1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成五年四月二十一日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 浜野 剛君
理事 太田 誠一君 理事 亀井 善之君
理事 田辺 広雄君 理事 津島 雄二君
理事 星野 行男君 理事 小森 龍邦君
理事 鈴木喜久子君 理事 冬柴 鐵三君
愛知 和男君 鯨岡 兵輔君
伊東 秀子君 沢田 広君
谷村 啓介君 中村 巖君
木島日出夫君 中野 寛成君
出席国務大臣
法 務 大 臣 後藤田正晴君
出席政府委員
法務大臣官房長 則定 衛君
法務大臣官房審
議官 森脇 勝君
法務省民事局長 清水 湛君
法務省矯正局長 飛田 清弘君
委員外の出席者
法務省刑事局刑
事課長 大泉 隆史君
大蔵省主税局税
制第一課長 渡辺 裕泰君
参 考 人
(東京証券取引
所理事長) 長岡 實君
参 考 人
(経済団体連合
会評議員会副議
長) 盛田 昭夫君
参 考 人
(立教大学法学
部教授) 上村 達男君
参 考 人
(弁 護 士) 家近 正直君
法務委員会調査
室長 平本 喜祿君
—————————————
本日の会議に付した案件
商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五
二号)
商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
法律の整備等に関する法律案(内閣提出第五三
号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/0
-
001・浜野剛
○浜野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/1
-
002・津島雄二
○津島委員 きょうは時間をいただきまして、商法等の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。
商法も戦後何度も改正をされて今日に至っておるわけでありますけれども、これは商法の中で特に会社法の関係でありますけれども、最初に立法者が意図した例えば株式会社なら株式会社というものの姿と、現実に日本の社会経済の中で株式会社がどのように機能し、またどのような組織原理で動いているかということの間に最初からいろいろな食い違いと申しますか、法の意図したところと実態の乖離があったという印象を否めないと私は思うのであります。
それで、最初に法務省の方にお尋ねしたいのですけれども、いろいろ言われておりますが、例えば最近までの議論あるいは法改正の経緯を踏まえて、どういう点に一番問題があるとお考えになっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/2
-
003・清水湛
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
まさに委員御指摘のように、日本の株式会社法というものが想定しておると申しますか、株式会社法が意図している実態と現実の株式会社の姿がうまく合っていないというような面も多々ある、こういうことがかねてから指摘されているわけでございます。
その一つの原因と申しますのは、現在我が国には株式会社が約百三十万社、それから有限会社が百七十万社、その他、合資、合名を加えますと四百万社に近い会社が存在をする。こういうような状況があるわけでございまして、例えば株式会社だけを見ましても、いわゆる上場会社は三千社に満たない、資本金五億円以上の会社というのは八千社程度であるというふうに規模の大きい会社は数は少のうございますけれども、極めて超大規模の会社も存在する。
他方では、平成二年度の商法改正によりまして株式会社の最低資本金は一千万ということにいたしましたけれども、経過的にまだ一千万未満の株式会社の存在も認められておる。一千万未満の株式会社が平成二年当時、六、七十万社存在をする、こういうような実態がある。このような小規模の会社につきましては、会社法の規定はある意味においてはほとんど死文化しておるというような実態があるわけでございます。
そういうような極めて巨大なものから小規模なものまでの会社についてどういう法規制をするかということが非常に問題でございまして、これまでもいろいろな改正の努力によりまして、資本金五億円以上あるいは負債総額二百億円以上というようないわゆる商法特例法上の大会社については、例えば会計なんかの面につきましても外部監査と言われる公認会計士あるいは監査法人による外部監査を強制するというような、その会社の形態に応じたいろいろな規制を加えてきたわけでございますけれども、より根本的には、さらにこの会社の実態というものを踏まえた、いわゆる大小会社の区分の立法と私どもは言っておりますけれども、そういうような面からの全面的な見直しと申しますか洗い直しも必要であろうというふうに思うわけでございます。
それと同時に、もう一つは、日本の株式会社の発生の一つの歴史的な形態と申しますか、日本の経済社会における文化と申しますか、そういうものの中に、明治時代はドイツ法を中心とした会社法の移入でございますけれども、そういうような法制が入ってきている。さらに戦後、昭和二十五年にアメリカ法の思想による会社法の流れがどっと入ってきた。こういうようなものがございまして、どうも日本の企業行動とそういう近代的な会社組織法というものがうまくかみ合わないというような面があるのではないか。
例えばアメリカあたりでは株主の権利が非常に強く主張されておるということになっておりますけれども、日本ではどうやら株主というよりかむしろ会社の経営者、大株主の経営者ということであればまた問題は別でありますけれども、実質的な株主ではないような形での会社の経営執行部というものが形成されておるというような面もあるわけでございまして、いろいろそういう日本の経済とかあるいは社会とか文化、そういうものの特質に根差した会社経営というものがあって、それがどうも会社法のいろいろな合理的な規制とうまくかみ合わない面もあるというようなこともあるわけでございます。
私どもといたしましては、一方では会社法というのはかなり国際共通性があるものでありますから、諸外国の法制等もにらみながら、これに調和するように合理的なものに改めていかなければならないということで、これまでも累次の改正を繰り返しているわけでございますが、なかなか完全
な意味で問題を解消するというわけにはまいらない難しい面もあろうかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/3
-
004・津島雄二
○津島委員 ただいまの御答弁、大体私の認識と一致をしておりまして、恐らく二つの問題があるだろう。一つは、同じ株式会社といっても、国際的な規模を誇る体制のものと、それから個人会社から法人化した、いわゆる法人成りという存在、これは税法上の取り扱いとも関連してかなり人為的にできた面もないとは言えない、こういう問題が一つ。それからもう一つは、巨大企業のあり方という問題でございましょう。
きょうは時間がございませんから、主として後の方の問題、国際的にも比肩する大きさになった日本の法人企業のあり方について若干考えてみたいと思います。
日本の企業が大きくなって国際的にも影響力が非常に大きくなった、また、もちろん国内の社会経済に及ぼす影響も非常に大きいということの中で、非常に強く指摘されておりますのは、法人企業の経営陣の支配力というものが十分な社会的な牽制を受けているかどうか。もともと株式会社というのは、所有者は株主である、だから株主総会に象徴される所有者の意思というものが強く働くはずであるということから組み立てていったのだろうと思うのですけれども、いわゆる所有と経営の分離ということが進んでいく中で、非常に効率的な企業活動の展開と相まって非常に強く大きくなった。大きくなるのは、それ自体悪いとは言わないけれども、これがまた同時に幾つかのグループに集約をされてきた。よく言われるのでありますが、六つとか八つとかいう企業集団が日本の経済の中で全体として本当に二割とか一割五分とか非常に大きな力と存在を誇示している、こういうことが言えるわけでありますし、またそのことが、国際的に見ても非常に注目をされると同時に、しばしば批判の的になるのが実態だと思います。
そこで、まずこういう状態が現実にあるわけでございますけれども、私はきょうは、これまでの商法の改正が、問題が出てきたら若干後追い式に、みんなでよく勉強されてどうしてもやらなければならぬところはやってきたということなんですけれども、できることなら少し先取りをしてやっていただける部門があるのじゃないだろうかという観点からお尋ねをしたいわけであります。
そこで、今の株主と企業の関係について、しばしば言われるのでありますけれども、日本ほど株主を大事にしない法人企業はない、その象徴的な指標は配当率であると言われておりますね。逆に言えば、株式市場が活況を呈してきてどんどん株価が上がってきたからそちらの方で十分うまみがあるでしょうということなのかもしれませんけれども、それが頭打ちになってきてみると、気がついてみるといわゆる配当株になっちゃう。そうすると、配当利回りは一%を割るというようなことになると、これは持っている方がおかしいというような話になってきかねないわけであります。
そこで、株主の立場というものをいい意味で強化をしていくために、法務省としては今どういうことをお考えなのか。もちろん経済政策的に、あるいは企業の立場から経団連あたりがいろいろと提案をされるのは、それはあれなんですけれども、法制の担当者として何かお考えになっておることがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/4
-
005・清水湛
○清水(湛)政府委員 株式会社は、株主が出資をして、それをもとにいろいろな企業活動を展開することを目的とする、営利を目的とする社団、こういうことになっているわけでございます。その際、いわゆる近代的な株式会社のあり方として、所有と経営の分離というようなことが一つの大きな特徴として指摘されておることは、確かにそのとおりでございます。
そういう状況の中で株式会社のシステムというものを考える場合に、まず第一に考えるべきことは、株主総会というものが有効適切に機能するということ。それから、それによって選任された取締役が取締役会を構成いたしますが、会社の業務執行を決定し、あるいは取締役会によって選任された代表取締役の具体的な業務執行を監督する、こういう取締役会というシステムがあるわけでありますけれども、これが有効適切に機能するということ。さらに、そういうような具体的な業務執行が適正に行われているかどうかということをチェックするシステムとして監査制度があるわけでございますが、株主総会によって選任された監査役が適正有効に機能をすること。さらには、大会社については、先ほど申し上げましたような外部監査機関である監査法人あるいは公認会計士が適切有効に機能するということ。これがすべての基本であるというふうに思われるわけでございます。
そういうことを前提にいたしまして、これらの機能がそれぞれ有効適切に機能をして会社が社会的な非難を受けないような行動をする、社会的な公正を確保する上において極めて重要なことでございますけれども、会社が商法を初め各種の法令を遵守して企業活動を行う、こういうことが実現されるべきであるというふうに思うわけでございます。したがいまして、株主の権利だとか取締役の権利義務だとかあるいは監査役の権利義務、そういうものがすべて適切に行使されるようなシステムをつくり上げる、こういうことが一番大事な問題だと思っておるわけでございます。
実は、そういうような観点から、これまでの商法の改正におきましては、例えば昭和四十九年の改正におきましては監査制度の大幅な強化あるいは外部監査の導入というようなことも実現いたしましたし、あるいは取締役会におけるそれぞれの取締役の権限強化というような改正をいたしましたし、また会社の第三者、債権者に対する関係において最低資本金制度を導入するというような平成二年の改正があるわけでございます。
今回の改正におきましても、監査制度を充実強化する、さらには株主の代表訴訟制度あるいは株主の帳簿閲覧権制度の改善によりまして株主の権利の強化を図るというような諸方策を講じまして、会社の業務の適正な執行を図る、会社の業務の適正な執行が図られるということはとりもなおさず株主の利益でもあり会社の利益、会社の利益はすなわち従業員の利益でもあり、またそれによって第三者の保護も図られる、こういうことにつながっていくというふうに私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/5
-
006・津島雄二
○津島委員 今までの経緯をたどっていけばそういうことになると思うのですが、株主総会の活性化が必要だとおっしゃるのだけれども、どうやったらいいのでしょうか。活性化といったって何か大声を上げるような人が議事を長引かせるのが活性化じゃないのですね。私は、基本的には会社の経営とか業務執行について、執行の任に当たる方々が株主総会に本当に責任を持っているという認識を持てるような構造にする、ということは、結局取締役会と株主総会、それから一般的な外部環境というようなものとの一種のいい意味の緊張関係をつくっていく必要があると思うのですね。そういう観点からいいますと、取締役会の強化は先般行われておるわけですけれども、取締役会の中身というものを考えなくてはいかぬのじゃないだろうか。
どうしてもそこで注目されてくるのは、社外重役の制度なんですね。例えばよく挙げられる例がエクソンですけれども、世界最大の石油会社の一つがアラスカであれだけの事故を起こしてしまった。そのときに環境団体に非常に厳しく批判をされたわけですけれども、日本だとどうなんでしょう、しばらく環境団体と会社とにらみ合う、あるいはそこで補償をどうするかという話になるのかもしれないけれども、環境団体の方も大変偉かったのでしょうか、エクソンの方から、どうだ、私の方の経営をひとつ見てください、一緒になって、世界企業であるエクソンが環境とも調和できるような仕事をするにはどこをどうしたらいいか知恵を出してくださいということに踏み切って、いわゆる社外重役として環境団体推薦の方を入れたわけですね。そういう角度からいろいろ聞いて
みますと、アメリカの大企業の重立った会社、ゼネラルモーターズもそうですし、重立った会社にはほとんど社外重役が、場合によっては過半数入っている。
日本でそういうことができるのかどうか、するためにはどういう工夫をしたらいいのか。法制の側からいって何か工夫がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/6
-
007・清水湛
○清水(湛)政府委員 先ほど株主総会と会社との緊張関係というお話もございましたけれども、昭和五十六年改正によりまして、例えば株主の提案権とか質問権というものが法定されまして、形骸化しているという意見もございますけれども、現実の会社の運営の実態等を見ますと、やはり株主総会においていろいろな非難、攻撃を受けないように、きちんとした会社の経営をしなくてはならないという意味で、会社の執行部が非常に株主総会を重視する傾向が最近出てきておるということは私どもも感じているところでございます。
そこで、問題は、さらにそういう株主と会社との関係ということではなく、会社の執行部そのものの中に例えば社外重役というようなものをもっと積極的に取り入れるような制度を法制的に考えたらどうか、こういう意味だろうと思います。
私どもも、いろいろな雑誌等の知識によりまして、アメリカの一流企業が積極的にそういう社外重役を採用しているという事実を承知いたしております。アメリカでは取締役会が大変強大な権限を持っておりまして、そういう取締役会におきましていわば高級業務執行社員、例えば社長とか副社長とかいうものを選ぶ、ある意味においては社長さんとか副社長さんよりは取締役会の方が権限が強大である、こういうような実態があるわけでございます。日本でも昭和二十五年改正によりまして、アメリカ法をまねて取締役会制度というものを導入いたしました。そして、その取締役会の中で代表取締役を選んで、代表取締役に日常の業務執行権限を与えるということになって、取締役が代表取締役を監督するという形にはなったのでございますけれども、現実の姿としては取締役の数がふえるばかりで、代表取締役の職務執行を監督するという実態にはなかなかなりにくいというような状況があるわけでございます。
そういうような状況を踏まえて、実は昭和五十年でございますけれども、私どもの方の民事局参事官室というところで、アメリカ法的な社外重役制度というものを法制化することにしたらどうだろう、そういう意見もあるがどうかというような意見を関係各界に求めたわけでございます。しかし、それに対する各界の意見としては、日本では他方において監査役制度というものがある、ですから会社の業務の適正をチェックするためにはむしろ監査役制度の充実強化を図るべきではないか、こういうような方向に大方の意見が流れたわけでございます。したがいまして、社外重役の法制化というようなことになりますと、やはり日本の現状からいたして相当の問題がある。
現実に、日本の大企業の中でもいわゆる社外重役と申しますかその企業の中で育った人ではない人を重役に迎えて、取締役会におきましていろいろな働きをしていただいているというような企業もたくさんあると聞いておりますが、法律上の制度としてそれを強制する、会社法の制度として強制するということになりますとやや問題があり過ぎる。一部の会社、特定の会社だけに強制をするということはできないでしょうし、さりとて百三十万社の全部の会社にも強制はできない。そうすると、今の大会社特例法の資本金五億円以上程度の会社に強制をするかということになってくるわけですけれども、そうなってきますと八千社ないし一万社の会社にそれを会社法において強制するということになるわけでございまして、現実の問題としては非常に難しい話なのではないか。
今回やっと監査役制度を強化すべきであるという流れの中で社外監査役を例外的に強制するということにいたしたわけでございますけれども、そういった面で法律的にはやっていかざるを得ない。しかし、それぞれの会社が国際的な信用というものも考慮いたしまして積極的にエクソンのような例、私は詳細には存じませんが、そういうようなものを積極的に取り入れることは大いにあってしかるべきだというふうには思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/7
-
008・津島雄二
○津島委員 現状については今局長の御答弁のとおりだろうと思うんです。監査役制度を強化することによってその方向に一歩でも二歩でもというところで来られたんだと思うのですが、私が申し上げているのは、そういう意味で今度の改正は多とするわけなんですけれども、これまでの実績を見ますと、余りにも監査役制度が機能していないという印象が強過ぎるものですから、この際、思い切って取締役会を、もう少し判断の基準を高めていく努力をすべきじゃないだろうか。特に、最近までのバブルの関係、いろいろ私どもの立場で話を聞いてみますと、実にびっくりするようなことが起こっている。
それで、そのことが起こっているときは、結局金融機関なら金融機関みんな同じような気持ちになっちゃって、土地は上がるのは当たり前だ、競争相手が一生懸命土地の地上げをやっているんだから自分たちも負けないように都内の地上げをやって、土地を確保して、そこに金を貸したい、これは取締役会がみんな同じ気持ちになっちゃうんですね。バブルが崩壊するなんということを取締役会で口にするのもできない雰囲気になっちゃう。そういう中で雪だるまのように、同じ方向に走ってくるというのが、どうも日本の、すべての組織について言えるわけなんですけれども、今や大きな民間企業についてもやはりかなり目立ってきているんじゃないだろうか。
その結果として、後から振り返ってみると、よくもやるもやったりというケースが本当にたくさん出てきているんですね。これはやはり本当に反省をしなければいけないし、それから法制を担当する方としてももう少し深刻に受けとめるべきじゃないだろうかなという感じがするんですよ。ですから、監査役制度について、一人だけは長い聞いた人はいかぬよみたいなことをおやりになった。それができるなら、やはり社外重役の制度を何らかの形で定着させていく努力をする必要があるんじゃないかと思うんですね。
こういう話はこれまでのバブルの時代の反省に立って物を考えるということなんですが、ちょっと振り返ってお伺いしたいんですが、昭和六十年代になってからで結構ですが、バブルの関係もあって会社の業務運営上非常に問題が多かった、それで背任という形で刑事裁判が起こされたというケースがどのくらいあるのか。これは一部上場企業を対象とするものでいいんですけれども、もし法務省の方でおわかりになったら、ちょっと数字を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/8
-
009・大泉隆史
○大泉説明員 いわゆるバブルの時期におきます犯罪動向につきましては、いまだ総括的な分析ができる段階でございませんで、また委員御指摘のように上場企業の、また幹部の役職員のといった限定での把握はなかなか困難でございますけれども、大手企業役職員らによる特別背任事件といたしましては、イトマン事件でありますとかあるいは東京佐川急便事件等がございますし、そのほかにも、これは役員かどうかという点は問題がありますけれども、金融機関の役職員らが関与しました経済事犯というようなものもかなりの数が認められるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/9
-
010・津島雄二
○津島委員 定数的に御答弁は難しいかもしれませんが、これに今度は損害賠償、民事訴訟、いろいろあり得るわけなんですけれども、民事訴訟の面からいいますと、アメリカは少しやり過ぎると言われているんですけれども、日本はなさ過ぎるという面もあるような感じがするんです。問題は、取締役会の強化ということと並んで、さっき局長が言われた監査制度が本当に機能しているかどうかという今回の法改正の問題になってくるわけなんですが、一般的にアメリカでいいますと、企業倒産に追い込まれたという場合に、会計監査人は限りなく損害賠償の対象になる危険があると言われておるのですね。日本の場合に、みんながびっくりするような経営実態、イトマンのような
実態があった場合に、外部監査の担当者である会計監査人はどういう責任を問われておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/10
-
011・清水湛
○清水(湛)政府委員 会計監査人も、その任務を怠るということになりますと、会社に対して損害賠償の責めに任ずるという特例法の九条の規定があるわけでございます。ただ、この九条の規定を根拠にして民事裁判で損害賠償請求が起こったという事例、私は統計的には承知いたしておりませんが、そのような裁判が起こされているという事例はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/11
-
012・津島雄二
○津島委員 たくさんありますか。余りない。印象的に答えて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/12
-
013・清水湛
○清水(湛)政府委員 それほど数は多くない。むしろ最近の現象。これは監査役についてもしかり、会計監査人についてもしかりでございますが、非常に強い権限が認められておるとともに、同時に責任も重くなっているわけでございまして、損害賠償責任等の厳しい規定がある、法制度上はそういうことになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/13
-
014・津島雄二
○津島委員 必ずしも多くないというのは、まず第一に、責任を問う立場の人も少ないし、その方に堪能な弁護士さんが少ないというようなことも指摘されてはおるのでありますけれども、私は制度上に若干問題があると思うのです。会計監査人は、いわゆる商特法で監査役に報告することになっていますね。これは外国の事例なんかから見て、それがいいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/14
-
015・清水湛
○清水(湛)政府委員 会計監査人の監査が行われる大会社におきましては、監査役も会計監査の義務を負っており、監査役は、会計監査人の監査報告書の作成を受けた上で監査報告書を作成する、こういうことになっています。
両者の関係につきましては、そういう監査報告書の提出義務とともに、「会計監査人がその職務を行うに際して取締役の職務遂行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、その会計監査人は、これを監査役に報告しなければならない。」また一方で、「監査役は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対してその監査に関する報告を求めることができる。」お互いに報告を求め合うということができることになっているわけでございます。
そういうような法律上の義務規定を前提にして、私どもの認識しているところでは、会計監査人、公認会計士さんと監査役は常時連絡をとり合って、会計監査人の方は会計監査が中心でございますけれども、そういうものを中心に会社の業務の適正を図るよう努めておられる、こういうふうに認識しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/15
-
016・津島雄二
○津島委員 そういう建前になっておるのがどうも機能しない場合があるんですね。びっくりするようなことをお話ししましょうか。
この間、ある一部上場会社で、千億を超える為替予約の失敗がありましたね。あれはどうやって起こるかというと、為替予約の仕組みというのは、御存じかと思うのですけれども、ディーリングをやっている担当者が電話で銀行に予約しているんですね。月末になりますと、この月にあなたの方から予約されたのはこれこれですよというステッカーを送ってくるんですね。そのステッカーを机の中に入れてしまうと、上の人は全然わからないんですよ、幾らやったって。そういうのがどんどん積み重なっていくうちに、千億単位の、結局は経営陣のトップの責任を負わされるような事態にまでいってしまった。
聞いてみると、最初にこれは大変だなと思って気がついたのは銀行だというのですね。電話でいろいろ御注文いただくけれども、どうも読んでみると随分これは大きいなということになった。さあ、それじゃこれを会計監査、決算報告でどうするかという話。具体的なことは言いたくないのだけれども、たまたまこの場合には外国法人が株主なものですから、外国の監査法人がかかわっていた。一歩も譲らない。これは限定意見をつけるべきだというようなこともあって、日本側の監査法人もやはり強く出たということが指摘をされているわけなんですね。
逆に言うと、そうでなかったらどうなったのかな。似たような話を私は幾つか風評で聞くのですけれども、例えば非常に大きな会社が十年にわたって法外な値段で為替予約をやっておる。今もやっておりますよ、そこは。レートは百九十円であって、ところが今実際のレートは百十円台だ。それをまだやっておる。それにもかかわらず、これは監査報告にも何にも一ちょっと触れているのです。ちょっと触れているけれども、気がつかない。それだけ大きな話があっても、監査役が社内で指摘をするという話も聞いていない。それを見ていると、怖くなるような話なんですよ、これは。それこそ会社の命運を決めるようなことが起こっていても、今商法上仕組まれている仕組みではどうも機能しないような気がするのですけれども、それでいいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/16
-
017・清水湛
○清水(湛)政府委員 具体的な事例を挙げられての御質問でございますけれども、一般論でまず申しますと、監査役は、取締役から業務状況の調査の報告を求めたり、あるいは使用人、部長さんなり課長さんなり、あるいは為替予約をしている担当者、そういうような方を直接呼んで業務の状況について報告を求める。そういう状況の中で違法な行為あるいは著しく妥当性を欠く行為、そういうものがあれば直ちにそれらについて差止を求めたり、あるいはもしそういうことが引き続いて行われるということであれば、さらにその上位の手段をとる、こういうようなことは可能になっているわけでございます。
そういう状況の中で、会社の業務の遂行の仕方がある程度投機的な要素を持っているというようなものにつきまして、それが違法という域までに言えるのかどうか。結果において会社に大変な損害を与えるということもあるかもしれませんけれども、逆に大変な利益をもたらすということもあり得るわけでございまして、そういうような行為の妥当性と申しますか、そういうところまで監査役が介入することができるかどうかということになりますとこれは問題でございまして、違法な行為あるいは著しく妥当性を欠く行為について監査役のチェック機能が及ぶ、こういうことになっているわけでございます。
私ども、昭和四十九年の大改正以来、監査制度の整備についてはいろいろな方策を講じてきたわけでございまして、現実に例えば大企業の監査役さんの集まりである日本監査役協会などというのがあるのでありますけれども、いろいろ監査役さんが集まって、どうやったら適正監査ができるか、正しい監査ができるかというようなことについて情報を交換し合い、勉強し合っているというような事実もあるわけでございます。したがいまして、監査制度の強化によってそういう強い権限とそしてまた責任を与えられた監査役あるいは公認会計士等の監査法人の方々が相当に自覚を持ってその職務を遂行されている、されつつあるというふうに実は私ども考えているわけでございます。
ただしかし、例えば御指摘のような為替予約をめぐる不祥事の問題あるいは金融・証券等をめぐるいろいろな不祥事の問題、そういうものが現実には出てきておる。そういうものをよく調べてみますと、監査役なり公認会計士監査の機能が必ずしもうまく機能していなかったというようなこともまた指摘されるわけでございまして、私どもといたしましては、やはりそういうことが未然に防止できるよう、できるだけ権限を行使しやすいようにこの行使の隘路となるような障害は除く、できるだけ行使しやすいようにするという観点からやはり制度の改善を考えていかなければならない。
例えば監査役の員数をふやすとか、監査役の任期を取締役より長くしてその地位の安定を図って物を言いやすいようにするとか、監査役会というような組織的なものをつくって、個人個人で言うより組織で言えば物が言いやすいというようなことも考えられるというようなことから、むしろ権
限と責任はもう十分なんでございますけれども、その権限を行使しやすくするような形を整えるということが今回の出発点になっているわけでございますが、根本的には、しかしそういった権限を適切に行使し得るような人材、能力を持った人間がそこに座らないと、結局どんな立派な制度をつくってもうまくいかないということは確かに御指摘のとおりでございまして、そういう意味で私どもは、各企業が真剣に監査制度の改善とあわせて運用の面においても十分な努力をしていただきたいというふうに実は心から念願しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/17
-
018・津島雄二
○津島委員 意とするところはよく理解できるのですけれども、今の二人を三人にするとか監査役会をつくるとか、それはいいんですよ。いいんだけれども、三人が三人とも余り牽制のできない人たちでは、これはどうにもしようがない。
私は昔一番印象を受けましたのは、外国に日本の法人が次々と支店や子会社をつくったときに、一番困るのは交際費をどうやって損金に計上するかということで、これは公認会計士のお墨つきをもらわないと全く認められないというんですね。それがないと、例えばイギリスならイギリスの税務当局が認めてくれない。これはおっかないんで、日本の税務当局よりまだ難しいといっても、きょうは税務当局の方おられるからあれですけれども、そのくらい権限があるし、それからやはり公正な企業慣行は何かということについて確固とした信念がおありなんですね。それがないと数を幾らふやしたってこれはだめなんです。今局長は、どこから重大な法令違反になるような事実があるのかこれは判断が難しいと言われたんだけれども、常にそれはあり得るんだけれども、それをやはり事前にある程度概括的に定めたガイドラインを置いておく必要があるだろう。
そういうことで、大蔵省の方も証取法の関係でいろいろおやりにはなっているんですけれども、どうでしょうか、この監査役なら監査役さんのガイドラインみたいなものを法務省の方で思い切っておつくりになる気はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/18
-
019・清水湛
○清水(湛)政府委員 証券取引法による監査につきましては、企業会計審議会というようなものがございまして、そこで、企業会計原則というようなものを常に時代に適合したものにするという観点からその整備を図っておられるということを私ども承知いたしております。私どもも、そういう企業会計原則というものを念頭に置きつつ、会社法の企業会計につきましては、公正な会計慣行をしんしゃくして商法の計算規定も解釈をしなければならない、こういうふうにいたしているわけでございます。その公正な会計慣行というものの第一の念頭にあるものは、企業会計審議会で定めておられる企業会計原則でございます。
そういうようなものをさらに具体的な、今度は公認会計士ではなくて監査役監査の面において何か監査基準というようなものをつくったらどうか、こういう委員の御指摘の御意見でございますけれども、実は、今これを法務省の方でつくるということについての具体的な作業はございませんけれども、先ほど申し上げました法務省認可の社団法人日本監査役協会におきまして、監査役の皆さん方が寄り寄り集まって、何かそういう監査基準と申しますかマニュアルみたいなものをつくろうというような動きがあるようでございまして、そういうものについて私どもとしてももし積極的に意見を述べることができる機会があればまた意見も述べて、立派なものがつくられれば、そういうものに従ってそれぞれの監査役監査が行われるようにしていきたい、こういうふうに実は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/19
-
020・津島雄二
○津島委員 今のようなお話が実は一番いいわけでありまして、やはり監査の立場にある方々がそれぞれの立場からみずからの創意工夫で一定の基準をつくっていただく、それはひとつ法務省としても大いに励ましてやっていただきたいと思うのです。
その関係でもう一つしばしば問題になるのは、使途不明金の問題ですね。これは、交際費と同じ、同じと言うと語弊があるかもしれませんけれども、物によっては株主の利益あるいは企業の本来の利益を損ねるおそれがある。よく、使途不明金というのは政治に関連してばかり言われておりますけれども、これは、実に広く行われている、帳簿上有形無形に粉飾された支出をいうのでありまして、別に使途不明金という制度があるわけじゃないんだけれども、まあ言ってみれば使途不明金という世界があるというのは、やはり日本の企業会計に不明朗な場所があるということを言っているに等しいと思うのですね。
税務上もう少し厳しく対応できないかという御議論はあるんだけれども、これは私も別の委員会でお答えしましたように、質問検査権との関係でなかなか限界があると思うのですね。しかし、基本的には、企業会計のあり方としてそれが毎年毎年経常的にまかり通っておる、しかもかなり公知の事実として売り上げの何%ありますなんというような話になると、これは一体何をチェックしているのかと言いたいわけですね。
ですから、さっき申し上げたような監査役制度でいくのか、外部監査でいくのか、それはどちらでもいいのですけれども、この問題についてある種のガイドラインを、ガイドラインというのは、結局はだめですよという話に大部分はなるんだろうけれども、中にはしかしどうしても必要なものもあるという話もありますよ。例えば地上げなんかやっている過程でなかなか難しい戦術的な支出が要るというような話もある。それは事業遂行上認容できるものもあるでしょう。しかし、当たり前のようにだれに払ったかわからないような支出があるというのは、これは局長、やはりおかしいんじゃないですか。
何か御意見ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/20
-
021・清水湛
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、商法上は使途不明金という概念はないわけでございまして、いずれの費目、例えば交際費とか寄附金だとか、あるいは諸会費だとか、そういうような費目の中に必ず分類されて入っている、こういうことになるわけでございます。したがいまして、実は交際費、寄附金というふうに書いて決算書類に上がっているものがもし事実に反するものであるということになりますと、そもそもそういうような不正経理を行うということは商法自体が禁じているわけでございまして、これによって会社に損害を与えるということになりますと、取締役の責任というものが生ずるし、損害賠償責任が生ずる、あるいはもしそれが第三者の利益を図るというようなことでございますと、それは特別背任というような問題にも発展する可能性があるわけでございます。
恐らく監査役あるいは公認会計士としては使途がわかっている、例えばいろいろな住民対策の関係でこの経費は支出いたしましたということで、それは会社の経営上必要な経費であるということで会社の計算上は問題はない。しかし、税務署に対する関係におきましては、どこどこの住民に幾ら幾らの金をやったということになりますと、その方に税金がかかるというようなこともあるだろうと思うのでありますが、その関係で支払い先を秘匿する、こういうようなこともまたあり得るであろう。それは税法上の使途不明金ということになるのだろうと思いますけれども、使途不明金だからといって直ちにそれが会社経理法上不正に当然なるということでもない。
しかし、おっしゃるようにいろいろな費用の中に現実には不正、つまり法律に違反するような形での政治資金というものが入っているということになりますと、これは法令に違反する行為でございますので、当然会社の責任なり監査役の監査の対象になり、公認会計士の意見の指摘すべき事項にもなる、こういうふうになるわけでございます。そういう意味では現在の会社の計算規則上は一応整備をされておる、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/21
-
022・津島雄二
○津島委員 企業会計の側からも、一般国民に随分勝手なことをやっているという批判を招かないように何か努力はしていただきたいと思います
ね。
時間がないから、次の問題に移ります。
さて、同じように経営支配が強くなり過ぎているという現象の一つが持合いの慣行ですね。これは企業の乗っ取りに対抗するためにということで、自由化が進む中であれよあれよという間に進んでしまったわけでありますけれども、今から考えてみますと、株式の評価損を出すという事態に至ればこれは甚だしく株主の利益に反する行為であったかもしれない、あるいはまた慌ててこれを始末するということになれば証券市場の不安定要素にもなっていくわけですね。
持合いの慣行について法務省としてはどのようにお考えか、そしてそれとの関係で、外国のように自己株式の売買をもう少し認めてもらえばそんなことは必要ないという御意見もあるのですけれども、この自己株式の売買の原則禁止という問題についてさらに細かく念査をし検討される用意はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/22
-
023・清水湛
○清水(湛)政府委員 株式の持合いについて商法上の規制をどうするかという点がまず第一点でございますけれども、会社間において株式を相互保有しているということがあるという事実は私どもとしては承知いたしているわけでございます。商法上は、子会社が親会社の株式を取得することを禁じているという形での相互保有規制しかない。それからもう一つは、議決権の行使に関しまして、二五%ですか、会社が他の株式会社の発行済株式総数の四分の一を超える株式または他の有限会社の資本の四分の一を超える出資口数を有する場合には、この株式会社または有限会社はそれが有する会社の株式につき議決権を行使することができない、つまり二五%以上の株を保有されてしまいますと、実際上は親会社の支配力が及ぶことになりますので、その親会社の株主総会へ行って議決権を行使することができない、こういうふうに議決権行使の方からの制約をいたしているわけでございます。
実は、この商法の問題といたしまして、先生御指摘のように、自己株取得というものを原則として商法は禁じております。これは資本充実の原則というのが商法の大原則でございまして、株主が出資した金を返すというのが、自己株取得で要するに資本の空洞化を生ずる、こういうことでございまして、極めて例外的にしか自社株取得を認めてはおらない、こういうことでございます。そこで従来の議論は、商法の大原則である自社株取得の禁止を、むしろ相互保有というのは潜脱する行為である、自社株取得ができないから相互保有をするというような現象が生まれてきておるのだ、だから商法の面からもそういう自社株取得の禁止の趣旨を徹底するために相互保有をむしろ規制すべきである、実は、こういう論理が昔からの論理だったわけでございます。
しかしながら、最近は、逆に相互保有というものをある程度どうしても持たなければならないというような状況が出てきておる。それは、実は自社株取得の制限というものが厳し過ぎるから相互保有ということに走るのであって、むしろ合理的な範囲内で自社株取得の制限を緩和したらどうか、こういう昔とは逆の議論でこの自社株取得制限緩和論というのが出てきておるというふうに私どもは見ておるわけでございます。
ただしかし、この自社株取得の制限緩和につきましてはいろいろな弊害が実は指摘されているわけでございまして、出資した資本の払い戻しという最も基本的な弊害に加えまして、株価操作が非常にしやすくなる。会社の社長さんが自分の金で会社の株を売り買いして操作をするということも、それは現実には行われているというふうに言われておりますけれども、今度は会社の金で自分の会社の株の売り買いをすることができるということになりますので、資金量からいっても、ほとんど問題にならないくらい大変な資金量ということになってくる、そうなると株価操作もしやすくなる。また、特に会社がいろいろな内部情報というものを知っているわけでございますから、そのインサイダートレーディング、内部情報を利用した自社株の売買というようなことにもつながってきて、非常に弊害が出てくるのじゃないかというような問題が指摘されております。
しかし、他方におきまして、日本の自社株取得の制限というのが非常に厳し過ぎる、もう少しこれを緩めてもいいじゃないか、そういう弊害が生じない範囲内でもし緩められるものなら緩めてみたらどうかというような意見もあるわけでございます。そういうような問題が提起されてまいりましたので、私どもといたしましては、現在自社株取得の制限を緩和すべきかどうかという問題、そして緩和するとすればどこまで緩和することができるか、あるいは緩和するとすればどういう条件を満たさなければならないか、こういうような観点からの問題点を整理いたしまして、各界にこの意見を照会しているところでございます。
先般の政府の総合経済対策におきましても、政府は自己株式の取得及び保有規制の見直しにつき次期通常国会までに結論を得、所要の対応をすべく検討を促進するというふうにされておりますので、私どもとしては、この閣議決定を踏まえまして適切な対応をしてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/23
-
024・津島雄二
○津島委員 残りの時間でもう一問、関係のことをお尋ねいたしますが、今の自社株取得について当然これは限界を設け、厳しい制約を設けなければいけませんね、それはおっしゃるとおり弊害があり得る。それでも、例えば外国の事例からいえば、株価の不測の変動に対応するある程度の対応策を会社は持ってもいいじゃないかとか、あるいは株主に対する責任もあるじゃないかとか、それからいわゆるストックオプションのような形で経営陣への報酬を考えてもいいじゃないかとか、いろいろな議論があるわけですね。
これらを頭に置いて、弊害のないように制約を置きながら、例えば社長や重役みずからは自社株の売買は厳しく制限する、あるいは報告義務をとるというようなことも考えなきゃいけませんが、これを進めていく場合によく言われるのは、いわゆるみなし配当課税が邪魔になっておるという議論があるのでありますけれども、私は今ここで議論になっている自己株式の取得については、特にそうではない。利益による株式消却をする場合には確かに問題になるけれども、そうではない。もっとも、所得税法の二十五条の一項二号の「持分の払戻しとして交付される金銭その他の資産」という概念をどう解釈するかによるのだけれども、この辺について税務当局の方から御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/24
-
025・渡辺裕泰
○渡辺説明員 お答え申し上げます。
自社株保有の緩和を仮にいたしますとしますと、ただいま民事局長から御答弁がございましたように、商法の改正が必要でございます。ただ、現時点では、自社株の取得あるいは保有に対します商法の改正の内容が明らかでございませんので、税制上の取り扱いをどのようにするのか検討するのは困難な状況でございますが、仮に商法改正によりまして、他社の株の取得の場合と同様に投資資産としての自社株の取得が認められる、こういうことになりました場合には、基本的にはみなし配当課税の問題は生じないというふうに私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/25
-
026・津島雄二
○津島委員 以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/26
-
027・浜野剛
○浜野委員長 亀井善之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/27
-
028・亀井善之
○亀井(善)委員 もう既に十五時間程度この商法等の一部改正の件につきましては審議をいたしておるわけでございます。特に、今度の立法の目的、株主による会社の業務執行に対する監督是正機能をより強固にする、あるいは監査役制度の実効性を高める、資金調達方法を合理化し、社債権者の保護を強化する、また社債に関する制度を整備すると、いろいろ御説明もあり、これは私は多とするわけでもございます。
そこで、限られた時間でございますけれども、関係のことにつきまして若干質問を申し上げるわけでもございます。
特に、いろいろ今回のこの改正、会社法につい
てはこれまで大変大きな会社の不祥事件が起こるたびに改正がされております。また一面、企業の倫理の問題、政治倫理の問題が盛んに今問われておるわけでございますが、やはりそういう面で企業と法との問題、こういうことも指摘をされるわけでもございます。
そういう中で、企業の自治的な監視あるいはまた監督体制は強化整備されてきたわけでもございます。これは、昭和四十九年あるいは五十六年、平成二年の改正のたびにそれらはずっと続いてきておるわけでもございます。今回の改正も、一昨年来の金融問題あるいは証券の不祥事を契機とする、このようにも考えられるわけでございますが、これらの不祥事に関しましては、自治的監視あるいは監督体制としての取締役会あるいは監査役、会計監査人等は適正にその職務を果たしてきたものかどうか、大変このことに疑問を持つわけでもございます。
この辺とあわせて、一つは取締役会の業務監督機能の内容と申しますかその実情、また監査役の業務監査の内容あるいはその実情、こういうことにつきまして考え方をちょっと承りたいわけでもございます。
〔委員長退席、星野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/28
-
029・清水湛
○清水(湛)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、日本の商法は昭和二十五年に取締役会制度というものを導入いたしまして、これはアメリカ法の影響でございますけれども、取締役会による業務執行の監督というところを最重視したわけでございます。
したがいまして、その際、それまでの監査役というのは会計監査だけじゃなくて、実は業務執行の監査権も持っていたのでありますけれども、業務執行の監査権というものを取締役会に期待して監査役から奪ってしまったという実は経過があるわけでございます。これはまさにアメリカ法が、監査役というものはアメリカにはございませんで、取締役会で業務執行の監督をする、こういうことになっておりますので、その思想を受け入れまして監査役の地位を弱めたというのが二十五年改正だったと思います。
ところが、特に日本の高度経済成長に従っていろいろな企業の不祥事が起こってくる。昭和三十年代、四十年代の山陽特殊鋼というような企業の大型倒産というのが、すべて企業の粉飾決算、粉飾経理を出発点としているというようなことがございまして、やはり取締役会だけの業務監督では不十分であるということで、またそういう意味では戦前の体制に戻りまして監査役制度を強化する、さらには監査役では足りないから、大会社については監査法人等の外部監査の制度を導入する、こういうことで現在までに至っているわけでございます。
私どもは、会社の業務執行の監査という意味におきましては監査制度の機能を強調しますけれども、取締役会における業務監督、業務監査というものの機能を決して軽視してはならないというふうに思っているわけでございます。現実に取締役会は会社の業務の執行を、重要な業務についてこれを決定するという意味で、会社の必要的機関でございますとともに、代表取締役が具体的にはその業務の執行に当たるわけでございますが、その業務執行を監督する。具体的に、取締役会というものが開かれまして、そこで代表取締役のいろいろな行為について取締役が意見を述べる。代表取締役は少なくとも三月に一回以上は業務執行の状況を取締役に報告しなければならない、代表取締役の方から取締役会にそういう報告をしなければならないということも、法律上の義務づけになっているわけでございます。
そういう意味で、取締役会というのは代表取締役を監督する機関として適切に行動することが期待されておる。最終的な権限といたしましては、代表取締役を選任したり解任する権限を持っている。最近も大きな企業で取締役会が代表取締役を解任するという事件が報道されたことがございますけれども、そういうような意味での強い権限を持っているわけでございます。
しかし、現実には多くの取締役会は、代表取締役の権限が実質的には強過ぎて、本来の機能を発揮していないというような指摘もあるわけでございますが、この法律の予定したような意味での取締役会の権限の発動というものも現実にはされているわけでございまして、今後そういう意味での取締役会の監督機能というものが十分に機能することを私どもは期待したいというふうに思っております。
次に、監査役につきましては、四十九年にまた監査役に業務執行の監査権が与えられました。これは小会社については別でございますけれども、中規模それから大会社については業務監査権が与えられているわけでございます。これにつきましても、四十九年改正以来、営業報告の請求権とか業務状況の調査権、あるいは取締役から報告を受ける権利とか子会社についての調査権とか、取締役会の出席権とか意見陳述権、それまでは監査役は取締役会に出席することはできなかったのですけれども、出席権を認め、意見陳述権を認め、さらに五十六年改正で、必要があれば監査役が取締役会を招集することができる、こういうようなこと、あるいは監査役の任免についての意見陳述権等々の権限を与え、また監査役の報酬についても、その職務の重要性にかんがみまして、いろいろな費用請求権とか、特別な扱いをするというような制度を整備しているわけでございます。
そういう意味で、先ほどもお答えしましたけれども、監査役の権限の強化あるいはそれに伴う責任の重大性ということにかんがみ、各企業における監査役におきましては、かなりその制度本来の機能を発揮しようということで、いろいろな研究、検討を現にされつつあるというふうに承知いたしております。
それにもかかわらず、御指摘のようにいろいろな不祥事が起こるということも事実でございまして、そういうものを見ますと、もう少し監査役なり何なりがきちんとした監査をすればあるいは防げたのではないかというようなものも現にあるわけでございまして、そういうような面も考えまして、もし権限は与えられてもその行使がしにくいということであれば、しやすくするような方法を考える必要があるということが実は今回の改正の動機の重要なものになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/29
-
030・亀井善之
○亀井(善)委員 今の御説明の中で、違法なものあるいは不当な行為を認識した場合、監査役あるいは会計監査人がどのような措置をとったらよいのか。あるいはまたその責任問題や、あるいはまた年度を越して、前年度以前の行為、こういうことであった場合、これはどう対応するのか、この辺のことについてお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/30
-
031・清水湛
○清水(湛)政府委員 監査役についてでございますけれども、監査役は、取締役が会社の目的の範囲外の行為、その他法令もしくは定款に違反する行為をする、あるいはそういうおそれがあるというようなことを認めるという、そういうようなときにはまず取締役会に報告をするということが義務づけられております。会社の業務状況の調査等の過程でそういうことがわかるということになりますと、取締役会に報告する義務がある。そして、第一次的には、先ほど来申し上げましたような取締役会の有する監督権限を発動してこれを是正するということにいたしているわけでございます。
この取締役会に対する報告は、監査役の権利であると同時に義務であるというふうになっているわけでございまして、そのことを知りながらこれを報告しなかったということになりますと責任が監査役について生ずる、こういうことになります。
また、そういった違法なあるいは著しく妥当でない行為をするというような場合に、これに取締役が応じないというようなことになりますと、その行為の差止請求をする、場合によっては裁判所にその差止請求の訴えを起こすというようなことも認められているわけでございます。しかもまた、このような方法によっても取締役が違法ない
し著しく不当な行為をするということがあった場合には、最終的には監査報告書に記載して株主総会にこれを報告する、株主の判断にゆだねる、こういうようなことが求められているわけでございまして、これらのすべてについて監査役が任務を怠る、あるいは以上の権限を適切に行使しない、それについて監査役に不注意があったというようなことになりますと、損害賠償責任等の責任が生ずることになるわけでございます。
実は、そういう取締役の違法行為が当該決算年度、当該営業年度ではなくて過去のものであったというようなことになりますと、これは事前にそういうものを差しとめるということはできませんから、それによって実は会社に損害が生じていたということになりますと、会社のために当該取締役に対して損害賠償の請求をする、場合によっては訴えを提起することが、監査役の名においてすることができる、こういうふうなことになっているわけでございます。
同じようなことは、監査役ではなくて会計監査人、これは公認会計士、監査法人でございますけれども、一定の限度で報告義務があると同時に、そういう報告義務を怠る、これは監査役に対する報告義務でございますけれども、そういう報告義務を怠るというようなことになりますと、会計監査人は会社に対して賠償責任を負うというような仕組みになっているわけでございます。
そういう意味におきまして、監査役あるいは会計監査人については法律上非常に重要な権限が与えられており、それをまた適切に行使する義務がある、その義務を怠ると責任が生ずる、こういう仕組みになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/31
-
032・亀井善之
○亀井(善)委員 今の御説明、制度的には大変整備をされておると思うのですよ。しかし、現実にはなかなかそれが行われていないということではなかろうか。そういうことがいろいろの問題を起こしてきておるのではなかろうか。したがって、今回このような改正をするわけでありますけれども、このような改正の中でそれが十分機能をすることになると期待をするわけでございますけれども、こういうことから会社の不祥事、こういうものを防止をすることがこれでできるものかどうか、この点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/32
-
033・清水湛
○清水(湛)政府委員 今回の改正の中身については既に先生十分御承知のことでございますけれども、結局今までの改正で監査役の権限とか責任というのは大変重くなってきたわけでありますけれども、それが確かに現実にはうまく行使されていない。つい最近も新聞紙上にあらわれた事件でございますけれども、監査役みずからが積極的に不法行為をする、法令違反行為をするというようなケースが出ておりました。
そういうことになりますと、やはりそれはそういう与えられた権限を適切に行使し得るような人を監査役に持ってくるということが非常に大事なことであり、それは結局企業の経営者の姿勢の問題にもつながってくるということでございますが、そういうことは一応別といたしましても、私ども現実に監査の任に当たっている監査役さん方のいろいろな意見も聞きますと、一つには、自分の任期が取締役と同じ二年であるから、再任してもらえるかどうか、再任してもらうためにはどうも余り強いことも言えないというようなこともあって、任期を延ばしてほしい。今回これを三年にすることにいたしましたが、四年だという説もございました。あるいは、中には、二年で法律上再任を義務づけろ、こういうようなことをおっしゃる方もありましたけれども、再任ということになりますと、これは株主総会で選任する問題でございますので、最高の意思決定機関である株主総会を拘束するということは難しいというようなこともございまして、三年ということで今回は落ちついたわけでございます。そういうような地位の安定を図るということ。
それから、大会社については、現実にはほとんどの会社は三人以上の監査役を置いているわけでございますけれども、それでも二人というようなところもある。この際、やはり少数の監査役でいろいろ物を言うというのはなかなか言いにくいので、人数をふやしてほしいというようなこともございまして、これを三人以上にする。大会社でございます。そのうちの一人は社外監査役ということで、会社に対して第三者的な立場からずばずば物を言えるような人を一人加える。それから、監査役会というようなものをつくりまして、組織的に行動する、組織的に会社に対応するというようなことができるようにする、こういうふうにいたしたわけでございまして、今まで法律上与えられている権限を行使しやすくするという意味での今回の改正でございます。
しかし、そうはいっても、私ども、システム的には、権限も責任もそれから行使の仕方もかなり制度としては整備したつもりでございますけれども、やはりこういう制度を適切に運用することができるような監査役をそれぞれの企業が積極的に選ぶということが、結局は当該会社の利益にもつながるし、当該会社の社会的な評価を高めるゆえんにもなるだろうというふうに思うわけでございまして、企業が積極的にこういう意味での制度の健全な運用を図るような方策を講じていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/33
-
034・亀井善之
○亀井(善)委員 全くそのとおりで、ただ、今の御説明の中でも、監査役の選任あるいは解任、このことについては、現在は今のお話のとおり株主総会に権限があるわけでございます。あるいはまた、監査役を選考する、候補者を決定する場合には、会長や社長の専権事項であったり、あるいは取締役会であるとかあるいは常務会、こういうところで決定される。また、株主総会の委任状、これは提出をしても社長が掌握をするというようなことになっております。したがって、実質的には、今のようないろいろのことをずっと進めていくわけでございますけれども、その人事権というものを代表取締役が握っておるわけでございます。
そういう面で、監査を受ける者が監査をする者を選ぶというようなことになるわけでございまして、その辺の問題というのを指摘いたさなければならないのではなかろうか。そうはいっても、なかなかこれどうしたらいいのか、非常に難しい課題だと思うのです。
そこで、この辺について考え方もあろうかと思いますけれども、あるいは外国ではどういう制度が、またあるいはその辺の事情、この辺のことについてお伺いをいたしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/34
-
035・清水湛
○清水(湛)政府委員 先生御指摘のように、監査を受ける方が監査役を事実上選ぶというような実態になっておるのではないかという御指摘、まことに大変重要な問題だろうと思うわけでございます。
しかし、全くそういうものと離れて監査役を選ぶ方法があるかということになりますと、これは実は難しい問題でございまして、私どもの今までの、これは五十六年改正が中心でございますけれども、監査役をだれにするかという選任議案、これを株主総会へ提出するわけでございますけれども、この選任議案というのは取締役会において審議をされる、代表取締役の一存で決めるというわけではございませんで、取締役会において審議されるわけでございますが、監査役の選任等については、これは現に監査役である者がその取締役会に出席して、その選任議案の候補者とされている監査役が適当であるかどうかというようなことについて意見を述べることができるという意見陳述権というものを認めているわけでございます。また、その意見が通らなくて、そのまま株主総会に取締役会で決定された選任議案というものが出されたという場合には、株主総会におきましても監査役は監査役の選任等について意見を述べることができる、こういう形で、できるだけ適任者である監査役が選任されるように、監査役の意見の反映ということを商法では考えているわけでございます。
では、そういう形に今現行法はなっているわけでございますけれども、諸外国の監査役の制度の実情はどうなっているかということでございま
す。
これは、実は監査役というふうに日本では訳されておりますけれども、ちょっと意味合いが違うわけでございます。しかし、大体類似ということも言えるかもしれませんが、イギリスとかアメリカには監査役制度自体がございません。アメリカは、取締役会において会社の業務執行監査をする、こういうことが前提でございまして、あとは株主の直接監査と申しますか、株主の会計帳簿閲覧等を通じていろいろな会社の業務の適正を図るというような形になっております。そういう意味では個々の株主の権利が非常に強いものになっております。日本では監査役制度がございますので相対的に株主の個々の権利は弱められておる、こういうことが言えるわけでございます。
アメリカ、イギリスにはございませんけれども、フランスでは、監査役はやはり株主総会において選任されるということになっております。選任されるにつきましては、やはり選任議案というのは会社側がこれを提案する、こういうことになろうかと思います。
それから、ドイツでは監査役は株主総会において選任されるということでございます。この選任の議案につきましても、会社の執行部の方で選任議案というものをつくるということになるわけでございます。
ただ、このドイツの監査役会というのは監査役会で取締役を選ぶということになっておりまして、日本の、監査役というふうに訳しておりますけれども、もっと権限の強い、実質的には会社の業務執行の最高機関である、こういう性格を与えられておりますのでちょっと違う、こういうことが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/35
-
036・亀井善之
○亀井(善)委員 現実の監査について、私も、大分古い話ですけれども、サラリーマン、会社員の経験があるわけでもございます。実際監査をする環境が必ずしも整っていないんじゃなかろうか。監査役室というかそういうところに異動で回されると、どうもサラリーマンとして余り意欲がなくなった、窓際のような感じを受ける、こういうようなこと。そういう面で人事考課というかその辺のことも、余り監査役の人に考課権がないのじゃなかろうか。したがって、いろいろな情報の収集というかそういうものが極めて困難な状況にあるのではなかろうか。したがって、少なくとも会社の重要ないろいろな情報が自動的に監査役のところに流れるような、システム的な、あるいは法制化がある面では必要なことというようなことも考えるわけでございますけれども、この辺のことについていかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/36
-
037・清水湛
○清水(湛)政府委員 これも、監査役が選ばれまして監査役が一人で監査をするということは現実の問題として不可能でございますので、これまでも、取締役等に対して営業の報告を求めたり、あるいは会社の業務、財産の状況をいつでも調査することができるというようなことになっています。それから、使用人に対してもそういうような報告を求めることができる、こういうことにいたしております。子会社に対してもそういうような営業報告を求め調査をする権限を認めておる。こういうような法律上の権限を適切に行使するために監査役のいわば手足として働くスタッフが必要である、こういうことは当然のことだろうと思います。
監査役制度が強化されて以来、少なくとも、例えば上場企業等におきましては、そういったような形でスタッフの強化に努めておられる。あるいは、先生が昔会社に勤められたころの監査役のあり方と、四十九年改正あるいは五十六年改正等を経た現時点における監査役制度の現実における会社の姿というのは相当変わっておるのではないか。不祥事が起こるものですから、監査制度は機能していないという指摘があるわけでありますけれども、そういう例外、例外なのかどうかわかりませんが、そういう現象がありますけれども、一方においては着実に監査制度の充実強化は図られつつある。まだ十分だとは申し上げることはできませんけれども、そんなふうに私も感ずることがあります。
先ほど来申し上げております日本監査役協会の議論などを聞いていますと、相当熱心にいろいろな方面にわたって研究、検討を重ねて、有効な監査をするにはどうしたらいいかというようなことで、監査役の方々自身が非常に悩み、かついろいろ検討されているというような状況が率直にわかるわけでございまして、急激な改善ということは難しいかもしれませんけれども、着実な進歩を私どもとしては期待をしているという状況に現在はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/37
-
038・亀井善之
○亀井(善)委員 先ほども、津島委員の御質問の中にも自社株取得の問題の件がございました。これは、ちょうど二月十六日の日経新聞に大きな見出しで出ておりまして、大変難しいいろいろの問題を抱えておるわけでもございます。ぜひ前向きに、また、大変難しいことでございますので慎重にお考えを早急におまとめをいただければ、このように御要望を申し上げる次第でございます。
それに関連をいたしまして、実は、前回平成二年度の商法改正の中でも最低資本金の問題についていろいろ議論がなされたわけでございまして、株主会社が一千万円、あるいは有限会社が三百万、五年間の猶予期間、こういうことであります。一千万円以下の会社が六十万も七十万もある、こういうようなことで、早くそのような体制にしなければならないわけでもございます。
そこで、最低資本金に達するまでに株式会社ではその資本組入れに所得税の非課税の特例措置があるわけでございます。同じようなことをするわけでございますけれども、有限会社についてはそれがないというようなことで、若干公平性を欠く面があるのではなかろうか。このことについて自民党も、昨年も税調で検討項目というようなことにいたしておるわけでもございます。この特例、いわゆる有限会社の措置について何とかすることができないものかどうか。ちょっとこのことについてお伺いをしたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/38
-
039・清水湛
○清水(湛)政府委員 平成二年改正で最低資本金制度を導入いたしまして、株主会社は一千万、有限会社は三百万ということにいたしました。株式会社の場合には一千万にするために新規に増資をしてもよろしいし、それからいわゆる法定準備金あるいはその際認められた配当可能な利益による資本組入れという形で、つまりそういう資本組入れという形で資本の増加の登記をいたしてもよろしいということにいたしたわけでございます。
そういたしますと、例えば準備金の資本組入れという形で登記をいたしますと、そのときの登記の登録免許税だけで済むということになるわけでございます。ところが、有限会社については、実はそういう利益準備金の制度等もございますけれども、そういう準備金も資本に組み入れるという制度がないわけでございます。ですから、一たんもし増資をしようとしますと、有限会社の社員が会社から配当を受けてその配当に税金がかかる、今度はその税金を払った残りの配当金で出資して増資の登記をする、その際に増資の登記の登録免許税が軽減されるということになるわけでございますけれども、そういう意味では有限会社の方が不利である、こういうような御指摘があったわけでございます。
私ども、有限会社についてそういう利益準備金等の資本組入れの制度がないという理由といたしましては、有限会社というのは資本の総額とか出資一口の金額とか各社員の出資の口数というのは定款記載事項でございまして、それによって資本金の額というのはぴたっと決まるようになっている、こういうような状況でございます。つまり、資本の総額と社員の出資の総額を一致させておるというようなことがございまして、同時に、有限会社の場合には社員が五十人以内ということで社員の個性が非常に強い法律になっております。そういうようなことから、株主総会の決議で準備金を資本に組み入れるという制度を一律に有限会社に設けるということは不適当である、こういうことからそういう制度がない、そういう制度がないために結果的に不公平かなというような現象が生
じたのだろうと思うわけでございます。
私どもといたしましては、有限会社法の全面的な見直しの中で、実は有限会社といっても小さな有限会社もございますけれども、はるかに大きな有限会社もあるわけでございまして、ちょっとした株式会社よりかはるかに大きい有限会社が現実にございます。そういうような会社もございますので、今後の検討課題としてそういう資本組入れ制度というものを有限会社についても考えたらどうか、実はそういう検討項目ということで外部にも発表している制度でございます。そういうものが実現するかどうかこれからの研究次第ということになりますけれども、さしあたってこういう制度はございませんために、先生御指摘のような商法の面から申しますと、バランスをとるのは現行法ではなかなか難しいのかなというような感じを率直に持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/39
-
040・渡辺裕泰
○渡辺説明員 お答え申し上げます。
ただいま民事局長の方から詳細な御答弁がございましたので、私の方から若干だけつけ加えさせていただきます。
今民事局長から御説明ございましたように、有限会社につきましては、株式会社と異なりまして、有限会社法上、利益または準備金を資本に組み入れるということが制度的に認められていないという事情がございます。したがいまして、増資に充てるためとはいえ、有限会社が行います配当は通常の配当そのものでございますことから、株式会社のみなし配当に係る特例措置と同様の措置を有限会社にも当てはめるということが困難でございました。
なお、株式会社におきましても、利益積立金を株主に配当してその金額を増資に充当した場合には、最低資本金に達するまでの増資でございましても課税されるということになっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、有限会社につきましても税法上株式会社と同様の措置を講ずるためには、商法あるいは有限会社法の措置がなされることがどうしても必要であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/40
-
041・亀井善之
○亀井(善)委員 持ち時間が来たわけでございますけれども、ちょっと地元の問題について、長い懸案の問題が一つございますので、きょうは大臣もおられますけれども、お話だけお聞きをいただければ、このように考えるわけでございます。
実は小田原市に少年院がございまして、昭和四十五年、もう二十数年前から地元の市議会ではこの撤去の陳情を受け、議会で採択をされた経緯もございます。今少年院が大変老朽化をいたしております。新幹線からのぞくこともできるような場所、駅から本当に五、六分のところにありまして、市のいろいろの再開発等々からは十分考えられる場所であるわけでございますが、現在のその少年院はいつごろお建てになって、現在何人ぐらいおられるものか、あるいは時々この職員の宿舎の建設等々が予定をされるようでございますけれども、まずその辺の計画なり現状、このことについてお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/41
-
042・飛田清弘
○飛田政府委員 確かに今お話がございましたように、この小田原少年院は大正十三年から昭和二十年代にかけまして建築されました主として木造を中心とする建物でございまして、耐用年数は既に経過して老朽化が著しく、維持管理も限界に達しているような状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/42
-
043・亀井善之
○亀井(善)委員 大変老朽化しておりまして、何かいろいろ考えていかなければならないということは十分わかるわけでございます。その中で実は移転の問題が市内で出てまいりまして、この対策協議会、もう五十数回、昭和四十五年以降ずっと市議会はいろいろ対策を考えておるわけでございますが、昭和五十七年に小田原市の上町というところに移転をする、その少年院の移転先につきましては非常に問題が出まして、市民の合意を得るということについては市も挙げてずっと努力をしてまいりましたが、上町というところに新しく町づくりをする、こういうような条件のもとに移転先が決定をしたわけでございます。
昭和五十七年に上町にということで法務省も合意をいただいてきて、またその煮詰めをしたわけでございますが、現実にその場所ということに固定をされますとまた地元も反対をするというようなことで、また七百五十メートルくらい先のところではどうかということで、ようやく合意ができまして、またあわせて市はその地域の町づくりを積極的に進める。法務省当局もこの七百五十メートル先のところではいろいろ問題がある、このように御指摘をされておるわけでございますが、やはり新しい町づくり、今は山合いのところでございますけれども、小田原市あるいは東名の秦野中井インターからも大変道路が整備されて環境もいい場所ではなかろうか、私はこのように考えるわけでございます。
〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
今法務省と小田原市当局と若干その辺の接点ができないかどうか。今までの法務省が合意をされた場所を一メートルも動かすことはできない、また小田原市の方も、地元の大反対があったところを、七百五十メートル、せっかく合意ができたわけでございますから、できるものならばその辺で接点を求めることができないか、こういう努力を今されておるところであると思いますけれども、ぜひ法務省当局も、現在合意をされた場所でなければというようなことで、学校教育や面会だとか道路だとかいろいろな問題で支障があるということを御指摘されているようでございますけれども、せいぜい七百五十メートルぐらいで、新しい町をつくるということで市も合意をしておるわけでございますから、ぜひその努力をしていただきたい。ちょっとその辺の法務省のお考えを伺うことができればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/43
-
044・飛田清弘
○飛田政府委員 時間がないところで、十分御説明を尽くし切れないかもわかりませんけれども、国の土地で国の施設が、少年院という社会的には非常に重要な仕事をしているわけでございますが、その土地が小田原市としてはどうしても必要だということで、ほかに移転してくれという御要請があります場合は、私どもとしては、移転したおかげで国の仕事に非常に困ります、あるいは施設の運営が非常にできにくくなりますというようなことがない限り、できるだけ御要望に沿おうという基本的姿勢を持っておるわけでございます。
いろいろな交渉の結果、この地、この地というふうなことで何回か土地の御提示がございましたのを私どもの立場から検討してまいりました結果、この地なら大丈夫だというような土地の御提示がなかなかなくて、昭和五十七年に御提示があった土地については、そこなら何とかなろうかということで、そこならそれじゃ移転することは可能ですよというお話をしておりましたところ、平成四年になりまして、そこからもう少し山奥へ行けということで、昭和五十七年の土地は山を切り取ったその切り土のところでございまして、施設を建てるのも地盤が非常によろしいのでございますが、新しく、さらに山奥に行けと言われた土地は谷間でございまして、それでその谷間を埋めたところに建てなければならない。
それで、こちらの山側の方がありますものですから、北側に面したような格好になっている状況でございまして、いろいろ不便になることもございますけれども、土地の条件も、建物を建てるのにどうも余りうまくないというようなこともありまして、現在、もう一回検討していただけませんか、ここはちょっとできませんよということを小田原市の方にお願いしているところでございます。小田原市としてもいろいろ御検討なさっているようでございますから、それに対する回答があると思いますが、その回答を待って態度を決めたい、こういうふうな段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/44
-
045・亀井善之
○亀井(善)委員 いろいろ御配慮をいただいておるわけでございますが、なかなかその場所を、昭和四十五年から二十数年かかってせっかく場所を決めて——五十七年に法務省の同意を得た場所、しかし七百五十メートル、小田原市内、東京から五十キロ圏のところでありますし、小田原市より東京に近い場所でありますから、山もそれほど急峻な場所でもないし、今の技術的な建築手法を考
えれば、私は十分可能な場所だと思うのです。地元もそれなりの対応をしておるようでございますけれども、法務省におかれましても、やはり前の場所とそれほど違わない、また小田原市の都市づくり、こういうこともいろいろ前提にあるわけでございますので、ぜひひとつ十分検討していただきたいとお願いを申し上げて終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/45
-
046・浜野剛
○浜野委員長 太田誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/46
-
047・太田誠一
○太田委員 大変長時間既に審議を続けておりますが、実は今回の商法改正の中で、社債にかかわる部分は実に延々八年ぐらいかかっている。八年前に自民党の中に商法に関する小委員会というものをつくりまして、そのときに半年ぐらいかけて、社債の発行市場というものがやや気軽に社債を発行できるような状態にないということが現実にあって、日本の大きな株式会社というのは、いずれもその窮屈な日本の発行市場を利用せずに海外で発行する。そして、日本の社債を買う投資家もわざわざヨーロッパまで行って買うというふうなおかしなことが続いてきたわけでありまして、たしかおととしなどは、国内の普通社債の発行というのがゼロになったというふうな異常な事態があったわけでございます。そういう問題意識のもとに社債発行にかかわる法改正を問題提起させていただいて、この法改正になったということでありまして、非常に長い時間をかけて御努力をいただいたわけでございます。
それと比較して、今回のもう一つの柱であります監査役の権限強化というテーマについては、実は非常に敏速な対応をしていただいたというふうに思っております。
というのは、実はこの監査役の権限強化というのは古くて新しい問題でありますが、特におととしの証券不祥事の際に大きな証券会社で起こったいろいろな出来事、あるいは金融機関で起こった出来事、あるいは新聞にはそういうふうに大きく報道されなかったけれども、あのバブルの時代にそれ以外の多くの一般の企業においても非常識な不動産投資が行われておって、そういった事柄について、いわゆる会社の中の監査役はどういう役目を果たしてきたのかということを聞くために、監査役協会というものがあるので、その代表をお招きしてその所見をお伺いしたところ、私たちにはほとんど発言力はありませんというような本音のお話があったわけであります。
一部はこれは会計監査にかかわるテーマでもありました。損失補てんのようなことは会計監査にかかわる世界でありますので、公認会計士協会にもおいでをいただいてお聞きしましたけれども、法律に触れるかどうなわからないことについて自分たちは監査はできないんだというような言葉であったわけでありまして、前からわかっていたことでありますが、監査役の仕事というのは非常に限定されておるということを確認いたしたわけであります。
そこで、社債に関係をした法改正を問題提起いたしましたときと同じように、我が党の小委員会において法務省に対して、監査役の強化ということを具体的に取り組んではどうかということで何項目かの問題提起をいたしたわけでありまして、今回ほぼその内容に対応をした改正案が出されたということは、非常に高く評価をするものでございます。
そこで、本来この監査役の機能を強化するということはどういうことであるかというと、既に何人かの同僚議員から質疑、質問あるいは発言がございましたように、本来は監査役制度を強化するということは監査役の独立性を強化するということになるわけでありまして、選任の方向についてももちろんさまざまな工夫の余地はあるわけでありますけれども、それよりも何よりも以前に、その会社の従業員であった者がすべて監査役を占めるという現状に対して、大変これは問題ではないかということであったわけであります。
それを法律で余り厳しく書き込むことが、いきなりそういうふうに厳しく制限をすることができるかどうかということについて大分論争がありましたけれども、結果として、直近の五年間その会社の従業員でなかったということをもって社外監査役の一つの条件といたしたわけでございます。
しかし、社外から選任される監査役というのはあくまでも社外であって、本来は純粋に社外であることが望ましい。すなわち、一度もその会社の従業員でなかった人が望ましいという、法律の精神はそこにあると思うのでありますが、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/47
-
048・清水湛
○清水(湛)政府委員 監査の適正を期す、こういう意味で、監査制度が有効に機能するにはどうしたらよろしいかということが基本的な問題であるわけでございます。
今回、会社の業務執行等に一定期間関与しなかった者の中から最低一名はこれを選任する、こういうことでその要件を五年ということにいたしたわけでございます。こういうふうにいたした趣旨は、先生御指摘のように、会社の業務執行から距離を置いた立場で物事を客観的、公平に見ることができる人という意味と同時に、会社の経営執行部、代表取締役を初めとする取締役等の経営執行部の影響力を受けないで、適正な意見を表明することができる人を置く、こういうことがその目的にあるわけでございます。
そういうような観点から見ますと、非常に有能な人材ということが前提になるわけでございますけれども、会社の執行部の影響力を受けなくて、公平な立場からきちっとした物事が言えるということであれば、それは五年ということではなくてもっと長く、あるいは先生御指摘のように、今まで会社とはそういう使用人というような関係では全く関係がなかった者ということであれば、なお一層そういうような意味での適正な意見を述べることができるということは十分に考えられるところだと思います。
私ども、ある意味においてはそういうような理想的な意見と、現実の会社、これの適用がある会社が約八千社でございますけれども、そういうような会社の意見等を見ますと、五年でも長過ぎる、三年程度にしてもらいたいというような意見がかなり多いわけでございまして、初めてこういったいわゆる社外監査役というような制度を導入することでございますので、いろいろな意見を調整しながら、最終的には大方の意見の一致するところが五年ということになったわけでございます。
あるべき姿あるいは理想論ということを考えますと、もちろん無能な人材であっては困りますけれども、有能に人材が得られるという前提であれば、それは会社との直接の関係、つまり、特に使用人として会社にあったというような関係がない方が、ある意味においてはより理想的な社外監査役であろうというふうに思うわけでございます。そういう意味におきましては、今回の立法はある意味においての妥協であるということも、これは申し上げざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/48
-
049・太田誠一
○太田委員 本来、これはそういった証券不祥事が起きたということもありますけれども、それと同時に、今度の法改正にも盛り込まれておる代表訴訟制度を盛り込んだ日米構造協議の際に、アメリカ側から社外取締役の制度を導入すべしという申し入れがあったようにお聞きをいたしております。それは何もアメリカ側が言ったからやるという必要はないのですけれども、やはり国際的にハーモナイゼーションといいますか、株式会社というものはこういう要件を備えているものだというものが日本の場合とその他の国で違っていては、それこそまたいわゆる日本異質論みたいなものになるわけでありますから、筋の通ったアメリカ側の要求というのは十分に考慮していかなければならない。
また、あわせて、これは最近、何カ月か前でありますけれども、新聞に載っておりましたが、野村証券に対してアメリカの最大手の機関投資家から、社外取締役を置けという要請があっておるというふうなことが出ておりました。それはニューヨーク証券取引所の上場基準としてそういうものが、社外の取締役を置かなければならないという
ことを上場基準としておるように、自由主義社会の株式会社のあり方としてはそれが常識的なチェック・アンド・バランス、株式会社の中の非常に大きな大企業であって、その経営の執行部というのは大変大きな社会的な権力を持つわけでありますから、それに対して何らチェック・アンド・バランスの機能が働いていないということはゆゆしき問題だと思いますので、私はその方向に進めていくべきだと思うのでございます。
現実の経済界がそのような社会的な要請といいますか、国際的な要請というものを踏まえて人選してくれれば、事実上そうなれば、実は何もこんな法律もつくる必要はないわけであって、それを実行しないから、我々がこんな余計なことをしなければならなくなるわけでございます。
そこで、私は、今後は、法務省でそれをやられることが望ましいと思うのですけれども、やはりきちんと年に一回とかあるいは何年に一回とか、どれだけ大会社について社外監査役が、我々の言う本来の社外監査役が選任されているかどうかということを定期的に調査をして、その調査結果を報告するとか、そういうことを進めながら、現実にこの法律、法改正の精神がどれだけ経済界の中で受け入れられているかということを注意深く見守らなければいけないと思うのであります。そうして、もし何らその前進が見られないということになれば、これは再度この法改正について考えなければいけないのではないかというふうに思っているわけでございますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/49
-
050・清水湛
○清水(湛)政府委員 先生御指摘のように、日米構造協議におきまして、アメリカ側の非常に強い主張として、社外取締役という制度を制度化せよ、取締役会の中にそういう社外取締役を含めた取締役で構成される監査委員会みたいなものをつくって、それが会社の職務執行を監査するというようなシステムを日本は採用すべきではないかというような問題提起がございました。それに対して私どもとしては、日本には実は監査制度というのがあるんだ、アメリカには監査制度がないんだけれども、いわばこの監査制度によって会社の業務の執行の適正を監査している、こういうことを説明いたしまして、取締役会というようなことを前提に考えるアメリカの議論とはその辺はちょっとかみ合いませんということで理解を求めたわけでございます。
しかし、では監査制度の中に社外監査役みたいなものを考えるべきではないかということが当然今度は我々の頭の中に出てくるわけでございまして、前々からもそういった議論というのは実はあったわけでございます。
先ほど私お答えしたかもしれませんけれども、実は、昭和五十年の会社法の根本改正についての問題提起のときに、いわゆる社外重役制度についてどう考えるかとか、あるいはこれと監査役制度についての関係をどう考えるかというような問題提起をして、アンケートをとっております。それは昭和五十年にそういうことをいたしているわけでございます。いろいろ経済界の反応がありまして、かなり消極的な意見が強かったというのが、はっきり申し上げましてその実情でございます。
私どもとしては、今回、こういった形で社外監査役というものを導入した商法が幸い国会を通過いたしまして施行されるという暁になりましたら、ぜひとも、この社外監査役というのが一体どういうような経歴の人で、あるいは法律は最低要件五年でございますけれども、会社とどの程度の期間離れていてというようなことについての実態調査を何らかの形でしてみたいというふうに思っております。幸い法務省認可の社団法人であります日本監査役協会がございますので、場合によってはそこを通じまして、現に監査役協会は常にそういう監査役の実態調査をやっておりますので、そういう実態調査の過程の中でも当然そういう結論は出てくるかと思いますけれども、フォローはいたしてみたい。そうして、それがどういうような成果を監査制度の中で生んでいるかということも検証してみたい。それを踏まえて、さらに必要な改正事項があるということであればこれはまた積極的に対応してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/50
-
051・太田誠一
○太田委員 これはぜひ法務大臣にもお聞きをいただきたいのですが、今パブリックセクターというか、政府部門でリタイアされた方が民間の企業に行かれるというのが非常に膨大な数だろうと私は想像しておるのですけれども、その場合に私は、経営の執行部に入るよりも、こういう監査役のような仕事をしていただくことが本来望ましいのではないかというふうに思っております。
監査役は株主の意見というか、株主の立場に立って会社の仕事を監査するわけですけれども、その株主というのは何万人とか何十万人いて、不特定多数の人であって、実は見えないわけですね。すると、不特定多数の人の常識というものを反映して業務の監査をするということになるわけですから、これはある意味では公共的な利益といいますか、パブリックインタレストというものを考える人がむしろ監査役になった方がいいのではないかというふうに考えております。
そうすると、しばしば法制審議会などで、この監査役の人的供給源がないということが時として発言が出るというふうに仄聞をいたしておりますけれども、本来は、もし公的部門にいる公務員であった方々が監査役になるということになれば、莫大な数の人的供給源はそこにあるわけであります。ですから、そのようになれば、民間企業に対してパブリックセクターにいた人たちがかかわるポジションというのははっきりしておるわけでありまして、すぐれた人材がリタイアした後もきちんと社会的に有用な役割を果たせるということになるし、また監査役の独立性という意味でもそれが一番望ましいのではないかというふうに私は考えております。
ということで、決してそういうふうな人材はいないんだとか、あるいは特別な、資格について制限をするというのは、これは今後の構想でございますけれども、監査役のうちの一人、社外から選任される人は、例えば公務員であった人とか、何かの会計専門家としての資格を持っておるとかあるいは法曹界の資格を持っておるとか、将来の課題としてはそういうふうな制限を設けた方がいいのではないかと考えております。監査役制度については、そのようなことを考えておるということで終わらせていただきます。
次に、自社株のことについても少しお聞きをいたしたいと思うのでございます。
自社株のこともこの監査役制度の問題も、それから後で時間があればお聞きしようと思っておりますけれども国際会計基準のことも、共通した一つの哲学を持って考えるわけであります。要は、株主の権利というか株主の利益というものが尊重されるためにはどうしたらいいのだろうかという根本的な問題があって、それと裏腹のことになるわけでありますけれども、我が国の証券市場でもって株の七〇%は法人の所有になっておって、三〇%が個人の所有になっている。そして、ふだんはそのことは余り問題にならない。株が上がっているときには問題にならないんだけれども、株が暴落した途端に証券界の方から、個人株主を大事にしなければならない、そういう手当てをしなければいけないという話が必ず起きてくるわけでございます。
個人株主を優遇するというのは、そんな株価対策的なことで、小手先でやるようなことではなくて、日ごろから制度やあるいは法律の中にその精神がちゃんと組み込まれていなければならないわけでありまして、その精神で、例えば株式市場における個人株主の割合を、私は本来はこちら側が七割ぐらいで法人が三割ぐらいというのがノーマルだと思うのですけれども、そういうふうに個人の株主を株式市場に呼び戻すためには、それこそ原則、原点に立って株主優遇といいますか、株主の利益とか株主の権利を尊重するという制度になっていなければいけない、それが長期的に見て最大の株式市場に対する構造政策になると思うのでございます。
そこで、自社株のことなんですけれども、自社
株を取得するということは、およそ株式会社というものは、株式会社制度が誕生してから、どこの国でも、企業は大きくなる一方であって、増資をし、資本を積み増していくということについては当然だろうということになっておる。ところが、実際には、こういうふうにいろいろなところで頭打ちになってまいりますと、企業が縮小をするという場合も考えておかなければいけない。
企業が縮小をするというときには、実際の仕事に必要な、その本来の業種で投資をすべきプロジェクトに比して企業内にあるキャッシュのフローが大き過ぎるということがあるわけでありまして、そうすると、企業内にあるキャッシュフローをそのままにしておかないで、株主の方に還元をし、株主の方はより成長性のある企業の方に投資をやりかえることによって資金の配分といいますか、資本の配分を適正にするというふうなこともあるわけでございます。
そうすると、それは配当をどんどんすればいいじゃないかということにもなるわけでありますけれども、配当による株主への利益還元ということは一つの手段であって、もう一つの手段として、自社株を買うことによってキャッシュフローを外に出すというか、株主に戻すという方法がある。二つの方法があるということだと思うのでございます。そういう手段を与えておくことは、ひいては資金の効率的な配分にもなりますし、また株主の優遇策にもなるというふうに言われているわけであります。
もう一つは、個人株主をふやそうとした場合に、個人株主といったって一体どういう人たちが個人株主たり得るのかということを考えてみると、我が国はこれだけ急角度で税率が上がる世界的にもまれな累進税率の制度をとっておりますので、あるいは相続税も大変税率が高いので、戦後四十数年、五十年近くたって、個人の金持ちというのは一時的には誕生するんだけれども、結局は抹殺されていってしまって、今我が国ではそんな飛びはねた大金持ちはいないわけであります。かつては、財閥解体のときに解体した財閥の株をだれが持ったかというと、企業家というのはそのときは大体もう破綻しておりましたので、そのときの株は山林地主が分けて持ったということが言われております。当時は農地改革が行われておるときであって、農民の大地主とか大金持ちというのは、それもまた制度的にばらばらになっておって、山林は手がつかなかったので、山林地主だけが大金持ちだったのでそこに割り当てたんだというふうなことも聞いております。
これからそういう個人株主をふやそうと思っても、実際には特別な階級、山林地主というような階級はここにいないわけでありますから、結局のところ、普通の人にどれだけ持ってもらえるか。特に企業の従業員である人たちに株をたくさん持ってもらわなければならないということだろうと私は思うのです。
そうであるとすれば、今、従業員持株制度というのは我が国にもありますけれども、これには株を取得するタイミング、そしてまた会社が株を取得してからその値段で従業員に配分するわけではなくて、市場で獲得をしたよりも安い値段で株を分けてあげなくてはいけないというふうな、制度上必ず会社が介入しないとこの従業員持株制度というのはうまく機能しないと言われておりますので、少なくとも従業員持株制度のような制度にのっとった自社株の取得及び、あるいは必要があれば保有ということについても、これは限られた期間については認めるべきではないかというふうに思っております。
それからまた、今日の商法の世界では、もし自社株を取得だけに限って、取得をしてすぐに消却をするという極めて限定をされた場合についても、各株式会社が株主総会において定款変更をして自社株が取得できるようにするということでは、それはできないのであって、原始定款でそのように定めていなければ自社株取得はできないのだというようなこともお聞きをいたします。こういった事柄について、お考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/51
-
052・清水湛
○清水(湛)政府委員 商法のいろいろな制度が、株主の利益を重視するあるいは会社を構成する従業員の利益を重視する、こういうような一つの基本的な哲学の面に基づいてやるべきだというのは、まことにおっしゃるとおりだと思います。
自己株取得の制限の緩和ということにつきましては、現在私ども法制審議会で検討中でございまして、いろいろな議論がございますから、そもそも制限を緩和すべきかすべからざるべきか、あるいは緩和をするとすればどういうような形で緩和をすべきなのか、それに伴う例えば弊害防御措置をどういうふうに講じたらいいかというような形での問題点を整理いたしまして、現に各関係方面に照会中でございます。そしてまた、去る四月の政府の総合経済対策によりまして「自己株式の取得及び保有に関する規制の見直しについて、次期通常国会までに結論を得、所要の対応をすべく検討を促進する。」ということでございますので、私どももこれにのっとって適切な対応をしたいというふうに考えているわけでございます。
そういうような議論の中で、どういう範囲内で自社株取得の制限を緩和するかといういろいろな理由、株主への利益還元だとか、従業員持株制度の運営の円滑化だとか、ストックオプション制度の採用だとか、企業資金の適切な運用だとか、敵対的な企業買収への対抗策としてこれを認めるべきだとか、あるいは相互保有の解消のためのシステムとしてこのようなことを考えるべきだというようないろいろな議論があるわけでございます。先生御指摘の従業員持株制度については、これは実現すべきではないかというような意見の方がかなりおられるように私どもは認識しております。
これを法制化しなくても、従業員持株会というような形で現実には従業員持株の制度が運用されているわけでございますけれども、それにはいろいろな問題がある、もっと合理的な形で会社が機動的に対応することができるようにしたらどうかという意味での問題提起だと思います。そういうものにつきましても、これから関係方面からの意見がいろいろ寄せられると思いますけれども、そういうものを踏まえまして適切な対応をいたしたいと思っております。少なくとも従業員持株制度というのは非常に重要な問題提起であるというふうに私どもは認識いたしております。
それからもう一つは、現行法でも、例えば利益をもってする消却のために自己株式を取得するということは認められておることになっているわけでございます。それをするためには、原始定款、つまり定款にそのようなことを認める規定がなければならないというようなことになっているわけでございますが、この定款がいわゆる会社設立のときの原始定款でなければならないのか、あるいは、その後一般の定款変更手続を経た変更定款でもよろしいのかということについてはいろいろな考え方があるようでございます。原始定款になければならないのだというような説をなす人もありますが、最近は、定款変更の特別決議でした変更定款にそういうことが記載されていればよろしいというような考え方を述べる人が多くなっているようには思います。
ただしかし、せっかくの利益消却の制度、これはみなし配当課税というような問題もございますけれども、商法の面で非常に手続が面倒くさいということでございますとなかなか実行しにくいというような問題もございますので、このような利益消却のための自己株式取得の手続についての簡素合理化ということについても、これは重要な検討事項の一つであると私どもは認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/52
-
053・太田誠一
○太田委員 もう一つのテーマでありますディスクロージャーの問題であります。ディスクロージャーの問題、これも株主の権利を尊重するということにつながるのでありまして、企業内容がきちんとわかるということは、株主が投資家として判断をする場合の最も有効な材料を提供するわけでございますから、ディスクロージャーということは大変大切なテーマだと思います。
そこで、このディスクロージャーのことについては、国際会計基準というものが最近話題になっておりまして、国際会計基準というのは、いわゆる国際業務、特に金融機関などが海外で資金を調達したりあるいは保証をするのですね。例えばアメリカの州が州債を発行するときの保証に日本の長期信用銀行が立つというようなことがあって、そのときに、そういう保証に立つ以上、その保証をしている銀行そのものが内容を開示しておらなければいけないということがさまざまあって、こういう仕事をやる場合には、国際業務にかかわる場合には少なくともこれだけの企業内容を開示しなければいけないというようなことで、さまざまな国の間で合意が図られようとしているわけでございます。
それはまた翻っては、金融機関の問題でいえばいわゆるBIS規制、国際決済銀行の中で新しく自己資本比率規制というものが数年前からやかましく言われるようになって、そのことが今日の日本の銀行の貸出態度に微妙な影響を与えるというようなことも言われるわけでございますけれども、BIS規制導入後に、自己資本というものについて、自分の会社の内容をきちっと開示せざるを得ないようにだんだんなってきておりますっ
そういう国際会計基準、あるいは国際業務の方からくる企業内容の開示ということについて、これもまたきちんと勉強したわけではありませんけれども、新しく取り決めがなされ、各国の会計制度についての監督官庁間で合意が将来できるであろう、このような国際会計基準を認めるということで合意に到達しそうな内容は、今までの日本の会計制度とどこが違うかというと、一番典型的なのは、例えば有価証券を時価評価の原則で行う、時価評価をするというふうなことが従来の日本の会計制度とは違うといわれておるわけでございます。
そうすると、従来の日本の会計制度は、確かにさまざまな我が国の風土あるいは文化といったものもあるかもしれないけれども、その会計制度の一つの有力な根拠になっておるのは商法でございます。我が国の商法は、原価法、有価証券であれ不動産であれ、資産の評価は取得原価で表示することになっておりまして、そのうちの有価証券について、国際会計基準の方では時価評価をした方がいいということになっているのだろうと思います。
今日の我が国の商法の考え方は、経営者の安全志向といいますか、経営者が、もし赤字が出たりやり損なった場合に、隠し財源があって、含み益をそこで出すことによって赤字決算を回避するというふうな方法をとる。特に経営者はそういうことを望んでおる、自分の裁量権が大きくなることを望んでおるのだけれども、そのような保守性、保守的な立場、経営者が裸になるような危険なことを避けるために、商法もまた同じような考え方をしておって、取得原価主義をとっておるのだといことが言われておるわけでございます。
それは一つの考え方であって、人によってはそれを商法の保守性というふうに表現する向きがありますけれども、それは経営者の保守性、経営者の自己保全を肯定しておるという意味の保守性であって、商法の保守性じゃないと私は思うのですね。
商法がどういう観点に立脚すべきかというと、そういうことを考えてもいいかどうか私わかりません、そういう観点もあるかもしれないけれども、それ以上に、株主を尊重し、株主の利益を考える、あるいは投資家の利益を考えるためには、より正確な企業内容の開示をした方がいいという方が説得力があると私は思うのでございます。
こういう話をしていると、何か不動産の再評価のことばかりを言っておるというふうに人々は受け取り、そして何かいかがわしいもののように報道されるわけでありますけれども、決してそんなことではなくて、要するにディスクロージャーという観点から見て、その点で、資産評価あるいは含み益を開示するというようなことについて、もし私が言ったような精神で商法ができておるならば、私は別の考え方もあるのではないかと思っております。
そこで、そこのところが政策判断だと私は思っておりますので、もし将来そのような法改正を行う、精神を変えるということであれば、商法に対して何か特例法をつくればいいのだということを言う人もおりますし、また大蔵省か何かでやればいいのだということを言う人もおりますし、さまざまな説があるわけでございます。
戦争が終わった直後、昭和二十年代に続けて資産再評価をやったときは、あれは事実として不動産の再評価を行わなかったわけでありまして、いわゆる設備のたぐいの償却資産が事実上再評価の対象になったわけでございます。それは当然のことであって、不動産の再評価は別といたしましても、償却資産というのは、インフレ時期には再取得のために償却を急に進めなければならなくなるわけでありますから、それはむしろ奨励しなければいかぬ。
他方で、そのようにして償却に引き当てるお金を積めば税負担は少なくなるわけでありますから課税をしてもいいということになるわけであって、課税ということと密接に絡んでいれば、それは大蔵省の法案にあるいはなるのかもしれない、税法なのかもしれない。しかし、そうではなくて、何もこれは課税と常に不可分のものではないわけであって、いわゆるディスクロージャーの観点からすれば、これはやはり商法のテーマではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/53
-
054・清水湛
○清水(湛)政府委員 国際会計基準の問題と資産の一種の再評価の問題、両方の問題が絡んでいる御質問だと思います。
まず、有価証券につきましては、原則として取得価額によるというふうに、商法では原価主義を採用いたしております。もちろん、取引所の相場がある有価証券については、時価が取得価額より著しく低くなって、とてもまた取得価額まで回復する見込みがないときにはその時価で評価するということになっております。
こういうような基本的な考え方は、経営者の立場あるいは株主の立場もそれはあるかもしれませんけれども、結局、企業体が有限責任で、要するに企業の資産だけが債権者に対する担保財産になっておるということから、いわゆる資本充実の原則というのが商法の大原則になっているわけでございますが、そういうような観点からそういう原価主義が採用されておるということが第一に言えようかと思います。
それからもう一つは、企業というのは営業年度があるわけですけれども、一定の期間にどれだけの費用をつぎ込んで、どれだけの売り上げがある、どれだけの収益がある、それによってその期間に利益が幾ら生じたかという、いわば期間損益の原則に立っておるというふうに言えようかと思います。
例えばある土地を買った。その土地が非常に値上がりをした。最初、期末には十万円だったけれども、期首にはそれが一千万円になった。では九百九十万円の利益が上がったかというと、それはそうじゃないわけでございまして、たまたま評価益は出ておりますけれども、企業活動の収益としては、その一年間に一定の費用を投じて、それに対応する収益が上がる。その収益から費用を差し引いたものが損益で、その損益の中から株主に配当するなり会社に積み立てをする、こういうような損益法の構造に株式会社法が立っているということになるわけでございます。そういう意味から原価主義を採用しておると言われております。
しかしながら、一方におきましては、これは不動産についてもしかりでございますけれども、現実には取得価額と時価というものが開いておる。例えば、この間も新聞で私知ったことではございますけれども、地価税の額というのが、これは時価ではなくて路線価格によって地価税を恐らく納付しているということだろうと思いますけれども、実際は、そういう公簿に記載されている取得価額と全く違う価格で国税当局はそれを評価していくのだろうと思います。
そういうものを適正な価格に評価し直して、それを会計処理に反映させるということになりますとどういう問題が出てくるのか私にもよくわからないのでございますけれども、大ざっぱに申しますと、そういう評価をし直すことによって評価益というものが出てまいります。これを、益、利益だから、では株主に配当してしまうかということになりますと、これは不動産を売って金にしてみんなに分けてしまわなければならないということになりますから、そういうことにはならないのではないか。そういう評価益を、商法上の処理として、例えばかつての昭和二十五年の再評価法と同じように、再評価積立金という形にして資本に組み入れるような手当てが必要になるだろう。そういう意味におきましては、これは商法の特例法みたいなものが必要になってくると私は考えております。
もう一つは、不動産を評価し直すことによってそこに評価益が出てくるということになりますと、これは利益でございますから、ではそれに対して所得税なり法人税なり、税金をかけるのかということになりますと、税金を払うために土地を売らなければならない、企業の存立基盤の財産がなくなってしまうということになります。二十五年の資産再評価法では、そういう評価益には一律六%という低率の税金を課すことによって会社に資産を温存させて、それを再評価積立金として資本に組み入れさせて会社の企業活動のいわばエネルギーにした、こういうことが言われているわけでございますが、そういった再評価益の税法上の取り扱いをどうするか、こういうようなことも問題になろうかと思います。
いずれにいたしましても、どういうふうな形でやるのか。商法にも関係してまいりましょうし、税法にも関係してまいると思うわけでございますが、私どもいろいろと研究はしなければならないと思いますけれども、具体的にどうするかというようなことについて方針がまだ決まっているわけではございません。太田先生の方でいろいろと問題提起をされているということもございまして、私どもそういう研究会に参加させていただいておりますので、いろいろと御指導を仰ぎながら今後研究、検討を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/54
-
055・太田誠一
○太田委員 こういう国際会議において、アメリカは取得原価と時価がほとんど違わない国なんですね。ところが、アメリカを除くG10の諸国はほとんど時価と取得原価に乖離があって、各国はそれを要求しておるんだということは言われるわけであります。いわゆる再評価、不動産についての再評価をすべしということを言っておるようでございます。我が国も、それはした方がいいかどうかというのはまたそのときの政策判断なんですけれども、そのような手段が必要とあればいつでもその手段がとれるようにしておくことは悪いことではないのではないかというふうに思っているところでございます。
法務大臣にお聞きする時間がなかったんですけれども、今三つの点について申し上げましたが、個人株主を尊重するということで、この商法改正に際しまして、この機会に、もう何度もお考えをここで聞いておりますけれども、改めてお考えを最後にお聞かせいただければ幸いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/55
-
056・後藤田正晴
○後藤田国務大臣 先ほど来、太田さんから非常な専門的なお立場に立っていろいろな点についての御意見、御質疑を拝聴しておりましたが、今回の監査役の改正の効果が果たしてどのようになっていくのかよく見てもらいたいとか、あるいはまた社外重役というものについていま少しく日本も考えたらどうだ、またそういった際にお役人のリタイアした人の過去の経験というものを生かしたらどうだとか、あるいは国際的な会計基準の問題と日本のやり方との間の乖離についてどう考えるべきなのか、いま少しく考える点がありはしないのか。
あるいはまた自社株取得について、なるほどいろいろな長所、短所あるだろうけれども、この点については既に当方の決定もあるし政府の決定もありますからどの程度まで緩和するのがいいのか、今のままではいけないのではないのかといったような積極的な御意見、あるいはまた株主の方とでもいいますか、会社がいま少しくディスクロージャーしたらどうだといったような問題、そういった際にやはり日本の会社、今の法律では原価主義で全部やっておるがもう少し時価の観点からやったらどうだとか、そういった点についてもアメリカと日本との間の違いがあるんだけれども、そこらについても、最近の多国籍企業その他の活動がありますから、従来からの観念では、このままじゃいかぬのではないかなといった疑問を付しながらの御質疑であったと思います。
大変有益な御意見をここで承ったと思いますが、私は、会社法、商法等の現在の日本の建前の中には新しい経済の展開に即応をしてまだまだ考えなきゃならぬ点が相当あるのではないかなというふうな思いをしながら拝聴いたしましたが、我々の担当しておる面については十分勉強いたしたい、こう思います。そういった際に、率直に言って、一体日本の税法がどうなるんだろうか。先ほど大蔵当局のお話では、何か関係ないというようなお話でしたけれども、自社株取得ですか、この場合には、私の常識ではやはりみなし配当課税という厄介な問題がありはせぬのかな、こういったような感じもいたしますが、いずれにいたしましても、いろいろな各方面にわたっての御意見を拝聴いたしましたが、今後さらなる勉強をいたしたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/56
-
057・太田誠一
○太田委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/57
-
058・浜野剛
○浜野委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
————◇—————
午後一時三十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/58
-
059・浜野剛
○浜野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
本日は、内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案審査のため、参考人として、東京証券取引所理事長長岡實君、経済団体連合会評議員会副議長盛田昭夫君、立教大学法学部教授上村達男君、弁護士家近正直君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
参考人各位におかれましては、御多用中本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
御意見は、長岡参考人、盛田参考人、上村参考人、家近参考人の順序で、お一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おきをお願いいたします。
それでは、まず長岡参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/59
-
060・長岡實
○長岡参考人 東京証券取引所の長岡でございます。
本日は、商法等の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを大変ありがたく存じております。
御高承のとおり、証券市場は、企業の長期資金の調達の場であり、国民の資産運用の場でございまして、それを通じ国民経済の円滑な発展に寄与するという役割を担うものでございます。
証券市場がそうした機能を果たすためには、投資者層の拡大、とりわけ多種多様な投資判断を有する多数の個人投資者の参入が不可欠であると考
えております。このような観点から、私どもは、個人投資者の増大のための諸施策を講ずるとともに、企業には、株主に顔を向けたと申しますか、株主重視の経営をお願いしてまいりました。このたびの商法改正は、企業が株主を大切にする必要があるという考え方に根差したものであり、個人株主の増大にも資するものでありまして、証券市場の運営に携わる者として、意義深い改正であると考えております。
それでは、具体的な改正点につきまして、簡単に意見を申し述べたいと存じます。
まず、株主の権利強化に関する改正についてでございます。
株主の帳簿閲覧権につきましては、一〇%以上の株式を所有する主要株主だけに認められる権利であることから、その要件が厳しく、また株主の代表訴訟につきましては、訴訟によっては株主の費用負担が多大であることなどから、株主がこれらの権利を十分に活用できないという指摘がございました。今回の改正は、こうした問題に対応するものであり、これらの権利を正当な目的のために行使することにより、執行機関に対する株主のチェック機能の充実に資することになると考えております。
次に、監査機能の強化に関する改正についてでございます。
これは、私どもの立場であります投資者保護の観点からいたしましても、望ましいことであると存じております。
中でも、社外監査役制度の導入によって、チェック機能が強化され、企業の業務及び会計の一層の適正化を図ることができるものと考えておりますし、また一連の不祥事によって高まった企業活動に対する社会の不信感を払拭することにも役立つものと期待しております。私ども証券取引所といたしましては、証券市場に対する信頼確保の観点からも、改正商法の施行に合わせ、全上場会社に対しまして、今回の改正の趣旨の徹底等について要請文を送付することを考えております。
また、上場会社の役員人事等は、私どもが要請しておりますタイムリー・ディスクロージャーの対象にもなっておりますので、社外監査役制度はいわば衆人環視のもとで適正に運営されていくものと考えております。
次に、社債制度の改善についてでございます。
社債制度の改善は、私ども証券界が長年にわたってお願いしてまいりました事項で、これが実現することは喜ばしいことでございます。
我が国社債市場の問題点として、かねてより普通社債の発行の低調が指摘されてきたところでありますが、一つには社債発行限度規制が制約となっていると言われておりますし、またこうしたことがエクイティーファイナンスの偏重をもたらした一つの要因になっているとも言われております。このようなことから、今般、社債発行限度規制が撤廃されますことは、企業の社債発行による円滑な資金調達を確保していく上で適切な対応であると考えております。
次に、受託会社制度の見直しについてでございますが、従来の受託会社につきましては、発行段階において、引受証券会社との間でその役割・責任が不明確であるとの指摘がなされておりました。今回の改正により、受託会社が社債権者のために社債を管理する会社として純化され、またその範囲、権限、義務が明確にされましたことは、今後の社債市場の発展に寄与するものと考えております。
以上が、今回の法律改正案に関する私どもの意見でございます。
重ねて、今回の商法改正案は、株主の権利強化、監査機能の強化などを通じまして証券市場の健全な発展に資するものであり、同時に社債制度の改善により市場機能を強化するものでありまして、まことに時宜を得たものであると考えます。私どもといたしましては、本法律案が早期に成立し、一日も早く施行されることを期待しております。
当委員会及び委員の諸先生方におかれましては、今後とも証券市場の発展に御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/60
-
061・浜野剛
○浜野委員長 ありがとうございました。
次に、盛田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/61
-
062・盛田昭夫
○盛田参考人 経団連の評議員会副議長を務めております盛田でございます。
本日は、こうした国会の場におきまして、経済界の一員といたしまして考え方を申し述べる機会を与えていただきましたことに厚く御礼を申し上げたいと存じます。
さて、商法は企業活動にとりましてはまさに基本となる法律でございまして、私どもは非常に大きな関心を持ってその動きを見守ってまいりました。また、経済社会の変化及び昨今の急速な国際化の進展にかんがみまして、必要な法改正は時宜に適して行われることが極めて重要な課題となってきておると考えておる次第でございます。今回の改正事項は、いずれも必要性の高い、また時宜にかなったものでございまして、ぜひとも早期に改正を実現していただきたいと存ずる次第でございます。
まず、今回の会社法の改正事項につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。
証券・金融不祥事の発生後、経団連におきましては、みずからを真剣に戒めるとともに、その事態の再発を防止すべく検討を重ねまして、平成三年九月には経団連企業行動憲章というものを公表いたしまして、企業経営の姿勢を正す具体的な対策を明らかにしてまいりました。その一環といたしまして、監査役制度の見直しにつきましても、みずからに課せられた課題として真剣に検討をしてまいりました。
不祥事の再発防止のための第一の課題として、監査制度の活用と企業の内部管理の適正化を提言いたしまして、その後、機会あるごとに代表取締役経験者などいわゆる大物監査役の登用に努めること、または監査役スタッフの充実を図ることなど、監査役の機能全般の強化を図ることを経団連の会員企業に働きかけてまいりました次第でございます。
今回の改正措置は監査役の機能の充実強化を図る上でのベースとなるものでございまして、改正が実現をいたしました暁には、改正の精神にのっとりまして、社外監査役として最も適任と思われる者が選任をされ、監査の実効性の向上と監査役機能が一層強化されるように呼びかけてまいりたいと考えておる次第でございます。
同じく今回の改正事項として取り上げられました会計帳簿の閲覧謄写権の見直しにつきましては、経済界の中には持株要件が三%では厳し過ぎるという意見もございました。しかしながら、経団連といたしましては、この際、株主の権利強化をさらに図るという観点から、権利行使のための手段となる会計帳簿の閲覧謄写権につきましても、改正案の形で見直しに応じるべきではないかということで経済界の意見を取りまとめるように努力をしてまいりました。
なお、公開すべき企業情報の開示につきましては、単に開示内容をふやすというだけでなく、広く投資家の企業活動に対する理解を促進することが重要と考えております。経団連におきましては、インベスター・リレーションズ協議会というものを設置いたしました。これに協力をいたしまして、幅広い角度から企業情報開示の充実に取り組んでおる次第でございます。
また、代表訴訟につきましても、これは重要な株主の権利の一つでございます。権利の行使を妨げる制度的な要因があるとすれば、これを取り除く必要があると考えております。しかしながら、米国において散見をされますように、濫訴が起きまして社会的費用の負担の増加が起きるというようなことが全くないわけではございませんので、その点に関しましては多少懸念をしておる次第でございます。
以上の改正事項につきましては、確かに企業にとりまして苦い薬となる面もあるかと考えておりますけれども、しかし今後の我が国の企業経営の
あり方として、株主、従業員、顧客、協力企業、地域社会などの企業の利害関係者の理解を得ていくことは絶対不可欠のものでございまして、その意味からも今回の改正の趣旨を十分に生かした対応をしていかなければならないと考えておる次第でございます。
次に、社債にかかわる改正でございますが、これはまさに私ども経済界が長年にわたって実現を要望してまいった事項でございます。
まず第一に、社債の発行限度額の撤廃でございます。
発行限度規制につきましては、平成二年の商法改正におきまして緩和していただきましたが、なお相当数の企業におきまして社債による資金調達に支障が出ております。社債による資金調達のニーズは、大企業、中小企業を問わずますます高まっております。また、欧米主要国におきましては発行限度規制は採用されておりません。企業法制の国際的整合性からも考えていただきまして、ぜひとも限度規制を完全に撤廃していただきたいとお願いをしたいのでございます。
もちろん、社債の発行につきましては、投資家保護を図ることが最大の課題となっております。この点につきましては、近年、企業の情報開示制度の整備充実が進んでおることに加えまして、この企業の情報開示制度が投資家に、より理解されやすいように、格付の整備定着が急速に進んでおります。経団連では、平成元年、広く市場関係者から成る格付についての懇談会というものを設けまして、格付定着のため具体的方策を提言するなど、みずから先頭に立って格付の普及定着に取り組んでまいっております。
第二は、いわゆる受託制度の見直しでございます。
現行の受託制度では、受託銀行が発行の段階から広範に介入してくるために、社債発行市場の活性化が阻害をされております。産業界ではかねてからその見直しをお願いしてまいりました。今回の改正が実現いたしますと、受託会社は社債の発行段階に介入するのではなくて、欧米におけるように社債管理会社が発行後の社債の管理を行うものとなることを高く評価するものでございます。
また、社債を発行するに当たりまして社債管理会社を置くことが原則として強制をされますことは、投資家の一層の保護につながるものだと確信をしておる次第でございます。
今回、投資家保護の整備が進みますことに伴いまして、今後は、社債を発行できる適格会社の一層の拡大が行われていくと考えておる次第でございます。
冒頭においても申し上げましたように、商法は企業活動にとってまさに基本となる法律でございます。株主・社債権者などの投資家、従業員、顧客、協力企業などいわゆる企業の利害関係者の権利に最大限に配慮していただきまして、健全な企業活動をバックアップする法律でなければならないと考えておる次第でございます。また、日本の経済は急速に国際化が進んでおりまして、商法に関しましても、その国際的整合性につきましてさまざまな問題が出ておる次第でございます。
今後の商法改正に際しましては、これら商法を取り巻く諸事情に最大限の御配慮を賜りまして、必要な法改正はタイムリーに行っていただきたい、切にお願いを申し上げる次第でございます。
残念ながら、今回の改正では先送りとなりましたが、自己株式取得規制の緩和、合併・分割法制の整備は喫緊の問題と考えておる次第でございます。特に、自己株式取得・保有規制の緩和は、経団連にとりまして二十数年来要望してきております歴史的とも言える重要な事実でございます。かねてから私どもが主張してまいりました従業員持株制度の安定かつ円滑な運営のためにはもとより、企業経営の国際化への対応という観点からも、これを早期に実現していただく必要があると私は考えておる次第でございます。
我が国の企業の事業範囲が国際化するに伴いまして、商法などの法制度の国際的な整合性が必要となってきております。こうした整合性の確保は、法制度の違いによる摩擦や誤解を減少させることにもつながります。自己株式取得の規制は、こうした例の一つでございます。諸外国ではさまざまなニーズから自己株式の取得が認められておりますが、前述の理由から、日本におきましても法制度の国際的整合性の観点から見ましてもぜひこれを認めていただきたいとお願いをする次第でございます。
また、従業員福祉のために、我が国において従業員持株制度をもっと充実をさせていきたいというふうに考えております。これらの制度を安定かつ円滑に運営していく上からも、ぜひこの規制の緩和をしていただきたいと存じます。
さらに、企業を経営する者といたしましては、株式につきましては、発行と同じように、その回収も経営者の裁量にゆだねていただくということによりまして、弾力的な財務運営が可能となると考えております。そこの点を御理解いただきたいと存ずる次第でございます。御高承のとおり、株式の回収による一株当たりの利益や資産が増加をいたしまして、結果としては株主への利益還元にもつながると考えておる次第でございます。
もとより、私どもといたしましても、単に規制緩和を要望するだけではなくて、規制緩和に伴う弊害防止のための措置は当然に必要不可欠であると考えておりまして、自己株式の取得にかかわるインサイダー取引や株価操縦の懸念をなくす意味から、証券取引法に係る必要な規定の整備も行っていくべきだと存ずる次第でございます。
今般の商法改正が実現した暁には、自己株式取得・保有規制の緩和につきましても、できる限り早い時期に御一考を願うようにお願いを申し上げたいと存ずる次第であります。
以上、商法改正に関する経済界の一員としての意見を述べさせていただきました。法制度に関する国際的整合性と経済社会の急速な変化に対応しまして、今後も時宜を得た法改正をお願い申し上げたいと存ずる次第でございまして、諸先生方の御理解を賜りまして、今回のこの法案の成立をぜひ早くしていただくようにお願いをしたいと存じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/62
-
063・浜野剛
○浜野委員長 ありがとうございました。
次に、上村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/63
-
064・上村達男
○上村参考人 立教大学の上村と申します。
本日は、このような最も権威ある場所におきまして意見を述べる機会を与えていただきましたことをまことに光栄に存じております。
早速でございますが、このたび政府より提出されました商法の一部を改正する法律案を中心とする二法案につきまして、意見を述べさせていただきます。
まず結論から申しますと、二法案には基本的に賛成でございます。そして、その上で、まず第一に、この法律案を評価する際に前提とすべき視点について大づかみに述べ、第二に、法律案の具体的項目について若干のコメントを述べさせていただきます。
まず第一は、大変大づかみな話でまことに恐縮でございますが、思いますに、現在、我が国企業社会を支える二大法制であります株式会社法と証券取引法の二法が、いずれも重大な理念的な転換期を迎えつつあるという点でございます。
株式会社法につきましては、そもそも会社はだれのものかという根本的な命題が問われております。とりわけアメリカで、行き過ぎた企業買収への反省から、今日では、会社は株主のものという命題を単純に繰り返すのではなく、会社をいかなるシステムで管理運営すべきかをめぐりまして盛んに議論が行われております。こうしたことはアメリカに倣うまでもなく、理論的に申しましても、一方において、合名会社のような無限責任を前提にし規模が小さくマーケットを持たない会社も、あるいは他方において、公開制の株式会社のように株主が有限責任という最大の利益を享受し、規模が大きくマーケットを有する会社も、ともに同じように単純に株主あるいは社員のものということにならないのは明らかと思われます。
有限責任制は債権者の犠牲の上に成り立ちます。規模が大きいことは、多くの従業員、消費者、地域住民とかかわります。マーケットを形成していることは、多くの投資家を利害関係人といたします。そして、何よりも、こうした企業は、国民経済に必要な消費財、生産財、雇用、サービスを提供し、研究開発、技術革新の担い手ともなって国民経済を支えております。そして、こうした企業がいかなるシステムのもとで運営されることによりその支配・管理の正当性が保障されたことになるのか、このことが今や真剣に検討されなければならない状況にあるように思われます。
そして、その際、恐らくいかなる立場に立ったといたしましても、恒常的な公正確保システムとしての監査制度の充実がとりわけ重視されることは間違いないと思われます。しかし、それは単なる株主を中心とした自主的監視機構という位置づけからは離れてまいります。株主は会社所有者としてアプリオリに尊重されるというよりは、数ある利害関係人の中でも最も重要な利害関係人としてこそ大いに尊重されるべきと思われます。
今回の改正案との関係で申しますと、社外監査役の導入、監査役会の法定といった方向はこうした理念の出発点として評価されるものであります。代表訴訟の訴額を確定不能なものと確認する改正も、代表訴訟が住民訴訟に似た高度に公益的な訴訟であることを認めるものにほかなりません。
次に、いま一つの基本法制である証券取引法は、このたびの証券不祥事を機に、従来の証券会社の保護育成、投資家の保護という保護政策のための法から、マーケットの成立条件を整備し、マーケットの効用が国民経済全体に及ぶような見地への大きな理念の転換期にあると思われます。近時のたび重なる証券取引法の改正は、こうした理念の転換を如実に示すものと思われます。
しかしながら、こうした観点に立って証券取引法制をマーケットメカニズムを発揮させるための法制としてとらえていくという方向は、我が国ではようやく緒についたばかりであり、多くの真剣な努力がなされてはいるものの、将来にわたって改善していくべきことは多く、既に改善を見た部分につきましても、それが真に実効性を持って機能するかとなりますと、いまだ未知数というのが実情かと存じます。
株式会社法は、株式・社債の商品性につきまして一定の条件と仕組みを提供いたしますが、問題は、それを支えるマーケットがそれにふさわしい形で対応し得るか、市場メカニズムが信頼に値する段階に到達していると評価し得るかにあると思われます。商法が商品性を提供したワラントに市場の方がついてこれず、バブル経済を支える一方の主役の役割を演じたことは、最近の苦い教訓であったように思われます。そこで、これからは、商法が提供する商品性を証券取引法上の例えばディスクロージャーのあり方と有機的に関連づけて検討する体制をつくっていくことが求められているように思われます。こうしたことは、国会こそがイニシアチブをとり得るもののように思われます。
次の改正課題であります自己株式取得規制の問題も、先ほど盛田参考人もおっしゃっておられましたが、本来は証券取引法上のディスクロージャー、インサイダー取引規制、相場操縦規制の問題と一体のものとして評価されるべき問題と思われます。法律案の社債制度、とりわけ社債管理会社制度は我が国のマーケットの実情を慎重に評価した上で提案されたものと思われますが、さらに金融機関のディスクロージャーの充実が不可欠の条件になっているように思われます。
以上のように、私は転機に立つ企業法制のあり方を今後とも広い見地に立って総合的に検討していくというプロセスを想定し、その上で今回の法律案をそうしたステップの一つとして評価いたしております。
なお、この際申し添えますと、アメリカと比較して我が国の方が厳しい制度を有している例は多々ございます。具体的な検討に入っております自己株式の取得規制の問題、社債の発行限度の問題、株主平等原則の強調にかかわる問題複数議決権株の禁止等、あるいは証券会社の免許制(アメリカは登録制)、持株会社の禁止といった事柄がこうした例でございます。
一般には、こうした制度を過剰規制と考える向きもあるようでございますが、我が国がこうした事前の一網打尽的な大原則による対応を必要といたしましたのは、少なくとも従来は会社法、証券取引法による事後の個別救済法理による司法的な対応に十分な自信を持てなかったことのぎりぎりの表現であります。もとより、個々の制度の妥当性を個別的に検討することは大切でございますが、こうした事情を考えますと、事前の大原則を緩和する場合には事後の個別救済制度の充実を同時に図っていくことが大切かと存じます。
次に、具体的な問題について若干のコメントをさせていただきます。
第一に、代表訴訟制度は、原告が勝訴しましても個人的には何もメリットはなく、それだけに訴えを提起するだけで濫訴と見られがちであり、株主がこれを提起しようというインセンティブは大変弱いものであります。竹内昭夫教授は、日本の代表訴訟を佐倉惣五郎のような義人の出現を期待している制度だともおっしゃっておられます。しかも、大きな金額のより公益性の高い訴訟ほど印紙税のハードルが高く、あたかも公益にとって重大なものであればあるほど訴訟をあきらめさせるように仕組まれているかのようであります。このたびの改正案は、印紙税の壁と訴訟費用の壁を取り払うものでありまして、重要な前進として評価いたしております。
第二に、帳簿書類閲覧請求権の持株要件を百分の三とする提案も妥当なものと考えます。また、六カ月という保有期間制限がないことは、事実の調査・確認という、この権利の手段性、中立性によるものと考えられます。
第三に、監査役の任期を延長して三年とすることも、監査役の独立性と再任の可能性を考えますと妥当と思われます。大会社につきまして監査役の員数を三人以上とすることも、監査役会法定との関係から、また社外監査役制度導入のためにも妥当と考えます。こうした制度の適用を上場会社に限定するようにとの意見もあったかに聞いておりますが、この問題は理論上マーケットの有無の問題ではなく企業規模の大小に係る問題でございますので、大会社ということでよろしいのではないかと思われます。昨年の証券取引法改正で、ディスクロージャーにつきまして外形基準が入り、株主数が五百人以上であれば証券取引法適用会社となり、公認会計士監査も必要とされるようになっているわけでございますので、これとの関係からも上場会社に適用対象を絞ることは妥当でないように思われます。
第四に、社外監査役制度の導入につきましても一歩前進と考えます。ただし、会社の相談役・顧問、親会社の取締役などが社外監査役になり得ることは、一応問題を残しているようにも思われます。この点は、適材を得がたいとの実際界の声との妥協の産物と思われますが、大企業の経営者といたしましては、真に社外監査役にふさわしいと思われる人物の一人や二人は直ちに思い浮かばないのだろうかという感じもしないではありませんが、実情を知らないというおしかりを受けるかもしれません。
第五に、法案の監査役会につきましては現行制度の運用をスムーズに行わせるための協議機関という性格が中心と思われますが、ともかくもこうした機関ができること自体を評価し得るように思われます。これにより、将来的には状況に応じて取締役会の権限の一部を監査役会に委譲させることで監査制度を充実させるという立法上の選択肢が大きく広がったと見ることも可能なように思われます。社外取締役でなく社外監査役を実現させたことは、こうした方向性を示唆するものかもしれません。
第六でございますが、社債の発行限度規制を維持すべきとの主張の論拠は、商法の世界で論議す
る限り必ずしも強力ではないように思われます。しかしながら、かねてよりこうした規制の撤廃は市場機構への信頼と投資家の自己責任原則の確立を待って実施すべきとされておりましたところ、果たして現時点においてそうした条件が十分に整ったと言えるかにつきましては、必ずしも完全に疑念を払拭し切れない実情にあるように思われます。少なくとも、限度規制の撤廃を前向きのものとしてとらえていくためには、我が国企業法制の総合力、地方をトータルに向上させていくという意思を強く持ち続け、制度改善を一つ一つ実現させていくことが必要と思われます。
第七は、社債管理会社の問題でございます。ところで、マーケットで取引される金融商品の性格といたしましては、さまざまな条件が想定されます。例えば単位が均一であること、品質が同質であることなどでございます。そして、品質の確実性も重要な条件の一つでございます。品質の確実性は、担保、政府保証、民間保証、保険、格付といったものによって提供されます。
無担保社債は、確実な担保や保証のない分を財務制限条項、格付、社債管理会社といった制度の組み合わせと市場機能への信頼によっていわば対応していこうという商品でございます。担保付社債の場合はあるはずの担保が確実に存在することを保証するシステムが要求されますが、無担保社債は発行企業の信頼性を生命線とするものでございますので、本来企業情報が完全に開示され、効率的で手厚い市場が存在していれば社債管理会社は不要のはずでございます。しかし、それゆえに社債管理会社は要らないということにはならないように思われます。
我が国では、従来、株式ですら株主還元ルールといった自主ルールの助けをかりて試行錯誤の繰り返しでマーケットを運営してきたのでございますし、まして社債市場につきましては緒についたばかりでございます。我が国の実情から見まして、無担保社債にも社債管理会社を必要とすることは妥当と考えております。
その際、社債管理会社である金融機関の、社債発行会社に対する融資者としての立場と社債管理会社としての立場との間の利益相反が問題となりますが、損害賠償の問題以前に、一般論として金融機関のディスクロージャーの充実が、そして利益相反対策としての特別のディスクロージャーと特別の重点的な監査体制の確立が望まれるように思われます。これには、系列会社を通じて利益の提供を受けることに対する対策も含まれるべきではないかと思われます。
最後に、その他の気がついた点でございますが、社債管理会社の約定権限が社債権者を拘束することの根拠につきましては、かなりすれすれの解釈がなされているように思われます。私に誤解があるのかもしれませんが、社債管理会社が約定上の権限を有する旨の明文を設けない積極的な理由がどこにあるのか、いささか疑問に感じております。約定権限につきましては、社債管理会社の調査権も約定で定めなければならないと考えられているようでございますが、純理的には約定権限のみを有して調査権を有しないということがあり得るかに思われます。約定権限の行使は社債権者に対する義務でもあること、したがって調査権が保障されることを何らかの形で明らかにすることも考えられてよいように思われます。
社債管理会社の適用除外につきましては、証券取引法上の私募概念と法律案の概念との間に若干のずれがあり、規制が非常に複雑化していること、少人数私募につきまして、証券取引法のように六カ月に五十人というような通算規定がございませんために、脱法を防げるかといった問題も残されているように思われます。いずれにいたしましても、ここでも商法と証券取引法との関係を総合的にとらえることの必要性を認めることができるように思われます。
以上で私の意見を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/64
-
065・浜野剛
○浜野委員長 ありがとうございました。
次に、家近参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/65
-
066・家近正直
○家近参考人 家近でございます。私は、この法案に賛成の立場で御意見を申し上げたいと思います。
私、ことしで弁護士経験三十年余りでございます。その間終始会社法の問題につきまして興味と関心を持って過ごしてまいっております。
御承知のように、会社法の改正は、長年にわたって継続して行われ、かつ数次にわたる改正が実現しておるわけでございます。しかし、子細に検討いたしますと、ややもすれば部分的な改正になっておるわけでございまして、悪く言えば場当たり的な改正ということになろうかと思います。
今回の法律案の提案理由を拝見いたしますと、「株主による会社の業務執行に対する監督是正機能をより強固にするとともに、株式会社の監査役制度の実効性を高めるために必要な措置を講ずる」、こういうことになっておりますが、果たして今回の改正でそのことが実現しておるのかどうか、これで事足りると言えるのかどうか、こういうふうな観点で考えますと、私自身もその作業の一部に関与した者ではございますけれども、若干物足りないというふうな感じを持つわけでございます。
個々的な問題について若干意見を申し上げますが、監査役制度の改正は、今回の改正点について申し上げますと、個々の監査役の権限強化というよりも、むしろ監査の環境整備という点に留意されているわけでございますが、今回の改正で一挙に監査役による監査が充実するとは思えません。しかしながら、いずれの改正点も監査の充実を図るという意味では一歩前進でございますので、私も賛成をしておるわけでございます。
任期の伸長ということが問題になっておりますが、このことは言うまでもなく監査役の地位の安定化ということでございまして、この問題はより根本的には、現在の社長を中心にした役員の人事権をどう見直すか、こういう問題でございます。つまり、監査役自身が監査役の人事権にどこまで介入するか、こういう問題につながっておるわけでございます。実は、今回の改正はこの点にまでは踏み込めなかったわけでございますが、これは問題意識がなかったというのではなくて、まだ日本の現状においては現実の問題としてそこまで議論する土壌がなかった、こういうふうに私は理解いたしております。
社外監査役の問題でございますが、社外の役員を導入するということを我が商法で明記するということは、ある意味では画期的な改正ではないかというふうに評価いたします。ただ、若干物足りないと思われます点は、資格要件として過去五年間、こういう限定がついておるということと、それから親会社の役員、従業員等が社外扱いになる、この点でございます。今回の多くのノンバンクにおける不祥事を見たらよくおわかりのように、親会社の指揮命令のもとに子会社が動いておる、こういう実態を考えますと、親会社の役員、従業員が社外の監査役の枠に入るというのは、いささかいかがかというふうに考えておるわけでございます。改正後は、専ら運用面と申しますか人選の問題でございまして、社外監査役が天下り先とかその他の人事政策に利用されないように、あるいはグループ企業間の結束とか締めつけの手段に陥らないように注意をする必要があろうかと思います。
増員につきましては、監査機能強化のために特に反対する理由はございませんが、ただ小規模会社の負担増になりはしないか。今回の改正は大会社が対象でございますが、大会社の中にも必ずしも隆々たる規模の大きい会社ばかりでもございませんので、若干そのあたりが懸念されるわけでございます。
それから、監査役会も、現在の実態を追認し、監査の効率化、監査の機能強化という面で歓迎すべき改正でございます。ただ、これについても一つの懸念は企業が監査役を合議体としてとらえることはないか、つまり組織の中に事実上組み込んでしまう、こういう懸念はないかということが考えられるわけでございます。
以上、監査役の改正について申しますと、御承知のように昭和四十九年、五十六年と、不祥事の発生を契機にいたしまして改正が行われたわけでございますが、今回また改正をするということは過去の改正が十分でなかったということを裏づける結果になったかと思います。ただ、こういった点についての問題をどこまで法律で強制すべきか、例えば定数の問題とか任期の問題につきまして、従来のように監査役は二人以上、任期は二年、あと必要に応じて随時会社が自主的に定めていけばいいのではないか、こういう有力な意見もございました。このあたりが、会社の自主性にどこまで任すべきか、法律でどの程度強制すべきか、この問題と絡みまして非常に今難しいところでございます。そういう意味では、今回法律でもってこのような改正をいわば強制しなければならないということは、我が国の企業にとってはある意味では大変残念なことではなかったか、かように思うわけでございます。
以上、監査役の問題については法律の改正以上に今後運用によるべき点が多々ございます。今申しましたように、人選をどうするか、あるいは監査の機能を強化するために現実に補助者、予算が会社においてどのように確保されるか、こういった問題を抜きにしてただ帳面づらといいますか表面を繕うだけで監査の機能が充実するということはあり得ないわけでございまして、そのあたり、将来に大きな問題を持ち越しておるというふうに評価いたします。
代表訴訟に関しまして申し上げます。
今回の代表訴訟に関する改正案は、会社の経営者に異常な関心を与えております。特に新聞雑誌等においては、既に興味本位といいますかかなりセンセーショナルな取り上げ方をいたしております。
御承知のように、代表訴訟制度そのものは昭和二十五年から存在しておるわけでございますが、今回の訴訟費用の改正という問題が実務界に与えておる影響は想像以上でございます。ただ、代表訴訟の問題と会計帳簿の閲覧請求の問題は御承知のように一部分の手直してございまして、今回は制度全体についての突っ込んだ見直しはなされておりません。そういう意味からいいますと、代表訴訟につきましても、今回の改正で提訴は非常に容易化されるわけでございますが、やはり濫訴の危険についても一抹の不安が残ります。よく言われることですが、アメリカでは濫訴が問題になっておる、日本では濫訴どころか利用すらされておらない、このあたりがこの改正の結果どのような形で動いていくのかということは、私ども非常に関心があるところでございます。
ただ、我が国の経営者の方々は、本日御出席の参考人を除きまして一般的には法的に無防備でございます。大多数はいわゆるサラリーマン重役でございます。しかも、我が国におきましては、経営者の意思決定につきましていわゆる経営判断の原則、ビジネス・ジャッジメント・ルールというものがまだ法的には確立いたしておりません。そのために場合によっては経営者に過度の負担を与えて経営の活性化を阻害する、こういう危険もあるわけでございます。
私どもは、先ほど申しましたように今後の推移を慎重に見守りたいと思いますし、同時に万一濫訴の危険が出ました場合には、迅速的確な対応が必要であろうかと思います。そして、それが非常に極端な場合には、改めて役員の責任制限立法を含めて新たな展開を考慮すべきではないかというふうに考えます。濫訴を防止するということは代表訴訟の道を狭めるのではないかというふうな批判もございますが、真に適正な代表訴訟制度を定着させるためには、むしろそのあたりの配慮が大変重要なことになってくるのではないかと考えておるわけでございます。
その他、帳簿閲覧請求権、社債法の問題につきましても基本的に賛成でございまして、時間の関係もございますので、詳細の意見は省略させていただきます。
最後に、ある新聞が、今回の改正は会社にあめとむちを与えるものである、このような批評をしておりました。あめは言うまでもなく社債発行限度枠の撤廃でございます。むちは経営機構に対するチェック機能の強化でございます。
今回、経営機構に対するチェック機能の強化といたしまして、会社の内部的な組織の問題として監査役制度、株主権の強化の一環として、代表訴訟、帳簿閲覧請求を改正するわけでございまして、先ほども申しましたように私は改正には賛成ではございますけれども、これだけでチェック機能の是正が事足りるというふうには考えておりません。殊に、今回の改正の直接的な動機と言われております会社不祥事の再発をこれで防止し得るとは到底思われません。不祥事の発生を肯定する経営者というのは、特別の例外を除いては存在しないわけでございます。しかも、既に我が国においてかなりの程度のチェック機能は整備されているわけでございます。それでも不祥事が起こっておるわけでございます。
これはより根本的には法制度の問題ではなくて、経営者の人の問題ということになるのではないかと思います。すべてを法で解決するということは不可能なわけでございますし、経営者はやはり経営者としての自負心と努力を持って経営に当たっていただかないと、いずれはまた法規制の強化でもって自分自身が拘束される、こういうめぐり合わせになるのではないかと思います。
もちろん、法制度にも問題はあるわけでございます。御承知のように、たび重なる当院の附帯決議にもかかわらず、残念ながら現在、商法の抜本的改正というものがなかなか完結しないわけでございます。
商法の改正すべき問題点は多岐に及んでおりますけれども、大小会社の区分立法に関して申しますと、これは早急に改正を実現していただかなければならない点であろうかと思います。これほど広範囲な株式会社を一つの法制度で規制するのは到底不可能でございまして、幾ら監査特例法を設けておるとはいえ、それだけでは不十分でございます。
一方、大会社につきましては、合併・分割等早急に解決すべき問題もございますけれども、それ以上に今回の監査制度の問題等につきましては、ここでより根本的に御検討いただく必要がございます。取締役会と監査役、会計監査人の相互の関係、あるいは株主権の強化という面につきましては、株主総会の現状がこれでいいのか。ことしも六月二十九日に全国の約七、八割の会社が一斉に株主総会を開催いたします。このようなことでいいのかどうか。こういったグローバルな観点から、あるいは現在の株主構成のあり方、これも大いに御検討いただく必要があります。そういったものはじっくりとひとつ腰を落ちつけて、皆さん方で十分に論議を闘わせていただきたいと思います。
同時に、先ほど今回の改正が監査の環境整備、こういう目的であると申しましたが、それになぞらえて申し上げますならば、我が国の立法の環境整備についてもさらに一段の御配慮をいただければ大変幸いと存ずる次第でございます。
以上で私の意見といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/66
-
067・浜野剛
○浜野委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/67
-
068・浜野剛
○浜野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/68
-
069・太田誠一
○太田委員 参考人の皆様には、本当にそれぞれお忙しい中をありがとうございました。大変多くのことを御示唆いただいたわけでございます。
まず、長岡理事長にお伺いをいたしますけれども、今最後に家近先生から特に強調されました、法律でいろいろなことを縛るというのはこの自由主義社会では本当は望ましくないことだと私も思っております。
そこで、それぞれの経営者あるいは経済界、あるいは特に株式会社でありますから、証券市場の
関係者がみずからの判断で、一方で公の利益を頭に置き、またマーケットの公正さというものが確保されることによってきちんと健全に発展をしていくということとか、市場の関係者の努力や創意工夫で秩序ができていくということが一番望ましいことだと私は思いますし、例えばロンドンなんかに行きますと、もともと法律で制度ができているのではなくて、何か約束事の積み重ねがルールになっておるというふうな感じもいたします。
諸外国の制度については、その成り立ちはわからないのでありますが、この監査役の問題について申しますと、どういうことで今回の監査役の権限の強化ということが行われたかといいますと、もちろん法務省の方としては法務省としての問題意識があったと思いますけれども、私は、実はきょう参考人として御出席をいただきました盛田会長の、盛田副議長のお話を承って大いに触発されるところがあったわけでございます。
それは、盛田会長はアメリカのパン・アメリカン航空の社外重役をやっておられたわけでございます。間違っていたら御訂正いただきたいと思いますけれども、そのときに盛田会長を指名されたパン・アメリカンの会長は、数年後に盛田会長自身が社外重役のお一人として、この人は業績不振の責任をとってやめるべきだという問題提起をされて、首になっちゃったということをお聞きいたしましてびっくりいたしました。大変ショックを受けました。それはまさに社外重役、社外取締役としての社会的な責任を果たしたわけでありますし、日本流に言えば、任命した人の首を切るということはあり得ないことだと思うのですけれども、そこがまさに国際人たる盛田会長の面目躍如というところだろうと思うのです。
このことに大変ショックを受けて、日本の中にも、そういう業務執行権を持っている方々は世界のどの国にも負けないぐらいの大組織を既に構え、その中で相当の権力を持っておられるわけでありますから、その権力者が恐れを抱かなければいけない存在をつくる必要がこの国でもあるのではないかということをかねがね思っておりました。
その中で、株主主権という考え方は、先ほど上村先生もやや時代おくれだというふうにおっしゃいましたけれども、株主主権ということよりも、今、何万人、何十万人という株主をどこの大企業も持っているわけでありますから、一人一人の顔は見えなくて、株主の意向といったって何かよくわからないはずだ。そうであれば、それを不特定多数の市民とか国民というふうにとらえると、不特定多数の国民というものの考えを代弁する存在としてだれかそこに、企業社会の健全性というか、世間の常識というものがその企業社会の中で通用する存在が必要なのではないか。それが社外取締役であったり、あるいはここで言う社外監査役のようなものではないかと思っているわけでございます。
そういたしますと、それは株主を大切にするということにもなり、また我が国の経済社会の中のよき市民、国民で企業があり得るということのためにこのような制度を強化しておく必要があるのではないかということで、法務省に対しても私どもは問題を提起してきたわけであります。
そうであれば、アメリカの法制と日本の法制がどこで違うのかというと、当初私は、アメリカは法律でもって社外の取締役を義務づけておるというふうに思っておりましたところ、それは法律ではないんだということがわかりましたので、今度の法改正で五年以上離れておればいいというような、これはやや甘いと私は思っておりましたけれども、その部分を、ではやむを得ないということで、やや弱いと思ったところをそのまま認めたわけでございますが、本来ならばこれは純粋に社外でなければいけないと思っております。そうしなければいろいろなことでほかにいいかげんなことが起こり得るというふうに思っておりますので、純粋に社外でなければいけないと思っております。
しかし、これは法律で規制すべきことではないということもわかるわけでありまして、そうであればアメリカの制度に倣って、アメリカのニューヨーク証券取引所の上場基準で上場企業は社外取締役の制度を設けていなければならないということになっておるというふうに聞いておりますので、ぜひ、そういうことが可能であれば、ニューヨーク証券取引所に対応する東京証券取引所においても上場基準の中にそのようなものを、そのような精神を体した条項というものを入れていただくことが一番この際穏当なのではないかというふうに考えておりますけれども、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/69
-
070・長岡實
○長岡参考人 お答え申し上げます。
基本的には、太田先生がおっしゃいましたように、法律でそう細かいところまで規制をしないで、社会規範的なものが自然にでき上がってきて、それによって世の中が動いていくというのが一番望ましい姿であろうとは思います。
ただ、アメリカにおきまして、ニューヨーク証券取引所の上場基準の中に今先生の御指摘のような基準が入りましたのは、これも先生おっしゃいましたけれども、アメリカには日本の商法に当たるようないわば商事基本法的なものがない。連邦制でございますから各州に類似法はございますけれども、それがみんなばらばらである。しかし、ニューヨーク証券取引所に上場される会社というのはやはりアメリカを代表する大企業でございまして、その大企業には一定の条件みたいなものを満たしてほしい、市場を預かるニューヨーク証券取引所の立場としてそういう必要性が出てきまして、それによって上場基準の中に今御指摘になったような規定が入ったというふうに私どもは理解いたしております。
それに比べまして我が国の場合には、精神としてはアメリカの精神はよくわかるわけでございますけれども、日本の場合には、今回御審議をいただいております商法という商事に関する基本法がございます。しかも、その中に取締役であるとか監査役であるといったような会社の機関についても基本的な規定が入っておるわけでございますから、私どもといたしましてその規定を遵守してほしいという意味で、例えば先ほど冒頭の意見陳述の際に申し上げましたように、今回の商法改正法が成立した場合には、私どもは直ちに上場会社に対して、その改正商法の意を体してしっかりそのようにしてほしいということを要請するつもりでございますし、あらゆる努力をそういう点で傾けるつもりではございますけれども、ただ商法にそういうふうに規定にあるものあるいはそれ以上のものを上場基準の中に入れるというのは、ただいま最初に申し上げましたように、アメリカと日本との法律制度の差その他から申しまして、私は無理ではないかなというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/70
-
071・太田誠一
○太田委員 参考人としておいでいただいたのに余りいろいろ求めることをいたすのは適切でないと思いますが、確かにおっしゃるとおり我が国は法律で決めている、つまりトップダウンといいますか、政府の方が自然発生的にできるべき規範、ルールというものを先取りしてどんどんやっていくということは事実の問題としてあるのですけれども、むしろこれから、それこそ証券取引所で実際株を上場しておられる企業の経営者の方々が、本来やはり自分たちはそうでなければならないのではないかというふうに考えて自然に合意ができるとすれば、それが一番望ましいのではないか。
そして、そういう空気を醸成したり、あるいはその空気ができてきたとすれば、最後にまとめるという役目を証券取引所が、東京証券取引所もやはりアメリカのニューヨーク証券取引所と同じように日本を代表する大企業が上場しておられるわけでありますし、また役所とは独立した判断をされるところでもあろうかと思いますので、それが常識となるような雰囲気を醸成していただいて、しかもそうなってきたらそのことをお互い約束として取り交わす、それによって東京証券取引所の信頼性というものをもっと広く世界に向かってアピールできるというふうなことがあるのではない
か、そういうふうな気持ちで申し上げておるわけでございます。
ということでありますが、そこで、先ほども盛田副議長のお話に言及させていただいて大変失礼をいたしましたが、盛田参考人のおっしゃるように、今度の監査役に関する権限の強化というのは、例のおととしの証券・金融不祥事というものが一つの大きなインパクトになってこの法改正が出てきたわけでありますけれども、経団連ですか、行動憲章というのはよくわかるのでございますが、やはりそれは三人の監査役のうちの全部を社外の人にするということを求めているとすれば、それはやはり私は求め過ぎだと思うのです。
三人のうちの一人だから、これはそれこそ前向きにとらえていただいて、うちの会社はこんなに社会的に信頼されるような人を監査役にしているんだ、自分の企業の人ではなくて、関係のなかった人でこういう人を据えておるんだということで企業のイメージを上げるというか、あるいは公衆に向かってみずからの企業の生き方というものを示すという積極的なとらえ方をぜひしていただきたいというふうに思うのでございます。
それは恐らく、パン・アメリカンの会長が盛田副議長に社外重役になっていただきたいということでお願いをしたときには、やはりアメリカの国内でのソニーというブランドと、それをつくり出した盛田会長というその人についての、アメリカ国民とかアメリカの株主に対するアピールをねらったと思いますね。そういうことをやはり日本の企業は、同じようなことをしなければならないのではないかというふうに思うのであります。
そうして、これも先ほど質問したことでございますけれども、監査役の人材の供給がないという議論がよく法制審議会の中で出ておるというふうにお聞きをしたのでありますが、これは全く私はおかしな話だと思っておりまして、というのは、今、我が国政府の官僚組織からリタイアされた方々が大変たくさん民間の企業に活躍の場を求めておられまして、その多くの方々は、執行権のある経営者の一角に入っておられます。
ところが、私は、先ほど申しましたように、株主というものは不特定多数にもなってしまって、いわゆるパブリックインタレストというものを頭に置く社外重役というものを考えておりますので、そうであれば、そのパブリックインタレストということについてよく考え、そしてそのような考え方に習熟しているのは、現にパブリックセクターで経験を積んでこられた方々こそが、むしろそういう方々は執行権のある経営陣に入るよりも監査役として仕事をされる方がよほどふさわしいのではないかと前々から思っております。
去年の証取法の改正のときにもたびたびそのような考え方を申し上げた経緯があるわけでありますが、そうであればそのような人材は山ほどいる。しかも、その中で著名な方もたくさんおられますから、我が社の監査役はそれこそ大蔵省のこれこれのすぐれた経験を持つ行政官の出身であるとか、あるいは、それこそ法務省の何々局長をされたとかいうことはむしろ誇るべき、自慢にすべきことになるのではないかと思うのでございます。そして、そういうお考えを、盛田会長はそもそもそういうふうな御経験をしておられるからおわかりになるんでしょうけれども、経済団体連合会のような大企業のトップが集まっておられるところで、十分にそのことを認識していただく御努力をぜひお願いしたいと思うのでございます。日本の企業社会というものの体質を改善していくということについて、ぜひとも前向きのお考えをお聞かせいただければ幸いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/71
-
072・盛田昭夫
○盛田参考人 ただいまの太田先生の御意見を伺いまして、今の監査役の人選につきましては、これは大変示唆されるところが多うございますので、経団連の中でも十分その御趣旨は普及をしていきたいと思います。
先ほどパン・アメリカンのお話が出ましたので、お許しをいただきましてちょっとそのお話をさせていただきたいのでございますが、パン・アメリカンでは、私がアポイントメントした会長を解雇できましたのは、我々社外重役が非常に数がありまして、結局数で十分それができたわけでございます。その意味では、ニューヨーク取引所に私どもが上場いたしていましたときも、最低二名は社外重役がなければいけないということで二名の社外重役をつくったのでございますけれども、結局民主主義は数でございますし、会社の議決も数でございます。そういうことからいきますと、社外重役が十分意見を通せるには、どうしても現業重役より余計数がなければいけません。
ところが、現実の問題を申し上げますと、社外重役をたくさんつくるということは不可能でございます。というのは、日本の慣習といたしましては、取締役というのは従業員のエスカレーターの、階段の上の方の上りでございまして、お役所からお呼び出しがあったときも、常務以上とか、それから支店長も取締役でなければいけないとか、副社長が出てこいということの御要請がございますから、どうしてもたくさん取締役を持っていなきゃならないのが会社の現状でございます。その数を超した社外重役を持つということは、実際は不可能でございます。
それで、ちょっとこれは本題から振れるかもしれませんけれども、私どもが申し上げておりますのは、持株会社を何とかして日本で許していただきたい。と申しますのは、外国では持株会社がございまして、持株会社というのは全く下の実際の動いている会社を監視する役目に使われておりまして、そうなりますと持株会社は社長と副社長とあとは全部社外重役でもやれるのでございます。
社外重役はその場合、特にアメリカの場合でございますが、各会社のトップで十分会社の経営経験がある人たちでリタイアの人たち、または役所で経験があってリタイアした人たちが、割に安い給料で、本当に安い給料で社外重役になっている。したがいまして、その人たちは、その会社の社長に顧慮することなく、会社に対して正しいと思うことが何でも言えるような環境ができております。でございますから、自分は会長に怒られても、その人にかわってもらわなきゃならないという意見が十分言えるのでございますけれども、監査役でも結局その会社からの給料に生活を頼っておるような現状でございますと、これはなかなか、これを直すべきだとか、またトップをかえるべきだというようなところまで徹底的に意見が申し述べられませんので、何か新しいシステムで、会社に頼らなくても、しかも見識経験の豊富な人たちが会社の活動を監視できるようにするには、やはり普通の会社の上に持株会社をつくるということが外国では行われておりますので、そういうことができますようなことは、何か、企業集団をつくるようなことのために持株会社をつくりたいというふうに考えられることが間々ございますけれども、私個人としては、実際の会社の役員を正しく監視する、そうしてその人たちを正しく動かすというために、監査機構というものの一つとしても持株会社は有効ではないかと経験から考えております。
余分なことを申し上げまして、申しわけありませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/72
-
073・太田誠一
○太田委員 今の盛田参考人のおっしゃられた持株会社の点につきましては、よくもう御存じのとおりでありますが、日本の独占禁止法の中で特異なものでありながら、それが独占禁止政策の基本であるように思われておるというおかしなことがあるわけでございます。それは広く言論界やあるいはその他の方面にある誤解を解いていかなければならないと思いますし、その環境は熟しつつあると思うのでございます。これは自社株のことについても同じでありまして、物事の考え方を切りかえていく大切なチャンスではないかと思っております。ただしかし、大変なリスクとエネルギーを投入しなければ凝り固まった考え方を変えることはできないわけでございますので、私どもも今後努力をしてまいりたいと思います。
上村参考人にお尋ねをいたしますが、免許制のような、いわゆる保護育成的な従来の物事の考え方というものを、事後の手当てなしに、事後の個
別救済的な手当てをしないでそこを外すのは問題だというふうな御発言がございました。これは今度の商法改正のことなのか証取法のことなのかちょっとわかりませんけれども、そこが今の一連の法改正の作業についての物事の哲学として一番大切なポイントだと私は思っております。
実は去年、この証取法の改正あるいは証券監視委員会の導入といった事柄につきましても大蔵委員会の方で深く関与をしておりましたので、証取法の考え方の中に証券会社の自主性を尊重するという文言を入れるのに大変激しい議論をした覚えがあるわけでございます。だから、その個別の手当てもさることながら、その考え方で、さまざまな業法とか、さまざまな商法のような基本法というものを変えていくということがやはり必要なのではないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/73
-
074・上村達男
○上村参考人 先ほど私が、保護育成型の行政からルール型とか、そういうことを証券取引法との関係で申しましたけれども、今回の法律案のことだけではございませんで、私が日ごろ感じておることですが、日本の戦後というものを、経済発展とか日本的な経営とか日本的な経済風土とか、そういう形で評価するという論調は山ほどございますけれども、それを制度とかルールという角度から検証していくといいましょうか、そういうことは非常に少なかったのではないかなという感じがいたしております。
これからは違うと思いますけれども、従来、制度を緩和するときにはアメリカ並み、つまりアメリカでもこうなっている、国際的調和ということを盛んに申しますけれども、例えば日本版SECをつくれとか、証券取引法のインサイダー取引とか、相場操縦とかという話になってまいりますと、日本的な経済風土とか日本人論とか日本的経営風土とかということは、ともすると使い分けてきたという感じはしないわけでもないわけでございます。建設談合なんかの話でもそうですし、証券取引法もそうですし、やはり従来日本では損害賠償とか差止とか民事制裁だとか、そういう形で事後にチェックをするということが必ずしも十分に機能しなかったためにやはり事前の大原則で対応せざるを得ない、そういうことが多かったように思います。ただ、これからは少なくともそれを両方調和のとれた形でバランスをとっていかないと、緩和してみたら後はかかとで、土俵際でもう出てしまうというような、我々法律家なものですから、そういう心配をするわけでございます。
それから、規制と申しましても、特に証券取引法とか金融の世界はそうだと思いますが、同じルールと申しましても、例えば百メートル競走で申しますと、石ころを取り除いたり、砂をならしたり、穴ぼこを埋めたり、それから白線をきちんと引いたり、それからスタートを公平にするようにフライングがないように監視をしたり、これはこういうことがきちんと行われれば行われるほど自己責任、つまり自分の思ったとおりの全力を尽くせるということであります。
走り出してから後ろから押してやるとか、お前は速すぎるからもっとゆっくり走れというような規制と走る前の規制とはやはり違うわけでございますので、それを余り区別せずに何となく規制は少ない方がいいのではないかとかということになりますけれども、これからは、そういう一定のルールがあるから初めて自分の全力を発揮できる、自己責任というものが問題になり得る、そういうものをやはりきちっと区別して議論していかなきゃいけないのではないかな。そういう意味では、先生おっしゃいましたように、少なくした方がいい規制と十分に備えておかなきゃいけない規制というのはきちっと区別していかなきゃいけないのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/74
-
075・太田誠一
○太田委員 ありがとうございました。いろいろなことを上村参考人からお聞きをいたしましたので、ちょっと全部消化はできなくて、また後で勉強させていただきたいと思います。
家近参考人にお聞きをいたします。
監査役を先生はなさったことがあるかどうか私はわかりませんが、現実に監査役という仕事をしておられる方々の、例えば弁護士であって監査役をしておられる方々、大勢おられると思いますけれども、そういった同僚の方々のいろいろなお話も聞かれると思いますのでお伺いをするのですけれども、現実に社外の方で、例えば弁護士さんのような方が監査役を務めてその仕事を全うする際に、もちろん法律はこういうふうになっておりますけれども、さらにここで留意しておかなければいけない点というか、つまり監査役としての発言をより強くするためにこういうことがさらになければならないということが、今お話を承ったほかにもっと何かございましたならばお教えをいただきたいのであります。現実に監査役をしておられる方々のお気持ちというものをもし代弁していただくとすれば、法律とかなんとかということではなくて、何かありますれば御示唆をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/75
-
076・家近正直
○家近参考人 今の御質問は大変難しい御質問でございまして、結局は、先ほどもちょっと申し上げましたが、人間の問題ではないかという気がいたします。例えば弁護士が監査役をいたしましても、どれだけの情報が会社から入手できるかということが一番問題でございまして、極端な話、社長以下役員全員が寄ってたかつて弁護士である監査役に隠すということになりますと、不正な事実の発見は一〇〇%不可能ではないかというふうに思います。
非常に皮肉なことですが、代表訴訟がどういう経緯で提起されるかという中で、先ほどもちょっとございましたように、いわば一種の社会正義に基づいて行われるというケースと、最近若干出ておりますが、いわゆる造反といいますか社内告発の形で出ておるケースがございますけれども、代表訴訟にしてしかりでございまして、監査役の監査が全うできるためにはいかに情報がフランクに監査役に入るか、特に社外監査役の場合これが必要でございまして、少なくとも同僚である他の常勤監査役から情報が的確に入る、これが最低限度の要件ではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/76
-
077・太田誠一
○太田委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/77
-
078・浜野剛
○浜野委員長 小森龍邦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/78
-
079・小森龍邦
○小森委員 本日は、参考人の先生方、大変御苦労さまでございました。有益な御意見をお聞かせいただきまして、本当に感謝をいたしております。
順次私の方から若干の事柄についてお尋ねをしてみたいと思いますが、まず、東京証券取引所理事長の長岡先生にお尋ねをいたします。
このたびの社債発行の限度規制を取り払うについて社債管理会社というものを法律的に設置する、それはますますその機能を純化するというようなお話でございました。確かにそういう面もそのとおりだ、私は肯定をさせていただくのですが、この管理会社なるものがどうしても社債を発行する株式会社とそれからいわゆる社債権者と双方と関係をする、双方と接触しなきやその機能を果たさないわけでありますので、そこで双方の利益が一致するという場合は非常にスムーズにいくと思いますけれども、全く利害が一致してばかりはいないのではないか。
余りそういうことはないと思いますけれども、例えば今回の証券不祥事とかあるいは銀行のバブル経済に基づく社会矛盾を引き出した状況などを考えると、必ずしもうまくいかないのではないかという心配も持つわけです。しかし、これはそれぞれの倫理の問題だと言えばそれまでではありますけれども、その点についてどのようなお考えを持っておられるか、ちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/79
-
080・長岡實
○長岡参考人 お答え申し上げます。
今回の改正案で従来の受託会社が、発行会社より社債権者の保護を一層強固にするという観点から、社債管理会社として位置づけられることになったというふうに私は理解をいたしております。したがいまして、今の御質問につきましても、やはり管理会社は何といいましても社債権者に対する公平誠実義務あるいは善管注意義務といったよ
うなものが課せられる、しかもそういう義務に違反した場合の損害賠償責任も課せられるというような内容と承っております。
こういったようなことで、今回明らかに性格づけられました社債管理会社が双方の利害の対立その他のような、実際にはいろいろな問題がございましょうけれども、あくまで社債権者の保護に徹するということであるべきであり、それによってこの社債の発行につきまして、あるいは制限を撤廃するその他のこともございましても、社債権者が保護されるのではないかというふうに私は理解をいたしております。そういうふうな管理会社になっていかなければいけないのだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/80
-
081・小森龍邦
○小森委員 それでは、続きまして経済団体連合会評議員会副議長の盛田先生にお尋ねをいたします。
今回の商法改正は、昨日までの本委員会における審議を通じまして、アメリカとの構造協議の関係だけでこんな事態になったのではなくて、やはり日本の政治、行政の必然的に到達する方向としてここまで到達したという意味の答弁も行政当局からございました。しかし、構造協議が指摘しておるということも事実でございます。
そこで、盛田先生は、この日米の経済摩擦の問題と、それをいかに調整するか、いわばその際に日本側の持つ問題を解決していかなきゃならぬということを活発に活字で発表されておるように伺っておるわけであります。今回の商法改正が、株式会社の経理を透明にし、しかも株主あるいは国民全体の公共性ということを考えて物事を合理的にしていくという営みであるわけでございますから、そういう方向を見据えつつ、盛田先生は、国際摩擦を解消し、一国会理的に我が国の経済を発展させるためには今の日本経済についてどういうポイントを問題とされておられますか、ひとつこの際にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/81
-
082・盛田昭夫
○盛田参考人 お答えを申し上げます。
今回の商法改正がアメリカとのSIIによるものだけではないというふうに私はもちろん考えております。私は最初にも申し上げましたように、経済界といたしましては長い間要望をしておりました改正と、それから最近のいろいろな不祥事を見て投資家保護という観点から新しい改正がなされたというふうに考えておりますので、私どもはこれに全面的に賛成でございます。
一方におきまして、我が国はますます経済が国際化してまいりまして、私どもの日本だけが世界各国に対して黒字をつくっておるというような現状になっておりまして、それが世界各国との、特に米欧とのいわゆる摩擦の大きな主因となっておるわけでございます。私どもは主たる輸出の仕事をしておりますので、一方におきましては何か非常に日本のために悪いことをしているように言われることもございますけれども、私は、日本のように資源のない国が生きていくためには、どうしてもエネルギー、食糧、その他必要な資源を入れるためにはそれを買う外貨を日本は稼がなければならない、そのためにはどうしても輸出は続けていかなければならない宿命にあると考えております。
そうなりますと、ずっと輸出をしていきますと、輸出相手先の国はいわばお客様でございます。そのお客様が皆不満を持つような状況というのは永久に続けていけるはずがないというふうに考えておりますので、お客様を満足させながら、そして私たちも商売を続けていき、日本全体が商売を続けていくようにしなければならないというふうに考えておりまして、そのためには私たちがいい製品を供給することも第一でございますけれども、また第二には、やはり相手の国が日本の中で商売をするのを楽にしてあげるということが非常に大事だと思うわけでございます。
そのために、日本の許認可をうんと減らして、日本の国がいわゆる外国から近寄りやすい国になるということが一つでございますし、それと同時に、日本へも投資がしやすい、日本でもいろいろな意味でビジネス、商業活動、経済活動ができやすいようにしてやるということが日本にとって非常に大事なことでございますので、その場合には、先ほど国際的整合性と申し上げましたけれども、これは日本の方式を全部米英に合わせるということではございません。
国際通念といたしまして当たり前のことは日本でも当たり前だというふうなところまで我々の経済システムを整合させていかなければならないというふうに私どもは考えておりまして、そういう国であるためにはまだまだ私ども経済界もすることがございますし、また、法律、税法その他におきましてもまだまだ改正をすべき点があるのではないかと日ごろ考えておりまして、今の先生の御質問につきましては、やはり日本も国際的な標準から見て同じような気持ちでビジネスができる国だという概念を相手国に与えることが、日本にとって非常に大事なことではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/82
-
083・小森龍邦
○小森委員 大変ありがとうございました。
それでは続きまして、立教大学法学部の上村先生に二、三点お尋ねをしてみたいと思います。
その一つは、先ほどの盛田先生の話とも多少関係すると思いますが、時代の変化、発展とともに私企業たる株式会社というものが、これは全く私企業であり個人のものであるといった概念から、次第にその株式会社の持つ社会的責任とか公共性とかというものが膨らんできておると思いますが、今回の商法改正もそういう公共性の膨らみということを反映して、徐々にではあるけれどもこういうことに着手しておる、こんな気持ちで私どもも審議に参加をしておるわけでありますが、現時点における株式会社の公共性とは何か、こんなことについてひとつ御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/83
-
084・上村達男
○上村参考人 お答えいたします。
先ほど私申しましたように、私は必ずしも現在の商法学の通説を体現してはおりませんので全く私の個人的な考えですが、特に公開制の株式会社が持っている公共性というのは、私は三つの点で関係があると思います。
一つは、有限責任であります。
有限責任というのは、これは誤解を招く表現かもしれませんが、いろいろな制度的な手当てはしなきゃいけませんけれども、究極的には人に迷惑をかける制度であります。そういう制度がなぜこんなに普及しているかと申しますと、それは、主婦が百万円出資をしたのに無限責任を負うというのでは資金が集中できないという、そういうこともありますが、やはり先ほど申しましたように、企業が生産財、消費財、雇用といった要するに国民経済を支えている、そういう公益を果たす。そのかわり、若干問題が有限責任という制度の中にはありますけれども、その弊害は最小限にしようとする、そういう制度的な対応が用意されている、これが第一点だと思います。
もう一つは、規模が大きいということが問題だろうと思います。規模が大きいということによりまして、従業員とか消費者とか地域住民とか、さまざまな人々と利害関係を持つ、そして国民経済をやはり支えている、この点が第二点だと思います。
従来余り議論されてこなかったのが第三点でございまして、マーケットを持っているという点がやはり大きな点だろうと思います。マーケットを持っていることによって多くの投資家とかかわりを持つ、それから公正な価格形成が確保されることによって、国民経済に重要な役割を持ちます指標となる価格形成、それに参加する商品を提供しているということもあろうかと思います。
それから、会社の支配という関係から申しますと、例えば私が小森先生に五一%の株を塊で譲渡したといたしますと、これは先生に経営をお任せします、そういうことだろうと思います。しかし、マーケットで五一%買ったということは、これは売り手が買い手に対する信任ということではありませんで、純粋にマーケットメカニズムの世界で議論される問題でございますので、その分マーケットで買えた、とりわけ借金で短期で買えたとい
うことによって、ただ三十年前から五一%持っているというのと同じように、その会社の管理をする、支配をする正当性が果たして本当に認められるのかということあたりからして疑問があると思います。ですから、そういう意味ではその三点で公益性があるということだと思います。
先ほど太田先生がちょっとおっしゃられたのですけれども、私は、理論的に言いますと、株主だけのものだという考え方はちょっと古いというふうに思っておりますが、ただ日本で従来株主が大事にされてこなかったというのも事実だと思いますので、そういう意味では株主を大事にするという考え方が時代おくれだというふうには考えておりません。そのことだけちょっと申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/84
-
085・小森龍邦
○小森委員 ありがとうございました。
それではまた、同じく上村先生に引き続いてお尋ねをいたしますが、今回の商法改正を先生の方から見られて、投資家の保護ということが出ておることは我々も審議の過程でよくわかるわけですが、それとこの市場メカニズムというものとを現時点でどのように調整をさすか。この二つの命題を同時に満足させるという、その頂点に今回の商法改正というものは現時点では成り立っておると思うのでありますが、どちらかに船が傾いておるというふうな見方をされますか、まことに調整がとれておるというふうに分析をされますか。その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/85
-
086・上村達男
○上村参考人 先ほども申しましたけれども、商法は市場に提供される商品性をまず基本的には用意するといいましょうか、それがまず第一の役割だと思いますので、その後のマーケットの問題は、商法ももちろん関係はありますけれども、証券取引法の方で十分な対応がなされるということが必要かと思います。
そこで、先ほどの私の意見でいいますと、投資家保護も時代おくれかというふうに聞こえたかもしれませんが、そうではございませんで、先ほどちょっと運動会の例で申しましたけれども、石ころだらけででこぼこの土俵でもって自由にやりなさい、それでけがが出たら保護してあげますよ、そういうのが本当に投資家保護なのだろうかと申しますと、やはりそうではないのではないか。全力で自分の能力が発揮できる土俵が提供されていてそこで初めて自己責任ということになりますので、投資家保護というのは、まず土俵がきちっと提供されて、投資家が自分の投資判断にふさわしい成果がきちんと回収される、そういうことが保障されるような条件が提供される、その上でなおかつ保護すべきものがあれば保護しなければいけないということはあるかもしれませんけれども、まず最初が自己責任だということではないだろう。
そういう意味では、マーケットの保護育成の体制からマーケット中心の体制になったことによって投資家保護が後退するということはないのではないかなというふうに思います。むしろ、マーケットがマーケットとして成立するための理論的な条件は、これは理論的な要請ということになりますので、実質的には投資家保護というものが充実されていく、そういう方向になるのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/86
-
087・小森龍邦
○小森委員 もう一点だけ上村先生にお尋ねをいたします。
今回の商法改正に基づきまして、監査役というものが独任機関であり、同時にまた会議体の構成員である、こういう形となるわけでありますが、私ども素人から見ますと、これが会議体の構成員ということになると、ある意味では会社の意向というものが強く支配をして、本当の監査の機能ができなくなるのではないか、こんな素人なりの心配を持ちます。そういう一つの会議体となることのメリットというものはどの辺にあるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/87
-
088・上村達男
○上村参考人 法案の監査役制度では独任機関としての性格を維持したまま会議体のメンバーでもある、こういう形になってこようかと思います。しかも、会議体の性格は、監査役の同意を要するというような場合に監査役会で決議をするといったようなぐあいに、協議機関としての性格が非常に強いと思います。ただ、これは今後変えていく可能性もありますし、時代の要請に応じて変わっていく可能性はあると思います。
ただ、逆に取締役会の方を考えてみますと、平取締役というのは取締役会の一構成員であって独任機関でないというふうに普通教科書には書いてございますけれども、本当にそうかと申しますと、一人一人の平取締役が監視監督の義務を負っているというふうに考えられております。したがいまして、一人一人の平取締役の調査権もある程度解釈上は認められるということになると思いますので、取締役会の場合でも個々の平取締役が独任機関でないと一〇〇%言い切れるということではないと思います。ですから、会議体としての性格をどの程度強めるかというのは立法政策の問題だと思いますが、このたびの法案の会議体としての性格は比較的弱いものですけれども、独任機関としての性格と両立するということは十二分に可能だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/88
-
089・小森龍邦
○小森委員 ありがとうございました。
それでは、続きまして、弁護士の家近先生にお尋ねをいたします。
法制審の商法部会が今回の商法改正の段取りをつけるに当たって、我が国がユーロ債を海外で発行する場合我が国における社債管理会社のようなものを設置すべきだという議論はなかったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/89
-
090・家近正直
○家近参考人 私が出席いたしました商法部会の席ではそういったテーマについての議論はなかったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/90
-
091・小森龍邦
○小森委員 それは、外国の法制と日本の法制との違いというようなことからくるのか、あるいは我が国の社債投資家を特に保護する、つまり我が国の投資家がその成熟度においてまだこの問題になれていない、だから特別に保護してやらなければならぬ、こういう意味との関係でそういうことの議論が出なかったのか、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/91
-
092・家近正直
○家近参考人 改正論議の中では、専ら社債管理会社の強制設置の趣旨として我が国の社債権者の保護のためにこういう改正をする、終始こういう形の議論だったと記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/92
-
093・小森龍邦
○小森委員 それでは、最後に同じく家近先生にお尋ねをします。
我が国における社債発行限度額、こういうものが従来ありまして、それ自体はその時期における投資家の保護策としてあったもの、こう思うわけでありますが、社債管理会社というものを新たに設置して、そして限度額を廃止するという今回のことについて、先生の見られたところで、一歩前進、言うなれば日本の歴史的な発展段階においてそれはふさわしいことだ、こういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/93
-
094・家近正直
○家近参考人 今回の社債発行限度枠撤廃との絡みで、現在の我が国の社会状態あるいは経済的な状況を踏まえた場合には今回の社債管理会社の設置強制というのは適切であった、かように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/94
-
095・小森龍邦
○小森委員 従来は、要するに投資家保護策として社債発行の限度を抑える、それは社債を発行する会社の実力に合うたところまで抑える、こういうことで投資家とすればある程度安心できたと思います。
今回の場合は、投資家自体がかなりそういうことの勉強をしておるというかその会社の情報というものを知っていなければ、自己の責任においてやる、そういう状況が強くなっておるわけでありますから相当勉強しなきゃならない、こういうことだと思うのであります。その点については社債管理会社というようなものが相当やはり情報の提供などをやらなきゃならぬと思いますが、その点については私も詳細その法律に精通しておりませんからわかりませんが、何かそれに対する手だてのようなものが今回の社債管理会社に相当義務づけられておるのか、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/95
-
096・家近正直
○家近参考人 おっしゃるとおりでございまして、今回の改正で従来と著しく違いますのは、社債管理会社の性格づけを社債権者の側に立って行っておる、したがって社債管理会社が社債権者のために善管注意義務とか公平義務を負って社債権者の権利保護のために努めなければならない、こういう位置づけをされておる点が今回の改正案の非常に大きな特色ではないかと思います。
ただ、改正案では、社債権者の保護のために、単に管理会社の設置強制だけではなくて、それ以外の格付の問題とかディスクロージャーの問題とか、総合的な手だての上で社債権者の保護を図ろう、こういう趣旨の改正である、かように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/96
-
097・小森龍邦
○小森委員 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/97
-
098・浜野剛
○浜野委員長 冬柴鐵三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/98
-
099・冬柴鐵三
○冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。
本日は、お忙しいところ参考人の先生方にはお出ましを願い、大変有益なお話をお伺いいたしまして、心から厚く御礼申し上げます。
順次お尋ねをいたします。
東京証券取引所の理事長であられる長岡参考人にお伺いいたしますが、東京証券取引所は、企業の長期資金の調達の場として、特に個人投資家の増大ということに力を尽くしておられる。正しい方向だと思いますが、諸般の金融・証券不祥事、これは大変な事件でございました。私も、特別委員会の委員として質疑をいろいろさせていただき、また取引所にもお伺いした経緯がありますが、大変な取引がありましたあの株式の出来高というものが激減をいたしまして、証券会社が成り行くのかな、一時本当に心配をいたしました。個人投資家が離れられました。
これは、一つは、いろいろな事情はあったにせよ、公開された財務諸表というものに対する個人投資家の非常な不信といいますか、非常に大きな損失補てんというものがあからさまになった。今回また使途不明金というようなものが、非常に巨額なものが累年計上されている。驚くべきことでございます。使途不明金というのは商法上の言葉ではありませんで、税務の実務用語のようでございますけれども、いずれにいたしましても、所有者、株主と言っていいか、いろいろ異論はありましょうが、とりあえず株主の所有する財産を、管理者である役員がその使途あるいは理由を明らかにしないという大変異常な金の使い方でありまして、それが億単位になる。
もちろん会社の利を図る目的を持って支出される場合もありましょうけれども、そうでない場合もある。犯罪が構成される場合もある。そういうものでございますから、こういうものが、最近もゼネコン十八社がそういうことをやっているという新聞報道がありまして、捜査も受けたという、これは真偽はわかりませんけれども、新聞報道ではそうありました。
そこで、有価証券報告書というものを過去三期にわたって、名前を明らかにされた十六社について見てみましたけれども、どこにもこの使途不明金が計上されたということの記載がなかったと私は思います。非常に不思議なことでございまして、ひとしくそれには会計監査法人による監査報告書というものが後ろに印刷をされておりまして、それには「経営成績を適正にあらわしているものと認めます。」という太鼓判が押されておるわけでございます。
会計年度というのは各期独立でございまして、株主総会で賛成ということで承認をされますと、一応それで確定をいたします。したがいまして、前期の会計の内容につきましては、監査法人あるいは監査役は監査の責めをその点免れると思うわけでございますけれども、それが舌の根も乾かぬうちに、法人税の確定申告時には実はこういう使途不明金を出しております。株主総会に出したものでは経費として計上いたしておりますけれども、自己否認をいたします、こういうことを届け出されるわけですね。そして、それについては、会社からその資金は確実に逸失しているにかかわらず、なお残存していることを前提とした法人税課税がされる。これは株主にとっては大変なことであるように思われます。
したがいまして、有価証券報告書というものに、前期決算ではこれぐらいの使途不明金がありましたということをどこかに書くということはいかがなものでしょうか。そういう発想はいかがでございましょう。どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/99
-
100・長岡實
○長岡参考人 投資家の保護を図ってまいりますのが私どもの重大な使命でございますから、そういう意味では、有価証券報告書の内容その他が投資家に広く知られなければいけない、的確に知られなければいけない、その他の情報も適時適切に開示されなければいけない、これは私どもの市場運営の一番の鉄則でございます。そういったような点で、ただいまの御意見につきましては、傾聴に値する御意見だと思いますけれども、果たして私どもがそれを義務づけ得るかどうかというような点についてはもう少し検討させていただきませんと、ここで明確なお答えをいたしかねる状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/100
-
101・冬柴鐵三
○冬柴委員 もとよりそうでございますけれども、証券取引所の理事長として、やはりそういう個人投資家にとっては、とりわけ会社の帳簿を閲覧するとか、そういうことは非常に困難というよりも不能でございます。したがいまして、有価証券報告書、これは非常な情報源でありますし、前期との対比とか非常に詳細に書かれております。非常によくわかるわけですが、今申し述べた非常に大事なところがこれは記載事項になっておりませんから、欠落とは申しませんけれども、我々から見るとそういう大きな点が抜けていると思います。これは法律の面でも、改正その他については私どもも考えていかなければならない問題であろう、こういうふうに思うわけでございます。
それでは、経団連の盛田参考人からお伺いいたします。
先ほども会計帳簿の閲覧謄写請求権につきまして、従来の発行済株式総数の十分の一というものを引き下げるべきである。今回百分の三というところまで引き下げたわけでありますから大幅な引き下げであることは間違いないわけでございますけれども、それについて経団連の内部ですとかあるいは経営者の方々の内部では、脅威に感ずるといいますかそういう議論があったということも先ほどお伺いいたしました。
ただ、大変失礼な話なのですが、九三年の会社四季報で御社株式会社ソニーの情報を見てみますと、もちろん日本を代表する巨大企業ですから、発行済株式総数は三億七千万株、これの三%といいますと、一株四千円と計算しましても四百億ぐらいになろうかと思います。それで、これは法律要件ですから、四百億円以上の株を持っている人じゃないと引き下げたとはいえ御社の帳簿閲覧請求は求められません。そしてまた、三%以上御社の株を持っている株主が何人ぐらいおられるかといいますと、上位三社ですね。いずれも巨大法人が持っておられまして、もちろん十位までの中には個人、盛田さんも含めて個人は入っていません。すなわち三%というのは、引き下げたとはいえ、巨大企業についてはとてもじゃないけれども実務的じゃない数字のように思われるわけでございます。
これは我々立法府の責任でございますが、今回一〇%から三%に下げたことは前向きで私は賛成なのですけれども、どうでしょうか、取引は千株単位、千株でも御社は平均株価で四百万、そうすると一万株で四千万、そこら辺と三%の低い方の選択とかをしないと、実質上これはそういうアクセスが閉ざされるのではないかというふうに思うのです。これは自由な考えで結構ですが、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/101
-
102・盛田昭夫
○盛田参考人 お答え申し上げます。
自由な考えでいいとおっしゃいましたので、今の我が社の例をお引きいただきますと、確かに私の会社も小さくはございませんし、株数も相当多うございますし、株価も平均より高いということで、三%というのはおっしゃるように非常に巨大
な額になりますので、閲覧をするためにそれだけを買うということは実際上はございません。
しかし私は、一〇%が三%になった、それが何%がいいかということは私は法律家でございませんので断定はできませんけれども、今後だんだん国際化、先ほども申し上げておりますけれども、経済が国際化してまいりますと、既に過去に起きましたように海外から日本の会社を、乗っ取るということはありませんけれども、アメリカにはグリーンメーラーと通称される、いわゆる株をある程度買ってそれを高く売りつけるとか経営者を困らせて利益を得るとかいうような習慣、またそういう人たちも相当ございます。
我が国の中には、必ずしも巨大会社だけがそういう対象になるようないい会社ではなくて、中小の会社でも非常にいい会社、また内容のいい会社、また技能、技術のいい会社がございます。そういう会社は実際にすぐ五%、一〇%というようなものは買われるということが起きまして、そのために結局経営者が非常に経営が困難になる、困難になるのにつけ込んで対案条件を出してくるというようなことが起きる可能性がございますので、私は、むしろ経営者の立場からいきますと必ずしも三%が小さ過ぎるというふうには考えておりません。その意味で経団連のメンバーの中には、また財界の中には、三%でもこれはなかなか危険だなと思う方がいるのは当然でございまして、その意味で先ほど申し上げましたようにそういう危惧は多少ありますけれども、経営者の方の姿勢をよくし、また内容をよくしていく意味で三%は妥当ではないか、私はこういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/102
-
103・冬柴鐵三
○冬柴委員 立場立場でよくわかりますけれども、ただ、上場して市場から大量にお金を集めてそれを流用するという裏腹として、不可避的にそういう危険はある。しかし、そういう悪い人には刑罰をもって臨むような立法、そういうものが望まれるべきであって、おたくの帳簿は上位三社しか法律上は見ることができないという制度自身は我々としてはちょっといかがなものだろう、こういうことは思うのです。これは参考人に対して大変失礼なのですが、そういう感想を持ちました。
次に、上村先生にお尋ねいたします。
バブルが崩壊いたしました。その当時、エクイティーファイナンスということで大変な資金が社債によって集められまして、ことしはその弁済期のピークを迎える年、十一兆円という弁済期が到来するということを聞いておりますし、上期だけでも六兆三千億という大変なお金を私企業が返していかなければならない。それの資金源としていろいろ手当てはついているという大蔵からの御答弁もいただいているわけですけれども、リファイナンス、借りかえということに求められると思うのです。
そういう場合に、今までの金利は逆金利、まあそれは常識外れですけれども、ただ同然のお金を、そのときには、弁済期が来れば我が社の株を引き取ってもらえるであろう、現ナマで返すことはなかろうという前提で集めたものが、意に反してここで真水で返さなければならないということで、発行条件も非常に厳しいものになろうかと思うわけでございます。そういう場合に、こういう時期に今の天井を取り払うということについて、私は別に反対ではないわけですけれども、投資家保護の措置も講じてはあるものの非常に厳しい時期だな、こういう感じがするわけです。先生のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/103
-
104・上村達男
○上村参考人 お答えいたします。
先ほど私の意見で申しましたように、商品性が提供されるけれどもその後に市場がついてこない、そういう苦い教訓がワラントのときにあったのではないかということをちょっと申し上げたのですけれども、確かに商法の問題といたしまして転換社債とかワラント、これはこういうふうに使われてこういうふうにうまく作用すればこれだけ国民経済に貢献するすばらしい商品だ、そうなりますと、商法は商法、証券取引法は証券取引法だというふうに別にやっておりますので、きっとすばらしいに違いないということで、経済学者の方がおっしゃるようなことに対しても特に反論もできず、マーケットの状況がどうかというようなことについても、それは後でマーケットの方できちっとしてくださるのではないかということでやってきたと思います。
しかし、ワラントにつきましてはいろいろな問題を引き起こしたことは事実だと思いますし、あれは一つのケーススタディーと申しますか、商法学者がそのことについて、あれはあの時期に認めることがよかったのかというようなことをケーススタディーとして振り返っていろいろ研究するというようなことは余りしませんで、後は市場の問題に任せ切りというようなことになっていると思います。
当時はやはり転換社債、ワラントというのは、必ず株が上がることを前提にした商品というようなことで非常に安易に使われていた。ですから、私も、社債の発行限度につきましても、少なくとも従来それが果たしてきた役割がなかったというふうには思っておりませんで、やはり従来の市場の状況とか格付の状況とかを考えますと従来は一定の役割を果たしてきたのではないか。ただ、上限を取り払うことについてフォローがきちっと行われるかについては若干疑問を払拭し切れないというのが本当のところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/104
-
105・冬柴鐵三
○冬柴委員 最後に、家近参考人にお伺いいたしたいと思います。
先ほど長岡参考人にもお伺いしたのですけれども、巨額な使途不明金がございまして、過去七年間の法人、企業の使途不明金の推移ということで調べてみますと、平成三年度は、建設業は三百八十二億円、製造業が四十四億円、卸売業が六十七億円、小売業で十二億円、その他の業で五十三億円、合計五百五十八億円の使途不明金が、自己申告を含めてですけれども国税によって捕捉されております。これは資本金一億円以上の会社の一四・六%ぐらいを調べてのものでございます。したがいまして、これがすべてではないのですけれども、一部とはいえ我々にとっては非常に大きな金額が株主の目の届かないところで処理されている。
では、これに対して商法はどう対処しているのかということで見ますと、万全の措置が講じられていると思います。ただ、機能していない。例えば、先ほど長岡参考人に申し上げたのですけれども、その痕跡は有価証券報告書にもあらわれておりませんし、各株主総会が六月二十九日ですかに行われますけれども、そのときの監査報告はいずれも適切と認めるというものばかりでして、こういうものがあったということを報告する監査役はほぼ絶無だと私は思います。
これはなぜそうなるのか。要するに、株主総会で承認をされればそれ以前の分については監査役の監査は免責されるという中身になっております。したがいまして、その期中の監査の結果というものは、監査報告書を取締役会に提出した時をもって終わると私は思うわけです。したがいまして、その決算後、法人税の確定申告期限までに取締役が実は十五億円こういうふうな処理がしてありますと言っても、監査役はそれをどこにも発表する機会がないということが商法上見えるわけでございますけれども、その理解は誤りないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/105
-
106・家近正直
○家近参考人 なかなか難しい法律論かと思うのですが、御指摘のように監査報告は単年度と申しますか当該営業年度に関する報告が原則でございますが、今例外として、後発事象については決算期後の事実について監査報告書に書くなりして報告することになっております。当該監査の対象であります期以前のことについては、法令上は直接報告の義務は明記されておらないのではないかと記憶いたしておりますが、ただ理論的には必ずしも前期までのことについて監査報告をすれば免責されるということにはならないのではないか。つまり、取締役も監査役もそれぞれ善管注意義務を負っておりますし、会社あるいは第三者に対する責任がございますので、少なくとも民事上は時効
が成立するまでは責任は残ると解釈すべきではないかと思います。
ただ、御指摘のように法令、特に法務省令で当該監査の対象年度の以前のことについて必ず報告しろ、こういう明記された規定がございませんので、そういう意味では一般論として善管注意義務の範囲で報告する義務があるというふうには考えますけれども、御指摘のように、その辺も明らかにするということは今後の一つの課題ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/106
-
107・冬柴鐵三
○冬柴委員 ありがとうございました。私も全くそのように考えるわけでございまして、免責するというのは、そこへもう一度手を突っ込んで調べて、それをどこかで報告する義務はない。しかし、前年度、監査役はきちっとやっていますよということで適正と認めてしまったわけですから、取締役にだまされたことになるわけです。
しかし、その舌の根も乾かないうちに、税務申告時に実はこれはというふうに取締役が言っているのがこんなにたくさんある。それは監査役も十分知っているわけですから、それがどうであったかということを監査して、もう一度調べ直して、取締役に法令、定款違反あるいは著しく不当な行為があれば、監査役は代表訴訟を起こさなければ任務懈怠に陥ると思うのです。しかし、それをどこか株主の前で発表する機会ぐらいあってもいいのではないか。ですから、次年度の株主総会のときに、前年度以降にこういう使途不明金がありましたということを報告することを義務づけてはいかがかということを小生愚考しているわけでございまして、先生も御賛同いただくということであればそれで結構だと思います。
本日は、本当にありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/107
-
108・浜野剛
○浜野委員長 木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/108
-
109・木島日出夫
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
最初に、社債の発行限度枠の撤廃の問題について、四人の参考人にそれぞれ伺いたいと思います。
これは我が国社債法の根本的な大転換なわけです。社債権者保護という基本的な要請に基づいて、先年改正された社債法でも、純資産の枠に限度をとどめるということは守ってきたわけであります。今回これを撤廃するわけでありますから、当然それなりの合理的な理由あるいは社債権者保護の制度的な保障がなければいかぬだろうと思うわけであります。
〔委員長退席、星野委員長代理着席〕
実は、せんだっての当法務委員会におきまして、我が党の大蔵委員でありました正森委員からこの問題が論じられたわけです。その中で、一九八六年以来五年間、日本の大企業は、エクイティーファイナンスとして主に転換社債、ワラント債、その他で四十七兆二千億円の資金を調達した。これでバブルが進んでいったわけでありますが、それがはじけて、今償還に必要な額が九三年度でも十一兆円に達する。総額四十兆三千億円になるということが大蔵省からの答弁をも踏まえて明らかになったわけです。
今回の社債の限度枠撤廃の商法改正は、言ってみれば日本の企業がみずからの責任でつくり出したバブルがはじけて、特に一昨年の証券不祥事、損失補てんの問題、これで国民、一般投資家からの大きな批判にさらされて今株式市場が低迷しておる、こういう中で資金調達に非常に苦労しているという現実の困難を一般社債の発行限度枠の撤廃という形でくぐり抜けるためではなかろうか。そうしますと、余りにも虫がよ過ぎるのではないかという指摘が当然あろうかと思うわけであります。
それに加えて、これだけの社債限度枠撤廃をするわけですから、社債権者保護として、当然のことながらディスクロージャーの強化があわせ行われなければならぬ。しかし、この問題も、ことし三月大蔵省が出した通達によりますと社債発行条件などが緩和される。逆行しているのではないかと思うわけですね。たしか法制審議会の論議の中にも、今日の条件で、今私が述べたようないろいろな状況を踏まえますと、今社債発行限度枠を全廃するのは時期尚早ではないかという意見があったと思われるわけであります。
こういう大企業にとって虫がよ過ぎるのではないかという指摘に対して、それぞれの参考人の皆さん、簡単で結構ですが、どういうお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/109
-
110・長岡實
○長岡参考人 私の記憶では、社債発行限度枠の撤廃という要請は、バブルの発生以前から大分古い問題として起きておると理解をいたしております。
そして、今回商法の改正でこの問題が取り上げられましたのは、過去の例を見ましても、社債の発行に制限があるために、外国で社債を発行するとかあるいは発行の規制枠の緩い転換社債やワラント債の方にぐっと傾いた、それはそれだけの理由ではないと思いますけれども、そういう傾向もあったのではないか。こういった時代に、外国の例を見まして、制限を設けている国は、ゼロではないそうですけれどもほとんどない、主要国ではないと聞いておりますので、そういったような国際化の時代にも即するようにこういう法制、制度改正が行われるに至ったというふうに理解をいたしております。
なお、社債権者の権利保護の問題は、先ほどもお答え申し上げましたけれども、管理会社がいかに誠実に社債権者の保護に努めるかというところにかかっているのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/110
-
111・盛田昭夫
○盛田参考人 お答え申し上げます。
今先生からの御指摘でございますが、この社債限度の撤廃というのは、現在の経済の混乱状況のために私どもがお願いしたわけではございませんで、国際的な整合を図るために長年お願いをしておりました問題でございまして、これは決して現在を糊塗するための、御指摘のような方法とは考えておりません。
それから、今までは限度がありましたので、したがって結局エクイティーファイナンスの方に偏っておりました。エクイティーファイナンスでありますと、日本の現状としては結局株主へのリターンが余り高くない。社債であれば、やはりボンドでありますからはっきりした利率が決まっております。そういう意味で、社債を買われた方は、株と違いましてリターンがはっきり推測できるというメリットもあるわけでございます。
それから、投資家保護という点につきましては、格付を含めまして、ディスクロージャーをより広範に、また早くしていこうというふうに今動いております。現にそういうふうに進んでおりますので、投資家の保護が不十分であるとは私どもは考えておりません。十分に投資家の方にははっきりした現状をお知らせできる、そして実際債権の処理につきましては、管理会社がこれを取り扱っていくということで守られるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/111
-
112・上村達男
○上村参考人 お答えいたします。
先ほども申しましたように、商品性が提供されてもその後のマーケットが本当についていける条件が十分に整っていると言い切れるかどうかということについては、私はやはりクエスチョンマークなしというわけにはいかないだろうというふうに思っております。
証券取引法につきましても、確かにバブルそれから証券不祥事を契機といたしまして、大蔵省の証券行政の対応も従来の保護育成からルール型といいましょうかマーケット型というふうに変わるんだということを大蔵大臣も証券局長もはっきり言っておりまして、理念の転換をすべき時期を失したんだというようなことをおっしゃっておられまして、そしてその後次から次へと証券取引法の改正が実現したわけであります。
それでも、私から見ますと、インサイダー取引とかそのほか証券会社に対して刑事罰のことがほとんど考えられていないとか、いろいろ考えるべき点はあろうかと思いますけれども、しかし理念が転換されて、そういう方向に今向かっていると
いうこと、それから無担保社債は、ワラントや転換社債のように、例えば一%の金利の商品なのに投資家が買えないとか、そういうものとは違って、やはりまともに金利を取って資金調達をするというきちっとした商品で本来なければいけないというふうに思っておりますので、そういう商品として育てていくということは意味があるのではないかなというふうに思っております。
社債管理会社が働く状況というのは相当異常な事態が起こった場合であります。そのほかさほど異常でない状況のもとではマーケットということになってまいりますので、やはりただ緩和するだけではなくて、そのマーケット体制をこれからもきちっと充実させていくことが条件になろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/112
-
113・家近正直
○家近参考人 ただいまの問題は、御指摘のように、余りにもタイミングがよ過ぎたというか悪過ぎたというか、そういう意味では御質問の御趣旨ごもっともでございます。
ただ、法制審議会の社債法の検討は昭和六十二年の一月から既に行っておりまして、その間終始社債発行限度枠の撤廃というのがメーンテーマでございます。したがいまして、まさに時あたかもこの時期に一致した、こういう結果ではございます。
ただ、御指摘のように、さりとて社債権者の保護を放置していいものではございませんし、今回の改正がそれで万全であるかどうか、必ずしもまだ実証されたわけでもございません。そういう意味では今後残された課題として大いに注目してやっていかなければならない問題ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/113
-
114・木島日出夫
○木島委員 お話をお伺いしておりますと、限度枠が撤廃された社債権者の保護をどこがやるか、社債管理会社にすべての期待がかかっているように思われます。本当にこの社債管理会社が社債権者の期待にこたえてその役割を十分に発揮できるかどうかが次に検証されなきゃならぬ問題だと思うわけであります。
そこで、一つお聞きしたいのですが、恐らく社債管理会社というのは銀行、信託会社ですが、例えば銀行などの場合には、社債発行会社のメーンバンクがなる場合も非常に多かろうかと思うわけです。現在も、社債発行について受託しているのが主にメーンバンクではなかろうか。
そうしますと、社債管理会社たる地位を引き受けたメーンバンクは、みずからもその社債発行会社に対して多額の融資をしているわけであります。一般債権者としての銀行という立場と、今度の法律によってすべての一般社債権者の利益を代理しなければならない社債管理会社との立場は、私も弁護士でありますが、これはどう考えても利益相反せざるを得ないと思うわけであります。法制審議会の論議の中にも、この利益相反の問題は大きな問題として審議が行われたやにお聞きしております。その利益相反という避けられない問題を回避するためには、やはり一定の基準をつくって、その社債発行会社に対するこれだけの貸付金を持っているメーンバンクは社債管理会社から外さなければいかぬのではないかとか、そういう論議がいろいろあってしかるべきだったし、あったのだろうと思うわけなんです。
ところが、今回の商法改正法案にはそういう利益相反行為を避けるという面での法整備がまことに不十分ではないか、総社債権者のための利益を図らなければいけない、善管注意義務とか公平義務が課せられるわけでありますが、実際この善管注意義務や公平義務に違反して社債管理会社が一般社債権者から損害賠償請求されることが本当にあり得るか。一般社債権者はばらばらであります。証拠力はほとんど持っておりません。すべての証拠力は社債管理会社が持つわけでありますから絵にかいたもちになるのではないかと思わざるを得ないわけでありまして、この利益相反という問題についてどうお考えなのか、これは長岡参考人と法制審の論議にも関与されました家近参考人から率直な御意見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/114
-
115・長岡實
○長岡参考人 私の答えは、法律的な面からいえば恐らく先生の御質問に対して十分にお答えしているかどうか、御満足いただけるようなお答えができる立場にはないと思いますけれども、私の立場といたしましては、社債の発行が一方において従来よりも円滑に行われて企業が資金調達しやすくなる反面、社債権者の保護は絶対にゆるがせにしてはならないということであろうかと思います。
そういったような意味におきましては、御質問に対するお答えにならないと申し上げたのはまさにその点でございますけれども、先ほどの善管注意義務とか公平誠実義務を新しく純化された社債管理会社が忠実に守ること、そして、先ほど実際問題としては難しいとおっしゃったかもしれませんけれども、もしそれに違反するようなことがあった場合には社債権者の方から損害賠償責任の訴えが行われること、そういうことが制度的に軌道に乗っていくように今後の運営を見守っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/115
-
116・家近正直
○家近参考人 今の問題は、御指摘のような問題が残るというのは事実でございまして、御承知のように、今回の法案には利益相反の場合の特別代理人の選任等の手当てもしてございますけれども、何せ多数の社債権者が集団として行動するということは現実問題として非常に難しい面があろうかと思います。これは社債の一つの本来的な性格の問題にも関連するのではないかと思われるわけでございまして、具体的に事件が起こりました場合にどの程度機能するかということと同時に、これは一にかかって社債管理会社の良識といいますか、日本の金融機関の長い慣行のもとに基づく良識ある対応が大変必要なことになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/116
-
117・木島日出夫
○木島委員 まさに日本の金融機関、証券会社の良識が問われる問題だ、しかしその良識が全く発揮されなかったのがあの証券・金融スキャンダルではなかったか、損失補てん問題ではなかったかと思うわけですね。良識が期待できないとなるとこれは法律できちっと整備しなければいけないということにならざるを得ないわけでありまして、その辺が今回の商法で一つ大きな問題として残っているのではなかろうかと感じているところでございます。
盛田参考人にお伺いしたいのですが、先ほど公述の中で、現行による受託銀行からの社債発行会社に対するいろいろな介入その他が緩和されて、管理会社制度になった方が社債発行会社にとっては社債を発行しやすくなるという趣旨に私聞こえたのですが、そういうふうに機能するのでしょうか。金融経済の実態を余りよく知らないので、その実態を教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/117
-
118・盛田昭夫
○盛田参考人 その問題で私の見解を申し上げますが、今までの受託会社の例を見ますと、社債を発行するプランニングの段階から受託会社が介入をいたしまして、そのために、引受会社が実際には社債の発行と販売をするわけでございますから、専門家が介入をしてくれるならばいいのですけれども、単に受託会社ということだけで銀行とかその他の企業が社債の発行に関して介入をされますと、実際の発行のマーケットの状況とかそれらの実情に即さないような介入が行われるということでございますので、発行した後で管理だけを管理会社が責任を負うという新しい法制度の方が私ども企業としては実際は社債の発行その他には便利でございますし、またその方が道理に合っていると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/118
-
119・木島日出夫
○木島委員 時間もほとんどありませんので最後にもう一点だけ盛田参考人にお伺いしたいのですが、今不況が長引く中で、金融資本といいますか、銀行からの産業資本といいますか、製造会社に対するいろいろな支配、介入といいますか、もうちょっと合理化せよとか、労働者の解雇とか配置転換、あるいは下請に対する支配を強めよとか、製品価格についてはこうせよとか、あるいはそれが高じて大事についてまで金融機関から製造会社に対して支配していくということがあるわけですね。
メーンバンクなどが従来の一般債権者としての
そういう支配力を持つに加えて、今度は社債管理会社としてすべての社債権者の利益を保護するという立場に立って、善管注意義務なんという大義名分を掲げて、自分が貸し付けている社債発行会社に対する管理支配をますます強めざるを得ないのではないか、そういう方向に働くのではないか、それは結局そこで働く労働者や下請企業の皆さんに対する大きなしわ寄せがますます強まるのではないかということを危惧しているわけですが、そんな経済的なはね返りについてどうお考えかお聞きをいたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/119
-
120・盛田昭夫
○盛田参考人 これも私が経営者としての考えをお答え申し上げます。
私は、いろいろな企業を渡り歩いておりません、自分の一つの企業ばかりで暮らしてまいりましたので、全体の傾向で今御指摘のようなメーンバンクまたは管理会社が企業の経営に口を出すというような実情があるかどうかは存じませんが、少なくとも企業におきましては、企業がいろいろな困難に当たりましたときには経営者が全責任を持って最善の対処を行うということが使命であると私は考えておりますので、メーンバンクは経営者を信頼してくれるからメーンバンクの位置にとどまっているのでございまして、もしもメーンバンクその他がそれ以上の、経営者がなすべきことまで介入するようになってさましたら、その場合は経営者は不適格だということを自覚するべき状況だと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/120
-
121・木島日出夫
○木島委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/121
-
122・星野行男
○星野委員長代理 中野寛成君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/122
-
123・中野寛成
○中野委員 民社党の中野寛成でございます。きょうはありがとうございました。
まず、長岡参考人から、素朴な質問をします。
私も、先ほどお話がございましたが、この社債発行限度規制がエクイティーファイナンスの偏重をもたらしたということについてはそのとおりだと思うのですが、今度これが規制を撤廃するということになりますと、エクイティーファイナンスの偏重が幾らかでも是正されるということになるんだろうと思うのですね。そしてまた、企業の資金調達の選択肢がふえるということは、これは大変結構なことだと思うのですね。経済の活性化のためにも大変いいと思うのです。ですから、そのことについての異論は全くないのですが、一方、証券取引所という立場で考えますときに、銀行は仕事がふえて喜ぶかもしれませんが、株式発行がそれだけ、余り頼りにしなくてもいい、なくなるという意味では全くありませんが、資金調達がそちらの方へ偏重しないとなりますと、今後の、この法律が成立した後のシミュレーションとして、株式発行または株価、そういう証券市場に与える影響はどういうことが出てくるだろうか。証券会社は今後とも商売がうまくいきまっか、大阪弁で聞きますと。この辺に与える影響は何かありますか、ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/123
-
124・長岡實
○長岡参考人 大変難しい御質問でございますけれども、やはり企業が資金調達をする道が多様化することが一つ望ましい姿だと思いますが、一方投資家の側から見ますと、投資対象が多様化されるということもやはりいいことではないか。そういったような意味で、投資家が社債に投資をするか株式に投資をするかというのは個別の判断によるわけでございますけれども、私は、大きく見まして、今回の改正によりまして株式発行、いわゆる時価発行でファイナンスをやるといったようなことが下火になるというふうには考えておりません。
これはまだ社債発行の限度枠の撤廃以前の今日の状態でございますから御参考にならないかもしれませんが、今でも新規上場で待機している企業も相当数あるわけでございまして、今後とも株式を発行して資金を調達する企業も継続して出てくるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/124
-
125・中野寛成
○中野委員 わかりました。
まだこれから待っているものがたくさんあるということになりますと、むしろ今はそのキャパシティーを広げることに経済の活性化という意味では意味があるということだろうと思いますので、そういうふうに受けとめさせていただきたいと思います。
さて、国際化の問題について盛田参考人、それから比較学問的にいいますと上村先生からお聞かせをいただきたいと思いますが、これは会計の方なんですけれども、国際会計基準に日本の会計基準は沿っているのかという批判が、世界会計士会議などをやりますと日本から行った参加者が言うならば責め立てられるといいますか、たたかれるというか、そういうことをよく聞くのであります。
それで、ECの方では、EC統合もありますことで、できるだけ会社法の統一というかそういう方向に向かっての努力をしている、また米国もできるだけそれに歩調を合わせる努力をしておられるということを聞くわけであります。向こうの方は、今日まで会社法がとっていた株主保護重視の立場から会社の当事者、すなわち従業員とか第三者、債権者を保護する立場へと方向転換をしている、こう言われるのですね。ところが、日本の場合にはこの株主保護さえまだ十分いっていない、こういうのが現状ではないのかというふうに思うわけであります。
ですから、先ほど来御指摘もありましたが、この会計基準だけではなくていわゆる業務監査も含めて監査のあり方、そういうことについてできるだけ国際基準または国際社会の動向に合わせて日本もおくれないようにやっていくということが国際社会から日本に対しての信頼をかち取ることにもなりますし、同時にその信頼の上に立っての日本の競争力も強化されていくことにつながっていくのではないか、こう思うのでありますが、最近の国際社会と日本との比較、国際社会の動きに対する日本のあるべき姿ということについてどのようにお考えでしょうか。
〔星野委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/125
-
126・盛田昭夫
○盛田参考人 お答え申し上げます。
今、主として会計基準についての国際的な整合性という、また比較というような御質問がございました。私は会計の専門家ではございませんので正確にお答えはできませんが、私が国際企業を経営しておりまして一番大きな違いだと思いますのは、先進各国におきましては会社の現状はいわゆる連結決算で評価をするという形になっております。
日本は、連結決算は国内のものにつきましては勧める、リコメンドされるという状況で、連結も併記するところはございますけれども、国際的な通念として連結決算というのはもとの親会社の経営者の経営のインフルエンス、影響が及ぶ範囲の会社はすべて連結をしようという精神でございまして、極端な場合は、株を持っていなくてもある会社のものを全部買っているというような場合にはそこまで連結しろという説まであるほど、連結というものが会社の経営者の全体をあらわすというふうになっておりますので、御指摘のように、そういうような会計基準並びに会計の精神をとっていない日本におきますと、その企業の評価の方法が外国、特に先進諸国と日本ではどうしても違ってくるのでございます。
それから、私たちのように実際に世界じゅうに工場を持っておりますと、特に今のような円高になってまいりますと生産を海外へ移転していく、結局安くつくって世界じゅうに売るには海外にどんどん生産基地を移動するという事実も起きてまいるわけでございます。そうしますと、日本では連結決算方式で会社を評価されるというあれがございませんから、私どもの親会社の数字だけで会社の成績が評価されるとなりますと、製造基地が海外へどんどん行きますと、極端なことを言いますと親会社の売り上げも減り、利益も減っていくという現状になるわけでございます。国際的な一つの会社として見れば会社は発展をしていきましても、日本の中で親会社の数字だけ見ますと逆のように見られることがあるわけでございます。この問題は、私たち自身でも非常に困っておりますし、日本のほかの企業でもだんだんそういう問題が起きてくると思っております。
その意味で、先ほども申し上げましたように、経済法規の国際的整合性ということが非常に必要である。会社の評価においてすら、整合性がありませんと正しい評価をしていただけないということがございますので、会計基準の細かいことについては私は十分な知識は持っておりませんけれども、会計をする、会社の会計を見るという根本的な精神におきまして根本的な違いがございますので、その辺をこれから整合していくことが日本の企業の国際化にとっては非常に大事なことだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/126
-
127・中野寛成
○中野委員 そこで、関連して上村先生にお聞きしていきたいのですが、これは比較法学という面もあろうと思いますけれども、今、盛田参考人からおっしゃられました、企業経営者としての立場でもそういう悩みを持っておられる。ならば、日本の会計制度そしてまた会社法、そういうこともやはり国際基準に照らし合わせて発展させていかなければいけないであろう。ならば、現在の日本の会計制度や会社法は、そういう視点に立って考えるとどういう欠陥があり、そしてどこをどういうふうに直さなければいけないのだろうか。先生のお立場からのお考え、御提言がありますればお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/127
-
128・上村達男
○上村参考人 お答えいたします。
どこをどういうふうにと言われますとちょっと私はお答えする用意はないのでございますけれども、金融が非常にグローバル化しておりまして、マーケットも二十四時間取引で地球規模のマーケットになっている。企業の活動も非常にグローバルなものになっている。金融があるいは企業活動がグローバル化すれば、それに伴って制度もグローバル化せざるを得ない。日本の制度が非常に緩やかであるがために日本にお金が集まるというようなことがあっては、これからは少なくともいけないわけだと思います。
そういう意味で考えてまいりますと、私は最初に意見のところで申しましたように、株式会社法制と証券取引法制がともに重大な理念の転換期にあるというふうに申し上げましたのは先生が今おっしゃったようなことを考えてのことでございまして、そういう意味では、今までは許されたかもしれないローカルなルールも、日本にそれを温存していくということはこれからは恐らく許されない事態になっているのではないかというふうに思われます。
会計基準も、これもやはりマーケットが統一してくれば、国際的な有価証券の売買一つをとってみましても、会計基準が統一してなければマーケットそのものが成立しないということになりますし、決済手段であるとか証券取引法であるとか会社法も、やはり実質的な中身それから調査協力とか、そういうことも含めましてグローバルなものに少しずつ変えていかなければいけないだろう。ただ、これは日本にとっては従来比較的軽視してきた分野でありますし、逆に外国にとりましては最も指摘しやすい弱点ということになろうかと思います。
私は、十分にわからない点もございますけれども、最近の国際摩擦もやはり制度をめぐる摩擦というのが非常に大きいのではないかなという感じもいたしております。かつて公害が非常に問題になったとき、排気ガスを出さない自動車をつくるということで日本の企業が世界に生き残ったというのと同じように、やはり経済社会でも、一つの排気ガスを出さないシステムといいましょうかルールといいましょうか、そういうものを備えるためのコスト支出ということをある程度覚悟しないと、これからはやはり生き残っていけないのではないかなというふうに思っております。ただし、これは一つ一つ、一歩一歩やっていくことでございますので大変時間のかかることだと思いますけれども、少なくとも方向性としてはそういうふうに考えていくべきではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/128
-
129・中野寛成
○中野委員 家近先生にお伺いいたしますが、実際上、この法案を出されるまでの審議会で審議にタッチをされたということと、それから先ほどの公述の中で、今まで会社法に関心を持ってやってきたけれども、どうも今日までの改正というのは部分的、場当たり的だという御指摘をされました。私はまさに同感でございまして、商法というのは今こそ抜本改正をしなければいけないときに日本は来ているのではないか。言うならば、盛田さんのような国際企業を経営していらっしゃる、それは日本の場合はだんだんふえてきているわけですから、そういうことも考え合わせますと、国際化に向けての日本の会社法、商法の抜本的な改正は国際社会に対する日本の責務ではないかというふうにも思うわけでございます。
そういう意味で、今回、私もいつも、商法改正なんかをやっておりますと、ああまた議論の激しく行われるところは避けて通ったな、随分場当たり的だなとついつい思ってしまう。本当に商法そのものを、片仮名から平仮名に変えることも含めて抜本的に改正しなければいけないのではないか、こう思うわけであります。そのことについて、果たして日本の政府は、法務省はまたは審議会はそういう意識を持ってやっているんだろうか。先生を責めるのではないですよ。先生が実際に参画してこられたので、参画された先生の御感想をお聞きしたいな、こういうふうに思うのでございます。
もちろん、やっているうちには、先ほど盛田参考人が代表訴訟のところで、企業には苦い薬となる一面もあるがというお言葉を使いました。これは代表訴訟の関連のところだけではなくて、日本の商法及び会社法の国際化の中ではまさに苦い薬となる面があるのであろう。しかし、それはクリアしなければならない日本の国際的責務だ、こういうふうに思うわけでございまして、ちょっと大きくなり過ぎたかもしれませんが、家近先生の御感想をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/129
-
130・家近正直
○家近参考人 私の個人の感想ということでお聞きをいただいたら結構かと思いますが、先生御指摘のように、我が国の商法、特に会社法制につきましては長い歴史もございます。特に、終戦後英米法の影響を受けまして、戦前の大陸法の法体系と英米法の法体系とが接ぎ木をされたというふうな経過もございます。その上に日本的な土壌がございまして、日本的な風土、習慣を踏まえた法律制度というふうな性格づけもございます。その間に、急激な社会経済の変動がございまして、待ったなしの緊急課題というのも出てまいります。
私は、先ほど申し上げましたように、決して今までの我が国の会社法制のあり方というものが理想的に進んでおるわけではないという認識のもとに立っておりますが、一面において商法ほど丁寧にいじくり回されておる法律もないわけでございまして、これはある意味では我が国ないしは法務省当局の関心の深さ、強さということを如実にあらわしておるのではないかというふうに思われます。
ただし、それが当然のこととして是認されるわけではございませんので、先ほどの意見陳述で申しましたように、やはり長い目で見た抜本的な改正の作業というものはどうしても必要でございますし、その必要性は法務省当局も十分に認識されて過去はあるわけでございますが、今後はよりそれを実現に向けて頑張っていただかなければならないと思いますし、立法府におかれましてもその趣旨で温かくかつ協力的に参画をしていただければ大変幸いではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/130
-
131・中野寛成
○中野委員 法務省という役所の性格から、この前からちょっと冗談まじりに皮肉も言ったりしているのですが、大体象牙を彫るみたいに、先生今おっしゃいましたが、丁寧に丁寧に彫っていく。そして、それがまたいかにも法務省らしい権威であるような気持ちを持っているんじゃないかと申し上げているのですが、しかし象牙というのは貴重でとうとくて、丁寧に彫れば彫るほど値打ちが出てくるのですが、象牙そのものがとったらいかぬのですな。いわゆる時代が変わってくる。変わってきたときに象牙にかわるものを新たにつくるという気持ちがないとこれからの国際社会に対応
できないな、こう思っておりまして、御健闘をお祈り申し上げたいと思います。
最後に一つだけ盛田参考人に。
がらっと話は変わりますが、個人投資家を中心とした株式市場を育成するために、配当性向の引き上げ等環境整備を進めていくべきだ。投機ではなくてもっと投資が進むようにしなければいかぬなと思いますと同時に、その中で先ほどおっしゃられた従業員の持株制度、今社会資本というのがしきりに言われますが、私は、日本の場合そろそろ個人資産、それもサラリーマンの個人資産というものをもっとふやしていくということが大事な時期に来たのではないか。それが宮澤内閣での生活大国の一助にもなるのではないか、こういう気がいたします。
米国のESOPですか、勤労者に自社株を持たせて、退職金、年金などで支給する制度、また英国の場合は株式所有制度が法律に裏づけられた制度としてある、こういう本格的な制度を日本もつくるべきときにきているのではないか、こういう気持ちがするのですが、これについての御感想がありましたらお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/131
-
132・盛田昭夫
○盛田参考人 ただいま従業員の持株制度についての御質問がございましたが、私も小さい会社から仕事をやってまいりまして、設立当初に自分たちでお金を出して会社を始めましたので、その人たちはやはり自分の会社という気持ちがしみついておりまして、何も重役でなくても、いわゆるサラリーマン根性でなくて、やはり自分の会社を大事にしていこうという気持ちが非常に強うございます。
今諸外国でも従業員に持株をさせようということは、これはやはりサラリーマン根性でなくて、自分の会社であり、そして会社をよくすることが自分の資産をふやすことだ。そうなりますと、家庭のすべての人たちが、奥さんたちから子供たちまでその会社が発展することを祈るわけでございますから、その意味におきまして、従業員が会社の株主になるということはこれからも非常にいいことだと思うのでございますが、先ほどもお話が出ましたように、私どもの株は非常に高うございますので、これを一般の市場から買ってくるということはなかなか難しいことでございます。
今私どもは従業員持株制度で一定のお金を皆から積み立てさせて、その総額で毎月買えるものだけを買って、従業員持株会というのをやっております。しかし、自社株がもし持てるようになれば、その中から会社は自社株を従業員に持たせるような手だてができるというふうに考えておりますので、やはり恒産を持つサラリーマンをつくるという意味におきましてもそういうことをしていきたいと私たちは願っておりますので、その意味におきましても自社株保有ということをぜひこの次の段階にはお考えいただきたい、それがひいては日本のビジネスマン、サラリーマンの考え方を根本的に変えることになると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/132
-
133・中野寛成
○中野委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/133
-
134・浜野剛
○浜野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112605206X00819930421/134
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。