1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月二十二日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第三十一号
平成八年五月二十二日
午前十時開議
第一 日本学術振興会法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
第二 農畜産業振興事業団法案(内閣提出、衆
議院送付)
第三 自動車ターミナル法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
第四 防衛庁設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、警察法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
警察法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/1
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002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。倉田国務大臣。
〔国務大臣倉田寛之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/2
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003・倉田寛之
○国務大臣(倉田寛之君) 警察法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、オウム真理教関連事件の経緯にかんがみ、都道府県警察が、広域組織犯罪等、すなわち、同事件のような組織犯罪その他の全国の広範な区域において個人の生命、身体及び財産並びに公共の安全と秩序を害し、または害するおそれのある事案に迅速かつ的確に対処することができるようにするため、所要の規定の整備を行うものであります。
以下、各項目ごとにその概要を御説明いたします。
第一は、広域組織犯罪等に関する都道府県警察の管轄区域外における権限に関する規定の整備であります。
これは、都道府県警察は、広域組織犯罪等を処理するため、必要な限度においてその管轄区域外に権限を及ぼすことができることとするものであります。
第二は、広域組織犯罪等に関する国家公安委員会及び警察庁長官の権限に関する規定等の整備であります。
その一は、国家公安委員会の権限に属する事務に、広域組織犯罪等に対処するための警察の態勢に関することを加えるものであります。
その二は、警察庁長官は、広域組織犯罪等に対処するため必要があると認めるときは、都道府県警察に対し、広域組織犯罪等に対処するための警察の態勢に関する事項について必要な指示をすることができることとし、都道府県警察は、当該指示に係る事項を実施するため必要があるときは、その管轄区域外に権限を及ぼす等の措置をとらなければならないこととするものであります。
なお、この法律の施行日は、公布の日としております。
以上が警察法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。和田洋子君。
〔和田洋子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/4
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005・和田洋子
○和田洋子君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました警察法の一部を改正する法律案について、内閣総理大臣並びに国家公安委員長に対して質問をさせていただきます。
戦後五十年を経て、我が国の社会経済システムには大きなきしみが生じております。
経済面では、言うまでもなく住専問題であります。
霞が関の最強官僚集団である大蔵省により誘導されてきた金融行政は、金融の国際化というスローガンとは裏腹に銀行業界の保護育成に終始してきたことから、世界の経済常識とは大きくかけ離れてしまい、その結果、破綻したのであります。まさに今こそ、この崩壊責任の究明と日本の経済システム全体の再構築が求められているのであります。
これと同様に、社会面、特に治安・危機管理体制に対して国民は大きな不安を感じております。国際的に高く評価されてきた我が国の安全神話が、続発する重大特異な事件によって大きく揺らぐ中で、政府の対応の悪さが国民の不安に拍車をかけているのです。
阪神・淡路大震災における初動態勢のおくれ、希薄な危機管理意識、情報収集・伝達体制の乱れ、緊急輸送路の分断など、体制の不備は目を覆うものであり、無差別大量殺人を惹起したオウム真理教関連事件についても共通の問題が露呈しております。無差別テロを目的とした地下鉄サリン事件の発生は、全世界に衝撃を与えたのであり、我が国の国際的信用を打ち砕いたと言っても過言ではないでしょう。
このような地に落ちてしまった戦後システムをどのように立て直すのか、国際的信頼を取り戻すとともに、国民が安心感を持って暮らすことのできる社会を今後どうして築いていくのかは、我が国が当面する最大の課題であります。このことについて、まず橋本総理の所信を伺いたいと存じます。
国民生活の安寧と社会の秩序維持のため、警察当局が日々努力されていることに対し深く敬意を表するとともに、我が国の信頼回復のためにも警察体制の整備は必要であるとの観点から、本法律案に対して賛成の立場ではありますが、若干の疑問点を含め、以下、改正案及び警察行政に関する問題点について質問いたします。
今回の改正案の眼目は、広域組織犯罪に関する態勢整備でありますが、広域捜査の重要性は従来から何度となく指摘されてきたところであります。平成六年には、警察法改正において、広域捜査に関する規定整備が行われたばかりであります。警察法制定以来四十年ぶりの大改正と説明されていたことからしても、広域捜査に関して十分な検討をした上での改正であったはずであります。
今回のオウム真理教関連事件の捜査に関して、平成六年の改正を踏まえ整備された広域捜査態勢についてどのような点に限界があり、そのために警察庁として迅速かつ的確な対応ができずに失態を招いたのか、国家公安委員長にお伺いいたします。
また、周知のように、オウム真理教関連事件に関する捜査そのものについても各方面から疑問視される中で、徹底的な総括を経ずに法律改正を提案することについて批判が出されております。坂本弁護士事件についての初動捜査のつまずき、松本サリン事件における第一通報者に対する見込み捜査、あるいは地下鉄サリン事件の事前予知の可能性などについて、国民の厳しい批判に対しどのように説明なさるのでしょうか。
捜査指揮の不手際、情報の一元化と分析力の欠如、刑事警察と公安警察とのあつれきなど、警察当局による国民への説明が求められている問題は多数あるはずであります。これら国民の不信にこたえるべく、それぞれの点について国家公安委員長から明確な答弁をいただきたいと思います。
加えて、國松警察庁長官狙撃事件に関する捜査状況について伺います。
警察庁長官は警察官僚のトップであり、犯罪捜査の最高責任者であります。警察庁長官が狙撃されるということは、日本警察のねらい撃ちを意味するものであります。当然その捜査を警察当局のメンツにかけても全力で行っておられるはずでありますが、いまだ犯人解明に至っておりません。ゆゆしき事態であります。よもや迷宮入りとはならぬよう、事件の捜査状況及び解明に向けての国家公安委員長の断固たる決意をお示しいただきたいと思います。
さて、我が国の警察制度は、警察法第三十六条に規定する自治体警察の原則によって、都道府県警察が当該都道府県の区域につき警察の責務を果たすこととなってきましたが、広域組織犯罪に対してはもはや自治体警察の原則が維持し切れなくなったということなのでしょうか。今回の改正を突破口として、警察庁長官の指揮監督権がより強化され、中央統制が強まるのではないかとの懸念もあるようであります。現行の警察制度の根本原則に対する内閣総理大臣及び国家公安委員長の基本的認識を伺いたいと思います。
また、地方分権の推進が強く求められている状況において、これまでの警察制度自体についても再検討する必要はないのでありましょうか。犯罪の広域化が進んでいる一方で、本格的高齢社会を迎え、住民生活に密着した、地域に根差した地道な警察活動も求められているところであります。
地方分権の観点から、広域的警察活動と地域警察活動にそれぞれ対応し得るような警察組織のリストラを含めた再編成を行う必要があるのではないかと考えますが、地方分権の推進と警察制度のあり方について、総理大臣及び国家公安委員長の所見を伺いたいと存じます。
具体的改正内容に入りますと、まず、改正ポイントの第一は、広域組織犯罪等に関する権限として、「都道府県警察は、広域組織犯罪等を処理するため、必要な限度において、その管轄区域外に権限を及ぼすことができる」とする六十三条の三の新設であります。
これまでは都道府県警察は、管轄区域内の公安の維持等に関することが明確に認定できなければ管轄区域外に権限を及ぼすことができなかったわけですが、この規定により、明確に認定できなくても広域組織犯罪等であれば管轄区域外に権限を及ぼすことができることになるわけであります。
では、この「広域組織犯罪等」とは、具体的にはどのような事例がこれに当たるのでしょうか。特に、広域組織犯罪等における「組織」とは何か、法文上明示されていないので、まずその定義をお示し願いたいと思います。
また、「必要な限度において」とは、他の都道府県警察によって権限が行使され、それで足りるような場合には、それに加えて管轄区域外に権限を及ぼすことはないとされておりますが、その認定は非常に不明確であると思われます。
「広域組織犯罪等」として都道府県警察が管轄区域外で権限を行使すべきか否かの判断基準を今後警察庁として示すことになるのか、示すとすれば、その内容及び自治体警察の原則とのバランスについて、あわせてお尋ねいたします。
改正ポイントの第二は、第六十一条の三に規定される警察庁長官の都道府県警察に対する指示権の創設であります。
警察庁長官が、「広域組織犯罪等に対処するための警察の態勢に関する事項について」都道府県警察に指示することのできる権限を新たに設けるとともに、指示を受けた都道府県警察は、当該指示に係る事項を実施するため必要があるときは、他の都道府県警察に対する援助の要求や管轄区域外における権限行使などの措置をとらなければならないとされております。この場合の「警察の態勢に関する事項」というのは具体的に何を指すのでありましょうか。
また、現在の都道府県警察の警察官の定数を見てみますと、北海道が約九千人、東京が約四万人、神奈川県警が約一万人、愛知県が約一万人、大阪府が約一万八千人、兵庫県が約一万人、福岡県が約九千人となっており、他の府県に比べて格段に大規模となっております。
結局、警視庁が全国レベルの中核となって、警視庁以外のこれらの道府県警察が地域レベルの中核となって、警察庁の指示を受けて広域組織犯罪等の捜査に当たるということなのでありましょうか。人員、装備面では警視庁等の中核都道府県警察が仮に中心となる場合であっても、具体的な捜査方針の決定等については、自治体警察の原則からして、当該捜査が行われる都道府県警察が実質的に中心となって捜査が実施されることが望ましいと考えられますが、どのような態勢整備を考えておられるのか、国家公安委員長の見解をお伺いします。
さらに、大転換期にある我が国社会においては、国民から求められる警察活動も多種多様、多方面にわたり、警察の守備範囲は広範な領域に広がっております。このような状況の中で、警察当局が、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため責務を遂行するには、国民の理解と協力が不可欠と考えます。
そこで、警察が不偏不党かつ公平中正であり、国民のための存在であるという観点から、警察に関する組織、予算、人員、活動状況などを広く国民に情報公開する必要があります。オンブズマン制度などの監査・監視制度を充実することも一考に値します。国民と警察当局とが積極的にコミュニケーションを図ることによって、より一層国民生活の平穏と安全が確保されると考えますが、橋本総理の見解をお聞かせください。
最後に、犯罪被害者対策についてお伺いします。
警察庁の任務は、犯罪捜査だけではなく、被害者対策は非常に重要であり、國松警察庁長官も、被害者対策は警察活動全体の柱であり、それは単に一つ一つの措置が適切にとられるということだけで満足すべきものではなく、警察官の意識改革を伴う精神活動として展開されるべきであると述べておられます。
警察庁においては、二月には「被害者対策要綱」が制定されたようでありますが、そこで、今後の警察庁の被害者対策の基本方針、それに、オウム真理教関連事件の被害者に対して事件発生以後どのような対策を講じてこられたのか、詳しく御説明をいただきたいと思います。
警察活動が国民の生活と安全を守るための公権力の行使であればこそ、国民の信頼なくしては成り立ち得ないのであります。重大凶悪事件が続発する今こそ、地域社会に密着した都道府県警察の着実な活動こそが警察に対する国民の信頼回復の条件なのです。
総理並びに国家公安委員長におかれましては、今後とも自治体警察の原則を堅持し、国民の生活と安全のため一層活躍されることを期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 和田議員にお答えを申し上げます。
まず、戦後日本の社会経済システムの再構築についての御意見をいただきました。
戦後五十年を経て、これまでの経済社会システムにさまざまな問題が生じておりますことは御指摘のとおりであり、二十一世紀を間近に控えて、我が国は現在大きな転換点に差しかかっております。すなわち、内外におきまして、グローバリゼーションの進展、高次な成熟経済社会への転換、さらに少子・高齢社会への移行、情報通信の高度化といった大きな潮流変化が生じており、これらに的確に対応してまいりますためには、政治、行政、経済、社会などあらゆる分野で根本的な変革が求められております。
このような認識のもとに、御指摘の新たな金融・経済システム、危機管理システムなどを含め、来るべき世紀にふさわしい新たなシステムをつくり出すべく全力を傾けてまいります。
次に、自治体警察制度に対する基本的認識であります。
都道府県警察を単位として各都道府県警察がその判断と責任のもとに具体的な執行を行うとする現行の自治体警察制度は、現行警察法の制定以来、治安についての国の責任に基づく補完的な関与を加味しながら、効果的かつ効率的に運用されてまいったと思います。
また、今回の改正案第六十一条の三に申します警察庁長官の指示は、広域組織犯罪などに対処するための関係都道府県警察間の役割の分担でありますとか、指揮系統の調整などの態勢に係る事項に限られるものであり、個々の警察活動にわたるものではございませんので、中央統制が強まるといった心配はないと思います。したがいまして、今回の改正案におきましても現行の警察制度の根本原則に変更を加えてはおりません。
次に、地方分権の推進と警察制度のあり方についてのお尋ねであります。
警察制度のあり方につきましても、地域警察活動のような住民に身近な事項につきましては各都道府県にゆだねるとともに、広域的な警察活動につきましては、国としての一定の治安責任を果たし得るものでなければならないと思います。そして、そうした視点から見るとき、私は、我が国の自治体警察制度というものは非常によくっくられた制度だと思ってまいりました。
現行の都道府県を単位とする自治体警察制度というものは、私はこうした観点からも適切なものだと思いますが、さらに広域組織犯罪に迅速かつ的確に対応することができるよう、今回の警察法改正をお願いしているところであります。
次に、警察行政に関する情報公開と監査などの制度につきましては、警察行政というものの円滑な運営も、当然のことながら国民の理解と協力があって初めて実現されるものでありますから、警察におきましても、私は、従来から国民に対する情報の提供には努力をしてこられていると、そう思ってまいりました。
また、警察行政につきましては、既に、市民の声を反映させ市民によってコントロールするための仕組みとして公安委員会制度が設けられております。従来から国家公安委員会及び都道府県公安委員会による警察の民主的管理というものは適正に行われていると考えており、改めて他の制度を導入する必要はないと私は思います。
最後に、被害者対策の基本方針につきまして、犯罪の被害者は、犯罪による直接的な被害だけではなく、その結果として精神的な被害、経済的な被害など多くの被害を受けていると思われます。また、警察は、被害者にとりまして身近で密接なかかわりを持つ機関でありますから、被害の回復や再発の防止についても大きな期待が寄せられております。
こうした点を踏まえ、警察庁では、本年二月から今後の基本方針として、被害者の視点に立って、被害者の救援、事情聴取における被害者の精神的負担などの二次的被害の防止、軽減などの諸施策を組織的、総合的に推進することとしております。
次に、オウム真理教関連事件の被害者対策についてでありますが、オウム真理教関連事件の被害者、その御遺族に対しましては、関係都道府県警察において捜査状況の連絡、各種御相談に応じるなどしてまいりましたほか、犯罪被害者等給付金支給法に基づき、十一名の被害者に対しまして総額五千四百五十九万六千円の給付金を支給いたしております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣倉田寛之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/6
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007・倉田寛之
○国務大臣(倉田寛之君) 広域捜査態勢の問題点についてのお尋ねでございますが、平成六年の警察法の改正におきましては、合同捜査の制度に関する規定等、都道府県警察間の協力に関する規定が整備され、複数の都道府県警察が管轄権を有する事案につきまして、その処理を円滑に行うために、警察本部長が相互に協議して定めたところにより、関係都道府県警察の指揮を一元化することができることとされたところでございます。
今回のオウム真理教関連事件の捜査におきましても、警察庁の指導調整のもと、その改正規定による指揮の一元化が有効に機能して捜査が円滑に推進されたところでございますが、「目黒公証役場事務長拉致事件や地下鉄サリン事件が発生する前に、警視庁が山梨県内のオウム真理教関連施設等に対し権限を及ぼすことができなかったのか」などの指摘を受けておるところでございます。
しかし、現行法上、個々の都道府県警察は、犯罪が管轄区域内の公安の維持等に関連することを明確に認定できなければ権限を及ぼすことが困難でございます。犯罪に対応するために必要な全国的な警察の態勢につきまして判断することは困難であります。こういった問題があります。
このために、広域組織犯罪等に関し、都道府県警察の管轄区域外における権限、警察庁長官の指示などについて規定を新たに整備する必要があり、今回の改正をお願いいたしているところでございます。
坂本弁護士事件等数点についてお尋ねがございました。
坂本弁護士事件につきましては、事件発生直後から、弁護士一家が何らかの被害に遭っている可能性が高いものとして、捜査本部を設置し、初期的段階からオウム真理教の関与についても視野に入れた所要の捜査を鋭意進めてきたものと承知をいたしています。
次に、松本サリン事件につきましては、サリンが犯罪に使用された初めての事件であり、警察にも戸惑いがあったものでありますが、第一通報者については、あくまで第一発見者、被害者として適正な捜査を行ったものと承知をいたしております。その過程において、第一通報者に対して御心労をおかけしたことにつきましては、大変申しわけなく感じている次第であります。
また、地下鉄サリン事件につきましては、結果的に強制捜査に着手する直前にその発生を見たことはまことに残念でありますが、警察は、松本サリン事件や公証役場事務長拉致事件などについて、証拠に基づき一つ一つ事実を積み重ね、懸命な捜査を行ってきたものと承知をいたしております。
さらに、一連のオウム真理教関連事件捜査につきましては、警察庁の調整のもと、関係都道府県警察及び警察各部門が緊密な連携を図るなど、警察の全組織を挙げた懸命な捜査を行ったものと承知をいたしております。
警察庁長官狙撃事件については、発生直後から警視庁を中心に鋭意捜査を推進しているところであります。また、全国の警察におきましても関連情報の収集に努めておりますが、犯人の特定には至っておりません。
本事件は、我が国の警察の最高責任者である警察庁長官がけん銃で撃たれるという極めて重大な事件であり、本事件の解決なくして国民の治安に対する安心感、警察に対する信頼感を取り戻すことはできないと認識をいたしております。国の治安を預かるものとして、このような認識のもと、警視庁を初め全国警察の総力を挙げて犯人の検挙に取り組む所存であります。
自治体警察の原則に対する基本的な認識についてのお尋ねでございますが、総理からも答弁がありましたとおり、都道府県警察がその責任と判断のもとに具体的な執行を行うとする現行の自治体警察制度につきましては、政府が進めております地方分権の推進の観点からも極めて意義あるものと認識をいたしているところであります。
今回の改正案につきましても、オウム真理教関連事件の経緯にかんがみまして、各都道府県警察が広域犯罪等に迅速かつ的確に対処できるようにするために、国が全国的な立場から補完的に関与することとするものであり、具体的な捜査活動における個々の方針や方法の指揮を行うものではございません。したがいまして、都道府県警察がその判断と責任のもとに具体的な執行を行うとする現行の自治体警察制度の枠組みを変更するものでもございません。
地方分権の推進と警察制度のあり方についてのお尋ねでございますが、地方分権の推進は、現在、政府を挙げて取り組んでいる重要課題であります。自治体警察制度もその趣旨に沿ったものであると認識をいたしております。
警察におきましては、地域に密着した警察活動の重要性にかんがみまして、交番の機能強化等、地域社会における安全の確保のための諸方策を講じているところでございます。このような地域警察活動の基盤の強化の上に、国が都道府県警察の活動を補完的にサポートし、広域組織犯罪等に迅速かつ的確に対処することができるようにするため、今回の改正をお願いいたしているところであります。
次に、具体的な内容についてのお尋ねでございますが、まず第一に、「広域組織犯罪等」に該当する具体的な事例としては、オウム真理教関連事件と同種のテロ事件、全国の広範な区域にわたって組事務所や傘下の組織を有する暴力団相互間の対立抗争事件などがございます。また、「広域組織犯罪等」にいう「組織」についてでございますが、ただいま申しましたオウム真理教や暴力団のほか、薬物の密売組織などのような多数人の集合体を指すものであります。
第二に、広域組織犯罪等に関し、都道府県警察が管轄区域外で権限を及ぼすべきか否かの判断につきましては、発生した事案の規模や態様等の具体的な事情に基づきまして個別的に行う必要がありますので、あらかじめ定型的な判断基準を示すことは困難であると考えております。
第三に、「警察の態勢に関する事項」とは、捜査を行うべき都道府県警察の範囲、その間の任務分担、指揮系統の調整等に関する事項を指すものでございます。
また、広域組織犯罪等の捜査に当たっての態勢整備のあり方についてでございますが、広域組織犯罪等とは、全国の広範な区域において公安等を害し、または害するおそれのある事案を言うものでありますから、すべての都道府県警察が広域組織犯罪等を処理するため管轄区域外に権限を及ぼし得ることとすることは、現行法の自治体警察制度の基本的な枠組みに変更を加えるものではございません。
このように、広域組織犯罪等の捜査はいずれの都道府県警察もこれを実施することができるものでございますが、その捜査をいずれの都道府県警察が中心となって行うかなどの具体的な態勢整備のあり方については、事案の規模、その発生地を管轄する都道府県警察のとり得る態勢の内容等に応じ、個別的、具体的に決せられるものと承知をいたしておるところであります。
被害者対策の基本方針についてのお尋ねでありますが、被害者の方々は、犯罪によって多大の身体的、財産的被害をこうむるばかりでなく、特に殺人事件の遺族や性犯罪の被害者の方々につきましては、その犯罪によって極めて大きな精神的被害を受けておられるのであります。
また、銃器使用による殺人事件やサリン事件等によって被害者の救済に対する関心が高まっており、国際的にも被害者の権利を重視することが近年の潮流となっているのであります。
こうした点を踏まえまして、警察庁では、有識者からの提言等も参考にしながら、被害者対策についての基本方針をこのほど取りまとめ、本年二月に各都道府県警察に示したところであります。
その基本方針につきましては、総理から先ほど御答弁いたしましたとおりでございますが、具体的な施策といたしましては、「被害者の手引き」の作成・配布、被害者連絡係の設置、性犯罪捜査における婦人警察官による事情聴取の拡大、被害者カウンセリング連絡体制の整備等を図ることといたしております。
次に、オウム真理教関連事件の被害者に対しての対策についてのお尋ねでありますが、ただいま総理が御答弁申し上げたとおりでございます。
いずれにいたしましても、警察といたしましては、今後とも被害者対策に一層の努力をしてまいる所存であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/7
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008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/8
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009・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教委員長小野清子君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔小野清子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/9
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010・小野清子
○小野清子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、学術研究を積極的に推進するため、日本学術振興会の目的及び業務に学術の応用に関する研究を行うことを加えるとともに、日本学術振興会に対し政府が出資することとする等、所要の措置を講じようとするものであります。なお、衆議院において、施行期日等について修正が行われております。
委員会におきましては、学術の応用に関する研究の意義、未来開拓学術研究推進事業の目的と内容、研究テーマの選定方法、同種事業に係る関係省庁間の調整・連携のあり方、外国人教員の雇用などの諸問題につきまして質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/10
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011・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/12
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013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第二 慶畜産業振興事業団法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長鈴木貞敏君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔鈴木貞敏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/13
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014・鈴木貞敏
○鈴木貞敏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、特殊法人の整理合理化を推進し、農産物の価格安定業務の効率的な運営を図るため、畜産振興事業団と蚕糸砂糖類価格安定事業団とを統合し、新たに農畜産業振興事業団を設立しようとするものであります。
委員会におきましては、行政改革推進の一環として行われる両事業団統合の具体的効果、新事業団の運営方針、農畜産物価格政策のあり方、肉牛、繭及び砂糖の生産対策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、三項目にわたる附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/14
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015・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/16
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017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第三 自動車ターミナル法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長寺崎昭久君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔寺崎昭久君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/17
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018・寺崎昭久
○寺崎昭久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、近年の旅客輸送の利便性の向上及び物流の効率化の要請に対応し、自動車ターミナル事業を免許制から許可制とすることにより事業への参入を容易にするとともに、施設の変更、料金の変更等の事業運営上の手続を簡素化することにより、自動車ターミナル事業者による多様なサービスの提供を促進しようとするものであります。
委員会におきましては、自動車ターミナル事業の規制緩和による具体的効果、自動車ターミナルの整備促進と安全性の確保等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党筆坂委員より本法律案に反対の意見が述べられ、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/18
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019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/19
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020・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第四 防衛庁設畳法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長宮崎秀樹君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔宮崎秀樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/21
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022・宮崎秀樹
○宮崎秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、御報告申し上げます。
本法律案は、防衛庁の任務の円滑な遂行を図るため、防衛大学校に一般大学の大学院修士課程に相当する総合安全保障研究科を設置し得るよう同大学校の所掌事務を改めるとともに、統合幕僚会議に、防衛に関する情報の収集及び調査に係る統合幕僚会議の事務等をつかさどる組織として情報本部を新設し、あわせて、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊から統合幕僚会議に所要の自衛官を移しかえること等のため、自衛官の定数を改めようとするものであります。
委員会におきましては、情報本部の運用構想、防衛大学校総合安全保障研究科学生の募集対象等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して笠井委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/22
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023・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/23
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024・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01919960522/24
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