1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十八日(水曜日)
午後六時二分開議
出席委員
委員長 瓦 力君
理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君
理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君
理事 伊藤 茂君 理事 野口 幸一君
理事 坂口 力君 理事 米沢 隆君
臼井日出男君 熊谷 弘君
笹山 登生君 椎名 素夫君
塩島 大君 田中 秀征君
中川 昭一君 長野 祐也君
平泉 渉君 平沼 赳夫君
藤井 勝志君 宮下 創平君
村上 茂利君 森 美秀君
山岡 謙蔵君 与謝野 馨君
上田 卓三君 川崎 寛治君
沢田 広君 渋沢 利久君
戸田 菊雄君 堀 昌雄君
柴田 弘君 日笠 勝之君
宮地 正介君 矢追 秀彦君
安倍 基雄君 玉置 一弥君
正森 成二君 簑輪 幸代君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
出席政府委員
大蔵政務次官 堀之内久男君
大蔵大臣官房審
議官 水野 勝君
大蔵省主計局次
長 平澤 貞昭君
大蔵省主税局長 梅澤 節男君
国税庁次長 岸田 俊輔君
国税庁直税部長 渡辺 幸則君
国税庁調査査察
部長 冨尾 一郎君
労働大臣官房審
議官 平賀 俊行君
委員外の出席者
厚生省年金局企
画課長 渡辺 修君
大蔵委員会調査
室長 矢島錦一郎君
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委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
小泉純一郎君 臼井日出男君
山中 貞則君 長野 祐也君
坂井 弘一君 日笠 勝之君
同日
辞任 補欠選任
臼井日出男君 小泉純一郎君
長野 祐也君 山中 貞則君
日笠 勝之君 坂井 弘一君
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本日の会議に付した案件
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇号)
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
第一一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/0
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001・瓦力
○瓦委員長 これより会議を開きます。
法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/1
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002・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 重要な三法でありますが、終局段階を迎えまして、どうしても採決の前にお伺いしたいことだけ集約をして質問をいたしますので、多言は申し上げませんから、答弁の方も要点を簡略にお願いいたしたいと思います。
まず、所得税に関してでありますが、今までさまざまな議論がございました。景気浮揚に役立つことになったのかどうかという問題、不公平是正になったのかならなかったのかという問題など、繰り返し指摘がございました。いろいろ、歯切れの余りよくない答弁がございましたけれども、皆様も、来月、再来月の月給袋を前にして高いビールを飲めば、実感がわいてくるのではないだろうかと思いますが、二点だけどうしても、今までの議論を伺っておりまして詰めたい問題があります。明確な御回答をいただきたいと思います。
一つは、減税は恒久法、財源の約半分は法人税。租特に入って、二年間の時限立法ということに関する質疑がございまして、その時点での社会経済情勢、財政状態などを含め判断というふうな意味の御答弁でございました。
私は、どうしてもここではっきりしていただきたい二つの道があると思います。一つは、その段階になれば、消費税あるいは間接税に法人税の分が切りかわっていくという形をとるのか。まあ、こういうことで公平な税制になるんだと言う学者の方がいらっしゃることも承知しておりますが、大きな問題であります。もう一つは、今回、所得税減税の財源として法人と間接税と痛み分け、痛み分けかどうか知りませんが、両方で対応するということになったわけであります。私は、過去十年、二十年法人税と所得税というものとのバランスを見ましても、二十年前と比べたら大きく逆転をしているという状態がございまして、やはり公平の視点をさらにきちんと持ってここをやらなければならないということだろうと思います。二年後にどうかということについて、何税にということまでは詰めませんが、今回とった方法論、それをわきまえるといいますか、財源の措置の方法論、その点を十分踏まえながら対応していくということだけはきちんと言っていただきたいというふうに思います。
もう一つは、この減税と言われる内容については、増減税であり、非常に不満であるという論評も多いわけであります。私は、これで一段落したと思ったら困ると思います。税調の中期答申にも、今後数年に一度は見直しをしなければならないということもはっきり書いてございます。国民の信頼が大事であるということもその前提に踏まえてあります。そういう努力を、やはりうまずたゆまずやらなければならないということであろうと思います。また、今までも議論がありましたが、将来社会と国民、税金の視点を考えますと、さまざまの新しい努力を、税の公平の観点からしていかなければならないということもございます。クロヨン問題もございます。そういうことの面から含めまして、これで一段落ではない、今後とも鋭意、税の公平のための努力をしていく、そういう決意はきちんと伺っておきたいと思いますが、二点、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/2
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003・梅澤節男
○梅澤政府委員 まず第一点でございますけれども、法人税の今回の税率の引き上げが、二年間の暫定措置になっておるわけでございます。これは当委員会における質疑を通じまして私どもの考え方を申し述べましたように、今回の税率の引き上げ幅、少なくとも戦後最高の実効税率の上昇を来すというふうなこともございます。そういった点も踏まえまして、租税特別措置法で二年間の臨時措置とさせていただいたわけでございますが、二年後どうするかということについて、ただいま委員がおっしゃいましたように、巷間伝えられるような、例えば新しい間接税でこれを置きかえるとか、そういった具体的な予断を一切持っておるものではございません。
ただ、この点につきましては繰り返し御答弁申し上げましたように、やはり二年後の財政状況、その時点におきまして税体系全体の見直しの中で適切な税財源を見出していかなければならないとしたら、その時点でいろいろ具体的な検討をしなければならないということは十分想定されるわけでございますけれども、今の時点で具体的にこれをどういうものと入れかえるとかいったような一切の予断はないということだけは、明確に申し上げたいと存じます。
それから第二点でございますけれども、これは御指摘のとおりでございまして、税制調査会の答申におきましても、我が国の所得税がトータルとして諸外国に比べて非常に高い水準にあるということではない、中長期的には負担の引き上げが行われるということも否定されるべきではないであろうという前置きはございますけれども、やはり所得税は税体系の基幹税でございますし、累進構造を持った形での税負担をお願いする税でございますので、長い期間これを見直しをしないということになりますと、その間急激な負担の変化が起こったり、あるいはゆがみを生ずるということは、これはもう御指摘のとおりでございます。したがいまして、少なくとも数年に一度は基本的な見直しを行うべきであるという御指摘は、そのとおりだと私どもも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/3
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004・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 この段階ですから、一言はっきり言ってください。さっきの二番目は結構です、一番目の方。
今回も減税財源を法人税、間接税両面で扱いました。まあ痛み分けということですね。私どもは、大衆増税にしたのは、右のポケットに入れて左のポケットから金を取るというのと同じであって、おかしいということを主張いたしております。ですから、皆さん方の方が二年後にどういう財源、税目になるのかということは、確かにまだいろいろ検討の余地もあるかもしれません。しかし大衆増税の方、こちらの方で主として賄うとかいうみたいな姿勢で対応されたのでは、私どもは将来そういう方向に行くような減税なんか、一体この国会で処理できるかという気持ちになるわけでありまして、そうではないということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/4
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005・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回減税財源のある部分につきまして酒税、物品税の間接税の負担増でお願いをしておるということは御指摘のとおりでございますが、この点につきましては、特例公債に財源を依存できないという状況の中で、しかも現行の税制の枠組みの中で、それからもう一つやはり家計に対する税負担の上昇を極力縮減するという観点から、最小限度負担の調整的な意味も含めまして、今回税負担の引き上げを私どもお願いしておるところでございます。
二年後どうするかという問題につきましては、先ほども申し上げましたように、具体的な予断を持っているものではございませんけれども、いずれにいたしましても、税体系全体の中で負担が著しく不均衡な形にならないように、税体系全体の見直しの中で対処していかなければならないというふうに申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/5
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006・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 次に行きましょう。
今度の減税法案について、多くの勤労者に、勤労市民の生活をどう守っていくのかという意味では切実な声が大きいわけであります。私はそういう意味で言いますと、一つは法改正にかかわる問題の分野がございますが、もう一つは法改正にわならない範囲、通達など行政の範囲で改善できるものもいろいろあるということではないかと思います。
まず一般論、総論として御見解を伺いたいのですが、例えば所得税基本通達とか法人税基本通達とか、さまざまな行政面の分野がございます。それらの行政の面でも見直し作業を、税調の所得税の場合と同じように適時やっていくのが当然ではないだろうか。五年も八年もたった、物価上昇率から見ても相当ある、そういうふうにだれが見ても改善されるべきものは、特に今回は所得税法、法人税法などを含めた改正の時期でありますから、これを機会に具体的に検討課題にされるべきではないだろうかと思いますが、総体的な考え方としていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/6
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007・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員ただいまの法令以外の面で、特に所得税の通達とか法人税の通達でいろいろな措置をいたしておりますが、それについてのお尋ねでございます。
委員御指摘のとおり、現在現物給与といった関係を中心といたしまして、いろいろ執行上非課税扱いにしているものがございます。これは御承知のとおり、現物給与と申しますのはやはり評価をいたしませんと所得税の課税ができない、その評価をどうするかということをめぐりましていろいろな対応策をとっておるわけでございます。こういう取り扱いが制定された時期はそれぞれ違うわけでございますし、おっしゃいますようにかなり昔に制定されたものもございます。それらの中には現行の取り扱いが定着しておるものもあるわけでございますが、今お話しをいただきましたように、長年手直しをしてないというものにつきまして、一般的に私ども適切な時期に見直しをしていくのが適当かと思っておるわけでございます。ただ、個々のものにつきましてはそれぞれの沿革がございますし、またそれぞれの影響、意味合いもございますので、そういうことを踏まえながら慎重に検討するということではなかろうかと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/7
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008・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 一般的には見直すのが当然ということでございまして、具体的に二、三伺ってみたいと思いますが、例えば所得税基本通達三十六−三十八の二というのがございます。「食事の支給による経済的利益はないものとする場合」「使用者が役員又は使用人に対し支給した食事につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、三十六−三十八により評価した当該食事の価額の五〇%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額二千五百円を超えるときは、この限りでない。」昭和五十年です。これから十年近くなるわけであります。この二千五百円というのは、物価上昇からしてもその他の要素を考えましても、例えば四千円ぐらいにするというのが一般的に見ても適切な対応ではないだろうか。
あるいはまた、個別通達で「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」というのがございます。これも昭和五十年。内容は「深夜勤務者に対し、使用者が調理施設を有しないことなどにより深夜勤務に伴う夜食を現物で支給することが著しく困難であるため、その夜食の現物支給に代え通常の給与に加算して勤務一回ごとの定額で支給する金銭で、その一回の支給額が二百円以下のものについては、課税しなくて差支えないものとする。」これは昭和五十年で二百円になっております。物価水準からいいましても当然変えられるべきものでありましょう。
同じように、例えば所得税基本通達三十六—三十二「課税しない経済的利益……使用者が負担する少額な保険料等」というのがあります。これにつきましても「金額の合計額が三百円以下である場合に限り、課税しなくて差支えない。」という項目がございます。
三つだけ申し上げましたが、これらのことも法改正にわならない範囲で、通達など行政面の範囲で改善されるべきものであろうというように思うわけであります。昭和五十年以降のさまざまな物価、経済の変化を見れば当然ではないだろうか。今回の所得税あるいは法人税の改正、その機会にこれらのことも取り扱うべきじゃないだろうか。幾らに上げなければならないとか即答できないならば、これらのことはさっき答弁の中で、情勢に即して適時改善措置をとるということも申されましたが、そういう趣旨でこの問題の取り扱いを決めていきたいということでも結構でございますので、御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/8
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009・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 ただいま三つの点について御質問がございました。
第一に食事の現物給与の点でございますが、これは御指摘のとおり昭和五十年に二千五百円ということで決められたままになっておるわけでございます。もともとこの制度は終戦後間もなく、企業におきまして現物給与、特に食糧事情の逼迫に伴いまして現物の食事という給与が一般化いたしまして、そのときの評価から発足した制度でございます。そういうことで、少額な現物給与という感じでできておる制度でございます。制定の趣旨といたしましては福利厚生的な面もございますし、また食事の給付を受ける使用人が二分の一以上の負担をするといったような制限もあるわけでございます。そういうことで大分時間がたっておるわけでございますが、これにつきましてはまた、給付を受けている方と受けていない方とのバランスとかいろいろな事情があるわけでございますので、そういう点につきましての検討が必要であろうかと考えておるわけでございます。
その次の、深夜勤務者の食事代の二百円でございますが、これも五十年に現在の金額になったわけでございます。これも、その前につきましては百円ということでございまして、当時は月額七百円の現物の食事の限度というものの中に含まれておったわけでございますが、その後外粋になりまして、別枠で考えられておるわけでございます。これにつきましても、これは現物で支給する食事とのバランスがございます。また、これは現金を支給いたしますので、所得税の課税の上からいきますと、なるべく少額不追求という観点を尊重いたしたいわけでございますが、そういう観点からの検討ということが必要であろうかと存ずるわけでございます。
最後に、使用者の負担する保険料で三百円というものでございますが、これはもう随分昔にさかのぼりますが、昭和二十九年にできた制度でございます。それまでの二百円の基準をこのときに三百円に引き上げたものでございます。ただ、この制度につきましては、昭和二十六年に生命保険料の控除の制度ができたわけでございますが、そのとき以前から設けられたものでございまして、一部で行われております非常に特殊なタイプの生命保険契約に組み込まれて実施をいたしてきたものでございまして、その後もそういう特殊なタイプの契約というものが存続をして現在に至っているというような、特異な事情があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/9
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010・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 時間がありませんからこれでやめますが、このような通達など行政の範囲で改善すべきもの、また改善されることがふさわしいものなどについて、前向きの対応をぜひお願いをいたしたいと思っております。
次に、納税環境の整備に関する問題につきまして二、三お伺いをいたします。
今回の議論の中で多く集中した議論がございました。私どもは、これは申告納税制度の理念と現実といいますか、税のベースにかかわる重要な問題が含まれているという感じがいたします。私も勉強してみますと、昭和二十五年、シャウプ勧告による税制改正、三十七年、国税通則法制定の答申などなどを含めましてその骨組みがつくられているわけでありますが、実際にはその理念と骨組みがよく機能していないという現実があり、税調でもさまざまの議論がなされたという経過になっているわけであります。それらの問題も今まで議論されたとおりであります。また、日弁連などからの意見書もございました。私も貴重な問題提起と思って読ませていただきました。
ただ、そういう法的な問題というものもございますけれども、特にこの税法に関する私どもの審議の中では、税の公平な執行、納税民主主義をベースに申告納税制度がどう機能さるべきなのかという視点から議論するのが中心であろうというふうな感じがいたしているわけであります。また、この申告納税制度がいろいろな面で未成熟であり、機能していない面があり、問題がある。残念な面もあるわけであります。政府の方にはぜひ認識をしていただきたいと思いますが、それらが機能しない大きな社会的ベースとしては、不公平税制がある、さまざまの脱税、その他の問題がある、政治の面においてもさまざまの問題がある。そういうことの不信感が、何か税金も取る取られるの論理、あるいは取られると損みたいなイメージ、社会のために一人一人がどう貢献すべきなのか、会費を払うべきなのかという民主社会の基本的なベースが十分に機能しないという面があるわけでありまして、そういうベースをきちんと踏まえてやらなければならないというふうに思います。
具体的なことを二、三伺いたいと思うのですが、さまざまな団体から切実な問題としての御要望などがございました。私もいろいろお話を伺ったりペーパーを読んだりいたしますと、その中でも全建総連の出された議論というのは非常に共鳴を深くする部面が多いということで考えております。というのは、何か記帳義務化反対、それから帳簿をつけないみたいなイメージの文書も間々お目にかかるわけでありますけれども、これは全建総連の中では、聞きますと、まじめに記帳しようという意味での記帳講習会とか、簡易な記帳形式をつくるなど、さまざまな前向きの努力をなさっている。私は大変いいことだと思います。またそれは、自分ができないからだれかに頼むとか、あるいはおれがやってやるとか、そういう論理ではなくて、みんなで努力をしながら一人一人がそれぞれ能力を向上させよう、そういう意識というのは非常に大事なことではないだろうかと私は思うわけであります。しかし、現実にはさまざまな問題があるわけであります。
まず一、二伺いたいのですが、私はそういう意味からいいますと、一つは、今回の税調の答申や今回の法改正のような、まあ納税環境の整備か徴税関係の整備かというようなお話もございましたけれども、そう受け取られるようなこと以前になすべきことがあるのではないだろうか。政府・税務当局のあり方として、言うならば民主主義を育てるというのか、あるいは啓蒙といいますか、そういう意味での努力の分野がもっとあるべきであろう。
梅澤さんの先輩の福田前国税庁長官の出された最近の本を見ましたら、 「申告納税の本旨からいって、納税者一般が当初から、自発的に正しい申告をすることが望ましいことで、低い申告を、個別的に後で調べて増差額をたたき出すやり方はよくない。正しい申告を確保するためには、広報・相談・指導・調査という順に、すべての税務活動を申告水準の向上に志向させる必要がある。アメリカ内国歳入庁の使命にあるように「納税者が納税義務を正しく守るよう当局が指導し援助する」ことである。」そういうコンプライアンスサービスが税務当局の使命であるというようなことが書いてございます。
現実には、各税務署のさまざまの御活動もあるようでありますが、主として、幾つかの納税団体に若干の補助金など出しながらという形が中心ではないだろうかと思うわけであります。やはり長い目で見て、税と民主主義という観点をきちんとした姿勢、これを当局がとられる必要があるというふうに思うわけであります。それが一つです。
二つ目には、この記帳についての現実の問題でありまして、記帳などの能力の現実の問題、零細企業経営管理上非常に困難な場合があるわけでありまして、こういうものを現実にどう処理をしていくのかということが、今この法律に関係をして現実の大事な問題ではないだろうかと思います。当然ながら、前にも御答弁ございましたが、可能な範囲での簡易な記帳を認めなければならない。まあ最小限売上高、仕入れ高が判明するような程度の記帳をどうできるのかというふうな取り扱いが必要であろうというふうに思うわけでありまして、極力、国民のだれもがつけられる、また全建総連の方も言っておりますが、労働終了後においても、なかなか生活のサイクルからいっても難しいという面もあるようでありますが、可能な、簡易な程度の内容にしていくということについての努力をすべきではないかというふうに思います。皆様方が納税者といい関係を持ってやるために受け入れようというならば、これらの関係者等も含めまして、私どもも実務的、実際的なさまざまのお話し合いもしたいと考えておりますが、その二つ、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/10
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011・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回御提案申し上げております納税環境の整備につきましては、ただいま委員のおっしゃいましたように、申告納税制度の基本的な考え方は、納税者自身が正確な資料に基づいて自主的に自分の税額を確定するというのが制度の本旨でございますので、今回御提案申し上げておりますものも、そういった制度の本旨を改めて制度的に確認させていただく。ただ「その中で新しく義務として、負担としてお願いします記帳の問題につきましては、一定の所得以上の方に限定いたしますとともに、記帳の内容も簡易なものにするということで、零細な事業所得者等に負担のかからないように配意はいたしておるところでございます。
ただ、その前提といたしまして、そういった納税環境の整備と申しますか、税制全般に対する国民全体の信頼をかち得るためには、もっと基本的に環境整備すべき事柄がいろいろあるのではないか。高度の政治的な御指摘の問題については、私ども答弁の範囲を出る問題でございますが、税制当局なり執行当局といたしまして、制度の適正、公平な仕組みについて絶えず見直しながら国民の御理解を得る努力をしなければならないこと、あるいは税務行政の執行面において正しい税制について御指導、御援助申し上げる努力を進めなければならないということは御指摘のとおりでございます。
ちなみに、今回の納税環境の整備の政府税調の答申の中でも触れておりますことは、こういった制度上の整備を進めるに当たっては、それとあわせてやはり全体の税に対する理解を得るための努力をしなければならないということで、特に「次代を担う児童、生徒等が学校教育の中で租税の意義を十分理解する機会を持つことが重要である」というふうな御指摘もいただいておりまして、これについては長年にわたりまして国税庁が文部省御当局ともいろいろ連絡をとりながら努力をしておるところでございます。
それから、第二番目の具体的な御指摘でございますが、記帳をなるべく簡易なものにして、しかも納税者の実態に即して負担にならないようにすべきであるという御指摘はまさにそのとおりでございまして、私どもも当委員会において繰り返し御指摘になりましたこの点を踏まえまして、これは具体的には省令で決めさせていただくわけでございますが、そういった方向で努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/11
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012・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 これは主税局長というよりも国税庁の方になるのでしょうか、今も主税局長のお話がございましたが、国税庁からも取り扱いをはっきりしていただきたいと思います。一つは、記帳制度の導入に当たって中小零細企業者に新たな負担にならないように、そういうものを極力回避するように努力をしてもらいたい。いろいろな業界もあると思いますし、今までの経緯もあると思います。ですから、関係者の意見も聞き、実態に即した形式をとっていくということですね。私どもも具体的なことがあればさらに相談をするようにしたいと思います。
それから、所得三百万というラインでありますが、三百万以下の場合には、全建総連の話を聞いても、実際は労働者ということではないだろうか。ですから記帳、記録、保存など、建前はそうでありますけれども、実際の末端行政の指導というものを実態に即して、何かこの機会に厳しく、ひどくやるとかということにならないような姿勢を、きちんとやはり持って対応していただくことが大事であろうというふうに思います。
またもう一つは、記録、保存の義務。これらについても、徴税といいますか、税務当局からしますと、ややもするとこの機会に完璧を期する、あるいはまたささいな不備を理由にして厳しい課税感覚を持って対応するとか、懸念をされるわけでありますが、それらの点についてどのような姿勢で行政指導なさるのか。私の申し上げましたような趣旨で対応されるようにしていただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/12
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013・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 御指摘の点でございますが、ただいま主税局長から御答弁申し上げましたとおり、今回の記帳制度の導入につきましては、現在の青色申告をさらに簡易なものにする、それから対象者を年所得三百万円以上の者に限るということで、中小零細企業者に負担にならないような配慮が加えられておるわけでございます。具体的な帳簿の記載事項とか記帳方法につきましては省令で定めることになっておるわけでございますし、具体的な業種の具体的な帳簿組織につきまして、これがこの省令の期待するところに適合するかどうか、具体的にどういう記帳をお願いするかということにつきましては、これまでの経緯とかあるいは関係者の意見も伺いまして、中小企業者の負担にならないように、私ども弾力的に運営をしてまいりたいと存じておるわけでございます。
また第二の御指摘でございますが、第一線の税務職員とそれから納税者との関係を円滑にするという点につきましても全くそのとおりでございまして、私どもはこの制度の導入に当たりまして努めて指導的な態度で臨むということにいたしたいと思っておるわけでございます。具体的には、パンフレットだとか説明会だとか、そういうことでこの内容を十分お知らせするとともに、関係の団体とも緊密な連絡をとりまして、いろいろ御協議をしながら制度の定着化を図ってまいりたいと思っておるわけでございます。したがいまして、制度が新しいわけでございますから、当初はいろいろふなれな点で間違いもございますでしょうが、そういうときに一々これをとがめ立てをする、あるいは調査で厳しく臨むというようなことは考えておりません。あくまでも長期的な観点に立ちまして、この制度が定着をするように納税者との間の関係を保っていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/13
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014・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 これは主税局長か政務次官が、こういう話があるんですね。何か本を読んでおりましたら、この納税環境の整備か徴税環境の整備かに関連をして、当初は罰則なしの緩やかな姿でスタートをして、続いて数年後には罰則をつけて監視体制を強化をして、これは大型間接税の布石というねらいがあるのではないか。政務次官は首をかしげていますが、この数年間の精力的な大型間接税の状況からいたしますと、そういう疑問も生まれてくるわけであります。そういうことはないように、明確に御否定なさるのが当然と思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/14
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015・堀之内久男
○堀之内政府委員 この納税環境の整備ということでいろいろと御指摘賜っておりますが、これまで主税局長なり答弁申し上げておりますように、私も実際末端でいろいろな商売をし仕事もし、また現実にやってまいりましたけれども、私は、やはりこの帳簿の記帳というのは御本人のためにも非常にいいことだし、またよく言われます税の公平、こういう立場から考えますときに、この記帳というのは当然なことじゃないか。こういうように考えますときに、これを悪用して徴税を強化する、こういうことにはならないわけであって、公平な課税の基礎になる、こういうことになろうと思います。したがって、そのことが将来間接税の布石になるということは絶対あり得ないと私自身考えておりますし、このことは与野党を問わず、大型間接税にはお互いに反対の決議もなされておるところでございますので、将来ともこれが大型間接税の布石にはならない、こういうように断言申し上げても言い過ぎではない、かように確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/15
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016・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 政務次官、後段は結構なんですが、前段の方。確かに申告納税制度、納税民主主義それから経営内容の自己管理、記帳、理論的にはまさにそのとおりですし、そういう社会ができればこれは百点満点だと思います。問題は、やっぱりそういう能力の問題や、実際に零細な企業や仕事、一人親方だとかそういう状況の中でどうしたらいいのかということが、この法案の先般来の焦点になっているわけでございまして、建前論はそのとおりですが、その点は十分踏まえていてください。
幾つか技術的な問題がありますが、法人税法の今回の改正に関連をいたしまして、政令の改正の準備がなされているようであります。さまざまの分野でいろいろとそれらにかかわる問題が出てまいります。私はそれらの具体的な問題をここでやる時間はございませんので、それはいたしません。ただ、私の経験から一つ皆様に強く要望しておきたいことがあるわけであります。個別の具体的なことではなくて、私の経験から一つお願いしたいことがあります。
基本通達の改正の前のときでしたか、基本通達の改正に関連してでしたか、労働組合の課税の問題がございまして、たしか事前の御相談やあるいは啓蒙、連絡、そういうことなしにいきなりお尋ね活動か何かが多くの労働組合に舞い込んだ。もらった方はびっくりしちゃって、一体これはどういうことかということになって、いろいろなとげとげしい騒ぎになりました。私はそのときに皆様方にお願いをして、やはり国税庁側と納税者との信頼が大事ですから、きちんとしたお話をして処理してくださいと申し上げまして、労働組合でも、労働四団体の幹部というよりも、そういうことの専門家の労福協というところが主体となって、国税庁と半年ぐらい何か話をなさったようであります。私はそのお話をなさった経過は非常に高く評価をしております。
というのは、さまざまな基本論や何かがありますけれども、この問題にどう対応すべきかということを極めて実務的に、極めて真剣にさまざまな御相談をなさり、合意をなさった。そうして、組合の大会は大体夏でありますから、ことしの夏の大会でどう対応しようかということについても、帳簿のつけ方まで含めて皆様とも御相談をし、また意見も伺い、合意をして準備をしてきたという経過があるわけであります。私はこういうことは非常に大事なことではないだろうかと思うわけでありまして、きはうは現物を持ってきませんでしたが、その合意に基づいたそれぞれの体制をきちんとしていくということについて、パンフレットも出して大量に配布しながら学習講座を開いているという状態でございます。私はそういうことが非常に大事だと思うので、そういうことの中で、何か今回の政令改正の中でも新しい問題が出る。そうすると、ことしの夏からそうしようかと思って随分勉強をして、皆さん相談してきたのに、今度は別の問題が、現実に施行される前から大きく起きていく、また不信感が出るということが起こりかねないような面も伺うわけでありまして、私は非常に懸念をしておるわけであります。
具体的な中身にわたることまではきょうは申し上げません。やはりそういう信頼関係を大事にして、今後とも対応していく。お互いの信頼あるいは話し合いや説得、合意の上に立ってなされていくのだということをきちんと踏まえて今後ともやっていく。当然ですが、そのことをきちんとお答えいただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/16
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017・梅澤節男
○梅澤政府委員 五十九年度におきまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、労働組合等も含まれます公益法人等の収益事業の範囲の拡充を政令でやらせていただくことを予定いたしておりますけれども、この点についてはただいま懇切な御注意がございましたように、この制度の考え方そのものは、収益事業が、普通の法人がやっておりますものとのバランス上不公平が出ないようにということで行うものでございますから、そういった労働組合等の事業の実態等もよく考えまして、実態に即した範囲の確定をするように努力するということを改めて申し上げたいと存じます。
なお、この政令を定めました暁、実施の段階に入るわけでございますが、この点につきましては、先ほど委員が御指摘になりましたように、国税庁とも密接な連絡をとりまして、円滑な制度の実施が行われますように、これは努力をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/17
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018・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 ただいまの点でございますが、確かに過去には御指摘のような経緯がございました。その後いろいろ組合側とお話し合いをさせていただきましたことは、私どもにとりましても大変貴重な経験でございましたし、また得るところも多かったと思うわけでございます。今度の政令の改正の実施に当たりましては、ただいま主税局長から申し上げましたように、今後とも納税者側と緊密な連絡をとってまいりたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/18
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019・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 最後に、もう一つだけ主税局長に注文しておきたいと思います。
きょうもこの後採決、附帯決議を付するという相談を与野党間でいたしましたが、今までの経過を振り返ってみると、どうも私は大蔵省側の本院、本大蔵委員会における附帯決議無視、じゅうりんが甚だしいと思うわけでありまして、既に審議は終わりましたが、例えば石油税法。この間質問する時間がなかったので、調べてみました。税法制定の際の五十三年、このときに「石油に対する課税については、関税、石油税、既存の内国消費税などその制度が複雑になっているので、その合理的なあり方について十分検討すること。」と書いてあります。その後、電源開発促進税のときでしたか、五十五年に同じように「エネルギー関係諸税については、制度が複雑になっているので、その合理的なあり方について十分検討すること。」と書いてございます。今回も、極めて残念なことに、同じ趣旨の附帯決議をこの間採択をいたしましたのこれだけではありません。前に物品税のときもそうです。むやみに上げてはならぬというふうな趣旨のあれはありましたが、その次に出てきた皆さん方の提案は、たしか二倍に上げるという法律改正が出てまいりました。
私どもはこう思うのですね。今本当に大事なときですから、政府・与党の皆さんの見解あるいは政策もここに出される。私どもも国民の期待にこたえて、現実にこれからどうベターにしていくのかという見解を述べる。より責任を持った議論を大いにしなければならぬと思います。それらの議論の結果が附帯決議に表明をされることになるわけであります。無責任につくったわけではありませんから。そういうことを次の税法改正までの間には十分踏まえて御検討いただくということでないと、さまざまな議論をここに集約して附帯決議を何本かつける、そんなことは全く軽視か無視をして出てくる。こんなことでは一体どうだろうかというふうに実は思うわけであります。野党も与党も完全に合意して附帯決議をつけて注文もつけた。それに対してなかなかできないというなら、随時そういう関係者にも理解を求めたり何とかしながら、お互いに国家、国民の将来のために有益なことをやっていくということにしなければならぬだろうと思うわけでありまして、今まで余りにもひど過ぎましたから、今後のことも含め、この際しかと御答弁を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/19
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020・梅澤節男
○梅澤政府委員 従来当委員会におきまして、毎年度、税制改正の際に附帯決議をちょうだいいたしておるわけでございます。この点につきましては、制度上検討すべきこととされた点につきましては具体的に税制調査会に報告を申し上げまして、次年度以降具体化し得るものについては、これまでも結論を得次第制度化を御提案申し上げてきたつもりでございますけれども、ただいま御指摘のように、極めて不満足であるという御批判でございます。これは一つの御批判として私ども率直に承らせていただくわけでございますが、ただ、いろいろ御指摘いただいたものにつきましても、事柄の性質上、かなり長期の検討を要する問題もございます。
今例示として挙げられました石油関係諸税の見直し等はまさにその典型の例でございまして、確かにおっしゃいますように、現在石油税は原油の段階に課税を求めますけれども、石油製品になりまして各種の税目があることは事実でございまして、これをもっと整理すべきであるという御意見は、当委員会の附帯決議のみならず、各方面からございます。税制調査会でも年々この議論が行われておるわけでございますが、現在の石油税諸税の体系は、道路整備なり空港整備なり、それから石油税でございますと、各種の代替エネルギーなり、特定財源と結びついておるという形でございまして、税制調査会の中でも、揮発油税の取り扱い自体についてなかなか基本的な結論が得られない、極めて困難な問題を含んでおるわけでございます。そういった問題をはらんだ性質もあるということは十分御理解を賜りたいと思いますけれども、御批判でございますので、今後とも十分注意をしながら、附帯決議にいただきました点については個々に誠実に検討を続けてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/20
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021・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/21
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022・瓦力
○瓦委員長 米沢隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/22
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023・米沢隆
○米沢委員 大分遅くなりましたが、最後の質問をさせていただきます。
我が国の所得税制は、昭和五十年代に入りましてから基本的な手直しが行われないままに今日に至っておりまして、その上、所得税課税最低限が昭和五十二年改正以来据え置かれてきたために、国民各層間に税負担の不合理感や不公正感が著しく醸成されてきたことは否めない事実でございました。今回、三年間にわたる与野党の協議の結果、七年ぶりの抜本改正に至ったわけでありますが、減税財源が増税によって賄われたことによりまして、減税による景気浮揚効果は相殺されることになりましたし、同時に、当時の二階堂幹事長−公党間の約束は結果的にほごにされて、またその減税規模においても不満が多いものに相なっております。
もともと我が国では、所得税制の制度改正は、特に物価調整減税的な所得課税におけるインフレヘの対応は、すべて政府の自由裁量の形で、すなわち裁量政策の形で実施されてきておりますが、今回七年ぶりに減税措置が行われるとはいえ、五十二年以来今日まで勤労者の実質増税、不公正税制を放置して、それも減税の大合唱がなければ抜本改正に手をつけないでいるというこのような政府の姿勢は、財政不如意の時代という問題を最大限に差し引きましても、余りにも無責任と言わねばならないと私たちは考えておりました。財源確保に悩む政府が、長年にわたるこの実質増税の状態をこれ幸いと故意にほおかぶりしてきた、そう思わざるを得ないのであります。
そこで、当局は、長年累積していたこの所得課税をめぐる不合理や不公正につき、一体どのような認識を持っておられたのであろうか。同時にまた、社会経済情勢の変化に対応する見直しが今日まで実行されないままに来た理由は一体どこにあるんだろうか。あるいは当局の裁量政策は財政のロジックだけで、税制の矛盾はどうでもいいということなんだろうかということを率直に感じるのでございますが、まずその点について御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/23
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024・竹下登
○竹下国務大臣 今米沢さんから御指摘がありましたように、私はこの三年以来の経緯を顧みて、ある意味において、仮に野党の皆さんからも最低限評価していただけるものがどこにあるかなといえば、やはりいわばこの課税最低限をも含めた一応の本格改正であったということであろうと思います。額等においては当然お互い認識の相違はあろうと思います。その意味においては私は、やはり税調でも言われておりますように、「社会経済情勢の変化に対応して、数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」ということでございますだけに、今度の改正というものはそういう意味においては、評価を押しつけるわけじゃございませんが、仮にあり得るとしたならばそういうことではなかろうか、政府としては今後ともこのような考え方で臨まなければならぬというふうに考えておるところであります。
まず基本的なことだけ申し上げて、主税局長からお答えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/24
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025・梅澤節男
○梅澤政府委員 ただいま基本的な点につきましては大臣の御答弁がございましたわけでございますが、米沢委員が御指摘になりました点につきましては、昨年十一月にまとめられました税制調査会の中期答申にも幾つか触れられておる考え方がございます。
基本的には、我が国の所得税が先進諸国に比べまして負担割合は必ずしも高くないということは一つの事実であるという認識がまずございます。これは個人所得に対する負担割合を見てもそういうことが言えますし、課税最低限の比較からいたしましても、四十年代の初めは先進諸国の中ではむしろ一番低かった我が国が、四十年代、五十年代を通じまして現時点では、改正前の現行法の時点でも、フランスに次いで高い水準にあるという認識がございます。
ただ、所得税は税体系の中で基幹的地位を占めておる、四千二百万人からの納税者に税負担をお願いしておる税目でございますから、この税負担について急激な負担増あるいはゆがみというものが生じた場合に、やはりそれは所得税制に対する不公平感、不満感のみならず、税制全体に対する納税者全体の不公平感につながるという問題意識を税制調査会も持っておられるわけでございまして、そういった負担水準の現状にはあるけれども、累進構造をもって負担をお願いする税でありますだけに、やはり数年に一度は見直すべきであるという観点に立って今回見直しが行われたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/25
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026・米沢隆
○米沢委員 私は、将来の問題として、今大臣も御引用なさいました「今後の税制のあり方についての答申」に書いてありますように、「数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」この文章は確かに昨年書かれたものですから、今度の減税がそれに当たるというふうな理解の仕方と、同時に将来、社会経済情勢の変化に対応して適宜見直しを行うというこの精神を今後政府が遵守してもらえるかどうかという、このことが今から先の問題として大事な観点ではないかと私は考えるのでございます。
したがってこの際、今後の税制改正の日常的な見直しあるいはまた適宜その見直しを行うためのルールみたいなものをやはりセットして、真剣にそれに対応する姿勢みたいなものを私は大臣の答弁で聞きたいのでございますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/26
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027・竹下登
○竹下国務大臣 これは中期答申というものを受けた今度の本格減税ということにはなろうかと思いますが、それ以前に、やはり各党間のそれぞれの話し合いの中で、この景気浮揚に役立つ規模ということを別に置きますと、一番基本的な問題はいわゆる本格改正であらねばならぬという御議論であったと思うのであります。したがって、この中期答申の精神は今回のみにとどまらず、今後ともこのような考え方は継続していくべきものであるというふうに考えます。
ただ、ルールを求めろとおっしゃいますと、いわゆる物価水準の動向とか、あるいは消費支出構造がどう変わっていくとか、所得分布もどう変わっていくとかということになりますと、にわかにそのルールみたいなものはなかなかつくりにくいものではないかなというふうに思います。だから、そのルールのようなものがつくられていくということも、またこうした本院における議論等が中心になって、やはりその社会構造の変化の中に出てくるものではなかろうか、こういう感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/27
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028・米沢隆
○米沢委員 その問題はまた後で触れますが、今回のこの改正された中身を見ておりますと、いろいろ問題点がございます。今回の改正の最大の特色は、もう御案内のとおり、四十五年度税制改正以来本格的な改革のなかった所得税の税率構造に、十四年ぶりにメスを入れたということでありますが、その他課税最低限の引き上げ等諸般の見直し、改正をするに当たり、一体当局はどういう理念でこのような減税幅を決め、また税制の中身を決めたのか。どうも批判的に物を見ますならば、今度の減税、税制改正というものは理念も効果も予測をしてない、何かそういうものでしかないような感じがしてなりません。改正項目に整合性もない。そういう意味で、大変初歩的な質問で恐縮でありますが、今回の税制改正の理念、目標としたものは一体どんなものであったのか、そして、苦労したけれども一体何が今まだ残っておるのか、その点について概括的に説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/28
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029・梅澤節男
○梅澤政府委員 御指摘の点につきましても、昨年の十一月の税制調査会の答申に、基本的な眼目と申しますか、そういうものが指摘をされておるわけでございます。
主要なものについて簡単に申し上げますと、まず第一点は数年ぶりの本格的な所得税改正の見直しでございますが、この時点での認識のまず第一点は、中堅所得階層の税負担の軽減をまず中心に置くという考え方が一つでございます。それから第二点は、多人数世帯と独身世帯の生活のゆとり感、余裕感のようなものから見まして、やはり多人数世帯の税負担の軽減を中心に考えるということでございます。それから、物事の考え方の背景といたしましては、当然所得税はもう九割以上の納税者は給与所得者でございますから、給与所得控除につきまして中堅所得階層にも負担軽減が及び得るような最小限度の見直しを行う、これが今回の一連の所得控除の見直しの眼目でございます。
もう一つは、ただいま委員が御指摘になりました税率構造の手直してございまして、今回人的控除が大幅と申しますか、相当程度引き上げられることに伴いまして、最低税率が適用されます最初の所得単位の税負担力は、当然理論的にも引き上がっておるわけでございますので、それに見合った適切な最低税率の引き上げ幅を設定するということでございます。同時に、最高税率の適用を受けます所得のブラッケット、具体的に申し上げますと限界税率六〇%、課税所得四千万超ぐらいのところは、実は昭和四十五年の税制改正以来放置されておるわけでございます。その間、先進諸国の所得税制を見ましても、今日主要な諸国で最高税率七〇%台の国はないというふうな現状もにらみつつ、累進構造を若干なだらかなものにするという観点から、最高税率を七五%から七〇%に引き下げる、これが第四点かと思うわけでございます。
こういった考え方が基本にあるわけでございまして、今後の所得税制の見直しに当たりましても、基本的にこういった考え方が貫かれるであろうということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/29
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030・米沢隆
○米沢委員 ところで、今回の減税の幅とか規模というものは一体どういうふうにして決定されたのですか。初めに七千億程度の減税という減税額ありきなのか、それともいろいろな案件を考慮した上で、大体この減税額の規模を算定して、あとは財源との相談をしながら規模を設定し、そしてその範囲内で改正項目を検討する、こういうようなルールでやられたのか、一体どういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/30
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031・梅澤節男
○梅澤政府委員 これはむしろ基本的には大臣から御答弁になる事柄にも属するかと思いますけれども、スタ一トはやはり本格的な所得税制の見直しによる恒久的な所得減税ということから作業が始まっておるわけでございますが、政治の場面でいろいろな御議論がございました。そういった経緯を踏まえまして、私ども税制当局が関知します限りでは、所得税、住民税を含めて平年度一兆円規模の減税を行うということで政府・与党の最高の意思決定が行われました。その場合の所得税の部分が七千億、住民税が三千億ということでございますが、こういった基本的な枠組みの中で、先ほど申しましたように所得控除、それから税率構造との調整を行って、現在御提案申し上げております税制の改正の枠組みを設定させていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/31
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032・米沢隆
○米沢委員 減税額の幅あるいは規模を決める場合に、単に物価調整的なものだけをストレートに考慮に入れるということにはなり得ない部分があるのかもしれませんが、少なくとも五十三年度以降の物価上昇累計をもとに課税最低限を引き上げた場合、大体五十九年度時点で——これは五十九年度の物価上昇も入れての減税額を計算していただきますと、五十三年から五十九年まで三〇・四%物価が上がっておりますから、それに比例してどれくらいの減税額になるかと計算をしますと、大体一兆六千億前後という試算が出てまいります。そういう意味では今回の減税幅は、もし改定の方針が物価調整的な考えで実施されたならば、これは所得税だけで一兆五千億前後程度の減税であるべきだという、この試算については大体正しいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/32
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033・梅澤節男
○梅澤政府委員 これはいろいろ前提に立った考え方があろうかと思います。
まず、五十二年から五十九年までの名目の物価上昇率が一三〇%強であることは御指摘のとおりでございます。それを全く機械的に、いわばインデクセーションと申しますか、その場合にも人的控除だけでインデクセーションをやるのか、税率のブラッケットまで含めたインデクセーションをやるのかでいろいろな想定があると思います。ただいま米沢委員が提示されましたのも一つの試算であろうかと思います。
一方、私どもその問題についてどういうふうにお答えをするかということでございますが、これは政府税調の答申にもございまして、今回の税制改正に当たりましては五十二年以降の物価上昇等も十分考慮して見直しを行うべきであるとされておるわけでございますが、結果的に平年度七千億余の所得税減税を今回御提案申し上げておりますけれども、課税最低限は今回二百三十五万七千円でございまして、既にフランスの水準を上回ったということが一つ御理解願いたい点でございます。
それからもう一つ、五十二年当時の課税最低限は、御案内のとおり夫婦子二人で二百一万五千円でございます。この二百一万五千円の人の五十九年の名目水準、これは先ほど委員がおっしゃいました一三〇%強でございますが、そういう名目水準になったと仮定いたしまして、今回御提案申し上げております所得税の減税、それから住民税の減税、これを含めまして国税、地方税におきます所得税、住民税の税引き後のいわゆる手取り額を五十二年当時の二百一万五千円の手取り額と名目比較をいたしますと、およそ一三〇%ということでございます。そういった目安を私どもは一つ作業の過程で持ったわけでございます。
ただ、ここは御承知のとおり、もう一つ課税最低限を構成するものとして社会保険料控除がございます。社会保険料控除は、昭和五十二年当時と現在とでは若干名目水準以上に上がっております。したがいまして、社会保険料控除も含めたところのいわゆる可処分所得については、五十二年当時に比べまして若干名目水準が下回るということでございますけれども、純粋の税引き後の手取り額というのは、五十二年の改正時と今回の減税後とは、ほぼ同じような水準にあるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/33
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034・米沢隆
○米沢委員 今の当局の説明は地方税も入れてですね。(梅澤政府委員「そうです」と呼ぶ)ですから、地方税も入れてカバーしたという御議論ですが、私は所得税だけの議論をしておるわけで、少なくとも地方税の分をマイナスにした場合には、五十二年以降の物価上昇をカバーし切れていないと言ってもいいと思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/34
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035・梅澤節男
○梅澤政府委員 ちょっと私の説明が不足であったかもしれませんけれども、ただいまの比較をいたしましたのは、五十二年につきましても、五十二年当時の所得税、住民税の税引き後、それから五十九年、今回も所得税、住民税の改正後の税引き後の比較でございます。今回の所得減税の議論というのは所得税、住民税を合わせたところでの議論でございますので、そういった比較も、私どもとしては一つの意味があるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/35
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036・米沢隆
○米沢委員 もう既に釈迦に説法だろうと思いますが、伝統的な所得税制というものは、物価水準が安定的だということを想定して設計されているはずだと私は思いますね。
そこで、先ほどから議論しておりますように、五十二年以来今日まで、物価上昇分は累積で五十八年度までは二六・八六%、五十九年度まで三〇・四%というかなり多くの累積がたまってきますと、この間ほとんど改正がなかったわけでありますから、本来意図されてない課税上の問題が出てくることは御案内のとおりであります。そこで一番大きな問題は、やはりインフレによって課税ベースのひずみが生じてくるということですね。本来ふえた所得とみなすべきではない。御案内のとおりのペーパーゲインあたりが課税の対象に取り込まれてくる、実質賃金増はゼロでも税金だけは上がる、こういう矛盾が出てくるという問題があります。
第二の問題は、所得税の制度的な構造を実質的には変化させることにつながる。すなわち所得税の課税最低限、今おっしゃいました免税点を決定する人的控除だとか累進税率表における各段階税率の適用範囲がすべて金額で設定されておりますから、インフレが進みますとその分だけ加重、実質増税になるような制度になってしまう、こういう矛盾があるわけでございます。名目表示のこの非課税限度額は、昭和五十二年以来二百一万五千円の水準であったわけですが、五十八年までに物価が約一・二七倍になっておるわけですから、その分だけ実質的な非課税限度は低下しておる。これは当たり前の話ですね。また、税率表は昭和四十九年以来据え置かれて、その間物価は大体一・七倍ぐらいに上がっておるわけでありますから、実質的な累進税率表の勾配は相当強められておる、こういうことになるわけです。
こうしたことから、いわゆるインフレによって隠れた所得税増税、実質増税が自動的に進行するわけでありまして、こういう問題が放置されていたというところから、今度の税制改正を求める大きな声が出てきたと言っても言い過ぎではないと思うのでございます。
従来までの税制改正というものは、先ほどから議論しておりますように、国会の論議等を通じてでありましょうけれども、いわゆる政策当局の御判断によって適宜な時期に、適当なやり方で、インフレによる所得課税のひずみを是正しようという裁量的な調整といいますか、そういう方式がとられてきたことは事実でございます。したがって、今後もそういう方式でやろうという姿勢のように先ほどから伺っておるわけでありますが、確かに今は物価動向も落ちついておりますし、あるいは財政再建の途上でありますから、即インデクセーションみたいなものを導入しろというやぼなことは私は申し上げたくはありません。しかし、七年間もこうして放置されて、陰の欲求不満が出てこなければ制度改正に手をつけないということを許さないためには、やはり少なくとも自動的な調整方式、機械的なものを入れよとは申しませんが、何かしらそのような、物価がここまで上がったならば調整しなければならないという、皆さん方の姿勢を義務づけるといいましょうか、規定する、束縛する、そういうやり方みたいなものが出てこないと、今後も皆さんの御判断いかんによっていつまでも実質増税を放置される。それイコールまた税に対する理解も進まないし、信頼度が薄くなっていく。そしてまた副次的ないろいろな税に対する問題が出てくることを考えましたときに、従来までの裁量によって調整しようという方式から、少なくとも物価上昇がどれぐらいあったならば、どれくらいの程度へ調整措置をきかせましょうというようなルールを確立することが、税の信頼のためにもぜひ必要だ、私はそう思うのでございます。大臣、重ね重ね質問して恐縮でありますが、その点について前向きな御答弁が欲しいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/36
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037・竹下登
○竹下国務大臣 インデクセーション、今の議論は一応理論的に成り立ち得る議論であります。
ただ、問題はそのとき二つございます。一つは、いわゆる税金を納めない方々がそれと同じようなメリットを受けるにはどうした方法があるか、こういう問題が出てまいります。それと、いま一つは、これは基本的な問題でありますが、そのときのいわゆる歳出に対する国民の歳出需要あるいは歳出圧力、それがどこにあるかということもやはり大きな判断の素材としなければならぬ問題ではなかろうか。だから、基本的な税の仕組みの理論としてその問題は十分に認識しながらも、今の場合は、おっしゃるように財政再建期でもあるし、物価も安定しておるという状態にはございますが、それが一番先行する指標になった場合には、間々現状の国民のニーズには必ずしも適応しない場合もあり得るではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/37
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038・米沢隆
○米沢委員 インデクセーションを導入するということは、いいものもあれば悪いものも出てくる、そういうことは確かに言えることだろうと思いますが、少なくとも私が申し上げたいのは、七年間も実質増税を放置して、減税をやれという大合唱が起こらないと手がつけられない。確かに財政的な問題があったのは事実ですよ。しかしながら七年間も放置するというその姿勢そのものが、どうも税の不公平感といいましょうか、税に対する信頼度を失う最大のものだ、私はそう考えるのです。したがって、先ほどから何回も言っておりますように、インデクセージョンを即導入しろという議論はいたしません。しかし、それの感覚みたいなものを政府自身が常に持ちながら、減税措置等についてもやはりそちらの方から発議されるという姿勢が必要ではないか、こう言っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/38
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039・竹下登
○竹下国務大臣 かつて高度経済成長時代にはそういう思想があって、それが間々戻し説とか物価調整減税とかいう形で行われた場合があるわけであります。近時は比較的物価が落ちついておるということと、いま一つはやはり五十年代以降のいわば財政の状態からして、その問題がとかく議論の外に置かれる傾向にあったという御指摘とすれば、それはそのとおりでありますとお答えすべきであろうと思います。ただ、高度経済成長期に間々考えられましたそうした問題につきましては、我々も絶えず念頭に置いて対応すべき課題であるというふうには私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/39
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040・米沢隆
○米沢委員 次に、課税最低限、人的控除あるいは給与所得控除等の問題について三点だけお伺いいたします。
第一点は、課税最低限のめどの置き方を政府はどのように考えていらっしゃるのかという問題でございます。課税最低限も基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料各控除、給与控除のトータルだということで示されておりますが、どうも合理的な計算の積み重ねによって出てきたものではない、結果的に課税最低限という数字が出てくる、そういう感じがしてなりませんね。課税最低限についても、ある人は生活保護基準と関連して見ようという人もおれば、あるいはある人によれば、これは単に行政上の観点で出てくるものであって、どの層からどれぐらい取るかというその結論として出てくるものであるという言い方をする人もおれば、あるいは租税と社会保険料との割り振りを考えながら変化しても何もおかしくないんだ、こういう議論をする人もおる。そういう意味で今当局のとっておられる課税最低限のめどの置き方というもの、どのような思想の上に成り立っておるのか。将来課税最低限の考え方を変えようというような気持ちがあるのかどうか、その点について第一点お聞かせいただきたい。
第二点は、先ほどからこれも御答弁の中にありますように、税調答申等では、今回の改定に当たりまして多人数世帯の負担軽減に重点的に配慮すべきだという意見がございました。例えば基礎控除よりも配偶者、扶養控除を大きくしたらどうかとか、あるいは世帯控除方式を導入したらどうかとか、その議論の上に立っていろいろと今度の改正もなされたのだと思いますが、果たして今回の改正はそのような多人数世帯の負担軽減というものにつながったのかどうか、達成できたのかどうか、そのところが第二点。
第三点は、給与所得控除の控除率は、御案内のとおり、基本的には五十五年改正、この場合には収入一千万円超部分について一〇%から五%下げるという改正でありましたが、その他は四十九年以降据え置かれてまいりました。今回最低控除額を五十万から五十五万に引き上げたり、適用対象となる収入範囲を広げるというような摘置が行われておりますが、私は先ほどの議論じゃありませんけれども、大体昭和四十九年当時と比べますと、かなりの物価上昇が重なっておるわけでありますから、これは例えば最低限だって、物価スライドそのものではないにせよ、物価スライドを適用するとすると、八十三万ぐらいにならないと整合性が保たれないということでございまして、やはり少々の改正はありましたけれども、控除率そのものを引き上げるとかあるいはまた適用対象となる収入範囲をもっと大胆に広げるべきであった、そういう感じがするわけでございます。給与収入についての概算経費控除という性格を持っておる給与所得控除でございますので、物価上昇でその分が実質的に切り下がっていくということは、やはり補てんするのが当然の議論ではないか。特に、事業者所得等は物価上昇において必要経費も上がっていく、それはカットできるのでありますが、こういう給与所得控除だけはそのまま固定的に据え置かれるということは、これは事業所得者との比較においてもちょっと給与所得者の方が不利になるのではないか、そう思っておるのでありますが、以上三点について御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/40
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041・梅澤節男
○梅澤政府委員 幾つかの御質問があったわけでございますが、まず課税最低限に対する考え方でございます。御承知のとおり所得税は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、それから給与所得者の場合には、我が国の場合は概算控除のシステムをとっておりますので、給与所得控除を控除いたしまして、控除後の部分につきまして累進税率でもって税負担を求めるという税でございます。基本的に控除される部分というのは、所得税の負担を求めることができない所得部分ということでございますので、これは学説的にもそうでございますけれども、最低生活費部分を保障しておるということが必要条件のまず第一でございます。
ただ、その最低生活費の水準をラインといたしまして、さて具体的にどの水準に課税最低限を設定するかということでございますが、これは四十三年の政府税調答申等でも述べられておりますし、我が国の戦後の所得課税最低限の歴史を見ましても、三十年代まではマーケットバスケットあるいはエンゲル係数等によって、いわば最低生活費的なものを模索しながら課税最低限を設定するという作業を進めておったわけでございますけれども、四十年代以降最低生活費よりもややゆとりのある点に課税最低限を設定するという考え方に立って、現在まで立法政策が進められておるわけでございます。
ただ、これを計量的にどこの水準に設定するのがいいかということは、結局は所得水準の状況あるいは所得分布の状況、それからもう一つ、財政の事情等を勘案しながら、それぞれの国でそれぞれの課税最低限を設定しておるというのが現実でございます。したがって、一つの作業概念としては、我が国と似たような経済社会構造を持っております先進諸国との課税最低限の比較とか、あるいは先ほど来先生が御指摘になっておりますように、一定期間を置いた場合のその間の所得水準の状況とか、あるいは名目物価水準の状況等を総合的に勘案して妥当な水準に求めるということに尽きるわけでございます。現在御提案申し上げております二百三十五万七千円の水準につきましては、先ほど背景となる考え方は申し上げたところでございます。
それから、今回の所得税見直しの基本眼目の一つが多人数世帯の負担軽減であるということは、先ほども申し上げました。その点の関連で、配偶者控除とかあるいは扶養控除をどういう点に設定するかというのは確かに問題がございました。この点については、政府税調の答申にもございますように、現在我が国の基本的、基礎的な人的控除は、三控除一律同額とされておるわけでございます。理論的に申し上げますと、必要な生計費という観点から申し上げますと、規模の利益というものがあるわけでございますから、人数が多くなればなるほどその限界単位の必要生活費部分というものはむしろ逓減していくわけでございます。したがいまして、これを同額に置くということ自身が多人数世帯の負担軽減に非常に効果的に働くということでございまして、今回もそういう観点に立って、基礎控除、配偶者控除、扶養控除を引き上げる場合にはそれぞれ同額を引き上げるべきであるというのが税制調査会の考え方でございましたし、そういう観点に立って現在御提案申し上げておるわけでございます。逆に今委員おっしゃいましたように、基礎控除より例えば配偶者控除を大きくする、あるいは扶養控除を大きくするということは、先ほど申し上げました生計費の基本的な考え方としてはむしろ理論的にやや難点があるということのほかに、やはり同額にするということが限度いっぱいの水準ではなかろうかということでございます。それがまた、我が国の現在の所得税制を非常に明快なものにしておるという利点でもございます。したがいまして、これを一律に引き上げるということで今回御提案申し上げておるわけでございます。
世帯控除の問題についても、税制調査会では議論をされたわけでございますけれども、現在のような稼得者単位の税制をとってまいりますと、何が世帯単位であるかということについて非常に設定が難しい。仮に一定の約束事で設定をいたしましても、執行上非常に問題があるわけでございます。特に、ほとんどの場合、年末調整で現在税務が完結しておりますけれども、年末調整で処理ができないというふうな執行上あるいは徴税コスト上の難点もございます。そういった点も含めまして、世帯控除という新たな控除をつくるよりも、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、配偶者控除、扶養控除をそれぞれ基礎控除と同じ額だけ引き上げることによって、多人数世帯の負担軽減をねらうというのが今回の改正の考え方になっておるわけでございます。
もう一つは給与所得控除でございますが、これについても、昨年の中期答申をまとめられる段階で、税制調査会では具体的に議論をいただきました。現在の我が国の給与所得控除のシステムは、先ほど委員がおっしゃいましたように、昭和四十九年に控除率方式で純化いたしまして現在の枠組みができたわけでございますが、現在マグロ的に見ますと、大体三割くらいが給与収入に対して控除の対象になっておるわけでございます。例えば、年収三百万くらいのところでございますと控除率は三五%くらいでございますし、年収一千万のところでも控除率が二〇%くらいでございます。
税制調査会の議論の過程では、昭和五十七年の総理府の家計調査をベースにいたしまして、勤労世帯の家計の費目の中から、およそサラリーマンの必要経費と目される費目を全部積み上げて集計し、計算をしたものを土台に議論をしていただいたわけでございます。それによりますと、各収入段階において若干のばらつきはございますけれども、年間の収入に対してほぼ一割というのがサラリーマンの必要経費と目されるものの水準であろう。そういうところから見ますると、現在の我が国の平均三〇%という給与所得の概算控除の水準は非常に高いということは、これは諸外国の所得税制と比べまして客観的に言えるのではないか。
したがって、税制調査会でもそういった認識に立ちまして、現在の最高四〇%から最低五%までの五段階制の控除体系はそのままでいいのではないか。ただ、四十九年以来放置されておりますので、給与収入の低い階層の税負担を軽減するというふうなことも配慮して、四〇%と三〇%のブラッケットだけ一割拡張するという手直しを行ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/41
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042・米沢隆
○米沢委員 時間がありませんから細かい話はできませんが、次に税率構造の問題について、これも二、三まとめて御質問をいたしたいと思います。
今回最低税率の引き上げ、最高税率の引き下げ、税率の刻み数及び適用所得範囲の改正というものが大きな柱として提案されておるわけでありますが、まず最高税率を七五%から七〇%にした場合、一体どれくらいの人が影響を受けて、その減税額は幾らくらいになるのか。また、最低税率を一〇%から一〇・五%に上げた場合に、大体どれくらいの人が影響を受けて、増税額は一体どれくらいになるのか。今度は、課税最低限あたりは上がりましたから、その分は差し引いて税率だけをいじった場合にどのような計算になるのか、その数字をお示しいただきたい。
私どもの試算によりますと、特にこの最低税率の引き上げによりまして、税率改正のもたらす影響というのは相当の人に及ぶ。給与所得者、事業所得者大体平均して五割前後の人が、税率そのものが引き上げられるという結果になっているのではないか。同時にまた、税率で見た階級別の新旧の負担割合の比較表をつくってもらった資料によりますと、所得税、住民税合わせまして税率が下がるのは大体六百万以上の人、五百万以下の人は税率そのものは上がるという結果になっております。これは上を下げて下を上げるんですから、そういう結果になる可能性は予見できるわけでありますが、税率だけでこの改正の結果を見ますと、少なくとも五百万以下の人は税率を上げられる、六百万以上の人が税率を下げてもらう、こういう結果にしかすぎない結果になっておるのでございまして、現に税率を下げられた人の対象というのは所得税を払う人々の二〇%前後でしかない。これは結果的にはどうも問題を残す税率改正ではないか、こう言わざるを得ないのでございます。
それゆえにまた今度は、確かに減税という形で課税最低限度を上げましたから、あらゆる階層に減税は行き渡りましたけれども、来年からこの制度がスタートいたしますと、これから先は、実質的に賃金が上がりますと、従来以上に五百万以下の皆さんの方が実質増税が進む、そして六百万以上の人が実質増税は五百万以下の人よりも進まないという、逆に新たな矛盾をつくってしまったのではないかと思うのでございます。こういう税率の構造の改正というのは、一体前向きな議論で評価していいものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/42
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043・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回の税率構造の手直しの基本的考え方につきましては、累進構造を若干なだらかにするという税調答申の考え方、その背景にあります詳細な考え方については先ほど申し述べましたので省略させていただきますが、まず御質問の点からお答えを申し上げますと、最低税率を一〇%から一〇・五%に引き上げるということでございますが、これの影響を受ける人は、実は所得税の納税者全員でございます。所得税は超過累進構造になっておりますので、最低所得部分のところには全納税者の所得が集まってきておるわけでございますから、これは五十九年度の見込みベースで申し上げますと約四千二百万人、所得税納税者全員がその対象になるということでございます。その場合の財源効果としては一千億円程度が見込まれます。
一方、最高税率の引き下げでございますが、これは所得八千万超のところでございますが、これは高額所得公示制度等から見まして、恐らく五十九年度においては五千人余の人がこの対象になるであろうということでございまして、その財源効果は約百億円でございます。
ここでお断り申し上げておきたいわけでございますけれども、所得税と申しますのは所得控除と税率の組み合わせによって税負担が出てくるわけでございますから、所得控除を放置したまま最低税率だけ引き上げますと増税でございますけれども、所得控除を引き上げ、最低税率を引き上げる、その組み合わせで結果として税負担が出てまいります。したがいまして、私どもこの辺ぜひ御理解を賜りたいということで、一〇%を一〇・五%に引き上げます場合の一千億について、私はあらゆる機会にこれを財源効果と申し上げておるわけでございます。これは増税でも増収でもないわけでございますので、その点はぜひひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
そこで、そうした結果一体どういう姿になっておるかということでございますが、給与所得者、夫婦子二人のモデル計算で見ますと、そういう増収効果が出る境が大体年収で六百万くらいのところでございます。しかし、そうした効果を含めましたところでも、要するに税負担の軽減割合は低所得者ほど大きいわけでございまして、例えば三百万円のところは、計数的に申し上げますと、人的控除による減収効果といいますか、財源効果はマイナス一万八千円、それから給与所得控除の手直しによるマイナスの効果が千五百七十五円、税率改正によります財源効果はプラス四千百円でございます。しかし、結局のところ、改正前と改正後の税負担の軽減割合は二六・七%でございます。その上の四百万円のクラスになりますと一五・一、五百万円のクラスになりますと一一・四、六百万円のクラスになりますと八・九ということでございまして、給与収入なり所得が上がるに従いまして減税の軽減効果は逓減していくという構造になっておることだけはぜひ御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/43
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044・米沢隆
○米沢委員 済みません。早くやめろということでございますから、あと一点だけ、厚生省の方が来ておられますから、伺っていきたいと思うのですが、御案内のとおり、老齢化社会の到来を控えまして、公的老齢年金、企業年金、任意年金等の各種年金所得のウエートが今後着実に高まっていきます。これに対する課税のあり方についても本格的な検討を加えようということになりつつありますが、特に、この公的な老齢年金について、現行の課税の仕組みあるいは負担水準を基本的に見直すという視点に立ては、従来の制度以上に、逆にマイナスになっていくということが懸念をされるわけでございます。細かく言いますとやぶ蛇になりますから、将来の公的老齢年金課税等について、厚生省はどういう方向に持っていった方がベターだと考えておられるのか。
それから、大蔵省に聞きたいのだけれども、任意の年金課税、この部分についても、今後政府が自助努力を言えば言うほど、任意年金課税についてはもっともっと軽減する方向をとるべきだと思うのでありますが、その点について大蔵省からの見解を聞かしていただきたい。
それから、内職の税金の話でございますが、先般、我が党の抜山参議院議員が代表質問でこの点についてただしましたときに、中曽根総理がこういうお答えをされております。「内職による所得は、パートと違いまして、雇用契約に基づくものでなくして、むしろこれは雑所得あるいは事業所得の性格を持ってまいります。」これは当然ですね。「したがいまして、給与所得控除、給与所得系統のものと系統が違うものでございますから、これを同列に取り扱うことは税制上も難しいということがございます。」これも当然ですね。 「したがいまして、一般の事業所得者とのバランスも考え、またパート等との対比等も考えながら、内職者の対応については適切に配慮してまいりたい」こうお答えになっておるのですが、この後段のパート等との対比、一般の事業所得者とのバランス等を考慮しながら、内職者について適切に対応するという答弁の中身を教えていただきたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/44
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045・渡辺修
○渡辺説明員 公的老齢年金税制のあり方についての基本的な視点といいますか、考え方について述べよということでございます。
先生ただいま御指摘のとおり、これから高齢化社会がどんどん進行してまいりまして、国民の老後生活の安定を図る上で公的年金の重要性は一層高まってまいります。こういう状況を踏まえまして、私どもは年金制度の長期安定の基盤を確立したいということで、この国会に年金制度の改正案を提出しておりますが、この年金の機能を十分に発揮させるためには税制上の配慮もまた極めて重要であろう、年金の老後における所得保障の機能を十分に発揮させるという見地から、今後の年金税制のあり方を考えていきたい、こう思っております。従来からもこうした見地で、厚生省としましては現行の税制の緩和、改善を要望してきておりますが、これからも年金税制のあり方について関係省庁とよく協議を進めていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/45
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046・梅澤節男
○梅澤政府委員 年金課税の問題は、今後の我が国の高齢化社会を迎えるに当たりまして、税制上も大変大きな問題であると私ども考えております。
これも十一月の税調の答申にもございますように、現在公的年金につきましては、掛金の段階で社会保険料控除、所得控除が認められておりますし、給付の段階ではこれは給与所得扱いになっております。同時に、一定の年齢者以上の場合には年金特別控除があるというシステムになっておりまして、税制調査会のこの答申の中では、少なくとも給与所得控除そのものを適用するというのは問題であるという指摘がなされております。
ただ、この年金課税の問題は、委員も御指摘になりましたように、公的年金だけではございませんで、企業年金、それから個々の人々が個々の契約によって受けられる個人年金でございますが、そういったいろいろなものがあるわけでございます。したがいまして、今後そういう公的年金と企業年金、それから純粋の私的年金、個人年金、こういったものをどういうふうに——これはむしろ税制よりもより広い話になってくると思いますけれども、高齢化社会を迎えるに当たってのそういった年金のそれぞれの位置づけでございますが、そういったもののシステムに対する考え方が成熟していく中で税制もそれぞれ対応していかなければならない。ただ、現行の課税制度のもとでは、恐らく高齢化社会には対応できないだろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/46
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047・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 三番目のお尋ねの内職者課税の件でございますが、委員御指摘のとおり、内職者の課税は大変難しい問題でございます。私どもといたしましては、大体におきまして内職というのはやはり請負的な形態をとることが多いということでございますので、雑所得または事業所得扱いにしていること、御指摘のとおりでございます。
ただ、具体的に雑所得ないしは事業所得の課税をいたします場合に、やはりそれに関する経費というものがあるわけでございます。私どもはそういう面におきまして、なるべく経費につきまして丁寧に見て差し上げるということを第一線の税務署に指示してはおるところでございます。大体、内職というのは細々とやっておられまして、記帳もない場合が多いわけでございます。そこで、そういう場合には一応三〇%の概算経費控除ということで課税所得を算定するわけでございますが、実際にいろいろまたお聞きしてみますと、個々のケースによりましていろいろ経費もあるというような場合もございます。そういう場合にはなるべく無理のない範囲で積極的に経費を認めまして、全体として無理のないような扱いにしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/47
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048・米沢隆
○米沢委員 時間も来ましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/48
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049・瓦力
○瓦委員長 戸田菊雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/49
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050・戸田菊雄
○戸田委員 最初に主税局長と労働省に質問しておきたいと思うのであります。
一つは、法人税法第二条「定義」でありますが、この十三号に「収益事業、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう。」この継続と事業場というのはどういう見解をとっておられますか、これが第一点です。
それから、労働省の方に、労働組合の課税問題については、租税法自体にとどまらず、労働組合に関する制度上、運用上の取り扱いにも関連すると思うが、この点に関する労働省の基本的な考え方、この見解を述べていただきたいと思います。
以上二点だけ、まずお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/50
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051・梅澤節男
○梅澤政府委員 法人税法の第二条十三号、収益事業の定義でございます。
「販売業、製造業その他の政令で定める事業」ということで販売業、製造業が列記されておるわけでございますが、現在政令によりまして三十二の業種を限定列挙いたしておるわけでございます。この収益事業の基本的考え方と申しますのは、公益法人等が行います事業で、販売業、製造業その他政令で定める事業につきまして継続して収益を上げているような事業、これは普通法人が行っております営利事業と実際上は競合するような関係にもあるわけでございますので、やはり普通法人については法人税の基本税率によって課税が行われています以上、それとの権衡と申しますか、課税の公平という観点から収益事業という概念を決めて、これに対して軽減された税率で税負担を求めるという構成になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/51
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052・平賀俊行
○平賀政府委員 御質問の労働組合に関する課税の問題につきましては、例えば法人格の問題あるいはこれの前提となります資格審査の制度の問題、これらの労働委員会における取り扱いの問題など、制度上あるいはその運営上いろいろな問題が指摘されていることは十分認識しております。これらにつきましては、関係方面とも相談をしながら、さらに問題を整理して研究を積み重ねていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/52
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053・戸田菊雄
○戸田委員 主税局長の収益事業に対する見解、殊に継続、そして事業場等、これはきょうは時間がありませんからやりません。後でまた機会を見ましていろいろと審議をしてまいりたい、こういうふうに考えます。
それで本論に移りますが、きょうは大分時間を短縮しましたので、端的に六点ほど質問してまいりたいと思います。
まず大臣に伺っておきたいと思いますが、納税環境整備について質問いたします。
今回、臨調、税調の答申を受けて、個人事業者所得について次のような法制化をとられるようになりました。これは法人も準ずる、こういうことになっておりまするが、一つは、確定申告書に所得金額の計算過程を明らかにする書類の添付、それから二番目は、記録及び書類の保存義務の創設、三番目は、所得三百万超の記帳義務の創設、四番目は、収入、その大半は売り上げたと思うのでありまするが、これが年額五千万超、それに対して総収入金額申告書の提出義務化、第五番目は、過少申告加算税を二段階として一部に重い加算税を課税する、第六番目は、課税処分取り消し訴訟における証拠申し出の順に関する規定等を整備する等々が今回の改正案の骨格であると思うのでありますが、この真のねらいは、今まで同僚議員の質問に対して答弁もありましたけれども、どのように考えておられますか、その見解をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/53
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054・竹下登
○竹下国務大臣 たびたびお答えしておりますように、私は本来奨励しておりますのが青色申告である。そういうことになりますと、本当はほとんどの人がそれに移行していただくことが一つの理想である。そうなれば、今の白色の人が一応制度上義務づけられたことによって環境が整って、その中で研さん錬磨という言葉もおかしゅうございますが、徐々に青色申告の方へ移行する本人自身の自信と環境と両方が整っていくというのが一番好ましい姿じゃないかということを私自身は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/54
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055・戸田菊雄
○戸田委員 私のところに全国建設労働組合総連合、略称全建総連等々から請願が参っておるわけでありますが、その内容は第一に、
なぜ申告納税制度の「見直し」に反対するのか。
全建総連は、計算や記帳すること、そのことに反対しているのではありません。
義務化し、法制化することに反対しているのです。
全建総連は、だれにでも簡単に記入ができ、事業の収支状況が一目でわかる「建設職人のだめの記帳簿」を作成し、組織的に記帳講習会等を開催し指導をおこなっているのが実態です。
零細な個人経営の事業者、とくに建設現場で働く町場の工務店・一人親方等は、朝早くから夜遅くまで、それこそ文字通り汗と埃にまみれ真黒になって屋外重労働に従事し、その日の仕事が終われば身体を休めることで精一杯です。その者への記帳の強制は困難といえます。
ということで、以下これから申し上げますところのいろいろな条件が出ておるわけでございます。
さらに、今大臣がお答えになったように、この申告書の納税者数等の推移を見ますと、これは大蔵省の資料でありますけれども、「申告所得税納税者数等の推移」、五十六年までの決算ですから五十七、八年は除きます。時間もありませんから全部読み上げるわけにはまいりませんが、申告所得税納税者数は五十年が四百六十二万四千人、五十一年が四百九十四万人、五十五年五百九十四万二千人、五十六年六百十七万一千人、うち営庶業所得者、これは大体五十年から二百五万五千人、二百二十三万六千人、二百六十二万二千人、二百六十四万人等々と、五十六年までこういう順序になっております。いずれにしても、漸次増傾向にあるわけであります。しかし、それにしても、大体総体の五二%程度の青色申告の状況なんです。それから法人でまいりますとこれは九〇%程度までいっております。なぜそういうことでこれが容易に四八%もできないのか。大臣は何とかそういうものを奨励誘導して、そして適切な記帳ができるような方向に持っていきたい、こう言うのであります。現状はなかなかそうはいっておらない。
結局、この申告の記帳義務を今度課せられる人たちは、農業であり、漁業であり、今読み上げた全建総連で指摘されるようなそういうものであり、弁護士、税理士その他もいろいろ入りましょう。入りましょうけれども、例えばこの農業関係、私ども見ますと、東北は今全く三ちゃん農業と言われて、うちには耳の聞こえないおじいちゃんとかばあちゃんがいる、こういう人がほとんどやっている。そういう人たちに対して記帳義務を強化しても、とてもじゃないがこれはできる相談じゃないですね。あるいは漁業者の関係を見ましても、宮城県は殊に船員の供給基地になっている。おおむね一万数千人おる。これが遠洋航海その他に全部出かけておるわけですね。そういう人たちの、残っている人は、同じようにじいちゃん、ばあちゃんなんですよ。若い人は全部出てしまっている。そういう人に幾ら記帳しろと言っても、なかなか難しいでしょう。私たちの税金で大蔵省が発刊してPR宣伝に努めている税制の内容を見たって、大変煩雑な各般の記帳義務の項目があるわけですね、きょうは時間がありませんから指摘しませんけれども。
そういうことになりますと、これは法制化して、義務化しても、どうしてもできないということは根底からあるわけですね。だから、そういうものに対しては何か別途に、今までの答弁を聞いていますと、簡易な記帳、こう言うのだ。簡易な記帳ですらなかなか容易じゃない。だから、そういう面は、青色申告の特典その他を与えていろいろやるとか、そういう方向なら、いろいろ世話役活動でやっている人がありますから、それはできるだろうと思うのですが、なかなか困難な状況が現実にございます。
ですから、シャウプ勧告の中でシャウプさんがこういうことを言っているわけですね。「所得税及び法人税の執行面の成功は、基本的には納税者の自発的協力にかかわっている。」自発的協力と。納税者は自己の課税されるべき事情または自分の所得は最もよく知っている、納税者の所得を算定するに必要な資料を自発的に提出しなければならないことを申告納税というのだ、こういうことなんですね。だから、この中には、法制化で義務化しようなんということは全然言っていない。あくまでも自発的、こうなっているのですね。そういうことで二十五年以来申告制度を導入して、日本はそういう取り扱いをずっとやってきたわけですね。それを今回なぜ無理に——だから、私はむしろ、そういうことで規制するのじゃなくて、奨励でいったらどうだ。これを主体にやっていく。それにふさわしい、いわば簡易の記帳を大蔵省では検討していただきたいと思うのです。そのことを見解としてひとつ承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/55
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056・竹下登
○竹下国務大臣 これは非常に政治論みたいな諭になりますけれども、私は、何度か申し上げましたように、全建総連、今度こういう陳情書を我々もいただいておりますが、これは、ある面においては組織強化活動の一つの手段として、非常に立派なことをやっていらっしゃるな、こういう感じがします。
と同時に、私は、健康保険を通してしか接触はございませんけれども、あの健康保険の運用なんというのはなかなかすばらしいものだし、こういう運動を起こす中に、むしろそれがある種のみずからに対する自覚作用をもたらして、この人たちの多くはこの簡易な記帳の方へ割に積極的に入っていただけるとしたら、全建総連にとっても、またお国のためにも大変いいことだな、これは非常に政治論ですが、そんな印象すら率直に受けておるわけであります。しかも、三百万円超というものがついておりますので、農家の方であれ、それはシャウプ勧告のこの精神どおり自発的協力というものが申告の基盤にあると同時に、また自分の生活設計を自分が立てる一つの基盤にもなり得ることでございます。したがって、これが制度の上では義務化されることによって環境が整うし、それが将来に向かっての第一歩、ワンステップであるとするならば、そこには特典もなければ、また罰則もないというので、ちょうどこれは今の場合いい制度ではなかろうか。これは私、非常に政治論的な見方をしておりますが、そんな感じすらいたしておるわけであります。したがって、これから記帳のあり方等については、当然のこととして、行政当局で、皆さんがなじみやすいものが検討されるであろうということを、私自身も期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/56
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057・戸田菊雄
○戸田委員 税務当局は、記帳を尊重し、重視して今日までやってきたとは思いますけれども、現に青色申告の場合でも、帳簿書類が重視されるような調査内容の活用は行われず、結局、反面調査が多いのですね。こちら側からネタを拾って、そして反面調査で銀行を調べたり、あるいは仕入れ先を調べたりということが非常に多いような気がする。そういうことを通じて推計課税ですね、いろいろ持っていく。何かそういうもののためにむしろ重視しているような今の執行体制、こういう状況じゃないかと思うのでありますけれども、その点についての見解をひとつ国税庁の方から伺いたいと思います。
それから、調査ができて税額を追徴するための更正にも、何らの理由も付記する必要はないわけでありますね。そうすると、推計課税で一方的に、あなたは三百万以上ありますよ、あるいは五千万以上ありますよ、こういう実証の認定は、あるいは届け出をしなくてもいい人は、どこでこれを認定しましょうか。それをはっきりしておかなければ、本人はいろいろ計算をして記帳しておって、それはないから申告はしませんと。ところが税務当局が行って、いろいろ調査をした結果、いや、どうもこれは三百万円超えるようだ、五千万円超えるようだということになる。そうすると、それはもう全く税務署の言うとおりに、これをやらせられるわけですから、そういうものの認定を、どこで一体、最終的に判断をし、認定をし、そしてどういう扱いをするのでしょうか、その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/57
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058・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 推計課税についてのお尋ねでございます。委員が御指摘のように、確かに推計課税の事案は今相当あるわけでございます。これはほとんどの場合、帳簿の内容がわからない、中には帳簿が全然ないといった場合もあるわけでございます。そういうことで、一々の取引その他につきましての証拠と申しますか、裏づけというものがとれませんので、やむを得ず反面調査その他をいたしまして、所得を推計するという場合があるわけでございます。
今度の記帳義務との関連でございますが、これにつきましては、私どもはあくまでも、いわゆる実額は推計を破るということだろうと思っておるわけでございます。記帳義務を履行なさいまして、そして現実の取引金額が適正に記帳されるということであれば、これが推計を破ることは当然でございまして、そういう場合につきまして、私どもが推計をあえてするようなことはございません。また、そういうことをいたしましても、結局は私どもの推計の方が合理性を失いまして破れるということだろうと思うわけでございます。したがいまして、記帳義務の適正な履行の暁には、推計課税の事案というのは、減りこそすれふえることはないように私どもは思っておるわけでございます。
第二点の理由付記についてでございますが、理由付記は確かに青色の場合には、そういうことが法律上、要件になっておるわけでございますし、どういう処分でどういう内容の決定あるいは更正をしたかということにつきまして、一々詳しく申し上げなければいけないわけでございます。
この今回の記帳義務につきましては、そういうことはないわけでございますが、処分の内容につきましては、これは執行の段階、調査の過程で、納税者には明らかにするように努めておるわけでございますし、また、それに御不満でございまして、異議の申し立て、審査の請求さらに訴訟ということになれば、当然私どもとしては、どういう理由によって課税処分をいたしたかということを明らかにしなければいけないわけでございます。今後とも、そういうことにつきましても適切な運営に努めたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/58
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059・戸田菊雄
○戸田委員 いろいろ意見がありますが、きょうは時間がないから先に進みます。
そこで大臣、一九六二年、二十二年前ですが、政府は国税通則法制定に当たって記帳義務創設を図ったのです。これは御存じだと思いますが、このときに、結局は国民党の反対があって取りやめさせられた。そのときに大蔵省が出してきた内容というものは、ボーダーラインは所得百万だったのですね。ところが、現在これを数字的に簡略に計算をしてみますと、大体十二倍強ですから一千二百万円強、こうなるわけですね。だから三百万円のものは、ちょっと私はそういう意味から言えば計算が合わないんじゃないかという気がするわけです。だから自民党税調等、当初大蔵省案は二百万、それを結果的には三百万に引き上げた。しかし当時の状況から見れば、経済その他、所得もふえている、そういう状況ですし、あるいは事業量もふえているということであれば、この辺についてもう一度考えてもいいのではないだろうか、こう考えますので、これらの見解をひとつ伺っておきたいと思います。
結論的には、したがってそういう困難な状況でございますから、私は今回の——さっき伊藤議員も触れましたから、私は読み上げて、ひとつ参考の要請をしておきたいのでございますけれども、大蔵省令で定める記帳簿については、国民のだれもがつけられ、かつ建設労働者の労働終了後においてもつけられるようなごく簡単な内容、これにしてほしい。建設従事者で所得三百万円以下の場合は労働者である、記帳及び記録等の保存が過酷にならないよう末端行政の指導を強化してくれぬか。それからもう一つは、記帳並びに記録保存等の義務の完璧を期する余り、ささいな不備を理由として過酷な課税とならないよう、行政的配慮をしていただきたい、こういう見解に対してどのように大臣はお考えになっておるか、以上二点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/59
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060・竹下登
○竹下国務大臣 いま百万という話がありまして、確かに所得で見ますと、ちょうど私はあの辺の統計をよく覚えておりますが、所得で見ると今恐らく十五倍ぐらいだと思います。それからCPIで見ると四・五倍ぐらいだと思います。そうすると百万が四百万。そのほかに今度は高等学校進学率が初めて五〇・一%になった年ですから、それが今九四・五%。かれこれ相乗すると、三百万というのはいいところじゃないかな、こういうまことに政治諭の話で申しわけございませんが、そういう感じがいたしております。
それから、記帳のいわゆる指導等には万全を期して、可能な限りの協力をしなければならぬというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/60
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061・戸田菊雄
○戸田委員 これで終わりますが、国税労働組合全国会議というのがございまして、「(国税職員の定員増加等、税務執行基盤の整備・拡充に関する決議実現の件)」ということで私のところに参っておるわけでございます。その「理由」は、税務行政の現状は、経済の発展に伴う納税人口の急増、取引規模の大型化・広域化、取引内容の複雑多様化によって事務量が急増しています。その一方で、昭和二十七年当時五万二千三十二人であった国税職員の定員は現在でも五万二千三百六十三人、沖縄を除いて、昭和五十九年度。そうしますと三百三十一人しかふえておらない。
それに対して、大蔵省資料ですけれども、「事務量増加等の状況」というものがございまして、時間がありませんから読み上げません。相当膨大に事務量がふえておる。ことに職員一人当たり納税者数については、申告所得税納税者数は四十六年度が四百七十三件、五十六年度が六百二十六件、一・三倍。それから法人数、四十六年度が百三十三件、それから五十六年度が百八十九、一・四倍。それから源泉徴収義務者数一・五倍、還付件数が二・五倍、滞納件数一・七倍等々相当業務量がふえておる。これに対してわずか三百三十一人で、五十九年度わずか十六人というのですから。
今税務職員の皆さんの中には自殺者が多い、あるいは長期欠席者が多い。罹病率が多い、こういう状況が東北一円を見ましてもございます。具体的な資料はいっぱいございます。きょうは時間がないから言いませんが、こういうものに対して大臣も十分配慮していただきたい。私は毎年触れておるわけですから。確かに去年は七名だと思いましたから、十六名で九名増。若干の前進があることは私も認めますが、もう一つ抜本的に定員増の方策というものを——確かに臨調や公務員の一%削減や、いろいろ厳しい条件があることはわかります。しかし適材適所方式でそれをやっていかなければうまくないんじゃないだろうか、こう思いますので、その辺に対する善処をお願いしたいと思いますが、大臣の見解と国税庁の見解。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/61
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062・竹下登
○竹下国務大臣 これはおっしゃるとおりでございまして、いつもお答えするようですが、私は予算編成と同時に行われるその年度の定員問題ということになりますと、必ずと言っていいほど「まず隗より始めよ」こう言われて、大蔵省に対するある種の圧力が加わります。しかし、その中にあって、税務職員ということについては、支えとしては本委員会における決議でございますとか、今のような御声援でございますとか、そういうものが支えになってさらに一生懸命努力してみた。開いてみたら一けただった。ことしは二けたにしましても、じくじたるものを絶えず感じておることは事実であります。そういう考え方を踏まえてこれからも対応しなければなりませんし、なおコンピューター等、機械化の推進に対する努力と、それからもう一つはいわゆる研修、あるいはまた税務大学出の方々が大変多くなりました。そういう資質の向上等々をあわせながら対応すべき課題である。その点においては、応援をいただいてありがたいことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/62
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063・岸田俊輔
○岸田政府委員 定員の問題につきましては、従来から私ども、最大限の努力をしてまいっております。先生御指摘のように、確かに事務量は増加しておりますし、重要な仕事をしております職員は非常に苦労をいたしております。関係方面の御理解を得まして逐次増員はいただいているわけでございますけれども、今後とも格段の努力をいたしたいと考えております。
なお、健康の管理の問題でございますが、この点につきましても私ども鋭意努力をいたしておりまして、人事院の規則に定めます水準よりも高い健康診断をいたしております。ないしは、職員も高年齢層が多くなっておりますので、成人病対策ないしは確定申告というような非常に忙しいときには格段の健康診断の設備をしているような状態でございますけれども、今後ともさらに努力を続けたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/63
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064・戸田菊雄
○戸田委員 努力しまして、五分間早く終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/64
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065・瓦力
○瓦委員長 箕輪幸代君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/65
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066・簑輪幸代
○簑輪委員 まず最初に、申告納税制度改正の問題点については、正森議員が先日の質疑を通じて、記帳義務法制化などがいかに中小業者にとって不当なものであるかという点を詳細明らかにしたと思います。納税環境の整備というのを口実にした今回の改正は、国民の権利である申告納税制度の根本を破壊する権力的な徴税体制づくりであるとともに、政府のねらう大型間接税導入の布石にもなる重大な改悪であると思わざるを得ません。しかも政府は、この制度改悪を減税法案など予算関連法案と合体させて一気に成立を図ろうというやり方、これは審議のあり方としても到底納得できるものではありません。少なくとも、申告納税制度を改めるこの納税環境の整備にかかわる部分については、分離して審議をするべきだというふうに考えます。
今、全国各地から、申告納税制度改悪に反対し、連日国会に陳情や請願が繰り返されております。殊に、全建総連の方々あるいは全商連の皆さんを初めとする全国中小業者団体連絡会の方々は、申告期の極めて忙しい中を、真剣に要請を繰り返してこられました。またこの間、全国から同様の要請はがきというのもどんどん届きまして、今私のところに約五千枚。実は、これまで議員になりましてから、こうした大量のはがきをいただいたことは私は初めてのことです。これだけ重大な関心と疑問があるということだと思わざるを得ません。だからこそ私は、こうした方々の重大な関心と真剣な要請を踏みにじって強引に成立させられようとしていることに断固反対するものです。
今、こうした状況を踏まえて、国民の声をどのように受けとめられるか、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/66
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067・竹下登
○竹下国務大臣 この問題は、先ほど申し上げましたように、私は、これは極めていいことだと思っております。そういうある種の疑問を感じながら、政治活動と国民の権利の行使として請願活動がありあるいは陳情活動があり、あるいは箕輪先生に対してお手紙やおはがきが来たり、それによってむしろこのたびのいわゆる環境整備というものが理解される一つの機会になった、その上にこの議場においてこれほど高邁な議論が闘わされるわけでありますから、ますます理解が深まっていって、そういうチャンスともなったとすれば、それは本人さんのためにも、また徴税側にとっても、結果としてはいいことになるではないか、そういうふうに私は最近受けとめるようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/67
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068・簑輪幸代
○簑輪委員 申告納税制度改悪問題については、再三申し上げますように、予算に伴って今すぐどうしても成立させなければならないものではないというふうに考えます。したがって、これについての慎重審議を要請するというのは当然のことであり、私は、今回の審議の経過を見てまいりましても、必ずしも十分な審議が行われたというふうには言うことができないと思います。私は、そうした審議のあり方をも含めて、こうした皆さん方の声を踏みにじって行うことにやはり断固として反対であるということを重ねて申し上げたいと思います。
ところで、大蔵省は、このように中小業者の要請を踏みにじって過酷な改悪を押しつける一方で、大企業には極めて寛大な対処をあちこちで行っていると私は思うのです。
我が国の大企業は、年々海外投資をふやして、多国籍化がますます強まっております。これらの多国籍企業の進出先での課税のあり方との関連で、我が国の税収減につながるという問題が起こっております。これは海外投資による租税回避の問題でございますが、その端的な例が、ことし一月一日、読売新聞に載った、大手商社法人税ゼロという記事でございます。これは、外国税額控除制度というのをフルに活用し、七大商社が昭和五十八年三月期決算で、納付すべき法人税はなしという申告をしているわけです。外税流出額は十年前の八倍、九大商社で六百億円、全産業では三千八百億円に上っていると報じております。昭和五十八年税制改正で一部この問題は見直されておりますけれども、こうした租税回避をなくす十分な改正とは言えずに、現在重大な問題となっているわけです。
これについては、一部我が党の議員が予算委員会で指摘しておりますので、この問題はこの程度にとどめておきますけれども、きょうは、多国籍企業が同様に租税回避策として活用している移転価格の問題をお尋ねしたいと思います。多国籍企業が海外の系列会社との取引価格を不当に操作して海外に所得を移転するのを防ぐ、移転価格税制を我が国に導入するという問題について伺うわけです。
大蔵省では数年前からこの問題についての調査を進めて、この税制の導入の検討というのが進められているというふうに聞いておりますけれども、我が国多国籍企業によって、価格移転操作、トランスファープライシングというのが相当行われているというふうに見ておられるのかどうか。それから、その結果、それによって我が国の税収減につながっている面があると見ているのかどうか、これを最初にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/68
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069・冨尾一郎
○冨尾政府委員 国税庁といたしましては、今御指摘のように、海外の取引の関係に調査の重点を置いて、大企業を中心に調査をするという体制をとっております。
具体的に申し上げますと、必要に応じまして調査官を国外に派遣したり、また、海外の子会社との取引が我が国の親会社ないしはそういう本邦所在法人の計算上適正に反映されているかどうかということにつきまして、十分注意をしているところでございます。
特に移転価格の問題につきましては、どの程度行われているかということにつきましては、私どもは重大な関心を持ってその実態の解明に取り組んでいるところでございますし、現在、環太平洋税務長官会議等の国際会議の開催、外国税務当局との情報交換の充実などによりまして、外国の税務当局との連携の緊密化を図ることによりまして、これらの多国籍企業に対する調査の強化に努めているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/69
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070・簑輪幸代
○簑輪委員 国税庁の取り組みは伺いましたけれども、そういう取り組みを進める中で、果たしてこの価格移転の操作が相当行われていると見ているのかどうか、そしてそれが税収減につながっているというふうに見ているのかどうか、この御判断を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/70
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071・冨尾一郎
○冨尾政府委員 多国籍企業のいわゆる移転価格の問題につきまして、私ども関心を持って実態解明に努めておりますが、国際的な取引に絡むことでもございますので、私どもとしてこれが税収の上でとか実際に移転価格がどんなようなことになっているかということにつきましては、現在鋭意いろいろの実態を調べておりますが、計数として持ち合わせはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/71
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072・簑輪幸代
○簑輪委員 計数的にどれこれ言えというふうに申し上げているわけじゃなくて、そういう事実を把握し、何らか対処しなければならないと思っておられるかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/72
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073・冨尾一郎
○冨尾政府委員 移転価格の問題につきましては、国際的な活動をしている多国籍企業に適正な課税を求めるというそれぞれの国の要請を受けて、国際的にも大きな関心事でございます。私どももそういう意味で、実態の解明につきましては今後とも力を入れるとともに、これの対処につきましても鋭意努力してまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/73
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074・簑輪幸代
○簑輪委員 ちっとも聞いていることに答えていただけないのですけれども、この移転価格による日本の税収減というものを本当に深刻にとらえるならば、それに対処する必要があるわけですし、鋭意その調査、把握に努めてまいりたいなどというようなのんびりした状況なのかどうかということだと思います。この移転価格の問題については、世界各国が厳格に対応するという動きになっておりますし、アメリカとかヨーロッパ諸国では既に税制上の措置が行われているというふうに聞きますが、その点について御報告いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/74
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075・梅澤節男
○梅澤政府委員 移転価格の税制の問題につきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、アメリカとかあるいはイギリス、西ドイツ、フランスでそういう税制上の措置をとり得る制度を持っておることは事実でございます。我が国の法人税法におきましても、低額譲渡の規定とかあるいは同族会社の行為、計算否認の規定もございますけれども、今後経済が国際化していく過程で、そういう特殊な支配関係を利用いたしまして、価格を操作して所得の移転を図るというふうなことに対応するために、現在の法人税制が果たして万全の対応ができるかどうかということは非常に問題があるという問題意識は、私どもは持っております。そういったことで、諸外国の税制なりあるいはこれをめぐりますOECDの中での議論とかそういったものには重大な関心を持っておりますし、OECDの作業委員会の議論等には私どもも参加して、検討の作業に加わっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/75
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076・簑輪幸代
○簑輪委員 国際的な問題ですし、アメリカやヨーロッパ等での一定の対処がなされているにもかかわらず、我が国にそうした税制がないということは、国際的な税の問題でいうならば、私どもの感覚からいいましても不利ではないかというふうに思います。その問題の導入の必要性というのを主税局でどうお考えであるか、そして現在の検討段階はどのようなところまで行っているのか、その場合の問題点は何なのかについてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/76
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077・梅澤節男
○梅澤政府委員 この問題は税制のむしろ技術的な問題で、非常に困難な問題がたくさんございます。先ほど主要諸外国におきまして移転価格税制を持っておるということを申し上げましたけれども、率直に言いまして、この税制自身は国際的に今成熟しつつある過程にある、まだこれから経済の国際化等に即応してこの税制が国際的に定着化していく過程にあると言ってもいいだろうと思うわけでございます。個々の国の税制を見ましても、それぞれの国が移転価格税制を持っておるというふうに申し上げましたけれども、現在比較的詳細なレギュレーションを持っておるのはアメリカの税制でございます。
この問題の一番難しい点は、結局特殊な支配関係によって価格が操作されるわけですから、何が適正な価格であるか、アームズ・レングス・プライスの問題でございますが、これについてもOECDの中でこの方法論を、例えば原価の積み上げのようなものによってアプローチする方法とか、あるいは公正な第三者間の取引として確立する価格を取引事例等によって求める方法とか、いろいろな議論がされておるわけでございますし、それはまた取引が商品である場合、サービスである場合、大きな工事のようなものの場合、いろいろな場合にそれぞれアームズ・レングス・プライスを見つけるその手法を、今国際的にいろいろ議論しておるという段階でございます。したがって、私どもももちろんそうしたきちんとした制度を確立していく上でのそういう国際的な動きには関心を持ちつつ、我が国の税制に、将来そういうものを確立するという必要性は認めておるわけでございますけれども、現在具体的にいつの時点で、どういう形でこれを導入するかというところまでまだ検討が進んでおりませんし、また、その機が熟していないというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/77
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078・簑輪幸代
○簑輪委員 伝えられるところによると、大蔵省の中では研究会が設けられ、そして早ければ六十年度から導入というようなことも言われておりますけれども、今の主税局長の御答弁を伺いますと、まだ機が熟していないというようなお話ですが、そうしますと、まだ当分の間研究を重ねられるということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/78
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079・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、国際的な動き等ももちろん見きわめながらやらなければならないし、税制調査会等でも具体的に御議論をいただくステージがなければならないと思うわけでございます。その意味で機が熟していないということを申し上げたわけでございますが、六十年度に導入しないとか、あるいは六十年度には導入するとかいうことを、きょう申し上げられる段階にはないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/79
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080・簑輪幸代
○簑輪委員 大変微妙な御答弁でございますけれども、私は、この多国籍企業が海外取引を通じて、タックスヘーブンなどを含め、租税回避をありとあらゆる形でやってくる中で、少しでも税金の問題で手抜かりのないように、主税局としてもきちっとした対応をしていただく必要がある、早急な対策をとっていただく必要があるのではないかというふうに思い、それをぜひ求めたいと思います。
それで続いて、今度五十九年度の税制改正でパートの問題がいろいろ論議されまして、今度は非課税限度額八十八万円、そして今後の問題としてあと二万円引き上げられ、九十万円というふうに言われておりますけれども、私はパートとの関連で考えましたときに、自営業者の専従者控除の問題、それとあわせて内職者の問題、これは勤労の実態から考えましても、従事する人々は圧倒的に主婦が多いというようなことから考えましても、一定の権衡を失することなく対策を立てていく必要があろうかというふうに思うわけです。
そこで、大臣のお考えを伺いたいわけですけれども、このパートの方は今後の二万円引き上げが行われれば九十万円になる、そして一方、専従者控除の方は四十五万円。これは私が昭和五十七年の七月七日の大蔵委員会でも申し上げましたように、自営業者の奥さん方の労働の実態、それを詳しく御報告する時間がきょうはございませんけれども、本当に朝早くから夜遅くまで、労働基準法が適用されませんので、産休もなく、本当に働きづめのそういう奥さんの労働の評価が、専従者控除として年に四十五万円ということで、この部分に限って、もうほかに配偶者控除も受けられないということを見ますときに、いかにもパートとの権衡を失するのではないかと思わざるを得ないわけですね。こういう自営業者の方々は、せめてパート並みにしてほしいということがかねてからの強い強い要求です。
そこで、大臣の御認識を伺うわけですけれども、パート労働と専従者控除に該当する業者婦人の労働、それからあと内職労働、こういったものの権衡をどうとっていくのかというような大臣のお考えを伺いたいと思うのですね。といいますのは、税制上のいろいろな仕組みのことは主税局長からも再三聞いておりまして、十分承知した上で、政治的にこういうふうなかけ離れた実態でよろしいのかどうか、大臣の御判断を伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/80
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081・竹下登
○竹下国務大臣 いつも議論のあるところですが、税制上の仕組みの問題はもうすべて御承知のとおりであります。したがって、私どもはこの問題が議論に上がるたびごとに、一方、パート労働法とかそういうことをいつも念頭に置きながら、結論としてそれそのものの議論もなかなか難しい議論が多いということから、今のような仕組みになっているわけですけれども、そうなると、そこに今おっしゃいました白色の専従者控除額の問題あるいは内職者の皆さん方がいわゆる事業所得または雑所得の範疇にお入りになっている問題、この問題はどうしても議論の中で出てくる問題です。それは実際問題、今給与の支払いの有無に関係なく、配偶者控除ないし扶養控除にかえて専従者控除というものが四十万から四十五万ということでございますので、パートの非課税限度額と直接結びつく問題ではこれは税制上はないと思うのですね、感覚的にはわかりますがね。
それと今、もう一つ内職の問題もそのとおり、税制上からいえば直接結びつく問題では必ずしもない。だから、結局は低所得の婦人労働者一般の問題として、その扱いについてはそれこそ適切にこれからも対処していかなきゃならぬ。だから、今度パートの問題について本院で議論されるでありましょう、そういうときに出てくるいろいろな議論というのが、また将来の検討の方向を示唆する貴重な御意見ともなれば幸いである、私はこの問題についてはいつもそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/81
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082・簑輪幸代
○簑輪委員 税というのは公平でなければならないということを基本としているわけですけれども、同じ婦人が働くという実態、それも時間的にもかなりの労働でありながら税制上は非常に冷遇されている。業者婦人でいうならば、四十五万ということになりますと、配偶者控除が三十三万ですから、勤労の実態に合わせて評価してもらっているのは年額わずか十二万、これは月一万ではないかということになるわけですね。
私は、せめてパートとの権衡から考えましても、専従者控除四十五万にプラスして配偶者控除三十三万円が受けられるような税制上の措置を講じていただくことは十分可能ではないか、控除対象配偶者の考え方の中で、こうした専従者控除の考え方と矛盾しないやり方で税制上の措置をすることは十分可能ではないかと考えます。
昭和三十五年の税調の答申では、この専従者控除の問題について、「実質的にはなんらかの形で家族専従者に対する事業利益の配分が行なわれているものとみて、右の定額控除をいわば一種の概算的な給与として控除する考え方である。」「扶養控除などとはその性質が異なり、税法上の性格は一種の給与とみるべきであるから、たとえばその家族専従者が他に所得を有する場合には、当然これと合算して課税の対象となるべきものである。」こう言われているわけですから、一種の概算的な給与と考えた場合に、これとは別に、パートが給与所得のほかに配偶者控除が受けられる、それと同様な方法を税法上新しくつくり出すことは可能だと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/82
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083・梅澤節男
○梅澤政府委員 この点は常々議論のあるところでございますが、先ほど大臣の答弁にもございましたように、現在の白色の専従者控除というのは、白色事業所得者の家族が事業に従事しておられるといういわばその実態に着目いたしまして、給与の支払いの有無にかかわらず、配偶者控除なり扶養控除にかえてということでございますから、いわゆる給与的性格というものよりも、やはり一つの白色事業者の実態に即した独特の所得控除というふうに観念すべきであろうということでございます。
五十九年度の税制改正におきましては、そういった観点に立ちまして、基礎的、人的控除の引き上げ幅とのバランスもとりながら五万円の引き上げということを、現在御提案申し上げているところでございまして、現在の制度の考え方から見まして、これに配偶者控除なり扶養控除を付加的に所得控除として認めるということになりますと、これは制度の基本的な性格にかかわる問題でございますし、これもまた委員のおしかりをこうむるかもしれませんけれども、給与的なものとしての控除ということでございますと、青色申告を選択していただきますと、実際の妥当な水準である限り、現実に払われます家族給与がそのまま経費といいますか、経費として認められるという道がございますので、そういった点とのバランスから考えますと、今の白色専従者控除というのは、それなりの制度的な位置づけがされておるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/83
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084・簑輪幸代
○簑輪委員 主税局長は、もし給与ということでやってほしければ青色申告をというようなお話のように承りましたけれども、青色申告であろうと白であろうと、そんなことは事業主の自由でございまして、それを強制されるいわれはないわけですね。そして労働そのものは、青色申告であろうと白であろうと、働く者にとっては同じように神聖であり重要でございます。税制上の措置が、青色申告制度をとったときだけはこうしてやるけれども、そうでなければ非常に過酷な条件に置いておいて、そして結局は青色の方へ誘導しようというようなやり方は、到底納得できるものではありません。だから実態そのものを正しく受けとめて、それに適切な対処をするということを私は強く求めたいと思うのです。
税制上無理があるかのような主税局長の御答弁でございましたけれども、どうもそんなふうには私には思えないのです。専従者控除と配偶者控除を合わせてダブル控除をやるということが、税法上全く無理なことというふうには思えないのですね。そういう方向を模索するというか、そういう方向に行こうと思えば、そういう知恵も働くわけですけれども、そんな必要はないと思っているから検討もされないということだとすると、とても残念なことだというふうに思います。
この問題は今回で解決するわけではございませんし、ますます不公平感が拡大している状況にございます。パートや自営業者と内職者との間の問題につきましては、私どもは昨年竹下大蔵大臣にも直接御要望申し上げましたように、せめて百二十万円まではすべて非課税となるよう——これはパートであろうと内職であろうと、あるいは自営業者の専従者控除であろうと、百二十万円までは非課税になるよう、税制上の御配慮を願いたいというふうに申し入れを行ったところでございます。そういう方向を目指して今後も御尽力をいただきたいと思いますが、最後に大臣の御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/84
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085・竹下登
○竹下国務大臣 いつも難しい問題だと申し上げますのは、仮に百二十万円になっても、では百二十一万円の場合はどうなるかという矛盾はいつも出てまいります。ただ、本院でせっかく御協議いただけるときでございますから、さらに婦人外交員等も含めて勉強していただきたいものだというふうに思っています。その意味におきましては、今も主税局長が申しましたのは、白色申告者の場合等における青色申告への強制というようなことじゃございません。誘導でもなければ、お勧め申し上げておる、こういう立場でございますので、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/85
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086・簑輪幸代
○簑輪委員 他にも税率構造の全面見直し等による金持ち優遇税制問題を論議したいと思いましたけれども、時間が参りましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/86
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087・瓦力
○瓦委員長 これにて三法律案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/87
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088・瓦力
○瓦委員長 これより三法律案を一括して討論に付します。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/88
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089・熊谷弘
○熊谷委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に賛成の意見を表明するものであります。
第一に、法人税法の一部を改正する法律案について見ますと、この法律案は、法人税の延納制度を廃止するほか、課税の公平を一層推進するため、帳簿書類の備えつけ制度を設ける等の措置を講ずること等をその内容としております。
これらの措置は、現下の厳しい財政事情及び課税の公平の確保が一層強く求められていること等にかんがみて、適切な措置であると考えます。
第二に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について見ますと、まず、臨時措置として法人税率の引き上げ等が図られております。現下の厳しい財政状況をこれ以上悪化させることのないよう、歳出削減、税外収入の確保に最大限努めつつこれらの増収策を図ることは、必要かつ適切なものと認められるところであります。また、法人税率の引き上げにおいては、中小法人等に対する軽減税率について所要の配慮を行っているものであり、この点も評価できるものであります。
次に、既存の租税特別措置については、準備金制度及び特別償却制度等の整理合理化が図られております。これらの企業関係の租税特別措置については、連年にわたる厳しい見直しに引き続いて整理合理化が行われたものであり、税負担の公平確保のための努力として高く評価されるところであります。
さらに、設備投資促進のための措置として、エネルギー利用の効率化、中小企業の電子機器利用等を促進するため、これらに係る設備投資について特別償却と特別税額控除の選択を認める等、厳しい財政事情の中で可能な限りの配慮が行われております。現下の経済情勢における中小企業を中心とした設備投資促進の要請にこたえるものとして、まことに時宜を得た措置であります。
第三に、所得税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
極めて厳しい財政事情の中にあって、政府は、歳入歳出両面にわたって工夫を重ね、所得税負担の軽減を図るため、初年度八千七百億円に上る所得税減税を行うこととしたことにつきまして、まずその努力を大いに多とし、高く評価するものであります。
次に、その具体的内容を見ますと、まず基礎控除、配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ四万円引き上げており、また、給与所得控除についても所要の引き上げが行われております。これにより、夫婦と子供二人の給与所得者の課税最低限は二百三十五万七千円となりますが、これは先進諸国の課税最低限を上回る極めて高い水準であります。
また、以上の改正とあわせて所得税の税率の見直しが行われております。すなわち、累進構造を全体としてなだらかなものとするとの観点から、最低税率及び最高税率を見直し、あわせて税率の刻みの数の縮減が図られておりますが、これにより、中堅所得者層を中心として負担累増感が緩和され、全体として適切な累進構造が実現されるものであります。また、最低税率の見直しに当たっては、あらゆる所得階層にとって負担増とならないよう工夫されており、きめ細かな配慮がうかがえるのであります。
このほか障害者控除、老年者控除等の特別の人的控除についてもその控除額の引き上げが行われ、また、白色申告者の専従者控除も引き上げられるなど、各般の控除について制度の趣旨、目的に応じた拡充が行われていることは、まことに適時適切な措置であります。
さらに、課税の公平を一層推進するための措置として納税環境の整備が図られており、一定の事業所得者等について記帳制度、総収入金額報告書の提出制度を設ける等の具体的措置が講じられておりますが、これは納税者の実態に十分配意しつつ、申告納税制度の定着と適正かつ公平な課税の実現を図る見地から極めて意義のあるものであり、大規模な所得税減税と相まって、所得税制度に対する国民の信頼を高める時宜を得た措置と考えられます。
以上申し上げました理由により、三法律案に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/89
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090・瓦力
○瓦委員長 上田卓三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/90
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091・上田卓三
○上田(卓)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案並びに法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案について反対討論を行うものであります。
五十八年度一千五百億、五十九年度一兆円という政府減税案は、景気浮揚に役立つ相当規模の減税実施という昨年の与野党合意に背くだけでなく、七年間課税最低限据え置きによって生じた実質大増税の埋め合わせにもなっていません。しかも、財源を法人税や酒税、物品税などの増税で賄うことによって減税の効果は減殺され、公共料金の値上げ、人事院勧告の実施引き延ばしなど、勤労者の家計は相変わらず苦しい状態を続けています。
先般の与野党合意によって、いわゆるパート減税の二万円上積みが約束されることになったものの、その額はいまだ極めて不十分であります。また、内職はパートと実質的に同じ労働内容であるにもかかわらず、その非課税額が著しく低い状態に置かれていることも問題であります。
さらに、所得税の最低税率の引き上げと最高税率の引き下げは、まさしく低所得者への負担増、高所得者への減税であって承知できません。
投資減税の規模も、今回一千億円にも満たず、しかも中小企業向け投資減税はわずか二百億円で、とても中小企業の振興、景気回復に役立つとは思えません。
今日、「不公平税制を正せ」は、国民の広範な世論となっております。言うまでもなく、不公平税制とは、所得税法、法人税法、租税特別措置法の中に組み込まれた制度上、税制上の大企業、大資産家優遇税制であります。例えば国税庁の調査でも明らかなように、マル優、非課税貯蓄申請数は、五十八年度で五億九千万口座にも達し、高額所得者、資産家の脱税の温床となっています。にもかかわらず、総合課税を目指して創設されたグリーンカード制は実施延期のまま放置され、遠からず消える運命にさえさらされているのであります。企業の貸倒引当金、退職給与引当金等の繰り入れ率の実績とのはなはだしい乖離の実体にも何らメスが入れられていません。
政府は、こうした不公平税制の是正には指一本触れないばかりか、逆にいわゆるクロヨン、トーゴーサンなどといった問題を過大にあおり立て、給与所得者と中小零細業者、農漁民、医師などの反目と分裂を策しています。いわゆる納税環境の整備という形で打ち出されている記帳義務化や推計課税の要件緩和、処分取り消し訴訟における挙証責任の納税者への転嫁など、一連の法改正は、納税者の権利としての自主申告権を真っ向から否定し、税務当局の権力を肥大化させ、事実上、戦前の賦課課税制度に復帰すると言っても過言ではありません。このような措置がいたずらに税務行政を混乱させ、より一層の不公平の拡大を招くことは必至であります。
大蔵大臣も当委員会で言明されたように、税において最も重要なことは公平の確保であります。国民は等しからざるを憂うるのであります。我々がかねて当委員会で審議し、要求してきた不公平税制の是正等、国民の切に要望する税制改革を早急に実行することを要求いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/91
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092・瓦力
○瓦委員長 宮地正介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/92
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093・宮地正介
○宮地委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました所得税法等、租税特別措置法、法人税法のそれぞれを一部改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
私は、まず、国民の多くが、さきの総選挙におきまして、政府・自民党に対し厳しい審判を下したにもかかわらず、中曽根内閣が国民の期待とは裏腹の政治姿勢をとり続けていることを厳しく指摘せねばなりません。
中曽根総理は、歴代自民党総理の中では珍しく、みずからの政治信条に従い、率直に発言し、行動される総理として、国民からある種の期待をされておりました。ところが、来年度の税制改正案を見る限り、中曽根総理ほど言行不一致の極めて多い総理も珍しいと言わざるを得ないのであります。
すなわち、昨年の参院選で与野党合意に基づき、景気浮揚に役立つ相当な額の減税について国民に期待をさせておきながら、所得税減税八千七百億円にとどめるばかりか、増税は行わないとしていた昨年暮れの総選挙での公約を、酒税、法人税などの見返り増税によって不履行にしております。
このような中曽根内閣の姿勢は、国民に対する背信行為であるとともに、議会制民主主義を後退させるものと言わざるを得ません。
また、予算修正問題では、我々は減税の上積み、大衆増税の撤回など、極めて現実的な共同修正要求を政府・自民党に提示し、その実現を迫ったのであります。しかし、政府・自民党の回答が、給与所得控除の最低控除額を二万円引き上げ、パート収入者等の減税上積みにとどまったことはまことに遺憾であります。
この際、私は、減税上積みの立法措置を政府・自民党が今国会において誠実に実行されることを強く要求しておきます。
以下、直税三法の改正案に反対する主な理由を申し述べます。
反対する理由の第一は、所得税の減税額を圧縮する上に、その見返りに大幅増税を強行し、減税の景気浮揚効果などを失っていることであります。
我が国経済は、景気に明るさが見えてきてはいるものの、その多くは輸出に支えられてきたものであり、内需、特に個人消費は伸び悩んでおります。内需の停滞が中小企業に厳しい景況をもたらし、地域間、業種間格差を拡大し、依然として失業、倒産を高水準で推移させていることは明らかであります。
家計面でも、所得税減税による負担軽減は、大衆増税、公共料金の値上げなどによって帳消しになり、国民生活の防衛には役立っておりません。
このような事実は、国民が所得税減税に期待した景気浮揚、生活防衛、税負担の公平化などの効果をことごとく減殺してしまうものであり、到底認めがたいのであります。
また、所得税の最低税率を引き上げ、その適用課税所得を縮小させることは、大衆課税の強化を進めるものであり、見過ごしにできません。
反対する理由の第二は、中小零細企業に対して極めて厳しい法人税の税率引き上げが強行されていることであります。
申すまでもなく、我が国経済財政の主要課題は、世界経済の景気回復、物価安定などの好材料を生かしつつ、内需拡大によって景気浮揚を図り、経済を安定成長軌道に乗せ、その基盤に立ち、財政再建を推進することであります。
法人税の税率引き上げは、中小企業の設備投資意欲を減退させるばかりか、その措置が二年間の時限立法とされていることから、二年後の増税延長、他の大衆増税との入れかえなどさまざまな憶測を生み、経営の不安定要因を増加させるものであります。
中小企業に対する設備投資減税も、我々の要求を大きく下回っていることから、その景気浮揚効果に疑問を抱かざるを得ません。
このように、我が国の緊急課題である景気対策に逆行する税制改正には強く反対せざるを得ないのであります。
また、政府が所得税減税の見返りとして、大幅増税を強行しながら、利子・配当課税の適正化や租税特別措置法の整理合理化の努力が余り見られず、国民の強い要求である不公平税制の是正に極めて消極的であることも、反対する主な理由の一つであります。
以上で私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/93
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094・瓦力
○瓦委員長 玉置一弥君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/94
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095・玉置一弥
○玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております直接税三法案に対し、一括して反対の討論を行います。
長期にわたる国内景気の低迷や、この六年間の所得税の実質的な税負担の増加から、勤労者を中心として、所得減税の国民的要求が世論として盛り上がり、五十七年度には、当大蔵委員会における減税小委員会が設置され、論議が行われてまいりました。
我が党を初め野党が一致して政府に要求したのは、五十七年度は一兆円、五十八年度は一兆四千億円の所得減税でありました。
これに対して政府は、財源手当てに固執し、五十七年度の減税は全く行わず、また五十八年度においては、予算審議の過程における、景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税の五十八年実施の与野党合意にもかかわらず、極めて小規模で不十分な千五百億円の、しかも五十八年だけの特例的な減税実施にとどめたのであります。
これまでの経緯を振り返ってみても、最近でこそようやく景気回復の兆しが見られるとはいえ、公共事業の息切れ、倒産件数の増加など、不安材料を抱えており、政府の景気の実態の認識が不十分であり、またこの六年間、知らない間に増税される状況にいた国民の切実な減税に対する期待を裏切ったのであり、極めて遺憾であります。
今回の減税実施は極めて遅きに失しており、また増税との抱き合わせ実施により、減税の景気浮揚効果はないに等しいと言わなければなりません。
政府が後手後手の対応を改め、国民の強い要望となっているバート減税の拡充、内職者、単身赴任者に対する税制上の軽減措置、教育費減税などに速やかに着手されるように強く求めるものであります。
一方、法人税制においても、設備投資を促進し、民間企業の活力を引き出し、我が国の産業の基盤を強化するため、大幅な投資減税、設備の法定耐用年数の短縮、中小企業の事業承継税制の確立などが急務であります。
また、政府がその圧縮を図ろうとしている退職給与引当金については、まずその保全のための措置を講ずることが先決であります。
これら諸対策が今回の改正では講じられていないことは極めて遺憾であります。今後、政府がこれらに対して積極的に取り組んでいくよう強く求めます。
最後に、今回の直接税三法案の当委員会での審議は、時間が不十分であり、特に納税環境の整備の中身についての解明や、不公平税制の是正についての具体的な対応について、十分なものとは言えません。
現行の税制度が、国民の活力を温存できるよう、実情に合ったそのときどきの見直しが適正に行われるように強く要望し、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/95
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096・瓦力
○瓦委員長 正森成二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/96
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097・正森成二
○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となっております法人税法、租税特別措置法並びに所得税法等の一部改正案など、政府提出のいわゆる直接税三法案につき、反対の討論を行います。
反対する第一の理由は、所得税法等及び法人税法の両改正案に盛り込まれている納税環境の整備なる諸措置が、戦後税制の大原則である自主申告に基づく申告納税制度の根幹を揺るがす一大改悪にほかならないからであります。
記帳に基づく申告なとはあくまで奨励されるべきもので、法律で義務づけ、強制すべきものではありません。これは、つけたくともつけられない広範な零細業者、農民、建設職人などに新たな過酷な負担を強いるばかりでなく、結局、税務当局による安易な推計課税、押しつけ課税に道を開き、税務行政の強権化を促進、強化させることは必至であります。また法人税法における、営利を目的としない労働組合、民主団体等への記帳義務等は、これら大小さまざまな団体への課税強化と政府の不当な介入を許す重大な危険を持っております。
資料収集制度としての総収入金額報告書の提出義務は、事実上の総収入申告制ともなるもので、事業者に過重な負担をもたらすばかりか、他の制度と連動して、予想される大型間接税の実務的な下準備ともなるものであります。
とりわけ許しがたいのは、国税通則法改正として、課税処分取り消し訴訟において、原告側の納税者に一方的な制限を加えたことであります。これは、訴訟の大前提である当事者対等の原則を崩壊させるとともに、裁判手続である民事訴訟法そのものを事実上改悪し、憲法に定められた国民の公正な裁判を受ける権利をも侵害するものであります。しかも、裁判の基本にかかわるこのような重大な大改悪を、法制審議会にも語らず、日本弁護士連合会の意見も事前に聞かず、その反対をも無視して、税法改正で一方的に強行しようとしていることは、二重三重にファッショ的暴挙であり、断じて黙過することはできません。本改正に対して、記帳義務等に賛成する個人や団体をも含めた広範な人々が反対し、憂慮しているのも当然のことと言わなければなりません。
反対する第二の理由は、所得税の七年ぶりの本格減税が、実はまやかし減税であり、国民の切実な要求と余りにもかけ離れているからであります。
まず、減税規模が、六年間の減税見送りによる実質増税累計のわずか二割に満たないばかりでなく、その配分においても、低所得者層を含む大多数の国民には薄く、高額所得者に厚い金持ち優遇の色合いが濃いものとなっていることであります。
加えて、この減税の財源に、間接税を中心とする国民への抱き合わせ増税が実施され、これに福祉切り捨てや公共料金値上げ等他の国民負担増を加味すれば、国民の大多数は、減税どころか、新たな負担増になります。
日本共産党・革新共同は、低所得者層に効果の大きい方法で、所得税で一兆四千億円の大幅減税を、さらにサラリーマンやパート主婦並びに業者婦人等へのきめ細かな減税の実施を、この際改めて強く要求するものであります。
反対する第三の理由は、法人関係税制で、中小企業に犠牲を強いる一方で、大企業には至れり尽くせりの優遇をしていることであります。
今回、減税財源捻出の一環として、法人税の二年間引き上げ、欠損金の繰り戻し還付制度の二年間適用停止、さらに延納制度の廃止が盛り込まれております。言うまでもなく、大企業に対する法人税率の引き上げは、その担税力から見ても当然でありますが、各種の大企業への優遇措置で、実際の税負担率では、大企業が中小企業を下回る逆累進構造が依然として続いております。また、現在、長期不況のもとで、倒産件数の九九・八%を中小企業が占める一方で、大企業が利益を大幅に伸ばしている現実から見れば、中小企業法人税引き上げ等は即時撤回し、大企業への適正負担を求める立場から、法人税に段階税率を導入するとともに、超過利得税を復活すべきであります。
さらに重大なのは、大企業の法人税率引き上げの見返り措置として、現行の大企業優遇税制を基本的に温存しつつ、エネルギー投資減税及びテクノポリス企業投資減税の新設、並びに海外投資損失準備金の積み立て対象に、銀行等のいわゆるカントリーリスク債権を新たに加えるなど、不公平を一層拡大していることであります。
日本共産党・革新共同は、全体として大多数の国民に新たな負担増を押しつけ、中小業者、農民等に徴税強化をする一方で、大企業には優遇措置を温存、拡大するこの三法案に断固として反対するものであります。
このような立場から、私どもは、去る三月十五日、大蔵大臣及び大蔵委員長に、今国会提出の税法六法案について、五つの項目による要求を申し入れました。特に納税環境の整備関連手続法は、最初に述べましたように、制度の根幹にかかわる重大な改悪であり、年度内に成立させなければならない何らの必要性もなく、当然予算関連法案から切り離し、撤回すべものであります。一歩退いても、その部分は切り離し、慎重審議すべきであり、私どもはそれを粘り強く主張してきました。政府・自民党がこれをかたくなに拒否し、減税に名をかりてこの悪法をも一気に押し通そうとしていることは、断じて認めることができないことを申し添えておきたいと思います。
以上、私は、政府提出の直接税三法案に反対の立場を改めて表明し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/97
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098・瓦力
○瓦委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/98
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099・瓦力
○瓦委員長 これより採決に入ります。
まず、法人税法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/99
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100・瓦力
○瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/100
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101・瓦力
○瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/101
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102・瓦力
○瓦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/102
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103・瓦力
○瓦委員長 ただいま議決いたしました三法律案に対し、中西啓介君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/103
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104・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を簡単に御説明申し上げます。
御案内のとおり、三法律案につきましては慎重に審議を進めてまいりましたが、これらの審議の中で委員から、さまざまな問題について議論が展開されました。
この附帯決議案は、これらの議論等を踏まえ、今後政府において検討あるいは配慮を要する事項を取りまとめたものであります。
なお、個々の事項の趣旨につきましては、案文で尽きておりますので、案文の朗読により、趣旨の説明にかえさせていただきます。
政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。
一 今後の所得税負担のあり方については、国民の理解と信頼を確保するため、一層公平のために努力し、社会経済情勢の変化に対応し、適宜見直しを行うこと。
一 退職給与引当金、貸倒引当金等については、繰入率について引き続き検討し、実態に応じその見直しを行うこと。
なお、退職給与の保全措置についても、検討を進めること。
一 各種の租税特別措置については、その整理合理化に更に努力すること。
一 利子・配当所得等については、郵便貯金を含め、本人確認、名寄せの厳正な方途の確立を図り、その適正・公平な課税のあり方につき、早急に結論が得られるよう検討を進めること。
一 高齢化社会をはじめとする今後の社会の変化に対応するあるべき税体系の検討を進めること。
一 税務執行の公平を確保するようなお、特段の努力をすること。
一 納税環境の整備に関する諸施策の導入に際しては、申告納税制度の趣旨に則り、かつ、これ迄の経緯や納税者の実態に十分配意し、中小所得者の過大な負担とならないよう円滑な運営を図ること。
一 記帳及び記録保存制度等に関しては、その内容、方式等について納税者に過大な負担となることがないよう十分留意するとともに、適正な運用に努めること。
一 変動する納税環境、財政再建の緊急性にかんがみ、複雑困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯及び今後の財源確保の緊急性かつ重要性並びに税務執行面における負担の公平確保の見地から、今後とも処遇の改善、中長期的見通しに基づく定員の増加等につき格段の努力をすること。
以上であります。
何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/104
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105・瓦力
○瓦委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
お諮りいたします。
本動議のごとく三法律案に対し附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/105
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106・瓦力
○瓦委員長 起立総員。よって、三法律案に対し附帯決議を付するに決しました。
本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/106
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107・竹下登
○竹下国務大臣 ただいま御決議にありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/107
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108・瓦力
○瓦委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/108
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109・瓦力
○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/109
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110・瓦力
○瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後九時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X01019840328/110
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