1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年十月十三日(木曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 竹中 修一君
理事 月原 茂皓君 理事 戸塚 進也君
理事 前田 武志君 理事 宮下 創平君
理事 田口 健二君 理事 竹内 勝彦君
理事 和田 一仁君
江藤 隆美君 大村 義治君
古賀 正浩君 宮里 松正君
谷津 義男君 角屋堅次郎君
井上 和久君 鈴切 康雄君
川端 達夫君 浦井 洋君
柴田 睦夫君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(総務庁長官) 高鳥 修君
出席政府委員
総務庁行政管理
局長 百崎 英君
総務庁行政管理
局行政情報シス
テム参事官 重富吉之助君
総務庁統計局長 田中 宏樹君
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委員外の出席者
外務大臣官房外
務参事官 小倉 和夫君
内閣委員会調査
室長 岩渕 静君
委員の異動
十月十三日
辞任 補欠選任
村井 仁君 古賀 正浩君
同日
辞任 補欠選任
古賀 正浩君 村井 仁君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百十二回国会閣法第八二号)
統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百十二回国会閣法第八三号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/0
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001・竹中修一
○竹中委員長 これより会議を開きます。
第百十二回国会、内閣提出、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案、及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。谷津義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/1
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002・谷津義男
○谷津委員 上程されております二法案につきまして、自由民主党を代表いたしまして質問をさせていただきたいと思います。
十一日に各党の質問が既に行われまして、その論議を聞いておりまして何点かの問題点が浮き彫りにされてきたというふうに私は思うわけであります。特にOECDの関係、また収集制限の問題、適用除外の問題、訂正等、もろもろの問題が浮き彫りにされてきたわけであります。そこで、この問題につきまして質問をしていきたいというふうに考えるところであります。
行政機関における個人情報の電算機の利用は、行政の効率化や合理化に不可欠のものであると同時に、行政サービスの向上のためには大変な寄与をしておるというふうに思っておるわけであります。今後とも、このような方向は一層前進させていかなければならないし、また、していくものというふうに考えているわけであります。しかし一方では、個人情報が大量に行政機関に保有され、利用されるようになりますと、国民の側から見ますれば、自分の情報が予期しない形で保有され、あるいは利用、提供されているのではないかといった不安感が増大されるのも無理からぬものがあるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。
一九八五年に総理府が実施した個人情報の保護に関する世論調査においても、国民の四八・二%がプライバシーの侵害がふえたと思う、六八・九%が今後プライバシーの侵害の発生がふえると見ている調査結果が出ております。さらに、国民の七五・七%が個人情報の保護対策が必要であると感じているというふうに調査は発表されております。このようなことから、今日、個人情報のための立法化を図ることは、時代の要請にこたえる重要なものであるというふうに私は考えておるわけであります。
そこでお尋ねしたいわけでありますが、一般にプライバシーと言われているものが個人においても国政上におきましても尊重されるべきものであるということは、当然のことだというふうに思います。しかし、一般にある利益を法的保護に値する利益、いわゆる権利とでも申しましょうか、保護するためには、明確な内容と限定性を備えていることが不可欠というふうに思うわけであります。プライバシーまたはプライバシー権というのですか、今日までいろいろな形で言われてき、また議論されてきておるところでありますけれども、その実態といいますかそのものは、抽象的でありますと同時に、多義的な概念であって、すべてを一つの法律で保護しようとすることは論理上無理ではなかろうかというふうに私は考えているわけであります。
そこでお聞きしたいのでありますが、情報化社会におけるプライバシー保護対策はどう考えておるのか、また、その前提としてのプライバシーまたはプライバシーの権利と言われるものについてはどのように認識をしておるのか、この点について最初にお聞かせいただきたいと思います。長官にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/2
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003・高鳥修
○高鳥国務大臣 ただいま御指摘のように、国ないし地方公共団体が持っております情報量というものは非常に膨大なものになりつつありますし、これらがコンピューター処理されることによりまして行政の円滑な推進に大きな貢献をしておることも御指摘のとおりであります。しかしながら、また反面、それらが大量処理され、そしてまた検索が容易であるというようなことからいたしまして、オンライン化された場合に、それらの管理をきちっとやっておきませんと、個人の情報がいろいろな面に流れていくというようなことによりまして、個人の権利というものが侵害されるというようなことがあってはならない、このように考えておるところであります。
いわゆるプライバシーという問題につきましては、私は法律学者ではございませんので、正確な定義を申し述べる立場にはないわけであります。ただ、私どもが承知をいたしておりますところでは、従来、プライバシーの権利というのは、ひとりにしておいてもらう権利というふうに説明をされておりまして、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利ということが、かつて昭和三十九年九月二十八日、「宴のあと」事件における東京地裁判決などでも出ているところであります。
さらにまた、情報化社会の進展に伴う今日的なプライバシーの権利の概念としては、学説などにおいて、従来の伝統的な、ひとりにしておいてもらう権利とするものから、自己の情報の流れをコントロールする権利というものを含むものへと展開してきているということ、そういう学説があるということについては私どもも承知をしているところであります。
〔委員長退席、前田委員長代理着席〕
ところで、私どもは、今回御提案申し上げてまいりましたこの法律につきまして、どうも個人情報保護法案というふうに一般的に短縮をして申しておりますので、その結果として、これがいわゆるプライバシー保護法案ではないか、プライバシー保護法案だということになれば、中身がこれはまことに欠落部分が多いではないかというおしかりを各方面からいただいたところであります。弁護士会の御指摘でありますとかあるいはまた労働団体の御指摘でありますとか、私どもいろいろそうした各方面の御意見、あるいは先日十一日に行われました各委員からの御質疑などにおきましても、プライバシー保護という面においては甚だごく一面しかとらえていないではないかという御指摘を数々いただいたところであります。
私どもは、個人情報保護法案と短縮して申しておりますが、これはプライバシー保護法案ではなくてデータ保護法案である。個人のデータのうち国がコンピューター処理をしておるものについてこれを保護するというのが、この法律の趣旨でございます。したがって、プライバシー全般についてこれをカバーする機能はもともと持ち合わせていない、そういう性格のものであるということを御理解いただきたいわけであります。
問題意識といたしましては、プライバシー全般に対する法的な考え方については、法務省などが中心になってさらにまとめていただかなければならないと思います。それからまた、民間部門における個人情報の処理についても、今後私どもといたしましても勉強してまいりたいと存じますし、関係各省庁におきましてさらに詰めていかなければならない、できるだけ早期にこれらの問題についても適切な対処をするように努力しなければならないと考えておりますが、当面少なくとも、先刻御指摘のあったような事情を踏まえて、政府が保有しております個人情報のうち、電算機処理されたものについて適切な管理体制を整える必要がある、このように考えて御提案した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/3
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004・谷津義男
○谷津委員 今長官から非常に明快な本案に対するお話があったわけであります。本法案の「目的」の中に「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護すること」まさに今長官のおっしゃった問題をここで指摘をしておるわけでありますけれども、この目的規定を入れましたその真意といいますか、その趣旨をもう少し詳しく説明をしていただきたいと考えているのですが、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/4
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005・高鳥修
○高鳥国務大臣 本法案は、ただいま申し上げましたように、国の行政機関が保有する電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関する基本的な事項を定めることによりまして、個人の権利利益を保護することを第一の目的とするものであります。
電子計算機処理に係ります個人情報の取り扱いに関する基本的な事項を定めることは、行政運営の効率化、行政サービスの向上に不可欠な行政情報システムの発展にも資するものでございまして、このことがひいては国民一般の利益にもつながるものであります。このため第一条では、第一の立法目的である個人の権利利益の保護との調和のもとに、その目的の一つとして行政の適正かつ円滑な運営を確保することを掲げたものでございます。
OECDの理事会勧告というのは、そもそもがプライバシーの保護と情報の自由な流通との調和を目的として出されたものであると理解いたしております。もう委員御承知のように、欧州各国におきましては国境を越えた情報の流通というものが現に行われておる、そういうことと個人の権利の保護ということとの調和点を見出すべく勧告されたものであるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/5
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006・谷津義男
○谷津委員 先ほど長官から、この法案についてはプライバシー保護法ではなくして、むしろデータ保護法であるというふうなお話がありましたが、コンピューターが今日の日本の社会を発展させているそのもとにもなっているということは何人も認めることであろうと思います。また、今後この問題については相当活用され利用されてくるということは、もう火を見るよりも明らかだろうと私は考えておるわけでありますが、そうなってまいりますと、プライバシーの保護との関係というのも重要な問題になってくるだろうと考えるわけであります。今のお答えの中でこの両方の兼ね合いというのは非常に大事な問題になるだろうと思いますが、この点について長官はどのようにお考えになっておりますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/6
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007・高鳥修
○高鳥国務大臣 先刻申し上げましたように、本法の第一の目的は個人の権利利益を保護するということにあるわけでございまして、そのための措置として、本法では、個人情報の保有制限、それから安全、正確性の確保、利用、提供制限、開示請求権など個人情報取り扱いの基本的な事項を定めることによりまして、行政の円滑かつ適正な運営を優先するものではなくて、それを図りつつも基本的な第一の目的をきちっと達成する、こういうことを考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/7
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008・谷津義男
○谷津委員 確かに十一日の議論でいろいろその辺が大きな問題になって、今の御答弁のように、本法案が個人の権利利益を保護すること、それが究極の目的であることだということは私も十分に理解できたわけであります。
そういうふうなことを踏まえまして、本法案で扱っておりますところのいわゆる記載されている保護すべき個人の権利利益、これは何であるか、そして、一般にプライバシーと言われているものとはどのように違うのか。これは本案の目的を示す非常に大事な問題であるというふうに私は思うわけであります。この辺のところをはっきりとお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/8
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009・百崎英
○百崎政府委員 この法律で保護することを目的とする個人の権利利益、これは電算機処理に係る個人情報の取り扱いに伴って生じます侵害から守られるべき個人の権利利益ということでございまして、一つは、個人の秘密が公開されないこと。これは先ほど大臣の御答弁にもございましたが、私どももプライバシー問題の専門家ではございませんけれども、個人の秘密が公開されないということは、要するに他人に知られたくないことを公開されないという意味で、普通に言われているプライバシーの範疇に入るものではなかろうかと考えております。
それから二番目に、誤った情報あるいは不完全な情報によりまして自分に関して誤った判断がなされないということについての権利利益。これは例えば、不完全な情報をもとに情報が集められた場合に、場合によっては虚像が形成されるというおそれもあるわけでございます。その場合には、あえて言えば人格権というものにかかわる、つまり、そういう意味でもプライバシーの範疇に該当するものではなかろうかというふうに考えておりますが、もう一つは、例えば誤った情報に基づいてある行政処分が行われた、その場合に財産上の損失をこうむった、これはどちらかといえばプライバシーの問題よりはむしろ財産権の侵害というようなことになろうかと思いますが、いずれにしても、そういった間違った情報で受ける不利益から守られる。
それから三番目には、自己の情報を知る権利利益。
大まかに申し上げますと、この法律で保護される権利利益というのはその三種類ぐらいに大別されるのではなかろうかと考えておるわけでございます。
若干お時間をいただきまして、この個人の権利利益とプライバシーとの関係を、専門家ではございませんがもう少し整理させていただきますと、平たく御説明させていただきますが、プライバシーの領域を示す円がある、それからもう一つ個人情報の領域を示す円がある、この円が交錯して重なっている、そういう図を念頭に置いていただきたいと思うわけでございます。
その場合に、プライバシーの領域を示す円で個人情報の円と重ならない部分、これは、例えば勝手に写真を撮られないとか、のぞき見をされないとか、あるいは家庭内のいざこざが表に出されないとか、そういったここで言う電算機処理に係る個人情報とは関係のないようなプライバシーの分野に該当するのではなかろうかと思います。その部分は、大臣も御答弁申し上げておりますようにこの法律では対象にしていない。
今度は、二つの円がダブっている部分。これは先ほどもちょっと御紹介いたしましたように、個人の秘密が公開されないとかあるいは不完全な情報で虚像が形成されないとか、そういったようなことでございますし、国民の意識調査を見ましても、年間収入とか財産状態とか納税額とか、こういった記録は他人に知られたくないという個人情報の一番大きな分野を占めておりますが、そのほかに、家族等の家庭生活の状況とかそういったようなものがデータとして電算機に入る、そういう場合にはちょうどそういう意味でダブっている部分に該当するのではなかろうか。
それから三番目に、今度は個人情報の領域を示す円でプライバシーとダブっていない部分と申しますのは、例えば住所であるとか氏名であるとかあるいは電話番号であるとか、それ自体をとってみれば必ずしも一般に言われるプライバシーでないものがございます。そういうものでありましても、仮にそれが使われ方によりましては、名前と住所がどこかに知られたために頻繁にダイレクトメールが送られてくるとかあるいは電話がひっきりなしにかかってくるとか、そういうような格好になりますと、普通に言う住所、氏名、電話番号、それだけをとってみれば一般に言われるプライバシーには直接関係は薄いわけですけれども、使われ方によってはそういうこともございますので、そういう部分につきましても、この法律ではすべて個人情報ということで差を設けずに保護の対象にしている、こういうことでございます。
いずれにいたしましても、そういうことで電算機処理に係る個人情報全体を対象にしてこの法律ではこれを保護しよう、こういうことになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/9
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010・谷津義男
○谷津委員 詳しい説明で結構でございますけれども、時間が足りなくなりますから、できるだけ簡潔にお答えをお願いしたいと思います。
そこで、今お話を聞いておりますと、その中で収集の問題というのがやはり問題になってくるのじゃなかろうかというふうに思うわけであります。十一日の議論を聞いておりましても、この問題がかなり問題化されております。特にOECD八原則との関係におきましてその問題が議論されたわけでありますが、この収集制限、特にいわゆるセンシティブ情報の収集制限について本法案には明確な規定がないというふうなことが随分言われましたし、またあるいはOECDの原則を満たしていないというふうな議論もありました。これらから、収集制限を詳しく質問していこうとも思っているわけでありますけれども、その質問に入る前に、まずOECDの勧告とはいかなる背景から出されたものか、またその性格はどういうものであるか、この辺のところを御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/10
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011・重富吉之助
○重富政府委員 それではお答え申し上げます。
まず最初に、OECD理事会勧告の出てきました背景について申し上げたいと思います。
昭和四十五年ごろから国際データ通信が急速に発展をいたしまして、個人データが国際的に流通が始まってきたということは先ほど大臣が申し上げたとおりでございますが、その際に、個人データの保護ということが問題になりまして、ヨーロッパ諸国では立法化の動きが出てきたわけでございます。これに関しまして、世界の情報のネットワークについて圧倒的な占拠率を持っておりますアメリカの経済的な利益と衝突のおそれが出てきたわけでございます。この相対立する二つの問題を調整することを任されたのがOECDでございます。そこで、OECDは小委員会を設けまして、プライバシー保護とデータの自由な国際流通の両者をいかに調和させるかにつきまして話し合い、検討を始めたわけでございます。その結果出たのがOECD理事会勧告であるというふうに理解しております。
それから次に、それではOECD理事会勧告の性格はどうであるかということでございますが、一般に国際協定のような拘束力を持つ性格のものではないと私どもは理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/11
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012・谷津義男
○谷津委員 外務省来ていますか。——今説明を受けたわけでありますが、我が国は当初からOECDの勧告を受け入れているというふうに聞いておるのですが、その検討過程におきまして、我が国はどのような態度を表明してきたのか、まずお聞きしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/12
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013・小倉和夫
○小倉説明員 ただいま総務庁から御答弁申し上げましたとおり、日本政府としましては、国際的なデータの流通の促進、そういった作業には基本的に協力するという態度だったと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、その場合にプライバシーの保護の問題との調和を図る必要がある。そういった問題につきましては、やはりいろいろの国々によって法律的な制度も違う、いろいろな歴史的伝統も違う、そういった点はやはり配慮すべきであるという態度を基本的な姿勢として維持しておった、こういうふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/13
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014・谷津義男
○谷津委員 外務省がOECDにおけるガイドラインを検討する過程におきまして、日本の態度の表明の中に、国情に適した形態で今後国内政策に反映させるよう努力するというようなことを言っておりますけれども、この国情に適した形態というのをわざわざ入れたのは、その背景はどこにあるのか御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/14
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015・小倉和夫
○小倉説明員 これは、OECDで議論いたしました際に、やはり各国の国情の問題が、日本のみならずほかの国からもいろいろ問題が提起されまして、例えば連邦政府、連邦制度をとっている国、あるいは地方制度、地方公共団体の権限の問題、そういったもので各国違いがあるじゃないか、例えばそういったようなものも国情の違いじゃないかという議論もございました。私どもといたしましては、そういった制度的な問題のほかに、やはり文化的な問題もあろう、あるいは伝統の違いもあろう、そういった法律的な制度の違いあるいは伝統の違い、文化の違いといったものをすべて含めまして、各国のいろいろな、今先生がおっしゃいました国情に配慮する、そういうものである。現にそれは勧告の解釈、ノートにも、法制度や伝統の違いによって異なっているそれを勘案するんだという趣旨が盛り込まれておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/15
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016・谷津義男
○谷津委員 ただいまの外務省のお話を聞きまして総務庁にお聞きしたいわけでありますけれども、OECDの勧告では、「加盟国は、」「ガイドラインに掲げているプライバシーと個人の自由の保護に係る原則を、その国内法の中で考慮すること。」というふうにありますけれども、ガイドラインの八原則をそのまま立法化しなければならないものかどうかということが一つ出てくるわけであります。それとも、その国の事情を踏まえてという問題がありますが、この違いがあってもいいものかどうか、これは非常に大事なものでありますが、それをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/16
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017・重富吉之助
○重富政府委員 お答え申し上げます。
ただいま外務省の方から御説明がございましたように、私どもは、OECD理事会勧告の「解説メモランダム」では、各ガイドラインをどのように国内法の中で考慮するかということは、第一義的には加盟国にゆだねられている。そしてそれは、先ほど説明がございましたように、法制度や伝統の違いによって異なっているはずである。したがいまして、そういうことから考えまして、ガイドラインの八原則というものを全くそのままの形で立法化しなければならないというものではなくて、各国の事情を踏まえて実施してよいものというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/17
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018・谷津義男
○谷津委員 ただいまの御答弁を聞きましてもう少し突っ込んでお聞きしたいわけでありますが、今外務省のお話の中にもありましたように、法制度あるいは伝統、文化あるいは歴史、風習、時によっては国民の意識の相違、こういうものもいろいろあるわけでありまして、その辺のところをOECDの勧告もしんしゃくをした勧告をしておる。ところが、十一日の議論を聞いておりますと、どうもOECDの勧告どおりに、何もかもと言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうふうなものをやらなければいけないのではなかろうかというふうな、そういう議論が大分ありました。本法案も日本の国情に最も適した国民の利益になるものでなければいけないというふうに私は考えるわけでありますが、そういうふうな観点から見ましたときに、この法案はまさに国民の利益に合っておるかどうか、この辺のところについて長官のお考えを一言だけお聞かせいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/18
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019・高鳥修
○高鳥国務大臣 ただいま政府委員から御答弁申し上げたところでございますが、我が国の実情を十分踏まえた上で、なおかつまたOECD勧告の基本ラインというものをきちっと踏まえて、この法案というものは作成をさせていただいたわけであります。したがいまして、実は、私どもがOECDの担当者にこの法案を提案いたす前にその概要について説明をいたしました。しかるところ、OECDの担当官は、これは大変よくできている、もう二重丸も三重丸もやっていいという評価をしていただいておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/19
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020・谷津義男
○谷津委員 OECDに褒められたということであるならば、この法案はそのまま通してもいいというふうに私は思うわけでありますが、先ほど申し上げましたとおり、ちょっと収集制限の各論についてお聞かせいただきたいと思うのです。
この原則、特に情報の内容による制限については、OECDでは、単に、個人データの収集には制限を設けるべきであるとのみ規定されているということでありましたが、なぜこのような規定になっておるのか、御説明をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/20
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021・百崎英
○百崎政府委員 OECDがこの勧告を出すに当たりまして、収集制限の原則を規定するに当たりましてはいろいろな議論が実はあったように伺っております。
その一端を御紹介いたしますと、情報の内容による制限につきましては二つの異なる見解がございまして、一つは、それ自体でセンシティブであって収集を制限すべきである、そういうデータのカテゴリーを列挙してはどうかという意見が一方にございました。それから他方、本質的にプライベートなあるいはセンシティブなデータというものはない、それは利用の仕方あるいは処理形態によってそのようにセンシティブにもなる、こういう主張があったように伺っております。そこで、この問題をめぐりまして専門家グループがいろいろな議論をされたわけですが、結局のところ、センシティブと万人に認められるようなデータを定義づけることは不可能だ、こういう結論に達したようでございます。その結果、OECDの勧告では、今先生御指摘のように、単に、個人データの収集には制限を設けるべきである、こういう一般的な表現にとどめられたというふうに伺っております。したがいまして、このOECDの収集制限の原則は、個人情報の無制限な収集を規制することになる何らかの制限を設けるようにこういうことを勧告しているものと私どもは理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/21
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022・谷津義男
○谷津委員 この問題につきましては、日弁連などの意見では、センシティブな情報をめぐる問題の重要性をどうもこの法案では全く無視しているとか、あるいは収集制限に関する原則の具体化を完全に欠落させているなどというふうな意見が出ておりますけれども、いわゆるセンシティブと言われるデータについて、その収集の原則禁止を規定することにはどのような問題があるか、この点については、大事な問題でありますのでひとつ詳しく説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/22
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023・高鳥修
○高鳥国務大臣 いわゆるセンシティブと言われるデータについてでありますが、その収集を原則禁止するということにつきましては、以下申し上げるような理由で適当でないと考えました。
それは、個人情報の取り扱いに伴う個人の権利利益の侵害のおそれや態様は一般に情報の種類や内容のみでは判断できず、利用の目的や電子計算機処理の仕方または提供先等が加味されて初めて明らかになるものと考えます。したがいまして、どのような情報が収集、保有すること自体、個人の権利利益を侵害するおそれになるかは、時代と場所または個人によっても異なり得るなど、相対的かつ主観的なものであり、法律でこれを網羅的に特定することは極めて困難であります。
また、行政機関の場合、公共の利益などの行政目的実現のため、いわゆるセンシティブ情報に含まれると考えられる個人情報を取り扱わざるを得ない場合も少なくございません。仮に、そうしたものについての収集制限を規定するということになりますと、逆にこれらを広く適用除外として規定せざるを得なくなり、この法律自体に非常に大きな適用除外が生ずることになりまして、適当でないと判断した次第であります。
本法は、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関するいわば一般法でございまして、電子計算機処理に係る個人情報一般を対象にその取り扱いの基本原則を定めるものでございます。したがいまして、御指摘のような個人情報について、その収集や記録を制限する必要があるとすれば、むしろこれらの個人情報を取り扱う個別の行政ごとに、その行政目的との関連において所要の措置を講ずることを検討することが適当である、このように考えた次第でございます。
先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたように、この問題についてはOECDにおいてもいろいろと各国の意見が対立をいたしまして、結局は各国の裁量にゆだねられた次第であります。なお、西ドイツ、カナダにおいては、センシティブ情報の収集制限といったやり方はとられておらないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/23
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024・谷津義男
○谷津委員 よく日弁連等では、この問題については加藤研究会を引用しております。ここに五十七年の七月に出された報告書があるわけでありますけれども、これによりますと、「個人データの収集は、当該行政機関等の所掌事務の範囲内で、収集目的を明確にし、その目的の達成に必要な限度において、適法かつ公正な手段によって行わなければならない。」というふうに書いてあるわけでありますけれども、加藤研究会でのこの情報の内容による制限については、この問題についてどのように言っておるのか、いま少し詳しく御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/24
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025・重富吉之助
○重富政府委員 お答え申し上げます。
加藤研究会意見におきます情報の内容によります制限についてのくだりを、ちょっとポイントだけ読み上げさせていただきたいと思います。
データ自体の性質から、思想、信条、宗教等個人の内心の自由に関するデータ、犯歴、逮捕歴、特定疾病歴等プライバシー侵害のおそれの大きいいわゆるセンシティブなデータについて収集を原則として禁止又は制限
することは、
プライバシーの内容及び侵害の形態が必ずしも確定しておらず、またどのようなデータがセンシティブであるかは、時代と場所又は個人によっても異なるなど、相対的かつ主観的なものと考えられ、法律でこれを特定することは困難であること、また仮に特定できたとしても行政機関等においては、所管行政の執行において、センシティブなデータを取り扱わざるを得ない場合も少くなく、これらを適用除外とすれば、その範囲は広く、そもそもデータの種類を特定し規制することの適否が問われるなどの問題がある。
と述べられておるところでございます。
私どもは、そういうところから、加藤研究会の結論をただいま谷津先生からお示しいただいたわ
けでございますけれども、この加藤研究会の結論と、私どもが本法案で保有制限を規定しております第四条の考え方というのは基本的に同じではないか、こんなふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/25
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026・谷津義男
○谷津委員 そこで、OECDの八原則、いわゆる収集制限以外の原則というのがあるわけでありますが、本法案ではどのように措置をしておられるのか、その概要をお聞かせいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/26
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027・百崎英
○百崎政府委員 この収集制限以外の原則は七つございますが、若干長くなりますので、対応するこの法案の条項だけを申し上げて、その対応関係をお示ししたいと思います。
一つは、八原則のうちデータ内容の原則というのがございますが、これに対応するものが、本法で言う保有制限、第四条の規定、それから正確性確保の第五条第二項の規定、これが対応することになっております。
それから目的明確化の原則、これは、本法で言います第六条の事前通知の規定、それから第四条第一項の保有制限の規定、これがこの目的明確化の原則に相当いたします。
それから利用制限の原則でございますが、これは、第九条の利用、提供の制限という規定がこれに対応するわけでございます。
それから安全保護の原則でございますが、これは、第五条第一項の安全確保の義務の規定がこれに対応いたします。
公開の原則は、第七条のファイル簿の作成及び閲覧、それから第八条の公示の規定がこれに対応いたします。
個人参加の原則は、第十三条の開示請求の規定と第十七条の訂正の申し出の規定、なお、第二十条の苦情処理の規定もこれに関連して対応いたします。
それから責任の原則、これはいろいろな条文がございますが、基本的には、各条項に基づきまして、ファイル保有機関の長が、例えばファイルの保有制限あるいは安全、正確性の確保、ファイル簿の作成、閲覧等々のことにつきまして責任を有する、こういう建前になっておりますので、基本的には、私ども、この収集制限以外の七原則はすべて本法において所要の措置を講じている、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/27
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028・谷津義男
○谷津委員 ただいま局長の御説明を聞いたわけでありますが、このOECD理事会勧告の八原則と本法律案との対比したものがありますか。もしそういうものができるのであるならば、後で文書でいただきたい。そうすればはっきりと今のことがわかるのではなかろうかと思うのです。もしよろしければそういったものの資料を御提出いただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/28
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029・百崎英
○百崎政府委員 既に一応手元にできておりますので、いつでも御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/29
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030・谷津義男
○谷津委員 よろしくお願いいたします。
次に、適用除外の問題につきましてお聞きいたしたいと思います。
この事前通知あるいは公示、利用、提供、開示請求等の各段階でいろいろの適用除外が設けられておる。これが先日の委員会においても、余りにも適用除外が多過ぎるということでありまして、これではプライバシーの保護ではなくて、政府による情報管理法ではないかというふうな議論が随分出たわけであります。この点については、大変重要なことでありますのではっきり聞いておかなければならないというふうに私は思うわけでありますが、それぞれの適用除外の考え方をはっきりとお答えいただきたい、これをお願いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/30
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031・高鳥修
○高鳥国務大臣 本法案を立案するに当たりまして、私どもといたしましては、適用除外をできるだけ少なくしたいということで一生懸命努力をしたところであります。ただ、事前通知、公示、利用、提供、開示請求の各段階におきまして、公共の利益や本人あるいは第三者の利益をも考慮する必要があるということからいたしまして、今回の案になったわけであります。
事前通知につきましては、国の安全に係るもの等極めて秘匿性が高いものと、短期間に消去をされるもの等改めて通知をし公示するまでもないものにつきまして、適用除外としているものであります。それから公示については、公共の安全や秩序の維持等極めて公共性の高い事務に限って公示しないことができることとしたものであります。利用、提供については、公共の利益や本人の利益になる場合に例外的に目的外にも利用、提供ができるものといたしております。それから開示については、本人の利益あるいは公共の利益を考慮し、例外的に開示できない場合、例えば医療、教育、刑の執行等でありますが、あるいはまた開示しないことができる事項を法律上限定的に列挙いたしております。
なお、必要があれば詳細については政府委員に答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/31
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032・谷津義男
○谷津委員 お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/32
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033・百崎英
○百崎政府委員 ポイントは今大臣から御答弁申し上げましたが、若干補足して御説明させていただきますと、まず事前通知の適用除外についてでございますが、この事前通知制度の趣旨は、何しろこの法律が新しい制度でございますので、各省がこの法律の運用に当たって統一性を欠くことがあっては困る、あるいは法の趣旨を誤解して本来ねらっている趣旨に沿わないような運営をしては困る、そういう意味で総務庁に事前通知をしていただきまして、総務庁がそういった点についての調整をする、こういう制度でございますので、基本的には、一つは秘匿性が非常に高くて総務庁が事前通知を受けて調整を行う余地が極めて乏しい、そういうものは適用除外にいたしております。もう一つは、記録項目や利用のされ方から個人の権利利益の侵害のおそれが少なくて、特に事前通知をして総務庁が調整をする必要性が少ないもの、そういうものにつきましては事前通知の適用除外といたしております。
それから、公示の適用除外でございますが、この公示制度と申しますのは、自己情報の開示請求権を行使する前提になる制度でございますので、基本的にはできるだけ広く公示すべきだと思いますが、ファイルの中には、その概要を公示することによりましてそのファイルの保有目的の達成を著しく阻害する、そういうものもございますので、それらにつきまして適用除外にいたしたわけでございます。
それから、利用、提供の制限の例外でございますが、行政機関が持っております個人情報につきましては、行政サービスの向上あるいは国民負担の軽減を図る、こういう観点から行政機関相互間での情報の有効利用など、そういうことに資する必要もございますし、また本人の利益のために目的外に利用、提供することが要請される、こういうこともございますので、目的外の利用、提供を一切認めないというのは適当でない。そこで、個人の権利利益の保護と公共の利益との調整を図る、こういう観点から、一定の除外事項に該当する場合にだけ例外的に目的外にも利用、提供できる、そういうことにしたわけでございます。
最後に、開示請求の適用除外でございますが、自己情報の開示請求権、これは先ほど申し上げましたように自己の情報を知ることができる利益を法律上保障するということでございますので、これもできるだけ広く開示請求ができるように考えておりますが、ただそういった開示請求権も、その他の利益、例えば本人の利益あるいは公共もしくは第三者の利益に配慮しなければならない場合もございまして、そういうことで、個人情報を本人に開示することがそういった他の利益を害することになると認められる場合には開示を拒否することも許される、このように考えまして、限定的に例外事項を列挙いたしまして、そういう場合には対象外にした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/33
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034・谷津義男
○谷津委員 そこでお聞きしたいのですが、OECDは八原則の適用除外についてはどのように言っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/34
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035・重富吉之助
○重富政府委員 お答え申し上げます。
八原則の適用除外につきましては、OECDのガイドラインでは、「国家主権、国家安全保障及び公の政策(”公の秩序”)に関係するものをも含め、
一、できるだけ少なくすること。二、公衆に知らしめること。」という表現で書かれておりますが、このガイドラインを解説しました「解説メモランダム」によりますと、こういうふうに述べられております。すべての例外事項をメモランダムに具体的に列挙することは不可能であるとしまして、それぞれ各国の実情に沿った例外を設けることを認めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/35
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036・谷津義男
○谷津委員 そこで、各種の適用除外のうち、教育とか医療とかあるいは刑の執行等に関するものを開示請求権の適用除外とすることは、むしろ我が国の国情、国民意識を考慮したものと私は理解をしておるわけでありますが、そういう理解でよろしいのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/36
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037・百崎英
○百崎政府委員 まさに今先生御指摘のように、適用除外の規定は専ら、我が国の国情あるいは国民意識から本人の利益にならない場合がある、そういうことを考慮したものでございます。
この適用除外のうち、教育関係あるいは医療の関係につきましては、学校教育法に規定する学校における成績の評価とかあるいは入学者の選抜に関するもの、それから病院、診療所等における診療に関するもの、これにつきましてなぜ適用除外にしたかという理由を申し上げますと、開示請求を認めて場合によって拒否する、そういう制度を仕組んだ場合には、先般も申し上げましたが、不治の病の場合など、これはどうしても拒否せざるを得ない、そうすると、拒否された場合は、どうしても自分は不治の病なのだという予断を本人に抱かせるわけでございまして、おのずからそういうことで本人にそれとなくわかる、悪影響を与えるという場合が考えられるわけでございます。それから、教育あるいは医療という問題につきましては、本来教師と生徒あるいはお医者さんと患者の信頼関係に基づいていろいろ行われるわけでございまして、国と国民との権利義務関係ということでこれをとらえて規律するのは必ずしも適当ではないのではないか、こういう観点から、教育上あるいは医療上の見地から本人に開示をしない、そこのところはお医者さんあるいは先生の専門的な御判断に任せるということにしたわけでございます。
いずれにしましても、この規定があるからといって、こういう成績の評価とか病名とかいうことを先生なりお医者さんが言ってはいけない、そういう禁止するということでは全くございません。もし聞いて必要があればいつでも教えるという道は当然残されているわけでございます。
それから、刑事事件に係る裁判等の処分、刑の執行に関するもの、これも一律に開示請求の対象にしますと、例えば前科のチェックに使われるというようなことも予想されるわけでございまして、その場合には明らかに本人の不利益になる、そういうことも考えられますので開示請求の対象にはしなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/37
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038・谷津義男
○谷津委員 OECDでもその勧告の中でそういうことを申しておるということでありますけれども、日本に最も適応した法律をつくる、これは私先ほども申し上げたわけでありますが、いわゆる国情に合わせて今回の法律案にしたという、何かこれ以外のものでも特に配慮した点があったならば、その辺をお聞かせいただきたいと思いますが、何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/38
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039・重富吉之助
○重富政府委員 例えて申しますと、この法律を執行するためにヨーロッパ諸国のように第三者機関を設けてこれをコントロールするということでなくて、一応行政組織の中で総合調整を担当している総務庁をして統一性、法律の適合性ということを監督させる、そういうふうな制度を設けているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/39
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040・谷津義男
○谷津委員 よくわかりました。
次に、プライバシーの保護の観点から申し上げますと、保護対策が必要なことは民間部門でも同じだろうというふうに私は思うわけであります。ところが、この民間部門については除外されておるわけでありますが、諸外国はどのようなことになっておるのか、諸外国の例をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/40
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041・重富吉之助
○重富政府委員 お答え申し上げます。
主要国だけに限らせていただきたいと思いますが、現在サミット参加国、七カ国ございますが、日本とイタリーがまだ法律ができておりませんので、法律ができておりますアメリカ、カナダ、フランス、イギリス、西ドイツについて申し上げたいと思います。
公的部門と民間部門を一つの法律で規制している国はフランス、イギリス、西ドイツでございまして、これはヨーロッパ諸国が中心でございます。それから公的部門のみ規制しているという国がアメリカとカナダでございます。ただし、もう少し詳しく申し上げますと、同じく公的部門、民間部門を一緒に一つの法律で規制しておりましても、西ドイツでは民間部門については別建てでやっている、そういうところもございます。要するに、法律の中で公共部門と民間部門を別建てでやっておる。それから先ほど申し上げました公的部門だけを規制しておりますアメリカ、カナダでも、個別法で民間部門についてもコントロールしているところがございます。例えて申しますと、アメリカでは金融プライバシー権法ということで個人信用情報が保護されるような法律をつくっております。カナダも信用報告法とか銀行法等個別法で民間部門の個人情報の保護を図っておるという実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/41
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042・谷津義男
○谷津委員 最近、長官はヨーロッパの方へ行きましてこれの研究をなされてこられたように私は聞いておるわけでありますが、イタリアにおいては民間を入れることに反対して法律ができなかったというふうに私は聞いておるわけでありますが、長官はこの点はどんなふうにお考えになっておりますか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/42
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043・高鳥修
○高鳥国務大臣 先般、五月の連休の際に、私もお許しを得ましてヨーロッパ各国の個人情報保護法案の実施状況について視察をいたしました。その際、イタリーではバッサリという法務大臣と会談をいたしましたが、このバッサリ法務大臣の説明では、法案そのものについて議論があって廃案になったというよりは、ちょうど政変があってそのために継続審議ができなくなったというような事情があったのだということを申しておりまして、なおまた、日本の法律ができればその法律も大いに参考にしながら、我々としてももう一回出し直しをしたいというふうに申しておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/43
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044・谷津義男
○谷津委員 よくわかりました。
次に、民間部門についてでありますけれども、一般的に国民感情から申し上げますと、間違ってブラックリストに記載されたとか信用を受けられないような状況が情報によって起きた、あるいは思わぬところで自分の住所や氏名や他の情報が名簿登載され、物品の購入、勧誘を受けて煩わしいとかという問題がいろいろ起こっているというふうに聞いておるわけでありますけれども、民間においても個人情報の保護対策が必要であるというふうに私は考えるわけであります。そこで、この法案を提案いたしました総務庁といたしましては、この民間部門の保護対策のあり方についてはどのように考えておられるのか御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/44
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045・高鳥修
○高鳥国務大臣 民間におきましても、ダイレクトメールなどに見られるように非常に個人情報というものが集積されておる、あるいはまた個人のいわばプライバシーとして最も秘匿をしたい部門に属します資産とか負債、そういうようなものについてもかなり民間部門においてはいろいろなデータを持っておるというような報道もなされておるところでありまして、私どもといたしましては、民間部門についても適当な規制を速やかにやるべきであるということは基本的に考えております。このことは、「昭和六十三年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」ということで私どもがまとめまして閣議決定をいたしたものでありますが、その中におきまして、「民間企業等の保有する個人情報の保護についても、それぞれの関係省庁において所要の連絡調整を図りつつ、引き続き検討を進める。」ということに決定をしておるところであります。この閣議決定に基づきましてそれぞれの関係省庁、経済企画庁、大蔵省、通産省などなどがございますが、それらにおいてできるだけ速やかに今後立案の方向に向かって検討を進めていくべきものというふうに考えております。
ただ、先ほども諸外国の例について御説明申し上げたところでありますが、私、西ドイツで民間部門についてどの程度実効性が上がっているかということについて担当官に質問をいたしました。しかるところ、やはり民間部門についてはいわば強制ではなくて届け出、自分のところではこういうデータを持っていますよという届け出をやっておるようでありまして、その届け出の率は一体どの程度になっているかと言って聞きましたら、まあ六割程度かなというような答えでありまして、必ずしも法律で規定をしているからといってすべてをカバーできているという自信はないというようなことでございました。
私ども、そうした諸外国の例を踏まえ、あるいは今日のプライバシー保護に対する国民の要望の高まり、そういうものを踏まえまして今後検討してまいりたいと存じますし、今回この法律を制定していただけますならば、それは前進へ向かっての大きな足がかりになるのかなというふうに期待しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/45
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046・谷津義男
○谷津委員 先ほど御説明の中に、主要先進国の中でも最近データ保護法を制定した、一九八四年ですかイギリスで制定をしたというふうに私ども聞いておるわけです。イギリスでは電算処理の情報に限っているというふうに聞いているわけでありますが、その理由は何であったか。それからマニュアルですか、手作業処理の情報も含めるべきであるというふうな議論もあったというふうに聞いておる。十一日の議論を聞いておりましても、この問題については各党から議論がありました。その内容はどのようなものでありますか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/46
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047・高鳥修
○高鳥国務大臣 御指摘のように、イギリスでは一九八四年データ保護法第四条というのがありまして、法律の対象とする情報を電子計算機により処理され得る形態で記録されている情報に限定しているところでございますが、その理由といたしましては、政府における検討におきまして、電子計算機処理によってプライバシーの侵害が将来現実化すると考えられたことがその理由であります。それからまた、イギリス国内の情報処理業者が他国から不利益な取り扱いを受けることがないようにするため、欧州評議会の個人データの自動処理に関する個人の保護のための条約を批准する前提として国内法制定の必要が生じたことが、同法が電子計算機処理に係る個人情報を対象とすることとした理由であります。
データ保護法案の国内の審議におきまして、手作業処理の個人情報も法律の対象とすべきであるという論議があったのでありますが、政府は修正に応じませんでした。その理由は、手作業処理情報のすべてを対象とすれば法律の実効性が確保できない、多種多様な手作業処理情報について対象とする範囲を限定することは極めて困難である、以上のような理由から手作業処理については対象としないということにいたしたところであるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/47
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048・谷津義男
○谷津委員 次に、目的外の利用、提供につきましてお伺いをいたしたいと思うわけであります。
個人情報がファイルの保有目的外の目的のために利用、提供された場合、収集されたときの背景、事情等が無視されたり、部分的な情報のみに基づいて虚像が形成され、その結果国民の権利利益が侵害されることになりはしないか。そのため、目的外の利用、提供は厳しく制限すべきであり、OECDの各国におきましては、本人の同意がある場合または法律の規定による場合に限定をしております。しかし本法案では保有機関内部における目的外利用や、外部機関に対する目的外提供も相当な理由があるときは認めることとしており、目的外の利用、提供を厳しく制限していないのではなかろうかというふうな批判もあるわけであります。そういう面から、この目的外利用、提供についてその中止を求める権利を認めるべきであるという意見に対しましてはどのようにお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/48
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049・百崎英
○百崎政府委員 我が国の行政争訟制度は、ある行政処分が行われてそれによって特定人の具体的な権利利益が侵害された、こういう場合に行政不服審査、そして最終的には裁判によって救済を図るということが原則であることは先生よく御承知のとおりでございます。
そこで、個人情報が目的外に利用、提供された、それだけの理由で、まだその特定人の具体的な権利利益が侵害されていない段階で中止請求権を認めるということは、今申し上げましたような事後救済を原則とする現在の行政争訟制度に対する非常に大きな例外を認めることになるわけでございまして、それでは、なぜ電算処理の場合にだけそういう例外を認めるのか、そのほかの行政情報一般の取り扱いの場合には認めないのか、そのあたりのバランスはどうなのか、そういうような問題もございまして、慎重に検討を要するということで中止を求めることを権利としては認めなかった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/49
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050・谷津義男
○谷津委員 個人情報の利用、提供のいかんによっては誤った認識やプライバシーの侵害のおそれが大きい、そして使用目的や方法を厳しく制限すべきであるというふうな考え方は、十一日の委員会の中でもそういうような議論がありました。そういう中で、受領者の措置要求に関し、行政機関等に対しその制限を課する場合にのみ、事務の遂行を不当に阻害することのない旨の留意規定を設けた理由につきまして、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/50
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051・百崎英
○百崎政府委員 第十条の受領者の措置要求の規定でございますが、国の行政機関それから地方公共団体及び特殊法人は法律の規定に従ってそれぞれの事務を遂行しているわけでございますので、これらの機関に対する措置要求に当たりましては、過度に使用目的あるいは使用方法などについての制限を課するとかあるいは安全確保の義務を課するとかいうことで、そのためにそういった受領者の事務処理が極めて煩雑になったり事務が遅延する、そういったことによって本来の提供目的を失する場合が考えられますので、この第十条の規定を設けたわけでございます。ここでは、単に業務の遂行が阻害されるというだけではございませんで、不当に阻害されることがないように、こういう規定をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/51
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052・谷津義男
○谷津委員 次に、訂正についてのお伺いをいたしたいと思います。
個人情報の取り扱いに関しましては、国民の権利利益を国民自身が守る方法として、開示に次いで重要なのが訂正の問題ではないかと思うのであります。個人情報に誤りがあったときは訂正すべきであることは当然であり、訂正については国民の権利として認めるべきであるというふうに思うわけでありますが、本法案第十七条では訂正の申し出を規定するのみということになっておるわけでありますが、この訂正の申し出とした理由をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/52
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053・百崎英
○百崎政府委員 個人情報の中で明らかな誤りがある、こういう場合には訂正の申し出をするということによりまして、行政機関が調査してそれを訂正するというのは第五条の正確性の確保の義務の規定からも当然のことでございまして、そういう場合には訂正の申し出ということで職権発動を促すだけでも十分ではないかというふうに考えたわけでございます。
それから、行政機関の判断とか評価に係る個人情報あるいは特定の行政処分の基礎になっている個人情報の誤り、こういうものにつきましてはいろいろ問題が、当事者の間で争訟等が起こる可能性もございますので、そういう場合には、そういった誤った情報に基づいて自分は不利益を受けたということを理由にして、行政不服審査とかあるいは行政事件訴訟という現在の争訟制度によって救済を図ることが適当ではなかろうか、このように考えたわけでございます。
それからもう一つは、先般もちょっと御説明いたしましたが、この訂正請求権というものを認めますと、同じ個人情報につきまして訂正請求権と、それに基づいて行われた行政処分、これの取り消しを求める訴えとが二重に重なる、そういうような問題もございまして、訂正請求権を権利としてここでは認めなかったわけでございます。
そういった問題もございまして、昭和六十年に改正されました住民基本台帳法におきましても訂正の申し出、こういうことになっております。そのほかにも同じような立法例が幾つかございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/53
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054・谷津義男
○谷津委員 この法律は我が国にとっても初めてでありますし、非常に新しい問題を抱えての法律だけに、この法案をまとめるに当たりましては長官初め皆様方大変な御苦労をなさったことを十分に拝察できるわけでございまして、心からそれに敬意を表するものでありますが、本法案を施行した後、問題があれば積極的に修正を行う考えがあるかどうか、この問題について長官にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/54
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055・高鳥修
○高鳥国務大臣 本法案につきましては、先刻来申し上げておりますように、OECDのガイドラインに沿った形で、なおかつまた諸外国の立法例やその運用の実態を参考にしながら、今日まで私ども十年余りの歳月をかけまして勉強してまいったわけでありまして、我が国の行政の実態あるいはまた情報処理の現在の状況、そうしたものを十分勘案いたしまして作成したものであります。したがいまして、現時点においては最善を尽くしたというふうに考えております。しかし、いわゆる情報処理の手段というものは日進月歩でありまして、どんどん新しいシステムなども出てまいるわけであります。それから、何分にも初めて施行する法律でございますので、したがって実際に施行してまいりました場合にうまくいくかどうかということについては常に反省もしていかなければならないものだというふうに考えております。今、何年後に見直しをするなどというようなことを申し上げることは適当でないと存じますが、私どもといたしましては、今後この法律を施行した上で、なお学識経験者等の御意見も十分聞く場を持ちまして、御意見を拝聴しながら検討を重ねてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/55
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056・谷津義男
○谷津委員 次に、私は、本法案は情報公開問題とはかなり深い関係があると認識をしているわけであります。総務庁は情報公開問題についてはどのように考えておりますのか、今後どのように取り組んでいくのか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/56
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057・高鳥修
○高鳥国務大臣 情報公開につきましてはかねがね民主的で公正な行政を確保するという観点からいたしまして、国民の皆様方の間にそうした御要望が非常に強いことを私どもも承知いたしております。そこで六十三年の行革大綱、これも私どもの担当でありますので、決定をさせていただいておるわけでありますが、制度化の問題については今後引き続き調査検討を進めるということにいたしまして、まずできることとして文書閲覧窓口制度の整備充実など、行政運営上の改善に関する具体的な方策を進めていくということをいたしておるわけであります。
この情報公開という制度は我が国にとりましては全く新しい分野でございまして、広範多岐にわたる関連領域との調整など、問題が非常にたくさんございます。したがいまして、結論を得るにはまだ若干の時間がかかると存じますが、私どもといたしましては、そうした方向に向かって努力をしていきたいと存じます。
ただ、一つ御理解をいただきたいことは、本法案に個人情報の開示という面が盛られておりますので、いわば情報公開制度の一環として受け取られがちでありますが、これはそういうことではないわけでありまして、あくまでも個人情報に間違いがあってはいけないという意味合いにおいて本人に限りこれを開示するということであります。それに対して情報公開ということは、もう委員御承知のとおりでありますが、広く行政情報一般を原則としてだれにでも公開するということでありまして、その辺がやはり性格的に若干違うものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/57
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058・谷津義男
○谷津委員 個人情報保護法案関係の最後の質問といたしまして長官にお伺いいたしますが、本法案に取り組む長官の決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/58
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059・高鳥修
○高鳥国務大臣 先刻来御指摘がございますように、高度情報化社会というものの進展は極めて速いスピードで展開しておるわけでありまして、そのために、国民皆様方の間に個人の情報がいろいろと目的外に転用され流出をするのではないかというような不安もあることは事実であります。これらの不安を解消するためにも、本法案を成立させていただきました暁には法律の適正厳格な運用に努める、そしてまた制度改善等につきましては、今後とも国会等でいろいろ御論議をいただいたことも踏まえまして鋭意努力をしていきたい、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/59
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060・谷津義男
○谷津委員 次に、統計法及び統計報告調整法の一部改正につきまして質問をしていきたいと思います。
これは大きくは保護、調査票の使用規制といいますか、そういうふうな問題を含んでの話にもなるんだろうと思いますけれども、この件についてこれから逐次質問していきますので、時間が余りありませんので、ひとつ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
我が国の統計水準は世界の最高を行っているというふうに私は考えております。特に、技術の進歩、経済情勢の変化が進むにつれまして、状況を的確に把握し分析することは大変大切なことでありまして、統計に関する期待、役割というものは今後ますます大きくなってくるのではなかろうかというふうに思うわけであります。
本法案の提案理由の説明を聞きまして、「統計行政の円滑な運営に資するため、統計調査に係る秘密の保護を図る等所要の措置を講じ、被調査者の統計調査に対する信頼を確保する」旨を挙げておりましたけれども、これは、国民のプライバシーの意識の高まり等による統計調査をめぐる環境が年ごとに厳しくなっていることへの対応ではなかろうかなというふうに私は思ったわけであります。このような状況の中でも、統計調査の円滑な実施に努めるとともに、新しい社会経済の動向に対応した統計体系を整備し、精度の高い統計を作成するために積極的に取り組む必要があるのではなかろうかというふうに私は考えておるわけであります。
そのためには、国民が統計調査に積極的に参加していただくことが基本であろうかと思うのでありますが、それには信頼を確保することが最も重要だというふうに私は考えております。その点、今回の法政正ではどのように対処しようとしておるのか、まずお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/60
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061・高鳥修
○高鳥国務大臣 今回改正案を提案いたしました趣旨は、まさに委員が御指摘のとおりであります。
もう時間も迫っておりますので、法律案の主な点についてだけ申し上げてみたいと思うわけでありますが、まず第一に、指定統計調査以外の統計調査等につきまして、現行法上秘密の保護に係る規定が整備されていなかったという点について、その秘密の保護を図ることといたしております。
第二番目に、指定統計調査以外の統計調査等によって集められた調査票等については、現行法上その使用規制に関する規定が整備されていなかったのでございまして、統計上の目的以外に使用することを規制するものといたしております。
それから第三番目に、指定統計調査等によって集められました調査票等の滅失、漏えい等を防止するため、調査実施者が適正な管理を行うこととするものでございまして、その他、統計調査の運営上必要な規定の整備を行う、いわば欠落部分について整備を図るということでございます。
〔前田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/61
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062・谷津義男
○谷津委員 次に、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案を提出するまでの経緯について、ひとつ局長の方からお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/62
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063・田中宏樹
○田中(宏樹)政府委員 昭和六十年の十月でございますが、統計審議会から「統計行政の中・長期構想について」という答申が行われました。その中で、届出統計調査及び統計報告の徴集につきまして、秘密の保護を図る観点から法的規制等を検討するとともに、個人情報の保護に関する法制定の動きに対応いたしまして、統計調査における秘密保護のあり方について検討するようにという提言がなされました。
他方、六十二年行革大綱におきまして、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護の制度的方策については、法的措置を講ずる方向で、そのための具体的検討を行う。」こととされたわけでございます。これらを受けまして、昭和六十二年の十二月統計審議会答申及び六十三年行革大綱におきましても、統計調査の特殊性から、個人情報保護法とは別途統計関係法令において措置するものとし、「所要の規定の整備を図る方向で具体的検討を行う。」こととされまして、前国会、ことしの四月二十八日でございますが、本法案を提出したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/63
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064・谷津義男
○谷津委員 ただいまの説明を聞いておりますと、この法案は必ずしも個人情報保護法案との関連だけではなくて、統計審議会の答申を受けて独自に統計調査の円滑な実施のために基盤整備といいますか、それを図ろうとしたことだというふうに理解をしたわけであります。
ところで、昭和六十年十月二十五日の統計審議会答申「統計行政の中・長期構想について」においては、届出統計調査及び承認統計調査について、報告者の秘密保護を図る観点から、法的規制あるいは統計データの提供、利用方法に関する統一的基準の設定等の措置を講ずる必要があると提言をされておりますが、大変これは大事なことだろうというふうに私は思うのであります。しかし、統計を作成するために集められた情報を、利用促進ということでほかに利用するあるいは使用するということは、調査に協力してくれる国民の方々に不安感を与えるという心配が私はあるわけでありますが、統計調査に対する信頼を失わせることにならないようにしっかりとやらなければいかぬというふうに考えておるわけであります。その点、改正案の中では統計調査によって集められた調査票についてどのように秘密の保護を拡張しようとしておられるのか、この点お伺いいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/64
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065・田中宏樹
○田中(宏樹)政府委員 統計調査におきます秘密の保護といいますものは、すべての統計調査に共通して遵守されるべき基本的要件であるというふうに思います。現行法令上規定のない届出統計調査、それから承認統計調査につきましても、指定統計と同様秘密の保護義務規定を設けるなど、秘密の保護に関する所要の法的整備を行いたいという趣旨でございます。
その中身でございますが、本法律案では秘密の保護義務、それから目的外使用規制、もう一つは調査票の管理という規定の整備を行うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/65
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066・谷津義男
○谷津委員 よくわかりました。
次に、指定統計調査について既に調査票の使用規制の仕組みがあって、統計上の目的以外には使用されないようになっておりますが、今回、今まで仕組みのなかった届出統計調査及び統計報告の徴集といいますか承認統計調査についてもそのような仕組みが設けられるようですので、かなり私は評価をしておるところでございます。
そこで、地方公共団体の関係についてお伺いをしたいというふうに思っておるわけであります。
我が国では、国の実施する統計調査は指定統計調査や承認統計調査として総務長官の承認を必要としているところでありますが、地方公共団体の実施する統計調査は届出統計調査として総務長官に届け出をするものというふうに聞いておるわけであります。それが今度の改正案では、地方公共団体の実施する届出統計調査が調査票の使用規制及び調査票等の適正管理の規定の適用除外になっているように思うのであります。これは地方公共団体の実施する統計調査と国の実施する統計調査とに何か違いがあるからなのだと私は思うのですが、何か違いがあるのかどうか。それから、統計調査に対する信頼を確保する観点からは、国であれ地方公共団体であれ差別があってはいけないというふうに思うわけでありますが、この考えはいかがなものでしょうか。局長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/66
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067・田中宏樹
○田中(宏樹)政府委員 今回の改正案では、届出統計調査につきましても目的外使用規制に関する規定及び調査票等の管理に関する規定を設けることにしておりますが、先生御指摘のとおり、地方公共団体が実施する届出統計調査についてはこれらの規定を適用しないことにしております。
これは、地方公共団体の実施する届出統計調査が、その施策に必要な統計を作成するために独自に実施されているものであること、また、地方公共団体によっては既に統計調査条例等におきまして秘密の保護の規定が設けられていることから、地方公共団体の自主性を尊重し、その実情に合わせて条例等において定めることがより適当であると考えたからでございます。なお申し上げますと、四十七都道府県のうち、統計関係の統計調査条例を持っておる都道府県は四十三でございまして、そういうことも考量いたしましてこういう規定にしたわけでございます。
ただ、先生御指摘のとおりでございますが、しかしながら、目的外使用規制及び調査票の適正管理というものは、統計調査に対する信頼を確保する観点からはすべての統計調査に共通する基本的要件であるというふうに考えます。このため、地方公共団体が実施する届出統計調査にあっても、統計調査実施者は集められた調査票等の適正な使用及び管理に努めなければならない旨の規定を、十五条の四でございますが、設けることにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/67
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068・谷津義男
○谷津委員 統計調査に関する最後の質問にしたいと思いますが、国民負担についてでございます。
今回の改正法案のように、統計調査に対する信頼を確保するために秘密の保護を図ることは結構なことでありますけれども、統計調査に対する国民の協力を仰ぐためには、国民が記入しやすい統計調査、もちろんプライバシーに立ち入るような事項を避けることは当然なことであろうというふうに思うわけでありますが、記入負担の軽減を考えることは非常に大事なことだろうと思います。そういうことで、総務庁という役所は特に行政改革を推進していく役所でありますから、このことについては十分承知のことと思いますが、統計調査における国民負担をどうするのか、今まででも三年、二割の整理再編などをなさっておるようでありますが、今後このようなことも含めてどのような方針をお持ちでありますか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/68
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069・高鳥修
○高鳥国務大臣 ただいま委員御指摘のように、行政改革の一環といたしまして、昭和五十九年以降三年間に約二割、百十五調査について廃止統合、周期の延長等を行うことといたしまして、昭和六十一年度までに大体予定どおりの整理をしたわけであります。
御指摘のように、統計調査に御協力いただきます場合に、非常に類似の調査が重複してあるというようなこともありまして、御協力をいただいておる各方面から簡素化、合理化、整理を要望されているところであります。もう時代がたちまして必要のなくなったものについては廃止するとか、あるいはまた周期の延長をしてその目的に合うに必要な限度において回数を減らすというようなこと、いろいろ合理化を進めていかなければならないと考えておりまして、今後とも努力していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/69
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070・谷津義男
○谷津委員 これで質問を終わらせていただくわけでありますが、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案は、先ほども申し上げましたとおり、日本にとりまして初めての法律でありますし、新しい社会問題に対する法律案でございます。それだけに、総務庁の御苦労というものに対しましては私も本当に頭の下がる思いでありますが、この法律案は何といっても必要な法律案でございますので、この法律の制定のために、私どもも頑張りますから、これからも長官初め皆さん方もひとつ頑張っていただきまして、国民の利益のために、国家の利益のためにこの法律案が立派に仕上がることを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/70
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071・竹中修一
○竹中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/71
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072・竹中修一
○竹中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111304889X00719881013/72
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