1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月二十八日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 高鳥 修君
理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君
理事 杉山 憲夫君 理事 虎島 和夫君
理事 山口 俊一君 理事 小林 守君
理事 田中 慶秋君 理事 若松 謙維君
理事 中井 洽君
岩下 栄一君 大石 秀政君
大野 松茂君 金田 英行君
熊谷 市雄君 倉成 正和君
小島 敏男君 河本 三郎君
桜井 郁三君 実川 幸夫君
砂田 圭佑君 園田 修光君
竹本 直一君 谷 洋一君
戸井田 徹君 中野 正志君
萩野 浩基君 牧野 隆守君
松本 和那君 水野 賢一君
宮本 一三君 森 英介君
山本 幸三君 伊藤 忠治君
岩國 哲人君 大畠 章宏君
中川 正春君 中桐 伸五君
平野 博文君 藤田 幸久君
山元 勉君 山本 譲司君
石垣 一夫君 木村 太郎君
佐藤 茂樹君 桝屋 敬悟君
佐々木洋平君 西川太一郎君
西野 陽君 三沢 淳君
吉田 幸弘君 大森 猛君
辻 第一君 春名 直章君
平賀 高成君 松本 善明君
畠山健治郎君 深田 肇君
出席政府委員
内閣審議官
兼中央省庁等改
革推進本部事務
局長 河野 昭君
内閣審議官
兼中央省庁等改
革推進本部事務
局次長 松田 隆利君
自治省行政局長
兼内閣審議官 鈴木 正明君
委員外の出席者
参考人
(地方分権推進
委員会委員長) 諸井 虔君
参考人
(横浜国立大学
経済学部助教授
) 北村 喜宣君
参考人
(西九州大学教
授) 坂田 期雄君
参考人
(専修大学法学
部教授) 白藤 博行君
参考人
(京都大学大学
院法学研究科教
授) 佐藤 幸治君
参考人
(法政大学法学
部教授) 五十嵐敬喜君
参考人
(構想日本代表
)
(慶應義塾大学
総合政策学部教
授) 加藤 秀樹君
参考人
(国民医療研究
所所長)
(元大阪大学医
学部助教授) 野村 拓君
衆議院調査局第
三特別調査室長 鈴木 明夫君
委員の異動
五月二十八日
辞任 補欠選任
小野寺五典君 萩野 浩基君
大野 松茂君 小島 敏男君
熊谷 市雄君 桜井 郁三君
宮島 大典君 竹本 直一君
伊藤 忠治君 山元 勉君
中桐 伸五君 大畠 章宏君
並木 正芳君 木村 太郎君
小池百合子君 西野 陽君
西川太一郎君 吉田 幸弘君
春名 直章君 辻 第一君
平賀 高成君 大森 猛君
同日
辞任 補欠選任
小島 敏男君 大野 松茂君
桜井 郁三君 園田 修光君
竹本 直一君 大石 秀政君
萩野 浩基君 小野寺五典君
大畠 章宏君 中桐 伸五君
山元 勉君 伊藤 忠治君
木村 太郎君 並木 正芳君
西野 陽君 佐々木洋平君
吉田 幸弘君 西川太一郎君
大森 猛君 平賀 高成君
辻 第一君 春名 直章君
同日
辞任 補欠選任
大石 秀政君 宮島 大典君
園田 修光君 熊谷 市雄君
佐々木洋平君 小池百合子君
本日の会議に付した案件
公聴会開会承認要求に関する件
委員派遣承認申請に関する件
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第九一号)
内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出第九六号)
内閣府設置法案(内閣提出第九七号)
国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)
総務省設置法案(内閣提出第九九号)
郵政事業庁設置法案(内閣提出第一〇〇号)
法務省設置法案(内閣提出第一〇一号)
外務省設置法案(内閣提出第一〇二号)
財務省設置法案(内閣提出第一〇三号)
文部科学省設置法案(内閣提出第一〇四号)
厚生労働省設置法案(内閣提出第一〇五号)
農林水産省設置法案(内閣提出第一〇六号)
経済産業省設置法案(内閣提出第一〇七号)
国土交通省設置法案(内閣提出第一〇八号)
環境省設置法案(内閣提出第一〇九号)
中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一〇号)
独立行政法人通則法案(内閣提出第一一一号)
独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一一二号)
午前九時開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/0
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001・高鳥修
○高鳥委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案並びに内閣法の一部を改正する法律案、内閣府設置法案、国家行政組織法の一部を改正する法律案、総務省設置法案、郵政事業庁設置法案、法務省設置法案、外務省設置法案、財務省設置法案、文部科学省設置法案、厚生労働省設置法案、農林水産省設置法案、経済産業省設置法案、国土交通省設置法案、環境省設置法案、中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律案、独立行政法人通則法案及び独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案審査のため、参考人として地方分権推進委員会委員長諸井虔君、横浜国立大学経済学部助教授北村喜宣君、西九州大学教授坂田期雄君及び専修大学法学部教授白藤博行君に御出席いただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序でありますが、まず、各参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に、各委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
それでは、諸井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/1
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002・諸井虔
○諸井参考人 地方分権推進委員会委員長の諸井でございます。
議員各位には、常日ごろから地方分権の推進につきまして格別の御支援を賜り、まことにありがとうございます。また、本日は、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案、すなわち地方分権推進一括法案の国会における審議に当たりまして、陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、私の方から、地方分権推進委員会のこれまでの活動及び勧告の基本的な考え方について御説明するとともに、あわせて地方分権推進一括法案についての評価を述べ、最後に若干の要望をさせていただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
地方分権推進委員会は、地方分権推進法に基づき、政府による地方分権推進計画作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する機関として、また、この地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視する機関として、平成七年七月三日に発足いたしました。我々に与えられた責務を果たすべく、今日に至るまで、延べ五百回にも及ぶ委員会、部会及び検討グループの会議を開催し、地方公共団体、関係省庁、有識者などからの意見聴取も進めつつ、精力的にかつ慎重に調査審議を重ねてきたところであります。
平成八年三月二十九日に中間報告を出した後、同年十二月二十日に第一次勧告を内閣総理大臣に提出し、また、平成九年に入り、七月八日に第二次勧告を、九月二日に第三次勧告を、そして十月九日に第四次勧告を順次提出いたしました。また、昨年十一月十九日には第五次勧告を提出いたしました。
このうち、第一次から第四次までの勧告に対応するものとして、昨年五月二十九日に地方分権推進計画が閣議決定され、この計画の内容を踏まえ、今回御審議いただいております地方分権推進一括法案が取りまとめられたところであります。
なお、第五次勧告につきましても政府において最大限尊重するとされ、第二次地方分権推進計画が去る三月二十六日に閣議決定されたところであります。
それでは、第一次から第四次までの勧告に当たっての基本的な考え方とそのアウトラインを述べさせていただきます。
地方分権推進委員会は、中間報告において、地方分権は、身の回りの課題に関する地域住民の自己決定権の拡充、すなわち、性別、年齢、職業の違いを超えたあらゆる階層の住民の共同参画による民主主義の実現を目指すものであること、また、地方分権の推進は、明治以来続いてきた中央集権型行政システムを変更しようとするものであり、行政改革の推進に当たって規制緩和と並んで車の両輪であり、この双方の推進によって初めて、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革が実現する旨の認識を示しました。
このような認識のもとに、我が国の地方自治の拡充にとっての最大の課題は、国と地方公共団体とを上下・主従の関係に置いてきた中央集権型行政システムを是正し、国と地方公共団体とを対等・協力の新しい関係に転換させることであると判断いたしました。
そこで、まず、この明治以来の我が国の中央集権型行政システムの中核的部分をなしてきた機関委任事務制度と、同制度のもとでの国による包括的かつ権力的な指揮監督を廃止することを勧告したところであります。
これに伴い、自治事務及び法定受託事務という新たな事務区分を設けるとともに、従前の機関委任事務について、事務自体を廃止するもの及び国の直接執行とするものを除き、原則自治事務、例外法定受託事務とする方針で整理をいたしました。
なお、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度を廃止することとし、これまで地方事務官が従事することとされていた社会保険関係事務及び職業安定関係事務は、国の直接執行とすることを勧告いたしました。
また、国と地方の新しい関係を確立するため、地方公共団体に対する国の関与について、法定主義の原則、一般法主義の原則及び公正、透明の原則に立つべきことを明らかにするとともに、自治事務と法定受託事務の区分に応じて国が行うことができる関与の基本類型とその手続等を示し、あわせて国と地方公共団体との間の係争処理の仕組みを創設すべきことを勧告いたしております。
権限移譲につきましては、国から地方公共団体へ移譲すべきもの、そして、基礎的な地方公共団体である市町村に対して、その規模などに応じて移譲すべきものを具体的に示すほか、地方公共団体の自主組織権を制約している必置規制についても、その見直しの考え方を整理するとともに、廃止または緩和すべきものを個別具体に示したところであります。
こうした機関委任事務の廃止等と並んで、国と地方公共団体の財政関係につきましても、地方公共団体の自主性、自立性を高める観点から基本的な見直しを行う必要があることを踏まえ、国庫補助負担金の整理合理化、存続する国庫補助負担金の運用、関与の改革、地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保の三つを柱として、改革案を取りまとめました。
さらに、都道府県と市町村についても、国と地方との関係と同じく、対等・協力の新しい関係が築かれるよう、都道府県、市町村間の事務の配分の考え方や、市町村に対する都道府県及び国の関与の考え方等を整理するとともに、地方分権の担い手となる地方公共団体の行政体制の整備、確立を図るため、地方公共団体における行政改革、市町村の自主的合併や広域行政の推進、地方議会の活性化等について、具体的方策を取りまとめたところであります。
地方分権推進委員会としては、こうした勧告により、地方分権を推進し、国と地方公共団体との間の新たな関係を確立するための確固たる道筋を示すことができたものと考えております。そして、国と地方公共団体の双方が、新たな枠組みのもとで対等・協力の関係を築き上げる努力を続けることにより、我が国の行政のあり方は大きく変わるものと信じております。
政府における地方分権推進計画及び地方分権推進一括法案の作成に当たっては、地方分権推進委員会として、勧告の提出と並んで重要な任務である監視活動の一環として、政府の検討状況を聴取しつつ、意見交換を行ってきたところであります。
政府においてはこれに誠実に対応していただいたところであり、また、その計画及び法律案の内容も地方分権推進委員会の勧告の趣旨に沿ったものと評価しております。膨大な計画及び法律案の作成に当たられてきた関係者の努力を多とするものであります。
平成五年六月に衆参両院において、二十一世紀に向けた時代にふさわしい地方自治を確立するため、地方分権を積極的に推進し、抜本的な施策を総力を挙げて断行していくべきことを決議されて、ちょうど六年が経過いたしました。この間の地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の数次にわたる勧告の内閣総理大臣への提出、政府における地方分権推進計画の作成を経て、こうした一連の取り組みが地方分権推進一括法案という具体的な法律案として結実をし、今まさに国会の審議にゆだねられているところであります。
明治以来続いてきた我が国の中央集権型行政システムの変革は世紀転換期の大事業であり、一朝一夕に達成することは困難と言わざるを得ません。こうしたシステムは、国、地方の政治、行政の隅々にまで広く根を張り、関係者の心の底まで深く浸透しているからであります。
真の意味での分権型社会を確立していくためには、地方分権推進委員会の勧告において示された各般の措置が着実に実施に移され、分権型社会の実現に向けた地歩を確固たるものにしていくことが必要であると考えております。
また、今回の法律案が成立した後、国及び地方公共団体において、法施行に向けて関係の政省令や条例の整備などに万全を尽くされることが不可欠であります。
地方分権推進一括法案が、国会において、地方分権推進の観点から審議を尽くされた上で、一日も早く成立させていただくようにお願いしたいと思います。そして、自己決定と自己責任の原則に基づく分権型社会の構築が速やかに図られていくよう念願してやみません。
以上で私の陳述を終わらせていただきますが、地方分権推進委員会といたしましても、残された期間において、与えられた任務の遂行に全力を傾注していく所存でございます。私どもの活動に対しまして、引き続き議員各位の御理解と御支援を切にお願いする次第であります。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/2
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003・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、北村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/3
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004・北村喜宣
○北村参考人 おはようございます。横浜国立大学の北村でございます。
主として行政法学の観点から意見陳述をさせていただきたいというふうに考えております。
まず、長年の懸案でございました地方分権を本格的に実施するための立法がされようとしていることは、まことに望ましいことであるというふうに考えます。
法律案を御審議、議決されるのは国会でございますが、無定量な立法裁量があるわけではないというふうに考えております。とりわけ、地方分権推進法の精神に即した形での法律改正、一括法案の審議でなければならないというのは、申すまでもないことでございます。
一括法案は内閣提出法案ということになっておりますけれども、閣議決定された地方分権推進計画、これは内閣に対しまして拘束力があるわけでございまして、それを十分に踏まえた法案になっているかというのが、ここでの審議の重要なポイントであろうというふうに考えております。すなわち、法案審議に当たられましては、自治体の自主性あるいは自立性を高めるというふうなことを申しております地方分権推進法の二条の基本理念を踏まえたものになっているかということがチェックされるべきであるというふうに考えます。
地方分権推進法及び地方分権推進計画におきましては、実は憲法の九十四条に規定されております地方自治というような言葉が十分には出てきておらないわけでございますが、これは単なる地方分権というわけではなくて、憲法で保障されております地方分権、地方自治の本格的な実現のための法案審議であるというふうな御認識が必要であろうというふうに考えるわけでございます。
また、本委員会の審議が国民注視のもとで、徹底した法案審議がされるというふうな観点からは、恐らくは作成されているはずの想定問答集等は一般に開示されることが必要であろうというふうに考えます。
以下、数点にわたって意見を申し述べたいと思います。
まず、立法、解釈の基本理念でございます。
改正地方自治法案の二条の十一項から十三項までが、立法及び解釈の基本理念を規定しているところでございます。非常に重要な規定でございまして、重要なものにはそれ相応の場所というのを与えるべきであろうというふうに考えます。二条の中に埋もれてしまうのではなくて、より早い一条の三あたりに起こして、重要なものはその場所に位置づけるということが必要かと存じます。
と申しますのは、こうした方針は、今国会だけではなくて、自後の国会の立法の指針ともなるべきものでございますから、目立つ形での整理がよろしいのではなかろうかというふうに思います。
恐らく、政府提案の法律でございますから、独特の立法の作法というのがあってこういうところに入ったのだというふうに考えますが、この点は政治の立場から、国民にわかりやすい法律という観点から御審議いただければというふうに考えるわけでございます。
次に、法定受託事務のメルクマールでございます。
当初はかなり限定されていた内容の法定受託事務が、折衝経過で拡大したというのは周知のとおりでございます。改正地方自治法案ではかなり包括的な定義がされておりますけれども、今後制定される法律も、実質的にはそうした定義に従って分けられるわけでございます。
より具体的には、地方分権推進計画の中にあります八つのメルクマールというのが恐らくは基準になるでしょう。しかし、それはあくまで行政の立場ということからのものでございましたから、今後とも基準として十分機能するようなものにする必要がありましょうし、そうした重要な基準は、ぜひとも法律レベルで御対応されることが必要ではないかというふうに考えます。
とりわけ、今後の立法の中で、法定受託事務の範囲が不要に拡大するのではないかというふうな懸念がございますが、そうしたことがなされないような、法定受託事務が乱造されないような歯どめというのが法律の中に必要であろうと考えます。
法定受託事務に関しましては、国家賠償の対象になるかならないかという議論がございます。すなわち、機関委任事務の場合には、自治体が具体的な違法行為があった場合でも、国も責任を負うということになっておりましたが、これが、法定受託事務は自治体の事務でございますが、その場合に国が責任を負うかどうかというのは、実はよくわからないところがございます。国がかなり強烈な関与をいたします、処理基準などもつくります、そうして関与した結果、自治体だけが責任を負うというのではかなりおかしいわけでございまして、この点も審議の中で十分に明らかにされるべきであろうというふうに考えております。
次は、自治体の政策裁量でございます。
全国的な画一性をある程度犠牲にしても多様な地方の存在を認めるというのが地方分権の趣旨でございます。これまでよりも自治体の裁量がふえるということになりますことから、法律に基づきます国の権限はかなり我慢をしてもらうというふうなものでなければならないというふうに考えます。
こうした自治体の政策実現の方法は条例でございます。これは、行政手続の透明性、公平性といった観点からも、要綱ではなくて条例で対応するということが求められるわけでございます。
この点、改正自治法案が、法定受託事務につきましては、法律や政令で明示的な根拠がない限りは条例は一切制定できないというふうなことを意味しているのであれば、過度に制約的な考え方であるというふうに思います。基本理念的な性格を有します一条の二や二条の関係条文に照らしても、問題があろうかというふうに考えております。九十六条の二項というところの括弧書きに、法定受託事務を除くとありますが、この辺の点もよくわからないところでございます。
ただ、過日、自治大臣の方から、明示的な規定がなくても法定受託事務に関しては条例は可能だという御答弁があったようでございまして、その点に関する懸念は一応は払拭されたのかなというふうに考えております。
自治体の裁量が大きいとされます自治事務に関します条例も、法律には違反できません。しかし、その第一次的な判断権はあくまで自治体の側にあるということでございます。個別改正法もございますが、その許可基準なども従来と同じなのでは分権の意味がないわけでございます。法律では基本的事項を指示するにとどめまして、条例の余地を拡大すべきであろうと思われます。法定するといたしましても、自治体独自の御判断で追加、削除ができることを確認的に法律の中で書くということがよろしかろうと思います。
実は、自治体の担当者と話をいたしますと、条例がどこまでできて、どこまではできないのかということに関しておっかなびっくりであるのが現状でございまして、この点について、国の方であるいは国会の方で、これはできる、できないということを明示的におっしゃることが非常に重要であろうというふうに考えております。
自治事務に関する国の関与でございます。
国が是正要求をするのは勝手でございますが、それに従うべき事実上の義務があるというふうに明示的に法律改正案では書いてございますが、行き過ぎであるような気がいたしまして、分権の精神に反するのではないかというふうに考えております。基本的に、自治事務である以上は、それを違法と考える市民と自治体の間の問題であろうかと思います。
たとえこうしたことを規定する必要があるといたしましても、その要件はより厳格に考えられなければならないわけでございます。改正自治法案の二百四十五条の五第一項の要件が「明らかに公益を害していると認めるとき」というふうに書いてございますが、恐らくはより厳格に、国益の侵害が明らかで、それが看過できないほどに著しいと認められるときというような、より絞った書き方がバランスの点から申しましてよろしいのではないかというふうに考えております。
どのように分権を進めるのかよくわからない自治体も実は多うございます。国への照会も恐らくは多いのではないかというふうに予想されます。しかし、それに応じて度を過ぎた助言というものをすれば、結果として合法的な中央統制がされてしまうということになるわけでございます。
したがいまして、改正法案のどこかに、国の関与に当たって、自治事務に関しては特に抑制的であるべきというふうな確認的な規定を明示的に規定することが、自治体の側から見ましても非常に安心できることではないかというふうに考えておる次第でございます。
以上をもちまして、私の意見陳述にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/4
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005・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、坂田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/5
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006・坂田期雄
○坂田参考人 私は、西九州大学の坂田でございます。
きょうは、この法案につきまして、これは大変な御苦労をされました法律案でございますので、ぜひこの国会で一日も早く成立されることを私も研究者の一員としてお願いいたすと同時に、残されている課題も非常に多いので、三点ほど課題を申し上げてみたいと思うわけでございます。
まず、この法律案でございますが、法令、制度面については今回のこの改正は非常に大きく進んだと言えるのではなかろうか。特に、機関委任事務というものにつきましては、先ほど来お話もございましたが、明治以来、あるいは戦後を通しまして、日本の国と地方との関係を制度的に縛る大きなものであったわけですが、これが取っ払われた。多くの人が機関委任事務の廃止なんてとてもできないのではなかろうかと思っておったわけでございますが、それが見事に実現をした。非常にまさに画期的なものと言えるのではないかと思うわけでございます。
現在、国と地方との関係は、機関委任事務という中に、府県の事務は七、八割が入っている。市町村の事務は四割が入っている。この中へ入ってしまうと、もう自治体は自由に何もできない。みずから考えみずから行うといっても、全部一から十まで国の指示に従って行う。今回この枠が取り外される、そういう意味では大変、戦後の大きな大改革と言えるのではないかと思うわけでございます。
もちろん、内容的に見ました場合には、法定受託事務と自治事務とにされた自治事務が何か六割ぐらいで、もっと、最初、八割ぐらいあるのではないかと思われたので、大分後退したではないかとか、あるいは自治事務にも事前協議が必要だとか、あるいは中央省庁の合意が必要であるというような条件が付されて、これでは機関委任事務と余り変わらないのではないかというような批判とかいう点もあるかと思いますが、それにいたしましても大変な反対、抵抗の中をここまで仕上げてきたものでございまして、これは地方分権のまず第一歩と言えるのではないか。ぜひ、国会で一日も早く成立されることを心からお願い申し上げたいと思うわけでございます。
ところで、では、これが通れば日本の地方分権は急速に進むのかといいますと、私は余り変わらないのではなかろうかと思うわけでございます。
といいますのは、現在、国と地方との関係は、法令、制度面で縛られていると同時に、もう一つ、何千何百という国庫補助金で縛られているわけでございます。それで、地方自治体というのは、やはり国庫補助金というのは配分の基準が全然決められていない、不明確。だれが決めるか。これは中央省庁の担当官のさじかげんで決める。これが大きな権力のもとになるわけでございます。国と地方とは上下・主従の関係と言われますが、上下・主従の関係を生じているのはこの国庫補助金でございます。
したがいまして、国庫補助金にメスを入れないと、現在、地方自治体の、大体、日常の多くの仕事の隅々まで国庫補助金が入っておりまして、国が地方を支配といいますか、指示、監督するような形になっているわけであります。したがって、将来、国から地方に税源を移譲して、国庫補助金を廃止する、そういう大改革が行われて初めて今回の機関委任事務の廃止というか法令、制度面の改革は生きてくる。
そういう意味で、法令、制度と国庫補助金の面の改革、両々相まちますように、今後、国会の場におきましても大きな改革を心からお願いいたしたいと思うわけでもございます。
何か、先般来、ちょっといろいろな御議論を見ていますと、機関委任事務の廃止と、財源面のことも考えなくてはいけないという意味のことも言われておるようでありますが、単に財源を考えるというのではなくて、国庫補助金というシステムをできるだけ縮小してなくすということこそが絶対に必要なのではないかというふうに思うわけでございます。これは一挙にできないかと思うのでございますが、心からこれをお願いしたいと思うわけでございます。
今後の課題の二番目といたしましては、今回の地方分権推進に当たりまして、受け手である市町村や住民がほとんど盛り上がっていない、住民はほとんど無関心である。こういう状況ではどうも地方分権は本格的に進まないのではなかろうかと思うわけでございます。
それで、なぜ市町村が盛り上がらなかったのか。これは、実は地方分権推進委員会が始まる前の段階で枠がはめられまして、これから地方分権の検討をするに当たって、国からまず府県に分権を図るので、市町村はまだ能力がないから今回は表に余り出さないで、将来の段階で今度は市町村、今回の主役は府県だ、そういうことに何かおぜん立てされたようでございます。したがって、市町村が主役からちょっと外された関係になって、やや市町村が白けたのではないか。
もう一つは、分権推進委員会が始まる前の段階で、今回は、現在の府県と市町村というこの枠組みは変えないんだ、これを前提にするんだということで始められたようでございます。つまり、地方分権の議論を進めていきますと、市町村をもっとしっかり大きくしていけば、府県は将来もっと、道州制とかいろいろな議論が出てくるわけでございますが、そういう議論に入ってはいかぬというようなことで始められた。
したがって、国民の側から見ていたら、何か国と県との間の権限争いぐらいにしか見えない、全然おもしろくないというか、そういうことで、今回、住民も全然無関心になってしまっているのではないかと思うわけであります。
そこで、今後でございますが、地方分権というのは、やはり住民に一番身近な市町村に権限とか財源を与えて、そして、ここが中心になって住民との間でサービスと負担のシステムをこしらえて、住民がチェックする、こういう地方分権のシステム。現在、市町村はまだ小さい、能力がないというのはありますが、それは順次、準備ができたところから市町村におろしていけばいい。そういう意味において、地方分権という全体像をぜひ国民に示す必要があるのではなかろうか。
それから、住民から見ました場合に、地方分権はどうも目に見えない。地方分権の推進委員の先生も、地方分権というのは何かUFOのようなものだ、声はすれども姿は見えずなんと言っていましたが、これではやはり住民が本当にわからない。地方分権になったらどういうふうに地方がよくなるのか、住民の生活はどう便利になるのか。そういう地方の現場に立って、住民の生活の面に立って地方分権がもう少し検討されますようにということが、私ども、地方分権といいますか、地方自治の研究者の責任でもあるのですが、考えていかなければ、本格的な地方分権は進まないのじゃなかろうか。私なんかの反省も含めまして、そういうふうに感ずるわけでございます。
それから、三番目でございますが、地方分権を本当に進めますには、委員会とか審議会の勧告、報告だけではなかなか進まない。やはり最後は、ここは国会の場でございますが、政治の強いリーダーシップが絶対必要じゃないかと思うわけでございます。
地方分権は、総論は皆さん賛成ですが、各論になるといろいろな反対や抵抗が出てまいりますし、中央省庁、中央官僚も抑えなくてはならない。そういう意味において、今度のいろいろな経過を見ましても、第二次勧告あるいは第五次勧告の場合、大したことでないときには余り反対は出ないのですが、重要なところへ入ってまいりますと、中央省庁あるいは関係の議員さんも一緒になって、強い力になって抵抗、反対する。
そういう意味において、やはり最後は、この反対、抵抗を抑えて地方に権限とか財源を与えるという強い政治のリーダーシップ、そしてそのためには、地方の住民が立ち上がって、地方からもこれをバックアップする政治の風を起こす。そのためにも、これからの地方分権の議論は市町村とか住民に視点を置いていろいろ進めるように、またそういう御指導を賜りますように、地方分権というのは、中央発だけじゃなくて、地方発あるいは市町村発、住民発という関係になって、地方が自分たちのものとして立ち上がっていくことが必要なんじゃないか。そういうふうに思って、これからそういう本格的な地方分権が進められますことを心から期待いたしております。どうぞよろしく御指導お願いいたしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/6
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007・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、白藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/7
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008・白藤博行
○白藤参考人 専修大学の白藤です。よろしくお願いします。
本来、地方分権を考える場合には、憲法が保障しているところの地方自治から、それがいかがなものかということを検討すべきではあると思うのですが、先ほど諸井参考人がおっしゃいましたように、この間、地方分権推進委員会が中心になって、さまざまな分権への努力をされてこられました。したがって、差し当たり、きょうの陳述は、地方分権推進委員会の勧告からあるいは推進計画から、どれだけ改正法案に問題があるのかということについてお話を申し上げたいと思います。
地方分権推進委員会はさまざまな課題を持っていたわけですが、そのうち、特に国の関与の縮減というところに最終的な最も重要な目的を置かれたと考えます。象徴的に機関委任事務の廃止ということに努力され、先ほど来他の参考人がおっしゃっておられるように、その廃止にこぎつけたということだと思います。したがって、それによって本来の目的である国の関与の縮減がどれだけ果たされたか、そして、国と地方公共団体が、上下・主従の関係であったということから、対等・協力の関係に本当になるのかどうかという観点から意見を述べたいと思います。
皆様方は既に地方自治法改正案を熟読しておられると存じますので、逐条的にお話を申し上げたいと思います。
まず、第一条の二の国と地方公共団体との役割分担にかかわってでございます。これは、地方分権推進法第四条をこのような形で書きかえたものだと了解しております。
地方分権推進法四条にはこのように書いてあります。
地方分権の推進は、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体においては住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理するとの観点から地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきことを旨として、行われるものとする。
ほとんどが改正法案の中に具体化されているというふうに一見すると見えるのですが、お気づきの方は既にお気づきだと思いますが、一つは、「できる限り」という文言が挿入されることによって、本来の地方分権推進法の第四条とは、少しやわらかなあるいは緩和された形になっているということ。
それからもう一つは、住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体にゆだねるというふうな趣旨が分権推進法だったわけですが、改正法案の中では、「住民に身近な地方公共団体」の方の「住民に身近な」は取られております。これは、シャウプ勧告以来、住民に身近な地方公共団体から事務を配分するという市町村優先の原則等に配慮をいたさない形での改正案かなというふうに思われます。
それから第二点なんですが、法定受託事務の定義に関してです。
御承知のように、法定受託事務に関しては、さまざまな定義の変遷を経て、結局、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」というふうになりました。
さまざまな御議論は承知いたしますが、この条文を見て直ちに思われるのは、これまでの中間報告から第四次勧告に至るまで、一貫して、国民の利便性等を配慮して法定受託事務の定義がなされていたのに比べますと、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」というだけの表現では、国が自由に法定受託事務を定められるというような印象を受けるものになってしまっていると思います。
それから第三点、条例制定権に関しては、北村参考人の方から御意見がありました。ほとんど意見を同じくするものですが、条例制定権が法定受託事務に関しても可能になったということは高く評価いたします。
問題は、これは行政法学にも大きな課題として残るわけですが、法令の範囲内においてという、法令と条例との関係論になるかと思います。望むらくは、条例制定を禁じていない限り、条例制定を広く認めるというような法の解釈が可能であればなというふうに考えます。
それから第四点目なんですが、国の関与にかかわってです。諸井参考人もおっしゃいましたように、関与の法定主義、関与の一般法主義ということがうたわれ、それが実現すればそれにこしたことはないというふうに考えます。
御承知のように、これも、自治事務に関してはあるいは法定受託事務に関しては、それぞれ関与の基本類型が定められ、それを基本として、法律またはこれに基づく政令に従って関与を行うというふうになったということですが、例えば自治事務の関与に関して考えてみますと、関与の基本類型は、助言または勧告、資料の提出の要求、協議及び是正の要求というふうになっております。
しかし、条文をつぶさに見てまいりますと、二百四十五条の三第二項におきましては、自治事務に関しても代執行が許される規定になっております。二百四十五条の三第六項におきましては、緊急の場合ではあれ、指示が行われることになっております。あるいは同条五項においては、許可、認可、承認といった典型的な権力的関与も場合によっては可能であるような表現になっております。
あるいは、都市計画法等をごらんになったら直ちにわかるのですが、これまで許可、認可、承認等が必要であったところを協議にする、自治事務にしながら協議にするということが言われたわけですが、法文上、見てみますと、協議した上で同意を求めるものとすると。すなわち、いわゆる同意を要する協議ということになっておって、結局、権力的関与と少しも変わらないような関与が残ってしまっているということが問題であろうかと思います。
それから、自治事務に関しての最大の問題は、是正の要求の点だろうと思います。是正の要求という関与が法化されたことだろうと思います。
皆さんごらんになるとよくわかると思うのですが、法案の中には、是正の勧告、是正の要求、是正の指示というふうに、一見すると、一般の人々だとわかりにくい言葉が並んでおって、その定義らしきところもほとんど同じ文言が連なっております。違いは、是正の勧告は「措置を講ずべきことを勧告することができる。」となっているのに対して、是正の要求は「講ずべきことを求めることができる。」あるいは、是正の指示は「必要な指示をすることができる。」となっていることぐらいです。
これまで是正の要求というのは、現行地方自治法の二百四十六条の二、内閣総理大臣の措置要求に範をとったものとされ、説明としては、非権力的な関与の一態様だというふうに説明されてきたんですが、この点も、是正措置義務を規定するとか、あるいは係争処理の手続の中で違法な是正の要求に対しては国地方係争処理委員会に対する審査の申し出をすることができる、かつ、その係争処理委員会の勧告に対して不服があるならばさらに裁判所に出訴することができるという仕組みができました。
これ自体は、公正なあるいは透明な関与に対する客観的な判断を可能にする制度でありますから、それに関して歓迎するところでありますが、実は、非権力的な関与である是正の要求であれば、地方公共団体は、みずからがそれに従わないという見解をとるならば従わないだけで済むはずなんですが、実は、先ほどの是正措置義務規定とともに、こういった係争処理の仕組みができることによって、かえって手続的な権力性、あるいは訴訟法的な権力性というふうに行政法では言うと思うんですが、そういった権力性が付与されることになりました。したがって、是正の要求は、全体の仕組みから見ると権力的関与ということにならざるを得ない。こういうふうな形で、自治事務に関しての重要な関与の一類型であります是正の要求が権力的な関与になっているということです。
しかも、内閣総理大臣の措置要求はまさに内閣総理大臣だけであったわけですが、今回の法案では「各大臣は、」ということになっております。しかも、もう一つ、その対象は何たるやということなんですが、それは「その担任する事務に関し、」というふうに書かれ、是正の指示等、法定受託事務に関しては法令所管大臣を意味するような書き方になっているのに対して、必ずしも法律を所管する大臣、法令所管大臣を意味しないかのような表現になっているところも気にかかるところです。
もう一つ、関与に関して、国の直接執行という点なんですが、二百五十条の六です。昨日も建設大臣が建築基準法に関して御答弁されたというのをちらっときょうの朝、新聞で拝見したんですが、国の直接執行というのは、いわゆるダブルトラックと言われるものなんです。例えば、大臣と知事が同じ内容の事務、権限を付与され、どちらが執行してもいいというようなものなわけですが、例えば建築基準法の十七条を見ますと、「国の利害に重大な関係がある建築物に関し必要があると認めるとき」に指示ができたり、あるいは直接執行ができるふうになっております。これを、きのう、防衛施設とかあるいは原発を想定しているというふうに建設大臣がおっしゃったわけですね。
もう一つ、同条文には、「多数の者の生命又は身体に重大な危害が発生するおそれがあると認めるとき」も指示ができるふうになっております。それは結構なことだと思うんですが、こちらの方にはなぜか直接執行の条文がついておりません。
つまり、これをあわせて普通に読めば、多数の者の生命または身体に重大な危害が発生するおそれがあるときは、知事なりあるいは建築主事なりに指示をして、指示どまりであるのに対して、国の利害に重大な関係がある建築物に関し必要があると認めるときは、直接執行までいく。憲法が定めるところの価値序列からしますと、逆転現象が起きているんではないかと、うがった見方かわかりませんが感じてしまいます。
水道法四十条にも同じような規定があり、あるいは都市計画法、土地区画整理法等々、国に重大な利害が関係あるとか、重大な関係がある事項に関しては国の直接執行が認められるというふうな規定が多々見られます。
それからもう一つ、国の直接執行は、地方分権推進計画におきましても、自治事務に関してというふうに明示されております。しかしながら、例えば自衛隊法の百三条を見てみますと、そこには自衛隊の防衛出動の際の知事の物資の収用等の事務が書かれております。今回の改正法案で、これは法定受託事務に改正されます。法定受託事務に関してということになるわけですが、したがって、同条文では、この事務を知事が執行しない場合には、防衛庁長官及び政令で定める者が直接執行を行うことになっております。すなわち、法定受託事務に関しても国の直接執行が可能になるというふうな仕組みが自衛隊法百三条の中には入っているということになりそうです。
こういった形で、国の直接執行というのが国の関与の縮減との関係でいかがなものかということは、もう少し議論が必要なのではないかというふうに思われます。
最後に、国と地方公共団体との間の紛争処理に関してなんですが、国地方係争処理委員会による審査の申し出の審査及び裁判所への出訴が可能になったことは、先ほど申し上げましたように評価したいと思います。ただ、国地方係争処理委員会への審査の申し出前置主義がとられたことは残念です。審査の申し出をするか直接裁判所に行くかは、地方公共団体の自己決定権にゆだねるべきではないでしょうか。あるいは、訴訟の対象を少し見てみますと、例えば同意を要する協議というのは、一体、同意なのか協議なのか、係争処理のときに迷うことだろうと思います。
それからもう一つ、専門的になって恐縮なんですが、今回の係争処理システムは機関訴訟と言われる係争の仕組みになるわけですが、機関訴訟の仕組みが法定されることによって、地方公共団体が自治権を侵害されたがゆえに主観訴訟として抗告訴訟等を起こすような機会が奪われるのではないかというふうに懸念いたします。そういった点をいましばらく国会の審議で慎重審議していただければありがたいと思います。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/8
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009・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/9
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010・高鳥修
○高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。砂田圭佑君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/10
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011・砂田圭佑
○砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。
本日は、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中わざわざ御出席を賜りまして、ありがとうございます。心から御礼申し上げる次第でございます。
殊のほか、地方分権推進委員会の委員長をお務めいただきました諸井先生には、長年にわたって大変な御苦労をいただきました。五次にわたるまでの勧告をいただきましたこと、その御努力、御労苦に心から敬意を表するものでございます。ありがとうございます。
近年、我々の議論の中では、理念というのがいささか置き去りにされて、ついつい技術的な、対症療法的なことが議論になってしまうわけでありますけれども、何と申しましても、政治の場では、政治に対する一つの理念、それを尺度として議論がなされるべきでありますし、また、議論の決着は、理念に基づいてその結論が出なければならないと思います。そういう意味で、今のような時代に、新しい大改革が行われるこの時代、やはり共通した理念というのが強く求められるんではないかという気がいたします。
当委員会の初日の冒頭で、我が党の伊吹先生は、持ち時間の半分を費やして、理念について、これからの政治のあるべき姿というものについて述べられ、また、総理は、富国有徳論をキーワードとして、これからの日本の方向を語られたわけでございます。私たち政治の場にある者は、そういう理念の議論がされることは、これから非常に大事なことではないかというふうに考えているわけでございます。
そのような意味からも、今回の地方分権について、理念の面から、今この地方分権がなぜ必要なのか、そして地方分権の基本的な理念、いろいろ既にお述べをいただきましたけれども、その必要性についてもぜひ諸井参考人からお伺いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/11
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012・諸井虔
○諸井参考人 私ども地方分権推進委員会がスタートいたしまして、最初半年ぐらいは七人の委員で熱心にその問題について議論をいたしました。
日本が戦後、瓦れきの中からスタートをして、結局先進国の域に達するまで発展をしてきたわけでありますが、その間にナショナルミニマムが整備をされていったということでございます。その過程では、やはり中央集権で行政主導で、広域的かつ効率的に行政が行われることが正しかったのではないかと思います。
しかし、その段階に達した後は、やはり住民の行政に対するニーズはいろいろ多様なものが出てくるわけでありまして、それまでのように経済一辺倒というわけにはいかないわけでございます。また、地域によって非常に状況が違うわけでございます。そういう状況の違う、ニーズの違う地域に対して画一的な行政を行うということは、決してニーズに合うものではないし、また非常に効率性も損なうことになるのではないか。
そこで、この段階からは、やはり地方において住民が優先順位を選択するというふうな形で身の回りのことが決定されるという方向に行くべきではないか。国は、国際関係にしてもあるいはマクロの運営にしても、極めて重大な課題を抱えるわけでございますから、そういうことに集中していくべきではないか。その辺はやはり一番基本の理念として考えたところでございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/12
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013・砂田圭佑
○砂田委員 ありがとうございます。
当委員会の議論を通じても、あるいは我々が選挙区で聞く状況の中でも、地方自治体あるいは国、国民から見てその明確な区別がありません。すべて、公といえば、市であり県であり国であって、それは一つに認識されているわけでございます。しかも、戦後五十年の間に何となく、国は敵ではないかというような、我々が集まってできた国であるにもかかわりませず、どうも国という存在は何か我々に対して敵対心を持っていて、ほっておくと自由も奪われてしまいそうな、そんな目でずっと見てこられた、そういう流れがあるんじゃないかという気がいたします。
地方分権は、決して国と地方がけんかをして、あるいは権限を争うというような性質のものじゃなくて、どうすれば国民のために行政サービスが十分徹底できるのか。もちろん、法的な細々したところでいろいろなセーフティーネットをかけておかなければなりませんでしょうけれども、国民から見て、この行政改革がどんなふうに住民のサービスの向上につながっていくものなのか、地方分権の推進が住民にとってはどんなメリットが考えられるのか、ぜひひとつ、委員会を通じて国民の皆さんにわかりやすくお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/13
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014・諸井虔
○諸井参考人 住民の方に地方分権というものが非常にわかりにくい。特にどういうメリットがあるかというのがわかりにくい。この点は確かにおっしゃるとおりだと思うのですね。
住民から見れば、行政の末端が、市町村に権限があろうが県にあろうが国にあろうが、住民の受けるサービスなりあるいはその規制なりというのは同じでございます。私ども、その点を具体的にどう説明したらいいかということをいろいろ考えてまいりました。なかなかうまい説明ができないわけでございます。例えば農地転用が、権限が移りましたよ、じゃ、それはどうなんだというふうな形になって。
ただ、私どもは、一番考えましたのは、さっき申し上げたような理念に沿っていくと、やはり身の回りのことというのはできるだけ住民の方、その地域の住民の多数の方の意向に沿って行われるべきものじゃないか。そうするためには、やはり権限が地方の自治体におりていないといけないのではないのか。おりておれば、そこに住民が参加をし、あるいは協力をし、あるいは監視をして、その地域の住民の方の意向に沿った形に行政を持っていけるのじゃないか。
ですから、これはこれから実際に法律が施行されて、政省令とか条例とかいろいろなものが変わっていく中で、住民が自治体に押しかけていっていろいろ要求をしたりなんかしていく中で逐次出てくる問題ではないかというふうに考えますので、どうもそこが非常にわかりやすい説明ができないのでまことに申しわけないのですが、私どもはそういうふうに考えている次第でございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/14
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015・砂田圭佑
○砂田委員 諸井先生にして、なかなか国民にわかりにくいという思いでございますから、なおさら国民側から見れば、何のための地方分権かというようなところがわかりにくい状況ではないかという気がいたします。
住民の意向に沿ってというのはごもっともでありますし、民主主義の本来の原点であろうかという気がいたします。しかし、住民の思いにおもねるというような形で進むと、それはそれでまた一つの方向として危険な部分もあるのではないかという気がいたします。それだけに、この法律を実際に施行するときの心構えというのは大変重要な部分があるのではないかという気がいたします。
特に、わかりにくい状況の中で事が進んでいくとすれば、過去の人間の歴史から見ても、権力が集中する、権力が巨大になる、なればなるほど権力者というのはやはりおごりがついて回るのは、過去の歴史上事実ではないかという気がいたします。
地方の公共団体の首長さんがそれぞれ力を持つということが、単なる法律で司直の手で処分のできることはそれでありますけれども、もっと広い意味において人間の自由やそういうものを制約していくというようなことに発展すると、そういう意味では大変恐ろしい部分があるのではないかという気がいたします。
基本的に、知事とか市町村長の自覚、資質の問題ではありますけれども、その抑止力はどんなふうにお考えになっておられるでしょうか。ぜひ諸井先生にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/15
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016・諸井虔
○諸井参考人 そういう御心配があるのは当然ではないかと思います。また、現に恐らくそういう問題があるいはこれから発生する可能性は、私は否定できないのだと思います。
ただ、だからといって中央省庁がすべてを律していく、すべてを指揮監督していくということが正しいかというと、やはりここまで時代が進んでまいりますと、これは中央省庁として、いろいろな個性を持って全国を一律にやっていくことは到底できないわけでございます。やはりどうしても、これは地方に責任を持ってやってもらわなければいかぬ。その場合に、地方というのはやはりそれだけ住民に近いわけでございます。自治体のやる行政というものが住民に直接いろいろな影響を与えていく。
ですから、その住民の方々が、今行われているその地方の地域の身の回りの行政についていろいろな不満がある、いろいろ問題があるというふうに思われると、やはりどんどん出かけていって、いろいろ情報を求めたり、監視をし、あるいは注文をつけていくというような形になりやすいわけでございます。霞が関まで行って注文をつけるというのはなかなか——地元でやることでございます。現に具体的に起こっていることでございます。そういうことが働いてまいりませんと、これは地方自治とか地方分権といっても何の意味もない。ですから、結局最終的に住民の方々がどんどん行政に参加していくという形で、むしろ地方の行政は透明になり公正になり得るのではないかというふうに存じております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/16
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017・砂田圭佑
○砂田委員 まあ、しょせんはそういう立場にある方々の心構えと申しますか基本的な理念と申しますか、そういうことが住民を幸せにも不幸にもするというようなことになろうかという気がいたします。我々は、この法律について、やはり基本的な理念をしっかりと認識した上で運用をしていかなければならないのではないかという思いがいたします。
この委員会でこれまで審議の中でも議論になっていることを幾つか、少し細かい点でお伺いをしたいと思います。
特に、上下関係、主従関係で国の下請ではないかと言われていた地方公共団体に対して、自治事務に対する国の関与あるいは是正の要求というようなことについての必要性、そういう点についてはどんなふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/17
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018・諸井虔
○諸井参考人 先日来も、自治事務に対する国の関与がどうもいろいろな形で許されていて、かえって地方分権に逆行しているのじゃないかというような御議論が行われていることは承知をしております。
しかし、今までは基本的に機関委任事務制度というものによって、地方の自治体が国の機関の下請機関である、国が包括的な指揮監督権限を持っている、いろいろな命令を大臣がどんどん下せるという形になっていた。その基本的な制度をなくしてしまったわけでございます。
ですから、その後、国がやはり、担当する各省庁から見て、これは法令に違反しているのではないか、法令は国会が国全体を治めるためにおつくりになるものでございますから、それに反するのじゃないかというふうに考えた場合に、何ら打つ手がないということでは、これは不十分ということになるのではないか。そういうことが起こらないとは言えないわけでございます。そういう場合の措置というものをやはり幾つか置いておく必要があるのじゃないか。だんだん時間がたって、そういう心配がないのだということになれば、また別かもしれません。
それからもう一つは、今回は、国のそういう是正措置の要求とかいろいろな関与について不満があった場合には、自治体は、従来なかった係争処理委員会というものに持っていくことができるし、またさらに不服があれば裁判に持っていけるという形で、決して唯々諾々とすべて従わなければならぬ、従来の状況とは私は大変違っておるのではないか、こういうふうに認識しております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/18
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019・砂田圭佑
○砂田委員 今の問題について、決して合衆国になっているわけではないのでありますから、それぞれ日本の国家としての体制が当然整わなければなりません。そういう意味で、国が関与をするのは当然のことではないか。その関与の仕方がいろいろ議論されるわけですが、北村先生もその点についてはどんなふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/19
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020・北村喜宣
○北村参考人 関与については、いろいろ御議論があるところでございます。機関委任事務体制というのは五十年ぐらい続いてきておりまして、それを一挙に変えるということになりますと、リハビリテーションには三倍かかると言われますから、なかなか一挙に変わらないということは当然でございます。また、自治事務というふうに自治体の事務ではございますものの、法令所管官庁とございますから、そのお立場からいろいろな意見が出るのは、これも当然であろうかと思います。
問題は、委員御指摘のとおり、程度の問題でございます。関与のスタンスでございます。まさに国におかれましても、そうした地方分権の一連の流れを踏まえられて、温かい関与と申しますか、建設的な関与ということであるべきでございましょうし、瑣末なことをやるお役人的な関与ではなくて、この政治の場の議論あるいは基本理念を十分に踏まえた関与でなければならないということでございます。また、そうしたものを監視するのは、当然国会の役割であろうかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/20
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021・砂田圭佑
○砂田委員 今と同じ質問でありますけれども、坂田参考人にもぜひお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/21
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022・坂田期雄
○坂田参考人 国の関与についてのお話があったわけでございますが、現在の地方自治体の、特に市町村といいますか、実態を見ました場合には、先ほど申しましたように、国庫補助金という金の力ということで、実際に職員は長い間、国から来たマニュアルに従ってやるということになれているというのが実態でございまして、国の関与をはねて、それで自分たちでこうやろうというのは、一部の自治体ではあるのですが、まだまだとても行っていないのじゃないかと思います。
それから、今度の改正によりまして大幅に地方自治体に主体性が認められて、それで、国の関与がどうあるべきかというような議論がここでも行われているわけですが、私は、その議論以前に、まず市町村職員の意識改革が行われて、今回の改正の中で、まず自分たちで考えて自分たちでやろう、そういう芽を出していくということがまず必要なのじゃないかなというふうに思っておるわけです。そういう意味でも、国庫補助金の改革もあわせまして今後期待したい、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/22
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023・砂田圭佑
○砂田委員 ありがとうございます。
続いて、白藤参考人にもぜひその点についてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/23
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024・白藤博行
○白藤参考人 国の関与のあり方に関してなんですが、今回、関与の法定主義というのが強く言われましたが、なぜ関与が法定されなければならないのかというのは、一九九六年の十二月六日に内閣法制局長官の大森さんが言っておられますが、憲法六十五条の「行政権は、内閣に属する。」という解釈において、その行政権は地方公共団体の行政執行権を除いたそれだというふうに言っておられるわけですね。そうすると、国が地方公共団体に何らかの関与をする場合は、それなりのきちんとした法的な根拠が必要だということになろうかと思います。そういう点で言うと、今回、地方自治法で関与が法定化されることは望ましいことだというふうに考えております。
ただ、その際に、法定する場合に気をつけなければいけないのは、地方公共団体が、先ほど申し上げましたように、憲法によって自治権が保障されている。その憲法が保障している地方公共団体の自治権をきちんと踏まえた上での法定でなければいけない。そうでなければ、戦前、国民に対しての関係で法治主義が言われたときに、形式的法治主義というのがよく言われたのですが、そういうものになぞらえて言えば、形式的法定主義と言われるようなものになってしまうというふうに僕は思うわけです。したがって、そういった点にもう少し配慮をいただいた法制度が考えられたらなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/24
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025・砂田圭佑
○砂田委員 時間がなくなりました。参考人の皆さん、大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/25
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026・高鳥修
○高鳥委員長 次に、伊藤忠治君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/26
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027・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 おはようございます。先生方には、大変御多用の中をわざわざ御臨席をいただきまして、ありがとうございます。民主党の伊藤でございますが、よろしくお願いをいたします。
まず初めに、諸井先生と北村先生にお伺いをさせていただきます。
常々私は考えておることでございますが、昨年の通常国会で行政改革基本法が議論をされまして、成立をいたしました。既にあのときに、二十一省から十二省に中央の省庁を再編していくということが法案の中でも明らかになっていたわけでございます。そのことの是非をめぐっても随分議論になりました。この基本法というのは一種のプログラム法だと私も思いまして、議論に参加をさせていただいたわけですが、その中央省庁の改革に中心的に携わられましたのが、総理のもとに設置をされました行革会議であったと思っております。
並行して、分権推進委員会は、長い間御苦労をいただきまして、一次から五次に至るまでの勧告、諸井委員長には大変な御苦労があったと心から敬意を表するわけでございます。
そういうふうに同時並行に議論が行われ、実態の調査も行われ、あるいは学問的に専門的な立場で行政改革にメスを入れようということで、大変な御苦労が行われてきたわけでございますが、分権推進委員会の議論と行政改革会議の議論がうまくマッチングして、つまり、法案という形で今日、集大成されてきているのかどうかという点について、そのあたりが私ども議会の立場におりますと詳しくわからない部分も多うございますので、お伺いをしたいと思っております。
その中身は、地方分権といいますが、手順はさまざま、つまり、手順はこのような手順でやっていくんだというのは私ども持っておりますが、それは横に置きまして、現実に、中央省庁の仕事がございますから、この仕事のどの部分が分権に移していくにふさわしい仕事なのかということの精査は、分権推進委員会の場でどのように行われたのか。
具体的に申し上げれば、各省庁をお呼びいただきまして、推進委員会としては、仕事の中身をずっとつぶさにお聞きいただいて、これは中央でなければいけないのか、地方に移してもいいのか、そういう具体的な詰めの作業も含めて、推進委員会の議論というのは進められたのかどうか。全く私たちもそのあたりは不案内でございますので、できましたら、諸井委員長の方からお伺いをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/27
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028・諸井虔
○諸井参考人 私ども地方分権推進委員会の方の作業の手順としては、まず、地方六団体、知事会を初め六団体ございます。六団体から膨大な改革の要求が出てきております。私どもとしては、基本的には、その六団体が一致して要求しているものを中心にして、これが直せないかということで各省庁と話し合ってきたわけでございます。もちろん、ベースには推進法がございまして、この推進法の中で、我々委員会がチェックすべき事項はきちんと書かれているわけでございます。そのすべてについて、今のような手順を追って各省庁と話をしてまいりまして、結論を得たものを勧告として提出をしたわけでございます。
一方、行政改革会議の方は、御承知のように、これは私がお話しすべきことではないと思いますが、内閣の機能強化とか、あるいは省庁の大ぐくり、スリム化、特に局とか課とか定員とかというものを削減していくというふうな方向で話をしているわけでございます。結局、地方分権で事務、権限が地方に移れば、その分、中央省庁の仕事は軽くなるはずでありますから、それがスリム化につながっていくということで、つながっておるんだと私は思います。
しかし、では、具体的に個々のどの課、あるいはどの係を廃止するのかというふうなことは、これはやはり各省庁の方に任されているわけでございます。各省庁の方は定員を削減される、あるいは局なり課なりを削減していかなくてはならないのです。そういう中で、この部分は地方分権で地方へ移譲するから人数を減らしていいだろうとか、あるいは組織をなくしてもいいだろうとか、そういうふうにつながっていくべきものではないかと思います。
したがいまして、私どもが、個々の課とか係とか分掌とかについて、これは中央でやるべきでないかというふうなことを、そういうふうな視点でやったわけではございません。さっき申し上げたような手順で進めてまいったわけでございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/28
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029・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 関連して質問させていただきますが、当然のことですけれども、諸井委員長さんのところで、六団体の一致した要求を踏まえられまして、各省庁と協議をされまして、一定の結論を出された。その結論が行革会議に反映をされて十二省庁という枠が決まってきた、このように理解をさせていただいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/29
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030・諸井虔
○諸井参考人 私の知る限りでは、そういうふうな形で一府十二省というものが決まったわけではないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/30
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031・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 ありがとうございました。
次は、財源の話でございます。
大変な御努力をいただきまして、第五次勧告で具体的な中身を勧告をいただいたわけでございますが、勧告を出されました責任者の立場からしまして、今回のこの法案に事実上これは盛られていない、あったにしても、極めてこれは不十分じゃないのかという認識を私たちは持っているわけでございます。よく私ども話し合うわけでございますが、行政改革、地方分権と申すのは、権限と財源と人間が三点セットでおりないことには実らないじゃないのか、こういう考え方を持っておりますが、そういう考え方から見ますときに、諸井委員長の心中というのは大変じくじたるものがおありになるんじゃないか、私どもはそう考えているわけでございます。
そこで、私どもは、結局、統合補助金という形での改革の勧告をいただいたわけでございますが、それはそれで非常に重要な提言だと受けておりますけれども、問題なのは、現在の税の大きな柱でございます地方税、住民税と所得税、この税収、税源の配分を中央と地方を変えていかない限り、この基本が変わらない限り、結局は仕事とマッチングした財源というのが整理できないのではなかろうか、こういう結論に私どもは達しているわけでございます。
もちろん、地方の中では、それぞれ地域の事情に差がございますから、地方税制の調整というのは、税源の調整というのはやらなければいけませんが、大もとはそこに存在をするのではなかろうか、このように考えまして、これは時間の関係がございますので、余り私たちの考え方に時間をとることはどうかと思いますが、例えば、所得税については、実は現在は一〇%から三七%の四ランクの仕組みになっておりますが、それを三%から三〇%のランクに改正をしまして、住民税の場合には、現行が五、一〇、一三と三段階でございますが、これを配分を変えまして、五、一二、一七、二〇ということで、つまり現在の税収割合を、一対一に変えていくことではどうか、このように考えておりますが、そのような私どもの考え方に対して、どのようにお感じになっておられるか。諸井委員長のひとつ御見解をいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/31
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032・諸井虔
○諸井参考人 私ども、補助金、税財源の問題については、どうもいろいろ御批判があることはよく承知をしております。
ただ、私どもの申しておりますのは、一つは補助金について、これを負担金と補助金とに分けて、補助金はやはり計画を立てて整理をしていくというようなことでございます。
それから税財源については、今おっしゃいましたように、仕事は二対一で税収は逆に一対二というこのアンバランスというものは、やはり中長期的に見たらどうしても改善をすべき問題であろうかと思います。
そういうことで、方向として、やはりなるべく偏在性が少ない、安定性の高い税金を地方に持ってきてもらいたいということを申しておるわけでございまして、実は税金の具体的な細かい審議というのは、これは税制調査会でやっておるわけでございます。税制調査会でも、来年の中期答申に向けて、地方分権と地方税というふうな問題について議論をすることになっております。私ども地方分権推進委員会でこれを議論して、具体的に、今おっしゃったような方向が、方向としては私どももそういうような方向が欲しいわけでございますが、しかし、それを具体的に私どもの勧告の中で述べる、そういう権限は持っていないわけでございます。ですから、私どもはそういう方向性を述べました。
それからもう一つは、今度の地方分権で勧告いたしました内容というのは、今まで既に仕事は地方がやっております。したがって、財源は、これは補助金なり交付税なりあるいは地方債のような形で何らかついておるわけでございます。新たに地方へ権限が移って新たな歳出が必要になるようなケースについては、これはきちんと財源手当てをするということは、二次勧告でも五次勧告でも申しているところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/32
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033・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 ありがとうございます。
北村先生、失礼いたしました、前回の質問のときにちょっと失念をいたしまして。それで、今の税源の問題についてお考えがございましたらお聞かせを賜りたいと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/33
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034・北村喜宣
○北村参考人 遺憾ながら、なかなか私の専門外でもございまして、委員の御質問に十分答えることが今はできません。どうぞ御容赦くださいませ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/34
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035・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 最後になりますが、北村先生、ちょっと聞かせてほしいんですが、実は、これは住基台帳に限りませんが、コンピューターネットワークがこれから政府内にも張られていくと思います。既に張られております。法定化されておりますのは、住基台帳が今回初めてなんですね。
私が疑問に思っておりますのは、住基台帳は自治事務なんです。ところが、これは自治省にセンターを置きまして、都道府県に中間のセンターを置きまして、三千三百の自治体に端末がずっと、もう既にこれは自主的にコンピューター化されているわけですね。これを無数にネットワークで、どこからでもアクセスができて情報活用できるようにネットワークを張る、ネットワークというのはそういうものなんですね。
そうしますと、住基台帳は自治事務で、これは自治体の固有の事務だというふうに法的に位置づけましても、データ通信をやっている間にどこに主たる管轄権限が移るのかということは、全く平等になると思うんです。これは新しい現象じゃないでしょうか。私はそのことが新たな課題として、法律でどう規定するのか、あるいは行政としてはそれをどのように考えてそういう物差しをつくるのかということは、既にこれが壊れてくる、それが情報化社会の新たな問題だと私は思っておりますが、それらのことについて、もしこれまでのいろいろな研究でお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思うんですが、どうでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/35
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036・北村喜宣
○北村参考人 委員御指摘のようなものがそれほどまでに進んでおるとは私も存じておりませんで、まことに申しわけございません。
ただ、自治事務であるという御指摘でございまして、それを前提にいたしますと、自治体の裁量の範囲と国の関与の程度というのが当然に問題となってくるわけでございます。これは事の性質上、かなりプライバシーでございますとかそうした問題に大きく絡むことであろうかと思いますし、地域ごとにプライバシーの程度がばらばらにあるというのも、これはまた考える余地があることであろうかと思います。
ですから、自治事務におきましてもやはり程度の違いというのはあるわけでございますから、国会におかれましてはその辺の事情を十分にお踏まえになって、全国的なバランスあるいは自治体の裁量権というあたりの調整をされる、あるいは御審議の場で自治省等々の当局との議論がされるということが望ましかろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/36
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037・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 最後でございますが、もう一分ぐらいですけれども、諸井委員長はたしか経営者でございますのでそのことは実際に携わっておみえになったと思いますが、実際はそうなりますものね。
インターネットというのは、あれはループになっていましてセンターがありませんから、だれが仕切るということがないので、みんな対等の立場で情報活用をしているわけですね。こういうのはピラミッド式にやるとはいいますが、事実上は、ピラミッドにしますと権限は中央がコントロールすることになりますから、下に主権があるといってもデータ通信を通じて、その情報のコントロールの主権みたいなものは下から上に移るという可能性もある。もしそれがないと否定されても、言うならば平等の関係になる。そうすると、自治事務と位置づけましてもこれは意味がなくなる、こんなふうに私は思っておるのですが、感じはどうでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/37
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038・諸井虔
○諸井参考人 その辺はちょっと不勉強で私もよくわからない点がありますが、ただ、情報公開というのがこれからの流れだと思うんですね。その場合に行政情報というのは、国の行政であろうが地方の行政であろうが、これはもうなるべく国民一般に公開をしていくべき。ですから、むしろマザーコンピューターに国や地方の情報が全部入っていて、それをみんなが引き出せるというような形になることが望ましいんではないかと思います。
ただ、一方ではやはりプライバシーの保護ということがあるはずでございます。これはやはり法律できちんと規制をしていくべきものではないかと思います。
大変どうも至りませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/38
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039・伊藤忠治
○伊藤(忠)委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/39
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040・高鳥修
○高鳥委員長 次に、桝屋敬悟君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/40
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041・桝屋敬悟
○桝屋委員 公明党・改革クラブの桝屋敬悟でございます。四人の参考人の皆さん、本当に本日はありがとうございます。特に諸井委員長におかれましては、長い間の御苦労、本当に敬意を表したいと思います。
いよいよこの国会で議論が今始まっているわけでありまして、どうしてもきょうは、おいでいただいた参考人の方々に再度、先ほどの意見陳述を伺いましてさらにお尋ねしたいことがありますので、それぞれお伺いをしたいと思います。
最初に坂田参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどのお話を伺っておりまして、大体私の気持ちと同じようなことを感じておられるなと思ったわけでありますが、今回の地方分権の一括法、これはある意味では大きな前進だ、特に機関委任事務を廃止するということは大変大きな出来事であるし、これは大きな前進である、こう評価をされておられたわけでありますけれども、先ほどおっしゃっていました、これが通れば国と地方の関係は大きく変わるのか、こう総括をされて、端的に、余り変わらないんじゃないか、こういうお話もいただいて、次なる残された課題ということもおっしゃったわけでありまして、これはまさにそうだろうと思います。
その中で一点、余り変わらないという中でおっしゃったのが、特に今、先ほどの議論でもありましたけれども、地方の税財源の話、財源の話はよくあるんだけれども、ともかくも今変わらない最大の問題は補助金だ、このように御指摘をされました。まさに私もそうだと思うんですね。
私も長い間、地方の職員としてこの補助金行政の中にどっぷりつかってまいりましたから痛いほどわかっておるわけでありまして、補助金の適正化法律、適化法という名前を聞くだけで、もう地方の仕事としてどうしても限界があるんだということを、その法律の名前を聞いただけで思わず頭の中が、視野が狭くなるといいますか、こんなこともあるわけであります。
我が国は、私は特に福祉の仕事が専門でありましたけれども、日本全国どこへ行っても同じような特別養護老人ホームがあって、同じような老人保健施設があって、同じような福祉施設があって、これはほとんど全国どこへ行ってもあるわけでありまして、よく自治体同士が先進地視察というのにお行きになるそうですけれども、どこへ行っても大体同じものでありまして、本当にどうなんだろうというふうに思うのであります。
特にこの補助金行政については、坂田参考人は、中央官僚の、中央省庁のさじかげん、これで決まるんだ、こういう御指摘もありました。ここにメスを入れなきゃいかぬということでありますが、当然この話の中には一気にできないという御指摘もあったわけでありますが、坂田参考人の最後の方の御意見で、最後は政治のリーダーシップだという総括もあったわけであります。これから、この今回の法改正を一つの山とすれば、次なる課題になるのかもしれませんが、補助金について特に早急にやらなきゃいかぬこと、当然サンセットとかいろいろなことをやっておりますけれども、これも一気になかなかなくせないわけであります。
私は、今回の法改正を実効あらしめるためには、坂田参考人御指摘のように、次なる課題にすぐ着手をしなきゃならぬし、今できることはやらなきゃならぬし、そこに政治のリーダーシップが必要であれば、それは我々が取り組まなければならぬと思っておるわけでありますが、その辺のところを、坂田参考人、もう一度御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/41
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042・坂田期雄
○坂田参考人 ただいま御指摘がございました国と地方との関係、特に国庫補助金との関係でございますが、先ほどもたしか申しましたように、現在の地方自治体、私、いろいろな市町村とか自治体を各地回ったりして、いろいろな実態面から見るようにしておるわけでございますが、確かに、日常の業務の隅々まで、何千、何百という補助金がずっと市役所の隅々まで入っておりまして、それを見ながらやるというのに長い間なれてきてしまっているという状況でございます。それで、その国庫補助金の補助要綱の中で、中央省庁が細かい指示を全部してやる状況になっておりますから、これが変わらないと、機関委任事務とかそちらの意味を変えただけではなかなか変わらないんじゃないかなとさっき申し上げたわけでございます。
さて、ではどうするかということですが、先ほど来ちょっとお話に出ておりますが、現在の税財政の仕組みが、国と地方との徴収段階が、年によって最近変わってきておりますが、長い間、大体国が六五、それから地方が三五、六五対三五。使う段階になりますと逆転いたしまして、国が三五、地方が六五。つまり、国が取った六五のうち三〇程度が移転財源として、交付税と国庫補助金として地方に来る。一たん国に入って、国から地方へお金が来る。この段階で、やはり、お金を配るところとお金をもらうところという上下・主従の関係が生ずるわけです。
それから、今後の方向としては、まず税制改正、一度にはできないにしても、地方が使う財源は最初から地方に与える、六五。一たん国に入って、国から地方に行くという国庫補助金は、将来の方向としてはこれはなしにする。なくなれば、お金の面から地方が中央から縛られているということがなくなる。これは強い抵抗があってとても一挙にできないかと思いますが、やはり、それが今後の地方分権の一番の眼目、一番の基本ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/42
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043・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。
補助金の問題は、突き詰めるとやはり地方と国の財源の問題になるという御指摘でありまして、それはまさに次の課題として我々もすぐ取り組まなければならぬ課題だろう、こう思っているわけであります。
それで、もう一点坂田参考人の先ほどの意見陳述で気になったのが、これは私も率直に感じておりますけれども、現場は無関心である、余り大きな議論になっていない、こういうことでありまして、なぜそうなっているかという話は、最初からいろいろな今回の議論の枠がはめられておるということは先ほど御説明がありましたけれども、私は、本当に民意のレベルが低いということはこれは大変心配でありまして、ここはやはり、今回の分権一括法が本当にその実効あらしめるためには今の状況ではよくないんだろうと思うんですね、今の現場を見ますと。
それで、一点関心があるのは、市町村の合併については、これは現場では喫緊の課題でありますから、今回の法改正の中では、市町村の合併については住民発議制度、あるいは合併協議会の勧告、県が勧告をするとかあるいは合併特例債の創設とかいろいろな仕掛けがありますけれども、さらには、最近また研究会の方から人口規模によるいろいろなアイデアも出ているようでありますけれども、この合併についての今回の法令における位置づけというものについて、もし御意見がありましたらお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/43
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044・坂田期雄
○坂田参考人 合併の問題が、地方分権推進委員会の勧告と相前後して、国の方から強く推進するという方向で種々の改正なんかが今行われておるわけでございますが、地方分権を本当に進めるには、やはり受け皿となる市町村が小さいままでは、中央の方の理解あるいは国民全体の理解もなかなか進められないんじゃないか。そういう意味において、やはり本当に受け皿にふさわしいような、規模がどの程度がいいかいろいろ議論はあるんでしょうが、そういう意味で合併はぜひ必要な方向ではなかろうか。
ただ、全国的に見ますと、市町村の中には、地理的に合併が難しいところもありますれば、あるいは、合併すれば中心だけがよくなって周りは切って捨てられるんじゃないかとか、いろいろな不安を持ったり、いろいろな意見も出ておるわけでございます。
ですから、今お話がございましたように、住民発議制度とかいろいろできたんですが、現在は合併しても余りメリットがないというんですか、合併すれば財政その他でやはりいろいろなメリットを与えるというような格好で国が誘導していく、力で上から合併をやるということはすべきじゃないと思うんですが、そういう形で合併をうまく誘導していく。
それと同時に、分権型社会というのは一体どういう社会なのか。分権型社会、理想の社会にして権限を全部おろすためには、やはり市町村もある程度の規模を持つような形になっていくことが必要なんじゃないかとか、そういう議論がもっともっと国民全体の中で行われるという、今回分権一括法案が成立するのと相まちまして、もっと国民全体で広くそれも議論されていくことが望まれるんではなかろうか、そういうふうに思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/44
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045・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。
私は、坂田参考人おっしゃるように現場が無関心であってはならぬわけでありまして、ぜひとも今回のこの法改正を通じて国と市町の新しい関係ができなければならぬ、こう思っておるわけであります。それは、合併も、住民の関心という点では極めて大きなテーマだろう、こういうふうに思っているわけであります。
それで、大きい話になりますが、諸井参考人にお伺いしたいんですけれども、いよいよ国会で今、こういう議論を我々やっております。この委員会でも審議が始まりまして、特に国と地方の関係、国の関与ということについては、さまざまに今議論されているわけであります。この委員会でも、中には、わがままな自治体、こういう声もありましたし、私の立場で言いますと、私は地方にいたものですから、わがままな自治体が多分出るかもしれない。それと同じように、心配し過ぎの国ということもあるわけで、ほっておいてもらいたい、私どもはこれをしたいんだと。さっきの話じゃありませんけれども、全国どこへ行っても同じような町並みが並んでいるという我が国の姿というのは、まさに今の中央集権的な我が国の国の体制、国、地方を通じた体制がなせるわざではなかったのか。ある意味では私は異常だと思っているんですね、この状況は。
そういう意味では、これからまさに国と地方の関係は、わがままな自治体も出るかもしれない、しかし、それを心配して余り国は関与してもらいたくない、まさにこのバランスだろうと思うのですね。これを今から第一弾としてやっていくわけでありますけれども、恐らくこの第一弾で終わっていない、課題は残っているだろうと私は思うんです。
諸井参考人にお伺いしたいのは二つ。私ども国会議員として一番悩んでおるのは、その二つのバランスを今からどうするかということが一つ。これに対しての御意見。
それから、まだまだ課題は残っている。これから第二弾、第三弾でやっていかなきゃいけないその課題を、プライオリティーを幾つか並べていただきますと、項目だけで結構でございますが、どういうことになるのか、お話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/45
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046・諸井虔
○諸井参考人 わがままな自治体と心配し過ぎの国というお話はまことに適切なお話でございまして、私どもも同じような考えはいつも委員会の中で議論をしてきたところでございます。
ただ、やはり基本は、身の回りのことをなるべく地方に、多少無理があっても、多少トラブルが出てくるかもしれないがそちらへ持っていくという方向へどんどん進めていかないと、まだ体制が整っていないとかいろいろなことを言っていると、これはいつまでたっても進みませんので、多少のことがあっても、やはりそっちの方向へ進めていくというのが基本であろうかと思います。
しかし一方で、やはり国には国の役割があり、法律は国が国会においてお決めになっていくわけでございます。そういうものに違反するようなものについては、これはやはり何らかの措置がとられていかないと、国民全体としてもまずいわけでございます。
ですから、今度、私どもは、特に係争処理委員会というものに非常に力点を置きまして、これを何とかして設置したい。ここへやはり地方の不満、苦情、あるいは異議というものが申し立てられていって、そのことが世の中一般に伝わっていく。そうすると、結局、最終的には国民がその両方の主張を見て、これはどうも国がやり過ぎじゃないのか、これはちょっと地域が少しエゴじゃないかとか、そういう議論が国民一般の中で起こっていって、だんだん落ちつくところへ落ちついていくのではないか。
もちろん、私どもが今回勧告しました内容が、いろいろな面でまだ地方分権が不十分ということはそのとおりだと思います。そういうことをこれから進めていくについても、結局は、国民の皆さんがどういうふうに考えていかれるのかということ、それはすなわち国会がどういうふうにお考えになるかということではないのかというふうに存じております。
次の課題は、私ども、今度やりましたことは、今申したように出発点をつくる、法律に定められている各項目についてきちんとした出発点をつくる、これだけはしっかりやろう。やはり実現性にこだわり過ぎたのではないかというような御批判もありますが、とにかくやはり出発点をきちんと実現をする。その先どこまで進めていくかというのは、これは今申し上げたように、やはり国民の皆さんの御議論であり、国会の御議論であろうかと思うのですね。
やはりそれは、権限移譲にしても、もっと進めた方がいいのだろうと思います。それから、必置規制、補助金の問題、税財源の問題、たくさん問題がまだ残っていると思います。そういうのを一つ一つこれから解決していただくのではないだろうか。私どもは、出発点をつくるということだけはきちっとやったつもりでございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/46
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047・桝屋敬悟
○桝屋委員 ありがとうございます。
出発点はつくったのだから後はしっかり国会でおまえたち頑張れ、こういうお話かと思いますが、それにしては余りにも課題が多いものですから、我々も悩んでおるわけであります。
時間がありません。最後に北村参考人にお伺いしたいと思うのですが、今諸井委員長の方からも話がありました、今回の係争処理の新しい仕組みですね。我々から見ると、あるいは国民の側から見ますと、この係争処理がどれぐらい出てくるかということはやってみなければわかりませんが、さっき言いましたように、わがままな自治体と心配し過ぎの国がとかくぶつかることもこれからはあるだろうというふうに私は思っておるのですが、どう見ても、国の行政機関として置かれること自体に非中立性を感じざるを得ない。
それから、その効果としては、勧告という形でありますけれども、それで本当に大丈夫なのか。もちろん後に裁判ということにもなるのでしょうけれども、そうしたことを率直に感ずるわけであります。
第三者機関の今回の規定ぶりについて、御認識をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/47
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048・北村喜宣
○北村参考人 これは内閣提出法案でございますから、行政の内部で御審議になった話でございます。中立性をいかにして確保するかというのは、委員御指摘のとおり非常に大事な点でありますが、その辺は、閣法であるということの限界でなかなか踏み切れなかったところがむしろあるわけでございまして、真に第三者性、中立性というのを国民が納得する形で仕組むならば、むしろ、恐らくは議会の場で政治的な立場から新しい仕組みをつくるというふうなことになろうかと私は思います。
委員のおっしゃるとおり、いろいろなことがクラッシュをするということは多かろうと思いますが、対等の立場になったというわけでございます、パートナーシップを恐らくはつくるんだろうということでございます。パートナーシップはトラブルを一つ一つ克服してこそ恐らくはできるものでございますし、先生方の奥様との関係もそういうふうにして多分確立されたんだろうというふうに考えるわけでございます。
むしろ恐れますのは、そうした係争処理をさせないような形で事が進むということでございまして、せっかくできた仕組みでございますから、なるべくお使いいただくという形で信頼関係が深まるのではないかという点が一つ。
それから、第三者性に関しましては、行政の内部に置くということは、政府提出法案であるためにやむを得ないのかなというふうに考えますので、もしも真にそうした、より中立性を御追求なさるならば、この審議の場で、あるいは政治的な立場で新しい仕組みをつくるというのが筋であろうかというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/48
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049・桝屋敬悟
○桝屋委員 北村参考人がおっしゃったこと、私は非常にきょう印象に残りましたけれども、新しいこういう国と地方の関係、恐らくリハビリが倍かかる、このように言われまして、その言葉の重さを我々も感じながら、しっかり議論をしてまいりたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/49
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050・高鳥修
○高鳥委員長 次に、春名直章君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/50
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051・春名直章
○春名委員 日本共産党の春名直章です。
四人の参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
最初に、白藤参考人と北村参考人に同じ質問をさせていただきます。
自治事務に是正の要求が加わったことが問題だというお話が出されました。かつ、加わって、それが内閣総理大臣から各大臣へと広げられています。政府は、これは法的義務を負うということはお認めになっています。同時に、今までの総理の是正措置要求と今度の改正とは、効力上は変化するものではないという御答弁をされています。私、そうかなと思ったのです。
といいますのは、現行法には、措置を講じなければならないという義務規定がございません。自治省、政府自身も、現行の総理大臣の是正措置要求は非権力的な関与、こういうふうに説明をされてこられました。お二人に、この現行の総理の是正措置要求の解釈についての御見解をお聞きしたい。
それから、是正の要求を出せるのが各大臣となっています。この点、御説明では、個別法による関与をできるだけ縮減したから、地方自治法に各大臣とした、こういうふうに御答弁をされているわけです。しかし、地方自治法の中に一般的な関与として各大臣ができるというふうになっていること自身が、私は重大じゃないかなと思っております。
この二点、是正の要求にかかわる問題ですけれども、白藤参考人の方から順次お答えいただけたらと思います。参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/51
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052・白藤博行
○白藤参考人 現行法の内閣総理大臣の措置要求に関してなんですが、自治省もそうですし、長野士郎コンメンタールといって日本で一番定評のある地方自治法のコンメンタールにおいても、非権力的関与の一態様というふうに言って、私たちもそういうふうに了解しております。
ただ、これまでの国と地方公共団体との関係でどこまで法的義務があるかないかというのはむなしい話で、実際に、それでは法律上どのような形で、義務なら義務、あるいはそれに従うことが明示されているかということが最も重要な点なんですね。
今回は、その点では、是正の要求に関して言いますと明文で措置義務が書かれたこと、これはもちろん法的義務を明確化したことです。それに加えて、先ほども申し上げましたが、是正の要求が違法に行われたというときに、国と地方公共団体が対等であるならば、そしてかつその関与が非権力的な関与であるならば、それに対して従うか従わないかは、地方公共団体の自由な裁量に任されるべきだと思うのですね。無視するべきときは無視するという決断をすれば、それでよろしい。
しかし、今回の場合は、違法な是正の要求だと地方公共団体が考えた場合に、それで決着がつくわけではなくて、まずは文句があるなら国地方係争処理委員会に審査の申し出をしなさい、その勧告に不満であれば裁判で決着をつけなさいという仕組みができたわけです。
ということは、皆さん御存じだと思うのですが、私たちが国民として公権力によってみずからの権利、自由が侵された場合に、公権力の行使を取り消したりとどめたりするために、行政事件訴訟法の取り消し訴訟とか無効確認訴訟を起こさなければいけません。それと同じように、それで決着がつくまでは、とにもかくにも是正の要求があたかも適法かのような様相を呈してひとり歩きしてしまう可能性がある。そういった点において手続法的ないしは訴訟法的な権力性があるのではないかというふうに私は思っておるわけです。そういう点で、これまでの内閣総理大臣の措置要求とは異なるレベルの権力性が付与されている、自治事務に関する権力的関与が可能であることが非常に問題であるというふうに思っておるわけです。
それからもう一つ、各大臣に広がったということなんですが、各大臣が関与の主体になるわけですが、重要なことは、今回地方自治法が一般法ルールとしても位置づけられておって、関与に関する一般法ルールとして機能があって、地方自治法に直接基づいて関与ができる。この是正の要求はそれの一つです。そのほかにも、是正の指示とか代執行も直接これに基づいてできるわけですが、これは条文を読んでいただければわかります。
したがって、個別法云々という議論、僕はちょっと今のお話よくわからなかったのですが、個別法云々というよりも、直接これらの規定に基づいて関与ができる仕組みになったという点を見逃してはいけないということだというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/52
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053・北村喜宣
○北村参考人 恐らく問題は、関与ができる場合というのをどう考えるかであろうかと思います。
と申しますのも、委員御指摘のとおり、この仕組みは、自治体側のコストといいますか、自治体側が何とかしなくてはいけないというのが高いわけですよね。国の場合は言えばいいけれども、受けた自治体は、それに応じてああだこうだしなければいけないということでございます。ですから、恐らくはこれは運用になるかと思いますけれども、国が要求をする、指示をする等々の場合の、真に要件に合致しているかという立証責任と申しますか、それはしっかりと示さなければいけないだろうというふうに考えます。
分権に関しては、一般的には自治体の事務を拡大するという方向でございますから、それに特に公益的な立場からコミットするのが国であるとするならば、軽々にそうしたことがされてはいけないということでございますから、国の方でそういうことが、するならばするでしっかりと説明をする義務があるだろうというのは当然のことであろうかと考えます。
また、個別法と一般法の関係でございますが、これは例えば個別法もいろいろな自治事務が規定されるわけでございますね。性格もいろいろなものがございます。裁量が多いものもありましょうし、比較的ちっちゃいものもあるかと思います。そのすべてに対して同じようなスタンスで一般法的な関与ができるかというと、恐らくそうではないだろう。個別法の性格によって、やや一般的な関与が控えられるべき場合もあるだろうというふうに考えます。
ただ、これは解釈になってまいりますから、一般法のレベルで書き切るというのは非常に難しいように思っております。恐らくこれは個別改正法の具体の規定の中で示されることでございましょうし、そうでなければ、より明確な形でこうした法案審議の場で政府側の、委員との御確認というのが個別にされるべきであろうと思いますが、何せ法案の数が多うございますので、個別に確認するのもなかなかつらいわけでございますが、一般論としてはそういうことかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/53
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054・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて白藤参考人にお願いします。
関与の法定主義ということによりまして通達行政が改善されるかのような御説明もあるわけです。同時に、法定受託事務に新しく処理基準というのが設けられることになっているわけですね。この内容や出し方によっては新たな通達行政になるのではないかという批判もございます。今回の法改正で自治体への通達行政は改善していくとお考えかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/54
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055・白藤博行
○白藤参考人 御指摘のとおり、法定受託事務に関しては、通達行政を排除するということから、処理基準によることとするということになりました。その点では、通達行政そのものがこれまで批判の対象になってきたものですから、廃止されることには異存がないのですが、今度創設される処理基準の制度なんですが、要するに、条文上読み取れる限りでいいますと、全くフリーハンドに近い形で処理基準の制定権が与えられてしまう。例えば行政法で言うところの裁量基準なんかも、そこに定められればそのとおりになるわけですから、結局のところ、通達の内容がそのまま処理基準に行くというふうにしか理解できないのかなという感じがいたします。
その点にかかわってなんですが、なぜそういうことになったのかなということをおもんぱかると、一九八九年の十二月二十日に第二次行革審の答申が出ているのですが、そこで「国・地方間の調整の仕組みの改善」という項目がありまして、既に「国による基準等の実行確保」という項目が立てられておって、こういうふうに書いてあります。「地方自治法等による国の地方公共団体に対する助言・勧告の範囲を拡大するとともに、特に必要がある行政事務について、緊急を要する場合等にあっては、是正勧告・要求等を行い得る制度について検討する。」というふうに書いてあるのですね。
そしてその後、自治省の松本次官なんかが繰り返し発言しておるのですが、国の側からの要請に対しては必要に応じて国が基準を示したり指針を示したりすること、それによって国の関与の実効性を確保するということが盛んに言われております。
したがって、恐らく法定受託事務に関してはそういった基準を設定することによって地方公共団体をコントロールするという仕組みにシフトするというお考えなのでしょうけれども、その内容に関してもう少し法的な統制というか法的な基準がない限り、通達行政と全く同じような効果を持ち得る危険が十分あるのではないかというふうに懸念しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/55
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056・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて諸井参考人、お願いしたいと思います。
地方事務官問題についてです。地方事務官の身分について、国家公務員にするということで第三次勧告をなさいました。私どもも、社会保険や職業安定関係の事務の基本的な性格は国が責任を持って当たらなければならない、そういう性格のものだと思っています。したがって、国家公務員に位置づけることが当然だと思っております。勧告ではいずれも国の直接執行事務とされました。その理由を改めて御説明をいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/56
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057・諸井虔
○諸井参考人 この第三次勧告のところ、私ども非常に悩んでいろいろ議論をしたところであります。やはり機関委任事務制度というものを撤廃するということになりますと、今まで地方事務官という非常に暫定的ないびつな形でやっていたことは、やはり何とかきちんと整理をしなければならぬ。結局、今おっしゃいましたように、保険についても職業紹介等についても、これはやはり現時点では本来国が処理するというのがよろしいのではないか。また、国がそういう責任を今負っておるわけでございます。それで、そういう形に処理をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/57
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058・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて坂田参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどのお話にも出ておりますけれども、今回の法案では地方への税財源の移譲というかなめの問題が残念ながら先送りといいますか、されておらないわけです。地方にとってやはり自主財源の拡大が一番必要な分権推進のかぎだと私は思っています。今後どのように税財源の移譲を推し進めていけばいいのか、その点についての御意見をお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/58
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059・坂田期雄
○坂田参考人 ただいまお尋ねの税財源の移譲の問題でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、これはなかなか難しい点ではあるわけですが、現在、国の方に三分の二の財源が国税として入って、そのうち半分近くが交付税とか、それから国庫補助金という格好で地方におろされてくる。このシステムを通じて国と地方が対等じゃなくて上下・主従の関係になってしまっている。
そういう点から見まして、今後は、とにかく税源移譲、先ほどおっしゃいました自主財源を増強するということは、国税から地方税へ移して地方税の比重を高めて、それと相まって国庫補助金というものをだんだん縮減して、できればこれを廃止して、国から地方を統制される金の力というものを漸次なくしていく。これはなかなか難しいことで、国会を初めとする政治の力でお進めいただかなきゃなかなかできないことかと思いますが、そういうことが非常に重要じゃないかと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/59
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060・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
続いて白藤参考人にお伺いします。
先ほどの、最初の陳述でもございましたけれども、二百五十条の六の第一項に、国の行政機関が自治体がやっている事務と同じことをやる場合の関与の手続規定、これは手続規定の中にこういう項目が入っております。同じ事務をやる場合に国の行政機関がどうするのかということで、ここは通知の話なんですけれども、手続の中身ということになっていますけれども。
ただ、こういうふうな規定が置かれていきますと、関与の類型化ということ自身が意味をなさなくなるという危険性があるんじゃないかというふうに思うんですね。類型化をして、これとこれとこれでいきます、透明にやるんだということを言っているんだけれども、同じ法律の中に、同じ仕事をやる場合には違う手続をいろいろできるというふうになっていますので、こういうふうになりますと関与の類型化自身が意味をなさなくなるんじゃないだろうか、その懸念。それから、国の裁量で必要な事務を取り上げるということになってしまうんじゃないかという懸念。こういう点を私は心配をしております。その点についての御見解を聞かせていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/60
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061・白藤博行
○白藤参考人 陳述でも申し上げましたが、関与が類型化され、せっかくそれぞれの事務に対する関与の基本類型が定められながら、個別の条文を見てまいりますとそれが見事に崩されておるといいますか、原則が崩されているということが見られます。
先ほど申し上げました処理基準もそうなんですが、処理基準は確かに一般不特定多数に対する基準でありますから、それを関与と直ちに類型化することは難しいかわかりませんが、例えばそれを通知すれば、どこかに送付すれば関与になるというふうな御説明があったりすると、処理基準も果たして、関与ではない、「関与等」の「等」に入るだけで済むのかどうかということですね。
それと同じように、先ほどの御質問の国の直接執行に関しましても、これを手続のところに含めていることは確かに問題であるかと思います。私、先ほど建築基準法等の例を挙げましたが、個別法をまだ全部私見ておりませんので何とも申し上げられませんが、個々の条文をきちんと精査していったら、恐らく国の直接執行の中には、いわゆる裁判抜き代執行と言われるようなものとか、あるいは行政法で言うところの即時強制型の国の直接執行と言われるものがあろうかと思います。そうすると、地方自治法の中でも、一般的な代執行は関与に含まれているわけですから、関与の類型化がされているわけですから、それらとの関係においても、果たしてここに手続の中の一つとして国の直接執行の方式を置いているだけで平仄が合うのかどうかという点に関しては、大きな疑問を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/61
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062・春名直章
○春名委員 どうもありがとうございました。
北村参考人にお伺いしたいと思います。
改正法の中の第一条の二で地方公共団体の役割というのが明示されておりまして、住民の福祉の増進を図ることを基本とするということと、地域における行政の役割を担うということになっております。
ちょっと読むと、住民の福祉の増進ということになりますと、それ自身はいいことなんですけれども、狭くとらえますと福祉ということだけになってしまったり、それから、地域における行政という表現になりますと、統治体としての役割は全くないのか、行政というだけでいいのかというような意見もあるんですね。この第一条二のこういう地方公共団体の役割規定についての御意見。
それから、第二条の改正する前の今の条文の中では、二十二の項目にわたりまして例示規定が示されているんですね、地方公共団体ができる仕事の。これが全部削除をされて大くくりにされるんですけれども、これについての評価等について御意見を聞かせていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/62
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063・北村喜宣
○北村参考人 まず、一条の二の第一項のことでございますが、住民の福祉の福祉というのはいわゆる純粋のソーシャルウエルフェアに限定されるものでは恐らくないということは、ここにいらっしゃる委員すべての方が御認識されておることでございます。公共の福祉という言い方がよく法律の一条にございますが、それはそうした狭い意味ではないというのは当然のことであろうかと考えております。
地域における行政というようなことでございますが、委員御懸念のような狭い意味では私は恐らくないというふうに考える次第でございます。
また、二条の三項にずらっと規定していたものがなくなるわけでございますが、二つの側面があるように思います。
一つは、今まで自治体で、例えば条例をつくる、何かをするといったときに、では自治体にその権限はあるのかという議論がされたときに、どこかに取っかかりを見つけてやってきたということがございます。ですから、その意味では、あった方が安心ができるということがございました。なくなると、自分たちの事務かどうかというのを真剣に自分たちの頭で考えないといけません。まさにそれが地方分権でございますからよろしいのでありますが、自治体の方からすると、そういう懸念はあります。
もう一つは、逆の面ですが、例えば有名なのがありまして、十八号というのがございます。これは、法律の定めるところによりいろいろな、土地利用規制等々ができるというふうに書いてございまして、ここに条例という言葉が書いておらなかったものですから、条例ではできないのではないかという議論がされました。これがなくなりますから、そういうような議論をする必要が全くなくなってくる。逆に申せば、今までは何でそんなことをやっていたのかと不思議になるわけでございますが。
そういう面もあり、両方の側面があるということで、お答えにかえさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/63
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064・春名直章
○春名委員 どうも四人の皆さん、ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/64
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065・高鳥修
○高鳥委員長 次に、畠山健治郎君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/65
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066・畠山健治郎
○畠山委員 参考人の皆さん、大変お忙しい中を本委員会に御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。社会民主党・市民連合を代表いたしまして、幾つかの点についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。時には失礼な質問もあるいは出るかもしれませんが、分権を積極的により進めたいという立場からでございますので、御容赦をいただければありがたいというふうに思います。
最初に、諸井委員長にお尋ねいたしたいというふうに思います。
五次にわたる大変な御労苦に改めて心から敬意を表したいというふうに思います。一次から四次までの勧告を拝見いたしますと、特に法定受託事務の概念について、多様な内容を含む方向に拡大いたしております。
こうした経緯を私なりに推察いたしますと、機関委任事務の廃止によって自治事務の拡大を基本とするというのが推進委員会のお考えだったのではないだろうかな。ところが逆に、法定受託事務を拡大するということで関与をできるだけ確保しようというのが中央省庁の考えであったのではないだろうか。そういうせめぎ合いの中から、結果的には四五%という法定受託事務が残ってしまった、こういうことになってしまったのではないだろうか。
このことは推進委員会の本意ではなかったのではないだろうかなというふうに思われてならないわけでありますが、その点についてお尋ねをさせていただきたいということと同時に、これからも法定受託事務の自治事務化の方向へ進んでいかなきゃいけないということであろうかと私どもも思っていますが、そういう点について御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/66
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067・諸井虔
○諸井参考人 法定受託事務がだんだんふえてきてしまっておるのではないかということなんだろうと思います。
私どもが一番最初に機関委任事務制度を撤廃するということを申し出たときは、全省庁完全にこれは反対でございました。しかし、中間報告を出した後、この制度の撤廃自体はやむを得ないのかなと。あとは、今度は自治事務か法定受託事務という中で、やはりもうほとんどすべてが法定受託事務ではないかというふうなところから議論はスタートいたしました。
私ども各委員が実際に各省庁の局長、審議官の皆さんとじかにひざ詰めでいろいろ議論をした。これは、要するに法律上、学問上のことも含めて論議を闘わせてまいりました。それで、省庁の方の言い分が正しいときもありましたし、私どもの言い分が通ったときもあります。そういう議論を積み重ねて、両方が合意してこういう整理になったわけでございます。私どもは、当初はもう少し法定受託事務が少なくなるんじゃないかという気もしておったんですけれども、そういう議論の過程でお互いに合意したことでございますから、今の時点では私どもはこれでいいのではないかと。
結果として、今まで知事さんのお仕事の大体七割以上が機関委任事務であったわけでございますが、今度四五%が残ったとしても、全体のお仕事の六五%が自治事務になるという、ですから、従来とほぼ逆転したような格好になったわけで、これは一つそれなりの成果ではないかというふうに考えておるわけでございます。
これからの方向として、やはり地方分権という点を考えますれば、次第にこの自治事務の領域が広まってくる。これは、地方自治体の機能が整備してくるということも関連をするんじゃないか、あるいは住民の皆さんのやはり要望ということもあるんじゃないか、そういう中でそういう方向ではないかと私どもは考えておりますが、これはもう私どもとしては今の形で一応結論をつけたことでございますので、これで今の時点ではいいのではないかというふうに考えております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/67
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068・畠山健治郎
○畠山委員 ありがとうございました。
五次勧告に基づきまして第二次推進計画も決定されておりますが、端的に申し上げますれば、当初構想された権限移譲とほど遠い内容に終わっちゃったというふうな思いがしてならないと思っております。
一方、地方分権推進法は来年の七月で期限切れを迎えることでございまして、そこでお尋ねをいたしたいというふうに思いますが、推進委員会として今後の活動の力点はどこに置かれて御活躍になることになるんだろうかというようなこと、特に法の執行状況の監視だけではないかというふうに思うんですが、率直にその辺のところをお聞かせいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/68
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069・諸井虔
○諸井参考人 今の時点では、私どもは、私どもが三年半、四年近くにわたって本当にもう毎日のようにいろいろな会議をやって積み上げましたその成果がこの法案でございますので、この法案を何とか成立させていただけるのではないか、もうその一点に関心が今集中をしておるわけでございます。ぜひそういうことでよろしくお願いしたいと思います。
ただ、この法案が通りましたとしても、その後、政省令、条例といったものも整備していかなくちゃなりません。それから、新たな法律がどういうふうな形で整理されていくのかというようなことも見ていかなくちゃなりません。いろいろチェックすべきことはまだ多々あると思います。五次勧告も、計画まではいっておりますが、その後の措置もこれからのことでございます。
それから、新しい仕事をするかどうかということについては、まだ実は委員会としては最終的な結論を出しておりません。地方自治体がどういうふうなお考えであるのか、あるいは各省庁がどうなのか、あるいは有識者の皆さんがどういうふうにお考えなのか、いろいろな点を勘案をした上で結論を出したいと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/69
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070・畠山健治郎
○畠山委員 ありがとうございました。
最後に、もう一点お伺いいたしたいというふうに思います。
指針勧告との関係についてでございますが、自治事務に対する中央政府の関与は、一般ルール、つまり地方自治法に基づいて行うことが推進委員会の基本的なお考えであったというふうに思うんです。ところが、個別法においても幾つかの是正要求が盛られております。中には、自治事務に対する中央政府の直接執行の規定さえあるわけでございます。個別法の性格上、そうした規定が絶対に不可欠なものか大いに私どもからすると疑問に思うわけでありますが、推進委員会はどのような理由で承認をなさったのか、その辺のところをお伺いをいたしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/70
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071・諸井虔
○諸井参考人 先日来、当委員会でやはりいろいろ議論しておられるところだと思います。
私どもも、さっき申し上げたように、それぞれの項目について各省と相当いろいろ突っ込んだ話、こんなケースが起こるんじゃないか、あんなケースが起こるんじゃないか。やはり、片方では各省庁もそれなりに自分の分担管理しておる行政について責任を負わなくちゃならないわけでありますから、間違いが起こらないようにというふうに考えるのは当然だと思います。それで私どもも、基本的には、関与が法定主義であり、一般法主義であり、あるいは透明であるべきだというふうに考えております。そこで関与の類型というものを定めたわけでございます。
しかし、一方で、個別法で関与について決めることをすべて排除するということになりますと、やはりいろいろな問題も出てくるわけでございます。これを入れておくことが分権の方向について非常に大きなマイナスであるというふうには考えておりません。あるいは、そういう部分について個別法で関与が残っているんだというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/71
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072・畠山健治郎
○畠山委員 はい、ありがとうございました。
それから、次に北村参考人にお尋ねをいたしたいというふうに思います。
法定受託事務に関する定義が指針勧告が行われる都度に変わって、法律案はその概念からかなり広範な内容を含むものとなっておりますことは、御案内のとおりかと思っております。
そこでお尋ねをいたしますが、法定受託事務の概念についてどのようにお考えなのか、お願いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/72
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073・北村喜宣
○北村参考人 委員御指摘のように、法定受託事務を取り巻く経緯からわかりますとおり、当初考えておったものからかなり膨れたというのは、諸井参考人もおっしゃったとおりだと思います。本来は自治事務に含まれてもよさそうなものも法定受託事務に入っているというのは、これは自治省の方もそういうふうにおっしゃっていて、そのとおりだと私も認識いたします。
したがいまして、法定受託事務と申しましても、法定受託事務中の法定受託事務みたいなそういうものもあれば、かなり周辺的に位置づけられるようなものも恐らくはあるだろうというふうに認識するわけでございます。したがいまして、すべてについて国の関与等々が同じルールでというか、同じ程度に行われるというふうに考えるのは恐らくはよろしくないだろう。法定受託事務の個々の事務の性質等々から判断して、踏み込むべき程度というのが決められるのだろうというふうに考えております。
これはほかの参考人からも御指摘あったんですが、実は二条九項というのが法定受託事務の定義でございますが、ここからだけではなぜこれが法定受託事務なのかとよくわからないんですね。分権推進計画では「国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から」という言葉が入っておりまして、これは「利便性」とか「効率性」ですから、なるほど、自治体の事務としてやるのがいいかなというふうになるんですが、これがなくなっております。法制局あたりでけ飛ばされたというふうにも伺いますが、こういう言葉を入れるということは、これが自治体の事務であることをはっきりさせる上に非常に重要な点であろうかと思いまして、修正ということもあり得れば、この点も一つの候補なのかなというふうに考えております。
内容的にも、「地方公共団体が処理する事務」という言い方と「地方公共団体の事務」という言い方が混在して入っていて、両方とも法定受託事務であるというふうな理解もございまして、その辺は、わかりやすさという観点から見ますれば、統一してお書きになる方がよろしいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/73
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074・畠山健治郎
○畠山委員 ありがとうございました。
法律案では、自治事務についての定義はなされておりません。法定受託事務と法律で明示しない限り自治事務とされておるわけですね。
自治事務という言葉の妥当性、あるいはまた法律上も定義づけるべきだという意見もございますが、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/74
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075・北村喜宣
○北村参考人 委員御指摘のとおり、この書き方はいわゆる控除説でございまして、引き算して残ったものが自治事務という言い方になります。先ほど私が申し上げましたとおり、法定受託事務もなかなかいろいろなところでぴしゃっと決まらないところがありまして、法定受託事務の概念のあいまいさというのが、結果的に自治事務の概念のあいまいさにつながっているということであろうかと思います。
では、自治事務をぴしゃっと書けばいいというふうになりますが、そうすると、どっちにも入らないようなものが出てきて、また第三のカテゴリーかというふうになりますと、余計な紛争といいますかトラブルが発生するという意味では、引き算というのは確かにいいことだと思います。その前提として、法定受託事務の概念自体がかなりクリアにされなければなりませんし、今後国会で審議される法律においても、自治事務か法定受託事務かというのは仕分けをされるわけですね。そのときにルールというのを全体で合意しておくというふうなことが大事、勝手に政府の方でそれを地方分権に反するような解釈でつくらせないような、そういうチェックというのは法律レベルでも必要でしょうし、当然、今後の個々の法案審議においても必要になるのだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/75
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076・畠山健治郎
○畠山委員 ありがとうございました。
次に、中央政府による関与は、一般ルール法であります地方自治法において規定されておりますが、個別法を見ますと、自治事務であっても許可基準などがかなり詳しく規定されております。その意味で、個別改正法と自治体の条例による政策の裁量についてどのようにお考えでしょうか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/76
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077・北村喜宣
○北村参考人 おっしゃるとおり、自治事務であっても、個別法を拝見しますと、許可基準というのが結構厳しく書いておるのですね。それは、従来あった法律ですから、その延長線上にあるのでやむを得ない面もあるのかなというふうに第一には考えるところでございます。そういう意味では、なかなか機関委任事務との違いがよくわからないことにもなろうかというふうに思います。
ただ、自治事務でございますから、自治体の条例制定というのが、法律に反してはいけませんが、比較的自由にできるということで、その解釈は自治体に第一次的な権限があるということが言えようかと思います。ですから、個別の法律でも、そうした条例制定は可能なのだということをはっきり書いた方が、自治体の方が安心して乗っかれるということもありましょうが、逆に、はっきりと書くと、書いていないものはできないんじゃないかというふうな余計な心配もありまして、なかなか私も、どちらがいいのか、にわかに決めかねておるところでございます。
それで、自治事務の場合は、先ほど白藤参考人もおっしゃいましたが、同意を要する協議というのがございまして、これは同意が必要なんですね。拒否権というのが結果的に持たれることになるというと、自治事務としたことの意味がなかなか生きてこないということはあり得ようかと思います。例えば、都市計画などは、もう外枠を国がぴしゃっと決めておりますから、自由にできると言われてもなかなかそうはいかない。これは地方自治法の改正の問題以前に、都市計画法、個々の法律の問題でございますが、そういう指摘ができようかと思います。
また、同意権とかあるいは補助金に関する裁量権をちらつかせて、自治体の意思決定に影響を与えるということがあってはなりませんから、そういうことを防止するような確認的な規定、あるいは確認的な御答弁というのを、こうした場で国民にわかる形で、あるいは自治体の懸念を払拭するような形で明確にされることが必要なのではないかというふうな感じがします。国の方は、そんなことはしないというふうにおっしゃるに決まっていますが、そんなことをしないのだったら別に書いてもいいじゃないかというふうに思うわけでございまして、この辺は、立場、見解の違いではございますが、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/77
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078・畠山健治郎
○畠山委員 ありがとうございました。
最後に、もう一つだけお尋ねいたしたいというふうに思います。
法律案では、産業廃棄物処理について、府県の法定受託事務となってございます。参考人は、産廃行政について深く御研究なさっていると承っておりますのでお尋ねいたしたいというふうに思いますが、こうした事務の位置づけについてどのように受けとめられていらっしゃるのか。また、法定受託事務とした場合、府県の産廃行政はどのように変わっていくことになるでしょうか。御見解を承りたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/78
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079・北村喜宣
○北村参考人 ここに御臨席の委員の方々の地元でも、恐らくは産廃に関する紛争が起きておると思うのです。私のふるさとであります京都でもそうしたことが起きておるのですね。
それで、実は、産業廃棄物に関しましては、処理施設の許可というのが法定受託事務なんですね。立地に関しては、今現在、事前の指導要綱で同意書を持ってこいとか、ああだこうだということをしておるのは、御案内のとおりでございます。基本的に自治体の事務でございますから、そうした事前手続を要綱でやっていたものが条例でできるというのが一つの筋かとは思いますが、しかし、同意制というのはなかなか法的に要求するのは難しいというふうなのは、法律学者ならば普通に考えることだというふうに思います。
実は、産廃行政も、産廃処理計画の方は自治事務になっておるのですね。ですから、そこで今後は、紛争は結局水源との関係で起こりますから、水源を外すとか、そういうことを全県的な議論をして決めて、その上で立地申請をしていただくというふうにするのがよかろう。今は許可の時点に、ここはいいところか悪いかとかリサイクルをちゃんとやっているかとか、はたまたこの業者は質がいいか悪いかとか、ありとあらゆる問題が投げ込まれて議論がふくそうしておりますので、これを機会に、自治事務とされた計画の時点で、そういうゾーニングといいますか立地規制といいますか、そういうものをして、それからそれをクリアしたものが申請にいくという、紛争の絡み合い状態をほぐすような形でやるべきだろうというふうに考えております。
もちろん、そうしたことをすると、どこでも嫌ですから、知事さんの政治的な責任が強くなるのですね。線引きとなると、なかなかうちは嫌だという話になってまいります。市町村長に照会すると全部ノーという話でありますが、しかし、それは県として産廃行政の責任がございますから、一件もなしというのはあり得ない話でございます。その辺はまさに地方分権でございますから、県の責任でもって、あるいは知事さんの政治的な責任でもってそうしたゾーニングをぴしゃっとやって、そして、そういう紛争をする不信感の原因は、ある日突然ここに決まるというのが決定的に多うございますから、段階的に合意を積み重ねていく、一発の同意ではなくて、合意の積み重ねによってそういうことができるように、今後改正される廃棄物処理法のもとでも運用がされればよろしいのではないかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/79
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080・畠山健治郎
○畠山委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/80
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081・高鳥修
○高鳥委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時二十九分休憩
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午後一時三十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/81
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082・高鳥修
○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午後は、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案審査のため、参考人として京都大学大学院法学研究科教授佐藤幸治君、法政大学法学部教授五十嵐敬喜君、構想日本代表・慶應義塾大学総合政策学部教授加藤秀樹君及び国民医療研究所所長・元大阪大学医学部助教授野村拓君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序でありますが、まず各参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
それでは、佐藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/82
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083・佐藤幸治
○佐藤参考人 佐藤でございます。意見を述べる機会を与えていただきまして、まことに光栄に存じます。
私の専門は憲法学ですが、行政改革会議の委員として、また推進本部顧問として、行政改革問題に関与する機会を与えられました。本日は、そこで得た知見も加味しながら、憲法学の観点から所見を述べたいと存じます。
行政改革会議の最終報告はこういうように言っております。「われわれの取り組むべき行政改革は、もはや局部的改革にとどまり得ず、日本の国民になお色濃く残る統治客体意識に伴う行政への過度の依存体質に訣別し、自律的個人を基礎とし、国民が統治の主体として自ら責任を負う国柄へと転換することに結び付くものでなければならない。」と述べております。
こうした課題に取り組まなければならない理由は、二つあると思います。
一つは、第二次大戦後の世界を特徴づけた冷戦構造の終えんと、その原因でもあり結果でもあるグローバル化の展開であります。それは、日本についていえば、厄介な国際政治に正面からかかずらうことなく敗戦の廃墟から立ち直り、経済的な豊かさの追求に専念し得た場が消滅したことを意味しております。国家の垣根の意味が少なくなり、国家主権が相対化する中で、日本の国家国民は積極的に生きることを求められております。
もう一つは、日本が高度経済成長のさなかにあるときには顕在化しなかった問題、つまり、異なる価値観や政策目的間の対立や矛盾を基本的な国政方針のもとで的確かつ積極的に調整していくという問題がいよいよ大きく我々に迫ってきているということであります。
こうした内外の著しい環境変化は、国家の統治能力の質の向上を求めている点で共通しております。
では、我々は何をなすべきなのか。
一国の政治の質は、結局のところ、国民の精神のありようと政治的資質によって規定されてまいります。最終報告にうたっているように、国民は、統治客体意識から脱却して、自律的個人を基礎とする自由で公正な社会を築くことを目指すとともに、行政権のあり方について、より直截にみずからの問題として受けとめ、行政権を自己統治の一環としてより強く自覚するようになることが重要であります。一口に言えば、行政権を国が行うにふさわしいものに限定しながら、その行政権を国民により近く引き寄せることであります。
従来、憲法六十五条に言う行政権について、漠然と法律の執行ととらえるとともに、その担い手である内閣を行政各部と一体的にとらえて、これを行政と観念し、その行政を国民と国会が一体化した政治がコントロールするという図式が一般的な理解ではなかったかと思います。しかし、現在我々が直面している諸困難は、まさしくそうした図式の問題性を浮き彫りにしているように思われます。
憲法に言う行政権は、法律の執行に尽きるのではありません。内閣の事務を具体的に定めている憲法七十三条の冒頭の一号にあるように、国務を総理すること、つまり高度の統治、政治作用、あるいは総合戦略、総合調整作用と言ってもいいと思いますが、これも行政権の重要な内実をなしております。
憲法に言う行政権がこのような高度の統治、政治作用を含んでいるとすると、従来の図式とは違って、国民、国会、内閣を一体的にとらえて政治と観念し、行政各部、つまり官僚の持つ情報と専門的能力を存分に活用しつつ、行政各部をコントロールするという図式こそ、憲法にふさわしい図式であるというように思われるのであります。
さて、行政権がかようなものであるといたしますと、その担い手である内閣のあり方についても見直しをする必要があります。
つまり、内閣の統治、政治機能の強化を図る必要があります。そして、この内閣機能の強化を図る上で、内閣総理大臣の指導性の発揮が不可欠であるということを強調しておきたいと思います。憲法が内閣総理大臣を内閣の首長としているということに、そのことは適合していると思います。
申すまでもなく、内閣は、国民代表機関たる国会が国会議員の中から指名し、それに基づいて任命された内閣総理大臣が、他の国務大臣を任命し、組織するものであります。こうして、内閣は、直接的には国会の信任に基づいて誕生し、ひいては国民の信託にこたえるべき立場にあります。
最終報告と基本法がその方向を明確に打ち出したことを、私は高く評価してまいりました。今回提出された諸法案は、最終報告及び基本法の趣旨を可及的に具体化しようとしているというように思います。
まず、内閣法改正案ですが、現行法一条が「内閣は、日本国憲法第七十三条その他日本国憲法に定める職権を行う。」とそっけなく規定しておりますけれども、それを改め、「国民主権の理念にのつとり」ということを加えて一条一項とし、同条二項として「内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う。」というようにしております。この二項は、現行法二条二項に「全国民を代表する議員からなる」の文言をつけ加えた上で、一条に移したものであります。
これは、まさに先ほど述べたように、内閣は、国民、国会と一体化しつつ、行政権の行使について、直截には国会の信任に、ひいては国民の信託にこたえるべき存在であることを明確にしようとしたものであるというように受けとめております。
また、現行法二条一項は「内閣は、首長たる内閣総理大臣及び二十人以内の国務大臣を以て、これを組織する。」というように定めておりますが、改正法案は「首長」の前に「国会の指名に基づいて任命された」というものを加え、「国務大臣」の前に「内閣総理大臣により任命された」ということを特につけ加えました。これも、内閣は国会によって選ばれた内閣総理大臣が組織するものであるということを明確にし、内閣総理大臣の主導性の意義を浮き彫りにしようとしています。
さらに、現行法四条二項には「閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。」とありますが、その後段に「この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。」というように定めております。ここにも、主導的地位に立つべき内閣総理大臣のありようを明確にしようとする趣旨がうかがわれます。
最終報告及び基本法は、内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化の必要を強調し、具体的には、内閣官房の強化、内閣府の設置を打ち出しました。
まず、内閣官房の強化ですが、内閣法改正案十二条は、現行法十二条と違って、「内閣の重要政策に関する基本的な方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務」などを所掌事務として掲げるとともに、機動的かつ有意的な活動を可能にする組織運営のあり方に工夫を凝らしております。
次に、内閣府ですが、内閣府を内閣に創設するこの内閣府設置法案は、今回の行政改革の特筆すべき事柄の一つであると思います。中でも、内閣府に設置される経済財政諮問会議と総合科学技術会議に、私は大きな期待をかけております。
例えば、経済財政諮問会議は、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項などについて調査審議を行うものとされております。
法案は、特命担当大臣に強力な調整権能を付与しておりますが、この経済財政諮問会議に副総理格の特命大臣がついて、経済財政問題について強力な指導性を発揮することを私はイメージとして描いております。実際の運用にゆだねられているところが少なくないとはいえ、この会議の活動いかんが今回の行政改革の成否のかぎを握っていると言っても過言ではないというように思っております。
省庁の再編について述べる時間的余裕がありませんが、この問題についてはさまざまな評価があることは、承知しております。
基本法の審議の際にも申したことですが、内閣機能の強化に比べれば、省庁の再編は、より手段的であるというように思っております。そうした観点から見るとき、半永久的で堅牢と思われていた行政組織にメスを入れたという事実自体の持つ意味は、決して少なくないと思われます。
振り返ってみれば、内閣機能の強化、内閣総理大臣の指導性の確立は、明治憲法時代以来の我々の大きな宿題でありました。明治憲法の悲劇は、後世、明治憲法下の総理大臣ほど哀れな存在はまれであると評されるような制度下にあって、内閣がその政治的責任を全うできないところに大きな原因があったというように思っております。今回の改革法案は、その長年の宿題を現代的な状況のもとで果たすという意義を担っているのではないかと考えるものであります。
最後に、行政権は三権の中の一つであります。そのあり方を変えるということは、他の二権のあり方に影響してくるということを指摘しておきたいと思います。
最終報告が、内閣機能の強化に当たっての留意事項として、権力分立ないし抑制均衡のシステムに対する適正な配慮を求め、基本法が司法改革への取り組みをうたったのは、そのためであるというように理解しております。そして、司法改革が具体的な政治日程にのってきたことを、大変うれしく思っている次第であります。
さらに希望を述べれば、国会による行政コントロール機能の強化が進むことを願っております。そのためにも、国民が、統治主体として政党そしてよき政治家を育てることに関心を持ち、政党も国民に向かってより開かれた姿になり、国民の統治主体意識を醸成することを願ってやみません。
以上で、意見陳述とさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/83
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084・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、五十嵐参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/84
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085・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 五十嵐です。
佐藤先生は内閣機能の点について意見を述べられましたけれども、私は、省庁改革の方について、意見を中心に述べさせていただきたいと思います。とりわけ、公共事業のコントロールについて、これと行政改革の関係をお話しさせていただきたいと思います。
最近、徳島県吉野川の河口堰の建設をめぐりまして、異常な事態が起きております。周知のように、この河口堰には治水効果などの面から多くの問題点があり、徳島市民は、建設の是非を建設省だけではなくて自分たちの住民投票で意思表示をしたいということを圧倒的な多数をもって徳島市議会に対して直接請求を行いました。これに対して徳島市議会が直接請求を否決したために、改めて、住民はこのたびの選挙によって議員を議会に送り込みました。その結果、条例制定を可とする議員が多数を占め、今後住民投票がもし行われれば、反対の意思表示の方が上回るだろうと予測されております。
異常な事態というのは、これを受けて建設大臣が、一つは、みんなが反対するならもう工事を中止するという発言をしたということ、それから間もなく、再び反転いたしまして、みんなが反対しても工事を続行すると、相矛盾する発言を繰り返したということであります。この発言は、いわゆる公共事業に言う公共とは何かということに関しまして、憲法の原理、国民主権の原理にもかかわる重大な論点を含んでいると私は考えております。
今回の行政改革による国土交通省の設置は、みんなが反対しても行う公共事業というものを問う大きな改革になるのではないかというふうに私は理解しておりますので、その点に関して少し意見を述べさせていただきたいと思います。
御承知のとおり、今回の行政改革は、行政の簡素効率化あるいはスリム化などを目指しました。しかし、今回、建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁を合併してつくられる国土交通省は、大臣官房と十三の局、職員約五万人、予算約十兆円、ただし、財政投融資もそこへ入れますともうちょっと額は膨らみます、許認可数約二千五百三十二という世界に全く例を見ない巨大官庁になります。これは、公共事業に関する予算あるいは法律あるいは定員を一つも削らないで従来の省庁を合併したものですから当然こういうものになるわけですけれども、何でこれが簡素効率あるいはスリム化ということになるのでしょうか。
この国土交通省の巨大化については、実は、私が意見を述べるだけではなくて、行政改革会議の会長を務めていた橋本前総理大臣も、余りの巨大さに驚きまして、中間報告段階では、建設省河川局と農水省を合併した国土保全省とその他の開発省に二分割しておりました。しかし、河川局の抵抗があったために、最終報告では国土交通省になっております。
ただし、これに関しましては、行政改革基本法第四十六条で、「公共事業の見直し」といたしまして、幾つかの条件をつけました。この条件をさらに吟味させていただければと思います。
一つは、国が行う公共事業を非常に限定するということであります。二番目は、国が個別に補助金等を交付する事業を限定すること。三番目は、地方支分部局に公共事業を主体的かつ一体的に処置させること。四番目は、民間委託を推進すること。五番目は、費用対効果など政策評価を行うことというのが、行革基本法で公共事業につけた条件であります。
これに向けて今どのようなことが進んでいるかということを点検いたしましたが、ほとんどこの条件が無視されているような状況にあることを申し上げたいと思っております。
第一の地方分権については、御承知のとおり、きょうの午前中も審議が行われておりますけれども、第五次勧告が、まさにこの公共事業の地方分権化というものを対象にした勧告でありました。これは、御承知のとおり、官庁の抵抗の前にあって、実りある成果を上げることはほとんどできませんでした。
補助金の削減でありますけれども、これについては、ここ一年の景気対策による公共事業の補正予算によりまして膨大に膨らんでおります。
三番目は、民間委託、これはPFIとして一部実現されておりますけれども、まだ効果がどのようになるかはわかっておりません。
政策評価あるいは透明化などを見ますと、今の吉野川河口堰をめぐっても明らかなように、必ずしもその政策評価がうまくいっているとは考えられません。恐らく、むだだと思われる公共事業が全国に山ほど今あると私は思っております。
最後の切り札、地方支分部局というのがうまくいくかどうかということでありまして、これについてさらに論点を詰めてみたいと思っております。
御承知のとおり、地方支分部局、地方出先機関というのは必ずしも新しくつくられるわけではありません。建設省は、既に地方建設局など八つのブロック単位の支局と工事事務所・出張所八百八十六をつくりまして、二万人の体制を擁しております。運輸省も、ブロック単位の地方運輸局などを含めまして、合計三千五百十一人、さらに、空港単位でいきますと地方航空局など四千四百三十一人を持っている膨大な地方の出先機関を持っております。
今回は、これをくっつけて幾らか整理統合すると、国の方から見れば、地方出先機関の方に事業を移すので霞が関はスリム化するという論理で地方出先機関がつくられたわけですけれども、これの内容を見ますと、まだ完全に地方支分部局の構想を明らかにされておりませんけれども、問題点がたくさんあると私は思います。
今回の行革に関係しまして、中央省庁等改革の推進に関する方針というのが出されておりますけれども、その方針を見ますと、府省の長は、地方支分部局に、その判断で事業を決定し執行を行うことができるよう一括して委任するということになっておりまして、その内容について言えば、訓令で定めるということになっております。
しかし、今の体制でいきますと、この地方支分部局、つまり地方出先機関は、数万人の人数、数兆円のお金を持ちまして、これで箇所づけを行ったりあるいは入札を行ったりするということになっておりまして、その内容がいわば国民のほとんど目に触れない訓令によって定められるというのは、極めていかがなものかというふうに思います。
もっとさらに大きい問題は、この地方出先機関に関しまして、果たして国会のコントロールが及ぶかどうか、あるいは自治体のコントロールが及ぶかどうかということであります。これは恐らくほとんど及ばないというのが今の通説であります。理由は、ほとんどコントロールする具体的なシステムを持たないということです。逆からいいますと、この地方出先機関が何らコントロールを受けないままに独走する可能性があるということであります。
この独走について、先ほど佐藤参考人から、内閣法に、まさに国民主権の前提に立って内閣機能を強化するということでありますけれども、国民主権という観点は、行革、省庁改革にも当然生きねばなりません。国会も自治体もほとんどコントロールできない地方出先機関をつくるというのは、名分は地方でありますけれども、実際上は行政庁の肥大化であり、地方分権にも反する、逆行する改革となっているのではないかというふうに思います。
先ほど冒頭に、建設大臣が、大多数が反対してもなお公共事業を続けると言ったのは、国民主権に基づく国民の利益を考えて公共事業を決定するというよりは、むしろ組織の論理あるいはバックにあるその他の論理によって公共事業を遂行するという行政庁の考え方を代弁したものではないかというふうに私は推測しております。
最後に、幾つか、公共事業に関する、本格的なメスを入れなければいけないことを申し上げたいと思います。
一つは、公共事業の遂行、特に昨年以来の大乱発によりまして、財政が非常に困難に陥っているということであります。
御承知のとおり、国と自治体を合わせてもう既に六百兆円の借金を抱えているということでありますけれども、このまま公共事業を続けますと、国はもちろん、自治体でも極めて深刻な財政危機が発生する可能性があるということであります。
最近決定されました五全総やその他公共事業に関する十六本の中長期計画を見ますと、依然として、海峡プロジェクト、巨大な橋あるいは整備新幹線あるいは首都移転など、公共事業オンパレードでありますけれども、財政の観点から見て、必要と必要でない公共事業に振り分ける必要があるというのが第一点であります。
二点目は、環境容量がありまして、環境を見ましても、非常に日本の環境はピンチであります。山の中に入ってみるとわかりますけれども、杉の木が非常にやせ細っておりますし、川はダムで埋まっておりますし、海はテトラポッドで包囲されるという状態であります。
特に重要なのはダムでありまして、ダムはいずれそのうち堆砂によって埋まると言われておりまして、これが二十世紀の最大の産業廃棄物になる可能性があるというふうに言われています。にもかかわらず、まださらに三百のダムをつくるというのが建設省の計画でありまして、これなども、絶対にもうつくってはいけないものの代表ではないかというふうに私は思っております。
住民投票を行っている市民の人たちの声を聞きますと、公共事業に対して国会がいわばノーコントロールでいることに対しまして、非常に危機感を抱くようになっておりました。住民みずから公共事業を自分たちの意思で決めたいと言っているのは、ある意味でいうと、地方自治体の首長や議会、あるいは政党をも超えて自分たちの意思を発動したい、つまり国民主権がそこまで来ているということだろうと私は思っております。
国会は国民の声を受けて、国土交通省の設置をやめるべきだし、もっとみずから公共事業をコントロールする公共事業コントロール法案を可決すべきであるというのが私の意見です。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/85
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086・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、加藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/86
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087・加藤秀樹
○加藤参考人 加藤でございます。
今回の省庁再編成、行政改革としての再編成は、大変な一大事業であると同時に、これは器づくりであって、まさに行革のスタートだと私は思っております。そういう意味では、中身はこれからであって、その魂をどう入れていくか。魂をどう入れていくかということについては、先ほど佐藤参考人もおっしゃっておりましたように、まさにこれは、一言で言えば、政治家がどうリーダーシップを発揮するかに尽きる、私はこう思っております。
幾つか、法案について二、三、私の意見をお述べいたしたいと思います。それから、その後で、紙をお配りいたしておりますけれども、政治家のリーダーシップということについて少し話をしたいと思います。
まず各法案についてですけれども、私は、つい最近まで、二十年余り役人をやっておりまして、あのあたりに座って国会の審議を聞いたりという、そんな経験も踏まえてのことなんですが、まず第一に、今回、設置法の中から権限規定が落ちることになりました。これは大変な快挙だと私は思っております。明治以来の大改革であって、この委員会は、そういう意味では歴史的に必ず名を残す委員会である、そう確信をしております。
これについては、この前の基本法のときにも参考人として私は同じことを申し上げましたが、これまでは、権限規定があるということで、日本じゅう、あるいは日本人一人一人の頭の中が役所できれいに切り分けられていて、役所の権限を全部足し合わせると、極端に言えば日本じゅうの国民の行為、あるいは一人一人が行っていること全部がどこかに属してしまう、そんな仕組みになっていた。これをやめよう、あくまでも法律に基づいて行政を行うルール・オブ・ローという原則に徹しようということで、大変に大事なことであったと思います。
それから二番目に、内閣府と内閣官房です。
私は、基本的には役所というのはなるべくつくらない方がいいと思っております。ですから、これをどう生かすか、その上で、内閣府と内閣官房というものに分担したものが屋上屋を重ねることがないよう、あるいは調整など二重手間にならないようにするには、これまた政治家のリーダーシップというのが非常に重要になってくると思います。また、これが各省の出先とならないようにするには、人材登用の仕方も非常に大事であると思います。
とりわけ、経済財政諮問会議が新しく設置されることになりました。これはおそらくはアメリカのCEAを念頭に置いたものであるのではないかと考えますけれども、これが有識者の単なる集まりではだめだと私は思います。きちっとワークさせようとすれば、構成員が責任をとるようにしないといけない。それには、有識者の単なる集まりではなくて、フルタイムでこれに専念させる。例えば一年という任期を限って専念させる、それで、責任を持ってそこで意見を述べてもらうということが必要であると思います。
それから三番目に、評価ですけれども、これは大変重要なことだと思いますが、大事なのは、日本の金融機関あるいは企業が何であそこまでだめになったかといいますと、やはりきちっと評価されていなかった、監査が機能していなかったということだと思います。あるいは、バランスシートをつくっていながら、そこにきちっと資産と負債が記載されておらず、それをだれもチェックしていなかった。したがって、評価というのは、第三者機関といいますか、外部から評価しないと機能しないと私は思っております。
そういう意味では、総務省の中で、評価というものを、設置法の中で、権限があるというような書き方であったかと私は記憶しておりますけれども、これではやはり機能はしないのではないか。評価を行うための法律を個別につくって、それに基づいて外からきちんと評価する仕組みが必要ではないか、あるいは各省においても最低限外部からのチェックが必要である、こんなふうに思います。
それから、直接今回の法案審議には含まれていない話ですけれども、その前提として、国あるいは地方自治体も含めてですけれども、バランスシートをつくらないといけない。そこで、先ほどこれは五十嵐参考人のお話にもありましたけれども、公共事業にどういう金を使って、それがどう生きているかという、まさに企業がリストラをするにはバランスシートからスタートするわけでして、国の行革というのはまさにリストラに当たるわけですから、このバランスシートというものをつくらないとそもそもスタートできない、これが不可欠であると思っております。
以上のことについてさらにこの委員会で議論を尽くしていただくとともに、行政改革を進めるということはまさに国民の総意なんだということを、もう一度念を押す意味で、今回の再編あるいはそれをどう運用するかということを含めて、ぜひ附帯決議でもって、これは国会の決議なんだということで、形に見えるようなことでお示しいただければいいのではないかと思っております。
それから次に、今後これをどう使っていくか、最初に申し上げました、どう魂を入れるかということについて一つ申し上げますと、これはもう既に先ほど佐藤参考人がお話しされたことに尽きると思います。
大まかに言えば、やはり内閣で大枠を決めて、それを各官庁が具体的なことをこなしていくということになると思いますけれども、そういうことで見れば、設置法の所掌事務にどう書いてあるかというのは実は全く問題ではない。それは単に役所の、仮にこんな仕事が生じたらどこで分担するかという、単なる分担を示しているだけであって、実際にどういう仕事をするか、あるいはしないかということは閣議できちっと決めて、各大臣がその責任において実行するということに尽きるのだと思います。ですから、そういう意味では、所掌事務というのは余り大きい意味は持つべきではないと考えております。
そうであれば、国会議員のリーダーシップというのは実際何かといいますと、内閣との関係でいえば、やや失礼な言い方になるかと思いますけれども、やはりきちんと能力のある人が大臣になって、その上で、その方が長期に在任して、仕事を遂行していただく、抽象的にはこういうことだと私は思います。その能力というのは何かというのは確かに難しいのかもわかりませんが、例えばイギリスでは、党の幹部と言われる方は全部閣僚を兼務しております。
日本では必ずしもそこはそうではないのではないか。それがきちっと実行されれば政府委員に頼る必要はなくなると思いますし、あるいは、副大臣というのが生きると思います。また、その結果として国会機能は強化されるわけですし、政府委員に頼る必要がなくなれば、役人が今大変な時間とエネルギーを割いております根回しとか調整というのが不必要になってくる。その結果として、役人があるいはエコノミストとして、あるいはローヤーとしてきちっと生きるという本来の形になってくるのではないか、こう思っております。
一つだけ、公務員制度についてこの関係で加えますと、私は、したがって、公務員制度を余りいじくってもこれまた余り意味がないのではないか。むしろ、公務員の評価といいますか、今はやはり根回しとか調整にたけた人がどちらかというと評価される、結果的にそうなっている。そうではなくて、法律の専門家あるいは経済の専門家として評価される、そういう仕組みをつくっていくことが大事だと思います。それもひとえに、もとをただせば国会議員の方々のリーダーシップにかかっている、私はこんなふうに思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/87
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088・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
次に、野村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/88
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089・野村拓
○野村参考人 野村でございます。意見陳述の機会を与えていただきまして光栄に存じます。
国民医療研究所という肩書がついておりますが、どういう研究所かといいますと、まあ手弁当の研究所で、医学医療関係者と人文社会系の研究者、それからいろいろな医療団体の人が集まって、より広い視野から国民医療の確立を目指して検討し、政策提言をやっていく、そういうような研究団体ということであります。二百人の個人会員と百五十の団体会員の会費によって成り立っている、そういうところであります。「月刊国民医療」という機関誌を発行し、それから幾つかのプロジェクトチーム、講座、シンポジウムなどを定期的に開催いたしております。
その下にもう一つ、元大阪大学医学部助教授と書いてありますが、これは、私のように医学部という臨床医学中心の場で医療政策論のような異端の学問をやった人間は、ポストがなくてこういうことになったという点もひとつ御理解をいただきまして、そして本日の主題に入らせていただきたいと思います。
今回は、行政改革による中央省庁改革、特に独立行政法人制度の創設が国民医療に及ぼすであろう影響、関連して、医療、福祉において国立の機関というのはどうあるべきかというようなことに絞って、短い時間でございますので、述べさせていただきます。
申し上げることは三点ございまして、第一点は、これまで国立病院・療養所がいわゆる地域医療において果たしてきた役割、そういう役割が今度は独立行政法人化によって阻害されはしないかということが第一点であります。
今から十三年前、一九八六年に、国立病院・療養所二百三十九のうち七十四を整理するという案が厚生省から出されました。七十四の内訳は、統廃合によって四十カ所、つまり、二つのものを一つにするとか、三つを二つにする、これは統合でございますね、統廃合でございます。それからもう一つは、三十四カ所は移譲する。国立病院を引き受けたいという地方自治体があったら手を挙げてください、地方自治体でなくてもそれに準ずるような組織であったら手を挙げてください、移譲しますから。統廃合で四十、移譲で三十四、七十四を十年間で減らすという計画を立て、そして実行にかかったわけであります。
ことしでその後十三年たちました。十三年たって幾つ統廃合が進んだか。統廃合の方は十五カ所、それから移譲は、三十四を目指して十一が移譲されている。もう十年計画はタイムオーバーで十三年たっておりますが、三十四カ所移譲する予定だったのが十一カ所しか移譲できなかった。
これはどういうことかといいますと、もう国立でしか成り立ちようがないような地域で、国立病院を移譲します、だれか引き受ける人は手を挙げなさいといってもだれも手を挙げてくれないわけで、どうしてもそういうことになってしまう。これは、地域によってはもう国立でなければ成り立ち得ない、財政力も弱い、民間病院もない、町が国立病院を引き受けてということはもう到底考えられない、そういうようなところが多いから、移譲計画というのは、三十四リストに挙げてまだ十一しか進行していない、こういう状況があったのではないかと思います。
つまり、北海道の、例えば弟子屈あたりへ行きまして、国立弟子屈病院の状態なんかを見る。隣の町までは車で五十キロほど走らなければならない、そういうところに一カ所だけ国立病院があって、それがなくなるということは一体どういうことになるか。一遍になくならずに独立行政法人という段階を経て、そして採算割れだからなくしてしまう、こういうようなことになってしまっては地域の医療は崩壊してしまう。ですから、町長さんなんかは必死になって移譲の相手を、受け皿を探して歩いたり、住民は不安の念に駆られたりと。こういうようなところが、これは先生方の選挙区の中でも一つ、二つ経験されているのではなかろうかなという気がいたします。
そしてまた、ある学者によれば、第二の過疎という何か新しい言葉が出てまいりまして、どういう意味かというと、第一の過疎は、いわゆる労働力人口の都市への流出によって起こる過疎でありますが、第二の過疎というのは、生活圏の中で医療機関がない、医療機関のないところでは心配で生きられない、そのことによってまた第二の過疎が進行しているのだ、こういう説を唱えられる方もいらっしゃるわけであります。医療がなくて第二の過疎あるいは地域の崩壊というようなことにならないような方向で、やはり国立病院というものの占める位置というのを見直して、なくす方で見直すのではなくて、存在の意味の方でやはり見直していただきたいなと思うわけであります。
これは、地域医療における国立病院の役割あるいは占めるべき役割、それが独立行政法人化で崩れてしまうのではないかということが第一点であります。
第二点は、いわゆる公費医療、あるいは不採算医療と言ってもいいわけでありますが、結核予防法とか、精神保健福祉法、児童福祉法などによるいわゆる公費医療、あるいは不採算医療といいますか、そういうものを担当してきた国立病院というのは、やはり障害児を抱える親たちにとっては非常に大事な存在であったわけであります。
端的に申しますと、重症心身障害児病棟というのは今日の国立病院・療養所の一つの特徴をなしていると思います。といいますのは、国立病院関係者は、この重症心身障害児病棟のことを略語で重心病棟と言って、重心病棟がどうなったというようなことを言うわけです。その場合に、その場にいたほかの医療関係者からは、重心て何のことだという質問が出たりいたします。つまり、国立病院だと重心という略語が通用するわけですが、国立でない普通の医療関係者だと、重心て一体何のことだ、こんな質問が出る。このことは、やはり国立病院が重症心身障害児医療において非常に大きな役割を果たしてきた。それに限らず、いわゆる公費医療、不採算医療で大きな役割を果たしてきたからではないか。こういう点が、独立行政法人化によって採算性あるいは企業会計が適用されることによって、どうなってしまうのか甚だ心配である、こういうことであります。
第三点は、非常にマクロに、歴史的に見た国立医療というものの役割、果たしてきた意味というものをもう一回とらえ直す必要があるのではないか。
よく医学部の講義などで、戦前に国立病院はあったと思うかなんて質問をして、思う人は手を挙げろというと、割合半分ぐらい手を挙げるわけですが、そこで驚いてはいけないと、戦前に国立病院はなかったのだ。あったのは、ハンセン病患者の隔離施設で、これは国立であった。それから国立大学の附属病院はあった。しかし、国民を対象として総合的な診療科目を持った国立病院というのは実はなかったのだと。
今日の国立病院の多くは、元陸軍病院、元海軍病院、それから元日本医療団結核療養所、それから温泉地に建った傷痍軍人療養所、こういうものが現在の国立病院、国立療養所の、圧倒的とまでは言いませんが、七、八割は占めているのではないかと思います。
ということは、国立病院というものは戦後民主主義の産物だというとらえ方があってしかるべきではないかと思います。明治憲法下ではなかった、新憲法下で陸軍病院や海軍病院なんかを国立病院に転換させたんだ、そういう意味では、マクロに見れば、戦後民主主義の産物として国立医療機関をとらえる必要があるのではないか。そういうものが、この間以来の、周辺事態法とか何となくきな臭い法律ができる状況の中で、国立が国立らしさを失ってしまうということは大変危ないことではないかなということをマクロな歴史的視点から申し上げまして、以上、参考人の意見陳述といたします。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/89
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090・高鳥修
○高鳥委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/90
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091・高鳥修
○高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三沢淳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/91
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092・三沢淳
○三沢委員 自由党の三沢淳です。
本日は、四人の参考人の皆さんにおかれましては、お忙しい中、国会に出向いていただきまして、心より感謝申し上げます。大変ありがとうございます。
まずは、佐藤参考人にお伺いいたします。
さきの自自合意において我が自由党が主張しましたことは、十年間で二五%の国家公務員の削減、そして政府委員の廃止、副大臣制度の導入であります。この二五%削減は、自民党さんなどとの協議で、閣議決定されることになりました。そして、副大臣制度は法案に盛り込まれることになり、政府委員制度についても追って議員立法がなされる模様です。
これらによって、行政組織のスリム化、政府委員の廃止による国会論戦の活性化、そして副大臣制度の導入による政治主導の現実は大きな前進を告げるものと考えますが、これらの制度改革、どういう影響を与え、どういう評価をされますか、まずは最初にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/92
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093・佐藤幸治
○佐藤参考人 お答え申し上げます。
三点にわたると思いますが、最初の公務員の二五%削減の問題であります。
私も公務員でありますので、二五%は大変厳しい数字である、行革会議では一〇%でございましたけれども、それが二五%というのは大変厳しゅうございます。現在、八十数万の公務員の中で三十万近くが郵政事業関係でありますが、その五十数万の二五%というのは大変本当に厳しい数字だと思いますけれども、国の減量、国家の減量を図る上で、こういう方法もやむを得ない一つの方法かなというように思わないではありません。
ただ、これを進めるについてはめり張りをつけていただきたいというように思います。事前規制社会から事後監視社会へという、キャッチフレーズ的に言われますけれども、事後監視社会をやろうとすれば、それは事後的な規制をきちっとやらなければいけないということになるわけでありまして、その辺のめり張りがどうつけられるかということが大きな課題かというように認識しております。
それから、次に副大臣制、政府委員関係でございますけれども、私は、結論的に申しまして、大変結構な考え方ではないか。先ほど加藤参考人の方からもお話がありましたけれども、これからのグローバル化する社会というのは、これは政治家も含めてでありますが、プロが重要な役割を果たす社会というように思います。政治がそのプロをいかに有効に使えるか。政が官を支配するといいますけれども、それは、官も一つのプロです、官に限りませんけれども、そういうプロを政が、政治がいかに有効に使えるかということがこれからのポイントだろうと思います。
それをするためには、さっきの加藤参考人のお話ですけれども、政治家自身がやはり高い見識とプロ的なセンスを持っていただく必要があるのではないか。副大臣制というのは、そういう方向での一つの工夫というように考えて、評価している次第であります。
最後に政府委員でありますが、御承知のように、政府委員制度は明治憲法で規定がございましたけれども、日本国憲法ではありません。それで、憲法学説としては政府委員制度とは認めない趣旨だという説もありますけれども、通説は、それはそういうようにかた苦しく考えるべきではない、御承知のように、国会法もそういう前提に立っておりますけれども。さらに申しますと、これは憲法をつくるときに極東委員会がやめろと言ったものでありますが、占領軍総司令部の方は技術的助言なら必要ではないかというようないきさつがあったということも承知しております。
少し長くなりましたけれども、政府委員をやめて国会の論戦を活発にしていただくということは、大変結構なことじゃないかというように理解している次第です。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/93
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094・三沢淳
○三沢委員 どうもありがとうございます。
やはり一番は、我々政治家がしっかりとした見識を持って、プロという意識を持たなきゃいけないということを教えていただきました。ありがとうございます。頑張りたいと思います。
続きまして、佐藤参考人にまた引き続きお伺いいたしますが、このたび内閣府に置かれる、重要政策に関する会議である経済財政諮問会議と総合科学技術会議は、今後の我が国のあり方を決めていく上で極めて意義深い、本当に大切な会議になると思われますが、これらの会議が総理大臣の指導力の発揮のもとに成果を上げていくためのポイントを幾つか挙げていただけましたら、お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/94
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095・佐藤幸治
○佐藤参考人 一つは、この会議が実質的に機能するためには、関係者を絞っていただきたいということであります。
幸い、このたびの法案は、経済財政諮問会議については十人、それから総合科学技術会議については十五人というように絞っていただきました。私も顧問会議で申したことでありますけれども、これが多くては、ほかの省庁が全部入ってきて、そこでまたいろいろ合わせないと進まないということではうまく機能しない。関係の深い大臣、それから民間の人たち、民間も含めて識者が入って、少人数でインテンシブな議論をしていただくということが大変重要だというように思います。
そのためにも、この両者は総理大臣が議長になっておられるわけでありまして、総理大臣が国政についてのどういう見識と意気込みを持っていられるかということが最終的には決め手になってくると言わざるを得ないと思います。
それから、もう一つつけ加えたいと思いますけれども、民間あるいは識者が入るということにつきましては、これは行革会議でもよく議論になったことでありますが、人の流動性をいかに確保するかということが極めて大事であります。
例えば、国立大学でありますと、一たんそういうところで、先ほど加藤参考人のお話ですけれども、フルで行くとなりますと、例えば休職するとかいろいろな方法があるかもしれませんが、授業とかいろいろ考えますと、それはなかなか難しゅうございます。そういうときに、出るとなりますと、結局退職する、そして戻ろうとするとまた新しい人事ということになるわけで、なかなかうっとうしいものがございます。
ですから、そこの、例えば国立大学ですけれども、民間は民間の難しさがあるかもしれませんが、国立大学の場合に、例えば、三年、四年程度であればそこでフルに活動して、その経験を持ってまた大学に戻れる、そういう仕組みを何とかつくっていただきたいというように思っておりまして、文部省の方々にもぜひそういうことを検討してほしいということを何度も言ったことがありますけれども、そういう仕組みも考えることが必要かというように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/95
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096・三沢淳
○三沢委員 ありがとうございます。
やはり民間の方の力が大切だということを今言われまして、ぜひそれを生かしていきたい、そういうふうに思われます。
佐藤参考人ばかり質問いたしまして、ほかの参考人の方々、大変失礼かと思いますが、我が自由党がお呼びしましたので、佐藤参考人にお聞きしたいと思います。
続きましてお聞きしたいのですけれども、今の質問とちょっと重複することがあるかもわかりませんが、内閣総理大臣の補佐体制強化について少しお伺いしたい、そういうふうに思います。
さきの行革会議では、委員として佐藤参考人はすばらしい手腕を発揮されましたが、この行革会議の最終報告では、「公務員制度の改革」の中で、「内閣及び内閣総理大臣を補佐する内閣官房、内閣府を支える人材を確保するための適正なシステムを確立する。」として、法案では総理大臣補佐官を三人から五人へ、そして秘書官もふやすこととしていますが、実際やはりこの日本では終身雇用制度がベースにあって、先ほども先生がおっしゃいましたけれども、一回仕事を離れてまたもとの仕事に戻るという難しさが日本的雇用慣行からあるのです。アメリカやイギリスなどのように政治任用職を大量に雇うことが難しくて、首相スタッフといえどもなかなか今はなり手がないのが現状じゃないか、そういうふうに思われますが、アメリカの大統領補佐官から国務長官にまでなりましたキッシンジャーさんや、現のサマーズ財務長官などは大学の先生でありまして、アメリカではむしろ当たり前の官民、官学交流が、日本ではさきの一橋大学の中谷教授のように、社外重役程度の兼業も大騒ぎになっております。
大学の先生や民間から優秀なエリートの方が官邸にすっと来れて、またすっと戻れるようなシステムにするにはどうしたらいいのか。そして、このことはまた野党の政策スタッフも同様に重要だと思われますが、ひいては国会審議の活性化、充実につながるもので、活発な政策論議の土台となると思われますが、この辺のところはどういうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/96
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097・佐藤幸治
○佐藤参考人 先ほど申したこととも重なりますけれども、先ほどは委員の方を中心に申しましたが、もう一つ大事なのは事務、支える事務の方に、やはり官民といいますか、民間からいろいろな流動性があってほしいというように思います。例えば三十代の若手の、大学でいえば助教授クラスのこれからという人たちがそこで経験を積むということが非常に重要なことかというように思います。
それで、また後で御質問が出るかもしれませんが、大学もこれから非常に厳しい時代を迎えることになります。かつてのように、国に全部お願いしますということだけでは済まなくて、グローバル化の時代で、大学も競争にさらされているわけであります。
そうなりますと、やはり相当な、経営的と言うと、その言葉にこだわる方がおられてちょっとあれなんですけれども、大学をいかに運営するかという視点が非常に重要になってくる。そうしますと、そういう人材をどこで育てるかという問題が出てまいります。
私は、例えば総合科学技術会議というところで、三十代の若いときに数年そこへ入ることによって、世界的な学問とか技術の動向、研究の動向などを把握する、そういう人たちがこれからの国立大学の運営などを支えていく、そういう人材を養成する場として活用されてしかるべきではないかというように思っております。
話は少しずれましたけれども、事務職員、支える事務のところでも、そういう人事の交流が必要だというように思います。このことを申しますと、国立大学、国家公務員としてそれはという反応がすぐ出てくるわけですけれども、私は、そこはこれからもう少し弾力的に考えていただきたいというように思います。
それで、申し上げたいのは、大学院の重点化政策に関連しまして、既に弁護士さんとか裁判官あるいは検事の方々に、国立大学に現に客員教授として来ていただいて、非常に実務的な観点からの、学生にいい刺激を与えていただいております。そういうわけで、既に人事交流の芽ができておりまして、今後それを促進していただきたい。
そして、公務員が何か全体の奉仕者としてどうのこうのと、難しいことを言うとそういう話になるのですけれども、これからは、御承知のように情報公開法が制定されまして、大学の勤務関係も基本的に公開されることになります。ですから、そうおかしなことにはならないだろうというように考えておりまして、いろいろな人事の交流ができる芽ができてきているのではないか。それを促進する方向でぜひお考えいただければというように願っている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/97
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098・三沢淳
○三沢委員 どうもありがとうございます。
私も今の時代、官民交流、今度政府でもその法案がおりてくるのですけれども、やはり官民学と、今のこの日本を本当に、二十一世紀を目の前に迎えまして、支えていくためには、いろいろな人の知恵が必要であると思っておりますので、ぜひこの辺のところも、我々政治家が、この辺のところが本当に詰まらないように、スムーズに流れるような、そういうものをつくっていかなければいけないんじゃないか、そういうふうに思っております。ありがとうございます。
続きまして、できましたら皆さんにお聞きしたいのですが、この最終報告の中には、能力、実績に応じた処遇ということで、能力、実績重視の給与制度導入や、年功序列の廃止も盛り込まれております。これは、だけれども、民間は営利を目的にしているんですけれども、公務員の人の場合は国のサービスということで、ちょっとなかなか比較するのは難しいのですが、具体的なものになると本当に難しいと思うのです。
私はこれまで全く特殊な世界に生きてきまして、まず、いつもプレッシャーを感じながら、いつもぴりぴりしながら、そういう生活を数十年送ってまいりました。その中で、今民間の方々は、本当に年功序列や終身雇用がなくなりまして、いつも危機感を持ちながら働いておられます。そういう意味で、こういう公務員の方も大変すばらしい仕事だと私は思います。頭脳の優秀な方がたくさんおられますし、こういう方々が今、国では、本当に夜遅くまで働いておられる方がたくさんおられますが、いつもこういう方も緊張感、プレッシャーを持ちながら能力を発揮していただければ、すばらしい仕事がもっとスムーズにできるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。
この前のいろいろな調査によりますと、今、小学生などの将来の夢は何かといったら大工さん、女の方は看護婦さんということでして、これが中学や高校生になると、公務員になりたいというのがまず最初に一番だということです。私は、公務員が悪いとは言いませんが、一般のお母さん方は、国家公務員の方も地方公務員の方々もひっくるめて公務員として見ておられまして、朝きちっと九時から五時まで行って、ノルマがなしで本当に楽な時間を過ごして、会社もつぶれることなくて、将来が一生安定して過ごせるという、だから今はお母さん方が、どんどん公務員になりなさいと勧めているような状態でして、これでは私は、ちょっと日本が、先が、今の子供たちが心配になってまいります。
公務員の方々というのは国家国民のために頑張っているんだ、公務員の仕事というのは大変なんだ、でもそのかわりやりがいのある仕事なんだ、そういうふうなあり方が、これから公務員の方々にももっともっと必要じゃないか。そのかわり、能力給といいますか、やはり公務員の方も頑張れば定年までの給料をそれまでに稼げるんだ、五十ぐらいまでに一生分の給料を稼げるんだ、そういうシステムもこれからあってもいいんじゃないかというふうに思いますが、これはなかなか難しいと思われますけれども、先生方、もしその辺のところ、お考えがあれば、ちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/98
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099・高鳥修
○高鳥委員長 時間が大分迫っておりますので、簡潔にお願いします。
それでは、五十嵐参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/99
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100・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 私もかつて自由業でありまして、そういう世界に生きてきました。
それで、これは、公務員の報酬をどのように考えるかということの基本的論点ですけれども、別にこういう形で考えていったらもう少し活路が開けるんではないかということです。
一つは、国家公務員も、先ほどありましたように二五%削減でありますし、自治体公務員も、今財政危機にありまして、大変なリストラ時代にあります。そういう意味でいえば、国家公務員も地方公務員も、公務員全体として永遠に安定した職業ではないということが社会的に生まれるということが一つです。
二番目には、情報公開が進んでおりまして、およそ仕事の内容もそれに対応する報酬も、さまざまな手当を含めまして、一般に公開される時代に入ったということです。
三番目は、先ほどからいろいろ出てきておりますけれども、私は、自治体も国も、将来民間人の採用とか交流というものが非常にふえてくるのではないかというふうに思って、そうすると、民間人を採用や交流するときに民間人の給料も参考になるということでありまして、外側の環境変化が、むしろ国家公務員あるいは地方公務員のこれまでのような報酬体系や、一番安定しているといいますか、永遠に解雇がないということに対して揺さぶりをかけていくのではないかというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/100
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101・三沢淳
○三沢委員 大変ありがとうございました。
なかなか難しい質問で申しわけありません。私も、いろいろ公務員の皆さんも不利にならないように、どういうふうにみんなスムーズに仕事ができるかということを考えてまいりたいと思いますので、またいろいろアドバイスをお願いいたします。
これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/101
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102・高鳥修
○高鳥委員長 次に、中川正春君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/102
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103・中川正春
○中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
四人の先生方には、先ほどからそれぞれ貴重な御意見をいただきまして、私からも改めてお礼を申し上げたいというふうに思います。
この行革議論でありますが、国会でやっております中でも、一般のというか、基本的な対立軸は何なのだ、こういうことが新聞紙上でも問題にされるようなことでありまして、どちらかというと行政改革自体は、これはみんながやらなければいけない、今のままでは日本はだめなんだという国民的なコンセンサスの中で私たちは議論をしているということ。その中で、どちらかというと、与党が出してきたもの、これはどうも本物じゃないよとか、あるいは遅いよ、あるいはこういう方向では逆におかしくなるよ、そういうことと同時に、私たち野党としては、もっと早くもっと大胆に、もう世界はそれは待っていてはくれないよ、大ざっぱに言いますと、そんな論点なんだろうというふうに思うわけであります。
その中で、そういうことを前提にしながら、まず最初にお聞きしたいのは、これは基本法の議論のときにもやはりあったと思うのですが、本来行政改革というのはその中身の問題、特に地方分権、これが実質的になされて、権限の移譲があって、その機能というのがスリムになった上で、それに合わす形で形あるいは組織論があるべきだ、こういうことだと思うのですね。
そんな中で、今回も具体的にこうして法案が上がってきたその議論で、では地方分権に対しては一括法案があるじゃないか、こういうことでありますが、これはよくよく見ていきますと、本当の意味の権限移譲じゃないのですね。
企画立案部門、それから業務の執行部門というのがあるとすれば、本来国が担当していく部分、中央が担当していく部分というのは、企画立案部分でその機能を発揮していって、マネジメント、これはそれぞれ各部署部署の現場サイドにおりていく。
その中で今回、現場と言われていたのが、地方公共団体に対して国の出張機関みたいな形で機関委任事務という業務がなされていた、そこの部分をただ現状の形で整理をしようじゃないか。マネジメントを自治事務という形でするのか、あるいは委託という形でするのか、それを整理をしようじゃないかというだけのことであって、本来の企画立案部門を地方自治体へ向いて移譲をするということ、この議論が全く抜けておるという形で進んでおりますね。
そういうことでありますから、中央省庁の再編をやっても、では具体的にこの法律で何人公務員を減らすことができるのだ。機能が下がるのであれば、地方自治体に分権するのであれば、その機能に基づいてどれだけ人数が減るのだといったら、そんな答えというのは出てこないということだと思うのです。
そういう意味合いで、今回のプロセスというのをどういう認識をされておるかということですね。これを佐藤先生、五十嵐先生、加藤先生にそれぞれ、まず基本的な認識として御意見をいただきたいというふうに思うのです。
〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/103
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104・佐藤幸治
○佐藤参考人 それではお答え申し上げます。
まず、地方分権が最初ではないかという御趣旨かというように承りましたが、これは基本法のときも申し上げたことでありますけれども、私もそれができればそれにこしたことはないというように思います。
機関委任事務についてお話がありましたけれども、これは形だけではないかと御指摘ですけれども、これ自体をするのが大変だったということは、いかに我々の認識がどういうものであるかということの徴憑だと思います。ともかくしかし、これは非常に関係者が苦労されて、この機関委任事務についての整理が一応できたということでありますけれども、本体は、私はやはり地方の行財政の改革抜きにはできない。今の企画立案の話もその話だと思います。
地方行財政の改革ができれば、それは日本の戦後の政治の体制の最も根本的なところにメスを入れることになると思いますけれども、これは基本法のときに申し上げましたけれども、それはやはり城の攻め方の問題であって、いきなり本丸に攻めるようなもので、それも一つの望ましい方法かもしれませんけれども、現実的な方法としては、外堀、内堀を埋めて、そして最後にという行き方もあるのではないか。今回はそういうものとして評価されるべきではないか。
そして、これは最終報告でも最後のところで強調しております。地方行財政の改革については、これから本格的に新しい体制で取り組んでくれということを強く強調しておりますが、その問題であって、城の攻め方の問題で、そこで少し先生と見解が分かれてくるのかもしれないというように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/104
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105・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 この問題を考えるときに、例えばアメリカにも同じような委員会がありまして、副大統領のゴアさんが行政改革の先頭に立っております。それを見ていただくと、非常に日本との差がはっきりすると思うのですね。どういうことをやったかといいますと、ゴアさんは、全国を回りまして、国民から直接意見を聞きまして、行政のどこに一体あなたは不満を感じるかということをヒアリングし、その結果、事務手続が非常に大変であること、むだが多いこと、それからその他のことについていろいろ具体的に直していきまして、それを何回かにわたって勧告していくということです。
そうなりますと、行政のどこに欠点があるかということが国民の間に非常によくわかりますし、改革の中身も国民の方で非常に評価できるということになるわけですけれども、日本の場合にはこれは全くやられておりません。行政改革も地方分権も、一言で申し上げますと、市民不在であります。確かに、内閣機能についていいますと、内閣機能の中で官と政との関係では、政が優位するようにという意味では市民と関係しています。これはなかなか、非常に大変遠い話であります。
それから地方分権も、いわば国と自治体との関係では機関委任事務を解体いたしまして、例えば自治事務をふやすという形でより市民に近づくようになっておりますけれども、市民から見たら非常にまだ遠いということでありまして、どうも市民の持っている関心事と今回の行政改革あるいは地方分権は、かなりずれていると私は思っております。これが第一点であります。
第二点は、ではどうしたらいいかということでありますが、いずれ二十一世紀になりますと、国民が主権者であるということがより強調された社会になってくるだろうと思います。そこで、政府においても、国においても、自治体においても、市民との関係を強める方向で行政を展開するということを本気で考えなければいけない。つまり、第二次行政改革、第二次地方分権というのにきょうから直ちに取り組まなければいけないのではないか。そこに市民が活力を加えることによって初めて、市民と行政改革、市民と地方分権ということが見えてくるのではないかというふうに思います。
そういう観点から見ますと、やはり国会は少し居眠りが長過ぎるというふうに私は思うわけですね。地方分権も、衆議院、参議院の両院決議があって地方分権推進法がつくられ、それから五回にわたって勧告がなされているわけですけれども、国会がその間にイニシアチブをとったということはほとんど聞きません。それから、行政改革についても、行政改革会議がつくられてしばらくたっているわけですけれども、これに対して国会がイニシアチブをとったということもほとんど聞きません。
要するに、別なところで作業が行われまして、その結果についていいか悪いか意見を言う。しかし、大勢的には、意見を言おうともほとんど無視されるというのが現実でありまして、逆から言いますと、憲法で定めている国会こそ唯一で最高の立法機関であるということを、もう一度先生方に深く考えていただければと思います。それが活性化することによって、市民ももっと行政改革や地方分権に本当の興味を抱くのではないかというのが私の意見です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/105
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106・加藤秀樹
○加藤参考人 先ほどの御質問の一番最初のところでお話しされたことですけれども、器と中身という話だったかと思います。私は、この点は大変に大事な話でして、私も先ほど申し上げましたとおり、これはようやく器ができたところで、後は中身だと思っております。
ただ、日本の場合には、設置法の所掌事務とか権限規定で非常にかっちりと役所の仕事を書いている。これはまさに器がかちっと決まっているというところですから、私は、器をまず変えないと中身が動き出さないという面もある、そういう意味では器を変えるということには大変に意義があると思っております。
地方分権についても同じことが言えるんだと私は思いますが、その中で、先ほどの企画立案を担当するかどうか、そこが重要である、これも私も全く同感でございます。
ただ、私は、その場合に企画立案を実際に自分の責任でやるかどうかというのは、お金を動かせるかどうか、資金的に予算を組めるかどうか、そのこととセットだと思います。ですから、この議論というのは、結局は地方が自主財源を持つかどうかという議論に尽きると考えております。
これはまたなかなか大変な話だと思いますけれども、今の仕組みというのは、例えば、五十億でどこかの市で何かのホールをつくるとなると、市長が、ついては国からとってきますということで、市議会もみんな拍手して、市長さん頑張ってきてということだと思うのですね。それで、国の方もその五十億でもって地方をコントロールできる。地方の方も余り議論せずに国からとってくるということでできる。これが両方とも楽なものですから、そういう仕組みになっている。
しかし、これをやはり変えないといけない。五十億でつくりましょう、ついては市民一人当たり五万円余計に税金を出しますかどうか。そうすると、むだが行われない。当たり前な話ではありますけれども、できるだけ身近なところで、出入りというのでしょうか、言葉が悪いのですが、損得勘定ができる仕組みをいろいろなところでつくっていかないといけない。
ですから、地方分権の一応の形はできつつあると私は思いますけれども、やはりお金という意味で、出入りがなるべく近いところで見えるような仕組みをつくっていかないといけない、そういうことだと思います。
しつこくなるようですけれども、先ほど私はバランスシートの話を申し上げました。これは、国だけではなくて、都道府県、市町村、本当は特殊法人、公益法人全部の連結財務諸表が、日本国のものができないといけないのですが、まずは地方自治体、市町村、都道府県からつくっていけば、このあたりが少しずつ見えてくる。
その上で、もう一つ大事なのは、補助金もさることながら、交付税ですね。今は、基準財政需要額という仕組みの中で、これを国が一律に日本の地方自治体で必要な金額はこれですよということで決めてしまっているわけですね。しかも、これが戦後五十年間一貫して伸びて、しかもここ十年間でこれが倍になっている。企業がリストラをしているときに、地方は、交付税、基準財政需要額というのが倍になっているというのは異常なのではないか。ですから、交付税の改革も非常に大きいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/106
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107・中川正春
○中川(正)委員 時間が限られておりますので、いろいろ用意してきたのですが、もう一つに絞らせていただきます。独立行政法人であります。
これは、先ほど外堀から埋めるという話をされましたが、今回、具体的にここで独立行政法人が出てきた。例えば研究所、先ほどの国立病院関係、それぞれあるのですが、これは、本来のエージェンシー、イギリスあたりでやっているのと比べると、全くの外堀というか、もともと独立しているものを独立行政法人と名を変えたというぐらいのことでありまして、本来は、例えば社会保険事務あたりを本体に入れ込みながらマネジメントをやっていく。あるいは、イギリスあたりでは、国防省の調達業務あたりまでこの独立行政法人でやっていく、そういう切り込み方をしておるのですね。
そういう見地から考えていくと、やはり日本の場合は、特殊法人も含めて一度スクリーニングをかけて、民間に委託できるものあるいは民営化できるもの、これを全部精査しながら、最終段階で残った部分で、独立行政法人のマネジメントを国家の機構の中に入れていくというようなプロセスが基本的には要るんじゃないか。でないと、このまま押し切られて外堀だけで終わってしまうよという危機感さえ持っております。
そういう観点から、それぞれの先生方これについては触れられなかったので、改めて、五十嵐参考人と加藤参考人に、時間が限られておりますので申しわけないのですが、お二人からお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/107
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108・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 現在、日本にはエージェンシーに似た組織が幾つもあります。一つは特殊法人でありますし、許認可法人でありますし、あるいは第三セクターというのもありますし、第三セクターにもさまざまな形があります。最近またPFIなどの組織もつくられようとしていて、非常に識別が困難なくらいさまざまな組織があります。大学院でも、一度、これはどこが違うかということを一覧表にして検討したのですが、ほとんど区別がよくわかりません。
それで、一つは、まず情報公開というものをすべてについてしてみたらどうだろうかというふうに思っているわけですね。
最近、特殊法人についても、財政を含めまして少しずつ情報公開が進むようになりました。これは、全体について情報公開をしてみると、実は国民の気がつかなかったさまざまなことがよく見えるようになるだろうと私は思っております。とりわけ、特殊法人などの非常に巨大な累積債務とか、あるいは許認可法人で非常に利益を上げている法人とか、あるいは第三セクターなどでも危機に瀕している第三セクターとか、あるいは少し利益を上げている第三セクターも出てくると思います。
それを情報公開をした上で、どのようにこれを整理したらいいかということでありますけれども、私自身は、今の先生の意見に大賛成であります。つまり、今のことを前提として少しずつ手を入れようとしても、特殊法人の改革一つ見てもわかりますように、ほとんど進みません。
それで、一たんこれを全部民営化するというふうにした上で、さらに国や自治体でない、もうちょっと中間的な経営体があるものとすればどういうふうにしたらいいかというふうに、逆に考えるべきではないかと思います。
これは、行政組織や法律や予算を考える上でも非常に重要な原理論を実は含んでおりまして、アメリカなどには、サンセットロー、つまり日没法というのがありまして、ある一定期間が過ぎたら、とにかく原理として一回全部やめにする、必要なものはどれとどれかを改めてそれを残すというシステムにしております。
日本の場合には、一たんつくりますと永遠で、問題があったらこれをやめさせるという方向でありますけれども、それとは逆にしまして、一回ある程度の期限を決めましてやらせた上で、期限が過ぎたら一たん全部白紙にする、その上で必要なものがあれば改めて存続させるという方向をとる。まさにそういう考え方をこのエージェンシーにも適用すべきでありまして、一たんすべて情報公開をした上で全部民営化すると考える、しかし必要なものはどれとどれか、それはどういう経営体がいいかということを逆に考えていかないと、改革は進まないだろうというふうに私は思います。
〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/108
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109・加藤秀樹
○加藤参考人 今の五十嵐参考人のお話でほとんど尽きていると思いますので、一つだけつけ加えたいと思います。
情報公開、これは大変大事だと思います。それからもう一つ、その評価だと思います。評価というのは、企業であればまさに市場が評価する。それで生き残るかつぶれるかですけれども、必ずしも市場で評価されない部分があるとすれば、それは半ば公的な部門でやる意味があるのではないか。ただ、それをまずどう評価するかということについて、きちっと外部の評価機関をつくってそこで評価していく、それからスタートするのかな、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/109
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110・中川正春
○中川(正)委員 それぞれありがとうございました。
これは、今回の議論にとどまらず、何とか私たちも、たゆまざる改革というか、機構の中に改革をしていくメカニズムを入れるべきだというふうに思っておりまして、それがあって初めて活力のある組織体ができていくんだろう、そんな意識も持っております。そんなことも含めて、私たちの決意も御披瀝をさせていただきながら、きょうの質問にさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/110
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111・高鳥修
○高鳥委員長 次に、石垣一夫君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/111
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112・石垣一夫
○石垣委員 公明党・改革クラブの石垣一夫でございます。
本日は、諸先生方には御多忙の中、挙げて出席いただきまして、ありがとうございます。改めて厚く御礼申し上げたいと思います。
まず最初に、先ほどからしばしば挙がっておりますいわゆる行政改革の本質は、一にかかって国会機能の強化にある、あわせて政治家の本質にあるんだ、こういう厳しい指摘がございました。
佐藤先生が見られて、今の国会のレベルといいますか資質といいますか、そういうことについて率直にひとつ御意見をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/112
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113・佐藤幸治
○佐藤参考人 大変難しい御質問で、私は、政治家だけというよりも、最初に十五分の陳述で申し上げたように、やはり国民自身の考え方の反映だというように思います。そして、先ほど来ありますように、国民主権という見地から見たときに、果たしてそういう考え方が実現できているんだろうかというように見ると、やはりそこには十分でないものがある。これは、決して政治家の皆さんだけではなくて、国民の全体がそういう考え方なんだろうと思います。
そこで、今回の行革が必要になったというのも、そこの我々の生き方そのものが今問われているのであって、ここでどなたがどうのということではなくて、やはり我々の生き方をこれから少し変えようということではないか。その中で、政治家は政治家の皆さんとしていろいろお考えになることがありましょうし、私は、大学人として考えることがいろいろあるというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/113
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114・石垣一夫
○石垣委員 同じ問題で、加藤参考人から先ほどちょっと政治家の問題がございましたので、ひとつ率直な御意見を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/114
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115・加藤秀樹
○加藤参考人 佐藤参考人は大変立派な方でいらっしゃるものですから、非常にマイルドな言葉でしたけれども、私は、先ほど申しましたが、二十年余り役人をやっておりまして、それで、マスコミを初め、しょっちゅうたたかれております。ただ、個々に話をすると、これはたしかある新聞の統計であった記憶があるのですが、日本の役人というのは、個々に見ると日本人の中でも最もリベラルな人たちだと、本当にそれは私は実感するのですね。ところが、組織としてだとなかなか動きにくいところがある。
私は、国会に関しても全く同じことではないのかなと。一人一人の議員の方とお話をすると、きょうお配りいたしました、国会機能をもっと強化しましょうという御提案についても、随分いろいろな議員の方と議論をしたものです。皆さん一様に、やはりこういうのは必要だとおっしゃるのですが、なかなか国会全体としては動かない。ですから私は、そういう意味では、残念ながら国会は十分に機能していないと。
ただ、これは幾つか、先ほどの内閣機能それから行政の仕組み、当たり前ですけれども全部がつながっている話だと思います。それで、根っこにあるのは、やはり最高機関である国会がどう機能するか、そこがうまくワークすることと内閣がきちっと機能すること。両方とも政治家に帰するわけですし、それがワークすれば、公務員のところはむしろついてくると私は考えております。
そのためには、政府委員の廃止とか副大臣というのは大変に重要な手だてだと思いますし、それとあわせて一つだけ申し上げますと、自由に議論ができる時間をつくらないと、幾ら政府委員を廃止しても、またまた、ますます綿密な答弁書がつくられて、全くそのとおり読むという儀式になってしまうのではないか。
この点と、もう一つは、違うことですけれども、例えば予算委員会に全閣僚が出席する、これは大変にむだなことでありまして、この間に例えば国際会議が開かれますと、役人は必死になって、頼むから週末にその会議を開いてくれ、そうじゃないとうちの大臣は出られないというようなことが実際に行われているわけですから、こんなこともあわせて、ぜひ実行していただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/115
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116・石垣一夫
○石垣委員 非常に適切な御指摘をいただきまして、我々議員としても心して研さんに努めなければならない、このように厳しく反省をいたしております。
そこで、今回、中央省庁再編の大きな目玉として、独立行政法人の問題がございます。この点に関して、佐藤先生は現行の法案に対してどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/116
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117・佐藤幸治
○佐藤参考人 独立行政法人については、先ほども既に御議論がありましたけれども、これも中川先生の御質問に関連するのですが、私は、方法、歩み方の違いかもしれないと。ちょうど地方行財政の問題がそうであったように、この問題も、まず何かつくった上で独立行政法人というのか、独立行政法人をまずやってみて、そしてその上でさらに不十分があればそれで進んでいくのか、その進み方の違いかなという感じがしております。
そして、後者の道をとるとしましても、この独立行政法人を真剣に実施するならば、相当厳しいものだ。例えば、大学も独立行政法人化の一つの候補として挙げられておりますけれども、これを現実に大学に実施するとなりますと、大学にとっては一種の革命的なことになるというように思います、これを実施するだけで。
大学人は、ほかも皆多かれ少なかれそうかもしれませんが、自分のやっていることはやはり意義あることだと思っております。意義あることだから社会が評価して当然だというように思いがちなところがありますけれども、国民主権のもとで、国民主権のもとでというのは非常に厳しゅうございまして、独立行政法人というのは、国民の監視の中にその活動をさらすということです。
自分で自律的にやりなさい、そして活動は全部公にしなさいという方法でありまして、これを現実に適用するとなりますと、立証責任といいますか、活動の意味があることを立証する責任がそれぞれの人に負わされるということになるわけでありまして、非常に厳しいものがある。しかし、行政改革として、ぜひともこの有力な方法としてこれを進める必要があるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/117
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118・石垣一夫
○石垣委員 そこで、独立行政法人の評価の問題ですけれども、これについて加藤先生はそれなりの御認識を持っておられると思うのですけれども、加藤さん、ひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/118
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119・加藤秀樹
○加藤参考人 正直なところ申し上げまして、先ほど申し上げましたようなこと以上のことはまだ私自身余り考えておりません。
ただ、繰り返しになりますけれども、企業の評価というのは結局市場でどう評価されるかということでして、政府というのは企業と違いますから、例えば一人一人の公務員に年間五百万円払っている、ではこの公務員が一千万円の収入を得ていないとバランスシート上マイナスであってこれはだめかというと、そんなことはないわけでして、そこは五百万円の給料を払っているのが見えない形で、サービスということで国民に還元されている。ただ、これが企業ですと、五百万の給料を得ているサラリーマンが一千万は稼いでこないといけない。独立行政法人というのはいわばその中間に当たるのだと思います。
ですから、そこの評価をどうするかというのは非常に難しいものですけれども、ただ、これは外国の例を見ても、実際に半ば公的な機関についてはきちっと、先ほど五十嵐参考人がおっしゃいました、業務内容と財務内容を克明に情報公開した上でそれを評価する機関があるわけですから、こういうものが参考になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/119
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120・石垣一夫
○石垣委員 そこで、関連して特殊法人の問題でお伺いしたいと思うのですけれども、先般来、総務庁の各種公団の財務調査によれば、かなり大きな不良資産が明らかになったわけであります。こういうことについて、今国民としては非常に不信を抱き、怒りを持っております。こういうことで、今回の法案の中にもわずか三行しか出ていないということで、非常に軽視されているわけですね。先般の質問の中では、まず独立行政法人の評価が出て改めてその中で特殊法人の改革に乗り出す、こういうふうな非常に悠長なことを言っているわけです。
それで、先般来のそういう調査発表も踏まえて先生方にひとつ御意見を伺いたいと思うのですけれども、五十嵐参考人、どのように思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/120
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121・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 私は、主として公共事業を中心に検討しているものですから、公共事業にかかわる特殊法人についてはとりわけ注意して見ておりました。
時間がありませんので一つ一つ挙げませんけれども、それぞれの法人が巨大な赤字を持っております。多分、このままいくとかつての国鉄と清算事業団の関係のように膨大な赤字を処理し切れないという事態がもうすぐ生まれてくるだろうと私は見ております。
そこで、問題は二つあります。
一つは、やはり情報公開した上でその赤字を全面的に表に出してみて、改革案を練ることです。どうしてもその赤字が埋め切れない、一つの例を言いますと利子すら払えないという状態の特殊法人もありまして、これはやはり整理すべきだと私は思っております。
それから二番目は、今後、今までつくってきた社会資本の維持管理の費用というのが膨大になるはずでありまして、この維持管理の費用がどうなるかについては、つくることについては非常に熱心ですけれども、それを維持管理していくについてどうするかということについては余り検討されておりません。その費用をどのように、だれが一体見ていくべきものかということについて、検討を加えるべきだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/121
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122・石垣一夫
○石垣委員 先ほど加藤先生からいわゆる権限規定の問題についていろいろ話があったと思うのですけれども、いわゆる設置法と所掌事務の関連性について一定の見解を持っておられると思うのですけれども、加藤先生にひとつお願いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/122
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123・加藤秀樹
○加藤参考人 設置法というのは基本的に役所の仕組みについて定めた法律ですけれども、主な規定としては所掌事務と権限規定、現行法の中にはその権限規定があるのだと思います。
所掌事務といいますのは、これは企業に例えれば、人事部は何をする、営業部は何をする、こういう単なる分担を決めたものであるのだと思います。この分担というのは本来は便宜上のものであって、では会社ではどうなるかといいますと、人事担当の役員からの指示を受けて人事部の人は採用をしたり給料を決めたりしている。これは国の機関に関しても本来は同じことなのだと思います。上司の指示に、担当役員の指示に当たるのが大臣の指示であり、あるいは各法律に基づいて何を行うかということである。
ですから、結局は、個々の法律に基づいてどうするかというところが権限の唯一の根拠であるはずなわけですけれども、従来はこれは明治の官制以来の延長線上で、権限がほとんど所掌事務をフルカバーする形で、法律と別にもうあらかじめ与えられていた。ですから、極端なことを言いますと、日本の今のいわゆる個別の法律を全部なくしても、所掌事務をフルカバーするような権限規定があれば、行政は同じようにできるということすら言えるわけだと思います。
ですから、そこのところを、権限規定を取るということによって、個々の法律に基づいてだけ権限行使ができる、そこは大変な大変革だと思っておりますが、ただ、中には所掌事務の書き方を見ますと、権限のように読み取れなくはない書き方になっていることもある。
ですから、私は先ほど国会の議論あるいは附帯決議でここをきちっと担保していただきたいと申し上げましたのは、念には念を入れてこの点を確認するという意味でありまして、何よりもやはりここは大臣を含めた政治家がどう役人との分担をしていくかということだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/123
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124・石垣一夫
○石垣委員 御意見は十分参考にしてこれからの論議に生かしてまいりたい、このように思います。
続いて、申しわけないのですけれども、加藤先生はかねがね特別会計のあり方について持論を持っておられると思うのですけれども、たまたま私も先般来特別会計の問題について関心を持っていろいろ調べたのです。普通は、一般会計はシーリングがあるのですけれども、特別会計はシーリングがないというような非常に抜け穴があるのですね。そういう点で、加藤先生の特別会計に対する持論をひとつ展開していただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/124
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125・加藤秀樹
○加藤参考人 特別会計のお話ですが、これもいろいろな特別会計があると思います。ですから、一概には必ずしも言えないかもわかりませんが、例えばよく話題になりますのに、道路についての特別会計があります。これはやはり特別会計、別のポケットとして特定財源というのがある。ここで財源として入ってきたものを道路に使うということで、現在の使われ方がすべてだめだというつもりは全くございませんけれども、ただ、どうしてもポケットが別になっているとそのポケットに金が入る限り不要なものにも使う仕組みになっている、あるいはこれが既得権益化するというのはもう紛れもない事実だと思います。
ですから、これは先ほど五十嵐参考人だったかと思いますが、おっしゃっていました、時限にする。現行のどんな制度も、もともとはやはり何かの必要があったからできたのだと思います。しかし、必要があったものが今必要であるという保証は全くないわけですし、とりあえず三年間必要なもの、あるいは結局二十年間必要なもの、いろいろあると思います。そういうものを時限で区切っていって見直していくというのが一つの工夫かと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/125
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126・石垣一夫
○石垣委員 では最後に、先ほども質問があったのですけれども、公務員の二五%削減、こういうことが出ておりますけれども、これについて五十嵐参考人はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/126
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127・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 二五%の削減というのは、先ほど佐藤先生がおっしゃっていましたように、非常に大変なことだと思います。ただ、少し気になることも幾つかあります。
それは定員の数え方、削減の数え方の中に、独立行政法人化してしまうと定員から削減する、しかし、実際上は国家公務員の身分のままというのがありまして、これはやはり少し虚偽であるということが一つです。
それから二番目には、質の転換というのはやはり必要だということですね。つまり、定員を削減するだけでなく、私自身は、公共事業は多過ぎてこれを福祉に回すべきだと思うんですけれども、やはりシフトをちゃんとするということが必要で、これは、単に削減というと一律削減になりがちですけれども、シフトをちゃんとするということです。
それから三番目には、一番定数削減のやりやすい方法は、早く退職させて、こっちを少なくしか採らないということです。これはやはり工夫が足りないと思いますね。民間の資源なども使うべきですし、自治体と国の交流もちゃんとすべきだし、いろいろな流動性を持った中で定数の削減というのを考えていくべきではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/127
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128・石垣一夫
○石垣委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/128
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129・高鳥修
○高鳥委員長 次に、松本善明君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/129
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130・松本善明
○松本(善)委員 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。国会の審議に御協力いただきまして、ありがとうございます。
最初に野村参考人に伺いますが、お話の中で出ました不採算医療、まあ重度心身障害者の場合なんかはよくわかりますが、いわゆる不採算医療と言われるものにはどういうものがあるんでしょうか。列挙をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/130
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131・野村拓
○野村参考人 不採算医療という言葉はどちらかというと開業医団体の方から出された面が歴史的にはあるわけで、社会保険診療報酬体系で縛られていてそういうところではやれない医療ということで、一般的に言えば、これは、例えば厚生省の外郭団体が出している「国民衛生の動向」なんかで「公費医療」というページをあけて、そこをずらっと見ますと、これが大体不採算医療に該当するのではないかと思います。もちろん、生活保護法の医療扶助も一応対象となりましょうし、あとは、結核予防法による命令入所、それから精神保健福祉法による措置入院とか、それから児童福祉法による育成医療、その他、身体障害者福祉法による更生医療等々でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/131
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132・松本善明
○松本(善)委員 独立行政法人になって財政上の保障がなくなるんじゃないかということは、閣僚までここの審議で心配をしていらっしゃるという状況でございますが、辺地でありますとか離島でありますとか、そういうところの国立病院や療養所が独立行政法人になったらどういうことになっていくんでしょうか。先ほど移譲という問題をお話しになりましたけれども、実情としてはどういうことになるのか、おわかりならお話しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/132
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133・野村拓
○野村参考人 一番簡単に申しますと、やはり住民の所得、能力といいますか、そういうものの一定の分布の中だと民間医療機関も成り立ち得るわけでありますけれども、僻地、離島、長崎県は大変離島をたくさん抱えておりますし、また北海道の辺遠部分なんかも、これは、到底普通の、いわゆる民間の医療機関でもペイするような医療となると、ちょっと成り立ちそうもないと考えられます。
やはり、人口の分布、人口の分布というのはまた同時に所得の分布にもなるわけで、特に公的な支えのない医療機関だったら、それは一定の人口分布掛ける所得分布の上でしか成り立ち得ないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/133
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134・松本善明
○松本(善)委員 それから、難病、まあ不採算医療とも言っていますが、一般的にいわゆる難病と言われるものがそういうものになるんでしょうけれども、国立もあれば公立もあれば、いわゆる民間の非営利医療法人もあろうかと思いますが、その中で国立病院や診療所の果たしている役割というものはどういうものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/134
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135・野村拓
○野村参考人 概して、難病それから先ほど挙げたものも、一番特徴的な点は、時間的に長期間かかるということであります。それで、長期間かかるということが現在の社会保険診療報酬と矛盾するわけでありまして、現在の社会保険診療報酬体系というのは、入院日数が長くなれば長くなるほど逓減的にだんだん減っていく、逓減的に診療報酬が安くなるというシステムになっておりまして、一月も二月も患者を抱えていると、その当該医療機関の方がバンザイしてしまう。ですから、今でしたらせいぜい二十日あたりが一つの目安で、なるべくそれを超さないぐらいのところで入院患者もお引き取りを願う、そのことによって医療機関も経営的に成り立つと。
こういう状況でありますと、いわゆる難病、その他長期的療養を要する、そういう場合にはもうとてもやっていけないという状況が生まれつつあり、それはやはり国公立、公的医療機関がカバーしていかなければならないのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/135
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136・松本善明
○松本(善)委員 五十嵐参考人にお伺いをいたします。
五十嵐参考人は公共事業の専門家で、公共事業についての暴走を憂えたいろいろな文章をお書きになっているのを拝見をしております。私ども、行政改革という場合に、やはり肥大した部分というのはここの部分が一番肥大しているのではないか、やはり、ここに徹底的にメスを入れるという方向の行政改革でなければならぬのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
それで、五十嵐参考人の御意見もほぼ私どもの考えと近いのではないかというふうに思っておりますけれども、公共事業について五十嵐参考人は、これはもうやり始めたらとまらない、とめられない、こういうような趣旨のことを言われた。この委員会でも、宮澤大蔵大臣がやはり同じような御答弁、例えばむつ小川原とか苫小牧東、発想の誤りであったんじゃないか、だけれども、戦争のときと同じように、始め出したら終わらない、やめろということが言い出せないということを率直に言われておりました。私ども、それはやはりぐあい悪いんじゃないか、そこが決断をしなければならぬ点ではないかというふうに思うわけでございます。これはどうしたらいいか、まあ私どもが考えることでもありますけれども、参考人としてはどうお考えになっているか。
また、今の中央省庁再編法、今の政府の進めている行政改革がそれに適合しているかどうかというようなことについての御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/136
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137・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 公共事業の予算とか人口とか、それに関連する産業というのは非常に膨大なものがあることは御存じだと思いますけれども、やはり、非常に端的に言って、むだかむだでないか、あるいは必要な公共事業に回っているか不必要な公共事業が行われているかについて、だれが判断するかということが一番重要だと思うんですね。私の提案は、かつて、公共事業コントロール法という形でぜひ国会で審議してくださいということを提案してもらったことがありますけれども、とにかく、国会の中に政策評価委員会といいますか、それをつくっていただきたいんです。そこで、例えば現地の人たちがどう思っているか、企業の人がどう思っているか、官僚の人がどう思っているか、まず聞いていただきたいんです。聞いた上で、やはりやめるものはやめるということをはっきり一度させてくださいということです。それが一つです。
ただ、急激にやめますといろいろな障害がありますので、手当ての仕方について幾つか考えなきゃいけないんですね。
それはどういうことかといいますと、現地へ行くとすぐわかりますけれども、なぜやめられないかの大きな理由として、もうそれに依存してしか自治体が動いていけない、あるいは住民が動いていけない、あるいは企業が動いていけないという構造がありまして、その人たちをどうするかというのは非常にしんどいということがあるからです。とりわけ、過疎自治体あるいは高齢化自治体と公共事業が結びついたところは非常にやめがたいというのがあります。そこで、やめるときには、その自治体あるいはその地域の人たちが再生できる方法を考えなければいけないということです。
一つは、既にできている施設について利用目的の変換をするとか、あるいは全部捨てても別なことを考えるとか、その人々が生きていく法案、地域再生法案というようなことを考える必要があるだろう。
こういう形で今の現行法を見ますと、過疎法だとか産炭地域法とかたくさんの、いわば恵まれない地域あるいは人々に対する法案があって、それが参考になると思います。しかし、それはいずれも全部社会資本に対する補助金の割合を引き上げるという形になっておりまして、二十一世紀、特に公共事業をやめるときの新しい再生法案としては必ずしも適合的ではない。新しく地域活性化する、地域再生する方法を考えて、あわせて、それと引きかえにその事業をやめるということを考えなければいけない。そういう法案をぜひ考えていただければというふうに思っております。
なお、この点に関しまして、やはり巨大公共事業というのはどこでもありまして、非常に強い、熱烈な要望があって、ここが見えないから、絶えずあしたの職業のため、あしたのパンのために国会議員の先生におすがりして公共事業を持ってきてもらうということになる。ここを早くやっていただければと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/137
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138・松本善明
○松本(善)委員 私どもは、公共事業の中身を生活密着型に切りかえる、そういうふうにすれば地元のいろいろな要望にもこたえられると思うのですが、残念ながら、今参考人がおっしゃったような仕組みは今回の法案の中にはないわけでございます。
それで、政府が決断をすれば私は何やかんやできるんだと思うのですが、今度の省庁再編でいけば、参考人もおっしゃいましたように、巨大官庁、国土交通省といって、やはり今までのものがそのまま進んでいく、そういう方向のものではないかと思いますが、率直な御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/138
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139・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 冒頭に申し上げましたように、私はまさに先生と同じ意見です。巨大省庁ができますと、これは政治学の法則と言われているのですけれども、組織を維持するためにあらゆることが行われるということがありまして、ますます公共事業はとまらなくなるだろう。二十世紀最大の禍根が私はこの国土交通省じゃないかと思うぐらいに考えております。
ぜひ先生方にお願いしたいことは、公共事業、外国の諸実例と比べているとわかりますけれども、外国はいろいろな意味で大転換を公共事業についてしております。一番大きくは、公共事業と社会福祉の費用を、公共事業が一に対して福祉事業を二にしているということです。日本は逆でありまして、公共事業が二で福祉事業が一です。これを変えることですね。
それから二番目は、それぞれ道路やら河川やら港やら空港についてむだがたくさん出てきておりますので、やはり公共事業の中身を変えていくということを同時にやらなければいけない。そのためには、地方分権や規制緩和とあわせて、公共事業に関する事業法というものを、単に自治事務か受託事務かというだけじゃなくて、質を変えるというところを早急に点検していただければと思います。
例えば、河川についてこの間改正がありまして、環境という一文字が入っただけで大分河川行政は変わりますし、さらに、国と自治体が一級河川、二級河川を持つというよりは、流域ごとに、例えば利根川なら利根川の流域ごとに管理運営するという形にすると、もっとがらっと変わるだろう。そこも同時に変えていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
とにかく、国土交通省だけは、ぜひこの委員会で設置をやめるようにしていただければありがたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/139
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140・松本善明
○松本(善)委員 佐藤参考人にお伺いしたいと思います。
佐藤参考人は、行革会議のときから現在に至るまで、政府の行政改革、省庁再編については深くかかわっておられる方でありますが、そういうつもりでお聞きをいたします。
それで、きょうの公述の中でもおっしゃいまして、引用もされました最終報告、行政への依存体質ということをかなり強調してお話しになりました。そしてこれは、参考人、きょうは引用されませんでしたけれども、やはり、行政に依存しがちだったこの国のあり方自体の改革なんだということが最終報告には書かれて、この点について根本的な反省をしなければならぬと。言うならば、この問題が政府の行政改革の中心問題のように位置づけておられると思います。
そこでお聞きしたいのですが、この依存体質というのはどういうところにどうあらわれているのだろう、だれがどのように依存しているのかということをお聞きしたいのであります。
佐藤参考人がジュリストの対談の中で、これは既存の産業、業者の保護なんかになっているんじゃないかということもちょっと言われている。そういう、企業が依存体質、例えば私どもは、銀行に六十兆もの支援をするというのが、これもまさに依存体質ではないかというふうに思います。それはそういうふうに思われているのかどうか。一方、医療、福祉というもの、これは難病なんか、今も野村参考人からの話がありましたように、やはり政府がやらないと、民間ではできない部門なんですね。そういうのまで依存体質と言っているのかどうか。これはいろいろな理解の仕方があろうかと思いますが、佐藤参考人は、行政への依存体質というものについて具体的にどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/140
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141・佐藤幸治
○佐藤参考人 お答えします。
依存体質というのはいろいろな面があると思います。先ほどの公共事業も、やはりそういう面もあり得ると僕は思います。それは、各種の規制というのも、必要なものもありますけれども、その規制によって既得権が保護され、そのシステムがなかなか動かないというようなものもある。さまざまあると思いますが、我々、そういうものを一遍、自分で自立する、自立して生きる、そういう考え方をまず基本に、出発点に持とうじゃないか。しかしながら、健康とかいろいろな、あるいは病気になって自分で自立できない、場合によっては困難な場合があります。そういう方は、社会として自立できるようにサポートしてあげなければいけない。そこは社会としての温かさがなければ、その社会というのはおかしくなると思っておりまして、先ほどお話しになりました医療のそういう領域については、やはり自立を社会全体としてサポートしていく、そういう温かい思いやりでそこは考えていかなければならない。
ただ、私の認識は間違っているかどうかわかりませんけれども、戦後はやや、自立ということを出発点にして、そしてそれが困難な場合にみんなで支えるという、その順序がどうもうやむやになったところがあるんじゃないか。それがいろいろなところで、例えば極端に言うと、さっきの公共事業も私は似たような印象を持っているところがありますが、そういうものを一遍原点に立ち戻って考え直してみたらどうか、そういう趣旨でレポートも書いているところであります。決して、いわゆる弱者切り捨てとかそういうことを考えているのではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/141
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142・松本善明
○松本(善)委員 そうすると、ちょっと改めてお聞きをいたしますが、医療、福祉という問題は、政府の世論調査でも圧倒的に国民が要求している部分です。そこのところはむしろ、例えば医療負担の増大というのが起こって、お医者さんにかかるのを自分で制限するというようなことが非常に広範に今起こっております。そういうものについては、むしろ施策を充実しなければならない。その部分がスリム化していくということになりますと、これは国民の望んでいる方向と逆の行政改革になるんじゃないかと思いますが、参考人、いかがお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/142
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143・佐藤幸治
○佐藤参考人 医療の場合も一つのシステムでありまして、いわゆる弱者保護という形でシステムが巨大化して、そこにいろいろな問題があるということは、日本だけではなくて、アメリカの場合もそういう面があります。ですからそこを、本当に必要なところに本当の十分なサポートがいくような、そういうシステムを考えていく必要があるし、ぜひ国会でもそういうことを明らかにしていただきたいというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/143
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144・松本善明
○松本(善)委員 佐藤参考人に続けてお聞きしますが、独立行政法人化した場合に、これが廃止もあり得る、これは総務庁長官もお認めになりました。法律にも書いてございます。やはりこれが、今弱者といいますけれども、難病なんかは弱者でなくても膨大な医療費用がかかりますものですから、これはとても自分たちの力だけではやれないという問題があります。ここのところを、医療部門でありますとか、あるいは試験研究機関、これはもう長期の研究を要するものだとか、基礎研究だとか、民間ではやれないような研究をやっています。国立大学なんかは、文部大臣、有馬さんでさえ、これは反対だと言っておられるわけです。そういうものを独立行政法人にいたしますと、それは場合によっては採算がとれなくて財政の保証がないということの心配もしておられる、閣僚でもしていらっしゃる。
そうすると、これは切り捨てられていくということになるんじゃないかと思いますが、今の行革でその辺はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/144
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145・佐藤幸治
○佐藤参考人 御承知のように、独立行政法人は、決して独立採算性を考えているわけではありません。必要なところは、十分国としてサポートするという考え方に独立行政法人はなっております。
先ほどの試験研究とか大学の話でありますが、私も先ほど申し上げたように、大学人として、この通則法のもとで大学がそのまま乗っかるかということについては、いろいろ検討する余地はあると考えておりまして、ストレートにいくものとは思っておりませんけれども、先ほど申し上げたように、私どもは自分のやっている研究というのはやはり価値のあるものだと思っております、それぞれ。皆さんそうだと思います。
けれども、国民主権のもとで、それを国民にわかってもらう努力を我々がそろそろみずからしないといかぬ時代に入ってきたのではないか。そして、価値あるものであれば堂々と主張して、国民のサポートを得て、むしろ一層の財政的な援助を得るとか、そういうめり張りをつけるような形で持っていくべきではないか。そういう観点でこの独立行政法人というのが活用され、生かされるならば、それは社会全体として活力を持たせる一つの方法ではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/145
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146・松本善明
○松本(善)委員 時間がないので終わりますが、財政的な保証がないということを閣僚の有馬さんさえ心配しているということを申し上げて、もう質問はできませんけれども、後の方がおっしゃるそうですから、一言だけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/146
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147・高鳥修
○高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/147
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148・深田肇
○深田委員 参考人の諸先生、ありがとうございます。ちょっと時間が食い込んだようで申しわけありません。最後でございますから、いま少しおつき合いのほどをよろしくお願い申し上げます。
私は社民党に所属している深田肇でございますが、あらゆる場所で同じような発言をしているんですけれども、もう一遍やはりこういう場でも申し上げなければいかぬなと思いますことは、私たちは大変勇気を出して物を言うのでありますけれども、与党時代を含めて、市民本位の行革へ向けて物事を考えていかなければならぬ、特に加えて、公務員の雇用と労働条件の確保をしっかりやらなければいかぬというのが私ども社民党の基本的な態度で、今日までやってまいりました。
お話が出ていますような、定員問題での一〇%から二五%問題、大変微妙な問題がありますけれども、先輩、同僚議員に余りおしかりをいただかないようなことをお願いしながら、率直な意見を言ってきていることもあるのでありますが。
そこで、今回の行革や地方分権の中で、特に行革の関係で政府当局が出しました提案理由の中では、大変特徴的だと私は思っているのでありますが、昨日も総理にもその辺の御意見を伺うような機会をいただいたのでありますけれども、これはいいことなんだ、いいことなんですが、盛んに国民主権の理念に沿って我が国の行政を考えていこう、まさに憲法そのもののことでございますから、これは大いに賛成事なんでありますが、極めて単純に、その理念というところを、いわゆる信託されて選ばれたメンバーが内閣をつくって、総理大臣の権限が強化されて、これがいわゆる行革であるし、言うなら憲法の理念だと。
私に言わせてみれば、そのことを百歩譲って認めたとしても、大変そこは矮小化して、権力集中主義に見え過ぎて、いわゆる市民や住民や国民の側の持っている要求というのはどういうふうに保障されていくのかという点が問題があるではないかということを実は考えておるわけでございます。
前段申し上げたとおり、いろいろなことを考えている社民党にいたしますと、やはり弱者の立場は保護せねばいかぬと思いますし、いわんや切り捨てがあっちゃ困るし、そういうことはないとおっしゃるわけだし、同時にまた首切りはやらないんだとおっしゃいますけれども、そういうことが起きては困るという立場を持ちながら話をするわけでございます。
同様、人権問題にしましても、それはもう日本国の憲法の精神だから人権は重視するんだよとおっしゃるんだが、実際は差別状況が今回起きておりまして、そういうことについて、あちこちで国民の側なり市民の側の声が上がっていることも事実でございますから、そういうことを、これは私が先生方に申し上げることはないのでありますが、我が方の見解として少し申し上げた上で、そういったものを少し見直しながら、新しい時代に見合うような政治、行政制度に変えていく、いわゆるモデルチェンジをするのが今回の目的だろうというふうに思っている次第でございます。
その意味からしますと、政府が使われた主権在民ということをしっかりと考えるとするならば、地方分権の推進、情報公開の徹底、公務員倫理の確立、加えて政治家の政治倫理の確立、ここまでをしっかり確認しなければ、本当の意味の行政改革や二十一世紀に向かっての新しい日本への道ということにならないのではないかと思いながら、考えている次第でございます。
そういう意味からしますと、極めて端的な言い方になりますが、省庁再編は、平和、安全、福祉、公正、こういったものをどう保障するかということをしっかり中央政府が考えるべきだということで、実は考えることを申し上げながら、日ごろから五十嵐先生の文献をいろいろと勉強させていただいた感じから申し上げますと、昨年もたしか本委員会の参考人でお出かけいただきましたときにも、いわゆる官僚内閣制から国会内閣制へというお話がありましたし、きょうまた、巨大なと言われるところの国土交通省を思い切ってここでやめてしまえ、こんなはっきり書かれた文章を拝見いたしまして、そうなると、この法案は、設置法は反対せねばいかぬかなと思ってみたりして、これは党内で大分論議しないといかぬのかなと思っているところであります。
そういうことも感じながら率直に申し上げますが、申し上げたようないわゆる憲法の主権在民の理念に基づいて、今回の行革、地方自治はどうあるべきかにつきまして、これまた時間がありません、勝手にしゃべっちゃうようで申しわけないのでありますが、四人の先生方にお話ししていただくことはできないのではないかと思いまして、勝手に決めさせてもらいますが、五十嵐先生にひとついただくと同時に、野村先生に一言お話しいただこうかと思っておりますが、ぜひひとつ佐藤先生、加藤先生の御理解を賜りたいと思います。お二方よろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/148
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149・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 今回の改革は、非常にタイミングが、一九九九年に法案を審議して、二〇〇一年一月一日から実施するということでありまして、非常に大きな歴史のパラダイムの転換といいますか、その時期に客観的にあると思います。
百年ごとの変更ではなくて、今回は、二〇〇一年ということであります、千年に一回の改革でありまして、これを行革の用語で言いますと、例えば明治維新や戦後改革に次ぐ第三の改革と言ってみたり、あるいは憲法改正なき憲法改正に匹敵するような大状況と言ってみたり、さまざまな意味で表現しているわけです。
まさにそういうことを私たち国民一人一人実感するわけですけれども、そういう目で行革や地方分権やその他金融改革、財政改革、もろもろを見ていますと、何ともどかしいことよということをつくづく思います。
先ほど言いましたように、既に住民は、吉野川河口堰、冒頭に申し上げましたように、住民投票という手法を使いまして、国民主権を実質化しようと、もう既にそこに来ています。そのときに、近代法制度あるいは近代政治学や制度が前提としていた三権分立とか政党政治とか、あるいは自治体や国との関係全体がきしみを立ててゆがんでいるといいますか、非常に奇妙なものに今映っているというのが事実だと思います。
戦後、日本国憲法がつくられまして、確かに国民主権ということは憲法第一条からずっと貫く理念になっているわけですけれども、ともすれば、やはり官僚ひとり勝ちの戦後ではなかったかというふうに私は思っております。
そのゆがみというものが先ほどの住民投票にあらわれてきていると思うんですけれども、今回の行政改革でもあるいは地方分権でも、とにかく国民がほとんど顔が見えない、市民がほとんど顔が見えないというのが一番残念でありまして、千年に一回の改革、戦後第三の改革と言われるものにふさわしい努力を国会でとにかく続けていただきたい。
私のところに、きのう膨大な法案が送られてきまして、この法案を見て歴史家が一体何と言うだろうか、膨大な量の法案改正にもかかわらず、少しの小さな変化しか私は見えない。多分この国会は歴史によってつらい審判を受けるのではないかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/149
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150・野村拓
○野村参考人 行政法の素人でございますが、政治家の資質、それから、先ほど問題になり、また、行政改革と政治家の資質をキーワードにしてどんな作文ができるかということでお答えいたしたいと思います。
大体、行政改革というのは、行政、公的行為の効果とか効率が問われて始まるわけでありますし、某公共工事の効果、何が効果であったかというようなあたりは、また厳しく判定していかなければならないと思うんですが、私は、ここでこんなことを申し上げたいと思います。
これは政治家の資質とも大いに関係することでありますけれども、そもそもトータルシステムとして医療というものの効果が問われるようになったのはいつからかということ。これは、一九七〇年代の初めごろ、アメリカの下院において、トータルシステムとしての医療の効果が問われたわけであります。それはどういう論法かといいますと、アメリカは世界で一番医学研究のために金を使っている、それから医療費の方も世界一だ、医学も医療も世界一金を使っているんだったら、当然その効果はアメリカ国民の健康水準にあらわれてしかるべきではないか、ここはちょっと乱暴な点もあるわけですが。
では、アメリカ国民の健康水準は世界で何番目か。国際比較は難しいんですが、常識的には、零歳平均余命、平均寿命、あるいは乳児死亡率あたりで比較することになるわけですが、世界一金を使っていて、当時、乳児死亡率は低い方から十五番目ぐらいだ、これは金の使われ方、システムがおかしいんじゃないか、こういう形で医療の効果が問われるようになりましたのが一九七〇年代の初め。
そして、アメリカは議員立法でありますから、議員立法をするためには、政治家は医療について勉強しなければならないということで、「アメリカン・ヘルス・ポリシー」という本が議員の勉強用として一九七四年に出されまして、これはよくまとまった本なので、我々専門の大学研究者はみんなそれを買って、医療政策、医療問題を勉強したわけであります。ここらはやはり、これから国民の立場に立ったリーダーシップを発揮する上で、先生方も大いに頑張って、事医療問題に関しても頑張っていただきたいなと思います。
なお、今言いましたことと関連いたしまして、アメリカは、世界一金を使って成績の方は十五番目だ、今は、小さい国まで入れるともっと、二十四番目ぐらいまで下がりますけれども、そういう状態である。
そういう目で見ていくと、日本という国は、何と医療に金を使わずに、そうして平均寿命は世界一で、乳児死亡率は世界で一番だ。だから、こういうあたりを、何といいますか、費用効果分析というような形で見たら、日本は、最も安い医療費で最も効果を上げている模範的な国である。そういう国で、国立病院への一般会計からの持ち出しというのはまことにささやかな、千四百億円をちょっと超えるぐらいで、その他の壮大な浪費に比べたらまことささやかなことではないだろうか。そのささやかさを守るために、また先生方もひとつということを希望申し上げまして、私の参考人意見といたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/150
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151・深田肇
○深田委員 ありがとうございます。
もう時間がありませんから、どうしてもやはり関心事が巨大な新しい省ができることでございますから、そこのところだけちょっと。
私どもがこれに対してどう考えているかということをここで申し上げるのは、時間がありませんからもうこれは省略いたしまして、お互いが確認できることは、巨大であることはもうだれもが認めるように、公共事業が八割全部行っちゃうとか、それから現在までの許認可数が二千五百五十を超えているとか、いろいろなことがあります。権力は集中する、そうすると腐敗とか汚職が始まる、いろいろなことが言われておるわけでありますから。
そこで、五十嵐先生の言われるところの勉強不足で恐縮なんだが、きょうも出ましたように、しかも文献でいただいておりますが、公共事業のコントロール法を、一番私たちが今わかりやすく、短い時間で、ここがポイントなんだよと。これをつくらないといけないわけでしょうから、この巨大な今度出る法案に、まあ賛否は私どもで決めさせてもらいますが、やめちゃえということですけれども、やめずに何か弊害をなくすることはできないのか、それともこのコントロール法が並行して審議されれば何か道が開かれるのか、それとも組み合わせを変えろとおっしゃっているのか、ちょっと、短い時間で恐縮なんですが、聞いておかにゃいかぬなと思っておる次第でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/151
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152・五十嵐敬喜
○五十嵐参考人 提案されている現行システムを前提にして改良案を考えるとしますと、地方出先機関に配分する公共事業を都道府県、自治体に回すということです。そうすると、かなり変わります。
それから、計画の策定及び箇所づけ、その他予算等について、今のところ国会の監視が十分でありません。要するに、計画の策定と箇所づけ等について国会が議決するということをつけ加えてもらえれば完璧だと私は思っています。それを公共事業コントロール法と言っております。
だから、一つは、もう一回言いますと、今地方出先機関に回そうとしている部分を自治体に回す、それで、それ全体を含めまして、国会が公共事業について、計画についても議決する、中長期的計画についても議決する、予算についても議決する、政策評価も行うということをやればいい、それが公共事業コントロール法案だということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/152
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153・深田肇
○深田委員 もうよかろうとおっしゃっていますが、やはり伺うと、佐藤先生、どうなんでしょうか、今のような御指摘をいただいて我々議員が一生懸命勉強するわけでありますが、そういうことをやればよかろう、いや、そんなことよりも現行で、現行の提案そのものをこういうふうに進めていったらいいというような違った御意見をお持ちなんでしょうか。ちょっと聞かせてください、巨大省の問題で結構なんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/153
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154・佐藤幸治
○佐藤参考人 先ほど五十嵐参考人がおっしゃったことについては、貴重な意見だというように私も考えておりますが、一つ指摘したいのは、情報公開法が既にできているということの意味を十分にお考えいただきたい。あれによって、使い方によっては相当有力なコントロールの手段になるというように考えております。私は、情報公開法の必要を三十年ぐらい前から主張してまいりました。あの意味は、皆さんが思っていらっしゃる以上に大きなものではないかというように考えております。
それだけ、一点だけ主張しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/154
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155・深田肇
○深田委員 では、これで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/155
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156・高鳥修
○高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。御苦労さまでした。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/156
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157・高鳥修
○高鳥委員長 この際、ただいま議題となっております各案につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求を行うこととし、公聴会は来る六月七日月曜日開会し、公述人の選定等は委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/157
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158・高鳥修
○高鳥委員長 起立多数。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/158
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159・高鳥修
○高鳥委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
ただいま議題となっております各案につきまして、審査の参考に資するため、議長に対し、委員派遣承認の申請を行うこととし、派遣地、派遣の期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/159
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160・高鳥修
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。
次回は、来る三十一日月曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114504278X00719990528/160
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