1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年五月十八日(火曜日)
午前九時五十三分開議
出席委員
委員長 穂積 良行君
理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君
理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君
理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君
理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君
今村 雅弘君 小野寺五典君
大石 秀政君 金田 英行君
岸本 光造君 熊谷 市雄君
塩谷 立君 鈴木 俊一君
田村 憲久君 中山 成彬君
丹羽 雄哉君 萩山 教嚴君
御法川英文君 宮腰 光寛君
宮本 一三君 矢上 雅義君
安住 淳君 鉢呂 吉雄君
堀込 征雄君 上田 勇君
漆原 良夫君 木村 太郎君
井上 喜一君 佐々木洋平君
菅原喜重郎君 中林よし子君
藤田 スミ君 知久馬二三子君
前島 秀行君
出席国務大臣
農林水産大臣 中川 昭一君
出席政府委員
農林水産大臣官
房長 高木 賢君
農林水産省経済
局長 竹中 美晴君
農林水産省構造
改善局長 渡辺 好明君
農林水産省農産
園芸局長 樋口 久俊君
農林水産省畜産
局長 本田 浩次君
農林水産省食品
流通局長 福島啓史郎君
農林水産技術会
議事務局長 三輪睿太郎君
食糧庁長官 堤 英隆君
林野庁長官 山本 徹君
委員外の出席者
農林水産委員会
専門員 外山 文雄君
委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
木部 佳昭君 大石 秀政君
園田 修光君 田村 憲久君
前島 秀行君 知久馬二三子君
同日
辞任 補欠選任
大石 秀政君 木部 佳昭君
田村 憲久君 園田 修光君
知久馬二三子君 前島 秀行君
五月十四日
農・林・漁業の地域産業振興策拡充に関する請願(春名直章君紹介)(第三二八九号)
新たな畜産・酪農政策に関する請願(小坂憲次君紹介)(第三三三一号)
食料・農業・農村基本法の制定に関する請願(小坂憲次君紹介)(第三三三二号)
は本委員会に付託された。
本日の会議に付した案件
公聴会開会承認要求に関する件
食料・農業・農村基本法案(内閣提出第六八号)
午前九時五十三分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/0
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001・穂積良行
○穂積委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、食料・農業・農村基本法案を議題といたします。
この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。
本案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求を行うこととし、公聴会は来る二十六日水曜日開会し、公述人の選定等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/1
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002・穂積良行
○穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/2
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003・穂積良行
○穂積委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/3
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004・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 おはようございます。
きょうは、私、二時間の少し長い時間をとりましたので、大臣を初め皆さんに御質問をいたしたいと思っております。
まず、五月七日にこの関係の本会議の質疑がございまして、我が党の堀込議員から、戦後農政、とりわけ現行の基本法農政の総括について、これは大臣というよりも総理大臣、小渕総理に御答弁を願っておるわけでありますけれども、中川農林水産大臣からも、農政の直接の最高責任者として、基本法農政というものをどのように総括しておるのか、まず御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/4
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005・中川昭一
○中川国務大臣 まず、昭和三十年代前半の農業あるいは農村あるいは食料事情を考えたとき、当時としては非常にいい基本法であったと私は思います。しかし、その後の急速な社会状況、経済状況あるいは農業、農村状況の変化によりまして、周りが大きく変化していったということだろうと思います。
現行基本法は、他産業との生産性と生活水準の格差の是正を図るため、生産政策、価格・流通政策、構造政策の三本柱で国の施策を方向づけたわけでございます。
生産政策につきましては、いわゆる選択的拡大ということ、それから、米、麦中心から畜産物、果樹、野菜等々いろいろな作物へ広げていこうという政策であったわけであります。
また、価格・流通政策につきましても、価格変動あるいは農業所得の過度の変動の防止、消費者負担の可能な範囲内での価格水準の安定といった機能が期待されていました。実際に所得確保に強い配慮が払われまして、農業経営の安定に効果が上げられたものの、一方、消費者のニーズが農業者に的確に伝わっていなかったということで、国産農産物の需要の減少が起こったというふうに考えております。
また、構造政策につきましても、自立経営の育成が目指されましたけれども、施設利用型農業の規模は一定の規模拡大が図られましたが、土地利用型農業につきましては、北海道を除いて、一般論としては自立経営についても限界があったということだと思います。
その結果、生産性が非常に上がってまいりましたけれども、他産業、特に高度経済成長時代でございましたから、農業を除く他産業の生産性が相当上がってきました結果、農業の方も相当生産性が上がりましたけれども、格差は埋まらなかった。
さらには、所得につきましては、農業従事者の生活水準、一世帯当たりの所得でも勤労者世帯を上回るというようなデータが出ておりますけれども、特に生活基盤整備、下水道とかあるいはまたいろいろな道路とか、いわゆる生活インフラの面では依然として都市部と格差が大きいという状況にあると認識をしております。
したがいまして、これらを総括して、新しい基本法の中で、また新たな考え方も導入しながら新しい農政さらには農業、食料全体を目指していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/5
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006・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 七日の総理の御答弁も、社会経済の変更に伴って、その事態に対応して新たな基本法をつくるんだという、ニュートラルなといいますか、現行の基本法農政に対して我が国の政策上どういう視点で行うかということが不明瞭であったというふうに私は思っております。今も大臣は、現状、これまでに至る農業や農村社会の変化の実態については言われました。
実は私、二時間ありますから、皆さんのこの間の経緯について相当勉強させていただきました。昨年十二月に農政改革大綱というものが、今官房長も見ておりますけれども、この紫色といいますかピンク色の冊子が出ております。中川昭一農林水産大臣の御署名もすばらしい字で書いてある冊子であります。
この農政改革大綱、前文を見させていただきますと、その基本的な考え方を見させていただきますと、これは識者も言っておるのでありますけれども、一つは、現状の農業、農村、食料の状況は危機的状況にある、多くは申しません、危機的状況にあるという認識を農水省が示しております。そして同時に、現行基本法に基づく戦後の農政を、その反省を踏まえて国民全体の視点に立って抜本的に見直しをしていく、反省ということが明記をされております。
骨子のところにいきますとこの点がすっぽり抜けておるんですけれども、大綱自体はそういうふうにきちんと表現をされておるわけであります。いろいろ学者の先生も、役人さんというのは政策をやってもその総括というのはしないたぐいのものである、行政にとって反省というような言い方をするのは禁句に等しいという中で、このように、危機的な状況、そして、これまでの基本法に基づく戦後の農政というものの反省ということを明言されておるわけでありまして、こういう立場で農水大臣もおられるかどうか。大綱を出されたのは農水大臣でありますから、そうであるというふうに思いますけれども、その点について御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/6
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007・中川昭一
○中川国務大臣 先ほど申し上げましたように、制定当時としては極めて画期的といいましょうか、当時の国会の審議なんかも拝聴しますと、かなり激しいいろいろな議論があったということで、その中で、農業、農村の将来のためにできた基本法として、当時としては私はやはりそれなりの意義があったと思っております。
ただ、生産サイドと消費者サイドとのミスマッチが生じたり、あるいはまた天候等の問題があったり、いろいろな外的な要因があったりしたことによって、先ほど申し上げたように、格差の是正が目的としてあったわけでありますけれども、十分には達成できなかったということでありまして、その辺を反省ということであります。
この農政改革大綱骨子の中にも、「現行基本法に基づく戦後の農政を、その反省を踏まえ国民全体の視点に立って抜本的に見直し、」というふうに明記されておるわけでございますから、まさに、基本法という非常に法律の中でも位置づけの高い法律を廃止して新しい基本法をつくるということでありますから、当然ここには総括あるいは反省というものがなければ、新しい基本法をつくる一つの大事なインセンティブが欠けるわけであります。
逆に申し上げますと、反省あってこその新しい基本法だというふうに私は考えておりますので、十分その辺を、法律ですから政府自体の所管事項でありますけれども、政府だけではなくて国民的な理解、生産者、消費者等々の御努力、御理解も含めた上で、これから新しい基本法が文字どおりその目的が達成できるように努力をしていかなければならないというふうに考えてはおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/7
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008・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 農水大臣が農政改革大綱のその反省というものを認めた中で、私は何も言葉じりをとらえるということでなくて、そういう姿勢が極めて大切であるという点で私は高く評価をしていきたい。
堀込委員の五月七日の質疑、先ほど言いましたけれども、そういう視点については、これは総理大臣ですから必ずしも認識をしない形で、これまでの経緯あるいは現状の農業、農村の状況というものを御答弁されたんだというふうに思いますけれども、堀込委員は、否定的に総括をすべきであるという言い方をされたわけであります。否定的ということは少し言葉は大きいのですけれども、反省の上に立って、これからどうするかということについて、やはり農水省、農政を執行する担当者としてそのような形で臨んでいくことは極めて大切である。
ですから、この改革大綱の基本的な考え方、全体の文章は、今日までの食料、農業、農村の我が国の状況、それから、今後のあり方について非常に思い切って書いているというふうに私は評価をしております。
ただ、基本法でありますからという大臣の表現もありました。私も議員になって丸九年過ぎましたけれども、この間ずっと農水委員会に所属をしています。例えば、近藤元次農林水産大臣の当時からこの基本法の見直しということが言われておった、農水大臣みずからそういう形で言及をされた、あれが平成三年かそのぐらいだったと思いますけれども、それ以来、六年も七年もたってようやく新たな基本法の制定にたどり着く。
また、具体的なところでいきましても、この検討会をつくってからもう四年ぐらいたってようやくたどり着いたということで、タイミング的には非常に問題があったのではないか。基本法というのは、つくられた当時意味があったということはあったでしょう。しかし、その後のいろいろな状況の急展開で、基本法というものが必ずしも実態に合わない、あるいは、基本的な問題として農政を推進する上で必ずしも実態に沿わなかった。それに対して、タイミングよくこれを新たなものにするという姿勢が欠けておったのではないか、私はそういうふうに思わざるを得ません。
したがって、平成四年に新政策が打ち出されました。それ以降、ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意あるいはWTOの協定に基づくさまざまな指針が農水省から出されてきたわけでありますけれども、新政策、これとの関係で今回の基本法というものはどういう位置づけになるのか。
私どもが見たところでは、具体的な政策については、中山間ですとかいろいろな面で新たなところに踏み出すところを持っておりますけれども、基本的には新政策を踏襲するものではないか。ある面では新しい面も若干ありますけれども、新政策を踏襲した法律としておくればせながらの基本法ではないかという感が否めないわけでありますけれども、大臣の所感をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/8
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009・中川昭一
○中川国務大臣 私もまだ十五年ちょっとの国会生活でございますが、私自身も農政に携わってきて、牛肉・オレンジの問題でありますとか、十二品目の問題でありますとか、それから、七年間かかったウルグアイ・ラウンド交渉の問題でありますとか、さらには、平成五年のあの大冷害の問題でありますとか、いろいろな農政上の大問題を経験してきたわけであります。
その間、新政策あるいは米の新しい政策等々をいろいろやってまいりましたけれども、やはり基本的には今回の新しい基本法に至る一つの過程であったというふうに私は位置づけをしております。
遅かったのではないかと言われれば、確かに早ければ早い方がいいのでありましょうけれども、ウルグアイ・ラウンドの決着、あるいは新しい米政策等々がございまして、基本法の議論というものが、やはりある意味ではその総括であり、新たなスタートの一番の大きなポイントだろうというふうに思います。
しかも今回は、先生御指摘のように、全く当時は予想し得ないような新しい要素、例えば多面的機能でありますとか、その中の景観、環境、あるいは教育的側面等々ございます。さらには、食料・農業・農村基本法でありますから、つまり国民全体を視野に入れた、旧基本法ではあくまでも選択的拡大と所得の格差あるいは生産条件の格差の是正という生産サイドのみの話でありましたが、消費者あっての国内農業、また国内農業あっての消費者という観点、消費者も視野に入れた全く新しい法律ということでございますから、その法律づくりには、やはり相当新しいドラスチックな議論というものも必要ではなかったのかな。
そういう意味で、食料・農業・農村基本問題調査会で二年間にわたって三十数回の議論をしていただいたということでございまして、やはり次期交渉も踏まえ総合的な面で、タイミングが早い方がいいとはいいながら、この時期にこの基本法の議論をしていただき、そして、この法案が今国会中に成立し、施行されるということも、別の意味でタイミングがいい時期ではないのかなというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/9
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010・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 それとの関係で、もっとやはり早くなければならなかったというふうに思います。
今回の基本法はあくまでも理念宣言法だというふうに言われています。基本計画は五年ごとに見直しをしていくという形でありますけれども、やはり最近の世界各国の農業法も、ある面では、我が国よりも非常に時期を見て、タイミングを見て新たな法律をつくるなり改定をしてきておる。
そういう面では、どうも日本というのは、一回理念法をつくればなかなかこれを改定できないということがあるのかもわかりませんけれども、もっとタイミングよくこの見直しをしていくという考え方に今回の基本法というのは立つのかどうか、大臣、一言御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/10
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011・中川昭一
○中川国務大臣 ですから、直接法律には書いておりませんけれども、例えば消費者ニーズといえば、よいもの、安全なもの、そしてまた表示の問題等々があるわけでありますし、また一方、次期交渉に向かいまして、我が国がこれから各国に主張をし、そして我が国の立場を理解させていかなければいけない問題等々があるわけでございます。そういう意味で、この基本法が我が国の食料政策、つまり国民全体にかかわる食料政策としての、憲法という言葉を前回も使いましたけれども、文字どおり基本法であるわけでありまして、基本法自体は、そう簡単にころころ変える、つくっては廃止しという問題はないと思います。
しかし、これから中長期的な日本の食料、農業、農村政策の文字どおりよって立つ基本理念を明記し、そして、それに基づいて、基本計画あるいはいろいろな施策を通じて実現をしていくということでございますから、今回の基本法が中長期的に、また国際的にも耐え得るものであるという前提で提出をさせていただき、御審議をお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/11
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012・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 そういう考えは、今から改定するということを提出者から述べるということがあるのかもわかりませんけれども、今日このように、前回の基本法が三十数年間もほとんど基本的な部分で改定がなかった、これが実態に合わないまま今日まで来たのは否めない事実ではないか。これからも時代の変転は極めて急速だというふうな観点からいきますと、やはり基本法といえども、農政の担当者として、適宜改定を加えていくということにちゅうちょしてはならないというふうに思います。
もう一度、今後の基本法のあり方に通ずる話でありますから、私は、いろいろな基本法のあり方があると思いますけれども、もっと時代に即してこれを見直しをしていくという考え方であっていいのではないかというふうに思いますから、その点、大臣としてどのようにお考えになるのか、御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/12
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013・中川昭一
○中川国務大臣 今回御審議をいただいております新しい基本法は、現時点で、将来にわたって十分に耐え得る基本法だ、ベストのものだと思っております。
しかし、これは国家国民のための法律であるわけでありますから、幾ら基本法といっても決して不磨の大典ではないというふうに思いますので、仮に、その四つの基本理念を初めとするこの四十三条から成る法律の中で、実態と著しく乖離をする、あるいはまた政策が変更されるということになるとするならば、それを基本法だから変更しないんだ、法の方に実態を合わせろというようなことは、私は毛頭考えておりません。
しかし、現時点ではこの基本法、そしてまたこれに基づく基本計画、あるいはその他の法律、諸施策が中長期的にベストであろうということでやっておりますが、未来永劫、一字一句一切変えないんだということまでは、私は申し上げるつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/13
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014・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 今、私どももいろいろ関係者からお話を聞いております。この論議も、本会議も含めて始まったわけでありますけれども、国民的な合意を求めていくんだという割には、国民の関心はいま一つではないかなというふうに思うわけであります。
マスコミの皆さんも、これをつくる過程において、株式会社の問題等々については関心を示しましたけれども、非常に大切な、食料の全体をどういうふうに安全保障的な立場で供給していくのかとか、多々大きな問題がある割には国民的な関心が薄い。これは一般的に、毎日不足なく食べておる食料ですからという意向もあるのかもわかりません。
同時に、農業者の関心も、いろいろ私ども聞いてみますと、この基本法に基づいて農業の展望が開かれるというような、意欲を喚起するような基本法とはどうしても言えない、現下の大変厳しい農業経営の実態からいきますと、何か訴えるものがこの基本法にはないのではないかという声が大変強いわけであります。私どもの北海道でも、こういう言葉だけのものではない実態にあるのではないか、政府はどういう考え方をしておるのだろうという声が強いわけであります。
基本法をつくるこの間の差し迫った論議として、皆さんも、国民的な論議の中で国民的な課題というものをつくり上げていこうという姿勢に変わりないと思います。基本問題調査会のいろいろな論議でも、農水省としては、本当に開かれた立場でやってきたというふうに私どもは評価をしますけれども、もう一つ盛り上がらないその原因は何だというふうに大臣として見ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/14
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015・中川昭一
○中川国務大臣 今、鉢呂先生からも評価をいただきましたけれども、これは総理のもとの基本問題調査会でございまして、三十数回、そしてまた、そのほかに公聴会等々いろいろやったわけであります。それとは別に、私自身も含めて農林省が、消費者団体あるいは全国の皆さん方に御理解をいただくという作業をしております。これからも、もっともっとやっていかなければならないというふうに思っております。
そういう中で、今の時点では、この法律に対して、もちろん農業者の方々は大変御関心があると思っておりますけれども、私は、消費者の皆さんの御関心もぜひ必要だろうというふうに思っておりまして、つい先日も消費者団体の皆さん方と二時間ほど懇談をさせていただきました。やはり資料等を御説明すればいろいろな御議論が出てくるわけでございますし、さらには日本型食生活とかごみをなくしましょうとか、法律で規定すべき問題以外にも実はかなり踏み込んだわけであります。おまえの食べている飯の食べ方を変えろみたいな、そういう強制的なものではありませんけれども、御理解をいただかなければ将来にわたって日本の食生活が不安になりますよということについては、大方の御理解をいただいているものというふうに考えております。
さらには、これは関係省庁ともよく連絡をとって、例えば文部大臣、有馬さんなんかは非常に御理解をいただいておりまして、都市の子供たちが農村に行く、さらには来年からは農村の農業経営者の方が都市に来て交流をするとか、そういうことについても、これは教育課程段階で非常に大事なことであるということで意見が一致しまして、有馬大臣にも大変な御協力を今いただいておるわけでございます。
そういう意味で、あらゆる手段、あらゆる方法を使って、国民にとって必要不可欠な食料の国内生産を基本とした安定的な供給、さらには多面的な機能というものも最終的には国民にとってプラスになるわけでございますので、これからもこれに対しての御理解と、それからこの法案の趣旨の普及に向けて努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/15
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016・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 いわゆる国民的な関心が起こってこないということについて大臣の直接の言及はなかったわけでありますけれども、あるいは農業者が一番関心を持たなければならないわけであります。
最近、私どものところに来るのは、早く農業基本法を上げろというだけの要請が多いんです。しかし、私どもがじっくり話をしてみれば、先ほど言いましたように、この基本法が訴える、あるいはこの現下の極めて危機的な、崩壊的な農業の実態を変えていくものが見えてこないというところが強いのであります。
そういう意味では、何が問題になっておるのか。大臣も言われました長期に通ずる基本法ですから、抽象的な文言になっておる嫌いは強いのでありますけれども、やはり政策の責任者としての決意なり、あるいは政策を遂行する立場の者としてその責任のありようが見えてこないというところに問題があるのではないか。
最近の基本法は前文というものを書くような方向でないというふうに言っておるわけでありますけれども、現行の基本法のその政策の責任者としての決意なり、あるいは現下の状況に対する総括なり、その方向についてはむしろ現行基本法の方がわかりやすいという声も大変強いんです。その内容のいかんは別としても非常に強いんです。
ですから、私どもの党は、堀込委員の本会議の質問でも言っていますけれども、やはり農政の責任者としての決意なり、現下の農業の実態なりを前文という形で明記をすべきでないかということを提起をしておるわけであります。
この点について、大臣としてどのようにお考えになるのか。農業者がもう一つこれならいけるというような感じに至らないということも含めて、大臣の御所見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/16
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017・中川昭一
○中川国務大臣 基本法は、第一条で、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定めということになっておりまして、二条から五条まで四つの基本理念が明記されておるわけでございます。そういう意味で、むしろ前文がその基本理念というお考えでの御質問だろうと思いますが、あるいは趣旨という意味でしょうが、この法律自体が基本理念法であり、むしろ前文よりも中身としては各条文が法律的な意味をきちっと持つわけであります。そういう意味で、二条から五条までの基本理念というものが明記されておるということで、私は、前文をあえて設置することで実態的な意味がより深まるとか深まらないとかいうことは関係がないのではないかというふうにこの法律案では御理解をいただきたいと思います。
先生も御指摘になりましたように、最近の基本法は前文というものを持たない。つまり、基本法というのはそもそも理念法であり、根本的な考え方を示す法律であります。ちなみに、私、先週末、韓国の農業大臣と会議をやってまいりました。韓国でも新しい基本法を去年制定して来年から実施だそうでありまして、その条文を見ました。四十八条ぐらいで量的にも同じですし、中身がかなり似通っておりますが、やはり韓国の基本法でも前文というものがなく、いきなり第一条から入ってきておる。日本でも基本法というものの性格上、前文というものを置く必要はないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/17
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018・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 もう一つ。この基本法が農業者に特に訴えない理由は、先ほども言いました新政策以来、もちろんWTOの貿易体制もありました。新政策の基本は、価格については市場原理を導入していく、あるいは大規模な経営体というものを育成していく、あるいは農業所得については他産業並みの労働時間と農業所得を確保していくんだと。非常に大規模な、あるいは合理的なといいますか、そういう農業経営にシフトしていくことが非常に鮮明に出てきました。これを補完するといいますか、これをきちっとした具体化をするということでは、農政改革大綱なりあるいは改革プログラムを見ても鮮明にそのことが出ておるわけであります。
しかし、そういう農業の効率化、合理化という側面と同時に、先ほど大臣もおっしゃいました、いわゆる農業の多面的な価値を求めたもの、あるいは中山間地域の地域政策、そういったものが一方である。要するに、言うなれば農業の非経済的な効果をどういうふうに働かすのかということが一方で文言上も出てきておるわけであります。
しかし、それと先ほど言った農業の自由化なり市場化なり、あるいは国際化というものとどういった方向でかみ合わせていくのか。ある面ではこれは対立的な政策要素だと思うんですけれども、これをどういった形でバランスよくかみ合わせて、本当に日本の農業が今の危機的な状況から再生をしていくんだというところの政策上の論点が必ずしも明らかでない。そこにやはり、どうも新政策上のあの流れが非常に強いというところのものを農業者は見ておる、あるいは私どもにもそういう言い方をされるわけであります。
そういうところについて、大臣としてどのようにお考えになっておるのか。私の、今のこういうとらえ方についてですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/18
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019・中川昭一
○中川国務大臣 今御審議いただいている法律案は、まず、国境措置というものを引き続ききちっとやるということが大前提になっておるわけでありまして、その上で国内での市場原理というものを導入していく。
市場原理というと、生産者の方から見ると、何か自分たちに不利なことばかりじゃないか、こういうふうにとらえがちであり、また、その気持ちも私自身わかるわけでございますが、暴落したときの対策は本法案で書かれておるわけでありますし、一方、暴騰したときのメリットは、これは生産者の方に行くわけでございます。さらには、やはり市場原理ということは、消費者のニーズにこたえた生産をすれば値段がいい価格で売れるということも市場原理の一つのメリットでございます。
だから、デメリットについては、できるだけそれをカバーするようないろいろな施策を講じながら、メリットも農業者、生産サイドにあるのだということ、これも御理解をいただきながらやっていくことによって、市場原理のプラス面を強調し、マイナス面についてはきちっとした施策でカバーをしていくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/19
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020・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 市場原理のデメリット並びにメリットもある、品質に基づいた価格の設定等で、よいものをつくれば高く売れる、もちろんそれはあるのかもわかりませんけれども、大きな流れとして、価格政策等の一連の流れと、それからいわゆる農業の多面的な機能といいますか価値に基づいた農業の非経済的な要因というもの、これも打ち出してはおるのですけれども、それとの絡みというものが、どうも並立的に主張されておるだけになっておる。
後でこれはもっと具体的に論じますけれども、国境措置は維持するのだということを言いました。そのもとにおいても、非常にこの間の日本の農業というのは外国の農産物に影響されてきたというふうに思います。そういう中にあって、果たして市場原理だけで基本的にやれるのかどうか。あるいは、その非外部的な、非経済的な農業の価値というものを相当強く前面に押し出さなければ日本の農業というのは持っていけないのではないかなというところの、農水省としての基本的な考えが見えないというふうに思うわけであります。
同時に、今、最初に概括的なことを申し上げますけれども、国境措置についても、十八条で農産物の輸出入に関する措置ということで、これは現基本法そのままと言ってもいいぐらいの形で出しておりまして、「関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」というふうに書いてありますけれども、この間のいわゆる基本問題調査会の論議でも、あるいはその後のさまざまな論議でも、日本としてWTOの次期交渉にどのような立場で臨むのかという本当の意味での国民的な論議がかなり不足をしておるのではないか。大臣の大変な御努力もあります。韓国にも週末を利用して行ってきて、あるいはヨーロッパにも働きかけをしておるわけでありますけれども、その前段の国民的な論議が必ずしも十分になされておらないのではないか。
米の関税化を初めとして、もっと国民的な論議、マスコミ等も次期ラウンドについては、日本が米の関税をいかに下げないかという一点で包括交渉にするとかいろいろなことの見方をしておりますけれども、本当に米あるいはその他の農産物の関税率というものをどのように維持するのか、保持するのか、そういうことの考え方。あるいは、いわゆるグリーンボックスですとかブルーボックスですとかイエローボックスというようなものについて、あるいはWTO協定の二十条、政府の助成なり保護というものをさらに下げていくのだという改革の方向の一連のものとして次期交渉はあるのだということに対して、政府としてあるいは日本としてどういう考えを打ち出していくのか。このことについてもう一つ国民的な論議といいますか、国民的な合意というものが見えないということも、生産者としての農業者に大きな不安感を与えておるのではないかというふうに思うわけであります。
そこで、逐条ごとに話を進めてまいりたいと思いますけれども、この間の本会議、委員会の論議でも問題になっております、国内生産を基本とする、この条文についてお伺いをいたしたいと思います。
大臣も、国内生産を基本とするという条文の方が重みがあるのだというふうに言われております。また、現下の自給率四一%というのはこの国内生産を基本とするというものの状態ではないというふうに前回の委員会でも明言をされたわけであります。
最初でありますから、では、大臣が言っておる国内生産を基本とするというふうなことに立てば、食料自給率というのは、おおむねでよろしいのですけれども、どういうふうな数字的なものとしてとらえるのが妥当だというふうに思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/20
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021・中川昭一
○中川国務大臣 前回の委員会でも申し上げましたが、他の国々、特にいわゆるOECDの国々に比べて我が国の自給率が極めて低い。しかも、低い傾向がさらにトレンドとしてある。こういう状況は、私は、国内生産が基本となった日本の食料供給ではないというふうに思っておりますから、何としても向上していかなければならないと思っております。
その場合、実は言うはやすく行うは極めて難しいということを、私自身専門家の農林省の職員の話を聞きました。先生も御承知のとおり、麦で一ポイント上げるためにはどうしたらいいかとか、大豆でとか、そういう議論があったわけでありますが、そういう意味で、これはまさに先生が先ほどから御主張されているように、自給率というのは、ただ全国で米ばかりつくって米の自給率が二〇〇%といっても、これは消費がどんどん減っていっている事情の中では、自給率は確かに上がっているのかもしれませんけれども、農業経営上も、また国民的ニーズからいっても、これは余り意味のない数字になっていくわけであります。
そういう意味で、国民が求めるものについて、しかも大事な品目についてどういうふうに上げていったらいいのかということについて、これは消費者ニーズも踏まえながら、もちろん生産者がそれをつくることによってメリットが上がるという前提で、品目ごとに自給率をどのぐらい上げるか、要するに増産をすることによって結果として自給率を上げていくということがポイントになっていくわけであります。現在、国内生産が基本となっていないと言わざるを得ないこの自給率向上のために、品目ごとにいろいろな生産誘導策もとりながら、そしてまた消費者自身の御理解、日本型食生活とか食べ残し等を減らすというようなことも含めて、自給率を高めていきたいと考えております。
今申し上げられることは、品目ごとに需給動向なんかも注意をしながら目標を設定していきたいというふうに考えておるということでありまして、その積み上げがいわゆる総合的な自給率ということになっていくのであろうと思います。まさにこれは、先ほど申し上げたように、非常に難しい、極端に言えば心理的な面までかかわるような問題でございまして、それは高ければ高い方がいいということでございますけれども、今の時点で総合的に何%ということの目標を示すほどの議論が省内でも進んでおりませんし、国民的にもいろいろな方々との御議論を通じて、当委員会を初めとしていろいろな御議論も拝聴しながらつくっていかなければならない。
そしてまた、これは基本計画の中で決められる話でございますので、法律ができて、基本計画の策定作業の中で、また改めて審議会等の意見も聞きながら自給率を決めていくということで、まことに申しわけありません、具体的にどのぐらいがいいのだろうということに対してのお答えについては、今がひど過ぎる、できるだけ実現可能な高い自給率にしていきたいということをお答えするのが現時点では限界だということを御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/21
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022・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 私は、国内農業生産を基本とするといった場合には、おおむねこういう形であれば国内生産を基本とした状態にあるということを、この法案を提出した農水大臣としてきちっと言うことがやはり必要ではないかなと。これは数字で言うのか。例えば、国内の農業の供給というものが過半を占めるとか五〇%以上を占めるとかいうことがなければ極めてあいまいな言葉です。基本とするということはよく使われるのですけれども、どうとでもとれると言ってはおかしいのですけれども、今の四一%だって、農業生産を基本としておると言ってもこれは通る話ではないかというふうに思います。
当初、与党の協議の段階では、「農業生産の維持増大を図ることを基本とし」、私どもも野党ですから正式な文書はいただいておりませんけれども、このようになっておりました。そして、その後に続く備蓄ですとか輸入と組み合わせていくなんという文言は出ておりませんでした。いや、顔を横に振りますので全文を言いますけれども、「食料の安定供給の確保」というところで、「国民に対する食料の供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、生産性の向上を図りつつ、国民の需要に即した農産物が供給されるようにすることにより、国内の農業生産の維持増大を図ることを基本として行われなければならない。」このようになっておったのであります。
細かい話でありますけれども、この中間の「維持増大を図ること」というものを除いて「国内の農業生産を基本とし、」と変更した経緯についてお伺いいたします。これは事務当局でもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/22
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023・高木賢
○高木政府委員 ただいま御指摘がありました食料・農業・農村基本法案骨子、これは最初の第一次案といたしまして、ことしの二月十七日に整理をいたしました。これは、いわば法案作成に当たっての素案のようなものでございまして、その後の御論議を経て定めるという一種の書案でございます。したがって、直ちにこれが法案そのものとなるものではないということでございます。
その前提で申し上げますと、今御指摘にありましたように、「食料の供給は、生産性の向上を図りつつ、国民の需要に即し、国内の農業生産の維持増大を図ることを基本として行う。」という記述がありました。それから、少し離れた場所ではございますが、食料供給体制につきましては、「国内の農業生産に、輸入及び備蓄を適切に組み合わせて食料の供給を確保するもの」とするというのも別途の場所に骨子には書いてございました。
その後の法制化の検討過程におきまして、「国内の農業生産の維持増大を図ることを基本」とするということですと、例えば、少しでも生産量の増大が図られる、あるいは維持で横ばいであるという場合にも基本にかなうというふうにも解釈されるということだとこれは必ずしも適切ではないのではないかということで、維持増大をただ単におっことしたというのではなくて、冒頭申し上げた二月十七日の法案骨子には規定されていない国内の農業生産を基本とするという表現にした方がいいということで、いわば入れかえたということでございます。
その後の論議で、三月二日に法案骨子の二次案を整理しておりますが、このときには、「食料の安定的な供給は、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産を基本とし、輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行う。」という記述に変更いたしました。これは、基本としということだけで、輸入と備蓄がないと供給の総量が確定しないという論理から、「国内の農業生産を基本とし、」の後に、輸入と備蓄というものを加えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/23
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024・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 代表質問でも、与党以外の各党から、そういう経過もわかっていたせいもあるかもわかりませんけれども、国内生産を基本としではなくて、維持増大を図るということの修正をすべきであるという質疑があったというふうに思います。皆さんは、維持増大だけでは非常に、大臣もお述べになっておりますけれども、維持であれば〇・何%上がっても維持になる、それよりも国内生産を基本とする方が重いのだというふうに言われますけれども、非常に抽象的な文言であるという点で、やはりここは各党の意見を集約して修正をすべきではないか、その方が国民にも訴えるものがあるというふうに思います。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/24
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025・中川昭一
○中川国務大臣 今、官房長から答弁あったと思いますが、国内生産を基本としてということは、あくまでも自給率の向上ということが大前提に含まれている。そして、十五条で基本計画を決めるわけでありますけれども、その中に食料自給率の目標という項目がございまして、品目ごとに決めていきたいと思っております。現在大豆が三%とか小麦が七%とかという数字。これを、例えば七%とか、下手したら六%なんということには、これは政治的にいってもまた行政の責任の立場からいってもできないわけでございます。
そういう意味で、我々としてはより強い意味で、特に与党内の議論としてはこの自給率の維持向上じゃ弱過ぎる、今も先生御指摘になりましたけれども、〇・一ポイントでも上がったら増大になるのか、それよりも、現時点で国内生産が基本になっていない現状を何としても打破していくためには、自給率向上はもう当然のことですけれども、国内生産を基本としなければならないというふうに条文を強めた修正を最終段階でさせていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/25
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026・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 私も、維持という文言を入れることにはいささか疑問があります。したがって、国内生産において、その拡大、増大を図ることを基本としという表現がやはり一番わかりやすいのではないか。国内生産を基本としという、その基本のとらえ方によっては、大臣の言われるような考えということもよくわかります。しかし、やはり一般的に見た場合に、非常に抽象的なあいまいな言葉になってしまうというふうに思わざるを得ないわけであります。そこはもっと、現下の最大の課題が国内の農業生産の供給力を高める、生産を高めることであるという観点で、きちんとした文言を使うべきであるというふうに思います。
同時に、実態として輸入というものがあるからということで、備蓄あるいは輸入とを適切に組み合わせるという表現になっておるわけでありますけれども、当初はなかったわけであります。やはりここは拡大を図る、国内生産の増大を図るという観点をきちんと強調する意味からいけば、輸入に関する条項は別の条項に移してわかるようにすべきである。
この条文を見ますと、適切に組み合わせて行うというのは、農産物の輸入というものを何か容認しながら、今日までそういう形で来たわけですね、後でまたお話ししますけれども。大変輸入依存の観点がこの間急速に推し進められたというところからいけば、適切に組み合わせて行うということをこの条項で示すというのは、いささか政府の姿勢としても弱いものがあるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/26
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027・中川昭一
○中川国務大臣 基本理念の第一番目の二条のところは、食料の安定供給の確保ということでございますから、強いて言えば、これは消費者サイドというか、国民全体に対する責務ということがポイントの条文だというふうに理解をしております。
したがいまして、一〇〇%自給、これも不可能でありますし、一〇〇%輸入、これはもってのほかなわけでございまして、国民に対する食料の安定供給については、これは平時あるいは不測時も含めまして、国内生産を基本とする、そして輸入と備蓄ということがセットにならざるを得ない。備蓄は必要でしょうけれども、輸入についてもこれは現実問題としてならざるを得ない。しかし、位置づけとしては基本ではない、私はそういう解釈をしております。
食料を国民に安定的に供給するためには、国内の食料生産を基本とし、輸入、備蓄を適切に組み合わせて行わなければならないということで、これは維持増大よりももっと向上をしていくんだ。そして十五条の方の基本計画で、ちゃんと自給の目標というものも定めなければならないというふうになっておりますので、この十五条の二項の二、それから二条の二項とで複合的に読んでいただければ、これは作業としてはなかなか大変な作業でありますけれども、消費者、生産者等々関係者の皆さんの御努力もいただきながら、何としても実現をしていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/27
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028・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 これは後で変更したせいで、文章的には矛盾をしておる文章になっておるのではないかと思わざるを得ません。
それは、第二条の二項は「国民に対する食料の安定的な供給」ということですが、原文は「安定」は入っておりませんでした、「国民に対する食料の供給」ということでした。なぜその前段で問題があるのかといいますと、世界の食料の需給あるいは貿易が不安定な要素を有しているからというまくら言葉をつけておるのであります。したがって、国内の生産の維持増大を図ることを基本としてやらなければならない、こういう文章になっておったのであります。今の大臣のお言葉からいけば、食料の安定全般からいけば、それは私もわかります。
しかし、この文章は、そういう意味では世界の食料貿易、日本に対する輸入が必ずしも安定はしない、不安定があるからどうすべきかということをこの条文は書こうとしておるわけであります。一面的に世界の食料の不安定さというもので、輸入と組み合わせていくのだと。しかしそのときには輸入というのはないかもわかりませんね、不安定になったときに。そういう点からいきますと、これは矛盾した文章になっておるのであります。これは事務当局からでいいです。官房長から御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/28
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029・高木賢
○高木政府委員 先生しばしば引き合いに出されますけれども、当初のは事務局のいわば素案みたいなものでございまして、それが内閣法制局などの審査あるいは政府部内の調整を経まして、この正規の案文に至っているということでございます。したがいまして、そこに至るまでに、ぐあいが悪いとか、やはり見解上こういうふうにした方がいいというものはきちんと整理された上で現下の提案になっているということでございます。
そこで、「安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、」というのが全部にかかっていていかがかという御質問だと思いますが、「かんがみ、」は、「国内の農業生産を基本とし、」ということと「輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて」ということにかかっております。
輸入ということが食料の安定供給のソースとして一つの重要な柱になっていることはこれは現実、実態として認めざるを得ないと思います。その輸入に依存するような表現がいかがかということでございますが、まさにそこは「適切に組み合わせて」というところに意味合いがあるというふうに思います。
それから、ここだけ見ていただくと何のことやらということになるかと思いますが、四項で、「最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により」云々ということで、輸入の方があるいは途絶するというような事態があった場合においても、国民生活の安定上、供給の確保が図られなければならないということでございまして、食料の安定供給の確保に関する考え方としては、そういう意味合いで、一項から四項まであわせて読んでいただければ、論理的には整合しているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/29
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030・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 私は、基本法が極めて大事だから条文にこだわって言うわけでありますけれども、そうであれば安定的な供給についても、国内の凶作、そういうものにかんがみという文言が入らなければこの文章はおかしいということになりますよ。わかりますね。安定的な供給については、世界の食料が不安定要素を有しているからと。では、国内の不安定要素についてはないのかあるのか。凶作等があれば輸入をしなければならないということも言わなければ、この文章は欠陥文章になってしまうというふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/30
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031・高木賢
○高木政府委員 二条の四項には凶作の要因、場合というのも明記してございます。その場合にも供給の確保が図られなければならないということでありまして、場合によったら、まさに国内でだめな場合には、供給の確保ということで、ソースは明記してございませんが、輸入の手段もあり得る、あるいは備蓄の取り崩しというのがその前に当然あると思いますけれども、そういう考え方でございます。
それから、二項についても補足を申し上げますと、需給、貿易が不安定な要素を有していることにかんがみということでございますから、まさに輸入の安定化という措置、例えば二国間で、たとえ不測の事態が生じても安定的な供給がなされるように取り決めをするとか、そういった事態は当然予想しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/31
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032・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 いずれにしても、この文章は直しただけに、もう少しきちっとした文章にしてほしかったというふうに思わざるを得ません。
同時にこれと関係して、第十五条の食料自給率の目標の設定の条項であります。
総理は本会議の御答弁で、国内生産を基本とするという中に自給率の向上も含んでおる、また中川農水大臣もそのような趣旨の御答弁をされておるわけであります。私どもは、やはり現下の大変大きな課題であります自給率がずっと下がっておる、それを向上させていかなければならないという観点からいけば、自給率の向上あるいは引き上げということについて、きちんと明記をすべきでないかというふうに思うわけでありますけれども、大臣としての御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/32
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033・高木賢
○高木政府委員 自給率の目標ということが明記してございます。目標というのは、改めて申し上げるまでもないことと存じますけれども、行動を進めるに当たっての実現達成を目指した水準、こういうことでありますから、食料自給率の数値目標を明示するということはその向上を図っていくという意味になることは明らかであるということで、法制当局の御理解もいただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/33
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034・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 条文上のことではなくて、大臣も御答弁されましたように、これは後でまたお話ししますけれども、そう簡単に上がるものでない、非常な困難さを伴うものである。
この間、ずっと着実に、着実にという表現はおかしいのですけれども、下がってきておるのであります。日本の経済のように下げどまりをするとかいうことじゃなくて、ずっと下がってきている。それをどのようにしていくのか。国内の農業生産を基本とするというのは、引き上げるという考えであるということであれば、やはりここは条文上もきちっと自給率の向上を果たすとかいう文言がなければ、いわゆる政府の決意なりアピールというものが示されてこないというふうに思わざるを得ないのであります。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/34
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035・中川昭一
○中川国務大臣 また同じような話で恐縮ですけれども、とにかく自給率の目標を設定するということと、二条二項の国内生産を基本としてということは、これは自給率を向上していかなければならないと。諸外国の状況あるいは中長期的な世界の人口と食料のアンバランス、それに対して、お金さえ出せば買えるんだということでも通用しませんし、やはり消費者ニーズも、安心して国内の農産物によって供給してもらいたい、そういう意識の強さ等々から考えますと、これは生産者、消費者、両面からの自給率の向上ということが大前提にあって、そして、先ほどもお話がありましたように、維持向上よりももっと強い気持ちのこもった文章だというふうに考えております。
したがいまして、もうこれははっきりこういう正式の委員会の場で私としては何回も申し上げ、永久に速記録、議事録に残るでありましょうけれども、はっきり申し上げて、自給率の設定ということは今のままではこれはもうとんでもない。自給率を上げていかなければならない。ただし、その手法等々については、さまざまな要素あるいは困難、あるいは理解をいただくこと等々、やるべきことがたくさんありますので、向上を前提としての目標設定にしていくということを明言させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/35
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036・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 大臣の決意はわかりますけれども、今法案の論議をしておるわけでありますけれども、その法案上にこのように抽象的な、国内生産を基本とするとか、単に、「基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。」という中で食料自給率の目標というものを条文化しておるだけでは、やはり大切なこの基本法をつくる段階で、この法律が国民なりあるいは関係者に訴える力が極めて弱いというふうに思わざるを得ないところであります。したがって、これはぜひ自給率の向上を果たすとか、そういうきちんとした文言を第二条なり第十五条で明記をすべきであるということを申し述べておきます。
同時に、今大臣も言いましたけれども、非常な困難さを伴うということであります。もう少し具体的に、どういうふうに自給率を向上させていくのか、大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/36
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037・中川昭一
○中川国務大臣 まず、米についてはほぼ一〇〇%ということでありますが、要するに自給率といった場合には、供給サイドだけではなくて、ディマンドサイドの方の意思というものも対等に置かれるわけでございます。そういう意味で、先ほど申し上げたように、ただつくればいいということにはならない。
そして、例えば麦、大豆、飼料作物といったようなもの、あるいはまたほかにもいろいろあると思いますけれども、そういう基礎的な食料について、これは食料安全保障の観点からも極めて重要でございますから、品目ごとにどのぐらいが必要なのだろうかと。ただし、麦なんかは現時点ではなかなか、めん用あるいはパン用の麦が国産では供給できないといったような技術的な問題もございますので、そういう技術的な問題をクリアしてやっていく。あるいは大豆、先ほど申し上げたように自給率三%ほどでありますが、やはり納豆用の大豆とか、そういうものについては十分国産で対応できるということもございます。
そういう消費者ニーズ、さらにはそのニーズにこたえるための技術開発等々も含め、あるいは国民に対する啓蒙普及のための理解をいただくというようなことも含めて、品目ごとにそれぞれ一ポイントでも上げていくためには大変難しい問題もございますけれども、品目ごとに一つ一つ積み上げをしていって、最終的にはこのぐらいが目標としてリーズナブルなものになるのではないかというような形で作業をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/37
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038・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 個々の作目ごとのということではなくて、質問の方がちょっとまずかったのですけれども、どういう手法で自給率の達成をしていくのか。私どもは、第十五条だけではやはり欠けておるのではないかと。
今日まで長期見通しということを現基本法に基づいて打ち出してきました。これは見通しであって、計画ではないと農水省の皆さんは言って閣議決定をしてきたわけであります。必ずそういうふうに文言がついておるわけであります。最近二回の長期生産見通し、需要と生産見通しですけれども、中身を見ますと、これは単なる見通しではない、政策を組み合わせて意欲的につくり上げたものであるという形になっておるのですけれども、前回のつくり上げたものを見ますと高まっていくような手法で、前々回のものは平成十二年が目標年次になっておるわけでありますけれども、今の四一%とはまた違って大変高い自給率になっています。これは後で申し上げます。
そういうことを達成するのが極めて困難な形で今日まで来ておるのであります。したがって、目標は設定したけれどもそのとおりにいかなかったという場合も、このままのやり方ではそういうふうにならざるを得ないのではないかというふうに私どもは危惧をしております。
したがって、きちんと政府として自給率の向上を達成するために、各種施策を集中し、予算を重点的に投入し、その達成を責任を持って行うものとするというように第十五条に条文化をしなければ、やはりこれはなかなか難しいことではないか。別に政府が言い逃れをするという形ではなくて、それをとめるということで条文化をするという形ではなくて、法律としてそのくらいの体制を整えておかなければ、なかなかこれは難しい問題であるというふうに思うわけでありますけれども、そういう条文化についてどのようにお考えになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/38
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039・中川昭一
○中川国務大臣 この十五条の自給率の目標を実現するための担保という意味での御質問だと思いますが、一項の方に、政府は施策の総合的かつ計画的な推進を図るために基本計画を定めなければならないというのが前提にあるわけでございまして、この理念を実現するために基本計画を立てる、そして、それのためには当然あらゆる施策が必要になってまいりますので、この条文で、私はきちっとしたいろいろな施策がとられることによって目標の実現に資するというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/39
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040・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 計画を定めるということはうたっておりますけれども、その計画を達成するということについては述べておりません。
官房長が立とうと思ったのは、第七条で政府の役割ということが国の責務という形で出ていますから、それで読み込めるというふうに答弁したいんだろうというふうに思っていますけれども、一般的に第七条は、この基本法すべてについて、国が施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する、もちろんこれで全体を網羅できるということは私もわかりますけれども、この食料自給率という問題の重要性にかんがみれば、やはり第十五条で、その達成についての政府としての責任なりあるいはその手法、施策を集中的に講じて予算を投入するという条項が、私はどうしても必要じゃないかというふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/40
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041・高木賢
○高木政府委員 ただいま御指摘のように、七条も申し上げようと思いましたが、あと、十三条に法制上の措置等というのがございまして、「食料、農業及び農村に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。」というのがまず総則にございます。
それから、今御指摘のありました具体的な基本計画自体につきましても、一号で基本的な方針、二号で基本的な方針の中の特に食料自給率の目標ということを特掲してございますが、三号に、「食料、農業及び農村に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」ということが明記してございまして、基本計画自体においても、総合的、計画的に施策の推進を図るという趣旨が明確化されているというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/41
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042・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 いずれにしても、この基本計画の、しかもすべての施策を講じて、結果として自給率が上がると。もちろん各作物ごとに、どのくらいの自給率になっていくのか、生産供給力になっていくのかということを積み上げてはじき出すということを大臣もおっしゃいましたけれども、同時に、やはり積み上げによってはなかなか国内の生産を基本とするところまで至らない可能性もあります。目的意識的に、日本の自給率を、基本とすると言われるぐらいのものに率を明示するというところからはじき出すという手法も私はとる必要があるというふうに思います。
いずれにしても、そういうものを具体化するためには、一般的な条項ではやはり私は足りないのではないか。政府は、こういう条文を入れるということに対して、責任を問われると言ったらおかしいんですけれども、そういうことを勘案すれば、なかなかそこは入れたがらないわけでありますけれども、農水大臣として、政治家として、先ほど言いました生産の増大を図るとか自給率の向上について条文上入れるとか、あるいはその手法、政策、予算の集中投入についての条文をつくるということについては、やはり政治的に決断を下すところにあるというふうに思います。
この三つについて、大臣として、政治家として、本当にどのようにお考えになるのか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/42
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043・中川昭一
○中川国務大臣 議院内閣制であり、しかも民主主義の我が国の法律の実施でありますから、我々は責任が当然あるわけでございまして、その責任は国会に対して負い、そしてまた国民に対して負っておるわけでございますから、目標なり一つの数値を設定した場合には、それに対して責任が生ずる。それは別に、法律その他できちっと明示しなくても我々としては責任がある。さっきの国の責務ではありませんけれども、広い意味では条文にも書かれておりますが、個別的な一つの数字等々につきましても、その実現に向けての責任はある、これは条文に明記されていようがいまいがあるというふうに思います。
これ以上言うとまた責任逃れだと怒られそうですが、この自給率に関して申し上げますならば、政府の責任だけで、どこかの国のように米だけしか食べちゃいけないとか、米は食べちゃいけないとかということは日本の場合にはできませんので、やはり消費者、生産者等の理解を得て目標設定に、国が責任を負いますけれども、それがよしということを御理解いただきますならば、みんなで協力をしていこうということも必要であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/43
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044・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 次に、自給率の低下の原因、これをどのようにお考えになっておるのか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/44
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045・高木賢
○高木政府委員 いろいろな原因はあると思いますが、大きな要因は、まず基本的に、日本が人口と国土あるいは農地との関係で非常にハンディキャップがあるということであろうと思います。イギリスなどに比べますと何分の一、あるいはフランスに比べても十何分の一、こういうことでございまして、非常に人口と農地との関係がアンバランスであるというのが基本的な条件だと思います。
そういう中で、国民の食生活の向上に伴いまして、日本での生産が適している米の消費が減退をした。一方、日本での生産が非常に困難な飼料穀物、あるいは油の原料としての大豆、菜種、こういったものの輸入が増大したというのが大きな原因であろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/45
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046・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 私は、農水省の皆さんとよく論議をするんですけれども、それは、昭和三十六年の七三%でしたか、それに比べると食生活の変更というのは当たっていると思います。しかし大臣、大臣も御案内のとおり、例えば昭和六十年、大臣はもう代議士になっていたと思いますけれども、その当時は五二%、カロリーベースの自給率があったんです。それが、昭和五十年には五四%でした。十年で二%しか減っていないんです。その十年前の昭和四十年は七三%。そこからは急激に落ちました。
大臣もどういう食生活だったかわかりませんけれども、私ども高校生から大学生ぐらいになる年代だったんですけれども、その当時に比べますと急激に、まあ米の消費は今も落ちておりますけれども、食生活が変わったことは事実であります。しかし、昭和五十年代は、今も言いましたけれども、ほとんど減少はとまったのであります。昭和六十年代は、食生活は変化したのかといいますと、それほど変化しておらないのであります。しかし、昭和六十年の五二%から、今、平成九年で四一%に減少したのです。私どもが議員になって、着実に一%ずつ減ってきたのであります。
この原因は何であるのか。私から答えてもいいのですけれども、官房長、どういうふうにとらえていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/46
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047・高木賢
○高木政府委員 確かに食生活の変化は緩やかにはなってきたと思いますけれども、米の消費が依然として減退をしてきたということは紛れもない事実でございます。それに見合うといいますか、麦あるいは大豆等の土地利用型作物につきまして、国内生産が十分でないあるいは微減というような傾向をたどってきたということで、カロリーベースとしては米の減退を補い得ていないというところに原因があると思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/47
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048・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 もう少し詳しくお話ししますと、先ほど言った、五十年代が変わらなかったという中身ですけれども、例えば砂糖は、大臣もビートを作付している地帯の議員でありますけれども、自給率はむしろ一五%から三三%に拡大をしています。牛乳、乳製品についても八一%から八五%に拡大しています。麦は四%から一四%にむしろ極めて増大をしております。豆類についても九%から八%というふうに現状維持です。野菜についても九九から九五とほぼ現状維持です。
そんな数字はどうでもいいのですけれども、当時、五十年代というのは、やはり価格支持政策といいますか、価格政策に偏向し過ぎたという嫌いはあったのですけれども、日本の農業は、そういう意味では活気のある、国内の生産力を維持、ある面では増大をしてきた、その十年間でありました。そういうことで、先ほど言いましたように、ほぼ五〇%以上を維持しておったのです。
ところが、六十年代、この十年間を作物ごとにいいますと、例えば野菜について、これはいろいろな野菜が入ってきたかもわかりませんけれども、伝統的な日本の野菜というのはどこでもつくられるわけであります。これが九五%から八六%、約一〇%落ちています。果実、これが七七%から五三%。牛乳、乳製品も八五%から七一%。肉類も八一%から五六%。魚介類、水産関係はこのあれになっておりませんけれども、九六%から七二%。日本で伝統的につくられてきた野菜とか魚介類とか果実というものが、押しなべて著しい低下を来してきたわけであります。
ですから、この十年間は、食生活の変化、もちろんずっと米等一連の低下はありましたけれども、それ以外のもので自給率の低下を来したというふうに数字が示しておるのであります。
むしろ、いわゆる牛肉・オレンジの自由化あるいは十二品目の問題、ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意等の国際貿易のルールの変更によって国内の生産力が極めて競争力をなくして、もうつくるにつくれない状態に立ち至った。これは大臣、もっと品目ごとにいいますと、例えば、日本で伝統的につくられておったニンニクなんかこの五年間でもう輸入量が七倍に、九〇年と九六年を比較しても七倍に、ショウガなんかは輸入量が八倍に、タマネギも二倍に、アスパラも二倍です。
私、今回、東京のスーパーに行きましたら、アメリカ産のアスパラ。大臣、普通は端境期にアスパラとかカボチャというのは出ておったのです。今、四月、五月というのはグリーンアスパラの時期ですね。これがアメリカからもう輸入されておる。大臣も御案内のとおりであります。もう五割以上、何といいましたか、あの青い野菜がアメリカとメキシコ等から入っておるということで、野菜なんかはこの五年間、六年間で全体で二・四倍、倍以上の輸入量になっておるのであります。
国内の作付面積は、九割以下に野菜自体が落ちておる。農水省の皆さんは食生活の変化ということを盛んに言いますけれども、基本的に押さえておかなければならないのは、やはり貿易の自由化によって国内の生産力が極めて低下をして、もうつくるにつくれない。ニンニクの産地は青森県ですけれども、もうつくるにつくれない。中国産のニンニク等が入ってきて、要するに価格が合わないということで撤退をせざるを得ないという状況が問題の核心だというふうに私は思います。
大臣、この認識はどうでしょうか。
〔委員長退席、増田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/48
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049・中川昭一
○中川国務大臣 今先生からいろいろと、特に六十年代以降の輸入農産物で自給率の低下のスピードが強いという御指摘がありました。
これは私の考え方でございますけれども、確かに自由化というものが全く影響なかったとは言いませんけれども、やはりいろいろな要因があるのではないか、極端に言えば品目ごとで。
つまり、逆の例を申し上げますと、サクランボを解禁したときがありましたけれども、あれは一、二年は生産者の方も大変御心配されましたけれども、今やもう日本のサクランボ以外に国内の消費者がほとんど関心を持たないというような状況もあります。
ですから、例えば果樹とか野菜でしたら珍しいもの。さっきグリーンアスパラのお話をされましたけれども、グリーンアスパラは確かに安いのでしょう。ただし、私は鉢呂先生と同じ北海道ですから、味、質の面では北海道、国産の方がおいしいと私自身確信をしておるわけであります。
また、乳製品、チーズ等につきましては、特に最近の洋食、ワインブームでチーズの消費が伸びているという話も聞いておりますけれども、そういったまさに食生活の変化もあります。
もちろん自由化の影響が全くないとは言いませんけれども、要は、消費者ニーズというものの結果がこういういろいろな状況を、下げる要因もありますし、逆に下がらなかったという品目もあるわけでございますから、その辺はもう少し詳細にそれぞれの品目についての輸入の伸びあるいはまた輸入動向の変化等について調べてみたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/49
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050・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 個々の品目の違いはあろうと思いますけれども、全体的にそういう形で結果として競争力を失って、日本の国内の生産力が減少したというのはもう否めない事実であります。全体ですよ。今、自給率の問題を考えておるわけでありますけれども、そこのところを十分見ながら政策をどのようにしていくのか、この場合はいわゆる新たなWTOの次期農業交渉にどのように立ち向かっていくのか、これは後で質疑をしたいと思っていますけれども、そこのところの一つの大きなポイントになっていくのではないか。
もちろん、食生活、どういうものを選択するのかというようなことはありますけれども、全体として自給率がこの六十年代、大臣、これはまだなかなか下げどまらない状況にあると言わなければなりません。これは一つ野菜だけではなくて、いろいろなものが大きく自給率に影響しているのであります。
魚介類なんか、魚、水産物はもう顕著ですね。これは昭和六十年に九六%あったんです。今は七二%。これはむしろ、水産漁業関係の基本法を一緒につくるぐらいのものがあっていいというふうに思いますけれども、そういう状況になってきておるその大きな原因は、やはり貿易の自由化であるということがこの自給率の低下の原因でも大きく反映をしておるというふうに思います。
そこで、通告のところに戻しますけれども、もう一つ自給率にとって大きな原因は、私は、担い手の確保と同時に農地の面積の確保でないかというふうに思います。農業の国内生産を維持拡大するという観点からいきますと、どうしても農地面積の確保というのは最大の課題であるというふうに思いますけれども、大臣のこの点についての御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/50
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051・中川昭一
○中川国務大臣 農業生産活動をやる上で、農地、そして水、あるいは人、技術というものが必要不可欠なわけでありますが、その中でも、限られた日本の国土の中で、食料の安定供給のためにもやはり農地がきちっと確保されていかなければいけないということが大前提であるというふうに考えております。
そういう意味で、今度の基本法に基づく基本計画の中でも、自給率目標の設定という項目の中に、前回御答弁申し上げましたように、品目ごとの農地の面積というものもはっきりと位置づけていきたいというふうに考えておりまして、その重要性については先生と考え方がほぼ一致しているのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/51
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052・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 若干、農地の減少の傾向をまた言いたいのでありますけれども、昭和三十六年、基本法の当時は六百九万ヘクタールありました。現在は、平成十年で四百九十一万ヘクタール、約二〇%の減少です。延べ作付面積というのが出ていまして、これは二毛作等で農地を高度利用するということでありますけれども、当時、昭和三十六年は、六百九万ヘクタールのところに、延べ作付面積として八百七万ヘクタール活用しておりました。ですから、耕地利用率としては一三三%、三割は二毛作等で使っておったと言ってもいいのではないかというふうに思います。一三三%です。今日は、平成九年ですけれども、延べ作付面積は四百七十二万ヘクタール、八百万ヘクタールから見ますと、何と四割の減少です。この耕地利用率は九五%ということで、一〇〇%活用しておらない。耕作放棄地も入っておるのかもわかりません。非常に耕地利用率が低くなっております。大臣、四割減少なんです。
自給率は七〇%から四一%に下がったというふうに言われているんです。そうなっていますけれども、この減少率がちょうど四割。まさに、耕地面積、農地面積が減少したと同じ比率で自給率が下がっておるのであります。ここにやはり一番の大きな問題があるのではないか。農地の総量の減少並びに利用率の低下、ここがやはり今回の新しい基本法にも大変大きな課題としてある。
壊廃は年間五万ヘクタール、年間一%の形で減少しています。この十年間ずっと変わらずです。不況が到来しておるにもかかわらず、ずっと同じ形で五万ヘクタールです。この三十年間で東北全体の農地が消滅をしたという面積、百万ヘクタール以上ですから、そういう状況です。耕地の拡大は、農地の造成は低下をしていまして、年間三千ヘクタールだけであります。五万ヘクタールがどんどん減っておる。
農水省の推計、これは公式の推計かどうかわかりませんけれども、平成二十二年の農地面積は四百四十二万ヘクタールから三百九十六万ヘクタール、さらに百万ヘクタールぐらい減るという見通しを持っておるのであります。
大臣、この減少についてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/52
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053・中川昭一
○中川国務大臣 今御審議いただいております、国内生産を基本としという、それに必要不可欠なのが優良農地であり、そして担い手等の確保ということでございますから、やはり優良農地を確保していくということが非常に重要だろうと思っていろいろな施策をとっておるところでございます。
今、先生の御指摘になったトレンドというのは、ある意味では世界的な傾向の一つかもしれませんけれども、日本の場合には、その数値が自給率と同じように低減率が異常に高いといいましょうか、要するにスピードがきついというような感じを率直に今持ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/53
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054・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 そのとおりでありまして、やはり皆さんの姿勢をきちっと基本法にあらわすには、農地の総面積について、これを例えば維持するとか、あるいは我が党では、先ほど言った、食料自給率の目標と同時に農地面積の目標についても基本計画に、もちろん皆さんは基本計画に入れるというふうに言っておりますけれども、そのくらいの重みを持った対応をしなければこの流れはなかなか、先ほどの農水省の試算がそういうことであります。条文になるかどうかわかりませんけれども、現在の農地面積をすべて確保あるいはできれば拡大をする、そういう姿勢にぜひ立っていただきたい。
どうもまだ農水省の姿勢は、大臣がいみじくもおっしゃいました、あるいは本会議の御答弁も、優良農地の確保ということを盛んに、私の聞く範囲では十回ぐらい、各党の質問でありますからダブった面もあると思いますけれども。優良農地の確保という視点はこの際やめていただきたい。皆さんの農政改革大綱でも、すべて見させていただきましたけれども、すべて優良農地の確保であります。さすがに基本法にはそういうものを書かないようにしておるのか、書いてありません。
今や食料の自給率の向上からいけば、優良農地という視点ではなくて、現在あるすべての農地の総量、面積を守るという姿勢をやはり堅持すべきでないか。我が党もいろいろな規制緩和は必要であるというふうに言っておりますけれども、農地の流動化等の規制緩和は必要でありますけれども、農地の総量については、厳にこの面積をきちっと維持する施策をやはりするべきである。それが極めて足りない。
それから、耕地利用率の向上についても、昔は一三三%も利用しておったわけであります。現在は九五%。昔のようにと言ってはおかしいんですけれども、農地の一二〇%の活用。日本の場合は、北海道はいざ知らず、できるわけでありますから、そういう施策の重点化を図るべきである。
同時に、やはり耕作放棄地について、これまでも大変問題であるというふうに指摘もし、農水省もいろいろな検討をしてきたわけでありましょうけれども、やはりもう少し大胆に耕作放棄地が本当に現実になくなるような施策を打つべきである。中山間地域でやるんだ、いろいろな農地の改良もしながら、あるいはその管理もいろいろな団体も含めてやるんだと言いながら、この耕作放棄地について、きちっと目に見えた減少が図られない。
あるいは、米の転作についても、いろいろ現地に参ればほとんど耕作放棄地のような形で投げられておるというのが実態ではないでしょうか。これを一二〇%本当に活用する施策について、やはり大臣は本当に具体的に提示をして、農水省を叱咤激励して、農業者も叱咤激励してこの解消を図るという姿勢に立っていただきたい。そうだというふうに思っておりますけれども、どうもこれまでの経過はそういう形でない。現に五万ヘクタールもどんどん減少しておる。もう道路がついたらその周辺はいつの間にやら農地じゃなくて市街地、宅地になっていくという姿勢を改めるところに来ておるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/54
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055・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 農地総量の確保の問題と、それから、言ってみれば壊廃を含めた転用等について御指摘があったわけでございます。農地の総量の確保というのは、その裏側にきちんとした生産目標があって、その生産目標に即してどれだけ農地を確保するかという問題でございます。
先生から御指摘ありましたように、現況を見ますと、耕作放棄地が十六万ヘクタールある。そして、耕地利用地の九五%、とりわけ冬の間の水田の利用というのは、七割ぐらいが未利用の状態になっておりますので、そうしたものについて一つ一つきめ細かい対策を打っていくということはこれから不可欠であろうというふうに私ども思います。と同時に、やはり農地は効率的に使われなければならないわけでございますので、これを引き受ける担い手あるいは法人、そういうものをやはりエンカレッジいたしまして、ここに農用地を流動化し集積させていくということが大事であろうと思います。
昨年、農地法の改正をしていただきまして、農地転用につきましては法定でこの転用基準を明確にいたしました。そして今回、この国会に農振法の改正も提出をさせていただいております。これによりまして、農地の確保に関する国の基本的な指針を明確にすると同時に、線引きにつきましてもきちんと法律によりどころを持って実施する、そういうことで、農地の総量と優良農地の確保、この両面から農業生産の裏打ちをしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/55
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056・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 基本問題調査会の中間取りまとめが平成九年十二月になされておりますけれども、大臣、その中では、農地は最も基礎的な農業生産の資源であって、かつ、一たん毀損された場合、その回復は非常に困難を伴うという形で、必要な農地総量を明確化すべきである、こういうふうに中間答申では言っておるのであります。
しかし、今回の農政改革大綱は、私は非常に大胆に切り込んでおるというふうに思っておりますけれども、農地に関しては、計画的な土地利用の徹底と、非農業的土地需要への適切な対応をしていくんだ。非農業的土地需要ということは、宅地とかそういうことになっていくということに対して適切な対応、まさに役所ですから、適切なというのは非常にあいまいな言葉なのですけれども、こういうわからないような対応ということはだんだん減っていくということですね。そういう対応では農水省の姿勢が見られない。
今、農振法の審議をするというふうに言いましたけれども、平成九年は、農用地の区域内の農地面積、これが優良農地というふうに大臣は言われるのかもわかりませんけれども、四百三十五万ヘクタールなんですよ。私は、もちろん優良農地の確保はしていかなければならないと思います。しかし、都市農業も総力を挙げて、全体で五百万ヘクタールが切れようとしておる農地面積というものを確保していくという姿勢に立たなければ、何ぼ大臣が自給率を上げていくんだと言ったって、これは難しいですよ。現状の五百万ヘクタール弱でやれば、戦後の芋、米だけを食べる食生活に戻って一千七百六十キロカロリー、何とか人間が生きていける最低限のものは確保できるというふうに農水省は打ち出したのでありますから、これ以上の農地面積の減少はもう待ったなしの状況ではありませんか。その割には農政改革大綱は歯切れが悪い。大臣、どうですか。
〔増田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/56
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057・中川昭一
○中川国務大臣 先ほど冒頭申し上げましたように、農地はもちろん大事でありますが、農地と水とそしてやる気のある農家と、そして技術あるいはまたいろいろな知識、さらには流通体制とかいろいろあるのでしょうけれども、これらが総合して初めて国内農業が基本という役割を果たしていけるのだろうと思います。
しかし、そういう中で、やはり農地というものが、これはもう先生御指摘のように、一たん荒らしたらもとに戻すのには大変な努力が必要なわけでありまして、この農地を何としても保全していく。そういう意味で、私は先ほど優良農地という言葉を使いましたが、とにかく作物あるいは地域に適切な農地を確保していくということは、まさに国内生産を基本としてということと同義語であるとすら私は考えております。これは単に土地だけあればいいということじゃなくて、そこに入ってくる人々、そしてまたそこで何をつくるか。何をつくるかということになりますと、これはもう生産サイドだけの問題ではなくなってくるわけであります。
そういう意味で、広い意味での、農地確保が目的というよりも、要するに国内生産を基本とするという中の、いろいろな要素の中の中心的な位置づけとして農地の減少をストップさせていくというようなことをこれから積極的にやっていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/57
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058・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 次に、価格政策についてお伺いいたします。
第三十条は、農産物の価格について、需給動向と品質評価で価格をつくっていくんだというふうに述べております。また、基本的なところで、ちょっときょうは時間がなくなってきたのですけれども、第二条で、食料というものは、将来にわたって、良質な食料が合理的な価格でというふうに言っておるわけでありますけれども、日本の価格政策というのはこの二つによって市場価格にゆだねていくのかどうか。
あるいはまた、合理的な価格というのは一体何を意味しているのか。非常に目新しい言葉だと思います。この調査会の答申の英語訳ではリーズナブルプライスというような表現に、値段が高くない、値段がほどよいという意味に英語訳はなっておるようですけれども、この二つについてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/58
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059・高木賢
○高木政府委員 御指摘がありましたように、三十条一項におきましては、具体的な価格形成のための施策のあり方といたしまして、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるということでございまして、大きな因子として需給事情と品質評価というものを掲げているわけでございます。
こういったものを適切に反映して形成される価格あるいは形成された価格で合理的に説明可能な価格というものがまさに合理的な価格ということになるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/59
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060・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 一方では、国民が納得し得る価格というのは、どこかにそういう表現もあったと思いますけれども、大臣、この二つの要因で価格形成を図るのか。
この間の、農業の本来持っておるところからいって豊凶に左右される。後でまたしようと思ったのですが、きょうは時間がなくなったのですけれども、米なんかはそうなんですけれども、単価が一割減少しただけで農家の農業所得は三七%の減収になる。ということは、非常にコストがかかっているという意味合いですけれども、そういう意味では、価格をこういう形で需給事情と品質評価にゆだねる、全く市場にゆだねるということは、やはり無理があるのではないか。もちろん、ほかのところで経営対策をやるというふうに言っておりますけれども、例えば一定の市場介入というものが想定されなければならないのではないか。
大臣も御案内のとおり、アメリカでもEUでも、市場介入価格というものを設定して、もっと下支えの機能を持たせておる。あるいはヨーロッパあたりは、単に市場価格、直接的ではなくて、そこには一つの指標価格のような形で、段階的にそれを補う補償的な意味合いを、固定的に、段階的に設けているところもございます。
そういう意味では、後でまた別の機会に米の経営安定化対策についての問題点を指摘したいと思いますけれども、この二つだけを基本法の中に明記しておるというのは、やはり若干無理があるのではないか。何々等とかというものを入れなかったら、これは基本法ですから、大抵はここにそれ以外の要素を絡み合わせるのが普通だと思いますけれども、この二つだけで価格を構成すると。もうそれは、政策というのは必要なくなるわけですね。これは、政策を講ずるというふうな意味合いでここに書いてありますけれども。その点、大臣はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/60
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061・中川昭一
○中川国務大臣 まず、国境措置を引き続ききちっとするということが大前提で、国内市場においては、やはり消費者が欲しいというものは、これは価格が高い安いよりも、おいしいものあるいは食べてみたいものということになりますと、もちろん安ければいいのでしょうけれども、価格に対するウエートというのが必然的に低くなっていくのではないか。つまり、高くてもおいしいものを食べたい。まして生命、健康の源である農産物でございます。そういう意味で、消費者が望むもの、私は、市場原理を通じてのニーズというものがイコール一概に安いものを供給するということにはならないと考えます。要は、消費者と生産者との間の価格というものがおのずから決定をされていくのだ。市場原理を導入したらただ下がっていくということではないと私は思います。
一方、下がった場合にはどうするかということにつきましては、米でも、例の何か保険のような制度も今度つくりましたし、果樹共済とかいろいろな制度がございますから、そういうものも含めて、本法案でも著しく価格が変動した場合には対策を講じますということを明記しておりますので、市場原理を導入することイコール価格が自動的に安くなって生産者が困るということではなく、仮にそうなった場合でも、それに対して講ずべき措置がある。
また一方、市場原理によって暴騰すれば、これは消費者の皆さんは困るかもしれませんけれども、生産者サイドから見れば、これは収入がふえるということにもなるわけでございまして、それに対する対策というものは別途講じていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/61
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062・鉢呂吉雄
○鉢呂委員 時間が来ましたけれども、今の消費者が求めるとかということではなくて、基本的に制度として価格というものを市場にゆだねるというのは、理論的に言っても極めてやはり無理がある。また、経営対策というものを後で講ずるということはまた別の形でありまして、その価格を市場にゆだねるだけで果たしていいのか。大暴騰、大暴落をという形ではなくて、その中で安定的に供給するというためには、一定の介入措置というものがほとんどの国でも残されております。アメリカでさえ残されておる段階で、このように二つの要因だけで切ってしまうというのはいかがかというふうに思いますから、また後ほど論議をしたいと思っていますけれども、きょうはこの辺で終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/62
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063・穂積良行
○穂積委員長 次に、漆原良夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/63
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064・漆原良夫
○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。
我が国の食料自給率の低下は、食料安全保障という観点から見て、極めて私は重大な問題であると思います。我が国の食料自給率は、昭和三十五年は七九%でありましたが、平成九年度では四一%に低下しております。また、人口一億人以上を有する国の穀物自給率は、平成九年度の我が国は二八%である、いずれの国々も八〇%以上となっておる、我が国は異常に低い水準になっておるわけでございます。
今回、各党からいろいろなこの食料自給率に関する論点が提示されておるわけでございますが、まず、この自給率向上に向けた政府の意欲についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/64
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065・中川昭一
○中川国務大臣 先生御指摘のとおり、日本が主要な国々の中で極めて低い、しかもそういう傾向が現時点でも続いておるということについては、これは食料の安全保障という観点からも、やはり非常に国としてもきちっと食料供給、安定的な供給をしていかなければならないということは、これは特に将来に対しての不安というものに関しまして、国民の皆さんにも非常な不安といいましょうか、国内生産が大事なんだという御理解をいただいているわけでございます。
そういう意味で、今基本法におきまして、第二条で、国民に対する食料の安定供給、平時あるいは不測時を含めた安定供給をしなければならない。そして、その供給の基本というのはあくまでも国内生産である。そして、備蓄、輸入を基本ではないですけれどもうまく組み合わせをして、国民の必要最低限の一番大事なニーズに対してこたえていかなければならないのが国の責務であるという位置づけにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/65
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066・漆原良夫
○漆原委員 今回の基本法の二条から四条の基本理念、そして国の責務を決めた七条、このいずれを見ましても、食料自給率の向上を目指す、あるいは自給率はこのくらいだ、そういう言葉すら出てこない。向上を目指すという言葉すら出てこない。私は、この食料自給率の向上というのは国の責務だというふうに認識しておるのですが、まず、国の責務であるかどうかは、大臣はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/66
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067・中川昭一
○中川国務大臣 二条から五条までが基本理念でございますが、その中に「国内の農業生産を基本とし、」これは、何回もお答えしておりますが、自給率の向上を目指すということでございます。
一方、七条では、国の責務といたしまして、二条から五条までに定める施策についての基本理念にのっとり、総合的に策定し実施する責務を有するということになっておりますから、向上も当然その基本の中に入っておるわけでございまして、それを受けて国としては責務を負っておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/67
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068・漆原良夫
○漆原委員 そうすると、十五条の二項の二号、ここに「食料自給率の目標」というのが書いてありますが、この目標を定めることによって初めて国の責務が発生するというのではなくて、この基本法の第二条の一項から四項までの間、この二条で国の自給率の向上については既に規定されているのだ。文面にはないんだけれども、この二条の一項から四項までの間に食料自給率の向上は規定されているんだ。それを七条が受けて、国の責務としているんだ、こう理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/68
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069・高木賢
○高木政府委員 今御指摘のありました二条の基本理念の中に、明文では確かに書いてはございませんが、国内農業生産を基本とするとか、不測の事態においても最低限の供給ができるようにするとか、そういった基本理念としては含意されているというふうに思います。
それから七条で、まさに一般的な基本理念にのっとって施策を策定し実施する責務を規定している。そして十五条で、具体的に目標を定め、目標を定めるということは当然、低い流れに任せるということではありませんので、当然のことだということで、あえて向上という言葉は使っておりませんが、目標は現状より高く設定して、それを目指す、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/69
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070・漆原良夫
○漆原委員 私も、そういうふうな読み方をするのが、この基本法の条文上正しいだろうなという認識を持っております。そうだとすると、この基本法は、二十一世紀の我が国農政の指針というべき、憲法というべき基本法でございますが、最も我が国として取り組んでいかなければならない自給率の向上、そしてその数値目標、これは我が国としては一番重要な問題ではないのか、こう思うのですが、こういう問題。言葉として、自給率の向上を目指すとか、あるいは数値目標をこれこれだというふうに国家として取り組んでいくんだという姿勢をなぜこの基本理念のところで示さなかったのか、明記しなかったのか。その辺の理由についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/70
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071・高木賢
○高木政府委員 これは、理念というものの具体化というか、抽象化というか、程度の問題だと思うのです。結局、基本理念ということですから、かなり普遍的なものを規定しようという基本的な規定の仕方に関する態度として臨んだ結果、やはり国の食料の安定供給のソースとしては、国内の農業生産を基本とする、そしてそれに輸入と備蓄を適切に組み合わせるということで、簡潔にその趣旨をあらわしたということだと思います。そして、その国内農業生産の維持増大を図り、それを通じて食料自給率の向上を目指すということは、その中に意味として含まれているというふうに整理をしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/71
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072・漆原良夫
○漆原委員 私は、食料自給率の向上ないし数値目標を基本理念のところで明記しなかった、そのために、この基本理念が国及び地方公共団体のいろいろな責務を規定したり、あるいは農業者、事業者、消費者に努力、協力を呼びかけている、だけれども表現が非常に平たんで抽象的であって、政府の意欲が十分に我々国民に伝わってこない、こんな感じを受けております。
具体的には、二条二項で、食料の安定的な供給については、「国内の農業生産を基本とし、」こう規定されておるわけです。しかし、国内の農業生産量がどの程度の量が必要なのか、これはやはり自給率の目標を決めなければ出てこないんじゃないか、こう思うのですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/72
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073・中川昭一
○中川国務大臣 基本計画の中では、品目ごとの農産物の自給率、あるいはそれに必要な農地等の数値を出そうとしておりますけれども、現在の四一%が五年後に例えば何%になるのかとか、あるいは各品目について何%になるのかというようなことにつきましては、法律の中に、努力目標といいましょうか、目標の設定を書き込むというのは、基本法であるがゆえに、一般法としてもそうなんだと思いますが、かなりこれは、目標ではありますけれども、ですから実現可能なものについて何とか実現していかなければならないわけでありますが、自然、生き物、あるいは経済的要因、内外のいろいろな要因があって、法律そのものにかちっと書き込むということはなかなか難しいのではないか。
先生のお気持ちはよくわかるわけでございまして、ですから、基本法に基づく基本計画、これは基本計画でございますから行政の責任でやるわけでございますけれども、基本計画は法律に基づき、その法律は、行政が政治に対して責任を負っておる、国会に対して責任を負っておるわけでございますから、そういう意味で「基本とし、」という中には、目標、少なくとも現在よりも実現可能なぎりぎりの高い数字を設定していくということとミックスでもって、これは国の責任において、関係者の皆さん方の御理解もいただきながら、国民全体の御理解もいただきながら、何としても基本計画の中で達成をすべく努力していくべきものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/73
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074・漆原良夫
○漆原委員 十二条に消費者の役割、こういう項目がありまして、「消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深め、食料の消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。」こういう条文があるんですけれども、これを読んで、そうだ、そうかというふうにわかる消費者の皆さんは多分いらっしゃらないのじゃないかなと。何をすればいいんだろうというふうに思うのが普通だと私は思うのですね。多分これは、食料自給率の向上というのが頭にある、食料自給率の向上は消費者の協力なくしてはできないんだ、だからそのために消費者の役割としてこういう協力をしてもらいたいということの条文上のあらわれだと思うのです。だとすれば、やはり国として政府として、自給率向上のために協力してもらいたいという呼びかけを消費者に対してもっとはっきり意思表示すべきじゃないのかな。自給率の向上という項目がないために、こういう抽象的な漠然とした条文にならざるを得なかったのじゃないかなという気持ちを持っておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/74
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075・高木賢
○高木政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、基本理念というところの取りまとめ方といたしましては、やはり理念的なものとして整理したわけでございます。
今御指摘のありました、消費者の役割のところも、表現としてはちょっとわかりにくい面もございますが、これも法制上の先例に従った表現になった次第でございます。
今先生がおっしゃいました、具体的な実践的な目標としては、まさに基本計画ということで位置づけておりまして、その三項でも、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として云々、定めるということでございます。まさに基本計画をそういう積極的、実践的なものとして位置づけるということで、抽象的な理念なり総則の規定を少しでも具体化しようということで取り組んで規定したという意図でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/75
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076・漆原良夫
○漆原委員 十五条では、政府は、基本計画を定め、その中で食料自給率の目標を定めることにしておりますね。しかし、国の安全保障にもかかわる食料自給率の目標については、単に個別の品目の生産を需要の積み上げによって設定するということではなくて、国家として、最低これだけ必要なんだという目標を掲げて、その目標に向かって必要な施策を講じていくという、要するに合目的的といいますか、そういうふうなやり方の方がいいんじゃないかな。
私は、二十一世紀の我が国農政の指針ともいうべき本法には、国として実現すべき最終的な自給率の目標数値を明確にして、基本計画に定める自給率の目標というのは、その最終目的達成のための段階的な目標と。ですから、基本理念における目標は、何%かわかりませんけれども、これを十五年後とか二十年後という長い期間に考えて、そして基本計画に定める目標は二年ないし五年の短い期間で考えていく、そんなふうにすべきではないのかなと思います。
また、自給率の向上は、単に政府の努力だけによって向上するのではなくて、地方公共団体、農業者、事業者、そして消費者の努力が不可欠であります。
自給率の目標数値を本法に明記して、政府全体が、あるいは国会も含めて国家全体が取り組んでいくという姿勢を明確にした方が、消費者も含めて国民総意の形成になるのではないか、こういうふうに今でも思うんですが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/76
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077・高木賢
○高木政府委員 私どもがこの自給率の目標というものを掲げるに至りました間には、大変な議論がございました。目標まで掲げるべきではないという議論もありましたし、掲げて本当に達成できるのかという議論もありました。
結局、そこはやはり、計画経済ではなくて、あるいは統制経済でもない、消費者の選択の中でいかに国産の農産物を買ってもらえるか、使ってもらえるかということをどう進めようかということであったと思います。
しかしながら現在の状況を見ますと、もはやそういうことも言っておれない、やはり少しでも高くしていかなければいけないということで目標ということを掲げたわけでございますが、そういった食料自給率というものが計画的、統制的に管理できないという前提のもとでの目標でありますから、やはり道路とかあるいは港湾の整備のように、即物的に、あらかじめ何かがあって、それを何年かで達成していく、こういう手法はとりがたいのではないかということで、目下、何が本当に現実的に実現可能なのかということで、積み上げの準備作業をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/77
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078・漆原良夫
○漆原委員 確かに、おっしゃるように、自給率は政府の力だけでは到底なし得ないところであります。
それはよくわかっておりますが、目標を掲げて、達成できないからといって、だれも政府の責任だというふうには私は考えないと思います。むしろ、何回も申し上げるように、目標をきちっと掲げることによって消費者の意識を変更していくという、自給率が大変なんだ、自給率向上を達成していく、自分たちもやらなきゃだめなんだというふうに消費者の意識が変わってくるんじゃないか。そこに期待をするということも、政府としての大きな意思表示の一つではないか、こう思っております。
それはそれとして、政府としては、自給率は大体どのくらいのところが相当だというふうにお考えになっているんでしょうか。もしお答えできれば、お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/78
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079・中川昭一
○中川国務大臣 基本的には、高ければ高いほどいいと思うわけでありますが、日本の耕地面積は約五百万ヘクタール。農林省の統計によりますと、仮に一〇〇%自給するためには千七百万ヘクタールの農地が必要だということでございますから、これは、とても今から千二百万ヘクタール余計に農地を造成するというのは、実現困難なことだろうと思います。
しかし、四一%、去年が四二、そして昭和三十五年が七九、こういう下がり続けてきている状況を何としても阻止し、そして上向きにしていかなければならない。前回、当委員会でもお話がありましたが、イギリスなどは、一時かなり低くなって、それを、今やもう一〇〇%を超える自給率になるように国民的な努力をされたわけでございます。
そういう意味で、高ければ高いほどいいのでありますが、では、いきなり何十%といっても、これは実現不可能な数字を挙げても、国の責務という観点からしてもなかなか難しいものがあるわけでございまして、品目ごとに、消費者ニーズ、あるいは技術的な側面、さらには生産者の皆さんの御努力等々をかなり細かいところまで検討をして、その上で積み上げていった結果が、最終的なカロリーベースの自給率ということになるんだろうと思います。そこには当然農地の裏づけというものもあるわけでありますが。
そういう意味で、現時点では、まだその作業も、今これから法律を成立させていただいた後、新しい審議会の御議論も踏まえなければなりませんし、気持ちとしては、できるだけ高くという気持ちは私自身持っておりますが、現時点で根拠もなく何%と言えるだけの自信がございません。
この部分は、かなりお願いベースといいましょうか、理解、精神的な部分も含めた、食べ残しの問題とか、日本型食生活への回帰、普及といいましょうか、独裁国家なら、あしたからこういうものは食べちゃだめ、こういうものを食べなさいとできますけれども、日本ではとてもそれを押しつけるわけにもいきませんので、子供たちの教育、普及も含めまして、日本型食生活の普及も自給率の向上に役立っていくと考えておりますので、そういう意味で、総合的にできるだけ自給率を上げていきたいという気持ちでいることだけは御理解をいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/79
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080・漆原良夫
○漆原委員 今大臣おっしゃった日本型食生活の普及は、ぜひ努力をしていかなければならない問題だと思っております。
さらに、具体的には、学校給食、大分日本食になっているようでございますが、学校給食をできるだけお米を中心としたものにしたらどうか、あるいは、飼料米をもっと国内で生産するようにしたらどうか、こんなふうな提案がなされておりますが、これについては政府としてどのように取り組んでいかれるのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/80
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081・堤英隆
○堤政府委員 米飯給食につきまして、私の方からお答えを申し上げます。
米飯給食は、御指摘のようにお米の消費拡大ということは当然でございますけれども、子供のころからお米を中心とした食事内容に親しむということで、そういう意味では、中長期を見据えた日本型食生活の定着、お米の消費拡大ということに非常に役立つというふうに理解をいたしております。
そういう形で、さまざまな対応策を講じてきたわけでございますけれども、現在では、学校給食実施校で三万二千校余り、要するにもう九九%ということで、ほぼ一〇〇%に近い数字になっております。それから、消費量は約十万トン程度ということで推移をいたしております。週平均実施回数は全国で二・七回ということでございますけれども、最近は大体横ばいでございます。ただ、地域的に見ますれば、大都市の方が低いという状況でございます。
こういった制度の実態を踏まえながら、値引き措置等につきましては最近見直しをいたしております。そういう意味で、新たな視点に立ちました推進措置を講じておりまして、今後とも、今おっしゃいましたような形での、日本型食生活の定着ということに役立つものでございますので、積極的な、着実な推進を図っていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/81
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082・漆原良夫
○漆原委員 それでは、農業の担い手と農地の確保についてお尋ねしたいと思うんです。
この法二条は、食料の安定供給の確保について規定しております。私は、四条で明記されている農業の担い手の確保と農地の確保というのは、法二条の食料の安定供給の確保の下支えとなっている大変重要な条文であろう、こういうふうに思っておりますが、まず、農業の担い手について、二十一条は「国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立する」、こう宣言しております。
ところで、平成四年六月の新政策で、十年後の稲作を中心とした農業構造が明記されておるわけでございますが、これによりますと、個別経営体が三十五万から四十万。組織経営体が四万から五万。稲作経営については、単一経営、十から二十ヘクタールが五万戸、複合経営、五から十ヘクタールが十万戸。それで、十から二十ヘクタール経営規模の稲作に占めるシェアは五割というふうな展望がなされております。
現状は大変厳しい実態となっておるわけでございますが、現状をまずどのように認識しておられるのか。
それから、農業就業人口が現在三百九十三万、それで十五年の間で百五十万も減っているということになっております。しかも、現在の平均年齢が六十歳という、まさに定年退職の時期を迎えているわけでございます。
従来から進めてきた構造政策に対する総括と、今後の展望をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/82
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083・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今御指摘がございました農業従事者数でございますけれども、平成四年当時、新政策におきまして、今先生が数字を挙げられましたように、平成二年、三百十三万人が、平成十二年、二百十一万人と、年間大体十万人規模で減少していくというふうに見込んだわけでございます。現状をお話し申し上げますと、データの接続の関係で多少数字が違うわけでありますけれども、販売農家ベースですと、近年の減少度合いは年間約六万人ということでございますので、まあ、新政策のスパンに入っているかなというふうに思っております。
新政策の時点で認定農業者制度を発足させまして、今、認定農業者数が十四万、それから、各市町村が立てております構想ではこの数を三十万人に持っていくというふうなことでございますので、そういう点では、目下途上ではございますけれども、そうした効率的、安定的な経営体が農業生産の相当部分を担うというコースに向かって今走っているところというふうに考えておりますが、今後ともなお、そうした望ましい農業構造の実現のために、金融面、補助の面あるいは農用地の集積等々につきまして、地域の実情に即した支援を進めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/83
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084・漆原良夫
○漆原委員 次に、話題は変わりますが、二十二条は農業経営の法人化という方針を打ち出しておりまして、農政改革大綱では、農業生産法人の一形態としての株式会社の参入を認める、こんなふうな内容になっております。
しかし、昭和三十七年の農林事務次官通達では、株式会社は、株式の自由譲渡性を本旨とするため、共同経営的色彩の濃い農業生産法人制度になじまず、かつ、農業生産法人の要件を欠くことになる危険に不断にさらされることにかんがみ、農業生産法人に含めないこととした、こういう経緯があるわけでございますけれども、株式会社は、株式の譲渡が自由な資本形成の最たるものでありますけれども、そもそも農地法の耕作者主義の原則に照らして、この株式会社の参入を認めることが法的整合性を欠くことにならぬのかという心配があります。この辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/84
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085・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 御指摘がありましたように、昭和三十七年当時は、商法の規定でも、株式の譲渡は自由というのが原則でございました。実は、昭和四十一年の改正によりまして、商法二百四条一項にはただし書きが付されまして、株式の譲渡に当たっては取締役会の承認を要する旨を定款で定めることが可能となったわけでございます。我が国に株式会社はおおよそ百十万社ございますけれども、その大部分はこうした定款の定めを置いて株式の譲渡に制限を加えているというふうに私どもは推定をいたしております。
そして、このような定款の定めを置きました場合には株の上場はできない、それから株券の券面にはこの株式は譲渡が制限をされている旨が明記をされるということでございますので、不特定多数の者に転々流通をするということは私どもは防止をされるのではないかなというふうに思います。
万が一、例えば質流れ等によりまして株式が第三者に渡った場合には、そういった券面の記載がございますので、株主総会におきまして議決権の行使等ができないということで、農業生産法人に対する介入ができないという仕組みになっております。私どもは、この規定を活用しますれば、農業生産法人という地域に根差した農業者の共同体である法人、これの一形態として株式会社を導入することは検討に値するのではないかと考えておりまして、今、検討会をつくりまして、この夏を目標に、懸念を払拭するための措置について具体的な検討を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/85
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086・漆原良夫
○漆原委員 確かに、二百四条一項ただし書きは、自由譲渡の例外として、「取締役会ノ承認ヲ要スル」というふうにした条文があります。ただこれは、株主、会社で決めることであって、会社で決めなければそういうただし書きはつかぬわけですね。今おっしゃったことを徹底するとすれば、株式会社の参入を認める条件として、必ず定款にその旨を付すべし、こういうふうにならざるを得ないと思うのですが、その辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/86
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087・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 手法としてはそのようなやり方になろうかと思います。同時に、農地法サイドで、農業生産法人としての要件、これは農業を行っているとか、農業生産に常時従事する者がいるとか、そういったもろもろのものがございます。とりわけ、構成員がどういうものであるかというふうなこともきちんと決めたいと思っておりますし、そういう点もあわせまして、懸念を払拭するための措置に万全を期したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/87
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088・漆原良夫
○漆原委員 定款で取締役会の承認を要するというふうに決めた場合に、結局それは、取締役会が正常に作動している場合は確かにそのとおりなのでしょうが、正常に作動しない、要するにどんどん承認をしてしまう、こういうふうになった場合にはこれは全く今おっしゃったことにならないのであって、そういうふうに無制限に譲渡承認をするような取締役会の、そういう事態を防ぐようなことは考えるのでしょうか、考えないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/88
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089・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 先ほどの答弁でちょっと触れさせていただきましたけれども、組織形態としての株式会社という問題と同時に、農業生産法人の要件というものをきちんとしていきたいと思っております。
現に、農業生産法人では、その構成員の大多数が農業者でなければならないとか、あるいは農業を現にやっていなければならないとか、あるいは役員の構成が農業に常時従事をする人を含んでいなければいけないとか、そういうことが決められておりますので、例えば、今先生がおっしゃったような、野方図に取締役会が承認をしたような場合には、そうした農業生産法人固有の面での要件を欠くことになるわけでございます。
同時に、農業生産法人としての要件を欠きました場合には、農業委員会によりましてその要件を欠いた旨の公示をする、あるいは要件が合致するように指導する、さらには要件をきちんと具備している方にその持ち分を譲渡する、あるいは農地を譲渡する、そしてさらに、それらが全く機能しないような状況におきましては、国がその農地を買収するというふうなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/89
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090・漆原良夫
○漆原委員 商法は、株式会社の場合には、もしも譲渡の承認を取締役会がしない場合には、これにかわるべきもの、被譲渡人、これを指定しなければならない、こういう条文になっていますね。これが一定期間に指定できなかった場合には承認したものとみなす、こういうふうな形態になっておるわけでありますけれども、そうなった場合に、果たして農業者が新しくその株式を買える態勢にあるのかないのか、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/90
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091・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 幾つかのことが考えられると思います。そういった地域の中で適格者に構成員として入っていただく、あるいは農地を適格なる法人に譲渡をする、さらには、平成六年の商法改正によりまして自社買いという制度もできましたので、当該農業生産法人が持ち分をみずから買い取るというふうなことで、その組織が崩れていくのを防止するというふうなことも可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/91
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092・漆原良夫
○漆原委員 もう一つ、先ほどおっしゃった、生産法人の形態を欠くような事態になった場合には買収措置の発動をするというふうなお話があったわけなのですが、既にもう死んでしまったような生産法人、これを買収するというのは簡単だと思うのですが、現に生きて活動をしている株式会社、これに買収措置を発動するということは、会社にとってみれば死刑の宣告と同じようなことで、大変な事態になるわけですね。
そうすると、必ず訴訟になったり、手続が非常に厄介になります。そういう事態に対応できるだけの農業委員会の実態があるのかな、こんなふうに思います。会社の場合には法務部なんかがあってしっかりしているわけですけれども、多分農業委員会はそんなところまでは組織が備わっていないだろう。そうすると、弁護士に依頼したり、長い間裁判をしたりしていかなければならない、非常な負担を伴うわけですね。本当に作動できるのだろうか、そういう心配がありますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/92
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093・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 御指摘のような事態は、ある日突然出てくると非常にやりにくいわけでありますけれども、農地法の規定によりまして、農業委員会は、農地の権利取得の許可をする場合に、その後十年間報告を求めて常時監視をするシステムができております。現に、農業委員会では、そうした方向で十カ年間の経営状況の報告等を求めているところが多いわけでございます。こういった制度を十分に活用し、道を誤らないような指導を常時やっていくということがまず一番肝心だろうと思いますし、実際に、もし不測の事態が起きました場合には、農業委員会、年間に二万から三万件の農地の移動のあっせんをいたしておりますので、この中で蓄積されましたノウハウを通じまして、適格な者に農地をあっせんしていくというふうなことを期待いたしたいと思います。
今回の生産法人の検討の中でも、そうした面で、農業委員会の機能、役割について、これを充実強化させる方向で議論がなされているところでございますし、最終的には、幾つかのステップを踏みまして、国家による買収というのも過去に例がないわけではございませんので、発動いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/93
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094・漆原良夫
○漆原委員 確かに、過去に一回例があったわけですね。この例は、農業生産法人が経営不振に陥って耕作放棄されている、こういう状態、ある意味ではもう死んでいる状態なのですね。
私、先ほど申し上げたのは、生きている状態の株式会社、それに死刑宣告ができるかという観点で申し上げたのであって、重大な損害を相手に、その会社に与える決定を農業委員会が本当にできるのだろうか。結局ずるずると黙認、追認といいますか、そういう事態になっていくのではないのかなという心配、結局のところ、買収措置が発動できずに農業生産法人が形骸化していくのではないか、こういう心配を持っておるのですが、本当に裁判をしてきちっとやれますか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/94
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095・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 今農業生産法人制度の検討会で議論になっておりますのは、先ほど御紹介いたしましたように、農業委員会のこれまで果たしてきた機能あるいは農業委員会の持っているノウハウ、これをフル発揮できるような措置を講ずるということと同時に、やはり常時その現場にいる方々が、当該農業生産法人がどういった営業活動、生産活動をしているかということをウオッチする、監視するシステムが大事でございますので、JAにも入っていただき、あるいは市町村にも参加をしていただいて、地域全体として、そういうことが生じないような、むしろ未然防止に力を入れるというふうなことで対応したいと思っておりますので、そうはならないような方策を、もう少しお時間をいただいて検討会で議論を深めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/95
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096・漆原良夫
○漆原委員 私はなった場合のことを言って、局長はならないようにということをおっしゃっているので、ちょっと議論がかみ合っていないのですが、ぜひそうならないようにしっかりした措置を講じていただきたいことを申し上げておきます。
農地の確保についてでございますけれども、基本問題調査会の中間取りまとめ、平成九年十二月ですけれども、こう言っております。「農地は、農業生産にとって最も基礎的な資源であり、かつ、いったん毀損された場合、その回復には非常な困難を伴うことから、良好な状態で確保していくことが必要である。このため、国民にとって最低限必要な栄養水準を検証し、これに必要な農地総量を明確化すべきである。」こういうふうになっております。しかし、今回の基本法では、農地総量に関する明確化の条文はありません。なぜ農地総量の明確化とその確保についての記述が基本法にないのか、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/96
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097・高木賢
○高木政府委員 国内の農業生産に必要な農地の確保という考え方につきましては、二十三条で明記をいたしております。具体的な数値につきましては、食料自給率の目標ということで、基本計画に明記することにいたしておりますが、具体的に何をどうつくっていくのかということで、個々の作目別に生産努力目標をつくるということを考えておりますが、そのために必要な作付面積それから耕地利用率、こういうものを勘案した上での農地面積は基本計画の中で明らかにするということを検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/97
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098・漆原良夫
○漆原委員 ここも自給率と同じようにすれ違いになるのだろうと思うのですが、やはり自給率に対する国の目標がはっきりしないということで、逆に、その達成に必要な農地総量が算出できないということになっているのではないかな、こういうふうに思います。だから、先ほど自給率で申し上げたとおり、やはりこれも自給率の目標をきちっと定めて、それに必要な農地総量も明確にすることによって、国民全体がこの問題に取り組んでいくのだ、そういう姿勢を示すべきではないのかという、私の気持ちだけをまず申し上げておきます。
これもお答えになれないのかもしれませんが、今政府は、大体でいいのですけれども、安定的な食料の供給のためにはどのくらいの農地総量が必要だというふうに考えておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/98
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099・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 先ほど官房長からお答え申し上げましたけれども、作物別に、必要な農地を積み上げてまいりますと、例えば麦であれば、裏を使って耕地利用率を高めるというふうなこともございますし、現に十六万ヘクタールある耕作放棄地をどう解消するかというふうなこともございまして、私どもとしては、この具体的な数字につきましては、基本計画の策定と同時に、これを積み上げの形で示していきたいと思っているわけでございます。そうした農地のうち、とりわけ優良農地につきましては、農振制度の中で、これは線を引いて、そしてその中では原則として転用はさせないというふうな形での確保をする、あるいは線引きもしくは農地の転用については、法律によってその許可基準を明らかにするというふうな方向で、国全体としての農地の確保の指針を、今回お願いしております農振法の改正の中で明らかにしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/99
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100・漆原良夫
○漆原委員 今おっしゃった、耕地放棄地が十六万ヘクタールに及んでいる、これについて、放棄地の解消に向かっての政府の取り組み方をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/100
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101・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 取り組むべきポイントは幾つかございますけれども、まずは、やはり現場に即して、具体的なアクションプログラムを市町村段階でつくるということではないかなというふうに思います。それから同時に、耕作放棄が生じている一番の要因というのは受け手がないということでございますので、やはり対策として担い手をしっかり養成していく、そしてすぐに担い手のところに行かないようなケースについては、農地保有合理化法人等を通じて、一定期間、これを管理耕作をする、相手が見つかるまで保全をするというふうなことを重視したいと思っておりますし、運動としては、現在、日本各地に約八万人の農地流動化推進員がいらっしゃいますので、これも地域によって相当な成果を上げているところもございますから、そういった優良事例を紹介しながら、この八万人の方々がより一層活発に耕作放棄の解消に向けて取り組むような、そういう雰囲気といいますか、環境をつくりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/101
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102・漆原良夫
○漆原委員 次に、農産物の価格の形成と経営の安定についてお尋ねしたいと思います。
新しい基本法の成立に今一番不安を感じていらっしゃるのはむしろ専業農家ではないのかな、こういうふうに思っております。それは本来、意欲ある担い手を育成、確保することが本法案の柱の一つでありますから、専業農家の方は最もこの法案の成立に期待しなければならないところであります。しかし、現実には、本法が価格政策から撤退して市場原理の導入を明確にしているのに、その受け皿となる経営、所得対策が抽象的でその姿が見えてこない、関係者からはこんな声が聞こえております。
価格を市場原理に任せるのであれば、それにかわるフォローがないと大規模専業農家はやっていけない、また、再生産可能な所得を下支えする仕組みがないと、将来が見えず、担い手または後継者は育たない、こんなふうに指摘されておりますが、この指摘に対する感想をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/102
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103・高木賢
○高木政府委員 農産物の価格形成につきまして、市場原理を導入するということが一方にございますが、同時に、価格低落時におきましても、育成すべき農業経営が安定的に営農を継続できるようにするということが重要でありまして、三十条には一項に加えて二項を特に置いているわけでございます。これは、今当面は、生産流通実態等が異なりますので、品目別に順次具体的な政策化を進めているということでございます。
既に、麦と牛乳、乳製品につきましては、関係者の御論議の結果、新たな麦政策大綱並びに新たな酪農・乳業対策大綱ということで、価格政策の見直しとあわせて、経営安定措置の内容、実施についての方向づけを行っております。これは生産者団体の皆様方とも十分御相談の上でき上がったものでございますが、さらに現在その具体化のための作業を進めております。
また、大豆につきましても、現在研究会でそのあり方につきまして検討を進めておりますが、本年秋の価格決定までに施策の見直しの方向づけを、これも関係者の御議論を経てやっていくということでございます。
その際に、まさに今おっしゃいました育成すべき農業経営の安定的な営農ということは十分考慮してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/103
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104・漆原良夫
○漆原委員 そこが明確でないということで非常な不安を感じているわけでありますので、一日も早く策定していただいて、将来の展望が持てるような数字として示していただきたい、こう申し上げておきたいと思います。
EUは、介入価格を引き下げて直接所得補償単価を引き上げるなどリンクさせて、具体的な内容を農民に提示して改革を進めております。また、米国の九六農業法でも、不足払い制度を廃止して、農業に対する直接固定支払い制度を導入して、それぞれ農家が価格の変動によって打撃を受けないよう安全措置を講じております。
日本にもEUや米国と同じく何らかの最低価格支持の仕組みが必要であると考えますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/104
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105・高木賢
○高木政府委員 アメリカ、EUにおきましても価格政策の見直しに伴いまして直接支払いが実施されております。また、介入価格制度というものもそれとは別に持たれておるという状況にございます。
先ほども申し上げましたが、具体的に個別の品目ごとに価格政策の見直しと経営安定措置、対策の検討を進めているわけですが、やはり日本の場合には、これまで需要者のニーズあるいは消費者のニーズというものが生産者に的確に伝わりにくかったという事情もございます。そういう事情も踏まえ、また経営安定の見地も考えながら、個別品目ごとの我が国の実態に即した制度のあり方というものを検討していきたいと思います。
その際、アメリカなりEUでどういうことが行われているかということは、当然いろいろと検討過程で勉強をするわけでございますが、そのとおりにした方がいいかどうかということにつきましては、あくまで我が国の実態に即して考えるべきであろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/105
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106・漆原良夫
○漆原委員 農政改革大綱では「個々の品目ごとではなく、意欲ある担い手の経営全体を捉えた経営安定措置の導入について検討する。」こういう一項目があるのですが、具体的にはこれはどんなことをお考えになっているのかお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/106
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107・高木賢
○高木政府委員 農業経営全体を単位としてとらえた経営安定措置といいますものは、個別の農産物の価格、あるいは販売収入ということではなくて、経営として複合経営を行っていたりする場合が多いわけでございますが、経営としての農業収入あるいは所得を考慮して、それが著しく低落した場合に経営安定を図る、こういうイメージでとらえております。
しかしながら、今の実態は、先ほど来申し上げておりますが、品目によって価格政策の手法なり、市場形成の程度なり、あるいは国境調整措置というものがさまざまでございます。また、営農類型によっても投下資本、あるいは、先ほど来も出ておりますが、いわゆる収益率、所得率といったような経営構造が大きく異なっております。したがいまして、当面まず価格政策の見直しに伴います経営安定措置というものは、先ほど来言っておりますように、品目別に講じていくということで、麦と酪農、乳製品につきまして大綱ができた段階ということでございます。
したがいまして、現在のところは経営単位の安定措置の導入につきましては、まさに品目別の価格政策の見直しや経営安定措置の実施状況を見ながら、今お話のありました諸外国の措置も参考にしながら検討を進めてまいりたい、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/107
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108・漆原良夫
○漆原委員 それでは、最後の項目に移ります。
中山間地等における直接支払いの導入についてお尋ねしますが、三十五条では中山間地域等における農業の生産条件に関する不利を補正するための支援を行う、こういうことでこの地域における直接支払い制度の導入をうたっておりますが、まず大臣に、そもそもこの中山間地域等における直接支払い制度の導入、この地域になぜこの制度を導入するのか、その根拠についてまずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/108
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109・中川昭一
○中川国務大臣 三十五条の中山間地域等の振興ということでございますが、農業が果たすいろいろな役割、生産活動あるいはいわゆる多面的な機能といったものは中山間地域でも役割が非常に大きいという認識を持っております。一方、生産条件が非常に不利であるということで、中山間地域だから逆にいいものができるという部分もあるわけでありますから、物の品質ではなくて生産条件が非常に悪い、さらには定住条件、いろいろあるわけでございますけれども、そういう地域をともすれば離れて、山からおりてきて都市に住んでということになりますと、そこの果たしております生産サイドだけではない多面的な機能を放棄することによる国土の荒廃あるいはまた耕作放棄地、林地の荒廃といった問題が発生をすることを何としても防いでいかなければならないということで、中山間地域に対する直接支払いというもの、これは直接支払いとは法文上書いてございませんが、多面的機能の確保を図るための施策を講ずるという中で、直接支払いというものを現在検討会の方々に御審議をいただいておりまして、この夏ぐらいには予算措置として要求できるように一つの結論を出していただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/109
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110・漆原良夫
○漆原委員 なぜ中山間地域を対象にするのかという根拠について、いろいろ議論もあるところだと思いますが、これまた後でいろいろお聞かせいただきたいと思います。
時間がないので、最後に三点だけ、まとめて聞きます。
一つは、この直接支払いを行う対象地域なんですが、離島、半島も含めるべきではないか。それから、傾斜地、峡谷型農業の中山間地域だけではなくて、遠隔粗放型農業における中山間地域も含めるべきではないか。それから、平地農村もその対象とすべきではないか。こういう意見がありますが、この三点についてまとめてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/110
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111・中川昭一
○中川国務大臣 いわゆる中山間地域等条件不利地域に対する直接支払いでございますから、先ほど申し上げたような例が一番典型的であるわけでございますけれども、それ以外にもどういう形で、生産条件、定住条件が不利で、しかもそこに対しての多面的機能の発揮に役に立つような地域があるということがあるのか、これは今後検討をしていかなければいけない課題だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/111
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112・漆原良夫
○漆原委員 私今申し上げた具体的な、離島、半島、遠隔粗放型農業における中山間地域、それから平地農村、これは今後の検討課題だということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/112
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113・渡辺好明
○渡辺(好)政府委員 三つ御指摘がございましたけれども、第一点目の離島、半島につきましては、この地域におけるいわゆる多面的機能がどういうものであるかという位置づけにつきまして現に直接支払いの検討会で議論が進んでおります。
それから、遠隔地粗放型という点につきましては、生産条件の不利性がいわゆるコスト格差という形できちんと立証されるんだろうかというふうな議論がなされているところでございます。
平地に対する直接所得補償の問題は、グリーンボックスの範疇からいいますと第二の範疇でございますので、先ほど来お答え申し上げておりますように、各種の経営対策の進展状況もしばらく見きわめる必要があろうかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/113
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114・漆原良夫
○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/114
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115・穂積良行
○穂積委員長 この際、休憩いたします。
午後零時五十二分休憩
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午後四時十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/115
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116・穂積良行
○穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。中林よし子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/116
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117・中林よし子
○中林委員 今回の新農業基本法案をめぐっては、一番肝心かなめの中心課題は、四一%まで下がった自給率をどう向上させるか、これが基本的な問題だというふうに思います。
しかし、第一回目の当委員会の審議を通じて、政府が、国の責任で、本気で自給率を向上させる立場に立っているとはとても思えないというふうに私は感じました。
我が党の藤田スミ議員が、本法案の第二条で、食料の安定供給の確保は「国内の農業生産を基本とし、」としているだけで、可能な限りその維持拡大を図るべきという表現が盛り込まれなかった点について質問したのに対して、大臣はこのように答弁をされました。現時点の国内の農業生産が基本になっていないという私の認識からいえば、依然として実態上国内生産が基本になっていないにもかかわらず、こういうことで、今の四一%では国内生産が基本になっていない、こういう認識を答弁されているわけですけれども、そのことは、自給率を上げて初めて国内生産が基本となると言えると思うのですけれども、それでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/117
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118・中川昭一
○中川国務大臣 現在の我が国の自給の実態というのは、各国に比べましても、また日本の実情を将来にわたって判断した場合を考えましても非常に低い。しかも、それが年々さらに低くなっているという状況というのは極めて憂うべき状況だと思います。したがいまして、先日、我が国は、国内の生産を基本としなければならないという二条の文言の状態になっていないというふうに申し上げました。
そこで、自給率を上げるために、二条で、はっきりと強いトーンで、国内生産を基本としという文言を入れ、そして、この法律に基づく基本計画の中で自給率の設定をするわけでありますが、これは、実現可能な、できるだけ高い数字を掲げたいと思っております。その作業は、またこれからいろいろな要素がございますので、その目標設定は少し後になりますけれども、とにかく今よりもできるだけ高い、実現可能な数字にしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/118
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119・中林よし子
○中林委員 藤田スミ議員の同じ質問に対して、さらに、今言われましたように、国内の農業生産を基本としてというのは、維持拡大を図るという表現よりも強い意思が込められているのだと。今もそのように重ねて答弁されたわけです。
それならば、去る四月二十八日に農水省が出しております「次期WTO交渉における対応の基本的考え方」、この農業の項目の第二番目、食料安全保障という項目がありますが、これには「世界最大の農産物純輸入国であり、食料自給率が極めて低い我が国においては、食料安全保障の確保のためには、国内農業生産を食料供給の基本に位置付け、可能な限りその維持・増大を図ることが不可欠である。」こういうふうに明記されております。これは、次期WTO農業交渉において、農水省と自民党との間でもこの基本に基づいて行われるのだというふうにも伺っております。
そうなると、維持増大ということを入れると、その基本としてよりも実は低めるんだと。大臣の今の答弁をお伺いすると、ここに書いてあることは、維持増大と書くということは大臣の意思とはまるで違うじゃないですか。大臣の答弁は農水省の考えとは違う、支離滅裂の答弁だ、このように思うのですけれども、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/119
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120・中川昭一
○中川国務大臣 そのパンフレットのできるだけ高い自給率ということと、条文の中での国内生産を基本としてということとは、趣旨は全く同じで、支離滅裂ではございません。
先ほど申し上げたように、維持増大ということは、極端に言えば、四一%を維持することも目的にかなうわけでございますが、我々は定性的にこの四一%という現状は少なくとも低過ぎるという認識を持っておるわけであります。では、無責任に八〇だ、九〇だ、一〇〇だと言って、高ければ高いほどいいじゃないかということになりますと、これはいろいろな事情、消費者の事情もあり、外国との関係もございますから、また国内の農地の問題もございます、いろいろな問題がございますので、実現可能なという意味で、可能な限り自給率を高くしていくんだという趣旨でございまして、維持増大よりも、それを含んで、さらにより強い意思を示したのが国内生産が基本であるという文言でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/120
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121・中林よし子
○中林委員 私は、大臣の答弁というのは詭弁だと思いますね。本当に純粋に考えて、国内生産を増大しなければ自給率は上がらないということはもうわかり切った話ですよ。その文言を欠落させたということ自体が、私は、大臣が今答弁されるように、それに書き込むことよりも強い意思のあらわれだなどというのは、その法律案を読む国民にとってはそこは感じられないというふうに思いますから、これはどうにでも解釈できる中身ではないかと思います。
百歩譲って、では、今大臣がおっしゃるように、基本としてということで、維持増大というのを落としたということの中身として、今でもこうおっしゃいましたね。維持でもいい、そういうことになれば維持でもいいのだ、さらに引き上げるといっても、〇・何%上がっただけでもいい、だからそういうような無責任なことは言えないのだというふうにおっしゃったわけですね。そうなると、やはり数字を示されないと、私たちは、基本としてというその中身の中にどれだけの意味が込められているかというのをはかり知ることができないと思うのですね。
具体的に聞きます。〇・何%ではいけない、このようにおっしゃっているわけですから、それでは、四二%ならば国内農業生産を基本としてということになるのですか、それとも五〇%になればそうなるのですか。そこの持っている意味合いをぜひお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/121
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122・中川昭一
○中川国務大臣 ですから、品目別に何%までならば可能なのか、そして消費者もそれを受け入れることができるのかということは、これから、この法律案を成立させていただいた後、この法律に基づいて基本計画を策定するわけでございまして、その中でいろいろな要素をこれからやっていく。
まさに二回目の当委員会の御議論でも、何回もこの話が出ているということはやはり大きなポイントの一つだろうと思いますから、そういう国会での御議論の様子も見ながら、そしてまた新しい審議会の御意見も聞きながら、さらにはまた消費者団体や生産者団体の皆さんを初め各界の皆さん方の御意見も聞きながら、とにかく実現可能なできるだけ高い数字にしていかなければならないという、その定性的な言葉を実現していくためにどういうふうにしていったらいいのかということは今後の作業になっていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/122
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123・中林よし子
○中林委員 やはり逃げていらっしゃると思うのですね。この新農業基本法の一番中心は、四一%まで自給率が下がった、これからどう引き上げていくか、政府は国としてどういう責任を持つかということであるならば、今答弁を聞いていると、強い意思を持っているとか今後決めるんだとか〇・何%ではだめだとか、これでは納得できないわけですよ。
では、実現可能な数字とは幾らを考えていらっしゃるのですか。これもこれから皆さんと論議しなければわからないというようなことで基本法が出されたのではないと思うんですよ、裏づけを持って基本法を出されたと私は思うのですけれども、大臣の腹づもりといいましょうか、数字、四二%なんですか、四三%ですか、実現可能な数字。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/123
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124・中川昭一
○中川国務大臣 食料の自給率というのは、あくまでもどのぐらいつくってどのぐらい消費するかということ。しかも、その品目は、これは水産物も含むわけでありますけれども、自然相手、生き物相手でつくる作業でありますから、さらにはいろいろな要素があるわけでございまして、それらをかなり厳しくというか詳しく判断して、そして中期的な目標、一年や二年で先のことでもできませんし、また、なるべくならば目標というものは中長期的な目標としていきたいと思っております。
さらには、どこかの独裁主義の国とは違いまして日本ですから、何かだけを食べなさいとか何かは食べてはいけないというようなこともできません。したがって、国民の食生活の変化というのも自給率が下がった原因の一つでございまして、そういう意味で、お子さんに対する教育も含め、あるいは国民に対する啓蒙あるいは理解も含め、いろいろな形の作業をこれからやっていかなければならないわけでございます。
そういう意味で、国内生産を基本としというのが最終的に何%になっていくかということは、先ほど申し上げたように、いろいろな場での御議論、特に審議会での意見も聞かなければなりませんし、最終的には、そういう場を通じまして、最終的な自給率というものの目標を基本計画の中に設定していきたい。逆に申し上げますと、望ましいのは何%だといえば、それは高いにこしたことはありませんけれども、現時点で私の立場からそれを申し上げることはいたしません。
ただし、それが責任逃れをしているんだろうというふうにおっしゃられるわけでありますけれども、基本計画はあくまでも政府の責任でつくるわけでございまして、責任は政府にあるわけで、実現、達成のための責任は政府にあるわけでございます。
しかし、また話が戻りますけれども、政府だけでは実現は、これは何%だから食べろ、食べるなというようなことを我々は言う権限のない、自由な体制の国でありますから、そういう意味で、各界の御理解をいただきながら、目標の実現に向けてみんなで努力をしていかなければならない、これが国益にかなうことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/124
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125・中林よし子
○中林委員 やはり言い逃れ、責任逃れの答弁にすぎないと思いますよ。それは、今まで私たちが経験を持っていないならば、今大臣がおっしゃったような、自然条件がどんな条件が来るかわからないとか、国民はどんなものを食べるかわからないとか、いろいろなことの条件は多々あるでしょう。だけれども、今まで私たちは営々と生活してきている。いろいろな自然条件のもとでもやってきた。この現行の農業基本法ができたときには七〇%台の食料自給率があったんです。それがこんなに低下しているわけだから、今までの農政の中の経験を見れば、自給率はどうやれば上がる、それは数値目標として当然出されるべきだというふうに思います。もちろん、食べる自由だとかつくる自由だとか、そういうのは保障されなければならないと私は思います。だけれども、それさえも、食べる自由さえも、あるいはつくる自由さえも現行農業基本法のもとでも奪ってきたのが政府の責任だ、このように私は思います。
これは、もうどんなに論議しても水かけ論になりかねないので、今度の新農業基本法をつくるに当たって、いわば真髄が食料の自給率、しかもそれをどこまで高めていくか。今後の計画にまつというんじゃなくて、国の責任において国民にしっかりと示していくというのが一番の出発でなければいけないということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。
そこで、今日までの自給率の低下の原因です。これをやはりはっきりさせなければ、では、どういうふうに上げていくかという次の政策も出てこないと思うわけです。そうなると、現行の農業基本法、これの功罪をはっきりと分析しなければならないと思います。
現行の農業基本法ですけれども、これは、大きな柱の一つに選択的拡大というのがあったと思うんですね。アメリカの余剰農産物を大量に輸入することが前提になって、その邪魔にならない品目、そういうものを日本でつくっていこうというようなことだったと思うわけですけれども、今日まで自給率が下がった原因、現行農業基本法の功罪においてどういうぐあいに考えていらっしゃるのか、答弁を求めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/125
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126・中川昭一
○中川国務大臣 昭和三十五年当時の自給率が七九%、大体一年で一ポイントずつ下がってきたということに単純に言うとなるわけでありますけれども、自給率の低下についてどう考えるかという御質問でございますから、そのことだけに絞ってお答えをさせていただきます。
一つには、国民が非常に豊かになっていって、食生活が、よくほかの国でも見られるわけでございますけれども、市場から、鳥肉、豚肉、牛肉へとだんだん供給熱量、カロリーの高い品目へとシフトをしていく、あるいはまた、世界のおいしいといいましょうか珍しい食品をどんどん世界じゅうから輸入していくといった、消費者サイドの予想せざる行動といいましょうか、実態があった。
さらには、生産者サイドの方で言いますと、生産性が上がってはきておりますけれども、他産業との格差が是正されていない、あるいはまた、現在もそうですけれども、都心に比べて農村部の、特に生活基盤の格差がまだまだ大きいものがあるといった中で、若い人の就業が少なくなってきた、過疎化、老齢化が進んだといったようなことで、生産性はもちろん上がってはおりますけれども、全体として、生産者サイドにいろいろな問題が発生をしてきている。
消費者サイドにも、先ほど申し上げたような多様なニーズというものがあるということのミスマッチから、特に一番典型的なのは肉だろうと思いますけれども、国産の肉を飼育するに当たりましても、そのえさとなるものはほとんどが輸入であるということになりますと、国産牛とはいいながらもえさは輸入だということで、だんだん穀物自給率も二八ポイントまで下がってきておる。こういうようなことが自給率が下がってきた原因ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/126
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127・中林よし子
○中林委員 今お話を聞いていると、消費者がまず食べるものが変わっていった、それから、農業者が、都市の労働者との格差が広がって、なかなか農業をする人が少なくなったんだ、若者が引き継がない、年寄りばかりが多くなったなどなど、本当に政府の責任というものをどのようにお考えになっているのか。それら一つ一つの現象面は、私は、現行農業基本法のもとで、政府の政策のもとでつくられたものだというふうに言わざるを得ないと思います。
先ほど、現行農業基本法が選択的拡大にあったということで、アメリカの余った農産物に邪魔にならないものだけはつくってもいいけれども、例えば、小麦だとか大豆だとか、そういったものは日本でつくらせないということが現行農業基本法のもとでだあっとやられた。
だから、例えば小麦などは、一九六〇年には自給率三九%だったのが、現在は九%まで落ちた。それから大豆も、二八%あったのが、現在は三%まで落ちた。牛肉などは、関税化で自由化になる一九八〇年代、七二%、それが、九〇年のさらなる関税率の引き下げによって五一%、現在三六%まで下がったということですよね。
私どもが、特定農産加工業経営改善臨時措置法の改正案の審議の際に、政府の提出資料、これを見ましても、一九八八年の日米合意による牛肉・オレンジ、農産物十二品目の自由化による製品輸入の増加と国内生産の減少、これが一覧表になって出されました。
これなどを見ても、かんきつ果汁などは、平成元年には一万九千トンだったわけですが、平成九年には五倍の輸入量、九万六千トンになり、国内生産は、平成元年には四万一千トンだったものが二分の一の二万四千トンまで落ち込んだ。これは、かんきつ果汁だけの例ですけれども、その他いろいろ品目別に、自給率がこの牛肉・オレンジ、農産物十二品目の自由化によってどういうふうに変化したかというのは、政府の資料でも明らかになっているわけですね。これで消費者の方の嗜好が変わったから落ちたんだ、こういうことが言えますか。自給率低下の原因が農産物輸入自由化にあったということは、これでも否定されるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/127
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128・中川昭一
○中川国務大臣 例えば小麦ですと、まずパン食の普及ということがどうしても日本産の小麦では対応できない、あるいは、オーストラリアあたりから、日本の綿羊に専門的に合う小麦を大量につくって輸入をしてきたというような個々の事情がいろいろあるわけでございまして、やはり、消費者だけの問題として先ほど申し上げたわけではございませんけれども、食生活、食文化の変化というものも大きな自給率低下の要因ではないかと。
先日、藤田委員がイギリスの例を出されておりましたけれども、イギリスも一時大変自給率が下がって、それから努力をして相当上がってまいりましたけれども、日本ほどといいましょうか、食生活はパンを中心にして、ほとんど食生活の変化がなかったということが、ある意味ではよりたやすくといいましょうか、麦をどんどんつくればそれが逆に外国の麦を締め出していくということで自給率が上がっているというような実例もございますので、そういう意味で、自給率の低下にはさまざまな要因がありますけれども、消費者サイドの生活の向上とそれにかかわる食生活の変化というものも一つの理由であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/128
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129・中林よし子
○中林委員 自由化の問題が原因だったということをなぜあなたはお認めにならないのか本当に不思議でならない、私はそのように思います。
大臣、一月二十四日のNHKテレビ「世紀を越えて・一頭の牛が食卓を変えた」というのをごらんになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/129
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130・中川昭一
○中川国務大臣 何かシリーズで、それは、曜日でいうと土日ぐらいですか。(「日曜日」と呼ぶ者あり)日曜日。何かシリーズで、例えばアマゾンの熱帯雨林がどうだとか、そういうのを何回かやっておりましたけれども、今先生御指摘のその番組は見ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/130
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131・中林よし子
○中林委員 今はビデオというものもあるんですよ。これだけ重要な特集を組んだ。私は、今からでもぜひ大臣に見てほしいです。多分農水省はお持ちだと思いますよ。ぜひ見ていただきたいと思います。
ここで、実は、さまざま報道があったわけですけれども、こういうことが報道をされております。
一九六三年、アメリカは、トウモロコシを初め大変穀物が余った。こういうときにどう売り込んでいくかということで、それは肉だ、牛肉だと。牛を飼えば当然飼料が要るわけですよ、だから飼料用作物を売り込んでいく、そのためにトウモロコシの外国に対する売り込みを開始しましたけれども、ヨーロッパでは、自国の農業を育成するということで、輸入は抑えられたわけです。世界の人々の食生活を変え、穀物を輸出するためにはどんなことでもやりました、こういうことをアメリカの農務省は言って、実は、日本の肉消費をマクドナルド社のハンバーガーによってやると。日本のマクドナルド社の社長は、要するに子供のときから食べさせると一生食べ続ける、ターゲットは子供だということで、テレビに出てそう言っておりました。そうすると、日本の肉の消費量は七倍に膨れ上がりましたし、それからトウモロコシの輸入量は十倍にも膨れ上がっていく、こういうことになりました。
だから、日本の食生活が変わり、国民の食味が変わったんだなどというんじゃなくて、まさにアメリカのトウモロコシ戦略あるいは穀物戦略の中で、そう変えさせていくという意図的な戦略をもってやられたということが、この報道を通じても明らかになりました。
それから、続けて、これはちょっと曜日を忘れましたけれども、かつてNHKが特集をいたしました。小麦戦略、日本じゅうをキッチンカーが走った、こういうこともアメリカの戦略の中で起こったんだと。これも深夜でしたけれども、報道されました。このキッチンカーの果たした役割というのは余りにも大きい。特に、米を食えばばかになる、一日に一度はパンを欠かせぬ、母の愛だというようなことで、パンを食べなければ賢い子供には育たないよというような特別の宣伝もやりました。そして当時、学校給食法の中に、必ず小麦を使うように、粉食で食事をするようにということで、これは当時の文部大臣が、今後、国民の食生活は米食偏重の傾向を是正し、粉食混合の形態に移行することが必要であるということまで言って、いわば小麦を日本の子供たちに食べさせていくと。
大臣も、この間からの御答弁を聞いていると、米飯を食べさせるのは子供が勝負だ、子供の時代からしっかりとした味を覚えているとそれを大人になっても食べ続ける、これはお認めになっていると思うのですね。そういうことになれば、これは消費者の好みが変わった、食生活が変わったというんじゃなくて、意図的な政府の政策、アメリカと一体になったそういう政策の中で国民の食味そのものが変えさせられたんだということが、この点でもはっきりしているわけじゃないでしょうか。そこには政府の責任が歴然とあるというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/131
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132・中川昭一
○中川国務大臣 私自身も、学校給食で輸入物の脱脂粉乳を溶いて育った記憶がございまして、あのときは、何かおいしくないなということで、みんなで鼻をつまんで飲んだ記憶がありますけれども、それが普通の牛乳になったらがらっと変わったという経験がございました。
戦争直後には、何かギブミーチョコレートというような言葉もはやったそうでありますが、やはり当時、占領軍は非常に豊かな食べ物で、あこがれていた世代があったというような話をよく聞くわけであります。当時は、とにかく日本はつくるものもなければ食べるものもなければ、そして外国から借りるだけのお金もなかった。ですから、そういう中で、当時、五千万か六千万の日本国民をどうやって飢えずに食べさせていくかということで、これは最大のポイントであったわけであります。そのとき、当時の進駐軍がいろいろな形での食料支援等をやってくれ、またそれに頼らざるを得なかったということでございまして、それが原体験になって大人になっていかれた方は確かにいるとは思いますけれども、私自身も、先ほども何回も申し上げておりますが、自給率の観点からもあるいは健康な食生活という観点からも、日本型の食生活というものを、お子さんを含めて、国民の皆さんに理解をさせていくということは決して政策として間違ってはいない。ただし、右のものは食べちゃだめ、左のものだけ食べなさいとか、そういう強制はできませんから、御理解をいただかなければならないと言うことしかできないわけであります。
いずれにいたしましても、私は、アメリカの戦略によって日本の食生活が大きく変わったというよりも、日本自身がそういう選択をせざるを得ない時期があった。あるいは、今お話しのハンバーガーメーカーにつきましても、これはもう世界じゅうに進出をしておるわけでございまして、まあ当然ビジネスですから、何とかしてターゲットを絞って、消費者に買わせるように一生懸命努力をしよう、これは、日本でもどこの国でもメーカーなり店はやっているわけでありますけれども、それの一つの世界的な大規模なやり方があのハンバーガーメーカーのやり方なんだろうと思います。
それは、アメリカが何か特別の意図を持ってやっているんだというよりも、むしろ、日本にもっと農産物あるいはアメリカ産のいろいろな製品を買ってくれということの一環であろうと思います。それに対して我々は、野方図にイエスと言っているわけでは決してないわけでございまして、現に私自身も、何回かアメリカ、ヨーロッパ等との農産物交渉もやってまいりましたし、歴代の先輩大臣たちも一生懸命いろいろな農業交渉を国のためにやってきておるわけでありまして、今後も、次期交渉を初めとして、我々は国民一体となって、我が国の国益、この場合には特に食料を守るために頑張っていかなければならないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/132
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133・中林よし子
○中林委員 大臣は本当に、農産物の輸入自由化があって、それが今の食料自給率を下げたということをなぜお認めにならないのか。消費者の嗜好が変わったんだ、食生活が変わった、最初にそちらありきみたいな、言説がまるで違うというふうに私は思います。
それは、私は、農産物自由化がこの自給率を下げたということを日本共産党が勝手に言っているんじゃないということを言いたいんです。これは、新農業基本法をつくるために、農水大臣の私的諮問機関、農業基本法に関する研究会の報告、これは今から三年前ですね、一九九六年九月、これに出ております。これを見ると、農業基本法制定当時の想定を超える状況変化の原因、これを三点挙げております。その三番目の原因として、「急速な国際化の進展等により、農産物輸入が予想を超えて増加したことである。」「農産物輸入の増加は、自給率を一貫して低下させるとともに、農業総生産の増大の実現を制約する等国内農業が発展していく上で大きな影響を与えた。」こういうふうに結論づけているんですよ。大臣、これでも認めませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/133
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134・中川昭一
○中川国務大臣 とにかく、新しい基本法をつくろうということで、省内のいろいろなレベルでの検討会があったわけでありまして、その集大成が昨年九月の食料・農業・農村基本問題調査会での答申、これが政府の原案のスタートになったわけでございまして、その中にはいろいろな分析、いろいろな議論があった。そしてまた、輸入量がふえていっているということも事実であるわけであります。しかし、それが、自給率の低下は自由化をしたことによってということで物事を片づけるほど単純な問題ではないというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/134
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135・中林よし子
○中林委員 だから、農産物の輸入自由化、これによって農産物の輸入が増大したというのは当然でしょう。しかも、中川大臣じゃないけれども、大臣の私的諮問機関の報告なんですよ。それで、今回の農業基本法をつくるに当たって、その結論部分として、要因の一つとして、今読み上げたようなことを結論づけているわけですよ。だから、さまざまな要因は、それはおっしゃるようにあるでしょう。でも、農産物の輸入自由化、これによる農産物の輸入が増大したことが食料自給率の低下の原因になっていると言っているのを、それを認めないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/135
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136・中川昭一
○中川国務大臣 過去何十年かの間に自由化した品目は、確かにたくさんあるわけでございます。それから一方、農産物の輸入量というものもふえているわけであります。しかし、自由化イコール自給率の低下となると、そう簡単にはいかない。逆に、自由化しても入ってこないものもある。アメリカやヨーロッパ等から強い要請があって、関税率を下げたり、あるいは自由化をしても、例えばアメリカ産のチェリーなんというのはほとんど、一時的には多少ブームになりましたけれども、その後はやはり国産のサクランボだということになっておるものもあるわけでございますから、そういうふうに、自由化イコール自給率の低下だというふうに単純に結びつけられないところがこの問題の難しいところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/136
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137・中林よし子
○中林委員 あなたは本当に都合のいいことだけおっしゃる。主要食料、それに当てはめて考えてみなさい。サクランボの話だけじゃないですよ。小麦だとか大豆だとか野菜だとか果物、牛肉、これら大方によってカロリー自給率というのは計算されるわけでしょう。チェリーがどの程度自給率低下に影響するかなどというのは関係ないですよ。
だから、さまざまな要因はあるといいながら、それならば、農産物の輸入自由化が食料自給率を低下させた原因の一つだとお認めになるでしょう、要因にはなるでしょう、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/137
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138・中川昭一
○中川国務大臣 自由化することによって、消費者がそのものをよりたやすくといいましょうか、場合によっては安く、あるいは場合によってはより買うチャンスが多くなるということは事実だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/138
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139・中林よし子
○中林委員 私が聞いていることにまともな答弁してくださいよ。そんなこと一言も聞いていないですよ。だれが消費者にチャンスを与えることになるかなんて聞いたんですか。とんでもない答弁ですよ。
大臣はお認めになりませんけれども、事実、農水省の、あなた方の報告書によってもちゃんとそういう資料が出ている。それなのに認めないなんというのは、今度の新農業基本法がどっちに向かっていっているかというのを如実にあらわしている一つの具体例だというふうに私は指摘をしておきます。
さきの五月十三日の当委員会で、藤田スミ議員の、イギリスやドイツの自給率向上政策から学ぶべきだ、こういう質問に対して大臣はどう答弁をされているかというと、「イギリスは国土の三分の二近くが平たんでございまして、もともと牧草地あるいはまた小麦をつくりやすい地域でございますから、やはり大転換をいたしまして、そしてそれによって、今先生が申されたような、今や自給率一〇〇%を超えるような国になったわけであります。一方、食生活の面でいいますと、その間そう大きな食生活の変化がなかった、イギリス式の食事が依然として続いていたということが、小麦あるいは畜産の生産の増大がそのまま自給率の増大につながっていった。」こういうふうに答弁をされております。これは私は本当に、率直に言って、イギリスの国内自給率を上げる諸政策、それを冒涜するものだ、このように指摘をせざるを得ません。
一九七〇年にイギリスの食料自給率は四八%、七五年は五二%、当時我が国は、一九七〇年で六〇%、七五年で五四%と、イギリスよりも自給率はカロリーベースで高かったわけですよ。それから穀物自給率がイギリスはどんどん上がって、一九八一年には一〇〇%を突破して、八〇年代後半には一二〇%を上回る、そういう水準になりました。現在、イギリスはカロリーベースでは七三%だ。これで私どもも、イギリスがどうやってこれだけの自給率を上げたのかということも勉強してみました。さまざまな施策をとっていることがよくわかりました。
一九七三年のEC加盟後、共通農業政策、CAPの枠組みの中で展開するようになって、一九七八年の共通農業政策全面適用で農業保護の側面が一段と強化されて、自給率が上がりました。一九五〇年代にEC加盟六カ国によって創設された共通農業政策というのは、戦中戦後の食料不足の経験から、自分の国の食料自給を図るために、農産物価格支持政策を中心に据えて、穀物その他の輸入を域内生産の水準を考慮して規制することができるような境界価格の設定を結合したものです。具体的には、国際市場価格と遮断したところで支持価格を設定して、域外からの安い輸入農産物の流入に際しては、輸入農産物価格と支持価格との差額を輸入課徴金として徴収して、域外との競争から国内農業をしっかり守った。こういう政策をやっているんですよ。
政府の責任でないとできないと、この間の委員会で藤田議員が強く申しましたけれども、まさにイギリスは、政府の責任、国の責任で、輸入を抑えながら国内農業を、価格支持の制度をうんとやって、それで上げていった、それで今日のような自給率の向上がもたらされたというのは、こういう歴史の事実から学べば当然ではないですか。
こういうイギリスの政策まで大臣は否定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/139
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140・中川昭一
○中川国務大臣 先日も藤田委員からお話がありましたが、イギリスの自給率の向上というのは、大体二百年ぐらいかかった。長い長い、いろいろな政策の失敗やら、いろいろな経験をして、ここに来てやっと自給率が、穀物ベースでいえば一〇〇%を超えたわけであります。
十九世紀の初めに、マルサス、リカードの激しい議論があって、結局リカードの方の国際分業論というのが勝って、そして穀物法が一八四六年に廃止されるわけで、そこからは、安いものは世界じゅうからどんどん入れよう、自分たちは機械とかそういった当時の先端技術をつくっていけばいいんだという、非常に鉱工業が盛んでありましたし、また、そこに重点が入って、食料の方がどんどん少なくなっていった。それを見て書いたのが、マルクスの資本論、共産主義の原点でございますが、そういう状況。そして、第一次世界大戦、第二次世界大戦と大変な食料危機をイギリスは経験をした。大変な食料の援助をアメリカやヨーロッパから頼んだわけであります。
そこで、戦争が終わって、チャーチルが、このままでいいんだろうかということで、本腰を入れて食料の自給というものにほぼ百年ぶりで政策を大転換していくことによって、それから二十年ぐらいたった段階でどんどん数字が上がっていく、成果が実ったということであります。
そして、時あたかも、先生御指摘のように、ECの共通農業政策が適用され、穀物の自給率が向上して、イギリスが七三年に加盟するわけでありますけれども、いわゆるCAPに入ったからといって、必ずしも自給率は上がっていない。イギリスは確かに上がりました。しかし、同じCAPのもとにありますオランダ、ベルギー、ルクセンブルクのような国々は自給率が向上しなかったということもあります。
いずれにしても、長い百五十年、二百年の間の一つの歴史の中でのイギリスの自給率というものについては、我が国がちょっとまねのできないような政策もありますし、自然条件等々も日本とは大分違うわけでございます。やはり農地の有効利用、生産性の向上、技術開発の促進、そして我が国の風土に合った農業生産あるいは日本型食生活の定着ということを、この基本法に基づきまして推し進めていくことによって、自給率の向上を実現していくことが重要ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/140
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141・中林よし子
○中林委員 イギリスの二百年来の歴史を振り返っておっしゃいましたけれども、私は、農業政策に対しては、この二百年、百五十年ぐらいの歴史だというふうに思うのですが、大臣いみじくも、自由化路線をとって、安い農産物がどんどん入るに任せて、そして機械などを売っていったんだと。日本と一緒じゃないですか。自由化をどんどんやって、テレビだ自動車だというのをアメリカに売らなきゃいけない。
まさに、私は、農民の方が今大臣のお話を聞いていると、日本の農業基本法ができてから今日の歴史をそのままおっしゃっているように思うでしょう。そう思いました。
そうであるならば、この一八四九年、農産物自由化をイギリスはやった。それで、本当に大変な自給率低下を招いた。それから第一次世界大戦もありました。そういう反省の中から、どうやって自給率を上げるかということを、試行錯誤をやるのですよ。その中で、一九四七年に農業法ができて、本当に国内でちゃんと農業が維持できるようにやっていこうという決意をして、さまざまな努力が始まりました。だから、それが今実ったわけでしょう。
今、日本の自給率が四一%。まさに七千万人分の国民の食料というのは外国に頼らなきゃいけない。つくられないんじゃなくて、つくられないような状況にならされたということを、私は放置してはならないと思うのです。
本当に真剣な反省があるならば、イギリスと同じように国土は狭い、イギリスは平たんなところが多いんだからとおっしゃったけれども、日本の農民の方々は、平たんでないような本当に急峻な農地でも、そこからどう生産性を上げるかということを営々と努力をされている、そういう技術を持っているわけですよ。
そうであるならば、政府は、ここで自給率向上のその転換を、農産物輸入自由化に頼るんじゃなくて、本当に根本的な転換をやる、こう決意をして、イギリスの政策からも学びながらやれば、日本の農家の人たちの今日まで蓄積した技術や努力、それが大いに花開いて自給率向上の方に行く、このようにイギリスの事例から学んでみても言えると思います。
そこで、私は、大臣が農産物の自由化、農産物の輸入がふえたということを全く反省されないということで、やはり今度の新しい農業基本法、今回出された中で、輸入の位置づけがかなり強烈になってきているということを指摘せざるを得ないと思うのです。
第二条の国内の農業生産を基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行わなければならない、初めて基本法に輸入の義務づけが行われようとしているわけです。これは、本当に私は大問題だと思います。輸入自由化が自給率低下を招いたということは、もうだれの目にもはっきりしている。
大臣、この基本法が自給率向上を目的としているというのであれば、輸入自由化政策の根本転換が必要だし、今回の輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行わなければならない、こういう義務的項目は当然排除すべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/141
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142・中川昭一
○中川国務大臣 私は、先ほどから一貫して、国産の農産物をもっともっと生産し、そして消費してもらうということに、四つの理念のうちの第一番目にはっきりと書いてあるということを前提にしてお話をしておるわけであります。
したがいまして、先ほど冒頭の議論にもありましたように、維持向上というよりも、国内生産を基本としてという方が、より包括的な意味で強い意思を我々はそこから読むわけでございますけれども、自給率を向上させるということになりますと、今度は、十五条の基本計画の中で、その数字を、目標をつくっていくわけであります。そこでの数字というのは、現状ではだめだということで、実現可能なできるだけ高い数字をつくり、そしてまた、それを実現していかなければならないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/142
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143・中林よし子
○中林委員 ここに一九九六年九月十六日付の読売新聞の報道があるのですが、この報道を見ますと、ウルグアイ・ラウンド交渉の過程で、食料安保は国際分業、つまり輸入ですが、それと食料備蓄で対応すべきだとしたアメリカなどの主張に屈服した感がある、こういう論評をされているわけですね。
アメリカを筆頭とする輸出国に屈服した結果、今回の農業基本法第二条に、国内農業生産を基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行わなければならない、まさに輸入を義務づけたのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/143
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144・中川昭一
○中川国務大臣 その新聞は、私は読んだのかもしれませんが、記憶にありませんが、決して屈服はしておりません。それから、それに基づいてということでもないわけでございますが、二条の食料の安定供給というところの、国内生産を基本として、あと、備蓄と輸入を適切に組み合わせというのは、あくまでも、これは一〇〇%自給をするということは現実問題として非常に難しいし、当面の念頭にはないわけでございます。できるだけ高く自給率を設定したいとは思っておりますけれども、五年、十年の間に自給率が一〇〇%になるということは現実的ではない、残念ながらそういうふうに思っております。
したがって、あくまでも国内生産が基本、つまりメーンでありますけれども、メーンだけでは国民の食生活の安定供給という義務を果たすことができないわけでございますから、サブというか、従という形で、備蓄あるいはまた輸入も、一定程度はやむを得ないということでありまして、しかし、その輸入についても、自給率を上げることによって輸入も少しずつ減ってくるという関係になっていくものと期待をしておるわけでありますし、またその条文そのものが義務規定的な書き方になっておるわけでありますから、これは国内生産を基本としなければならないというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/144
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145・中林よし子
○中林委員 これは二条をちゃんと読むと、「国内の農業生産を基本とし、」最後に「なければならない。」という義務規定になっているけれども、「とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」ということですから、輸入も義務づけられている。大臣が同じようにおっしゃれば、同じように義務づけられた、こういうことはもう明確ですよ。
そこで、この第二条を受けて第十八条、農産物の輸出入に関する措置という項目があるわけですが、ここでは、「国は、農産物につき、国内生産では需要を満たすことができないものの安定的な輸入を確保するため必要な施策を講ずる」、これによって農産物輸入の安定化のために国としてあらゆる措置を講ずると、これまた義務づけているわけですね。この規定は現行法にはないというふうに思います。この規定があるということは、輸入自由化をさらに強化する条項だと私は思います。この条項から、安定的な輸入を脅かすような国内措置は一切とれないということになるんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/145
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146・高木賢
○高木政府委員 国土資源に制約がある我が国でありますから、国民が必要とするすべての食料を国内生産で賄う、安定的な供給を確保するということは困難であります。そういう意味で、十八条一項では「国内生産では需要を満たすことができないもの」ということで、まず、ものを限定いたしましての「安定的な輸入を確保するため必要な施策」ということでございます。
かつて、輸出国におきまして禁輸措置があって国民生活に大きな影響を与えたというのは、大豆の例でも明らかでございます。現実問題として、輸入に依存しているものにつきまして、ある日突然断絶だということでは国民生活は大混乱に陥る、こういう事態の反省に立ちまして、食料輸出国との良好な関係の維持とか、それから世界の食料需給について常々情報収集あるいは交換をしておくとか、主な輸出国と安定的な取引に関する取り決めをしておくとか、こういったことをすることは、食料の安定的な供給の確保という上から欠かせないということで位置づけたものでございます。
一方で、先ほど来大臣が御答弁しておりますように、国内農業生産を基本とした食料供給ということも厳然として二条にあるわけでございますので、何か輸入を促進するように作用するんだということは全く考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/146
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147・中林よし子
○中林委員 それならば、具体的にお伺いします。
日本はアメリカからの食料輸入に依存している部分が非常に多い。これはJAが年次ごとに「ファクトブック」というのをずっと出しておられます。この中で、アメリカの輸入が全体の輸入の中でどの程度を占めているのかと。日本は農産物輸入の多くをアメリカに依存という項目があるわけですね。それを見ると、これは一九九六年ですけれども、大豆で八〇・七%、小麦で五五%、牛肉で四九%、こういう状況ですから、仮にアメリカが、我が国に対する食料輸出にさまざまな条件をつけてきた場合、我が国は、この新しい農業基本法に基づいて安定的な輸入を確保するため、こういう名目でその条件を次々に受け入れざるを得なくなるのではないか。
今、答弁の中で、輸出国との友好な関係を保たなきゃいけない、仲たがいしてはいけないんだというようなこともおっしゃったわけですから、そうなると、そういう相手国の条件を次々とのみ込んでいくことになりかねないというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/147
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148・高木賢
○高木政府委員 それは、それぞれの国との関係におきまして、まさに取引関係ということでございますから、不都合な条件ということであれば、当然、それは代替する措置なり別の方法にシフトするということになろうかと思います。
したがいまして、相手が言ったから直ちにすべて言いなりになるというような態度は私どももとりませんし、また現実問題としてもそういうことにならないようにしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/148
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149・中林よし子
○中林委員 ただ、わざわざこの十八条をつけた。安定的な輸入を確保するためには必要な施策を講ずるということで、あらゆる施策を講ずることになるわけですからね。
そうなると、今、自給率が非常に低い大豆や小麦や牛肉など、アメリカがいろいろなことを言ってきたら、それに従わざるを得ない。今度は米の関税化をされましたが、これについても、高過ぎる、高過ぎると言ってきたら、それも受けざるを得ないような状況というのは出てくるんじゃないかと思うんですね。これでは、国内の農業生産を基本とすることというのは根本的に矛盾するんじゃないですか。むしろ全く逆な方向に作用して、食料の安定的輸入の確保を名目に、アメリカや多国籍企業の対日要求を次々に受け入れる根拠となって、まさに日本の食料主権、それを侵すことになると思うんですけれども、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/149
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150・中川昭一
○中川国務大臣 この十八条の安定的な輸入を確保するということは、国内では確保できない、しかし、国民生活に影響を与えることもできないという意味から必要な施策を講ずるということでございまして、一方、輸出国の勝手気ままは許さぬぞというのは、現時点においても、我々政府としても、またいろいろな立場の方々が外国等の間でいろいろな交渉をやっております。
さらには、これと密接不可分と前回申し上げましたが、次期WTO交渉における我が国の主張の一つが、輸出国と輸入国とのアンバランスの解消でございますので、そういうものも含めて、本基本法、そして次期WTOの新しい協定というものの中で、そういう心配のないような体制にすべく、努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/150
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151・中林よし子
○中林委員 もう質問の時間が終わりますけれども、私は今まで、るる、事実をもって農産物の輸入自由化というのが食料自給率を低下させたことは間違いないと言うのに、大臣は絶対お認めにならない。しかも、今度は新たに輸入の義務規定が入ったということは、本気で食料自給率を上げる、国内生産を基本とする方向ではない。国内でつくられるのにつくられないようにして、四一%まで自給率を低下させた政府の責任というのは極めて重いということを私は指摘して、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/151
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152・穂積良行
○穂積委員長 次に、知久馬二三子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/152
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153・知久馬二三子
○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。
私は、まず最初に、食について少し考えてみたいと思うんです。当たり前のことなんですけれども、私たちは本当に食べ物なくしては生きていけません。にもかかわらず、目の前にあふれ返っている食品群に、何のために食べるのかということを私たちは忘れているのではないかということです。
確かに、食べることは個人的で閉鎖的な行為ですが、この三十年余り、欧米型食生活が浸透して、がんや循環器系統の疾病がふえ、子供たちまで生活習慣病の予備軍をつくっているというようなことに対して本当に憂慮するものでございます。これから百年は続くだろうと言われる高齢・少子社会で、これ以上の医療費の増大は保険制度の崩壊にもつながりかねません。私たち国民が生きるために安全で良質な食料を安定的に供給することが大切であります。
そこで、私も、このようなことを念頭に置きながら、基本的なものについて質問させていただきたいと思います。
まず最初に、なぜ新たな基本法が必要か、その認識について確認しておきたいと思います。
今から三十八年前、一九六一年に制定されました現行の農業基本法は、他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向上すること、それから、農業従事者が所得を増大して他産業と均衡する生活を営むことを政策目標としていました。しかし、現状では政策目標を生産向上と所得の増大に限定していることが限界に達しているとの認識が、今回の食料・農業・農村基本法案が提出されるに至った背景にあると理解してよいか、農林水産大臣の御見解をここでお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/153
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154・中川昭一
○中川国務大臣 御指摘のとおり、現行基本法は、他産業との生産性あるいは生活水準の格差を是正するという目的で制定されたものでございます。
その中には、生産性も随分上がってきたわけでありますけれども、他産業の生産性の伸びがもっと高いということで、格差が依然としてまだ大きい、あるいはまた生活基盤も随分よくなってはきておりますけれども、まだまだ生活インフラを整備しなければいけないところもたくさんあるということと、あるいはまたこれだけ自給率が大幅な低下をする、あるいは農業に就業する人がだんだん少なくなって過疎化、高齢化の問題があるといったようなマイナス点が非常に大きな問題となってきたわけであります。
一方、消費者ニーズというものの高まりも、これは特に国産に対するニーズというものが中長期的に非常に高まってきているというふうに考えておりますし、いわゆる多面的な機能、環境面、国土保全面、あるいはまた景観、そしてまた教育的な観点からもやはり農業、農村というものの役割というものも大きいということでございまして、時代に合った、あるいはまた引き続きやっていく部分もございますけれども、新しい時代にふさわしい基本法をつくるということに至ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/154
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155・知久馬二三子
○知久馬委員 それで、これからの農業は、先ほども大臣おっしゃったように、地球規模の環境汚染、世界人口の増加、農地の減少、水資源の枯渇などの危機を受けて、人口問題、食料問題、環境問題などを解決する役割を果たすことが重要となっていると考えます。このことについていま一度、大臣さっきおっしゃったんですけれども、もう一度の確認をしておきたいと思います。ひとつよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/155
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156・中川昭一
○中川国務大臣 農産物にしましても林産物、水産物にいたしましても、有限な資源である、しかもこれは生き物であり、自然相手の仕事である、こういう特殊性、重要性というものを考えたときに、やはり、既に世界各地で発生しております環境の問題あるいはまた飢餓人口が八億人以上いると言われておるような現状等々を考えますと、地球の環境維持あるいはまた人口と食料とのアンバランスの解消、そのために今回は国際貢献という条文も入っておるわけでございますけれども、そういったような、ただつくって食べればいいんだというだけではなく、つくることによるいろいろな意味あるいはその存在する農村という地域のいろいろな意味というもの、十分その意義、機能を発揮できるような体制にしていかなければならないということが今回の法律の大きな柱になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/156
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157・知久馬二三子
○知久馬委員 続きまして、食料・農業・農村基本法問題調査会の答申においても、私たちは今、地球資源の有限性や環境問題、食料危機への不安などを強く意識せざるを得ないと思います。文明の大きな転機に立たされているということです。それと、進歩と発展の明るい高度成長期から一転して、世界的に危機意識と不透明感が強まる中にあって、戦後の農政を形づくってきた制度の全般にわたる抜本的な見直し、二十一世紀を展望しつつ国民全体の視点に立った食料・農業・農村政策の再構築が今なされなければならないと、新たな食料・農業・農村政策に向けた問題意識が明らかにされていますが、今回の政府の案において、こうした認識をどの部分で読み取ればいいのか、その辺がちょっと明らかでない面がありますので、詳細に説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/157
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158・高木賢
○高木政府委員 食料・農業・農村基本問題調査会答申におきましては、二十一世紀におきまして人口、食料、環境、エネルギー問題が顕在化する、こういう基本的な認識に立ちまして、我が国経済社会の展望を示した上で、今後の食料・農業・農村政策の基本的考え方、具体的施策の方向を明らかにしております。
この答申を受けて本法案が法制化されたわけでありますけれども、その趣旨は、何よりも国民の皆さんが農業、農村に求める価値として二つのことに集約をいたしまして、一つが食料の安定供給の確保であり、もう一つが農業、農村の多面的機能の発揮ということでございます。この二つを基本理念に掲げまして、国家社会におきます農業、農村の位置づけの明確化を図ったということであります。
それから、具体的な政策といたしましても、この基本理念に基づきまして構築しているわけでありますが、主なものを申し上げますと、食料の安定供給の確保という点では、食料問題の重要性ということから基本理念の一つに取り上げたということでございますが、特に世界の食料需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみという基本認識を入れ込んでございます。これは、地球環境の問題などが世界の食料需給に悪影響を与えかねないという認識を踏まえたものでございます。
また、多面的機能を特に三条で明記しておりますけれども、これは、農業、農村の持つ国土や環境の保全機能、こういったものを重視する、あるいは文化の形成、景観の保持等も含めておりますけれども、特に環境面につきまして明示的に規定をしておるということでございます。
また、農業の持続的な発展のための不可欠な要素といたしまして、現行基本法では経済的要素しか規定しておりませんけれども、新しい基本法案におきましてはその四条において、農業の自然循環機能の維持増進ということを規定しております。これは、農業が本来持っております自然循環機能を通じて土や水などの自然環境が形成、保全されるといった認識を示したものでございます。
幾つか申し上げましたけれども、資源の有限性とか環境問題とか食料をめぐる問題、こういったものは、それぞれのところに十分反映されているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/158
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159・知久馬二三子
○知久馬委員 今、世界の食料事情にかんがみということを言われたのですけれども、その辺がちょっと私には理解できないのです。日本の食料事情というのをどのように考えておられるかということ、それから、今環境面ではということがあったのですけれども、具体的に環境面でどのような方策をとられるのか、環境にマッチしたというのですか、そのようなことについてもう少し詳しくお願いしたいのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/159
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160・高木賢
○高木政府委員 世界の食料需給という点について申し上げますと、これまで栄養不足人口が八億人いるということはございますが、基本的に、世界の食料供給力というのは上昇の一途をたどってまいりました。しかし、これからは、環境面の制約、新しい農地開発ができにくくなっている、あるいは、順調に単収が伸びてきたものがこれまでどおり伸びることができるのか、こういう問題に突き当たっているというふうに思います。
一方で、世界の人口は毎年一億人ずつふえている、こういうことでありますから、需要と供給の間にギャップが生ずる可能性がだんだん出てきている、こういうふうに世界全体の食料需給としては展望しているわけであります。そうなりますと、我が国におきましても、相応の食料供給力をつけていかないとなかなかこれから先大変ではないか、こういう認識でございます。
それからもう一つ、環境面でございます。
農業は、自然循環機能というのを本来は持っておるわけですけれども、肥料、農薬の多投入ということが起こりがちでございます。やはり単収を上げるため、あるいは労働の軽減を図るために肥料なり農薬の多投という問題が出てまいりました。これが、例えば窒素などが地下水に浸透いたしますと、硝酸態窒素というようなことになりまして、地下水に依存する地域の飲み水に悪影響を与えかねない、こういう問題も出てまいっているわけでございます。それに対して、本来の農業の力が発揮されるような農法を奨励していく、こういうことが必要になったという認識でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/160
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161・知久馬二三子
○知久馬委員 ありがとうございました。
次に、総則にあります基本理念に関連してなのですけれども、まず、食料の安定供給の確保に当たっては、国内農業生産の維持増大による食料自給率向上が必要条件であると考えますが、法案の条文に明示的に述べられていないのは、何でそういうようなことが書かれていないのか、その理由はどういうことかということを説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/161
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162・高木賢
○高木政府委員 基本法案の二条におきましては、食料供給のあり方といたしまして、国内の農業生産を基本とするということが明確に規定されてあります。これは、輸入と備蓄の関係におきまして、国内農業生産を基本とするということを示したものでございます。これは、食料供給におきます国内農業生産の位置づけが端的でより明確になっているというふうに考えております。
一方、食料自給率の目標につきましては、これはもう具体的、実践的な課題でありまして、理念とは別の条項におきまして、十五条でございますが、食料自給率の目標を定める、こういうことであります。目標である以上、当然その向上を目指すというのは目標という言葉に含まれた意味でございますので、当然その向上を目指すということで目標を立てるわけでありますので、向上という字句が重なるということであえて規定していないものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/162
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163・知久馬二三子
○知久馬委員 先がたもあったと思うのですけれども、日本の食料の自給率というのは世界で何番目かと、例えば消費者の人とか農業をしておられる方、生産者の方に聞いても、ほとんどの人は知らないということです。それに対しても何の疑問も持っていないようなことだと思います。それほどに私たちの周りには食べ物があふれ、世界じゅうのありとあらゆるものを食べているのが当たり前になってきております。
今、日本では、数字がちょっと古いかもしれませんが、三千二百万トンもの食料を輸入して、その四割をごみとして廃棄し、食料自給率も穀物自給率も下げ続けているという現状でございまして、このことは本当に憂うことだなと思います。
そういうことで今お聞きしたわけなのですけれども、やはりちゃんとしたものを明記すべきでないかなと思います。
次に、農業の持つ多面的機能を発揮させ、農業の持続的発展を図るために環境保全型農業の推進は極めて重要な要素であるが、法案の四条において、環境保全型農業の推進について明確に述べられていないと思います。このことについて、具体的にもう一度お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/163
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164・高木賢
○高木政府委員 農林水産省におきましては、この数年来、環境保全型農業ということで、その奨励をしてまいりました。これを基本法案でどう規定するかということで、いろいろ検討したわけでございますが、環境保全型農業といいますと、農業生産活動を行う上で使用する化学肥料、化学農薬の使用の低減によって自然環境に対する負荷を低減させる、いわば環境を悪化させないという意味合いは確かにありますけれども、もっと積極的に農業の持つ機能を生かすという表現ができないだろうかということで検討いたしたわけでございます。
その中で、特に、家畜排せつ物とか稲わらとか食品残渣、こういったものをもっと積極的にリサイクルして環境改善に寄与する、こういう積極面を含んだ概念としては、環境保全型農業というよりは農業の持つ自然循環機能の維持増進という方がより積極的な幅広い規定である、よりこれからの時代のあり方を踏まえた適切な規定であるということで、いわばもっとポジティブな書き方として、自然循環機能の維持増進ということで規定をいたしました。したがいまして、いわゆる環境保全型農業というものもこの中に含まれているというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/164
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165・知久馬二三子
○知久馬委員 農薬とか化学肥料の使用量の削減を目指すためには、有機質肥料への転換がなされる必要がありはしないかと思います。そのためには、やはり一定域内の有畜複合循環型の農産物生産システムの確立なんかも明記する必要があるのじゃないかと思うのですけれども、この点についてはどのようなあれでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/165
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166・高木賢
○高木政府委員 御指摘のように、まさに家畜排せつ物とか稲わらとかそういった有機物を利用して、これをリサイクルして、またその地域の農地に還元し農業生産に役立てていく、こういう考え方が基本的に大事だと思っています。そういう方向を目指す、そういうところまで踏み出すんだという意味で、農業の自然循環機能の維持増進という言葉でその基本的な方向を書きあらわしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/166
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167・知久馬二三子
○知久馬委員 くどくなりますからこの点については言いませんけれども、次に私が一番問題というか関心のあるのが、担い手の問題についてです。
法案全体を通してお伺いしたいと思いますけれども、法案の四条においては、農業の持続的な発展のために農業の担い手が確保されなければならない旨が述べられています。また、二十五条においては、人材の育成と確保のために、農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上、新たに就農しようとする者に対する農業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講じる旨が述べられています。
まず最初に、農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上のための施策として、現在行われているものは具体的にどのような施策か、または、その効果と問題点と今後の課題についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/167
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168・樋口久俊
○樋口政府委員 農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上という点についてお答えを申し上げます。
これに関連する施策につきましては、普及組織が中心となりまして、試験研究機関などで開発をされました技術の移転や普及を図るということが一つでございます。さらに、農業者や農業者に直接接しております普及職員に対する、例えば簿記の記帳とかそういうものの講習をやるとか、あるいは経営診断能力の向上のための研修をやるとか、あるいはまた、新しい技術を導入するために無利子の資金を貸し付けるとか等々の施策を講じておりまして、担い手を育成するためにいろいろ展開をされております。こういうことで、生産性の向上とか青年農業者の確保、育成等に一定の役割を果たしてきたところと考えております。
しかしながら、現時点でもう一回よくよく見てみますと、農政の課題がいろいろ多様化したり複雑化をしておりまして、普及事業が実際どんな成果を上げているのだろうかというのがなかなか見えづらくなっている点が一つあったり、それから、農業者の技術水準が全体として大変高度になってきているという点もございます。また、いろいろな作物でございますとか機械が入ってきたりということで経営内容も多様化しておりますので、そういう中で農業者のニーズにきちんとこたえられているのだろうかというような問題も指摘をされております。
私どもとしては、こういう技術水準の向上や経営の多様化に伴います農業者のかなりハイレベルな要請、そういうものに普及事業が的確に対応し得るというようなことをねらいとしまして、一つは、現場で解決できるような実証試験、現実に目で見る、見せてあげるということは大変大事なことでございまして、そういうもので実証試験に積極的に取り組むということで、試験部門と普及組織の連携を強化しまして、かなりハイレベルな技術を早く移転できるということが一つでございます。
それから、経営改善支援センター等関係の機関と連携をしながら、個別の農業者に、経営はいろいろ違いますので、それぞれの実態に即した個別支援の指導を展開できるというようなことが一つでございます。
それからもう一つは、経営管理能力というのが今から大変大事になるのではないかと思っておりますので、必要に応じまして、必ずしも普及だけではなくて、例えば税理士さんでございますとか、民間のそういう専門的な知識も活用する等々、大変大切なことだと思っていまして、そういうような方策を用意することが必要ではなかろうかと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/168
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169・知久馬二三子
○知久馬委員 確かに、こうした技術的なこと、経験等、いろいろあるとは思うのですけれども、問題は、後継者、担い手というのは、農業に対する魅力というものがないから、このような状況の中で担い手がいないということだと思います。幾らそこの中で生産性を高めても、財政的な面等についても、やはりそれを実らせなければ、農業の担い手にはなかなかなり手がないのではないかなということを思います。
さっきちらっとおっしゃったのですけれども、新規就農促進に関しては、昨年、青年就農促進法ですか、改正されて、中高年齢者もその対象となっていたようですが、その成果はあらわれているでしょうか。また、それらについての問題点、今後の課題についてお聞かせ願いたいと思います、青年も含めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/169
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170・樋口久俊
○樋口政府委員 新規就農の関連でお答え申し上げます。
新規就農で、いろいろな課題があるわけでございますが、就農する場合の隘路といいますか、ハードルといいますか、それが大きく分けて三つほどあるのではなかろうかと思われるわけでございます。
一つは、やはり技術をきちっと身につけていないとなかなか難しい。それから、ある程度の資金を必要とするわけでございます。三つ目が、やはり生産の手段でございます農地が確保されないといけないということでございまして、これらにつきまして体系的な支援措置を講じております。
先生、今御質問ございましたのは、どちらかというとそれらに必要な資金の話でございまして、改正前は就農支援資金ということで年々伸びてきて、一応の成果を上げたと思っておりましたけれども、三十九歳以下の青年の就農動向が、ちょっと数字だけ御紹介しますと、平成七年の七千六百人から平成九年には九千七百人ということで増加をしていまして、私どもとしては、資金の貸し付けを中心とします施策の効果が着実に上がってきていると思っております。
さらに、多様化したルートから新規就農の道をということもございまして、そういうニーズにもおこたえするということで、お話のございました、青年就農促進法を改正しまして中高年齢者も新たに対象にするということになったわけでございます。こういう方に対する資金の貸し付けはもちろんでございますが、このほか、農業者大学校における研修でございますとかいろいろなことをやっております。これはちょうど十年度に始まったところでございまして、正直言いまして、ようやく一年たったところでございますから、まだ一定の実績を積み重ねるということが必要だと思っておりまして、もう少し経過を見ていきたいなと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/170
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171・知久馬二三子
○知久馬委員 今、農地の確保も一つあるんだと言われたのですけれども、私は小さい県の中山間地のところにおるのですけれども、ずっとこれまで圃場を整備され、耕地整理されてきた中での田んぼの状況というのは、減反政策をとられながら、相当の田が荒れ地になっておる現状を見る中で、本当にこれらのことに対して心が痛んでいるというか、やはり農地が荒廃すれば国が滅びるというようなことがよく言われる中で、これらのことについてもう少し検討するあれがあるのではないかなということを思います。
次にちょっとお聞きしたいと思うのですけれども、法案の二十五条の二項でございます。農業に関する教育の振興その他必要な施策を講じる旨が述べられていますが、教育、啓発の手法についての具体策を説明いただきたいと思います。ひとつよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/171
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172・樋口久俊
○樋口政府委員 農業に関する教育につきましてお答えを申し上げます。
農政の円滑な推進を図るということにつきましては、農業あるいは農村について国民の皆さんの理解と関心を深めてもらう、これは大変重要なことであろうと考えております。
このため、義務教育といいますか小中学校段階からの農業体験でございますとか、あるいは一般国民に対しますいろいろな情報提供を実施するとか等々で、農業や農村に対する理解を深めていただくためのいろいろな活動に取り組んでいるところでございます。特に、昨年秋には、農業教育につきまして文部省さんと連携して取り組むということで基本的方針に合意を見たところでございまして、今後は連携をとりながら一層これらの取り組みを強化していきたいと思っております。
ちょっと具体的にお話を申し上げますと、農家に泊まりましての農業体験に対する支援でございますとか、それから今度は小学校、中学校の先生方を、本当に実践的な研修等、あるいは農業副読本までつくってもらおうではないかというようなことでございますとか、特に本年度からは、そういう受け入れ農家などの紹介を行います私どもの方のきちっとした推進員でございますとか、そういう農業者等をきちっと登録するといいますか、だれだれさんというふうに明らかにしていくということでございますとか、文部省と連携をしまして、子ども長期自然体験村というようなところで一定の支援を申し上げる等々のことで連携を図っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/172
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173・知久馬二三子
○知久馬委員 その点につきましては大変結構なことだと思います。
今子供たちも、例えばお米はどこでつくられるかといえば、スーパーに売っているとかいうような現象があります。この豊かな自然の中で、いつ、どんな作物ができるのかさえ知らないような子供たちがたくさんおるわけなんです。それは、長い農業経営の中でそうなってきた面があると思いますけれども、やはり私たち、自然の中でその時期時期にとれるそうした農作物というのをしっかりと食べながら、健康な体をつくり、健康な子供たちを育てていかねばならないではないかということを思っております。
まだちょっと用意しておったのですけれども、時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/173
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174・穂積良行
○穂積委員長 次回は、明十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505007X01319990518/174
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