1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年三月十五日(月曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月九日
辞任 補欠選任
上野 公成君 陣内 孝雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 須藤良太郎君
理 事
成瀬 守重君
畑 恵君
簗瀬 進君
山下 芳生君
梶原 敬義君
委 員
加納 時男君
倉田 寛之君
小山 孝雄君
末広まきこ君
中曽根弘文君
長谷川 清君
平田 健二君
福山 哲郎君
前川 忠夫君
海野 義孝君
加藤 修一君
西山登紀子君
渡辺 秀央君
水野 誠一君
国務大臣
通商産業大臣 与謝野 馨君
国務大臣
(経済企画庁長
官) 堺屋 太一君
政府委員
公正取引委員会
委員長 根來 泰周君
公正取引委員会
事務総局経済取
引局長 山田 昭雄君
経済企画庁長官
官房長 林 正和君
経済企画庁調整
局長 河出 英治君
経済企画庁総合
計画局長 中名生 隆君
大蔵省国際局長 黒田 東彦君
文化庁次長 近藤 信司君
通商産業大臣官
房商務流通審議
官 岩田 満泰君
通商産業省産業
政策局長 江崎 格君
通商産業省基礎
産業局長 河野 博文君
通商産業省機械
情報産業局長 広瀬 勝貞君
通商産業省生活
産業局長 近藤 隆彦君
資源エネルギー
庁長官 稲川 泰弘君
資源エネルギー
庁石油部長 今井 康夫君
中小企業庁長官 鴇田 勝彦君
中小企業庁次長 殿岡 茂樹君
事務局側
常任委員会専門
員 塩入 武三君
説明員
経済企画庁経済
研究所長 貞広 彰君
外務省中南米局
長 阿部 知之君
農林水産大臣官
房審議官 大森 昭彦君
運輸省航空局次
長 安富 正文君
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本日の会議に付した案件
○平成十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
送付)、平成十一年度特別会計予算(内閣提出
、衆議院送付)、平成十一年度政府関係機関予
算(内閣提出、衆議院送付)について
(総理府所管(公正取引委員会、経済企画庁)
、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企
業信用保険公庫及び中小企業総合事業団信用保
険部門)
○中小企業経営革新支援法案(内閣提出、衆議院
送付)
○中小企業総合事業団法案(内閣提出、衆議院送
付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/0
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001・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) ただいまから経済・産業委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る九日、上野公成君が委員を辞任され、その補欠として陣内孝雄君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/1
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002・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 去る十日、予算委員会から、三月十二日から十六日正午までの間、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会及び経済企画庁、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫並びに中小企業総合事業団信用保険部門について審査の委嘱がありました。
この際、本件を議題といたします。
通商産業大臣から説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/2
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003・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 平成十一年度の通商産業省関係予算等について御説明申し上げます。
現下の我が国経済は、戦後初めて二年連続のマイナス成長が見込まれ、失業率についても依然として高い水準にあるなど極めて厳しい状況にあります。
政府は、現在の困難な状況を打破し、我が国経済の再生を図るため、昨年十一月に緊急経済対策を取りまとめるなど、目下さまざまな措置を講じているところであります。私といたしましても、景気の回復や経済の再生といった当面の重要課題に加え、二十一世紀の新たな我が国経済の発展基盤を形成する観点から、経済構造改革などの中長期的課題にも力強く取り組み、一段と活力と魅力にあふれた我が国経済社会の実現に努力してまいる所存であります。
このような認識のもと、通商産業省としては、平成十一年度において、以下の五つの重点項目に沿って全力を挙げて政策の遂行に取り組む所存であります。
第一の柱は、産業再生に向けた政策手段の総動員であります。
政府は、先般新事業の創出による良質な雇用の確保と生産性向上のための投資拡大に重点を置いた産業再生計画を策定いたしました。
当省としては、本計画の着実な実施を図るため、個人等による新規開業及びベンチャービジネスの成長支援、新規・成長十五分野における市場整備等の加速的な推進、産業のフロンティアを開く創造的技術開発の促進、経済社会のあらゆる分野における情報通信技術の本格的展開などによる高度情報通信社会の実現、経済の動脈たる物流システムの高度化などの施策を強力に実施いたします。
第二に、中小企業の基盤強化・新事業展開に向けた支援であります。
我が国経済の活力の源泉たる中小企業が、金融システムの不安定化、低迷する景気等の厳しい状況を克服し、二十一世紀の発展に向けた基盤づくりを進める環境を整備すべく、貸し渋り対策を強力に推進するとともに、新規開業、雇用創出を図ってまいります。また、新商品開発など中小企業の経営革新に対する支援や対応のおくれが懸念されるコンピューター西暦二〇〇〇年問題への中小企業の対応促進などの施策を強力に推進してまいります。
第三の柱は、生活の質の向上への支援であります。
先般取りまとめられた生活空間倍増戦略プランの着実な推進を図る観点から、住宅における情報化、省エネルギーやリサイクルのための技術開発や普及促進を図ってまいります。
また、地域における人、物、情報が交流・集積する場所である中心市街地の活性化を図るため、中心市街地における施設の整備や各種プロジェクトの推進等、ハード・ソフト両面からの支援を充実し、活力に満ちた豊かな商業空間の実現を目指します。
第四の柱は、二十一世紀の国際経済を支える基盤構築への貢献であります。
アジア経済と我が国経済の回復の好循環を形成するため、経済的困難に直面しているアジア諸国に対し、金融対策、人材育成・技術支援、インフラ整備、制度整備等の各面における経済再生支援策を早急に講じてまいります。また、諸外国との適切な協力を図りつつ、多国間の国際経済ルールの形成、維持等に積極的に関与してまいります。
第五の柱は、環境・エネルギー制約への挑戦であります。
近年、広がりを見せている地球温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題など、通常の事業活動や日常生活に深くかかわる環境問題、資源・エネルギー問題を克服するため、地球温暖化対策推進大綱の着実な実施、各分野におけるリサイクルシステムの構築、技術開発の推進、PRTR制度の導入による化学物質管理の促進等、新たな経済発展の原動力ともなる循環型経済システムの構築に努めてまいります。
また、エネルギーセキュリティー、環境保全という政策課題に対応するため、原子力開発・利用や新エネルギー導入の促進、省エネルギーの推進等の重要課題に積極的に取り組むとともに、二十一世紀に向けた新たなエネルギー供給システムの構築や戦略的な国際エネルギー政策を推進してまいります。
以上申し上げました平成十一年度通商産業政策を実施していくため、一般会計では総額九千百七十二億円を計上しております。また、特別会計については、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計七千億円、電源開発促進対策特別会計四千七百十六億円を初め、五つの特別会計にそれぞれ所要の予算額を計上しているところであります。
さらに、財政投融資計画につきましても、貸し渋り対策を初めとして所要の措置を講じております。
平成十一年度通商産業省関係予算及び財政投融資計画の詳細につきましては、お手元に資料をお配りしてありますので、委員各位のお許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。
何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/3
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004・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 次に、経済企画庁長官から説明を聴取いたします。堺屋経済企画庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/4
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005・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 平成十一年度の経済企画庁関係の予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。
総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁の予算額は、百五十億九千九百万円余であります。
以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。
第一に、経済情勢判断の推進など調査分析機能の強化に必要な経費として、十二億四千四百万円余を計上しております。
この内訳の主なものは、一つには景気情報早期把握推進調査費など、迅速かつ的確な景気判断に資するため、きめの細かい景気情報を迅速に収集し、経済指標の充実を図るために必要な経費です。もう一つは、構造改革の推進による地域経済影響度の調査、構造政策の景気動向への影響評価の調査など、経済構造改革などの推進に資するための調査分析に必要な経費であります。
第二に、経済運営と経済構造の改革を適切かつ機動的に推進するのに必要な経費として、六億九千九百万円余を計上しております。
この内訳の主なものは、一つには就業形態の多様化に関する調査など、景気動向を踏まえ、経済構造改革の方向と整合性のとれた経済運営を適切かつ機動的に推進するために必要な経費です。もう一つは民間資金等活用事業、つまりPFIの推進に必要な施策について提言を行い、その実現を図るために必要な経費であります。
第三に、国民生活の視点に立った市場のルールづくりに必要な経費として、三億千二百万円余を計上しております。
この内訳の主なものは、一つには消費者契約適正化事業など消費者政策の充実強化に必要な経費であり、二つ目にはボランティア活動、いわゆるNPOの促進等のための環境整備に必要な経費、三つ目には公共料金に係る情報公開のあり方に関する調査など物価行政を積極的に展開するのに必要な経費であります。
海外経済協力基金の平成十一年度の事業規模は、三千六百億円を予定しており、このための資金として、一般会計において、出資金千二百七十七億円が大蔵省に計上されるとともに、財政投融資計画においても、資金運用部資金等からの借入金三千五十二億円が予定されております。なお、本計数は、基金が本年十月一日を目途に日本輸出入銀行と統合し、国際協力銀行(仮称)に改組するまでのものであります。便宜上、通期の計数をとらえた場合、事業規模は、九千二百億円、出資金三千百二十六億円、財政投融資七千四百六十五億円となる予定であります。
以上、平成十一年度における経済企画庁関係の予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/5
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006・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 次に、公正取引委員会委員長から説明を聴取いたします。根來公正取引委員会委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/6
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007・根來泰周
○政府委員(根來泰周君) 平成十一年度における公正取引委員会関係予算につきまして、その概略を御説明申し上げます。
総理府所管一般会計歳出予算のうち、公正取引委員会の予算額は、五十七億八千百万円となっております。これは、前年度予算額に比べますと、総額で一億五千九百万円、二・八%の増額となっております。うち、人件費は九千二百万円の減となっておりますが、これは、地方分権推進計画に基づく、都道府県知事への委託費の廃止によるものであります。また、物件費は二億五千百万円の増となっております。
以下、その内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法の施行経費等として五十六億四千五百万円を計上しております。
これは、違反事件の審査のための経費、経済実態や流通実態の調査及び対策を講ずるための経費など、独占禁止法を厳正に運用し、法運用の透明性を確保するとともに、規制緩和の推進及び規制緩和後の市場の公正な競争秩序の確保を図ることにより、競争政策を積極的に展開するための経費であります。この中には、違反事件の処理を担当する部門を中心とした増員のための経費が含まれております。
第二に、下請代金支払遅延等防止法、いわゆる下請法の施行経費として五千六百万円を計上しております。
これは、下請法の厳正な運用と啓発普及活動を積極的に行い、下請取引の適正化を推進するための経費であります。
第三に、不当景品類及び不当表示防止法の施行経費として八千万円を計上しております。
これは、景品表示行政を積極的に推進し、公正な競争を維持促進することにより、消費者利益の保護を図るための経費であります。
以上、平成十一年度における公正取引委員会の予算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
何とぞ御審議のほどよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/7
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008・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 以上で説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/8
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009・福山哲郎
○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。
本日は、かなり広範囲にわたりましていろんなことを質問させていただきたいというふうに思います。少し長時間ではございますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
まずは第一に、先週の金曜日に、昨年の十—十二月期のGDPの結果が出てまいりまして、五四半期連続のマイナス成長になったということで、九八年十—十二月期のGDP実質マイナス〇・八%成長、九七年の十—十二月期から戦後初めて五期連続のマイナス成長となりました。主要先進七カ国でも九八年のマイナス成長は日本だけという、御案内のように大変異常な事態であります。
堺屋長官がいつもおっしゃられますように、恐らくこの十—十二月期というのは、まさに夜明けの前の一番暗いところだったということなんだと思いますけれども、この結果について長官はどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/9
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010・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 十—十二月期のQE、四半期別国民所得統計速報によりますと、この期間に内外需合わせて〇・八%のマイナスになりました。これは年率に直しますと三・二%になる、非常に大きなマイナスであります。その結果、委員御指摘のように五期連続のマイナスになりまして、四期連続も新記録だったんですが、五期連続というのはこの種の統計をとり出してから最初のことでございます。
ただ、パターンを見ていただきますと、一昨年の十—十二月期には外需が〇・四%プラス、内需が一・三%マイナス、その次の期は、内需の方が一・〇%マイナスで、外需が〇・三%マイナス、その次の期は、内需の方が一・一%マイナス、外需がプラス〇・四、そして七—九月期は内需が〇・六マイナスで、外需が〇・三プラスでありました。
要するに、今回は、内需の方はややましになっているけれども、輸出がアジア地域を中心に悪かった、これが一つの理由であります。それからもう一つは、七—九月期が〇・七%のマイナスと予想されておりましたのが、意外や中小企業等の設備投資が多くて、確定値ではマイナスが〇・三になったというようなこともございまして、いかにも今回、この十—十二月にがっくり落ちたような印象もありますけれども、内容を見ますと必ずしもそうではなしに、内需だけで見るといささか改善が見られるという状況になっております。
重要なことは、今回、政府投資は相当公共事業等をやりましたので改善要素になっておりますが、消費需要は心配されたほどの下がりはなかった、住宅投資とそして設備投資が非常に低落している、これが大きな問題でございます。その後、ことしに入りましてから住宅の方はかなり改善が見られるという情報が相当に入っております。したがって、そこは改善されると思いますが、設備投資は依然として後退が続いているというような状況でございます。
政府といたしましては、十一月に決定いたしました第三次補正予算を含みます緊急経済対策の着実な実行と、そして金利、金融政策等をあわせてこの一—三月にはいい状態をつくり、そして四月からの平成十一年度にははっきりとしたプラス成長に持ち込むべく全力を挙げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/10
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011・福山哲郎
○福山哲郎君 私も、景気はよくなるにこしたことはないというふうに思っていますし、堺屋長官の言われる見通しのようにいけば大変ありがたいなというふうに思っています。
ただ、長官にお伺いをしたいんですが、消費の方が思ったほど冷え込まなかったというふうに今おっしゃられましたが、十—十二月期というのは、ボーナスも十二月に出ますし、年末のセール等もありまして基本的には消費は上がる期だというふうに通常は思うんです。それが、実は思ったより下がらなかったというよりかは、思ったより上がらなかったというのが実情だというふうに思うんですが、そこら辺の理由というか、どのように今判断をされておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/11
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012・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 御指摘のように、十—十二月というのは消費の、最もたくさん売れるときでございますが、これは季節修正済みでやっておりますので、季節によって売れるということは一応打ち消されているとお考えいただいていいと思います。
また、各流通部門が消費税還元セールとかいろんなイベントをやりました。その効果も期待されたんですが、プラスにはなりませんでした。反面、ボーナスが前年に比べるとかなり減っております。その影響で勤労者所得で見るとかなりのマイナスが、二%以上のマイナスが予想されたものですから、かなり下がるんじゃないかと思っておりましたところ、季節修正済みで〇・一のマイナスということでございますので、危惧されたほどの悪化はなかったが期待されたほどの上昇もなかったというような結果になっております。
一月になりましてからの消費動向もいろいろと情報はふくそうしておりまして、消費というのは全く政治で動かしにくい部分でございますので、確かに委員おっしゃるように危惧しておりますが、今のところ、住宅につられてやや回復傾向がこの二月の下旬あたりから出ているんじゃないかなというような感じは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/12
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013・福山哲郎
○福山哲郎君 本当にそれならありがたいなと思います。
消費について見ますと、一—三月期から見ても、マイナス〇・一、マイナス〇・一、マイナス〇・一ということで、実は余り大きく動いていないというふうに私は思っているわけです。
三番バッターが消費でございますね、長官。三番バッターが四月、五月に出てきて何とかというお話ですが、要は、これだけ政府が緊急経済対策と減税措置等を昨年とりながらも、消費自体は余り大きな動きがないということで、私は、消費が急に花が開いていくとか、逆に言うとしぼむ方も含めて、どちらかというと、当面、やっぱり動きはそんなに、国民一人一人も将来に対する不安もありますし、堺屋長官が一生懸命頑張って景気はよくなるんだとおっしゃられても、それもほんまかなというのもあると思いますので、そこら辺については長官の言われるようになればいいなというふうに思いながら、次に質問に移らせていただきます。
先ほど、公共投資の方で一〇・六%プラスだと。これは昨年四月の緊急経済対策等の実際の効果が出てきているというふうに私も思っています。
それで、一番バッターが公共投資で、多分このレベルでいうと二塁打ぐらいは打ってくれているという感覚だと思いますが、二塁打ぐらいは打っている。住宅投資もなかなか、この二番バッターは動きが鈍かったんですが、ようやくこの一月に入って住宅ローン減税等、政府の政策減税等の動きの中で二番バッターもようやく活躍をする傾向がちょっと出てきた。ところが、消費に関しては今申し上げたとおりのような状況でございます。そして、四番の設備投資が実はマイナス五・七と、さらにこの十—十二月期に悪化をしているということで、GDPに対する設備投資の影響というのは規模的にも大変大きい。それが実は坂道を落ちていっていると。
これは、せっかく一番、二番が頑張って、消費はひょっとしたら犠牲フライかもしれないけれども、四番の設備投資は実は残塁に終わるような状況が起こるのではないかというような懸念をしております。この設備投資のマイナス五・七というのは大変重要というか、問題だというふうに思っておりまして、そこに関しては長官はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/13
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014・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 委員御説のように、政府の公共投資というのは大体全体の七%台でございます。住宅も四・五とか四%台でございます。したがって、長打を期待できるようなバッターではございません。それに比べまして消費は六〇%でございますから、ここで一発長打というように期待したいところでございますが、今のところ消費のもとであります可処分所得がそれほど増加するとは思えません。
したがって、消費者のマインドが改善をして耐久消費財等に需要の転換が起こる、あるいは新しい耐久消費財が出てくる、そういうようなことを期待しないと大きな伸びはできないんじゃないか、そういうような議論もございます。
ただ、耐久消費財の買いかえ時期が来ておりまして、住宅に続いてそういう周辺刺激がございますれば、今コンピューター、軽自動車等々、新しい企画、新しい商品などの支出がございますので、かなり、ある程度期待できるのではないかと思います。
問題は輸出と設備投資なのでございますが、この設備投資は衰えたりといえども一五、六%のシェアを持っておりまして、政府の公共事業の倍ぐらいのシェアを持っておりますから、これがやはり長打を出してくれなきゃ困るんですが、その前に、設備投資がふえるためには企業が設備投資をするともうかるという判断が必要です。そのためには、労働生産性が向上し、資本効率が上がる、いわゆるROEが上がらなければなりません。
ところが、大赤字が予想されます金融機関を除きましても、この三月期の日本の企業のROEは二%少々だと言われております。それに比べて、アメリカ、ドイツ、イギリスあたりでは十数%、時には二〇%に近づくような利益率なんです。そうなるためには、やはり人員の整理や事業の選択も含めた大胆な手術が必要になってまいります。その間の苦痛、これぞ本当の夜明けの前の暗さだという感じがいたしまして、恐らく来年度の前半ぐらいはかなり厳しい事態があるんじゃないか。
その間、政府の公共事業や減税を含めた消費需要、こういったものがずっと下支えをして次に伝えてくれる。同時に、各省の政策が功を発揮いたしまして、新しい産業分野、例えば介護でございますとか、あるいは住宅建設でございますとか、あるいは家事のアウトソーシングの新しい産業でございますとか、環境の発展とか、そういうところの新しい投資が出てきてくれなければ、従来型の産業構造で設備投資が拡大するというのはかなり時間のかかる問題だと思っております。
政府といたしましても、経済戦略会議の提案、あるいはこれから進めます経済審議会等でそういった点を十分に考慮して解決していきたい、積極的にそういう設備投資を呼び出していきたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/14
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015・福山哲郎
○福山哲郎君 長官のお話を伺っていますと、ほとんど、余り認識は、正直、生意気ながら変わらないのかなと。だから、設備投資に対してはっきりと確信を持って四月、五月、来年度出てくるというよりも、やはり政府の政策と、呼びかけと、もうかるという意識等が出てこないとなかなか出てこないというと、今お話にありましたように、四番バッターの登場も、まあどうなのかなという状況だと思います。
その中で、私は思うんですが、長官がまさに言われましたように、この三月、恐らく日本の経済は未曾有のというか、多分戦後始まって以来の悪い企業決算を迎えるのではないかというふうに思います。そして、その悪い決算を踏まえた後、働く人たちにとっては大変厳しい春闘を迎えると。これは、賃上げよりも何よりも雇用確保だというような状況の中で、先ほど長官も言われたように厳しいリストラとか構造改革をしていかなければいけない。そうすると、逆にその三月、四月というのは、〇・一%のマイナスぐらいで落ちついている六割を占める消費が、実は非常にマインド的にはしんどくなるんじゃないか。
そうすると、新聞紙上で三月の決算が最悪の決算だというようなことが活字で躍り、春闘が厳しいということを働く者は自分の各企業の中で感じ、目の前でリストラされている人を見る中で、そして消費が上がるか、さらには四番の設備投資が出てくるかというと、僕はやっぱり三番、四番の登場というのは本当に厳しいんじゃないかというふうに今感じています。
そんな中で、この政府当初見通しの、実は当初ではないんですが、修正されたマイナス二・二%の九八年度の成長が、この十—十二月期のマイナス〇・八を踏まえて一—三月期はどういった見通しを長官は今お考えでいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/15
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016・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 平成十年度に関する限りは、十—十二月期がマイナス〇・八と予想以上に下がった反面、七—九月期がかなり上方修正されているということがございます。したがいまして、仮に一—三月期が成長ゼロだったといたしますと、全体を通じてマイナス二・四ぐらいになります。私どもは、一—三月期はプラスに転じてくれるのじゃないかという期待がありますが、仮に〇・〇で行きましてもそれぐらいでございますから、マイナス二・二という見通しは修正する必要はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/16
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017・福山哲郎
○福山哲郎君 マイナス二・二でも二・四でもどちらでもよろしいんですが、これは僕はさきの臨時国会でもこの見通しの件については長官と少し質疑をさせていただいたんですが、当初予算でプラス一・九%だったんです。四月の総合経済対策と十二月の補正という、ある意味でいうと、普通ならベンチにいないような松井とかイチローみたいな代打を昨年四月に経済対策というところで十六兆円、十二月も十七兆円ということで、本当に松井、イチロー級の代打を昨年はベンチにいないはずなのに出してきた。それで、代打なしで当初プラス一・九だったものが、代打を二人出してマイナス二・二ということになっています。
僕は、当たったか外れたかということは、もう余り議論はしても仕方がないと思いますし、見通しがあかんかったやないかという話をしても水かけ論ですから意味がないと思うんです。
これ、当初予算でプラス一・九だったんです。二人の代打を四月と十二月に出してマイナス二・二です。実は、外れた率というのはプラス・マイナスすると四・二とか三になるわけです。四・二%とか三%のずれというのは尋常なずれではないと私は思うんです。例えば九八年度のGDPが四百七十八兆円ぐらいだと計算しても、四%から四・数%ずれるということは、実はGDPでいうと十九兆円とか二十兆円のずれになるわけです。十九兆円とか二十兆円のずれというと、先ほど言った民間住宅が十七兆円ですから、この分ぐらいのずれを今回の経済政策では起こしているわけです。
ここに対しては、やはり九七年までの従来の政府の対策、それから九八年の見通しについてかなり大きな誤りがあったんだということを認めていただかなければいけないのではないかというふうに私は今思っております。これだけ厳しい状況ですから、九八年がマイナス二・二かマイナス二・四の議論をしているよりも、将来どうするかという議論の方が重要だとは思いますが、やはりプラス・マイナスで四・数%ずれているというのは大変大きい、それも二人も代打を使っているわけですから。
この辺について長官はどのように思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/17
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018・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 昨年の見通し、プラス一・九というのが大変大きく外れたことにつきましては、率直に国民の皆様におわびする以外にないと思います。これは明らかに間違いました。
どこにその間違いがあったのか、私どもが小渕内閣になってから丹念に研究いたしました。その結果、やはり最大の問題は金融政策のあいまいさにあった。これがどんどんと収縮していく。政府が十六兆円、その次は減税を入れて二十四兆円つぎ込みましても金融収縮がとまらない。ここで相当連続三振をとられたようなところがございまして、この金融収縮をまずとめなきゃいけない、これに小渕内閣は全力を挙げました。
一つには、貸付保証を中小企業にやりました。この効果があらわれまして、十二月から一月にかけて中小企業の倒産件数は非常に少なくなっております。
第二に、大手金融機関に対して改善しなきゃいけないというので、臨時国会で金融再生法案、金融早期健全化法案を通していただきました。それが御案内のように去る金曜日あたりから実行されて注入されております。これで金融問題が本当に解決するのかどうか、まだやられたばかりでございますから危惧は残っておりますが、これは金融再生委員会の指導等もございましてかなりよくなるだろうと思っております。
そういうぐあいに、まずバケツの穴をとめて、それから改めて水を注ぎ込もうという政策をとっております。そういう点で、この不況の環の一番の重要だった金融問題がとまった、それに伴って中小企業の経営状態もかなり改善されてきている。そういったことごとがリストラあるいは金利の低下等で個人所得が減るというような問題を覆っていい方に影響してくれるのではないか。それを株式市場なども評価してくれているのではないか。あるいは住宅現場に来られる方がふえているのではないか。そういう意味から去年とは違った局面が出てきていると私は感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/18
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019・福山哲郎
○福山哲郎君 では、これは長官に、私が大変尊敬する元評論家でいらっしゃったので、今でもそうかもしれませんが、わからないというか、少しお伺いをしたいんですが、経済成長率というのは四半期ごとで見ていきますね、前の四半期からどのぐらい減ったんだという議論をしていきます。そうすると、先ほど冒頭申し上げましたように、五四半期連続で成長率は減っているわけです。日本のGDPは減っていっているわけです。
そうすると、政府の〇・五%成長というのは、それは一%であろうが〇・五%であろうが与謝野大臣が誤差の範囲だとおっしゃられたように、いろいろあると思うんですが、基本的にはどんどんGDPの大きさというのは減った上で、要は、当初でいえば例えば一—三月期が四百八十二兆円だったものがこの十—十二月期は四百七十三兆円と分母が減っていっているわけです。分母が減って例えば〇・五%成長したとしたって、それは一体日本のいつの時期のGDPに比べてどうなんだといったときに、〇・五%成長するのはいいことなんですが、分母自体が減っていっているわけですから、私はこの議論の中で、この国の雇用とかこの国の経済規模とか産業構造から考えて、一体どのくらいのGDPならば不況感とか不景気感とか将来に対する不安がなくなるような経済活動ができるのか、これが一概に言えるかどうかもわからないし、その議論が意味があるかどうかもわからないんですが、今のプラス〇・五にする一%にするというのは、どんどん減っていっていますから、ここが起点になるわけです。ここが起点になって〇・五上がった、よかったねといったって、実は三年前ぐらいの時期に比べれば全然落ちているわけです。それはプラスに転じるのはいいことなんですが。
では、日本の経済のファンダメンタルズで見たときに、どういう規模のGDPが本当に今の日本の経済の中でいいのかという議論が必要なのではないかというのは個人的に思っていまして、そこに対して長官の御見解をいただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/19
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020・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 委員御指摘のとおりでございまして、前年と比較しておりますから、前年が下がっていたらそれに比べてどうかと、こういうことになるわけです。五期連続でどんどん下がっておりますから、実額でいいますとかなりの減少を見ております。暦年で見て二・八%下がっているということでございます。
それで、この〇・五%というのは、毎期下がってきたところの平均をとりますから、今よりは高い、初期よりは低い。それを回復しようと思いますと、例えば一—三月期が〇・〇、横並びでございますと、これから平均いたしまして平成十一年度は〇・四ずつ上がらなきゃいけない、年率で一・六%ずつぐらいの成長をしなきゃいけない。一—三月期が〇・四ぐらい上がってくれていますと、向こうの谷間との間が上がりますから、あとは〇・一ずつぐらいになる。そういうテクニックな問題がございますが、それは経済学者の間の議論でございまして、一般国民の話からいうと、〇・一だろうが〇・四だろうが余り関係がないということになるでしょう。
それで、政府といたしましては、この〇・五というのは、とにかく五期連続でプラスにするんだ、今までの二年連続でマイナスになってきたのを三年連続マイナスにしないんだと、こういう決意を示したものでございまして、まだまだこれは健康体になった状態とは考えておりません。
さきに報告のありました経済戦略会議では、最初の二年間、九九年、二〇〇〇年は経済を再生するために早く言えば集中病棟みたいなものだと。そして二〇〇一年、二〇〇二年が一般病棟からリハビリだと。そして二〇〇三年から二〇〇八年まで、この期間に健康体になって、そしてその健康体の状態は潜在成長率で二・〇%と、こう見ているようでございます。
私どもはこれから経済審議会で、この経済戦略会議の提案も踏まえまして、さらに業種別に精査いたしまして、どれぐらいのものであるべきか、今申し上げたのは実質成長でございますから、これに名目成長が加わって財政がどのようになるのか、産業構造がどのようになるのか、それから雇用がどのようになるのか、そしてその中で、雇用も若い人、高齢者、女性、男性、いろんな面でどんな形になっていくのかというのをできることならことしの前半にお示しさせていただきたい、経済審議会として答申させていただきたい。
そこでは、委員御指摘のようなことを国民の皆様方にもよくわかってもらえるような形で示せればやりたいなと、今鋭意努力しているところでございます。経済戦略会議では大体二・〇%の実質成長という数字が出されておりまして、今のところそれが一番権威のある数字とお考えいただければいいんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/20
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021・福山哲郎
○福山哲郎君 この件についての質問はあと一つで終わりにしたいと思いますが、では先ほどからの流れの中で、三番バッター、四番バッターが打ってくれればいいんですが、ひょっとしたらファウルチップになるかもしれないし空振りするかもしれない。
そうすると、この〇・五%のプラスにするためには公的資本形成というものがまた必要になってくる可能性があります。来年度の予算審議をしている最中に、その話は予算が通ってからだという話をいただくのは百も承知の上でございますが、もしそういう状況で三番バッター、四番バッターが空振りをした場合には、長官としては次なる財政出動等のお考えはお持ちでいらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/21
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022・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 委員御自身がお話しいただきましたように、予算審議がまだ終わっていない段階で次の手はどうかというのを申し上げるのはいかがなものかと思いますが、経済政策につきましても、緊急経済対策と、十一年度の予算におきまして、そういったことも見込んで十分な手当てをしたつもりでございます。国際経済その他から緊急事態が起こってくる、災害が起こるというようなことがあれば別でございますが、十分な手当てをしておるつもりでございます。したがいまして、これをいかに上手に執行していくかというのが第一の問題だろうと思います。いろいろとそういう面では新しい政策も入れておりますので、執行の面で考える必要があろうかと思います。
また、予算以外にも、金融政策でございますとかあるいは規制緩和政策でございますとか、そういった経済対策の面で幾つも今考えなければならない点もあるのではないかと思っております。
そういったことをできるだけ取り上げまして、長打力がなくても、ピンチランナーを出すとかヒットエンドランをやるとかというようなことをやる。ベンチにいない選手をまた連れてくるというようなことはなるべく避けていきたいし、それでもできるだろうと、できるはずだと私たちは確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/22
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023・福山哲郎
○福山哲郎君 大変誠実にお答えいただきまして、ありがとうございました。
では、次の質問に移らせていただきたいと思います。
がらっと雰囲気は変わりますが、お手元に資料を配らせていただいております。「ご当選」という、何か政治家にとってはどきっとするようなものが書いてある、「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」というのがございまして、これはつい先月の二月二十三日に公正取引委員会の方でこの会社でありますいちこしに対して警告の措置をとっていただいた案件でございます。公正取引委員会には警告の措置をとっていただいて、私は京都が地元でございますので西陣の産地等大変皆喜んでおるんですけれども。
これ見ていただければわかりますように、振りそで無料プレゼントなんです。振りそでが無料でプレゼントされるというのはすごいことでございまして、これは借り上げのホールだの呉服の販売会場で、うまいんですが、十七歳から十九歳の女性には振りそでをプレゼントしますと、四十歳から六十歳の方には訪問着とか浴衣を無料プレゼントするということをダイレクトメール、チラシ等で周辺に発送しまして、それで当たったといって喜んでその会場に来られた方には、お仕立て代はうちの方でお願いしますと。さらには、その周辺にいろんなものを売っておりまして、結局すごい金額のお金を使わせるということでございます。
このように、一般の消費者に対して無作為抽せんで当たったかのごとくダイレクトメールで呼び寄せて、プレゼント品である反物の価格以上に仕立ての加工代とか、さらにはプレゼントとは別のものは通常価格でいろんな買い物をさせているということは、今回警告という措置をとっていただいたんですが、こういった商行為は景品表示法上どういうような問題があるのか、一般論で結構でございますのでお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/23
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024・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) 先生御指摘のとおり、「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」というような、いわば当選商法というようなことを言われているわけでございます。
本件につきましては、株式会社いちこしが一般消費者に郵送したダイレクトメールにおきまして、京都染織振興会主催、あるいは今お話にございましたような「振袖無料プレゼントご当選のお知らせ」、ここにありますように限られた人数の方々に無料プレゼントさせていただきますというようなこと。あるいは、「仕立て加工代は」「特別割引でお承りいたしております。」と記載いたしまして、あたかも着物の振興を図るために設立した権威のある特別な団体が、多数の中から特に選ばれた者だけを対象に、和裁技術保持等を目的に、通常の仕立て代に比べまして特別に安い仕立て代で着物を提供するかのように表示していたわけでございます。
しかし、実際にはこの株式会社いちこしが主体となっているものでございまして、また先生が御指摘のとおり、特に選ばれた、当選ということで限られた人数の方々にやっていたのではない、そういう企画ではないということでございます。
それと、仕立て代でございますが、通常の仕立て代に比べまして特別割引と言えるようなものではないということでございまして、当該金額は、企画対象の着物の反物原価あるいは仕立ての経費の合計を上回っていたということでございます。
こういった表示、これが景品表示法第四条第二号の規定に違反するおそれがあるといたしまして、先ほど御指摘ございましたように、去る二月二十三日、同社に対しまして警告を行ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/24
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025・福山哲郎
○福山哲郎君 実は、このいちこしという会社は過去、平成九年ですが、これは無料じゃないんですが、一円セールということをしていまして、振りそで一着に一円の値札をつけ、やはり数万円の仕立て加工代金と組み合わせて販売を行っていました。そして、その平成九年の五月には、全日本帯地連盟というのが、いちこしの商法は不当廉売だということで公正取引委員会に告発を行っているというふうに伺っているんですが、これに対して公正取引委員会はどのように対処をしていただいたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/25
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026・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) その御指摘の件でございますが、今回の違反行為と類型や内容も異なりますけれども、景品表示法に違反するといたしまして私ども過去に警告をした事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/26
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027・福山哲郎
○福山哲郎君 その警告はいつのことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/27
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028・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) ちょっと正確な日にちは忘れましたが、一昨年かと思いますけれども、警告という措置を講じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/28
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029・福山哲郎
○福山哲郎君 一昨年ということは、平成九年の何がしかのときに警告をされたわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/29
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030・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) 一昨年、平成九年の九月でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/30
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031・福山哲郎
○福山哲郎君 警告というのは具体的にはどういう内容というか、どういう法的な措置というのか、表現上わからないんですが、警告というのはどういった性質のものと判断すればいいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/31
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032・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) 景品表示法違反行為につきましては、景品表示法の第六条で排除措置という、これは法律上の行政処分でございます。しかし、事案の内容あるいは迅速に処理する必要性というようなこともございまして、あるいは相手方が既に私どもが調査していたときにやめるというようなこと、もろもろのことを考えまして、行政処分ではございませんで行政指導といたしまして、相手方の違反行為を取りやめるということも前提といたしまして、そのような指導をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/32
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033・福山哲郎
○福山哲郎君 行政指導をされているということで、このいちこしさんも御商売をされていますし、この不景気のさなかですから、生活がかかっていると思うので大変だとは思うんですが、実は平成九年の九月、先ほど言われたように警告が出ている。それでまた平成十一年二月二十三日に、先ほど言われたような類型、内容だということで警告が出たわけですね。
そうすると、平成九年九月から十一年二月というわずか一年半ぐらいの間に、警告が出てから大してたっていないのに、いきなり一円から無料にまた値下げして、同じようなことをしているわけです。
今回の公正取引委員会の措置がやはりまた警告であったと。先ほど申し上げましたように、一生懸命仕事をされているわけですから、生活もかかっているからなかなかきついとは思うんですけれども、これはどう考えても確信犯というか、警告だと行政指導だということでもう一度同じようなことをやっている。さらには、先ほどまさに言われましたように、染織振興会という非常に信用のある団体のように見せかけをして業務を行っている。
これに対して今回の措置の警告というものは、なぜさらに強いものにはならなかったのか、理由をお聞かせいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/33
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034・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) 平成九年に私どもが処理いたしました事案というのは、今回の事案とは事実であるとか違反の行為類型というものが異なるわけでございます。過去の事案に厳正に対処していて今回の事件が生じなかったかどうかということは一概に言えないかとも思いますが、しかし、繰り返して同じ者がこのような景表法に違反するような行為を行ったということもございまして、今回は私ども、警告と同時に、先生が御指摘のとおり、全国各地でもやっておりましたものですから、公表いたしました。
警告しかつ公表いたしまして、今後こういった行為が繰り返し行われないように十分周知徹底しまして、そして消費者の側にも十分これからの買い方について気をつけてもらうように、そういったことも促したわけでございます。今後とも十分監視してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/34
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035・福山哲郎
○福山哲郎君 そうすると、警告で公表しないというのは、公表するというのは段階としてはより重いという判断でよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/35
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036・山田昭雄
○政府委員(山田昭雄君) 事案の性質なり内容によりまして、やはり皆さんそれぞれ御商売をしておりますし、それと消費者をいかに店に引き寄せるか、プルするかということもこれも一つの商売でございます。しかし、消費者を欺罔してそして来させるということは、これはかなり問題、悪質な行為になりますので、私どもとしては景表法上このような措置を講じているわけでございます。
公表ということは社会的にもかなり影響も与えます。そういうことでありますし、また消費者にも、こういう売り方であり、当選といって限られた者に当選したというように表示しても、実は非常に多くの者に、ダイレクトメールで、若い人には晴れ着であり年寄りにはとめそで、訪問着であるとか、先ほどそのように御指摘ございましたが、販売業者からすべての者に当選だということを出している、こういったものであるということを消費者にもよく訴えるということによって再発が防げる、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/36
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037・福山哲郎
○福山哲郎君 そのとおりだと思います。
ただ、実際に、一回目の警告では再発の防止ができなかったという事実があります。そこは、できれば重く受けとめていただきたいと思います。
確かに、いちこしは商売をしているということを先ほど私も申し上げましたが、その後ろで、実はまともに商売をされて一生懸命働いている方がたくさんいらっしゃる。
特に中小企業関係の方は、こういった不当な商売がまかり通って、なおかつ確信犯的に、警告程度だからもうかれば得だというような状況で、これは多分こういういちこしの例だけではないと思うんです。家電の安売り販売も最近問題になっております。確かに不景気ですし、景気が悪いですから、安いものに消費者は飛びつくと思います。それは資本主義のあれだと言われればそうかもしれないけれども、そうではない部分でやっぱり公正な商売上の監視というものをしっかりしておいていただきたいと思います。
本当にこれはひどい話で、実はダイレクトメールを一千百万通送っているんです。二万六千人の女性ががこれに対して応じているということで、大変べらぼうなDMの数でして、DMの経費を回収するだけで多分いちこしは大変だと思うんです。
そんなレベルでこういう商売が広がっていくと、本当に真っ当な商売をしている方がしんどいというふうに思いますので、ぜひ今後、こういったことに対する監視をより強めていただきたいというふうに思うんですが、一言御答弁をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/37
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038・根來泰周
○政府委員(根來泰周君) 御指摘の点は一々ごもっともでございまして、私どもの職員あるいは都道府県にもお願いしまして、こういう事案を防圧するように全力を尽くしているところでございます。
ただ、不公正取引というのは罰則がございませんし、排除命令ということと警告と、この効果というのは警告の方が早手回しというところがございまして、排除命令をやっているとどうしても時間がかかる、その間に被害者もふえるというような痛しかゆしのところがございます。
そういうところで、安直だという批判を受けるかもわかりませんけれども、早く警告をして、早く世の中の方に知ってもらって、早くやめるということも一つの手段であろう、こういうふうに思いますので、その辺の兼ね合いを考えながら厳正に対処したい、こういうふうに思っております。
今後ともひとつよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/38
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039・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
同様で、やはり資料でお示しをしたのですが、今度はマルチ商法の話なんです。これは通産省が今回、訪問販売法の改正ということで大変前向きな法案を出していただいていまして、今衆議院でやられているということで、今後審議が参議院にも回ってくるので、その法案の審議についてのひとつ準備ということで、一つ二つだけ質問させていただきたいと思います。
お手元の資料には、新聞記事が二つ出ています。これは両方とも本年の記事なんですが、先ほどのいちこしの問題もそうですし、今回のマルチ商法もそうなんですが、やはり本質的には不景気で不況でみんながしんどいというのがあるわけです。しんどいから安易にとにかくお金もうけに走るとか、とりあえず何か安いものとかという話の中で、実はマルチの相談件数、苦情というのが、九六年に法改正がされて、実はマルチ商法関連の苦情がその法改正前の約二倍出ている。
それと私は、大変問題だなと思っているのは、この苦情等が大変低年齢化をしている。例えば大学生であるとか二十代の前半、後半であるとか。例えば、やっと就職をしたけれども、そういうマルチ商法まがいのものにひっかかって、結局会社をやめてしまったとか、学生がお金が定期的に入ってくると言われ、大学へ行きながらそういうものに手を染めて、いつの間にか学生ローンみたいなものに手を出してみたりという形で、低年齢化をしているというのは大変これは問題だというふうに思っています。
まずは現在、苦情が二倍に達しているということに対して通産省としてはどのように御認識を持っておられるか、お答えをいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/39
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040・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 連鎖販売取引につきましては、平成八年に訪問販売法を改正していただきまして、禁止行為などの行為規制の対象者を統括者あるいは勧誘者に加えまして連鎖販売業を行う者ということで組織全体、マルチと申しましょうか、ピラミッド組織全体に及ぶように拡大をしていただいたわけでございまして、さらにクーリングオフの期間も十四日から二十日に延長するというような強化措置を講じていただきました。これまでその法律の運用に努めてまいりました。いずれにいたしましても、八年改正当時問題となっておりました事案に対して効果的な取り組みができ得るような仕組みを用意していただいたと思います。
しかしながら、御指摘のように、最近、国民生活センターで発表されました数字等によりますと、俗称ではございますが、マルチあるいはマルチまがいと言われるような商法に関します苦情相談件数が増加しているということでございまして、私ども、国民生活センターあるいは経済企画庁とも連携をとりまして、こうした悪質な商法については厳正な対応をしていきたいと考えますし、同時に、消費者啓発という面につきましても努力をしてまいりたいと考えております。
今、先生から御指摘でございますが、今国会で改正訪問販売法をお願いいたしておりますけれども、連鎖販売取引に係る罰則の点についても強化措置を盛り込んでおりまして、さらにこの規制の実効性が高まることを期待いたしておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/40
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041・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
これはひょっとしたら通産省の管轄ではないのかもしれないんで、お答えできない場合はいいんですが、一つだけちょっとお伺いをしたい。
全国のマルチ商法に対する事件の摘発の数というのが、暦年でいいますと、九〇年から三件、四件、八件、八件、十六件と摘発数があります。ところが、九六、九七、九八というのは三年合わせて三件しかなくて、でも苦情の件数は実は倍に上がっています。これは何か理由があるのでしょうか。お答えできない場合は結構ですが、もし何かお答え、コメントいただければありがたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/41
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042・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 衆議院で法案審議の段階で、警察当局に対してそうした御質問がございました。私、内容的にはお答えできる立場にございませんけれども、今後そうした警察当局としての対応をしっかりやっていくというような御答弁があったというふうに記憶をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/42
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043・福山哲郎
○福山哲郎君 これは答弁できないかもしれないんですが、やっぱり警察の摘発数がふえていると苦情件数というのは減っているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/43
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044・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) その関係について、ちょっと今手元にデータ等がございませんので、恐縮でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/44
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045・福山哲郎
○福山哲郎君 そうしたら、先ほどの話で低年齢化についてなんですが、これについては通産省として、政府委員の御答弁の後、通産大臣にももしお伺いができればというふうに思いますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/45
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046・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) いわばこういう商法が入ってまいりましたのは、これも刑事事件になりましたが、ネズミ講というところから日本の社会でこういうものが出てきたと私は思っております。
しかし、最近いろんな事件が起きておりますし、トラブルが起きております。こういう消費者トラブルを防止、解決するためには、消費者の方も自己責任原則に立って、購入時における商品選択やトラブルへの対応を図っていくことが基本と考えておりまして、この点についての自覚を促すことが重要であると思います。世の中にはそんなうまい話はないということだろうと思います。
このため、通産省としては、テレビ番組、パンフレット、リーフレット等のいろんなメディアを通じまして、契約の知識や悪質なトラブルへの注意喚起など消費者の教育とか啓発とかを行っております。こうした中でマルチ商法をめぐる問題が取り上げられているところでございます。
特に、先生御指摘になったように、若年層が新種のサービス等をめぐるトラブルに巻き込まれやすいというのは最近の傾向でございまして、私どもとしては、成人式等の機会を利用した全国規模の消費者啓発を自治体の協力のもとに進めているわけでございます。
今後とも、法律による取引の適正化措置に加えまして、消費者教育、啓発活動、情報提供等に積極的に取り組んでまいりたい。ですから、法的な整備と消費者啓発と教育、この二面からやっていかなければならないことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/46
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047・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
では、訪販の問題は今後また審議がありますのでこれぐらいにさせていただきます。
次に、繊維産業のことでまた少しお伺いをしたいというふうに思います。
今国会で中小企業経営革新支援法案というのが提出されています。その一方で、繊維産業構造改善臨時措置法というのが平成十一年、ことしの六月末で廃止されることになっています。繊維産業は大変厳しい状況にありますし、京都なんかも呉服業界も含めて大変厳しいわけでございます。その中で、新商品開発への補助とか税制の優遇措置とか、とにかく繊維業界の保護、振興をこれまでこの繊維産業構造改善臨時措置法というのは図ってきたわけですが、通産省の繊維ビジョンの中間報告では、繊維法の利用者というのは業者の一%にすぎない、個別の法律で繊維産業を支援するのは効率的ではないというふうに御指摘をいただいておりまして、三十年続いた繊維産業を振興するこの法律がことしの六月に終了することになるわけです。
そうすると、その代替策として、十二年度から繊維産地の都道府県に繊維産地活性化基金というのが設立をされるということで、同基金の運営は五年間の期間限定、そして運用益を繊維産地問屋または異業種間の連携による新商品の開発等に使いなさいというような状況でこれが設立をされるわけでございます。この繊維産地活性化基金構想の中身と、それから近年の繊維産業の概況、現状認識について通産省はどのようにお考えをいただいているか、お答えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/47
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048・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 繊維産業は、大変長引いております景気低迷による国内需要の不振の影響を受けておりまして、平成十年の繊維産業全体の生産指数が対前年比一〇・五%減となるなど、大変厳しい状況に今置かれていると私どもは認識しております。
繊維産業はこれまでも大きな環境変化に直面してまいりましたけれども、通産省としては、過去四十年以上にわたり、その時々の繊維産業をめぐる状況を踏まえまして重点を移しながら、設備調整、構造改善、情報化基盤整備等の施策を実施してまいりました。
こうした政策につきましては、我が国の繊維産業が二百万人を超える雇用を支えている、また国際的に見ても質の高い製品を今供給している、こういう事実からすれば、私どもとしては一定の役割を果たしてきたものと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/48
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049・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) お尋ねの繊維産地活性化基金の件でございますが、このたび私ども、繊維構造改善措置法を廃止しますと同時に、全体としましては、今回法案の審議をお願いしておりますけれども、基本的には新しい中小企業総合事業団に当面の間その事業を継承したいと思っておりまして、大変こういう厳しい時期でございますので、経過的な措置には十分意を尽くしてまいりたいと思っております。
お尋ねの繊維産地活性化基金の点でございますけれども、このような大変厳しい景気の状況と、それからかつてからありました後継者不足といったものもございまして、従来繊維産地の中ではいろいろな業種、業態が一定の分業構造を形成しておりまして、全体としてうまくいっておったという状況がございましたけれども、最近は一部企業の廃業等が続いておるものでございますので、産地の分業構造が大変壊れかかってきておる状況にございます。
こういった繊維産地の機能の低下ということを踏まえまして、複数の産地によってお互いに連携協力し合う、あるいは異業種間の連携をもっともっと強力にする、それから流通の方面あるいは消費者とも一層もっともっと近づくような、そのような構造改善をしようという機運も一方で盛り上がっておりますので、そのような意欲のある産地組合を中心としまして、再編強化と申しましょうか、そういった事業をできるだけ支援したいということでございます。
組合の中には、従来のような単体の組合ではなくて、組合同士が再編成しようという、そういった動きもあるものでございますので、そういったことにきめ細かくこたえていこう、こういうのがこの産地活性化基金の目的でございまして、都道府県と一緒になってこのような組合の新しい事業を支援してまいりたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/49
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050・福山哲郎
○福山哲郎君 具体的には、基金の運用それから運用益を用いた、実際はどのような仕組み、形態で行われるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/50
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051・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) 活性化基金でございますけれども、十一年度予算を成立させていただきますと、十一年度にできるだけ各都道府県の公益法人にこういった基金といいますものをつくっていただく。これに対しまして、国と都道府県が一対一、半分ずつ資金の造成をするということでございます。現在のところ、国側では総額二百億程度の中小企業事業団高度化無利子融資を活用しまして準備しております。そういった資金と各都道府県の資金とが一体になりまして、その御要望のある、必要のある都道府県に基金をつくっていただくということにしておりまして、その運用益で先ほど言いましたような連携事業とか新しいタイプのいろいろな再編事業を進めていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/51
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052・福山哲郎
○福山哲郎君 国と都道府県で一対一で基金を出し合うわけですね。そうすると、都道府県としては、これだけ地方財政の厳しい折、先ほど二百億というふうにおっしゃられましたが、要は国が二百億用意をした場合に、一対一だとすれば、いろんな都道府県が手を挙げたところが全部合わせて二百億出して初めて基金ができるということになると、都道府県としても地方財政の困難な中かなりしんどいと思うんですが、そこに関してはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/52
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053・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) 基金は各都道府県がおのおのつくられるようになっておりますので、全体ができないと基金ができないというものではないわけでございます。おっしゃいましたとおり、今地方自治体は大変厳しいものでございますので、最初から基金という格好で数十億のお金をお願いしまして、それしかだめだというふうに申しますと、厳しい場合が生ずると思っております。
したがいまして、現在は、都道府県によりましては、運用益相当分をフローの補助金の格好で提供したいというふうな御意見もございますので、そういったことなどを十分踏まえまして、各都道府県が実際に事業のしやすいように、基金造成だけにこだわらないで柔軟にやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/53
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054・福山哲郎
○福山哲郎君 現状まだわからないところもあるかもしれませんが、設立の希望をお出しになる都道府県というのは通産省の方に申し出とかいう形で来ているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/54
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055・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) 現在、各都道府県の方でいろいろ御検討いただいていると承知をしております。おっしゃいましたとおり、大変厳しいものでございますので、そういったものを勘案しながらいろいろ検討していきたいというふうに承知しておりますが、まだ具体的に何県ほどが本当にその基金を造成するか十分伺っておりません。
ただ、最近、二月の末に私どもの方でこの基金につきまして説明会をいたしましたところ、二十七の都道府県が御参加いただきましたので、この程度の都道府県では少なくとも大変な関心を持っていただいているというふうには承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/55
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056・福山哲郎
○福山哲郎君 今おっしゃられたみたいに、二十七都道府県が一応説明会に来られたと。先ほど、運用益相当分をフローの形の補助金で出すと言われましたが、このフローの形の補助金の金額等はどういったものをめどに決められるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/56
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057・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) これは、各都道府県の産地の事業内容によりましてどういった事業が必要であるかということになると思いますので、一律に幾らということではないと思っております。ただ、従来も、構造改善事業の実績から申しますと、例えば数百万程度の事業から一千万、二千万程度の事業というふうに、金額的には大体そういった幅ではないかというふうに考えておりますので、全体としましては各県によりまして金額の合計額は相当幅があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/57
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058・福山哲郎
○福山哲郎君 そうすると、フローの補助金の形でいくと、先ほど言われた一対一の二百億の基金という形ではなくなってきますね。そうすると、ことしの申請は二百億に達して埋まるのか埋まらないのかとか、埋まらなかった場合に次の年は減額されてしまうのかとか、その辺は今どのように想定をされておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/58
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059・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) この事業は一応五年ぐらいをめどというふうに考えておりますものですから、特に関心の深い産地性の大きい県に関しましてはできるだけ基金という格好でお願いしたいと思っております。したがいまして、もし今おっしゃいましたような二百億円に十分満たないという場合は、そのときに、どのような資金需要かといったこととか、産地の状況なども勘案しまして検討したいと思っておりますけれども、現在のところできるだけ十一年度中につくっていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/59
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060・福山哲郎
○福山哲郎君 景気低迷の中、本当に厳しい産地が多うございますので、なるべく弾力的に運用していただいて、より産地の活性化につながるように御配慮いただきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
いろいろたくさん質問させていただきまして、次、また完全に別のお話をさせていただこうというふうに思います。
お手元の資料にグアテマラという国の地図がありまして、グアテマラというのは中米地域の本当に小さい国でございまして、日本でいうと北海道と四国を合わせたぐらいの大きさになります。人口は約一千万人で、御案内の先生方多いと思いますが、このグアテマラのある地域というのは、例のユカタン半島などグアテマラの地域に住んで、三世紀から九世紀、マヤ暦やそれから例の巨大な石像物等をつくり出しまして、私たち人類の文明に大変影響を与えたというマヤ文明の発祥の地でございます。
余り長々とした説明は省きますけれども、こちらがずっと内戦をしておりまして、一九九六年十二月二十九日に、つい三年ほど前ですが、最終的な和平協定の調印で政府軍とゲリラ軍の三十六年間に及ぶ内戦に終止符が打たれました。しかし、この内戦のさなかに、どこでもそうなんですが、被害を受けるというのは一般の市民でございまして、これはいろんな説があるんですが、特にこの人口一千万弱というこの国の五割とか七割とかを占めるマヤの先住民の人々が大変苦しい思いをしました。
この和平協定がされまして、とりあえずは軍事対立もなくなりましたし、政府軍の兵力削減も行われまして、和平協定の法制化に向けて具体的な活動もようやく進んだところではございますけれども、実は先月、二月でございますが、国連人権侵害真相究明委員会というものからグアテマラについての報告書というものが提出されました。
実は、このグアテマラのいわゆる先住民に対する人権侵害、内戦のさなかの人権侵害の様子を国連の真相究明委員会の方で報告をして報告書が出されました。日本というのはこの報告書作成に七十五万ドルもの資金を提供しておりまして、実は現地では大変感謝をされています。だからといって人権侵害がなくなったわけではないのですが、このグアテマラの人権侵害の現状、それからこの国連の真相究明委員会の報告についてどのように把握をされているか。きょうは外務省もお呼びをさせていただいておりますので、御見解をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/60
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061・阿部知之
○説明員(阿部知之君) 今、福山委員御指摘の人権侵害真相究明委員会の報告書、先月末に公表されたものでございますが、御指摘のようにグアテマラの三十数年間に及ぶ内戦中の人権侵害事例をいろいろ細かく記載してございます。その内容はある意味で信じがたいようなケースも多々記述してございまして、戦争、内戦というものはこういうものなのかということを明らかにしていく上で非常に貴重な報告であろうかというふうに考えております。
内戦の終了後は人権状況について非常に大きな改善が見られておりまして、国連の人権委員会でも、人権を侵害するような国家政策はもはや存在しないというような結論を出しておりまして、それなりの改善というか、大幅な改善が見られているというふうに思っております。
ただ、そういう中でも、例えば昨年の後半でございますが、人権関係に非常に大きなNGO活動を行っておりました神父さんが殺害されるとか、若干まだ幾つかの悲劇的な話は時々あるようでございます。そういった点、私どもとしても引き続きいろいろな形で監視を、監視と申しますか注目をしていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/61
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062・福山哲郎
○福山哲郎君 この国連の真相究明委員会の報告書に対して、外務省として、日本国政府として何かコメントなり意思を表明されたことはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/62
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063・阿部知之
○説明員(阿部知之君) 特段のことはしておりません。報告書を評価するという気持ちは持っておりますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/63
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064・福山哲郎
○福山哲郎君 きょうは経済・産業委員会ということで日本のODAのことについてお伺いをしたいんですが、実は九三年、このグアテマラでセラーノ大統領というのが憲法を停止しました。そのときに我が国は、これは民主化のプロセスに逆行する、ODA大綱の原則にのっとって援助政策の見直しを行うという大変御英断をいただいております。その後も、同国の民主化、経済発展のためにODA大綱の原則にのっとって外務省なり経企庁はODAとして支援をしていただいています。
先ほど申し上げましたように、この人権侵害真相究明委員会に七十五万ドルを拠出したり、グアテマラの帰還民に対する再定住支援計画に二百四十五万ドルを拠出したりということで、実は日本の援助が大変評価されています。
私は、きょうはネガティブなことをお話しする気は全くありません。ただ、グアテマラの無償資金の援助の額というのが、九七年が三十四億円、それから九六年が四十二億円、九五年が十四億円ということで、実は日本のODAの一兆円の中で見れば大変少額でございますが、実はグアテマラの国から見ると、世界で一番援助をくれているのが日本なんです。アメリカよりも日本がドナー国としてトップでございまして、日本にとってはこの金額は大して大きくないですから存在感は小さいんですが、グアテマラにとっては、向こうの国にとってみると日本がこれだけくれているということは大変存在感として大きくて、先ほど政府委員の方がその真相究明委員会の報告書は評価をしているというふうなことを言っていただいたことも含めて、これからの人権を守る政策にしても、これからグアテマラの内戦の傷跡をいやしていくためにも大変実は日本の援助というのは期待を受けているということの認識をいただきたい。
金額的に大変少ないんで、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、実は日本がドナー国として一番だということを質問通告のときに来られた外務省の方も知らなくて、ああ、日本が一番なんですかというふうにおっしゃっておられました。こっちから見れば小さい金額でも、やっぱりそういう各国々にとって、向こうから見れば大変重要だというふうに思われておりまして、近年着実に無償援助の額も増加をしておりますので、ぜひこのグアテマラの援助に対する今の外務省のお考えをお聞かせいただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/64
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065・阿部知之
○説明員(阿部知之君) 福山委員御指摘のように、我が国がグアテマラに対する援助をいわゆる民主化が達成されて以降相当なテンポでふやしてきているというのは御指摘のとおりでございまして、その結果として第一位の援助国という立場に立っているということも事実でございます。
私どもといたしましては、グアテマラという国、最貧国ということではございませんが、やはり非常にいろいろな点でこれから整備をしていかなければならない面の多い国ということを認識しておりまして、教育であるとか保健衛生であるとかあるいは道路等のインフラ、それから国民生活の安全、行政手法の整備、そういった点を具体的に援助対象として重視しながら、グアテマラにおける民生の向上、それから民主化の推進ということに貢献できるように努力していきたいというふうに考えております。
ちなみに、昨年十一月に大きなハリケーンがグアテマラを襲いましたので、その関係も視野に入れて今後援助を考えていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/65
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066・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。大変前向きな御答弁をいただきまして、グアテマラのマヤ文明の先住民もきっと喜ぶと思います。
さらにODAの件に関して言いますと、さきの予算委員会で私が堺屋長官に質問させていただきました。例の国際協力銀行に今回OECFと輸出入銀行が統合されるということで、大変規模の大きな、世銀に匹敵するようなものができるということです。OECFはいわゆるODAの四原則にのっとった環境ガイドラインというものを持っているけれども、輸出入銀行はあくまでも内規としての環境に対するものしかない、チェックリストしかないということで、片方は資金供与と性質が違うのはわかりますが、お互いが同じ機関になるわけですから、統合を機に、共通の環境ガイドラインをおつくりいただくことを御検討いただけませんかという予算委員会での私の質問に長官が大変前向きに御答弁をいただきまして、また大蔵大臣からも御答弁をいただいたわけです。
実は各国の取り組みというのも、資金拠出に関して環境ガイドライン等の取り組みがあるわけですが、この辺について、経企庁としてどのように把握をされているかお聞かせをいただきたいと思います。どちらでも結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/66
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067・黒田東彦
○政府委員(黒田東彦君) 各国の状況を簡単に申し上げますと、委員御承知のように、米国の輸出信用機関、いわゆる輸銀及び海外民間投資公社、OPICといいますけれども、これらは既に環境ガイドラインを持っております。
それから二番目に、英国、ドイツ、カナダ、ノルウェーなどは環境ガイドラインを作成する方向で検討をしているというふうに聞いております。まだ持っておりません。
三番目に、フランスは環境配慮のチェックリストというものについて運用を始めたところであるというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/67
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068・福山哲郎
○福山哲郎君 そういった中で、ぜひ具体的にこの国際協力銀行での環境ガイドラインの統一のものをおつくりいただきたいと思っているんですが、経企庁長官として今見通しとしてはどのようにお考えをいただいているのか、お聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/68
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069・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 基金のやっております公的な援助事業と輸銀のやっております輸出金融事業というのは多少性格も違います。その実態等をよく調べまして、できるだけ環境に優しいような基準をつくりたいとは思っておりますけれども、現実にいつどのような基準にすべきかは事務当局に鋭意研究させて、できればそういうものをつくっていきたい。それによって何らかの事業に重大な支障を来すようなことがあるかどうか、個々のケースでもいろいろございますので、そういうことも含めて、そういう実務的なことを現場で研究していただきたいと思っております。
私個人としては、なるべくそういう統一基準があった方が世界にも日本国民にも説明しやすいとは思っておりますが、何しろ事が違った性格のものでございます。慎重に検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/69
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070・福山哲郎
○福山哲郎君 経企庁長官、もう御案内だと思いますが、九七年六月にデンバー・サミットの共同宣言というのがございまして、そこで、「先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続可能な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融上の支援を供与する際、環境要因を考慮することによって、持続可能な慣行の促進を助長しなければならない。」というふうに、実はこの民間資金、輸出入銀行の資金の流れについてもこういう環境要因を配慮する等の宣言が出ています。
フランスの強硬な反対があって、その後この統一のガイドラインをつくるという作業は世界的におくれているという話なんですが、ぜひ日本としては、この国際協力銀行に統合を機に、まずは国内の整備をしていただく。その後、逆に言うと、今度は、資金供与の際の環境ガイドラインというものがお互いの各国、国際的にばらばらではなくて、それはそれぞれの事情があるから全部が全部というわけにはいかないと思いますが、ある意味での国際的なガイドラインというか、例えば透明性の確保の問題、情報をいつの時点で開示するかという問題、それからこういう点においてこのプロジェクトには資金を供与するという条件の問題等については、ある意味でいうと国際的な標準みたいなもの、ガイドラインみたいなものがあると、それこそ本当にこの資金の流れ、南北問題も含めて第一歩が進むのではないか。
特に、日本の場合には今回国際協力銀行ができるということですので、ぜひこれを機会に前向きに国際的にも働きかけていただいて、日本のODAの評価を上げていただくような御努力をいただきたいと思うんですが、その辺は、外務省なのか経企庁なのかわかりませんが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/70
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071・黒田東彦
○政府委員(黒田東彦君) 御指摘の点につきましては、確かにOECDでも実は輸出信用の関係につきましては、環境に対する配慮をどういうふうにするのが望ましいかということの議論を始めております。特に御指摘のように、ある意味でいいますと輸出信用というのは各国の輸出の競争でもございますので、ある意味でいうとODAよりむしろ輸出信用こそ国際的なスタンダードがあることが望ましいという面もございます。
ODAの方は、経済的な面もございますが、やはり人道的な面から主体的に途上国に対する支援を行っているわけでございますので、ある意味でいうとそれぞれの国の考え方というのはあるかと思いますが、輸出信用につきましては御指摘のように競争という面がございますので、今後ともOECDの議論等を十分踏まえて私どもとしてもやっていかなければならないと思いますし、また逆にOECD等でいろいろな議論に積極的に参加してまいりたいと思っております。
また、ODAそのものにつきましては、むしろ私よりも外務省の方がよろしいかと思いますけれども、ODAにつきましては御承知のような大綱が設けられておりまして、当然環境に対する配慮というものもしております。OECF、基金につきましてもガイドラインができているわけでございますので、先ほど経企庁長官が答弁されましたように、新しい国際協力銀行においては環境配慮のための手続指針としてのガイドライン、これは当然ODAの部分もございますし、非ODAの部分もあるわけですが、それらについてそれぞれ適切なガイドラインを設けていく必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/71
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072・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。
もう大分時間も経過いたしましたので、あと一問か二問で終わらせていただきたいと思います。
一つ二つだけ、これも二〇〇〇年問題のことについて、また今後の国会の中でも出てくると思いますので、聞かせていただきます。
通産省は、昨年の十二月一日付で、二十七業種、延べ五千八百三十九社について二〇〇〇年問題の対応状況について調査をしたというふうに伺っていますが、概略で結構でございますのでこの調査結果について教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/72
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073・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) 対応状況を簡単に御報告させていただきます。
電力等のエネルギー分野、これは重要五分野の中の一つになっておるわけでございますけれども、これは四半期ごとに調査をやらせていただいておりまして、その結果を集めているところでございますけれども、今のところ計画的に対応を進めているというふうに考えられるのではないかというふうに考えております。
それから、その他の一般業種につきましては相当跛行性が見られますけれども、これにつきましてもかなり意識は高まっておりまして、作業中等のところもかなり多くなっております。
それから、コンピューター等のベンダーの対策でございますけれども、これにつきましては、ベンダーとしての責任もありますし、それから情報通信システムを使っているものとしての責任もございますけれども、これはさすがに自分の問題意識が高うございまして、かなり進んでおります。ただ、ここは非常に大事なところでございますので、ことしの一月にさらにベンダー百十二団体に対して情報提供等の指導をしたところでございます。
それから、中小企業でございますけれども、これは対応済みの企業の割合は着実に増大しておりますけれども、なお依然として三割程度の企業が対応の必要性の有無をまだ確認していないというような状況でございまして、このあたりの対応は急いでやらなければならないというふうに考えておるところでございます。
いずれにしましても、この二〇〇〇年問題につきましては、既に三百日を切っております。先日も、通産大臣のもとで対応に万全を期するようにという指示をいただいたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/73
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074・福山哲郎
○福山哲郎君 これは対応済み、未対応という分類でやられていると私は伺っておるんですが、対応済み、未対応で本当にフォローができるのかどうか。聞いたら対応していると言っているけれども、それがどの程度まで対応しているのかというのは甚だ疑問だというふうに思っていまして、ここに対してどのような指導をこれから今後三百日で行うのかということは大変課題だと思いますので、これは今後の審議に譲りたいと思います。
そしてもう一つだけ、先ほど中小企業の方がまだまだおくれているというお話がありましたが、さらには、特に中小企業が決済機能も含めておつき合いをしている中小の金融機関ではどのような対応がされているのか、その中小の金融機関での二〇〇〇年問題についての最終テストは一体いつぐらいに終了するのか、もしそれが終了するときが、問題が発見されて間に合う時点で終了するのかという点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/74
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075・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) 金融機関につきましては、重要五分野の一つとして取り上げておりまして、中小の金融機関といえども金融機関としてはかなり私は対応が進んでいくだろうというふうに考えております。むしろ、かつまた万一のことを考えて一定の期間から後は、緊急時にどうするかというようなことで、リスク管理の方にも万全を期していくという必要があるというふうに考えております。
ただ、問題は、中小企業の皆さんでございまして、これは先ほど申し上げましたような問題がまだ引き続き残ってまいるんではないかというふうに心配をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/75
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076・福山哲郎
○福山哲郎君 中小金融機関等で最終テストはいつぐらいだというような把握は通産省はされていないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/76
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077・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) ことしの六月末をめどに最終テストをやろうというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/77
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078・福山哲郎
○福山哲郎君 もう一つだけ。六月末にテストしてだめな場合、まずいとなったときには間に合うんでしょうか、めどとして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/78
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079・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) 実はそこのところは私どもも大変心配をしておるわけですけれども、六月末に終わるとか十月末に終わるとかいろいろございますけれども、日本の企業の文化かもしれませんけれども、かなり前広にいろいろ事前の調査をし対応して、テストのときには最後の仕上げというような気持ちでやっていただいていると思います。
そういう意味では、ここで何とかいけるんではないか、六月なら来年の一月までにまだ半年あるわけでございますから、対応できるんではないかと今後期待をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/79
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080・福山哲郎
○福山哲郎君 二〇〇〇年問題、まだいろいろお伺いしたいこともございますが、きょうは本会議でもありますし、少し早いですがこれで質問を終わらせていただきます。
長時間ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/80
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081・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
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午後一時三十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/81
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082・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) ただいまから経済・産業委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会及び経済企画庁、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫並びに中小企業総合事業団信用保険部門を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/82
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083・加藤修一
○加藤修一君 公明党の加藤でございます。
午前中、同僚の議員が同じく質問したわけでありますけれども、コンピューター二〇〇〇年問題について質疑をいたしたいと思います。運輸省、来ておられますか。
二〇〇〇年問題に関して、航空機は危険であるとの報道がなされているわけですけれども、運輸省としては、危険日の航空利用者に対するリスク管理の観点からどういった対策をとっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/83
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084・安富正文
○説明員(安富正文君) お答えいたします。
我が国の航空に関する二〇〇〇年問題につきましては、先生御承知のとおり三つございまして、一つは航空機の問題、それから航空管制の問題、航空会社の問題、この三点ございます。
これらにつきまして、運輸省としましては、航空機についてはメーカーにも連絡の上調査をいたしまして、現在のところ、安全運航に直接影響を与えるような重大な問題を有する装備品は確認されておりません。また、多少ふぐあいがございましても、ソフトウエアの変更等で対策がとられているところでございます。
また、もう一つ、航空管制に関する件でございますが、運輸省の方で管制をやっておるわけですけれども、機器の更新等の際にこれまで着実に対策を進めてまいりまして、既に模擬テストも含めまして、本年三月末に対応を完了することとしております。また、日米の当局間においても昨年の十月に国際的な共同模擬テストを実施しまして、問題がないということを確認したところでございます。
それから、海外の航空管制であるとかあるいは航空会社についてでございますが、現在国際民間航空機関、ICAOと申しておりますが、この機関、あるいは国際航空運送協会、IATAと申しておりますが、この両者において調査を実施して現在対策を協議しているところでございます。我が国としてもこの調査に全面的に協力しまして積極的に参加しているところでございます。
また、運輸省としましては、こういう対策を進めてまいりまして、逐次情報を公開いたしまして、今後利用者に対するリスク管理の面で不測の事態が生じた場合も想定して危機管理計画を策定する予定にしております。航空会社、それから航空管制両方についてこの危機管理計画を策定するということで万全の体制を講じていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/84
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085・加藤修一
○加藤修一君 危機管理計画、コンティンジェンシープランとかなんとかと言われているものですね、危機管理の関係は、緊急対応型の。これはいつぐらいまでにつくる予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/85
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086・安富正文
○説明員(安富正文君) 危機管理計画でございますが、現在、航空管制につきましては、ICAOのアジア太平洋事務所で八月一日までに管制機関と連絡をとって調和のとれた計画をつくるということで協議しておるところでございます。
それから、航空会社に係る計画につきましては、現在我が方で六月末までに取りまとめをするようにということで、先ほど申しましたICAOの関係の危機管理計画とあわせて、これは航空会社については十月末ぐらいをめどに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/86
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087・加藤修一
○加藤修一君 私は三年前ぐらいからこの問題について取り上げて、今回で五回目なわけです。ここまでおくれた、私は対応がおくれたと思っていますけれども、あえてリスク管理をしなければいけないという段階になっているわけですけれども、おくれた理由は主に運輸省の場合はどういうふうに判断していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/87
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088・安富正文
○説明員(安富正文君) 我々もなるべくおくれないようにということで特に航空会社関係については逐次指導しておりますが、この問題につきましては、単に国内だけの問題ではございませんで、国際的にも調整を図っていかなきゃいけないということで、その国際的な動向、ICAO、IATAの動向を見ながら我々としては対処していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/88
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089・加藤修一
○加藤修一君 では、至急速やかに対応をしっかりとやっていただきたいと思います。
これで運輸省はよろしいです。
次に、通産省、通産大臣にお願いしたいわけですけれども、今航空機の話をいたしましたけれども、原子力発電についてはどういうふうに現状ではなっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/89
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090・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 二〇〇〇年問題については、電力会社各社とも、社会経済上極めて重要な問題であるとの認識のもと、対策委員会を設けまして、組織的な対応を図っております。
電力会社の調査の結果、原子力発電所の安全運転に必要な制御システムについては、計算機を使っている部分についても年月日情報を用いておらず、発電所の安全運転に支障となる事態は発生しないことが確認されております。
なお、設備の監視や運転状態を記録するシステムについては一部対応が必要でございまして、定期検査時に逐次工事を行っており、本年中にすべてのシステムについて対応を完了する予定でございます。
また、原子力発電所では、異常が発生した場合に備え、さまざまな対応措置が整備され、定期的に訓練が行われているところですが、二〇〇〇年問題についても本年六月までに危機管理計画を策定する予定でございます。
通産省としては、このような電力会社の取り組みについて今後とも指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/90
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091・加藤修一
○加藤修一君 制御システムについてはそういう御答弁がございまして、恐らくそうだと思います。一部ではその辺のことについて不安が膨らんだ経緯もございますけれども、私はやはり情報開示がある意味ではおくれたのではないかというふうに判断しています。こういった面についての情報開示を速やかにすることが不安を解消するということになると思いますけれども、この辺についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/91
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092・稲川泰弘
○政府委員(稲川泰弘君) 情報開示の点につきましては御指摘のとおりでございまして、各社それぞれホームページを開いてございまして、各社の行っております二〇〇〇年問題対策委員会の最近の情報をホームページにおいて公表をし、かついろんな質問も受けている、かような状況でやってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/92
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093・加藤修一
○加藤修一君 ホームページを持っているコンピューターも、二〇〇〇年問題である面では危うい状態になる可能性も否定できないんですけれども。
この二〇〇〇年問題の周辺の関係で、単に二〇〇〇年周辺がおかしいという話じゃなくて、例えばUNIXというOSについては、二〇三八年あるいは二一〇六年、そういう話も聞いております。いわゆる期日表示の問題です。あるいはMS—DOSに至っては、一九八〇年から二〇七九年までの百年間についてソフトが組まれている。あるいはもう一つMS—DOSについて考えていきますと、一九八〇年から二〇三八年、そういう説があるわけです。
二〇〇〇年という問題を飛び越えて、プラスアルファといった面については今から当然対応策を考えておくべきだと思うんですけれども、二〇〇〇年問題の中でどういうふうにその辺は位置づけをされているか、見解を示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/93
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094・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) 加藤委員にはかねてから二〇〇〇年問題につきましていろいろ御心配いただき、またお話のありましたようにいろいろこの場でも御質問をいただいているところでございます。
今の御心配の件はいわゆるけたあふれという問題だろうと思いますけれども、今お話のありましたUNIXなんかにつきましては、情報量が三十二ビットということになります。そうなりますと、二の三十一乗秒まではカウントできるということで、一九七〇年一月一日から始めていきますと、二〇三八年一月十九日までしかカウントできないというような問題だろうと思います。
これにつきましては、個々のシステムの問題であるということと、それから急速な技術の進歩によって、それまでの間にいろいろ解決可能な点もあるのではないかというようなことで、特に二〇〇〇年問題とあわせて対応を急いでいるわけではございませんけれども、せっかくの御指摘もございますので、実態をよく調べまして、政府としても、対応の必要があればしかるべく対応をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/94
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095・加藤修一
○加藤修一君 MS—DOSなんかも、本体のメモリーの方にチップの形でOSを焼きつけて搭載している機種もあるわけです。
二〇〇〇年問題は大分前から言われていたわけですけれども、なかなか直近にならないと対応がとれないという話になってしまったわけです。それ以外の、二〇〇〇年プラスアルファの問題だって今からきちっと対応しなければいけないと思うんですけれども、そこをもう少し明確に検討を確定していくような話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/95
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096・広瀬勝貞
○政府委員(広瀬勝貞君) 御心配の点、私どももよく今認識をしておりますけれども、一つは、とにかく二〇〇〇年問題、あるいは二〇〇〇年に関連する一九九九年問題とかあるいはうるう年問題とか、そういったあたりが目先の問題でございまして、先生の御指摘の点についてはその次の問題かなと思っておるところでございます。
ただ、これからいろんな技術進歩等もありますので、この辺は何とか克服できるんではないかという希望もしておりまして、今はむしろ二〇〇〇年問題を中心にやってまいりたいというふうに考えております。
ただ、これはそういう問題がありませんというわけでは決してありませんで、私どもとしましても、できるだけ早目な対応をするような準備をしていきたい、あるいは調査をしていきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/96
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097・加藤修一
○加藤修一君 PL法の問題とかあるいは訴訟の問題にはね返る可能性もなくはないわけですから、やはり事前に十分対応を考えていく、予防的な対応を考えていく必要が私はあると思いますので、そう主張しておきたいと思います。
それでは次に、農水省来られておりますか。ダイオキシンの問題についてちょっと質問したいと思います。
ダイオキシンの関係では、焼却場の問題が非常に大きなことになっているわけですけれども、それ以外に農薬の問題が当然ございます。PCPとかあるいはCNPなどのいわゆる除草剤の関係でありますけれども、この問題と、食品の汚染というのがダイオキシンによって進んでいる、体の中に入ってくるうちの九〇%は食品から入ってくるわけですが、農薬が農地から流れ出て河川に入って海洋に入るということから、恐らくそういったものが魚介類に影響を与えているとかさまざまなことが言われているわけですけれども、この辺のメカニズムというか調査はやっていらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/97
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098・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 私ども農林水産省におきまして、過去に使用されました農薬中のダイオキシン類につきましては、実はその含有量自体が不明であるというふうなこともございまして、どういう農薬にどの程度過去含まれておったかという知見自体がまず不足しておるという状況にございます。
したがいまして、環境中のダイオキシンと食品中のダイオキシンの関係ということを解明いたします場合にも、現在の科学的知見から見てまいりますと、その直接的な関連を議論するには非常にデータが少ないという状況にあるわけでございます。
しかしながら、私どもといたしましては、この重要な問題につきましてできるだけ科学的な知見の集積を図ってまいりたいというふうに考えておりまして、平成十一年度におきまして、農地におきますダイオキシン類の全国的な実態調査を予定しております。さらには、ダイオキシン類の農林水産生態系での動態の解明あるいは作用機作に関する総合研究、これを平成十一年度から行うことにしておりまして、そのようなことを通じて実態の解明、把握に努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/98
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099・加藤修一
○加藤修一君 私、最初の答弁の方は重要な問題だと思うんです。なぜ重要かといいますと、PCPとかCNPの関係でダイオキシンの量がどの程度かは全然把握していないと、そういう答弁だったわけです。
今、これからこれをやるんですか。今まで全然やっていないんですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/99
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100・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 農薬は登録という手続を経て世に出るわけでございます。現在におきましては、このダイオキシン類の含有量というものにつきまして、それが含まれていないということについてメーカーサイドで確認の上登録をいただく、こういうことにしておりますので、現在登録され使われておりますものについてはダイオキシン類は入っていないというふうに承知しております。
ただし、過去において使われましたもの、特に先生御指摘のPCP、これは昭和三十年から四十年代に主として使われたものでございますし、それからCNPにつきましては、これは昭和四十年から五十年代の前半に使われた農薬でございまして、当時、ダイオキシンというようなことについての認識と申しますか、そういうことについてチェックするシステムにはなっていなかったというふうなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/100
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101・加藤修一
○加藤修一君 非意図的物質であることは私もよく承知しておりますけれども、昭和三十年代から使っていたというわけで、今はどの程度使われたかということも含めてわかるわけですね。
だから私は、地域別に、年別に、しかもどれだけ生産したかということも含めて、あるいは消費、あるいはその保管の状況はどうなったのか、わかった段階でその辺の実態調査をきちっとすべきだと思いますけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/101
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102・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 先生、例えば過去にどういう地域でどの程度使われたかという御指摘でございますが、そのようなことについて、例えば出荷量統計ですとか生産量統計という観点から整理はできるというふうに思っておりますし、またこういうデータは今までにも公表してまいっております。
ただし、御指摘の、その中にダイオキシンをどれぐらい含んでいたかという観点につきましては、これは当時の分析技術等の関連もございまして、そういうデータの持ち合わせがないものですから、その当時使われたものに対してどれぐらい入っていたかということの推量、推計自体が非常に難しい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/102
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103・加藤修一
○加藤修一君 それはちょっと難しいですね。
どのぐらい含まれていたかは現段階ではなかなか難しいという話ですけれども、どの程度使用されたかということについては把握できるわけですね。
それと、例えばJAに協力を要請してもっと具体的な、生産が中止になって以降のものがどういうふうに処理、処分されたか、どういうふうに保管されているかを含めてやるべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/103
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104・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 過去の利用の実態ということにつきましては、私どもも日ごろできるだけそういうのをフォローできるようにと思っておるわけでございますが、特にこれらの農薬につきまして登録失効後の状況ということにつきましては、これはメーカーサイドで責任を持って処分をしていただくということになっておるわけでございます。
そういう点で、その辺の状況、特に御指摘のPCPあるいはCNPということにつきまして、実際にどのような最終的な処分状況かということについては、私どももメーカーの方からその処理状況についてはきっちり報告を受けているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/104
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105・加藤修一
○加藤修一君 報告は受けていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/105
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106・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/106
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107・加藤修一
○加藤修一君 では、具体的にどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/107
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108・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) これらにつきましては、特に出荷、製造が中止されまして以降のこういう物質については、このような化学物質につきまして環境に影響を与えないような形でしかるべく処理、処分をしていくということが原則でございまして、そのような処分がされたと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/108
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109・加藤修一
○加藤修一君 メーカーに処分の責任を任せているという話ですけれども、もう少し具体的に、どういう実態であるか、当時どういうふうにやったかということも含めて私はやるべきだと思いますので、その要請をしておきたいと思います。
それから、農耕地に除草剤がどのぐらい使われたかということは間接的に把握できるかもしれませんが、いわゆるダイオキシン類の濃度測定をぜひ全国ベースでやるべきだと思います。その辺については先ほども多少あったかもしれませんが、あえてまたもう一度質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/109
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110・大森昭彦
○説明員(大森昭彦君) 先ほどの処理の関係は、これはメーカーの責任におきまして、出荷したものについてすべて回収をし、しかるべく処理をさせていただいておる、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
それから、農地等のダイオキシン類の含有量の実態と申しますか、これにつきましては私ども、平成十一年度から全国的にその実態調査を予定しておるところでございまして、これからどういう設計で取り組むか、現在その詰めをしておる段階でございますので、そういうことで御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/110
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111・加藤修一
○加藤修一君 ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。
農水省はよろしいです。
それでは次に、石油公団問題に移りたいと思います。
先週、この問題についても取り上げたわけでありますが、なぜまた取り上げるかということなんですけれども、やはり昨年の九月二十九日に出された報告書の中身については私は非常に疑問が多いということなんです。なぜこんないいかげんな中身のものを国会に平然と出せるのか、私の結論はそうなんです。非常に重大な問題だと思います。
そこで、通産大臣にお聞きしたいわけですけれども、先週、委員会において私はこの問題を取り上げて、その際の通産大臣の答弁にどうも事実と違う形で認識をされているのではないか、そう思いますので再度質問いたします。
九月二十九日の報告書に設定されている前提条件、これについて大臣は次のように答弁しているわけです。これはあくまでも将来を予想するという話でございますから、将来、物事がどういう幅の中におさまっていくだろうかということを計算するときには、過去経験した円レートの幅、それから原油価格の幅、これの両極端をとって、多分その中に将来入っていくだろうという、これは前提を置いた予想でございます、こういうふうにはっきりと答弁されているわけであります。
ところが、事実はそうではない。レポートの中に書かれていることは、こういう両極端という形にはなっていないと私は思うんです。楽観的なケースのみが極端な方に行っていますけれども、悲観的なケースとされている方は実は平均値をとっている。
一枚目の配付資料の方に書いてございますけれども、為替レートについて見ますと、楽観的ケースにおいては一ドル百四十五円というレートを採用しております。このレートは過去五年間で最も円安であったときのレートであります。大臣の答弁のとおり、もう一方の極端をとるというならば、一九九五年四月の八十四円というレートを採用しなければならないはずだと思うんです。ところが、実際には平均値である百十円が採用されている。
まず、この辺のところを大臣は誤認されているのではないかというふうに私は理解しているわけですけれども、大臣、どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/111
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112・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 別に誤認をしているわけではありませんが、過去の最大、最小といっても極めて短期間に例外的に起きる現象もございまして、やはり将来の試算をするときの合理的な前提条件となり得るもののうち、最大と最小をとったんだろうと私は思っております。それ自体は、計算する上でいつでも前提条件を変えれば結果というものは出てくるわけでございますから、報告書自体は極めて透明性をもってつくられているということで、その前提条件も明らかにしておりますから、私は大変透明性の高いことを報告書の中に書いていただいたものだと思っております。
ただ、先生御承知のように、例えば昭和四十八年に起きました石油ショックというのは、バレル二ドル台のものが一挙に十倍以上にもなったという経験もありますし、極端なことが起きるか起きないかということは、将来の問題ですから、ある意味では神のみぞ知る世界かもしれません。
しかし、現時点で将来を遠く眺める場合には、過去の経験の中で非常に安くなった場合、高くなった場合というのを円レートあるいは石油の建て値等で使うということは許される手法であろうと私は思いますし、仮に八十四円というような、あるいは円のレートは七十九円まで行ったわけでございますから、それは前提のとり方としてはややちょっと説明しづらくなるなという気はいたします。
しかし、いずれにしましても、将来を考えるときには、過去の例を考えながら物事の前提をつくらざるを得ないという、そこのところの苦心はぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/112
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113・加藤修一
○加藤修一君 確かに、過去の実績を踏まえた形で将来をプロジェクションするということは非常に大事なことだと思います。ただ、大臣が先週おっしゃったことは、両極端をとって、多分その中に将来入っていくだろうという想定で話をされているわけです。両極端というのは、先ほど私が申し上げましたように、そういう値になるわけでありまして、これはちょっと私は理解できないんです。両極端ということと報告書で言っていることは明らかに違っている、矛盾している、そういう言い方ですよ、私が言っているのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/113
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114・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 確かに、形式的には円レートの中で、極端と申しますと、円高は七十九円台まで進んだことは事実でございますから、先生は、それがレートとしての極端だ、あるいはここに書いてあります八十四円というのが最円高だというふうにおっしゃるんでしたら、それは計算の方法もございますけれども、極端の中で合理性を持っているものを選ばなければならないわけでして、七十九円が持続したのは数日間だろうと思いますし、八十円台もそう長い期間そのレートが継続したわけではありません。
あの当時の為替レートは極端に円高に振れていって、やがては円高と言われる百十円前後に落ちついたというのが私の知っている限りの円レートの傾向でございまして、先生が八十円台をとれとおっしゃるんでしたら八十円台の計算も当然のこととしてできるわけですが、それが合理性、説得性を持っているかどうかということとその話は多分別なんだろうと私は思っております。
ですから、私の答弁として先生に誤解を与えたといたしましたら、実際に起きたレートの両極端をとったということではなくて、円レートが上下する中で合理的と考えられる円レートの幅をとったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/114
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115・加藤修一
○加藤修一君 そうしますと、要するに、単純に両極端をとって、多分その中に将来入っていくだろうという両極端というのは、もともと大臣の頭には別の前提条件が入っていたという理解でよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/115
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116・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 御承知のように、石油開発各社の経理の状況というのは、同じ石油の量を産出いたしましても、その産出した石油がドルで一体幾らで売ることができるのかということがまず第一の関門でございます。ドルで幾らで売れるかというのは、いわば油価を指しているわけです。受け取ったドルを今度は円にかえるときにどういう為替レートでかえられるか、これが実際の円として受け取るお金であるわけですから、同じ量の石油を産出した場合に、実は最初はドルで建て値となっている原油の価格によって左右される。ですから、原油が高ければドルの手取りは高くなる。原油が低ければドルの手取りは少なくなる、当たり前の話でございますが、油価によってまず左右される。
そして、受け取ったドルを円貨にかえませんといけませんから、そのかえるときの円の計算、円貨に対する換算レートというのは市場で決まってくるわけでございますから、結局、それぞれ石油開発会社各社の経理の状況というのは、いわば原油価格とそして円とドルの交換レート、この二種類によって決まってくるというのは先生はもう当然御承知のことだと思います。
そうなりますと、計算する場合には、油の値段はドル建てで一体幾らぐらいだろうという予想もしなければなりませんし、円対ドルの関係がどうなっているかということも予測しなければなりません。ですから、方法としては、極端な円高と極端な原油安、それから、各社の経理がよくなるのは、原油が物すごく高い値段で売られて、売ったドルがまた価値があって、ということは円安であって受け取りの円が物すごく高くなる。いろんな組み合わせが実際起きるんですが、極端な原油高と極端な円安という場合と、極端な円高と極端な原油安という両端をとれば数字はどこかに入ってくるはずだろうということが計算の前提であるわけです。
例えば、先生が、原油価格の方を固定しておいて円だけ動かせという計算をしろというのも簡単にできますし、あるいは円レートを固定させて原油の値段をこうやって動かして計算しろというのも出ますし、いろんなケースがあって、それは多分いろんな計算があるんだけれども、両極端をとればその幅の中にいずれの計算も入ってくるということを前提にしてあの報告書はできているというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/116
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117・加藤修一
○加藤修一君 ですから、先ほどから言っておりますように、大臣は、過去経験した円レートの幅、それから原油価格の幅、これらの両極端をとっているというふうに答弁されたわけですけれども、私は、これと報告書の中身は違うと言っているんです。明らかに違う。だから、報告書の中身とは両極端ということの意味が違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/117
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118・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) それは、先生に誤解をお与えしたことは申しわけないと思いますが、七十九円という円レートをとることが、それも確かにそういう幅があったわけですが、そういう幅をとることの合理性があったかどうかということとはまた別問題で、やはり円高になるというような場合は七十九円とか八十円で物事の計算をするということはやや合理性に欠けると私は思いますから、その幅のとり方も、円レートについては過去の経験したものを合理的に判断して幅を決めていけばいいわけでして、別にそれは計算式がちゃんとあるわけですから幅のとり方で幾らでも結果は変わってまいります。変わってまいりますけれども、やはりその前提となるものは、ある一定の合理性を持つ必要があって、合理性を持つ範囲内での両極端というふうにお考えをいただければ御理解をいただけるのではないかと思います。実際に起きた経験に基づいた判断であることは間違いないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/118
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119・加藤修一
○加藤修一君 それでは、先ほど、試算をするに当たって物になるように最大最小をとったという話をされましたけれども、物になるようにというのはもちろん合理的だという判断だと思うんです。先ほど答弁の中で言いました、最初の方に。試算を行うに当たって物になるように最大最小を決めるんだと。ですから、それは物になるようにというのは恐らく合理的なという意味で大臣はおっしゃったと思うんです。
では、合理的に果たして今回前提条件をきちっとしているかどうかというところに私も疑問があります。ちゃんと説明してくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/119
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120・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) 大臣の御指示を受けまして事務方が作業したことでございますので御報告申し上げますけれども、為替レートにつきましては、当時百四十五円台でございました。それで、非常に円安になるという考え方もいろいろございまして、通産省として為替レートについて予断をいろいろ与えてはいけないということもございましたので、非常に円安な状況の中で、今の現時点での足元、百四十五円というのを一つの考え方といたしました。それから、過去五年間の平均ということで百十円という数字を置きました。この百十円というのは、当時の状況からしますと相当円高のイメージの強い数字でございました。この百十円と百四十五円を為替レートの前提として置いたわけでございます。
また、油価につきましては、十六ドルケースと二十・七ドルのケースを置きましたけれども、これにつきましては、さまざまな著名な国際的な機関で行っております長期、これは二〇二〇年までの見通しでございますので、当時の油価の水準は確かに十三、四ドルでございましたけれども、二〇二〇年までそういうレベルでいくことはないということで、著名な各機関が行っている見通しの下の数字、おおむね十六ドルでございます。それ以下のものは余りなかったわけでございますけれども。それから、上の方のケースは、IEAの高値の見通し、それからアメリカのエネルギー省の高値の見通しというものを使いましてダブルチェックをしたわけでございます。
私どもの計算は、前回も先生にお答え申し上げましたように、過去三年または五年の平均の低い方を低値ケースとする、それから過去五年間の六カ月平均の高い数字を高値ケースとしたわけでございますけれども、これを国際的なさまざまな機関の当時入手できました予測でクロスチェックをしたというのがこの計算の前提でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/120
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121・加藤修一
○加藤修一君 楽観ケースについては過去五年間における六カ月平均の最高値をとって一バレル当たり二十・七ドルというふうにやっているわけです。一方、悲観的なケースについては過去三年間または五年間の平均値の低い方ということで一バレル当たり十六・一ドル、そういうふうに設定しているわけです。この悲観値の決め方についてだって、前回はメジャー等がやっている方法と言いましたけれども、それは確認できますか。明確にそういう資料を出せますか。同じ方法でなぜやらないか、私は非常にそこに非合理を感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/121
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122・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) 低値の方が過去五年または三年の平均値の低い方、それから高値の方は過去五年間の六カ月平均値の高値の方という計算は、私ども、メジャーの関係者でございますとか石油のオーソリティーに、いろいろこういう場合、それから過去におきましてもどういう計算をして将来を見通したらよろしいのかということを何度も聞いております。そこで私どもが培ってきたような考え方であるわけでございますが、その意味ではそれほどこの方式自体がおかしいということは考えておりません。
また、例えば先生おっしゃる対照形にして過去の高値のケースをやったなら低値もやりなさいと、この場合だと十三ドルであるということだと思いますが、石油価格の場合にこのような考え方でやって過去の平均をベースとして高値の方をまた計算するということになるかといいますと、石油価格はやはり長期的には上昇していくという基本的な物の考え方が恐らく国際的にもあるわけでございます。ちょうど対照形にするという形で将来を予測する、例えば現時点でいいますと十三ドルで二〇二〇年まで油の価格を予測するというのは余りとられていない手法でございまして、むしろベースを、一番低いケースを十六ドルぐらいにし、それにインフレ率を二、三%かけていく、ないしはもう少し高目の設定をもともとしておくというのが恐らく各予測機関、メジャー等々において行われている手法だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/122
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123・加藤修一
○加藤修一君 では、その辺についてはまた関連の資料を出していただきたいと思いますし、まだ私は理解したつもりになっていませんから。
それから、この配付資料の三枚目でありますけれども、悲観ケースと楽観ケースの生起確率をちょっと計算してみました。過去五年間の原油価格、為替レートについてです。
例えば悲観ケースについて考えていきますと、原油価格が一バレル当たり十六・一ドル以下、為替レートが一ドル当たり百十円以下、そういう場合の生起確率を計算していきますと二七・九%、悲観ケースとしてはこういうことが約三〇%近く起こり得る。
一方、楽観ケースとして、原油価格が一バレル当たり二十・七ドル、為替レートが一ドル百四十五円以上で考えていった場合は生起確率が〇・一%、ほとんどゼロに近いという話です。
そういうことを確率論で考えていった場合は、やはり悲観ケースの方が起こり得るという判断もあり得るわけです。この辺についてはどういうふうに見解をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/123
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124・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) 先生の計算でいきますと、こういうふうになると思います。過去について、非常に円高の進んだ局面それから油が非常に下がった局面がございましたので、それを累積していくとこういう形の生起確率になろうかと思います。
ただ、私どもは、二〇二〇年まで石油の価格が例えば非常に低いレベルで推移するということはなかなか考えにくいところでございますので、前回九月、事務方としてつくりました将来の見通しでは十六ドルを下限のケースと置いたわけでございます。
ただ、いろんな議論がございまして、先生からも御議論いただきましたし、新しく中立的な委員によってつくられました報告書におきまして、今後、この後段のキャッシュフロー分析を繰り返してやっていくようにと、また状況が変わったらつくり直すようにと、毎年それを見直すようにということでございます。
前回九月に御提出申し上げましたときには、時間も限られましたので非常に限定したケースでございましたけれども、なるべく透明度は高めたつもりでございますが、今後これを見直していくに際しましては、いろんなケースでどういう姿が得られるのかということについてもう少しきめの細かな数値も計算いたして、それを公開していきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/124
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125・加藤修一
○加藤修一君 計算はこのようになるという答弁でありましたけれども、確かに過去の実績をもとにしてやるとこうなるわけです。なぜこういう計算をしたかというと、通産省が何回も何回も過去のデータに基づいてやっているというふうに言いますから、それに基づいてやっているわけです。
そして、先ほどの答弁の中では、二〇二〇年に云々、長期的なプロジェクションであるから不確定要素が入る、それは私もわかります。しかし、その辺のことについて定性的な言葉だけで逃げないで、どういうふうになるかわからないという部分があるならば、非常に起こりづらい部分もあるし非常に起こりやすい部分もあると、かなり幅を広げて私はやるべきだと思うんです。
私の目から見ますと、通産省にとって都合の悪いようなものは余り出さないようになっている嫌いがあると思うんです。といいますのは、四枚目を見ていただきたいんですけれども、報告書で最終損益評価額が出されております。報告書では結論は、最善のケースとして三千七百六十億円の黒字が出ますよ、それから最悪のケースとしては二千四百九十億円の赤字が出ますよという話になっています。しかし、私の方で計算した結果を考えていきますと、これについては五千億円ぐらいの赤字になる可能性がある、最悪のケースを考えていきますと。
それから先日、通産省から出していただいた資料を検討していきますと、実はその四枚目に書いてございますけれども、現在の為替レート、油価に基づく損益を計算していきますと、五千五百二十四億円の赤字になる可能性がある。これは可能性ですから、実際になるかどうか、それはわかりません。しかし、可能性ということをやっぱり検討していかなくちゃいけないのが今回の報告書の中身だと思うんです。住専で六千八百五十億円も公的資金を投入したときにも大変な状態になったわけですから、この今回の報告書の中身は国民だって知らされていない範囲の話ですよ。マスコミも取り上げておりますけれども、国民の方にはこういう話に伝わっていません。
こういう赤字が二千四百九十億円ということで非常に小さい、決して小さくはないわけですけれども、黒字が三千七百六十億円である、差し引きプラスになる、黒字になるという話になってしまうわけです。それだけがひとり歩きしてしまう危険性が非常にあるわけですから、もっと幅をとって、あり得る範囲の中できちっと私はキャッシュフロー分析を行うべきだと思います。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/125
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126・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) 九月に御報告申し上げました報告書におきましても、さまざま議論があり得ると私どもも想定いたしましたものですから、先ほど大臣からお話ございましたように、感応度分析ということで、もしこれ以上に油の価格、為替レートが振れた場合にどういう形になるのかというのをお出しして透明性を高めたつもりでございますが、今後この恒常的な見直しに当たりましては、御指摘の点を踏まえてさまざまなケースを開示するというような形で進めていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/126
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127・加藤修一
○加藤修一君 その意味は、過去の両極端という意味も含まれますか。単純に言って、過去の両極端というのは最近五年間という考え方でもよろしいわけですけれども、それも含めて考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/127
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128・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) 計算という意味では、いろんな前提を置いて計算できると思います。ただ、例えばこの一カ月で油の値段は二・五ドルも動いているという現状がありますので、日々の数字をとるというのはなかなか難しいとは思いますけれども、ある程度の大きな幅を持って、こういうある極端なケースが起きた場合は何が起きるのかということもあわせて開示するということについては、私どもはそれを行うつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/128
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129・加藤修一
○加藤修一君 ですから、最初から私が言っていますように、報告書で無視している範囲があるわけですから、あえてそれを無視した形でそういうデータをもとにして計算すること自体、非常におかしいと思います。そして、その数字がひとり歩きすることをねらって報告書をつくったのかなという疑問も出てくるわけですから、なぜそういうふうにやらないのかなと本当に単純に思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/129
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130・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 先生の御趣旨もわかるつもりでございますけれども、例えば先生が計算された最大の赤字というのは五千五百二十四億円、こういうことでございますが、これにも一つの前提があっての計算であるわけでございます。我々はすべての計算について前提を明らかにしております。したがいまして、その前提が本当に起きるかどうか、実は問題なのは計算自体ではなくて、例えば原油の価格についてお互いにどういう見通しを持っているのかということが私は大事なんだろうと思います。
原油価格については、資源の賦存状態あるいはこれから再びアジアを初めとする経済がもう一度立ち直ってきますと、いろいろな報告書を読みましても、やはり原油の消費量は増加する傾向にあるということが専門家の大体共通の認識でございます。これは一年、二年の単位をとったということではなくて、十年、二十年の単位をとると原油の消費量というのは増大していく。一方、原油の資源というものはある意味では有限でございますし、また現在のような低い原油の価格ですと探鉱開発というものも余り盛んになりませんし、常識的に言えば原油の価格はどちらかというとベクトルは高くなる方向に向いているということでございます。
ただ、円レートについては、昨年の秋は百四十円台でございました。百四十五円というのをつけたこともあると思いますが、急激にそれが上昇して百八円台に参りましたから、それ自体で三十円を超える振れ幅があったわけでございます。為替レートの方は非常に振れますから、また一国の経済の状況とか他国との関係とかいろんなことで総合的に決まってくるわけですから、為替レートの方は予測しがたいものがございますけれども、やはり原油の価格を現在より将来高くなるというふうに考えるというのは、私は理屈に合っているのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/130
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131・加藤修一
○加藤修一君 答弁の最初の方で五千五百二十四億円の赤字というのは、私が試算した値じゃなくて、これはごく最近通産省が出した値ですよ。そういうことです。二月の為替レート及び原価を用いて資源エネルギー庁が試算した値ですので、念のため。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/131
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132・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) ああ、わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/132
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133・加藤修一
○加藤修一君 それから、アジア経済云々のそれ以降の答弁については、わかる部分は当然あります。ただ、私が一番問題にしているのは、九月二十九日のこの報告書の書き方が問題だと言っているんです。報告書の書き方について、幅のとり方が非常に意味のない、ある程度の意図を持って書かれている部分があるから、それはやはり変えるべきだと言っているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/133
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134・今井康夫
○政府委員(今井康夫君) ずっと御議論をしていただきましたのでございますけれども、諸前提の置き方につきましては、為替につきましてはなかなか難しいところがあって、通産省が前提を置くというのは非常に難しいところがございます。したがって、ある程度の過去の趨勢などを客観的に、国民の方、読んでいただく方にわかるような数字を前提として置くということだと思います。
また、原油価格につきましては、過去の趨勢及び諸機関の行っているさまざまな見通しを前提としてある程度幅をとる、なおかつ、例えば今の足元で計算したらどのようになるのかということについてもそれを明らかにするということで今後対応してまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/134
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135・加藤修一
○加藤修一君 この点に関しての疑問だけじゃなくて、別にもたくさんありますので、私は委員長に、一般質疑を含めてこの石油公団問題をきちっと取り上げてやるべきだということを要望して、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/135
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136・西山登紀子
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
きょうは私は、日本映画の振興、復興について、通産省と文化庁に質問をいたします。
映画議員連盟というのがございますけれども、私どもの先輩でございます、長年当委員会の委員を務めてこられました市川正一議員はこの映画議員連盟の創始者の一人であるわけですが、たびたび当委員会でも映画の問題について質問をされておられましたので、私はそのよき伝統を受け継ぎましてきょう質問をしたいと思います。ちなみに、この超党派の映画議員連盟の会長は、小渕総理御自身でございます。
昨年の九月に、世界のクロサワと言われた映画監督、黒澤明監督が亡くなられました。いろいろな特集番組が組まれておりまして、私も改めて勉強させていただきました。黒澤作品、「羅生門」、戦後間もない一九五一年にベネチア映画祭でグランプリを受賞したことをきっかけにいたしまして、日本映画への注目とかそれから国際的な評価というのが非常に高まったんです。私もそういうことを再認識させていただいたわけでございます。「羅生門」だとかそれから「七人の侍」だとか「隠し砦の三悪人」、こういうふうな懐かしい映画を繰り返しテレビが放映しておりまして、私も見せていただきました。こういうすばらしい業績、これは私も認識不足だったと思いますが、むしろ日本映画が世界の映画をリードしてきたんだというふうなことを改めて認識いたしました。しかし、この日本映画の現状といいますのは非常に厳しくて、将来展望は必ずしも明るいとは言えません。
そこで、大臣にまずお伺いしたいわけですけれども、日本映画は一八九六年誕生以来百年の歴史を持ち、芸術、文化の大きなジャンルとして発展を遂げてまいりました。殊に、ほかの芸術に比べまして複製がきくということ、多数の国民に鑑賞の機会があり、むしろ国民の鑑賞力によって育ってきた文化であるということ、また国民生活に非常に身近で不可欠な文化や娯楽であるということ、日本の社会や日本の時代を映す芸術であると言っても私は過言でないと思います。
この日本映画、国際的にも大きな評価を受けているわけですけれども、まず通産大臣に、この日本映画についての御認識、評価についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/136
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137・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 私は中学時代は映画を大変たくさん見ておりまして、封切り館にはなかなか行けなかったので、二本立て、三本立てという映画をよく麻布十番の劇場で見ておりました。一日四本見たこともあります。
日本映画はすばらしいものがございまして、今、黒澤監督の全集を私は自宅に持っておりまして時々見ておりますが、これはマカロニウエスタンという形でアメリカの映画の原作にもなっているというものも実はございます。
まず、過去すばらしい映画ができましたことについて、文部省を中心にフィルムライブラリーが整備をされましたので、過去の業績については私は今きちんと整備されつつあると思います。
また、もう一つは、過去、映画の著作に携わった方々に対して著作権法上どういう問題があるのかという問題も実はございますが、この問題も大分解決されてきていると思います。
我々、今はなかなか、映画館に行くのではなくて、どちらかというとビデオ、レーザーディスク、あるいは最近はDVDという新しいメディアもできてまいりましたので、そういうもので過去の映画を鑑賞する機会が多くなりました。
そこで、今、情報産業が大変豊かになったといって論じられておりますけれども、やはりコンテンツと申しますかソフトと申しますか、そういうものは実はなかなか短時間では充実できない分野でございます。そういう意味では、今は映画にかわるもので各テレビ会社がドラマや何かを制作しておりますけれども、やはり映画というのは一種の迫真性というものがある表現手段でございます。
日本の映画をこれからどう振興していくかということは、先生の御意見もぜひお伺いしたいんですが、過去百年間積み上げてきた実績で、いい監督、いい俳優の方々もたくさんおられますから、やはり日本の文化の一つとして映画振興に取り組むということは私は大変大事なことだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/137
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138・西山登紀子
○西山登紀子君 日本映画の国際的な評価ということについて、大臣の御認識はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/138
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139・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 多分昭和二十八年か九年に京マチ子さんが出ておられる黒澤監督の「羅生門」がグランプリをとりました。私は当時エジプトにおりましたが、エジプトにもその映画が回ってまいりまして私も見たことがございます。
そういう意味では、やはり日本映画は日本人の感性をあらわしているわけですから、私も好きな俳優もたくさんおりますし、また好きな監督もおります。日本の映画の水準というのは、黒澤監督ばかりではなく小津さんを初めとしたたくさんの優秀な監督さんがおられて、そういうものが日本人にいい映画作品をつくってくださったということと同時に、やはり黒澤さんの作品も小津さんの作品も、世界じゅうの映画監督、映画界に大きな影響力を残しているという意味で、また我々がそういう映画を見て楽しんでいるということで、私は日本映画に対して大変高い評価をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/139
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140・西山登紀子
○西山登紀子君 大臣が日本映画について高い評価をされているということで、私も意を強くいたしました。
しかし、この日本映画、産業としての側面とまた文化としての側面と両方がございまして、両面からサポートをして発展していくものでございます。
文化庁が九四年八月に映画芸術振興に関して協力者の皆さんの御協力を得ましてこういう報告書をつくっております。「映画芸術振興方策の充実について」という提言、公式の文書でございますが、その文書の中でこういうふうに指摘をされております。
我が国の映画芸術は、映画産業とともに育ってきた歴史があり、今後ともそれとの関連を抜きにして映画芸術の振興方策を考えることは難しいといえる。
もっとも今日の映画産業の衰退は、昭和三十年代後半から始まった諸々の要因の積み重なりがもたらした社会的なものであり、短期的にその回復を図ることは難しいと言わざるを得ない。したがって、映画産業としては、「映画百年」を我が国映画界再生の「映画元年」と認識し、中長期的展望の下にその基盤の充実に努めていく必要がある。
こういう御指摘をされているわけです。
映画芸術の振興に対しまして、映画産業を所管する通産省の役割をどのようにお考えですか、端的にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/140
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141・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 映画産業自体は、制作を行い、またそれを配給し、また映画館で興行を行い、またそれがやがて他の変わった媒体に乗っていろんな方に届けられるわけですが、これは産業としては約二千億円の産業でございます。これは、直接の二千億円のほかに、ビデオ化等によりさらに大きな収入を生んでいるわけでございますが、ヒット作品が社会現象となるなど、文化、社会を活性化し、経済に波及効果を与える産業だというふうに認識しております。
また、デジタル化、ネットワーク化が進展する状況のもとでコンテンツ産業の大きな発展が予想される中で、映画産業というのはむしろこれから一層重要な役割を果たす、また果たしていただきたいというふうに考えております。
通産省としては、このような特性を有する映画産業の健全な発展を図る観点から、映画産業発展のために必要なビジネス環境の整備を進めることなどに今後とも努力をさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/141
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142・西山登紀子
○西山登紀子君 努力をしていくという御表明があったわけですけれども、今、日本映画の現状というのは大変深刻でございます。この提言も、現状のまま行くと「日本映画が消滅するといった最悪の事態の到来も架空のものではなくなるおそれがある。」と非常に厳しく今の現状を指摘されているんですけれども、この提言が発表されてから実は五年がたっております。
そこで、昨年一年間の封切り映画の本数ですけれども、全部で五百五十五本です。ところが、その中で日本映画は二百四十九本、洋画が三百六本ということで、逆転現象が起こっているわけです。日本の映画二百四十九本のうち大手以外の手による映画は百八十四本、そのうちポルノ映画が百一本ということで、日本映画全体の四〇・五%です。大手以外によるものの五四・八九%を占めている、これは国民文化にとって非常に憂うべき事態というふうに思うわけです。
文化庁、この提言が発表されて以降の五年間で日本映画の危機的な状態が深刻になっているんじゃないでしょうか。確認だけで結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/142
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143・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) お答えをいたします。
委員御案内のとおり、映画は国民の身近な娯楽として生活の中に定着いたしますとともに、総合的な芸術として大変重要な位置を占めてきたわけでございます。
今、委員が御指摘になりましたようなことで、現在の邦画界は国際映画祭等で高い評価を得る作品も一方ではあるわけでありますけれども、全体として見れば大変厳しい状況にある、そういうふうに認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/143
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144・西山登紀子
○西山登紀子君 大変厳しい現状にあります。
それで、大臣に、日本映画の産業としての深刻さ、それについてもちょっとお伺いをしたいと思うわけですけれども、映画制作の基盤が非常に弱体化しているという問題でございます。
いわゆる三大大手の映画会社があるわけですけれども、この会社は、今自社制作を余りしなくなっているんです。十年前には百二本だったのが今六十五本だというんですけれども、しかし実際の中身は自社作品は十本に届かないんじゃないか、こんなふうなことも言われているわけでございます。
それでは、だれがつくっているかということなんですけれども、独立プロと言われるグループの人たちが一生懸命つくっているわけでございます。大手は、自分がつくらないで、独立プロの皆さんが例えば六億円もかけて制作したような映画を二億円ぐらいで買いたたいて、そして配給してもうける、こういう興行中心、ひどい言葉で言えば収入があればいいというふうなことで、制作に余りお金をかけないというふうなことになってきている。最近のマスコミでも話題になりましたけれども、松竹の場合もむしろ映画の制作本数を減らして洋画中心の興行に方向転換するというようなことが報道されておりまして、大変心配をしているわけでございます。
独立プロの皆さんの制作難、いろいろお伺いいたしましたけれども、実際再生産が非常に困難になってきている。まず資金を集めるということから監督さんも含めて皆さんがやられる。資金が集まらなかったら、いいものをつくろうという計画はあっても途中であきらめてしまうこともあるそうでございます。創作意欲がわいてもお金がないからそれを放棄してしまう、こういう事態になっているということでございます。
今、会社に専属の監督さんはわずか三人、日本全体で五百人近い監督さんがいらっしゃるそうですけれども、それではどれぐらいの収入で暮らしているのかとお伺いいたしますと、年収三百万円ぐらいの収入の方が多いということをお伺いしたわけでございます。映画がつくれなければ収入がない。では何で食べているんですかと言ったら、農業をしながら食べている、監督さんがですよ、そういう事態だということをお伺いしました。再生産が非常に困難。
また、映画従事者の不安定な身分や収入という問題も大変でございます。映画は監督さん一人でつくれるわけでも、俳優さん一人でつくれるわけでもありません。集団の大変な時間をかけた作業の中で、また総合芸術としての非常に大がかりな仕事でございます。生産といいますか文化生産ですね。
ところが、映画をつくっていないときは失業者とも見られませんので失業保険、これは入れないというようなこともお伺いしたわけでございます。つまり、日本映画は、産業としてそれを支えるスタッフの皆さんの不安定な身分や収入の状態も含めまして再生産が非常に困難な現状にあるということでございます。
日本映画のよき伝統を生かして国民の皆さんの鑑賞意欲にこたえていく、いい映画をつくる、こういう点から見ましても、とりわけ日本映画をつくっていくという、再生産ができなくなっているというこの厳しい現状について大臣はどのように認識しておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/144
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145・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 先生おっしゃいましたように、昔は東宝、新東宝、松竹、東映とか、日活、大映という幾つも映画会社があって、それぞれいい作品をつくろうとしておりました。やはりテレビ時代になりまして観客動員数も減りましたし、また現在ですと、例えばテレビドラマを撮影するというのは、フィルム代というのはもう実際上ほとんどかからないというようなことがありますが、映画制作というのは膨大な資金が必要でございますし、またお客様が映画館まで足を運ばなければならないということもございます。ですから、最近ですと、アニメですけれども、「もののけ姫」というようなものがヒットするということはございましたが、全般として観客をなかなか動員できない。ただ、時々いい作品があって静かにブームになっております。
これはやはり基本は、観客のニーズにこたえないと産業としては成り立たないわけでございますが、我々としては、先ほど先生が言われましたように、日本は百年の映画制作の歴史があって、いろいろな知識や経験を持っているわけですから、それが無に帰すというのは大変惜しいことでございますから、国としてどこまでこういうものを支えることがいいのか、またできるのかという議論はございますが、何とかして日本映画のよき伝統が残り、また将来にわたっていい映画がつくられていくという環境整備をいたしたいと思います。
また、映画監督をやっておられる方あるいは俳優をやっておられる方で、映画に出るということはむしろ出費を伴うような世界であるということも私よく知っております。大変な犠牲を強いられながら、いい作品を残したいという芸術家としての使命感だけが支えで作品をつくっておる方がたくさんおられるということもよく知っておりますので、私どもとしては、映画産業の基盤整備とか環境整備とか、間接的にお手伝いできることについては、文化庁も一生懸命やっておられますし、我々もまたそれに取り組みたい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/145
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146・西山登紀子
○西山登紀子君 大臣の何とかしたいという思いは非常によくわかります。ただ、今の日本映画の現状というのは本当にもう厳しくて、再生産ができなくて、このままでしたら消滅する、先ほど無に帰するのは惜しいとおっしゃった、まさにこのまま行ったら無に帰してしまうという現状にあるということでございます。
では日本の国民の鑑賞意欲が減退したのかというとそうではなくて、例えば映画「タイタニック」は大きく映画鑑賞人口を吸収いたしまして、昨年一年間で日本の映画鑑賞人口は一億五千万人、一昨年よりも三千万人アップしたんです。映画館で見る「タイタニック」。ですから、いい映画というのはやはり日本の国民は映画館で見てくださるということでございます。
ところが、よい日本映画をつくりたくてもつくれない。とりわけ資金面で非常な困難に直面しているということなんです。その御認識をはっきりお持ちいただきたいと思うわけです。
それでは、どうしたらいいかということなんですが、通産省と文化庁もいろいろ努力をされていると思いますけれども、通産省の来年度の予算の中で映画の振興についてどのような予算が組まれているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/146
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147・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) 現在、私どもとしましては、従来から映画産業全体のビジネス環境の整備という観点から、例えば映画フィルムの特別償却といったふうに税制上の措置を講じてきておりますし、また商品ファンド法の映画への適用といったことで資金が広く集まるようにといったこともしております。
また、いろんな調査研究を行いまして、映画産業の活性化のためのいろいろなビジョンというようなものも検討しております。また、これは金額的にも小さいものだと思いますけれども、撮影技術等に非常にいいものとかあるいは映画産業全体の振興に資するようなものにつきましては、大臣表彰といった格好で士気を高めていただくといったようなこともやっているわけでございます。
さらに、映画産業は、例えば商店街全体の活性化の一環としても今後期待ができますし、また先ほど申し上げましたように、コンテンツ産業の大きな製造者でありますものですから、そういった意味でコンテンツ産業の支援といったことからも応援ができるというふうに思っております。
具体的に一般会計予算でいいますと、例えば調査研究費といった程度でございますけれども、今言いましたような既存の施策を十分活用しまして、できるだけ映画産業につきましても意を用いてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/147
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148・西山登紀子
○西山登紀子君 大変言いにくそうに御答弁されているんですけれども、予算の資料を取り寄せましても、映画のためにこれをという予算は幾らだということを示されない。ゼロということなのでございます。
あとは、いただいた資料によりますと、競輪の日本自転車振興会にいろんな要望をしているということだけでありまして、直接的な一般会計から映画の振興のために出す予算というのはゼロだということで、こういう状態では日本の映画産業の衰退の危機というのはとても救えないんじゃないかということで、実は驚いているわけでございます。
九三年の衆議院の商工委員会で、我が党の小沢議員が同じように、この映画産業の振興について予算がないのはおかしいという指摘をしておりますのにもかかわらず、今回もゼロというようなことで、この事態は非常に重大だと思います。
文化庁にお伺いいたしますけれども、文化庁は日本映画の振興策についてどのようなことをやってこられましたでしょうか、また来年度どのようなことをやろうとされているのか、主なもので結構ですからお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/148
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149・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 文化庁におきましては、我が国映画芸術の振興を図るために、これまでも優秀映画の顕彰でありますとか、優秀映画の公開上映に必要な経費の援助を行うほか、先ほどお話がございました国立近代美術館フィルムセンターの整備充実等に予算を組んできたわけでございます。
特に、平成十一年度の予算案におきましては、フィルムセンター計上分は約六億円でございます。特にすぐれた日本映画の鑑賞機会を提供するために、優秀映画鑑賞推進事業を拡充いたしますとともに、貴重な映画フィルムの修復事業の充実など、フィルムセンターの予算の充実を図ることといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/149
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150・西山登紀子
○西山登紀子君 制作費の助成について言われなかったんですが、後で基金の問題のところで質問いたしますので、いいです。
それで、いろいろ言われたわけですけれども、これまでのいろんな施策で日本の映画の衰退が食いとめられなかったという現実がやはり示しているわけですから、厳しい認識が必要だと思うわけです。
私の地元は京都でございますが、日本映画の発祥の地でございます。映画産業に従事する監督さんやいろんな方々のお話を伺ってまいりましたし、また日本全体で活躍をされていらっしゃる映画関係者の皆さんの御要望もお伺いをいたしました。
そこで、具体的に提案をしたいんですけれども、大臣にお伺いしたいと思います。とりわけ、無に帰してはもったいないと言われた大臣ですから、何とかしていただきたい。
一つは、先ほど中小企業対策費を使ってなされた調査、協同組合日本映画製作者協会の方々がつくられた調査報告書でございますけれども、この報告書の中で最も強い要望はやはり制作費に対する要望なんです。映画をつくる資金、これが最も切実なんだということなんです。映画の資金出資者の出したお金を所得税とか法人税などの優遇措置をして減免措置をしてくれないかというのがここに出ているわけです。
大臣、ぜひ大蔵省に要求をしてこれが実現をしていくようにしていただきたい。アメリカではこういうことをやっているということでございますので、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/150
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151・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 協同組合日本映画製作者協会が平成八年度に行った活路開拓ビジョンの調査において、映画への出資に対する税制上の優遇措置や映画制作の完成保証制度の導入が提言されていることはよく承知しております。
通産省としては、我が国映画産業発展のため、適切な施策の検討、実施に当たり、これらの提言を初めとした関係業界や有識者の方々の御意見や御要望も参考にさせていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/151
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152・西山登紀子
○西山登紀子君 大臣が次の質問の御答弁もされたようなんですが、次に完成保証についてもお聞きしようと思っていたんです。
特に制作費をつくるという非常な努力をされているんです。例えば、お一人お一人に協力金を求めてたくさん資金を集める。こういうことをやっておりますと、それこそ本当に制作意欲すらも減退していってしまうということで、せめて映画に出資をしてあげようという人の善意を大いに引き出すための税の優遇措置。
それからもう一つは、映画をつくるときにお金を借りやすくしてほしいという完成保証の要求でございます。
この完成保証というのは、映画をつくる場合には、担保としての不動産をたくさん持っている人たちがおつくりになっているわけではありません。知的才能を持っていらっしゃる、芸術、文化の能力を持っていらっしゃるけれども、そういう担保能力は本当にないという方々が日本映画に愛着を持って、制作意欲を持ってつくりたいと思っていらっしゃる。だから、その場合にフィルムを担保にしてお金を貸してくれないかという要求なんです。これはドイツでは認めているというふうに聞いているんですけれども、大臣、この完成保証という融資制度の実現のためにぜひ御努力いただきたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/152
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153・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) 映画におきます完成保証制度につきましては、その導入につきまして今関係業界と意見交換をしておりまして、だんだん制度導入の萌芽が生まれつつあるというふうに考えておりますので、これが実現するように期待をしておりまして、そういう方向で今議論をしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/153
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154・西山登紀子
○西山登紀子君 話し合いがずっと進んでいるということで大変私もうれしく思っているんですけれども、日本映画の衰退の危機というのは早く救わなきゃいけない、なくなってからではもうできない。そういうために、いつごろをめどにできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/154
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155・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) まだ具体的にいつごろということは必ずしもはっきりしておりませんけれども、相当前向きに進んでおりますので、そういう方向で今後とも精力的に頑張っていこうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/155
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156・西山登紀子
○西山登紀子君 いわゆる議会答弁というか、一年以内とか、そういうふうに期待していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/156
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157・近藤隆彦
○政府委員(近藤隆彦君) ちょっと具体的にいつということはないようでございますけれども、いろいろな関係者がおりますので、何とかできるだけ早目に議論が進むように環境の整備をしようと思っておりますが、具体的に時期は……恐縮でございますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/157
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158・西山登紀子
○西山登紀子君 通産省の中にも文化関連産業課という新しい課が一年半前から生まれまして努力がされているというように聞いておりますので、ぜひこの点の御努力をよろしくお願いしたいと思います。
次に、芸術文化振興基金について文化庁にお伺いをしたいと思います。
この芸術文化振興基金というものは、唯一と言っていい映画制作に対する助成でございます。この映画への芸術文化振興基金の助成が、実は平成十年度ですけれども減っております。一本当たり二千五百万円というようなことで今まで出されてきたわけですけれども、いただいた資料をずっと見てみますとこれが減っているんです。九八年度は二億五百万円出されたのでございますけれども、九七年度は二億四千五百万円出されている。これは減っています。
ずっと計算をしてみますと、基金の制度は平成二年に発足をしているんですけれども、映画だけではなくすべてのジャンルの助成総額といったものも、実はこの五年間で八億三千六百十五万円減っています。三五%目減りをしている。中で、日本映画に対する助成の総額は、これもやはり五年間で五千六百万目減りをして二億五百万ということになっているわけです。危機が叫ばれている中で後退をしているということは非常に重要だと思います。基金は当初から幾らふえたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/158
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159・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 芸術文化振興基金は平成二年に創設をされたわけでございますが、政府出資金五百億円、それから民間から拠出をいたしました百億円、計六百億円の資金による運用益をもちまして、今委員御指摘のような映画の制作活動を含めまして、その他音楽活動、演劇活動等々幅広い芸術活動に助成をしておるわけでございます。
現在、基金の総額は約六百十二億円ということでございます。なお、その運用益の減でございますが、これは昨今の厳しい低金利の状況によるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/159
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160・西山登紀子
○西山登紀子君 それでは、六百十二億ということはわずか十二億基金がふえたということでございます。
次に、この芸術文化振興基金というのは、最初二千億の規模を目標にスタートしたそうでございます。最初は六百億、だけれども毎年政府が百億ずつ上積みをして、将来二千億の規模を目指すという構想だったんです。
ところが、政府の出資金は五百億でそのままです、ふえていないということなんですけれども、九〇年の基金発足以来この基金がふえていないということでは、これはもう映画の今の衰退状況を打開するということはできないというふうに思うわけです。
文化庁は、平成十一年度文化庁予算案の概要の表のところに、「文化立国の実現に向けて」、「文化は、人として生きるあかし、生きがい、社会や経済に活力を生み出す源泉」、「文化予算は、未来への先行投資」だというふうに書いてございますが、非常にすばらしいスローガンだと私は思うわけでございます。まさにそのとおりだと思います。
日本映画はこういう状態で、基金がわずか六百十二億のままに低迷をしている状態ではこの危機の状況を脱することはできないと思うんです。基金もふやすべきだと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/160
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161・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 昨今のそういう低金利の状況によりまして、運用益もなかなかはかばかしくないわけでございますが、平成八年度から文化庁の芸術創造活動に対する支援事業、アーツプラン21と称しておりますけれども、このアーツプラン21によりまして芸術文化振興基金に対し毎年約十億円の補助金を支出いたしております。この補助金をまた原資にいたしまして、音楽活動でありますとか演劇活動と、また別途助成の対象にさせていただいております。
〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕
なお、今委員御指摘の基金の積み増しでございますが、民間資金の拠出状況あるいは文化庁の芸術文化振興のためのいろんな施策等を踏まえながら慎重に検討していく課題であろうかと思っておりますが、いかんせん現下のこういう大変に厳しい財政状況にかんがみますならば、政府出資による基金の積み増し、これはまたなかなかハードルの高い問題ではないか、このような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/161
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162・西山登紀子
○西山登紀子君 財政難をいつも理由に出されるわけですけれども、やはりこの金利が下がったというのも下げたのは政府ですし、また大銀行に六十兆円ぼんと投入するというふうなことを一方ではやって、そして本当に国民が求めている心の潤い、文化、こういうことにはお金がないからといって本当にわずかな基金すら上げようとしない、これは問題だと思います。
次に、映画一本当たりの助成金の上積みです。これは当初、一作品当たり制作費は七千五百万円を想定してその三分の一の二千五百万で始まったと。これは今も二千五百万のままですね。関係者の皆さんは、せめて一本一億円、こういう引き上げの御要望ですけれども、ぜひ上積みを検討していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/162
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163・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 御指摘のとおり、長編映画の制作に対します助成金額は、平成二年度から一件当たり二千五百万円、こういうことになっておるわけでございます。先ほど来るる申し上げて恐縮でございますが、約六百億円の原資の運用益をもって助成を行っておる、こういうことでございますので、音楽団体、演劇団体といういろんな団体からの助成要望があるわけでございまして、この長編映画の一件当たりの助成金額を仮に引き上げるとするならばどうしても採択件数を減らさざるを得ないのかと、こういった選択肢もあるわけでございまして、いずれにいたしましてもその助成金額の引き上げということはなかなか難しい面があるのではなかろうかと、このように考えております。御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/163
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164・西山登紀子
○西山登紀子君 御理解できないんです。そんなことを御理解していたら日本映画というのは衰退してしまいます、無に帰してしまいます。文化庁の今来てくださっている方を責めるわけじゃありませんけれども、私は御理解はできません。
それは、日本映画を今本当に愛着を持って何とか復興、振興したいと思っていらっしゃる制作者に対して、せめてこれぐらいは、運用益が減っているということであればその基金をうんとふやすということをやらなければならないと思います。
〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕
一つ飛ばして次の質問に行きますけれども、こういう状態ですから、芸術文化振興基金に対しまして、これではちょっと映画の復興にはもどかしいということで、日本映像職能連合、日本俳優連合、映演共闘会議という伝統的な映像三団体連絡会議が日本映画振興基金構想というのを提案していらっしゃるわけでございます。文化庁は御存じだと思いますけれども、ぜひこれも真剣に研究をしてほしいと思います。文化庁どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/164
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165・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 今お尋ねの件は、映像三団体連絡会が提案している日本映画振興基金の事柄かと思います。
いろんな御提言があるかと思っております。私どもも一つの提案ではあると受けとめてはおりますが、また今後研究すべき課題も多々ございますので、慎重に研究をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/165
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166・西山登紀子
○西山登紀子君 では、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、実はこの日本映画振興基金というのは、日本映画のこの危機を何とかしたいという思いで提案をされているものでございますので、通産大臣としてもぜひ検討していただきたいということと、それから各国ともやはり自国の映画の振興のいろんな対策をとっております。
それで、例えばイギリスなどは最近、九五年七十八本だったのが、具体的な制作に対する援助金を政府が出すということによって百十六本まで映画の制作本数が上がっているという効果も上げております。
そこで、ぜひ通産大臣、今の映画の危機を救う、文化産業に対する拡充策、大臣がイニシアをとっていただきまして、ぜひ文部省とも努力をしていただきますように決意をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/166
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167・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 通産省としてもかねがね産業としての映画の振興を考えておりました。また、文化関連産業の中心的な存在でございます映画産業の重要性や将来性などにかんがみまして、関係業界や有識者の方々の御意見等も参考にしながら、我が国映画産業の発展のための環境整備を進めるべく適切な施策の検討、実施を図ってまいりたい、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/167
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168・西山登紀子
○西山登紀子君 大臣の決意をぜひ実行に移していただきたいと思います。
次に、文化庁にフィルムセンターの問題についてお伺いをいたします。
東京国立近代美術館が中央省庁等改革に係る大綱で独立行政法人化の対象になっているんですけれども、当然附属機関であるフィルムセンターもその対象になりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/168
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169・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 一月二十六日の中央省庁等改革に係る大綱が決定をされたわけでございまして、東京国立近代美術館を含めまして国立の博物館、美術館は種々の準備作業を行い、独立行政法人化を図る、こういうふうにされたわけでございます。
フィルムセンターは、現在、東京国立近代美術館の組織の一部でございますから、東京国立近代美術館が独立行政法人化いたしますならば、フィルムセンターも独立行政法人化たる東京国立近代美術館の組織の一部になる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/169
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170・西山登紀子
○西山登紀子君 時間が押しておりますので次の質問に行きますが、そのフィルムセンターが独立行政法人化の対象になるということで、私は日本映画は国民共有の文化遺産であると思いますから、このフィルムの収集、保存、整理、再生、国民的な観賞、こういう活動をやっていらっしゃるフィルムセンターを実際に見てまいりました。
このフィルムセンターの維持をしていらっしゃる職員の方の人数ですけれども、非常に少ないんです。きょうお手元に配らせていただいておりますけれども、ぜひ委員の皆さんも見ていただきたいと思います。
日本は十一名ということですけれども、政府からいただいた資料は十名でございます。名誉館長の高野さんは国家公務員ではありませんので十名でございます。ロシアは約六百人、フランスは百人、百人といってもいろいろなところに機関を持っておりますから合計すればもっと、二百人、二百五十人というような人数を抱えていらっしゃる。ドイツは百四十人。こういうことで、これは悪名高い十一人というか十人というか、フィルムセンターの職員の皆さんは本当に一生懸命努力しているんですけれども、常勤の職員というのは公式の資料をいただいたのでは十人。これはフィルムセンターの資料でございますが、十一人ということになっているわけでございます。一方で、非常勤の職員は今十一人が働いていらっしゃいます。
国立の今の状態でもこういう現状であるわけですけれども、なぜこんなに日本は常勤の職員が少ないのか。文化庁、少なくとも国際的なアーカイブに加盟をしている国立の機関としてはもっと人数をふやすべきじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/170
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171・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 各国のフィルムアーカイブの職員数につきましては、それぞれの国における映画をめぐる状況でありますとか文化行政の組織、制度の意義を異にしているわけでございますから、私どもも必ずしも簡単に国際比較をすることは難しいのではなかろうかと思っております。また、このフィルムセンターは東京国立近代美術館の附属機関でございまして、特に一般管理業務につきましては美術館本館で対応している、こんなところもほかの国のフィルムアーカイブとは若干組織形態が異なるのかな、そのような感じで思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/171
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172・西山登紀子
○西山登紀子君 それは御答弁にはならないと思います。相模原だってたった二人でしょう。相模原の膨大なあのフィルムの保存庫にたった二人です。
それで、次に移りますが、この国立近代美術館それからフィルムセンターを独立行政法人化するについて、映画関係者の意見は聞かれましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/172
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173・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) この独立行政法人化の議論は、昨今いろいろと文化庁の内部でも議論をしてきたわけでございますし、東京国立近代美術館におきましてもいろいろな議論がなされたわけでございます。
特に、東京国立近代美術館には、そういった館の管理運営に関します重要事項についていろいろと意見を聞くために評議員会というものを設けております。その中には、先ほどお名前が出ました高野悦子さんを初め映画関係者も若干の方が入っていらっしゃいますけれども、そういった評議員会の場でこの独立行政法人化のこともまた議論がなされたと、このように承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/173
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174・西山登紀子
○西山登紀子君 私がお聞きしたのでは、映画関係者の直接の意見は聞かれていない、聞いていないというふうに伺っておりますので、そこの経緯についてはもう少し詰めてみたいと思います。
この独立行政法人化するということの目的は、いわゆる行政の減量、効率化でございます。それははっきりと行政改革会議最終報告にも盛り込まれているところなので、私も心配ですので調べてみました。
現在の東京国立近代美術館フィルムセンターの平成九年度の入場料などの収入は千六百万円。今年度のフィルムセンターの予算は六億九百六十一万円ということでございます。収入は千六百万円、これは到底採算がとれるというような代物ではございません。
もともと採算を目的にしてはいけない機関だというふうに私は考えております。国が当然日本映画の収集と保存と再生と新たな普及、それから人材の育成。フィルムセンターへ私も行ってこういうことを本当に皆さんが努力されているということを目の当たりにしてまいりましたけれども、今始まろうとしているんです。新しい事業もいろんなことをやって、人材育成のこともいろいろやろうとしている。そのやろうとしている矢先に独立行政法人化して国立から外してしまうということは、まさに国の責任放棄だというふうに私は思います。
平成十年七月三十一日から博物館、美術館の関係者が集まった懇談会が開かれている、それが情報開示されております。それを見ましても、その中でやっぱり美術館、博物館などは国立でやるべきなんだという懸念の声がたくさん出ております。だれがというふうには、そこまでは開示されておりませんけれども、たくさん心配の声が出ているわけですから、これはもうそれこそ悔いを千載に残すということがないように、もっと映画関係者の直接の意見をよく聞いていただきたいと思います。
そのことをお願いいたしますが、文化庁の答えをもらって質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/174
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175・近藤信司
○政府委員(近藤信司君) 独立行政法人ということで危惧があるということでございますが、例えばイギリスの大英博物館等のいわゆる国立博物館、美術館も国の機関そのものではないわけでございます。法律に基づいて国から独立して設立された法人でございます。
また、中央省庁等改革に係る大綱におきましても、「独立行政法人は、一般的には独立採算制を前提とするものではない。独立行政法人への移行後は、国の予算において所要の財源措置を行うものとする。」、こういう規定もあるわけでございます。国立博物館、美術館は採算性は極めて低いもの、この認識は私どもも持っておるわけでございまして、国として十分な財政的な支援が必要であると考えております。
今、最後に委員が御指摘になりました映画関係者、御指摘になりました国立博物館、美術館の懇談会には確かに映画関係者そのものは入ってはおりませんが、東京国立近代美術館の評議員会でありますとか、特にフィルムセンターの運営委員会、これはもう大半が映画関係者でございますので、そういった場を活用しながら、そういった方々の御意見も承りながら独立行政法人化の問題に適切に対応してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/175
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176・梶原敬義
○梶原敬義君 平成十一年度予算案について今委嘱審査をやっておりますが、私はそれに関連して、一つは中小企業対策費と、もう一つはエネルギー関連に関しまして二つの質問をいたしたいと思います。
大蔵省の「平成八年分 税務統計から見た法人企業の実態」というのをいただいて見ておるんですが、それによりますと、欠損法人、赤字法人の年別推移を見てみますと、昭和六十一年は五四・三、六十二年は五二・五、六十三年は五一・三、そして平成元年になりまして四九・六、平成二年は一番率が下がりまして四八・四、三年が四九・七、四年が五三・一、五年が五九・一、六年になりまして六二・七、七年が六四・五、八年が六四・七。九年、十年はまだ出ておりません。
平成八年におきましては、二百四十三万五千七百四十九社のうち、実に六四・七%の百五十七万六千百十社が欠損を出して赤字法人だと、こういうことになっておるのはもう御承知だろうと思います。要するに、景気のいいときは率はずっと下がっております。悪くなるとこれがずっとふえておるわけです。恐らく九年、十年というのはもう六五%を超えているのではないかと思いますが、統計はまだ出ておりません。
そこで、通産省が打つ景気対策やあるいは諸施策というのは、新しい企業をつくるのもいいけれども、既存の百六十万に及ぶような法人が赤字を出して苦しんでおる、ここにどう手を入れていくかというのが最大の課題だと思うんです。いろいろなことをやっておりますが、どうも通産省というのは、自分が局長とかあるいは長官とかやっておるときに、新しい法律をつくったりあるいは何かをすることが仕事のような、よくそういう感じを持つことがあるんですが、もっと基本になる、既存の企業がこんなに赤字の状況だからここをどうするかというような、そういう対策が非常に弱い。一番肝心かなめのところを抜きにしてよそに手を打っているような気がしてならないんですが、その辺はどういう基本的な理念に立っているか、聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/176
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177・鴇田勝彦
○政府委員(鴇田勝彦君) ただいま先生御指摘のように、昨臨時国会におきましては新事業創出促進法を制定させていただきまして、日本版SBIR制度だとか、あるいは新規に開業される個人事業者あるいは中小企業者向けの助成策を整備させていただいております。この流れにございますように、近年、新事業創出あるいは新規開業について中小企業対策の中でもいろいろと手当てを講じているのは御指摘のとおりでございます。
ただ、ただいま御指摘をいただきましたけれども、中小企業者は現在六百五十万事業所ございます。こういった既存の中小企業対策につきましては、中小企業庁が中心になりまして、各省も一緒になりながらいろいろな手だてを既に講じてきておるところでございます。
御指摘にもございましたが、例えば円滑な資金供給のために信用保証協会の特別保証制度を設けるとか、あるいは政府系関係金融機関を通じまして中小企業向けの資金供給の円滑化を図るとか、あるいは税の部分あるいは取引の適正化の部分等々いろいろな観点から既に実施をさせていただいております。
特に、今国会におきましては、既に御高承のとおり、中小企業経営革新支援法案というのを提出して御審議いただいているところでございますが、この眼目は、先生御指摘の既存の中小企業の方々に新しい経済環境の中で新たな経営課題に柔軟に円滑に対応していただこう、いろいろ創意工夫をしていただこうという観点から、制度設計に当たりましても、いろんな中小企業の方々が使いやすいような形で支援手段等も整備をさせていただいてきております。
こういったことで、私どもといたしましては、既存の中小企業対策、これが大宗を占めることになると思いますが、それにつきましても今後とも万全の体制で強力に推進をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/177
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178・梶原敬義
○梶原敬義君 確かに、去年の暮れに信用枠を拡大して無担保無保証で五千万、ああいうのは非常によかったです。ただ、私がさらに言いたいのは、例えば新事業創出促進法、少し資本金を持っておって新しい事業をやる場合には一千万貸しましょうと。これも大変役立つと思います。しかし、これは既存の中小企業がやる場合は枠外です。既存の企業が何かやっておる、しかしおれはこっちの仕事もやってみたいといって新たな仕事に着手した場合には、なかなかそれが使えない。そういう両方に効くようなものをこれからやっぱり早急に考えていく必要があるんではないか、このように思います。
雇用問題から見ますと、確かに失業率や失業者数というのは非常に高くなっておりますが、総理大臣以下それぞれ大臣がリストラというのをある程度肯定したような答弁がよくあるんです。大企業というのはそういうように合理化をやって人員を減らしていく。しかし、中小零細企業、これが恐らく雇用問題を解決していく力になると思うんです。だから、雇用との絡み等で新機軸が打ち出せないのかどうなのか、この辺について長官いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/178
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179・鴇田勝彦
○政府委員(鴇田勝彦君) 雇用の絡みでの中小企業対策の拡充という御指摘でございましたが、繰り返しになりますが、私ども現在提案をさせていただいております中小企業経営革新支援法案につきましても、既存の中小企業の方々、現在もう先生御高承のごとく、日本の全体の従業者数の七八%を中小事業所で雇用を持ち上げているわけですから、大変厳しい経済環境の中ですけれども、こういった既存の中小企業の方々にぜひとも頑張っていただいて、経営革新に努めていただいて、雇用の維持あるいはできればその拡大に努めていただきたいということで本法案を提案させていただいております。
また、新事業創出促進法の中に日本版SBIRという制度をつくらせていただきました。これにつきましては、アメリカ版SBIR制度を私どもとしても参考にさせていただいたんですが、アメリカの場合はSBIR制度を八二年から動かしまして、具体的にはたしか九二年から九六年までの五年間に中小企業者千二百万人の雇用増を創出しております。その間、私どもでは約二百万人程度の中小企業の雇用増でございましたから、こういった日本版SBIR制度、これは一例でございますけれども、これもぜひ活用させていただいて、雇用対策の面でも役に立てるようにしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/179
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180・梶原敬義
○梶原敬義君 長官、万全を期しているといったって、予算総額からいきますと、当初予算でいうと千三百十三億、それが十一年度は千三百十三億から千三百十六億、三億ふえているだけなんです。大体イージス艦一隻千二百億ぐらいするんです。そんな程度です。
私ども、かつて、通産大臣は通産大臣で、中小企業大臣を別につくろうじゃないかという運動をしたことがあるんです。そのときに、たしか田村通産大臣だったと思うんだけれども、通産大臣は、中小企業のための仕事をするから、まあ何とかそう言わぬでくれというような話があったんだが、やっぱり万全を期しているというのは私は言い過ぎじゃないかと思うんです。
私は、この休みに帰って銀行の貸し付けをやっている小さな支店の窓口の担当者の話を聞きました。一体どうなっているのかと、いろんな制度資金や何やら国も手当てしてやっているじゃないか、こういう話をしたんですが、本当に中小企業の人たちというのは六五%ぐらいが赤字を出しているんです。そうしたら、銀行側から見ますと、一つは赤字を出しておるようなところへは金を貸すな、金融監督庁がこういうことで厳しく指導する。一方では、金が欲しい中小企業が存在している。特に通産大臣、一体この矛盾をどうさばいていくかというのは非常に難しい課題だと思うんです。それが一つ。
それからもう一つは、そういう中小企業に対する貸し付けの担当者から見ると、赤字を出している皆さんは非常に現状維持というか、先が見えぬものですから、何かをやる気力がない、そういう閉塞状況だというんです。だから、今打っている手プラスアルファを中小企業のために打つようなやっぱりアイデアを皆さん真剣になって現場を察知して出すべきだ、このように思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/180
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181・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 実は、金融監督庁が検査マニュアルをつくりまして、我々も拝見いたしました。実際は、これはどうも世の中の実態と合っていないというふうに我々は率直に感じたわけでございます。と申しますのは、二期連続赤字でございますと格下げになって分類が変わってしまう、銀行とのつき合いもうまくいかなくなるということで、それ自体で中小企業はえらい経営上の打撃を受けるわけでございます。中小企業庁及び通産省では金融監督庁に対しまして、検査マニュアルに関してはきちんと意見を申し上げました。また、これからも申し上げるつもりでございます。
と申しますのは、言葉ではまあこの程度で大丈夫だというようなことをおっしゃる方もいますけれども、実際はマニュアルというのは一度つくりますとひとり歩きをしまして、現場ではマニュアルどおりの弾力性のないしゃくし定規の適用のされ方をされますと、実際これからよくなろうとしている中小企業等も、それだけで経営が行き詰まるということでございますから、我々としてはそういう中小企業の立場に立ってこれからも十分意見を金融監督庁に申し上げたい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/181
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182・梶原敬義
○梶原敬義君 肝心なところでありまして、大臣、それをぜひ反映させていただきたいと思います。
要するに、地方銀行ですよ。金融監督庁が来るために毎日毎日残業して、それは赤字企業にもつき合いはあります、六五%も赤字ですから。それを一々ほじくられて、そうすると地方銀行のそういう人間的なつながりのある、赤字企業でも何とか助けにゃいかぬということでやりたくてもやれないような実態があるんです。ここをやっぱりもう少し踏み込んでいただいて、今言われたようなことを中小企業庁長官や皆さんがその気になってこれは対応せぬと、だれが六五%の赤字のこの人たちの味方になるかということは、通産省がならなきゃなるところはないんです。中小企業庁長官も、今頑張っているのはよくわかりますが、ぜひさらに頑張っていただきたいと思います。
予算についても、千三百十三億が当初予算千三百十六億、三億円のプラス。これはイージス艦一隻の値段に毛の生えたようなものだ。これはいつもですが、皆さんはやっているやっていると言うが、毎年毎年努力をしてこれをふやすようにしていただきたいと思います。ここは私どもが予算を審議するに当たりまして大変ひっかかるところなんです。よろしくお願いします。
次に移りたいと思います。
もう一つ、エネルギーの問題なんですが、先ほどの加藤委員との関係で、いろいろなエネルギーの見方がありますが、私はちょっと違った観点からエネルギーを見ております。
最近、東南アジア各国を参議院の委員派遣で回りました。ベトナムからタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポールも行ってきました。そして、機会がありまして中国にここ最近二、三回行ってきまして、韓国にも先般行ってまいりました。私はいろんな課題を持って行ったんですが、私は私なりにやっぱりエネルギーの観点というものを見ながら、どういうようにエネルギーが、特に石油、ガソリン、こういうものが伸びていくのかなという観点で見ると、特に中国や東南アジアの最近の車の増加率は目覚ましい。ベトナムはまだ単車なんです。しかも、南ベトナムでしたか、信号機を一台が待つ間に三百から五百ぐらい単車がずっと集まっていくんです。これは恐らく車にかわるでしょう。
そういうことを見てみますと、石油資源は有限で、地下に埋もれている化石という何億年もかかってやっとできたものをこの調子で使ったらやがてなくなる。戦後の我々の消費によりましてもう既に三分の一ぐらいは可採埋蔵量を取り出した、こう言われておりますが、それは加速度的に恐らく進んでいく。世界エネルギー総需要の伸びをエネルギー経済研究所の数字で見てみますと、二〇〇五年までにヨーロッパは一一六%、アメリカは一五四%、アジアが二七三%上昇するだろうと。これは一昨年かに出した資料なんです。恐らくそうなるんじゃないでしょうか。そういうような状況でどんどん伸びておる。
それはCOP3もありますけれども、特に開発途上国というのは伸び率は非常に高い。そういう状況を考えてみますと、エネルギー問題というのは本当に真剣に考えないと、日本の生命線だと思うんです。かつては、狂乱インフレのときは時の通産大臣が夏に半袖シャツを着ていた、そういうのをテレビで見ました。省エネに物すごく力を入れておりました。
それから、その後は新エネに対しても一生懸命号令をかけておりましたが、どうも最近は、現通産大臣になってからというわけじゃないんだけれども、特に石油が最近ずっと余ったような状況が続いておりますから、どうもそこらで緩みが出たんじゃないかと思うんですが、エネルギーといったら原子力にぱっと行って、省エネに対する取り組みと、それから新エネに対する取り組みが、やっておるんですがどうも不十分だなという感じを持つんです。
最初に、その辺について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/182
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183・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 確かに二度にわたる石油ショックのときは、改めて日本のエネルギー供給構造の脆弱性ということを我々思い知ったわけでございます。経済成長をいたしますと、当然ある一定の弾性値のもとでエネルギー消費がふえてまいります。これは日本ばかりでなく、世界各国とも経済が大きくなればそれだけエネルギーの消費量がふえるということは現実であるわけでございます。ところが、ここ数年と申しますか、相当長い期間、日本ではエネルギー問題の深刻さということは余り議論をされなくなりました。それは、石油が非常に豊富に供給されている、あるいは原油の価格が下がっているということで、どうもいつまでもこういう状況が続くんではないかというふうにやや我々は考えがちになってしまうわけでございます。
しかし、先生御指摘のように、エネルギー消費というものは、アジアはもとより世界各国でこれからも飛躍的にふえていくわけでございますし、その中でやはり石油に依存する量というのは大変大きくなっていくと私どもは考えております。もちろん天然ガスもあり石油もありということでございますが、我々は省エネというものをさらに大切にしていかなければなりませんし、また天然ガス、石炭等、代替的な化石燃料の方にも重点を移してまいりました。それで、事実は原子力も電力の生産量の中では比重を非常に高くしておりまして、会社によっては実際の発電量の五割以上が原子力というところも幾つも出てきたわけでございます。そういう中で、日本のエネルギー供給構造はそんな強くはない、弱い、そういう前提でやはり政策を論じていかなければならないものというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/183
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184・梶原敬義
○梶原敬義君 大臣のその理解の度合いというのは満足できるものであります。ただ、それが具体的にどう手を打っていくかというのが問題でありまして、これからぜひ頑張っていただきたい。
私はちょっとした経験があるんです。昔、若いときに製紙会社におったんです。そのときに、最初、広葉樹は九州にいっぱいあるから、針葉樹から広葉樹に原料を切りかえたことがある。農林省の統計を見たら年々減っていくんです。ところが、資源はずっと減っておるにもかかわらず、値段を上げれば、あっという間に広葉樹の原木が土間がいっぱいになるぐらい集まるんです。それで、どういうことだろうかと、こう思ったんです。そして、値段を下げるとずっと減ってくるんです。もうからぬことはやらないわけです。しかし、やっぱり統計数字にありますように、ある日突然限界点に達したんです。もう資源がないというので、がたっときた。
これは石油も同じでして、人間は割合無知でありまして、本当に底が見えるまでは掘ると思うんですよ。底が見えだして慌てる。もうそのときは遅いんです。だから、それは幾らいったってエネルギーの大宗というのは石油が占めていますから、この石油資源は大事にやっぱり使わなきゃいけないし、そしていつまでもあるものではないという前提に立ってこれからエネルギー対策については手を打っていただきたい。それにかわるいろんな、石炭もあるしあるいは天然ガスもあるでしょう、こういうものにも手を打ち、やれることは全部やってもらいたいと思うんです。
いつも私の周りに私の党の国対委員長とかあるいは副会長とかおるんですが、私がこの話をしていますと、じゃ、おれもつけるわと言って太陽光発電を二人とももうつけたんです。言い出しもとの私はまだお金がないからちょっと今見積もりをとっておる段階ですが、太陽光発電をやっぱり私は私なりに、エネルギー、省エネあるいは環境問題もありますから自分でできることはやろうと、このように思っているんです。
時間がありませんから太陽光に少し入りますと、太陽光発電についても、去年に比べますと百四十七億円が百六十・四億円で十三・四億円ですか伸びております。まあいいことでありますが、補助率も少し上がっておりますが、言うならば、いつも言うんですが、学校とかあるいは病院とか公的な施設とか、そういうところにどんどん普及させると同時に、個人の家庭においてももう少しふやすような総合的な努力がなされないものだろうかとかねがね考えておりますので、エネ庁ですか、考えを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/184
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185・稲川泰弘
○政府委員(稲川泰弘君) 太陽光発電につきましては、先生から数字の御指摘がございましたが、今年度、昨年度と比べた予算増を図ってございます。
平成六年から八年までモニター制度をとっておりまして、この三年間で全国で約三千五百軒の家庭に太陽光発電が普及されております。平成九年度、十年度、それぞれ八千件強の申し込みがございました。この設置コストは当初キロワット二百万円程度、したがいまして三キロワットですと六百万円ぐらいでございました。平成十年度の実績ベースでは約九十万円、三キロワットにしますと二百七十万円ぐらいでございますが、十一年度はさらにこれが二百四十万円程度まで、キロワットベースにすると十万円ほど下がる。商業化のラインのコスト低下が行われてございます。
これに伴いまして、助成のサイドでは、一件当たり従来売電収入を三十五万円強と考えてございまして、キロワット当たりでございますが、設置コストからその三十五万円を引いたその差額の二分の一という助成をしておりまして、これをさらに十一年度では、効果としてキロワット当たり五万円強安くなる負担の軽減を図ろうと考えてございます。
また学校につきましては、平成四年度から公共施設に対する助成の一環として助成をしてきてございますが、平成九年度からは、文部省と協力をしましてエコスクールという認定を行いまして、これに対する支援を行ってございます。現在までに七十一校、キロワット数にしますと千九百キロワットが学校の屋根に乗っているという状況でございます。
今後ともこの助成強化を図っていきたい、かように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/185
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186・梶原敬義
○梶原敬義君 私もそれは聞いた話ですが、学校の子供が大変関心を持って、それで教育上も非常にいいということですから、ぜひさらに頑張っていただきたいと思います。そして、これは環境にもいいし教育上もいいし、景気対策にもなる。
ところが、聞きましたら、シリコンが足らぬから生産が追いつかないんでどうやこうやと担当者は言っておりましたが、もう少しコスト全体が安くなればこれはどんどん普及することになりますから、多量生産ができるような企業に対する指導もやってもらいたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
それと、予算額は確かにありますが、繰り越しみたいなものが、数量が予算消化できないで残っているものがあるのかどうなのか、その二点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/186
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187・稲川泰弘
○政府委員(稲川泰弘君) 一昨年から昨年にかけまして、いわゆる原料に使いますシリコン不足から生産の隘路があったことは事実でございますが、その後、材料についての研究を進めてございまして、この隘路は比較的少なくなってございます。
現在、各社が行っておりますライン、生産能力のほぼ全量をいろんな仕組みで補助対象にできる仕組みでございまして、今後、我々としてもそれからメーカーとしてもコスト低下の目標を立てながら、このコスト低下、それから商業ラインとしての生産、販売ができるよう考えておるところでございます。
それから、予算の執行状況でございますが、現在、景気情勢を反映いたしまして、若干の残りがございます。全体としては四分の三程度が執行いたしてございますが、残り四分の一について未執行の部分がございます。このため、今回補助率についても若干考え方を整理したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/187
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188・梶原敬義
○梶原敬義君 その他のエネルギーについてあるいは核融合について質問する予定でしたが、またの機会にさせていただきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/188
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189・加納時男
○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。
けさ大臣からお話のございました予算説明、これに沿いまして二つほど御質問させていただきたいと思います。一つは新事業創出に関する問題、もう一つはエネルギーであります。
今、同僚の梶原敬義議員からも新事業創出に関連する質問がございましたが、少し深めて質問させていただきます。
産業の再生そして経済の活性化、これが急務であるということが大臣のお話の中にございました。この根本には、私は、アントルプルヌールといいますか、起業ですね、アントルプルヌールの精神が殊のほか大事であり、先ほど鴇田長官もちょっと触れられましたけれども、一九八二年にアメリカのSBIRが生まれて、この八〇年代から九〇年代にかけてアメリカにおいてベンチャービジネスが非常に大きく成長した。先ほど鴇田長官は千二百万人の雇用増加、私の持っている数字と一致するわけでありますが、非常に大きな成果がアメリカで上がっているわけであります。
さすればこそ、我が国の経済戦略会議、これは経済企画庁長官の肝いりだったと思いますけれども、この答申でもベンチャービジネス等の起業支援、これが産業再生の枠組みという中で提言されているのかと思っております。かかる観点からしますと、私どもこの経済・産業委員会で昨年百四十四臨時国会で成立に向かって皆さんで議論をしました新事業創出促進法というものが成立を見たことは、非常に意義のあることだと思っております。
そこで第一の質問でありますが、この中小企業技術革新制度というのがその一環としてこの二月にスタートしていると聞いておりますけれども、まだスタートして日は浅いとはいえ、早くもその反応だとか応募状況とか動きがあるのではないかと思います。わかっている範囲で答えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/189
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190・鴇田勝彦
○政府委員(鴇田勝彦君) 日本版SBIR制度、中小企業技術革新制度についての応募状況、反応についての御質問だと思います。
昨臨時国会で成立を見ました新事業創出促進法につきましては、去る二月十六日に本格施行を迎えました。SBIRにつきましても本格的な運用を開始したところでございます。
平成十年度につきましては、年度半ばでの制度創設でございますので、具体的に法律の中で定めてございます特定補助金等につきましては、十年度の三次補正予算に盛り込まれました通産省、科技庁、郵政省の十二の研究開発事業を指定させていただきました。これは補正予算でございますので年度内執行ということでございますが、短期間の準備期間にもかかわらず、事業によっては現在十倍を超える競争率の応募が出されておりまして、各事業とも多数の応募をいただいてございます。
なお、これは新聞報道でございますが、中小企業へのアンケート調査結果も私どもにございまして、本制度につきまして約四百社の中小企業に対するアンケート調査の結果では、三分の二以上の方が大変深い関心を示されておられまして、特に通産省でやっております各種のベンチャー企業支援策、いろいろ税とか金融とかございますが、その中でも最も関心が高いという結果、これは一例でございますけれども、出ております。
今後とも関係省庁とも連携をいたしまして、本制度の一層の充実、円滑な運用に努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/190
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191・加納時男
○加納時男君 ありがとうございました。
先ほど鴇田長官もおっしゃった、今もちょっと言われたんですが、アメリカのSBIR、それを参考にしたということですけれども、どういう点を参考にし、どういう点を参考にしなかったのか。
私はちょうど八二年というのはたまたまアメリカにいたものですからSBIRに非常に関心を持っているわけでありますが、私の理解している範囲では、SBIRというのは非常におもしろくできていて、ステップ制なんです。最初の段階はフィージビリティースタディーの段階でまず支援をしましょう。そのときにはたしか十万ドルぐらいをアッパーリミットにしていると思うんです。それがうまくいくと、今度は第二段階は、何というんですか、試作品をつくる。そのときは七十五万ドルを上限に援助しましょう。それで、第三ステップまでありまして、第三ステップはいよいよ商業化です。そうすると、アメリカお得意のベンチャーキャピタルが出てくると、こういうので非常にうまくつながっていると思うんです。
こういうふうなところは日本の場合に取り入れるのかどうかというのが一つの質問です。これから検討するんでもいいんですけれども、お考えを聞きたい。
もう一つ伺いたいのは、アメリカの場合に非常におもしろかったのは、いろんな省庁、たしか十一ぐらいあったと思うんですけれども、外部に出すRアンドD、研究開発予算が一億ドルを超えているところは、そのうちの一定比率はこのSBIR、SBIRというのは要するにスモール・ビジネス・イノベーション・リサーチです、その基金に出しなさいというようなことで予算枠をつくったと思うんですけれども、そういう一定の比率、たしかスタートは一・二五%で、最近は二・五%に率が上がっていると思うんですけれども、そんなような決めつけ方がある。日本のはちょっと違うやり方だと思うんです。
私の質問をまとめると、アメリカのSBIRを参考になさった、私非常にいいことだと思うんです。いいものはどんどん取り入れたらいいと思うけれども、どこを取り入れてどこを取り入れなかったのか。取り入れなかったのはこれこれだからという理由があるのか。なおこれはしばらくスタートして様子を見るのか。そんなことで御説明をいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/191
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192・鴇田勝彦
○政府委員(鴇田勝彦君) 委員御指摘のように、アメリカのSBIR制度につきましてはスリーステップで助成をする制度になってございます。私どもがこの制度を非常に評価いたしましたのは、ベンチャー企業が技術開発をいたしますけれども、まだ試作品もできないような段階ではなかなか民間から、特にベンチャーキャピタルからお金を導入するのは難しいわけでありますが、アメリカの八二年にできました制度にのっとりますと、政府関係機関、今委員が申された一億ドル以上の外部研究委託費を持った機関、十機関程度あると思います。こういったところの予算につきまして、当初は〇・二%から始めて現在二・五%まで徐々に拡大をしてきております。当初はわずか六十億だったんですが、現在は昨年で千四百億円ぐらいの規模になってきております。円ベースに換算をいたしまして当初六十億円、昨年で千四百億円と聞いております。
したがって、幾つかポイントがあるわけですが、ベンチャービジネスにとりまして、新規の技術開発をする場合になかなか外部資源が取り入れにくいときにお金を提供しているというのが一点。それから、十機関ございますが、各省のいわゆる研究開発課題ということで方向性が示されまして、今後こういった分野で需要がある、あるいは開発ニーズがあるという点を中小企業に示してもらえるというのが二点目だと思います。それから、スリーステップと申し上げましたけれども、FS段階の助成と技術開発の段階の助成、そこまでが制度の中身でございまして、ここまでやりますとある程度箔がつくというんでしょうか、外部の民間資金も取り入れやすくなるものですから、スリーステップ目の商業化もしやすくなるというようなことだと思います。
結論的に、私どもの制度とアメリカの制度との違いでございますが、第一には、〇・二%から始まって二・五%までというシェアで金額を上げていく米国の手法に対しまして、私どもの方は、法案のときも御審議いただきましたが、特定補助金という中小企業者も使えるような外部研究委託費について毎年度具体的に金額を積み上げまして、今年度この程度まで中小企業に流れるように努力をしましょうという実額ベースで組み立ててございます。これは率でやるのがよいのか実額でやるのがいいのか。我々の判断では、既にもう各省のこういった補助金等は整備されておりますので、その中で、途中から始めるという観点からすると、具体的に中小企業者向けの額を定め、毎年これは公表もさせていただきますし、実績も公表いたしますので、そこで徐々に金額を上げていくという手法が一つのやり方ではないかと思います。
今申し上げたのが一番大きいと思いますが、他に相違点を申し上げますと、アメリカの場合は一億ドル以上の外部研究委託費を持った機関が自動的にこのSBIRの対象になってきておりますが、特殊法人等は入っておりません。私どもあえてこの点については、基本方針の中に定めましたが、数字でどうこうということよりも中小企業者が利用できる外部研究委託費であって公募制をとっているものについては幅広く対象にしよう、特殊法人も含めようという二点で米国版と違ってくると思います。
さらに、三つ目でございますが、米国の場合は事業化段階での支援というのはSBIR制度の中に特に設けられておりませんが、私どもの場合は、信用保険の特例とか投資育成会社の投資の特例とか各般の事業化についての支援策も法律上盛り込んでございます。
以上、簡単でありますが、違いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/192
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193・加納時男
○加納時男君 ありがとうございました。
今のお話に関連してなんですけれども、実績は公表するということでございました。それからまた競争率が、日本の場合、スタートしたばかりだけれども、十倍ですか、大変たくさん申し込みがあったということなんです。
ちょっとそこで関連して伺いたいと思うんですけれども、不採択になった場合、だめになった理由を教えてあげるということは次なる挑戦への大きな情報になるというような気がします。そういう意味で、不採択の理由というのは教えるんでしょうか、教えないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/193
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194・鴇田勝彦
○政府委員(鴇田勝彦君) 先日、十二の特定補助金等というものの指定をいたしました。この中身は、通産省のものもあれば科技庁あるいは郵政省のものもございます。これらについてはそれぞれ既に制度が歴史を持っているものもございますが、結論だけで申し上げますと、一応応募者御本人から不採択理由について問い合わせがあった場合には、技術的にこういった問題があるとかあるいはニーズにおいてこういった問題があると、そういった審査結果について御説明することになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/194
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195・加納時男
○加納時男君 結構だと思います。私は、政府が研究開発のニーズを提示して、その結果、いろんなイノベーションをやりたい人たちにとって方向感がつかめるというのはいい制度だと思いますし、通産が音頭をとってほかの省庁のニーズも取りまとめて提示する、いわば窓口を一本化するというのは、日本らしくてなかなかいい制度ではないかと私は思っています。
注文としては、今お答えがありまして、聞かれたならば教えるよというんですけれども、原則として、不採択になった場合にはこういう理由で採用できなかったということをはっきり説明する、そういう説明をしていただく方が親切ではないかということだけ私は注文しておきたいと思っています。
次に、もう一つ質問したいと思うことはエネルギー関係であります。きょうはプルサーマルを取り上げてみようかと思っております。
御存じのとおり、ウラン、プルトニウム、混合酸化物燃料、MOX燃料と言っておりますけれども、これを普通の原子炉、軽水炉で利用するということが今日的な課題となってきております。欧米では極めて常識化しておりまして、ドイツであろうとフランスだろうとスイスだろうとベルギーだろうともう千六百体も実績があるし極めて常識的なんですが、日本では初めてやるとかあるいは新しい試みというふうな報道もありまして社会的にも関心を呼んでいると思うんです。
大臣に伺いたいと思うんですが、今なぜプルサーマルなのか、この辺はどういうふうに大臣としてはお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/195
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196・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) MOXと言われる燃料の利用というのは、日本にとりまして大変重要な課題であるわけでございます。現に、ウラン燃料で動いております現在の軽水炉も、実際は運転をしておりますと自然にプルトニウムが発生してそれが炉内でいわば燃料として同時に消費されているという状況は今でもあるわけでございます。
しかし、使用済み燃料を再処理いたしますとプルトニウムが出てまいります。これは核分裂物質でございますから燃料として当然利用できるものでございまして、こうして日本の国内でウラン燃料を燃やすとできてくる燃料なのでこれを純国産燃料だというふうに呼んでいた方も過去一時期はございます。
したがいまして、このいわゆるミックスドオキサイドという酸化ウラン、酸化プルトニウムをまぜてつくり出します燃料も、いろいろな研究によって安全性その他が既に実証されているというふうに専門家から私は伺っております。しかし、新しいことをするわけですから、多くの方に御理解をいただかなければならないこともまた事実だろうと思います。しかし、エネルギー資源のない我が国にとりまして、日本が持っております、また将来持つこととなるプルトニウムを有効に軽水炉にリサイクルしていくということは、日本のエネルギー問題にとりましても大変重要な課題であるというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/196
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197・加納時男
○加納時男君 ありがとうございました。大臣から力強い確信を披露していただいたかと思います。
原子力の取り柄というのは、私は技術エネルギーだと思っております。技術エネルギーというのは、ただ火をつけて燃せばいいというようなものじゃなくて、技術の力でこれを有用なものに変えていくという意味で化石燃料とは根本的に技術パラダイムの違うものだろうと。その強みというのはリサイクルできるところにあると思っております。
今、大臣のお話にありましたように、貴重な燃料を使い捨てにすることなく、先ほど梶原敬義議員からもエネルギーは大切に使わなきゃいけないというのがありました。まさにウラン燃料も大切に使うべきだと。ならば、一回使っただけの燃料でまだその中には使える燃料があるならば、リサイクルして使えるウランとかプルトニウムを取り出してこれを資源として利用していくということが原子力の使い勝手、一番の強みだと私は思っておりますし、このことは同時に、ほっておけば廃棄物に含まれてしまうプルトニウムを資源として取り出すことによって高レベル廃棄物を減量化しそして適切化する、処分しやすくするという、環境対策でも資源対策でも当然このリサイクルは本命だと思っております。
環境問題を考えても、確かに私は太陽光発電が大好きだし、若いころから夢中でやってまいりましたけれども、申しわけないけれども力から見れば横綱と、横綱もよく負けますけれども、横綱と本当に小学生の相撲取りぐらいの力の差は歴然と原子力との間にあることは当たり前のことでございますので、好きだ嫌いだということは別にしまして、これをしっかりとリサイクルをやっていく、その一歩としてプルサーマルはぜひ確信を持って推進をしていただきたいと思うわけでございます。
一つだけ質問させていただいて終わりますけれども、これを進めていく場合に、私はやはり地域の方々のいろんな声を大切にしていただきたい。例えばプルサーマルをやるからどうということじゃなくて、原子力が立地している新潟、福島、福井、地域のいろんな方々、知事あるいは地元の方々とたくさん対話集会をやってお話を伺ってまいりました。生産地の方々は、もっと消費地の方、消費地の知事なんかが来て直接皆さんと対話をしてほしいということ、そして地域では一番欲しいのは雇用であり、産業であり、所得の向上であり、教育であり、インフラであると。まさに、前回の委員会でも申し上げましたように、通産省、科技庁は一生懸命やっているけれども、ほかの省庁も含めたオールジャパンとして、日本政府としてしっかりとこの地域の共生に力を挙げてほしいということでございます。加えて、電源三法交付金についてもその使い勝手のよさをもっと考えてほしいというようなさまざまな要求がありました。
プルサーマルをやるから何かをしろというような目先のことじゃなくて、原子力を一生懸命やっている立地と人々のこの声に対して、大臣から一言お言葉をいただき、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/197
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198・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) やむを得ないことでございましたが、過去の原子力の立地は特定の県にお願いをして立地をしているわけでございます。したがいまして、電源特会等では地域振興に特に力を入れてまいりましたが、先生言われますように、やはり地域社会の声をよく聞いて、雇用の場を含めまして地域振興ということに大いに力を入れるということは、国にとっても地方自治体にとっても大変私は大事なことだろうと思っております。そういう意味では、今後とも十分地域の声を聞きながらエネルギー政策を進めてまいりたい、そのように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/198
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199・加納時男
○加納時男君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/199
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200・末広まきこ
○末広まきこ君 自由民主党の末広まきこでございます。
一九七〇年、大阪の万博は竹やぶをブルドーザーで削って行いました。この万博に関しては経済企画庁長官が大変お詳しいところであると存じ上げますが、実は二〇〇五年の愛知県の万博もこれと同じ考え方、同じ手法で天然の雑木林を造成して産業博が行われる予定でした。この地元案には私は反対しました。なぜならば、海上の森の豊かな自然の営みを見落としているからでございます。絶滅危急種十四種類を含めました自然の生態系、これを残念ながら見落としていました。
さて、お聞きいたしますが、この当初の地元の構想と比べて、国で最終的におまとめになった構想では基本理念が変わっておりますね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/200
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201・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 平成六年に地元において取りまとめられました博覧会の基本構想では、博覧会を、二十一世紀の新しい技術と文化を開き、人と知恵を地球規模で交流させるグローバルメディアとして位置づけることによって、新たな地球社会の創造を目指すということとされたと承知しておりますが、この構想を前提にさらに検討を加えまして、自然の叡知、すなわち人と自然の新たな関係を追求する現在の基本理念が導き出されたと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/201
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202・末広まきこ
○末広まきこ君 今お認めになられましたように、技術と文化の交流という当時の地元の産業博構想から大きく軸足を移して、環境博に切りかえられたのでございます。
それで、本年度の予算を拝見いたしますと、平成十一年度における愛知万博予算については、環境影響評価に対する支援として一億八千万円、日本国際博覧会基本計画策定の支援として四億二千三百万円が計上されております。間違いございませんですね。
ところで、この会場基本計画についても当初の会場計画と変わっておりますね、どうですか。どのように変えましたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/202
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203・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 政府といたしましては、愛知県から提出されました会場構想につきまして、環境に十分配慮するという観点に立ちまして、所要の修正を行った上で、平成七年十二月に閣議了解を行いました。
具体的には、希少種がまとまって生息、生育する環境の保全を図るということで、屋戸川、寺山川などの水系の保全を図るという基本的な考え方のもとに、主要施設を整備する区域を約二百五十ヘクタールから約百五十ヘクタールに大幅に縮小しまして、あわせて、かねてから道路の建設が予定されておりましたが、この道路位置の大幅なルート変更を行うというような見直しを行ったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/203
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204・末広まきこ
○末広まきこ君 万博の基本理念を自然との共生、開発を超えてという、ビヨンドディベロプメント、すばらしいテーマにお変えになりました。それに伴い、会場基本計画では自然保護を第一となさった。
このことを踏まえた上でお伺いいたします。その結果、我が国から提案された新しい博覧会の国際的な評価はBIEにおいてどのようになったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/204
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205・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) ただいま御説明を申し上げましたこの博覧会の基本理念、あるいは環境に配慮した会場計画とするというこの新しい博覧会の提案がBIEにおきましても高く評価をされまして、国際的な競争の中で我が国の開催ということに決まったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/205
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206・末広まきこ
○末広まきこ君 今、道路の位置も自然環境に配慮してずらしたというふうにお触れになりましたのですが、私が思いますには、会場基本計画の中で一番難しいと思われますのが道路建設ではないのかなと思います。東西に流れている数本の細い川、そして地下水系、これに沿って貴重な植生、自然の生態系の分布が見られているからでございます。こういった場合は、こういう地下水系に並行する形で道路をつけるのが通常だと思うんですが、本計画案では九十度に横断する形で南北に道路が二本通っていくと、これは大変難しい技術ではないのかなと心配いたしておりますが、これをどう回避し解決していかれるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/206
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207・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 現在、アセスメントの準備書が作成されまして、このアセスメントにつきましては、実は法案の審議の段階にも御説明したことでございますけれども、博覧会のアセスメントだけではなくて、これとの関連で道路の建設あるいは新住事業と言われているような三つのプロジェクト全体として、新住事業あるいは道路建設事業は主として地元の県あるいは建設省の事業として行われる事業でございますけれども、全体としてアセスメントの結果がお示しできるようにということで、現在皆様方の縦覧に供しかつ御意見をいただくプロセスを経ているところでございますが、これの中で地下水の動きに若干の影響があり得るということが示されております。
これに対しまして、今主として道路についてお触れでございますので、そして建設省の関係あるいは県の関係の事業ということにはなりますけれども、今後県とも連携をして、こうしたみずからの調査の結果として若干の影響があるという結果が道路の関係についても出ておりますので、追跡調査をする等々によりましてしかるべき対応がされるものと、このように理解いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/207
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208・末広まきこ
○末広まきこ君 今アセスの途中だと思いますけれども、これは石井環境庁長官、そして大木環境庁長官も、歴代の長官がアセスを前倒しして、国が責任を持って万全なアセスを行うと二度にわたってお約束くださっているんですが、現段階でのアセスでどのような点が環境に影響を与えるというふうな評価をされているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/208
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209・岩田満泰
○政府委員(岩田満泰君) 今お触れになりました地下水系の関係もそうでございますが、一部の植物あるいは動物の関係につきましても、程度の差はございますけれども、特にいわゆる新住事業あるいは道路建設事業との関係においてそういうものがあり得るということが出されております。
なお、御存じのとおりでございますが、新住事業が行われる場所を暫定的に博覧会として使わせていただくというのがこの博覧会の事業の時期的な位置づけでございますので、新住事業としてはもっと違った事業も、もちろん博覧会の必要な範囲を超えたような、あるいはもう少し幅の広い事業が行われることになるんだと思います。
いずれにいたしましても、博覧会の関係であるかどうかは別にいたしまして、新住あるいは道路建設等の関係で植物や動物についての、程度の問題はさまざまでございますけれども、影響があり得るということをこれまでの調査の結果、準備書は明らかにしている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/209
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210・末広まきこ
○末広まきこ君 自然と共生する万博ということで大変国際的な評価もいただいて決定されたわけでございます。平成七年十二月の閣議決定におきまして、基本理念を産業博から環境博へ変えたということは根本的な変更であり、それに伴って会場計画も変わったというのは至極当然のことであり、評価したいと思います。
振り返ってみますと、今から四年ほど前、私もそうですが、地元の皆様も愛してやまない海上の森をつぶし、そこで産業博をやるということに対しまして、私は共生という観点から自然とも共生すべきだと考えました。
素人に何ができるかという嘲笑の中、参議院選に立候補いたしまして、そして当選させていただきました。以来、この問題には微力ではございますが情熱を込めて取り組んでまいりましたし、また関係各位の皆様の御努力の結果、今日このような自然との共生という方向になりました。
この自然との共生という理念に沿った二〇〇五年愛知万博を成功させることが、このことにかかわってきた私たちに託された使命ではないのかなと認識しております。そのためには、車の両輪と申しますか、環境影響評価をしっかりと行ってほしいとお願いしておきたいと思います。
二十一世紀は自然との共生という道を地球規模で探らなければならない、そしてそのことを世界に向けて発信することがこの万博を行う意義につながるというふうに考えますが、与謝野大臣の御見解はいかがでございましょうか。新しい時代を開く万博開催に向けた御決意をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/210
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211・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 私としては、例えばだれもが森を体感できる機会の提供、二酸化炭素の排出を極力抑えるエネルギーシステム、ゼロ・エミッションといったアイデアの検討を通じまして、環境に十分配慮した新しい時代を開く博覧会が実現されることを期待しており、本博覧会の担当大臣として支援してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/211
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212・末広まきこ
○末広まきこ君 質問通告はしておりませんでしたけれども、今、堺屋経済企画庁長官と目が合ってしまいましたので、ひとつ万博の権威としまして、二十一世紀、二〇〇五年に行われる万博の経済効果と、それから二十一世紀的役割について御所見をお述べいただけたら。突然で恐縮でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/212
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213・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 一九七〇年の万国博覧会を開催するときにも、今、末広委員のおっしゃるのと全く同じ議論がございました。一切竹やぶを切っちゃいけない。それで、進歩と調和という、特にこの調和という言葉を世界で初めてつくりました。その結果、三百三十ヘクタールの敷地の中で百ヘクタールだけを会場施設に充てるというようなこともやりました。その結果、現在、あの地域に日本庭園等非常に自然に親しむ二次自然ができまして、年間に数百万の人が来られるようになりました。竹やぶだったときには恐らく数万人来なかったろうと思うんですが、大変大勢の人が来られるようになりました。
もう一つ、私は、二十一世紀の万国博覧会として、先ほど通産大臣がおっしゃいましたゼロ・エミッション、それから電子マネー、そしてネットワーク、この三つが完全に実現できるようなものが舞台裏として必要だと思います。ただ、博覧会といたしましてこれが人類の文明に意義あるためには、やはり大勢の人に見てもらう、そして世界に情報発信がされる、これも重要なことでございます。
したがいまして、私は、万国博覧会の入場者が大変多くて、世界じゅうからたくさんの人が来て、そしてそこから新しい文明が出てくるということが必要だと思います。環境保護はもちろん大事であります。万国博覧会も海洋博覧会も、その点では恐らく世界に冠たる行事であったと思いますし、今も自然に親しまれるところとなっておりますが、それは博覧会として絶対に不可欠な楽屋裏なんです。これを乱してはいけないんですが、やはり人々に本当に楽しんでもらう、そして新しい文明を、文化をつくるような表舞台も必要です。これをいかにゼロ・エミッションの中でつくっていくか、これが二十一世紀の私たち日本人にかけられた必要条件ではないかという気がいたします。
博覧会を始めるときには、だれしも、うっそうたる森林の中に自分と恋人が歩いているような情景を想定いたしますけれども、実際に会場をつくってみますと、一本の木の下に数百人がいる状態になります。また、そうならなければ文明の発信になりません。人間の力に負けないそういった自然をどうやってつくっていくか、これは、人類がどんどんと増加していく中で、新しい文化、新しい地球をつくる大変壮大な実験だと私は期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/213
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214・末広まきこ
○末広まきこ君 時間がなくなりましたが、今後とも愛知万博、その理念にたがわないような適正なアセスメントを行っていきながら、万博の行く末をどうぞよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/214
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215・水野誠一
○水野誠一君 私は、財政健全化と景気対策について堺屋長官のお考えを伺いたいと思います。
今さら論ずるまでもなく、財政健全化が先なのか、あるいは景気対策が先なのかという議論、これはいろいろな立場からさまざまな議論がされております。今、政府の展開しております考え方というのは、景気対策が最重要課題であるという考え方であります。しかし、一方で財政健全化の道筋がどうも見えにくくなってしまったということが、言ってみれば日本の国債の格付の低下というようなところ、つまり国際経済社会の中において日本買いというものが弱くなってくるということにもつながるということで、私は、これからの議論というのは、財政健全化なのか景気対策なのかという二者択一的なトレードオフの関係ではない、それをどう両立させていくかという知恵の議論、これが必要になっていく時代ではないかと思うわけでございます。
しかし、堺屋長官も今まで内閣の一員として、何よりも急ぐべきは不況からの脱出である、そして景気対策優先の立場を明らかにしてこられたわけでありますし、大規模な景気対策で一時的に財政赤字が拡大したとしても、景気が回復軌道に乗ればいろいろ複合的な手段を講ずることができる、こうも御発言されています。そのまま将来の負担につながるべきではないという御意見であるわけですが、そのいろいろ複合的な手段とおっしゃっているところ、この具体的な方策、どんなことを頭に描かれておられるか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/215
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216・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 景気が悪化して経済が下降いたしますと、当然税収も減ります。したがって、スパイラル型に景気が悪くなり、税収が減り、日本経済全体が縮小していくということになりますので、今はまず景気対策が第一だと考えるわけでございます。
それで、これが立ち直ったときにどのような手段があるかということでございますが、まず第一にはアメリカの例を参考にしたいと思います。
アメリカは、今から十年前、三千億ドルの赤字がございました。それが今八百億ドルの黒字に変わっております。そのうちで大体増税によるもの、これは一時レーガンが大減税をやりまして少し戻したのでございますが、これが約二割ぐらいでございます。それから、景気がよくなったことによって自然増収になった。それから、景気がよくなると失業保険等、当然減というのも出てまいりますが、これが約三割でございます。そして、あとの五割が歳出削減、これは冷戦構造が終わったことを中心といたします軍事費の削減でございますけれども、その削減ができたのもそれぞれの軍事工場のある地域の景気がよくなったこととも関係がございます。
この状況を日本で考えますと、まず第一の問題は、景気がよくなってきたとき、例えば実質成長率が二・〇%になった。そして、名目成長率が三・五%ぐらい、つまりデフレーターは一・五ぐらいあります。そのときに、名目成長率よりも長期金利が低いかどうかが非常に重要です。長期金利がそれよりも低ければ、国債の負担率が減りますから、急激に良好になります。一般には一・五%ぐらい長期金利の方が成長率より高いという前提で計算いたしますが、これまでの例を見ると必ずしもそうとは限りません。そういう意味で、低金利政策との組み合わせということも一つ重要なポイントではないかと思います。
第二番目には、日本の現状でございますと、三・五%ぐらい成長いたしますとかなり税収が伸びるんじゃないか。かなり税の高い分野の所得に入る人、今、日本は外国と違いまして、下の方の、所得の低い人の課税最低限が高いものですから、全体の所得が上がってくると納税者がふえてまいりますから、弾性値が一・二ぐらいになるんじゃないか。そこへ景気がよくなれば、今景気対策でやっている事業を大胆に切り捨てていく。
この二つを行うとともに、やはり国の行っております事業あるいは財産なんかを大胆に民営化する。これはアメリカもイギリスもやりましたけれども、民営化することによってそれを活性化し、財政収入に充てていく。そういったことを景気がよくなってきたときに大胆に行う、これが大事なことだと思います。
そういう種々の、金利の問題あるいは弾性値の問題、それから国有財産の売却もしくは国営事業の民営化の問題、そういったことも組み合わせて歳出削減を行っていけば、これは日本の将来、孫子の代まで患うようなことではないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/216
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217・水野誠一
○水野誠一君 大変よくわかりますが、ともかく今のお話にもありますように、財政構造をどう改革していくか、あるいは行政改革に求められているような思い切った行政改革をどうやっていくかというような、日本のビジョンが明確に示されていくということがちょっとここのところへ来てうやむやになってきている、立ち消えそうになってきているということが、国際社会から見たときに、日本は本気で構造改革をやっていくつもりがあるのか、その上での今の景気対策なのかということが私はやはり求められているような気がいたします。
今、長官がおっしゃったようなことも含めて、ぜひしっかりとした道筋を示していくということをお願いしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/217
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218・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 一月十八日に、小渕総理大臣から経済審議会に対して、十年後ぐらいをめどにした日本のあるべき姿という諮問が下されました。
その線に沿いまして、これからの日本が規格大量生産の工業社会から次にどのような社会をつくっていくのか、こういったことを全般的に出す、その中で財政の中長期展望についても触れていきたいと考えております。いずれそういうところも明確にさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/218
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219・水野誠一
○水野誠一君 大いに期待をしております。
次に、こういった経済企画庁の日々のお仕事にも関係するところでありますが、フローからストックへという言葉、これが盛んに言われるわけであります。もっとも、宮澤大蔵大臣がもう十年以上も前に、生産・輸出優先から生活・内需優先の生活大国を目指すということでフローからストックへというフレーズを用いられたわけであります。また、過去に政府の経済審議会でも、フロー中心からフロー・アンド・ストックへの視野の拡大が必要だと指摘されました。また最近では、特に住関連行政や企業の過剰設備問題、あるいは金融ビッグバンをめぐる議論においてもストックの活用ということが盛んに言われるわけでございます。
ストックの重要性というのはもう釈迦に説法でございます。もう何も申し上げませんが、特にストック、フローという非常に密接な関係、これを統計数値の中でどう読み込んでいくかということ、これが私は今この時代の経済を読み解く上で非常に重要ではないかと思うわけであります。
我が国におけるフローやストックをとらえるマクロ経済統計にはさまざまなものがあるわけでありますが、例えば鉱工業生産指数や通関輸出入額などがどちらかといえばフローの経済統計であるというのに対しまして、マネーサプライあるいは外貨準備高、こういったものはストックの経済統計でございます。しかし、こうした経済統計の多くは、経済活動の一面だけを対象としたものであるために、一つの統計によって国全体の姿を俯瞰するということはなかなか難しい、これは申し上げるまでもないことであります。
しかし、これらに対して、一国経済のあらゆる側面をカバーし、その全体像を包括的に記録する統計として、企画庁が毎年十二月に発表されております国民経済計算というのがあると承知しております。財あるいはサービスがいかに生産されたか、あるいはいかに供給、需要、蓄積されたかといういわゆる物の側面と、それから現金や有価証券などがいかに生成され、取り引きされ、保有されたかという金の側面、この両面をさらにフローとストックの両面から包括的に記録された唯一の政府統計ではないかと思っております。
しかし、なかなかこれは難しい統計でございます。さまざまな経済分析や経済予測のもととなる重要な統計であるわけでありますが、この国民経済計算というものについて、その目的あるいは性質などを含めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/219
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220・貞広彰
○説明員(貞広彰君) お答え申し上げます。
国民経済計算と申しますのは、これは英語で恐縮ですけれども、システム・オブ・ナショナル・アカウントと申しまして、先生が今おっしゃいましたように、国の勘定の体系ということでございます。一国経済の循環構造を総体的に把握するために一定の概念とか一定の定義に基づきまして体系的に整備された概念ということで、その基準は国際連合によって作成されております。
今、先生から御指摘のありましたように、この国民経済計算というのは、経済活動を物と金、あるいはフローとストックと、こういう各側面からデータとして記録するものでございます。
具体的には、物の側面で申し上げますと、財とかサービスの生産あるいは所得の分配、あるいは消費とか投資という支出、それからいろんな資産の蓄積、こういうものを記録する。また、金の側面で申し上げますと、実物取引のファイナンスとかあるいは現金とか、私どもが持っている預金とか有価証券、これの取引、保有を記録しているものでございます。
また、物と金の各側面について、フロー、流れとストックの両方を記録する、こういうことになっておりまして、フローの側面で申し上げますと、ある一定期間内、例えば一年間あるいは一四半期という一定期間内に行われた生産の量とか取引の量を示す。それからストックの側面では、ある一定時点、例えば一九九八年の末とか九七年の末という一定時点における実物資産とか金融資産、それから負債残高を示しております。
このSNA勘定、国民経済計算の勘定は、今申し上げましたように国際連合によって作成しているものでございまして、その歴史を若干さかのぼりますと、最初は一九五三年、昭和二十八年に国連からこの勘定体系の考え方が示されました。これを受けて、我が国でもこの体系をずっと採用してきております。その後、一九六八年、昭和四十三年にこれまでの基準を大幅に改定した新しい国際基準、すなわち新SNAというふうに呼んでいますけれども、この新SNAの新しい考え方が発表されまして、我が国を含む各国にもその採用を勧告したということでございます。これを受けて私どもも、十年おくれの一九七八年、昭和五十三年八月にこの新SNA体系に移行し現在に至っている、こういう経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/220
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221・水野誠一
○水野誠一君 今のお答えですと、一九六八年に新SNA体系ができて、それに十年おくれで対応されたと。それ以降というのは新しい国連基準というのは出ていないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/221
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222・貞広彰
○説明員(貞広彰君) 実はそれ以降、国際連合の方で、今申し上げました六八年の体系、六八体系と我々呼んでいますけれども、一九九三年に九三体系というものの考え方が出されまして、各国にその体系を採用するようにということで勧告を受けております。
私ども経済企画庁におきましても、この勧告を受けて鋭意この二年間その検討方を行っておりまして、現在この九三体系に基づいて新しい国民経済計算体系の改定作業に取り組んでいるところでございまして、今の予定ですと二〇〇〇年の秋ごろに新しい体系、九三体系に移行すると、この準備を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/222
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223・水野誠一
○水野誠一君 いろいろ私も周りで聞いてまいりますと、この国民経済計算自体がなかなか今の経済実態に反応し切れていない、こういう批判もあるようでございます。それは一つに、今お話にあったような新しい国連基準というものに対応していくのがどうもおくれがちである、後手後手になっていく、そういうところにもよる批判かなという気もするわけであります。こういった非常にスピードの速い国際社会でございます。九三年に出た基準を二〇〇〇年に導入するというようなこと、これはいろいろ御事情はあると思いますが、やっぱり早くその対応ができるような体制をぜひおつくりいただきたいなと思っております。
今、いろいろお答えがありましたが、それでは我が国には一体どれだけのストックがあるのかという非常に単純な疑問を持つわけであります。過去に行いました、国内に存在する経済的価値を一時点で評価したいわゆる国富調査というものがありましたが、これについて調べてみますと、大変歴史が古い。公的機関が行った調査を見ただけでも明治三十八年の日本銀行調査までさかのぼると言われております。以来、調査目的の変遷に伴って、国富に土地などの天然資源を含むかどうかなど、こういう議論もいろいろあったようでございますが、変化を遂げながら調査は重ねられてまいりまして、昭和三十年から四十五年までは経済企画庁によって五年置きに調査がされているというふうに承知しております。
さて、現在の国民経済計算でございますが、既存の統計データからそのエッセンスを独自の概念に合わせて加工するいわゆる加工統計、二次統計と呼ばれるものでございます。また、その柱である五つの既存統計データのうち四つのフロー統計、すなわち国民所得統計、産業連関表、国際収支表、それから資金循環表については現在も重要な統計として独立して作成利用されている。これら自体が国民経済計算の一部を構成しているものではないわけであります。
現在の国民経済計算の一つの柱であるストックの部分、これは国民貸借対照表というふうに言われているものでございますが、これにつきましては、その国民経済計算年報の中のストック編が我が国における貸借対照表そのものであって、独自の統計として作成されてきたものではない。つまり、国富調査のように独立した調査というのは昭和四十五年以降は行われていない。
年報の中のストック編は四十五年調査をもとにフローを積み上げたものであるという指摘を私は聞いたことがあるんですが、これは事実でございましょうか。
また、もし独立した調査を行うとすれば、もちろんその費用も相当かかると思いますが、これを行うことの必要性についての御所見はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/223
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224・貞広彰
○説明員(貞広彰君) まず、先生御指摘の国民経済計算の中でのストック統計のつくり方でございますけれども、先生御指摘のとおり、現在では、一番最後に行われた昭和四十五年の国富調査をまずベンチマーク、スタート台といたしまして、それ以降、毎年のフロー、流れを積み上げて毎年毎年のストックを出しているということでございます。
なお、諸外国の例を見ましても、例えばアメリカ、イギリス等の欧米先進国においても同様のことをやっておりまして、国富調査に類する一次統計の調査は実施をされておりませんで、フローの積み上げでストックは推計されている、こういう状況でございます。
なお、先ほど申しました、二〇〇〇年から新しいSNA体系、九三SNA体系になりますけれども、ストック統計の充実という観点で項目も新しい項目を入れたり分類もいろいろ変えたりということで、ストック時代に対応した方向に向けて作業を進めてまいりたいと思います。
なお、国富調査そのものにつきましては、先生御指摘のとおり、昭和三十年、三十五年、四十年、四十五年と、四十五年が最後になっておりますけれども、仮に現在、国富調査を今すぐやるということになりますと、予算面、人員面、スタッフ面、それから調査客体である企業や家計の負担などいろいろとそういう難しい問題、いろいろな制約条件があるということを御理解賜りたいと思います。ただ、ストック統計の充実という観点で、中長期的に国民経済計算におけるストック統計の整備を進めるに当たって、国富調査というストックの二次統計ではなくて一次統計、これのあり方も十分念頭に置いて今後検討してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/224
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225・水野誠一
○水野誠一君 戦後、住宅などが破壊されて極端なストック不足に陥った日本の姿があったわけでありますが、その蓄積を図るために、フロー重視、それから高度成長重視の政策を日本は積極的に展開してきた。企業も付加価値を極大化することを目指して、大量消費、使い捨て商品の開発、頻繁なモデルチェンジなど、重要な戦略の柱としてこういう政策をとってきたわけであります。その結果、資源の浪費とかあるいは環境破壊という問題は伴いましたけれども、とりあえず日本のストックというのが急速に整ってきた姿、これが今の姿ではないかと思っております。
こういうストックの充実した社会においては、長もちする製品を開発する、あるいは良質なアフターケアなどのサービス需要が増す。例えば百年もつ住宅をつくれば、次世代はストックとしての住宅を引き継いで、リフォームなどのサービスを受けながら住宅ローンに消えるはずだった資金をより質の高い生活を楽しむ消費に向けられる、こういう社会、本当に豊かな社会がそこには出てくるのではないかと期待をするわけであります。そして、ストック重視の経済は、環境の負荷の少ない循環型社会への移行を促す非常に重要なキーファクターになっていくと期待もしております。
現在我が国にどれだけの社会資本ストックがあるかということを正確に把握する調査というものも、そういうストックを有効に活用していくためにも今後さらに重要であると思いますので、引き続きこういった調査の充実ということ、これは特に国際基準に合わせた、国際比較のできる調査であるということはもう大前提でございますが、ひとつ経済企画庁の重要なお仕事としてお進めいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/225
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226・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 委員御指摘のとおり、日本の社会的、経済的な知的インフラストラクチャーを高めることは大変重要だと思っております。
科学技術の面につきましては、諸外国との比較でどうだこうだ、どれぐらいの費用がかかっている、どれぐらいの人数を抱えているとよく言われるんですが、実を言いますと、社会科学の面では非常にお寒い現状でございます。また、今御指摘のありましたように、少子高齢社会を迎えるに当たって日本もフロー社会からストック社会に変わってきておりますし、その間の積み上げだけではいろいろの誤解も誤算も出ていることと思いますので、できるだけ早い機会に、一つは、できるだけ早く経済情報をとらえる。先ほど御指摘ありましたように、世界的にも日本は早い方ではございません。正確ではありますが早い方ではございません。これを改める。これは既に委員会をつくってやっております。
もう一つは、研究所を充実いたしまして世界に冠たる情報を流せるようにしたい。これは次の新政策としてぜひ実現したいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/226
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227・水野誠一
○水野誠一君 ありがとうございました。
次に、通産省にちょっとお尋ねをしたいのでありますが、最近ニュースをにぎわせております、日本の基幹産業であります日産自動車と、海外、これは、ついこの間まではダイムラークライスラーという話があったわけでありますが、それが先週ぐらいからフランスの大手自動車メーカーのルノーとの交渉へ移ってきています。報道によりますと、両社は十六日にも最終合意、正式発表する見通しである、資本提携をする、その大筋合意ができた、こんなニュースがございます。
その一連のニュースの中で実は私がちょっと興味を持ちましたのは、通産省の事務次官がダイムラークライスラー社と日産自動車との交渉が不調に終わった、決裂したというようなことについて見解をコメントされていたことがございました。
私はこの一点でお尋ねするわけではないのですが、これからさらに国際的な資本提携あるいは吸収合併というようなことも含めて、国をまたいだグローバル企業同士の提携ないしあるいは合併というようなものが行われていく機会というのはどんどんふえるのではないだろうか。そうしたときに、通産省がどんなスタンスでそういった合併交渉等に関与していくのか、あるいはどんなビジョンを持ってそれに取り組んでいかれるのか、その点について大臣の御見解を伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/227
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228・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 貿易も自由になり、資本の移動も自由になり、人の移動も自由になり、また税制その他の制度も各国で大体一致する方向で物事が動いておりますときには、日本の資本と外国の資本が提携するということはいわば理の必然であると私は思っております。かつて日本も好調の時代にアメリカに行って大きな会社を買ったこともありますし、日本の大きな会社が外国の資本と提携するということは、こういう資本の移動が自由であるという世界では半ば当然、起きても不思議はないと私は思っております。むしろ、そのように各国間の企業が連携をしますと、企業の体質が強化される場合が多くなるでしょうから、そういう資本提携とかあるいは外国資本が日本の企業をテークオーバーするとかということをそう驚いて見る必要はないのではないかと私は思っております。
ただ、通産省がやらなければならない仕事は、国内でも企業の合併とか再編とかテークオーバーとかいろいろなことが起きるでしょうから、そのとき国内で障害になっております、税制の問題は障害になっているかどうかわかりませんが、株の交換制度とか商法上の問題とかが仮にあるとすれば、やはり再編機運と申しますか実際の再編と申しますか、そういうものに対する障害を取り除いていって、企業が自由な組み合わせで自由に発展していくための環境整備をするというのが通産省の役割だろうと私は思っております。
日本の企業が外国資本と連携をするということ自体は不思議なことでもありませんし、外国との連携によって企業の体質、体力が強化されるということはむしろ望ましいことだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/228
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229・水野誠一
○水野誠一君 今のお答えで大変よくわかりました。私も全く大臣と同じ考え方でございます。ただ、通産省というお立場で、これから特にこういった国際提携あるいは国際合併というようなときに、非常にデリケートなお立場があろうかと思いますので、そういった点に十分御注意をいただいて、いい行司役、いいコーディネーターの役割を果たしていただければよろしいかと思っております。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/229
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230・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 以上をもちまして、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会及び経済企画庁、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫並びに中小企業総合事業団信用保険部門についての委嘱審査は終了いたしました。
なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/230
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231・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/231
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232・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 中小企業経営革新支援法案及び中小企業総合事業団法案の両案を一括して議題といたします。
政府から順次趣旨説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/232
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233・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 中小企業経営革新支援法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
昨今の経済環境を見ますと、経済のグローバル化、消費構造の多様化、経済構造のサービス化、情報技術の進展等の大きな変化が見られております。その中で、中小企業においては、製品、サービスの高付加価値化、市場指向性の追求、企画提案型の経営戦略の追求等の今日的な経営課題に的確に対応することが極めて重要となっております。
こうした状況におきまして、昭和三十八年に施行された中小企業近代化促進法では、業種ぐるみの近代化のための施策が推進されてきており、また、中小企業新分野進出等円滑化法につきましても、その支援対象が生産額または取引額が相当程度減少している等の要件に該当するものに限定されていることから、経済的環境の変化の中で、中小企業の新たな経営課題への取り組みに対し的確な支援策を講ずるためには、大幅な見直しが必要となってきております。
このため、経済的環境の変化に柔軟に対応して、中小企業が創意工夫を生かした新商品、新サービスの開発や新たな生産方式の導入などの新たな事業活動を通じて経営の相当程度の向上を図ることを経営革新としてとらえ、こうした経営革新を行おうとする個別の中小企業、グループ等への支援を強化するため、中小企業近代化促進法と中小企業新分野進出等円滑化法を発展的に統合し、本法律案を提案した次第であります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、通商産業大臣は、経済的環境の変化に即応して中小企業が行う経営革新に関する指針を経営革新指針として定めることとしております。
第二に、経営革新指針に基づき、単独でまたは共同で行おうとする経営革新に関する計画を作成し、行政庁の承認を受けた中小企業者及び組合等に対し、中小企業信用保険法の特例、中小企業近代化資金等助成法の特例、中小企業投資育成株式会社法の特例、課税の特例等の措置を講ずることとしております。
第三に、経済的環境の著しい変化による影響を受け、生産額または取引額が相当程度減少している業種に属する事業を行う中小企業者を構成員とする組合等が、その中小企業者の将来の経営革新に寄与するための経営基盤の強化に関する計画を作成し、主務大臣の承認を受けた場合には、当該組合等及びその構成員に対し、中小企業信用保険法の特例、中小企業近代化資金等助成法の特例、課税の特例等の措置を講ずることとしております。
以上が本法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、中小企業総合事業団法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
この法案は、平成九年六月及び同年九月の閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」に基づき、特殊法人等の整理合理化を推進し、あわせて中小企業施策の総合的かつ効率的な実施を図るため、中小企業信用保険公庫及び中小企業事業団を解散して中小企業総合事業団を設立するとともに、繊維産業構造改善事業協会を解散して必要な業務を中小企業総合事業団に移管しようとするものであります。
次に、この法案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、中小企業信用保険公庫、中小企業事業団及び繊維産業構造改善事業協会を解散し、中小企業総合事業団を設立することとしております。
第二に、中小企業総合事業団は、中小企業構造の高度化及び中小企業の新事業の開拓を促進するために必要な指導、資金の貸し付け、出資及び助成等の事業、中小企業に対する事業資金の融通を円滑にするための債務の保証等についての保険及び信用保証協会に対する資金の貸し付け、中小企業の経営管理の合理化及び技術の向上を図るために必要な研修、指導等の事業並びに小規模企業共済法及び中小企業倒産防止共済法の規定による共済制度の運営等の事業を行うこととしております。また、繊維産業構造改善事業協会が行ってきた必要な業務を当分の間、実施することとしております。
第三に、中小企業総合事業団の役員につきましては、特殊法人の統合の趣旨に即して、役員数の縮減を行うこととしております。
その他、財務及び会計に関する規定を整備するとともに、三機関の統合に伴う経過措置等を講ずることとしております。また、あわせて、税法その他関連法律について所要の改正を行うこととしております。
以上がこの法案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/233
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234・須藤良太郎
○委員長(須藤良太郎君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
両案に対する質疑は後日行うことといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514062X00319990315/234
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