1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十九年七月十二日(木曜日)
午前十時一分開会
—————————————
委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
刈田 貞子君 高桑 栄松君
七月六日
辞任 補欠選任
安永 英雄君 菅野 久光君
七月七日
辞任 補欠選任
菅野 久光君 安永英雄君
七月十一日
辞任 補欠選任
中村 哲君 本岡 昭次君
高桑 栄松君 中西 珠子君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 長谷川 信君
理 事
杉山 令肇君
田沢 智治君
久保 亘君
吉川 春子君
委 員
井上 裕君
大島 友治君
藏内 修治君
山東 昭子君
世耕 政隆君
仲川 幸男君
林 健太郎君
柳川 覺治君
粕谷 照美君
本岡 昭次君
安永 英雄君
高木健太郎君
中西 珠子君
小西 博行君
美濃部亮吉君
国務大臣
文 部 大 臣 森 喜朗君
政府委員
文部大臣官房長 西崎 清久君
文部大臣官房総
務審議官
兼内閣審議官 齋藤 尚夫君
文部大臣官房会
計課長 坂元 弘直君
文部省教育助成
局長 阿部 充夫君
文部省高等教育
局長 宮地 貫一君
事務局側
常任委員会専門
員 佐々木定典君
説明員
文部大臣官房審
議官 植木 浩君
—————————————
本日の会議に付した案件
○日本育英会法案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/0
-
001・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、中村哲君及び高桑栄松君が委員を辞任され、その補欠として本岡昭次君及び中西珠子君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/1
-
002・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 日本育英会法案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。森文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/2
-
003・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) このたび、政府から提出いたしました日本育英会法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
昭和十九年日本育英会法施行以来、日本育英会は、逐年発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受けた学生及び生徒は、約三百四十万人に達し、これらの人材は社会の各分野で活躍し、我が国の今日の発展に多大の寄与をいたしてまいりました。
しかしながら、最近における高等教育等の普及状況を踏まえ、社会・経済情勢の変化に対応して日本育英会の学資貸与事業の一層の充実を図るためには、その内容・方法等について抜本的な見直しを行うことが必要であり、このことは、第二次臨時行政調査会の答申等や文部省に置かれた育英奨学事業に関する調査研究会の報告でも指摘されたところであります。
このような要請にこたえるべく、今般、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与するため、日本育英会の学資貸与事業に関し、無利子貸与制度の整備、有利子貸与制度の創設その他制度全般にわたる整備改善を行うほか、日本育英会の組織、財務・会計等の全般にわたる規定の整備等を行うこととし、現行の日本育英会法の全部を改正する法律案を提出いだした次第であります。
次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。
まず第一に、日本育英会は、すぐれた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資の貸与等を行うことにより、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与することを目的とすることといたしました。
第二に、日本育英会の組織については、理事は文部大臣の認可を受けて会長が任命することとし、また、法人運営の適正を期するため、会長の諮問機関として評議員会を置くなどの整備を行うことといたしました。
第三に、日本育英会の業務については、学資貸与事業について次のような改正を行うことといたしました。
まず、無利子貸与制度について、現行の一般貸与と特別貸与を一本化することといたしました。これに伴い、特別貸与を受けた者が一般貸与相当額の返還を完了したとき、その残額を免除してきた従来の特別貸与返還免除制度を廃止することといたしました。
次に、現行の無利子貸与制度に加えて、学資貸与事業の量的拡充を図るため、新たに低利の有利子貸与制度を創設することといたしました。この有利子貸与制度には、死亡・心身障害返還免除制度を設けることといたしました。
なお、無利子貸与にあわせて有利子貸与を受けることができる道を開くことといたしております。
第四に、日本育英会が債券を発行することができる旨の規定を設け、国の一般会計以外からの資金を導入し得ることといたしました。なお、これにより、政府から資金運用部資金の貸し付けを受けて、有利子貸与事業に対する貸付資金の原資に充てることができるようにいたしたい考えてあります。
また、債券発行規定を設けることに伴い、日本育英会の長期借入金または債券に係る債務についての政府保証の規定を整備するほか、日本育英会の財務・会計について所要の規定の整備をいたしております。
第五に、日本育英会の監督、罰則等に関する規定を整備するとともに、関係法律についても所要の規定を整備することといたしました。
このほか、この全部改正の機会に、現行の片仮名書き文語体の法文を平仮名書き口語体に改めることとし、法文の平明化を図ることといたしております。
以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
なお、衆議院において、施行期日等に関する附則の規定の一部が修正されましたので、念のため申し添えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/3
-
004・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 以上で趣旨説明の聴取を終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/4
-
005・安永英雄
○安永英雄君 文部省に質問をする前に、ちょっと委員長の方にお聞きしたいことがあるんですが、また、これは私は後の審議がスムーズにいくようにあえてお聞きするんですけれども、五月の二十三日に参議院文教委員長の名前で文部大臣に申し入れをされております。その趣旨は、「日本育英会法案については、現在、衆議院において審議が行われているが、日本育英会の奨学金の貸与を期待している学生の実情は憂慮すべき事態になっている。従って、政府においては、これらの学生等に対して、何らかの救済措置を早急に講ずるよう検討されたい。」こういう申し入れをされたわけでありまして、私としましても、まことにこれは時宜を得た申し入れだというふうに感謝をいたしております。また、これについて、理事会の方の合意によってということでもございますので、理事の皆さん方も、委員長を中心に、この申し入れの実現について、いろいろ動きがあったということも聞いておりますし、本当に感謝を申し上げたいと思うのであります。
しかし、久しぶりの委員会でございますし、委員長の方からこの申し入れの経過なり、あるいは、現時点における文部省の措置した現状認識なり、それから、今からそれに対してどう理事会なり委員長は対応されるのか、それについてお聞きをしておった方が、後の質問がスムーズにいくと思いますので、お聞かせを願いたいと思います。
ただ、時間もありませんので申し上げますが、これがぽんと私どもの方の机の上に上がっておりました。これは、もちろん、私どもは平委員でありますから、何もむくれてはおらぬのでありますけれども、その裏の方に次のようなことが、これは文部省の大学局からの報告が恐らく委員長の手元にあったのじゃないか、それを印刷してこういうものが裏にひっついて、として私どもの机の上にありました。したがって、これを読みますと、後の報告で、ここは要らないという意味で私は申し上げるのでありますが、次のような措置をするということで、日本育英会による無利子貸与の予約の採用候補者三万六千人、大学院が三千人、大学、短大で二万人、高校、高専で一万三千人、合計三万六千人、これについては進学届の提出後奨学生として採用決定を行う、この場合、とりあえず留保条件を付して、一般貸与の奨学生として採用して、五十九年四月分からの一般貸与の貸与月額を交付しておいて、「改正法成立後」とありますが、これはもちろん改正法案でありましょう。改正法による無利子貸与の奨学生に切りかえ、四月に遡及して改正法による無利子貸与の貸与月額との差額を追加して交付する、二番目に、改正法による無利子貸与の在学採用者八万二千人、これについては改正法の成立後速やかに奨学生の募集・採用を行うことができるように募集要綱・願書の印刷等の準備を行う。こういうあれですから、私は文書でもこれは委員長から報告があったんだというふうに確認をいたします。したがいまして、三万六千だけはこの時点において何とかやれるけれども、八万二千についてはこれはできないという報告だと思うんです、この時点は、これは五月の三十日。その後の進展といいますか、現状はどうなっているかと、こういったことです。それから、それに対してどう対応するのかお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/5
-
006・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいま安永先生からお話がございました育英会法に関する申し合わせ、これは各党理事、今、先生のお話のとおり合意をいたしまして、文部省の方には、要諦をいたしておりました。
ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/6
-
007・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/7
-
008・安永英雄
○安永英雄君 だから、あなたの今の話では、そのとおりにいっているというふうに認識されておるようですけれども、私どもが聞いているところでは、そうはいっていないから私は聞いているんで、詳しくひとつその間の1文部省の方であれば文部省の方にやりますよ、いつまでも。ただ、今まで委員長なり理事の方でこれを処理していかれておるから、そちらの方の意見を聞いた方があとはスムーズにいくのだろうということで私はあえて言っておるわけでありますから、経過なり、あるいはその現状がどこまでいっているのか、そのところで、私はいってないと思っておるから聞いておるわけでありまして、いってないというところがあれば、それは今後どうするのか、理事会としては。こういうことを聞いておかないと、私はじかに文部省の方でお答えをさして、私は文部省の方でいったら法的な問題どんどんやりますよ。これ、しかも時間外にやってもらわないと困る、審議に入れないんです。そういったことで、理事会にあえて私は申し上げておく。まとめて経過なり——これはあえて委員長でなくてもいい、正確なところをひとつ、ここでなければ理事会あたりで、経過の現状認識なり、文部省呼ばれず、そこで結構です。そうして、今からどうするんだということを理事会の方で言われないと、私ども平ですから、何もなかったら、どんどんこの問題は委員長に私の時間外としてもらってやらなきゃならぬ、そうしなきゃ審議に入れない、そういった意味で申し上げておりますので、どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/8
-
009・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 今、安永先生からお話がございました点は、さっき申し上げましたように、各党申し合わせ、理事会で申し合わせをいたしまして、文部省の方に強く要請をいたしております。その後、文部省の方から、私どもは申し合わせに基づいて事務的に話を進めておるものであるというふうに承知をいたしておりますが、なお細かな詳細の点についてはまだ報告を聞いておりませんので、理事会等を開きまして、文部省の今までの経過等について十分詳しく説明を聞きまして御報告申し上げたいと思っております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/9
-
010・安永英雄
○安永英雄君 大体、理事会の方はわかっておるでしょう。それでなければ入れないというんだ、質問に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/10
-
011・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 暫時休憩いたします。
午前十時十五分休憩
—————・—————
午前十一時十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/11
-
012・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
安永君に申し上げます。
日本育英会の奨学金の貸与に関しましては、学生等の実情を考慮して、その救済措置を講ずるよう、去る五月二十三日、理事会の合意により、文部省に対し御案内のとおりの申し入れを行いました。
この申し入れに対する文部省の回答につきましては、既に委員の皆様にお配りいたしておりますとおりでございます。
この文部省の回答につきまして、去る六月二十八日理事懇談会を開きまして協議いたしましたところ、これらの措置ではまだ不満であるとして、さらに在学採用予定者を緊急に救済するため、現行法に基づき、可及的速やかに募集を開始されたい旨の申し入れを口頭により再度いたしました。
この申し入れにつきましては、ただいまの理事会におきまして文部省より回答があり、その説明を聴取いたしたところでございます。
回答の内容につきましては、ただいま、お手元に配付いたしたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/12
-
013・安永英雄
○安永英雄君 理事会の方で、今後の進行についてスムーズにいくようにという配慮でやられたわけですから、私はくどくは申しませんが、今もらった在学採用についての救済措置の方針で、一項目では完全に現行法に基づいてきちんとやるということを確認をされたというふうに思いますし、二、三のところでは多少問題が残るんじゃないかという気もするんです。これは理事会で確認をされたとなれば、私としては不本意な点がたくさんあるんで、これについてはさらに質問を直接向こうにしなきゃならぬということになるわけで、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/13
-
014・長谷川信
○委員長(長谷川信君) それは今理事会でもいろいろ各党の御意見を聞いたのでありますが、各党意見がいろいろありますので、審議の過程の中で安永委員から御質問いただくようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/14
-
015・安永英雄
○安永英雄君 それじゃ文部省の方にお聞きしますけれども、在学採用者のこの措置については、今、理事会の決定、確認があったように、現行法に基づいて可及的速やかに募集を開始すると、これが私は原則だろうと思います。意見の一致しなかった点等もあったかもしれませんが、二、三に至りましては、これは可能な限りということで、この恩恵といいますか、救済措置に漏れる人間が出てくるということを私は予想するわけですが、まず第一番に、現行法に基づいて可及的速やかに募集を開始するという理事会なり委員長の意向ですが、文部省としては、その意向を受けてどう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/15
-
016・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御案内のとおり、在学採用についての救済措置の問題が、その後、衆議院文教委員会の審議等を通じて、その点が御議論がございまして、そこに日程のところで御説明をいたしておりますように、文部省といたしましては六月二十九日に方針を決定をいたしまして、直ちに日本育英会にもその趣旨を伝え、二十九日から要項なり願書等の印刷に取りかかり、あらかじめ募集開始をする旨の予告を、各大学への通知を七月二日にいたしたわけでございます。
それを、さらにその後七月六日付で具体的に各大学に推薦の依頼をいたしたわけでございまして、これらの措置については、在学採用予定者が、具体的に、例えば夏休みの直前に来ておるというような状況を受けまして、各大学が七月十日から奨学生の募集を実際に開始できるような対応をいたしたわけでございます。
以上が私どものとりました措置でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/16
-
017・安永英雄
○安永英雄君 とりました措置というのは、現行法に基づいて、この在学採用予定者の全員、とにかくそういった恩恵といいますか、この措置ができなかったということを今報告をされたわけですか。なぜですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/17
-
018・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘の点は、在学採用者について緊急に救済するという、しかも、夏休み前に募集事務を開始しなければ実際の仕事が非常におくれることになるというような事態を受けまして、二以下に書いてございますような考え方で対応をいたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/18
-
019・安永英雄
○安永英雄君 私と法論争をやるつもりですか。衆議院では、現行法に基づいて皆できるように、これについては検討しますというのがあなた方の答弁じゃないですか。参議院の場合では、そう検討しましたけれどもできませんとあなたは言い切るんですか、今、言い切ったつもりですか。それなら今から、私、法論争やりますけれどもね。現行法に基づいてやるということを約束し、その方向で検討しているというのならかわいげもある、それは。法論争で私にそういった答弁をやるというんだったら徹底的にやりますぜ、時間をどけてもらって、委員長に。これが解決しない限り審議になりませんよ。どちらなんです。衆議院で答弁したのと今答弁したのとは違うのですか、同じなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/19
-
020・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) あるいは私の言葉が十分でなかった点があったといたしますれば、その点は先生におわびを申し上げるわけでございまして、衆議院で答弁しました気持ちと、ここで答弁いたしております気持ちとは全く変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/20
-
021・安永英雄
○安永英雄君 そうすると、今の理事会の態度決定というのは、文部省の方は、むしろ全員が、とにかくこの恩恵に治すようにというふうに決意を言っているのに、理事会としては、どうしてもこれは「可能な限り採用する」ということで、残る。食い違いがありますから、理事会がどうしてそういった態度をとられておるのか。文部省は全員ができるように検討する、できるできぬは別としても検討すると。あなたの方は早々と、これはできませんので、これは可及的速やかにやると思っても、最後には、可能な限りですから、残る者も出てくるかもしれない、それについてはやむを得ないという理事会の態度を決定されたと確認してよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/21
-
022・長谷川信
○委員長(長谷川信君) これはまだ決定はいたしておりませんし、理事会としてまだ緒論を出しておりません。したがいまして、「可及的速やかに」という文言を使ったということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/22
-
023・安永英雄
○安永英雄君 そこの説明がなかったものですから、私はこれで結論が出たものと思っておりました。そういう説明があればわかっておったわけですけれども、そんなことは。私も先ほどの趣旨ですから、そう別に大きな声を出したり時間を長引かせるつもりはありませんけれども、いささか違うとったものですから、つい……。
だから私は、そういう態度であるということならば、これはまたいろんな次の方も質問されますので、私はこれ以上は申しません。ただ一つ申し上げておきたいのは、どうも文部省の方は、先ほどの現行法に基づいて全員がこの恩恵を受けるようにしたいという気持ちはあるけれども、この法案も参議院に来ておることだし、もうちょっとすると上がる、現行法じゃなくて新しく改正法が出る、だから、もう時間の問題だから、約束はしておるけれども、検討中、検討中ということで引っ張り延ばしていけばそれに出会うというふうな気持ちがあるとするならば私は許せませんよ。これは初めは、委員長の要求にもありましたように、学生の実情は憂慮すべき状態で気の毒だという、いわゆる感情的な、心情的なものから出ておりますけれども、今まであなた方が作業をされていったところでは、既に法的な問題にはまり込んでしまっておるわけですよ、これは。できるだけやってやればよろしいというそういったものではなくて、現行法という法律が厳然としてあるというその中であなた方は努力をされている、その点について私は非常に称賛すべきだと思うんだけれども、心情的なものじゃなくて法律的なものになっている。しかも、現在、私ども参議院はきょうから審議をする、こういったところですから、夏休みが始まるとかなんとかいう問題ではなくて、これは筋を通しなさい。検討、検討で、何とか法律案が成立するだろう、そこまで検討しておったということで逃げていけばいいんじゃないかというふうな気持ちでやってもらっては困る。その点、大学局長どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/23
-
024・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 国会の御論議を外しまして、十分私どもとしても誠意を持って対応いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/24
-
025・安永英雄
○安永英雄君 今後、この問題についての文部省の措置と、理事会の方も、ひとつ最終的な結論は出していただきたい。これは少なくともきょうの昼ぐらいはかけてやってもらわぬと、次の質問者もこれにまた触れていきますので、ぴしっと出してもらって、委員会を中断しておっても結構ですから、きちっと出してもらわぬと困りますよ、実際言って。言いようがない、理事会と文部省との間の問題が。そういった点を要望をいたしまして、この問題を見守りながら、私もこの問題については留保しながら次の質問に入りたいと思います。
今度の国会の劈頭から、第一号議案は、いわゆる国立学校の設置法でございました。この審議をする中で、大学院の設置という問題については政令事項に落としていくということで、ことしが最後でございました。この後ろには、探ってまいりますというと、いわゆる臨時行政調査会、ここの指摘というものがあって、この大学院の設置についてこの委員会で審議するという場所がなくなった、まさに臨調の指摘に基づいてそういった方向に行っておる。次の私学共済の審議に至りましても、いわゆる国の補助金というのは四分の一切り捨てられておる。調べてみると、これが臨調の指摘による、こういう答弁もありました。今、審議しております育英会法、この改正につきましても、この提案の理由、先ほど大臣が読み上げられましたけれども、第二次臨時行政調査会の答申等や文部省に置かれた育英奨学事業に関する調査研究会の報告、これでも指摘されたところでありますという、いわゆる改正の一つの根拠というものの中には、やはり臨時行政調査会、いわゆる臨調というものが基底にある。言いかえますと、ここが一番大きな問題だと、この改正法の問題は、こんなふうに私は見まずし、あと次の法律が予定されておると聞いておりますが、日本学校健康会、それと国立競技場の統合という法律案を用意されておるようでありますけれども、これまた、まさに臨調の指摘というものに従って法律ができ上がっておる。この前審議しました著作権法、これは別としまして、今度の国会で審議しているのは、すべて臨調から指摘を受けて、それが法律になって、ここに出てきておる。こういうふうに私は思って実に残念なんです。掘り詰めていけば、臨調から指摘を受けたと言う。私は、いわゆる臨調というものについて、今はこの臨調はなくなりましたけれども、残したものは、今、脈々として残っておる。そしてこれが二十一世紀に向けてというふうな大きな目的になっておる。そうすると、今後この臨調から指摘をされたという問題は、私ども教育関係者にとっては非常に大きな問題になるし、この育英会法を審議するといった場合にも、根本的にはそこにメスを入れなければならないというふうに私は思うのであります。私は調べてみたんですけれども、この臨調の設置をされたときの目的、二条にありますけれども、「調査会は、行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議する。」という任務を持ってこれは発足をしたんであります。ところが、今、それを受けて文部省は直ちに法律に出して、次々に今から国会に出していくということにまさかなろうとは私は考えていなかった。実に一般的な抽象的な目的であって、これは一般国民、私は後で教育の問題に触れますけれども、教育に関心を持っておる者だって、この臨調というものが行政整理とか、あるいはむだ遣いをなくすとか、あるいは機構を緊縮するとか、こういったものについて検討するだろうという機関に私どもは考えていた口ところが、現在、この機関は政治上の重要な施策、これについての政策審議までやる、一種の国会代行機関というふうな性格を持つに至っておるわけで、この臨調は一応任務を果たしたとはいいますけれども、いわゆる臨時行政改革推進審議会——行革審というものがあとこれに続いてきている。しかも目的は、いろいろ書いてありますけれども、この臨調で指摘をした、問題にしたというものが、実際にそのとおりに執行されておるかどうか、こういう監視機関ということまでまだ続いてきておる。私は、この臨調の性格というものを今さらここで批判するつもりはないですけれども、そして、またこれが日本の防衛の問題の政策まで論議をしたり、指図をしたり、予算の制約をしたり、あるいは拡大を求めたり、こういったところまでいっておるのでありますけれども、そこまでこの委員会の性格からして、それはやる場所が違うかもしれません。しかし、少なくとも教育の問題について、私はこれは掘り下げてここで審議をする必要があると思うんです。
これはここでつけ加えておきますが、この行革審というものは、九日の日に地方自治体の行政改革推進に関する報告書というものを出しております。ここで内容を私は申し上げませんが、もちろん承知だと思いますけれども、地方公務員の定員抑制のために地方自治体が削減計画をつくる。国の施策で警察官と消防職員の増員は当分の間凍結し、四十人学級実現を目指す教員の定数改善計画も抑制する、地方公務員の給与水準を国家公務員を上回らないようにする方向で国は制裁的な財政措置を含め指導を強める、骨格はこれででき上がっておるのであります。
私は、教育の問題は先ほど申しました。事あるごとに全部臨調の指摘を受けて文部省は次々にそれを実現に移していっておる。それが法律の形で出てきておる。特に現在活躍をしておる行革審というものについて、例えば、定数の問題についても、臨調で抑制をし凍結をしておきながら、いよいよ凍結が解けるという寸前にいったら、またもや行革審は四十人学級の実現を目指す教員の定数改善計画を抑制すると先手を打って出てきておる。各都道府県の問題でありますけれども、各都道府県では、あの凍結が解ければ四十人学級に向かってやらなきゃならぬという準備もし、予算の見積もりもやっておる。それに水をかけるように行革審の方はこれを抑制するというふうに言ってきておる。衆議院の臨時教育審議会等の審議等も見まして、私は議事録見ていますが、大臣はこれについては大いに頑張るという答弁もなされておるようでありますが、しかし、それは出てみなきゃわからぬと逃げておられるところもある。しかし現実にこの報告書が出ておる。
先ほど私が長々と申しましたが、こういった問題について、閣僚の一人としてという立場もありましょうが、少なくとも文教委員会の中で、文教の全責任を持っておられる文部大臣のこのような現在のやり方について、どういう見解を持たれ得るか私はお聞きしたいんです。篤とお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/25
-
026・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 行政改革につきましての受けとめ方というのは、先生方も、また私ども与党にいたしましても、それぞれの考え方がございます。
私は衆議院の委員会を通じて申し上げてまいりましたが、行政改革はすべて行政を簡素化するということも一つのねらいでありますが、もう一つに効率化ということがございます。そして、行政が大変肥大化していることも事実でございますし、将来に向けて、もう少し躍動的に日本の行政機関がもっともっと民間の活力を大きく多様的に利用するといいましょうか、駆使しながら行政がまた新しい展開をしていくということが二十一世紀の日本のために必要だろう、こういう考えを私は持っております。総理は時々言葉の中で、うみやあかもたまりますから、それをそいでというふうな表現をしておりますが、まあ、いい言葉であるかどうかは別としまして、少し肥大化し過ぎると同時に、また非常に多様的に動きの悪い面になっておるということも、政治家の立場から見て、これは先生もある程度御理解をいただけると思うんです。
そういう中で、例えば、よくこれは臨時教育審議会等の議論でも、野党の皆さんからも御質問いただいた点でありますが、財政改革、行政改革そして教育改革が一連の同じような三本立ての中曽根内閣というふうに見られる向きもよくあるわけですが、私はそうは思っていないんです。むしろ、二十一世紀は本当に生き生きとした教育の体制にしていきたい、そういうふうに私は考えます。そのためには財政もしっかり建て直さなきゃなりませんし、行政ももう少し、今までのような画一的なものではないようにしていくということが大事だと考えます。そういう意味で、この行政改革は国民的な大きな要請によるものが多い、私どもはこういう判断をいたしているわけでございます。
したがいまして、行政改革は厳しいところでありますが、将来の日本の国民にとって、私たち、現在生きる政治家たちが、今日までの行政を組み立ててきたわけでございますから、将来の子供たちにとって、生き生きとしたものに残してあげる、そのための、ここはお互いに痛みを分かち合うという、この気持ちも政治家としてとらざるを得ない立場であろうというふうに考えます。
しかしながら、だからといって、教育関係の行政については、すべてこれを切りまくるという考えは私ども持っているわけではございません。何とかそういう効率化、簡素化という政府全体の方針に従いつつ、なお一層、こうした教育行政の仕組みは勇敢に新たなものを多様的に取り入れていくということも、これも必要だろうというふうに考えているわけでございます。
たまたま、この国会で法案を御審議いただいております中に、先生からも今御指摘ありましたように、私学共済あるいは育英、前の国立学校設置、いずれも臨調の指摘ではないか、臨調支配の国会ではないか、こういうふうな先生の御指摘もあるわけでございますが、全体といたしましては、予算全体の枠組みというものも、これは考えていかなければならぬ、文部省といたしましては、できるだけその中で教育行政を生き生きとしたものにするという基本的な考え方でこれを尊重しつつ対応してきたというところでございます。
もう一つは、行革審に対して文部大臣としてしっかりやると言っておきながら、今のこの行革審の小委員会の報告をなんと受けとめているのか、こういうことでございますが、七月九日には「地方公共団体における行政改革の推進方策」という報告が出ておりますが、これは審議会に対して小委員会が報告したものであるというふうに私は受けとめておりますので、またこれはプロセスの段階、仮定の段階であるというふうに私は見ておりました。これから審議会がどういうふうな最終的な結論を出すかということについては、これはまだ私ども承知もいたしておりませんし、この意見が出るまでは政府の、私の立場からはこれをとやかく言うことについては、これは控えなければならぬだろうというふうに考えております。しかし、いずれにいたしましても、小委員会の答申も私なりに十分にこれはよく承知もいたしております。それから、これから審議会でどういう御議論があって、最終的にどういう考え方が示されるかということについては、方向については私自身も大変大きな関心を持っているわけでございますが、先生方のまた御支援をちょうだいをしながら、教育行政のいろんな意味で、先生方から御指摘をいただいております心配な点にならないように、最大限の努力をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/26
-
027・安永英雄
○安永英雄君 今お聞きしますと、閣僚の一人としてという立場を非常に大きく大臣感じておられるようですし、私の言っております教育的な、教育の全般の責任者としてのこれというのは、与えられた枠内でできるだけ努力していきます。問題は、財政が強くなるためには、閣僚としての立場というものを重視していかなければならないという方針をお持ちのようです。
それから、今の私が質問をいたしました、いわゆる行革審の問題ですが、またもやこれは報告書でありまして、これから先どうなるかわかりませんから控えますというのですけれども、出てしまったらだめですよ、もう。出ますよ、それは。今からかからなければどうしますか、これ。こういったものを突きつけられたり、例えば風聞があったりしてでも、しかも、これは有力な風聞だといったときには、もう駆けつける、早く文部大臣としての見解をぱっと出すというふうなことでなければならぬと私は思うんですよ。衆議院ではうまく逃げられましたけれども、あのときには、まだこの報告書も出てなかったから、まあ、あれですけれども、報告書が出ている。そうしてあなたは四十人学級についてはこれはやりますと、そう言って今まで答えてきておる。それでもまだほんま物かうそ物かわかりませんので私は見解出しませんというのはひきょうですよ。文部大臣としては、これは、この委員会で質問受けてぱっと出すぐらいが一番絶好の時期じゃないかと私は思っておる。私は大臣になりませんけれども、大臣ならもう衆議院段階で言っていますな。新聞にも言っていますよ。言いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/27
-
028・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 文部大臣といたしまして教育行政については最大の私は苦心をいたしておりますし、教育予算が停滞をすることのないように、少しでもこれは、数字からいきましても伸びるように最大の努力をすることが私の大事な仕事だと考えております。しかしまた、中曽根内閣の一国務大臣でございますので、私が直接、今、小委員会あるいは審議会に対して、今の段階が一番大事なんです。先生の御指摘どおりです。だからといって、私が今小委員会や審議会に、ああせい、こうせいど口出しすることがいいことであるかどうかということは、先生のようなベテランならよくおわかりのとおりでございます。しかし、だからといって、先ほど私は関心を持っております、こう申し上げました。それは一切何もやってないということではございません。しかし、公の場所で、ああします、こうします、こうやりますというようなことは、ここは慎むべきだというふうに私は申し上げているわけでございまして、小委員会の報告につきましても、あるいは審議会の報告につきましても、文部省あるいはまた与党の自由民主党、文教関係の先生方も大変な努力を今払ってくれておりますので、そういうひとつの結果を待ってみたいというふうに考えております。
なお、四十人学級等については、私にとりましては、これはどうしてもやらなきゃならぬということでございますので、国会でもそうでございますし、先生のお目にとまらなかったのかもしれませんが、記者会見の席あるいは記者懇談会の席、文教予算はこれは停滞なく進めていきたい、行革審の答申いろいろあろうが、その中でもいろいろ工夫を凝らしながら四十人学級等については十分やっていきたい。また、私のそういう考え方を与党としても酌みとってくれておりまして、自由民主党の文教部会や文教制度調査会も、六十年度の予算編成に際しての文教予算のあり方についてはこのようにやるべきではないかという考え方も、先般、いわゆる合同会議で決定もいたしておりまして、そういうことも私ども、大臣という立場の気持ちを十分党としても受けとめてくれているものだろうというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/28
-
029・安永英雄
○安永英雄君 言わないというものを言えといったって、これはどうにもならぬですから。
聞き方を変えまして、こういう行革審というものと離れて、四十人学級というものの凍結解除も間近ですが、この問題についてはどうするつもりですか。これは答えられるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/29
-
030・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) これもたびたび申し上げておりますが、全体計画、最終年度は六十六年度、これについては見直しの考え方はございません。したがいまして、着実に、厳しいでございましょうが、いろいろ工夫を凝らしながら、ぜひ一つずつ進めていきたい。特に三年間の抑制期間がございましたので、六十年度についてはかなり微妙な、私はこの計画達成について大事な年であるというふうに認識をいたしておりますので、何とかして着実な進め方ができるように最大限の努力をしたい、こういうふうに申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/30
-
031・安永英雄
○安永英雄君 いずれにしましても、大臣から批判めいたことは言えないにしても、臨調にしろ行革審にしろ、これは、もうとにかく権威になり過ぎていますよ。余りに設置のときの目的以上になっているでしょう。国会の答弁見ましても、土光さん、土光さんで、土光さんの名前が出ないことがない、総理大臣の答弁に。あなたのところでも、質問すると、これは臨調、臨調とこう言う。臨調がああ言っているからとこう言う。そして要求したり、臨調がこう言っておるとかといって弁明したり、もう私個人は我慢できない状態だと思うんですよ。私はそういった意味で、もう少し突っ込んで大臣の考え方も聞きたいと思うんです。
そこで、今も答弁ありましたように、衆議院のこの育英会法の審議の中で、私も一日傍聴に行きました。これは中西君の質問で大臣答えられたんですけれども、「行革の立場からいえば、奨学金はまあ有利子でもいいのではないかという声が出てくるのも一つの意見でしょう。これは全くだめだ、いけませんとは言えないわけであります。」と、こうおっしゃった。これあたりも、今さきの答弁に重なるような気がするんですね。そして「国全体の財政の枠の中でどうやっていくか。」「その枠の中でどれを優先順位で決めていくか。」「これはまた別途の政治判断であろう」かと思いますと、こういう答えもされて、私もびっくりしたんです。先ほど言われたとおりの基本に立っての発言だと思います。
そういった意味で、私はもう少しお聞きをしたいんでありますが、この臨調の答申というのがいまだにまだ生きておって、それを引き継いで行革審が点検をやって、そして今みたいに行革審で決まったものを、例えば定数の問題では、ここで一応凍結を解こうという時期へ来ると、もう一回、監視どころか強力にまた地方自治体を抑えていって、四十人学級という準備をしてはならない、抑制する、そういうことをやったら財政的罰則を政府はつけなさい、こういうところまで、出過ぎた話ですよ、これは。
そこで、文部省が今日まで臨時行政調査会の答申の中で指摘を受けているところはどこですか。私の調査では三十カ所ぐらいある。それを明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/31
-
032・西崎清久
○政府委員(西崎清久君) 臨調における文教関係の指摘事項は大変多岐にわたること、御指摘のとおりでございます。
大きな項目で申し上げますと、まず第一点は「高等教育の規模と質的充実の在り方」という項目でございます。その中では、国立大学の学部、学科の転換とか再編成とか、あるいは特色ある大学づくり等、かなりの項目にわたっての指摘があるわけでございます。それから次には「高等教育の費用負担の在り方」の問題がございます。それから育英奨学金制度に関しましての指摘があることは先ほど先生のお話にもございました。それから次に、義務教育に関しましては、義務教育費の国庫負担制度に関しましての指摘、それから義務教育教科書無償制度に関する指摘、公立文教施設整備に関する指摘がございます。
その他の事項といたしましては、国立少年自然の家とか青年の家とか、かなり多岐にわたる指摘がございます。
以上のような、ほかには例えば内部部局の再編、合理化に関しますこととか、それから特殊法人の再編、合理化に関しますこと。かなり項目といたしましては多数にわたる指摘がございます。
なお、補助金関係につきましては学校給食、私学助成、社会教育、社会体育施設整備等に関しましての指摘があることは事実でございます。
概要につきましては以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/32
-
033・安永英雄
○安永英雄君 例えばとか概要とかじゃなくて、今から先ずっとこれはあなた問題になってくるんですよ、毎年毎年。だから、明確に挙げなさいと言っているんです。何と何と何がある、そして文部省はどう対応したか、それに。それを聞いているんです。そうしなきゃ、今の大臣の答弁みたいな形じゃ、あなたこれが次々持ってきて毎年毎年臨調から言われたとおりの法律案を私ども審議しなければならぬ。もう我慢できないですよ。全部挙げなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/33
-
034・西崎清久
○政府委員(西崎清久君) それでは若干のお時間をいただきまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/34
-
035・安永英雄
○安永英雄君 ちょっと、一番まとまっておるのが、大体第五次でまとまっておるから五次の説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/35
-
036・西崎清久
○政府委員(西崎清久君) 第一点で申し上げますことは、高等教育に関しましての指摘でございます。
まず、「国立大学の新設、学部・学科の新増設、定員増は、全体として抑制」せよという指摘がございます。この点につきましては、本年度におきまして、五十九年度は多年の調査、準備をやってまいりました併設医療技術短期大学の創設を一校いたしましたが、学部の創設は見送るなど全体として抑制をして実施をしておるというふうな状況でございます。それから次に、「学部・学科の転換、再編成」の推進についてという指摘につきましては、やはりその点についていろいろ検討いたしまして、学問の発展及び時代の変化等に対応するため必要なものとして、五十九年度におきましては十学科等につきまして転換、再編成を行うことといたしております。
それから次に、費用負担につきまして、「授業料については、教育に要する経費や私立大学との均衡等を考慮し、順次適正化」するべしという指摘につきましては、国立大学の授業料の引き上げを図りまして、年額二十一万六千円を二十五万二千円にいたしております。それから、私学助成の当面総額抑制という指摘につきましては、私立大学等経常費につきましては一二%減、私立高等学校等の経常費助成につきましては一〇%減の削減を図っております。それからさらに、育英奨学金につきましては、外部資金の導入による有利子制度の問題、返還免除制度の廃止等の問題、育英奨学金の量的拡充等の指摘があるわけでございます。この点につきましては、このたびの改正法案において審議いただくわけでございますが、有利子制度への導入、それから返還免除制度についての廃止等の検討ということをいたして法案の審議をお願いしておるわけでございます。
義務教育教科書無償制度につきましては、「廃止等を含め検討」という指摘があったわけでございますが、この点については中央教育審議会で検討をお願いいたしまして、やはり義務教育教科書については無償を維持する必要があるという結論をいただいておるところでございまして、五十九年度は引き続き無償制度を維持しておるわけでございます。
それから、公立文教施設整備費につきましては、「緊急性の高いものに限定し、事業量の大幅な削減を行う」べしという指摘がございました。事業量につきましては、必要なものは確保するという形でございますが、約四百億余の削減を図っておるという現状でございます。
詳細につきまして申し上げましたが、なお、学校給食につきましては、施設整備の関係で補助金の削減を行うということについての若干減額をいたしております。設備費につきましては、十三億を切ろう。それから、整備費につきましては、八十六億を七十三億というふうな削減をいたしております。
それから、社会教育関係につきましての施設整備につきましては総額を縮減するという指摘がございまして、この点につきまして社会教育施設は百五十四億を百三十一億というふうな削減。それから、社会体育施設につきましては百六億円を八十九億円というふうな削減をしておる次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/36
-
037・安永英雄
○安永英雄君 まだたくさんあるようですけれども、これは時間の関係で、篤とひとつ官房長からヒアリングでお聞きしたいと思います。
しかし、学校教育の多様化、弾力化の推進と、こういうものが臨調から指摘をされるという筋合いのものじゃないんです。これは育英会法の問題に私は最後は触れますけれども、憲法、教育基本法にかかわる基本的なこの教育の機会均等のこれは純粋なところなんですよ。そういったものを利子をつけろとか、つけないとか、大体臨調から指図を受けるような内容じゃないし、文部省としては、これは基本に触れる問題だから、こう言われれば、だめとは言えませんという大臣の態度ではこれは困るんです。国民の中の、これはもう何万人か何十万人かの人のことじゃないんですよ。高等教育のあり方、すべてこれは産・学・官の提携とか、とにかく今から審議が始まるそうですけれども、今、本会議でやりましたけれども、臨教審あたりでやる問題なんで、財政の面からとか——もちろんこの臨調にいらっしゃる方が教育観持たないとは言わない。それは確固たる一つの見識を持った人が出てきているから、全く教育の問題を離れた指摘をするということも私は思わないけれども、しかし、やはり今からでも、学校教育の多様化、弾力化というのはどういうふうにしたらいいのか、またこれがいいのか悪いのか、多様化が、弾力化が。こういったものを今からでも審議していこう、そして二十一世紀に向けて確固たるひとつ日本のこういった問題についての検討をしようという。それが二、三年前からちょろちょろと臨調の方で、学校教育の多様化、弾力化についてこう考えろ、大学教育のあり方、こういったものについて指摘を受けて、はい、そうかとやるような筋合いのものじゃないし、あなたは、これは、はい、そうかといって育英会法の改正に取り組むべき筋合いのものじゃないんです。そこが私は言いたかったわけです。私はもちろん教育の聖域論といいますか、そういう私は主張をしているんじゃない。これは大臣、後でお聞きしますけれども、大臣の先ほどの答弁からいけば、恐らく大臣も教育聖域論というのはお持ちでないだろうと思うんです。私自身もこれに近いけれども、何もかも、とにかく教育についてはすべての予算とは別なもんだという考え方は私は持たない。しかし、聖域論に近い私は考え方を持っている。私は経験がありますが、いつかもここで申しましたけれども、戦後のいわゆる教育委員会というものができた。あの中には多分にそういった予算の面とか、あるいは、側からこう言われたというふうなことで左右されないように、全く教育的な判断、政治判断でなくて教育的判断でなきゃならない、教育の問題は。そういう趣旨から、もう覚えていらっしゃるかどうか知りませんが、あのときには、もちろん、県の財源その他もありますから、合い議はする、教育委員会に。しかし合い議が調わない、こうなれば、あの当時、対立予算というものが出せた。法律的に決まっている。ここでは教育に関しての教育委員会の考え方を腹いっぱい、張り手いっぱい詰めて、そして県議会で知事案がいいのか、教育委員会案がいいのか、この採決を、討論もやるし、採決もやった。私はこの前も申しましたように、教育委員会の出した案というものが次々に通っていった。あの当時は理解があった、教育の問題に。そこであわてて、知事はそれが通ったものですから、予算の編成大いに困って、大抵の場合は、この予測した収入増というものの見積もりという形でそれぞれ毎年これを対処していったという私は記憶がある。それぐらいに当時としては教育問題というのは、予算とはかかわるけれども、金はないけれども、何とかやっぱり頑張らなきゃならぬのだ、議員もそういうふうに考えたから、教育委員会の出した予算が通ったものだ。これは無残に改正になって、その制度はなくなりましたけれども、私はその精神というのは生きていると思います。
だから、事、教育の問題だから、ないそでは振れぬとは言わせぬ。徹底的に全部の予算を別枠にして取ってこい、防衛予算みたいに取ってこいというふうに私は厳格には言わないけれども、それに近い考え方を私は文部大臣が持ってもらわなければならない、普通の閣僚とは違うというふうに考えます。私は、財政あるいは予算の枠というものはあるけれども、その中でも絶対に守らなきゃならぬ基本的な問題については、どんなに言われようとも、これは応じられないという厳然たる態度を文部大臣としてはとらなければならぬのじゃないか、閣僚ではあるけれども。私は、教育の問題についてはそういった諸問題、基本に触れる諸問題というものが非常に多い。
そしてまた、財政が苦しくても、さらに拡大を当然していかなければならないという、教育にはそういった特殊性というものがある。それが、私は今審議しておるこの育英会法の問題ではないか、育英会法の問題とはそういったものではないのか。先ほども話がありましたが、教科書無償の問題はそういったものではないか。教員の定数にしたってそういうものではないか。私学の振興にしたってそういうものじゃないか。抑制せいと言われても、これだけはというところの主張はやってもらわなければならない。
まだ報告書だから言えない、こんなことじゃなしに、ここでひとつはっきりした態度をとってもらいたい。教育の立場からいって、文部大臣の立場からいって、これだけはどうしても聞けませんと。言われりゃだめだとは言えない、財政上の問題もあるし、将来の財政全部を考えていくならば、そんなことはとても言えないと言わぬばかりの先ほどの答弁でありましたけれども、私はそういうものじゃないかというふうに考えます。
そして基本的な教育のあり方、諸制度、諸政策、これは二十一世紀に向けて衆知を集めて確定をしていく段階なんだ。教育を改革しなきゃならぬということは私はもう賛成なんだ。それへ向かって今から取り組もう、こう言っている中に、こういうところから、先ほど例を挙げましたけれども、言われたら、はいそうですか、断り切れません。こういうことでは、とてもじゃないが臨教審などという構想はだめですよ。まだ文教政策として固まってもいないもの、そういうものを財政の面から、あるいは私は極端な言い方をするかもしれませんが、ちゃちな教育論から横やりを入れられて、それに向かって実施していかなきゃならぬという身動きならないような私は状態ではない。状態をつくってはならない。
大臣は別途の判断と言われますけれども、先ほども言いましたように、別途の政治判断というふうな悠長なものではないのじゃないか。財政が苦しい、国全体としてはこれだけだ。そして受益者負担、教育と福祉は切り捨てる。こういう大枠の中でその枠を認め、そしてまた向こうから指摘されたところを直していく。その中で私は軽重、本末をつけよったところで、これは重箱の隅をつついておるようなものだ。その中で文部大臣がもらってきた予算、もらってきた指摘、そういったものを、これが一番だ、ことしは育英会法を出しておこう、これは通らぬかもしらぬけれども出しておこう、この前はオリンピックのあれを出した、次々にこうやって出してくる。そんな重箱の中の、臨調なり国の財政というふうなものを取捨選択できる大臣の範囲というのは、そんなに狭いものですか。陰ではやって取る、陰で教育費は取ってみる、これは局長もそう言ってやっておる。これは私は当然のことだと思うけれども、こういった公式の席上で、委員会で、大臣がそういった決意を述べるということが当然じゃなかろうかと思うけれども、あくまでも閣僚の一人として、そういうことは言えません、与えられた枠の中で、政治的な判断の中でやらなきゃならぬので、というふうな態度では、私は文教政策の最高責任者としての資格を疑う。あくまでも教育的な判断というもので守らなきゃならぬものは絶対に守っていく、こういう決意の表明を私は欲しい。私はそんな気がするんですよ。
この委員会に来るときに、ちょっと余談になりますけれども、かつて、私、建設委員長をしておったその当時の次官が参議院議員になっていらっしゃいまして会いましたけれども、私は建設関係に一年間おりましたが、予算の獲得でも、委員長の私に、課長やら係長が、一緒に大蔵省に行ってください、先生と一緒に計画した大分県のあの青ノ洞門のところの上の方にダムをつくっておる、これが切り落とされております、途中になっています、この予算がつかなかったらあそこは大洪水になって今までの工事はむだになります、今度の梅雨が来たら絶対にむだになります、これが落とされております、大臣も動きません、委員長行ってください。そうして私は行って一緒にやった。課長や係長ですよ、涙を流しながら廊下に座り込んで予算を獲得しておる。私も本当に涙が出た。ともに泣いた。それがやっと今できました、そのダムは、おかげで。
私はどうも、文部省の悪口言うことじゃないけれども、五十人学級や四十五人学級だろうと授業は行われておる。ちゃんとやっていますよ。しかし、五十人より四十人の方がいいんです。教育的な判断からするならば大きな効果がある。しかし、それにならないものだから四十五人学級、これでやっていっても授業は行われる。毎日の教育活動は行われておる。ダムが崩れるようなことじゃないんです。そういうところから迫力がない。本気で四十人学級でなきゃならぬという教育的な判断というものがあるなら、私は先ほどの廊下に座り込んで源流せとは言わないけれども、もう少し迫力のある対応があるはず。例は悪かったかもしれませんけれども、私はどうも悠長だ。言われたら、はい、と全部答えておるような気がするから、先ほど言ったように、全部言いなさいと、こう言ったわけです。
私は育英会のこの問題につきましても、まさにそれじゃないかと思うんです。今から私は質問に入りますけれども、ここらでひとつ、大臣のいわゆる教育的な判断、臨調とのかかわりについての私は御意見を再度承りたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/37
-
038・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 随分、時間をかけて先生の教育論をおっしゃいまして、一々ごもっともなところもございますし、私なりに反論を加えたいところもございます。全部申し上げでおりましたら時間が過ぎてしまいますから、また先生におしかりをいただきますことは本意でもございませんので、今幾つか申されましたことにつきまして私の感想として申し上げておきたいと思います。
結論から言えば、決意の表明をここでしておけということでございますが、先ほど申し上げたことが私の決意でございまして、厳しい情勢下でございますから、教育だけ聖域にしろという一つの考え方もありますが、政治はやはり国民の合意というものが必要だろうと思うんです。教科書の有償、無償でも国民には両論ございます。有利子採用についてもやは力両論ございます。どっちが多いか少ないかということはなかなか全部を判断しにくい面がございますが、いろんな意見があると思います。ですから、そういう中でも、教育を聖域とすべきかどうかということについては、それは相当の私は国民の合意を取りつける必要があろうと思いますが、少なくとも教育というものは大事なものなんだと、財政計画、財政によって左右されるものではないという考え方は私も持っております。これは先生もそういうお考えを基本にしておられるということはよくわかります。
かつて私は党の文教部会長をいたしておりましたときに、ちょうど土光答申の最初が出たときでありまして、ヒルトンホテルで土光さんを中心に審議会のメンバーが自民党の各政調の部会の部会長を集めた、そういう懇談の会がございまして、私が一番強く土光さんに食い下がりました。最後まで食い下がりました。言ったことは全部今でも覚えております。一つ一つ今、官房長が言ったことについて全部反論を加えました。必要がございましたら、そのときの言ったことを改めて先生に申し上げていいと思うぐらいでございます。そのために私だけ瀬島さんにも呼ばれました。土光さんにも工業倶楽部で、あえて私だけ呼ばれまして、もう少し君とは語り合おうということでいろんな議論をいたしました。別に私は自分のスタンドプレーをここで申し上げているわけじゃないんですが、私自身も、先生が今情熱を傾けて、時たま大きな声で私もどなられましたけれども、私もそれ以上に土光さんとやり合いました。私も日本の教育というものについては、いわゆる行政改革という形の場だけでとらえて判断をしてもらうということにかなり問題は多い、私もそういう立場に立っておるということでございますから、これはぜひ先生にも理解してもらいたいと思います。ただ、私は、今、国務大臣でありますから、財政も何も全部捨てて教育だけを別枠でやっていけという考え方はとれない。幾ら、教育諸制度を立派に続けていきまして、そしてその教育によって、二十一世紀に社会の中心になってくれる人たちの時代に日本の国が大きな財政の借金を抱えて、その後継者たちにこの後の始末をしるということは、決してこれは政治家としてはとるべき態度でもない。そういう意味から言えば、先ほど申し上げたように、行政の簡素化、効率化をして、躍動的な諸制度を引き出すと、新しい教育の制度もつくり上げていくということが私は大事だと思うから、今、行政改革に協力をしつつ、その中でも苦労をしながら教育予算の獲得に努力をしておるところでございます。
建設省の方の、課長さんの引用をなさいましたけれども、何か文部省の局長以下何もしていないように思えて、私は、先生の激励の言葉だと思いましたけれども、大変悲しい思いをして聞いておりました。私も、当選しましてから十五年間、文部省の予算のために一生懸命やってきた一人でありますから、文部省の次官以下、局長や課長や、あるいは一般の職員も、どんなに大蔵省と議論を闘わして、それこそ一本一本の鉛筆、下敷きに至るまで、強い教育論で財政当局と彼らは闘っておるということを私が一番よく知っております。
たまたまダムの例を先生取り上げられました。ダムの場合なら、そんなものやらなくていいと言う人はだれもいないです。しかし、教育のことになりますと、いろんな理論があるんです。その中でも文部省はいろんな立場を乗り越えて今日まで教育予算の充実に最大の努力をしてきたことは、私の少ない経験でありますが、よく承知をいたしておるわけでございますので、あえて文部省の次官以下、私の部下に対しても、私は一生懸命教育のためにやっておるということを、先生があえてここでお取り上げになりましたので、議事録にも明記しておきたいと思って、あえて私は、別に弁解をするわけじゃありませんが、文部省の職員も大変な努力をしておるということをぜひ理解をしていただきたいと、こう思うわけでございます。
基本的には、聖域論でいくかどうかということもございますし、もう一つは、行政改革、第二臨調というものが教育の諸制度にまで手を入れるべきであるかどうかということの議論が、先生も大変ここのところが問題であり、また重要な関心というふうに私は先ほどからお話を伺っておって感じました。私自身もそういう感じを持っております。だからこそ、私は臨時教育審議会という制度をお願いをしておりますのは、こういう制度の中で、基本的に日本の教育はどうあるべきなのか、もちろんこれからの制度も大事でしょうが、日本の教育は、国民のいわゆる多くの合意の中から、どのような制度が必要なのか。例えば公費のあり方、個人の負担のあり方等々も私は大いにひとつ御議論をいただく大事なこれは問題点ではないだろうかと、こう思っているわけでございまして、そういう意味で、臨時行政改革の中で、教育のところも同じように聖域ではないという形で教育の諸制度にメスを入れられてきたという今日の時点の中で、改めて国全体で、また内閣全体で、そして国民の多くの関心をいただきながら、教育というものは一体国民の中のどのような位置にあるべきなのか、教育行政全体の中にどのように位置すべきなのかというようなことなども私は含めて御議論をいただくということが大変大事なことなんではないだろうか。これは私は、与野党ともに、このことについては関心を持って、少なくともこの文教委員会にいらっしゃる皆さんは、教育については一番関心を深め、教育を大事にしておられる方々でありますから、私はそういう意味で、臨時教育審議会も、極めて今の時期に適切なものだろうというふうに判断をして、国会で今お願いをいたしておるわけでございます。
申し上げたいことはたくさんございますが、先生のお気持ちは私自身もよくわかっております。ちょっと過ぎたことも申し上げたかもしれませんが、優秀なる文部省の官僚の皆さんの私はその頂に立って今努力をしておりますということだけはどうぞ御信頼をいただきたい、あえてこう付言をさせていただく次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/38
-
039・安永英雄
○安永英雄君 私の意見とかみ合ったところもありますし、大部分はかみ合わないですな。例えば、本会議で説明をこの法案についてなさったときに、無利子貸与制度を根幹として存続させるという言葉を盛んに使われております。そして、きょうの提案でもそうですが、育英事業に関する調査研究会の報告というのもあるので、こう並べてあるところは私は真意のほどはわかるし、今の大臣のおっしゃった努力もわかるわけで、何も臨調から言われたから、そのままやったんじゃないんだという心意気を、あそこのところに示されておるんだろうと思う。それは、臨調の方から、全部有利子にせいと言わんばかりの指摘を受けて、やっとここで食いとめているんですぞというふうな心意気は私はわかるような気がするけれども、そう威張るほどのことじゃない、根本的に認めておるわけですから。大革改なんですよ、根幹という問題は。しかし、私はそういう点はわかります。また、官僚が幾らやったところで、これは限度のあるものということも私は承知しております。何もそこで源流したり野党の委員長連れていくほどのこともないかもしれぬ。私は心意気を先ほど申し上げたので、そして、余りに文部省、どんどん大蔵の攻撃を受け、教育の基本まで揺るがせられるような状態だから、私は頑張れと言ったわけです。
そこで、時間も本日のところございませんが、端的にお伺いしますけれども、財政が好転していくということになれば、有利子制度は、これはなくしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/39
-
040・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) お話の点は、国の財政が好転したときに有利子貸与を廃止して無利子貸与にするのかという端的なお尋ねかと思うわけでございますけれども、基本的には育英奨学事業は、先生、十分御承知のとおりでございますが、人材の育成に資するとともに教育の機会均等を確保するための私ども基本的な教育施策というぐあいに承知をしておるわけでございます。したがって、御指摘にもございましたけれども、今回の制度改正におきましても、私どもとしては無利子貸与制度を育英奨学事業の根幹として存続をさせていくという考え方でございますし、これに加えまして、量的拡充を図るために新たに有利子貸与制度を創設したものでございます。
今後の財政の問題についてどういう状況になるかということは、にわかに私どもからも申し上げにくいわけでございますが、全体的に、私ども先ほども申しましたように、育英奨学事業というのは基本的な教育施策であるというぐあいに理解をしておりますので、その育英奨学事業の充実ということは今後ともぜひとも必要であり、私どももそのために最大限の努力をしていきたいと、かように考えております。その点では、今回の制度改正の趣旨に沿って実施をしたいと、かように考えておるわけでございまして、その点、お尋ねは、端的に、好転すれば有利子貸与制度は廃止するのかというお尋ねなんでございますけれども、私どもとしては、御提案申し上げておりますような制度全体の充実ということで育英奨学事業の充実を図っていきたいと、かように考えております。もちろん、そのことについて衆議院での御議論で附帯決議があったことも十分承知をしておりまして、それらの点については今後の検討課題というぐあいに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/40
-
041・安永英雄
○安永英雄君 衆議院の附帯決議にまで触れられましたので、後で検討するというのはどういう意味ですか。これは財政が好転すれば有利子はなくしていくという方向に検討するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/41
-
042・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 私どもとしては育英奨学事業全体の重要性ということを十分認識をいたしまして、今回の制度改正でお願いをしているわけでございます。もちろん、提案理由その他でも御説明をいたしておりますように、量的な拡充を図るために、現在の財政の状況からすればこういう道しかないという考え方も基礎にはございます。したがって、こういう今回の仕組み、無利子貸与制度と有利子貸与制度ということで貸与する仕組みを考えたわけでございますけれども、「有利子貸与制度は、補完措置として財政が好転した場合には検討すること。」という御指摘はいただいておりますので、そういう時期が来ました際にはその問題に取り組まなければならないと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/42
-
043・安永英雄
○安永英雄君 先ほどの、あなた、これ現行法で実施するか、せぬかということと同じじゃありませんか。検討します、検討しますじゃ済まないんですよ、これ。大臣、そしてこの附帯決議については、よくそれを参酌してと言ってあいさつしたんですか、せぬのですか、これは。まあ、大臣、それは言わぬでいいですよ。それは大体形式的に決まっておることはわかりますから。落ちつくところは、絶対にこの二本立でのこの制度と、有利子、無利子、これはもう変えませんけれども、そう言われるんなら、検討しますと言って、その時期、あなた今その時期が来たらと言って、どんな時期が来たとぎにやるんですか、これば。ちょっとあいまいなことは一言わぬ方がいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/43
-
044・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) ここにも指摘されておりますように、「財政が好転した場合には」というのを具体的にどう判断するかという問題があろうかと思いますけれども、私どもとしては、制度を今回御提案申し上げているのは、もちろん基本的に今日の財政状況を踏まえた形で検討をしておるわけでございますけれども、全体的に奨学制度として、もちろん無利子貸与制度を制度の根幹といたしておるわけでございますが、私どもとしては量的な拡大を図るために、長期低利の有利子制度ということも量的な拡充を図る際の方法としては考えるべき手段というぐあいに考えて、今回御提案を申し上げておるわけでございまして、「財政が好転した場合には」という解釈をどう解釈するかの問題があろうかと思いますが、その時期には検討をしなければならない課題というぐあいに理解をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/44
-
045・安永英雄
○安永英雄君 別に私は揚げ足とるわけじゃないですけれども、あなた自身今決意のほどを述べて、二本立てが一番いいと思い込んでおると、こうおっしゃっておって、検討しますと言うけれども、その時期も何かわからぬのですね。これは恐らく大臣も先ほどちょっとお触れになりましたように、当然これはあなたのところで計画してあって、通るか通らぬかわからぬけれども、臨教審というようなところで二十一世紀に向けて、こういう問題も当然検討されるでしょうというふうなことですが、そういった時期ということに、私は、先ほどの大臣の答弁と総合すればそんな気もするんですけれどもね。これは文部省の大臣がよく言われる、そういう根本的な審議というのもあるけれども、文部省固有のこれは事務でございますということで、固有の事務でこれやっておられるのじゃないかと思うんですけれども、固有の事務で取り扱う内容ではないような気がします。
そこで、有利子が継続をするというと、財政好転のときにはどんなふうになるのですか。
その前にちょっと聞いておきますが、無利子というのを根幹とする、根幹とすると、こう言われておって、私は議事録を一生懸命調べてみて、これはたしか本会議で答弁された議事録の中からとったような気がするんですが、四月十二日の衆議院の本会議の議事録の中に「根幹」というのが出てきたわけです。提案理由の中には出ていませんね。法律の中にも出ていませんね、これ。そうすると、現在のあなた方が考えているような今度の改正案というものが実施の段階に入ったときには、今言ったような姿になるんですか。いわゆる無利子、これが根幹だと。そして有利子というのは、これはもう芽が出たか小枝ぐらいだと、横から出た。そういう姿なんでしょう、根幹というのは。
これはちょっと話がそれるけれども、私の家にヤマモモがあります。立派なヤマモモがある。私は植木というのは随分趣味持っておりまして、おやじの代からあるヤマモモの木がある。枝が五本出ているヤマモモの木。それは見事なものです。根幹の方が低くして、横から出た四本の方が大きいですよ。見事な木です。自慢の木です。これは今おっしゃったことは二本立てになっておりますな。根幹があって、この根幹というのはどんどん伸びにゃいかぬ。枝葉の方が大きくなっちゃいかぬ。芽ぐらいのものですか、小枝ぐらいのものですか、私のところのヤマモモの木のようなものですか。言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/45
-
046・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 私ども確かに法律上の文言としてはないわけでございますけれども、具体的な内容的な面で申し上げますと、例えば五十九年度予算における無利子貸与制度の新規採用人員が約十二万人、それに対して有利子貸与制度の新規採用人員が二万人というような事柄からいたしましても、まず量的に私どもとしては無利子貸与制度をこの育英奨学事業の事業内容としてはウエートをかけたものということはおわかりをいただけるかと思います。
それから補完的なといいますか、そういう感じが出ておる事柄で申し上げますと、育英奨学事業無利子貸与制度については、事業といたしましては、採用しております学校、例えば高校学校から高等専門学校、大学、短期大学、さらに専修学校についても無利子貸与制度は実施をするわけでございますけれども、今回有利子貸与制度をお願いをしております制度は、当面量的な拡大が特に望まれております大学、短期大学に限って適用すると申しますか、そういうぐあいに限定的に取り上げておるということからいたしましても、実態的にも無利子貸与制度と有利子貸与制度というものについて私ども対応しております点は、以上の二点からも、お尋ねの点で大変な一私どもよくはわからないんでございますが、今市し上げましたような実態から御理解をいただきまして、育英奨学事業の中では無利子貸与制度を根幹として、考え、有利子貸与制度をいわばそれを補うものとして今回御提案申し上げているという点は御理解をいただければと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/46
-
047・安永英雄
○安永英雄君 わき枝か芽ぐらいは出たか、それの一つの物差しで十二万人と二万人、十二対二ですか、真ん中の根幹が十二で横から出たのが二というんだから、ある程度想像できますわな、木の形は、二本立ては。そして、今おっしゃったのを聞きますと、いわゆる大学、短大というところだけにしておるんで。これ、ちょっとわき枝の直径がわからぬですわな。いずれにしたって数で示せばそういうものだと、こういってやっぱり依然として小枝は置いとかないかぬ、こういう今説明ですが、これは根幹を育てていくためには、真ん中のを育てていくためには、横から出ているわき枝というのは全部切っていかんと発展せぬものですよ、これ。天まで上らないかぬのですから、二十一世紀までいくんだから、これ、あなた方の考え方からいけば。これはもう有利子よりも無利子がいいですわな。無利子よりも返還免除がいいです。返還免除よりも給与がいいですわな、これ。だれでもわかったことで、あなた方もそうだろうと思うんです。そうでしょう。私はそう思うんだけれども。根幹は給与に向かって今からやらにやならんのですよ、二十一世紀まで。今みたいな財政苦しいばかりじゃつまらぬですよ、これ。バラ色の、とにかく私どもが二十一世紀を目指しながら給与に向かってやらなきゃ。枝が出ておると、なかなか伸びぬですよ、これ。そうすると、財政がよくなった、こういったときにはあくまでも残すというんだが、残すときのその姿というのはどういう形になりますか。これはちょっと大臣にお聞きしたいんですが、もちろん、大臣御異存はないでしょう。我々の望むところは、給与というところが、これはいいことに決まっているから、そこに向かってやらなきゃならぬけれどもというのがついでいるけれども、そうすると財政がよくなっても、あくまでも有利子制度というのは残していかなきゃならぬ、財政はよくなった、この二本立てのずっと伸びていく姿というのは。有利子の方も無利子の方も、極端に言うなら十二対一のこのバランスというのをずっとよくなってもとっていくということですか、こっちの方がよくなればやっぱり根幹の方に、こうしてこちらの方の枝葉の方を少なくしていくというんですか、そこらどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/47
-
048・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 先生のところで持っておられます立派なヤマモモの木というのを一度また拝見をさしていただきたいんですが、木の枝、幹というのもそいでいかなきゃならぬ面もございますし、茂っていって立派な木になっていく形もございます。例えで先生がおっしゃいましたから申し上げたわけでございますが、根幹というのは、無利子貸与制度というこの事業というものは、大事に守っていきたい。先生も今御指摘がありましたように、私も、でき得れば給与制という奨学資金制度は本当は、先進諸国も採用いたしておりますし、そのことがいいということは私もよく承知をいたしております。ただ、日本は昭和十九年というあの軍事的に一番厳しいときにこの制度ができたわけでございますから、当時といたしましては、大変、よくあの時代にこんなものできたもんだなということは、改めて政治家として当時の政治家の皆さんに対して本当に私は尊敬を申し上げるわけでありますが、当時といたしましては、今のこの制度をつくるのが精いっぱいであったと、こう思いますから、このことを充実改善をしていくということが基本的な私どものスタンスでございます。将来にとりましては、そうしたことはもちろん目標として考えでいかなきゃならぬことでございますが、その枝葉になっていきます有利子貸与制というのは果たして本当に悪いかどうかということは、これは今度からこの制度を取り入れたわけでございますから、もう少し見定めていくことも大事なのではないかなという感じを持つわけでございます。私ども教育に関係をいたしております政治家の立場から見れば、できるだけ教育基本法あるいは憲法の精神を教育奨学制度の中にもしっかりとこれは貫いていかなきゃならぬということは言うまでもないことでございます。しかし、昔の奨学制度というものをつくった当時、また、それから戦後のずっとこの過程、また最近におきます何といいましても量的な拡大、高等教育に進むのはもう三五%ということになってまいりました。そういう一つの時代背景、環境というものを考えたときの奨学生制度というのはどうあるべきなんだろうか、これは大変私は大事なところだと、こう思うんです。私どもの、先生ももちろん一番御心配なさっておられる立場でございますが、そういう先生方や教育の制度を考える政治の立場からいえば、できるだけ将来の目標は有利子より無利子、無利子より返還免除、返還免除よりも給与、この理想はみんなで考えておられることだと思いますが、実際これを受けるのは学生さんでございます。その学生さんの状況が十年前、二十年前の学生さんの教育を受ける環境と今と違うと思うんです。そして、受ける学生さん方が、そのことが確かに無利子の方がいいに決まっていますけれども、有利子が本当に障害になるかどうかということも、もう少し行く末見てみなきゃならぬのじゃないでしょうか。これは学生が選ぶことでありまして、だまして無利子で貸しますよと言って、利子を後から出しなさいと言っているわけじゃないわけで、こういう制度もございますよという選択というものを、受ける学生にも与えているわけであります。その学生さんの今の教育環境、十年前、二十年前、おのずと違うと思うんです。それから、教育を受ける個人個人の立場も違うと思います。あるいは、将来その学生さんたちが返還をしていかなきゃならぬときの環境もまた違ってくると思います。それから、学問の分野も違うと思いますね。そういう意味で私は、それは無利子よりも有利子がよくないことはわかってますが、本当にこのことが枝葉としてどういうように、先生、御心配のように枝葉の方が茂っちゃうのか、幹をしっかりするために枝葉をある程度そいでいかなきゃならぬ、ある程度切っていかなきゃならぬという木もございます。そういうことをどうするのかということについては、もう少しこの制度を国会で御審議をいただいて、そしてこの法案を通していただいて、この制度を具体的に進めていくといった場合に、その行く末は少しみんなで見ていく必要があるんではないか、私はこんなふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/48
-
049・安永英雄
○安永英雄君 わき枝、太らせるか太らせぬか今からの問題だと、残すなら残すと。それは小さな枝だけ残したり切ったりするけれども、横枝は、わき枝は置いておく方がいいと、こういう考え方ですね、今おっしゃったのは。それを大きくするか小さくするか、わき枝はどのくらいの長さで切るか、それは今からだと、こう言うてますわな。どうしてわき枝残すのか。有利子は悪いことに決まってますよ、無利子の方がいいことは決まっておる。それを残さんならぬというのは、今のお話からいうと、そういうものを望んでおる人もおるんじゃないかというようなふうな感じをちょっと受けるんです。学生諸君がしょっちゅう来ますわな。毎日毎日私どものところへ陳情に来ますよ。一人として、とにかくわき枝も置いておく方がいい、私はやっぱり量の拡大ということで、と言う人は一人もおらぬですね。
もう時間がありませんから、次の問題は次の委員会でやりますが、一つの例え話聞いてください。私は日曜日家に帰ると、下の方に日雇い労務者がおるんです。この人はしょっちゅう来ますわね。この前でも、前の前の日曜日に帰ったところが、血相変えて私のところへ来ておるんですよ。手に持っておるのは共通一次の、あの新聞に載りますわな、共通一次の試験が。あれしっかり握っているのと、免許法のチラシ、利子がつくというので反対しましょうというチラシを私のところに持ってきて、血相変えて来ておるんです。この人はしょっちゅう、帰ってきておると思えば、晩方もう私のところに来るんですが、もう自分の子供が五年生です、男の子が小学校の五年生です。そのことにこだわるんです。かかわっておるんです。必死になっておるんです。自分は日雇い労務者で働いておるけれども、息子は大学にやりたい。もう奨学金というのは頭の中にあるんですよ。小学校の五年生でっせ。頭いいです。これはなかなかできがいい。恐らく、あのおやじが、今からあれが大学に入っちゃうのは六、七年後でしょうが、五年生ですから、これが急に金持ちになることはない。大体、育英会の収入の基準の中に悠々と一番で入るぐらいだろうと私は思う。成績はいい。なかなか見込みがある。だから、もうあの下の方に、今苦しい生活していますがね。唯一、子供に期待をかけて、そしてもう頭の中には共通一次の問題と奨学金という問題があって、その一家は生活設計、将来の展望までつくっておるんです。それがどうもおかしいというんで私のところに来るわけですよ。ただ、今の学生諸君が早く渡せ早く渡せと、有利子反対と。学生諸君だけじゃないですよ。私は、もしもこの有利子制をいいという学生がおったり父兄がおったら、それは悠々と生活できるんですよ。生活ある程度裕福でなければできない。本当に苦しくて、下の者はそんなものじゃないですよ。利子がついたといったら、もうぱっと来て、息子の将来どうなるんだと、こう来るんです。心配するな、おれが今度の法律はつぶして見せると言うて私は帰ってきたんですけれどもね。私はそういう心組みでまた帰ってきておるんですがね。
もう時間がありませんから私はこれぐらいでやめますけれども、ただ単に、利子で恩恵を受ける者がおるんだし、量の拡大した方がいいんだというふうなことは、本当の生活、苦しい生活をやって、そして奨学金をもう計画の中に入れて一生懸命やっておるのはたくさんおるんですよ。それまでが動揺しておる。どうしても利子つけてくれるなと言っておる。そういうこともやっぱり頭の中に置いておいてもらいたい。もうこれは、たくさん質問残りましたけれども、また次の機会に、あるそうでありますから、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/49
-
050・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。
午後零時四十三分休憩
—————・—————
午後一時四十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/50
-
051・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き日本育英会法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/51
-
052・本岡昭次
○本岡昭次君 午前中、理事会で確認をされて私たちに配付をされました「日本育英会の奨学生に対する救済措置について」というこの文書について若干お伺いをしたいと思います。
この救済措置は、衆議院からの審議の経緯では、在学八万二千人のうち、特別貸与相当数の四万七千人についての具体化であって、残りの三万五千人については現在なお検討中ということであります。この点について、先ほど我が党の同僚委員が残りの三万五千人はどうなっているのかという問題についての重ねての質問についても現在なお検討中ということであり、また委員長の方もそれは「可能な限り採用するものとする。」という、「可能な限り」というところに今後の検討の問題が含まれているんだということであって、安永委員の方も納得をされました。
そこで私はお伺いするんですが、別紙(二)のところに日程が出ておりますが、一体、今から残された日程の中でなお残りの三万五千人の検討が実際問題としてできるのかどうかということであります。私はできないと思うんですよ。やろうとしてできないことを、その場限りの言葉でもって検討中でありますと言って逃げていく、私はこういう答弁に今まで再々出くわしているんですが、そのたびに、いわゆる大臣答弁というふうに類すること、あるいは委員会が終われば、もうそれでおしまいだというふうな非常に委員会を軽視したそういう場に出くわします。先ほどの宮地局長のなお検討中というのも、できないことを、とにかく検討しておると言うておけば済むんだというふうな気がして仕方がない。そういう意味で、私は委員会の侮辱ではないかというふうに思っているんですが、もし、そうでないなら、残された日数の中で、いつまでにできるかできないかという問題も含めて検討して、そうして、どうやろうとするのかという問題をここではっきり出していただかなければ私は納得できない。局長、そこをはっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/52
-
053・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) この奨学生に対する救済措置の問題につきましては、国会の御論議の過程で、最初、私ども予定をいたしておりました予約の採用候補者の点についてまず取り上げて対応したわけでございますけれども、さらに全体の国会審議の中で、在学採用予定者の問題についてもさらに対応をすべしという国会の御意思を受けまして、私どもとしても全体の置かれております、例えば先ほども御説明したわけでございますが、夏休みを前にしての対応としてどうするかということでぎりぎりの、緊急に救済を要するものについて可及的速やかに募集を始めるということで対応したわけでございます。
そうしてちょっと数字についての詰めたお尋ねもございましたので、御指摘のように四万七千人程度の者について対応するということで考えましたが、さらに、それでは残る者をより多く救うべきであるというような論議もございまして、私どもとしては、可能なぎりぎりの数字で一応五万八千人程度というところまで対応をするように現に出してあるわけでございます。
先ほど私お答えしましたのは、私どもとしては国会での御論議を踏まえて誠心誠意対応しておる点について御説明をしたつもりでございまして、具体的な今後の国会の審議との関連もあるわけでございますけれども、例えば、各大学の方から、実際に採用予定枠よりも、さらに上回った数字で出てきたときにどう対応するかというようなことなども、現実問題としては起こり得る可能性はあるわけでございます。私どもとしてもぎりぎりの対応をすべく、その点については、国会の御論議も踏まえて誠心誠意対応しておるという点で申し上げたことでございまして、私の言葉が至りません点がございましたら、その点は先ほども安永先生からおしかりを受けたわけでございますけれども、私どもとしては、仕事の処置としては誠心誠意対応しておるつもりでございますので、その点はひとつ御理解を賜りたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/53
-
054・本岡昭次
○本岡昭次君 今の答弁を整理しますと、四万七千人についての具体化であったけれども、なお検討して、それを五万八千人にまで広げた、誠心誠意やった、それは結構だと思います。奨学生も喜びますし、文部省の対応として私は別に異議もありません。
ただ、その問題は、そうすると五万八千人で、これでやるだけのことをやった、もうこれ以後検討の余地はありませんということなのかどうかということについては、大学の方がさらに推薦をする人数が枠よりも広がってくるという状況があっても、その中からさらにまだ拾い上げていく余地というものを残しておきたいという、その部分だけが検討の内容として残っているというふうに我々は理解をすればいいのかどうか、この点をもう端的に言ってください、そうか、そうでないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/54
-
055・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 具体的な御指摘で、お尋ねが大変ぎりぎりのところでどう考えておるのかというお尋ねでございますので、一つの事柄として、そういうことを先ほど申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/55
-
056・本岡昭次
○本岡昭次君 一つの事柄って、二つ三つの事柄あるんですか。それしかないのか、まだあるのか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/56
-
057・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 私どもの考えております点では、それ以外にはないと私は理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/57
-
058・本岡昭次
○本岡昭次君 それは大体何人ぐらいが想定できるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/58
-
059・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) その点は、個々の大学がこれから対応した結果がどう出てくるかということを踏まえてみないと対応のしようがないと私は判断をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/59
-
060・本岡昭次
○本岡昭次君 今のその問題ですが、いつになったらそれははっきりするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/60
-
061・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 私ども現在の状況で判断している点で申し上げますと、各学校での奨学生の募集というのが七月十日から八月九日の間にかけてということでございまして、それを受けて選考し、それが私どものところへ、育英会の方へ上がってまいりますのが九月の一日という状況になると日程的には考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/61
-
062・本岡昭次
○本岡昭次君 委員長も、残された三万五千人というこんな数じゃなくて、八万二千引く五万八千ということにこうなったようで、残りが二万四千人ですか、二万四千人にこうなったわけで、もうその分についてはほとんど、後でこれ言いますが、可能性はないんです。だから、可能な限り採用するということの中に、残されたこの人数が含まっているということではない。ここのところを僕ははっきりしておいてもらわにゃいかぬと。だから、検討中、検討中と言って、具体的に中身も言わずに、そしてまあ何とかなるという、こういうやり方を私はいけないと、こう言っておるんですよ。大臣、私の言っていることわかっていただけますか。はっきりさしてもらわな困るんですよ、こういう問題。ひとつ大臣の見解を伺って次へいきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/62
-
063・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 先ほどから局長も申し上げておりますように、国会の御審議を決して無にもいたしておるわけではございません。たまたま法案の提出をいたしましたそういう種々の要件もございまして、奨学資金を期待をいたしておる学生諸君に対して大変な迷惑をかけておるということについては、私は、極めて遺憾だということで、衆議院の委員会でも御答弁を申し上げておるわけでございます。あくまでも衆議院そして参議院、文教委員会の先生方の御意思を、そして委員長を通じて私どもにお示しをいただいたわけでございますので、誠心誠意をもってこれに対応してきたつもりでございます。また、今後とも御指摘いただきました点につきましては、十分にその趣旨を踏まえながら、なお一層の努力をいたしたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/63
-
064・本岡昭次
○本岡昭次君 今の問題は、私は別に納得しているわけではないんで、後ほどの問題と絡んで、またこの委員長の方にもはっきりとした答えをいただきたいと思っているんです。
それで、もう一つ重要な問題は、この文書の中に、措置方針に一、二、三と三つのこの項目があるわけで、この一つの項目には、「現行法に基づき、可及的速やかに募集を開始する。」、こういうふうに書いてあるんですね。それで、しかし私の理解では、この一の「現行法に基づき」という項目と、第二項に書いてあるその「右記の募集の基準は、原則として現行の特別貸与相当の基準とし、一般貸与として採用する。」というこの問題はこれ矛盾をすると、こう思うんです。これを委員長が文教委員長としてこの中身を確認され、理事会としてもしこれを確認をされているとすれば、文教委員長なり文教委員会の理事会が、文部省なりあるいはまた育英会に対して現行法上に違反することをやれということを指示したということに私はなると思う。大変なことをこれこの委員長なり理事会はやっていると、こういうふうに思うんです。
そこの理屈はおわかりですかな、理事会の方。説明しましょうか。こういうことなんですよ。この「右記の募集の基準は、原則として、」と、ここの「原則として、」というこれはどういう意味を持つのか、ここが難しいところではないかと思うんですが、「現行の特別貸与相当の基準とし、」というのは、御存じのとおり、日本育英会法の第十六条の二項に、貸与には二つの種類があると、一般貸与とそれから特別貸与のこの二種類があって、そしてそれぞれ特別貸与には特別貸与の選考基準が、その学力並びにその家庭の経済状態というものがある。それから一般貸与を選考する場合も、一般貸与の選考の学力と貸与の基準、それぞれ全然別のものなんです。現行法は別のものなんですよ。別のものでありながら、ここでは一般貸与の奨学生を募集するについて特別貸与の基準でもって採用すると、こうやった。現行法でそんなことができるんですか。
現行法でできないことをですね、一体、こういう文書で出してそれでさせる。その結果として、ここにこの七月六日付で「昭和五十九年度大学一般奨学生の推薦について」という文書が出てきているでしょう。そして、ここには明確に「昭和五十九年度大学一般奨学生の推薦についで(依頼)」、三角さんの理事長名で出ておるんです。明確に「大学、一般奨学生の推薦」と、こう出ている。現行法に基づいて大学一般奨学生の推薦であれば、十六条の二項に従ってですね、一般奨学生の選考の学力並びに家計の状態の基準に合わして選考してこないかん。ところが、その中の文章になるとこういうことが書いてある。「とりあえず、前年度の特別貸与奨学生の基準(学力・家計とも)に合致する者を御推薦願います。」と、こうなっておる。それで、この標題とそれからここに書いてある推薦と全然違うことが起こった。
なぜ起こったか。それは、ここに方針の中にそういうことをせいと書いてあるから、それを具体化したらこういうことになるんです。で、これは「現行法に基づき、」。だれが責任とるんですか、こんなこと。僕は、初めこれは育英会が何とむちゃなことをしたんかと思うし、文部省もいいかげんな指導をしたなと思った。ところが、そうじゃない。問題はこういうものを出したところに責任があって、これに忠実に従ったまでですよ。ちょっと僕の言うとることはおかしいですか。「現行法に基づき、」でしょう。だから、現行法に従って募集せないかんでしょう。現行法と違う募集の仕方を——現在では現行法に基づく以外に募集のしようがないじゃないですか。育英会法に上回る法律がどこにあるんですか。文部大臣が特別のそれに対する指示か何か出したんですか。現行法にかくかくしかじかあるけれども、しかし、この際やむを得ぬからこういうことでやるようにと言って、何かそういうものがあったんですか。ないんですか。(「そんな超法規ない」と呼ぶ者あり)ああ、ない。それを理事会がやっておる。ちょっとそこのところ解明してもらえませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/64
-
065・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/65
-
066・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/66
-
067・本岡昭次
○本岡昭次君 文部省どうですか、今まで中身を私は相当言いましたから、ひとつ文部省として、現行法に基づいて、この現行の特別貸与相当の基準で一般貸与の学生を募集するということ、現行法上どういう根拠でこれができるんですか、はっきりさしてください。はっきりそこだけを、これとこれとこうしたらこうなりますという、はっきりそれだけ言うてもらったらいい、余分なこと要らぬから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/67
-
068・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、私どもとしては、国会の御意思を外しまして、どういう事柄が行政上措置ができるかということについて検討いたしたわけでございます。政府の立場といたしましては、問題は五十九年実予算で内容的に固められましたものを、制度としては育英会法の改正案ということで、予算関係法案ということで、国会の提出期限、予算関係法案の提出期限ということについては私どもとしてそういう形で処理を進めてきたわけでございますが、現実問題として、私どもとしては予算の成立と法律の成立とが整合性を持って実施できるということを前提といたして処理を進めてきたわけでございますけれども、現実の法律の問題につきましてはなお国会で御審議が行われているという事態になったわけでございます。
そこで、国会の方でいろいろ御議論があった末に、緊急に救済をする必要のあるものについて措置を行政当局で考えるという御意思を受けまして、私どもとしても具体的な措置を、それぞれ、当初予約採用について対応し、さらに在学採用についても緊急に救済をするために対応をしろということで、それを受けて行政的にとり得る範囲内のことという判断をいたしましてとったものでございます。
現行制度では一般貸与の基準と特別貸与の基準とがございますけれども、現行の一般貸与の基準で募集採用を行えば改正法成立後、改正法による無利子貸与の基準に該当しないものが出てくるということがございますので、改正法による無利子貸与に吸収することが困難なわけでございます。そこで、在学採用者の一部について採用を行う今回の募集の基準としては、改正法成立後、改正法に吸収できる特別貸与の基準で募集をするということにしたわけでございまして、これは既に救済措置を講じております予約採用者との均衡も考慮いたしまして、緊急に救済すべき必要性が高いものについて対応をしたということでございます。
もちろん、一般貸与自体の基準が変わるわけではございませんので、今回の募集に際しての、いわば緊急避難の措置としての基準ということで、私どもとしては従来の特別貸与相当の基準という考え方で対応をしたわけでございます。このことについては、先生お示しのとおり、育英会が募集に当たりまして、この基準を定めて学校に示して対応しているわけでございます。
私どもとしては、行政上とるべき措置としては妥当な範囲内ということで、こういう救済措置で対応をするということで、御指摘の点は、いわば緊急に救済するために行政上どこまでの措置がとれるかという事柄の中身として今そこに示されておりますような形の対応を私ども育英会にも指示をし、それに基づいて既に事務処理として行われているという事柄でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/68
-
069・本岡昭次
○本岡昭次君 随分いろいろと説明をしてもらいましたけれども、僕の聞いているのは、現行法に基づきということでいった場合に、七月七日付のこの募集の文書、現行法に基づいてはやられてないと、新しい別な措置をこれはとってやったということなんでしょう、これは。今おっしゃったように行政措置とか緊急避難、いろいろおっしゃったけれども、今までその持っていた基準そのものを変えてここでやられた、こういうことなんですか、それとも現行法というものの中で今までやってきたことをそのまま当てはめたのか、全然別のことをしたのか、そこのところどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/69
-
070・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) その点は先ほどの御説明の繰り返しになるわけでございますけれども、現行法の範囲内で行政上の判断に基づいてとり得る措置、それは先ほども申しましたように改正法成立後、改正法による無利子貸与の基準に該当し得る範囲内で対応をするということが、行政の整合性としては、こういう緊急に対応する形としてとるべき私どもの対応としては、そこが限度ではないかというぐあいに判断をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/70
-
071・本岡昭次
○本岡昭次君 今まで大学の奨学、一般の学力と特別貸与奨学者の学力の基準はどうなっておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/71
-
072・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 学力基準につきましては、大学の一般貸与は高校成績三・二以上、特別貸与は高校成績三・五以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/72
-
073・本岡昭次
○本岡昭次君 そうすると、現行法に基づいて大学一般奨学生の募集を行われておれば、三・二以上のいわゆる学力という人はこの推薦の基準の範囲の中に入るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/73
-
074・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘の点はそのとおりでございますが、私ども、現在、国会で育英会法の改正の審議をお願いをしている立場といたしましては、行政的に改正法に吸収し得る範囲内での措置を緊急にとるべき措置の範囲内と考えまして、ただいま一応育英会名で出しておりますような考え方で措置をいたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/74
-
075・本岡昭次
○本岡昭次君 だから、前提としては現行法に基づくじゃなくて、改正法を前提にして、改正法になればこうなるだろうと、そういう立場で現行法を当てはめたらこうなるとやっているんじゃないですか。だから、ここに矛盾があるんですよ。大学一般奨学生というものを現行法に基づいてやったら三・二以上の学生を推薦する、それ以外にやりようがない。だけれども、それをやると、今度は改正された法律の中で三・五以上でなければ有利子になるというところから、あなた方が整合性とかいろいろなことをつけて、そして、それを今度は特別貸与学生の募集基準でやれ、こうやっているでしょう。だから、現行法に基づき、法律がまだできてないのに、それを想定をした上で、通るということを想定した上でそうしたことをやっていってるんじゃないですか。それが厳格な意味で現行法に基づくということとは私は思えぬね、それは。現行法に基づくというのは、今、現在、現行法しかないんだから、それに基づく募集しかできない。今審議しているこの法律が通ったらこうなるから、そのことを前提にしてやるというふうなこと、僕は納得できないね、それは。それは厳密な意味で現行法に基づきということなのかどうか。私たちは今何のために審議しておるんですか、時間さえ過ぎればいいんですか、これ。あなた方は、既に改正法に基づくことを頭の中に入れて、そして現行法を全部そこに当てはめていっている、そんなことはできるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/75
-
076・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 私どもといたしましては、先ほども申しましたように、今回の内容を盛り込んだ予算をお願いをしまして予算が成立をいたしておるわけでございまして、それに基づく法律改正をさらに国会に御審議をお願いをしている立場にあるわけでございます。したがって、私ども当初救済措置として考えましたのは、予約採用についても留保をつけて募集をしたわけでございますけれども、予約採用については既に奨学生となるべき者が特定をされている。しかも予約採用の場合は、先生、御案内のとおりでございますが、四月から大学生になった場合に奨学生になるということを前提にして、奨学生となるべき者が特定をされているというようないろんな要素を加味をいたしまして、予約採用については、この際緊急の措置をとるべきことが必要ではないかと判断をして対応をしたわけでございます。在学採用につきましては、これから募集をしまして、どういう方が基準に該当して奨学生として採用されるかということはまだ決まってないわけでございまして、これから決まることになるわけでございます。その際に、私どもとしては、もちろん法律の改正をお願いしておる立場から申せば、それが成立をしまして募集を行うというのが本来の行政としてとるべき態度というぐあいに理解をしておったわけでございますけれども、国会の御審議の過程で、現行法に基づく在学採用についての措置ということを対応すべきではないかという御趣旨を踏まえて、行政上それに対応する対応の仕方としてはどういうやり方があるかということを考えて措置をいたしたものが、先ほど来御説明をしております中身でございまして、私ども行政を担当する者としては、もちろん、この法律案の御審議がかかっている段階では、むしろ、そういう措置を講じない方が、本来、国会の御決定を待った上で対応するということが政府側のとるべき態度ではないかということで対応してきたわけでございます。したがって、それは在学採用については法律の決定が出た後に、例えば廃案になりましたら廃案になった段階で現行法で措置をするというのがとるべきひとつの態度だと私どもは理解をしておったわけでございます。しかしながら、こういう審議の過程の中で、法律案の審議が行われておるけれども、何らか緊急に救済をする事柄について、在学採用について対応を考えるということについて国会の御示唆を受けまして、行政府側として対応し得る内容としては、先ほど来御説明しております事柄で対応するということにならざるを得ないという立場に立っておるわけでございまして、その点は、私どもとしては、国会の御意思に沿って、行政府としてできる範囲内の最大限の事柄としてはこういう対応ではないかということで、先ほど来申し上げておりますような措置で既に育英会にも指示をして、そういう実務は既に動いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/76
-
077・本岡昭次
○本岡昭次君 今のでよくわかりました。
それでちょっとそちらに聞くんですがね。結局、無理をさせたらこういうことしかできぬということなんですよ。現行法に基づいてやれとおっしゃった。しかし、いろいろ考えてみても、この法律改正というのが目の前にぶら下がっているから、こういう現行法上の中の矛盾したことをここに持ち出してきた。それでこれが成立してから募集したかった、それはそれでいいです。だけれども、国会の御意思に従ってこうならざるを得なかったというんです。あなた方がこういう無理をさしたんや、文部省に。そうでしょう。だから私は言っているんですよ。だから、これ、一体こういうことをあなた方も認めてないからいけないんですよと言うんですよ、ああ言っているんだから。あなた方の言ったことをやろうとしたらこういうことしかできませんと言う。しかし、こういうことというのは、今言っているように、現行法の十六条の二からいけば、明らかに学力基準というものを、違う学力基準で違うものを選ぶということが起こってしまう。だれがこういうことについて責任をとるのか。今の論議をずっとしたら、結局、こういうことをさせたところがそれでいいんだと、やむを得ないんだということを、そこをはっきりさせてなかったら向こうかわいそうじゃないですか。委員長、どうですか。一遍、理事会ではっきりさせてください、こんなもの。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/77
-
078・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 今のお話、理事会での各党の意見を聴取した上で、いろいろまた態度を決定したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/78
-
079・本岡昭次
○本岡昭次君 それで質問だけ先にせいと言うんですか。質問だけはせいと言うんですか。
いや、こんな大事なことは、結局、きょう朝から、あなた、このことで話がごたごたしておるんだから、はっきりさせてくださいよ。今言ったのはそのとおりだと言うのか、おかしいと言うのか、はっきりとお墨つきを文部省に与えてやらぬといかぬでしょう、こんなことをやらしておるんだから。それは衆議院の理事会がやらしたのか、こっちがやらしたのか知らぬけれども、しかし、委員長は、両方の委員長がそのことを要請したということになっているんでしょう。それで、こっちの理事会の方は、後からこれについて、きょう初めて見せてもらったということになっておるんだから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/79
-
080・長谷川信
○委員長(長谷川信君) じゃ、ちょっと休憩します。保
午後二時二十一分休憩
—————・—————
午後二時五十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/80
-
081・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいまから委員会を再開いたします。
本岡君の御発言につきまして、ただいま理事会を開きまして各党の御意見を聴取いたしたのでありますが、結論に至りません。したがいまして、後刻、理事会を開きまして理事会の結論が得られるようにこれから進めさしていただきたいと思いますので、ただいまのを御了解いただきたいということと、本岡君の質疑は保留をして次回に回していただきたいということであります。
それでは次の質問の方、高木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/81
-
082・高木健太郎
○高木健太郎君 この育英会法というのが昭和十八年に創設されたということでございますが、ちょうどこれは戦争中でございましたが、戦争中にこういうことが持ち上がってきた、こういう育英会というものをやろうとしたそのときの趣旨というものはどういうものであったでしょうか。これをまず最初お伺いしておきたいんですが。
あのころは学生は随分大勢戦線に徴発されたわけでございますし、物資も非常に窮屈になってきたときであろうと思います。そういう中で特に政府がこういう育英会法というものを創設されたという、そういう御意思はどういうところにあったのかということをまずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/82
-
083・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘のとおり昭和十八年にこの日本育英会が大日本育英会として発足をしたわけでございまして、当時、御案内のとおり戦時体制下でございまして、経済的事情から進学困難な者が増大をして教育界初め関係者の間にこの育英奨学制度創設の要望が大変強まったというようなことがございますが、そのいわば直接的な原動力といたしましては、教育の振興が国の一大事であるというような考え方が基本的にございまして、教育問題に取り組んでおりました国民教育振興議員連盟の提案が出されたという形があるわけでございます。
最初、財団法人大日本育英会として、国家的規模の学資貸与事業を開始をするということになり、さらに昭和十九年、大日本育英会法に基づきまして特殊法人大日本育英会として設立をされたわけでございます。戦後、憲法二十六条に基づき「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」が規定をされ、これを受けて教育基本法第三条が定められておるわけでございまして、それらを踏まえまして、全体的には非常に学校教育全体の普及拡充ということが見られたわけでございます。
当初は、少数の学生生徒を対象とするという形であったかと思いますが、時代の進展とともに、その点は拡充をされて、今日に至っておるわけでございます。その点では、発足以来の今日までの拡充の中において、順次、そういう教育の機会均等の精神を生かすということで、その理念は生かされてきておるものというふうに私どもは理解をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/83
-
084・高木健太郎
○高木健太郎君 教育の機会均等というような言葉は、恐らく戦後の憲法ができてからでないかと思いますので、その前の十八年あるいは戦時中のときは、そういうことよりも経済的の理由ということが主であったでしょうし、国家社会に有用なる人材を育成するということの方が重要であったと私は思うわけです。
その育英会の奨学生は徴兵ということはどうなっておったでしょうか。学徒でとられた者がだんだんこのころからふえてきたと思うんですが、もらった人たちは、徴兵は免除されたでしょうか、どうだったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/84
-
085・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 設立当時のお尋ねで、育英会の奨学生は徴兵を免除されたのかというお尋ねかと承ったんでございますが、そういう事柄はなかったというぐあいに私ども承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/85
-
086・高木健太郎
○高木健太郎君 しかし、とにかく、ほとんどすべての人、学生も、国民全体が戦争に行ったというときに、こういう財団が設けられて、国家百年の計のもとに、立派な人材を養っていこうという、教育に非常にそのときに一生懸命になったということだけは私は理解できると思うんです。その精神は現在も私は変わらないと思うわけです。
そういうことで見てきますと、育英会の報告によると、奨学金を受けた者がこれまで三百二十六万、総貸与額が七千四百十九億というふうに非常に多額の金を使って多くの人材を養ってきたということは、私、認めるものでございます。
ところが、大蔵省の意見としては、だんだん財政負担が大きくなっていく、一般会計からの持ち出しが次第にふえていくという、五十九年度には千百八十億円余りである。そのうち政府の貸付金が八百二十二億ということになっておりまして、多額の政府資金がそこに投入されているということでございます。そういうことから、しかも、割りと、この奨学金の返済金が十分でないということから、これはますます政府の投入がふえていくのじゃないか。しかも、貸与免除額が昨年度末で三八%あるというようなことで、どうしても政府のそれに対する投入がふえていくんじゃないかということですね。こういう意味から大蔵省としては、特別貸与、いわゆる月額が多いし、それから一般貸与並みの返還しかしなくともよろしいとか、あるいは返還免除で一定期間の学校教育職その他についたものは、これは返還を免除する、こういうことをまず切っていきたい。そして、いわゆる量的にふやすというようなことを大蔵省は考えていかれたのではないかというように思うわけです。実際、また、第二臨調の方の言い方としては、これはもうそういう返還は全部利子をつけろ、それから免除はやめてしまえというようなことがございましたが、しかし、調査研究会の方では、返還免除ということは、これは残しておこう、しかし一部有利子制にしよう、こういう二本立てで量的拡大を図ろうというようなことであったろうと思うんです。
文部省は、その第二臨調の方の言い分はとらないで、そして返還免除の方はそのまま残された——そのままかどうか知りませんが、そういう制度は残されたということなんです。有利子制についても、多分、先ほども文部大臣おっしゃいましたけれども、教育のことを考えれば、何とかもっと有利に学生を勉学さしてやりたいというお気持ちはあったでしょうから、何とか抵抗はされたんじゃないかなと、こう思うんですけれども、我々普通の者が考えますのは、この大蔵省の意思がだんだん段階的に有利子化を進めていこうというふうに、初めの間はそう言っておりました。だから、我々の不安としては、だんだん有利子化をこれで拡大していくんじゃないかという心配がどうしても残るわけでございます。しかも、大蔵省や第二臨調の考え方は、財政窮迫という側面からだけしか見ていないように我々は感じを受けるわけでございますが、将来、文部省はどのようにこれに対して対抗していかれるか、この決意が、私非常に大事だと。それは昭和十八年の戦時中にもかかわらず、その財政圧迫、苦しかったときにもかかわらず、こういう制度をつくり出されたそのときの議員の先生方の御意思をぜひ貫いていただきまして、大蔵省の財政の方からの圧迫というようなものに対してはぜひ抵抗していただきたいと、こういう決意をまずお聞きしておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/86
-
087・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、臨調でいろいろ議論をされた事柄はあるわけでございますけれども、その後、私どもとしましては、御案内のとおり、調査会を設けまして、教育施策としてどうあるべきかという考え方のもとに検討をいただいたわけでございます。そして結論的に申し上げますと、
育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としていることにも留意し、現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。
という結論をいただいて、その趣旨に沿いまして、今回の法律改正でも、この調査会でいただきました御議論を踏まえまして、私どもとしても制度改正をお願いをしている点でございます。私どもとしては、先ほども申しましたような無利子貸与制度を国が行う育英奨学事業の根幹として存続をさせていくということについてはいささかも考え方を変える気持ちは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/87
-
088・高木健太郎
○高木健太郎君 御存じのとおり、欧米の主要国、先進国では今局長がお話になりましたように、年間の予算額としましても、アメリカは一兆四千九百億、これは五十四年でございますが、イギリスが千四百八十億、西ドイツは四千五百億、これに対して日本は九百七十億。イギリスの千四百八億というのは四十九年度で、日本の九百七十億というのは五十七年度でございます。このように総額におきましても日本をはるかに上回っているというわけです。御存じのとおりでございます。また、国公立だけで見てみますと、一人当たりの最高の支給額というのは、先進各国の平均ですけれども、三十五万円から八十九万円、五十七年度。日本は三十一万円である。また、受給者の割合もアメリカは六割、イギリスが九割、西ドイツが四割、日本が一割であるということです。西ドイツ、イギリスは御存じのように大変財政的にも窮迫しているのではないかと私は思いますし、そうであるとこう思うわけです。それでもなおこれを続けているということは私は学ぶべきところではないか。あるいはまた、これは後でもお聞きしますけれども、何か別の考え方ですね。というのは、日本の社会と欧米先進国の社会とは必ずしも同じではありませんから、また学生の変化も同じではないから、だからこういうふうなのがよかったという、そういう理由をお持ちだろうと思うんですね。そういう意味では、ただこの数字だけで、私は日本はおかしいと、こういうつもりはございませんけれども、一般に受け取れば、同じように日本は今現在GNP第二位であって、世界の豊かな国であると言われている日本で、どうしてそれができないだろうかというのが一般の人たちの難問ではないかと、こう思うんです。そういう意味では、いろいろ調査研究会だとか、臨調の方はこれは行政改革の上からだけ見ますから、これは無理でございましょうが、調査研究会あたりではかなりの議論がされていると思いますが、今の私の質問に答えるような討議が行われたとしたらば、それをひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/88
-
089・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 調査研究会におきましても、外国の事情も調査をいたして、それらの点については十分幅広く議論をしていただいたわけでございます。先生御指摘のように、例えばアメリカ、イギリス、西ドイツ等の諸外国においての公的な育英奨学事業というのは給付制度が主体でございます。そして、一部これを補完するものとして貸与制が実施をされており、御指摘のように事業規模も相当大きいわけでございます。しかしながら、先生のお話にもございましたように、やはりそれぞれ教育制度というものは国によって、国情なりあるいはその他社会全体の置かれております状況、歴史的なもの、いろんな要素がございまして、それぞれの国にふさわしい高等教育の制度というものが置かれているわけでございます。さらに、育英奨学事業の経費の点だけで申し上げますと、確かに日本の場合は、まだ非常に最的にも十分ではないという点は私どもも十分認識をしておりますけれども、片や国際的な比較で見る場合には、例えば租税負担率がどうなっているかというような事柄も背景にはあり得るわけでございます。
そういう事柄も十分考慮をいたしまして、調査会で御議論をいただきました結論としては、先ほど申し上げましたような現行の無利子貸与事業を育英奨学事業全体の根幹として存続をさせ、その改善を行うとともに、全体的な量的な拡充を図ろうとする場合には、やはり一般会計からの政府貸付金を資金とするだけでは限度があるので、資金の調達方法を一般会計以外からも考える必要がある。国が実施する事業であること、あるいは長期安定的な資金の確保が確実であること、また比較的低利であることが望ましいという、いろんな事柄を考えましての資金として財政投融資資金の活用についても検討すべきであるというのが調査会で御議論をいただきました結論でございまして、それを受けまして、今回、低利の有利子貸与制度を創設するということで御提案を申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/89
-
090・高木健太郎
○高木健太郎君 十分な討論とは私思いません。もう少し突っ込んだお話がいろいろあったんだろうと思うわけですが、あらかじめこういうことを申し出ておきませんでしたので御説明が得られなかったと思います。
もう一つのことは、今、欧米との比較でございましたが、量的に拡大したというけれども、実際は無利子、いわゆる第一種ですか、第一種の方は予算が少し縮まっているわけですね。そして有利子の方が広がっていて、無利子の方へ食い込むような形で実際の量的の拡大が図られている。そして特別貸与もなくなったというようなことは、ちょっと見るとどうしても——ちょっと見ないでもいいのかもしれませんが、どうも一般に受け取られる形は何だか量的というようなものを表面に出して、しかも有利子制というのを導入し、その有利子制がだんだん拡大していく。これは大蔵省に押し切られていくのではないか。そうすると、経済というものからだんだん教育が圧迫を受けてくるんじゃないか。それで最初に申し上げたように、戦時中でもやったじゃないか。また、欧米は必ずしも経済的に豊かでもない、あるいは租税負担率も私は多いと思うんですね、日本より。あるいは医療費でもみんな多いわけですけれども、そういう苦しい中ででも、とにかく教育というものをひとつ育てていこうとしている。そういうところに、何か非常に経済的だけで見られている。だけではもちろんないでしょうが、経済が非常に重点的にそこに教育の方におっかぶさってきているということを心配している向きが多いのではないか。何かこれについては御議論はございますか、お考えがございましたら。なければ、また後でお聞きをいたしますが、私の考えはそうでございますので、ひとつそういう意味をお考えいただいていると思います。
先ほど、大臣も私は大いに頑張ったと、こうおっしゃったから非常に私心強く感じているわけですが、教育の効果というのは三十年とか五十年後でなければわからない、そういうこともあるので、この際、やはり教育というものを心棒に据えた政治というものを考えていただきたい。経済も大事でないとは言いませんけれども、とにかく教育がだめになったときには、その国は滅びるということを昔から言いますので、ぜひとも、ここでもう一度森文部大臣に頑張っていただいて、今後こういうことが起こらないように、また一年や二年で大臣をおやめにならないで、長くお続けいただいて、ひとつ教育の基本をお立ていただきたい、こういうふうに強く要望するものでございます。
さて、次にお尋ねしますのは、現在、奨学金の受給者の数でございますけれども、これ数といっても、学生の数も変わりますので、絶対数はここで申し上げても仕方がないと思います。それで見ますと、国立大学の方が、私立大学も大体その傾向がございますけれども、一九七〇年から一九八二年まで見ていきますと、全学生に対する受給者の比率がだんだん下がっていっているわけです。それから絶対数も下がっております。これはどういうわけでこんなに下がっていったんだろうかということですね。これに対して何か分析をされたことがおありでしょうかということです。
私はいろんなこれ原因が考えられるわけですが、一言で言えば、奨学金に余り魅力がなくなったんじゃないかなという気がするわけです。その魅力のなくなった原因とすれば、すぐ考えられるのは返還がだんだん重荷になってきたんじゃないか。これとちょうど逆比例をするように、後で申し上げますけれども、アルバイトの方がだんだんふえていっているということですね。これは奨学金をもらえるほどの成績が得られなくなったのか、みんな非常に成績が悪くなったのか、もう一つはまた非常に家庭が裕福になって、奨学金なんかもらってもしようがないと思うようになったのか、いろいろの原因があると思うんですけれども、もしも返還というものが原因で減ってきたとしますと、有利子というものがここにかぶってくると、余計奨学金というものの利用が減ってくるんじゃないか、せっかくの親心がそこでだんだん薄くなっていくんじゃないか、そういうことを心配しておるわけです。例えば育英という名前とか、前にも本会議でもちょっと申し上げましたけれども、育英奨学金というふうに言われているわけです。本当は貸与金で、英語ではローンと書いてありますけれども。いわゆるローンというと、我々の耳に非常に嫌な感じがします。しかし、英語ではローン生言っているわけです。その奨学金という名がだんだん枯れていくような、細っていくような気がするわけでございます。それで、また借りる学生の方も、だんだんこのごろはドライになっていますから、これは一種のローンだと、こういうふうに考えていくんじゃないか。そうなりますと、設立当初の精神がだんだん薄れていっているんじゃないかなという心配をしておるわけですが、いかがお考えでございましょうか。それに対する御感想があればひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/90
-
091・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 最初に先生御指摘のございました純貸与人員といいますか、貸与率が順次下がっているという点はどうかというお尋ねかと思いますけれども、私は、基本的には、その点は、大学進学者の数が、全体のふえ方が、例えば昭和三十年当時をとってみますと、学生の総数が約五十八万、大学でございますが、五十八万に対しまして五十七年は二百八万ということで、ほぼ四倍近いふえ方になっております。片や貸与人員の方で申し上げますと、昭和三十年当時十四万一千でございましたものが、五十七年で、これは大学の場合でございますけれども二十四万四千ぐらいということで、貸与者の人員はもちろんふやしてきておるわけでございますけれども、やはり大学進学者が、この二十年余りをとりましても、非常にふえてきたということがございまして、したがって、貸与率から申しますと、その当時に比べれば貸与率が落ちてきておるということが言えるかと思います。
最近の五十五年から五十七年度程度までの推移で申し上げますと、貸与の実績でございますけれども、国公立大学で二四・五%、二三・八%、二三・三%、やや低下の傾向が見られますが、私立大学につきましては七・八%、八・三%、八・八%と、若干でございますが上昇をしております。したがって、幾つか先生御指摘がございまして、数が減ったのは、例えば奨学金としての魅力が少なくなったのか、あるいは家庭の所得水準その他との関連から落ちたのか、さらには奨学金そのものとしての魅力がなくなったからではないかというような御指摘がございましたが、私ども、現在の奨学金の額が必ずしも十分ではないと考えておりますけれども、しかし、現実に希望する学生は相当多数に上っておりまして、大体、希望者に対します採用率から見れば七割程度という状況からすれば、なおこの奨学金を希望する者が実際の予算積算よりも多いということは現実でございます。したがって、貸与率の点で申せばそういう状況でございますけれども、これらの点は、さらに私どもとしても人員の増加、その他の改善措置というものは、今後の施策の上で十分生かしていかなければならない事柄というぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/91
-
092・高木健太郎
○高木健太郎君 私のと少し違いますけれども、おっしゃるように国立大学では減っているわけなんですが受給率が。私立大学ではまあまあそろっているか少しふえているというところなんです。
これは私が十分調べたわけでないので何とも言えませんが、学校に行くのは国公立の方がかえって楽なんじゃないかということがこのごろ言われている。それは授業料も安いですし、それから各県にかなりの国立大学ができておりますので、地元から通うと一言えばそれだけ通学費が安くなる。ところが私立大学というのは東京の方に偏っておりまして、そこへ行くと通学費が高くなる、あるいは生活費も高くなる。そういうことから、少しでもとにかく奨学金をもらいたいという気持ちでふえているんじゃないか、授業料ももちろん私学の方が——大分差は少なくなりましたけれども、私学の方が高い。こういうことから、私学の方では、今おっしゃったように平均七割ぐらい、あるいは私の調べたのでは六割ぐらいしかもらえないというので、もっとたくさんくれというところがございますが、国立なんかで、特に医学部なんかでいいますと、もうほとんど満杯でして、一〇〇%もらっているというわけです。だから、これは医学部に進む人、それから国立大学へ進めた人、そういう者はかなり裕福といえばおかしいですけれども、子供のときに塾に行ったり予備校へ行ったりする金もあるという、そういう家庭の子供が割と国立大学に行っておって、私立大学に行った人はそれができなかった人が多かったんじゃないか、そういうこともひとつぜひお考えいただいて、これはうわさというか、完全には調べられないわけです。なかなかつかみにくい数字でございますけれども、そういうこともお調べになって、これは単に、いやそう減っておりませんと、受給率は減っておりませんと、国立も私立も同じぐらいですというふうにばっと平均的に考えないで、ぜひ、もう少しきめ細かな調査をしていただきまして、実態はどうなっているかをしっかりつかんでいただきたい、こういうふうに考えております。
次にお尋ね申し上げたいのは教育費のことでございます。
昨年の十一月にある新聞でしたか、雑誌か知りませんが、東京都の五百世帯で調べますというと、一カ月の平均の教育費が六万三千七百八十円、平均の消費の支出が二十九万九千三百円、教育費を割りますというと二一・三%が教育費に充てられていると、私立の短期大学、それから中学、小学校に三人の子供をやっているという家庭では家計の六〇%がその教育費に使われているという例もあるそうでございまして、教育費が家庭の経済を圧迫するということは非常に大きいんじゃないかと思っております。
それで、そのうち教育費の内容でございますけれども、授業料、それから通学費なんかは、その内容の五八・八%、約六〇%を占めている。ところが壁とか家庭教師が二八%、それからおけいこ事が一五・二%と、このように塾、家庭教師というのが約三〇%を占めているというわけです。これはもちろん学校の水準で違っておりますけれども、我々の近辺の知り合いの子供さんを聞いてみますと、もう塾や、そういう家庭教師を雇っていないというのはほとんどいない。東京なんかでは非常に多いんじゃないか。それから、また、東京では、あるいは大都会では、その授業料が非常に高いと。一人一万円ぐらい取るところもざらにあるということを聞いております。こういうことで、しかも、その傾向が、こういう補助学習費というものがだんだんふえているという傾向にあるわけです。予備校やあるいは塾や家庭教師がだんだんふえていくと。子供さんをそこにやっていくということを何も私はいけないと言うわけではないわけです。しかし、学校というものを管理しておられる文部省としては何となくおもしろくないんじゃないかなと思うんですね。学校だけで十分じゃないか、そういう補助学習というようなことは要らないんじゃないかというふうにお考えかもしれませんが、現実は補助学習というのが次第次第にふえておって、それが家庭の経済を非常に圧迫しているということです。実際に進学を控えた中学生のうち四人に三人はもう進学塾に行っていると。また、小学校や高校はそれよりか少ないですけれども、三分の一が塾かあるいは家庭教師を雇っていると、こういう状況で、この塾、進学塾あるいは予備校というようなものは、もう立派に教育の中に入り込んでいるんですね。それ抜きではもう現在の日本の教育は考えられない。ということになりますと、家庭の生活費に及ぼす影響は非常に大きなものであろうと、こう思うわけでございます。そういう意味では、これに対してどのように対応していったらいいだろうかということでございます。
それじゃ、母親側から見た希望を聞きますというと、後で文部省側の御意向をお聞きいたしますが、今のようなこういう状態に対して文部省としてはどのような対応をされようとしているのかということをお聞きしたいと思いますが、母親の希望としては、塾や予備校の必要のないようなそういう教育制度、あるいは学校教育制度が望ましいと、こういう人たちが七〇%ぐらいおります。それから、これは学歴偏重のためであるからして、それを解消してくれというのが二〇%以上もおると。それから、教育費は、これは税金控除の対象にしてもらえないかと。明らかにこれは教育費であるからして、しかも義務教育のような場合には、これを税金控除の対象にしてもらえないかというようなことを言っているわけでございます。なかなかいろんな、まだほかにも議論はあると思いますけれども、文部省としては、こういう実情といいますか、に対してどのようにお考えであるかということをお聞きしたいんです。これは、やはり奨学金ともまた関係のあることであると思いますので、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/92
-
093・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 高木先生の御意見を交えてのお尋ねでございますが、私として総論的な感想ということで申し上げさせていただきまして、必要がございましたら、数字や、文部省として、どうとらえているかということを事務当局から説明をさせたいと思います。
今、御指摘がございました家庭教育費というのは、確かにここ数年、若干伸びておるということは事実でございますが、その家庭が出す教育にかかる経費というものは、一体、どこのところが本当の教育へのいわゆる教育費なのか、あるいは教育を補充する——先生は補充というふうにちょっとおっしゃいましたが、補充する費用に充てることになるのか。この判断は、それぞれの家庭のお父さん、お母さんの判断によるものであろうというふうに考えますので、そういう面から見ますと、私どもから、負担の軽いとか重いという軽重を一概に言うというのは非常に困難なことだと思うんです。端的に申し上げたら、そこまでしなくてもいいというものもあるかもしれませんが、しかし、やはりそれは親の愛情という立場でしょうか。あるいは子供に対する期待感もあるかもしれませんが、いろんな角度から子供に対する教育のお手伝いをする。あるいはこれをバックアップするといいましょうか、そういうことに対する経費というのは、純粋に言って教育費というふうに一般的に言ってしまえるかどうか、これはそれぞれの家庭の判断というのが非常に重いというのは、そういうふうに私は意味を申し上げたわけでございます。
学習塾に通うということも、具体的に今、先生から御指摘ございましたが、これにつきます背景といたしましては、これも前からの委員会でもたびたび申し上げていることでお耳ざわりかもしれませんが、学歴偏重の社会的風潮、あるいは学校におきます教育、指導のあり方に対するいろんな問題がある。あるいは入学試験のあり方の問題、それから子供の養育に対する、先ほども申し上げましたように親の関心のあり方、こういうことが学習塾に通うという、そういう実際の背景ではないだろうかというふうに文部省としては解釈いたしておるわけであります。したがいまして、文部省としては、児童生徒が学習塾に通うことを必要としない状況をつくるということが、これは一番大事なことであろうというふうに考えております。そのためには、学習指導や進路指導の充実、あるいは教員の資質向上、あるいは社会の学歴に対する偏重の誤りを是正していく、こういうことを総合的に考えていかなければならぬことだろうというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/93
-
094・高木健太郎
○高木健太郎君 これはなかなかいろんな御意見があると思いますので私の説を押しつけるというわけにもいきませんけれども、普通、一般のお母さん方は、やはり自分の子供を立派にしたいと思いますと、塾に通わなきゃだめだという信念なんですね、もう。半分信念になっていまして、隣のお子さんが行っていれば、うちもやっぱり出さなきゃいかぬと、だんだんおくれるよと、それでなければいい高校には入れないよと。こういうことがだんだん、口コミか何か知りませんが、一つの信仰か信念になっている。そう思わせるのは悪いかもしれませんが、現実的にやっぱり塾に入っている方がいい学校へ行けると、こういうことになって教育費がかかる。それから、そこまで家庭の事情でやれないという家は、それじゃどうしているかということになりますと、お母さんが大体パートに出ちゃうんですね。それは、母親が外へ出て働くことに意義を感じている母親もおりますけれども、実際に家庭が苦しくって、子供の教育費なり養育費を稼ぐためにパートに出ている母親も私はかなりおるのではないかと、こういう調べ方は非常に難しいですけれども、私はそうではないかというふうに思うわけです。
この家庭の収入の中には、父親の収入のほかに、こういう母親のパートのものも入っておりまして、これが子供一人ぐらいのときは父親だけで済むが、二人、中学と高等学校にやってくるようになると、それはとても父親だけの給与では足りないと。こういうことになってきて、母親がパートに出る。そこからまたいろんな社会問題が起こってくるんじゃないかと。そして、子供を持って苦労している家庭を見ますというと、うちはもう一人にしておこうというふうなことになりまして、この間、本会議でも申し上げましたように、いわゆる、これから家庭の一人っ子がだんだんふえてくるんじゃないか。これは子供の教育にとってなよくないんじゃないか。
簡略に申しますというと、結局、授業料は義務教育で教科書も無償ですから、もうほとんど非常に安く済みますけれども、それ以外のいわゆる教育費というもの、補習教育費といいますか、そういうものが大きくなってきたために、こういうことをやらなければならないという、そういう状況にあると、こう思うんです。結局、母親が今度パートヘ出ますと、そうすると、家庭というものがだんだんぐあいが悪くなる。家庭がしかも経済的に乱されるということになる。極端に言うと、そういうところの子供に非行が出てくるというようなことも起こるのではないだろうかと。もっと極端に申し上げますと、中学、高校のときの家庭の経済状況というものが、高等教育を受ける機会均等というものに響いていくのではないかということさえ思われるわけでございますので、私のような考え、心配性のものでもございますから、そういうふうに考えますけれども、そう簡単ではない。やはり塾というもの、家庭というもの、学歴社会というものを考えると、そういうことも十分考えておかないというと、本当の教育にならないのではないか。ただ指導要領を何とかするということでは、これはおさまらない問題なんじゃないか、こういうふうに私の感想を申し上げておきます。
次は、今度は大学へ移ってからでございますけれども、大学に移って大学の学生に家庭が全部金を送るということができないという場合には、これまでやってこられた育英会の貸与金あるいはまた本人のアルバイトということがここに出てくるわけでして、家庭から全部をこれを送るわけにはいかない。恐らく三分の一が家庭から送ってくる、三分の一がアルバイト、三分の一が奨学金というようなことになっているのかもしれません。大体、統計はそのようになっているようでございます。そのほかに大学に通う本人としてはいろいろ努力しているわけでございまして、それはできるだけ自宅通学のできるような大学に入る。だから、これが原因かどうか知りませんけれども、最近、国立大学にせっかく入っておりながら、私立大学へ入るという人があるわけですね。それも一種の自宅通学というようなことがあるいはあるかもしれないという気がしているわけです。だから、有名な例えば国立大学へ入ったと。しかし、それは遠い。だから、とてもそれはやれないから、おまえ近くでもいいからこの学校へ入りなさいというようなことがあるのじゃないか。これも私何か理解できないんです。なぜ立派な国立大学に入っておりながら、授業料も少ないのに、どういうわけで私立大学の方を選ばれたか。それは私立大学の方が将来の就職とかそういうことがいいのかもしれませんが、これもぜひひとつ分析しておく必要があろうかと思いますが、少なくとも本人としましては、このごろの傾向としては、自宅外から通うよりも自宅から通うという学生がふえておるということでございます。
それからもう一つは、アルバイトの増収に努めるということなんです。これは学生の一般的傾向であろうかと思いますが、アルバイトに消費する時間を調べますというと、大学生ですけれども、学校の授業には、これは四十七年でございますが、四十七年に学校の授業で費やす時間が、誤っておるかもしれませんが、三時間五十二分、これは「I・D・E」という本に出ておりましたので間違いないと思うんですが、それが五十六年には三時間九分、四十分ぐらい短くなっているわけですね。それから、テレビを見ている時間が四十七年には一時間、ところが五十六年には一時間二十八分。これは何を見ているか、野球を見ているか何かわかりませんが、とにかく、そういうふうにテレビを見ている時間がふえる。それから、アルバイトあるいは課外活動、これはクラブ活動も入っておりますが、それが四十七年にはどうかというと、六時間二十九分、そうして五十六年には七時間二十九分というふうに、一時間以上もふえている。それで、それと反対に正課の方が減っている。こういうふうにアルバイトに費やす時間が非常にふえているわけなんです。そういうことで、アルバイトによって得る金、すなわち一時間当たりの金もふえておりますし、それからアルバイトの労働の時間もふえております。だから、ここ五年ぐらいの間に二倍ぐらいの収入を上げているのじゃないかなと、これはまた学校によって違いますし、科によっても違うわけですが、そのようにアルバイトというものが、かなり学生の教育の中の生活費の中に大きな部面を占めている。これが恐らく奨学金ととんとん、三分の一ずつぐらい、あるいは最近はアルバイトの方がだんだん大きくなっているということになると思うんです。
このアルバイトの理由をどういうふうに考えたらいいだろうかと私なりに考えてみました。それは、一つは大学というものがある程度魅力を失ったんじゃないかということですね。これは極めて憂うつな話でございますけれども、魅力がない。それはレジャーランドというようなことでも表現されております。レジャーランドとしては魅力があるんだろうと思うんですね。だから、授業には三時間ぐらいしか出ないということになるわけですね。また、これはお読みになりましたか、タイムスから出しました「裸にした日本」という本がございますが、それにこういうことが書いてございます。「皮肉なことだが、それほどのストレスとがり勉を終えた後は、少なくとも理工系以外の学部では四年間の長い休暇に入っていると言っていい」、こういうように書いてあるんですね。「企業の側では、学生の出身大学を採用の眼目とし、在学中の成績はほとんど問題にしない。卒業して就職したとき、日本人は再び真剣に勉強を始める。日本では、技術者の本当の訓練は会社に入った後で始まる」。これは何もタイムスがそれを書いたのではなくて、日本科学技術連盟の野口順路という理事の方がおっしゃったのをタイムスがそれを引いているということです。これはよく言われることでございまして、私はそれを本会議のときには、こう申しました。我々は旧制の高校出ましたけれども、旧制の高校というのは何となくのんきであったように思います。大臣は戦後でいらっしゃいましょうから、おわかりにならぬかもしれませんが、何か勉強したような、しないような、勉強もしたようですが、随分遊びもした。そういう意味で、いまだに寮歌祭というものが開かれまして、友だちとのつながりが強い。そして非常に人生を謳歌するというような感じがあるわけです。私はその昔の高等学校が半分大学へ移ったんじゃないかなという気がしているわけです。どこかでそういうものがやっぱり必要なんじゃないかと思いまして、大学はレジャーランド化と言われるのは反対ですけれども、そういうところにまた今の大学の価値もあるんじゃないか、存在価値があるんじゃないか。余り大学で勉強せい、勉強せいと言っても、学生の側からはそれを拒否するいろんな理屈が出てくるのじゃないか。そして、アルバイトをしているというけれども、それはアルバイトをしている間に実地の勉強をしている、社会勉強をしているということで、私は現在の大学のあり方としてはそんなに悪くないとは思います。だが、一方においては、先ほど申し上げましたように、アルバイトによってしか大学へ行けないという人間がやっぱり何人か、あるいは大勢おられるのじゃないかなと思うわけでございます。だから、アルバイトのふえたということを現象的に見ると、ああ、あれは自分の遊ぶ金をつくっているんだという見方もありましょうが、一方においては、そうではなくて、彼は社会勉強をしているんだ、しかも大学というのはそういうふうに性格が変わってきているんだ、こういうふうに思わなきゃならぬかもしれませんし、またアルバイトをしなければ、あるいは奨学金をもらわなければ、自分は大学というところで勉強ができないという人もおるんじゃないか。だから、アルバイトというものが、異質のグループが幾つかあるんじゃないかなというふうに思っておりますが、それ以上の分析は現在はできないと思います。しかし、これは、将来、大学生に対して奨学金を与える場合、どのように与えたらばいいか。要するに、それは量的に拡大するべきであるのか、そうでないのかということの参考にはなるんじゃないか。将来、今度こういう法案をお出しになりましたが、いろいろ議論されましたので、私が何時間か勉強しましたことで全部を尽くすわけじゃございませんが、一つの意見として聞いておかれて、ぜひ、今後、奨学金というものを、育英会というものを、よりよき奨学金にしていただきたい、こういうふうに思うわけです。
そこで、私、以上申し上げますと、母親のパートであるとか、あるいは学生のアルバイトであるとか、そういう、ある程度ひずんだといいますか、ノーマルでない、そういう歩き方を学生も、家庭も、母親もしているわけですね。これが全部私は教育のしわ寄せというふうには申しませんが、かなり重要な私は因子を占めていると思います。いわば、母親としては家庭を犠牲にして、学生としては勉学をある程度犠牲にしてアルバイトをしている、あるいはパートをしているということになるのじゃないかと、このようなことはぜひ考えておかなければならないことでおろうと思います。
それでこれを、しかしもっと根本的に掘り下げてみますと、一つは、日本人そのものの、いわゆる人並み意識というのがあるんじゃないかと思いますね。あの人がこうするから自分もこうする。人並み意識というものは日本人に非常に強いわけですけれども、そういう人並み意識が母親なり子供なりにもあるのじゃないか。もう一つは、負けまい、勝とう。これは立派に勝つならいいですが、負けまい、勝とうといういわゆる競争意識が他の民族に比べて非常に強いのではないか。こういうことが進学率とか進学校とか、あるいは壁とか予備校とか、こういうものに殺到していく一つの原因になっているかもしれない。これが一つですね。もう一つは、やはり何か豊かになりましたので、一方では享楽意識というものが、これは否定できないというふうに思います。しかし、そのもう一方では、私は何となく不安感がありまして、豊かであるにもかかわらず、国民が何となく不安を持っておる。それはどこから来る不安かはわかりませんが、先行きの不安を持っておりまして、それに対して友を求める、あるいは孤独感を解消したい、あるいは、そういうために仲間意識を持ってクラブ活動というものに入っていく、あるいはアルバイトをして友を求めると、こういうところにいくので、これが第二番目に考えられる。いわゆる、国民のそこはかとなく不安というものですね。第三には、最終的には経済的な窮迫。経済的に窮迫しているために、やむを得ずそういうところに入っていく学生がいる。これは、私は現在はそう多くはないんじゃないか。それはアルバイトかなんかすればいいわけですから、そう多くないということですけれども、私は、以上のような不安だとか、そういうものをなくすために、この奨学金制度、育英会制度というものが非常に大きな働きをしていると思うんですね。
そこで、これに続いて、大臣、何か御感想ございましたら後でまたお聞かせ願いますが、時間が足りなくなるおそれがありますので、私お話するだけお話さしていただきます。
そこで、選考基準というものに触れてみたいと思います。
これは今さっきいただきましたけれども、これ見てもわかりますように、軸がこう二つなんですね。縦軸と横軸と平面でありまして、それで空間を切っているわけでございます。結局、二つのファクターで人間を処理しようと。人間を処理するというのはおかしいですが、いわゆる育英会のお金がもらえるか、もらえないかという基準をここでつくられているわけです。その軸を少しこう伸ばしたり、あるいは下へ下げたりしまして、有利子制が入る、無利子制がある。もとは特別貸与というのがあったわけですね。それから一般貸与というのがありまして、それ、やっぱり、もとも二つですかね、二つですね。今度、有利子制度というのがそれへつきましたかわりに特別貸与がなくなっちゃったということです。五百二万円以下の人が特別貸与の資格があったわけですね。今度は六百万円ぐらいの人以下が有利子貸与を受けられるという、枠をお広げになったことは、私は非常にいいです。何かしら非常に優秀で、しかし非常に貧困だと。貧困と言っちゃ失礼ですけれども、非常に貧困であると。さっきの安永先生の話みたいですけれども、日雇いだという話でしたけれども、これ貧困だろうというんですね。しかし、非常にできるというような人がまだあるわけですね。何か、もう少しこれに幾つかの傾斜がつけられないか。全体の金は同じようであっても、これが何か真っ四角ですね。こう、ここからこっち、ようかん切ったみたいになっているわけです、これ。そうじゃなくて、もう少し段階がついて、そして成績の優秀な者をもっとよく見るとか、あるいは収入が非常に少ない人で優秀な人とか、こういう人があるに違いないわけですね。あるいはよく努力をしたとか、あるいは母親だけの家であるとか、そういういろいろの条件がまだほかにもあると思うんです。そういうことを、もう少しきめ細かく割り込んでいただけなかったかなあという気がするのです。あるいは、ぜひそういうものを割り込んでいただきたい。
〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
そして、その一番端っこでも結構ですから、成績がよくって非常に貧しいと、かなり貧しいという人は、それこそいわゆる奨学金、いわゆるフェローシップなりスカラシップと、いわゆる給費制度をその下に設ける。私は、もう少しこれはきめ細かな配慮が必要であると、こういうように主張するわけでございます。それが一つです。
これはお考えになったかどうかしりませんが、あるいは配分するのに大変面倒だからと。そういうのをいとわないで、ぜひこれを立派な配分の規定をもう少しきめ細かな、いわゆる親心的なものがここへ入ってくれた方がいい。しかも、そうすればスカラシップという、いわゆる給費制がここに入ることができるわけです。今度、評判が悪いのは、有利子制をぼーんとふやしたと、全体はふえたけれども、有利子制がふえた。ああ、何だ、今までの特別貸与がみんな消えちゃったと、こういうようにみんな思うんですね。せっかくいろいろお考えになって、皆さんにたくさん上げたいよというようにおやりになったけれども、大事なところは全部消えちゃったというところに非常に不満が僕は出てくるんじゃないか。そういう意味では、ぜひここに給費の制度をお入れいただきたいと、こういうふうに考えるわけです。
もう一つ選考基準で、これはお尋ねでございます。高等学校の成績が大体決定的な因子になっているわけですね、三・二であるとか、三・五であるとか。これ浪人した人はどうなるんだろうかなあというふうに思うんです、一つは。それから、おくての人があるわけですね。(笑声)いや、おくてというのは実際あるんです。ばかみたいな顔していたのが、エジソンみたいにだんだん上へ行くほどよくなってくるという人があるわけです。それから、一芸に秀でてばかみたいのがいるわけですね。しかし、一芸に秀ずるとか、おくての人とか、浪人というのを高等学校の方ですぱっと切っちゃって、それから先は幾ら努力しようと、何しようと、どうしようもならないと、こういう、私、選考基準はちょっとおかしいのじゃないかというような気がするのです。この点を一つまずお聞きしたいと思います。どういうようになっているのかですね。まさかそれだけじゃないと思いますけれども、どういうようにお考えになっているのかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/94
-
095・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 今回は無利子貸与制度と有利子貸与制度という仕組みに、大きく言ってそういう二種類で貸与をするという考え方で考えているわけでございます。
御指摘の点は、第一点は、きめ細かい配慮が必要ではないかということで、例えば、非常に所得の低い方などに対して、あるいは給費というようなことも考えるということも、きめ細かい配慮の一つではないかという御指摘でございます。
今回の改正では、一つは貸与月額につきましては、御案内のとおり、一般貸与、特別貸与を吸収する形で、全体に額の引き上げを行い、さらに貸与月額も引き上げたわけでございます。そして、全体的な額の引き上げには限度がございますので、一つには医歯系、薬学系の学生を対象にする有利子貸与制度については増額貸与月額を出すというような仕組みも一つは考えた点が一点ございます。
それから、特に経済的援助を必要とする者に対しましては、一部でございますけれども、無利子貸与と有利子貸与の両者を併用するというような仕組みも一応考えまして、貸与月額の増額を図るというようなことは考えているわけでございます。御指摘のように、非常に学業成績がすぐれた学生に特別に高額の奨学金を貸与するとか、あるいは家庭の負担能力に応じた貸与月額というぐあいにきめ細かい配慮をするということは、確かに御指摘のように大事なことの一つだと思います。
ただ、ただいまのところ非常に限られた資金で多くの学生に貸与をするというようなことで御提案申し上げている点は、確かに先生おっしゃっているように、学力基準と所得基準で貸与をしておるわけでございますが、御指摘のようなことは、将来の育英奨学事業の改善に当たって、きめ細かく配慮をしていかなきゃならぬという点については、私ども今後の研究課題というぐあいには考えているわけでございます。もちろん、調査会での議論の際にも給費の問題も議論が確かに出まして、例えば特に大学院の研究者養成というような観点からでは、そういう点も必要ではないかというような議論もいろいろ出たことは事実でございますけれども、現時点での貸与は御提案申し上げている範囲にとどまっておるということでございます。
それから第二点は、選考基準のところについて、一つは浪人の場合はどうかというお尋ねでございますが、これは高等学校時代の成績を基本に考えておるわけでございます。もちろん、大学に入りまして、大学二年生、三年生になってから奨学金を希望するというような場合には、大学二年生であれば大学の一年生の成績が基本になるわけでございますが、上位三分の一であれば無利子貸与、二分の一以内であれば有利子貸与というふうなことで、大学に入りまして二年生の際に育英奨学金を希望する場合には、大学一年の時代の成績を考えるというような考え方で貸与をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/95
-
096・高木健太郎
○高木健太郎君 大学へ入ってからの成績ということですが、非常にこれは範囲が狭いんでしょうね、ポストがあかないともらえないんだから。だから、もしも、そういうことがあるならば、それも少しとっておく、あらかじめ。そうでないと、うまくいかないんじゃないですか。どうなっていますか。——まあ、いいですが、とにかく、そういうことをお考え願いたいと、こういうんです。私は、高等学校卒業のときだけの成績が人生のすべてを支配するというようなことはやめてもらいたいと、こういうことです。というのは、おくてがあるからです。あるいは、土光さんも浪人されたんですよね。だから、あの人は私うまくいかぬと思うんです、今の奨学金ではもらえないんです。そういうこともありますから、−まあ、要らないかもしれませんけれども。私は、せっかくの人物を逃すことになりますよと、こういうことです。
今のことに関係しまして、大学院の奨学金の話が出ましたが、ちょっとその大学院のことをお尋ねいたします。
これは「ネーチャー」という雑誌が出ておりますが、学問的な雑誌ですが、それにいろんなことが書いてございます。ちょっといやな気持ちがするわけです。そういうふうに受け取られているかなあと思っていやな気がするんですが、文部大臣も余りいいお気持ちじゃないと思います。とにかく大学を出て大学院に入る、そして博士課程を出た。そしてオーバードクターになる。これは日本人がつくった言葉だと書いてございます。オーバードクターという英語はないんだそうです。ポストドクトリアルというわけですね。そういうことなんですが、それが非常にこのごろふえておるということは御存じのとおりでございまして、就職してない人は五千人ぐらいいる。京大の物理を出た、物理の教室は百名以上おりまして、みんなあぶれて、定員を超過しておりますから、到底、職につくことはできないわけです。理論物理学科出た人は、最大で、今、千名ぐらいオーバードクター、いわゆる就職しないで遊んでいる人がいるんですね。続いて人文科学、社会科学、農学部というのがオーバードクターになっているわけです。そのためにオーバードクターソサエティーというようなものをある先生がつくっておられまして、これに対する財政援助、心理的な援助、あるいはまたアルバイトを探してやる。あるいは、例えば、アルバイトというと、翻訳をさせるとか、受験生の先生をさせると、こういうふうなことをオーバードクターソサエティーというところはやっているわけです。大体、これも本会議でちょっと申し上げましたけれども、半分以上の人は結婚をしております。それで平均の収入が税込みで年収三千ドルぐらいです。それで、学術研究をするためにドクターを取ったわけですけれども、そういう職にはほとんどつけません。ところが、日本では、この人たちの生活を支えるような、そのようなグラントといいますか、奨学金がないわけです。これが彼らには非常に不思議であるようでして、それで、ほとんどの学生は育英会のようなものからローンをしておるという状態であるというふうに書いてございます。もしも、大学で助手なり何なりの職を得ることができれば、そうすればもう返す必要がない。これも彼らにはちょっと不思議なんですね。就職しない者が金を払わなければならないで、職についた者は金払わぬでいいと。これがどうもちょっと彼らには変なものでありまして、彼らは、そういう未就職者は非常に大きな金を払っていかなければならないんだ。これに対してはだれも責任はとらぬ。大学も責任がとれなければ政府も責任がとれないというふうに書いてございますし、また臨調のことも書いてございますが、臨調はそういうふうに、いつまででもアカデミーにあこがれているからいかぬのだ、もっと一般社会に出ていけばいいんじゃないかというようなことを言っておるというごとです。確かに、私は、無理やりに本来のそういう研究生活に入らないで、もっとフリーにいけばいいとは思いますけれども、ところが、日本の企業を見ますというと、大学を卒業してすぐの学生は割と就職がいいんです。ところが、大学を出てドクターを取って、博士号を取ってから行こうと思うと、そうすると、年齢が上ですし、それから給与も高く払わなければならない。こういうことで、余り企業はそれを好まないというわけなんです。また、農学部は非常に厳しくて、関連企業が少ないので、非常に失業している人が多い。こういうことで、そういう今のような学部を出てきた人は、大体は外国のフェローシップをもらっていると、それで外国へ行っちゃうというわけですね。それがいわゆる頭脳流出として昔言われたことになりますが、最近は外国も非常に苦しくて、そして、二、三年のうちには日本にまた帰ってくるというようなことになります。これが一つの問題でありまして、まず最初に大臣なり、あるいは局長にお伺いしたいのですけれども、ぜひ、このポストドクトリアルですね。オーバードクターの人を何か就職させるなり、あるいはさせる努力を政府がするわけにいかないんでしょうけれども、だれも見てくれないわけですから、だれが一体これやるのか、これは非常に国家的に私は不経済じゃないかと思う。せっかくの頭脳をそこで遊ばせるということは非常に、私、不経済であると、だから、これに、この前も本会議で申し上げましたように、少し返還を延期していただくなり、あるいはそういうポストドクトリアル、オーバードクターに対して研究費を、グラントを与えるということにしていただけないか、そういうことをお考えいただけないかということが一つです。
もう一つは、こういうふうにどんどん、だれもやめませんから、その人たちが就職するためには、前にそこにおった人がその研究室を去るか、死ぬか何かしなければ助手のポストには入れないわけですよ。そうなりますとどうなるかというと、中の研究者はどんどん年をとるわけです。新しい講座ができない限りは、その講座あるいは物理学教室なり理学部なりの、全体の研究者の年齢のピークがどんどん高い方へいくわけです。御存じのように、数学であるとか、物理学であるとか、化学であるとか、そういう基礎科学の進歩というのは、いわゆる創造的な研究というのはもう三十代なんですね。それが四十を超し五十を超して、そこから立派な研究出てくるはずがないわけです。そういう意味では、これ何とかしないと、一九九一年にはピークが、大体、理学部の方では四十八歳になります。それから二〇〇一年にはピークはもう五十八歳になるわけですね。もう一つ若いところでピークができますけれども、五十八歳というと、もう定年に近いわけです。それがピークになるということは考えなきゃならぬと思います。ヨーロッパその他では、これのためにいろいろの新しい血を入れる方法を考えております。私は、現在、原子力だとか、いろいろ科学の進歩、非常に重要でございますが、そういう意味では、ピークがそんなふうにならないように、次の世代を担う研究者なり、新しい創造的な仕事がそういうところから出てくるように、できるだけ新しい血潮をその中に入れていただきたいというふうに考えるわけでございます。
もう一つ文部大臣にお願いしたいのは、これは何も理学部とかそういうのに限ったことではございませんが、日本はドイツ式の講座制というものをしいているわけです。今の理学部もそうでございまして、新しく講座をつくったときには、そこにはフレッシュマンが入りまして、非常にアクティブに仕事をやるわけですけれども、だんだんそれが年をとっていく、そして講座ができるということは、それでもういつまでたってもその講座はそこにある。非常にリジッドになりまして、講座の間のフレキシビリティーというのは全然ない。これが非常に一つの、私、欠点だと。いわゆる時代に対応できない、これを私はここで考える必要がある。まあ、これ、育英会と直接関係ございませんけれども、ぜひ育英会の方でもオーバードクター何とかすると同時に、講座のフレキシビリティーというものを私は考えていただきたい。また政府は、大学は自治を持っておりますので、政府がいろいろの口を入れるということは非常にできにくくなっております。そういうことは私もよく承知しておるわけですけれども、ぜひ大学ともよく相談ずくで、相談はしたって構わぬだろう。どうしたらいいというようなことを相談をしていただきたいというようなことも、この際お願いしておきたいし、大臣のお考えを聞いておきたい。また外国ではポストドクトリアルのフェローシップを与えたり、グラントがありましたり、あるいは奨学金の返済不要の、そういう奨励金というようなものもございまして、それによって新しい血を導入しているということでございますので、この際、ぜひ、そのようなことに意を用いていただきたい。まあ、余り長くしゃべりますといけませんので、これぐらいに、大学院生の話はこれだけにとどめさしていただきますが、ぜひ、ひとつお考えいただきたい。何か御感想ありましたらお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/96
-
097・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 高木先生、御自分で大学の研究に携わっておられまして、示唆に富むお話などもいただきまして、大変参考になります。私自身も実はこの講座制というやり方がいいのか悪いのか、これは、今、文部大臣という立場ではなくて、ずっと文教問題を担当しておりまして、党の一員として、オーバードクターの方々の御相談というのは意外に多いんです。私のような田舎でも、石川県の片田舎ですから、同じように私の町に、東京大学、大学院を出て、もう年も三十五を超えておられて、それでも就職がない。お父さんお母さんにすると、田んぼまで売って、末は博士か大臣かというような、あなたは大臣になったけれども、うちの息子はまだ博士になれない、こう言って悩まれるわけです。確かにいろいろ問題はあると思うんですが、私、やっぱり、そういう上が一つやめなければ欠員がこう、埋まっていかないと、今、先生が例を申されましたそういう制度も一つあると思いますし、
〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
これはその人に当てがって言うわけじゃないんですが、話を聞いてみると、そういう学問をなぜあなたはやったんですかと、その学問をなぜ、将来、何に生かそうとあなたは考えたんですかということは全く考えてないで入ってる人もいるわけですね。そういう、若干、学問に対する甘えみたいなものも、今の若者志向なのかもしれませんが、案外ある。それじゃ、もう学問は、こういう制度なんだから、教授がいて、助教授がいて、助手がいると、こういう制度なんだから、もうこれはあなたの学問を見ると、研究室を見ると、その可能性は、まずこれから、十年、十五年ないだろうと。ということは、民間の会社であなたの学問や研究を生かす方法を考えたらどうかということを言いましても、なかなかわがままなところがあるんですね。一徹というところもあるんで、それがまた学問を研究されるそれだけの方なんだろうと思いますが、そういういろんな面があって、一概に一つの型をはめ込むということは非常に難しいだろうと思いますが、この講座制の問題、オーバードクターも含めながら、大変重大な、日本の国にとって貴重な頭脳がそういう形で停滞をしておるという面から見ると、これは将来いろいろ考えてみなければならぬ問題であろうというふうに思いますし、これにちなみましての、いわゆる奨学資金の与え方というのも、これもなかなか一概に枠にはめ込むというのは非常に難しいと思います。先生がおっしゃるように、もっと段階的に、ようかんを切ったようなものではなくて、もう少しパンを引きちぎったような形で、幾つのものがあってもいいんじゃないか、多様な面があってもいいんじゃないかということになるかと思いますが、そういう多様な面を考えていくということになりますと、奨学資金そのものの多様なあり方というものが必要になってくるんじゃないかなあと。さっき、午前中、安永先生の御質問でもちょっとおしかりもいただきましたけれども、この制度をいろんな形で多様にやってみる。アルバイトをやって、奨学資金をもらわなければ学べない人もいるし、奨学資金をいただいてこれを学資の一助にし、アルバイトで生活するという方もありますし、まあ、私などの知ってる学生では、奨学資金は学業の一助だけれども、アルバイトで楽しく遊ぶ、これも私は悪いとは言えないと思うんですね。先ほど先生おっしゃった、大学そのものは、体験ということから考えれば、社会学という面で見れば、遊んでみるということも大変大事なことだと思うんです。私も学生時代は、奨学資金などはもらえるというような、そういう成績ではなかったですが、アルバイト、よくいたしました。なぜアルバイトしたんだろうということになると、授業料の使い込みなんですね。その授業料を各期ごと払うときに困るものですから、それを一括してアルバイトで稼ぐ。じゃあ授業料何に使ったんだろうかと考えてみると、結局、飲み食いして遊んでたような感じがするんです。そのことも決して私はむだではなかったと今思っているわけでございまして、そういう意味で、奨学資金というものも一概に一つの形にはめ込んでしまうということも確かに私は考えものだと思いますので、今度の制度の改正で、いろいろ御指摘もありますし、御批判もございますけれども、奨学金のあり方という制度は、もう少し今後多様な形に変化をしていくと。安永先生の御指摘のように、根幹がおかしくなっちゃいかぬぞということになっちゃいけませんが、枝葉はいろいろと私は多様にあってもいいんじゃないかなあと。日本の学問を学ぶということが、本当に研究を進めていくというタイプもありますし、今、高木先生おっしゃったように社会学的な、体験的なものもあるわけですし、レジャー大学というものも、それもそう悪いとも言い切れないと先生さっきおっしゃっておりましたが、そういう面も一面あるわけですから、奨学生の制度もいろんな多様な面が今後あってもいいんじゃないかなあというような感じを、あえて高木先生、感想はと、こういうことでございましたので、感想として申し上げさしていただきます。
奨学制度のところのオーバードクターのところはいろんな配慮は加えておるようでございますが、それにつきましては担当の事務当局から答弁をさした方がよろしいかと思いますので、お願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/97
-
098・植木浩
○説明員(植木浩君) 高木先生がおっしゃいました、大学院を修了した若い研究者といいますか、そういう方々に対する援助という点でございますけれども、文部省では、従来から日本学術振興会の事業といたしまして、すぐれた若手研究者を養成、確保するという角度から、奨励研究員制度という一種のフェローシップ制度を設けております。しかしながら、近年、特に学問の進展が非常に急速になり、かつ学際的な領域等も広がってまいるという点もございますし、また、助手等への採用がなかなか従来のようにはいかなくなってきたというような点を考えまして、さらに独創的、先駆的な研究も振興しなければいけないという点から、今まで以上にすぐれた若手研究者を養成、確保しなければいけないという状況になっておりまして、先般、二月に学術審議会の答申というものがございましたが、この中でも、特に、そういった若手研究者の養成が強調されておりまして、フェローシップ制度をさらに整備する必要がある、このように指摘をされておるわけでございます。ただいま先生からお話ございましたような趣旨と同じようなことが言われておるわけでございますが、そういった答申の趣旨をも踏まえまして、さらにフェローシップ制度の充実を図っていきたい。現在、いろいろと検討しておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/98
-
099・高木健太郎
○高木健太郎君 ぜひ、これはお願いしたいと思うんです。今までは模倣でよかったんですけれども、今後の日本は、総理も言われるように、創造しなきゃいかぬと。そのときに、そういう若い柔軟な頭を遊ばしておくというのは、あるいはまたピークが老人になっていくということは、私はその中からは出てこない。これは全然わからないようですけれども、何年かたった後に、しまったということになるんじゃないか。そういう意味では、ぜひ、ひとつこれは本当に真剣に考えていかなきゃならぬ問題だと思います。これは何も理学部に限ったことじゃございません。農学部も人文科学も全部の共通の問題としてお考えをいただきたいというふうに思います。
最後に、もう大分時間がなくなりましたので聞くんですが、これは留学生のことなんですけれども、日本に、国立には留学生の会館が立派なのが方々に建てられました。非常に喜ばれております。ところが、御存じのように、アジアの人が日本に来ることが非常に少ないですね。台湾、韓国の人は多いんですけれども、しかし、タイ、それからインドネシア、マレーシア、シンガポールというようなところの人は——インドネシアなんかはもう十番目ぐらいですね。みんな西ドイツ、アメリカ、オーストラリア、イギリスというところへ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイなんというような、それは昔の植民地ということもあるかもしれませんけれども、しかし、目の前にあるのにそれがよそへ行ってしまう。日本は、そういう意味では科学立国、立派な国であるということを知りながら外へ行く、こういうことは私非常に残念なことに思いますし、将来の国際化ということにとりましては、その人たちが快く勉強して、日本と非常に親しくなって、それで帰れば、指導者になる人たちですからして、その人たちが日本で勉強するということは、非常に大きな、私、金だと思うんですよね、これ。だから、少々の輸出品を売るよりも、貿易をやるよりも、教育でお互いに親しくなるということが非常に重要なことであるのに、この方面は文部省の留学生課で取り扱われている。今のドクターの方は、これは奨励研究制度ですか、振興会で取り扱っている。こちらの方は留学生課で取り扱っている、そして育英会は日本の学生を取り扱っているということになっているわけです。また、国費留学生で、外国からこちらへやってきている学生がいるわけですけれども、その国費留学生というのは、非常に金持ちの国からたくさん金を持ってくる国費留学生もいるんですけれども、名前挙げて悪いんですけれども、中国なんかは、留学生で来ると、元が低いというんですか、日本の生活費が高いというんですか、非常に苦労しているわけですね、おいでになった方が。それで、もうみんな友人、我々が寄ってたかってお金を集めて、それでその人たちに道具を買ってあげたり、お金を差し上げたりなんかしてやっておられる。向こうも気詰まりなら、こちらも大変であるということになるわけです。だから、同じ国費留学生でも、そういう人たちがいろいろおられるでしょうから、そうすると、そういう生活をこちらでしていくと、日本に行ったら余りおもしろくなかったということに私はなるんじゃないかと。それで、育英会で立派な日本の学生をお育てになる、これは私非常にいいことで、量もふえ、質もよければもっといいんですけれども、まあ、質は今度は余り私満点差し上げられないですね。量の方はよかろう、質もよくしていただくという上に、こういう留学生に対しまして、これは留学か、それからオーバードクターの学術振興会、それと育英会、こういうものがよく手をつないで、そしてそういう対応をしていかれることが、私は今後の日本の学術の国際化ということから考えて緊要な問題であると、こういうふうに考えておるわけでございます。この点もぜひお含みいただいて、そして快く勉強して、日本と将来とも親交を結ぶというような国際化をぜひこの際一緒に図っていただきたい、こういう御要求を申し上げまして私の質問を終わりますが、何か御感想があればお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/99
-
100・植木浩
○説明員(植木浩君) ただいま先生からお話のございました留学生交流につきましては、私どもも大変大事な事業であるということで、例えば予算面におきましても、この大変厳しい予算の中で、五十八年度に比べまして五十九年度は一一%増という留学生予算を計上しておるわけでございます。したがいまして、今後とも留学生関係につきましては、さらに国際交流の重要性にかんがみまして、これをさらに充実をしていきたいと思っておるわけでございます。
なお、お話のございました学術振興会等々につきましては、留学生事業と学術振興会の行っております研究者交流事業などは十分連絡をとりながらやっておるわけでございますが、さらに今後ともよく連絡をとりまして進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/100
-
101・高木健太郎
○高木健太郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/101
-
102・吉川春子
○吉川春子君 私は、まず奨学資金の支給凍結問題についてお伺いいたします。
けさから何回かごの問題につきましては論議があったわけですけれども、政府はこの改正案を二月の二十五日に提出いたしまして、それで無理を承知で四月一日施行ということを盛り込んできたわけなんです。しかし、こんなに重要法案、しかも国民の暮らしに大変悪い影響を及ぼすという法案が、そう簡単に国会で成立するはずはないんでありまして、それが今日までそういう状態が続いておることは明らかです。この四月からの支給手続事務に支障がないように、この法案の成立があるというふうに判断したとすれば、それは非常に見通しが甘かったと思うし、また予想しなかったというと、また無責任だと思うんです。この文部省の態度によって非常に多くの学生がいろいろな影響を受けています。例えば六月三日のこれは新聞の切り抜きなんですけれども、奨学金を当てにして学校に入学してきて、やむを得ずサラ金から金を借りてやりくりをしたり、過度のアルバイトで学業に支障を来す学生が出るなど深刻な事態が広がっていると、こういう報道をしています。これは東京大学工学部で博士課程一年生のMさん二十七歳の話なんですけれども、家庭の事情で家からの仕送りを当てにできないために、七月になれば奨学金で返せると思って、四月と五月にサラ金から五万円ずつ借金をしてしまったと、こういう事態にも追い込まれているわけなんです。大学院の場合には有利子制がないから十分現行法でできるはずだと、このままだと借金を重ねるか、勉強を中断してアルバイトをするしかない、こういうふうにこの方は話しておられるわけですけれども、この支給凍結問題についての責任ですね、これを文部大臣はどういうふうにお考えになっているか、最初にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/102
-
103・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) いろいろ、この問題につきましては衆議院の委員会あるいはまた参議院の委員会——本日から御審議をいただいているわけでございまして、その都度御指摘をいただきます。それの理由を幾つか申し上げておりますと、これまた言いわけになってしまいます。基本的には国の一般会計の資金を充当して、これを貸し付けるという制度でございますから、予算を国会にお願いをいたしておりますし、その予算案に関連をした法案として国会にお願いする従来の慣例でございます。吉川さんおっしゃるように、確かに、そのことが四月からできるかできないかというふうなことを最初から、また今の立場から言えば、それを考えなかったのかという御指摘になりますが、逆にそのことを事前に、国会の御論議をいただかない前に、私どもは想定して物をやるということも、国会の御審議をかえってこれは無視をするということになるわけでございまして、言いわけになるようでございますが、今日までのそうした予算関連法案としての取り組み方というのは、これ一つの慣例で進めてきておるわけでございますので、私どもとして、これに従ってきたわけでございます。もちろん、従来と違いまして選挙がございまして、予算編成が年を越しだということも一つには要因もございました。国会のこうした四月一日という問題については、かっても国立学校設置法等々についても、そういう問題が時たま時限的に間に合わなかったというようなことも出てまいりまして、国会の御論議に大変御迷惑をかけた面も種々あったことも、私はよく、理事もいたしておりましたから、承知をいたしております。
いずれにいたしましても、種々の要因から多くの学生、生徒に迷惑をかけた、こういう事態になったということについては極めて遺憾であるというふうに私は申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/103
-
104・吉川春子
○吉川春子君 今の大臣の御発言は、責任をお認めになるということに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/104
-
105・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) こういう事態になったということについて、大変残念でもございますし、遺憾でありましたというふうに申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/105
-
106・吉川春子
○吉川春子君 責任はお認めにならないということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/106
-
107・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 責任というかどうか、これはこういう制度で、国会の審議のいろんな制度もあるわけでございます。そうなれば、行政府である私どもも、国会の審議の進め方に対していろいろ——私は政治の立場ですから、いろいろあるわけでありますが、そんなことを申し上げたら国会に対して御無礼であろうというような立場にもなりますから、遺憾で残念でございましたと申し上げるしかない。しかし、これも問題になって、今、午前中からいろいろおしかりもいただいているわけでありますが、しかし衆議院、参議院両文教委員会の皆さんが大変御心配をなさいまして、そして何とか現状の中で最大の考慮をするように、そういう救済措置をするようにという要請がございましたので、そういう救済措置を講じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/107
-
108・吉川春子
○吉川春子君 大臣の発言は全く納得できない、何か国会の審議がおくれたから今日の事態を招いたかのようなふうにも今おっしゃられました。しかし、もうたくさん法案を出したり、いろいろその道のベテランである文部省、政府が、一月そこそこで、こんな法案が成立するというふうに思って出したということは、言葉を強く言えば全く厚かましいし、国会の審議権というものを軽視をしていると思うんですね。そうして案の定こういう結果を招いたんですから、私は学生に与えた多大な迷惑、そういうものについて率直に文部省としては責任をお認めになる方がいいと思うんですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/108
-
109・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 国会の審議に対して責任を押しつけていると、そういうふうに先生は判断をされましたが、私はそういう誤解があってはいかぬと思いますので幾つかの理由を申し上げてまいりました。そこまで先生がおっしゃって、私に責任をとれということをおっしゃるということになれば、私直言わなければならぬということになります。
法案をお願いをいたしておるわけでありますが、これは参議院には直接関係のないことでございますから、この場で申し上げるということはかえっていけないのかもしれませんが、私は衆議院の委員会でもはっきり言ってきましたので、——国会に法案の提出をお願いして、私どもも一日も早く、こういうことの学生さんに対する迷惑もありますから、早く審議してほしいということはお願いをいたしておりますが、本会議に上程をし、質疑にかけるという順番がなかなか来ない−国会用語では別の言い方がございますが、しかし、こういう順番が来ないということは、だんだんおくれていくということにもなります。何とか早くならぬのかなということもお願いもいたしました。国会というのは予算が通らなければ法案は一切できないのかという国会の仕組みの問題にもなってくると思います。しかし、現実の問題として、私は大蔵委員長の経験を持っておりますから、いわゆる時限立法的な面で予算案と並行してやるケースも委員会によってはあるわけであります。ただ、文教委員会はそうしたことはやらないということに従来なっております。大蔵委員会はそういうやり方はやっております。ですから、そういうやり方でも、でき得れば全くしてはならぬということじゃないと思いますが、ただそういう方向に国会の合意としてはならなかったということは極めて残念だったと私は思っております。
ですから、そういうこともいろいろ考えますと、先生が初めから四月にできるはずがないじゃないか、ないのになぜ出したんだということのおしかりでありますから、それはそれなりの私は御意見としてよくわかりますが、私どもといたしましては、こういう大事な問題でもございますし、四月一日から学生に奨学資金を与えるという、そういう日にちというものに対する一つのタイムリミットというものは重大な問題であるということも承知をいたしておりますから、何とか御審議に一工夫があってしかるべきではないかというようなことについて、差し出がましいことでございますが、私は与党に対しましてもいろんな角度からお願いをしてまいりました。しかし、残念ながら、やはり従来どおりの法案の取り扱いになったという経緯があったわけでございまして、種々の要因がございましたというのは、そういう意味のことを申し上げたわけでございまして、そういう意味で大変遺憾でございますというふうに申し上げておるわけでございまして、文部省といたしましても、国会の要請を受けて、いろんな措置を今やっておるわけでございます。責任があったと言えと言われますが、それについては私は責任があったという言い方はできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/109
-
110・吉川春子
○吉川春子君 法案が成立しないということだけではなくて、学生についても現行法で手を打つということがすぐにやられていれば、そんなにサラ金借りたり、アルバイトを過度にしたりしなくても済んだ学生が多かったはずです。しかし、じりじりとというか、小出しにそういう手当てもしできたと、私はもうこれ以上この問題について大臣から答弁は求めませんけれども、しかし、文部省の責任が大きいということは指摘しておきたいと思います。
それで、今度の法改正は大臣のいろんな御答弁を読みますと、制度の拡充のためにやったんだというふうに言っておられますが、何をもって制度の拡充というふうにおっしゃられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/110
-
111・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 日本育英会の育英奨学事業でございますけれども、従来、一般会計からの政府貸付金と卒業奨学生の返還金をもって事業を行ってきたわけでございますが、高等教育の機会均等を確保するためには、学生生活費の上昇あるいは授業料負担に応じまして育英奨学事業の量的拡充が必要であると私ども考えたわけでございますが、現下の国の財政事情を勘案すれば、一般会計の政府貸付金を資金とするだけでは限度がございますので、財政投融資資金を導入しまして、低利の有利子貸与制度を創設することとし、そして、ただいま、この育英会法案の御審議をお願いをいたしているわけでございます。
有利子貸与事業でございますが、当面、大学、短大の学生を対象といたしまして、初年度の昭和五十九年度は貸与人員二万人、事業費は六十五億ということでお願いをいたしております。したがって、無利子貸与事業、有利子貸与事業合わせますと、五十九年度においては貸与人員において一万一千人の増、事業費については約六十七億の増でございまして、これらの点は学年進行完成年度の六十四年度において見ますれば、貸与人員で約四万二千人の増、事業費について約三百四十億の増を見込んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/111
-
112・吉川春子
○吉川春子君 非常に今度の改正によって量的な拡大があるということでございました。それでは、量的な拡大があるということは、数字を見てそういうふうに言えるかもしれませんけれども、しかし、量的な拡大ということはちょっとひとつおくとしても、これによって非常に学生あるいは奨学生の返還金の負担が重くなるというふうに思うんですけれども、制度をいじるときに、量がふえればいいんだと。じゃ、返還する立場に立っての配慮ということはどういうふうになさいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/112
-
113・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 返還のことについても、もちろん私ども考慮をいたしたわけでございまして、従来から返還金の回収ということでは資金の効率的な運用を図ると同時に、卒業奨学生の返還負担能力も考慮して過重な負担とならないよう配慮するということは当然でございます。
昭和五十九年度の新規採用者につきまして、毎年の返還額を無利子貸与制度の場合で見ますと、国公立では十万円、私立大学では十二万円ということになるわけでございます。さらに有利子貸与事業について、その創設にあたりましては貸与利率を在学中は無利子とする、卒業後においてもできるたけ低利となるようということで、三%の利率ということで配慮をしたわけでございます。
そこで、基本的な貸与月額につきましてのその返還総額を見ますと、国公立、私立ともに無利子貸与に比べまして約二割程度の増になるわけでございます。毎年の返還額は、国公立大学約十二万六千円、私立大学約十五万五千円となっております。さらに、その財政投融資利率との差額につきましては利子補給を行うというようなことで、私どもとしましては、もちろん返還について十分配慮をした、今回の有利子貸与制度につきましても以上申し上げましたような点について配慮をいたしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/113
-
114・吉川春子
○吉川春子君 過重な負担にならないように配慮をなさったということですが、一、二具体的に伺ってみたいと思います。
例えば、五十八年度の一般貸与の月額及び四年間、つまり四十五カ月貸与を受けた場合の返還総額は幾らになりましょうか。また、五十九年度有利子貸与の自宅の月額及び返還総額は幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/114
-
115・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 五十八年度についてのお尋ねであったかと思いますけれども、五十八年度の国公立大学一般貸与、貸与月額一万八千円、貸与月数四十五月では、貸与総額が八十一万、返還総額八十一万で、返還年賦額は八万円、返還年数は十年ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/115
-
116・吉川春子
○吉川春子君 五十九年度有利子。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/116
-
117・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) それから、五十九年度の有利子貸与につきましては、国公立については、有利子貸与の貸与総額は九十九万でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/117
-
118・吉川春子
○吉川春子君 もう一つ伺いたいんですけれども、五十九年度の自宅外通学の私立大学奨学生の場合の無利子貸与と有利子貸与の月額及び返還総額はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/118
-
119・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 五十九年度の、私立大学の有利子貸与の自宅外の月額は四万一千円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/119
-
120・吉川春子
○吉川春子君 ちょっとあれですね、例えば五十九年度の無利子と有利子を比べてみますと、貸与月額は同じですけれども、返還総額は約四十六万、二五%近くふえることになるんですね。それで、ちょっとお伺いすると時間がかかりますので、私から申し上げますと、例えば高校と大学をともに私立で過ごした場合どうなるかということなんです。高校でも三割以上の子供たちが私学を選んでおりますし、大学では八割が私学です。高校、大学が私学というケースは今後ふえると思うんですけれども、しかも大学院まで行ったと、こういうふうに仮定しますと、返還総額が七百十六万になるんですよね。それを二十年ということで分割いたしますと、三十五万八千円ずつ年間返還していかなきゃならないと。年二回返還ということも検討されているようですけれども、こういう多額の金額を十五年、二十年かかって払い続けていくということは大変返還の負担というのにたえがたいという感じがするんですけれども、この返還の金額を見て、配慮は全然してないとは言わないんですけれども、なかなか大変な額だというふうにはお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/120
-
121・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) ただいま先生御指摘の私立について高等学校から大学院修士課程、博士課程までの全体の金額について御指摘があったわけでございまして、その点は貸与総額が七百十六万四千円となり、二十年の返還年数で申しますと、返還年賦額が三十五万八千円、月額にいたしますと約三万円弱という金額になるわけでございます。
この金額についてどう考えるかというお尋ねなんでございますけれども、確かに高等学校から大学院博士課程までの、しかも私立についての金額で申せば、そのような相当大きい金額になるということは事実でございます。大学院の博士課程を出て返還する場合に、月額三万円を重い負担と考えるかどうか。それはその人が博士課程を終了して通例得られます初任給との比率で考えることになろうかと思いますけれども、大学院の博士課程までを出まして通例得られる収入から、私どもはその負担にはたえられるものというぐあいに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/121
-
122・吉川春子
○吉川春子君 例えば自宅外の私立大学文理系の場合、十五年返還で現行法でも十二万ですけれども、それが今度十五万三千円になります。それを年二回払うとすると八万円ずつになるんですけれども、ボーナス時に八万円ずつ払っていくということですね。これ大臣に伺いたいんですけれども、こういう毎ボーナス時十五年間八万円ずつ返還していくと。そして十五年たちますと、もう既に自分の子供にさらに教育費がかかるということになるし、その間には結婚もするだろうし、家も買うし、そのローンも払わなきゃならない。そういうようなことを考えたときに、この金額が本当に大して負担にならない金額だと、そういうふうに考えられるかどうかという点を大臣に伺います。
それからさっき月額にすると三万云々と言われましたけれども、月賦で払うことを認めるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/122
-
123・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 原則年賦でございますが、本人の希望に応じて半年賦なり月賦ということは取り扱いは可能でございます。
負担についての、返還の負担額が多いか少ないかということについてのお尋ねであったかと思いますけれども、その点は先生御指摘の、先ほど申し上げましたようなケースで申し上げれば、貸与総額が七百十六万という数字になるわけでございまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/123
-
124・吉川春子
○吉川春子君 いや、大学院じゃないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/124
-
125・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 失礼しました。
私立の文科系の返還のケースについてのお尋ねでございますね。
私立大学で約十五万三千円という返還金額になるわけでございますが、これは通例の民間企業の初任給との対比で考えますと、私立大学で約九・七%程度ということになるわけでございますが、返還負担能力としては、私どもは、この程度の返還負担は無理のないケースではないかと考えております。もちろん、奨学生の場合には、ケースによりまして、それは単に自分の生活費を自分の収入で賄うということ以外に、それぞれ個人の御事情で、例えば仕送りをそれの中からするケースでございますとか、あるいは親の生活費を見るケースでございますとか、いろいろなケースが実際問題としては起こり得ることはあろうかと思います。そういうような方々にとっては、この返還ということについては考えなければならない点は確かにあろうかと思います。私は平均的な点で申し上げたわけでございまして、そういう事柄としてはあり得るケースとして、そういう方々にとっては確かに返還の問題というのはやはり負担感を感ずるケースもあり得るかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/125
-
126・吉川春子
○吉川春子君 今、ケースによってはこの返還の問題は大変だということを一部お認めになりましたけれども、私はやはり奨学資金を借りる人たちは低所得者層出身で、そしていろんな負担を負って生活する場合も多いわけですから、今度の量的な拡充が仮にあったというふうにいたしましても、返還の面で非常に重い負担がかかってきている、こういうことを指摘しておきたいと思うんです。
この次の質問がちょっと量的に長くなるんですけれども、もし差し支えなければここで切らせていただきたいんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/126
-
127・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/127
-
128・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
日本育英会法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/128
-
129・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 御異議ないと認めます。
なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/129
-
130・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時五十三分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01319840712/130
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。