1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成八年五月十五日(水曜日)
午前九時三十四分開議
出席委員
委員長 和田 貞夫君
理事 衛藤 晟一君 理事 木村 義雄君
理事 鈴木 俊一君 理事 青山 二三君
理事 石田 祝稔君 理事 柳田 稔君
理事 横光 克彦君 理事 荒井 聰君
伊吹 文明君 稲垣 実男君
狩野 勝君 熊代 昭彦君
近藤 鉄雄君 田中眞紀子君
高橋 辰夫君 竹内 黎一君
戸井田三郎君 長勢 甚遠君
根本 匠君 林 幹雄君
持永 和見君 保岡 興治君
山下 徳夫君 赤松 正雄君
粟屋 敏信君 大野由利子君
鴨下 一郎君 北村 直人君
久保 哲司君 高市 早苗君
桝屋 敬悟君 山本 孝史君
緒方 克陽君 五島 正規君
森井 忠良君 枝野 幸男君
金田 誠一君 岩佐 恵美君
土肥 隆一君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 菅 直人君
出席政府委員
厚生大臣官房長 山口 剛彦君
厚生大臣官房総
務審議官 亀田 克彦君
厚生大臣官房審
議官 和田 勝君
厚生省薬務局長 荒賀 泰太君
厚生省児童家庭
局長 高木 俊明君
厚生省保険局長 岡光 序治君
厚生省年金局長 近藤純五郎君
社会保険運営
部長 横田 吉男君
委員外の出席者
大蔵大臣官房審
議官 和田 恒夫君
大蔵省主計局共
済課長 松川 忠晴君
大蔵省主税局税
制第一課長 木村 幸俊君
大蔵省理財局資
金第二課長 富田 辰郎君
文部大臣官房福
利課長 齊藤 秀昭君
農林水産省経済
局農業協同組合
課長 高橋 賢二君
運輸省鉄道局国
有鉄道清算業務
指導課長 金澤 悟君
運輸省鉄道局業
務課長 宿利 正史君
参 考 人
(日本鉄道共済
組合本部長・日
本国有鉄道清算
事業団理事) 鈴木 三也君
参 考 人
(日本経営者団
体連盟政策調査
局環境社ム本部
長) 高梨 昇三君
参 考 人
(社団法人全国
労働金庫協会相
談役) 船後 正道君
厚生委員会調査
室長 市川 喬君
—————————————
委員の異動
五月十五日
辞任 補欠選任
堀之内久男君 林 幹雄君
田邊 誠君 緒方 克陽君
枝野幸男君 金田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
林 幹雄君 堀之内久男君
緒方 克陽君 田邊 誠君
金田 誠一君 枝野 幸男君
—————————————
本日の会議に付した案件
厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内
閣提出第七五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/0
-
001・和田貞夫
○和田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として日本鉄道共済組合本部長・日本国有鉄道清算事業団理事鈴木三也君、日本経営者団体連盟政策調査局環境社会部長高梨昇三君及び社団法人全国労働金庫協会相談役船後正道君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
御意見は、鈴木参考人、高梨参考人、船後参考人の順序により、お一人十分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/1
-
002・鈴木三也
○鈴木参考人 ただいま御紹介をいただきました日本国有鉄道清算事業団理事の鈴木でございます。日本鉄道共済組合の本部長を兼ねております。どうかよろしくお願いを申し上げます。
本日は、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案の御審議に関連をいたしまして、参考人としてお時間をいただき、まことに光栄に存じております。せっかくいただきました機会でございますので、日本鉄道共済組合を代表いたしまして、これまでの私どもの状況について御説明をさせていただきまして、私どもの苦しい経営状況につきまして御理解を賜りたいと思いますとともに、今回この法案が提出されまして御審議をいただいていることにつきまして、共済組合といたしまして心から御礼を申し上げさせていただきたいと存じます。
まず、私どもの鉄道共済組合の状況を御説明申し上げます。
御存じのとおり、モータリゼーションの進行などに伴いまして輸送構造の変化が起きて、昭和四十年代からそれが始まったわけでございますが、これに伴いまして国鉄の経営の合理化も進んだわけでございます。
したがいまして、国鉄の職員の減少が昭和五十年代から始まりまして、特に国鉄改革を控えました昭和五十年代の末ごろ、昭和五十八年、五十九年ごろには急激に職員が減少いたしまして、したがいまして、共済組合の組合員の減少が進んだということでございます。昭和四十年度末におきましては四十八万人の組合員が在籍したわけでございますが、現在、直近の数字で平成六年度末には二十万人でございまして、約四割に減少しておるわけでございます。
これに対しまして年金の受給者は、退職年金、障害年金、遺族年金の三つを合わせまして、同じ期間、昭和四十年度と現在を比較いたしますと、昭和四十年度には十七万人でございましたが、現在は何と四十四万人という状況でございます。今の状況を申し上げますと、現役一人でOB二人以上を支えるという状況こ至っております。年金制度の係数で御説明を申しますと、いわゆる成熟度で申し上げますと、現状では二二四%という状況になっておるわけでございます。
このような状況に伴いまして鉄道共済組合の財政は悪化の一途をたどりまして、昭和五十年代に入りましてから保険料引き上げの努力は行ってまいりましたものの、昭和六十年度からはとうとう自前ではやっていけなくなったということでございまして、国家公務員共済の相互の助け合いということで、これを長期給付財政調整事業と言っておりますが、昭和六十年度からは年間四百六十六億円の援助を受けるということに相なりました。
さらに、それだけでは足りなくなりまして、平成二年度からは厚生年金を初めとする被用者年金制度全体によるいわゆる制度間調整事業を開始していただきまして、この仕組みの中で多額の援助をいただいてきております。ちょっと金額を申し上げますと、平成二年度から四年度までは年間千百五十億円でございます。平成五年度及び六年度につきましては九百七十億円、現在の七年度及び八年度につきましては六百二十億円というふうなことで、多額の援助をいただいております。
また、これにあわせまして、平成二年度以降、事業主であります国鉄清算事業団及びJR各社から、特別負担といたしまして年間千二百二十億円の御援助をいただいております。
ここで六年度決算の状況を申し上げますと、支出総額九千八百八十三億円に対しまして、二千二百三十億円の合わせた御援助をいただいておるということでございまして、大変苦しい状況が続いておるということでございます。
しかしながら、私ども鉄道共済年金が現在に至るまで辛うじてこの年金の支払いを維持することができてきておりますのは、これらの御支援があったからでありまして、改めて厚生年金を初めとする関係の方々の御尽力に深く感謝を申し上げる次第でございます。
もちろん、私どもとしてもいわゆる自助努力というのを営々としてやってきておりまして、特に昭和五十九年度以降は、給付の抑制、保険料の引き上げの両面にわたって努力を重ねておるわけでございます。
その歴史を多少申し上げますと、給付につきましては、昭和五十九年度からは一〇%スライド停止ということで、年金額の約一割の圧縮を図ったということでございます。それから昭和六十一年度の大改正におきましては、いわゆる三階部分、職域部分の不支給を行うことといたしました。それから平成二年度からは、さらに踏み込んだ措置といたしまして、かねてから御指摘のありました問題でございます、退職時の特別昇給の結果はね上がっております昇給による増加分の金額の削減を実施しておりますし、さらには標準報酬再評価の繰り延べといったような抑制措置も実行したところでございます。
他方、保険料につきましては、昭和五十年代末に大幅引き上げをいたしまして、厚生年金を三割ないし四割上回る水準を続けてまいりましたが、平成六年末におきましては、おかげさまで公的年金制度に関する関係閣僚会議の決定を受けまして、今後格差は拡大しないという御決定をいただきまして、今回の引き上げでは格差は縮小に向かうということに相なったわけでございます。現在におきましては、鉄道共済の組合員及び事業主は厚生年金を二割弱上回る保険料を負担しておるわけでございます。
以上のような状況で、私どものいわば経営状況、さらに自助努力を御説明申し上げましたのですが、この経営悪化が見え始めましたのは昭和五十年代の初めでございます。いろいろな工夫を始めましたのが昭和五十九年以降ということでございますが、非常に長い間私どもは経営に四苦八苦をしておるというのが実態でございます。いろいろな方々に御迷惑をおかけしているということもございますが、この苦境をぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
御審議いただいております厚生年金保険法等の一部を改正する法律案は、公的年金制度の再編成の第一段階として、旧公共企業体の共済年金を厚生年金に統合することを主な内容とするものでございます。鉄道共済組合では、これまで、公的年金制度の一元化により、財政の長期的安定と給付と負担の公平化が実現されることを強く要望してまいった次第でございます。
この法案におきましては、おかげさまで厚生年金及び共済年金各制度に御負担をいただきつつ、これらの問題につきまして根本的な解決が図られていると認識しております。鉄道共済に対しましても、現有積立金を大きく上回る額の積立金の移換などの努力が求められておりますが、被用者年金制度の中心であり、最大規模である厚生年金との統合によりまして、国鉄及びJR各社の退職者が将来にわたって安定して年金が受給できるようになるものと考えている次第でございます。
さらに、給付と負担についても、今後一般の水準にそろえる方向が示されております。私ども日本鉄道共済組合といたしましては、この法案の内容を高く評価しておる次第でございます。国会での御審議を賜った上で、法案の内容に沿いまして、平成九年四月に厚生年金との統合が実施されることを切に期待しておるわけでございます。
最後に、私ども日本鉄道共済組合といたしまして、この法案の作成に御尽力をいただきました関係各省、関係各方面の皆様方、御審議をいただいております諸先生方に深く感謝を申し上げ、簡単ではございますが、私の発言を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/2
-
003・和田貞夫
○和田委員長 ありがとうございました。
次に、高梨参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/3
-
004・高梨昇三
○高梨参考人 日経連の高梨でございます。日経連で社会保障関係などを担当いたしております。委員長を初め各委員の皆さん方には、常日ごろから日経連の諸活動に対しまして大変な御理解をいただいておりますことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。
また、本日は、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案の審査に際しまして、発言の機会を与えていただきましたことに深く感謝を申し上げます。
まず、現在の公的年金制度の問題点について申し述べます。
既に御高承のとおり、我が国の被用者年金は職域単位の制度として発足し、現在八つの制度に分立して運営されております。職域の違いで独自に制度が運営されてまいりましたことで、各制度ごとで保険料負担に相当の格差が生じております。具体的には、現時点の保険料率あるいは掛金率は、厚生年金が一六・五%であるのに対しまして、JR共済では一九・五九%、私学共済では一二・八%と大きな開きがあります。このうち、私学共済の掛金率には、いわゆる三階部分の負担も含まれているのであります。
昭和六十年改正においては、全国民に共通の基礎年金が導入されますとともに、被用者年金各制度について給付の算定方式を原則としてそろえる改正が行われました。この改正により、我が国の公的年金制度は、一階部分が二十歳以上の全国民が加入する基礎年金制度、二階部分が民間サラリーマンや公務員などが加入する被用者年金制度という構造になったわけであります。この公的年金の上に、民間企業においては、任意に、退職金の移行等の形で企業年金制度が三階部分として上乗せされる形になっております。
先ほど、六十年改正で二階部分の給付の算定方式をそろえたと申し上げましたが、実は、給付面での制度間格差が完全に解消されたわけではありません。と申しますのは、現在、JR、JTを除く共済年金には、厚生年金給付、報酬比例部分の二〇%に見合う職域年金が上乗せされておりまして、いわば公的年金の中に三階部分が含まれる形になっております。こういうように給付面でも格差が残っているわけであります。本来、社会保障としての公的年金制度は、同一給付・同一負担が原則であるべきものと考えます。
また、産業構造、就業構造の変化によって財政危機に陥った制度が生じましたことは、基本的に各制度が職域ごとに分立、運営されてきたために財政基盤が脆弱化したことに大きな要因があり、このままでは、経済社会情勢の変化によって、今後財政悪化を来す制度が生じることも懸念されるのであります。
そのほかにも、制度を移ったときのいわゆる在職老齢年金の取り扱いが違うということや、制度を移ったときの加入手続や年金の請求手続の煩雑さという問題もあり、いずれも職域ごとに分立した現行制度のもとでは解決が難しい問題であります。
ところで、さきの公的年金制度の一元化に関する懇談会におきまして、日経連は次のように主張してまいりました。すなわち、一元化に課せられた役割は、これら現行の公的年金が抱えた問題の解決を図り、国民にわかりやすく、信頼される制度に再構築することであり、そのためには、全制度の統合一本化が最も望ましい方法であるということであります。
また、各制度が独立して運営されてきたこれまでの経緯等を勘案し、第一段階の措置として、旧三公社共済を厚生年金に統合するという考え方をとることがやむを得ない選択であるといたしましても、その際には次のことが求められると主張いたしました。
第一に、将来、全制度の統合一本化を目指すこと、そしてその目標時期を明らかにすること。第二に、厚生年金だけに負担がかかることのないように、被用者年金制度全体で支え合う枠組みを講じること。第三に、共済年金に上乗せされている三階の職域部分を二階部分と分け、その透明化を図ること。第四に、救済される立場の制度においては、一定期間保険料率等の自助努力を行うこと。そして第五に、国民の理解を得るためにわかりやすい情報の公開を行うことなどであります。
さて、今回の改正案のポイントは、被用者年金制度の再編成の一環として、JR、JT、NTTの各共済組合の長期給付事業を厚生年金保険に統合し、旧三共済の組合員を新たに厚生年金の加入者として厚生年金のルールに従って年金を支給すること、統合に際しては必要な額の積立金を移換するとともに、全制度が一定のルールに従って財政支援を行うこと、旧三共済の事業主は健康保険組合を設立すること等であります。
移換すべき積立金の額は、旧三共済が独立制度として運営されていた期間に給付が確定した部分に見合うものとして、JRとNTTがおのおの約一兆二千億円、JTが約一千億円とされております。
また、物価スライド、再評価といった世代間扶養で賄われている部分に見合うものとして、旧JR、JT加入者の保険料の一部を充当するほか、引き続き被用者年金全制度で支援を行うことと六れまして、その支援額の半分は負担能力に応じた公平な分担、もう半分は財政的な成熟度が低い制度がより多く負担するという費用負担の平準化の観点による分担という考え方がとられ、当面五年間の全制度の支援額は年間一千六百億円、うち厚生年金は千二百七十二億円とされております。
なお、旧JR、JT加入者の保険料率は厚生年金の保険料率が追いつくまでの間は据え置き、NTTの保険料率は厚生年金の保険料率にそろえることになっております。
今回の改正案は以上のような内容となっておりますが、日経連としては、全制度統合一本化への第一段階としてやむを得ないものと考えております。
次に、今後の課題についてであります。
一つには、今回の一元化の枠組みは次の段階での統合に際してのルールになるものと説明されておりますが、決して今後単独での運営が行き詰まった制度の救済を図る仕組みということであってはならないわけでして、そのためにも、早期に今後の再編成に向けての道筋が明らかにされるべきであると考えます。
二つには、今後の再編成に当たっては、何よりも国民の理解と支持を得ていくことが重要であります。そのためには、年金財政の安定性や給付・負担の公平性という一元化の基本目標を踏まえた各制度の財政状況等の実態や見通しの的確な検証と、それらに関するわかりやすい情報の公開が不可欠であります。
三つには、共済制度の三階の職域部分は、厚生年金基金と比較した場合、実態面で物価スライド、再評価の有無等の格差が残っており、今後その格差解消に向けて、適切な情報の提供等により職域部分の透明性を高めていくことが求められます。
最後に、昨年七月の社会保障制度審議会の勧告の中で、二十一世紀には被用者年金制度の一元化が実現していなければならないとされているところでありますが、各制度が今後二十一世紀にかけて成熟化する段階がまさにその時期ではないかと考えられます。政府、関係各省庁の熱意と各制度関係者の利害得失にとらわれない姿勢をもって、公平で安定した、真に国民に信頼される公的年令制度を構築していくことが必要であると考える次第であります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/4
-
005・和田貞夫
○和田委員長 ありがとうございました。
次に、船後参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/5
-
006・船後正道
○船後参考人 船後でございます。
本日は、年金改正問題について意見を申し述べる機会を賜りまして、光栄に存じております。
私は、現在、社会保障制度審議会年金数理部会長を務めており、また、先般の公的年金制度の一元化に関する懇談会にも委員として参加いたしました。長年、年金一元化問題に関係してまいりました者の一人として、今回の制度改正案について意見を申し述べたいと存じます。
まず初めに、この問題の経過を簡単に振り返ってみたいと思います。
我が国の公的年金制度は、昭和五十年代ごろまでは、八制度三十一保険者と言われましたように多くの制度に分立いたしておりました。また、財政方式は、いずれの制度も発足の当初は積立方式を標構いたしていたのでありますが、その後、次第に賦課方式への傾斜を強め、ベースアップや年金改定など社会経済情勢の変化に伴う後発債務の一部を後代負担に求めるという、いわゆる世代間扶養の考え方を取り入れた運営に移っていったわけであります。
このような状況のもとでは、制度間に給付と負担の不均衡が生ずることは避けられず、また、産業構造、就業構造の変化に伴い加入者が減少する制度では、財政運営が次第に困難になってまいります。五十年代の終わりごろには国鉄共済年金の財政逼迫が顕在化してまいりまして、五十九年には国家公務員共済組合法と公共企業体共済組合法の統合が行われて、国鉄共済に対しまして旧国家公務員グループによる財政援助が行われることになったわけであります。
同年二月に公的年金制度の一元化について閣議決定が行われましたが、これはこのような情勢を背景としたものでございます。一元化の課題は、改めて申し上げるまでもないと思いますが、年金財政の安定性の確保と制度間の給付・負担の公平性の確保という二点に要約できます。五十九年の閣議決定以降、このような基本的目標の達成に向けて種々の努力が積み重ねられることになったわけであります。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
まず、昭和六十一年には、基礎年金制度の導入によりまして一階部分が一元化され、二階部分につきましては共済年金の給付設計が厚生年金の方式に改められました。これによりまして給付面での統一はほぼ完了し、残る主要問題は二階部分の負担面での格差ということになったわけでございます。しかし、負担面での格差につきましては、各制度が独立した制度として運営されてまいりました経緯があり、これの解消につきまして関係者の合意形成を図ることはまことに困難な問題でございました。
他方、この間、鉄道に加えてたばこ共済の財政の逼迫も顕在化し、両共済の財政問題に対応するため、平成二年からは制度間調整事業が実施されました。これは一元化の地ならし措置と言われたもので、交付を受ける側の制度のいろいろな自助努力を前提として実施されたものでございまして、負担の公平性の確保という一元化の理念からいたしますれば不十分であり、あくまで過渡的なものとして理解すべきものと考えます。
また、この間、年金数理部会におきましては、一元化議論の促進を図るために、平成四年の第三次報告書におきまして、一元化の具体的方式について三つのモデル案を提示いたしたのでございます。
平成六年二月に至りまして公的年金制度の一元化に関する懇談会が設けられ、各制度の代表者もこれに加わり、翌七年二月には皆様御存じのような報告が行われ、制度再編成の第一段階として、旧公企体共済の厚生年金への統合が行われることになったわけでございます。今後の検討にゆだねられました問題が少なからず残りましたけれども、これによりまして負担の公平化について方向性が示され、当面の差し迫った課題であった二共済の財政安定化のための具体的解決策が得られましたことは、一つの前進であったと評価できます。
次に、今回の制度改正案について所見を二、三申し上げたいと思います。
先ほども申しましたように、現在、鉄道とたばこの二共済は、各制度からの財政支援を受けながら給付費を賄っている状況にありますが、このような統合前の期間に係る給付費を統合後どのように賄っていくかということが今回の改正案の大きなポイントであったわけでございます。
改正案は、この統合前の期間に係る二階部分の給付を二つの部分に分けて財政対策を考えております。
一つは、鉄道、たばこ共済が独立制度として運営していた期間に給付が確定した部分につきましては、必要な額の積立金を移換し、他制度の負担としない。その他の部分、つまり物価スライド、再評価といった世代間扶養で賄われている部分につきましては、旧鉄道、たばこ共済加入者が厚生年金に払う保険料の一部を充当するほか、一定のルールに従い被用者年金全制度で公平に支え合う、こういう仕組みとしたわけでございます。
そして、被用者年金全制度による支援につきましては、支援額の半分を負担能力に応じて負担する、すなわち標準報酬総額によって按分する、残りの半分は費用負担の平準化の観点から分担する、すなわち、財政的な成熟度合いが低く負担すべき水準が低い制度がより多く分担する、こういう仕組みとされたわけであります。
制度統合に伴う積立金の移換は、まことに処理の難しい問題であります。各制度の財政方式が完全積立か完全賦課かといったことでそろっているならば、一定のルールによって処理することは可能でありますが、冒頭に申しましたように、現在各制度の財政は修正積立あるいは部分積立ど言われる中間的な財政方式で運営されておりまして、確定した保険料率算定方式なるものが存在いたしません。ですから、一定のルールを見つけるということは非常に難しいわけでございます。結局、各制度が合意された方法によるほかはないと考えます。そういう意味におきまして、今回改正案のような形で積立金の移換と各制度による支え合いを合意されましたことは、高く評価することができると考えます。
この点につきまして年金数理部会は、平成五年の第四次報告書におきまして、修正積立方式のもとにおける財政運営について次のように述べております。引用させていただきます。
世代間扶養の考え方を取り入れた公的年金制度においても、保険料の拠出時点において給付が確定できて、しかもその費用について負担を平準化することが必要であると考えられる部分については、積立方式を取り入れた財政運営を行っていくことが重要である。その際には、この部分の給付に見合う積立金を確保していく必要がある。
このように述べております。今回の改正案はこの考え方の趣旨にも沿うものであり、妥当なものと考えます。
今後の一元化の進め方につきましては、去る三月に、一元化懇談会報告書の趣旨に沿った形で政府の方針が閣議決定されました。四共済におきましては今後この閣議決定の線に沿って検討を進められることになるわけでありますが、私ども年金数理部会におきましても、年金制度の再編成を進めるに当たって、制度の安定性、公平性の確保に関し財政再計算時ごとに検証を行う、そういう要請を受けました。まことに大役でございますが、精いっぱい努力いたす所存でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
以上、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/6
-
007・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/7
-
008・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/8
-
009・根本匠
○根本委員 自由民主党の根本匠でございます。
今回の公的年金の一元化、再編成、これはそれぞれ異なる制度が分立する中で一定のルールをつくったという大変な作業だったわけですが、今回まとまった案、これは私も国民の年金制度に対する信頼を確保したという点で大変大きな意義を有するものと思っております。
今回の公的年金の一元化、再編成を進めるに当たりましては、これはそもそもJR共済の財政破綻に端を発したわけでありますから、その原因がどこにあったのか、そして具体的な自助努力をどのように行ったのか、この辺が他制度の理解あるいは国民の合意を求める上で重要なポイントだと思っております。
まず第一に、鈴木参考人にお伺いしたいと思います。
JR共済の破綻した理由、これは制度運営上いろいろな問題点があったとか、あるいはモータリゼーションの発達で鉄道が衰退して産業構造上の変化の要因があったとか、いろいろな問題点があったわけでありますが、JR共済が破綻した理由をJRとしてどのようにとらえているのか、この点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/9
-
010・鈴木三也
○鈴木参考人 お答え申し上げます。
私ども鉄道共済の破綻した原因ということにつきましては、例えば昭和六十三年度に開催されております鉄道共済年金問題懇談会というのがございますが、ここにおきまして二つの点が指摘されております。
これは今先生がおっしゃいましたように、一つは、モータリゼーション等の進行に伴います就業構造、産業構造の変化ということでございます。二つ目は、やはり国鉄共済時代の制度、それから運営に問題があったのではないかという御指摘でございます。この同様の御指摘は、既に過去におきましても国会の場でかなり行われておるわけでございます。私どもといたしましては、特に日本鉄道共済組合、昔の国鉄共済組合の運営についての御批判は、そのとおり真摯に受けとめなければいけないと考えておるわけでございます。
しかしながら、率直に申し上げさせていただきますれば、事ここに至りました主な理由といたしましては、やはり就業構造の変化、産業構造の変化というのがメーンであったのではないかというように感ずるところがございます。
先ほど御説明いたしましたとおり、昭和四十年度末に四十八万人いた組合員が現在は二十万人ということでございますし、他方、受給をしておられる方々は、四十年度十七万人が現在四十四万人ということでございます。先ほど船後参考人のお話にもございましたように、現在の年金制度は単純な保険数理ではございませんで、世代間扶養ということで、特に物価上昇分、それから賃金の実質上昇分を結局後世代、若い世代が負担するということでございますので、どうしても産業構造の変化がございますともたない面が強まるということでございます。
しかしながら、昔の国鉄共済時代の制度運営等について問題がなかったかといえば、私ども、特に私の今の立場は昔の国鉄共済の事務局を引き継いだ立場でございますので、率直に申し上げましてなかなか?りい面がございますけれども、やはりそういう面がなかったと言うことはできないということでございまして、いわゆる自助努力につきましても、この点の御批判を踏まえまして、これを逐一実施をしてきたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/10
-
011・根本匠
○根本委員 国鉄共済の破綻の原因はそういうことだろうと思うのですが、こういう制度論を考えるに当たっては、まずどういうところに責任があったのか、問題点があったのか、その辺をきちんと峻別してとらえて、そして具体的な対応をするというのが筋だと思います。
今、自助努力のお話がありましたけれども、要はJR共済破綻の原因として、旧国鉄の責めに帰さないいわゆる構造的な要因、それからいろいろな制度上、運営上の問題点、これが大きくあるわけであります。それを踏まえて具体的に相当の自助努力はされてきたわけでありますが、この自助努力、先ほどもお話がありましたけれども、もう少し詳しく、どのような自助努力をどのような観点から行ってきたのか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/11
-
012・鈴木三也
○鈴木参考人 まず、自助努力の中心は保険料率の引き上げということでございます。国鉄共済組合の財政の悪化が始まりましたのは五十年代の初頭でございます。五十年代に入りましてから保険料率の引き上げに努力をいたしました。特に五十年代末には急激な引き上げを実施しておりまして、その結果、厚生年金を三割ないし四割上回る水準まで達したということでございます。こういうことになりますと、三十歳ぐらいの組合員の負担する保険料と申しますのは、厚生年金等の同世代の方と比べますと約一万円高くなるということでございます。そういう努力を実施したというのがまず保険料の面で基本でございます。
それから給付の切り下げ、これはいろいろな面で実施をしております。多少過去の話もございますけれども、まず最初に実施いたしましたのが、昭和五十九年度に私どもの国鉄共済を国家公務員共済の方へ統合させていただきましたときに、百十分の百の切り下げというのをやっております。これはいわゆる職域に見合う部分というものを、もうこの財政状況では負担し得ないということで、百十分の百に圧縮をさせていただいたということ。それから、昔から御批判を賜っておりましたけれども、国鉄共済の場合には退職時の給与水準、その瞬間の給与水準で年金が決まるということになっておりましたけれども、これも五十九年の時点では、退職前一年間の平均給与ということで国家公務員並みにいたしました。これがまず最初の自助努力でございます。
それから、昭和六十一年の基礎年金制度の導入の際におきましては、いわゆる職域部分は不支給ということで、明確に制度上規定をしたところでございます。
それから平成二年度に入りまして、さらに、従来から御批判の強かった、特に国鉄時代に退職時に二階級特進の特別昇給をしておりまして、それに見合って年金がふえているのはおかしいではないかという強い御批判があった部分につきまして、その現に支給されている金額につきまして圧縮を図ったわけでございます。
さらには、平成二年度以降、標準報酬の評価の繰り延べということを実施しております。これはかなり厳しい部分がございまして、金額的にも非常に大きなものがあったというふうに認識しております。
あと、いわゆる自助努力といたしましては、やや細かくなりますけれども、六十歳前の繰り上げ支給制度を鉄道については適用しないといったようなこともやっております。
大体概要は以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/12
-
013・根本匠
○根本委員 私が聞きたかったのは、こういう再編成を進めるに当たっては、繰り返しになりますが、どこに責任があったのかということをきちんと明確にして、具体的な制度を仕組むということが必要だと思いますので、どのような自助努力をされてきたのか、これが聞きたかったわけです。午後また私も質問いたしますので、少し私の頭の方も整理をしたいということでお伺いいたしました。相当な自助努力もされて、ソフトランディングという形で今回の再編成になったということだろうと思います。
それから、船後参考人にお伺いしたいと思います。
これからの公的年金のさらなる再編一元化、これが大きな課題になるわけでありますが、その前提としては、やはり各制度間の財政運営、それぞれの制度の実態、これをきちんと情報公開という形で明らかにする必要がありますし、それから、先ほど船後参考人からもありましたけれども、数理部会に、制度の安定性、公平性に関して財政再計算時ごとに検証を行う、こういう要請があるわけであります。
私はこの数理部会のこれまでの運営、必ずしも十分に承知していないわけでありますが、今までの数理部会はどのような運営を行ってきたのか、その数理部会の目的、内容、運営、それと今回、それぞれの制度のチェック機能あるいはフォローする役割、これが新たに与えられたわけでありますが、その新たに与えられた役割を前提にいたしまして、具体的な新たな役割に対応して数理部会が組織、体制を含めて今の現状でいいのかどうか、あるいは運用で十分やっていけるとお考えなのか、もし数理部会のこれからのあり方につきまして要望等がありましたら、お話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/13
-
014・船後正道
○船後参考人 今後一元化を進めるに当たりまして、数理部会は大変な任務を課されたわけでございます。
ともかくこの一元化という仕事を進めるためには、国民の御理解を前提にして進めねばならない。国民の理解を得るためには、当然のことながら情報は公開していかねばならない、こういうことになるわけでございます。残念ながら、年金に関する情報というものは、非常に専門的な分野でございますので理解しにくい、こういう性格のものでございます。これをいかにわかりやすく国民の皆様に伝えるかということは、今後いろいろな工夫をしていかなければならないと思います。これがまず私ども数理部会で考えております一つの課題でございます。
いま一つの問題は、一元化は各制度の成熟化の進展の度合いに応じて考え、漸進的に進めていく、こういうことになるわけでございます。確かに、現在やっておりますような財政方式のもとでは、各制度の収支の状況なりあるいは積立金の状況というものは、成熟化の進展に伴っていろいろ変わっていくわけであります。そういう動態的な課題をどのように横に並べて比較するかという難しい問題が実は残っておるわけでございます。
数理部会は、従来から、各制度の毎年の決算の状況あるいは五年ごとの再計算の状況、こういうことにつきましてヒアリングをいたしまして、これを分析し、そして評価をする、こういうような仕事を進めてまいったわけでありますが、今後は、この仕事を拡充し、そして本当に一元化の作業に役立てていただかねばならぬということになるわけでございます。
そういたしますと、現在の陣容なり現在の仕組みで十分かという問題が出てくるわけでございますが、正直に申しまして、現在の陣容では甚だ心もとないというような状況でございます。やはり各制度間の正確なる情報を適宜提供を受けねばならない、これが第一の条件でございます。次に、この情報を解析していかねばならないという、非常にこれは人手の要る仕事でございます。こういったことのためには、さらに数理部会、事務局の陣容というものの充実に努めていただき、皆様の御理解を得ていきたいと考えておる次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/14
-
015・根本匠
○根本委員 私も、これからの再編一元化を進めるに当たっては、数理部会の役割が、とりわけフォローする機能、チェックする機能ということで重要だと思っております。
実は、高梨参考人にもこれからの公的年金一元化の道筋について質問したかったわけでありますが、私の持ち時間が終了いたしましたので、終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/15
-
016・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 石田祝稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/16
-
017・石田祝稔
○石田(祝)委員 新進党の石田祝稔でございます。
三人の参考人の方々、きょうは大変に御苦労さまでございます。私、若干時間をいただいておりますので、この年金の一元化法案の審議に資するためにぜひお聞きをしたいことがございますので、よろしくお願いしたいと思います。
まず、三人の参考人に順次お答えをいただきたいのですが、一つは、今回の法案は統合への第一歩と評価をされているのかどうか、これをまずお三人にそれぞれお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/17
-
018・鈴木三也
○鈴木参考人 先ほど船後参考人からも今後の運びの御説明があったとおりでございます。私どもとしては偉大な第一歩であるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/18
-
019・高梨昇三
○高梨参考人 日経連といたしましては、この一元化問題の課題を解決する最も望ましいやり方というのは完全統合一本化だというふうに考えておりますが、懇談会の場でもなかなかいろいろな御意見がございまして、集約、収れんできなかった。そういう事情の中で、またそれぞれの制度が歴史を抱えていて、時間も制約をされているということの中での措置といたしまして、今回の措置は統合一本化への第一歩といいますか、第一段階というふうに位置づけられるのではないかというふうに考えております。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、木村委員長
代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/19
-
020・船後正道
○船後参考人 私も、今回の制度改正は公的年金制度再編成の第一段階と考えております。
先ほど来申し上げましたように、まだいろいろな問題が残っておるわけでございまして、何よりも大切なことは、これらの問題を着実に解決していく。これは国民の理解を得、かつ関係者の合意の形成を図りながらしなければなりませんから、やはり時間がかかると思います。したがいまして、今後できるだけ速やかに、しかし着実に前進していく必要があると考えております。
〔木村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/20
-
021・石田祝稔
○石田(祝)委員 三人の参考人、それぞれ第一歩、第一段階という御評価はされていらっしゃるようであります、若干ニュアンスの違いも感じられますけれども。
続いてお聞きをいたしますが、今回が第一歩といたしますと、その次の二歩目、三歩目、国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済とまだ残っているわけであります。今回の第一歩に続いて、それらの完全統合化、また完全一元化に向けてルールは確立をされた、ですからあとは諸問題の解決をしながら、もうレールは敷かれている、その中で若干時間はかかることがあるかもしれないが、こういうふうな認識なのでしょうか。それとも、第一歩を踏み出したのだけれども、まだその次の段階に至る道筋は見えているのか見えていないのか。私も法案を読んだ段階では全然わかりませんが、これはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、順次お三人の方にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/21
-
022・鈴木三也
○鈴木参考人 本日は日本鉄道共済組合の代表者でございますものですから、今御質問の点につきましては、率直に申しまして大変難しい問題でございまして、私としてなかなかお答えするだけの技量がないというのが本音でございます。
それをお断りした上で申し上げさせていただきますれば、船後参考人が申されましたように、着実に進むための道筋は見えているということで、なかなかそれ以上のことはちょっと私の立場からは申し上げにくいということで、御容赦をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/22
-
023・高梨昇三
○高梨参考人 私ども、政府の方からは、今回の改正措置といいますか、改正のやり方というのは第一段階として位置づけられるものでありますが、次の段階での統合に際しましての一つのルールであるというふうに説明を受けております。
そういうものであると理解をいたしておりますが、ただ、よくよく考えてみますと、三階部分の取り扱いをどうするかという問題は非常に重い問題でございます。ですから、その重い問題をこれから関係者がどういう形で合意形成を図っていくかということをひっくるめて、検討しなければならない課題も残っているのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/23
-
024・船後正道
○船後参考人 一元化の課題は、先ほども申し上げましたように、制度の安定化と給付・負担の公平化ということでございます。したがいまして、これを具体的にいかなる方法で実現するか、いろいろな考え方があり得るわけでございまして、数理部会におきましては、さきに三つのモデルを提起いたしたわけでございます。
この問題は一元化の懇談会におきましてももちろん問題となりました。結局、関係者がいろいろ審議いたしました結果、昨年七月の報告のように、まず第一段階として旧公企体共済を厚生年金に統合する、残った国家公務員、地方公務員共済につきましては、公務員制度としてのあり方並びに社会保障制度としてのあり方を踏まえて、それぞれ財政安定化のための措置を検討する、農林、私学につきましては、その成熟化の進展等を踏まえながらそれぞれの制度の位置づけについて検討を行う、こういう合意形成が行われまして、去る三月八日の政府の閣議決定もこの線に沿って行われたわけでございます。
したがいまして、恐らく今後年金制度の再編成はこの線に沿って行われる、私はそのように思いますし、またそれが関係者の合意であるならば最も近道ではないか、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/24
-
025・石田祝稔
○石田(祝)委員 船後参考人にお伺いをしますが、最後に閣議決定のことも触れられてお話をされましたが、国家公務員共済、地方公務員共済それぞれの中でという形にひょっとしたらなるのではないかと私は思っているのです。
そうすると、一元化というよりも、今回の法案が仮にそのまま通過をしたといたしますと、JR、JT、NTT、それから厚生年金は一つになる、そして国家公務員、地方公務員はそのグループを一つつくる、私学、農林については成熟度を見てということですから、これはある意味では成熟度が一〇〇%を超えて、自分たちで運営できなくなるまでそのままでいるのではないか、こういうふうに私は率直に閣議決定を見ても思えるのです。
そうすると、いわゆる三タイプを平成四年に出されました。一元化の前に公務員グループとか幾つかに分けてやるというのも一つ案が出ておりましたが、どうも一元化というよりも、三つぐらいのグループに分かれてそれぞれいくのではない一か、こういう気がいたしますが、こういう心配はないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/25
-
026・船後正道
○船後参考人 私は、先生が仰せになりましたような懸念はないのではないか、かように考えております。
しかし、そういう懸念は確かにあり得るわけでございまして、それがためにこの閣議決定も、この再編成を進めるに当たって、制度の安定性、公平性の確保に関して再計算時ごとに検証を行う、こういうことを条件にいたしておるわけでございます。この任務が私ども年金数理部会に課せられたわけでございます。ですから、先ほど申しましたように、これは非常に難しい問題ではございますが、大切な仕事だと考えております。
ですから、決して時期を失することのないように、しかも先生がおっしゃいましたように、もう万歳をしてから何とかしてくれといったような失敗を二度と繰り返すことがないように、十分な時間を置き、余裕を持って今後の対策を進めていく必要がある、かように考えておりまして、私は年金数理部会のこの検証の作業は、そういう考え方のもとに進めてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/26
-
027・石田祝稔
○石田(祝)委員 それでは、個別の問題で若干お伺いをしたいのですが、最初に鈴木参考人にお伺いをいたします。
参考人が最初の陳述の中でおっしゃったことでお伺いをしたいのですが、一つは、五十年代の初めに赤が見えてきたというふうにおっしゃったと思います。国鉄の共済年金ではできなくなっていく、こういうことが五十年代の初めに見えてきた、しかし五十九年から努力をしている、こういうことをおっしゃったように思います。このことで間違いなければ、およそ十年にわたる大変なタイムラグがそこにある。赤字傾向が見えてきたのになぜ五十九年まで御努力を目に見える形でされなかったのだろうか、私は率直な疑問があるのですが、これは何かその間やられておったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/27
-
028・鈴木三也
○鈴木参考人 お答え申し上げます。
国鉄職員の減少がやや始まっておるのが五十年代の最初でございまして、五十年代の最初のころに積立金が減少をし始めたということで、その時点から既にいろいろと対策を講じ始めております。保険料の引き上げも五十二年に一回やっております。その後も一回やっておりますが、それからもう一つ、五十三年からは、きょう御出席の船後参考人のお手数を煩わせまして、この対策のための検討を始めております。
今、遅かったのではないかという御指摘でございますが、私の先輩の事務当局者が、仮に私がその時点でそこで在職しておりましたとすれば、どこまでできたかということを今も考えることがございますが、共済制度というのは先生も御存じのとおり非常に複雑なところがございまして、余りに制度が複雑なゆえに透明性に欠けるところがございます。それから、当時の国鉄の労使関係というものが非常に厳しいものであったということもございます。
それで、当時も既に国鉄共済組合の保険料率は国家公務員の保険料率を上回っていたということもございますし、それから五十九年に国家公務員共済組合と統合いたしまして法律を一本化していただきまして、先ほど来申し上げておるような百十分の百への圧縮とか、それから退職時の給料ではなくて一年間の平均給料ベースにするというような改正をやったわけでございますが、これはいずれも大変ドラスチックな改正でございます。したがいまして、おくれがなかったかと言われれば、なかったと申し上げるのは自信はございませんが、かなり当時はそれなりの努力をしたように私は感じます。
つまり、当時私がその場にいたときにもつといいことが本当にどの程度できたかと言われれば、もちろん努力はしていたと思いますけれども、どこまでできたかと言われますと、当時先輩がやったことに比べてもっとできていたかどうかと言われますと、自信のないところもございます。要するに、厳しい状況の中で努力はしていた、ただそれがもっと早くできなかったかと言われれば、その御指摘はあえて受けざるを得ないかなというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/28
-
029・石田祝稔
○石田(祝)委員 続いて鈴木参考人にお伺いをしたいのですが、実は私の友人もJR、旧国鉄で坪用されて現在勤めております。その方のお父さんもお勤めで、いろいろと戦後の御苦労されたこともよく伺って、大変な仕事の中で頑張ってこられたということもよくわかっております。ですから、第一線でまじめに働いてこられた方が自分の退職後の生活設計を考えたときに、ああ、これぐらいもらえるだろう、ですからこういうふうにしていこう、こういうことは当然お考えになる。
そのときに、年金のいわゆる期待権と申しましょうか、そういう部分はそれぞれお持ちになって仕事に励んでこられたのじゃないか。ですから、今回の統合で、第一線でまじめに働いていらっしゃった方が何か負い目を感じるようなことがあっては決してならない。ですから、その間に実はどうしてこういうふうになったかということを、これは産業構造の変化とかいろいろなことで国民の皆さんに理解をしてもらわないと、後々まで引っ張っていくのではないか、こういう思いがしますので、ぜひお伺いをしたいのです。
やはり国鉄の、JR共済の年金数理人という方がいらっしゃったと思うのです。そういう方の判断というものは結果的に正しかったのだろうか、こういうことを私は思わざるを得ないのですが、その数理人の計算を超えて職員の減少があったとか、そういうことが今回の大きな原因だったのでしょうか。ここはどうでしすうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/29
-
030・鈴木三也
○鈴木参考人 大変詳細な御質問でございまして、特に年金数理で年金数理人の御判断はどうであったかということでございますけれども、率直に申しまして、きょうは準備がちょっとそこまで足りておりませんものですから、ややぼやけたお返事としては、当時は努力はしていたと思いますが、年金数理の判断という点については、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/30
-
031・石田祝稔
○石田(祝)委員 それでは、高梨参考人にお伺いをしたいのです。
高梨参考人は、日経連の見解ということでこういうことを述べたのだということで、年金の将来をわかりやすく再構築しなければならない。それで参考人は、一元化ではなくて統合一本化という言葉をよくお使いになっておりますが、これは、一元化ではなくて、いわゆる負担と給付の水準をそろえるということではなくて、そういうものを超えて全部が一つのどんぶりと申しましょうか、一つの中に入るという意味で一本化ということで使われているのでしょうか。そちらの方が望ましいということなのか、ちょっとお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/31
-
032・高梨昇三
○高梨参考人 私が使っております完全統合一本化というのは、船後先生が御苦労なさった社会保障制度審議会の年金数理部会で三つの類型の一元化の形態というものを打ち立てたわけでございますが、その一つの形態として統合一本化、こういうものがあったかと思います。
私どもそのことを指して申し上げておりますが、大枠で申し上げますと、給付と負担が社会保障制度としてのものでございまして、公的年金としての社会保障制度でございますので、それは同一であるべきだということと同時に、財政面で安定性が確保できるきっちりしたものがなければならない、そういうものを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/32
-
033・石田祝稔
○石田(祝)委員 高梨参考人に続いてお伺いしたいのですが、最後にこれからの課題ということで何点かおっしゃった中で、国民の理解と支援が必要である、一元化の目標を踏まえて、目標年次というのでしょうか、そういうものを明確にする必要があるという意味のことをおっしゃったと思います。これは、参考人として、そんなに余裕がないよ、ですからある時期までに決めるべきである、こういう具体的な、純粋に数理計算等もあると思いますけれども、そういうものも含めていつごろまでには一元化は完成させるべきだ、こういうふうなお考えはあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/33
-
034・高梨昇三
○高梨参考人 具体的に千九百何年とか二千何年とかということを申し上げるのは、これから財政再計算ごとに年金数理部会におきまして検証をしていく、こういう過程もございますので、僭越ですので差し控えさせていただきます。
ただ、基本的に、今回の一元化の枠組みというのは次の統合につなげていく、こういうことになっているわけでございまして、そういう意味から、今後の再編に向けての道筋を早期に政府側においてきちっと示していただきたいというのが私ども民間企業サイドの気持ちでございます。
それで具体的には、先ほども申し上げたわけでございますが、それぞれの成熟時期が違ってはまいりますけれども、そのそれぞれの成熟の時期を勘案した二十一世紀にかけて成熟化していく段階という、その前にしておかないといけないのではないかと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/34
-
035・石田祝稔
○石田(祝)委員 済みません。高梨参考人にまたお伺いをします。
先ほど私の統合への第一歩と思うかという質問の中で、その次の質問の将来のルールが確立されたかどうかという中で、やはり公務員共済の三階部分が大変な問題になるだろう、ここをどういうふうに解決していくかということが大事じゃないか、こういう趣旨のことをおっしゃったと思います。
ここのいわゆる共済の三階部分に当たる報酬比例の二〇%のところ、ここはいわゆる再評価もある、物価スライドもある、こういうことで、厚生年金のいわゆる職域部分、JRでは職域部分はもう廃止をされるという大変な負担も負っていらっしゃるわけですが、この公務員共済の三階部分について、これは何か統合一元化の妨げになるという観点から見たときに、どういうふうな解決の仕方があるか、お考えはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/35
-
036・高梨昇三
○高梨参考人 職域部分は、それぞれの制度ごとに設定されるものではないかなと考えております。民間について申し上げれば、厚生年金基金制度あるいは税制上の適格年金制度というものがございますが、それはある意味ではそれぞれの企業ごとにあるいは企業グループごとに、業種ごとに違ったものをつくっているというのが現状でございます。したがって、これから統合をしていくという過程の中で、私どもの主張といたしましては、職域部分を二階部分から分離をするということを主張させていただいているわけでございますが、その過程でどうあるべきかということの前に、その部分についての情報の公開ということをしていただいて、国民に明らかにしていただく中で負担をどう考えるか。
と申しますのは、当然のことでございますが、民間の場合も労使で負担をするということがあるわけでございますし、また今までも共済の関係につきましては労使折半で負担をしているわけでございますが、国家公務員あるいは地方公務員の事業者たる国あるいは地方の負担は、税金が用いられていることになるわけでございます。したがって、国民あるいは住民の判断を求めるということが最も必要なことなのかなと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/36
-
037・石田祝稔
○石田(祝)委員 最後に船後参考人にお伺いをしたいのですが、先ほどの同僚議員への御答弁、御回答の中で、国民の理解が必要である、そのためにも、専門性が非常に強くて、年金数理部会としてある意味では人手が足りないという趣旨のことをおっしゃっておりましたが、今回のこの法案に際して、十二分に国民の理解が得られているとお考えでございますか。また、情報が必要不可欠でございますが、十分情報が開示されているとお考えでしょうか。端的にお伺いできれば結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/37
-
038・船後正道
○船後参考人 大変難しい御質問でございます。
先ほども申しましたように、年金に関することは非常に専門的でございまして、理解しにくい。特に、今回の積立金あるいは各制度による支え合い、これは各関係者が年月をかけて議論を闘わせ、その末にできた一つのルールでございますので、ある意味では理解しにくい。これをどのようにして国民の皆様に御理解願うか、これは今後の問題でございます。これはもちろん政府のお仕事でございますが、私どもといたしましては、理解しやすいような翻訳の仕方についてはできる限り御協力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/38
-
039・石田祝稔
○石田(祝)委員 それでは私の質問を終わらせていただきますが、三人の参考人の皆様、また今後の審議にいろいろとぜひ御協力、アドバイスをいただければありがたいと思っております。きょうはありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/39
-
040・和田貞夫
○和田委員長 緒方克陽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/40
-
041・緒方克陽
○緒方委員 社会民主党の緒方でございます。
本日は、参考人の方々、大変御苦労さまでございます。年金の統合の法案の審議に当たりまして大変貴重な御意見をいただきまして、感謝をいたしております。
そこで私は、ちょっと専門外かなとは思うのですが、年金と雇用というのは大変リンクをしている。そういう意味で非常に重要ではないかという意味で、年金の問題や雇用の問題についても大変造詣が深いというふうに承知をしております高梨参考人と船後参考人のお二人に、まずその辺についてお尋ねをしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
まず、年金受給年齢の引き上げに伴う高齢者の雇用の延長、そして再就職などをどう進めるかという問題であります。
我が国において現在非常に高齢化が進んでいるわけでありますが、雇用政策と年金政策の連携を図りながら高齢者が生きがいを持って暮らすことができるような社会を実現していくためには、豊かな知識経験を生かして、六十五歳に達するまで働くことができるようにすることが非常に重要な課題であろうと思っております。
九〇年の通常国会では高齢者等雇用安定法が改正をされまして、六十歳未満の定年制の禁止が九四年四月に実施、それから六十五歳に達するまでの継続雇用制度の導入、これは九五年四月施行ということになっておりますが、そういうことがされております。年金支給開始年齢までの雇用保障を基本としながら、当面希望する者については、さっき言いましたように六十五歳までの雇用を継続することが非常に重要な課題であると思うわけですが、そういうことを考える場合に、年金支給開始年齢の引き上げなどと連携した形で、高齢化をにらんだ福祉・雇用システムというものをつくる必要があるのではないかと思うわけであります。
そこで、具体的に二点質問いたしますが、一つは、こういった高齢者を生かすポイントということで、それぞれの希望、能力に合わせて働けるような雇用形態が必要だと思うわけでございます。例えばトヨタなどでは、熟練労働者が定年退職でやめられた後、パートタイムやフルタイムで選択的に働くというような雇用形態などがあるわけでございますが、そういうものについてどういうふうにお考えなのかということ。
それから、年金と雇用をリンクするという意味で、政府の方もいろいろな施策はやるわけでありますが、企業の難しい状況もあるという中で、例えば定年でやめたとしても、年金がちゃんと来るというような状況で安心した生活ができるようにするためには、政府なりいろいろな行政がきちんとしていかなければいけない問題もあるのではないかと思うわけでございます。
以上二点について高梨参考人と船後参考人に、御質問の通告はしておりませんでしたけれども、年金そして雇用にも造詣の深い方でございますので、御意見を賜れればありがたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/41
-
042・高梨昇三
○高梨参考人 日経連の中で社会保障関係などを担当いたしておりまして、雇用保険法とか雇用安定法とか直接担当しておりませんので、十分なお答えができるかどうかでございますが、御案内のように、前回の平成六年の改正におきまして、支給開始年齢の引き上げをすることが決まったわけでございます。
これまでの状況を考慮いたしますれば、支給開始年齢の引き上げというのは避けて通れない課題ではなかったかと思います。しかし、支給開始年齢を二〇〇一年から段階的に引き上げるということだけで問題の解決が行われるわけではございません。先生がおっしゃいますように雇用と年金との連携を十分にしなければ、働く人たちにとって所得の保障のない期間が出てくるわけでございますので、そのことを十分に考慮しなければならないわけでございます。
そういう中で、前回の改正におきましても、別個の給付というものを支給するという制度をとると同時に、労働政策の中におきましても高齢者継続雇用ということでの給付金制度を新たに設ける、こういうこともいたしましたし、また、いわゆるシルバー人材ということでの開発事業をより一層強化していこう、こういう施策も打ち立てたわけでございます。
したがって、政府側としてもいろいろな努力を積み重ねておるところでございまして、必ずしもまだ十分ではないと思いますが、私ども民間部門におきましても、それぞれの企業においてできる限りの対策を講じていくということが必要なことだと思っております。
六十を過ぎてまいりますと、それぞれの方々によりまして体力的な問題もあります。また意欲の問題もあります。多様な選択をする、こういうことになってまいりますので、そういう御本人の希望を十分にそんたくした中で、御指摘のような短時間就労といいますか、パートタイマーとしての就労でございますとか、あるいは一日の就労時間は従来同様フルタイムであるけれども週に二日あるいは七百しか出ないとか、そういういろいろな形態での就労の仕方を民間部門においても、それぞれの企業において工夫していくということを積み重ねていかなければならないのかなと考えているところでございます。
御指摘のように、全くそういう意味で、この年金と雇用との連携という問題は大事な、重要な課題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/42
-
043・船後正道
○船後参考人 現在の公的年金制度は、先ほど来申し上げておりますように、いわゆる世代間扶養の考え方で運営されております。したがいまして、扶養する者に比較して扶養される者の数がふえてまいりますと、年金制度は行き詰まることはもう当然でございます。ですから、先生御指摘のように、今後は雇用と、特に高齢者雇用と年金の連携ということが最も大切な問題になってくると私どもは考えております。
既に年金制度の行き詰まりが顕著になりました西欧諸国におきましては、年金の支給開始年齢をさらに引き上げる、六十五歳をもっと引き上げる、アメリカは既に二〇〇〇年には六十七歳にするということになっておりますが、ドイツ、フランス、イタリア、ここらあたりでもやはりこの問題が大きな問題になっておるわけでございます。
我が国におきましては、この年金の支給開始年齢問題につきましては、平成六年の改正で前進が見られたわけでございますが、私は、これでもって万事オーケーというわけにはまいらぬだろうと思っております。この場合に実は考えねばならぬのは、公的年金の支給開始年齢の引き上げ問題だけではなく、企業年金あるいは個人年金といった私的年金の活用問題が大きな問題として残っておるわけでございまして、アメリカや西欧では、この公的年金財政の行き詰まりの問題との関連並びに高齢者の雇用と年金といったような観点から、企業年金の助長あるいは規制といったような措置が進んでおるわけでございます。
我が国におきましては、現在企業年金は非常に微々たる存在にすぎないのでございますけれども、こういう雇用と年金の連携、そして公的年金の支給開始年齢と雇用とのはざまを埋めるものとしての企業年金の役割、こういった点に着目して今後種々検討を積み重ねていく。同時に、最も大きいのは年金税制をどうするかということでございまして、日本の現在のように非常に制限的な税制のもとではこの問題の解決は難しいのではないか、かように私は考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/43
-
044・緒方克陽
○緒方委員 ありがとうございました。
鈴木参考人にお尋ねをしたいと思います。
先ほど来、それぞれの委員から、鉄道共済が大変厳しい状況になってきて、その要因は何なのかとかいろいろ議論がありました。その間たくさんの自助努力がされてきたわけでありますが、何かその努力というのは、年金をもらっている人にとっては、四十年一生懸命働いてきて、そして戦後復興も含めて頑張ってきた人たちに対して、あっという間に自分の年金が下げられたということで、本当に大変な怒りとか悩みとかいうことで私たちにもたくさんの意見があったわけでございます。
それにしても、自助努力というものをされてきた内容について、当事者としてはなかなか言いにくい面もあったと思うのですが、共済として、こんな自助努力をして大変厳しい状況です、年金を受けている人の状況はこうですというようなことについての説得といいますか、あるいは宣伝といいますか、そういうのが必ずしも十分ではなかったのではないかなという気がしますが、それがまず第一点です。
時間が来ましたので、一緒にあと二点お尋ねをいたします。
二点目は、今回の法改正で年金給付の大部分は厚生年金に統合されることになるわけでありますが、存続組合が残るということになるわけでございます。どんな業務が残るのか、これを明らかにしていただきたいということでございます。
それから三つ目に、今回の統合に伴って、聞くところによりますと本部では四十人ぐらいの人間なのかなというふうに聞いておりますが、各JR会社では、厚生の仕事と年金の仕事を一緒にやっているという人もあるやに聞いております。そんな中で、例えばJRから今出向している人が年金に帰るというのがあるのかどうか、そういうことがどういうことになるのだろうかということですね。まあ数は少ないわけですから、清算事業団みたいに二千もいないわけですから雇用問題は起きないと思いますが、それは明確に起きないというふうに言えるのかどうか。
以上、三点についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/44
-
045・鈴木三也
○鈴木参考人 まず第一点目でございます。
私どもさまざまな自助努力をやっておりまして、その中で特に組合員なりOBから苦しいとか困ったという話がございますのは、今までも触れておりますけれども、一つはやはり保険料率がかなり高くなっておる。若い世代にとっては、どうもほかの保険に入っている人よりも月額で一万円ぐらい高い。そういう点はかなりちらほらと今でも聞こえてきております。
それから、OBの方から一番よく聞こえてきております不満といいますのは、いわゆる百十分の百の圧縮をやったわけでございますが、この点についてのいろいろな、どうにかならないかという話はかなり伝わってきております。
国鉄OBには、何か聞くところによりますと組織が二つおありになるそうでございます。私どもとしても、公的年金一元化の第一歩ということで今回のこれが一番いいんだということで、このOBの方々にも何回も接触をいたしまして説得をし、大体において御理解を得られたのではないか。ただ、何せ四十四万人の受給者でございます。やはりお年寄りもおられますので、なかなかもって一〇〇%というところまでいっておりませんで、ひょっとすると御迷惑をおかけしている部分もあろうかと思っております。
第一点についてはそのようなことで、私どもとしても鋭意説得の努力、宣伝という言葉はちょっと申しわけございませんけれども、説明の努力をしておるということでございます。
それから第二点の御質問ですが、私ども日本鉄道共済組合は、今回の改正後におきましても、存続組合という形でいわば残存業務を行う形で残るわけでございます。どういう仕事が残るかということでございますが、今度の改正におきましては、御承知のとおり、今後退職をされて新たに年金をもらわれる方、これは新規裁定の方々と言っておりますが、この方々の年金のうちいわゆる恩給公務員期間相当分等のいわばかなり昔の部分に関する給付は、引き続きこの日本鉄道共済組合が存続する形で支給をするということになっております。それから、いわゆる積立金の移換というのが今後生ずるわけですが、その関係の仕事も引き続きこの存続組合の仕事として残るわけでございます。
なお、御承知のとおり、いわゆる医療保険、短期の健康保険の関係、これは今後、健康保険組合をJR各社において考えていくということになっておるわけでございます。
最後に、日本鉄道共済組合自身の職員の処遇の問題、それからJR各社におられる方々の処遇の問題でございますが、今申し上げましたように、今後健康保険の関係で組合が設立されるということで、当然これに関連して仕事が実態は今までと大差なく続いていくわけでございます。したがいまして、このJR各社におられるような方々が今後仕事量が減るというようなことはまずないというように考えております。
それから、私どもの組合の本部におります方々につきましても、存続組今ないしは健康保険組合の方へ大部分の方が引き継がれていくであろうというふうに考えておりまして、いずれにせよ雇用問題は大変大事でございますので、私といたしましても雇用の確保につきまして万全の努力をしていきたいと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/45
-
046・緒方克陽
○緒方委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/46
-
047・和田貞夫
○和田委員長 荒井聰君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/47
-
048・荒井聰
○荒井(聰)委員 新党さきがけの荒井聰でございます。
きょうは、鈴木参考人、高梨参考人、船後参考人、本当にありがとうございます。私、時間が余りないものですから、三人の方にそれぞれ質問をさせていただくのですけれども、一遍に質問させていただきますので、お答えいただければ幸いだと思ってございます。
まず、高梨参考人にお伺いいたします。
我が国の公的年金というのはさまざまなものがあるわけですけれども、公的年金というのは我が国の産業構造と軌を一にして変化をしてきたし、あるいはせざるを得ないのだというふうに思うわけです。産業の中には、成長する産業もあればまた衰退する産業がある。産業の中で盛衰があって日本の経済社会全体が発展してきた。そういう発展ということを前提にして公的年金制度の安定化が図られていたのではないかな、私はそんなふうに思うわけでございます。
しかし、一方では、リストラをせざるを得ない産業というものは非常に深刻に衰退していくという現象が、ここ数年、随分顕著に見られるようになってきた。産業の空洞化でありますとか、あるいは新しい産業がまだなかなか起きないというような現象もこれまたある。経済成長がだんだん鈍ってきた。あるいは、銀行の金利に代表されますように金利自体も鈍化してきた。
こういう状況は、当初、全体として公的年金の制度を支えていくというときには、余り考慮していなかったことなのではないだろうかというふうに思うわけなのですけれども、こういう点について、産業の構造変化と公的年金というものをどういうふうに考えていくべきなのか。場合によっては、産業の構造改革を年金のサイドから抑制しているというような側面さえあるのではないのだろうかというふうにも思うのですけれども、そのような点が第一点。
それから、私は、公的年金というのはシビルミニマムとしての最低限度の年金制度であるべきだと思うのですけれども、そのためには、民間の生損保の、民間企業における個人年金というものをもっと振興していかなければならないのではないかと思うのです。このあたり、公的な年金制度と私的な年金制度のバランス、あるいは産業振興としてのこういう年金制度というものを日経連としてはどういうふうにお考えなのかということ。
それから、最後の三点目なのですけれども、最近日本人でも外国で働く例が大変多くなってございます。日本も今ドイツとの間で、年金制度の条約といいますか、そういうことを結ぼうということで検討しております。あるいは外国人が日本で働く例というのも多くなってございます。こういう外国との関係をどういうふうに整理していくのかということについて。
以上三点、産業の構造変化に対する公的年金制度のあり方について、それから私的年金制度と公的年金制度との整合性やあり方について、そして外国の年金制度との整合性について、高梨参考人からお伺いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/48
-
049・高梨昇三
○高梨参考人 いずれも大変大きな問題でございますが、産業構造の変遷、衰退、成長というようなことを考慮すればこそ、今回、第一段階の措置として踏み出そうとしているこういう制度の改正が必要なのではないか。現在の制度というのは、産業ごとにといいますか職域ごとに八つに分かれているわけでございますので、それを財政単位を大きくするということが必要なことだというふうに考えております。
ただ、御指摘のございました、経済が低成長基調へ転換をしている問題でございますとか、あるいは金利が低下してきているという問題は、別の問題ではございますが、公的年金制度に与える影響もございますし、それから企業年金制度に与える影響も非常に大きな問題がございます。今ここでは申し上げませんが、制度をその状況に合った弾力的なものにしていく必要があると考えているところでございます。
二つ目の御質問でございますが、公的年金と私的年金との関係でございます。現在の構成というのは、公的年金というものがあって、その上にいわゆる三階部分といいますか、民間企業でいきますれば企業年金部分、厚生年金基金とかあるいは適格年金とかそういうものがございます。それにさらに私的年金、こういうものが上乗せされて老後の生活を保障していこう、こういうものでございますが、この三つのバランスということをよくよく考えていかなければならないのだと考えます。
特に、もらうということだけ考えるのではなくて、それぞれが負担が伴うわけでございます。公的年金の負担、企業年金の負担、また私的年金の負担、その負担のことを考えてまいりませんと、税金で負担をするのか社会保険料で負担をするのか、あるいは企業年金の場合に、それは従業員が負担をするのか会社が負担をするのか、その辺を十分に考えながら制度設計をしていかなければならない状況だと考えます。
それから、外国との関係でございます。我が国とドイツとの間で年金の通算協定が今交渉が進められておりますが、それ以外にも、イギリスとの間でも進められなければならないし、また、人の数でいきますと、やはりアメリカとの関係を解決しなければならないわけでございます。数字はちょっと今持ち合わせておりませんが、日本人でアメリカで働いている人が大変多うございます。これらの場合には、企業が結局は二重に保険料を払っているという実情がございます。また本人にとっても穴があくということが出てまいることもありますので、そういう国際協定を締結するということを促進しなければならないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/49
-
050・荒井聰
○荒井(聰)委員 次に、船後参考人にお願いしたいと思います。
二〇二五年でしたでしょうか、現在は約五人に一人ぐらいで年金を支えている構造になっていると思いますけれども、それが二人で支えていくといったような超高齢化社会を迎えていくわけでして、私なども地元を回りますと、若い三十代の非常に一生懸命働いている人たちが、私たちの時代に本当に年金をもらえるのでしょうかといったようなことさえ質問として出てくる。そういう不安が社会の中にも蔓延しているという状況があるのではないかと思うのです。
そこで、公的年金の一元化というのは社会的に非常に高い要請度を持っているのではないかと思うのですけれども、しかし、年金それ自体は、それぞれ生まれも育ちも違ってきて、それぞれ特色があったり、今までの歴史的なものを持っているわけでございます。これを一気に一元化していくというのは大変難しい筋道を必要とするのだろうと思うのです。この公的年金の一元化、今回第一歩というふうに評価をされておりましたが、これを一歩として、どのぐらいの期間をかけて、どういうバリアを、障害を乗り越えていく必要があるというふうにお考えなのか、そのあたりの御見識を賜れればと思いますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/50
-
051・船後正道
○船後参考人 年金数理部会では、数年前に一元化のモデルとしてA、B、C、三つを提示したわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一元化の課題は安定性と公平性という問題でございまして、この基本目標が達成されるならばいずれのモデルでもいいのではないか、私どもはかように考えております。
したがいまして、今後の一元化がどうなるか、これは先生御指摘のように、それぞれの制度は過去を背負っておりますので、なかなか難しい問題が残ると思います。したがいまして、どういうスケジュールでいくのか私は予想もつかない問題でございますが、ただ言えることは、統合にせよあるいは調整にせよ、難しいのは過去の期間の費用負担をどうするかということであって、将来の期間につきましては、これは問題ないわけであります。
今回の三共済の厚年への統合でもわかりますように、将来に向かっては何の問題もない。これはすべて厚生年金という財政の中で運営されるわけであります。ただ、過去についてどうするか、これにいろいろ問題があり、私が冒頭に申し上げましたように、財政方式が違うところに問題がある。
しかし、今回の三共済の解決方法は、これは考え方としては妥当であったと私は思いますし、恐らく、今後このやり方が先例になるというふうにも思いませんが、考え方は大いに今後の参考になる。皆さんもこの精神でもって、ひとつ統合前の、過去の期間についての費用負担をどのように始末するかということを考えていただきたい。そういたしますれば今後の再編成の進め方というのは比較的スムーズになるのじゃないか。
ただ、先ほど来高梨さんのお話にもございましたように、公務員共済とその他のグループでは三階部分という問題がございまして、この三階部分の処理という問題がございます。これはまたそれほど難しい問題ではございません。やる気になればできないことはない、私はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/51
-
052・荒井聰
○荒井(聰)委員 最後に鈴木参考人にお願いしたいのですけれども、今、船後参考人からも、今回のルールというもの、考え方というものは評価できるというお話でございました。私もそう思うのですね。今回のこのやり方が一つのルールになるだろうし、また妥当な線なのではないかというふうに思うのです。
ただ、鉄道共済の場合には、大変大きな赤字を清算事業団自身が抱えていながら今回負担を出していくということは、清算事業団さんは大変苦しい状況にさらに進んでいるなというふうに思うわけなのですけれども、そういう状況を踏まえて、今回のこのルールというものをどういうふうに評価されるか、御見解を賜れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/52
-
053・鈴木三也
○鈴木参考人 本日、私は鉄道共済組合の代表として来ておりますので、今の御質問は実は事業団本体の話にかかわっておりますので、少しずれておりますが、そういう前提でちょっとお答えをいたします。
今回、まず鉄道共済組合が一兆二千億の積立余を移換するということでございます。これは結局、物価上昇とか実質賃金上昇以外の部分、いわゆる世代間の扶養を除いた基本的な部分については、やはり厚生年金サイドとしても移換をしてもらわなければ困る、こういうお立場で、これは合理的な部分があってもっともであるというふうに考えております。
次に、多分お尋ねの点は、それを事業団が負相することについてのお尋ねでございますれば、じゃ、なぜこの共済組合にしかるべき積立金が残っていないのか、こういう問題になるわけでございます。なぜ積立金が現在減少してしまっているのか、これはなかなかもつて難しい問題でございます。この共済組合においては、今までも物価上昇分とか実質賃金上昇分のファイナンスもやつてきておりますものですから、どうしてもこの辺の制度の調整のおくれというのが響きまして、率直に申しますと、昔の蓄積もかなり侵食されざるを得なかったという点もあります。
先ほど来御質問があったように、じゃ、昔の国鉄共済組合の対応が妥当であったかという論点もありまして、責任割合みたいなものはなかなか難しい点がございます。しかしながら、現在になつてみますと積立金が足りない。じゃ、これはだれに負担してもらおうかということになりますと、現在残っているのはJR各社と私ども事業団だけでございます。私ども事業団は、法律上は日本国有鉄道をそのまま全面的に承継しておるということで、事業主としての地位を承継しておりますものですから、これは大変苦しい状況でございますけれども、やむを得ざるところかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/53
-
054・荒井聰
○荒井(聰)委員 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/54
-
055・和田貞夫
○和田委員長 岩佐恵美さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/55
-
056・岩佐恵美
○岩佐委員 本日は、参考人の皆様にはお忙しい中、どうもありがとうございました。御苦労さまでした。この法律の改正案に絞って幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。
まず、今回の改正案では、国鉄清算事業団とJR各社の支出額が、現行の制度間調整法に比べても千二百二十億円から八百七十六億円へと大幅に減額をされることになります。一方、各被用者年金からの支出額、これは六百六十億円から千六百億円へと二・五倍となります。つまり、労働者に負担を転嫁するということになるという計算になります。この問題について、国やあるいはJR当局がもっと負担をすべきであるというふうに思いますけれども、その点について各参考人の皆様のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/56
-
057・鈴木三也
○鈴木参考人 お答えを申し上げます。
今回のこの法案において提案されております仕組みと申しますものは、今までの被用者年金制度全体の制度間調整という枠組みとは枠組みが異なっておるわけでございます。
今委員のおっしゃいました、今まではJR及び国鉄清算事業団が千二百二十億を負担していたのに対して今後八百億とおっしゃいました点につきましては、ちょっと私、定かでないところがございますが、多分委員が言っておられますのは、いわゆる移換金債務の履行がこうなるのではないかという御質問かと思いますけれども、この点については私ども日本鉄道共済の立場としてはややコメントがしがたいところがございまして、むしろ厚生省及び大蔵省当局にお尋ねを賜りたいと思うわけでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/57
-
058・高梨昇三
○高梨参考人 お答えいたします。
私ども厚生年金を担当する立場からいたしますと、その問題については非常に関心を持った問題でございます。理屈があるのかないのかということで関心を持った問題でございますが、結果的にはやむを得ないというふうに判断をいたしました。
と申しますのは、現在の国鉄清算事業団の特別負担王者二十億円といいますのは、これは国鉄が分割・民営なされましたときの日本国有鉄道改革法等施行法の規定によりまして、JR各社分を含めて負担をする、こういうことになっておりまして、それが平成八年度で終わる、こういう事情がございます。それが来年度から、平成九年度から新しい枠組みの中で行われる、こういうことになりますので今回のような負担の結果になる、こういうことでありますのでやむを得ないもの、こういうふうに考えております。
ただ、残念なことは、この八年度で終了をするということが私どもに対しまして明らかにされましたのは、非常に遅い時期でございました。これは一元化懇談会の場におきましても、もっともっとこういう事実があるということを明らかにすることが必要ではなかったのかなというふうに思っておりまして、こういった情報をひっくるめまして、あらかじめオープンにされて、公平な審議ということがなされることが必要なことだというふうに思っておりますので、年金の問題につきましては、枠組みの問題をもひっくるめまして、これからもぜひ情報公開をすることが必要だ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/58
-
059・船後正道
○船後参考人 具体的な数字につきましてはお答え申し上げる立場にはございませんが、ただ、制度間調整事業と申しますのは、先ほども申し上げましたように、差し迫った鉄道、たばこ、二共済の財政問題に対応するために、各制度の自助努力を前提といたしまして行った措置でございます。
これに対しまして今回の制度改正は、年金制度再編成の第一段階として、負担の公平化という一元化の理念に照らし行われたものでございますから、そして、そのようなことでもって具体的に関係者の皆様がお決めになったことでございますから、私はそれで結構ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/59
-
060・岩佐恵美
○岩佐委員 次に、ちょっと時間が迫っておりますので、二点についてまとめてお答えいただきたいと思うのです。お三人の方からお願いしたいと思います。
一つは、厚生年金保険料より低いNTT共済の保険料負担、これは統合するとすぐに引き上がる。ところがJRの場合には、年額七万円も高い保険料でありますけれども、それは据え置くということになります。これは負担と給付の公平という点から問題があるというふうに思いますけれども、その点について御意見をいただきたいと思います。
それからもう一つは、先ほどから出されている問題で、職域年金部分を将来的にどうするのか。
NTTについてはもうこれはいいのですけれども、あとJR、JTについては、この職域年金部分について私どもはちゃんと確保すべきではないかというふうに思うのですけれども、その点について御意見を伺いたいと思います。
この二点について、済みません、簡潔にお願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/60
-
061・鈴木三也
○鈴木参考人 先ほど来御説明しておりますように、私どもの保険料はかなり高い数字になるというのは御指摘のとおりでございまして、若い世代の不満はそこにあるわけでございますが、せっかくやっていただきます公的年金制度の第一歩としての今回のこの再編成につきましては、いろいろ関係者間の調整の結果、ようやくこういうことに至ったわけでございます。また、先般の閣議決定におきましても、今後この保険料格差は縮小していくということで、これは今後の再計算の都度着実に見直されていくということで、私どもとしては、私どもの保険料がむしろ今後厚生年金並みになっていく道筋が明らかにされたということで、喜んでおるというのが率直なところでございます。
それから職域年金の部分につきましては、これはまさに今後はJR各社が企業年金的なものを設けるかどうかという議論だけでございまして、今回の統合でJRの受給者の方々も、いわば厚生年金並みという大前提のもとで統合していただくわけでございますから、職域年金の不支給の部分につきましては、公の制度としては今後これでいかざるを得ないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/61
-
062・高梨昇三
○高梨参考人 保険料率の問題でございますが、NTTにつきましては厚生年金と統合するわけでございますので、それに保険料率が合わさるということは当然のことと存じます。
また、JR、JTでございますが、高いまま据え置きになるということでございますが、救済される制度はそれなりの自助努力をしていただきたいというのが厚生年金の立場でございます。高いまま据え置きになるのは当然だというふうに考えております。
また、JR、JTの職域部分の問題でございますが、これはそれぞれの制度において考えるべき問題でございまして、私どもからとかくのことを申し上げる筋の問題ではないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/62
-
063・船後正道
○船後参考人 統合に際しまして、JR、JTの保険料が他と比較して高い、こういう問題でございますが、これはやはり過渡的な措置としてやむを得ないのではないか。また、こういうことを前提として関係者が合意されたのでございますから、私どももいたし方がない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/63
-
064・岩佐恵美
○岩佐委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/64
-
065・和田貞夫
○和田委員長 土肥隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/65
-
066・土肥隆一
○土肥委員 御三人の皆さん、きょうは本当に御苦労さまでございます。
平成八年三月八日の閣議決定、「公的年金制度の再編成の推進について」というのが政府から出まして、第一段階として今回の法改正があるわけでございますが、私は、これから社会保障制度審議会、特に年金数理部会の仕事が非常に大事になるのではないかというふうに思っております。
私も二年ほど制度審に席を入れさせていただきましたけれども、まず船後参考人にお聞きしたいのですが、どうでしょう、数理部会は今後、年金制度の検証機関として、組織がえあるいは何らかの手だてをしなければならないというふうにお考えでしょうか。数理部会の組織がえとか拡大であるとか、その手だてを何らかしなければいけないような状態になるのではないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/66
-
067・船後正道
○船後参考人 土肥先生には社会保障制度審議会委員としていろいろ御厄介になったわけでございますが、確かに社会保障制度審議会における年金数理部会の位置づけと申しますか、これはもう先生御承知のとおり、一部会、一つの部会でございます。したがいまして、数理部会自体が中立的な存在とは申せ、各省庁に対しましてそれぞれ調査の権限を持ったり、あるいは助言、勧告ができる、こういう機能を持っているわけではなく、これはすべて社会保障制度審議会を通してやっておる、こういう仕組みでございます。
しかし、私といたしましては、将来、今回の閣議決定のような大役を仰せつかるならば、例えばイギリスにおけるガバメント・アクチュアリーズ・デパートメント、政府アクチュアリー院とか訳しておりますが、こういった一つの公式な立場というものをいただいて、そして公的年金制度の財政は統一的にここで考えていく、あるいはいろいろ調整を図っていく、こういうふうにする必要があるのではないか。
しかし、一挙にそういうことに進むわけにもまいりませんので、現在の機構のもとでできる限りひとつ今回の仕事がスムーズにできますように、スタッフあるいは予算面で種々御配慮をお願いいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/67
-
068・土肥隆一
○土肥委員 ついでに船後先生にお聞きしたいのですが、この閣議決定で、次の第二段階として、国家公務員や地方公務員の共済制度は、成熟度の状況に応じて分析を行い、公務員制度のあり方も踏まえ、まず両制度において財政安定化の措置を検討するとなっておりますが、先生のお考えで、一体いつごろ、そしてどの時点で国共済、地共済を一元化の第二段階として考えておられるのか。
ついでに、農林漁業団体の共済組合、あるいは私立学校もそうでありますが、ちょっと違うのは、公務員制度のあり方というのはもちろんありませんけれども、成熟化の進展等を踏まえ、あるいは財政再計算時に分析を行いと、こうなっております。同じ手法でございますが、どうも私はこの先が見えてこない。今回第一段階で、やれやれと。だけれども、専門家としての船後先生の見通し、大体どれくらいのペースでやるべきかをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/68
-
069・船後正道
○船後参考人 これは大変難しい御質問でございます。
いずれにいたしましても、やはり今後各制度は、現在のような財政方式をとっております以上、成熟度の進展に応じて次第に問題が顕在化していく、のみならず、日本の公的年金制度全体がこの見えない債務がいっかは顕在化していく、こういう状況にあるわけでございますから、対策はできるだけ速やかに打たねばならない。さようでございますので、少なくともこういった一元化といったような問題は、次期再計算期、これは今世紀の終わりでございますが、この次期再計算の機会には、ここにございますようないろいろの検証を行いました上で、私どもとしては何か一つの方向性を示す必要があるのではないか、かように考えております。
ただ、非常に難しい問題であり、かつまた御承知のようないきさつのある問題でございますだけに非常に難しいと思いますので、関係者の各位の御理解と御協力というものが必要であるということは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/69
-
070・土肥隆一
○土肥委員 次期再計算時という大変力強いお言葉をいただきましてありがとうございます。やはりJR、JTみたいに、もうにつちもさっちもいかなくなって、どうしようかという話ではぐあいが悪いと思うのでありまして、ぜひとも今後は数理部会の御健闘、御活躍を期待しまして、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/70
-
071・和田貞夫
○和田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時四十四分休憩
————◇—————
午後一時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/71
-
072・和田貞夫
○和田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田祝稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/72
-
073・石田祝稔
○石田(祝)委員 委員長が開会せよという御命令ですから私は質問をいたしますが、ぜひ定足数に足るように御努力をいただきたいと思います。
まず最初に、エイズの問題でお伺いをします。
先週末から今週の初めにかけまして、各紙で、自民党の代議士が、パソコン通信を使って、エイズ薬害の問題についていろいろと御意見を全国的に発信されている。
これは、私たちは、与野党を超えて、今回のエイズの問題は真相究明に努力をして、そして再発防止をしなくてはならない、こういうことで、委員会の定例日を全部使いまして、一日も休まずに、法案審査と参考人をお呼びしてやっているわけです。そういう中で、厚生省にいらっしゃったその代議士さんが、我々が委員会で真剣に取り組んでおることに対して、それにつながるような形で、エイズ報道は間違いだ、こういうふうなことを言われている。今いらっしゃらないようでありますけれども。
このことについて大臣はどうお考えなのか。私は、大臣は就任以来熱心に取り組んでおられるとある意味では大変評価をしているところもあるのですが、大臣としてはどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/73
-
074・菅直人
○菅国務大臣 私もいろいろな報道機関からそのことを聞かれまして、コンピューターに入っている、ネットに入っているものを見せていただきました。
全体的に言いますと、私は、いろいろな議論がこういう問題ではあるのは自然だし、また、いろいろな見解をそれぞれ述べ合うのは一般的にも当然でしょうし、政治家の中ではもちろん当然なことだと思っております。
そういうことを前提にして、それでは、その中に言われていることと私自身の見解とが同じかというふうに聞かれれば、それは幾つかの点では違っているところがあるということは申し上げております。
例えば、厚生大臣という形で、「厚生大臣もあやまるべきことをあやまるのは良いことですが、それとともに、はっきりと当時の事実関係を把握して正当性を主張すべきことは断固として主張しなければ、真の厚生大臣とは言い難いと思います。」という御指摘をいただいているわけですが、この文面そのものでいえば、そのとおりだと思うのですね。謝るべきことは謝るべきでいいことだということですから、私もそういうふうにしたつもりですし、事実関係を把握しなければならないということもそのとおりだと思いますし、その上で、正当性があると考えれば主張することも当然そうだろうと思っております。
ただ、全体の中でいえば、非加熱製剤の危険性の認識については、私は、一九八三年あるいは八四年、八五年といろいろな経緯の中で当時も相当に危険性が認識されていた、そういう点では非加熱製剤ではない治療法に転換をするというのはもう少し早い時期に転換ができてもよかった、というよりは、そうあるべきではなかったか、そういう点では当時の厚生行政において必ずしも十分ではなかった、そういう点については、そういう認識のもとに裁判所の指摘を踏まえて国の責任を認め謝罪をした、そういうふうに考えておりますし、その考え方は今も変わっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/74
-
075・石田祝稔
○石田(祝)委員 そうすると、発言は自由だし、いろいろな意見を持つのはそれは構わないという前提の上での意見の違いはある、こういうことなわけですね。
ですから、これはある意味では、四月二十六日に厚生省が報告書をまとめられた後のことではないかと思うのですが、省として出された意見に対してやはり不満だということだろうと思うのですが、大臣としては、さっきもちょっと答弁の中でおっしゃいましたが、この議員の言われているようなことも思い当たることがあるような答弁でございましたけれども、そうすると、報告書を出されて、その後の議論として、なお、そういう議論にある程度はわかる部分がある、納得できる部分があると。ということは、報告書を出されて、まだこれは変えられる可能性があるのですか、厚生省としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/75
-
076・菅直人
○菅国務大臣 どの部分を御指摘なのか必ずしもわかりませんが、この内容を見ておりますと、厚生省の報告を踏まえて、その内容を踏まえていろいろな見解を述べられているというふうに私は理解をしております。ですから、必ずしも厚生省の報告書そのものが間違っているというような指摘は特に含まれていないのではないか、ただ、その厚生省の報告書を踏まえての見解が述べられていて、その見解については、先ほど申し上げたような点では若干私とは見解が違うということで申し上げたわけであります。
それと、御存じのように、行政として調査、完全に十分かどうかは別として調査の報告をしたということと、国会ないしはいろいろな場で、それに関連して、あるいはそれ以外の資料でいろいろ議論されるということは、それは当然あって不思議はないことだと思っております。
ただ、何度も申し上げますように、私との見解に差があるかないかと聞かれれば、差があるので、その点については、必要であれば必要なときに申し上げているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/76
-
077・石田祝稔
○石田(祝)委員 引き続いてお伺いをしますが、先ほども少し申し上げましたけれども、四月二十六日に、厚生省がエイズ薬害についての報告を出されました。この報告はどういう性格のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/77
-
078・菅直人
○菅国務大臣 これも何度かこの衆議院厚生委員会でも申し上げておりますように、調査プロジェクトは、一月二十三日にスタートいたしまして、十一の調査項目について、文献などの調査を、公表を前提として調べる、あるいはいろいろな方に質問書を出してそれに返答いただいて調査をする。一応、当初は一カ月程度を一つのめどにということで調査を始めたものでありまして、そういう意味では、役所としての調査ではありますが、それを超えての特別な権限を持って調査に当たったということではなくて、厚生省としての調査ということで行ってきたわけであります。その結果、約三カ月にわたっていろいろな努力をしてまいった結果を、その途中の過程でも、二月二十八日及び三月十九日の報告に続きまして四月二十六日に、まだ未公開であった新たなファイルと同時に、その二十六日の段階での調査結果を盛り込んで公表をいたしたところであります。
その内容については、確かにすべてが整合性がある形で答えをいただいたという形にはなっておりませんし、いろいろな方が記憶がないといったような返事もありまして、そういう点で完全に事実関係を解明できたというふうには考えておりません。
しかし、そうした役所としてのいわば任意の調査という性格で考えますと、当初予定した、あるいは想定した調査については、ほぼ、少なくとも努力はしたのではないかと思っておりまして、そういう意味から、役所の調査としての一応の最終的な報告というふうに位置づけて報告をさせていただいたところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/78
-
079・石田祝稔
○石田(祝)委員 これは、最後におっしゃいましたように、最終報告ということでよろしいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/79
-
080・菅直人
○菅国務大臣 このプロジェクトそのものをいろいろなことを若干想定して存続させておりますので、あるいは今後の国会のいろいろな質疑などによっては、再度何らかの調査を再開しなければいけない場面もあるかもしれないということは思っておりますが、一応、先ほど申し上げたように、当初予定なり想定した問題、あるいはその後若干いろいろなものが出てきた上で考えていた問題について、庁内のプロジェクトによる調査という意味では最終的な報告というふうに御理解していただいて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/80
-
081・石田祝稔
○石田(祝)委員 そういたしますと、一月にプロジェクトチームをつくられて、ほぼ厚生省としての調査はもう終わった、ですから、現時点においては考えられる限りの問題点を拾い上げて、今後出てくる問題については別にして、ほぼ終わった、こういうことでまとめられたというふうに理解をいたしますが、ちょっと済みません、再度で申しわけないのですが、確認をします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/81
-
082・菅直人
○菅国務大臣 厚生省としてというふうに言われると、その後も、御存じのように厚生科学会議とか、あるいは庁内に、関連をする問題でのプロジェクトを幾つか設けておりますので、そういう中でまた、関連をする意味で、いろいろな調査といいますか、関連した事実が出てくる可能性はあります。
今申し上げたのは、一月二十三日に事務次官を責任者として庁内につくりました調査プロジェクトとしての報告としては一応最終的なものと考えていて、先ほども申し上げましたように、何らか大きな事情変更なり新たな事態が起きた場合は、あるいは、組織はそのまま残しておりますので、改めて再開するという可能性もゼロではないという意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/82
-
083・石田祝稔
○石田(祝)委員 そういたしますと、この問題は、御存じのとおり、大変な犠牲を払っていると申しますか、多くの方を犠牲にして今日に至っているわけですが、この問題を一応プロジェクトの最終報告としてまとめられて、国会で報告をする義務があると私は思うのです。
発表されてほぼ二十日になりますけれども、その間、マスコミに発表されただけで、極端に言えば、本会議でも、またこの委員会でも説明をされたことは一切ないわけですけれども、これは大臣、行政の一つの省として、そして事務次官をトップにしたプロジェクトチームが、これだけ何百人もの犠牲者を出した問題の報告をされた、それがプロジェクトチームとしての最終報告である、こういう位置づけの報告を国会で一切なさらないというのは、これは何か理由があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/83
-
084・菅直人
○菅国務大臣 どの段階で、どういう形で御報告をするのが適切かということはそれぞれの場合があると思っております。ですから、もちろん、国会なり委員会で何らかの報告が求められれば当然それには応じるべきだろうと思っております。
ただ、これまでそういう一つの形式といいますか形を役所サイドとして、あるいは私サイドとしてとらなかったのは、特別に意味があるということではないのですけれども、つまりは、役所の内部的な調査では不十分ではないかといったような指摘もこの委員会でもいただいておりますし、そういうことも若干踏まえて、厚生科学会議に何人かの新しい臨時委員に加わっていただいて、役所の関係者以外の第三者の有識者のいろいろな御意見もいただいておりますし、またその御意見をいただいた上で、どういった形でこの問題を、さらに第三者的な有識者の人たちにもう少しいろいろなお願いなどをするべきかどうかとか、そういったことをいろいろまだ検討中でありますので、先ほども申し上げたように、この庁内の調査プロジェクトでの内部的な調査が最終的な報告を出したからといって、厚生省全体としてあるいは私の立場として、それで十分な調査ができて、かつ終わったというふうには必ずしも考えておりません。
そういった意味では、調査プロジェクトとしては最終的報告ではありますけれども、調査全体、あるいはこれからのいろいろな将来に向かっての改革の提言などをいただくというようなことも考えますと、まだいろいろな努力が必要だと思います。そういった点で、そういった調査プロジェクトとしての一定の報告ではありますので、もしその必要があれば、それは御報告することにはやぶさかではありません。
ただ、率直に申し上げて、中身についてはまさに公開をいたしておりますので、それぞれの委員のお手元にも積極的にお届けしたか、どういう手続をとったか、ちょっと詳細は今すぐはわかりませんが、必要なものは要請があれば間違いなくお届けしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/84
-
085・石田祝稔
○石田(祝)委員 ちょっと確認をさせてもらいますが、国会なり委員会でお求めがあれば報告することにやぶさかではない、こういうことでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/85
-
086・菅直人
○菅国務大臣 報告書そのものが公開されておりますので、そのことについてこういう報告をしたということの説明を求められれば説明をいたしますし、今既にお聞きになっていることも含めて、ある部分はその報告書に関連をする問題も含まれておりますので、それに関連した御質問をいただければ、それは当然答えるのが義務だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/86
-
087・石田祝稔
○石田(祝)委員 そういう御答弁でございますから、私はぜひ、求めがあったら御報告をいただきたいと思います。
以前にこの委員会で御質問させていただいたときに、省としてはほぼ限界かな、こういう認識を持っている、こういう御答弁も確かにあったと思います。それで我々も、それでは行政府としての内部調査、こういう段階でなかなか難しいことも確かにあるのじゃないかと。ですから、委員会として、立法府のこの場で真相究明に一歩でも努力しよう、そういうことで、火曜日の一般審査日はもう毎回欠かさずといっていいぐらい、今ずっと参考人をお煩わせをして、私たちも努力をしておるわけでございます。
ですから、立法府として努力を続けていくのは引き続きやらせていただきますが、和田委員長の運営のもと、今熱心に努めておりますけれども、行政府の立場としては、やはり四月の末にプロジェクトの最終報告ということで出されております以上は正式に一度報告する、こういうことが正しい姿ではないか、また、その後の議論が出てくるのは当然でありますから、それにあわせてまた新しい事実がわかれば報告していく、こういうことで国民の期待にこたえていく必要があるのではないか、こういうことを私は最後に申し上げたいと思うのですが、このことについて、大臣はどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/87
-
088・菅直人
○菅国務大臣 先ほども申し上げましたように、形としてきちっと、いついつのこういうことをこういう形で御報告しますという形でしていないことはそのとおりですが、その内容については公表いたしておりますので、実質的なところでは、これまでも、あるいは今の石田委員の御質問の中でも関連した質問をいただいて、答えられるところは答えているというふうに思っております。
ですから、例えばこの委員会として改めてこういう形で報告をするようにという御指摘をいただいた場合は、当然のことながら、それにはきちっと対応したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/88
-
089・石田祝稔
○石田(祝)委員 この問題はここらでやめますが、また引き続き参考人を来週もお煩わせをして参考人聴取もやるようになっておりますので、本会議の方での報告を求められているようでありますし、我々としてもできるだけ真相究明に努力をしていきたい、こう思っておりますから、また特段の御協力をお願いしたいというふうに思っております。
それでは、年金法についてお伺いをしたいのですが、今回の年金法改正の目的、これは端的に言ってどういうことが目的なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/89
-
090・菅直人
○菅国務大臣 今回、年金の統合法案を出させていただいているわけですけれども、この目的についてのお尋ねをいただきました。
公的年金制度は、老後の生活を支える柱となるものでありまして、その長期的な安定と、給付と負担の公平を図ることが極めて重要であるというふうに考えております。このため、全国民共通の基礎年金制度の導入や被用者年金制度の給付の公平化などの改革をこれまでも進めてきたところであります。
しかし、一方において、小規模な制度が産業構造の変化などに対して脆弱であるという問題や、各制度の成熟度等の違いを反映した保険料の負担の問題が残されていたところであります。
このため、今回、JR共済など三共済を厚生年金に統合する法案を提案したところでありますが、今後とも、産業構造の変化、制度の成熟化の進展等に対応して、公的年金制度の安定化、公平化を図るという目的のためにその再編成を着実に進める必要があると考えておりまして、今回の統合法案はある意味では第一段階、このように考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/90
-
091・石田祝稔
○石田(祝)委員 大臣のおっしゃりたいことはよくわかるのですが、私は何となく、JR、JT、NTTの厚生年金への統合ということは今回の法案でよくわかるのですけれども、それ以降の道筋が本当にはっきり示されているのか。午前の参考人質疑の中でもお伺いをしましたけれども、第一歩だ、皆さんそういう御評価は間違いなくされておりますが、その次の段階に至るレールがきちんと敷かれて視界良好、その中でただ時間をかけて問題を解決していって一元化に至る、そういう確信を持たれているようには私はどうも受け取れませんでした。
ですから、お伺いしたいのですけれども、そもそも公的年金の一元化ということはどういうことでスタートをして、これは本当はどういうことを意味しているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/91
-
092・菅直人
○菅国務大臣 公的年金の一元化という大きな目標につきましては、一つには被用者年金制度の財政単位を拡大する、もう一つには共通部分について費用負担の平準化をする、こういう基本的な目標を実現するために、あるいはそういうことを考えて一元化という方向を進めているというふうに認識しております。
そこで、今回の問題を含めまして、民営化、株式会社化しているJR、JT及びNTTの共済組合を厚生年金に統合するということをまずはお願いしているわけですが、今後残された問題としては、国家公務員共済と地方公務員共済について、次の段階ではこの両制度間での財政安定化の措置というものが必要ではないかということで検討する必要があるだろうと思っております。またさらには、農林漁業共済と私学共済については、被用者年金制度全体の中における位置づけについて検討する必要がある、このように考えておりまして、こうした基本的な方針を定めた閣議決定を行ったところでありまして、この方向に沿って漸進的に取り組みを進めているところであります。そういった意味で、先ほど申し上げたように、今回の改正はそういった流れの第一段階というふうにとらえているところであります。
それで、残された四共済についての一元化の進め方やめどについては、今も一応のところは申し上げましたけれども、多少重なりますが、申し上げてみますと、三共済の厚生年金統合後も、政府として被用者年金制度の再編成を推進する考え方でありまして、その旨の基本方針を閣議決定においても定めているということは今も申し上げました。その際、被用者年金制度の分立による不安定な制度運営の負担の不均衡の問題は、主として各制度の成熟化の進展に伴って生ずるものであることから、今後二十一世紀にかけて各制度が成熟化する段階において漸進的に再編成を進めることといたしたいと考えております。
具体的には、国共済及び地方共済の公務員グループについては、特に国共済の成熟度が既に三公社に次いで高いものとなっておることから、まず、公務員グループ内で財政安定化のための措置について検討を進めていく必要があると考えております。
また、農林共済については、現在、農協の組織整備も課題となっているところであることから、その進展が制度基盤に与える影響などを踏まえつつ、今後日指すべき方向を検討する必要があると考えております。
さらに、私学共済については、他の制度に比べ、その成熟度はまだそれほど進んでいない、遅いわけでありますが、今後の成熟化の進展を踏まえつつ、被用者年金制度全体の中における位置づけについて検討する必要があると考えております。
今後、このような基本的方針に沿って、財政再計算時ごとに制度の安定性、公平性の確保に関し検証を行い、被用者年金制度の再編成を着実に進めてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/92
-
093・石田祝稔
○石田(祝)委員 随分先の方まで御答弁いただいたのですが、まだこれから聞こうと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思うのです。
大臣、今御答弁の中で、NTT、JT、JRは民営化されたからやるのだ、こういう御答弁がありましたが、これはそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/93
-
094・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先生の先ほどの、経緯ということで申し上げますと、五十九年の二月に閣議決定がございまして、公的年金制度の一元化という問題が始まったわけです。その前の背景となりますのが、やはりJR共済というのがかなり危なくなってきている、公的年金制度全体で支え合う必要があるのではないか、給付と負担の不公平が出てきた、こういうふうなことで、しかも、制度の長期的な安定というのが非常に難しくなってきたという背景があってこういう閣議決定ができたわけでございます。
そういうことでいろいろやってきたわけでございますが、制度間の財政調整、こういうことで支援措置というものも途中でやってきたわけでございますけれども、これも、自助努力等がこれ以上続かない、こういうことで、JR、JTの支援策といいますのはこのままの状態では非常に継続しがたいというふうなかなりせっぱ詰まったところがあったわけでございます。しかも、先ほど大臣から申し上げましたように、JR、JTそれからNTTも含めまして既に民営化している、どちらかといえばもう厚生年金の対象者に近いのではないかという事情もございまして、これは、引き受け側の労働者側それから使用者側もそういうことで御理解を願ったということで今回統合に至ったという経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/94
-
095・石田祝稔
○石田(祝)委員 局長、聞いていますと、JRが何か危なくなったから統合するのだ、まじめに働いている方に対してそれは失礼じゃないですか。公的年金の一元化の第一歩としてやっているのじゃないのですか。さっきから聞いていると、危ないからとか、民営化されたからとか、どういう趣旨でやろうとしているのか、今の答弁は私はおかしいと思いますよ。もう一度ちょっと答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/95
-
096・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 JR、JTが危なくなったといいますのは言葉がちょっと言い過ぎかもわかりませんけれども、独立した制度として、ほかの制度と同じレベルの保険料負担の水準ではもうやっていけない状態になってきたわけです。したがいまして、このまま放置いたしますれば負担の不均衡というのは非常に拡大いたすわけでございまして、まさに公的年金の一元化が目標といたしております給付と負担の公平それから制度の長期的な安定に反する、こういうことでございます。これに著しく反する可能性があったJR、JT、まだNTTはそういう状態にはもちろん至っていないわけでございますけれども、この際、一元化ということで一緒になろう、こういうことで各制度が合意をいたしまして今回の法案の提案になったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/96
-
097・石田祝稔
○石田(祝)委員 その民営化ということでお伺いをしますが、確かにそれぞれ、昔は公務員のグループでやっておられて民営化された。そうすると、私学とか農林漁業というのは民間じゃないのですか。こういうところはどうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/97
-
098・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 確かに民間の組織だと思っておりますが、制度の関係者の御説明によりますと、例えば私学でございますけれども、私学というのは公立学校の代替措置をやっているものである、こういうふうなことでいわば公立の先生方と同じように扱うべきだ。こういうふうな経緯があって厚生年金から独立していったという経緯もあるわけでございます。
それから、農協、漁協等の組織の方々の御主張によりますれば、農協、漁協といいますのはこれらの地域におきまして市町村の職員と同じような面もある。こういうふうな御主張もあるというように私は聞いているわけでございまして、まさに公的な目的を持つ法人だけの職員を対象にしてきた制度であるわけでございます。そういう意味でこれも厚生年金から抜けてきたというふうな経緯もあるわけでございます。
目的とするところ、私学の方は公立学校の先生と同じような処遇、それから、農協、漁協の農林共済につきましては市町村の職員と同じような処遇が必要である、こういう目的でできた経緯があり、なおかつ独立した経緯もあるわけでございます。こう言う関係団体の方もたくさんいらっしゃるわけでございまして、そのあたりの合意形成に至らなかった。かなり利害が相反する部分があるわけでございまして、これは、粘り強く、時間をかけてやる必要があるわけでございます。
JR、JTの関係につきましても、これは長い間の議論の積み重ねの結果できたというふうに私ども考えているわけでございまして、そういう意味で、一挙にやるというのは非常に難しいということでございますので、財政再計算の折に情報公開あるいは検証等の機会を通じまして検証しつつ、着実に再編成を進めていく必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/98
-
099・石田祝稔
○石田(祝)委員 今いみじくも年金局長がおっしゃいましたが、私学共済も農林漁業共済も、もとは厚生年金の仲間であったわけですね。それが、どういう経緯か私もつまびらかには知りませんが、それぞれで共済をつくった。ですから、今回のJTとかJR、NTTのように、いわゆる昔の恩給という部分はないわけですね。もともと民間の仲間であったのが自分たちでグループをつくった。
ですから、根っこが同じだから、どうして今回一緒にできなかったかという素朴な疑問もわくのですけれども、これは、要するに関係者の利害が一致しないからですか。利害が一致するまで調整していくというのだったら、この公的年金の一元化というのは一体何なのですか。利害が調整するのを待ってやる制度なのですか。そうではないでしょう。要するに、大きな制度の中で将来の社会保障の大事な部分としてやっていくということではないのですか。これは利害調整ができなければできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/99
-
100・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 給付と負担の公平、制度の長期安定というのが一元化ということでございますので、必ずしも一本という形ではないわけでございます。したがいまして、けさほどの船後参考人からもお話があったと思いますけれども、一元化の方式にも幾つかあるということでございまして、一つは一本にする、一つはグループごとに分かれてやる、それから各制度間の財政調整、それから、今回の三共済の統合と申しますのは一元化の懇談会におきましてはD案と称されたものでございまして、一部の制度を着実にやっていくということでございます。
したがいまして、給付と負担の公平、それから制度が長期的に安定するか、こういうことでございますので、その観点からの検証とか情報公開というのは当然必要になるわけでございますけれども、利害が相反するものを強制的に一挙にやるというのは現実的な方法ではないわけでございますので、これは、これからの推移を見ながら粘り強く交渉をいたしまして、その結果の上で再編成が進む、こういうふうなのが現実的な方法ではないかということでございます。一元化懇の報告書にもございますように、二十一世紀にかけまして成熟化してまいりますので、その成熟化の段階を追って一元化の実を上げていく、こういうのが私どもの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/100
-
101・石田祝稔
○石田(祝)委員 大臣、ちょっと確認したいのですが、一本化ということはもう正式に厚生省としてはやめたのですか。今局長の答弁だと、一本化はしないという御答弁を最初にされて僕もちょっとびっくりしたのですが、これはそういうことでよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/101
-
102・菅直人
○菅国務大臣 今、年金局長からも御答弁を申し上げましたが、一元化という考え方を閣議で決定、確認しているわけですが、一元化の考え方の中に幾つかの選択肢があるというふうに理解しております。もちろん、そこにはすべてを一本にまとめるという意味での一元化も一つの選択肢の中には入っているわけですが、同時に、まだ全部を一本にはしないで、共通の要素の強いものを幾つかのグループにして負担と給付の条件の公平化を進める、あるいはそのときに財政調整などもあわせて行う、そういう考え方も選択肢として含まれたものとしての一元化、そういう考え方をとっていると理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/102
-
103・石田祝稔
○石田(祝)委員 そうしたら、ちょっと確認をさせてもらいたいのですが、たしか昭和五十九年ですか、そのときは一本化を前提にして進めておったのではないのですか。それで平成四年のときに、やり方としてこれこれこういうやり方がありますよ、一つにするもの、それから、過渡的なものとして公務員は公務員だけ、民間は民間だけ固めよう、また、それぞれの八つの制度は分立させたまま負担と給付だけはならしていこう、こういうことで、一本化ということが最終目的で、一元化というのはそれぞれの制度を残しながら負担と給付だけはそろえましょうよ、こういうことでなかったのですか。一本化ということはもうやめたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/103
-
104・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 五十九年のときの一元化と申しますのも、これは必ずしも一本化という前提ではないわけでございます。もちろん、一本化を否定しているわけではございませんけれども、幾つかの種類の一つである、基本は制度の長期的な安定と、それから分立をしている場合には負担と給付の公平化、こういうものを図っていくというのが一元化の趣旨というふうに私どもは受けとめてきておりますし、現在もそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/104
-
105・石田祝稔
○石田(祝)委員 この議論はまた後でやらせてもらいたいと思うのですが、他省の方も来ておられますので、お伺いをいたします。
平成八年三月八日の閣議決定について、この中の公務員共済、私学共済、農林漁業共済のことについて今後の見通しをお伺いします。
菅厚生大臣も先ほど御答弁で少し触れられましたけれども、この「公的年金制度の再編成の推進について」という中で、ちょっと読ませていただきますが、
国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合については、それぞれの成熟化の状況等に応じ、財政再計算時ごとに将来の財政見通し等について分析を行い、公務員制度としての在り方をも踏まえつつ、まず両制度において財政安定化のための措置を検討する。こういうふうに述べられております。
これは、将来において厚生年金の方とは一緒になりませんよ、公務員は公務員だけでやっていきますよという意味ですか。これはどういう意味なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/105
-
106・松川忠晴
○松川説明員 今後の被用者年金制度の再編成に対する国共済並びに地方共済の関係の取り組みについてのお尋ねでございます。
先ほど御指摘がございましたように、三月八日の閣議決定で、今後の被用者年金制度の再編成の進め方について基本方針が示されているところでございます。
まず、その前提としまして、基本方針といたしまして、この閣議決定の最初の方にございますように、各制度の目的、機能等についても配慮をしながら、各制度が今後二十一世紀にかけて成熟化する段階において漸進的に再編成を進めることとされております。この点は、過去にいろいろ沿革でありますとか目的、機能等が異なった面がございますので、着実に再編成を進めるためにも円滑に関係者間の合意形成を図ることが重要である、そういう認識に基づいているものだと認識いたしております。
そこで、国共済、地方共済につきまして、この閣議決定で、今議員御指摘ありましたくだりでございますが、大きく分けますと、二つの点について触れておられるわけでございます。
まず、「それぞれの成熟化の状況等に応じ、財政再計算時ごとに将来の財政見通し等について分析を行い、」とありますように、まさに、その成熟化する状況等に応じてそれぞれの制度が将来どのようになっていくのか、そのテンポがどのようになっていくのかということを、かつ、そのことによって、他の制度との関係において、被用者年金制度の再編成の究極の目的であります制度全体の安定性あるいはその公平性といった観点から問題がないのかどうか、そういうことを逐一その時々の状況に応じてチェックしていくことが重要である、こういう観点が一つ含まれているわけでございます。
もちろん、この点につきましては、制度みずからの判断というだけでなくて、制度横断的あるいは中立的、専門的判断が必要ということですから、この閣議決定では、社会保障制度審議会の年金数理部会にも要請して、検証をお願いするということになっております。したがって、国共済といたしましても、その検証作業の結果も踏まえながら検討を進める必要があるわけでございます。
もう一つの考慮要素といたしましては、「公務員制度としての在り方をも踏まえつつ、」というくだりがございます。これは、国家公務員共済につきましては、地方公務員共済とともに、公務員に適用される年金制度といたしまして、公務員制度の一環としての意義を有していることから、そうしたことを十分踏まえる必要があるということでございます。
この点につきましては、職域年金部分の設計に象徴的にあらわれておりますように、この部分につきましては、公務員制度の一環としての役割を果たしているものと私どもは理解をしておりますし、大多数の関係者の理解を得ているのではないかと思っているところでありますけれども、なおその給付のあり方でありますとか財政運営のあり方につきましては、さまざまな意見もございます。そういった中で、やはりこうした職域年金部分の位置づけをどう考えるのかということについて、我々自身だけではなく、ほかの制度の方々におかれましても、十分その位置づけについてコンセンサスが得られるようにしていく必要があろうかと思います。
そうしたさまざまな検討をやりながら着実に検討を進めていきたいということでございまして、委員御指摘のように、あらかじめその結論を出しているということではございません。ただ、そういったような事情から、公務員制度との関連が非常に深うございますので、検討の対象としてはまずは公務員制度の中で検討しよう、こういう趣旨であろうかと認識いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/106
-
107・石田祝稔
○石田(祝)委員 長々と答弁していただきましたが、ここの部分は昭和五十九年で全部わかっていることではないのですか。なぜ今ごろこういうのが出てくるのですか。「公務員制度としての在り方をも踏まえ」なんて、こんなのは当たり前ではないですか。それはもう、年金の一元化、一本化しなければいけないときに、当然入っている話なんでしょう。十何年もたって、それを何で将来の、やらないような理由にするのですか。
「公務員制度としての在り方をも踏まえ」なんてなってくると、公務員は、守秘義務があるとか、また、もちろん民間もそうですが、職務専念義務、いろいろな義務を課せられている。ですから、昔は恩給制度という形でスタートしたわけでしょう。そういうとっくにわかっている話をなぜ今ごろ、平成七年度の年金の一元化に間に合わないのですか。
とりあえずJTとNTTとJRでスタートする、公務員共済、地方公務員共済はできない、その理由に使われていると私は思うのですけれども、これは今わかったことですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/107
-
108・松川忠晴
○松川説明員 確かに委員御指摘のように、この問題はかねてから議論されてきておることでございますので、今後についての理由に使われているのではないかということでございますが、先ほど申し上げましたように、公務員制度の一環としての意義を有しているというふうに理解をしておりますけれども、その理解の仕方については、いろいろな人について意見はさまざまでありましょうし、それはまた、現実問題といたしまして、給付の設計は、かつては恩給制度との関係もございまして、厚生年金とは非常に異なった算定方式でございました。それを昭和六十一年の段階に、厚生年金と同じ方式にそろえるということをやったわけであります。
したがいまして、昭和六十一年以後に退職をされる方につきましては、かなり厚生年金との関係について十分比較ができるような三階建ての形になってきておるわけでございますけれども、給付の設計を見直していく過程においても、過去の方式を引きずっている人たちもやはりおられますので、その検討を進めるに際しても、さまざまな要素がありまして今日に至っているということで御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/108
-
109・石田祝稔
○石田(祝)委員 全然理解できませんね、言っていることは。
さっき私が聞いた、今回改めて閣議という大変大事なところで決められたものは、その後の事情の変化によって出てきたものですか、出てきたものではないのですか、そこだけちょっと答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/109
-
110・松川忠晴
○松川説明員 さまざまな状況を踏まえたものであることは事実でありますけれども、その大きな要素に変更があったというふうには認識いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/110
-
111・石田祝稔
○石田(祝)委員 そうしたら、国家公務員共済を所管していらっしゃる大蔵省として、この間、どういう形で御努力をされたのでしょうか。
十年余り余裕があって、それぞれ大変な思いをして問題を一つ一つ解決してきたのに、平成八年の、一年おくれの段階になって、「公務員制度としての在り方をも踏まえ」なんていうのを出されてきたら、それは、公務員と民間は職責が違いますよ。数字だけで、待遇の面だけで公務員制度ということをとらえているのであれば、これは解決ができると思うのですが、それは、公権力の行使をされる公務員の方が公務員制度を踏まえて年金を考えると言われたら、これは一緒になれないのが当たり前ではないですか。一元化できないのは当然ではないのですか。ですから、やらない理由にしているのではないかと私は言っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/111
-
112・松川忠晴
○松川説明員 鉄道共済を含む問題に照らしてもわかりますように、鉄道共済を被用者年金制度の再編成の中で進めていこうということを議論しておったのはまさに十年前からのことであったわけでございますけれども、その際、給付の算定方式も厚生年金と著しく違う、実際にもらっている年金額も厚生年金よりも高いということでございました。それをいろいろな自助努力という形で努力する中で、今は厚生年金より下がっておるわけでございます。したがいまして、まず給付をそるえていくということについても十分時間がかかる問題でございます。
なお、今、給付の内容についてはほぼそろっているわけでありますけれども、なお職域年金部分の取り扱いにつきましては、私どもとしては、公務員制度の一環として十分それを認識していきたいと思います。その観点からいたしますと、二階までの部分も含めまして、トータルとして公務員制度に対する処遇としてどう考えるかということは引き続き重要な観点であろうかと思っておりますけれども、他方において、そこを二階との関連においてもっと透明性なり財政運営なりについて工夫を重ねる必要があると言われているところでございまして、この点につきましては、情報公開その他で今後とも努力をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/112
-
113・石田祝稔
○石田(祝)委員 これはまた次回にお聞きをします。農林省、文部省もおいでいただいておりますので、私は、この部分は納得をしておりませんから、もう少しお考えをいただいて次回御答弁をいただきたいと思います。
その次に、
農林漁業団体職員共済組合については、構成
団体の組織整備の進展が制度基盤に与える影響
を、また私立学校教職員共済組合については、
その成熟化の進展等を踏まえつつ、財政再計算
時ごとに将来の財政見通し等について分析を行
い、被用者年金制度全体の中におけるそれぞれ
の制度の位置付けについて検討を行う。こういうふうに書かれておりますが、これは農林水産省としてはどういうふうに読まれているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/113
-
114・高橋賢二
○高橋説明員 農林年金制度の大宗を占めます農協系統組織におきましては、御案内かと思いますが、今、組織整備ということで西暦二〇〇〇年に向かいまして組織二段階合併の推進、生産性の三〇%向上ということで検討が進められておりまして、また、実践に向かっているところでございますので、こういったことを含めて、閣議決定にありますように「構成団体の組織整備の進展」、この状況と、当然のことながら制度の成熟化の進展状況、このあたりを踏まえまして検討を進めるというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/114
-
115・石田祝稔
○石田(祝)委員 続きまして、私立学校教職員共済組合について、文部省はどういうふうにお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/115
-
116・齊藤秀昭
○齊藤説明員 お答えいたします。
私学共済は、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、ほかの年金制度と比べまして最も成熟度が低い、また、現時点では財政的にも健全な状況になっておるわけでございます。しかしながら、他の年金制度と同様に、今後、年金受給者がふえる、あるいは児童生徒数の減少という問題が私学の教職員数にどう影響していくかということもございまして、今後の見通しにつきましては、徐々に成熟度が高くなっていくだろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。
したがいまして、こういう状況を踏まえまして、成熟度あるいは財政状況といったものについて、財政再計算時ごとにそれらの将来の見通しを分析し、また、私学共済が年金制度としての安定性という観点からどうなのかということを常に検証しながら、公的年金制度の再編成という課題に適切に対処してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/116
-
117・石田祝稔
○石田(祝)委員 時間の関係で最後にお聞きをしますが、この閣議決定に参加されたのは、きょうおいでになっておるのは菅大臣だけですね、そのときいらっしゃったのは。それで、それぞれに成熟化の進展を踏まえつつというのが文章によく出てくるわけです。ということは、成熟化がそんなに進まなければ、要するにその制度の中で十二分に運営をしていけば、それは一元化の中に加わらなくてもよろしい、その一つの条件たり得るということでこういう成熟化の進展を踏まえつっというのが入っているのですか。
私は、哲学の問題として、全体的に大きな制度の中でやはり将来の社会保障の一環として年金制度はあるべきだと思うのですが、どうも自分たちだけでできるよというところで、その隠れみのに成熟化の進展、こういうものが使われているような気がしているのですが、大臣は閣議決定に参加をされて、年金問題担当大臣としてこれはどういうふうに読まれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/117
-
118・菅直人
○菅国務大臣 私も、かなり古い段階から、かつての国鉄共済年金とか、いろいろな年金と厚生年金の仕組みのいろいろな違いなどを議論したことを少し思い出しながら今の議論もあわせて聞いていたわけですが、先ほども申し上げたように、産業構造が変化をする中では、ある産業なりある企業に大変大勢の雇用者といいましょうか労働者が働いている時期と、あるいはそれがかなり少なくなる時期とが、二十年、三十年という中ではそういう意味でも非常に変化をしますし、同じ数の雇用者がある場合でも、もちろん成熟化というのはある意味では変化をするわけでありまして、そういう点では、成熟化ということをこの中で言っているという意味は、私の理解では、そうしたいろいろな状況の中でそれぞれの制度がある程度、必要性も感じながらお互いの納得の中で合同していく、そういうことをいわば想定しているのではないかと思っております。
今の御質問の趣旨に戻して考えますと、つまりは、一元化という考え方は、確かに理念としてすべての年金を一本化するという考え方がもちろんあるわけです。それに関しましては、もう既に基礎年金部分ではそういう考え方にのっとって、いわば基礎年金の一本化というのは実行されているわけであります。いわゆる上乗せ部分においては、御承知のように、もちろん被用者年金とそうでないものの間でも仕組みが違いますし、また被用者年金の中でも、歴史的にいろいろな制度があったものを一元化していこう。そういう意味では、一元化というものの目標には、先ほども申し上げましたが、一本化という選択もあるし、必ずしも一本化でない形のあり方の選択肢もある。究極の目標は、あえて今の段階でいえば、公平あるいは安定性、安定で給付と負担が公平な全体の仕組みに変えていく、そういうことのプロセスとして今言われました成熟化という考え方が、いわば一つの判断要素として、その制度ごとにあるいはその時代ごとに判断要素として大きな要素となる、そういうふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/118
-
119・石田祝稔
○石田(祝)委員 ですから、私が申し上げているのは、年金の一元化というのは一つの哲学の問題であって、自分の年金の枠の中で成熟化の進展をにらみつつ、これは危ないぞとか、これはまだまだ大丈夫だから一緒にならなくてもいいやとか、そういう問題ではないのじゃないですかと言っているわけです。
ですから、そこのところで「成熟化の進展等を踏まえつつ、」という言葉を入れられると、自分たちでやっていけそうだ、では今の制度でいこうよ、こういうことで一元化を考えるのか、それとも、そうじゃなくて、やはり日本として一つの単位として社会保障の大事な部分としての年金をお互いに日本国民として支え合っていこうというのか、この哲学に違いがあるのじゃないかと私は思いますが、そのときに成熟化なんというのを持ってこられると、そこでまた利害という話が出てくる、それはどうですかと私は聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/119
-
120・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 どの制度におきましても、これから人口の高齢化、少子化に伴いまして成熟化というのは当然進むわけでございまして、ただ、その成熟度合いというのは後継者の数によって著しく異なってくる。といいますのは、JRの例を見ましても明らかであるわけでございまして、どの制度も成熟化になりましたら、もうほとんど給付とか、給付は決めればいいのですけれども、負担の格差というのはなくなるわけでございます。その成熟化が進展している段階でございますけれども、この段階では、まさに成熟度合いというのが各制度違うわけでございます。そのときに、その進行の過程で、はっきり言いますれば、特定産業に偏った制度でございますと、制度の安定も崩れるし、負担が急増する。こういうふうな、はっきり言えば破綻するおそれがあるわけでございます。
したがいまして、私どもが何度も何度も検証と申し上げておりますのは、兆候というのは早目に出るわけでございますので、それを早目にチェックして、その間に協議の上、大方のコンセンサスを得てやっていく、はっきり申し上げて、こういうのが一元化懇における最終的なコンセンサスになったわけでございまして、閣議決定はその線に沿いまして同じような文言を入れさせていただいた、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/120
-
121・石田祝稔
○石田(祝)委員 時間が参りました。質問通告をしておりましたが、時間の都合でできませんでした。申しわけなく思っておりますが、次回にやらせていただきますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/121
-
122・和田貞夫
○和田委員長 青山二三さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/122
-
123・青山二三
○青山(二)委員 新進党の青山二三でございます。
ただいま議論されております年金法の一部を改正する法案につきまして、質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、大臣に公的年金全般の課題についてお聞きしたいと思います。
近年の少子化、そして平均寿命の伸びによりまして、人口の高齢化はさらにさらに進んでいくと予想されております。総務庁統計局の平成六年度全国消費実態調査によりますと、高齢者の単身世帯の実収入、もちろん無職の方でございますが、この方たちの一カ月の収入の平均は、男子が十六万八千三百九十三円、女子が十三万八百四十二円であります。その実収入の中で、公的年金など社会保障給付の占めます割合は、男子が九二一七%、女子が八六・三%となっております。この統計からもわかりますように、高齢者の生活は公的年金に非常に高く依存しておりまして、これからの社会で老後の生活を支えるのは年金であると言っても過言ではありません。だれもが老後収入の半分以上、人によりましては大部分を年金に期待しているわけでございまして、これからの世の中は年金がなければ社会そのものが成り立たない、そういう時代であります。
また、公的年金は、急速な高齢化で、三十年後は、実質的には若い世代二人で年金受給世代一人を支える、そういう時代がやってくるわけでございます。ですから、公平ということがますます大切になってくるわけでございますが、現在は職業によって大きな格差が生じております。
このような中で今回の法案の改正が出てきたわけでございますが、これは先ほど来るる論じられておりますが、公的年金一元化へ向けてのまず第一段階、このように理解しているわけでございます。
そこで、こうした現状も踏まえて、公的年金にはさまざまな課題があると思いますが、大臣としてはどのような課題を考えられ、また御検討なさっているのか、御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/123
-
124・菅直人
○菅国務大臣 今、青山委員御指摘のように、公的年金制度全般については、本当にいろいろな課題を抱えているわけであります。
公的年金は、国民の老後生活に欠くことのできない重要な柱であるということは、今御指摘をきれたいろいろな数字の中でもあらわれていると、私も同様に理解をいたしておりまして、長い老後の生活を確実に支えていくためにこの年金に大変強く期待がされているわけであります。
このため、高齢化や少子化が進行する中で、給付と負担のバランスを確保し、将来の負担を過重なものとしないことは重要な課題だと受けとめております。また、産業構造の変化や制度の成熟化の進展などに対応して、年金制度の見直しを行い、公的年金制度の安定化と公平化を図ることが重要だと考えておりまして、今回のJR共済等三共済を厚生年金に統合する法案を提案したのも、こういった理由によるところであります。
こういった大きな課題に加えて、国民年金の未加入、未納の問題ですとか、基礎年金の国庫負担のあり方ですとか、女性の年金問題あるいは国際的な年金通算の問題、総報酬制の問題、スライド制のあり方、障害無年金の問題あるいは厚生年金基金制度の見直しなど、年金制度をめぐる課題は数多く存在をいたしておりまして、そういった課題を一つ一つ議論をし、適切に対応しながら安定した制度を維持し発展させていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/124
-
125・青山二三
○青山(二)委員 大変な課題を抱えて、これから私たちは真剣に議論を進めていかなければならないわけでございます。
この公的年金制度の一元化というのは、先ほど来るる論じられておりますとおり、もう今から十二年も前から言われている問題でございまして、昭和七十年、すなわち平成七年に当たりますけれども、この平成七年度を目途に公的年金全体の一元化を完了させるという昭和五十九年の閣議決定以来の課題でございます。
そもそもこの一元化の問題は、旧国鉄年金の財政破綻から始まったとも言えるわけでございますが、高齢社会の到来とともに、JRだけではなくて、他のほとんどの制度も財政が悪化するのが目に見えている状況でございます。そこで、どの制度の財政も安定し、しかも公平になることを目的としたこの一元化は、早急に進めなければならない課題でございます。
しかしながら、実際は、先ほど来お話が出ておりますけれども、公務員や私学、農林の各共済組合には独自の経緯がありまして、年金、医療、福祉を総合した、自分たちだけの職域の相互の助け合いの制度として長年にわたって内容の充実と運営の合理化に努力してきた、そんな理由によりまして、一元化をここで直ちに行うということは大変困難な状態となっております。
そこで、この各制度の特殊性や自主性と公的年金全体の一元化とをどう調和させていくのか、今後の重要な課題であろうかと思いますけれども、この点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/125
-
126・菅直人
○菅国務大臣 今御指摘がありましたように、これまで各制度が各職域で独立をして運営した経緯や、各制度の目的や機能、過去の財政運営の努力などについては配慮をしていく必要があると考えております。しかし同時に、被用者年金制度については、制度の長期的な安定と、負担と給付の公平という考え方があわせて重要であるというふうに思っております。
したがって、そういった問題を考えますと、やはり第一には、財政単位を拡大していくということが長期的安定化のためには必要であり、また、費用負担の平準化ということが負担と給付の公平という面で重要だと思っておりまして、そういった方向での再編成を進めていく必要があると考えております。
今後とも、関係者間で十分議論を積み重ねるとともに、制度運営に関する情報公開や、財政再計算時ごとに制度の安定性、公平性の確保に関する検証を行いつつ、着実に再編成を進めていきたい、このように考えております。先ほど委員の御指摘のありました、いわば職域ごとの特殊性などを配慮しなければならないということを一方に持ちながら、しかし同時に、安定で公平な制度にするためには、ある程度の基盤の拡大、平準化が必要だ、そういう方向で再編成を考えているというところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/126
-
127・青山二三
○青山(二)委員 そこで、今回、財政破綻したJRそしてJT共済、また、破綻しつつあるNTT共済、この旧三公社共済と厚生年金との統合問題でございますが、これにつきましては、放漫経営で赤字になれば民営化を大義名分にしまして厚生年金に押しつける結果になっているというような不満の声もあるわけでございます。
近い将来、これまた財政難になると思われます農林共済あるいは国家公務員共済、今回は一元化を見送ることになりましたけれども、先ほど来御答弁をお聞きいたしましたけれども、何かわかりづらい説明でございます。私たちは、有権者あるいは地元の人たちに説明をしなければなりませんので、もっと明確にわかりやすく、もう一度御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/127
-
128・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 各共済制度というのは、年金部門といいますのは長期保険でございまして、これまで非常に長い期間独立して運営してきたわけでございまして、したがいまして、長い経緯を持つわけでございます。
制度の目的とか機能という点で見ましても、農林共済といいますのは、特別の法律に基づきます法人ということで、農協とか漁協の人だけを対象とした制度でございまして、先ほども申し上げましたように、市町村の職員と同じような処遇、こういうふうなことで厚生年金からは抜け出た、こういうふうな経緯も持つわけでございますし、それから国家公務員共済組合につきましては、これは公務員の制度でございまして、恩給以来の伝統を持つ制度であるわけでございまして、こういうふうに各制度の目的とか機能が違うわけでございます。
それから、過去の財政運営というものも違うわけでございまして、積立金の積み立て度合いとか、こういったものも違うわけでございます。したがいまして、こういった面に十分配慮をする必要があるわけでございます。
それから、現在既に受給をされている方それから現役の方、合併をいたしますとかなりの影響をこうむる場合もあるわけでございまして、こういった人たちの合意というものがない限りは理想にはなかなか近づかない、こういう面もあるわけでございます。
今回の改正では、三共済につきましては厚生年金に統合するということで、受け入れ側の方も、先生御指摘のように大変負担がふえるわけでございます。もちろん、厚生年金だけではなくて、ほかの残りました制度も全体で支えるわけですけれども、いずれにいたしましても、それを支える方の制度も大変でございますし、それの御理解をいただかなければいかぬ、それから、移る方の人の理解ももちろんいただかなければいかぬ、こういうふうなことで時間がかかった。
こういうことでございまして、残念ながら、農林共済、国共済につきましては、一元化懇談会におきましては結論が出ないで、一応検討の方向という形は出たわけでございまして、その方向で粘り強く議論をし、合意を得るように関係者が努力する必要がある、そのための情報公開とか検証が必要である、こういうふうに申したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/128
-
129・青山二三
○青山(二)委員 それでは、JR共済についてちょっとお伺いしてみたいと思います。
このJR共済、旧国鉄年金の財政破綻の原因と申しますのが、まず大きな原因は、合理化による職員の大幅な減少、それから受給者の大幅な拡大などがそれに当たるということでございまして、午前中の参考人からもいろいろと御説明をお聞きいたしましたけれども、そのほかにも、放漫経営が年金財政の赤字の大きな原因になっていることも、これは確かだと思うわけでございます。
先ほど参考人の口からはなかなかお話ししづらかったことだと思いますけれども、自助努力という形でその一端をお述べいただいたわけでございますが、例えば、年金支給額というのが退職直前の給料に比例する仕組みになっておりましたので、最後の、退職するときだけの給料を引き上げて年金を大幅にふやす、そんな操作も行った、こんなこともお聞きいたしているわけでございます。そのほかにもどのようなものがあったのか、参考までにお聞きしておきたいと思いますので、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/129
-
130・松川忠晴
○松川説明員 鉄道共済の財政の悪化の原因につきましては、主な要因といたしましては、委員が御指摘いただきましたように、産業構造の変化の中で国鉄が雇用を縮小せざるを得なかった、その結果、年金制度の支え手であります現役組合員数が大幅に減少したことによるものであると認識しておりますが、旧国鉄共済年金時代の制度運営に起因する問題があることも否定できないと考えております。
昭和六十三年の秋に、有識者の懇談会でも分析されておりますように、例えば、制度運営上の問題として指摘し得る問題といたしましては、ただいま御指摘のありましたように、制度上、当時の共済年金の仕組みが退職時の最終俸給を基準として計算されておりましたことから、退職時に特別昇給を運営上、制度としてではなくて運営上、特別昇給を行ったことが年金額に直接反映されるようになった点でございます。
また、負担面につきましては、いろいろと給付が有利な方式になっていた時代もありましたけれども、そうした給付に見合った保険料の引き上げが十分なされていたのかどうかという点についても問題があったのではないかというふうに指摘されている点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/130
-
131・青山二三
○青山(二)委員 このたび、JR共済の積立金ですか、これは持参金ということになろうかと思いますけれども、そうした大きな赤字を厚生年金に押しつける結果となって、それでそのかわりに持参金を持っていく、こういう仕組みだろうと思うわけでございます。
しかし、持っていくこの持参金は一兆円でございますね。しかし、これもJR共済の一年分の支払いにすぎないと言われております。この一兆円のうち、国鉄清算事業団が負担する八千億円、大変な赤字を抱えている清算事業団でございますので、この八千億円だってやがては国民の税金にはね返ってくるのだろう、そしてJR各社が負担いたします二千億円、これだって運賃値上げにつながっていくのではないか、そういう心配が大きいわけでございますが、この点についての見通しをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/131
-
132・金澤悟
○金澤説明員 お答え申し上げます。
国鉄清算事業団の長期債務の償還につきましては、昭和六十三年一月の閣議決定におきまして、「土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る事業団の債務等については最終的には国において処理するものとする」とされておりますし、委員御質問の今回の移換金にかかわる清算事業団の負担につきましても、本年三月に、「既存の債務等と同様の取扱いをする」すなわち、最終的には国において処理するということを閣議決定されております。
そして、事業団が発足いたしました昭和六十二年でございますが、そのとき当初から、清算事業団は、土地あるいはJR株式などの売却によりまして、すなわち自主的な財源の収入によって、当時の清算事業団の負担すべき債務の二十五兆五千億円すべてを償還するという計画であったわけではございません。
今回新たに国鉄長期債務の一部となりますこの移換金にかかわる負担につきましても、委員御指摘のように、結果として最終的な国民負担の増加につながる可能性はございますが、運輸省といたしましては、これにつきましても、今後、事業団の他の長期債務と同様に一生懸命その早期処理に取り組んでまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/132
-
133・宿利正史
○宿利説明員 JR各社が負担することとなります約二千億円の移換金につきまして、お答え申し上げます。
JR各社の移換金につきましては、各社ごとの支払い額や具体的な支払い方法などにつきまして、今後、関係者間で調整を図ることとしております。また、JR各社は現在でも鉄道共済年金の給付費用につきまして七社合計で毎年度二百二十億円の特別負担を行っておりますけれども、今回の移換金の負担につきましても、その負担によりまして各社の経営に与える影響について十分留意しつつ調整を図っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/133
-
134・青山二三
○青山(二)委員 それでは、国民の負担にはね返ってこないようにしっかり御努力を願います。
次に、財政に余裕のある私学共済それから地方公務員共済はこのまま独立していたいと主張していると聞いております。余裕のある間は独立して有利な運営を進めて、苦しくなったら大所帯の厚生年金に助けてもらうというのでは、厚生年金の加入者の不満は強まる一方でございます。これらの制度も厚生年金に統合していくのであれば、財政状況がよいうちに、先ほど来、成熟度、成熟度と繰り返されておりますが、そういう財政が苦しくならないうちに統合しないと国民の理解は到底得られないと思います。
今回の措置を出発点といたしまして、公平で本格的な年金一元化へと向かう努力を本当に真剣にすべきでありますが、一元化へ向けての将来展望をはっきりと大臣の口からお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/134
-
135・菅直人
○菅国務大臣 今回の三共済の厚生年金統合後も、政府といたしましては、引き続き被用者年金制度の再編成を推進する考え方でありまして、その旨の基本方針を閣議決定において定めているところであります。
この閣議決定においては、今後二十一世紀にかけて各年金制度が成熟化する段階において漸進的に再編成を進めることとし、具体的には、国共済及び地方共済については、それぞれの成熟化の状況に応じ、公務員制度としてのあり方も踏まえつつ、両制度において財政安定化措置を検討することといたしております。また、農林共済及び私学共済につきましては、被用者年金制度の中におけるそれぞれの制度の位置づけについて検討を行うことといたしております。
今後、この基本方針に沿って、財政再計算時ごとに制度の安定性、公平性の確保に関し検証を行いまして、被用者年金制度全体の再編成を着実に進めてまいりたいと考えております。
先ほども申し上げましたように、一元化という表現もいたしておりますけれども、基本的には、安定性、公平性を確保するという方向で一元化という考えに基づく再編成を着実に進めていく、このような考え方に立っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/135
-
136・青山二三
○青山(二)委員 昨年七月の公的年金制度の一元化に関する懇談会の報告にもございましたように、また、午前中の参考人もるるおっしゃっておられましたけれども、この公的年金制度に対する国民の理解を得るためには、年金制度の運営状況に関する情報をわかりやすく国民に提供していくことが大切だ、このように私も思います。今回統合が予定されている旧三公社や公務員などの各種共済年金の経営内容が、負担と給付がどの程度だったのかとか、あるいは過去の実態についてはほとんど公開されておりません。このように国民の知りたいことが何もわからないという状況では、一元化を進める上で国民の理解は得られない、このように思うわけであります。
そこで、懇談会での議論の経緯や各制度が提出した資料を整理し公開することや、さらに各制度の保険料や年金水準、そして積立金の額と運用収益、資産などについて、できれば白書というような形で毎年情報公開することを検討すべきである、このように考えますけれども、御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/136
-
137・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先生御指摘のように、年金制度というのはこれからの高齢化社会において非常に重要な制度でございますので、これをぜひとも守り育てていく必要があるわけでございます。そのためにも、国民の方々に御理解願わなければいかぬわけでございまして、できるだけわかりやすい形を工夫いたしまして情報公開に努めていく必要があるというふうに考えているわけでございます。
それで、各制度におきましても、これまでも被保険者数とか受給者数とか財政収支それから積立金の収入、いろいろなデータをもちろん出していたわけでございますし、今回の支援事業につきましても、できるだけわかりやすいような形で公表していくということを考えているわけでございます。
それから、けさほどの参考人の質疑にもございましたけれども、社会保障制度審議会の年金数理部会の方で、財政再計算期ごと、それから毎年でもございますけれども、検証事業をやっていただくわけでございまして、横断的な資料につきましては、白書という名前になるかどうかというのは別にいたしまして、年金数理部会の方にお願いをいたしまして、そういうふうな形で情報公開するように私どもとしても努力をしてまいりたいと思いますし、働きかけをしてまいりたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/137
-
138・青山二三
○青山(二)委員 次に、国民年金の未加入者の問題についてお伺いしたいと思います。
公的年金制度の安定性を確保するためには、この制度の一階部分であります国民年金の基盤を強化することが大切であることは言うまでもございません。昭和三十六年に国民年金ができまして、日本は皆年金の体制になりました。しかしながら、実際には自営業者などのいわゆる百方被保険者には多数の未加入者が生じておりまして、国民年金の空洞化が大きな課題になっているわけでございます。
こうした国民年金の未加入者の推移と現状について、また、国民年金の免除者や未納者についてもその推移と現状をお教えいただきたいと思います。特に未納者につきましては、所得が低いときでも滞納しないで免除という形で資格を確保できる制度があるということをもっともっとPRすれば、未納者の数は随分減るのではないかと思うわけでございますが、こうした努力はされているのかどうか、あわせてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/138
-
139・横田吉男
○横田政府委員 国民年金の未加入者の数についてでございますが、私どもは平成四年公的年金加入状況等調査というのを行っておりますが、その結果によりますと、第一号被保険者になるべき者で加入されていない人が約百九十万人というふうに推計しております。この未加入者の実態につきましては、平成四年度に国勢調査の調査をもとにいたしまして全国の調査対象区を選定し、調査を行った結果でございまして、初めて四年に行ったものでございます。
次に、保険料の免除者数でございますが、ここ数年、増加傾向にございまして、例えば、平成三年では二百五十五万人ということでございますが、平成六年度におきましては三百九万人ということで、ふえております。
次に、国民年金保険料の収納関係でありますけれども、収納率ということにつきまして、私ども、保険料を納付すべき月数の累計に対して納付した月数の比率、検認率と言っておりますけれども、こういった数値で把握しておりまして、この検認率は最近ほぼ同水準で推移しております。平成六年度では八五・三%ということでございまして、未納率としては、その裏側の数値ということで一四・七%ということでございます。この検認率等から未納者の数をおよそということで推計いたしますと、約二百数十万人程度になるのではないかというふうに考えております。
免除等の制度につきましては、私ども、毎年のさまざまな市町村広報等におきましても周知を図っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/139
-
140・青山二三
○青山(二)委員 この国民年金の未加入者がふえていくということは、国民年金に対する国民の信頼が揺らいでいるということでございまして、これは大きな問題になっております。
また、若い世代に将来の年金に対する不信感が強いことも事実でございまして、若い人たちにとりましては、かける期間が長いこと、そして将来いただけるかどうかわからない、こういう不安感が未加入者を増大させる原因になっていると思うのであります。
このような未加入者をなくしていくためには、年金制度に対する信頼を高めていくことが今一番大切なことではなかろうかと思いますけれども、こうした点について、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/140
-
141・菅直人
○菅国務大臣 年金財政の将来見通しにつきましては、人口構造や就業構造の変化などとともに、保険料の段階的な引き上げを織り込んでおり、こうした前提が大きく崩れない限り、年金制度は安定的に運営されていくもの、このように考えております。
年金制度が今後とも長期的に安定したものであるためには、一つには、出生率の回復ということが重要になっております。もう一つは、保険料の引き上げを吸収できるだけの経済成長がある程度維持されるということも重要であると認識をいたしております。
また、年金制度においては、給付と負担のバランスを確保し、将来の負担を過重なものとしないことが極めて重要な課題と受けとめておりまして、平成六年改正において、老齢厚生年金の支給開始年齢の見直しやネット所得スライドの導入などの改革を行ったところであります。
二十一世紀の本格的な少子・高齢社会が到来する中で、今後とも、制度運営に関する情報提供を積極的に行い、国民の合意を得ながら必要な制度改革を行い、安定的に制度を運営していくことが国民の不安感を払拭するために重要だと思っております。
以上、申し上げましたように、年金の将来というのは幾つかの条件をきちんとクリアしていくことによって安定的に運営ができるわけですが、そのことについてはきちっと国民の皆さんにお伝えしながら、そういった選択を将来に向かってとっていくという、そういう国民の選択というものの合意を得ながら運営が行われていくべきだろう、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/141
-
142・青山二三
○青山(二)委員 この国民年金の未加入者の中で若年層が多いわけでございますが、若年層の中でも特に学生が多いことが考えられるわけでございます。学生の場合は、ほとんど親が学費や生活費を負担いたしておりまして、特に地方などそうでございますけれども、さらにその上に親が子供の年金を払う、こういうことになりまして、親の家計を大変圧迫しているのであります。
そこで、学生につきましては、保険料の減額制度などが考えられないか。減額制度の検討の必要性を私は痛感いたしておりますけれども、学生に限らず、基準を決めて減額制度というものを導入すべきと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/142
-
143・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 学生の保険料の減額制度ということでございますけれども、現在の国民年金制度というのは、定額拠出の定額給付、こういう仕組みをとっておりますので、制度の基本にかかわる問題でもございますし、それから、減額の対象というのを学生に限定できるかどうかとか、減額した場合の年金額をどうするのかというふうな問題もございますし、現在、保険料の減免措置を、親御さんが負担するということで、比較的高い家庭につきましても保険料の免除というのをやっておりまして、減額となりますと、それより高い水準になるといいますとかなりの高所得層になるわけでございます。こういう層に減額するような制度を設けることがいかがか、こういうふうな問題もあるわけでございまして、なかなか難しいと思っております。
それから一つ、親元の負担の軽減という観点から、年金の教育資金ということで、在学中の国民年金保険料につきましても還元融資の制度を設けているわけでございます。
学生の適用の関係は非常に難しいわけでございますけれども、私ども努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/143
-
144・青山二三
○青山(二)委員 ああすればいいのではないか、こうすればいいのではないかといろいろ考えて御提言させていただいているわけでございますので、いずれにいたしましても、提言は前向きに検討していただきたいと思います。
公的年金を将来給付されるには、保険料を二十五年以上納めなければなりません。ですから、未加入者や滞納者など国民年金の保険料を納めていない人が、大体推計いたしますと、その月によりましていろいろ異なるようでありますけれども、四百五十万人から八百万人近くいるのではないかと言われております。これは、将来、無年金者や低年金者が多く出るということを示しておりまして、すなわち貧しい老人がふえていく、こういうことでございます。ですから、将来、高齢者の家に生活保護者がふえるのではないか、こんな心配があるわけでございます。これはそのときの社会全体の負担になるわけでございますから、どうしても単に無年金者の問題だけではなくて社会全体の問題である、このように思うわけでございます。
ですから、低年金者や無年金者を少なくしていくことが、今から徹底した対策を立てていくことが重要なのではないかと思っているわけでございますので、今後そうした点も踏まえてどのように対処していくのか、御説明いただきたいと思います。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/144
-
145・横田吉男
○横田政府委員 先生に御指摘いただきましたように、未加入者、未納者の解消を図ってまいりますことは、国民一人一人の将来の年金権の確保というためにも、また年金財政の安定化のためにも、私ども、大変重要な課題であるというふうに考えております。
このため、未加入者対策といたしましては、未加入者の七割が国民健康保険の方には入っているというような実態にございますので、市町村段階における国民年金の事務と国保関係の事務の連携の強化を図りまして、窓口の総合化なりあるいは届出書の一体化をしていただくことによりまして、加入漏れがないような対策を進めてまいりたいというふうに考えております。
それから、二十歳到達者につきましては全員加入していただくという考えに立ちまして、何回か勧奨していただきまして、最終的には未加入であることを確認して手帳送付という形で適用を進めております。これは現在、各市町村の九割ぐらいのところがやっていただいておりますが、一層その充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
さらに、九年一月からの基礎年金番号の導入を目指して現在準備しておりますけれども、これが実現されますと未加入者の把握が非常にやりやすくなるということもございますので、届け出漏れによる未加入あるいは未加入者への勧奨というものがやりやすくなるというふうに考えておるところでございます。
それから、未納者対策でございますけれども、未納者は特に都市部の若年者に多いというような実態もございまして、私ども、なかなか徴収が大変なわけでありますが、こういった険路をなくすために今重点としておりますのは、金融機関を活用した口座振替の促進ということを進めております。それから、当然のことながら、文書、電話、戸別訪問等による催促もやっておりますが、そのほかに、専任徴収員の増員も図りまして徴収の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。
それから、先ほども御指摘いただきましたように、制度に対する信頼の確保というのが大事だと思いますので、新聞、テレビ等を通じました広報活動の充実なり、あるいは年金教育の推進ということで、まだ加入される前からの年金制度に対する理解を深めるような努力をしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/145
-
146・青山二三
○青山(二)委員 それでは、ただいま御答弁の中に出てまいりました基礎年金番号の設定についてお伺いしたいと思います。
この基礎年金番号の設定につきましては、公的年金の番号を統一するということで新年度予算でも二百五十億円ほど計上されておりますけれども、この年金番号の統一につきましては、年金業務が各省庁に分かれておりますために、調整や、また各自治体との連携など大変努力しなければならない点も多々あるかと思いますが、その進捗状況についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/146
-
147・横田吉男
○横田政府委員 御指摘いただきましたように、年金制度につきましては、数十年にわたる長期にわたりまして記録を正確に管理するという必要性があるわけでありますが、最近のように、職業移動が非常に激しくなりまして、制度をまたがって異動する方がふえてきている状況の中におきましては、制度分立のもとでいろいろ不都合が多いということで、従来から、制度間の情報交換というものをもう少し効果的に行うべきである、このために基礎年金番号制度を導入すべきであるという要請を各界から受けてきたところでございます。
こういった要望等を受けまして、私ども、考え方といたしましては、すべての公的年金加入者が基礎年金制度に加入するような仕組みに現在なっておりますことに着目いたしまして、各公的年金制度の番号を共通化することによりまして年金サービスの向上なり未加入者の解消を図っていこうと考えたわけであります。
これにつきましては、関係省庁とも調整を図りながら準備を進めてまいりまして、平成六年度からシステム開発が予算措置されまして、これに基づき、平成七年度でほぼシステム開発は終わったところでございます。八年度におきましては、現在、二号被保険者である厚生年金被保険者等の住所収録作業、あるいは秋ごろからは重複加入のチェック等を行いまして、年末までには各被保険者に対しまして番号の通知をする予定といたしております。
これが実施されますと、二十歳到達加入者等の把握が容易になるということで、未加入者対策あるいは制度をまたがった年金相談、年金裁定等が迅速にできるようになるというような面でさまざまな効果が期待できると考えておりまして、私どもといたしましては、九年一月の実施を目指して全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/147
-
148・青山二三
○青山(二)委員 大変急いで進めていただいているということがよくわかりましたけれども、一つ問題は、一人につき一番号ということになりますと個人情報の集積が容易になるわけでございまして、プライバシー保護の観点から、情報が漏れないような対策も慎重に進めなければならないのではないかと思っております。また、こういう番号が他に使われないように、そういう歯どめも必要ではないかと思っております。
こういうことで、法的な措置も含めてこのプライバシー保護の強化を必要とされるわけでございますが、この取り組みについて、国民一人一人のプライバシーの保護についてはどのように対策をお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/148
-
149・横田吉男
○横田政府委員 私どもが現在進めております基礎年金番号につきましては、年金分野における使用を専ら行うものでございまして、その使用も、加入者と保険者の間で使用されることになるわけであります。本人の方にとりましても、普通は年金手帳等は金庫にしまわれているケースも多いと思われますので、私どもといたしましては、基本的には、この情報が第三者に漏れるケースは少ないというふうに考えておりますけれども、先生御指摘のように、プライバシー保護の重要性にかんがみまして、その管理につきましては最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
このため、一つとしては、個人情報保護法というのがございますが、こういった法律を踏まえまして、社会保険業務センターの中に基礎年金番号を専門に管理する年金番号管理室を設置いたしまして、また、データ保護管理規程を設けまして、データの提供は本人が確認できた場合以外は行わない、あるいはIDカードによる電算室の入退室の管理なりデータの取り扱いの制限、あるいは本人に対しましても、本人の方から番号が出ていく可能性もございますので、第三者に番号を示すこと等につきまして慎重な取り扱いをお願いいたしたいというふうに考えております。
万が一、基礎年金番号が他人に悪用されまして本人が不利益を受けたというような場合には、その本人の基礎年金番号を変えてあげることによりまして対応いたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/149
-
150・青山二三
○青山(二)委員 それでは、まだいろいろと質問も考え、通告もさせていただきましたが、時間が参ったようでございますので、この次にさせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/150
-
151・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 桝屋敬悟君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/151
-
152・桝屋敬悟
○桝屋委員 新進党の桝屋敬悟でございます。
引き続き、今回の厚生年金統合の法案につきまして質疑をさせていただきます。大臣も先ほどからこちらから見ておりましたら大変お疲れのようでございますので、あと一時間みっちりおつき合いをお願い申し上げたいと思います。
私は、二つ質問を考え、議論をさせていただきたいと思うのでありますが、一つは、年金も含めます年金、医療、福祉、社会保障全体の我が国の動向といいますか、財政の状況等についてまずお話をさせていただきたい。しかる後に厚生年金基金の問題、一元化に係る重要な問題も今出ておりますから、そうした問題について議論させていただきたい、このように思います。
最初は、大臣とぜひお話をさせていただきたいのでありますが、実は、この厚生年金保険法の改正案が本会議で趣旨説明があり、質疑もございました。その中で同僚の福島議員から、特に二十一世紀福祉ビジョン等につきまして、給付と負担のあり方を国民にお示しをするべきではないか、こういう議論をさせていただいております。その中で大臣は、二十一世紀福祉ビジョンにつきましては、給付と負担の将来見通しをその後の状況の変化あるいは介護保険の議論も踏まえて必要な見直しを検討したい、このようにたしかおっしゃっておられます。
きのう、きょうとマスコミにも総理もいろいろなことをおっしゃっているようでありまして、特に社会保障全体に係ります給付と負担の今後の見通し、このビジョンをどのようにお示しになる予定なのか、具体的なこれからの流れをまずお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/152
-
153・菅直人
○菅国務大臣 平成六年三月に二十一世紀福祉ビジョンを取りまとめた際に、将来の社会保障の給付と負担のあり方についての議論の素材として「社会保障に係る給付と負担の将来見通し」をお示ししたことは委員も御承知のとおりであります。その後、平成七年十二月には新しい経済計画が策定され、また新ゴールドプランなど保健、福祉の三プランが策定されたところであり、こうした点を踏まえ、またさらに高齢者介護保険制度の検討も今まさに進んでいるわけでありますので、こういった問題も視野に入れながら「社会保障に係る給付と負担の将来見通し」について見直しを行う必要がある、このように考えております。
今後、関係審議会の会長にお集まりをいただく場を設け、その場において社会保障制度のあり方について御検討いただきまして、そうした皆さんの御意見も踏まえて、秋口をめどにして社会保障の給付と負担に係る将来推計を行ってまいりたいと思います。
なお、こうした本会議での御質問に対してお答えをした以降、確かに今委員もおっしゃるとおり、いろいろな動きが報道などを含めて伝わってきております。そういった意味では、比較的間近に迫った例えば消費税問題などを含む問題とか、あるいは二十一世紀の初頭といったような言い方とか、あるいは高齢化のピーク時といったような言い方とか、それぞれの時点についていろいろな数字や見通しなどがあることは御承知のとおりでありまして、そういった点で、今申し上げた方向で考えておりますけれども、場合によってはそういう別の場ではさらに議論がいろいろな形で展開をされる、それに対して私どもとしても何らかの対応をしなければいけないのではないか、そういうことも考えながら準備をしようとしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/153
-
154・桝屋敬悟
○桝屋委員 今大臣が、秋をめどに、このようにおっしゃいまして、恐らく九月という意識もお持ちだろうと思うのですが、実はきょうの日経新聞にかなり私も見てびっくりするような内容が出ておりまして、びっくりというか当然の内容なんですが、総理が「十四日、次期衆議院選挙をにらんだ」、この表現は余り好きでないわけでありますが、「にらんだ政策構想(橋本ビジョン)の柱として社会保障サービスや、それを支える国民負担の将来像を示す「新・福祉ビジョン」を打ち出す意向を固めた。」これは橋本ビジョンですから、それは向こうでおやりになるのだろうということかもしれませんが、やはり政府として、総理がこういうふうにお考えになっている、これに対して、今の大臣の御答弁は秋までにという、これは大体同じ意味合いだというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/154
-
155・菅直人
○菅国務大臣 この日経新聞の記事を私も拝見をいたしましたが、ここで言われている「新・福祉ビジョン」というものがどういう位置づけで考えられているのか、あるいは報道されたのかということは、まだちょっと確かなことを私の立場で申し上げるほどの材料は持っておりません。
ただ、もう既に報道もされておりますが、総理のもとで四つの審議会、財政制度審議会、税制調査会、経済審議会、社会保障制度審議会の会長とあるいは大蔵大臣や経企庁長官や厚生大臣を交えての懇談会等に参加するよう指示をされておりまして、そういった点では、あるいはこういったものをそういった場で意見交換をして進めよう、そういう御意向を持っておられるのではないかというふうにも拝察をしておりまして、そういった点で、先ほど申し上げたのは、まさに、きょうのこの新聞のようなことよりも、前の、従来の流れで考えていた問題でありまして、従来の流れは流れとして進めてまいりますが、新たなそういった場ができた場合には、またそれはそれとして対応できるように今考えを進めなければいけない、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/155
-
156・桝屋敬悟
○桝屋委員 きょうの新聞でありますから、今から政府内でまた調整もあるのでありましょう。
もう一度大臣、確認をさせていただきたいのでありますが、既に消費税率については三%から五%が決まっているわけでありまして、実は、平成六年の十一月にこの消費税率の議論がされたときに、私も税特委に出まして、当時の村山総理と三十分ほど議論をさせていただきました。
そのときに、税率が先に決まるのではなくして、ちゃんとした福祉ビジョン、当時は新ゴールドプランもまだ確定をしていなくて、先ほど言われた福祉関係のいろいろなプランもまだ出ていなかったわけでありますから、ぜひそういうものはきちっと整理をして、それから税率、税制の問題に入るべきではないか、それがやはり国民の理解を得る一番の方法ではないか、随分激しい議論をしました。
村山総理は、そのときは、プランは急いで早くつくればいいというものではない、じっくり検討するのだ、検討すると言ったら検討する、このようにおっしゃって今日に至っているわけでありまして、いよいよ九月、今年九月、消費税率の五%を前提とした議論がなされるわけでありますが、もちろん五%でとどまるものではなくして、改めて社会保障全体の姿も見直しをした上で必要であれば云々という、こういうことになっているのだろうと思います。
そういう意味では、私は、秋までにというふうにおっしゃいましたけれども、この五%の消費税率の議論をする中で、厚生大臣としては、今の福祉ビジョンについてきちっと方向性を出す、新たな給付と負担の将来見通しを示します、このようにおっしゃっていただくべきではないかと思うのでありますが、ただ、それは厚生省独自ではない、場合によっては政府全体で取り組まなければいけない課題だろうと思いますが、もう一度、その辺のところを確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/156
-
157・菅直人
○菅国務大臣 今も申し上げましたように、秋をめどに、今私が直接申し上げられる意味で言えば、厚生省としては、この社会保障の給付と負担の将来推計を従来のものを見直して新たなものをお示ししたい、そのことは申し上げられると思います。
ただ、先ほど来申し上げておりますように、今、同時にいろいろな財政をめぐる議論も活発になっておりますし、また、先ほど御指摘のあった新聞記事などに関連してのいろいろな要素を加えた議論もあるいはこの間で進む可能性もありますので、そういう場合には、予定は予定として進めながら、同時並行的に厚生省として対応すべきことがあればその都度対応していきたい、このように考えております。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/157
-
158・桝屋敬悟
○桝屋委員 それでは、今の福祉ビジョンに絡めてもっと具体的な大臣のお考えをお聞きしたいわけでありますが、一つは、国民負担率五〇%ということであります。
実は、同じく同僚議員の先日の本会議でも、福祉ビジョンにつきまして大臣の前に総理がお答えをしておられます。福祉ビジョンについての福島議員に対する回答は、特に国民負担率につきましては、第二臨調のときに示された国民負担率を根底に議論をしてきた、「これは一つの国民的なコンセンサスの上に立ったベースの数字であったように今まで考えてまいりました。」このようにおっしゃっているわけであります。記憶違いがあるかもしれませんが。やはり第二臨調のときに国民負担率上限五〇%という議論があり、それは、今日まである意味では国民各層の中でコンセンサスを得た議論として社会保障の分野の議論でずっと認識をされてきたものであります。
それで、今回も、橋本総理もこの国民負担率五〇%というのはどのようにお考えになっているか。総理が、出発のときはできるだけ五〇%でいきたい、できれば四五%ぐらいでいきたいという発言もあったというふうに私は承っているわけでありますが、実は、大臣が所属しておられますさきがけの武村代表が、つい最近、中央公論に論文をお寄せになりまして、「私の財政再建論」という文献をお出しになっておられます。
私も見せていただきまして、大変に関心を持つ部分もあるわけでありますが、その中で、財政再建を我が国は何としてもしなければいけない、そういう意味では二〇〇一年の消費税率については、場合によっては一二%あるいは一〇%、八%というような数字もお示しになりながら財政再建策を進めるべきではないか、こんなお話もしておられます。そしてその中で、例えば一二%の場合は、五%を超える部分は福祉目的税として整理をすべきではないか、こんな御発言をしておられます。
報道によりますと、あくまで報道ですけれども、党内のコンセンサスもあったのではないか、党内での議論もある程度されたのではないか、こんな報道もあったわけでありますが、そんなことを考えますと、私は今の武村代表のこの論文なんかを見ますと、正直申し上げて、第二臨調のときの国民負担率五〇%というのは、私は、二十一世紀の初頭をこれから乗り越えなければいけない我が国の厳しい財政状況の中で、場合によっては五〇%を超えるという事態もあるのではないかというふうに思うわけでありますが、さきがけの中での議論、大臣が御発言をされたこと等がありましたらぜひこの場でもお聞かせいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/158
-
159・菅直人
○菅国務大臣 まず、さきがけ党内の議論があった、あるいはなかったという問題は、私、本当のところ具体的には承知いたしておりませんで、聞いているところでは、代表がこういう何らかの文章を出されるに当たって二、三の人に相談はしたというような、あるいは党内の人を含めて相談をしたというようなことはあったやに聞いておりますが、きちんとした議論で出されたというふうには聞いておりません。
ただ、今余り、党の仕事といいましょうか、顔を出す機会が少ないものですから、そこは私が知る範囲でということで、この問題については、知る範囲ではそういうことだということであります。
それから、この内容について私もざっとは読んでおりますけれども、私は、今委員の言われた受けとめ方と多少、何といいましょうか、全体を見ると逆の受けとめ方をしておりまして、より厳しいことを言っておられる論文ではないかと思っております。
つまりは、これはどの場面かわかりませんが、例えば
国民負担率は、今世紀中は四〇%以下に抑制し、二十一世紀においても基本的には四〇%を堅持していくことが必要である。ただし、二十一世紀の前半においては、高齢化・少子化の緊急対応として、これに数パーセントの負担が加わることを避けることはできないであろう。というような文章も中に入っているわけでありまして、そういう点では、その五〇%の中で、五〇%を超えないところで、しかも、財政再建をきちんと果たすためにどうするかというような基本的立場に立っての論文ではないか、論文の趣旨はそのように受けとめているところであります。
そういった意味で、私も、これは総理の見解でもあり、あるいは先ほど委員からも話がありましたように、第二臨調あるいは行革審の答申の中で、国民負担率を高齢化のピークにおいても五〇%以下にとどめるようにしていく、こういうことについて、その目標に向けて全力を挙げたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/159
-
160・桝屋敬悟
○桝屋委員 今の大臣のお話は、厚生省の担当する大臣として、やはり五〇%という線は一つの大きな目標として、その範囲の中で何とか財政再建できるように努力をしたい、こういうことですね。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/160
-
161・菅直人
○菅国務大臣 今申し上げたように、この五〇%というものの中で、高齢化社会において安心できる社会を実現するということもあわせて何とか実現できるように努力をしたいということであります。
おいおい議論が進むのかもしれませんが、率直に申し上げて、決してそのことが容易な道だと思っているわけではありません。そういった点では、今後、国民の選択としていろいろな議論が出てくることは当然あると思いますし、また、あっていいことだと思いますが、この時点において、今見通せる範囲で申し上げるとすれば、五〇%を超えない範囲で、しかも安心して高齢者が生活できる、そういう社会実現という、その二つを何としても実現できるよう努力したい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/161
-
162・桝屋敬悟
○桝屋委員 わかりました。
そうしますと、今まさに大臣がおっしゃったように、決して安易な道ではない、困難な作業になると思うのでありますが、そういう意味では、今回、年金の一元化ということをこの委員会では議論しているわけでありますが、年金の分野について、たしか私はいっかの委員会で大臣と、これから社会保障の分野は構造改革を積極的にやっていかなければもちませんねという話を議論させていただいたと思うのですが、年金の分野でも、大臣として新たに二十一世紀の年金、一元化はもちろんでございます、私は進めるべきだるりと思うのですが、年金の分野で思い切った改革をするという点では大臣として幾つかの方策をお持ちなのかどうか。特に武村さんがこの中で言われていることは私は大変傾聴に値する内容だろうと思うのでありますが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/162
-
163・菅直人
○菅国務大臣 年金に関してどういう考え方を政治家として持っているかという趣旨のお尋ねかと思います。
ここはなかなか難しいのですが、一つ私が特に最近感じているのは、やはり出生率が非常に低下をして、これが当初の予想のように回復し得るのかどうか、いろいろな外国の事例なども調べております。
この連休中に機会がありまして八丈島というところに行きましたら、そこの町長が、我が町では三人目の子供が生まれたときには五十万円、四人目では七十万円、五人目では百万円、一番最高三百万円まで支給しているのだ、しかし、一万人弱の人口で、それでも年間一千万程度で、あるいはそのぐらいでそれを賄えているのだ、こんなお話がありました。ある意味でびっくりすると同時に、長期的に考えると、あるいはそういうふうな形があっても将来の年金という意味ではプラスになるのかもしれませんし、また、ここはなかなか難しいのですが、これもあくまで勉強の材料ということで見たわけですが、フランスでしたか、どこかの国では、子供を何人か育てると、年金の給付の、何といいましょうか、年金をかけた期間を延長したのと同じような扱いをするとか、実は、年金と出生率を回復するという努力の中に直接、間接に結びつくような努力もいろいろされております。
また、公的介護では主に医療と介護という議論がされてきているわけですが、将来的には年金あるいはストック、特に私も団塊の世代の入り口ですが、団塊の世代が六十五とか七十とか七十五となった段階では、その世代でいわば生み出した資産を何らかの形で使いながら安心できる老後を過ごせるような仕組み、リバースモーゲージとか、私が住んでいる武蔵野市には、武蔵野方式と言われまして、資産はあるけれどもフローの収入がない方に対して、市がいわばコーディネートして有料のサービスを行って、ツケにしておいて、亡くなられたときにそれを精算するというやり方も二十年ぐらい前からありますけれども、そういった問題を年金あるいはストック等も含めていろいろ考えるとか、いろいろなことをこれから考えないと、先ほど委員もお話のありました五〇%の負担の内側で、しかも安心できる制度をつくっていくのは相当に難しいのだろう。
あくまで個人的な政治家としてのお考えということでしたので、今厚生省が検討していることをちょっとはみ出していると思いますが、申し上げてみました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/163
-
164・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。
それで、今大臣がおっしゃったことは私も聞かせていただいたわけでありますが、一つは、大臣、これから年金財政等を考えても支出増になるようなことはなかなかできないわけでありまして、合理化できる部分あるいは構造改革で何とか合理化できる部分はそれはまた考えなければいかぬと思うのであります。
そういう意味では、先ほど話を出しました武村代表の、私は全部が賛成できるわけではないのですが、一つは、総花的な福祉政策から重点的な福祉政策へ、あるいはさきがけの中で議論されたのかどうか大変気になったのですが、年金と医療、福祉の二分野に分けて考えるという整理の仕方があるのじゃないか、そこから先出てくるのは何かといいますと、例えば医療や福祉が十分手当てされているものについては年金はちょっと合理化する、一時一部分支給停止をするとか、そういう議論でありまして、私は、やはり将来の社会保障、年金と福祉、医療を考えるときに大事な視点かなという気もしているのでありますが、これは大臣、御認識はいかがでしょうか。ちょっと時間がなくなりましたので、簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/164
-
165・菅直人
○菅国務大臣 先ほども申し上げましたように、まず、党の方でそういう議論がやられたということを私は少なくとも知っておりません。ですから、多分、武村代表本人が考えられて、もちろん参考にはされたかもしれません。
今委員の言われた考え方というのは、あるいは武村代表の論文に出ている内容というのは、私は、その表現そのものでいうと、必ずしも同じ考えではありません。
ただ、従来から申し上げているように、健康なお年寄りの場合は生活費が一番重要で、病気になった場合は医療サービスが重要で、寝たきりのような場合は介護サービスが重要であることは事実でありますから、そういう意味では、それが必ずしも併存している、つまり、介護が必要で、医療が必要で、十分な生活費が必要でということが、同じ人が同じときに必要でということにはならないわけでありますから、そういう点では、そういった、どういう形になっても、どういう状況になっても安心できるという保障が一つのバックグラウンドにあれば、その相互間の給付について何らかの関連性を持たせるというのは、そういう広い意味では一つの考え方であろう、私個人としてはそんなことも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/165
-
166・桝屋敬悟
○桝屋委員 今大臣がおっしゃった、まさに介護の部分でありますが、今の議論をもうちょっとしたいのであります。介護保険が非常に気になっておりまして、政府・与党さんではしっかり議論されておられるようですが、我々野党にはなかなか情報がないものですから、この席で何点か確認をさせていただきたいのです。
一点は、介護保険は法案としてこの国会に提出をされることは、その方向でお考えになっているのでしょうか。その点をまず確認させていただきたいと思います。
それともう一点は、大臣、先ほど消費税率の話も出ましたが、介護保険というのは、国民の皆さんの立場からしますと、まさに、今出ている案は五百円とか六百円、あるいは施設まで入れると千八百円とか二千百円という話がありますが、これは新たな国民の負担であるというふうに私は考えるべきだと思いますが、そういう認識でよろしいでしょうか。
その二点、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/166
-
167・菅直人
○菅国務大臣 介護保険制度につきましては、従来から申し上げておりますように、せんだっての最終報告をいただきまして、今、試案をきょうの老健審にお示しをするという中で、この国会中に、その間にもちろん法案大綱として幾つかの審議会に正式に諮問をし、答申をいただくという手続がありますが、この国会中に法案として何とか出していきたい、そういう基本的考え方については変わりはありません。
それから、公的介護保険が新たな負担であるという認識で間違いないかという御質問ですが、公的介護保険制度が生まれたときに、その保険料あるいはその保険運営にかかる費用というのは、従来にない費用という意味ではもちろん新たな負担ということになるかもしれません。ただし、それによって他のいろいろな分野でかかっている費用がどうなるかという問題は、制度の仕組みによってはいろいろ関連してくることもあるわけです。
例えば、従来、家庭ではなかなか見切れないということで入院をしていただいたというか、しているお年寄りに、在宅サービスが充実してくれば在宅の中で介護ができるということになったときに、それが数字の上であらわれるか、あらわれないかは、これはなかなか難しいところですけれども、例えば在宅の中で介護ができて、一部いわゆる社会的入院というようなものが減ってくる、そういう関連性もあるいは生み出すかもしれない。
ここはなかなか、簡単にこの数字が一対一対応になるかどうかは別として、そういういろいろな関連性があろうと思っておりますので、制度として新たな負担であるということと、必ずしも社会的にすべてが新たな負担になるということとは若干違うのではないか、また、そういうこともあわせて、より効率化できるような仕組みを考えていかなければならないのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/167
-
168・桝屋敬悟
○桝屋委員 大臣の説明は私は理解できないこともないのでありますが、私は、国民の皆さんには明確にやはり新たな負担という形でお示しをすべきではないか、もちろん今大臣おっしゃったように、今の福祉制度、保健医療制度全体の中で合理化され、必ずしもそれが純粋に負担増にならないということも、それは理解できるのでありますが、国民の皆さんには非常にわかりにくい議論ではないかという気がいたします。
いずれにしても、この国会に出す努力をされる、こういうことですね。わかりました。何か橋本総理は、きょうの新聞を見ますと、介護保険は大変新たな負担増という話もあるのでちょっと見合わすような、そんな報道も出ておりますので、それを確認させていただきました。
ぜひこの国会で出していただきたい。消費税率とあわせて、恐らく近い選挙でありましょう、この衆議院選挙の中でも大きな争点にしていただくようにぜひお願いを申し上げたい。選挙のときこそ本当に、二十一世紀の福祉をどうするかという問題は国民に出していくべきだろう、私はこのように思っているわけであります。お願いを申し上げたいと思います。
時間もなくなりまして、二点目の厚生年金基金のお話にさせていただきたいと思います。
なぜきょう年金基金の話を私が出すかといいますと、年金の一元化を私たちは今目指しているわけでありますが、被用者年金の中で三割以上、恐らく四割に近い方をカバーしておりますこの厚生年金基金、特に報酬比例部分の代行給付があるわけでありますから、今後の年金の一元化の中でやはりどうしてもここも議論をしておかなければいけない部分だろうというふうに私は思います。
それで、実は大変気になる新聞記事がありまして、これは四月十九日の日経でございますが、ちょっと内容を御紹介しますと、厚生年金基金が国にかわって厚生年金の一部を支給するいわゆる代行給付の部分でありますが、「全基金の一五%に相当する二百八十九基金がへ支払い超過に陥っていることが明らかになった。」これは、いろいろ読んでみますと、私ももちろんこの代行部分のいわゆる保険料免除部分、これが複数化をしたということは存じておるわけでありますが、今年度から三r二から三・八、こういう免除率になるということは伺っておりますけれども、上限の三・八%を徴収してもなお代行給付の財源、原資が足りない、こういう基金が二百八十九に上った、こういう報道が出ておりました。
これは基金制度を考えたときに将来大変大きな不安でありまして、この実態というものをまずちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/168
-
169・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先生御指摘のように、厚生年金基金の代行部分につきましては、基金加入員に係ります厚生年金本体の保険料のうち、代行費用に見合う部分の保険料につきましては国への納付が免除されるということで、いわゆる免除保険料率ということで言われているわけでございまして、この免除保険料を原資といたしまして基金が国にかわって代行部分を給付する、こういう仕組みになっているわけでございます。
この免除保険料率は、これまでは基金全体ということで、本体の厚生年金との関係で財政が均衡する、こういうことであったわけでございまして、したがいまして、免除保険料率そのものも全基金一律という形になってきたわけでございます。先生にもお世話になりました平成六年の制度改正におきまして改正されまして、ことしの四月から実施になったわけでございますけれども、これを各基金の代行費用に見合うように個別の基金ごとに定める、こういう形に今切りかわったわけでございます。
ただ、一度に切りかわりますと、従来の免除保険料率から大幅にずれることも出てまいりますので、複数化はいたしましても、当分の間は上限と下限を設ける、こういうことになっていまして、上限を三・八それから下限を三・二、こういう七段階に分けたわけでございます。
御指摘の新聞報道につきましては、基金の代行費用に見合う保険料率、いわゆる代行保険料率でございますけれども、それが免除保険料率を、上限を超えている基金というのが全部の一五%、先生御指摘の二百八十九基金ということでございまして、一方では下限の、より少なくて済む基金もあるわけでございまして、これが二百二十二基金、一二%あるわけでございまして、合計で政府管掌の厚生年金と均衡をする、こういう形になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/169
-
170・桝屋敬悟
○桝屋委員 考えてみれば、今の局長の御説明のように、三・八%でも足りない、いわゆる利差損といいますか、そういう厚生年金基金もあれば、逆に最低の三・二%以下でもう楽勝、こういう基金もある。これはまさに、ある意味では今回のJR、JT、NTTを何とか救済しなければいかぬというのと同じような問題が実は基金の世界でも既に進行しているのかな、こう思っているわけであります。
それで、今局長が御説明になりましたように、将来的にはこれは完全個別化という方向でいくわけですね。もう本則はそうなっている。そういうふうに理解をしておるのでありますが、どうなんでしょうかね。
私はこの部分については余り詳しくないのでありますが、年金基金につきましては事前積立だ、完全に事前積立しているからこんな問題は起きないというふうに思っていたわけでありますが、実態を聞いてみますと、特に先般の繊維業界の基金の話を聞きまして、これは本当に、ある意味では陰でJRと同じような問題が起きているのかな、こう思ったりして大変心配をしているわけでありますが、どういう原因でこういう事態が生まれているのか、簡単に御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/170
-
171・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 厚生年金基金は積立方式でございますので、基本的には、加入員が減少しましても立ち行く形にはなっているわけでございます。ただ、平均寿命が伸びまして、給付の期間も長くなるわけでございます。それから、給付そのものもベースアップなんかがございますとふえる、こういう仕組みを導入している基金もあるわけでございまして、今までなぜこういうのが破綻しなかったかということでございますけれども、これは運用環境が非常によかった。数年前までは非常に利差益があったということでございまして、それが暗転をしたわけでございまして、逆に利差損が出る。こういう事態になりますと、本来積み立てた以上に給付が出るわけでございますので、それを挽回するだけの能力が加入員が減ったところにはもうなかった。こういうのが、このところ三カ所、基金が解散いたしておりますけれども、原因としましては同じような理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/171
-
172・桝屋敬悟
○桝屋委員 今の説明は、一つは、平均寿命が伸びて、いわゆる受給期間が長くなったということで、基金が予定をしておった基礎率が大きく変わってきたということですね。いみじくも今局長が言われた、僕は背筋に冷たいものが走ったわけでありますが、厚生年金基金も、かつては本当に余裕があったわけですね、利差益があって、そこで随分、厚生年金基金の設立が促進をされたということがあるのでしょうが、ちょっと前のような気がしまして、一気に全部が利差益の状況からもうほとんどが利差損になるというような時代、それぐらい我が国の高齢化の進行が早いということなのかなというふうに理解をするわけであります。
それで、局長、積み立て不足の基金の状況というのは今どういうふうな状況になっておりますか、基金別にちょっと数字をお示しいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/172
-
173・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先生、高齢化が進んだと申しますよりは、経済状況が暗転したという方が今の基金の苦境では大きい、もう既に潜在的には確かにそういう要素もあったわけでございますけれども、それがバブルの崩壊、こういう形で顕在化したというのが認識としては正しかろうと思うわけでございます。
それから、現在、そういうことで代行部分を割るかその寸前、こういうふうな基金が百八基金ございます。内訳を申し上げますと、単独の基金で六基金、それから、連合と申しまして親と子が一緒につくるというのが十八、それから総合型、中小の会社が集まってつくる総合というのが八十四基金、こういうことで、業種的に見ますと、繊維の関係が非常に多いわけでございます。あとはタクシーとか、そういう業界が非常に高齢化が進んでいる、こういう状況でございます。
この百八の基金につきましては、積み立て水準の回復義務を義務づけたわけでございまして、この計画をもう既にほとんどの基金がつくってきてまいっておりますが、七年度の状況というのはまだ必ずしも明らかでないわけでございますけれども、ここのところとは違う状況でございまして、株価が幾分戻ってまいりましたし、それから、円高の是正というのもございまして、運用環境というのは前よりはよくなってきているわけでございまして、好転している模様であるわけでございます。したがいまして、この百八の基金の中でもかなり好転しているというふうに見受けられるわけでございますけれども、まだまだ安心できるような状況には到底達していない、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/173
-
174・桝屋敬悟
○桝屋委員 先ほど、私の認識不足もあったかもしれません。一気に年金基金の世界が暗雲が垂れ込める、そういう状況ではないような御説明もありましたが、しかし、百八が既に積み立て不足の状況になっているわけでありまして、こういう積み立て不足となった基金はどういうふうな対応をしているのですかね。恐らく、代行部分の原資が足らないという状況になるわけですから、そうなると、差額分は企業が負担をするということなのか、あるいは掛金を上げるか。あるいは、加算部分を減らして回すということは、これは僕は制度的にはできないのじゃないかと思うのですが、実際どういうふうな形になっているのか、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/174
-
175・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 基金の仕組みは、代行部分というのがございまして、加算部分というのはそれに三割以上という形になってきているわけでございまして、先ほど申し上げましたのは、その三割を割り込みまして、さらに代行部分まで割りかねるか、割っている、こういう非常に危機的な基金であるわけでございます。
したがいまして、こういう基金につきましては、大部分のところがまさに企業年金でございますから、上乗せの部分はほとんどが企業が掛金の形で負担されるということでございますので、企業が掛金を負担していく。ただ、先ほど申し上げました解散するようなところは、もう既にそういう体力もございませんので見通しがない、こういうことで解散に至っているということでございます。
ただ、全体の基金で申し上げますと、本体の政府管掌の厚生年金に比べますと、基金の成熟度というのはまだ低く、全体として見れば低いわけでございまして、これから種々工夫を凝らし、なおかつ資産の運用というもので、規制緩和というのもかなりされてきておりますので、その辺も踏まえて、工夫を凝らして運営について努力をすれば十分回復の余地があるのが大部分だ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/175
-
176・桝屋敬悟
○桝屋委員 全体として見れば大丈夫というお話もございましたが、しかし、今の説明では、厚生年金基金については標準報酬部分は代行しておるわけでありますが、それは掛金の運用ももちろん代行している、責任を持って代行をしている、あるいは給付も責任を持ってと、足らないときには基金でちゃんとしなさいと、こういうことですね。
そうすると、今の局長のお話のように、全体としてはいいのかもしれませんが、基金全体の成熟度はまだいいというお話かもしれませんが、しかし、現実に厳しい基金があるわけでありまして、そういう基金は企業が負担をしているという今のお話でございます。
そうしますと、まさに企業にとりましては、本当に厳しい経済状況の中で、国際経済の中で、国際競争力等も非常に今大事な時期でありまして、そんなときに、ある意味では社員の福利厚生ということになるのだろうと思うのですが、福利厚生が非常に増嵩して企業の競争力に影響を与える、こういうこともあるわけでありまして、私は本当に大変だろうなと思うわけであります。
それでもう一点、積立金の評価につきましても、これはお話を聞きますと、簿価方式から時価方式に変える。先ほどの、まさに株価等の状況によって大変な厳しい状況になっている。そういう意味では、恐らく含み損が相当あるのだろう。株価が若干持ち直してきておりますから、今は状況としていいのかもしれませんが、これは平成九年度から時価方式ということになると思うのですが、そうなった場合は、相当な含み損は償却をするということに多分なるのだろうと思います。
それで、これは厚生年金基金全体で相当の資産があるわけでありますが、どうなんでしょうか、九年ですからちょっとわからないかもしれませんが、これは整理するときにどの程度の数字になるのか。あるいは、私が一番心配しますのは、組合員の、加入者の掛金にはね返ってくるのではないか。将来安定のために平成九年に一度大きな整理をしなきゃいかぬということは理解できるのでありますが、その辺は大丈夫なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/176
-
177・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 来年度から、九年度でございますけれども、九年度から時価方式に変えていく、こういう方針で、現在、考え方等につきまして私どもの内部で検討している、こういう段階でございます。したがいまして、近いうちにそういう方針を出したいと思っておりますけれども、やはり含み損、かなり運用環境が変わってきておりますので、かなり解消しつつあるというふうには伺っておりますけれども、どの程度回復しているかわかりません。恐らく、今のままですと残るような形だろうと思いますので、これは時間をかけて償却をしていく、こういう形になろうかと思います。
それで、負担につきましては、これは企業年金でございますから、基本的には企業が御負担していただくという形になろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/177
-
178・桝屋敬悟
○桝屋委員 何度聞いても、やはり厚生年金基金を持つ企業にとっては大変に厳しい時代が今続いているな、こういうふうに思うわけであります。
そこで、私は、一番最初に申し上げましたように、この厚生年金基金につきましては、年金一元化のその表と裏の部分で、まさに裏の部分で、どうしてもここはやはり今後見直しをしていかなければいけない、今大変に厳しい状況になっている、JRのようにどうにもならなくなって手をつけるというのではもう間に合いませんし、やはりJRの反省にも立って、早目早目に私たちは二十一世紀を見据えて取り組むべき改善はしなきゃならぬだろうというふうに思うわけであります。そういう意味では、個別化あるいは複数化という免除料率のそうした流れも私は理解ができるわけであります。
それで、平成七年から厚生年金基金制度研究会を設置されて、厚生省におかれては経済界等のニーズも踏まえて積極的に検討されているというように伺っているわけでありますが、議論のポイントを、簡単で結構ですからちょっとこの場で、今、恐らくこれは六月に報告書が出る、最終報告をまとめるという話も聞いておりまして、その辺の作業日程と、おおむねどういう方向で議論が進んでいるのか教えていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/178
-
179・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 昨年の九月から、基金の関係者それから学識経験者にお集まりいただきまして研究会を開催しているわけでございまして、現在、基金財政の安定化方策、これは予定利率というのが五・五%で固定しておりますので、これをどうするのか、あるいは、ベースアップのものなんかは今まで財政の中に見込んでいなかったわけですけれども、それを見込むかどうかとか、そういう議論をいたしております。
それから、基金財政に関する関係者の責務とか、先生御指摘のような危なくなるおそれがある基金についてチェックをする。これはもう第三者、我々行政官も含めましてチェックをするシステムというのが必要なのではないか。それから、関係者の責務という形につきましても、やはりこれから規制の緩和とか、それから、非常に厳しい時代になるわけでございますので、そういう点を踏まえて関係者の責務を十分認識していただく必要がある。
それから、支払保証制度、これはセーフティーネットワーク、ネットということで、いろいろ危ない基金というのも当然出てくるわけでございますので、そうしたときに受給権の確保、こういう必要があるわけでございますけれども、残念ながら、今の支払保証制度というのは非常に脆弱でございまして、二、三つぶれるとなくなる、資産がなくなってしまう、こういうふうな非常に零細な事業でございますので、ここら辺の拡充をする必要があるのではないか。
こういうふうな議論をしていただいているわけでございまして、六月終わりころに報告書をまとめていただきたいというふうに今お願いをしているわけでございます。
いずれにしましても、厚生年金基金制度創設から三十年を経過しているわけでございます。今まで非常に順調に伸びてきたわけでございますけれども、これからは必ずしも右肩上がりではございませんので、社会経済の実態に応じた柔軟な仕組みに、今までは余りにも剛構造ではなかったのか、こういうふうな反省もあるわけでございまして、委員の先生方も、基本的には基金が自主的に選択できる、なるべくそういう方向に持っていきたい、こういうふうにお考えだというふうに受けとめているわけでございまして、この検討結果を踏まえまして、年金審議会とか関係者の御意見をお聞きしながら必要な制度改正、全面的な見直しという形に持っていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/179
-
180・桝屋敬悟
○桝屋委員 その議論の中で、例えば一番最初に申し上げました厚生年金基金の日経の記事あたりで、いわゆる支払い超過の企業が、基金があるということと、逆に、利差益をまだ有している企業もある。どうなんでしょうか、一時的に、まあ代行部分もあるわけでありますから、利差損のところと利差益のところと調整なんという議論はありませんですか。だから、厳しいところが、まあそれは今までの経営の仕方が問題なんだということが当然あるのでありましょうが、そういう議論は出ておりませんですか。
それからもう一点、予定利率の検討についてちょっと御紹介いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/180
-
181・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 免除料率の複数化がこの四月からできたばかりでございまして、基金の関係者もこれまでのところは一応合意をいたしているわけですけれども、これ以上すぐやるかどうかということについては、これからやはり財政再計算、こういう段階を踏んで、その段階でさらに検討していくべき課題かなということで、基金の研究会の中ではその点は今のところ出ておりません。
それから、予定利率の関係でございますけれども、現在、本体と同じ五・五%ということでございますけれども、やはり一定の幅の中で基金が自主的に選択できる余地というのを認めたらどうか、こういう御意見が委員の先生方の多くから出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/181
-
182・桝屋敬悟
○桝屋委員 予定利率の五・五%水準の見直しについてはマスコミにも報道されておりまして、ただ、私は、厚生年金基金の安定化なりあるいは本体との中立性あたりを考えますと、この五・五%、簡単に動かしていいということではないのだろうと思いますが、いずれにしても、厚生年金基金も公的年金の一翼を担っているという意味では、やはり加入者の方が将来設計がしやすい形、これだけはぜひ維持をしていただきたいなというふうに思うわけであります。
それで、最後になりました。きょう大蔵にも来ていただいておりますが、同じく日経に、厚生年金基金の見直し検討については厚生省は研究会もつくり一生懸命取り組まれている、にもかかわらず、日経連等の要望にもかかわらず大蔵については全く改革は動く気配がない、こういう記事がありまして、適格年金制度のことでございますが、大蔵省が所管をしておりますが、資産運用は銀行局、税制問題は主税局、許認可は国税庁というように窓口が一本化していないということが取り組みに拍車がかからない理由ではないか、こんな記事が出ております。
それで、ぜひ大蔵におかれても、今の厚生省の六月という一つのめどがあるわけでありますから、ぜひ私は、規制緩和等必要な制度改正については御検討に着手をしていただきたい、このように思うわけでありますが、大蔵、きょう来られておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/182
-
183・和田恒夫
○和田説明員 厚生省においては、厚生年金基金制度研究会で基金の見直しが検討されているように聞いております。適格退職年金の見直しにつきましては、今後、そのような状況等をも踏まえつつ、幅広い観点から勉強させていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/183
-
184・桝屋敬悟
○桝屋委員 よく私が昔、役人時代に書いた答弁の内容とよく似ているわけでありますが、六月ですから、厚生省は最終報告書を六月というふうに言っておられるわけでありますから、どうか、ぜひ業界や日経連等のお話も聞きながらお取り組みをお願いしておきたいと思います。
時間もございません。最後に、大臣、厚生年金基金は、私も今回勉強してみまして、まことに奥の深い、一般の人にはなかなか理解できない。本を二冊読みましたけれども、全く価値観がばらばらになりまして、厚生年金基金というのは一元化に反するのだ、こういう評論もあったり、あるいはやはり一元化の大事な武器なんだ、こういう声があったり、なかなか、昨年のシンポジウムなんかを聞きましても、私は、年金の将来のために、ここはしっかり、JRのようになってはいけませんから、早目に御検討をお願いしたいと思うのでありますが、大臣のお考えをお聞きして、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/184
-
185・菅直人
○菅国務大臣 今、いろいろ桝屋委員の方から御指摘をいただいたお話を聞いておりまして、私もこの年金基金が、従来、退職金にかわって雇用者にとって大変大きな老後の安心を維持する、確保する制度だというふうに認識をしていたわけですけれども、それがいろいろな問題を抱えているということを改めて認識を新たにいたしました。
先ほど局長も言っておりましたように、あるいは委員も御指摘のありましたように、今、研究会で六月をめどに報告をいただく予定にしておりますので、そういう中で、いろいろな御指摘を十分踏まえた形で、もう一度この年金基金の制度のあり方について、必要であれば抜本的な改革も含めて十分検討したい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/185
-
186・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/186
-
187・和田貞夫
○和田委員長 鴨下一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/187
-
188・鴨下一郎
○鴨下委員 大臣、お疲れさまでございます。
大臣が答弁の中で、例えばネット所得スライドとか一号被保険者とか、非常にたどたどしく答弁書をお読みになっている部分がありまして、年金というのは本当にある意味で難しい。例えば言葉一つとっても、我々一般的にはわかりにくい言葉がたくさん出てまいります。
ところが、実際には二十歳の人かちそれぞれ負担をしていただくというようなこともありまして、この辺のことで、厚生省として、一般の国民にわかりやすく、年金とは一体どういうことで、皆さんはどういうふうにかかわっているのだということで、例えば一号被保険者、二号被保険者、三号被保険者と言われても、普通の人は何のことだかちっともわからないということで、言葉をもっと平たい言葉に変えていくとか、年金をどういうふうにわかっていただくか、この辺のところの運動は何かなさっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/188
-
189・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 御指摘のとおり、非常に年金制度というのは複雑でございますし、それから、いろいろなことを正確にあらわすために、一号とか二号とか、こういう表現をいたしているわけでございます。確かに、ぱっと言われるとそういうふうな言葉が出てくることが多いわけでございますけれども、意識して、かなり時間をいただいて用意しているものにつきましては、そういうのはなるべくわかりやすいように心がけているつもりでございますけれども、それにしてもやはり年金制度というのは難しいな。私もかなり長く年金をやっておりますけれども、それでもよくわからないことがいっぱいあるわけでございまして、そういう面では、年金制度というのは奥深いし、なかなか難しい制度だなと。
これが非常に難しくなっておりますのは、やはり既得権という形で長い歴史をそのまま背負ってきて、それを正確にあらわそうとすると非常に難しくなる、こういう面もあることを御理解願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/189
-
190・鴨下一郎
○鴨下委員 それが理解できないから質問しているわけですけれども、例えば成熟度という言葉がありますね。成熟度というと、我々一般的な考え方としては、成熟していくというのはいいことなんだというふうに、普通ですとこう考えますよ。そうすると、成熟度が高くなったJR共済が今回厚生年金の方に入ってくるというような形になると、成熟度の高いところがという誤解を受けるような話でもあります。ですから、成熟度という言葉そのものも、例えばサッカーだと、サドンデスという言葉が使えなくなってVゴールになったとかというのがありますけれども、国民がすっとうまく理解できる言葉に変えていくという作業というのはどうなんですか。
それはなぜかといいますと、例えば国民年金なんかでも、未加入と未納を含めて大変な数があるわけですね。現実には、若い人たち、そのままほっておけば、最終的には無年金になったりなんかして本人たちが困る話にもなりかねないわけで、そういうことでいいますと、厚生省がわかりやすい言葉で、あなたたち、こういうふうに賃金というのは必要なんだということをもっともっと本来でしたらやるべき、工夫するべきだ。こういうことでいって、非常に象徴的な言葉が私は成熟度という言葉なのかなというふうに思うのですけれども、局長、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/190
-
191・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 成熟度といいますのは、かつては非常にいい言葉であったわけでして、何か、年金の成熟化を高めるために経過年金について優遇するとか、こういうふうなことで、成熟度が高い年金が出るというのは非常にいい意味で確かに使われてきたわけでございます。最近、そういう成熟度が高くなってまいりますと、非常に、黄信号が出てくる、いずれは赤信号が出てくる、こういうことで、一種、時代が変わりますとこういうふうに受けとめられてきているわけでございます。
ただ、この言葉そのものもかなり熟度が高い言葉でございまして、これを適当な言葉に言いかえるというのがまた非常に難しいわけでございまして、それでまた誤解を招く、こういうふうな面もございます。しかし、できるだけ成熟度というのはこういうものである、こういうことをはっきりお示しした上でお話しをする、こういうことに心がけたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/191
-
192・鴨下一郎
○鴨下委員 例えば一〇〇%超えたら過成熟とか過多成熟とか、何かそういうふうにして、ある意味で少し区別なさった方がいいような気がします。
きょう、ちょっと質問の中で一つ、国民年金の未加入、未納者の。パーセントはわかりますか。さっき青山委員の質問の中で総数は出ていましたけれども、パーセントをもしあれでしたら教えていただきたいのです。わかりますか。——それでは、後ほどで結構です。
今回、年金の一元化のお話の中で、例えば三共済を一元化していくわけですけれども、そのときに、全体の保険料率が最終的に厚生省は二〇二五年あたりに二九・六%ぐらいになるというふうに設計していますよね。それに関して、前回の九四年の制度改正のときに、この一元化を織り込んで最終料率三〇%以下というのを考えているのですか、それとも、これからまたさらに考えないといけない状況なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/192
-
193・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先ほどの数字は調べまして、後ほど先生の方に御報告申し上げたいと思います。
先ほどのお尋ねでございますが、一昨年の改正のときにはいろいろな施策を講じまして、最終保険料率を三〇%以内にとどめたい、こういうことで改正を行ったわけでございまして、私どもが提案いたしておりました当時には二九・六%であったわけでございますけれども、衆議院の方の修正によりまして若干ふえまして、二九・八%というのが公式の数値でございます。
それで、今回の統合による厚生年金の負担でございますけれども、平成九年から十三年までの五年間の平均でございますけれども、毎年千二百七十二億円を負担していただくという見込みになっております。それで、そのころの厚生年金全体の標準報酬総額は約百四十兆円でございまして、これで割り戻しますと〇・一%弱ということでございます。
したがいまして、今直ちに保険料率を引き上げればその程度におさまるわけで、〇・一%弱増ということになるわけでございますが、これは、今直ちにというわけにもまいりませんので、平成十一年の財政再計算以降において、ほかの要素で増分というのがあるわけでございますので、それとあわせて改正する、引き上げるということになりますと、最終料率はどの程度要るかちょっとわかりませんけれども、合わせましても三〇は超えない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/193
-
194・鴨下一郎
○鴨下委員 先ほどからの議論の中で、JRを含めて、苦しくなってきたら厚生年金に一本化していくというような話が流れとしてありますね。そうすると、例えば私学共済だとか地共済だとか、その辺のところも含めて、いずれ厳しくなってきたときにそれを厚生年金に一元化していくという話になったときに、二〇二五年の最終保険料率というのはどういうふうになるかということは余り今までお考えになっていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/194
-
195・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 他の四共済との関係につきましては、厚生年金との統合というのは具体的な課題になっているわけではございませんので、試算は行っておりません。
ただ、残りの四共済のシェアというのが二割弱ということでございますので、その加入者数の動向によりましては影響はあろうかとも思います。ただ、試算はしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/195
-
196・鴨下一郎
○鴨下委員 前回の財政再計算のときに、至上命題として三〇%を超えないのだというような話がありました。そういう中での財政再計算であったはずなんですが、そうすると、そこに今回の一元化というのは織り込まないで計算していたということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/196
-
197・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 三〇%におさめるということでお願いをいたしまして、先ほど申し上げましたように、当初の法案では二九・六%、これが修正で二九・八%ということでございまして、統合の関係のものは織り込んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/197
-
198・鴨下一郎
○鴨下委員 JRを含めて、今回一元化される方は大変ありがたいわけですけれども、入ってこられる厚生年金の方にとってみれば、それは少しずつ負担がふえていくわけですよね。今おっしゃっているように、百兆円からの積立金があるから−そうじゃないの。〇・一%しか寄与しないという話をしていますよね、保険料率に対して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/198
-
199・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 保険料の賦課対象になります標準報酬の総額が百四十兆円と申し上げたわけでございまして、それに比べますと保険料率が〇・九%程度になる、こういうことでございます。(発言する者あり)失礼いたしました。〇・〇九%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/199
-
200・鴨下一郎
○鴨下委員 局長もだんだんお疲れになってきたようです、こっちは入れかわり立ちかわりだからあれですけれども。
それで、一番心配しているのは、我々が年金をこれから受けるときに、国民年金もそれから厚生年金も含めて、若い人たちの世代の中には、年金を自分が納めた分だけもらえるのだろうかというようなことで非常に不安に思っているわけです。それがある意味で、さっきの話じゃないけれども、わかりにくい言葉を使う年金が、言ってみれば異邦人の言葉みたいに聞こえてきて、そういうところに加入するよりは自分で貯金した方がいいというふうに考える人たちがふえてきたら、これは大変なことになってぐる。そのことをきょう私は申し上げたくて先ほどからの質問をしているわけです。
そうすると、例えば厚生年金は〇・一%、それから、国民年金に関して未加入、滞納の人たちもたくさん出てきて、最終的に自分が納めた金が戻ってくるのかどうかというようなことに関して、大臣、もしおっしゃっていただければ大変ありがたいのですけれども、大丈夫なんだよというような試算について、ある程度裏づけをいただきたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/200
-
201・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 その前に、先ほど御質問がありました未加入の率でございますが、未加入者数が百九十三万人ということでございまして、これは平成四年九月末の調査の数字でございますが、率にいたしまして九・八%、約一〇%でございます。
それから、納めた保険料が戻ってこないのではないか、こういうことでございます。
先生御承知のとおり、公的年金制度は世代間の扶養の制度でございまして、単純に保険料と給付との関係で損得論というのは必ずしもなじまないとは考えておりますが、一定の前提を置きまして、単純に保険料と給付との関係、これを試算いたしますと、公的年金には事業主負担がある、それから国庫負担がある、こういうこともございまして、若い世代でも受給額は保険料を上回る見込みであるわけでございます。厚生年金につきましては、保険料に対します年金の受給額の比率を見ますと、平成六年に二十歳ということで計算しておりますが、この方で二・二倍、それからゼロ歳の方で一・九倍、こういうふうな数字が私どもの試算として計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/201
-
202・鴨下一郎
○鴨下委員 今おっしゃったのは、例えば企業が折半している部分は企業の負担というふうに考えているのですよね。そうすると、結局、給料としてもらっている部分の天引きなわけですから、企業の負担ということも個人の方の負担ということにして、それからさらに、例えば税金の控除分がありますけれども、それも加えた場合には、例えば年金の負担と給付分のバランスというのはどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/202
-
203・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 考え方はいろいろあろうかと思うわけでございますけれども、事業主負担というのは公的な制度ということで負担をしていただいているわけでございます。したがいまして、事業主負担を除いて本人負担分を考えるのが妥当だと私どもは思っております。
それから、保険料控除というのは公的な制度ということで控除の対象になっておりますので、当然控除して比較するのが妥当だと思っております。ただ、先生せっかくの御指摘でございますので試算をいたしているわけでございまして、先ほどと同じ、平成六年で二十歳の者で〇・九倍、それから平成六年に生まれたゼロ歳の人で〇・八倍、こういう結果になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/203
-
204・鴨下一郎
○鴨下委員 多少計算に私の方が無理難題を吹っかけている部分はありますけれども、ただ、一〇〇%戻ってこないというようなこともあるわけですよね、その企業の負担分を入れてしまうと。そうすると、ただでさえもそういうような年金の状態になっているところに、例えば今回の〇・〇九%の負担というのが二〇二五年のときにはもっと大きな負担になってくるのじゃないかというふうに私は思えるのですけれども、その辺のところは局長はどういうふうにお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/204
-
205・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 この統合によります影響をどう考えるかというのは、先ほど若干申し上げましたけれども、この分の保険料負担というのをいつ上げるかということによって変わってくるわけでございます。今すぐといいますか、九年度に上げれば〇・〇九になるわけでございまして、それを大分最後に上げるということになりますと〇・一%を超える、こういう感じになろうかと思います。〇・一%程度という感じではないだろうかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/205
-
206・鴨下一郎
○鴨下委員 いずれにしても、非常に厳しい状況が生まれつつあることは間違いないのだろうと思いますけれども、その中で、今公的年金でお預かりしている金の運用の面について、この経済状況ですからだんだんと厳しくなってきているだろうと思います。
特に、例えば資金運用部に預託されて財投として使われている部分と、それから、八六年からですか、厚生省の外郭団体の年金福祉事業団が資金運用部資産の一部を借り入れて自主運用も行っているということのようですけれども、この自主運用部分について、九〇年以降厳しい状況が出てきて一部には逆ざやになっているようなところもあるということも伺っております。
例えばどういうふうなところで運用していて、具体的な運用ですね、それから、逆ざやになっていることはあるのかどうかということについてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/206
-
207・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 今、正確な数値は持っておりませんけれども、自主運用事業は財源強化事業それから資金確保事業と両方やっているわけでございます。
この自主運用の関係におきましては、いわゆる五・三・三・二規制というのがございまして、五割以上は安全資産、三割が株式、外貨建て、二割が不動産へ、不動産は実際はやっておりませんけれども、そういうふうなことで運用いたしております。今の具体的な数値、ちょっと定かではございませんけれども、大体、株式に二割弱、外貨建てに一割強、そのほかに七割から三分の二ぐらいが債券それから譲渡性預金、こういう形で運用されているわけでございます。
それで、六年度におきまして、非常に円高が進む、株価が急落する、こういうふうな事態が起きまして、平成六年におきましては二・六七%の運用利率しかなかった、こういう状況でございまして、一方で、財政投融資の資金運用部の方から七年物の固定金利で借りてきているわけでございます。したがいまして、五・二%から五・四%ぐらいのコストがかかっておりまして、その差額が赤字になって出てきているということで、過去にも累積赤字がありましたので、六年度末の累積損というのが約七千億円となっているわけでございます。
一方、特別会計の方の厚生年金基金、それから厚生年金、国民年金の関係の預託というのは、まさに財政投融資の方に、資金運用部の方にお預けをするということでございますから先ほどのコストとほぼ同じ運用収入を得ているわけでございまして、六年度で五・三三%というのが特別会計の方に入っている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/207
-
208・鴨下一郎
○鴨下委員 九四年の財政再計算のときには、その運用利回りというのは大体どのぐらいというふうに考えていましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/208
-
209・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 五・五%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/209
-
210・鴨下一郎
○鴨下委員 そうすると、明らかにその辺のところで計算とは違って現実は進んでいるわけですね。そうすると、最終料率にも影響してくるというふうに私は考えるのですけれども、その辺の資金の運用と最終料率との関係はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/210
-
211・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 財政再計算におきます経済的要素として大きなものが三つございまして、一つは先ほどの運用利率、これは五・五%でございます。それから物価上昇率が二%。それから標準報酬、賃金の伸びでございますが、四%。こういうことで財政再計算を行っているわけでございます。
それで、この経済的要素が与える影響といいますのは、これは長期的に見ますと、賃金というか標準報酬の伸びと予定利回りの相対関係になるわけでございます。四%と五・五%ですから大体一・五%の実質利回り、こういう形になるわけでございます。
先ほど申し上げましたように、実際に回っております金利といいますのは五・三三、それから賃金の方は非常に落ち込んでいるわけでございまして、一・五%前後だと思っておりまして、この利差というのは、実質利回りは四%弱ということになっておりますので、現在の段階で、このままの推移というのは当然ないわけでございますので推計できないわけでございますけれども、一年だけで比較してみれば財政的に言えばプラス要素の方が大きい、こういう状況になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/211
-
212・鴨下一郎
○鴨下委員 今までの経済状況等、これからは大分また違ってくるのだろうと思いますので、その辺十分に考えながらやりませんと厳しい状況がさらに厳しくなるというようなことだろうと思います。
今回の一元化に関して、JR共済が入るわけですけれども、そのときにJR共済が持参金として持ってくる中に、八千億円の部分が国鉄清算事業団の方にある意味で上乗せされていくわけですけれども、既に二十七兆五千八百億円の長期債務を抱えている国鉄清算事業団にさらに八千億の上乗せということについては、清算事業団の方はどういうふうに考えて、どう処理しようとしているのかということをお尋ねしたいと思います。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/212
-
213・金澤悟
○金澤説明員 お答えを申し上げます。
国鉄清算事業団の債務につきましては、昭和六十二年度において当初約二十五兆五千億円でございましたものが、本年度首におきまして、ただいま委員御指摘のとおり、約二十七兆六千億円になっておるというふうに私ども見込んでおります。
今後、清算事業団に残ります土地あるいは株式などの売却の見込み額でございますが、これにつきましては、まず土地でございますが、昨年の四月、昨年度首でおおむね四・四兆円と私ども見込んでおりました。そして、七年度中に約四千二百五十億円の売却収入を上げましたので、現在残る土地が約三千五百ヘクタールございますが、この土地の資産額について現在試算をしておるところでございます。おおむね七月ごろまでには試算を終える予定でございます。
一方、株でございますが、現在、清算事業団はJRの七社合計で六百六十九万株の株を保有しております。これは額面で五万円の株式でございますので、総計約三千三百億円に相当いたします。
これらの土地と株を今後実際に売却する場合にどのような収入になるかということでございますが、これにつきましては、今後の地価の動向あるいは株式市況などに影響されるものでございますので、なかなか現時点で具体的に申し上げるということは難しいというふうに考えております。
しかし、私どもといたしましては、今委員御指摘のとおり、最終的な国民負担の見通しを明確に申し上げることはできませんけれども、土地及びJR株式を早期かつ効果的に売却いたしまして国民負担をできるだけ軽減していきたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/213
-
214・鴨下一郎
○鴨下委員 では、最終的にその八千億円が負担にならないということなんですか。清算事業団にとって、八千億円という言ってみればこれからさらに過重な負担が加わるわけですけれども、その辺のことについてどういうふうにお考えになっているかという話です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/214
-
215・金澤悟
○金澤説明員 八千億円の事業団の移換金の負担についてどう処理するかというお尋ねでございますが、今回の鉄道共済の厚生年金への統合に当たり必要になります八千億円の移換金の負担につきましては、この法案の提出時、すなわち先般三月八日の閣議におきまして、清算事業団の既存の他の債務と同様の取り扱いをするという閣議決定を行っております。したがって、各年度における具体的な厚生年金への清算事業団の支払い額、そういったものを初めといたします具体的な支払い方法につきましては、今後、こうした閣議決定を踏まえて関係者間で調整を図っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/215
-
216・鴨下一郎
○鴨下委員 そうすると、最終的には長期債務の中に加算されてトータルで考えられるということになるわけですね。
そうなりますと、例えば長期債務の中での八千億円の過重な負担なんですけれども、その債務の利払いと、それから、国鉄清算事業団に財投の資金というのはどういうふうに入っているのかというのを教えていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/216
-
217・金澤悟
○金澤説明員 今年度首におきまして国鉄清算事業団が抱えております長期債務の額は、先ほど委員御指摘のとおり、二十七兆六千億円でございますが、そのうち財投から借り入れております残高は約十五兆五千億円というふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/217
-
218・鴨下一郎
○鴨下委員 その債務の利払いに関しては、そうすると、借りかえを繰り返していっているということなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/218
-
219・金澤悟
○金澤説明員 清算事業団の債務の処理につきましては、先ほど御説明申しましたとおり、土地及び株式等の自己資産の売却収入によってできるだけこれを返済するということでございますが、なおそれによって足らない部分につきましては、今御説明申し上げました財投その他の借入金を一部充当しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/219
-
220・鴨下一郎
○鴨下委員 これは大蔵省にお尋ねしたいのですけれども、財投の資金として公的年金からの資金運用というのはどういうふうになっているか教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/220
-
221・富田辰郎
○富田説明員 年金からの資金運用部資金でございますけれども、六年度末で厚生年金で約百三兆円、国民年金で八兆円預かっているわけでございますが、その運用につきましては、資金運用部資金法に規定されておりますように、確実かつ有利な方法で運用する、また公共の利益の増進にも寄与せしめるという償還確実性、それと公益性、公共性、これらを総合勘案して適切に運用してまいっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/221
-
222・鴨下一郎
○鴨下委員 今、運輸省から、財投の中から国鉄清算事業団に十五兆円入っているというような話がありましたけれども、そうすると、年金からの百十兆円くらいのお金の一部も国鉄清算事業団の方に行っているというふうに考えてもいいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/222
-
223・富田辰郎
○富田説明員 おっしゃるとおりでございまして、金に色目はないものですから、郵貯資金がかなりのウエートを占めておりますけれども、郵貯に対して年金の比率は少のうございますが、それでも参っている。
なお、財政投融資、先ほど金澤課長の方から御答弁がございましたように十五兆円強でございますが、そのうち、年金を原資とする資金運用部資金の貸付残高は十一兆円強ということでございまして、その中に一部、年金資金も当然含まれているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/223
-
224・鴨下一郎
○鴨下委員 今回のJR共済の一元化で八千億円からのお金が清算事業団の方に付加されるわけですけれども、そのお金は、結局回り回って年金の運用資金だとかなんかの一部が入ってくる、こういうふうには考えられないのですか。厚生大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/224
-
225・富田辰郎
○富田説明員 いわゆる八千億円の処理をどういう形でやるかというのは、先ほど金澤課長の方からも御答弁がございましたように、最終的に閣議決定等を踏まえて国の責任において処理するということで、長期債務の中で処理するということでございます。
しかし、その長期債務をどういう形でどう区分して処理するかということについては、今後、関係者間で調整を図っていくということでございまして、その辺は、長期債務をどういう区分でどういうふうに処理するのかということで、あるいは返済方法をどういう方法でするか等々を踏まえるということで、現時点においては、この八千億円の中に財政投融資資金も必ず入るということがはっきりしているというわけではございませんので、今後の処理をどうするかという問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/225
-
226・鴨下一郎
○鴨下委員 それはお役所だけではなくて、我々政治家の役目でもあるのだろうと思いますけれども。
ただ、今申し上げているのは、二〇二五年に最終保険料率が三〇%になりませんというようなことを、ある意味で我々は約束して厚生年金を設計しているわけですね。ところが、八千億円というお金を持参金として持ってきていただいて、結果的には一兆円ですか、そのお金を持ってきていただいて、厚生年金、とりあえず安心のようですけれども、現実にはつけ回しで、清算事業団の方に負担が大きくなって、さらに、それに対して今度は財政投融資だとか何かで運用している。言ってみれば、公的年金の資金そのものに、もしかすると厳しい状況が生じかねない。
そうなってくると、最終的な負担というのは、このまま清算事業団からの持参金が入ってくることによって、厚生年金、一見安泰のように見えますけれども、大きく回ってみると、これは国民の負担としてつけ回すというようなことになるのだろうと思います。これは厚生大臣にお考えを伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/226
-
227・菅直人
○菅国務大臣 今のお話を聞いていたのですが、清算事業団というものの性格が、最終的には、先ほどそちらの関係からも説明があったように、今持たれている土地とか株とかでできるだけ負債を少なくする、その残ったものは結局は国民の負担になっていくということを考えれば、その部分で、今おっしゃったことはそのとおりだと思います。
ただ、この厚生年金の問題でいいますと、八千億を含めた一兆円が入ってくるわけですから、厚生年金の制度としては、一応その問題とは切り離されて考えていいのではないか。ですから、国民の負担全体のことでいえばもちろん関連しますが、厚生年金という仕組みの中でいえば、そこはそこで区別して考えていいのではないかと私は理解しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/227
-
228・鴨下一郎
○鴨下委員 これは厚生省だけの議論ではなかなかうまくいかない話なんだろうと思いますし、ある意味で角を矯めて牛を殺すようなことがないように、我々もみんなで考えないといけない問題だろうと思います。
先ほど同僚議員から、社会保障全体で五〇%を超えないように考えなければいけないというような話で議論がございましたけれども、そういうことを含めて、今、厚生年金だけの問題として考えれば一見安泰のように見えるような話が、これがぐるつと回ってみると大変な事態になっているということもあり得るわけでございますので、ぜひその辺のことを省益を超えてこれから御検討いただきたい、このことをお願いいたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/228
-
229・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 根本匠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/229
-
230・根本匠
○根本委員 自由民主党の根本匠であります。
これから法案の内容についていろいろとお伺いしたいと思います。
年金制度は、国民の老後の所得を保障するものとして、安心して暮らせる老後にとって不可欠なものであります。ただ、現在でも、本当に将来年金がもらえるのだろうかと不安に感じている人もいるわけであります。年金は将来とも保障されることが重要でありまして、国民の政治に対する信頼も問われるところだ、こう考えております。
今回の年金一元化の議論のきっかけになったJR共済、これにつきましては、JRの年金財政が破綻して、JRのOBの皆さんは、戦後の引き揚げから営々として四十年間働いてきたわけでありますが、昭和六十一年以降、年金水準の切り下げあるいは他制度からの財政支援を受ける、こういう不安定な状態が続いてまいりました。
我々自由民主党も、社会部会あるいは年金制度調査会などによりまして、精力的に取り組んでまいりましたし、私も、社会部会副部会長あるいは年金制度調査会委員として、この問題、JRのOBの皆さんあるいはいろいろな方々と議論して、年金の一元化、再編成、そして安定した年金制度の確立について議論をし、取り組んでまいりました。
今回、関係者の皆さんの協力によりまして、JRなど三日公社が厚生年金に統合する、そして他制度との財政調整のルールが確立したことは大変喜ばしいことだと思っておりますし、公的な年金制度に対する国民の安心、信頼感が高まる、こんな意味を持っているものと思っております。
これから法案の全体像あるいは基本的な考え方、これを明らかにするという視点から、今回の法案の内容、ねらい、経緯、将来のあり方、これについて私は質問したいと思います。
まず、公的年金制度でありますが、一元化を目指して検討がなされてまいりました。そして、今回の措置になったわけでありますが、その内容、理由、そして主な論点、これをお伺いいたします。
年金の一元化の議論は十数年前の旧国鉄の年金財政の破綻がきっかけで、長年、懸案事項として議論されてまいりました。八四年の閣議で、九五年を目途に公的年金の一元化を完了させる方針で、これまでも昭和六十年度に全国民共通の基礎年金の導入、そして六十一年は被用者年金の給付設計を厚生年金にそろえる、要は給付面の官民格差の是正、それで残された課題が被用者年金の一元化というものであったわけであります。
一元化は、これまでもいろいろ議論が出てまいりましたが、一元化というのは八つの制度をできるだけまとめるか、あるいは分立したままでもいいけれども、制度間の財政調整をするシステムをつくって負担と給付の公平化を図る、こういうことでありますが、今回、JR等の三共済を厚生年金に統合するということを中心に公的年金制度の再編成を行ったわけでありますが、今回の公的年金制度の再編成の内容と、どうしてこのような措置にしたのかという理由、それから、これまでの審議の過程でもいろいろな論点が出てまいりましたが、検討過程での主な論点、これを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/230
-
231・菅直人
○菅国務大臣 この間の検討の過程でのいろいろな論点などについてのお尋ねでありますので、若干長くなるかもしれませんが、お答えをいたしたいと思います。
公的年金制度の一元化については、昭和五十九年二月の閣議決定により政府の基本方針が示されたわけですが、その内容は、まず第一に、各制度共通の基礎年金を導入し、一階部分の長期安定と公平化を図ることであり、第二に、いわゆる二階部分については、特に給付と負担の両面にわたって制度間の調整を行うことであったわけであります。この昭和五十九年の閣議決定に基づき、まず昭和六十年改正において、全国民共通の基礎年金が導入されるとともに、二階部分の給付設計が厚生年金に基本的にそろえられたわけであります。
一方、JR共済やJT共済などにおいては、産業構造の変化等に伴う加入者の減少により、現役世代とOB世代のバランスが崩れ、急速に財政が悪化して、小規模な年金制度が産業構造の変化に脆弱であるという問題が既に顕在化をしてきておりました。こうした問題に対応するため、平成二年四月から、当面の暫定的な支援措置として制度間調整事業が実施され、平成八年度まで各制度間の財政調整が行われてきたところであります。
しかし、JR、JT共済の年金支給が増加し、今までのような自助努力を続けることにも限界があったことや、被用者年金制度の一元化のあり方について検討を進める必要もあることから、平成六年二月、公的年金制度の一元化に関する懇談会が設置され、関係者の合意形成に向けて取り組みが進められてまいりました。
この懇談会においては、まず、被用者年金各制度の財政状況には大きな差があるが、当面の年金制度の安定性を考える上では、財政的に厳しい状況にあるJR共済等のあり方をどうするかが重要ではないか。第二に、JR共済等に対する支援に当たっては、支援費用の負担のあり方について検討すべきではないか。第三に、制度間の負担の格差の解消を図る上で、各制度が独立して運営してきた経緯等をどこまで尊重すべきなのか。第四に、各制度の成熟度の差に応じて漸進的に対応すべきではないか。第五に、移換すべき積立金の水準など制度統合のルールをどうするのかなこといった論点について論議が行われ、今回の三共済統合の基本的枠組み及び今後の一元化の進め方について提言がなされたところであります。
これを受けまして、政府部内でも検討を重ね、本年三月、「公的年金制度の再編成の推進について」という形で閣議決定を行うとともに、今回の三共済統合の法案を提出いたしたところであります。
以上、この間のいろいろな経緯、概略の姿を御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/231
-
232・根本匠
○根本委員 一元化の理想は、理論的には全制度のいわば統合一元化ということであろうと思います。ただ、各制度も長年にわたって分立してまいりましたし、それから、さまざまな歴史的な経緯もありますし、それぞれの財政運営の努力の違いもありますから、このようなことを考えれば、私は、今回の措置は公的年金一元化の第一段階、いわば漸進的な改革ということで評価しております。ただ、これからの、将来のさらなる再編一元化を進めるに当たりましては、制度運営に関する情報公開あるいは各制度の不断の点検、フォローが必要であります。
これから具体的方策をお聞きしたいわけでありますが、今後、これからの公的年金の再編成を考えますと、残る四つの制度もまとめて一元化する、あるいは官民の二本立てにする、あるいは現在の制度を分立させたまま恒久的な財政調整の仕組みをつくる、こんな再編の道筋がいろいろあるわけですが、これをきちんと確定してやる必要がある。
ただ、この前提として、制度運営に関する情報公開が不可欠でありますし、他の制度も将来もし厚生年金に統合するとなれば、財政状態が良好のうちでないとなかなか国民的な理解は得られないだろうと思います。さらに、過去の反省を踏まえまして、各制度が放漫な運営をしないようなチェック、あるいは制度の安定や保険料負担、給付の水準が公平となるような措置も重要でありますが、先ほども出ておりましたけれども、情報公開、これを具体的にどのように行うのか。
それからもう一つ、数理部会に制度の安定性やあるいは公平性の確保に関して検証をさせる、こうしておりますが、数理部会に具体的にどのような役割を期待するのか、あるいは今までの数理部会とどのように違うのか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/232
-
233・菅直人
○菅国務大臣 御指摘のように、今後とも被用者年金制度の再編成をさらに着実に進めていくためには、各制度の財政運営については、広く国民の皆様に理解をいただく必要があります。このために、各制度が共通の基準に基づいて、制度運営の実績や将来の見通しについての情報をわかりやすい形で国民に提供していくべきだと考えております。
また、社会保障制度審議会年金数理部会におきましては、これは委員も御承知のとおり、一応その専門的、中立的立場ということで、厚生省そのものからもいわば自立、独立をされているわけですけれども、その数理部会におきまして、被用者年金各制度の安定性が将来にわたって確保されているかどうか、さらには、各制度間で費用負担の公平性が確保されているかどうか、こういったことについて財政再計算ごとに検証をしていただくことといたしている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/233
-
234・根本匠
○根本委員 これからのさらなる公的年金の再編成あるいは一元化を進めるについては、数理部会の役割が大変重要なわけであります。
新たな機能、役割を持たせるということでありますが、私は、これをどのように担保するのか、これが問題だと思うのですね。数理部会は社会保障制度審議会の部会にすぎないわけで、他省庁の所管する制度まで踏み込むわけでありますから、例えば法令上できちんと位置づけをはっきりさせてあげる、具体的なこれを担保する措置が必要だと思いますけれども、これはどのように考えているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/234
-
235・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 先ほど大臣から申し上げましたとおり、被用者年金制度の再編成を進めるに当たりまして、制度運営に関する検証というものを総理府に設置されております社会保障制度審議会の年金数理部会にお願いするということで、法制上の措置というものも当然考えられるわけでございますけれども、今回は閣議決定というふうな形で、各制度を所管しております大臣も全部もちろん入った閣議という形の決定で決めておりますので、その趣旨に従いまして各制度の協力が得られるというふうに思っておりますし、私ども、一番大きな厚生年金制度を所管しておりますので全面的に御協力申し上げたい、こういうふうに考えております。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/235
-
236・根本匠
○根本委員 閣議決定という形で担保してあるというお話でありますが、これからの公的年金の一元化、再編成、これは数理部会が非常に大きな役割を持っておると思いますので、的確な運営ができるようにこれからも努力していただきたいと思います。
次に、公的年金再編成のきっかけになったJR共済、この統合後の具体的な給付水準、そして保険料率等の考え方、これについてお伺いしたいと思います。
今回のJR共済等の厚生年金への統合に当たっては、やはり国民の理解を得る、これが必要だと思います。これについては、JR共済が破綻した原因がどういうところにあったのか、その原因と責任、あるいはどのような自助努力を行ったのか、この辺をきちんと明らかにしておく必要があると思います。
JR共済の破綻の原因でありますが、大きく、国鉄民営化に伴う加入員の大幅減少、それと他の年金制度に比べて高い年金を出してきたという運営上の問題点、こんな指摘がなされております。運営上の問題点としては、保険料率を余り上げない運営をしながら、例えば退職時等に特別昇給をさせる。ただ、これは一方では退職を促すための合理化努力の一環という面もあるわけでありますが、運営上に問題点がある、こんな指摘があります。
それからもう一つは、旧国鉄の責めに帰さない構造的な要因。これは私は二つあると思いますが、第一点は、自動車等の発達による鉄道輸送の衰退による人員合理化、これは経営努力を超える産業構造の変化だと思いますが、もう一点、旧国鉄が終戦時に旧満州あるいは朝鮮から引き揚げた鉄道職員を多数抱え込んで、その世代が退職年齢を迎えた。これも旧国鉄の責めに帰さないいわば社会政策的な就業構造上の要因だった、こんなふうに思うわけであります。
それから、財政破綻のこれまでの対応。制度間での調整を受けてきたわけでありますが、自助努力として、負担面で、高い保険料を負担してきた。給付面では、運営上の問題点と指摘された退職時特別昇給等の是正、あるいは職域年金部分を不支給とする、あるいは標準報酬の再評価の繰り延べ措置というような相当の自助努力をしてきております。
この結果、給付面でどういう水準になっているかと申しますと、平成六年三月末の数字で、鉄道年金平均加入三十六・二年で二百二十三万円、厚生年金加入三十丁二年で二百二十六万円となっておりまして、年金額階層別割合で見ますと、例えば年収二百四十万円以上でどういう分布になっているかと申しますと、鉄道年金は四五・七%、厚生年金は四五%、ただ、これを三百万円以上で見ると、鉄道年金は一・八%、厚生年金が一四・一%、こういう年金額階層別分布になっております。
以上申し上げたようなJR共済破綻の原因あるいは自助努力、これらを踏まえて今回の措置となったわけでありますが、JR共済部分について、統合後の具体的な給付水準、保険料率の内容、それから、どうしてこういう措置にしたのか、この背景となる考え方、これをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/236
-
237・松川忠晴
○松川説明員 鉄道共済の給付についてのお尋ねでございますが、鉄道共済につきましては、他制度から財政支援を受ける前提として、先ほど来御指摘がございますように、各種の給付面の自助努力を実施してきておりますが、それらを大別いたしますと、まず第一に、鉄道共済の給付水準を公的年金制度としての共通部分であります厚生年金水準に合わせるために行っているもの、具体的には、従来型の旧法年金、昭和六十一年三月以前に裁定を受けた年金は通年方式になっておりますが、それを百十分の百に減額する制限、あるいは職域年金部分の不支給措置、それから、先ほどありましたように、退職時特昇分のカット等という措置でございます。
第二番目としましては、支援を受ける側として最大限の自助努力を実施するとの観点から、厚生年金水準を下回る水準に給付をさらに抑制するための措置でございまして、これは具体的には標準報酬の再評価を繰り延べしているものでございます。
厚生年金への統合後はどうなるかということでございますが、統合後は、給付面の公平確保という一元化の趣旨から見まして、鉄道共済の受給者につきましても厚生年金水準の給付を確保すべきであると考えられますので、厚生年金より下回っている部分の措置、具体的には、標準報酬の再評価の繰り延べ措置については統合時に解除することを予定しておりますけれども、職域部分等のように、鉄道共済の給付水準を厚生年金水準まで引き下げるための措置につきましては、引き続き実施することにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/237
-
238・根本匠
○根本委員 今回の決着は責任の所在が不透明なまま国民の負担がまたふえる、こんな批判もあるわけでありますが、私は次のように考えております。
今回の改革によりまして、年金制度全体の仕組み、これが一定のルールが確立した。まず、基礎年金の一階部分、これは全国民の協力ということでありますから、いわゆるナショナルミニマム部分。それから二階建ての部分の被用者年金の部分、これはいわば社会保障的な年金部分として制度間の財政調整によって被用者全員の協力でやりましょう。これは被用者ミニマム。それで、職域相当部分の三階建て部分、これはそれぞれのグループの自助努力でやりましょう。こういう統一的な枠組みができたのだろうと思うのですね。
これをJR共済の年金に当てはめてみますと、自助努力としては、制度上、運営上の問題点、これは是正しまして、さらに厚生年金水準を上回る三階建て部分の職域年金相当部分、これについては、実は従業員の皆さんに責任はないし、まじめに働いてきた人々にとってはこれは得べかりし利益の喪失になるわけですが、他の厚生年金基金と同じように、これを支える財政基盤が失われておりますからこれは支給しない、こんな整理だろうと思うのです。
それから、被用者の二階建て年金部分、これは全被用者の協力を受ける分野でありますから、厚生年金を含め他制度からの財政的な調整を受ける。これは別の見方からいたしますと、旧国鉄の責めに帰さない産業構造の変化等に対応するものとして支援する、こういう見方もできるのではないだろうか、こう思っております。
さらに、この他制度からの財政支援について言えば、公的年金というのは世代間の扶養、世代と世代の助け合いですから、これはある方の試算でありますが、JRの従業員は今二十万人弱いる、OBの世代は受給者、これは今四十三万人おられます。四十三万人のOBの皆さんが、例えば二人子供がいるとして一人働いている、こう仮定しますと、四十三万人の子供が勤めていて仮に二十万人がJRに勤めていたとしても、二十三万人は厚生年金等の他の分野で働いているわけですから、これを考えますと、例えば一定の試算だと、このJRの子弟に相当する皆さんの保険料は一千六百億円になる。厚生年金は今千二百億円の負担でありますから、要はJRのお子さんがほかの産業に勤めていて親を支えるということで考えれば、いわば立体的に考えればこれはやむを得ない支援で、私もある意味で合理的だろう、こんなふうに思っております。
次に、JR、JT、NTTの三公社を統合したわけでありますが、ただ一点違うのは、NTTについて職域部分に相当する厚生年金基金を検討する、こうされております。
一元化懇でも、旧公共企業体共済の厚生年金への統合に当たって、「現に支給されている職域年金部分については企業年金化を図る。」そんな提言が出されております。私は、最初、これはJR等も含むものだと思っておりましたら、要は「現に支給されている職域年金部分」ということでNTTを指す。なかなか役人の皆さんはいろいろな文章を書かれるのだなと感心いたしましたが、このNTTの職域部分についての厚生年金基金の考え方、内容についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/238
-
239・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 NTTの共済が厚生年金に統合をされますので、共済の厚生年金水準の部分につきましてま厚生年金こ移るわけでございますが、職域相当部分につきましては企業年金化ということになっておりますが、実際は厚生年金基金を設立されるということで労使合意されているようでございまして、具体的な中身につきましては、現在、労使で協議中というふうにお聞きしております。
したがいまして、現在、NTT共済が行っております給付で一般の厚生年金基金に認められていない遺族・障害年金、これも職域部分がございますので、これにつきましてもNTT厚生年金基金が給付を行える余地を特例措置で残しております。これをどう活用されるかどうかというのは労使で協議をされる、こういうふうに伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/239
-
240・根本匠
○根本委員 今の答弁にありますように、NTTの厚生年金基金、これについてはこれまでの給付水準を考慮する、あるいは、これを制度の継続性の観点から障害年金あるいは遺族年金についても給付ができるという仕組みにする、こういうことですよね。この点においては、実はこの法案上、年金法の制度上は、JTやJR、これも職域相当部分は制度的にはつくり得るのだけれども、現実問題として他制度からの財政支援も受けているので理解が得られないだろう、ですから、自助努力に相当するものとして職域年金相当部分は給付しない、NTTに限っては、他の厚生年金基金と異なって障害年金、遺族年金も給付できる、この部分が他の厚生年金基金と違う、こういうことですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/240
-
241・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 そのとおりでございまして、JR、JTについても、法令上は制限はありません。ただ、現に職域年金はもうございませんので、今のところ、当面の間はそれだけの力がないのではないか、こういうふうに見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/241
-
242・根本匠
○根本委員 次に、公務員年金制度について考え方をお伺いしたいと思います。
今後の再編成の将来展望、理想的には全制度の統合一元化ということだろうと思いますが、さまざまな経緯もありますから、特にこれから、そういった観点からいえば、公務員の共済制度をどう考えるか、これが一つの論点になると思うのですね。特に、今質問しましたように、NTTの部分、これが他の厚生年金と異なって障害年金、遺族年金も給付できる、こういう形にしましたから、公務員の共済制度について見ますと、民間との差は三階建て部分だけでありますから、単純な話ではありませんが、NTTと同じような対応をすれば、支給の面で、枠組みという考え方では、これは現行制度と同様の給付が可能になるわけであります。ただ、公務員制度でありますから、残るのは恩給以来の歴史のある公務員制度の一環としての共済年金をどう考えるか、こういうことなんだろうと思います。
ただ、一方で、国家公務員共済は既に財政難が始まっておりまして、定年制によって新規採用が抑制される、一方で、地方公務員は福祉行政等の新規需要によって職員が増加している、こんな現状もあります。それから、公務員制度を外国の例で見ますと、独立の制度としているフランス、ドイツ、あるいは独立の制度だったけれども一般制度への統合を進めているアメリカ、あるいは単一制度の上乗せ的な職域年金としているイギリス、スウェーデン、カナダ、諸外国でもこんな形になっているわけでありますが、これからの公務員の共済制度、どう取り組んでいくか、どう考えるのか、これについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/242
-
243・松川忠晴
○松川説明員 国家公務員共済にとりましての今後の一元化の取り組みでございますが、先ほど来述べさせていただいておりますように、本年三月に閣議決定で基本方針が示されております。漸進的再編成ということでございますが、公務員のグループにつきましては、具体的には国家公務員共済、地方公務員共済ともに、公務員に対して適用される年金制度として、公務員制度の一環としての意義を有しておりますことから、まず、それぞれの成熟化の状況等に応じ、財政計算時ごとに将来の財政見通し等について分析を行った上、公務員制度としてのあり方も踏まえながら、まず両制度において財政安定化の措置を検討することとしておりまして、今後、国共済としてもこの基本方針に沿いまして着実に検討を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/243
-
244・根本匠
○根本委員 公務員制度については、年金制度という視点で公務員共済で整理するのか、あるいは公務員制度の仕組みの一環という考え方をとるのか、この辺は非常に難しい部分でありますが、今後、年金制度の再編成一元化を進める中で、これは十分検討する必要があると思っております。
最後に、大臣に御決意をお伺いしたいと思っておりますが、今回のJR共済の破綻、これを放置しておけば、OBの皆さんも大変だし、あるいは公的年金制度全体の信頼が揺らぐ。解決を急がなければならない大きな政策課題であったわけであります。今回の措置によりまして日本の公的年金制度に一定のルールが確定されまして、制度全体に対する安心、信頼感が高まりまして、これは非常に大きな意味を有すると私は思っております。
年金制度で一番大事なのは、まじめに働いていた人たちが老後にばかを見ない、安心して期待していた年金が受給できる、これが大事でありまして、その意味では、年金制度を長期的により安定したものにすることが重要でありまして、これからも統一的な枠組みづくり、そして不断のフォロー、点検、これが必要だと思いますが、今後の長期的に安定した年金制度の確立についての大臣の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/244
-
245・菅直人
○菅国務大臣 これまで根本委員が党の中でもこの問題に大変詳しく取り組まれて、今回の法案の趣旨などについて基本的に御賛同をいただきながらいろいろ御質問いただいたことを、まず感謝を申し上げたいと思います。
今お話のありましたとおり、本当にまじめに働いている人が年をとったときに安心できる状況をつくるためには、年金制度を安定的に運営しなければいけないわけですけれども、少子化が非常に進んでいる、さらには、出生率が従来の予想よりも非常に低い水準で推移しているという問題、また同時に、高齢者の皆さん自身、まだまだ、六十五歳あるいはそれ以上を現役で働けるような方が大変多くなっている、こういうことを考えますと、一つには、六十五歳までは十分働けるということを社会的に実現する、六十五歳現役社会というものに向かって切りかえていく必要があるのではないか。
このためには、年金制度において、雇用と年金の連携を図りつつ、年金制度自身も雇用促進的な仕組みに改めることとし、平成六年改正において、老齢厚生年金の支給開始年齢の見直しや在職老齢年金の改善などの改正を行ってきたところであります。
また、産業構造の変化や制度の成熟化の進展などに対応し、国民の合意を得ながら必要な制度改革を行い、公的年金制度の安定化、公平化を図ってまいりたい、このように考えております。
これからの高齢化社会で、先ほど来のいろいろな議論の中でも大変難しい面もありますけれども、何とかいろいろな工夫を重ねて、安心できる公的年金制度を維持発展させるために全力を尽くしたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/245
-
246・根本匠
○根本委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/246
-
247・和田貞夫
○和田委員長 緒方克陽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/247
-
248・緒方克陽
○緒方委員 社会民主党の緒方でございますが、厚生年金法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。
今回の改正は、被用者年金制度の再編成の第一歩となる大変大きな法改正でありまして、JT、JR、NTTの共済組合の給付事業を厚生年金に統合するもので、それぞれ、お話ありましたように、さまざまの経過があったわけでございます。
その間、JR共済は、国、地方の共済あるいは私学共済、厚生年金などの皆さんの大変な御支援あるいは御協力をいただいたことは十分承知をしているわけでございますけれども、大変な自助努力を強いられましたJRの年金受給者の率直な願いを代弁する気持ちで質問をいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。三十分の時間しかありませんので、端的に御質問いたしますから、よろしくお願いしたいと思います。
まず最初に、厚生大臣にお尋ねをいたしますけれども、今回のJR共済等の厚生年金への統合に当たって、年金問題担当大臣であり、JR共済などを受け入れる厚生年金保険の所管大臣である厚生大臣の感想をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/248
-
249・菅直人
○菅国務大臣 大変長い経緯の中で、今回、ある意味では一つの大きな段階を踏めるという意味で、関係者の御苦労にも感謝を申し上げたいと思います。
特定の産業や業種、職種のみを対象とした年金制度では、産業構造の変化により、現役加入者が著しく減少し、一般の制度の保険料水準では財政運営が極めて困難になるということが生じるわけであります。特に鉄道共済につきましては、先ほど来お話もありましたように、モータリゼーションの進行による鉄道事業の斜陽化によって、かなり以前から運営が極めて困難な状況になり、他制度から財政支援を受けてきたところでありますが、そういった状況を踏まえて、この問題の解決は長年の懸案であったというふうに理解いたしております。
今回の統合措置は、この長年の懸案解決のための一つの区切りとなるものであり、また今後の被用者年金制度の再編成を進める上で重要な意義を持つものと考えております。そういった意味では、一つの大きな山を越すと同時に、さらにこれから進んでいく方向性も基本的にこの制度統合の中に盛り込まれている、このように感じているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/249
-
250・緒方克陽
○緒方委員 先ほどからそれぞれお話があっておりますように、鉄道共済年金が赤字となりまして、財政調整での他組合やあるいは厚生年金などの御協力と自助努力の結果で何とかここまでたどり着いたということでございますが、その主たる原因は、それぞれお話ありましたように、旧国鉄職員数の補充がなされなかったことにあったのではないか。特徴的には、国鉄分割・民営化の際に、JR移行の際に、三十五万人の職員が、いわゆる共済組合員が一挙に二十万人になったということで、その際の年金に対する配慮が政府としてなされていなかったのではないかということについては、どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/250
-
251・松川忠晴
○松川説明員 現在、鉄道共済年金は、他の年金制度から財政支援を受けることで毎年の給付を維持するという極めて厳しい財政状況にございますが、その主たる原因につきましては、先ほど来議論がございますように、モータリゼーションの進行に伴う産業構造の変化によりまして、旧国鉄時代に雇用を縮小せざるを得なかった。その結果、鉄道共済といたしましても成熟度が非常に高くなったことによるものと考えております。
国鉄の民営化につきましても、このような産業構造の変化という大きな流れの中で行われたものと考えておりまして、組合員数の減少も民営化前から進行していたものでございますので、民営化自体が鉄道共済の財政悪化の直接的な原因であるとは考えておりません。
いずれにいたしましても、鉄道共済の問題は、単一の職域に構成されていることから産業構造の変化等の影響に対して極めて脆弱であるということで、したがって、このような問題は、根本的には、やはり公的年金制度の一元化によって財政単位、財政基盤を拡大していくことにより解決していくべきという考え方から、公的年金制度全体の再編成についての検討の中で対処していくこととされていたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/251
-
252・緒方克陽
○緒方委員 同じような論点ですけれども、過去の赤字の原因究明についてはそれぞれお話がありましたけれども、私としては、こういうふうに至った原因は政府の責任もあるというふうに思うわけでございます。その結果が給付の削減あるいは保険料の引き上げ、そして年金の制度間調整による援助に重点が置かれまして、特に年金の削減については悪例を残したのではないかというふうに思うわけです。
例えば特別昇給がカットをされたわけですが、先ほどもある委員からもお話がありましたように、これは退職者勧奨という意味でなされた制度でございます。これを受け入れて五十五歳で退職した者が、これに伴う年金を言うならば取り上げられたということになるわけでございまして、これは通常であれば労働法上の代替の措置があっても当然ではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/252
-
253・松川忠晴
○松川説明員 この鉄道共済の退職時の特昇分のカットの措置につきましては、鉄道共済の自助努力の一環として行っているものでございます。退職時の特昇そのものは、委員の御指摘のような事情で行われたところは十分承知いたしているところでございますが、退職時に特別昇給をさせ、その結果、最終俸給を引き上げることによって年金額をかさ上げをするということ自体は、年金制度のあり方といたしましては本来予定していたものではない運用でありまして、また、それに伴う保険料も支払われていなかったことから、是正することが適当ではないかという指摘が当時からあったわけでございます。
他方、当時の財政状況といたしましては、鉄道共済側の自助努力がなされなければ、制度間調整による他の公的年金制度からの支援が得られないような状況にございまして、その結果、支払い自体がストップしてしまいかねないような事情にあったことから、従前の自助努力に加えて、さらに追加的な自助努力をして実施されたものでございますが、やむを得ない措置としてとられたものと認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/253
-
254・緒方克陽
○緒方委員 そこで次に、旧法者、つまり、一九八六年の三月以前の支給は百十分の百で支給されているわけでありまして、統合前当時の数字が明らかにされなかったわけでありますが、国家公務員共済より平均一〇%高いということで減額をさせられたという経緯があるわけであります。その後、特別昇給制度の削減とかあるいは数項目の自助努力がなされたわけでありますが、その結果、当時でも、結果的には、国家公務員共済よりもはるかに低額になっているのではないかという点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/254
-
255・松川忠晴
○松川説明員 いわゆる自助努力の一環としまして職域年金相当部分の不支給等の措置が講じられておるわけでございますが、この趣旨は、先ほど来申し上げておりますように、まず厚生年金相当水準まで給付水準をそろえるという観点から職域年金相当部分を不支給とする、さらに、昭和六十一年の四月前に裁定された年金についても、同様の趣旨から百十分の百に減額しているものでございます。
それに加えまして、制度間調整事業が実施され、財政支援をする対象が厚生年金を初めとして被用者年金全制度に拡大するに当たって、さらに追加的な努力が求められた結果、報酬比例部分につきまして再評価の繰り延べ措置が行われたわけでございます。その結果、報酬比例部分の繰り延べ分相当分だけさらに低くなったということでございます。
そういったことからいたしますと、個々に給付水準を比較するのは難しゅうございますけれども、総体として見ますと、標準報酬の再評価が繰り延べられた分だけ給付水準が低くなっているものと認識しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/255
-
256・緒方克陽
○緒方委員 次に、現在の鉄道年金は、総じて再評価の繰り延べ分だけ厚生年金よりも低いというふうな説明があっておりましたけれども、公表されている数字では、昨今ようやく加入月数というのが明らかにされたわけでございますが、計算基礎の平均標準報酬月額が明らかにされていないわけでございます。換算して同条件として比較する方法はとれないのか。これがなくて、単なる数字の羅列で、何か高いんだあるいは低いんだということでは議論が具体的に納得ができないという意見があるわけでございまして、どのような根拠でもってされたのかということについてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/256
-
257・松川忠晴
○松川説明員 給付の算定方式自体が昭和六十一年四月を境にいたしまして大きく変わっております。昭和六十一年四月以降はいわゆる厚生年金と算定方式をそろえておりますので、昭和六十一年四月以降の方々については、ちょうどぴったりと再評価の繰り延べ分だけ低くなっている状況であることは容易におわかりいただけるかと思います。
問題は、昭和六十一年四月前に裁定された年金でございますが、これは現在、通年方式による年金額を百十分の百に減額する措置になっているものでございまして、具体的にその水準を比較する場合には、通年方式に用いられております最終俸給月額と厚生庫金方式に用いられております平均標準報酬月額との間に定まった関係がないことや、今御指摘がありましたように、受給権者によりまして加入期間、その基礎となっている俸給自体が異なることから、なかなか難しい面がございます。
ただ、経緯的に申し上げますと、この百十分の百のカットの前の時代に、おおむね一割程度スライド停止をするということが国家公務員グループ内で財政調整をスタートしたときに合意されたわけでございまして、その当時の前提認識といたしましては、厚生年金水準よりもおおむね一割程度高いという認識が存在していたところでございます。
なお、今委員御指摘の問題は、現実の直近のデータで見て、加入期間に比して一割以上に低くなっているんじゃないかという御疑問であろうかと思いますが、なかなか難しい面があるわけですけれども、表面上低くなっていることの要因といたしましては、鉄道共済の場合にはいわゆる繰り上げ減額年金制度を利用される方が極めて多く、こうした方々につきましては若いときにやめるということで平均加入期間が短い、それから賃金水準も低いということに加えまして、さらに減額されるということで、トリプルで年金額が低くなっているということもございますので、そういった結果になっているものではないかと推察している次第でございます。
いずれにしましても、そういった要素を一応勘案いたしますと、おおむね現在の状態は、総体といたしまして繰り延べ分だけが厚生年金水準よりも低くなっているのではないか、こういうふうに認識している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/257
-
258・緒方克陽
○緒方委員 次に、鉄道退職者にとりましては、年金が八十年の歴史を今終えようとしているわけでございます。
最近の状況では、先ほども述べましたように、さまざまの自助努力がされているわけでありまして、また、制度間調整ということで、同時に大変な御迷惑と御支援を各組合から受けているということについては承知をしているわけであります。しかし、退職者の皆さんの強い願望としては、みずからは一生懸命戦後働いてきたという中で、どうして百十分の百の問題が解決をしないのかということについては、何とか解決をしてもらいたいという強い願望があるわけでございますが、この辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/258
-
259・松川忠晴
○松川説明員 今回の措置をまとめられるまでの過程におきまして、鉄道共済の退職者の方々から、現実の問題として既裁定年金について百十分の百に減額されている、これについても何とかしてほしいという強い要望は受けとめているところでございます。
ただ、御案内のように、この措置は、鉄道共済が他の年金制度からいわば財政支援を受けて、何とか少なくとも厚生年金水準に近いところまでの給付は維持しようという観点から、自助努力の一環といたしまして実施しているところのものでございまして、先ほど来申し上げておりますように、百十分の百に減額しているというのは、いわば鉄道共済の年金を公的年金制度として各制度に共通する厚生年金水準までの給付にそろえるという観点で実施されたものでございます。
さらにまた、今回の統合に伴う過去期間の費用負担の枠組みにおきましても、実質的に厚生年金相当水準の給付を維持するに当たりまして、かなり多くの支援を他の年金制度の関係者から受けないといけないような状況にございます。そういった状況の中で厚生年金水準を超える部分について給付を復活するということでは、なかなか支援側の理解が現実問題として得られなかったという事情がございます。
そういったことでございますので、かねてからの要望ではございますけれども、引き続き百十分の百に減額したままの状態で枠組みを考えさせていただいているところでございますが、引き続き、退職者の方々にはそういった状況も含めまして十分理解していただけるように、PRその他で工夫をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/259
-
260・緒方克陽
○緒方委員 次に、現在JRの共済年金を既に受給している方々の間では、今回の厚生年金への統合に際しまして、これまで以上に厳しい抑制措置が講じられ、現在受給している年金額がさらに減少をしたり、スライドが停止されるのではないかといういろいろな、今日までの経過が経過ですから、そういう不安があるわけでございます。
そこで、今回の統合に際して四点について御質問をいたしますので、お答えをいただきたいと思います。
まずその第一点は、統合前の既裁定年金と統合後の新規裁定年金との扱いはどのようなものになるのかということでございます。
二つ目に、新規裁定年金については、鉄道共済の組合員期間と厚生年金の被保険者期間は全く同等に取り扱われるのかどうかということでございます。
そして三つ目に、既裁定年金のスライドは厚生年金と全く同様に実施をされるのかどうかということですね。
四番目に、現在既に鉄道共済年金を受給しながら厚生年金の職場で働いている場合の在職老齢年金の所得制限等既裁定年金の取り扱いについては、今後とも変更はないのかどうかということで大変いろいろな心配がありますので、以上四点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/260
-
261・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 まず第一点の統合前の既裁定年金と統合後の新規裁定年金の扱いでございますけれども、既裁定年金につきましては既に受給権が確定いたしておりますので、統合後も従来どおり支給することにいたしております。また、新規裁定年金につきましては、もう厚生年金そのものということでございますので、厚生年金の方式により裁定をさせていただくことにいたしております。
第二点でございますが、新規裁定年金につきましては、鉄道共済の組合員期間と厚生年金の被保険者期間につきましては、同じ扱いにすることにいたしております。
それから第三点でございますが、既裁定年金のスライドは、厚生年金と同じように実施することにしております。
それから、第四点の既裁定年金の取り扱いにつきましては従来どおりでございまして、変更はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/261
-
262・緒方克陽
○緒方委員 続きまして、中小企業に働く人たちの年金の問題についてお尋ねをしたいと思います。
先ほどもいろいろ議論がされておりましたが、政府は、我が国の年金制度は三階建てになっているというふうに規定しております。三階としては、一階は基礎年金の部分、二階は所得年金の部分、そして三階は企業年金ということを指しているということになっておりますが、これは公務員や大企業の従業員の年金制度を言うのであって、いわゆる三階部分の企業年金は、独自の力で企業年金基金制度をつくれない企業であります中小零細企業にとっては、社会保険庁が支援策を講じて、事務費などは国庫で補助しながら、異業種の域を超えた中小零細企業全体の年金制度をつくる必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。
そこで四点お尋ねしますが、まず第一点は、政府は我が国の年金制度は三階建てとなっているというふうに言っているわけですが、この点については明確にそうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/262
-
263・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 我が国の年金制度は、基礎年金というふうな形で全国民が加入する俗に一階部分というものがございます。その上に被用者年金の報酬比例部分の年金が乗っかるわけでございます。これにつきましては民間サラリーマンとか公務員等が加入をしているわけでございまして、二階部分相当と俗に呼んでいるわけでございます。さらにその上に厚生年金基金、これはもちろん代行部分も含みますけれども、厚生年金基金、それから共済年金の職域相当部分、こういったものがあるわけでございまして、被用者年金へのさらに上乗せという形で、俗に三階部分というふうに呼ばれているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/263
-
264・緒方克陽
○緒方委員 公務員や大企業の従業員は三階建て年金と言えるけれども、企業年金制度のない中小零細企業の従業員は、実際は二階建てということになるわけでございます。
そこでお尋ねしますが、中小零細企業の従業員にも企業年金制度を適用させるには、企業独自ではその力がないということで、何らかの解決をする方法を考えるべきではないかと思いますが、その点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/264
-
265・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 民間サラリーマンの厚生年金に加入されている方につきましては、三階部分の年金制度であります企業年金ということで厚生年金基金というのがあるわけでございますけれども、単独で厚生年金基金を設立するのが困難な中小企業につきましては、総合型という形で大勢の企業が集まって基金をつくる、こういうことが可能になっているわけでございます。
現在、全国に千八百八十五基金があるわけですが、その中で総合型の基金は六百四十七基金ございまして、全体の三四・三%、約三分の一でございますが、加入員が六百四十六万人でございます。基金の加入員の総数が全体で千二百二十八万人でございますので、これの五二・六%は総合型の基金に加入している、こういうふうな状況になっているわけでございまして、必ずしも中小企業の方が基金をつくれないという状況にはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/265
-
266・緒方克陽
○緒方委員 今の答弁ではそのようなお話がありましたけれども、日本の産業は中小企業で成り立っている。しかもその中の労働者数というのは大変な数字でございまして、今言われた数字はその一部分ではないかということです。きょうここに数字を持ってきておりませんので、引き続きこのことについては次回の委員会で議論をしていきたいと思います。
そこで、最後に大臣にお尋ねをいたしますが、中小零細企業の従業員を含めて政府の言うように三階建て制度にするためには、力のない中小企業については事務費等の補助を行いながら、さらには、先ほども言いましたように、業種を超えた形での企業年金制度をつくるために積極的な支援策をやるべきではないかというふうに思いますが、厚生大臣の決意、お考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/266
-
267・菅直人
○菅国務大臣 中小企業あるいは零細企業に働く従業員にとっても三階建ての年金制度のサービスを受けられるようにする、そういった考え方は私も大変重要だというふうに思っております。公的年金に上乗せする三階部分の企業年金は、それぞれの企業における労使の合意に基づき、それぞれの状況に適した内容のものが設立されることが基本であるわけであります。
御指摘の中小企業の従業員の方々に対しては、先ほど年金局長の方からも答弁申し上げましたとおり、従来から総合型基金という形態での設立を進めているところであり、中には異業種であっても、地域型という形で基金の創設が認められているところであります。
御指摘の事務費につきましては、もともと基金というものは、先ほど申し上げたように、それぞれの企業の労使の合意で設立するということを原則としておりますので、原則として事務費も基金の自己負担でお願いせざるを得ないというのが現在の状態であるわけであります。
しかし、総合型基金というのはまさに中小企業にとっては重要なものでありますので、他の形でいろいろフォローすべきことがあれば考えたいと思っております。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/267
-
268・緒方克陽
○緒方委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、鉄道共済の給付を受けている人たちの切実な思いや、あるいは中小企業の人たちのそういう願いについてぜひしっかり受けとめていただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/268
-
269・鈴木俊一
○鈴木(俊)委員長代理 荒井聰君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/269
-
270・荒井聰
○荒井(聰)委員 審議で大変大臣もお疲れでしょう。もう少したと思いますので、お願いを申し上げます。
我が国の経済社会は、時代とともに衰退する産業がある一方で、常に成長産業の出現といったものに支えられながら発展してきたということだろうと思います。個々の産業分野ごとに見れば盛衰というものがあるわけですけれども、社会全体としては、戦後五十年、順調な発展を遂げてきたわけです。
これを年金制度に即して見てみますと、民間サラリーマンを対象とした厚生年金という大きな制度の中では、リストラなどによって現役の被保険者数が減少する産業がある一方で、余剰労働力を新たに吸収して被保険者数が増大する成長産業があり、全体としては制度の安定が図られてきたということが言えるのだろうと思うのです。
今回厚生年金に統合されるJR共済やJT共済のように特定の職域や産業を単位とした年金制度は、たゆまないリストラ等によって企業体として人員の合理化をすればするほど年金の財政規模、財政単位が小さくなってしまって、やがて財政的に破綻するという宿命を持っているわけであります。
先般厚生省からいただいた資料によれば、現在財政的に優良な年金制度と言えるのは、加入員が増加してきた私学共済や地共済であって、逆に財政的に苦しい制度は、構造改革や合理化が進んでいる国共済や農林共済であり、これらの制度は、今後の行革や構造改革の進行によって第二、第三のJR共済になることが明白ではないかというふうに思うわけであります。
このように、特定の職域や産業を単位とした年金制度は、企業や産業の構造改革や合理化の影響を直接的に受けるため、現在のような状況は、むしろ産業社会全体の構造改革を阻害する要因にすらなりかねないという側面があるのではないかと思います。
年金制度を産業の構造改革に対して中立的な制度としていくためには、財政単位の拡大に向けて絶え間ない改革といったようなことを進めていくべきであるというふうに思いますけれども、この問題について大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/270
-
271・菅直人
○菅国務大臣 今まさに御指摘のとおり、特定の職域ですとかあるいは産業ですとかを単位とした年金制度に従来からいろいろ分立をしていたわけですけれども、こうした中では、その産業や職域が大きく変化をして衰退をするような場合には、その影響を直接的に受けることになるわけであります。そういった意味では、御指摘のとおり、公的年金制度の財政単位を拡大して、いろいろな産業、いろいろな職業の皆さんが混在するような構造にすることによって、産業構造の変化に対して柔軟にといいますか、あるいは中立的にといいますか、対応できるようなものにしていく必要があると思っております。
このため、従来より、基礎年金制度の導入や制度間調整事業の実施、今般の三共済統合など、公的年金制度の財政単位の拡大に努めてきたところであります。その意味で今回の法律も出させていただいたわけでありますが、今後とも、財政単位の拡大を基本として、公的年金制度のさらなる再編成を着実に進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/271
-
272・荒井聰
○荒井(聰)委員 さて、少し具体的な議論をしたいと思うのですけれども、特に運輸省に聞きたいのです。
今回の統合に当たっては、JR共済などから積立金が厚生年金に移換されることになっておりますが、不足する約一兆円の債務は国鉄清算事業団とJR各社が分担されることになるというふうに承知しております。
そこでまず、JR各社の負担についてはどうなっているのか。特に、JR各社の中でも経営状態の思わしくないと言われている三島、つまり北海道JR、九州JR、四国JRのいわゆる三島会社と貨物会社の経営状況はどうなっているのか。そして、今後これら三島会社の経営改善のためにどのような対応策を講じていくのか。
先般、たしかこの三島の運賃改定をしたところでありますけれども、残念ながら北海道JRについては、運賃改定してもなお経営状態が黒字体質にならないというような状況もあるわけです。このあたりを運輸省としてはどうお考えなのか、聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/272
-
273・宿利正史
○宿利説明員 まず御質問の第一点目、JR各社等が負担をいたします移換金の関係でございますけれども、各社ごとの支払い額や具体的な支払い方法などにつきましては、今後関係者間で調整を図ってまいることになっております。
また、JR各社は、現在でも鉄道共済年金の給付費用につきまして、七社合計で毎年度二百二十億円の特別負担を行っておりますが、今回の移換金の負担につきましても、その負担により各社の経営に与える影響について十分留意をいたしまして、今後の調整を図ってまいりたいと考えております。
お尋ねの第二点目のJR北海道、四国、九州、貨物会社の経営の状況でございますが、昭和六十二年四月に国鉄改革によりまして会社が発足して以降今日まで、JR北海道、四国、九州の三社につきましては、各地域のニーズに対応いたしました輸送サービスの改善や経営の効率化に積極的に努めておりますし、またJR貨物につきましても、荷主のニーズに適合しました貨物輸送サービスの提供でありますとか経営の効率化を図ってきたことによりまして、改革以後、基本的には順調に営業収益を伸ばして経常利益を確保してまいりました。
しかしながら、先生御指摘のように、JR北海道、四国、九州の三社につきましては、昨今の低金利の状況あるいは景気の低迷によります輸送量の減少などによりまして、各社とも経営状況が悪化をいたしまして、平成六年度にはJR四国とJR九州が初めて五億円の経常損失を計上いたしております。
また平成七年度には、JR北海道も含めました三社につきまして経常損失が見込まれ、さらに今年度、平成八年度につきましては、その赤字が一層拡大する見通しとなりましたので、本年の一月十日からでございますけれども、JR発足後、実質的には初めてでございますが、国鉄時代末期の昭和六十一年九月の運賃改定以来九年ぶりの運賃改定を初めて行ったということでございます。
この結果、平成七年度の決算の見込みでございますけれども、JR九州は七億円の経常黒字が見込まれるような状況になっております。一方、JR北海道とJR四国につきましては、当初の赤字見込みよりも圧縮されておりますけれども、JR北海道につきまして十四億円、JR四国につきまして七億円の赤字が見込まれておるというふうに聞いております。
また、平成八年度でございますけれども、先生おっしゃいましたように、JR北海道につきましてはなお三十七億円の経常損失が見込まれておりますが、JR四国とJR九州の二社につきましては、それぞれ二億円、十八億円の経常利益が得られて、赤字が解消するものと見込まれております。
また、JR貨物につきましては、景気の低迷あるいは自然災害の影響などによりまして、平成五年度に三十八億円の赤字、平成六年度に八十二億円の赤字を計上し、平成七年度決算におきましても八十九億円の経常赤字が見込まれていると聞いております。それで、平成八年度につきましては、JR貨物におきまして、コンテナ輸送の拡大や一層の経営合理化などに努めることによりまして、事業計画では二億円の経常利益を見込んでおるということでございます。
それから、お尋ねの第三点目でありますけれども、これら各社の経営改善のためにどのような対応策を講じていくのかという点でございます。
各社とも、昭和六十二年四月の国鉄改革におきまして、経営の自主性が確保され、責任が明確になるように株式会社として発足をいたしております。その際に、特に厳しい経営環境が見込まれておりましたJR北海道、四国、九州の三社につきましては、国鉄の長期債務を承継させないということに加えまして、三社合計で約一兆二千八百億円の経営安定基金を設けるといった特別の措置を講じております。
また、JR貨物につきましても、JR旅客会社に支払いをします線路使用料につきまして、仮に貨物輸送がなければその発生が回避されると認められる経費、これはアボイダブルコストと呼んでおりますけれども、このコストにその支払いを限定するといったような特別の措置を講じて会社を発足させたところでございます。
このような国鉄改革の趣旨にかんがみますと、昨今の大変厳しい経営状況の中ではありますが、JR北海道、四国、九州の三社につきましては、今後なお一層各地域のニーズに対応した輸送サービスの改善を積極的に推進していただくことにより、またJR貨物につきましては、荷主のニーズに適合しました質の高い輸送サービスの提供によりまして一層増収を確保していただき、また、あわせて不断の経営合理化により経費の削減を図るなど徹底した経営努力を尽くしていただきたい、このように思っております。
運輸省といたしましても、これら各社の経営努力を見守りつつ、国鉄改革の最終目標でありますJR各社の完全民営化の実現を目指し幅広く勉強してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/273
-
274・荒井聰
○荒井(聰)委員 大変御丁寧な御説明でありがとうございます。
国鉄改革というのは、この数年間、我が国政府が行った大きな改革で私は大変成功した事例だと思うのですね。しかし、残念ながら、当時予想していなかったような低経済成長に入ってしまったということで、当初の予定の手法が余りうまく機能していないといったような点が三島に集中しているんじゃないかというふうに思います。経営改善のために、当初の考え方とどこが実際狂ってきたのかということをよく運輸省は検討していただきたいと思います。
また、鉄道貨物や鉄道という公共交通というのは、環境改善という意味でも大変大きなメリットがあるというふうに、鉄道の持っている意味というものを国民にももう少し知らせていただけるように努力をしていただきたいと思います。
さて、今回の三共済の統合は、年金制度の長期的な安定を図るという観点から行われるものと評価いたしますが、今後の高齢化に伴い、年金を初め医療、介護などにかかわる国民の負担はますます増大することが予想されております。
社会保障全体として安定的な運営が図られるようにしていくという視点が今後とも不可欠でありますが、これらの制度は国民生活に安心と安定を与えるものであり、その役割は今後とも変わらず大切なものがあります。一方において、先ほども指摘いたしましたけれども、右肩上がりの経済成長というものを想定していたと思うのですけれども、そういうものがなかなか困難な状況になってきているという状況の中で、従来のように国民に税や保険料負担を際限なく負わせるというわけには当然いかない状況になってございます。
そこで、社会保障制度を確実な、安定なものにしていく上では、国民の負担のレベルも経済の体力に見合った水準である必要があると思うのですが、大臣は国民負担率のあり方、限界についてどのようにお考えなのか。きょうも日経新聞にちょっと出ておりましたけれども、国民負担率のあり方について大臣の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/274
-
275・菅直人
○菅国務大臣 御指摘のとおり、一方では、高齢化の進展に伴いまして、社会保障に要する費用が増大していくことはなかなか避けがたいものだと認識をしておりますが、また同時に、今日の経済の状態は、これまでのようなまさに右肩上がりを期待することはなかなか難しくて、経済の活力を今後損なわないように運営していくためには、国民に過重な負担を課することがないように考慮しつつ、必要な給付を実現していかなければならないという大変難しい選択になってくると思っております。
国民負担率につきましては、行革審の答申においても、高齢化のピークにおいて五〇%以下をめどにその上昇を抑制する、そういうふうにされているところでありますが、厚生省においても、また私自身も、この五〇%以下というものを一つのめどとして制度の合理化、制度の運用の効率化などに努めて、まさに福祉構造の改革をする中で安心できる高齢化社会を実現しつつ、しかも負担を五〇%以下にしていくという、難しい選択ではありますけれども、その目標に向けて全力を挙げていきたい、このように考えております。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/275
-
276・荒井聰
○荒井(聰)委員 現在、与党福祉プロジェクトでは、介護保険問題を非常に熱心に議論をしております。厚生省と与党の福祉プロジェクトとの間でも、介護保険問題に関する基本的な枠組みについては、大方了解がつきそうな状況に今あります。ぜひとも医療、年金、そして福祉の、その福祉問題でも大きな問題であります介護保険問題について、菅厚生大臣初め厚生省の熱心な議論、検討、そして努力というものをお願い申し上げます。
ところで、外国で勤務するサラリーマンが現在大変ふえております。このような外国で勤務する者について、年金制度の適用において、我が国の年金制度と現地の国の制度との二重適用になるというような問題がたびたび指摘されておりまして、現在、我が国とドイツとの間で、この年金の通算協定といったようなことが熱心に行われているということを聞いてございます。
一番勤務地の多いアメリカなどでも早急にこの協定の交渉を始められることを希望いたしますが、つい最近ドイツへ行って、介護保険問題を中心にドイツの社会福祉問題を熱心に調査してこられました同僚の金田議員に以降関連質問をお譲りいたしますので、どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/276
-
277・和田貞夫
○和田委員長 この際、金田誠一君から関連質疑の申し出があります。荒井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。金田誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/277
-
278・金田誠一
○金田(誠)委員 金田誠一でございます。
私は、社会保険料の徴収システムについてというテーマで御見解を伺いたいと思うわけでございます。
社会保険料、特に給料から天引きできない国民年金あるいは国民健康保険、こういうものの徴収システムは、我が国の場合非常にまだ不備な点が多い、こう思っているところでございます。その証拠といたしまして、今焦点になっております介護保険の導入に当たりましては、市町村長の皆様から、国保の二の舞になるのではないか、ヒういう心配の声が上がっているわけでございますし、国民年金については年金の空洞化ということが大きな問題になっておるわけでございます。
こうしたテーマを持ちながら、先般、連休を利用させていただきまして、ドイツの状況を視察させていただいた次第でございます。現地の大使館に厚生省の方から派遣をされている職員の方がいらっしゃいまして、いろいろアレンジしていただきまして、充実した視察をすることができました。また、ちょうどそのときに日本とドイツの年金の通算に関する協議がなされていたようでございまして、大変御苦労さまであったと思うわけでございます。
ドイツに出向きまして、社会保険料の未納についてどうなっているのでしょうかという質問をいたしますと、けげんな顔をされる。そういうことはもう問題にもなっておらないという状況でございました。ドイツは、国民負担率のうちでも、税よりも保険の方が高いというお国柄のようでございます。ビスマルクが初めて社会保険というものを編み出したということで、保険のウエートが非常に高い。したがって、その徴収システム等についても、かなりきちんとしたものになっているようでございます。
例えば、自営業者の場合、営業をするためには何か証明書のようなものを交付していただくようでございますが、毎年毎年交付をしてもらうに当たっては、税の納入の証明、そして社会保険の納入の証明書が要るということのようでございます。
それらを含めましていろいろ勉強をしてまいりましたが、今の例もそうですけれども、そのまま日本に適用できない部分も結構ございます。しかし、現状の日本の社会保険料の徴収システムを考えた場合に、このまま放置しておいてはならないという気がしてなりません。それで、素人ながら、例えばこういう方法が考えられるのではないかということを幾つか考えてみました。これについて、時間もございませんので全部一括申し上げますので、順次御見解をいただければと思います。
まず、国民年金の被保険者になる、あるいは国保の被保険者になる。徴収するのは市町村長でございますけれども、その市町村長に、自分のところに転入してきた住民あるいは住んでいる住民の中でだれが一体該当するのかという情報が伝わらないシステムでございます。したがって、収納率が下がる、空洞化が進むのも無理からぬことと思うわけでございます。
ここに、例えば厚生年金から国民年金に異動するtいうような場合に、厚生年金の保険者から市町村長にあてて通知義務を負わせて、通知を受け取った市町村長が当該本人を国民年金に加入をさせて年金保険料を徴収する、その通知を厚生年金の方に通知した時点で厚生年金の方から被保険者資格を喪失させるというシステムでもつくらなければ、これはどうしようもないのではないか。これと同じように、国保についても同じような仕組みをつくらなければならないのではないか。この国保、国民年金と被用者年金、被用者保険の間の異動に当たって、通知義務ということをまずは制度化する必要があると思いますのが一点でございます。
もう一点は、これは特に国保の方に言えることかと思いますが、年金からの天引き制度。これは今介護保険導入に伴って議論されていることでございますけれども、介護保険の導入にかかわらず、国保については早急に天引きに手をつけることができるのではないだろうか。あるいは国民年金については雇用保険の給付などからの天引き、こういう天引き制度というものを、そのほかにも例えば労災の給付とかからもできるのかもしれませんけれども、検討をする必要があるのではないかというのが二点目です。
そして三点目としては、これは特に国保の場合ですけれども、現状では保険料を納入しなくても被保険者資格を有する。そして、病気になって保険給付の必要を生じた場合に申請をすれば、保険証が交付されて直ちに保険給付が受けられる。例えて言うなれば、火事に遭ってから火災保険に入りに行くようなもの、事故を起こしてから自動車保険に入るようなものでございまして、もはやこれは保険の体をなしておらない。こういう状況であれば保険料を払う方が不思議なくらいでございまして、にもかかわらず八割、九割の方は払っていただいているというのは、日本は非常にモラルが高いんだなと思うわけでございますが、このモラルの高い方々、正直者がばかを見るということであってはならないと思うわけでございます。
ドイツに行って聞きましたら、二カ月滞納をしますと自動的に資格喪失をします。資格を喪失したらどうなるのですかと言ったら、自己負担です、自己負担で払い切れなくなったら生活保護の適用をするしかありません、しかし、生保の適用については自分の財産を使い果たすという条件が必要ですという御説明でございました。
厚生省サイドで検討できるものについては、私はこの三点ほどあるのではないか、こう素人ながら思っているわけでございますけれども、これらについてぜひ御見解を賜りたい。そして、まだほかにもいい方法があるんだというようなことでもあれば、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/278
-
279・横田吉男
○横田政府委員 被用者年金との連携による国民年金の未納者対策でございますけれども、私ども、九年一月一日から、各公的年金制度に共通する基礎年金番号の導入を目指しまして準備しておりますが、これが実現されますと、社会保険事務所の方から被保険者としての年金の資格を失った情報につきまして各市町村に提供することにいたしておりますので、市町村といたしましては、どの人が国年の対象になるか把握できるようになりますので、御意見の趣旨を踏まえた効率的な適用対策なり納付対策が可能になるというふうに考えております。
また、国保につきましては、被用者保険の事業主に対しまして、従業員が退職した場合に国保加入のための連絡票というのを発行いたしまして、国保の加入手続を行うように従業員を指導するよう協力をお願いしているところでございます。
さらに、私どもといたしましては、市町村の窓口におきまして、国民年金と国民健康保険との間の被保険者資格の定期的な突合あるいは窓口の一本化、届出書の一体化等を指導いたしておりまして、こういったことを通じて未加入者、未納者対策を進めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/279
-
280・岡光序治
○岡光政府委員 まず、国保の保険料につきまして年金から天引きしたらどうかという御提案でございますが、先生よく御存じのとおり、現在の国保の収納状況を見ますと、実は都市部の滞納が比較的に多いわけでございます。特にその都市部での滞納者は年齢の若い層でございます。年齢階級別に見ますと、むしろお年寄りほど納めている率が高うございます。
そういう国保の実態でございますので、年齢の若い層につきましてはもちろん年金の対象にはなっておりませんから、今おっしゃった話は直ちにはこの若年層には当てはまらないのだと思いますが、高齢者につきましてはまさに研究課題だと思っております。たまたま御指摘ありましたように、介護保険につきまして今そういった趣旨の検討をしておりますので、そういったことの動向を見ながら、国民健康保険においてその点についてどういう対応ができるか、検討させていただきたいと思っております。
それから、未納者があった場合に、ドイツでは相当シビアな対応をしているけれども国保はどうだという御指摘でございます。
もう先生よく御存じのとおり、現在やっておりますことは、特別の事情がないにもかかわらず保険料を滞納しているいわゆる悪質滞納者、こういうグループを想定いたしまして、いろいろ窓口で指導をしてもなお対応してもらえない場合には、保険証を返していただきまして、その資格期間、有効期間が短い保険証をお渡しするとか、あるいは、どうしても協力をいただけないような場合には、保険証を返していただきまして、それにかわりまして被保険者資格証明書というものを出すことになっております。この場合には現物給付は受けられませんで、いわゆる償還払いの扱いにする、そして、現金を下さいとお見えになった場合には、保険料をちゃんと納めてください、それとの見合いで現金払いをする、こんな仕組みにしているわけでございまして、こういった制度が既にあるわけでございます。
こういったものをうまく動かしながら、かつ、御指摘がありましたようないろいろな収納対策を今も講じておりますが、こういったものを充実することによってとりあえず対応させることが私どもとるべき方法ではないだろうか。
資格を喪失させるということにつきましては非常に議論のあるところでございますし、国民健康保険がいわゆる皆保険体制の基礎になっているわけでございますから、そういう意味では資格喪失ということはなかなか難しいのではないだろうか。その前に保険料収納対策をいろいろ講じて対応するというのが、まず対応する手順ではないだろうかなというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/280
-
281・金田誠一
○金田(誠)委員 現状が徴収の現場でいかに深刻な事態にあるかということを御存じないのだと思います。現状を大胆に改革するという発想にぜひ立っていただきたいと思うわけでございます。旧来、護送船団方式といいますか、ぬるま湯といいますか、あるいは談合社会といいますか、住専の問題もそうでございますけれども、日本的な体質というものが社会全体にしみ渡ってきた。そこからいかに脱皮を図るかというのが今の大きな課題ではないのでしょうか。
保険ですから、皆保険であっても保険であって、保険料納入と保険金給付というのはリンクしなければ、もはや保険でない。これは当たり前のことですが、そのぐらいの国民合意ができなければ、これから財政の厳しい状況等についてどうやって乗り越えるのか、ひとつお考えをいただきたいもの、こう思うわけでございます。
なお、きょうは大蔵省にもおいでいただいております。前段、年金番号ができれば通知はされるというお話もございましたけれども、通知をしたところで払わなければそれまでというのが現状の制度でございます。国保もしかりでございます。資格を喪失させるということがない限りは、払っていただけない可能性がまだまだある。そのために各市町村は膨大な社会保険料の徴収コストをかけているわけでございます。もしこれをきちんとしたルールに乗せれば、数万人あるいは数十万人単位で人員も削減できるのではないだろうかなという予感もしております。
その一つの方法として、例えば自営業者の方々、給料から天引きされて年末調整をされない方々は確定申告をされるはずでございます。その際に社会保険料の領収書を添付をしていただく。領収書を添付されなければ各種控除等についても認めないとか、領収書添付がなければその時点で税と一括して社会保険料も徴収するということだって考えなければ、社会的公正を期すことはできないのではないか。
社会保険料というのは税と同等だ。まさに今介護保険などを仕組むということは、これはもう本来、税で今までやってきたものを保険に振りかえるわけですから、やはりそういうシステムもあわせ考えるべきだと思うのです。これは行政改革にもつながる、財政再建にもつながる、大蔵としても無関心ではいられないはずだと私は思いますので、主税局のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/281
-
282・木村幸俊
○木村説明員 お答え申し上げます。
委員の御質問でございますが、国民年金や国民健康保険の保険料が確実に納められるということを担保いたしますために、これらにつきまして確定申告の際に社会保険料控除関係の証明書類の添付を義務づけたらどうだろうかという御趣旨であると思っております。
委員よく御承知のとおり、現行の所得税制上、居住者が自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額を、社会保険料控除として、その居住者のその年分の総所得金額等から控除するということにされているわけでございます。
この社会保険料についてでございますが、国民年金、国民健康保険は強制徴収の制度となっております。基本的に加入者には必ずその保険料の納付を求めるものであることでございますので、確定申告に当たりましてその額を証明する書類を確定申告書に添付することを義務づけるということは今しておりませんし、税制の立場から申し上げますと、その必要性はないものと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/282
-
283・金田誠一
○金田(誠)委員 大蔵の立場からすれば関係のないこととおっしゃられるのは、非常に残念なことでございます。
今深刻な財政危機にある、税負担をこれ以上求めるのは非常に困難である、したがって社会保険方式でという形の中で、このようなざるのような徴収システムを具体的に変えていこう、検討の俎上にのせていこうということさえ御答弁では伺うことができませんでした。残念でございますが時間がございません。またの機会に質問させていただくことにしまして、終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/283
-
284・和田貞夫
○和田委員長 岩佐恵美さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/284
-
285・岩佐恵美
○岩佐委員 日本鉄道共済が破綻した原因は、政府と国鉄の人員政策にあったと思います。戦中は四十五万人ぐらいであった人数が、戦後は失業対策もあり、六十一万人になりました。その後、十万人の首切りがあり、一九七五年ごろまでの二十五年間というのは四十五万人体制でした。その後、急激な人減らしが行われ、現在二十万人となっています。
国鉄の分割・民営化を含め、まさに国策として行われてきたものであり、国、JR当局に大きな原因があるというふうに思いますけれども、その点どうでしょうか、大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/285
-
286・菅直人
○菅国務大臣 今、岩佐委員が言われるように、JR共済の財政状況が大変厳しくなったのにはいろいろと原因があると思います。基本的には、モータリゼーションの進行によりまして、鉄道事業の斜陽化という産業構造の変化によって余剰人員が発生し、合理化を進めた結果、給付を支える現役の組合員数が著しく減少したことによって急激に悪化をしたものである、このように考えております。
このような産業構造の変化による影響は、種々の産業分野にあり得ることでありまして、その場合に特定の運営主体に責任を帰すことができるかどうか、私は帰すことは必ずしも適当ではないと思っております。
例えば、ある分野の産業は、民間の場合であれば、その産業が若干衰退する場合に別の分野へどんどん進出していくといったような形で対応することもあるでしょうし、あるいは、いち早くある種の転換を図っていくということもあるでしょうから、必ずしもそれをすべて運営主体の責任に帰すというのは適当ではないのではないか。例えば、繊維産業や石炭鉱業も鉄道事業と同様に産業構造の変化による影響を強く受け、被保険者数が著しく減少しているわけですけれども、年金制度の運営に当たっては、事業主に特別な責任を求めるのではなく、同じ厚生年金グループの中で全産業が公平に支え合っているわけであります。
したがって、鉄道事業の斜陽化という産業構造の変化による影響について、国やJR各社に運営主体として全面的に責任を求めるというのは、それだけで求めるというのは必ずしも適当ではなくて、今回のようにいろいろな組み合わせの中で公的年金制度全体の問題として対応する、そしてまたいろいろな形で自助努力も当然のことながらお願いする、そういうことで今回の仕組みをつくり、法案を提出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/286
-
287・岩佐恵美
○岩佐委員 ところが、今回の改正案では、国鉄清算事業団とJR各社の支出額が、現行の制度間調整法に比べても千二百二十億円から八百七十六億円へと大幅に減額をされます。一方、各被用者年金からの支援額、これは六百六十億円から千六百億円へと二・五倍となります。つまり、労働者に負担を転嫁することになるわけです。ですから、国やJR当局の責任をあいまいにして、こうした労働者に負担を課し、これらの負担を軽くする、そういうものであってはならないというふうに思っているわけです。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/287
-
288・松川忠晴
○松川説明員 委員の御指摘は、今回の統合に伴う支援措置と現在の制度間調整事業における支援の枠組みについての比較をした上でのお尋ねでございます。
今回の統合に伴う過去期間、統合前期間に係る給付費に関します費用負担の枠組みにつきましては、御案内のとおり、物価スライド、賃金再評価といったような世代間扶養で賄える部分につきましては被用者年金全制度で支え合う一方、そうでない部分、独立制度として運営していた期間に給付が確定していた部分については積立金を移換させるというものでございまして、これらはすべて関係者間で大変長期間にわたりまして議論を積み重ねられた結果、いわば一つのコンセンサスとして取りまとめられたものでございます。そうではございますが、結果として、単純に現行制度間調整事業と比べました場合、委員御指摘のような差があることは事実でございます。
これにつきましては、まず第一に、基本的な考え方といたしまして、現行の制度間調整事業では、一時的な支援措置、一元化までのつなぎの措置としての支援措置を講ずるに当たりまして、鉄道共済自身がまず最大限、目いっぱいの自助努力を行うべきであるという前提、考え方でございましたのに対しまして、今回の枠組みでは、一定の合理的かつ公平なルールに従って、みんなで、全サラリーマンで鉄道共済を長期的かつ安定的に支え合っていこうというものでございます。そういったことから基本的な考え方が異なっているという面がございます。
その次に、第二といたしまして、そうしたことから、現行の制度間調整事業では、本来現役被保険者が将来退職したときに備えて積み立てておくべき部分、今回の枠組みでは給付確定部分に相当するわけでありますけれども、その部分の保険料まで過去の給付に充てる、まずは優先的に保険料を全部充てるということで、本来積み立てておくべき部分も食いつぶしていたということに対しまして、今回では、そうした部分が別途引き当てを留保されておるということがございます。
それから三番目は、先ほど御指摘がございましたように、特別負担といわゆる積立金の移換の充当部分の差でございます。これにつきましては、現行の清算事業団等の特別負担は、いわば民営化前の過去の保険料徴収が足りなかった、その不足分の精算として負担しているものでございまして、その性格上、八年度で終了するものでございました。したがって、そうしたものがなくなるといったことから差が出てくるわけでございます。
そのほかの要因といたしまして、ここ数年の鉄道共済の給付費の傾向自体が、職員構成の関係上、新規の退職者が余り発生していないというような要因もございますし、さらには、今回の統合の枠組みに伴いまして標準報酬の再評価の繰り延べは解除するというような要因もございまして、そういった要因にも留意する必要があろうかと思います。
いずれにいたしましても、そういったような基本的な考え方、特別負担の差によるものでございまして、国及びJR各社の責任を転嫁したという指摘は当たらないのではないかと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/288
-
289・岩佐恵美
○岩佐委員 今回、日本鉄道共済を厚生年金に統合するに当たって、国鉄清算事業団とJR各社は積立金の不足部分についてだけ支出をするということになっているわけです。今説明があったようなぐあいです。
この積立金の算定ルールというのは、結局は持参金を少なくする、そういう算出方法を用いたとしか思えないんですね。実際に積立金で賄われるのは年金給付費用の二三%にしかすぎません。現役労働者に多くの負担を負わせた上、四割以上を他の保険からの支援に頼ることになるわけです。年金は当然物価スライドを伴うものであって、この分についてもJR各社などが負担をするのは当然だというのは、これは一つの理屈の立つ考え方であるというふうに思います。
また、大量の人減らし、合理化によって鉄道共済は財政破綻をしている。この結果、高い保険料、低い給付、そういうことで非常に労働者が大変な思いをしてきているわけですから、国やJR当局がそれなりの負担をしていくのは当たり前のことではないかというふうに思うわけです。
鉄道共済は最も高い保険料で最も低い給付と言われています。厚生年金に比べて年間七万円も高い保険料に現在なっていて、それも次の再計算のときにまだ厚生年金と同じにはなりません。
給付についても、先ほど来議論がされているように、十年余りで十項目の給付削減があって、鉄道共済組合の調査でも、平均年金額が、三十六年二カ月加入の方で鉄道年金は二百二十万円、厚生年金の場合三十年八カ月で二百二十二万円、国家公務員共済では三十三年七カ月加入して二百三十六万円というふうになっていますから、これはもう鉄道共済の皆さんが非常に低いというのは一目瞭然です。再評価分凍結を解除して三・四%引き上げても、給付額というのは厚生年金と同じにはならないわけです。政府、厚生省がよく言う負担と給付の公平、そういう考え方からも、この実情というのは反するというふうに思います。その点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/289
-
290・松川忠晴
○松川説明員 鉄道共済の年金給付についてのお尋ねでございます。
御指摘のような、いわば財政支援を受ける前提としての自助努力の結果、鉄道共済の年金給付については、厚生年金よりも下回る水準に下げてきているわけでございます。
委員の御指摘のあった数字につきましては、給付の算定方式が昭和六十一年四月を境にしまして大きく異なっております。昭和六十一年四月以降は、いわば給付の算定方式が厚生年金にそろえられておりますので、この部分につきましては、職域年金相当部分が支給されないということと、あわせて標準報酬の再評価の繰り延べが行われていないということでございまして、結果として再評価の繰り延べ分だけ厚生年金を下回るということは容易にうかがえるかと思いますが、大半の部分はいわゆる昭和六十一年三月以前に裁定をされた年金でございます。
これは給付の算定方式が、いろいろありましたが整理された結果、現在はいわば通年方式の百十分の百に減額された姿となっておるわけでございます。通年方式は最終俸給を基礎とするものでございます。他方、厚生年金の方は平均標準報酬を基礎とするものでございまして、最終俸給と平均標準報酬との間に一定の関係を見出すのはなかなか難しいわけでございますし、個々にも加入期間も違います。また、賃金の実際の履歴というものを追うことも難しいので、なかなか比較をすることは難しいわけであります。
これまで申し上げてきたことに対してやや低くなっている要因として考えられます要因といたしましては、鉄道共済の場合は、若い年齢のときに繰り上げて年金を支給するという制度が以前適用されておりまして、こうした年金の受給者が非常に他の制度に比べて多いということでございます。繰り上げ請求の方の年金額につきましては、御案内のように、平均賃金も低い、平均加入期間も短い、それから、繰り上げますので早期支給の分だけ減額される、十年繰り上げれば四〇%カットされるということでもございますので、そういったような要素を勘案しますと、マクロ的ではございますけれども、厚生年金水準との対比で誓いますと、おおむね標準報酬の再評価の繰り延べ分だけ現在は下回っているものではないかというふうに判断している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/290
-
291・岩佐恵美
○岩佐委員 現に保険料は高くて給付は低いということが非常に大きな問題になっているわけですから、その点については、これはもう議論の余地のないところだというふうに思います。
先ほど申し上げた、年金について積立金の部分だけ見るということではなくて、当然物価スライドを伴う、そういう計算がされなければいけないというふうに思います。JR各社などがこの分について持つというのは当然ではないかというふうに思いますけれども、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/291
-
292・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 積立金をどれだけ移換するかということにつきましては、これはさまざまな意見があろうかと思うわけでございまして、先生御指摘のような意見もあろうかと存ずるわけでございます。
ただ、先ほど来話がございますように、JR共済といいますのは、産業構造の変化によります被保険者数の著しい減少、こういうものに伴って制度の中だけで世代間扶養というものができなくなった、こういうふうなことであるわけでございまして、こうした産業構造の変化による影響につきましては、特定の制度、特定の事業者だけに全面的に負担を求めるというのは必ずしも好ましくない。
ただ、保険料を納付していた時点で確定した部分につきましては、これは当然移換していただくにいたしましても、世代間扶養に見られるようなところについてまで全面的に負担を求めるのは好ましくないということで、もちろん厚生年金だけではなくて、他の残りました被用者年金制度全体で支えるのが公平だ、こういう判断のもとに今回法案を提出させていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/292
-
293・岩佐恵美
○岩佐委員 鉄道共済については、昭和六十一年四月以降職域年金部分を支給しないということになっていますけれども、当時の衆参両院の附帯決議では、「年金財政及び国鉄財政の動向等を見きわめ、設置することを将来検討する」というふうに言っているわけです。
NTT共済については厚生年金基金が設立をすることになっていますので、職域年金部分は確保できるのですけれども、鉄道及びJTについては引き続きできないということになるわけですね。将来的にも基金はつくらないということなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/293
-
294・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 JR、JTの各社によります厚生年金基金の設立につきましては、法的な制限は今回も設けておりません。ただ、JR共済それからJT共済ともに財政状況が極めて悪いわけでございまして、現に職域年金部分は支給されていないわけでございまして、統合後におきましても当面は現実問題として基金をつくるのは難しいのではないかな、こういう見通しを持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/294
-
295・岩佐恵美
○岩佐委員 そういう説明になると、援助を受けている間は未来永劫できないよという話になりかねないわけですけれども、そうなると附帯決議の趣旨に反すると思うのですね。
現在、積立金は約三千四百億円あります。そのうち、独自給付部分引き当て分として三百億円確保をして、そして六十歳前給付等を支払うというふうになっています。この部分に五百億円程度加えれば職域部分の給付ができる、そういう説明もあるわけですけれども、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/295
-
296・松川忠晴
○松川説明員 委員の御指摘は、現在、いわゆる
恩給期間の部分の費用を除いたところのベースで、鉄道共済の関係で大ざっぱなところで年間約五千億円程度給付費があるということでございまして、いわば職域年金部分は全体の給付の一割程度ということでございますので、そういったことからすると五百億円程度あれば賄えるのではないかということでございますが、これは毎年度五百億円ということでございますので、少なくとも一兆円程度の追加的な引き当てが必要になる可能性がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/296
-
297・岩佐恵美
○岩佐委員 その点について、毎年ということですけれども、これは検討していくことができる、そういう問題ではないかというふうに思うのですね。まるっきり検討できないという話ではないというふうに思います。
国とかあるいはJR当局がこれを支出して職域年金部分を支給していく、前向きにきちんと検討していく、あるいは厚生年金基金を設立するということなどを、全くだめだということではなくて、考えていく必要があるというふうに思うのですけれども、再度確認をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/297
-
298・松川忠晴
○松川説明員 委員の御指摘の前に、企業年金の話に入ります前に、まず、いわば公的年金のあり方として職域年金部分の復活ができないかということでございますけれども、職域年金部分につきましては、従来、鉄道共済が他の制度から財政支援を受けることによってようやく毎年の給付を維持しているという状況にありまして、いわば財政支援を受ける前提としまして、自助努力として職域年金部分を支給しない措置を講じてきたわけでございます。そうした経緯もございます。
今後の枠組みにおきましても、相当長期間にわたりまして他の制度から財政支援、実質的な支援を受ける形で給付を維持するということでございまして、その考え方は、少なくとも公的年金として共通する厚生年金相当部分の給付の維持をみんなで支え合うことでやろうということでございます。
そうした中にあって、職域年金部分を支給できるぐらいなら、支援部分ではなくてまず自助努力でやるべきだという考え方にむしろ逆行しかねないわけでございますので、そういった事情からいたしましても、現実の問題として、職域年金部分を復活するということについてはコンセンサスが得られなかったわけでございます。
こうした事情からいたしますと、先ほど年金局の方から御答弁申し上げましたように、制度といたしましては企業年金の設定を否定しているものではございませんが、現実問題としてはなかなか難しい状況にあるということを申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/298
-
299・岩佐恵美
○岩佐委員 私は、JRとか国が負担をするという点について、もっと真剣に現場で働く人たちあるいは年金受給者の立場に立って考えるべきであるということでいうと、今の説明ではなかなか納得がいかない。やはりもっと努力をすべきであるというふうに思います。
時間も限られてきていますので、女性の年金権について大臣にお考えをいただきたいということです。二つばかり提案させていただきますので、お答えをいただきたいと思います。
社会保障制度審議会の九五年勧告で、「現在の社会保障制度には、妻を夫の被扶養者と位置づけるような、従来の女性の役割を反映した仕組みが残されているが、このような仕組みについても真に男女平等の視点に立って見直していかねばならない。」と言っているわけです。年金でもまだ未解決の問題が残っています。
離婚した女性は、死亡した被保険者との間にたとえ長い婚姻期間があっても遺族年金を受給できない。男性が再婚していれば、いわゆる後妻が遺族年金を受給する。仮に長い婚姻生活があっても先妻には受給権がないということになります。男性中心社会の、男性中心の年金制度の不合理さのあらわれだというふうに考えます。
フランスのように婚姻期間によって遺族年金を支給する、そういうことを検討すべきだと思いますけれども、その点についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/299
-
300・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 日本の年金制度は、先生御承知のとおり、老齢とか障害とか死亡とか、こういう保険事故が発生した時点で権利関係を確定する、こういう基本原則に立っているわけでございまして、その時点での生活実態に着目いたしまして、それに応じました給付をするという建前になっているわけでございます。
したがいまして、遺族年金の関係でも、夫の死亡時点でその夫と生計維持関係にある妻に対しまして遺族年金を支給する、こういうことでございまして、御指摘のような婚姻期間に応じまして妻の遺族年金を分割するということに.つきましては、生計を維持されていた方の生活を保障する、こういうことで遺族年金が出ているわけでございますので、こうした遺族年金の基本的な考え方に触れるのではないのかなというのが一点でございます。
それから、民法上、離婚した妻に対しまして法定の遺産相続がまだ認められていないような法体系の国でございますので、こういったことが今すぐなじむのかな、こういうふうな感じがいたしているわけでございます。
そういうことで、この問題につきましては、さらに慎重な検討が必要だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/300
-
301・岩佐恵美
○岩佐委員 もう一つの問題ですけれども、勧告が指摘をしているように、「賃金格差など社会の実態が社会保障の給付水準に反映される」ということも、両性の平等という原則から問題となります。賃金水準の格差のほか、勤務年数の男女格差があります。育児、老人や病人の世話、介護、家事などが女性の就業を困難にしています。
一つの職業で男の人と同じようにずっと数十年間働き続ける女性というのは、本当に数少ないのではないでしょうか。大体職業を幾つもかえる。そのたびにやめて、ブランクになるわけですね。そういう女性が多いわけです。女性の就業の継続を困難にしているそういういろいろな問題があって、これが年金についても大変大きな妨げになっているわけです。
この女性の就業の継続を困難にしている大きな原因として、やはり育児があると思うのですね。子供が生まれるとやめなければいけないというのがありますね。一年間とか二年間とかということで、かなりの方がやめられるわけですけれども、フランスでは、一児の育児について二年の被保険者期間というのを加算しているということです。こういう制度についてもやはり検討していくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/301
-
302・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 御承知のとおり、日本の年金制度では、育てた子の数に応じまして年金を加算する、こういうふうな措置はないわけでございまして、新しい形の制度が入ってくるということでございますので、年金制度と育児期間の関係をどのように考えていくか、にわかには判断しがたいわけでございますけれども、関係者の御意見、いろいろあろうかと思うわけでございます。
こういった意見を十分聞きながら、いろいろな方々の御意見を聞きながら議論をしていく必要があるということでございまして、今直ちにだめだとかいいとかいうことは言えないのでございますけれども、せっかくの御意見でございますので参考にさせていただきまして、検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/302
-
303・岩佐恵美
○岩佐委員 女性の年金権については、やはり女性が自立してひとりで暮らしていけるということが非常に重要です。現実には賃金差別だとか就業上のいろいろな障害というのがあるわけですから、早急にこうした具体的な問題について、フランスでは現にやれているわけですから、日本でも検討して実行に移していく、そういう手だてをとってほしいというふうに思うのですけれども、菅大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/303
-
304・菅直人
○菅国務大臣 今、女性の年金権あるいは配偶者の年金権という問題で幾つが御指摘がありまして、確かに、おっしゃる趣旨の中で、何となく何らかの措置が必要なのかなと思う面もないわけではないのです。
特に私が感じましたのは、これは他の委員の御質問にもお答えしたのですが、育児期間の年金の問題は、育児休業などとも関連して、今非常に子供の出生率が下がっているという問題に対しても、かなり深刻に何らかの対応を考えなければいけないと思っております。そういった面からも、あるいは今フランスの例を挙げられましたけれども、そういったことについても、そういう観点からも場合によっては検討に値するのじゃないだろうか、そんなふうにお聞きをいたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/304
-
305・岩佐恵美
○岩佐委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/305
-
306・和田貞夫
○和田委員長 土肥隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/306
-
307・土肥隆一
○土肥委員 皆さん、お疲れでございます。あと十五分おつき合いください。
まず、午後の委員の質問の中で、一元化について何か私よく理解できなかったので、早速例の一元化懇を読んでみましたら、そこに被用者年金制度の統一的な枠組みを形成するというのが一元化の目的だ、こり書いてありますね。したがって、まずは第一段階として旧三公社共済を厚生年金に統合する、その次は公務員グループだ、その次は農林共済、私学共済だ、こういうふうに一元化懇ではまとめておりますが、その後はどうするのですか。それは一本化じゃないのですか。お答えいただきたいど思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/307
-
308・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 一元化懇の議論では一本化という議論も出ました。きょうの日経連の参考人からそういうふうな話が出たと思いますけれども、日経連の委員の先生からは統合一本化をすべきである、こういうふうな御意見も出ました。
ただ、現実問題として、過去の経緯もあるということで、それも尊重しながらやっていかなければいかぬということで、まだ最終的な目標という形では明らかになっていなかったわけです。もちろん一本化というのが否定されているわけではございませんけれども、基本となる考え方は年金制度の長期的な安定ということと特に負担の公平だ、こういうことでございますので、必ずしも一本化が最終目標という形で決まったわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/308
-
309・土肥隆一
○土肥委員 これは国語の問題なのか、私が理解が悪いのか、一元化と一本化とは違うのですね。そうですが。それでは、厚生省が年金問題で一元化と言うときには、いつも一本化じゃないと言いながら聞いておかなければいけない。
そうすると、今のところそれをどうするかということは全く見通しは立っていない、結論は出ていない、そういうふうに理解していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/309
-
310・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 手法の具体的な検討の方向は出ておりますけれども、最終目標が決まったというわけではございません。一本化というのは一元化の一つの対応である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/310
-
311・土肥隆一
○土肥委員 改めて国語力のなさを私、痛感しております。
ちょっと追加して近藤局長に聞きたいのですが、この一元化懇のを見ておりますと、情報の公開というのを改めて第三項目に挙げまして、しきりに情報公開、検証、こう言っておりますが、共済制度の中で何か情報を隠しているところがあるのですか。何でこんなに情報公開を強調するのか、ちょっとお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/311
-
312・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 全般的に国民の御理解を願うために情報公開が必要だというのは、もちろん一般論であるわけでございまして、それも大きな要素であるわけでございますが、一元化懇でそれにプラスアルファの要因として申し上げますと、きょうの参考人の意見でも出ておりましたけれども、共済年金の三階部分と二階部分というのは実際はくっついておりますので、三階部分というのは透明でないということで、ぜひこれについては透明な形で情報公開してほしい、こういう要請があったことは事実でございます。
一般的に年金制度というのは重要なものでございますので、国民の御理解を得なければいかぬ。非常に難しい制度でございますけれども、これはわかりやすい形でやはり情報を提供して御理解を得なければいかぬ、こういうのはまさに隠れようもない事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/312
-
313・土肥隆一
○土肥委員 それではこれは三階部分だけの話ですね。大蔵省どうですか、ついでに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/313
-
314・松川忠晴
○松川説明員 全体については厚生省の方からお答えがあったとおりだと思いますが、共済年金の三階部分の情報公開につきましては、懇談会の議論の中で透明性をもっと高めるようにという指摘があったことは事実でございます。
ただ、これは資料を何も公開していないということではございませんで、実は給付の算定方式は、いろいろ経緯がございまして、厚生年金とは非常に大きく異なっていました。それを現在はそろえてきたわけでありますけれども、何分過去のそういう経緯があるものですから、単純に比較するのが非常に難しい。ですから、午前中の議論もありましたように、一般国民にもわかりやすいような形で情報公開するような工夫をすべきではないか、こういう趣旨ではないかというふうに受けとめている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/314
-
315・土肥隆一
○土肥委員 しつこいようですけれども、二階部分には何か隠していることはないわけですね。情報はきっちり公開されているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/315
-
316・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 十分かどうかという議論はあろうと思いますけれども、故意に隠しているということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/316
-
317・土肥隆一
○土肥委員 また後でゆっくりお話し合いをしたいというふうに思います。
JR共済がいよいよ厚生年金に統合されるというわけですが、一兆円の支度金を持っていかれるということでございます。運輸省、来ておられますね。それで、それを八対二で分けて、清算事業団から八割持っていく、八千億持っていくというわけです。
どうでしょうか、清算事業団はまだ株も売っておりませんし、土地がなかなか売れない。平成九年には全部これを処分しなければならないということになっているんじゃないでしょうか。そういういわば借金だらけの清算事業団がどうして八千億も持てるんだろうかな、これは素人の、その辺の家庭の奥さんでも考えることではないかと思うのです。要するに、最終的には税金で見るわけですから、いわば税金を投入しているようなものですね。JRを厚生年金にくっつけるために、言ってみれば、八千億のうち幾らか知りませんけれども、それは税金で面倒見るということと理解していいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/317
-
318・金澤悟
○金澤説明員 お答え申し上げます。
今回の厚生年金保険法の一部改正法案に基づきまして、鉄道共済年金が厚生年金保険に統合されます。その際に、今委員御指摘のとおり、清算事業団は六十二年四月の民営化以前の旧国鉄という事業主の地位を承継した次第でございますから、その観点から、今お話しのとおり、六十二年三月以前の雇用主としての負担としての約八千億という、粗い試算でございますが、それだけの負担が求められることになる見込みでございます。
それでは、その負担は可能なのかという御指摘でございます。この委員会における質疑でも明らかにされておりますとおり、清算事業団の長期債務は、既に六十三年一月の閣議決定において、土地、株の資産売却収入の自主財源を充ててもなお残る債務については、最終的に国において処理をするということが決められておるわけでございまして、今回の年金についても、この三月の閣議決定において、最終的に国において処理をするという閣議決定と同様の取り扱いをするということが確認されておるわけでございます。
その閣議決定に基づいて清算事業団がどのような形でこの移換金債務を負担するかということについては、私ども、この趣旨を踏まえて、今後適切に対処していくというふうにお答え申し上げたいと思います。
〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/318
-
319・土肥隆一
○土肥委員 別に清算事業団にお金が余っているわけではないでしょう。ですから、またどこからか借り入れてきて払うのですか。どうですか。どういうふうに事実上は支払いをするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/319
-
320・金澤悟
○金澤説明員 今お答え申しましたとおり、土地、株の売却は今後の問題でございます。今後、こういった自己資産の処分による収入を確保することによってできるだけ多くの返済をいたしまして、最終的な国民負担の額の縮小に努めていきたいというのが私どもの現在の気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/320
-
321・土肥隆一
○土肥委員 要するに税金を使うということだろう。そう言わざるを得ません。ですから、余り大っぴらにこれを言うと住専絡みみたいな議論になりかねませんので、やはりその辺は情報公開をして、最終的に幾ら債務が残るのか、今から株を売り出したり土地を売ったりして、それが平成九年度に間に合うのかどうかということも含めて、またお聞きしなければならないというふうに思います。
さて、厚生年金が旧三公社を抱えたという状況ですが、私ども、年金がなくなるのではないかというような議論が時々あるのですけれども、厚生省の方で保険料と給付の倍率というのを出しておられます。
今七十歳の方は、自分の掛けた保険料の十八・三倍をもらうという大変恵まれた方でございます。ゼロ歳で一・九倍しかならない。それでも二倍近くあるから幸せでございます。これがずっとさかのぼりまして、平成三十七年、これは二〇二五年、厚生省はいつも目標の見通し数値をここに持ってくるわけですが、このときには何倍になっているのでしょうか。そして、もし保険料を全部貯金して複利の利回りで回すと、四十年間勤めた総額と比較してどっちが有利なのか、計算してくれましたか。計算できていますか。それをちょっとお答えいただきたいと思います。
〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/321
-
322・近藤純五郎
○近藤(純)政府委員 平成三十七年に二十歳という理解でよろしゅうございますか。
平成三十七年に二十歳の方ということですから、平成十七年、これから九年ほど後に生まれる方でございますけれども、この方が二十歳で、それから四十年間加入される、こういうことでございます。平成六年にゼロ歳の数字が一・九倍ということでございますけれども、もう既に平成六年にゼロ歳の方も、二九・八というかなり最終料率に近い段階で厚生年金に加入されるわけでございます。
もちろん、平成三十七年に二十歳になられる方も、もう既に最終保険料率になって定常状態になってから入るということで、その保険料の差というのはわずかでございまして、ここに出している数字でゼロ歳の保険料の元利合計が三千四十万円となっておりますが、二十万円ふえて三千六十万円になるだけでございます。給付は今のベースでやってございますので、五千八百十万円ということで同じでございますので、率といたしますれば一・九倍ということで、微妙に数字は違いますけれども、丁九倍ということでは変わらないということでございます。
それからへこの方が二十歳から五十九歳までの四十年間に払い込む保険料の運用利回り、これを五・五%で計算いたしますと、六十歳時点で、これは名目額でございますけれども約四億四千万円になるわけでございます。一方、給付は同じ時点で名目額で八億三千万円ということになるわけでございまして、どちらが有利ということは言えないような数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/322
-
323・土肥隆一
○土肥委員 どうも御苦労さまでした。ありがとうございます。まあ倍率が一・九を維持するということは大変結構だと思います。
最後に、今回の財政再計算は合計特殊出生率が下五〇で計算されておりますが、二〇二五年、先ほど申しました平成三十七年では一・八〇、こうなっております。結局、年金というのは分母がどれだけ大きいかということで、充実度といいましょうか、成熟度と逆の意味で非成熟度が出てくるわけでありますけれども、そのいわば算定根拠になっている合計特殊出生率が一・八というのは、一体どういう根拠になっているのでしょうか。
そして、最近聞きますと、スウェーデンを初めヨーロッパ諸国は出生率が非常に回復が早いわけでございますが、一・八まで日本は来るのかどうか、その辺の根拠についてお述べいただきたい。
そして最後に、大臣は、日本の合計特殊出生率を高めるには一体何が最大のキーポイントか、お答えいただきまして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/323
-
324・亀田克彦
○亀田政府委員 合計特殊出生率の問題でございますけれども、一般論といたしまして、出生率低下の原因には、女子の未婚率の上昇あるいは夫婦の出生児数の減少などが考えられるわけでございます心近年における状況でございますけれども、夫婦の出生児数の方は二を少し超えている、こういう状態でございまして、余り変化をしてないわけでございます。
したがいまして、最近の出生率の低下は主として女子の未婚率の上昇、これによるものと考えられております。すなわち、若い世代におきましては未婚率が上昇中でございまして、その世代の多くがまだ結婚しておらず、したがって子供も産んでいないのに対しまして、一方、一つ前の世代の多くは既に子供を産み終えている。こういう意味で全体として出生の時期が移行期、過渡期にある、こういうふうに考えられておるわけでございます。
こういうことから、平成四年に先生御指摘の人口問題研究所が推計をいたしましたけれども、その将来推計人口におきましては、申し上げました若い世代が一部生涯未婚、こういうことにつながる可能性もございますけれども、いずれその大多数が結婚をいたしまして、まあ晩婚ということになりますけれども子供を産むことになる、こういうような考え方のもとに、結果といたしまして合計特殊出生率は将来的には御指摘の一・八になるだろう、こういう推計をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/324
-
325・菅直人
○菅国務大臣 私も、出生率の低下というのは、年金においては長期的に見たときに大変重要な問題だと考えておりまして、先ほども別の委員の方のお話のときに申し上げたのですが、この連休中に八丈島に行きましたら、八丈町では三人目の子供から生まれたときに五十万円、あるいは四人目は七十万円、五人目は百万円、六人目は三百万円と特別な手当を出しているのですね。それでも一万人弱の町で年間一千万程度で賄える。それを一万倍にすると一億人ですから、もし効果があるのならこれも一つの検討材料かなとも本当に思ったわけです。
また同時に、女性の社会参加ということが一つの流れですので、やはり女性が働きながら子供を産んで育てられるという環境をもっときちっとつくるべきであろう。こういったことで出生率の回復については相当に力を入れなきゃいけないのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/325
-
326・土肥隆一
○土肥委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/326
-
327・和田貞夫
○和田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後七時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113604237X01619960515/327
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。