1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年十二月十日(火曜日)
午前十時三十二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 増岡 康治君
理 事
松浦 功君
吉川 芳男君
佐藤 三吾君
委 員
井上 孝君
岩上 二郎君
上田 稔君
大河原太一郎君
金丸 三郎君
上條 勝久君
出口 廣光君
上野 雄文君
志苫 裕君
丸谷 金保君
中野 明君
神谷信之助君
抜山 映子君
国務大臣
自 治 大 臣 古屋 亨君
政府委員
自治大臣官房長 津田 正君
自治省行政局公
務員部長 中島 忠能君
事務局側
常任委員会専門
員 高池 忠和君
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本日の会議に付した案件
○地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法
律案(第百二回国会内閣提出、第百三回国会衆
議院送付)
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001・増岡康治
○委員長(増岡康治君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本法律案につきましては、十二月五日、趣旨説明を聴取しております。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/1
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002・出口廣光
○出口廣光君 私自身が退職共済年金の受給者でございますので、先日、私の手元に地方職員共済組合の方からこういう小冊子をお送りいただきました。読ましていただきましたが、いろいろ理解しにくい点がございますのでお尋ねをさしていただきたいと存じます。
まず、今回の改正の必要性といったものについてお伺いをしたいと存じます。現在の地方職員共済組合制度が発足したのは昭和三十七年でございますから、既に二十三年の歴史を持っておるわけであります。地方公務員制度の一環として定着しておりますし、また自治体職員の生活設計というものにしっかり組み込まれておるわけでございます。
今度の改正につきまして、年金受給者また現職の共済組合員の間に、一体どういうわけで今の制度、ある意味では約束と申しますか、既得権のようなものがもうできておるのに手を加えられなければならないのか。いわゆる長寿社会に向かっての社会的な対応の一つであるということは漠然と理解できるわけでありますけれども、具体的に、共済組合制度に対する外的な要因によるものなのか、あるいは共済制度自身の内的な要因によるものなのか、あるいはまた両方なのか、どうもはっきりしないということで大きな不安を抱いておりますので、制度創設以来の大改正の必要性といったものについて御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/2
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003・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) お答えいたします。
今回の制度改正は非常に大きな改正でございますが、それはどういう理由で必要であるか、その理由は何かという御質問だと思っておりますが、高齢化社会の到来を控えまして、各年金制度とも程度の差はありますけれども成熟化が進み、現行制度のままに続けますと年金財政の将来が極めて憂慮されますとともに、保険料が負担し切れないほど高くなりまして、現役世代と受給世代との間のバランスが崩れるという問題が予想されます。したがいまして、公的年金制度全体の長期的安定と整合性ある発展が確保されるように年金制度全般にわたって見直し、改革を推進することが重要な課題であると考えられております。
国民年金や厚生年金保険、船員保険制度につきましては、御承知のようにさきに改革法が成立いたしまして、六十一年四月から実施されることになっておりますが、今御審議をお願いしております各共済制度の改革法も同じ趣旨にのっとったものでございまして、公的年金制度の一元化の観点からも速やかに成立させていただきたいというふうに考えておるのでありまして、これが大改正が必要であるということについての私どもの大体の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/3
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004・出口廣光
○出口廣光君 ただいまのお答えの中にございました給付と負担とのバランスの問題に関連してでありますが、次のことを明らかにしていただきたいと思います。
私が実務を担当しておりました昭和四十年ごろの退職年金受給者の組合員数に対する割合と現在を比較いたしますと六倍にも達しておる、こういう説明を聞いておりますが、それでは現在の共済組合の組合員数の総数、これは都道府県・市町村総数で結構でございます。またそれに対する退職年金受給者の総数というものは現在どうなっておるのか、さらに今後どういう推移をたどるであろうという見通しを持っておられるのか、この辺をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/4
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005・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 地方公務員共済組合連合会の資料というもので御説明させていただきますが、昭和五十八年度末におきましては組合員総数が百八十九万四千人でございます。その時点における退職年金受給者が三十六万八千人でございまして、成熟度が一九・四%になっております。これは、先生が今おっしゃいました昭和四十年度末と比較いたしますと、組合員数は一・五倍でございますが、退職年金受給者数は実は七・七倍にもなっております。
将来の見通してございますけれども、地方公務員共済組合連合会の一般組合員について組合員数を一定とさしていただく、そういう前提で申し上げますと成熟度のピークは昭和九十年度末ということになりまして、その時点における退職年金の受給者数は百二万二千人というふうに見込まれます。そういたしますと成熟度は五七・八%となってまいりますので、組合員一・七人で一人の退職年金受給者を支えるという非常に厳しい見通しが立てられるわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/5
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006・出口廣光
○出口廣光君 大臣の御答弁、また公務員部長のお答えによりまして共済制度をめぐる諸情勢と内部的な事情について理解できたわけでありますが、それではそのような状況に対応しようとする今回の改正に当たっての基本的な考え方と申しますか、去る五日に提案理由の説明もあったわけでございますが、改めてもっと具体的に改正の主眼点といったものについて御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/6
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007・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 今回の制度改正に当たります基本的な考え方は何かという御質問でございます。
今回の改革は、先ほど申し上げましたように、高齢化社会の到来等の社会情勢の推移の変化に対応いたしまして、公的年金制度全般につきまして長期的安定と整合性ある発展を図りますために、地方公務員の共済制度につきましても、さきに国民年金法等の一部を改正する法律によって創設されました国民共通の基礎年金を導入いたしますと同時に、将来の給付水準の適正化を図るなどの措置を講じ、そのほかに現行公的年金制度間の制度内容の相違等から生じできます種々の論議にもできるだけおこたえすることができるということを主眼としております。
改革に当たりましては、このような改革のねらいを達成いたしますとともに、公務員の共済年金制度は公務員制度の一環として位置づけられておりますので、公務の能率的運営に資するという目的を果たすことができるようにするということを基本的な考えといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/7
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008・出口廣光
○出口廣光君 たしか昭和五十七年の秋であったと記憶いたしておりますが、自民党の公的年金調査会がまとめられました「公的年金制度の再編・統合スケジュール」、それに昨年の二月の「公的年金制度の改革について」の閣議決定によりまして昭和七十年にいわゆる公的年金の一元化を完了する、こういうスケジュールになっているはずでありますが、この一元化スケジュールと今回の改正との関係はどうなっておるのかお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/8
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009・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) お話は、公的年金制度の一元化と今回の制度との関係をどう考えるか、七十年度の公的年金制度の一元化完了に向けてスケジュールの具体的内容はどうなっているかという御質問だと思います。
今回の改正は公的年金一元化に向かいまして、先ほど申し上げました共通の基礎年金の導入と同時に給付水準の適正化等がなり徹底した調整を実施するものでありまして、これによりまして所期の一元化の目標が相当程度達成されるものと考えております。昭和六十一年以降の一元化に向けましての具体的な内容、手順につきましては今回の改正措置を踏まえて検討されることとなります。いずれにいたしましても、公的年金制度全体としての長期的安定と整合性ある発展を図る見地から、各制度を通じまして所要の調整措置を進めて七十年度を目途に一元化を完了することになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/9
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010・出口廣光
○出口廣光君 少し方面を変えまして、問題の国鉄共済と今度の地方共済の改正との関係についてお尋ねしたいと思います。
国鉄共済の救済問題につきましては先般衆議院で統一見解が示されておりますが、これについて地方公務員共済は一体どういう立場に置かれることになるのか、またどういう影響を受けるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/10
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011・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 国鉄共済救済の問題につきましては、衆議院における審議の段階におきまして政府の統一見解が大蔵大臣から示されております。その政府の統一見解の解釈といたしまして、大蔵大臣は、六十四年度まてについての国鉄救済につきましては、他の制度に参加を求めるようなことは理論的にはあり得るが、現時点では念頭にないと答弁しておるところでございます。したがいまして、地方公務員共済組合の立場といたしましては、六十四年度までは大蔵大臣の答弁を文字どおりに受け取り、現時点では国鉄共済の救済に参加を求められるということは念頭にありません。
なお、六十五年度以降につきましては全く白紙でありますが、いずれにいたしましても、地方公務員共済組合の予算、掛金につきましては実質的には運営審議会、つまり委員は地方公共団体の代表と組合員の代表と半数ずつの構成でございますが、この運営審議会の承認がなければ実行することはできないことになっております。私どもといたしましては地共済の審議会の答申の趣旨も十分踏まえまして、関係方面の理解と合意が得られるような措置がとられることが必要であると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/11
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012・出口廣光
○出口廣光君 ただいまのお答えでまだよく理解できませんのは、今国鉄の余剰人員の地方公共団体への受け入れという要請があるわけでございますが、国鉄職員を地方自治体が受け入れる場合、国鉄在職中の期間に係る年金支給に要する費用については地方公共団体また組合員の負担とならないように当然措置すべきである、こういうふうに考えるものでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/12
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013・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 余剰人員対策として国鉄職員を地方団体が受け入れる場合の国鉄在職中の期間に係ります年金支給に関する費用については、地方公共団体及び組合員の負担とならないように措置すべきだという御意見でございます。
私どももそのように考えておりまして、国鉄の分割・民営に伴います余剰人員対策の一環といたしまして、仮に地方公共団体が国鉄職員を受け入れ、それらの者の受け入れた後の身分が地方公務員法に基づく一般職の職員となった場合は地方公務員共済制度が適用されることになることは当然でございますが、それらの者が将来年金受給権を取得した場合のそれらの者の国鉄職員期間に係ります年金給付に要する費用及び追加費用の取り扱いにつきましては、自治省といたしましては地方公共団体や地方公務員の負担とならないよう適切な措置を講じなければならないと考えておりますし、この点事務当局でも大体そういうような方向に話が向けられております。ただ、現在のところそのやり方とかその根拠についてまだはっきりしない点がありますが、考え方については今のように、地方公務員の負担にならないような措置が図られなければならないという点につきましては大体事務的な話もその方向に進んでおりまして、私どももそうしなきゃならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/13
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014・出口廣光
○出口廣光君 どうぞその方向で進んでいただきますよう要望いたす次第でございます。
次に、基礎年金についてお伺いしたいと思います。
先ほどのお答えによりますと、今回の一番大きな改正点の一つとして基礎年金制の適用ということが挙げられると思いますが、これまで組合員、被扶養配偶者双方について組合員の退職時の給与をもとに年金を決めるということがこれまでの大きな特徴でありましたし、また古くは恩給制度以来の一つの伝統的なやり方であったわけでございますが、そこへもってきてなぜ基礎年金制度を今回導入しなければならないのか、その理由をもう少し明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/14
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015・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 先生よく御存じのように、我が国の公的年金制度は、いろいろな沿革から現在三種七制度に分立いたしております。そういうふうに分立しておりますことによりまして、経済社会の変化に伴いまして公的年金制度の中にはその財政基盤が揺らぐものも実は予想されるわけでございます。そこで、経済社会の変化に対応し得るように年金制度をできるだけ一元化していかなきゃならないというので、今回その第一歩といたしまして基礎的な部分を横断的に各制度に共通いたしまして基礎年金というものをつくろうじゃないかということを考えたのが一つでございます。
もう一つは、かねがね言われておりますように、公的年金制度間におきまして給付に非常にアンバランスがある、そのアンバランスが公的年金制度に対する国民の信頼というものにも関係してきておるということでございますので、できるだけ給付の面についても統一化を図っていこう、そういう二つの考え方からさきの通常国会におきまして国民年金法が改正され、基礎年金制度が日の目を見たわけでございまして、そういうことから今回共済組合員及びその被扶養配偶者につきましても基礎年金を適用した方がよかろうというふうに我々も考えたわけでございます。
そういうことで基礎年金を導入しようということでございますけれども、この基礎年金にはかね
がね言われておりますように、一つは婦人の年金権を確立していこうじゃないかということと、もう一つは障害者の年金を充実していこう、こういう二つのねらいがございまして、そういうねらいにつきましてもやはり地方公務員の共済組合員及び被扶養配偶者につきまして適用した方がよかろうということで、今回基礎年金制度を地方公務員の世界にも導入していこうというふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/15
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016・出口廣光
○出口廣光君 今のお答えの中にもありましたが、現行の公務員の共済年金と民間の厚生年金とを比較して、世間で言われておりますようないわゆる大きな官民格差というものがあるのか。あるとしますと、今度の改正でその格差が縮まるのか、格差是正というものがされるのか、お尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/16
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017・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 公務員の共済年金と民間のサラリーマンに適用されております厚生年金との間においていろいろ違いがあることは事実でございます。ただ、公務員の共済年金制度というものは、よく言われておりますように、公務員制度の一環としての職域年金的な性格もあわせ持っておりますし、またこれが戦前からの恩給法の流れをくむ制度でございますので、厚生年金との間にそれなりの差が生ずるのも理解できることでございますけれども、ただその差というものが十分説明されていないといいますか、その差についての十分な理解というものがもう一つ行われておりません。
そこで、我々の方もこういう差につきましていろいろ勉強いたしまして、いわゆる制度間格差の問題につきましては改正を要する点についてはこの際改正をしていこうじゃないか、公務員の年金の特殊性からして差として国民に認めていただく分は国民に認めていただこうじゃないか、そしてその部分については性格をはっきりさせていこうというふうに今回考えたわけでございます。
厚生年金制度との間に差があることについて若干御説明さしていただきますと、一つは算定方式の問題でございますが、公務員共済につきましては基本ルールと通年ルールという二つのルールがございまして、そのいずれで計算したら年金が有利になるか、有利な方を公務員は選択できるということで、基本ルールと通年ルールの選択方式が認められておるということで民間より有利じゃないかという議論が一つございます。この点につきましては今回厚生年金の算定方式に統一するというふうにいたしたわけでございます。
それから二番目でございますけれども、算定基礎につきましては、現在公務員共済につきましては退職前一年間の給料の平均額によりまして年金を計算しておるわけでございますけれども、民間のサラリーマンにつきましてはいわゆる平均標準報酬というもので年金を算定しております。その算定基礎についての違いも今回統一をいたす、あるいはまた統一したと同じような制度を導入するということで、その点についてもバランスを図っていこうじゃないかということでございます。
支給開始年齢につきましてでございますが、三番目の問題としてこの問題もよく言われております。厚生年金は既に六十歳でございますけれども、公務員共済の場合には、現行法のもとでは昭和七十五年までかかりまして六十歳に漸次引き上げていこうということでございますが、その支給開始年齢の差につきましてもいろいろ言われておりますので、今回昭和七十年度に六十歳にするようにその経過措置を若干短縮していこう、厚生年金の方に近づけていこうということでございます。
それから第四番目に、年金の支給を受けながら高額の給与を受けているというケースもございまして、この点についてもいろいろ議論が出ておりますので、この高額な給与を受けながらの年金支給というものにつきまして、その制限を現在よりも厳しくしていこうということを考えております。
そういうことを通じまして制度間格差の議論にこたえていかなきゃならないと思いますけれども、一方、先ほど申し上げましたように、公務員共済というものは公務員制度の一環としての性格も持っておりますので、その面にも配慮した年金制度というものを考えていかなきゃならないということでございます。その一つとしていわゆる職域年金部分の議論もございます。そういうことを通じまして公務員の年金制度の姿というものを整理して国民の前に提示していかなきゃならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/17
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018・出口廣光
○出口廣光君 重ねてお伺いいたしますが、年金制度について官民格差を論ずる場合に、公務員の共済制度というものはお話にもありましたように公務員の身分でありますとか、あるいは服務、責任、こういった公務員制度全体の中の一環として位置づけられるべきものと認識をいたしておるわけでありますが、今回の改正についてその点についてどういう配慮をしておるのかもう少し具体的にお伺いしたいのと、またそういう考えに立った場合に、今度の案の中にあります職域年金相当部分の千分の一・五という率の根拠が那辺にあるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/18
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019・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 職域年金部分に関する御質問だと思いますけれども、公務員というのは民間のサラリーマンと異なりまして、その仕事はもっぱら公益といいますか、地方公務員の場合なら住民の利益のためにのみ働かなければならないという立場に置かれているというふうに思います。それが非常に特殊な立場だと思いますけれども、そういう特殊な立場に関連いたしまして公務員はいろいろな規制に服しております。労働三権が制約されておるとか、あるいはまた守秘義務があるとか、いろいろ厳しい服務規律に服しておりまして、そういう特殊な立場を考えるといいますか、そういうものに配慮いたしまして職域年金部分というものを設けなければならないというふうに私たちは考えたわけでございます。
それ以外にも、例えば公務による障害共済年金とか、あるいは遺族共済年金につきましては高い水準の年金給付を保障していくということも考えまして、公務員共済の特殊性というものを年金制度の面において配慮したわけでございますけれども、その具体的なあらわれが法案の中に御提示申し上げておりますように千分の一・五ということになるわけでございまして、共済年金の中でいわゆる公的年金、民間の厚生年金に相当する部分につきましては千分の七・五でございますけれども、民間の厚生年金にはない千分の一・五というものを制度的に今回設けましたその根拠につきましては、案はこれはいろいろ民間の専門家の方たちの意見も聞き、また現役の公務員の負担にも配慮いたしまして、そして現役の公務員の方の報酬とOBの方の年金の額とのバランス等も考えまして、千分の一・五ぐらいならばおよそ国民の方の合意が得られるんじゃないかというふうに考えたわけでございます。この千分の一・五というのは先ほど申し上げました厚生年金の相当部分千分の七・五の二〇%という額になっておるわけでございます。そういうことで今回国民の皆さん方の御賛同も得て、国会の審議を通じまして御承認いただければというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/19
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020・出口廣光
○出口廣光君 今回の改正による影響は各個人によってまちまちであろうと思いますが、大ざっぱで結構でありますが、共済年金受給者の年金水準というものはどうなるのか。話によりますと一般的に不利になるし、特に独身者、共稼ぎの方については大変不利になると言われておりますが、そうなのかどうかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/20
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021・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 年金の水準につきましては、先生よく御存じのように、勤続年数とか、その方が退職されるときの給料の額とか、そういうものによって水準が変わってまいりますので、モデル計算によって通常御説明申し上げております。
そこで、仮に勤続年数が四十年ということで、最終一年間の平均的な給料月額が三十二万三千円
という場合について見てみますと、現行の年金額は二十二万六千円でございますけれども、今回の改正後では、当初、新法施行直後におきましては二十一万円ぐらい。したがいまして、現行に対しまして九二・九%と七%ほど減額になりますけれども、制度が完成された時点におきましてはそれが十九万三千円という額になりますので、八五・四%ということで一五%ほどの減になってまいります。
また、単身者につきましては、改正後では当初は十九万三千円と現行比八五・四%ということでございますけれども、完成時では十四万三千円と現行比で六三・三%というふうになってまいります。
さらに、今お話しの共稼ぎの場合にはどうなるかということでございますが、夫、妻とも同じ年金額ということで仮定いたしますと、現行制度によりますと両者の年金額が合計されますので四十五万二千円という年金額になります。改正後では当初は三十八万六千円でございますけれども、完成時では二十八万六千円と現行比で六三。三%というふうになりまして、一人当たりでは単身者と同じように非常に厳しい水準になってまいります。
ただ、先生御存じのように、現在の年金制度は世帯単位で給付設計がなされておりますけれども、今回の改正案では年金の給付設計を個人単位に組み直すということで考えられておりますので、共稼ぎの方それぞれにつきまして、あるいは単身者につきまして厳しい内容になるということでございます。その点は今回の年金制度の改正の基本的な考え方に絡むものでございますので、御理解いただきまして御承認いただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/21
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022・出口廣光
○出口廣光君 この冊子を拝見しまして、非常に実務的で、私の見方が間違っておるのかもしれませんが、既裁定の年金について一般方式の年金は通年方式に裁定がえをする、そして従前額を保障した上で裁定がえ後の額が従前の額に達するまでスライド停止をする、こういうふうに読めるわけでございますが、そうなのか、そうだとすればどうしてそうしなければいけないのか、その理由を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/22
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023・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 先生がおっしゃったとおりの内容でございますが、今回の改正法が国会でもし御殿認いただきますと、来年の四月一日から年金が裁定される方につきましては新しい方式で年金が裁定されるわけでございますが、それは厚生年金と同じ方式に移り変わるということでございます。ただ、現在既に年金が裁定されておる方につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、基本ルールと通年ルールという二つのルールの中で有利な方を選択していただいて年金額が裁定されております。そこで、基本ルールで現在既に年金額が裁定されておる方につきましては、今度の施行を契機にいたしまして通年ルールに裁定がえさしていただこうじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
現在既に通年ルールで裁定されておる方につきましては裁定がえという問題、スライド停止という問題は起こってまいりませんが、現在基本ルールで年金額が裁定されておる方につきましては通年ルールに裁定がえさしていただく。しかし、その通年ルールというのも退職前一年間の給料をもとに年金額が裁定されておりますので、この改正法というものが施行されたときの裁定方式よりも有利な方式で裁定がえされる、その点をよく御理解いただきたいと思います。
ただ、そういうふうに裁定がえをいたしまして、そして来年の三月三十一日現在の基本ルールに基づく年金額を保障するというふうに考えましたのは、今回の制度改正の内容によりまして年金額を裁定さしていただきましても、やはり将来現役の方々の保険料が大変高くなりますので、現役の方の保険料とOBの方の年金額のバランスを保っていくためには、現在既に年金を裁定されている方につきましてもある程度の我慢をお願い申し上げなきゃならないんじゃないか、やはりそういうふうに考えなければ全体としてバランスを保つことができないんじゃないかというふうに考えましてスライド停止というものを考えたわけでございますけれども、このスライド停止をする来年の三月三十一日現在の額の中には、現在恩給制度で用いられております高齢者加算とか戦務加算とかあるいは勤続加算というような額が算入されましてその額が保障されるということでございますが、その点は余り十分説明されていないようでございますけれども、そういうことで従前額を保障し既得権を尊重していくんだという制度内容になっておりますので、全体としてよく御理解いただきまして、私たちの考え方もひとつ御支持いただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/23
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024・出口廣光
○出口廣光君 年金のスライドについてお尋ねいたしますが、これを拝見しますと、年金のスライドは消費者物価による自動スライドとしております。ある意味では組合員のかねてから期待しておったところでもあるわけでございますが、消費者物価と給与水準なり年金とにいろいろギャップの生じたこともこれまであったというような経過にかんがみまして、賃金というものは生産性の向上と物価との両面を勘案したものという常識からしますと、消費者物価だけによる自動スライドというものについては相当心配があるわけでございますが、その辺についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/24
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025・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 今回の改正案では、共済年金につきましても物価スライドということを予定さしていただいております。それは、先ほど御説明さしていただきましたが、公務員共済につきましても基礎年金を導入いたしまして、公務員共済はいわゆるその上に積む二階部分としての性格ということになるわけでございますが、その一階の土台部分につきまして既に国会で御承認いただきまして物価スライドということになっておりますので、上に積む部分につきましても物価スライドというふうに考えた方が年金制度全体として整合性が保たれるだろうというふうに考えたわけでございます。
ただ、この点につきましては、今、先生がお話しになりましたように実はいろいろな議論がございます。私たちの方も過去十年間の賃金と物価の上昇テンポを調べてみますともうほとんど変わらないような状況でございますけれども、ただ、年金というものが賃金を基礎にして算定される仕組みでございますので、その差が生じた場合に補正しなければ年金受給者の立場から考えますと不十分じゃないかという議論にもそれ相当の説得力がございますので、五年に一回いわゆる財源率の再計算を行いますけれども、そのときには賃金の動向を踏まえまして補正をしていって、そして賃金と物価の差というものがきちんと年金の面にも反映されるように考えていかなきゃならないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/25
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026・出口廣光
○出口廣光君 先ほど、大臣からお答えのありました今度の制度改革の必要性の一つとして共済年金財政悪化の問題がございましたが、現行制度のもとにおける共済年金財政の将来収支見通しは現在どうなっているのか、また今度の改正によればどうなるのか、さらに現行の組合員の掛金本俸の六・九%というものが今度の改正によってどうなるのか、この点御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/26
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027・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 地方公務員共済組合連合会の資料に基づいて御説明申し上げますけれども、現在の財源率をそのまま据え置いて連合会の運営を行いました場合にどういうふうになるだろうかということで計算してまいりますと、昭和七十五年度には収支がマイナスになりまして、昭和八十四年度には現在の積立金が実はゼロになってしまいます。そういたしますと、それ以後はいわゆる賦課保険料になるわけでございますけれども、その賦課保険料に移りましてから一番高い保険料が徴収されるのは何年かということで計算してみますとちょうど昭和百年になりまして、その時点の保険料といいますか、我々の月給から引かれるのはどれくらいになるかといいますと、月給に対しまして二一・七七%の掛金率になるという
ことでございます。
そこで、そういうことが現役の公務員にとっては非常に過酷なことになるというふうに受け取られるにもちろん違いございませんので、今回の制度改革というものを仮にさしていただくといたしますとどういうふうになるだろうかということで計算をしてみたわけでございますけれども、五十九年の十二月に財源率の再計算をいたしましたが、そのときの組合員数に据え置く、そして給与改定率と年金改定率を仮に年五%、運用利回りを年七%だと、昭和六十五年度に厚生年金の財源率に合わせるという前提で計算さしていただきますと、昭和九十二年度には一度単年度収支がマイナスになりますけれども、昭和九十五年度には再び財源率の改定がございますので、ここで収支が安定いたしまして、昭和百年度になりますと収入と支出の割合が九一・四%と収入が若干支出を上回るという状況になります。
そして積立比率、いわゆる積立金がそのときの支出に対してどれくらいの額を持っておるかといいますと三・一倍の積立金を持つことになりまして、およそこのあたりで年金財政は成熟状態に達するんじゃないかというふうに考えられます。ただ、この昭和百年度の組合員の掛金率がどういうふうになるかというのは、先ほど申し上げましたものよりおおむね二割ぐらい下がりまして一七・二五%というふうに計算されるわけでございます。そういうことで私たちの方では一応計算をさしていただきまして御説明をさしていただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/27
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028・出口廣光
○出口廣光君 ただいまちょっと聞き落としましたが、財源率が国民年金と同じになるのは何年か、もう一度お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/28
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029・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 改正後の収支の見通しを立てるときの一つの前提でございますけれども、仮に昭和六十五年度に厚生年金の財源率と同じ財源率にするという前提で計算さしていただきますと、先ほど申し上げましたような見通しになる、六十五年度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/29
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030・出口廣光
○出口廣光君 次に、公的負担の関係についてお伺いしたいと思いますが、現行制度のままでいった場合にどういう見通しとなるのか。これと比較しますと、今度の改正で大幅に減額になるように資料を見ますと見受けられますが、そうなのか。現在の一五・八五%ですか、これが資料を拝見しますと、基礎年金勘定への拠出金の三分の一を公的負担するんだ、こういうふうに私読んだわけでございますが、そういうことだとすれば大変減額になるのではないかと思うんでありますが、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/30
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031・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) 今回予定しております制度改正後の年金財政の見通しについて一定の条件を置きまして非常に粗い推計を行いました。その結果で説明さしていただきますと、公的負担は初年度の昭和六十一年度におきまして八百億円、そして昭和七十年度で千三百億円、八十年度で千七百億円、九十年度で二千二百億円というふうに公的負担がふえてまいります。それに対しまして現行制度のまま公的負担を置いておきますと、給付時負担ということで計算さしていただきますと六十一年度が七百億円、百億ほど現行制度の方が少ないわけでございますが、七十年度は千五百億円、八十年度が二千七百億円、九十年度が四千億円というふうになりまして、今、先生が指摘されましたように、現行制度のまま据え置いた場合よりも改正後の公的負担の額は相当減ってまいります。
そこで、公的負担がそのように減る理由は何なのかということでございますが、かねがね当委員会でも、公的年金制度の違いによって公的負担の額が違うじゃないかという議論がいろいろ国会でも議論されました。そこで、すべての国民に公平な公的負担ということで統一しようじゃないかということが考えられたわけでございますけれども、先ほど御説明さしていただきましたように、今回すべての国民に基礎年金を適用する、そしてその基礎年金勘定に対しまして各保険者が拠出金を出すという制度になりましたので、その三分の一を公的負担にするということで各公的年金制度につきまして公平な公的負担という制度にしたわけでございますが、そういう結果によりまして、現行制度に比べますと公的負担が減額されるということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/31
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032・出口廣光
○出口廣光君 この法案を見ますと、今回、支給開始年齢を本則で六十五歳となっております。附則で当分の間六十歳となっておりますが、現在五十五歳でありますから一挙に本則で六十五歳ということではなしに段階的に本則で六十歳とすべきではないだろうか、こういう感じがいたしますが、その点の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/32
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033・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) おっしゃるように、本則で六十五歳とし附則で六十歳にしておるということでございますが、これはたびたび御説明さしていただいておりますように、公務員共済につきまして今回基礎年金制度を導入するということにしたわけでございますが、厚生年金におきましても基礎年金を導入するということでさきの国会で御承認いただきましたが、その基礎年金が六十五歳支給だということで厚生年金の法律におきまして本則六十五歳、附則で六十歳ということになっておりますので、私たちの方もそれに平仄を合わせまして規定をさしていただいたわけでございます。ただ、六十歳支給、六十五歳支給ということで衆議院においてもいろいろ御議論がございましたけれども、この規定の仕方のいかんにかかわらず、年金の支給開始年齢は雇用との関係において十分考慮されるべき問題だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/33
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034・出口廣光
○出口廣光君 いろいろまだお伺いしたい点が数多くあるわけでございますが、時間の関係がございますので、最後に、今回の改正は制度始まって以来の大改正であります。にもかかわらず実施予定を来年の四月となさっておられますが、大変な大改正であり、また事務的な準備も大変なことだと思いますけれども、なぜ今この法案を審議し四カ月後にもう実施に移さなければならないか、大変性急なような感じがするわけでございますが、その辺の事情について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/34
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035・中島忠能
○政府委員(中島忠能君) さきの国会におきまして国民年金法と厚生年金法が可決されまして来年の四月一日から施行されることが予定されております。それによりまして厚生年金におきましては経過措置を設けながら順次給付水準が適正化されていく、そして国民年金法が改正されましたことによりまして今度は強制加入の基礎年金制度に変わっていくということでございます。仮に公務員共済が改正されずにこのままの状態になりますと、一つは先ほど申し上げましたように、厚生年金の給付水準は適正化されていくけれども公務員共済の年金水準はそのままだということになりますと、制度間格差がさらに広がるじゃないかという議論が出てぐるだろうというふうに思います。
もう一つは、国民年金法が改正されまして基礎年金制度ということになりますので、公務員の妻は今度は任意加入の国民年金という制度がなくなりますので、公務員共済の被扶養配偶者につきましては宙ぶらりんの状態になるというふうなことがございます。
それ以外にも、障害基礎年金の面におきまして費用負担との関係においても若干問題がございますけれども、これらの問題から考えまして、やはり公務員共済につきましても関係法が可決されまして来年の四月一日から施行さしていただいた方が全体としての年金制度が整合性を保ってスタートできるのではないか、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/35
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036・増岡康治
○委員長(増岡康治君) それでは暫時休憩いたします。
午前十一時二十八分休憩
〔休憩後開会に至らなかった〕
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110314720X00319851210/36
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