1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月十日(水曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 穂積 良行君
理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君
理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君
理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君
理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君
今村 雅弘君 岩永 峯一君
小野寺五典君 大石 秀政君
嘉数 知賢君 金子 一義君
金田 英行君 岸本 光造君
鈴木 俊一君 園田 修光君
中山 成彬君 萩山 教嚴君
御法川英文君 宮本 一三君
矢上 雅義君 安住 淳君
神田 厚君 鉢呂 吉雄君
堀込 征雄君 上田 勇君
漆原 良夫君 山中あき子君
井上 喜一君 佐々木洋平君
菅原喜重郎君 中林よし子君
藤田 スミ君 前島 秀行君
委員外の出席者
参考人
(北海道農民連
盟書記長) 北 準一君
参考人
(全国農業協同
組合中央会常務
理事) 高野 博君
参考人
(消費科学連合
会事務局長) 伊藤 康江君
参考人
(日本女子大学
家政学部教授) 今村奈良臣君
農林水産委員会
専門員 外山 文雄君
委員の異動
三月十日
辞任 補欠選任
木部 佳昭君 大石 秀政君
熊谷 市雄君 嘉数 知賢君
宮腰 光寛君 岩永 峯一君
木村 太郎君 山中あき子君
同日
辞任 補欠選任
岩永 峯一君 宮腰 光寛君
大石 秀政君 木部 佳昭君
嘉数 知賢君 熊谷 市雄君
山中あき子君 木村 太郎君
本日の会議に付した案件
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
午後一時開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/0
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001・穂積良行
○穂積委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、北海道農民連盟書記長北準一君、全国農業協同組合中央会常務理事高野博君、消費科学連合会事務局長伊藤康江君、日本女子大学家政学部教授今村奈良臣君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、北参考人、高野参考人、伊藤参考人、今村参考人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
それでは、北参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/1
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002・北準一
○北参考人 御紹介いただきました参考人の北準一であります。
農水委員会の皆様には、日ごろ日本の農業問題で御論議いただき、感謝と敬意を申し上げる次第でございます。
私は、北海道の農家六万五千戸が加盟しております北海道農民連盟の書記長をしておりますが、みずから十一・五ヘクタールの経営をする稲作農民でもあります。私は、今国会に提案されております主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案について、意見を述べさせていただきたいと思います。
初めに、主要食糧法など関連四法案の一部改正について、本連盟は、国内対策強化の条件が具体的に整備されなければ賛同することはできない、このように考えているところでございます。
まず、関連四法案について、三点にわたり意見を申し上げたいと思います。
第一点目は、次期WTO交渉を控えて、国は、国内農産物につき、輸入農産物との競合で価格が著しく低下し、その生産に重大な支障を与える場合またはおそれがある場合、輸入にかかわる農産物の関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとするなど、引き続き国境措置が堅持できるよう国内法の整備を図るべきであります。
また、食料安全保障や地球環境の保全など非貿易的関心事項の強化と、各国の食料、農業事情に十分配慮し、自国の持続可能な農業生産の維持、増大を基本とした食料自給権など、新たな貿易ルールを確立することを位置づけていただきたい、このように思っているところでございます。
第二点目は、米穀などについては特別緊急関税制度の対象品目としておりますが、米粉調製品、米菓、米を含む肉、魚等の調製品などについても、産品の類似性、代替性からして、特別セーフガードの対象とするなど、具体的な国境措置を講ずるべきと考えております。
第三点目は、ミニマムアクセスにおける売買同時入札制度、いわゆるSBS制度の即時廃止を求めたいと思うのであります。
平成十年度のSBSで輸入された数量は約十二万トンにも達しておりまして、加工用米や外食産業分野では、北海道米との競合関係を強めることが大きく懸念されているからであります。また、UR農業合意を受け入れた平成五年十二月の、MA米導入に伴う転作強化は行わないという閣議決定はぜひ遵守すべきであると考えているところでございます。
続いて、米の関税化に伴う国内対策強化について意見を述べさせていただきたいと思います。
北海道の稲作農家は、UR農業合意の国内支持削減や食糧法施行により、自主流通米価格はここ数年で一五%以上も下落しております。平成十年産自主流通米の農家手取り見込み価格は、稲作経営安定対策の補てん金を加えても、北海道米の六十キロ当たり全算入生産費一万五千五百円を大きく割り込み、一万四千円水準にとどまると見込まれており、二年連続で生産費割れを余儀なくされている現況にあるのであります。
この結果、農業所得は激減し、経営破綻の状況に追い込まれ、離農する農家も相次ぐなど、農村社会、地域経済にも大きな深刻な打撃を与えておるのであります。このため、まず第一の条件として、UR農業合意で認められております所得の大幅減少に対する補償の法制度化と財政確保により直ちに実施していただきたい、こう思うところでございます。
本連盟の試算では、北海道における米作と転作を合わせた水田十アール当たりの生産額は、UR農業合意基準年の昭和六十三年の十二万八千円から、平成十年には九万七千円へと三万円以上減少しているのであります。これは、即大幅な農業所得の減少となっており、その代償措置としては、十アール当たり三万円以上の直接固定支払い制度の創設が必要だと考えております。
こうした政策が講じられなければ、専業的な土地利用型農業の持続や、担い手農家の水田維持、公益的、多面的機能の重要な役割が果たせなくなるからであります。
第二の条件は、稲作経営安定対策の制度改善であります。
現行の稲作経営安定対策は、自主流通米価格が長期または大幅に下落した場合、補てん基準価格も同時に低下するため、補てん後の自主流通米の農家手取り価格が生産費水準を大きく下回る仕組みになっております。
さきに述べましたように、平成十年産の北海道米は、補てん後の農家手取り価格が全算入生産費を大幅に下回ることが見込まれておりまして、稲作収入に大きく依存する北海道の専業的農家における経営悪化の大きな要因となっているのであります。このため、稲作経営安定対策における補てん基準価格につきましては、生産者手取り米価がいわゆる全算入生産費を満たす水準となるよう制度を早急に見直すとともに、あわせて政府拠出金を拡充強化し、生産者拠出金の負担軽減を図っていただきたい、このように思うところでございます。
第三の条件は、制度資金にかかわる農家債務の減免措置など、農業経営再建策についてであります。
農業経営の悪化が続く中で、平成八年度末の道内百二十土地改良区の国営及び道営の土地改良事業等にかかわる借入金残高は一千百六十一億円であります。さらに、主要制度資金関連の融資残高は、農林漁業金融公庫資金のうち農業関係六千百八十二億円、農業近代化資金七百八十五億円、農業改良資金百八十四億円、農家負担軽減支援特別資金、M資金でありますが五百二億円、畜産関係特別対策資金、農業者年金基金貸付金など七百七十六億円となっておりまして、これらを合計いたしますと、農家の借入金残高は一兆円を超え、ほぼ北海道の農業粗生産額に匹敵しているのであります。
空知や上川、道南などの稲作主産地では、経営悪化に陥っている農家を中心に、土地改良事業負担金や各種制度資金などの農家債務について、返済不能に追い込まれる農家が多発しておるのでございます。
このため、制度資金にかかわる農家負債で返済不能なものについては、元利金の減免措置などを講じ、緊急の経営再建を支援していただきたいと思います。あわせて、抜本的な超低利の一括借りかえ制度を創設し、末端の実質金利をゼロとしていただきたいと思うのでございます。なお、当面は、農家負担軽減支援特別資金における貸付対象要件の緩和として、貸付対象制度資金金利の現行五%超というところから一%超へ引き下げるとともに、融資枠の拡大をお願いしたいと思います。
また、土地改良事業負担金については、抜本的な制度の改善を図り、既往事業の受益者負担金の金利を無利子化し、さらに、今後の国営などの土地改良事業における農家負担についてはゼロ化していただきたいと思うものでございます。
加えまして、優良農地を将来にわたり維持、確保するため、当面、引き受け手のない優良農地を適正に保全管理などを行う新たな土地集積利用・管理制度を創設するとともに、超長期で貸し付けする農地保有合理化事業の創設が不可欠と考えております。
これら国内対策強化の三条件については、緊急的にここ一、二年の間に対策が講じられなければならないと強く要望するものでございます。
ここで、北海道における規模拡大型稲作農家の経営実態につきまして、その事例として、私自身の経営内容を説明したいと思います。
お手元に参考資料としてお届けしておりますが、私は、北海道の米産地であります空知管内、奈井江町で、後継者とともに水稲九・五ヘクタール、転作作物二ヘクタールを経営しております。私が経営を引き継いだ昭和四十六年以降は、水田と転作を含め約六・五ヘクタール規模で、足らざる収入はアルバイトなどの農外収入で補ってきたところであります。平成年代に入って、隣の農家が将来見通しの不安などから離農することとなり、五ヘクタールの水田を購入し、それに伴い負債額は危険ラインを超える三千万円に膨れ上がったものでございます。このため、転作でメロン、ホウレンソウ、カボチャなどを導入し、収益性を高める努力を重ねてきたところでありますが、食糧法施行後の平成九年、十年の米価の急落によって、借入金償還後の所得金額が、参考資料で示しますように、生活維持が非常に困難な実態に陥っているのでございます。機械や設備投資は、昭和五十九年の農舎への投資、あるいは平成七年のトラクター購入以外、主要な機械は中古品とするなど、極力投資を抑えてきておりますが、見ていただいたような経営の実態にあります。これがいわゆる新基本法が求めている専業的な担い手農家としての実像でありますが、この実態では将来展望が開ける状況ではございません。
こうした経営悪化の傾向は私に限ったことではなく、ほとんどの稲作農家が同様の傾向にあります。農林統計事務所の経営統計調査によりますと、北海道の平成九年度における稲作単一経営五ヘクタール以上層の収支は、農業粗収益は自主米の低下等により一千百二十九万円、一方、経営費は生産資材の上昇などで八百八十三万円に、その結果、農業所得は大幅に減少し、二百四十五万円にすぎません。UR農業基準年の昭和六十三年の稲作単一経営の自立経営農家における農業所得は五百五十万円でありましたから、その比較では四四・五%と半分以下の水準となっておるのでございます。
最後に、国民生活にとって欠かすことのできない米の安全・安定供給、国土、環境を守り、命をはぐくむ水田を二十一世紀に向けて末永く受け継いでいくことが我々農民の使命でもあり、また国の大きな責務と考えております。私の意見が具体的政策として盛り込まれますことを念願し、意見陳述を終わらせていただきたいと思います。
本日、農林水産委員会におきましてこのような機会をいただきましたことに厚く感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/2
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003・穂積良行
○穂積委員長 どうもありがとうございました。
次に、高野参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/3
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004・高野博
○高野参考人 御紹介いただきました高野でございます。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
お手元に資料を出してございます。これをもとに説明するわけでございますが、まず初めに、今回の法律改正が、米の特例措置を関税措置に切りかえる、このことに伴う法律改正というぐあいに解釈しておりますので、この措置の切りかえについて、私たちがどのように取り組んできたか、あるいは考えていたかあるいはいるかということを御説明させていただきたいと思うわけでございます。
この中身に入ります前に、組織討議の経過について、簡単に説明させていただきます。
実は、私ども、一昨年になりますけれども、平成九年の十月でございますが、二十一回の農協大会を開きました。ここで既にWTOの問題を課題として提起したわけでございます。ここで提起いたしましたのは、こういう内容でございました。
一つは、まず食料・農業・農村に関する基本法の成立を目指します。そして、その国民合意を踏まえて、その上にのっとって次のWTO交渉に臨みたい、これが一つでございます。
二つ目が、WTO交渉にどう臨むか、ストレートに、そのことに対する方針は、平成十一年の三月末までにつくりましょうということを提案しました。そのときには、米について特例措置でいくのか関税措置を選ぶのか、本音の議論をしましょうということも提案してございます。
三つ目は、平成十年、十一年、十二年と、次期交渉に向けて特別運動を展開しましょう、予算も特別予算を組ませてくださいということで、この三年間は、前回七年間、WTO交渉、ウルグアイ・ラウンド交渉を闘ったときと同じ規模の予算を増額して認めてもらってきておるわけでございます。
こういう流れでございまして、私どもは、前段、基本法の成立に全力を挙げてきたということでございます。
そこで、昨年の九月に入りまして、基本問題調査会で最終答申がまとまるという段階を迎えたわけでございます。それとあわせて、WTO問題に対する専門委員会を設置するということを決めました。そして、昨年の九月二十二日に直ちに委員会を開催いたしまして、米だけではございません、次期交渉の全体の枠組みについて全部洗い出して資料をつくりまして、それを一万五千部つくりまして組織に配付し、組織での検討をお願いしたということでございます。
それから、いよいよ十一月五日になりまして、同じく専門委員会で、今度は全部ではございません、米の特例措置と関税措置をどうするかという問題に絞って資料をつくりまして、議論を展開しまして、これも一万九千部ばかり資料をつくりまして、組織で相談していきたいということで諮ったわけでございます。
そして、理事会に諮ったりいろいろな会合に諮りましたが、最終的には十一月二十六日、農業対策本部委員会というものを開きまして、これは全県の中央会の会長さんの集まりでございますが、全県の中央会の会長さんの集まりに諮って、よし、やろうということになりまして、十二月十四日までにその討議を完了するということにしたわけでございます。
大変短い期間でございましたが、集中的に議論いたしまして、結果を集約いたしましたところ、特例措置を継続するという議論はございませんでした。ただ、議論する期間が非常に短い、場合によっては唐突だというような御批判も受けました。その点についてはいろいろと批判を受けましたが、内容については特例措置の継続という意見はなかったわけでございます。
そういう状況も踏まえて、十二月十五日に、あくまでも前提条件が満たされるならば、措置の切りかえについて、判断を理事会それから会長に一任するということを決めたわけでございます。それに基づきまして、十二月十七日、外交交渉の責任を持つ政府とも協議させていただきまして、前提条件が満たされたのではないかと考えて結論を出したということでございます。
これが経過でございます。
次に、私たちの判断した中身につきまして御説明したいと思います。
私たちは、米の特例措置か関税か、この問題だけ切り離して議論することに反対でございまして、これは全体の農業交渉の一部でございますので、全体の農業交渉をどうするのか、その姿勢がはっきりしなければいけないと考えたわけでございまして、その点についての私どもの見解は、目下議論中で結論ではございませんが、お手元の資料の四ページに中間的な整理を出しているわけでございます。
参考資料の一でございます。四ページでございますが、「主張の要点」ということで書いてございます。要点は四つございますが、1は、二行目から書いてございますが、食料の安全保障を確立することは、各国政府の自国民に対する基本的な責務である、こういう考え方に立ちたいということでございます。2でございますが、二行目の後ろから始まっております。農業は、食料生産にとどまらず、多面的機能の役割を果たしているので、これは貿易では置きかえることができないのだというぐあいに考えているわけでございます。3でございますが、二行目に書いてございます。よってもってすべての国が一定規模の国内農業生産を維持することが必要なのだという考えでございます。4でございますが、とりわけ、多面的機能の四割以上を条件不利地域、国土・環境保全地域が担っておりますので、この点に配慮した政策展開が必要なのだという考えでございます。
これを踏まえて、次期交渉で「要求する項目」といたしましては、二つ出してございますが、1は、食料の純輸入国が、食料安全保障並びに農業の多面的機能を発揮させる観点から、国内法体系で定めた一定規模の国内生産を確保するための政策対応が、協定の新たなルールとして確立されるべきである、2が、国土・環境保全地域(中山間地域)の機能を維持するための農業生産支援政策が、新たなルールとして確立されるべきだ、こういう観点から、これをさらに具体化した要求をし、交渉をすべきだというのが現時点での中間取りまとめに基づく私どもの基本的な考え方でございます。
全体交渉はそういう観点でするにいたしまして、それでは、米のミニマムアクセスについてどう考えていくかということでございますが、私たちは、そもそも三五%の生産調整を実施している状況下で無理やり米を輸入するということについては、基本的には反対でございます。しかし、現在マラケシュ協定を批准しておりますので、米の最低輸入義務といいますか、ミニマムアクセスの仕組みを免れる方法があるのかということでございますが、批准している協定のもとで免れる方法というのは二つしかないわけでございます。
一つは、脱退するということでございます。二つ目は、協定の修正を図るということでございます。しかし、協定の修正には三分の二の同意が必要でございます。現在、百三十二カ国ございますが、三分の二といいますと八十八カ国の賛成が要るわけでございます。我が国が米のミニマムアクセスの仕組みの廃止を提案してすぐ納得してくれる国は、恐らく一、二しか今のところはないと思います。八十数カ国をこれから説得するというのは、時間的な余裕も理論的な組み立ても可能か、大変難しいと思います。
そういうことでございますので、残念ながら、協定の期限が切れた後のルール、二〇〇一年以降のルールをどうするか、その交渉ではいろいろなことを要求しなければなりませんが、今批准した協定が生きている間は、その協定の中の選択肢を選ぶしか現実的にはないと考えたわけでございまして、その点については、冷静に考えて最も有利な方法を選ぶべきだと思ったわけでございます。
そこで、特例措置と関税措置について比較検討したわけでございます。
最初に特例措置でございますが、お手元の資料の五ページに表を出してございますが、上から二番目の表でございますが、特例措置につきましては、二〇〇〇年段階の輸入義務数量八%ということは最も高いわけでございまして、不利であると思います。
それからもう一つ不利なのは、事前に二〇〇〇年中に八%プラスアルファの輸出国が受け入れ可能な譲許をしなさいということが書き込まれているわけでございます。これは大変不利だと考えております。
三番目に、二〇〇一年以降のルールを交渉することを考えた場合、これは二〇〇〇年から交渉していくのですが、同じその二〇〇〇年に八%プラスアルファの譲許を示しなさい、そういう交渉をさせられながら、同じその二〇〇〇年に八%の仕組みを廃止しなさいとか八%マイナスアルファにしなさいという交渉を並行してできるものだろうかと考えたわけでございます。それは、仕組みとしては可能かもしれませんが、実際の外交交渉とすれば、余りにも矛盾といいますか成り立ちにくいことではないかと考えたわけでございます。
それからもう一つは、特例措置で、輸出国からすればどういう譲許をかち取ろうかということでございますので、これは次のWTO交渉の前哨戦になるわけです。次のWTO交渉で、輸出国がどこまで攻めていこうか、その最初の突破口がこの特例措置になるわけですから、寄ってたかって死に物狂いで交渉してくる、もう目に見えておりますので、我が国が孤立して、この交渉の矢面に立つのは極めて不利であると私どもは考えたわけでございます。
ではそこで、関税措置はどうかということでございますが、関税措置については、前提条件を幾つか置いて考えざるを得ないと思います。
一つは高関税といいますか、高い二次関税が適切に設置されまして、九十数%の大部分の米について、現行の措置と同じような効果が得られるのかどうなのか、ここをはっきりさせなきゃなりません。二番目は、その設定した二次関税水準の維持について努力の合意が成り立つのかどうなのか。三番目に、輸入米について国内の生産調整にマイナス影響を与えないという閣議決定事項が引き続き守られていくのかどうか。こういう前提条件を置かないと議論が進まないと考えたわけでございます。
もしこれらの前提条件が満たされれば、関税措置につきましては、二〇〇〇年段階で、このAの例で申し上げますと七・二%ということで義務数量が最も少なくて済む。それから二番目には、二〇〇〇年からの交渉で、交渉期間が例えば三年かかれば、その三年間は七・二%の水準のままで交渉を継続する、その間事前の譲許は必要ないということでございます。
さっき言いましたように、特例措置では、二〇〇〇年一年間でプラスアルファの譲許を行って、それに従って加算した数字で輸入を積み重ねていかなきゃいけないわけですね。二〇〇一年、二〇〇二年、二〇〇三年、実績をつくっていかなきゃいけない、プラスアルファで譲って。ところが、この関税措置では二〇〇〇年水準を凍結したまま次の交渉ができる。ですから、次の交渉でこの仕組みの改革を求めてもこれは整合性が成り立つと考えたわけでございます。
以上のことから、私どもの今批准している協定の中でどれを選ぶかという判断の場合に、前提条件が満たされるかどうかが分かれ目だと考えたわけでございます。この点について、十二月十七日、政府との協議で条件が満たされたと判断いたしまして、御存じのとおりの決断をしたということでございます。
以上で説明を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/4
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005・穂積良行
○穂積委員長 ありがとうございました。
次に、伊藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/5
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006・伊藤康江
○伊藤参考人 伊藤でございます。
私は、これまでお話しになった方とちょっと違いまして、ちょっとどころか大分違うんでしょうけれども、食べる一方ということで少し意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、今回のこの委員会なんですけれども、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部改正ということなんですが、法律の中身を私どもが意見を述べるのはちょっと大変難しいというふうに思いますので、この法律改正は特例措置から関税化へ移行するというための一つの手続であるというふうに解釈させていただきまして、関税化そのものをどう考えているかということを主にお話ししていきたいというふうに思っています。
私は、食料・農業・農村基本問題調査会の委員をしておりましたけれども、そのときにいろいろな方から、消費者というのは安くておいしい食料が手に入ればそれでいいんではないかというふうなことを言われました。そういうふうに単純に物を見ていらっしゃる方も多いわけなんですが、実は私たち多くの消費者は国内自給を望んでいる、これは多くデータが出ておりますので御存じの話だというふうに思います。
そして、その理由は何かといいますと、安全保障であり食の自立であり環境の問題でありというふうに思っているわけです。それは所得も低いですし、価格は安い方がいいに決まっているんですけれども、それと引きかえに、今申し上げましたような安全保障だとか環境問題を売り渡すわけにはいかないというふうに多くの消費者が考えているということを知っていただきたいというふうに思っております。
私たちの団体で、五百人の大学生を中心に若者のアンケート調査をいたしました。お米をどう思っているのかということ、そしてその中で輸入することについてどう思うかということを二十代から三十代、若い人中心にやったんですが、後でもし時間がございましたらその内容も御紹介できたらというふうに思っています。
余り時間がございませんので、次に、今回の特例措置から関税化への移行について意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
特例措置が始まったのは一九九五年ですか、当時関税化の話もあったように私は記憶しております。関税化の方がいいのかな、特例措置の方がいいのかなというふうに私たちも考えた時期がございます。だけれども、ミニマムアクセスという方法で出発したわけです。そしてここにきて、今になってやはり関税化の方がいいんではないかというふうなことを言われますと、先を見る目のないといいますか、そういう国政を預かる方たちの先を見る目のない農政に大変不信感を今消費者は持っております。
それから、今回の決定の方法についてなんですけれども、ここで法律改正の委員会が開かれております。だけれども、本当に重要なことは、特例措置から関税化へ行くときに、どうするのがいいのかということをやはり審議すべきではなかったかというふうに思っています。私たちが意見を述べる場はございません。国会が、国民を代表してくださる方たちでそこをやっていただきたかったなというふうに思います。今回は、与党と行政とJA、生産者だけで何かごちゃごちゃと決めちゃったみたいに私たちは考えております。
そのときに国会でやっていただきたかったという大きな理由がもう一つあるんですけれども、米の完全自給を維持するというふうに国会で三回ほど決議していらっしゃいますね。そこで決議したことを崩すんだったら、やはり国会でやるのが順当ではなかったかというふうに思います。今回のことを考えますと、全部私たち消費者は蚊帳の外に置かれていたということに非常に不信の目を国民は持っております。
これはまず私たちは、新聞かラジオかちょっと忘れましたが、報道で接したわけですね。食糧庁から何の連絡もなかったです。こんなことを審議しているよとか、考えているよとか、JAからもありませんでした。報道によって耳にしまして、ああこれは何とかしなきゃというふうな機運になりまして、農林水産省にお電話しまして消費者団体に説明に来てほしいというふうなことを申し上げて初めて、慌てふためかれたのかその辺はわかりませんけれども、すぐに飛んで見えました。そして、中川農林大臣もお見えいただいていろいろと御説明をしていただいたわけなんですけれども、つくる人がいて、食べる人が半分以上いて、そしてやっと日本の農政、農業というのは成り立つはずなんですが、いつもつくる人たちを中心に物事が動くというのが私たち国民にとっては大変不満です。
この委員会も農林水産委員会といいますよね。だけれども、農林水産委員会というと生産のところを中心に私たちは考えが浮かびます。食料・農林水産委員会とこの委員会も名前を改めていただけたらというふうに思っています。調査会の名前も食料・農業・農村というふうになったわけです。食料という、その消費の立場というのをぜひこの委員会の名称としても入れていただけたらと、余計なことを言いましたけれども、そういうふうに思っています。
関税化に伴う消費者の気持ちといいますのは、いろいろ農林水産省、食糧庁から説明していただいたわけなんですが、九九年度は六・八で、二〇〇〇年は七・二、それ以後はミニマムアクセス量は減っていきながら交渉をしていくんだということですね。今は一〇〇〇%近い高い関税がかかることが附属書に書いてあって、そういうことができるから輸入はされないだろう、日本のお米より高い輸入品を買う人はいないから輸入されないだろうというふうに言われておりますけれども、すべて交渉事というのは心配な面が大変多いわけですね。関税化というのは言うならば自由化のことなんですから、交渉次第で関税率が左右される。関税だけが頼りというのは、やはり不安が残るのではないかというふうに思っています。
私たちの印象としては単に延命措置、ほんの短い間だけ輸入しなくたって済むというふうなことにならないように、私たちもそういう意見を出していきますけれども、くれぐれも政策の方でお願いしたいというふうに思っています。
それから、法律の中身に入らせていただきますと、輸入に係る納付金を食糧管理特別会計の勘定とするというふうなことも御説明いただいております。この点はやはり評価したいというふうに思っています。ぜひ備蓄米の確保ということは続けていただきたい。ただ、今みたいに多いのがいいのか、もうちょっと少なくてもいいのか、その辺の量の問題はございますが、この制度自体は続けて、そしてその納付金の使途について明白に情報公開をしていただきたいというふうに思います。
今回の法案は日切れ法案と書いてありましたけれども、一括審議される予定と聞いております。関税化はこの法律改正に伴って施行されるわけで、この法律が改正されなければ、もしかしてできないのではないかというふうに思っているわけです。実質的な実行に移る法律改正ですので、そういうことを十分念頭に置いて審議を尽くしていただきたいというふうに思います。
もし関税化はだめということになれば、この法案を通さなければそれでいいのではないかと、私は法律のことは余りよくわかりませんけれども、そんなことも想像しております。
それから最後に、政府、行政へ消費者としての要望を一応述べておきたいと思いますが、WTO協定とか農業協定の交渉に当たっては、食料というのは何だという、その基本に立った貿易ルールを確立していただきたいというふうに思っております。輸入に頼っている日本としては、国際的にリーダーシップをWTO協定、農業協定の場で発揮していただけたらというふうに思っております。
去年九月にまとめられました、私が先ほど申し上げました、食料・農業・農村基本問題調査会答申の五というところに行政手法というのがありまして、情報公開と国民の意見の反映により、政策立案の透明性を確保するというふうになっております。今回のように、二度と食べる人を蚊帳の外に置くようなことのないよう十分御配慮いただきたいというふうに思っております。
今までるる述べましたように、門戸を開放するわけです。税率は、交渉事となれば、先はどうなるかやみの中というふうに私どもは考えております。そこで、もし安い輸入米が入ってきたときに、それを私たちがどう選択するかということが残された最後の手段だというふうに思っております。
そのときには、一般家庭用を中心に、これは甘い考え方だとよく言われておりますけれども、私たちが買わなきゃそれでいいんでしょうと。今までリンゴとかチェリーが結構輸入されましたね、安いからというので。だけれども、消費者は買いませんでした。そうしたら、やはり輸入はされませんでした。そういうことができるのではないかというふうにも考えております。ですから、業務用も含めて、選択可能な手段というのを今後検討に着手しておくべきではないかというふうに思っております。
時間がなくなりましたが、先ほどの若者の意見というのをちょっとここで読み上げようかなと思うのです。一つだけ読ませてください。十代の女子です。これは、うちはランダムにやっているので、一番上にあるのを読みます。
輸入米は日本米より安い。最近では味も余り差が見られなくなってきている。しかし、減反など、米が余る現状で農家は大変だと思うので、米の輸入は最小限にすべきだと思います。食料のほとんどを輸入に頼っている日本ですので、何か一つぐらい輸入に頼らなくてもやっていけるものがあってもいいのではないでしょうかというふうに十代の女性が述べております。
今、若い人たちは余りお米を食べません。ですけれども、こういう意見を若い人たちが持っているということをぜひ念頭に置いていただきたいと思います。
どうも失礼いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/6
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007・穂積良行
○穂積委員長 ありがとうございました。
次に、今村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/7
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008・今村奈良臣
○今村参考人 ただいま紹介いただきました今村でございます。
私は、実は、内閣総理大臣に任命されて、農政審議会の会長を現在やっておりますし、それからまた畜産振興審議会の会長もさせられております。本日、本委員会に参考人として呼ばれましたけれども、これは、一研究者として、農業問題、農業政策についてこれまで私なりに研究してきたその研究者としての立場から意見を申し上げたい、こう考えております。総理大臣からいろいろ諮問がございましたことについては、私なりに全力を挙げてお答え申し上げるということはもちろんいたしますけれども、きょうはそういう立場で意見を開陳させていただきたいと思います。
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案、これは四つ法律案がございます。委員の皆さん御承知のことですので繰り返しませんけれども、この法律案の改正につきまして、まず結論から申し上げますと賛成でございまして、ぜひ成立をお願いしたいなというのが私の考えでございます。
しかし、その背景は、こういうふうに私考えております。当然この法律改正は、米のいわゆる特例措置から関税化へということに係る改正でございますけれども、この法律改正の問題は、実は二〇〇〇年の初めから開始されるWTO二〇〇〇年交渉の前哨戦の非常に重要な一部であるというふうに私は考えております。
私、きょう先生方に上げるお金がないので一冊だけ持ってきたのですが、「WTO体制下の食料農業戦略」、こういう本をもう大分前に出しましたけれども、この中で、きょうの改正問題に直接関連して申し上げるならば、特例措置から早急に関税化の方向へ切りかえるべきであるという基本的な考えを既に述べております。そういう意味では、私、研究者としての立場で見ればやや遅きに失したというふうな感なきにしもあらずでございますけれども、次善の策としていい方向がとられているのではないか、こう考えております。
さて、今回二〇〇〇年交渉の前哨戦の一部である、交渉そのものの体制が今日から始まっているという考え方をとる根拠を若干最初に申し上げておきたいと思います。
前回のウルグアイ・ラウンド交渉の折には、その交渉に当たるべき国内体制が、私の考えによれば基本的には構築されていなかったというふうに考えております。もちろん戦術的にはいろいろなことが行われたことはわかっております。例えば、後でこの本の交渉年表などを見ていただければるるわかるわけでございますけれども、国内体制が整っていなかった、そのことで、そのほか諸般の事情もございましたけれども、日本政府としてのポジティブなポジションが国際交渉においてなかなかとれなかったという問題がやはり基本問題としてあったと思います。
しかし、今回は、御承知のように、食料・農業・農村基本問題調査会の二年間にわたる審議、その結果の答申、さらに政府の御決定になった農政改革大綱、さらに昨日国会に上程された食料・農業・農村基本法案というふうなもので新しい日本の食料・農業・農村問題についての基本的スタンスが決められて、これでもって交渉に臨むという体制が整う中で、今回の特例措置から関税化への切りかえという、一見技術的、しかしもちろん技術的だけではないのですけれども、一見技術的と見られるものが本質的な問題を含んでいる、これに切りかえる。ただ切りかえるだけではこれはだめで、その国内体制が国際交渉に全力を挙げて構築できているという体制のもとで行われているという点を、私は、前回のウルグアイ・ラウンド交渉に比べてはるかにすぐれたものを持っているというふうに考えます。
さらに、最後にもう一度述べますけれども、食料の安全保障の問題、あるいは各国自給力強化の路線、あるいは農業、農村の持つ多面的機能の問題、環境問題、こういった問題について、日本が積極的に国際交渉の中で海外諸国に対して問題提起をしていく、そういう中から新しい合意をつくり上げていく、こういうことが必要だと考えておりますし、その体制が私の見るところではほぼでき上がりつつあるというふうに読んでおります。
そういう意味で、その一連の過程の中における一つのポイントが、今回上程されております法律等の改正案にかかわる内容だと思います。
そういうことで、背景をやや述べましたけれども、関税措置への切りかえを行う根拠というものを次に申し上げてみたいと思います。大きく言って、私は三点に集約できると思います。
第一は、極めて現実的な問題でありますけれども、特例措置を継続する場合に比べてミニマムアクセス数量の毎年の増加量を半減できる、年々〇・八%から〇・四%にできるということが一つ。
それから、特例措置をもし二〇〇一年以降もこのまま継続するならば、ミニマムアクセス数量の一層の増加が見込まれるし、それからまた、一定の多分相当厳しい譲許を求められるということがあり得るだろうというふうに考えております。やはり外国産米の義務輸入量をいかに減らすかということが、ともあれ第一の大きい現実的な問題だろうと思います。
第二に、WTO協定の基本である包括関税化の原則にかなうものである。つまり、WTO協定の原則を日本も遵守するという方向を、米だけそれがなかったわけですけれども、この国際協約の原則を日本は遵守するという原則を内外に宣言するという意味が非常に大きいと思います。これが次期交渉、来年の一月から始まる次期交渉に非常に大きな力を与えることになるというふうに考えております。
なお、ついでながら申し上げますと、例えば韓国とかフィリピンはやはり特例措置、イスラエルもありますが、特に韓国、フィリピン、アジアの国々ですけれども、これは途上国規定で、二〇〇〇年にはその特例措置の問題は出てこないと思います。日本だけが浮かび上がってくる可能性があるわけですが、これに対して日本が原則を遵守するという基本路線を出した上で、その上で日本の、先ほど申し上げましたような新しい問題提起を国際社会に行うべきではないか、こう考えておる。
それから第三に、つまり強力な国際交渉のポジションを固めるということ。つまりそういう意味で、今回の四法律の改正は二〇〇〇年交渉の前哨戦になるというふうに私なりに考えております。
次に、関税措置への切りかえに当たり関税相当量の算定が必要になるわけですけれども、この点について政府から非常に詳細なデータが出されておりますけれども、これについて若干コメント申し上げます。
関税相当量は、公表された統計資料に基づき、農業協定に規定された算定指針に忠実に従って、一切調整を加えていないというものであります。国際的にも非難、批判をされるものではないということが第一点でございます。これは私も私なりに、いろいろ協定条文その他を参照しながら出された統計を吟味して、そういうふうに納得しております。
それから第二に、周知のように、ウルグアイ・ラウンド交渉の折には、関税表では農産品の分類はHS四けた、つまり国際統一商品分類システムの四けたを用いて関税を計算する約束になっております。この分類では、米はライスとしてだけ分類されているわけです。
ついでながら申しますと、HS六けたになりますと初めて、もみだとか玄米だとか精米、砕米の四つになってきます。六けたでも、インディカとかジャポニカ、ウルチ、モチといったような区別は出てまいりませんが、ともあれHS四けたでやられておりますから、米であればどういう米でもよろしい、こういうことが前提になっている。
以上のように、どのような質の米を比較しても合法なのだ、国際的にも、国際協約上合法であり文句はつけようがないというわけでございます。
また、算定に当たって従価税、従量税いずれを選択するのも当事国の主体的選択によるものと農業協定上はなっております。今回は従量税を選択しておりますが、これも正しい選択だったと私は考えております。
特に、従量税は、価格低下時、価格が暴落した、あるいはいろいろダンピングなどがあるというふうなことが想定されるとか、あるいはさらに、低価格米に対する従量税は国境措置として非常に機能するわけでございます。それに対して従価税は、価格低落時や低価格品に対しては課税額が縮小してしまいまして、国境措置としては非常に効果が薄い。あるいは、為替変動などがありまして、円高というふうな問題になりますと、機能するのが非常に弱くなるという問題がございます。そういう意味で、従量税が望ましいというふうに考えております。
ちょっと時間が来てしまいました。では、大分省略させていただきます。
以上のような考え方に基づきまして、関税化の方向、それに伴う必要な法律改正ということに賛成いたしたいと思います。
最後に、若干、一、二分いただきまして、最初に申し上げた交渉のスタンスの問題。
もう既に始まっておりまして、今回の法律の改正案の御審議についても、委員の皆様方におかれましても、今回この審議の中から新しい二〇〇〇年交渉がもう始まっているんだという観点でぜひ取り組んでいただければというふうに思います。当然、こういう中で日本農業あるいは農業者にやはり明るい展望をもたらすということをしっかりと提起すべきですが、そのために、他方では国内法、特にこれから御審議のされる食料・農業・農村基本法の十分な御審議をいただいた上で、早期の御成立を私としては念願したいというふうに考えております。
ただ、国際交渉、私がいろいろ勉強している中で気になる点は、アメリカあるいはオーストラリア、カナダ、ニュージーランドといったようなケアンズ・グループの戦術は、どうもアジア諸国、APEC諸国を席巻しながら、その勢いでもってWTO交渉に臨もうというふうな感なきにしもあらず、これまでの経緯をつぶさに見ていますとそういう気がいたしております。
日本は、非常にアジア諸国と関係が深いことでございます。インドネシアなどに対しても、新しいシステムでの米の援助と申しましょうか、支援をいたしております。
ついでながら申し上げますと、この米の長期にわたる貸し借り、インドネシアに対するお米の貸し借りという提案は、私がもともと一昨々年、一九九六年の十月十六日付で朝日新聞の「論壇」に投稿いたしました「東アジア地域で米の需給調整を」という投稿が、東アジアに生きるんではなくてインドネシアに生きるという、私自身提案者としてびっくりしているわけです。
しかし、そういう関係を、政府間の本当の信用、信頼に基づいてこれからお互いにやっていく、特に食料の問題についてはそういう観点でやっていくという近隣諸国との提携をベースにしながら、ぜひ二〇〇〇年交渉に政府としても当たっていただきたいということを終わりに申し上げまして、私の参考人としての意見を終わらせていただきます。
どうもちょっと時間がオーバーしてしまいましたけれども、話したいことは山ほどあるんですが、この程度で終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/8
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009・穂積良行
○穂積委員長 どうもありがとうございました。
これにて参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/9
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010・穂積良行
○穂積委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢上雅義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/10
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011・矢上雅義
○矢上委員 自由民主党を代表いたしまして、参考人の皆様方に質問いたします。
まず高野常務に対してでございますが、以前より、米の関税化措置への移行に向けて何回か勉強会を開かせていただきました。その中で私も、高野常務に対して厳しく御指摘申し上げた点がございます。まず、組織討議の時間は十分とれるのか、また、仮に高い水準の関税相当量を設定したとしても、日本独自で設定できるのか、また、それをいつまで維持できるのか、そして、関税化措置への移行をのんだ場合に、二〇〇〇年からのWTO次期交渉への影響はいかがなものか、大きく分けるとこの四つの問題を論議し合ったことを覚えております。
しかし、高野常務の御説明によりますと、WTO協定は例外なき関税化ということで、今現在とっておる特例措置の四つの選択のうちどれか最善の選択をするしかない状況にあるという現実の判断に追い込まれた、そういう状況でございました。また、きちんとWTOの原則に基づいて協定を遵守すれば、次の二〇〇〇年からの次期交渉のテーブルにおいて有利なスタンスで臨める、この二つの観点から、どうしても自分はJAグループの責任者として全うするんだというかたい決意を述べられたことを思い出します。また、熊本県のJAが相当もめましたときにも、高野常務が、単身乗り込んでいただきまして、きちんと質疑応答に応じられ、その結果、熊本県のJAの皆さん方も御理解されたということを、つい先日のことでありますので、まだ私もよく記憶いたしております。
そういう中で、常務が、これからJAグループとしてこういう大きな苦渋の決断をしたということに対しての、組合員の皆様方や国民の皆様方に対してのきちんとした説明もありましょうし、また、新たな新農業基本法の中で展開されます施策に対しての要望等、率直な御意見があれば承りたいと思っております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/11
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012・高野博
○高野参考人 今回の決定につきまして、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、組織の中から一番出されました意見は、討議の時間がいかにも短いというおしかりでございました。これにつきましては、私ども反省するしかないわけでございまして、そういう気持ちでいっぱいでございます。
これも先ほど触れましたけれども、では、具体的な中身については別の提案があるかということでございますが、それについては、やはり特例措置の継続という考え方はなかったわけでございまして、そういう議論の中で組織の意向をまとめたわけでございます。しかし、不十分な点は残ったままでございますので、現在も関税措置へ切りかえたことにつきまして、組織の内外に一層理解を求める説明を続けておるわけでございまして、今後も継続したいと考えているわけでございます。
それから、今後のことについてでございますが、今一番急いでおりますのは、次期交渉に臨む私どもの基本方針、基本的な考え方を早くつくらないと、これは何を訴えていくにしましても自分たちの考えがまとまらないと進みませんので、関税措置への切りかえの説明も必要でございますが、次の交渉に臨む全体の基本方針を早くつくりたいと今一生懸命努力しているところでございます。できれば三月末までに原案をつくりまして、四月いっぱい組織に諮りまして、四月の末か五月の初めには私どもの次の交渉に臨む方針をまとめたいと考えておるところでございますが、それとも関連いたしまして、次期交渉に向けて、国民運動の組織、これも早急に行わなくてはならないと考えているところでございます。
幸い、基本法の議論をもう私ども三年間やってまいりましたが、その中で、各界のいろいろな方々と連携、つながりを持たせていただいたわけでございまして、それを足場に、全国段階でそれから各県でそういう運動を組織していきたいと考えているわけでございます。一月から既に、消費者団体の方、労働団体の方、婦人団体の方、市民運動の方々、学者、報道関係の方々と連絡をとっておりまして、近々そういう組織を発足させることは可能だと考えておりますので、そこにも、過ちを何度も繰り返さないように、WTO次期交渉に臨む考え方を十分御説明もし、御意見も聞かせていただいて、今までの反省も踏まえて、まさに各界の御指導を受けながら国民運動を展開するというぐあいに取り組んでいきたいわけでございます。
基本法につきましては、いわば先ほども申し上げましたが、次期交渉に臨む国民合意を、食料、農業、農村問題についての国民合意を法律の形で示すものだ、そういう性格も持っておると思っております。したがいまして、国内農業を基本とした自給率の向上を目指す方針、それから農業、農村の多面的な役割を評価し、それを助長していく、そういう方針、立場が明確に示されるよう心からお願いしたいわけでございます。
なお、次期交渉は、もちろん国民運動に支えられていく必要がありますが、決定していくのは政治でございますので、先生方の引き続きの御指導も心からお願い申し上げたいと思うわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/12
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013・矢上雅義
○矢上委員 続きまして、時間の関係で、今村先生にお願いしたいことがございます。
今村先生はいろいろな著書の中で、高関税率、関税相当量に関しまして、ダーティータリフィケーションの問題、またMA米の国内生産に及ぼす影響、そしてまたマークアップから推定して関税相当量がいかなるものかの推論など、何年も前から非常に客観的、冷静に分析されておりますので、今日起きております事柄は、先生の本を読みますと既に推察されておることかなと思っております。そういう、冷静に、またわかりやすく著書を出しておられることに対して、大変敬意を表したいと思っております。
その中で、私思いますことは、今までの農政というものは、昭和十七年、一九四二年の食糧管理法の制定、戦前戦後の食い物がない時代の、どんどんつくって食べ物を供給してくださいという大きな時代がございまして、そういうアクセルをどんどん踏み続けながら、しかし、一九六〇年、一九七〇年と米余り、そして減反政策と、急に環境が変わってまいりました。しかし、大きな車がアクセルを吹かし続けておった結果、なかなかとまれない。一九六〇年、七〇年から、ブレーキを踏もうと思っても車がとまらない。しかし、やっとその大きな車が、停止した状態というか、真空状態みたいな形で今停止しております。そういう状況が、まさしく先生が今まで研究されてきた中での一つの結果ではないかと思っております。
そういう状況の中で、今後この大きな問題が、また農政号という大きな車が、アクセルを吹かしてきちんとハンドルを切っていくためにどうすればいいか。ブレーキを踏んでいる最中に思い切ってハンドルを切りますと必ず失敗します。そういう認識を、行政関係者、政治関係者、団体関係者の皆様方もわかっておりながらブレーキを踏むしかなかったという時代を二十年、三十年と過ごしてまいりましたが、しかし、今ここに車が停止した状態で、新たにどういう方向にアクセルを踏みハンドルを切るか、そういう状況におきまして、先生が今まで持論としておられます農業における五五年体制の改革、この点について、簡単で結構でございますので、お気持ちを御披露していただければと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/13
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014・今村奈良臣
○今村参考人 大変大きい問題でございまして、これを二分か三分で答えるのは容易なことではございませんけれども、一つの筋は、やはり市場で需給や食料品の品質を評価するというシステムとあわせて、経営安定対策をいかに安定的にしっかり組むかということでございます。
私は、先ほどは申し上げませんでしたが、自主流通米価格形成センターの運営委員長だとか、自主米取引の監視委員長だとか、米情報委員会の委員長だとか、米についても全部やらされているんですけれども、それを通して見まして、例えば、平成十年産米から値幅制限を入札取引において撤廃いたしまして、非常にいろいろの危惧が関係者からも出されていたんです。私も一生懸命観察し分析してきましたけれども、今までのところ、まだ一年たちませんけれども、ほとんど大きい問題は出てこない。こういう中で、先ほど北海道の方などからの、所得安定制度をいかにするかというふうな問題につきましても、これは当然政府としてやるべきことだというふうに考えております。
それから、第二番目は、やはり環境、農業、農村の持っている多面的機能、この問題についてしっかり考えなくてはならない。これは、ちょっと時間がございませんので細かくは省略いたしますが、この考え方。
それと、食料の安全保障という問題。これは、食は人間生存の基礎でございます。と同時に、これは日本だけの視野ではなくて、私は、世界全体を見渡したときに、二十一世紀は食料の時代になるというふうに考えております。中身はもう解説しなくてもおわかりいただけると思いますが、そういう観点を持つということ。
同時に、日本としてはいかに自給率を上げていくか。これについては私なりに考え方がございます。きょうは畜審の会長とかそういうことを離れて、日本ほど草資源大国はございません。中山間地域、ここには草資源が大量にございます。これを畜産にどういうふうに生かしていくか、こういう路線をしっかり考えながらやっていきたいなというのを一研究者の政策提言として今次出しております。
そういうことも含めて、これから一番は、国民に本当に安心、安全な食料をいかに供給するか、そのシステムをつくる。それから同時に、その供給する農業者、生産者をどれだけ安定させ、安心して農業生産にいそしんでいただけるような仕組みを本当に構築していくか、こういうことでございます。
大変舌足らずでございましたけれども、よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/14
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015・矢上雅義
○矢上委員 私も、先生の本を読みました。価格支持ということから、消費者に対しての負担、そしてまた食品産業に対しての負担、そのような負担の形で成り立っておった今までの農政から、国の財政として農家の経営安定対策をきちんと図る。きょうは北書記長も来ておられますが、まさしく北書記長が先ほど御説明されたことはそのことではなかったかと思います。
やはり、きちんとした経営安定対策の位置づけを図る、そして自立した経営体として、個人、法人も含めて、また集落営農も含めて、きちんとした経営体を育成する。以前の農地改革におきます自作農というレベルを超えて、きちんとした経営体としての自作農、また法人経営体を育成する。それこそがまさしく五五年体制からの脱却だ、私はそのように理解いたしております。何しろ参考人の皆様方に与えられた時間が短いので、先生も大変残念であったかとは思いますが、続きまして、次の質問に移らせていただきます。
実は、自民党におきまして、新農業基本法の法律案等を今策定中でございますが、私どもの哲学といたしまして、一つまず柱があって、その後に基礎的なものが二つほどございます。
一つは、土づくり、経営、生産、流通、加工、販売、消費、廃棄、リサイクル、それぞれ個々ばらばらで取り組んでおりましたものを、きちんと目に見える循環型リサイクル社会として農業全体を位置づける。先ほど申しましたように、つくって食べるということが主眼でありましたが、しかし、入り口と出口というものがございます。きちんと土づくりをしてきちんとした経営をする、これが入り口。そしてその後、きちんとつくったものを適正なきちんとした値段で売ること、そしてまた廃棄及びリサイクルシステムをきちんとつくること。入り口と出口がきちんとしないまま農政が進められてきたという嫌いもございますので、その辺を、きちんと一貫した循環型の農業として確立していくことが一つでございます。
そういう中で、従事しておる生産者の皆さん、また行政そして政治家おのおのが、自信と誇りを持って農業、農政に取り組めるような新しい農業基本法をつくろうということで、そういう体系のもとに法案を作成いたしております。
次に、この法案の根拠といいますか前提となる哲学でございますが、一つに、地域生態系の保全と創造を支援するシステムを内在すること、また国土保全、また農村風景、農村景観の整備という中でも、きちんと日本の歴史とか伝統というものを踏まえた魂のある形でやっていくということでございます。やはり、歴史とか伝統を踏まえた景観整備でなければ、ヨーロッパあたりの、アメリカあたりの風景を日本に持ち込んで、単なるリゾート化して、また失敗に終わるということにもつながると思っております。
そういう新しい基本法の中で、さらに地域戦略を練り上げる。地域戦略を練り上げる中で必要になるのは、人材の育成でございます。きょうここに伊藤事務局長も来ておられますが、先日も伊藤事務局長のお言葉の中に、農業者大学校を初め人材を育成する、そして、その人材が地域に配置されることによって、食を通して人の健康とかまた環境が保たれていく、そういう意見を聞いたことがございます。きちんと、新農業基本法に合わせまして、地域戦略を策定して人材を育成するという点につきまして、伊藤事務局長の方から御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/15
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016・伊藤康江
○伊藤参考人 人材育成ということで大それたことは、私どもが育成するわけではありませんし、やはりここは政策に頼るということになると思いますが、農業を理解する、多くの国民が理解するということについては私どもが力を尽くせるのではないかというふうに思っています。
そして、国民が農業をきちんと理解することによって、農業をやろうかなというふうな人々がふえてくることを私どもは期待して、国民が農業理解をするという活動を推進して、それがひいては人材の育成につながればというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/16
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017・矢上雅義
○矢上委員 伊藤事務局長のお話を何回か聞きましたが、本当に農業を大事にして、また理解してくださるお気持ちに感謝いたします。
続きまして、最後に、あと三、四分しかございませんが、今一番問題となっております直接所得補償について、北書記長に御質問がございます。
実は、北書記長も既に御存じだと思います。所得補償の方式として、個別、作物ごとにやるべきなのか、また農家、経営体ごとにやるべきなのか、また中山間地、いや平場だ、しかし畑だ、田んぼだといろいろ議論があることも書記長は御存じだと思っておりますが、これから組合の皆さん方にもそういう大変難しい作業をお願いすることもふえてくるかと思っております。その点、御認識だとは思いますが、そういうことを踏まえまして、大変厳しい作業を目前に控えた中で書記長のお気持ちをお聞かせ願えればと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/17
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018・北準一
○北参考人 今、所得補償のあり方、形態がどうあるべきかということですかね。
私ども、農政の方向として、いわゆる価格から所得政策ということに変わっていく、こういう認識で生産現場も認識はいたしておりますけれども、現況を申し上げて、先ほどのようないわゆる疲弊感といいますか、経営の切迫感が出ている、これは否めないわけです。そこで、この後、それではそこをどうやってカバーするかということが、いわゆる所得補償政策というものがぜひ必要、こういう認識に立っております。
先生も描かれておりますように、いわゆる協定上の問題、いろいろあるわけでありますから、私どもは基本的に、先ほど言われました循環型だとか保全型、いわゆる地域政策として農村地域全体を包んでいくような、やはりそういう観点での所得政策というものがぜひ必要という考え方であります。ですから、いわゆる生産高単位というものはちょっとなじまないであろう、一部そこが取り入れられるかもしれませんが、私どもはそんな認識をいたしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/18
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019・矢上雅義
○矢上委員 以上で質問を終わらせていただきますが、本日はまことに貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/19
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020・穂積良行
○穂積委員長 次に、堀込征雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/20
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021・堀込征雄
○堀込委員 参考人の皆様、きょうは本当にありがとうございます。民主党の堀込でございます。各先生方に、それぞれ質問をさせていただきたいと思います。
最初に、北参考人にお尋ねをいたします。
先ほどお話がございましたように、この法改正、国内対策強化の三条件がクリアされなければ反対だ、こういうふうにおっしゃいました。中身をお聞きしますと、本来ウルグアイ・ラウンド対策費六兆百億の中で消化をされて対策が打ってこられなければならなかったような中身だというふうに受けとめますし、当然この対策費はそういうふうに使われてくるべきだったのだろう。
しかし、あの対策費は、もともと見せかけは六兆百億でありますが、国費は二兆八千億で、事業費で市町村負担や農家負担を膨らませてあるわけですから六兆百億になっているわけであります。そういう意味では、このウルグアイ・ラウンドの国内対策が、最初から見せかけ、まやかしの姿でやられてきて、今書記長がおっしゃったように、国内対策がとられてこなかったのではないかという印象を私は持っていますが、この対策費の印象についてが第一点です。
第二点、隣に高野常務さんがいて言いにくいかもしれませんが、今度の意思決定の過程ですね。この関税化を受け入れる、それぞれ団体もありましょうし、政府の意思決定の過程、こういうものについて、早過ぎたとか十分でなかったとかいろいろありましょうが、感想をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/21
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022・北準一
○北参考人 今お尋ねのUR対策費の点でありますけれども、当初、協定受け入れといいますか、自由化に踏み込むと国が決めた、その中からいわゆる対策として六兆百億というものが実は出てきたわけであります。我々生産者としては、この六兆百億はおよそ所得政策にストレートに使われるべきだという認識もしておりましたし、そういう中身であろうと予測しておりましたが、実は御指摘のような公共事業等に大半が回ったということであります。この事業については、やはり食料生産で基本的に改良事業等は必要である、ここはだれも論をまたないわけなんですが、その中身についてはかなり受益者負担が強い、一々申し上げる時間はございませんけれども、そういう認識であります。
ですから、押しなべて言いますと、この効果というものがいつ出てくるのかということが今のところ見え切っていないというのが私どもの実感であります。
それから、関税化を決定したという経過についての農業者としての感想なんでありますが、一口に言って非常に拙速といいますか、短期間、短時間で、いわゆる焦点あるいは内容の論議が十分されない、そういう中で、時間がないということで踏み切るということには非常にやはり問題があったと私は思っております。
もちろん、高野常務さんも、いろいろと系統組織での論議という部分で努力されたと思うのでありますけれども、しかし、時間的に言って、とてもじゃないが、農業者みずからの意向だとか、そこまでには至っていない。私どもも、この点については非常に不満といいますか持っているという部分であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/22
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023・堀込征雄
○堀込委員 ありがとうございました。
続いて、高野参考人にお尋ねをいたします。
きょうはどうしてもお聞きをしなければならないことがあるわけでありますが、その第一点は、平成五年の全中、全国農政協の抗議声明であります。
細川総理の決定は全国の農業者にいわれなき犠牲を強い、農業者の誇りと夢さえ奪うものでありまして、断じて許すことはできない。細川総理の為政者にあるまじき理不尽な断によって云々、こういう声明を出して、関税化受け入れ断固反対をしてきたわけです。その当時の事情としては私もよくわかります。
ただ、先ほど伊藤参考人もおっしゃっていましたが、最初から関税化を受け入れておくという勇気がないのはなぜなのという御意見ございましたが、私もその点はじくじたる思いをしているわけであります。
しかし、ここへきてこれをやる、関税化を受け入れるとなると、政府も行政も私ども議員も、やはり過去の判断は誤っていたんだね、あるいは過去の行動はどうだったのかという総括といいますか、反省ということはきちんと言わなきゃいけないのでしょう、こう思っていますが、農協組織として、高野常務さんに、まずその辺の総括はどうされたか、そして今度の組織決定に至ったのかという点を一つはお聞かせをいただきたい。
第二点、先ほど北参考人にもお尋ねをいたしましたが、ウルグアイ・ラウンドの六兆百億、これを扱うことによって、この期間に、六年間で競争力ある日本農業をつくる、こういうはずであったわけでありますが、実はなかなかそうなっていない。構造改善事業を中心としたこの対策費の使われ方、あるいは成果などについて、感想がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/23
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024・高野博
○高野参考人 平成五年の十二月は、関税化の受け入れを政府が発表した直後でございまして、そのときの声明は、多少感情的な声明になっていたかなと思うわけでございますが、政府が決定して批准した以上、その後、その現実に立って我々も考えていかざるを得ない、これは当然でございます。そこで、関税化に反対しながら、今回の議論がそれとどう整合しているのかというのは、これは私ども組織の中でも最大の論争点の一つでございます。
そこで、一つ最初に申し上げたいのは、今回の米の特例措置を関税措置に切りかえるという話は、米の国境措置を、一般の品目のように一律関税を設けて関税化していくというのとちょっと違うということなのですね。
つまり、前回、ウルグアイ・ラウンド交渉のときに、輸入実績が三%以下の輸入禁止的な品目を各国とも持っていたのですね。これをどうするかというのは、もめにもめて、七年間かかって、結局、その仕組みとして、大部分のものは高関税で実質輸入をストップして結構ですよ、内外価格差を計算してそれで関税を設けていい、そのかわり、最低限の、三から五%は輸入を認めなさいという仕組みを取り入れたわけでございます。ですから、高い二次関税で事実上輸入がされるのならミニマムアクセスは取り込む必要がないわけでございますから、高関税で実質阻止、それと見合った最低輸入機会を与えなさい、これはワンセットの仕組みができ上がっているわけでございます。
私どもは、米についてはそもそも全部に反対なのですが、政府がこれを認めたわけでございまして、その現実には従うという立場に立っておるわけでございます。
そこで、何で今回、米のミニマムアクセスの仕組みの中の関税措置の方を選んだかということでございますが、最近の新しい事情が幾つかございます。
一つは、結局、その後を見ますと、各国がこの仕組みでうまくやっているのです。カナダの農民組合とも接触しました。アメリカの農民組合とも接触しました。EUとも接触しました。みんながミニマムアクセスの仕組みで事実上三%も輸入させていない、徹底的にガードしてしまっている。何か支障はないか、いや、何にも支障はないよ、あの仕組みでうまくやっているよ、そういうことが一つわかってきました。
それからもう一つは、輸入米の流通実態がわかってきました。直近の実情を申し上げますと、輸入米は、アメリカと中国の短粒種が一番競争関係が激しい米なのですが、六十キロ、一俵四千七百円から六千円で入ってきます。それに政府が一万円の課徴金を乗っけます。一俵一万四千七百円から一万六千円ぐらいで流通する。輸入米がそういう実力だというのがわかってきました。ですから、どのぐらいの関税を設定すれば、ここのところが関税措置を採用しても、特例措置と事実上同じような仕組みをつくることができるかということがわかってきました。これが二つ目でございます。
三つ目でございますが、国内の状況、先ほど申し上げましたように、基本法が、昨年の九月、成立する見通しになりまして、国内生産を中心にやっていく、自給率の目標を決めてやっていくという国内世論の方向がはっきりしてきました。これは、次期交渉で本当に頼りにしていけると思ったわけでございます。
四つ目は、国際的な状況でございますが、昨年の春のOECDの農相会合で、両論併記になりました。自由化も大事だが、農業の多面的な役割を認めて、各国の農業生産を構築することが大事だ、これがはっきり両論併記で定着してきたということでございます。
大きく言いますと、こういう四つの事情を踏まえまして、私どもは、米のミニマムアクセスの仕組みの中で、特例措置から関税措置に切りかえても、二次高関税の部分が自動的に下りのエレベーターに乗ると考えなくても済むのではないのかと。今申し上げましたような状況を全部総合して、そういうぐあいに判断して、そういうことを前提に、最も有利な方法を選んでいいと考えたわけでございまして、その結果が今回の選択につながったということでございます。
六兆百億につきましては、先生の御指摘のとおり、三兆一千億は公共事業でございまして、非公共の二兆八千億のうち八千億はさらに融資枠でございまして、本体はそれなりにたくさんの金額でございますが、比率とすれば割と少ないわけでございます。
それから、いずれの事業も始めてすぐ効果が出るということではなくて、事業を始めて完成して結果が出ていく。時間がかかる仕事が三分の二でございますので、今後評価が確定していくのではないか。私どもは、残念ながら、まだ組織から評価の、意向の取りまとめができておりませんので、今後機会を見てやりたいと思っています。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/24
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025・堀込征雄
○堀込委員 ありがとうございました。
今村参考人にお尋ねをいたします。
WTO交渉が既に始まっている、そのとおりでありまして、その一部としてこの法律の早期成立が必要だ、こういう話でございました。ある意味で、そのとおりだと思います。しかし一方、私は、米の関税化決定を急がなければならない日本政府の理由に、やはり、通産省、外務省を中心とした、今度のWTO交渉全体をどう仕組むか、各分野、知的所有権、鉱工業製品あるいは投資のルールをどうするか、こういうものがあって、そして、今度はウルグアイ・ラウンドのように、農業、米で足を引っ張らないでくれよという、ある意味で政府部内の合意があったのではないか、こういうふうに私は思っております。
つまり、交渉方式も、これから四月、十月、十一月の閣僚理事会などで決定をされていくわけでありますが、やはり包括方式でやる。しかし、アメリカは、二国間交渉をしたり分野別の交渉をしたりしながら、農業で日本をつついたりしながら交渉を有利に運びたいという、各国の思惑がこれから入り乱れてやってくるのだろうというふうに私は思っております。
そういう意味で、米の問題は四月から、既にいろいろな会議はやっているわけでありますが、閣僚関係者の会議が開かれていくということになりますと、国内体制整備上、やはり米の問題を早く片づけておかなくてはならなかった、こういう印象を私は持っておるわけでありますが、このWTO交渉全体の位置づけ、今の私の見解に対する感想がございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/25
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026・今村奈良臣
○今村参考人 政府部内の云々というのは、私もよくわからない。いろいろ情報はありますけれども、そういうことで申し上げるべきではないというふうに思います。
私が最初に意見を申し上げましたように、やはり、前回のウルグアイ・ラウンド交渉で、一番欠点だったというか本当に残念だったのは、国内体制が整っていなかった。農業政策上も、全体の農業、農村、食料についての考え方も、全体を通してなかったということが残念でございます。それが着々と回復されて、今、戦線が整いつつあるという状況だと私は認識しております。二〇〇〇年交渉に向けて、できるだけ全力を挙げて路線を構築していただきたいという考えを述べた次第でございます。
特に、やはりこれは難しい問題ですが、国際交渉の中で、農業、農村の持つ多面的機能、あるいは食料安全保障の確立の問題、あるいは農業生産や農村文化の問題、あるいは農業水利、特にヨーロッパの方々は、水という問題がなかなかわからないのでございます。日本的な、あるいはアジア的な農業水利、アジアの中でも日本が非常に特有でございますけれども、農村を見て何が違うかというと、結局、日本は水、ヨーロッパは家畜なんですね。この……(堀込委員「時間がありませんので、質問に答えていただけませんか。申しわけありません」と呼ぶ)そういう基本的な考え方を持っております。
よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/26
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027・堀込征雄
○堀込委員 済みません。
最後に、伊藤参考人にお尋ねをいたします。
非常に参考になる御意見をいただきました。消費者から見まして、行政のあり方ですが、つまり、生産者中心でいろいろきていますねというお話がありまして、私もそのとおりだと思います。農水省だけじゃなくて各省みんな。どうも日本は生産中心の社会、生産中心の行政、生産中心の政治が行われてきて、消費行政というのは後ろへ追いやられてきた、こういうふうに思うのです。
もう一つ、そういう意味では、やはりそういう中央の仕組みを変えて、農政なんかも少し、地方主権といいますか、地方分権といいますか、かなりの部分を地方に任せていく、全国画一農政ではない姿にしていく必要があるのではないかと私は思っていますが、参考人の御意見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/27
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028・伊藤康江
○伊藤参考人 今まで、消費者といいますか、消費の場面の人は、余り農業問題に口を挟まないというのですか、余り意見を出していないように思われているかもしれませんけれども、私たちは、地域では生産者と大変交流しながら日本の農業を考えていたつもりです。ここへきて農業基本法が改正されるわけですけれども、遅きに失したというふうに考えております。
ただ、改正の方向なんですけれども、私は調査会にいていろいろ感じて発言もしているのですが、あれではまだ十分ではないというふうに思っています。
もともと、食べ物って何だろう、それは生命をはぐくむものということを大前提に置いて、では農業というものはどうあるべきかというふうに、食品産業はどういうふうになってほしいということが具体的に出てくるのですけれども、そういう基本路線がないのですね。今度の基本法はまだ不十分だ、調査会の中身も十分ではないというふうに思っています。
それから、農業の方向として、大規模化、効率化を念頭に置いているわけですね。やはり私は、それだけでは不十分であって、それは効率よくしなければならないのは当然ですけれども、やはり日本の農業という特殊性も考慮に入れるべきではなかったかなというふうに思っています。そういう点が、改革するとはいいながら、まだまだ消費者にとって不十分というふうな考え方があります。
それから、WTOのことなんですけれども、消費者としては、米が余っていますね、四〇%も減反しているのですけれども、なぜそれなのに輸入しなければいけないのか、そこがとても理解できていない。今後の問題として、余っていて減反しているのだけれども米は輸入しなければならないということを、十分納得のいくような説明をしていただけたらというふうに思っています。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/28
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029・堀込征雄
○堀込委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/29
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030・穂積良行
○穂積委員長 次に、宮地正介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/30
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031・宮地正介
○宮地委員 公明党の宮地正介でございます。
きょうは、参考人の皆さん、御多忙の中、当農林水産委員会にお越しをいただきまして、貴重な陳述を拝聴いたしまして、まずもって心から敬意を表したいと思います。
きょうは、限られた時間が二十分でございますので、参考人の皆さんに御質問がたくさんできませんが、簡単に御質問してまいりますので、簡明にお答えいただければありがたいと思います。
最初に、北参考人に御質問したいと思います。
去る二月十二日、私も、北海道農業の現場の視察をしたい、こういうことで、北参考人の事務所にも寄らせていただきました。皆さんの生の声も聞かせていただきまして、さらにそこから車で一時間、岩見沢の生産農家の激励に行ってまいりました。そして、岩見沢ではタマネギの栽培もしておりました。
そうした経営の実態の中で私が生に感じましたことは、北海道の稲作農家の皆さんの経営は、先ほど北参考人がおっしゃいましたように、大変厳しいな、まさに生産割れの実態だなという感じがいたしました。大体生産費が一万六千円弱、六十キロ当たり一万五千九百円ぐらいだと思いました。ところが、実際は、いわゆる輸送コストが三千五百円程度かかるということで、手取り一万二千円を割る。こういう大変な実態を目の当たりにいたしまして、北海道は、農業、林業、漁業、こうした問題をワンパッケージにして、食料基地北海道にしていく、そういう大きな構想の中で北海道の農政改革をやらなくては大変だなという気持ちで私ども帰ってまいりました。
そこで、北参考人、先ほど来お話がありましたように、昨日、政府は新しい食料・農業・農村基本法を閣議決定いたしまして、国会に提出をしてまいりました。その中で、いわゆる中山間地域のデカップリング方式をこの基本法の中で導入するということが法案に盛り込まれております。私は北海道のそうした農業生産者の皆さんの実態を見たときに、先ほども北参考人は、何らかの形で所得補償の制度を検討できないか、こういうお話をされました。
いわゆるデカップリング方式というのは、WTO協定の中でも御存じのように、いわゆるへんぴな山間地域を対象とした、そうしたところにいわゆる何らかの補償措置をするということで認められているわけですが、平たん地等についてのデカップリング方式というのは認められていないわけです。そこで、今、農水省あたりは経営安定資金ということでそうしたフォローアップをしているのが実態であります。
しかし、北参考人あるいは私が現場を見た、そうした状況から見ると、日本の国民の主食である稲作農家に対しても、こうした中山間地域に適応するデカップリング制度というものを何らかの形で検討できないか、私は、これも大いに国会の中で今後議論していく必要があるという考え方を持っている一人であります。
これについて、まず、北参考人の御意見をきょうはお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/31
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032・北準一
○北参考人 先日、先生北海道の方をつぶさにごらんになられて、私どもの御意見も伝えることができました。
今のお尋ねの、中山間地に限らず、いわゆる平地等のデカップリングの手法という部分でありますけれども、もちろん山間地域は非常に不利であります。しかし、北海道は今の経営実態にあるように、この後の農政方向の展開を予測する中では、ますます経営状態は悪くなるであろうという予測を私どもはいたしております。
そこで、先ほどもお尋ねがありましたけれども、補てん政策の観点なのでありますけれども、例えば、一つはこの北海道のような条件不利地域。いわゆる気象的な不利。五月から九月までのいわゆる農作物の生育期間等における積算温度が、一般的に水稲でいいますと二千五百度が限界と言われておりますけれども、北海道はその温度を切る地域が非常に多いわけなんですけれども、やはりそういう気象的な不利地域。あるいはまた、主な消費地から遠く離れているといいますか、輸送コスト、管理コスト、そういうものが非常にかかってくる、こういう不利な部分。あるいはまた、北海道は原料供給型といいますか、そういう農業生産物が主でありますから、いわゆる生産性が府県から見て反当たり低い、売上高が低い、こういう根本的なハンディ。こういうことについて、ぜひデカップリング、所得補償の大きな要因に入れるべきだ、こう考えておるところであります。
あと、先ほど申し上げましたように、循環型あるいは地域環境型という点で組み立てもぜひ必要と思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/32
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033・宮地正介
○宮地委員 次に、高野参考人にお伺いをしたいと思います。
高野参考人は、JA全中の常務理事でございますし、今回の三者合意の、いわゆる生産団体の代表として三者合意をされた団体の責任者であるわけでございますが、そういう中で、一部、農業生産者の団体の中には、今回の関税化について、撤回をせよ、こういう運動をしている生産者団体もあるわけです。地方議会などにおいては、既に撤回の意見書等も出されている。そういう状況に対して、まず、高野常務理事はどういうような御見解を持っておられるか、それが一つです。
それからもう一つは、いわゆる自給率ですね。今回の新しい農業基本法の基本計画の中で、自給率の数値目標を設定する、こういうことになっているわけですが、この自給率の向上、現在四一%の自給率、これを当面やはり最低五〇%以上に高めていくべきであろう、十年ぐらい先には六〇%台ぐらいには乗せるべきではなかろうか。これをやはり、国民合意の中で、全力で予算的な措置の中でこの自給率という問題を明確にしていくべきであろう。
JA全中などにおいては、私が聞くところでは、五〇%程度というような、そういう話も聞こえてくるわけでございますが、今、この点についてはどのように検討をされておられるのか、この点についてお伺いできればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/33
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034・高野博
○高野参考人 撤回運動の件でございますが、いろいろな考え方でそういう運動を展開なさっている方もおられるんじゃないかとは思いますが、私どもの考えでは、現在の選択肢の中では、私どもが判断した方法が農家、生産者にとってベストの方法と確信しているわけでございまして、何回でもいろいろな意見の方々と話し合いを持って、意見の一致が図られていけばいいなと考えておりまして、そういう努力を惜しまないという気持ちでございます。
それから、自給率でございますが、系統組織の希望といたしまして五〇%という数字が組織討議の中で出てきているわけでございまして、そういう目標を掲げたいという気持ちが組織の中にあるということはそのとおりでございます。
ただ、実際に五〇%を実現していくために、それではJAみずからどういうことを考えて何をやっていくのかということも、やはり我々は我々なりに考えていかなければならないなということも考えておりまして、そういうことともあわせてやはり数値目標も出していかなければいけないのかなとも思っております。まだ、そういう意味では、組織の中の議論が十分とは思っておりませんので、引き続き、早急に議論いたしまして、私どもの見解をもう少ししっかりした形で固めていきたいなと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/34
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035・宮地正介
○宮地委員 さらに、高野常務にお伺いしたいんですが、いわゆる生産農家の皆さんの激励に参りますと、最初にやはり、いわゆる来年一月一日から始まる次期WTO交渉で今回のこの高関税率が維持できるのかどうか、ここが生産農家の皆さんの大変な心配の種であります。
当然、これは政府間交渉でございますから、政府が最大の努力、政府としては、食料の安全保障あるいは多面的機能、こうしたものの立場から、断固闘う、こういう姿勢を農水大臣も表明をしているわけですが、先ほど高野常務は、今後、国民的な合意を得るように全中としても全力を挙げて国民運動に取り組んでまいりたいという大変結構な決意のお話がありまして、私もこれについては大変敬意を表しているわけでございます。
やはり、日本の国民がこの次期WTO交渉に対して結束して当たることが、まず私は、WTO交渉成功の第一歩であろう、こういう考え方を持っておるわけでございますので、その点については、高野常務のそうした決意に対しては敬意を表したいと思います。
さて、今申し上げたようなこうした高関税率の維持については、当然、政府の努力でございますが、我々国民もそれに対して相当なフォローアップをしていかなければならない。そういう意味合いから、先日みどり議連という超党派の国会議員による議連もつくらせていただいたところでございますし、こうした総意の中で来年一月一日からのWTO交渉に臨むべきだと私は考えている一人でございます。どうかこの点について、まず、高野常務はどのようなお考えをお持ちなのか、この点についてきょうはお伺いできればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/35
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036・高野博
○高野参考人 まさに御指摘のとおり、国民的な合意といいますか、そういうものがなければ、私どもの気持ちが成功していくということはできないわけでございまして、外交交渉の中で私どもの交渉力をどう高めていくか、それがかぎでございまして、そのためには今申し上げたようなことで、先生の御指摘のとおりだと思っております。
そこで、一般的な民間のといいますか国民運動につきましては先ほども触れましたが、婦人団体、労働界、それから学者の方々、マスコミの方々、市民運動の方々、いろいろな組織の方々と手をとり合いまして、国民運動組織を三月中に立ち上げたいということで進んできております。
同じ思想でございまして、最終的には、外交交渉でございますから、政府と、それからそれを支える国会議員の皆様方が決定なさっていくことでございます。先生方の御理解なしには私どもの気持ち、考えは実現しないわけでございますので、いろいろな立場の方々と率直に、有利なこと、不利なこともあわせて議論をさせていただきまして、この運動に全力を挙げていきたいと考えておりますので、よろしく御指導のほどお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/36
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037・宮地正介
○宮地委員 最後に、今村参考人にお伺いしたいと思います。
今村参考人は、農政審議会の会長もされ、今回の新しい農業基本法についても大変御苦労されたことには敬意を表したいと思います。
今回のこの法案の中で、基本法が理念宣言法である、その中のいわゆる基本計画、これが実施計画になるわけで、これがやはりこれからの日本の農業の抜本改革に、どう再生をさせていくかというポイントではなかろうか、私はこう考えている一人でございまして、この法律が国会で成立した後の基本計画づくりが大変大事になってくる。その基本計画が来年の十二年度からスタートできるためには、これを来年度の予算編成に裏打ちさせなければならない。そうなりますと、八月の概算要求の段階から、例えばデカップリングの予算、その他関連の予算についても裏打ちをしていかなければ、基本法はできました、基本計画はできました、実際の予算の裏打ちはさらに先送りなんということになるとこれは大変なことになりますので、私は農水省にも、来年度の概算要求に間に合うようにしっかりと施策をして対応しなければまずいぞということを既に申し上げているところでございます。まずこの点についてのお考え、それから、来年の通常国会には、もう一つの大事な農地法改正によっていわゆる農業生産法人の株式会社化の問題が出てくるわけであります。これも、今回の基本法の問題、関税化の問題、こうした問題と一体の大変重要な法律案がやはり出てくるわけでございまして、これについての御見解も伺えれば大変ありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/37
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038・今村奈良臣
○今村参考人 先生おっしゃるとおりだと私も考えております。基本的な筋はそうだと思います。
私の仄聞しているところによりますと、農水省におきましても、主要な、特に新しく予算を伴うような項目については検討会あるいは研究会などで鋭意検討しているようでございまして、七月末ぐらいをめどに、物によっていろいろ、年度末までかかるのもあるようですけれども、検討を進めておるようでございますので、多分、概算要求に新しく盛られていくのではないかというふうに思います。
それから、法律の体系としては、私、もともと、新しい基本法は宣言法だけではだめだ、理念を説くけれども、実際の政策推進を行うべきその中身を持っていないとだめだというのが年来の基本的考え方でございました。それが基本計画という中に盛り込まれていくことになるのだろうと思いますが、それこそ、その中身についてどうするかということはさらにこの国会で御議論をいただいて、それで、新しい基本法の成立に向けてお願いしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/38
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039・宮地正介
○宮地委員 参考人の皆さん、大変ありがとうございました。時間が参りましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/39
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040・穂積良行
○穂積委員長 次は、菅原喜重郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/40
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041・菅原喜重郎
○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。きょうは、四方の参考人の皆さんから貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
まず高野参考人にお伺いするわけでございますが、私は、自由化されても食える日本農業の確立を図るべきだということを一貫して主張してきている人間なんですが、平成五年のウルグアイ・ラウンドの交渉で、政府は、米の特例措置、ミニマムアクセスの引き受けを約束したわけでございまして、当時、JAの方もこれに同意されたわけなんですが、今回は関税措置にまた同意されている。これのいい悪いじゃなくして、当時の、ウルグアイ・ラウンドの最初のこの米の特例措置を受け入れたときの状況が、どのような状況判断からだったかをごく簡単にお聞かせいただければ幸いだな、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/41
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042・高野博
○高野参考人 前回、ウルグアイ・ラウンド交渉の中で米のミニマムアクセス、最低輸入義務数量の仕組みを受け入れることについては、私ども、そのこと自体に反対でございまして、それを受け入れることになるということは、いわば組織全体としては予想していなかったわけでございます。もちろん、途中、それを外交交渉で折衝している政府からそういう相談を受けたということもないわけでございまして、でございますので、そのミニマムアクセス、最低輸入義務数量の仕組みを受け入れるということと、その中でどちらの仕組みを採用するか、特例措置を採用するのか関税措置を採用するのか、そういう相談がなかったわけでございますので、当時も、私ども、それについて何かのコメントを持っていたということではございません。
現在は、先ほど申し上げましたように、政府が批准しましたものですから、その現実を受けとめて、その中で最良の方法を選ぼうと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/42
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043・菅原喜重郎
○菅原委員 政府の決定にやむなく従ったといように解釈させていただきますが、今回のこの関税措置につきましても、農民に、個々の農家にどうも徹底した理解を得る時間がないようなままに三者合意がなされているのではないか、こう思うわけでございます。
これは前回も、やはりこういう大きな問題を個々の国民に本当にわかりやすく、殊に農民にわかりやすくこれが理解されるということは、本当に、時間がないところで決めていく、そういう点では、何か上からばかり決められる政策のようで、農政についても政府の政治についても不信感をますます増大させる結果はよくないなというふうに考えております。
ですから、今後、この受け入れたことの趣旨、理解を増すPRにはひとつ力を入れていっていただきたいな、こう思います。
次に伊藤参考人にお伺いしますが、消費科学連合会の立場としては、関税化に移って物が安くなればいいという消費者の考えは、そういうことを望んでいることよりも、安全性を望んでいる点もまた強いんだということ、そういう意味では、国内自給を望んでいる声が多いというようなことを聞きました。今回のこの問題についても食料自給率の向上がやはり大きく課題になっているわけでございまして、新農業基本法の策定に当たりましても、この食料自給率の向上が大きな課題として取り上げられてきているわけです。
政府としては、この食料自給率の向上について、米の消費量の五%増加と、その分、輸入畜産物、油脂の消費の減少が行われる場合、一・五%程度向上すると試算しているわけでありますが、参考人には、この食料自給率の向上について、これまで何か具体的に試算されたものとか、こういう措置を講ずることによって自給率はこうなるんだという御意見があればお伺いいたしたいと思います。
〔委員長退席、増田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/43
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044・伊藤康江
○伊藤参考人 こちらから質問しちゃいけないんですかね。もうちょっと明確に質問を、最後のところ、自給率を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/44
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045・菅原喜重郎
○菅原委員 消費者の立場からの自給率の向上の点に対する意見、またもう一つ詳しく言いますならば、これに関連するのは、今、米の消費量が年々落ちているわけですね。こういう米の消費拡大策ということについても関連してお答えいただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/45
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046・伊藤康江
○伊藤参考人 私どもは、消費者の方も、生産者だけではなくて、もちろん自給率は拡大してほしいというふうに思っております。ですけれども、調査会の中では、一%上げるには米をどのくらい食べて、そして畜肉製品をやめなきゃだめなんですよというようなことを言われたわけですね。
それでは自給率向上に関して消費者が何ができるかとなりますと、やはり私たちの食べ方を変えていかなければならないというふうに考えております。幸い、今生活習慣病という病気が若い人に起きているわけで、やはり食生活がこのままであってはならないというふうに思っています。ですから、私たちは、自給率を上げることを望み、そして一人一人がそれへ向けて行動するには、自分でつくるわけにいきませんから、自分たちの食生活を変えるという方法しかないのではないかなというふうに思っています。
お答えになっていましたでしょうか、済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/46
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047・菅原喜重郎
○菅原委員 それではまたお伺いしますが、輸入米でも安全性と食味とが確保され、価格が安ければ、消費者は国内産米よりも十分消費の方に回ると思われますか、どうですか。その御意見をまずまたお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/47
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048・伊藤康江
○伊藤参考人 安全性の問題で、輸入食品の問題ですね。
私たちは必ずしも、しかられそうですけれども、国内製品の方が安全だという認識を持っているわけではありません。国内製品でも危ないものもあるだろうし、輸入品でも安全なものがあるのではないかというふうに思っています。
ですけれども、制度として、遠くから物を持ってくればそれだけ時間がかかるから、やはり近くから持ってくるものよりも安全性に対しては問題があるというふうに思っていますし、それから、私たちは、国内でつくっている場合にはどういうふうにしてつくっているか見ることができるわけですね。確認することができる。そういった面では、やはり国産品の方が安全だろうというふうに思っていますし、多くの消費者のアンケート調査なんかを見ても、国産品の方が安全だから国産品を選びたいという、国産品を選択する理由にもなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/48
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049・菅原喜重郎
○菅原委員 次に、今村参考人にお聞きしますが、今村参考人の御意見の中に、日本ほど草資源に恵まれた国土はないという発言があったんです。私もこれには同感しているわけですが、これはちょっと問題が飛躍するようなんですが、私は、こういう日本の資源を活用するには、やはり水の確保、かんがい排水と優良な基盤整備の大規模圃場の整備が大切なんだということを主張しているわけなんです。
それで、実はきのうの委員会におきましても、もう既に日本の大規模圃場整備に対しましては九〇%—九五%の補助率になっていますが、しかし、第二種兼業農家の後継者のいない農家は一割から五%のいわゆる現金の借入金、借金をつくることに反対なために、基盤整備を行うのに同意を得るのがなかなか難しい状況ですので、もうそろそろこういう圃場整備には、都市計画事業で行っているように土地区画整理法の保留地制度と同様の制度を導入して、義務的な共同減歩による公共用地の創出との見合いで、農家の金銭負担をゼロとする事業の導入を図るべきじゃないかということを主張していますが、こういう意見に対してはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/49
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050・今村奈良臣
○今村参考人 一言で申しますと、土地改良法をどういうふうに改革するかということでございます。きょうは細かいことまで私の時間はありませんけれども、基本的には、一九四九年に制定されました、昭和二十四年に制定された土地改良法、もちろんその後随分改正されてきておりますし、特に昭和四十七年改正には私いろいろ陰ながら提案を具体的にいたした経緯がございますが、今回、新しい基本法のもとで、やはり土地改良法の本当に本質的な改革が必要ではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/50
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051・菅原喜重郎
○菅原委員 関連しまして、また高野参考人にお伺いしますが、もう既に、日本の米づくり農家でも、部落が土地を集約して、それを二、三人の農家に耕作を移譲して、一農家が二十ヘクタール、三十ヘクタールという経営も実現されているわけですね。そうなりますと、やはり土地基盤整備、大規模圃場整備とかんがい排水施設の完備ということが急がれるわけなんです。こういう点で、やはりこれから米づくりも、十年以降二十年までは随分自由化の激しい競争の中に追い込まれていくと思いますので、JAとしては、こういう私の今申し上げましたような土地の基盤整備と水の確保は国家責任でやるべきだという意見に対しては、唐突のようなんですが、どのようにお考えになっているか、意見をお聞かせいただきたいと思います。
〔増田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/51
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052・高野博
○高野参考人 御指摘のとおり、農業のいろいろな役割を主張し、食料安全保障の立場からいろいろな主張を展開するにいたしましても、国内の消費者の理解を得るためには、可能な限りコストを下げた生産ということが不可欠でございまして、そういう意味で私どもも基盤整備はその基礎をつくるものと考えております。
現在、ウルグアイ・ラウンド関連対策で着実に実行させていただいておりますが、こういうことが引き続き大切な事項として政策的に推進されるよう、私どもの立場からも心からお願いしたいと考えているわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/52
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053・菅原喜重郎
○菅原委員 それでは、最後に北参考人にお聞きしますが、先ほど他の参考人にもお聞きしましたように、食料自給率の向上についての御意見がありますならば御開陳をいただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/53
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054・北準一
○北参考人 自給率の向上といいますかそういう点では、今伊藤さんから消費者の視点としてお答えといいますか御意見があったところなんでありますけれども、私は、基本的に私ども生産者がここをいかに努力してもならないというところに限界があると思っております。やはりこれは、今の新基本法の中にこの自給率なり国内生産というものをどう位置づけるかというところが大きなポイントだと思っております。そこがすべてを決すると思っております。
ですから、やはり素案の中にありましたように、国内自給の維持増大という当初の条文が、今回基本にと置きかわった、ここは私はやはり国としての自給に対する責任といいますか見通しは揺らいだな、こう受け取っております。具体的になりますと、私どもは、やはり農地の耕作をいかにしていく政策がとられるのかというところが生産現場としては一番注目されるところだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/54
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055・菅原喜重郎
○菅原委員 以上、時間ですので、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/55
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056・穂積良行
○穂積委員長 次に、藤田スミ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/56
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057・藤田スミ
○藤田(ス)委員 日本共産党の藤田スミでございます。
きょうは、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、高野参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほど、高野参考人は、皆さんがお調べになれば各国ともミニマムアクセスを一〇〇%やっていないんだという御発言をされております。私は大変興味を持って聞かせていただいたわけでございますが、この問題については、実は私どももいろいろ調査をして、そのとおりでございます。お隣の国貿でやっている韓国もミニマムアクセスを一〇〇%実行していない。実行していないのは、WTO協定にそれを義務づけるそういう裏づけがないわけでありまして、日本で言われているのは政府の統一見解だ、それに基づくものでございますので、私は今、そういう御調査をされているのかなということで聞かせていただきました。この問題を私はここで質問するほど時間がございませんので、ここでは関税化の問題についてお伺いをしたいと思います。
大変失礼になるかと思いますが、あえて言わせていただきたいと思いますが、とにかく政府は、今回の関税化移行について、高関税を設定するから輸入米は来ないんだというふうなことを皆さんに説明されてきました。しかし、マラケシュ協定の前文でも明らかなように、WTO協定というのは、関税化を中心的な柱にし、その関税率をだんだんに引き下げていって、そして貿易障壁を低くして自由貿易を進展させていくということをそもそもの目的にしているわけでありまして、つまり、関税率を引き下げない関税化というのはあり得ないわけであります。
既にアメリカのゴア副大統領なども、特に農産物の関税率は大幅な引き下げを呼びかけていくんだということを述べておりますし、きょうのニュースでも同じような発言で、米の関税率の問題で何か言っているそうでありますが、果たしてこれで高関税を維持し続けることができるのか。そこが大変気になりまして、当委員会でも大臣に質問をいたしましたら、二〇〇一年以降の問題については交渉事だからということで、つまり見通しがないということを認めていらっしゃるわけであります。
私は、昨年の決定以来、幾つかの農協の皆さんとお話をさせていただきましたけれども、我々は高関税を長期に維持するということを前提にしているのだ、それを条件にしているんだというふうに言っておられますが、この高関税を維持できるか否かの問題についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいわけです。
もう一つの問題は、もう既に日本向けの開発輸入をねらって、アメリカやオーストラリア、タイでコシヒカリがつくられ、そして中国ではきらら三九七というのがつくられてきています。こうした開発輸入が本格的に始まったときに日本の稲作にどういうふうに影響してくるのか、その二点についてお聞かせをください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/57
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058・高野博
○高野参考人 高関税の維持が可能かどうかということは、私どもの組織の中でも最大の論争点の一つでございました。結論から申し上げますと、私どもそう説明してきたのですが、最低輸入義務数量、輸入する仕組みでございますが、批准しちゃっていますから、今ミニマムアクセス、最低輸入義務数量をどういう形で当面二年間過ごすかというのが一つのテーマでございまして、その中で、私どもは関税措置の方に切りかえようという判断をしたわけでございます。
そこで、二〇〇一年以降どっちの措置であれば輸入を事実上ブロックしていくといいますか、とめていくことに対して有利なのか、そういう議論が一つあると思うのです。結論的には、どっちの措置を今採用しているから先々必ず有利になるという関係はないと思っております。そして、これは交渉事でございますので、全部枝葉を取って、最終的には外交交渉の力関係でございますから、私どもの力量をどうアップしていくか、それに全力を挙げなければ、どっちの措置をとってもがたがたにさせられてしまうという関係は同じだと私どもは判断しているわけでございます。
ただ、多少なりとも関税措置の方がましだと思いましたのは、二〇〇〇年一年で事前に孤立して袋だたきに遭って譲許を迫られるよりも、EUも含まった全体の交渉の場で最終的な二〇〇〇年の七・二%の数字を維持しながら改革の交渉をした方がましだ、それはわずかか大きいかわかりませんがプラスの要素だと私どもは考えたわけでございます。
そこで、私どもの交渉の力量アップをどう図っていくかということでございますが、先ほど申し上げましたが、この四、五年間いろいろ努力してまいりまして、今までと違う目といいますか情勢を、私どもは私どもなりに判断したわけでございまして、一つは国内の全体の体制がどうか。これが国内生産を中心にやっていくという方向も見えてきましたし、私どもは基本法に取り組む中でいろいろな方々と連携ができて、今月中にはWTOに向けた国民運動を何とか組織できそうだというところにもなってきましたし、国際的にもいろいろな会合で両論併記が定着するというところまできたものですから、そういうものを背景に、私どもは政府と一体となって、外交努力といいますか折衝を展開していく中で活路を切り開きたい、こういう考えでございます。
それから、アメリカ、タイの米の話でございますが、もちろんそういう動きが出てくるだろうと思っております。それは楽観はできないと考えておりますが、例えば同じ果物、リンゴをとりましてもサクランボをとりましても似たような感じでございますけれども、食味の差ということで国産を消費者に選んでいただいておりますので、米については、予測して言ってはいけませんが、タイやアメリカの米の生産条件を考えましたときに、私どもは国産米の方が食味の点においてまさったものを供給できるのではないかと考えておるわけでございます。これは推測でございますのでパーフェクトな答えではございませんが、そういう気持ちも持っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/58
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059・藤田スミ
○藤田(ス)委員 私どももWTO協定の改正を求め、そして何よりも食料自給の根幹をなす米、それを自由化の対象から外せということは、もとより求める第一の柱だと思っております。そして、そのためにも、どうして今関税化をわざわざ受け入れなければならないのかという点については、関税化の撤回を求めているところでございます。
きょうは本当に時間がなくて、とてもつらい思いをしながら質問をしておりますので、できるだけ簡潔にお願いをしたいと思います。
北参考人、北海道から本当に御苦労さんでございました。北海道は牛肉の輸入自由化で大変な目に遭っているということを私はもう詳しく言う時間がございません。そして、先ほどのお話のように、特にWTO協定以降、米価の暴落あるいは値幅制限の撤廃、減反、政府米の買い上げ数量の減少、そして、加えて多額の負債ということで、空知の地域でも自殺をする稲作農家が出てきているというようなことを聞いております。四十五ヘクタールもの大規模農家、四十六歳の後継者が、一億五千万の借金を背負って、自分の生命保険と引きかえにみずからの命を絶ったというような悲劇を、米の関税化で、しかも引き下げられていく中で、一体それが繰り返されないという保証はあるかというと、私はないというふうに思わざるを得ないわけです。
もう一度、せっかくの機会でございますので、政府が目指す、最も理想とする大規模経営の北海道でこの米の関税化の影響をどう考えていらっしゃるかということをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/59
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060・北準一
○北参考人 まだ関税化が実施される前なんですが、先ほど申し上げたような中身で、いわゆる大規模化、規模拡大に努力した農家というものの経営収支は、あのとおりでございます。
もう少し申し上げますと、平成七年ですから、水田の価格というものは六十年代前後より約半分になった時期ですから、ちょうどこの五十年代後半から六十年代というものは北海道でも百万を超えたわけですね。この方々は、今先生が心配されたように、もうどうにもならぬということで自分で命を始末する、こういうことも出てきている、こういう状況であります。
そのことがいわゆる関税化においてどうなるかということなんですが、私は、これは予測として今より価格は抑えられるであろう、こう思ってとらえております。五年後になるのか十年後になるのか、これは政策でありますから、そこをいかにガードするかということが一つあると思うんですけれども、そういう見通し。ですから、その一方で、それをしっかりガードする対策がないと、ここは踏み切るべきでないというのが私どもの考え方でございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/60
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061・藤田スミ
○藤田(ス)委員 せっかくおいでですのに、時間の関係で大変制約をしてしまっていることをお許しいただきたいと思います。
最後に、伊藤参考人にお伺いをいたします。
当委員会で消費者の声を聞く機会はめったにありませんので、私はもう二十分全部差し上げたいと思っておりましたが、本当に少なくなってしまいました。だから、はしょってお伺いをいたしますが、消費者に何の相談もなかったという点について、私も昨年の政府の決定を受けての当委員会で厳しく抗議をしたところであります。しかも、主食である米というのは消費者問題そのものでありまして、それを何の相談もなかったということは本当に許されないと思っているわけですが、大臣は、その決定後、消費者団体を回っていって、そして消費者の皆さんからも関税化移行は最善の選択であったと理解を得ているという御答弁をされているわけでありますが、消費者にとって最善の選択であったというこの御答弁についてどういうふうに思われるか、先ほどの五百人の若者たちの食料についての調査の内容ともあわせてお答えをいただきたい。
最後になります。WTO協定の改定の時期は確かにもう目前に迫っておりますが、SPS協定で、ハーモナイゼーションだといって食品添加物や残留農薬基準の緩和が次々に進められていく、この問題で消費者の不安は一層大きい。だから、改定に当たって、消費者としてのお立場からどう考えられるか、遺伝子組み換え食品の表示を求めて御奮闘の伊藤参考人に特にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/61
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062・伊藤康江
○伊藤参考人 二つ質問があったというふうに思っております。
先ほども申し上げたように、私ども、新聞に出るまでこの問題は全く知りませんでした。さきの基本問題調査会の中で、食料問題は、今までは川上から変わっていたのが、川下から川中へ、そして川上へという流れに変わるというふうなことなんですが、具体的な問題になると、突如として、その考え方ではなく、何か時間切れだったとかなんとかということで、私たちはいつも蚊帳の外ということになるわけですね。
国民的大運動とか国民的合意という言葉が先ほどから出ておりますが、そういうことがしばしばあれば、やはり国民というのは、そんな合意とか、都合のいいときだけ誘わないでよ、こういう気持ちになるわけですね。もしそういう方向を目指すのであれば、日々確実に合意がとれるような手段を積み重ねていかなければならない。ある日突然合意というふうなことを言われても、それは合意をするわけにはいかないと思います。
それから、例えば、具体的に言いますと、藤田先生だから遺伝子組み換えのことはわかると思うのですが、私たちは遺伝子組み換え食品に表示をという大運動を起こしております。だけれども、本当は議事録からのけていただきたいぐらいの気持ちなんですが、生産者の方がトウモロコシを飼料に使われるわけですね。そういう方たちの動きが見えません。本来なら、私たちがそういう大運動を起こしている、そしたら、その片方で飼料などを大量に使っていらっしゃる方がどう考えているのか、せめてお話も聞きたいな。そういうことが見えないと、やはり国民的合意とか大運動というのは起こりにくいのではないかなというふうに思っております。
もう一つありましたか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/62
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063・藤田スミ
○藤田(ス)委員 若者たちの五百人のアンケートの中身を紹介したいとおっしゃって、一つきりしか。私、時間が四十一分までございますので、どうぞその間じゅう、全部つぶしてくださって結構です、御紹介ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/63
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064・伊藤康江
○伊藤参考人 私たち、大学を中心に五百人のアンケート調査をいたしました。そうしますと、意外や意外、御飯を食べている。実態からやっていっているんですけれども、どのくらい御飯を食べますか、何回食べますかと。若者であっても必ず一回は食べております。それはおにぎりであったりチャーハンであったりいろいろですが、でも白いお米も大好きよというふうなことが出ておりました。ですから、若い人が米離れ米離れと言っていますけれども、実態はそうではないというふうに私どもは解釈しております。そして、年配の人というのはお米が好きなんですけれども、年をとると何せ食べる量が少ない。だから、やはり消費量の拡大は若者に期待した方がいいというふうに思っています。
もう一人、女性の二番目を言ってみますと、銘柄によっても売れ行きが左右されること、まして外国産の米の味が日本人に受け入れられないこと、農業経済のあり方の難しさなど、さまざまな問題のあることを授業で学びました。タイ米をむだにしたのも日本人の米や調理法に対する無知が引き起こしたことだったことから、輸入に対してもさまざまな事情を私たち多くの人が知ることのできる機会をつくってほしいというふうに述べております。
もう一ついいですね。今度は二十代の男性に行きます。
食料という面からいえば、輸入は結構なことだと思う。既に他の農畜水産物も輸入されているのだから、米だから特別な感情はない。おいしければ、安全であればそれでいい。しかし、水田風景や農家が減ってしまうことには危機感がある。それに対する有効な手段が輸入しないことだとするならば輸入しない方がいい。また、米を食文化の中心というのなら、大豆はどうなるのだろうか。大豆をないがしろにして米のみ守るのは矛盾しているというふうに思うというのは、これは二十代の男性でございます。
まだ後で資料をお送りいたします。残念でございます。時間になりましたので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/64
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065・藤田スミ
○藤田(ス)委員 ありがとうございます。
若い皆さんも決して食の問題に無関心ではなく、それどころか、非常に本質的なところで食の大切さをとらえているということを、私はそのアンケートからも学ぶことができるというふうに思っております。どうぞ消費者の立場から、食を守るために一層の御奮闘を心から期待しております。きょうはどうもありがとうございました。
参考人の皆さん、本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/65
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066・穂積良行
○穂積委員長 次に、前島秀行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/66
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067・前島秀行
○前島委員 参考人の皆さん、本当にお忙しい中、ありがとうございます。
今村先生にお聞きしたいと思います。
二つ聞かせていただきたいんですが、一つは、関税率の今後の見通し。私も、関係国がノーと言わない、あるいは日本もそれを取り扱わないよ、相手にしない、こういう交渉をしないとなると、二〇〇〇年までは一定の関税率というのは保持できるだろうなと。そういう面では、三つか四つある選択の中では今度の選択も一つであったのかなというふうに私は二〇〇〇年という枠の中では一定の理解をしなくはない。しかし、米という話は別に二〇〇〇年に終わるんじゃなくして永久に続くわけですね。その間に交渉事もあるということ。それと、私たちが四年前、五年前、みんなでもってウルグアイ・ラウンドのときに考えて議論した関税化というものは何だったのかな、こういうことですね。そして、あそこで反対をした。それは、自由化というものが前提になってくる、その中での関税化なんだなと。
私たち日本にとってみれば、やはり米、稲作というのはあらゆる面で重要なんだ、引き続き産業としてやっていきたい、こういう意味で関税化は反対なんだ、こういうふうに言ってきた。今の枠の中で二〇〇〇年までは関税化を選ぶことは一定の理解をしますけれども、関税化というものを受けとめたということは、長い目で見ていくと、どんどん下がっていって、結果的には輸入につながるものではないだろうかなというこの認識。
それと、私はきのうも言ったのでありますけれども、基準年が一九八六年—八八年から、もし二〇〇〇年になったとする。その間にMA米の価格変動と国内米の価格変動を想定すると、率そのもの、削減率が変わらなくても、自動的に関税率が変わることは大いに考えられるな、こういうふうに思っています。
したがって、関税化に踏み切ったということは、結局、自由化につながる道と理解せざるを得ないと思っていますが、この辺のところの先生の御理解はどうなのかなということが一つ。
それから、先生が提案されている東アジア食料安保、私たち社民党もいち早く、その先生の朝日新聞の投稿と我々の議論と一致しましたもので、先生の御出席をいただいてシンポジウムを開いてやったり、いろいろ議論しました。
そのときの先生の東アジアというのは、ジャポニカ米という前提であったわけですね。今度、インドネシアでもってということでしたので、私たちも、当面はまずジャポニカ米で東アジア四カ国が中心かな、そこから出発して大きく広げよう、こうなったんだけれども、ぽんとインドネシアまでいったということになってみると、東アジアだけではなくてジャポニカ米ということにこだわらないで、もう少し穀物という大きな枠の中でこの食料安保というものを考えると可能性というのは出てくる。
そうすると、これからの日本のお米の処理だとかMA米等々のいろいろな対応を考えると、これはもう少し組織的に政府も本腰でやるべき課題ではないかなというふうに思っているんですが、その辺の先生の御意見を聞かせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/67
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068・今村奈良臣
○今村参考人 二つ御質問いただきました。
一つは、関税率、だんだん下がっていって、二〇〇〇年まではともかく、その先はどうなるんだ、多分全くひどいことになるんではないかというあるいは御質問だったと思いますが、二〇〇一年までの交渉期間中はこれは変わらないわけでございます。
それで、その先も削減率、六年間で一五%というふうな率で仮にいったとするならば、私の試算によると、マイナスの複利計算でいくと、二十年間で二分の一ぐらいになる、これは単純な計算でございますけれども、そういうのが単純には見通せるわけでございます。
ただ、これは二〇〇〇年からの交渉いかんにかかわることでございまして、全く私も予測の限りでありません。これは政府がいかにこういう将来の問題を考えて交渉するかということにかかわっていると思います。その交渉に対して、私なども力及ばずながら、何かいろいろ支援をして、国際的にそういう方向を、例えば国際的な学会その他を通じて皆さんに訴えていきたいというふうに考えております。その努力は政府とは別にやっておりますし、NGOその他の活躍も意外と重要な役割を果たしているというふうに私は考えております。もちろん、しかし、最終的には政府間交渉ということになります。
それから、第二の点は、先ほどもちょっと時間がなかったので、ついでに申し上げたことですが、東アジアで米を需給調整しながら政府間信用ということで貸借を中心にして、これはKR援助だとかWFPの、今ウルグアイ・ラウンドで制限されている、それのまた別の手法を私それなりに考えて、一昨々年の十月十六日、朝日新聞で提案したわけでございますけれども、これがインドネシアに生きていくとはまるっきり思わなかったし、どなたも思わなかったんじゃないかと思うんです。
そもそも、インドネシアが、ああいうエルニーニョ現象ということであれだけになるということ、これもほとんどの人は予測していなかったし、また政変でいろいろインドネシアの国内問題が起こるということ、これも大きく予測した人はいなかったと思うんです。
つまり、世界というのは常にそういう問題を含み得る、そういう食料の危機問題を含み得るということを、政策的予測じゃなくて、どういうことが起こってもいいような体制ということをやはり考えておく必要があるだろう。結果的には、日本に大変備蓄があったということが非常に有効な武器になった。戦略として非常に有効な結果を果たしている。恐らくこれからも果たすべきだろうということだろうと思います。
ただ、今この備蓄制度ができたのは、その評価についてはいろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、やはり日本の平成五年の大凶作に起因しているわけでございます。自分を省みてほかをどうするか、こういう考え方はこれからとっていくべきだと思いますし、その場合に、とりあえず私の頭の中で考え得たのはジャポニカという考え方だった。東アジアのジャポニカという考え方でインディカに広げていく、これは広げていくときにまた米の輸出国としてあらわれているタイあるいはベトナムという国々をどういうふうに見るか、あるいは中国とどういう関係を持つかということは、これまた非常に難しい問題でありますが、総論としては私の考えを今後も少し広げていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/68
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069・前島秀行
○前島委員 高野参考人に伺います。
私は、きのうの政府との質疑の中で大臣に、日本は、政府は先の見えない危険なかけに走った、こういう表現をしたのでありますが、今度の関税化を受け入れたということで、すなわち国境措置としての争い事はあとは数の勝負、要するに、先ほど言った、関税率がどれだけになるかなということだけしかなくなっちゃった。従来私たちが主張してきた、主要食料はせめてその国境調整という機能をガット上認めるべきではないか、こういう主張は関税化を受け入れたことでなくなって、あとは関税率をどれだけ抑えられるかというところの勝負になってしまったなという感じがするわけです。
それで、政府もそれからJAも、今度の受け入れの声明に当たって、これからは主張として農業の多面的機能というものを主張していくのだ、あるいは食料安全保障という観点を主張していくのだ、こう言っているのですが、そのことは具体的に、WTO交渉の中でどういうルール改定を求めていく、ということは具体的に何を改定させようと期待しているのか、あるいは政府に求めているのかという点をお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/69
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070・高野博
○高野参考人 最初の御発言と関連してでございますが、私どもの考え方は、WTO協定の中には、次期交渉は改革過程の継続であると書かれております。しかし、改革過程の継続というのは二つの意味が入っているのです。自由化の一層の推進ということと非貿易的関心事項に対する交渉と二つ入っております。ですから、私どもは、国際交渉の場所で改革過程の継続という表現に反対はしておりません。それは、私どもが常日ごろから主張している非貿易的関心事項を考慮するという条項が入っているからでございまして、そこに依拠して私どもは私どもの考え方を全面的に展開していきたいと考えておるわけでございます。
そこで、例えばどういうことがあるのかという御質問かと思いますが、先ほどもちょっと文章を読ませていただきましたが、輸入国で、食料主権の立場から最低限ぎりぎりの食料を国内で生産していこうということが国民合意として法律で認められている、そういう条件のある場合には、そういう政策に対して、そういう観点から展開する農業政策に対しては、これは国際的な貿易ルールの措置として新しく認めるべきじゃないのかというようなことは主張できないか。
それから、特に条件不利地域、中山間地域の農業振興については、これはもう別枠だ、別の観点から必要なんだ、多面的な目的を果たしていくために。そういうことで、新しいルールを持ち込めないかと今いろいろ議論しておりますが、例えばそういうことで突破口を切り開いていきたいと考えているわけでございまして、結局関税率だけの争いではないと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/70
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071・前島秀行
○前島委員 北参考人に伺います。
一つは、御発言の中にもMA米の存在ということについてあったのでありますが、これをどう今受けとめているのか。これからMA米という形で入ってくるのか、新たな輸入の拡大ということで入ってくるのかわかりませんけれども、いろいろな変化が予測される。
それで、MA米が三年余入ってきて、SBSという方式の中でじわじわと国産米との関係が出てきているという話を伺っているわけでもありますので、片っ方で、日本が関税化をしたという形になると、日本に向かっての輸出国がさまざまな改善をしてくることは間違いないだろう。だとすると、このMA米あるいはこれから来るであろう輸入米の使途というものが相当影響をしてくるような気がいたします。
そういう面で、北海道、特にその辺のところの受けとめ方、それに対する見方といいましょうか、対応について御意見を聞かせていただければありがたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/71
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072・北準一
○北参考人 MA米自体が、私どもとしてはこれが取り払われれば非常にいいわけなんですが、現況の中ではなかなかそうもいかない状況か、こう判断しておりますけれども、特に問題なのは、SBS米が、北海道のような、あるいは東北の一部ですが、いわゆる低価格米といいますか、それらと非常に競合する、なおかつ品質的にも匹敵している。
それで、私どもが一番恐れているのは、国内の動きが、いわゆるお米にかかわる輸出入、もちろん輸入なんですが、ここに利益を求めていこうといいますか、一つの業界の動きも出てきている。ですから、これらが相まって、MA米の中でのSBSの動きが非常に大きな脅威に実は思っております。
ですから、このSBS米については何らかの手法をとって、これらの日本の米と競合するような形はとっていただきたくないな、これは廃止していただきたいというのが私どもの考え方であります。ですから、非常に脅威に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/72
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073・前島秀行
○前島委員 最後に伊藤参考人にお聞かせいただきたいと思うのですが、言われましたように、今までは農業の議論となると生産する側だけであったことは間違いないわけで、これからは農村あるいは農業、食料、こういう形で物事を考えていこうという形に基本法もなっていますし、そのことの重要性はわかっていると思うのです。いわゆる消費者の側から求める食料というものは何を求めているのか。とりわけ国産と輸入との問題について、別な認識といいましょうか、受けとめ方で見るのか、あるいは何を基準にしてその辺のところを、国産米、輸入米、米とは限りませんけれども、輸入食料あるいは国産食料という形を基準にして求めるのかという点でございます。
そういう意味の消費者の受けとめ方というのをお聞かせをいただきたい、こういうふうに思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/73
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074・伊藤康江
○伊藤参考人 消費者は食品を考えるときに何を基準にするだろうかということでございますが、まず、健康と安全が第一ですから、やはり食品は健康と安全に役立つものでなくてはならない。もしそれがないのだったら、やはりそれはもう食品とは言えないのではないかというふうに思っています。
それから次に、おいしくて新鮮でというふうに、どこのアンケート調査を調べてもそういうことになってくるわけですね。価格は無視しているわけではないのですが、それなくして価格というわけにはいかないということで、大体価格は三番手ぐらいにやってきます。ですから、やはり食品というものは命をはぐくむもとだというふうな前提で食品を選んでいるというふうに思っております。
それから、輸入品と国産品の問題なんですが、私たちが物を選ぶときに、まず自分の、先ほど言いました健康とか安全とかということを前提としますが、次に、国内農業を育てたいというふうに考えている人は国産品を選ぶ、そういう行動に出てきます。例えば、青森のニンニクとそれから中国のニンニクでは倍近く違うわけですね、価格が。そうすると、私たちは一瞬、スーパーでううんと考えるわけです。幾ら何でも倍は嫌よねというふうに思う人もいますし、やはり倍しても日本のものを食べよう、ましてやニンニクはちょっとでいいんだから青森のニンニクを食べようという行動に出る人もおります。
ですから、先ほどから申し上げました消費者の行動、選択、その前提として意識があります。意識をどういうふうに構築していくかという問題があって、意識の上に立った選択と行動があります。そのときに、選択と行動をさせてもらわなければいけない。そのために私たちは情報、具体的には表示ということを言っているわけです。しつこく言って済みませんけれども、知らないうちに食べさせられるのは嫌だ。それは今遺伝子組み換え食品が最たるものだというふうに私たちは思う。
ですから、お米にしても、やはり最後の手段は、消費者の行動にあるならば、そこのときには選択を可能なようにしてくださいということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/74
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075・前島秀行
○前島委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/75
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076・穂積良行
○穂積委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人に一言御礼を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X00519990310/76
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