1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成十年五月十二日(火曜日)
午前九時五十分開議
出席委員
委員長 谷津 義男君
理事 植竹 繁雄君 理事 小此木八郎君
理事 小林 興起君 理事 穂積 良行君
理事 佐々木秀典君 理事 中沢 健次君
理事 倉田 栄喜君 理事 三沢 淳君
逢沢 一郎君 小野寺五典君
越智 伊平君 佐藤 信二君
橘 康太郎君 近岡理一郎君
虎島 和夫君 野田 実君
萩野 浩基君 桧田 仁君
平沢 勝栄君 池端 清一君
鹿野 道彦君 桑原 豊君
石井 啓一君 石田幸四郎君
鰐淵 俊之君 瀬古由起子君
寺前 巖君 深田 肇君
笹木 竜三君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(内閣官房長官) 小里 貞利君
出席政府委員
総務庁長官官房
審議官 瀧上 信光君
総務庁行政管理
局長 河野 昭君
委員外の出席者
議 員 北村 哲男君
議 員 福岡 宗也君
議 員 倉田 栄喜君
議 員 松本 善明君
内閣委員会専門
員 新倉 紀一君
—————————————
委員の異動
五月十二日
辞任 補欠選任
虎島 和夫君 橘 康太郎君
生方 幸夫君 桑原 豊君
同日
辞任 補欠選任
橘 康太郎君 虎島 和夫君
桑原 豊君 生方 幸夫君
—————————————
五月八日
元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する
請願(武藤嘉文君紹介)(第二一四一号)
同(逢沢一郎君紹介)(第二一七二号)
同(目片信君紹介)(第二一七三号)
元日赤救護看護婦に対する慰労給付金増額に関
する請願(石井啓一君紹介)(第二一四二号)
同(坂上富男君紹介)(第二一四三号)
同(日野市朗君紹介)(第二一四四号)
同(池端清一君紹介)(第二一六五号)
同(石井啓一君紹介)(第二一六六号)
同(鹿野道彦君紹介)(第二一六七号)
同(倉田栄喜君紹介)(第二一六八号)
同(菅原喜重郎君紹介)(第二一六九号)
同(日野市朗君紹介)(第二一七〇号)
戦争被害に関する調査会設置法の早期制定に関
する請願(石井紘基君紹介)(第二一四五号)
同(金田誠一君紹介)(第二一四六号)
同(田中甲君紹介)(第二一七一号)
傷病恩給等の改善に関する請願(河村建夫君紹
介)(第二一六四号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
行政機関の保有する情報の公開に関する法律案
(内閣提出第一〇二号)
行政機関の保有する情報の公開に関する法律の
施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
(内閣提出第一〇三号)
行政情報の公開に関する法律案(北村哲男君外
五名提出、衆法第一一号)
情報公開法案(松本善明君外一名提出、第百四
十一回国会衆法第五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/0
-
001・谷津義男
○谷津委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案、内閣提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、北村哲男君外五名提出、行政情報の公開に関する法律案及び第百四十一回国会、松本善明君外一名提出、情報公開法案の各案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植竹繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/1
-
002・植竹繁雄
○植竹委員 私は、情報公開法案につきまして、自由民主党を代表して質問いたしたいと思います。
実は、本日、この情報公開法案につきまして、こうして当委員会で審議が開始されることになったことにつきましては、私も非常に感慨深い思いがしているところであります。政府が情報公開法の検討に着手するに至ったその端緒は、私が尊敬しておりました大平正芳先生におきまして、情報の円滑な提供と適正な管理を図るため鋭意検討を行い所要の改善措置を講ずる旨の、昭和五十五年一月の内閣総理大臣の施政方針演説においてであります。その後、政府は、我が国の実情に合った情報公開の制度化を進めるため、幅広い検討を行っていたところでありますが、ようやくこうして国会の場で審議が開始されるに至ったことは、大変意義深いものと感じます。
今から思いますと、大平内閣の時代というのは、まさに我が国の政治、経済、社会の大きな転換期であったと思うのであります。以降、我が国は、ボーダーレス化あるいはグローバル化している世界の中で、財政構造改革を進める一方、国際貢献、経済構造改革、環境問題、高齢化社会問題等、重要な課題に対応しなければならないという、まことに厳しい状況に直面しております。
こういう中で、政治や行政に対する国民の信頼が陰り、一般国民の政治離れあるいは無党派化の動きも指摘されているところでありますが、二十一世紀の到来を間近に控え、まさに政治も、それを執行する行政も大きく変わらねばならないと感ずるのであります。
そういう時期に到来しているところでありますので、現在、橋本内閣は、まさに今私が申し上げました状況認識に立って、二十一世紀にふさわしい政治、経済、社会を創造するため、一丸となって六大改革を推進しているところであって、その中でも、行政改革というのは、政府みずからの問題として率先して行うべき課題だと思っております。
小里大臣には、この行政改革を推進するかなめの大臣として大変御苦労をされており、その功績はだれもが認めるところでありまして、さらにまた、今、国会に提出されました長年の懸案であった情報公開法案を取りまとめられたことに対し、心から敬意を表する次第でございます。
さて、この法案の立案に当たっては、行政改革委員会の意見を最大限尊重して立案されました。この意見は、行政改革委員会において幅広い専門的な検討がなされ、また、その過程では各方面で
の団体の意見も聞きながら意見をまとめられたと聞いております。
そこで、大臣にまずお尋ねしたいのでありますが、今申し上げましたような我が国の厳しい状況を踏まえまして、今回の情報公開法の制定ということがどういう意義を有するのか、情報公開法制定に関する大臣御自身の基本的な認識をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/2
-
003・小里貞利
○小里国務大臣 情報公開法は、ただいま議員も御発言いただきましたように、行政システムを二十一世紀に向けていわば転換を図るための、中央省庁等改革と並ぶ、行政の体質を根本的に改革するものである、私どもはさように受けとめております。
すなわち、情報公開法は、政府の活動全般にわたりまして公開を徹底する、そして主権者である国民に対しましていわば説明責任を全うするものである、こう思っております。特に、国民に政治と行政への関心を高めていただき、国民本位の政治と行政が実現するためにも欠くことのできないものである、さように思います。また、お触れいただきましたように、中央省庁等改革の一環と位置づけられるものでありまして、国民に開かれた、信頼された行政を実現するよう、全公務員の意識改革も促すものであると判断をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/3
-
004・植竹繁雄
○植竹委員 ありがとうございました。
さて、行政改革というと、現在、省庁改革法案が昨日行政改革特別委員会で可決されまして、本日午後の本会議に上程されることとなっておりますが、この情報公開法案も、今大臣も御答弁なされたように、二十一世紀に向けての新しい行政スタイル、いわば行政の体質を変えていくという意味で、省庁再編に並ぶ重要な改革だと考えております。
情報公開を目的として情報公開法が整備されますと、結果としてはいろいろな効果をもたらすものであります。
例えば、情報公開法は行政改革を推進するという側面があるとともに、行政改革の推進に伴って生ずる問題を修復し補完するという側面もあると考えます。具体的に申しますと、行政改革の実施が国民一般の見えるところで展開されるということになり、その実施の仕方や効果を国民が直接吟味し、また評価できることになるのでありますから、政府も、より効果的で国民の立場に合った行政とするよう努力することが促進されることにならざるを得ない、そういうことになると思います。
そこで、大臣にお伺いしたいのは、現在進められております省庁再編と情報公開の関係はどういうことかということであります。
特に、従来の縦割り行政の是正、総合的で弾力的な行政の推進ということからは、例えば今回の国土交通省を初め、いわゆる大くくりの省庁というものがつくられることは不可避と思われます。このような省庁再編によりまして行政の簡素化、効率化が促進されると考えます反面、省庁内部の政策形成が国民一般の目から届かないところで行われ、あるいは国民にはわかりにくい行政になるのではないかという懸念も指摘されるところであります。
情報公開法は、このような問題についてもその透明性が図られ、国民と政治、行政との関係を望ましいものとすることに大いに役に立つと考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/4
-
005・小里貞利
○小里国務大臣 お話がございましたように、情報公開は、いわば政策形成過程も含めまして、政府のもろもろの幅広い活動を国民の前にあるがままに明らかにする、そして主権者である国民の皆様に政策を評価、吟味をしていただくというところに大変大きな意義があると思います。
あわせまして、ただいまお話がありましたように、行政改革の仮に結果を得ました場合に、巨大官庁などというお話も一部お聞かせいただく昨今でございますが、公正な行政運営が一層図られるものといたしまして、国民のいわゆる責任ある意思形成が可能となり、望ましい国民と政府との関係の確立が期待されると思います。
なおまた、中央省庁等改革基本法案においても、その目指す目的を実現するためには行政機関の保有する情報の公開が欠くことのできないものでありますよと、第五十条の第一項できちんと明記をいたしておるところでございます。
要するに、議員もただいまお話がございましたように、簡素で効率的な行政体系をつくるよというのも大変大きな行政改革の要素になっておりますが、そういう意味におきまして、それらとこの情報公開法というのはまさに一衣帯水である、さように私どもは評価をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/5
-
006・植竹繁雄
○植竹委員 今大臣言われましたように、いろいろ一体となるというお話でございますが、省庁改革法国独立行政法人というものを設立しまして、従来行政機関が行ってきました行政を行わせようとするわけでありますが、このような独立法人に対する情報公開法の適用については総務庁はどのように考えておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/6
-
007・瀧上信光
○瀧上政府委員 お答えいたします。
ただいま御指摘の独立行政法人の取り扱いにつきましては、与党三党の合意事項におきまして、特殊法人の情報公開法の検討の際に両者の関係を整理することとされているところでございます。
情報公開法は政府の諸活動について説明責任を確保するものでございまして、独立行政法人は政府の諸活動の一翼を担うものであると考えられ、その場合、その公開性を図ることは不可欠であると考えております。しかし、その実体的内容につきましては、中央省庁等改革基本法の制定後検討されることとなっております。
したがって、今後、中央省庁等改革基本法が成立をしました後、同法に基づき中央省庁等改革推進本部において行われることとされている独立行政法人の制度設計の具体化の検討状況も十分勘案しつつ、検討していくことが必要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/7
-
008・植竹繁雄
○植竹委員 最近、大蔵省あるいは日銀初め公務員の不祥事件が相次いでおるわけでありますが、この公務員のモラルの問題が行政改革の大きな課題の一つとして取り上げられ、現在、与党内で公務員倫理法の制定も検討しておるところであります。
そもそも、倫理の問題を法律で規制するということは大変難しい問題でもあると思いますが、他方、情報公開法が制定されれば、公務員一人一人が、みずからの仕事は絶えず国民の評価を受けるのだという緊張感も生じさせ、みずから国民の立場に立ってそういう行政を行うという方向への意識の改革にも役立つものと考えるわけであります。
その点、大臣としましては、そういう公務員の倫理という点について、どういうふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/8
-
009・小里貞利
○小里国務大臣 本当に、従来ともう根本から変えまして、行政状況というものが国民の前に明らかにされるわけでございますから、国民にも行政について理解をいただくと同時に、また行政全体に対する国民の批判あるいは吟味というものが旺盛になってくるわけでございまして、行政運営に従事する公務員の一人一人が国民のための行政ということを常に自覚する、そして職務遂行に当たることが、もう当然のこと、非常に、不断のいわゆる警鐘と申し上げましょうか、あるいは自覚を促すことになる。議員のおっしゃるとおりであります。
加えまして、自己の仕事の成果に対する国民の適正かつ的確な評価が敏感にはね返ってきますが、これは前段でも申し上げましたけれども、そのことがみずからの職務の重要性の再認識や励みとして受けとめられまして、公務員一人一人の仕事への意欲や能力の向上につながる、さように期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/9
-
010・植竹繁雄
○植竹委員 大臣から大変いいお話を伺いました。どうか、この情報公開法をもとに、総務庁というお立場から各省に、情報公開法の持つ意義もいろいろと御指導いただきたいと思うのでありま
す。
さて、情報公開法の内容についての質問に移らせていただきます丁
情報公開法の内容の中でも最も重要でまた困難な問題というのは、公開、非公開の範囲をいかに適正かっ明確に定めるかということであります。そこで大臣にお伺いしたいのでありますが、政府の情報公開法案における公開、非公開の範囲の定め方に関する基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/10
-
011・小里貞利
○小里国務大臣 公開しますか、公開しませんかというその基準、けじめをつけること、ただいまお話もありましたが、行政改革委員会で最も苦慮されたところであると思います。不開示情報の規定について、そういうことでもそういう経緯もございましたが、外国法制や条例を参考にしながら、また各方面からの意見も聴取され、論議を重ねられてまいったところであります。
行政情報を原則公開とする仕組みでありますが、しかしながら他方、個人、法人の権利利益や公共の利益など、公開すれば国民に不利益をもたらす情報もあるわけでございます。このような公開の必要性と保護の必要性を比較考慮し、保護すべき情報は適正に不開示情報と定め、それ以外のものはすべて公開するという仕組みを法律上の基準として定めるところが最も重要であろう。
加えまして、法律の運用に当たりましては解釈に紛れがないよう、法律条文として明確なものとすることが必要である。そういう判断のもとに、政府といたしましては、このような考え方に基づきまして、行政改革委員会の御意見に沿って法案の立案を行ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/11
-
012・植竹繁雄
○植竹委員 長官が言われますこと、全く同感でございます。行政情報というのは、やはり今言われましたように原則公開すべきであり、かつその公開は徹底したものがあるべきだと思うのは全くそのとおりだと思います。他方、行政情報といっても、今大臣も言われましたように、個人情報や企業情報、あるいは外交防衛情報、また犯罪捜査等の、その他いろいろな、行政運営から考えまして公開に実際上支障のある情報が少なくないことは当然であるわけであります。
守るべき情報につきましては、守った上での公開でなければならないと思っております。プライバシーや企業秘密が漏えいされる情報公開は全くナンセンスだと考えておるのであります。自国の安全や国民一般の安寧が害されるおそれがある情報を公開しているような国は、世界でどこにもないということだと思います。
そこで、この点に関して一つお尋ねしたいと思います。
情報公開法案では、個人情報については、特定の個人が識別できる情報については不開示にすることとなっておりますが、法人に関する情報につきましては、不開示情報に書かれた支障があるか否かを個別に判断することになっているわけであります。法人には、株式会社のほか、学校法人あるいは宗教法人などさまざまなものがあるわけであります。この法人に関する情報というものは、公開されることにより明確に財産上の利益が不当に侵害されるようなおそれがある場合には、当然不開示とされるものと思います。
このような経済的な利益とともに、法人にはそれぞれ設立目的に沿った重要な権利や利益があるわけでありますが、ここで特に強調しておきたいのは、学校法人であれば学問の自由、宗教法人であれば信教の自由といったいわゆる憲法上の権利であります。情報公開法の運用に当たり、例えば宗教法人について言いますと、憲法上の信教の自由のような権利は、財産権とともに、あるいはそれ以上に、政府によって尊重されねばならないと考えるのであります。
そこで大臣にお尋ねしたいのでありますが、この法案の第五条第二号のイで、法人等に関する情報であって「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」を不開示情報とされておりますが、ここで述べられている「権利」とはいかなる権利を保護しているのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/12
-
013・小里貞利
○小里国務大臣 権利についてのお話でございます。いわばいかなる権利を保護しているのかと、こういうことであります。
「法人等」には、お話がございましたように、株式会社、公益法人、あるいは宗教法人その他の法人のほか、法人格のない団体が含まれるわけでございます。法人格のない団体といえば同窓会とかそういうものだと思っておりますが。その「権利」には「当該法人等」の有する日本国憲法や法律上の権利はすべて含まれることといたしております。
言いかえますと、非常に大事なところでございますから、「法人等」には、株式会社、公益法人、宗教法人その他の法人のほか、法人格のない団体が含まれるが、「権利」には「当該法人等」の有する日本国憲法や法律上の権利はすべて含まれるものとしております、こういうことでございます。
すなわち、憲法が保障する権利、例えばお話がございました信教の自由、集会、結社、表現の自由などは権利の中心的なものというべきであり、当然のこととして、御指摘の本法案第五条第二号イの「当該法人等又は当該個人の権利」として保護されることといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/13
-
014・植竹繁雄
○植竹委員 小里大臣から明快な答弁をいただきましたので、安心いたしました。大変にこれは重要な問題であるのではっきりしていただきたかった点について、大臣の御答弁のとおり、情報公開法の運用に当たっては、宗教法人の信教の自由を初め憲法上の権利の保護には今後とも十分留意していただきたい。これが情報公開法の中でも最も重要な部分であると思います。特にお願いをする次第であります。
原則公開ということは、口ではたやすいことですが、現実の問題として、ある情報を公開するかしないかという判断は簡単なことではないと思います。そこで総務庁にお伺いしたいのですが、外交防衛情報や警察情報は、諸外国の情報公開法でもその取り扱いについていろいろと苦慮しておるところだと思いますが、外国でのこれらの情報の取り扱いの状況及び政府の情報公開法案におけるその規定の仕方と趣旨について、総務庁にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/14
-
015・瀧上信光
○瀧上政府委員 外交防衛情報や警察情報につきましての外国制度の取り扱いにつきましてでございますが、こういった情報につきましては、その特殊性にかんがみまして、例えばアメリカでは、大統領命令による秘密指定が正当になされたものの不開示、国際テロリズムに関するものなどを適用除外としているところでございます。
オーストラリアやニュージーランドでは、不開示文書である旨の主管大臣の判断が最終的なものとなる大臣認定書制度を設けているところでございます。カナダにおきましては、法律により明文で、司法審査は行政機関の長の不開示決定に合理的な理由が存在するかどうかといったことに限定をしている。こういったふうに、他の情報とは異なる特別の考慮が払われているところでございます。
行政改革委員会におきましてはこのような外国の状況を参考に検討を進められましたが、御指摘の情報につきましては、その性質上、開示、不開示の判断に高度の政策的判断や専門的、技術的な判断を要するなどの特殊性があるところでございます。そこで、このような情報につきましては、行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、裁判所においては、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうかを審理するのが適当とされたところでございます。
この趣旨を明確に表現するため、情報公開法案では、国の安全や公共の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報と規定いたしておると
ころでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/15
-
016・植竹繁雄
○植竹委員 さらに、最近は、行政部内におきます政策決定プロセスの透明性の確保ということが重要になってきているところであります。
例えば、最近、ダイオキシンの問題が話題となっているわけでありますが、このダイオキシンの最大の発生源というものは廃棄物の焼却炉であるわけであります。この炉の中におけるダイオキシンの濃度の基準値が問題となっておるわけであります。というのは、この基準値につきましては関係省庁でいろいろと食い違いが出ております。そして、この基準値を決めた審議会のその審議の過程、また、議事録や資料についての取り扱いがオープンになれば、この問題も食い違いというものが解決できるのではなかろうかと考えるわけです。
実は私も、昨年七月アメリカに調査に参りまして、EPAその他といろいろ打ち合わせをしましたが、こういう点についてどうあるべきか、この問題の認識を深めて帰ってきたところであります。そこで総務庁にお伺いするわけでありますが、このような審議会の議事録や資料についての取り扱いは、この情報公開法の政府案においてどういうふうになるのでしょうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/16
-
017・瀧上信光
○瀧上政府委員 透明な行政運営の確保を図るため、特に審議会等の公開は重要でありまして、政府としましては、これまでも議事録の公開等を推進してきているところでございます。
今回御提案しております情報公開法案では、行政機関の内部または行政機関相互の間の審議、検討等に関する情報について、率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるもの等を除きまして、原則公開としているところでございます。お尋ねの審議会の議事録や提出資料につきましても、この規定が適用されまして、このような支障がある場合を除きまして、そういった情報につきましては開示されることとなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/17
-
018・植竹繁雄
○植竹委員 今、瀧上審議官からお話を伺いましたが、そういう審議会、ある省庁では公表される、ある省庁では公表されないといった問題も、不整合な点も見受けられるわけです。ですから、先ほど来大臣が言われますように、本当に、行政面におきまして、国民にわかりやすい、そういう政治を推進していくためにも、国民の目からこれが適正であるかどうかということがわかるわけでございまして、こういう細かい点につきましても特に今後徹底して各省庁に連絡していただきたいと申し添えるわけであります。
また、その反面、いわゆる未成熟情報の問題があるわけであります。
情報というものは、単なる事実に関する情報であっても、その置かれている状況、使われ方によっていろいろな意味が出てきたり、違った評価が行われる可能性があります。それは今申し上げたようなことにも関連するわけでありますが、例えば、ある研究によって結論が出ていない段階で発表されますと、国民に不当な混乱を招く場合も現実にはあるのではなかろうかと考えるわけであります。データのひとり歩きということは、予測のつかない事態を招くことさえあるわけであります。
政府の情報公開法案の規定によりますと、このような未成熟な情報やデータはどのような取り扱いがなされているか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/18
-
019・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法案では、請求の対象になる行政文書は「組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」としておりまして、多くの条例で見られますように、決裁、供覧等の事案決定手続の終了したものというふうなものに限定をしておりません。例えば、個人の職員が思案中の段階のメモをその時点で請求された場合は別としまして、組織的に現に利用可能な状態で保有されている文書は、広く本制度の対象文書といたしているところでございます。
したがいまして、検討中の行政文書であっても対象文書とされる場合がありまして、その後は、当該情報が開示されると国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるかどうかによりまして、これを不開示としたり開示とするということになります。
なお、御指摘のデータ等の事実に関する情報でありましても、当該情報の置かれている状況等により、公開すれば支障がある場合があることは御指摘のとおりでございます。開示、不開示の判断に当たりましては、当該情報のみならず周囲の状況等も把握し、総合的に適正に判断する必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/19
-
020・植竹繁雄
○植竹委員 次に、特殊法人の情報公開の問題についてお伺いしたいと思います。
政府案では、特殊法人は対象機関には含まれておりません。別途、法制を整備すべき政府の義務を法律に規定することとされております。
御承知のとおり、日本道路公団を初め動燃の問題等、特殊法人については、行政機関にまさるとも劣らないぐらい、一層の情報公開というものが必要であるというのが世論であると考えるわけであります。私ども自由民主党における議論におきましても、特殊法人の情報公開につきましては一段と踏み込んだ対応が必要との認識であります。与党三党における協議におきましても議論が重ねられ、与党三党間で、法案制定後二年以内に所要の法案を国会提出する旨、附則に明記することが合意されたのであります。
そこで、大臣に、特殊法人の情報公開法制の制定に関する御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/20
-
021・小里貞利
○小里国務大臣 結論から申し上げますと、議員が御指摘のとおりであります。
特殊法人に対する情報公開法の制定は、国民も大きな関心を持っておりますし、またそのような事情からいたしましても緊要の課題である、さように認識をいたします。特に、今次の法案におきましても、御承知のとおり、情報の開示及び提供が推進されるよう、情報公開に関する法制上の措置その他の必要な措置を講すべき旨も明記いたしたところであります。
議員がお触れいただきましたように、与党三党の合意によりまして、情報公開法制定後二年以内に所要の法案を国会に提出するとされておるところでございますが、政府といたしましては、今後の国会での御審議を踏まえ、できるだけ早く誠実に対応しなければならない、さように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/21
-
022・植竹繁雄
○植竹委員 続きまして、特殊法人といいましても、公団、公庫、事業団等だけではなく、民間企業と市場で競争しておりますいわゆる特殊会社や、共済事業をやっている組合等まで含まれているのであります。これらにつきまして、どのような範囲でどのような情報公開法の対象とすべきかという点につきまして、理論的にも実態上も簡単には結論が下せない問題もあるのではないかと思うのであります。
そこで、総務庁において、このような情報公開法の対象となる特殊法人の範囲についての考え方があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/22
-
023・瀧上信光
○瀧上政府委員 御指摘のとおり、特殊法人は、その法的性格、業務内容、国との関係等がさまざまでございます。このような特殊法人につきまして開示請求権制度の対象となる法人の範囲を考えるに当たりましては、法人への国の出資、法人の予算決算、役員の任免に対する国の統制の態様、法人の行う事務事業の内容等のさまざまな要件について、どのような要件に着目すべきか、どのような要件を組み合わせることが適当か等、個々の特殊法人の制度、実態をも吟味した上で検討することが必要であります。
したがいまして、こういった点につきまして専門的な観点から検討することが不可欠であると考えておりまして、この法案成立後、速やかに検討を開始することとしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/23
-
024・植竹繁雄
○植竹委員 さて、情報公開法というものは、だれでも何人でも請求ができ、また請求目的も問われないこととされておりますけれども、その上、いかなる行政機関に対しましても請求できるという、非常に国民だれもが使いやすい制度となっているのであります。
都道府県等の条例の運用状況をお聞きしますと、中には、全く何のために請求しているのか想像できないものもいろいろあるわけであります。
また、大量な量の文書を請求している、そういう事例が散見されておるわけであります。かつて、アメリカにおきましても、本来の目的には沿わない悪用というべき利用の仕方が現実にあったと聞いておりますし、我が国におきましても、非常にそういった近い点も仄聞しておるわけであります。
民主主義のコストという言われ方もされておりますけれども、情報公開法の運用には相当の人的な、財政的な負担も生じることは事実であります。そして、これらは結局一般納税者の負担にもなるというわけでありますから、いわばこのような乱用的な使われ方に対して、どのような対応を総務庁としては考えておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/24
-
025・瀧上信光
○瀧上政府委員 御指摘の乱用的な利用に対する対応策につきましては、行政改革委員会でも何度か論議をされているところでございます。しかしながら、何人に対しても原則としていかなる情報へのアクセスも認めていくというこの制度の趣旨や仕掛けの有効性の観点から、良策といったものは見出しがたく、結局利用者たる国民の御理解にゆだねざるを得ないところであると考えております。
ただし、特定の部局の保有するすべての行政文書の開示請求や、行政機関の事務遂行能力を減殺させることを目的とする開示請求等のいわゆる権利の乱用に当たるようなものにつきましては、特別の規定を設けてはおりませんが、権利乱用に関する一般法理を適用することにより対応可能と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/25
-
026・植竹繁雄
○植竹委員 何か決め手がないような、非常に難しいという答弁でありますけれども、しかしこれも、解釈の違い、非常に難しいもの等あるわけであります。したがって、請求するものは請求するということになれば、今申し上げましたように、人の問題あるいは財政の問題があるわけでありますから、少なくともこういうことを考えますと、その取扱手数料というものについては、実費の範囲内ということでありますが、相応の額を徴収することが必要であると私は申し上げたいのであります。
次に、よく行政情報は国民の共有財産というような言われ方がされているところでありますが、例えば企業の製造ノウハウに関する情報や著作権の対象となるような情報につきましては、むしろ企業や著作権者の権利の適切な保護が図られねばならないと思います。そこで、例えば著作権の対象となるような情報というものは情報公開上どのような取り扱いになるのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/26
-
027・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法に基づきまして行政文書を開示しようとする場合に、第三者の著作物であるときは、著作権法上の公表権、複製権等との関係が問題になるということから、行政改革委員会意見におきましては、公表権、複製権等の著作者の権利との関係につきましては、情報公開法の円滑な運用の確保を図りつつ、必要な調整措置を検討するように指摘をされているところでございます。
そして、この御指摘を受けまして、これらの権利との関係につきましては、今回の情報公開法案と同時に提出をさせていただいております整備法案の中で、個人または法人の権利として適切に保護することを基本としつつ、調整措置を講ずることとしているところでございます。
具体的な内容としましては、情報公開法施行後は、未公表著作物につきましては、著作者が情報公開法に基づく開示に同意しない旨を表明していない場合には開示に同意をしたものとみなすこととすること、そして情報公開法に基づき公益上の理由により開示をする場合には公表権を害することにはならないこととすること、情報公開法に基づき開示に必要な限度で複製等を行う場合には複製権等を害することにはならないこととすることなどの調整措置を講じているところでございます。
そしてなお、情報公開条例に基づきまして著作物を開示する場合につきましても、この情報公開法と同様な規定に従って開示する限り、情報公開法における取り扱いと同様とする調整措置を講じることとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/27
-
028・植竹繁雄
○植竹委員 この著作権法の問題につきましては、国内の問題もさることながら、非常に海外との間に問題になる点が多いわけでありますから、そういう点について、日本の著作権法以外にも、国際的なそういう著作権法との兼ね合いを十分に検討した上で情報公開というものをやりませんと、国際間のいろいろなトラブルの問題となるので、特にこの点も留意していただきたいと思います。
さて、今までは政府案につきましていろいろな点から伺っておりましたけれども、このほかに今、いわゆる三派案の問題について一点だけお伺いしたいと思います。
三派案には、目的規定に、知る権利の保障ということが言われておりますが、この点が政府案と大きな違いと主張されているところであります。そこで、最近できました韓国の法制は別といたしましても、それ以外の情報公開法を制定されております国で、いわゆる知る権利の議論はどのようになされ、それぞれの法律に位置づけられているのかということにつきましてお伺いしたいのであります。
私どもの手元にある資料によりますと、アクセス権としているところが多いようであります。アクセス権であれば、日本語に訳すことになりますと、先ほど来問題になっておりますように開示請求権ということでいいのではないかと考えるわけでありますが、なぜ外国では、韓国を除き、知る権利という言葉が用いられていないのか、この点、野党の御提案者にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/28
-
029・倉田栄喜
○倉田議員 ただいま委員から御指摘をいただきましたように、民主、平和・改革、自由三党で提案をいたしました今回の法律案につきましては、目的の中に知る権利を明記いたしております。その意味で、政府案との一つの大きな違いということは、今委員御指摘のとおりでございます。
諸外国の例の中で、韓国を除けば、知る権利という言葉が情報公開という法律の中には書いていないのではないのか、諸外国ではどのような議論がなされてきたのか、こういうお尋ねでございます。
私どもの案の中に知る権利を明記してあることと、諸外国が、韓国を除いて、その知る権利が書かれていないということは、それは別に矛盾するものでもないと私は思っているわけでございます。
いわゆる情報公開の法律がいつどのような時期に制定をされたかということも関係することと思いますし、その議論の過程がどのようになされたかということまでは詳しく存じているわけではないわけでありますけれども、例えば世界人権宣言第十九条には、「すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、」今委員御指摘のように、これを「受け、及び伝える自由を含む。」とあります。
さらに、一九七九年に我が国も批准をいたしました国際人権規約のB規約第十九条第二項では、「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。」とございます。
これらの表現の自由は、受け手の自由を含むことを明らかにするものでありまして、同種の規定は、ヨーロッパの人権規約それから米州人権条約の中にもあると承知をいたしております。
さらに、ドイツのいわゆるボン基本法第五条第一項では、各人は、言語、文書及び図画をもって自由にその意見を表明し、及び流布し、及び一般に近づくことのできる情報源から妨げられること
なく知る権利を有するという形で、ここでは、このボン基本法第五条第一項では、知る権利という形で明文をもって規定しているわけでございます。
また、アメリカでございますけれども、第二次世界大戦以後、ジャーナリストが、知る権利という主張を提起し、一九六七年に情報の自由に関する法律が施行されるに至ったわけでございます。また、合衆国最高裁判所の一連の判決においても、一九四三年以降、知る権利と同様の発想があらわれているわけでございます。
今、知る権利を目的の中に明記することが、あるいは知る権利という言葉として熟しているかどうかという議論があるというふうに私どもも承知をいたしておるわけでございますけれども、それぞれ諸外国の例の中で、その制定された時期の中に知る権利という言葉は既に使われているということは今申し上げたとおりでございますが、それを言葉の中で、目的の中に明記するかどうかということについては、やはり制定された時期の中で知る権利がどれほど熟されてきているかどうかということにかかわってきているのではないかと考えておるわけでございます。
今私どもがつくろうとするこの時期においては、韓国の例を引くまでもなく、私どもは、知る権利というのはもう十分に熟されておるというふうに考えておるわけでございますし、私どもの立場から申し上げさせていただければ、知る権利という言葉が法律の目的の中に明記されているかどうかということは、この情報公開法という法律が国民主権の上に立つものであるかということの一つの判断基準として実は非常に重要な言葉なのではないか、このように考えております。
委員の御指摘の答弁になったかどうかわかりませんけれども、不足の点がありましたら、また同僚議員の方からお答えをさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/29
-
030・植竹繁雄
○植竹委員 いろいろ御答弁を伺いましても、機は熟しているのではないかということでございますが、我が国におきまして、なぜ知る権利の保障ということを法律上に明示しなくてはならないかということが、まだまだ今の状況では率直に言って私どもは理解できないわけであります。
そもそも、憲法解釈上さまざまな考え方があるにもかかわらず、法律で一方的に一つの考え方を採用するということは、ちょっとおかしいのではないかと私どもは考えているわけであります。その反面、法律に知る権利ということが規定されないことは、憲法上知る権利を保障するという考え方自体を否定することにもならないのではないのかという意見も指摘させていただきたいと思うのであります。
この点につきましては、本当に私どもはもっともっと慎重に考えていかなくてはならない。余り一つの方向に限って採用していくというのは、大変に、今の状況ではまだまだ無理ではなかろうかと考えるわけであります。
ありがとうございました。
情報公開法の制定は、国民が直接行政情報にアクセスすることを可能とするところに大きな意義があるのであります。しかし、政府が受動的に国民の請求を待つというだけではなく、積極的に、諸課題の現状、政策の実施状況、そして評価に関する情報を、的確にかつ正確に、わかりやすく伝えるべきだと考えるわけであります。その意味で、開示請求権制度と情報提供制度の両者が相まって実施されて初めて情報公開が完結するべきであると思います。
近年、電子情報化とインターネットの普及によりまして、情報量とこの伝達速度が飛躍的に向上しておるのであります。このような電子情報のオンライン提供につきましてどのように取り組んでおられるのか、総務庁にお伺いしたいと思います。
また、反面、オンラインによる提供を進めるに当たりましては、ハッカーやあるいはウイルス対策などの安全対策をバランスよく進めていくことが不可欠だと考えるわけであります。この面の対策につきまして政府としてどのように取り組んでいるか、あわせ御回答を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/30
-
031・瀧上信光
○瀧上政府委員 行政情報の電子的提供の推進につきまして、まずお答えを申し上げます。
政府は、行政の情報化を総合的に推進してきたところでございますが、特に、近年のインターネットの普及とともに、国民の間でのパソコンの普及等の状況を踏まえまして、行政情報化推進基本計画を改定いたしまして、平成十年度からの五カ年間で、行政情報化を一層強力に推進することとしたところでございます。
その中でも、国民と行政の間の電子情報化、いわば国民と行政の接点の情報化ということでございますが、こういった面を大きな柱と位置づけまして、電子的な情報提供や電子的な意見、要望の聴取、申請等を一層推進していくことといたしておるところでございます。
このような中で、各省庁等におきましても、既にホームページの開設等による電子的提供に積極的に取り組んできているところでございます。今後は、総合的な行政情報の所在案内をするためのシステムを近く稼働させ、国民の利便を図るとともに、政府全体として一層推進するため、電子的提供内容の充実や整合性等について、政府部内で検討を進めることとしているところでございます。
次に、安全対策の推進につきましてでございますが、このような情報化施策を進めるに当たりましては、御指摘のとおり、あわせてハッカー対策やウイルス対策などの安全対策も進めていくことが重要であります。
各省庁におきましても既に、ホームページを設置する際には、省庁内ネットワークに外部から不正な侵入、ハッキングといいますが、こういったものを防止する機器、ソフトウエアによる防護措置や、コンピューターウイルスの被害の未然防止や被害を最小限にとどめるためのソフトウエアによるウイルスチェック、省庁間での被害発生情報の交換等を緊密かつ迅速に行っているところでございます。
さらに、行政情報システムの安全対策を省庁間で整合性をとりながら一層充実をさせていくという観点から、基本計画に基づきまして、今年度内に安全対策に係る指針を策定することとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/31
-
032・植竹繁雄
○植竹委員 今の電子情報化時代にありましては、情報公開法とこの問題は、本当に、国際的にもいろいろな点でもって重要な情報がどんどん流れていく、我々が知らないところで流れていく。今後、日本といたしましても、この点につきましてさらに検討を加えていきたい、特に政府に要望するわけであります。
さて、政府案に対しまして、この情報公開法についていろいろな批判も聞かれるところでありますけれども、一方では、各国法制や条例に全く遜色ない立派な案だという評価も出ておるわけであります。私もいろいろと検討させていただきましたが、この政府案につきましては、本当によくできているということを申し上げたいのであります。
国民が情報公開法の早期制定をこれまでずっと待ち望んできたということは、冒頭に申し上げましたように昭和五十五年一月、大平内閣のときからの状態でございますので、一刻も早く情報公開法が制定されて、国民の声に耳を傾け、これにこたえていくことこそが政治家の役割と考えるわけであります。
国民世論といいまずけれども、国民への情報は、新聞、テレビなどのマスコミによるものがほとんどでありまして、これはマスコミの論調が世論を大きく左右することになるわけであります。情報公開法が制定されますことにより、国民が行政機関の情報に直接アクセスできるようになるということは、国民が主体的な適切な意見を形成できるようになることに大変意義があるものと考えられるわけであります。
そこで、情報公開法案の早期成立につきまして、大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/32
-
033・小里貞利
○小里国務大臣 議員からいろいろな御提言をいただきました。そしてまた私どもの考え方も明らかにいたしたところでございますが、お話ございましたように、行政改革関連法案等とも大変重要な関係があります。さらにまた、橋本総理大臣も情報公開法につきましては相当強い期待と努力をいたしておるところでございまして、お話ございましたように、早期に国会の意思を御決定いただきますことを心からお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/33
-
034・植竹繁雄
○植竹委員 最後に一つしておきたいのでありますが、情報公開法の制定とあわせまして、国会自体の活性化を図ることが重要だと考えるのであります。
マスコミを初め、行政に対する直接的な監督、介入を国民に期待するかのような論調も見受けられるわけであります。しかしながら、本来、行政に対する監督は国会の機能であります。国政調査権を的確に行使し、国会による行政の統制を図り、政治がリーダーシップをとっていくことがまことに重要であると考えるわけであります。また、情報公開法は、このような国会の機能を一層発揮させ、補完するためのものでもあります。
総理も施政方針演説で、主権者である国民の皆様に、政策を評価、吟味し、御意見をいただき、政治と行政への関心を高めていただくために極めて重要な法案と述べられているところでありますが、その意味で、私もこの情報公開法の早期成立をお願いするのであります。
以上でもって私の質問を終わらせていただきますが、知る権利についてまだまだお伺いしたいところもございましたので、以下、穂積先生からお伺いすることにいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/34
-
035・谷津義男
○谷津委員長 この際、穂積君より関連質疑の申し出があります。植竹繁雄君の持ち時間の範囲内でこれを許します。穂積良行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/35
-
036・穂積良行
○穂積委員 植竹委員の質問の中で、政府案、それから三党案、共産党案、それぞれの目的規定に関しまして、知る権利についての質問がございました。私は、このいわゆる情報公開法を今回制定するに当たり、この辺についての、憲法の保障する基本的人権と情報公開という、今回法律をもって行政機関に義務を課すということについての基本的な考え方の整理が非常に必要だと思いますので、追加して質問をさせていただきます。
野党の法案は、いずれもその冒頭の目的の規定で知る権利ということを明記しておりますけれども、まず、共産党案につきまして伺います。
「憲法に由来する国民の知る権利」ということでございますが、これは憲法のどの条文に由来するというふうに御理解なさっているか、まず御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/36
-
037・松本善明
○松本(善)議員 御答弁申し上げます。
国民の知る権利を明記するということは、主権者が国民である憲法の基本原理から当然のことであると思います。これは既に、憲法二十一条に保障されました表現の自由の一環としての権利であることは、今や定説となってきておるのではないかと思います。先ほども御答弁がございましたが、表現の自由のいわば基礎となる、国民がすべての情報を可能な限り知って初めて表現の自由が確実に保障されるということになるからでございます。
知る権利につきましては、まだ実定法上の権利として成っておりませんので、判例その他が多くあるわけではもちろんございませんけれども、このことは実際にも不開示事由を必要最小限に厳格にするという根拠になります。そして、地方自治体の条例につきましても、このことが明記をされているかどうかによりまして裁判所の判断も違ってくるという実態が起こっておりますので、行政改革を実効あるものにするために必要なものである、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/37
-
038・穂積良行
○穂積委員 それでは、三党の案の中では「国民主権の理念」という表現でこの知る権利の根拠を書いておりますけれども、この「国民主権の理念」、いかような理念と理解し、知る権利があるんだというふうにお考えになっているか、その辺を御説明いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/38
-
039・福岡宗也
○福岡議員 お答え申し上げます。
国民主権というのは、行政が国民の主権に基づいて奉仕されるものであるということを大前提にしているわけでございますけれども、したがいまして、国民の主権というものを実質的ならしめるためには、国民による行政の監視、それからまた国民の基本的人権を守るという実質的な権利というものを保障する必要があるわけでございます。
したがいまして、これを本当に実質的ならしめるためには、憲法二十一条の表現の自由というものを根拠にいたしまして、受け手の自由ともいうべきいわゆる情報公開の請求権というものを認めていかなければならないというふうに考えたわけでございます。行政監視のみならず、国民が自分の生命、身体、財産を守るために、広く集められておりますところの行政情報を十分に公開を求めることができる権利を憲法的に保障するということが大切であろうというふうに考えるわけであります。
そういう意味におきまして、やはり国民主権の理念のもとにおいても、表現の自由という観点から見ても一知る権利というものを明確に定めることは極めて重要だと考えて野党案には盛り込んだ、こういうわけでございます。御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/39
-
040・穂積良行
○穂積委員 憲法第二十一条をそれぞれ根拠とされているということはお聞きいたしました。
片や、基本的人権の中には、特にこの法案で行政情報のうち個人情報に係るものについては、政府案はこれを制限的に処理すべき分野があるという考え方に立っておりますけれども、個人のプライバシー、これも個人の尊厳その他憲法の規定に基づいて基本的人権だという考え方がありますね。憲法でプライバシーという言葉はありませんけれども、似たような話がこの知る権利ということだと思います。知る権利の反面、プライバシーの保護というようなこともありますから。
そうしますと、まずプライバシー保護に関連する憲法上の規定は、憲法第十三条の個人の尊重、あるいは第十九条の思想及び良心の自由、それから第二十条の信教の自由等の基本的人権の規定にかかわる話だと私は思っておるわけでございます。
そうしたこととの対比におきまして、情報公開法におきまして知る権利の方のみを明示し、片や、知られたくない、プライバシーとして保護されるのが相当であるという権利を保障すべきであるということの関係においては、やはり今申しましたような憲法上の明文あるいは憲法上の解釈からしてのこうした議論などは、もう少し慎重なる検討を要する。こんなふうな気がいたしますので、私どもは政府案のこの目的規定で当面は対処していくということがよろしいのではないかなという考え方でおるわけでございます。
そもそも、この情報公開法の趣旨といいますのは、行政を国民のものにする、これは私どもも全く野党の皆さんと意見を異にするものではございません。行政を国民のものとし、公正で民主的な行政を推進させるということで、行政情報について画期的な情報公開法をつくろうということは、この基本は与野党共通だと思うのでございます。この目的規定で、そのような今まで申しましたいろいろな議論があるという中では、政府案で、当面は十分この法案を提出そして策定するということについての意義はあるという気がいたします。
その辺について、野党の皆さん、御同意いただけるかどうか、御回答をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/40
-
041・倉田栄喜
○倉田議員 確かに、委員御指摘のように、この情報公開制度がいわゆる基本的人権、他人のプライバシーを侵害するようなものであってはならないと考えます。この制度そのものがいわゆるのぞき見を容認するようなものではないというのは、委員と私は同じ考えであると思います。その意味で、行政固有の情報、そして法人情報、純粋な個人情報というのは、それぞれの特性に応じて考え
られなければならない、このように考えております。
ただ、そのことが、目的規定の中に知る権利を明記するかどうかということには、今の委員の御指摘のように直接的には私は結びつかないと考えております。
先ほど国民主権と知る権利の関係をという委員からの御指摘がありましたけれども、あくまでも私どもの案のこの情報公開制度の目的は、行政の監視、つまり平たく言えば国民の皆さんの税金が不正に使われていないかどうか、あるいは政策意思形成過程情報が不当にゆがめられていないかどうか、そのことの情報を正しく入手することによって、いわゆる政治的情報、行政に対する批判、監視ということも正しくできる。
つまり、先ほど根拠として表現の自由という文言が同僚委員の方からもありましたけれども、表現の自由が正しく行われるためには、その前提としての情報をまた正しく自己が持っていなければならない。自己が集められている情報というものが正しくなければ、また自己の意思発信の情報も正しくない。
そういう意味で、この目的が、行政の監視、ある意味では批判、その前提として国民の知る権利として明記をすることによって、私は、この法律の運用、それから司法における解釈、その部分についても実は法律の目的の中に知る権利が明記されているかどうかは重要な違いがある、このように考えています。
ただ、先ほど申し上げましたように、そのことが他人のプライバシーをのぞき見をすることを容認するものではないことは申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/41
-
042・北村哲男
○北村(哲)議員 北村でございます。ただいま委員の方から、知る権利と同様に個人のプライバシーは憲法上も保障されなければいけないという話がありました。
政府案が私どもの案と個人の問題について違うところは、政府案は個人識別説、個人の名前がわかればもうこれは非公開にしていいのだと。私どもの案は、いわゆるプライバシー説で、まさに委員のおっしゃったとおり、個人のプライバシーを守るためにはこれは非公開にしてもいいのだということで、個人の思想、宗教、身体的特徴、それから健康状態、あるいは家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等個人に関する情報、こういうものは非公開の対象にしてもいいのだというふうにかなり限定しておるわけです。
ところが、政府案は、単に個人に関する情報で個人が識別されるものというふうに言っておられる。私どもは、これでは広過ぎる。すなわち、本当に保護されるべきプライバシーに関係しないものまでも、単に個人が識別されるだけで非公開の対象にされてしまう。
公務員の人、あるいは校長先生が公務でどこかに行った、そのときに幾ら食糧費を使ったというのは、地方の条例の判例で問題にされておるのですけれども、そういう場合でも、それはもう公務でやっているのだから、どこへ行って、どこで何を食べた、だれと食べたということは、その個人がわかったにしてもプライバシーには関係ないではないか。そこの差が出てくるわけです。
そういう意味で、私どもは、行政の持っている情報を透明性をより深めるために、これは個人のプライバシーに限って、それが識別されるものに限って非公開の対象にするというふうにした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/42
-
043・松本善明
○松本(善)議員 穂積委員にお答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、個人の秘密を守ることも大事なことでございます。我が党の案も、第五条に、個人に関する情報について開示、非開示の場合があることについて規定をしております。
問題は、不開示事由をどういうふうに規定をし、どういうふうに判断をするかということが、情報公開法のいわば中心的な問題であろうかと思います。この不開示事由につきまして、それぞれの案がいろいろ書かれておりますが、知る権利を保障するということになりますと、この不開示事由を最小限にする、厳格に不開示事由を解釈するという点で非常に重要な意味があります。先ほど申し上げましたとおり、実際の裁判例でもそういうふうになってきております。
実定法としてこの情報公開法が我が国に初めて制定されますならば、このそれぞれの法域をどう判断するか、公開すべき情報の性質をどのように判断をするかということが中心問題でございますけれども、それが次第に裁判例の中で確立されていくことになるのではないか、このように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/43
-
044・福岡宗也
○福岡議員 先生の指摘されました不安はもっともなことであろうと思います。そういうわけで、私どもの法案の中では、個人情報と企業情報については、明確な非公開事由を設けております。
先ほど説明がありましたように、個人情報につきましては、プライバシー侵害の情報は絶対公開をしない、こういう形になっておりますし、さらに企業情報につきましても、正当な利益を害するものについては明確に除外をする、こういう形になっておりますから、心配はないというふうに考えております。
それから、一九八八年現在の統計しかありませんので現在明確ではありませんけれども、この段階で都道府県におきまして知る権利を定めているのは、三県というか三府県といいますか、ございます。それから市町村の関係では、この段階で二十四の市町村において、やはり条例に知る権利が明記されていたわけであります。そして、この十年間において、その後に制定されたいわゆる条例については、ほとんど、知る権利を入れるというのが慣例みたいになっておりますので、恐らく、明確なことはわかりませんけれども、市町村の関係では四十を超える、知る権利が明記されておるだろうというふうに思うわけであります。
そして、実際に、先ほどの調和でございますね、個人の情報とかとの、いわゆるどこまで認めるか認めないかというその調和点。大切なことですけれども、そういう問題に関して、これは弊害的な事例があったということよりも、むしろ国民のそういう情報を受ける公開権というものを実質的に保障するという方向で、いい方向で機能しておるというのが実態なようでございますので、その点は先生の御心配はないものだというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/44
-
045・穂積良行
○穂積委員 知られたくない権利、プライバシー等の知る権利と対置される考え方というのは、御承知のとおり、例えば刑法の第十三章、秘密を侵す罪という規定の中では、弁護士あるいは医師が仕事をやっていて知り得たプライバシーについては、これを漏示したら罰則がかかる、こういう法制がありますね。それから、国家公務員は、在職中いろいろと個人情報も含めて秘密にかかわったら、公務員をやめても守秘義務がかかる、こういう法制がありますね。
こうした守るべき秘密というものと、行政情報についての知らせるべき要請というものについて、きちんと整理された考え方で、今回の情報公開法等について目的規定もその条文をセットするということならばよろしいかと思うのですが、この辺はどうも野党の案は、現段階ではやや、ちょっと焦っているという感じではないかなというのが正直な感想でございます。
それは、実は法律の目的として、とにかくいい行政をやってくれ、国民のための行政をやってもらうんだ、そのために国民に知らせるべきものは知らせろという、これは、先ほど申しましたように私どもは全く皆さんと共通の気持ちなんですよ。ただ、いずれ議論が出ると思いますけれども、国家機密に関すること、外交、防衛等々の行政情報の扱いについてどうするかという話などになりますと、これは結局、国民のために一生懸命行政をやる、その国民のための行政の目的を達成するために守るべきもの、あるいは国民に知っていただいていろいろ意見もいただくもの、その辺の仕分けがこの法案をつくるに当たって本当に一
番大事なところだと思っておりますので、あえて冒頭の目的規定について触れた次第でございます。
どうか、これからの論議の中でその辺もさらに論議を深めて、目的規定の論議を通じて、この法案の必要性というものについて円満なる理解に達することを私は希望して、植竹委員の残余の時間での私の補足質問を当面は終わらせていただきます。ありがとうございました。
何かお話、もし例えれば、どうぞ答弁もしていただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/45
-
046・松本善明
○松本(善)議員 今委員の御指摘になりました行政情報につきましての国家公務員の秘密の問題ですが、これはやはり行政開示の裁判手続の中で、インカメラの制度もございまして、それぞれの法益を判断して検討することができるように我が党の案はなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/46
-
047・倉田栄喜
○倉田議員 個人とか法人とか、プライバシーにかかわる部分については、私どもの案も委員と同じ考え方であるというふうに思っております。
ただ、この法律の中で、いわゆる行政裁量の幅というものをできるだけ極小化する、明確にするという意味で、まさにその両方の価値の調整の問題をできるだけクリアにしなければならないということで私どもは考えたつもりでございます。
国家機密情報等々については、委員の御指摘のことをまつまでもなく、私どもの案もきちんとその辺は書いてございますので、御心配要らない、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/47
-
048・穂積良行
○穂積委員 それでは、私の質問は当面終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/48
-
049・谷津義男
○谷津委員長 瀬古由起子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/49
-
050・瀬古由起子
○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
本日は、情報公開法案の初めての委員会質疑でございます。質疑に先立ちまして、どういう立場でこの情報公開法の審議に臨んでいくかという点について、私どもの考えを述べさせていただきたいと思います。
政府案にはいろいろ弱点はございますけれども、制度の法案が提案されたことは二十年来の世論と運動の成果でもあり、立派なものをつくるために私たちも積極的に法案を提案しているところでございます。したがって、NPO法の審議にもございましたように、各党が知恵を出し合い、よりよい法律に仕上げていくということをぜひ呼びかけたいと思います。
そもそも、行政の情報を公開してガラス張りの行政をすることは、企業・団体献金の禁止や天下り禁止とも並びまして、行政の腐敗とゆがみを正していく上で決定的に重要な課題だと考えています。ですから、行政当局による情報隠しや情報操作を許さないためにも、非公開情報の範囲を可能な限り具体的に限定して、行政当局の恣意的な解釈を抑えることが重要だと考えています。
そうした視点に立って、政府案並びに野党案について質問をいたします。
まず、政府案についてですけれども、第一に、知る権利の明記という問題です。
本会議場での質問に対して、行政改革委員会の意見に沿って法案化した、知る権利の概念には多くの理解の仕方がある、このような答弁がされております。
そこで、概念の理解の仕方ではなくて、知る権利というものが今回の情報公開法への動きの中で果たした役割は大変大きかったというふうに私は考えます。その点で、どのような認識をお持ちなのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/50
-
051・小里貞利
○小里国務大臣 まあいわば知る権利という言葉についてのお話でございますが、行政改革委員会におきましては、国民の情報公開法制に対する関心を高めた、そしてまた、その制度化を推進する役割を果たしてきた旨述べられているところでございまして、法制化促進に果たした役割は評価いたさなければならない、さように思います。
しかしながら、ただいま議員もお触れいただきましたように、法律上の概念としての知る権利については、憲法学上さまざまな理解の仕方がありまして、最高裁判所の判例でも、政府の情報の開示を請求する権利としては認知されていないことから、知る権利という文言を情報公開法に用いることは適当ではない、さように判断したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/51
-
052・瀬古由起子
○瀬古委員 制度化を推進するためにも、この知る権利というものが重要な役割を果たしてきた、そういう点ではお認めいただけると思います。
それで、知る権利というものは、憲法に由来する権利として、まさに国民の基本的な権利であるというように考えますけれども、この立法の趣旨に当たって、その点はどのように認識されているでしょうか。政府案です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/52
-
053・瀧上信光
○瀧上政府委員 いわゆる知る権利の概念についての認識でございますが、いわゆる知る権利の概念は憲法上明文の規定がないということから、この点につきまして憲法学上さまざまな理解の仕方がございます。
行政改革委員会の情報公開法制の確立に関する意見の中では、
「知る権利」については、憲法学上、国民主権
の理念を背景に、表現の自由を定めた憲法第二
十一条に根拠付けて主張されることが多い。こ
の主張は、表現の自由は、国民が広く思想や情
報を伝達し、またそれを受け取る自由のみなら
ず、政府が保有する情報の開示を求める権利
(政府情報開示請求権)をも含むという理解で
あり、この場合、後者が特に「知る権利」と呼
ばれている。このような理解に立つ場合でも、
「知る権利」は基本的には抽象的な権利である
にとどまり、法律による制度化を待って具体的
な権利となるという見解が有力である。
しかし、憲法第二十一条の保障する表現の自
由はあくまで自由権であってそのような請求権
的なものは含まないという見解がある一方、
「知る権利」をより広く自己情報の開示請求権
を含めて考えたり、「知る権利」は憲法上既に
具体的な内容をもって存在する権利であるとす
る見解もある。こういったようないろいろな考え方があるということを言っております。
それとともに、条例等でも、先ほどお話がありましたような、三つの県で知る権利を使っておりますが、これらにつきましては、いずれも前文で使っているということでございます。そして、最高裁判所の判例でも、政府の情報の開示を請求する権利としての知る権利を認知したものではありません。こういつたために、知る権利という文言を情報公開法の中に用いることはしなかったものでございます。
しかしながら、国民主権の理念にのっとりという表現によって、情報公開法に基づく開示請求権制度、我が国の憲法が立脚する民主主義制度において、国政を信託した主権者たる国民に対し、政府がその諸活動を明らかにし、その説明責務を全うするための制度として位置づけているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/53
-
054・瀬古由起子
○瀬古委員 結果、国民主権の理念にのっとりという中身が憲法の理念を踏まえたものだ、この点ではお認めいただいたと思います。
そこで、政府案ですけれども、本法案における国民の開示請求権は、単に政府の政策判断として与えられた権利ではない、当然憲法の理念を踏まえて制定されるものと理解してよろしいでしょうか。その点、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/54
-
055・小里貞利
○小里国務大臣 行政改革委員会におきましては、憲法の理念を踏まえて、充実した情報公開制度の確立を目指している旨を指摘いたしております。政府案は同意見に沿って立案したものでありまして、この法律案の目的規定において、国民主権の理念にのっとり、開示請求権を定めることなどにより政府の説明責任が全うされるようにすることなどを明記いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/55
-
056・瀬古由起子
○瀬古委員 そうしますと、例えば地方の条例などでは、大阪とか京都とか沖縄などが知る権利が明記されております。今回政府案には盛り込まれなかったわけですけれども、法律の趣旨ということを考えた場合に、条例には知る権利を入れるか
どうかという問題が、今後条例づくりに当たって問われていくだろうと思うのですね。その場合は当然それぞれ自治体がやはり自主的な判断で行われる、このように理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/56
-
057・瀧上信光
○瀧上政府委員 御指摘の知る権利の概念につきましては、先ほど申し上げましたように、憲法学上もさまざまな理解の仕方があり、最高裁判所の判例でも政府の情報の開示を請求する権利としましては認知されていないということから、知る権利という文言を情報公開法に用いることは適当でないとしたところでございます。
条例上知る権利という文言を用いるかどうかにつきましては、それぞれの地方公共団体において適切に判断をしていただけるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/57
-
058・瀬古由起子
○瀬古委員 この情報公開法をつくろうというやはり多くの国民の運動もありますし、そしてある意味では行政の今までのあり方を変える、そういう法律だというなら、積極的にこの法律の中に知る権利をきちっとうたい込み、そしてそれぞれ条例をつくるに当たっても、大いに憲法の理念に基づいたそういう条例がつくられるように、積極的な役割を果たすべきではないかということを私は痛感しております。
では、次に質問させていただきます。
第二番目、これも政府案ですけれども、法人情報の保護のあり方について質問いたします。特に非公開特約について、これは本会議での質問に対しての答弁ですけれども、非公開特約は必要なものだ、合理的という点で縛っている、こういう答弁がございました。
そこで、まず、この法案の趣旨はやはり原則開示だと思うわけですね。法人等の利益は、第五条の第二号のイで「競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」、こうして実際には保護しているわけですね。こういう状況がございます。
そうしますと、その情報の中身、その情報が本当に競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるかどうか、こういう中身の問題が問われるのではなくて、当事者の条件で公開しない、そういう条件があるから非公開にするというやり方は、やはり原則公開していくという趣旨から反するのではないか、こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/58
-
059・瀧上信光
○瀧上政府委員 いわゆる非公開特約につきましての御質問でございますが、法人等からの任意提供情報の取り扱いにつきましては、行政改革委員会における検討の結果、非公開を前提として初めて受け渡しをされるという情報の流通の形態や、非公開とする条件のもとに初めて提供することを決めた提供者の非公開扱いに対する期待と信頼は保護に値するとされたところでございまして、その趣旨を踏まえて条文化をいたしたところでございます。
こういった規定につきましては、諸外国の情報公開法におきましても同様の保護規定が盛り込まれておるところでございます。そして、この情報公開法の第五条第二号は、このような任意提供情報が法人等における通例として公にしないこととされているものである場合のように、提供に当たって付された条件が合理的である場合にこれを不開示情報とするものでございます。したがって、この規定は、不開示とすることにつきまして合理的な理由があるもののみを不開示とする情報公開法の趣旨に合致するものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/59
-
060・瀬古由起子
○瀬古委員 外国との関係で言われたんですけれども、私は、今の日本の現状、一体、企業の情報がどういうようになっているのかという実情を本当に見た場合に、私は、この規定というのは大変問題があるのではないかというように思います。
例えば薬害エイズの問題でもそうでしょう。それから、今問題になっている銀行だとか証券会社のさまざまな乱脈経営の情報がなかなか国民に開示されないでいる、これが今の大きな問題の解決を阻んでいるという問題があります。
実際には、情報を公開することによって、企業は、当然そこに利益の問題を考えれば利益損失にもなり得るわけですね。で、その利益と比較しますと、一方は、国民の側で言いますと、理由を問わない開示請求権があると。そういう場合には、開示してほしいという国民の側の必要性というのは全然考慮なく、ともかく情報が欲しいという場合に要求されるわけですから、どちらが比重が重いかというと、結局企業の利益の側にその判断がやはりいくんじゃないか。実際にはそのような運用がされて、もうさまざまな地方自治体で、企業の情報が出てこないということで裁判にもなり、苦労されているわけですよね。
そういう点では、公開してくれるなと言えばそれがまかり通るということになりますと、結局、原則公開というものがどんどん、事実上でいえば、崩されているわけですね印そういう点でもやはりこの問題は大変重要な問題だというように思います。
今、合理的だからというお話がありましたけれども、この合理的というものについては、これは常識的にも理解できる場合に限る、こういう旨の要件であるというふうに判断できるでしょうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/60
-
061・瀧上信光
○瀧上政府委員 お答えいたします。
情報公開法の第五条第二号ロに規定する「合理的であると認められるもの」とは、公にしないとの条件を付すことが当該情報の性質、当時の状況等に照らして常識的にも理解できる場合に限って不開示情報とする趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/61
-
062・瀬古由起子
○瀬古委員 では、この非開示になる場合に、「要請を受けて」というようになっていますよね。「要請を受けて、提供されたもの」というようになっているわけですけれども、この場合に、その要請というのは、例えば法令上の権限がある場合、役所は当然資料を提供する権限を持っているとか、いろいろな文書を提出するその責任がある、こういう関係にある、法令上の権限がある場合は当然除かれるというように解釈していいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/62
-
063・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法第五条第二号におきましては、「行政機関の要請を受けて、任意に提供されたもの」とされておりまして、これは任意に提供した法人等の期待と信頼を保護しようとする趣旨でございます。
したがいまして、法令上の権限に基づき提出が義務づけられている情報について提出を求められている場合は含まれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/63
-
064・瀬古由起子
○瀬古委員 それでは、公にしないとの条件というのは、これは法人の側がつけるんでしょうか、行政の側がつけるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/64
-
065・瀧上信光
○瀧上政府委員 公にしないとの条件についてでございますが、行政改革委員会の意見の要綱案では「公にしないとの約束の下に」としているところでございますが、その趣旨を法律上の用語として的確に表現するために「条件」との文言を用いることとしたものでございます。
すなわち、政府案の情報公開法第五条第二号ロに規定する公にしないとの条件とは、法人等が行政機関に情報を提供するに当たり、当該情報を公にしないことにしてほしいとの申し出でありますが、当該申し出を行政機関が受け入れなければならないものではなく、行政機関側もその申し出を了解した上で条件となるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/65
-
066・瀬古由起子
○瀬古委員 例えば、法人が公開しないでほしいという場合もあるでしょう。しかし、同時に、行政の側から、公にしないから、公開しないからどんどん資料を下さい、こういう場合はあるんじゃないですか。それはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/66
-
067・瀧上信光
○瀧上政府委員 そういった場合につきましても、その法人側から公にしないという要請があるということが前提でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/67
-
068・瀬古由起子
○瀬古委員 ですから、もちろん企業は当然、出してくれるなということになるわけですよ、こういう情報の場合に。特に重要な情報ほどある意味では大変企業にとっては損害になるということもありますから、往々にして、出してくれるなという流れなんです。
しかし同時に、この規定は、行政の側も、逆
に、公開しませんよという形で情報を集めるということも十分可能なわけですね。そうしますと、情報隠しに行政が協力するみたいな形になってしまうという大変問題のある条項を含んでいるということを思います。
先ほど、もともとでいえば、約束というものが条件になったという問題も、両者の約束というものではなくて、その当時の状況も踏まえた条件なんというようにまた大ざっぱに広げるということになりますと、ますますその両者との間の非公開条件を広げるということになって、私は大変大きな問題になってくるのではないかというように思います。
次に移りたいと思うんですけれども、ただし書きのところで、不開示の例外として、人の生命、健康、生活または財産を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報というのがありますけれども、これは、生命、健康、生活にどの程度の影響があれば適用されるのか適用されないのか。この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/68
-
069・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法第五条第二号ただし書きにおきまして、人の生命、健康等を保護するため、公にすることが必要であると認められる場合には、不開示情報たる法人情報に該当しても、これを開示するということといたしております。
この趣旨は、不開示とされる情報であっても、開示することに優越的な公益が認められる場合には開示するというものでございます。すなわち、不開示とすることにより保護される利益と、開示することにより保護される利益とを比較考量するという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/69
-
070・瀬古由起子
○瀬古委員 比較考量といいましても、今、健康、こういう問題では、ある意味では取り返しつかないという例があるわけですね。命なんというのはもう取り返しつかないですよ。しかし、これが実際には比較考量という形で不開示になってしまうということもあるわけです。
そういう意味では、生命、健康、生活というような場合には、実際には、命がなくなってから慌てて公開するとか、健康が害されてから慌てて公開するというものではなくて、ある意味では、予防的な内容、そのおそれがあるという場合にはきちっと当然公開されるものだというように思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/70
-
071・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法第五条第二号のただし書きの、人の生命、健康等を保護するためとは、現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これが侵害されるおそれがある場合も含まれるべきであると考えております。
なお、当該情報を公開することと生命、健康等が保護されることとの関係においては、法的保護に値する関連性が要求されると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/71
-
072・瀬古由起子
○瀬古委員 具体的な事例でお話ししたいと思うのですけれども、私、先日東芝の本社に行ってまいりました。実は、この東芝の愛知の名古屋分工場の地下水から、発がん性があり肝臓や中枢神経に障害を起こすトリクロロエチレン、こういう物質が環境基準値の八百倍もの数値で検出されたという事件が起こりました。トリクロロエチレンを使用していたのは、愛知の名古屋分工場だけではないのですね。したがって、東芝は、全事業所、これは二十五カ所あるのですけれども、ここを対象に環境の実態調査をいたしました。その結果はどうだったか、そのことを私は東芝に聞きに行ったわけです。そうすると、東芝は公表できないといって拒否をいたしました。
このトリクロロエチレンは、水質汚濁防止法でも有害物質に指定されているわけです。この問題、基準値以上の数値が出されたというのは、東芝がみずから発表したわけじゃないのですね。この発端は内部告発から始まりました。ここには、企業は、東芝はそのために、発表するまでに土壌、地下水を入れかえるとか、もう住民に黙ってどんどんいろいろなことをやって、それでも明らかになったという経過があって、本当にけしからぬわけですけれども、こういう場合に、企業に都合の悪い情報は公表しない、こういう姿勢があるわけですね。
これを指導監督しております、その責任を持っている通産省なんですけれども、通産省は、この二十五カ所、東芝がやった調査については報告を受けているわけです。報告を受けているけれども、これは企業、東芝の利益、こういうものを考えて、公表できない、こういうふうに言っているわけですね。そういう意味では、東芝は、役所との関係で、公表しないということの話し合いができている、こういうふうに答えております。
こういうことを許したら本当に、実際にその地域で飲み水を使っていた人もいますし、また土壌も汚染されているということも出されていますし、名古屋工場だけでなくて全国の二十五カ所の、一体その地域に住んでいる人の健康はどうなのか、命はどうなのかということが今問われているのに、なかなかその資料が、役所も会社も出してこないわけですね。
こうした企業の情報というものが、例えば非公開特約という形で非公開にできるということになったら、乱用される危険性は本当に甚だしく大きい。むしろ、この非公開特約をつくったことによって、もう公開しなくていいというのがまかり通ってしまう可能性がある。どうやってこのような乱用を防止できるのか、その点についてお聞かせいただきたいど思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/72
-
073・瀧上信光
○瀧上政府委員 個別具体的な情報が不開示情報に該当するかどうかといったものは、その情報の性質、内容に応じまして、当該情報に係る状況、時の経過、その他種々の事情との関係で変わっていくものでありまして、あらかじめ一義的に決することができないものと考えております。開示請求があった都度、諸般の事情を総合して、当該情報を保有する行政機関の長が第一義的には判断することとなります。
なお、当該情報を公開することと生命、健康等が保護されることとの関係におきましては、法的保護に値する関連性が要求されますが、こういったものにつきましては、最終的には裁判所で客観的な判断がされるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/73
-
074・瀬古由起子
○瀬古委員 最終的には裁判所という話がありますけれども、私は、命や健康にかかわるという問題は、裁判所に持っていかなければ判断できない、こういうものであってはならないと思うのです。少なくとも、情報公開されなくたって、行政がみずからこんな危険なものについては発表するなり対策をとるなりしなければいかぬ、そういう性質のものだと思うのですね。
ですから、私は、生命、健康、生活に影響があるという場合は、先ほど比較考量と言われましたけれども、本当にこの問題については、少しでもその可能性があるという場合には、本当にみずから率先して情報公開しなければならないし、そしてそれに、ああでもないこうでもないという企業側の約束やそういうものに左右されるものであってはならない、このように思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/74
-
075・瀧上信光
○瀧上政府委員 情報公開法の第五条第二号におきましては、任意提供情報について、「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」という要件を付して、これを不開示情報としているものでございます。
単に非公開特約があるかどうかといったものではなく、このように要件が法律上明確に定まっておりまして、そしてまた、不開示該当性の判断は事後的に情報公開審査会や裁判所の審査に服することとなるということから、非公開の約束が乱用されるということはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/75
-
076・瀬古由起子
○瀬古委員 ぜひ、今地域で起きている問題点などもよく調査していただいて、実際には本当になかなか企業が情報を公開しない、そういう場合に、役所も一緒になって隠してしまうということがあってはならない。そういう意味では、私は、ぜひ、この法人の非公開特約という問題については、再検討するべきだというふうに思います。
その場合に、特に地方自治体の条例について伺いたいと思うのですが、地方自治体の条例には、非公開特約という規定はない場合が多いわけですね。この法律の趣旨にのっとりまして地方自治体がまた条例をどう整備するかということになりますけれども、この非公開特約の条項を入れるかどうか。私は、当然入れるべきでないと思っていますが、これについても入れよなどという御指導はないと思うのですけれども、これはやはり先ほどの知る権利と同じく、自治体の自主的な判断で当然行われるというふうに考えていいでしょうか。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/76
-
077・瀧上信光
○瀧上政府委員 地方公共団体の定める情報公開に関する条例等の取り扱いにつきましては、この情報公開法の第四十条におきまして「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」とされているところでございます。この法律の趣旨にのっとりというのは、地方公共団体に対して、法律全体の規定内容及び考え方にのっとって必要な措置を講じてもらうということを期待いたしているものでございます。
最終的には、当該地方公共団体におきまして、この規定及び情報公開法の第五条第二号ロの規定の趣旨をどのように的確に判断するかといった問題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/77
-
078・瀬古由起子
○瀬古委員 ちょっと最後のところが聞けなかったのですが、自主的に判断できるというふうに考えていいですか。その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/78
-
079・瀧上信光
○瀧上政府委員 ただいま申し上げましたように、情報公開法の第四十条の規定というのは地方公共団体に対する努力義務規定であります。そして、最終的には、当該地方公共団体において、この規定そして情報公開法第五条第二号ロの規定の趣旨をどのように的確に判断するかといった問題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/79
-
080・瀬古由起子
○瀬古委員 自主的に判断できるというのでいいですね。それは、そこで自治体が判断するということでいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/80
-
081・瀧上信光
○瀧上政府委員 地方公共団体といたしましては、この情報公開法の第四十条に定める、この法律の趣旨にのっとりという規定を踏まえて、的確に判断をされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/81
-
082・瀬古由起子
○瀬古委員 もともと、情報公開法の趣旨全体そのものを本当に踏まえて、やはり自主的に自治体が判断するということをやるべきだというふうに思います。
では、次に、この非公開特約を今回入れなかった野党三党案について、その御見解を伺いたいと思います。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/82
-
083・北村哲男
○北村(哲)議員 ただいま委員がほとんどの時間を割いて、この非公開特約の問題を問題にされたということについて、私どもも全く同じ認識で、大変重要な問題だと考えております。
それで、非公開特約条項をなぜ入れなかったのかという問題でございます。
政府案は、この問題についてまず二つに分けております。一つは、公にすることによって法人もしくは当該個人の権利あるいは競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものは非公開にすることができるというカテゴリーと、もう一つは、行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意提出されたものであって、当該条件を付することが合理的であることという二つの分け方をしておりますね。
前者については、私どもの案も共産党さんの案も当然入っております。これは実質的に企業のプライバシーを守るための必要なものであるという意味です。
二番目の方については、なぜ我々は入れなかったのかということについて。これは、委員も先ほど御指摘をしておられましたけれども、一番の大きな問題点は、その公開が妥当かあるいは非公開が妥当かの最終的な判断というのは、そのものの性質を見て最終的に裁判所が判断するものでありますけれども、ところが、裁判所の判断する前に、企業と行政機関との約束あるいは条件で非公開を決めてしまう、これは裁判所の最終判断権を奪ってしまうことになるのではないか。
法律的な用語でいいますと、いわば実質秘、そのもの自体が秘密に値するものであるという場合が実質秘といいます。これは、実質秘で判断するのは構わないけれども、それをその事前の形式秘、すなわち当事者間の、これは出さないでいいですよというふうなことを形式秘というふうにいうのですけれども、当事者間の約束とか条件というその形式的要件で非公開を決めてしまうということはよくないのではないかということを言っておるわけです。
したがって、この企業情報あるいは個人の事業に対する情報については、実質秘を保護しているイの方、最初に言ったものだけで十分であるという意味で、私どもは入れる必要はないというふうに判断しております。
それからもう一つは、余り長くないようにお答えしますけれども、行政機関の要請を受けて任意に提供された情報とは一体どういうものかという点なんですけれども、これは、純粋に企業側から任意に提出されたものであれば、公にしないことに合理性があれば非公開にしてもいいと思うのですけれども、政府の要請のもとに提供された情報というのは果たして純粋な任意提供情報であろうか。これは委員も指摘しておられました。
むしろ、日本の行政と民間との関係あるいは従来の慣行からいうと、政府の要請とはすなわち行政指導ということの強制であるというふうに私どもは見ております。したがって、政府の要請を受けて任意に提出された情報とは、純粋の任意提供情報とは言えないのではないかという問題があります。
それから、先ほどの政府の説明では、外国にもこのような例があると言われました。アメリカの判例法において、一九九二年ですが、コロンビア地区巡回裁判所が出したクリティカルマス判決というのがあります。ここでこの法理が打ち出されておるわけですが、すなわちこれは、提出が義務づけられていない任意に提供された情報については、当該情報が慣行として公衆に提供されない性質のものであるときは非公開にできるというものであります。この判例の解釈では、企業側に提出義務がある場合は任意提供とは言えず、政府の要請を受けてから提供した場合も任意提供とは言えないと言っております。これはアメリカの司法省のガイドラインの公的解釈でもあります。
したがって、アメリカの場合は、要請を受けて任意提供したものは任意提供情報ではないと言っているにもかかわらず、日本では逆に要請を受けて任意に提供されたものは任意提供情報であって、非公開にできるというふうに一奇妙な反対現象を起こしている。これは、私どもは、どうも政府がこのクリティカルマス判決を政府の都合のよいように恣意的に取り上げたものではないかというふうな考えを持っております。
ちなみに、このクリティカルマス判決というのは、まだ必ずしも確定された判決ではないのです。そして、私たちは、そういう意味で、この問題については、先ほど言った実質秘だけ守ればいいということによって、あとの問題、形式秘ということによって、行政と企業とのなれ合い、今までの慣行を排除しようという意味で、この規定を置かないことにいたしました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/83
-
084・福岡宗也
○福岡議員 基本的な考え方につきましては、北村議員の言われたとおりでございますけれども、問題は、この条項を認めるときには、行政機関の裁量といいますか恣意的なことによって、不公開情報になるのか公開情報になるかという判断が大きく分かれてしまうということであります。
先ほど委員が御指摘のように、開示情報の中に強制的な権限をもって強制的に提出を命令するものがあれば、これは当然不開示情報にはならないわけでありますけれども、これが、任意に提出されて、そういう条件つきのものであればなるということになりますけれども、実際に強制的に提出させる権限がある場合であっても、多くの場合行
政機関は、話し合いによって任意な提出を求める場合があって、強制的な手続を省略することが多いのですね。
そうして集められた情報で、しかも条件といいますから、これは確実な合意とまで言えるかどうかは非常に要件が難しいので、やはり企業側において、これは公開しないということにしてくれというような申し入れがあって、明確な合意までないにしても、ほぼ承諾したような形で提出された情報というものが非公開になってしまう危険性がある。
ということは、行政機関が、自分の都合の悪い企業情報については、あらかじめ、本来強制的に集めるべき、収集すべき情報を任意提出という形で集めることによって、情報公開の幅を非常に縮小することが可能になり得る、乱用されるのではないだろうか、この点があるので、やはり実質的な企業の利益を害するおそれという判断のみに任せて、こういう裁量的なものによって範囲が決まるような除外事由というのは避ける必要があるということで、これは除外したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/84
-
085・谷津義男
○谷津委員長 時間が来ておりますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/85
-
086・瀬古由起子
○瀬古委員 申しわけありません、最後一点だけですけれども、非公開特約を認めていない点、それから防衛情報などの規定を置かない点の日本共産党案について最後伺って、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/86
-
087・松本善明
○松本(善)議員 非公開特約を認めないのは、今日、企業活動が国民生活に広範にかかわってきておりまして、企業が情報公開について社会的責任があるからであります。先ほど委員の御指摘のような実例もございます。非公開特約を認めますと、乱用の危険も非常に大きい。提供が社会的責任である、あるいは社会的義務にさえなっている情報も、非公開特約つきの任意提供とすることにより、公開を免れるということが起こり得るからであります。
防衛情報規定を置かないことにつきましては、陸海空軍その他戦力を保持しないと明記した憲法九条を厳格に守る立場からのものであります。侵略が天下御免の第一次大戦までとは異なり、国連憲章にあるように、言語に絶する被害を人類に与えた二つの世界大戦を経て、武力の行使の禁止、紛争の平和的解決は国際ルールとなりました。これが実効を発揮しましたのが今回のイラク問題であります。
軍事力絶対の時代は終わろうとしており、憲法の平和条項は一段と輝きを増しております。今日の世界史の発展段階は、恒常的戦力によらず、諸外国との真の友好関係を確立することにより、主権の確保が可能な時代になったと考えております。のみならず、憲法の平和条項を守り抜くことこそが、諸外国との信頼関係を構築し、我が国が憲法の言う国際社会での名誉ある地位を占めることになると考えているからであります。
なお、このような政策の実現につきましては、我が党は、すべて国民的合意を得て行うこととしていることを付言しておきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/87
-
088・瀬古由起子
○瀬古委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/88
-
089・谷津義男
○谷津委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114204889X00819980512/89
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。