1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年十一月十六日(水曜日)
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議事日程 第十三号
昭和六十三年十一月十六日
午前一時開議
第 一 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第 二 昭和六十年度一般会計歳入歳出決算
昭和六十年度特別会計歳入歳出決算
昭和六十年度国税収納金整理資金受払計算書
昭和六十年度政府関係機関決算書
第 三 昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書
第 四 昭和六十年度国有財産無償貸付状況総計算書
第 五 畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第 六 肉用子牛生産安定等特別措置法案(内閣提出)
第 七 遊漁船業の適正化に関する法律案(農林水産委員長提出)
第 八 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
第 九 統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
第 十 行政機関の休日に関する法律案(内閣提出)
第十一 一般職の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十二 税制改革法案(内閣提出)
第十三 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十四 消費税法案(内閣提出)
第十五 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十六 消費譲与税法案(内閣提出)
第十七 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第十二 税制改革法案(内閣提出)
日程第十三 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十四 消費税法案(内閣提出)
日程第十五 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十六 消費譲与税法案(内閣提出)
日程第十七 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後一時三十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/0
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001・原健三郎
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/1
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002・自見庄三郎
○自見庄三郎君 日程第一ないし第十一は延期されることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/2
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003・原健三郎
○議長(原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/3
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004・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一ないし第十一は延期するに決しました。
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日程第十二 税制改革法案(内閣提出)
日程第十三 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十四 消費税法案(内閣提出)
日程第十五 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十六 消費譲与税法案(内閣提出)
日程第十七 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/4
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005・原健三郎
○議長(原健三郎君) 日程第十二、税制改革法案、日程第十三、所得税法等の一部を改正する法律案、日程第十四、消費税法案、日程第十五、地方税法の一部を改正する法律案、日程第十六、消費譲与税法案、日程第十七、地方交付税法の一部を改正する法律案、右六案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。税制問題等に関する調査特別委員会理事海部俊樹君。
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税制改革法案及び同報告書
所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告書
消費税法案及び同報告書
地方税法の一部を改正する法律案及び同報告書
消費譲与税法案及び同報告書
地方交付税法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔海部俊樹君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/5
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006・海部俊樹
○海部俊樹君 ただいま議題となりました六法律案につきまして、税制問題等に関する調査特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
今回の六法律案の提出の前提となる税制改革の目指すものは、現行税制が昭和二十四年のシャウプ勧告にその基礎を置き、著しく変化した現在の経済社会に適合していないため、来るべき二十一世紀の展望を踏まえながら、国民の税に対する不公平感を払拭し、所得、消費、資産等に対する課税を適切に組み合わせることによって均衡がとれた税体系を新たに構築するための抜本的改革なのであります。
初めに、六法律案の概要について申し上げます。
まず、税制改革法案は、今次改革の趣旨、基本理念及び方針を明らかにし、かつ、簡潔にその全体像を示すことなどを主な内容としております。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案は、
第一に、所得税では中堅所得者、特に給与所得者に対して思い切った税負担の軽減を行うとともに、中低所得者の税負担の軽減を図る見地や福祉政策等の見地から必要な措置を講ずることとしております。そして、株式等のキャピタルゲイン課税は原則課税とするなど、税負担の公平を確保するため必要な措置を講ずることとしております。
第二に、法人税は、国際的視点に立って経済の活性化を図るため、税率の引き下げを行うとともに、税負担回避の防止などの観点から必要な改正を行うこととしております。
第三に、相続税は、最近の地価高騰の状況などを踏まえ、減税を行うほか、税負担の回避を防止するため必要な改正を行うこととしております。また、贈与税について、税率の緩和を行うこととしております。
第四に、酒税は、従価税率、級別制度を廃止するなど酒税制度の簡素合理化を図るとともに、各種酒類の税負担水準を見直し、その格差を縮小した上、消費税相当分の引き下げを行うこととしております。
第五に、その他の間接税等につきましては、まず、たばこ消費税は、現行の税負担水準を維持しつつ消費税との負担の調整を行うこととし、石油税、取引所税、有価証券取引税、印紙税につきまして所要の改正を行うこととしております。
次に、消費税法案は、今次税制改革の一環として消費税を創設しようとするものでありまして、
第一に、納税義務者は、国内の場合は課税資産の譲渡等を行った事業者、課税貨物の場合はその貨物を保税地域から引き取る者としております。
第二に、非課税取引は、消費税の性質上課税することが適当でないもの、例えば土地の売買、金利支払いなどのほか、消費に広く薄く負担を求めるというこの税の性格から、社会保険医療、教育、社会福祉の一部のみとしております。
第三に、税率は、百分の三としております。
第四に、課税の累積を排除するための仕入れ税額控除は、納税事務の負担を負う事業者の便宜に配慮して、帳簿上の記録や請求書等に基づき計算する方式を採用しております。
第五に、中小零細事業者の事務負担等に配慮し、年間課税売上高が三千万円以下の事業者について納税義務を免除するほか、年間課税売上高が六千万円未満の事業者については、免税業者とのバランスを考慮し、納付税額の一部を軽減する限界控除制度を、年間課税売上高が五億円以下の事業者については、売り上げのみから納付税額を計算する簡易課税制度の選択を認めることとしております。
第六に、消費税の申告、納付等は原則として、個人事業者にあっては暦年、法人にあっては事業年度を課税期間とし、課税期間終了後二カ月以内に申告し、納付することとしております。また、中間申告及び納付の制度を設けております。
第七に、消費税導入に伴い、砂糖消費税、物品税、トランプ類税、入場税、通行税の五税目は廃止することとしております。
第八に、消費税が円滑、適正に転嫁されるための環境づくりの一環として、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律の一部改正を行うこととしております。
次に、地方税法の一部を改正する法律案は、まず、個人住民税につきまして、所得税の改正と同様の趣旨から所要の改正を行うこととしております。また、消費税の創設に伴い、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税、道府県たばこ消費税及び市町村たばこ消費税について所要の調整を行うほか、不動産取得税について負担の軽減措置を講ずることとしております。さらに、消費税の創設に伴い、電気税、ガス税及び木材引取税の三税目は廃止することとしております。
次に、消費譲与税法案については、地方公共団体の財源の安定的な確保に資するため、消費譲与税を創設しようとするものであります。
次に、地方交付税法の一部を改正する法律案は、消費税を地方交付税の対象税目とするため所要の改正を行おうとするものであります。
以上の各案につきましては、九月二十二日宮澤大蔵大臣及び梶山自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、十月六日から質疑に入り、不公平税制に係る質疑、リクルート問題に係る質疑、税制に関する基本構想に係る質疑、総括質疑など順次質疑を進め、十一月十日質疑を終了いたしました。
この間、十月十二日には参考人に対する病床質問を行い、十一月八日には公聴会を、また十一月九日にはいわゆる地方公聴会を開催し、慎重な審査を行いました。当特別委員会が設置されて以来、開会回数は二十一回に、その総審査時間は約九十六時間半に達しております。
その主な質疑内容を申しますと、税制改革に当たっての基本理念、改正の手順、方法。現行税制における各種不公平の是正。消費税の税率の歯どめ、逆進性、課税ベース、簡易課税制度・帳簿方式採用についての是非、円滑、適正な転嫁の実現など消費税に関する諸問題。石油関係諸税の単純併課の問題。生活保護世帯等真に手を差し伸べるべき方々に対する配慮。地方財政に対する配慮。所得税及び法人税の減税の必要性。現行間接税の抜本的改革の必要性。行財政改革の推進の必要性。福祉ビジョンの確立の必要性。リクルート問題の解明などでありました。
かくして、質疑は終了いたしたのでありますが、税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案、消費税法案、地方税法の一部を改正する法律案に対しまして、加藤六月君外一名から自由民主党提案に係る修正案がそれぞれ提出されました。修正案の内容は、上場等の日以前に取得した株式等に係る譲渡所得課税の強化などを行おうとするものでありまして、その詳細は委員会議録等に譲ることといたします。
次いで、各案について採決いたしましたところ、修正案の提出された四案については、いずれも修正議決すべきものと決し、消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案は、それぞれ原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/6
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007・原健三郎
○議長(原健三郎君) 六案中、日程第十二、第十三及び第十五の三案に対しては、それぞれ渡辺美智雄君外一名から、成規により修正案が提出されております。
この際、修正案の趣旨弁明を許します。野田毅君。
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税制改革法案に対する修正案
所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案
地方税法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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〔野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/7
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008・野田毅
○野田毅君 ただいま議題となりました税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案、以上三案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を御説明申し上げます。
まず、税制改革法案に対する修正案について申し上げますと、
第一に、消費税の転嫁に関する規定について、消費税の円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務を明確化するとともに、国は事業者が取引に際し課せられる消費税の額が明らかとなる措置を講ずる場合をも踏まえ必要な施策を講ずるものとするなど、国の義務を明確化することといたしております。
第二に、消費税になじみの薄い我が国の現状を踏まえ、国税当局においては、昭和六十四年九月三十日までは、その執行に当たり、広報、相談及び指導を中心として弾力的運営を行うものとする旨の規定を設けることといたしております。
第三に、消費税の中小事業者の事務負担等に配慮した小規模事業者に係る免税措置、簡易課税制度等の諸措置については、納税者の事務負担、消費税の転嫁の状況、納税者の税負担の公平の確保の必要性等を踏まえ、消費税の仕組みの定着状況等を勘案しつつ、その見直しを行うものとする規定を設けることといたしております。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案について申し上げますと、
第一に、年齢七十歳以上の障害者である控除対象配偶者または扶養親族を老人控除対象配偶者または老人扶養親族に含めることとするほか、同居特別障害者の特別控除額について、政府案の二十万円を三十万円に改めることといたしております。この結果、寝たきり老親を在宅で介護している場合の老人に係る控除額は現行八十万円、政府案九十万円が百二十万円と大幅に引き上げられることになります。
第二に、退職所得に係る退職所得控除額について、勤続年数二十年以下である場合の一年当たりの控除額を四十万円に、勤続年数二十年を超える場合のその超える一年当たりの控除額を七十万円に改めることといたしております。この結果、勤続三十年の勤労者の退職金の非課税限度額は、現行千万円から千五百万円へと、大幅に引き上げられることとなります。
その他、所要の整備を行うことといたしております。
なお、この修正による所得税の減税規模は約千四百億円と見込まれております。
最後に、地方税法の一部を改正する法律案に対する修正案について申し上げますと、この修正案は、さきに述べました所得税法等の一部を改正する法律案の修正に伴い、所要の規定の整備を行おうとするものであります。
以上が各修正案の概要であります。
何とぞ、御賛成賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/8
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009・原健三郎
○議長(原健三郎君) 質疑の通告があります。順次これを許します。宮地正介君。
〔宮地正介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/9
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010・宮地正介
○宮地正介君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております消費税法案を初めとした税制改革六法案並びに同修正案について、総理並びに関係大臣に質問を行うものであります。
総理は、今回の税制改革の目的について、均衡のとれた税体系を二十一世紀に向かって構築することにあると述べられ、再三にわたり国民の理解を求められてまいりました。ところが、各種の世論調査等に見られる国民の声は、消費税導入には強い反対を示しております。リクルート疑惑の問題が明るみに出て以来、この傾向はさらに強まっているのであります。
去る十日に政府・自民党が衆議院税制問題等調査特別委員会において行った税制改革六法案の単独強行採決は、総理が国民に理解を求めてきた姿勢とはおよそかけ離れたものであり、まさに議会制民主主義を踏みにじる暴挙であります。
私たちは、混迷を深めるリクルート疑惑を解明するために、証人喚問と資料公開を強く要求いたしました。この二つの要件は疑惑解明のためのかぎであるからであります。私たちの粘り強い要求によって二十一日に証人喚問が実施することが決定し、また、すべてのリクルート株の譲渡先が資料として提出されたのであります。この二つの実現は、リクルート疑惑解明の大きな突破口を切り開いたものと言ってよく、大きな意義があり、引き続き徹底的に究明していく決意であります。
そこで、法務大臣に伺いますが、リクルート疑惑真相解明のために指揮権を発動しないと国会で再々答弁をしておりますが、その決意は今後とも変わらないのか。このたびの資料の信憑性についてはどのように受けとめておられるのか。また、近い将来国政調査権に協力し全容解明に協力するとの発言が昨夜ありましたが、その決意を伺いたいのであります。
さて、具体的な質問に入りますが、第一は、消費税にかかわる問題であります。
言うまでもなく、私たちはあくまでも消費税の導入については反対であります。それは、総理自身が七つの懸念を示されたように、消費税には多くの問題があるからであります。
私が強く懸念を持っているのは、消費税の税率の引き上げであります。大蔵省が法律案決定直前まで五%の税率に固執していたことは周知のとおりであります。また、高齢化社会への移行を考え合わせると、近い将来における税率の引き上げは必至であると見なければなりません。税率の引き上げについて、総理は国会の議決を得ると答弁しているのでありますが、これは法律に基づくという当然のことを述べているにすぎないのであります。総理、具体的に税率の引き上げはやらないことを明確に歯どめをすべきであります。決意を伺いたいのでございます。
また、総理は、所得税のかからない人に過重な負担になると懸念を示されました。我々も、この点に強い懸念を持っております。
本日、公明党の主張により、寝たきり老人にかかわる扶養控除が、現行八十万円から百二十万円に大幅に引き上げられることが決定いたしましたが、このことは、寝たきり老人を抱える家庭に大きく寄与できると思うのであります。
さらに、私たちは、今後特に大きな課題となる寝たきり老人対策について、国会質疑を通じてその実施を迫ってまいりました。ここで、次の各点について具体的にお伺いをいたします。
第一番目は、寝たきり老人対策総合プランの策定であります。この寝たきり老人対策総合プランの策定によって寝たきり老人対策を総合的、体系的に展開すべきだと思いますが、策定の用意があるのかどうか。
第二番目は、在宅介護体制強化であります。今後三年間の緊急措置として、ホームヘルパー現行二万七千人を五万人に増員、ショートステイ二千五百ベッドを一万ベッドに増大、デイサービス二千五百カ所をそれぞれ実現すると自民党幹事長は先ほど公明党に確約をされました。これは画期的なことであり、政府の決意を明確にしていただきたいのであります。
第三番目は、特別養護老人ホームの拡充についてどのように取り組まれるのかでございます。
第四番目に、老人介護手当の支給についてであります。来年度予算において、年収三百万円以下の世帯の寝たきり老人に対して月額五万円の老人介護手当を支給する確約を自民党幹事長は公明党に確約されましたが、政府の決意を伺いたいのであります。
以上の各点につき、総理の明確な答弁を求めるものであります。
総理の示された七つの懸念は、以上述べたほか、地方財政への負担の問題、物価上昇、インフレ懸念の問題、中小企業等の事務負担の増大の問題等々、今なおそのまま存在しているのであります。それぞれについての総理の懸念を解消するための具体策を明確にしていただきたいのであります。
私は、この解消は困難と見ざるを得ません。そこで、百歩譲っても、消費税導入の時期について大幅に延期し、消費税の持つ懸念を解消するためにあらゆる努力を払うべきであると思います。総理の決断を求めるものであります。
第二は、不公平税制の是正、中でも資産課税の適正化についてであります。
政府は、今回の税制改革について、所得、消費、資産の間で均衡のとれた安定的な税体系を構築すると称しておりますが、実際は、資産課税の適正化にはほとんど手がつけられていないのが実情であります。
特に、私たちは今日まで、地価高騰によって発生する含み益について、社会的公正を確保する見地から、土地増価税を創設し、社会へ還元するよう主張してまいりました。しかし、これまで政府は、税務上の技術的な問題のみを取り上げ、我々の提案に耳を傾けようとしてこなかったのであり
ます。資産課税の適正化を図るという以上、この問題を放置することはできないはずであります。
総理は、大企業の地価高騰に伴う含み益についてどのように対処されようとしているのか、具体的にお答えいただきたいのであります。
第三は、総合課税の再構築についてであります。
我が国の所得税制は、総合課税の建前をとっているものの、資産所得課税、事業所得課税に対する優遇措置が拡大され、労働所得課税に過重の負担がしわ寄せされてきたのであります。税率構造を緩和する一方で、所得税の課税ベースを拡大し、総合課税の徹底を図り、この矛盾を解消していくべきであります。
所得税法案の修正によって、有価証券譲渡益を含め総合課税への移行が明らかにされたのでありますが、この問題に対する今後の取り組みについて、総理の決意を伺うものであります。
さらに、納税者番号制についても導入の方向が示されております。この具体的なスケジュールについてお答えいただきたいのであります。
本日の本会議で我が党の主張により退職金減税の実施が決まり、三十年勤務で現行一千万円から一千五百万円まで非課税となります。これに要する所要財源は、一千三百億円であります。今回の措置は、サラリーマンにとって大きな夢を与えるものと思います。
この際、サラリーマンの税負担の軽減のために今後どのように取り組まれるのか、方針を示されたいのであります。
第四は、行政改革の徹底についてであります。
行政改革については、中長期の中央省庁の統廃合を含め、行政改革実施計画を改めて作成し、これに従って機構減らし、人減らし、金減らしの行政改革を推進すべきであります。総理の行政改革についての具体的方針を伺いたいのであります。
また、公的規制の緩和については、中小企業等に十分配慮しつつ、また、これまで規制がとられてきた経緯を尊重しつつ、前向きに対処すべきだと考えます。総理の方針を伺うものであります。
第五に、石油諸税、いわゆるタックス・オン・タックスは余りにも不合理であり、これの軽減を先ほど約束されましたが、政府の見解を伺いたい。
また、軽自動車税の軽減も確約されておりますが、政府の方針を明確にされたいのであります。
最後に、リクルート問題についてであります。
政府・自民党が、我々の要求を受け入れ、証人喚問の決定並びに資料公開に踏み切り、さらに衆議院にリクルート問題調査特別委員会の設置を行ったことは高く評価するものであります。
総理、リクルート問題によって政治への不信はここにきわまっております。政治に携わる者の政治的、道義的責任として、リクルート疑惑の解明に全力を尽くし、そのけじめをつけるべきであります。それなくして国民の合意を得られる税制改革を行うことは不可能と言わなければなりません。この際、総理にリクルート問題の真相究明の決意を伺うものであります。
総理の明確なる答弁を要求するとともに、改めて、消費税の導入については公明党は断固反対であることを表明して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/10
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011・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) 宮地議員にお答えをいたします。
まず最初に、今日の国会運営の問題についてお触れになりました。
今回の採決のあり方につきましては、これは国会自身の問題でございますので、行政府としてとかく申し上げるべきではなかろうと思います。
さて、次の、消費税導入について国民の合意が形成されておるかどうか、こういうお尋ねでございました。
これにつきましては、そもそも税制というものは、完全合意ということには事の性格上なじみにくいものであると私も思っております。しかしながら、熱心に御協議をいただき、そして国会においても熱心に御審議いただきましたその中において、私は国民の合意も逐次進みつつあるものと期待し、また確信をいたしておるものであります。(拍手)
次には、税率問題にお触れになりました。
おっしゃるように、これは租税法定主義でございます。しかし、今回この税率を決定しますに当たりましては、所得、消費、資産、この段階にいかに均衡ある税制を構築していくか、国会の議論もあり、また政府税制調査会あるいはまた党税制調査会、それから各党協議等、ぎりぎりの議論をいただいた上に出した結論でございます。安易に変えるべきものでない、いや、今変えるなどということは毛頭考えていないことを、この際明らかにしておく次第であります。
さて、次の問題は、福祉問題につきまして、与党と公明党との間でそれぞれ意見交換があり、そしてまた合意に達したものがあるということは、十分私は承知いたしておるところであります。
まず、基本的なお考え方の方向に立って寝たきり老人対策等総合的に進めていきたいと考えております。その中における在宅三本柱等の具体的問題につきましては、大蔵大臣からお答えを申し上げることにいたします。いずれにせよ、与党と公明党との合意につきまして十分承知いたしておることを、この際重ねて申し上げるわけでございます。
さて、次の問題でございますが、私が懸念を申し上げました。この懸念は、まさに今御指摘がありましたように、税制全体の構築の中で対応するもの、そして歳出をもってこれに対応するもの等々、これは、各般にわたりこれらの懸念というものは審議しつつ理解を深め、今後とも懸念の解消ということについて国会の議論等を通じながらさらに深めてまいりたい、このように考えておるところであります。
そこで、それについては大幅に延期したらどうだ、こういう実施時期についてもお触れになりました。
税制というものは、習熟することによって新税もまた良税となると昔から言われておるものであります。したがって、今日、時期そのものは、既に委員長報告にもございましたとおり、これを延期するという考え方はございません。
さらに、不公平税制の中のいわゆる資産関係、なかんずく土地問題についてお触れになりました。
かねて貴党の土地増価税、私どもも十分承知いたしております。が、いつも申し上げるようでございますが、いわゆる未実現の所得に対する課税、これは固定資産税等々あらゆる土地対策の基本問題からして検討すべき課題でございますので、ただいまの御提言について、直ちにそれに私どもが賛同するわけにはまいりません。
さて、次の問題は総合課税の再構築についてであります。
これはかねてから貴党の主張でありまして、昨年の国会におきましても、いわゆる利子課税の問題等につきましても、これが将来にわたる総合化の方向についての御議論がありましたことは十分承知いたしておるところでございます。したがいまして、やはり総合課税という理念の中で、そして源泉徴収等の方法を十分考慮しながら、適切な対応で逐次その方向に進めていかなければならないということについては、私も同感でございます。
納税者番号につきましては、今政府税調等においても種々御議論をいただいておるところでございます。これについて、近い将来、政府税調あるいは各党協議等の場において議論が熟していくであろうということを、私も期待をいたしておるところであります。
さて、次は、サラリーマン減税の今後の問題についてもお触れになりました。
やはり今回の所得減税というのは、いわゆるサラリーマンの皆様方に対する減税の基礎がこれによって私は構築されたではなかろうか、このように考えるものでございます。
さて、次には行政改革にお触れになりました。
行政改革というものは、本当に一遍手を放しますと、まさに坂の上をガラガラとおりてくる荷車のようなことになってはなりません。私どもは、今具体的に機構減らし、人減らし、金減らしという言葉をお使いになりましたが、行革審の答申等を基礎といたしまして、国会の論議を踏まえながら、あるいは総定員法あるいは行政組織法、そういう原点に返った議論を通じて、この問題、寸時たりともなおざりになってはならない、このように考えておるところであります。
さて、最後にリクルート問題にお触れになったところであります。
本院におきましても、このリクルート問題に関する特別委員会が設置されたところであります。国政調査権に対して最大限の協力をすることはもとよりのことでございますが、政治家たるものまさに政治倫理綱領を拳々服膺していくべきものであり、私個人をも含めまして、この真相究明に対しては極力力をいたすことをお誓いいたす次第でございます。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/11
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012・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 二、三の点につきまして、総理の答弁を補足させていただきます。
第一は、寝たきり老人対策として、今後三年間に総合緊急対策を講ずべきではないかという御提案が自由民主党に対してございまして、自由民主党といたしまして、この問題については我が党としても誠意を持って政府と協議させていただきたいとお答えをいたしました。
既に政府は自由民主党から協議を受けておりまして、本件につきましては、三年間の対策を具体的に考えつつございます。すなわち、御指摘のような三本柱、ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービスでございますが、それから施設対策、それらを含めまして、規模についてもあるいは箇所数についても御指摘があったと伺っておりますが、御趣旨を十分実現いたしますように、具体的に思い切った対策を樹立して実現をいたしてまいるつもりでございます。
それから、老人介護手当につきましても自由民主党との間の御協議がございましたと承知をしております。
自由民主党から、今申し上げました三年間のいわゆる緊急対策、これとの関連がございますので、その予算化との関連を見つつ、実施方法を含めて予算編成までに両党間で御協議をさせていただきたいとお答えいたしておるということは政府もよく承知しておりまして、これを踏まえまして政府としても対応をいたすつもりでございます。
それから、石油諸税につきまして最後にお触れになられまして、いわゆるタックス・オン・タックスがほぼ一千億あるということにつきましては、政府としても承知をいたしております。具体的にどういう対応をいたしますか、これは六十四年度予算編成、税制改正の中で検討をいたしまして、適切に対処をいたさなければならないと考えております。
それからもう一つ、軽自動車につきましても御指摘がございましたが、今後、この規格の問題あるいは税制等の問題を含めまして、どのような対応が可能か、検討させていただきたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣林田悠紀夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/12
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013・林田悠紀夫
○国務大臣(林田悠紀夫君) リクルート問題に関しまして法務大臣が指揮権を行使することはないかという御質問でございまするが、私は、かねてから申し上げておりまするように、検察を信頼しておりまして、具体的事件の捜査や処理に関しましては、検察権の行使に不当な制約を加えるようなことはいたさない所存でございます。
また、昨日リクルート特別委員会に提出をされました資料の信憑性につきまして、今私が申し上げる立場にはございません。検察は関心を持ちまして拝見をしているものと存じております。
次に、国会におきまする国政調査権につきましては、私といたしましても、法令の許す範囲内でできる限りの協力をいたす所存でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/13
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014・原健三郎
○議長(原健三郎君) 安倍基雄君。
〔安倍基雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/14
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015・安倍基雄
○安倍基雄君 私は、民社党・民主連合を代表し、去る十一月十日税制特別委員会において自民党単独で強行採決された消費税等関連六法案及び同修正案について補充質問をするものであります。
まず最初に、私は、国民生活のすべての分野に大きな影響を及ぼす、またシャウプ以来の大改正と言われる税制改正法案が、総括質問を終え、公聴会を開いた直後に、野党の強硬な反対にもかかわらず強行採決されたことに大きな憤りを感じるものであります。国民は、同法案の徹底審議を望んでいたものでありますが、この審議がわずか三日間の審議で断ち切られたことに大きな驚きと憤りを感じております。これは、自民党の側における審議拒否と言っても過言ではありません。
総理、あなたは、強行採決の前に十分審議がなされていたと主張されておりますが、六法案について審議入りをしたのは十一月四日であります。それでも、総理は六法案について十分審議が行われているとお考えになりますか。この強行採決を正しいとお考えか、その御見解を承りたい。
六法案のうち最も重要なのは、消費税法案であります。これは、欧州において一般的となっている税とはいえ、我が国にとっては全く新しい税であります。この税が、果たして我が国の産業構造に適しているのか否かを検討すべきであります。
第一に、これが中小企業者にとって第二の企業税になるのではないかの問題があります。
名称は消費税であっても、市場が買い手市場の場合、売り手は税相当分を上乗せして売ることは困難であります。我が国は、生産、流通ともに多段階的であり、その間に大小さまざまの業者が介在しており、お互いに競争し合っているのであります。この大企業と中小企業との二重構造が、我が国経済の特色であります。その結果、それぞれの段階において力の弱い業者は、勢い価格への転嫁が行えず、みずから税を負担することとなります。
大蔵大臣、あなたは、独禁法の緩和でこれに対処しようとされておられますが、消費者に接する小売段階のみならず、下請業者の間で、あるいは卸、仲卸等の段階で果たしてカルテルを結べるとお考えですか。独禁法の緩和は、価格形成力のある業界でしか通用しないのであります。ましてや帳簿方式をとった今回の消費税は、売上税の場合よりも転嫁が困難と考えます。大臣、今回の消費税が、独禁法の緩和や行政指導でその転嫁が可能とお考えか。そしてまた、中小企業が税を価格に転嫁できない場合にはどのような措置を講ずるのであるかをお答え願いたい。
次に、第二の企業税となった場合、これがどのように産業構造に影響を与えるかの問題であります。
我が国の場合、製造業、卸売業、小売業にそれぞれ一千万、四百万、一千万の勤労者が従事しており、その八〇ないし九〇%が中小企業で働いております。英国、西独等では、中小企業で働いている人々の比率が四〇ないし五〇%となっております。言うなれば、我が国は、先端産業を幅広い下請企業で支え、また、その収益を分かち合っていると言えるのであります。なるほど西欧においては付加価値税が定着しておりますが、これは、長い間の取引高税等の間接税で中小企業者が自然淘汰された結果と見られます。
総理及び通産大臣にお伺いいたしますが、今回の消費税の導入は、企業の垂直的統合を促し、中
小企業者の自然淘汰の方向に作用するのではないかと考えますが、この消費税の産業構造に与える影響をどのように考えておられるのか。本来、こうした想定される産業構造への変化を十分検討した上で消費税を検討すべきであると考えますが、果たしてこのような検討が事前に行われてきたのかどうか、お伺いしたいのであります。
第三に、簡易課税制度に伴う問題点を指摘したいと思います。
それぞれの産業は、その付加価値率において千差万別であります。特に流通業界においては、マージン率が非常に低いものが数多く存在しております。これに対し二段階のマージン率を想定する簡易課税方式は、新たな不公平を生じることになります。価格転嫁がスムーズに行われればともかく、マージン率の低い業界は、換言すれば、売り手が弱く買い手が強い業界であります。私は、大企業と中小企業との力関係をさきに問題といたしましたが、転嫁の困難な消費税が業界間の不公平を増大する事実を否定できません。大蔵大臣、あなたは、不公平税制の是正を行うとされておりますが、新たに生じ得る不公平についてどう考えられるのでありますか。
第四に、委員会で十分討議されなかった問題として、激変緩和と産業間の資金シフトの問題が存在します。
従来、物品税の不公平の問題が広く取り上げられてまいりました。確かに、現在の物品税が少数の物品に集中していることは事実であります。しかし、税は一つの環境であり、現在の税体系のもとでそれぞれの企業は投資を行い、企業として採算を維持しているものであります。したがって、外見上は不公平に見える物品税も、実質上は、その企業が利益を上げている以上、価格転嫁がスムーズに行われていると言ってよいのであります。
ある日突然、一方の製品についての物品税が大幅に下がり、これと競争関係にある製品に物品税が新たに課せられるとすれば、企業にとっての採算は一挙に大きな変動を来すこととなります。したがって、物品税の変化には、一定期間の激変緩和措置が必要なのであります。諸外国においても、税体系の変更には必ずこのような産業政策的な配慮がなされております。今回の改正においては、このような配慮が全くと言ってよいほどなされておりません。この点、総理、大蔵大臣、こうした産業政策的配慮がなされているとお考えでありますか。
第五に、今後三%の税率がどの程度の期間維持されるかの問題があります。
西欧諸国においては、付加価値税の税率は押しなべて二けたの率になっております。既に述べた価格への転嫁の問題も、三%程度であればともかく、二けたともなれば買い手市場の業界においては深刻な問題となります。国民は、この消費税が、小さく産んで大きく育てる税金になりはしないかと大きな不安を抱いております。この三%の税率を、総理は自分の在任中は変更しないと言っておられますが、果たしてどのくらいの期間これを据え置くことと考えておられるのか。防衛費にGNP一%という歯どめがあるように、国民が納得する明確な歯どめを国民の前に提出する用意があるかどうか、総理にお伺いしたい。
以上が消費税を中心とした問題点でありますが、これとともに、国民が大きな関心を抱いているのは不公平税制の是正であり、また、国の歳入の面もさることながら、歳出の面についてであります。
我々は、消費税審議の前提として、不公平税制の是正、行政改革の徹底、福祉ビジョンの提示を要求いたしました。これらについてある程度の論議が行われましたが、これらが不十分のままに強行採決が行われたことはまことに残念であります。
不公平税制の是正について、ある程度の論議が行われたのは事実であります。しかし、そのいずれも十分の成果を得るには至りませんでした。特に、消費税がその性格上逆進性を有し、低所得者に不利であることの反面として、資産所得に対する課税が十分行われてこそ税の公平が保ち得るのであります。株式のキャピタルゲインについての課税については、ある程度の前進が見られたのは事実でありますが、まだ十分ではなく、また、それにも増して土地所有者についての課税が大きな問題となってきております。毎年GNPに近い価値増を示している土地についての課税を、我々は真剣に検討すべきときに至っていると考えますが、総理はこの問題についてどのように考えられますか。一生の給料をもってしてもみずからの家を持てない人々が多くなっている現状をどうお考えでありますか。
また、多くの国民は、我が国歳出がどのように使われているかについて大きな関心を示し始めております。ある程度の税の負担は覚悟するにしても、これがむだに使われているのではないかという声が年々高くなっております。
我々の要求に対し、政府は行政改革の方向を示した回答を用意いたしましたが、これは、我々をして言わしむれば単なる作文の域を出ておりません。総理、あなたは行政改革について、五カ年計画といった具体的なプログラムを我々に示す用意がありますか。企業の債務が累積したとき、企業は、まず余剰財産を処分し、経費を節約し、思い切った合理化を行います。総理に、単に中央のみならず、地方を通じた行政改革のプログラムの提出を要望するものであります。
また、これとともに、より具体的な福祉ビジョンの提出の用意があるかどうかをお伺いいたします。
我々は、本国会において、税制の基本を十分論議した上で消費税という各論に移ることを期待しておりました。国民に一方的な負担を課する税は、国民の協力なくして実行することは無理であり、政府や自民党のみによる形式的な地方公聴会ではなく、野党と共同した公聴会を全国各地で長期間にわたり行い、長い年月をかけて是非を検討すべきであると考えます。総理は、我々は十分人々の意見を聞いたと言われますが、六五%以上の人々がこれに反対しているという現実をどう考えられますか。これは単に政府のPR不足ではなく、国民が十分実体のわからない税を課せられると感じているからではありませんか。総理の御見解をお伺いしたい。
最後に、我々は消費税の実施を一年延期するように要請いたしました。これは、審議の十分なされないままの消費税導入には一定の期間が必要であると考えるとともに、少なくとも参議院議員選挙という国民にその意思を問う機会を得てからこれが実施されるべきであるという考えに基づくのであります。総理、なぜ消費税の実施が参議院議員選挙の後であってはならないのか、一刻も早く実施しなければならない理由はどこにあるのか、国民の意思を問うことを避けておられるのか、はっきりとお答え願いたい。
最後に、政治に対する信頼回復のため、リクルート問題の徹底的究明についての口先だけではない総理の御決意をお伺いして、私の補充質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/15
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016・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初のお尋ねは、法案審議に対する私に対する感想をお尋ねになりました。
私は行政府でございますので、国会についての論評は差し控えたいと存じますが、六法案が議題にされ濃密な御議論をちょうだいしたと、私の方は大変感謝を申し上げておるところでございます。
さて、次の問題は、消費税は第二企業税とならないか、こういうお話でございました。
消費税は、消費一般に広く薄く負担を求めるもので、消費者がその最終的な負担者となることが予定されておる間接税であることは申すまでもありません。したがって、その意味においては、事業
者に負担を求めるというようなものではない。しかし、新しい税金でございますから、なじみの薄い税金でございますから、いろいろな懸念がございます。適正な転嫁が実現するよう、各方面からの努力をすべき課題であると思うわけであります。
次が、消費税と産業への影響についてお触れになりました。
これは、製造、流通の各段階において仕入れに係ります税額を控除して課税の累積を排除しながら、売り上げに係る税額が商品やサービスの価格に上乗せして転嫁されて、最終的には消費者に広く薄く公平に負担を求める税でございますから、その意味におきまして、元来中立的なものであるというふうに考えておるところであります。
さて、産業部門における利益率の差と簡易納税制度等についてもお触れになりました。
簡易納税制度につきましては、若干制度の精密さを損なう要素はございます。しかし、それ以上に、消費税の納付に関する中小事業者の事務負担の増を極力少なくするという政策的な観点から認められるものでございますので、その意味でこの制度の必要性を御理解を賜りたい、このように考える次第でございます。
それから、物品税の廃止と新税の創設に伴う、いわゆる品目ごとにおけるアンバランスとか企業間格差等についての、御意見を交えての御質問がございました。
確かに、ゼロのものが三%あるいは多いものが引き下がる、その間の企業にいろいろな負担の、企業能力の差、そうしたものがあることは事実でございます。しかし、そもそもが、やはり物品税等の諸問題を根本的に解決するため消費税を創設したことでございますので、私は、これらに対して漸進的な配慮、これを例えば軽自動車等におきましても行ってきておるというふうに考えておるところであります。
さて、税率アップの問題にお触れになりました。小さく産んで大きく育てるというお言葉もお使いになったところであります。
しかし、この問題は、確かに、私はいつも申しますが、国会こそが税率引き上げについての最大の歯どめであります。しかし、それでは他人任せであります。したがって、私どもお互い国会の議論を通じながら感ずることは、実際問題として私どもがそれを提案する環境にあるとお思いになりますか、私はいつもそのように考えておるものでございます。
さて、次が不公平税制についてお触れになりました。
歳出問題について、今後極力今日までの財政改革の路線を貫いていかなければなりません。そして行革問題につきましては、まさに御指摘がありましたように、中央地方を通じての行政改革、こうしたことに思いをいたして、行革審の答申等を絶えず念頭に置きながら、まさに総定員法とか行政組織法とかそのような原点議論に立って、この問題はいささかも寸時たりともないがしろにしてはいけない問題であるというふうに考えておるところでございます。PR不足等だけで糊塗しようとは思っておりません。しかし、幸いに今のような国会で御議論をいただくことが国民の理解を一層増すものであることを確信もし、期待もいたしておるところであります。
最後に、リクルート問題にお触れになりました。
国政調査権については、政府として最大限の協力を行うことは申すまでもないことであります。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/16
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017・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 二点につきまして補足をさせていただきます。
第一点は転嫁に関するものでございまして、これがうまくいかないときには第二の企業税となる心配があるとの御指摘でございました。
この点は、私どもも十分注意をいたしておるつもりでございますが、法案の中におきましても、御承知のように、消費税の転嫁の方法あるいは表示の方法等についての共同行為を独禁法の特例として認めておるところでございますし、また、ただいま関係各省庁、業界に対していろいろ御相談に応じましたり、あるいは必要があればお求めによって指導をいたしましたりいたしまして、この転嫁のことを大変に大切に今私ども努力をいたしつつございます。
なお、これにつきまして、先ほど修正につきましてのお話がございまして、政府は、この税制改革法案の十一条でこの点を述べておるのでございますが、もっと端的に、「消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする。」このように修正することが適当である、また、政府としてもその「周知徹底を図る等必要な施策を講ずるものとする。」こういうことが適切であるというお話を承りました。このようになりますれば、この点はさらに明確になるものと存じます。
次に、いわゆる簡易納税制度についてお尋ねがございまして、確かに、この簡易納税制度をいたしますとマージン率の高い事業者はいわば有利であるということは、そういう場合があるであろうということは、私は否定をいたしません。そういう意味では、できるだけ簡易な、簡素な税制にいたしますために、若干制度の精密さを損なうという点は、私はこれはあろうと思います。あろうと思いますが、やはりなるべく事業者の事務負担を簡素にしておきたいということを配慮しておりますことを御理解をいただきたいと存じます。
なお、しかし、これにつきましてもいろいろ御議論がございまして、こういう問題についてやはり新しい条文を設けておくべきである、それは、消費税の仕組みが定着した場合に、いろいろこういう問題については見直しを必要とするのではないかという意味での修正の御意見と承りましたが、この点も、そうなりますれば、さらに将来におきまして見直しをすることがあるいは適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣田村元君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/17
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018・田村元
○国務大臣(田村元君) 先ほどの安倍基雄議員のお尋ねは、消費税が産業構造、特に中小企業に対してどういう影響を与えるのかという御趣旨であったと思います。
消費税というものは、あらゆる課税物品、サービスの取引の各段階に課せられるものでございまして、価格を通して消費者に転嫁されていく税でございます。この点からいたしますと、消費税は、特定の産業分野に対してのみ高い税負担を求める場合とは異なりまして、産業構造についておおむね中立的と考えられます。
しかしながら、我が国におきましては、流通業者を初めといたしまして零細な中小企業が多い、これは我が国の特徴でございます。その経営基盤も脆弱でございますために、間接税導入に伴います納税事務負担の軽減合理化や転嫁の円滑化がなされなければ、経営上大きな負担となるおそれがあることもまた懸念されるわけでございます。
こうした我が国中小企業の実態を十分勘案いたしまして、今般の消費税につきましては、免税点を設定するとともに、帳簿方式、簡易課税制度の採用等を行うこととしているところでございます。これによりまして、消費税の仕組みの簡素化が図られまして、中小企業の納税事務負担が相当程度軽減されるものと考えております。
しかしながら、これらの消費税の仕組みの工夫によっても依然として増大することの避けられない納税事務負担の軽減合理化を図りますとともに、消費税の確実な転嫁の実現を図るために、各面で所要の措置を講じることが不可欠と考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/18
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019・原健三郎
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/19
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020・原健三郎
○議長(原健三郎君) この際、国会法第五十七条の三の規定により、日程第十三に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案について、内閣の意見を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/20
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021・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) この修正案につきましては、政府といたしましては、諸般の事情に照らし、異存ございません。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/21
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022・原健三郎
○議長(原健三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。小谷輝二君。
〔小谷輝二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/22
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023・小谷輝二
○小谷輝二君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました税制改革六法案に対して反対、修正部分に対して賛成の討論を行うものであります。(拍手)
まず初めに、税制問題等に関する調査特別委員会で行った単独強行採決は、政府・自民党の暴挙であり、議会制民主主義を踏みにじるものであり、断じて許すべきものではございません。
政府・自民党は、六十一年の選挙公約、六十年二月の政府統一見解及び五十四年十二月の国会決議などをことごとく踏みにじり、さらに、現行税制の中にある不公平税制の是正を放てきした上での大型間接税の導入に関する一連の動きは、国家百年の大計とは似ても似つかぬものであり、数の力に頼った政府・自民党のおごりであり、まさに国民不在、国民無視の税制改革と言わなければなりません。
リクルート疑惑は、今や疑惑から疑獄への傾斜を進めており、これを徹底的に国会自身が解明することが、今真に国民が政治に求めているところであり、国民の政治不信を払拭するものであります。
私ども公明党は、江副リクルート社前会長、加藤前労働事務次官、高石前文部事務次官ら三氏の国会の証人喚問を初め、リクルートコスモス社株譲渡にかかわった政治家のリスト、譲渡された株数など、全資料の公開を政府・自民党に強く要求し、これに応じない場合にはその後の審議に責任を持つことができないと申し入れたのであります。政府・自民党は我々の要求に対し、二十一日に証人喚問に応じ、また政治家にかかわる全リストの公表をしたことは、リクルート疑惑解明に大きな突破口を開いたと高く評価するものであり、我が党は、より一層リクルート疑惑解明のため全力を傾注する決意であることを明確に表明するものであります。
さて、税制改革六法案、なかんずく、消費税法案は、ぬぐい切れぬ問題点を持っております。以下、税制改革六法案の主な問題点を挙げ、具体的に反対の理由を申し上げます。
反対の第一の理由は、今回の税制改革が初めに消費税導入ありきであり、したがって、税制改革の趣旨はあいまいで、その手順も国民合意の形成という視点が欠落している点であります。
政府・自民党は、今回の税制改革について、資産、所得、消費のバランスのとれた税制を確立するとか高齢化社会への対応ということを称しておりますが、しかし、消費税導入によってどのようにバランスのとれた税制が確立されるのか明らかにされておりません。さらには、高齢化社会に消費税がどのように対応するのか、全く不明であります。政府は「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」と題する福祉ビジョンを提出しましたが、高齢化社会ビジョンというには余りにもほど遠い内容であり、ここに示された施策と消費税との関係は全く説明されていないのであります。
私どもは、長期的展望に立って国民合意の税制改革を進めるために、その趣旨、手順等を示した税制改革基本法を提示いたしました。この中では、まず不公平税制の是正に取り組み、しかる後に年金、医療制度等を含む高齢化社会のビジョンを策定し、それに基づいて財源問題は論じるべきであると主張してまいったのであります。
高齢化社会の支え方についての検討もせず、歳出需要が増大するだろうという一般論だけで消費税の導入を図ろうというのは、まさに財源あさりであり、このような税制改革法案は断じて認めることはできません。
反対する第二の理由は、税制改革法案は、不公平税制の是正が極めて不十分であり、国民の税に対する不公平感が払拭し切れていないことであります。
特に、資産課税の適正化に至っては、その方向すら示しておりません。有価証券譲渡所得については、原則課税としたものの、わずか売却額の一%という分離課税の選択を認めており、新たな不公平を生じさせる内容となっております。資産課税についても、今日まで懸案になってきた土地税制の改革には一向に手がつけられておらず、このままでは、消費税導入によって所得、資産格差を一層増大させる結果を招くことは必至であります。
不公平税制について、公明党は、社会、民社、社民連の四党共同で、主要な不公平税制十項目に絞り、その具体的改正案及び改革の方向性を政府に提示し、その是正を図るよう主張してまいりました。しかし、先送りされたもの、全く手をつけなかった状態のものなど、課題は依然として積み残されたままであり、まことに遺憾であります。引き続き参議院において正々堂々の徹底審議を行い、これらの課題解決のため全力を尽くす決意でございます。
委員会段階で法案修正された総合課税への移行や有価証券譲渡所得課税の強化などは、公明党の強い要求を受け入れたものであり、当然の措置であります。
第三の反対理由は、今回の税制改革法案の柱である消費税法案が極めて多くの問題を持っていることであります。総理は消費税について八つの懸念を表明されましたが、この懸念は現在もなお歴然と残されているのであります。
逆進性の問題について、総理は、税体系全体で見るべきであるとし、解消策を示しておりません。逆進性によって低所得者の生活が圧迫され、重圧がかかることは目に見えております。
税率の引き上げについても、国会の議決を得るという答弁は、法律に基づくという当然のことを述べたものであり、引き続きこの問題は、公明党として、歯どめに完全を期す決意であります。
さらに、事務負担については、事務負担軽減のために簡易課税制度を採用したというも、昨年の売上税に比すればであり、現在の所得税、法人税、事業税などの納税事務に加えて新たに事務負担がふえることには変わりはありません。
転嫁の問題に関しては、転嫁カルテルを認めたり、中小企業に対する価格転嫁対策などを講じても、実際の取引上の力関係や競争が激しい業界では、依然として転嫁は困難であることが予想されます。
公明党は、政府・自民党に対し、消費税法案を初めとする政府原案に反対するとともに、公明党が国民の立場に立って要求してきた退職金現行一千万円を一千五百万円に引き上げによる減税、寝たきり老人扶養控除現行八十万円を百二十万円に引き上げによるところの減税など、修正部分に賛成することを申し上げ、かつ、先ほどの我が党宮地議員が指摘した三年間でホームヘルパー五万人への倍増、ショートステイベッド一万個への四倍増、デイサービス施設二千五百カ所への四倍増の完全実施、並びに来年度予算における寝たきり老人に対して月額五万円の老人介護手当の支給についての政府・自民党の我が党への確約の実施、及び石油税制のタックス・オン・タックスの軽減、軽自動車税の軽減、それぞれの実現を強く要求し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/23
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024・原健三郎
○議長(原健三郎君) 羽田孜君。
〔羽田孜君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/24
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025・羽田孜
○羽田孜君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました税制改革関連六法案につき、賛成の意見を申し上げます。
戦後、我が国の経済社会の変化、発展は著しいものがありました。産業、就業構造が変化し、国民の所得水準が上昇するとともに、消費が多様化し、サービスのウエートが高まり、経済が著しく国際化しております。
過去数十年間の所得水準の上昇、平準化の結果、我が国は、フローで見れば世界有数の高水準の所得を得る中で、最も貧富の差の小さい社会を形成するに至っております。これは、戦後一貫して政権を担当してきた我が自由民主党の政策と額に汗する勤勉なる国民の努力のたまものでありました。(拍手)
しかし、急速な円高や国際化が進む近年の経済社会の著しい変化に対応するためには、現行の諸制度を総合的に見直し、勇気を持って大改革を行うことが必要であります。殊に、我が国の現行税制は、昭和二十四年のシャウプ勧告に基づく枠組みを基本的に維持してきたものであります。このため、近年各面でさまざまなゆがみ、ひずみが指摘されております。
すなわち、税収の大宗を占める所得税、住民税が累進性の強い制度であることなどから、給与所得者に負担が偏り、サラリーマンの重税感、不公平感が募ってきております。
また、土地、株式等のいわゆるキャピタルゲイン課税が不十分という不満が高まる一方、相続税の負担軽減を求める声が強まっております。
間接税では、全税収に占めるウエート、いわゆる直間比率が著しく低下する中で、現行の個別消費税の課税品目や税負担にアンバランスが目立ち、最近における消費性向の多様化やサービス化の進展に対応し切れず、ひいては所得、消費、資産等の間で課税の不均衡が生ずる結果となっております。
企業の活力維持という面からは、法人税の税率が国際的に見て極めて高い水準であることも問題となってきております。
これらの税制のゆがみ、ひずみを放置することは、国民の税制、ひいては国家への信頼を危うくするものであります。税制は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識に立ち返れば、まさに単なる減税策ではなくて、二十一世紀を展望し、国民が納得できる公平で簡素な、活力を生み出す新しい税体系の再構築が求められておると申せましょう。
私は、このような観点から、中長期的視点に立脚して所得、消費、資産等の間で均衡がとれた望ましい税体系を再構築しようとする今回の税制改革を高く評価するものであります。
抜本的な改革の趣旨、基本理念、方針とその全体像につき、以下、具体的な内容について申し上げます。
第一に、所得税、住民税負担の軽減合理化についてであります。
所得税については、最高税率を引き下げるとともに、その累進度を一層緩和し、また、税率の段階を現行の十二段階から五段階に簡素化することとされております。個人住民税についても、同様に、現行の七段階から三段階に簡素化する措置がとられております。
また、所得税、住民税ともに、基礎控除、配偶者控除及び扶養控除、さらに障害者、特別障害者、寡婦及び勤労学生に対する控除を一律に引き上げるとともに、配偶者特別控除を引き上げることとされております。さらに、十六歳から二十二歳までの育ち盛りの子供を持つ家庭に対する扶養控除の割り増し制度を創設することとされております。
これらの措置は、働き盛りの中堅所得者層の負担軽減を中心とした、過去に例を見ない思い切った軽減合理化策として、大きな評価を与えられるべきものと考えます。
第二に、税制の大原則の一つである負担の公平の確保についてであります。
その一つは、株式のキャピタルゲイン課税についてであり、非課税の原則を原則課税に改めることとされております。株式等の譲渡益については、申告分離課税方式を原則とし、上場株式等の譲渡益については、納税者の選択により源泉分離課税によることができることとされております。
その二は、社会保険診療報酬の課税の特例についてであり、その年の報酬が五千万円を超える者には、この特例を適用しないこととされております。
その三は、法人の一定の土地取得に係る借入金利子の損金算入を、企業の土地転がしによる地価高騰を防ぐ意味も含め、制限する措置であります。
これらの措置は、いずれも適正公平な課税を実現しており、極めて有意義なものであると考えます。
第三は、相続税等についてであります。
相続税については、遺産についての課税最低限を現行の二倍に引き上げ、また、税率構造の見直しを行うとともに、配偶者の負担を民法に合わせてさらに軽減する等の負担の軽減合理化のための措置がとられております。
さらに、事業用及び居住用の小規模宅地等についての課税の特例については、例えば相続税のために事業の継続や長年住みなれた土地での生活が不可能になることのないよう、その減額の割合を引き上げることとされておるのであります。
これらの措置は、経済情勢の変化及び最近の地価高騰の状況を考慮した、極めて適切な対応であります。
第四に、間接税制度の抜本的見直しについてであります。
現行個別間接税制度が直面している諸問題を根本的に解決し、安定的でしかも信頼感のある税制を構築するために、既存間接税の抜本的見直しをすることとされております。
新しい消費税は、非課税対象を土地の売買、金融等その性格上対象となり得ないもののほか、医療、教育、社会福祉の一部などに限定して、原則としてすべての物品やサービスの売り上げを課税対象とし、消費一般に負担を求める税であり、その税率は三%と極めて低いものとされ、また、納税者の事務負担等に配慮して事業者免税点制度あるいは簡易課税制度を認めた簡素な仕組みであります。
消費税の創設に伴い、物品税、トランプ類税、砂糖消費税、入場税、通行税、電気税、ガス税及び木材引取税は廃止し、酒税及びたばこ消費税については税負担調整の上、消費税をあわせて課すとともに、料理飲食等消費税及び娯楽施設利用税については抜本的に改正し、それぞれ特別地方消費税、ゴルフ場利用税に名称を改めた上、消費税を併課することとし、石油諸税の対象物品については消費税を併課することとされております。
さらに、消費税の配分について、その収入額の一定割合を地方公共団体に譲与するとともに、地方交付税の対象税目とする措置を講じ、地方財政の運営に支障を来さないよう配慮されることとなっております。
近年、税収全体に占める間接税の割合が大きく低下している状況の中で、高齢化社会の進展、経済の国際化に対応していくため、所得税、住民税の思い切った減税を実施する一方、消費に広く薄く負担を求める消費税の導入は、我が国にとって必要不可欠な措置であると確信をいたしております。
第五に、国際的視点に立った法人税制の確立であります。
法人税の税率については、基本税率を段階的に三七・五%にまで引き下げ、中小法人に対する軽減税率等についても所要の措置を講ずることとされております。
法人税については、我が国の負担水準は今回の引き下げ後でも国際的に見てなお相当高いレベル
にあり、いわゆる経済の空洞化を生じさせないためにも、今回の法人税率の引き下げ等はぜひとも必要な措置であると考えます。
以上述べてまいりました今回の税制改革による減税規模は、平年度で所得税、住民税、法人税、相続税合わせて五兆六千億円、既存間接税の廃止等を加えると九兆円もの未曾有の減税であり、これに消費税の創設等による増収を合わせましても、差し引き二兆四千億円もの大幅な減税となっております。(拍手)
私は、総理が所信表明で述べられたように、これからの日本のあるべき姿として、公平でしかも活力のある社会、勤勉な人々が報われる社会、そしてゆとりと希望に満ちた人間尊重の社会の建設を目指すことが大切であると信ずるものであります。
なお、税制問題等に関する調査特別委員会において提出されました上場等の日以前に取得した株式等に対する譲渡益課税の強化、株式等に対する譲渡益課税の見直し規定の創設及び施行期日等を改める修正案並びに先ほど提出されました消費税の転嫁に係る規定の明確化、消費税導入当初の執行の弾力的運営、中小事業者の事務負担等に配慮した諸措置の見直し規定の創設、寝たきり老人に係る扶養控除額の引き上げ及び退職所得控除額の引き上げを内容とする修正案については、いずれも妥当な措置と考えます。
ここで、税制問題に関する調査特別委員会の運営について触れさせていただきます。
特別委員会における金丸委員長は、与野党の対立の中で、野党の要求のほとんどを受け入れるという公平無私の姿勢で委員会の運営に当たられましたが、一部野党はこのような公正な委員長の采配をも無視し、結果として審議拒否の暴挙に出たことは、厳しい環境下の審議であるにもかかわらず円満な話し合いをしてきた委員会運営に傷をつけ、議会政治のルールに照らしても遺憾なことであると言わざるを得ません。(拍手)
最後に、この税制改革に関連して、政府に対する若干の要望を申し上げます。
その一つは、政府は今後とも課税の公平、簡素、活力の原則にのっとり不断の努力を行う必要があります。現段階では国民的合意を得ていない納税者番号制度のあり方等を含め、特に課税の公平の確保のためになお検討すべき課題は残されております。
その二つとして、新しい税制が国民の理解を得るためには、税の使途、すなわち行財政が効率的に運営されることが必要であり、あわせて、巨額の公債発行残高を抱える厳しい財政事情に思いをいたすとき、行財政改革を引き続き強力に推進することが不可欠であります。
その三つは、消費税の円滑で適正な転嫁についてであります。政府は、消費税の性格に深く配慮の上、その円滑な転嫁が行われるよう、その環境づくりに努めるとともに、便乗値上げがなされることがないよう適切に対応する必要があります。
その四つは、現在所得課税の対象となっていない人々など、真に手を差し伸べるべき人々に引き続ききめ細かな配慮が行われる必要があることであります。
私は、政府がこれらの諸点について最大限の努力を払うことを確信し、以上申し上げた理由により、税制改革関連六法案の各案に対し賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/25
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026・原健三郎
○議長(原健三郎君) 米沢隆君。
〔米沢隆君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/26
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027・米沢隆
○米沢隆君 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいま議題となりました政府提案の税制改革関連六法案についての委員長報告に反対、公明、民社のそれぞれの修正合意にかかわる本会議修正案に賛成の立場から討論を行うものであります。
本来、その国の税制は、その国民の共通の社会的な財産であり、その税制改革に当たっては、何人といえども、どのような政治の形態であろうとも、厳然として租税民主主義の原則が貫かれ、あくまで国民合意を図りつつ行われなければならないことは、常識以前の常識だと言っても過言ではありません。
しかるに、シャウプ税制以来の抜本的改革と呼称される竹下税制改革法案が、今日までの自民党の暴挙から暴挙に次ぐかかる異常事態の中で、このような衆議院段階における結末を迎えようとしていることは、まことに遺憾のきわみであり、かつ、まことに悲しいことと言わなければなりません。
私ども民社党は、今次税制改革の審議に当たり、特に消費税という、弱者を直撃する我が国にとっては初めての大衆課税が強行導入されようとする事態にかんがみ、政府は、慎重な上にも慎重に、手順を踏みつつ、国民合意の形成を図るべきことを終始一貫主張してまいりました。
その中で、塚本三条件なるものを国民に提示し、まずは六十三年度の大幅な所得減税を実現させ、国民の不満の根源である不公平税制是正により、国民の税に対する信頼を確保し、消費税が高齢化社会に対応する措置であると言われるならば、国民にあるべき高齢化社会における福祉ビジョンを提示して、真摯な理解を求め、安易な大衆課税に走る前に、まず政府みずからが行財政改革に汗を流すべきことを訴えつつ、まじめに審議を深めてまいったと自負いたしております。しかし、そのやさきのかかる数々の不正常な審議のあり方は、幾ら弁明、弁解されたといたしましても、断じて国民の容認するところではありません。
言うまでもなく、竹下内閣がこのような無定見とも言える蛮行を強いられたゆえんのものは、つとに私が税制改革委員会で指摘しておりますように、何といいましても竹下税革の全体像が矛盾と欠陥に満ちたものであるにもかかわらず、その理念なき欠陥税制法案を自民党が多数の威をかりて強行成立させようとしているところにあることは、だれの目にも明らかであります。本来ならばこのような欠陥税制は撤回して出直すぐらいの勇気と決断が竹下内閣に問われていることを、改めて強く指摘したいと存じます。
しかし、今日の国会情勢では、残念ながら我々は衆寡敵せず、多数決の原理に従えば、欠陥商品も成立のやむなきに至ることもまた明らかであります。成立すれば、天下の悪法も法は法なり。我々は、無為に欠陥税法を通すことを選ぶのか、それとも一歩でもいいから国民のために次善の策を求めて修正交渉に踏み切るか、その選択を迫られましたが、我々は、議会制民主主義の立党の精神に立ち、勇気を持って後者の立場を選択したわけであります。(拍手)
我々が要求した消費税法案本体の修正、実施時期の延期の問題、税率の歯どめ措置の問題、見直し条文の新設、転嫁の円滑化対策、転嫁できない
場合の第二事業税とならないための措置の確立、激変緩和措置、石油諸税の消費税単純併課の是正、退職金の控除額の引き上げ、実額控除制度の改正、通勤費限度額の撤廃、土地税制の確立、弱者対策としての年金、医療、福祉政策の充実策の具体化の問題等々、真剣な修正交渉の中で、既にただいま修正案として提出されておりますお手元にありますような成果を得たものもありました。成果を六十四年度税制改正に譲ったものもありました。不十分なものもあります。残念ながら失敗に終わった問題もありますが、いろいろとありますが、今後も引き続き国民の皆さんのための改正に全力を挙げて闘うことを誓うものであります。
しかし、我々の修正の力の及ばざるところもあり、いまだ竹下税制改革の全容は依然として欠陥税制であることは間違いありません。
まず第一に、国民が切実に求めております不公平税制の是正が不徹底になっている点であります。
何回も何回も言われておりますように、現在、株や土地の異常な高騰が社会にさまざまなひずみをもたらしております。額に汗して働いてもマイホームを買うことができない人がいる反面、資産を転がすことによって働かずとも優雅に暮らしている人々がおります。持つ者と持たざる者との格差は放置できない状況にあります。このような資産格差の拡大現象は、ひとえに資産課税に対してなまぬるい現行税体系にあるのではないのか。にもかかわらず、政府案における資産課税の強化は小手先のものにとどまっており、遺憾にたえません。
リクルート事件が明らかになる中で、国民は株売却課税に対する今日までの政府の無策に強い怒りをあらわしております。改革案では、原則課税への移行、さらに我々の提案した創業者利益への課税、公開後の短期売り抜けに対する重課税等が盛り込まれてはおりますが、結局ほとんどの場合は一%のみなし課税を奨励するものであり、断じて容認はできません。早急に捕捉体制を確立し、原則総合課税への移行の準備を始めるべきであります。
また、土地税制についても、抜本改革は完全に見送られております。個人、法人の居住権、営業権を阻害しないよう配意しつつ、固定資産税及び相続税についての課税評価額を一本化する方向で土地税制を見直すよう、我々は強く求めてまいりましたが、竹下内閣はのれんに腕押しの状況に推移いたしました。
第三に、減税が不十分な点であります。
我々の強い要求を受け入れ、所得税率の累進緩和、人的控除の引き上げなど、中堅サラリーマンに重点を置いた減税が盛り込まれていることは評価をいたします。しかし、これでも減税はまだまだ不十分であります。物価調整減税の創設、実効あるサラリーマンの申告制度などの改革が欠落しているうちは、勤労者の税に対する不満は消えることはないということを銘記すべきでありましょう。
また第四に、消費税の持つさまざまな欠陥については、今さら指摘するまでもありません。老人、母子家庭、生活保護世帯など、社会的に弱い人に容赦なく襲いかかる逆進的消費税を導入するにもかかわらず、その対策は全くもってお粗末であります。
また、消費税は転嫁がうまくいかず、結局のところ第二事業税となるのは明白でありましょう。今回、私どもの修正の中で、転嫁円滑化対策としての予算措置や、転嫁できない場合の見直し措置の条文の追加など努力はいたしましたが、いまだ不安は残ります。帳簿方式、簡易課税制度、限界控除制度などを採用したために、極めていいかげんな税金となりました。独占禁止法の適用除外を行っても、競争力の弱い会社は、場合によっては赤字法人課税となり、倒産するケースもあり得ましょう。
また、消費税は来年の四月から適用されることになっておりますが、こんなに短い準備期間しか与えない政府首脳の良識を疑いたくもなります。ヨーロッパ諸国のように付加価値税を導入する前に取引高税を実施していた国ならいざ知らず、我が国のように大型間接税の経験がほとんどない国で直ちに消費税を四月から導入するとはあきれた話であります。
数を挙げれば切りがないほど、疲れるほどたくさんございますけれども、願わくはこの消費税が戦後導入されながら短期間でつぶれ去った第二の取引高税になりませんよう心から祈念を申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/27
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028・原健三郎
○議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/28
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029・原健三郎
○議長(原健三郎君) これより採決に入ります。
まず、日程第十二に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/29
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030・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/30
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031・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
次に、日程第十三に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/31
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032・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/32
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033・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
なお、ただいまの議決の結果、附則中に条項の整理を要するものがありますので、衆議院規則第百二十条により、この整理を議長に一任されたいと思います。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/33
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034・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、そのとおり決しました。
次に、日程第十四につき採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/34
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035・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
次に、日程第十五に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/35
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036・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/36
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037・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
次に、日程第十六及び第十七の両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/37
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038・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/38
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039・原健三郎
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01619881116/39
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