1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月十七日(火曜日)
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議事日程 第三十二号
昭和五十九年七月十七日
午後一時開議
第一 たばこ事業法案(内閣提出)
第二 日本たばこ産業株式会社法案(内閣提出
)
第三 塩専売法案(内閣提出)
第四 たばこ事業法等の施行に伴う関係法律の
整備等に関する法律案(内閣提出)
第五 たばこ消費税法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
塩崎潤君の故議員湯山勇君に対する追悼演説
日程第一 たばこ事業法案(内閣提出)
日程第二 日本たばこ産業株式会社法案(内閣
提出)
日程第三 塩専売法案(内閣提出)
日程第四 たばこ事業法等の施行に伴う関係法
律の整備等に関する法律案(内閣提出)
日程第五 たばこ消費税法案(内閣提出)
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/0
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001・福永健司
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/1
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002・福永健司
○議長(福永健司君) 御報告いたすことがあります。
議員湯山勇君は、去る六月十六日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る六月二十四日贈呈いたしまた、これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し さきに災
害対策特別委員長の要職にあたられた議員正四
位勲二等湯山勇君の長逝を哀悼し つつしんで
弔詞をささげます
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故議員湯山勇君に対する追悼演説発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/2
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003・福永健司
○議長(福永健司君) この際、弔意を表するため、塩崎潤君から発言を求められております。これを許します。塩崎潤若。
〔塩崎潤君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/3
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004・塩崎潤
○塩崎潤君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員湯山勇先生は、去る六月十六日深夜御逝去されました。
思えば、私が湯山先生と最後に言葉を交わしたのは、御逝去の前日の六月十五日、サミット報告のあった本会議場から議員会館へ二人で肩を並べて戻る道すがらでありました。臨教審問題など生涯情熱を注がれた教育問題に触れながら、先生が別れ際に松山弁で「あすは松山へ帰るのよ」とうれしそうに語られた一言が、今でも私の耳に不思議に印象深く残っております。
確かに、その翌日の六月十六日、湯山先生は、先生がこよなく愛された松山に帰られました。そして長らくともに歩んできた県教組の大会に出席されて力強く人々を激励されました。しかし、その夜、忽然として永遠に帰らぬ人になってしまわれたのであります。まことに人の世の無情を恨まざるを得ません。
私は、ここに、議員各位の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
湯山先生は、明治四十五年一月十八日愛媛県宇摩郡別子山村に生をうけられました。幼少にしてお父上を、青年期にはお母上を亡くされて、苦学力行、昭和六年に首席で愛媛師範学校を御卒業されました。
先生が教職の道を選ばれたのは、自分の幼い日を顧みて、人の世の平等の大切さを知り、恵まれない子供たちにもみんなと同じ学校生活を送らせてやりたかったからだというとうとい理由からでありました。
教師生活は二十二年にも及びましたが、この間高等師範学校に進んだ同級生よりも一年早く検定試験に合格して理科の中等教員資格を取得され、さらには県で一番若い視学になられるなど、先生は愛媛の子弟の教育に若き時代の情熱のすべてをなげうたれたのであります。
しかし、先生の情熱はだんだんと教育から政治の方に移っていきました。昭和二十六年に県教組委員長に、さらに翌年には地評議長に推され、昭和二十八年四月にはついに第三回の参議院議員選挙に社会党から立候補して見事に初当選され、今日の政治家湯山勇先生の道を歩み始められたのであります。
参議院議員としての先生の御活躍は目覚ましく、特に教育問題におけるそれは際立ったものでありました。昭和三十一年の新教育委員会法審議の際の湯山先生の本会議場における混乱にも動じない毅然たる御行動は、石川達三氏の有名な小説「人間の壁」の中に詳しく描かれ、多くの人々に深い感銘と共感を与えたのであります。(拍手)
昭和三十三年一月には参議院文教委員長の御要職に進まれるのでありますが、ほぼそのころ、大蔵省の文部主計官でありました同郷の私に、文教委員会で例のやわらかい口調でありながら精緻な御質問を通じて、日本における教育の重大さを教えていただいたことをきのうのように思い出すのであります。
先生は、昭和三十五年十一月の第二十九回の総選挙に当選されてから本院に議席を移され、一時、知事選に挑戦するため辞されたことはありましたが、再び昭和四十七年に復帰されて以来、七期、十八年の長きにわたって縦横無尽の活躍をされたのであります。
一方、日本社会党の中にあっても、政審副会長、文教部会長などの要職につかれ、党の重要施策の立案、決定に大きな役割を果たされ、最近では、代議士会副会長として党の運営に大きく貢献されました。
一方、地元愛媛でも「社会党の顔」「革新の星」とまでうたわれて、揺るぎなき社会党の基盤を堅実に築き上げられたのであります。
その御活躍の範囲は広くかつ深く、辺地教育、養護学校教員給与の国庫負担、教員免許状などの御専門の教育問題はもちろん、米価問題、農産物自由化問題にあらわされる農政問題、年金、医療問題を中心とする社会保障問題から地域改善問題にまで及びました。また、御活躍の場所も、文教委員会を初めとする数多くの常任委員会から予算委員会に至るまで、さらに昭和五十一年には災害対策特別委員長に御就任されるなど、いずこにおいてもあのじゅんじゅんと説得する式の湯山先生のお姿は、今でも目の当たり見えるようであります。
先生の人間像を示すものとして、ここにどうしても御報告しなければならないのは、第九十八回国会において成立したいわゆる献体法をみずから実践されたことであります。医学の教育と進歩のために、遺族の意思にかかわらず本人の意思だけで献体できるという献体法は、まことに画期的なものでありますが、先生は先頭に立ってこれを促進し、ついにこれを成立せしめたばかりか、みずから国会議員の献体第一号として、愛媛大学医学部にとうといその身をささげられたのであります。(拍手)
その御遺体が車で送られていく光景をまざまざと目の当たり見た見送りの私どもは、湯山先生とチアキ夫人その他御遺族の、身をささげても最後まで社会に奉仕するという崇高なお気持ちに、言いようのない深い感銘を覚えたものであります。(拍手)
先生の政治哲学の根底は、みずからの献体に示されるように、人間に対する深い思いやりにあったと思われます。そして、この深い思いやりは、先生のあのやわらかな語り口にあらわされる優しさから出ていることは言うまでもありません。
この優しさと思いやりは、ふるさとの自然から動植物にまで及びました。先生が愛媛の山や野を好んで歩き、学界でも絶滅したと思われていたイヨスミレを半世紀ぶりに再発見したとき、「おまえたちはこんなところに咲いていたのか」と群れ咲く花を前にして涙されたというエピソードは、先生の優しさ、草花を愛し庶民を愛するお人柄を最もよく物語っているものであります。(拍手)
議員をやめたら洗礼を受けて一緒に教会へ通おう、可憐な草花を求めて一緒にゆっくり山歩きをしようと常々奥様に語られていた湯山先生でしたが、御愛読の聖書の中にある「一粒の麦もし死なずば」のあの教えのように、たとえ地に埋もれても必ずや愛媛の野に多くの実を結び、先生の御遺志を実現しようとする人々がほうはいとして続くことは信じて疑いません。
内外情勢の極めて厳しい折から、ここに湯山先生を失ったことは、本院にとっても国家国民にとってもまことに大きな損失であります。また、後輩の一人として長い間御交誼を受けた私自身にとりましても、湯山先生の御逝去は政治を志す者のかがみを失った思いであります。私どもは、湯山先生の御遺志を体し、決意を新たにして国政に取り組むことを誓うものであります。
ここに、湯山先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、安らかに眠られんことを心から祈りつつ、謹んで哀悼の言葉といたします。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/4
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005・福永健司
○議長(福永健司君) 御報告いたすことがあります。
永年在職議員として表彰された元議員永山忠則君は、去る六月十三日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る五日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議
をもってその功労を表彰され さきに社会労働
委員長内閣委員長の要職につき また国務大臣
の重任にあたられた正三位勲一等永山忠則君の
長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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日程第一 たばこ事業法案(内閣提出)
日程第二 日本たばこ産業株式会社法案(内
閣提出)
日程第三 塩専売法案(内閣提出)
日程第四 たばこ事業法等の施行に伴う関係
法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
日程第五 たばこ消費税法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/5
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006・福永健司
○議長(福永健司君) 日程第一、たばこ事業法案、日程第二、日本たばこ産業株式会社法案、日程第三、塩専売法案、日程第四、たばこ事業法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、日程第五、たばこ消費税法案、右五案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。大蔵委員長瓦力君。
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たばこ事業法案及び同報告書
日本たばこ産業株式会社法案及び同報告書
塩専売法案及び同報告書
たばこ事業法等の施行に伴う関係法律の整備等
に関する法律案及び同報告書
たばこ消費税法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/6
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007・瓦力
○瓦力君 ただいま議題となりました専売改革関連の五法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
最初に、各法律案の概要を御説明申し上げます。
まず、たばこ事業法案について申し上げます。
この法律案は、開放経済体制に即応しつつ、たばこ事業の効率的運営等も図る見地から、明治三十七年以来約八十年に及ぶたばこ専売制度を廃止するとともに、我が国たばこ産業の健全な発展を図ることにより財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資するため、原料用国産葉たばこの生産、買い入れ、製造たばこの製造、販売の事業等に関し所要の調整を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、原料用国産葉たばこにつきましては、新会社となる日本たばこ産業株式会社がたばこ耕作者と買い入れ契約をあらかじめ締結する一方、これにより生産された葉たばこは、新会社による全量買い入れを行う等所要の措置を講ずることとしております。
第二に、製造たばこの製造は、新会社に独占させることとしております。
第三に、たばこの輸入自由化を図ることとし、輸入した製造たばこを業として販売する者に登録制を採用することとしております。
第四に、当分の間現行の小売人指定制を許可制とし、実質的に現行小売販売制度を維持するとともに、小売販売価格は引き続き当分の間定価制を維持することとしております。
その他、喫煙と健康の関係に関する注意文言の表示の義務づけ等所要の規定を整備することとしております。
次に、日本たばこ産業株式会社法案について申し上げます。
この法律案は、我が国たばこ産業の健全な発展等を図るため、日本専売公社の経営形態を政府関係特殊法人の中で最も自主性が認められる特殊会社に改組する等の措置を講じようとするものでありまして、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、新会社は、製造たばこの製造、販売及び輸入に関する事業を経営することを目的とする株式会社とすることとしております。
第二に、新会社の株式につきましては、発行済み株式総数の二分の一以上の、ただし当分の間三分の二以上の保有義務を政府に課することとし、その保有株式を処分するに際しましては、国会の議決を経なければならないこととしております。
第三に、事業計画等一定の事項につきまして、許可等の公的規制に関する必要最小限の規定を設けることとしております。
次に、塩専売法案について申し上げます。
この法律案は、塩専売事業が公益専売である旨を明らかにした目的規定を設けるとともに、現在公社が実施している塩専売事業を新会社に実施させるために必要な措置を講ずるほか、国内塩産業の自立化のめどが得られた段階で本法律について検討を加えることとする規定を設ける等所要の措置を講ずることとしております。
次に、たばこ事業法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
この法律案は、たばこ事業法等の制定等に伴い、製塩施設法及び塩業組合法を廃止するほか、国家公務員等共済組合法等六十法律につき所要の規定の整備等を図ろうとするものであります。
最後に、たばこ消費税法案について申し上げます。
この法律案は、たばこ専売制度の廃止に伴い、現行の専売納付金制度にかえて、新たにたばこ消費税を創設することとしたもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、たばこ消費税は、製造たばこを課税物件とし、国産製造たばこは製造者、輸入製造たばこは保税地域から引き取る者をそれぞれ納税義務者とすることとしております。
第二に、税額は、従価割額と従量割額の合算額とし、課税標準は、従価割にあっては小売定価、従量割にあっては本数または重量とすることとしております。
第三に、税率は、現行の専売納付金率等を参酌しつつ、製造たばこの種類ごとに定めることとし、また、従価割の税率と従量割の税率の組み合わせ比率は八対二程度とすることとしております。
なお、日本たばこ産業株式会社法案は公布の日から、その他の法律案は昭和六十年四月一日から施行することとしております。
以上の五法律案につきましては、去る五月十八日竹下大蔵大臣から提案理由の説明を聴取し、去る六月二十日から質疑に入り、以来福島県に委員派遣を行うとともに、参考人からの意見も聴取し、また、地方行政委員会、農林水産委員会との連合審査会を開会するなど慎重に審査を進めてまいりましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、去る十三日五法律案の質疑を終了し、討論を行い、順次採決いたしました結果、各法律案はいずれも多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、五法律案に対し、それぞれ附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/7
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008・福永健司
○議長(福永健司君) 五案につき討論の通告があります。順次これを許します。伊藤茂君。
〔伊藤茂君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/8
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009・伊藤茂
○伊藤茂君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました専売関係五法案に対し、反対の討論をいたします。(拍手)
今我が国のたばこ・塩産業は、八十年にわたる専売制度の歴史、三十五年の公社制度の歴史から会社に移るという大きな転換に直面をいたしております。国と地方の財政に対する多大の貢献を初め大きな社会的役割を果たしてきた専売制度に終止符を打ち会社に移行させるという本法案について、十万戸の葉たばこ農家、二十六万の小売店、約四万人の公社職員を含め多くの人々が、なぜ変えるのか、将来どうなるのかという不安と疑問の気持ちを込めて見詰めているのが現実であります。しかも、たばこ産業をめぐる内外の環境と条件が極めて厳しいだけに、この法案に対する関係者の不安はひとしお深刻であります。
このような状況を見るとき、私は、まず、本法案は関係者に将来への明確な展望を与えるのではなく、逆に不安をかき立てているという現実を指摘しなければなりません。今日までの長時間にわたる審議を通じ、我が党の追及と強い要求に対して政府と公社から幾つかの面で前向きの答弁があったことはそれなりに評価はいたしますが、次に挙げるような重要な問題があることを指摘しないわけにはまいりません。
まず指摘したいのは、今日までの公社に対する政府の基本姿勢と今回の対応についてであります。日本の安企業は、残念ながら本来のパブリックコーポレーションとしての活力ある発展を著しく阻害をされてまいりました。その原因は、各般にわたり官僚的拘束、政治的圧力が余りにも強過ぎたためであります。政府は事業計画、予算、給与にまで、がんじがらめに介入、統制を加え、さらに恣意的な特別納付金まで押しつけてまいりました。これでどうして公共性を果たし、積極的な経営発展ができるでありましょうか。これは専売公社だけではなく、電電公社、国鉄への対応にも共通する政府の大きな責任であります。私は、本来安企業こそが近代的な新しい経営モデルをつくるという先見性、積極性を持つべきだと思います。それはヨーロッパの幾つかの社会党政権下で既に実行されていることでもあります。私たちが主張してきたような公社の民主的改革がなされていたら、アメリカのたばこ資本の自由化要求に対する対応を含め状況は大きく違っていたでありましょう。
行革に関連して最近政府側から、二十一世紀という言葉がよく使われておりますが、これを見ると、現実におやりになっていることは二十一世紀どころか、逆に社会の発展に後ろ向きと言わなければなりません。政府の姿勢が今日の社会的要求に大きくかけ離れていることは法案の主要なポイントにも明らかであります。
例えば経営の自主性、主体的な発展が必要なのに、それと相反する規定が多過ぎるのであります。政省令委任事項、許認可にかかわる事項は二百数十項目という驚くべき数に上り、これに加えて監督官庁として、また株主としての大きな権限を持つ法律構造を見ますと、政府の中には民主主義とか信頼、参加というような現代的な理念は存在していないのではないかと思わざるを得ないのであります。竹下大蔵大臣は、委員会の質疑を通じ、自主性尊重を約束すると繰り返し述べられましたが、それは本来は法律体系自体に表現をされるべきものであります。
また、今後の厳しい経営環境の中でどう将来を展望するのかが不明確であります。たばこをめぐる社会環境の変化による消費の低下傾向、流通自由化に伴う外国たばこのシェアの拡大、厳しい合理化、工場統廃合による雇用をめぐる深刻な状況、新しい設備投資負担の増大、過剰葉たばこ在庫の圧力など困難な環境を見るとき、これらの条件を踏まえて将来を展望する戦略、経営展望、中期計画が必要であります。しかし、それはあいまいであり、不明確なままであります。ただ一つ明らかなのは、本法律改正によって政府が新しく従来の納付金以上に数百億円に上る法人税、配当などの負担を会社に押しつけることのできることのみであります。これでは、濃い霧の海に装備不十分な船を無理やり船出させるものにほかならないと言わなければなりません。
さらに、葉たばこ農家には新たな減反政策を押しつけることが想定されており、農家の将来計画が立てにくい状況のもとで、従来公社負担の農政費部分などは政府が負担すべきでありますし、労働者に労働三法が一切の制約なしに保障されるだけではなくて、労使協議、経営協議の場が積極的に拡大されるべきであります。さらに、国民の皆さんに安心して吸えるたばこを安定して供給するとともに、宣伝広告の規制、未成年者の喫煙防止など、社会的要求にこたえなければなりません。
塩専売制度によって今日まで安い価格で安定供給してきたことを高く評価し、関係者に不安を与えないことも大切であります。
これらの点を初め、質疑の焦点となりました論点を振り返りますと、多くの不安が、また多くの不満が残されているのであります。
以上、見解を申し述べましたが、最後に私は、審議を通じ公式にお約束された事項並びに十九項目に上る附帯決議に述べられた事項、すなわち、将来とも民営・分割を行わず製造独占を維持すること、所有と経営の分離の立場を守り公的規制を極力排除すること、塩公益専売制度の維持、業務範囲の積極的拡大、各種審議会の民主的な構成と運営、現行関税率の維持、健康と喫煙に関する諸対策などについて厳正な執行がなされるよう強く要求するものであります。
以上で反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/9
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010・福永健司
○議長(福永健司君) 中川昭一君。
〔中川昭一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/10
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011・中川昭一
○中川昭一君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、専売改革関連五法律案に対し、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)
御承知のように、たばこ専売制度は明治三十七年に創設され、また日本専売公社は、従来の政府直営であった専売事業を引き継いで昭和二十四年に創立されたものであります。これらの制度は国民になじみの深い制度として定着しており、また長年にわたって国、地方の財政に多大な貢献をしてきたところであります。しかしながら、行財政改革に対する国民的要請の高まりや海外からの市場開放要請など、たばこをめぐる環境は大きく変化し、我が国の専売制度は内外から新たな対応を迫られております。
こうした状況を踏まえ、一昨年七月、臨時行政調査会において行政改革に関する第三次答申が提出され、専売制度、公社制度の抜本的な改革について提言がなされたところであります。この改革法案は、いずれもこの答申の趣旨に沿って、たばこ産業関係者等との意見の調整を図りながら、政府部内で鋭意検討を進めてきた結果、今国会に提出する運びとなったものであります。この調整のために払われた関係者の精力的な努力を私は高く評価するものであります。特に、小規模経営が多いと言われるたばこ耕作者及びたばこ小売人の関係者の御協力に心から感謝を申し上げる次第であります。
この改革法案の基本的な柱は、まず第一に、たばこの輸入自由化に踏み切り、このため、たばこ専売制度を廃止すること、第二に、公社を合理的企業経営が最大限可能な特殊会社に改組することの二点に要約されると考えます。御案内のとおり、我が国のたばこ市場は自由世界で第二位の規模を占めているにもかかわらず、輸入品のシェアは五十八年度で一・八%にすぎず、今後とも諸外国から市場の開放を強く要請されるものと予想されております。貿易立国であり、開放経済体制を志向する我が国としては、この要請に対し適切に対応することが望まれるところであり、また、たばこ事業をいつまでも閉鎖的な状態にしておくことは適切ではないと認識するものであります。したがって、今回開放経済体制に即応する等のため、たばこの輸入自由化に踏み切り、たばこ専売制度を廃止することとしているのでありますが、貿易立国であります我が国の国際社会における現在の立場や役割等を考えますと、輸入自由化に踏み切ることはまことに時宜を得た適当な措置と認められるものであります。
次に、我が国のたばこ産業は広いすそ野を有し、また国民経済において重要な位置を占めているため、市場開放後においてもその健全な発展を図っていくことが極めて重要であります。巨大な海外たばこ企業との対等な競争関係のもとで我が国たばこ産業の健全な発展を図るため、たばこ産業の現状にかんがみ、公付を分割・民営とはせず、政府関係特殊法人の中で最大限に合理的な企業経営が可能な政府出資の特殊会社に改組し、その新会社に製造を独占させることとしているものであります。我が国たばこ産業の健全な発展を図りつつ、かつ国際競争力の確保を図るためには、公社を自由な競争に耐え得る経営形態に改めることがぜひとも必要であると認識するものであります。
その他、この改革法案におきましては、たばこ耕作者、たばこ小売店等たばこ産業関係者に対して急激な変化が及ぶことのないよう、例えば葉たばこの全量買い取り制の維持、葉たばこ審議会の設置、小売人指定制、定価制の実質的維持等きめ細かくかつ慎重な配慮が加えられているのでありまして、現実的改革案として極めて適切かつ妥当な措置と認められるのであります。(拍手)
また、塩専売事業については、公益専売を目的として運営することを明らかにするほか、所要の措置を講じた上でこれを新会社に行わせるとともに、現行制度の基本的枠組みを維持しつつ必要な手当てを行い、その自立化促進のための措置を講じようとする改革であり、時宜を得た措置と考えるところであります。
さらに、たばこ専売制度の廃止に伴い現行の専売納付金制度にかえて設けられるたばこ消費税制度も、今回の制度改革の趣旨から見て、また重要な財政物資たるたばこに対する負担の求め方として適切なものと認められます。
最後に、今後の新会社の運用面におきましては、国産葉たばこ問題など非常に苦労の多い処理すべき事案も山積していることと存じますが、単に利益追求のみを図るのではなく、たばこ産業の中心的担い手として経営の効率化を図りつつ、たばこ産業全体の一層の調和ある発展に心がけ、たばこ耕作省を初めとするたばこ事業関係者に不安を抱かせることのないよう十分に配慮することを切に希望いたしまして、私は、五法律案に対し全面的に賛成の意を表明いたしまして、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/11
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012・福永健司
○議長(福永健司君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/12
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013・福永健司
○議長(福永健司君) 五案を一括して採決いたします。
五案の委員長の報告はいずれも可決であります。五案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/13
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014・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、五案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/14
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015・福永健司
○議長(福永健司君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X03619840717/15
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