1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年八月六日(月曜日)
午後四時三十一分開議
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○議事日程 第二十八号
昭和五十九年八月六日
午後一時開議
第一 健康保険法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
日程第一 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長石本茂君。
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〔石本茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/1
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002・石本茂
○石本茂君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の主なる内容は、一部負担金制度の改正とその一部負担金が一定額以下の場合の定額制導入、療養費制度の改正、日雇い労働者健康保険の対象者に対する健康保険制度の適用、国民健康保険の被保険者である退職被保険者等を対象とした退職者医療制度の創設と特例退職被保険者制度の導入、国民健康保険の国庫補助制度の改定、その他給付の公正化に関する措置等であります。
委員会におきましては、参考人、公述人からの意見を聴取、地方行政委員会、大蔵委員会及び運輸委員会と連合審査を行うとともに、中長期の医療政策とその財源対策、被用者保険本人の給付率の引き下げの家計への影響、疾病予防と健康増進策等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、自由民主党・自由国民会議を代表し佐々木理事より、高額療養費に関する規定の法文上の明記、傷病手当金と障害年金との支給調整などを内容とする修正案が提出され、提案者に対する質疑が行われました。
次いで、討論に入りましたところ、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合より、それぞれ原案並びに修正案に反対、自由民主党・自由国民会議より、原案並びに修正案に賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本法律案は多数をもって修正議決すべきものと決しました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。本岡昭次君。
〔本岡昭次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/3
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004・本岡昭次
○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自民党提出の修正案のいずれに対しても、断固反対する立場から討論を行うものであります。
中曽根総理は、去る七月十六日の本院本会議において、我が党の質問に対し、本法案は医療保険制度の基盤を揺るぎなきものとするために必要であり、単なる財政対策ではないと述べられました。しかし、これは真実を語っていません。一〇〇%所得を捕捉されるサラリーマンの自己負担増を強いることによってのみ医療保険制度の基盤を揺るぎなきものにするなどと言う前に、改めるべき問題が山積しているではありませんか。
まず、世上批判が強まっている薬づけ、検査づけの医療構造を支える現在の出来高払い制の診療報酬体系をなぜ見直そうとしないのですか。また、医療費高騰を問題にするならば、なぜ医薬品の大量消費をあおり、巨額の保険財政を吸い取っている製薬業界の体質を問題にしないのですか。さらに、患者の人権を侵害し、不正、違法を日常化して私腹を肥やす一部医療機関をなぜ野放しにしておくのですか。そこに横たわる癒着となれ合いを断つことをせず、患者に責任と負担を転嫁することで医療保険制度の基盤を固めるなど、見当違いも甚だしいと言わざるを得ません。
今回の改正案の根っこには、防衛費のGNP一%枠突破と軌を一にした国民医療への国庫支出削減があります。私は、この福祉を切り捨てて軍事力の増強を図る中曽根総理の政治基調を絶対に容認できないのであります。
また、本改正案は、定例日でもない八月三日の深夜に、我が党の強い反対を退け、委員長職権で委員会を強引に開会し、審議、採決されたのであります。このような暴挙を私は許すことはできません。極めて遺憾であり、強く抗議するものであります。
さらに、自民党が衆議院の本改正案修正の際、日本医師会など医療団体との間で、医療保険制度の統合や診療報酬の引き上げなど七項目について国会終了後具体化を図る密約を交わしていたことは、国会と国民を愚弄するものであり、断じて容認できないところであります。この甚だしい国会軽視についても強く抗議しておかなければなりません。
次いで、私は、本改正案の具体的内容について反対の理由を明らかにしてまいります。
私の反対する第一の理由は、今回の改正案の柱であります被用者保険本人の給付率の引き下げについてであります。
政府原案が一部修正され、国会の承認を得るまでの間はなお引き続き九割給付とし、医療費が三千五百円以下のとき患者負担は定額にするとなりました。しかし、依然として八割給付の原則は残されております。こうした本人給付率の引き下げは医療保障の後退であり、重症者、長期の入院・通院患者ほど過重な負担となり、しかも低所得者ほど受診が抑制される逆累進の結果を招くもので、到底認めることができません。
一方で増税なき財政再建をうたいながら、国庫負担削減のしわ寄せをこのような形で弱い立場の者に持っていこうとすることは、経済的に弱い立場の者に配慮するという総理の施政方針が全く言葉だけのものであることを証明しております。患者負担を平均すれば月額六百二十五円、コーヒー二杯分にすぎないなどといった説明を国民にすることは、欺瞞も甚だしいと言わざるを得ません。
第二の理由は、法案内容の検討の不十分さであります。
我が党は審議の過程で、国民医療費の綿密な計算のもとに、薬剤費の伸び率を物価上昇程度とし、薬剤比率を低下させていくことによって、給付率の引き下げを行わずして国民医療費を国民所得の伸び以内に抑えることができるという対案を提示して政府の長期ビジョンと対決してきました。しかし、政府は何ら説得力ある説明ができないまま、採決に至ったことは許せないのであります。
第三に、新たに創設されようとしている退職者医療制度についてであります。
現役時代と老人医療とのギャップを埋めるための制度として、私たちも強く要求をしてきたところであります。しかし、今回の政府案は、その私たちの要求に名をかりて国庫負担削減の手段としたところに問題があります。この制度は財政的に必要な国庫負担がなく、私たちの要求と異なり、絶対賛成できません。
第四に、この退職者医療制度の創設に伴い、国民健康保険の国庫補助率を医療費の四五彩から三八・五%へ引き下げている点であります。
政府は、当面、保険料の引き上げに結びつくも
のではないと説明していますが、早晩これは保険料引き上げにつながるものであり、ここにも保険料増大の方向が芽を出しているのであります。また、八千億円近い累積赤字を抱えた日雇い健保の政管健保への移行についても、なし崩しの問題転嫁であります。
最後に、医療保険の将来像に関してであります。給付と負担の公平化に名をかりて給付八割の一元化をうたっておりますが、それに対する財源的な説明は何らなされておりません。結局、後からつけた理屈づけであることを暴露しているにすぎないのであります。
なお、修正案についても、高額療養費の不合理是正等で一部評価できる面もありますが、基本的に給付率の問題の議論が何ら反映されておらず、最初にも申し上げましたが、議論はまだ十分尽くされているとは言えず、賛成できないのであります。
以上、私は、本案の審議のあり方、内容の問題点を指摘し、本改正案に対する反対の態度を明らかにいたしました。
そもそも健康保険法の理念は、所得に関係なくだれもが平等に十分な医療を受けられることにあります。一般的に低賃金で無権利の労働者ほど有病率は高いと言われております。給付率のダウンは、そうした人ほど医療負担の重圧を受けるのであります。だれも好んで病気になったり、けがをするわけではありません。被用者保険本人とは、一家の大黒柱、生計の中心であります。病気による収入減と治療に伴う支出増の両面から家計が直撃され、家族もろともどん底をさまようようなことに断じて手をかすことはできません。また、医療を金で買う時代への幕を私はあけるわけにはまいりません。それは健康保険制度そのものの否定であるからであります。
中曽根総理、医療保険は社会保障の重要な柱であります。憲法第二十五条は、すべての国民に健康で文化的な生活の権利を保障し、国は社会保障の増進の向上に努める、この責任を明記いたしております。国民医療はこの精神にのっとり、いかに拡充させていくかという原点に立ち、国民と政府が一体になって医療をより厚く、よりよくすべきものであって、その原点を踏み外し、憲法を否定していく本改正案には絶対賛成できないことを重ねて申し上げて、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/4
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005・木村睦男
○議長(木村睦男君) 中野鉄造君。
〔中野鉄造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/5
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006・中野鉄造
○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論を行うものであります。
具体的反対の理由を申し述べる前に指摘しておきたいことは、まず、昭和初年より半世紀以上にわたって営々として築かれてきた本制度を大きく変革しようとするこの改革法案は、まさに歴史的重要法案と言っても過言ではありません。これだけの改革をするからには、それに見合うだけの慎重な姿勢で臨むべきであったと思います。
ところが、振り返ってみると、これは極めて拙速に過ぎていたと言わざるを得ません。例えばその一つに、本法案が今国会に上程審議されるに当たり、その手順が逆さまになっていることであります。すなわち本来のあるべき姿として遅くとも審議に入るかなり以前に明示すべき医療政策の中長期ビジョンが、厚生省試案として本年四月二十七日、衆議院における審議の段階に入ってから提示されております。そもそもこのビジョンそのものが、政府としてはもちろん大蔵省との協議もなされておらず、厚生省という一行政官庁の試案であり、それはまさに絵にかいたもちにすぎず、今回の改革案に対する論難をかわすための案文であると言っても言い過ぎではありません。
次に、いま一つは、今回の改正案の背景について政府は、「二十一世紀の本格的高齢化社会に備え、中長期の観点に立って、医療費の規模を適正な水準にとどめ、現在の保険医療水準を維持すること、また給付の見直しと負担の公平化によって揺るぎない医療保険制度を確立するため」と再三再四説明しております。しかるに、薬づけ、検査づけに代表される現行の医療供給体制の是正や、医療機関における薬価の実勢価格と薬価基準との乖離、あるいはその流通の改善等々、是正すべき数多くの問題があるにもかかわらず、それらには何ら着手することなく、専ら本人の給付率引き下げによる受診の抑制と国庫負担の削減という最も安易な方法で医療費の削減をしょうとする政府の態度は、患者と国民に保険財政の責任を転嫁しようとするものであります。
こうした政府の逆立ちした発想は、去る七月三十一日のマイナスシーリングのつじつま合わせによる六千二百億円の医療費削減予算案として露呈されました。このようにして国民の医療保障を大幅に後退させる結果となりつつあることは極めて残念なことであり、断じて許すことはできません。
以下、反対の主な理由を申し述べます。
まず第一は、給付率であります。
昭和二年以来の健康保険本人の十割給付をやめ、患者の一割負担導入を国民的合意もないままに強行しようとする政府の姿勢は、我が党が本会議、委員会等で繰り返し主張したように、早期発見、早期治療という国民のプライマリーケアの権利を剥奪するばかりか、結果として、疾病の重篤化とそれによる医療費の高騰を招くものと危惧するものであります。
制度改革を言われるならば、まず各医療保険の制度間並びに本人・家族間の給付格差の是正こそが急務であるにもかかわらず、その点、改革案にはほとんど示されず、わずかに衆議院修正によって、今後の医療費の動向や財政状況等を踏まえ、「社会保険各法の被扶養者及び国民健康保険の被保険者の給付割合を八割とするよう必要な措置を講ずるものとする」という一言が加えられたにすぎないのであります。しかも、これとても全くの具体的展望を欠くものとなっており、特に国保の給付改善の施策や一元化の時期など関連した問題点は極めてあいまいなものとなっております。これらの速かやな明示と実行が前提となっていない本法案に対し、強く反対いたします。
次に、退職者医療制度についてであります。
我が党は、かねてより制度の早期実現を熱望してきた経緯があり、制度創設自体には賛成の立場にあります。しかし、本案による退職者医療制度は、国保に対する国庫補助の削減が目的であり、財政調整に名をかりて被用者保険に負担を転嫁しながら、国は本制度に対し何らの補助を行わないのは、国としての責任放棄であると言わざるを得ません。
さらに、関連する大きな問題点として、経営基盤の脆弱な国民健康保険の国庫補助率を引き下げるとしていることであります。これは今後の制度統合や給付の平準化を推進する上で大きな障害となることばかりでなく、この補助率の引き下げが、やがて保険料引き上げを誘発する要因となることも明白であります。
第三の反対の理由は、特定療養費支給制度についてであります。
これは結果的には、従来よりその弊害が強く指摘されてきた保険外負担を一層助長するばかりか、自由診療や差額徴収の拡大により医療保険制度の持つ本来的機能をスポイルするもので、適正、公平こそが大原則であるべき社会保険診療の中に、患者、国民の財力による差別を持ち込む危険性を内包するものと断ぜざるを得ないのであります。
第四に、医療費の増高要因についての分析と、それに対する的確な対応が欠如している点についてであります。
私は、現在の出来高払い制自体に長所があることを否定はいたしませんが、反面、制度的に無制限診療を招来しやすく、結果的には医療費を増高
させていることも否定できないのであります。しかるに、今日まで何らの手だてもなされていないばかりか、技術料重視の診療報酬制度、医薬分業制度の確立、高額医療機器の適正配置、医療機関の地域偏在の是正、医療機関に対する指導監査の徹底、医療内容のチェック強化等々古くから指摘されているにもかかわらず、いまだに有効適切な措置が講ぜられていないことも極めて遺憾であります。
それと、もう一つには、政府が医療費の抜本的軽減を望むとするならば、まずほ乳幼児を含めた国民の健康づくりの充実や成人病予防並びに早期発見の体制強化を図る改革こそ先決であることを強く主張いたすものでございます。
ともあれ、本案に対し、参議院社労委員会において修正がなされたことは一応評価いたします。しかしながら、こうした社会保障費こそは、将来ともに国の財政事情によって安易に左右されるべきものではなく、特に医療保障費にあっては、安心立命の活力ある国民生活の源泉たるべきものであり、何物にも最優先されるべき国費であり、施策でなければならないと確信いたします。
したがって、本改革案は国民福祉向上に逆行するものにほかならず、糊塗的財政対策優先の発想から成る今後の福祉切り捨てを惹起する改革案であるがゆえに、強く反対を表明し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/6
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007・木村睦男
○議長(木村睦男君) 神谷信之助君。
〔神谷信之助君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/7
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008・神谷信之助
○神谷信之助君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
私は、まず、本法案が社会労働委員会において深夜に採決されるという異常な事態が生じたことについて強く抗議するものであります。
そもそも本法案は、今国会の会期末五月二十三日時点で、衆議院において議了するにはほど遠い状況であり、議会運営の常道からすれば、当然廃案もしくは継続審議の運命にあったのであります。それを七十七日間の会期延長という暴挙によって継続されたのでありますが、それでも審議を尽くすことができず、衆議院の委員会審議では、合意済みの我が党の質問を封殺して採決を強行し、参議院段階における審議を尽くし得ないことが明白であるにもかかわらず本院に送付されてきたといういわくつきの法案であります。
この一連の経過は、健康保険改悪に対する国民の反対がいかに強くとも、この改悪法案は数に物を言わせて成立させずにはおかないという中曽根政治のファッショ的体質を露呈したものであります。
すなわち、一千万人をはるかに超える健康保険改悪反対の請願署名が国会に寄せられ、人口の八三%を占める三十九都道府県議会が、また市町村議会の半数以上が反対決議を行い、先日の七・二九中央集会には健康保険改悪反対などの要求で十二万人が結集するなど、本法案に反対する国民の声が日増しに強まっています。したがって、二院制における参議院の責任と役割からしても、この国民の声に謙虚に耳を傾け、審議を尽くし、議了に至らなければ廃案とすべきであります。しかるに、定例日でない三日から四日未明にかけて、我が党の反対を無視し、与党と一部野党の合意のもとで審議を強行し、採決するがごときは、主権者たる国民の声を踏みにじるものであり、断じて容認することはできない。日本共産党は厳しく抗議するものであります。
次に、具体的な反対の理由を述べます。
反対理由の第一は、健康保険本人十割給付の原則を打ち崩し、自己負担を導入することであります。
この健保本人十割給付の原則は、戦時中の一時期を除いて五十数年間堅持されてきた大原則であり、国民健保その他にも拡大すべき目標であります。ところが、中曽根内閣は、財界主導の臨調路線のもとで、膨大な軍事費は保障し、大企業への手厚い保護は続ける一方で、社会保障制度に対する国の負担を大幅に削り続けてまいりました。健康保険制度の根幹であり、長い間の国民の闘いの成果である健保十割給付の取り崩しは、患者と国民の犠牲で国庫負担を削減しようとするものであって、絶対に許すことはできません。根本問題は、国民の税金を命と健康を守る健保制度の充実に使うのか、あるいは命を奪う軍事費に使うのかの問題であり、本院の修正は、この根本問題のすりかえにすぎません。
反対理由の第二は、国庫補助なしの退職者医療制度の創設を理由に、国保財政への国庫補助を大幅に削減していることであります。
既に、市町村国保の財政は、今日までの国庫補助の削減もあって極めて困難な状態に置かれているところが多くなっています。この数年間に国保料が三倍から五倍にふえているところも数多くあり、このため保険料納入率低下の自治体もふえています。納入率が低下すれば財政調整交付金が減額されるという制裁があり、悪循環を繰り返すことになります。そこで、前橋市のごとく電話まで差し押さえるとか、沖縄県の十市のごとく滞納者には期限つきの証明書しか手交しないとか、サラ金まがいの取り立てが起こっています。いつでもどこでも、よい医療を貧富の差なく平等に受けられることを目指すべき公的医療保険制度の崩壊以外の何物でもありません。
我が党は、人道の名において国庫補助の削減は認めるわけにはまいりません。また退職者医療制度の創設も、国庫負担はなく、国民の負担のみで賄えという不当なもので、認めることはできません。
第三に、特定療養費制度導入の問題であります。
これは近い将来、いわゆる自由診療の拡大に道を開き、公的医療保険制度の地位を低下させ、患者の支払い能力によって医療に質的な差が出てくるという重大な内容を含んでいます。貧富の差によって医療内容に差が出てくるということは、社会保障の理念をも否定するものであり、反対であります。
第四に指摘したいことは、財界は既に本法案の実施を新たな利潤追求の好機ととらえ、着々その準備を進めていることであります。
従来、健康保険制度が改悪されると売薬を利用する国民がふえていますが、それを見越した製薬業界の売薬の値上げがいつも行われてまいりました。また個人負担の増加、給付内容の切り下げによって公的保険制度の機能が十分に果たし得なくなるのにつけ込んで、生命保険業界が新型の疾病保険を準備しているのであります。かねてより我が党は、薬価について製造原価に適正な利潤を加えた公共なものとするよう提案してまいりましたが、政府はこれに一顧だにせず、大もうけを許してきたのであります。
このように、中曽根内閣の進める財界主導の臨調路線は、福祉切り捨てで軍事費を生み出すだけではなく、直接的にも財界の利益を保証し、国民にまさに二重の打撃を与えるものと断ぜざるを得ません。
以上、我が党の主要な反対理由につき明らかにしてまいりました。本改悪法案は、既に明らかにしたごとく、国民の命と暮らしに重大な影響を与える悪法中の悪法であります。圧倒的な国民の反対の声に耳を傾けず、これを強行するならば、戦時下あの東条内閣がやった本人負担の導入を軍備拡張路線を進める中曽根内閣が行うこととなり、まさに歴史に汚点を残すことになるでありましょう。六十年度予算へ向けての概算要求でも、相変わらず軍事費は七%の突出、そして今度は生活保護費等国民生活関連予算を削るというではありませんか。
日本共産党は、このような中曽根内閣の軍備拡大、国民生活破壊の政策に反対し、軍事費を削って国民の暮らしを守れという国民の願いを実現をするために、そして国民のためのよりよい医療制
度の確立を目指して奮闘することを改めて表明し、反対討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/8
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009・木村睦男
○議長(木村睦男君) 柄谷道一君。
〔柄谷道一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/9
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010・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行うものであります。
反対する第一の理由は、今回の改正案が我が国医療制度の根幹にかかわるものであり、医療保険本来の趣旨に照らして慎重かつ広範な検討を行い、国民合意の形成をまって決定されるべきものであるにもかかわらず、本案は政府の画一的な予算のマイナスシーリングのつじつま合わせから出発し、被用者保険本人に対する定率負担の導入、受診率の抑制、国庫負担の削減をねらいとした財政対策にすぎないということであります。
我が国の医療保険制度は、昭和三十六年に国民皆保険の仕組みが達成されましたが、その後二十余年の歳月が経過する中で、政府は皆保険に即応した医療供給体制を主軸とする基礎的な条件整備を怠ったばかりか、疾病構造の変化や人口老齢化等の現象に対する適切な施策を欠き、医療制度全般の矛盾、不合理を拡大させ、国民総医療費の増高と保険財政の行き詰まりを招いた政治責任を私はまず指摘するものであります。
すなわち、総理の公的諮問機関である社会保障制度審議会は、昭和四十二年、財政対策のみを追う政府の姿勢を厳しく批判し、抜本対策の確立はまさに天の声であり、政府がもし従来のような態度に終始するならば、それは単に医療保険の破局をもたらすばかりでなく、社会保障の均衡のある発展を阻止し、ひいては我が国社会開発全般に一大障害となることは明らかであろうと異例の警告を行い、同じ立場をとる社会保険審議会とともに長期にわたる慎重な審議を経て、昭和四十五年と四十六年の二回にわたり、健康管理体制の充実と包括医療の実現、医療供給体制の体系的整備、診療報酬の適正化と医療支払い制度の改善など六項目について具体的改革案を提示し、これらについて具体的長期構想と年次計画を策定して実践に移すことこそ政治の要請であると答申したのであります。
しかるに、自来十二年間、政府はこれにこたえる万全の努力を払わず、さらに本年四月、我が党の強い要望によって発表した医療保障改革の基本的方向でも、「給付と負担の見直し」以外は問題点の羅列にとどまり、これを実現するための具体的方策は何ら示さなかったのであります。医療保険制度の基盤である国民期待の前提諸条件の改革を怠り、その上、今後の具体的改革計画も明らかにしないまま、国民にのみ過重な負担を課そうとする本案は、政府の怠慢、無策を国民に転嫁するものにほかならず、到底容認できるものではありません。
第二の理由は、本院における自民党の修正案が、我が党の本質的要求を満たしたものではないということであります。
我が党は、さきに述べたように、前提諸問題の改革と同時並行的に給付率を検討すべきであり、加えて、昭和五十六年度以降政府管掌健康保険の財政が健全化の方向にある中で、昭和二年以来五十七年間持続されてきた被用者本人の給付率を引き下げる必要はないという基本的立場をとり続けてきましたが、政府・与党にこれに応ずる用意が全くなく、かつ衆議院で既に議了されたという現実を踏まえ、次善の策として政府案の八割給付を本法から削除すべきであると強く要求してきました。
すなわち、衆議院の審議で、本則では被用者本人の給付率は八割とするが、昭和六十一年四月一日以降も国会で承認を受ける日までの間はなお引き続き九割とする旨の修正が行われましたが、九割給付はあくまでも激変緩和のための時限的措置として位置づけられているのであります。九割給付を高額療養費制度の抜本改善を前提として採用するとしても、本来的給付率のあり方については、一割負担としたことによる受診率の動向と国民の健康確保に与えた影響、医療保険の前提諸問題や保険外負担の整備改善状況、医療費や保険財政の推移、給付率は画一的でなく入院をより重視すべきとする公的審議会答申の理念との関連、各種保険制度の一元化に当たっては給付と負担の公平確保問題等々について深くメスを入れ、整合性をとりつつ決定されるべきであり、こうした討議を深く行うことなく八割給付を予約する法制化を行うことは暴挙であると言わざるを得ません。
このような客観的に正当性を持つ我が党の主張は、自民党推薦の参考人、公述人ですらこれを肯定したのであります。しかるに、政府・与党は、こうした我が党の妥当な要求を受け入れることを拒否しました。
自民党が我が党の修正要求の多くを入れ、高額療養費制度について、その原則を法文上明記し、あわせて低所得者の自己負担限度額の改善、自己負担が一定額以上のレセプトの世帯合算、高額療養費多数該当世帯の負担軽減、長期高額疾病患者の負担軽減について具体的に確認するとともに、償還払い方式改善のための融資制度の創設を法定するなど国民の疾病に対する不安を緩和する措置をとったこと、五人未満事業所等の適用拡大、傷病手当金と障害年金との支給調整、任意継続被保険者の保険料前納制、健康の保持増進を促進する事業規定の明確化、分娩費等現金給付の最低保障額の引き上げ等の改善措置をとったことは高く評価するにやぶさかではありません。
しかし、我が党の修正要求の根幹である八割給付削減が入れられない以上、これを認めることはできません。
第三は、退職者医療制度の創設に当たって、我が党の要求を認めず、国庫負担の導入を見送ったことであります。
現在、国は政府管掌健保、国民健保、日雇い健保には定率の国庫負担を行い、船員保険の疾病部門には定額補助を、また健康保険組合に対しても給付費臨時補助金を支出しております。さらに、老人保健法に基づく医療給付の財源は、いわゆる財政調整でありますが、かつ定率の補助を行っているのであります。しかるに政府は、退職者医療制度については国庫負担を行わず、その財源を各種保険制度の拠出金にのみ依存しており、これは著しく公正を欠き、国の責任を棚上げにするものと断ぜざるを得ません。
政府の本制度創設のねらいは、これによって国民健保に対する国庫負担率を引き下げ、国の歳出を削減しようとするこそくなものであり、これまで我が党が提起した制度とは似て非なるものであって、国庫負担を欠く制度創設を認めるわけにはいかないのであります。
最後に、総理及び厚生大臣が委員会で確認した
保険外負担の解消、改善及び医の倫理の確立と医療費の適正化対策について政府が強力に総合的施策を推進することを要求するとともに、附帯決議に盛られた医療供給体制の整備や各種保険制度の健全な運営を初めとする十五項目を誠実に履行し、国民の負託にこたえることを強く求めて、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/10
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011・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/11
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012・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/12
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013・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後五時十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02819840806/13
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