1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十年九月四日(金曜日)
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議事日程 第六号
平成十年九月四日
午後一時開議
第一 労働基準法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 労働基準法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)
金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案(菅直人君外十二名提出)、金融再生委員会設置法案(菅直人君外十二名提出)、預金保険法の一部を改正する法律案(菅直人君外十二名提出)及び金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(菅直人君外十二名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 労働基準法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。労働委員長岩田順介君。
〔岩田順介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/2
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003・岩田順介
○岩田順介君 ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、労働委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本案は、労働条件をめぐる社会経済情勢の動向にかんがみ、労働者の福祉の増進等を図るため、一定の範囲の労働者に関して労働契約の期間の上限を延長するとともに、労働大臣は時間外労働についての基準を定めることができることとするものであります。
その主な内容は、
第一に、新商品、新技術の開発等に必要な高度の専門的な知識、技術等を有する労働者を新たに確保する場合や高齢者などについて、労働契約期間の上限を三年とするものとすること、
第二に、効率的な働き方とそれによる労働時間の短縮を実現するため、一年単位の変形労働時間制について、対象期間における労働日数の限度を定めるなど要件を追加すること、
第三に、時間外労働を適正なものとするため、労働大臣は、労使協定で定める労働時間の延長の限度等について基準を定め、関係労使は、労使協定を定めるに当たり、これに適合したものとなるようにしなければならないものとすること、その際、育児または介護を行う女性労働者について、一定期間、通常の労働者より短い限度の基準を定めるとともに、この期間中に政府は育児または介護を行う労働者の時間外労働に関する制度のあり方について検討するものとすること、
第四に、事業運営上の重要な決定が行われる事業場における企画、立案等の業務について、労使委員会で、対象となる労働者の範囲、健康及び福祉を確保するための措置等を全員の合意で決議し、行政官庁に届け出ることにより、決議の内容に基づいて裁量労働制の対象とすることができるものとすること
などであります。
本案は、第百四十二回国会に提出され、四月二十一日の本会議において趣旨説明が行われ、同日労働委員会に付託され、翌二十二日労働大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日に質疑に入り、参考人の意見を聴取するなど慎重かつ熱心な審査が行われましたが、継続審査となって今国会に至ったものであります。
今国会においては、昨三日質疑を終了し、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派により、新たな裁量労働制を適用するに当たり対象労働者の同意を得なければならないことなどを制度実施の要件とするものとすること等についての修正案が共同提出され、討論の後、採決の結果、本案は修正案のとおり賛成多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/4
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005・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
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金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案(菅直人君外十二名提出)、金融再生委員会設置法案(菅直人君外十二名提出)、預金保険法の一部を改正する法律案(菅直人君外十二名提出)及び金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(菅直人君外十二名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、菅直人君外十二名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案、金融再生委員会設置法案、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。提出者菅直人君。
〔菅直人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/6
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007・菅直人
○菅直人君 私は、提案者を代表して、ただいま議題となりました民主党、平和・改革、自由党三会派提出の金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案、預金保険法の一部を改正する法律案、金融再生委員会設置法案並びに金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要とその趣旨を御説明いたします。
まず、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案について御説明します。
バブル崩壊後七年余りを経過してもなお、不良債権問題は一向に解決せず、株価はバブル後最安値を更新し、日本経済はますます泥沼に沈んでいくばかりであります。金融機関の破綻は、昨年秋には都市銀行や大手証券会社の一角をも巻き込むほどに大きな波になりました。この間、政府は、貸し渋り対策などを大義名分に三十兆円の公的資金の投入を柱とする金融安定化策を打ち出し、三月には、優良銀行に限ると国民に説明しながら、大手銀行に横並びで一兆八千億円余の公的資金を資本注入という形で投入いたしました。
しかし、現在深刻な経営危機に陥っている日本長期信用銀行を見ればわかるとおり、この黒を白と言いくるめた欺瞞に満ちた資本注入は、不良債権問題を解決するどころか、金融機関のモラルハザードを拡大し、わずか半年足らずの間に、政府保有の銀行株や劣後債で七千億円以上の含み損が発生しました。
金融危機管理審査委員会は、佐々波委員長の国会答弁でも明らかなように、大蔵省と日銀の検査、考査の結果をうのみにして、わずか九十分の審議で、一兆八千億円余の資本注入を認めてしまいました。こうしたいいかげんな審査機関を隠れみのに、バブル紳士やゼネコンの借金は棒引きにし、国民に負担を転嫁しようというのが政府・自民党提出の金融再生六法案の実態であり、まさに国民に対する背信行為にほかなりません。
政府の金融安定化策は相変わらずの護送船団方式であって、我が国金融界のグランドデザインをどのように描くかといった視点は全く欠如いたしております。この金融安定化策を考案したのが、自民党金融システム安定化対策本部長でありました宮澤現大蔵大臣であり、また、当時の外務大臣として三月の資本注入の閣議決定にサインをされたのが小渕現総理大臣であり、橋本内閣の路線を継承して、今日の事態を招いた小渕内閣の政治責任は極めて重いものと言わざるを得ません。(拍手)
破綻前処理という新しい言葉をひねり出し、長銀と住友信託の合併支援を名目に、幾らかかるかわからないが無限に税金で資本注入しようという、場当たり、その場しのぎ、ノールールの政府・自民党の不良債権問題への取り組み、隠ぺい、先送りの大蔵省主導の金融行政のあり方それ自体が、今や完全に破綻状態にあると私たちは考えます。このような無責任な政策、大蔵省主導の金融行政の体制を続ける限り、我が国金融システムに対する内外金融市場の信頼は永久に取り戻せません。
こうした状況を踏まえれば、二十一世紀の我が国金融業界のグランドデザインを描きつつ、金融危機を管理できる一元的な金融行政の体制を築き、金融機関の破綻処理の枠組みを整備することにより、金融機能の安定とその再生を図ることが必要であります。
本法律案は、こうした考え方に立って、十三兆円の資本注入の枠組みを定めた現行の金融安定化緊急措置法をきっぱりと廃止し、情報開示など金融再生委員会が定める透明なルールのもとで、金融機関の経営改革を推進し、管理された形で金融機関の破綻処理を行う枠組みを整備しようとするものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、我が国の金融の機能の安定及びその再生を図るため、新たに総理府に設置される金融再生委員会が主体となって、金融機関の破綻処理を二〇〇一年三月末までに集中的に実施することといたしております。その際、破綻処理の原則として、不良債権等の財務内容を開示することや、経営内容が不健全な金融機関を存続させないこと、株主、経営者等の責任を明確にすること、預金者を保護すること、金融仲介機能を維持すること、破綻処理に係る費用を最小化することという六つの原則を掲げております。
第二に、金融機関の財務内容等の透明性を確保するため、金融機関に対して、定期的に資産の査定と公表を義務づけることといたしております。
第三に、金融機関が破綻した場合に、信用秩序の維持及び預金者等の保護を図るため、金融再生委員会が、裁判所の認可を受けて金融整理管財人を選任し、原則として一年間、当該破綻金融機関の業務及び財産の管理を命じることといたしております。その際、金融整理管財人は、被管理金融機関を他の金融機関に営業譲渡する等のため、資金の貸し付けその他の業務の暫定的な維持継続や業務の整理合理化に関する方針等に関する計画を作成し、計画の実行に関し必要な措置を講じることとしているほか、被管理金融機関の経営者等の責任を明確にするための措置をとらなければならないこととしております。
第四に、金融機関が破綻した場合に、他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させるおそれがある場合、または、当該破綻銀行が業務を行っている地域または分野における経済活動に極めて重大な障害が生じるおそれがある場合は、金融再生委員会は、裁判所の認可を受けて当該破綻銀行の特別公的管理を開始することができることといたしております。その際、特別公的管理銀行は、金融再生委員会の承認を得て、資金の貸し付けその他の業務を行うとともに、経営合理化計画を作成し、二〇〇一年三月末までに、営業譲渡や株式の譲渡等によって特別管理を終えることといたしております。
第五に、公的資金による資本注入を認める金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律は、直ちに廃止することといたしております。
次に、預金保険法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
本法律案は、金融機関の破綻の責任を明確にしつつ、破綻の処理を円滑かつ効率的に行うことにより信用秩序の維持に資するため、整理回収機構を設立する等、所要の規定の整備を行うものであります。
以下にその大要を申し上げます。
第一に、整理回収機構は、破綻金融機関からその営業を譲り受けその整理を行うことや、破綻金融機関からその資産を買い取りその管理、処分を行うこととしております。
第二に、整理回収機構の職員は、必要な場合は、債務者が所有する不動産に立ち入ることができる等の立入調査権を有することとしております。
第三に、整理回収機構は、整理回収銀行及び住宅金融債権管理機構の営業の全部を引き継ぎ、その業務を行うことができることとしております。
次に、金融再生委員会設置法案について御説明いたします。
本法案は、我が国の金融の機能の安定及びその再生を図るため、金融機関の破綻に対し必要な措置を講ずるとともに、銀行業、保険業、証券業その他の金融業を営む民間事業者等について検査その他の監督をすること等を主たる任務とする金融再生委員会を設置するものであります。
大蔵省や金融監督庁に対する国民や金融市場の信頼が雲散霧消してしまっている今日、彼らに不良債権問題の解決を託することはもはやできません。金融再生委員会は、隠ぺい、先送り、国民への負担押しつけを繰り返してきた大蔵省による護送船団行政と決別し、不良債権問題の抜本的解決を図るための施策を講じる主体となるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、国家行政組織法第三条の規定に基づいて、総理府の外局として金融再生委員会を設置することとしております。
第二に、金融再生委員会の所掌事務及び権限を、金融制度の調査、企画及び立案をすること、金融整理管財人により破綻した金融機関を管理すること、破綻した金融機関の特別公的管理に関すること、銀行業を営む者の検査その他の監督に関すること等と定めることとしております。
第三に、金融再生委員会の委員長は、国務大臣をもって充てることとしております。
第四に、国家行政組織法第三条の規定に基づいて、金融再生委員会に金融監督庁を置くとともに、そのもとに証券取引等監視委員会を置くこととしております。
第五に、金融再生委員会に、金融機能再生のための緊急措置に関する法律の規定に基づき預金保険機構が取得する特別公的管理銀行の株式の適正な対価を決定するため、株価算定委員会を置くこととしております。
次に、金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について御説明いたします。
本法律案は、金融再生委員会設置法の施行に伴い、銀行業の免許、行政処分等の監督権限を金融再生委員会に移管するために、必要な関係法律の整備を行うためのものであります。
以上が、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案、預金保険法の一部を改正する法律案、金融再生委員会設置法案及び金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の趣旨であります。
最後に、私たち野党三会派は、情報を開示しないなど、基本的な考え方が全く間違っている政府・自民党の六法案では、どんなに修正を加えたとしても、適正な金融再生の道筋は描けないものと考えております。野党三会派案の早期の成立こそが、唯一の金融再生、経済再生の道と考えております。
自民党が、この野党案の基本的な考え方を認めて、よりよいものにするために、政府提出法案を取り下げてでも法案修正の協議を呼びかけるというのであれば、それには積極的に応じていきたいと考えております。この国会で金融再生のための道筋をつけることは、与野党の立場を超えた、国民に対する政治家の責務であると考えます。自民党には、大胆かつ建設的な妥協を呼びかけたいと思います。(拍手)
その上で、私たちは、金融危機に対処できず迷走している小渕内閣には早期の退陣を求めます。国民に対して巨額の負担をお願いするのであれば、まずみずからが、誤った政策を続けてきた政治責任を明らかにし、きっぱりとけじめをつけることが必要であります。不良債権問題を隠ぺいし、構造改革を先送りしてきた自民党政権を変えない限り、金融に限らず、日本が抱えるさまざまな問題の解決は永久に不可能である、このことを申し上げたいと思います。
このことを申し上げ、私の趣旨説明をこれで終わります。(拍手)
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金融機能の再生のための緊急措置に関する法律案(菅直人君外十二名提出)、金融再生委員会設置法案(菅直人君外十二名提出)、預金保険法の一部を改正する法律案(菅直人君外十二名提出)及び金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(菅直人君外十二名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。藤井孝男君。
〔藤井孝男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/8
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009・藤井孝男
○藤井孝男君 私は、自由民主党を代表して、民主党、平和・改革及び自由党の三会派提出の法案について質問をいたします。
現下の経済の状況はまことに厳しいものがあります。バブルの発生と崩壊の過程の中で、長期化する景気の停滞とも相まって、金融機関は多額の不良債権を抱えており、我が国経済が再活性化するためには、その抜本的処理を早急に促していく必要があります。
また、ロシアの経済危機等を背景に、世界の市場は極めて不安定な状態にあります。ここ数日の世界の市場を見ても、株価の乱高下、為替の動揺など、世界同時不況の前兆との論評も出ているほどです。その中で、我が国発の金融恐慌を引き起こさないというかたい決意のもと、政治主導の責任ある危機管理が今まさに求められているものであり、しかも迅速な対応が不可欠であります。立法府の一員として、こうした現下の状況についてどのように認識されているのか、まずお尋ねをいたします。
次に、ようやく提案されました三会派の法案について質問いたします。
三会派の御提案につきましては、我々として、幾つかの点について危惧するところはありますが、金融再生に向けた真剣な取り組みの具体化として、今後、早急に建設的な議論をしていきたいと考えております。こうした観点から、大きな問題点に絞って、以下御質問をいたします。
まず第一に、野党案では、公的ブリッジバンクの仕組みがありません。そして、金融整理管財人で対応をすることを原則としております。
しかしながら、金融機関の破綻に際して、民間の引受金融機関が登場しない場合に、受け皿としての公的ブリッジバンクを用意しないで預金の流出がとまると確信できますか。資産の急速な劣化や資金調達困難に陥った破綻金融機関が、善意かつ健全な債務者にどのようにして融資を維持継続できるのでしょうか。また、そのように資産が劣化した場合、公的ブリッジバンクをつなぎとしないで、他の民間金融機関に業務を移管するまで持ちこたえることができると考える理由は何なのでしょうか。また、受け皿金融機関を用意しなければ、結局破綻金融機関の善意かつ健全な借り手の債権も、ほとんどが整理回収銀行に行くこととなってしまうのではないですか。
答弁を求めます。
政府提案は、こうした問題を解決できるとともに、善意かつ健全な借り手への配慮に万全を期すことができるものとなっております。
すなわち、取引先の銀行が破綻しなければ通常どおり融資を受けられる善意かつ健全な借り手であっても、融資先と金融機関との円滑な取引関係を築くにはある程度時間を要すると考えられること、地域によっては代替し得る金融機関の数が少ないこと、民間金融機関が融資審査や債権管理を厳正化しつつある金融環境にあること等から、新たな取引銀行が見出せず、急には融資が受けられなくなる事態が想定されます。したがって、金融機関の破綻に際して、民間の引受金融機関が登場しない場合に、善意かつ健全な債務者対策に万全を期すためには、つなぎとして公的ブリッジバンクを用意できるものとなっております。
こうした点から申し上げれば、政府提案の方がすぐれていると思いますが、どうお考えでしょうか。(拍手)
第二に、野党案では、金融再生委員会が破綻銀行の全株式を強制買収することとされておりますが、そもそも、株主の権利を行政が強制的に奪うことについて、どのような根拠に基づいてこれを認めることとするのでしょうか。また、株券は流通しており、収用決定と同時にその権利が失われるとすれば取引の安全を著しく害するのではないですか。また、銀行株は、突然その株主が制限される可能性がある魅力に乏しいものとなるわけですが、そのために株価が暴落するおそれがあるのではないですか。
民主党の当初案では、一円で株式を買い取るとなっていました。さすがにそれは非現実的であるということで今回の御提案になったのでしょうが、具体的な手続のことを考えた場合、そもそも収用に当たっての正当な対価の算定は可能ですか。また、補償手続には膨大な事務負担とコストを要すると考えられますが、そうしたことを考えたことがあるのでしょうか。また、株主から訴訟が頻発するおそれがありますが、このような困難を伴う行政処分を機動的に発動できると本当にお考えなのでしょうか。明確な答弁をお願いいたします。
第三に、こうした点はさておいても、現下の問題は、金融システムの危機が発生するのをどのように防ぐかという点にあるはずです。
三会派の御提案では、連鎖破綻等内外の金融システムの機能の維持に重大な支障を生じるおそれがある場合には、破綻金融機関の公的管理ができることになっております。しかし、そもそも破綻してしまえば、こうした危機は既に起きてしまうのではないですか。このような事態が生じてしまっては取り返しのつかない事態となるので、事前に防ぐ工夫こそが求められているのではないでしょうか。
また、金融、経済は生き物であります。刻々状況が変わるそうした金融、経済を日常的にフォローする体制にない裁判所に、危機的な状況を判断することができますか。また、二十四時間以内に判断する材料を裁判所は持ち合わせているのですか。御答弁をお願いします。
以上、私として危惧する点を中心にお尋ねをいたしました。
ただ、冒頭に申し上げましたとおり、世界の市場が不安定な状況の中、金融再生法案の処理が長引けば、我が国が世界的な経済危機に追い打ちをかけることにもなりかねません。重ねて申し上げますが、今こそ、ともに英知を結集し、政治主導の責任ある危機管理が求められており、迅速な対応が不可欠であります。いずれにせよ、重要なことは、現在の危機的な状況を打破するために、いたずらに日にちを費やすのではなく、早急に結論を得るということであります。
そうした観点から、三会派の御提案の法律案については、その内容を十分に検討していきたいと考えておりますことを再度申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔伊藤英成君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/9
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010・伊藤英成
○伊藤英成君 藤井孝男議員にお答えをいたします。
まず、ロシアのルーブル危機など、現下の状況をどう認識しているかとのお尋ねがありました。
ロシア・ルーブル危機やアジアの経済危機は、欧米諸国や中南米諸国の株式、為替市場の動揺を誘っております。特に、これまで世界経済の牽引役であった米国の株式市場に不透明感が漂っている現状は、御指摘のように、世界経済に深刻なダメージを与えるおそれもあると言わなければなりません。世界第二位の経済規模を持つ我が国が果たすべき役割と責任は、極めて重いものと考えております。
次に、破綻銀行の全株式を強制買収することとしているが、どのような根拠に基づいてこれを認めることとするのかというお尋ねがありました。
銀行業は内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営むことができず、銀行業の免許を受けるには、銀行の業務を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有することが必要であります。したがって、破綻した銀行は銀行業の免許を失うことになりますから、破綻銀行の株式もその財産価値を失います。しかし、大手銀行が連鎖破綻した場合等の金融システムに与える影響の大きさを考えると、場合によっては破綻銀行を公的管理下に置くことも考えなければなりません。とはいえ、その銀行は破綻したのでありますから、その瞬間、株式は無価値になっております。
このように、国による破綻銀行の株式の強制取得は、金融システムの維持という公共の福祉のために正当な補償のもとに収用するものでありますから、憲法第二十九条第三項で言う財産権の侵害には当たらず、十分な根拠があると考えております。
次に、収用決定と同時にその権利が失われるとすれば、銀行株取引の安全を著しく害するのではないか、また、これによって銀行の株価が暴落するおそれがあるのではないかというお尋ねがありました。
株式会社が倒産すれば株券が紙くずになるのは資本主義の大原則であり、銀行株の安全性も一般事業会社株と何ら変わりありません。財務内容が健全で、情報開示が徹底されている銀行の株式は、破綻の心配がないのでありますから、安全性を害するということはあり得ません。財務内容が健全でなく、情報開示がなされていない銀行の株式に対する不安が高まることはあるかもしれませんが、それは全く別の問題であります。
次に、収用に当たって、正当な対価の算定は可能かというお尋ねがありました。
預金保険機構が特別公的管理銀行の株式を取得する際には、金融再生委員会の定める算定基準に基づいて、株価算定委員会が適正な対価を定めることとしております。具体的な算定基準としては、株価の算定方法として一般的に用いられている方法、例えば、純資産の金額から株価を算定する純資産価額方式等により決定することになるものと考えております。
次に、特別公的管理銀行の株主であった者に対する補償手続に膨大な事務負担とコストを要するのではないかというお尋ねがありました。
政府・自民党は、実質的に破綻していると思われる長銀に対し、公的資金を投入して救済しようとしておりますが、このやり方の方がコストがかかるのは明らかであります。なぜなら、当然責任を問われて損失を負担しなければならないはずの株主も、長銀が救済されることによって救われてしまうからであります。また、補償手続にかかる事務負担コストは、通常の会社が倒産した場合に配当を支払うのと同じであり、膨大なものになるとは考えておりません。
次に、株主から訴訟が頻発するおそれがあり、このような困難を伴う行政処分を機動的に発動できるのかというお尋ねがありました。
まず、破綻した銀行の株式が無価値になるのは当然のことであります。また、内閣総理大臣が破綻した銀行の免許を取り消すことは、銀行法によって認められている上に、先ほど述べたとおり憲法に適合しているので、これに対して株主が訴訟を起こしても、株主側に道理はありません。したがって、株主から訴訟が頻発すると考えられず、おっしゃるような懸念はないものと認識をしております。
次に、破綻前処理の工夫こそ求められているのではないかというお尋ねがありました。
政府・自民党の言う破綻前処理とは、要するに、破綻の危機にある銀行の救済、延命であります。我々は、本法律案の中で金融機能安定化法の廃止をうたっており、政府・自民党の言う破綻前処理には賛同できかねます。
確かに、大手銀行の破綻を放置すれば金融システムは動揺しますが、適切な措置を講じて管理された破綻処理を進めれば、破綻銀行を整理清算しても何ら問題は起きません。破綻前処理ではなくあえて破綻前対策というなら、早期是正措置の厳格な発動や、政府系金融機関、信用保証協会の拡充等で事足りると考えております。
残余の答弁は坂口議員、野田議員よりいたします。(拍手)
〔坂口力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/10
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011・坂口力
○坂口力君 私の方からは二点だけお答えをさせていただきたいと思います。
裁判所に判断を任せることができるのかとの御指摘がございましたが、野党三会派案では、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分、及び特別公的管理の開始の決定について裁判所の認可を求めることといたしておりますが、裁判所は、金融再生委員会の申請が法律の要件に該当するか否かの判断をするものであり、十分に判断できるものと考えております。
また、裁判所は、金融再生委員会から申請のあった場合、申請のあった日またはその翌日において判断することといたしておりますが、判断の材料は金融再生委員会が用意するものと想定をいたしているところでございます。
以上でございます。(拍手)
〔野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/11
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012・野田毅
○野田毅君 二点お答え申し上げます。
まず、ブリッジバンクに移行しなければ破綻金融機関から預金流出がとまらないのではないかとのお尋ねがありました。
議員御承知のとおり、現在、預金保険という形で全額預金は保護されておりますことは御承知のとおり。したがって、預金が全額破綻金融機関から流出するような事態は到底考えにくい事柄であると思います。
なお、この点は、政府提案のブリッジバンク法案においても同じ問題ではないかと思っております。そもそも十七兆円のお金を使うということを決定したということは、すなわちそういうことに対処するためにつくった法案であったと考えております。
いずれにせよ、破綻金融機関は最終的に清算することといたしておりますので、預金は、預金者に払い戻されることになるか、他の金融機関へ譲渡されることになります。
次に、ブリッジバンクなしでは営業譲渡に支障を来すのではないか、また、善良かつ健全な借り手まで整理回収銀行に行くことになるのではないかとのお尋ねでありますが、破綻処理が長引けば資産が劣化することは御存じのとおりであります。業務移管のための時間稼ぎにブリッジバンクを利用するのではなく、一刻も早く清算することが必要であると考えます。
また、我々三会派は、破綻金融機関と取引をしていた他行へ行けない第二分類債権に分類される融資先対策として、信用保証協会による保証を付し、他行融資への道を開く制度を創設することといたしておりますため、まず、この破綻金融機関の迅速な清算にも資するものと考えております。
次に、本法案より政府案の方がすぐれているのではないかとのお尋ねがありました。
我々は、政府提出法案によるブリッジバンク制度は必要ない、廃案にすべきであると考えております。
金融機関の破綻時において特に留意するべき点は、預金者、借り手、決済システムであります。預金者は全額保護されております。また、借り手については、信用保証制度を改革することにより十分対応可能であります。また、政府提出のブリッジバンク法案においても、決済システムの維持に日銀及び国が責任を持つ点は変わりません。逆に、ブリッジバンクをつくってしまえば、良質な借り手は逃避し、最終的に不良債権だけが残り、公的資金の際限ない投入につながるため、問題点の方が多いと考えます。
以上です。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/12
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013・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 佐々木憲昭君。
〔佐々木憲昭君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/13
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014・佐々木憲昭
○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、野党三党提出の金融機能再生のための緊急措置に関する法律案など四案の基本点について質問いたします。
まず、国民の圧倒的多数が反対する日本長期信用銀行への公的資金投入問題についてであります。
銀行への十三兆円の税金投入を可能にしている現行の金融機能安定化法についてお聞きします。
この法律を審議したときの政府の説明は、債務超過に非常に近づいているケースは対象にならない、吸収合併されるような銀行は対象にならないというものでありました。今から見れば、長銀のようなケースは絶対に公的資金を投入しない、あくまでも健全銀行が対象だというのが、文字どおりの表看板でありました。ところが、でき上がった法律とそれに基づく審査基準なるものは、この説明とは似ても似つかないものとなったのであります。
これまでの審議を通じて明らかになったことは、既に破綻してしまった金融機関、著しく経営が悪化した金融機関以外はどこでも公的資金の投入が可能だというのがこの法律と審査基準なのであります。この法律がある限り、長銀問題のように、政府の勝手な理屈づけでどんな銀行にも税金を投入でき、税金投入が限りなく拡大することになるのであります。
提案者の三党は、さきの国会で、いずれもこの法案に反対の態度をとりました。今回提案の金融再生法案では、附則で同法を廃止することとしています。首尾一貫した態度であり、評価したいと思います。(拍手)
そこで、三党それぞれに質問をいたします。
この法案が成立すれば、これによって十三兆円の銀行への税金投入の根拠がなくなりますね、念のためにお聞きをいたします。したがって、今問題になっている長銀への税金投入は、この法案の立場とは両立しないものと考えてよろしいですね。
政府は、長銀に対して六千億円とも一兆円とも言われる莫大な公的資金を投入しようとしています。しかし、これほど道理も根拠もない計画はありません。
この三月、長銀を健全銀行だとして、政府は一千七百六十六億円もの公的資金を投入しました。長銀が本当に健全な銀行であったとしたなら、さらに力をつけたはずであります。それが、半年もたたないうちに、長銀に公的資金を投入しなければ、長銀が破綻する、金融システムが危うくなる、日本発の金融恐慌を起こしてはならないなどというのでは、三月のあの資本注入は一体何だったのか。政府の説明は、だれが見ても、支離滅裂だと言わなければなりません。
長銀が破綻すると金融システムは危機になるなどという口実は、既にこれまでの論戦によって崩壊しております。長銀は債務超過ではないというのが政府の説明であります。それであるならば、最終的に債務不履行が起こることはあり得ず、システム全体の危機につながることはあり得ません。それをシステム不安になるなどと政府が先頭を切って金融不安をあおるのは、最も悪質な税金投入の口実づくりであります。
我が党は、このような道理も根拠もない税金投入に断固反対するものであります。我が党は、去る八月二十七日、金融機関の不良債権及び破綻処理についての日本共産党の提案を発表しました。その最も基本的な立場は、金融機関の不良債権処理あるいは金融機関の破綻処理にいかなる形であれ国民の血税を使ってはならず、それは金融業界の自己責任、自己負担によってなされるべきであるということであります。
金融機関の不良債権や破綻は、バブルに踊った個々の金融機関と金融業界の責任であって、国民には何の責任もありません。国民の負担で不良債権や銀行の破綻を処理するとなれば、銀行や銀行業界は限りなくそれに依存することになります。金融機関と金融業界の自己責任、自己負担の原則を貫いてこそ、必要な費用を最小限に抑え、金融システムの本当の意味での安定と信頼を回復できると考えるものであります。
提案者にお聞きをいたします。このような金融業界の自己責任、自己負担の原則についてどのようにお考えでしょうか。法案には破綻銀行の公的管理という処理が含まれていますが、これによる公的資金、税金の投入はどのようになるのでしょうか。金融機関の自己責任はどうなるのでしょうか。
法案が金融機関の破綻処理の原則の一つとして挙げている、破綻処理に係る費用が最小限になるようにすることという原則は、法律に則して言えば、どのようなメカニズムで、どのように作用することになっているのでしょうか。
私たちは、銀行業界の自己負担の原則に立って、国が果たすべき役割と銀行業界が果たすべき役割をしっかり区分し、整理することが重要だと考えております。政府の役割は、金融機関への検査、監視、指導に限定されるべきであります。破綻処理に税金を投入するなどは、やってはならないことです。要するに、公的機能を持つ金融機関に対し、口は出すが金は出さないということ、これが政府のあるべき姿だと考えるわけであります。
ところが、これまでの政府の対応は、銀行を厳しくしつけるという肝心なことは何もやらず、他方では、住専問題処理への税金投入、三十兆円の税金投入計画の策定、二十一行への一兆八千億円の税金投入などなど、やってはならないことばかりやって、国民の利益を損ねてきたのであります。提案者は、これまでの政府のこういう対応について、どのような見解を持っておられるでしょうか。
また、この問題での政府のあるべき役割についてどう考えますか。提案されている法案では、政府の果たすべき役割と金融業界の果たすべき責任が、どう区分されているのでしょうか。
以上、法案の基本にかかわる幾つかの問題をお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)
〔伊藤英成君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/14
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015・伊藤英成
○伊藤英成君 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。
長銀に対する税金投入について、民主党の基本的な考え方を伺いたいとのお尋ねでありました。
まず、政府が幾ら否定しようとも、長銀は実質的に破綻していると認識をしております。したがって、政府・自民党が強行しようとしている長銀に対する税金投入は、明らかに長銀救済であり、金融機能安定化法に違反すると考えております。
民主党は、銀行救済のための公的資金の投入には一貫して反対しており、その姿勢は何ら変わることはありません。ただし、仮に長銀が破綻した場合、預金者保護のために税金を投入することは、二〇〇一年三月末まではやむを得ないと考えております。これまで銀行は経営内容をきちんと開示してこなかったのでありますから、預金者に対して直ちに自己責任原則を押しつけるのではフェアではないと考えております。
次に、金融機能安定化法の廃止によって長銀への税金投入はできなくなるのかとのお尋ねでありました。
おっしゃるとおりであります。
次に、本法律案には破綻銀行の公的管理という処理が含まれているが、これによる公的資金、税金の投入はどのようになるのか、金融機関の自己責任はどうなるのかというお尋ねがありました。
金融機関の不良債権の実態が思ったほどひどくなく、金融機関の自己責任、自己負担の範囲内で預金者保護が可能であるならば、公的資金を投入する必要はありませんし、投入すべきでありません。しかし、我々の認識では、不良債権の実態は相当に深刻であり、金融機関の自己責任、自己負担で解決しようとすれば、預金者が犠牲になるおそれが大きいと言わざるを得ません。したがって、預金者保護の範囲において公的資金を投入するのはやむを得ないと考えます。
本法律案の特別公的管理というスキームは、そうした立場に立って、預金者保護のために公的資金を投入するものです。それとは別に、健全な債務者に対する融資業務を継続するため、つまり、公的管理銀行の運転資金として公的資金を使うこともあり得ますが、この場合の公的資金はいずれ回収されるものであり、例えば政府系金融機関の貸出枠を広げるのと同じ性格のものであります。
次に、金融機関の破綻処理の原則の一つとして挙げている、破綻処理に係る費用が最小限になるようにすることという原則は、法律に則して言えば、どのようなメカニズムで、どう作用することになっているのかというお尋ねがありました。
破綻処理に係る費用を最小化するという原則の具体策は、国が破綻銀行の株式を取得する際に株主に損失を負担させることや、特別公的管理終了後、営業譲渡や株式売却を行うことにより、売却益を国庫に納入すること、経営者に民事上の責任を負わせること等により、実現できるものと考えております。
残余の答弁は、坂口議員、野田議員よりいたします。
以上です。(拍手)
〔坂口力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/15
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016・坂口力
○坂口力君 佐々木議員にお答えをしたいと思います。
日本長期信用銀行への公的資金投入について御質問をいただきました。
金融危機管理勘定から導入されます資本注入は、政府がこれまで、健全な銀行にのみ注入する、不良債権処理には使わないと明言をしてきたものであり、全く自己矛盾と言わなければなりません。
長銀の財務状況は債務超過ではないとされておりますが、情報開示については全く不透明で、経営者責任とリストラ策も必ずしも徹底されたものではありません。政府の対応は、実際は長銀の抱える不良債権処理のための支援策だと考えざるを得ないのであります。我々は、金融機関の常識として、徹底した情報の開示、経営者、株主等の責任の明確化、リストラの断行が当然だと考えております。その意味で、今回の政府の日本長期信用銀行への対応を含め、反対であります。
金融安定化緊急措置法の廃止に関するお尋ねについてお答えをいたします。
本法案で金融安定化緊急措置法が廃止されれば、当然ながら、同法に基づく長銀への公的資金投入はできなくなります。また、本法案では、金融安定化緊急措置法を廃止し、モラルハザードを招くような銀行への資本注入はやめるという趣旨であります。
次に、金融機関の破綻処理につきましては、可能な限り自己責任、自己負担によって処理すべきは当然と考えます。しかしながら、一方で、国民生活上あるいは国民経済、また国際市場ということを考えましたとき、破綻処理において、預金者保護等の場合には、公的資金の投入を含め機動的、積極的に対処すべきだと考えております。
以上、お答えを申し上げます。(拍手)
〔野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/16
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017・野田毅
○野田毅君 端的に二点お尋ねがございました。
三党案が成立すれば十三兆円の銀行投入の根拠はなくなりますね、この質問であります。公的資金の投入の根拠はなくなるか。イエスであります。この法案と長銀税金投入は両立しないですね。イエスで、つまり英語で言えばノーであります。つまり、両立しないということであります。
それから、金融行政における政府の役割等についての御質問がございました。
政府は、不良債権問題に決着をつけないまま、金融ビッグバンを開始いたしました。政策手順の誤りは明らかであります。その結果、銀行のみならず、証券、生保各社は、世界規模の再編の中での生き残りと不良債権処理を同時に進めなければならないという大変な困難に直面しております。
金融システムの安定とは、金融機関の健全化ということにほかなりません。ビッグバン開始後の今、我が国の金融機関の将来像がどのようにあるべきかを明確にした上で、優勝劣敗の淘汰、自助努力、市場原理を生かし、我が国金融機関の体質強化を行わなければならないのであります。これが我が国金融機関に対する先行き不安の本質であります。そのグランドデザインを示さないで、大手銀行を救済したり、弱い銀行同士の合併に公的資金を注ぎ込むということが政府の仕事であるとは我々は考えておりません。
政府の銀行業界に対する対応についてのお尋ねがありました。
政府の役割は、検査、監視、指導であって、口は出しても金は出すべきではないという御党の御主張、同感であります。
政府の金融政策は、隠ぺい、場当たり、先送りの連続であり、相次ぐびほう策の結果が今日の金融危機をもたらしていることは、もはや論をまちません。加えて、不良債権の処理には信用収縮などデフレ圧力を伴います。不良債権処理には経済政策のバックアップが必要であるにもかかわらず、政府がデフレ政策をとり続けたために、逆に不良債権を積み上げ、問題を深刻化させてまいりました。また、不良債権問題の決着をつけずにビッグバンを開始したため、貸し渋りを初めとする混乱を招いてしまいました。
これらの意味においても、金融機関の自己責任原則、市場メカニズムを尊重し、行政介入を減らすことこそが、透明性を高め、信頼を取り戻す唯一の方策であると考えます。また、景気回復最優先政策をとるべきであります。ただし、預金者の保護、システミックリスクの回避、破綻金融機関の借り手支援に万全を期すのは政府の役割であると考えます。今回提出いたしております法案も、その考え方に沿ったものであります。
以上であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/17
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018・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 秋葉忠利君。
〔秋葉忠利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/18
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019・秋葉忠利
○秋葉忠利君 社会民主党・市民連合を代表して、野党三会派提出の金融再生のための四法案について、提出者に質問いたします。大変短い時間内に国家存亡の危機とも言える問題についての質問をいたしますので、単刀直入に本題に入ります。
第一に、社民党はかねてから、財政、金融の完全分離を主張してまいりました。その観点から、三会派案で金融再生委員会という大蔵省から独立した第三者機関を創設し、そこに大蔵省の金融企画局を移すことには賛成いたします。同時に、今日の金融が著しく国際化していることを考えると、国際局、これは従来の国際金融局ですが、これも金融再生委員会に移すべきではないのでしょうか。まず、この点について、野党三会派の考え方を伺いたいと思います。
加えて、三月の公的資金投入の決定に当たって、金融危機管理審査委員会の判断は事実の把握と客観性において不十分であり、その結果、当時喧伝された貸し渋り解消の目的も達成できませんでした。
その原因、いろいろありますが、私たちは、預金保険機構そのものが大蔵省の認可法人であり、大蔵省の意向を無視しては存続できない組織である点が重要だと考えます。となると、預金保険機構の監督権限等も金融再生委員会に移すべきだという結論になりますし、同様な理由で、日本銀行の監督等も、大蔵省ではなく金融再生委員会で行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
次に、大手銀行などがつぶれれば、社会的、経済的に大きな影響を生ずることは言うまでもありません。こうした大手銀行の破綻に際して、三会派案では、国が全株を取得して公的管理に移すことになっております。事の重要性にかんがみて、このような手段の必要性は理解できますが、同時にデュープロセス、すなわち、法的な批判にたえ得る手続をきちんととることも重要です。
特に、この視点から、土地収用委員会の役割、機能をあくまでも尊重すべきだと主張し、沖縄特措法に反対した社民党としては、このことにこだわらざるを得ません。三会派案がこの点で必要十分な条件を備えているかどうか、以下お聞きしたいと思います。
三会派案では、確かに金融再生委員会の判断の客観性を担保するため、あらかじめ司法の判断を仰ぐことになっております。その一環として、高度に政治的な判断、例えば日本経済に重大な影響があるかどうかも司法にゆだねられています。その上、この判断は二日間で下すことになっております。日本の司法制度が世界に冠たるものだとしても、そもそも政治的判断を司法にゆだねることが適切なのかどうか。仮に適切だとしても、これほどの短期間に高度に政治的な判断ができるような環境が整っているのかどうか、慎重に考慮すべき点だと思います。
私は、こうした国民の英知を結集して行うべき政治的判断については、国会を通じた国民のコントロールが及ばない司法に任せるのではなく、主権者である国民の意思が最優先されるべきだと考えます。この点についても、三会派案では当然何らかのメカニズムを想定しておられるはずですが、どのように国民の意思が反映されるのか、御説明いただきたく存じます。
第三に、現在の金融危機の原因は、金融機関や不動産業等の無責任経営、さらに、大蔵省の護送船団方式による指導力の欠如等々、さまざまな要素がありますが、数値的には、都心の地価の短期間大幅下落が原因だと認識すべき問題だと考えております。この前提のもと、日本の銀行はほとんどの融資案件において協調融資という形をとっている等の事実をもあわせて考えると、例えば大手銀行が複数、同時に破綻するケースを想定する必要もあるのではないでしょうか。このような場合に野党案ではどのように対応するのか、伺いたく存じます。
次に、金融危機から脱し、景気向上を実現するための対策の一環として、政府・自民党の考え方は、不動産等の流動化策、これを一つの目玉にしております。野党三会派案はこの点への言及がないのですが、特定資産の流動化についてどのようにお考えでしょうか。
野党三会派が、政府・自民党の考え方と同じく、土地等の証券化を対策の一部として考えていると仮定しての質問ですが、このような市場は日本社会では形成できないという考え方もあります。アメリカで証券化がうまくいったのは、実質において、土地の交換価値ではなく、土地の使用価値を担保にとるシステムだからだと考えられております。
すなわち、日本のように、土地だけを担保にとっている場合、その土地を買った人は、土地の上に建物を建てないと利益が生じないからです。同時に、固定資産税は払わなくてはなりません。アメリカの場合には、既に建物があり、最低限何らかの収入のあるケースがほとんどでした。この違いを考えたとき、日本での証券化は難しいと考えざるを得ないと思うのですが、この点、どうお考えでしょうか。
それから、野党案では、金融機関の破綻前には何ら手を打つ必要はないと考えているようですけれども、北海道拓殖銀行のような場合、地域経済に与えた影響、そして現在与えつつある影響ははかり知れないものがあります。破綻前に何らかの措置を講ずるべきではなかったかとの意見も大変多く寄せられております。この点についての野党側の考え方をお聞かせいただきたく存じます。
最後に、金融再生の出発点は、情報公開にあり情報公開に尽きると言っても過言ではありません。また、先日の参考人の答え方を見ながら感じたことですが、みずから情報公開の努力を誠実に行い、その上で国民の判断を仰ぐといった謙虚な姿勢が必要だと思います。
さらに、大蔵省、金融監督庁、預金保険機構等、政府の姿勢から判断すると、情報公開の大切さがほとんどわかっていないように見受けられます。情報公開のための統一基準をつくったり、公開命令を出す等、できることは多々あるにもかかわらず、何一つ具体化されていないのが現状です。最低限、情報公開が出発点であることを、政府も金融機関も認識すべきだと考えます。
この点については、野党三会派の皆さんと全く同意見だと考えておりますが、再度確認させていただき、私の質問を終わります。(拍手)
〔伊藤英成君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/19
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020・伊藤英成
○伊藤英成君 秋葉議員にお答えいたします。
まず、国際局も金融再生委員会に移行させるべきではないかとのお尋ねがありました。
金融再生委員会は、二〇〇一年三月末までに不良債権問題を抜本的に解決するため新たに設置する機関でありますが、それだけにとどまらず、金融庁への移行を視野に入れ、財政、金融の分離をも実現しようというものであります。秋葉議員の御指摘のとおり、情報通信の発達に伴って、金融業界は完全なボーダーレスワールドと化しており、国際局だけを大蔵省に残す必然性はないものと思います。この点につきましては、貴重な御意見として、今後の検討課題としてまいりたいと考えます。
次に、預金保険機構や日本銀行に対する監督権限についてのお尋ねがありました。
金融再生委員会は、将来発足する予定の金融庁の母体とも言えるものであり、預金保険機構及び日本銀行は、金融再生委員会の監督下に置かれることが望ましいと考えております。そのため、金融再生委員会設置法案において、預金保険機構及び日本銀行の監督は、金融再生委員会の所掌事務と定めることとしたところであります。
次に、大手行が複数、同時に破綻するケースに対応できるのかとのお尋ねがありました。
政府が不良債権の実態を隠ぺいしている以上、断定的なことは言えません。しかし、不良債権の総額は、公表されている数字よりもはるかに大きいだろうという見方が一般的であり、私どももそのように考えております。経営危機に陥っている長銀がまさにそれを象徴しているのであります。したがって、大手行が連鎖破綻するというシナリオは十分に可能性があり、私ども野党三会派は、我々は、まさにその認識に立って金融再生法案を作成したのであります。
大手行が連鎖破綻した場合、国がその銀行の株式を直ちに取得して特別公的管理に入り、国家信用を背景に営業を継続する、その後、他の金融機関に営業譲渡するなり、例えば、連鎖破綻した銀行数行を合併させて再生するなりという対応をすればよいものと考えております。
次に、北海道拓殖銀行破綻を例に挙げて、破綻前に何らかの対応が必要ではないかというお尋ねがありました。
政府・自民党が言う破綻前処理とは公的資金を資本注入して銀行を救済することであり、私ども野党三会派が掲げる原則、すなわち経営の健全性の確保が困難な金融機関を存続させないという原則に反するものであります。公的資金を幾ら投入しても、不良債権を抱えたままの銀行が健全になることはありません。むしろ、不良債権の処理が先送りされる結果、将来破綻したときの影響はますます大きなものになると言わざるを得ません。
重要なのは、破綻した銀行を放置するのではなく、政府が破綻処理を管理することであると考えます。そうすることにより、預金者を完全に保護し、インターバンク取引やデリバティブ取引のデフォルトは回避できるものであります。健全な債務者については、政府系金融機関や信用保証協会の活用により、影響は最小限にすることができるものと考えております。
もしも、大規模な破綻が発生すれば、私ども野党三会派で用意した特別公的管理というスキームを使えばよいということであります。あえて破綻前の対応というなら、それは、早期是正措置の厳格な運用以外にはないと考えます。
残余の答弁は、坂口議員、野田議員よりいたします。
以上です。(拍手)
〔坂口力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/20
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021・坂口力
○坂口力君 秋葉議員にお答えを申し上げたいと思います。
情報公開のための努力を全国民に見えるような形で行うことも必要ではないかとの御指摘でございます。
野党三会派案では、情報公開について、金融機関の財務内容等の透明性を確保するという観点から、決算期その他定期的に資産査定を行い、その報告書を金融再生委員会に提出しなければならないものとしている上に、資産査定結果についての公表を義務づけているところであります。今回の長銀のように、公的資金を投入する場合は、通常以上に情報公開のための努力を行うことが必要と考えます。重要な御指摘でありますので、さらに検討を続けたいと存じます。
次に、司法が高度な政治的判断を短期間で行うことができるのか、また、政治的判断には国会が関与すべきではないかとのお尋ねがございました。
一部、先ほど藤井議員にもお答えをしたところでございますが、我々の案の中には、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分及び特別公的管理の開始の決定について、裁判所の認可を求めることといたしております。したがいまして、裁判所は金融再生委員会の申請が法律の要件に該当するか否かの判断をするものであり、いわゆる政治的判断ではなく、可能であると考えております。
国会が関与することについてでありますが、本法案では、国務大臣がその委員長を務め、金融再生委員会が主たる関与を行うことといたしております。国会は行政に関する監視を行うことにより関与することができるものと考えているところでございます。
以上、お答えを申し上げました。(拍手)
〔野田毅君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/21
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022・野田毅
○野田毅君 土地など特定資産の流動化についてのお尋ねがありました。また、土地の証券化及びその流通市場育成についてのお尋ねがございました。
不動産等の流動化、証券化やその流通市場育成につきましては、枠組み、方法などについての整備はもちろん重要な課題であると考えております。今回我が三党が出しました法案にこれらの問題が入っていないではないかという御指摘でもありますが、これは、既に、あるいは政府提案なり自民党の議員提案ということで法案が提出されておるテーマでもあるわけであります。
これらの点については、別途我々三党の間でも真剣な協議を今やっておりまして、ほぼ調っております。これは、法案審議の過程の中で、あるいはその中で前進であると認められるもの、あるいは、これは問題であると反対しなければならない事柄、あるいは、中には修正を申し入れなければならない事柄、そういった事柄を今整理しておりまして、その審議の過程の中で具体的にあらわしてまいるつもりでおります。
なお、いわゆる土地等の証券化、あるいはその流通市場の形成の問題であります。
これは、むしろ今回のテーマというよりも、既にSPC等の中で前の国会で出てきた問題であります。御指摘の懸念は、アメリカと違って日本の場合かなり市場が異なるではないかというのは、そのとおりでもございます。
それだけに、私どもとしては、いわゆる不良債権の、あるいはそれの担保になった土地の流動化という角度からこのSPCを論ずるというよりも、むしろ、優良物件あるいはプロジェクトファイナンスに切りかえていく、そういう角度の中から市場を育成していくという手法をとるということの方がより望ましいのではないか、そのことを考えております。
基本的に、少なくとも大事なことは、何よりもこれらのスキームがしっかりと機能していくためには、景気回復ということがあって、それが追い風をつくるということが一番大きな背景になるテーマであるということを、最後に重ねて申し上げておきたいと思います。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/22
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023・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/23
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024・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114305254X00819980904/24
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