1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成九年三月二十一日(金曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月十八日
辞任 補欠選任
海老原義彦君 大河原太一郎君
鈴木 政二君 石井 道子君
三月十九日
辞任 補欠選任
大河原太一郎君 亀谷 博昭君
川橋 幸子君 前川 忠夫君
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出席者は左のとおり。
委員長 勝木 健司君
理 事
石渡 清元君
坪井 一字君
長谷川 清君
笹野 貞子君
委 員
上野 公成君
亀谷 博昭君
小山 孝雄君
佐々木 満君
野村 五男君
今泉 昭君
武田 節子君
星野 朋市君
大脇 雅子君
前川 忠夫君
吉川 春子君
国務大臣
労 働 大 臣 岡野 裕君
政府委員
労働大臣官房長 渡邊 信君
労働省労働基準
局長 伊藤 庄平君
事務局側
常任委員会専門
員 佐野 厚君
説明員
中小企業庁計画
部振興課長 小野 浩孝君
中小企業庁計画
部下請企業課長 宮川萬里夫君
運輸大臣官房審
議官 宮崎 達彦君
運輸省自動車交
通局貨物課長 福本 秀爾君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/0
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001・勝木健司
○委員長(勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る十八日、鈴木政二君及び海老原義彦君が委員を辞任され、その補欠として石井道子君及び大河原太一郎君が選任されました。
また、去る十九日、大河原太一郎君及び川橋幸子君が委員を辞任され、その補欠として亀谷博昭君及び前川忠夫君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/1
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002・勝木健司
○委員長(勝木健司君) それでは、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/2
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003・勝木健司
○委員長(勝木健司君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に笹野貞子君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/3
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004・勝木健司
○委員長(勝木健司君) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/4
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005・小山孝雄
○小山孝雄君 昔から働かざる者食うべからずという言葉があります。と同時に、実はこれはエコノミストの「時短総特集 千八百時間への挑戦」ということで、平成三年に出されたものでございますが、その表紙に「休まぬ者、働くべからず」と大きく書いておりました。
働かざる者食うべからずというのを調べてみましたら、これは語源は新約聖書だそうでございまして、働こうとしない怠惰な人間は食べることを許されない、食べるためにはまじめに働かなければならないということだと、こう注釈もついてございます。まさしく人間の怠惰を戒めた言葉なんだろうと思います。逆にまた、休まぬ者働くべからず、なかなか言い得て妙なる言葉だなと、こう思ったわけですが、時短を考えるに当たってこの二つの言葉、大臣どう思われましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/5
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006・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 最初の、働かざる者食うべからず、これは子供のころから知っておりました。ある程度書き物を読むようになりましたときは、働かざる者食うべからずというのは、資本家で何も自分は労働の提供をしないで労働者を搾取しているといいますか、というような者に対する戒めだなというように思う私の人生の中の時期もありました。しかし、よく遊びよく学べだとか、よく学びよく遊べだとか、もう小学校、国民学校のころから先生から教えられていて、やはり一つの社会に生きる者みんなで同じような恩恵をそれぞれ受けよう、その組織の中にある者が脱落をしていく、働かないということではその共同体が保たれないのではないかと。だから今のような言棄も生まれたのかなと思っております。
先生おっしゃる後段の、休まない者は働くべからずというのは先生のお言葉で初めて私聞いたのでありますが、これは要するに、労働力の再生産という意味からいいましても、二日も三日も徹夜で作業をしておりますれば労働の質というものはどんどん低下するわけですので、労働力の再生産のためにもやはり休めということだと思います。同時に、このごろは労働力の再生産じゃなくて労働力の拡大再生産という意味で、これは質的に立派なよりよい労働を提供するというためにも、まず休んで体を休める、それから心を、精神を安らかにして、よしきたあしたも働こう、こういうことであると同時に、最近は竿頭一歩をさらに進めまして、そういった休める時間があるとするならば、自己啓発というようなことを心がけようじゃないかという風潮も生まれたように思います。
それらを相対的につかまえて、あるいは休まぬ者働くべからずというような言葉になったのかなと。千八百労働時間というものを目指していろいろ労働行政の各種施策を進めております者としては傾聴に値する一つのことわざというか、警句だなと、こう存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/6
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007・小山孝雄
○小山孝雄君 ありがとうございました。
八時間労働制というその考え方を実行に移した発祥は、神戸の川崎造船所、大正八年、一九一九年だったそうでございます。あの大震災の神戸のハーバーランドの一角に八時間労働制発祥の地記念碑というのが建ってございまして、この前行きましたらちゃんと震災にもめげずに建っておりまして、テレホンカードにもなっておりました。
そのことを言い出された方は、あの絵画等の収集で有名な松方コレクションの松方幸次郎さん、当時の川崎造船所の社長であります。くしくもその年はILOが創立された年でありまして、その第一号条約が八時間労働制だったということで、世界の趨勢にこれはなる、こう松方さんは思われまして、八時間労働制の採用にまさに日本で初めて踏み切ったと聞いております。
当時は第一次大戦の不況下にありまして、労働争議が頻発をし、八時間どころか十時間労働が大体の一般的な働く時間の長さであったようでございますが、松方さんは十時間労働を八時間、二時間短縮することによって生産性を上げて不況を克服しようと、こう記されておりました。
今もまさしく長引く不況のただ中にあるわけでございますけれども、こうした松方さんの発想についてどうお考えになりますか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/7
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008・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 小山先生のお話で、私どもが心がけておりますところの八時間労働、これが大正の世代において川崎造船の松方社長から発想されたものだと初めて教えていただきました。ありがとうございました。
やはりその時代の背景というものからそれぞれの発想が出てくるのだと思いますが、大正という今から八十年も昔にもうはや八時間かと。あのころ女工哀史等々が、これはまだ昭和の十年代まで長い歴史をたどるわけでありますけれども、秩父事件その他もあったわけです。そういうような中で、やはり外国の事情等々を頭に入れられて八時間労働というものを標榜された、まことに敬意を表する次第であります。
何のための八時間がというならば、博愛主義的に労働者の皆さんに八時間の労働でもうよろしいというような意味で考えられたのか、経営者的な感覚で、やっぱり八時間ぐらいの労働に制限しなければ、それ以上やらせたのではあすの労働力というか、一年、二年、三年、五年、一緒に職員の皆さんと働くという立場に立っての経営的な観点からのものか、この辺が私よくわかりません。また別の機会にお教えをいただければありがたいと、こう存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/8
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009・小山孝雄
○小山孝雄君 まさしく九十年近くたって八時間労働制、そして週休二日制というものが今まさに定着しようとしつつあるわけでございますが、今の原則週四十時間制の法改正をしましたのは平成五年、今から四年前でございますけれども、翌年の六年四月一日施行の法改正を行った。
ちょうどあのとき大臣の秘書官として一部始終をかいま見たわけでございますけれども、当時、これは商工会議所会頭の石川六郎さんからの建議が、意見が大臣のところに来ておったのがたまたま私の手元にございました。時短というものはあくまでも個々の企業の労使の自主的な努力によって進められるべきものであって、行政はこうした企業の自助努力を促進するための環境整備に徹するべきだと。何時間働かなくちゃいけないとか、何時間以上はだめだとかということには介入すべきじゃないと。ましてや今大変な不況の中にある、現下の厳しい経済情勢や、経済社会を支える中小企業に与える深刻な影響が真剣に考えられるべきであって、今このようなことを進めるべきじゃないという、これは平成四年の十二月十八日付で当時の大臣のところに、村上労働大臣でございましたけれども、商工会議所から厳しいこうした意見も出されておりました。
今もこれは、そういう経済状況、多少は違うにいたしましても同じような厳しい中にございます。こうした意見に対しまして労働省はどうお答えになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/9
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010・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 小山先生からいただきました前二問及び平成四年の商工会議所会頭の御要望、この三点、この席で初めて私知りました。したがいまして、四年の商工会議所の要望書、私全く読んでおりません。最近の根本二郎日経連会長のブルーバードプラン等々でありますれば読んでおるのでありますが、申しわけございません。政府委員をして答えさせますことをお許しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/10
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011・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 先生御指摘ありましたように、平成五年に労働基準法を改正いたしまして、週四十時間制をこの四月一日から中小企業を含めまして実施することと、割り増し率のあり方等についても織り込みました改正を行ったわけでございますが、それに先立つ中央労働基準審議会の議論が行われている中で、この日本商工会議所の方からお話のございましたような要望がなされたわけでございます。
その趣旨は、御指摘ございましたとおり、厳しい経済情勢のもとで、この週四十時間制の実施等が与える中小企業への影響、これが大きいことを考慮して、ぜひその辺を考えた進め方をしてほしいということでございます。
私ども、商工会議所の方とも当時種々話し合いをいたしまして、この労働時間の短縮というものがある意味では、事業の生産性を上げるための事業の進め方、運営の仕方、そういったことを見直して体質の強化につながる一つのきっかけでもあるし、そういったことをこなしつつぜひこの労働時間短縮には取り組んでいただきたい、私どももそういった方向に向けての必要な援助や指導を行い、そのために必要な準備期間も置いて平成九年の四月一日から実施するというような内容であること等を説明いたしまして、この改正法案を国会へ提出し、成立をさせていただいたわけでございます。
現在もやはり、四月一日が近づきましたけれども、かなりの中小企業において週四十時間制が未達成の状況になっていることは事実でございます。先ほど申し上げましたような商工会議所との話し合いの過程でなされました私どもの意見、そういったものは今も変わってございませんで、そういった気持ちで中小企業の未達成の事業場に対しましてこの四月一日から労働基準法を全面的に施行いたしまして、なお、なかなか困難を伴う中小企業主の方に対しましては必要な指導あるいは援助というものを懇切丁寧に申し上げて、むしろ生産性の向上や効率性が上がる、そういう形で中小企業の体質強化につながることを願いながら、この四十時間制の確実な定着を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/11
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012・小山孝雄
○小山孝雄君 今のお話でもそうでありますが、この四月一日から待ったなしの施行、原則がとれるわけでございます。それに当たっての法改正、この改正の提案理由説明の中にもございますように、「中小企業において、週四十時間労働制が円滑に定着するためには、その実情にかんがみ、確実に定着するまでの間、懇切丁寧な指導や援助を精力的に行うなどの特別の措置を講ずることが必要不可欠であります。」と、こう書かれてあります。
懇切丁寧な指導、それから援助とはどういうことか明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/12
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013・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 週四十時間制、四月一日から労働基準法を施行いたしましてその確実な定着を図ってまいるわけでございますが、その際の柱となりますもの、主として私ども三点をその骨格にしてまいりたいと思っていますが、一つは、四十時間制を定着させるために、業務の遂行方法あるいは業務の進め方、そういったものを合理化し効率化していく、あるいは変形労働時間制の活用等を含めて改善していく、そういった具体的なノウハウを提供するための集団指導あるいは説明会を網羅的にまず実施していく。
それで、そういった中で労働時間短縮を実施していただく事業主の方に対しましては、賃金のコスト上昇あるいは事業の効率化等のためのコスト負担、こういうことを避けていくために、例えば省力化投資を行う、それから労働時間制度の改善を行う場合に、その必要な経費の一部を助成していく、これが二つ目でございます。
さらに、商工関係の団体等を含めまして中小企業の団体に対しまして、会員企業の労働時間の状況を自主的に点検していただいて、それで自主的に改善指導を進めていってもらう、そういった自主点検事業をお願いすることにし、その必要な経費を助成していく。
この三つを計画的、体系的かつ網羅的に実施いたしまして、指導期間といたしておりますこの期間中に週休二日制に相当する四十時間制が我が国の社会で一般的な働き方として定着していくように努めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/13
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014・小山孝雄
○小山孝雄君 始まる前からこういうことを聞くのはいかがかとは思いますが、四十時間が定着するまでの間というのが二年で足りると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/14
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015・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 猶予対象とされてきておりました中小企業の数は二百万を超える事業所があるわけでございますが、私ども、先ほど申し上げましたように三つの柱にいたしました対策を計画的に網羅的に実施してまいりまして、この四十時間制というものを確実に定着させる努力をしてまいりたい。むしろ、この二年間は私どもにそういったことを果たしていくという責務を負わされた期間と受けとめまして努力をいたしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/15
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016・小山孝雄
○小山孝雄君 たまたま夕べ、私の田舎で十人の従業員で土木会社をやっている男がおりまして、あんたのところは時短奨励金等は使わせてもらったかと聞いたら、どこかでその言葉は聞いたことはあるけれども、いや、やってないよと。大いにいい制度だから、今から勉強して申請したらいいよ、三十一日まで間に合うから、こう言ったわけでありますが、先ほど述べられたいろんな省力化投資等の援助の制度につきましても、大分知られてはきていると思うんですけれどもまだまだ知られていないと思います。その点のPRしていく手だてはどんなふうに考えていらっしゃいますか、基準局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/16
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017・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 今、労働時間短縮、とりわけこの週四十時間制を後押ししていくための援助制度についてのPRについてお尋ねがございました。
今まで私ども、さきの労働基準法の改正以来、中小企業労働時間短縮促進特別奨励金というものを設けて後押しをしてまいったわけでございますが、今までのところ、それを利用するということで省力化投資あるいは新たな雇用をする、こういったことであらかじめ計画を届けてきている事業場の数が平成七年度では七千三百件ほどでございましたが、平成八年度に入りましてこの二月段階までで、途中でございますが約四万三千件、今までの累計が約五万七千五百件ほどになってまいっております。
ここに来まして、この週四十時間制に対する中小企業の方の認識というものも大分高まってきたことは事実だろうと思っておりますが、これからこういった奨励金のあり方も四月以降姿を変えるわけでございますし、まず根っこの労働基準法が四月一日から施行されること、またそれを確実に定着させるために私どもが用意していろいろんな手だてにつきまして、これは新聞あるいは雑誌等を通じまして周知に努めているところでございますし、労働基準監督署の窓口におきましても事業主の方とタイアップした、先ほど申し上げました集団説明会等も計画的に実施してそういった手だてを広げて、周知を広げてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/17
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018・小山孝雄
○小山孝雄君 ぜひさらなる努力を要望したいと思います。
それから、中小企業の事業主の中には、今度の二年間を実質的な猶予期間の延長、そう見る向きもある。これはマスコミ報道にも散見されるところでございますが、これに対してどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/18
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019・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま御審議をお願いしております時短促進法で懇切丁寧な指導を申し上げる、こういうことにしております二年間は、これは猶予といったようなものとは全く次元を異にするものでございます。労働基準法は四月一日から全面的に実施されるわけでございまして、私どもそれを定着させるために先ほど申し上げましたようなきめ細かな指導、援助を計画的に実施してまいるわけでございます。
今まで事業主の方も十分な準備期間をとって、この四十時間制を実施していく場合にはむしろ事業の改善等を通じて効率化や生産性の向上につながっておった企業も多いわけでございますが、今後、この準備期間なしにそういった指導を加えられていくことによっていろいろ御苦労も多いわけでございますので、むしろできるだけ早く私どもの指導、援助を受けながらこの四十時間制というものを早期に取り入れてもらう、そういったことをお願いして精力的な指導をしてまいるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/19
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020・小山孝雄
○小山孝雄君 実質的な猶予と受けとめられたのでは困るわけでありまして、そうすると、努力に努力を重ねて四十時間制を実現しようといってやってきた者との不公平が出てまいります。法律は法であり、そして不公平な競争を許すことにならないようにしっかりお進めをいただきたいと思うわけであります。
たまたま、きのう、おととい私は秋田に所用で参ったのでありますが、労働基準協会にお寄りしましたら、秋田の由利郡というところの三共建設株式会社、総合建設業、労働者数四十三名、非常に努力に努力を重ねて四十時間を実現した会社ということで、ある会合でここの常務取締役の渡邊美樹子さん、女性の常務さんでございますが、体験発表をした記録がありました。本当に努力をなさっておられるさまがこの体験発表を要約した文章の中にありますので、ちょっと読んでみたいと思います。
労働基準法の改正に伴い、労働時間の短縮という重い課題は私ども中小企業にとっては存続をも意味する大きな決断であった。つぶれるかもしれないという不安があった。豊かな人間性を求めると同時に高い生産性を求めるという相反する二つの要素を同時に求めることは容易なことではありませんでした。しかしながら、経済成長とともに労働者の豊かさを実感できる施策としてこれを考えるとき、新たな価値観に対応したライフスタイルの定着を図る重要な課題として取り組んでまいったところであります。
そして、それを進めるために一年かかって社内にプロジェクトチームを編成し、むだな時間は費やしていないかどうか調べてみると、意外と実働労働時間というのは本当に短いんだということがわかった。じゃそれ以外の時間はむだな時間なんだからそれは休もうじゃないかという話になった。
次第次第に経営者の決断、そしてそれに協力しようとする社員の打って一丸となっての努力が続いて、今では一日八時間、週四十時間。所定の休日は年間カレンダーによる週休二日制。年間休日日数百八日。連続休暇は年末年始六日間、ゴールデンウイーク七日間、夏季三日間、その他九日間と、こうなっておりまして、秋田県由利郡の小さな町としては実に画期的な四十時間制の実現にこぎつけたという体験がつづられておりました。
こういう努力もしている会社はたくさんあるわけでございますので、不公平な競争を許すことにならないように、労働省としては今回の法改正を含めたこの措置の真意を中小企業やその団体等を通して各企業に十分周知徹底させる努力をさらにさらに続けてもらいたいと思うが、この点についての考えを聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/20
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021・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 今、実例についてお話をちょうだいいたしました。とりわけ建設事業は全体として労働時間の短縮がおくれている業種でございますが、そういった中で、お話がございましたような苦労を重ねながら週四十時間制等を達成していただいた事例、大変貴重な例として承りました。私どもも、秋田県で、こういった事業場をモデルとして、そういった事業場の経験の例を他の事業場にも紹介するなどの努力を重ねているというふうに伺っております。
とりわけ、御指摘いただいた例で承っているところでは、従業員の一日の行動を非常に綿密に調査してむだな行動をなくすような改善、あるいは従来のコンピューターソフトでは満足できないで新しいものに切りかえていったとか、あるいは役割の明確化とか現場詰所の環境改善をして作業効率を高めた、そういったことをやりながらの四十時間制の実施と聞いております。
私ども、今までの事例の中でも、週四十時間制に踏み切った、そのためにいろんな事業の見直しを行い効率化を図って、むしろ四十時間制に踏み切った後は企業体質が強くなった、こういうことをおっしゃる経営者の話も聞いておりまして、先生御指摘がございましたように、そういった事例を好事例として、この四十時間制を定着させるための指導や援助の中で随時関係者、関係事業主にも提供して、この四十時間制に踏み切っていただくことを強く勧めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/21
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022・小山孝雄
○小山孝雄君 努力をしているところはぜひ大いに顕彰し、認めて、ほかのところの参考に資していただくという努力をさらに続けていただいたらよろしいかなと、現場に行ってそのようなことを感じてまいりました。
それで、指導期間を置くとは申せ、法は法として厳然としてあるわけでございますから、不公平な競争を許すことにならないように監督をしなければいけません。その体制は十分でありましょうか。
例えば、昨年の暮れ、長野県の小谷村での土砂崩れの事故でたくさんの方が死亡した大事故がございました。労働省としては、たしか長野基準監督署が去年の夏から警告を発しておったけれども、その警告が守られなかった、それがあの大事故につなかったと、こういうふうにもあのときは指摘されたわけであります。
現在の監督官の定数で足りるのかどうか、行革の時代でありますから、ふやすということはなかなか言いにくいわけでありますけれども、労働省の中でも、不必要な分はみずから切ってでもそちらに人員を振り向けるということも必要になるのかなと。今の監督官の定数で足りるのかどうか、そしてまたそれを充足する検討はいかがかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/22
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023・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、私どもの労働基準行政、労働時間短縮あるいは労働災害の防止、いろんな課題を抱えている中で、この監督官を中心とした監督指導体制は十分かという御指摘に対しましては、私ども、残念ながらなお一層そういった面を充実させていくための努力はしなくちゃいかぬというふうに受けとめております。ただ、厳しい行財政改革を進めなければならない一方の中でございますので、そういった状況と十分調和をさせながら引き続き努力はしてまいりたいと思います。
ただ、この労働時間短縮、とりわけこの四月一日からの週四十時間制の達成に向けての指導は、私どもの行政の最重要課題として、いわば各都道府県の労働基準局、労働基準監督署の総力を挙げてこの指導に努めてきたところでございます。それは監督官のみならず他の職種の職員につきましても、この問題に向けて一致協力する体制をかねてよりつくってきたところでございます。
この四月一日からは労働基準法が全面的に実施されるわけでございまして、この残りの指導期間という期間につきましても、むしろ私どもにこれを確実に定着させる任務を負った期間というふうに受けとめておりますので、今までの監督官のみならず、基準行政全体が一致協力してこの問題に当たる体制を一層強化いたしまして、この四十時間制の定着を目指してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/23
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024・小山孝雄
○小山孝雄君 ぜひさらなる御努力を要請いたします。
それから、私は自民党の時短検討プロジェクトチームの一員として今回の措置の取りまとめに参画した者でありますけれども、その当時、中小企業団体や商工会議所などから出された意見というのは、ただでさえも国際競争力の低下が心配されている今日、時短をやることによってさらにコスト増を招けばこの不況下ではとてもやっていけないよと、こういう意見であったと思います。
コスト増をカバーする手だてとしてどのような対策を考えておられるのか。さらにまた、労働側からすれば実質的な収入減になってはかなわないということで残業をふやしたりするのじゃないかという心配もあります。時短の実現のためには労働者側の考えも非常に重要だと思うわけであります。さらにまた、サービス残業などというものも行われるようになるのかなと。またその実態についてどういうように把握をしておられるのか。
コスト増をカバーするための手段、それから労働者側の考えが非常に重要だと思う点はいかがかということ、サービス残業の実態について、三つお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/24
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025・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) これからの時短を進めるに当たって、それらの問題とコストの問題との関連についての御指摘でございますが、今、日本の経済の状況を見まして、やはり輸出産業は国際的にも十分通用する生産性を持ちながら、一方ではかなり低生産性の部門が残っている、このことがいろいろ内外価格差等の問題も生んでいる原因の一つであろうというふうに受けとめております。今後世界的な厳しい競争が広がっていく中で、中小企業も生産性の向上なり効率性の向上、そういったことで企業体質を強めていくことがやはり今後の中小企業が頑張っていただくためにも不可欠の課題であろうと思っております。
労働時間も、事業主の方から見て単にコストとしてだけとらえるのではなくて、生産性の向上、効率を上げる、そういったことを通じて経営体質を強化していくことにつながる一つの契機なんだと、こういう観点からとらえていただこう、その辺の趣旨を十分御理解いただこうと思っております。
私ども、そういったことを御理解いただいて労働時間短縮に取り組む事業主の方に対しましては、省力化投資や労働時間制度の改善に取り組む事業主に対しまして助成制度等を用意し、ノウハウの提供とあわせて活用しながら進めていく、そういうふうなことを積極的に進めてまいりたいと思っております。
そういうことで生産性、効率性が上がることでこの労働時間短縮に伴うコストが吸収されていけば、労働者の方にとっても全体として実質的な収入減等を伴わない形でこの労働時間短縮が実施されていくわけでございまして、そのことが一番望ましい姿だということで、私どもそういったことに向けて最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
それからもう一つ御指摘がございました。労働時間短縮が進む一方で、実質的な残業をサービス残業というようなことで表面化させない動きが出ないかどうかという御指摘でございますが、こういった点につきましては、かねてから私どもそういったものはあってはならないということで、監督指導の一つとして取り上げてやってきたものでございますので、引き続き監督指導はそういった点につきましても厳しく進めてまいりたいと思いますし、労使の間でそういった点についても厳しくお互いに見詰め合っていただいて、いろんな問題点等があれば私ども窓口で幅広にそういった御相談も引き受けながら、そういった問題がもしあればその解消に向けて積極的に努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/25
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026・小山孝雄
○小山孝雄君 次に、女性の社会進出と時短の促進ということについてお尋ねをいたしますけれども、なかなか時短が進まないと女性が職場と家庭を両立させられない、こういう面があろうかと思います。逆に言えば、女性の職場進出が時短を促進することになるのじゃないかと、こう考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/26
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027・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、女性の社会進出、職場進出が非常に進んでおりますし、もちろん男女が機会を均等に与えられ、その能力を存分に発揮する体制をつくっていくことは大変重要なことでございます。
そういった側面、あるいは女性の方の能力を大いに活用したいという事業主もふえていることでございますので、そういったことを考えますと、今後、職場と家庭、そういったことに対する視点、こういうことから労働時間のあり方というものを考えられる事業主あるいは労働組合関係者も大分ふえてくるのではないかと、そういうことを期待しているところでございます。
したがいまして、今後、労働時間短縮というものが着実に進むための一つの契機として、また私ども含めて労使の方に労働時間短縮というものを考えていただかなくちゃいかぬ背景の大きな問題として、私ども御理解を得るように努めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/27
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028・小山孝雄
○小山孝雄君 先進国の中あるいは途上国と比較したときに、我が国の総労働時間の水準というのはどういうふうな位置づけになっていますでしょうか。OECD加盟国あるいはWTO加盟国、例えば一つの基準でございますが、その中でどういう水準にあるのか。結局、日本に対する国際間の批判等々についてはいろいろあるわけでございますけれども、日本は国際ルールを守らないじゃないか、アンフェアじゃないかということが一番、この労働時間だけじゃございません、いろんな点に関して言われることがよくあるわけでございますが、水準はどのような位置づけになっておりますか。大ざっぱで結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/28
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029・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 労働時間の国際比較でございますが、いろんな統計のとり方によりまして単純な比較はできませんが、いわば製造業の生産労働者について推計をいたしまして年間の総実労働時間を各国と比較いたしますと、一九九四年の時点で我が国は千九百六十六時間となっております。したがいまして、アメリカの二千五時間に比べるとそれより短い。ただ、フランスの千六百七十時間あるいはドイツの千五百四十二時間というものに比べるとかなり長い状況になっております。
そのほか、例えばアジア諸国等についてどうかと、こういうことの御指摘でございます。その辺の比較につきましては、正直、今の推計方法では単純に比較できませんで、ただ製造業について見ますと、韓国、台湾、シンガポールにつきましても二千時間を超えている状況にあるというふうに承っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/29
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030・小山孝雄
○小山孝雄君 少子・高齢化社会が今後猛烈な勢いで進んでいくでありましょうし、必ず近いうちに人手不足現象も起きることであろうと思います。時短を促進して共働き家族を支える社会基盤というものも整備していかなくちゃいけない、こんなふうにも考えるわけでありまして、今回の措置というものは大変重要な点だと、こう思っているわけでございます。
そこで、時短が進むことによって働く人たちが時間的に余裕ができるという、これが一番の大事な点だと思いますが、そうすることによって自己を高め新たな自己啓発をしなければならない、またそういう時間的な余裕を持つわけでありますが、労働者に対する自己啓発の支援措置、これが大事だろうと、こう思うわけでありますが、この点についてどう考えるのか。
例えば今、特殊法人の整理、統廃合なども進められておるわけでございますが、新聞紙上、マスコミ等では雇用促進事業団の統廃合も対象になっております。あそこが進めている能力開発の業務はこれから大事な点だと、こう思うわけでありますが、時間的に余裕ができた勤労者に対する自己啓発の支援措置等々についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/30
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031・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、労働時間短縮、単に労働時間を短くするということでなしに、それによってふえました自由時間を家庭あるいは地域、それから自己の能力を高めていくためのいわば充電期間、そういったものとしてバランスのとれた形で活用していただくことが必要かと思っております。
とりわけ、我が国の経済社会、産業構造等が変わる、あるいは国際化が進む中で国際的な対応能力を身につけること、あるいはますます高度化してまいります情報通信、そういったものを使いこなせる能力を高めていくこと、あるいはこれからの新しい事業分野、あるいは付加価値の高いものを生み出していく、そういった分野で活躍できるための能力を身につけていくこと、こういったことが大変大事かと思っております。そういうことで、御指摘ございましたように、勤労者の方が事業主から言われた、それをオン・ザ・ジョブ等で身につけていくためだけではなくて、みずから主体的に自分の能力を磨いて活躍していくこと、これがいわば社会全体の活力につながるだろう。
こういう見地から、自己啓発のための援助、助成制度を私ども進めてきておりまして、とりわけ来年度に向けましては、自己啓発助成金につきまして要件緩和を行いますと同時に、例えば事業主の方がそれを受けやすくするための労働時間を初め環境整備をする、そういった場合の助成制度等も新たに加えながら、そういう主体的な形での自己啓発、こういうものを進めていこう。こういったことで、そういった奨励制度等もこれからの産業構造の変化、あるいは構造改革を支える重要な施策の柱として、雇用促進事業団の各都道府県の雇用促進センター等を通じて、そういった活動を積極的に展開するための準備を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/31
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032・小山孝雄
○小山孝雄君 大事な部門でありますので、しっかりこれからも取り組んでいただきたい、こう念願をするわけであります。
時間がなくなっております。最後に大臣にお尋ねいたしますけれども、大臣、「たまごっち」という言葉を御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/32
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033・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 申しわけありません。存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/33
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034・小山孝雄
○小山孝雄君 若者の間で大変人気があり、またこれは私もよくわかりませんが、大変人気のある、何というんでしょうかね、これを開発というかつくり出したのは三十二歳か三歳の主婦というか、勤めてはいるんですけれどもそんなに朝から晩まで働いている人じゃなくて、本当に短い時間働く女性であります。その方が「たまごっち」の母と言われるんだそうであります。そのように、非常に時間的な余裕のある働く人が新しい製品を開発し、新しい時代の企業の発展を支えていく、こういうふうな見本としてこの前テレビで取り上げられておりました。
そういう意味におきましても、時間短縮を促進することによって働く人たちが時間的な余裕を持つということは大変大事なことだと思うわけであります。そういう意味におきましても、裁量労働制だとか変形労働時間制なども大変大事なこれからの施策になってくると思いますが、そういった点も含めまして、時短促進に取り組まれる大臣の御決意のほどを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/34
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035・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生、「たまごっち」とかいうお話をなさいましたので、似たような話をいたしますと、釈迦は菩提樹の下で座禅を組んで天啓をもらった。湯川博士は長ふろで、ふろ場にゆっくりつかっている間に例の発見をされた。
私は、熊本の委員長の近くにしばらく生活をしたことがありますが、近くに電気通信先端機器メーカーの、名前は有名なその工場があります。ところが、どうも最近出てくるところの半導体、これが少し欠陥商品が多くなった。それで、なぜだろうなぜだろうというようなことを経営者考えたけれども、わからない。
ところが、日本はまことに幸せなことに、従業員の諸君が全員参加で自分の工場を立派にしようというそういう意欲を持って、そうして、ある従業員が電車で通っておったそうであります。そうしたら、この間、踏切を直したんだそうです。ごっとん、ごっとんという電車が踏切を渡る振動が何か影響があるのではないかということをこの会議で発言して、詳細調べたところそのとおりだった。これが疲れ果てた労働者でずっと眠って通っておったら、踏切のごっとん気がつかなかったと思うのであります。そういう意味合いでは、先生おっしゃるように、ゆとりがあるということでないと斬新な発想はできないなと。
それから、裁量労働制等の話でありますが、やっぱり勤務といいますか労働の態様というものが変わってくるわけですね。マニュファクチャーから蒸気機関車の機関の発明だとか電気機関の発明だとか、このごろはどんどんコンピューターをというようなことになると思います。コンピューターが進みますと、それ在宅勤務だというようなことになりますね。流れ作業の間は、拘束労働時間何時間、休憩時間何時間、休息時間何時間というようなことで労働の提供をしてもらうという、言いますならば労働管理のあり方というものがあったと思います。
ところが、そういった事業場の中身、労働の提供の仕方、態様、特に質的なものを求められるということになりますと、在来の時間管理というものは大幅に変わってくる。その中で、裁量労働制でありますとか、変形労働時間制の採用でありますとかというようなことのメリットと、それから時間短縮にこれを貢献させるといいますか、それを活用して時間短縮に結びつける。いろいろな要素がありますので、裁量労働制とか、あるいは今お話をした変形労働時間制とかいうようなもののあり方、こういうものを私は今関係審議会に御意見を伺っている真っ最中であります。ぜひ時短を推進するためにも立派な答申をいただきたいものだなと、かように考えております。一生懸命時短に努めますので、よろしくお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/35
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036・小山孝雄
○小山孝雄君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/36
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037・今泉昭
○今泉昭君 平成会の今泉昭であります。日ごろ労働行政で大変御苦労なさっていることに感謝申し上げたいと思います。
先日、実は本会議で私この労働時間短縮の問題につきまして限られた時間で質問申し上げましたが、あの質問は大変大ざっぱな大きな問題でございましたけれども、きょうは百分ほど時間をいただきましたので、少し細かい点に立ち入っておつき合いを願いたいと思っております。
日本の労働条件問題の中での重要な柱である労働時間短縮の問題が取り上げられたのは、一九八〇年の例のG7の合意の時期を中心としまして、日本の経済発展に対して先進諸国がどうもアンフェアではないかと、いろんな意味でのアンフェアの問題を取り上げて、その中の一つに労働条件の問題、労働時間の問題もあるのではないだろうかというところがもともと私は発端になっているような気がしてならないわけであります。
労働基準法は、昭和二十二年に制定されて以来四十年間ほとんど手もつけられずに、この労働時間の問題は放置されてきたような状態でございました。西暦で言うよりも昭和で言った方がいいかもしれません、昭和六十一年に例の前川レポートが出て、それから昭和六十二年に新前川レポートが出て、そのときに日本も千八百時間を目指した労働時間制を考えなきゃいけないというのが契機になったような形で、労働基準法が一九八七年に、これまで四十八時間だったのが原則四十時間という定義がなされ、政令において四十六時間というのが翌年の四月一日から実施された。これが実はきっかけで今日のこの労働時間問題というものの流れができているのではないかというふうに私は判断をしているわけであります。
たまたま、男女雇用均等法が出されたのも十年前で、ことしはこの男女雇用均等法が根本的に改正されるのと同じように、この労働時間短縮四十時間制度の問題もちょうど十年目を実は実質的に迎えているんではないかと思うわけでございまして、そういう意味で、労働時間短縮の問題というのを、やはり本腰を入れてぜひひとつ行政としても取り組んでいただきたいと思うわけでございます。
そこでまず、いろいろとこれから質問やら意見を言う前の前提として、少し現状認識をお互いに合わせておきたいと思うんです。
まず、現在の我が国の労働時間の実態について少しお聞きしたいと思うわけであります。
昨年発表された労働時間調査によりますと、我が国の労働時間の実態は、平均で言うと千九百十九時間だと、こういう調査の結果が出ているわけでございます。ところが、これをよく調べてみますと、実際、全労働者の実態調査じゃないわけですね。三十名以上の企業に働く労働者の実態調査でありまして、現実の日本の労働時間というのはもっともっと長いんじゃないかというような私は考え方を持っているわけでございます。
と申しますのは、これは調査室からいただいた資料なのでございますが、この調査室の資料によりまして私自身が素人計算をしてみますと、一番この四十時間が実現できていないところは中小零細企業である。特にこの資料によりますと、一つの業種の例でしますと、製造業において一人から九人の事業所におけるところの四十時間労働を実現している企業の実態というのは、ことしの平成八年の実態で二七・八%だという数字が出ております。
この率をもとにして計算をさせていただきますと、同じように実は事業所別の企業規模別の従業員数まで明らかにされているわけですが、一番四十時間制度が実施されていないところで働いている労働者の数というのは、何と二千四百十六万人いるわけであります。その中で、先ほど申し上げましたパーセントを適用してみますと、何と二千二百三十一万人の人たちというのは四十時間労働の外の枠におられる方でありまして、その方々の実は労働時間の実態調査というものがその千九百十九時間の中にあらわれてきていないんじゃないかと思うんですね。恐らくこの時間帯で働いているこの事業所の方々が一番長い労働時間で働いているんじゃないかと思うんですが、そういう実態にあるという認識を持ってよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/37
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038・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、千九百十九時間という年間総実労働時間は、毎月勤労統計調査によりまして、三十人以上の規模で調査をいたしておるものでございます。一方、私どもの窓口監督官等が指導に回る中で把握いたしました週四十時間制の達成状況につきましては、御指摘のあったとおりでございまして、規模が小さくなるほど四十時間制の達成割合がかなり小さくなってくることも事実でございます。
そういった状況の中で、まず毎月勤労統計調査によりましてこの千九百十九時間というものを規模別に見てまいりますと、五百人以上が千九百十三時間でございます。それから、百人から四百九十九人の規模で千九百八時間、それから三十人から九十九人という規模で千九百二十八時間と、こうなっております。
大きな差が見られないわけでございますが、これはある意味では、所定内の労働時間が中小企業は長くて残業が少ない。大企業の場合はちょうどその逆になっておりまして、所定労働時間が短いけれども残業が多いと、こういう形であらわれてきております。
御指摘のとおり、三十人を下回る事業場においての状況がわかりませんので正確なことを申し上げられませんが、ただ、四十時間制の達成状況等から見て、ある程度この総実労働時間が長い傾向がもし調査すればあらわれてくるんではないかということはうかがわれるわけでございまして、それがどの程度の大きさになるかは、今申し上げたような状況からちょっと即断はいたしかねる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/38
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039・今泉昭
○今泉昭君 そのような状況を私独自で推計いたしますと、恐らく日本の労働時間の実態というのは二千時間をはるかに超えているというのが偽らざる現実ではないかと思うんですね。東南アジア諸国とよく比較をされて、東南アジア諸国は二千時間以上を上回っているじゃないかというようなことがよく言われるんですが、これは統計のとり方次第にもよってくるんでしょうけれども、まだ我が国の労働時間というものは大変長いという私は認識に立ってこの問題を取り上げなきゃいけないと思うんです。
労働大臣にお伺いしたいと思いますが、四十時間という制度を目指して取り組むということ、そして年間千八百労働時間を実現するという決意を持って政府としていろんな施策をとっていくということでございますけれども、いろいろ問題はあるんですけれども、限られた二年間の行政指導の間に果たしてこれがただ行政指導ということだけで実現できるのかどうだろうか。こういう質問はちょっと無理な質問かもしれませんけれども、労働大臣の思っていらっしゃる気持ちをちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/39
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040・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生のお話の中にもございましたが、世界の趨勢といいますか先進国の趨勢、これはやはり労働時間短縮の方向にあるわけであります。そして、そういった世界の中で日本が働き過ぎであるというようなダメージ的な印象というものもぬぐいがたいというようなこと、そしてこれから労働を提供してくれる皆さんの心のゆとり、生活の豊かさ、あるいは職場生活と家庭生活との共存等々の観点で、千八百労働時間というものを目指して、その具体的手段としてこの四月一日から週四十時間労働制に完全に踏み切るということでこの法律案を御審議いただいております。
それに踏み切るために、先生のおっしゃる二年間の指導、助言を申し上げるそういった期間を設けるほか、勤務時間短縮、四十時間労働制の実施のために中小企業の経営者の皆さんが省力化装置というようなものを導入する、あるいは変形労働時間等々をいろいろ活用する、そういった経営相談というようなものの皆さんの考えを聞いて、就業規則を改めて四十時間にするという、言いますならばポジティブアクションというような行為につきましては、これを助成するというような我々のPRとともに、あれやこれやの手法をないまぜにしまして、ぜひひとつ四十時間定着ということに持ってまいりたいということでこの法律案を提出いたしました、そんな次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/40
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041・今泉昭
○今泉昭君 大変厳しい現実でございますけれども、ぜひその意気込みで、四十時間労働制が完全に実現できるようにひとつ頑張っていただきたいと思うわけでございます。
そこで、いわゆる週四十時間労働というものと、全体的な経済計画の中で盛られた千八百時間という数字、ちょっとこの間の関連をお聞きしたいと思うわけなんです。週四十時間労働というのは、これは基準法に定められるわけですから、我が国の国民にとりまして、働く者にとりまして一つのミニマムであろうというふうに考えるのは当然だろうと思うわけであります。
これで計算をしてみますと、基準法上でいろいろ制定されている数字をあれこれいじくり回してみますと、一年間三百六十五日、百四日の土日休日があります。祝祭日がことしは十四日ありますが、一日ダブっていて十三日実質的にはある。そして、有給休暇がミニマムで十日与えられている。これを完全にそのままやったとしても千八百時間をはるかにオーバーしているわけでございますが、現実の姿としてはそれ以外に時間外労働というものが必ずついて回っているわけです。
そういう意味で、ミニマムの四十時間労働、それからそのほかの労働基準法に定められた各種の労働、休日の問題等々と、一般的に言われている一千八百時間というものがどういう整合性を持っているのか。ただ単なるキャッチフレーズなのか、平均的な数値なのか、あるいは千八百時間という年間の総労働時間のミニマムのつもりなのか、その辺をちょっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/41
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042・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生ももう既におっしゃっておられますが、我々は、千八百時間といいますものは、それを目指して努力をしようではないかということであります。そして、その千八百時間というのは一人の労働者について年間千八百時間というような意味であります。ところが、これも先生おっしゃいました、四十時間労働制というのは、一人の労働者について週四十時間ということで、強行規定ということで罰則まで準備をされているわけであります。したがいまして、平均的な千八百時間になるようなことを目指して、そして具体的な手法として今御審議をいただいている週四十時間労働制をやろうと。
ただ、計算をいたしますと、先生がおっしゃるように、これだけじゃとてもじゃありません。したがいまして、年次有給休暇のより多くの完全消化を目指しての努力、そして所定外労働時間を極力縮減していくというような三本柱を具体的な手段として一つ一つこなしていこう。企業等によりますと、週休あるいは年休のほかに特別休暇などという名前のもとにいろいろな休暇がとれるというものもあったりなんかいたします。その中には奨励すべきようなものもあるわけでございます。
というような意味合いで、これから具体的に実現をするためにも、年次有給休暇の問題でありますとか、所定外労働時間の問題でありますとか、そのありさま等々について検討していかなければならない。そのためには、ひとつ審議会でも御意見を賜りたいというようなことで今進みつつある、そんな次第でございます。よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/42
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043・今泉昭
○今泉昭君 事務当局の方から追加ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/43
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044・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 四十時間制と千八百時間というものがほかの要素とどういうふうに関連し合ってどういう位置づけになっているのかという点については、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
この千八百時間というものは、前川レポートで目標として取り上げられまして以来私どもの行政目標となってきておるわけでございますが、千八百時間を達成する場合の一つのモデルケース、これにつきましては、昭和六十三年に経済審議会の国民生活部会で示されたものがございます。その中では、いろんな要素が千八百時間を決めるわけでございますが、まず所定内の労働時間でございますが、当時の実情から、平均に近い七時間二十五分を基礎にして計算をいたしておるわけでございます。
それから所定外労働につきましては、大体百四十七時間程度を見込んだモデルになっております。これは年間のあれでございますが、当時はまだ所定外が約百八十時間を超えるか超えないか、そういう高いレベルでございましたので、かなりの目標値ではあったわけでございます。
それから週休につきましては、週四十時間制を前提にいたしまして完全週休二日ということを想定いたしております。そのほか、有給休暇については二十日の完全取得、こういうことを想定いたしております。そのほかに国民の祝日、会社独自の休日等を合わせたものを前提にいたしまして、それらトータルで千八百時間というモデルを描いておるわけでございます。
これは一つの到達すべき目標のモデルとして私ども理解はしておりますが、やはりその中で一番のかぎを握るのは、数量的に大きいものは、まず週四十時間制が定着することが一番大きいかぎを握るだろうというふうに受けとめておりまして、週四十時間制というものを中小企業を含めて実施する、そのことに向けて私ども努力を重ねてきたわけでございます。これの完全定着を図りつつ、さらに、大臣から答弁申し上げましたように、労働時間管理のルールにつきまして、残業時間のあり方、あるいは有給休暇のあり方等、現在関係審議会で御審議願っておりますので、そういった結論もいただいて、さらなる労働時間短縮に結びつけていく、そういう努力を次のものとして私ども対処してまいりたいと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/44
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045・今泉昭
○今泉昭君 千八百労働時間に向けての今後の目標づけに向けまして、週四十時間労働の実現の後に新しい取り組みを検討されていただきたいと思っておるわけでございますが、その前に四十時間労働の具体的な実施状況をさらに見てみますと、これも同じように調査室の方で出していただきました具体的な進行状況を見てみますと、ことしの四月一日から四十時間労働の実施を予定している企業というものが、さきに申しました実態よりも大幅に倍増しているような状態にある。これは大変結構なことではないかと私は思っておるわけでございます。
しかしながら、大幅に増加はしているけれどもまだ相当数のものが残っているわけでございまして、なかなか計画にまでこのようなことが実現でき得てないという一番大きなネックというのはどのように考えていらっしゃいますか。ちょっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/45
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046・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 私どもの調査では、今現在四十四時間で猶予になっている対象事業場のうち四十時間に到達しているものの割合が約三六%でございます。ことしの四月時点で四十時間になる、そういうことをやりますと、こう答えているものが約五六%ぐらいでございまして、かなりまだまだ私ども努力を要する状況というふうに踏まえております。
そういった週四十時間制が中小あるいは零細事業場を含めましてなかなか実施が困難な理由でございますが、まず一つは、こういった経済情勢の中で労働時間短縮に踏み切るためにどうしてもコストがかかるんではなかろうかと、そういったコストを吸収する方策について迷っておられるところ、こういうことが一つあるかと思います。それからもう一つは、やはり同じ地域あるいは業種等で横並び、これはいいことか悪いことかは別といたしまして横を見るというようなことで、ほかが踏み切ってくればうちもやらなくちゃいかぬ、四月一日からの実施ということで全体の達成率が低いこともありまして、その辺の意識がまだついてきてくれないこと。あるいは業種によりましてはかなり競争が厳しい業種がございます。建設業、あるいは規制緩和が行われましてから新規参入等でかなり厳しい競争が出ております運輸関係の業種等では、そういった競争関係の中でなかなか四十時間というものにまだ取り組む余裕がなかったというようなことをおっしゃる事業主もおります。もう一つは、そういう業種と関係いたしますが、発注者の方の、あるいは商慣行の中でどうしても下請あるいは発注先の企業に無理を強いてしまう、そういった発注なり商慣行がまだ十分に改善されないで残っている。
そういうことが四十時間達成にマイナスの効果を及ぼしているんではなかろうか。そういうことがいろんなケースで複合した形で現在の状況になっておるものと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/46
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047・今泉昭
○今泉昭君 未達成企業の中心が中小企業ということでございまして、中小企業対策というものをどのように行っていくかというのが非常に重要になってくるわけでございます。
特に喧伝されるのが、労働時間短縮というのはコストアップ、コストアップというふうにすぐ結びつけて宣伝されてしまうわけでございますが、中小企業を管掌されております通産の方も見えておりますので、通産の立場からこの労働時間の短縮のネックというのはどういうふうに考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/47
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048・小野浩孝
○説明員(小野浩孝君) 先ほど労働基準局長の方から御指摘ございましたけれども、中小企業にとりましてこの時短問題の最大のネックとなっておりますのが、非常に厳しい経済競争にさらされつつあるということでございます。
要因は幾つかございますが、最大のポイントが最近のアジア諸国との競争でございまして、このコストを十分吸収できないという問題点が最大のポイントになっております。それから第二のポイントが、先ほど御指摘ございました、規制緩和ということで非常に厳しい競争にさらされているということでございます。
ただ、先生御指摘のように、時間短縮ということについては、企業の生産性を上げて対処しなければならないということがあることも半面でございまして、中小企業、そのような努力をしている企業もあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/48
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049・今泉昭
○今泉昭君 実は、これもまた調査室の資料によりますと、時短を進めていく上での障害ということで調査の結果が出ているわけでございまして、一つは親企業との関係、もう一つはコスト要因ということでございます。
特に親企業との関係で言われていることは、発注量の波が激しくて生産の平準化ができないとか、あるいは受発注が短納期であるとかというような、要するに親企業だけではなくしてお得意さんとの取引の関係があると思うんですが、中小企業の分野におきましては、下請振興法が改正をされて、そういう意味での中小企業の健全なる生産活動ができないような条件をできるだけ整備していこうではないかということが強く言われてきたはずでございますけれども、そういう面において、中小企業庁におきましては、今の下請振興法、まだまだそういう意味で足らざる点が多いというふうにお考えですか、今の法律で十分だというふうにお考えですか、ちょっとお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/49
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050・小野浩孝
○説明員(小野浩孝君) 先生御指摘のように、下請中小企業の労働時間短縮には親企業の発注方式等の改善が非常に重要なポイントになるというふうにまず認識をしておるところでございます。
このため、平成三年に下請中小企業振興法の振興基準を改正いたしまして、時短の妨げとなる発注の抑制を親企業の協力事項として追加したところでございます。具体的には、親企業を対象としまして、この振興基準を含めた講習会等をやってこの徹底を図ってきているところでございます。
これについて、現在のところ、このような対策をさらに徹底し強化していくということを当方で考えておりまして、ことしの四月に向けてその準備をしているところでございますが、法律上の不備ではなく、このような施策の内容を十分に徹底していくということで現在考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/50
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051・今泉昭
○今泉昭君 コストアップ面について少しお聞きしたいんですが、労働省が平成三年に労働時間短縮が生産性向上に及ぼす影響に関する調査というのを行われていると思うんです。その内容によりますと、要するに労働時間の短縮というのは結果的に、その数字を見てみますとコストアップにつながるという短絡的な結果だけじゃないんですよね。労働時間の短縮によって生産性が逆に向上しているという各企業のアンケートに応じた姿が見えるわけなんです。
私は、何かもう労働時間短縮をやると中小企業は弱いからコストアップ負担に耐えきれない耐えきれないというところばかりが前面に出てきているような状況が見られるんですが、労働省では、その後こういう面についての調査研究、これは中小企業庁でも結構ですが、いわゆる時間短縮と生産性の向上との関連についての調査研究、何かデータがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/51
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052・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 統計的な手法をもって調査いたしましたのは先生御指摘ございましたものでございまして、その後、私ども労働時間短縮を進める過程で個別の好事例の収集等に当たっております。そういった中では、先生御指摘のように、この労働時間の短縮というものを進めるに当たって、業務全体のあり方をもう一回とらえ直したり、あるいは作業態様を分析してむだな部分をなくす工夫をしたり、いろんな効率化、生産性を上げるための工夫等を十分施した上で四十時間制に踏み切っていく、こういうケースが多いわけでございます。そういったところからは、むしろ四十時間制を実施した後がなり職場全体の効率性の向上につながった、あるいはモラールの向上につながったというような報告は受けております。そういった個々の事例としては私ども把握をさせていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/52
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053・小野浩孝
○説明員(小野浩孝君) 中小企業庁といたしましては統計的なデータまではとってございませんが、個別の事例が生産性の向上につなかったという事態の把握はしておるところでございます。
これを生かしまして、労働省の方で中小企業団体の方に委託をしてパンフレットを現在作成しているところでございまして、このパンフレットの中に時短によって生産性が上がった事例をふんだんに盛り込んで、そしてこの時短に向けた取り組みを行うように現在要請を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/53
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054・今泉昭
○今泉昭君 中小企業白書などを見てみますと、中小企業の経営者が一番やっぱりコスト負担で大変だ大変だと言っているのは、実は物流コストが最大でございます。労働コストの負担というのもその中には出ていますし、またエネルギーコスト、土地代等、そういうようなコスト負担は大変なことは重々承知をしているわけでございますが、労働時間短縮になると、すぐそれがあたかも企業の足元を揺るがすような宣伝がされて労働時間短縮に二の足を踏むという経営者が多いわけでして、むしろ労働時間短縮が生産性の向上に多くかかわっているんだという点を強く強調していただきたいと思うんです。
例えば、先ほど私が申し上げました労働省の調査の中をいろいろ見てみますと、マクロ的な推計によれば、所定内労働時間を一%短縮することによって生産性は三・七%向上しているんだ、出勤日数を一%短縮すればこれまた同じように生産性が三%以上上がっているんだというデータもあるような状況ですから、ただ単にマイナス点ばかりを宣伝しないような指導をぜひしていただきたいと思うわけでございます。
そこで、これに関連して少しお尋ねしたいと思うんですが、さきの本会議の質問のときにも私申し上げましたけれども、経済四団体が傘下の中小企業の方々に、具体的な労働時間の短縮に当たって、コスト負担の増大を避けるというところから、基本給の引き下げをしても時間当たりの賃率が下がらなければいいんだから、そういうやり方もあるんだという指導をされているという文書が出回っていると申し上げました。
私自身もこの文書を手元に今持っておりますけれども、これが二月七日に、これは労働省に対して連合からもこの問題についての文書が来ているのではないかと私は思うわけです。申し入れなり見解のことについてのいろいろな申し入れが来ていると思うのであります。
前回、本会議で私は労働大臣にお尋ねをしましたが、労働大臣は私の耳に入っていないというようなお答えでございました。しかし、この問題につきましては、さきの衆議院の労働委員会におきましても我が新進党の同僚議員が質問をしているわけでございまして、労働大臣は全く相知らないということではないと私は思うのであります。
大変重要な問題でございますので、連合から申し入れられているこの問題についての見解、労働大臣あてになっている文書であったはずでございます、それから衆議院の労働委員会で質問をされたのも聞いていたと思うんですが、労働大臣、この文書の中身についてどのようにお考えかちょっと見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/54
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055・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 衆議院の労働委員会でもお答えをいたしました、あるいは予算委員会でもそうかなと思うのでありますが、間違っておりましたらごめんなさい。先般、先生の本会議における御質問、これにつきましても大体同じことを言っております。
といいますのは、実態的に言いますと、日本商工会議所を初め中小企業等の団体も、四月一日からこの週四十時間労働制、これは実施しなければならないというような方向でいろいろ指導をし周知をしている、これは当然の責務だ、こう私は思っております。そのために、先生がお話しのようにケースメソッド的にこういうようなやり方もあるよ、こういうようなやり方もあるよというようなことを文書だか雑誌でやっていると、こういうふうに私は聞き及んでおります。物そのものを見ているわけではございません。
ということで、先生の御質問が本会議では、労賃の引き下げについて、あるいは給与の引き下げについてでございますか、中小企業団体等が指導をしている、それをどう思うかということでございましたので、賃金の引き下げについて中小企業団体等がそういう指導をしているというふうには私の耳には入っておりません、こういうふうにお答えしました。
あの本会議というのは、なるべく短くしろ短くしろということでありまして、結局十五分も私はあけさせたのでありますけれども、これは諸会派で構成する議運の皆さんの御意向に従ったものでありますが、きょうは多少、先生は午後までお時間があるというお話であります。
いろいろケースメソッドの中で、今言った趣旨に基づいて本会議でお話をいたしましたが、一時間の労賃が今まで千円だったという場合に、一週間が四十四時間労働制であれば、その労働を提供してくれている人に対して労賃は千円掛ける四十四イコール四万四千円だとあのときお話をいたしました。ところが今度四十時間になっちゃった。そうすると、同じ質の労働を提供していると仮定をいたしますと、千円掛ける四十四ではなくて四十になって四万円になる、したがって労働者の手取りというものは四万四千円だったものが四万円になっちゃう。しかしながら、そうだとしても、それは合理性に欠けている、したがって法に触れるというものではないと。
ただしかしながら、先生おっしゃるとおりであります。四十四時間が四十時間になった、土日が休みになったということになれば、そこで心身ともにリフレッシュする機会というものが生まれるだろうし、あるいは自己啓発でパソコンならパソコンを物にするというような場合もあるでしょう。そうすると、その経営体全体としては非常に生産性というものが上がって収益の増に結びつくかもしれない。そうだとするならば、その賃金は労使の間の団体交渉で決めるべきものである、したがってそれぞれの企業体、それぞれの提供する労働の態様等々をつまびらかにしているその労及び使にゆだねたらいかがであるか、こういうことを先般の本会議ではお話をした、あるいはお話をするつもりでございました。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/55
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056・今泉昭
○今泉昭君 私は、それについて労働省としてなかなか言いにくいかもしれませんけれども、そういう指導をするというその指導のやり方についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/56
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057・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 私は、単なる法の解説ではなくて個々のケースメソッドをやるというのは、私も長くその職場の諸君と一緒に仕事をしてきました。とかく役人というものは抽象的な話をし、したがって具体的なことについては余り言い過ぎると、間違っていると後で責任をしょわされる。減点主義的な雰囲気が非常に大きいので、したがってそれでは第一線で営業をしてくれている諸君のためにはマイナスになるというようなことで、ケースメソッドによるところの指導といいますか介入というものは非常に効果の大きいものであります。
私は、中小企業団体等の文書というか雑誌は見ておりません。だけれども、政府委員等々から聞きましたら、ケースメソッドでやっている、それは本当に立派な手法であるなど、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/57
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058・今泉昭
○今泉昭君 労働時間短縮というのは、政府の文書にも明らかにされておりますし、また各経済計画の中でも盛んに宣伝されているように、国民の生活を豊かにする、そしてゆとりを持たせるというところに基本が置かれているわけなのであります。労働時間短縮というのは確かにゆとりを持つけれども、一方では、所定の収入が減るということを差し引き条件として時間的な余裕を得られればいいというものではないんじゃないかと思うのであります。
現実的にケースメソッドというふうにおっしゃいましたけれども、そこに出されている考え方というのは、時間短縮をやらなきゃならぬ、したがってそのためにコストアップするのは、その負担を下げるために基本給を下げるという手法もありますよということなんですよ。片方を上げるから片方を下げる、二者択一のやり方なんです。
これは私は、労働時間の短縮を目指している、あるいは四十時間労働を目指している基準法の法の精神に全く反する考え方じゃないかと思うんです。そういうものを経営者団体が傘下の企業側に出す、しかも、出されていく企業側の方々というのは中小零細企業でございますから、専門の労務担当者もいないわけですよ。労働組合もほとんどできていない。そうしたら、そういう方法があればこれはいいなとそれに乗っかるのは、これは当然の流れだと私は思うわけです。
そういう中で、恐らく各地方の行政の皆さん方が地方で指導される際に必ず相談が来ると思うわけです。それは従業員の中には、ちょっとおかしいよ、労働組今ないけれども個人的におれはおかしいと思うという形で相談が恐らく行くと思うんですが、そういう相談に対して労働省としてはどういうふうにお答えになりますか。大いに結構ですと言うんですか、それともこれはちょっとおかしいよというふうにお答えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/58
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059・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) おかしいものについては、多分照会があればおかしいと言いますでしょうし、合理的でありますればこれは合理的だということだと思っております。賃金の問題は、労働基準法あるいは最低賃金、これに触れない限りは、やはり労使の間で自主的に交渉をして結論を得るということが基本だ、こう存じております。
ただ、どういう文書が、どういう雑誌が出ているのか私この目で見ておりませんので、一遍先生がおっしゃるそれに相当するくだりを見てみたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/59
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060・今泉昭
○今泉昭君 大臣、それは見ていないというのはちょっと無責任過ぎるんじゃないんですか。ちゃんとした文書でもう労働省に入っていますし、連合からも大臣あてにそれについての文書まで出ているわけですよ。もし事務当局がそれを大臣にお見せしなかったとするならば、これは職務怠慢になりますよ、大臣あてに出している文書でございますから。ぜひ見ていただきたいと思うんです。しかも労働協約の書き方までつけて、こういうふうに書いたらいいというものまで全部つけて出しているわけです。
私は、大臣そういうふうに言われましたけれども、法に間違いなければいいんじゃないかというお答えでございまして、しかし、そういう問題でこれまで我々労使の間でいろいろ問題があったケースを知っております。例えば有給休暇のとり方でございます。有給休暇の消化をできるだけ推進しようではないかということで分割使用の問題が一時期話題になったことがございました。ところが、有給休暇を設定したときの精神というのは、例えば一時間とか二時間とか有給休暇を分割して、例えばちょっと役所に何か手続をするために、そのために必要な時間、賃金が引かれるのは嫌だから有給休暇を一時間使うというやり方、それは法には触れないのかもしれないけれども、法の精神として労働省が当時指導していたのは何か。
あれは、一日労働者がゆったり休めるために一日という単位で有給休暇を与えているものだ、だから実際の執行の場合、時間で細切れにして使うのは望ましくないという大変健全な指導をしていただいたことを私は覚えています。一時間、二時間と使うとするならば、そういうときの別の使い方を労使で考えて使うようにという指導もいただいたことも覚えています。それは、法律上ではそこまで言っていないけれども法の精神からしてこうだという、大きな法の精神の流れがあると思うんですよ。そういうことからすると、今私が申し上げましたあの文書は、確かに私は法には触れないと思うんです。法に触れないけれども、法の精神からいって明らかにこれはちょっと行き過ぎではないでしょうか。
例えば、日本の賃金制度は御存じのように基本給にすべてリンクをする賃金制度になっていますから、基本給が下がるということはボーナスにもすぐ降りかかってきます。時間外割り増し率、時間外収入にもはね返ってきます。退職金にもはね返ってきます。ただ単に基本給の低下では済まないわけであります。
この労働時間を、わずか労働時間四時間短縮するためにほかの賃金というものに大きな影響を及ぼすということであるならば、やはり労働省としてもこの点については何らかの指導というのが必要なのではないか、あるいはアドバイスをしてあげる、経営団体に。そういうことが必要ではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/60
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061・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 先生御指摘になっております使用者団体の文書でございますが、もともとは、四十時間制を実施するに当たりまして、先生も先ほど御指摘ございましたように、それが生産性の向上というものにつながり、そのことで労働時間短縮、四十時間制の実施に伴うコストが吸収されていくことが一番望ましいわけでございまして、私どもそういった形を期待しておるわけでございます。
ただ、二百万を超えるまだ未達成の中小零細事業場において、この法律により四十時間制の実施が定められてまいります。そういう中でさまざまなケースが出てくるかと思います。生産性の向上等ができないケースも中にはある。そういった中で、本来、生産性の向上分を賃金あるいは労働時間、そういったものに振り向けていく、そういったことの考えからいたしますと、そういった生産性の向上等が図れないまま四十時間制を実施していく事業場におきまして、賃金等の取り扱いをめぐっていろいろ困難が起きる可能性もある。
そういったことは懸念されていた一つの問題でございますが、使用者団体の方からこういった四十時間制の実施に伴う基本給の取り扱いについて質問がございまして、私ども従来からとってきておりました考え方でございますが、そういった賃金の取り扱いにつきましては、基本的には労使間でまず話し合って解決することが必要であると。かつ、週四十時間労働制への移行に伴う賃金の改定が行われるのであれば、時間当たり賃金が減少しないこと等、労働時間の変更の関係から見て合理性が必要だと、こういうことでなければならない。逆に言えば、そういったことを十分勘案して合理的な賃金改定が行われた場合には労働基準法上問題とはもちろんならない、こういうことの解釈を回答した次第でございます。
私ども承知している範囲では、使用者団体の方もそういった考え方に即して、この四十時間制の実施というものは四月一日から不可欠であるということを指摘した上で、先生御指摘のような基本給の問題につきましては、ケースに即して、いわば労使と話し合うための一つの材料、例示として示しているようでございまして、御指摘ございました基本給等の取り扱いが時間率を変えない範囲で下げていくケースというのは、生産性の向上が図れないで四十時間制を導入したけれども、四十時間制を導入した後も実質四十四時間で一つの仕事をしていく、そういうままになったケースとして取り上げられておるわけでございます。
もちろん、こういう場合でも全体としては割り増し率その他のことをきちっとやってもらわなくちゃいかぬわけでございますので、そういった点も十分加味した労使と話し合う際の例示として出されているんだろうと思います。
それから、逆に生産性の向上が図られて、今まで四十四時間でやっていた作業が四十時間で済むようになって残業を行わなくてもよい、こういう姿が実現するようなケースも取り上げておるわけでございます。こういった場合はむしろ実質賃金、実質時間率を引き上げるべきではないかというようなことも示唆されているようでございまして、私ども、そういった点につきましてはいろんなケースがある、また事業主の方も従業員との相談の過程でいろんな行動があり得るんだろうと。
私どもは、そういった点について、労使の話し合いという適切な手続が踏まれること等合理的なものでなければならない、そういった内容面についてはしっかりと先ほどの考えを示して対応をお願いしておりますし、もし相談が窓口にあれば争ういった姿勢で対応していくように、こういった経緯については地方の方にも連絡をいたしておるところでございます。
なお、もう一つ御指摘ございました基本給、全体としては割り増し率等があって賃金全体の所程は上がる。先ほどの四十時間になっても実質四十四時間のままで労働したケース、そういったことになるのかもしれませんが、基本給についてはボーナスあるいは退職金等々に響く、こういったことがあるではないかということでございます。まさにそういった点、四十時間導入に伴って、生産性の上がらない中でもしやる場合の賃金といろものをそういうふうに話し合いする際に、それは実際退職金とかボーナスの関係でどうすべきものなのか、あくまで暫定的なものとして取り扱うのかどうなのか、その辺は労使でしっかりと話し合っていただくべきものと考えております。
私ども、労働基準法体系上、例えば四十時間になりながら四十四時間働く場合等は、今まで残業でなかったのが残業になるわけでございまして、三六協定等が当然必要になるわけでございます。そのためには従業員の過半数を代表する者等との協定が当然必要になるわけでございまして、もし労働組合等がない場合でもそういった方ときちっとした話し合いの上、就業規則なりそういったことの見直しが行われて初めて賃金の改定というものもあり得るわけでございます。三六協定等につきましても、私ども、目安等の関係もあり、受理の段階でもそういった段階を見ておりますので、もしあわせてそういった賃金の取り扱い等についていろんな相談があれば、先ほど申し上げましたような基本的な考え方にのっとって指導をすることは当然あり得ると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/61
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062・今泉昭
○今泉昭君 私どもとしましては、労働時間短縮、せっかくいい制度を導入していくわけでございますから、労働者の何かを犠牲に供して時間短縮を実現するということを一番やはり危惧するわけでございます。もしコストの面で実現できないとするならば、別な形での企業に対する、産業に対するいろんな援助なり環境整備の努力をしていくべきであって、国際的な公約の実現のために労働者の生活が一部犠牲にされるということはぜひとも避けなきゃならないことでございますので、ぜひひとつ労働省におきましてもその辺は慎重に指導していただきたいと思うんです。
これに関連してもう一つお聞きしたいと思うんですが、今、日本は、賃金と労働時間に関する国際労働基準であるILO条約第四十七号と第百十六号はどういうふうになっていますか。批准しているんですか、していないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/62
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063・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) まず最初にお尋ねのございました、労働時間短縮が円滑に進むように事業主の方に必要な援助をするべきではないかということでございますが、私ども御指摘のとおりというふうに受けとめておりまして、こういった労働時間短縮を、事業主の方がいろいろ生産性の向上のために省力化投資あるいは新たな労働者を雇い入れる、そういったことで吸収していただければ一番いいわけでございまして、そこを期待しておるわけでございます。
そのための省力化投資あるいは新規雇用のための経費等につきまして、私どもその一部につきまして新たな形で助成制度を設けて、それを活用していただく。そのために前提になるノウハウ等についても、集団的な説明会、あるいは個別の相談にも応じて提供していこうというふうに思っておるところでございます。
それから、御指摘ございましたILOの四十七号条約でございますが、これについては我が国は批准をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/63
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064・今泉昭
○今泉昭君 百十六号はいかがなのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/64
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065・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 勧告につきましては、いわばILO加盟国に対する一般的な勧告という性格でございますので、その点につきましては批准といったような形では問題にならないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/65
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066・今泉昭
○今泉昭君 現在我が国が四十七号を批准していないというのは、どういう理由からなのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/66
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067・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の四十七号条約では、生活標準の低下を来さないように、こういうことで時間短縮というものを進めていく、こういう趣旨の定めをいたしておるところでございます。
この労働時間の短縮は、賃金との関係で申し上げれば、いわば生産性の向上を賃金あるいは労働時間に振り向けていくわけですが、それが個々具体的な企業の中で行われていく場合には、これを賃金あるいは労働時間でどう処理していくのかは個々の労使の間の話し合いによって決められるべき課題であるわけでございます。そういったことで、今の我が国の労使間で賃金を初めいろいろな労働条件の問題について話し合い解決しているもとでは、直ちにこれを批准していくことについていかがかという立場で、慎重な検討を要するというふうに認識をいたしているところでございます。
ちなみに、この条約につきましては、例えば時短先進国と言われますヨーロッパ等の諸国におきましても、賃金があるいは時間がというような労使の話し合いの中で労働時間短縮というものが進められてきた経過もあることかと推測いたしておりますが、やはりそういった国々でもまだこの四十七号条約については批准をされていない、そういった状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/67
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068・今泉昭
○今泉昭君 それじゃ、午前中の最後の質問にさせていただきたいと思います。
先ほどから賃金、労働条件は労使間の話し合いで決めるべきだと、これはもう当然のことだと私は思うんです。しかし、御存じのように、基準法というのはミニマムなんですね、社会的な規範なんです。だから、それを守るというのは話し合いを超越したことなんです。
特に今問題なのは、そのミニマムを達成できていないところが問題になっているわけでございます。しかも、そのミニマムを達成できていない中小企業というところには、先ほどから労使間の話し合いをやるといったって、労働組合なんかできていないんですよ。私どもがそういうところをずっと回って現実の姿を見てみますと、話し合いで賃上げとか労働条件を決めていませんよ。経営側がこうやるからなと言って、それで終わりなんです。そういう実態。
特に、労働組合の組織率が我が国の場合は二三%台でございますから、大多数の中小零細はそういう状況であります。建前上の労使の話し合いという意味合いはわかります、重要にしなきゃならないことです、一番重要なことなんですが、実態の姿はそうなっていないということですから、その点をはき違えないようにして、労働行政がその欠けている点をぜひ丁寧に指導していっていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/68
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069・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の趣旨については、私ども同様の認識をいたしておりますが、新しく四月一日から実施されますこの四十時間労働制、新たな最低労働基準として膨大な数の中小零細企業も含めて全面的に実施されるわけでございます。これをぜひ守ってもらわなくてはいけないことになるわけでございますが、その過程で、生産性を十分上げながら準備してきたところはそういう形で進む、あるいはそうならないケースも多々あろうかと思います。
しかし、これはあくまで最低労働基準として守っていただくわけでございますので、賃金あるいはほかの労働条件の面で困難があってはならないというのが私どもの基本的な立場でございまして、もしそういった困難が生じることがあれば、これは望ましくないわけでございますので、そういった困難が出ないように、まずそういった賃金の改定等が行われる場合には労使間で十分に話し合っていただかなくてはいけないこと、これが一つ。
それから、時間率等も変更ない等、四十時間制の導入のためという関係で十分合理性がなくてはいけない、そういったところをきちっと見るようにいわば考えているわけでございまして、一つの歯どめとして、こういったことの考え方に即して個々の企業で労使間で話し合っていただくための措置でございます。むしろそういった意味では、労働基準法上の労働条件を守っていく立場から、そういったものについて質問があって、私どものそういった労働条件を守っていくという立場からの基本的な見解を使用者団体等に示して守っていただくようにお願いをしなくちゃいかぬと、こういうことで対応したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/69
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070・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 今泉先生がお話しになりました質問に対する私の答弁で一カ所だけ間違っておりましたので、お許しをいただきたいと存じます。
連合から三月七日付、私あての文書そのものは、今、後ろの者にどうだと言ったら、はい、これは写してありますと。本物は読んでおりません。私が読んでおりませんのは、いろいろな雑誌やら何やらで、中小企業団体等が傘下の企業主に対して出しているものの詳細を読んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/70
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071・勝木健司
○委員長(勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
午前十一時五十三分休憩
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午後二時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/71
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072・勝木健司
○委員長(勝木健司君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/72
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073・今泉昭
○今泉昭君 午前中に引き続いてよろしくお願いします。
労働時間の長短と労災の発生頻度の問題についてちょっとお伺いしたいと思います。
労働科学研究所あたりの研究によりますと、人間が精神的にも肉体的にも翌日にちゃんと再生産ができるように疲れない程度の労働時間は大体六時間ぐらいが一番いいのではないかというような研究もありますように、労働時間が長くなれば人間としてやっぱり緊張感も緩んでまいりますし、いろんな事故が起きやすいものだろうと思うわけであります。
労働時間が比較的長い作業、そしてどちらかといえばなかなか四十時間制度になりにくい職場を見てみますと、建設であるとか交通とか大変なかなか難しいような現実にあるわけですけれども、どうなんでしょうか、一般的な因果関係、実態の中から見てみると、労働時間が長いということはやっぱり労災のいろんな発生率が高いというようなことが言えるのでしょうか。一般的なことで結構です、細かいことまで必要ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/73
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074・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 労働災害と労働時間の関係でございますが、これを統計的な方法で把握するいろんな手法があって、考えなくちゃいかぬという面もありまして難しい面があろうかと思いますが、一般的に申し上げると、例えば最近ふえておりますコンピューター等の作業従事者、やはりディスプレーを見ながらの作業等についてとかあるいはそれのデータをインプットするための作業を連続的に行う、こういった作業につきましては疲労というものがかなり労働時間と関係ある点は指摘されております。したがいまして、そういう頸肩腕症候群等のあれを防ぐためにも、一定の指導の基準みたいなものを設けて、連続どのくらいの作業で休みをどのくらいというふうにして指導したりしておるケースはあるわけでございます。
また、御指摘ございました自動車運転手等につきましては、やはり長時間にわたる運転なり拘束時間というものが疲労と関係があるのではなかろうかというようなことで、トラックあるいはバス、ハイヤー、タクシー等については、そういう労働時間の改善の基準や交通災害の防止のガイドラインの中でも労働時間の管理というようなものを重視して指導をいたしておるわけでございます。
ただ、全産業について一般的な、何時間であれば労働災害との関係がどうと具体的に申し上げることは難しい状況にございますが、そういった業種につきましては、そういったことも念頭に置いた労働災害防止のための指導をあわせて進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/74
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075・今泉昭
○今泉昭君 長時間労働という立場から、少し残業の問題についてお聞きしたいと思うわけであります。
一般的な平均値で見ると、大体年間百三十時間前後でございましょうか、今、日本の残業の実態というのは。残業というものはもともと突発的な作業に対応する労働時間でございますから、残業を定型的に、あるいは固定的に期待されてしまったのでは労働時間の短縮は大変難しくなるわけですが、どちらかといえば日本の場合は一つの景気のショックアブソーバー的な意味合いで残業が取り扱われてまいりましたし、そういう環境の中で働いている者自身も残業収入にある程度期待をする、総賃金の手取りというものをいつも期待するような状況になってきたというのが日本のこれまでの大きな流れだったんじゃないだろうかと思うわけであります。
そこで、残業をするために基準法で指定されておりますいわゆる三六協定というものでございますけれども、ややもすればこの三六協定というのが形式的につくられて提出されている。もっとひどい考え方からすると、もうそんなのは必要ないんじゃないかというようなどうも日経連の中での論議もあったやに聞いているような状況でございまして、特に中小零細企業の場合、先ほどもちょっと話をしましたように、相手方の従業員代表を決めるのも難しい、労働組合がないから。
だから、見た限りにおいては従業員代表と言えないような人を代表にしちゃって協定をつくるということもあり得るのじゃないかという心配があるくらいでございまして、しかもそこで働いている中小企業の従業員たちはその日急に言われて残業をするとか、こういうような実態が大変多く見受けられるわけでございますけれども、どうなんでしょうか、全国の企業を現地で指導されている方々、もうほとんどと言っていいぐらいの多くの企業が残業をやっているような実態ではないかと思うんですけれども、三六協定なんかを提出されている企業というのは、大ざっぱに見てそこに存在する企業の大体何%ぐらいが実態の姿ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/75
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076・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 三六協定、これは超過勤務を命じていく場合の、適法な残業をする場合の大事な要件の一つでございます。例えば平成七年の三六協定の届け出件数は八十一万件に上っておりまして、また私ども労働基準監督官が事業場の定期監督に赴く際の重要な監督指導の項目の一つでもございます。
したがいまして、残業を要する事業場においては、今正確なパーセンテージを持ち合わせておりませんが、まずほとんどの事業場でこの三六協定というものは整備されている、またされていない場合については私ども監督指導の際に厳しく御注意を申し上げている、そういった状況にあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/76
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077・今泉昭
○今泉昭君 労働時間の千八百時間というものを達成するために、労働時間の中で残業の占めるウエートというのは決して少ないわけではございませんので、ぜひ末端で指導される行政の皆さん方の、恐らく件数が多くて目を通すのも私は人数の割り当てからいって大変なことじゃないかと思うし、ほとんどこれに全部目を通すということは不可能に近いんじゃないかというふうな悲観的な見方をしているぐらいでございますが、できる限りひとつ労働時間短縮の実現のために今後とも努力をしていただきたいと思うわけであります。
そこで、この残業の問題につきまして、労働省は全体の総労働時間を短縮していく意味で残業の目安的なものを設定されているというふうにお聞きをしております。例えば、当面は年間で言うならば三百六十時間というものを一つの上限の目安にしてできるだけ短縮をしていこうじゃないか、一週間どれぐらい、一月幾らぐらいというような形で数字が決められていると思うわけであります。
各国の状況についてもお聞かせ願いたいと思うんですが、大体諸外国ではこの残業の取り扱いというのはどのような形で指導しているのか。例えばドイツに行きますと、残業は決められた時間を超えて労働を負荷するわけですからペナルティーを科すというような形の法整備ができているわけでございまして、残業をある一定の限度以上させた場合は、政府の方、政治の方でこれはペナルティーを科すというような形でできるだけ残業、予定外の残業は減らしていこうという国もあるというふうに聞いております。
実は、先ほど実態の御説明の中でお聞きしたら、今、年間総労働時間で見ると日本よりアメリカの方が多いという話がちらっと報告の中にあったわけでございますが、実は、アメリカで労働時間が長くなっているのは残業がアメリカにふえてきているせいであるというふうに私は聞いております。しかも、この残業がふえたというのは日本の労働慣習というのが大変大きな影響を与えているということも聞いております。
というのは、私も大分アメリカの労働組合の現地視察もしましたし、個人的なつき合いもあるものですからいろいろと意見交換をしてみますと、日本から大変多くの企業が進出してきた、そういう意味で、雇用創出のために日本の企業がアメリカの地に出てきてもらっているのは大変ありがたいんだけれども、その中で日本的な労働時間の扱い方というものがアメリカの中でも芽生えてきている、それは残業だというわけですね。今までそんなことなかったというわけです。その日になって急にこれだけ残業やってくれと。
特にこれが目立ってきたのは、例のプラザ合意を中心とした日本の集中豪雨的な輸出攻勢、そして日本の日の出の勢いのような大変好調な経済をバックにして、アメリカなどは日本から経済侵略をされる、日本に負けないためには何とか生産体制を立て直さなきゃならない。今までのように、おれはこれまで労働契約じゃこうなっているからこれで帰りますよというわけにはいかなくなった。というのは、雇用不安がその当時大変多かったものですから、雇用が欲しければこれだけ仕事をせいというような、押しつけられるようなやり方が大変ふえてきたと。
ですから、日本に比べますとアメリカの社会は奥さんの力が大変強いわけでございまして、奥さんは大体だんなが帰ってくる時間をちゃんと管理して待っているにもかかわらず、最近はどうも急に残業ができたからといって帰りが遅くなるというような、笑い話ともつかないような状況が出てきているのがアメリカの年間総労働時間を長くしている原因だというような話も、多少針小棒大な説明であるかもしれませんけれども、そういう話も聞くことがあるわけでございます。
一般的に、先進国の残業管理というもの、それから時間外労働に対する対応の仕方というものはどういうことになっているのか。全体的な年間総労働時間を減らす意味で残業管理というもののウエートが高いものですから、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/77
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078・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 時間外労働に対する各国の法制、非常にまちまちでございます。
まず、御指摘ございましたドイツの場合につきましては、確かに上限規制を法律上行っておるわけでございます。それからフランスの場合には、例えば割り増し率につきまして一定の段階から、最初二五%であったものが一定の段階を超えると五〇%になる、こういった形で時間外労働に対応しているといった状況。それからアメリカの場合には、公正労働基準法で特に時間外労働につきましての規制的なものは設けておりませんが、割り増し率を八時間を超えた部分について五〇%にしておる、こういったやり方でございます。
直接的な規制は、先生御指摘あったドイツに見られるところでございますが、これも根底での生産やそういったもの、経済活動に対するいろんな考え方の問題が背景にあるのであろうというふうに受けとめております。その辺も踏まえながら、我が国の参考になるかどうか、いろいろ対応について検討をさせていただいておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/78
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079・今泉昭
○今泉昭君 労働省で出しております毎月勤労統計に基づいて出されました産業別労働者一人平均の年間総労働時間を見てみますと、産業別によって時間外労働の長短の差が大きいわけですね。例えば、運輸・通信業におきましては年間二百三十八時間からの残業時間、要するに定時間外労働をしている。鉱業においても二百時間を上回るような労働をしている。ところが一方では、四十時間労働が進まないと言われている卸売、飲食業におきましては年間の時間外労働はわずか七十三時間だと、大変大きな差があるわけですね。
日本の場合、特に残業労働というものに対する評価というものが先進国に比べまして位置づけが明確になっていないのではないだろうかと思うわけであります。と申しますのは、私どもが調べてみますと、一般の勤労者は、定時の時間帯で働いている賃金よりも実は残業で働いているときの方が低い賃金で働いているという結果が出ていると思うんです。その表現が悪ければ別な言葉で言います。残業時間帯で使う労働者の労務コストよりも定時間で働く労務コストの方が実は高いという実態になっている。ですから、日本の場合はできるだけ定時間外に働かそうとしている。
それはどういうことかといいますと、日本の場合を見てみますと、十万円の賃金を取っている人に対する労務コストというのは、これは労働省から出されている資料でございますから間違いないと思うんですが、大体七万円ぐらいプラスアルファされている。福利厚生費であるとか、あるいは教育費であるとかボーナス、退職金、そういうものにかかる費用が必ずあるわけでございますから、十万円の賃金の労働者にかかる費用は大体十七万円かかるというのが通常である。
ところが、これが残業をした場合になりますとそういうものが一切と言っていいぐらい要らなくなるわけであります。だから、定時間で働けば十七万円かかるのに、我が国の場合の残業割り増し率というのは、法で定められたのはわずか二五%でありますから、残業の時間帯の労務コストというのは十二万五千円で済むという実態なわけであります。新しい労働者をその時間帯に雇い入れるとするならば十七万円かかるところを、残業させれば十二万五千円で済むという実態が出ているわけです、日本の場合は。
したがって、残業を多く使うということはそれだけコスト低減に役立つという点があるわけでございまして、日本の残業をなくそうにもなかなか減っていかないという、これは経営側のやっぱり考え方があると思うんですよ。私も経営者だったらそういうふうに考えると思いますよ、ある意味では。
それで、私が申し上げたいのは、やっぱり定時間よりも低い労務コストだったならば、労働時間短縮のために一番ポイントになっている残業が一定水準までどんどん減っていくということはなかなか難しいんじゃないかと。常識的に考えられて、緊急事態に必要な残業時間というのは当然必要なことでございますからある程度は許容できるにしても、年間二百時間をオーバーするような長い残業時間というものは、やはりある程度法的な意味での規制も必要なんじゃないだろうか。それは残業割り増し率をどうするかということが一番大きなインパクトになるんじゃないかと思うわけでございまして、労働時間との関係で、この割り増し率を一つの時間短縮推進の柱の中に今後はやっぱり入れていく必要があるんじゃないかと思うんですが、その点についての御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/79
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080・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のございまししたように、運輸その他、とりわけ建設を含めて受注産業での労働というのは非常に長い傾向があらわれております。こういった長時間の残業時間について望ましくないことは当然でございまして、こういった長時間労働の削減について、いわば千八百時間達成に向かう際の大きな柱の一つとしてかねてよりそういった削減のための要綱を示すなどいろいろ努力をしてきているところでございます。そういった努力は引き続き続けさせていただきたいと存じます。
もう一つ御指摘ございました、新規に雇い入れるよりも残業で働かせた方がいわばコスト面でいいと。確かにそういった点、一つの問題提起として、新規雇用に置きかえた方と残業で対処した方との損益分岐点みたいなものについて、一応仮説でございますが、時々のその状況、その時代のいろんな社会的な負担等含めて計算したりすることがございます。そういったことのほかに、やはり我が国の場合、時間外労働というものがかなり景気変動等に対応して雇用量を調整する機能を持っている。したがいまして、仮に新規雇用に置きかえた方がコストが安い場合でも、それによって新規雇用をふやしていきますと、景気の後退時期等に大変対処に困る。
例えば、この千八百時間の目標をつくりだした時点では残業時間というものが平均では大体百八十時間を超えていたわけですが、平成八年で見ますと大体百四十五時間ぐらいまで、ちょっと前は百三十時間台まで落ちている。そういった中で、直ちにそこでレイオフ等の事態を招かなかったことは、残業時間というものがかなり雇用調整機能を果たしている。
したがいまして、そういう新規雇い入れに置きかえる分岐点とは別に、我が国の残業というものが果たしている雇用調整的な機能というものにある程度着目して、そういった機能というものを損なわない範囲での対応というものは念頭に置かなければいけないのではないかというふうに考えております。
そういったことの中での割り増し率の問題でございますが、これは私ども平成五年に審議また成立をさせていただきました労働基準法の改正でございますが、その中ではこの四十時間制の実施時期を定めるとともに、割り増し率についても、以前法律ですべて定めていたものを二五%から五〇%の範囲内で政令で決められる、こういう改正をして、その後の状況を見ながらこの割り増し率のあり方を考えていこう、こういう形をつくったわけでございます。
その後我が国の経済情勢は厳しい情勢が続きまして、雇用というものを非常に重視した考え方でいかなければいけない時代が続いたことと、それからこの四十時間の実施に当たりまして、中小零細企業の膨大な事業場がこの四十時間というものに取り組む際に、過渡的にはなるかもしれませんが、やはり四十四時間よりも縮められない。四十時間という法定労働時間に対して、四時間は残業という形で処理しなくちゃいけないケースも多々あるかと思います。
そういった状況の中でございますので、この割り増し率の問題につきましては、そういったことを踏まえて慎重にそのあるべき方向というものを考えていかなければならない段階であるのかなというふうに認識いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/80
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081・今泉昭
○今泉昭君 先ほど残業時間のことでドイツのことを申し上げましたけれども、実は私、ドイツにおきまして、今から十七、八年前でしたか、IMFが世界時間短縮会議というのを主催してやったときにその会議に出席した経験がございます。IMFといっても例の金融機関のIMFじゃございません、世界金属労協といいまして、インターナショナル・メタルワーカーズ・フェデレーションのIMFでございまして、マネタリーファンドとは違います。
その、世界に二千万人近くいる金属労働者の時間短縮会議というのをフランクフルトで開催したときに、ドイツの時間短縮の事例が大変問題になったわけであります。当時、先進的にドイツは問題を抱えておりまして、ドイツの場合は大変失業率の増加に悩んでおりまして、何とか失業を少なくするためにお互いに働く時間を分かち合おうじゃないかというので、ワークシェアリングというのを中心にいたしまして労働時間の短縮というものにこれを結びつけていった、そういう流れがございます。
我が国のことを考えてみますと、日本の場合は失業率が高いとはいえども世界の中ではまだまだ低い方の水準でありまして、安心をしているような風潮もありますが、将来を展望してみますと決してこれは安心できないのじゃないかと思うわけです。
と申しますのは、今世界の基準で世界を相手に産業活動ができているのは製造業だけでございまして、製造業以外の産業というのは日本の中の規制に守られて、どちらかといえばその規制のために生き延びられているという産業が大変多いわけであります。
生産性比較をしてみますと、これは生産性本部が五年に一回ずつ出している調査でございますが、それを見てみますと、製造業は先進各国と比較をいたしまして大体七〇%から一〇〇ぐらいの間に分散をしているわけでございますが、特に第三次産業を中心とする各産業の生産性というのは、アメリカを一〇〇としますと三〇から四〇のところにあるわけです。これからそういう産業におけるところの規制緩和がどんどんなくなって、世界の物差しで裸でもってやっていかなきゃならないとするならば、そこの生産性を放置していますと日本の第三次産業というのは軒並みにつぶれなきゃいけない。そのためには生産性の向上をどうやって図るかということになるわけです。
極端な例を言いますと、四割の生産性の水準であったら六割の人の首を切ってしまえば生産性は同じに並ぶわけですから、要するに過剰に抱えている人間を切っていけばいい、こういうことになる。これは極端な例でございますが、それぐらいに第三次産業におきましては今過剰な人を抱える中で、低い生産性で我が国の場合は産業を維持している、こういう状況にあるわけです。
規制緩和がこれからどんどん進むでしょう、政府の一つの大きな政策の柱でございますから。そういった場合に、第三次産業に働いている約四千万人と言われる勤労者の方々が雇用不安なしに対応していくためにこれからどうしたらいいのかと考えますと、もちろん生産性をぐっと対等に引き上げていけばいいんだけれども、すぐそうはできないとするならば、当然これは何らかの形でワークシェアリングということを考えなければ対応できないという雇用情勢がやってくる危険性があるわけです。
これはドイツがちょうどそういう経験をやってきたわけでございますが、そういうワークシェアリングの思想というのは今のところ我が国には余りないわけであります。むしろ、どちらかといえば残業をふやしてでもたくさん働いて、うんと収入がふえればいいというような流れが一部にまだ残っているわけでございますが、そういうこれからの将来的な展望を抱えて、このワークシェアリングという問題とそれから時間外労働という問題との調整というものを労働省としてはどのように考えていかれるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/81
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082・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) ワークシェアリングについてのお尋ねでございますが、確かにワークシェアリング、これからの新しい時代に対応して考えていかなければならないではないかという御指摘、いろんな各方面からもありまして、私ども部内ではいろいろと検討をさせていただいているところでございます。
例えば、御指摘ございましたドイツのケースの場合、非常に残業が少ない生産体制でございます。これはむしろ需要があっても生産は常に一定を保つ、注文者には待たせてでも生産量は一定に保つ、こういう生産体制が主流を占めている国でございまして、ある意味では残業時間を非常に少ない体制でやっている。そういうところにつきまして労働時間短縮を進めていきますと、これは確かに一定の生産量を維持していくためには雇用をふやさなければならないということでワークシェアリングの効果があらわれてくる、こういう側面もあろうかと思います。
ただ、典型的なワークシェアリングを考えますと、ドイツの場合でも、やはり一般の働いている人たちの間に、賃金と労働時間の間でやはり労働時間を選好する傾向が非常に強かった、そういった形で進むこともあったわけでございますが、我が国の環境のもとでこのワークシェアリングということを考えますと、仕事を分かち合うことでございますので、一方では、賃金というものが仕事の成果に対して払われる側面があるとすれば、賃金のある程度の分かち合いにもつながるわけでございまして、そういったことを我が国で具体的な問題として考えていく際にどういう道筋があり得るのかというのは、大変難しい問題だろうというふうに思っております。
ただ、御指摘ございましたように、二百時間を超えるような残業労働というものが果たして好ましいかというと、これは当然健康の面、労働災害の防止の点からも好ましくないわけでございまして、私どもそういった観点から、例えば週四十時間制の導入に当たって実施してきておりました奨励金、あるいは今後この四十時間制定着のために実施する助成制度、こういう中では省力化投資あるいは新規雇い入れによって労働時間短縮というものをこなしていくケースを想定しまして、そういう場合も助成対象として考えているわけです。そういった歩みで、部分的なといいますか、ある意味でのワークシェアリング的な発想は取り入れつつこの労働時間短縮というものを進めておるところでございます。
基本的な観点からこのワークシェアリングというものを考える際に当たりましては、我が国の雇用調整機能、それから賃金と労働時間との関係、その他非常に大きな議論とコンセンサスを得るための各方面の御議論というものをお願いしていかないと結論がなかなか見出せないんではないかというふうに現段階では受けとめておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/82
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083・今泉昭
○今泉昭君 時間がなくなってまいりましたので先を急がせていただきたいと思いますが、先ほど午前中に、法の精神に基づいて労働者の生活にしわ寄せのいかないような形の労働時間短縮をひとつ実現するように指導していただきたいということを申し上げました。
ワークシェアリングというものを考えていきますと、今後どうしてもその問題とのひっかかりが出てくると思うわけであります。ワークシェアリングを、だからといって全然手をつけない、今から論議もしないというわけには恐らくまいらないだろうと思いますから、先ほど申し上げましたような、労働者の生活の低下につながらないような労働時間の短縮を実現するために、今後恐らく迫ってくるであろうワークシェアリングの導入に関しまして、ひとつ綿密なる研究なり検討を今から労働省では進めていっていただきたいというふうにお願いを申し上げておきたいと思うのであります。
次に、残された時間、年次有給休暇のことにつきまして少しお尋ねをしたいと思います。
平均的な数字を見てみますと、我が国の年次有給休暇の付与日数は、平均で十七・二日ですか、十七日前後だというふうに聞いております。そして、法で定められているミニマムが十日であるというふうに聞かされております。そういう中で、せっかく付与されているこの年次有給休暇が六割も使用されていない、実際に五五%ぐらいの消化しかされていないという実態を考えてみますと、年間総労働時間の総体の数を減らすためには、もう少しこの年次有給休暇の消化について工夫を凝らした取り組みということを今後考えていかなきゃならないんじゃないかと思うわけであります。
労働省でも、これまでいろんな意味で一斉休暇のとり方についてのいろいろな指導を、特に中小企業にやってこられたということも重々承知をしております。どうもそれだけでは日本人の場合は、これまで自分でゆっくりと休暇をとって、その休暇を活用しようという生活環境が古くからなかったものですから、どうしても全部消化をされていないという実態が一つ、それから職場の中において有給休暇を要求してもなかなかとりづらい雰囲気にあるというのが一つはあるということと、もう一つは医療制度との関係で、ちょっと一日風邪をひいたというときに、我が国の医療制度では最初の三日間ですか、何日間だがその保障がないものだから、つい年次有給休暇をとらなきゃならないという心配があるものですから、そのためにわざわざ有給休暇を使わないでとっているというような状況があるわけですね。先進諸国などでは最初の一日から医療制度でそれをカバーできるという制度をとっているところもあるわけでございまして、年次有給休暇というもののやっぱり使い方の根本的な考え方が違うわけですね。
そういう意味で、残業時間と同じように全体の年間の労働時間短縮に大変大きなウエートを持っている年次有給休暇、せっかく制度でつくってもらって付与されておるにもかかわらず、それを使わないから年間の総労働時間が減っていかないと、こういう状況にあるわけでございまして、これらの問題を、これは労働省だけではできない問題でございますから、医療制度の問題も絡め、それから生活環境あるいは国全体のそういう価値観の変更ということもあわせて、この年次有給休暇が完全に使えるような環境をつくっていく必要があるんじゃないかと思うわけであります。
例えば、先ほど申し上げましたように、ドイツの例でございますと大体今六労働週ですか、年次有給休暇が与えられていまして、六労働週といいますと年間三十日ですね、一労働週が五日ですから、六、五、三十日間あるんですが、まず年度初めにその三十日をどう使うかというのを計画して企業側に出すと、企業側がその計画書に基づいて年間の生産スケジュールを立てる。そして、その三十日なら三十日与えられた有給休暇の主な連続的な取得の状況というのは、一つは復活祭を中心としたイースター休日、それからクリスマスを中心とするクリスマス休暇、そしてもう一つは夏休みの時期にこれらの有給休暇を一斉に消化するわけでございますから、したがって、ドイツあたりの年間総労働時間というのは実は千六百時間という低い労働時間の実態を実現しているわけであります。
そういう意味で、せっかくゆとりのために、豊かさを感じるための有給休暇という制度があるわけでございますから、そういう制度がやっぱり十分に消化できるような環境づくりをぜひしていただきたいと思うわけでございます。
そのほかに、これからこの休暇の使い方ということにつきましては、新しいいろんな使い方というのをひとつ考えながら労働省としても指導していただきたいと思うんですが、一つは、今まではリフレッシュ休暇という形で指導もされていたようですが、これから労働者が自分の能力を再開発するために、啓発するために教育休暇的な意味合いのものも当然必要になってくるんじゃないかと思うわけであります。
例えば十年なら十年勤め上げたならば、その労働者には三十日なら三十日の教育休暇を与えて、もう一度人生の勉強をし直してくるという形の教育休暇、既にもう先進国の一部ではそういうことを取り入れているようでございます。さらには、御存じのようにこれからボランティアが大変重要な時代になるわけでございまして、ボランティア制度というものに対してみずから積極的に参加をしていく場合に、その有給休暇というのを優先的にどう使わせるかというようなシステムを、これは企業の中につくっていく必要も当然出てくるのではないかと思うんであります。
そういう意味で休暇の新しい使い方ということを考えなきゃならないわけですが、そのためには幾ら何でもミニマムの十日というのは少な過ぎるんじゃないかと思うわけですよ。先ほど説明にありましたように、千八百時間のときの前提条件は有給休暇二十日だという形で組み立てられているというお話がございました。それから比べてみても有給休暇十日というのは半分でございます。だから、そこからもう既に問題があるわけでございますから、早い機会にこの問題を基準法の改正という形で労働時間短縮の一環として組み入れていただきたいと思うんですが、その点についての今後の準備なり対応についてどう考えていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/83
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084・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生のお時間もうないというお話でありますが、さっき先生ドイツのお話をなさいました。私は自分の過去の経験で、やはり年次有給休暇というのは、私が知っているところは二十日でございますが、全部完全消化というそのやり方は、半分を本人が一年じゅうの休暇計画というのをつくって、それを所属長のところへ出して、所属長はほかから出てきたほかの人の分とうまく取り合わせて、それは完全に計画休暇。もう一つは突発休暇。やっぱり、何かやりたいということがあったときに、何が何でもあした休ませてくれというようなのが出てくる。だから全部計画休暇では困るというような話も組合からありまして、そのかわりもう全部二十日間完全になりました。しかしながら、私さっき先生のお話をお聞きしておりましたが、企業といっても大から小までいろいろある。業種もいろいろあるわけですね。そうすると、一律的にここで私がお話をするわけにはいかない未知の世界があるな、こう思うのであります。
千八百労働時間制というものを目指して、その手段は三つある。一つは四十時間労働制だと。一つは年次有給休暇、これを完全消化をする。あるいはもう一つは残業をなるべく少なくする。三つのうちのまず一つをやろうということで、週四十時間労働制ということで御提案をしているわけです。
ところが、先ほどおしかりをいただいたみたいで、この問題についても中小企業等々の中でいろいろな指導をやっている、それが自分の職場にうまく合うかどうかというような問題で、いざとなれば処罰が後ろに控えているけれども、二年間ひとつ助言をし、いろいろ指導をし、あるいは助成もしていくというようなことでありますので、本問題をまずやろう、その次だと。あれもこれも用意ドン、一緒だというわけにはいかぬのじゃないか。そのかわり、二番バッターは何もしないんじゃない。二番バッターの残業の問題、あるいは年次有給休暇がいかにあるかという問題も、労働省は労働省ながらに関係機関のところと相談をしながらやっていく。それもタイムリミットは七月一日までにひとつ結論を出してくれというようなことで、一つ一つこなしていこう、しかし常に前向きであらねばならないというようなことで進めておりますのが今の段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/84
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085・今泉昭
○今泉昭君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/85
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086・大脇雅子
○大脇雅子君 週四十時間労働制が、昭和六十二年及び平成五年の二度にわたった労働基準法の改正の後、本年四月一日からは従来適用が猶予されてきた中小企業においても実施されることになったわけです。
現在審議中のこの法案によりますと、附則第三条というところで、週四十時間労働制の猶予措置の対象とされていた事業の事業主に対して、今後「きめ細かな指導、援助等を行うよう配慮しなければならない。」という、指導、援助に当たっての配慮条項が盛り込まれたところであります。
そこでお聞きをしたいのですが、このきめ細かな指導とはどんな内容を指すのかお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/86
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087・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) この四月一日から労働基準法を施行いたしまして、中小企業を含めまして週四十時間制を実施いたしてまいるわけでございますが、その際に、中小企業の実情に即しつつ確実に定着させていくための指導方法といたしまして、一つはこの労働時間短縮をいかにしたら達成できるか、例えば省力化投資のあり方、そのための業務の改善等の方法、それから労働時間制度、これを例えば変形労働時間制等を効果的に使いながら四十時間制を達成する、そういった労働時間制度の改善、こういったものに向けての指導、そういうもののノウハウの提供を含めながら、事業主団体等と連携をとりながら、多くの事業主にも参加してもらういわば網羅的な集団指導、説明会、こういうものを計画的に実施していくこと、これが一つでございます。
それからもう一つは、そういった中小企業の事業主を構成員とします商工関係の団体を含めまして、そういった団体に傘下の事業主の労働時間状況というものを自主点検していただく、それに基づいて四十時間制の達成等改善指導を実施していただく、そのための費用を私どもが助成しながらそれを実施していく。この二つを有機的に関連させながら実施していく。
そういった中で、四十時間制に踏み切っていただく際にもし省力化投資その他の費用がかかる際には、新しい助成制度によってその一部を助成していくというようなことを考えておりまして、これらの措置を体系的に、また計画的に展開していこうというのがこのきめ細かな指導、援助の具体的な内容でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/87
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088・大脇雅子
○大脇雅子君 そうすると、このきめ細かな指導の対象企業というのは何社ぐらいありまして、この法律によりますと二年間ということになっておりますが、具体的にそのプログラムはどのように描かれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/88
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089・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 現在四十時間制が猶予になっている事業場の数、これ中小零細、膨大な数がございまして、事業所センサス等から推計いたしますと二百万を超えるのではないか、こういうふうに考えております。
これらの事業場に対しまして私どもこの指導、援助というものを展開していくわけですので、なかなか全体をつかんでいくことは大変な作業であるかと思いますが、まず私どもこの中小企業の団体等の方に連携をとりまして、その傘下の事業主の方にできるだけ集まっていただく集団説明会、指導、そういったものを計画的にかつ網羅的に展開することがまず第一段階と考えております。
そういった中で、そういった個々の事業主の方から労働時間短縮への取り組み状況を把握し、その後例えばアンケートその他を活用しながら進捗状況というものをフォローアップして、だんだんとそういう集団的な説明会、指導というものから、そういったフォローアップの中から、これは重点的にあるいは選択的に指導しなくてはという事業場を漸次いわば絞り込みながらこの四十時間というものを確実に定着させていく、そういった手法を第二段階として考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/89
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090・大脇雅子
○大脇雅子君 二百万という事業場に対してこれからどのような形で二年間のうちに達成していくのか、少なくとも具体的なプログラムを早急に立てる必要があると思います。
しかし、このきめ細かな指導、援助を行うように配慮ということに対しても、刑事的な効果と民事的な効果の法律上の効果について確認をしたいと思います。まず刑事的な効果として、四十時間法制が実施されるわけですから、四十時間を超える時間を労働者の意に反して時間外労働の協定なしに施行させた場合には、これは刑事罰になるわけですが、こうした違法状態に対してはどのような取り組みをなさるおつもりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/90
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091・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 基準法が四月一日からこの週四十時間制施行をもって実施されますと、もちろん御指摘のように、三六協定なしに四十時間を超えて就労させていく姿というのは違法になるわけでございます。
そういった事例につきましては、先ほどの集団指導の説明の中で把握し、またもう一つは監督官による定期監督指導の中で把握されていく、そういったものにつきまして、まずその改善について再三にわたる指導を展開していくことになるわけでございます。
もう一つは、そういった中で悪質、重大と思われるものにつきましては、司法処理を含めて対応を要する事態も当然あり得るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/91
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092・大脇雅子
○大脇雅子君 平成五年度 六年度、七年度の定期監督における労働基準法違反の事業場数は、男性に関して平成五年は二万八十八件、六年は一万八千二百四十一件、七年は二万九千五十九件という報告がされておりますが その労働時間関係法の違反に関する司法処分、これは送検件数でありますが、平成五年でわずか十三件、平成六年で九件、平成七年で八件、その率にして〇・〇八、〇・〇五、〇・〇三という数字でありまして、これでは労働時間に関する限り労働基準監督の実がほとんど上がっていないのではないか。今まで四十時間法制に対する実施がなかなかにできなかったということに関しても、やはりこうした監督行政のあり方が一つ土壌にあるのではないかと思われるのですが、この送検件数の少なさについて何かコメントすることはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/92
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093・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、例えば平成七年度は十七万六千近くの事業場を定期監督し、その中から二万九千件の、三十二条といいますか、労働時間関係の違反を見つけておるわけでございますが、そういった違反状況を把握いたしますと、私どもまずその是正に向けて指導をいたします。必要によっては是正の勧告もいたします。そういった過程でかなりの事業場が改善をされていくと、こういう状況にございます。
司法処理になりました八件というのは、地域の中堅的な企業であるにもかかわらず、再三のそういった指導に応じないケース、あるいは労働災害事故と結びついていたケース等について最終的に司法処理ということになるわけでございます。
そういった状況から、私どももいきなり罰則を適用していくスタイルというのは従来からとっておらないところでございます。また、それによって法律の徹底を図ろうとしましても、実際上、いわば二百万を超える事業場を点で攻めていくような形になる。それよりも、今までの指導や勧告で改善が見られてきている状況を踏まえれば、事業主の団体等と提携したできるだけ多くの事業主の方を集める集団的な説明会から始まって、その中で個々の事業場の労働時間への取り組み状況をフォローアップしながら、さらに重点的な指導を要するものを絞り込んでいく、こういう形でいわば面というものを意識した定着のための指導や援助の展開を目指していきたい、そういうことが今回の時短促進法の中できめ細かな指導、援助をしていくということの基本的な考え方でもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/93
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094・大脇雅子
○大脇雅子君 悪質な違反に対しては送検をして、労働基準法違反として処罰をする。そして週四十時間法制の実施のために労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法ができている。その附則においてきめ細かな指導、援助を行うように配慮というこの法律のいわば位置づけから見ますと、労働基準法におけるいわゆる司法処分に対する態度というものがこの条項によって緩められるということは法解釈上あってならないことだというふうに思いますが、この点はよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/94
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095・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほど申し上げましたように、今までもそうでありましたように、まず指導というものを申し上げてまいるわけでございます。さらにきめ細かいノウハウの提供等も行いますが、そういった再三の指導にかかわらずもし悪質、重大なものがあれば、今まで同様、司法処理ということを検討さぜるを得ないものが出てくるかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/95
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096・大脇雅子
○大脇雅子君 それから、四十四時間が四十時間になることによって、時間外労働としてその時間が取り扱われるわけですけれども、それについては必ず三六協定の締結と届け出が必要なこと、あるいは割り増し賃金の支払いなどきちっと行うよう行政指導されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/96
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097・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) まず、四月一日以降、週四十時間というものが法定労働時間でございますので、それを上回る労働時間については三六協定が必要になる。きめ細かな指導、援助を申し上げるという中にはそういったことも含めて、就業規則の整備等も含めての指導の中身になってまいるわけでございます。
それから、割り増し率のついたいわば割り増し賃金の支払いというものも当然四十時間を超えた労働については必要となってまいります。その点も、割り増し賃金が順調に払われていくような指導も私どものこれから展開する指導の中に当然含まれてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/97
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098・大脇雅子
○大脇雅子君 先回の労働委員会におきまして、労働時間の短縮に際していわゆる賃金がどう取り扱われるかについて、労働基準局長のいわゆる口頭によるコメントについて問題提起をいたしました。そのときの御返答によると、通達を出すのか出さないかという点について少し明快ではない結論でございましたので、その点についてさらにお尋ねをいたします。
まず基本的な考え方として、四十四時間が四十時間になった場合に、さきに中小企業団体に口頭で言われたように、時間当たり賃金が減少しない限りは合理性があるというふうな趣旨であったと思うんですが、まず基本給が減少をいたしまして、その基本給が退職金や一時金等に関連づけて計算の基礎として影響を及ぼしてくるわけですから、基本的にこの取り扱いが不利益処遇になるという点ではお認めになるわけですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/98
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099・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のケースでございますが、一つは、私どもが商工団体等に回答した趣旨は、例えば四十時間になって依然として四十四時間のままであるというようなケースにつきまして、もしその賃金の改定が問題となるケースにつきましては、まず労使で十分話し合っていただくことが基本であると。それから、時間率を変更しないなど週四十時間制を導入するに当たって合理的な範囲内のものでなければならない。もしそういうことであるならば、労働基準法上問題はないという趣旨のものでございます。これ自体はいわゆる不利益変更というようなものではなくて、そういう労使の話し合い等合理的な範囲内のものについては、これは労働基準法上、そういった角度から問題にはならないものと考えております。
またもう一つ、基本給について、時間率の引き下げではないけれども、全体額としての基本給自体の絶対額の引き下げ等があった場合にボーナスあるいは退職金等に響くという問題でございますが、そこもまさに労使間で、本当にそういった形で連動させる仕組みにするのか、この四十時間導入に当たって本当に合理的な賃金のあり方というものを考える際にそういったことまでやるのかどうか、これは労使で十分話し合っていただいて結論を出していただくことが必要だというふうに考えております。そういった意味で、当然そこと連結した姿のことは私ども想定はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/99
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100・大脇雅子
○大脇雅子君 まず労使で話し合うという点についてですが、労使で話し合って決めることに関して労働省がとやかく介入をするということは基本的には間違いではありませんか。だから、労使で話し合いをするということであれば、そこでピリオドを打つべきだというふうに考えるんですが、通達は出されるつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/100
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101・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) まさに御指摘のとおり、労使で話し合うべきであるということを申し上げ、そういった中で見直しが行われる際にも、時間当たりの賃金率を下げないなど週四十時間制を導入するに当たって合理的なものでなければならないと、こういうことを申し上げているわけでございまして、そこは一種の歯どめであるかもしれませんが、具体的な内容についてはまさに労使で話し合っていただく。それ以上のことを私ども具体的に、例えば干渉したりするというようなことはあり得ないわけでございます。
したがいまして、御指摘ございました通達でございますが、御審議願っております時短促進法の成立を待ってこれからの進め方につきましても具体的な指示をいたしますが、そういった中でも、こういった問題についてこういう経緯があるということは私ども地方にも連絡し混乱のないようにいたしてまいる所存でございますが、そういった干渉等について、するといったようなことは通達の中でももちろん示されないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/101
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102・大脇雅子
○大脇雅子君 通達について先回の質問では、この促進法を施行するための運用の通達に問題として書くかどうかということと、それから今地方局に通達するとおっしゃったんですが、それは地方に対する例えば労働基準局長の通達のようなものを指していて、別のものですか、一緒のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/102
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103・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) この時短促進法を成立させていただいた段階で、これからの労働時間短縮の進め方、これは地方の労働基準局あてに出すわけでございまして、これはいろんなこれからの指導や援助の進め方全般にわたるものでございます。そういったものを順調に進めていく過程で、今御指摘のございましたような賃金の問題につきましても、そういう経過があることは地方にもその一つとして知らせてまいるわけでございます。そういった事実関係を知らせることになりますが、これは全体の中の一つとして入りますので、全体が労働省の労働基準局長名でやはり地方局へ出される、そういった性格のものだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/103
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104・大脇雅子
○大脇雅子君 そういう通達を出されるということは非常に大きな問題があると思います。合理性があって不利益変更にならないと言われるわけですが、不利益変更に関する最高裁の判例の系譜を見てみますと、秋北バス事件、最高裁の昭和四十三年十二月二十五日の判決ですが、これによりますと、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質から、合理的なものである限りいいというふうに書いてあるんです。
合理的なものがあるというのは単なる、今の労働省の考え方によりますと、時間当たり賃金が減らなきゃいいというふうに言っておられるわけですが、しかしそれは、例えば先ほど言われたように、省力化とか業務計画の練り直しとか、あるいは変形労働時間制の導入とかでいわゆる時間当たり労働密度を非常に効率化していくわけですから、四十四時間でやっていたものが四十時間になるかもしれない。その場合に、単なる時間当たり賃金がそのままでいいという理由には決してならないわけで、例えば御国ハイヤー事件では、その代償となる何らかの労働条件を提供していなきゃいけないとか、あるいは変更の内容と必要性の両面から検討しなければならないということで、これはタケダシステムの事件ですけれども、諸事情を総合的に勘案する必要があると言っているわけです。とりわけ、退職金規定をめぐって大曲市農協事件というのがあるんですが、これは高度の必要性がなければだめだと。
この判例を本件の解釈に援用いたしますと、単なる時間当たり賃金がそのままでいいよということにならなくて、果たして省力化が行われたのか、労働時間当たりの密度がどうなのか、それから変形労働時間制の導入によって労働者の生活はどうなったのか、さまざまな諸般の事情が考慮されなければそれは合理性と言えない。それを通達の中で時間当たり賃金が下がらなければ合理的だよというように書かれるということは、これは大変大きな労働省の権限の逸脱であるというふうに思わざるを得ないわけです。これは就業規則の問題です。
労働協約において、それが労使の合意であるということでピリオドを打たれるならそれはそれでいいんですけれども、そんな恐ろしい一方的な通達を出されるおつもりですか。私はちょっと信じがたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/104
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105・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) その通達は、全体の中で、今回使用者団体からそういう問い合わせがあり、こういうことが出ている、そういった経緯を示すものでございますが、もう一つ先生から御指摘ございましたように、私どもが過去から労働基準法の解釈として示しているものは、労使で十分話し合うこと、これをまず一つ前提にいたしておるわけでございます。
したがいまして、御指摘ございましたように、この四十時間制を実施するに当たって、今までどおりの四十四時間の労働でなくて済むように省力化その他いろんな話し合いをして、それで時間短縮に伴うコストを生産性の向上で吸収できない場合に初めて問題になる。そこは労使間で話し合われる際に、そういった何とか生産性の向上を図るための工夫ができないかということも大きなテーマになるかと思います。
また、商工団体等が示している文書も、今回のそういったケースにつきましては、四十時間になった中で今までどおり生産性の向上が図れずに四十四時間の労働が必要とされる場合というふうにケースを示して、そういったケースの場合の一つのあり方として提示しているようでございます。
したがいまして、逆に申し上げると、同じ使用者団体の文書の中では、四十四時間で今までやっていた作業が省力化投資その他生産性の向上で四十時間で済むようになった場合にはむしろ実質賃金の引き上げを図るべきだと、こういうことも出しているようでございます。
私ども、そういった詳細について通達するつもりはございませんが、ただそういったことがあるということは示しておきませんと、地方におきましてもし労使の話し合いがなしに一方的な賃金改定が行われたケース等につきましては、これは私どもやはり問題とせざるを得ないケースがあろうかと思いますし、また、生産性等が十分上がっていて実際四十時間で済む労働内容になりながら、そのケースに当たらないような形で賃金の改定が行われていれば、やはりこれは合理性の点から問題になることもございましょうし、そういったことにつきまして、地方の窓口まで含めて、そういった経緯があることを承知させておくことはこれは行政運営上どうしても必要なわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/105
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106・大脇雅子
○大脇雅子君 ちょっと問題が混乱しているのではないですか。
現実に中小企業団体が一つの書面を配付して、そして時間当たり賃金が下がらなければ合理性があるよと労働基準局長が言われたということで通知を出しているこの通知の問題と、そうではなくて、法の基本原則に触れた労働省が出す通達、これを混乱することはおかしいと思いますね。
問題があっていろいろあるからその通達を出すのなら、きちっと法の原則に触れて、今私が言ったように、時間当たり賃金を下げてしまえば、こんなのは不利益処遇で、むしろ契約違反で、大体できないことでありまして、時間当たり賃金がそのままいいよということは何の歯どめにもならないわけですよね。歯どめ以上じゃなくて、労使交渉に対する介入であり、そして労働者の権利に対する侵害であり、判例の基準からしても後退しているわけですから、やはり通達はしっかりとその点を踏まえて、きちっと労基法の趣旨と判例の趣旨に沿って出されないと困る。したがって、単純に時間当たり賃金を下げなきゃいいというようなことを書き切っていただくことは、これは大変大きな問題があるということが一つある。
もう一つは、中小企業団体が出した通達が、これは誤りだよと、基本原則に反しているよと、これは撤回をしないといけないんだということを言わなきゃいけないんじゃないんですか。この二点についてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/106
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107・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 今回の商工団体等から問い合わせがあり回答しました趣旨と申しますのは、昭和五十六年当時の労働時間の短縮のための制度改正に際してそういった考え方が既に通達されておるわけでございまして、この内容は、今まで御議論あったとおり、労使の話し合いがあることがまず必要、それからこの時間短縮との関係から見て時間率を引き下げてないなど合理性があること、この二つを示しておるわけでございます。
今回も、新たな解釈を示すというのではなくて、そういった労使の話し合いと合理性、この二つを必要とする旨を回答いたしておるわけでございます。そういった趣旨から、私ども窓口も含めてこれからの展開というものを見守っていくことは必要でございますので、そういった経緯があることを示すものでございまして、今回新たに使用者団体の解釈についてこれをお勧めするとか容認するとかという趣旨の通達を特に出すものではございません。
それからもう一つ、使用者団体の出した文書につきましては、そういったいろんなケース、例えば四十時間制が実施された後もなお四十四時間の仕事を必要とする場合、実際生産性等の向上が図られ四十時間で済むようになった場合などケース分けしながら対応の方法を例示しているものでございまして、それ自体、労使で話し合う際の一つの参考資料として出されたものについてとやかく申すことはできないかと存じておりますが、実際の個々の企業ベースで労使の話し合いがなされずに、あるいは合理性のない姿が出てくれば、これはそういった私どももともと持っておる基本的な考えに即して必要な指導等をする場面も出てこようかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/107
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108・大脇雅子
○大脇雅子君 前にそういう通達が出たということを言われるんですが、前の解釈例規の見直しに関しての通達というのは、運送の事業または貨物取り扱いの事業にかかわる労働時間の特例の暫定措置というものに関しての取り扱いではなかったのかと思いますが、それを今回は中小企業一般にそれが適用されるということになると、これはまた特に業務の状態その他から大きな問題になるのかと思うんですが、それはどうですか。前の通達があるから今度の通達も問題ないということはおかしいじゃないですか。前のときの状況と今の状況と違いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/108
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109・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 確かに、今回この四十時間というものを基本的な労働条件の一つとして実施すること、またその対象が非常に膨大な数の事業場に及ぶこと、こういったことから、そういった賃金の取り扱い等について、もし生産性の向上等でこの労働時間短縮分のコストが吸収できない場合に、個々の企業で議論があったり混乱が生ずることが起こり得る可能性については以前に比べて確かに大きいかと思います。
そういった意味でも、そういった賃金の問題が出てきた場合には、まず労使間で十分話し合って、この四十時間制というものの受けとめ方も含めて十分話し合っていただいた上で賃金の改定というものをどうするか、その改定を行う際にも、労働時間四十時間ということの関係から見て時間率を下げないことなど合理性の認められるものでやってほしいと、こういうことをいわばはっきりと窓口を含めまして確認しながら、混乱のないように対応していくための趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/109
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110・大脇雅子
○大脇雅子君 労使の自治ということをそれほど言われるのなら、労使の自治に徹底していただきたいと思います。
その通達は、現場に混乱があるのなら通達を出されるというなら、前の通達と違った現況の中で出すということを十分に認識されて、そして不利益変更に関する最高裁の判例はずっと長い積み重ねがあるわけで、ただ単に時間当たり賃金がそのまま存続するから合理性があると、そんな法理論というのはむしろ労働省の新しい法解釈であって、やはり判例に対する挑戦だと思うんですね。
だから、本当に労働者の権利と使用者との利益のバランスを考えられるのなら、時間当たり賃金がそのままなら合理性があるなどという単純なお考えじゃなくて、一般的な状況を勘案してそういう必要性が高度にある場合、とりわけコストが吸収できないというやむを得ないような場合にのみやれるんだという明快な法解釈が根底にあって通達を考えられるべきだと思うんですよね。
だから、単純明快に前の通達どおりにそんな通達を出されるということになれば、これは大きな問題になりますし、労働組合ももしそういうことがあれば訴訟で闘うと言っているんですが、訴訟で闘った場合に、労働省がそういう通達を出したということは大きな問題になると思いますね。もう一度慎重に御検討いただかないといけないと思いますが、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/110
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111・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 使用者団体の商工団体が出しました文書等を見ましても、これは一つのケースごとの例示として示されているものでございますが、御指摘になっていますような基本給の変更等が一つの例示されているケースといいますのは、生産性が向上できないために、四十時間制を実施したけれども以前どおり四十四時間で同じ仕事をこなさなければならない事態、こういうことが認識されているようでございます。
逆に言えば、もう一つ、四十時間で済むようになったらむしろ実質賃金を引き上げていくべきではないかと、こういうことも例示されているわけでございまして、そういう意味から、先生御指摘のありますように、本当にこの四十時間制を導入するためのいろんな工夫が行われた後の姿として関係者も認識しているんではないかというふうに思っております。
私どもも、地方局に対しましては、今までも繰り返してきておりますが、この四十時間制を進めるに当たっては、中小企業の労使の実情を踏まえてきめ細かな指導、援助というものを展開していこうと、こういうふうに申し上げているところでございますので、そういったことを十分踏まえながらこういった問題についても見守っていくわけでございます。その点は、安易に使用者側の言う文書をお勧め品だというような意味で受け取っていくという趣旨では決してございませんし、むしろそういった労使の話し合い、合理性というようなものを大事にしていく趣旨と受けとめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/111
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112・大脇雅子
○大脇雅子君 使用者団体の出した文書はそんなふうには読めないですね。もっと明快にそうした法原則をきちっと出すように、したがってあれは誤解を与えるから気をつけるようにというやはり注意を労働省はやっていただきたいと思うんです。それは、そういうことを回答した労働省の責任ではないんでしょうか。その点私は重ねて注意を申し上げたいと思います。
そして、その通達には賃金減額については触れるつもりはないと労働基準局長が言われたという新聞記事もあるんですけれども、それは通達はやっぱり出されるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/112
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113・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) こういう経緯があり、私どもがそういう中で四十時間制を実施していくに当たって、賃金をめぐる混乱がないように、合理性や労使の話し合いというものは必要だ、こういう考えを依然として持っていることにつきましては地方にも理解してもらい、もしそういった基本線から逸脱するケースがあれば、これは指導等申し上げる場面が出てくるわけでございますので、そういった経緯があったこと、これは全体の通達の中の一部になりますが、そういったことも触れざるを得ないというふうに現段階考えております。
ただ、先生御指摘ございましたように、そういった賃金の見直し等が非常に安易な姿でこの四十時間制の導入に伴って、私ども基本的には生産性の向上で何とかこれに伴うコストを吸収してもらうことを第一と考えておりますので、そういった趣旨、これは十分団体にも徹底させて、そういった理解の中でこの問題を見ていく、そういうふうには心がけてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/113
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114・大脇雅子
○大脇雅子君 労使に対して労使自治と言われるなら、完全に公正中立な立場で通達を出していただきたいというふうに思います。
最後になりました。たくさん質問をしたかったんですが、時間がありませんので最後に大臣に。
時間短縮の促進のために、かくも長い時間外労働をどう解消し実質的な労働時間の短縮に向けていくのか、その労働行政に対する御決意をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/114
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115・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 時短の問題は、六十二年以来十年間にわたって、あるいは例外措置をしたり、あるいは猶予期間を設けたりというようなことで、何とかして週四十時間労働制を定着させたいということでやってまいりました結果がきょう御審議をいただいている促進法の一部改正案であります。
そういう意味合いで、指導期間を設けたり、あるいは助成の援助もしたりというようなことに意図があることをぜひひとつ御理解いただきまして、労働省が考えておりますところの時短の促進に御協力をいただきますよう、よろしくお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/115
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116・笹野貞子
○笹野貞子君 かつて、この時短の審議をした何年前だったでしょうか、そのときも伊藤局長といろいろと討論した記憶があります。非常に文学的造詣の深い局長だとそのときに思いましたので、きょうは最初にちょっと文学的なことで議論をしてみたいというふうに思います。
そのとき私はミヒャエル・エンデが書いた「モモ」という小説のことを例に出しまして、時間に対する一つの歴史的発展性というものをお聞きしたんですが、きのう私はもう一度このミヒャエル・エンデの書いた「モモ」を読み直してみますと、二十何年前に書いたこの「モモ」というのが本当に今この審議にそっくりそのまま当てはまるという気がいたしまして、何か急にこの文章をちょっと読み上げたくなりました。局長にこれからこの文章の感想をお聞きいたしますので、どうぞリラックスして聞いていただきたいというふうに思います。
時間とはすなわち生活なのです。そして生活とは、人間の心の中にあるものなのです。
人間が時間を粗末にすればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまうのです。
しかしこの時間は、ほんとうの持ち主から切りはなされると、文字どおり死んでしまうのだ。
人間というものは、ひとりひとりがそれぞれのじぶんの時間を持っている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられるのだよ。
というモモの会話があります。
この「モモ」の小説というのは、見えないところに時間泥棒がいて、灰色の紳士という表現をしていますが、この灰色の紳士が生活の持っている時間を泥棒してしまうという設定なんですね。これは一九七三年、ミヒャエル・エンデが書いた児童文学が百五十カ国以上に翻訳されて世界的なベストセラーになったという本です。
さて、時間はその人が持っているときだけは生きているんだよ、その人の持っている時間がなくなればその時間は死んでしまうんだよというこのモモの会話ですけれども、今八時間労働という労働は、これは私たち八時間働こう、でも所定外労働の四時間というのは、これはモモに言わせると生きた時間でしょうか、死んだ時間でしょうか、その点をちょっとお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/116
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117・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) それは本人のその時間の使い方に自主性があるかないか、これにかかっていると思っております。自主性があればその時間は自分のものだということじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/117
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118・笹野貞子
○笹野貞子君 自主性というのは、お金がたくさん入るから、あるいは名誉がつくからというのも自主性に入りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/118
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119・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) ちょっと私と次元が全然違いまして、例えて言いますと、ここで私はきょう五時間なら五時間答弁をいたしております。これはいわゆる労働法的に言いますと、私は国会議員でありますので、労働の提供などというふうな位置づけはできないと思います。しかしながら、ここで各先生方の御質問に答える、仕事であります。しかし、その仕事に私は人生をかけております。その意味で、この五時間六時間というものは非常に私の自主性を発揮しているものだ、非常に楽しい、意義が高い、こう思っておりますが、ちょっとピントが外れているかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/119
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120・笹野貞子
○笹野貞子君 大分ピントが外れまして、私はモモの言葉に対してどう思いますかというふうに聞いているんで、私に対してではありませんで、この「モモ」というミヒャエル・エンデの時間に対する哲学に対して今お聞きをしているわけです。
私は、この今の私たちの人類というのは、時間というのが本当に重要な生活の一つの要件であり、勤労というものの考え方に対する大変重要な条件だと思います。かつて私たちは歴史の中で非常に長時間労働を強いられてきたわけですけれども、この長時間労働に対して、勤労権という権利は、どういうことをすると権利として私たちに受け入れられるのかということを模索しながら現在の社会を構築しているというふうに思います。
大臣のような博学な方にこんなことを言うのはまさに釈迦に説法かもしれませんが、勤労の義務から勤労の権利に変わったというこの私たちの今二十世紀というのは、権利というのは簡単に言うと楽しいことですし、義務というのは簡単に言うと嫌なことなわけで、勤労権という権利を獲得したというのは、まさに楽しくあるべき勤労ということ。この楽しくあるべき勤労という中に、私はモモが言うように、時間というのは本当に生きた時間にするべきだと。私が本会議のときにちょっと引用いたしました八時間の勤労、八時間の休息、八時間の教育という、この教育の中には文化、生活が入るというふうに思います。そういう意味では、八時間の教育と文化というのは、これは私たちが歴史の上で本当に勤労権として獲得していった重大な要素だというふうに思います。
そういう点では、今回のこのモモの小説というのは、私たち二十世紀に生きる人間として、時間というものを勤労とどうドッキングしながら考えていくかという大きな示唆だというふうに思います。これは児童文学ですから非常に単純にして明快であります。モモの言っている単純にして明快なこの価値観というのは、まずこの法案の審議をするときに、私たちは歴史の発展性という意味で十分高い価値を与えなければいけないんじゃないかなというところから御質問しているんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/120
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121・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 私、とんちんかんかなと言ったんですが、先生の今のお話を聞いていると、私のさっきの答えは、自分ではとんちんかんじゃなくてずばりと当たっているなと、こう思いました。
我々、等しく一日二十四時間という時間を与えられている。その中でやはり八時間程度は眠らなければならない。それからあと八時間は文化、教養、その他もろもろの上部構造的な生活があると思います。これを充実させなければならない。しかし、その十六時間を全くさせるためには、残りの八時間なら八時間、これが七時間で済み、あるいは生産性が上がって六時間で済むならばもっといいわけでありますが、やはりその上部構造を支える下部構造として労働を提供するという時間があろうと思っております。その労働提供の中身が自主性が発揮できるものであり、そこに自分の人生の意義が感ぜられるものであるならば、これは先生がおっしゃった勤労は権利だと、つらい義務ではない、権利だと。
私は、実は憲法の「すべて国民は、労働の権利を有し、義務を負ふ。」というその意味の権利とは違った意味でお話をしております。働きたいが職がないという者について、やっぱり労働省としては、ひとつ雇用と結びつけるという努力をすることが労働権にも結びつくものだと、こう思っております。今私がお話をしたのはその憲法の意味での労働ではありませんが、そういう意味合いで、やはり自分にかなう、そしてそこに人生として意義を感ずる、そういうような労働で残りの十六時間が支えられるということであるならば、この一生というものは幸せなのではないかなと、こう思っております。違いましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/121
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122・笹野貞子
○笹野貞子君 大臣の価値観はよくわかりました。しかし、私たちが今審議しているのは日本国民全体の勤労条件のことについて話し合っておるわけですから、大臣のその価値観はまた追って私と二人でお話をさせていただきたいというふうに思います。
さて、私は、労働時間というこの時間は勤労権にとっては非常に大きな条件の一つだ、働く時間の長短というのは勤労者にとっては非常に重大な問題だというふうに認識しております。しかし、歴史では長時間労働をした事実があるわけで、これが人類の英知によって労働条件として権利の中で時短という物の考え方がだんだん発展してまいりました。
私が本会議で御質問をしたときに、総理大臣は元気よく私の質問にこうお答えいただきました。「残念ながら経済計画に掲げられている年間総労働時間千八百時間にはなお、御指摘のとおり、開きが見られるところでありますので、その達成、定着に向けて引き続き積極的に取り組んでまいります。」というふうに総理は御答弁いただいておりますが、もう一度大臣に、この千八百時間、そして週四十時間、八時間労働というものに対する取り組み、とりわけこの法案の達成の取り組みの御姿勢をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/122
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123・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) やっぱり心のゆとりと生活に豊かさが感ぜられる、そうしてそのためにも職場の生活と家庭の生活というようなものが両立できるというようなことを目指して、世界的な傾向の中では当面千八百時間を目がけてまいりたい。それを実現するためには、先ほど今泉先生その他、先生からもお話がありましたが、四十時間制をまず一つの柱とし、二つ目には残業を少なくし、三つ目には有給休暇というものをより多く消化をするというような、具体的な手法をそれぞれ全くさせることによってこの千八百時間を達成し、冒頭申し上げた生きがいのある、そういう生活にしてまいりたい、こう思っております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/123
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124・笹野貞子
○笹野貞子君 そういう御発言というのは、総理大臣と同じように、この時短という物の考え方は人類の英知というんでしょうか、歴史の発展性に基づいたものだというふうに受けとめてよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/124
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125・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 私は、やっぱりこの長い歴史の中で、人間が知恵を出し、そうして機械その他を発明をし、短時間の労働提供によってより大きな生産物を出している。その努力を今日も人類はしているわけでありますが、そういう方向を進めることによって我々の労働時間を短縮し、人生をより楽しめるものにしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/125
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126・笹野貞子
○笹野貞子君 ということは、何度も言いますように、歴史の発展性があるがゆえに今この法案を審議しているというふうに解釈してよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/126
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127・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 歴史の中の経緯からいたしまして、先ほど御紹介をいたしました他の国々の今の労働時間、これらに相伍して世界に恥じない日本の労働時間制にいたしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/127
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128・笹野貞子
○笹野貞子君 大変くどいようですけれども、世界に恥じないという言葉は、つまり人類の歴史を発展させた結果だと受けとめてもよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/128
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129・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 昔ならば、一日の糧を得るために相当の時間を労働に費やさなければならなかった。それが十時間が九時間になり、九時間が八時間になっている。より多く七時間、六時間に持っていきたいというような意味合いで人類の英知だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/129
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130・笹野貞子
○笹野貞子君 やっと何か一致点が見つかったような気がいたします。と申しますのは、歴史を発展させるということは、歴史を後退させてはならないという意味と同意義だと私は思います。そういう意味では、先ほどの時間の賃金の問題、いろいろな問題がありましたけれども、歴史を発展させるというのは、一歩でも後退してはいけないんで、指導というのは一歩前進させる指導じゃなければいけないんで、同じことを、今やっていることを今指導するんだったら指導の意味がないというふうに、先ほどの議論を聞きながら、指導という言葉を随分たくさん使ってますけれども、指導するというのは歴史の発展性に合わせて一歩でも半歩でも前に指導することじゃないかなというふうに思って聞いておりました。
次に、歴史の発展性、私はこの言葉が大好きなんですね。人類の英知というのも大好きなんです。これからいたしますと、今度男女雇用機会均等法の改正に従って労働基準法の女子保護規定が撤廃されるやに聞いておりますけれども、つまり女性の枠組みを外してしまって残業を多くするような状況に持っていくというのは、これは歴史の発展性なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/130
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131・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) この歴史の発展というのは学説がいろいろあろうかと思っております。どういう角度で眺めて発展をしたのか、あるいは退化をしたのかというような問題は哲学の問題でありますので、この問題はさておくということにいたします。
それで、今の時点で男女雇用均等といいますものは世界の潮流だと思っております。それを労働法制の中でも実現をいたしたいというようなことで、労働省所管の男女雇用機会均等法というものを御審議いただこうと思っているわけでありますが、その中で、労働基準法の条文の中に、女子の場合には深夜勤でありますとか、休日労働でありますとか、時間外労働の制限というものがあるわけであります。
そういうことで、男女雇用機会を均等にするならば、やはり同じように男女も労働を提供するというようなことではないかと。さればといって、鉱山法等々に定められているような労働については、女子の保護というような面から外すものは外すということではありますが、この際ひとつ割り切るものは割り切ろうというような声もございまして、審議会からの建議に基づき、男女雇用機会均等法というものを御提案申し上げる手はずになった次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/131
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132・笹野貞子
○笹野貞子君 この際割り切るものは割り切ろうといって歴史を後退させるような割り切り方は、これは非常に困った問題だと思います。この問題はまた男女雇用機会均等法の改正のときに十分議論をいたしたいと思います。
私は、時短というものの発想というのがどういう歴史的な発展性、社会の趨勢というものの中にあるかというこの大きな認識をしなければ、これから労働条件を考える上には大きな支障が来ると思うんです。男性と女性が一緒に働こう、そのために女性の勤労条件が歴史の発展に後退するような状況をつくるというのは、これは私は行政としてあるまじき行動であって、現状の条件より一歩でも半歩でもよくなるような、そういうやっぱり労働条件というのがこれから私たちが求める問題ではないかというふうに思います。
そこで、ちょっと話があきましたのでお聞きいたしますけれども、男性と女性と同じに働くんだというこの物の考え方を、大臣は割り切るんだと、こう言うのですが、じゃ割り切った後、今の少子化現象というものに対してこの割り切りがプラスに出るでしょうか、マイナスに出るとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/132
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133・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生、私が割り切ると申しましたのは、今まで女性は深夜勤はやってはならない、休日労働はやってはならないということに相なっていた。それがやろうと思えばやれるようになったという意味で割り切ったと、こう考えていただきたいと思っております。よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/133
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134・笹野貞子
○笹野貞子君 私は大臣にいいとか悪いとか申し上げられる立場じゃありませんが、私としては、これから来るであろうところの女性の労働条件にとって、もしも歴史の発展性に逆らうようなそういう問題があったときには、いち早く労働行政の中でその条件を整備していくような、そんなことが必要じゃないかというふうに思いました。
結論といたしまして、今の私の質問に対する回答がないんですね。少子化現象に対してどのような状況が起こるでしょうかと聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/134
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135・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 私がよろしいでしょうかと言いましたのは、前段についての回答がこれでよろしいでしょうかというお話をしたわけです。
これから審議をいただきます男女雇用機会均等法の中では、女子性といいますか母性といいますか、これを保護する規定というものを幾つか準備をいたしております。
その一つ一つはまたお話をしてもいいのでありますが、例えて言いますならば、労働基準法の中の生理休暇から始まって産前産後の休暇、多胎児におけるところの、これを十週間にするというような定め、あるいは妊娠をなさった、あるいは出産をなさった、定期の健康診断に行かれる、そういった便宜は講じなければならない。お医者さんから、じゃこういうような手を打ちなさい、施療いたしなさいというような場合には、やはり勤務時間のやりくりその他便宜を講じなければならない。あるいはその申し出によって深夜労働は無理だというような場合には深夜労働をさせてはならない。そして分娩をされた後には育児休業制度というようなものがある等々、まだいろいろございます。
というようなことで、男女雇用機会均等法で男性も女性も均等な労働ができるようにするということのために、女性、母性性の保護、これについての規定を設けて、全体が調和して職場生活と家庭生活が両立するように、そして少子化対策というものもこれによって実現をするように、そんなあんなでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/135
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136・笹野貞子
○笹野貞子君 大臣、大変申しわけないのですけれども、何か聞いているうちに、ああそうだそうだ、もっともだと大臣の言うことに相づちを打ちながら、結論としては何だったかなというように今思っております。
つまり、少子化現象というものに対してどういうふうに働きますかという質問に対して、大変くどいようですけれども、再度御回答いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/136
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137・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 少子化対策の一つの部門として男女雇用機会均等法というものを設けた、そんな次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/137
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138・笹野貞子
○笹野貞子君 それでは、この法律ができることによって少子化に歯どめがかかって、女性はたくさん子供を産むというふうな御判断ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/138
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139・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 子供さんが生まれるか生まれないか、産もうか産むまいか、これはやはり御夫婦の御判断にお任せをすることだと。しかしながら、産みたいけれども職場の環境がこれを許さない、あるいは生まれたその後育児をしなければならない、しかし育児というものをするような環境に職場が相なっておらない、それじゃ産むわけにはいかないというような考え方もあろうかというようなことで、産みたいと思われる方については職場環境がそれにそぐうように、そして育児もできるようにというような意味合いであれこれ、先ほどお話をしたような配意もした法律案が男女雇用機会均等法である。
それから、今御審議をいただいている時短、これもまた少子化対策ということで、ゆとりのある生活というようなものを志すための手段に相なっている、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/139
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140・笹野貞子
○笹野貞子君 何か大臣と話をすると禅問答をやっているような感じがいたします。
しかし今大臣は、産みたい女性が職場の条件によって産めなくなることに対しては労働省はあれこれしなければいけないという文言がありましたけれども、私はここの方が非常に重大じゃないかというふうに思います。
そういう意味で、これから男性も女性も歴史の発展性にあわせて働くということが権利として楽しい状態をつくるためには、これから女性が保護はもう要らない、あらゆるところで平等でいこうというこの考え方に即して、男性も女性も共通の時間外労働に対する一つの目安というものをつくっていかなければ、働くことが非常におもしろい女性も出てくるかもしれません、また地位やお金や名誉もたくさんできて楽しいと思う女性がいるかもしれません、しかし、そういうことが共同の家庭生活とかあるいは時短という問題に対する一つの大きな歴史の発展性に逆らうような問題になって、私は少子化現象というものの歯どめにはならないというふうに思います。
繰り返しますけれども、私はやっぱり産んで育てたいという女性のためには、男女雇用機会均等法が実施される平成十一年までにこの時間外労働に対する一つの目安をつくるべきだという考えですけれども、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/140
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141・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 男女雇用機会均等法を今回御提案をさせていただいておりますが、それに至るまで、最初の均等法の施行から十年余になりますが、その間、総実労働時間は実に約百時間ほどの減少を見てきておりますし、そしてまたその間、育児休業あるいは介護休業に係る法制化も整備され、そういった中でこの保護規定等をどうするかという議論があって、解消に向けて関係審議会等でも御協議いただいてまとまって御提案をさせていただいている、こういう経過でございます。
その中でやはり議論がありましたのは、この四十時間というものが一つの区切りとして実現していく、そういう土台の上に立って男女の雇用の機会均等、またそういった職域が拡大していくことに伴う職場と家庭の両立等の問題も、まずこの基盤があってこその議論だという認識は皆さん一致しているようでございます。
したがいまして、まずは週四十時間労働制というものを確実に定着させる任務を全うしていきたいと思っておりますが、その上に立ちまして、今後時間外労働等のあり方にどう対応していくのか、これは基本問題の一つであろうかと思います。
とりわけ機会均等法がさらに充実され、職域も拡大する、一方で保護規定等も解消される中でさらに職域も拡大する可能性もある。やはりそういう状況を迎えますと、どうしても今までの男性の論理からだけでない、女性の方に能力を発揮してもらうために家庭と職場の両立というようなことをどういう方策、レベルで考えるかというのも御議論が出てくるかと思います。
こういった点につきまして、今四十時間制をこの四月一日から実施することに向けて関係者も全精力を挙げてきたところでございますので、これをまず滑り出させてその定着を図りながら、現在、中央労働基準審議会におきましても、次の段階の問題として時間外労働のあり方というものをテーマの一つとして取り上げていただいておりますので、そういった中での御議論をいただきたい。
また、この点については、労働大臣からもテーマ全体について七月までに一定の方向を出してもらうようにという指示もされておりますので、そういったことを踏まえて対応していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/141
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142・笹野貞子
○笹野貞子君 ぜひとも四十時間の定着を早急に図りながら、次の手だてを考えていただきたい。私は声を大にして申し上げますけれども、男性と女性とが同時に働くということは、男性も女性にとっても、やはりこれからの二十一世紀に向けて労働条件が人類の発展に合わないようなものであるならば早急に手を打っていただきたいというふうに思いますので、よろしくその点はこれから審議をしていただきたいというふうに思います。
さて、私はこの法案を読んだときに本当によく理解できませんでした。これはいい法案なのか、変な法案なのか、どう解釈していいかさっぱりわかりませんでした。
労働基準法で四十時間になるんだという強い罰則規定があるにもかかわらず、懇切丁寧というんですから本当に労働省というのは親切なところなんだなというふうに思いながら、しかし強制法規というのは、その強制法規に対して違法じゃないという、二年間という意味ですけれども、私は時間がなくなってしまいましたのでこの点はちょっと疑問点だけぶつけますけれども、この二年間の間というのは、労働基準法が違法だと言っている条文に対して何が原因で違法性がないのか、責任性がないのか、どっちなのかなというふうに非常に不思議に思っておりますけれども、趣旨を理解しますと、法をしっかり守りながら実行に移すための一つの手段だというところで妥協はいたします。
しかし、四十時間にするためには、先ほどの大脇先生の議論にあったように、賃金問題が物すごく重要になってくると思うんです。先ほどの議論を聞いていましても、このペーパーを私は拝見させていただきました。全国中小企業団体中央会が各都道府県に出している通達のペーパーですが、これを見ますと非常に簡潔にして明瞭、三つの事例を出して、一の場合、これは四十四時間を生産性がそのままだとして四十時間にした場合にはどうするかという、こういう問題。
二番目が、大変これが問題でしょうけれども、四十四時間のケースであって、仕事がないために四十時間でいいんだ、そのときにはどうするかというと、この記述に物すごく苦慮をした跡が見られます。
しかし、三つ目、ここにきっちり書いているのは、今まで四十四時間だったんだけれども、生産性を向上して四十時間で済むんだ、その場合には賃金をそのままにして四十四時間の賃金を四十時間にしてもいいんだ、こういう三つの事例がきちっと出ているんです。
私は、この三つの事例を見て、やっぱりこういう企業というのはうやむやにしないで、簡潔にして明瞭な模範解答をここに出しているわけですが、労働省としてはこの三つの解答に対して、何か先ほどの議論を聞いていますと、二番目の議論で相当引っかかっているように思うんですが、この三つに対して一つ一つにどういうふうな見解を持っているんですか。
これは、私いただいた都道府県中小企業団体中央会御中に対して全国中小企業団体中央会が出しているペーパーですが、これはありますでしょうか、手元に。それの事例として一の事例、二の事例、三の事例というふうにあるんですが、一つ一つの見解をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/142
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143・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 使用者団体の方が各傘下に出しました文書でございますが、これはあくまで前文の方で言っておりますように、労使の話し合いを基本にしてくださいということを使用者団体みずからが最初に注意をしながら、いろんなケース分けをして、そういう場合の労使で話し合う際の例示として示しておるものと理解しております。
したがいまして、これが個々の企業のレベルで労使で話し合われた結果、それぞれのケースについてこのとおりになるものではないと思っております。いろいろな段階での労使の交渉の結果というものがなされるんだろうと思います、結論も。
したがいまして、私どもは、少なくとも労使の話し合いがなかったり、あるいは時間当たり賃金を下げる、特にケース一の場合でございますが、そういったような形が出てきたりしたり、その他合理性を欠くと認められるものがあれば、それは注意する、指導するという場面も出てこようかと思いますが、それ以外のそういうことを踏まえた個々のケースにつきましては、これから労使で話し合われる際の参考資料でございますので、私どもが具体的にその内容についての是非をコメントすることは控えさせていただければと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/143
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144・笹野貞子
○笹野貞子君 それであるならば、先ほどの御議論を聞いていますと、二のケースのことを一生懸命に言っていられる、通達として二のケースです。四十四時間働いていたのが、仕事量が減っちゃって、生産性も上がらないのに四十時間になってしまった。そうすると四時間カットということになるわけで、そのときには賃率が下がらないんだったらそれでいいというようなことなんです。
先ほどの歴史の発展性の議論からしますと、時短というのは生産性の向上があった上での時間の短縮というのが本来の意味の時短なんで、四十四時間働いたときと四十時間働いたときとその条件が、つまり給料というのは大きな条件の一つなわけですから、絶対数の賃金が下がったということは条件が悪くなったということになるわけです。そういう点では本来の意味の時短ではないわけで、もしこの考え方を発展させるんだったら、かつて十時間働いたときの時間賃金を、八時間だったら十時間働いたときと同じようにするという論法と一緒になつちゃうわけで、十時間働いていたけれどもそれが生産性を向上して八時間になったというのが、これが私は本来の時短の意味だというふうに思うんです。
そこで、労働省が懇切丁寧に指導するというのは、私は先ほども言ったように、指導というのは今やっていることを今言ったって指導にならないというふうに思うんです。やっぱり指導というのは、今こうだけれども、こういうふうにした方がよりよくなるよというのが指導で、私も長らく教師をやっておりますけれども、今やっていることを今言うという指導というのはちょっと聞いたことがないので、やっぱり懇切丁寧な指導というのはそういうところにあるというふうに私は深く思っております。
そういう意味で、この問題は非常に大きな問題ですし、時短というものの本旨は何か、時短とは何なのか、人間の勤労の中の時間というものはどう考えていったらいいのか、根本原因だというふうに思っております。そういう意味では、この点を十分踏まえてこれから指導していただきたい。
ですから、私に言わせるといろいろまだ無理な点があるかもしれません。しかし、中小企業団体中央会が三つ目のケースとしてこういうケースもあるんだという、ちゃんとそのケースを出しているんですね。四十四時間働いているのを生産性を上げて四十時間になった場合には、賃金はそのままにして四十時間労働に移行するというふうに三つ目のケースを書いておるわけですから、私はやっぱり企業の側でも時短というものはこれをも含むんだという意味だというふうに解釈しております。
そういう点では、私は勤労権というのは、きのうよりもきょうよくする、きょうよりもあしたよくするというのが人間の楽しさだというふうに思いますので、そういう指導をしていただきたいというふうに思います。それでなければ労働基準法という強制法規の意味がなくなってくるというふうに思いますので、その点はどうぞ十分考慮していただきたいというふうに思います。
最後にお聞きいたしますけれども、こういうふうに今、日本の国は規制緩和という大号令のもとでいろんな問題の規制を緩和させているところが現状です。私としては、規制というのは、もちろんするべきところはする、しかしかえって規制をしなければならないところもある。そのかえって規制をしなければならないところの一つに、勤労権を守るいろんな条件というのをきちっと守っていかなければいけないというふうにかたく思っている一人ですが、その点について、この規制緩和という流れの中での労働行政のあり方ということについて大臣から所見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/144
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145・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 労働の提供ということは、一人の人間というか人格そのものに結びついております。したがいまして、これの規制の緩和につきましては十分配慮を凝らさなければならない、こう思っております。しかし、労働の提供であるがゆえに規制の緩和は一切まかりならぬかというと、そういうわけにはまいらないという面もあろうかと思っております。
一つの経営体というか一つの作業場といいますものは、人とそれから物と金と、この三つの総合体だと思っております。そうして、物と金だけが働く分野、これは当然経済規制でありますので、これの規制というものは緩和をすべきだということでありますが、三つが総合されます場合に、規制を緩和してはならないものから始まって、規制を緩和しなければならないものまで各対応があろうか、こう思っております。それぞれの判断をまた凝らして、十分労働の質が高まり、そうして労働者の権利が守られ、楽しい労働の提供ができて、ゆとりのある生活が実現できればと、こう思っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/145
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146・笹野貞子
○笹野貞子君 ありがとうございました。
一部分は理解しますけれども、一部分はわからないところがありますので、またいずれ大臣と二人で議論をいたしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/146
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147・前川忠夫
○前川忠夫君 きょうは、午前十時から大臣初め基準局長からいろんなお話をお聞きして、私も実は今度の時短促進法は、労働基準法の改正の議論にかなり以前からかかわった人間として、ある意味では一つの節目といいますか、大きな区切りがっくなというふうな印象を持って今度の法案については関心を持っていたんですが、少し自信がぐらついてきました。後ほど指摘をさせていただきたいと思います。
その前提になる私自身の考え方といいますか問題意識について申し上げますので、大臣なりあるいは局長の方から御見解があればお伺いをしたいと思います。
既に労働時間問題の歴史的な経過については何人かの議員の方からも発言がありましたから、重複をする点は避けたいと思います。
私は、労働時間というのは、例えば賃金あるいは一時金や退職金等々と違いまして、企業の中でなかなか議論をしてもしにくい部分が正直に言ってある。
これは実はなぜなのかということをいろいろ考えてみたんですが、一つには、労働時間というのは、先ほど私どもの笹野先生からも指摘がありましたが、二十四時間というのは万国共通なんですね、ごまかしようがないんです。途上国だから二十八時間というわけにいかないんです。あるいは先進国だからといって二十二時間で済むとか二十時間で済むというわけにいかないんですね。賃金については、例えばアメリカを一〇〇として日本は幾ら幾らであっても、例えばそのときの生活のレベルやさまざまな条件によって差があっても決して不思議ではない。ところが、労働時間というのは万国共通なんですね。そういう点から私は、労働時間の問題というのは人類普遍の問題だというふうに考えております。
そこで、例の八五年のプラザ合意以来、特に日本に対する海外からの風当たりが非常に強くなってきた。日本は少し働き過ぎじゃないか。このことから政府も労働時間問題に注目をせざるを得なくなってきた。これが一連の私は政府として労働時間問題に本格的に取り組んだ端緒だと思います。
ただし、そうは言うけれどもそう簡単にはできないということもありまして、八六年ごろからの議論はありましたけれども、最終的に八八年に本則四十時間制がスタートをして、今段階的に四十時間にようやく到達をしよう、こういうことになったんじゃないかというふうに、私はそういう理解を実はいたしています。
そういう前提に立ちますと、事労働時間に関しては、ほかの労働条件に比べまして、いわゆる現状追認型の、労働基準法というのはある意味では強行法規ですから、実態が伴わない形で法律だけが先行するということになると縄つきをたくさん出しかねない、したがって、ある程度実態が整った段階で基準法が後を追うというのは私はある部分でやむを得ないと思っていたんです。ところが、労働時間に関しては今申し上げたように必ずしもそうではない部分が存在をしている。つまり、政策誘導型の性格を持っている法の条文じゃないかというふうに私は実は考えています。
そういう前提について、大臣なりあるいは局長の方の感想がありましたらまず最初にお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/147
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148・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 今御指摘ございましたように、日本の当時の経済構造改革の一環として前川レポートで取り上げられて以来、千八百時間、またその中核としての週四十時間労働制というものが進んでまいったわけでございます。
この点につきましては、そういった経済構造の改革という非常に政策的な意義、これがありまして、そのスタートを切りながら段階的に進んできたという側面がございます。労働基準法という法律の中では、確かに御指摘のとおり、ほかの事項と違いまして、いわば強行法規、罰則という規定も持ちながら、ある程度リーディング的な役割を持ってきたことも事実だろうと思います。
今回の四月一日を迎えての状況におきましても、先ほど来御説明しているように、この今までの猶予対象事業場の三六%しかまだ達成できていない状況の中で新たな最低労働基準というものを持ち込むわけでございますので、かなり政策的な色彩が強いことは事実だろうと思います。またそれだけに、私どもからすれば、それをできるだけ早く確実に我が国の一般的な働き方として定着させていかなくちゃいかぬという任務も政策的な見地から負うわけでございます。そういった意味で、これからの二年間というのをそういう意味合いの、私どもが任務を全うすべき二年間として受けとめさせていただいておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/148
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149・前川忠夫
○前川忠夫君 まだ少し何か物足りないような感じがするんですが、この議論だけやっているとちょっと時間が過ぎますので。
もう一点、したがってという言い方をさせていただきますが、万国共通だということは少なくとも日本の国内でも同じなんですね。私も審議会のメンバーのころに一度労働省の皆さんにお伺いをしたことがあるんですが、法律で、あなたは大企業に働いているから、あなたは中小企業だからということで労働時間に差を設けることが憲法上許されるんですかと一回議論をしたことがあります。
その当時は、八八年改正に向けての議論の中で、一つは移行過程であるということ、それから合理的な理由があればそれは認められるというのが現在の憲法判断だと、こういう御指摘がありました。私もそのことについては承知をいたしております。
しかし、今ここまで、あの法律が制定をされてから、本則四十時間制が施行されてから既に九年が過ぎようとしています。ようやくいわゆる四十時間が本物になるのかなというふうに実は期待をしていたのが、どうもちょっと事情が違う、何かおかしいぞという感じを実は先ほどからの議論や、あるいはこの法律が最初にできた議論の経過を聞いておりまして感じております。
そこで、これまでの九年間の段階的な経過ですね。今さまざまな規制緩和が進んでいます。そういう規制緩和が進む中で、例えばこれまでのいろんな戦後の仕組みが見直されるということについては、かなり私個人的には前向きに、新しい時代にふさわしいシステムにつくりかえていく、このことについては理解をしているつもりです。
余談になりますけれども、いずれこれは商工委員会で議論することになりますが、独占禁止法の持ち株会社の問題。労働大臣にもまたいずれお聞きをしなければいかぬと思っていますけれども、この問題についても、この議論の過程の中でいわゆる国際的なハーモナイゼーションということが非常に大きな議論になりました。日本だけがなぜ独禁法という形で純粋持ち株会社が制限されなければならないのかという議論がありました。私は、基本的には持ち株会社は解禁をすべきだと。ただ、幾つかの条件はやっぱり整えてくださいということでさまざまな議論をして、ようやく今法案となって議論をしようとしています。
労働基準法の問題についてもやはりそうではないか。つまり、一連の長年の経過があって改正をしようという場合には、例えば先進国との比較ではどうなんだろうと。あるいは国際的な労働基準、先ほど今泉議員の方からはILOの問題が指摘をされました。どうなんだろう、こういう観点もしっかり見てもらわなければ困る。あるいは年次有給休暇についてもそうであります。ILOは少なくとも三労働週が最低だと言っているわけです。しかも連続して与えなければいけないと言っている。まだ日本の現状は十日であります。あるいは時間外割り増し、既に先進国はほとんどが五〇%になっています。日本の法律は依然として二五%、ようやく休日だけが、しかも法定休日だけが三〇%になる。こういう一歩も二歩もおくれているというこの実態、このことがやはり今国際的に問題にされているんです。
したがって、踏み切るときにはしっかり踏み切ってほしい。これまで中小の皆さん方にはそれなりの事情があったわけですから、かなりのハンディキャップを与えてきたと思うんですね、議論が始まってから少なくとも十年かかっているんですから。しかも労働時間に関してはこれからハンディなしですよと。しかしほかの部分にはまだハンディがあるわけですよね。
多分、労働省では現在の中小企業と大企業と言われているところの賃金やあるいは一時金やさまざまな労働条件の格差についてデータはある程度お持ちだと思いますので、参考までにちょっと最初にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/149
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150・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 中小企業と大企業の労働条件の格差でございますが、代表的な項目について申し上げたいと思います。
まず賃金でございますが、賃金につきましては平成七年の賃金構造基本統計調査で御説明させていただきますが、規模千人以上の企業の定期給与の水準を一〇〇とした場合に、百人から九百九十九人の企業では八三・一、それから十人から九十九人の企業では七五・五となっております。
それから、これを賞与等の一時金で見ますと、これは規模百人以上の企業の年間賞与その他の特別給与でございますが、これを一〇〇といたしますと、百人から九百九十九人の企業では六五・四、それから十人から九十九人の企業が四三・一でございます。
それから企業内の福利厚生施設でございますが、これも別の調査になりますが、平成七年の賃金労働時間制度等総合調査でございますが、五千人以上の企業の法定外福利費の水準を一〇〇とした場合に、千人から五千人未満の企業は七三・九でございます。それから三百人から九百九十九人の企業が四八・〇、百人から二百九十九人の企業が三四・二、それから小さい三十人から九十九人の企業では二九・三、こんな状況になっております。
労働時間でございますが、労働時間につきましては毎月の統計調査で平成八年の一人平均の年間総実労働時間で見ますと、五百人以上の事業所では千九百十三時間、それから百人から四百九十九人の事業所で千九百八時間、それから三十人から九十九人の事業所で千九百十九時間、こういう状況になっております。ほかの項目と比べまして実労働時間ではそう開いておらないわけでございますが、その内容を見ますと、これは所定内労働時間が大企業の方は短くて中小企業の方は長い、それと逆に、所定外の労働時間が大企業が長くて中小企業が短い、こういった状況で相殺されまして、全体としてそう格差があらわれてこない状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/150
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151・前川忠夫
○前川忠夫君 今、数字を述べていただきましたが、賃金や一時金やあるいは企業内福利、退職金は今数字は報告ありませんでしたが、退職金やあるいは企業内年金等を比較しますと、大企業と中小企業というのは大変な格差があるんですね、まだ依然として。労働時間については今報告がありましたようにそんなに格差がない。初めてお聞きになった方は意外に思われるかもしれません。実はこれは当たり前なんでありまして、中小企業は大変なんですよ、はっきり言って。ですから、例えば年間の総労働時間は同じにしておいても、実は残業時間を少なくすることによって何とかやりくりをしている、あるいは所定内労働時間が長いことによって何とかカバーをしているというのが実態なんですね。
ところが、例えば先ほどから議論のありました同じ賃率で計算をいたしますと、大企業の場合と中小企業の場合、年間の働いている時間がどちらも千九百時間そこそこです。ところが月収では大きな差がついている。これは当たり前の話ですよね。片や所定労働時間が短いわけですから、残業時間がつまり長い。片や所定労働時間が長くて残業時間が短いわけですから、プラスアルファとして出てくるいわゆる通常の所定内の賃金プラス時間外労働というトータルで考えてみれば、ここにも実は中小企業と大企業との格差が出てきているんです。
こういう実態があるだけに、私は、できるだけ早くこの格差の問題に日の目を当てて、解消のための努力をしなければいけないということを実は感じているわけです。後ほどこの賃金と時間短縮の問題については触れたいと思います。
そこで、労働時間の問題だけは実は労働基準法ではかなりきめ細かく書いてありますね。ところが、労働時間以外の項目というのは割合抽象的な部分が多い。もちろん年次有給休暇のように具体的な数字を入れている部分もあります。ただ、賃金に関しては基準法から発展した形で最賃法で定めていますから、そういう意味では労働基準法の中の柱は労働時間にあると言っても過言ではないんです、ある意味で言えば。それだけ私は労働時間の問題というのは非常に重いというふうに思います。
そこで、先ほどの議論をお聞きしておりまして、時間短縮の問題にかかわって、これは大臣の本会議でのお答えの中にもありましたし、先ほどからの議論の中でも労使の交渉あるいは実質的な労使の問題だ、こういう御指摘がよくあります。事実そのとおりなんです。ですけれども、労働組合があるところとないところ、一体実態はどうなっているんだろう。全体としてはたしか二三・二%ということですが、特に問題になっています三十人未満、あるいは百人未満ということでも結構ですけれども、中小企業における労働組合の組織率について、もしおわかりでしたらお知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/151
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152・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 平成八年の労働組合基礎調査によりますと、平成八年六月三十日現在では全体で二〇・二%になっております。規模別に見ますと、千人以上の規模で五八・一%の組織率、それから百人から九百九十九人の規模で二〇・五%、九十九人以下の規模になりますと一・六%となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/152
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153・前川忠夫
○前川忠夫君 今、労働基準法で労働時間問題が労使のある意味では焦点になる職場、企業というのはわずか一・六%しか組織率がないんですね。百の企業があってわずか一・六しかない。ですから、事実上労使の交渉というのは機能していないといっていいんです。
確かに基準法には、例えば時間外労働をやる三六協定を結びなさい、労働組合がない場合には従業員代表を決めて協定を結びなさいという指導をしています。しかし、先ほどから報告がありまして、私もある程度承知はしているつもりですが、三六協定を結んでいるところは事業所の中で三分の一ぐらいしかないんじゃないですか。そういう実態があるわけですよね。そういう実態の中で、時間短縮の問題のように非常に高度な難しい問題を企業の中で判断をしようとすると、労使の交渉の材料ということよりも、むしろそういう職場あるいは事業所においてはやっぱり基準法が最低の基準になってくるんですね。ある意味では基準法が頼りなんです。それだけに私は基準法がしっかりしてほしい、中小企業のためにもしっかりしてほしい、あやふやになつちゃ困ると言うんですよ。
これまでも実は、かつて九三年四月一日から四十六時間から四十四時間に週労働時間を二時間短縮するという法定が決まっていたのが、九三年に使用者側の猛烈な抵抗がありまして、猶予の猶予といった形で延長になりましたね、一年間。ああいう過去のいろんな経過を振り返ってみますと、私は労働時間の問題というのは、やはり基準法というのは軸足は労働者に置いておいてほしいと思うんです。そういう視点からいきますと、先ほどからの議論をお聞きしておりましてちょっと不安になってきたという点の一つ目を申し上げます。
もし四月一日以降、例えば四十二時間の事業所があった、あるいは四十四時間の事業所があった、そこの労働者が監督署に駆け込んできた、何とかしてくださいと言った場合に監督署はどうするんですか。できるだけ簡単でいいですからお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/153
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154・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) この四月一日から労働基準法が全面的に実施されるわけでございまして、私どもそれを定着するように指導をしてまいりますが、もしそういった申告事案と申しますか、今おっしゃられたような形で四十二時間あるいは四十四時間働いているところから監督署に申し出があった場合には、これは先ほど申し上げた集団的指導とは別に個別の指導を展開することになるわけでございまして、それを改善させていく、そのために再三再四にわたる指導を行い、また法律に基づく割り増し賃金等も支払わせるよう措置していく、そういった対応が必要になるケースかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/154
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155・前川忠夫
○前川忠夫君 ということは、具体的な監督署への申し立てやあるいは申請なりがあれば、法の精神を厳格に守るという解釈でよろしいわけですね。
そこで、これは当たり前だと言ってしまえば当たり前なんですけれども、そういう外からか、あるいは中の従業員からかは別にして、あそこの事業所はこうだ、あるいはうちの職場はこうなんだ、何とかしてくださいと言ったところは懇切丁寧に具体的な改善策をあれして、例えば時間外労働を払いなさいというような協定を結ばせてやる。しかし、全国でこの対象になるのは、先ほどのお話では約二百万ぐらいですね。だから、集団的な指導をやったところで指導し切れないですよね。
ということは、例えば交通事故と一緒で、ぶつかったやつをおまえ運が悪かったなという話になりかねない。例えば、道交法でここは制限速度五十キロですよと、たまたまネズミ取りをやっていて二十キロか三十キロオーバーで捕まっちゃったと、それはたまたま運が悪かったなで済むかもしれません。これも本当はいけないんですけれども、基準法はそれじゃ困るんですよ、はっきり言って。変な話ですけれども、内部告発でもなければ改善をされないというんじゃ困るんです。やっぱり法律というのは強行法規であるがゆえに、あるいは先ほどから言っているように労働基準法のかなり大きなウエートを労働時間問題が占めているがゆえに、労働時間の重さを考えたらあいまいな法の解釈じゃ困るんです。
もう一度お聞きしますが、厳格にその点は守れるんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/155
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156・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 先生御指摘ございましたように、この週四十時間制を施行していくに当たって、その定着を図っていく過程が例えばスピード違反のネズミ取りのような形になってはいけないという点、全く同感でございます。たまたま目についたところを一罰百戒的にやっていくと、これだけではますます目についたところだけを責めていく、ある意味ではスピード違反の取り締まり的な姿になるだろうと、こういうふうに思っております。
そういった点、個別の事業所に対して厳格に対応する部分と、それからこの四十時間制を定着させていくためにできるだけ多くの事業主に参加していただく集団的な説明会、そこで各事業場の労働時間の状況というものを把握し、以後の改善についてフォローアップに結びつけていく。そういう中からさらに重点的、選択的に指導しなくちゃいかぬ事業場を絞り込んで、この二年間の間に定着させていく、そういった戦略的な指導の手順というものを考えておりまして、そういった進め方についても地方が組織的に取り組めるよう指示してまいる考えでおりまして、まさにたまたま目についた事業場だけを対応していくというのではない、この確実な定着に向けての組織的な対応というものを十分心がけてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/156
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157・前川忠夫
○前川忠夫君 きょうは通産省からも来ていただきましたので、ちょっとお聞きをしたいと思います。
一昨年から、一昨年の暮れあたりからと言った方がいいんでしょうか、ことしの四月一日からの猶予の廃止の問題については中小企業団体を中心にさまざまな要請があって、中小企業庁でもさまざまな努力をしたというふうに私も承知をしていますし、お聞きをしていますが、今度の促進法の改正について通産省、中小企業庁としての見解なり感想なりがあったらお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/157
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158・小野浩孝
○説明員(小野浩孝君) お答えいたします。
先ほど来伊藤局長から御答弁をしていただいておりますとおり、中央労働基準審議会での報告でも明らかなとおり、週四十時間労働制の移行は本年四月一日から待ったなしということで施行されるというふうに認識をしております。
したがいまして、それに伴う円滑な移行を一日でも早く進めるという観点から今回の時短促進法を御審議していただいているというふうに考えておりまして、非常に重要だというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/158
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159・前川忠夫
○前川忠夫君 実は、この四月一日から実施をするということに対しては、かなり激しい中小企業団体からの要請が通産省にもあったと思います。
ここに、ある雑誌のコピーを私持っております。商工会議所の副会頭の中西さんという方ですが、労働省のことし四月一日からの基準法四十時間制を押し切って二年間の延長をかち取った、これは通産省と一緒に闘った成果だと、こういうふうに書いてあります。このことについて、労働省と通産省一言ずつで結構ですから感想なり、あるいはもし事実だとすればこれはそのとおりでいいんですけれども、事実でなかったとしたらどんな抗議なり何なりをされたかお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/159
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160・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の雑誌に記載されている事項につきましては、私ども全くの事実に反することでありまして、全く個人的な誤解というふうに受けとめております。
先ほど来申し上げていますように、この四十時間制、四月一日から労働基準法の規定どおり実施されるものでございまして、今御審議願っておりますように、それをいかに定着させていくかということが課題になっておる段階だというふうに認識いたしております。したがいまして、私どもそういった誤解が出ないように関係の商工団体等ともお話をいたしておりまして、先ほど来御質問のございました商工団体が発出した文書におきましても、この四月一日から四十時間制を実施することが必要不可欠だ、こういうことが明記されているわけでございまして、そういった趣旨を私どもも徹底を現にさせてきておりますし、今後も中央、地方含めましてそういった趣旨を間違いのないよう徹底をさせてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/160
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161・小野浩孝
○説明員(小野浩孝君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、本年四月一日から週四十時間労働制は完全に実施されるものというふうに認識しておりまして、二年間延長ということは誤解による個人的発言であるというふうに考えております。
中小企業庁といたしましては、影響力ある団体役員の誤解による発言であるため、誤解のないよう十分に説明を申し上げ、御本人も納得していただいたというふうに認識しております。なお、別の機会に労働省の方が日本商工会議所に行かれたときにも、日本商工会議所から同様の御発言がございました。
なお、中小企業団体がつくっておりますパンフレットにおきましても、週四十時間労働制待ったなしということでパンフレットを作成しておりまして、中小企業団体の認識も同一のものというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/161
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162・前川忠夫
○前川忠夫君 私は、中西さんの考え方が全部の中小企業団体の役員あるいは中小企業の社長さんを含めた代表者の考え方だと思っているわけじゃないんです。ただ、こういう方が主要なポストにいるということ自身が私は問題だと思う。少なくとも、商工会議所とかあるいは全国中小企業団体中央会というのは政府の補助金を受けている団体ですよね。こういう団体の代表をするような方々がこういう発想で労働時間の問題を見ていたのかと思うと情けなくなってくるんです、はっきり申し上げて。
私は、中小企業がどうなってもいいというふうに思っているんじゃないんです。実は、昨年一年の間、中小企業庁の皆さん方とも何か方法がないだろうかということでさまざまな議論をしてきました。法制局の見解も聞きました。しかし、そう簡単にはいきませんよということで、今度の方法あるいは法律がぎりぎりなのかなというふうに個人的には思っています。しかし、法の執行があいまいになりかねないような、あるいはあいまいであるかのようなこういう理解をして、なおかつそれが各地域の団体を通じてそれぞれの事業所や事業者に伝えられるということになると、これは大変なことなんですね。法の建前といいますか、これが根底から崩れてしまうということになるわけです。
ぜひこれはこれからも十分に留意して、もしこういうのが目にとまったら、それについては抗議をするなりあるいは訂正をさせるなり、そういうリアクションを直ちにとっていただきたい。そうでないと、何かそういう裏約束があったんじゃないかというふうに逆に勘ぐられるわけですね。ぜひこの点はお願いをしておきたいと思います。
余り時間がありませんので、賃金の問題についてお聞きをしたいと思います。
私、この賃金の問題については、先ほどから今泉先生あるいは大脇先生あるいは笹野先生のお話をお聞きしておりまして、少し労働省はおかしいんじゃないのというふうに申し上げたいと思います。それは、確かに先ほどからの議論の中でも、局長はまず労使の話し合いでということが先にあるというふうに言っています。なぜそこでとめないんでしょうか。
私は、先ほどから言っているように、労働省というのは経営者側の皆さん方あるいは中小企業団体の声ももちろん聞かなければいけません。と同時に、働いている人たちの声も聞いてもらわなければ困るわけです。なおかつ、労働組合もない人たちというのはなかなか労働省に対して声が届かないんです。そういう部分をこういう委員会や国会の場で議論をしたり、さまざまな場でやはり議論になるわけですから、ぜひそのことについては耳を傾けていただきたい。中小企業の経営者団体から問い合わせがあったから答えましたと。ところが、連合からの問い合わせに対しては余り丁寧な答えをしていないんですね。私は連合からの回答についても見せていただきました。
私は、なぜおかしいかというと、最終的な労使の話し合いがつかなかったという場合にどうしたらいいでしょうかという問い合わせが監督署に持ち込まれたとか、あるいはトラブって労働委員会に持ち込まれたとかいう場合に初めて、中立的な立場であるべき労働省やあるいは監督署やあるいは労働委員会が答えを出すべきなんです。あらかじめ答えを出すというのは私は行き過ぎだと思います。
それから、先ほど中小企業団体の幾つかのケースについてのお話がありました。私もそれぞれのケースについていろいろと調べてみましたけれども、例えば二つ目のケースの中でドイツのケースをというふうに言っていますけれども、このドイツのケース、確かに労働時間の短縮にかかわって、いわゆる時間当たり賃金を確保することによって年収を確保しよう、あるいは月収を確保しようという仕組みをつくりました。
非常に大事なことが落ちているんですね。これはドイツのフォルクスワーゲンなんです。フォルクスワーゲンは週労働時間を三十六時間から二十八・八時間に短縮をしたんです。これはなぜ短縮をしたかというと、十万人の組合員のうち三万人の雇用の首切りが出たんです。ワークシェアリングという立場で労働時間の短縮をして仕事を分かち合いましょう、そのかわり、二十八・八時間ですと、ドイツの場合には時間給ですから賃金が一遍にダウンをしてしまう。そのために、ベースアップをまずやりましょう、それから二年間だけ企業も少し持ち出しをしましょう、あるいは諸手当もそちらの方へ少し振り向けて、それで年収を確保しましょうというふうにやったわけです。雇用を守るためのまさに苦肉の策だった。ところが、中小企業団体のあれは、月収を確保するために手当を引っ張ってきて、こういう計算でやったらば何とかなりますよ、こういうやり方をする。
それから、先ほどから議論になっている賃金の話ですけれども、例えば月給者の場合に、もし会社に入るときに時間給で契約を結んでいなかったとした場合、これは完全に労働契約違反になるわけですよ。そういうことになりませんか。一カ月の月給は例えば二十万円であれしましょうということになっていたとすると、例えば二月のように労働日数が少ない月は時間当たり賃金上がりますよ、これは当然のことですが。ですから、時間当たり賃金というのは余り意味をなさないんです、月給者の場合には。ところが、月給者についてまでこういうやり方をやるということになると、私は労働契約違反になるんじゃないかと。法律学者もそう言っているわけです。
ですから、さまざまに実は議論がある、あるいは起こりそうな問題についてなぜ労働省がこれを踏み切らなきゃならないのか、あるいは法律が成立をした段階でこういう通達を出しますから御安心をという約束でもしていたのかどうか、お聞きをしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/162
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163・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) この週四十時間制の実施に伴う賃金の取り扱いの問題について私どもが商工団体等に答えた内容の中で、労使で話し合うことが基本であると、そこでとめておけばよろしいんではないかという御指摘でございます。
先ほども申し上げましたように、組織率等いろんな状況を見た中で、やはり小規模事業所にとって、三六協定等をやる際の労使代表制等も活用しながらそういった話し合いを進めていくことも考慮していかなくてはならないわけでございます。そういった中でもう一つ考慮しなくちゃいかぬのは、この週四十時間制をめぐってやはり大きな議論、また厳しい経済情勢のもとでこれを実施することに対してのいろんな御意見もあった中でこの四月一日から実施してまいるわけでございまして、やはりそこで困難等が出てまいってはいかぬ、そういったことが私ども労働条件を守る立場からまず第一に考えなくてはいけないことだというふうに考えました。
そういった中で、やはり今までも、私ども一般的な考え方として合理的な範囲でこの労働条件等というものを見直していく、そういうことのために、今回週四十時間制の実施に当たって、四十時間制との関係で合理性がある、例えば時間当たり賃金率を下げないことも含めまして、この四十時間制を実施するに当たって合理性のあるものでなくてはいけない、こういうことも念頭に置いて、これは実質的には過去からとられていた解釈と同様でございますが、そういったことをお示ししたわけでございます。
そういう二つの考え方に基づいて、四十時間制が実施されるに当たってこういった議論が起きる中で、私ども労働者の労働条件というものを適切に確保し守っていきたいという見地から行ったものでございますので、これはぜひ御理解をいただければというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/163
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164・前川忠夫
○前川忠夫君 ちょっと理解できないんですよね。
今、合理的な理由というお話がありましたが、それは、合理的な理由というのは経営者の皆さん方から言えば合理的な理由になるかもしれませんが、そこで働いている人たちから見れば合理的な理由にならないんです。
それから、もう一つ大事なことを忘れていますよ。この中小企業団体から出ている三つのケースです。例えば、従来四十四時間でやっていた、四十時間に今度なりましたと、しかし四十四時間で働かないと従来どおりの生産性が上がらないという前提の場合にはこうですというケース。それから二番目のケースは、四十時間でやらざるを得ないほど仕事が減っちゃったというケース。この二つのケースが問題なんですよね。こういうケースは一体どうやって調べるんですか。あらかじめ答えを用意しておいて後で当てはめろと言うんですか。そんなことはないんですよ。
現実には、一カ月ということはないでしょう、例えば半年なり一年なり時間短縮をやってみて、結果的には生産性が従来と変わらなかった、あるいは従来よりも上がったとか、あるいは四十時間になったがために、週当たりの稼働時間は減るわけですから、結果的に下がってしまった、これはしばらくやってみないとわからないんです。私ら何度も経験しているんですよ、職場で。その結果に基づいてさあどうするかというのを次のステップとして議論するんですよ。これじゃ具合が悪いので何とか賃金を下げてくれという話だってあるかもしれません、経営者によっては。それは賃金交渉ですから。だけど、あらかじめ答えを出してしまうというやり方はないじゃないかと。
私は、労働省はある意味では行司役に徹してほしい。最初に答えを出さないでほしい。相撲をとる前から判定をする行司なんてどこにもいませんよ。そういう点で私は問題があると言っているんですよ。ですから、法案が成立した後で今申し上げたような趣旨で通達を出すということであれば、私どもとしてもこの法案の扱いについて場合によっては再検討しなければならないということを申し上げて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/164
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165・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の点につきまして説明をさせていただきますが、一つは使用者団体の方から出ております文書でのいろんなケースでございますが、これは私どもの結論でもございませんし、もちろんそれによって個々の企業の結論が縛られていくものでもないというふうに理解をいたしております。
私どもは、労使がきっちりと話し合っていただくこと、また、時間率を下げないこと等の合理性がある、例えばケース一とケース三を取り違えたりすればこれは本当に合理性がないケースになるかもしれません、そういうことも含めてきちっとそこは合理性のあるお答えを出していただかなくちゃいかぬという一つの考え方を持っておりまして、その使用者側の提示されたものはあくまで労使と話し合う際の参考資料であろうというふうに受けとめておるところでございます。
したがいまして、通達等でも私どもは、使用者側の文書が結論でも、またそれに沿って対応しなくちゃいかぬものでも何でもない、いわば一つのこれから労使話し合う際の参考資料であるという趣旨は十分地方にも伝わるように心がけて対応をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/165
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166・前川忠夫
○前川忠夫君 済みません、もう一回確認させてください。
ということは、法案が成立した後出すんですか、通達をもう一回。それだけはっきり言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/166
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167・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 通達と申しますか、こういう経緯があったということは地方に知らせなくてはいけない、こういうことでございまして、全体の通達の中で、こういったことがあるのでちゃんと労使の基本的な話し合いがきっちりと行われること、それから合理性のある形で行われること、この二つはきちっと頭に置いて、もし個々具体的なケースがあった場合に、相談があった場合に必要な指導や対応ができるように、これは窓口にも知らせておくという意味のことでございます。そういった意味で、地方に知らせることはしなくてはいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/167
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168・前川忠夫
○前川忠夫君 はい、わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/168
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169・吉川春子
○吉川春子君 政府は、八七年の労働基準法改正で週四十時間労働制の方針を決めました。また、経済計画等で時短千八百時間達成についてたびたび宣言してきました。
そして、時短推進計画、九二年、平成四年十月九日で、世界有数の経済的地位にふさわしい豊かでゆとりある労働者生活の実現のために緊急に取り組むべき課題が労働時間の短縮だと、生活大国実現を目指す上で最重要課題の一つであるとしました。また、労使の取り組みの促進では、生産や所得の低下を引き起こすことなく労働時間の短縮を円滑に進めるためには生産性の向上が必要であるとしていますが、時短促進のために所得の低下を引き起こしてはならないという閣議決定の内容は政府の方針として変わりないと思いますが、これらの点について大臣の決意をまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/169
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170・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 後で答えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/170
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171・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 時間短縮推進計画の具体的な内容にかかわりますので、私の方から答えさせていただきたいと思いますが、これからの労働時間短縮の進め方に当たって、生産性を上げ、生産とか所得の低下を招くことのないように留意しながら時間短縮を進めていこうという方向、方針については現時点でも変わりないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/171
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172・吉川春子
○吉川春子君 ことし四月から週四十時間制への移行が決まっていますが、所定労働時間を週四十時間とする事業所の割合は全体として六六%、また猶予対象事業場では五六・三%にとどまっています。
そこで大臣に伺いたいと思いますが、猶予措置対象事業場の四割以上が四十時間制に移行できない原因、さっき横並びとかなんとかかんとかいろいろおっしゃいましたけれども、政府の側にどんな責任があったために移行できない事業所がこんなに多いのか、それについて見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/172
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173・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 私どもは、先ほど前川先生、今泉先生等々からお話がありましたように、もう九年前といいますか、六十二年からこの時短を期していろいろな努力をいろいろ細かな手配もしながらやってまいりましたが、残念なことに、先生がおっしゃるような数字に相なっていることは事実であります。これはやはりここ数年におきますところの、バブル期を含めてバブルの崩壊に伴うところの非常に厳しい経済環境、あるいは大企業の生産拠点が海外へ出ていくというようなことの中小企業に及ぼす影響等々が相重なって今の未達成であるというようなことになったと思います。
したがいまして、今度はもう一度ふんどしを引き締めてといいますか、二年の猶予期間を置く、しかしながら、それを犯したならば違反は違反である、しかしながら違反イコール罰則ということではなくて、懇切丁寧な御助言を申し上げ御指導を申し上げる、あるいは省力化施設については助成もする等々、細かな配慮もして今度こそ時短を実現したい。
したがいまして、この四月一日を期して四十時間労働制というものに踏み切るということでございますので、御理解を賜りたい。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/173
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174・吉川春子
○吉川春子君 景気が悪くなったので、海外に拠点を移す企業が多かったので時短は進まないということですか。
この時短が未達成に終わったということについて政府にどんな責任があるとお考えですか。局長、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/174
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175・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) この労働時間の短縮、もう既に十年来進めてまいったわけでございますが、正直申し上げまして、四十時間というものに近づくにつれてその進捗のテンポというものはだんだんと落ちてまいりました。四十八から四十六、四十四、それから四十と、正直申し上げまして残るところが非常に規模の小さい事業場を含んだ膨大な数の事業場であるということ、それからそういった事業場は、日本国内での競争だけではなくて、例えば同じようなものをつくっていき続けるとすれば、やはりアジア諸国の工業化等も加わって、ある意味では広いグローバル的な意味の競争の中で対応する。そういった中で中小企業がこれからの経営というものに対応していく際に、労働時間短縮というものについてコストの点等で踏み切れないものがあったり、そうしたケースがあったんではないかというふうに推察いたしております。
私どもとしては、そういった中でこの労働時間短縮というものは、むしろこれからの生産性の上げ方、効率性の上げ方、そういった企業体質を強くすることを考えるきっかけでもあるんだということの認識から、本省それから地方も一体となってかなりのキャンペーンを張ってまいったわけでございます。
そういった中で、平成八年になりましてからも時短奨励金等を活用する事業場が猛烈にふえて、理解が深まってきているわけでございます。ただ、全体の数が膨大な中でまだ相当数が残ったということは事実でございますが、私どものそういった周知、PRについてもっとやればというおしかりは、これは受けたいと存じますが、ただ、それが政府の責任といったような形ではなくて、力不足だったということは必ずしも否定いたしませんが、責任があった点と言われると、ちょっと具体的にお答えはしかねるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/175
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176・吉川春子
○吉川春子君 中小企業での時短のおくれの原因について考えるときに、かつて松原労働基準局長が、労働時間の短縮をある意味では成果配分という面があると言っておられます。
生産性向上の成果配分をすべて賃上げで獲得し、それに加えて労働時間短縮をということは極めて困難な面がある、したがって、労使の間で生産性向上の成果配分を労働時間と賃金でどう分けて時短を進めていくか、労働者に時短に向けての取り組みを考えてもらわなくてはならない、権利として持っている年次有給休暇を行使しない実態がある、こういう問題について労使、特に労働者に意識をもう少し持っていただかなければならないというふうに去年の四月九日に述べているわけです。
このように、中小企業では労働者の賃上げ要求が時短が進まない原因であるかのような、こういう考えが労働省全体にあるんじゃないですか。生産性向上の範囲で時短と賃上げを行う、こういう考え方はもう日経連のかねてからの考え方で、生産性基準原理そのものです。それを労働省が持っている。中小企業では生産性向上分以上に大企業から厳しく収奪されているんです。そして、これをやめさせないと中小企業での時短も賃上げも進まない。こういうところをちゃんと労働省としても分析して、肝に銘じていただきたいと思うんです。
それで労働省に伺います。大企業と中小企業の賃金の格差はどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/176
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177・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 企業規模別に見ました所定内賃金の状況でございますが、平成七年度賃金構造基本統計調査でございますが、規模千人以上の企業における所定内賃金を一〇〇とした場合に、百人から九百九十九人規模で八三・八、それから十人から九十九人の規模で七七・九となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/177
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178・吉川春子
○吉川春子君 年間賞与その他、特別給与額を含めたパーセントは出ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/178
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179・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 賞与等の一時金でございますが、賞与等の一時金について申し上げますと、同じく千人以上の企業の年間賞与その他の特別給与の水準を一〇〇とした場合に、百から九十九人の規模の企業では六五・四、それから十人から九十九人の規模の企業では四三・一となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/179
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180・吉川春子
○吉川春子君 これだけ賃金格差があるわけですね。
通産省、お見えになっていただいていると思いますが、中小企業の労働者の賃上げ要求が時短を阻害しているというような考え方を持っているとしたらこれは重大問題ですけれども、時短の阻害要因は平成四年の時短計画で指摘しています。
すなわち時短のための環境整備で、発注方法の改善等取引慣行の是正、「個々の企業が労働時間の短縮を行おうとしても、親企業等からの発注等取引上の問題が阻害要因になっている場合が少なからず」ある、時短促進を「阻害するような取引慣行について是正していくことが必要」だ、こういうふうにされています。
それで、これは参議院の調査室の資料なんですけれども、全国下請企業振興協会、発注者方式等取引条件改善調査報告によりますと、時短を進めていく上での障害は次のとおりです。
発注の波が激しく生産の平準化ができない、三三・九%。受発注が短納期、これが二三・九%。受発注が多頻度・少量発注、これが一八・九%。低単価で時短によるコストアップができない、三四・一%。競争が激しく、時短により仕事の機会が失われる、一三・七%。こういう実態を通産省どのぐらいつかんでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/180
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181・宮川萬里夫
○説明員(宮川萬里夫君) お答えいたします。
下請中小製造企業が労働時間を短縮するためには、下請中小企業が自分で努力する、こういったことはもちろんでございますけれども、週末発注、そして週の初めにすぐ納入せよとか、それから就業後発注、そして翌朝納入しろとか、こういった親企業の発注方法、こういったあり方につきましても、こういったことに非常に左右されることがあるもの、こういうふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/181
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182・吉川春子
○吉川春子君 こういう問題についてどういう指導をして、どの程度改善されているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/182
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183・宮川萬里夫
○説明員(宮川萬里夫君) 私どもは、下請中小製造企業の時短、これを図るためには親企業の発注方法の改善が重要である、こう認識しておりまして、平成三年二月、下請中小企業振興法の振興基準を改正いたしました。そして、今申し上げたような内容につきまして、毎年度、親企業の外注担当者を対象に開催される下請取引改善講習会、それから通達、こういったことで周知徹底を図ってきております。
ちなみに数字等を申し上げますと、例えばこの振興基準改正時、平成三年と現在平成八年度の数字を比べてみますと、例えば週末発注、週の初めの納入がよくある企業の割合、こういったものにつきましては、平成三年度は一〇・九%、平成八年度は六・三%、こんなふうな数字になっております。それから就業後発注、そして翌朝すぐ納入しろ、こういったのがよくある企業、こういったアンケートのお答えですけれども、そういった企業につきましては、平成三年度三・八%、それから平成八年度は一・一%というふうになっておりまして、改善の方向は見られておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/183
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184・吉川春子
○吉川春子君 この数字を拝見しましても、遅々として進まない、なかなか時短推進のテンポには合わないというふうに思うんですけれども、もう一つの問題は、単価の問題があるわけです。
親企業に対する低単価の問題についてはどのような指導を行っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/184
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185・宮川萬里夫
○説明員(宮川萬里夫君) お答えいたします。
下請中小企業振興法に基づく振興基準におきまして、これは親、下のいわゆるガイドラインでございますが、取引単価は、取引数量、納期の長短、納入頻度の多寡等を考慮した合理的な算定方式に基づき「労働時間短縮等が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定するもの」、こういうふうにされておりまして、先ほど申し上げましたように、親企業を対象とした講習会、これは昨年度約一万名を超える参加を得ておりますけれども、それから通産大臣からの通達、こういったことで周知徹底を図っております。
一方、短納期発注それから多頻度小口納入、こういったものを反映しない単価、コストが十分こういったものに反映されていない、そして下請事業者にこれを押しつける、こういった親事業者の悪質なケースにつきましては、下請代金支払遅延等防止法によりまして厳正に対処を行っているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/185
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186・吉川春子
○吉川春子君 この下請いじめについては本当に悲鳴に近い声を私たちは調査に入るたびに聞きます。
この間、トヨタ自動車のラインが全部ストップしたという事件がありましたけれども、ああいうかんばん方式初め、今ずっといろいろ細かく言われたような納入方式とかあるいは単価の決め方とか、本当に中小零細企業を圧迫しておりまして、こういうことが時短がなかなか進まない大きな原因になっておりますので、通産省においても、遅々とした数字ではなくて抜本的に改善されますようにぜひ指導をしていただきたい、そのことを強く要望をしておきたいと思います。
それから、運輸省に引き続いて伺います。
まず、トラック運転手について、週四十時間適用になるわけですけれども、しかし、賃金水準を維持して時短を進めようとすれば当然運賃にはね返ると。
そこで運輸省に聞きますけれども、前回、労働時間が四十六時間から四十四時間に変更されたときに運輸省が示した、改定運賃の届け出の原価計算書等の添付を省略できる範囲の算定の基礎となった指標等では、時短に伴うコストアップ分を何%と見込んでいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/186
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187・福本秀爾
○説明員(福本秀爾君) お答えいたします。
平成六年二月十五日に先生御指摘の通達を私ども発出いたしておりますが、原価計算書が不要となる範囲を算定いたしました場合の人件費のアップ率につきましては、いわゆる労働時間の短縮分も含めた形でございますが、二・五%を入れておったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/187
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188・吉川春子
○吉川春子君 労働省、賃下げなしで時短を進めるためにはどうしてもこうした措置が必要になるわけですね。労働省も運輸省と協議して今後もこうした措置を講じるようにぜひ働きかけていただきたいと思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/188
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189・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 運輸省とは、この週四十時間制の実施を含め、労働時間短縮等につきましていろいろ連絡するための場も設けてございます。
そういった場も活用しながら、昨年の十一月には、トラック業界等の労働時間短縮のために荷主等に協力を文書で要請するなど、今までも労働時間短縮に向けて協力をしていただいてきておりますので、今後ともそういった形で、先生御指摘のこの労働時間短縮、とりわけ四十時間を進めていくに当たって、いろいろ発注者との関係等について円滑に進むための方策について引き続き話し合いをしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/189
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190・吉川春子
○吉川春子君 運輸省、もう一つ伺いますが、タクシードライバーですね、この人たちに週四十時間制が入るんですけれども、私が調べたところによりますと、タクシー運転手の給料というのは事実上一〇〇%歩合制というところが少なくないんですよ。あるいは一〇〇%でなくてもほとんど歩合制に頼っていると。こういう賃金の決め方ですと、労働時間を短縮するとそれだけ水揚げの減少に直ちにつながっていくわけなんです。だから、労働時間の短縮というのは全然ありがたくないんですね。自分の生活を脅かされる。こういう困難な職場において労働時間の短縮をし、そしてその賃金も低下させないようにする、生活も守る、これは非常に重要な課題だと思いますが、どういうふうに取り組んでいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/190
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191・宮崎達彦
○説明員(宮崎達彦君) 先生御指摘のとおり、タクシーの運転手の賃金というのは歩合制が非常に多い業種でございます。おっしゃるとおり、その中で時短を進めていくというのはなかなか難しい問題があるというふうに考えております。ただ、労働時間や賃金などの労働条件というのは、一定の労働関係法令の枠内におきまして、あくまでも労使関係の交渉によって決められるべきものと我々は考えております。
したがいまして、週四十時間制の実施に当たりましては、労使間において勤務形態の見直し、時間外勤務の見直しなどの問題も含め十分協議していただきたいと考えております。
なお、先般、中央労働基準審議会の場で、労使も含めまして約一年にわたりまして御協議されました結果、昨年十二月に、拘束時間の短縮をどう進めていくのかでありますとか、一年単位の変形労働時間制を導入できないかなどにつきまして、四十時間制への移行に当たっていろいろなことを話し合われてその結果をまとめられたというふうに承知しております。
今後、そういった線に沿いまして労使間で十分な真摯な協議が進められていくことを望んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/191
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192・吉川春子
○吉川春子君 その一年制の変形労働時間の要件緩和というのは大問題で、これはもう実際上、残業手当を払わなくてもいいということになるんですよ。それはちょっときょう触れる時間がないんですけれども。
もう一つ伺いますけれども、運輸省はタクシー運賃を二度にわたって値上げ申請を認めて値上げしましたけれども、それはほとんど運転手の待遇改善、賃金の上昇につながってないんですよ。そういう実態をどの程度把握されているか私はわかりませんけれども、ともかく労使で話し合ってやればいいという生易しい現場じゃないんですよね。タクシーの運転手さんを含めて四十時間に移行するためには、本当に政府が一体となった指導やらそういうものをきちっとやらないとこれは移行できないと思うんです。一番困難なところに四十時間労働制の恩恵を与える、これがやっぱり本当の意味での経済大国の時短じゃないでしょうか。
私は、いつもタクシーに乗るたびにタクシーの運転手さんの悲鳴を聞くわけです。今度だってこの恩恵にあずからないわけなんです。そういうことを含めて、きょうは大臣もお見えじゃありませんから労働大臣にまとめて伺いますけれども、今残っているところは非常に困難なところなんです。中小零細企業の困難なところ、規模も小さい、そして困難な業種、そういうところでやっぱり時間短縮というのを進めていかなきゃならない。そのためには政府の一致した努力が必要だと思いますが、そういう点で今、中小企業の問題について少しですけれども指摘いたしました。
そういうことも含めて、全力を挙げて政府として取り組んでいただきたい。その決意を労働大臣から伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/192
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193・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 吉川先生、最後におっしゃいましたように、この時短と申しますものの実現は、あにひとり労働省だけでやれるものではないと。関係各省庁いろいろ協力をいただき、あるいは相提携し、意思の疎通を図りながらぜひ実現をさせたい、こう思っているわけです。
全般的に、労働時間のあり方といいますか、今、時短の御提案をしているわけでありますが、労働時間管理あるいは労働契約のありざま、これにつきましては、中央労働基準審議会の方に七月一日まで御審議を賜るようということでお話し合いをいただくことに相なっております。
そんなようなことも踏まえまして、今後もできる限り中小企業等々を含めまして時短の恩典にあずかれるよう頑張ってまいりたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/193
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194・吉川春子
○吉川春子君 それでは次に、先ほど来問題になっております事務連絡、二月七日付で賃金時間部労働時間課長の事務連絡を発しております。この問題について、全労連も厳しくこの通達に抗議をしているわけですけれども、これは賃金の切り下げを公然と認めるものではないのか。
さっきからいろんな議論がありました。業界団体のさまざまな文書を添付して、そして一番表紙に労働基準局の時間課長の名前で事務連絡を発している。だから、これはもう労働省によってオーソライズされたものじゃないですか。ここに書いてある、業界団体の意見だとかおっしゃいますけれども、これを全部労働省は添付して、一番最初に時間課長の名前がついていて、都道府県の労働基準局長あての事務連絡として出しているわけですよ。だから、この内容について全部正しいものだと、そういうような受けとめ方をされても当然だと思うんですけれども、もちろんそういう内容でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/194
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195・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の事務連絡、取り急ぎ地方局にこういった動きがあることについて事務的に知らせてあるものでございます。既に関係の商工団体からそういう文書が各傘下事業主へ出ているわけでございますので、私ども各窓口におきましては、五十六年の際にも同様の措置をしておりますが、この賃金の問題について労使で十分話し合っていただかなくちゃいかぬ、また、それぞれの商工団体の文書ではケースを分けておりますが、そういった個々のケースに示されているものが、本当に合理性を持った形で労使で話し合って結論を出していただかなくちゃいかぬわけでございまして、そういった基本的な考え方を窓口が承知して対応する必要がある、そういう観点から流しているものでございまして、御指摘のように、この方向を推奨するとか追認するとか、そういったものでは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/195
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196・吉川春子
○吉川春子君 その中に書いてあることなんですけれども、労働省の文書ですよ、「週四十時間労働制への移行に伴う月給者に対する賃金の取扱いについては、基本的には労使間の話し合いで解決すべきものであるが、週四十時間労働制の移行に伴う賃金の改定に当たっては、時間当たり賃金が減少しない等労働時間の変更との関係からみて合理性があるものであれば、労働基準法の適用上問題とならない。」としていますね。だから、労働基準法上問題となる場合があるということなんですけれども、しかし、そこでその全国中小企業団体中央会の文書が、ホッチキスでとまっているかどうかわかりませんが添付されている。ということは、これは労働省の考え方の範囲内で合理性のあるものだと、そういう資料として添付されたんですか。それとも、いや、これはとんでもない考えのものなんですよと、こういうひどいものが出ていますよということで添付されたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/196
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197・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 私ども、その基本的な考え方を商工団体の方に示したわけでございまして、この商工団体の方がこれからそういった私どもの基本的な考えを踏まえてその範囲内で労使で話し合っていく、そういった基本的な姿勢をとっておられることについては承知をいたしておりますが、そこで示された一つ一つのケースについて、それが労使の間で出るべき結論でもございませんし、これは労使の間で十分話し合っていただいて、そういった個々の企業で四十時間達成に当たっていろんな工夫を重ねられれば、本当にどういつだ賃金の扱いがいいのか、そこは十分議論なされた上で結論が出るべきものと思っておりますので、個々一つ一つについて、これは労働省が認知したとかこれを容認するとか、そういった次元のものではないというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/197
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198・吉川春子
○吉川春子君 認知していない、悪い考えの見本としてつけたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/198
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199・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 個々のケースごとに示された一つの例示のようなこの扱いにつきまして、事例につきまして、これがいいとか悪いとかというものではないと思います。私どもは、労使で十分話し合い、合理性のある範囲で結論を得ていくことが大事でございまして、そういった中で、例えばこの例示の中であっても、例示の一と三を取り違えたりするようなことがあれば、これはやはり合理性を欠くケースもあるでしょうし、そういった意味では、この四十時間実施に伴って生産性向上等のために労使でいろんな工夫をされる、そういうことと相まって賃金の問題についていろんな議論がされる、そこから出てくる結論というものが大事でございまして、使用者側が労使と話し合う際のいわば使用者側の手持ち参考資料のような形で出されたというふうに理解しておりますので、それがどうこうというコメントを行政がすることはかえってよくないんではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/199
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200・吉川春子
○吉川春子君 行政がコメントするのがよくないんだったら、こんな民間団体のものをたくさんつけて、わざわざ各都道府県の基準局長に出す必要はないんだと思うんです。
例えば、ここで示されている計算式によりますと、所定外労働を強制されることになるというケースもあるわけですね。政府は、千八百時間達成のために法定時間四十時間にすること、週休二日を達成すること、年休取得の促進、所定外労働の圧縮、こういうことを図るとしているわけですね。そして、各業界団体別の指針のところでも、所定外労働時間の削減ということをきめ細かく言っているわけですよ。
ところが、これについているその一つのケースは、やっぱり賃金を下げない場合だったらば所定外労働時間を強制されると、そういうような内容もあるわけですけれども、これは所定外労働の削減ということを進めている労働省の立場からは逆行する内容じゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/200
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201・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 生産性等が上がらないために、引き続き四十四時間働かなくてはいけないケースがあることを例示していることについての御指摘であろうと思います。
先生も冒頭御指摘ございましたように、生産性の向上、その成果を賃金なり労働時間にこれは労働者の方に還元していかなければならない、そういう形で労働時間短縮を進めるのが一番望ましいわけでございますし、そういったことのために、今までの労働時間短縮というものも、生産性の向上あるいは親企業のそういった援助等も、そのための援助等も協力要請しながら進めてまいってきているわけです。
ただ、それはどちらかというと労使の間で自発的に、法律等によって強制されない部分について長時間労働を削減しようとか、有給休暇の取得率を上げようという形で進んできておるわけでございますが、今回のように、法律によってこの四月一日から待ったなしで四十時間制というものが適用される。この商工団体もそれが必要不可欠だとした上での措置でございますので、今までの生産性向上等のための準備もろもろが間に合わなかった事業場について、今までと同じ生産等を維持していくために、四十時間という法定労働時間にはなったけれども、残業を含めて四十四時間働かなくてはいけないケースが出ることは、これはある意味ではやむを得ない。
ただ、手続的に三六協定その他の手続が必要であることはもちろんでございますが、そういった現象がこの四月一日を挟んで出ることについては、長時間の残業等を削減したいという私どもの気持ちそれ自体の本質を覆すものではないというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/201
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202・吉川春子
○吉川春子君 いずれにしても、ここの中身に書いてあることは、所定外労働時間をふやすと、時間外労働をふやすということにつながるような内容も入っているわけです。
それで、労使の話し合いということをさっきから何十回とおっしゃっているんですけれども、中小企業の組織率について伺います。その組織率と、その組織の中に包含されている人数と、両方規模別に報告していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/202
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203・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 労働組合の組織率でございますが、組織率についての数字をまず申し上げますが、民営企業における労働組合の推定組織率は、平成八年の労働組合基礎調査で、平成八年六月三十日現在で二〇・二%でございます。それから規模別で、千人以上規模で五八・一%、百人から九百九十九人規模で二〇・五%、九十九人以下で一・六%となっております。
それで、労働組合員数についてもお尋ねでございますが、千人以上の規模で労働組合員数を申し上げますと、約五百七十七万三千人でございます。それから、百人から九百九十九人の規模でございますと二百四十三万八千人、それから九十九人以下でございますと大体四十万五千人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/203
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204・吉川春子
○吉川春子君 その人数じゃないんですよ、私が聞いておるのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/204
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205・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 労働組合員数でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/205
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206・吉川春子
○吉川春子君 対象になっている人数です。組織されているのは少ないんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/206
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207・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) 民営企業の労働組合員総数でございますから、総数で申し上げますと、組合員数が九百七十四万二千七百四十五人でございます。それを規模別に申し上げますと、先ほど申し上げた数字になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/207
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208・吉川春子
○吉川春子君 対象になっているのは、労働省からもらっている数字なんで私言っちゃいます。千人以上が九百九十四万人、百人から九十九人が千百八十七万人、九十九人以下が二千六百十六万人。だから、組織されていないところの労働者の数が圧倒的に多いわけですよ。労使で話し合いなんて言っても、組織率が一・六%、それで何千万の人たちが未組織なわけですね。そういう人たちとどうやって労使の対等な話し合いなんてできるんですか。そういうところで労働省は労使の対等な話し合いをするように何か策を講じていこうとされているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/208
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209・伊藤庄平
○政府委員(伊藤庄平君) まず最初に、先ほどの数字の食い違いでございますが、私は労働組合員数で申し上げまして、先生はそこの雇用者数で申し上げられているその食い違いかと存じます。
それから、そういった組織率の状況で労使の話し合いというものが本当に進むのか、こういう御指摘でございます。御指摘のとおり、この点は私どももやっぱり懸念すべきところだと理解しております。それであるからこそ、今回、まだ三六・数%という達成状況の中でこの四月一日から待ったなしに四十時間というものを実施していく。
それで、今まで自主的に進められてきた四十時間の努力と違って、準備のないケース等があって、生産性等の上がらないままそこへ向かう。そういった際に、例えば賃金等について一方的な変更その他があってはならないわけでございます。そういった意味では、商工団体等から話があった際にも、どういう状況であれ、まず労使の話し合いというものを尽くしてもらう、そこで決めるというのが基本でありますということをまず大前提として申し上げておるわけでございます。
したがいまして、使用者側が例示している、最初にございます四十四時間引き続き働かざるを得ないケースということであれば、当然三六協定等も締結しなくちゃいかぬ、そのための従業員の代表というものもいなくてはいけない、そういった状況でございますので、そういったことを活用せずにこういった形がもし出てくるとしたら、私どもの考えでいるものと違ってまいりますので、そういった点については、私ども把握すれば指導、注意を申し上げていかなくてはいけない、そういうことでこういった考え方を私ども出しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/209
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210・吉川春子
○吉川春子君 もう時間がなくなってしまいました。結局、さっきからいろいろ詰められて、最大の逃げ道が労使の話し合い。しかしその労使の頼みの話し合いが、九十九人以下では二千六百十六万人も雇用者がいるのに、組織率が一・六%。労使の対等の話し合いなんかできないわけですよ。だから、そういうところに労使の話し合いといっても本当に無意味なのであって、やっぱり労働省の非常なイニシアチブ、労働基準監督官を初めそういうところのイニシアチブというのが非常に大きな意味を持っていると思うんですが、その労働省がこういう事務連絡を出すということは何をかいわんやです。それで、この文書が実は春闘を闘っている現場、労使の間で非常に問題になっているんですよ。そして、時短なのか賃下げなのか、こういうことが向こうからも提起されたりして問題になっている。
やっぱり今、中小企業が労働者側の要求に押されて平均以上の賃上げを行えば、大企業は今度、企業経営に余力があるという形でもって逆にまた一層厳しい単価引き下げも行ってくると、こういう状況にあるその時期に、こういう賃下げを合理化するような、こういうような労働省の事務連絡というのは本当によくないと。私はこれは撤回すべきだと思うんです。この事務連絡はぜひ撤回してもらいたい。大したものじゃなとさつきから繰り返しおっしゃっているんですから、こんなものは撤回してください。誤解を生みますよ。そして、時短を推進するのにもっと困難を生じますよ。どうですか、大臣、これ撤回してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/210
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211・岡野裕
○国務大臣(岡野裕君) 先生もうすべて御存じだと思いますが、時短はぜひ労働大臣やりたいと言っていますが、労働大臣だけでできっこないじゃないかと、はいそうです、政府みんな一体となってと言っております。それじゃその次、経営者が時短をやりたいと思っても経営者ひとりでできるものじゃありません。やっぱり労働者諸君、皆さんも一緒になって時短だということでなければ実現するものじゃありません。
したがって、ここでは労使の話し合いと、こう言っているわけで、逃げ場をそこへ求めているわけではありません。例えば、省力化施設を入れて生産性を向上させて時短にも貢献というようなことで、省力化施設を入れると労働条件が職場でどう変わるかというような問題も、本来であれば使用者が一方的に決めるんじゃなくて労使の話し合いで決めるんだと、こういうことだと思いますもので、労使の話し合いでぜひ時短を進めるようにしてもらいたい、こういうことであります。
労働基準法というのは最低基準であります。したがって、ここに労働基準法の第一条第二項というのがあります。御披露いたします。何と書いてあるか。「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として」、この「基準」の中に時短が入るわけでありますが、「この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」と、こうあります。労働省はこの法一条二項に基づいて時短を進めるべく努力をいたしますので、よろしく御協力をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/211
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212・吉川春子
○吉川春子君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/212
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213・勝木健司
○委員長(勝木健司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/213
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214・勝木健司
○委員長(勝木健司君) 御異議ないと認めます。よって、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114015289X00519970321/214
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