1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年六月十一日(金曜日)
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議事日程 第二十八号
平成十一年六月十一日
午後一時開議
第一 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。行政改革に関する特別委員長高鳥修君。
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地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔高鳥修君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/2
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003・高鳥修
○高鳥修君 ただいま議題となりました法律案につきまして、行政改革に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、かつ、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るため、地方自治法を初め四百七十五件にわたる関係法律を改正し、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与等の縮減、権限移譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備確立等を行い、もって地方分権を推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとし、これに伴い、地方公共団体が処理する事務を自治事務と法定受託事務とに区分すること、
第二に、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度を廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととすること、
第三に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととし、このため、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定める等、所要の改正を行うこと、
第四に、国の権限を都道府県に、また、都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととし、これに関連して、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設すること、
第五に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこと、
第六に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めること、
第七に、この法律は、一部を除き、平成十二年四月一日から施行すること
としております。
本案は、去る三月二十九日本院に提出され、五月十三日の本会議において趣旨説明を聴取した後、質疑を行い、同日本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、五月十八日野田自治大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十五日から六月十日まで政府等に対する質疑を行ってまいりました。この間、五月二十八日には参考人からの意見聴取、六月七日には公聴会の開催、翌八日にはいわゆる地方公聴会を開催するなど、慎重に審査を重ね、昨十日質疑を終了いたしましたところ、本案に対し、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派より、第一号法定受託事務の事務区分についての適宜適切な見直し、地方税財源の充実確保の方途についての検討、社会保険関係の地方事務官であった者の職員団体加入についての経過措置等を内容とする修正案が提出され、討論、採決の結果、本案は修正案のとおり賛成多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
また、本案に対して日本共産党より修正案が提出されましたが、賛成少数をもって否決されました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。春名直章君。
〔春名直章君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/4
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005・春名直章
○春名直章君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方分権一括法案と、自由民主党、民主党、自由党、公明党・改革クラブ、社会民主党・市民連合の五党提案の修正案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
本法律案は、日本の全法律の約三分の一にも及ぶ膨大なものであります。公聴会や参考人質疑の中でも、拙速を避け、慎重な上にも慎重な審議を求める声が多数寄せられたのであります。にもかかわらず、ごくわずかな審議で問題点の解明も不十分なまま採決しようとしていることに、厳しく抗議するものであります。国会審議の形骸化であり、地方自治体、国民の期待を裏切るものと言わなければなりません。
日本国憲法に地方自治がうたわれて五十年余、国民の要望にこたえた地方分権とは、この憲法と地方自治の精神にのっとって、真に地方自治権を拡充すること、住民自治に基づいて、地方自治体が住民の利益を守る仕事に全力で取り組めるようにすることであります。そして、そのために、国による官僚統制を根本的になくし、権限と財源の地方への移譲を進めることが喫緊の課題だったのであります。機関委任事務の廃止に踏み出す今を絶好の機会として、国の関与、統制の仕組みをこの際根本からなくしていくことが問われていたのであります。
ところが、提出された地方分権一括法案は、地方への権限と財源移譲には見るべきものがなく、機関委任事務廃止後も、広く強力な国の関与、統制が残され、むしろ拡大しているのであります。その上、アメリカの戦争に日本国民を動員する、そのための法改悪、地方議員定数削減、上からの市町村合併推進など、地方自治体が望んでもいない自治体リストラ路線の推進など、地方自治拡充とは相入れない重大な改悪も盛り込まれているのであります。日本共産党が、この法案を地方統制法と呼んでいる根拠はここにあります。(拍手)
以下、具体的に反対理由を申し述べます。
第一に、国の地方への関与、統制が強化され、地方自治体の住民生活向上の努力が抑制されるという問題であります。
本法案は、これまで憲法の規定から権力的関与は認められてこなかった自治事務に対し、法的義務を負う是正の要求を明示し、それを出すのも内閣総理大臣一人からすべての大臣に広げています。こうして、国は法定受託事務だけでなく、地方自治体のすべての事務に関与、統制の権限を持つこととなります。その上、個別法で代執行できる旨の規定を初めて地方自治法に盛り込んだことも重大であります。
政府は、違法な状態がおさまらないとき、政府がその権限を行使するのは当然と開き直っています。しかし、国と地方は対等、協力といううたい文句に偽りがないのであれば、政府が一方的に正しいという姿勢こそ正されるべきであります。地方自治体と住民を信頼し、原則関与しない、ここに地方自治を尊重する姿勢があらわれるのであります。
政府のこの姿勢は、高知県の非核港湾条例制定、各地の大型店出店規制条例、宅地開発指導要綱など、住民の安全や健康、よりよい生活環境を守るために地方自治体が独自に設けた規制や基準に対しても、この権力的規定を行使する危険を浮き彫りにするものであります。建築基準法改正では、国の利害に重大な影響を与えるという一方的な判断基準を持ち込み、住民同意もなく、自治体が建築確認をしなくとも、原子力発電所や軍事基地を建設するために国が直接執行できる仕組みすら導入されているのであります。
本法案が国の関与の縮小、廃止に資するどころか、逆に関与、統制を強めるものであることは明白であります。
第二に、地方分権の名で米軍用地特別措置法の改悪を盛り込み、地方自治体、住民をアメリカの戦争に動員する仕掛けを推進していることは断じて許されません。
本改悪案は、これまで県知事や市町村長の事務であった土地調書への署名、押印、裁決申請書の公告縦覧などを国の直接執行事務として取り上げた上に、新たに緊急裁決、代行裁決制度を導入し、県収用委員会の機能をも根こそぎ奪おうというものであります。新ガイドラインで約束した米軍への新たな施設・区域の提供を適宜適切に行うために、憲法二十九条が定める国民の財産権を保障する枠組みを取り払うなど、言語道断と言わなければなりません。(拍手)
第三に、本法案が住民犠牲、地方自治切り詰めの自治体リストラ推進法案ともいうべきものだからであります。
地方分権というのなら、市町村合併や地方議員定数など、自治体の自主性にゆだねるべきであります。ところが、本法案によって、現在でも法定定数より二万二千名も少ない地方議員定数をさらに削減し、戦時中の定数以下に抑えられる自治体すら七百十一も生み出すという、これがどうして地方分権なのか。市町村合併も、何よりもそこに住む住民の大多数の合意、成熟こそが基本であるにもかかわらず、ひたすら上から推進の旗を振る、これこそ地方分権と全く相入れないものであります。
さらに、必置規制の緩和の中には、福祉事務所の現業職員の配置基準、公立図書館館長の司書資格など、その基準があるからこそ、住民の暮らしや環境、教育や文化の水準がやっと保たれているものが多数含まれており、その緩和は住民サービスの後退につながりかねません。こうした法改正は、住民が主人公という地方自治の大原則に相反するものであり、国が地方自治体に強要してきた自治体リストラの流れを、地方分権の名前で推進するものにほかならないのであります。
第四に、国による自治体締めつけ、統制の大きな手段となってきた通達行政も温存され、地方交付税、国庫補助金などによる財政面での統制の仕組みには何ら手がつけられていないことであります。
自治省通達、通知の約四割が現行自治法の自治大臣の技術的助言、勧告規定によって出されてきました。その中には、自治体リストラ推進の大号令や、国の景気対策に沿って地方単独事業を積み増しさせ地方財政破綻を導く通知など、自治体の自主性を脅かし、住民を苦しめる内容も少なくありません。真っ先に削除、廃止されるべきこうした規定が残されていることが重大であります。通達行政の大きな変化は望むべくもありません。
五党提案の修正案は、以上申し述べた政府案の重大な問題点に何らメスを入れるものとなっておらず、賛成できません。
日本共産党は、憲法に明記された地方自治の本旨を真に実現するために、国民、地方自治体の皆さんと力を合わせ、今後も全力を尽くす決意を述べ、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 鰐淵俊之君。
〔鰐淵俊之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/6
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007・鰐淵俊之
○鰐淵俊之君 私は、自由民主党、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となっております地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
我が国は、中央集権的な行政体制をとることにより、明治維新以降の近代化、第二次世界大戦後の復興や高度経済成長をなし遂げ、日本の発展に寄与してまいりました。しかし、今日においては、もはや制度疲労を起こし、さまざまな弊害が生じて、逆に我が国の活力を低下させる一因となっております。
今後、我が国において健全な民主主義を発展させ、豊かな国民生活の実現を図るためには、国と地方公共団体の役割を明確にし、国と地方公共団体が対等となる関係になるような、新たな行政体制を構築する必要がありますが、この観点からも、今回の一括法律案は、中央集権型の行政体制を地方分権型の行政体制に変革しようとするものであり、内容的にも、二十一世紀を見据えた改革であると評価できます。
本法案の内容の第一は、機関委任事務制度の廃止であります。機関委任事務制度は、明治以来の我が国の中央集権型の行政体制の中核をなすと言われてきたものであり、地方公共団体の自主性、自立性を阻害するのみならず、国と地方との役割分担や責任の所在を不明確なものとしているため、長い間その廃止が課題とされてきました。今回、この一括法案により、地方自治法を初めとする四百数十本の法律改正を行い、機関委任事務制度が廃止されることになりました。これは極めて画期的なことであります。
また、機関委任事務の廃止に伴い見直される地方事務官の身分の取り扱いについて、一言申し述べます。
この問題について、与野党間の協議の結果、第一に、廃止に伴い厚生事務官に移行する社会保険行政職員のための新たな共済組合を創設する、二つ目は、廃止の経過措置として、七年間は引き続き地方公務員の職員組合のメンバーでいられる等の修正を行ったことであります。
第二に、地方公共団体に対する国の関与のあり方を抜本的に見直し、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、新しい国と地方公共団体とのルールを確立することにしております。これは、地方公共団体の自主性、自立性を高め、国と地方公共団体との関係を対等、協力な関係にしていく第一歩であると考えます。
第三に、国から地方公共団体へ対する権限移譲であります。今回の法律案では、都市計画法、森林法等三十五本の法律の改正を行うこととしているほか、人口三十万人以上の市に権限をまとめて移譲するための特例市制度を創設するなど、住民に身近な行政はできる限り住民に身近な地方公共団体が行うという、地方分権の基本理念に即した内容であると考えます。
第四に、必置規制の廃止、緩和を行うこととされておりますが、これは、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるために当然なものであります。
最後に、市町村合併の推進等の地方公共団体の体制整備を推進することにつきましては、地方分権を進めると同時に、地方公共団体を行財政的にも自立させるために必要不可欠の内容と考えます。
以上のように、今回の地方分権一括法案の内容は、平成五年の国会決議以来の、地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の勧告、計画を踏まえており、地方分権推進のために第一歩を踏み出した内容であると評価されるものであります。
なお、今回の法案が四百七十五本という非常に多くの法律の改正を伴うことから、もっと審議をすべきとの意見も一部にあります。しかし、これら法律の改正が必要なのは、その内容が機関委任事務制度の廃止という我が国の法体系の基本にかかわる事項の改正であることによるため、実質的な内容の検討、審議は十分尽くされていると考えるものであります。
最後に、今後は、本法律案を成立させ、地方分権を実行の段階に移すとともに、政府においては、国と地方公共団体を通じた税財源の再配分や一層の市町村合併等を進めるなど、さらなる地方分権推進の取り組みを続けられることを願って、私の賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/7
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。(拍手)
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011・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時二十七分散会
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出席国務大臣
自治大臣 野田 毅君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114505254X03719990611/11
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