1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成八年五月二十一日(火曜日)
—————————————
議事日程 第十五号
平成八年五月二十一日
午後一時開議
一 特定住宅金融専門会社の債権債務の処理
の促進等に関する特別措置法案(内閣提
出)、金融機関等の経営の健全性確保の
ための関係法律の整備に関する法律案
(内閣提出)、金融機関の更生手続の特
例等に関する法律案(内閣提出)、預金
保険法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び農水産業協同組合貯金保険法の
一部を改正する法律案(内閣提出)並び
に特定住宅金融専門会社が有する債権の
時効の停止等に関する特別措置法案(保
岡興治君外五名提出)の趣旨説明
—————————————
○本日の会議に付した案件
特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進
等に関する特別措置法案(内閣提出)、金融機
関等の経営の健全性確保のための関係法律の
整備に関する法律案(内閣提出)、金融機関の
更生手続の特例等に関する法律案(内閣提
出)、預金保険法の一部を改正する法律案(内
閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法の
一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定
住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止
等に関する特別措置法案(保岡興治君外五名
提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/0
-
001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
————◇—————
特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案(内閣提出)、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)、金融機関の更生手続の特例等に関する法律案(内閣提出)、預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法案(保岡興治君外五名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/1
-
002・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案、金融機関の更生手続の特例等に関する法律案、預金保険法の一部を改正する法律案及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案並びに保岡興治さん外五名提出、特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法案について、趣旨の説明を順次求めます。大蔵大臣久保亘さん。
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/2
-
003・久保亘
○国務大臣(久保亘君) ただいま議題となりました特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案、金融機関の更生手続の特例等に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
金融は、経済全体にとっていわば動脈ともいえる役割を担っており、信用秩序の維持、預金者保護に万全を期しつつ、住宅金融専門会社をめぐる問題に象徴される金融機関の不良債権問題の早期解決を図ることは、我が国経済が今後持続的発展を遂げていく上で不可欠の前提であります。同時に、金融機関の不良債権問題の再発防止を図るためにも、本格的な金融自由化時代にふさわしい、自己責任原則と市場規律に立脚した透明性の高い、新しい金融システムを早急に構築する必要があります。このため、政府といたしましては、これらの法律案を提出することとした次第であります。
まず、特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案にっきまして御説明申し上げます。
本法律案は、関係当事者による処理が極めて困難となっている住宅金融専門会社の債権債務の処理を促進し、信用秩序の維持と預金者の保護等を図るため、緊急の特例措置として、預金保険機構の業務の特例及び国の財政上の措置等を定めるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、預金保険機構は、住専から貸付債権等を譲り受け、その回収等を行うことを目的とする債権処理会社を設立するため出資することとしております。
第二に、預金保険機構は、債権処理会社が住専から貸付債権等を譲り受ける対価をもってしてもなお不足する住専の債務処理の財源として、政府の補助金により同機構に緊急金融安定化基金を置き、同基金から同会社に対し助成金を交付することができることとしております。
また、同会社が譲り受けた貸付債権等については、極力損失が生じないよう努める所存でありますが、仮に損失が生じた場合には、当該損失の二分の一に相当する金額について政府は同機構に補助金を交付することができることとし、同機構は同会社に対し助成金を交付することができることとしております。なお、これらの場合において、同会社は、回収が進み利益が生じたときは、同機構を通じて国庫へ還元することとしております。
第三に、預金保険機構は、債権処理会社の円滑な業務の遂行のために必要があると認めるときは、金融機関等の拠出金による金融安定化拠出基金から同会社に対し助成金を交付することができることとしております。
第四に、債権処理会社及び預金保険機構は一体となって、強力な債権回収及び損害賠償請求権の行使を含む関係者の責任追及を行うこととしております。このため、同機構に対し罰則で担保された財産調査権を付与するとともに、回収が困難な事案については同機構がみずからその取り立てを行うことができることとする等の措置を講ずることとしております。
その他、政府の預金保険機構への出資に関する規定の整備等、所要の措置を講ずることとしております。
次に、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案にっきまして御説明申し上げます。
本法律案は、内外の経済社会情勢の変化に対応し、金融機関等の経営の健全性を確保する必要性にかんがみ、信用協同組合等の協同組織金融機関における監査体制の充実、金融機関の経営の状況に応じとるべき監督上の措置に関する規定の整備等、所要の措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、信用協同組合等の協同組織金融機関について、監事の権限等を強化するとともに、員外監事の登用、外部監査制の導入により、その監査体制の充実を図るほか、信用協同組合の役員等の兼職等を原則として禁止することとしております。
第二に、自己資本の充実の状況に応じ、大蔵大臣等が監督上必要な措置を命ずることができることとしております。
その他、金融機関相互間における営業譲渡等ができる範囲の拡大や金融機関等のトレーディング取引への時価会計の導入を図ることとしております。
次に、金融機関の更生手続の特例等に関する法律案について御説明申し上げます。
本法律案は、経営が重大な危機に陥った金融機関について、預金者等の権利の実現を確保しつつ、更生手続及び破産手続の円滑な進行を図ることを目的として、金融機関の特殊性を踏まえたこれらの手続の特例等を設けるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、協同組織金融機関について更生手続を行うことができることとしております。
第二に、金融機関の破綻時の処理を適時適切に開始する観点から、監督庁は更生手続及び破産手続の開始の申し立てができることとしております。
第三に、預金者等の権利の実現を確保しつつ、更生手続及び破産手続の円滑な遂行を図るため、預金保険機構が預金者等のためにこれらの手続に属する行為をすることとしております。
その他、所要の措置を講ずることとしております。
次に、預金保険法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
本法律案は、最近における我が国の金融環境の変化に対応し、破綻金融機関の適時適切な処理を図るため、預金保険機構の業務の拡充を図るとともに、今後五年間に信用協同組合等の経営が破綻した場合における同機構が行う資金援助の特例を設ける等、所要の措置を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、預金保険制度の整備拡充に関する事項として、保険金の支払いがなされる場合に、預金保険機構が保険対象外の預金等に係る債権を買い取る制度を設ける等、所要の措置を講ずることとしております。
第二に、預金保険機構は、今後五年間の特例業務として、保険金の支払いに要すると見込まれる費用を超える資金援助等ができることとするとともに、金融機関から特別保険料を徴収することとしております。
第三に、預金保険機構は、当分の間、信用協同組合の破綻処理を円滑に行うための特例業務として、破綻信用組合から譲り受けた事業の整理等を行うことを主たる目的とした一の銀行と協定を締結し、これに対する出資や債務保証を行うとともに、当該銀行が引き継いだ貸付債権等の円滑な回収を図るため、債務者の財産調査や取り立てを行うことができること等としております。
第四に、政府は、信用協同組合の破綻処理に関する特例業務のために預金保険機構が行う資金の借り入れに係る債務について保証できることとする等、所要の措置を講ずることとしております。
以上、提案の四法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/3
-
004・土井たか子
○議長(土井たか子君) 農林水産大臣大原一三さん。
〔国務大臣大原一三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/4
-
005・大原一三
○国務大臣(大原一三君) ただいま議題となりました農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案にっきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
農水産業協同組合貯金保険制度については、最近における金融環境の変化に対処して、貯金者等の保護と信用秩序の維持に万全を期するため、農協、漁協等が経営困難に陥った場合における対応措置が適時適切に講じられるよう制度を改善することとし、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
第一に、農協、漁協等に保険事故が発生した場合に、機構は、貯金者等の有する貯金等債権を買い取ることができることとしております。
第二に、農協、漁協等が経営困難に陥った場合に機構が行う資金援助の対象として、信用事業の全部譲渡を追加することとしております。
第三に、今後五年間の時限的な措置として、機構が行う資金援助及び貯金等債権の買い取りについての特例措置を講ずることとしております。
第四に、漁協から信用事業を譲り受けた漁業協同組合連合会を、貯金保険の適用対象として追加することとしております。
以上、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/5
-
006・土井たか子
○議長(土井たか子君) 提出者保岡興治さん。
〔保岡興治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/6
-
007・保岡興治
○保岡興治君 ただいま議題となりました特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。
先般、特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案が本院に提出されているところでありますが、同法律の施行に伴い、特定住宅金融専門会社の債権の回収を迅速かつ的確に行うためには、当該特定住宅金融専門会社が有する債権の時効を一定期間停止する等の措置をとることが強く求められております。
こうした事態にかんがみ、ここにこの法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
まず第一に、特定住宅金融専門会社がこの法律の施行の日において有する債権については、同日以後、特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法に規定する指定期間の終了する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間は、時効は完成しないこととしております。
第二に、特定住宅金融専門会社が解散したときは、当該特定住宅金融専門会社が有する根抵当権の担保すべき元本は、確定することといたしております。
なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようによろしくお願い申し上げます。(拍手)
————◇—————
特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措費法案(内閣提出)、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)、金融機関の更生手続の特例等に関する法律案(内閣提出)、預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措畳法案(保岡興治君外五名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/7
-
008・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。加藤六月さん。
〔加藤六月君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/8
-
009・加藤六月
○加藤六月君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました金融関連等六法案に対し質問を行います。
まず最初に、今回提出された法案では、臨時異例の緊急的措置が五年間に限定されております。
この時限的措置は、五年間が過ぎた後は、当然のことながら恒久的措置に移行いたします。であるならば、五年後に、金融界、証券、信託、生損保業界等を含めて、どう国際化、自由化されているか。各業態で規制緩和が行われ、それぞれの垣根が取り払われた結果、資本市場、金融市場を含め、金融界が全体としてこうなるという姿、形、見通しが明らかにされなければ、当面する不良債権の処理及び金融システム安定化の諸施策が十分な意味を持ちません。それが明示されなければ、当面の措置について審議のしょうがありません。総理、金融界全体の五年後の見通し、あわせて当面の緊急措置を五年に限定した根拠は何か、明らかにしていただきたいのであります。
私は、予算委員会において、金融関連法案の国会提出を急ぐことを強く要求いたしました。
改めてお伺いしますが、政府・与党はなぜこの関連法案を住専処理法案より早く国会に提出しなかったのか。住専には預金者が全くいないにもかかわらず、金融システムの安定化を口実として、その破綻処理に税金を投入するスキームをつくり、住専処理法案を先に国会に提出し、圧倒的な国民の反対の中で住専予算の成立を急がせました。どう考えても、政府の対応はむちゃくちゃとしか言いようがありません。政府・与党の対応は、一体何をお考えなのか、強い疑問を呈さざるを得ません。
今何よりも必要なことは、我が国全体の不良債権の処理であります。また、海外からも、我が国全体の不良債権の総額に強い不信の目が注がれております。いえ、単に不良債権にとどまらず、世界最大の債権国日本の金融システムそのものに対する不信であります。内外からの不信、不安を解消するためには、住専ではなく、金融機関全体の破綻処理のためのその体制づくりを急ぐべきであります。住専よりもはるかに緊急性を要し、かつ重要な意味を持つ金融機関全体の不良債権処理を住専よりもなおざりにした理由は何か、総理の明快な答弁をいただきたい。(拍手)
金融の自由化とは、市場原理に基づき公正かつ透明なルールにのっとって、銀行経営だけでなく預金者にも自己責任を求める、そして非効率な金融機関は淘汰され、あるいは吸収合併などによって再編成が行われる、こうした金融システムの実現を一日も早く図らねばなりません。しかし、政府が今回提出した法案からは、こうした今後の金融行政についての基本理念、方向性が全く見えません。
現状は、日本輸出入銀行は発足当初総裁が民間出身であり、日本開発銀行も初期には民間出身者が総裁を務めました。しかし、現在はいずれも大蔵省の天下り先の指定席となっております。さらに、通貨の番人として政府からの独立が要請される日本銀行でさえ、最近の五代の総裁のうち三人が大蔵省出身者であります。日銀の独立性に関しては、権限の大半が政府の裁量下にあります。これこそが、護送船団方式と言われる金融行政の実態であります。国民の願望する金融システム、すなわち、競争原理、自己責任原則が徹底され、金融機関の経営、金融行政の透明性が確保されるという姿はどこにもありません。
国際的にも、為替取引だけで一日に一兆ドル、百兆円という巨額のマネーが瞬時に世界を駆けめぐるというように、情報先端技術の驚異的な発展等を背景とするボーダーレスな金融界の現状において、金融業が第三の産業革命ともいうべき歴史的な転換期にあるにもかかわらず、行政当局は権限の拡大とみずからの保身に終始し、金融危機に対して正面から対応することを避けて、巨額の不良債権や金融技術の立ちおくれに手をこまねいてまいりました。その責任は実に重大であります。
総理、護送船団方式に対する認識、及び市場原理に基づく国民経済の発展のための、そして国際的にも通用する新しい金融システムを構築するためには、今後、金融行政をどうするおつもりですか。
とりわけ、連立政権成立以来、金融経済問題に対しびほう策に終始し、新たな改革に取り組めないでいる政府の対応について、その責任をいかがお考えか。金融の国際化、特に金融先端技術に対する具体的方策とあわせてお伺いいたしたいのであります。
今回提出の預金保険法改正案等では、第二地銀を初めとする他の金融機関は整理回収銀行の対象とせず、信用組合だけに限定しております。なぜ信用組合だけに限定するのか。信用組合さえ手当てをすれば、ほかは何の手当てがなくても大丈夫だとするのですか。これでは、政府は、第二地方銀行を初めとする他の金融機関に対しては、護送船団方式を継続することを意図しているとしか理解のしようがありません。これは、行政姿勢を転換し、行政は市場監視に徹して市場型の金融システムを目指すとする大蔵省の説明する基本方針とは全く矛盾いたします。
信用組合以外の金融機関が破綻した場合、どう対処するおつもりか。破綻処理に当たって信用組合と他の金融機関を区別したのはどういう基準、理由に基づいているのか、明らかにしていただきたい。
次に、金融機関の更生手続についてであります。
金融機関の更生手続特例法案では、信用組合の破綻処理に関して会社更生法の適用の手続の整備を図っております。会社更生法を金融機関に適用するならば、民間会社である住専処理に関しては、なぜわざわざ責任をさかのぼって追及できなくするような私的整理によって措置したのか。その対応には全く一貫性がなく、無原則そのものであります。住専と信用組合における破綻処理の更生手続に関する対応の違いについて、その基準は何か、明確にしていただきたい。(拍手)
昨年五月、当時の武村大蔵大臣は予算委員会において、ペイオフを超える預金の保護について、今後五年間に限ると答弁いたしました。それからもう丸一年が経過しました。にもかかわらず、今回の法案でもまた、今後五年間とされております。一体いつになったら自己責任原則を確立するおつもりですか。また、五年の時限措置の期間内においては、協和、木津信組にあったように、数百億円を超える大口預金者にも完全保護を与えるおつもりですか。
預金保険の責任準備金の総額は、協和、安全の二信組の破綻処理以前の段階では八千七百億円ありましたが、平成八年三月末現在では、その後の破綻処理に伴って三千九百億円程度に減少しております。庶民の預金を基準とする預金保険が、今回の預金保険法改正案では、保険料が七倍となり、今後五年間で二兆円以上が取られた上に一握りの大金持ちの預金保護に使われるというのでは、全くたまったものではありません。五年間の時限内において、ペイオフを超える部分について何らかの限度額を設ける考えはありませんか。逆に、五年先にペイオフの限度額を二倍にする決意はどうですか。
また、計算では、七倍に引き上げた場合、五年後の責任準備金残高は三兆三千億円見込まれますが、そんなに多くの資金援助をしなくてはならない危険な信用組合、銀行等があるのですか。あれば、ぜひ教えていただきたい。
さらに、期間の延長はあり得ないと思いますが、仮に再延長があると自己責任原則の確立は夢のまた夢ということになりかねません。それぞれについて、所管大臣の見解をお伺いいたします。
さて、預金保険法改正案等では、破綻した金融機関の経営責任については、どこまで追及できるのか全く担保されておりません。債権の譲渡が行われれば、その時点で特に責任を明記しない限り、破綻を招いた金融機関の経営責任を過去にさかのぼって追及することは不可能であります。住専処理法案と同じく、いわば免責の体系となっております。行政責任や天下った官僚出身者には責任を及ぼさないことを前提として提出法案はっくられているのではないかという疑念がぬぐい切れません。
一般の庶民は、バブルの破綻によって、会社のリストラ、倒産、また株価の暴落に泣き、価値が下落してもバブル時代の高い価格のままの住宅ローンの支払い等で苦しんでおります。もちろん、阪神・淡路大震災で被災をした住宅ローンでさえ自分持ちであり、だれもその穴埋めはしてくれません。バブル経済に踊り、その後始末に税金を投入する事態まで生じさせた経営者の責任をほおかぶりするようなことがなぜ許されるのか。断じて容認できることではありません。(拍手)
不良債権処理は、だれが損失を負担するのかという経済上の問題と同時に、債権の回収における、いわば社会正義上の課題も重要な問題であります。
みずからの経営の失敗はみずから償うことは、当然であります。また、法的処理であれば、裁判所の任命した管財人が公的権力を背景として債権の回収を担保します。政府案は、債権回収の法的裏づけが全くないだけでなく、経済倫理にももとる行為を促進しかねません。総理はいかがお考えか、お伺いいたします。
金融機関の破綻処理に関しては、公的支援は預金者保護に限定しつつ、法的処理の原則に基づく、二十一世紀に向けた新しい金融システムの再構築を進めるべきであります。さもなければ、金融危機が財政投入に姿を変え、財政赤字を際限なく拡大する危険な事態を招くことは必至であります。経営責任の遡及、経済倫理の問題とあわせ、総理の見解を伺います。
次に、信用組合の金融システムの中での位置づけについてお伺いいたします。
昨年暮れの金融制度調査会の答申では、信用組合を、協同組合組織としてとどめる場合と業態転換を促す場合とに分けております。ところが、今回提出の法案では、業態転換については触れておりません。また、信用組合は、監督権限を機関委任事務として都道府県知事にゆだねてきております。だからこそ、昨年春、ある日突然、大蔵大臣が日銀総裁を連れて東京都知事に陳情に行きました。
そこで、整理回収銀行への都道府県の財政支援はどうするのか。また、国と知事との共同検査の発動基準の明確化はどうなったのか。そのそれぞれの責任についてはあいまいにしたまま国民にそのツケ回しをしょうとしているのが、今回提出の金融関連法案であります。信用組合の今後のあり方について、業態転換の促進、機関委任事務の監督権限のあり方を含めどうお考えか、明確にお示しいただきたいのであります。
次に、今後の農業、農協のあり方と貯金保険法の関係についてお伺いいたします。
農業系金融機関は、現在、貸出先や運用、貯貸率の低さという構造的な課題を抱えております。しかし、単位農協の赤字は信用事業によるものではなく、営農指導等の他の事業によるものであります。その意味で、単位農協の経営上の問題は、金融システムの課題というよりも、むしろすぐれて農業、農協のあり方に根差すものだと考えます。
金融システム上の問題とは違う原因で経営危機にある単位農協を金融システム上の観点から対処するというのは、矛盾する措置だと言わなければなりません。真の意味での将来性のある農業、農政の確立こそ急務であります。他の金融機関に比べ経営が構造的に厳しい農林系の金融機関をどうするおつもりか、あわせて単位農協の抱える課題についていかがお考えか、所管大臣の御見解をお伺いいたします。
金融問題の課題処理は、我が国に対する内外からの信頼を回復するための国民的課題であります。このときに、最大与党の幹事長として今回提出の不良債権処理の枠組みをつくった実質的な責任者である加藤紘一自民党幹事長が、不良債権の当事者である住専の借り手から裏献金をもらい、その穴埋めに血税が投入されるような結果を招いた疑惑が発覚いたしました。この疑惑解明のために、加藤自民党幹事長はみずから積極的に証人喚問に応じるべきであります。(拍手)橋本総理も、国会が決めることだと逃げることなく、自民党総裁として大いなるリーダーシップを発揮していただきたいことを強く要望するものであります。
最後に、総理、体面にこだわることなく、与野党という枠組みを超えて、金融・不良債権処理問題に対して、新しいスキームのもと、新しい法案として出し直す勇気こそ最重要であると申し上げて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/9
-
010・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 加藤議員にお答えを申し上げます。
まず、五年後に金融界がどう国際化、自由化されるのかという御質問であります。
政府はこれまでも、預金金利の自由化、金融制度改革の実施等、施策を着実に実施してまいりました。今後はさらに、本格的な金融自由化時代にふさわしい自己責任原則と市場規律に立脚した透明性の高い金融システムを早急に構築する必要があると考えており、そのため、今後五年以内に預金者の自己責任原則を問えるよう環境整備を図るとともに、規制緩和の推進等により市場機能の一層の活用を図ってまいりたいと考えております。
当面の五年間の緊急措置につきましては、来るべき二十一世紀に向け、ただいま申し上げましたような新たな金融システムの構築を図るために、ディスクロージャーの進展等の環境整備とともに、不良債権の早期処理及び経営が破綻した金融機関の果断かつ迅速な処理により金融システムの健全化を図ることが不可欠であります。このような環境整備には五年程度を要すると考えられることから、預金者保護、信用秩序の維持に万全を期すための時限的な措置を講ずることといたしました。
金融四法案と住専処理法案の重要性に関する御意見がございました。
住専処理法案は予算関連法案でありますのに対し、金融四法案は予算非関連法案でありますところから、国会への提出は住専処理法案が先になりましたが、金融四法案及び住専処理法案により不良債権問題の早期解決を図りますことは、我が国の金融システムの安定性とこれに対する内外からの信頼を確保し、今後我が国経済が持続的に発展をしていくためにぜひとも必要でございます。このような観点から、住専処理法案、金融四法案がともに早期に成立することを心から願っております。
護送船団方式につきましては、金融自由化が本格化する以前における金融機関の破綻回避を前提とした競争制限的な金融行政手法でありました。こうした手法は、私は、かつては安定的な資金供給に貢献した面があったと思います。しかし、金融自由化の進展した今日にありましては、もはやこうした行政手法はとり得ないものでありまして、今後の金融行政につきましては、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い金融システムを構築していくよう努めることが重要だと考えております。
金融問題に対する政府の対応につきましては、政府は、これまでも金融機関の不良債権問題に対し、問題を先送りすることなく果断に対応してまいりました。今後とも、政府として責任を持って金融問題に取り組んでまいりたいと考えております。
また、経済改革にっきましては、昨年十二月に決定した構造改革のための経済社会計画に基づき、広範な規制緩和などの経済構造改革の推進にも積極的に取り組んできたところであります。
金融の国際化、金融先端技術につきましては、金融機関の創意工夫及び金融先端技術に伴う複雑なリスクの金融機関自体による適切な管理が極めて重要であり、監督当局におきましては、金融機関のリスク管理体制について市場のチェックが十分機能するような基盤整備を図ることが重要だと考えております。
政府保証を信用協同組合特別勘定の借り入れに限定いたしますのは、信用組合につきましては、その不良債権額に対する償却財源が他の業態に比べて脆弱であり破綻処理に多大な費用を要するおそれがあることから、預金者等が無用の不安を感じることがないよう制度的に万全の措置をしておく必要があると考えたからであります。
なお、整理回収銀行の業務の対象にっきましても破綻信用組合に限定することといたしておりますが、これは、一昨年来信用組合の経営破綻が相次いで発生している現状や多額の不良債権を抱える厳しい経営状態を踏まえまして、その破綻について適時適切な対応を可能とするため、特に信用組合が破綻した場合について制度的な枠組みの整備を図る必要があると考えたためであります。
一方、信用組合以外の金融機関につきましては、そもそも多くの破綻が発生する事態は想定されないことに加え、銀行等にっきましては高度な決済機能を有していること等にかんがみ、信用秩序全体や地域経済に与える影響等を十分に考慮し、個々の事例に応じた適切な処理を図ることが必要だと考えております。
住専と信用組合の破綻処理における更生手続について御意見がございました。
住専の処理につきましては、住専七社の事業内容等にかんがみれば、事業自体にそもそも更生の見込みがありませんため、更生手続を使うことは困難であると考えられます。これに対し信用組合などの金融機関の場合は、ケースによりましては更生の見込みがあり、また地域経済の安定のために事業の維持更生を図る必要がある。こうした理由によりまして、これまでの任意の合併、営業譲渡の方式によっては円滑な破綻処理が期待できない場合には、更生手続を活用した破綻処理を行うことが適切な場合も少なくないと考えられます。
破綻金融機関の経営責任及び債権回収にっつましては、預金保険が発動されます場合には、破綻金融機関は存続させないこと、経営者の退任及び民事、刑事上の厳格な責任追及が行われること等が前提条件とされております。また、借り手に対しましては、受け皿金融機関ないしは倒産手続により法律に基づく厳格な債権回収が図られることとなります。経済倫理にもとる行為を促進するといったおそれはないものと考えております。
また、金融機関の破綻処理に当たっての財政支出に関する御質問がありました。
今般の預金保険法の一部を改正する法律案におきまして、預金者に直接負担を求めることが困難な当面の間、預金者保護のための臨時異例の措置として、信用組合の破綻処理について必要な場合には政府保証等の措置を講ずることとしております。
これは、信用不安を惹起しやすい現下の金融環境等にかんがみ、万が一預金保険料の引き上げ等金融システム内での最大限の負担によってもなお破綻処理費用を賄えない場合の備えを講ずることにより、預金者保護及び信用秩序の維持に万全を期するためのものであります。ただ、従来の七倍程度の預金保険料を徴収することとしておりますこと、三年後には特別保険料の見直しを行うこと、こうしておりますことにかんがみれば、今般の措置によって多額の財政支出が必要となることはないのではないか、そのように考えております。
信用組合の業態転換につきましては、先般の金融制度調査会答申におきましては、最近の破綻の例を踏まえ、都市部を中心に協同組織としての基本理念が薄れて一般の金融機関と同じ業務展開を志向するものについては、他業態への転換について法令の規定に基づき適切に対応していく必要がある旨述べられております。
金融機関の業態転換は、個別金融機関がみずからの経営判断によって意思決定をすることが基本であると考えておりまして、今後とも現行法令の規定に基づいて適切に対応していく所存であります。政府といたしましては、信用組合の経営の健全性確保、破綻の未然防止等を図りますために、いわゆる金融三法案において法的手当てを講じるなど、金融システム安定のため所要の措置を講じてまいりたいと考えております。
次に、都道府県の財政支援及び国と知事との共同検査の発動基準の明確化についてのお尋ねがありました。
信用組合の破綻処理における都道府県の財政支援は、知事の監督権限に基づく措置ではなく、それぞれの都道府県の実情に基づいて地域経済に与える影響や民生の安定等を勘案の上、公益上の必要性から自己の責任に基づく判断により行われております。また、国と知事との共同検査の発動基準の明確化については、信用組合の検査・監督上の問題点等を踏まえ、基準の具体化に向け検討を行ってまいる所存であります。いずれにいたしましても、信用組合の検査・監督につきましては、都道府県知事と密接な連携をとりながら、その充実強化を図ってまいりたいと考えております。
加藤幹事長の喚問についてお尋ねがございました。
御指摘の件は司法の場に告発がなされていることでもあり、事実関係がはっきりしていないときにとやかく言及することは適当ではないと考えております。また、御意見がございましたけれども、私は、証人喚問要求については国会がお決めになることであり、行政府の長として申し上げることではありません。
最後に、金融機関の不良債権処理問題について、新しいスキームのもとに新しい法案として提出すべきだという御意見をいただきました。
御意見にお礼を申し上げますが、政府といたしましては、既に提出しております金融関連法案による不良債権処理策が最善のものと考え御提案を申し上げたことでありまして、その早期成立を心から願っております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/10
-
011・久保亘
○国務大臣(久保亘君) 自己責任原則確立の時期については、ディスクロージャーの推進等により、預金者の自己責任を問い得る環境の整備を、二十一世紀を展望しつつ、今後五年以内のできる限り早期に完了し、その後は、預金のカットを伴うペイオフも金融機関の破綻処理の際の自己責任原則の一つとなると考えております。
したがって、預金保険機構による資金援助の特例等の時限措置については、これが預金者の自己責任を問い得る環境が整備されるまでの間の臨時異例の措置であることから、改正法案において平成十二年度末までに資金援助が申し込まれた事案等に限ると明記いたしており、現時点において、こうした措置を五年を超えて行うことは考えておりません。
五年間の時限期間内においてペイオフ超過分に限度額を設定することについては、現下の信用不安を惹起しやすい金融環境において大口預金は保護されないということになれば、大口預金を中心とした急激な預金のシフトが起こり、弱小の金融機関の多くが破綻に追い込まれることにもなりかねないと思います。こうした事態を回避しつつ果断な破綻処理を行っていくためには、大口の預金を含め預金の全額を保護し得る仕組みを設けることが必要であると考えております。
今後の預金保険の資金援助を必要とする破綻金融機関の数や規模等を現時点で予測することは、大変困難であることを御理解賜りたいと思います。
今般、預金保険制度の充実を図るに当たっては、預金保険機構の資金援助が初めて実施された平成四年から平成七年末までに生じた破綻金融機関の損失額が二兆五千億円程度であることにかんがみ、今後五年間に同程度の破綻処理費用が必要となった場合にも対処し得るようにすることとして、金融機関の国際競争力を阻害しない限度においての水準に保険料率を設定したところであります。
農林系統金融機関への認識、対応についてのお尋ねでございますが、農林系統金融機関についても、金融の自由化等の環境変化に対応して、この体質を強化していくことが重要な課題であることに変わりはございません。大蔵省としても、農協の貯金者保護の観点から、農水省と適切に連絡連携を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣大原一三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/11
-
012・大原一三
○国務大臣(大原一三君) お答えいたします。
まず、農水産業協同組合貯金保険法の五年間の時限措置における限度額の設定についてのお尋ねでございますが、今回の措置は、市場規律の発揮と自己責任原則の徹底を基本とした透明性の高い金融システムが構築されるまでの間、ペイオフにより貯金者に損失負担を求めることは困難との認識に立って、大口の貯金を含め貯金の全額を保護し得る仕組みを設けようとするものでございます。
なお、時限措置の期限の再延長についてのお尋ねでございますが、時限措置については、預金保険法と同様に、改正法案において平成八年から十二年度末までの措置と明記しており、現時点においては、こうした措置を五年を超えて延長することは考えておりません。
なお、農協系統についてのリストラのお話でございますが、農協系統については、金融の自由化や農業を取り巻く情勢の変化に対応していくために、議員御指摘のとおり、まさに事業、組織の見直しが避けて通ることのできない重要な課題であります。このため、現在、農政審議会において、信用秩序の再構築を含め、単位農協を初め農協系統の事業、組織のあり方について検討を行っているところであり、遅くても来年の通常国会には関連法案を提出できるよう準備を進めていく考えでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/12
-
013・土井たか子
○議長(土井たか子君) 森本晃司さん。
〔森本晃司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/13
-
014・森本晃司
○森本晃司君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま議題となりました特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案など六法案に関し、総理初め関係大臣に質問をいたします。
住専を処理するために国民の税金を投入することに反対する世論は、現在も国民の九割近くに上っております。にもかかわらず、与党は、六千八百五十億円の税金投入を含む平成八年度予算を、数に物を言わせて成立させました。これまで本会議の場やあるいは予算委員会で、政府の住専処理策に対して長い時間審議をしてまいりましたが、全く国民の理解を得られていないのが現状であります。
申すまでもなく、住専は、純然たる民間会社であり、ノンバンクであり、預金者もおりません。民間企業というのは、たとえ政府・与党の経済無策による長期的な不景気により自分の経営している会社が倒産したとしても、政府が救済してくれることは決してありません。
しかし、今回の政府の処理策は、住専を救済するためでもなく、ただつぶすために税金を投入するというものであります。税金を投入しなければならない必然性についても、合理的な理由が全く示されていないのであります。これでは、どんなに時間をかけても国民の理解が到底得られるものではありません。政府・与党は、だめなものはだめということを明確に認識すべきであります。
国民は、憲法第三十条で納税の義務を負っております。これは、国民の税金を預かる政府や国会に対する信頼が前提となっていることは言うまでもありません。民間会社の倒産処理に税金を使うということは前代未聞であり、後世に悪例を残すものであります。
こんなことを多数によって決めるならば、国民の納税意欲は著しく低下し、こんな法律を成立させ、さらに消費税をアップさせるなどということは、国民に対する冒濱であります。政府や議会に対しぬぐいがたい不信を招く、いや既に不信を招いているのであります。私は、住専処理案を廃案にし、国民の税金投入を直ちに中止することが国会の良識であると申し上げたいのであります。(拍手)
政治に携わる者は、国民の負託を受けて行動することは当然であります。行政もまた、国民の信頼があってこそ成り立つものであります。しかるに、住専の破綻をここまで放置し、金融秩序が揺らぐほどの不良債権問題を抱えるに至っております。にもかかわらず、政治も政府も金融機関経営者も、いまだだれ一人として責任を明確にしょうとしていないではありませんか。総理は、政治と責任、特に住専・金融問題に関する責任のあり方にいかなる考え方を持っておられるのか、ぜひ国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
今回の住専スキームを決定したのは村山内閣であり、大蔵大臣は武村さんでありましたが、予算を編成し国会に提出しただけで、政権を投げ出してしまいました。
一人の方は、外でいろいろ言いながらも国会の場での発言を求めても応じず、もう一人の方は、こんな枠組みをつくった張本人が敵前逃亡したという国民の厳しい批判に対して、責めの一端を果たしたいと称して、財政再建策として消費税一二%をもっともらしく述べていることは、国会を軽視するとともに、無責任きわまりないと思うのでありますが、総理はこのことに対してどのようなお考えをお持ちか、お答えを賜りたいのであります。(拍手)
さらに加えて、今回のスキームづくりの中核的役割を果たした加藤自民党幹事長は、住専から七十三億円を借り、これを不良債権として破産した共和から一千万円のやみ献金を受けたとの疑惑を受けています。
いわゆる加藤問題は、ここ四年来、国会で疑惑が取り上げられ続け、加藤氏は官房長官時代など四回にわたって答弁をされているのであります。しかし、疑惑は解明されないばかりか、去る三月四日、加藤氏の元後援会長が代理人を通じて司法クラブで、加藤幹事長の住専・共和やみ献金問題について、現金の受け渡しに立ち会い、その後、加藤氏の依頼で一千万円を預かったなど事実の経過を明らかにしたことにより、国会で虚偽の答弁を行った疑いがますます大きくなっているのであります。
我々は、決して党利党略で加藤氏の証人喚問を求めているのではありません。住専や金融問題を審議するに当たり、まず国民の不信を取り除くことが政治の責任ではないでしょうか。(拍手)みずから進んで証人喚問に応じられるべきであります。
また、住専に直結する加藤喚問は、法案や金融問題に先立って、まず実現されなければなりません。先ほど総理は、我が党の加藤議員の質問に対して司法の場にあるからと言って逃れられましたが、政治家としての責任は国会できちんとしなければなりません。金丸さんのときも病院にまで行って喚問をやったではありませんか。
加藤さんが回避すればするほど、国民の政治不信は高まることを認識されるべきであります。与党各党の閣僚や議員の皆さんが一致して加藤喚問を勧告し、一日も早く実現されることを念願するものであります。特にこの問題について、総理、大蔵、経企庁長官に見解を求めたいと思います。
四年前の六月、社民党の幹部は「政治スキャンダルを解明せずして法案の審議を十分することは難しい」と述べて、加藤証人喚問を要求いたしました。疑惑が一段と明確になった今日、なぜ証人喚問を要求されないのですか。かつて社民党は真っ先に証人喚問を要求してきたではありませんか。
村山前総理は「何かあったらすぐ証人喚問と騒ぎ立てるのはどうか」などと言っておりますが、これには国民も唖然としているのではないでしょうか。立場が人を変えるといいますが、これでは、公約も国会での主張も何の意味も持たないことになるのではないでしょうか。国民やかつての社会党を支持されてきた多くの皆さんの失望と悲しみの声が聞こえてまいります。私は、この場で社民党諸君の猛省を促しておきたいと思うのであります。
総理、あなたは、今日の住専問題を生むことになった総量規制、三業種規制の通達をお出しになった当時の大蔵大臣としての御自身の政治責任をどのように感じておられるのか、率直に語るべきです。
住専を破綻するままに放置をし、金融機関に対する監督を怠ってきたと言わざるを得ない大蔵省、農林系統金融機関の住専に対する貸し込みを黙認してきた農林水産省、後に税金投入の根拠となる法的には何の効力もないあの覚書を交わし、国政を壟断したとも言えるこの両省の責任を総理はどのようにお考えか、この両省に対する行政監察を実施するおつもりはお持ちかどうか、お伺いいたします。
法案関係についてお伺いいたします。
住専処理に投入される六千八百五十億円の積算根拠であります。
参議院予算委員会の証人喚問で、角道農林中金理事長は、負担額は前農相に善処をお願いしており、五千三百億円の積算根拠は知らないと証言し、橋本全銀協前会長は、六千八百五十億円の税金投入は突如決まったと証言をしております。当事者の知らないところで、政府内の談合によりこの処理スキームは決められたのですか。
なぜ六千八百五十億円なのかという説明も、納得できるものではありません。これまで政府は、農林系統金融機関の負担五千三百億円の積算根拠についても、ぎりぎりの負担を積み上げたとの一点張りで答弁をしてきました。これら証人の証言を踏まえ、総理、農水大臣に、六千八百五十億円、五千三百億円の積算根拠をお尋ね申し上げます。
次に、住専処理機構の二次損失と債権回収についてお伺いいたします。
住専処理機構で回収できない債権を二次損失とし、二次損失以降は損失額の半額を税金で補うことも政府は閣議において了解しております。住専処理が金融システム安定化のためであるなら、一次、二次に分けず、なぜ一括して迅速に処理をしないのでしょうか。分割処理とする理由は一体何でありましょうか。また、二次損失の財政負担はいっから支出されるつもりですか。
また、昨今の地価の下落により住専の不良債権額は拡大しているはずでありますが、どのぐらい拡大していると判断されているのか。直近の地価に基づき処理策を作成し直すお考えはお持ちでしょうか。もし処理策をし直さない場合、政府は、二次損失について一兆二千億円程度の損失が出る見込みであると説明してまいりましたが、地価の下落などを考慮に入れれば、増加することは明らかです。
政府は、なぜ今から二次損失の半額を国民の血税によって穴埋めすることを決定されたのですか。これでは、まるで国民が政府に白紙の小切手を渡すようなものではありませんか。半額は税金と決めた理由と、最終的に総額どれだけの税金が必要になると算定しておられるのか、具体的な数字を総理、大蔵大臣に御答弁をお願いいたします。
政府は住専七社を一括処理する方針ですが、住専七社には経営内容、資産の傷みぐあいにかなりの相違があり、一括に処理してしまうのはまさに責任逃れのためとしか考えられませんが、この点についてどう考えておられるのでしょうか、お答え願います。
東京協和、安全の破綻二信組の事業を受け継いだ東京共同銀行、民間債権処理のために設立された共同債権買取機構の債権回収がはかばかしく進んでいないことを見ても、住専処理機構には強力な債権回収など到底期待できないと考えますが、回収の見通しは立っているのかどうか、それぞれ明確にされたい。
次に、住専の経営者、設立母体金融機関の経営責任の追及について伺います。
昨今、借りた金を返さずに優雅な暮らしを続けている悪質な借り手企業に検察・国税当局の捜査が入り、そのいいかげんな経営の実態が明らかになりつつあります。住専各社は、低い担保権で巨額の融資を行ったり、同一の不動産に何度も担保権を設定するなど、新進党が以前から指摘をしてきたずさんな融資状況が次々と明るみに出ております。
また、住専の設立母体金融機関つまり母体行は、その紹介融資の金額が債権放棄額を上回る銀行が六行あり、二倍を超える銀行が三行あります。紹介融資総額の九割が不良債権となっており、駆け込みで資金回収をした金融機関も多数に上っております。このようなずさんな経営をしていた住専並びに母体行の経営者の責任を総理はどのようにお考えでしょうか。
住専各社から住専処理機構に営業譲渡をする場合、経営責任の追及、役員への損害賠償請求権は、包括的、網羅的に住専処理機構に譲渡されることになると政府はしております。しかし、住専で一番のしにせである日住金の個人株主が五〇%を超えていると聞きます。営業譲渡のための決議が危ぶまれていますが、完全に住専処理機構に移転し、損害賠償と責任の追及をすることができるのでしょうか。既に住専処理のスキームは破綻していると言っても過言ではないと思います。(拍手)総理の明確なる答弁を求めます。
次に、経済企画庁長官にお伺いいたします。
長期にわたる景気の低迷が国民生活に深刻な影響をもたらしている中、例を見ない超低金利政策により、金融機関は史上空前の業務純益を上げております。これは明らかに銀行優遇策であり、年金生活者などの低所得者から銀行への所得移転であります。この低金利政策が国民生活にどのような影響を与えていると認識しておられるのか。
また、五月の月例経済報告では、景気は穏やかながら回復の動きを続けていると判断されております。金融機関の抱える膨大な不良債権の処理に根本的な対策を打ち出せないでいる政府が、景気と不良債権処理の関連をどのように考えておられるのか、これからの景気見通しも含めて御説明願いたいのであります。
さらに、今日の膨大な不良債権を生む元凶となったバブル時代の経済政策を経済企画庁はどのように総括されておられるのか、明確に御答弁をお願いします。
与党自民党の幹部は「ダムに穴があいたら、だれがあけたのかとか何であいたのかと言っている暇はない。早く穴をふさがないと、ふもとの村が水浸しになってしまう」と言って、今回の税金投入を正当化しようとしております。これは、全く見識を欠いた発言と言わなければなりません。
不良債権問題が住専問題のみであり、これが解決すれば不良債権問題は解決するかごときの物の言い方は、問題の本質を矮小化し、国民の判断を誤らせるものでしかありません。まさに木を見て森を見ずのたぐいであります。住専という氷山の一角だけを見て膨大な不良債権が見えないのでは、日本丸は座礁し、沈没することは必至であります。こんな政府・与党にかじ取りを任せているわけにはまいりません。(拍手)
住専処理機構による債権回収が始まり、担保物件が処分され、借り手企業が次々と倒産に追い込まれることになれば、錯綜する債権債務関係が、他の金融機関、ノンバンクなどにも波及することが十分に予想されます。その際、金融秩序の安定維持には、この住専処理法案では何ら役に立ちません。金融システムの安定維持のための公的資金投入については、明確なるガイドラインがなければなりません。それは、あくまでも預金者保護であり、経営者の厳しい責任追及及び「破綻金融機関は存続させない」が原則と考えます。
我が新進党は、不良債権全体の処理を視野に入れた中で、住専処理は、自己責任と市場原理の大原則に基づき、法治国家として国民に開かれた状況の中で行うのが最善と考えます。
総理、かつて「過ちを改むるにはばかることなかれ」と言った人が与党首脳の中におられますが、この過ち多く、総理御自身が「住専処理に税金を投入することに国民の理解が得られていない」と述べておられる住専処理法案は、廃案にすべきだと重ねて申し上げます。
先ほど、我が党の加藤議員の新しいスキームでという質問に対して、総理は全く考えておりませんとおっしゃいましたが、では、けさの官房長官の記事はいかがなのでしょう。総理の御所見をお伺いいたします。
橋本内閣は、住専処理策にとどまらず、経済政策や外交政策を見ても、何ら展望を国民に示しておりません。自民党、社民党、さきがけによる連立内閣も国民の審判を受けたものではなく、その行き詰まりが指摘されております。私は、一日も早く衆議院を解散し、総選挙によって国民の信を問うべきだと申し上げ、総理の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/14
-
015・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 森本議員にお答えを申し上げます。
まず、住専・金融問題に対する政治責任というお尋ねがございました。
私は、住専問題の処理方策は、経済の動脈ともいうべき重要な役割を果たしております金融に対する内外の信頼を確保しながら、景気回復を確実なものにするためにも、我が国の命運に責任を持たなければならない政府・与党として国民全体のために決断をしたものであり、これが責任であると考えております。(拍手)
次に、村山前総理並びに武村前大蔵大臣についてのお尋ねがございました。
この内閣は、三党の政策合意の上に立ちまして、村山政権下の政策の継続性を基本としながら新たな課題に対応していくこととしており、平成八年度予算にっきましても、村山内閣の決定した予算の概算を引き継ぎ、現内閣において国会に提出をいたしました。私は、村山前総理に対しましても、武村前大蔵大臣に対しましても、何ら申し上げるべきことはございません。しかし、強いてお尋ねがありますならば、お二人とも見識のあるすぐれた政治家だと考えております。(拍手)
また、加藤幹事長についてお尋ねがございました。
先ほど加藤議員にもお答えを申し上げましたように、私は、御指摘の件は司法の場に告発がなされていることでもあり、事実関係がはっきりしていないときにとやかく言及することは適当ではないと考えております。また、国会がお決めになることに対し私が何ら申し上げる立場にはありません。
次に、総量規制についてのお尋ねがございました。
議員も御記憶でありますように、私が海部内閣の大蔵大臣として就任をいたします前から、土地の取引というものが非常に問題になり、地価の高騰をいかに抑えるかが非常に大きな課題になっていたことは御記憶のとおりであります。私が就任いたします前から、通達やヒアリングを通じ、投機的な土地取引に対する融資を排除すべき指導が行われておりました。私の就任後も同様の指導を行いますとともに、平成二年三月にいわゆる総量規制通達を発出いたしました。これは、当時大きな社会問題となっておりました地価の重要性にかんがみ、前年末に施行されました土地基本法、また金融機関の業務の公共性の趣旨を踏まえて、あえて一歩踏み込んだ措置をとったものでございます。
また、住専問題に関する大蔵省の責任については、住専を含むノンバンクに対して、大蔵省としても銀行等に対するような広範な指導監督権限を有していない中で、私は制度上許される最大限の努力を行ってきたと思います。
なお、覚書について、住専の再建問題をめぐる当事者間の協議が円滑に行われていくよう、住専の再建問題の取り進め方について議論の整理をしたものであり、当事者間の権利義務関係に何ら影響を及ぼすものではないと繰り返し御説明をしてまいりました。
このように、総量規制などバブル期の政策あるいは自由化を初めとする金融行政につきましては、私も含め、その時々政府は一生懸命取り組んできたと思います。しかし、結果として今こうした事態になっておりますことは、今の時点で振り返りましたとき、不十分な点があったということを決して免れるものではございません。
いずれにせよ、今般御提案申し上げております関係法案を早期に成立させていただき、住専処理を実施すること、及び従来の行政のあり方に関する見直しを踏まえて新たな金融行政と金融市場の確立を図ること、またマクロ政策について適切な運営を図っていくことが政府全体の責務であると考えております。
また、農林水産省の責任についてのお尋ねでありますが、農協系統の住専への貸し付けにつきましては、総量規制通達の趣旨を体し、必要に応じ関係者に対し注意喚起を行い、理解を求めたものと承知しております。当時、農協系統の住専への貸し付けが伸びましたのは、当時の経営環境のもとで個々の経営判断に基づき行われたものど承知しておりますが、農協系統がこうした貸し付けを行うに至った背景について整理点検を行い、今後の行政指導に十分反映させる必要があると考えております。
次に、行政監察の実施について御意見がございました。
金融行政につきましては、新しい金融行政のあり方の検討とその実施状況等を見ながら行政監察を実施することといたしております。
また、農協系統の負担額の積算につきましては、農協系統の資金協力につき、信連、中金ごとに推定利益の充当、引当金の取り崩し等を行うこと等を前提に、当該経営に及ぼす影響を見定め、存立の基盤を守り得る最大限の協力として算定をいたしたものであります。この点に関し角道理事長は、系統にとって非常に厳しい内容である旨の証言も同時になされていると承知しております。
次に、六千八百五十億円の積算根拠につきましては、今回の住専問題の処理方策の策定に当たり各当事者に最大限の努力が求められました結果、母体行、一般行に対しそれぞれ債権放棄を要請するほか、系統金融機関に対し資金贈与を要請いたしたところであります。当事者間の負担を決めるに当たって考慮した点は、我が国金融機関の国際的位置づけ、住専設立から破綻への経緯等、当事者の経営状況、対応力等でありますが、各当事者が最大限の負担を行いましてもなお埋め切れない損失を処理し、住専問題の早期かつ円滑な処理を行うため不可欠な措置として決断をいたしたものであります。
いわゆる一次損失と二次損失の処理につきましては、既に発生が見込まれている損失の処理とは異なり、住専処理機構に引き継がれる資産につきましては、強力な債権回収が図られ、現在以上の損失が極力生じないよう最大限の努力が行われることとなっており、いわゆる二次損失が将来当然に生じるということを前提にしたものではございません。また、いわゆる二次損失に係る財政措置につきましては、具体的には債権回収に伴う損失の発生状況等を勘案しつつ行われることになるわけであります。
御指摘のように、地価下落と住専の不良債権の関係につきましては、当初見込まれていた安全性が全体に低くなっていることは否定できません。こうした状況のもとに、処理方策の見直しに直結するわけではありませんが、住専処理にとって厳しさが増したことは事実でありまして、これを真摯に受けとめ、今後、回収努力に万全を期さなければならないとの認識を新たにしているところであります。
いわゆる二次損失につきましては、住専処理機構におきまして、同機構が買い取った債権等について強力な回収を図り、損失が極力生じないよう努めることとしております。その上で、なお万一将来損失が生じました場合に、住専問題の処理は広く国民全体が最終的に受益する性格を有しておりますことでありますので、国、民間の両者が折半で負担していくことが適当と考えた次第であります。しかし、いわゆる二次損失につきましては、将来当然損失が生じるということを前提としたものではございません。
次に、住専の経営者の責任につきましては、今回の住専の巨額の不良債権を抱え整理のやむなきに至った状況をかんがみましても、その経営責任を徹底的に追及すべきことは当然であります。
また、母体行の経営者の責任につきましても、母体行の過去の経営のあり方に対するさまざまな御指摘を踏まえながら、母体行の経営者及び株主みずから判断していくことが重要だと考えております。
日本住宅金融の営業譲渡につきましては、日住金を含めた各住専における株主総会の開催、株主に対する対応等は、各住専及び母体行において努力されているものと考えております。いずれにいたしましても、日住金等の各住専の保有する損害賠償請求権は、包括的に住専処理機構に譲渡されることとしており、これによって役員等に対する損害賠償請求権及び責任の追及に万全を期してまいる所存であります。
住専処理法案は廃案にすべきではないかとのお尋ねでありました。
今般の住専問題の処理方策は、国民の皆様の預金を守るとともに、経済の動脈と言われる金融に対する内外の信頼を確保し、景気回復を確実なものとするために、まさに、冒頭申し上げましたように、我が国の命運に責任を持つ政府・与党として最善のものであると考え決断をしたものであり、政府としてはこの法律案の早期成立を期待しているところであります。
最後に、衆議院の解散につきましては、これら御審議をいただいております法律案を初め、我々としては、切れ目のない経済運営に万全を図る、また、普天間飛行場の返還などにつきましての作業にも全力を尽くす、日米防衛協力の指針の見直し、あるいは日米間の協力の研究促進を図る、リヨン・サミット、さまざまな懸案のあります現在、政治に空白を生じるべきではないと考えております。
残余の問題につきましては、関係閣僚から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/15
-
016・久保亘
○国務大臣(久保亘君) 証人喚問問題につきましては、四月十日、四党の国対責任者間で取り扱いの合意がなされており、その合意に基づいて国会で御相談が行われているものと承知いたしております。
次に、二次損失の問題、地価の変動に伴う損失の問題についてのお尋ねがございましたが、この点に関してはただいま総理から御答弁を申し上げましたので、私からは省略をさせていただきます。
なお、住専七社を一括処理することについてのお尋ねでございますが、今回の処理方策においては、個別の住専ごとではなく、七住専を一括して住専処理機構が引き継ぐことにしており、これにより、各住専共通の債務を一括して取り扱うことにより、コストダウンを図るとともに、困難事案にも共同して立ち向かえる点があります。二番目には、各住専の担保及びそれに係る法律関係が集約、整理されやすくなること、三番目には、債務者の個別住専との過去の取引経緯や関係者の利害にとらわれることなく、これまでは行い得なかった厳しい回収を図っていくことが可能となること等の利点があると考えております。
なお、債権回収についてのお尋ねでございますが、旧二信組の事業を譲り受けた東京共同銀行及び共同債権買取機構においては債権回収に鋭意努めているところでありますが、地価の下落による担保価値の下落等から、必ずしも円滑に回収が図られているとは言いがたい状況にあるものと承知いたしております。特に共同債権買取機構による担保不動産の処分については、原則として任意売却としていることから、債務者の売却同意が得られにくいこと等により、現状、債権回収に時間を要していると承知いたしております。
一方、住専処理機構においては、担保不動産の競売による回収を含め、法律上認められるあらゆる回収手段を迅速的確に用いるとともに、いわゆる借り手の資産隠しについては、債務者の財産の実態を解明するために、預金保険機構に対し債務者その他の関係者の所有・占有する不動産に対する罰則つきの財産調査権を付与することにより対処することとする等、預金保険機構と一体となって住専から譲り受けた債権等を強力に回収することとしており、その成果を期したいと考えております。(拍手)
〔国務大臣大原一三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/16
-
017・大原一三
○国務大臣(大原一三君) お答えいたします。
系統負担額の積算についてのお尋ねでありますが、ただいま総理からお答えがありましたように、我々農水省において、信連、中金ごとに推定利益の充当、引当金の可能な限りの取り崩し等を行うこと等を前提に、経営に影響を及ぼすことを見きわめながら、存立基盤を守り得る最大限の協力として算定いたしたものであります。
角道理事長等につきましては、決定の事前、事後において説明を行ったところであります。この点に関し角道理事長は、系統にとって非常に厳しい内容である旨の証言も同時になされていると承知いたしております。(拍手)
〔国務大臣田中秀征君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/17
-
018・田中秀征
○国務大臣(田中秀征君) 私に対する御質問は四点ありました。
最初に、加藤さんの喚問問題についてお答えをいたします。
我が党は、この問題を金融関連法案審議のための前提条件とは考えておりません。御理解をいただきたいと思います。
次に、低金利政策についてのお尋ねであります。
申し上げるまでもなく、金利政策は日本銀行の専管事項でありますが、現在の低金利政策は景気回復のためのものであって、金融機関を優遇する目的のものではないと理解しております。このところの日銀の金融緩和の姿勢は、景気回復のために好影響を与えてきたと評価するとともに、現在も今後の本格的回復を強く下支えしていくとの観点からとられているものと理解しております。
一方、低金利が家計に与える直接的な影響としては、利子収入が利払いよりも大きく低下したため、このところ財産所得の純受け取りが減少してきているという事実がございます。しかしながら、金利の低下は、設備投資や住宅投資等の経済活動に好影響を与え、ひいては家計所得全体の増加につながることにより、消費を刺激することが期待されております。いずれにしましても、部分的に家計に与えるマイナスの影響を早期になくしていくためにも、景気の一日も早い本格的回復に全力を投球していく決意でございます。
金融機関の抱える膨大な不良債権の処理と景気との関連についてお尋ねでございますが、総理がいつも言われておりますように、住専処理が不良債権処理の突破口を開くものと認識しております。住専問題に象徴される不良債権問題は、一たびその処理を誤れば経済全体を不安定化させかねないという意味で、我が国経済の先行きに不透明感をもたらしております。さらに、株式や不動産を含む内外のマーケットや国民生活への影響を通じて景気に悪影響を与える可能性があります。
今後の景気の動向につきましては、公共投資に支えられた回復から、民間需要が次第に力を増し、自律的回復に移行していくものと見通していますが、このような動きを確実なものとし、景気の本格的回復を図るためにも、住専問題処理を突破口とした金融機関全体の不良債権の早期処理が喫緊の課題であると考えております。
最後に、バブル時代の経済政策について経済企画庁はどのように総括しているかとの御質問であります。
バブルの発生とその後の展開についてはそれぞれの立場での責任があるとは存じますが、私も含めて当時の政府・与党、特に大蔵省、日銀、そして私ども経済企画庁にも重い責任の一端があると受けとめております。中でも、資産価格の大幅で急激な変動がもたらす経済への影響について十分な洞察を欠いていた、いわば不明の責任は免れられないものと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/18
-
019・土井たか子
○議長(土井たか子君) 田中甲さん。
〔議長退席、副議長着席〕
〔田中甲君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/19
-
020・田中甲
○田中甲君 私は、自由民主党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけを代表して、ただいま提案されました特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案を初めとする金融関連六法案に関して質問をいたします。
金融は、国にとっては、経済の血液であるお金を体内に流す、いわば動脈であります。であるならば、銀行や住専など金融システムを支える個々の企業は私企業ではあっても、信用秩序を形成している金融システム全体は国民共有の財産、公共財なのであります。そして、今、我が国の金融システムは、バブル崩壊によって巨額な不良債権を抱え、あちらこちらにほころびが生じ、この大動脈が切れかかっている、いわば動脈瘤の症状を呈しています。
こうした金融の危機的状況は、これまでの護送船団方式の金融行政のあり方、不良債権対策のおくれが招いたものであり、それを今に至るまで正すことができなかったことについて、国会に議席を占めている私たち議員一人一人が重く受けとめ、国民に謝罪をしなければいけないと考えています。
今回、こうした深い反省に立って、政府・与党は、国民の血税というメスを使って、多額の不良債権を抱えた住専という動脈瘤を金融システムから摘出する外科手術に踏み切る決断をし、住専処理法案が国会の場で審議されることになったわけであります。この上は、一刻も早く金融関連六法案の審議を行い、国民に最大限の御理解をいただく中で、できるだけ早く法案を成立させ、住専処理機構を稼働させて、一日も早く金融システムを救う外科手術を行うことが政治の責任を果たす道であると考えます。
金融システムは国民の共有財産であり、国民の財産を守るのは政治の務めであります。このことに与野党の別はありません。金融関連六法案の審議においては、この国民の共有財産を守るという共通の原理に立って、与野党ともに言論の府にある者の誇りを持って堂々と論争をしようではありませんか。(拍手)
また、政治倫理綱領を持ち出すまでもなく、政治家たる者、一たびみずからの政治活動について国民から疑惑を招くようなことがあれば、みずから進んで国会の場に立ってその疑惑を解く責任と義務があるのは言うまでもないことであります。
しかし、最もあってはならないことは、このようなことを緊急を要する重要な法案の審議入りの前提条件とすることであり、そのことは、いたずらに国民の共有財産である金融システムを危篤状態のまま手術もせずに放置し、政争の具としてもてあそぶことにほかなりません。
思い返せば、国会議員同士の真摯な論争を通じて国会を改革し、五五年体制下での政官業もたれ合いの閉塞した構造を変えていくことが、我々が政治改革を通じて目指したことではなかったでしょうか。金融問題特別委員会の一員としても、この六法の審議が一刻も早く行われるべきであることをまず議員の皆さん方にお訴えをしたいと思います。(拍手)
次に、住専処理法案に関して、総理並びに大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
住専処理法案は、総理御自身が言われるように、残念ながらいまだに国民の十分な理解を得られているとは言えません。しかし、それを理由に法案の成立をおくらせることは、国民に対して責任を果たせず、結果として背信行為になると思います。
例えば先日逮捕された末野興産の末野容疑者は、本院で、生涯かかっても借りた金は返すなどと一見殊勝なことを言いながら、その後、一千二百億円を超える資産を次々に移しかえて、資産隠しを図ろうとしていたことが捜査当局の調べで明らかになってきています。こうした悪質な資産隠しなどを行っているのは、果たして末野興産だけでしょうか。これが氷山の一角のように思えるのは私だけではないはずです。
巨悪を眠らせず、徹底して追及して、その罪を告発すること、隠匿資産を暴き出して徹底した債権回収を図っていくこと、それがまさに住専処理法案によって住専処理機構と預金保険機構に与えられた使命であります。こういう金融犯罪を犯した悪者を取り逃がさないためにも、一日も早く住専処理機構が稼働できるようにすること、また、預金保険機構等が暴力団絡みの金融犯罪にも十分対応できるように政府として万全の支援体制を図ること、さらに、住専処理法案が成立する前でも、末野興産のような資産隠しの動きがあれば、一件たりとも見逃すことなく厳しく捜査を行うことが重要であると考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
既に政府・与党首脳会議でも確認されていますが、住専処理法第八条の「その他の財産」には母体行等への損害賠償請求権を含むこと、したがって第十七条の預金保険機構の強制調査の対象には母体行等の関係金融機関も含まれることをここで改めて総理から明らかにしていただきたいと思います。
その上で、住専処理法成立の暁には、預金保険機構が政府の関係当局と緊密な連携をとりながら、各住専の経営者や母体行等の関係金融機関に対して厳しく調査のメスを入れ、国民の負担を軽くするためにも、損害賠償請求によって回収可能な債権については必要な民事訴訟の手続を急いでとらせるようにするということを総理から国民にお約束をしていただきたいと思います。総理の明快な答弁を求めます。
これまでの国会審議を通じて、住専の関係金融機関、とりわけ母体行の負担が不十分ではないかという議論がされてきました。久保大蔵大臣も繰り返し、予算成立後に新たな負担を関係金融機関に求めたいという趣旨の答弁をされています。私たちも、今後の債権回収の過程で、住専処理機構の健全な運営の確保がされるようにさらに工夫をして、国民の負担を軽減できないかと考えています。
例えば、母体行から住専処理機構への低利融資二兆五千億円の金利を可能な限り低くすること、住専の労働者を関係金融機関で再雇用すること、金融安定化拠出基金への拠出金の増額などの措置によって、住専処理機構の負担を軽くし、いわゆる二次損失を可能な限り少なくすべきであると考えています。大蔵大臣は、このような追加負担について関係金融機関にさらに協力を要請される考えはありませんか。お伺いをしたいと思います。
また、母体行に限らず農林系についても、同様に何らかの形で国家財政への新たなる寄与を求めていくべきと考えますが、総理はどのようにお考えか、お伺いをいたします。
護送船団方式の金融行政が社会に弊害をもたらしてきた原因の一つに、公務員の天下り問題があります。与党内では、現在、監督官庁から監督を受けている民間企業への再就職について、現在二年間の天下り禁止期間を延長することが検討されていますが、総理はこの問題についてどのような見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
次に、預金保険法改正案など政府提出の金融関連四法案についてお伺いをいたします。
金融関連四法案の目的は、預金保険の料率を向こう五年間現在の七倍にして、今後の中小金融機関の破綻に備えること、金融機関の経営の監視を強化するために、不良債権等の情報開示を徹底し、金融機関経営の早期是正措置を導入すること、実質的に破綻状態にある金融機関を早期に整理する更生手続等の法的枠組みを整備することにあります。これは、金融システム全体のセーフティーネットを強化しながら、自己責任原則と市場規律を基本とする公正で透明な金融秩序の構築のための基盤整備を図ろうとするものであり、極めて時宜を得た措置と考えます。
しかし、今回の大改正をもってしても、まだ十分に金融システム全体の不安要因を解消することはできないのではないかと危惧をしております。
例えば、現在の預金保険制度では、外貨預金や譲渡性預金、長期信用銀行等の主力商品である利付金融債などは預金保険の対象になっていません。こうした商品も銀行の総合口座の中に位置づけられて決済システムの一翼を担っていることを考えるときに、これで果たして金融システムのセーフティーネットは十分に機能すると言えるでしょうか。
さらに、預金保険の料率を政府提案どおり七倍に引き上げても、向こう五年間に集まる保険料は二兆七千億円程度であります。これでは、国際的な影響も大きい、いわゆるマネーセンターバンクの破綻が起きた場合にも十分に対応できると言えるでしょうか。
こうした問題点についても、金融問題特別委員会で議論がされ、その必要性で一致すれば、その実現を図っていく必要があると考えます。政府としても、このような残された課題について、今後積極的に情報を開示しながら検討を進めていくべきと考えますが、総理並びに大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
また、この際、与党提案の特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法案について御質問いたします。
住専処理法の施行日より一定期間、住専処理機構が引き継ぐ債権の消滅時効を停止することで、債権回収の面でどのような利点があるのでしょうか。提出者に確認をさせていただきたいと思います。
さて次に、バブルを起こしてしまった原因についてはさまざまな議論がありますが、こうしたマクロ政策の過ちを二度と繰り返さないためには、大蔵省が、財政政策も金融政策も、実際にはマクロ政策の総合調整機能も、すべて一つの役所で握っていた構造を改革し、財政金融の分離、そして官邸主導によるマクロ政策調整、この二つを基本とする新しい仕組みを構築していく必要があると考えます。
そこでまず、与党では、戦時立法である日銀法の改正によって、権限、人事の両面で日銀の独立性を強化し、政策委員会の議事録公開など政策決定過程の情報を広く一般に開示すること、さらに、国会が日銀の金融政策運営を検証できる仕組みを導入することが必要と考えます。総理並びに大蔵大臣の日銀法改正についての基本姿勢をお伺いいたしたいと思います。
次に、大蔵省改革について御質問をいたします。
特に金融行政については、首都機能移転等に伴う他の中央官庁との横並び議論ではなく、大蔵省改革の一環として先行して改革することが重要と考えます。具体的には、平成九年度予算の概算要求までに政府・与党で金融行政の改革方針を確認し、次期通常国会において、大蔵省設置法の改正など所要の措置を講ずることが必要であると思いますが、大蔵省改革について総理は不退転の覚悟を持って取り組んでいただけるでしょうか。総理並びに大蔵大臣の御決意のほどを、それぞれ御本人の言葉で明確に御答弁をいただきたいと思います。
「まないたのコイが包丁を持ってはいけない」とは田中経済企画庁長官が言われたことでありますが、このことがまさに大蔵・金融改革の基本であマ特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進ると思います。この問題は、政府主導ではなく、あくまで政党主導で改革の道筋をつくっていかなければいけないと考えています。この点については大蔵大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思
います。
与党、野党の別なく、我々政治家が国民のために政治生命をかけて取り組まなければいけないのは、霞が関の改革です。集中した権限を持ちながら、国民に情報を公開せず、省益を最優先する官僚社会の構造、体質の改革であります。私たちは、今回の住専問題をめぐる論議を契機に金融行政の改革を断行し、官僚社会の意識を変えて、霞が関を国民を幸福にするシステムに改革する突破口としなければなりません。
以上、お訴えいたしまして、私の質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/20
-
021・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 田中議員にお答えを申し上げます。
まず、一日も早く住専処理機構を稼働させることについての御意見をいただきました。
住専処理法案が早期に成立することにより、一日も早く住専処理機構を設立させ、預金保険機構と一体となって強力な債権回収を行うことができますよう、ぜひとも御協力をお願い申し上げます。
次に、預金保険機構等に対する政府の支援体制につきましては、今回の政府の住専処理策におきまして、関係省庁による連絡協議会による支援のもとに、預金保険機構は、国税のほか法務・検察、警察職員の出向を得、捜査当局と緊密な連絡をとることとするなど、関係者の責任の明確化について政府としても万全の体制を構築することといたしております。
また、いわゆる借り手の刑事責任につきましても、住専処理法案の成立の前後にかかわらず、刑罰法令に触れる行為を認めれば、捜査当局において厳正に対処すると認識をいたしております。
次に、住専処理法案第八条に規定する、住専処理機構が住専から譲り受ける「貸付債権その他の財産」につきましては、住専が母体行等に対して有する損害賠償請求権も含まれることとなり、したがって、母体行等の関係金融機関が損害賠償請求権の債務者である場合には、第十七条の預金保険機構の財産調査権の対象になるものと考えます。
次に、住専の経営者や母体行等の関係金融機関に対する損害賠償請求権につきましては、住専処理法案成立後、住専処理機構が住専から包括的に譲り受け、預金保険機構及び関係当局と緊密な連携をとりながら、過去の経緯等を徹底的に調査した上、法的措置を含め適切に行使することとしております。
農林系金融機関についても何らかの形で国家財政への新たな寄与を求めていくべきだというお尋ねでありました。
私は、母体行として住専の設立に深くかかわった立場と系統のような貸し手だけの立場とでは、責任のとり方についても違いがあるのではないかと思います。しかし、何らかの新たな寄与については、関係金融機関の一員として、系統自身においても真剣にお考えになるべき事柄だと思います。
次に、公務員の再就職の問題については、公務の公正な執行の確保の要請と退職公務員の職業選択の自由等の基本的人権とをどう調和させていくか難しい問題がありますけれども、現在の制度なり運用をどうすべきか、これは各方面の意見をお聞きしながら今後の人事管理のあり方などを含め議論を深め、検討していくべきことだと思います。それぞれの国の雇用制度の中で、日本の仕組みはまた日本として独自に考えなければなりますまい。
次に、政府提出の四法案によってもまだ十分に金融システム全体の不安要因を解消することはできないのではないかというお尋ねがありました。
しかし、金融四法案におきましては、今後おおむね五年の間の特別な措置として、預金者保護、信用秩序の維持に万全を期すため時限的な制度を整備していくわけでありますが、そのほかに、金融機関の健全性の確保を図るための措置あるいは破綻処理を円滑かつ迅速に行うための制度の整備を行うことにしております。政府としては、金融四法案によりまして、今後の金融機関の破綻に対し基本的には十分対処することができると考えておりまして、金融システムの安定化のためにもその早期成立を期待しているところであります。当然のことながら、委員会で十分御議論をいただくことは我々としても望むところだと思います。
また、日銀法の改正についての御質問がありました。
現在の日銀法のもとにおきまして、さまざまな議論がなされてはおりますが、これまでの政策運営上、特に支障となるような問題は発生していないと思います。しかし、いずれにいたしましても、この問題は、一国の経済金融システムの根幹をなすものであることを考えれば、広範囲な視点からの慎重な検討が必要であると思っております。
これは、次にお尋ねのありました大蔵省改革についても同様でありまして、私は、金融行政に対してこれまでなされたさまざまな御批判というものを踏まえながら、これから先、我々が目指す自己責任原則というものを徹底していくこと、市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政をつくっていくためにどういう仕組みがいいのか、これは我々としてこの日銀法ともあわせながら真剣な検討を要するものだと思います。
私としては、金融自由化、国際化の大きな流れの中で、新たな金融行政のあり方につきまして、国際的な立場における日本の金融というものをも踏まえながら、真剣な検討をしてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/21
-
022・久保亘
○国務大臣(久保亘君) 関係金融機関による追加負担についてのお尋ねでございますが、住専問題については、これまでの国会の議論におきましても、母体行等として何らかの追加負担等による新たな寄与をすべきだとの厳しい御意見が与野党を問わずございました。
母体行の責任については、これまでの住専の経営の経緯等を踏まえて、債権放棄、拠出、低利融資など、政府の処理スキームに沿って最大限の協力を要請しているところであります。これ以上の負担については、法的な議論としては損害賠償請求権等個々の事案として処理するしかないと思われますが、住専問題については、単に法律的判断にとどまらず、関係金融機関の公共的責任の上から大局的判断が望まれるところであります。
政府としては、関係法案をぜひとも早期に成立させていただき、住専処理機構を一日も早く設立し、あらゆる手段をもって債権回収と責任追及に取り組むとともに、今後とも、結果としてできる限り国民負担の軽減につながるよう、関係金融機関等の自主的かつ真剣な取り組みを促してまいりたいと考えております。
政府提出の四法案によっても金融システム全体の不安要因を解消することはできないのではないかというお尋ねでございましたが、ただいま総理から御答弁を申し上げました。
なお、このことに関連をいたしまして、預金保険料については、七倍程度に引き上げることにより、預金保険が発動されるようになったこの四年間と同程度の破綻が生じた場合にも対処できることとなるほか、三年後には特別保険料の見直しを行うこととしております。また、預金保険の対象範囲については、一定限度内の預金元本の払い戻しを保証することにより一般預金者の保護を図るという預金保険制度の趣旨に照らしつつ、個々の預金等の商品性や保有形態等を勘案して決められており、現在のところ、保険対象預金の見直しは検討いたしておりません。
日銀法改正についての御質問でありますが、総理も述べられましたように、現在の日銀法のもとにおいて日銀の中立性、独立性を尊重した形で運用されており、特に支障となるような問題は発生していないと認識いたしておりますが、中央銀行のあり方は、各国の政治経済体制、歴史的経緯等を反映し、さまざまな特色を有しているところであります。
今御質問のございました中で、政策委員会の議事録公開等政策決定過程の情報開示につきましては、政策委員会が日銀の最高意思決定機関であることにかんがみ、現行法のもとでも可能と考えられますので、その方向で検討すべきものと思います。
いずれにしても、この問題については、一国の経済金融システムの根幹をなすものであることを踏まえれば、広範囲な視点からの慎重な検討が必要と考えております。
大蔵省改革についてのお尋ねでございますが、金融行政については、金融の自由化、国際化が急速に進展したにもかかわらず、市場機能を重視し自己責任の徹底を求める行政への転換が必ずしも十分に行われてこなかったのではないかとの御批判をいただいているところであります。また、業界との相互信頼に基づいてきめ細やかな行政を進めていく姿勢が、ともすれば不透明な行政として批判されてきたことも事実であります。
そのような御指摘を踏まえ、市場原理の貫徹した金融システムを構築していくため、今後の金融行政については、金融機関と行政の間に一定の緊張感を保ち、また総理も述べられましたように、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政を行っていくことが重要と考えております。このため、今般、所要の法律案を国会に提出したところであります。
金融行政の見直しを進めるに当たっては、みずからを最もよく知る者が自己改革を考え実行するということも極めて重要であり、新しい時代に対応する金融システムはいかなるものか、そのためにどのような行政で臨まなければならないかという積極的な自己改革を目指して、先般、大蔵省としても、今後の金融行政のあり方を検討するためのプロジェクトチームを発足させ、広範な視点から検討、議論を進めているところであります。
いずれにせよ、金融行政の今後のあり方については、国会、与党あるいは広く各界における御議論を見守りつつ、真摯な検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
〔永井哲男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/22
-
023・永井哲男
○永井哲男君 与党が提案いたしました特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止等に関する特別措置法案について、田中甲議員から、この法律の施行日より一定期間、住専処理機構が引き継ぐ債権の消滅時効を停止することで、債権回収の面でどのような利点があるのかとの質問がありましたので、提案者を代表してお答えいたします。
まず、本院に提出されている特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案が成立した場合、債権処理会社が特定住専からその有していた債権を譲り受け、預金保険機構とともにその債権の回収に鋭意努めることとなり
ます。
ところで、この債権の譲り受けに関しては、債権処理会社設立後の一時期に、約二十万件もある大量の債権を集中的に処理することになります。そして、この中には何らかの時効中断措置をとらなければ時効が完成してしまう債権が、当局の調査によれば、七住専合計で、今年度については約八百件、金額にして一千億円、来年度については約二千件、金額にして三千二百億円存在するとの
ことであります。
債権処理会社において、これらについて一つ一つ時効の中断を図ることも全く不可能とは言えませんが、膨大な債権譲り受けの事務の中で時効中断に遺漏なきを期するとすれば、債権処理会社の事務負担が著しく過重となり、結局借り手等に対する責任追及が万全とはいかなくなるおそれがあります。そこで、本法律案により時効を停止し、債権処理会社の効率的な業務運営を図り、よって借り手等に対する責任追及に万全を期すことといたしたものであります。
さらに、今回の住専処理スキームにおいては、借り手責任追及に加え、損害賠償請求権の行使による関係者の責任の明確化が強く要請されているところでございます。
ここで、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、民法により、被害者が損害及び加害者を知ったときから三年間と定められているため、その時効期間の起算点が住専関係者の認識にかかっている場合もあり、十分な調査が必要と考えられます。損害賠償請求権の調査は、今後、債権処理会社により徹底的に行われることとなりますが、本法律案は、そのような調査の間に消滅時効が完成しないようにして責任追及ができなくなることを防ぎ、国民負担の軽減に資する目的も有するものであります。
このように、本法律案によって、特定住宅金融専門会社が法案の施行日において有する債権については、同日以後、特定住専債権等処理法に定める指定期間の終了する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間は時効は完成しないこととし、これによって債権処理会社等による債権回収がより迅速かつ的確に行うことができるようになるものと考えるものであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/23
-
024・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 佐々木陸海君。
〔佐々木陸海君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/24
-
025・佐々木陸海
○佐々木陸海君 日本共産党を代表して、特に住専処理の基本にかかわる問題などについて質問をいたします。
予算は成立いたしましたが、「住専処理に税金を使うな」という声は依然として国民の八割、九割を占め、国民は理解も納得もしていません。政府・与党は、こうした国民の強い批判の中で、母体行の追加負担を実現すると再三にわたって言明しています。
問題の住専処理法案は、六千八百五十億円の財政支出やいわゆる二次ロスの半額負担などの国民負担を前提としていますが、追加負担がどうなるかによって、当然、国民負担も変動する、住専処理法案の中身も変化するはずであります。だとすれば、その追加負担の具体策が示されることもなく法案を審議せよというのは道理がないのではありませんか。国民の目から見ても、法案審議の前提として当然追加負担の具体策が明らかにされてしかるべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
この追加負担問題に対処する上でも、さらに不良債権問題全体に対処する上でも、住専処理に主体的責任を持つ者はだれなのかという根本問題をこの際改めて明確にすることが必要であり、かつ重要であります。
政府の住専処理案、提案されている住専処理法案は、住専処理の主体的責任を実際上政府が引き受けてしまうものとなっています。法案の基礎になった昨年十二月十九日の閣議決定では、母体行などの金融機関に政府が負担を要請するとされています。つまり、政府が母体行など関係者に協力をお願いするという形になっているのであります。
ここから、合意できない部分について政府がその責任を負わざるを得なくなり、足りない部分は税金投入ということになり、六千八百五十億円だけでなく、いわゆる二次処理分、少なく見積もっても一兆二千億円の半額を税金で賄う、つまり責任の全くない国民にツケを回すという結果になっているのであります。
私がここで根本から問題にしたいのは、住専処理に主体的責任を負っているのは母体行であって、政府が母体行に成りかわってその破綻処理に責任を負うというのは本末転倒ではないかということであります。第一に、主体的責任は母体行でというのは、大蔵省などが金融業界を実際に指導してきた内容であったではありませんか。現に、東海銀行をめぐる株主代表訴訟で、東海銀行側は「大蔵省など金融当局は、いわゆる母体行責任主義として、各銀行が融資残高に応じて支援するのではなく母体と認識されている銀行が自行が危機に瀕しない限り支援するという方式を採用し、その旨を行政指導した」と主張し、昨年九月の名古屋地裁の決定も、そういう行政指導を事実として認定しているではありませんか。そういう行政指導がなされてきたことを大蔵大臣はお認めになりますか。
第二に、実際にも、これまで銀行系列のノンバンクが破綻したとき、母体行が主体的責任を持って処理に当たってきたのであります。多くの場合、母体行は系列ノンバンクの債務をすべて引き受け、他には一切負担をさせずに処理してきました。これが完全母体行主義です。
その例外とされる修正母体行主義においても、大蔵省が典型として挙げる関西三行の場合でも、母体行自身が全責任を負うだけの体力がないという事情のもとで、母体行が他の金融機関に頭を下げて協力を依頼し、大阪銀行、福徳銀行の両母体行は本店の売却まで行って合意を取りつけているのであります。他の金融機関との合意形成の主体的責任を果たしているのが母体行であるという点は、修正母体行主義であっても例外ではないのであります。大蔵大臣、そうではありませんか。
では、住専に関してはどうでしょうか。昨年九月二十七日の金融制度調査会金融システム安定化委員会の報告までは、「母体行が主体的役割を果たし、今後の基本的な方針や債権の処理の仕方等につき合意形成を行うことが必要」と明確に述べていました。これは、このことが自明のルールであったことを証明しているではありませんか。首相にお聞きしたいのですが、なぜこのルールをそのまま住専処理に適用しないのですか。
株主代表訴訟が母体行の責任放棄の理由にならないこと、母体行に全体として体力があることも、既に政府自身が認めてきたことです。また、母体行が複数であっても親であることは明確であります。これらは、いずれも母体行の主体的責任を回避する理由にはならないのではないですか。総理の見解を伺いたいのであります。
政府が言う金融の安定とか緊急性とかいうことも、ルールを破る理由にはならないのであります。むしろ母体行主義のルールをきっちりと守らないからこそ解決が長引いてきたのであって、また、ルールを破ることこそが金融秩序への国民の信頼を裏切り、その不安定化をもたらすものではないでしょうか。
住専処理の主体的責任を母体行に果たさせるのではなく政府が引き受けるというこの主客転倒が、税金投入というこの法案の最大の問題を生み出しているのであります。この主客転倒を直ちに改めて、税金投入をきっぱりやめることをこそ住専処理の基本にすべきであります。現在の住専処理法案はその点で廃案にすべきであります。首相の見解を求めるものであります。
住専処理でこのような間違った処理に踏み込むと、今後の不良債権処理に対しても税金投入のレールを敷くことになってしまいます。杞憂ではありません。それが既に具体化されようとしているのが預金保険法の問題であります。この法案では、信用組合の破綻処理に財政資金を投入することが提案されています。
最近の信組の破綻には、大手の銀行が深く関与しています。東京の二信組には長期信用銀行が、コスモ、木津両信用組合には三和銀行が、大阪信用組合には東海銀行が、それぞれいろいろな形で関与し、各信組を破綻に至らしめているのであります。「バブル時代、大手銀行は信組を系列ノンバンク代わりに使った」という関係者の証言も報道されています。大銀行は、信用組合を住専同様に使ったということであります。
ところが、今回の法案には、資金援助の際に大銀行の責任と負担の原則を保障する仕組みがありません。信組の破綻に関与した大銀行の責任と負担の原則を明確にせず、資金援助の上限を五年間は事実上取り払い、公的資金の投入を前提とするのでは、大銀行の責任と負担を免罪するものでしかないではありませんか。責任と負担の原則を明確にすべきだと考えますが、いかがですか。
その上、公的資金の投入口となる信用組合特別勘定の責任準備金は、年間八十三億円、五年間で四百十七億円が見込まれているにすぎません。ところが、木津信組の処理ではペイオフコストを上回る額が四千五百億円、大阪信組では九百億円とされています。信組特別勘定が初年度から赤字になるのは必至ではありませんか。
たとえ一般金融機関特別勘定から補うとしても、与党の政策担当幹部の試算として、「政府案に従って処理すると、投入が見込まれる財政資金が総額で五千億円前後にのぼる」との報道さえなされているではありませんか。初めから公的資金ありきになることが目に見えているのであります。政府は一体どのような見通しを持っているか、明確にしていただきたいと思います。結局、これは預金者保護が大目的の預金保険機構を破綻金融機関処理機構に変質させることになるのではないでしょうか。以上、首相の答弁を求めます。
なぜ銀行が母体行としてのあるいは関係金融機関としての責任を放棄し、国民にツケ回しをするようなことがまかり通るか。その重大な理由として、大蔵省自身がみずからの責任を明確にしていないという点を指摘しないわけにはいきません。
住専問題で、その設立から破綻まで大蔵省が深くかかわり、重大な責任を担ってきたことが国会の審議でも明白になっています。けれども、歴代の大蔵大臣、事務次官・銀行局長がこのことで一体どのような責任をとったでしょうか。まずみずから襟を正してこそ、銀行にもきっちりと責任をとらせることができるのではありませんか。総理
にお聞きしたいと思います。
銀行のディスクロージャーは、金融システムヘの国民の信頼を得る上で不可欠であります。しかし、大蔵省のこの間の態度は、銀行情報の一番中心部分をむしろ隠すことだったと言わなければなりません。現に、紹介融資の基準など、住専問題の究明のため国会が法律に基づいて母体行に対する資料提出を求めても、銀行が「ない」と言えば、大蔵省はオウム返しに「ない」という回答をするだけでした。なぜ立入調査をやってでも国会の資料要求にこたえようとしないのでしょうか。これは大蔵大臣に伺いたいと思います。
一体なぜこうなっているのか。大蔵省が護送船団行政のいわば護衛艦になっているからであります。これを改めるには、天下りや天上がり、そして巨額の銀行献金などによる大蔵省、銀行業界、政府・与党の構造的な癒着を断ち切ることが必要であります。同時に、大蔵省から独立した銀行・金融行政の監督機関の設置が必要ではないかと考えます。これらのことを実行する決意があるかどうか、総理の答弁を求めるものであります。
住専問題は、確かに現在の日本の不良債権問題の象徴であります。その住専問題でこれまでのルールだった母体行責任主義を貫くか否かは、今後の不良債権問題処理への枠組みともかかわって極めて重要であります。住専問題を果てしない税金投入の突破口にしてはならないということを重ねて強調し、日本共産党はそれを阻止するために国民とともに力いっぱい頑張る、その決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/25
-
026・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 佐々木議員にお答えを申し上げます。
まず、母体行の責任につきましては、これまでの住専の経営の経緯等を踏まえ、債権放棄、拠出、低利融資など、政府の処理スキームに沿い最大限の協力を要請してまいりました。政府といたしましては、関係法案をぜひとも早期に成立をさせていただき、住専処理機構を一日も早く設立し、損害賠償請求を含めあらゆる手段をもって債権回収と責任追及に取り組むとともに、今後とも、結果としてできる限り国民の負担の軽減につながるよう、関係金融機関等の自主的かつ真剣な議論を促してまいりたいと考えております。
昨年九月の金融制度調査会金融システム安定化委員会の審議経過については、その際の議論として、住専問題の解決に向け何らかの案を策定し合意形成を行っていくに当たり、当該住専の現況に最も通じている住専自身及び母体行がまずもって対応していくことが自然であるとのものであったのではないかと理解しております。政府としても、住専自身、母体行及び農協系統金融機関等の貸し手が解決策の具体策づくりに積極的に協力し合うことが強く望まれるものと受けとめ、当事者の真剣な努力を促したところでありますが、関係する多数の金融機関の利害関係が極めて錯綜していること等から、当事者の意欲と努力だけでは解決を図り得ない状況となったものであります。
母体行の責任につきましては、先ほど申し上げましたとおり、関係法案をぜひとも早期に成立をさせていただき、住専処理機構を一日も早く設立し、法律上問題のある紹介に対する損害賠償請求を含めあらゆる手段をもって債権回収と責任追及に取り組むとともに、今後とも、結果としてできる限り国民負担の軽減につながるよう、関係金融機関等の自主的かつ真剣な議論を促してまいりたいと考えております。
財政支出については、今回の住専処理策は、関係金融機関の最大限の負担を前提としながら、国民の皆様の預金を守るとともに、景気回復を確実なものとするためのものであり、住専問題は本来、民間当事者間で解決を図るべきものであります。先ほど述べたように、こうした解決が図り得ない状況となりましたことから、我が国経済の運営に責任を持つ政府・与党として国民経済の見地から決断したものであります。
信組の破綻処理における負担の問題について御意見がありました。
今後五年の間は、信用不安を醸成しやすい金融環境にあることから、金融機関の破綻に際し預金を全額保護できるようにするための時限的な制度の整備を図ることといたしております。金融機関の破綻処理は金融システム内の負担により賄われることが原則であり、破綻処理費用を賄うために預金保険料率の最大限の引き上げを行うこととしております。また、破綻信用組合と関係の深い金融機関がある場合には、これら関係金融機関による可能な限りの支援も求められると考えております。
ただし、預金者に破綻処理費用を直接分担していただくことが難しい今後五年の間におきましては、預金者保護、信用秩序の維持に万全を期すため、信用組合に限り政府保証等所要の措置を講ずることといたしました。
今後の信用組合を初めとする金融機関の破綻を現時点で予測することは困難でありますが、信用組合の破綻処理のための支出により信用組合特別勘定が赤字となりました場合にも、一般金融機関特別勘定に黒字が残る場合はまずこれを充てることといたしており、これら両特別勘定の今後五年間の特別保険料収入は約一兆円と見込まれること、特別保険料率は今後の特別勘定の損益の状況や金融機関の収益の状況等を踏まえながら三年後に見直しを行うこととしていることにかんがみれば、現時点においては、他の業態において大規模な破綻が発生しない限り、最終的に多額の財政支出が必要となることはないのではないかと考えております。
住専を含むノンバンクにつきましては、大蔵省としても、銀行等に対するような広範な指導監督権限を有していない中で、制度上許される最大限の努力を行ってきたものと考えており、今般御提案申し上げております関係法案を早期に成立させていただき、住専の処理、強力な債権回収など、住専処理の実施に取りかかることが私たちの責務だと考えております。
護送船団行政につきましては、金融自由化が本格化される前の金融機関の破綻回避を前提とした、まさに競争制限的な金融行政手法でありました。金融自由化が進展した今日におきましては、もはやこうした行政手法はとり得ないと考えております。
今後の金融行政につきましては、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い金融システムを構築していくよう努めていく必要があり、これにより金融機関と行政の間に一定の緊張感が保たれると思います。
構造的な癒着という御意見がありました。
大蔵省においては厳正かつ公正な金融行政に努めており、何らかの配慮により金融行政がゆがめられたということはないと思っております。今後とも引き続き綱紀の厳正な保持に注意を喚起し、その徹底を図ってまいりたいと考えております。
今回の法案が預金保険機構を破綻金融機関処理機構に変質させるのではないかという御意見でありました。
しかし、預金保険法の一部を改正する法律案は、金融機関の経営破綻に際し預金者を保護しながら適時適切な処理を図るため、預金保険機構の業務の拡充等所要の措置を講ずるものでありまして、これにより預金者の保護という預金保険機構の基本的な目的が変化するものではないと考えております。
最後に、大蔵省から独立した金融監督機関を設置すべきではないかという御意見がありました。
金融行政につきましては、これまでなされたさまざまな御批判を踏まえ、今後、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政を行うことが必要であると考えております。いずれにいたしましても、初めに組織や権限の見直しありきということではなく、これまでの行政のあり方について十分な点検を行い、その上でこれからの新しい金融行政のあり方につき真剣な検討を進めてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/26
-
027・久保亘
○国務大臣(久保亘君) 住専処理に当たっての主体的責任についてのお尋ねでございましたが、金融機関を母体とするノンバンクの経営問題に対しては、程度の差はございますが母体金融機関が経営に関与していること、母体金融機関自身の信用保持を図ること等の観点から、母体金融機関が最大限の支援を行って再建を図る方法をとることが通例であると認識しております。また、母体行の体力的な問題等から、御指摘の大阪銀行、福徳銀行のような法的処理が行われている例も見られるところであります。
しかしながら、住専問題は、本来、民間当事者間の話し合いで解決を図ることが望ましいと考えられるものの、関係する金融機関が多数に上り、それらの金融機関の利害関係が極めて錯綜していること等から、当事者の意欲と努力だけでは解決を図り得ない深刻な状況となっていたということであります。住専問題を未解決のままこれ以上放置いたしますと、住専の財務体質がますます悪化し、早晩倒産に陥ることによって体力の弱い関係金融機関の損失負担が累増することによって、これが金融機関自身の破綻につながり、ひいては預金者に迷惑をかけることになりかねないと考えるのであります。
こうした点を踏まえ、我が国経済の運営に責任を持つ政府としては、農林系統金融機関等の預金者保護を図りつつ、我が国金融システムに対する内外の信頼を確保するため、この問題の具体的な処理方策を決定したものであります。
なお、資料開示についての御質問でございましたが、金融システムを安定的に確立してまいりますことの基本は、情報の公開にあることはもとよりであります。住専問題の処理に当たっては、透明性の確保が肝要であり、資料提出についても、可能な限りの情報開示が行われるべきものと考えております。このような観点から、大蔵省としては、住専に関する母体行等からの資料提出についても、これまで可能な限り開示するよう要請してきたところであり、今後とも、資料の開示に最大限応ずるよう銀行等に対しても要請してまいりた
いと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/27
-
028・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) これにて質疑は終了いた
しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/28
-
029・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 本日は、これにて散会い
たします。
午後三時四十一分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02619960521/29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。