1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年三月二十五日(月曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 加藤 卓二君
理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君
理事 山田 英介君 理事 山田 正彦君
理事 細川 律夫君 理事 枝野 幸男君
奥野 誠亮君 塩川正十郎君
塩谷 立君 白川 勝彦君
橘 康太郎君 萩山 教嚴君
福永 信彦君 古屋 圭司君
横内 正明君 阿部 昭吾君
愛知 和男君 貝沼 次郎君
左藤 恵君 佐々木秀典君
坂上 富男君 正森 成二君
小森 龍邦君
出席国務大臣
法 務 大 臣 長尾 立子君
出席政府委員
法務大臣官房長 頃安 健司君
法務大臣官房司
法法制調査部長 永井 紀昭君
法務省民事局長 濱崎 恭生君
法務省刑事局長 原田 明夫君
法務省訟務局長 増井 和男君
委員外の出席者
警察庁刑事局暴
力団対策部暴力
団対策第一課長 人見 信男君
大蔵省主計局主
計官 長尾 和彦君
大蔵省主税局税
制第一課長 木村 幸俊君
国税庁長官官房
総務課長 西川 聰君
文部省初等中等
教育局中学校課
長 加茂川幸夫君
最高裁判所事務
総局総務局長 涌井 紀夫君
最高裁判所事務
総局人事局長 堀籠 幸男君
最高裁判所事務
総局経理局長 仁田 陸郎君
最高裁判所事務
総局民事局長 石垣 君雄君
最高裁判所事務
総局刑事局長 高橋 省吾君
法務委員会調査
室長 河田 勝夫君
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委員の異動
三月二十五日
辞任 補欠選任
白川 勝彦君 福永 信彦君
古屋 圭司君 塩谷 立君
同日
辞任 補欠選任
塩谷 立君 古屋 圭司君
福永 信彦君 白川 勝彦君
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三月二十二日
証人等の被害についての給付に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第二七号)(参
議院送付)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出第三二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案一内
閣提出第三二号)
証人等の被害についての給付に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第二七号)(参
議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/0
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001・加藤卓二
○加藤委員長 これより会議を開きます。
お諮りいたします。
本日、最高裁判所涌井総務局長、堀籠人事局長、仁田経理局長、石垣民事局長、高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/1
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002・加藤卓二
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/2
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003・加藤卓二
○加藤委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び内閣提出、参議院送付、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、両案について趣旨の説明を聴取いたします。長尾法務大臣。
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裁判所職員定員法の一部を改正する法律案証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/3
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004・長尾立子
○長尾国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を十五人増加しょうとするものであります。
第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において、地方裁判所における民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を五十五人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十四人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十一人増加しょうとするものであります。
以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
次に、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、今国会に別途提案されました、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案において、警察官の職務に協力援助した者について介護給付が設けられ協力援助者に対する給付の充実が図られることにかんがみ、証人等の被害についての給付制度においても、介護給付を創設して被害者に対する給付の充実を図ろうとするものであります。この法律案による改正点は、現行法では、被害者が負傷し、または疾病にかかり、そのため重度の障害にある場合には、傷病給付または障害給付を支給しておりますが、さらに、被害者が傷病給付または障害給付の支給原因となった障害により必要な介護を受けている場合における給付として介護給付を新たに設けることとするものであります。
以上が証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/4
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005・加藤卓二
○加藤委員長 これにて両案についての趣旨の説明は終わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/5
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006・加藤卓二
○加藤委員長 まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田英介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/6
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007・山田英介
○山田(英)委員 ただいま長尾法務大臣から、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして提案理由の説明をお伺いしたところでございますが、この法律案の骨子でございます。その一つ、判事補の定員を十五人増加するということでございますけれども、改めまして、いま少しその増員をする理由についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/7
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008・永井紀昭
○永井政府委員 ただいま法務大臣から趣旨を御説明いたしましたとおり、判事補の定員を十五人増加する理由は地方裁判所における民事訴訟事件の審理の充実改善のためでありますが、次のような事情に基づいているものと聞いております。
裁判所におきましては、従来から、事前準備の徹底、あるいは弁論兼和解の活用などによりまして民事訴訟事件の審理の充実促進を図ってきたところでございます。しかし、国民からは裁判に時間がかかり過ぎるという批判が高まっておりまして、最近は諸外国からも審理の促進を求められている、こういう状況にございます。
このようなことから、民事訴訟法の全面的な見直しを検討するとともに、現行法の運用のもとにおいても、訴訟関係人の理解と協力を得た上で、審理の充実を図り集中的に審理を行うことにより口頭弁論期日の間隔を短縮するなどの改善を図る必要があります。そのためには、やはり裁判官の負担件数を減少させることがその前提となるわけでございます。
これに加えまして、民事訴訟事件は最近急激に増加しておりまして、しかも事件内容は複雑困難化しております。したがいまして、それに伴いまして裁判官の裁判事務の負担が著しく増加しておりまして、このような裁判事務の適正迅速化を図り、しかも一層の審理の充実を図るためには、裁判官の人的な充実が必要であるということでございます。
ところで、裁判官につきましては、委員も御承知のとおり、その主たる給源は司法修習生に限られておりますので、まず判事補から増員を図る必要がございます。このようなことから、修習生からの判事補任官希望者の数なども考慮した上、平成八年度は判事補十五人の増員を図るということのようでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/8
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009・山田英介
○山田(英)委員 もう一つ、裁判官以外の裁判所職員を二十一名増員を図るということでございますが、これも、改めましていま少しく詳しく御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/9
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010・永井紀昭
○永井政府委員 裁判官以外の裁判所職員では、裁判所の事務のうち裁判部門について裁判所書記官五十五人を増員することが予定されておりますが、その内訳は、既にお渡ししております参考資料の末尾の方、十五ページにございますけれども、簡単に御説明いたします。
まず、地方裁判所における民事訴訟事件の審理充実を図るため裁判所書記官三十八人の増員、それから、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件処理の充実強化を図るため裁判所書記官十五人の増員、それから三番目に、地方裁判所における破産事件処理の充実強化を図るため裁判所書記官二人の増員ということで、合計五十五名の増員でございます。
他方、政府における職員の定員削減の方針、平成八年度開始の第八次定員削減計画に協力する意味で、主として清掃等の庁舎管理業務に携わる技能労務職員三十二人を減員するほか、司法行政部門における事務の簡素化、能率化に努めることといたしまして、タイピスト二人の減員が可能でございますので、この三十四人を減員することによりまして、結局裁判官以外の裁判所職員の定員は、五十五引く三十四ということで純増二十一というふうになると聞いております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/10
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011・山田英介
○山田(英)委員 関連いたしまして、基礎的な状況について何点かお尋ねをしたいと思っておりますが、地方裁判所また簡易裁判所における民事訴訟事件の係属状況また処理状況につきまして、最近ではどのような推移となっておりますのか、お知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/11
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012・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 最高裁から申し上げますが、まず地方裁判所の民事訴訟事件でございますが、新受件数は年々増加傾向をたどっておりまして、平成六年におきましては十五万七千三百九十五件と、過去最高を記録しております。既済件数も新受件数とほぼ同様の傾向を示しておりまして、平成六年度においては十五万五千七百六十三件でございます。未済件数は年々増加しておりまして、平成六年度においては十二万七百二十七件でございます。
簡易裁判所でございますが、民事訴訟事件の新受件数は、年々これも増加傾向にありまして、平成六年におきましては二十四万五千二百三十一件、既済件数も新受件数とほぼ同様の傾向を示し、平成六年においては二十四万六千七百五十七件でございますが、未済件数は年々増加傾向にありまして、平成六年においては四万七千五百二十八件となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/12
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013・山田英介
○山田(英)委員 民事訴訟事件、未済分が年々増加をしておるというお話でございますけれども、今回、この裁判所職員定員法の一部改正法案によりまして十五名の判事補を増員するということになっておるわけでございますが、ただいま御答弁がありました状況を踏まえまして、この増員によって民事訴訟事件の審理をどのように充実をさせていくのか、あるいはさらに処理を進めていく二のか、この点について改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/13
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014・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 今回、判事補の増員をお願いしているところでございますので、関連する状況を申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、民事訴訟事件は急増している。特に地方裁判所の民事通常訴訟事件の事件数は、平成四年以来過去最高を更新しております。しかも、先ほど法務省の方からもお話がありましたように、事件内容は年々複雑困難化をしております。したがって、裁判官の裁判事務の負担というものは著しく増加しているというふうに思っております。
通常、御承知のとおり判事補は合議事件の新任裁判官となりますために、判事補から増員をすることによって合議事件の処理そのものの充実を図ることができるということが言えようかと思います。また、合議体において現在よりも多くの事件を処理することが可能になりますので、これまでは事案が複雑困難でありながらやむを得ず単独体で処理されていた事件を合議に付することが可能になります。単独体はそれほど困難でない事件の処理に専念することができますし、これによって円滑な事件処理を実現できるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/14
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015・山田英介
○山田(英)委員 次に、民事執行事件の係属状況また処理状況につきまして、最高裁にお伺いをすることになると思いますが、この不動産執行及び債権執行事件数の推移について簡単に御報告をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/15
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016・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 まず、不動産執行事件の状況でございますが、新受件数で申し上げますと、最近底をついたといいますか、その時期をさかのぼってみますと、平成二年でございました。この平成二年の新受件数は四万一千百七十九件でございますが、これが年々増加をしてきておりまして、平成六年には六万三千九百三件となっております。
既済件数もほぼ相応すると言っていいかもしれませんが、実は既済件数の方は、なかなか困難化しておりまして、伸びておりません。むしろ、例えば平成二年、六万三千八十三件であったものが、平成六年は四万九千二十八件と落ちてきておるわけでございます。したがいまして、未済の事件数ですが、平成二年が五万九千九件でありましたものが、平成六年には十万八千九十二件というふうに大幅に増加をしているという状況にございます。
債権の執行事件でございますが、これは平成二年が、新受件数で申し上げますと、九万一千九百十五件でありましたものが、平成六年には十四万三千五百四件。これが既済件数では、平成二年が十一万七千九百十一件でありましたものが、こちらの方は比較的順調に十二万八千七百八十九件既済となっておりますが、未済で申し上げますと、平成二年が十一万四千二百八十件であったものが十五万二千十九件、やはり大幅に増加をしているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/16
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017・山田英介
○山田(英)委員 全体的にはそういう推移ということで、わかりました。
そこで、特に大都市部におけるこの不動産執行事件とか債権執行事件の推移でございますが、具体的に例えば東京地裁、大阪地裁、この大都市部におけるこれらの状況はどうなっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/17
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018・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 全国的に大裁判所といいますと、東京、大阪というところに代表されるわけでございますが、特にこの不動産執行事件につきまして、東京と大阪の新受、既済等の状況を申し上げたいと思います。
先ほどの例に倣いまして、平成二年と平成六年の比較で申し上げたいと思いますが、東京の場合、新受件数は、平成二年が千五百七十一件でありましたものが、平成六年には六千二十九件となっております。既済件数は、平成二年が千七百十九件でありましたものが、平成六年には二千五百八十三件となっておりまして、未済件数でいいますと、平成二年が千八百九十四件でありましたものが、平成六年には一万四千六百十一件と大幅な増加を示しております。
同様のことは大阪でも申し上げられると思いますが、大阪では、平成二年の新受件数が六百十八件でありましたものが、平成六年の新受件数は三千四百六十八件、既済件数は、平成二年が千三十九件でありましたものが、平成六年には二千二百九十六件、未済件数で申し上げますと、平成二年が六百六十四件でありましたものが、平成六年には六千七百六十四件ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/18
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019・山田英介
○山田(英)委員 改めて御見解をお示しをいただきたいと思っておりますが、最近、不動産執行とか債権執行申し立て事件が激増している。その背景といいますか、理由について御認識をお示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/19
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020・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 不動産執行及び債権執行の申し立て事件が大幅に増加していることは今申し上げたとおりでございますが、その理由につきましては、なかなか詳細に把握をすることは困難かと思いますし、掌握しているわけではございませんが、文献、あるいは巷間言われるように、バブル経済の崩壊の影響というのが大きいものというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/20
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021・山田英介
○山田(英)委員 何点かまとめてお伺いをいたしますけれども、東京地裁、大阪地裁における執行事件の担当の裁判官また書記官の大都市部における増員の状況についてはどうなっておりますか。それから、あわせて裁判所書記官の増員によって民事執行法に基づきます執行事件の処理についてどのように充実強化を図っていかれようとするのか、この二点、先にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/21
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022・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 まず人員の関係を申し上げたいと思いますが、東京から申し上げますと、執行事件を担当する裁判官の増員の関係ですが、平成三年四月におきましては五名でございましたが、平成七年四月には十名に増員になっておりまして、現在検討中でございますが平成八年四月には十二名に増員をする予定でございます。また、執行事件を担当する書記官及び事務官につきましても、平成三年四月には合わせて三十九名でございましたが、平成七年の四月には六十六名に増員を図りまして、この平成八年四月には合計で九十名余りに増員をする予定でおります。
それから大阪地裁でございますが、執行事件を担当する裁判官の増員については、平成三年四月には三名でございましたが、平成七年四月には六名に増員し、この平成八年四月においてもこの六名が執行事件を担当する予定でございます。また、書記官、事務官につきましては、平成三年四月には書記官と事務官を合わせて三十一名でございましたが、平成七年四月には五十名に増員し、この平成八年四月においてはさらに数名の増員をする予定でございます。
それから、増員によってどのような事務の充実強化が図られるかということでございますので若干申し上げたいと思いますが、御承知のとおり、不動産競売事件においては、執行裁判所は所有者の所有する物件を適正な価額で売却をするということが必要でございます。そのために、現況調査とかあるいは評価とかさらには物件明細というような形で、現況を十分掌握をした上で一般の閲覧に供しているということでございますが、特に売却のポイントとなります物件明細書でございますが、これには不動産の表示のほかに、不動産に係る権利の取得、あるいは仮処分の執行で売却によって処分を失わないものだとか、売却によって設定されたものとみなされる地上権等の概要など、いろいろなものを記載することになっております。
さらに、競売不動産について、買い受け人が引き受けるべき用益権の内容等も明らかにする、こういうことになっております。その前提として、先ほど申し上げたように、現況調査あるいは評価あるいはその物件の中身の点検ということが必要になるわけでございますが、特に、この物件明細書の記載が現況調査の状況やあるいは評価書の記載と食い違いがあるような場合には大きな問題を起こすことになります。そういう意味で、物件明細書の作成というのは大変な労力を要する作業でございまして、実際に実務におきましても、この物件明細書の作成にある程度の期間を要する現状にございます。この点が現状における大きなネックになっているというふうに認識をしておりますので、今回この書記官等の増員を図ることによりまして、物件明細書の作成手続を促進させることができるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/22
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023・山田英介
○山田(英)委員 今御答弁にありましたこの物件明細書については、裁判所書記官が担当されるということで、かなり手間暇がかかるということでございますが、もう一つ、不動産執行事件にありましては評価書をつくるということもかなりの事務である。これは通常、不動産鑑定士が評価人ということに委嘱をされてということになるのでしょうか、担当していると理解しておりますが、この評価書も、あわせてこの作成について迅速化を図る、あるいは大量に正確に処理することができる体制をつくるということは極めて大事なことではないのか。
どうなんでしょうか、不動産鑑定士の皆さんも、もともと鑑定をする、評価をするということが基本的な御任務であるわけでありますから、裁判所がそういうスタンスに立って協力を求めるということであれば、これは評価書を担当の評価人を大幅に増員をすることができるのではないのか、こう思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/23
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024・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げておりますように、不動産競売事件における評価というものの重要性はまさに先生御指摘のとおりでございまして、適正な評価のもとに適正な売却に付するということが大変大事であろうと思っております。したがって、私どもとしては、評価人に適切な人材を広く求めるという観点から、必要に応じ充実を図ってきたところでございまして、例えば東京地裁で申し上げますと、平成三年の四月における評価人の数は十六名でございましたが、平成八年になりまして三十二人という形になろうかと思います。それから大阪の方は、需要によりまして、平成三年は四名でございましたが、平成八年には十五名ということになっております。
ただ、この評価人の評価というものは、申し上げるまでもなく、適正妥当な評価を行う能力を有することが必要である。そして、裁判所の競売手続の一端を担うものでございますので、中立の立場を保持しなければなりませんし、執行官と同様に評価の対象物件の立入権が認められている。その物件の居住者等のプライバシーにも配慮することが必要になるということでございます。このようなことから、そのふさわしい人物をどのように確保していくかということにつきましては、大変気を使っているところでございます。
ただ、必要に応じて事件数に応じた評価人を確保していくということは当然でございまして、この点は今後とも配慮していかなければいかぬと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、今例えば東京で未済事件が増加をしている一番大きな要因は、物件明細書関係の事務的な手続のおくれでございますが、評価につきましては一時期よりかなり改善をされまして、未済事件は急速に減少してきておるという状況にございます。適時適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/24
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025・山田英介
○山田(英)委員 長尾大臣にお伺いいたしますけれども、今、いろいろ基礎的な部分についてやりとりをさせていただいたわけでありますが、この裁判所の職員の定員につきまして、今後の取り組みに関する大臣の御所見をこの問題については伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/25
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026・長尾立子
○長尾国務大臣 適正迅速な裁判を実現するためには、ある程度の裁判所の判事またはその職員について必要な人員を確保していかなくてはならない、これは先生の御指摘のとおりであると思いますし、最高裁判所におかれましても、この問題について適切に対処してこられたものと承知をいたしております。
法務大臣といたしましても、この裁判所職員定員法、私どもの所管でございます裁判所における所要人員の確保のため、今後とも努力を続けてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/26
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027・山田英介
○山田(英)委員 それでは、もう少し的を絞りまして、ただいまもやりとりにございました不動産競売手続について、これをどのようにして十分機能させていくか、あるいは活性化をさせていくかということは極めて重要なテーマであると私は認識をいたしております。
端的に申し上げますと、不動産競売制度の現状、問題点というのは、遅い、なかなか売れない、それから非常に安い、ここに象徴されているわけでございます。
御案内のとおりでございますが、不動産の競売制度は債権を回収する最終的な手段である。したがって、ここのところが十分に機能しませんと、実に根本的な、さまざまな問題が起きてくる。この担保権の意味が、一つは、何のためにそれでは担保をつけたのか、お金を貸す、それを担保するためになぜ抵当権などをつけるのかというこの意味が非常に低下をするということが一つ言えます。と同時に、裁判制度そのものの信頼にも大きな揺るぎというものが出てこざるを得ない。それからもう一つは、バブル債権といいますか、住専を初めとするバブル債権の処理が進んでいくかどうかという極めてキーポイントにこれはならざるを得ない。
これから住専を初め住専以外のノンバンクあるいは全体的なバブル債権というものを、社会的な公正を確保する、また正義を確保するという観点から極めて重要な作業をしなければならない。またその局面をこれから迎えようとするわけでありますから、そういう状況の中で、遅い、売れない、安いというこの競売制度をこのままにしておいてよいはずは当然ないわけでありまして、関係者の本当にそれこそ全力を挙げた改善といいますか、改革の取り組みが国民的にもあるいは国家経済的にも強く求められている、要請されているというような基本的な認識のもとで何点か提言をさせていただいたり、あるいはまた御当局のお考えというものを明らかにしていただきたいと思うわけでございます。
まず一点は、競売制度、幾つかのアプローチの仕方があるのだろうと思いますが、そのうちの一つ、これは極めて大事だと私は思っているのですが、現時点の競売市場には一般国民はもう皆無と言っていいほど直接参加をしていない、御案内のとおりでございます。
このことはいろいろな要因が考えられるわけでありますが、一つは、金融、資金面から一般国民が、競売市場といいますか、この競売手続に参入しやすくしていくことが大事だと思っております。一般ユーザー、一般国民が競売手続に参加をしやすくするために、競売物件を担保にして公的金融機関も含めて銀行などから融資を受けられるようにするための制度を本気で検討し、考え、実現させる必要があるのではないか。
皆様御案内のとおりでございますが、現状の競売手続におきましては、まず応札をするときに最低売却価格の二割を納付する。そして競売物件を落札した、競落をした後二週間、十四日以内に残額を現金で納付する。それから後二週間ほど経過をして初めて、競落をした、落札をした物件についての落札人所有名義の権利証というものが交付をされる。これが現状のシステムの形になっているわけだと思います。そう理解をいたしております。
そうなりますと、これは結果的に、結論的に言うと、資金面から、金融面から幅広い一般国民の参加を阻害している、妨げているということが明らかに見てとれるわけでございます。
といいますのも、応札時に二割、落札をしてから十四日以内、二週間以内に残金の八割を現金で納付するということになりますと、それだけの自己資金を持っている国民でなければ、あるいは他に金融機関等から融資を受けることのできる、したがって裏づけとしての担保を提供できる物件を持っている人でなければ、個人も法人も資金調達ができなくなるということになるわけでございますから、これをいろいろ工夫しまして、落札した、競落した物件を担保にして、二週間以内に残金八割を納めなければならないわけですから、それを融資という手段を通して残額を納付できるようにしてあげれば、これは一つの、幅広く国民の競売市場への参加ということを大きく促していくインセンティブが働いてくると思うわけであります。
御当局でもいろいろ工夫されているようでございまして、いわゆる横浜方式というようなことがあるようでございますけれども、それがもし評価をされて競売制度の活性化につながる有力な一つの手段であるという御認識に立つならば、全国的にこれは一つの確立したシステムとして適用をしていくということをぜひ考えるべきだと私は思いますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/27
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028・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 不動産競売につきましていろいろ御批判をいただいていることは承知をしております。今お話のありました競落代金の確保の問題につきましても大きな降路があるということも事実でございます。
競売手続では、今お話がありましたように、競落人は買い受け代金を一括して支払わなければならない、代金の納入後に初めて所有権移転登記を受けることができる、こう…う仕組みになっておりまして、事前に抵当権を設定してローンを組むことができないということになります。
そこで、今お話にありましたように、横浜など幾つかの裁判所で、裁判所、弁護士会、司法書士会それから法務及び金融機関の了解のもとに、金融機関が、抵当権設定登記を受ける前に司法書士や弁護士に融資金を交付して、通常裁判所から登記所に直接送付する所有権移転登記の嘱託書等を、抵当権設定登記等の手続をとらせるために司法書士や弁護士に交付するという方法をとるようになったと聞いております。これがいわゆる横浜ローン方式と言われたものでございます。不動産等の買い受け代金は高額でありまして、その一括納入は特に一般市民にとってはかなりの不便を生じるということは想像できるわけでございますが、その意味で、横浜ローン方式はこういう不便を解消するものとして大きな利点を有しているというふうには思います。
ただ、この方式は、金融機関にとっては、抵当権が設定されてからローンが組まれるという通常の方式と異なって、抵当権の設定登記前にローンを組むことになるということでございますので、その不動産をその後担保にとることができなくなる危険をはらんでいるという意味で、不安定な手続と言わざるを得ないかと思います。
また、裁判所としては、競落された物件の登記手続未了の段階で、これに必要な書類を司法書士や弁護士に預けるということになるために、責任を持って手続を行う司法書士や弁護士が当事者についているということが前提とならざるを得ませんし、関係者すべての了解を得てこの手続についての取り決めをしていくことも当然前提となります。しかも、そのような場合でも、何らかの間違いでこれが悪用される結果となる危険も皆無とは言えないわけでございます。
こういった事情から、この方式は実際のところ、現状でも余り活用されていないようでございまして、これを全国的に広めるといっても、その前提条件の整備はなかなか難しいというふうに思っております。
何かいい方法があれば研究をしていきたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/28
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029・山田英介
○山田(英)委員 今、御答弁を伺っていますと、正確に理解できたかどうか、私もちょっと整理ができていない部分もあるのですが、競落物件については全額を納付しなければ所有権の移転登記は行えない、そういう仕組みになっている。ですから、そこのところを抜本的に検討されたらどうなんですかというのが僕の趣旨なんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/29
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030・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 委員御指摘の御趣旨はよく了解をしているつもりでございますが、仮に所有権移転登記がなされた後に代金の納入ができなかった場合どうするか、先ほど申し上げた危険がございますので、相当慎重な検討が必要になろうかというふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/30
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031・山田英介
○山田(英)委員 これは民事局長にも意見を聞いておいた方がいいんじゃないかなという気がしているのですけれども、どうですか、民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/31
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032・濱崎恭生
○濱崎政府委員 現在の制度は、今最高裁当局がお答えになりましたように、権利関係の確実を図るという観点から、代金を納付してもらった後に移転登記をするという制度になっておるものと承知しておりまして、御指摘のような改正をするということについては、今最高裁当局からお答えになりましたとおり、大変慎重な検討を要する問題ではないかというふうに思っております。最高裁当局の御意向等も踏まえながら、念頭に置いておきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/32
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033・山田英介
○山田(英)委員 冒頭といいますか、先ほど私は、この競売制度を十分に機能させるということがいかに重要な意味を持つものかということを申し上げました、繰り返しては申し上げませんけれども。ぜひひとつ大きな問題意識を持っていただいて、競落物件についての、それを担保にして金融機関等から融資を受けて十四日以内に納付ができるというような仕組みにしないと、これはもう自己資金を持っているか、他に担保物件を持っているか、そういう個人、法人しか参加できないという非常に大きな隘路になっているわけでありますから、ぜひ重大な関心をお持ちをいただきたいと思います。
私は、またこの点につきましては、日を改めましていろいろと議論をさせていただきたいと思っております。
今、融資資金面からの活性化ということでありますが、もう一つは、競売物件情報というようなものを広く一般国民に情報を開示していくということもまた、非常に大事だというふうに思っております。特に物件も多く、需要も大きい大都市部では、区役所とか市役所、あるいはそこに出向けば物件情報を満遍なく、あるいはさまざまな情報を入手できるというような情報提供の手だてを、これまたいろいろ考えておられるのでしょうけれども、さらに踏み込んだというか、抜本的な情報開示の、あるいは情報の提供というものを、手だてを講ずるべきだと思いますけれども、これはちょっと時間の関係もありますので、短目に一言、御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/33
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034・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 競売情報を適正に周知をさせるということは非常に重要なことであろうというふうに思っております。
今、当面考えておりますことだけを若干申し上げますが、大都市の裁判所を中心に、現在多くの裁判所で日刊新聞や住宅情報誌等に売却物件の情報掲載をして、広く一般の人が参加できるように配慮しているということが一つございます。
さらに、東京地裁、大阪地裁を初め、需要の大きな地方裁判所で、約十九庁を考えておりますが、競売物件の情報をファクシミリを利用して一般の人に提供することを予定しております。既に札幌地裁では、本年の三月二十八日から情報提供を開始するということになっておりまして、その他の庁につきましても、四月以降、順次情報提供が開始される見込みでございます。そうしますと、区役所や市役所に出向くまでもなく、自宅で必要な情報を入手することができるようになるというふうに考えております。
その他いろいろございますが、当面、ホットな情報だけを申し上げさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/34
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035・山田英介
○山田(英)委員 御答弁でございますが、なお一層、もっと思い切った情報開示、提供というものを考えるべきだと思います。
それからもう一つは、この制度を活性化するためのもう一つの角度は運営面の改善ということでございますが、これは先ほど来、裁判所書記官を増員して物件明細書等の事務の迅速化を図る、あるいは評価人、不動産鑑定士等をさらに充実をさせてというところにつきましては、先ほど御答弁を基本的にいただいたと理解をいたしております。
それからもう一つは、大蔵省に来ていただいているかと思うのですけれども、税制面からもこの競売制度というものを活性化する必要というものがあるのではないのかという観点から申し上げたいと思うのですけれども、従来、競売市場の参加者というのは、転売を目的とする専門の不動産業者が過半であったわけでございます。ところが、全国的にバブルが膨らんだ、そしてまた大都市部では特に地価の高騰というものが大変な深刻さを増してきたということで、短期売買の地価を抑制する、あるいは低下をさせる、そういう政策目的を持って、短期売買の高利益を防ぐために、法人、個人に対して所有期間が五年以下の土地の譲渡益には重課措置がとられているわけでございます。
ところが、実際には、このことは、政策目的、目標としては、私は基本的に正しいという理解を持っているのですけれども、競売市場をどうしたら活性化できるのかというふうに、その角度からこれを見てみますと、いわゆる短期売買の高率課税というものをいわゆる専門の不動産事業者が非常に嫌って、結局、競売市場から撤退を余儀なくされている、そういう実態も一方においてあるわけでございます。したがって、競売物件は、あるいはそういう不動産執行申し立て事件数というのはどんどんふえてくる、したがって競売物件は激増をする、しかし応札者はいない、参加者が極めて少ない、これが今日的な実態でございますから、そういうふうに考えてみると、これは大蔵省でございますが、競売物件の譲渡益に限っては、個人、法人を問わず、所有期間五年以内の重課税制度を減免をするというような措置を講ずることによって、競売物住専門の不動産事業者に落札メリットが一定の幅で生じるようにしてあげることも大事なんではないのかというふうに私は考えるわけであります。
これは、じゃそうします、そうしませんということではなくて、ぜひ大蔵省に持って帰っていただいて、これは、例えば、さっき申し上げましたけれども、いろいろなバブル債権を自主的に回収を確保していく、あるいは進めていくという上で極めて大事な、税制面から見た競売制度の活性化ということにつながるわけでありますので、ぜひ問題意識を持っていただいて、しっかり検討をしてもらいたいというふうに思いますけれども、大蔵省、一言お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/35
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036・木村幸俊
○木村説明員 お答え申し上げます。
ただいま先生がおっしゃいました競売で取得した土地を譲渡した法人及び個人につきまして、短期譲渡益に係る追加課税、これは法人の場合でございますし、個人の場合でございますと重課制度があるわけでございますが、これを緩和してはどうかというような御提案でございました。
これは、先生よく御承知のとおりでございまして、改めて御説明するまでもないと思いますが、例えば、法人の場合でございますと追加課税制度、これは、まさに投機的土地取引の抑制とか土地の資産としての有利性の縮減などを目的としたものでございます。
したがいまして、この制度につきまして、公有地の確保とか優良な住宅建設など土地の有効利用に資する譲渡、まさに競売取得した土地がそういった目的のために譲渡されるという場合でございますと、こういった追加課税制度等の適用除外ということになっているわけでございますが、一般的に、競売で取得した土地だ、その譲渡だからという売買形態の違いのみに着目いたしまして追加課税制度とか重課制度の対象から外すということは、なかなか、一般の場合と比べまして課税上バランスを失するのじゃないかという問題がちょっとあろうと思っております。
なお、今回、平成八年度の土地税制改正におきまして、土地の保有、譲渡、取得の各段階にわたりまして税負担のあり方を見直しております。一定の調整を行うことといたしておりまして、法人の土地譲渡益に対する追加課税制度につきましても、例えば所有期間が二年超五年以下の短期の場合でございますと、追加課税の税率二〇%を一〇%に引き下げる、さらには所有期間二年以下の、超短期と言っておりますが、その土地譲渡益につきましては、三〇%分離課税を一五%追加課税というふうに改めて、その軽減を図ることといたしておりますので、御理解を賜りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/36
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037・山田英介
○山田(英)委員 また時間をかけて議論したいと思っております。
次に、関連をいたしまして何点か質問をいたします。
国税庁に来ていただいているかと思いますけれども、住専問題でございますが、現時点までに住専三社とその大口融資先五つのグループに対して立入調査をなされた、このように理解しておりますけれども、他の住専四社、他の大口の融資先への対処についてどういう御方針を持っておられるのか、簡潔に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/37
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038・西川聰
○西川説明員 お答えいたします。
国税当局といたしましては、従来から、資料、情報の収集等に努めまして、納税者の適正な課税の実現に努めるということでございまして、問題があれば調査するというのが基本的スタンスでございます。
今回の住専問題につきましても、その関係者の課税処理が適切に行われているかどうかといった点につきまして、我々としては、非常に大きな関心を持っているところでございまして、今後とも適正な課税の実現といった観点から積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/38
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039・山田英介
○山田(英)委員 検察、警察、捜査当局にもおいでいただいて、一点。
国税・検察・警察合同会議というものを既に設置をされて住専債権の回収等に、そこに暴力団だとかそういうかかわりが決して少なくないとされている部分があるわけでございまして、そこを着実に回収を図るという意味で三者の合同会議が設置されていると伺っております。
それらも踏まえまして、基本的には民事不介入という原則があるわけだと思いますが、しかし、この住専問題あるいは債権の回収については国民的にも非常に大きな、極めて大きな関心が持たれているわけでありまして、民事不介入ということが原則かもしれませんけれども、これらについて、あらゆる法律、あらゆる罪名等を駆使して徹底的な捜査並びに摘発をぜひすべきである、これはまた国民の期待にこたえることになるのだというふうに思うわけでありますが、検察、警察からその決意なりお考えなりを、一言ずつで結構でございますので、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/39
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040・原田明夫
○原田政府委員 お答え申し上げます。
いわゆる住専をめぐる不良債権問題につきましては、関係者の刑事上の責任が可能な限り明らかにされる必要があると考えております。検察当局におきましては、既に住専問題等に関する協議会や捜査専従班を設置するなど所要の態勢を整えて取り組んでいるところでございます。
御指摘のとおり、この問題に関しましては、過去の刑事責任のみならずこれから進められてまいると考えられます債権回収の過程におきましても、委員御指摘のようなさまざまな観点からの配慮が必要であろうかと思います。そのいずれの面におきましても、国税当局あるいは警察当局とも緊密な連携を図りつつ、情報や資料の収集、分析、検討を行ってまいることと存じます。
今後、そのような過程で関係者の刑事責任を追及すべきであると認められるような容疑事実が判明してまいる場合には、そのような緊密な連携のもとで鋭意所要の捜査を遂げまして、厳正に対処していくものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/40
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041・人見信男
○人見説明員 住専に係るものも含めまして、民事上の債権債務関係については民事関係法令に基づき適正に処理されるべきものと考えておりますが、債権回収等の過程で暴力団等による犯罪や暴力団対策法違反に当たる行為があれば、厳正かつ積極的に対処してまいる所存であります。
警察庁におきましては、一月九日付で刑事局内に金融・不良債権関連事犯対策室というものをつくっておりますが、これを二月八日付で警察庁次長を長とする室に拡大強化し、また全国の都道府県警察に対しましても、情報収集、事件検挙及び体制の整備に積極的に取り組むよう指示し、今後違法事案を認めた場合においては的確な対応をとり得るよう努めているところであります。
金融、不良債権関連事犯の捜査に当たりましては検察当局とも連携を図りながら行っているところであり、また今後とも検察当局や国税当局と緊密な連携の上、所要の捜査を推進していく所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/41
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042・山田英介
○山田(英)委員 自由民主党の加藤幹事長の一千万円のやみ献金疑惑が今関心を集めておりますけれども、これは九〇年、鉄骨加工会社共和の森口副社長から加藤幹事長へ一千万円が不法に手渡された疑いがある。当時、幹事長は宮澤内閣の官房長官をされていた。今年三月四日、加藤幹事長の後援会、紘和会の水町元会長が声明を出されまして、ポイントは三点あるんですが、九〇年一月三十一日、その一千万円金銭授受の現場に立ち会っていた。二点目は、代議士個人への政治献金であり、後援会への寄附金ではない。三点目のポイントは、共和の献金問題が国会で取り上げられるようになった九二年二月に、あのときの一千万を預かってほしいと一千万を秘書が持参した。こういう流れになっているわけであります。
これはポイントが三点あるわけで、一つは、所得税法違反として脱税の疑いがあるんじゃないのか。二点目は、国会で過去四回疑惑を全面否定をする。したがって、本当に真実を語っておられたのか。三点目は、住専問題とのかかわりで大蔵が出してきた資料によれば、住専から共和というこの会社に多額の融資が行われ、そのうちの七十三億円が不良債権化していたということが明らかになった。したがって、六千八百五十億円の税金が、やみ献金の後始末に使われることになるのではないのか。これがポイントの三つだと思います。
それで、既に所得税法違反の疑いで加藤幹事長が三月七日、東京地検に告発状を提出された。そして東京地検はこれを受理した。
そこで質問でございますが、捜査当局はこの問題についてどのような対処方針で臨まれようとしているのか。また、時効の成立は三月十五日ではないかと言われておりましたけれども、実際はどうなんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/42
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043・原田明夫
○原田政府委員 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、去る三月七日、加藤紘一代議士に対する所得税法違反の告発が東京地方検察庁になされまして、受理されたと聞いております。現在、その事案につきまして、東京地検におきまして鋭意捜査中と承知いたしております。
時効の点のお尋ねでございますが、具体的事案につきまして検察当局がどのような対応をとるかについては法務当局として答弁を差し控えさせていただきたいのでございますが、一般的に時効がいつ完成するかにつきましては、それは、一見して明らかな場合は別といたしまして、通常は事実関係について捜査を尽くした上でなければ判断できない事柄でございますので、まずは事実関係の解明のための所要の捜査が行われるということについて、それを待ちたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/43
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044・山田英介
○山田(英)委員 二点目。この後援会、紘和会の水町元会長と加藤幹事長の言い分が食い違っております。捜査当局は、両氏に対する事情聴取を行うのか、あるいは既に行ったのか、お答えをください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/44
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045・原田明夫
○原田政府委員 お答え申し上げます。
具体的に捜査中の事案でございますので、どのような形で捜査が行われているか、また、その中身について今の段階でお答え申し上げることは御遠慮させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/45
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046・山田英介
○山田(英)委員 大臣にお伺いをいたしますが、このいわゆるやみ献金疑惑と言われるものについて、この解明捜査についてどのような御所見をお持ちでございますか。
また二点目ですが、この疑惑は、加藤幹事長が、与党の予算編成の責任者、また今回の政府・与党による処理スキーム策定の中心的な役割を果たしたということから考えても、住専問題そのものではないのかと私は理解をいたしております。そしてまた、この疑惑とされていることが事実であれば、国会で真実でない答弁を繰り返してなされてきたということにもなるわけでありますので、みずから加藤紘一幹事長は、進んで国会の証人喚問に応すべきと考えているわけでありますけれども、法務大臣としては御所見はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/46
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047・長尾立子
○長尾国務大臣 加藤議員にかかわります所得税法違反事件につきましては、東京地検で告発状を受理いたしておりまして、同地検において所要の捜査を行っているものと承知をいたしております。
ただいま議員からは証人喚問についてのお尋ねがございましたが、これは国会でお決めをいただくことでございまして、法務大臣としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/47
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048・山田英介
○山田(英)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/48
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049・加藤卓二
○加藤委員長 佐々木秀典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/49
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050・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 社会民主党・護憲連合の佐々木です。
きょうは、久しぶりに新進党の皆さんも御出席いただいて、山田委員からの御質問がありました。大変結構なことだと思います。予算委員会も早くこのように開かれて、新進党の皆さんとも御一緒の上で予算の成立を早く図りたいものだ、こう考えております。
そこで、私の質問予定の中で、最近の裁判事件の傾向と処理の状況などについては先ほど山田委員からも御質問がありましたので、重複する分は割愛したいと思います。ただ、例えば昨年一年を例にとった場合に、一昨年と比べて民事事件、刑事事件その他裁判所に係属するさまざまな事件で何か去年は特徴的なことがあったかどうか。刑事事件などについては、何といっても去年は一連のオウム事件がありまして、これが大量に起訴されて東京地裁を中心にして今係属審理中だというようなことはこれはもう特徴的なことだとは思うんですけれども、民事、刑事について、そのほかに何か特徴的な、一昨年に比べての傾向などがありましたらお知らせをいただきたい。
それと、統計資料によりますと、民事事件の方は、先ほど石垣局長お話しのようにふえているということはわかるんですけれども、刑事事件の方は必ずしも多くないんですね。昭和五十九年には十七万九千二百三十三件であった。それが平成元年からは大体十四万台、平成四年には十三万件、平成五年には十四万、それから平成六年には十四万五千三百ぐらいですか、五十九年に比べるとかなり減っている。これが犯罪自体が少なくなっているんだとすればそれは好ましい傾向だとは言えるんだけれども、そうなんだろうか。最近の報道などによっても結構殺人事件などの凶悪事件はあるわけですね。ですから、必ずしもこの数字だけから見て治安状況がよくなっているのかということについてはいかがなものかとも思うんだけれども、その辺の特徴的なことがありましたら、民事、刑事について、その他の破産執行事件についてもそうですけれども、特徴的な点だけ、ありましたらお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/50
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051・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 まず民事事件について申し上げますが、地方裁判所における民事第一審訴訟事件の新受件数が年々増加傾向をたどっているということは先ほど来申し上げているとおりでございまして、平成六年におきましては十五万五千四百三十九件と過去最高を記録したところであります。平成七年度ですが、確定的なところは申し上げかねますが、前年同様の高水準を維持する見込みでございます。
また、地方裁判所における執行事件の新受件数も年々増加傾向にあるということは先ほど来申し上げているとおりであります。
一方、簡易裁判所の民事訴訟事件の新受件数も増加傾向にありまして、平成六年においては二十四万五千二百三十一件で、平成七年も前年とほぼ同数になる見込みでございます。
その傾向といいますと、やはり現在の経済情勢というものが反映をされているというふうに思わざるを得ないというふうに思っておりますが、それ以上の立ち入った分析まではまだいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/51
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052・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 刑事事件はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/52
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053・高橋省吾
○高橋最高裁判所長官代理者 刑事事件関係について申し上げますと、全国の地方裁判所の刑事事件の新受件数は、昭和五十九年までは増加傾向を示しておりましたが、昭和六十年以降は減少に転じまして、平成五年以降は再び増加に転じております。新受件数がふえるかあるいは減るかといった問題につきましては、これは検察官の起訴件数の問題ということになってきますので、裁判所としましては、増減の具体的な理由といいますか、そのあたりについては把握していないところでございます。
また、大型、複雑な事件がふえているかどうかという点につきましては、委員御指摘のとおり、昨年はオウム真理教関連の事件として極めて多数の被告人が全国的に、またいろいろな事件で起訴されまして、これらの相当数は極めて重大で大型、複雑な事件でございます。
ただ、何が大型、複雑と言っていいかどうか、その明確な基準があるわけではないものですから、刑事事件全体において大型あるいは複雑な事件が増加しているかどうか、こういった分析はちょっと困難でありますので、その点、ひとつ事情をお察しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/53
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054・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 裁判の促進ということが非常に言われておりまして、これは裁判を早くするためにも、例えば人証、証人、本人の調書、尋問の結果を早く正確に知りたいということはこれは当事者の願いでもあるし、訴訟促進のためには非常に重要なことだと思うのです。
そういう意味では、私は速記官の役割——裁判所の職員にもいろいろな職員がいます。もちろんそれぞれ充実を図らなければならないのですが、とりわけこの速記官の充実ということが、私の経験からいっても、非常に重要だと思っているのです。ところが、どうも聞いてみますと、これは裁判所の職員組合などからも、その部署部署、どこも足りないのだ、職員は非常に足りない、速記官が非常に少ないということも言われておるのですね。
私の経験からいっても、確かに裁判とこの国会に来てからのことを比較いたしますと、今もこうして速記官の方々が一生懸命速記をとっていらっしゃいますけれども、国会の場合は非常に早いのですね。仮ではあっても、きょうやったことが夕方になると仮ではあっても一応こうなって、もう私どもは目に触れることも場合によったらできる。
ところが、裁判所の場合にはなかなかいかない。集中審理促進のためには、集中審理ということが刑事でも民事でも必要になってくると思うのですが、とりわけそういう場合には速記による調書の作成、これは非常に必要だと私は考えているのですが、この速記官の充実の度合いというのはどの程度になっておりますか。
それとまた、速記官については、養成のためには研修所があるわけですね。ここで、その速記官の毎年の募集に対する応募の人員などはどうなっているのか。
それからまた、速記官がこちらと違ってソクタイプですね。今でもソクタイプを使っているのですね。あれをマスターするのにどのぐらいの時間がかかるのか、どのぐらいになれば実務につけるのか、この辺についてもお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/54
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055・涌井紀夫
○涌井最高裁判所長官代理者 速記官の充足状況でございますが、委員御指摘のとおり、定員をなかなか充員できない状況が続いております。
平成七年十二月一日現在の数字を申し上げますと、予算上の定員は九百三十五名ございますが、現在員が八百六十八名ということでございますので、六十七名が欠員状態にあるという状況でございます。裁判所の方としてはできるだけ充員に努めておるところでございますが、客観的な状況としまして非常に充員が難しくなっております。
委員御指摘ございましたように、裁判所の速記というのはソクタイプという非常に特殊な機械を使って行う方式でございまして、これは、我が国でも裁判所だけが採用している方式でございます。最近の傾向としましては、大体高校を卒業しました方にこの速記研修生の試験を受けていただいて、その試験を合格した人につきまして二年間のトレーニングを行いまして、速記官に育てるわけでございます。その速記官になる適性を持った方がなかなか確保できないような状況になっております。このところ毎年、試験の結果では四十五名から五十名程度の方を合格させておりますのですが、実際に速記研修生に採用するという手続をとる段になりますと、平均しますと、そのうち三割ぐらいの方は来ていただけない。大学に進学されるとか、あるいはほかの職場をお選びになるというような状況でございます。
そういう形で、実際に研修にお入りいただくのは年間三十人くらいになるわけでございますけれども、その後の研修というのは非常にハードでございまして、二年間、それこそ朝から夜まで必死でトレーニングをしていただかないとなかなか速記官としての技量を身につけていただけないということがございまして、通常この二年間のトレーニングの過程でやはり二割程度の方が脱落していかれるというようなそういう状況にございます。
そういうことに加えまして、実は裁判所の場合、速記タイプの機械自体、これも裁判所だけが特注でつくっている機械でございますので、なかなか、メーカーの方でもいつまでこの製造を続けていただけるか非常に難しいような状況が出ております。そういう状況がございますので、なかなか充員ができないという状況にあることを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/55
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056・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 これは本当に訴訟関係人にとっては重要なことなので、この充実の必要があるとすれば、そういう経済的な配慮もしなければならないし、それを踏まえてやはり予算要求も大胆にしていただいていいと思うのですね。それを受けてまた対処していきたい、またいかなければならないと私ども思っておりますので、その辺は十分に御検討いただいて、それでまた私どもにも実情を知らせていただきたいと思うのです。
それとあわせて、実は私も訴訟をやっているときにしみじみ感じたのは、裁判所も訴訟促進のためにいろいろなOA機器の導入とか非常にいろいろなことを考えているにもかかわらず、それからかつては提出書類などもワープロで打ったものはだめだなんという時代もあったのですね、今考えるとちょっと噴飯物みたいに思えるのだけれども。
そんなこととあわせて、私どもは早く人証の尋問の結果を知りたい。ところが、大きな事件でたくさん弁護人がいる、あるいは代理人がいるときにはみんなでメモをとり合ってやりますけれども、一人でやらなければならないときなんというのは、尋問して答えがあるときにそれを自分でメモしていられないわけですね。すぐに次の訴訟期日に対する準備をしなければならないというようなこともあるものですから、正確にそれを把握するためにはテープレコーダーをメモがわりに使いたいということをしばしば裁判所で私は申し上げたことがあるのだけれども、それは許可されなかった。
どうも聞いているところによると、今も許可されておらないようなのだけれども、この程度のことは、外に発表するとかなんとかではなくて、訴訟の関係人、代理人、弁護人が自分のメモがわりとして使うようなことはもうそろそろ認めてもいいと思うのですけれども、この辺について裁判所の見解はどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/56
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057・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 まず民事の関係で八申し上げますが、民事訴訟規則の十一条には、法廷における秩序の維持の見地から、法廷における写真の撮影、速記、録音等は、裁判長の許可を得なければならないということにされていることは御承知のとおりでございますが、当事者が録音等をする場合においてもこれが適用されることになっております。したがって、当事者から録音の許可の申し出があった場合には、裁判長は録音を許可する必要性の大きさなど諸般の事情を考慮して許否を決定している、またそうなるであろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/57
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058・高橋省吾
○高橋最高裁判所長官代理者 刑事関係につきましても基本的には民事と同じでして、訴訟当事者が法廷に録音機を入れること自体は、法律とかあるいは規則によって禁止されているわけではありませんで、弁護人から公判廷における録音の許可申請があった場合には、これを許可するかどうかというものは個々の裁判所の訴訟指揮の一内容としてその裁量に属することでございます。一般的には、弁護人にこれを許可する必要があるかどうかのいろいろな事情を考慮した上で、受訴裁判所において判断しているものと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/58
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059・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 写真撮影などは、特別の場合でなければそんなに必要がないと思うのですけれども、録音というのは、私がさっき申し上げたような観点からいうと非常に私どもは必要としているのですよね。そこで、今言われたように、裁判所の規則、これがそういうような要請からすると合っていないという側面が非常に強くなっているわけで、この辺は、かたくなではなくてもうそろそろこの辺も見直さなければならないときだと考えておるのです。
かつては、戦後のいっときは、写真撮影というよりも、こういうカメラ自体が法廷に入って、審理の状況を写したこともあったのですよ。あの帝銀事件の平沢なんかはニュースで報道されたのですからね、松川事件などもそうですけれども。それがだんだんうるさくなってきまして、最近はまた写真撮影が一部できるようになったけれども、これは当事者、被告人だとか、それから訴訟の当事者は写さないのですよね。裁判官と検事と弁護人、代理人だけが写るようになっているのですけれどもね。
この辺についても、裁判の公開という点から、例えば本人たちの同意があった場合にはそういう撮影を許可するようなことも考えてもいいのかななんということも思うのですけれども、この辺はまた訴訟のあり方などと含めて議論をしていきたいものだ、こう考えております。
限られた時間が迫ってまいりまして、予定していた質問が全部お聞きできないかもしれませんので、はしょることを御勘弁いただきたいと思います。
そこで、本年度の任官者、新任の判事補それから検察官の任官希望者、これはもう大体はっきりしてきたのじゃないかと思いますけれども、去年に比べてどうなのか、これをお聞かせいただけますか。簡単に数字で結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/59
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060・堀籠幸男
○堀籠最高裁判所長官代理者 昨年度の判事補任官希望者は、最終的には百一人でございました。本年度は、現時点で百一人が判事補採用願を提出しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/60
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061・頃安健司
○頃安政府委員 平成八年度の検事任官予定者数は、現在のところ七十一名でございます。なお、平成七年度における検事任官者数は八十六名でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/61
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062・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 裁判官が去年に比べてはほぼ同数、検察官の方はちょっと少ない。しかし、七十名を超えているということで、これは大変結構な傾向だと思うのですね。
そういうことと絡んで、実は去年、司法試験の改革問題ですったもんだして今度は丙案の導入が実施されるわけですけれども、今年度の司法試験の受験の申込者の数、これは去年と比べてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/62
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063・頃安健司
○頃安政府委員 平成八年度の司法試験第二次試験の出願者数は、現時点においてはまだ確定できておりませんが、昨年の出願者数二万四千四百八十八人を上回り、二万五千人台となる見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/63
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064・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 御承知のように、丙案はいわゆる三回以内の受験生についての例の点数のげた履きということもあって、むしろ若い方々が受験控えをするのじゃないかということも心配されたのですけれども、そうすると、今のところは割合、受験者の数は極端に減っているということはないようですね。しかし、この制度自体については、御案内のようにいろいろな意見もあり、そして当委員会理事会として法曹三者に対する意見も申し上げているところでありますので、これを実施してみて弊害があるのかどうか、将来的にこれが好ましいものなのかどうか、これはまた検証していきたいと思いますので、このことについても指摘をしておきたい、こういうふうに思っております。
時間が非常に限られてまいりまして、もう一つ、オウム関連について、これも簡単にお聞きをしたいと思います。
検察、裁判所の大変な御努力によって、オウム関連事件については随分多くの事件が起訴され、係属しているわけですけれども、わけてもこの間来、オウムの幹部と言われる井上あるいは早川、中川、上祐などの裁判も軌道に乗ってきているわけです。
一方、オウム真理教の教祖である麻原こと松本智津夫、これについては、例の弁護人の関係もいろいろ私選、国選の仕方などの問題もあったりして、本当なら昨年内に第一回公判が開かれる予定だったところが開かれずに今日までいるという状況ですが、これは結局弁護人はどうなったのか。私選と国選との関係はどうなっているのか。そして、第一回公判については期日指定ができたのかどうか。この進行の見込みなど、差し支えない範囲でお答えいただければお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/64
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065・高橋省吾
○高橋最高裁判所長官代理者 麻原こと松本智津夫被告につきましては、現在国選弁護人が合計十二名ついております。(佐々木(秀)委員「国選だけですか」と呼ぶ一国選だけでございます。
本件につきましては、いまだ第一回公判期日前の段階でございますけれども、審理を担当する受訴裁判所では、既に検察官それから弁護人との間で訴訟の進行に関して相当回数打ち合わせを行っているところでありまして、弁護人、検察官ともそれぞれの立場から熱心な取り組みをしていると聞いております。
その結果、弁護人の了解のもとに、既に第一回公判期日から第八回公判期日までの期日が指定されております。具体的には、四月二十四日が第一回でありまして、四月二十五日、五月二十三日、それから五月三十日、六月二十日、六月二十七日、七月十一日、七月十八日、全部で八回指定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/65
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066・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 今お聞きをしますと、国選弁護人だけになってしまったのですね。十二人という数は、国選弁護人が十二人なんというのは、私どもの常識からいうと極めて異例なんですけれども、ただ、本人に対する起訴事実、事案ですね、この事件数の多さなどから比べ、また諸般の事情から考えると、そういうこともあり得るのかなと思うわけです。第一回以降がスムーズに集中して行われることを私どもとしても期待をしておりますし、それなりに関係者は、皆さん大変な苦労が要ることだろうとは思いますけれども、相互に協力をし合って、また警備の点でも心配あると思いますけれども、ひとつ万全の態勢でやっていただきたいということを希望したいと思います。
それとあわせて、これまでのオウム真理教関連の事件の処理状況を確定したもの、それから係属中のものなど、これは東京地裁以外にもあるわけですけれども、何といっても事件が集中しているのは東京地裁ですから、東京地裁の例でもしもお示しいただけるとすればお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/66
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067・高橋省吾
○高橋最高裁判所長官代理者 東京地裁刑事部に起訴されましたオウム真理教関連の被告人の数は、平成八年三月二十二日現在で、これは実人員で申し上げますけれども、合計で百二十三名と聞いております。このうち、判決を宣告された被告人の数は同じ三月二十二日現在で五十名と聞いております。そのうち、確定した被告人の数は三十九名、控訴した被告人は三名、控訴申し立て期間中の被告人の数は八名と聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/67
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068・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 今の数字で見る限りは、そうすると一審判決が出て控訴した者の数、つまり、一審の判決に不服だということを言っている数というのは極めて少ないのですね。ということは、おおむね自分の犯罪行為を認めて、それから罪を認めて、処罰を受けるということについても観念をしているという傾向が多いのだと思います。
ただ、この間の井上ですか、井上なんかも犯罪事実を認めているけれども、ただ、弁護人の主張としては、期待可能性論で責任論のところで無罪を主張している。それから、上祐については事実そのものを争っているというか、認めないというか、そういうようなこともあるようですね。温度差はあるのだろうと思いますけれども、しかし、相当数が自分の罪を認めているということは、これは捜査の段階で警察、検察の努力でそういうような心境に立ち至ったというか、罪を認めるようになったのだろうと思うのです。
この間の井上などの事件で明らかになった坂本弁護士一家の殺害の状況なんというのは、本当に私どもとしても聞くにたえないような思いでいるわけですけれども、痛ましい限りですけれども、どうかひとつ真相の解明について、関係者の皆さん、徹底的な御努力をこの際にもお願いしておきたい、こんなふうに思っている次第でございます。
それから、これも時間がなくなって恐縮なんですが、去年、関西の淡路大震災がございまして、その後処理の問題については、私は予算委員会で恐らく借地・借家その他の権利関係をめぐっての民事調停などが非常に大きくなってくるのじゃなかろうか、これに対する法曹関係者の対処ということをお願いをしてきたわけですけれども、この辺のところがどのようになっておりますか。おわかりいただける範囲で、現状についてお示しをいただければありがたいと思います。時間がなくなってまいりましたので、簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/68
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069・石垣君雄
○石垣最高裁判所長官代理者 裁判所関係で申し上げますと、事件の発生が最も予想されましたのが調停事件ということでございますので、早速に民事調停事件の増加に対応するために、他の庁の弁護士の調停委員百六十九人を、あわせて神戸地方裁判所管内の民事調停委員に任命するということ、それから同管内の民事調停委員として新規に弁護士二十六人、不動産鑑定士有資格者十人を任命して、合計二百五名を増員をしたというようなことで、これらの措置も相まって、比較的調停事件の処理は順調に推移をしているというふうに考えております。
ほかの事件についても、今のところ大きな問題は生じていないというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/69
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070・佐々木秀典
○佐々木(秀)委員 これも何しろ大変な大震災でございましたから、権利関係をめぐってもいろいろ懸念されたところが多いのですけれども、今お話を聞きますと、これもまた法曹関係者の御努力によって調停の処理その他も順調に進んでおるということでございますし、どうかひとつ当事者が御満足できるような結果を与えることができるように御努力いただきたいと思います。
時間が参りました。最後に、これは質問ではございませんけれども、実は先般当委員会において、これは新進党の皆さんはいらっしゃらなかったところですけれども、例のTBSのオウム事件関連について、TBSの大川常務を参考人として招致し、これについて各委員が厳しい質問をしたところでございました。
実は、きょう午前十一時からTBSが記者会見をしたそうでございますけれども、オウムに対してTBSのプロデューサーがビデオを、あの問題のビデオをオウムの早川らに見せたということを認めたそうでございます。それについてTBSの社長がおわびの発言をし、そして担当プロデューサーを懲戒解雇したということだそうでございます。
この間、大川常務は参考人としてでございますから証人として宣誓の上での証言ということにはならないけれども、当委員会においても、むしろ、こういうビデオを見せたことについてはあるはずがないと言って否定していたわけです。ところが事実はそうじゃないということを認めた。ということになりますと、これは私どもの委員会に対する、委員会の権威にもかかわる問題ということになるんじゃなかろうかと思います。
この辺で当委員会として何らかの対処をする必要があるのではなかろうか。できましたら委員長、これは理事会で御相談いただいて、これに対する対処の仕方を検討していただきたい、そのことを希望して私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/70
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071・加藤卓二
○加藤委員長 枝野幸男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/71
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072・枝野幸男
○枝野委員 裁判所職員定員法の一部改正によって、裁判官が判事補十五名、そしてそれ以外の職員の方が二十一名増加するということでございますが、御承知のとおり、法曹人口を増加しろとかしないとかさまざまな議論も出ている中、また、司法試験の合格者の数をふやすということが進んでいる中で、今回の増員というものをその全体像の中でどういう位置づけとしてとらえたらいいのか、裁判所の御見解をまずお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/72
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073・涌井紀夫
○涌井最高裁判所長官代理者 裁判所の立場から申し上げますと、やはり民事訴訟事件の審理充実のための増員ということでございますので、民事訴訟の審理がどうなるかという観点から今回の増員の位置づけを考えていく必要があろうかと思っております。国民の側からいたしますと、やはり現在の民事訴訟の最大の課題は、もう少し迅速な裁判が実現できないかという観点であろうかと思います。
現状を申し上げますと、委員御承知かと思いますが、地裁に提起されてまいります民事訴訟事件の全事件の平均的な審理期間というのは十カ月弱でございますので、それなりの数字という言い方もできようかと思います。ただ、これは全事件の平均でございますので、当事者間に実質的な争いがございまして、その審理の過程で何名かの人証の調べが必要になるという事件、こういう事件がいわば普通の民事訴訟というイメージなんだろうと思うのですが、そういう事件になってまいりますと、やはり審理期間に一年半から二年ぐらいはかかっているのが現状ではなかろうかと思っております。
私どもの方の考えとしましては、望ましい目標といいますか、そういうものとしては、やはりこういった通常の民事訴訟事件もできれば一年以内には処理できるようなそういう体制をつくっていきたいということです。ただ、もちろんこのあたりは訴訟の運営の仕方にもかかってまいります面がございますので、裁判官の人数をふやしますと比例的にその審理期間が短くなるというものではございません。そういう意味で、望ましい目標というものを一挙に達成していくということはなかなか難しいわけでございますが、本年度の判事補十五名の増員というのは、いわばそういう目標の実現に一歩近づくための措置だ、こういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/73
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074・枝野幸男
○枝野委員 確かにお話のとおり、一気に物事が解決する問題ではないとは思っております。ただ、実は私はずっとこの委員会でも何度か質問させていただきましたとおり、薬害エイズ問題に取り組ませていただいてまいりました。幸い、裁判所で和解が成立をしそうだ、お一人和解に応じるかどうか迷っていらした方も何とか同意をいただけるようだということを、けさ、私聞きました。
ただ、この薬害エイズ事件で、特に大阪原告団の皆さんが、内容的には本当はバツなんだけれどもという記者会見をしておられます。内容的にバツなのに、なぜ原告の皆さんが薬害エイズの和解に応じざるを得ないかといえば、それは裁判に時間がかかっているからであります。
これは裁判のことですので、裁判官でない私が断定的に申し上げるとおかしいのかもしれませんが、ここまでいろいろ出てくれば、裁判で判決をとっても、多くの方は場合によっては多分和解金額以上の損害賠償をとれるのはほぼ確かな事案ではないかとも思います。しかし、既に一審だけで七年かかっている。国が控訴しないということはむしろ期待が薄いという中では、これから五年も六年も、確定をして実際に救済を受けられるまでに時間がかかるだろうという中では、やはり特に発症の恐怖あるいは発症して死と向かい合っている皆さんにとっては、内容的に不満足であっても、一刻も早く和解に応じて現実の救済というものを受けざるを得ないというつらい現実があると思います。
私自身、原告団の皆さんに対して、厚生省の問題として厚生省がおわびをしなければならなかったことと同時に、私は法務委員会の委員として、裁判所、司法行政に関連する分野に携わる者として、裁判にこんなに時間がかかるということもこれはエイズの被害者に対する加害行為の一つであるということで、個人的におわびの言葉を申し上げさせていただきました。
今、普通の争いのある事件でも一年というような目標を示していただきましたが、今回の薬害エイズのような非常に大規模な複雑な事件であっても、私は、六年、七年と一審だけでかかるという現実は大幅に変えなければならない、できればせめて二年ぐらいの間にと思っておりますが、そうした複雑、大規模な事件でも、つまりどんなに遅くてもこれぐらいの目標というようなことはおっしゃっていただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/74
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075・涌井紀夫
○涌井最高裁判所長官代理者 今、HIV訴訟の例をお引きになった御質問でございました。この訴訟は、御承知のように大変当事者数も多うございまして、審理の経過では、大体、公判回数、東京の事件も大阪の事件もそれぞれ三十回から四十回程度の弁論期日を開かざるを得なかった事件のようでございますし、その間に取り調べました人証の数も六十名から七十名程度の数になっております。これだけの人証を取り調べて、これだけの回数の弁論を開くということになりますと、やはりどうしてもそれなりの期間は必要になってくるわけでございます。
ただ、根本的に、現在の民事訴訟の運営のやり方自体が、まず争点の整理について何度も細切れに期日を開いて、さらに争点の整理が終わりましてから人証の取り調べに入りましても、かなり間隔を置いて断片的にといいますか証拠調べをする、そういう運用がまだ一般的でございますので、こういう運用自体をやはり改めていかなければならないだろうと思っております。
我々の方としましては、できるだけ短い時間で集中的に争点の整理を完結いたしまして、その上に立って集中的、実効的な証拠調べをできるだけ短期間でやっていく、こういう形の新しい民事訴訟の運営というものを実現していく必要があるんじゃなかろうかと思います。そういうふうに運営が改善できれば、今御指摘のありましたような大規模な訴訟につきましても現在より相当短い期間で処理ができるようになるのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/75
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076・枝野幸男
○枝野委員 裁判に時間がかかるという問題は、最初に局長がおっしゃられたとおり、裁判所のキャパシティーの問題だけではないというのも重々承知をいたしております。特に、私も弁護士の出身でございますが、弁護士がどれぐらい訴訟の進行に協力をするかというようなところで、現実的にはやはり私も弁護士として法廷に立っておりますときには、一度期日があれば次の期日までには一カ月間あるものだという前提で仕事をしていたのも事実であります。
しかし、それではやはり裁判を早期に進行させることはできない。民事訴訟法、法制度そのものを変える、そして裁判所の訴訟指揮、訴訟進行を変える、そしてそれに対応する弁護士の方の対応も変える、それに応じて、例えば先ほど佐々木先生が御質問になっていたとおり、速記の上がりを早くしていただくとか、調書の上がりを早くしていただくというようなことも必要になるだろうと思います。
いずれにしても、すぐにはすべてが解決しないのもわかっておりますし、裁判所だけですべてが解決できるとも思っておりませんが、しかしながら今回の法改正も、現状ではまずいんだという現状認識の上に立った提案だと思いますし、また法曹人口の問題などのところでも、現状ではまずいんだという認識に基づいて法曹三者がやっているわけであります。そうした中で、ただ単純に、とりあえずまず足りないから十五人ふやしましょうとかいうことで果たしていいのかどうか。
特に今回の薬害エイズのような非常に悲惨な、そしてある意味では私ども自身が責任を感じなければならないような事案を目の前にしたときに、一気にはできないにしても、目標として、こういうシステムにして、こういう運用をして、これぐらいの数がいればこれぐらいの時間でできますよという目標というものを、単に例えば普通の事件なら一年とかというだけではなくて、具体的な、こことここをこういじるんだ、そうすればこうなりますよというような目標を定めて、それに向けてこういうふうに段階を追ってよくしていくんだというようなことをしていくのが、私はある意味では必要じゃないかなと思うのですが、そのあたりのところはいかがなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/76
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077・涌井紀夫
○涌井最高裁判所長官代理者 大変難しいお尋ねでございまして、私どもの方も、内部でいろいろこの点、何かもう少し長期の計画というものを立てて裁判官の増員計画なりなんなりを考えていけないものだろうかという議論を繰り返しやっておるところでございます。
ただ、一番のやはり難しい問題は、もう委員御承知のとおりでございまして、例えば先ほど言いましたような将来の民事訴訟の望ましい目標というものを、数名程度の人証の取り調べを要する事件につきましても一年以内で処理しようというふうな目標をつけましても、それじゃそのために裁判官の数がどれだけ要るかという計算が実は簡単にはできないということでございます。
といいますのは、やはり全国的な事件数の動向がどうなるかということ自体非常に予測が難しい。これは年度によりまして、平成六年は十五万数千件でございましたけれども、二十年前の五十年当時は九万件ぐらいというような数字もございましたし、年度によって二万とか三万といったオーダーで事件が非常に増減するというところもございます。
それともう一つは、やはり、先ほど委員の御指摘ございましたように、訴訟の運営自体で当事者の方の協力がどの程度得られるかというところも、これまたなかなか難しい面がございます。
さらに、裁判官の充員に特異の問題としましては、やはり給源の問題がございまして、定員を計画的に増員していきましても、果たして司法修習生の中から裁判官にふさわしい人材をそのとおりに採用していけるかどうかというところもまた、年度によってかなり変わってくるわけでございます。そういった非常に不確定な要素が多いものですから、なかなか長期の計画というものを具体的な数字で出すことが難しいわけでございます。
ただ、全体的な傾向といたしましては、恐らく民事訴訟の件数というのが今のようなかなり多い状態というのは今後も相当続いていくだろうと思います。しかも、民事訴訟法の改正法案が今国会に提出されておりますが、この法改正を契機に訴訟運営の改善のための努力もまた一段と進んでいくだろうと思います。そういたしますと、やはり事件処理のペースというのも従前よりは早くなってくるだろう。
そういうふうな状況を考えますと、やはり裁判所の方としては、今後も着実な裁判官の増員というのは継続的にお願いしていかざるを得ないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/77
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078・枝野幸男
○枝野委員 確かに、その見通し、計画が立てにくいということを理解しないわけではないのでありますが、ただそれ自体は必ずしも裁判所あるいは裁判制度のあり方についての問題に限らないことではないか。
例えば、これは予算の問題で、道路ですとか港湾ですとか、そういったものについては五年計画とか十年計画というものがつくられて、それに基づいて着実に物事を進めていこうとしているわけであります。これといえども、例えば五年後の日本経済がどうなっているかという予測は予測にしかすぎないわけでありまして、実際には大幅にその見通しが狂うということも現実に起きているわけでありますが、そういったことがあったときにはその都度修正をしていくということで長期計画というのを立てて、だからこそ、道路にしろ鉄道にしろ港にしろ、さまざまなものが計画的につくられていくのだろうと思っています。
そうしたことを見ますときに、裁判所の裁判官の数でありますとか裁判運営のあり方とかというものについて、確かに定量的にやるというのは難しいかもしれません、こうした経済の問題に比べれば。しかし、定性的にある程度のところは示せるのではないかと思いますし、ましてや、単に数の問題だけではなくて、今おっしゃられたような例えば弁護士に代表される関係者の協力を求めていく上でも、こういうふうな形でやっていきたいのでこういった数にこうやってふやしていくし、こういう運営をしていくことで裁判を早くしていきたいという計画を示すからこそ、例えば弁護士などもそれに合わせて自分の仕事のやり方を変えていくとか、あるいは場合によっては司法研修所の、弁護士に対する弁護士実務の研修なども、これからの裁判のあり方はこういうふうに運用を変えていくのだ、早くやっていくのだという見通し、計画があって初めて弁護士の研修が充実できるのではないかというようなところもあると思います。
しかも、法曹人口、裁判に携わる者の全体の人口という問題については、裁判所については計画的な将来ビジョンをなかなか示せないというお話でありますが、その一方では、弁護士の数に代表されるように、そして司法試験の合格者の数に代表されるように、これは中長期的にわたってふやすのだ、合格者を千人にふやすのだ、場合によっては千五百人にふやすのだ、これは具体的な数が決まっていく話であります。そして、裁判の事件の数がどうなるのかということが読めないからそういった先のことを決められないというのであれば、司法試験の合格者の数だって逆に言えば決められない。一年ごとに、経済状況とか裁判の事件の数を見ながら合格者の数をふやしたり減らしたりするのかということになれば、そうではないわけであります。
そして、裁判所だけ、あるいは裁判所と検察庁だけ、その都度その都度に応じて必要な数を採っていくという計画で、残りは、その数が需要に応じて多かろうが少なかろうが、残りが弁護士になってくださいというのでは、法曹全体のバランスのとれた発展といいますか、充実というものはできないじゃないか。そういった意味では、今の御答弁は、司法試験の合格者の数をふやすという裁判所や法務省全体の方針とある意味では矛盾をしてしまうのではないかと私は思っております。
例えば裁判官の数が今の三倍がいいのか、二倍がいいのか、五倍がいいのか、そういったところまではなかなか出せないかもしれない。定量的な数は何人とは出せないかもしれない。しかし、例えば現状では少なくとも今の倍ぐらいは欲しいとか、あるいは今の一・五倍ぐらいは欲しいとかという程度の大ざっぱな方向性、そしてそれと運用の改善ができれば、例えば一年ぐらいでできるとかというふうな見通し、そしてそれをやっていくためには供給源との兼ね合いで何年ぐらいかかります、こういったことぐらいは示すべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/78
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079・涌井紀夫
○涌井最高裁判所長官代理者 全体的な傾向といいますか基本方針としては、委員御指摘のように、やはり今後裁判官の増員というのは着実に継続していく必要があるだろうと思っております。
ただ、具体的に、それじゃ例えば今後十年間でどういう人数でやっていったらいいかという議論になりますと非常に難しゅうございます。というのは、現状でも、全国の裁判所の状況を見ますと、例えば東京地裁というのは非常に忙しい庁でございまして、恐らく一人の裁判官が二百七十から二百八十件程度の事件を担当しておる状況でございますが、地方に行きますと、裁判官一人当たりの負担件数が百件程度という非常に軽い庁もあるわけなんです。
ところが、それじゃ、その二つの庁で現実の事件の処理の状況を比較してみますと裁判官の負担が軽い庁が審理期間が短くなっておるかといいますと、実はそうはなっておりませんで、現状ではもうほとんど審理期間というのは変わらないわけでございます。というのは、恐らくその原因は、やはりそういう裁判官に余裕のある庁でも、現実の訴訟の運営の仕方というのは東京のような繁忙庁の場合とほとんど変わらない運用があるからだろうと思うのです。
したがいまして、この運用をどういう形で改善していくか、その改善がどの程度実を上げていくかというところを見ながら必要な裁判官数といいますか、それを計算していかないといけない面がございまして、そういう点がございますものですから、今の時点で各年度ごとの必要数というのを、漠然とした数字でも計算することはなかなか難しいということでございます。ただ、基本的な姿勢といたしましては、繰り返して申し上げますとおり、我々の方としては、裁判官の増員には今後も着実に努力をしていく必要があるだろうと考えておるところでございます。
〔委員長退席、太田(誠)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/79
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080・枝野幸男
○枝野委員 御説明はわからないではないのですが、逆に言うと、繁忙庁でも事件数に余裕のある庁でも処理期間が変わらないということをおっしゃってしまうと、じゃふやさなくてもいいじゃないかということになるわけではないでしょうか。
そういった意味では、私も、今すぐに例えばその長期計画を示してくれということは申し上げるつもりはありません。逆に言えば、幸い今一人当たりの事件の数が少ないところを優先させて、運用の改善をまず例えば何年計画でしていただく、そこで、ああ、なるほどこういう運営の仕方をすれば一人当たり何件ではどれぐらいの期間でできるとかというようなデータが出てくるでしょう。そういったものに合わせて、東京のような忙しいところの裁判官の数を運用と同時に切りかえていくというようなことをこれから始めていただいて、一年とか二年とかかけて、これこれこういうふうな計画でやれば恐らく裁判の年数は短くなるでしょうというような見込みを示していただかないと、現実に今裁判が長くて苦しんでいらっしゃる方の理解をなかなか得られないですし、あるいは逆に、そういった計画を示すからこそ、じゃ裁判官の数をもっとふやしてもらいましょうという世論のバックアップといいますか、そうしたものが出てくるんじゃないかなと思っています。
もう一つ、この裁判官の数その他の長期計画とかということを考えたときに、どうもこれは御自身ではおっしゃれないでしょうが、裁判所あるいは法務省は大蔵省に遠慮があるのではないのかなというふうなことを、率直に申し上げて実感として持たざるを得ません。例えば、裁判所が裁判官の数をこれからこういうふうにしていきたいとか五年計画とか十年計画とかつくったとしても、別に大蔵省は文句を言う筋合いはありませんよね、大蔵省おいでいただいていると思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/80
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081・長尾和彦
○長尾説明員 私ども、毎年予算編成に当たっているわけですが、予算編成に当たりましては、裁判所あるいは法務省とよく相談しながら進めているところでございまして、今御議論になっております裁判所のいろいろな事務、これにつきまして近年について見ますと、国民生活の多様化、複雑化を反映して、裁判所に係属する事件の数が増加する、それとともに内容も複雑困難化している、それからまた今後もますますそういう傾向は高まるだろうという指摘がなされていることは大変よく承知しております。
こうした状況の中で、裁判官につきましては、厳しい定員事情のもとでございますけれども、これまでも、事件数の動向あるいは裁判所事務処理の状況等を勘案いたしまして、着実に増員を図ってきているところでございまして、今後とも、裁判所あるいは法務省ともよく相談しつつ適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/81
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082・枝野幸男
○枝野委員 今のお答えは私の質問に答えていただいていないのです。私は、裁判所が仮に長期計画で裁判官の数をこうやってふやしたいとかという計画をつくっても、大蔵省としては何かそれに異論を挟む立場ではありませんよねとお聞きしたのに、全然関係ないことをお答えになっているということは、文句がないということと理解をさせていただきますが、よろしいですね。あえて答えは求めません。
それで、時間も短くなってきたのですが、これは裁判所にお聞きをした方がいいのでしょうか。財政法では、いわゆる二重予算といいますか、裁判所は、大蔵省が何を言っても、査定をしても、いや実は裁判所としてはこれぐらい欲しいんだ、大蔵に削られても、これぐらい欲しいんだと国会には削る前の額を示して、予算を確保する余地を残しています。これは戦後使ったことはありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/82
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083・仁田陸郎
○仁田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
昭和二十五年度の予算につきまして、二重予算制度を使いまして要求をしたことはありますけれども、結果的には財政当局と話がつきまして、事実上取り下げをした、こういう経過はございます。
〔太田(誠)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/83
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084・枝野幸男
○枝野委員 三権分立の見地からしますと、私は、原則的には最高裁判所が大蔵省の予算の査定に気を使ったりとかそれに従う理由はないと思っているのです。大蔵省と話がついて、裁判所の求める予算と大蔵省の査定とが一致するという方がむしろレアケースであっていいのではないか。そして、大蔵の査定が正しいのか、それとも裁判所の要求が正しいのかということは、両当事者ではない我々立法府が判断をさせていただくというのが、三権分立の見地からすれば本来の見地ではないか。
裁判所が行政府の財政状況について気を使うことはない。例えば、財政全体、税全体で二十兆しか収入がないところで裁判所だけで五十兆の予算を請求するだなんというふうなばかなことがあれば別ではありますが、基本的に全体の税収の数%しか占めないような予算の要求の中で、裁判所として欲しいものがあれば、そしてそれが正当だと考えるならば、それと大蔵の査定とどっちが正しいのか立法府に判断をさせるべきであって、大蔵との間で、国民や我々が見えないところで変な妥協をしないでいただきたい。
大蔵が、むしろほかのところの予算を削るべきなのか、それとも裁判所の予算を削るべきなのかなんということは、それは、大蔵は、行政府の内部であるならばその査定をする立場にあるけれども、本来裁判所の予算を査定するような立場にはない。一応考慮して話し合いをすることは必要かもしれないけれども、基本的には、裁判所は立法府まで、我々のところまで、裁判所ではこれぐらい予算が欲しいんだ、例えば、薬害エイズ事件で大阪の原告団の皆さんが、もっと裁判が早ければというふうに怒りを押し殺しながら和解に応じざるを得ないというようなことが起こらないようにするにはこれぐらい欲しいんだということを堂々と御発言になって、そして、その主張と、行政府としての財政状況の厳しいとかというふうな部分のところは、立法府に判断をさせていただく。むしろ今までのケースは逆ではないか。何でそんなに大蔵に気を使うのか。
ぜひ来年は大蔵の査定を無視して、裁判所として必要なのはここだということをきちんと貫いていただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/84
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085・仁田陸郎
○仁田最高裁判所長官代理者 最初におわびをいたしますが、先ほど二十五年度の予算と申し上げましたが、二十七年度の間違いでございますので、訂正をさせていただきます。
委員御指摘の二重予算制度の問題でございますが、私どもは、財政法等に決められました独立機関であります裁判所に配慮をした二重予算制度というものにつきまして、常に頭に置きながら、概算要求の見積もりを出して後、財政当局にたび重なる説明をし、資料を提供し、理解を求めておるところでございます。
今後ともこういう努力を一層強めて予算の充実に一層努力をしたい、このように考えております。もちろん、二重予算制度のあることは十分に私どもの念頭に置いて予算の折衝を続けるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/85
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086・枝野幸男
○枝野委員 時間がなくなってしまったのですが、理解を求める相手は、本来は、行政府大蔵ではなくて、予算の決定権を最終的に持っている立法府に対して理解を求めればいいのであって、大蔵が理解をしなくても、国会が、裁判所、それぐらい金使え、それで裁判が早くなって、いい裁判が行われるのだったらそれでいいということになれば、大蔵が何を言ったって予算はつくのですよ。
ですから、ぜひそういう姿勢に切りかえていただきたい。何で裁判所が大蔵の言うことを聞かなければならないのか、全く理屈が通らない話ですので、ぜひそうしていただきたいし、特に概算要求の枠のシーリングだなんというのは、あんなものは行政府が勝手にやっている話なのですから、あんなシーリングなんか無視していいですから、ぜひ来年の予算はシーリング無視してやっていただきたい。お願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/86
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087・加藤卓二
○加藤委員長 正森成二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/87
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088・正森成二
○正森委員 報道によりますと、本日、福岡高等裁判所那覇支部で判決があり、沖縄県の大田知事が国の代理署名を拒否した、その件について国が全面勝訴したという判決が出たそうであります。ただ、大田知事が沖縄県民の立場や基地の現状から拒否した気持ちは理解できるというコメントもついているようですが、国の全面勝訴である点については変わりはありません。
そこで、私は裁判所職員の定員法の改正で判事補十五名、職員二十一名を増員することには賛成でございますが、その点を前提にした上で裁判所のあり方について若干御質問をしたいと思います。
この沖縄の問題につきましては、十一歳の小学校六年生の子供が海兵隊員三名によって暴行を受けるということから沖縄県民の憤激が高まるというような、もろもろなことからこれまでの怒りが非常に増大して、知事がその声を反映せざるを得ないような立場に置かれたということであります。
しかし、この中で非常に私が問題だなというように思いましたのは、訴訟指揮に関する県側の意見書が出ております。その中で、裁判長が二回目の期日に、証人尋問を省略して知事の被告本人尋問を二月二十三日に行うというように指定したそうですが、その日は県議会で代表質問が行われることが予定されており、つまり国会の代表質問と同じで、そこでは知事が県議会へ出席することが必要不可欠だったということで、できれば二月二十三日の期日は変更してほしいということを言ったそうであります。
それで、この県の意見書によりますと、裁判長は、「普通の訴訟ではいろいろ証人の都合も聞くが、知事と総理大臣が争う国内でも重要な事件で、国際的な関わりもある。もともとの発端は知事の署名拒否にあり、差し支えがあってもやりくりして出廷して下さい」、こう言うたと報道でも言われておりますし、意見書に書いてあります。それだけでなしに、「県議会に出席するか、法廷に出頭するかは知事の判断にゆだねます」、こういう高圧的な訴訟指揮をしております。
言うまでもなく、民訴法の三百三十八条によれば、被告本人の尋問というのは代替性のないもので、期日を指定されながら欠席した場合には相手方の主張を真実と認めるという重大な不利益をこうむることもあり得ると定められております。ところが、そういう問題について、こういう沖縄県民から見れば納得のできない態度をとっているという点が非常に問題になって新聞に広く報道をされたことは事実であります。
そこで、私が聞きたいのは、こういうことが行われたことについて、沖縄県民や、あるいはマスコミにも報道されておりますが、裁判官が余りにも国に偏っているのではないかという一つの原因として、沖縄の訴訟を担当する福岡高裁那覇支部の右陪席裁判官が一九八七年から訟務検事を三年間やっておった。また、同じ訴訟で、この裁判で基地の用地提供の公益性を主張している国側の訟務検事の一人は、那覇地裁沖縄支部で嘉手納基地騒音訴訟を審理したときの右陪席裁判官だった。この右陪席裁判官が関与した裁判で、騒音について、差しとめ訴訟だったのですが、一部損害賠償は認めましたが、差しとめは認めなかった理由として、「国が日米安保条約に基づいて米国に提供している本件飛行場に離発着する米軍機の騒音の差しとめを国に求めるもので、主張自体とることができず棄却を免れない」という判決を行った人であります。
つまり、国側の代理で訟務検事を行うのも裁判官で、根本的には全く同種事件について国側の主張を認めた人物である。それを裁く方の裁判官も、やはり訟務検事を三年ほどやって国の利益を代弁してきた人物が、公平なるべき裁判所の右陪席をやっておる。そういう中で裁判長が、もともとあなたが拒否したのだから裁判になっているのだ、県議会で少々のことがあっても出てきてもらわなければ困る、どうするかはあなたの判断によると言って、その期日を変更すればいいものを、当初変更はしない、猛烈な抗議を受けてやっと知事の出られる日に変更をしたということになっております。
これに対して一部の新聞の中には、これは非常に不当なやり方ではないかということで記事が出ておりますが、その中でこう言っております。「「李下に冠を正さず」という。せめて訟務検事経験者には、政府が関係する訴訟の裁判官をさせないけじめがほしい。」
判検事交流とか法曹一元から、弁護士が裁判官になる、あるいは弁護士が検事になるということも、これは非常に結構なことであるというのが私の基本的な立場であります。しかし、少なくとも、訟務検事になって国の主張を行政裁判で言った者が、その同じような行政裁判で裁判官で判決する立場になる、こういうことは国民の目から見て非常に問題があるのではないか。
この中でこの新聞は、かつて最高裁長官だった故石田和外氏ですね、私も知っておりますが、「裁判は公正であるだけでなく、公正に見えなければいけない」、つまり公正らしさが必要であるということを当時言われたことは有名な言葉であります。
そういう意味からいいますと、私は、少なくとも同じような行政事件で訟務検事をやった者がその行政事件で裁判官になるのは避けるのがしかるべきことではないかというように思いますが、その点について御意見を承りたいと思います。
同時に、私が調べてくださいと言っておきましたが、今裁判官で訟務検事をしておられる方が最近ほぼ何人ぐらいあるのか、お答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/88
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089・堀籠幸男
○堀籠最高裁判所長官代理者 訟務検事を経験した人が裁判をやることの公正さあるいは公正らしさについての御質問でございますが、この点につきましては、我が国の司法制度というものは、法曹というものは、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場におかれましても、それぞれの立場でそれにふさわしい活動をすることを使命とするという理念のもとに成り立っているのではないかと考えております。立場に応じて職責を全うすることができるのは、法という客観的な基準を評価の尺度として共有しているからだというふうに考えております。このことは、検察官や弁護士の職にあった者を裁判官に任命することができるという現行の裁判官任用制度からも明らかに見てとることができるのではないかと考えておりまして、現行の一元的な法曹養成制度もこの理念を前提として存在しているものというふうに考えているところでございます。
また、当事者の代理人という立場は、決して当事者の意見、思想に同調しなければならないものではありませんし、ある者の代理人として活動した人が、その立場を離れてその人の利益に偏った判断をするものだという考えがあるとすれば、これは全く私どもとしては誤解ではないかというふうに考えておるところでございます。
以上のことからおわかりのとおり、法曹というものはそれぞれの立場に応じた活動をすることができるものであり、検察官や弁護士の経験を有する人が一たん裁判官になった以上、国や依頼者の利益を離れて中立公正な立場で判断を下すことができるというふうに考えております。したがいまして、法務省との人事交流が公正さを欠くことにはならないと考えておりますし、また、以上のような法曹の特質は国民一般の人にも十分理解されているところであるというふうに考えておりますので、公正さ、公正らしさを欠くこともないというふうに思います。なお公正らしさに疑問をお持ちの方があるとすれば、私どもとしても理解を得られるように努力していきたいというふうに考えております。
それから、次に、法務省との人事交流の点でございますが、毎年二十人程度の者が出向し、ほぼ同数の者が復帰しておりまして、昨年現在では法務省全体で裁判所から出向している者は九十二人になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/89
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090・正森成二
○正森委員 今答えているのは、質問の趣旨がよくわからなかったのかもしれないけれども、判検事交流とか弁護士と裁判官の交流の一般論について答えているだけで、しかも最後の、法務省へ行っている人間が何人だというのも、私はそんなことは聞いていないので、訟務検事に何人出ているかと聞いているので、そういう意味では、人事局長がえらい張り切って答弁したけれども、張り切っている割には質問にちゃんと答えておらないと思いますから、もう一遍答えてください。僕から言おうか、わからなかったら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/90
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091・堀籠幸男
○堀籠最高裁判所長官代理者 訟務検事を経験した人が裁判官を担当することにつきましては、先ほど私がお答え申し上げたとおりでありまして、裁判官の良心に従って判断しているところと信じているわけでございまして、問題はないのではないかと考えております。
なお、訟務検事として出向している人は、昨年の十二月現在で五十四名というところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/91
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092・正森成二
○正森委員 まず第一に、単に法務省へ検事として行っているという者でなしに、訟務検事になっているのはどれだけの数かというように聞いた点から言いますと、私が最高裁から三月二十二日に取り寄せた資料では、最近の例でいいますと、平成四年が十一名、平成五年が十五名、平成六年が十七名、平成七年はいつの時点かわかりませんが十二名ということになっております。
だから、非常に数が少ないのですね。その少ない数について、私は、訟務検事をやった者が同種の行政裁判の裁判官になるということは避けた方がいいのではないかというように限定して問題を聞いているのですね。
あなたは、非常に理想的な法曹を念頭に置いて、裁判官、検察官、弁護人、だれであろうと、それぞれのその職責になればその職責に従って公平厳正に法を適用するのだから何ら問題はないというように言いましたが、それだったら、刑事訴訟法なりしかるべき手続法に忌避だとか回避だとかいう制度があるのはどういうわけですか。忌避が通る場合もあるのですよ。不公正な裁判をした場合には忌避されるし、そういうことがなくても、自分はこの事件に関与したから回避するという場合はあります。最高裁判所の判決の中でも、自分がかつて検事であったとき、あるいは裁判官、弁護士であったときに関与したという理由で回避されている例は幾らもあります。ですから、あなたの言われているようなことが絶対的な真理なら、そもそも回避の制度なんか要らないじゃないですか。
なぜ回避の制度をするかといえば、それほど厳正、公平にやる裁判官でも、時に応じては過去の経歴によって不公平な裁判をするおそれがある、少なくとも不公平な裁判をするのではないかと公正らしさが疑われる余地がある、だから回避制度があるのじゃないですか。あなたの言い分を全部認めると、あなたは刑事訴訟法の制度を否定して、抽象的な裁判官なりあるいは訟務検事の公正らしさを主張しているということにならざるを得ません。ですから、私は、その点について厳重な反省を求めておきたいと思います。
残り時間が少なくなりましたので、刑事局長に一言だけ伺います。
私どもは、証人被害給付法の改正についても賛成であります。しかし、この点については参議院でも質問があったようでありますが、もう少し範囲を広げたらいいのではないかという主張があります。
例えば国選弁護人の場合の給付対象者というのを考えますと、これは弁護人とその一定範囲の親族というようになっておりますが、実際上の問題として、場合によればその法律事務所の職員とか、あるいは横浜法律事務所でも現にそういう危険がありましたが、一緒に事件などをやっている、もちろん国選弁護人にはなっておりませんけれども、協力することはありますから、その同じ事務所の弁護士などが当該事件と相当因果関係のあることについて被害を受けた場合にはその対象者にしてもいいのではないかとか、あるいは組織的な嫌がらせの問題についても被害の対象にしたらいいのではないかというような説がございますが、そういう点について、今回の改正は介護を要することになった点についてその対象を広げるということですからもちろん結構なことでありますが、将来の問題としてそういう点についての御見解を承って、質問を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/92
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093・原田明夫
○原田政府委員 お答え申し上げます。
ただいま委員御指摘の点は、過去にも本法の問題について御審議がなされた場合にも、さまざまな角度から御指摘があったことを承知いたしております。最近の状況を踏まえましてそのような御意見があるということにつきまして、私ども念頭に置いてまいりたいと存じます。
ただ、本法の対象の現在のありさま、またその給付の状況につきましては、さまざまな他の給付制度との均衡等を考えていかなければなりませんので、直ちにそれを検討の課題にするという点はまいらないだろうと残念ながら申し上げざるを得ませんが、さまざまな最近の状況も踏まえながら、刑事司法あるいは民事司法のあり方全般の中での、特に刑事司法の問題についての御理解にかかわるものというふうに考えますので、念頭に置いてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/93
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094・正森成二
○正森委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/94
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095・加藤卓二
○加藤委員長 これにて裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についての質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/95
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096・加藤卓二
○加藤委員長 次に、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、これを許します。小森龍邦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/96
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097・小森龍邦
○小森委員 証人等の被害についての給付に関する法律の一部改正、少し一、二点、具体的な条文にかかわってその法意をお尋ねしたいと思います。
その一つは、第四条の「証人、参考人若しくは国選弁護人又は被害者と加害者との間に親族関係があるとき。」は、全部または一部を給付しないという場合があるということでございますが、親族関係がある場合にはどうしてこういう条文が必要であろうか。
被害を受ける者にとっては、これは全く被害を受けるということでは同一のことではないのかと思いますが、その点と、同じ第四条の二号でございますが、証人が加害行為を誘発したとき、あるいは証人等にもその責めに帰すべき行為があったときというところがありますが、これはちょっと例示をしていただきますと、すっと理解できるのじゃないかと思いますので、その点をお願いしたいと思います。
発言時間が非常に短いことを考慮いたしまして、ついでに質問だけをさせていただきますので、順次お答えをいただきたいと思います。
この法律は私も賛成でありまして、正しい証言をするために、ある程度国はこれを守るということが必要でありますから、非常にこれは大事なことだと思います。したがって、そのことに関連いたしまして、例えば事実を証人が述べた場合に、いわゆる不利な証言をしたということでお礼参りまがいのようなことが行われることが想定されますから、どれくらいの件数、今日そういうようなことが行われておるのか、できれば、時代推移をもって世の中どういう方向に動いておるかということの参考になるような状況を御説明いただければ、かように思います。
そしてもう一つは、そういった犯罪というものは、社会の秩序を守るために裁判とか裁判における証言とかいうものがあるわけでありますが、大変な社会秩序への挑戦というか、そういう種類の犯罪であると思います。言うなれば、一度悪いことをしたというだけじゃなくて、その悪いことをしたことが社会秩序を守るために是正されようとするときに、またそれに対してやるというようなことでありますから、どういう言葉で表現したらよろしいですか、複合的な構図を持っておる、こう思います。このような状況はどうして、それは人間が煩悩の存在だからと言ってしまえばそうでありますが、社会的などういう状況を反映しておるのか、どういうところに第一義的な原因があるのだろうか、そんなことを、法務省が思っておられるところを御説明いただきたいと思います。
なお、それに関連して、類似なことでありますが、文部省が問題とする例の子供のいじめ現象でありますが、親や先生に訴え出ると、訴え出たということでまた余計にいじめられるという問題がございます。そういう問題に対して同じような趣旨の文部省の見解を聞きたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/97
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098・原田明夫
○原田政府委員 ただいまの御質問でございますが、順次お答えをさせていただきたいと思います。
まず、法第四条一号で、証人等と加害者の間に親族関係があるときは給付を全部または一部しないことができるとされておりますし、また同二号では、証人等が加害行為を誘発したとき等、その責めに帰すべき行為があったときにも同様の措置が定められております。
これは、立法当時から既に、このような一定の場合には全部あるいは一部の補償をしないことができるという場合があり得るということは考慮されていたのでございますが、それは、ある一定の被害があれば必ず国が補償しなければならないということではなくて、やはり事案に応じまして、いわば公平の立場から、このような場合には一定の給付をしないことができるようにするというのが法の考え方であったのではなかろうかと思います。いわば事務的に給付をするということでなくて、やはりその事案に即して、その事情を考慮すべきだというのが立法されたときの御趣旨ではないだろうかと思います。
まず、親族関係につきましては、例えば父が被告になっている場合に子供が証言した、それに対して後に一定の傷害を与えたというような場合があろうかと思いますが、国が給付を行う義務を必ず負うということが必ずしも国民一般の法的感情から見て納得していただけないような、あるいは健全な社会通念にそぐわないようなことがあり得るのではないかということが考慮されたのではないだろうかと存じます。
また、「証人等が加害行為を誘発したとき、」という点でございますが、例えば、証人等に出まして、その帰途、全く問われもしないのに、被告人あるいはその被疑者の身内の者に会って、いわば挑発的に、進んで、不利益なことを証言してきた、あるいは述べてきたというようなことを申すなど、一定の言動によりましてその被告人あるいは被疑者に当たる人の行為を挑発するというような場合も全くないわけではないと思います。そうした場合に、そのような一定の事情は、やはり全般として給付のあり方について考慮すべきではないだろうかというのが法の趣旨ではないだろうかと思います。
それから、いわゆるお礼参り的な行為に対する御観察でございますが、まことに私はそのとおりだと存じます。現在における刑事司法の根幹は、やはりいわば個人として被害を受けた者が仕返しをすることは許されない、また他に頼んで報復することは許されないというときに、その当事者の気持ちをも酌んで国として刑罰権を実行するというのが刑事司法の根幹でございます。
そうした場合に、刑事司法が健全に果たされていく場合に、それに協力したがために被害を受けるということがあってはならないのでございますので、そのような行為を、お礼参り的なものも含めて、国として防いでいかなければなりません。そして、万が一不幸な事態が生じた場合には一定の給付をさせていただくというのがこの法の趣旨ではないだろうかと思います。
そこで、お礼参りの件数そのものを掌握しているわけでございませんけれども、本法施行後これまでにこの法律に基づきまして被害に遭った方々に給付した事例は五件ございます。ただ、幸いなことにと申しますか、昭和五十八年を最後といたしまして、そのような事案はございません。
また、いわゆる刑法の証人威迫罪として過去五年間に全国の検察において通常受理いたしました件数は、平成二年が十九件でございました。これが平成三年には十三件、また平成四年にはふえまして二十八件ございましたが、平成五年は十件、平成六年が九件ということで、一定はしておりませんが、次第にふえているという状況でもないかわりに一定件数あるということは申さなければならないだろうと思います。
そういう状況を含めまして、やはり刑事司法を健全に運営してまいるためには、そのような行為は許さない。万が一そのような証人威迫的なこと、あるいはお礼参り的なことがあれば、これを正しぐ御申告いただいてきちんとした対応をしていくというのが刑事司法のあり方ではないだろうかと思います。ひいては、そういうことによりまして、安心して御協力がいただけるような社会にしていただきたいというのが法の趣旨ではないだろうかと思います。
また、いじめとの関係で、同じような面があるのではないかという御指摘は、確かにそれに相通ずるものがあるだろうと思います。一つの共同社会の中、あるいは閉ざされた一つの仲間の中で正しいことが行われないといった場合に、それに対して勇気を持って物を申されたという方については、きちんとあらゆる手段を尽くして守っていくというのが社会のあり方ではないだろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/98
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099・加茂川幸夫
○加茂川説明員 いじめについてのお尋ねでございます。
いじめ問題につきましては、弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない、こういう強い認識に立ちまして、家庭、学校、地域社会が一体となって取り組むことが大変重要であると考えてございます。特に先生御指摘のように、学校におきまして児童生徒が教師に訴えたためにいじめを受けるようになったり、あるいはいじめがさらに激しくなったりするようなことにつきましては、断じてあってはならないことであると考えております。
このような事態に対しましては、学校を挙げて、いじめる児童生徒に毅然として対応すること、またいじめられている児童生徒を必ず守り通すという断固とした姿勢を示す必要があるということにつきまして、具体的に指導をいたしておるところでございます。昨年十二月の教育委員会に対します指導通知におきましても、このことにつきまして具体的に指導を徹底しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/99
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100・小森龍邦
○小森委員 一番わかりやすいのが子供のいじめの問題だと思うから、あえてこれを追加させてもらったような格好で質問しておるのです。
私らが子供のときには、けんかをしてもさらっとしておって、そして先生に言っていかれて先生がその公園で注意したら、それで子供は大体おさまっておった。ところが、先生に言っていったことによってさらにひどいのをやられるから、よう言っていかない。悶々とした日を過ごしてついに自殺、こういうことになるのですね。
したがって、私がお尋ねをしておるのは、今日の教育の状況がそういう状況になっておる。そして、ある程度年配の人は、もうそこがどうしてこんなにいびつになったのかなというふうな考え方を持っておると思うのです。どうしていびつになったのか、そこの教育的問題というのはどういうことなのかということを尋ねておるわけなんで、少しでもいいですからそれを答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/100
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101・加茂川幸夫
○加茂川説明員 お答えをいたします。
現在、学校におきます子供の置かれている状況についての認識は大変いろいろな見方がございまして、一言で申し上げるには難しい面がございます。
ただ、指摘されておりますことの一つには、子供が大変多様化してきておりまして、子供を取り巻く環境自身も社会環境も家庭環境も大変変わってきておりまして、子供自身が多様化してきている、その多様化に学校が十分対応できていないという面があろうかと思うわけでございます。
例えば評価につきましても、ややもすると単一の価値基準でもって子供を評価してしまう、判断してしまうといった傾向がございまして、細やかに子供に対応できていない。学校、教師が反省すべき点もあろうと思うわけでございます。そういったことから、子供は授業に参加する際にも必ずしも楽しく参加できていない、学校生活にも自信を持って参加できていないという面も指摘されておるところでございまして、そういったことが、いじめを完全に解消できていない一因または要因となっているのではないかと私どもも考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/101
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102・小森龍邦
○小森委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/102
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103・加藤卓二
○加藤委員長 これにて証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/103
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104・加藤卓二
○加藤委員長 これより討論に入るのでありますが、両案いずれも討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/104
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105・加藤卓二
○加藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/105
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106・加藤卓二
○加藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/106
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107・加藤卓二
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/107
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108・加藤卓二
○加藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時三十八分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605206X00519960325/108
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