1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年十一月二十一日(月曜日)
午前十時二分開議
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○議事日程 第十号
昭和六十三年十一月二十一日
午前十時開議
第一 国家公務員等の任命に関する件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
一、税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案、消費税法案、地方税法の一部を改正する法律案、消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
一、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案(趣旨説明)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/0
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001・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
日程第一 国家公務員等の任命に関する件
内閣から、原子力委員会委員に向坊隆君を、
公正取引委員会委員に宇賀道郎君を、
公害健康被害補償不服審査会委員に太田壽郎君及び山本秀夫君を、
社会保険審査会委員に中澤幸一君を、
運輸審議会委員に隅健三君を、
電波監理審議会委員に神谷健一君を、
労働保険審査会委員に山田正美君を、
また、地方財政審議会委員に荒尾正浩君、胡子英幸君、木下和夫君、皆川迪夫君及び山本成美君を
それぞれ任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
まず、原子力委員会委員、公正取引委員会委員、運輸審議会委員、電波監理審議会委員並びに地方財政審議会委員のうち胡子英幸君、木下和夫君、皆川迪夫君及び山本成美君の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/1
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002・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
よって、いずれも同意することに決しました。
次に、公害健康被害補償不服審査会委員のうち太田壽郎君の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/2
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003・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
よって、これに同意することに決しました。
次に、公害健康被害補償不服審査会委員のうち山本秀夫君、社会保険審査会委員及び労働保険審査会委員並びに地方財政審議会委員のうち荒尾正浩君の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/3
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004・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 総員起立と認めます。
よって、全会一致をもっていずれも同意することに決しました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/4
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005・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) この際、日程に追加して、
議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/5
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006・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長嶋崎均君。
〔嶋崎均君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/6
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007・嶋崎均
○嶋崎均君 ただいま議題となりました法律案につきまして、議院運営委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本法律案は、議院外においても証人尋問ができるようにするとともに、証人の保護を図るための規定を新設し、あわせて証言等に関する規定の整備を行おうとするものであります。
その主な内容を申し上げますと、第一は、病気等の理由で議院に出頭することが困難な場合であっても、証言を求めることが必要なときは、院外においても証人尋問ができるよう、所要の規定を設けたことであります。第二は、証人の保護を図るための諸規定を整備したことであります。まず、証人の喚問に当たりましては、一定の猶予期間を置くとともに、あらかじめ尋問事項等の通知を行うこととしております。次に、証言を求めるに当たりましては、証言拒絶権等の告知、補佐人制度、尋問事項の制限、尋問中の撮影の禁止の規定を設けております。その他、証人の保護を図る措置といたしまして、証人等の被害についての給付、告発要件の加重、証人威迫に対する処罰等の規定を設けております。また、証言拒絶権等の規定を整備しております。
なお、本法律案は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行することといたしております。
委員会におきましては、提出者の三塚衆議院議院運営委員長から趣旨説明を聴取した後、原案のとおり可決すべきものと多数をもって決定した次第でございます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/7
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008・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/8
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009・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/9
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010・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) お諮りいたします。
この際、日程に追加して、
税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案、消費税法案、地方税法の一部を改正する法律案、消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案、以上六案について提出者から順次趣旨説明を求めることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/10
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011・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
よって、趣旨説明を聴取することに決しました。宮澤大蔵大臣。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/11
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012・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案及び消費税法案、以上三件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
初めに、税制改革法案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、今次の税制改革の趣旨、基本理念及び方針を明らかにし、かつ、簡潔にその全体像を示すことにより、改革についての国民の理解を深めるとともに、改革が整合性を持って包括的かつ一体的に行われることに資するほか、改革が我が国の経済社会に及ぼす影響にかんがみ、国等の配慮すべき事項について定めることを目的といたしております。
以下、その大要を申し上げます。
本法律案の第一章は、今次の税制改革の基本的考え方について定めております。
まず、今次の税制改革の趣旨でありますが、今次の改革は、現行の税制が著しく変化してきた現在の経済社会との間に不整合を生じている事態に対処して、将来の展望を踏まえつつ、国民の租税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等に対する課税を適切に組み合わせることにより均衡がとれた税体系を構築することが国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した税制を確立するために行うものであります。
次に、今次の税制改革の基本理念でありますが、今次の改革は、租税は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識のもとに、税負担の公平を確保し、税制の経済に対する中立性を保持し、及び税制の簡素化を図ることを基本原則として行うことといたしております。
このような趣旨及び基本理念のもと、今次の税制改革は、次のような方針に沿って行うことといたしております。
まず、今次の改革は、所得課税において税負担の公平の確保を図るための措置を講ずるとともに、税体系全体としての税負担の公平に資するため、所得課税を軽減し、消費に広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化すること等により、国民が公平感を持って納税し得る税体系の構築を目指して行うことといたしております。
また、今次の改革は、全体として税負担の軽減を図るとともに、国及び地方公共団体の財政運営に基本的に影響を与えることのないよう配慮して行うことといたしております。
なお、今次の税制改革は我が国の経済社会にさまざまな影響を及ぼすものであることから、本法律案におきましては、改革に際しての国及び地方公共団体の責務について定めております。すなわち、改革の趣旨及び方針にかんがみ福祉の充実に配慮しなければならないこと、また、改革に際し行財政改革の一層の推進に努めなければならないこと、さらに、改革の円滑な推進に資するための環境の整備に配慮しなければならないこととしております。
次に、本法律案の第二章におきましては、既に述べました今次の税制改革の趣旨、基本理念及び方針に従って行う国税及び地方税に関する改革等の全体像を示すこととし、個人所得課税及び法人税並びに相続税の負担の軽減合理化等、消費税の創設及び酒税の抜本的見直し等並びに国と地方公共団体との間の財源の配分について、その内容を簡潔に示しております。
また、本法律案におきましては、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税の転嫁について特に規定を設け、事業者は、消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう努めるものとし、必要と認めるときは、取引の相手方にその取引に課せられる消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとするとともに、国は、消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するために必要な施策を講ずるよう努めるものとしております。
さらに、本法律案におきましては、今次の税制改革がその趣旨、基本理念及び方針から見て整合性を持って包括的かつ一体的に行われるものであることにかんがみ、その実施の時期について明らかにしており、その時期は、各税の改革等の内容及び事前手続に要する期間並びに各税の有する性質に応じて、国税に係るものにつきましては昭和六十三年十月一日、昭和六十四年一月一日及び同年四月一日とし、地方税等に係るものにつきましては昭和六十四年四月一日及び昭和六十五年四月一日としております。この場合において、相続税及び贈与税の負担の軽減及び合理化に係る改正については、昭和六十三年一月一日にさかのぼって適用することとしております。
政府といたしましては以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院におきまして次のとおり修正が行われております。
その第一は、消費税の転嫁に関する規定について、消費税の円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務を明確化するとともに、これを支援する国の義務をもあわせて明確化することであります。
その第二は、消費税になじみの薄い我が国の現状を踏まえ、国税当局においては、昭和六十四年九月三十日までは、その執行に当たり、広報、相談及び指導を中心として弾力的運営を行うものとする旨の規定を設けることであります。
その第三は、消費税の中小事業者の事務負担等に配慮した諸措置については、納税者の事務負担、消費税の転嫁の状況、納税者の税負担の公平の確保の必要性等を踏まえ、消費税の仕組みの定着状況等を勘案しつつ、その見直しを行うものとする旨の規定を設けることであります。
その第四は、改革の実施の時期及び本法律案の施行期日について、昭和六十三年十月一日という期日を既に経過しておりますところから、これに伴う所要の修正を行うことであります。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、今次の税制改革の一環として、所得税法、法人税法、相続税法、酒税法、たばこ消費税法、石油税法、取引所税法、有価証券取引税法、印紙税法及び租税特別措置法の一部を改正するものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、所得税につきましては、税負担の思い切った軽減合理化を行うとともに、税負担の公平の確保を図るための措置を講ずることとしております。
まず、所得税の負担の軽減合理化につきましては、中堅所得者層の負担軽減を主眼として、最低税率を一〇%とし、その適用範囲を大幅に拡大する等税率の累進度を緩和するとともに、税率構造を五段階に簡素化するほか、中低所得者の負担の軽減を図るため基礎的な人的控除の引き上げ等を行うとともに、福祉政策等の見地から障害者控除等の特別な人的控除の引き上げ等を行うこととしております。
また、内職所得者について、パート所得者との均衡を考慮した課税上の取り扱いをするため、必要経費の最低保障を認めることとする等所要の改正を行うこととしております。
次に、税負担の公平の確保を図るための措置といたしましては、株式等の譲渡益について、非課税を原則とする現行制度を改め原則課税とし、他の所得と分離して課税する制度を創設するほか、社会保険診療報酬の所得計算の特例の縮減を行うこととしております。
第二に、法人税につきましては、基本税率を四二%から三七・五%に、中小法人の軽減税率を三〇%から二八%にそれぞれ引き下げるほか、配当軽課税率を廃止することとしております。
そのほか、受取配当等の益金不算入制度及び外国税額控除制度の見直しを行うとともに、土地等の取得に係る借入金の利子の損金算入を繰り延べる措置を講ずる等所要の改正を行うこととしております。
第三に、相続税につきましては、遺産に係る基礎控除等を二倍に引き上げるとともに、税率の緩和を行うほか、配偶者の負担軽減措置の拡充等を行う一方、遺産に係る基礎控除等の算定の基礎となる相続人の数に含まれる養子の数を制限する措置を講ずる等所要の改正を行うこととしております。
また、贈与税につきましては、相続税の改正との関連において、税率の緩和等を行うこととしております。
第四に、酒税につきましては、従価税の廃止、清酒及びウイスキー類に係る級別制度の廃止等酒税制度につき簡素合理化を図るとともに、各種酒類の税負担水準を見直し、酒期間の税負担格差を縮小した上、従量税率について消費税相当分の引き下げを行うこととしております。なお、清酒、しょうちゅう等の中小酒類製造者に対しては一定期間税率を軽減することとする等所要の措置を講ずることとしております。
第五に、その他の間接税等につきましては、次のような改正を行うこととしております。
まず、たばこ消費税につきましては、課税方式を従量税方式に改め、現行の税負担水準を維持しつつ消費税との負担の調整を行うこととし、石油税につきましては、課税方式の従量税化を図ることとしております。
次に、取引所税につきましては、商品等の先物取引に係る税率を引き下げることとし、有価証券取引税につきましては、株式等に係る税率を引き下げることとしております。
このほか、印紙税につきましては、物品切手等五文書を課税対象から除外することとしております。
以上の改正につきましては、原則として昭和六十四年一月一日以後または同年四月一日以後実施することとしております。なお、相続税及び贈与税の負担の軽減及び合理化に係る改正については、昭和六十三年一月一日にさかのぼって適用することとしております。
政府といたしましては以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院におきまして次のとおり修正が行われております。
その第一は、株式等の譲渡益課税について、上場等の日以前に取得した株式等を上場等の日以後一年以内に譲渡する場合には源泉分離課税の対象としないこととするとともに、この場合において、上場等の日における所有期間が三年を超える株式に係る譲渡益いわゆる創業者利益に該当するものについては、その二分の一に対し課税することであります。
その第二は、株式等の譲渡益に対する所得税の課税のあり方については、利子所得に対する課税のあり方の見直しとあわせて見直しを行うものとする旨の規定を設けることであります。
その第三は、年齢七十歳以上の障害者である控除対象配偶者または扶養親族を老人控除対象配偶者または老人扶養親族に含めることとするほか、同居特別障害者の特別控除額を三十万円とすることであります。
その第四は、退職所得控除額について、勤続年数二十年以下である場合の一年当たりの控除額を四十万円に、勤続年数二十年を超える場合のその超える一年当たりの控除額を七十万円に引き上げることであります。
その第五は、本法律案の施行期日である昭和六十三年十月一日を既に経過しておりますところから、施行期日等につき所要の修正を行うことであります。
次に、消費税法案につきまして御説明申し上げます。
本法律案は、今次の税制改革の一環として、物品税等の現行個別間接税制度が直面している諸問題を根本的に解決し、税体系全体を通ずる税負担の公平を図るとともに、国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するため、消費に広く薄く負担を求める消費税を創設するものであります。
以下、その大要を申し上げます。
まず、消費税の課税の対象は、国内において事業者が行った資産の譲渡等及び保税地域から引き取られる外国貨物としております。
第二に、納税義務者は、国内において行った課税資産の譲渡等については当該譲渡等を行った事業者、課税貨物については外国貨物を保税地域から引き取る者としております。なお、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が三千万円以下の者については、その課税期間中に行った課税資産の譲渡等につき納税義務を免除することとしております。
第三に、非課税取引等につきましては、土地の譲渡、資金の貸し付け等のほか、一定の医療、社会福祉事業及び学校教育を非課税とし、輸出取引及び輸出類似取引を免税としております。
第四に、課税標準は、課税資産の譲渡等についてはその対価の額、課税貨物についてはその引き取り価額としております。
第五に、税率は、百分の三としております。
第六に、課税の累積を排除するための仕入れ税額控除の概要について申し上げます。
事業者が国内において課税仕入れを行った場合または課税貨物を引き取った場合には、帳簿または請求書等に基づき計算した課税仕入れ等の支払い対価の額に百三分の三を乗じた金額を仕入れに係る消費税額として、課税資産の譲渡等に係る消費税額から控除することとしております。
なお、この仕入れに係る消費税額の控除に関し、基準期間における課税売上高が五億円以下の事業者については、その選択により、課税資産の譲渡等に係る消費税額の一定割合を仕入れに係る消費税額とすることにより簡易に納付税額を計算する方法も認めることとしております。
また、その課税期間における課税売上高が六千万円未満の事業者について、納付すべき税額の一部または全部を課税売上高に応じ軽減する限界控除制度を設けるほか、売り上げに係る対価の返還等をした場合等にも、税額控除を認めることとしております。
第七に、消費税の申告、納付等については、原則として、個人事業者にあっては、一月から十二月までの期間、法人にあっては事業年度を課税期間とし、課税期間終了後二カ月以内に申告し、納付することとしております。また、中間申告及び納付の制度を設けております。
さらに、仕入れに係る消費税額等を控除した結果、控除不足額があるときは、その不足額に相当する消費税額を還付することとしております。
また、保税地域から外国貨物を引き取る者については、原則として引き取りの際、申告及び納付をすることとしております。
なお、この法律は原則として昭和六十三年十月一日から施行し昭和六十四年四月一日以降の資産の譲渡等及び外国貨物の引き取りについて適用することとし、施行に当たり所要の経過措置を設けております。
政府といたしましては以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、昭和六十三年十月一日という期日につきましては、既にこれを経過しておりますところから、衆議院におきまして、本法律案の施行期日等について所要の修正が行われております。
以上、税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案及び消費税法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/12
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013・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 梶山自治大臣。
〔国務大臣梶山静六君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/13
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014・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案、消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
まず、地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、今次の税制改革の一環として地方税制の改正を行うものであります。
以下、その概要について御説明申し上げます。
まず、個人住民税につきまして、中堅所得者を中心として、税負担の累増感の解消を図り、税負担を軽減するため、税率の累進度を緩和し、簡素な税率構造にするとともに、中低所得者の税負担等に配慮し、基礎控除額等を引き上げる等の改正を行うこととしております。
さらに、税負担の公平の確保を図るため、株式等の譲渡による所得について所得税において源泉分離課税することとされたものを除き、他の所得と分離して個人住民税を課する制度を設けることとしております。
また、消費税の創設に伴い、娯楽施設利用税及び料理飲食等消費税について税率を引き下げる等の改正を行うとともに、道府県たばこ消費税及び市町村たばこ消費税について課税方式を従量税方式に改める等の改正を行うほか、不動産取得税について負担の軽減措置を講ずることとしております。
さらに、消費税の創設に伴い、電気税、ガス税及び木材引取税を廃止することとしております。
政府といたしましては以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、衆議院におきまして次のとおり修正が行われております。
その第一は、個人住民税において、一定の株式等の譲渡による所得に対してはその二分の一相当額に課税することとすること、第二は、株式等の譲渡益に対する課税のあり方についての見直しに関する規定を設けることであります。
以上が地方税法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
次に、消費譲与税法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、今次の税制改革に伴い、地方公共団体の財源の安定的な確保に資するため、消費譲与税を創設するものであります。
以下、その概要について御説明申し上げます。
消費譲与税は、消費税の収入額の五分の一相当額とし、その十一分の六の額を都道府県に、十一分の五の額を市町村に、人口及び従業者数を基準として、それぞれ年四回に分けて譲与することとしております。
以上が消費譲与税法案の趣旨であります。
次に、地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、今次の税制改革に伴い、創設される消費税を地方交付税の対象税目とし、その総額の安定的確保を図るとともに、所得税、法人税及び酒税の減税に伴う地方交付税の減収を補てんする等地方財政の運営に支障の生じないようにするため、消費譲与税分を除く消費税の収入額の百分の二十四を地方交付税に加える改正を行おうとするものであります。
以上が地方交付税法の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/14
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015・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。加藤武徳君。
〔加藤武徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/15
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016・加藤武徳
○加藤武徳君 初めに、天皇陛下の御病状を案じ、一日も早い御全快をお祈り申し上げまして、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました税制改革関連六法案について総理並びに関係閣僚に若干の質問を行いたいと思います。
総理は、税制の抜本改革を現下の最も重要な課題と認識され、一日も早く公平で活力ある社会を確かなものとするために全力を傾注する決意を表明しておられます。
今次税制国会も、召集以来四カ月を経過いたし、本院においても本格的な審議が始まろうとしておるのであります。どうか、参議院においては、二十一世紀を目指した安定的な税体系の確立という国民期待の喫緊の課題に十分にこたえられますよう、粛々と濃密な審議を展開いたし、速やかに議了を図るべきだと考えます。
そこでまず、総理の税制改革に取り組む決意についてお伺いいたします。
何ゆえに今税制の抜本改革が必要であるのか。それは申すまでもなく、昭和二十四年のシャウプ勧告による税制以来今日まで大きな改革が行われず、急速に変化する社会経済に対応できなくて、さまざまなゆがみ、ひずみが生じておるからであります。
すなわち、我が国の所得課税は、税率が高く、給与所得に税負担が偏っており、サラリーマンの不公平感や重税感がますます募っておるのであります。また、最近の地価高騰や株式投資、マネーゲームなど、土地や株式等の資産所得に対する課税が不十分であるとの声も強いのであります。また、消費に対する課税も、その多様化、サービス化の進展に対応し切れない面があり、個別消費税に依存する現行制度は矛盾と不平がいっぱいであると言われております。また、酒税に見られるよ
うに、対外的な摩擦も引き起こしておりますし、さらに、法人税率が高いために企業が外国に本社を移転するという例も少なくないのであります。
今や、国民の負託を受けた私どもは、これらの事態を直視いたし、直接税偏重から来るさまざまのゆがみ、ひずみを是正いたし、国際的水準に見合う税体系の確立や中堅サラリーマン層の重税感の解消を図って、国民が納得できる公平で簡素な税制を構築すべき責務を背負っておると考えるのであります。
総理は今次税制改革の理念をどう認識され、抜本改革を行おうとしておられるのか、その基本的な考え方を伺うのであります。
税制の改革とあわせ大事でありますことは、行財政の改革であります。
政府は、去る十月二十五日、行財政改革の推進と「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標」、いわゆる行革と社会保障の二つのビジョンを示されたのであります。その目標とするところは、経済社会の情勢の進展に即応して絶えず行政制度の、あるいは施策の見直しを行うとともに、財政の対応力の回復を図り、もって民間の活力を引き出すことにあると思うのであります。
行財政改革につきましては、これまで鈴木内閣、中曽根内閣と着実に実施をしてまいりましたが、竹下総理もまた並み並みならぬ意欲を示しておられますけれども、いまだ道半ばの感が深いのであります。新行革審は、竹下総理の諮問に答えて、いわゆる規制緩和の問題についてただいま答申案の取りまとめに当たっておる最中であると承知をいたしておりますが、今後の具体的な行動計画についてどのように考えておられるか、伺いたいのであります。
次に、国民の税や社会保障費負担について伺います。
行財政改革ビジョンでは、将来の国民の負担率は、長期的には上昇するが、昭和五十八年三月十四日の臨調答申の趣旨を踏まえ、その上昇を極力抑制すると書いてあります。およそ税制改革を進めるに当たって一番重要なことは、国民に税の役割を理解していただき、負担の必要性を納得してもらうことだと思います。そのためには、税負担の限界を国民により具体的に明示すべきであろうと思うのでありますが、租税負担と社会保障負担を合わせた国民負担率はどの程度になると予想しておられますか、お示し願いたいのであります。
また、国債費については、公債依存度を引き下げ、一般会計歳出に占めるシェアの縮小を目指すとありますが、将来の財政見通しをいかがに考えておられるか、大蔵大臣から伺いたいのであります。
社会保障ビジョンにおきましては、雇用その他の条件整備を図りながら、厚生年金など公的年金の支給開始年齢について、将来できる限り早い時期に六十五歳にすることを目標としておられます。確かに、団塊の世代が年金受給者になる八十年代後半には年金財政は苦しく、年金支給開始年齢の引き上げは避けて通れない問題でありましょうが、六十歳定年の企業がいまだ約六〇%という現況では、定年とのギャップや雇用の確保をどうするのかということが大きな課題であります。年金支給開始年齢の引き上げと、これにリンクした高齢者雇用対策をどう考えておるのか、総理に伺いたいのであります。
以上お尋ねをいたしました国民負担率も、また年金支給開始年齢の引き上げも、帰するところ人口の高齢化に伴う社会保障の費用負担にかかわる問題であります。
我が国人口の高齢化は、かつて世界に例を見ないスピードで急速に進んでおります。このことは、年金や医療などの社会保障給付費が人口の高齢化により今後も増大していくと見込まれることであります。このためには、社会保障における給付と負担の適正化や制度の一元化について今後さらに取り組むとしても、生きがいのある豊かな長寿社会における国民のニーズにこたえるには国民負担の増大は避けて通れない問題であります。
今ここで問題を先送りして、働き手の比率が少ない高齢化社会における現役が過重な負担をこうむりますことは制度の存立に基本的にかかわる問題であります。長生きを本当に喜び合える社会とするために、必要とする社会保障を円満に支えることのできるよう、みんなが公平で無理のない負担で、世代間の負担のバランスを配慮いたし、しかも二十一世紀にもたえ得る均衡のとれた税制改革を、また財政対策を今から構築しておく必要があります。
税制改革案は高齢化社会の到来をどう受けとめて策定されようとしておるのか、承りたいのであります。
次に、現行間接税は、酒税、たばこ消費税、物品税のように個別間接税制度がとられております。このために、例えば物品税がゴルフ用品には三〇%かかっておるのにテニス用品にはどうしてかからないのか、素朴な質問がいっぱいでありますし、また、課税されるものとされないものとの負担が不公平になっております。
また、個別間接税制度では、物とサービスへの課税が極めてアンバランスになっておりますほか、我が国のこの制度は特定の物に高く税金がかかることになっておりますために、結果的に輸入品に対して差別的になっているという批判が外国からあるのであります。
今や、個別間接税制度だけに頼っている国はOECD加盟二十四カ国の中では我が国だけであり、直接税中心の国と言われるアメリカでも、州などでは小売売上税という課税ベースの広い間接税が実施されておるのであります。我が国としましても、今こそ課税ベースの広い間接税の導入を図る必要があると思うのであります。
この観点から、昨年廃案となりました売上税の反省に立ちまして、消費に広く薄く課税を行う消費税を導入しようとすることはまことに適当であり、差し引き二兆六千億円の減税を行うことは経済の順調な今をおいてはその機はないと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
しかしながら、何分にも消費税は初めてのことであり、なじみがない。そのために、納税事務はどうなるのか、転嫁は果たしてできるのか、低所得者はどのような影響を受けるのかなどなど不安、懸念があるのもまた事実であります。この点の払拭、解明が新制度の導入の成否を決するキーポイントだと思われるのでありまして、以下数点についてお伺いをいたします。
まず、納税事務であります。
今回の消費税は、昨年廃案となった売上税とはさまざまな点で異なっておるのであります。中でも大きな違いは、売上税が税額票を使おうとしておったのに対し、消費税は帳簿や請求書等を使って仕入れの税額を計算することでありまして、納税事務は大幅に簡素化されております。また、申告納税は原則として中間申告と確定申告の年二回で済み、簡易課税制度の選択制の導入、事業者免税点制度の取り入れ等が行われておりますほか、非課税品目は、売上税の反省もあって、金融、土地、医療、福祉、教育に限定されております。
しかし、今回新たに納税義務を背負うことになる事業者の方々は大きな不安感を持っているのであります。そこで、親切な手続面の指導やあるいは相談、また広報等がぜひ必要と考えるのでありますが、どのような方針をお持ちでありましょうか。
消費税の導入で大きな問題は、転嫁ができるかどうかであります。
そもそも消費税は、消費に広く薄く負担を求めるものであり、消費者が最終的には負担者となるものであります。そのためには、消費税が円滑に、また適正に転嫁できることでなければなりません。しかしながら、事業者の中には、特に立場の弱い零細企業、事業者の方々は、法律が予定している転嫁が果たして十分に行い得るのでありましょうか、また一方消費者の方では、この際便乗値上げが行われるのではないであろうか、かような不安もあるのであります。
政府案では、この転嫁のため、法令面の手当てとして、消費税の転嫁の方法を決定する共同行為や表示の方法について独禁法の特別措置が講じられているのでありますが、これにより事業者の懸念する転嫁が果たしてスムーズに行えるのかどうか、明確にお答え願いたいのでありますし、あわせて便乗値上げの防止にどう対処しようとしていらっしゃるのか伺いたいのであります。
次は、税率三%の問題であります。
我々は、党内において消費税率を論議するに当たりまして、昨年の売上税の五%では転嫁がなかなか困難であるとして、極力抑制いたし三%の税率を決定いたしたのであります。この法定税率に対して、将来安易に引き上げられるおそれがあるとして懸念する向きが強くありますけれども、政府としてはこの歯どめについてどのように考えているのでありましょうか。
また、消費税の導入により、その分物価が上昇せざるを得ないと思うのでありますけれども、物価への影響をどう見通しておられるのか、伺いたいのであります。
さらには、逆進性の問題であります。
消費税は逆進的な税体系となっていわゆる再配分機能を弱めると指摘する声もあります。生活保護世帯や年金受給者などの低所得層は減税の恩恵に浴することがなく、かえって消費税による負担を直接こうむることになることが懸念されますだけに、これには政治、行政の両面で十分にカバーしていかなければならぬのでありますが、いかがにお考えでありましょうか。
次は、実施時期の問題であります。
今般の衆議院修正において、我が国の取引慣行から見て消費税になじみの薄い実態に対し、その執行に当たって広報、相談、指導を中心として弾力的な運営を行う旨が定められておるのでありますが、この弾力的運営とは具体的にどのような内容のものでありますか、お示しを願いたいのであります。
続いて、税制改革の家計への影響であります。
これについては、各党や研究グループからそれぞれ試算が出ておりますが、概して消費税負担を過大推計している向きが多く見られますのと、改革によって負担が軽くなる点が見過ごされている傾向があるのであります。政府は、今回の税制改革で一般家庭の収支バランス、各世帯ごとの税負担はどのようになる見通しでありますのか、お示しを願いたいのであります。
次は、不公平税制の問題であります。
およそ税制の改革に当たって最も留意すべきことは、公平、公正の確保であります。我々も党内論議においてこの点に最も意を尽くしたところであります。問題は、人により立場により、何が不公平税制であるかということについてそれぞれ受けとめ方が異なる点もあります。今般、衆議院側においてこの不公平税制の是正について真摯に各党協議が行われたことは歓迎すべきことでありますし、我々としてもさらに合意を求めて追求すべきテーマであると心得ておるのであります。
今回の政府案において、医師の税制については社会保険診療報酬課税の特例を見直しましたほか、キャピタルゲインを従来の非課税原則を課税原則に改め、またいわゆるタックスヘーブンについても課税の強化が図られておりますことは、不公正是正の見地から大いなる前進と思います。
しかしながら、最近における証券行政をめぐる問題で、創業者利得の問題や未公開株の公開後売却の問題については多くの批判が出ております。これを踏まえて、さきに衆議院における修正により、これらについて適用税率の引き上げ、申告分離課税の実施が行われることになりましたことは、時宜を得た措置であると評価しなければなりません。
そこで伺いたいのは、納税者番号制度の導入問題であります。
株式等譲渡益に対する所得税の課税を将来総合課税とするには、キャピタルゲインの捕捉、名寄せの徹底を図るための納税者番号制度の導入を進めるべきだとの強い意見がございます。しかしながら、この制度は国民のプライバシーに大きくかかわる問題であるほか、源泉徴収制度の発達した我が国では極めてそのメリットが少ないのではないかとの意見も強いのであります。
今般、衆議院修正により四年をめどに検討することになりましたが、国民感情として受容されるかどうかといった問題もあります。政府としていかがお考えでありましょうか、伺いたいのであります。
その他不公平税制として、みなし法人課税の問題あるいは公益法人、赤字法人課税、土地税制、企業税制等々がありますが、今後政府はどのような手順によりその改善策に取り組むつもりでありますか。
私は、究極するところ、国民の税に対する不公平感を払拭するには、所得、消費、資産に対する課税をバランスよく組み合わせることであると考えておりますし、政府といたしまして今後とも格段の検討を願いたいのであります。
次に、今回の税制改革と地方財政の問題であります。
御承知の地方財政は、地方自治体本来の財源と国からの補助金、並びに交付税交付金によって成り立っておるのでありますが、交付金の基礎である酒税、所得税、法人税の大幅な減税によって交付税交付金は大幅に減額されることでありますし、地方税である電気税、料理飲食税、娯楽施設利用税などが廃止または著しく縮小されるのであります。もとより消費税の一部を地方に譲与いたし、また交付税の対象に取り入れる措置がなされることになっておりますが、果たしてこれで十分でありましょうか。
四全総におきましては、一点集中型から大きく多極分散型の国土総合開発を目指しておりますし、また、本格的な地方の時代を構築していかなければならない時期になっており、また、「ふるさと創生」の具体的な作業にも本格的に入らなければならない時期になっております。
自治大臣は、今回の財源措置でこれで十分であるとお考えでありましょうか、所見を承りたいのであります。
今日、国民の税に対する関心は一段と高まっており、税負担の不公平感、重税感を何としても正していかなければならない強い要請があります。我々は、これらに対処すべく、党の税制調査会におきましても、現行税制の抱える問題点の一つ一つについて公平、公正の基本的理念に立って精力的にかつ慎重に検討いたしてまいりましたし、来るべき高齢化社会を活力あるものとし、世代間の負担のバランスを十分考慮いたし、二十一世紀にたえ得る安定的な税体系の確立を目指してまいりました。
とかく新税には不安がつきまとい、大改革を行う場合には各人により利害得失が出てまいり、手続が面倒であることとか、抵抗が多いとか、あるいは反対の声もあるでございましょう。
しかしながら、現行税制の矛盾を今断ち切り、将来への基礎固めをしておかないと、二十一世紀まであと十二年、このまま進めばサラリーマンや企業等の負担は重くなるばかりであります。長寿福祉社会をより確実なものとして維持するためにも、日本経済に活力を与えるためにも、どうぞ国民各位の御理解と御協力を賜りたいと存ずるのであります。また、竹下内閣は、その命運をかけて大改革の実現に邁進を願いたいのであります。
最後に、リクルートコスモス問題について若干お伺いしたいのであります。
今、本件が大きな政治社会問題化しております。もとより店頭登録前に安定株主対策として特定の第三者に株を譲渡いたしますことは、一般的には純粋な経済行為であるといたしましても、そこに政治家がこれにかかわることについては国民感情では割り切れないものがありますし、これが政治不信を招いていることは残念なことであります。申すまでもなく、国民の政治に対する信頼を確保するには、清潔な政治、規律ある行政の確立が要諦であります。政治家は常に政治倫理の確立を志し、公正で金のかからない選挙の実現を目指すべきであります。そして、この種行為の再発防止の徹底を期していかなければなりません。
総理は今回の事件をどう受けとめられ、今後の対策を講じようとしておられるのか、御所見を承りまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/16
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017・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず最初に、税制改革の基本理念について御質問がありました。種々御意見にありましたとおりであります。
現行税制は、経済社会の著しい変化に対応し切れておりません。税負担が給与所得を初めとする個人の稼得所得に偏って、他面その裏腹として消費課税のウエートが著しく低下し、こうした中で納税者の重税感、不公平感が募ってきておるなどさまざまなゆがみが目立ってきております。
今後、人口の高齢化が世界に例を見ない速度で進展していく状況のもとにおきまして、現行税制のままでは国民の負担は、働き手世代の稼得する勤労所得に対する直接的な負担、これに一層偏ってまいります。その結果、納税者の方々の重税感、不公平感が深刻化して、勤労意欲、納税意欲が阻害されるといった事態を招きかねないなど、税制のゆがみが一層拡大していくものと考えられます。
こうした状況を踏まえるならば、所得課税において負担の公平を図りますとともに、税体系全体としての実質的な負担の公平を保つという観点からいたしましても、所得課税の負担を軽減し、消費にも広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化することなどによりまして、国民の皆様方が公平感を持って納税し得るような税体系を構築していく、これが何よりも必要であります。
そこで、今次の税制改革は、こうした状況に対処いたしまして、将来の展望を踏まえながら、国民の租税に対する不公平感をぬぐい去りますとともに、所得、消費そして資産等に対します課税を適切に組み合わせることによりまして均衡がとれた税体系を構築していく、これが何よりの目的である、まさに御指摘のとおりであります。
また、今次の税制改革は、租税は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識のもとに、税負担の公平を確保し、税制の経済に対する中立性を保持し、また税制の簡素化を図る、こういう基本原則に立っておることもお説のとおりであります。
政府としては、こうした認識のもとに税制全般にわたります改革案を提案しているところでございまして、抜本的な税制改革の実現に向け政府としても懸命に取り組む所存であります。
インフレなき持続的成長という環境の中でこそ、まさに二十一世紀へ向かっての税体系を構築していく時宜を得た今であると、このように考えておるところであります。
さて次に、行革に対しては瞬時たりとも停滞はまかりならぬと、お説のとおりであります。
そこで、新行革審でことしの二月から公約規制の在り方に関する小委員会が設けられました。ここで検討が続けられ、先般「公的規制の緩和等に関する報告」を取りまとめられ、そして審議会に報告されたところであると承知しております。現在、審議会としてその報告をもとに十二月一日の答申決定を目指して鋭意御審議中のことでございます。
答申が提出されますならば、政府としてはまさにこれを最大限に尊重いたしまして、速やかに具体化の方策を決定すべきである、このように考えております。
高齢化社会等の角度からいろいろお触れになりました。
本格的な高齢化社会を迎える二十一世紀におきまして公的年金制度を長期的に安定したものといたしますためには、支給開始年齢の引き上げ問題、これは避けて通れない課題でありましょう。
本格的な高齢化社会の到来を迎え、高年齢者の方々が安んじて生活を送れますようにするためには、年金政策とともに高年齢者の雇用の場を確保していくことが重要な課題である、申すまでもございません。
そこで、政府としては、高年齢者の多様な就業へのニーズに対応しながら、六十五歳程度までの雇用確保を目標とする継続雇用の推進、そしてまた高年齢者の円滑な再就職の問題に対する対応、生産能力開発の理念に立った教育訓練の振興、これらの施策を総合的に進めていかなければならないと認識いたしておるところであります。
さて、消費税等について、いろいろな角度から御懸念について詳細にお触れになりました。
まず、私からは税率の歯どめの問題について申し上げます。
経過でもお述べになりましたように、これはいろいろな議論の末、消費税の税率は法律に規定しております。したがって、まさに国会こそが税率引き上げについての最大の歯どめである、これは原則であります。
そこで、税率を引き上げるかどうか、こういう問題につきますと、結局は財政需要と税負担の関係などについて、将来の国民がそのときどきに与えられた条件のもとで選択する問題でありましょう。
しかし、今もお述べになりましたように、長期間にわたる議論の末コンセンサスの得られた三%という水準であります。これを提案いたしております私どもとして、その間の事情を熟知しておりますだけに、安易にこれを上げるなどということは到底考えられないものであるというふうに私は思うのであります。
そして、行財政改革、これを引き続き粘り強く進めていくというのは当然のことであると思う次第であります。
そして、税制は新税に対しては不安が伴うものである、したがって全力を傾けてこれが円滑な執行に努力しろとの御鞭撻を含めたお尋ねがございました。
私は、比較的日本になじみの薄いこの新税というものが適切に機能し、かつて新税はすべて悪税なりという言葉がありましたが、これが国民の中に理解を得られることによって、これまた良税に変化するということを心から期待いたしておるものであります。
さて、最後にリクルート問題についてのお尋ねがございました。
私は、いつも申し上げますが、まず大別して証券取引上の問題、課税上の問題、刑法上の問題、そして道義上の問題があると整理いたしております。
証券取引上の問題については、これは関係審議会等、まさに今後とるべき方策が検討されておるさなかであります。
また、税法上の問題につきましては、株式のキャピタルゲイン課税に関する政府原案に対し、衆議院においてこれまた所要の改正が追加されてまいりました。総合課税主義の方向に向かってはいまだ距離があるにいたしましても、私は現実的な対応であると考えておるところであります。
刑事上の問題につきましては、これはまさに検察当局が適切に対応しておるものと確信をいたしております。
道義上の問題につきましては、私自身を含め、ひっきょうお互いの政治倫理綱領を反復熟読いたしまして、まず一人一人が身を正していくべき必要があろうかと思う次第であります。これが具体化の問題につきましては、結局政治改革の問題にも帰するのではなかろうかと思います。公職選挙法、政治資金規正法、これらの問題と同時に、いわば道義的な問題が起こらないような諸制度というものに政治改革の中でいかに取り組んでいくか。これは政府のみならず、政治家として急ぐ今後の課題として取り組むべき課題であると、このように考えておるところであります。
諸般の問題については、担当大臣からお答えをいたすことにいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/17
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018・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 総理大臣のお答えと重複を避けまして、補足してお答えを申し上げます。
まず、将来の国民負担の問題でございますが、やはり高齢化社会が進んでまいりますと国民負担は長期的にはある程度上昇するということは恐らく避けられないと存じますけれども、しかし、それをどの水準にするかということは、結局受益と負担、給付と負担とのバランスを将来国民がどういうふうに選択されるかということにかかっていくというふうに思います。御指摘のように、ただ、現在から見まして、欧米先進国のような水準にまでいくことは問題があるのではないかという臨調のお考え、そのようなことがやはり今の一つの目標として議論されておるということであろうと存じております。
次に、財政の将来の再建のことにつきまして御質問がありまして、このたびの税制改正が御指摘のように二兆六千億円というネットの減税になりますので、この点は財政の将来に一つの難しい問題を投げかけておるわけでございますが、しかし、やはり六十五年度には特例公債を税却したいという目標は、現実の目標として私ども今、六十四年度予算編成に当たりましても考えておりますし、何とか達成いたしたいと考えております。
ただ、それが達成いたされましても、もう既に発行されておる国債から生じます国債費、これはなかなか下げられないわけでございますので、一般会計に大きな重圧になります。それ以外に、御存じのように各方面にいろいろ御負担を願っているものを先々解決しなければならない問題もございますので、なかなか財政は楽にならない。ともかく国債費のシェア、一般会計に来る国債費のシェアをできるだけ縮小してまいるという長い努力を続けなければならない。そのためには新規発行をしないでいくということ、そういう努力、歳出歳入面で両方の努力をいたさなければならないと思います。
次に、転嫁の問題について御指摘がございまして、これは私どもが一番心配をしておる問題でございますし、法律にもその旨が記されております。国の務めも記されておるわけでございますが、地方でもこれについての関心が非常に高うご
ざいまして、したがいまして、先般衆議院におきまして、円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務あるいは必要な施策を講ずべき国の義務をさらに修正により明確化されたと。私どもとしては、その御趣旨に従いまして、転嫁方法や表示方法についての共同行為についての独禁法の例外であるとか、あるいはおっしゃいますような便乗値上げにつきましては、下請代金支払遅延等防止法の活用であるとか、行政を最大限に動員いたしまして御心配のないようにいたしたいと考えております。
なお、物価への影響につきましては、経済企画庁の試算によりますと一・一%程度、六十四年度から六十六年度までは一・二%程度と推算をいたされております。
それからいわゆる実施後半年間は弾力的運営をせよという衆議院においてなされました修正に関してでございます。
四月一日に税法が施行されますと、その日から納税義務が発生をいたします。したがいまして、最初の半年間はいわゆる試運転であるというような意味ではございません。法律は正式に施行されるものと考えております。ただ、この御決議にもありますように、納税者も国税当局もあるいは関係者皆さんが初めてのことでありますから、いろいろふなれな点があろうということは想像にかたくございませんので、その点では最初の半年の間運営に十分気をつけていく必要があるということがこの修正の趣旨と考えております。
すなわち、導入当初の間は、執行に当たりまして文字どおり広報、相談、指導を中心とした弾力運営を行ってまいるつもりでございます。納税者に誤りがあったりあるいはミスが発見されました場合、悪質な不正事案はこれは別でございますけれども、一般にはその誤りやミスにつきまして助言をして訂正を求めてまいりますとともに、その規模なり態様に応じましてそれに対する対応も適切に行っていきたいと思っておりまして、具体的な運営の基準につきましては今後早急に詰めてまいりたいと考えております。
それから納税者番号につきましてのお尋ねがございまして、これにつきましても株式のキャピタルゲインの課税に関して衆議院で修正が行われました際、いわゆる見直しに関連しまして納税者番号に御言及がございました。
その御趣旨を体してまいりたいと思いますが、ただいま政府におきましては、御承知のように税制調査会で納税者番号等検討小委員会が極めて精力的にこの仕事を検討しておられまして、ただいま問題になっておりますのは、そのようなことをした場合に専ら税務執行上だけの制度として考えていいのであるか、あるいは仮にそれが他の分野に広がった場合に、特に民間分野におけるプライバシーの保護等をどのように考えたらいいか等々を検討しておられまして、ただいま、この結論を政府としても待ちまして、これにつきましての考えを進めてまいりたいと思っておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣梶山静六君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/18
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019・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) お答えいたします。
税制改革に伴う地方財源の措置についてでありますが、御指摘のように、多極分散型の国土を形成するためには、地方公共団体が地域特性を生かした魅力ある地域づくりを積極的に進めることが求められており、そのためには地方一般財源の一層の充実確保を図っていくことが必要不可欠であると考えております。
今回の税制改革により生ずる地方税及び地方交付税の減収に対しましては、消費税の収入額の五分の一相当額を消費譲与税とし、また消費譲与税を除く消費税の収入額の二四%相当額を地方交付税として確保し、税収減の状況や財政力等に配慮して譲与税や交付税の配分を適切に行いながら、地方財政の運営に支障の生じないように措置することといたしております。
以上です。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/19
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020・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 福間知之君。
〔福間知之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/20
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021・福間知之
○福間知之君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま趣旨説明が行われた税制六法案に対して、総理並びに関係大臣に質問を行うものであります。
消費税という名の大型間接税の導入を柱とするこの税制六法案は、衆議院において強行採決を重ね、かつて前例を見ない変則かつ異常な形で修正議決され本院に送付されてまいりました。本案件は、衆議院の税制問題等に関する調査特別委員会において、法案そのものの総括質疑は三日間行われただけであり、今月十日、自民党単独で強行採決されたのであります。
総理や大蔵大臣は、これほど時間をかけて審議した法案はない、議論はほとんど出尽くしたなどと白々しくも公言していますが、徹頭徹尾、事実に反する言動であり、多数による強行採決を正当化しようとする極めて理不尽な言い分であると言わざるを得ません。
政府・与党首脳は審議時間は十分だったと言われるが、税制改革論議の大前提であるところの不公平税制是正の問題、税制改革に対する基本的な考え方についての論議の段階であったのであり、それとてまだまだ議論が尽くされてはおらず、結論も出ていない状況でありました。不公平税制の是正はもちろんのこと、将来の高齢化社会の展望についても福祉充実に逆行する年金支給年齢の六十五歳への引き上げが示されたにすぎないのであります。
また、今回も、昨年の税制改革法案と同様に、新税によって国民に広く負担を求めようとする税制法案であるにもかかわらず、重要な部分が政省令に任されているため、我が党は政府が法案成立以前に既に準備しているであろうと思われる政省令案の全文を要求したのでありますが、到底政省令の案文とは言えないものが委員会に提出されたのが今月八日でありました。
ですから、衆議院の委員会では、税制六法案の細目と照らし合わせて消費税法案などが議論されたことは全くないのであります。この一事をもってしても、十分な議論がなされたなどとは到底言えるものではありません。税制法案の全体を論議するための前提条件さえ全く整っていない状況だったのであります。
にもかかわらず、自民党が衆議院において強行採決を繰り返したのは、税制を仕上げることで政権の延命を図ろうとする竹下内閣の妄執にほかならないと断言できるのであります。このような税
制改革は決して国民に信頼を得られないことを肝に銘ずべきであります。
したがって、我が党が委員会強行採決を白紙撤回し、法案を委員会に差し戻すよう主張したのは全く正当なことでありました。その後衆議院では、リクルート問題調査特別委員会の設置、リクルートコスモスの未公開株譲渡リストの公開、江副氏、加藤氏、高石氏三名の証人喚問の約束と若干の法案修正によって自民党単独は免れたとはいえ、極めて変則的で異常な衆議院通過であったことに変わりはありません。
このことは、シャウプ勧告以来四十年ぶりの歴史的とも言われる税制論議と、すぐれて国民の理解と合意を必要とする税制審議というものを破壊する暴挙と言わざるを得ません。
衆議院を通過した際の竹下総理や宮澤大蔵大臣、そして自民党首脳の笑顔に憤りを覚えたのは私ひとり、我が党だけではないのであります。衆議院通過をもって総理はほとんど税制法案は山を越したかのような感想を漏らし、今国会での成立に余裕を持ち始めてさえおられるようでありますが、総理には大多数の国民の怒りの声が聞こえないのでありますか。いまだなお国民の三分の二以上は消費税に反対しており、衆議院でのごり押しに賛成している人は極めてわずかにしかすぎないのであります。総理のもとには、政権の構造汚職であるリクルート疑惑に浸ったままで正当な議論を封殺する数の政治への批判が必ずや寄せられているはずであります。
我が党は、公約違反である消費税の撤回か、さもなければ衆議院解散総選挙で国民に信を問うべきであると主張してきました。だが、残念ながら、本日こうして本院での税制改革の議論が開始されたわけでありますが、私はこの場でもう一度問いただします。
総理、あなたは国会のみならず国民に対する背信行為を続け、憲政史上に一大汚点を残して、あくまでも税制法案の成立を強行しようとするのでありますか。それとも、潔く法案を撤回し、歴史にさん然と名を残す考えは毛頭持ち合わせてはいないのでありますか。延長国会の会期はあと三日、今月二十四日で、本院において十分な論議などできようはずがないではありませんか。衆議院と同じように強行突破を図ろうとしても、今国会中に法案を成立させることは不可能であります。よって、総理、潔くあきらめるべきではありませんか。
そもそも今回の税制改革法案は、議論の初めから異常なものでありました。
それは、消費税という名の大型間接税の導入が、昨年国民の総反対によって廃案となった売上税を中心とした中曽根前内閣の税制改革とほとんど変わるところがなかったからであります。減税や間接税に技術的な修正を多少施したからといって、その基本的性格は、中曽根内閣当時の選挙公約、さらには大平内閣当時の国会決議に反することは明らかであります。
総理は、内閣がかわったとか、国会決議は財政再建を目的にした一般消費税についての否定だとか、売上税の廃案で公約は洗礼を受けたとか、間接税論議の機は熟したなどと述べ、政府・自民党の国民に対する約束をほごにする考えのようでありますが、大型間接税は導入しないとした選挙公約、国会決議などは全くクリアされてはおらないのであります。それどころか、リクルート疑惑という巨悪、根深い腐敗構造を考え合わせて、国民は内閣総辞職、衆議院の解散総選挙を求めているのであります。
総理、あなたは、公約違反の消費税の導入を柱とする税制改革の実現のためには、少なくとも与野党の合意が必要不可欠であり、その合意すら成立しないとすれば、選挙で民意に問うという民主政治の基本を心得ておられるのでしょうか。我が党は、民主政治の常道としても、また国の根幹をなす税法というものの重みからいっても、本法案の強行成立を許すことはできないのであります。
今回の衆議院における強行採決の繰り返しは、またリクルート隠しでもあります。
衆議院本会議での税制法案の採決に至る過程で、リクルート問題調査特別委員会の設置、株式譲渡先リストの公表、江副、加藤、高石三氏の証人喚問が決定されておりますが、これは税制法案の衆議院通過の取引材料とされた感があり、政府・自民党が疑惑解明に本気で取り組む姿勢のあらわれであるとは到底考えられないのであります。一事不再議にすらもとる新たな特別委員会の設置は、リクルートの解明ではなく、税制法案審議との切り離しに本当のねらいがあったのではないですか。
税制改革案がリクルートに汚染された税調、政府・与党の関係メンバーによってつくり上げられたことを思うとき、私は、法案審議とリクルート解明はまさに不離一体のものであるばかりか、これに深くかかわった総理、大蔵大臣には税制改革を提案する資格なしと断ぜざるを得ないのであります。
今回衆議院で公表された疑惑リストは、我が党の調査を初め既に白日にさらされた政官界関係者に限られており、目新しいものではありませんでした。法務大臣は御丁寧にもこれ以上のものは出ないとコメントされたが、果たして弁護士、会社役員、文化人、学者などとして名を伏せられた者の中に、政治家とかかわりのある者、政府審議会などで職務権限上問題となる者、当時は会社役員でもその後政官界関係者になった者などがいないと断言できるのですか。
法務大臣の発言は、その職責上重大で、責任問題にもかかわるものであり、ここで大臣の真意を問うものであります。
我々は、このリストの信憑性を疑い、また、このリストですべてが尽くされているとは到底思えないのであります。現に、リスト公表後、田中角榮元首相の当時の秘書が未公開株二万株の譲渡を受けていた事実が明らかになり、その他にも名前が挙がっており、リストの信憑性は既に崩れ去っているではありませんか。
ただいま衆議院のリクルート特別委員会における江副氏の証言で、警察関係にも譲渡を受けた者がいることが判明いたしました。リストの信憑性は既に崩れ去っているではありませんか。速やかにリストの伏せ字の部分を起こすことはもちろん、ルートの違う他の事実も調査し、公表することを要求するものであります。
また、証人喚問が決定されたのはよろしいが、法案が衆議院を通過したことによって証人喚問が形式だけのものに終わってしまうのではないかと危惧する声も出ています。何にも増して、総理自身のリクルート疑惑解明に対する態度が問われて
いるのであります。法的責任はおくとしても、リクルート疑惑に関しては、総理や大蔵大臣などが、当事者でありながら、自分は知らなかったと言うだけで、政治的道義的責任を国民の前に何も明らかにしないのは極めて遺憾であります。みずからの責任をあいまいにしたままで、公正を重んずべき税制、しかも消費税によって大衆課税しようというのは余りにもずうずうしいと言わねばなりません。これでは国民はますます政治に対する不信、税制に対する不信を募らせるでありましょう。潔く身を清めてから税制改革を持ち出すのが筋ではありませんか。
総理、大蔵大臣、そして現、元閣僚あるいは党幹部の皆さん、あなた方はリクルート疑惑の解明に本気で取り組む気構えがあるのですか。今、世間ではリクルートのことを利に狂う人という当て字で呼ぶ向きもございます。言い得て妙じゃございませんか。政治的道義的責任を潔くとられる考えは、総理、大蔵大臣、ないのでございますか、はっきりとお答え願います。
次に、税制改革論議の前提となる基本的な認識について質問します。
ただいまの法案の趣旨説明を伺いましても、衆議院での議論を聞いておりましても、そもそもなぜ今税制改革なのか、全く疑念が晴れないのであります。私は、いまだに多くの国民が私と同じような疑問を持っていると信ずるのであります。
政府は、産業構造、就業構造の変化、所得の平準化、消費の多様化・高度化、経済取引の国際化等の経済社会の変動に現行税制は対応できていないため税に対する国民の不公平感が拡大している、それを解消するために税制改革が必要であると説明しているようであります。そのためには所得税、法人税を中心とした直接税に偏重した税制を改め、所得、消費、資産課税等で均衡のとれた税制の構築が必要であるとし、所得減税と若干の資産課税の改正を伴いながらも、とどのつまりは消費税の導入が導き出されているのであります。
しかし、産業・就業構造に現行税制は対応できないと言いますが、具体的には何を指しているのか、対応できないとしたらその原因は何か、なぜ消費税でなければならないのか、そのことは決して明らかではありません。
所得の平準化が強調されてはおりますが、戦後の混乱期と比較すれば平準化しているのは当たり前の話で、問題なのは、ここ十年余り所得格差は縮小どころかかえって拡大傾向さえ見られることです。また、ここ二、三年の土地や株の高騰による資産格差の拡大は著しいものがあります。これは、先般公表された国民生活白書を見ても、また衆議院に提出された収入階級別の貯蓄残高の比較に関する政府資料においても明らかであります。このような情勢にあるとき、なぜ意図的に所得の平準化を持ち出すのか理解できないのであります。
総理や大蔵大臣は、好景気が続き、所得格差は趨勢的に縮小していくと言っておりますが、それは余りにも楽観的に過ぎます。こんな時期に所得に対して逆進的な課税である消費税を導入したら、所得格差がますます拡大することは間違いないではありませんか。不公平税制の是正が税制改革の目的とも言われておりますが、消費税そのものが不公平税制であると言えるのであります。衆議院で多少の修正はあったものの、税制全般を見ても、財政運営全体を見ても、確実に財政の所得再配分機能が弱められようとしているのであります。こうした税制改革の前提となる基本的な認識においても、いまだ明確な回答は示されていないではありませんか。
以上指摘しました疑問点につき、総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
次に、消費税そのものの問題点について何点かお尋ねいたします。
所得に対して逆進的な消費税そのものが不公平を拡大する税金であることは今さら申すまでもありませんが、事業者に配慮して帳簿式の付加価値税にしたこと、また限界控除や簡易課税を大幅に認めたことなどから、最終的な税負担者である消費者からすれば、一段と公平、公正さを欠いた税金になっていると言えます。
そこで、修正でも簡易課税などの問題点が指摘されているのでありますが、その改善方向、方途は全く不明瞭であります。政府の提出資料によっても、業種別、企業規模別の付加価値率、粗利益率に極端な相違が存在しており、簡易課税によって不公平、不公正が拡大することは明らかではありませんか。
また、修正で、法律施行後半年間は税務執行を弾力化するとされているが、これはいかなる意味でありますか。一部には、施行期日を半年延長したことと同じであるとも言われておりますが、それは事実なのでありましょうか。この点について、大蔵省は既に異論を表明しているではありませんか。先ほどの大蔵大臣の答弁でもいま一つ理解することは困難であります。
修正では、また、低所得者へ配慮した寝たきり老人減税の拡充、生活保護など歳出面での手当て策などが盛り込まれたと言われておりますが、とすれば、消費税の欠陥を塗り隠すためのいかにも小手先の、場当たり的な対処策であるという印象が強いのであります。金を余りかけず、福祉への配慮を見せかけようという意図が明らかで、政府にとってはまことに好都合な譲歩だったのではありませんでしょうか。しかし、そうすることによって、かえって消費税の矛盾点が際立ったことも事実ではありませんか。
また、消費税における大きな問題点は、総理も認めるように、事業者の税負担の価格への適正な転嫁ということであります。
我が国の産業構造は、生産、流通とも大変複雑であり、また過当競争とも言われるほど事業者間の競争が激しい実態にあります。このような中で大型間接税を導入しても、転嫁が円滑に行われないことは明らかであります。例えば、過当競争の中で消費税の価格転嫁の最前線に立っている中小小売業者や、親企業に対して価格交渉力などの面で弱い立場にある下請業者がこぞってこの消費税に大きな懸念を抱いていることは、まさにこの問題があるからであります。消費税という名称とは反対に、第二法人税・事業税となることを強く危惧しているからであります。総理はこのような中小業者の声にどのようにこたえるのでありますか、御答弁をお願いします。
また、消費税法案では、この価格転嫁の困難性に配慮して独占禁止法のカルテル禁止の緩和措置が打ち出されているのでありますが、これが逆に大きな矛盾をはらんでいるのであります。それ
は、便乗値上げの余地を拡大する危険性とともに、諸外国に日本の取引慣行に対する一層の不信を与えるおそれがあるということ。また、統一的販売価格の決定といった範囲を超えた価格カルテルが行われるおそれがありはしないかということ。消費税の転嫁が容易な大企業にまで価格カルテルを認めることになり、競争上弱い立場にある中小企業が不利な結果になりかねないのではないかということ。さらに、一定期間のはずのカルテルが業界に定着し、カルテル依存体質を強化することになるのではないかなどであります。
以上、簡単に見ただけでも、消費税の矛盾は根深く、小手先の修正で対処できることではありません。審議を尽くして問題点をさらに明らかにしなければならないのですが、総理並びに大蔵大臣の御答弁を求めます。
今回の税制改革法案におきましては、衆議院での修正を踏まえても、不公平是正は全く不十分であると断言せざるを得ないのであります。
キャピタルゲインの課税強化については、リクルート疑惑に関連させて未公開株の売却益に対する課税強化策が講じられただけで、資産格差の拡大の現状に照らして見れば、抜本的な改善策と言えるものではありません。分離課税の拡大によって、かえって基本的には不公平を助長することになったとも言えるのではありませんか。株式譲渡益を原則非課税から原則課税にすることになったからといって、不公平が解消されるというものではありません。
四年後の利子課税の見直しに合わせてキャピタルゲインについても総合課税への移行を実現するとか、納税者番号制については政府税制調査会で検討しているといったあいまいな言いぐさで逃げるのではなく、例えば、資産取引については創意工夫を凝らした番号制によって所得の捕捉と総合課税を徹底するといった明示があってもいいのではありませんか。
また、抜本的な土地税制の改革、不公平税制の焦点とされてきた政治家の資金集めパーティーへの課税、医師優遇税制、宗教法人課税、みなし法人課税などの改革について、具体的改善の方向を明示するぐらいの踏み込みがなければ国民の納得を得ることは到底不可能であります。消費税に反対する声とともに、不公平税制の是正は全く不十分であるという圧倒的な世論があるのでございます。
法人税については、経済活動の国際化の進展に伴い、法人税負担率の格差によって産業空洞化が危惧されるとして、基本税率の引き下げが行われようとしております。しかし、国際比較を行うのであれば、課税ベースの相違をも念頭に置かなければなりません。アメリカの場合でも、法人税の表面税率を大幅に引き下げましたが、投資税額控除の廃止など特別措置の見直しによって課税ベースの大幅拡大を実施しているのであります。単に表面税率だけを比較するのではなく、実質的な税負担をも考慮に入れるべきであります。
大蔵省は、今回の法人税の基本税率を引き下げるに当たって、外国税額控除の適正化や配当などについて課税の適正化を行っていると説明しているようであります。さらに、ここ二、三年のうちに賞与引当金、退職給与引当金、貸倒引当金の圧縮などによって三千億円の増収を予定していると答弁しておりますが、そうであるならばなぜ法案に盛り込まないのか、余りにも不自然ではありませんか。
不公平税制の是正について国民の合意がなければ消費税の導入など到底認められないのではないかと思いますが、不公平税制の是正に対する総理及び大蔵大臣の決意をお聞かせ願いたい。
次に、今回の税制改革は、地方財政に直接的な悪影響をもたらすことはもちろん、税源の配分において地方自治を大きく後退させるものであることが明らかであります。
地方財政への国の不必要な介入、補助金の一律カットなど地方財政への圧迫が続いているのでありますが、今回の税制改革もその基本方向を継承する内容となっております。本来、福祉、高齢化社会への公的対応に対して地方自治体の役割は極めて重要であり、その充実を目指すのであれば、当然、国と地方との財源配分を含めた地方財政の充実を図るべきなのですが、実際はこれに全く逆行しているのであります。消費税を中心にした今回の税制改革については、地方自治の見地からすればまさに有害無益と言わなければなりません。
歳入の面では、住民税減税、法人税と所得税の減税による交付税の収入減、法人税の基本税率の引き下げに見合う法人事業税の減収、さらには消費税と現行地方間接税との調整、つまり電気税、ガス税、木材引取税の廃止、料理飲食税、たばこ消費税、娯楽施設利用税の調整などによって大幅減収になるのであります。一方増収は、消費税導入に伴う消費譲与税の創設、消費税の交付税算定税目への算入、その他株式譲渡益課税や法人税制の見直しなどによって行われるのだが、差し引き大幅減収になることは必至であります。
それに加えて、歳出面において地方財政も消費税の負担を強いられるのであります。政府提出の資料によれば、地方財政計画全体で消費税負担額は六千億円に達すると見込まれております。いささか過小見積もりとは思いますが、ともあれ、これは自治体や公営企業が行っている事業の料金が値上がりすること、つまり住民負担がふえることを意味しております。上下水道料金の値上げ、公営住宅の家賃値上げ、自治体病院の統廃合など深刻な問題が続出するのではないでしょうか。
つまり、今回の税制改革が自治体に及ぼす悪影響は放置することができないほど大きなものであります。課税自主権が侵害され、自主財源が剥奪されて一般財源が不足し、公債依存が一挙に高まる危険性があります。消費税によって歳出増も余儀なくされ、その結果、住民へのサービス低下、住民の負担増、福祉の後退など深刻な事態が生じかねないのであります。
毎年悪化を続ける地方財政に対して、地方交付税算定税目の拡大、交付税率の引き上げが要請され、地方自治体の財政構造の変化に対応できる財政調整制度の確立が待たれている状況なのではありませんか。また、補助率削減措置についても、政府が約束どおり廃止を明確に示すことが急務なのではありませんか。税制改革が地方財政に与える影響、それへの対処策について、総理並びに自治大臣の明快な答弁を求めます。
これまでにもるる強調してまいりましたように、我が党は、リクルート疑惑の解明、公約違反問題の解決、不公平税制の徹底的是正、防衛費優遇の停止など財政運営の抜本的転換、高齢化社会の進展における福祉充実に向けた将来展望の明示
などが、税制改革の不可欠の前提条件ではないのかと考えているのであります。リクルート疑惑については、証人喚問を形式的にせよ実施すれば税制改革法案を成立させてもよいというような二者択一の問題でもなければ、いわんや法案成立のための取引材料でもないのであります。また、小手先の法案修正では、我が党はもちろんのこと、国民の合意を得ることは全く不可能であります。
総理は税制改革法案の今国会での成立にあくまで固執しておられるが、それは政権維持にとらわれる余り、国民、国家をないがしろにするものと断じざるを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/21
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022・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 福間君、時間が超過しております。簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/22
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023・福間知之
○福間知之君 (続)多くの国民は、このような重要な税制改革法案をなぜこの臨時国会で無理を重ねて成立させなければならないのか、全く理解できないのであります。
総理、あなたは、みずから進んでリクルート疑惑の解明もせず、国会での究明も待たず、法案の審議も尽くさず、民意も問わず、ひたすら数と手練手管の竹下流政治手法によって法案成立を目指しておられるようだが、仮にそのようにして事態を乗り切ったとしても……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/23
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024・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 福間君、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/24
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025・福間知之
○福間知之君 (続)それでは、国民の政治に対する信頼はもちろん、納税者の税に対する信頼も根底から失われてしまうでありましょう。納税者の信頼は税制の命であり、それを失うことは国家百年の損失とも言うべきことであります。日本社会党は、そのような暴挙には断じてくみすることはできません。
最後に、リクルート疑惑の徹底解明と政治責任の明確化、さらに手続、内容ともに重大な欠陥を持つ消費税法案廃案のため我が党は全力を挙げることを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/25
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026・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 大部分の時間が、私ども体制側にある者に対する、批判する立場からの御鞭撻でありました。そして、十年間にわたる長い歴史をひもとかれまして、それぞれの問題点をすべて総括されたかの感がございます。
そこで、まず改革の必要性、これは申すまでもないところでございます。いかにして、国民の皆様方が公平感を持って納税し得る環境、そしてまた二十一世紀へ向かっての所得、消費、資産、これらの適正なる税体系を構築していくかということであります。
しかし、御指摘にございましたとおり、昭和五十四年からの決議問題にもお触れになりました。まさに、国民福祉充実のためには安定した財源が必要である。したがって、いわゆる一般消費税(仮称)によらずして、まずは行政改革を行い、歳出の節減合理化を行い、そして税制の抜本改革を行ってこれに当たるべきであるという筋道を、時間をかけてお互い議論の中で今日歩んできたわけであります。
そしてまた、衆議院総選挙の際、あるいはまた前総理が昭和六十年、予算委員会等で発言された問題、これは時の内閣の総理大臣としての発言でありますので、その重みは十分に承知いたしておるところであります。そして、これらの発言の経過を踏まえていわゆる売上税法案を提出いたしました。しかし、それは結果として廃案になりました。
これらの反省の上に立って、議論のすべてを出し合って、国民各界各層の御理解を得られるよう衆知を絞った苦心の策がまさに今次の税制改革であります。したがって、それら十年の歴史の延長線上に存在する、このように御理解をいただきたいと思っておるところであります。
さて、また、この税制法案そのものにつきましては、まさにこの税制改革を御審議賜りたいがために七月十九日に臨時国会の召集をお願いした次第であります。自来、四カ月を経過しました。そうして、今まさに参議院において慎重かつ集中的な御審議がいただけたばかりであります。
したがって、選挙によって与えられた任期はこれからも大切に大切にすべきものだ、このように考えておるところであります。
次に、リクルート疑惑の解明ということでお話がありました。
先ほども申しましたが、大別して証券取引上の問題、課税上の問題、刑事上の問題、道義上の問題があると整理いたしております。
証券取引上の問題は、まさに審議会でこのそのものを議題として御審議いただいているさなかであります。
また、課税上の問題につきましては、政府原案に対して、今御指摘にもありましたように、総合課税への道は若干の距離があることは承知いたしておりますが、所要の改正が追加されたところであります。
また、刑事上の問題は、検察当局等において適切に対応されておるものと信じております。
道義上の問題につきましては、私自身を含め、ひっきょう一人一人が心して倫理綱領等を反復熟読すべきものである、このように考えておるところであります。
さて次に、いよいよ税制の問題について御意見を交えての御質問がございました。
そのいろいろな懸念の中で、私からは転嫁対策について、今、福間議員は中小業者の声にこたえよ、こういうお尋ねでありました。
消費税は、消費一般に広く薄く負担を求めるものでありまして、消費者がその最終的な負担者となることが予定されておる間接税であります。事業者に負担を求めるものではないということからして、まさに円滑、適正な転嫁、それが前提の上において仕組まれた税制そのものであります。
したがって、政府案におきましても、円滑かつ適正な転嫁を実現するために、「消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格」を明記して、「行われるよう努める」、あるいは「措置を講ずる」よう努める、たしか税制改革法十一条でございましたか、明記いたしておりましたが、これまたさきの衆議院本会議において、円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務、また必要な施策を講ずべき国の義務、これを明確化する議員修正が行われたところであります。
したがって、このような趣旨を踏まえて消費税の円滑かつ適正な転嫁ができるよう一層努力をすべきものであると考えておるところであります。
さて次に、それに関連して、価格カルテル等にお触れになりました。
今回の独禁法に関する特別措置は、消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為や、市場
における価格形成力の弱い中小企業に特に配慮する観点から、中小企業等に限りまして消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為を、公正取引委員会への届け出を要件として独占禁止法に違反することなく行えるようにする旨のこれは暫定的なものであります。
これらの措置は、あくまで消費税の円滑かつ適正な転嫁のため限定的に講ずることとしたものであります。もとより、便乗値上げにつながるような本体価格の価格カルテル行為、これは厳に禁じられておるところでありまして、公正取引委員会は法の厳正な運用を行っていかれるであろうと確信をいたしております。
次に、不公平税制問題についてお触れになりました。総合課税への段階的移行でありますとか、我々が平素議論をしておる問題についてもお触れになりました。
税制への納税者の信頼の基礎となりますものは、負担の公平であり、今次の税制改革においても、公平の原則を改革に当たっての最も基本的な理念の一つとして検討に検討を重ねてまいりました。
政府としては、今回の改革案の中で、いわゆる有価証券譲渡益の原則課税化であるとか、社会保険診療報酬課税の特例の見直し、法人の土地等の取得にかかわる借入金利子の損金算入の繰り延べ、これらの是正策を明らかにしているところでありますが、なお、さらに、この問題につきましては、去る九月八日からいわゆる与野党協議というものがたびたび重ねられてまいりました。したがって、不公平税制是正の共同提案に対します自由民主党の考え方が示されたと承知をしております。
この協議及び国会における議論等を踏まえながら、衆議院においてはさらに修正が行われてまいりました。したがって、今後の問題、公党間の協議の場において与党から回答をしました事項、これを踏まえて適切に対処してまいるべきことは当然のことであります。
さらに、自治体への問題にお触れになりました。
私からは補助率等の問題についてお答えをしておきます。
補助金等に係る暫定措置の期間終了後における国庫補助負担率の取り扱いにつきましては、これまでの経緯、私自身が大蔵大臣でありましたときに取り交わした文書であります。そして、それの性格を踏まえまして、諸情勢の変化、国、地方の役割分担、財源配分のあり方等を勘案しながら適切な対応をしてまいりたいと考えます。
税制改革の地方財政への影響につきましては、とにかく消費税の税収の五分の一、これをいわゆる地方団体に譲与する、また、消費譲与税分を除く消費税税収の二四%を新たに地方交付税として地方団体に配分する、これらの措置をとっておるところであります。したがいまして、私は、当面の問題については地方財政の円滑な運営に支障は生じないというふうに考えておるところであります。
将来の問題につきましては、いずれ国と地方の役割分担等は、これは絶えず議論を続けていくべき課題であると考えております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/26
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027・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、リクルートの問題につきまして御批判がございました。
当時秘書をいたしておりました者がまことに軽率なことをいたしまして、私の監督不行き届きでもございます。深く改めましておわびをいたしまして反省をいたしております。
次に、産業構造、就業構造の変化と税制についてお尋ねがございましたが、これはシャウプ税制当時から今日、産業構造、就業構造が激しく変化いたしましたことは申し上げるまでもございません。その間大きな税制の改革をいたしませんでしたので、中堅所得層の重税感が強くなっておる。また、消費につきましては、消費のパターンも変わりましたし、価値観も変わりましたし、サービス化ということもこれだけ大きくなってまいりました。それらのことをやはり今回この大改革でこういう構造の変化に対応してまいらなければならないということを申し上げておるわけでございます。そういう意味で、所得課税を軽減いたし、消費にも応分の負担を求める、消費、所得、資産の間でバランスをとった課税をいたしたいと考えておるわけでございます。
なお、所得格差が小さくなっているか拡大しているかということにつきましてお尋ねがございまして、これは中長期的に見ますと、ジニ係数を見ましてもあるいは五分位階層の一分位と五分位の差を見ましても、格差が縮小しておりますことは聞違いのないところであるし、世界でも我が国は一番格差の小さい国であると思っておりますが、ただこの数年こういう傾向に必ずしもそれが促進をしていないのではないか、多少の逆行があるのではないかと言われますことは、やはり二度の石油危機あるいは円高等々がございまして雇用の不安がつい先日までございました。そういうことがこういう点に関係をしているということは否めないところであると思いますけれども、大きな傾向といたしましては、やはり所得格差というものは中長期的には縮まってまいっておるというのが事実ではないか、また経済が正常化いたしますと、またその傾向に戻っていくのではないかというふうに考えております。
それから帳簿方式とかいわゆる簡易課税につきまして御批判がございまして、これは厳密に申しますと確かに利益率の大きいところ小さいところいろいろな問題がございますが、前回の経験にかんがみましてできるだけやはり全体を簡素にして、国民に余り御苦労をおかけしたくないと申しますか、手間をおかけしたくない意味で若干制度の精密さを損なう点はあろうかと思いますが、この点は御理解をいただきたいと存じます。
それから税務執行のその施行期日、いわゆる半年弾力化につきましては、先ほど加藤議員にもお答えを申し上げたわけでございますが、納税者に誤りやミスがありました場合には、悪質な不正事案等はこれは別でございますけれども、やはりそれについて助言をして訂正していただく、そうして態様に応じて適切な対応をしたい、やはり半年間というのは、ふなれでございますからそういう心構えでやっていきたい。ただ、法律は四月一日から適用されるわけでございます。先ほど加藤議員にも私、施行日と申したかもしれませんが、厳格に申しますと適用日と申し上げるべきだと思います、訂正をいたしますが、適用日は四月一日でご
ざいますので、これは納税義務は発生をいたす。その執行につきまして先ほど申しましたような心構えで半年間はやっていけというのが、衆議院の御修正の趣旨と心得ております。
それから転嫁カルテルにつきましては総理からお答えがございました。
最後に、法人税率の国際比較でございますが、これはやはり客観的に可能な方法としては、表面税率をもとにいわゆる実効税率によって比較を行うのがよろしいのではないかというふうに考えております。
それから賞与引当金、退職給与引当金、貸倒引当金等々につきましては、衆議院の段階で与野党御協議がありまして、企業税制のあり方については全体としての法人の負担軽減が図られる中で引当金等がどうあるべきかについて二、三年内を目途にさらに検討するという、そういう御協議の場での与党からの返事を申し上げておりますので、その趣旨を踏まえまして適切に対処をいたしてまいりたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣梶山静六君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/27
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028・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) お答えいたします。
まず、交付税率引き上げ等に関する御質問についてでありますが、近年の地方財政の財源不足に対しては、毎年度地方財政の円滑な運営に支障が生じないように所要の措置を講じてきたところであります。
地方財政は御承知のとおり巨額の借入金残高を抱え、引き続き厳しい状況にありますが、最近における財源不足については、主として六十三年度までの暫定措置とされている国庫補助負担率の引き下げ措置によるものであり、現時点においては交付税率の引き上げ等を行うべき事態であるとは言いがたいものというふうに考えております。
次に、六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについてでありますが、総理からお答えがございましたとおりでございますが、自治省としては、各種事業の性格、国庫補助負担制度の本来の意義等に即して、国の責任が全うされ、国と地方との信頼関係が損なわれることのないよう、また、地方財政の健全かつ安定的な財政運営の確保が図られるように適切に対処してまいる所存であります。
最後に、今回の税制改革が地方財政に及ぼす影響とその対策でございますが、これまた総理がお答えになったとおりでございます。消費譲与税やあるいは地方交付税の対象税目の追加を行いながら、地方財政の運営に支障が生じないように措置し、また、消費税の導入に伴う地方財政の歳出増については地方財政計画の策定等を通じて適切に対応してまいる所存であります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣林田悠紀夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/28
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029・林田悠紀夫
○国務大臣(林田悠紀夫君) 衆議院で公表されました非公開株の譲渡リストにつきまして私が去る十八日の記者会見で申しましたのは、その時点におきまして、今までのところ新しい政官界関係者について聞いていないが、今後さらに検察において非公開株の譲渡関係について調査、検討を続けることになっているということであります。したがって、今後の調査、検討にまたなければ明らかでなく、まだ私がその全容について報告を受ける段階に至っていないものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/29
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030・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) これにて午後一時まで休憩いたします。
午後零時十二分休憩
─────・─────
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/30
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031・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑を続けます。太田淳夫君。
〔太田淳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/31
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032・太田淳夫
○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま提案されております税制改革関連六法案に対し、総理並びに関係大臣に質問を行います。
今、国民が求め、かつ国会が行わなければならない最優先課題は、あのロッキード以上と言われるリクルート疑惑の徹底解明であります。
政府・自民党は、去る十一月十日、衆議院の税制問題等調査特別委員会において、税制改革関連六法案の自民党単独による強行採決を行いました。この行為は、まさに議会制民主主義の原則にもとる暴挙であり、国民が求めるリクルート疑惑解明にふたをする以外の何物でもありません。
私は、今日ほど国民の間に政治不信の念が高まっているときはないと考えます。リクルート疑惑をあいまいなまま税制改革を強行しようというのでは、国民が納得するはずがないのであります。その意味で、公明党の主張により衆議院において江副リクルート社前会長等の証人喚問が決定し、リクルートコスモス株の譲渡先リストが公開されたことは一応の評価をするものであります。しかし、その後、元総理の秘書等政界関係者のリスト漏れが判明しております。この際、疑惑解明のためにも、政府関係各種審議会在職者等も含め、公開リストの拡充を図るべきものと思います。総理はリクルート疑惑の真相究明のために真剣に取り組むべきだと思うが、その決意を伺いたいのであります。
冒頭にもう一点お伺いしたいことは、政府・自民党の中では、税制改革関連法案の本院での修正には応じず、大臣答弁や附帯決議で対処していくとの方針を持っていると伝えられている点であります。もし仮にそれが事実であれば、憲法に定められた二院制そのものを否定することにもなり、断じて容認することはできません。良識の府参議院では、じっくりと時間をかけて審議を行い、撤回すべきは撤回し、修正すべき点があれば修正を行うことによって、初めて国民が望む税制改革が実現されるものであると確信するものでありますが、総理、大蔵大臣の見解を伺いたいのであります。
さて、我が党を初め社会、民社、社民連の野党四党は、さきに国民の納得のいく税制改革を実現するために、国民合意の原則、公平、公正の原則などの税制改革に関する五原則とともに、その中で税制に関する基本構想を発表してきました。そしてその手順としては、まず不公平税制是正の徹底を図るよう求めてきたのであります。
しかし、現在、政府が国会に提出している税制改革六法案の内容は国民が求める内容とは全くかけ離れたものであり、その手順もまず初めに消費税ありきであります。公約違反の大型間接税導入に執着し、上辺だけの不公平税制の是正でお茶を濁しているとしか言いようがありません。
我々は、不公平税制の是正のために十項目にわたる四野党共同提案を提示し、政府・与党と協議を重ねてきました。しかし、政府・与党の回答は、創業者利益等に対するキャピタルゲイン課税の強化や国際課税におけるタックスヘーブン地域の拡大などで一部前進が見られたものの、大部分の項目については今後の検討課題としてその是正を先送りしているのであります。
特に、我々が再三にわたってキャピタルゲインを初め所得把握適正化のために導入を求めた納税者番号制については、政府税調の小委員会の検討待ちとして政府みずからの意思を示そうとはしません。確かに、所得税法等の一部改正案に対する衆議院修正において総合課税の方向は示されておりますが、我々が要求する納税者番号制導入の時期については必ずしも明確になったものとは言えません。私は、この場において、総合課税移行への取り組みと、どのようなスケジュールのもとに納税者番号を導入しようとしているのか、総理、大蔵大臣に答弁をいただきたいのであります。
また、政治家のパーティー収入に対する課税につきましても、総理はまず政治資金規正法の側から入るべきだとして、我々が要求したパーティーの純益に対する二〇%の分離課税の導入には消極的であります。しかし、幾ら政治活動とはいえ、わずか数時間のパーティーで何億円、何十億円の利益を上げることに課税が及ばないということは国民感情からも納得できません。今回の改正案には随所でみなし規定が設けられていますが、政府がどうしても我々の要求に応じないのであれば、政治資金規正法上の規制が行われるまで収入額の一定割合を所得とみなして課税するのも一つの考え方でありますが、パーティー収入課税への取り組み、政治資金規正法上の具体的対応策について総理の見解を明らかにされたいのであります。
このほか、貸倒引当金の繰り入れ率の圧縮など法人税の課税ベースの拡大はなお不十分であり、公益法人課税、医師優遇税制、みなし法人課税等についても大幅な見直しが必要であります。これらの不公平を是正していかない以上、国民の合意の得られる改革は成功しません。その是正に勇気を持って取り組まれることを期待するものでありますが、総理、大蔵大臣の決意を伺いたいのであります。
ところで、総理は、今回の税制改革のねらいの一つに、所得、消費、資産の三つの間で均衡のとれた税体系の確立を挙げています。しかし、この割合がどうあることが好ましいのか、何ら明らかにされておりません。言葉でどうつくろってみても、政府の意図が直間比率の見直しにあり、大型間接税導入にあることは明らかであります。所得、消費、資産の均衡のとれた税体系とはどのような税体系を言うのか、総理にお伺いするものであります。
また、二十一世紀の高齢化社会に向けての対応も税制改革の大きな目的として掲げておりますが、政府が衆議院の税特委に提出した「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」を見ても、単なる施策の羅列だけで、高齢化社会のビジョンやそれにのっとった受益と負担のあり方などは何ら明らかにされておりません。一体これでどう国民に理解を求めようとされるのでしょうか。高齢化社会における受益と負担のあり方について、総理、大蔵大臣、厚生大臣の見解を示されたいのであります。
また、政府は、所得税の税率構造のフラット化や広く薄く税負担を求める論拠として、所得水準の平準化ということを喧伝しております。確かにシャウプ税制がスタートした当時と今日を比較すれば多少は所得格差は是正されているかもしれませんが、石油危機以降の所得格差の実態を見ると、単純に所得の平準化が進んだと言えるでしょうか。
昭和六十三年度の経済白書及び国民生活白書では、株価の急上昇や地価の高騰による資産価値の増大等によって、勤労者間の所得格差はむしろ広がる傾向にあり、とりわけ資産所得の格差が明確に拡大して不公平感が高まっていることが指摘されております。このような状況のもとでとられるべき税制は、累進税率のもとにおける総合課税を再構築し、所得再分配機能を高める方向でなければなりません。しかし、政府が行おうとしている改革は全く逆で、所得税の最高税率を大幅に引き下げ、税率構造のフラット化を行いながら、土地や有価証券などの譲渡から生ずる資産所得に次々と分離課税を導入することによって総合課税を放棄しようとするものであります。
ここに逆進性の強い消費税を導入するならば、ますます高所得者、資産家優遇の税制が我が国税制の基本的な構造として確立することになるのではありませんか。総理、大蔵大臣の見解を求めます。
近年の地価の高騰は、一時ほどではないものの、高値に張りついたまま、庶民が住宅を建てることなど夢となり果ててしまいました。我が党はかねてから、このような実情を踏まえて、社会的公正のための大企業の土地の含み益還元のため、土地増価税の創設を提案してまいりました。これについて大蔵大臣は、含み益はあくまで未実現であること、含み資産を持つ大企業が必ずしも好況業種でないことなどを理由として否定的見解を示しています。
しかし、地価高騰による含み益の増大が企業の信用創造につながり、ある場合には投機資金の担保として活用されている現実を見るにつけ、そこに税負担を求めることは公正の原則から当然の措置と考えますが、大蔵大臣の見解を伺いたい。もし土地増価税を否定するのであれば、土地税制改革にどのように取り組むのか、具体的方針を示してもらいたいのであります。
また、現在、土地に対する評価方式は、公示価格のほか、相続税、固定資産税の際にそれぞれの評価が異なるなど、資産課税の制度を不必要に複雑化させております。私は、この税制改革を機にその一元化を図るべきだと考えますが、自治大臣、国土庁長官の御見解を伺いたいのであります。
さらに、相続税については、所得税と同様に最高税率を引き下げております。私は、相続税の課税最低限が昭和五十五年に引き上げられて以来十数年も放置されてきたことから見て、その二倍の引き上げは妥当と考えますが、相続税は富の再配分機能を兼ね備えた唯一の税であることを重視すべきであり、最高税率まで引き下げる必要はなかったはずであります。その理由を明らかにされたいと思います。
さて、政府は、昨年の売上税廃案の反省もなく、世論調査等で国民の圧倒的多数が反対してい
るのが明らかにされているにもかかわらず、消費税導入を強行しようとしております。どんなに名称や税額控除の方式あるいは免税点を変えてみても、消費税は、中曽根前総理が国民に導入しないと選挙で約束をした大型間接税そのものであり、公約違反の税制にほかなりません。消費全般に広く課税するという観点で見ても全く同様なものと言わざるを得ませんが、総理の御見解を求めます。
総理は、去る三月の衆議院予算委員会で大型間接税に対する六つの懸念を表明しました。その後、税額の転嫁の可能性と地方自主財源の縮小の問題二つを加えて八つの懸念を明らかにしていますが、そのいずれも解消できるとしております。
果たしてそうでしょうか。
例えば、逆進的税体系となり所得再配分機能が弱まるとの懸念については、税制全体の構築で中和でき、歳出面もあわせて考慮すべきだとしていますが、るる指摘したように、今回の改革案そのものが総合課税原則を後退させ、所得再配分機能を弱めるような方向を志向している以上、決して税制全般で中和できるとは思えません。
また、社会的弱者と言われる人たちへの過重な負担を強いる懸念については、生活保護基準の改定など政策的歳出の中で中和できるとしていますが、しかし、社会的弱者の人たちに一たん税を負担させ、後でそれを相殺するような政府支出を高めることは、行政としてもむだであり、生活保護を受けない低所得者層にとっては何のメリットもありません。御答弁を願いたい。
さらに、消費税の税率が安易に引き上げられることの懸念については、国会で審議決定される問題であり、少なくとも現内閣ではその引き上げは行わないとしています。しかし、導入しないと公約し、国会決議まで踏みにじって大型間接税の導入を強行しようとする政府・自民党であれば、消費税の税率引き上げも強引に推し進める可能性があります。税率引き上げによる大型間接税の懸念は解消しないどころか、むしろ懸念は拡大しているのであります。総理の答弁を願います。
さらに、総理は消費税論議が価格転嫁問題に収れんしつつあるとの認識のようでありますが、さきに申し上げたように、多くの懸念が解消できないばかりか、この価格転嫁問題についても消費税の中に大きな矛盾が内包されているのであります。
すなわち、事業者が仮に消費税の税額が完全に転嫁できないとすれば、消費税ではなく第二法人税や第二事業税となってしまうことは御存じのとおりであります。これを防ぐため、政府としては、時限的とはいえ、独禁法の適用除外に関する法律を改正してまで、円滑かつ適正な転嫁の実現を図ることとしております。
ところが一方では、利益率が高い事業者が簡易課税制度を選択し、それに限界控除制度を併用することによって納税額を著しく減少させることができ、さらに免税業者が事業者団体の転嫁カルテルに参加できることにより、納税義務のない免税業者が課税業者と同じように三%相当額の税額を上乗せできるのです。消費者である国民の側から見ると、税制を通じて国が事業者に対して補助金を与えるのかとの疑問があります。消費税を導入しようとしてこのような矛盾をつくり出すことは好ましい税制改革だとは到底言えません。総理、大蔵大臣の見解を求めます。
ところで、今回の税制改革は地方財政へ与える影響を無視できません。これも消費税の持つ懸念の一つでありますが、特に問題なのは地方自治体の課税権がかなり削減されていることであります。
政府は、消費税収の五分の一相当額を消費譲与税として地方に譲与するとともに、地方交付税の対象に消費税を加えることによってその補てんを行おうとしています。しかし、道府県では道府県民税の個人分、さらには料理飲食等消費税などの税目が非常に大きな減収となり、また、市町村においても市町村民税の個人、法人分に加え、電気・ガス税が廃止されることにより非常に大きな額が地方自治体の課税権の射程外に移ってしまいます。このような実態を自治大臣はどのように考えているのでしょうか。
現在の国、地方間の税源配分は二対一であるのに対し、歳出割合ではこれが一対二と逆転しております。少なくとも、抜本的改革というのであれば、改革案作成までの審議過程において国と地方の間の財源配分のあり方についてもっと時間をかけて議論を深める必要があったはずであります。地方への事務、権限の移譲を含め、地方自治体の財政自主権の確立を図るため今後どう対応していかれるつもりか、あわせて自治大臣の見解を伺います。
同時に、六十三年度で期限の到来する補助金カットについては、六十四年度以降はもとに戻し、補助金カットを継続すべきではないと強く主張するものでありますが、大蔵大臣並びに自治大臣の見解を伺います。
六十一年度以降、我が国の税収は、経済の好況に支えられて法人税収を中心に好調に推移しております。特に六十二年度は、補正前の予算と比べると七兆数千億円、対補正後予算比で三兆七千億円という史上最高の自然増収を記録しました。六十三年度においても、低金利、原油価格の落ちつき、為替の安定等を背景に景気は引き続き順調に推移しており、今後もその好調さは続くと見られております。そのため六十三年度の自然増収も五から六兆円にも及ぶと予測でき、ここ数年間は、消費税導入によって国民に増税を強いることなく所得減税が可能な状況にあります。ここで六十三年度の自然増収の見通しを明らかにしていただきたいのであります。
最後に、税制改革は、公明党が税制改革基本法の中で主張するように、まず不公平の是正を中心とした第一次改革を行い、その上で高齢化社会のビジョンを策定し、さらに必要があれば、国民合意のもとに間接税体系のあり方を考える第二次改革を行うという手順を踏むべきであります。不公平税制の是正を放置したまま消費税導入に走ることについては断固反対であると再度申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/32
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033・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず、リクルート問題の解明についてでございます。
先ほど来も申し上げておりましたが、大別して、証券取引上の問題、課税上の問題、刑事上の問題、道義上の問題、これらに整理をいたしてみます。
証券取引上の問題は、これはまさに関係審議会で今後とるべき方策を検討中であるという状態であります。
税制の問題に対しましては、政府原案に対しさらに衆議院において所要の改正が追加されたところであります。総合課税への理念というものに若干の距離があることは私も承知いたしております。
刑事上の問題につきましては、検察当局が適切な対応をされるものと確信をいたします。
道義上の問題につきましては、まさに私自身を含め、やはり政治倫理綱領を拳々服膺すべきものであると、このように考えておるところであります。
さて、リクルートコスモス株の譲渡先についてさらに明らかにすべきであると、こういう御主張でございました。
これは、さきに衆議院リクルート問題調査特別委員会にリクルート及びリクルートコスモスの両社から提出された資料というものがございます。したがって、その内容につきましては、これはやはり国会そのものの議論の中で位置づけられるべきものであるということでございます。
そうして、また、私どもといたしまして、先ほど申し上げました四つの点につき、今後とも我が国証券市場が健全に発達していくための基盤を整備するということでいろいろ努力をしなければならない課題が多いというふうに考えておるところでございます。
そうして、二院制の問題にお触れになりました。
そもそも二院制を否定するような考え方を持っておったらこの場に立つことはできないとみずからに絶えず言い聞かしておるところであります。
また、税制改革の手順にお触れになりました。
最後にもお触れになりましたが、貴党のいわゆる基本法、これはまさに手順を明示された法律であることは私も十分承知いたしておるところであります。ただ、その手順にいかほどの時間をかけるかというところが私どもと若干、いや、かなりの開きがあることは否定できないことでございます。
したがって、まさに今こそ喫緊の課題だという考え方に立ちまして、一層今後とも、この理念、手順というのは大きな差があるわけではございませんから、参議院におかれまして広い角度から十分な御審議を賜りたい、このように考えておるところでございます。
それから納税者番号にお触れになっておりました。
これは、政府税制調査会等におきまして今特別に審議していただいておるところでございます。昭和二十二年、いわゆる申告制、当時から見れば、当時はなかった議論が今の段階では大きなウエートを占めておるということを十分承知いたしておりますだけに、今後ともその小委員会の推移を見たいと、このように考えております。
それからパーティー課税の問題にお触れになりました。
これは、国会等で十分御議論をいただきたい問題だと考えております。率直に言いまして、政治資金規正法のサイドからアプローチすべきだという考え方は理解できるけれども、しかし、現実問題として、分離課税の問題あるいは消費税として位置づける問題あるいは印紙税として位置づける問題等々、いろいろ議論をして、そこには問題があることはよくわかるが、しかし、今おっしゃったような国民感情あるいは情緒的不公平感、こういうものとのギャップをどう埋めるか、こういう問題であろうと整理させていただいております。
したがって、今後とも十分各党において御議論をいただき、またそれまでの間、いわゆる自主規制措置等が現実問題として議題となっておるということを申し上げることにとどめさせていただきます。
それから次は、不公平税制という問題についてお触れになりました。
この問題につきましては、御承知のどとく、いわゆる有価証券譲渡益の原則課税問題、社会保険診療報酬課税問題、法人の土地等の取得に係る借入金利子の損金算入の繰り延べ等、こうした是正策を盛り込んでおることは事実でありますが、一方、九月八日から与野党協議が重ねられ、そして、そこにまた自民党の考え方も示されております。そうして衆議院におきましてまたさらなる修正が行われたということも、その協議に基づいて行われたものであろうというふうに考えております。その際いろいろ御議論なさいまして、また与党から回答があった事柄については、その趣旨を踏まえて十分対応すべき課題であると思っております。
それから次が高齢化社会における受益と負担の問題等についてお触れになっておりました。
そうしていま一つは、望ましい所得、消費、資産に対する水準というようなものに対する御意見を交えての御質問でございました。
所得、消費、資産に対する課税の割合につきましては、あらかじめ望ましい水準が決められるという性格のものではございませんが、今度の改革等によりましてより望ましいものに改善されていくと、こういうふうに私は理解をいたしておるところであります。
先般提出いたしましたいわゆる社会福祉ビジ9ン、この点につきまして、これは実際問題、難しい問題を可能な限り具体的にお示ししたものであります。したがって、今後の社会保障の給付と負担の展望につきましては、今回お示しした将来の姿で見ましても、国民負担率ベースでは三月に示した水準がおおむね妥当なものと考えております。
なお、今後の社会保障につきましては、保険料を基本としながら税による財源を適切に組み合わせていくべきものでございますので、どのような組み合わせが最も妥当かというのは、やはり私は国民の選択に帰する課題だというふうに思っておるところであります。
それから高所得者、資産家優遇ではないか、こういうお話がございました。
この問題については、確かにいわゆる土地と株式の高騰等による資産面の格差についての社会的関心が高まっておるということは御説のとおりであると思っておるところであります。したがいまして、原則課税化等をいたすことによりまして資産に対する課税の適正化などをこの際盛り込ませていただいたということでございます。
また、改革後におきましても、所得税、住民税を合わせた最高税率はなお高いということ、そして応能主義的な体系は貫かれておるということが
言えるのではなかろうかと思うわけでございます。したがって、やっぱり将来的にはこの総合課税方式への展望というものを絶えず考えながらも、一方、努力と報酬の一致という大原則をも念頭に置くべきものであると考えておるところであります。
それから公約違反の問題にお触れになりました。
いつも申し上げますように、時の内閣の総理大臣の発言はこれは重いものでございます。その重いものを基礎といたしまして私どもは売上税を提案いたしました。しかしそれは、それこそその仕組み、構造等において国民の理解を得るに至りませんでした。そこでこれは国会においては廃案になった、そういう反省の原点に立って今日の消費税を提案申し上げておりますがゆえに、その一連した線上にあるというふうに御理解をいただきたいと思います。
さらに、懸念についてお触れになりました。懸念を中和するというのは君が言うほど中和できていないではないか、こういう御趣旨からの御質問でございます。
間接税というものが所得に対して逆進的であるという面があることを否定するものではございません。また一方、消費の大きさに応じまして比例的な負担を求め得るという公平性というのが一方に存在するわけであります。
しょせん国民の納税の義務を考えてみますとき、消費の段階か所得の段階か、それがいずれの段階で負担すべきものがいわば最も調和のとれた姿かということでもって私は国民の理解を得るべき問題であると思っております。
税率の歯どめの問題についてもお触れになりました。
この三%議論というのは、大変な長い間の議論によってコンセンサスが得られた水準であります。これは安易に変えた提案ができようはずもないというふうに私は思っておるところでございます。
それから簡易課税等々についての、この税制を通じて補助金を出すことになりはしないかとか、いろいろな御指摘がございました。
確かに、若干制度の精密さを損なう面がございます。しかし、これは我が国になじみの薄いこの税制というものを考えますと、納税事務負担とそうした議論との政策的観点から中和をして御提案申し上げたものだというふうに御理解を賜りたいと思います。
それから最後に、また、転嫁カルテルと免税事業者問題についてもお触れになりました。
これはまさに暫定的な立法措置を講ずることとしたところであります。零細事業者の事務負担について特段の配慮が必要であるとの考え方から設けることとされたものでございまして、免税事業者の場合でありましても、その仕入れに消費税が含まれていることなど、転嫁を必要とするもろもろのコストを負担している点を十分考慮する必要があります。
したがって、公正取引委員会は、法案においてこれらの措置が講ぜられた趣旨を踏まえて法の適正な運用を行っていかれるものというふうに思料をいたしておるところでございます。
以上で私のお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/33
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034・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 重複をいたしませんようにお答えを申し上げます。
まず、納税者番号の問題でございますが、この点につきまして、衆議院で政府案の修正を行われました際、今後の見直しに関連いたしまして納税者番号制度の導入云々ということに触れておられるわけでございますが、今後見直しをいたします際にはこの修正の御趣旨もよく考えてまいることは当然であろうと思っております。
現在は政府の税制調査会におきまして納税者番号等検討小委員会で御審議をしていただいておりまして、その結論をしばらく私どもとしては待っておるというのが現状でございます。御審議の内容としては、これが税だけのものであるのか、あるいは仮にこの番号が広く世の中にいろいろなことに用いられるようになった場合に、いわゆるプライバシーとの関連はどうかとかいうようないろいろな問題をただいま御検討中でございます。
それからいわゆる我が国の各層間における所得の格差がどうなっているかということにつきましては、私どもは、やはり中長期的に見て所得格差は縮まってまいっているし、我が国は世界でも最も格差の小さい国であると考えております。
それはジニ係数であるとかあるいは五分位階層の一対五の比較であるとかであらわれるわけでありますが、ただ、おっしゃいますのは、最近になってその傾向は必ずしもそうは見えない、逆転傾向も見えると言われますことについては、一つは、やはり土地とか株式とかいうものから生ずる資産所得の問題があるだろうと。私は、それは現実にはある程度あるというふうに、この間も国民生活白書でございますか、指摘されたことはそうだろうと思いますが、全体の問題といたしますと、しかしやはり二度の石油危機とか円高というようなことから来る雇用不安がこの各層間の格差を逆転させた大きな原因ではなかったかというふうに思っておりまして、そういう意味では、経済情勢が正常化してまいりましたので、再び長期間のトレンドに帰っていくのではないかというふうに思っております。
なお、そのような資産所得につきましては、いわゆる有価証券譲渡益の原則課税、あるいはさきの改正によりまして土地の短期譲渡に重課をしたというようなことは政府としてもいたしておるところでございます。
基本的に所得税というものは総合課税が本当ではないかと言われますことは、私どももそう思っております。現実に実際上の行政の可能性から、あるいは政策的な考慮からそれの例外はございますけれども、基本的にはやはり総合という考え方に忠実でありたいというふうに思っております。
それから相続税につきましてこのたび最高税率を引き下げました。
それは昭和五十年度に、前回改正いたしましたときに、アメリカが七七、イギリスが七五でありまして、我が国も七五にいたしたわけでございますけれども、その後八〇年代になりまして各国がみんな税率を下げ出しました。アメリカが現在五五、イギリスが四〇でございますので、我が国の税率はまだまだかなり高い七〇%でございますから、これで富の再配分という機能は基本的には果たしているというふうに考えております。
それからいわゆる免税事業者の場合に価格に上乗せをする、あるいは簡易課税制度を選択した場合にマージン率の高いものがある、こういう場合はという御指摘は、理論上確かに議論は私はあると思います。
それは認めなければなりませんが、ただそこまで細かくいたしますと制度が非常に複雑になってまいりまして、国民の皆さんに受け入れていただくのには多少の精密さは犠牲にすることもやむを得ないのではないかというふうな決断を今回いたしました。この点は、そういうものとして御理解をお願いいたしたいと存じます。
それから補助金カットのことでございますが、六十一年度に補助金問題検討会というものの長い討議を経まして、ともかく三年間暫定措置としてやるということでございましたが、これからは国、地方の行財政の配分等々も考えまして、もう一度関係各省と相談をいたしまして予算編成の過程で対処をしなければならない。内々各省庁の意見のすり合わせを始めたところでございます。
最後に自然増収のことについてお触れがございまして、確かにただいま九月分までの税収がわかっておるわけでございますが、それによりますと前年同月比で累計で五・三%プラスでございます。したがいまして、税収の動向は決して悪いとは存じておりませんが、前年がいかにも株式であるとか土地であるとかあるいは円高差益であるとか、いわゆる繰り返さない一時的な要因によるものが多かっただけに、そこは用心をいたしておりまして、現在まだ九月までで予算額の三分の一程度が収納になったところでございますので、もう少し情勢を見守ってまいりたいと思っておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣梶山静六君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/34
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035・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) お答えをいたします。
まず、土地評価の一元化の問題についてでございますが、一般土地取引における指標を示そうとする地価公示価格、相続があった際に一回限り課税される相続税の評価額と、資産保有の継続を前提に毎年税負担を求める固定資産税の評価額とは、その目的や性格において相違がありますので、これを直ちに一元化することはなかなか困難でございます。
しかしながら、固定資産税の評価については、引き続きその適正化に努めてまいる所存であります。
次に、税制改革による地方自治体の課税権の削減縮小の問題でございますが、今回の税制改革においては、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築するための措置の一環として、課税ベースの広い間接税を導入したものであり、これに伴い、国税、地方税を通じ、個別間接税についての廃止、見直しが必要となったところでございます。
今回の税制改革により生ずる地方税財源の減収に対しては、消費税の一定割合を消費譲与税及び地方交付税とし、地方財政の運営に支障を生じないよう措置することといたしているところであり、今後とも適切に対処をしてまいる所存であります。
また、地方自治体の財政自主権の確立の問題でございますが、今後、地域の特性を生かしつつ、地方の活性化と国土の均衡ある発展を図るためには、国と地方との事務配分の見直しや地方への権限移譲等をさらに進めることが必要であり、これにあわせて地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保に努めてまいらなければならないと考えております。
最後に、六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについてでございますが、この措置は国の極めて厳しい財政事情と内需拡大の要請を背景として昭和六十三年度までの暫定措置として行われているものであり、昭和六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについては、原則としてもとの補助負担率に戻すべきものであると考えております。具体的には、六十四年度予算編成過程において関係省庁で協議の上定められるところであります。
自治省としては、各事業の性格、国庫補助負担制度の本来の意義に即して、国の責任が全うされ、国と地方との信頼関係が損なわれることのないよう、また、地方財政の健全かつ安定的な財政運営の確保が図られるように適切に対処をしてまいる所存であります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣藤本孝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/35
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036・藤本孝雄
○国務大臣(藤本孝雄君) 先般提出をいたしました「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標」、いわゆる福祉ビジョンでございますが、これは明るく活力のある長寿福祉社会づくりを目指しまして、今後のとるべき施策や目標をできる限り具体的にお示ししたものでございます。
そして、これに伴う給付と負担の展望につきましては、総理から御答弁もございましたが、国民負担率ベースでは、三月にお示しをいたしました水準がおおむね妥当するものと考えております。
なお、今後の社会保障につきましては、受益と負担の関係が明らかな保険料を基本としながら税による財源を適切に組み合わせていくべきものでありまして、その具体的なあり方につきましては、これは国民の選択によるべきものと考えております。(拍手)
〔国務大臣内海英男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/36
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037・内海英男
○国務大臣(内海英男君) 土地の公的評価について一元化を図るべきではないかというお尋ねでございましたが、ただいま自治大臣からもお答えがございましたとおり、御承知のとおり、現在全国的に継続的に行われております公的土地評価制度には、地価公示及び都道府県地価調査、固定資産税評価、相続税評価等がございます。
これらにつきましては、それぞれの制度の目的に応じた評価がなされておりまして、先般閣議決定をいたしました総合土地対策要綱におきましても、相続税評価、固定資産税評価につきまして、その性格を考慮いたし、地価公示との関連におきまして均衡化、適正化を推進することといたしております。
このため、国土庁といたしましては、この要綱の趣旨に沿いまして大蔵省及び自治省と協議を進めてまいる考えでございます。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/37
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038・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 上田耕一郎君。
〔上田耕一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/38
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039・上田耕一郎
○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、議会制民主主義、リクルート問題、消費税問題について首相並びに関係大臣に質問します。
その前に、日本共産党本部に対する公安調査庁の盗み撮り事件を糾弾したい。
公安調査庁は、事実を認めながら、それを正当化する驚くべき態度をとっています。しかし、にせの会社名を使って秘密のアジトを設け、四六時中政党本部をビデオカメラで盗み撮りすることは政府のやるべきことですか。
〔議長退席、副議長着席〕
これは公党の日常活動の権利を侵害し、政党と国民のプライバシー権を踏みにじり、結社の自由、政治活動の自由を侵す重大な違憲、違法行為であって、いかなる口実をもってしても合理化できるものではありません。
我が党は、警察官による盗聴事件について首相が国会で遺憾の意を表明したにもかかわらず、なお今回の事件が起きたことに対し厳しく抗議し、こうした違憲行為の即時中止を強く要求します。一体政府は、国家機関である公安調査庁が年間百三十三億円もの莫大な税金を使って、このような権力犯罪行為を行うことが許されると思っているのですか、総理大臣と法務大臣の答弁を求めます。
質問の第一は、議会制民主主義の原則を乱暴に侵害して恥じない政府・自民党の責任の問題であります。
自民党は、十一月十日、衆議院税制問題等調査特別委員会で公約違反の消費税を単独強行採決した上、公明党、民社党との密室協議でその要求を受け入れた形をとって、十六日午後の本会議で自公民のみによる税制六法案の採決を強行したことは、断じて許すことはできません。今まさに、我が国の議会制民主主義の根本、国権の最高機関としての国会のあり方そのものが厳しく問われていることについて、首相の見解を問うものであります。
次に、消費税法案が大型間接税は導入しないという自民党の公約に違反していないとする根拠は何か、また、それが七九年十二月の国会決議が否定した一般消費税(仮称)と仕組み、構造のどこが違うのか、はっきりとお答えいただきたい。政権が変われば公党の公約も国会決議も棚上げできることになれば、議会制民主主義は成り立ちません。
政府自身がシャウプ以来の税制改革と称してきたほど重大な内容を持つ六法案は、衆議院特別委員会で実質わずか二日半しか審議しておりません。どの世論調査でも消費税反対は圧倒的多数ですが、首相、あなたは三百議席の多数さえあれば、世論がどれだけ反対しようが、審議がどんなに不十分であろうが、国民生活に重大な影響のある税制の大改悪を押しつけてよいと考えているのですか、その理由をお示しいただきたい。
さらに重大な問題は、天皇の政治的利用であります。十日の単独採決前に、自民党の安倍幹事長らは、社公民各党の幹部や理事に、天皇の病状悪化できょうやらせていただくと事前通告してきたとの証言があります。これは、憲法四条が「国政に関する権能を有しない。」とした象徴天皇を党利党略のために利用したこと以外の何物でもありません。この重大な憲法違反の行為について、自民党総裁としての竹下首相の責任を問いたい。
第二は、リクルート疑惑の問題であります。
政府・自民党は、消費税問題とリクルート疑惑追及を切り離すために、税制特別委の設置目的にリクルート問題がうたわれているにもかかわらず、密室協議でリクルート問題等調査特別委員会を設置しました。しかし、ぬれ手でアワの甘い汁を吸った政治家に税制改革を語る資格はないという国民の声のとおり、また、江副氏が政府税調特別委員に任命されたことが示すように、二つの問題は切り離すことができません。
そこでまず、宮澤大蔵大臣の問題を取り上げたい。
宮澤喜一名義のリクルートコスモス株譲渡に関して、午前中の衆議院リクルート特別委員会で江副証人は、私が直接話したのではなく、社員が服部秘書に話したという重大な証言を行いました。議院証言法に基づき偽証の許されないこの証言は、これまで宮澤大蔵大臣が行ってきた、SE設計の河合社長が話を受け、河合氏が宮澤大蔵大臣の名義を借りたという答弁並びに再答弁と全く食い違っています。あなたは、今こそ真実を述べるべきであり、それができなければ証人として証言に立つべきではありませんか。答弁を求めます。
竹下首相に伺いたい。
もし宮澤大蔵大臣がこの問題で国会を欺く答弁を行ってきた事実が明白となった場合、それは蔵相の進退にかかわる重大問題であって、宮澤大蔵大臣が消費税法案の提案者であり続けることは許されないと思いますが、首相としてどのような措置をおとりになりますか。責任ある答弁を求めるものであります。
首相の問題についてもお聞きしたい。
当時の竹下幹事長あての一万株譲渡の申し込みを青木秘書があなたの親戚の福田組社長に取り次いだという事実が明らかになりました。あなたの周辺で合わせて一万二千株、二千六百万円余のわいろ性の濃い事実上の現金贈与があったというこの重大な問題について、首相としてどのような責任をおとりになるつもりか。
今回のリクルート疑惑は、当時の中曽根政権の中枢にかかわる巨大な疑獄事件の様相を色濃くしてきました。第二の首相の犯罪と言われるこの事件の規模と構造は、ロッキード事件以上の複雑さと奇怪さを示しています。首相みずからかかわりを持ったままこの疑獄を全容解明できる、自民党の自浄能力の発揮を指導できるとお思いですか。明確な答弁を要求します。
次に、法務大臣に伺いたい。
六法案との取引の形で十五日に公表された非公開株の譲渡リストについてリクルート側は、氏名を伏せた人物を介してさらに政官界関係者に再譲渡されている事実はないとしています。大臣も記者会見で、政官界で追加する人はいないと追認しました。しかし、早くも田中元首相の秘書名が出てきた現在でもそのように断言できるのか。できなければ法務大臣の発言の責任をどうとるのか。明確な答弁をいただきたいと思います。
第三は、消費税導入の問題であります。
まず、今回の密室協議で合意とされた弾力的運用なるものについて質問したい。
民社党の塚本委員長は十六日、「結論を申し上げればごまかしをやったということ」と講演して、その後取り消し、小渕官房長官は、「四月実施に最善の努力を払うということ」と記者会見で述べています。大蔵大臣は午前中、悪質なものは別として、誤りなどに適切に対処する意味だと答弁しましたが、では一体具体的にはいかなる内容なの
か、実質的な徴税延期も含まれるのか、大蔵大臣の説明を要求します。
政府が公約違反の大型間接税の導入を正当化しようとして持ち出した数々の宣伝は、いずれも偽りに満ちたものばかりであることが明らかになりました。本来課税してはならない母子世帯、老人世帯、貧困世帯までその生計費のすべてにわたって税を負担させる消費税は、我が国税制史上最も不公平な税制であり、逆進性が最も強い最悪の大衆課税であります。
一方、許しがたいことには、大企業へは巨額の法人税減税に加え、有価証券取引税引き下げ、大資産家へはその主要な所得である利子、配当、キャピタルゲイン、不動産譲渡益などは、配当の一部を除いてすべて低税率の分離課税にしてしまう。さらに、累進税率緩和で、税の公平のための累進原則はほとんど形をとどめないほど崩されています。これでは公平であるどころか、実際には大企業、高額所得者向けの大減税と大衆課税の強化、不公平税制のかつてない拡大を図ろうというのが今回の税制改革の正体ではありませんか。
今回の税制改革の理由として政府が挙げている国民所得の平準化なるものも、本来比較の対象にならない統計を恣意的に用いたトリックだったことが、衆議院税特委での我が党の工藤議員の質問で完膚なきまでに明らかにされました。それに反論もできないままその後も平準化論を振り回している政府の態度は、消費税の導入がいかに根拠のないものであるかをみずから証明したものと断ぜざるを得ません。
さらに重大な問題は、五兆四千億円という消費税の税収総額の数字が明らかに政治的な過小数字だったことです。
大蔵省のやり方は、計算のスタートになる付加価値の総額はいわゆる積み上げ方式で一回り小さな数字にし、それから投資額を引く段になると国民経済計算の数字を使って残額を小さくする。こんなでたらめな計算は通用しません。我々がかたく計算しても七兆円台となり、日本経済新聞も六兆八千億円、静岡大学は六兆四千億円の試算を発表いたしました。この問題だけでも政府、大蔵省の立場は破綻しており、法案を撤回して、責任ある計算のし直しを求めるものであります。
また、将来、税率の引き上げは国会で審議するから歯どめありなどと言いますが、首相が竹下内閣の間は引き上げないと答弁したことは、次の内閣以後は税率引き上げがあり得ることを示唆したこと以外の何物でもありません。どこに歯どめがあるのか、総理と大蔵大臣はどう答えられますか。
最後にお聞きしたいのは、政府・自民党が異常な執念で成立させようとしている消費税の政治的動機、目的であります。
政府が幾ら高齢化社会に備えるためと宣伝しても、竹下内閣が軍事費突出、アメリカからの戦略援助要請の受け入れ、福祉、教育、地方自治体への補助金切り捨てなどを基本政策としている以上、説得力は全くありません。
首相は、ことし一月の訪米時、ナショナルプレスクラブでの演説で、抜本的税制改革を国際社会に貢献する日本にふさわしい安定的財源を確保するためと説明しました。アメリカとの責任分担のための財源づくりとしたこの演説について、総理の明確な説明を要望します。
国際的にも大型間接税の歴史は戦費調達の歴史であり、第一次世界大戦、第二次世界大戦の産物です。大型間接税こそは戦争の申し子であり、だからこそ絶対に許してはならないのであります。
日本国民は、あの十五年戦争のさなかにおいても、日中戦争の戦費調達のための取引税のたくらみを許しませんでした。戦後、米軍占領費調達のため導入された取引高税、大平内閣の一般消費税、中曽根内閣の売上税と、ことごとく打ち破ってきたのであります。大型間接税がないことは日本国民の世界に対する大きな誇りなのであります。
日本共産党は、公約違反の消費税の反国民的内容からも、政府・自民党があえてした議会制民主主義の侵害行為からも、リクルート疑惑の解明に対する無責任さからも、竹下内閣は直ちに総辞職すべきであると主張し、国会解散総選挙を行って、リクルート疑惑を徹底追及することのできる新しい国会、税制問題でも世論が要求している不公平税制の是正をこそ実行できる国会をつくることを呼びかけています。
この問題について首相の責任ある答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/39
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040・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず、質問に先立ちまして公安調査庁の問題についてのお尋ねがございました。
特定の調査につきましてお答えは差し控えるべきであろうと思いますが、一般論として申し上げますと、公安調査庁としては法律にのっとって必要な範囲で適正な調査活動を行っておるものと私は承知いたしておるところであります。
それから議会制民主主義問題についてお触れになりました。
議会制民主主義は、自由かつ率直な意見交換と多数決原理の上に成り立つ社会生活の基本ルールをもとに構築されたものと、このように私は理解をいたしております。現に行政府の長でございますが、議会人の一人として、議会制民主主義が戦後いろいろな試行錯誤を繰り返しながら円滑に機能し、今後とも発展していくことを私は心から期待いたしておるものであります。
それから公約違反問題にお触れになりました。
昭和六十年の二月六日、衆議院予算委員会、このときの内閣総理大臣の御発言、これは重いものであります。そうしてまたいわゆる国会決議、これもよく承知しておるところであります。したがって、これらの延長線上にいろいろの反省をもとにして立案し、今御提示申し上げているのが今次の税制改革であると、このように御理解をいただきたいというふうに思っておるところであります。
それから世論の反対について御懸念がございましたが、さまざまなゆがみが目立ってきておる現行税制、これを全般にわたる改革をやろう、これは喫緊の課題であるということは私はコンセンサスであると思います。今次の改革案は、いろいろ長い間、十年以上にわたって専門の税制調査会あるいは国会で御議論をいただいたものを踏まえて取りまとめてきたわけでございます。したがって、さらに国会において議論を深めていただいて、国民の理解が一層深まることは私どもが大いに期待しておるところであります。
次は、国会の議事運営につきましては、衆議院でありましょうと参議院でありましょうと、行政府の長として口を差し挟むべきものではないというのはかねて申しておるところでございます。一般論として、新憲法下におきまして象徴天皇の意義を十分理解し、国民の皆さんとともに御快癒を祈るや切なるものがございます。
次の問題でございますが、衆議院特別委員会で今朝どのような発言があったかは私は承知いたしておりません。いずれにせよ宮澤大臣は、私が信頼し、任命申し上げたことであります。
次が私自身の問題でございます。
これは経済取引であると言ってみましたところで、私は、情報の集まりやすい立場にあるみずからを顧みて、やはり再発防止のためにいかにすべきか、そしてまた、倫理綱領を反復すべきものであるという考え方に立って、しかし自浄能力というものが自由民主党に全くなくなっておるとは考えておりません。
次の問題は、税制そのものに対するお尋ねでございました。
努力と報酬、そういうことを考えますと、税というものの仕組みはおのずから帰着するところは一つであります。そしてまた、大企業大企業といろいろな御指摘がございますが、企業の果たしておる社会的役割というのを土台に置きまして税制そのものは構築すべきものである、このように考えております。
それから歯どめ問題についてお触れになりました。
私は、このいわゆる税負担の問題というものは、やはり将来の国民がそのときどきに与えられた条件のもとで選択する問題であるというふうにいつも申し上げておるところであります。今の消費税の税率三%、この問題は長期間にわたる議論の未コンセンサスを得た水準であります。引き上げなどというものが現時点で考えられようはずがないというふうに思っておるところであります。しかし、原則として、税そのものを考えますときに、後世代の方々の手を縛るようなことは歴史の一こまである私どもは慎むべきである、このように考えております。
それから国際化と税制改革の問題について、ナショナルプレスクラブ等での私のスピーチを援用してお話がございました。
国際化した今日、そして国際的に期待せられる今日、我が国の国内における税制構造というのがこれこそ見事なものに成熟していくことを期待するのは私は当然であるというふうに思っておるところであります。
最後に、総辞職、解散の問題にお触れになりました。
国政は一日もゆるがせにできない大事なものでございます。それこそ上田さんの御批判もある意味においては私に対する励ましとでも私は受けとめて、議員に与えられた任期というようなものはこれこそ大事に大事にすべきものだ、このことを重ねて申し上げます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/40
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041・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 衆議院の特別委員会における証言のことにつきましては、私もこの席におりましたので何も承っておりませんが、いずれにいたしましても、当時の秘書からの報告に基づきまして最近の機会まで国会に御報告いたしましたことに特につけ加えることはございません。
次に、弾力的運用に関してでございますが、これは先ほどもお答えを申し上げましたが、消費税の適用日は四月一日でございますので、これによりまして納税をしていただくことに変わりはございません。ただ、衆議院本会議における修正にございますように、全く新しい制度でございますから、納税者の立場に十分配慮する必要がある。納税者がミスをされたあるいは誤りをされた場合に、悪質な不正事案等はこれは別でございますけれども、そのミス、誤りにつきましては助言をして直していただく。その規模、態様に応じて適切な対応をしていきたいと思っておりまして、これは具体的に今後早急に詰めてまいりたいと思っております。
それから税収見積もりが過小ではないかということは、前回も委員会でございましたか、お尋ねがございまして、そのときも申し上げましたが、利用可能な各種資料を基礎にして積み上げておりまして、意図的に過大に過小にということはもとよりいたしておりません。
それから三%の問題につきましては、今総理がお答えになりました。全くこれを引き上げられるとも思っておりませんし、そういうつもりもございません。
ただ、総理がおっしゃいますことは、総理大臣として後世代の人々の手を縛るということはこれは慎まなければならないということを言っていらっしゃるのであって、その三%の引き上げの可能性についておっしゃっていらっしゃるとは私は考えておりません。私もそういうことは思っておりません。(拍手)
〔国務大臣林田悠紀夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/41
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042・林田悠紀夫
○国務大臣(林田悠紀夫君) 公安調査庁の調査活動についてでございまするが、一般論といたしましては先ほど総理が御答弁になったとおりでございます。
共産党本部にかかわりまする公安調査庁の調査行為につきましては、現在、東京地検におきまして告訴、告発を受け捜査中でございます。その結果を待たなければならないと存じております。
次に、衆議院で公表されました非公開株の譲渡リストにつきまして私が去る十八日の記者会見で申しましたのは、先ほども福間議員にお答え申し上げましたように、その時点において、今までのところ新しい政官界関係者について聞いていないが、今後さらに検察において非公開株の譲渡関係について調査、検討を続けることになっているということでありました。したがって、今後の調査、検討にまたなければ明らかではないわけでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/42
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043・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 柳澤錬造君。
〔柳澤錬造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/43
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044・柳澤錬造
○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました税制改革関連六法案に対して、竹下内閣総理大臣並びに大蔵大臣に質問をしてまいります。
本論に入る前に、今天皇陛下は重い御病気にあり、闘病生活を続けておられるのには深い感動を覚えるものであり、陛下の御快癒を心からお祈り申し上げます。
さて、まず第一には、国民の信頼なくして民主政治は成り立ちません。
総理、今日ほど国民が政治に不信を持っているときはありません。今の国会は、国民不在の国会と言っても過言ではありません。リクルート事件にしても、政権の中枢にある人々の名前が次々と発表されて、国民は疑惑の目をもって見ているというのに、政府はその真相を解明する努力すら何らしませんでした。
去る十五日、やっと衆議院に調査特別委員会が設置されましたが、その前にやるべきことがあったのです。
それは、三年前、衆参両院で政治倫理綱領を決めました。その中で、「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」とうたわれているのです。これを尊重するならば、政府は、進んでこの政治倫理審査会に取り上げて、真相を解明し、国民の前に明らかにすることであり、それをなぜしなかったのですか。政府は、都合の悪いことはほおかぶりをして、この税制改革法案さえ国会を通過させてしまえばよいという態度のようですが、国民を無視して信頼を失ったならば民主政治は成り立ちません。一国の総理としてどうお考えですか。政治倫理綱領を尊重して実行するとお約束していただけますか、お伺いをいたします。
第二としては、不公平税制の是正こそ最優先して実施することです。
政府はシャウプ勧告以来の大改革であると強調しておりますが、シャウプ勧告は昭和二十四年という占領下でGHQの指示によって実施されたものであり、それまで複数レートであった為替も一ドル三百六十円と単一為替レートにさせられたのもこの年でした。要するに、シャウプ勧告以来ということは、その後今日まで、我が国の経済発展、社会の変化に対応して適切な税制改正を行ってこなかったと表明しているようなものであります。
昭和六十二年度の自然増収は幾らあったのでしょうか。六兆円ぐらいはあったはずです。だったら、所得税の大幅減税も思い切って行うべきでありますし、相続税も、昨年十二月に私の代表質問に対し宮澤大蔵大臣は抜本的に改正して遡及実施すると答弁されたのですから、本年初めから適用されるように速やかに改正して国民を安心させるべきであります。
また、今や国民の足となっている自動車に対して昔の感覚のままで九種類もの重課税をしているもの、国際水準より高い法人税、不当とも言える高率課税をしている石油税などは、この税制改革以前に改正をしておくべきものであり、それをこの税制改革案に含めるというのは、政府の怠慢であり、フェアな態度ではありません。改めるべき不公平、不合理なものは政府が進んで速やかに改正しておるならば、国民もクロヨンなどと言わず、必要な税金は納めてくれるものです。これら不公平税制の是正を実施しなかった責任も含めて、総理並びに大蔵大臣の具体的な御答弁を求めます。
第三としては、今回の消費税法案は誠意のないもので、国民の立場に立って再検討すべきです。
今回の税制改革案の説明で自民党のある幹部は、コーヒーが課税されて紅茶が課税されていない、電気掃除機が課税されて電気炊飯器が課税されていない、こんな不公平な税制がありますかと言って税制改革の必要性を説いていました。語るに落ちたとはこのことで、政府が公平、公正を唱えていても、実際にはいかになすべきことをしていなかったかと言っているようなものであります。
消費税という以上はこれは消費者が納める税金でありますが、実際に業者が消費者から税金が取れるかという不安がありましたが、これは衆議院で転嫁することが明確にされたので解決したと見てよろしいでしょう。
では、消費者が品物を購入するとき、この品物に幾らの消費税が含まれているのか確認する方法がありません。二倍の税金を含めていても消費者にはわからないのです。これはどうされるのですか。あわせて、各業者が消費者から消費税として受け取った税金が正確に納められているのかどうか、これも把握する方法がありません。これらについてどうするつもりでございますか。
特に、税率の三%についての歯どめはいまだに明確になっておりません。何年間は現状のままで変更はしないとはっきり国民に明示すべきです。この税制改革は二十一世紀に向けての税制構造のあるべき姿を目指すものだという以上、そのくらいの見通しは明確に表明すべきです。
大体大蔵省というところは、税金を取り立てる立場の論理だけで考えており、税金を納める国民の立場を無視し過ぎます。この消費税には多くの問題点がありますので、税金を納める国民の立場に立っていま一度検討してみてはどうかと思うのですが、大蔵大臣の御見解を求めます。
第四としては、なぜ消費税を急ぐのですか。その前に行政改革こそ急ぐべきなのです。
総理、今回の税制改革案をまとめるのに自民党の税制調査会では二百数十時間も論議をしているではありませんか。一つの政党でもこれだけの時間をかけているのですから、幾つもの政党が存在する国会ではそれ以上の時間を必要とすることは自明の理でありましょう。ましてや、このような新しい税制を全国民に理解、納得してもらうためには、相当長期間の日数を必要とすることぐらいはおわかりにならないのですか。
実施時期を明年四月一日というのは非常識も甚だしい考え方であり、あと何日あると思っているのですか。いかに国民の立場を無視しているものかを実証しております。
これも衆議院で我が党の修正要求に対し、半年間延期すると回答があったと聞いていましたが、新聞によると、あれは延期ではない、取れるところからは取って取れないところはそのままにしておくというもので、大蔵省は少しも痛くはないとありましたが、それが事実なら重大であります。新たなる不公平を生み出すもので、断じて認めることはできません。
政府はこの消費税をなぜそんなに急ぐのですか。数の多数で国会さえ通してしまえばよいと考えているのですか。それでいて、相当年数がたっている行政改革については積極的に実行しようとしません。行政改革に本気で取り組み、政府が持っている株や土地を放出したら、税の自然増収もあり、当面消費税など必要としないことぐらい大蔵省はわかっているでしょうに。政府がこのような誠意のない良識のない態度をとっている限り、消費税を認めることはできません。まず実施
時期を延期して、不公平税制の是正を優先的に処理し、さらに行政改革の実行を推進すべきであると思うのですが、総理並びに大蔵大臣の御所見を求めます。
最後に第五として、議会制民主主義の政治とは何かと問うものです。
私は、昨年、竹下新内閣が誕生したとき、何とか民主主義政治を定着させたいと思い、竹下総理なら実力者であり、リーダーシップを発揮してくださるであろうと期待して、代表質問のとき、与党は強行採決をしない、野党は審議拒否をしない、せめてこの二点だけでも与野党で合意して国会を運営しないと民主政治は育たないですよと申し上げましたが、総理は核心を避けて答弁をしました。私は残念でなりませんでした。
総理、こうして本年もまた衆議院では強行採決がありました。審議拒否もありました。このような国会運営をしていて、総理はサミットに出席するのが恥ずかしくないですか。国会とは議論をする場なんです。その議論を通じて何が正しいかで正論を生み出していく場でありましょう。そして政治とは、国民がより平和に、より幸せに、より安心して暮らせるようにすることでしょう。そのために、また日本の国家の将来のために何をなすべきかを考えていくことであり、政府もこの国会も国民のためにあることを認識することであって、それが政治家の使命でありましょう。
その認識こそが主権在民の原点であり、民主主義政治を定着発展させる基本であると思うのですが、竹下総理の心からの御所見を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/44
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045・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず、政治倫理綱領というものに沿った政治をすべきである、まさに私どもの政治家としての活動のすべての原点は、あれだけ時間をかけて作成された政治倫理綱領であるというふうに私も考えております。ただ、審査会の問題は、これは国会そのものの問題であろうというふうに考えるわけであります。
民主政治の要諦は、国政に対する国民の信頼に基盤を置くべきものと、このように考えます。その意味におきまして、リクルート問題、私を含む政治家及びその周辺がかかわっておったことは残念至極であります。したがって、先ほど御指摘がありましたように政治改革、その根底にはまさに倫理綱領、これを置くべきであるという心を新たにして信頼回復に最善を尽くしたい、このように考えておるところであります。
次に、不公平税制の問題についていろいろ御議論がありました。
確かにシャウプ勧告、これは占領下におけるシャウプ調査団というものの勧告に基づいてつくられた税制であります。しかし、今日に至るまでさまざまな政策的配慮からいたしていろいろな部分的改革が行われてきておることも事実であります。しかし、およそ十年前からやはり本格的な対応に迫られてきたというのが一つの世論になりつつあったと思うわけであります。したがって、この十年来まさにいろいろ国会等においてお互いが議論したことを根底にしてこのたび税制改革、二十一世紀に向けてあるべき税体系の構築について御審議をいただいておるというのが現状であると、このように考えておるところであります。
行革、これがまずあるべきだ。
確かに昭和五十四年十二月の決議におきましても、まさにまずは行政改革ということが書かれてあります。そして、歳出の節減合理化ということも本院において指摘されておるところであります。私どもはそのような経過を得ながら今日に至っておりますが、行政改革、財政改革、ともどもに寸時たりともその手綱を緩めてはならない、このようにみずからの心に絶えず言い聞かしておるところであります。
強行採決そのものについての政治的基本姿勢についてお触れになりました。
お互いがゆえあって国民の信任を得て国会を形成しておる一員でございます。政府も国会も国民のためにあるという認識は私も等しくするものであります。
そこで、強行採決あるいは審議拒否、私も私なりに長い国会生活の中で、本当に審議拒否は慎む、強行採決は慎む、その申し合わせをして数週間後にまた強行採決が行われ、審議拒否が行われる、そういう歴史的な繰り返しも確かにあったと思います。しかし、議会制民主主義というのは、自由かつ率直な意見交換と多数決原理の上に立つのが社会生活の基本ルールであって、それを基盤として議会制民主主義というのは成り立っておると考えます。
そこで、議会人の一人としてともに思いを等しくしながら、本当に戦後まさにいろいろなことを繰り返してまいりました、そういう試行錯誤を繰り返しつつも議会制民主主義が今日円滑に、きょうただいままた円滑に機能しておるということを思いますときに、やっぱりこれからの、もう永遠の課題としてお互いが議会人として切磋琢磨、研さんすべきものであると考えております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宮津喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/45
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046・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 不公平税制及び行財政改革につきましては総理がお答えになられましたので省略をさせていただきます。
次に、消費税の導入に関する点でございますが、これは改めて御説明を申し上げたいと存じますが、いわゆる弾力的運用の問題につきましては、衆議院本会議における税制改革法案の議員修正によりまして、この種の税には我が国はなじみが薄いのでございますから、その現状を踏まえて、新制度の発足当初の配慮としてこのような修正をされたというふうに私ども理解をいたしております。したがいまして、消費税そのものは、四月一日を適用日といたしますと、それに従いまして納税義務が発生するわけであることには変わりがございません。
修正のねらっておられるところは、これが全く新しい制度でありますから、納税者の立場に十分配慮する必要がある、納税者がこの制度にふなれである導入当初の間は、執行に当たっても広報、相談あるいは指導を中心としていわゆる弾力的に運営していくべきではないかという、それが修正の趣旨と心得ておりまして、私どもそのようにやってまいる所存でございます。
具体的には、納税者にミスがあったあるいは誤りがあったという場合に、それが大変計画的な悪質な不正事案でありましたらこれは別でございますが、ふなれによるもの、理解の不足によるものであるような場合には、その誤り、ミスを指摘し
て、そういう助言をいたしまして訂正していただく、訂正を求める、こういうことを基本的な対応としてまいりたい、規模、態様に応じて柔軟に対応をいたしたいと思っておりまして、具体的なその基準につきましては今後早急に詰めてまいりたいと思っております。
それからもう一つ、消費税は消費者が納税額を、税額を確認できないではないかと。
税額を確認できないではないかということにつきましては、消費税額が正札に別に表示されておればこれは容易でございますが、そうでない場合、税込みであります場合はその価格の百三分の三が税額ということになるわけでございます。今度は、いわゆる非課税取引という範囲が大変少のうございますので、ほとんどの場合の商品、サービス価格に含まれる税額は百三分の三と考えていただければいい。これは取引関係者、消費者にとりまして大体の場合はほとんど明らかではないかというふうに考えております。
なお、この点につきましては、転嫁に関連いたしまして、衆議院が転嫁のために政府も必要な施策を講ずるものとするという国の義務を修正によって明確にされましたことは御承知のとおりでございます。
最後に、相続税についてでございますが、先般柳澤議員から、これは現在の状況から見て年初にさかのぼって適用すべきであるという御指摘がございました。
御指摘のように、政府といたしましてはそのように御提案を申しておりますので、どうぞそのようにひとつお願いを申し上げたいと思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/46
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047・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/47
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048・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) この際、日程に追加して、
畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/48
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049・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 御異議ないと認めます。佐藤農林水産大臣。
〔国務大臣佐藤隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/49
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050・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
牛肉につきましては、我が国農業生産及び国民食生活における重要性にかんがみ、畜産振興事業団が行う価格安定操作の対象とするとともに、輸入割り当て制度のもとで、事業団に輸入牛肉の買い入れ及び売り渡しを一元的に行わせ、その価格と需給の安定を図ってきたところであります。
しかしながら、この輸入割り当て制度につきましては、先般の日米及び日豪間の協議において、我が国は、昭和六十六年度から、これを撤廃するとともに、事業団は輸入牛肉を取り扱わないこととしたところであります。この決定は、輸入数量制限をめぐる厳しい国際世論、我が国の置かれている国際的立場等を考慮し、所要の国境措置を確保しつつ行ったものでありますが、牛肉輸入の自由化は、今後、国産牛肉の需給及び価格に重大な影響を及ぼすことが見込まれるところであります。
このような牛肉の輸入をめぐる事情の変化に対処して、国産牛肉を引き続き事業団の価格安定操作の対象としてその価格の安定を図りつつ、事業団の業務及びその実施方法等について所要の見直しを行うこととし、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を提出することとした次第であります。
また、このような状況の中で我が国肉用牛生産の存立を確保するためには、肉用牛生産の合理化を初め関連する諸施策を積極的に推進し、輸入牛肉に対抗し得る価格水準で国産牛肉を供給し得るようその生産体制を整備する必要がありますが、牛肉の内外価格差の現状、我が国の国土条件の制約等から見て、直ちにその実現を図ることは極めて困難と判断せざるを得ず、我が国肉用牛生産の基盤である肉用子牛生産の存続に大きな困難が生ずることが危惧されるところであります。
このような事態に対処して、我が国肉用子牛生産の安定その他畜産の健全な発達を図り、農業経営の安定に資するため、当分の間、事業団に、肉用子牛についての生産者補給交付金等の交付の業務を行わせるとともに、生産者補給交付金等の交付その他食肉に係る畜産の振興に資する施策の実施に要する経費の財源に関する特別の措置を講ずることとし、肉用子牛生産安定等特別措置法案を提出することとした次第であります。
次に、これらの法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
まず、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。
第一に、事業団は、輸入牛肉については、買い入れ、売り渡し等の業務を行わないこととするとともに、これに伴う所要の規定の整理を行うこととしております。
第二に、畜産経営の改善等に資するため、事業団は、主要な畜産物に関する情報の収集、提供等の業務を行うこととしております。
次に、肉用子牛生産安定等特別措置法案についてであります。
第一に、事業団は、都道府県知事の指定を受けた都道府県肉用子牛価格安定基金協会が肉用子牛の生産者に交付する生産者補給金に充てるため、当該都道府県協会に対し生産者補給交付金を交付することとしております。
第二に、生産者補給交付金の金額は、肉用子牛の再生産を確保することを旨として定める保証基準価格から肉用子牛の平均売買価格を控除した金額を基礎として算定することとしております。
この場合、平均売買価格が肉用子牛生産の合理化により実現を図ることが必要な肉用子牛の生産費を基準として定める合理化目標価格を下回るときは、都道府県協会の生産者積立金から生産者補給金の一部を交付することとしております。また、事業団及び都道府県は、都道府県協会の生産者積立金に充てるため、生産者積立助成金を交付することとしております。
第三に、牛肉及び特定の牛肉調製品に係る関税収入を、生産者補給交付金等に充てるための事業団への交付金の交付並びに繁殖、育成及び肥育を通ずる肉用牛生産の合理化、食肉等の流通の合理
化等に資する施策の実施に要する経費に充てるための特定の財源とすることとしております。
最後に、事業団による生産者補給交付金等の交付は昭和六十五年度から、牛肉等に係る関税収入についての特別の措置は昭和六十六年度から実施することとしております。なお、昭和六十五年度の生産者補給交付金等の財源といたしまして、本年度から昭和六十五年度までの間の事業団の輸入牛肉差益の一部を充てることとしております。
以上が畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/50
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051・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。村沢牧君。
〔村沢牧君登壇、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/51
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052・村沢牧
○村沢牧君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま提案のありました畜産関係法案に関連して、総理並びに関係大臣に質問します。
法案の内容について論議するに先立ち、今我が国の農業が重大な局面を迎えているとき、これまでの農政の総括と今後の基本政策についてただしておかなければなりません。
昭和三十六年に農業基本法が制定されて以来三十年近くがたちましたが、農業の現状は基本法の目的とは大きくかけ離れた存在になっています。多くの作物は思うような生産性の向上が図れないまま輸入農産物との競争を迫られ、減反の強化や価格の引き下げによっての農業所得の落ち込み、中核農家や農業後継者の減少、こうした結果、穀物自給率はついに先進諸国最低の三一%に低下し、食糧の安全保障に大きな不安を与えています。
我が国農業がこのような状態に陥ったことは、農業基本法の精神と目標を忘れ、本院の食糧自給力強化に関する決議をも無視し、場当たり的で整合性のない政策を進めてきた自民党政府の責任によるものであります。このような農政のもたらした責任について総理はどのように反省をしていますか。
この際、二十一世紀を展望し、我が国経済における農業の位置づけ、農民が安心して農業にいそしめる基本政策の確立、食糧自給率向上の見通しについて総理の答弁を求めます。
次は、米の自由化問題であります。
日本の米市場開放を要求するRMAの提訴を米国通商代表部は却下しましたが、同時に、来る十二月のウルグアイ・ラウンドの中間レビューにおいて日本が米市場開放に積極的に対応しなければRMAの再提訴を促すとの条件を付しており、これは却下ではなく、問題を先送りしただけの決定であって、全く遺憾であります。総理並びに農林水産大臣はどのように受けとめていますか。
ヤイター米通商代表は、日本の米市場参入をウルグアイ・ラウンドで協議することはレーガン大統領と竹下総理との間で確約されていると声明していますが、総理はいかなる確約をされているのですか。
米問題を二国間協議の対象にしないという日米外相会議の確認を逆手にとってウルグアイ・ラウンドの中間レビューで日本の米だけをつまみ食いにし、しかも期限を切って具体案を示せという要求は日米友好関係を損なうものであり、国際信義にもとるものであります。政府はこのような要求を受け入れるつもりがないことを早急に米国に伝えるべきでありますが、外務大臣の見解を求めます。あわせて、ウルグアイ・ラウンドでは農業問題について何を討議するのか、農林水産大臣に尋ねます。
米は国民の主食であるとともに、水田面積の三割にも達する減反を強いられ、生産者米価は二年連続引き下げられている中で、米の市場開放は絶対に認めることはできません。また、食管制度の根幹は堅持すべきであります。改めて総理の決意を伺います。
総理は国会決議を尊重して対応すると言っていますが、本院は、第百一国会で、米は国内生産による完全自給の方針を堅持することを決議しており、この臨時国会では、我が国農業の基幹作物である米の完全自給を図るため、自由化は反対であるという決議を行っています。完全自給とは、部分的輸入であろうと、少量の輸入であろうと、加工米の輸入であろうと認めるべきでないという趣旨であります。総理は完全自給という表現をどのように理解されていますか。はっきりと答弁してください。本院の二度にわたる決議を尊重し、またその決議の重さを認識し、米の完全自給の方針を内外に明確にし、毅然たる態度で臨むべきでありますが、見解をお聞きしたい。
次は、牛肉・オレンジ交渉について伺います。
竹下内閣は発足以来一年を経過しましたが、内閣発足直後に迎えた重要農畜産物十二品目問題について、十品目の自由化を受け入れ、続いて行われた牛肉・オレンジ交渉では、初めは自由化は困難であると言っておりながら、いつの間にか自由化を前提とした条件闘争の場と化して、牛肉については、国際法上認められている課徴金制度さえ放棄し、関税の引き上げと米国の輸入制限制度と比較して、はるかに見劣りのする不平等な輸入制限措置の導入のみで妥協してしまったのであります。かんきつについては、輸入制限も関税の引き上げ措置も認められていません。
このことに象徴されているように、竹下内閣は、農民の切実な要求を裏切り、本院農林水産委員会決議や議員の署名要求をも無視し、押されっ放しの自主性のない外交交渉によって一方的譲歩を重ね、日本農業を厳しい試練の場に追い込んでいるのであります。
米国やECは農産物に対して輸入制限制度や課徴金制度、輸出奨励金などで自国の農産物を保護している中で、我が国は自由化の圧力に屈して丸裸になってしまうことを黙視することはできません。このような不平等な国境措置をどう考えているのですか。独立国としてなぜ毅然たる態度をとらなかったのですか。総理、外務大臣の答弁を求めます。
総理は衆議院の答弁で、自由化になっても牛肉・かんきつ生産の存立を守り得るとの判断に立って決断したものであると述べていますが、生産者や国民の不安を解消するために、その判断と責任を明らかにしてください。
次に、牛肉自由化に伴う影響と法案の内容について伺います。
多くの農産物が過剰基調にある我が国で、牛肉は今後とも需要の拡大が見込める成長作目として政府が積極的に増産を進め、生産者も規模拡大、経営改善に努力をしているときに、政府みずから
が自由化を決定したことは、畜産農家に大きな打撃を与えるだけでなく、政治不信を招いています。
肉牛生産農家並びに畜産物全体に、また国内牛肉の需給、価格にいかなる影響をもたらすと判断していますか。また、自由化が消費者に与える影響、輸入牛肉の安全性対策についても伺いたい。
提案された肉用子牛生産安定特別措置法案は六十五年度から施行になっていますが、牛肉の輸入は六十五年度を待たずして本年度から大幅にふえますので、本法案の内容は早急に実施すべきであり、施行前の価格変動に対しては緊急措置を講じて肉牛生産の安定を図るべきでありますが、どのように対応されますか。
本法案は、不足払い制度によって生産者に補給金を交付しようとするものでありますが、その基準価格や合理化目標価格のとり方が重要であります。保証価格の水準、算定方式について伺いたい。
また、肥育農家にとっては、安い価格で子牛を購入できる保証がないにかかわらず、自由化によって販売価格が引き下げられることが必至でありますので、流通改善とあわせて、肥育農家にも不足払い制度などの総合的対策を講じ、所得を補償すべきでありますが、どのように対応されますか。
畜安法改正案は、自由化に伴って畜産振興事業団の業務を整備しようとするものでありますが、事業団が輸入牛肉の取り扱いをめぐって国民に大きな疑惑を与えていることはまことに遺憾であります。農林水産省の調査結果を明らかにするとともに、今後の指導監督、また畜産振興事業団が国内牛肉対策の充実をどのように図っていくのか伺いたいというふうに思います。
次に、かんきつ対策について伺います。
政府の責任で自由化を決めながら、かんきつ対策については行政措置の補完にとどめていることはまことに無責任であります。かんきつは、かつては選択的拡大作物として政府みずからが奨励しましたが、今度は自由化を受け入れて、ミカン園の二割を廃園にして、そのほとんどは植林をして山にしようとするような行政措置は全く場当たり的であり、整合性のないものであります。
農林水産大臣、こんなことを続けていて、果樹生産の存立を確保して日本農業を守ることができると思っているのですか。オレンジとオレンジ果汁の自由化はすべての果樹生産に深刻な影響を与えることになりますが、どのように判断されるのか、またその対策を明らかにしてください。
輸入の増加につれて我が国の果樹産業を後退させるような消極的姿勢ではなくて、我が党が既に衆議院に提出してあります法案のように、加工原料用果実についての不足払い制度を法制化するとか、我が国の果実を積極的に輸出するなどの前向きな対策を講ずべきでありますが、農林水産大臣の所信を伺いたい。
また、外国産の果実等の輸入によって我が国の果樹産業に重大な影響を与えるときは、果樹振興法第五条を適用し、国境調整措置を講ずべきであります。この果樹振興法第五条は、第百二国会で私が提案者となって全会一致の賛成を得、参議院の修正によって可決された条文であります。政府は、この国内法に基づき国境調整措置を含めて適切な対策を講ずる義務があります。また、そのための省政令などを早急に整備することが重要であります。農林水産大臣の責任ある答弁を求めます。
最後に、財源対策について伺います。
特別措置法による必要な財源は牛肉の関税収入で充当することになっていますが、関税率は六十六年から六十八年まで毎年一〇%ずつ下げられ、六十九年度以降の関税率は決められておらないがさらに下げられることが心配をされます。
大蔵大臣、このような関税収入の特定財源でこの制度の運営に必要な財源が確保できるという自信をお持ちですか。六十九年度以降はどうするんですか。本法案による必要な財源を関税収入の範囲内に限定すべきではないと考えますが、見解を伺います。
牛肉・かんきつの国内対策の予算は六十三年度から必要でありますが、その内容について明らかにしてください。六十三年度から必要なこの財源は、この臨時国会で補正予算を講ずべきでありましたが、どうしますか。
以上、私は牛肉・かんきつの自由化に関連して質問しましたが、畜産にしても、果樹にしても、その他の農産物でも、自由化の中で生産を存続するためには生産コストを下げなければならず、そのために農機具、飼料、肥料、農薬などの生産資材費を引き下げることが最も重要であります。
こうしたときに、竹下内閣がなりふり構わず導入しようとする消費税は、農家のあらゆる生産資材費の引き上げを招くことになります。ところが、農産物は輸入品との競争による価格の低下や政策価格の引き下げにより、また競りによって販売価格が決められている中で、農家は消費税による負担増を他に転嫁することはほとんど困難であり、営農生活面でダブルパンチを受けることになるんです。農家、農産物、食糧にとって重大な負担を及ぼすこのような消費税の導入に私は絶対反対するものであります。
したがって、農業に及ぼす影響だけを見ても消費税は極めて大きな問題を持っておりますので、これは撤回すべきであり、また農業に対して消費税の及ぼす影響について、大蔵大臣、農林水産大臣の答弁を求めます。
竹下総理、あなたは「ふるさと創生」を掲げて政権の座に着きましたが、自主性のない外交姿勢と農業軽視の政策によって食糧と緑を失い、地域をますます疲弊させようとしているんです。こんなことで何が「ふるさと創生」と言えますか。改めて総理の見解を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/52
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053・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず最初に、昭和三十六年に農業基本法が制定されて以来、農業の現状が基本法の目的と乖離してきておると、そういうもろもろの反省に立って、農業基本法の精神をどう考えるか、こういうお尋ねであったと思います。
昭和三十六年に農業基本法が制定されまして、需要に対応した畜産物、果実などの生産の拡大と施設型農業部門を中心といたしました生産性の向上というものが実現されますとともに、農家所得は勤労者世帯の収入に比肩し得る水準になったと。しかしながら、現在、我が国農業は、土地利用型農業部門におきますところの経営規模の拡大が停滞し、また一部農産物の需給の不均衡とか、それから御指摘なすった諸外国からの市場開放のそういう要求等が厳しい情勢をもたらしておるという共通認識は私も持っております。
このため、産業として自立し得る農業を確立して、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給を基本として生産性向上を図りますとともに、農業所得の安定的な確保、そして魅力ある農業の確立、これらに向かいまして積極的な農政への転換を図らなければならぬと、このように私も問題意識を整理いたしておるところであります。
そこで、農業の位置づけということになりますと、食糧安定供給を初め、やはり活力ある地域社会の維持、そうしていま一つ、国土、自然環境の保全等こうした極めて重要な役割を果たしておるものであるというふうに私は思っております。
したがって、今後、国際化に対応しながらも、こうした農業の果たす役割が極めて重要であるという基本認識に立って農業の健全な発展を図っていくことが何よりも重要であると考えております。
したがって、国会決議の趣旨を踏まえ、そしてやっぱり、おととしの暮れでございましたか、農政審議会報告、これに沿いまして、国内での食糧供給力の確保を図りながら国民の納得し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本として、そして与えられた国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図るという観点から農政を展開していかなきゃならぬというふうに思っておるところであります。
そうしてまた、農業者の方が将来を見通しながら営農を展開することができますように、新たな農産物の需要と生産の長期見通し、これを策定していかなければならない課題だと思っております。
次に、米の問題にお触れになりました。
十月の二十九日、内閣官房長官談話を発表いたしたところでございます。
米国政府が、我が国の米の輸入制度につきまして、米国精米業者協会などが行いました提訴について、二年前と同様、ウルグアイ・ラウンドで扱うのがより適切であるとしてこの提訴を却下したということ自体は一応評価をいたしております。
我が国としてはウルグアイ・ラウンドの農業交渉に真剣かつ真摯に取り組んでおるところでございますが、各国の抱える困難な農業問題及び制度について議論されるときには米の問題についても討議する用意があるという立場をとっております。
なお、米通商代表部がウルグアイ・ラウンドの中間レビューで満足のいく対応が得られない場合には再提訴を勧奨する、こうしておる点につきましては、これは三〇一条によります二国間交渉及びガットパネルの道を残すものでありますので、これに対してはまことに遺憾であるという立場をとっておるところでございます。
私とレーガン大統領とに密約があるなどということはございません。
それから米の市場開放、食管制度等につきまして国会決議等も含めてお触れいただきました。
米につきましては、その重要性にかんがみまして、国会における決議、この趣旨をまず体して、生産性の向上を図りながら国内産で自給するという基本的な方針で対処してまいりたい、このように考えます。
食管制度につきましては、米を政府が責任を持って管理することによって生産者に対してはその再生産を確保しまた消費者に対しては安定的にその供給責任を果たす、こういう制度の基本というものは今後ともやはり堅持すべきものであるというふうに考えます。
それから国会決議につきましては、我が国における米及び稲作の重要性について、その供給を外国からの輸入に依存するという事態が今後生ずることのないよう国内産で自給する、この方針をとるべきであるという趣旨と理解をいたしております。したがって、その趣旨を体して遺憾のないように対応していきたいと思います。
それから牛肉・かんきつ交渉についていろいろお触れになりました。
佐藤農林水産大臣を初めといたします関係者が粘っこい交渉を行いまして、自由化までの期間、国境措置等につきまして米側からも相当の譲歩を得て、いわば日米間の共同作業で決着したというふうに私は考えておるところであります。
したがって、今後とも国内対策等、この生産の存立を守り得るという判断に立った決断であったと御理解をいただきたいと思います。
それからふるさと創生論というお言葉をお使い賜りました。
農業の役割というもの、これはやっぱり自然環境の保全といった極めて重要なものがございます。東京一極集中というようなこと、これを抑制して機能を地方へ分散して国土の均衡ある発展を図る。そのときに、農業とか農村とか、そういうものの役割というものが一層拡大していくであろうというふうに私は考えておるところでございます。
以上で私のお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/53
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054・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 村沢議員にお答えを申し上げます。
まず、米の市場開放要求についてでありますが、米国政府が、我が国の米の輸入制度について米国精米業者協会等が行った提訴を却下した際、来る十二月のウルグアイ・ラウンドの中間レビューにおいて我が国の米問題について日本政府の積極的な対応を要求し、それが実現されなければRMAの再提訴を促すとの条件を付していることは遺憾であります。
次に、ガット・ウルグアイ・ラウンドでの農業問題についてでありますが、農業貿易に影響を及ぼすすべての措置を対象にした新しいガット規則及び規律の策定を通じ、新たな農産物貿易秩序の形成を図ることが議論されるものと考えております。
いずれにしても、新しいルールづくりについて慎重な論議が行われると考えております。
次に、牛肉輸入枠の撤廃が畜産物需給等に与える影響とこれに対する対策いかん、こういうことでございますが、今般の牛肉輸入枠の撤廃により牛肉価格はかなり低落するものと考えられ、これに伴い牛肉の需要量はかなり拡大するものと見込まれます。
また、豚肉、鶏肉等の需給に関しましてはそれほど急激な影響は出てこないのではないかと見込まれますが、なお今後の動向を注視してまいりたいと考えております。
いずれにせよ、牛肉輸入枠の撤廃による影響に対処し、我が国肉用牛生産の存立を守り、畜産経
営の安定を図るため、国内措置の実施については最大限の努力を傾注してまいる所存であります。
将来の牛肉価格についてでありますが、内外の需給動向、原産地価格、為替レートの動向等さまざまな要因が絡み合っており的確に見通すことは困難でありますが、輸入量の増加、国内生産コストの低減、流通の合理化等により総じて安定的に推移するものと考えております。
次に、輸入牛肉等の安全性の確保につきましては、食品衛生法に基づき厚生省において検疫等の業務を実施しているところでありますが、農林水産省といたしましても、厚生省と十分連携を密にし、輸入牛肉等の安全性確保に所要の努力を払ってまいる所存であります。
次に、肉用牛生産の安定のための対策等についてでありますが、本法律案に基づく生産者補給金制度の発足については、諸般の準備のため、昭和六十五年度からを予定しております。
しかし、本制度が発足し定着するまでの間において懸念される価格変動等に対処するため、現行の肉用子牛価格安定制度の拡充強化を初め、肉用牛の生産から流通にわたる各般の緊急対策を講じてまいる考えでございます。
次に、保証基準価格及び合理化目標価格の算定方式については、今後、制度の発足までに、畜産振興審議会の御意見を承った上で、慎重に検討、具体化したいと考えております。
なお、保証基準価格の水準については、現行肉用子牛価格安定事業における保証基準価格の全国平均値が一つの目安になるのではないかと考えております。
次に、本制度の実施期間として「当分の間」ということを言っておるわけでございますが、余り詳しくはお触れになりませんでしたけれども、国内肉用牛生産が安定し今回の特別措置の必要がないという状況になるまでの間と私どもは考えておるところでございます。
次に、肥育経営に対する施策についてでございます。
輸入枠の撤廃後において肥育経営の再生産が確保できるよう肉用子牛価格を所要の水準にまで引き下げ、そのもとでも肉用子牛生産の存続を図り得るようこの法律案を提出したものであります。
また、牛肉の価格安定制度は引き続き維持することとしており、その安定価格帯水準は肥育経営の再生産が確保できる水準として設定することとしておるところであります。
なお、これらの制度とあわせて、特別措置の一環として、牛肉等の関税収入相当額から、肥育経営を含む肉用牛生産の合理化、食肉の流通改善等のための施策の実施に要する経費にも充当し得るよう措置しているところであります。
次に、事業団のいわゆる談合疑惑問題でございますが、牛肉輸入にかかわる談合疑惑報道につきましては、直ちに調査の指示をしたところ、先般事業団から談合があったとは考えられない旨の報告がありました。あわせて、今後の業務運営について諸般の改善措置を講ずるとの報告があったところであります。
農林水産省といたしましては、このような報告を踏まえつつ、三年後の牛肉輸入の自由化を目前に控え、事業団の今後の業務の運営につき、消費者に不信を持たれることのないよう、改善措置の適切な実施等につき指導監督を厳しく行ってまいりたいと考えております。
なおまた、今回の法改正により畜産振興事業団が行うこととなる新たな業務の実施に当たっては、その組織体制等を再編整備することが必要となりますが、具体的には、昭和六十五年度まで経過的に継続される牛肉輸入業務の状況を踏まえて今後適切に対処してまいる所存であります。
次に、果樹農業の存立の確保についてであります。
先般の日米合意が関係農家にとり極めて厳しい試練であることは十分認識しているところであります。今後、厳しい条件のもとで我が国農業の重要な部門としての果樹農業の存立を守りその体質強化を図っていくとの基本的考え方にのっとり、所要の国内対策を講ずる所存であります。
輸入オレンジと国産かんきつは商品としてそれぞれ別の需要もあり、オレンジ生果の自由化が国産かんきつの需給に必ずしも著しい悪影響を及ぼすことはないものと考えております。他方、オレンジ果汁の自由化につきましては、内外価格差があることから国産かんきつ果汁に相当の影響が生ずることが予想されます。
このような厳しい条件のもとでかんきつ生産の存立を守るため、今後、かんきつの生産性・品質の向上と安定出荷、ミカン園等の再編整備、果汁原料用かんきつの価格安定対策、果汁工場の設備の合理化、近代化、再編整備等、国内、海外にわたる需要拡大対策等所要の措置を進めることとしており、これらの国内対策の予算としては全体で一千億円程度を確保したいと考えております。
加工原料用果実の不足払い等についてでありますが、この際率直に申し上げておきたいと思いますが、従来から行っておる通常の価格差補てんに加えて、特別の価格差補てんを一定期間実施することとしており、予算措置等を行う所存であり、立法措置を講じなくても実現可能であると考えております。
また、果樹農業については生果を中心として生産者の採算が成り立つことが基本であり、加工原料用仕向け果実の価格対策についてはこの点に留意して進める必要があると考えております。
さらに、守りだけではない、より積極的な農政を展開してまいる所存であり、御指摘の果実の輸出振興につきましても、今回の国内対策において重要な柱として位置づけ、輸出振興産地の整備、海外市場調査、海外宣伝事業等を強力に進めることとしております。これがまた大事なところでございます。
次に、果樹振興法第五条につきましてでございますが、議員が中心となられましておやりになったことは重々承知をいたしております。この条項制定の経緯については承知をしながらも、この規定の発動は、外国産の果実等の輸入によって引き起こされる一定の事態について政府に対しこれを克服するための措置を講ずべき旨を義務づけておりますが、どのような措置を講ずべきかについては政府にゆだねられているものと考えております。
本法の発動については、国際条約上の義務との関連もあり、どのような場合にどのような措置を講ずるかをあらかじめ定めておくことには困難があると考えております。
いずれにしても、本条の趣旨を体して適切に対処してまいりたいと考えております。
最後に、消費税の農業に及ぼす影響についてお答えをいたします。
消費税は、基本的には消費者に転嫁することを予定した税であることから、消費税額の円滑な転嫁が行われれば農業者がその負担をすることにはならないものと考えております。
しかしながら、農産物については行政価格や卸売市場における競り取引の対象となるものが多いこと等の事情もございますので、その円滑な転嫁を図るため、行政価格についてはその対象となる農産物について消費税の導入に伴う影響を織り込んで算定すること、また、競り取引については競り価格に税額三%分を上乗せする方法を採用することなどの方向で関係省庁等と調整を進めているところであります。
いずれにしても、消費税の円滑な転嫁が行われるようその環境整備について適切に対処をしてまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/54
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055・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) まず、米の問題に関しましてお答え申し上げます。
米に関しましては、去る日米外相会談におきまして、我が方より米は二国間よりもむしろ多国間で議論すべきであるということを主張いたしまして、シュルツ国務長官の理解を得たところでございます。そうしたことで、過般のRMAの三〇一条提訴に関しましてUSTRのヤイター代表が却下されたことを私たちは高く評価いたします。しかしながら、条件がついたことは、今も農林大臣が申されましたとおり遺憾でございますが、我が国は、ウルグアイ・ラウンドにおきまして、参加各国でウルグアイ・ラウンドの農業問題、そうした問題がすべてテーブルの上に乗りましたときに、我々といたしましても米を含めて誠心誠意議論をする所存でございます。
また、日米間の外交に関しましては、もっと毅然とやれというお話でございまして、共同作業だが我が国だけが協力させられておるのではないかという御指摘でございますが、決してさようではございません。今も農水大臣がお答えなさいましたように、牛肉・かんきつの場合におきましても、米国に対しまして譲歩してもらうところは譲歩していただきました。なおかつ、我が方といたしましても、こうした問題で国境措置、国内措置をしっかりやるのならばその生産は守られるという確信のもとにそうした決断を下しておる所存であります。もちろん、今後も我が国のために毅然とした外交を続けます。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/55
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056・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの問題の国内対策といたしまして、牛肉等に係る関税収入を特定財源といたしました。その上で肉用子牛の不足払い等に必要な経費にそれを充てることといたしまして、関係法案の御審議をお願いいたしておるところでございます。
それで、お尋ねの趣旨は、それが足りなくなったときということでございましたが、今後牛肉の輸入量というのは恐らくかなりの程度増大すると考えられますので、この関税収入で所要経費は十分賄い得るものと考えております。万々一仮に財源の確保に困難を来す事態が生まれましたら、それはその時点で所要の見直しをいたします。が、まずそういうことはなかろうと実は思っております。
それから次の問題は、六十九年度以降のこの関税率は決められていないではないかということで、確かに六十八年までの約束はなされましたが、それ以降はウルグアイ・ラウンドの関税交渉で議論することになったわけでございます。関税交渉には大蔵省も当然のことながら参加いたしますので、私どもウルグアイ・ラウンドの場で六十九年以降の牛肉の関税率について議論をいたしますに際しましては、国際的な経済関係また我が国肉用牛生産の健全な発展等の観点を十分参酌して対処いたしたいと思います。
それから最後に、かんきつ類の自由化についての国内対策に関して補正予算のお話がございました。
ただいま補正予算につきましては、その関連の歳出歳入、例えば災害復旧等の追加財政需要がどのぐらいあるか、あるいはまた税収動向もただいまの段階ではちょっと早過ぎまして定かでございませんので、この臨時国会に補正予算を御審議願う、提出する考えはございません。
今後の問題といたしまして、このただいまの対策を含めまして、いろいろな補正要因を合わせまして、また歳入歳出の動向等がもう少しはっきりしてまいりました段階で補正予算を提出いたしまして御審議をお願いいたしたい、こう考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/56
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057・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 及川順郎君。
〔及川順郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/57
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058・及川順郎
○及川順郎君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案並びに肉用子牛生産安定等特別措置法案に対しまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず初めに、牛肉・かんきつ交渉の結果についてお伺いいたします。
長年の懸案でありました日米牛肉・かんきつ交渉が、農産物十二品目に続いて去る六月二十日、我が国が一方的に譲歩する形で決着いたしました。この輸入自由化決定は、肉牛生産農家はもとより、酪農、養豚、養鶏、かんきつ生産農家など、さらには地域の農業、経済社会に大きな影響をもたらすことは言うまでもありません。総理は、我が国農業の存立をも脅かすこれら農産物の輸入自由化を決定したという事実に対して、どのような責任を感じておられるのか、まずその見解を承りたいと思います。
次に、ただいまも出ておりましたが、米問題について伺います。
今日、我が国の稲作は、大規模減反を初め、米価の二年連続の大幅引き下げや異常低温に見舞われるなど、大変な苦境にさらされております。このような現状において、米国の通商代表部は、我が国が米の市場開放について積極的な対応を示さなければRMAに対して再度通商法三〇一条に基づく提訴を促すという姿勢を崩しておりません。申すまでもなく米問題は我が国農業、食糧の基本にかかわる重大な問題であり、外国の米生産事情によってこの市場開放が許されるべきではありません。
これまで本院においては、昭和五十九年七月に、米については国内生産による完全自給の方針を堅持するという本会議決議を行い、さらに本年の九月二十一日には、米自由化反対の本会議決議を採決いたしております。政府は、これらの決議の趣旨を踏まえ、来月開かれるガットの中間レビューに向けてどのように対応されるのか、総理の具体的な所見を伺っておきたいと思います。
牛肉について伺います。
昭和六十一年度で六九%という牛肉の自給率は、今回の輸入自由化によってさらに低下するのは避けられない見通しであります。本来、牛肉は自給自足的な性格が強く、米国は食肉輸入法で、ECは輸入課徴金でそれぞれ輸入規制を行うなど、先進諸国においても強力な国境措置をもって保護している現状であります。したがって、我が国においても、単に輸入依存度が高まる状況を放置するのではなく、中長期的視点に立って国内の生産体制を整備することが重要であると思いますが、農林水産大臣の見解を伺いたいと存じます。
また、国内肉牛生産のコスト低下を図るためには、素牛代と飼料代で生産費の約八割弱を占めている現状を考慮し、これらの生産費を圧縮させるための生産方式の合理化がなされなければなりません。農林水産省が本年二月にまとめました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」におきましては、昭和七十年度を目標に生産コストを現状の二、三割引き下げる必要があるとしております。自由化が決定した現段階でこれを見直す必要はないのか。また、このコスト引き下げのために今後どのような具体的措置を講じていくのか。牛肉の価格安定制度の運営も含め、農林水産大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
次に、法案の内容について伺います。
今回の特別措置法案は、牛肉の輸入自由化に伴う国内の生産農家への打撃を食いとめるために、子牛の生産農家に対して不足払い制度を設けようとするものであります。
子牛は依然として高値が続いており、高い子牛を買い入れても出荷するころには牛肉の輸入量が大幅に増大することなどから牛肉の市況が低落しているおそれがあり、現に生産農家では今後の肥育経営の悪化が懸念されております。したがって、この不足払い制度は子牛段階だけではなく、肥育段階に対しても導入を図るべきであります。
法案では保証基準価格と平均売買価格との差額を不足払いするとしておりますが、この保証基準価格の水準についても明らかにしていただきたいのであります。
また、不足払いの財源としては、牛肉及び特定牛肉調整品についての関税収入が充てられることになっております。しかし、関税収入だけでは将来にわたって子牛の不足払いに必要な額を確保できる保証はありません。したがって、この財源が不足した場合にどのような措置がとられるのか、大蔵大臣並びに農林水産大臣の見解を伺いたいと思います。
次に、畜産振興事業団についてお尋ねいたします。
畜安法改正案では、昭和六十六年度より畜産振興事業団が輸入牛肉の売買業務から撤退することとしております。畜産振興事業団による一元的な輸入牛肉の取り扱いに関しましては、昨年十月、売買同時入札方式の割り当て枠をめぐる汚職事件が発生しており、また、多額の助成金が不正支出されていた事実も報告されております。
政府は肉用子牛に対する不足払いの業務を畜産振興事業団に行わせるとしておりますが、このような不正続きの畜産振興事業団にこの業務を任せて大丈夫なのかという疑念を払拭することはできません。これはまた、畜産振興事業団を温存させるための布石ではないかとの指摘もあります。したがいまして、この不足払い業務を畜産振興事業団に行わせることとした理由を明らかにしていただきたい。農林水産大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
総務庁は、先日、ことし十月から十二月期の行政監察計画を発表しております。その中で、二年半後の牛肉輸入自由化に向けて牛肉の流通状況、畜産生産コストの形成過程、自由化に伴う国内措置が適切であるかなどを監察するとしております。
特に私は、不透明な部分の多い流通システムについて徹底した行政監察を行い、国民が納得のできる公正なシステムの確立を願うものであります。そうした観点から、総務庁が具体的にどのような内容の行政監察を実施するのか。また、この監察結果はいつごろ発表されるのかを総務庁長官にお答えいただきたいと存じます。
次に、安全性の確保について伺います。
最近、輸入牛肉やブロイラーから殊留農薬、合成抗菌剤などが見つかったり、販売が禁止されているペットフード用の病死牛肉が食用として大量に出回るなど、日常食卓の安全性を脅かす事件が相次いでおります。大量の輸入牛肉を国内に入れる前に、まず十分な安全性確保の措置が確立されなければなりません。こうした安全性確保の取り組みについて、厚生大臣並びに農林水産大臣はどのように考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。
最後に、私は、国内の牛肉生産農家が将来に明るい展望を持って営農に従事するとともに、一方、安くて安全なおいしい牛肉を求める消費者も納得のできる牛肉政策を政府が責任を持って確立することを強く要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/58
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059・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 最初にお触れにたりましたのは、十二品目あるいは牛肉・オレンジ輸入の自由化、そういうことの事実についてでございます。
農産物十二品目につきましては、ことしの二月のガット理事会の勧告を踏まえて、その後米国との間で協議を行いまして、自由化後の国境措置等について合意に至ったものと、こういう位置づけになります。
それから牛肉・かんきつ問題につきましては、米側と粘り強い交渉を行いまして、自由化までの期間、国境措置等について米側からも譲歩を得、日米間の共同作業で決着したものということに位置づけられるわけでございます。
我が国としては、輸入数量の制限をめぐる厳しい世論、我が国の置かれておる国際的立場、これらを考慮いたしまして、国境措置と国内対策を講ずることによりまして牛肉・かんきつの生産の存立を守り得る、この判断に立って決断をいたしたものであります。
次は、米の問題についてであります。
この重要性にかんがみまして、まず国会における決議、これの趣旨を体し、生産性の向上を図りながら国内産で自給するという基本的な方針で今後も対処してまいる所存であります。
米の貿易問題につきましては、ウルグアイ・ラウンドにおきまして各国の農業問題、制度について議論を行う段階において討議することが適切であると、このようにいつも思っておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣佐藤隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/59
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060・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 及川議員の御質問にお答え申し上げます。丁寧に要点のみ申し上げます。
まず、国内における肉用牛の生産体制の整備についてでありますが、国内における肉用牛の生産体制の整備につきましては、本年二月策定公表いたしましたいわゆる酪肉近代化対策でございます。今後とも、我が国土地利用型農業の基軸として位置づけ、その振興合理化を図ることとし、昭和七十年度における国内生産量を現状から見て約二割増にするという目標を設定したところであります。
この目標は、経営規模の拡大、合理的な肥育、バイテク等の新技術の普及等を織り込み、低コストによる国内生産の着実な拡大を図ることを旨として策定したものでありますが、この目標の実現を目指して各般の施策を展開してまいりたいと考えております。
生産コストの目標の見直しということでお尋ねがございました。
今般の酪肉基本方針においては、長期的な視点から国際化にも対応し得る肉用牛生産の確立を目指すとの基本的な観点に立って、当面、生産コストを現状より二ないし三割程度引き下げることを目標としたところであります。
この目標は、肉用牛経営の動向等を十分に踏まえて定めたものであり、現段階においてこれを改定する必要はないと考えております。
また、この目標を実現するため、飼養規模の安定的拡大、経営能力にすぐれた意欲的な農業者等の育成などなどの諸対策を積極的に推進してまいる所存であります。
なお、牛肉の価格安定制度についても、引き続き適切な運用を図ってまいる所存であります。
肥育段階における不足払いのことも触れなければなりません。
肥育段階において価格差補てんを行うことについては、国産牛肉は種類、銘柄等による品質格差が極めて大きいこと、また、牛肉の生産流通過程は多段階にわたるため肥育段階において価格差補てんを行う場合にはその効果が真に必要とする者にまで及ぶことを確保しがたいことなどから、実施不可能と考えております。
なお、今回の制度においては、肉用子牛の段階において価格差補てんを行うこととしており、また、国産牛肉の価格安定制度を引き続き維持することとしております。これらにより、肥育経営の安定は十分図り得るものと考えております。
保証基準価格の水準についても触れられましたが、肉用子牛の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、その再生産を確保することを旨として定めることとしております。
その具体的な水準につきましては、今後の検討課題ではありますが、現行肉用子牛価格安定事業における保証基準価格の全国平均値が一つの目安になるのではないかと考えております。
価格差補てんの財源についてでございますが、牛肉及び特定牛肉調製品にかかわる関税収入については、輸入枠の撤廃による輸入量の増加もあり、今後相当増大すると見込まれることから、これを全額特定財源化することにより本制度の運営に必要な財源は十分確保され、肉用子牛等対策の実施には支障がないと考えております。
不足払い業務についてでございますが、生産者補給交付金等の交付を畜産振興事業団に行わせることとしておりますのは、同事業団は加工原料乳の生産者補給交付金の交付業務を現に行っておりこの種の業務に精通しておるということ、同事業団は本制度と密接な関連を有する国産牛肉の価格安定制度の運用を担当していることから、本制度についてはこの牛肉価格安定制度と一体的に実施することが適当なことなどの理由に基づくものであります。
なお、同事業団の輸入牛肉売買業務等をめぐって種々御批判のあることはまことに遺憾であります。
今後、同事業団の任務が円滑適正に遂行されていくよう、綱紀の粛正はもとより、業務執行体制の整備等について指導監督の強化に努めてまいる所存であります。
最後に、輸入牛肉等の安全性のことについてでございますけれども、輸入牛肉等の食品としての安全性の確保につきましては、食品衛生法に基づき厚生省において検疫等の業務を実施しているところでありますが、農林水産省といたしましても、厚生省と十分連携を密にし、輸入牛肉等の安全性確保に所要の努力を払ってまいる所存であります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣宮津喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/60
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061・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの措置、自由化されることになりましたことに伴いまして、国内対策として、牛肉等に係る関税収入をいわゆる特定財源化いたしまして、その上で肉用子牛の不足払い、それから肉用牛生産、食肉の流通の合理化、その他畜産の振興に資するための施策、これらに必要な経費に充てることといたしまして、関係法案の御審議をお願いしているところでございます。
先ほども申し上げましたし、ただいまも農水大臣もそのように言われたと存じますが、牛肉の輸入量が今後かなり増大するであろうと見込まれますので、この関税収入で所要経費は十分賄い得ると考えております。万一財源が不足をいたすということになりますれば、それはその時点で所要の見直しを行うことといたしたいと思いますが、まずこれで十分であろうかと考えております。(拍手)
〔国務大臣高鳥修君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/61
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062・高鳥修
○国務大臣(高鳥修君) 及川議員から御質問のございました総務庁が行っております行政監察についてでありますが、畜産につきましてはかねがね各方面から、特に流通について問題があるではないかという御指摘があったところであります。
先ほど議員から御指摘のように、私の就任前でありますけれども、畜産振興事業団をめぐりまして遺憾な事件もございました。そこで、総務庁長官を拝命いたしましてから直ちに、生産、流通、
消費の各段階について制度上問題がないかどうか行政監察を実施するよう指示したところでございます。
御承知のように、総務庁といたしましては三年ごとの中期的な行政監察計画を立てておりまして、実は畜産につきましては来年度実施をするという予定であったわけでありますが、これを繰り上げまして今年の十月から十二月実施することにいたしまして、ただいま行っているところであります。
その後の農産物の輸入の自由化等の動向を踏まえまして、国内生産対策の実施状況、それから特にただいま御指摘のありました不透明だと言われております流通関係、さらにまた消費者対策等の実施状況について監察することといたしております。
対象機関といたしましては、公正取引委員会、農林水産省、農用地整備公団、畜産振興事業団、都道府県、市町村、関係団体等多岐にわたっております。
監察結果の取りまとめにつきましては、従来、問題によりましては一年近くの歳月を要しておったところでありますが、事柄の重要性にかんがみましてできるだけ急いでやるようにという指示をいたしておりますが、夏ごろまでかかるのではないかというふうに想定いたしております。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣藤本孝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/62
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063・藤本孝雄
○国務大臣(藤本孝雄君) 輸入牛肉の安全対策の問題につきましてお尋ねでございますが、輸入牛肉等の残留物質にかかわる安全性の確保につきましては重要な課題でございまして、輸入の際に検疫所におきまして動物用医薬品及び農薬の検査を必要に応じて実施しておりまして、我が国の基準を超える残留物質が検出された食肉につきましては輸入禁止の措置を講じております。
また、この問題は輸出国側の対策も極めて重要でございますので、今後とも輸出国におけるこれら物質の使用状況等の情報の入手に努め、また残留防止対策に関し十分な協議等を行い、輸出国に安全な食肉の輸出を求めるとともに、他方、輸入時における監視も強化することによりまして、食品衛生上問題となる食肉が輸入されることのないよう引き続き努力をしてまいる所存であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/63
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064・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111315254X01019881121/64
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