1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年四月十一日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十八号
平成九年四月十一日
午前十時開議
第一 新エネルギー利用等の促進に関する特別
措置法案(内閣提出、衆議院送付)
第二 児童福祉法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第三 特定通信・放送開発事業実施円滑化法の
一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一より第三まで
一、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力
及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区
域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に
関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関
する特別措置法の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員長木宮和彦君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔木宮和彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/1
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002・木宮和彦
○木宮和彦君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、エネルギーの安定供給の確保及び地球環境問題に対応するため、太陽光発電や風力発電等の新エネルギーについて、利用指針の策定や金融上の助成措置等を講ずることにより、一層の利用の促進を図ろうとするものであります。
委員会におきましては、新エネルギーの利用状況と問題点、長期エネルギー需給見通しと新エネルギーの役割、関係行政機関や民間企業等との協力体制等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/2
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003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/4
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005・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第二 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生委員長上山和人君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔上山和人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/5
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006・上山和人
○上山和人君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、少子化の進行、夫婦共働きの一般化、家庭と地域の子育て機能の低下等、児童及び家庭を取り巻く環境の変化を踏まえ、児童の福祉の増進を図るため、市町村の措置による保育所入所の仕組みを情報の提供に基づき保護者が保育所を選択できる仕組みに改めるとともに、保護を要する児童を対象とする児童福祉施設の名称及び機能の見直し、並びに児童家庭支援センターの創設による地域の相談援助体制の整備等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、児童福祉施策のあり方、保育に対する公的責任の保障、少子化対策についての取り組み方等の諸問題について質疑が行われましたほか、教護院である東京都立萩山実務学校において実情調査を行い、また十人の参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終わり、本法律案に対し、民主党・新緑風会を代表して竹村委員より児童福祉の理念規定を追加する修正案が、次いで、日本共産党を代表して西山委員より児童福祉の理念規定の改正、保育に関する措置制度の維持等を内容とする修正案が提出されました。
なお、西山委員提出の修正案は予算を伴うものでありますので、内閣の意見を聴取いたしましたところ、小泉厚生大臣から政府としては反対である旨の発言がありました。
次いで、討論に入り、日本共産党を代表して西山委員より原案に反対である旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、二修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/6
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007・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/7
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008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/8
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009・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第三 特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長渕上貞雄君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔渕上貞雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/9
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010・渕上貞雄
○渕上貞雄君 ただいま議題となりました特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、認定計画に係る通信・放送新規事業を実施する株式会社が、当該事業の実施に必要な人材を確保することを円滑にするため、取締役または使用人に対し特に有利な発行価額で新株を発行する場合における株主総会の決議その他の要件に関し、所要の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、通信・放送新規事業の認定状況と中小事業者への配慮、ストックオプション制度の導入目的とその効果、情報通信ベンチャー企業育成方策等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、本法律案に対し、日本共産党を代表して上田委員より反対する旨の意見が、自由民主党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけを代表して陣内理事より賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、多数をもって三項目から成る附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/10
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011・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
これにて休憩いたします。
午前十時十一分休憩
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午後二時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/12
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013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
この際、日程に追加して、
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/13
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014・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。久間国務大臣。
〔国務大臣久間章生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/14
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015・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
防衛庁といたしましては、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊に施設及び区域を円滑かつ安定的に提供することは、我が国の日米安全保障条約上の義務であり、同条約上の義務履行に万全を期すことが重要と考えております。
このため、我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等が民公有のものであるときは、政府としては、その所有者等との合意によりその土地等の使用権または所有権を取得することを基本としつつも、これらの者との合意ができない場合には、やむを得ず日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の規定により、必要な土地等を使用し、または収用することによって、我が国の日米安全保障条約上の義務を履行することが必要と考えております。
しかしながら、所有者等との合意または日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の規定により使用されている土地等を、同法の規定により従前の使用期間に引き続き使用しようとする場合において、その従前の使用期間の末日以前に収用委員会の裁決その他使用のために必要な権利を取得するための手続が完了しないときは、日米安全保障条約の実施上重大な支障が生ずるとともに、その所有者等が受ける損失に対する適正な補償を確保するための法的制度を欠くこととなるため、当該土地等の継続使用及びこれによりその所有者等が受ける損失の補償に関する制度について整備する必要があります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、この法律案の内容についてその概要を御説明いたします。
第一に、防衛施設局長は、我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の用に供するため所有者等との合意または日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の規定により使用されている土地等で引き続き我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の用に供するためその使用について同法第五条の規定による認定があったものについて、その使用期間の末日以前に収用委員会に対して権利取得裁決の申請及び明け渡し裁決の申し立てをした場合で、その使用期間の末日以前に使用のために必要な権利を取得するための手続が完了しないときは、損失の補償のための担保を提供して、その使用期間の末日の翌日から、当該土地等についての明け渡し裁決において定められる明け渡しの期限までの間、引き続きこれを暫定使用できるものとすることとしております。
第二に、暫定使用によって所有者等が受ける損失の補償については、土地収用法中土地の使用による損失の補償に関する規定に準じて補償しなければならないものとし、暫定使用の期間等に応じてこれらの者が取得することができる損失の補償のための担保をその期間の六月ごとにあらかじめ提供しなければならないこととするとともに、最終的には収用委員会が明け渡し裁決において裁決するものとすることとしております。
なお、この法律案は、収用委員会の審理手続並びに市町村長及び都道府県知事の権限等、現行制度の基本的な枠組みは変更しないものとし、我が国の日米安全保障条約上の義務履行のための必要最小限の措置を内容としております。
以上が、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。永田良雄君。
〔永田良雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/16
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017・永田良雄
○永田良雄君 私は、自由民主党及び新党さきがけを代表して、日米地位協定の実施に伴う駐留軍用地特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、橋本内閣総理大臣及び関係大臣に質問いたします。
来月十五日は、沖縄が本土に復帰して四半世紀の記念すべき日であります。昭和四十七年五月十五日、それまでの戦後二十七年間、本土と分かれていた沖縄は、悲願の祖国日本への復帰を果たしたのであります。
思えば、我が党の大先輩である故佐藤栄作総理は、さまざまな困難があることを十分承知した上で、沖縄の祖国復帰を決意され、その第一歩として昭和四十年に沖縄を訪問されました。このとき佐藤総理は、到着した那覇空港で「沖縄同胞の皆さん」と心からの呼びかけをされました。この中で、長い間の御労苦に対し深い尊敬と感謝の念をささげるとともに、特に、「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国にとって戦後が終わっていない」と言明されました。
この心情は、当時、沖縄のみならず、日本本土でも大きな共感を呼び起こしたのであります。そしてそれは、その後の沖縄返還交渉における日本側の原点であったばかりでなく、恐らく今日においても沖縄問題を考える上で、我々一人一人の心の中に共通して存在する思いであります。
そして今、故佐藤総理を政治の師とも仰いでおられる橋本総理が、その後の沖縄問題の解決に誠心誠意取り組んでおられるわけであります。まことに天の配剤これにすぐるはないと思うのでありますが、沖縄、そして沖縄県民に対する橋本総理の率直なお気持ちをまず伺っておきたいと存じます。
佐藤総理が、沖縄の祖国復帰という大目標に向かって、長期にわたる幾多の困難を乗り越えつつ、実に整々と計画を進められたように、橋本総理も今日、沖縄問題の解決に向けて多くの国民の理解のもと、特に沖縄県民の気持ちに配慮しながら一つ一つ慎重に事を進めておられることは、その一連の政策実施からうかがい知ることができるのであります。
沖縄県民が切望をしていたものの、極めて難しいと思われていた普天間基地の返還問題を果敢に取り上げられ、その返還の約束を米国側から取りつけられたのであります。また、大田沖縄県知重と節目節目でひざを交えて会談され、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを国民に強く訴えられました。さらに、沖縄政策協議会の設置、沖縄振興のための特別調整費五十億円の予算計上など、沖縄県経済の自立、雇用の確保、県民生活の向上に取り組む姿勢を強調されたわけであります。
このように、これまでの経過を簡単に振り返っただけでも、橋本総理が沖縄問題にいかに心を砕かれ、その解決に一生懸命に取り組んでおられるかがわかるのであります。こうした橋本総理の懸命の努力にもかかわらず、この五月十四日に使甲期限が切れる一部の米軍用地について、沖縄県収用委員会の裁決がそれまでに間に合わなくなりました。今回、やむにやまれぬ思いで総理は特別措置法の改正手続を決意されたのだと理解をいたします。
ただ、本年五月十四日に期限が切れるということは十分わかっていたはずであります。十分な準備をすれば今日の事態に立ち至らなかったのではないかという国民の中に素直な疑問があります。
今日の事態になった経緯と、総理のただいまの心境をわかりやすく国民に向かって御説明を賜りたいと思うわけであります。
さて、特別措置法の一部改正案についてでありますが、このような政府の方針に対し、時限立法によって対処すべきではないか、あるいは都道府県の収用委員会が国の命運を決する事項について判断を行うことは適切ではない、したがって新規立法も含めて抜本的に見直しをすべきなどという主張が見受けられましたが、衆議院においては本日、改正案が無修正で圧倒的多数をもって通過いたしました。
今回の改正の措置は、日米安保条約に基づく義務を履行する観点から、継続する必要がある土地等で裁決を申し立てているものについて、損失の適正な補償のもとに暫定使用を行うことを主な内容とするものであります。いわゆる無権原状態を生じないための必要最小限度の措置として決断されたわけであります。このような特別措置法の一部改正が法治上、安全保障上不可欠であることについて、具体的な御説明を防衛庁長官にお願いいたします。
沖縄米軍基地の中で、契約を拒否している人は全体の九・四%に当たる三千七十八人、その土地面積はわずか〇・二%の三十六ヘクタールであると承知いたします。しかも、契約を拒否している人のうち二千九百六十五人、九六・三%は、いわゆる一坪地主と言われる人であります。これらの一坪地主が所有する土地の実態を見ますと、例えば普天間飛行場に至ってはわずか六十七平方メートルを六百八十九人、一人当たりの平均は〇・〇九七平方メートルの所有であります。これはB4判の紙一枚、ハンカチ一枚分であります。
これらの一坪共有地主のうち、しかも半数近くが本土在住であり、米軍基地に反対し、契約拒否の拡大運動に参加するため、後になって土地所有者となった人々であります。彼らが沖縄県民の声を代表するかのごとき誤った論調に国の命運を左右されてはならないのであります。
今回の特別措置法の一部改正は、こうした土地を含めて、土地収用委員会の裁決により使用権原を得るまでの期間、その暫定使用を可能にしようとするものでありますが、これをもって憲法二十九条に言う財産権の侵害に当たるとの論をなす見方もあるわけであります。同じ憲法第二十九条には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と明定されているわけであり、米軍基地用地の使用は安全保障のため最も公共性の高いものと確信いたします。
この憲法の財産権の保障と今回の暫定使用との関係につきまして、防衛庁長官に御答弁を賜りたいわけであります。
今回の改正措置は、必要最小限度のものとはいえ、なお沖縄県民の方々に過重な御負担をおかけしなければならないことになっておりますことに対しては、率直に言ってまことに申しわけないと思うのは、国民すべてが持っている感情だと思います。
今日、私たちは、そうした状態の解消を政治が実現すべき最大の目標として掲げ努力しているところであります。県道一〇四号越え実弾射撃訓練の本土移転はその一例でありますが、これからも公平な負担の見地から沖縄米軍基地の分散、移転を積極的に推し進める必要があります。そのためには、国が最終的に責任を負うにしても、本土の国民の本当に積極的な理解と協力が不可欠であり、我々としては国民に強くそれを期待するものであります。
この点について、総理の率直な御所見を承りたいわけであります。
また、米国下院は、先月、日本、特に沖縄の人々がこの日米安保条約の実施の確保並びに地域の平和及び安定のために行っている貢献は、特別の承認及び謝意を受けるに値するとの決議を行いましたが、これは沖縄がこれまで多くの困難の上に果たしてきた積極的な役割に対する感謝のあらわれであります。
この米国下院の感謝決議について、総理はどのような所見をお持ちか、お伺いしておきたいと思います。
近年、駐留米軍あるいは海兵隊の兵士に対する国民の感情は必ずしもよくはございません。しかし、日米安全保障条約の役割である米国及び同盟国である日本の安全を守るため、危険を省みず過酷な訓練を行っているのが海兵隊の若者たちであります。彼らを本土に招き、ねぎらいと感謝を込めた交流活動をしておられる御婦人のボランティアの会があると聞いておるわけであります。日本国民がみんなこのような気持ちを持って米軍に接することが日米両国のために大変大事なことであると私は思うわけであります。
沖縄の負担を軽くするためには、米軍基地の整理・統合・縮小がどうしても必要であり、SACOの最終報告の着実な実施を初め最大の努力が必要であります。同時に、今や我が国はもちろん、アジア太平洋地域の平和と安全のために、この地域における米国のプレゼンスは、いわば国際公共財として必要不可欠であります。
このような中で、在日米軍の兵力構成につきましては、朝鮮半島を初め不安定なこの地域の情勢からいって、直ちに変更することは無理でありましょう。が、将来的には我が国の判断に立ってこの問題を提起していくことも望まれるわけであります。
このところ米国側からは、現在の東アジア情勢のもとでは米軍の十万人体制には変化がないとの発言も聞こえてくるわけでありますが、しかし、東アジア情勢の緊張が緩和し、安定した場合も含め、将来における海兵隊中心の現在の兵力構成の見直しなどについて、総理及び外務大臣のお考えを伺いたいと存じます。
沖縄県に米軍の七五%が集中し、そのしわ寄せで住民の生活環境や経済、産業の振興に大きな影響が及んでいることを重く受けとめ、国を挙げて沖縄振興に取り組むべきであります。
沖縄県からは、来るべき二十一世紀に向けて、平和交流、技術協力、経済・文化交流を基本とする沖縄のグランドデザインである国際都市形成構想が示され、自由貿易地域の拡充強化による経済特区の形成など、規制緩和の先行的導入を軸とした戦略的なプロジェクトの展開が表明されているわけであります。
これに対して、国としてもその実現に向けて沖縄政策協議会を設置し、沖縄振興策について積極的に取り組み、若年層の雇用開発の促進、国際化に対応する多様な人材の育成、航空運賃低減など、各方面にわたり施策、事業のための措置等を講じつつあるのであります。
こうした沖縄県のさまざまな要望に対しどのように対処されていくのか。常識の範囲を超えた一国二制度的な思い切った対応も必要かと思われます。
また、財政再建を進める上で聖域なき経費の縮減が打ち出されておりますが、沖縄振興開発等の予算措置に特段の配慮を行うことも必要であると思いますが、この点について総理の御決意を承っておきたいわけであります。
最後に、橋本総理は、去る三月三十一日の記者会見で、総理御自身が提唱しておられる六つの改革に通ずる基本理念を三点に整理してお述べになりました。危機への対応、選択の自由、そして共に生きていくことであります。この中の共に生きる、いわゆる共生の理念こそは沖縄問題に取り組む上でも絶対に必要でありへかつ、決して忘れてはならない考えであると思います。
他方、沖縄の国際都市形成構想にも、平和、自立に加え、共生の基本理念が掲げられております。沖縄と本土がしっかり支え合い、国全体の発展に寄与し、地球社会との調和を図っていく、そうした共生の理念に立たれる橋本内閣の今後の沖縄に対する施策に大いなる期待を寄せ、橋本総理の今後における強力なイニシアチブの発揮を願って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/17
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018・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 永田議員にお答えを申し上げます。
冒頭、沖縄及び沖縄県民に対する率直な気持ちというお尋ねがございました。
私は、ちょうど昭和四十年、佐藤総理の沖縄訪問の直後、党の支持を得て初めて沖縄に参りました。そして、各地を回りましても、どこでも非常に木が低い、それだけしか育っていない、その姿の中に沖縄戦の苛烈さを見る思いがしたことを今も記憶をいたしております。
それ以来さまざまなかかわりを持ってまいりましたが、総理という座に着き、改めてこの問題に向き合ったとき、我々が知らないことが余りに多かったという思いを改めてかみしめることになりました。自来、知事さんを初めいろいろな方々とひざを突き合わせながらお話をしてまいりましたけれども、そのたびに本土の私たちが、沖縄の本土復帰以来今日までの間、沖縄県の抱えている、また沖縄県民の心の中にある痛みと苦しみというものに対し、余りにも気を使わな過ぎた、そんな思いを新たにいたします。
そして、その痛みというものをどうやって本土の私たちが分かち合うことができるのか、そのような思いを胸にし、内閣としての最重要課題の一つとして今日までこの問題に取り組んでまいりました。
今後、なお努力をしなければならない多くの課題を抱えておりますが、院におかれましても、こうした状況を解決するためのお力添えを心からお願いをする次第であります。
次に、駐留軍用地の取得手続についてのお尋ねがございました。
今回の手続は、過去三回の経験からその手続期間の実績というものを考え、平成七年の三月三日に開始をいたしておりました。しかし、その後さまざまな不幸な事件が起こり、その中で職務執行命令手続をとらざるを得ない、従来予想できない期間を要することになりました。
こうした状況の中で、我が国の安全保障にとって欠くことのできない日米安全保障条約上の義務を果たしていくために、御批判のあることは覚悟した上で、暫定使用という最小限の措置をとらせていただきたいと考えた次第でございます。
そして、沖縄の米軍基地の本土への分散、移転というものを考えろ、そういう御指摘をいただきましたが、まさに我が国全体の安全のために沖縄県の方々に背負っていただいております。その重みというものをできる限り国民全体で受けとめて、分かち合っていくべきものと思います。
こうした認識のもとに、KC130の岩国移駐、また一〇四号線越え射撃訓練の本土五カ所の射撃訓練場への移転をただいま関係それぞれの地域にお願いを申し上げております。
岩国基地については既に御了解をいただきました。また、一部の射撃訓練場については御同意をいただいておりますが、残念ながらまだ全部の地域からのお返事をいただくに至っておりません。この場をかりまして、それぞれの地域の方々が少しでも沖縄の抱えている苦しみというものに御理解を示されるなら、ぜひこれを受けていただきたいと心から願っておりますし、私どもはSACO最終報告の着実な実施に向けて全力を尽くしてまいりたい。本土の皆様の御理解、御協力を心から願う次第であります。
次に、アメリカの下院の決議についてどう評価をするのかというお尋ねがございました。
この決議は、日米安全保障条約が日本やアジア太平洋地域の安全保障に不可欠なものであること、そして沖縄の方々のこの条約の実施及び地域の平和と安全への貢献が特別の認知と謝意を受けるに値することを確認したものとして、これが圧倒的多数で可決されましたこと、これは、アメリカの議会におきましても、日米安保の重要性、そしてこれについて沖縄県民の払っていただいている、また現に抱えておられる苦しみというものに対しての謝意を真剣にあらわしていただいたもの、そのように受けとめております。
次に、米軍の兵力構成見直しについての御意見をいただきました。
アジア太平洋地域におきまして依然として不安定、不確実な要因が存在をしておりますこと、そしてその状況の中、今日があることを考えますと、現時点におきまして私は海兵隊の削減や撤退をアメリカ側に求めるつもりはありません。同時に、日米安保共同宣言の中に確認をいたしておりますように、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応し、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢、防衛政策について今後ともに両政府間で緊密な協議を継続いたします。次に、一国二制度的な思い切った沖縄振興策をというお尋ねをいただきました。
私は、一国二制度という点につきましては検討すべき問題点が幾つかあるように思います。しかし、沖縄県が基地経済から、あるいは基地依存から自立した経済を、そして将来に向けての大きな発展をしていこうとするとき、思い切った中長期的な振興策を立てるべきである、この御趣旨は私ども全く異論はありません。
そして、沖縄の振興開発のための財政措置についても御意見をいただきましたが、この振興策につきましては大田沖縄県知事御自身にもメンバーとなっていただいております沖縄政策協議会で具体的に検討をしていただいております。
さらに、県の方で規制緩和の検討委員会を設置される、そのように伺っておりますが、この検討委員会の提言がまとまり、政策協議会に提示をされましたら、その段階で当然ながら真剣に検討をさせていただくつもりでおります。
また、先般、沖縄米軍基地所在市町村懇談会、いわゆる島田懇からも御提言をいただきました。内閣としても、これを実現するために全力を尽くしてまいるつもりでありますし、その推進のために平成八年度補正予算及び平成九年度予算におきまして所要の予算的手当てを行ってまいりました。
今後ともに、沖縄の振興につきましては内閣を挙げて取り組んでまいる決意でありますし、懇談会提言、また政策協議会における検討の結果を踏まえ、財政事情にも配慮しながらではありますが、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/18
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019・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 法改正の必要についてのお尋ねですが、日米安保条約上の義務を果たすことは、日米関係だけでなく国家の存立にかかわる重大な問題であります。使用権限がなくなり、提供している施設・区域をめぐる混乱や運用に支障を及ぼす事態は、どんなことがあっても避けなければなりません。このため法案は、これまで使用していた土地について、収用委員会の結論が出るまでの間に限って暫定的に使用できるという必要最小限の措置をとるものであります。
次に、財産権の保障との関係についてお尋ねでございますけれども、憲法第二十九条は財産権を保障しておりますが、私有財産を絶対のものとはせず、同条第三項で正当な補償のもとで公共のために用いることを認めております。改正案は、我が国の安全にとって不可欠な駐留軍用地を継続して使用する場合に限り、適正な補償を確保した上で暫定使用できるようにするものであり、憲法第二十九条で保障されている財産権を侵害するものではありません。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/19
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020・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 在日米軍兵力構成の見直し等については総理の御答弁のとおりでありますが、政府といたしましては、将来、この地域の安全保障環境がさらに改善され、日本の安全や地域の平和と安定を確保しながら、同時に、沖縄県民の御負担を一層軽減するための展望が開けることを強く希望しておりまして、そのために二国間、多国間の外交努力を一層強化してまいります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 泉信也君。
〔泉信也君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/21
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022・泉信也
○泉信也君 私は、平成会を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる駐留軍用地特別措置法の一部改正案に対し、総理並びに防衛庁長官に質問いたします。
総理は、昨年四月十七日、クリントン大統領とともに日米安全保障共同宣言を発表されました。当日の参議院予算委員会において、総理は私の質問に、この共同宣言は日米安全保障体制の重要性を再確認したものである旨答弁されました。ところが、今、同盟関係の信頼性を損ないかねない局面を迎えていますことはまことに遺憾であると言わざるを得ません。
総理は、今回の法改正に当たり、基地の提供は日米安保条約の義務であり、それは国家そのものの存立基盤にかかわるものであるとの認識を表明しておられます。私は、総理の国家の存立基盤というお考えを評価するものであります。
国家とは何か、国家はどうあらねばならぬかということは、為政者にあっては最高にして最大の命題であると思います。明治維新聞もなく、岩倉具視を大使とする使節団がヨーロッパ、アメリカを視察し、得られた彼らの結論は、国というものは何をおいてもまず存続しなければならない、この激甚なる国際社会の競争の中で国が存続を維持するためには何をなすべきか、その観点から国家の経営はなされなければならないということであったと言われます。
そこで、総理にお伺いいたします。総理の国家観、国家経営の理念をお聞かせください。
そもそも、今回の沖縄米軍基地用地の使用問題は、平成七年四月、防衛施設局長が当時の総理大臣に法に基づく使用認定の申請を行い、同年九月二十九日に沖縄県知事が土地・物件調書の代理署名を拒否した時点において、当然予想された事態であります。橋本内閣が発足してからも一年以上が経過しています。なぜ、この問題の処理に手間取ったのでしょうか。その理由が、巷間伝えられますような、自民・社会・さきがけ政権基盤の崩壊を危惧し、あるいは沖縄県の猛反発にたじろいでなどという次元の問題ではなかったと思います。この間、内閣総理大臣として、防衛庁、防衛施設庁にどのような指示をなさったのか、この事態を解決するために具体的に何を検討されたのか、お伺いいたします。
さて、総理は、沖縄に偏在する米軍基地の整理・縮小・移転の必要性を表明され、その実現に努めておられます。沖縄県民に我が国安全保障の重荷を背負い続けさせることは到底許されることではありません。本土もまたその役割を引き受けるべきだと考えています。
しかし、米軍の駐留目的に照らし、米軍の沖縄からの本土移転などが合目的であるか否かの検証はどうなされているのでしょうか。沖縄が我が国のシーレーンの近傍に位置していること、東シナ海と太平洋を結ぶ要衝にあることなどの地勢的特性、軍事的戦略性は本土のいかなる地域にも代替できぬものであります。
総理は、極東のキーストーンとも言われる沖縄の特性をどう評価し、沖縄にある米軍基地の重要性とその本土展開をどのように考えておられるか、お伺いいたします。
また、今回の特措法の改正に際し、在沖縄米軍の削減論が一部にありました。政府も、朝鮮半島情勢が安定すればというメッセージを沖縄に伝えています。しかし、極東の安定は必ずしも予測できず、沖縄県民に過度の期待感を与えることは慎むべきではないかと思います。防衛庁長官は両三年後の在沖縄米軍の規模をどう見通しておられるか、お尋ねいたします。
さらに、三月三日、米国で開かれた日米実務者会議で、日本の海兵隊削減提案が米側に拒否されたと伝えられます。しかも、提案に際し、外務省と防衛庁との意思の疎通が十分でなかったというのは事実でありましょうか。
ところで、土地の使用契約を拒んでいる地主の数は地主全体の一割にも達せず、面積ではわずか〇・二%にすぎません。しかも、この契約拒否者の九六%以上がいわゆる一坪地主であり、これら地主の平均所有面積は〇・七五平方メートルであります。反対する大部分のいわゆる一坪地主は、憲法が国民に保障する権利の本当の意味を理解しない人たちであり、公共の福祉のために資すべき責務を放棄している人たちだと思います。大多数の沖縄の人たちの本当の気持ちは別のところにあるのではないでしょうか。防衛庁長官のお考えを伺います。
大多数の地主は、日米安保条約の重要性を理解し、その履行に必要な用地を提供する善意の協力者であります。しかし、こうした理解者にありましても、今回の特措法の改正がもたらす感情は複雑であります。
今回の改正は、裁決で使用権原を取得するまでの間及び裁決申請の却下による不服審査請求をしている間、土地の暫定使用を可能といたします。これにより、米軍用地の確保は物理的には安定いたしましょう。しかし、法的には不安定な状態にあると言わざるを得ません。暫定使用あるいは泥縄的緊急避難などという表現がこのことを物語っています。
そこで、総理にお尋ねいたします。
基地の整理・縮小・移転を含む、国が責任を負う抜本的立法措置のスケジュールをどのようにお考えでしょうか。また、そのことに着手するにはいかなる条件が整うことが必要でしょうか。さらに、その立法措置の基本的な考え方の一つとして、国の安全にかかわる用地の確保は、自治体が行う機関委任事務でなく国の直轄事務とすることもお考えでしょうか。
さらに、沖縄振興について伺います。
今、沖縄では、第三次振興計画の実施を初め幾つかの施策が展開されています。しかし、沖縄県民の期待にはもっと大きなものがあります。かつて西ドイツは、西ベルリンヘの投資に対し、他の地域に比べ、法人税は二二・五%、個人所得税は三〇%低く税率を設定するなどの優遇措置をとったと言われています。沖縄には、総理のイニシアチブにより、政治の主導により、これ以上の刮目すべき振興策の立案が待たれています。総理は、今どのような具体策をお考えでしょうか。
さて、本年秋までには、日米安全保障共同宣言に基づき、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直しを進めなければなりません。この作業は、今回の特措法改正にまさるとも劣らぬ内容を持つものであり、日本の安全に直接かかわるものであります。既に中間報告も可能な段階に達していると伺っています。
防衛庁長官に、その進捗度、日米間の主要な問題点をお尋ねいたします。
今回の特措法改正に見られた与党三党の対応ぶりを見るとき、ガイドライン見直しの先行きに心なからざる危惧の念を禁じ得ないのであります。安全保障に対する与党三党の基本的立場には大きな認識の違いがあります。これでは見直しの内容が中途半端なものになることは明らかであります。国家国民の生命財産を死守すると同時に、地域の平和に寄与するという崇高な理念が損なわれることを心配するものであります。
総理にお伺いいたします。
ガイドライン見直し作業の過程で、その内容を国会の議論の場に供するお考えであることを確認いたしますとともに、最終的には国会の承認を求められる御予定でしょうか。
今回の改正により、駐留軍用地は継続的に確保されることになります。沖縄県民の要望がいまだ具体的にかなえられない中、県民には騒音や生活の不安が残ります。沖縄では、今もなお琉球処分が歴史の事実を超えて教え継がれ、琉球独立論が思想的背景のもと語られているとも言われます。
大田實少将が「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民二対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」という電報を打たれてから早くも半世紀以上の歳月が経過いたしました。我々は今、大田少将の思いにこたえなければなりません。
橋本総理と小沢党首との間で合意された三項目が、総理の指揮のもと、一日も早く具体化することを確認させていただき、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/22
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023・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 泉議員にお答えを申し上げます。
まず冒頭、国家観、国家経営の理念というお尋ねがございました。
政府の責務は、国家の安全と繁栄を維持し、国民の平和でより豊かな生活を実現することにあり、政府は、そのために内政、外交の両面で最大限の努力を傾ける責任を負っております。その意味では、今般の駐留軍用地特措法改正法案、これは我が国の平和と安全、国際社会における信用の維持という、こうした観点から極めて重要なものであり、国家の存立にかかわる意義を有するもの、そのように考えております。
次に、取得手続の時間的経過についてのお尋ねがございました。
今回の手続は、過去三回の手続期間の実績を考慮して、平成七年三月に開始をいたしておりました。しかし、同年九月の大変不幸な事件を契機とする諸問題が提起をされます中で、職務執行命令手続をとらざるを得ない等、従来予想できない期間を要することとなりました。そして、その間、私としては、収用委員会における早期の裁決というものに期待をし、防衛庁、防衛施設庁に対し、関係者の御協力を得るための最大限の努力を指示してまいった次第であります。
しかし、ついに収用委員会の次回開会期日が決まらないという状況の中で、沖縄県の方々に大変厳しい御批判を浴びることを覚悟しながら、今回の最小限度の措置を決断させていただきました。
次に、沖縄の特性をどう評価し、沖縄の米軍基地の重要性と本土展開についてのお尋ねがございました。
米軍が沖縄に展開しております要因、これは、ハワイ、グアムよりも極東の各地域に近い、そして迅速な戦力投入が可能であると同時に、周辺諸国から一定の距離があり、本土にない縦深性がある、こうした点があると思います。他方、SACOの最終報告にもございますように、県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の本土移転等、本土に移転すべきものの案件も含まれておりまして、私どもとしては、この報告の着実な実施に全力を尽くしたいと思います。
次に、米軍基地の整理・縮小・移転などを含めた手続の問題がございました。
政府としては、目下、沖縄県民の方々が背負ってこられた重荷を国民全体で分かち合う、そうした姿勢に立ち、日米両国政府が最終的合意をまとめましたSACOの最終報告をいかにして着実に実施していけるかを政府の最重要課題と位置づけ、全力を尽くしております。
将来の問題についてもお尋ねがございました。
駐留軍用地の取得事務、これは我が国の生存と安全を確保する上で極めて重要であり、高度の公共性を有する米軍の活動の基盤にかかわるものであります。さらに、これは我が国が条約上負うべき義務を果たしていかなければならないその履行に関するものということから、本来、私は国が執行責任を負うべき性格のものである、そのように考えております。そのあり方につきましては、現在、地方分権推進委員会が十二月に出されました第一次勧告の中でなお調整中とされたことがございますので、分権推進委からの御意見なども見ながら、幅広く検討していきたいと考えております。
次に、沖縄振興策についての御意見がございました。
現在、大田沖縄県知事御自身にもメンバーに加わっていただいております沖縄政策協議会において、具体的に県からの御意見を検討させていただいております。また、先般、米軍基地所在市町村懇談会から提言がなされました。内閣としても、その実現のために最大限の努力をしてまいりますし、今後、沖縄が基地依存から自立をされ、さらに我が国経済社会の発展に寄与できる地域として整備され、魅力のある地域として発展していきますよう、県とともに協力をしながら努力をしてまいります。
次に、日米防衛協力ガイドラインの見直し作業についての御意見がありました。
国民の御理解をいただきながら政府間の作業を進めていきますため、五月の中旬以降しかるべき時点で、そのときまでの進捗状況及び検討内容を公表させていただきたいと考えております。当然、国会においてもさまざまな御論議をいただけるものと存じますが、むしろ私どもとしては、そうした御論議も踏まえて新しい指針は取りまとめてまいりたい。ただ、これ自身が国会による承認の対象となるものではない、そのように考えております。
最後に、新進党小沢党首と私の合意事項についてのお尋ねがございました。
沖縄の米軍基地、施設・区域の整理・統合・縮小につきまして、県民の方々が背負ってこられた重荷を国民全員で本当に分かち合うという姿勢に立ちながら、SACO最終報告の着実な実施に全力を尽くしますとともに、駐留軍用地の取得に関する事務のあり方につきましては、先ほども申し上げましたような手順を踏みながら、地方分権推進委員会の御意見等も見ながら、幅広く検討していきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/23
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024・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 沖縄の米軍の規模についてのお尋ねですが、米国はアジア太平洋地域において在沖米軍を含む約十万人の兵力を維持するとの政策を有しておりまして、現時点においては海兵隊の削減や撤退を米側に求めることは考えておりません。
同時に、日米安保共同宣言で確認されたとおり、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応しまして、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢や防衛政策について、両政府間で緊密な協議を継続いたすつもりでございます。
なお、日米安保高級事務レベル協議審議官級会合についてのお尋ねでございますけれども、その際に日本側より日本に所在する海兵隊の削減に係る提案を行ったというような、そういう事実はございません。
また、このような日米協議に際しては、従来より防衛庁と外務省との間で緊密な協議を行っているところであり、両省庁間の意思疎通は十分に図られていると考えております。
それから、一坪共有地主に関する御質問ですが、御指摘のとおり、契約拒否者三千七十八人のうち九六%以上の二千九百六十五人が在来の土地所有者二人から土地を購入、所有権の分散を図ったいわゆる一坪共有地主であり、かつその約半数は本土在住者であります。私は、沖縄県民の方々に冷静で理性的な御意見があることは十分承知しており、土地所有者の九割の方々から契約をいただいている現状にかんがみれば、このような一坪共有地主の声が沖縄の総意とは毛頭考えておりません。
なお、ガイドラインについては、先ほど総理からもお答えがあったわけでございますけれども、見直しの進捗状況について申しますと、指針見直しは、本年秋に作業を終了することを目途に、現在、SDC作業班会合で進捗状況報告にある主な研究・協議事項につきまして、協力の具体的な機能及び分野を抽出する等の作業を滞りなく進めておりますけれども、まだ主要な問題点について総洗いできているわけではございません。したがいまして、本作業については五月中旬以降のしかるべき時期に中間取りまとめを行い、作業の進捗状況を内外に明らかにしてまいりたい、そのように考えておるところでございます。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/24
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025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 田英夫君。
〔田英夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/25
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026・田英夫
○田英夫君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、駐留軍用地特別措置法の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問いたします。
沖縄は、戦中戦後を通じて苦しみ続けてきました。あの太平洋戦争の末期、沖縄は日本で唯一の地上戦の場となり、一般市民を含めて二十一万七千人余りのとうとい生命が失われました。戦後も、祖国から切り離され、アメリカの軍事支配下に置かれ、強権的に土地を取り上げられ、強大なアメリカ軍基地が建設されたのです。二十七年に及ぶ苦難の末にようやく祖国へ復帰した喜びもつかの間、公用地暫定使用法等によってアメリカ軍基地はそのまま存続してしまったのです。
今、米軍嘉手納空軍基地の管制塔に上ってみますと、広大な飛行場のはるか向こうの片隅に、肩を寄せ合うように密集した嘉手納町の人々の家が見えます。まさに沖縄の現状を象徴しています。
この沖縄の皆さんに一日も早く平和で豊かな暮らしができる状態を構築することが、政府、そして私ども日本人全体の責任であり願いであると思います。そして、このことをアメリカの人々に語るべきではないでしょうか。アメリカの政府、議会、そしてアメリカ国民にもこのことを理解してもらわねばなりません。
こうした思いで今回の政府が提出された駐留軍用地特別措置法の一部改正案を見ると、実は愕然とせざるを得ませんでした。当初、政府は必要最小限の改正と言っていましたが、実はそれは最大限でありました。現在までの法体系を壊し、収用委員会の存在意義を否定し、総理大臣の権限によって米軍基地用地を恒久的に使用できる道を開くものと言わざるを得ません。憲法二十九条の精神を否定するおそれさえあります。しかも、この改正案は事実上沖縄県にのみ適用されるものであり、憲法九十五条に触れる可能性を指摘せざるを得ません。
次に、第二次橋本内閣が発足した昨年十月、自民、社民、さきがけの与党三党で長時間真剣に話し合った結果まとまった三党政策合意文書に触れたいと思います。
これは、議会制民主主義のもとでの連立政権としては初めての本格的な政権としての政策を与党間で合意したもので、極めて意義深いものであったと思います。そして、合意した政策と合意に至らなかった政策を明確に区別し、国民に発表したのです。
その合意した部分に沖縄に関するものが明記されています。念のために簡潔にまとめてみますと、一、沖縄の提起している三点の要望を重く受けとめ、沖縄米軍基地の整理・統合・縮小に向けてさらなる積極的努力を行う。二、アジア情勢安定のため努力するとともに、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について継続的に米国と協議するとあります。
今回の特措法一部改正を提案されると同時に橋本総理、池田外務大臣らがアメリカの指導者に示された姿勢は、この三党合意に沿ったものと言えるでしょうか。
さきに来日したアメリカのゴア副大統領に対し、橋本総理、池田外相とも、自分の側から、現状ではアメリカ軍の縮小を求めるつもりはないと言われたと伝えられています。また、来日したコーエン国防長官が、後に修正したとはいえ、朝鮮の統一が実現してもアジアの米軍十万の体制を変えるつもりはないと、あえて言えば暴言とも言える発言をしたのに対し、総理はどのように反論をされたのですか。政府・自民党の幹部は、しばしば沖縄のアメリカ軍は朝鮮有事に備えたものと言っておられますが、コーエン発言は修正後も在日米軍の兵力は朝鮮半島の情勢変化や緊張緩和とは関係ないとの立場を示していると思われますが、この食い違いについて総理はどのように考えておられるのでしょうか。
しかも、一方で、アメリカ政府の対北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国に対する外交は最近大きく変わりつつあります。「北風と太陽」の話に例えれば、明らかに太陽の路線です。KEDOの積極的推進、四者会談の実現への積極姿勢、そして年内にも米朝の連絡事務所を相互に設置するところまで進んできています。北朝鮮への食糧援助も積極的に進めています。一方、韓国政府はなお北風路線ですけれども、日本政府は一体どうされるおつもりですか。
今こそ、外務官僚に任せるのではなくて、国の進路を決める政治的決断が必要なのではないでしょうか。それは、沖縄の米軍基地縮小に直結する問題です。
また、アメリカには中国脅威論が根強く存在し、それがアジアの不安定要因の最大のものとの意見があります。コーエン国防長官の真意もその辺にあるのかもしれません。橋本総理は、中国を脅威とお考えですか。
私は、ことし既に二回中国を訪問しました。その一回は、土井党首を団長とする社民党代表団の一員としてでした。江沢民総書記ら会談した中国の指導者の態度は、脅威とはほど遠いものでありました。台湾問題は、台湾は中国の一部との基本姿勢はもちろん堅持していますが、一国二制度の実現を目指していく姿勢ですし、そのやり方はことし七月一日の香港返還で事実として明らかにされようとしています。尖閣列島の問題も、解決を後世の人々にゆだねようとの姿勢です。核兵器の問題も、CTBTの締結後は核廃絶を目指すとの基本姿勢に立ち戻っています。
日本政府は、日中国交正常化二十五周年のことし、日中友好確立の先頭に立つべきではないでしょうか。
最後に、沖縄の振興と基地のない沖縄の問題に触れなければなりません。
沖縄県は、さきに二〇一五年の基地のない沖縄を目指したアクションプログラムを発表しています。これこそ、まさに沖縄の願いだと思います。それは、二〇一五年までを三段階に分け、それぞれ具体的に基地の名を挙げてその返還を求め、その跡地を利用しながら国際都市形成構想をまとめています。
一方、与党三党は、昨十日、この沖縄県の構想を推進することで合意し、一国二制度的な大胆な改革を目指すとしています。政府は、この沖縄の願いの実現のための与党三党の合意を実らせていただきたいと思います。総理の御所見を伺います。
今、沖縄の問題が日本の進路を決めようとしています。日米安保条約を優先するのか、沖縄の心を大切にして日本国民の平和で豊かな生活の構築を優先するのかが問われていると思います。
社会民主党は、党内の議論を重ね、苦渋の中でこの法案に反対することを決断いたしました。それは私たちが沖縄の心を大切にし、国民の願いを優先すべきだと考えたからであります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/26
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027・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 田議員にお答えを申し上げます。
まず、沖縄の問題は、日本人全体の責任であることをアメリカにも理解させるべしという御主張でありました。
私は、沖縄戦を含むさきの大戦のような不幸な歴史を二度と繰り返してはならない、そうかたく決意をしております。そして、沖縄が平和で豊かな生活の構築のできる状態、これが日本人全体の責任であることは当然でありますし、こうした考え方に立ちながら、基地の問題あるいは振興策などに取り組むとともに、アメリカ側にも沖縄問題の重要性というものを、最初の日米首脳会談以来、私は訴え続けてまいりました。
次に、与党三党合意と政府の米国への対応についてのお尋ねがございました。
政府は、与党三党合意を念頭に置きながら、日米間で最大限の努力をして取りまとめてまいりましたSACOの最終報告の実施に全力を尽くしますとともに、振興策にも真剣に取り組んでおります。また、安全保障情勢に起こり得る変化に対応し、軍事態勢及び防衛政策について引き続き日米間で緊密に協議する一方、地域の安全保障環境の改善のための外交努力を一層強化いたしております。
次に、報道されましたコーエン長官の発言についてのお尋ねがございました。
この話につきましては、防衛庁長官との会談におきまして、コーエン長官から、報道関係者から朝鮮半島統一を仮定した質問を受けたので、現時点では朝鮮半島統一が直ちに実現する見通しはなく、アジア太平洋地域に十万人の米軍プレゼンスを維持するという方針の見直しは考えられない旨を述べた、そうした説明があったという報告を受けておりましたから、私は改めてこれに言及をいたしておりません。
次に、米軍の兵力構成についてのお尋ねがありましたが、コーエン長官の発言の趣旨というものは今申し上げたようなものでありますし、また同長官は、今回の訪日時の一連の会談の中におきまして、アジア太平洋地域において現在の米軍プレゼンスを維持するという方針を表明する一方で、国際情勢に大きな変化があれば日米安保共同宣言に基づいて、それに応じた軍事態勢、防衛政策について日本と協議することを確認しております。
次に、対北朝鮮政策という点での御意見がありました。
朝鮮半島の平和と安定のためには、南北関係の改善、そして北朝鮮の国際社会への一層の開放が重要であります。私どもは四者会談の早期実現を期待しておりますし、またKEDOの問題にも積極的に取り組んでおります。そのような中で、今後ともに第二次世界大戦後の日朝間の不正常な関係を正すとともに、朝鮮半島の平和と安定に資するもの、こうした二つの観点を踏まえながら、韓国等と緊密に連携しながら対処していきたいと考えております。
しかし、そうした観点から申し上げますならば、日朝政府の会談が中断をしております原因はいまだに解明されておりません。こうした問題に対する私は誠意のある対応も求めたいと思います。
次に、中国に対する認識のお尋ねがございました。
中国は、改革・開放の基本政策のもとに、経済建設を当面の最重要課題としながら、そのための安定的な国際関係を必要としていると考えております。また、軍事力につきましては、その近代化は次第に漸進的に進むものと見られます。我が国としては、こうした中国がより積極的な、建設的なパートナーとして国際社会に関与することを慫慂することが重要だと考えております。
次に、日中友好という点について御意見をいただきました。
日中関係がアジア太平洋地域、さらには世界全体の平和と繁栄にとって非常に大切なことであることは御指摘のとおりでありますし、本年が日中国交正常化二十五周年という節目の年でありますだけに、政府として、この日中友好関係のさらなる発展のため、先般、池田外務大臣が訪中し、その際合意されました年内の首脳相互訪問を初めとする人的な往来等を通じ、心から二十五周年を祝福できるようさらなる努力を払っていくことが重要だと思います。
次に、基地返還アクションプログラムについてお尋ねがありました。
政府としては、このプログラムを初めとする沖縄県の御要望も踏まえながら、日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、両国間で最大限の努力を払いSACOの最終報告をまとめました。今後とも、普天間の問題を初めとしたこの報告に盛られております措置を着実に実施するために、地元の皆様の御理解と御協力を求めながらあらゆる努力を払っていきたいと思います。
沖縄振興策につきましては、現在、沖縄県知事御自身もメンバーに入っていただいている沖縄政策協議会において、県の国際都市形成構想などの御要望も踏まえながら、振興策について具体的に検討をしていただいております。
さらに、県御自身で規制緩和の検討委員会を設置されると聞きました。この内容がまとまれば、当然知事からこの政策協議会の場に提起されると思いますし、真剣に検討していきたいと思います。
一国二制度的な発想というのにはさまざまな問題点はあると私は思いますけれども、沖縄が基地依存から自立した経済発展を遂げていく、そのために国が中長期的な視点に立った振興策の推進を図るべきという点については、私どもも同様に考え、既に行動しつつあります。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/27
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028・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 法案は最小限ではなくて最大限の改正ではないかとのお尋ねですが、この法案は、日米安保条約上の義務を履行するため必要な土地等を、収用委員会の裁決による使用権原が得られるまでの間に限って、暫定的に使用を認めるという必要最小限の措置を内容とするものでありまして、裁決を行う収用委員会の権限や役割に変更を加えるものではございません。
次に、憲法との関係についてのお尋ねでございますけれども、法案は、現に駐留軍の用に供されており、引き続きその用に供する必要があると認定された土地等を適正な補償のもとで暫定使用するための要件とその手続を定めているものであり、また、特定の地方公共団体の組織、運営または機能について特例を定めるものではありません。したがって、御指摘の憲法の諸条項に反するものではないと考えております。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/28
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029・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私に対するお尋ね、すべて総理が答弁されましたが、私も最近の日米協議のあり方が三党合意に違背するものとは思っておりません。
また、北朝鮮外交のあり方、日中友好促進についても総理答弁のとおりでございますが、いずれにいたしましても、この地域の安定、その中での近隣諸国の関係改善なり友好促進を図るという観点から、いろいろな要素をよく考慮しながら、政治の責任で判断をしながら適切に対処してまいります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/29
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030・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 齋藤勁君。
〔齋藤勁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/30
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031・齋藤勁
○齋藤勁君 私は、米駐留軍用地等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、民主党・新緑風会を代表して質問をいたします。
橋本総理、民主党は、去る三月に沖縄に米軍基地問題調査団を派遣し、当地において大田知事と会談をし、幅広く意見交換を行ったところであります。
その際、知事は、沖縄県民は国の基本政策を軽く見ているわけではなく、日米安保条約に真っ向から反対ということではないと述べられた上で、弱い立場にしわ寄せをする形で国の安全を守ろうとするのはおかしい、同じ国民なのに差別的処遇をすることは容認できないと訴えられたのであります。
総理、昭和四十年の初めての訪問以来たびたび沖縄を訪問された総理には、この大田知事の言葉の重みを十分に感じ取ることができるはずであります。普天間米軍基地の返還を初めとするSACO合意を得ることに全力を挙げられたのも、総理自身として沖縄の思いにこたえようとされたからだと、私は好意的に解釈をしたいのでございます。
しかし、最近の総理の言動はどうしたことなのでしょうか。沖縄の海兵隊の削減問題について、日本から米国に持ち出すことはしないと繰り返し断言をし、沖縄県民の兵力削減にかける強い思いに背を向け続けるのはどうしてでありましょうか。周辺情勢が安定化していないから海兵隊の削減はできないということであれば、それはとても一国の宰相が口にする言葉だとは私は思えないのでございます。情勢を分析することは研究者の仕事であり、政治家の政治家たるゆえんは、情勢を分析し、それが不透明であれば、もっと見通しのよいものに変えていくための政策の立案と実行力を発揮することではないでしょうか。
私には、不透明な情勢を憂う批評家としての橋本総理しか見えないのでございます。このような思いを持つのは私だけではないはずでございます。本当に沖縄県民の苦悩をみずからのものとしてとらえようとするのであれば、沖縄の海兵隊の削減が実現できるような周辺環境をつくり出していこうという意欲とビジョンを持った、真の意味での政治家としての橋本総理の姿を見せていただきたいのであります。このことについて、総理の見解をお示しいただきたいと思います。
民主党は、結党直後の昨年十月の選挙において、日米安保を基軸として、日本の安全とアジア太平洋の安定を確保することを外交安保政策の柱として公約したところであります。また、沖縄米軍基地問題を契機として、改めて党の外交安保政策の議論を行い、日米安保条約の堅持を党全体で確認し合ったところであります。
同時に、ポスト冷戦の時代変化に伴い、これまでのような、ややもすると対米一本やりがちであった外交から自主性、主体性を持った外交政策を展開していくことが極めて重要になってきている。日本は、世界の国々、とりわけ隣国、友人であるアジア諸国といかにかかわっていくのかを具体的に示していかなければならない時代に差しかかっていくということについても確認し合ったところであります。
このような時代認識に立つのであれば、日米安保を基軸としつつ、アジア太平洋地域の多角的安全保障体制の構築に努めることが二十一世紀の新時代に向かう我が日本の責務であると考えるのであります。そして、国際情勢の変化に伴い、日米両国が在日米軍の兵力構成やレベルについて緊密な協議、議論をしていくことは至極自然なことであり、さらに言えば、そのような関係こそ同盟関係の強さをあらわすものであると言えるのではないでしょうか。
在日駐留米軍イコール安保堅持イコール日米友好という短絡的な固定観念から脱し、アジアの安定と平和のために必要な在日米軍の兵力構成・レベル、日本とアメリカの協力体制等を率直に協議し合える関係こそ真の日米友好関係であると思うのであります。また、そのような対等で、なおかつ友好的な関係を目指すことこそ自立した国のあるべき外交姿勢ではないでしょうか。
朝鮮半島の情勢は、不安定な側面を持ちつつも、例えば四者協議の実現に向けた準備が進んでいるように、また米朝間で連絡事務所の設置の話し合いが持たれているように、少しずつ好ましい方向に進みつつあります。私は、朝鮮半島情勢の不安定を憂うよりも、一九七〇年代のニクソン・ショックのように、気がつけば米朝和解が日本抜きで劇的に実現する悪夢の可能性こそ心配すべきなのではとさえ思うのであります。
そこで、お尋ねします。
こうした情勢認識を踏まえて、沖縄の海兵隊を含む在日駐留米軍の兵力構成・レベルに関して米国と協議していく用意はないのか、また北東アジア情勢の見通しと安全保障環境の好転に向けた日本としての戦略について、さらに米朝間で協議中の連絡事務所設置についての状況認識について、総理のお考え方をお聞かせください。あわせて、関係大臣たる外務大臣及び防衛庁長官の見解をお伺いいたします。
総理も御承知のとおり、私たち民主党と自民党は、去る八日、「沖縄米軍基地問題に関する合意事項」を取りまとめたところであります。この中において、沖縄の地域振興に関して、「大胆な独自制度の導入等による自由貿易地域制度の拡充及び国際観光の発展のための環境整備について沖縄政策協議会で積極的に検討させ、これらの課題について、平成九年中に結論を得させる」ことを両党から政府に求めることにしたわけでありますが、この部分は早くも昨日、三党間で「沖縄振興策に関する与党合意事項」の中に組み入れられております。私は、こうした与党の努力を評価するものであり、今後政府としてその実現に向け最大限の努力を払うことを強く求めるものであります。
もちろん、我が党と自民党とが合意した項目は、これらの地域振興策にとどまるものではありません。したがって、この際、政府の責任者として、また自民党総裁として、今回の五項目合意をどのように受けとめておられるか、率直な見解をお聞かせください。
民主党は、日米安保条約を円滑に運用すべき責任の履行と、沖縄が現在でも日本における在日米軍基地の七五%も負わされている状況の打開という両側面から、今回の特措法の一部改正に対する賛否について党内で極めて民主的に議論に議論を重ねてまいりました。その結果、責任ある政党として、五月十四日の使用期限切れ後の法的空白を放置することはできないことを確認したところであります。
しかし、本来、使用期間内に収用手続を完了することは政府の責任であります。現行法での緊急使用申し立てを行うべきと主張したにもかかわらず、その道をとりませんでした。このような政府の失策を、特措法の改正という形で、沖縄にとって納得できない形で事態を解決しようという姿勢は本末転倒と断ぜざるを得ません。その上、政府提出の特措法の一部改正案は、収用委員会が却下裁決をしても、防衛施設庁が審査請求しさえずればいつまでも暫定使用が許される仕組みになっており、実態的には恒久使用となってしまうおそれをはらんでいるのであります。これでは必要最小限の法改正とは言えないと思うのでありますが、防衛庁長官の見解を伺います。
我が党は、こうした問題点を重視し、日米安保条約を維持する上で支障となる法的空白状態をつくり出さず、なおかつ沖縄県民に米軍基地固定化の不安を少しでも払拭してもらえるように、政府案を五年間の時限立法に修正することを衆議院において提案したところであります。残念ながら、衆議院においては賛成少数で否決されたわけでありますが、我が党は本院においても同趣旨の修正案を提出し、議員各位の御賛同をお願いするつもりであります。
政府においても、沖縄県民の国に対する不信と不満を少しでも和らげ、県民が念願する米軍基地の整理・縮小を国と県とが協力しながら着実に実現していく方向に踏み切るべきであると考えるものでありますが、時限立法問題について総理の見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/31
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032・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 齋藤議員にお答えを申し上げます。
まず、沖縄の海兵隊の削減が実現できるようなそうした努力をすべきであるという御指摘をいただきました。
しかし、我が国の周辺環境において、今、本当に安定した状況が存在をするか。私は、実は、我が国を取り巻く周辺、そしてこの地域における不安定性というものは否定のできない現実であると考えております。
当然ながら、そうした中で、例えばさまざまな外交努力、これは二国間もありましょう、多国間の枠組みもございますが、そうした中での努力を重ねておりますけれども、その状況が解消している状況ではありません。これから先もこの情勢の安定を、改善をまた図るべく外交努力の一層の強化、あるいは安全保障対話や地域の協力の促進、こうしたあらゆる努力を我々は払っていこうと考えております。
その上で、在日米軍の兵力構成についてアメリカ側との協議をする用意はないのかというお話がございました。
私は、このアジア太平洋において依然として不安定、不確実な要因が存在している中で、現時点において海兵隊の削減や撤退をアメリカ側に求めることは考えておらない、これは確かに私は繰り返し申し上げております。本当なら一回でいいのかもしれませんが、何遍もお尋ねがありますから何遍もお答えをしてきました。そして、むしろできない希望を申し上げるより、事実認識として現在の国際情勢に基づく判断はきちんとお伝えをする方が私は正直だと思います。
しかし、その上で、日米安保共同宣言の中に確認しておりますように、国際的な安全保障体制に応じて起こり得る変化に即応しながら、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢あるいは防衛政策について両国の政府間における緊密な協議というものは、SSCあるいはSCCときちんと実行のできる場を持っておりますし、今後ともに継続をいたしていきます。
また、北東アジアの情勢をどう好転させるのだというお話がございました。
我々は、今、本当に朝鮮半島における四者会合の一日も早い実現を心から期待いたしております。また、北朝鮮に対するKEDOの問題等、我が国は積極的に行動いたしておることも御承知のとおりであります。今後ともに、こうした努力は我々は続けていかなければなりません。
米朝連絡事務所についてお尋ねがございましたが、九四年十月の米朝枠組み合意におきまして、双方が、技術的問題が解決した後、おのおのの首都に連絡事務所を開設するとされております。当然のことながら米朝間で協議が行われているということは承知をしておりますが、開設の具体的時期等についてはまだ決定されていないと思います。
次に、沖縄米軍基地問題に関する自由民主党との間の合意についてお尋ねがございました。
内閣は、今日まで沖縄の問題を国政上の最重要問題の一つとして、例えばSACOの最終合意に見られますような日米両国間のぎりぎりの努力も続けてまいりましたし、また経済社会の振興策についても全力を挙げて取り組んでまいりました。今後ともこの方針を堅持してまいりますし、こうした問題の取り組みの中に御指摘の合意も踏まえさせていただきたい、そのように考えております。
次に、時限立法についてのお尋ねがございました。
駐留米軍の用に供することが必要な民公有地で契約による合意の得られないものにつきましては、これは本土、沖縄県ともに、駐留軍用地特措法に基づいて原則として一定期間の使用権原を得て使用せざるを得ない、理論的にそうなります。その場合、近い将来において今般と同様の事態が生ずる可能性がある、そうした状況にかんがみ、今回限りの時限立法とはいたしませんでした。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久間章生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/32
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033・久間章生
○国務大臣(久間章生君) 在日米軍に関する協議、また北東アジア情勢の見通し、我が国を取り巻く安全保障環境の好転へ向けた戦略等につきましては、先ほど総理がお述べになりましたとおりでございます。
なお、法改正は必要最小限と言えないのではないかとのお尋ねでございますけれども、これは先ほどからも答弁いたしましたように、日米安保条約上の義務を履行するため必要な土地等を、収用委員会の裁決による使用権原が得られるまでの間に限って、暫定的に使用を認めるという必要最小限の措置を内容とするものであります。
なお、この申請がこの法律に違反しない限りは却下裁決というものはあり得ないところでありますが、仮に収用委員会が却下した場合については、現行法上、建設大臣に対する審査請求等の一連の手続が定められておりますので一法案においてもその手続が終わるまでは暫定使用ができることとしたものであります。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/33
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034・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 在日米軍の兵力構成、北東アジア情勢並びに米朝の連絡事務所設置の問題、いずれも総理から御答弁があったところと全く同じ考え、認識でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/34
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035・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 立木洋君。
〔立木洋君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/35
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036・立木洋
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、米軍用地特別措置法の一部改正案について橋本首相に質問をいたします。
今回の法案の内容は改悪であり、二十一世紀にわたって沖縄県民の土地を強奪し続け、米軍基地を固定化するために憲法をじゅうりんするものとなっており、断じて容認できません。
沖縄における米軍基地の成り立ちは、アメリカの占領下において、戦争で生き延びた沖縄の人々を有刺鉄線で囲まれた十二の収容所に押し込め、一万八千ヘクタールの民有地を米軍基地化したのを出発点としたのでした。さらに、講和条約によって日本が沖縄を放棄した以降、米軍は沖縄の基地の拡大強化のために、銃剣とブルドーザーによって住民を再度強制的に追い出し、一万九千ヘクタールもの土地を取り上げたのです。このことは、一九七一年十一月の沖縄返還協定の審議の際に、佐藤首相は、ハーグ陸戦法規、つまり国際法に違反する行為だったと答弁せざるを得なかったのであります。
橋本首相は、こうした沖縄での土地取り上げの過程が、もともと国際法に反した米軍の土地取り上げにあったと認めますか。明確に答えてください。
日本国憲法から切り離されていたもとで生じた沖縄県民の苦難の現実をしっかりと認識するならば、一九七二年に沖縄が祖国復帰を遂げたとき、日本政府がとるべき最大の問題は、憲法に基づき、沖縄県民の財産権回復に向かって努力を尽くすことにこそあったはずではありませんか。
しかし、日本政府は、沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律という、土地所有者との契約がなくても五年間にわたって米軍基地をそのまま使用できるという法律をつくって沖縄に押しつけ、さらにそれを五年間延長して、合わせて十年間にわたって沖縄県民の財産権を全く無視した土地取り上げを続けてきたのであります。
その後、この県民の権利をじゅうりんし続ける法律の延長はさすがにできなくなりました。一九八二年、わずかな期間の臨時の法律としてきた一九五二年に制定された古い米軍用地特別措置法を持ち出して、米軍用地を保障する措置を継続させることにしたのであります。しかし、そのような米軍特措法であっても、憲法での財産権を侵してはならないということとのつじつま合わせのために、軍用地を収用する手続は土地収用法を準用するものとなっており、県の収用委員会が最終的に土地使用の裁決を行う仕組みになりました。
政府自身、さきの衆議院特別委員会での質疑の中で、現行法のもとでは土地の強制使用を行う場合は収用委員会の裁決が不可欠であること、土地収用委員会にのみ土地収用の期限を決める権限があること、その申請が法律に違反している場合は収用委員会は裁決申請を却下すること等を認めています。
ところが、政府の今回の改悪法によれば、収用委員会の裁決なしでも強制使用を継続できるものになっております。また、収用委員会が裁決申請を却下したときでも、防衛施設局長が建設大臣に対し不服審査請求を行ったならば、その後も継続使用ができるとしています。これでは収用委員会の判断も、審査と実質的審理の機能も、事実上奪い取ることになるではありませんか。
収用委員会で初めて本格的な公開審理を進めることとなった今回、米軍用地が不法占拠となることを恐れた政府が収用委員会の権限を事実上剥奪する暴挙に出たのです。これは、まさしく法治国家にあるまじき事態であります。
憲法二十九条で財産権を侵してはならないとの規定は、国家の権力によってみだりにこれを侵しがたいものとした確認に基づいて生まれたものであります。戦前の、公共のためとの口実で権力を乱用したような国家権力の横暴を抑える、独立したチェック機関として県の収用委員会はつくられました。それは新しい憲法が要請した法体系であります。その収用委員会を無力化する法の改悪を行うことは、憲法を無視する逆行ではありませんか。
四月七日、衆議院の特別委員会で法制局長官は、憲法三十一条の適正な手続は刑事手続のみではなく行政手続においても及ぶものと述べているように、例えば一九六二年十一月の第三者所有物没収事件の最高裁大法廷での判例でも、「当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは」著しく不合理であって、「憲法の容認しないところ」との明確な判決が出されているのであります。この判決にも見られるように、適正な手続を全く無力化し、自治体の独立した準司法機関としての収用委員会の機能も実質的に奪い去ることになる今回の改悪は、まさしく憲法のもとでの土地収用法の要求する適正な手続とはなり得ないことは、どのような弁明をしようとも明白ではありませんか。
また首相は、この改正案は、それこそ条約上の義務を履行するために必要なものと繰り返して述べておりますが、外国との約束だからといって日本の法律を無視していい、そんな権限は政府にも与えられるものではないのであります。ましてや、すべての法律に優先する最高法規、その憲法に違反する法の改悪を安保条約で正当化しようなどというのはもってのほかであります。明確に答弁していただきたい。
かつてのアメリカの国防情報センターの副所長であり、米海軍少将で、空母ミッドウェーの艦長として日本に寄港したこともあるキャロル氏は、「在日米軍基地は日本の防衛と関係がありません。日本の国民や利益に対する脅威があるわけではなく、日本に役立つような米軍の使い方などないのです。日本に駐留しているのも、何十億ドルもの駐留経費を日本が負担してくれて安上がりだから」とはっきり述べています。
首相、アメリカの利益、アメリカの世界戦略の都合のために日本にいる米軍を我が国の公共のためと断言できるのですか。
戦後、新憲法のもとで新しい土地収用法が制定された際、戦前の土地収用法第二条の一にあった「国防その他の軍事に関する事業」は削除され、廃止されました。その後つくられた米軍用地特措法は、まさに日米安保条約を憲法に優先させた違憲立法であります。
しかも、今日、政府は日米安保共同宣言で対米約束したように、地球的規模でのアメリカの戦略を日本の憲法の上に置いて、米軍基地のための土地の強制使用をいつまでも不法に続け、さらに先月、ゴア米副大統領との会談で、首相自身が、在日米軍の削減を求める考えはないと明確に申し上げたいとまで公言していますが、二〇一五年までに米軍基地を撤去し、平和な島を目指す日本国民、沖縄県民の権利と心からの願いを踏みにじることがどうして許されるでしょうか。
最後に、沖縄を初め日本の命運と憲法の根本にかかわる問題を、日米首脳会談の日程に合わせて、国会で十分な審議を尽くさず、数の力で強引に強行しようとするやり方自体、議会制民主主義をないがしろにする暴挙であり、沖縄県民、国民の要求を裏切るものであって、沖縄米軍基地を固定化するものではありませんか。強権的手法を用いなければ安保体制も基地も維持できないことにこそ、その反国民的本質があるということを指摘して、憲法に反する法の改悪に強く反対することを表明し、質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/36
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037・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 立木議員にお答えを申し上げます。
まず第一点は、沖縄復帰以前の米軍による土地の接収についてどう思うかという御質問でありました。
我が国は、サンフランシスコ平和条約及び沖縄返還協定によりまして、占領下における米軍の行動等から生じたすべての請求権を放棄いたしております。私は、沖縄の方々に本当に現実に大変な御苦労をおかけしている、あるいはお気の毒な点があったと思いますけれども、現時点において、当時の米軍の行為について法的評価を行うことは困難だと考えております。
次に、沖縄が返還をされましたとき、政府が憲法に基づき県民の財産権を回復すべきであったのではないかという質問がありました。
まさに、沖縄返還協定によりまして、憲法を含む日本の法体系が沖縄にも本土と同様に適用されることになり、沖縄におきましても憲法による財産権が保障されたことであります。
次に、本法案が収用委員会の判断、審査、機能等を奪うというお話でありましたが、この法案は、収用委員会の裁決による使用権原が得られるまでの間の暫定使用を認めるものでありまして、また収用委員会が却下の裁決をした場合、現行法上、建設大臣に対する審査請求等の一連の手続が定められており、法案におきましてもこの手続が終わるまでは暫定使用ができるものとしたものであり、御指摘は当たらないと思います。
次に、収用委員会の権限を事実上剥奪する暴挙であるというお話でありますが、日米安保条約上の義務を履行するため、必要な土地等を収用委員会の裁決による使用権原が得られるまでの間に限って、法律により、適正な補償のもとで使用することができるとしたものでありまして、裁決を行う収用委員会の権限や役割に変更を加えるものではございません。
次に、収用委員会を無力化する法改正は憲法を無視するものというお話でありましたが、収用委員会の権限に何ら変更を加えるものではございませんので、前提を欠くものではないかと思います。
次に、法案は適正手続たり得ないというお尋ねでありますが、繰り返し申し上げておりますように、この法案は、収用委員会の権限に何ら変更を加えるものではございません。現に駐留軍の用に供されており、引き続きその用に供する必要があると認定されました土地等を適正な補償のもとで暫定使用するための要件、手続を定めているものでありまして、憲法のもとの適正手続に反するものではございません。
次に、条約上の義務を根拠に憲法違反の法改正を行うことは不当だという御意見でありますが、私は、この法案が憲法に違反するものだと考えておりません。また、日米安保条約上の義務を果たすこと、我が国にとりまして最も重要な二国間関係であります日米関係の維持のために必要というだけではなく、日本という国家そのものの存立にかかわる重大事項だと考えております。
次に、在日米軍についてお尋ねがありましたが、国際社会において依然として不安定、不確実な要因の存在する中におきまして、在日米軍は、我が国自身の安全ばかりではなく、我が国にとりまして非常に重要なアジア太平洋地域の平和と繁栄の確保のためにも不可欠の存在であり、その意味で我が国の国益に資するものであります。
また、在日米軍の削減についてお尋ねがございました。
累次御答弁を申し上げておりますように、現時点で私はその削減を求めることは適切でないと考えております。
他方、我が国全体の安全のため沖縄県の方々が担っていただいております御負担というものは、でき得る限り国民全部で分かち合うべきものであり、今後とも、政府は、SACO最終報告の着実な実施に全力を尽くしてまいります。
最後に、法案は米軍基地を固定化するという御指摘でありましたが、本法案は、収用委員会の裁決により使用権原を得られるまでの間の暫定的な使用に関するものであります。本来の土地使用の期間は収用委員会の裁決において定められるものであります。
最後に、議員から改悪改悪というお話がございましたが、私どもは改正案を御審議願っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/37
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038・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015254X01819970411/38
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