1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和六十年十二月四日(水曜日)
午後二時一分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第六号
昭和六十年十二月四日
午後二時開議
第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案
(衆議院提出)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、国家公務員等共済組合法等の一部を改正す
る法律案及び地方公務員等共済組合法等の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/0
-
001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案、地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案、以上両案について提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/1
-
002・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。竹下大蔵大臣。
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/2
-
003・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
御承知のように我が国は、近年、人口構造の高齢化の進行等により年金制度のよって立つ基盤そのものに大きな変化が生じており、このような社会経済情勢の変化に対応しつつ、長期的に安定した年金制度が維持されるよう公的年金制度全般にわたる見直しが迫られております。
このような状況にかんがみ、政府は、昭和七十年を目途に、高齢化社会の到来等社会経済情勢の変化に対応し、公的年金制度全体の長期的安定と整合性ある発展を図るため、公的年金制度の一元化を展望しつつ、その改革を推進することといたしたところであります。
今回提出いたしました改正案は、このような趣旨に基づき、国民年金、厚生年金保険等の制度改正と同様、国家公務員等共済組合の組合員等についても、国民年金の基礎年金の制度を適用することとし、同時に共済年金制度における給付と負担の長期的均衡を確保するため給付水準の適正化を図る等の措置を計画的に講ずることとするものであります。
また、共済年金制度は、公務員制度等の一環としての性格をも有しているので、この面にも配慮を行っているところであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一点は、共済年金制度に基づく給付は、原則として基礎年金に上乗せして支給する報酬比例年金とし、給付の種類としては、退職共済年金、障害共済年金及び遺族共済年金等といたしております。
第二点は、共済年金の給付の内容でありますが、共済年金の年金額は、厚生年金相当部分の年金額に公務員制度等の一環としての職域年金相当部分の年金額を加えたものをもって年金額とすることといたしております。
厚生年金相当部分の年金額の算定方式については、厚生年金と同様のものとしており、職域年金相当部分の年金額については、その水準を厚生年金相当部分の二割相当としております。
なお、支給開始年齢については、経過措置を短縮し、昭和七十年から六十歳となるようにいたしております。
第三点は、各年金給付の個別の改正であります。退職共済年金については、配偶者等に対する加給年金制度及び低所得者に対する在職老齢年金の制度を設け、障害共済年金については、事後重症の制限期間を撤廃し、遺族共済年金については、給付率を二分の一から四分の三に引き上げる等の措置を講ずることといたしております。
第四点は、公的年金の併給調整の実施、所得制限の強化等給付の合理化を図ることといたしております。
第五点は、既裁定年金の取り扱いにつきまして、改正後の年金額の算定方式に類似している、いわゆる通年方式により算定した額に改定することといたしておりますが、従前の年金額は、これを保障することといたしております。
第六点は、費用負担についてであります。共済年金の給付に要する費用については、使用者としての国または公共企業体等と組合員との折半負担とすることとし、いわゆる公経済の主体としての国庫等の負担については、基礎年金拠出金の三分の一とすることとしております。
その他、年金額の改定方式について、厚生年金等と同様、消費者物価による自動スライド制を採用するほか、国鉄共済年金について、その財政状況を勘案し、職域年金相当部分については給付を行わないこととしております。
なお、今回の制度改正についての施行期日でありますが、国民年金、厚生年金保険の制度改正と同様、昭和六十一年四月一日といたしております。
以上、国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
なお、本法律案は、第百二回国会で成立いたしました国民年金法等の一部を改正する法律の参議院における修正等に伴い、原案の附則の規定について、衆議院におきまして所要の修正がなされておりますので、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/3
-
004・木村睦男
○議長(木村睦男君) 古屋自治大臣。
〔国務大臣古屋亨君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/4
-
005・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) ただいま議題となりました地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、高齢化社会の到来等社会経済情勢の変化に対応し、公的年金制度の長期的安定と整合性ある発展を図るため、公的年金制度の一元比等の改革の一環として、地方公務員等共済組合法に基づく長期給付についても、基礎年金制度を適用するとともに、給付水準の適正化を図る等国家公務員の共済年金制度の改正と同様の措置を講じようとするものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一は、給付の通則に関する事項についてであります。
長期給付の給付額につきましては、平均給料月額を基礎として算定することとし、その種類は、退職共済年金、障害共済年金、遺族共済年金等とすることとしております。
第二は、共済年金の給付の内容についてであります。
年金額につきましては、厚生年金相当部分の額と公務員制度等の一環としての職域年金相当部分の額を合算して年金額といたしております。
退職共済年金については、組合員期間等が二十五年以上である者が、退職した後に六十五歳に達したとき等に支給することとしておりますが、当分の間、六十歳から退職共済年金の特別支給を行うこととしております。
なお、支給開始年齢につきましては、現行の経過措置を短縮することとしております。
障害共済年金については、組合員である間に初診日のある傷病により、障害等級に該当する程度の障害の状態になったときに支給することとしております。
遺族共済年金については、組合員、退職共済年金の受給権者等が死亡したときに、その遺族に支給することとしております。
このほか、地方公共団体の長について、従前の取り扱い等を勘案した特例措置を講ずることとしております。
第三は、給付に関するその他の事項についてであります。
退職共済年金等の年金額の改定につきましては、消費者物価指数による自動改定とすることとしております。
また、退職共済年金等の受給権者が厚生年金保険の被保険者等となったときは、その間、その者の給与所得に応じ、年金額の一部の支給を停止することとしております。
さらに、受給権者が複数の共済年金の給付または他の法律に基づく年金である給付を受けることができる場合には、原則として、その選択する一の年金を支給することとしております。
第四は、既裁定年金に関する事項についてであります。
既裁定年金につきましては、その額をいわゆる通年方式による年金額に改定することとしております。なお、この場合、従前の年金額は、これを保障することとしております。
第五は、費用負担に関する事項についてであります。
長期給付に要する費用は、組合員と地方公共団体等が折半して負担することとし、公的負担の額は基礎年金拠出金の三分の一に相当する額とすることとしております。
第六は、団体組合員に関する事項についてであります。
団体組合員につきましては、新たに、地方公務員等と通算措置を講ずることとするほか、地方公務員に対する措置と同様の改正を行うこととしております。
第七は、地方議会議員の年金に関する事項についてであります。
地方議会議員の年金につきましては、国会議員の互助年金の取り扱いに準じ、高額所得停止制度の導入及び支給開始年齢の引き上げを図る等の措置を講ずることとしております。
最後に、組合員等についても基礎年金制度を適用することに伴い、国民年金法等を改正する等所要の措置を講ずることとしております。
以上、地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
なお、本法律案は、第百二回国会で成立いたしました国民年金法等の一部を改正する法律の参議院における修正等に伴い、原案の附則の規定について衆議院におきまして所要の修正がなされておりますので、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/5
-
006・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐藤三吾君。
〔佐藤三吾君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/6
-
007・佐藤三吾
○佐藤三吾君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました国公共済、地公共済二法改正案につきまして、総理並びに関係閣僚に対し質問いたします。
今回の改正は、一口に言うと、第一に給付の切り下げ、第二に負担の引き上げ、第三に国庫負担の削減を内容とするものであります。私は、こうした年金制度の後退に対して、第一に日本経済に与える悪影響を危惧せざるを得ません。
我が国は、高度経済成長を続けて、安定成長期にある現在においても先進資本主義諸国と比べ高い成長を誇っておりますが、こうした成長発展の主たる功績は政府にあるものではなく、また、企業経営者にあるものでもなく、ひたすら我が国の勤労国民の勤勉さにあるものであります。そして、その老後の生活は必ずしも保障されている状況ではなく、雇用、所得、医療や福祉もこうした成長を支えた勤労者に報いるのに十分とは言えないことは既に国民一致した認識であります。こうした中で年金の水準を切り下げることは、勤労国民の既得権を裏切るのみならず、今後、我が国の経済を支える若年労働者や子供たちの勤労意欲を阻害することになります。
例えば、改正によって多くの既裁定者のスライド停止が実施されますが、その停止期間は最長五年に及ぶと言われております。政府は七十歳以上については百五十分の二の上積みがあるとしていますが、では六十歳から七十歳までの間はどのような形で配慮されるのでしょうか。自助努力、民間活力といっても、その源泉は勤労が報われるという勤労国民の社会に対する信頼があってのものであり、生かさず殺さすの政策では活力は向上いたしません。総理は、勤労国民の勤勉にどのようにして報いる社会を築かれようとして今回の改正案を提出されたのか、また、既裁定者、つまりは成長を支えてきた人々のスライド停止をどのように受けとめておられるのか、所見を伺いたいと存じます。
また、厚生大臣は、国民の老後の社会保障をどのような体系として確立すべく考えておられるのか、お伺いしたいのであります。
また、政府は、経済摩擦解消、内需拡大を経済政策の最大の課題としておりますが、内需拡大と年金の関係についてはどのようにお考えでしょうか。税負担は重い、賃金は低上昇のもとで消費消費といっても、年金の給付までが切り下げられては実行できません。老後の生活に不安があれば消費よりも貯蓄に励むのは当然であります。年金法改正が内需拡大策においてどう位置づけられているのか、この点についても総理の見解を求めたいと思います。
同時に、国鉄共済について六十四年まで衆議院で方向が定まったようでございますけれども、六十五年以降については皆目不明でございます。これについても総理の見解をあわせてお聞きしておきたいと思います。
第二に、公務員制度と共済制度との関係についてお伺いいたします。
国公共済、地公共済とも、その目的には、公務員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与する、公務員の能率的運営に資することを目的とする、国及び地方公共団体は共済組合の健全な運営と発達が図られるよう必要な配慮を加えると記されております。公務員がその労働の性格の特殊性をもってその労働基本権がさまざまに制限を受けていることは、この場で多くは言いません。しかし、ゆがんではおりますが、政府みずからが行政職員の社会に果たす職責の重大さを認識している例証であると考えます。そうした中で、今回の改正が公務員の能率的運営に資することになり、また共済組合の健全な運営と発達への必要な配慮を加えたことになるのでありますか。職域年金加算部分として千分の一・五が加算されることになっておりますが、この加算をもってしても給付の切り下げは厚生年金よりはるかに大きいものであります。
総理は公務員の規律についてはしばしば毅然たる姿勢を示しますが、むちをもって行政の能率は向上するものではありません。軍備の拡大や靖国神社への公式参拝など、総理みずから憲法の精神に反する行動をとり、国家機密法によって国民生活を縛り、そして年金は後退させるといった政策で、行政が、公務労働が発展し得るのでありましょうか。私は、公務員の能率的運営と今回の改正がどのように連関するのか、みずからの部下である行政職員及び遺族の福祉の増進をどのように図られようとしておるのか、総理の所信をお伺いしたいのであります。
また、大蔵大臣、自治大臣からは、今回の改正案に共済組合の健全な運営と発達に対する必要な配慮がどのような形で具体的になされているのか、おのおのの共済制度のもとでお答えいただきたいと存じます。
第三に、今回の改正の根幹でもある基礎年金についてお伺いします。
国民共通の基礎年金制度の導入において、その財源が国民の掛金によって賄われるという考え方は、社会保障の観点からすれば極めて貧困な状態であると言えます。社会保障の確立のもとでの公的年金制度の安定を求めるなら、その財源は全額国庫負担とすべきであり、我が党が主張するとおり、大企業に対する所得型付加価値税の導入をもって国民の負担から社会的負担に転換を図るべきと考えますが、政府は国民の掛金制度によってどのように公的年金制度の安定を図られるのか、我が党主張の賦課方式に将来転換される考えをお持ちであるのか、見解をお伺いしておきたいと思います。
また、基礎年金につきましては三分の一の国庫負担が導入されるとされておりますが、国の四現業並びに地方公営企業職員の基礎年金については国庫負担が行われず、企業会計負担とされております。この点については、衆議院地方行政委員会におきまして公的負担のあり方を検討することとする附帯決議も行われておりますが、企業会計負担ということは料金等にはね返るということであり、これは政府がしばしば主張する公経済負担ではなく二重の国民負担であります。そして、この年金負担によって現在においても経営が圧迫されており、公営企業においては料金値上げはもとより、病院や交通事業の経営の根幹にかかわる事態となっております。大蔵省、自治省は公営企業の経営の安定を指示しますが、その不安定要因をつくっているのは実は政府であります。
私は、国の四現業及び地方公営企業においても国民共通の基礎年金については明確に国庫負担とすることは当然であり、仮に政府内において検討期間を要するものであれば、当面、公的負担部分に見合った額を一般会計から企業会計へ繰り入れる等の措置を講ずるくらいは最低の政府の責任であると考えますけれども、大蔵大臣並びに自治大臣の所見を伺いたいと思います。
最後に、私は、本改正案における二つの具体的な問題点について触れたいと考えます。
第一は、消防職員の問題であります。
六十歳定年制を前提にして、特定消防職員の五十五歳年金特別支給が廃止されようとしておりますが、社会一般における定年年齢まで勤務を全うできない現実をどう考えるのでしょうか。消火活動に命をかけて働く消防職員の労働は極めて過酷なものであり、五十五歳はもとより、五十歳でも非常に命の危険性は高いものであります。消防庁長官は、定年まで勤務できる労働環境の整備を行うと衆議院で約束されたと伺っておりますが、具体的にどのようにして労働環境の抜本的改善を行うのか、明確に政府の施策を示していただきたいと考えます。
第二に、年金の算定基礎の問題であります。
国家公務員は標準報酬方式をとるとされておりますが、これは地方公務員の本俸に補正率を乗ずる方式と比べ多くの矛盾を含んでおります。国公共済組合員全体はもとより、野党四党一致して国公共済においても本俸に補正率を乗ずる方式に改めるよう要求しておりますが、この場においてはこの問題に対する答弁は求めません。参議院において、政府がこの組合員、野党の声に耳を傾けることを期待し、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/7
-
008・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えいたします。
まず、給付の切り下げによる勤労意欲の減退あるいはスライド制の停止の問題でございます。
今回の改正は、高齢化社会の到来に備えまして、公的年金制度の一元化を展望しつつ、給付と負担の均衡を図り、公平で安定した年金制度を確立しようとする第一巻のものでございます。このため、年金の給付水準を適正化するとともに、将来における組合員の負担の軽減を図り、長期的に安定した制度の確立を図ろうとするものでございます。
今回の改正案では、退職時の俸給が高い人たちのいわゆる一般方式による年金額につきまして、厚生年金に類似したいわゆる通年方式による年金額に裁定がえをいたしております。その場合、現に支給を受けている額は保障することとしておりますが、通年方式により算定した額を上回っている同スライドは停止するということにしておるのであります。これは、公的年金一元化の観点を踏まえつつ、同時に退職者と現役公務員との給付水準のバランス、給付と負担のバランスを図るためにやむを得ず行ったものでございます。
次に、給付の引き下げと貯蓄の問題でございます。
今回の年金制度の改正に当たりましては、本格的な高齢化社会、長寿社会を控えまして、長期的に安定した公平な年金制度を確立するために、給付と負担の適正化を図ったところでございます。先般の「内需拡大に関する対策」において、個人消費の喚起を図るための諸方策を講じているところでございますが、我が国の貯蓄の水準は、国民性など、さまざまな要因に基づくものとも考えられまして、給付の適正化が貯蓄にどのような影響を与えるかは一概には申し上げることはできないと思っております。
次に、公務員の能率的運営と福祉の問題でございますが、改正案の給付内容は、公的年金相互の均衡と整合性を図るため、厚生年金の水準と同水準のものとして設計するほか、公務員制度等の一環としての側面をも配慮して、職域年金相当部分として厚生年金相当部分の約二割程度、基礎年金を含めた全体年金額の八%強の給付を行うこととしておるものであります。今回の改正は、公的年金の一元化を展望しつつ年金の給付水準を適正化することによって、将来の負担の増加を抑制し、制度の安定化を図ることとするとともに、公務等の能率的運営に資するという観点からも配慮したものでありまして、国共済法等の目的規定の趣旨にも合致しておるものと思います。
なお、国鉄につきましては、六十五年以降におきましても、速やかに総合的に検討を加えまして、支払い維持ができるように適切に処理する考えでおります。
残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/8
-
009・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問の第一は、総理からもお答えがございましたが、改正後の共済年金の給付内容は、公的年金相互の均衡と整合性を図るため、厚生年金の水準と同水準のものとして設計をいたしますほか、公務員制度等の一環としての側面をも配慮して、職域年金相当部分として厚生年金相当部分の二割程度、基礎年金を含めた公的年金全体の八%強の給付を行う、こういうことになるわけであります。
今回の改正案は、このような公的年金の一元化を展望しつつ年金の給付水準を適正化することによって、将来の負担の増加を抑制し、制度の安定化を図ることとするとともに、公務等の能率的運営に資するという観点にも配慮したものでございますので、国共済法の第一条の目的規定の趣旨にも合致しておるというふうに考えております。
次は、四現業の公的負担についての問題でございます。
一般に、社会保険制度における保険料は、事業主と被用者とで分担するのが原則でありますが、社会保険制度を推進する立場から、国等のいわゆる公経済の主体が一定割合の公的負担を行うのがこれまた通例となっているところでございます。このような考え方から、国の特別会計においても、四現業を含め、公経済の主体として公的負担を行っているところであります。
次に、必ずしも、答弁は不要ということでございましたが、基本的な考え方だけを申し述べておきたいと思います。すなわち、国公共済も算定基礎は本俸掛ける補正率とすべきであるという考え方に対する問題でございます。
共済年金制度は、公的年金制度の一環としての性格を有しております。その面から給付内容、給付水準等について他の公的年金制度との整合性を図っていくことが必要であります。今回の改正案におきましては、年金額計算上の基礎俸給のとり方について標準報酬制を採用することとしておりますが、これは、公的年金の大宗をなします厚生年金と年金額の算定方式及び年金額の給付水準が相互に均衡のとれたものという考え方から設計することにしたわけでございます。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/9
-
010・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 私に対する御質問の第一については、共済組合の健全な運営と発達を図るためには、共済年金財政の長期的展望に立った安定化ということが不可欠であると考えております。今回の改革案は、高齢化社会の到来等社会経済情勢の変化に対応して、地方公務員の共済年金制度についても、基礎年金の導入を図りますとともに将来の給付水準の適正化を図る等の措置を講ずることによりまして、公的年金制度全体を通じて長期的安定と整合性ある発展を図ろうとするものであります。
一方におきまして、公務員の共済年金制度は、公務員制度の一環として位置づけられておることにかんがみまして、公務の能率的運営に資するという目的を果たすことができるようにすることも重要であります。このため、今回の改革においては、職域年金相当部分を設け、また、公務上の障害、遺族給付について、現行制度と同様、年金水準において格別の配慮をするとともに、その費用の全額を地方公共団体等が負担することとしております。以上のほかにも、共済組合の健全な運営が図られますよう、地方公共団体等の人的、物的援助が受けられるよう引き続き配慮しておるところでございます。
御質問の第二の地方公営企業の公的負担についてお答えいたします。
今回の制度改正によりまして、地方公務員にも基礎年金が導入されることとなっておりますが、現行制度におきましても、地方団体の負担には雇用者としての負担部分と公経済の主体としての負担部分があると考えられております。公経済の部分につきましては、厚生年金の場合は国庫が負担いたしますが、地方公務員については、共済制度発足時に、国と同様、公経済の主体である地方団体が負担することとされており、今回の制度改正に当たりましても、引き続き地方団体の負担とされておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
なお、公営企業につきましては、企業会計で負担すべきか、普通会計で負担すべきかという問題がありますが、これにつきましては、国の企業関係職員における取り扱いを踏まえつつ検討してまいりたいと存じます。
第三に、消防職員の労働環境の抜本的改善についてでございますが、消防機関は国民の生命財産を守るため二十四時同体制による活動が必要であり、このため、消防職員の勤務環境の整備は極めて重要な問題であると考えております。各消防機関におきましては、職員の執務環境の改善についてはこれまでにかなりの努力が払われてきておるところでありますが、自治省消防庁といたしましても、今後、消防職員の執務環境の整備や安全衛生の確保等に一層努めるよう指導してまいる所存であります。
また、消防職員が六十歳まで安んじて勤務し得るよう、職員の体力錬成、適切な人事交流等につきまして、全国の消防長の組織であります全国消防長会とともに研究を進め、適切な指導に努めてまいりたいと存じます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/10
-
011・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
まず、今後の社会保障体系についてでありますが、年金制度につきましては、今回の改正により全国民共通の基礎年金を導入するとともに、給付と負担の適正化を図り、公平で長期的に安定した制度の基盤づくりができるものと考えます。今後引き続き給付と負担の両面において制度間調整を進めるなどにより年金制度の一元化を完了させ、来るべき高齢化社会においても揺るぎない制度を確立いたしたいと考えております。
次に、年金財源を税で賄うべきであるという御提案につきましては、我が国の公的年金制度が、これまで社会保険方式で運営されてきており、我が国社会に定着していること、さらに新たに巨額の税負担を課すことについて国民的な合意が得られるかといった問題があることから、引き続き社会保険方式を維持することが妥当であると考えております。
なお、段階的にでも国庫負担をふやしてはどうかという点につきましても、今日の極めて厳しい財政状況のもとでは、これ以上国庫負担をふやすことは困難と言わざるを得ません。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/11
-
012・木村睦男
○議長(木村睦男君) 中野鉄造君。
〔中野鉄造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/12
-
013・中野鉄造
○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案並びに地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に対して質問をいたします。
まず、具体的な質問に入る前に、昭和六十一年度の予算編成を目前に控え、中曽根内閣の社会保障予算に対する取り組みの姿勢を伺います。
ここ数年の社会保障予算は、長期的展望のない、いわばその場しのぎの予算編成を行ってまいりました。にもかかわらず、来年度は、社会保障面で本年度限りの約束を無視した高率補助の削減強化、あるいは老人医療費についての患者負担の増大や、現役で働いている人に負担を転嫁することによって厚生年金国庫負担削減を図る等、一兆一千億円に及ぶ財源捻国策が示されております。このように毎年毎年社会保障費を削減し、国民の負担を増大させる一方で、防衛関係費には大幅な支出増を図っていこうとする政策は断じて容認しがたいものであります。今後ますます高齢化社会は進み、その費用の自然増は当然のことだけに、この際、来年度社会保障予算についてどのような姿勢で臨まれるのか、明確にしていただきたいと思います。
さて、政府は国民に対し、全国民各制度共通の基礎年金を創設し、四十年加入月額五万円の年金を保障すると説明しております。しかし、それはすべての加入者に保障されているというものではありません。国民年金については、五十九年度の月額一人六千二百二十円の保険料で保険料免除者が既に三百十九万人と、強制加入者の一七・四%に及ぶのが実態であります。将来、これが五十九年度価格で一万三千円に倍増した場合を推測すれば、保険料を授け得ない免除者数の増大は必至であります。これでは、制度はできても年金は受給できないといった階層が続出し、本当に年金が必要なこれらの人たちが切り捨てられてしまう結果になります。
また、他面、現行の所得税制上、保険料が所得控除の対象となることから、所得の額によって社会保険料負担に実質的に反比例的な差を生じさせており、この点から見ても定額保険料の不合理は明白であります。我が党は、かねてより、この保険料の負担については、所得比例の能力に応じた負担の考え方を導入すべきことを主張してまいりましたが、かかる矛盾と現実にかんがみ、早急に検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
次に、現在、共済年金制度における最大の課題は、破綻に瀕する国鉄共済年金制度をどのように救済していくかにあると言っても過言ではありません。現在、国家公務員等地の共済組合から援助を受けるなどして作成されている三共済の財政調整計画は、国鉄職員数を三十二万人ベースとしたものであり、国鉄監理委員会の意見による六十二年度民営化スタート時点の二十一万五千人、あるいは国鉄自身の示している十九万五千人体制とは大きな隔たりがあります。したがって、六十四年度までの財政収支についても、今日では全くつじつまの合わないものとなっておりますが、この際、納得のいく明確な計画をお示しいただきたい。
なお、先月末、衆議院審議の段階で、この五カ年計画に対し示された政府の統一見解では、六十五年度以降については全く不透明であります。いやしくも、五カ年計画のスタート時点で既にこのような混乱した対応では、現在の受給者並びに他制度加入者の将来に対する不安は募る一方であります。この問題に対し、六十五年度以降、国の責任をどのように果たしていくお考えであるのか、再度明確な答弁をお願いします。
次に、今回の共済年金改革において、給付額を算定する基準は、組合員であった期間の平均標準報酬月額を基礎として採用することになっておりますが、現実に個別の過去の標準報酬の再評価は容易ではありません。しかも、純粋な職域年金部分にまでもこれを算定基礎としており、これではまさに職域年金、ひいては退職年金としての独自性を全く軽視したものと言えます。さらにまた、同じ共済制度間でも統一がとれておらず、例えば、地方公務員については本俸の一定割合を加算することとしております。したがって、この際、共済関係に標準報酬といった考え方を採用する理由、それにいま一つ、職域年金部分を労使折半の負担とし、二〇%とした理由について被保険者にどのように説明されるのか、伺います。
次に、各制度間の財政調整に関連してお尋ねします。
基礎年金の財源は、三分の一は国庫負担、三分の二は各制度から加入者及び被扶養配偶者の数に応じた拠出金で賄われることになっております。したがって、加入者数に対し受給者数の多い国民年金制度はこの財政調整による恩恵を受けるわけでありますが、一方の被用者保険加入者に対し、この点をどのように説得しようとされるのか、明確にしていただきたい。
次に、婦人の年金権について触れたいと思います。
政府は、今回の一連の改革により、婦人の年金権が確立されると説明しております。しかし、これで果たして婦人の年金権の確立と言えるのかどうか甚だ疑問が残ります。さらに、関連した問題として、例えば、働く婦人が育児や老人介護のため退職を余儀なくされた途端に被保険者の資格を失い、こうした中断期間中は国民年金のみの加入者となります。この点については、諸外国にその例を見るように、被保険者期間に一定の中断期間の年数を加算するなど特別の配慮を行うのが妥当であると思います。すなわち、これら婦人の年金権の真の確立、そして母性保護の精神を年金制度の上でどのように具現しようとするのか、答弁を願います。
最後に、今後の高齢化社会で年金財源をどこに、どう求めるべきかといった観点から質問します。
それは、今後二十一世紀に向かって年金の財源を従来の社会保険方式のみで負担していくことに大きな問題が生じてくることが予想されるからであります。すなわち、生産管理システムの近代化等により雇用を極度に減少させる企業は今後ますます増加が見込まれます。こうした新たな経済社会の変化に伴う年金財源の確保についてどのような対応をなされるのか、お答えをいただきたいと思います。
以上、私は、国民が老後において、憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を真に営むことができるような年金制度の確立を強く切望し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇・拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/13
-
014・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 中野議員にお答えいたします。
まず、社会保障予算に対する取り組み方でございます。
昭和六十一年度の予算編成につきましては、厳しい財政事情のもとで行財政改革の一層の推進を図るため、歳出内容の徹底した合理化、効率化を進める一方、人口高齢化の進展等社会経済情勢の変化に対応して国民生活の水準を確保するため適切に対処してまいる考えでおります。基本的には、やはり臨調路線ということで行革を推進していくということでございますが、国民生活やあるいは円・ドル関係、特に円が強くなってきたりするという景気の動向等も踏まえまして、適切に処理してまいりたいと考えております。
国鉄共済年金の問題でございますが、国鉄共済年金については、財政調整五カ年計画の終わる昭和六十四年度までは、政府として、国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ、国鉄の自助勢力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにする考えでございます。以上については、昭和六十一年度中に結論を得、その後できるだけ速やかに具体的立法措置に入る考え方でおります。六十五年度以降分につきましては、その後速やかに対策を講じて、支払いの維持ができるように措置する考えでおります。
婦人の年金権の問題でございますが、今回の改正におきましては、全国民に共通する基礎年金を導入することにより、子供を有する家庭の主婦を含め、すべての婦人に独自の年金を保障するほか、子のある寡婦に対する遺族年金を充実するなど、子供を有する婦人の年金保障にも十分配慮をいたしました。これにより婦人の年金保障は大きく前進したものと考えております。
次に、年金財源の問題でございますが、今回の年金改革においては、本格的な高齢化社会に向けて、公平で安定した年金制度を確立するため基礎年金を導入するとともに、給付と負担の適正化を図り、その財源確保上問題の生じないよう努力しているところでございます。
企業の近代化に対応した新しい年金財源のあり方に関する御指摘がございましたが、法人税に加え、年金給付と結びつかない新たな企業負担を課すといった方策については、国民の合意が果たして得られるかどうか、また合理的な理由があるのかどうか疑問に思いまして、将来に対する検討課題として承っておきたいと思います。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/14
-
015・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 中野さんにお答えをいたします。
まず最初は、社会保障予算に対する六十一年度予算の取り組み姿勢、こういうことでございます。
我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがございます。高齢化社会の進展、それから国際社会における責任の増大等に対応するために、今後とも財政の改革を強力に推進し、まずはその対応力の回復を図っていく必要があると考えております。各年度の予算編成に当たりましては、歳入の確保に最大限の努力を払いますとともに、あらゆる経費について徹底した合理化、効率化を図って、限られた財源の中で質的な充実に配慮してまいることにいたしたい、このように考えます。
社会保障関係予算につきまして申しますならば、来るべき高齢化社会においても各制度が長期的に安定的かつ有効に機能するよう、これまで医療保険制度や年金制度の抜本的改革等に取り組んできたところでございますが、今後とも、各制度について根本にさかのぼって見直しを行い、給付の重点化、負担の適正化、これを図りますとともに、社会的にまた経済的に弱い立場にある方々に対して重点的かつ効率的に福祉政策を推進していくこと等を基本として、予算編成に対処してまいりたいというふうに考えておるところであります。
それから次は、社会保険料は、その社会保険の加入者の自己責任と相互連帯の考え方を基盤として家計が負担し、かつ強制的に徴収されるものであるといった事情等を考慮して、課税所得の計算上その支払った金額を控除することとされているものであります。このような社会保険料の性格から見て、これを所得税の課税上、所得から控除する現行制度は簡明にして合理的なものではないか、このように考えております。
それから国鉄共済組合財政調整問題につきましては、総理から統一見解に基づいて正確なお答えがあったところでございます。いずれにいたしましても、私どもといたしまして、支払いに支障のないようにするという点につきましては、昭和六十一年度中に結論を得て、そして具体的立法措置に入る。そしてさらに六十五年度以降の問題につきましても、支払いの維持ができるような措置をするということを正確に申し上げておるところであります。
それから、いわゆる平均標準報酬制を導入した問題でございますが、共済年金制度は公的年金制度の一環としての性格を有しております。その面から給付内容、給付水準等につきまして他の公的年金制度との整合性を図っていくことが必要でございます。今回の改正案におきましても、年金額計算上の基礎俸給のとり方について標準報酬制を採用することといたしておりますが、これは公的年金の大宗をなします厚生年金と年金額の算定方式及び年金額の給付水準が相互に均衡のとれたものとなるよう設計することとしたためでございます。
また、職域年金部分につきましても、平均標準報酬を年金算定の基礎に用いることとしましたのは、厚生年金部分と職域年金部分とは一体の共済年金として支給されるものでありますので、年金算定の基礎俸給につきましても同一のものを用いますのが適当であるという考え方によるものでございます。
それから次は、職域年金部分の給付水準の考え方についてでございます。
今回の改正案では、共済年金の中に職域年金相当部分として千分の一・五の年金設計を行っております。この千分の一・五につきましては、厚生年金相当部分の二割程度、基礎年金を含めた公的年金全体の八%強となるわけであります。職域年金の給付水準につきましては、公務員制度等の一環としての側面、それから民間における企業年金の普及状態、さらに年金受給者と費用負担者との生活水準のバランス、費用を負担する現職者の負担の限度、これらを総合的に考慮しまして設計したものでございます。
それから職域年金部分の負担割合の問題でございますが、年金に要します費用の労使折半につきましては、社会保険全般を通じます原則でございます。特に共済の場合には、使用者負担と申しましても、それは一般納税者の負担で賄われておるものであります。これをふやすということは国民に負担を転嫁するという問題がございますので、現行の労使折半負担が妥当であるというふうに考えております。
それから基礎年金制度導入の考え方についてでございます。
公的年金制度は、我が国社会が高齢化のピークを迎えます二十一世紀においても制度が十分にその機能を発揮できるよう長期的に安定し、公平なものとする必要がございます。今回の改正におきましては、こうした見地から、国民に共通な基礎年金を導入し、制度間格差の是正と制度基盤の安定化を図りますとともに、国民一人一人の年金を確立し、婦人の年金権を確立しようとするものでありまして、国民年金と厚生年金、共済年金等の被用者年金との財政調整を目的としたものではございません。
それから最後に、年金財源の問題についての御意見を交えた御質問でございました。
これまで公的年金制度は、本人と事業主の拠出によります保険料と公的負担によります社会保険方式で運営されておりまして、これは長い歴史の中で定着しておるというふうに考えられます。したがって、社会保険方式でない新たなる負担方式によるということを考えてみますと、新たに巨額の負担を課すことについて一体国民の合意が得られるのか、あるいは保険料を拠出した者と拠出しない者との公平が図れるか、そういう問題もございます。したがいまして、今回の改正においても社会保険方式を引き続き維持するということにしたわけでございます。この問題につきましては、御意見の趣旨は引き続き幅広い角度から検討を行うべき課題だという問題意識は私どもも有しております。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/15
-
016・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
まず、昭和六十一年度の社会保障予算に対する取り組みにつきましては、引き続き既存の制度、施策の改革を進め、合理化、効率化を図る一方、厳しい財政事情のもとではありますが、今後とも国民生活を守る社会保障制度が有効に機能するよう、どうしても必要な予算についてはその所要額を確保するため万全を期してまいりたいと考えております。
次に、国民年金に所得比例保険料を導入してはどうかとの御提案につきましては、さきの国会での国民年金改正法の審議に際しましても種々御議論をいただいたところであります。この問題については、所得の把握等をどうするか、種々難しい点もありますが、今後の課題として検討してまいりたいと考えております。
次に、育児休業期間を被用者年金の期間に算入することにつきましては、賃金の支払いといった実質上の使用関係のない場合にまで被用者年金の適用を広げることにもつながり、困難であると考えております。いずれにしましても、この問題については育児休業制度の今後のあり方等との関連もあり、なお慎重な検討が必要であると考えております。
最後に、合理化が進んだ企業に年金財源として新たな負担を課すといった考え方についてでありますが、年金制度は人に対する給付を行うものでありまして、人を使わない企業の保険料負担が人を多く使う企業に比べて相対的に小さくなるのが自然であることを考えれば、この考え方が合理的と言えるかどうか疑問のあるところでございます。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/16
-
017・木村睦男
○議長(木村睦男君) 近藤忠孝君。
〔近藤忠孝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/17
-
018・近藤忠孝
○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表いたしまして、共済年金二法案について総理並びに大蔵大臣に質問いたします。
総理、あなたの言う戦後政治の総決算と臨調行革なるものが、軍拡のために社会保障を初めとする果てしない国民生活犠牲にほかならないことがいよいよ明白となっております。政府はさきに、国民年金と厚生年金について、給付額は三割以上引き下げ、保険料は二倍以上引き上げるという改悪を強行いたしました。老後の生活の安定を求める国民の願いに逆行する年金の水準引き下げを行っておいて、今度は、これに合わせて官民格差解消を口実に共済年金の水準を大幅に下げようというのであります。これはまことに身勝手な主張であって、我が党はこのような年金制度改悪の総仕上げを容認することは断じてできません。官民格差をなくすというなら、国民年金と厚生年金の改悪をもとに戻して、国民の期待にこたえる年金制度を確立すべきではありませんか。国民・厚生年金とあわせ、国民の老後の生活保障の確立のために抜本的見直しを求めるものであります。総理いかがですか。
総理は、衆議院本会議における我が党の正森議員の質問に対し、共産党の言うとおりやったら大増税か年金制度の崩壊しかないと答弁しました。しかし、これはみずからの不当な政治姿勢に対する無反省のみならず、国民に対する挑戦と言わなければなりません。なぜなら、高齢化社会への対応というのは口実で、本法案の真のねらいは、今日の破綻した国家財政のもとでも軍拡と大企業奉仕の政治を続けていくために、社会保障に対する国の責務を放棄して、将来に向かって国庫負担を大幅に削減しようとする点にあることは明白だからであります。今必要なことは、政治の基本姿勢を改めることなのであります。中曽根内閣の軍拡、大企業奉仕の政策を国民生活第一に切りかえるならば、我が党の主張する年金制度の確立は、我が国の経済力により国民負担の大増税なしに実現することが可能なのであります。
以下、法案の内容に即して質問いたします。
第一は、給付水準の大幅切り下げと掛金の引き上げについてであります。
例えば、法施行時二十歳の地方公務員が勤続三十五年で退職した場合、現行制度のもとでは十九万三千円の年金が支給されますが、今回の改悪によって、妻の基礎年金分を含めて十六万七千円、共働きの場合、妻の基礎年金分が差し引かれますので十一万七千円となりまして、何と約四〇%のダウンとなるのであります。現在ですら年金給付は不十分であり、現受給者からさまざまな要求が出されているのに、このようなひどい水準に引き下げて、それで国民に対して安定した老後の生活の保障という政府の責任が果たせるというのでありますか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
一方、この間、掛金は連続的に引き上げられ、二十年後には一・八倍、三十五年後には二・五倍にも達します。そのため、実際に受け取る年金額は掛金とその利子の総額よりも少なくなり、我々の試算によりますと、無職の妻を持つ国家公務員の場合、七十五歳で死亡したときの掛け損の金額は二千二百三十四万円。掛け損とならないためには八十七歳まで生きなければなりません。これについて政府は世代間扶養の問題だと答弁していますが、これほどひどい国民に対する収奪を給付と負担の適正化などと言えるものでありましょうか。総理の認識を伺うものであります。
第二に、年金の支給開始年齢を六十歳から六十五歳に引き上げる問題についてであります。
政府は、これは高齢化社会の到来を展望すると避けて通れないことだと言うのでありますが、本来、雇用保障と一体であるべき支給開始年齢について、これだけを先に引き上げることは全く筋が通らないのであります。政府は経過措置があるため生活に支障はないと言いますが、それはあくまでも当分の間のことにすぎません。定年六十歳の公務員に対し、退職後六十五歳までどのように生活せよというのでありますか。衆議院の審議でもその点について政府は明確にしておりませんが、改めて雇用保障など具体的な対応策を明示することを求めるものであります。
第三に、年金額が削減されるのは新規裁定者だけではない点についてであります。
現在、一般方式の適用を受けている受給者はすべて通年方式に裁定がえされ、その低い水準に達するまで物価スライドが停止されます。政府は、従前の金額は保障するから既得権侵害ではないと弁解していますが、実質上の切り下げであることは何人も否定できないのであります。例えば、ことし六十歳で退職した人が八十歳まで受給するとしてモデル計算した結果は、その受取総額が現行よりも約一千万円も少なくなるのであります。全体の半数の受給者がこの影響をもろに受けるのであります。これは契約違反とも言うべきものであり、多年にわたり苦労して掛金を掛け続けてきた退職公務員の生活設計を破壊する重大な期待権の侵害になるのではありませんか。
第四に、国鉄共済問題についてでありますが、その破綻は、敗戦時、旧満鉄職員を大量に吸収することなどに加えて、さらに今後分割・民営化により労働者の大量首切りをしようとする国の政策によって、いよいよ決定的になろうとしているのであります。この国の責任を顧みず、政府は統一見解で、「国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加える」としています。
そこで総理に質問しますが、国の負担以外の諸般の検討とはどういうことでありますか。また、国鉄の自助努力とはどういうことと考えておるのか。政府は、衆議院で、国鉄職員やOBに対する一層の負担増を求めると答弁していますが、それでは、既に職域年金の加算制度の適用除外や、他の年金よりも高率の保険料など大変な犠牲を強いている上、さらに耐えがたい過酷な負担を国鉄の労働者に押しつけることになるではありませんか。国の責任で解決すべきことは当然であります。総理、いかがですか。
最後に、国民負担率の上限の問題について質問いたします。
政府税調では、国民負担率について五〇%を割る程度という議論がなされています。これは現在の三六%をはるかに上回ることはもちろん、臨調答申で示された国民所得に対する比率をもかなり上回るものでありまして、国民生活への影響は重大であります。本法案を含む年金改悪によって、保険料負担が大幅に高まることとあわせて、さらに昨日の政府税調の方針でも明らかになったように、大型間接税導入などの増税が前提となっていると考えざるを得ないのであります。政府は国民負担率がどの程度のものであるべきだと考えているのか、この際、総理の明確な答弁を求めるものであります。
共済年金制度の大改悪を許さず、老後の生活を保障する最低保障年金制度の確立のために、我が党は、全体として給付水準を底上げする一方、保険料負担の労使折半方式を改め、計画的に三対七万式にするなど、抜本的改革をなすべきことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/18
-
019・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 近藤議員にお答えをいたします。
まず、年金改悪は見直せという御議論でございますが、見直すつもりはございません。今回の改正は、本格的な長寿社会の到来に備えまして、公平で長期的な安定した年金制度を確立するために不可欠の改革であると考えております。
次に、地方公務員の年金水準と老後の生活保障の問題でございますが、今回の地方公務員の共済年金制度の改革は、地方公務員の共済年金制度についても基礎年金の導入、給付水準の適正化等を図り、公的年金制度全体を通じて長期的安定と整合性ある発展を図るためにぜひ必要であると考えて行うものであります。
給付と負担の適正化の問題でございますが、今回の改正は、長寿社会の到来に備え、公的年金制度の改革の一環として、給付と負担の均衡を図り、公平で安定した年金制度を確立することが目的であることは申し上げたとおりです。
公的年金制度は世代間の相互扶助に基づく社会保険でありまして、私的年金とは性格が異なります。仮に支払い保険料総額が受取年金額を上回るような場合にも、その上回る部分は保険集団の中で現役世代から老齢世代へ移転されるということになるものと考えております。したがって、これを収奪という観点でとらえるのは不適当であると
考えます。
定年退職後の生活の問題ですが、退職共済年金の支給開始年齢については、国民年金、厚生年金の改正に合わせて本則上六十五歳。しかしながら、厚生年金と同様に退職共済年金については、六十歳から支給される特別支給等の措置が講ぜられております。六十歳定年制との関係では特段の支障はないものと考えております。また、再就職を希望する退職者につきましては、その方の状況に応じて早期再就職の促進に努めていく所存であります。
国鉄共済の問題でございますが、これも先ほどお答えしたとおりでございます。
国鉄の自助努力とは何であるかと言えば、やはり合理化、効率化、財産処分、そういうようなことを意味するものと考えております。いずれにいたしましても、六十四年度、六十五年度以降について、先ほどお答えしたとおりでありまして、心配はかけないように処理いたしたいと思っております。
国民の負担率の問題でございますが、税及び社会保障負担の水準は、それぞれいずれも国民が必要とする公共支出の水準の問題と裏腹をなしております。この点については、既に「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、あるいは臨調最終答申の趣旨を踏まえまして、先般の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」におきましても、「今後、高齢化社会の進展等により、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめるよう努める」、このように前から申しているとおりでございます。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/19
-
020・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 総理からそれぞれお答えがございまして、私に対するお尋ねはいわゆる期待権の問題であろうと思います。
今回の改正案では、退職時の俸給が高い人たちのいわゆる一般方式による年金額について、厚生年金に類似した、いわゆる通年方式による年金額に裁定がえすることとしておりますが、これは、公的年金一元化の観点を踏まえつつ、同時に退職者と現役公務員との給付水準のバランス、給付と負担のバランスを図るため必要なことであると考えております。
なお、通年方式によりまして裁定がえした年金額が現に支給を受けております額を下回る場合はその額を保障する、こういうことにいたしておるわけであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/20
-
021・木村睦男
○議長(木村睦男君) 井上計君。
〔井上計君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/21
-
022・井上計
○井上計君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました国公共済法並びに地公共済法の一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に質問を行います。
人間のすべてが幸せを求めて生きていることは、今さら言うまでもありません。しからば、幸せとは何ぞやと問われたとき、今、現在の幸せとなると、人それぞれによって異なるでありましょう。しかし、老後の幸せとはと尋ねられれば、だれしもが、長生きをしていてよかったと思える人生を送りたいと答えることでありましょう。
我が党が、昭和三十五年結党の際、高らかに掲げた「福祉国家建設」の大スローガンは、今日では政治の基本として当然のこととなりました。これは当時に比べて福祉政策が大きく前進したあらわれであり、まことに喜ばしいことであります。しかし、二十五年前と現在では、社会環境、経済環境が著しく変化し、物質的な生活はまことに豊かになりました。しかし、そのために国民の間から、より高度の、より密度の濃い福祉社会の実現が求められてきたことはこれまた当然であります。
特に、二十五年前には、総人口に占める六十五歳以上の高齢者の比率はわずかに五・七%でありましたが、以来、年を追うごとに上昇し、ついに本年は一〇・三%という高率に達しております。千二百四十万人という多数の高齢人口になっておるわけであります。人生八十年時代が現実のものとなったのであります。したがって、この増加率は今後ますます高率となり、十五年後には、すなわち二十一世紀に入るときは約一六%、さらに三十年後には二〇%を超えることが確実と予想されております。文字どおり長寿社会が実現したこと、まことに喜ばしいことではありますが、同時に、第二の人生である老後社会が長期化することによって、さらに多くの不安が国民の間に増幅していることもこれまた事実であります。
老後の人生を幸せにするためには、第一に健康、第二に平和な家庭、第三には経済的な安定、第四には生きがいを感じる気力と、この四つの条件が必要と私は考えております。ところが、この条件を満たすことは容易ではありません。このためには、もちろん各人の若いときからの努力が必要ではありますが、その努力を助成し、さらに助長するための政治の責任と行政の持つ役割がますます一層重大になるのであります。それらの点を改めて考えるとき、今回の改正の内容はまだまだ十分ではありません。
七十年度の年金制度一元化への目的達成への道は甚だ遠いと言わなくてはなりません。逆に、政府の今回の改正のねらいは、財政難の緩和のために、私的サービスの利用や民間活力導入によって将来への布石としようとしているのではないかと、いわば逃げの姿勢があるやに思えてならないのであります。この際、政府は、高齢化社会に対応する新たな高度福祉社会実現のためにどのようなビジョンを持ち、どのような責任を感じているのか、国民が十分理解し、納得して安心できるように明確にすべきであろうと考えます。あわせで、七十年度を目途とした一元化へのスケジュールについても具体的なものを発表すべきだと考えます。総理の御見解はいかがでありますか、お伺いをいたします。
次に、従来、我が国の年金制度には甚だしい官民格差が存在していて、国民の多くから不満と非難が集中をしておりました。これが今回の改正によりかなりの是正がなされることについては、遅きに失したとはいえ、一応の評価はいたします。しかしながら、今回の改正によっても、依然として積立金の自主運用の問題を初め、幾つかの官民格差が存続することが明らかであります。
その一つは、年金所得以外の高額所得者に対する減額支給、すなわち部分停止の率は、将来とも厚生年金受給者のそれと比べるとまだまだ格差が生じるのであります。
私は、去る五十三年三月、本院の予算委員会において、今井一男国家公務員共済組合審議会会長が昭和五十年八月、年金法改正についての意見書で主張されている「それらの受給者に対しては、全額停止もしくは大幅削減」をすべきであるとの提言を速やかに実施することを政府に強く申し入れをいたしました。その後、予算委員会及び内閣委員会等におきまして、前後七回この提言を繰り返してまいりました。
特にその中で力点を置いたのは、退職後、公社あるいは公団及び政府に準ずる等のところから給与を受けている人たちに対しては、その在職中は年金、恩給等の支給は全額を停止すべきであると主張をいたしてきたのであります。もちろん、この対象者の中には、国会議員及び地方議員等の公職者も含まれておるのであります。私のこの提言に対し、当時の大蔵大臣あるいは官房長官から前向きの答弁がありました。特に五十五年三月の予算委員会においては、当時の大平総理からも、十分検討に値するとの答弁をいただいておりますが、そのために多分に今回期待をいたしておりましたけれども、今回の改正案には全額停止の点は提案されておりません。いかなる事情によるのか、大蔵大臣の御説明をいただきたいと思います。
次に、厚生年金基金に対する特別法人税の問題について質問をいたします。
今回の改正により、厚生年金基金の積立金への課税対象が大幅に増加し、年金基金の約八〇%に上る八百基金が対象になるものと予想されます。これらの年金基金は、設立以来約二十年、常に懸命に経営努力を続け、給付率の維持に努めてまいりました。ところが、先般の厚生年金法の改正により、去る十月より、男子千分の十八、女子千分の二十の保険料の引き上げが行われ、それがため、従業員三十人という平均的な中小企業事業所にあっては、一カ月に約十五万円という多額の負担増になっておるのであります。したがって、現行の特別法人税を本法律案改正後も同様の率で実施した場合、これらの厚生年金基金は、現行の給付率を維持するためには、さらに大幅の掛金率の引き上げを必要とするのであります。
改めて申すまでもなく、厚生年金基金の占める役割は今後ますます重大であります。したがって、政府はより一層基金の育成に努めなくてはなりません。そのためにも、この特別法人税はこの際撤廃することを決定すべきであります。総理並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
最後に、国鉄共済年金救済の問題であります。
政府は、国鉄共済年金の財政救済を、現行の共済グループだけでなく、厚生年金保険からも救済措置導入を企図していると伝えられております。私は、現在の国鉄共済年金制度の破綻の原因の中にいささかは同情すべき点があることを承知をいたしておりますが、しかしながら、長年にわたって違法ストを繰り返し、その処罰によって解雇された者に対してまでも、わずかに二〇%しか減額せずして支給している事実、また、この救済措置を万が一厚生年金に求めたとき、さらに大幅な保険料の引き上げを行わなくてはなりません。したがって、厚生年金による国鉄共済年金の救済は将来とも国民の到底納得せざるところでありますから、断固反対であります。大蔵大臣はいかがお考えでありましょうか、お伺いをいたします。
以上のほか、本改正後もまだまだ幾つかの問題点が残ります。したがって、正すべき点は多々ありますが、これは今後の委員会審議の中で明らかにすることを言明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/22
-
023・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 井上議員にお答えをいたします。
まず、福祉社会に向けてのビジョンでございますが、本格的な長寿社会に向けて、社会保障制度について、長期的かつ安定、有効な、そして国民が信頼することのできる制度、システムをつくることが大事であると考えます。本年七月二十三日に、長寿社会対策を総合的に推進するために、長寿社会対策関係閣僚会議というものを設けて今検討させておるところでございまして、来年六月を目途に長寿社会対策大綱を策定して、さらに総合的かつ効果的に施策を推進してまいる考えでおります。
次に、一元化の具体的内容の問題でございますが、公的年金制度の一元化は七十年を目標にやると申し上げているとおりでありますが、さきの国民年金、厚生年金保険の改正及び現在御審議いただいておりまする共済年金法の改正を踏まえて、来年四月以降さらに制度間調整を進めたい、そういう考えに立って進めておるものでございます。しかし、その具体的内容や手順につきましては、今後政府部内におきまして周到に検討してまいりたいと考えております。
次に、厚生年金基金への特別法人税課税問題でございますが、厚生年金基金の積立金に対する課税のあり方につきましては、今後の税制改正の過程で検討がなされるべきものと考えております。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/23
-
024・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず、私に対する御質問の中に、いわゆる退職後、公社、公団及び政府に準ずる等、国会議員、地方議員も含め、そういう職場から給与を受ける人に対して、在職中、年金、恩給等の全額の支給を停止すべきである、こういうかねてからの御主張についての私の考え方でございます。
今回の共済年金改正案におきましては、退職共済年金等の受給権者が再就職して厚生年金の被保険者等となった場合には、その者の給与所得の高低に応じ、退職共済年金の一部を支給停止することとしておりますが、現行の支給停止措置を強化して、高額所得者につきましては年金額の大部分が支給停止される仕組みとなっておりますので、御指摘の趣旨に沿ってきたものだというふうに御理解をいただきたいと思います。
しかし、公社、公団等の役員あるいは国会議員のみに限って年金の支給を全額停止するということは、共済年金などが社会保険方式をとって保険料を徴収し、一定の条件のもとに年金を支給する仕組みとなっていることとの関係、民間会社等へ再就職した者との均衡、これらの点から見まして法律上の公平性の観点という問題もございます。したがって、それらに限ってということについては問題が多いというふうに判断をいたしたわけであります。
それから特別法人税の問題でございますが、退職年金積立金に対する課税は、企業の掛金が支出時の損金算入となるのに対して、これを年金として受け取る従業員に対する課税が将来の年金受給時であるということから、この間の課税遅延の利子分という趣旨で行っておる制度でございます。したがって、私どもとしてはこの考え方はやはり維持されるべきものではなかろうかと思っております。
国家公務員共済年金制度が改革された場合におきます厚生年金基金の積立金に対する課税につきましては、退職年金等積立金に対する課税の趣旨を踏まえて適切に対処してまいりたいというふうに考えておるところであります。
それから国鉄共済の問題でございます。
これはたびたび統一見解として申し述べておるところでございますが、国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加えて支払いに支障のないようにするというのが基本的な考え方でございます。ただいま、いわば厚生年金を特定しての御質問でございますが、これらすべてが今後の検討課題ということであろうと理解をいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/24
-
025・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/25
-
026・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長山本富雄君。
〔山本富雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/26
-
027・山本富雄
○山本富雄君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、衆議院大蔵委員長提出に係るものでありまして、さきに関係各党派間で合意を見た政策減税等の処理のうち、いわゆる寝たきり老人減税実施のためのものであります。
その内容は、昭和六十年分以後の所得税について、同居の特別障害者に対する特別控除額を七万円引き上げて十四万円にしようとするものであり、この引き上げは、昭和六十年分の所得税の確定申告から適用するほか、本年の年末調整の際にも適用することとしております。
これにより、同居の特別障害者については、扶養控除額三十三万円、特別障害者控除額三十三万円、同居の特別障害者に対する特別控除額十四万円の合計八十万円の所得控除が認められることになります。
なお、本法施行に伴う租税の減収額は、昭和六十年度約三十億円と見込まれております。
委員会におきましては、質疑、討論なく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/27
-
028・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/28
-
029・木村睦男
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00619851204/29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。