1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年八月四日(土曜日)
午前零時五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
中野 鉄造君
委 員
大浜 方栄君
金丸 三郎君
斎藤 十朗君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
村上 正邦君
森下 泰君
糸久八重子君
本岡 昭次君
和田 静夫君
中西 珠子君
山中 郁子君
柄谷 道一君
下村 泰君
国務大臣
厚 生 大 臣 渡部 恒三君
政府委員
大蔵省主計局次
長
兼内閣審議官 保田 博君
厚生大臣官房長 幸田 正孝君
厚生大臣官房総
務審議官 小林 功典君
厚生大臣官房審
議官
兼内閣審議官 古賀 章介君
厚生大臣官房審
議官 新田 進治君
厚生大臣官房会
計課長 黒木 武弘君
厚生省健康政策
局長 吉崎 正義君
厚生省保険医療
局長 大池 眞澄君
厚生省保険医療
局老人保険部長 水田 努君
厚生省生活衛生
局長 竹中 浩治君
厚生省薬務局長 正木 馨君
厚生省社会局長 持永 和見君
厚生省児童家庭
局長 小島 弘仲君
厚生省保険局長 吉村 仁君
厚生省年金局長 吉原 健二君
厚生省援護局長 入江 慧君
社会保険庁長官
官房審議官 長門 保明君
社会保険庁医療
保険部長 坂本 龍彦君
社会保険庁年金
保険部長
兼内閣審議官 朝本 信明君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
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本日の会議に付した案件
○健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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〔理事遠藤政夫君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/0
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001・遠藤政夫
○理事(遠藤政夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。
〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/1
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002・浜本万三
○浜本万三君 こういう状態でございますから、締めくくり的な質問をするというのは何となく気が進まないんでございますが、同僚議員の勧めもございますので、政府に確認を求める意味で若干の質問をさせてもらいたいと思います。
まず第一は、高額療養費支給制度について、家計の負担能力を勘案し、家計への影響を緩和するため、低所得者への配慮、世帯合算、長期継続療養、長期高額疾病などの支給要件の改善を図るべきだと思いますが、大臣の御回答をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/2
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003・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御指摘の方向で対応することとしまして、負担限度額を一般の場合は五万一千円、低所得者の場合は外来、入院とも一律三万円とし、また、同一世帯で同一月に三万円以上の負担が複数生じた場介には、これらを合算し、負担限度額を超える分について高額療養費を支給することとし、低所得者については二万一千円以上の負担が生じた場合に同様の処置を講じます。
また、一年間に四回以上高額療養費の支給を受けた場合には、四回目からは負担の限度額を三万円、低所得者にあっては二万一千円に軽減することとし、また、厚生大臣の指定した長期高額疾病については負担限度額を月一万円に軽減することとしたいと考えております。
なお、この件については、社会保険審議会に付議した上で決定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/3
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004・浜本万三
○浜本万三君 次は、高額療養費が支給されるまでの間の当座の支払いに充てるための無利子の融資制度を創設すべきではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/4
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005・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御趣旨に沿って融資制度の創設を図ることといたします。
なお、利子については、できるだけ無利子とする方向で検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/5
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006・浜本万三
○浜本万三君 次は、分娩費や埋葬料の問題でございます。
分娩費や埋葬料の最低保障額を、分娩費につきましては現在の十五万円から二十万円に、埋葬料につきましては七万円から十万円に引き上げるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/6
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007・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 分娩費や埋葬料については、実勢費用を勘案し、六十年度には最低保障額の引き上げを行いたい所存であります。
なお、この件は社会保険審議会に付議した上で決定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/7
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008・浜本万三
○浜本万三君 次は、医療保険の保険者による健康診断等の予防活動を促進すべきであると思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/8
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009・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御趣旨に沿って努力する所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/9
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010・浜本万三
○浜本万三君 次は、乳幼児の保健医療対策の充実を図りますために、健康管理の強化、診療報酬の面での配慮などを行うべきであると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/10
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011・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御指摘の趣旨に沿い、努力してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/11
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012・浜本万三
○浜本万三君 退職者医療制度の運営につきまして、拠出者側の意向が反映されるような仕組みを考えるべきではないかと思いますが、この点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/12
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013・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 退職者医療制度の運営
については、保険者の拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会の意見を聞くなど、拠出側の意向が反映されるよう努力いたす所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/13
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014・浜本万三
○浜本万三君 政管健保に吸収したからといって、日雇健保の累積債務を政管健保の保険料で返済するようなことがあってはいけないと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/14
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015・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 日雇健保の累積赤字は、健康勘定で経理することとしているが、政管健保の収支とは明確に区分することとしており、政管健保の保険料で償還することは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/15
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016・浜本万三
○浜本万三君 減額査定に係る一部負担金の返還につきまして、今後どのような対策を講じていかれるのか、この点についてもお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/16
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017・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 一部負担金の返還のための実務処理の費用と便益を考慮し、査定額が一定額以上のケースについて、保険者から被保険者に通知すべく指導するとともに、医療機関においても返還するよう指導してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/17
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018・浜本万三
○浜本万三君 特定承認保険医療機関の導入後も保険診療上必要かつ適切な医療は、保険給付として確保すべきであると考えますが、今後の大臣の基本方向についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/18
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019・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御指摘のとおり、保険給付として必要かつ適切な医療は、今後とも確保してまいる方針であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/19
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020・浜本万三
○浜本万三君 診療報酬につきましては、現行方式の欠点を是正するとともに、医療機関の健全経営や医療の質の向上を図るため、技術料の適正評価などその合理化を図るべきではないかと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/20
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021・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 診療報酬については、現行の出来高払い方式の原則を維持しつつ、その欠点の是正を図ることとし、中医協における今後の診療報酬合理化に関する審議状況も踏まえつつ、技術料重視の診療報酬体系の確立に向けて努力してまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/21
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022・浜本万三
○浜本万三君 薬価基準につきましては、市場実勢価格を極力反映したものとなるよう、その適正化に努めるとともに、新薬の薬価についてもこれが妥当適切なものとなるよう、一層の努力をすべきであると思いますが、この点についての御回答をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/22
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023・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 薬価基準については、毎年薬価調査を実施して的確に市場の動向を把握し、市場実勢価格に基づき厳正に改定を実施してきたところであり、今後もその適正化に努める所存であります。
また、新医薬品の薬価算定についても、妥当適切なものとなるよう努める所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/23
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024・浜本万三
○浜本万三君 次は、保険医療機関に対する指導でございます。
保険医療機関に対する指導監査体制を充実強化し、不正請求については徹底的に排除するとともに、不当診療についても厳正に対処すべきであると思いますが、御回答いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/24
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025・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 不当請求については徹底的に排除することとし、また、医学常識から見て不当と思われる診療についても指導監査を積極的に実施し、適正な保険医療の確保に努めてまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/25
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026・浜本万三
○浜本万三君 中央に設置されることとなっております顧問医師団は、薬づけ、検査づけ医療の適正化に有効な手法と考えられますが、これを都道府県段階にも設置すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/26
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027・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 厚生省に設置される顧問医師団の今後の活動実績等を見た上で、地方設置について検討する所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/27
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028・浜本万三
○浜本万三君 差額ベッドの問題です。
三人室以上の差額ベッドの解消については、今後どのように取り組むのか、大臣の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/28
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029・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 三人室以上の差額ベッドについては、その解消に鋭意努力してきたところであります。
今後とも私立大学関係者などと話し合いを進めるとともに、今回の特定療養費の運用を適正かつ円滑に行うことにより、この問題の解決を図ってまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/29
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030・浜本万三
○浜本万三君 レセプト処理のコンピューター化を推進するなどにより、医療保険事務全体の合理化を図るべきであると思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/30
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031・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 御指摘のように、事務の合理化について今後一層の努力をいたす所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/31
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032・浜本万三
○浜本万三君 精神病院の不祥事案が多発していることにかんがみまして、全国の精神病院に対する一斉監査を実施するとともに、措置入院患者の実地審査に必要な予算措置を講ずるべきであると思いますが、この点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/32
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033・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 今回の宇都宮病院をめぐる事案にかんがみ、去る六月二十二日付の関係局長連名通知をもって、全国の精神病院に対する医療監視等の徹底強化を図るとともに、措置入院患者については原則として年一回精神衛生監定医による実地審査を行うこととしております。
なお、実地審査に必要な予算についてもその確保に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/33
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034・浜本万三
○浜本万三君 最後の質問をいたします。
無医地区の解消のため、年次計画を立てて具体的な施策を推進すべきであると思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/34
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035・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 無医地区等僻地における医療の確保を図るため、従来から年次計画に基づき、僻地中核病院の整備、僻地勤務医師の確保等の各種施策を総合的に推進してきたところであります。
今後とも、これら僻地医療対策の推進に積極的に取り組んでまいる考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/35
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036・石本茂
○委員長(石本茂君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」「反対」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/36
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037・石本茂
○委員長(石本茂君) 質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/37
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038・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、質疑を終局することに決定いたしました。
本案に対し、佐々木君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
この際、本修正案を議題とし、佐々木君から趣旨説明を聴取いたします。佐々木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/38
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039・佐々木満
○佐々木満君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
修正の要旨は、第一に、高額療養費制度については、医療費負担の家計に及ぼす影響を考慮して、その支給要件等を政令で定めるものとすることを法文上明記すること。
第二に、高額療養費制度により償還されるまでの間の当座の高額の医療費支払いに充てるため、保険者が融資制度を実施することができることとし、その根拠規定を設けること。
第三に、被保険者等の健康の保持増進を促進するため、保険者による健康相談、健康診断等の事業に関する規定を明確化すること。
第四に、傷病手当金の受給者が同一の傷病により障害年金の受給要件に該当することとなった場合において、傷病手当金の額が障害年金の額を上回るときは、その差額を傷病手当金として支給するものとすること。
第五に、被保険者の選択により、任意継続被保険者の保険料について前納ができるものとすること。
第六に、法人の事業所であって、五人未満の従業員を使用するもの等について、政令で定めると
ころにより、六十一年度以降段階的に健康保険の適用を拡大すること。
以上のほか、船員保険法、国民健康保険法等についても、健康保険法に準じた修正を行うこと等であります。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/39
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040・石本茂
○委員長(石本茂君) 佐々木君提出の修正案は予算を伴うものでありますから、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。渡部厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/40
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041・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としてはやむを得ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/41
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042・石本茂
○委員長(石本茂君) 本修正案に対し、質疑のある方は御発言を願います。発言は五分以内にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/42
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043・山中郁子
○山中郁子君 提案者に質問をいたします。
今回のこの委員会の中で、限られた時間の中で多くの人々が質疑をしたことは、一割負担、二割負担、これが実際問題として労働者の、国民の生活を一層苦しめるものになるということについてたくさんの指摘がされました。そのことは、この修正案の中身によりましても何ら解決をしていない。ということは、依然として多くの人が、この今の提案理由の説明によっても十分わかるところです。こういう国民の声と、それからこの委員会の中でも議論になり、また、衆議院段階でも議論になった多くの問題点が、この修正案の中で何ら解決されていない。このことについての提案者の御意見を伺います。
それからまた、この問題を解決しないままに、この修正でもってよしとされるのかどうか、そこのところのお考えを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/43
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044・佐々木満
○佐々木満君 お答えを申し上げます。
私はこの健康保険法の審議、終始ここへ座っておりまして各委員の皆さんの御質問、御意見、それに対する政府の御答弁をお聞きをしてまいりました。その中には、本当になるほどなと、これはやっぱり制度を改めた方がいいなと思う点もたくさんございました。加えて、先般有力な三党からこの健康保険法の審議を踏まえての統一見解というものが私どもに示されたわけでございますが、これも拝見をいたしますと、なるほどなと、ごもっともだなと思う点がたくさんあったわけでございます。
それらを我が党の中におきましていろいろと審議をいたしまして、当面実行できるもの、あるいは長期的に検討すべきもの、いろいろ仕分けをしたわけでございまして、その中で、やっぱり法律を修正しなきゃならぬもの、それから法律の修正はなくとも、もしこれが可決をされれば——後ほど私は附帯決議を提案をしたいと思いますけれども、附帯決議でもってやった方がいいもの、いろいろ仕分けをしたわけでございますけれども、我我の検討では、一割負担、そして衆議院の修正による、国会の承認を得た後での二割負担、この原則はそのままでいいのではないか、こういうふうな結論に達しましたので修正案には盛らなかったわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/44
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045・山中郁子
○山中郁子君 重ねてお伺いしますけれども、今の基本の一割、二割負担を盛らなくてもいいというふうに判断をしたとおっしゃるけれども、それは先ほど私が申し上げましたように、当面一割、本則の二割負担の一番柱のところに焦点を当てて国民の声、たくさんの意見が出されているということで今大きな問題になっているわけです。それで、そのことをさきに申し上げましたけれども、この修正案については、そういう国民の声に対する何ら合理的なものが今の御答弁の中にないにもかかわらず、ただ入れなくてもいいと判断したという、全く根拠のないものだと言わざるを得ないと思います。
それとの関連で、この要旨の中で、「高額療養費制度については、医療費負担の家計に及ぼす影響を考慮して、その支給要件等を政令で定めるものとすることを」となっておりますけれども、具体的には、「医療費負担の家計に及ぼす影響」というのは、本当にさっき言ったように、根本的な問題として、一割、二割の負担が家計や生活に大きな影響を及ぼすということは、もう私の質疑の中でも、厚生大臣を初めとして厚生省当局も認めざるを得なかったところなんですけれども、この点については具体的にどういうことをお考えになっていらっしゃるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/45
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046・佐々木満
○佐々木満君 一割負担、それから国会の承認を得た後での二割負担、こういう原則につきましては、大変熱心な御意見を交えた御質疑がございまして、政府側からも再三お答えがありました。私は、これは十分よく承知をしております。大変重要な問題でございますので、我が党でも真剣に検討いたしました結果、衆議院の修正が妥当だと、こういうふうに判断をしたわけでございます。
それから、高額療養費につきましては、御承知のとおりこれはもともと政令でやってきておることでございます。法律に根拠はございますけれども、具体の問題は政令でやっておる。ただ、皆さんの御論議をお聞きしておりまして、私もその根拠規定の中に「家計に及ぼす影響」、この一言を法律で入れるのがやっぱり必要だというふうに思いまして、その点の修正をしたい、こういうふうに決めたわけでございます。
具体の問題は、これはもう政令その他のことで、行政権の中でやることでございますから、先ほど来確認の質疑、答弁がございましたが、ああやってお約束をなさっておるわけでございますから、当然これは本委員会としてもそれが実行されるかどうか十分監視をしなければなりませんし、監視していけばいいのじゃないかと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/46
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047・山中郁子
○山中郁子君 今の御答弁でございますけれども、「家計に及ぼす影響を考慮して」ということは、さんざん議論になっておりますように、具体的に私も質疑の中で、これだけのことがこれだけの負担増になるんだから、家計だけの問題ではなくて、暮らしそのものを根本的に脅かすものになるということを申し上げてきたところで今の提案者の御答弁では、何らそのことについての納得できる中身がないと言わざるを得ないのです。こういう形で、一割、二割の本則のところに問題が集中しているという観点に答える点では、余りにも基本の問題について、末節に過ぎると言わざるを得ないと思うんですけれども、その点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるんですか。
それとあわせて、続けてお伺いしますけれども、先ほど有力な三党から統一見解があったというふうにおっしゃいましたけれども、私どもたくさんの国民の支持をいただいて国会に出て、こうやって審議をしている党でありますし、私自身もその代表の一人であります。私どもは、全面的にこの問題についての根本問題が改善されないという立場から廃案にすべきだということを主張してまいりましたけれども、この有力な私どもの党の見解に対して、あなた方はどういうふうにお受けとめになっていらっしゃるのか、あわせて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/47
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048・佐々木満
○佐々木満君 重ねての山中先生の御質疑、私は本当に、終始聞いておるわけでございまして、それなりに、我が党で検討する場合には、大変重点を置いて先生の御意見を検討した結果でございます。
それから、高額療養費の問題は、これは法律の理屈でございますけれども、何から何まで法律に書くわけにはまいりませんので、法律では原則だけを書いて、あとは行政命令あるいは行政の執行でやるのがこれは普通でございますので、そういう方法をとらしていただきました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/48
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049・石本茂
○委員長(石本茂君) 時間が参りました。
これにて質疑は終局いたします。
これより原案並びに修正案に対し討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにして順次お述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/49
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050・糸久八重子
○糸久八重子君 ただいま議題になりました健康
保険法等の一部を改正する法律案につきまして、修正案並びに修正部分を除く原案に対し反対の討論を行うものでございます。
私は、以下申し述べるように、多くの未解決の問題がある今日、定例日でもない、しかもこの深夜に至って、委員会を委員長職権で強引に開会することは、到底許すことのできない暴挙であると言わざるを得ません。このような委員会運営はあしき前例を残すもので、極めて遺憾であり、強く抗議するものであります。かかる立場を表明して反対の討論を行うものであります。
私が反対する第一の理由として、本案提出に至るまでの検討の不十分さ、さらに、本院に送付されてきて以来いかにも短時日の間に結論を出そうとしている今日の事態を問題にしないわけにはまいりません。
我が党は審議の過程で国民医療費の詳細な内訳を算出し、政府案のような大幅な国庫負担削減案が中長期展望の中で必要のないことを対案とも言うべき形で提示し、政府の長期ビジョンと対決してきました。しかし、政府はこれに対し何ら説得力ある説明をしてまいりませんでした。そういう意味では、宿題に対する解答は今日時点でもまだ留保されていると言えるのであります。
第二に、言うまでもなく、今回の改革の柱であります被用者保険本人の給付率の引き下げが、病人並びに患者を抱えた家庭に大きな打撃を与えようとしていることであります。
一方で増税なき財政再建をうたいながら、国庫負担削減のしわ寄せをこのような形で弱い立場の者に持っていこうとすることは、経済的に弱い立場の者に配慮するという総理の施政方針が全く言葉だけのものであることを証明しています。これを平均すればコーヒー二杯分の負担にすぎないといった説明を国民にするとは、欺瞞も甚だしいと言わざるを得ません。
第三に、新たに創設されようとしている退職者医療制度の創設であります。
現役時代と七十蔵以降の老人医療とのギャップを埋めるための制度を設けることを私たちも長く要求してきたところでありますが、今回の政府案はそれに名をかりて、その対象者に補助されていた部分を国庫負担削減のための手段として考えられていることであります。それを給付率引き下げによって捻出された現役被用者の財源をそこに振り向け、しかも国庫負担分をそっくり削減しようとするのですから、財源捻国策以外の何物でもないということであります。国もこの制度に財政的にも応分の負担を負うのは当然と思うわけであります。
第四に、この退職者医療制度の創設に伴い、国民健康保険の国庫補助率を医療費の四五%から三八・五%へ引き下げている点であります。
政府は当面保険料の引き上げに結びつくものではないと説明をしておりますが、早晩これは保険料引き上げにつながるもので、ここにも国庫負担の削減、保険料負担の増大の方向が芽を出しているのであります。
さらに、一部高所得者の利用、一般の実用化への道を閉ざすと懸念される療養費制度改正、また八千億円近い累積赤字を抱えた日雇健保の政管への移行に伴うなし崩しの問題転嫁、いずれも到底賛成できるものではありません。
最後に、医療保険の将来像に関連してであります。
給付と負担の公平化に名をかりて、給付八割の一元化をうたっておりますが、それに対する財源的な説明は何らなされず、それは財政当局の了解もないものであり、まさに画餅で、今回の改革の位置づけを一部の要望に抗し切れずに、後からつけた理屈づけであることを暴露しているにすぎないのであります。
なお、修正案についても、一部評価できる面もありますが、基本的に給付率の問題の議論が何ら反映されておらず、最初にも申し上げましたが、議論はまだ十分尽くされているとは言えないのでありますから、これにも反対であります。
以上、国民が等しく現代医学の恩恵を受け得るような医療保険制度の確立の方向と逆行する修正案並びに原案には絶対反対を表明し、反対の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/50
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051・佐々木満
○佐々木満君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党・自由国民会議が提出した修正案につきまして、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意を表するものであります。
我が国の平均寿命は男子七十四・二〇蔵、女子七十九・七八歳となっており、国民の健康水準は逐年向上していると思います。これにはいろいろの原因があると思いますが、その間にあって医療保険制度の果たしてきた役割は、何人もこれを否定できないと思います。
医療費は、保険料、国庫負担、そして受診時の負担という形で、いずれにせよ国民が負担するものでありますが、近年の医療費の伸びと今後の本格的高齢化社会を考えるとき、国民医療費の総額が将来国民の負担能力の限界を超えるおそれのあることが心配されております。また、現行の医療保険制度には、給付の面でいろいろの格差があります。これは、それぞれの制度の発足の経緯とその後の歩みから見てやむを得なかったと思いますが、しかし、今後の人生八十年時代を展望するとき、その格差は速やかに是正さるべきものと思うのであります。
政府原案は、このような要請にこたえて、医療費の適正化を図るとともに、制度間、本人家族間、さらには世代間における給付と負担の公平化へ向かっての第一歩であり、その意味において高く評価できるものであります。
さらに、次の諸点について所要の修正が行われますならば、内容の一層の改善が図られるものと考えます。
第一に、高額療養費制度について、医療費負担の家計に及ぼす影響を考慮して、その支給要件等を政令で定めることとする旨を法文上明記することであります。
第二に、高額療養費制度により償還されるまでの間の高額な医療費支払いに備えて、保険者による融資の道を開くことであります。
このほか、傷病手当金の額が障害年金の額を上回る場合には、その差額を傷病手当金として支給すること、任意継続被保険者の保険料支払いについて前納を認めることとすること、五人未満事業所等について昭和六十一年度以降段階的に健康保険の適用を拡大することとすることであります。
以上の修正は、本委員会審議を通じ最善の努力を尽くした上での結果であり、これによってさらに本法案の目的の達成と円滑な実施に資するものと考えるものであります。
以上述べましたように、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに由民主党・自由国民会議提出の修正案は、二十一世紀に備え、医療保険制度の確固たる基盤づくりを図るものであり、私どもはこの修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
以上をもって私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/51
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052・中西珠子
○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、健康保険法等の一部を改正する法律案原案並びに修正案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。
我が国の医療と医療技術の目覚ましい発展は、科学技術の長足の進歩と医療関係者の不断の努力によることは申すまでもありませんが、特に健康保険制度が果たしてきた役割は、特筆大書するべきと言えましょう。昭和二年以来の健保十割給付の大原則は、社会保障制度の根幹をなしてきたものであり、今回の改正案は、その根幹を揺るがす大変革である以上、あらゆる角度から慎重に、もっと時間をかけて審議するべきものと思うのであります。
今日、人口の急速な高齢化、就業構造の変化、労働態様の多様化などによってもたらされた疾病構造の変化など、健康保険制度を取り巻く環境は極めて厳しいものがあり、現行制度のまま今後永続的に対応できるものとは考えられません。とは
いえ、今回の改正案は、国民の生活と健康をいかにして守るかを考慮することなく、あくまで財政的見地から医療関係予算をどう削減するかという視点かも提案された歳出削減案であることは明らかであり、反対せざるを得ません。
まず第一に、被保険者本人一割負担、近い将来に二割負担の導入は、受診の抑制につながり、疾病の早期発見と早期治療を妨げ、予防医学の見地からまことに憂慮されるところであります。ILOは、その「二十一世紀に向けての社会保障の発展」と題する専門家会議の報告書において、二十一世紀に向けて、今まず第一に必要なのは予防医学的見地からの医療保険の見直しであると勧告しています。これは早急に実施すべきものと考えます。
第二に、厚生省の説明のように、改正案が国民に医療費のコスト意識を持たせることを意図しているのであれば、医療費通知制度、医療費の領収書発行などの方法により、その目的は十分に達成できるはずであります。
第三に指摘しなければならないのは、現行制度の制度間における給付格差であります。給付格差の是正は、本来低い給付の方を高い給付の方へ引き上げるべきものであります。国保の七割給付の引き上げを行わず、退職者医療制度の創設を口実に国保財政から大幅な国庫補助の削減を行うことは重大な問題であります。退職者医療制度の創設自体に異論はありませんが、取りやすいところから取る財源対策に問題があります。国保の加入者は比較的低所得者や高齢者など有病率の高い階層が多く、社会保障制度としての所得再分配機能を発揮させるには国保の給付の引き上げをまず行うべきであります。
第四点として、医療の供給と診療報酬の支払いについての問題を指摘します。現在の出来高払い方式は医療の供給や医学の進歩発展に寄与する反面、一部に、いわゆる薬づけ、検査づけ等の過剰濃厚診療とか不正請求を生ずる欠陥があることも事実であります。したがって、この際、医療費適正化対策を一層強化するとともに、国民の医療に対する信頼を回復する上からも診療報酬のあり方について検討すべき段階ではないかと思います。しかし、この点に関する政府の取り組みは、非常に不十分と言わざるを得ません。
第五に、厚生大臣は、この法案は二十一世紀を目指す医療保険制度の改革と言われましたが、我が国の将来の医療のあるべき姿、そしてこれを支える保険制度のあり方に関して、まず具体的な構想と年次計画を明らかにすべきであります。
以上、反対の理由を述べましたが、今回の健保改正案は、国民の健康と命を守り、国民の福祉の向上を図るものとは言いがたく、財政再建の名のもとに、国民の医療の切り捨て、福祉の切り捨てを行おうとするものであり、断じて賛成できません。
また、修正案についても、給付の引き下げに関する最も重要な論議が反映されておらず反対であります。
それゆえに、法律案原案並びに修正案に対し反対を表明いたしまして、私の討論を終えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/52
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053・山中郁子
○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案及び修正案に反対の討論を行います。
まず私は、本法案に対して一千万を超える反対の署名が寄せられ、過半数以上の地方自治体が反対決議を上げているにもかかわらず、そうした広範な国民の声を踏みにじって本法案を国会会期を大幅に延長してまでしゃにむに成立させようとする中曽根内閣と自民党の反国民的姿勢を強く糾弾するものであります。
また私は、この四日未明という異常な時刻に本法案の採決が行われようとしていることに強く抗議の意思を表明するものであります。すなわち、圧倒的多数の国民が強く反対し、廃案を要求している悪法だからこそもともと会期中に議了に至らなかったのに、七十七日間の大幅延長という暴挙を行い、本院でも私の質疑要求時間の二割程度しか保障されず、なお金期が残っているにもかかわらず審議不十分のまま強引に議了採決に持ち込もうとしているからです。これは国民の本院に対する期待を裏切るものであり、断じて容認できるものではありません。重ねて強く抗議の意思を表明するものであります。
言うまでもなく健康保険制度は、戦時中の一時期を除いて五十数年間、本人十割給付を大原則としてきたものであり、本法案の一割、二割自己負担の導入は制度の根本的大改悪であり、これまでの社会保障の歴史に一大汚点をしるす暴挙と言わなければなりません。
本法案の本質は、軍備拡大、大企業奉仕の臨調路線に基づいて、医療費の国庫負担を大幅に削減してそのツケを患者と国民に押しつけようとするものであります。これが反対の第一の理由であります。
第二の反対の理由は、健康保険本人の十割給付を切り崩し、一割、二割の自己負担を導入しようとする点であります。本法案の本則は二割負担であり、当面一割負担とはいえ、六十一年四月以降二割負担の危険性は依然として消えるものではありません。その一割負担にしても、負担増となる割合は、入院患者はほとんど一〇〇%、外来でも七六・九%に上り、一家の働き手である健保本人に相当の自己負担が強いられ、賃上げ抑制のもとで苦しさが年々増している家計に打撃を与えることは必至であります。私の質疑の中でも明らかにしたところでありますが、これらの負担は所得の程度にかかわらず、基本は定率の負担であり、低所得者、弱者ほど深刻な打撃をこうむるもので、まさに暮らしと命と健康にゆゆしき影響を与える重大な改悪であります。
反対理由の第三は、国庫補助なしの退職者医療制度の創設を理由に、国保に対する国庫補助を大幅に削減したことであります。それでなくても市町村における国民健康保険の財政は逼迫してきており、年々保険料も上がり、納入率低下の自治体もふえている状態で、この上に国庫補助削減がなされるなら、必ずや新たな保険料の引き上げ、国保財政運営が困難に直面することは火を見るよりも明らかであります。
第四に、特定療養費制度導入の問題であります。このことは、特定承認医療保険機関での高度医療部分の患者の負担が強まり、一般病院での特別治療を認めることで患者の負担能力の違いによって医療内容に差別を招くことになりかねません。国民の支払い能力によって医療内容に差を生ぜしめることは、憲法の理念にも抵触する重大問題であります。
第五に、保険医療機関に対する監査、再指定の条件の強化の問題であり、これは萎縮診療、医療内容の規制にもつながり、国民が十分な医療を受けられなくなるおそれなしとしません。
以上、我が党が本法案に断固反対する主な理由であります。
なお、修正案についてでありますが、その内容は本法案の改悪条項の本質をいささかも改めるものでなく認めがたいものであることを表明し、私の反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/53
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054・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案について、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、反対の討論を行うものであります。
私が反対する第一の理由は、今回の改正案が政府の画一的マイナスシーリングのつじつま合わせのために、被保険者本人の負担増、受診率の抑制、国庫負担の削減という方策をとろうとするものであり、財政対策のみにこだわり、医療保険本来の趣旨に照らした改正案ではないということであります。
すなわち、総理の諮問機関である社会保障制度審議会は、再三にわたって、財政対策のみを追う政府の姿勢を厳しく批判し、医療保険の前提諸問題の改革を断行しなければ、医療保険の財政破局と社会保障制度の均衡ある発展を阻害する結果になると重大な警告を発し、同じ立場をとる社会保険審議会とともに、昭和四十五年と四十六年の二
回にわたって健康管理体制の充実と包括医療の実現、医療供給体制の体系的整備等を中心とする具体的改革案を提示し、これらについて長期構想の策定を行い、年次計画を立てて実行に移すことを求めたのであります。しかるに、自来十二年間、政府はこれにこたえる万全の努力を払うことなく、今日安易に被用者保険本人の定率負担を導入しようとしており、本案はその怠慢と無策を国民の負担に振りかえるものにほかなりません。
また、政府は本年四月末、我が党の強い要求によって医療保障改革の中長期ビジョンを示しましたが、それは問題を羅列したにとどまり、これを実現するためのタイムスケジュールは何ら示されず、単なる論文に終わっているのであります。
医療保険制度の基盤とも言うべき国民が期待する諸課題について、具体的改革ビジョンも示さず、国民にのみ負担をかけようとする本案は、到底容認できるものではありません。
第二の理由は、自民党の修正案が本質的な修正ではないということであります。
我々は、さきに述べたように、前提諸問題の改革を同時並行的に実行することなく、加えて昭和五十六年度以降政管健保の財政が健全化の方向に向かっている中で、昭和二年の制度発足以来今日まで維持されてきた本人給付率を引き下げる必要はないという基本的立場をとるものでありますが、衆議院で既に議了されているという現実も踏まえ、次善の策として、本文に明定されている八割給付を削除すべきであると修正を要求してまいりました。九割給付を高額療養費制度の抜本的改善を前提として時限的に実施する場合も、本来的給付率のあり方については、一割負担後の受診率の動向と国民の健康確保に与えた影響、医療保険制度の前提諸条件の整備状況、医療費や保険財政の推移、保険外負担の改善状況、給付率は画一的でなく入院をより重視すべしとする公的審議会答申との関連、各種保険制度一元化と給付と負担の公平確保等々について、広範かつ慎重な検討を行い、国民合意の形成に努めつつ決定されるべきであります。自民党修正案は、高額療養費制度の改善、高額医療費融資制度の創設と予防給付の充実、傷病手当金と障害年金の併給、任意継続被保険者の保険料前納制、五人未満事業所等の適用拡大、分娩費等現金給付等の改善を内容とし、これらは我々の要求に沿うものとして高く評価するものでありますが、自民党推薦の参考人、公述人すら肯定した我々の八割給付削除という主張が認められない以上、これに賛同することはできません。
第三は、退職者医療制度の創設に当たって我々の修正要求を認めず、国庫負担の導入を見送ったことであります。政府案は、退職者医療制度の創設に当たって国庫負担の導入を見送り、その財源を各種保険制度の拠出金のみに依存し、国の責任を棚上げしました。まさにこそくな提案であり、これまで我が党が提起した制度とは似て非なるものであって、国庫負担なしの制度創設は認めるわけにはいかないのであります。
私は最後に、制度間格差の是正など医療保険制度の早急な抜本改正の実現、予防からリハビリテーションに至る一貫した包括医療制度の確立、差額ベッド料や付添看護料といった保険外負担の解消とともに、僻地医療の改善、救急医療の改革、保健婦やリハビリテーションなど医療従事者の養成、医療供給体制の整備、医療機関の機能の分化、ナーシングホームなど中間施設の整備、医療機関と諸福祉施設との有機的連携など、いつでも、どこでも、だれもが最良の医療が受けられる体制の確立と、あわせて医薬分業の推進、診療報酬の適正化、不正請求や過剰請求の解消などについて政府が全力を尽くして取り組むことを強く求めて、私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/54
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055・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で討論は終局いたしました。
これより健康保険法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
まず、佐々木君提出の修正案を問題に供します。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/55
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056・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/56
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057・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
この際、佐々木君から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/57
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058・佐々木満
○佐々木満君 私は、ただいま可決されました健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずべきである。
一、国民健康保険の連営については、退職者医療制度の創設に伴う国庫補助の引下げ及び国庫補助基準の変更により安定的な事業運営が損なわれることのないよう配慮すること。
また、退職者医療制度の運営に当たっては、被用者保険の負担が過重とならないよう適切な配慮を行うとともに、市町村においては国民健康保険事業の運営について一層の経営努力を行うこと。
二、日雇労働者の健康保険については、政府管掌健康保険の健全な運営に支障をきたすことのないよう適切な配慮をするとともに、日雇労働者の就労の特性に配慮しつつ、一般の被保険者との均衡に欠けることのないよう留意すること。
三、特定療養費制度の運用に当たっては、自由診療の大幅な拡大や保険診療の後退をもたらすことのないよう細心の配慮をもって運用し、高度医療についても、適正な保険医療の確保を図るとともに差額ベッド等にみられる不当な保険外負担の解消を図ること。
四、月をまたがる入院に係る高額療養費の支給については、月越合算処理が行われるよう、関係者間の協議を進め、その実施を図ること。
五、分娩費及び埋葬料の最低保障額については、実勢費用を勘案し、早急にその引上げを図ること。
六、診療報酬については、技術重視の診療報酬体系を確立し、その合理化を図ること。また、家庭医の特性に応じた診療報酬について検討すること。なお、乳幼児の医療について、その特性に応じた配慮を行うこと。
七、薬価基準の適正化、医療機関に対する指導監査の徹底、医療費通知の充実等の医療費適正化対策を積極的に推進することにより、不適切な医療を排除し、医療費及び医療内容の適正化を図ること。
八、本人定率一部負担の導入に伴う保険請求事務の簡素化等医療機関の事務負担の軽減を図るとともに、窓口における混乱を防止するよう特段の配慮をすること。
九、診療報酬支払基金等におけるレセプト処理のコンピューター化の推進等、支払審査事務全般にわたる合理化を推進すること。
十、医薬分業については、その基盤づくりに努め、モデル地区による試行など具体的推進を図ること。
十一、成人病の予防その他国民のライフサイクルに応じた健康づくり対策の積極的推進を図るため、保健所及び市町村の保健活動の強化に努めること。
十二、へき地等における医療従事者及び医療施
設の確保に努めるとともに、家庭医の標ぼうを認める等プライマリ・ケアについてはその制度化を含めた充実を図り、地域の実情に即した医療供給体制の体系的整備を推進すること。
十三、医師、歯科医師、薬剤師及びその他の医療従事者については、今後の医療需要の動向等を踏まえて、養成確保対策を見直すこととし、適正な水準を確保すること。
十四、医療機関における健全かつ安定的な経営の確保のため、経営基盤及びその環境の条件整備に努めることとし、医業経営が薬価差益に依存することのないよう関連制度の改善に努めること。
十五、政府管掌健康保険の運営について行政努力に一層配慮するとともに、必要な人員及び予算の確保に努めること。
右決議する。
以上でございます。よろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/58
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059・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいま佐々木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/59
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060・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、渡部厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/60
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061・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/61
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062・石本茂
○委員長(石本茂君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/62
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063・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前一時七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X02019840804/63
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