1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月十三日(木曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 穂積 良行君
理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君
理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君
理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君
理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君
今村 雅弘君 小野寺五典君
大石 秀政君 金子 一義君
金田 英行君 岸本 光造君
熊谷 市雄君 熊代 昭彦君
小島 敏男君 佐藤 勉君
塩谷 立君 鈴木 俊一君
園田 修光君 中山 成彬君
丹羽 雄哉君 萩山 教嚴君
御法川英文君 宮腰 光寛君
宮本 一三君 矢上 雅義君
安住 淳君 鉢呂 吉雄君
堀込 征雄君 上田 勇君
漆原 良夫君 木村 太郎君
井上 喜一君 佐々木洋平君
菅原喜重郎君 中林よし子君
藤田 スミ君 前島 秀行君
出席国務大臣
農林水産大臣 中川 昭一君
出席政府委員
農林水産大臣官
房長 高木 賢君
農林水産省経済
局長 竹中 美晴君
農林水産省構造
改善局長 渡辺 好明君
農林水産省畜産
局長 本田 浩次君
食糧庁長官 堤 英隆君
委員外の出席者
農林水産委員会
専門員 外山 文雄君
委員の異動
五月十三日
辞任 補欠選任
木部 佳昭君 大石 秀政君
丹羽 雄哉君 佐藤 勉君
同日
辞任 補欠選任
大石 秀政君 小島 敏男君
佐藤 勉君 丹羽 雄哉君
同日
辞任 補欠選任
小島 敏男君 木部 佳昭君
本日の会議に付した案件
委員派遣承認申請に関する件
参考人出頭要求に関する件
食料・農業・農村基本法案(内閣提出第六八号)
午前十時開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/0
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001・穂積良行
○穂積委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、食料・農業・農村基本法案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田英行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/1
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002・金田英行
○金田(英)委員 まさに本日から食料・農業・農村基本法の審議に入るわけでありますが、昭和三十六年の最初の基本法から、はや三十八年でこの法律の改正ということになるわけであります。この基本法のためにいろいろと長い時間をかけて党内あるいは全国を行脚しながら、この基本法の取りまとめに当たった党あるいは農林水産省に敬意を表させていただくわけであります。
そしてまた、冒頭にこういう質問の機会をいただきまして光栄に存ずる次第でございますが、まずこの基本法の歴史的な意義について、若干総括してみたいというふうに思うわけであります。
戦後の農業、いろいろな変遷を経てまいっておりますが、ここ近年、大幅な転換期に当たっているというふうな感を否めないのであります。農政は、今までは米の値段は幾ら、作付はどれくらいしなさい、あるいは麦の値段は幾ら、作付の指導はこうなんだよというようなこと、あるいは乳価についてはこうだよというふうな形で、価格を維持することによって、そして生産費を確保してやることによって、農家の皆さん方の生活向上あるいは生活を確保してきたというのが基本的な流れではなかったのかというふうに思うわけであります。
しかし、近年、市場原理を導入するというようなこと、あるいはガット・ウルグアイ・ラウンドに見られましたような国際的な趨勢の中で、農政は大幅な転換を迫られてまいりましたし、また現実に、今その大転換、政策転換をなし遂げている途上にあるわけであります。エポックな話でいいますと、米の関税化を受け入れたということでもございます。
振り返ってみますと、農政というと、米の価格決定について、全国から農家の皆さん方が東京に押しかけてきて、価格をこうしろ、ああしろというような一時期もありました。しかし、昨年来の米価につきましては、一千万トンの生産のうちの国が備蓄に必要な二十三万トンぐらいのわずか二%か三%の米の価格を決めるだけにすぎない価格決定になったわけであります。
そういった意味で、あるいはこの基本法にも書かれております大きな柱、中山間地等への直接支払い制度を新たにつくるとか、あるいはまた食料の自給率、国際的にも自給率が極めて低いのは先進国の中で日本だけだというような状況の中で、農政をどう転換していったらいいか、大変な政策転換が迫られている中でのこの農業基本法の討議であります。
そういったことにつきまして、まずは農林水産大臣に、この農業基本法、大変国民の注目を集めておりますし、また大きな歴史的な意義を持っている法律だろうというふうに思うわけでありますが、この点につきまして農林水産大臣の所見、歴史的な意義をどういうふうにとらまえておられるのかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/2
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003・中川昭一
○中川国務大臣 まず今金田先生からも御指摘がありましたように、農政における憲法ともいうべき新しい基本法の御審議をこれからしていただくまでに、委員の先生方を初め、国民各層の皆様方に大変な御努力をいただきましたこと、そして今後の御審議に当たっては、当委員会の先生方を中心として御審議をいただくことに対しまして、どうぞよろしくお願いをいたします。
お答えさせていただきます。
歴史的意義という御質問でございますが、戦後、全く新しい農業体制といいましょうか、そういう中でスタートしたわけでありますが、その後、昭和三十六年に当時のニーズにこたえるべく基本法を制定したわけであります。これはこれで当時のニーズに基づいた基本法としての位置づけという大きな意義があったというふうに考えております。
しかし、その後、社会的あるいは経済的、あるいは農業、農村部門そのものも大きく情勢が変化をいたしました。具体的に申し上げますならば、自給率の低下、あるいはまた農業就業人口の減少、さらには高齢化、そしてまた中山間地域等における農村社会の過疎化等の問題。一方、国民からは、良質な農産物、食料に対するニーズの高まり、さらには将来に対する食料の不安等々、さらには国民的に農業、農村の果たす多面的役割に対するニーズ等々が大きくなりまして、現行基本法ではこれらに対応することはもはや困難であるというふうな認識を持ったわけでございます。
これから御審議いただく本法案は、こういったニーズ、あるいは情勢の変化、あるいは将来展望を見据えた国民全体の視点から、国民に関係する食料、そしてそれを支える農業、農村の将来展望を明るくするというニーズも踏まえた形で、今申し上げたようないろいろな問題点の解決、あるいは将来の夢の実現に向けて、この法案を法律として意義あるものにしていきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/3
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004・金田英行
○金田(英)委員 まさに新しい農政の出発がこの基本法から始まるんだという気持ちでおるわけであります。
考えてみますと、今までの農家の皆さん方は、一生懸命頑張れば頑張るほど、生産費が、コストが下がったために価格が下げられるという中で、頑張っても頑張っても努力が報われないという政策の中で価格決定が行われてきた。そういった中で、新しい農政では、米もそうでありましたし、今検討中の新しい麦政策についても、努力した農家の皆さん方が報われる農政に転換していくんだというようなことであります。
そういった中で、一部に不安があるのも事実であります。市場原理を入れたならば、果たして自分の所得は保障されるのであろうか、そういった不安も国内の農家の皆さん方はお持ちでありますけれども、そこはそことして、やはり自分のつくった物の値段は自分たちが努力して価格を上昇させていく。市場原理、国内の需要を、ニーズを受けとめながら生産にいそしんでいくという新しい農業の展開が図られるんだろうなというふうに思うわけであります。
そこで、この農業基本法の中で食料の自給率を向上させていこう。今カロリーベースで四一%という自給率、まさに先進国の中では最低の自給率であります。食料安全保障の問題、そういった中で、もう何としてでもこの自給率を上げていこうということがうたわれるわけでありますが、この食料の自給率を法律の中では書けない。そこで、五年ぐらいの見直しをするという中で、基本計画をつくるというようなことがうたわれているわけであります。この基本計画の中で目標となるべき自給率を定める。米については幾ら、麦については幾ら、牛乳については幾らという形の自給率の目標を掲げて、その目標に向かってあらゆる施策を動員していく、そういった基本計画を定めることになっているわけであります。
この基本計画につきまして若干の御質問をさせていただきますが、今までいろいろな農産物につきましていわゆる長期見通しというものを発表し、その見通しが当たるも八卦、当たらぬも八卦というような形で需給見通しあるいは長期計画みたいなものが定められておったわけでありますが、基本計画というのは、今までのそういった見通しとは大いに違う性格のものではなかろうかというふうに金田は思うわけであります。
そこで、官房長にお尋ねいたしますが、この基本計画を定める中で、農産物ごとの自給率の目標、そしてその目標を達成するための施策というのは、有機的にどういうふうに関連づけていかれるつもりなのか。目標は達成できなかったという形で、単に残念でしたというような対応の基本計画なのかどうか。そこいら辺をしかと、やはり目標を管理する政策、農政でなければならないというふうに私は思うわけでありますが、基本計画とこれからの農政、各種の制度の見直し等々とどう絡めていかれるおつもりなのか、そこいら辺をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/4
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005・高木賢
○高木政府委員 お尋ねのありました、今までの長期見通しとの違いということでございます。
現行の農業基本法に基づきます農産物の需要と生産の長期見通しにつきましては、先生御案内のように、需要の見通しとそれに対応した国内農業政策、見通しを示したということでございます。
これに対しまして、新たな基本法案におきます基本計画の食料自給率の目標は、まさに生産、消費、両サイドの努力によりまして達成を目指す目標として定めるという点が、見通しとまず基本的に異なっているわけでございます。
同時に、今御指摘もありましたように、単に数値を定めているということだけではなくて、生産面、消費面でどういう課題に取り組む必要があるか、そしてまた、課題解決に向けた取り組み内容はどういうことが必要であるか、そして、その実現のための基本施策はどうあるべきかという施策の内容につきましても、基本的なことを定めるものでございます。
したがいまして、まさに目標とそれに関連いたします施策を一体的なものとして定めるということでございますから、数字だけが歩くとかいうことではなくて、きちんとその達成に向けて努力する、そのための施策を講ずるという裏打ちを持っての計画である、こういうふうに位置づけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/5
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006・金田英行
○金田(英)委員 そういったことで、基本計画を五年ごとにつくるといいますか、五年ごとに見直しする中で、それ以降の農政の歩むべき道、あるいは各種の農政についての制度の見直し等々を具体的に進める中で、目標の達成のためにぜひ取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。
それから、この農業基本法を読ませていただいて、あるいは検討させていただいて、次期WTO交渉が来年から始まるわけでありますが、そのWTO交渉に向けての日本の国論の統一という意味で、大きな意義を持った基本法であろうというふうに金田は考えているわけであります。
いろいろな、WTO、農産物における交渉ルールはどうしなければならないのかというような、これは国際的ないろいろな交渉事がこれから行われるわけでありますが、とかくケアンズ・グループ、農産物輸出国側の論理に翻弄されているような体系の中で、日本の農政についての考え方はこうであるぞというようなことをこの農業基本法の中で高らかにうたっているわけであります。
やはり食料安保という観点から、各農産物ごとに自給率を向上させていこうという精神がうたわれておるわけであります。また、市場原理も相応に取り入れる中でやってまいりましょうと。それから、例外なき関税化については、日本としては一定のお約束と申しますか、そういったことには、クリアいたしましたよというようなスタンスもでき上がったわけであります。
また、中山間地等についての見直し、直接支払い制度を大きくこの基本法では取り上げているわけであります。やはり条件不利地域については、一定の直接支払い制度をとり行うことによって農家の皆さん方の経営を安定させるというか、条件不利のコスト差を埋めてやるという制度があるんだよというようなこと。あるいはまた、市場原理も導入させていただきますよというようなこと。
そういったことについて、これで日本の農業はやってまいりますし、日本の意思はこうであるということを諸外国に向けても明らかにしたという面があるのではないかというふうに思うのでございます。
そういった意味で、次期WTO交渉に向けての日本の農業についての考え方はこうだよということを高らかに宣言した大きな意味合いが、この基本法にあるなというふうに金田は考えるわけであります。
そういったことについて、次期交渉に取り組む意欲を持った農林水産大臣でございますので、そういったことが、この法律の審議を通じて、あるいはこの法律の制定を通じて国論が統一され、これを足場にした新しい農業交渉に取り組まれる体制ができ上がるんだということにつきまして、農林大臣、中川大臣から御決意のほどを伺って、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/6
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007・中川昭一
○中川国務大臣 今まさに、この大法案の御審議と次期交渉に向かって臨む方針との二つの大きな作業を、国会の場でも、また政府としてもやっているわけでありますが、これは、全く別のものではなく、むしろ整合性のとれた、同じ方向を向いたものであるというふうに考えております。
つまり、将来にわたって国民の安定的な食料の供給、そのための農業、農村の果たす役割、これは生産面だけではなくて多面的な機能、あるいはまた、我が国が強く主張しております今申し上げた二つを初めとして、先生御指摘の輸出国と輸入国とのバランスの問題等々、基本的な考え方については先日公表したところでございますが、両方ともこれは大事であり、そしてまた、これは密接不可分のものであるというふうに考えております。
そして、さらにもっと根本的な部分で共通するところは、両方ともいわゆる国民的なコンセンサス、合意が大前提にあるということでございます。
そういう意味で、この大前提をつくり上げていくために、この場での御論議を初めといたしまして、農業関係者だけではなく、消費者あるいは経済界、あらゆる立場の国民の皆さんの御意見を聞き、そして御議論を通じていわゆる国論の統一を図って、新しい食料・農業・農村基本法の実施、そしてまた次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/7
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008・金田英行
○金田(英)委員 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/8
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009・穂積良行
○穂積委員長 次に、小平忠正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/9
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010・小平忠正
○小平委員 おはようございます。
いよいよ基本法審議に入ります。二十一世紀に向けての大事な法案ですので、しっかりと我々もこれから構えていきますので、政府としてもその点ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
まず、基本法に入る前に、私は少しく所見を述べさせていただきます。
現下の農業情勢は、我が国はもちろんですけれども、国際間においても激動の連続で、まさしく重要な局面に今立たされております。WTO次期農業交渉を来年に控えて、今まさに事前交渉が、水面下熾烈な展開、各国とも自国の農業を守るために国益をかけていろいろと外交を展開している、私はこう思います。
それはそれで御苦労さんでありますが、私は、このWTO交渉を前にして今から憂えていますことは、次期交渉において、特に食料輸出国から我が国に対し、農業保護の削減を求める声がさらに強くなる、言うならば外圧が強まることは必至である、このように思います。しかし、これを受け入れることは、すなわち我が国の農業の崩壊につながる、このように指摘をし、また、これはそういう圧力が来ることは火を見るより明らかである、こんなふうに考えます。
こういう状況の中で、これは済んだことではありますけれども、政府は昨年暮れに唐突にも、米の関税化に移行する、この政府決定がなされました。今国会でその関係法の整備を強行し、関税化が四月から実施されたわけであります。我が党は、この関税化移行については、国民的な合意がまだ十分でないこと、それから過般の委員会を通じても国内対策が十分に示されていないということ、もう一点は、WTO次期交渉において政府の戦略、すなわち高率関税にするから関税化は大丈夫なんだ、ではその高率関税を堅持するかという姿勢が不明確である、こういう点を考慮して、私どもは現時点での関税化移行は時期尚早、拙速である、このように判断をし、反対をいたしました。
私がこのことを申し上げたのは、こういう我が国農業の基幹である稲作農業の存立にかかわる重大決定をする前に、当然、我が国の基本農政についての徹底した議論が国会で展開されるべきだ、こう思います。しかし政府は、まず米の関税化を強行し、その後に農業の憲法とも言える食料・農業・農村基本法の審議を行うという、まさしく順序が逆なことが行われてきました。私は、冒頭にこのことをまず指摘しておきたいと思います。
これについて政府の見解も問いたいのでありますけれども、きょうは時間がありません。三十分という短い時間でありますので、これは私の強い危惧の念を申し上げて、大臣や食糧庁長官、いろいろと関係の皆さんにこのことを指摘して、次の質問に入っていきます。これは答弁は結構です。いずれ今後の展開で、また時間があればその考えをお聞きすることもあると思いますけれども、きょうは結構です。
さて、そこで基本法についてでありますが、本法案の内容に入る前に、現行の農業基本法について政府はどのような総括をしているのか、それを伺っておきたいと思います。
昭和三十六年に制定をされました現行基本法は、農業生産性の向上と他産業並みの生活水準を目指してスタートをいたしました。しかし実態は、我が国農業の食文化の維持や農村社会の発展的継承といった面は考慮されずに、一方で麦や大豆といった伝統的作物生産からの撤退、また畜産への転換に伴う飼料作物の大量輸入により食料自給率の著しい低下を招き、また他方では農村の過疎、高齢化、そして相次ぐこれによる集落の消滅、このような地方社会の崩壊につながりかねない時代を生み出すに至ったのであります。これが現行の農業基本法下での三十八年間の歴史、足跡、結果であると思います。
昨年九月の食料・農業・農村基本問題調査会の最終報告を見ましても、また昨年末の政府による農政改革大綱を見ても、現行農業基本法総括についてはほとんど言及されておりません。これではなし崩し的な方向転換と言われても仕方がない。
我が国農業の現状にかんがみ、その反省のもとに二十一世紀を見据えた新しい農業基本法をつくるのだという真摯な姿勢が政府にはおありなのか、まずこの基本的なことについて、大臣、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/10
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011・中川昭一
○中川国務大臣 まず、我々は過去の、昭和三十六年当時の農業あるいは日本の社会状況をも含めて、あるべき農業、農村の姿というものをいろいろと考えて先人たちが基本法をつくったわけでございます。これはこれで当時の情勢の中でできる限りいいものをつくろうという中で大変国会でも長い御審議をいただいたというふうに聞いております。
そういう状況でございますが、先生御指摘のように四十年近くたって社会情勢あるいはまた日本の経済情勢、さらには日本の置かれておる世界的な立場、そして何よりも日本の農業、農村の置かれておる現状というものが大きく変化をしてきたわけであります。その中には、もちろん所得面で向上をしたとかあるいは生活基盤面で向上が見られるとかいった一定の成果もありますけれども、先生御指摘のようなことも含めまして多くの問題点あるいはまた新しいニーズ、新しい問題点も出てきたわけでございます。四十年という長い期間でございますから、いろいろな変化あるいは予想を上回るような課題が出てくることも結果的にはあったわけであります。
具体的に申し上げますならば、自給率の大幅な低下や農業就業人口の減少、高齢化、過疎化、こういった問題、さらには国際化の進展そして国民の食生活の変化といった問題。さらに新しい問題としては、環境面を含めた農業の多面的な機能に対する国民のニーズ、そして将来の国民の食料に対する不安といいましょうか、このままの自給率で果たしていいんだろうかといったような国民的な不安もあるわけでございます。
そういった問題点も非常に大きな存在となってきたわけでございまして、そういう意味で、現時点で過去を総括するならば、四十年の間にいろいろな変化によっていろいろな問題が新たに発生し、また新たな課題の解決によって明るい将来が実現できるというような形の施策もいろいろとこれから講じていかなければいけないし、いけるという面も我々考えておりまして、そういうようないろいろな要素を今総括し、決してなし崩しとか無反省にというようなことは我々毛頭考えていないつもりでございますけれども、結果的に過去を振り返るならば、今申し上げたようなことになろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/11
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012・小平忠正
○小平委員 私は、そういうことをあげつらうのではなくて、せっかくつくる基本法が、二十一世紀に向かってこういう農業の憲法、基本法をつくりました、これにのっとって信頼していいんですねという信頼感を与えることができなければいかぬと思うんです。ところが、三十八年前の現行基本法の今日までの足跡の中でそれがなし崩し的にいろいろな変化の中で変わってきましたが、それはそれで、基本法はあったけれどもしかしこうなった。ですから、これをつくるときにこうだったからこうという、そこのもっと真摯な反省、総括というものを政府から出すことによって、私は国民が今度の新しい基本法にまた大きな期待を寄せていただける、そう思いますので指摘をしているんです。
特に、平成三年ですか、当時の近藤元次農水大臣が閣議後の記者会見でこの基本法のことに触れて、見直しを含めて新しい時代に向かってこれを検討する必要がある、こう言われて、あれからもう随分たちました。その間ウルグアイ・ラウンドのいろいろな交渉事もありましたけれども、今やっとその舞台に入ったわけですから、この機会にしっかりと進めることが大事だ、そういう思いでお話ししております。
それで、大臣、本会議で、非常に優秀な役人がつくった答弁を長々と棒読されましたのでよく聞き取れなかった面もありますけれども、この委員会ではそういう役人作成の答弁は必要ありませんから、ぜひ大臣の肉声といいますか、お考えをお聞きしたいので、長い答弁は必要ないですから、私も時間がありませんので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。決して本会議の繰り返しにならないようにお願いします。
さて、法案についてであります。時間がないので、この後これから審議が重ねてありますから、そのときに、私も含めて同僚議員から、またいろいろなサイドから、角度から質問しますので、きょうはまず二点に絞って質問をいたします。
まず一点は、食料の安定供給の確保、言うならば自給率の問題です。
昭和三十五年当時は自給率が七九%にも達しておりました。しかし、その自給率も平成九年では四一%にまで落ち込んでしまった。一方で、先進諸国では七〇ないし八〇%から、国によっては一〇〇%を超える、二〇〇%近いところもあるという状況の中で、我が国の自給率はもうお話にならない。食料安全保障の観点から、私は大きな不安を持っております。
食料・農業・農村基本問題調査会の議論では、食料自給率を政策目標にすることについては賛否両論があったと伺っております。そのため今回の法案でも、せっかく食料自給率目標設定を基本計画に掲げながら、わざわざ農業生産及び食料消費に関する指針だとか関係者が取り組むべき課題というクレジットをつけることで政府の責任をあいまいにしてしまっている、こう指摘せざるを得ません。これでは、現行の基本法でも行われている農産物需要及び生産の長期見通しに示される自給率の指針とどこがどう違うのか疑わざるを得ない。
私は、自然環境や生態系の保全並びに食料に対する安全性が強く要求される今日、農業をめぐる国際情勢が著しく変化している今日、農業、農村が有する多面的、公益的機能を増進するためにも、本来各国が有する普遍的な権利ともいうべき食料自給率の向上を明記して、そして国内生産を基本として世界の食料安全保障に寄与する、このことをはっきりと打ち出すことが政府の責任であり、また我々国民に課せられた責務である、こう考えますが、この点についてはいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/12
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013・中川昭一
○中川国務大臣 もう先生も既に法律案の条文はお読みでございますから、できるだけ簡潔にお答えしたいと思います。
あくまでも国内の農業生産を基本として、しかし現状ではこれだけではとても無理だということで備蓄と輸入というものも組み合わせるわけでありますが、一方、政府がこの法律に基づいてつくる基本計画の中で、自給率の目標というものを設定するわけであります。これはもちろん、自給率を上げていくということが当然の前提でございまして、そういう意味で、国内の農業生産を基本としてという言葉を受けての基本計画ということでございます。
先生御指摘のとおり、我が国の自給率が非常に低い、しかもさらに下がる傾向が少なくとも昨年まで続いているという状況を何としても打破していくことが、国内的な安定供給、平時、不測時を含めた安定供給だけではなく、条文にもありますように、「世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、」という、法律条文にもわざわざ書いてあるわけでございますけれども、こういうことから、自給率の向上ということを基本的な考え方にした上での条文であり、それに基づいてきっちりとした形で基本計画を定め、その中に自給率という数字を品目ごとにまたきちっと書き込んでいきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/13
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014・小平忠正
○小平委員 時間がありますれば、この政府案に対して、自給率の設定の仕方、考え方について、もう少し掘り下げて議論したいのでありますが、次にまた機会があると思いますので、また重ねて質問いたします。
要は、五年ごとの基本計画でもって云々するんではなくて、この本文の中に明快に、自給率の向上を目指すんだという、パーセンテージまではないにしても、そこまでは要求しないにしても、少なくとも自給率の向上を目指すんだという、それをまずうたい上げて、そして数値は五年ごとのこの基本計画で持っていくという、そういうことをしなければあいまいもこになってしまう、そういう意味で私は申し上げているのでありますが、このことはまた、ひいては国内農業生産の維持発展にもつながっていきますので、私は、自給率の向上というのは大事な要点だと思っていますので、指摘をしているところであります。
さて、次に進みますが、農業の持続的な発展並びに農村の振興に関する施策、こういう条項があります。これについてでありますが、我が国は、農業は大別して二つの特徴があると言えると思います。一つは、大宗を占める二種兼業農業と専業農業との区分であります。もう一つの区分というのは、中山間に見られる条件不利地農業と平地農業との違い、これがあると思います。
この後段の条件不利地域、平地農業のことでありますけれども、この条件不利な中山間地域の農業については、地域社会を守ることはもちろん、国土保全の見地からも重要であり、直接所得補償等の施策を講ずることは、これはもう肝要であります。と同時に、平地農業にも経営安定対策はしっかりと講ずるべきだと思います。特に、兼業化の機会もなく、これは大臣もよくおわかりと思います、専業地帯は兼業の機会もない、作物選択の自由度も狭められ、かつ、内外の価格差から生じる基幹農産物の急激な価格引き下げに伴う所得減少は、平地地域においても、農業経営の破綻、ひいては集落の崩壊にもつながる社会問題にもなっており、これを補う政策措置はぜひとも必要である、こう思います。
農業というものは、申し述べたように、さまざまな特質を異にしており、農政は画一的なものであってはならない。国と地方とがそれぞれ対等な立場で地域にふさわしい農政の確立を進めることが必要と思いますが、これについてはいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/14
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015・中川昭一
○中川国務大臣 平地農業についての何らかの経営安定対策という御質問ですが、先生も私も同じ北海道ですから、平地における専業大規模地帯の悩みというものもお互い知っておるわけでございます。
経営安定対策につきましては、いわゆる中山間地域、中山間地域というのはいわゆる条件不利地域としての位置づけとして中山間地域等ということで法律上の仕切りをさせていただいておるわけでございます。平地においてもいろいろな経営安定対策を講じていくことは、これはもう当然のことであり、これからいろいろとさらに、今までもやってきたつもりでございますけれども、新しい法律のもとで、市場原理の導入とか、そういう新しい手法も導入されますので、新しい経営安定対策も当然、価格変動対策等々、いろいろと講じていかなければならないというふうに考えております。
また、いわゆる直接支払いの話につきましては、これはあくまでも条件不利ということが大前提でございまして、その場合の条件不利ということについては、中山間地域等というふうに必ず等が入っておりますから、中山間地域以外は入れないというふうに今から断言するつもりは毛頭ございません。むしろ、中山間地域以外でも条件不利地域があった場合には、それに対する対策としてどういうものがあるかということは今後の検討事項であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/15
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016・小平忠正
○小平委員 いろいろと政府にお尋ねしたい点、また我々の考えも主張しながら確認したい点が多々ありますが、今申し上げましたように時間がきょうはありませんので、それはこれからの審議にまたゆだねたいと思います。
最後に、農業の存在意義というものは、国際市場の価格によって決められた相対的有利性、よく言われるコンパラティブアドバンテージですか、そういうものによって左右されるものではなくて、生活文化の根底に農業があるという認識をはっきりと持つべきだ、人間の生命に欠くべからざる食べ物のとうとさを、そして稲作文化に代表される農業が、日本人の心、すなわち日本文化を基本で支え、今日の我が国日本をつくってきたことをここで改めて再認識すべきであると私は思います。
そういう意味において、これからつくる新しい食料・農業・農村基本法においては、以上の精神にのっとって、農は国の基なり、このことを高らかにうたい上げた前文をまず冒頭に入れて、そしてそのもとにこの法律に入っていく、私はそう思うのでありますが、政府案では前文が欠けております。今のような点を含めて、大臣はそこのところをどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/16
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017・中川昭一
○中川国務大臣 法律の前文というのは、法律を提出し御審議いただく理由、事情あるいはまたその法案の基本的な考え方、理念が記述されるのが通常であります。今度の新基本法におきましては、理念はまさに基本理念として、たしか二条から五条までの四つの理念として明示されておりますし、また提案に至った理由につきましては、提案理由説明の中で御説明をさせていただいたわけでございます。
そしてまた、あくまでもこれは基本法といいましょうか、理念法といいましょうか、これが実際に、先生が先ほどから御指摘されておるような趣旨、あるいは我々も考えておるような趣旨を実現するためには、実体法がなければ現実にはできない部分もございます。そういう意味で、こういう基本的な部分については、この法案の四十数条の条文の中に盛り込まれておるものというふうに考えております。
したがって、先生が御指摘になったような基本的な考え方そのものがまさにこの基本法の条文の中に明示されておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
現行の農業基本法ではもちろん前文がございますけれども、最近のいろいろな基本法ではいわゆる前文というものは置いていないというのが、先ほども申し上げたような理由から、そういう事情になっておるということもつけ加えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/17
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018・小平忠正
○小平委員 確かに最近の傾向としては、基本法に前文がないのが流行なようであります。でも、それに別に従う必要はない。
今大臣がいみじくも答弁された、この法文の中にそれが盛り込まれている、また説明にもそういうものがついていると。それは、確かに法文の最後に理由として説明が出ていますね。であるならば冒頭に、やはり法律というものは一般の人にわかりやすく、まずそれをしっかりと訴えて、そして感動を与える、そのことをまず考えるべきではないでしょうか。そして、第一章、第一条と入っていくのが大事であって、ただ無機質に機械的に法律をつくっていくのではなくて、せっかくそういうことで二十一世紀を目指す新しい基本法に持っていくなら、今の傾向がどうであれ、今の大臣のその趣旨にのっとってしっかりと前文をそこにうたい上げて、農は国の基なり、そのことがはっきりとわかるようなそういう文言を盛り込んだ前文をつくって、そして各条項に入っていく、私は、そのことが意義があり、また大きな効果を持つと思っていますので、強く主張をしているところであります。
いずれにしましても、いよいよきょうから実質的にこの基本法の審議が始まりました。我が党としても、これから数次にわたる委員会審議を通じて我々の考え方も政府に申し上げ、また、この法律が、与党だから賛成、野党だから反対、そうじゃなくて、できるならばこの法律は全会一致で、満場一致で賛成してつくり上げて世に送り出す、これが二十一世紀を見据えた新しい基本法にふさわしい形である、こう私は信じています。
そのためにも、はっきり言って不備があるこの今の政府案に対し、私どもは修正を求めていく考えでありますので、ぜひそこのところは、胸襟を開き、真摯に協議をして、審議を尽くしてすばらしい法律ができるように、このことをまず願いまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/18
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019・穂積良行
○穂積委員長 次に、宮地正介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/19
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020・宮地正介
○宮地委員 きょうは限られた三十分という各党一回りの質疑、こういうことでございますので、重点的な骨太の質問を少し大臣と対でさせていただきたいと思います。
今回のこの新しい農業基本法、この国会提出に当たりまして、まず一つは、現行の農業基本法、昭和三十六年に成立をしたこの法律について、この三十八年間、特に自民党単独政権の時代が長く続いて、この農業基本法をもとに我が国の農業政策をやってきたわけでございます。
しかし、この三十八年間を総括してみますと、確かに時代の変革も大変にスピード、そして大きな変化があったわけであります。しかし、結果として、あの農業基本法ができたころの我が国の食料の自給率は七九%、しかし平成九年ベースで現在四一%に落ち込んでしまった。簡単に言えば一年に一%ずつ落ちて、三八%落ちた。これは我が国にとって大変な危機的な状況に今陥っている。このことに対する認識と、自民党政権が長きにわたって続いてきた中でとってきた農業政策の一つの憲法であるこの基本法を、果たして本当に国民の期待に沿った基本法として有効的に活用してきたのかどうか。
やはり、まずしっかりとした総括と反省の上に立って、次の二十一世紀に向けての日本の農業をどう抜本改革して再生させていくか、その新しい憲法の、今度は改正でなくて、これは新法というスタートですから、言うなれば、今までの基本法は新法の成立と同時に廃止されるわけですから、私は、これは大変重大な、大きな日本農業の分岐点であろうと。
まず、その点について、一つは、中川農林水産大臣が、今までとってきた三十八年間の我が国の農業政策についてどう総括されているのか、この点についてまずお考えを確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/20
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021・中川昭一
○中川国務大臣 当時のことを、当時制定にかかわった大先輩の方々に聞いたことがありますけれども、当時、とにかく敗戦からやっと立ち直って、高度経済成長の時代に入った直後であります。そういう中で、依然として、農村人口が非常に多くて、規模も非常に小さくて、そして生活水準も非常に厳しい、そういう状況は何としても是正していく。
それから、先生から御指摘がございましたように、自給率は確かに昭和三十六年当時で七九%ありましたが、たしかまだ米は一〇〇%自給までは行っていなかったというふうに私は記憶をしております。米だけではなくて、ほかの主な作物をもっとつくっていこうということでありますから、これは米を一〇〇%自給するのが目的であったわけではないわけでございますけれども、そういう社会情勢にあった。
そういう中で、都市と農村との生活水準の格差の是正、あるいは農業と他産業との所得格差の是正、あるいはまた農業そのものの経営規模の拡大、生産性の向上、自立経営の育成等々を目指したわけでございます。
その結果、成果を上げた点を申し上げますならば、生産性が向上いたしました、あるいはまた一世帯当たりの所得が勤労者並みになってきた、あるいは生活インフラも一定の向上が見られたというような点があります。
しかし他方、生産性は上がったけれども、他産業はもっと上がったということで、決して格差が埋まったと言い切れる状態にはない。さらにはまた、インフラもまだまだ都市に比べれば未整備の部分が大きい。そしてまた、自給率の大幅な低下、就業人口の減少や高齢化、過疎化といった問題が生じております。
これは、政府・与党の責任であったといえば、それは全くなかったとは私も申し上げることはできませんけれども、これは何といいましても、もう一つの要素としてぜひ御理解をいただきたいのは、それもあったということを認めた上で申し上げさせていただきたいと思いますけれども、やはり自然、生き物相手の大事な産業活動であった、経済活動であった。
それから、やはり消費者の嗜好といいましょうか、端的に言えば食生活が、所得の向上とともにいわゆる穀物中心から肉食その他にウエートが移り、また、いろいろな品目をお金さえ出せば世界じゅうから買えるようになったというような食文化、食生活の変化等もあったということもございまして、つい最近の平成五年の大冷害がございましたけれども、その間何回かそういうこともございましたし、社会のそういう文化、食生活の面での変化もあったというようなこともありまして、総合的な意味で、現行基本法では今後の農業あるいは農村そして国民全体にかかわる食料に対応することは困難になったということで、そういうことも見据えた形での新しい基本法を御審議いただくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/21
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022・宮地正介
○宮地委員 その辺の総括をしっかりやって、それをベースにして次のステップを踏んでいくということが私は大変大事だと思うのですね。
そういう中で、平成四年の六月に「新しい食料・農業・農村政策の方向」というのを農水省が示した。これは非常に、一つの大転換のときの政策の方向性を示した。これがベースでもう一歩さらにここで、ウルグアイ・ラウンドの問題、米関税化の問題、こういうような問題が、新たに今度は外的な要因が出てきた。そういうものを複合的に考えて、ここでさらにもう一歩アクセルを踏まなきゃいかぬ。私はそこで新法がどうしても必要なんだという理解をしている一人なんです。
そういう中で、確かに今回四つの理念が打ち出されておりますが、私は、平成四年の六月の「新しい食料・農業・農村政策の方向」の中の「政策展開の考え方」の最後に出ているところを大変注目している。このところをどうしてもう少し表に、今回の基本法の中で、前文でも結構です、前書きでも結構です、なぜ入れなかったのか。
私は、あえてここを読ませていただきますが、こう書いてあるのですね。
近年、地球温暖化、熱帯林の消失、砂漠化の進行、野生生物種の減少、酸性雨、オゾン層の破壊などの地球環境問題がクローズアップされている。この問題は、農林水産業と深い係わりを有するとともに、後世代へも重大な影響を及ぼす、一国のみでは解決し得ない極めて深刻な問題である。
このように、我が国そして世界は新しい事態に直面しており、これに対応し得る食料・農業・農村政策を展開することが求められている。
非常にここは重大なところを指摘されて、既に七年前にこの展開を農水省の皆さんが御苦労されて国民に示している。
確かに、この中の一部については理念なり方向としてこの法案にも盛り込まれておる。しかし、やはりこの視点というものは、これからの自給率の向上を目指す我が国の農業政策の抜本改革をしていく上の大変重大な視点である。
我が国の国民の食料の安全保障ももちろん大事ですけれども、これからは世界の食料安全保障にも我が国が先進国として国際貢献をしていかなくてはならない、そういう時代にもう今入っている。
確かに、国際貢献については今回の法案にも一行入っています。しかし、なぜここのところをもう少しきちっと表に出して国民に訴えられなかったのか。この点について、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/22
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023・高木賢
○高木政府委員 今先生から御指摘を受けた点は、新政策のまさに末尾に書いてございまして、基本的な大きな認識であろうと思います。
ただ、法文化ということになりますと、それがすべて取り入れられないということで、今も先生のお話の中にありましたが、まさに基本理念の中には、そういった事柄が引き起こすであろう世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみということで、食料政策の理念といたしましては、そういったもろもろの、砂漠化とかオゾンとかいろいろな問題もありましょうが、集約された点として、「世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、」ということにまず出ていると思います。
それから、第二条の一項でも、食料につきまして改めて、「人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、」ということで、読みようによっては、何だ当たり前じゃないかというふうにも受け取られる向きもあるわけですけれども、やはり食料の重要性というのを改めて明記をしている。
それから、農業、農村に期待される多面的機能の発揮ということで、自然環境の保全なり、良好な景観の形成なり、あるいは文化の伝承といったソフト面にわたる多面的機能につきましても、この基本理念の条で明確にいたしたところでございます。
それから今も御指摘のありました国際協力も、今度の新しい基本法で明記した一条の姿でございますし、その前に不測の事態におきます食料安全保障の規定も置いておるということで、今先生が御指摘になった事態の認識も踏まえて、基本理念なり基本的政策という形で具現化をしたというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/23
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024・宮地正介
○宮地委員 大臣、フォローアップを。私は大臣の見解を聞きたい。今の事務方のことは全部読んで知っていますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/24
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025・中川昭一
○中川国務大臣 今官房長から法技術的な面を中心に答弁がございました。
まさに新政策の、今の地球環境あるいはまた後世代に果たす我々の責務といった観点というのは、先生が大変御熱心に今お話しされておりましたが、我々としましても、その趣旨としては、今申し上げたように、国際貢献あるいは環境面に果たす役割、あるいはまた将来にわたる食料の安定供給、安定時、不測時を含めた役割等々を含めて、この条文の中にちりばめていると言うとちょっと言い方が適切じゃないかもしれませんけれども、各条文の中で、先生から見れば不十分かもしれませんけれども、その趣旨に沿った形で、平成六年といいますと、その新政策が起点になって基本法の議論が起こり、そして基本問題調査会で約二年の議論を昨年の秋までに終了したということでありますから、時系列的にいいましても、それを受けての実体法の作業に入り、いよいよ本日から御審議をいただいているというふうに私は理解をさせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/25
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026・宮地正介
○宮地委員 きょうは、大臣、同じ政治家ですから、時間も限られておりますから、余り事務方を煩わさないで、政治家同士で骨太の議論をしたいというのは私が最初申し上げたとおりですから、大臣の政治家としての基本的な考え方なり哲学なり姿勢を遠慮なく国民の前で披瀝してもらいたいのです。これが今一番大事なんですから。先ほど官房長が言ったことは、私は全部読んで知っていますよ。ですから、初めに言ったのです。
そこで、もう一つ大変大事なことは、問題は、自給率が今四一%まで落ち込んでしまった。確かに、今回の法案の中に、十五条の二項の二にきちっと、基本計画の中で目標を設定すると出ています。四つの理念、それから基本計画、ここで実施計画、こういうものをこれから五年を目途につくる、自給率についても目標を設定する、こうなっています。
ところが、大臣御存じのように、この自給率を一%引き上げるのも大変なんですね、今の状況は。これは、生産者段階の御努力だけでは解決しない問題です。法案の中にも書いてあります。消費者団体、消費者の理解、国民の理解。本当に、これは内閣が総力を挙げて取り組んでいく重大な課題なんですね、この自給率の向上という問題は。
今、先進国の中で最低の状態です。できるだけ早い時期に五〇%のフィフティー・フィフティーまでまず引き上げるというのは、我が国における食料の危機管理政策ぐらいの重大な問題であろう。これはもう農林水産省だけの御苦労でなくて、内閣を挙げて、内閣が総力戦でこの自給率の向上に取り組むぐらいの決意が必要であろう。そうしなければ、今この法律が通って、これからこの食料、農業、農村の、総理大臣の諮問機関でいろいろ審議して、そして基本計画をつくって目標を設定して、今言われているような五年、十年ぐらいのスタンスで五〇%ぐらいに引き上げる、こういうことだけでは達成は大変難しいだろう。
大臣、あなたも小渕内閣の主要閣僚の一人です。私は、国会が責任を持ち、内閣が責任を持ち、国会はまさに国民の代表機関ですから、やはり国会と内閣が総力戦で自給率の向上に向けて、例えば五〇%なら五〇%の目標を、今農水省の皆さんは十年ぐらいというような悠長なことを考えているけれども、私は、五年なり七年ぐらいで達成するぐらいの、この難攻不落の戦略をどう内閣がつくり上げていくか、これは大変重大な問題であろう、こう思っておりますが、まず大臣、この点について、大臣の御決意なりお考えはどういうふうに持たれているのか、確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/26
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027・中川昭一
○中川国務大臣 先生御指摘のとおり、現在も、それから将来に対しても日本の食料の自給というものが非常に低く、そしてまた将来に対しての不安があります。
この条文で、国民に対して、国内生産を基本としなければならない、これは義務規定的に書かれておるわけでございます、この基本理念が。一方では、自給率の目標を基本計画で定めなければならないということでございますが、現状は、私としましては、国内の生産が基本になっていないと言わざるを得ないのが現状だろうと思います。カロリーベースで四一%、しかもそれがさらに、先生のお言葉をかりれば、年一ポイントずつ下がってきたという現状を見れば、国内生産を基本としていない現状を、何としても国内生産を基本としなければならないという基本理念のもとで基本計画をつくっていくわけでございます。
そして、これについては政府がつくるわけでございますから、政府が責任を持つ大事な目標であり、政策なわけでございます。
しかし、それは政府だけではできないということは先生からも御指摘がございまして、国会での、こういう場での法律案の審議を通じ、また年次報告等で進捗状況的なものもこれから御報告することも法律で決められておるわけでございまして、そういう意味で、この法律は国会で御承認をいただき、それに基づく実施計画的な基本計画については、それに基づいての行政の責任において、国民各位の御協力、あるいは場合によっては御努力もいただかなければならないということをもって、この現時点あるいは将来にわたっての安定的な国内生産を基本とした食料供給の実現に向けて努力をしていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/27
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028・宮地正介
○宮地委員 国内生産を基本にしてというのは、私も大賛成です。
要は、これは、政府といっても具体的には今農水省マターの問題として御努力の規定になっているわけです。私は、そうではなくて、内閣全体として、例えば、農水省は今厚生省といろいろ打ち合わせもしているようです。さらに、厚生省だけではない、内閣全体、例えば消費者の問題であれば国民生活局、経済企画庁も巻き込まなければいけない。
しかし、私は、本当に内閣全体としてこの食料自給率の向上に向けて総力戦で戦略的にやるということであるならば、むしろ内閣の中に食料安全保障対策室みたいなものをつくって、そこから内閣全体としてこの自給率の、例えば当面五〇%なら五〇%と設定して、それでは何ができるんだということで、内閣全体がやはり総力戦で取り組んでいく。まず、そうした仕組みをつくる。また、国会もただこの法案を審議して通すだけではなく、やはり何らかの形で国会が責任を持った対応をしていくべきではなかろうか。
これについては我が党としても考え方を持っておりますから、きょうはこの場では申し上げませんが、やはり国会もそうした国民の代表としての責任を持った対応をする。内閣も内閣の中枢に仮称食料安全保障対策室のようなものをつくって、その中枢は自給率の向上を目指す、それに伴うあらゆる改革、あらゆる施策を、農水省を中心として政府が総力戦で戦略的にやっていく。そのベースに国内生産を基軸にする。これは当然です。
そういう考え方について、大臣はどう考えられるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/28
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029・中川昭一
○中川国務大臣 文字どおり、こういう現状の中で、国内生産を基本として自給率を向上させていくということになりますと、一農林水産省だけでできる問題ではございません。現実に、今先生御指摘のように、厚生省あるいは自治省、あるいはほかの官庁、特に将来にわたっての話ですから、文部省とも連携を現に今とっておるわけでございます。
また一方、今度できます審議会は、これは内閣のもとで内閣総理大臣が委員を任命するということでございますから、内閣の中に置かれた審議会が認めなければ基本計画はできないということになります。そしてまた、その審議会では、必要があれば各行政の長、つまりどの大臣でも呼んで、実態についていろいろ質問をしたり、また情報を聞くことができるということも条文上明記されておるわけでございます。
そういう意味で、これは一農林水産省の法律ではなくて、食料という国民にとって必要不可欠な、全国民にかかわりのある問題の基本法である以上は、これは政府全体が全力を挙げてやっていきますし、また繰り返しになりますけれども、地方公共団体、そして関係団体以外にも、消費者、経済界を含めた国民全体の御議論、合意の上に立って、政府全体としてこの問題に取り組む。
そして、それは議会、国会に対して、我々が責任を持つというか、国会に対して、議院内閣制でございますから、その法律の根拠を与えていただいて、そして折に触れて御審議あるいは年次報告等でチェックを受ける、こういう形でやらせていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/29
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030・宮地正介
○宮地委員 ぜひ内閣が総力戦で戦略的に取り組んでいく、そうした仕組みなり機構というものも具体的に内閣の中に設置をしてこの問題は取り組んでいく。これがなければ、実効性の上がる自給率の向上は実現が大変難しいであろうときょうは提言をさせていただきたいと思います。
もう一つの大事な視点は、時間がありませんが、本日から地方分権の問題がいよいよ国会で審議をされます。やはり国と地方の関係において、この法律の中にも役割分担が書かれておりますが、さらにこれを強固に、地方分権の推進の中で、地域の活性化、集落の活性化、こうした問題とこの農村の活性化、再生という問題は表裏一体のものであろう、私はこう考えておりますから、この地方の分権と一体の中でどう農村地域の活性化を、再生をしていくか、この視点もしっかりと魂に入れて私は取り組んでいただきたい。
また、先ほど中山間地域のデカップリング制度の導入についても、いわゆる中山間地域等ということで、等の中でハンディキャップのある地域においては十分にこれはWTO協定の緑政策を踏まえて対応する、こういう大臣答弁もありました。この等の中に、北海道のああいう豪雪地帯とか寒冷地帯とか、平たん地の中においても相当なハンディキャップを負って、一生懸命生産農家として励んでいる。励んでいるけれども、例えば米についても、先日も申し上げましたが、六十キロ当たり一万二千円を割るような、つくればつくるほど赤字経営になるようなハンディをしょった、そういう地域も現実に我が国にはあるわけですから、ぜひこの等というところで、中山間地域のみならず、全国のそうしたハンディキャップの地域を総点検していただいて、そしてWTO協定の緑政策にきちっと合致するような方向で、思い切ってここについても、私はこの際、全力を挙げて検討してもらいたい。
この点について要望すると同時に、一言で結構ですから、大臣の決意を伺って質問は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/30
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031・中川昭一
○中川国務大臣 二つだけ、一言ずつ申し上げさせていただきます。
地方との関係におきましては、条文にもありますように、適切な役割分担ということで、一言で言えば対等な関係にある。
それから、条件不利地域、中山間地域等条件不利地域ということにつきましては、典型的な例、主な例が中山間でございますけれども、等という中にはそれだけではないということも含まれておるわけであります。それについても考えるということは先ほど申していないので、それだけではないんだということで、等についても検討することはあるということでございまして、北海道の例を先生が御引用いただきましたので、そういう意味で、等という中には中山間地域だけではないということが私自身も頭の中に実はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/31
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032・宮地正介
○宮地委員 この委員会において、締めくくり総括では小渕総理の出席も担保しておりますので、先ほどの質問など、さらに総理ともぜひこれからの日本の農業の抜本改革については議論をさせていただきたいと思います。
きょうは限られた時間でございました。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/32
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033・穂積良行
○穂積委員長 次に、藤田スミ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/33
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034・藤田スミ
○藤田(ス)委員 この食料・農業・農村基本法案というのはいわば農業の憲法だという御発言が先ほどもありました。私もそう思う。
そして、このことは国民の命と国の主権にかかわる大変重大な問題であります。その法律であります。だからこそ、私は、この法案の審議に入る前に、総理にまず質問をできる、そういうことで始めていきたいということを主張いたしました。もちろん、この主張は野党が一致して求めたものであります。現基本法の質疑のときも、五回にわたって総理が出席をされ、その質疑に参加をしておられるわけであります。国民が期待をしているそういうものになるのかどうか、総理としてその責任を持てるのかどうか、そういう点では、総理のこの委員会への参加というのは非常に大事であります。
この点については、与党である自民党の筆頭理事からも、総理の出席については約束をするということでございましたので、きょうは大臣からお伺いをするという始めになりました。しかし私は、委員長にもあの理事懇の約束は必ず守っていただきたいということを、まず委員長にお願いをしておきたいと思います。
いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/34
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035・穂積良行
○穂積委員長 当委員会の理事懇談会で相談をした結果に基づきまして、御質問の趣旨については、私もその方向で努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/35
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036・藤田スミ
○藤田(ス)委員 それでは質問を始めていきたいと思います。
私は、まず最初に、この法案の最大の問題である食料自給率引き上げの問題、この点に絞ってきょうはお伺いをしていきます。
本会議の質問でも指摘をいたしましたが、極端に低い食料自給率の回復、向上は、食料不足が予測されている二十一世紀を目前にして、文字どおり国民の生存にかかわる大きな問題であります。本来、農業に関する基本法であるならば、農業を文字どおり国の基幹的産業に位置づけ、この食料自給率向上を基本法の大命題に据えなければならないはずであります。その上で、国の責任で食料自給率を一刻も早く五〇%へ引き上げて、さらには六割、七割へと自給率を引き上げていくんだ、そのことを明記すべきであります。
これに対して本法案は、総則において食料自給率という字句さえ記載されておりません。ましてや、食料自給率の引き上げが基本理念としても掲げられていない。なぜ食料自給率の引き上げとその目標理念、目標数値を基本理念に明記しなかったのか、まずお答えをいただきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/36
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037・中川昭一
○中川国務大臣 まず、二条で、国内生産を基本としてという言葉には極めて重い意味があるというふうに考えております。
先ほどもお答え申し上げましたように、現状、基本ではないという認識を持っておる私にとりまして、しかも、先ほど宮地先生からも御質問がありましたが、一ポイント上げるということは、試算を聞きましても大変な作業であるということでございまして、そういう中で、国内生産を基本としてということを基本理念である第二条の中に入れたということの重みをぜひ御理解いただきたいと思います。
そして、その基本理念に基づく基本計画の中で、自給率の設定という基本計画の中で盛り込まなければならない条項があるわけでございまして、これに基づいて政府の責任において食料自給率の目標を定めていくわけでございます。
具体的に何%ということになりますと、さっきも申し上げたように非常に難しい作業でありますし、それから自然相手、生き物相手、そしてまた消費者相手というか、消費者の動向も非常に大きなウエートを占めるわけでございますから、そう簡単に何%ということを、基本法と先生もおっしゃいました、農政の憲法たる基本法に何%という数字を書くということは、この基本法の性質上できないと言わざるを得ません。
しかし、自給率を向上し、国内生産を基本とする食料の安定供給を目指すということについては、これは法律に基づいて、各界の御努力、御協力もいただきながら全力を挙げて努力をし、そしてその目標を実現し、そしてその先さらに少しでも高い自給率にしていくということについては、我々も強い決意を持ち、またそのためのいろいろな施策を講じていく決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/37
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038・藤田スミ
○藤田(ス)委員 一%引き上げるのは大変な作業だ、一%下がったら大変なことだという認識とは随分違うというふうに思うのです。
続けます。
それではお伺いいたします。第二条の食料の安定供給の確保では、今大臣もおっしゃいましたが、「国内の農業生産を基本とし、」とするだけで、食料・農業・農村基本問題調査会の最終答申で指摘された、可能な限りその維持拡大を図るべきであるとの認識、表現が盛り込まれていないわけであります。
言うまでもなく、国内農業生産が拡大しなければ、食料の自給率は向上することはありません。農業生産の拡大という課題を盛り込まなかったということは、本当にそれで食料自給率の抜本的引き上げを進めるおつもりなのかどうかという疑問も国民の中から出てまいります。お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/38
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039・中川昭一
○中川国務大臣 結論から申し上げます。
確かに、素案の中では維持増大という言葉が、国内生産を基本としという言葉になりました。維持増大ということであれば、維持でもいいわけであります。あるいは〇・何ポイント上がっただけでもいいわけであります。しかし、それでは、先ほど申し上げたように、現時点での国内生産が基本でないという私の認識からいえば、依然として実態上国内生産が基本になっていないにもかかわらず、法文上は維持増大という目的を達成したということになるわけでございまして、私どもといたしましては、より自給率を上げる決意とそのための施策を実施するために、国民的な協力、理解もいただきながら、少しでも高い数字を実現していくためには、維持増大よりも向上の方が、はるかに強い意思そして実行が伴わなければならないという、より強いものと御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/39
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040・藤田スミ
○藤田(ス)委員 今の御答弁でわかったという人はどれだけいるでしょうか。
しかも、生産性の向上ということじゃないでしょう。国内生産を基本としというのは、答申の中でも、国内の農業生産を基本に位置づけということを書いて、その上で可能な限りその維持拡大を図っていくべきであるというふうにしておりますから、国内生産を基本とするということの規定は維持拡大を規定するよりももっと明確、的確だというような御答弁は全く読めないわけでありまして、国内生産を基本とするという規定から、あえて維持拡大を外したというふうにしか読めません。
しかも、この法案は、政府は国内の農業生産及び食料消費に関する指針としての食料自給率の目標を定め、農業者と消費者などの関係者がそれに向けて取り組む、そういう構図になっておりまして、どこをどう読んでも食料自給率引き上げのための政府の責務というものが出てこないわけであります。
政府は食料自給率の引き上げの責務を負っているのかいないのか、その点をもう一度明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/40
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041・中川昭一
○中川国務大臣 基本計画をつくるのは政府でございますから、基本計画の中に自給率の目標というものを設定するわけでございます。そしてその目標というのは、基本理念の中で、国内の農業生産を基本とするということが前提になっておるわけであります。
国内生産を基本とするということは、先ほども申し上げましたように、現状の四一%という数字、しかも、それがずっと下がり続けた結果としての四一というのは基本になっていないという現状を認めざるを得ないということから考えますならば、政府としては、自給率を少しでも上げていくというための基本計画を政府の責任においてつくっていく。ただし、それには、政府だけが数字を掲げてもできませんので、先ほど申し上げたように、生産者、消費者を初め国民各位の御協力、あるいはまた、将来の不安に対する御理解をいただいて、みんなで頑張っていこうということを踏まえて政府の責任があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/41
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042・藤田スミ
○藤田(ス)委員 みんなで頑張っていこうということでは政府の責任ということが明確じゃないわけです。そんな気持ちを持っていらっしゃるから、結局はこの基本法にきちっと、食料自給率を引き上げるとも、国内農業を基本としてその向上を図っていく、拡大を図っていくとも書けなかったんじゃないでしょうか。
もう少し具体的にお伺いしますが、あなた方はすぐ消費者の食生活によっても随分変わってくるんだということをおっしゃるわけでありますが、これはつまり消費者に責任を押しつけようというようなことにつながるわけであります。現在の食生活を前提にしても、飼料の自給率を引き上げれば食料自給率は引き上がっていくわけであります。だから、そういう点では、問題は政府の姿勢いかんにかかっているわけであります。
もともとアジア・モンスーン型の気象、水田が中心の日本では大変飼料米はすぐれた飼料作物になっております。だから、既にもう山形や千葉というようなところで飼料米の生産と流通の取り組みが始まっています。こういうところに政府が応援をしていけば、飼料の自給率は上がっていって食料自給率が引き上げられるわけですが、この点については、政府の姿勢はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/42
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043・高木賢
○高木政府委員 飼料の自給率の向上も全体の食料自給率の向上の上で非常に大きな要素をなす部分であるというふうに認識しております。したがいまして、飼料自給率の向上に向けまして各般の取り組みをしていく、こういう基本姿勢で、今具体的にどこまで飼料作物が輸入のものと振りかわることができるかどうかということについて作業を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/43
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044・藤田スミ
○藤田(ス)委員 何を聞いてもあいまいな答弁になりますので、私は、かなり具体的に、それではこの点はどうかということをお伺いしていきたい。
今私は飼料作物の問題について質問をいたしましたけれども、食料自給率を引き上げるということは確かに生易しいことではありません。耕作放棄地の回復どころか、新たな農地の確保を求めなければなりません。また、現在一〇〇%を切っている農地利用率の抜本的な引き上げも進めていかなければならない。農業者が生産意欲を持って取り組めるように農産物の価格政策を進めていかなければならないし、さらに、国内の農産物を保護するために、農産物輸入自由化政策についても転換を図っていかなければならない。それぞれが、現在の国土状況、国際状況の中で、本当に政府が腹を据えて取り組んでいかなければならないものばかりであります。そして、決定的な問題は、これらのことは政府でしかできない、政府の責任で実施しなければならないことばかりであります。したがって、食料自給率を引き上げるために決定的なかぎを握っているのは政府です。
これらの点について、政府は責任を持って実施されるおつもりなのかどうか、大臣からお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/44
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045・中川昭一
○中川国務大臣 この法律に基づいてつくられます基本計画において定められた自給率について、その達成については政府の責任であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/45
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046・藤田スミ
○藤田(ス)委員 私は、具体的に今一つ一つ非常に丁寧に聞いたんですよ。もう一度お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/46
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047・高木賢
○高木政府委員 食料自給率目標の達成のための具体的な課題につきましては、政府を初め農業者などの努力につきましてどういうものがあるかということを今私どもは整理いたしております。
政府の行うべきものということで今検討しておりますのは、生産面につきましては、全体の目標は基本計画で立てますが、具体的に、地域段階におきましてそれぞれの品目の生産努力目標を策定する、それによってそれぞれの地域で積み上がるようにしたいというのが一つでございます。
それから、市場原理を重視した価格の形成の実現によりまして、消費者のニーズあるいは実需者のニーズが的確に生産者に伝わるようにしたい、そういうことによって実需に合った生産物が生産され、流通されるようにしたいということでございます。
また、技術の普及、開発ということによります品質の向上と、収量の安定、向上ということも当然一つの柱でございます。
加えて、生産基盤の強化ということも当然必要でありますし、経営対策あるいは人材対策、こういうことも当然必要なことであろうと思います。
それから、消費面におきましては、健全な食生活の指針の策定がございます。また、食料消費の状況あるいは農産物の供給の状況はどうなっておるかということについて積極的に消費者に情報提供をいたしたい。それから、特に重要なものとして、食べ残しや廃棄の抑制の問題、あるいは日本型食生活の普及、こういったものに対する国民運動の展開ということも考えております。
ただ、同時に、政策というものは関係者の協力なくしては当然できないわけでございまして、今お話もありました耕作放棄地の解消とか耕地利用率の向上といったものは、経営政策なり農地の基盤政策というものと相まって、それぞれの地域の農業者が積極的に取り組んでいただかなければならない課題であろうと思います。これはもちろん、農業団体の運動としても当然必要なことと思っております。
また、コストの低減でありますとか、需要者、実需者のニーズに即したものを具体的につくるのは生産者の方々でございますから、そういったシグナルに応じた農産物の生産、供給をする、こういうことについては特段の御協力をいただかなければならないというふうに思います。
また、食品産業の事業者につきましても、農業サイドと連携いたしまして、国産の農産物の販路開拓とか新製品の開発とか、こういったことをしていただかなければならないと思っておりますし、また、消費者の適切な選択に資するための原産地の表示なり原材料の表示なり、こういったものを徹底していただかなければならないのではないかというふうに思います。
また、消費者の方々も、食べ残しや廃棄の発生の抑制なり、あるいは栄養バランスの改善なり、あるいは我が国の食料事情がどうなっているのかということについての御理解を深めていただく、こういうことも当然必要になってくると思います。
そういうことで、政府はもちろんですけれども、それぞれの関係の方々があわせて一体となってそれぞれの課題に取り組んでいただくということの総合的な成果として自給率の向上というものが図られる、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/47
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048・藤田スミ
○藤田(ス)委員 大変長い御答弁でありましたけれども、今の御答弁の中には、結局政府の責任というものが明確じゃないわけです。みんな政策というのは、要するに消費者、生産者、そういう関係者の協力と一体となって進められるものなんだ、まるで自分の責任ということがちっとも明らかでない。
そこで、私は続けて今度は大臣にお答えをいただきたいわけですが、食料自給率を引き上げてきた世界の国々の事例を見たら、政府の役割が決定的に重要であることがわかるはずであります。イギリスにおいてもしかり、ドイツにおいてもしかりです。
イギリスは、一九六一年には六一%の穀物自給率、ドイツは五三%、当時日本は七六%。今はどうですか。イギリスは一三〇%、ドイツは一一八%、日本は二八%なんです。これだけ自給率を引き上げてきたこれらの国に共通していることは、食料の自給率向上の本質は農業生産の振興であって、その中核を担っていたのは生産刺激的な農産物価格政策であり、国内農産物保護のための輸入規制であったということです。このことは政府でしかできないことであって、それを政府が責任を持ってやることによって食料自給率が向上するわけであります。そのことを政府が責任を持ってやらなければ、食料自給率を引き上げることができないんだということが歴史的教訓ではありませんか。大臣は、このことをどう受けとめていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/48
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049・中川昭一
○中川国務大臣 今イギリスの例をお引きになりましたけれども、イギリスは、産業革命の後、十九世紀の初めからいわゆるマルサスとリカードの大論争があって、そしていわゆる国際分業論という政策に転換をして、穀物条例を一八四六年に廃止した結果、一時期は五〇%を割るような状況にまで下がったわけであります。それによりまして、第一次世界大戦、第二次世界大戦で国民は大変な食料危機、まさに不測の事態に直面をして大危機が起きたわけであります。
その後、特に戦後でございますけれども、イギリスは国土の三分の二近くが平たんでございまして、もともと牧草地あるいはまた小麦をつくりやすい地域でございますから、やはり大転換をいたしまして、そしてそれによって、今先生が申されたような、今や自給率一〇〇%を超えるような国になったわけであります。一方、食生活の面でいいますと、その間そう大きな食生活の変化がなかった、イギリス式の食事が依然として続いていたということが、小麦あるいは畜産の生産の増大がそのまま自給率の増大につながっていった。
一方、我が国の場合には、最近では消費者の皆さんも含めて一生懸命御努力をいただいておるわけでありますけれども、過去数十年間、先ほど申し上げたようないろいろな食生活の変化等によりまして自給率が下がり続けているという現状があるわけでございます。
これからも、今御議論があったような農地の有効利用、あるいは生産性の向上、技術の向上、さらには日本型食生活、そして消費者の皆さんのさらなる、特にお子さんにも私は重要な役割があると思っておりますけれども、国民の食生活の面からもいろいろな御協力をいただいた上で、自給率を少しでも上げていきたいというふうに思っております。
そういうことを踏まえた上で、基本計画に基づく、踏まえた上と言うとまた責任逃れじゃないかというふうに言われますが、基本計画をつくるときには審議会の意見を聞く、審議会は国民的な意見を代表された方々の場でございますから、それを踏まえて決められた目標というものに対しては、最終的には政府が責任があるというふうに先ほど申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/49
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050・藤田スミ
○藤田(ス)委員 どうも私の言っていることに真正面から答えていらっしゃらない。
今、なぜ新しい基本法なのか。それは、農業者の立場からいえば、この日本の農業の崩壊を食いとめていきたいという願い、消費者も、輸入食料がふえていく中で安全性に対する不安も抱え、もうこれ以上政府は外国に食料を依存するというようなことではなしに自給率を上げていってもらいたい、そういう農政の転換を期待しているわけであります。
そのためには、歴史の教訓から、政府が責任を持って取り組んでいく。そのことによって現に上がっているわけです。私は、そういう点では、政府が本当にその歴史的教訓に学んで、本当に腰を据えてやらないと、今幾ら言葉でいろいろとおっしゃっても本気になってやる気があるというふうには思えないのです。
もう一度、大臣お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/50
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051・中川昭一
○中川国務大臣 自給率向上は、先生も御指摘のとおり、生産者サイドだけではなくて消費者サイドにもあるわけでございます。もちろんある意味では、食料の安定的な供給は、つまり国内生産を基本とする、そのために農業の持続あるいは農村の維持といったような基本理念が四つあるわけでありますけれども、あとの二つというのは、あくまでも食料の安定供給あるいは多面的機能の発展のためのバックアップ的といいましょうか、そういう位置づけの四つの関係でございます。
そういう意味で、我々は、何としても自給率を向上し、安定的な国内食料を基本とした政策を実現していきたいという強い決意を持っておるわけでございまして、その実現のためには、最終的な計画目標実現のための責任は政府にあるわけでございますけれども、政府だけではできないので、ぜひ生産者サイドも消費者サイドも御努力、御協力をいただかなければならないということで、決して責任逃れをしているとか話をそらしているということではなくて、何度も申し上げているとおり、基本計画に基づく自給率の設定というものにつきましては、政府が責任があるということは何回も申し上げているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/51
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052・藤田スミ
○藤田(ス)委員 政府が責任があると言いながら、政府だけではできないとおっしゃる。そこに結局、食料自給率を引き上げる本当に腹構えというものが見えない。
大臣は北海道でいらっしゃるので、少し古くなりますが、昨年の九月十八日の北海道新聞、その社説に、食料自給率向上をうたえば生産増のための農業政策が必要になり、国際的合意、WTO農業協定に触れるおそれがあるからだろう、そういうことを書いています。私はそのとおりだと思う。農業生産の増大という国が責任を持って実現する手段を持つことができないために、自給率向上についても専ら農業者だ、国民だと責任をそういうふうに転嫁して、そして逃げざるを得なくなるわけであります。
私は、WTO協定の問題は次回の質問に譲ることにいたしますが、最後に、何よりも政府が食料自給率引き上げに対して極めて無責任な態度に終始している決定的な点は、この国会に対しても食料自給率の目標を提示していない、計画で示すからというだけで提示していないということです。言いかえれば、食料自給率を引き上げると条文にも書いていないし、数値も示されない。これでは、この出された法案が、本当に二十一世紀に展望を切り開き、農業者が喜びを持って農業に取り組み、消費者も真剣にそのことを支援していこうということを考える、そういうことにならないわけであります。
私は、この点ではぜひとも、この審議を本当に実のあるものにするために、国会に対して食料自給率目標を提示していただきたいというふうに思いますが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/52
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053・中川昭一
○中川国務大臣 何を農業者の方がつくりたいか、あるいはまた国民が何を食べたいか、これは、基本的にはその方々の自由なのが日本の体制であります。
しかし、共通認識として、先ほど申し上げたようなことを繰り返しませんけれども、そういうことがあるので、生産者も、そういう自給率に役立つようなインセンティブをいろいろと講じながら、そういう方向に行っていただきたい、消費者の方々にもそういうふうに行っていただきたいということで、これは義務規定でも何でもないのでありますけれども、それが必要である。それがなければ自給率の向上、維持ではなくて向上というものにはつながっていかないわけでございます。あるいは、もっとほっておけば低下をさらにしていくわけであります。
そういう意味で、我々としては、そういう言い方を何回も申し上げておるわけでございまして、ぜひともそういう面を御理解いただきながら、この法案について、きょうは初めてでございますし、時間も余り長い時間ではございませんから、先生の御発言に対して、私もいろいろ申し上げたいことはたくさんございますけれども、今後の御議論の中で、先生もまたおっしゃりたいことがいっぱいあると思いますので、議論を深めさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/53
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054・藤田スミ
○藤田(ス)委員 最後にいたしますが、本当にこれから議論を大いに深めていきましょう。特に、消費者の食生活の問題について、だれが食生活を政策的に変えたのか、この点については、私は、大臣と深く議論をしていきたいというふうに思います。
しかし、いずれにしても、これだけの法案を提出するなら、当然その目標をセットで示してくる、それが政府の責任というものじゃありませんか。口先だけで、自給率を引き上げるんだ、しかし、そのためには国民の協力が要るんだ、そんなことを言って、その肝心かなめの裏づけを何にも国会にも示さないということでは、どだい本当に議論にもなりません。そして、食料の自給率を引き上げるんだという幻想だけがずっとばらまかれてしまうということになりますので、今後の審議にとっても決定的な問題だというふうに考えます。
委員長、食料自給率目標の当委員会への提示を強く求めたいと思いますが、最後に、委員長の御答弁を求めて終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/54
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055・穂積良行
○穂積委員長 この委員会の次の質疑の際にも、先生の御趣旨等を御質問ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/55
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056・藤田スミ
○藤田(ス)委員 以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/56
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057・穂積良行
○穂積委員長 次に、前島秀行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/57
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058・前島秀行
○前島委員 今度の農業基本法、三十八年ぶりの新たな基本法をつくるということでありますので、我が党も、長い間、さまざまな総括を含めて議論をしてきました。何回か大臣にも、あるいは審議会等々にも申し入れ等々をしてきたわけでありますが、その結果として出されたこの新基本法について、具体的な対応をどうするかという中で、我が党としては、二つ、非常に重視をしている点がございます。また、そのことが、今度の農業基本法の将来に向かっての国民的合意とか、あるいは信頼を得るために非常に大切な点だろうと思っていますので、きょうは最初で、大臣でありますので、その二点だけ中心にお聞きをしたいと思っています。
その二点というのは、一つは、この新しい農業基本法、いわゆる二十一世紀の日本の農政の根幹をなすのは、いろいろ言っているけれども、基本計画だな、こういう位置づけです。したがって、この基本計画をどう作成過程でやっていくのか、農業の中でどう位置づけていくのかということが、私は非常に大切だろうと思っています。したがって、きょうはこの基本計画の取り扱い、中身の問題じゃなく、どんなことを載せるのか、そして、この作成過程でどういう手順を踏むのかということを中心にお聞きをしたい、こう思っています。
なぜそのことを言うかというと、先ほど委員の皆さんの御意見にもあったように、いわゆる新しい農業基本法をつくるわけでありますから、現行の基本法の総括はどうだったのか、反省点はどうだったのか、もちろんいい成果を上げた点も、私はなしとしませんから、そういう総括に基づいて、反省に基づいて新しい基本法はどういうスタンスといいましょうか、どういうものを目指すべきなのかという点がさまざまな角度で議論されているだろうし、してきただろうし、それがまた、今度の法案の中に反映されなければならないだろうな。
そういう議論の中で、そういう視点の中で、私は、一つ大事な点は、国民の合意、国民の理解ということだろうな。現行基本法の総括の中で、率直に言って、国民との合意、接点を求める努力はどうだったんだろうか、あるいは政策作成過程、あるいはその施策を実施する過程で、生産者サイドだけが展開していた側面はなかっただろうか、あるいは需給動向、自給率の低下等々を考えると、国民の、消費者の需給動向と生産者側の生産との乖離というものはなかったんだろうか。そのことを考えますと、私は、新しい基本法をつくり、あるいはこれから新しい二十一世紀の農政をやっていく上で、国民の合意、国民の支持というものは非常に大切な視点ではないだろうかな、こういうふうに思います。
したがって、二十一世紀の農政の基本を決めるだろうこの基本計画の作成というものについては、やはり重要な国民の合意、消費者の期待、あるいは消費者の需給動向というものをちゃんと見きわめていくということが非常に大切だろうと私は思います。
そこで、まず一つ聞きたいのは、先ほどの議論から見て、この基本計画に書き込む内容なんです。確かに、基本法とは言いません、今の議論。そうじゃなくて、せめて五年ごとに変える、五年ごとに見直すというこの基本計画の中には、目標とする自給率は数字で示すかなということが一つ。自給率を基本計画に具体的数字で、五年単位の目標率を示すのかということが一つ。
それから、当然、自給率を向上させるということは大前提の考え方でありますから、その自給率を向上させるためには、いわゆる主要作物の生産目標というものがあって初めて自給率というのが出てくるとすると、日本の主要食物の生産目標、その数値というのは基本計画に出すのか。例えば、米、小麦、大豆、飼料作物、あるいは畜産物等々が、自給率といいましょうか、あるいは国民に食料を供給する大きな構成要因だろうと私は思いますけれども、こういう主要作物の生産目標を具体的数値で挙げるのか、これが二つ目。
三つ目は、自給率を向上させる生産を目標とするためには、当然、必要な農地というものが問われてきますね。その他、自給率を確保したり生産を向上させるためには、生産組織のあり方だとか、いろいろありますけれども、いわゆる基本的な自給率の目標と主要作物の生産目標とそれの前提である農地の確保というのはセットといいましょうか、この三つがそろわない限りは、自給率を向上するとかどうのこうのといっても、私は、国民の理解も得られないだろうし、生産者に対する信頼性も確保できないだろう。この基本計画というものはまた、率直に言って、現行基本法の二の舞になりはせぬのかという心配もなきにしもあらずなんです。
そういう面で、最初に、この基本計画の中に何を書き込むのか。私は、先ほど言ったような数字を具体的に書くつもりなのかどうかということをひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/58
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059・高木賢
○高木政府委員 ただいま基本計画に織り込むべき項目で三点のお尋ねがございました。
第一点の食料自給率の目標につきましては、全体目標ですから、これはカロリーベースでの目標設定ということを考えております。
それから二番目に、品目別にどうかということでございますが、個別の主要品目につきまして生産努力目標を策定し、明示するということを考えております。具体的な品目は、今先生お話がありました米、麦、大豆、飼料作物あるいは畜産物、果樹、野菜、甘味資源作物、こういったものを想定いたしております。また、食料ではありませんけれども、花につきましても、近年、非常に農業経営上重要なものでございますので、それにつきましても目標を作成するということを検討いたしております。
それから三番目に、農地面積ということでございますが、御指摘のとおり、品目別にどれだけつくるんだということの基礎になるわけでございますので、品目ごとの作付面積など、生産目標の達成に必要な指標として基本計画の中で明らかにしていく、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/59
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060・前島秀行
○前島委員 それは、それぞれ数字、数値が伴うことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/60
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061・高木賢
○高木政府委員 数字での記載を検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/61
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062・前島秀行
○前島委員 ぜひ具体的な数値目標を立ててほしいということです。それを具体的に出すことによってこの基本計画の信頼性というものが出てくるだろうな、私はこういうふうに思います。
次に、どうしても農政に対する国民的合意、支援を得るということ。この国民的合意と支援、理解、同時に生産者を中心とした側の計画に対する信頼性という二つが相伴って初めて中身が出てくるし、生きたものになってくるだろう、そこに実効性も伴ってくるだろうと私は思います。そういう意味で、国民の理解、合意と信頼性を得るために、この計画、具体的な施策を作成する過程での努力というのが私は非常に大事だろうなと。
率直に申し上げまして、先ほど私が言いましたように、やはり農政の一つの反省として、生産者側が独自に走ってしまったという面はなきにしもあらずだろうなというふうに私は思います。すべてとは言いません。その過程の中での団体の対応を含めて、私はこれから生かすべき点があるだろうと。そういう中で、二十一世紀の農政の根幹をなす基本計画を立てたり議論したりする過程の先ほど出ている審議会のあり方というのも私は非常に大切だろうなと。
ですから、今までの基本法をつくる過程におけるさまざまな検討会とか審議会とは違って、これは総理大臣の諮問という位置づけでありますから、相当重視しているな、私はこういうことはわかりますが、同時に、この審議会の位置づけとかということは、先ほど言った国民的合意と理解だとか、あるいはこの基本計画の信頼性を確保する上で、審議会の構成の問題だとか、あるいは審議のあり方の問題として、例えば審議の状況を公開するとか、あるいは審議会が議論する過程でさまざまな国民的な意見を各階層から聞く、そのための公聴会の設定だとか参考人の招致とかということを逐次やはり公開していく、国民の前に明らかにしていく、消費者に明らかにしていくということが、合意を得られるし、信頼を得る形だろうと私は思います。
これは形式的なことを言えば内閣総理大臣の云々だ、こう言いますけれども、主管は当然農林省ということになりますから、農林省の姿勢によってこの方向は決まるだろうと思いますので、その辺のところの基本的な審議会に対する位置づけみたいなもの、どうそこのところを持っていこうとしているのかについて聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/62
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063・高木賢
○高木政府委員 食料・農業・農村政策審議会についてのお尋ねでございます。
まず、人選についてでございますけれども、今お話のありましたように、まさに各層各界の方々の参加を得る必要があるというふうに考えておりまして、農業生産者の方のみならず、食品産業の事業者、それから消費者、経済界あるいは地方公共団体といったような、それぞれの立場を代表する方々の御参加をいただく必要があるのではないかというふうに考えております。
それから、二番目の公開の問題ですが、まさに、平成七年の閣議決定に基づきまして、透明性の確保に努めるという運営をしていきたいと思っております。
食料・農業・農村基本問題調査会が、先般、三月まで時限の調査会として開かれておりましたが、この際には、議事録をホームページで公開するということで、どなたからもアクセスできるという手段をとりました。これはもちろん審議会ができた暁での御了解を得ないといけないわけですけれども、御了解を得られればそういう扱いにもしたいというふうに考えております。
それから三番目に、審議会の委員という方だけでなくて、審議会の場で幅広く足らざる部分について国民各層各界の意見を聞くということにつきましても、これも調査会では地方公聴会というような形で意見を聞いた経過もございますけれども、各界の代表ではありますけれども、足らざる部分があるということであれば、それは審議会としてさらに意見聴取を深めるということもあり得ると思います。
いずれにしても、これは新しい審議会の委員なり、審議会の中で決められることでもございますが、私どもとしては、そういう審議会の実が上がるという方向で対応していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/63
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064・前島秀行
○前島委員 やはりこういう政策作成過程だとかという過程が今非常に大事であるということですので、私はぜひその辺のところは十分今後の問題として配慮してほしい。どんなに計画あるいは施策をあれしても、国民的支援がないとこれからの農政というものは絶対できるものではないだろう、こういうふうに思いますので、その点はぜひお願いをしたい。
それから大臣、ここで、この基本計画の位置づけ、存在というのが大きいわけなんで、先ほど言いました国民の合意だとか理解を得るために、国会との兼ね合いの問題、ここは非常に重要だろうな、私はこういうふうに思います。国の責任ということ、あるいは政治の責任ということ、そして同時に国民の理解ということ、あるいは基本計画等々の信頼性ということをいろいろな角度からやっていく。そして、そのことがまた、これからの日本農政を考えたときに、従来はただ物をつくるというだけ。その視点だけではない、多面的な機能の点だとか、いろいろな国民的理解を求めて農政を展開していかないと二十一世紀の農政が展開できない、あるいは生産者の所得も確保できないというさまざまな観点を考えると、この基本計画がそういう意味で国民的理解を得るためには、政治がどう責任を持っていくのかということも私は非常に大事なことと。政府の責任も当然でありますが。
そういう面で、この基本計画、五年単位に国会で議論をする、国会で承認を得る、このことは私は非常に大切だろうな。お互いに、やはりここのところを国民の前で、審議会での議論もさることながら、国会という場でもってお互いに議論する、そういうことが絶対に必要なような気がしますので。
確かに、それぞれの役所といいましょうか、それぞれの政策の基本計画というのは大体事務レベルでやるということは一つのパターンですよね。しかし、この基本計画というのは、自給率の数字を出すというし、あるいは主要作物の生産目標を具体的に数字で出す。ということになってきますと、私は、従来あるさまざまな政策の中の基本計画とはちょっと基本的ニュアンスが違うのではないのかな。二十一世紀の日本の農政の文字どおりの根幹が描かれてくるだろうな。だとすると、事務当局だけで議論をするだけで済むんだろうか。政府の責任、政治の責任。
だから、私は先ほど、審議会の議論ももっと従来以上に大事にすべきであるし、最終的には国会で議論して承認して、お互いに責任を持ち合うということが非常に大切だろうな。そこまでやったら、国民の皆さんも真剣に受けとめるだろうし、我々も含めて政治の責任ということが問われるだろうし、お互いに信頼というものも国内的にも国際的にも得てくるだろうな、こういうふうに私は思います。
したがいまして、従来の何か事業とか政策をやるときの政府が示す基本計画とは基本的に私は違うと思いますので、五年に一度出し、見直しをする、自給率の数値目標も出すというこの基本計画は、国会で議論すべきではないか、承認を得るべきではないか、そういうふうに思いますけれども、その辺のところ、大臣としてどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/64
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065・中川昭一
○中川国務大臣 確かにこの基本法は、四つの基本理念を実現するためであり、そしてまたそのための具体的なといいましょうか、主な条文が書かれておるわけでございまして、その中の基本的施策といたしまして基本計画というものを定めなければならない。その内容については、先ほど官房長から答弁をしたところでございますから、この基本計画というものが、農政の憲法ともいうべき新しい基本法において、まさにこの中での一番大事な部分といいましょうか、内容に近いといいましょうか、それに基づいて施策を実行していくということになるわけでございます。そういう意味で、非常にウエートとして高いということは私どもも十分に認識をしておるわけでございます。
したがいまして、先生が先ほど御指摘になりましたように、より開かれた形での審議会での説明等も経た上で公表するということになっておるわけでございますが、この基本法並びにこれに関連する実体法を国会で御承認いただいた後は、あとは国会に対しての責任を我々が負う立場で実施をさせていただくということで、重要性においては私も極めて重要な計画だというふうに思いますけれども、これは当委員会を初めとする随時の国会での御審議ということで、十分御審議をいただくということで、これは行政執行としての基本計画ということで、先生の、御承認とかいうことに関しては、議院内閣制の観点から申し上げますならば、最終的には、国会が最終、最高機関であり、そのもとに内閣があるわけでございまして、その内閣の一つの責務であり、常に審議をいただき、チェックをするということで進めさせていただくことがよりスムーズではないのかなというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/65
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066・前島秀行
○前島委員 いわゆる基本法が本当に憲法的な存在であるなら、私は、この基本計画の全体の中の位置づけから見れば、この基本計画というのは具体的な法案という位置づけになるだろうと思いますよ。これ以上言いませんけれども、私は、承認もしくは最低でも国会で議論をする、そんな努力はぜひすべきだろうという点だけは指摘をしておきます。
それからもう一つ、私たちがこの基本法の中で重視しているのは、先ほどの同僚議員にもありましたように、国内の生産活動の位置づけなんです。
それで、最初に、ちょっと基本的な状況認識をする意味で、需給動向と長期見通しというのは、これは当たり前のことだと思いますけれども、長期的に見ると、地球規模、世界的に見ると、食料の需給見通しというのは逼迫するんだろうな、こういう見通し。
それから、国内的需給動向を今まで振り返ってみると、やはり米の消費は減少した、そして農畜産物等々の消費は増加をした、あるいは大豆等々を原料とする油脂類の消費も増加をした、そういう基本的な動向という認識、この基本的な動向というのは今後も変わるものではないだろう、この認識。
それからもう一つ、この国内生産を重視する中で、絶対的に、前提としてお互いに確認しなくちゃいかぬのは、食料の安定供給に対する国民の認識といいましょうか期待というものが私は絶対に必要だと思いますね。それは、この食料に対する国民の認識、期待というのは、安定供給に対する絶対的信頼があるんだろうかどうだろうか、国民の世論調査から見ると、ここは今の国民、消費者は不安を感じているというこの認識。そして、主要食料、特に主食なんかは多少割高であっても自給したいんだ、そういう食料の安全性という観点から、国民はそのことを期待している。
この基本的な世界の食料の逼迫する需給見通しと、国内の動向と、食料の安定供給に対する国民の認識、期待、これは大体こういうふうに基本的に認識してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/66
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067・中川昭一
○中川国務大臣 まず、国民が将来の食料と人口とのバランスからいって不安を持っているというデータが総理府の調査でございますし、我々もそういう認識を持っております。
基本法の中で、安定的に食料を供給する、しかも国内生産を基本としてという、この意味というのは、ある意味ではというか、非常に直接生命にかかわる問題でございまして、これについて、たしか二条と十九条だったと思いますが、平時と不測の事態とに分けてあるわけでございます。
では、不測の事態にどういうふうに供給できるかということにつきまして、どういう不測の事態なのか、国内だけの不測の事態なのか、あるいは海外における凶作とか、あるいは動乱とか戦争とかいったような事態、さらには途中の輸送段階の、例えば何とか海峡でちょっと危険な状態があるとかいう状態、しかも海外の状態が短期なのか長期なのか、あるいはまた構造的な問題なのかといったいろいろな類型が考えられるわけでございます。
それに対してどういうふうに対応していったらいいかということに関しては、海外の戦争絡みの不測の事態ということになりますと、これはもうとても農林省だけの問題ではない、政府全体が国民にいかに食料を安定供給させるかという問題になってくるわけでございます。そういうことも含めまして、今省内で、どういう場合にはどういう対策が考えられるのか、あるいは考えなければいけないのか、あるいは考えるべきかについて、具体的に検討をしておる最中ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/67
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068・前島秀行
○前島委員 これからまだ何回となくその辺のところも議論しますけれども、私は、安定供給と国内生産の関係の議論の中で、一つやはり基本法農政、これは今までの農政の反省といいましょうか、そこから学ばなくちゃいかぬ点としてあるのは、消費者の国民の意向、動向と国内の生産活動はマッチしていただろうかということだと思いますね。私は、結果としてはマッチしていなかった部分がかなりある、そのことがまた自給率を下げていったという点ではないだろうかな、そんな視点もこの国内生産と安定供給との関係では重要視しなくちゃ、反省せにゃいかぬ点だろうな、そういう観点が一つあります。
それから、安定供給と国内生産との関係の議論の中で、今大臣が言われるように、私たちも国内の安定供給をすべて国内生産でなんというつもりはないわけなんで、したがって、国内生産と輸入と備蓄というものをどう組み合わせていくのかという議論であることは、これは間違いないと思います。
そういう前提の中で、いわゆる一連の安定供給の議論が、当初はこの国内生産の維持増大という議論が中心であって、最終的にこれが、国内生産を主力にというところに変わってきた。私は、この微妙な変化というところに、ある意味ではこれからの農業あるいはあり方論の本質みたいな考え方、そこに基本的なとらえ方の違いが存在するような気がしてならぬわけなんです。
やはり主力に置くということと、それから国内生産活動を維持したりふやしたりするということとは基本的に違う認識なんですよ、違う認識だと私は思っています。だから、大臣が先ほど説明されたように、もし中心に置くということが増進なり拡大、増大より強いんだというなら、具体的にあれは米だとか主要作物等々の、あるいは国内作物の増産計画をするという認識でいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/68
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069・中川昭一
○中川国務大臣 確かに、国内生産を基本としてというと定性的な感じでございますし、今よりも維持増大というと、四一以上、ゼロ以上の数字が乗っかればいいという定量的な意味になりますから、そういう意味では若干とらえ方が違うかもしれませんが、とにかく現状が、定性的に見ても、あるいは定量的に見ても、諸外国から比べても、また、国内の生産者、消費者から見ても低過ぎるという認識に立つ以上、やはり国内生産を基本としてということは、私は先ほどは中心的とまでは申し上げませんでしたけれども、基本という意味は今のままではとにかくだめだよということになるわけでございます。
それを、では定量の方に行けば、では四一を維持すれば維持増大の言葉に合致するではないかということにもなりかねない。まあ、言葉の問題になってしまうのを避けたいわけでありますけれども、いずれにいたしましても、先生のおっしゃりたい気持ちは私とも同じでございまして、とにかく今のままではだめだと。品目ごとに数字を定め、しかも、その数字は現在の数字よりも必ず下回らない。必ず下回らないというのは、要するに目標として現状よりも高い数字を目標にして、そして、実現可能な数字としてそれに向けて努力をしていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/69
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070・前島秀行
○前島委員 時間が来ましたからまたの機会にしますけれども、いわゆる自給率は向上させようという前提に立って、それで基本計画の中で自給率の数字を上げ、そしてそれぞれ主要作物の生産目標を数字で持っていけば、必然的に、生産活動を最低でも維持しなきゃ、あるいはそれだけ増大しなければ、その自給率の向上だとか示すであろう生産目標は達成できないんですよ。だから、私は言葉にはこだわりません。それが、もし主力に置くということがすなわち増産を意味するんだよと言うんなら、それはそれで一つのあれですから、それを具体的に基本計画の中で示してくれたり施策の中で示したらいいんですけれども、しかし私は、今までの基本法の計画だとかさまざまな施策、この歴史的な経過を見ると、国民に対する合意だとか国民の動向に対する期待だとか、あるいは生産者に対する安心、信頼を与えるためには、やはりここは明確に、国内生産を重視するんだよ、維持増大を図っていくんだよということを宣言の中に明確にすることがまた私は必要ではないだろうかなということだけは申し上げまして、終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/70
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071・穂積良行
○穂積委員長 次に、佐々木洋平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/71
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072・佐々木洋平
○佐々木(洋)委員 御質問をいたします。
いよいよ新しい農業基本法の審議に入ったわけですけれども、現行の農業基本法は昭和三十六年にできたわけでございますけれども、その時代と今とは大分違う状況だろうと思います。まさに高度成長の時代でもあり、そしてまた、経済界ももろ手を挙げてこの農業振興に力を入れたと言っても過言ではないというふうな感じがいたします。しかし、今は全くその逆でございまして、世界的に見ても大変不透明な時代。言えることは、いずれ世界的な食料危機が来るんだということだけははっきりしているわけでございまして、大きな一つの転換期でもあるわけでございます。
となると、この新農業基本法は、例えば建物で例えますと、巨大なビルディングをつくるということではなくして、この建物をつくるための基礎工事ですか、基礎をつくることだろうというふうに思うんです。これにどういうものを建てていくか、これが私は大事な問題であろう、それほど柔軟性を持った施策というものの具体化が必要になってくるだろうというふうに思います。
また一方、食料の安全保障の面から考えるときに、ただ単に農水省だけの考え方ではなかなかそれは進まないのではないか。あるいは防衛庁であったり、あるいはまた厚生省、文部省等々、関係省庁との綿密な連携というものがまさに重要になってくるだろうというふうにも思います。
今回の農業基本法は、暮らしと命、こういうテーマでございまして、まさに安全と安心をどうするかが今回の大きなテーマになっておるわけでございまして、そのためには、政府はもちろんでございますが、生産者も流通業者も、また消費者も一緒になって真剣にこの問題に取り組んでいかなければならない責任があると思います。
大臣に今回のこの新しい農業基本法についての御見解をまずお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/72
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073・中川昭一
○中川国務大臣 一言で申し上げれば先生のおっしゃるとおりでございまして、四十年近くの間に現行基本法では対応し切れない問題が出てきた。また、そういうことで新しい基本法をつくる。しかもそこは、すべてと言っていい国民の暮らしと命の安全と安心をどう守るかということでございますから、生産活動だけではなく、消費者を初めとして国民各位の御理解をいただき、また、農業、農村の果たす多面的役割を国民全体が共有できるように持続をさせていくというような観点が必要でございます。
そのためには、やはり国民的な合意、この法律案の趣旨、そして、目指す方向に対する御理解と合意をいただかなければなりません。そのためには、本委員会をスタートさせていただき審議をしていただいて、また、国としても、またマスコミでいろいろ報道されるかもしれませんけれども、我々としてもこれからもいろいろと情報の提供をしていかなければならないということで、まさに、国民ひとしく必要不可欠な課題に対して国民全体が取り組んでいけるように我々も努力をしていきたいし、また、先生方の御指導もお願いをしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/73
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074・佐々木洋平
○佐々木(洋)委員 ありがとうございます。
それでは、自給率の問題についてちょっとお伺いをしたいと思います。
先ほど来いろいろ議論になっておるわけでございますけれども、この自給率の表示の仕方、今カロリーベースで表示をされておる。これは、六十二年までは違った表示の仕方であったと思います。為替レートの問題とかいろいろな理由でこのカロリーベースによる自給率の表示に変わっていると思いますが、農家から言わせると、非常にわかりにくいという声がございます。確かに日本人の場合は、雑食という言い方はおかしいんですが、中国料理あり、フランス料理あり、アメリカ、いろいろな料理を試食する、まさに好奇心が強い人種でもあるわけでございまして、そういう意味では非常に絞りにくい部分があるかと思います。
そこで、例えばカロリーベースでこういう評価をいたしますと、野菜とかそういった低カロリーのもの、野菜あるいはキノコ、ワカメといったものはこの中に入ってこないわけでありますね。あるいはまた畜産物にしても、穀物輸入によるそういう部分についても非常に低い評価の仕方しか出てこない。そうしますと、先ほど大臣もおっしゃっておったんですが、これから自給率を上げよう、そのために、一応の目標値、麦は幾らにしよう何にしようということを一応の目標値を立てようというような話がございましたけれども、となると、カロリーベースと実際とのアンバランスが生まれてくるんじゃないかなという心配があるわけでございます。
そういう意味で、もっと国民がわかりやすい、そしてまた農家も、実際に野菜も非常に大事なんです。それが入らない。この今のカロリーベースの自給率に入らないんですから、それではどうなのかという疑問も出てくるわけです。その辺についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/74
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075・高木賢
○高木政府委員 食料自給率の表示の仕方についてのお尋ねでございます。
御案内のように、これをあらわす指標といたしましては大きく三つありまして、金額ベース、重量ベース、カロリーベースというものがございます。これはそれぞれに御指摘をいただいたような問題もあって、どれか一つで決定的ないいあらわし方になるというものには、残念ながら現在なっておりません。
金額ベースで表示をするということになりますと、価格とか為替の変化が、実態のものとは、重量では同じなのに違ってくるとかという問題が出てくるとか、内外価格差がある作物だと実態以上に大きく出てくるとか、そういう問題がございます。
それから、重量ベースということになりますと、これは畜産物と野菜の間を重さで比べてもウエートがうまくかみ合わないという問題もございまして、なかなか総合的にあらわすという点においては欠点があるかと思います。
そこで、単一の物差しといたしましては、最も基礎的な栄養でありますエネルギー、カロリーに着目して、これで横断的に同じ物差しでそれぞれの食料を足し上げるという意味でのカロリーベースの指標を今用いているわけでございます。
ただ、今御指摘のありましたように、ビタミンだとかミネラルだとか微量栄養素、こういうことになりますとカロリーでは出てまいりません。それらのもののウエートが、寄与度が自給率の算定上低く出るんではないかという点はまさに御指摘のとおりであります。しかし、それを共通してやる物差しとなりますと、まだ発明といいますか、うまいものができていないというのが実情でございます。
そこで、総合的に見た場合には、カロリーベースということで総合いたしまして、あと現実には、基本計画の中では、品目別には重量ベース、野菜とかあるいは花とかそういったものはそういう数量であらわすということで、併用ということでやったらどうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/75
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076・佐々木洋平
○佐々木(洋)委員 表示については、やはり両面でやった方が私はベターだと思いますので、ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。
次に、時間がないのでちょっと簡単に聞きますが、価格政策についてでございます。長期的に再生産が可能な農業所得をやる、これは当然重要な課題なわけでございますが、欧米諸国等々では、生産費といいますか国際価格との差というものはせいぜい二割前後だと思います。そういうことになりますと、不足払いとか所得補償という形の中で財政支援によって再生産ができるような農業が営まれるというふうに思うんです。ところが、米に見られるように、日本の場合は五倍も六倍もというような内外価格差がある。
そうなりますと、仮に自由化というような、今米の関税化の問題が議論になっておりますけれども、いずれ自由化というふうになった場合に、それに市場原理を導入するんだということになりますと、大暴落をすることはもちろん当然のことだと思います。この辺のこれからの価格政策をどのように基本的に考えておられるか、大臣からちょっとお伺いしたいと思います。
あわせてちょっとお伺いしたいんですが、きょうはちょうど畜政の方からも来ておりますので、乳価の問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
乳製品、加工原料乳等々の価格政策の見直しがなされるわけでございますけれども、今回の見直しにはどのような背景があって、そしてまたどのような価格政策になるのか、酪農家が大変心配をしておりますので、その辺をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/76
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077・高木賢
○高木政府委員 市場原理と価格の関係というお尋ねでございますが、御案内のように、市場原理を活用いたしまして市場の評価が的確に生産者に伝わるということで、需要と生産のミスマッチを減らそう、なくそうという方向で考えておるわけでございますが、その際には、当然のことですが、国境調整措置というものがある、それが適切に講じられるということを前提といたしております。
具体的に申し上げれば、今もお話がございましたが、米について申し上げれば、一番低いものからいたしますと約十倍ぐらいの内外価格差が存在しております。これは四月から関税措置へ移行したわけですけれども、国内の米生産に悪影響を及ぼさない水準に関税を設定しているということで、ミニマムアクセス分以外の輸入米がふえて国内価格に影響を及ぼす、こういう事態にはなっていないわけでございます。
一方では、国内で流通するお米につきましては、自主流通米を主体といたしまして、市場の機能を生かした運営が行われているということでございます。そういう意味で、国境調整措置をしっかりやるということで、市場原理の活用ということとは両立しているというふうに思っております。
物ができ過ぎて、あるいは余って価格が下落する、こういう場合には、自主流通米につきましては、現在、稲作経営安定対策を実施しているところでございまして、今後のほかの品目の価格政策の見直しということを検討しておりますが、その場合にも、国境調整措置を適切に講ずるということと経営安定措置を講ずるということをあわせてやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/77
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078・本田浩次
○本田政府委員 乳製品や加工原料乳の価格政策の見直しについてでございますけれども、乳製品、加工原料乳につきましては、その価格が大変硬直的であるとか固定的であると言われておりますし、また、需要者ニーズに応じた生産、供給が必ずしも行われていないといった問題が指摘されております。こうしたこともございまして、先般決定をさせていただきました新たな酪農・乳業対策大綱におきまして、平成十三年度を目途に市場実勢を反映した形で価格が形成される制度に移行していきたいと考えているところでございます。
ただ、この改革に当たりましては、高い関税相当量でありますとか国家貿易のもとで、計画生産の推進や必要に応じた調整保管の実施などを適切に行うことによりまして、生乳等の需給の安定やこれを通じた全体としての価格水準の安定を図りながら、実際の各取引におきましての価格について市場実勢を反映する観点から、見直しを行っていきたいと考えているところでございます。
したがいまして、加工原料乳の生産者に対しましては、加工原料乳地域におきます生乳の再生産を確保し、生産者の経営の安定及び所得の確保を図る観点から、所要の措置を講じていきたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/78
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079・佐々木洋平
○佐々木(洋)委員 ありがとうございました。
以上で終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/79
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080・穂積良行
○穂積委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査中、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/80
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081・穂積良行
○穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/81
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082・穂積良行
○穂積委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
本案審査の参考に資するため、議長に対し、委員派遣承認の申請を行うこととし、派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/82
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083・穂積良行
○穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01219990513/83
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