職者医療制度を設ける問題点というのが幾つかあったわけでありまして、その問題点をどう解決するかが、退職者医療制度を創設できるかどうかの成否を決定する問題であったわけでございます。
それを申し上げますと、一つはやはり、退職者の被保険者期間の確認をどうするか、効率的に行う方法は何かということであります。退職者というのは、一つの企業でずっと勤めて退職されるというようなタイプもございますし、いろいろな企業を綴られて退職をされるという方もおられるわけでございまして、被用者の期間が何年あったか、そしてどういうところに所属をしたか、こういうことがやはり一番重要なわけでございますが、なかなかその確認というのは難しい作業でございます。
そしてもう一つ、第二の問題としましては、退職をいたしますと、もと勤めておったところにお住まいになる方もおられますし、国に帰る人もおられるというように、全国に散在をするわけでございます。その退職者を把握をしまして、退職者医療を適用し、保険料を徴収し、給付を行うという事務の管理をしなければならないわけでありますが、それをするというのはやはり膨大な機構も要することになるわけでございまして、ここが第二の難点であったわけであります。
それから第三点は、その費用負担をどうするか。非常に理論的に言いますと、退職者が勤めておった期間に応じてその企業というか、その企業の現役が負担をする、あるいはその退職者本人の保険料でもって賄う、こういうことになるわけでありますが、なかなかこの被保険者について、何年分をある事業主が責任を持ち、何年分を次の事業主が受け持つ、こういうことは難しいわけでございます。最終の保険者が持つということになればこれは不公平、例えばずっと勤めておる人の場合はそれはそれなりによろしいわけですが、事業所を転々とされたというような方を想定いたしますと、それを最後の保険者が持つというのはこれはやはり不公平ではなかろうか、こういうように思うわけであります。
そこで、今申し上げましたような問題点を全部解消するような制度とはどういうものか。私どもが提案をしている退職者医療制度はその問題を全部解決した制度だと私は思っておるわけでございますが、第一の点につきましては、年金受給者という形でとらえるならば、少なくとも被用者期間が二十年以上あったという無言の証明になるはずでありますし、それから、全国に散在する被保険者について新たな事務機構を設けないでやるとすれば、国保の窓口を借りるのが一番実態に合うんではなかろうか、こういうことで国保の窓口をお借りした。それから、三番目の費用負担につきましては、やはり全被用者保険の費用、こういうことで、一種の財政力に応じた負担というものを被用者保険のグループの中でやる、こういうことで総費用を負担をしてもらう、こういうことで解決をしたということでございます。
国保の窓口を仮に借りられないとすれば、この退職者医療制度を管理運営をする機構というものをやはり別に設けざるを得ません。しかしそれを設けるということになれば、私どもは退職者医療制度そのものがなかなか成り立ちにくいのではないか、今の時点でそういう膨大な機構を設けるということは非常に時宜に適さない問題ではないかということで、国保の窓口を借りるという形で処理をした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/290
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291・菅直人
○菅委員 大臣、今の局長の話をずっと聞いていると、何かもう一生懸命退職者医療制度を昔からつくろうと思っていた、しかしいろいろ問題点があってそのいい解答がなかったから、いろいろ考えたら今回やっといい解答、手当てが見つかったので、それでそういう案を出したのだと聞こえるわけですね。しかし私は、今の局長の視点というのはその本音は道なんですね。つまり、何が何でもここで実質的に財政調整をするために、退職者医療というものを間に置いて、国民健保の負担をいわゆる被用者保険に振りかえる必要があるときに、そこに何としてもこの退職者医療というものを介在させな と制度的にうまくつじつまが合わない、そこを前提にして考えられたから今のような議論が成り立つわけです。
なぜこんなことを言うかというと、退職者の立場になって考えたときに、この制度が何かということなんです。私の父親は四十年サラリーマンをやりまして、その後任意継続で二年ぐらいは前の保険にいましたけれども、今もう七十を越えましたから、そろそろそれが切れれば国保で、退職者ではなくて老健法に入るわけです。その立場で見ると、なぜ退職者医療が欲しい、また我々も必要だと言ったかといえば、やはり会社勤めを長い間やった人が、やめた後もある意味では現役時代と同じような待遇を受けられる、もちろん給付もですけれども、場合によったら健康事業、ヘルス事業も、年一回の健康診断を受けられるとか、つまり現役時代と同じように扱ってもらえることを望んでいるわけですよ。それが、この制度はそうなっているのかというのですよ。つまり給付率も今の国保よりは若干上がるとな言いますけれども、現役時代とは全然違って、それで保健事業にしたって結局はもともとの保険者とは違うわけですから違ってくる。結局被保険者、つまりその退職者医療の対象になる人から言えば、何が変わったのかといえばせいぜい、せいぜいなんと言ったら怒られるかもしれませんが、本人の給付率が一割上がった。それは確かに以前よりはその点だけとらえればプラスかもしれないけれども、しかしヘルス事業にしたって何にしたってもともとの関係から言えば全部切り離された形で、とうとうこれによって窓口としては国保を借りる。窓口として借りるわけですから、国保の担当者である自治体から見ても、自分の被保険者というよりは、窓口を貸している被保険者ですよ。そうすると、この退職者保険の対象になる四百万人の人は、保険制度の中で一体だれがこの人たちの健康という面での責任者なのかということです。拠出は完全に本人プラス現役労使。自治体はお金は一円も関係ありません。だから、先ほど言われた沢内村の例でも、多少頑張れば医療費が少なくなるといっても、退職者医療については少なくなろうが多くなろうが自治体は全く関係ありませんで、あるいはまた、各健康保険組合なり政管健保なりは一律拠出ですから、もともと自分のところにいようがいまいが関係ありませんで、完全に人間的には切り離されてしまうわけですよ。それを称して退職者医療と言うのですけれども、私は、そういう点では責任とそういうものが分離をし、あるいは被保険者の立場になったときに、そういったつながりがない退職者医療というのは大変問題が多くて、私なりあるいはいろいろな議論がこれまであった、そういう多くの人たちが望んだ退職者医療とは全く異質のものではないか。この点、大臣どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/291
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292・渡部恒三
○渡部国務大臣 サラリーマンの方が現役のときは十割、ところが退職されると、退職される時期にはこれは老齢になるわけですから、どんどん病院に余計行く可能性が強くなってくる、また月給など収入も減ってくる、そういうときに、今まで十割だったものが急に国保に入って七割になる、これはだれが考えても矛盾だ、直したい、こういうことは一つあったろうと思います。
それからもう一つは国保、今まで先生から大変御心配いただきましたけれども、社会構造が非常に変化しておりますから、ますます国保を支える財政的な力は弱くなっている。そういう一番弱い国保に、強い方の被用者保険から老齢になると入っていって国保の財政を苦しめることになる。これもだれが考えても矛盾である。
そういう二つの大きな矛盾を解決する方法として、今回退職者医療制度、退職者保険、いわば国保の窓口を借りるところの全国的な規模の被用者保険と言うべきものでございましょうけれども、これができたということは、常識的にほとんどの皆さんが、非常にこの点はよかったと歓迎をしていただいておるところであります。
それから、七割が八割になっただけじゃないかというのは、先生のお言葉ですが、これはちょっとうなずけないので、十割を九割にするということでこれは日本じゅうで大騒ぎしておるわけですから、やはり七割を八割にするというのは大変な、これは退職者の皆さん方に対しては大きな問題でありまして、私は、退職者保険の今回の創設というものは先生も評価してよろしいのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/292
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293・菅直人
○菅委員 先ほども言いましたように、七割を八割にしたということを決して軽視をしているわけじゃないのです。それは後で議事録をお読みになられてもそうは言っていません。ただ、私が申し上げたいのは、あくまで現職時代にいた保険で、いわば保険組合にそのまま面倒を見てもらうという意味での退職者医療というものを考えていたのが自然なんです。それが全然変わったというのは、ちょうど老健法ができたのと、あるいは新しい全く別の制度に移ってくださいと言われるのと同じことでありまして、確かに給付率が本人については今の国保の水準よりは上がるにしろ、本来願っていた退職者医療とはそういう意味でかなり異質ではないか。そういうことを含めて例えば任意継続の延長、あるいはこの退職者医療制度の中で健康保険組合自身が、自分のところを退職した人については従来どおり給付を続けたいという場合に、そういう給付を続ける道を認められることを考えられることはできないか。その場合には拠出金をその分だけ減額するとかいう措置ももちろん必要になると思いますが、その道を開く可能性について、それはできないかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/293
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294・吉村仁
○吉村政府委員 まず、ちょっと補足をさせてもらいたいのですが、私ども、今度の退職者医療制度は、退職者を全体に把握した一つの健保組合をつくったみたいなものだ、こういうように考えておるのです。そして、その窓口だけは少なくとも国民健康保険の窓口を借りないとなかなかうまく管理できないから、市町村の窓口をお借りした全国の退職者を対象にした一種の健保組合をつくったようなものだ、こういうように理解をしていただければありがたい、こう思います。
それから、御質問の第一は、任意継続被保険者の期間を延長して対処する方法はないか、こういうことでございますが、私どももその方法についていろいろ検討もしてみました。しかし、任意継続制度というのはやはり逆選択を招く可能性がある。つまり、体の弱い人だけが任意継続の被保険者になる。退職しても元気な方、退職しても元気なというのは変ですが、退職時に元気な方は任意継続の道を選ばない、こういうことになると思います。
それから、任意継続の期間を何年にするかという問題があるわけでありますが、現在の任意継続制度というのは現役被保険者の二倍の保険料を自分が負担をする、こういう制度で成り立っておるわけでありますが、そういう現役被保険者の保険料の二倍程度の保険料を長く負担をするというのはやはり少し無理なのではなかろうか、こういうように考えておるわけであります。しかもまだ、資格喪失時の保険者がその任意継続被保険者の面倒を見る、これは私はたびたび繰り返すようですが、最後の保険者だけが面倒を見る制度というのは少し公平を欠くのではないか。日本国民の退職者全部が、一つの企業に初めからずっと勤めて、最後の定年退職まで勤められるということなら成り立つのでありますが、やはりそうではない現実がたくさんあるわけでございまして、最後の保険者がその責任を持つというのは少し酷なのではなかろうか、こういうように考えております。
それから、それでは健保組合が退職者医療制度というものを独自にやった場合に調整の道を開く気持ちがあるか、こういう第二の御質問でございますが、私ども、各健保組合が行おうとする退職者医療制度というものが、この我々が創設しようとしておる退職者制度以上のものを実施するとすれば、それはやってはいけないと言って拒む理由はなかろうというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/294
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295・菅直人
○菅委員 この問題、もっともっと実は問題があるのですが、時間が間近ですから一つだけちょっとこの例を言ってみたいのです。
例えば、本人が退職者医療の本人で六十九歳、それが一年たつと七十歳になりますね。そのとき家族の給付というのはどう変化するのですか。六十九歳のときの退職者医療の家族が、本人は七十歳になったときには老人保健法に入るわけですが、家族はそのときの給付はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/295
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296・吉村仁
○吉村政府委員 七十歳になると、今の老人保健法で言いますと国保に返る、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/296
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297・菅直人
○菅委員 いや、ですから家族の給付率はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/297
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298・吉村仁
○吉村政府委員 家族が七十歳以上ならもちろん老人保健法の適用を受けますし、七十歳以下なら国保の給付率にまた戻る、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/298
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299・菅直人
○菅委員 だから、数字を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/299
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300・吉村仁
○吉村政府委員 七割に戻るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/300
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301・菅直人
○菅委員 つまり、本人は六十九歳まで退職者医療で八割でしょう。それで老人保健になったら十割ですわね。そして家族は、通院は七割の入院が八割。それがどうなるのですか。今度は本人が老人保健になった場合は、家族は他の国保と同じように通院七割の入院も七割になるわけですね。つまり入院部分で家族の給付率は一割下がるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/301
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302・吉村仁
○吉村政府委員 今のところ、そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/302
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303・菅直人
○菅委員 ちょっとこれは流れとしておかしいのですね。つまり六十九歳から七十歳になったら、本人は老人保健法に移ってください、もっといい給付率です。しかし家族は、例えば入院していたら、だんなが七十歳になった途端に、入院していた家族は二割自己負担から三割自己負担に変わってしまうということになるわけです。これは非常に具体的な事例ですが、退職者医療制度というものを設けた趣旨が、先ほども申し上げたように、本来長い間勤めをした人がやめて、その後の面倒を現役が一緒に見ようじゃないかということからスタートしたのなら、こういうことこそ被保険者の立場に立って何とかしなければいけないという立場になると思うのですが、今回の制度が、あくまで財政的な視点から、この制度を間に置いて、こちらのお金をこちらに振りかえようという立場から考えられているものだから、制度として、資格の問題だとか管理の問題だとか費用負担の問題は一生懸命知恵を出されたけれども、こういうきめ細かな被保険者の立場への配慮というものが抜け落ちたのではないか。
今回の健康保険制度にはまだまだたくさん問題点はありますけれども、こういうたくさんの問題を抱えた健康保険改正法にはやはり賛成できないということを最後に申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/303
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304・有馬元治
○有馬委員長 次回は、来る五月十五日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後八時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01319840510/304
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