1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年五月十二日(木曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 越智 通雄君
理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君
理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君
理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君
理事 宮地 正介君
新井 将敬君 井上 喜一君
江口 一雄君 遠藤 武彦君
金子 一義君 小泉純一郎君
笹川 堯君 杉山 憲夫君
戸塚 進也君 葉梨 信行君
鳩山由紀夫君 堀之内久男君
村井 仁君 村上誠一郎君
沢田 広君 早川 勝君
堀 昌雄君 武藤 山治君
橋本 文彦君 日笠 勝之君
森田 景一君 矢追 秀彦君
安倍 基雄君 正森 成二君
矢島 恒夫君
出席政府委員
大蔵政務次官 平沼 赳夫君
大蔵省証券局長 藤田 恒郎君
大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君
大蔵省国際金融
局長 内海 孚君
委員外の出席者
参 考 人
(東京証券取引
所理事長) 竹内 道雄君
参 考 人
(日本証券業協
会会長) 田渕 節也君
参 考 人
(全国銀行協会
連合会会長) 伊夫伎一雄君
参 考 人
(神戸大学名誉
教授) 河本 一郎君
大蔵委員会調査
室長 矢島錦一郎君
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本日の会議に付した案件
証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)
金融先物取引法案(内閣提出第八〇号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/0
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001・越智通雄
○越智委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案の両案を一括して議題といたします。
本日は、参考人として東京証券取引所理事長竹内道雄君、日本証券業協会会長田渕節也君、全国銀行協会連合会会長伊夫伎一雄君及び神戸大学名誉教授河本一郎君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。
それでは次に、議事の順序について申し上げます。
まず、各参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
最初に竹内参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/1
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002・竹内道雄
○竹内参考人 東京証券取引所の竹内でございます。
本委員会の皆様方には、平素何かと証券市場の諸問題につきまして、御支援、御指導をいただいておりますことを、まず厚く御礼申し上げます。
また、本日は、証券取引法の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、意見を申し述べる機会を得ましたことを大変ありがたく存じております。
御案内のように、昨年十月、ニューヨーク市場に端を発しました株式暴落は、世界各国の市場に連鎖的な反応を引き起こしました。幸い、東京市場では混乱はほとんどなく、その後の回復状況も諸外国に比べて著しく、現在の株価は、ほぼ暴落前の水準に戻しております。これは基本的には、日本経済の状態が他の国に比べていいということが背景にあるからではないかと存じております。
近年における日本経済の順調な展開に伴いまして、東京の市場は、ここ数年急速に国際化のテンポを速めまして、今や、ニューヨーク、ロンドンと並んで世界の三大金融資本市場の一つと言われるまでに発展してまいりました。
東京証券市場に対する内外の期待と関心も、非常に大きなものとなっております。こうした時期に、このたびの証券取引法改正が行われますことは、証券市場の運営に携わる者として、極めて意義深いことと受けとめております。
以下、今回の改正法案につきまして簡単に意見を申し述べたいと存じます。
まず、証券先物市場の整備についてでございます。
我が国の株式市場では、最近、急速に取引の規模が拡大し、また、株価上昇に伴って株価の変動幅も大きくなってきております。こうしたことを背景に、機関投資家を中心に株価変動リスクをヘッジしたいというニーズが急速に高まってきております。
一昨年、ヘッジ・ニーズを具体的に把握するため、私どもでは、機関投資家を対象にアンケート調査を行いましたが、その結果から見ましても、先物取引等に対する強い関心と利用ニーズをうかがうことができるのであります。
東京証券取引所におきましては、金利変動リスクに対するヘッジ・ニーズを満たすため、一昨々年、六十年十月に債券先物市場を開設いたしました。債券先物市場は、その後順調に発展、定着をいたしまして、今や、金融・資本市場の一翼を担うものとして欠かせない存在となっております。ちなみに、昨年中の売買高は、一日平均で六兆六千億円強となっておりますし、本年に入りましても、ほぼ同水準に推移をいたしております。
また、大阪証券取引所で昨年六月から行っております現物株式五十銘柄のパッケージ方式による株式先物取引の状況を見ましても、同様のことが言えようかと存じております。
一方、米国等の海外市場におきましては、株価指数先物取引を初め、各種証券先物取引や証券オプション取引が世界的な広がりを見せております。東京市場におきましても、今後、国際資本市場としての地位の向上を図る意味合いからも、証券先物市場の整備を行い、その機能強化を図ることが不可欠であると考える次第でございます。
証券先物取引の導入によりまして、リスクヘッジだけではなくて、市場全体への投資を目的とした取引や裁定取引が可能となり、機関投資家等の資産運用の効率化に大きく寄与するものと期待されております。
同時に、証券先物取引の導入は、現物・先物両市場間の裁定取引を通じて現物市場の流動性を高め、ひいては現物価格の安定性に資するものと考えております。このように、現物・先物両市場は極めて密接な関連を持っております。新しい先物取引の導入に際しましては、現・先両市場一体となった管理運営を心がけてまいりたいと考えております。
第二点は、内部者取引規制の整備についてでございます。
内部者取引の規制について整備が図られますことは、我が国証券市場に対する内外投資家からの信頼を確保し、国際資本市場としての発展を図る上で必要なことであり、まことに時宜を得た立法であると存じます。
法の改正に伴いまして、取引所といたしましては、売買管理部門の体制整備を図るとともに、行政当局等と有機的な連携をとりながら、内部者取引の未然防止に一段と努力をしてまいりたいと存じます。
証券取引所は、従来から上場会社に対し適時適切な情報開示を要請いたしておりますが、今後は、さらにその趣旨を徹底いたしたいと考えております。特に、適時通告を怠った上場会社に対しましては、再発防止の観点から、改善報告書を求める等の適切な措置を講ずることといたしたいと存じております。
また、内容が不明確な情報、あるいは重要な情報であるが広く周知されていないものが流れているというような場合には、現在、発行会社による適切な情報開示によりまして、それが一般投資家に周知されるまでの間売買取引の停止を行っておりますが、今後、そのような運用を一層機動的に行ってまいりたいと考えております。
第三点は、企業内容開示制度の見直しについてであります。
今回の改正案では、発行市場の変化、拡大に対応するため、発行登録制度の導入が図られておりますほか、発行開示制度に関しましても、簡素化と充実の両面から見直しがなされております。これらの見直しによりまして、社債市場の活性化を期待することができると存じております。
冒頭にも申し上げましたように、東京市場の国際化はこのところ著しい進展を見せております。外国人の我が国への株式投資は拡大しており、外国上場会社数も大幅に増加いたしております。
東京証券取引所の正会員にも外国証券会社が既に六社加入いたしておりますが、今月、さらに十六社が加入いたします。この結果、東証正会員百十四社のうち二十二社が外国会社となりまして、約二割のシェアを外国勢が占めることとなるわけであります。
国際的な資本交流は今後もますます活発になると考えられ、取引所といたしましては、国際資本市場としての基盤強化をいかに図っていくかがこれからの最も大きな課題であると存じます。そして、そのために基本的に大切なことは、市場での取引が公正かつ効率的に行われるということにつきまして、内外の投資家からの信頼を受けることであると存じます。
これを言いかえれば、投資家が安心して取引のできる魅力のある市場とすることであると言うこともできると存じます。このたびの法改正は、そのような意味で、今後の我が国の証券市場の発展に寄与するものであると考えております。
私どもといたしましては、法律の改正を機会に、さらに一層、東京市場の健全な発展に努めてまいりたいと存じます。
委員会の皆様におかれましては、証券市場の運営に関しまして、今後とも引き続き格段の御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/2
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003・越智通雄
○越智委員長 竹内参考人、ありがとうございました。
次に、田渕参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/3
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004・田渕節也
○田渕参考人 日本証券業協会の会長を相務めております田渕でございます。
本日は、ただいま審議が進められております証券取引法の一部を改正する法律案に関しまして意見を申し上げる機会を与えていただきましたことを、厚く御礼申し上げたいと存じます。
まず最初に、証券先物市場の整備につきまして意見を申し上げます。
先ほどの竹内理事長のお話にもありましたが、既に我が国に導入されております証券の先物取引は、おかげをもちまして順調な発展を遂げております。
申し上げるまでもなく、こうした先物市場の活況の背景には、我が国金融資産残高が二千兆円に達する中で、金利変動、株価変動に対するリスクを回避したいという要請が、我が国の機関投資家を中心として高まっており、そうした投資家の要請にタイミングよく対応できたということがございます。
そのような意味から申しまして、今回の法整備は、株価指数先物取引あるいは証券オプション取引などの導入を可能にし、リスクヘッジ手段の一層の充実に資するものでありますので、まことに時宜を得たものと考えております。
また、改正法案におきましては、証券先物取引については証券取引所において導入することとし、法規制は証券取引法によって行うこととされておりますが、これについても大いに賛意を表するものでございます。
証券現物市場と証券先物市場とは密接な関係を有しておりますので、その一体的な管理運営を図ることが、両市場双方の健全な発展に寄与すると確信いたしているからでございます。ちなみに米国でも、さきのブラックマンデーにおける両市場の混乱を教訓として、現在、両市場の一体的管理運営を図るべきとの声が高まっているとのことでございます。
さらに、当然のことではありますが、私ども証券会社といたしましては、証券先物取引に関して十分な投資者保護を図るため、証券取引法の精神を十分に反映させまして、内部の自主的な規制をさらに一段と確立し、健全な証券先物市場の発展のためなお一層の努力を傾けていく所存でございます。具体的には、取引開始に当たっての顧客基準でございますとか、取引開始後の顧客管理体制の整備等の体制整備には万全を期すつもりでございます。
なお、本法律案とともに審議されております通貨及び預金等を対象とする金融先物法案に関しまして意見を申し上げます。
金融市場におきましても証券市場と同様に、近年の自由化、国際化の進展を背景として先物市場導入のニーズが高まっておりますので、金融先物市場の整備等を図ることが不可欠となっている状況にあると考えております。証券会社といたしましても、市場参加者として市場の適切な運営及び健全な発展に助力する所存でございます。
次に、企業内容開示制度の見直しにつきまして述べさせていただきます。
今回の法律改正は、発行登録制度の導入、有価証券届出書の簡素化、効力の発生期間の短縮等、発行の機動性の向上に役立つ内容を含んでおり、極めて重要な改正であると考えております。これにより、我が国の発行市場は、機動性のより高い国際的に通用する市場として、今後ますますの発展が期待されることとなると信じておるものでございます。
次に、内部者取引、いわゆるインサイダー取引を規制する法制の整備につきまして意見を申し上げます。
インサイダー取引は、証券市場に対する投資家の信頼を損なう不公正な取引であり、有価証券の公正な価格形成を基本とする証券市場の機能を大きくゆがめてしまうものでございます。こうした取引は絶対に許してはならないというのが、私ども証券市場に参加する者の共通の信念でございまして、これまでも証券会社はインサイダー取引の未然防止に全力を傾けてまいった次第でございます。
しかしながら、これまでは、どういう取引がインサイダー取引に該当するのかなど法律上の規定が必ずしも明確ではなかったこともありまして、内外からいろいろな批判がございました。こうした批判に対しまして、行政当局の適切な御指導のもと常日ごろから公正な市場運営に努めてまいった者としては、非常に残念なことと思っていた次第でございます。
今般の改正により法律が明確となり、基準が明らかにされますことは、法律を実際に守っていくべき立場にある証券会社といたしまして、非常にありがたいことであると考えております。
改正案では、従来から私どもが主張してまいりましたように、何がインサイダー情報か、だれのどのような取引が処罰の対象となるかが明確に定められており、取引の時点で、自分の行為が処罰の対象となるかどうかを市場参加者が判断できる内容となっております。また、行政当局や証券取引所を通じた未然防止体制の強化も手当てされております。こうした点から、法案が成立し周知徹底された暁には、国際的にも平仄の合った実効性の高いルールになるものと存じます。
私ども証券会社といたしましては、これからもチャイニーズ・ウオールの強化など、率先垂範してインサイダー取引の未然防止に努めてまいる所存でございます。あわせて、上場会社ではタイムリーディスクロージャーの徹底を、また、その他の市場関係者においてもチャイニーズ・ウオールの設置等の情報管理の徹底を実行していただくなど、各市場参加者が責任を持って改正法の趣旨に沿った努力をしていくことが大切ではないかと考えている次第でございます。
以上が、今回の証券取引法改正案に対する私どもの考え方でございますが、いずれの内容につきましても、我が国証券市場の機能強化、国際化の観点から大変意義深い改正であると考えております。委員の皆様におかれましても、御支援のほど深く御願い申し上げる次第でございます。
以上をもちまして私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/4
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005・越智通雄
○越智委員長 田渕参考人、ありがとうございました。
次に、伊夫伎参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/5
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006・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会の伊夫伎でございます。
大蔵委員会の諸先生方には、私ども銀行界といたしまして、常日ごろ大変お世話に相なっておりまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。
本日は、銀行界を代表いたしまして、主として金融先物取引につきまして、意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
今般、金融先物市場創設のための法手当てがなされますことは、我が国に真に国際的に通用する金融先物市場をつくってまいりますための一里塚といたしまして意義のあることであり、私ども銀行界にとりましても喜ばしいことであると思っております。
我が国の金融資本市場が、世界的なものといたしまして認知され、機能してまいりますためには、総合的な金融先物市場がどうしても必要不可欠でございます。
御高承のとおり、金融の自由化、国際化が急速に進展しておりまして、これに伴いまして、金融取引に占めまする自由金利商品の比重は著しく増大をいたしまして、また、各種の金融資本市場において、幅広い市場参加者によりまする自由な価格形成が行われるようになっております。そうした中、金利変動リスク、為替変動リスク等、各種のリスクもまた急速に増大しておりまして、個々の金融機関、投資家にとりまして、金融取引の安定性を確保してまいりますためには、さまざまなリスクを何らかの形で回避することが必要となってきております。こうした各種のリスクに対しまするヘッジ・ニーズの拡大に対応してまいりますためには、我が国における金融先物市場の整備と我が国投資家によりまする海外金融先物取引の一層の自由化が急務となっているわけでございます。
さらに申しますならば、我が国は今や世界の三大金融資本市場の一つになっており、今後我が国がそうした国際的な役割を果たしてまいりますためにも、それにふさわしい市場機能の強化や一層の自由化が必要となっておりまして、そのためにも、金融先物市場の整備と海外金融先物取引の一層の自由化が不可欠となっているのでございます。
こうした中で、全銀協といたしましては、昨年来、金融先物特別委員会を設置いたしまして、我が国における金融先物市場につきましての検討を続けてまいりました。その基本的な考え方は、昨年三月、「金融先物についての銀行界の考え方」として発表いたしております。
その中で、私どもは、オプションを含みます広範な金融先物を取引し得る総合的な金融先物市場を我が国にも早急に創設する必要があること、あわせまして、金融先物取引を包括的に規制する統一的な法規制が必要であることを主張いたしております。これを一言で申しますならば、統一的な法規制のもとに総合的な金融先物市場を創設するというのが私ども銀行界のかぬてからの主張でございます。
なお、昨年末の金融制度調査会、外国為替等審議会の合同報告書におきましても、海外に通用する統一的な金融先物市場をつくっていくという基本的な認識のもとに、金融先物市場の整備等を提言されており、その中で、市場の整備に当たりましては、市場利用者の利便の優先、ニーズの変化への柔軟なる対応、簡素な規制、国際的に通用する仕組みといった諸点が強調されております。特に、金融先物市場整備の必要性が我が国金融の国際化の進展により生じていることを考慮し、市場整備に当たりましては、国際的な視点、すなわち、海外市場との整合性、連関性を重視すべきであると指摘されております。
そうした視点から、世界の主要な金融先物市場を見てみますと、いずれも、オプションを含む通貨、金利、株式の先物取引は、現物の市場とは全く別の先物専用の市場で総合的に取引が行われております。例えば、米国では、シカゴにシカゴ商品取引所とそれからシカゴマーカンタイル取引所が存在し、両取引所とも、株式、金利に関する先物商品を上場しておりまして、投資家の多様な先物取引のニーズにこたえる総合的な先物市場となっております。
我が国における市場の仕組みも、こうした海外の主要な金融先物市場とできるだけ共通であることが望ましく、我が国におきましても幅広い金融先物商品を取り扱うことのできる総合的な市場を創設することが本来望まれるわけでございます。そういたしますことによりまして、海外の市場との相互決済やクリアリングの共有といった取引所間の国際的なリンクも可能となるわけでございます。また、投資家にとりましても、総合的な市場が実現いたしまするならば、多様な先物取引ニーズを満たすことができることになりまして、利便性を増すことにもなります。
こうした観点から、今般の先物取引につきましての法律手当てを見てみますと、証取法上の有価証券を除きます金融商品に係りまする先物取引につきましては金融先物取引法でカバーし、証取法上の有価証券に係る先物取引につきましては証取法でカバーするといったぐあいに、広義の金融先物につきましての法手当て、上場市場が二本立てとなっております点、率直に申しまして金融制度調査会の答申の趣旨を十分踏まえたものとなってはおりません。
しかしながら、いずれにいたしましても、今回の法律手当てが本年一月の大蔵省銀行局、証券局、国際金融局による裁定の精神をそのまま反映いたしたものでございます以上、そして、その裁定が現実の問題といたしまして国債先物取引が証券取引所で既に行われている等をも踏まえました上での御当局の深い思慮によって出たものでありまする以上、私ども銀行界といたしましては、この裁定を尊重し、私どもなりに与えられた枠組みの中で金融先物市場の開設に向けまして最大限の努力をしてまいる覚悟でございます。
今般の先物市場の整備は、我が国経済史に残る大事業であるとの認識に立ちまして、投資家にとって少しでも使い勝手のよい立派な市場としてまいることが私どもに課せられた課題であると考えております。法案及び関係政省令成立後、御当局へ新市場創設のための申請が遅滞なくできますよう、全銀協内に昨年六月来設置しております実務家による金融先物プロジェクトチームにおきまして、具体的な市場創設作業を行うべく、実務的な準備を鋭意進めてまいっております。
具体的には、金融先物取引の決済履行の確実性を担保するための清算機関を設置する方向で検討いたしておりますほか、妥当な証拠金率の設定、適切な値洗い制度の運営、会員資格の一定の制限といった、投資家保護のための制度的な手当てに留意いたしました定款等の諸規定につきましても、ベーシックな検討を進めております。
なお、当初取引所開設時の上場商品につきましては、取引所が市場利用者のニーズ等も踏まえまして大蔵大臣の認可を得て決定するものではございますが、短期金利先物といたしまして米ドル短期金利先物及び日本円短期金利先物、通貨先物といたしまして円ドル通貨先物の三商品をその候補に考えているところでございます。
また、以上を前提といたしまして、取引所のコンピューターシステムにつきましても開発は着手いたしております。
ただ、裁定でも、法律改正をも含めました見直しをすることが明記されておりまするので、ぜひとも市場開設二年後には、真に国際的に通用する統一的な金融先物市場実現に向けまして見直していただけまするよう希望いたしますとともに、そうした二年後の見直しをも展望いたしました市場づくりをしてまいりたいと存じております。
なお、市場創設の暁には、私ども銀行界は、みずからのリスクヘッジの手段としてこれを活用するだけにとどまらず、この市場が、内外のニーズに適切に対応しながら健全に発展し、国民経済の発展に寄与いたしますとともに、我が国が国際的な金融資本市場としての役割を果たしていく上で有用なものとなりまするように、主導的な役割を担ってまいる覚悟でございます。
また、今般の法手当てでは、海外金融先物取引の受託に関する法整備も同時に行われまするが、これによりまして、一般の居住者も私ども金融機関等の受託業者を通じまして海外金融先物取引に参加し得る手だてが格段に拡大されることになります。私どもは、こうしたニーズにも的確に対応いたしまして、我が国が国際金融資本市場における相応の役割を果たすことができまするよう、努めてまいる所存でございます。
次に、証券取引法改正につきまして一言意見を申し述べたいと存じます。
内部者取引規制の整備についてでございます。私どもといたしましては、内部者取引規制の整備は、投資家の証券市場に対しまする信頼性を確保する上で望ましいことと考えております。今回の証取法改正は、我が国の実情を踏まえた上で諸外国の規制とのバランスにも配慮したものと前向きに受けとめております。今後、政省令をおつくりになられる際におきましても、取引の実情を十分踏まえられますとともに、実際に取引する者にできるだけわかりやすく、明確な規定にしていただきたいと存じます。私ども銀行界といたしましては、従来より取引先情報につきましての守秘義務を徹底いたしておりまするが、今回の規制の趣旨に沿いまして、より一層情報管理体制を整備いたしまして、その徹底を図ってまいりたいと考えております。
以上をもちまして私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/6
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007・越智通雄
○越智委員長 伊夫伎参考人、ありがとうございました。
次に、河本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/7
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008・河本一郎
○河本参考人 まず、長年証券取引法の研究に従事してきた者といたしまして、このたびの非常に重要な改正に当たり意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。
今回の証券取引法の改正は、同法制定後の何回かの改正の中でも、質的にも量的にも画期的なものであると考えております。その特徴を一言で申しますと、我が国資本市場の国際化の急進展に対応するものであるということが言えようかと思います。
今回の改正は、次の三つの大きな部分から成っております。第一は、内部者取引の規制に関する改正であります。第二は、証券先物市場の整備に関する改正でございます。第三は、ディスクロージャー制度の改善のための改正でございます。そのほかに、証券会社の営業年度に関する証取法五十二条の改正もございます。
まず第一の内部者取引の規制に関する改正は、私ども学界に属する者といたしましては、多年の望みが達成されたものとして非常に喜ばしく感じておるところでございます。米国はもちろんのこと、最近はヨーロッパ諸国におきましても、内部者取引、つまりインサイダー取引を刑罰をもって禁止するという立法が相次いでおります。我が国の資本市場の急速な国際化にかんがみますと、我が国におきましてもこれを放置しておくことはできないという客観的情勢に既にありました。そこへたまたまタテホ化学株をめぐるある相互銀行の内部者取引の疑惑が大きく世間の注目を引くに至りました。このような現実の問題に直面してみますと、我が国の現行法の諸規定がそれを実際に運用するのにはいかに困難であるかということが明らかとなりました。すなわち、従来我々商法学者は、現行証券取引法の五十八条は内部者取引にも適用されると主張してまいりましたが、現実にこれを発動するにはその条文が余りに抽象的に過ぎるといううらみがあることは否定ができません。また、監督官庁の調査権にいたしましても、上場会社等に対しこれを及ぼすにはどうも条文上の根拠が乏しいという事実もございました。以上のような欠点を除きますために今回の改正がなされようとしておるわけでございまして、まことに時宜に適したものと考えております。
この改正の立法技術的な特徴を挙げますと、処罰の対象となる行為の構成要件をできる限り客観的に明確なものにしている点でございます。すなわち、行為者の範囲、内部情報の定義、それから対象となる有価証券、禁止される行為を明確にしております。また、適用が除外される場合につきましても、具体的にこれを列挙いたしまして、真に刑罰を科するにふさわしい行為は何であるかということを明らかにしておりまして、その意味からも妥当な立法であると考えております。
以上のことを前提にいたしまして、この内部者取引規制の改正法の内容を要約いたしますと、大体次の三つになろうかと思います。
一つは、会社関係者で上場株券等の発行者である会社の業務等に関する重要事実を職務等に関し知った者は、当該重要事実が公表された後でなければ当該上場株券等の売買をしてはならぬということであります。
次は、公開買い付け者等の関係者でありまして、株券等の公開買い付け者等の公開買い付け等の実施に関する事実またはそれの中止に関する事実を職務等に関し知った者は、当該公開買い付け等の実施に関する事実またはその中止に関する事実の公表された後でなければそれを買い付けたり売り付けたりしてはならぬということであります。
それから第三は、そういう人たちから情報を受領した者は、それが公開された後でなければ売買をしてはならぬということであります。
世上よく問題にされますように、この条文では、例えば情報を伝達をして、そして受領した者が取引した場合、その伝達者を罰することになってないではないかと言われますが、この場合は、伝達者、つまり会社内部の人たちを場合によっては刑法の教唆犯とか幇助犯に関するような規定を使えば十分逮捕できますし、それからまた、法律は第一次受領者に対象を絞っておるということに対しましても、場合によっては、全く他人を道具に使って取引するというような場合には刑法にある間接正犯というような理論もございますので、まずこの法律で重要な場合は漏れなくカバーできる、こういうふうに考えております。
それから、これに違反しました者は六月以下の懲役または五十万円以下の罰金ということになっておりまして、これも現行証取法の五十八条違反が三年以下の懲役または三百万円以下の罰金というのと比べますと軽いという感を免れませんが、ただ今度の法律は構成要件を非常に形式化しております。そのために、我が国のほかの刑罰法規等と比較しました場合には、この程度の刑罰でもってバランスがとれておるというふうに思います。
それと、この点で注意しておかなければならないのは、この法律ができましたからといって決して従来の五十八条が削除されるわけではございません。刑法理論では五十八条と今度の法律とは観念的競合だというふうに言われておりますが、要するに悪質な違法性の高い内部者取引については五十八条をもって対処できるというふうに私ども考えておりますので、刑罰のバランスにおきましても、そういう違法性の強いものは五十八条、こういうことでバランスがとれるんじゃないかと考えております。
これによりまして非常に国際化してまいりました我が国の証券市場が国際的にも信用を獲得することができるということは、非常にありがたいことだと私ども考えております。
それから、刑罰でもってすべての処置はできませんので、それよりも大事なことは行政及び取引当事者の姿勢であります。これにつきましても、例えば百五十四条の改正であるとか五十五条の運用強化等によりまして行政もできる限りの対応ができるようにしておりますし、それから業界におきましても鋭意この法律の趣旨に沿った内部における対応が今後なされようとされておりますので、私どもはそれが十分整いますことを強く要望しておる次第でございます。
それから、先物市場に関しましては、既に御承知のように大阪の証券取引所で現行法の枠の中で行っております株先五〇、これは著しい成果を上げておりますが、これの行き着くところは結局インデックス、つまり指数先物取引でありますが、これはどう考えましても現行法の有価証券といえませんし、またこれには売買という観念は成り立ちません。そこで今回の証券取引法の改正はそういうものをずっと列挙をしていくという形をとっております。そのために非常に多数の改正条項ができ上がっておりますが、これも我が国の証取法の体系のもとではやむを得ないことであろうかと存じております。それから、これによりまして我が国におきましても株式投資のリスクヘッジが円滑に行われるようになりますし、また投資家の投資機会が拡大されることになると存じます。
次に、ディスクロージャー制度の改善でありますが、我が国の社債発行市場の活性化のための具体的措置の一環であると私どもはこれをとらえております。その中でも、発行登録制度の導入などは米国における制度を倣ったものでありますが、これによりまして我が国の企業も米国の制度と同じ利便を享受できるようになろうかと考えます。
そのほか、ディスクロージャー制度につきましては、効力発生期間を三十日から十五日にするとか、その他手続の簡素化を図るための法改正がなされようとしておりますが、その反面、省令事項として、臨時報告書の提出事由の拡大であるとか、セグメント情報の充実の検討など、内容面の充実も図るということが考えられておりますので、結局バランスのとれた改正になると考えております。
以上をもちまして私の陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/8
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009・越智通雄
○越智委員長 河本参考人、ありがとうございました。
以上で御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/9
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010・越智通雄
○越智委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/10
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011・堀昌雄
○堀委員 本日は各参考人にはお忙しい中を当委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。
約一時間の時間の中で今回提案をされておりますところの証券取引法の改正及び金融先物に関する法律の改正についてのお尋ねをいたしますけれども、まず私は、実は一番重要視いたしておりますのは、現在日本の金融というのは、単に国内の金融を充足すればいいという段階ではございませんで、国際的な視野で考えていかなければならない大変重要な段階に参っておる、こう考えております。
いろいろなものを見ておりますと、実は一九八七年八月二十四日に「金融財政事情」の方で行事がございまして、「一九九〇年の東京市場を展望する」、こういう会議が行われた中で、財務官の行天さんが大変いいことを言っていらっしゃいますので、それを最初にちょっと紹介をしておこうと思うのであります。
しかし当然のことながら、ただ手をこまぬいているだけで、東京が立派な国際市場として発展できるわけではない。やはり、立派な国際市場というものにはいくつもの大事な資格、あるいは資質が必要である。東京市場の今後の発展にあたっては、そういう国際市場としての資格を育てていく努力が、ますます必要になってくる。
その資格としては、四つあるのではないか。第一は、これからの国際市場でいちばん大事なことであるマーケットとしての公正さの確保である。具体的にいえば、市場参加者がいかなる国籍の人であろうと同等の競争条件を与えられ、同じ立場で商売ができる、そういう意味での公正なマーケットであるかどうかということである。
レベル・プレイング・フィールドという言葉があるが、これは文字どおり平らな球技場ということである。フットボールにしても、もし球場が傾いていればボールは片方へ流れていく。両チームの競争条件は平等ではなくなる。したがって、本当に平らな球場をつくらなければいけない。
第二番目には、市場が効率的な、エフィシェントな市場でなければならない。エフィシェントであるという意味は、その市場がもっているいろいろなハードウェア、ソフトウェアがほかの市場と比べて十分に整備されており、そこで仕事をする場合は最高度の効率性が確保されうるということである。そういったハードウェア、ソフトウェアが合理的なコストで手に入る条件をつくっていく必要が、とりわけ東京の場合は大切である。
そのなかには、もちろんオフィスのスペース、家賃、賃金といった問題も入ってくると思うが、いずれにしてもハード、ソフトの両面で、だれがみても、エフィシェントな商売ができるということが非常に大事な点だろう。
第三番目には、ビジネスをする観点からいって魅力のある市場、つまり、アトラクティブな市場である必要があろう。アトラクティブな市場というのは、いろいろな形で大きなビジネスのチャンスがあり、そしてマーケットとしての厚さあるいは広がりがなければいけない。
その意味で、商品の多様化が重要な要素になる。つまり、仕事の種類によってできないものがあるというマーケットであっては本当の意味での国際市場としての魅力に欠けることになる。したがって、先物・オプションについても、整備していくことが今後の東京市場の国際的発展にとって必要になろう。
四番目の資格は、信頼のできるマーケットであることである。つまりいかにマーケットが効率的で魅力があるマーケットであっても、もしそこでビジネスをしている金融機関その他の参加者が、金融に携わる者としての信用に欠けるということであれば、結局マーケット全体としての信用度が低下してしまい、発展できなくなる。
わが国の場合、金融産業は国際的にみてもレベルの高い信用度をもって発展をしてきた伝統があり、そのよき伝統を今後の発展のなかでも維持し、かつ強化していくことが望ましい。
こういうふうに実は行天財務官がおっしゃっているのであります。
そこには銀行局長、証券局長、国際金融局長、それから審議官、皆さん出席をしていただいておる。財務官というのは英語で言うと事務次官と同じ資格があるのだというふうにかつて鳩山さんから聞いたことがありますが、ここに書いてあることを行政がきちっとやっておれば私はきょう参考人の皆さんに伺うことは実はほとんどないのであります。ところが現実には、この行天さんが書いておられることは、国際金融に関するトップの人が公開の場で話をしておることについて、それが行政の側としてそのように必ずしも十分に行われていないというのは、私にとっては大変残念なことであるというふうな感じがいたしておるわけでございます。
先物取引、インサイダーもすべてそうでありますけれども、きょう議題になっておるものは、国際的に通用しないようなものを日本だけが新たにつくったところで、それはせっかくつくっても画竜点睛を欠くというのが実は私の認識でございます。そういう認識に立って二、三、まず先物関係についてだけ先に参考人の皆さんに少しお伺いいたしたいのであります。
今の考えで、要するに公正な競争、そして相互主義という概念からまいりますと、昨日私どもの同僚の武藤山治議員が当委員会でこの法案についての質問をいたしましたところ、水野主税局長は取引所税はこれを全部やりますという答弁をしておるようでございます。しかし、私が調査したところでは、アメリカにおける先物もイギリスにおける先物も実はそのような税をかけていないのであります。これから東京を含めた日本は少なくともニューヨーク、ロンドンと並び立つ大きな国際的市場になろうというときに、ここに行天さんが言っておること、そして私もそう考えておる国際的にイコールフッティングでやるということが確保できないようなことでは、大変問題がある、まず第一にこういうふうに考えております。今度の先物取引に関する課税問題については、アメリカ、イギリスと同じように、課税をしないということが国際化の第一歩だ、私はこう考えておるのでありますが、ひとつ各参考人お一人ずつからお答えをいただきたいと思います。竹内参考人から逐次お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/11
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012・竹内道雄
○竹内参考人 何と申しますか、私どもからいたしますとむしろ大変ありがたい質問で、今度のキャピタルゲイン課税の問題に絡んでも私は多少意見があるわけでございますけれども、さしあたり先物についての課税だけについて申し上げますと、お話しのように世界の先進国はほとんど先物取引というものを既に実施をしておるわけでございますけれども、これに対して取引税、流通税のようなものを課している国は一つもないというのが現状でございます。
これから国際競争がだんだん盛んになってまいりますし、先物について申し上げますならば、日本の国債の先物、これは既にロンドンで取引をされております。恐らく来年の初めごろにはアメリカでも取引をされることになると思います。さらに今度の法律改正に伴いまして私どもが実施いたそうとしておりますTOPIXの先物取引、それから恐らく大阪では日経指数の先物取引をやるというふうに思いますが、このTOPIX及び日経指数の先物も、私どもが始めますと、かなり早い時期に、これはシカゴのCBT及びCMEでやろうということになろうと思います。また、御承知のように日経指数については既にシンガポールでされておるというようなことで、取引所同士の競争というようなものはこれからだんだん盛んになっていくのですが、先物につきましても、今申し上げたような状況で、もしかしたら、日本でも将来例えば外国のSP五〇〇だとかそういうニーズが出てくれば、日本でも上場するというようなこともあるのであろうと思います。そういうときに、アメリカやイギリスで取引をすれば税金はかからないけれども日本では税金がかかるというようなことではとても国際場裏で日本の取引所が伍していくわけにはまいらぬということになりますので、主税局長はどういうつもりでおっしゃったかわかりませんが、私としてはぜひ先物取引についての取引所税というようなものはかけないようにしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
余計なことを申して恐縮ですが、例えば国債の現物につきましても、これに今日本では有価証券取引税がかかっておりますけれども、こんなものに税金をかけている国はないわけでございます。一つだけあるのは西独でございます。西独が、四万マルクぐらいでしたか、一定金額以上のものについて低い税率の有取税のようなものをかけておりますけれども、それ以外の先進国では国債についてはかけていないというのが現状でございます。日本のようにこれだけ政府がたくさん国債を出してみんなに迷惑をかけているといいますか、そういう状況で、その国債の流通に何ぼでもあれ有取税をかけているというような状況も、今度の法案とは直接関係はないわけでございますが、大変望ましくないことであるというふうに考えております。ちょっと余計なことまで申し上げまして恐縮でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/12
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013・田渕節也
○田渕参考人 先生御指摘のとおり、海外の主要国には証券先物取引等に対する取引所取引税は、私も調べてみましたが、存在いたしておりません。証券先物取引がこれはまさにリスクヘッジ手段として有効に利用されるためには、当然低いコストで機動的に取引できることが必要条件でございます。取引所取引税は証券先物取引のリスクヘッジ手段としての機能を損なうものである、そういうふうに考えます。また、証券先物取引はすぐれて国際性を有する取引でありますために、取引所取引税が課せられることによって取引コストが海外に比べてもし割高になる、当然割高になると思うわけでございますが、そうしますと国内の取引が海外に流出をいたしまして我が国証券市場が空洞化することになりますので、証券先物取引に対する取引所取引税は非課税とすることが望ましい、かねがねそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/13
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014・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 お答えを申し上げます。
先ほど先生のおっしゃいましたように、現在、債券先物、商品先物等につきましては、一種の流通税といたしまして取引所取引税が賦課されておるわけでございます。しかしながら、金融先物取引にかかわりまする取引所の取引税は海外には例がございませんで、国際性の観点から問題がございます上に、円滑な先物取引の阻害要因になる、こういう可能性が強いと思うわけでございます。すなわち、仮に税金がかかるといたしますと取引が海外の市場に逃げていってしまう、あるいはお客様の取引のインセンティブを損なう、そういうことで我が国の金融先物取引所の成長の足かせにもなりかねない、このように存ずるわけでございます。
そもそも、先物取引についてでございますけれども、取引所取引にいたしましたのは、投資家の保護や取引の安全かつ効率的な遂行を確保いたしまして、そしてもって国民経済の適切な運営に資する、こういうような点にあるわけでございますけれども、仮に税金をかけることによりまして取引が店頭取引やあるいは海外に逃げてしまう、こういうようなことに相なりますならば、まさに仏つくって魂入れず、こういうようなそしりを免れないのではないかというふうに思うわけでございます。
また、取引所税の影響についてでございますけれども、金融先物取引の個別事情をちょっと言わしていただきますと、一つには、今後上場が予定されておりまする短期金利の先物取引でございますけれども、これは債券価格や株式の先物に比べまして、担税力の源泉になっておりまする価格の変動幅、これが極めて小さいのでございます。したがいまして、税負担というものが相対的にその結果大きくなってしまう。既存の税率というものを課せられるとほとんど商売にならない、こういうようなおそれさえある。そういうことでございます。
また、いま一つの上場商品でございます通貨先物取引に関して申し上げますと、通貨につきましては、経済的な効果を同じくいたしておりますフォワード取引でございますが、これが既に非課税で行われている、こういうことからいたしまして、そうした取引とのバランスにつきましても十分御配慮されることが必要ではなかろうか、このように存ずるわけでございます。
他の先物取引に比べまして取引所の取引税の影響をより受けやすい、そういう取引所税がその盛衰のかぎを握っている、これから取引所が発展していくかいかないかということのかぎを握っていると言っても過言ではなかろう、このように思うわけでございます。
以上、長々と述べたわけでございますが、要しまするに、金融先物取引につきまして取引税を賦課することはぜひとも避けていただきたい、こういうのが私どものお願いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/14
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015・河本一郎
○河本参考人 私、関西で研究生活をしておるわけでございますが、今の問題で非常に現実問題として如実に感じましたのは、大阪の株先五〇でございます。先生御承知のように、最初はあれにつきましては取引税は非常に高うございました。ところが、六月にそれが下げられましてから飛躍的に取引が伸びまして、今の大阪取引所の財政的基盤を非常に大きく支えるようになっております。このことから見ましても、税金の問題というのが制度を本当に実のあるものにするためには決定的な意味を持っておるというふうに私は思っております。
ただ、私ども、会社法にしろ証券取引法にしろ、主として実定法の方から問題を考えるわけですが、その場合に、いつも、いや税法でこうなっておるからどうにもなりませんというような壁に当たることが多うございます。したがいまして、この問題も国の政策として非常に難しい点があろうかと思いますが、それこそその点は先生方の御努力によりまして国際的にこの制度が本当に機能するような方向へむしろ持っていっていただきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/15
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016・堀昌雄
○堀委員 御出席をいただいた参考人、皆さん、私の提案に御賛成でございました。
ちょっとそちらに並んでいる三局の皆さんに申し上げたいんですけれども、ともかく局が三つあって一つの局に対抗できない。もうちょっと皆さんしっかりしてほしいと思うんだ。平沼政務次官いらっしゃいますが、答弁をいただく気はないのです。
要するに、私は昨年の一月二十七日に社団法人国際金融経済研究所というのをつくることにいたしました。これはなぜつくることになったのか。実は、その前の年にアメリカでマルフォードさんに会いましたときに、マルフォードさんが、日本の短期国債はどうして源泉徴収取るのですかと一生懸命私に話がありました。この短期国債というのは、私は五十六年二月の大蔵委員会で当時の渡辺美智雄大蔵大臣に、国債特別会計という国債のファイナンスの問題の提案をし、あわせて、これからの大量借りかえに対して対応するためには少なくとも短期の国債を発行する必要がある、これをアメリカのTBのように短期金融市場の商品としてつくるということを含めて政府は検討すべきである、こういう提案をいたしまして、それが法律になったのは六年たってですか、短期国債だけが今法律になっているのでありますけれども、それをずっとやってまいりましたり、その前には、実はスプリンケルさんが財務省の次官でありましたときに、バンクアクセプタンスのスタンプ、印紙税の問題もありました。
ともかくも今国際金融の問題の中で常に問題になるのは、国際金融の仕組みの話じゃなくて、全部税金の話なんです。そのために、私はもう行政に任しておくわけにいかない、国会としてひとつきちっと国際的に通用する仕組みにしたいというので、自由民主党の皆さん、公明党、民社党の皆さんにお諮りをし、各業界の協会長さんの御支援をいただいて国際金融経済研究所というのをつくったというのがそもそもの私の考えでございまして、広義の金融諸関係について、国際的に問題のある税制は、今回の税制の抜本改革の中で、当委員会にいらっしゃる皆さんの御協力をいただいて必ずきちっとしたいというのが今の私の信念でございます。それすらできないようならあとの重要問題については私どももまだ考えがある、という気持ちを持つくらいに私はこの問題を重要視しておるのです。それは何も私どもの党の利害じゃないんですよ。日本の金融も国際金融というものの持っておる重要性を認識しなければならないところに来ているにもかかわらず、主税局が一方的にそれを頑張っている。
それで、スタンプの問題があります。CPの問題についても、私は相乗りでできたことは大変いいと思っているのですけれども、これがまたスタンプがこれまでどおりでいく、こういう話ですね。私はせめて二百円の定額でいかないかと思ったのですが、それはそうなってない。ですから、短期国債の源泉徴収の問題、CPをひとつ、まあゼロにしろといっても無理ならば、二百円の定額制で手形全部公平に処理をするという問題、そうして今度の国際金融に関する先物取引に関するものを無税にする。今竹内理事長がおっしゃったように、大蔵省の大先輩である竹内さんも、国債について税金取っているのはおかしい。
確かにそういう意味でやや国際的に問題があるのは、理事長もおっしゃいましたけれども、ドイツがアメリカやイギリスとちょっと違うのですね。私は水野主税局長にこの話をしましたら、水野さんが、先生何かドイツはまた源泉徴収やるようですよ、こういう話をしているわけですね。今ドイツがいろんなものに源泉徴収を復活させるようなことをしたら、フランクフルトの市場などというのは世界の市場から取り残されてドイツにとって大変なマイナスになるんじゃないか、一体ドイツ政府及びドイツの国会どう考えているんだろうかという認識を私は持っているくらいなんでありますけれども、きょうの参考人の皆さんすべての方がそういうふうにおっしゃっている。恐らく今ここで、主税局は別かもしれないが、それ以外の各局はいずれも私の意見に反対ということではないのではないか、こう思っておるのでありまして、これらの問題、あしたまた大臣や政府と論議をいたしますからやりますが、どうかひとつ平沼政務次官も、日本の国際的な位置をきちんとするためは、貿易では私どもは大変問題をたくさん抱えていて、今のオレンジや牛肉その他大変困る問題があるのですが、それを国際金融でカバーしようというのが私の考えでございますので、どうかひとつ大蔵省、関係者一同、十分肝に銘じてこの皆さんのお話を聞いておいていただきたい。よろしゅうございますね。
〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
次に参ります。
相互主義の問題の中で、実は昨日私ども国際金融経済研究所でアメリカの関係者の方からお話を伺いました。これまでも私ども、アメリカの関係者、ゴールドマン・サックス、ソロモン・ブラザースの日本における責任者の方からお話を伺っているのでありますけれども、ここで問題になっておる国際上の問題というのが証券業務の為替の取り扱い問題というので、実は世界の国の中で証券業が為替を扱えないのは日本だけですよというのが昨年の私どもの研究会でのアメリカの関係者のお話でございましたが、昨日も実はこのお話がございました。そして、一九七九年に法律を改正してから今日まで改正がされていない、こういうことでございます。
そこで、実はちょっと私、外国為替銀行法とそれから外国為替及び外国貿易管理法をそういう御指摘ありましたので調べてみました。非常に興味のあることを発見いたしました。というのは、実は現在の法律は昭和五十四年の改正になっているのでありますけれども、これはそもそもの法律は、外為銀行法は昭和二十九年の法律でございまして、片方は昭和二十四年の法律であります。いずれもその後途中で改正が行われておるのでありますが、まず非常に興味がございますのは、その前の昭和四十三年改正の外国為替及び外国貿易管理法第一章「総則」第一条「目的」、「この法律は、外国貿易の正常な発展を図り、国際収支の均衡、通貨の安定及び外貨資金の最も有効な利用を確保するために必要な外国為替、外国貿易及びその他の対外取引の管理を行い、もつて国民経済の復興と発展とに寄与することを目的とする。」こういうのが第一条であります。
私も昭和三十五年から当委員会におりますが、当時外貨準備が大体十八億ドルくらいです。そして池田さんの人為的低金利政策で経済がうわっとこうなってきますとこの十八億ドルの壁へぶつかる。ですから、当時経済調整を何でやっていたかというと、金利は固定金利ですから金利で引き締められない。日本銀行の窓口規制で量的規制だけでやる。私はあれを見て、日本が高度成長したのは社会主義的手段によって高度成長したのであって、資本主義的手段で高度成長してない、こう認識をしておるのでありますけれども、そういうときですから、この法律ができてくるのは当然のことでございます。
そしてこの二条が非常に興味があるのです。第二条「再検討」、こんな条項の入った法律はこれだけだと思っておるのでありますけれども、「この法律及びこの法律に基く命令の規定は、これらの規定による制限を、その必要の減少に伴い逐次緩和又は廃止する目的をもつて再検討するものとする。」私、この法律をつくった方は先見性があったと思うのですね。要するに、新しい時代が来ていろいろやっている中で、この法律できちんと為替管理をやるけれども、客観的な条件が変わってきたら再検討して逐次減らしていって最後廃止をしたらいいということが法律第二条に入っている。
ところが、この五十四年法改正ではこれが変わってきまして、その前に三条、四条、削除になっているんですが、五十四年法改正では、再検討、見直し条項が削除されているわけです。五十四年のあの段階で、為替管理その他の問題は動かさなくてよろしい、こういう認識だったようですね。私は当時当委員会にいたんだと思うのですけれども、ちょっとはっきりそのところの記憶がないのでありますけれども、振り返ってみまして、これは非常に問題があるなというのが今日の私の認識でございます。
そこで、さっきの国際的な視野という問題で特に私が行天さんの問題を話させていただいたのも、ともかくも日本だけで特別な部分だけが制限を受けておるようなことは国際的な観点からいって速やかに是正すべきである。しかし、今法律がこう出ておりますからこの中でどうこう言う気はないのでありますが、幸い二年の見直しというのがこの中に入っておりますね。ですから、この二年の見直しを壁にしてこの外為法についての改正を手順を進めてひとつ政府側としてやっていただきたい。そうすることによって、少なくとも世界の証券業が日本へ来て、日本へは今、アメリカだけでありません、イギリスも来ておるしフランスも来ておるし、皆来ておるわけでありますから、そういう各国の証券業が日本へ来たら途端に為替の業務が取り扱えないということは、国際的に見て決してイコール・プレイング・フィールドになってないという明らかな証拠だと私は思うのでございます。これについてもひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/16
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017・竹内道雄
○竹内参考人 証券業務を営んでいく上で証券会社が為替業務を全くできないということになりますと、いろいろ不便も起きてくるかと存じます。殊にそのために証券の取引が円滑にいかないというようなことになりますと、これは非常につまらないことなんで、そういう面があるとしますれば、そういう点は、二年とおっしゃいましたが、その法律を直さずに済む部分は二年を待たなくても、直さなければいけないところは直していただきたいなというふうに思っております。
例えて申しますと、先ほど申し上げましたように、来年の初めには恐らくアメリカのTボンド先物というようなものが東京で上場されるということになりますが、そのときのTボンドはドル建てで取引をするということを予定しておるわけでございます。そういたしますと、Tボンド取引の先物の決済にドルが要る、それを取引のたびにどこかへ行ってお金を借りてこないと商売ができないという点は、少なくとももう少し簡単に決済ができるようなことを考えていただきたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/17
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018・田渕節也
○田渕参考人 先生おっしゃられるように、金融資本市場の国際化、自由化の進展ほ伴いまして、証券市場を通ずる内外の資本交流は甚だ活発化いたしております。証券界といたしましては、国際的な取引を迅速かつ円滑に行うために、かねてから機会あるごとに証券会社による為替の取り扱い範囲の拡大を要望してきているところでございまして、ぜひ早期実現方をお願いいたしたいと存じます。
〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
また、先ほどの先生のお話に、日本に来ている海外の証券会社の要望ということがございましたが、手前ども証券業協会の中に国際資本市場特別委員会という委員会をことしから発足させております。その委員会は、外国証券会社の会員、それから非会員が非常にふえてきておりますので、そういう外国証券会社の要望をなるべく酌み取って差し上げて、満足のいく形にするといいますか、金融摩擦を未然に極力防ぎたいということでこしらえた特別委員会でございますが、まず最初に、日本に来ている外国証券会社、会員、非会員四十数社の代表者を呼びまして、君らが非常に不便に思っていることあるいは不満に思っていることを遠慮なしに全部言ってください、こたえられることは極力おこたえしましょうということをこの半年間にわたって行ったわけでございますが、アメリカの証券会社、それからヨーロッパの証券会社が異口同音に言うことは、本国の本社では為替はすべて取り扱える、それから日本に来ている証券会社は大体ロンドンにも支店を出しているわけですが、ロンドンでは当然為替は取り扱える、しかし東京だけは本店との取引あるいはロンドン支店の取引の場合に為替が取り扱えないというのは甚だ不便でしようがない、何とかしてくれというわけでございまして、これは外国証券会社のことだけではなくて、我々自身も甚だ不便を感じているわけでございます。そういうことでもございますので、証券会社による為替の取り扱いはぜひ実現をさせていただきたいと思います。
なお、今回の通貨先物取引に関して通貨オプションという制度も実現すると思われるわけでございますが、この通貨オプションに我々証券会社が参加できるように、先ほど二年後というお話もございましたけれども、そのときにはぜひ実現をさせていただきたい、そう思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/18
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019・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 先生へのお答えにちょっとそれるかもしれませんけれども、御案内のとおり、為銀主義でございますけれども、有事規制の有効性が阻害されまして通貨政策に不測の事態を招来することがないように、対外取引にかかわりまする決済というものは外国為替業務を営みます銀行を経由して行う、こういうふうにされているわけでございます。銀行は、外国為替業務を行います場合におきましては、御承知のとおり大蔵大臣の認可を受けなければならないわけでございまするし、一方におきまして、外国為替業務の実施に当たりまして、対外取引にかかわりまする適法性の確認でございますとかあるいは各種報告の取りまとめなど、行政的な機能の一部を分担させていただいておるわけでございます。したがいまして、大蔵大臣の認可を受けました銀行以外の者が外国為替業務を業として行いますのは、一国の為替政策、通貨政策の根幹に触れるものである、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/19
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020・河本一郎
○河本参考人 私、まことに申しわけございませんが、この分野、特別に研究しておりませんので、無責任なことを申し上げられませんので、御容赦願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/20
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021・堀昌雄
○堀委員 内海局長が入ってこられましたのでちょっとお尋ねしたいのですけれども、大体為銀主義というのは、さっき私が申し上げたような、非常に外貨が不足をしているために外貨コントロールをきっちりしていかなければ日本経済がどうにもならないときにやったのがこの制度なんですね。ですから貿易取引が主体だったわけです。ところが、今日、今の為替業務の全体を見ると、全体の中に占める貿易関係の取引と金融関係の取引というものは大きく変化をしておるわけです。一九七九年に法律が改正されておりますから、当時と現在とでもいいし、昨年の状態でもいいのですけれども、要するに、貿易取引関係の為替の問題と金融関係の取引の為替の問題のウエートはどんな変化をしておるかを国際金融局長の方からちょっと答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/21
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022・内海孚
○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。
まず貿易関係でございますが、輸出につきましては、ただいま堀委員御指摘の外為法改正時におきまして約一千億ドルのオーダーでございましたのが、六十二年には二千億ドルでございます。
ちなみに、同じ外貨の受け取りという意味で貿易外の受け取りの方を申し上げますと、五十四年当時でございますが、二百五十六億ドルでございましたが、六十二年には七百九十六億ドルということでございます。入る方も申し上げてもいいのですが、大体そういうバランスで考えていただければいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/22
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023・堀昌雄
○堀委員 今の話で、要するに輸出の関係では、千億ドルだったのが二千億ドルしかなっていない。私はこんな小さな金額ではないと思っているのです。私の方でちょっと調べてみますと、為替の取引の方は全体で三兆ドルぐらいになっているので、千億ドルや二千、二百五十六億ドルとか七百九十六億ドルという数字が何だかよくわからないのでありますけれども、これはまた明日精査して委員会で論議をいたします。私の方で調べたのでは、少なくとも昨年の状態は、為替取引は三兆四千八百七十二億ドル、貿易取引は三千七百八十六億ドル。ですから貿易取引に対する為替取引は九・二倍だということで、一九七九年当時はほぼ同じぐらいだったようですけれども、これだけ違いが出ておるというのが私の方の調査なんです。またあしたで結構です。
ともかくもそういうように本来は貿易取引について問題が発生してきた。しかし、今日国際金融上で資金が非常にどんどん動くようになってきておるにもかかわらずこういう条件があるのはどうも適当でないし、今銀行協会長おっしゃいましたけれども、実は外為銀行が今百七十四行ぐらいあって、信用金庫が三十二行入っているのです。信用金庫まで為替取引を行う時代に証券業に一切認めないなんということは、これは円ドル委員会の案件にもなっておると思います。そうでしょう、藤田証券局長。円ドル委員会の問題になっているわけで、今度は円ドル委員会変わりますけれども、アメリカが強い意思を表明しておるというのが現状でございますので、私は前段で申し上げたように国際金融上の問題としてひとつ検討をきちんとしていただきたいということが二つ目であります。
三つ目は、昨日も既に御議論がございました。私この証取審の報告と金融先物の審議会の報告を両方読んでみたのでありますけれども、両審議会の答申にいずれも、ヘッジに関する会計のルールを改めてほしいというのが、金融先物の方も証取審の方も実は出ているわけであります。
証取審の報告の方がちょっと詳しいですから、
会計処理の問題等
米国では、一九八四年に先物取引一般に係る会計処理基準が設定され、先物市場における売買について一定の基準を満たす場合には、これをヘッジ取引と認定したうえで、現物取引の損益と期間対応させて計上することが認められている。これに対し、我が国では、このような会計処理は認められておらず、決済時に損益を認識する原則となっている。このような取扱いは、現物評価の在り方と密接に関連するものであり、また、先物取引全般に係わる問題でもあるので、先物取引やオプション取引の我が国における定着状況を踏まえつつ、今後、その在り方を検討していくことが望まれる。
また、株価指数先物取引等については、取引の効率性の確保等の観点から、委託手数料等取引に要するコストをできるだけ低廉なものとすることが望まれる。
こうなっております。
そして、今度は金融先物の方は、これはちょっと簡単なんですけれども、やはり金融先物の報告で、
会計処理の問題
米国では、先物取引に係る会計処理基準が設定されており、先物取引を利用の目的に応じて区分し、そのうちヘッジ取引と認められるものについては、そのヘッジの対象である現物取引の損益の認識に対応して先物取引の損益を認識するいわゆるヘッジ会計が導入されている。先物取引及びオプション取引に係る会計処理のあり方については、今後これらの取引の定着状況を踏まえつつ、検討していく必要がある。
これは両審議会からいずれも、この先物取引の問題については会計上の処理をきちっとしてくれ、こういう問題が出ているわけであります。これは皆さんに御意見を伺うだけで政府からは聞きませんけれども、ひとつあしたの委員会できちっとした答弁をできるように用意をしておいていただきたいということを申し上げておきます。
各参考人からこの問題についての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/23
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024・竹内道雄
○竹内参考人 申すまでもなく先物というものはヘッジが目的であるわけでありますから、具体的に申しますと、例えば三月末の決算で、株の現物では損をしているけれども、その部分について先物を買っていてその部分はカバーされているから必ずしも損にならないじゃないかというようなところをどういうふうに三月末は決算処理をしたらいいか、しかしそのヘッジの期間が三月よりも先になるから、そこのところを三月末でどういうふうに計算するかというようなことであろうと思います。ですから、恐らく私は、そもそも現物に対するヘッジとしての先物ですから、損を防ぐためにヘッジをしているということだから、ある時点で見たときにヘッジされていればそれは損は出ていないじゃないかという計算が当然可能だと思うのですが、私よくわかりませんが、殊に指数でヘッジするということになりますと、どの部分がヘッジされているのかとか、ヘッジの期間が到来するのは三月末の決算とは違ってもう一月先であるというようなときに、今度は三月末に指数が幾らになっているかわからないじゃないか、その問題をどういうふうに解決するのだ。どうも私は素人で勝手なことを言って恐縮なんですが、恐らくそういう技術的な問題があってこの問題がすぐに決着をしていないというのが現状なんじゃないかと思うのですけれども、いずれにしても、そのヘッジ目的に照らしてうまい処理ができるように私どもとしてはぜひお願いをしたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/24
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025・田渕節也
○田渕参考人 甚だお恥ずかしいのでございますが、会計を余り今まで勉強をいたしておりませんで、極めて常識的な返事しかできないわけです。
先物はあくまでも現物のヘッジ機能ということで使われる方が大部分だと思うわけでございます。したがって、常に先物と裏腹に現物があるということであれば、そのヘッジによる利益というのはやはり現物とセットで考えるのが常識的だ、そう思っております。今回のその両方がばらばらであるという会計制度は私もちょっと疑問を感じているわけでございますが、今のところ余り詳しく調べておりませんので、以上のお答えをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/25
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026・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 先生御案内のとおり、アメリカでは一九八四年に先物取引一般に係る会計処理基準が設定されまして、先物市場におきましての売買につきまして、一定の基準を満たす場合には、これはヘッジ取引と認定した上で、現物取引の損益と期間対応させて計上することが認められておるわけでございます。
今後の金融先物取引に係る会計処理のあり方についてでございますけれども、これは法案が成立いたしました後で御当局とも御相談しながら関係者の間でもって詰めてまいりたいと考えております。アメリカでもって導入されましたヘッジ会計の我が国への導入についてでございますけれども、先物取引やオプション取引の我が国における定着状況を踏まえながら今後検討してまいることにはなるのではなかろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/26
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027・河本一郎
○河本参考人 先生御案内かと思いますが、今会社法の改正問題も鋭意やっておりますが、その中で、計算のところにはこういう問題が上がっておりません。ただ、リースというような新しいものが次々と出てまいりますので、それをどういうふうな処理をするかということは検討いたしております。しかし、今度のこの問題も、まず商法の計算規定あるいは計算処理規則まではまだいかないと思いますけれども、むしろ会計実務の方で恐らく検討されていくであろうと思いますので、私どもも鋭意勉強していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/27
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028・堀昌雄
○堀委員 今の国際関係の問題はまだたくさんございますが、以上で。時間があとございませんので。
最後に、実は、私、一月二十九日の当委員会で、ひとつ金融先物取引所を大阪にもつくったらどうかという問題の提起をいたしておるわけであります。これは、実は宮澤大蔵大臣もそのときにお答えをいただいておるのでありますけれども、ちょっと四全総のこの部分についてだけ読ませていただきますと、
東京圏は、我が国の首都としてのみならず、金融、情報等の面で世界の中枢的都市の一つとして、我が国及び国際経済社会の発展に寄与する。そのため、国際金融機能等の都心部での展開に伴う要請に対応し、都心部及び東京臨海部の総合的整備を進める。また、都心部に集中しがちな業務機能等を圏域全体で適切に受け止めるよう、業務核都市等への諸機能の選択的分散等地域構造の改編を推進する
同時に、
世界都市機能の集積に伴い安全性の配慮が格段に重要となっている。東京圏の安全性の強化を図るとともに、緊急時に東京圏の機能の一部を支援、補完するしくみを具体的に検討する。
というふうになっておりまして、今度は関西圏の方では、
さらに、特色ある国際金融、証券市場等国際経済機能を育成するとともに、二十四時間空港としての関西国際空港の活用、テレポートの建設等により、世界各地との国際交流拠点としての機能の強化を図る。
こういうふうに実は四全総の中に記載されておるのが一つでございます。
同時に、もう一つは、竹下総理も宮澤大蔵大臣も、東京一極集中というのは問題がある、こうおっしゃっているのです。私が非常に重要視しておりますのは、実は東京というのは直下型地震がいつ来るかわからない。それはあした来るかもわからないけれども、あと五十年先かもしれない。これはわからないのでありますけれども、しかし、下河辺さんがこう言っておられるのであります。起きることはまず間違いないと考えて対処した方がいい、こういうことが一つ、もし起きたら三千万の人口の中で大混乱が起こる、これは大変な事態を予測される、こういうふうになっているわけであります。
そういう意味では、私は今の東京一極集中の問題、さらには四全総における関西の位置づけの問題等を含め、ちょっと私が最初に行天さんのこの提案を読みましたときに、こういうふうに書いてあるのですね。要するにハードウエアとソフトウエアでありますけれども、「そのなかには、もちろんオフィスのスペース、家賃、賃金といった問題も入ってくると思うが、」と。コストの問題ですね。このコストの問題というのは、これは東京はもう日本で一番高くて、大阪はまだ現状ではそういうコストの点では比較的コストが低いというような問題もありますので、その金融先物取引所、東京一つでいいという話ではなくて、ひとつ大阪にも金融先物取引所をつくるということは、今の政府の政策全体の観点から見ても、また直下型地震を避ける危険分散という意味から見ても、大変重要な案件である、こう私は考えておるのでありますが、これは金融先物取引に関する問題でございますので、伊夫伎参考人の方だけにお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/28
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029・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 金融先物取引所をどこに置くかという、こういうことなんでございますけれども、私どもといたしましては、実際に利用される方の利便を考えまして、使い勝手の最もよいところに市場を設置する、こういうのが金融先物市場の円滑な発展にとりまして重要ではなかろうかと考えておるわけでございます。ただいま先生のおっしゃいました首都圏機能の分散化、こういうような観点、これも御卓見でございまするが、これは貴重な御意見といたしまして参考にさせていただきたいと思うわけでございますけれども、ただ、現実ほ金融取引を踏まえてみますと、機関投資家を初めといたしまする金融取引を行いますものの大半、それに外銀、外国の証券会社、そのほとんどがディーリングルームを設置いたしまして各種の取引を行っており、それに応ずる金融のインフラも十分整備されておる場所にまず設置をする、こういうようなのが自然な考え方ではなかろうか、こう存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/29
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030・堀昌雄
○堀委員 最後に竹内さんにお伺いをいたします。
この間竹下総理が実はロンドンに行かれましてサッチャー首相とお会いになったようであります。そのときにサッチャー首相から、イギリスの証券会社バークレー・デズートとそれからジェームス・ケーベルをひとつ会員にしてくれと。まあ大体私このごろ世の中随分変わったものだと思うのですけれども、一国の総理大臣に宰相が、一証券会社を会員にしてくれなんという話が総理とサッチャーさんの間で出るなんというのは、これはしかし考えようによると、問題の重要性というものがそれほど高くなったという認識をする必要があるかもしれません。
ところで、東証の皆さんに大変お骨折りをいただいて、先般、外国証券会社の皆さんが参加をいたしまして、たまたま私、日経新聞で、まだ確定ではないのですが、大体こういうことになりそうだというのを、実はワシントンで日経の新聞で見たものですから、すぐ大使館で英文に直してくれ、それをシューマーに会うときにシューマーに渡して、シューマーさん、私がこの前言ったようにこういうふうになったぞと言いましたら、彼が大変喜びまして、いや、堀さん、もう本当にありがとうと言ってシューマーは喜んでいるのですが、喜んだだけではなくて、貿易包括法案の中にまたシューマー法案が入っている、こういうことがあるのです。これは東証の話ではございませんからいいのですが、これは総理は何か個人的には理解するとおっしゃったのか、向こう側はパーソナルコミットメントだ、こう言っているというようなことになっているようでありますが、東京証券取引所としてはどう対処されるのかをちょっとお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/30
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031・竹内道雄
○竹内参考人 まだ竹下総理もお帰りになったばかりで、私も直接お目にかかってはおりませんし、本当にどういうお話がサッチャー首相との間でされたのか、私もよく承知はしておらないのでございますけれども、第一回の会員権の六社を入れるとき、あのときには竹下総理はちょうど大蔵大臣でございまして、私そのときに証券業協会長と一緒に竹下さんに呼ばれて、何とかしてくれないかというようなことから外国証券の加入というものが始まってまいりまして、御承知のように、第二回はついこの間、ことしの二月に十六社決まりまして、それでその人たちはまだ正式のメンバーじゃないわけです。この五月二十三日に東証の新しい建物ができまして、その日から新しい会員になろうというような状況でございまするので、まだ二次も会員になっていないのに、もうその次を入れてくれというような話は、私はまことにどうも随分せっかちな話であるというふうには思っております。もちろん、それはそれなりにイギリスの方ではバークレーというものが力があり、また、東証会員になりたいという要望が強いということはよくわかるわけでございまするけれども、私どもとしては、まだ昼飯も食っていないのに夕飯だというような話は、しばらく御勘弁願いたいと考えておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/31
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032・堀昌雄
○堀委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/32
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033・越智通雄
○越智委員長 次に、日笠勝之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/33
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034・日笠勝之
○日笠委員 参考人の皆様には、公私ともに御多忙のところ、また、きょうは雨が降って大変足元の悪いところ参考人として御出席を賜りまして、大変ありがとうございました。
皆さんは、証取審のメンバーでいらっしゃいますので大変お詳しいわけでございますが、先ほどの陳述時間がお一人十分前後でございましたので、少し言い足りないところもあったかもしれません。今回の証券取引法の改正の大きな柱は、御陳述にもございましたようにインサイダー取引ではないかと思います。そのインサイダー取引につきまして、日本はインサイダーの天国であるとか温床があるとか、このように言われてきたわけでございますが、今回の法改正によりまして本当に国際的にも非難にたえられるような内容になっているのかどうか、これが一点でございます。
それからもう一つは、それぞれのお立場で、分野で、専門があるわけでございますが、もう少し具体的に未然防止策と申しましょうか、体制といいましょうか、こういうものがございますれば、それについてもあわせて御見解をお伺いしたいと思います。順次、竹内理事長さんからお願いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/34
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035・竹内道雄
○竹内参考人 今度の証取法改正によります不公正防止に関する内容でございますけれども、私は、法律の内容と申すよりは、むしろどういうふうに運用していくかということが、これからの問題ではないかというふうに思っております。御承知のようにアメリカでは、非常に厳しい内部者取引の規制というようなものが行われておりますけれども、これは法律の中身そのものとしては極めて簡単な法律で、あとはSECがその法律でいろいろやって、その判例に基づいていろいろな事例が積み上げられているというようなことでございますから、法律そのものを比較するのは割と難しいんじゃないだろうかと、私も外国のことはそんなに詳しくは知りませんが思っております。ただ、聞くところによりますと、この間アメリカのSECのルーダー委員長がやってきて、たしか勝田証券局長とお話をして、大体日本ではこういう法律をつくるんだということをお話ししたらば、九十五点だとか九十八点だとかいう話をされたということでありますから、その話をもとにすれば、相当国際的にも恥ずかしくない法律になっているんだろうと考えております。
取引所の方で何をするかということになりますと、申すまでもなく今度の不公正防止の法律というのは、一つは罰則規定、一つは未然防止というこの二本立てで成っているわけです。罰則の方は私ども関係がない話でございますから、未然防止について一体どうするのかということでございますけれども、それにつきましては、私ども従来から取引所における売買の状況についての管理というものをいたして、日々売買の状況を管理いたしております。また、例えばファイナンスと申すのですか、増資みたいなものがございますときには、その前後を通じてかなり長期間にわたって株価の動きをにらんでいるというようなことをいたしております。その状況を見ながら、どうもおかしいというようなときには、証券会社の担当の人を呼んで話を聞くというようなことをやっているわけでございまするけれども、そういった売買状況を把握するのには一部コンピューターを使ってやっているわけでございますが、これから強化をいたしていくということでありますと、そういうコンピューターの能力も拡大して、審査を充実していく必要があると思っております。
それからもう一つは、タイムリーディスクロージャーという問題です。上場会社に対する問題として、タイムリーディスクロージャーの問題がございます。これについては常々上場会社に対して、大事なことについては早く情報を公開するようにということを要請しているわけでございますけれども、これからは、そういうことについて多少おくれがあったような上場会社につきましては、改善報告書というようなものを取って注意を促していくということもございます。
それから、いろいろな情報が市場に流れまして、中身がどうもよくわからないというような情報でございますとか、あるいは本来公開すべき情報が公開されていないで、しかもうわさが流れているというような場合には、取引所での売買を一時停止させるというようなことをやっておりますけれども、そういう点につきましてもこれから機動的に行ってまいりたいと考えているわけでございます。
そういうようなことで、今までよりも一層売買管理の強化を徹底してまいりたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/35
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036・田渕節也
○田渕参考人 外国の週刊誌的な経済雑誌などで日本の証券業界はインサイダー天国であるということを書かれたことがありまして、私は甚だ頭にきて、その責任者はだれだと編集局長にうちのニューヨークの店を通じて抗議を申し込んだことがあるわけでございます。そのときに、外国のそういう特派員がそんなに兜町の事情を徹底的に調べて知っているわけでもないわけで、中途半端なうわさなどを聞いて書いたものだと思ったわけでございますけれども、しかし、もう一つやはりきちっとした法規制がないと、彼らは先入観としてそういうふうに思うのじゃなかろうかという感じがいたしたわけでございまして、今度インサイダー取引に関する法律、証取法の中にその法律が盛り込まれるということは、私最初から非常にこれはありがたい、そういうような先入観がなくなるなということで、直観的に大賛成をしたわけでございます。法律を読む前に賛成をしたわけでございます。
各国の法制は、これはそれぞれの国において歴史的ないきさつや社会制度が大きく異なっていますために、単純に比較できるものではないと思います。また、法による規制の前段階とも言える行政の対応につきましても、各国の状況は大きく異なっております。例えば、日本の場合はまさに免許制でございまして、二百数十社の証券会社を行政が監視、監督して、法律以前に十分適切な未然防止体制がとられているわけでございます。しかしアメリカでは、何といいますかまさに登録制で、証券会社をやろうと思えばいつでもすぐできる、登録さえすればいいということで、たしか全米に八千社ぐらい、今少なくとも証券会社と称している証券会社が八千を超えていると思いますが、そういうアメリカの状況と、それからこれだけきちっとした免許制下で行政の監視、監督、指導のもとにある日本の二百数十社とでは、法律もおのずから違ってきてしかるべきだ、そう思います。
実は、アメリカのインサイダー取引規制の法律、これはSECの法律でございますが、読んだわけでないので、ちょっとどこが違うということは今申し上げかねます。
未然防止体制、これが何といっても大事なわけで、我々証券会社としましてはいろいろな情報が入ってまいりますので、はっきりと社内にチャイニーズ・ウオールといいますか、ファイア・ウオールといいますか、そういう障壁を今からきちっとつくっていく、形から整えるということも非常に大切だ、そういうふうに思っております。
それからもう一つは、上場会社の役員が自社株を売買するということに関して、これは相当きつい監視の目を当然注がなくてはいけないわけで、今回これは報告義務が法制化されると思いますけれども、そういう点も非常に厳重にやりたい、そう思っております。
ただ、このインサイダー取引規制は、これは刑法にまたがっていくわけでございまして、甚だ複雑であり、投資家もそう六法全書を片手に証券会社に来られる方はいないわけでございますから、何とか十分今から投資家に対してPRしなくてはいかぬ。それから社員に対して、手前ども野村証券、私の会社のことを言ったらなんですが、一万人従業員がいるわけでございますけれども、例えば遠くの方の支店で朝から晩まで営業に従事している人というのは、なかなか新聞を見て、社内からどんどんそういうパンフレットが行くわけですけれども、肝心なことは余り読まなくておもしろそうなことだけ読むという癖もありますので、社員に対する周知徹底をこの問題に関しては徹底的に図ろう、そう思っております。
現在、証券界におきましては、テレフォンサービスとかあるいはテレビの文字放送等各種のマスメディア、こういうものを利用いたしておりますので、そういうマスメディアを通じて一般投資家に対していわゆる証券に関するPRと一緒に、インサイダー取引規制についても今後はしっかりとPRしていきたい、そう思っておることが一つでございます。
証券会社の役職員は、これは日常上場会社の役職員と常時接触するわけでございますから、上場会社の役職員に対してもインサイダー取引規制について助言に努めてまいりたい、そう思っております。当然、証券会社におきましては社内規則を徹底的に整備をいたしまして、役職員に対しまして社内研修等あらゆる機会を通じてその遵守徹底を図っていきたい、そういうふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/36
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037・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 お答えを申し上げますが、インサイダー取引の規制は、証券取引審議会での御報告にもございますとおり、それを未然に防止する、こういうことが大切でございまして、今後各界が未然防止のためにどのような措置をこれから講じていくか、こういうことが一つのポイントになるのではなかろうかと思うわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても今回の法整備によりまして世間の注意が喚起されまして、おのずと内部取引を避けようとする気持ちが働く、こういうこと、いわゆる刑法で言っております刑法の謙抑性が働く、こういうことはあるのではなかろうか、このように思うわけでございます。もちろん、内部者取引に対します世間の認識が今後定着してまいりますならば、違法性の通念も広がってくるわけでございまして、さらに厳しいものを望む、こういうことが出てくる、こういうふうに思うわけでございますけれども、現時点ではこれだけのものができれば十分ではないか、このように存ずるわけでございます。
次に、内部情報管理についてでございますけれども、株式等の対顧売買を業とされておられます証券会社さんと、私どもポートフォリオの一部として所有するために売買をいたしておりまする金融機関とでは、具体的な中身は当然異なってくると思うわけでございます。しかしながら、インサイダー取引を未然に防止するための措置をとる必要がある、そういう意味では銀行も同様に大きな責任があると思うわけでございます。
銀行協会といたしましては、従来から取引先の情報につきましては守秘義務、これは徹底をいたしておるわけでございますけれども、法の規制の趣旨に沿いまして、今後より一層情報管理体制を整備いたしまして、それを徹底するように各方面とも十分相談し、これから検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/37
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038・河本一郎
○河本参考人 私、例のタテホ事件が地元でございますので、あれを防ぐのには一体何が一番よかったかということを今この法律ができたところで考えています。
そうしますと、一番簡単なことが一つあります。それは、タテホがたった年五億円ぐらいしか上げていないのが、短期間で二百五十億の損を受けた。それを銀行に集まってくださいというようなことを言う前に、証券取引所へそれを言えばいいんだ。そうすれば、すぐ証券取引所はその取引をとめますから、売ろうにも売れない。ですから、私どもは、この法律を発動するのが目的ではないのであって、これを発動しないような情勢をつくっていただきたい。それにはまだ今までのところ、あの例でもわかりますように、経営者の中でそういうことをよく知らない方が多いですね。それでこの機会に、インサイダーというものがどういうふうに悪いことなのかということが随分認識できたと思います。その上で、今度は証券取引所が上場会社等に十分言いまして、そういう株価に非常に大きな影響を及ぼすようなことが出たらまず当所へ言うてくれ、その上で銀行に話すなり何なりするという、まずそういう措置が予防措置として一番有効ではないか、こういうふうに私は考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/38
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039・日笠勝之
○日笠委員 続いて、さらにもう一、二問お聞きしたいと思うのですが、先ほど竹内理事長、キャピタルゲインについてはおっしゃりたいことがあるようなお話でございましたけれども、先日も私ども大蔵委員会のメンバーで視察させていただきまして、そのとき私口火を切ったわけでございますが、きょうは証券業協会それから全銀協さんもいらっしゃいますし、また学者、文化人として河本先生もいらっしゃるわけでございますが、税制改正も御存じのように政府税調で素案ができ、今度は中間答申も出まして、自民党さんの税調も今活発にやっておられるようでございまして、きのうの自民党さんの税調もキャピタルゲインは原則課税を確認をされておられるようでございます。
そこで、先ほど堀先生からも税制のことで種々お話もございましたけれども、水野局長はきょういらっしゃいませんけれども、現実に六十一年度の有価証券取引税は一兆七千六百億円もあるわけでございます。かつて私も、この委員会で水野局長と論議したことがございますが、データがないのではっきりわからないといつもおっしゃるのですけれども、いろいろな民間の研究機関また学者の皆さんの大ざっぱなデータでございますが、もしこの有価証券取引税を全部やめちゃってキャピタルゲイン課税だけ一本に絞った場合は、せいぜい数千億円のオーダーじゃないか、そうすると一兆一千か二千億円というものは国庫に入ってこないんだ、こういうふうなことをおっしゃる方もたくさんいらっしゃるわけでございます。国際性ということを考えれば、流通税である有価証券取引税は低いほどいいのかもしれませんが、かといって一兆数千億円というオーダーの税収があるわけでございますし、この辺も今後の税制改正で大変大きな論議の的になってくると思うのです。
そこで、きょう参考人の方にお伺いしたいのは、この前の自民党税調さんのヒアリングでも申されたかと思うのですけれども、一体全体、皆さん方の業界の立場から見ればどうあるべきかということは当然でございますが、もう少し大所高所に立っていただいて、国家の税収ということを考えていただきまして、この辺に落ちつけば、ベストはないわけですから、ベターではなかろうかという御意見の御開陳でもあればと思うのですが、理事長さんからいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/39
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040・竹内道雄
○竹内参考人 税調の審議がきのうから始まっておるというような状況でございますので、ちょうどいささか物が言いにくいような時期であるとは存じますけれども、キャピタルゲインの原則課税という問題につきましては、かつて昭和二十四年にも原則課税という時代はあったわけでございますけれども、その課税が実際技術的にもなかなかうまくいかないということから、今のような制度に昭和二十八年からなったんだというふうに聞いております。したがいまして、一体どういうふうにやったらうまく課税できるんだということで、では昭和二十八年と今と変わっているのかというと、どうも余り変わっていないんじゃないかと私は思っています。ですから、その課税方法はどうやって課税したらいいのかというのは、なかなか難しい問題なんだろうと思います。
それについては各方面でいろいろ御議論がされているようでございますから、どういう方法がいいということは私どもなかなか言えないのでございますけれども、抽象的に申し上げますと、キャピタルゲイン課税のやり方によって市場に非常に大きな影響を与える、市場の取引を阻害するといいますか、あるいは株価に非常に大きな影響を与えるというようなやり方というのは、望ましくないんじゃないだろうかということが一つ言えるかというふうに存じております。
それから有取税との関係でございますけれども、昭和二十八年に有取税ができたときは、キャピタルゲイン課税を廃止するのと引きかえにできたわけだから、今度キャピタルゲインをかけるなら有取税は廃止すべきであるという御議論があるわけで、私はそれはそのとおりだと思っております。しかしそのほかに、私は先ほどから申し上げましたように、キャピタルゲインの問題とは関係がなくても、有価証券取引税というのは悪法であると思っておるのです。
有価証券取引税というもの、あるいはそれに類似した法律を持っている国は各国にございまするけれども、日本のように万分の五十五というような高率の有取税を持っているところはございません。イギリスが今万分の五十でございますから、これがやや近いわけでありますが、ドイツが二十五ぐらい、それからアメリカはゼロ。そのほかスイスでありますとか、たしかイタリーでしたか、そういうところもあるのですが、国際競争上有価証券取引税みたいなものはどんどん低くすべきだ、あるいはゼロに持っていくべきだという議論が盛んで、だんだんそういう方向に向かっているわけであります。私も、東京市場というものがこれからだんだん国際化していくときに、そういう重い有取税というものが存在することは、東京市場の将来の発展を妨げるということになると思います。
取引をする場合のコストでございますけれども、現在大きく分けて委託手数料と税金だと思うのです。外国との競争ということになりますと、余り小さなものは問題になりませんが、例えば五億円とか十億円ぐらいのものがある程度基準になるかと思いますが、例えば十億円の取引をして株券葬を売ろうということになりますと、日本では委託手数料で大体二百二十万円ぐらいかかります。そのほかに、現在有価証券取引税で五百五十万円払わなくちゃいけない。合わせて七百七十万円のコストがかかるわけでございます。その同じ株をアメリカで売れば、有価証券取引税はゼロですから、二百二十万円で済むわけです。今、同じ株をアメリカでも日本でもドイツでも、どこでも売れるという状況ではございません。両方の市場に上場している株でなければそういう問題は起きないわけで、今のところはどんどん外国に日本の取引が流れているという状況だとは私も思いません。例えば、ソニーならソニーというような両方に上場されている株を売るときに、どっちで売ったらいいかといったらば、これは問題なくアメリカで売った方が、ニューヨークで売った方がコストがかからないわけです。これからだんだん国際化をしてまいりますと、相互上場の株というようなものがだんだんふえてくるということを考えますと、有価証券取引税というものは、私はぜひ廃止をしていただきたいというふうに思っているわけです。
そのほかに、国債については先ほど申し上げたようなことで別ですが、国債に有取税をかけているのは、これまた西独以外にはないというような状況なんで、やはり日本も相当な国債残高があるわけですから、これの流通を確保していくことがまた発行についても楽になるということなんで、そういった流通市場を育成するためにも、国債のようなものに有取税をかけているということは、大変望ましくないことじゃないかというふうに思っているわけでございます。そんなところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/40
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041・田渕節也
○田渕参考人 私の立場は証券業協会長ということで、一つは証券業者を代表しているといいますか、証券業者の意向をいつも酌み取らなくてはいけない。もう一つは、ちょうど今日本国に個人投資家が一千万人おいでになるわけでございますが、この一千万人の個人株主の方たちの意向をいつもそんたくして税の問題は考えなくちゃいけない、そういうふうに思っておるわけでございます。この半年間、たまたま政府税調の委員もさせていただいていますし、それから、やはりこのキャピタルゲイン課税というのはマスコミに随分取り上げられたわけで、新聞記者等からいろいろな質問を受けてきました。今まで私が政府税調の中、あるいは新聞記者の質問は答えたことを中心にして申し上げたいと思います。
先ほど竹内理事長も言われましたが、昭和二十八年にキャピタルゲインが原則非課税とされたわけでございます。ということは、昭和二十五年にシャウプ税制ができたときにキャピタルゲインは原則課税であったわけで、そのわずか三年の間に課税原則が非課税原則に変わったということでございます。これは当時、やはり不公平論議が国会その他で非常に盛んでございまして、正直者がばかを見るじゃないかというようなことのようでございました。そういうことで、キャピタルゲイン課税をやめて有価証券取引税が創設されたわけでございまして、その後、御存じのように一万分の十五であったものが一万分の三十、それから四十五、現在五十五というふうに引き上げられてきた、その歴史的ないきさつを丹念に調べてみますと、有価証券取引税はキャピタルゲイン課税の代替であるというふうに理解せざるを得ないわけでございます。したがいまして、キャピタルゲインが原則課税に移行するのであれば、有価証券取引税は撤廃されるべきであるというのが、終始一貫変わらない私の基本的な考え方でございます。
しかしながら、今回の政府税制調査会の中間答申では、この私どもの考え方が盛り込まれず、税率の引き下げにとどまるとされているわけでございまして、この点については大変不満が残っているというのが率直な感じでございます。
日笠先生おっしゃられましたように、確かに有価証券取引税の税収は、六十二年度補正予算では一兆七千億円になっております。実際にも一兆七千億円を超えるのじゃなかろうか、そう思っておりますが、これが撤廃されれば税収に影響を与えると私も同じように思います。税理論とそれから現実とのギャップというのはなかなか難しい問題で、日本のみならず世界じゅう大変難しい問題のようでございます。しかしこの問題は、今後党の税調あるいは国会でいろいろ御論議いただけるものだと思いますが、いずれにしましても、キャピタルゲイン課税の具体的な仕組みによる税収の関係と、それから先ほど竹内理事長が言われた国際的な資本取引の側面と、この両方を総合的に十分お考えいただいて対処していただきたいものだ、そういうふうにお願いをする次第でございます。
今後、具体的な課税方式について検討が進められることになるわけでございますが、この株式譲渡益に対する税制の変更が、マーケット、株式市場にともかく混乱をもたらすことのないようにということが、何といっても一番のお願いでございます。それから、全国一千万人の個人株主に対して新たな不公平、不合理、そういうことを今度の税制改革によってまたもたらすというようなことだけは絶対に回避していただくよう、実態に即した議論を十分尽くしていただきたいものだ、そうお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/41
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042・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 有価証券のキャピタルゲインでございますけれども、御案内のとおり、現在でも継続的な取引あるいは大口取引には課税されておるわけでございますけれども、申告件数が極めて少ない、こういうふうに今私ども伺っておるわけでございます。マル優がこの四月から撤廃されたことに伴いまして、零細な預金利子までもが課税対象となったことから不公平感が大変高まってきておる、こういったことで先般の政府税調の中間答申でも、キャピタルゲインを原則課税とする方向が提言されておると思うわけでございます。
キャピタルゲインの課税のあり方につきましては、全銀協といたしまして論議いたしましたことはございませんので私見になるわけでございますけれども、キャピタルゲイン課税は所得捕捉の方法でもってなかなか難しい点も多い。したがいまして、一気に完璧を期する、そういうようなことではなかなか前に進まないのではなかろうか。これは証券会社さんのお手数がかかるわけでございますけれども、証券会社さんの御協力を求めるなど、実現可能な施策の方からまず手をつけていくことが望ましいのではなかろうかと思うわけでございます。
先ほどお話がございましたとおり、有価証券取引税は昭和二十八年にキャピタルゲインの課税のかわりに導入された、こういう経緯から見まして、今般キャピタルゲインを原則課税とする方向で見直す場合にはこういった経緯にも配慮することは理解できる、このように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/42
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043・河本一郎
○河本参考人 税金のことになりますとどうしても個人的な意見が強くなりますのですが、私自身は少々株もやりますけれどもまずもうかったためしがありません。それで、今度もうかるときがあったときに、片方で損しているのはどうしてくれるのだ、こういう気持ちはどうしても私どもの気持ちの中からぬぐい切れないのですね。それで、私自身はむしろ今の方法がいいのではないのか。つまり、原則非課税にしておきまして、かなりの程度やっている人、そこから取る。これも脱税が多いようでありますけれども、ここあたりをびしびし押さえていく、そして片方は取引税の方で形式的に取り上げられていくというのが、どうもこのままでいいのじゃないかという感じが私はしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/43
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044・日笠勝之
○日笠委員 時間も参りましたので、せっかく私、国会図書館から河本先生の「証券取引法」の本を借りまして読ませていただきましたので、一つだけ最後にお伺いをして終わりたいと思います。
先生、この中に、アメリカのSECがエドガーシステムというものを今取り人れていろいろとやっているそうでございますが、これは開示、ディスクロージャーの手段としては画期的なものだそうでございますが、現状どこまで進んでおりましたか。また、日本で将来こういうものを取り入れていけるだけの素地といいましょうか、そういうものがあるのでございましょうか。その点を最後にお聞きしたいと思うのでございますが、ページ数申し上げましょうか、五十ページの三行目でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/44
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045・河本一郎
○河本参考人 実は、数年前に私ども、業界の方方それから大蔵省の担当官などと一緒にアメリカのSECの調査に参りました。そのときに、ちょうどエドガーシステムが動き始めておる、そういう場も見せてもらいました。それで、技術的な発展もこうしてどんどん進んでいきますので、しかも膨大な資料になってまいります。そうすると、やはりどうしてもこういう制度を日本にも導入しなければならないだろうということを、その当時も強く感じたわけでございます。私自身はそのあれにタッチしておりませんけれども、私の同僚などは既に研究会等々に参加しておりますので、現在検討中であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/45
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046・日笠勝之
○日笠委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/46
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047・越智通雄
○越智委員長 次に、安倍基雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/47
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048・安倍基雄
○安倍(基)委員 どうも参考人の諸先生方、お忙しいところありがとうございます。三番バッターとなりますと、打とうと思った球が大体打たれてしまって打つ球がない、空振りに終わることが多いのでございます。もっとも野球の場合には、三番、四番が一番強いはずでございますけれども。
そういうことでございまして、私も税の問題とかヘッジ会計の問題を聞こうと思っておったのですけれども、それはもうお話が済んでしまった。キャピタルゲインの話も出ましたが、たまたまキャピタルゲインで一つ積み残しでお伺いしたいのは、最近非常にコンピューター化が進んでいますから、取引なんか全部把握できるだろうということで、国民総背番号のはしりみたいな形で、株式についてはちゃんと把握できるのじゃないかというような議論もある。それに対して、株だけ先にそうなってはかなわぬというような議論もあるかと思いますけれども、証券業協会会長さんの田渕参考人からその辺について忌憚のない御意見があれば。というのは、こういった国民総背番号制がどうなるのかという話でございますけれども、先に株だけきちっとつかまえられてしまったら、さっき株式の暴落という話もございますし、また逆のいわば不公平も出てくるという議論もございますが、その辺御意見がございましたらお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/48
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049・田渕節也
○田渕参考人 証券会社は二百数十社あるわけでございます。御存じのように、大証券あるいは中証券というところは非常にコンピューター化が進んでおります。しかし、小証券の中には資金の関係その他でコンピューター化が非常におくれているところもあるわけでございまして、なかなか証券会社の内部の経理、計算を一律に考えるわけにいかない、こういうことが一つございます。
それから、例えば私が会長をやっております野村証券の場合はコンピューター化が相当進んでおりますので、お客様は番号の処理をいたしておりますけれども、ただお客様方がどこで取引するかは全く自由でございまして、複数の取引をされている方が非常に多いということでございます。したがって、例えば野村証券と山一証券と日興証券の三つで取引をされているお客様を番号処理することは現実的には不可能でございます。したがって、そこらを中途半端な制度にすると、まさに新たな不公平が生ずるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/49
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050・安倍基雄
○安倍(基)委員 キャピタルゲイン課税についてはその辺にいたしまして、さっきの取引税もございますが、私の方は時間も短いですから簡単に集中的にお話ししたいと思いますけれども、伊夫伎参考人のお考えで、二年先ぐらいには見直してほしい、そのときには統一市場的なものに持っていってもらいたいというような希望があるわけでございますけれども、これは証券界としてはどうなのかという話でございますが、この点につきましては理事長さんはどういうぐあいにお考えでいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/50
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051・竹内道雄
○竹内参考人 報告書の中で、二年先に見直しをすると言っておるのは一体何を二年先に見直すのか、そのことは必ずしも明らかでないので、新しい金融先物取引所が発足して二年間やったところでいろいろな問題が出てくるだろう、そこで見直しをやろうというような趣旨なんであろうと私は考えております。その問題を、あらゆる先物を一つの先物取引所に集中した方がいいじゃないかという議論については、私は大変疑問を持っております。つまり、今証券の、例えば株式の先物指数というものができる。そうすると、その株式の先物指数を売ったり買ったりするという人はどういう人だろうかというと、それは普通は片方で現物を売り買いしている人が先物の売り買いをするというわけですから、それは同じ場所で取引がされておるということが投資家のサイドから見ても極めて便利であろうかと思うのです。
そして、そういう意味で証券については、現物先物市場を一体化して今の証券取引所でやった方がいいのではないか。その方が投資家のためにとっても便利であり、また既に証券取引所の方では、国債先物というものをやっておりましていろいろなノーハウも持っているし、コンピューターもそのためのものを備えているわけです。そこのコンピューターに、今度は株式先物指数という一銘柄を加えていけば済む話なのでありまして、それをまた全く新しい機械システムを入れてやっていくというようなことは国民経済的にも大変マイナスではないかという意味で、私どもは一つの取引所でやった方がいいという主張をしてきたわけでございます。結果的にはそういうことになって、大変よかったと思っているわけでございます。
これから先二年間、いろいろやっていくわけですけれども、私は株式の先物を扱うという人は現物を扱っている人が大部分であろうと思うのです。もちろん、株式の先物を扱っている人が、通貨やあるいは預金の先物を同時に取り扱うという場合がないとは申しません。もちろんそういう場合があると思うのですが、そういう場合というのは、株式の先物をやる人は通貨の先物をやる場合よりは、むしろ株式の現物をやっている場合の方が基本的に多いのだろうと思います。そういう状態というものは、二年たっても三年たっても変わらないだろうと私は思います。そういう意味では、二年先のことですから今から余りいろいろなことを言うのは適当ではないと存じまするけれども、その二年間なり双方の取引所というものを運営してまいって、そこで考えていけばいい問題であるというふうには考えておりますが、実態は変わらないのではないだろうかというのが私の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/51
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052・安倍基雄
○安倍(基)委員 わかりました。
それから、今までの議論の中で余り出てきてないのが投資家保護の問題。と申しますのは、どちらかと申しますとヘッジ取引というのは、ある意味では非常に物をスムーズにするというか、株価をスムーズにするというあれもございますけれども、リスキーな面が非常に大きい。でございますから、零細な連中がやったらとんでもない話になるということでございますので、これはそれぞれが先物証券取引におきましても先物金融市場におきましても、どうやって投資家保護をしようかということを考えていらっしゃると思います。証拠金率をどうやるか、ロットをどうするか、会員をどうするかという問題。それとともに手数料、これをどういう形に考えていくのか。この二点について証券界それから金融界、これはできましたら田渕参考人と伊夫伎参考人からそれぞれ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/52
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053・田渕節也
○田渕参考人 先物市場に零細といいますか資力の小さい投資家が参加するというのは、投資家保護の立場からいって非常にまずいわけでございまして、したがいまして、先ほど私が冒頭の意見陳述でも述べましたように、投資家保護につきましては証取法改正案で規定されているほか、証券取引所や証券業協会におきましても十分な投資家保護を図る、これが必要であると考えております。
現在、先物取引等を行うのにふさわしくない零細投資家を排除する、ちょっと言葉は変な言葉ですが、その規定といたしましては以下のようなものがございます。
まず、最低委託証拠金額の設定をいたしております。債券先物及び国債先物ともに、これは取引所の受託契約準則で六百万円ということになっております。それから、我々証券会社は、まずお客さんの証券知識あるいは投資経験、そういうものがどのような状況かということ。もう一つ、一定の預かり資産、株や国債やその他そういう有価証券を保護預かりで預かっている。これも大体二千万円以上の保護預かりになっている方というふうなものを基準にしまして、それで取引開始の一つの定めにいたしております。
以上のような規制につきましては、今度の証取法改正案に規定されております先物取引あるいはオプション取引等につきましても必要である、そういうふうに考えております。いずれにしましても証券会社の営業姿勢につきまして、これは過度な取引の勧誘を禁止するということなど投資家保護を徹底していきたい、そう考えております。
それから、もう一つの御質問の手数料を、株価指数先物取引における今度の委託証拠金の水準をどのように考えるかという御質問かと存じますが、これはシミュレーションで過去の株価指数の値動き、それから値幅制限、これをいろいろ考慮いたします。それから、現在大阪証券取引所で行われている株先五〇の水準とか、もう一つは国際的水準とかそういうものを総合的に勘案しまして今から決定されることが肝要か、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/53
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054・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 お答えを申し上げます。
投資家保護につきまして金融先物取引法に規定されているようなことで十分か、こういうような御趣旨の御質問だったと思うのでございますが、金融先物取引法案では、投資家の保護を徹底いたしますために金融先物取引の取り次ぎを行う者は大蔵大臣の許可を受けなければならない、こういうふうにされております。まず、先物の取次業者としてふさわしくない業者が先物市場に参入してまいりまして、投資家が不当な損害をこうむることがないような配慮はされておるわけでございます。
さらに、こういったような開業規制に加えまして、金融先物取引法案では、契約締結前の書面の交付の義務づけあるいは著しく不当な広告の禁止、それから不当な勧誘行為等の禁止などの行為規制も設けておりまして、基本的には投資家保護の枠組みは整っている、このように評価をしてよいのではなかろうかと思うわけでございます。
それから、先物取引は御案内のとおり、低率の証拠金があれば売買ができ、決済も差金で行える、こういうようなことでございますので、ある意味では大変投機的な面があるということは否定できないわけでございます。したがいまして、先物取引の仕組みを構築するに当たりましてはこの点に十分に留意していく必要がある、これは改めて指摘するまでもないところでございます。具体的には、妥当な証拠金率の設定とか市場の動きが非常に投機的になった場合の値幅制限を導入するとかそういう場合は検討する、あるいは証拠金率の機動的な変更とか適切な値洗い制度の運営などにつきまして、十分留意していく必要があるのではなかろうか。
それから、売買の単位に関してでございますけれども、仮に余り金額が小さくなってまいりますと、資力の十分でない先物取引に習熟してない者が市場に参入してくる、こういうような可能性もございますので、売買単位につきましても慎重な検討が必要であろうと思うわけでございます。
それから、さらに取引所の機能といたしまして、先物取引価格の監視体制というものを強化していく、こういうことも考えていかなければならないのではなかろうかと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/54
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055・安倍基雄
○安倍(基)委員 証拠金率は、それぞれ決まってはおるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/55
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056・竹内道雄
○竹内参考人 今のところ、証拠金率は大体九%ぐらいを考えているわけでございます。
それから、先ほどお話がございました手数料の方でございますけれども、これはまだ決まっておりませんけれども、現在国債先物の手数料が一銭五厘、万分の一・五でございます。それを基準にして、外国の状況などを見ながら決めていくということで、恐らく一銭五厘よりもうちょっと高いところに、株式指数でございます先物でございますから決まるのじゃないかと思っておりますが、まだ最終的には決めておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/56
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057・安倍基雄
○安倍(基)委員 金融の方はまだですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/57
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058・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 御回答申し上げます。
委託証拠金の利率でございますけれども、金融先物取引所におきまして、取引対象の具体的な内容とか取引の事情等を考慮いたしまして、受託契約準則において定めることとなっておるわけでございます。要するに、取引の安全を確保しながら円滑な取引が行われ、かつ委託者の方にも資する、そういうような水準に定められる、こういうふうに思っております。ただ、海外の主要市場で取り扱っておりますものと同じ商品であります場合には、海外市場との競合の問題もございますので、海外との平均を考慮いたしました水準になるのではなかろうかと思うわけでございます。
なお、他の国内の先物取引所と同様にいわゆる最低証拠金、これの制度は導入しなければならないのではなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/58
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059・安倍基雄
○安倍(基)委員 最後に、河本先生にインサイダー取引で二点お伺いしたいのです。
一つは、要件は一応はっきりしてきたけれども、間接正犯とか幇助助ということできちっと捕まるという話もございましたけれども、これまた逆に広がりますと、アメリカと同じようにどこまでいったら間接正犯になるのだ、幇助になるのだという問題が起こってくる可能性もあるわけなのです。この点が、一方では比較的きちんと構成要件がはっきりしたからよくなったという説に対して、逆に範囲がどこまで広がったかわからぬじゃないかというような議論も出てくる可能性がある。これが第一点でございます。
もう一つは刑罰でございますけれども、アメリカあたりは得た金の何倍かを罰金にしておる。日本の場合には五十万円だという話で、きのう大蔵委員会で大臣にお聞きしたら、没収というのは利得では難しいのだというお話もございましたけれども、これは利得的なものも本来物でなくとも没収の対象になり得るような格好にすべきなのじゃないか。もう時間もございませんから、この二点について簡単に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/59
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060・河本一郎
○河本参考人 第一点の刑法理論を使うことにつきまして、非常に明確な要件を定めた法律を逆に緩めてくるのじゃないのかという御指摘なんですけれども、確かに片方はいわゆる理論であったり、それも判例等々でありますから、使うとなるとどうしてもきちっとここからというふうに切れないことは確かでございます。しかし、私、刑法の専門じゃございませんけれども、刑法理論というのは、適用はどちらかというとかなり謙抑的で非常に厳しいというのか、適用そのものがかなり抑えられておるということじゃなかろうかと思います。殊に、他人を道具に使っていくというのはどんな場合かということも、私ども素人なりに今回読んでみますとかなり厳しく要件を決めているようですから、この法律が決めてないところをそれで埋めるというのにはそう心配はないのじゃないか、こう思っております。
それから幇助とか教唆の場合は、先生御案内のように、この法律は意識的に情報を与えて取引させたという、させた者のことは全く書いてないのです。それは、全く手をつけないのかというとそうではない。そこは教唆であったり幇助であったりということで救えるのだ、こう言いませんと全く抜けたようなところが出てきますので、そこのところは刑法理論をかたく厳重に考えながら適用していくべきであろう、こういうふうに思っております。
それから、後の刑罰の点でございますが、これは今回の法律そのものが非常に形式的にできておりまして、例えば不法であるとか不当であるとか利益を得る目的であるとか、そういうものを一切排除しております。そのために、例えばほかの法律と比較してみましても、証券取引法そのものの中でいいますと、いわゆる届出を怠ったような場合にかかってくる罰則であるとか、それからまたそのほかの法律で秘密漏泄等々のものとの比較をしてみますと、大体このくらいであろう。ただ、先ほども申しましたように、悪質で違法性の強いものはどうしても五十八条へ持っていくべきだ。そしてまた、今後この法律ができましたことによって明らかにインサイダー取引は違法だという認識が高まりますと、今度はその五十八条も適用が、ひどいものについては容易になるのではないか、こう考えております。したがって、世の中でこんなことがというようなことが起こりましたときは、むしろ五十八条でいけるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/60
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061・安倍基雄
○安倍(基)委員 ちょっと超過しましたが、時間になりましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/61
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062・越智通雄
○越智委員長 次に、正森成二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/62
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063・正森成二
○正森委員 参考人各位の御意見の中で、私がお聞きしたいと思っていたことを大部分御意見開陳なさいましたので、それを前提にいたしまして、今までお述べになったことに基づいて若干伺わせていただきたいと思います。
最初に、田渕参考人を初め多くの参考人が、企業内容開示といいますかディスクロージャーについて、これは株式発行等について機動性を増すということでいい面だけを強調されましたが、同時に私は考えてみなければならないディスクロージャーの質を低下させる面というのがあると思うのです。これは私だけの意見ではございませんで、ここにおられる諸先生も皆よくお読みになる「金融財政」というのがあります。その「金融財政」に、六十三年の二月二十九日から三回にわたって論文が載っております。その中でこう言っているのです。
統合開示は、企業情報の提供は原則として継続開示にゆだねようとするものであるが、従来の届出書ではまさに届け出時点の企業情報が開示されているのに対し、継続開示では半期(六カ月)ごとの情報になってしまうという問題である。情報の価値は、その内容及びその新しさにもよることを考慮すれば、開示統合化は必然的にディスクロージャーの質を低下させるのでは、という懸念も当然出てこよう。
これは正論だと思うのです。この正論を言っておられるのは、上田善久という大蔵省の証券局の企業財務課というのがありますか、そこの課長補佐ですね。この方の論文は、私は読ましていただきましたけれども、私見だと断っておられるのですけれどもなかなか立派なことを書いておられるのですね。そういう意味で一概に安心できないものがある。
そこで、時間がございませんのでこの論文に基づいて私がもっともだと思う点を申しますと、臨時報告書、これは今でも継続開示に決まっておりますので、臨時報告書をやはり活用すべきだということで、今までは省令がございまして、「臨時報告書の提出及びその記載内容等」ということで十九条に五項目書いてある、それを今回は六項目ふやすというようになっているそうであります。そのふやす内容は、私の承知しているところでは合併、重要な営業譲渡、重要な係争事件、代表取締役の異動、それから資産内容、経営成績に重要な影響を与える事象、それから重要な取引先の倒産ということに大体なるだろうと言われております。これは本来、きのう大蔵省の証券局長に聞くべきことで時間がなかったのですけれども、多分そうなると思います。そうなるとしますと、こういう臨時報告書をやはり関係者は活用するように慣行をつくっていくということが大事だと思うのです。
それからもう一つ大事なのは、やはりこの論文にも書いてあることですが、それにもかかわらず、この臨時報告書に記載さるべきことと、それからインサイダー取引の禁止と密接な関係があるタイムリーディスクロージャー、時宜を得て開示していくということとは、必ずしも一致しないのですね。タイムリーディスクロージャーというのは強制開示で開示すべき内容ではなしに、まさに開示すべきでない内容なんだけれども、しかしそれがだれかに知られることによって取引されればこれは非常な不公正になるということで、企業が自分が倒産しそうだとか、タテホのときみたいにえらいことになったとか、そんなことは本当なら公開したくないし、またしないのですけれども、公正さのためにあえてタイムリーにディスクローズしなければならないもので性格が違うということがこの論文にも書いてあるのですね。それは私はもっともなことだと思うのです。
それで、この臨時報告書の活用、特に今回範囲が広げられた場合にそれを厳格に履行するとか、それだけでなしにいろいろなことが起こった場合にはタイムリーディスクロージャーを適切に行うということが大切だと思いますが、竹内参考人と田渕参考人にその点について御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/63
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064・竹内道雄
○竹内参考人 今の点につきましては正森委員のおっしゃるとおりで、別に何の異論もございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/64
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065・田渕節也
○田渕参考人 インサイダー取引の規制強化と全く裏腹の問題は、発行会社のディスクロージャーの充実であると常に考えております。したがいまして、投資家がいつでも本当の企業実態がわかるという方法に関しては、今の臨時報告書、私、その形がどうなるのか、残念ながらまだ研究いたしておりませんが、非常に複雑でなくて簡単であるということであれば、研究さしていただく価値が非常にある、そういうふうに思います。
それから、タイムリーディスクロージャーとその報告書の問題とは、これは基本に質が違うということでございますが、理論的には確かに私も違うと思いますけれども、しかし、投資家にとって何といっても大事なことはこの企業のタイムリーディスクロージャーだと思います。これも倒産しそうだとか、そんな重大なこと以外のいわゆる重大なことでございますね、投資判断として重要なこと、これはインサイダー取引の規制強化が法制化される以上は、今まで以上に発行企業に強く要求していかなくてはいかぬ、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/65
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066・正森成二
○正森委員 次に、河本参考人に伺いたいと思います。
インサイダー規制について観念的競合とか、私も弁護士ですので関心を持って伺ったのですが、御意見でごもっともな点もございます。ただ、私伺っておって、五十八条がより違法性の強い重要なものに適用されるという御意見には、必ずしも全面的に賛成できないのです。というのは、五十八条は不正の手段、計画、技巧をもって行うということで、これはアメリカのSECの十条bの五号というようなものをもとにして、同じような文言を日本語でつくったものですけれども、それではちょっと構成要件が漠としているので、その中でこれだけは取り締まらなければいけないというものを構成要件で明確化して百九十条の二以下に決めたもので、それなのに、それらは余り重要でなく、悪質でなく、軽微であって、重要なのはこっちだけだということになれば、今度の改正自体がぐあいが悪いということになるので、発行会社や証券会社というように絶対にそんなことをしてはならない内部者のあってはならない行為を、構成要件を明らかにして刑事罰で確実に処罰するために今回の改正が行われたというように、まず第一義的には理解すべきではないかというように私は思うのですね。
ただ、先生のおっしゃる意味もわかります。例えば、証取審の不公正取引特別部会の座長をお務めになりました竹内昭夫東京大学教授、この方が「金融財政事情」の六十三年三月十四日号に書いておられるのですけれども、その中でこう言っておられるんですね。「今回は内部者取引のコアに当たる部分」核心ですね。「について要件をできるだけ形式化し具体化したわけだ。」というように前提した上で、
ただ、アメリカで広がっていった部分を日本ではいっさい放免にするというわけではない。というのは、もともと五八条で全部カバーしているはずだ。
だから、インサイダー取引に対する日本人の法感覚もだんだん鋭くなってくれば、昔は五八条のもとで不問に付されていたことが、五八条に当たると一般に考えられるようになるだろう。そうなれば、五八条の「不正の計画、技巧」という文言の意味も、アメリカで広がってきたように、日本でも広く解釈されるようになるだろう。
こういうように言っておられるのですね。私は、この御意見の中にも非常に傾聴すべき意見があるというように思うんですが、これらについて総合的に河本先生の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/66
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067・河本一郎
○河本参考人 実は、この問題は部会におきましても非常に議論になりまして、最初私どもは率直に申しますと、この新しい法律ができましたら我我が今まで言うてきた五十八条の解釈を変えなければならぬのか、つまり、もう五十八条はインサイダーの規定ではないんだ、これはもう全く刑法の詐欺ででもいけるようなものしかこの条文では捕まえられないのか、そこまで一時は逆に私どもは思い詰めて考えたこともあったんです。しかし、そう言ってしまってこの新しい法律だけに任せますと、先ほど来申しましたように、例えばアメリカのボウスキーのようなあんなひどいのが出てきましたときに、たったこれが六カ月か、五十万かというふうになりますと、これはどう考えても一般の国民の納得を得られないと思いますんですね。
そこで、私も、刑法の専門家ではありませんけれども、刑法学者は、観念的競合論というのはあるんだ、だから何も五十八条はおまえたち遠慮して説を変えぬでもええ、こう言ってくれておりますので、それで、いまだに実際は釈然といたしませんですけれども、極端なやつは五十八条へ持っていく、そのときにインサイダーというのがこうして違法なんだということが定着しますと、竹内がおっしゃるように五十八条も使いやすくなるだろう、こういう甚だ今のところは理論的には釈然としないところでおさまっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/67
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068・正森成二
○正森委員 竹内教授の意見もございますし、構成要件からいいましても、五十八条はそもそも「何人も」ですからね、その点でもぐっと広がるわけですし、それぞれの役割は違うわけで、五十八条が空文化するわけではない。その点で、私は先生と見解を同じくしたいと思います。
伊夫伎参考人に伺いたいと思います。
お説を承っておりますと、現・先一体というのが必ずしもお気に召さないで、二年後見直しを大いに期しておられるようで、この点は竹内さんやら田渕さんとはやや見解を異にするように横におって伺ったんですけれども、金融先物市場について伊夫伎さん、金融機関といいますのは、事業法人等からの預金もございますが、大衆のとらの子の預金をお預かりして、そして運用するという立場にあるんですね。ですから、銀行がいかにもうかりましてもその配当については一定の制限を設けられるとか、健全性の原則というのが非常に重視されるわけです。それが、先物取引というのはリスクヘッジということが大義名分ですし、それはそうなんですけれども、同時にスペキュレーションという要素が非常に強くて、それは現物の場合よりもはるかに大きいということになりますと、金融機関がこれに直接参加してやっていくという場合に、今度大蔵省がいろいろ政省令で考えるかもしれませんが、無制限に利潤を求めてやっていくと、金融機関は自分だけが損したらいいんではないかということではございませんので、そこにはやはり社会的な自己規制といいますか、節度が必要だと思うのです。例えば、諸外国では子会社が直接先物取引をして本体の方は抑制的であるというような例もございますし、そういう点について伊夫伎参考人はどうお考えになりますか伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/68
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069・伊夫伎一雄
○伊夫伎参考人 お答え申し上げます。
先物取引でございますけれども、これは先ほどもお話ございましたように、低率の証拠金がございますれば決済も差金で行える、こういうことであって、ある意味におきましては投機的な面がある、こういうことは否定できないと思うわけでございます。したがいまして、先物取引の仕組みを構築するに当たりましてはこうした点に十分配慮いたしまして、投資家の保護や過度の投機的な取引を排除する等、安定的な取引を確保するためのさまざまな工夫が凝らされておるわけでございます。また、取次業務を行うに当たりましても、先ほども申し上げましたとおり開業規制とか行為規制が行われておるわけでございます。こういったような制度の枠組みが整っております以上、銀行が先物取次業務に進出いたしましても銀行経営の健全性に特段問題を生じるようなことはない、こういうふうに考えておるわけでございます。むしろ、銀行が先物取次業務に進出することによりましてお客様のヘッジ・ニーズに弾力的に対応できる、また手数料収入等も期待できることから、銀行の先物取次業務の進出というものは銀行自身の経営基盤の強化にも資するのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから、子会社方式も一つの選択肢であるわけでございますけれども、取次業務というものを本体で行うかあるいは子会社の方でもって行うかは基本的には経営判断の問題である、こういうふうに思うわけでございます。先ほどもお話ございましたように、アメリカにおきましては行政指導によりまして、先物の取次業務というものは子会社方式で行っておるわけでございますけれども、英国におきましては銀行の経営判断によってどちらでも選択できる、こういうふうになっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/69
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070・正森成二
○正森委員 金融機関が行うのは取次業務だけではないので、その点もお聞きしようと思ったのですけれども、時間がございませんので終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/70
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071・越智通雄
○越智委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、御多忙のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、明十三日金曜日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X01619880512/71
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