1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年十二月七日(火曜日)
午後三時七分開議
出席委員
委員長 江口 一雄君
理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君
理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君
理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君
理事 福島 豊君 理事 岡島 正之君
伊吹 文明君 石崎 岳君
遠藤 利明君 大村 秀章君
鴨下 一郎君 佐藤 勉君
鈴木 俊一君 砂田 圭佑君
田中 和徳君 田村 憲久君
戸井田 徹君 桧田 仁君
堀之内久男君 松本 純君
宮島 大典君 山下 徳夫君
家西 悟君 石毛えい子君
五島 正規君 土肥 隆一君
中桐 伸五君 古川 元久君
青山 二三君 大野由利子君
久保 哲司君 江崎 鐵磨君
吉田 幸弘君 児玉 健次君
瀬古由起子君 中川 智子君
笹木 竜三君
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厚生大臣 丹羽 雄哉君
厚生政務次官 大野由利子君
政府参考人
(厚生省年金局長) 矢野 朝水君
厚生委員会専門員 杉谷 正秀君
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委員の異動
十二月七日
辞任 補欠選任
根本 匠君 佐藤 勉君
鰐淵 俊之君 江崎 鐵磨君
同日
辞任 補欠選任
佐藤 勉君 根本 匠君
江崎 鐵磨君 鰐淵 俊之君
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十二月七日
年金・医療・福祉等の制度改革に関する請願(野田毅君紹介)(第六二一号)
食品中のダイオキシン類汚染実態調査・公開に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六二二号)
同(瀬古由起子君紹介)(第六二三号)
中小自営業者婦人の健康と母性保護、社会的・経済的地位向上に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六二四号)
同(古堅実吉君紹介)(第六九二号)
同(矢島恒夫君紹介)(第六九三号)
同(松本惟子君紹介)(第七三四号)
介護保険の緊急改善に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六二五号)
同(大森猛君紹介)(第六五〇号)
同(木島日出夫君紹介)(第七一八号)
被爆者援護法の改正に関する請願(濱田健一君紹介)(第六二六号)
同(中川智子君紹介)(第七五三号)
社会保障の拡充に関する請願(寺前巖君紹介)(第六四五号)
同(枝野幸男君紹介)(第七三〇号)
年金制度改正に関する請願(佐藤謙一郎君紹介)(第六四六号)
同(田中慶秋君紹介)(第六四七号)
同(葉山峻君紹介)(第六四八号)
同(松沢成文君紹介)(第六四九号)
同(伊藤茂君紹介)(第七〇一号)
同(永井英慈君紹介)(第七五五号)
年金改悪反対、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六五一号)
同(金子満広君紹介)(第七一九号)
同(児玉健次君紹介)(第七二〇号)
同(佐々木陸海君紹介)(第七二一号)
同(山原健二郎君紹介)(第七二二号)
子供たちが移植を受けられる臓器移植法の見直しに関する請願(砂田圭佑君紹介)(第六五二号)
同(田中慶秋君紹介)(第六五三号)
同(桧田仁君紹介)(第六五四号)
同(福島豊君紹介)(第六五五号)
同(戸井田徹君紹介)(第六九四号)
同(藤本孝雄君紹介)(第六九五号)
同(安倍晋三君紹介)(第七二三号)
同(甘利明君紹介)(第七二四号)
同(衛藤晟一君紹介)(第七二五号)
同(田村憲久君紹介)(第七二六号)
同(中山太郎君紹介)(第七二七号)
同(堀之内久男君紹介)(第七二八号)
同(伊吹文明君紹介)(第七五一号)
同(武山百合子君紹介)(第七五二号)
介護保険を緊急に改善することに関する請願(石井郁子君紹介)(第六七九号)
同(東中光雄君紹介)(第六八〇号)
同(藤田スミ君紹介)(第六八一号)
同(吉井英勝君紹介)(第六八二号)
年金改悪に反対し、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(大森猛君紹介)(第六
八三号)
同(児玉健次君紹介)(第六八四号)
同(土井たか子君紹介)(第六八五号)
同(中川智子君紹介)(第六八六号)
同(保坂展人君紹介)(第六八七号)
同(松本善明君紹介)(第六八八号)
同(横光克彦君紹介)(第六八九号)
母子家庭の経済生活安定のための施策の充実強化に関する請願(熊代昭彦君紹介)(第六九〇号)
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六九一号)
介護保険の緊急改善等に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第六九六号)
歯科医療の危機打開に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六九七号)
保険によるよい歯科医療の実現に関する請願(松本善明君紹介)(第六九八号)
高齢者医療への定率一割負担導入反対等に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六九九号)
同(松本善明君紹介)(第七〇〇号)
年金改悪反対、安心して暮らせる老後保障に関する請願(大森猛君紹介)(第七二九号)
原爆被害への国家補償制度確立に関する請願(中川智子君紹介)(第七五四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
国民年金法等の一部を改正する法律案について
年金資金運用基金法案について
年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について
派遣委員からの報告聴取
午後三時七分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/0
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001・江口一雄
○江口委員長 これより会議を開きます。
国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について発言を求められております。
この際、ただいまの各法律案について意見聴取のため大阪府に委員を派遣いたしましたので、派遣委員から報告を求めます。金田誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/1
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002・金田誠一
○金田(誠)委員 団長にかわり、派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、江口一雄委員長を団長として、理事安倍晋三君、理事木村義雄君、理事田中眞紀子さん、理事山本孝史君、委員久保哲司君、委員吉田幸弘君、委員児玉健次君、委員中川智子さん、それに私、金田誠一を加えた十名であります。
なお、現地において、中野寛成議員、吉田治議員及び辻元清美議員が参加されました。
昨日、豊中市のホテルアイボリー会議室において会議を開催し、まず、団長から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、関西学院大学経済学部教授井口泰君、日本労働組合総連合会大阪府連合会事務局長伊東文生君、奈良女子大学生活環境学部人間環境学科助教授木村陽子さん、関西経営者協会社会保障基金制度専門委員会委員長向山平八郎君の四名から意見を聴取いたしました。
その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。
井口君からは、今回の年金改正案には基本的に賛成であるが、年金制度に雇用政策の役割を担わせるべきではないこと、また、年金の給付抑制は不可避であるが、国民の年金制度への信頼を維持するため、今後の経済成長によって回復可能な削減幅にとどめるべきであること、基礎年金の国庫負担割合の段階的拡大が不可欠であることなどの意見が述べられました。
伊東君からは、今回の年金改正案は、基礎年金改革を回避し、年金の給付水準を大幅に低下させるものであるなどの理由により反対であるとの意見が述べられ、また、本来、年金改革は、医療、介護、雇用を含む高齢者生活の将来像を示した上で行うべきであり、合意形成を重視する姿勢こそが社会保障制度の信頼確立の基礎となるとの意見が述べられました。
木村さんからは、今回の改正案の方向性は賛成であるが、年金制度の構造的な改革の視点が不足していること、保険料凍結は負担の先送りであること、女性の年金問題が未解決であることなどの問題があるとの意見が述べられ、また、基礎年金の財源は全額税方式にすること、公的年金、企業年金を通じた老後のための包括的な貯蓄税制の確立が必要であるなどの意見が述べられました。
向山君からは、厚生年金の報酬比例部分の五%適正化、賃金スライドの停止、支給開始年齢の引き上げなどの措置はやむを得ないものであり、長期にわたって安定した年金制度を構築する視点から、今回改正案には賛成であるとの意見が述べられ、また、基礎年金の財源は全額国庫負担とすべきであること、厚生年金基金の代行部分を国へ返上できる仕組みを創設することなどの意見が述べられました。
意見の陳述が行われた後、各委員から、社会保険料負担の限界、基礎年金の国庫負担割合の引き上げ及び税方式化に対する見解、社会保障制度における年金制度の役割、支給開始年齢の引き上げ・賃金スライドの停止などの年金給付の抑制策に対する評価、第三号被保険者問題及びパートタイム労働者への社会保険適用に関する見解、年金制度改革を税制改革・財政全般とあわせて議論する必要性、支給開始年齢と定年年齢を接続する必要性、年金積立金及びその自主運用をめぐる諸問題、少子化対策のあり方などについて発言がありました。
なお、会議の内容を速記により記録いたしましたので、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。会議の記録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって報告を終わりたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/2
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003・江口一雄
○江口委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
お諮りいたします。
ただいま報告のありました現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/3
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004・江口一雄
○江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/4
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005・江口一雄
○江口委員長 お諮りいたします。
各法律案について、本日、政府参考人といたしまして厚生省年金局長矢野朝水君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/5
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006・江口一雄
○江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/6
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007・江口一雄
○江口委員長 この際、念のため申し上げます。
去る十一月二十六日、木村義雄君外二名から提出された、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の三派共同提案に係る修正案文をお手元に配付してございますので、御了承ください。
順次発言を許します。安倍晋三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/7
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008・安倍晋三
○安倍(晋)委員 先月の十七日にこの年金改正関連三法が本委員会で審議をスタートしたわけでありますが、本日まで計四回質疑を行いました。また、地方公聴会、中央公聴会、さらには参考人の質疑も行いまして、二十四時間半にわたっての十二分な質疑がなされたわけでありまして、きょうは、それを受けての締めくくりの総括的な質疑ということでございますが、私は、今後の課題でございます、将来の年金制度でありますいわゆる三階部分の確定拠出型年金、そしてまた年金の積立金の運用について質問を行いたい、こういうふうに思うわけであります。
いわゆる一階部分の基礎年金、そして二階部分の厚生年金、公的な年金でございますが、さらには三階部分の企業年金も我が国には制度としてあるわけであります。その企業年金は確定給付型の年金でございますが、しかし、この確定給付型年金の場合には、中小企業の皆さんはもちろんのこと、自営業者の方々にとりましては大変普及が進んでいないわけであります。さらには、労働力の流動化が今どんどん進んでいるわけでありまして、産業構造も、そしてまた労働市場の形態も変わっていく中にあって、ポータビリティーが確保されていない確定給付型年金だけでは、国民にとって将来豊かな暮らしを保障するという年金の三階部分の役割が十二分に果たし得ないというふうに私は思うわけであります。
そういう中にありまして、新しい選択肢、アメリカにおきましては四〇一Kという形で極めて大きな成功をおさめているわけでありますが、我が国におきましても、できるだけ早くこの確定拠出型年金制度を導入することが求められているんだろうと私は思います。
我が党におきましても、与党におきましても、今検討を進めているところでございますが、この制度を成功させるためにも、今確定給付型に行われているような税制上の措置を当然考えていかなければいけない、私はこのように思うわけでありますが、この確定拠出型年金の導入について大臣の御決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/8
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009・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 安倍議員御指摘のとおり、米国においては四〇一Kが普及し、我が国でも公的年金を補完するものとして確定拠出型年金、いわゆる日本型の四〇一Kが大変注目を浴びているところでございます。
確定拠出型年金は、これまでの確定給付型の年金とは異なりまして、自己責任のもとに運用いたしまして、その運用収益をもとにいたしまして給付額が決定されるものでありますが、確定給付型の年金だけでは、ただいま委員御指摘のように、中小企業であるとかあるいは自営業者への普及、さらにポータビリティーの確保という点について問題がございます。社会経済環境の変化に十分対応できなくなっておることも事実でございます。
このため、公的年金に上乗せされる企業年金などの新たな選択肢として、三階部分に位置づけられております確定拠出型年金制度を導入するということは必要だ、私はこう考えているような次第でございます。現在、税制上の措置を含めまして、制度の具体的な内容につきまして検討を進めているところでございます。平成十二年度中の導入を目指して鋭意準備を進めていきたい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/9
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010・安倍晋三
○安倍(晋)委員 続きまして、年金の積立金の自主運用について質問をしたいと思うわけであります。
この運用につきましては野党側からもいろいろな意見が出されているわけでありますが、この運用については専門的な、技術的なテーマを多く含んでいるわけであります。その中にありまして、何となく本質とは若干ずれた議論もなされてきたような気がするわけでございますので、ここでひとつ大臣から、極めて明確に、かつわかりやすく御答弁をいただきまして、国民の皆さんの自主運用に対する不安を払拭していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
二つ質問をしたいわけでありますが、一つは、この自主運用の問題については財投の改革と一緒に議論をするべきだという意見が出されているわけであります。財投改革を契機にしてこの自主運用の問題が出てきたのは事実でございますが、しかしながら、この自主運用というのは、皆様からお預かりをした年金を運用して運用益を上げて、将来の皆さんの年金に対する負担を軽減していくという、まさに年金制度にとりましては極めて基本的な問題でございますから、当委員会で質疑をして当然だったんだろうと私は思います。それについて、まず大臣のお考え方を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/10
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011・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 自主運用につきましては、行財政改革の観点から、平成九年の六月の閣議決定におきまして、平成十一年に行われる年金の財政再計算に合わせ、年金資金の運用の新たなあり方について結論を得る、こうされていることから、今回の財政再計算に合わせて年金の自主運用の仕組みを明らかにしたところでございます。
この自主運用につきましては、年金財政、すなわち給付と負担のあり方を左右いたしまして、年金制度の安定という年金制度加入者にとりまして極めて重要な要素でございますので、今回新たに年金制度の核をなす一つの仕組みといたしまして国民年金法及び厚生年金法上明確に位置づけられた、こういうような経緯があるわけでございます。
また、あわせて提出いたしております年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案は、こうした自主運用を実施するための組織を整備する、こういうためのものでございます。
このような観点から、自主運用のあり方と年金本体部分とは密接不可分である、このように考えておるわけでございまして、一体的に御審議をいただいているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/11
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012・安倍晋三
○安倍(晋)委員 また、自主運用について、今までの年福の運用におきまして一兆二千億円の累積の赤字が出ているわけでありまして、これは何となく役所が、厚生省がやるとうまくいかないんじゃないかというのが国民一般の認識でございます。私もそう思っていたわけであります。局長の皆さんの顔を見ていると、何となく大丈夫かなという印象を持った人もいるわけであります。
しかしながら、ポイントは、果たして市場のプレーヤーとして本当にどうだったのかというと、これは、直近の十年、また直近の五年間を比べてみましても、信託銀行の平均の利回りよりも上回っているわけであります。実は、意外とプレーヤーとしては必ずしも能力がないことはなかった、むしろ平均点以上はとっていたんだろうと私は思います。
また、累積で一兆二千億あるわけでありますが、最近、株価も上がっておりまして、今年度は八千億円黒字になっているわけであります。場合によっては、もし株価が二万円になってくるとゼロになるということすら出てきた、黒字になるということすら考えられるわけであります。
今後の運用でございますが、この百四十兆円をまるですべて一気に株式市場に投入するかのような印象を与える質疑がなされてきたわけでありますが、実際はそういうことではなくて、八割ぐらいは恐らく国債とか財投債に回されて、〇・五%ぐらいはキャッシュで持つわけでありますから、実際に我が国の株式市場に投入されるのは大体一割だろうと言われているわけであります。
そうした投入をしていく中の割合について、大臣から、これは詳細に大体どういう組み合わせでいくかということも含めてお示しをいただきまして、むしろ将来への不安を払拭していただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/12
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013・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 ただいま安倍委員からも御指摘がございましたように、これまで、ほかの年金資金を運用いたします機関投資家と比較いたしましても決して遜色のない運用収益を確保いたしていることは事実でございます。
年金福祉事業団は、資金運用部から、長期の、一度借りたら動かすことのできない固定金利で資金を借りて市場運用を行っておるわけでございますが、近年の金利、株価の低迷などにより、運用収益が資金運用部の利払いを下回ったために、平成十年度末で一兆二千億円の累積赤字が生じた、こういうことでございます。今年度に入りましてからは、今御指摘がございましたように減っておるわけでございますが。
これからどういう割合でやるかということでございますが、まだこれは厚生省のいわゆる研究会の中で検討中でございます。大体債券は八割くらいで日本株は一割くらいがいいんじゃないか、こんなようなことでございますが、いずれにいたしましても、これが正式に決定いたしましたら、国民の皆さん方に情報を公開いたしまして、安心して運営できるような体制をつくっていきたい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/13
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014・安倍晋三
○安倍(晋)委員 ありがとうございました。
これで質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/14
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015・江口一雄
○江口委員長 五島正規君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/15
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016・五島正規
○五島委員 まず、この審議も大詰めになってまいりましたが、これまでお伺いしていて、幾つかの点について非常にあいまいであった点があると思いますので、三点に分けて質問をしたいと思います。
まず最初に、基礎年金の問題でございますが、現在、基礎年金は六万七千十七円、夫婦で十三万四千三十四円という給付がモデルになっております。このモデルの中身については、厚生省は、高齢期の基礎的消費、それから医療費、診察代や入院費まで含めた医療費というのが一人につき約一万二千数百円入っているんだというお話でございました。
先日、政務次官に、これから先、公的な負担が高齢者はふえてくる、介護保険の自己負担も入ってくるし、恐らく医療費の、高齢者医療の問題についての改革も出てくるだろう、こうした部分について基礎年金はどういうふうに考えますかと。基礎年金については、総理府が言う消費者物価に対するスライド制だけとおっしゃっていました。総理府の消費者物価の中には、こうした公的負担の問題あるいは保健医療費の問題については入っておりません。しかし、現在は、それは入ったものとして給付されている。
そういうふうな政務次官のお話を聞いていますと、今回の改正によって基礎年金が給付する中身、対象を変えるという内容なんですかというふうにお伺いいたしましたが、政務次官の方は、その辺については高齢者の方にもお願いしなければしようがないんだというお話で終わったわけでございます。
金額の問題ではございません。基礎年金が給付すべきその範囲、私は基礎年金がナショナルミニマムを満足するものというふうに要求しているわけではございません。しかし、これまで保健医療についてカバーしていた部分を、今回の改正ではカバーしないというふうに受け取れる発言が政務次官からあったわけでございますが、この給付の水準の変更というのを、何か意味がわかりませんが、与党からも出しておられる。そういうふうな点から考えて、この基礎年金が守備すべき範囲というのをどのようにお考えなのか、政務次官にまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/16
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017・大野由利子
○大野(由)政務次官 基礎年金につきましては、高齢者の基礎的消費支出、食料、住居、被服費等と、保健医療までをカバーする。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/17
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018・五島正規
○五島委員 保健医療までカバーされるということになれば、この保健医療の部分については消費者物価の中には含まれませんね、保健医療制度が変わり、公的な保険料がふえてくる、あるいは自己負担が変わってくるということになれば、これは、今この法律の中においては物価スライドだけ、物価スライドは総理府の物価指数にスライドさせるということになっているのですが、それ以外に保健医療の部分についてもスライドさせるというふうにおっしゃっているのか、させないとおっしゃっているのか、そこのところを明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/18
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019・大野由利子
○大野(由)政務次官 基礎的生活部分をカバーする考え方でございますが、その額の中に保健医療費も含んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/19
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020・五島正規
○五島委員 含んでいるということは、当然、介護保険が実施され、そして老人医療制度が変われば、消費者物価とは別に、こういうふうなことについても基礎年金の水準の変更要因になるとおっしゃっていると受け取っていいんですか。これはなんでしたら大臣にお答えいただいても結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/20
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021・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 基礎年金というのは、基本的にこれまでは賃金スライドプラス物価上昇であったわけでございますが、今回、御案内のように、今四・六人で一人を支えておるわけでございますが、将来を見越しまして、将来は二人で一人を支える、こういうことから物価スライドに着目して行っておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/21
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022・五島正規
○五島委員 大臣は明確に物価スライドになっているとおっしゃっています。物価スライドになっているとすれば、大野政務次官がおっしゃるように、保健医療の部分についてスライドさせる根拠は出てまいりません。総理府の消費者物価には含まれておりません。したがって、そこのところについて大臣と政務次官とのお答えに違いがあることは、与党の皆さんもおわかりだと思います。
最後のところで、ここで委員会をとめてみても何の足しにもなりませんので……(発言する者あり)ちょっとお待ちください。我が党の理事もこのように申しておりますが、このことで押し合いっこしても仕方ないのだろう。
ついては、今回のこの年金法案に対する修正案、与党三党でお出しになっています、この修正案の中には給付水準の見直しという言葉が入っております。給付水準の見直しというのは何を指しているのか。そのことは、まさに消費者物価にスライドさせる物価スライド以外に、保健医療の問題、あるいは介護の問題、公的負担の問題、そういうふうなものへのスライドということを意味して三党で合意されて出されているのか。それとも、そうではなくて、賃金スライドにしないけれども賃金との格差が出ればそこを考えるという意味でおっしゃっているのか。その点について修正案の提案者の御意見をちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/22
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023・福島豊
○福島委員 五島委員の委員会におきます御質問というのは、大変示唆に富む御発言をしておられまして、私も大先輩の意見を大変勉強させていただいております。
今回私どもが修正を加えた理由というのは、根底にある問題意識は、委員がおっしゃっておられることと共通でございます。
今、医療にしましても介護にしましても、二十一世紀に、高齢化が進む中でどのように制度を改めていくのか、高齢者の負担というものをどのように求めていくのか、そういう議論がなされているわけでございます。そして、介護保険の保険料を基礎年金の水準に反映させるのかどうか、そこのところの明確な答えを出してほしいというのが今の委員の御質問だと思いますけれども、はっきり申し上げまして、私どもは、具体的な答弁というものを現在有しているわけではありません。
その理由は、その制度改革の行方というのがどうなるのかということについて、まだ具体的な道筋が明確に示されているわけではないということが第一点。そしてまた第二点は、介護にしましても医療にしましても、ほかの社会保障制度における負担というものをそのまま年金に持ってきていいのかどうかという議論が一つある。
そこのところは、結局のところ、基礎年金の給付水準をそれに見合っただけ丸ごと上げるということになれば、それは保険料の引き上げということにつながってくるわけでございます。保険料はどこまで引き上げたらいいのかという議論も一方ではありますから、そこのところのバランスをどうとるのかということは、また検討を重ねる必要があるというふうに思います。
国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げるということは、将来における保険料の水準に対して大きな影響を与えるわけですから、そのころには、介護にしましても医療にしましても、もう少し具体的な道筋が恐らく明らかになっているだろうと私は思っておりますし、そのときの状況を踏まえて、適切な給付水準というのはいかにあるべきかという議論をきちっとするべきである。
その議論をきちっとするためにも附則を修正して、その議論をする担保といいますか、明確な義務といいますか、そういうものをぜひとも残しておきたかったという意味で私どもは修正をさせていただきました。
それからもう一つは、先般総理が真に豊かな老後のための国民会議を発足させるという話がありました。その中では、介護の問題、医療の問題、年金の問題、それぞれはばらばらに考えられるべきではなくて、包括的に考えられるべきであるということが一つの提案の理由になっていると私は承知をいたしておりますが、この三つの制度をどのように関連させていくのか、特に後期高齢者においてどのように関連させるのかということは、大変大きなテーマだと思っております。
ですから、そういう大きなテーマについても検討を進め、その上で給付水準というものはいかにあるべきかという議論がさらに展開される必要がある、そのように私は認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/23
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024・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 基礎年金の、私が申し上げたことと政務次官がちょっと食い違っているような御印象をお持ちでいらっしゃいますので、あえて申し上げさせていただきますが、今後あくまでも物価スライドで上げていく、こういうことでございまして、その中に、例えば今御指摘のあったような医療費の値上げなんかも、要するに物価に響いてくればそれは当然のことながら含まれる、こういう意味合いでございます。平成十一年度の夫婦二人分の基礎年金の額は大体十三万四千円、そういう中におきまして、いわゆる基礎的な支出と保健と医療を含めたものも十分カバーできるというのが政務次官の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/24
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025・五島正規
○五島委員 今の修正案提案者の御意見を聞いていても、医療、福祉、介護の費用を全額基礎年金で賄うということはできないであろうと。しかし、保健医療部分というのはこれまで入っていたのであるから、全体としてその部分の引き上げについても考慮せざるを得ないかもしれない、それは将来的に検討したいという御意見だったと思うわけです。それでいいですね。
私は、そうした手法というのが実は国民に大変不安を与えている。間違いなく介護保険の保険料、与党の方は半年間取らないとか、それから一年間保険料を半分取らないとかおっしゃっているわけですが、しかし、介護の社会化を進めていくとすれば、当然、一割の自己負担、保険料というのは入ってくる。恐らく来年から医療費も改定せざるを得ないでしょう。そういうふうな状況によって、お年寄り、国民自身は、たちまち目の前からその費用はふえていく。それを見て、給付の改善については状況を見ながら検討する——既に国民の懐は搾り取られているけれども、それに対する対策は後手後手になってくる。そのことが、今の年金制度に対しても国民が大変不安を持っている一つの要因だろう。
私は、与党の方が基礎年金の給付水準というものについて、もし福島議員がおっしゃっているようなところで本当に合意できているのであれば、医療、福祉、介護といったような部分の公的な負担と、そういう高齢期のサービスの利用に関して、全額それをやっていくのかどうかは別としても、それについて何らか基礎年金に反映させるということを明確にされるべきであろうと。あるいは、高齢期の、特に基礎年金について、物価スライド制あるいは賃金スライド制という切り口がいいのか、現役世代とのネットネットの比較の中においてそれを見直していくという方向がいいのか。
そういうものを何か委員会が混乱した中において取ってつけたような、その中身は聞いてみるとわけがわからないという修正ではなくて、せっかく三党で修正をやろうと言われるのなら、国民にわかりやすいように、何を修正しようとしているのか見えるようにされるべきだと思うわけですが、時間もありませんが、福島議員、もし何かございましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/25
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026・福島豊
○福島委員 先生の御指摘は私もよく理解できます。
ただ、先生に逆にお聞きしたいといいますか、基礎年金の水準をどうするかということは保険料の水準と密接に関係しているわけでして、それを上げるということは将来的に保険料の引き上げということにつながる。現在でも、国民年金、基礎年金の空洞化というようなことが言われるわけでして、果たしてそれだけ高い水準の保険料を納めていただけるのかという問題が一方にはあるわけです。その両方のバランスをとった議論をしなければいけない。ですから、少なくとも、国庫負担を引き上げるということは保険料に対して一定の引き下げ効果があるわけですから、そこのところではぜひ考えなければいけない。その余裕が出てくるというか幅が出てくる話になるんだろうというふうに私は理解をいたしております。
逆に先生に、どういうところまで——先般の委員会での先生の御議論も、基礎年金は一体何をカバーすべきなのか、ナショナルミニマムとは何なのかという議論がなされたと思いますが、先生のお考えをお聞きできれば、御披露いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/26
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027・五島正規
○五島委員 まさにその点について、我々は前国会で対案を提出したわけでございまして、前回も民主党は対案を出せ出せと騒いでおられましたが、前国会に出したということをお忘れになっているとは思いません。
というよりも、我々自身が五年前に現行の年金法をつくったときに、附則の中に公費負担の見直しというのが入っています。我々は、基本的に、この五年間の間に基礎年金部分については公費五割を実施しておくべきであった、そして一日も早く基礎年金については全額税制度に持っていくべきであると考えています。
その場合の基礎年金の位置づけというのは、まさに高齢期の消費の一部を公的に支えるという内容であって、必ずしもナショナルミニマムという内容ではないだろうと私自身は思っています。むしろ、そこのところについては、基礎年金に加えて、純粋保険部分として運営させる厚生年金部分をどうしっかりやっていくかということが大事だろうと思っています。
しかし、この法はそうはなっていません。そこで申し上げているわけでございますが、もし仮に基礎年金も含めて保険ということにこだわってやっていくとするならば、一日も早く少なくとも公費五割にしていくということによって、そこのところにおける財源によっても、そうした社会保障関係の公的負担、サービスの利用料というものに対する基礎年金の給付水準の改定というのは十分可能になるであろうと思っております。
これは私の個人的な意見でございますが、今回の修正案というものについては、今申し上げましたように、また御質問申し上げましたように、どうも政府の中、大臣と政務次官、あるいは与党三党で修正案を出されている方々も、理念としてそれぞれお考えかもわからないけれども、問題は、国民に対して理解を得ることを先行させて制度の改革をしていくのか、それとも理解を得る前に、ともかく金は要るんだから給付は減らしていこうという形をとるのかということの違いかなというふうに思っております。
福島議員にはありがとうございました。お席に戻っていただいて結構でございます。
次の問題に移りますが、考え方としてこの問題と極めて共通いたします。
厚生年金給付が六十五歳給付へ繰り延べになる。六十五歳給付に対する繰り延べに賛成なのか反対なのかといえば、私は、繰り延べは、やむを得ないというよりも望ましいだろうと思っています。
なぜならば、例えば昭和四十年、六十五歳の方の平均余命は男性で十一・八八歳、女性で十四・五六歳でした。平成八年レベルでは、十六・九四歳と二十一・五三歳。平均余命は六十五歳の段階で五歳と七歳延びています。なお、平成七年と八年とを比べてみますと、六十五歳の段階において一年間に大体五カ月ぐらいずつ平均余命が延びていっている。一年間に五カ月平均余命が延びるというのは、例えば昭和四十年代ですと、三十代の人たちの生命力とほぼ匹敵する。非常にお元気な方々が六十五歳以上にもたくさんおられるということを意味していると思います。
そういうふうな状況の中で、何度も繰り返し言われたように、六十五歳現役社会、あるいは最近では何か名前だけが先行いたしまして七十歳現役社会ということが出てきております。しかし、世の中の実態はどうかといいますと、今の不況の問題もあって、六十歳現役社会そのものが危うい、リストラによって退職していっているという状況が生まれてきています。すなわち、六十五歳現役社会ということをもし実現できておれば、六十五歳の年金給付について私は基本的に問題はないと思っている。しかし、それが一向に達成できる見通しが見えないままにおいて年金給付だけがおくらされていく。そのことに対する国民の不安というものは非常に大きいわけでございます。この問題をどうするのか。
厚生省も労働省と早晩統合されます。まさに六十五歳現役社会をつくるためにどのような雇用政策なり産業政策を確立していくのか。そう簡単にはいかないよとおっしゃるのであれば、年金問題についてもそう簡単に六十五歳に繰り上げなんてできるものじゃない。まさに国民が求めている六十五歳現役社会をどうしてつくるのかということを十分に国会においても審議し、その見通しを国民に見せることなしに給付の繰り延べだけを出されていることに対して、国民が不安を感じていると思うわけでございますが、大臣、その点についてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/27
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028・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 まず前半の、要するに平均寿命の関係に関連いたしましては五島委員と私と全く同じ認識でございます。
御案内のように、現在我が国の平均寿命は世界でナンバーワンでございます。男性が七十七・一九歳、女性が八十三・八二歳、こういうことでございまして、いわゆる長寿化が進んでおるわけでございます。また、世界の趨勢を見ましても、欧米でも六十五歳支給というのが一般的でございます。しかし、そうはいっても、お年寄りの働く機会というのがまだ恵まれていないのじゃないか、こういうような五島委員の御指摘でございます。
確かに、この問題は古くて新しい問題でございまして、五年前にこの問題の改正を出しました時点におきましても、その当時はまだ五十五歳定年が主流でございました。しかし、現在では六十歳定年というものが、すべてがすべてとは申しませんけれども、ほぼ定着をいたしておりますし、今後、私は、高齢化社会が急激に進展していく中で、定年年齢というのが引き上げられる傾向にあるのではないかと思っているような次第であります。
ただ、現実問題として、まだまだ六十歳の前半で働く方は六割をちょっと切っておるような状態でございますので、今後、私どもといたしましては、まだ先の話でございますけれども、しかし、先の話だから待っているというような姿勢ではなくて、当然のことながらシルバー人材センターの活用であるとか定年制の延長の問題につきまして労働省とも十分に協議しながら——要するに今すべてがそういうわけにいかないわけでございます、現実問題として。雇用と年金というものができるだけ結びつくような形が望ましい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/28
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029・五島正規
○五島委員 時間もありませんが、この問題につきましては、私はやはり発想が逆転していると思います。
現在、六十五歳の方々の残存労働能力は、例えば昭和四十年代に比べると飛躍的に能力を残しておられます。一方で、仕事の現場における労働強度は、四十年代に比べますと明らかに軽減されている。より経験が生かされる環境で何が阻害しているかといえば、これまでの日本のシステムなりあるいは雇用状況なり、そういうさまざまなものがそれを阻害しているのであって、これを変えるのが政治の責任だろう。明らかに六十五歳現役社会を実現することができる労働の環境と労働能力が残っておりながら、六十五歳現役社会が実現できていない。そこのところをどうするかということを先にきちっとつくり上げた上で年金問題の議論をすべきではないか、そのように申し上げているわけです。
この点につきましても、先ほどの与党の修正案と同じように、必要性はわかるけれども、年金の財政計算の中で、将来的に非常に大きな破綻が来る、このままいったら大変だ、だからとりあえず年金の給付だけおくらそうということで、そうした新しい方法で年金制度を改革していける可能性に目をつぶったまま国民に犠牲だけを強要しているということではないかというふうに思います。
最後にもう一項目。年金の自主運用について先ほど安倍委員からも御質問がございました。この年金の自主運用の問題につきましては、基本的に財投制度そのものの変更に基づく問題でございます。そういう意味では、一体これからの財投制度はどのようになされるのか。あるいは百四十兆という巨大な年金積立金、先ほどのお話では二割ぐらいだろうかとか、一割なのか二割なのか、現在の運用で四割なのか、その辺も全くあいまいなまま、まさか全部株式運用されることはないだろうみたいな、そういうあいまいなことで巨大な金を市場に持ち込んでリスクを冒す、それでいいのか。
自主運用するにしても、あるいはこの投資に一定の規制をかけるにしても、これは財投制度の議論とセットで検討すべきであり、大蔵委員会との連合審査等が当然あってしかるべきだろうと思います。
そういう意味において、この法案の中でなぜそうした部分が一緒に出されてこなければいけないのか。こうした問題についても国民の不安を解消するために、これは分離して継続すべきではないかというふうに思うわけでございますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/29
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030・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 先ほど自民党の安倍委員の御質問にもお答えを申し上げたわけでございますが、今回のいわゆる自主運用の問題につきましては、昨年の六月に成立いたしました中央省庁等の改革法の中で年金の資金運用部への預託義務というものが廃止されまして、新たに、要するに自主運用せよ、こういうことを基金の中でせよ、こういうことが決まったわけであります。
現実問題として、いわゆる少子・高齢化社会を迎えまして、これまでの保険料だけではもう既に給付分が賄えなくなってきておるわけでございますし、運用益を充てている、しかも、その運用益も年金の特会の方に返納できなくなってきておる。こういうような状態でございまして、私どもは、現役世代の負担の軽減のために自主運用を行っていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
問題は、この自主運用というものが果たして国民の皆さん方から見て安全なのかどうか、こういうような心配がなされておることは事実でございます。私どもは、年福事業団の反省の上に立ちまして、いわゆる研究会の話でございますけれども、それは前回の菅委員のときにも御披瀝を申し上げたわけでございますけれども、いわゆるハイリスク・ハイリターンを求めるのではなくて、ローリスク・ローリターン、債券と株をまぜながらやっていく。こういうことの中で、例えばの話でございますけれども、債券を八割、日本株を一割、こんなような報告が出されているということを御披瀝申し上げたわけでございますし、はっきり申し上げて、債券でも金融のいわゆる左右によって、上げ下げによってリスクがあるわけでございます。
私どもは、あくまでも国民の年金制度の安定のために自主運用を行うのだということでありますので、御理解を賜りたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/30
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031・五島正規
○五島委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、せめて、大臣おっしゃっているような検討委員会の結論が出て、その結論を含めてこの資金運用については本委員会で検討した上でこの法案を出されても構わないのではないか、遅くないのではないか、そのことを申し添えまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/31
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032・江口一雄
○江口委員長 山本孝史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/32
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033・山本孝史
○山本(孝)委員 山本でございます。
大臣、恐れ入ります、質問通告にないのですが、先ほどの五島先生とのやりとりで一点だけ確認をさせていただきたいのですが、基礎年金のカバーする範囲、水準という問題にかかわってですけれども、大臣の御答弁で、いわゆる自己負担分が上がったりして医療費が上がってきますと、それは物価スライドに反映されて基礎年金の給付水準に反映してくるという御答弁は、そのとおりだというふうに思います。
問題は、高齢者自身の税負担あるいは社会保険料負担というもの、これは基礎的な生活消費支出という中には含まれていないというふうに理解しておりますが、そういうことだと思うのですね。うんうんとうなずいておられますので同じ御意見だと思いますが、その点を確認していただきたい。
そうしますと、今後、介護保険料であれ高齢者の医療制度であれ、高齢者自身の社会保険料負担がふえてくるときに、それは今のシステムの中では基礎年金の額には反映しないというシステムになっている。
今度福島先生が修正案を出されて、政府も同意されておられる「給付水準及び」というこの六文字が入った修正案の意義は、したがって、今後高齢者自身の社会保険料あるいは租税負担がふえてくるときに、それは物価スライドの水準を超えて政策的に基礎年金の給付水準を見直していくという意味合いなんだ、こう理解をしてよろしいのでしょうか、この点お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/33
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034・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 まず、山本委員に御理解をいただきたいのは、基礎年金というのはお年寄りのいわゆる衣食住を中心とする基礎的な部分について賄うんだ、こういう観点でございまして、今後、物価の上昇に応じてスライドをしていくんだ、そういうことにあくまで注目するんだということでございます。
先ほどもちょっと申し上げたわけでございますけれども、例えば医療費であるとか、あるいはそのほかのもろもろのものが結果的に物価にはね返ってくるというようなことになれば、当然のことながら物価スライドの中で勘案されるものだ、こういうふうに私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/34
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035・山本孝史
○山本(孝)委員 したがって、高齢者の例えば介護保険料の負担、こういった社会保険料負担は基礎年金の水準で見ない、そこには入っていないという理解ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/35
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036・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/36
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037・山本孝史
○山本(孝)委員 したがって、給付水準を見直すということは、介護保険料が上がってくれば、今度はその上がっていくのを横目で見ながら基礎年金の水準は見直していこうというお考えがあの六文字の中に含まれているというふうに理解してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/37
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038・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 これは、先日の三党の修正の中において、基礎年金を三分の一から二分の一に引き上げる中において、私どもは、基本的には保険料の引き下げに使って、いわゆる現役世代の保険料の負担を軽減するということでございますけれども、私どもの理解といたしましては、その部分を基礎年金の給付改善にも充てたらどうか、こういうような修正がなされた、このように認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/38
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039・山本孝史
○山本(孝)委員 後の方で私が質問に用意している部分と引っかかりますので今お聞きをしておきますが、もう一度繰り返しになります。
私の質問は非常にシンプルになっておりまして、介護保険料ですとか、あるいは高齢者医療制度ができたときに高齢者自身が社会保険料として負担をする部分があるだろう。そうすると、持ち出しがふえるわけですね、自分の手取り年金の中から持ち出しがふえる。そのときに、基礎年金の給付水準を見直すという中で、社会保険料の支払いというのは物価スライドとは関係ないんですね、反映しないんです。反映しないとおっしゃっておられるわけです。そうすると、その社会保険料として出す部分が基礎年金の給付水準の見直しの中に引っかかってくるのかという質問なんですね。理解いただいていますか。
そうすると、社会保険料がどんどんふえてくれば当然手取りの基礎年金は減ってくるわけですから、それを全額埋め戻すのがいいのかどうかというのが福島先生の、提案者の先ほどのお話ですが、厚生大臣としては、物価スライド以外に、このふえてくる社会保険料の高齢者自身の負担の部分は、基礎年金をふやしてあげることで若干なりとも丸々負担じゃない形をとってあげればいいではないかというお考えなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/39
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040・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 要するに、与党三党の修正案の趣旨はそのようなことではないかと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/40
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041・山本孝史
○山本(孝)委員 与党三党の修正案を政府も一応受け入れられて、今出しておられるんだと思うんですね。これで法案を修正されたので、したがって、厚生大臣として修正案に対する御見解はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/41
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042・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 多数をもって採決されたことであり、尊重するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/42
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043・山本孝史
○山本(孝)委員 そうすると、今後、高齢者自身の社会保険料負担がふえてきたときは、それは基礎年金の水準を上げてあげることで若干なりとも見てあげるんだという御答弁ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/43
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044・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 そういう部分に着目するのではなくて、先ほどから申し上げておりますように、基礎年金が三分の一から二分の一に引き上がるときに、基本的には若年世代の負担の軽減に充当するものであるけれども、与党三党の修正の目的は、その中において、いわゆる負担減を若干減らしてでも給付の改善に充てるべきだ、このように認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/44
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045・山本孝史
○山本(孝)委員 給付の改善されたものが何に当たるかというのは人によって受けとめ方が違いましょうからわかりませんが、いずれにしても、二分の一に引き上げるときに給付の改善をしてあげるんだ、こうおっしゃっておられるわけですね。
そうしますと、その前段階になります、我々国民サイドがずっと理解しておりました、あるいは一方的な理解だったのかもしれませんが、国庫負担が二分の一に引き上がることで国民年金の保険料は三千円下がる、あるいは厚生年金の保険料は二・五%上げなきゃいけないところが一%下がる、こういう理解をしてきたわけですね。すなわち、国庫負担二分の一に引き上げるために費用がかかる、その上がる部分だけ保険料は下がる、そっくりそのまま下がる、こういうふうに理解をしてきたわけですが、ただいまの厚生大臣の御答弁は、この二分の一に上がる分だけそっくり保険料は下がるのではなくて、保険料の下げ幅を圧縮してでも給付の方をよくする側に回してあげるんだ、こういう御答弁をされておられるんですが、そう認識してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/45
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046・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 与党の修正案を受けまして、私どもといたしましては、年金審議会で御検討いただくことでございますが、基本的な考え方はそのように受けとめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/46
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047・山本孝史
○山本(孝)委員 わかりました。
それで、国庫負担割合の引き上げについてもう一点。最初の質問に戻りますけれども、国庫負担の引き上げの時期と凍結解除時期は同時だという御答弁をされました。問題はその時期だというふうに思うんですね。
私、十九日にこの委員会で質問させていただきましたときに、平成十六年には国庫負担割合が二分の一になるということは断言できないけれども、そうあるべきだ、こう考えております、こういう御答弁がございまして、十六年にどうなっているかは今明確には答弁できないんだけれどもというのが私に対する御答弁でございました。
その後、坂口政審会長の御質問に対して二〇〇四年より早い時期にでも引き上げをしたいという御認識を示されましたので、私への答弁の中では十六年にどうなっているかわからないよとおっしゃりつつ、坂口政審会長への御答弁では十六年より前にそうなっていることもあり得るという御答弁をされましたので、そういうふうに認識がお変わりになった、あるいはお考えがどうなっておられるのか、ここをお示しいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/47
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048・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 附則の中で、委員御案内のように、三分の一から二分の一に引き上げることにつきましては二〇〇四年までの間に実施する、いわゆる安定した財源を得つつという前提がございますけれども、そういうことでございます。要するに、山本委員あるいは坂口委員の話の延長線上の話でございまして、年金制度改正大綱の中でも、現在保険料の凍結をいたしておりますけれども、凍結の解除と基礎年金の二分の一引き上げは同時にすべきだ、こういうことが基本として明記されておるわけでございまして、私といたしましては、保険料の凍結の問題もこれあり、またさらに、いわゆる国民の年金に対する不安といいますか、そういうような御心配というものを一刻も早く解消しなければならない、こういう観点から、二〇〇四年を待たずして、できるだけ速やかに実施する方向で努力をしたい、こういうことを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/48
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049・山本孝史
○山本(孝)委員 それでは、いわゆる税方式という部分です。私どもが主張しておりますけれども、今回参考人の皆さんの御意見を聴取する中で、この税方式を主張される方たちがかなりおられたというふうに理解をしております。
大臣もよく御承知のように、社会保障制度審議会が昭和五十二年に出しました勧告、「皆年金下の新年金体系」は、皆年金制度というのは社会保険では無理だという前提に立っておりまして、最低生活保障は国民すべてが負担すべきである、その方式としては、現在賦課方式になっているものを税方式で、それも所得課税が望ましいけれども、執行の面からは消費税という論旨を展開しているわけです。
同様の考えを参考人からも多く聞いたところでございますが、基礎年金の税方式という考え方、丹羽厚生大臣はかねてから二分の一どまりではあるのですけれども、かなり今回の審議を通じても税方式に対する賛同の声が聞かれているわけですけれども、大臣としてあるいは厚生省としてここをお考えになるお気持ちはないのか、お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/49
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050・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 公聴会での参考人の意見の中で税方式を求める声があったということも私聞いておるわけでございますが、今回の改正法律案の中におきまして、基礎年金につきましては、財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に安定した財源を確保して国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るもの、こういうような附則が先ほど来申し上げておるようについておるわけでございます。
基礎年金につきましては多くの検討事項が指摘されております。その一つとして御指摘の問題もあるものと認識いたしておりまして、基礎年金について幅広く今後検討していかなければならないと思いますが、御案内のように、我が国の社会保障というものは、いわゆる負担と給付との関係を明確にしなければならない。いわゆる税方式ということは、国民にすべてひとしくでありますけれども、ある意味におきまして生活保護的な色彩を持つものであることも紛れもない事実でございます。今後、長期的、安定的に年金制度を維持していくという観点からも、私は国民の理解の得やすい社会保険方式が最も適していると個人的に考えているような次第でございますし、厚生省もその考え方でございます。
いずれにいたしましても、今後の扱いにつきましては与党三党間の協議の中でも十分に議論されるものと認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/50
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051・山本孝史
○山本(孝)委員 年金審議会でもいわば門前払いにされてしまったという印象を持っておりますけれども、基礎年金税方式化というのは国民に最低保障という意味で年金制度の安定への入り口というか第一歩だというふうに私はかねて考えておりまして、与党三党の協議もございましょうけれども、もう一度白紙の状態でぜひ御検討をしていただきたいということをお願いしておきます。
それから、これもこの委員会で何回も審議になりました無年金障害者の問題ですけれども、私も、改めて関係者のお話を聞いておりまして、これはやはり国として対応を考えるべきではないかというふうに思います。
障害年金を受給しておられないために、この方たちは国民年金保険料が免除されません、福祉定期預金もできません。地域振興券も受けることができませんでした。そういう意味では二重の差別をこの無年金障害者の皆さんは受けておられると思います。
国会の附帯決議が年金改正のたびについておりますけれども、厚生省としては保険方式の中では検討する余地がないと。これも門前払いをしておられるということだと思います。一方、障害者福祉の中で十分な手当てをすると言いつつも、これも一向に前に進んでいない。学生は任意加入できたではないかというふうにおっしゃるわけですけれども、厚生省自身がお調べになった平成元年の調査でも、全国百六十万人の学生のうち任意加入しておりますのは二ないし三%にしかすぎません。こういう実態を見ますと、学生が任意加入とされていた時代において加入していなかったのだから無年金になってもやむを得ないという説明は、非現実的ですし、当事者からすれば非常に納得のしにくい話だと私は思います。
そういった意味で、今回またまた附帯決議で同じものを書くのは私はいかがかというふうに思いまして、大臣の率直な御感想をお伺いするとともに、しっかりとした対応をお願いしたい。年金制度の中でも検討できるのではないかというふうに思いますので、もう一度お考えをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/51
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052・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 学生を含めたいわゆる無年金障害者の問題については、この委員会でも繰り返し各委員から御指摘のあるところでございます。
特に学生につきましては、平成三年の四月から強制加入とされましたけれども、任意加入のもとで国民年金に加入せず、ために障害になった方々につきましては、そもそも年金制度に加入しなかったときの障害であり、このような方々に障害年金を支給するということは、ほかの保険料を納めていた方とのバランスということが一番大きな問題になるわけでございまして、私はやはり公的な年金制度の根幹にかかわる問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
確かに、委員が御指摘になりました問題についても、情の面においてはよくわかるわけでございますが、それでは社会保険方式とは何ぞやということになれば、本来入ることができる人が入らなかったために無年金障害になった方と、あるいは入りたくても入れなかった方、その辺のところは十分に検討していかなければならない問題だな、このように考えているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/52
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053・山本孝史
○山本(孝)委員 この点については大臣の答弁はいつも同じことの繰り返しになってしまうのですけれども、入れたのに入らなかったんだ、制度は整備してあげたのだよとおっしゃっても、私の質問も繰り返しになりますけれども、平成元年の厚生省調査においても百六十万人の学生のうち入っているのはわずか二ないし三%しかいないわけですね。九八%、九九%近い方たちは任意加入制度ができていても実は入っていない。それは明らかに政策的な間違いだというふうに私は思います。
そういう現実を直視した対応というのが厚生省には求められているのであって、国会の側は五年の改正ごとに附帯決議をつける、そのたびに厚生省は同じ答弁をする、そして障害無年金の方たちはそのはざまにあっていつまでも日の目を見ない。こういう政策をしている限りにおいては何ら改善しないのではないか。
だから、同じ答弁を厚生省の役人は書くのでしょうけれども、情の世界の話を持ち込まれても困るとおっしゃいましたが、私は政治にも情はあってしかるべきだと思います。ここは大臣がその気持ちをどうお受けとめになって、どうしていかなければいけないかというお気持ちの部分だと思うのですね。ここは政治が出る場面ではないかと思うのです。
重ねての質問で恐縮ですけれども、大臣の心のうちをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/53
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054・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 率直に申し上げて、大変難しい問題だと思います。
問題は、先ほどから申し上げておりますように、入ることができても入らないためにそういうふうになった方と、いろいろな事情があって入れなかったという方を洗いざらいきちんといたしまして、そういう方については何らかの方法というものを検討する余地がある、私はこのように考えているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/54
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055・山本孝史
○山本(孝)委員 個々の方の事情をよく聞いて、それで対応する道も探してみたいという御答弁のように聞こえますけれども、ぜひそれぞれの方たちに、十万人ということでございますし、今、年金積立金の運用益を児童手当の拡充に使ったらどうだという案が検討されているように、私は新聞でしか見ておりませんけれども、そういったことをするよりも、まずこの無年金障害者への給付に充てるべきだというふうに私は思いますし、その方が国民も理解しやすい、納得できると思います。ですから、児童手当の拡充を考える折にはぜひこの点は考えていただきたい、これは私の思いでございます。
それから、年金積立金の問題も、この委員会で何度となく議論をされてきました、きょうも質問の中に出ているわけですけれども、私厚生省あるいは大臣の御答弁を聞いておりまして、まるで証券会社のセールスマンの方がお話をされておられるような印象を受けるんです。ローリスク・ローリターンで運用します、できるだけもうけて皆さんに還元をします、ポートフォリオでやりますから安全です。こういうお話は実は証券会社のパンフレットに出てくる話であって、国がやる話ではないのではないかというふうに私は思うんですね。
私は、国民の側からしましたら、百四十兆円を運用してうまく厚生省にもうけてくれと言っているわけではないと思います。少なくとも損失を出さないようにしてほしい、今の年金福祉事業団のような損失を出すようなことはしてほしくないんだ、きっちりとそれは守っていってほしいんだというのが、私は国民の率直な感想ではないかというふうに受けとめています。厚生省が証券会社になる必要はない、丹羽証券というものをつくる必要はないと私は思うんです。
今、積立金の流れを見ておりましても、平成十二年ベースで厚生年金六年分、国民年金三・三年分持っております。国庫負担三分の一ベースで、二〇二五年にも厚生年金三・八年、国民年金二・八年、二〇五〇年になりましても厚生年金三・三年、国民年金二・八年、積立金を持つというふうに聞いております。平成十一年度も新たに積立金を積み増すという計算になっております。いまだに積立金を積み増しながら、しかも巨額の積立金をピーク時にも持ち続ける、こういう必要性が本当にあるんだろうか。国民の側からすれば、これは素朴な疑問だと思うんですね。本当にこんな巨額の積立金を持つ必要があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/55
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056・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 今後数十年にわたります積立金の将来推移を見ますと、現在は五・五年分でございますけれども、これがピークでございます。今後、保険料の引き上げであるとかあるいは運用の収益によりまして金額的にはある程度増加が見られる、こういうようなことでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、少子・高齢化社会を迎えまして、受給者が大変な勢いでふえ続けておるわけでございまして、こういう観点から見ますと、支出に対する割合というものは今がピークでございまして、次第に低下していく、こういう見通しでございます。
私が先ほどから申し上げておりますように、積立金というのは、将来積立金が生み出す利子収入というものを活用することによって保険料を軽減する、こういうことでございまして、あくまでも現役世代の負担軽減という観点から、これは国民あるいは現役世代の皆さん方にとって大変役に立つものと確信をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/56
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057・山本孝史
○山本(孝)委員 ここは水かけ論になると思いますので。しかし、ポートフォリオでやるから大丈夫だと言いますが、どの証券会社に聞いても、自分たちが運用しているファンドのポートフォリオを公開するような証券会社はありません。したがって、情報公開をするといっても、国民の側にどうやって運用しているかの情報がそんなに提供されるとは私は毛頭考えていません。
繰り返しになりますが、そんなにうまくもうけてくれと言っているわけではないのです。そういう認識を、国民の普通の感覚をちゃんと持っていただいたらいいのではないかと私は思います。
それから、時間ですので確定拠出型年金は飛ばしまして、もう一つの問題、農林年金共済組合との統合問題です。
この大きな問題を抱えながら、この委員会で残念ながら農水委員会と合同審査をする時間がありませんでした。これも私は国民の素朴な感情だと思いますが、公務員よりも高い給付を求めて特別法によって厚生年金からいわば出ていって、分離独立して、その結果収支バランスがうまくとれなくなったから今度は厚生年金にもう一遍入れてほしいというのは、私はいささか身勝手ではないかというのが国民感情だと思います。
したがって、一元化して救済しなければいけないということがあったとしても、少なくとも厚生年金の側から持ち出しになるような統合、そういう不公平な措置はとるべきではないと私は思いますが、そういう約束はしていただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/57
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058・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 被用者年金制度の再編成に関する平成八年三月の閣議決定におきましては、農林共済につきまして、構成団体の加入者の減少などが制度基盤に与える影響を踏まえつつ、その制度の位置づけについて検討する、要約しますとこういうようなことが決定されておるわけでございます。
これを踏まえまして、農林共済を含めました被用者年金制度の再編成を進めるに当たりましては、社会保障制度審議会において今後検討をさせていただかなければならないわけでございますが、当然のことながら、委員の御指摘がありましたような農林共済の将来の財政見通しなど財政状況というものを検証し、そしてさらに確認をしながら行っていきたい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/58
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059・山本孝史
○山本(孝)委員 私の質問は一番最後のところにありまして、農林年金共済と合併するということがあったとしても、それは財政再計算をしながら、それぞれ移換金の話も考えられるとしても、厚生年金の側が不利になるような、厚生年金側から持ち出しをするような、そういう一元化はしないという約束はしていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/59
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060・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 貴重な御意見として十分に考慮していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/60
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061・山本孝史
○山本(孝)委員 貴重な御意見として検討するというのは、大体無視されるというふうに思いますので、これは私だけじゃなくて、厚生年金に入っているみんなが怒り心頭だと私は思います。鉄道共済あるいはたばこと違って、昭和三十年代のときに独自に自分たちだけでおつくりになったわけですから、ここは議論が少し違うのではないかと思いますので、国民の素朴な感情をしっかりと受けとめていただきたいと思います。
最後の質問、これは実は質問通告がなくて申しわけございません。
これも私は素朴な感覚だと思いますけれども、今回の改正によって年金制度は安定をするのか。五年先の財政再計算のときに、人口構造が変わったので、将来の人口推計が変わったので、五年先になって再び給付水準の切り下げ、見直しということをしなければいけなくなるのではないか。これで最後の改革だと言えるのかどうか。給付の抑制や保険料率のさらなる引き上げはない、今回の改正でもう大丈夫ですよというふうにおっしゃっていただけるのかどうか、これが最後の質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/61
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062・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 財政再計算というのは、委員御案内のように五年ごとに行われるものでございます。それに対しまして、恐らく委員の御指摘は、五年ごとに保険料が上がっていくではないかとかあるいは給付水準が下がるんじゃないか、こういうような御指摘でございますけれども、今附則の中で御議論をいただいておるように、三分の一から二分の一にする、こういうようなこともございまして、私どもといたしましては、現役世代の皆さん方が安心して年金に加入していただける長期的に安定した制度のために全力を尽くす覚悟でございます。
ただし、率直に申し上げて、先ほどから申し上げておりますように現在は四・六人で一人のお年寄りを支えておるわけでございますし、将来は二人で一人を支えるという人口構成がございますので、今私がこの場においてこれで最後ですよということは断言できませんけれども、しかし、国民の皆さん方の御期待にこたえ得ますように、委員の皆さん方の御理解、御協力を得ながら最善の努力をしていきたい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/62
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063・山本孝史
○山本(孝)委員 五年の再計算ごとに年金は逃げ水になっていっている、一度もその改正が実現しないままにまた給付の切り下げが行われてきたというのが、これまでを振り返った歴史なんです。よく御存じのとおりですね。
基礎年金の、三分の一から二分の一に引き上げて見かけ上の保険料率は変わっても、給付の水準がどうなるかという部分はあります。見かけ上の話ではなくて、今回の改正で最後か、もうこれで大丈夫なのかと言われたときに、大臣の御答弁では、大丈夫でない、五年先には再び皆さんにまた新たな御負担あるいは新たな給付の下げをお願いせざるを得ない、そのことは避け得ないんだ、こういう認識なんでしょうか、もう一度その点だけ御確認させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/63
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064・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 そういうことではなくて、先ほど山本委員からの質問の中で強い御主張もございまして、基礎年金の国庫負担を引き上げる、こういうことになれば、国民の皆さん方により安心して長期的にも安定的な年金制度が確立できる、こういうことを申し上げておるわけでございまして、要するに、五年ごとの財政再計算というものが国民の皆さん方にとって何か大変不利益な印象を与えるようなことではないのだということであります。
しかし、そうは申し上げても、この年金制度というものは、人口構成の中において、世代間の支え合いによって、いわゆる賦課方式によって成り立っているんだということも御理解を賜りたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/64
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065・山本孝史
○山本(孝)委員 質問時間がなくなりましたので終わりますが、現行制度の延長線上で幾ら議論していても、これは数字を合わせているだけにしかならないのではないかと思いますので、安定した年金制度改革のための抜本的な案を厚生省としても考えていただきたいということを最後に申し添えまして、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/65
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066・江口一雄
○江口委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/66
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067・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
今、この年金問題について非常に広い国民から関心が寄せられています。私は、この間の公聴会、そして地方公聴会、さらに参考人からの意見聴取、そういった場で広い国民の層から出された意見を国会の審議に反映させる、そういった立場で質疑を続行したい、このように思います。
まず聞きたいことは、年金資金運用基金法案、この第一条に次のようにありますね。法人である基金が厚生大臣から寄託された資金を厚生大臣が定める基本方針に沿って管理及び運用を行う。「厚生大臣が定める基本方針」、それはどのような内容か、そのことをお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/67
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068・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 運用の基本方針についての委員からの御質問だと思いますけれども、新しい自主運用に当たりましては、厚生大臣は、金融、経済などの専門家のほかに、保険料の拠出者の代表も加えました審議会の意見を聞きまして、運用に関する基本方針というものを定めることにいたしております。実際の運用に当たりましては、被保険者の意見というものを反映することが制度的に担保されておるような次第でございます。
また、この運用に関する基本方針については、法律上、専ら被保険者の利益のためという運用の目的に沿って策定することにされておりますので、その内容も被保険者の利益を図ることを基本として定められることになりますし、当然のことながら、この基本方針につきましては情報公開により透明性の確保というものを図っていきたい、このように考えているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/68
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069・児玉健次
○児玉委員 それでは、現在百四十兆円を超している積立金がどのように運用されるのか。だれとだれを集めて、こんなことについて心得を置きながらなんという、そういった中身にとどまるのであれば、肝心のこの法案審議のときに、国民に対して百四十兆円の運用については白紙委任をしろということに等しい、私はそう考えます。そこのところがこの法案審議の一つの重要なポイントです。
年金審議会が昨年十月に提出した国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見、ゆっくり読ませていただいた、その中に年金積立金の新しい自主運用のあり方という部分があって、「責任体制の明確化を図る。」とある。この運用指針の中でどのように責任体制の明確化が図れるのか、具体的に示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/69
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070・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 この運用に当たりましては、先ほどから申し上げておりますように、厚生大臣が指針を示しまして、そして基金からそれぞれの受託機関に対しまして運用を一切任すわけでございます。したがいまして、厚生大臣であるとかあるいは基金がこの運用に当たって一切口出しをするというようなことはございません。
ですから、政治的なものによって左右されるということはありませんし、運用の受託者に対しては、その方針に従って被保険者の利益のために行いなさいというような注意義務というのが課せられることになるわけでございますし、もしこれを逸脱したようなことがあって被害があれば、当然のことながら厳しい処分をする、こういうことでございます。
これは前回菅委員のときに申し上げたわけでございますけれども、国が行うこういうような自主運用について結果責任云々ということは、私はこの問題になじまない、こう考えているような次第でございます。
〔委員長退席、安倍(晋)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/70
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071・児玉健次
○児玉委員 私は時間が十八分しかありませんから、ずばり聞きます。
その責任体制の問題で、今大臣からは注意義務云々というお言葉もあった。そして、先ほどの議論の中で、民主党の同僚議員の御質問に対して、丹羽大臣からは年福事業団の反省に立ってというお言葉もあった。どんな反省をしたのか、はっきり示してほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/71
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072・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 年福事業団の場合は、例えば、私が承知いたしております範囲におきましては、株の運用というものが三〇%前後あった、そういう中におきまして、激しい市場の変動によりまして、先ほど来申し上げておりますように、平成十年度の三月末におきましては一兆二千億の損失をこうむった。しかし、その後市場の株価の上昇によりまして、利払い後でございますけれども、八千億返済をし、要するに八千億回復し、四千億前後になっておる、こういうことでございます。
これまで、年福事業団においては、例えば株を何%買いなさいとか、そういうような細かい指示はないと承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/72
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073・児玉健次
○児玉委員 私も以前からいろいろ議論してきていますから、大臣は物事を端的に率直に言われる方だと思うので、私もそういう方ですから申しますけれども、今のお話では、結局、年福事業団の反省というのは市場の変動が激しかったということに置きかえられていると思いますね。私は、そうではないと思う。あくまで被保険者の利益のためにどうやって積立金の損失を出さないか、そのことについての努力が足りなかった。
この後に注意義務という言葉が基金法の中に入ってくる。忠実義務という言葉も入ってくる。私は矢野局長に事実の有無に関してのみ端的にお聞きするけれども、年福事業団法の中には役員や職員について注意義務、忠実義務という言葉は入っておりません。しかし、あなたの答弁の中では、年福事業団の役員は十分な注意義務を果たした、こういうくだりもあったと思うんですね。書いてある、書いてないに関係なく、こういった仕事を担当する人物は注意義務、忠実義務を負わなければならない。そうじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/73
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074・矢野朝水
○矢野政府参考人 おっしゃるとおりでございます。
欧米では、これはプルーデントマン・ルールと言われております。これを今回法案の中に盛り込んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/74
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075・児玉健次
○児玉委員 おっしゃるとおりであれば、盛り込んだからといって何の保証もないということは、まさにおっしゃるとおりです。
そこで問題なのは、アメリカが年金積立金の株式投資を運用の対象にしていないというのは周知の事実です。随分この委員会でも議論になった。クリントン大統領が、本年の一月、株式運用を提案し、グリーンスパン氏その他の厳しい反論に遭って、十月、事実上断念した。
十二月二日、本委員会に出席してくださった参考人、慶応大学の加藤秀樹教授は、私の質問に対してこのようにお答えになった。本当に圧倒的に世界最大の機関投資家が誕生するということですから、そのことの市場に対する影響というのは極めて大きいと思います、しかも、これも先ほど若杉参考人、これは積立金運用についての厚生省の検討会の座長ですね、若杉参考人がお答えになりましたように、政治的な影響というのは、これは排除できないと思います、一〇〇%排除する仕組みをつくるということは、これは不可能であると思いますと。私もこの点については完全に同感ですね。
運用リスクの問題とポリティカルリスクの問題。基金がある意味では責任を負わない形である種の観測が流れる、それだけで市場が影響を受けるということは十分に考えられる。加藤教授がおっしゃっているように、これを一〇〇%排除する仕組みをつくるということは困難である。それなのに、なおかつ、パーセンテージの多寡は別として、積立金の運用の対象に株式投資を置いている。なぜだろうか。ここのところの根本的な再検討が必要だと私は考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/75
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076・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 アメリカのクリントン大統領が株式の運用を提案して、グリーンスパン議長がこれに対して反対をしたということは、前回以来承知をいたしておるような次第でございます。要するに、私どもは、先ほどから申し上げておりますように、アメリカの場合におきましては、政府による運用に対する政治的圧力の可能性であるとか、先ほどから御指摘を申し上げておりますような資本の効率的な配分を妨げる可能性、こういったものを懸念してグリーンスパン議長がこのような考え方を示したのではないか、こう考えているような次第でございます。
私どもは、先ほども申し上げたわけでございますけれども、我が国の、自主運用におきましては十分こういう点を配慮しながら、要するに株式におきましてはいわゆる確定的な割合というのを少なくするということは、まずそれでやってございます。国内の株式は、あくまでもまだ研究会の段階でございますが、一割程度でと考えておるわけでございますし、それから、あくまでも国や年金資金運用基金が行うのではなくて民間の運用機関が運用する、こういうことでございますし、情報の公開であるとかあるいは責任体制の明確化、こういうものを徹底することによりまして政治的な圧力や市場への悪影響を排除できる、こういうことを法律上明記することによりましてこうした問題を解決できる、このように確信をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/76
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077・児玉健次
○児玉委員 そこで、今お話しになったことに深く関連するのですが、積立金の運用を株式市場で行う、株に伴う議決権はどうなるのか、こういう問題が出てきます。
この点についても、私の質問に慶応大学の加藤教授は、コーポレートガバナンスの話だと思います、企業統治の話ではないか、こう前置きされた上で、こうおっしゃった。国が株主として権利を行使するとすれば、やはり企業に対する経営の介入、これは間接的であっても経営に対する介入というふうになりますし、逆に、これだけ大きい金額を動かす機関投資家が一切それを行使しないということになれば、これは株主の責任はどうなるのか、企業の経営をチェックする機能というのが動かないのではないか、こういう問題を含んでいると思いますと。私は、これまた本質的な指摘だと思います。
そして、先ほどの年金審議会の意見書の中でも「有価証券市場への影響や」、次の部分です、「株式投資による企業経営への影響が不適切なものにならないようにする。」まさにこの問題ではありませんか。国が私企業の株を取得して議決権を行使するとすれば、国が私企業に対して経営に介入することになる、それをしなかったら、株が紙くずになることについて、言ってみれば何らのチェックもできない。この問題について厚生省はどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/77
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078・矢野朝水
○矢野政府参考人 コーポレートガバナンスの問題は非常に重要な課題だと私ども認識しております。そして、この解決のために私どもとしてはこういう手法を考えておるわけです。つまり、金融機関を通じて株式投資をするわけでございますので、民間金融機関が議決権を行使する場合に、基金と民間金融機関との間で、株主の利益を擁護する観点から一定のガイドラインをつくったらどうだろうか、そういうことで、株主権の行使というのは民間金融機関にやっていただくわけですし、その場合には株主の利益を高めるような考え方でその行使をしていただく、こういうことによってこの問題は解決しよう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/78
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079・児玉健次
○児玉委員 民間の金融機関に委託するというのも当たり前の話であって、そのことがあるからポリティカルリスクを排除できるなんてだれも思わないですよ。まさにだれも思わない。こういう最も根本的な問題が提起されていて、年金審議会の中でも営利企業の経営に対する介入に対して懸念が出ている。先ほども発言がありましたが、積立金の運用というのは、文字どおり損失を招かないということが肝心であって、それ以外の道を歩むべきではない。
私はこの際申したいわけだけれども、年金審議会の先ほどの意見の中でも、「巨額の積立金を保有することについては、インフレによる目減りや運用の困難性を考えると必要ない」という意見があり、「積立金の規模は給付費の支払準備に必要な程度にとどめるのが適当である」という意見があるという紹介もされていますね。
そこで、この後、年金についての審議はさまざまな形で私たちは続けていくことになるけれども、二十一世紀の中葉以降も年金財政の担い手が減り続ける、こういうことを前提にして積立金は勤労国民の利益の立場で抜本的に見直す必要がある。その規模、運用のあり方、年金給付額を基本的に維持するために、保険料率を引き上げないために、積立金を適切に活用していく、そのことも含めて積立金のあり方を是正すべきだ、こう考えますが、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/79
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080・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 運用のあり方でございますけれども、公的年金の積み立てというのは、先ほどから申し上げておりますように、将来世代の負担を軽減するため、世代間の負担の公平を図るためのものでございまして、今後、少子・高齢化が一層進展することを考えますと、この役割は大変重要である、私はこのように考えているような次第でございます。
それから、先ほどもちょっと触れさせていただいたわけでございますけれども、積立金は、支給総額に対する割合で見ますと、今後どんどん減少していくことが見込まれておるわけでございまして、今や毎年の年金支給額は、毎年の保険料収入のみで行うことができない状況であるわけでございます。こういうような状況の中で、積立金の運用の課題はいかに利回りというものを確保し将来世代の負担の軽減に役立てるか、こういうことに尽きるのではないか。
今回財投への預託義務というものが廃止されたわけでございまして、今後は、運用のあり方につきましては、先生が先ほどから御指摘いただいておりますように、安全確実性に配慮しながら、いかに利回りを確保し将来世代の負担の軽減に資するか、このことを基本としながら考えていきたい、このような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/80
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081・児玉健次
○児玉委員 時間が参りましたので、私、一言だけ申して終わりたいと思うのです。
少子・高齢化、高齢化というのは祝福すべき問題で、少子は社会の力を挙げて克服しなければならない問題です。
そして、支え手と扶養されるべき人の関係ですが、これまで随分議論してきましたが、厚生省の権威ある人口推計によっても、何が問題になるかというと、働いている人が自分以外にお年寄りと子供をどのくらい支えるか、それが問題なんです。一九九〇年についていえば、自分を除いて〇・九四人、二〇〇〇年の場合は自分を除いて〇・八八人、そして二〇二〇年には〇・八九人。要するに、働いている人は自分を除いて一人弱を支えればいいという点については変わりがないんですね。そのことも含めて年金の問題というのは二十一世紀に責任を負う立場で議論しなければならない、その議論を続けるということを述べて、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/81
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082・安倍晋三
○安倍(晋)委員長代理 中川智子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/82
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083・中川智子
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
まず最初に、今回先送りされたというか、本当にいつになったらこれが解決するのだろうと思う問題について質問をしたいんですが、女性と年金については、今回もまたいわゆるサラリーマンの妻である三号被保険者の問題が先送りされました。
厚生省は、いつも世代間の負担と給付のバランスのことは強調されますけれども、専業主婦世帯と共働きやシングルなど、世帯間の負担と給付の公平性についてきっちり認識されていないようで、これを重要視していないように思いますが、これに対して大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/83
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084・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 女性の年金権の問題につきましては、先般来先生から繰り返し御質問を受けているところでございます。
女性の社会進出であるとか、あるいは家族や就労形態の多様化など社会実態が進んでおりまして、こうした実態と年金制度との調和をいかにして図っていくかという問題でございます。
現に、いわゆる第三号被保険者というのは一千二百万人おるわけでございます。こういったような問題をどういうふうに解決していくか。これは年金制度の分野にとどまらず、民事法制における離婚時の財産分与のあり方であるとか、税制における配偶者の取り扱いであるとか、いわゆる社会保障全般の中でこれらの問題というものは解決していかなければならない、このように考えているような次第でございます。
私は前回の委員会で申し上げましたけれども、しかし、それでは百年河清を待つごとくではないか、こういうようなことでございますし、今言ったような問題について、早急に、いずれにいたしましても女性の年金権を確立するという方向に沿って、解決できる問題から検討していかなければならない、このような認識に立つものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/84
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085・中川智子
○中川(智)委員 やはり女性の経済的自立が軽視されていると思うんですね。一生懸命働いても、男性のお給料から比べて、いつまでたっても女性の賃金が低く抑えられている。そして、パートタイマーで働く方々も、百三十万の壁というものが前に大きく立ちはだかっているという部分があります。
やはり少子、子供が生まれるのが少ない、保険料の担い手がより少なくなることがわかっているんですから、女性がきっちり働く、そして年金も自分自身できっちり払っていく。給付の切り下げとか支給年齢の引き上げばかりに着目するんじゃなくて、その前に、保険料を払える人、払う人をもっとふやしていく、そこをやっていくべきだと思うんですね。そこの改革というのをいつまでも先送りにしていると思います。女性ができるだけ担い手になるように、働く女性をバックアップすべきだと思うんですね。
今の大臣の御答弁にもありましたけれども、働く女性をバックアップするには雇用平等政策です。今度労働省と厚生省が一緒になるわけですから、やはり雇用の平等政策ともう一つは社会保障の政策を連動させてしっかりと議論すべきだと思いますし、社会保障というのはライフスタイルの選択に中立であるべきだと思うんですね。
今大臣が、早急にというふうにおっしゃいましたが、厚かましくて申しわけないんですけれども、早急にというのは、いつごろをめどに、どのような委員会なりどういうふうなシステムとしてそれをやっていこうとされているのか、女性の年金問題というのに対して一歩踏み込んだ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/85
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086・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 早急にということで時期を示せということでありますが、率直に申し上げて、専門家の委員の皆さん方の中でこの問題について御議論をいただいておるわけでございますが、その中でもまだ結論が出ないということが事実でございます。しかし、そうは申し上げましても、できるだけ集約した意見をまとめていただきたい、こういうような私の願いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/86
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087・中川智子
○中川(智)委員 続きまして、年福事業団の解散と承継のことで伺いたいと思うんです。
事業からの撤退については、融資事業等が年金制度に対する保険料拠出者のさまざまな理解を深めるというところも一定あるわけなんですけれども、そこを踏まえて、被保険者や年金受給者に悪影響が出ないようにということ。また、いろいろなところの事業で地域経済への影響というのもこの解散についてはあると思います。地域経済への影響と雇用の確保、これは先般も私は質問させていただいたんですけれども、やはりその方たちの不安の声というものを十分に受けて、雇用の確保に十分配慮して実施していただきたいという要望に対して、大臣の明確な御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/87
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088・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 これは、先ほどから申し上げておりますけれども、平成九年の閣議決定を踏まえまして、この事業団を解散し、例えばグリーンピアであるとかいうような大規模保養基地、こういうような事業から撤退することになりましたが、被保険者、これまで三千五百万人の方々が御利用なさっておるわけでございますが、こういうようなことも十分に踏まえながら、そして、被保険者などのニーズが現にございます住宅融資事業などにつきましては、別に法律で定めるまでの間新しい基金において実施することにいたしておるわけでございます。
いずれにいたしましても、被保険者であるとか年金の受給者であるとか、さらに委員御指摘のように地域経済に悪影響が出ないように、最大限配慮して取り組んでいく次第でございます。
また、職員の雇用問題につきましては、年福事業団の解散と事業の整理に当たりまして最重要課題の一つとして考えておりまして、十分に配慮していく決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/88
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089・中川智子
○中川(智)委員 それでは、きょうは最後の年金での質問ですので、無年金障害者の問題についてもう一度伺いたいと思うんです。
附帯決議まで出されたものが形としては厚生省に全く無視をされてしまったことに対する怒りと失望というのが、とても深いものがあります。年金審議会の委員の中に、ぜひ議論の機会をとっていただくようお願いしたいとか、また、現行制度では困難であると言って片づけてしまわないでぜひとも障害年金への道はあけておく方がいいという意見が出たにもかかわらず、議論の場を設けなかった厚生省に対して、審議会の委員は、厚生省が目を背けたというふうにおっしゃったり、また、附帯決議までされたものが大事にされなかったということをおっしゃっています。
厚生省の最高責任者としての大臣にぜひともこの問題に対して御見解を伺いたいのですが、無年金障害者の方の問題を早急に解決するために、やはりこの場で、今回は附帯決議も付されません、ですから、無年金障害者の方たちに対する、本当にどうやって解決していくかということを、今までのようにあいまいな答弁ではなくて、少しでも希望の光が見えるような御答弁をぜひともいただきたいと思います。
〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/89
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090・丹羽雄哉
○丹羽国務大臣 この問題につきましては中川委員から繰り返し繰り返し、またほかの委員からも御指摘されて、きょうもされておるところでございます。
私自身、ここで心境を打ち明けてもしようがないのですが、内心じくじたる思いがあるわけでございます。この問題の解決については専門家の皆さん方にも御意見を求めているところでございますけれども、なかなか難しい論点が残されておるわけでございます。社会保険方式のもとでどういうような救済の道があるか、いずれにいたしましても、今後とも関係方面の皆さん方の御意見を聞きながら、私なりに、知恵がない男でございますが、知恵を絞って考えてまいりたいというのが最大限の私の答弁でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/90
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091・中川智子
○中川(智)委員 私は、この間の乱闘騒ぎを見ていらっしゃる大臣のつらそうな顔を見て、本当に優しい方だと思いました。ぜひともしっかりと、この無年金障害者の問題は、大臣が任期である間に何とか道筋をつけていただきたいと最後にお願いいたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/91
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092・江口一雄
○江口委員長 この際、山本孝史君、児玉健次君、中川智子さんから発言を求められておりますので、順次これを許します。山本孝史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/92
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093・山本孝史
○山本(孝)委員 私は、民主党を代表して、年金関連三法案に強く反対する立場から討論を行います。
法案に反対する理由を述べる前に、与党三党による横暴な委員会運営について強く抗議をいたします。
国会活性化を目指したこの国会において、厚生委員会における与党側の姿勢は、盗聴法あるいは住基法で見せた小渕内閣のごり押し、問答無用体質そのものでございます。
以下、四点の罪状を申し述べます。
第一に、公聴会日程の決定と法案採決を強行したことです。委員会は大混乱となり、議長裁定によって法案審議は委員会に差し戻しとなりました。
第二に、公聴会の開始直前、我々の抗議にもかかわらず、公述人を目の前にして、あした採決しますと与党側が強引に決めたことです。公聴会を法案採決への通過儀式としか考えていない与党側の姿勢は、国民や国会を軽視するものです。
第三に、依然として法案審議の時間数で審議の深まりを判断するあしき習性に陥っておられることです。今回は、年金改正法案にとどまらず、年金福祉事業団の解散と年金積立金の自主運用にかかわる法案があわせて提出されています。そのことからも審議時間は十分でなければならず、まして丹羽厚生大臣が明確とは言えない答弁を繰り返しておられる中においては、より慎重な審議が求められます。
第四に、審議を避ける与党の姿勢についてであります。先週木曜日の参考人質疑と昨日の地方公聴会後の審議時間は、本日の一時間四十分だけです。参考人の貴重な意見を委員会審議に反映させようという姿勢は与党側にはついぞ見られませんでした。
以上四点のみを申し上げましたが、与党側が強引な委員会審議に終始したため、審議を通じて年金のあるべき将来像を国民に示すという、国会の重大な責務は残念ながら果たされなかった。多くの課題が積み残しになっていると思います。
次に、年金関連三法案に反対する主な理由を申し述べます。
第一に、今回の年金改正法案は、年金制度の安定に欠かせない基礎年金の改革を避けたまま、給付水準を切り下げたり年金支給開始年齢を引き上げるなどの給付抑制策を実施しようとしているにすぎないことです。
我が党は、前回改正時の確認事項を踏まえ、今回改正から基礎年金の国庫負担割合を二分の一へ引き上げる法律案を、三月の五日本院に提出をしました。これは今回の政府案への対案とも言えるものですが、一方、政府は、次回二〇〇四年までに引き上げると、またまた先送りをしたにすぎません。
反対する第二の理由は、年金支給開始年齢の六十五歳への引き上げです。異常なリストラが進行して雇用不安が高まっている中、政府の高齢者雇用の推進策も効果を上げておりません。そのような折に、さらに国民の不安を高めるような施策はとるべきではありません。
反対する第三の理由は、百四十兆円にも上る巨大な年金積立金の運用を、厚生省が世界一の機関投資家として行うことについてであります。そもそも国が巨額の積立金を持つ必要があるのか。自主運用案もあいまいなままです。拙速な審議に任せず、財政投融資制度の改革にあわせて審議をやり直すべきだと思います。
第四に、年金福祉事業団の解散に関して、その責任の所在を含めて、これまでの経営実態が明確にされなかったことです。巨額の損失を生じさせたまま、また同じ過ちを繰り返すに違いありません。
以上、反対の主なる理由を申し述べました。
少子・高齢社会にふさわしい年金制度や社会保障制度のあり方を与野党を問わず十分に論議をし、安心できる国民生活あるいは暮らしの安心保障体制をつくることは国会の責務であると考えます。学者や官僚に任せておいて安心できる年金制度が構築できるのでしょうか。私は、もっと政治家が責任を持った議論をすべきだと思います。そういう意味で、議論を避ける自民党の姿勢からは何も生まれてこないと申し上げて、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/93
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094・江口一雄
○江口委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/94
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095・児玉健次
○児玉委員 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等三法案に対する反対討論を行います。
反対理由の第一は、国庫負担の引き上げを先送りしていることです。
前回の改正時に、法の附則、附帯決議で、次回の財政再計算のときに国庫負担を二分の一に引き上げることを検討するとしました。ところが、本法案では国庫負担の引き上げを先送りしました。国民に対する重大な約束不履行です。
与党の修正案はこの附則二条に「給付水準」を入れただけのものであり、五年後に年金水準を検討するということでは、これもまた先送りにしかすぎません。改悪法の成立を前提とした同修正案には反対です。
第二の反対理由は、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げが国民の老後の暮らしを直撃することです。
政府は、六十歳代前半層の雇用の場の確保を支給開始年齢引き上げの前提としてきました。現在、異常なリストラ、解雇の横行によって、この前提が完全に崩れ去っています。支給開始年齢の引き上げは、日本の高齢者の深刻な雇用状況を無視し、憲法第二十五条が保障する国民の生存権を乱暴に侵害するものです。
第三に、賃金スライドの凍結及び厚生年金報酬比例部分の五%削減です。
賃金スライドの中止と支給開始年齢の引き上げ等で、二〇二五年度時点の年金給付額が二割カットされます。我が党の質問に対して、厚生省は、生涯で受け取るべき年金が一千万円の減額となると答弁いたしました。これでは、老後への不安から消費を一層冷え込ませ、不況打開を困難にします。
反対理由の第四は、厚生省が全面的に積立金の株式運用を行うことです。
積立金の運用について、本法案は運用に関する基本方針も示されておらず、損害が生じた場合の責任や、株価の買い支えのための運用等を規制する確かな保障がありません。米国は、積立金の株式運用を禁止しています。
最後は、無年金障害者の年金について全く触れていないことです。
厚生委員会の附帯決議で、無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すると明記されました。ところが、本改正案では全く触れておらず、全国の障害者の切なる期待を裏切るものとなっています。
今回の法改正では、年金福祉事業団の廃止や積立金の全面運用に伴う重要な問題が新しく提起されており、それらの内容について、当然、慎重な審議が求められていました。この求めに反して、不十分な審議時間で、しかも公聴会の前に採決の日取りを決めて、強行採決を行うなどということは、絶対に許されないことです。
日本が本格的な高齢社会に向かう今、公的年金制度を守り、社会保障を充実させることこそ、不況打開、日本経済の再建に直結する大道であります。この大道に逆行する本法律案の撤回を要求して、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/95
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096・江口一雄
○江口委員長 中川智子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/96
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097・中川智子
○中川(智)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案など三法案に対して、反対討論を行います。
許せない、心の底から強くそう思いました。数さえあれば何をやってもいいのか。こんなことがまかり通るならば、私は何のために国会に来たのかわからない。市民の皆さんに説明すらできないと思いました。厚生委員会は、国民生活の福祉の向上、押しなべて、国民の命と健康を守る大切な法案を議論するところです。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/97
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098・江口一雄
○江口委員長 静粛に。静粛にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/98
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099・中川智子
○中川(智)委員 年金改革三法案は、通常国会では、自民、自由両党が、連立政権であるにもかかわらず基本的なところで合意を見出せず、会期末になってやっと提出、たったの一度も審議できず、継続となりました。そして、今国会の十一月十六日に本会議の趣旨説明、あろうことか二十六日には強行採決されかけ、我々社民、民主、共産の野党三党が体を張って阻止しようとしたのは、本委員会に付託されてわずか九日後のことでした。たった十七時間二十八分の審議、形ばかりの公聴会、参考人の質疑のみでした。これじゃ、年金に対する不信、不安が増大するのは当たり前です。何のために委員会があるのかわからない。全くひどいものでした。
基礎年金の国庫負担の三分の一から二分の一も平気で約束を破る。賃金スライドもやめるし、給付水準も下げる。これほど雇用の不安があるときに、給付年齢を六十歳から六十五歳にするなどという、全くこの国に社会保障の理念などあるのかと言いたくなります。だからこそ、納得のいく審議をしてもらいたかったのです。
年金積立金の自主運用と年福事業団の事業承継についても十分な審議が行われたとは言えず、とても賛成できるものではありません。
女性の年金問題については、またしても先送りされてしまいました。年金改革論議に女性の経済的自立の視点が全く欠落しています。保険料の担い手がより少なくなることがわかっているのですから、支給開始年齢の引き上げや給付の引き下げ、保険料の引き上げなどを国民に迫る前に、もっと保険料を払える人をふやすことが大切ではないでしょうか。女性ができるだけ担い手になれるよう、働く女性をバックアップすべきだと考えます。そのためには、雇用平等政策及び社会保障政策が大事です。そして、社会保障は、ライフスタイルの選択に中立であるのが原則。今回の年金改革に、いわゆるサラリーマンの妻である三号被保険者の問題も先送りされたことは、またしても時代おくれの年金制度と言わざるを得ません。
また、障害無年金問題については、前回の年金改正で附帯決議までされたものが今回は全く無視され、無年金の障害者の方々を救う手だてが一切講じられなかったことに対して、強い怒りを覚えます。弱い立場の人々を見捨てる政治に未来はありません。
社会民主党・市民連合は、断固として年金関連三法案及び与党提出の修正案に反対であることを表明して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/99
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100・江口一雄
○江口委員長 これにて発言は終わりました。
この際、念のため確認をいたします。
まず、木村義雄君外二名提出の国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/100
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101・江口一雄
○江口委員長 起立多数。
次に、ただいま確認いたしました修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/101
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102・江口一雄
○江口委員長 起立多数。
次に、年金資金運用基金法案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/102
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103・江口一雄
○江口委員長 起立多数。
次に、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/103
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104・江口一雄
○江口委員長 起立多数。
次に、三法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/104
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105・江口一雄
○江口委員長 御異議なしと認めます。よって、国民年金法等の一部を改正する法律案につきましては、木村義雄君外二名提出の修正案は多数で可決、その修正部分を除く原案は多数で可決されたことにより、本案は修正議決され、年金資金運用基金法案は多数で可決され、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案は多数で可決され、三法律案の委員会報告書の作成は委員長に一任されたことが明確になりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十八分散会
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〔参照〕
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派遣委員の大阪府における意見聴取に関する記録
一、期日
平成十一年十二月六日(月)
二、場所
ホテルアイボリー
三、意見を聴取した問題
国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 江口 一雄君
安倍 晋三君 木村 義雄君
田中眞紀子君 金田 誠一君
山本 孝史君 久保 哲司君
吉田 幸弘君 児玉 健次君
中川 智子君
(2) 現地参加議員
中野 寛成君 吉田 治君
辻元 清美君
(3) 意見陳述者
関西学院大学経済学部教授 井口 泰君
日本労働組合総連合会大阪府連合会事務局長 伊東 文生君
奈良女子大学生活環境学部人間環境学科助教授 木村 陽子君
関西経営者協会社会保障基金制度専門委員会委員長 向山平八郎君
(4) その他の出席者
厚生委員会専門員 杉谷 正秀君
厚生大臣官房審議官 吉武 民樹君
厚生大臣官房総務課長 水田 邦雄君
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午前九時三十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/105
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106・江口一雄
○江口座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院厚生委員会派遣委員団団長の江口一雄でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。
皆様御承知のとおり、当委員会では、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催しているところであります。
御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようよろしくお願いをいたします。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの発言にお答え願いたいと存じます。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
まず、派遣委員は、自由民主党理事木村義雄君、同じく田中眞紀子さん、同じく安倍晋三君、民主党理事金田誠一君、同じく山本孝史君、公明党・改革クラブの久保哲司君、自由党の吉田幸弘君、日本共産党の児玉健次君、社会民主党・市民連合の中川智子さん、なお、現地参加議員といたしまして、民主党の吉田治君が参加をされております。
次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
関西学院大学経済学部教授井口泰君、日本労働組合総連合会大阪府連合会事務局長伊東文生君、奈良女子大学生活環境学部人間環境学科助教授木村陽子さん、関西経営者協会社会保障基金制度専門委員会委員長向山平八郎君、以上四名の方でございます。
それでは、まず井口泰君から御意見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/106
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107・井口泰
○井口泰君 それでは、年金制度改正三法案に対します意見を述べさせていただきます。このような機会を与えられましたことを、まず感謝申し上げます。
本日の私の陳述につきましては、既に三枚紙の紙をお配りいたしておりますので、それをよくごらんになりながら聞いていただきたいと思います。時間の関係で、すぐに始めさせていただきたいと思います。
まず最初に、私の意見陳述につきましての基本的な考え方を申したいと思いますが、御存じのように、大阪あるいは兵庫を含めまして、関西地域の経済情勢は非常に厳しゅうございます。失業率も高くなっております。こういう中で、この地域で何とか景気を回復し、さらに中長期的にも活性化を図るということは、労使のみならず、研究者を含めまして、一般市民にとって非常に大事な問題であります。こういった視点も含めまして、今回の年金制度改正案についての私の意見を申し上げたいと思います。
本法案は、現状におきましてもなおさまざまな問題を持っておりますけれども、既に国会で一部修正、あるいは厚生年金の特に報酬比例部分の繰り上げ支給時の減額率の問題などにつきましては厚生省から前向きの御回答もあったというふうに伺っておりまして、私は、基本的には本法案を支持する立場から陳述をさせていただくことにいたしました。
まず、基本的な考え方を数点述べまして、その後に、具体的にそれに関連する問題点あるいは評価について申し上げたいと思います。
そこに書いてあります基本的な考え方は四つございます。
一つは、今回の法案につきまして、特に支給開始年齢との関係で雇用との関係が非常に議論になるわけでありますが、雇用政策は基本的には社会保険の役割ではない。失業情勢の悪化に伴って逆に年金制度が一層不安定になるということは避けなければならないというのが第一点であります。
この点につきましては、細かく申し上げられませんが、特にドイツやフランスなどでは、こういった失業情勢の悪化が年金に及ぼす影響が非常に顕著になってきております。三十年、四十年違いますと、これだけで保険料率が五ポイントから七ポイント違ってくるというくらいの大きな影響がございます。こういった意味で、失業率が今後上昇するおそれなしとしない我が国につきましても、失業情勢の影響から年金制度を中立なものにしなければならないということを痛切に感じております。
第二は、いわゆる雇用に優しい年金制度ということが大事である。中長期的には、年金制度自身が雇用を圧迫してしまうという問題があると思います。
まず第一に、これは今回の年金法改正案の中に入っておりますけれども、人口高齢化のピーク時の年金保険料のみならず社会保険料全体の抑制を図るということが、産業立地上の問題あるいは雇用の創出力という面で非常に大事である。それから、第二でございますが、これは今回改正に含まれておらないのでありますが、特に短時間雇用を含めまして就業形態が非常に多様化しておりまして、こうした方々が必ずしも、年金など、特に厚生年金の方でございますけれども、職域年金の加入の対象者になっておりません。健全なこういった短時間雇用などの雇用を創出していかなければ、低成長下で失業を減らす、いわゆるワークシェアリングということもよく言われておりますが、そういった観点からもこの問題は看過できないというふうに考えておるところであります。
第三でありますが、年金制度への国民の不信を払拭するという点からいいますと、単に給付を削減するというだけでは困るわけでありまして、やはり将来成長していけば、国全体として、国民全体として努力していけば、ある程度その給付の削減が回復できるということが非常に大事であろう。
といいますのは、年金制度への不信の結果が、一つは現在の消費不況というふうに言われているわけであります。したがいまして、年金を裁定する時点で、過去の賃金についてのスライドを大幅に廃止したり、給付乗率を大幅に切り下げるなどといったことは、かえってこういった問題を悪化させるわけでありまして、その意味で、年金制度の信頼を維持するためには、このような削減幅をやはり一定範囲内に限定しなければならない。
第四でございますが、これは国会で非常によく議論されているところだと思いますけれども、基礎年金の構造的な問題の解決にはやはり国庫負担の段階的拡大が不可欠である。しかしながら、同時に、これは皆様も御存じかと思いますけれども、我が国は高齢層に対する財政移転というのは非常に多いのですけれども、子育て層あるいはそういった勤労世代についての財政移転というのは比較的少ない、これは先進国の中でも非常に顕著でありまして、そういう意味からいいますと、この部分のみに本当に一般財源を投入していっていいのかどうかという点については十分に検討すべきであるということであります。
さて、以上の点を踏まえまして、具体的な点につきまして、そこに四点ほど書かせていただいております。
第一は、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の問題であります。
二〇一三年から二五年にかけて段階的に引き上げる、かわりに減額年金の支給が可能であるということであります。このような措置は、明らかに、仮にこの年齢層の失業が増加した場合におきまして繰り上げ支給がふえても財政を圧迫しないという意味で非常に重要な措置である。このことはやはり確保していかなければならない。他方で、六十五歳までの雇用の確保というのは雇用政策の重要な役割でありますので、その点につきましても配慮が必要であります。
特に、六十歳代の前半層につきましては、やはり将来的には多様な就労形態、短時間労働によるいわゆるジョブシェアリングといったものも考えていかなければならないのですけれども、これは社会保障だけでは不十分でありまして、特に、フルタイムとパートタイム労働者の格差が非常に大きい我が国の状況の中では、こういった点からの雇用創出が非常に困難であるということ、それから、現行の雇用保険制度におきます高齢雇用継続給付などの拡充といったことを別途考えていかなければならない。
第二点でございますが、高齢化のピークに向けた年金保険料の抑制でございます。
今回の法案では、これは年収ベースで今回から計算できるようになりました。これは非常に大きな進歩だと私は思っております。これは、国際比較も可能になりますし、一体どこまでが我が国の産業あるいは国民がたえられるのかということを客観的に議論するのに非常に重要でありますが、これによりますと、一応二〇二五年時点で一九・六%としております。
これはたまたま現在のドイツの年金保険料の水準に近いものでありまして、ドイツでは、社会保険料全体を四〇%以下に抑えようということを政労使で合意してこの問題に対応しているわけでありますけれども、しかし、この厚生省の案に出ております一九・六%なら本当に産業立地やあるいは雇用の面で問題がないのかといった点について、実証的な根拠は実はございません。
また、他方で医療保険改革や介護保険制度の見直しなどといった問題もありまして、基本的にはこれは社会保険料全体の中で検討されるべきであると考えております。しかしながら、いずれにしても、こういった問題に対しても上限規制をしていくという考え方は非常に大事である。
それから、第三点に参りますが、給付水準の伸びにつきましても、先ほど申し上げましたように、消費不況をさらに長期化させるということを考えますと、この法案の中におきます給付乗率の五%適正化や六十五歳以降の物価スライド制への移行といったものにつきましては、我が国の潜在成長率が仮に実現できるということになりますと、将来かなりの部分が、個人の目から見ますと回復可能なものではないか。そういう点から、私、評価いたしまして、今回の給付水準の抑制はかなり適切なものではないかと思っております。
それから、第四点でありますが、基礎年金の国庫負担の問題につきましては、先ほど既に申し上げたところでありますが、もうちょっと具体的に申し上げますと、確かに、基礎年金、国民年金の空洞化の抑制のために、さらに、過度の保険料上昇を回避するためには、国庫負担をふやさなければならないということについてはかなりのコンセンサスがあると思います。しかしながら、先ほど申しましたように、特に少子化対策についてこれからかなりの財源を割かなければならないという観点からまいりますと、この点についてかなり検討が必要である。
特に、今回の法案の中で、育児休業期間についての保険料負担を年金保険が負うという形になっておりますが、これは本来は社会保険の原理になじまないわけでありますから、年金に負担させるのではなく、別途、私の考えでは、例えば家族支援基金というようなものを考えて、そこにプールした原資でそういったものを賄うべきではないかと考えております。こういった考え方は、実はフランスにおける家族政策、あるいは最近のドイツにおける政策議論の中でも似たような議論がなされていることにも言及しておきたいと思います。
最後になりましたけれども、私が現在最も懸念しておりますのは、この法案そのものにつきましては、基本的にかなり正論に立ったものであるという観点からはむしろ国民にもっと理解を求めるべきだと考えておるのですが、他方で、労働省におきまして、中央職業安定審議会の雇用保険部会におきまして、雇用保険改革の議論がされております。この中で、かなり大きな給付削減が避けられないかのごときいろいろな報道があるわけでありますけれども、六十歳代前半層の特に高齢雇用継続給付などについては、むしろこれをもっと使いやすいものにして充実していかなければならない。六十五歳現役社会というからには、そういった意味での制度の維持あるいは改善が必要でありますけれども、もし雇用保険制度についてかなりの給付の切り込みがやられるようなことになりますと、政府の雇用政策と年金政策は相互に調整がない、私の言葉で言いますと調整の破綻ということが発生するのではないか。このようなことはあってはならないことである。
また、今後の年金制度におきましては、パートタイム労働者の加入など基盤の拡大ということが非常に大事であること。労働政策におきまして、将来的には、これは使用者側の問題からいいますとなかなかお受け入れになりにくい点があると思いますけれども、パートタイム、フルタイムの均等待遇の確保を前提として、パートタイムにも広く社会保険を適用していく、そういう観点からの高齢化への対応というものが今後とも検討されるべきではないか。今回の法案の前提になっております社会保障・人口問題研究所の九七年一月の人口推計は既に古くなっている。既に実態はさらに少子化が進んでいるという意味からいいましても、今後、この問題についてはできるだけ早く現状に即した今後の検討が必要ではないか。
さらに、厚生年金の積立金の問題でありますが、二十一世紀半ばにおきましても、年間給付総額の三倍から四倍相当を維持することになっております。しかし、一体これだけの膨大な積立金を維持することをどうやって正当化していくのかという問題は、ぜひもっと議論していただく必要があると思います。
仮に、例えばドイツのケースでありますと、たった一カ月、二カ月の積立金しかないのに、毎年フレキシブルに保険料率が改定できるという政治情勢もあるというふうに考えておりまして、これは逆に言いますと、先進国ではむしろ積立金を若干積み増そうという流れになっております。その点につきましては、他方で、行政の側におきましても、恐らく厚生年金などのいろいろな事務費の確保のためにこういった利子収入を当てにしているといったような別の問題もあるのではないかと思いますけれども、この点についてもぜひ御検討いただきたいと思います。
以上、私は、今回の法案については基本的には支持する立場から陳述をさせていただきました。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/107
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108・江口一雄
○江口座長 ありがとうございました。
この際、議事の途中ではありますが、ただいま現地参加議員といたしまして、社会民主党・市民連合の辻元清美さんがお見えになりましたので、御紹介いたします。
それでは、議事を続行いたします。
次に、伊東文生君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/108
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109・伊東文生
○伊東文生君 連合大阪の伊東でございます。
今回の年金改正について、幾つかの点にわたりまして意見を申し上げたいと思います。
まず、今回の年金改正案は、必要な改革を避けて給付の切り下げに終始をしているのではないかというふうに言わざるを得ません。今、国民が抱いておる社会保障制度に対する不安をさらに助長してしまうことになるのではないかという懸念を抱いています。今人生八十年時代でありますから、国民だれしもが安心できる年金制度に改革すべきだという考え方から、以下幾つかの点で意見を申し上げたいと思います。
第一には、高齢者生活の総合ビジョンと年金改革についてであります。
年金は、ただ単に年金だけで単独にあるということではなくて、他の福祉、社会保障制度と密接に関連して老後生活の柱になっているわけであります。医療、介護、さらには雇用を含む高齢者生活全体の将来の姿を明確に示して、その中で年金の位置と役割を明確にし、そこへ向けて制度改革を進めることがぜひとも必要であります。厚生省が平成六年に二十一世紀福祉ビジョンをまとめたのもこうした考え方に立ってのことだったはずであります。
年金をめぐる条件は、急速に進む高齢化あるいは若年人口の減少など確かに厳しいものがあります。将来の生活を支える年金制度について、今必要なのは、総合ビジョンを明確に国民の前に示す中で進めることであります。そういうものが示されないまま単に狭い財政論の枠内だけで給付抑制に走るということではなくて、この厳しさの中で真に国民合意と呼べるものをつくり上げることこそ今問われている課題だというふうに考えます。
第二には、今回の改革が基礎年金改革を回避した改正案であるということであります。
公的年金が直面している最大の課題は、制度に対する国民の信頼が失われつつあることであります。いわゆる国民年金の空洞化、すなわち国民年金の第一号被保険者とその対象者の中で三分の一が保険料を納めていないという事実はその端的なあらわれではないでしょうか。
このままでは、将来多くの無年金者あるいは低額年金者が生まれることは避けられません。国民皆年金は既に空文句になっているわけでありまして、この状況をどうするのかという大きな岐路に我が国の年金制度は立たされていると考えています。
保険方式と皆年金は本来両立するものではありません。諸外国の例を見ても、保険方式で皆年金を実現した例はないというふうに思います。皆年金を放棄して保険方式を続けるのか、それとも税方式に転換して皆年金を実現するのか、この選択を国民の前に示して改革の方向を明らかにするのが今回改正の課題であったはずであります。だが、今回の改正法案はそれを避けて通っているというふうに言っても過言ではありません。
私は、揺るぎなき国民皆年金を確立するため、基礎年金を財源とする北欧型の普遍主義に立つ年金、いわゆる普遍年金に抜本的に組みかえるべきだと考えます。
その方向に立って、まず、前回改正の附帯決議で確認されたとおり、今の基礎年金の国庫負担率を二分の一に引き上げる、その後に残りについても税方式を導入すべきであるというふうに考えます。
しかし、改正案はこの重要な課題をまた先送りしようというふうにしています。平成十六年までというのであれば十年の空白が生まれますし、さらにまた、言われています安定した財源とは一体何なのか、それが確保されない場合には平成十六年という時期もさらにずれ込んでいくのか、少しも明らかになっていないことが問題であります。
第三の問題は、水準の大幅な引き下げであります。
改正案は、現役労働者の賃金に対して五九%水準を保障するというふうに言っているわけでありますが、この数字は全くの見せかけのものにすぎないと考えています。
まず、この数字は年金裁定時、つまり年金を受け取り始める出発点についてのものであります。基礎年金の水準は変えず二階の報酬比例部分を引き下げるとき、計算いたしますと、受け取り始めてから亡くなるまでの期間を通した水準を見れば一〇%もの大きな引き下げになるわけであります。しかも、この五九%という数字は、年金生活者の税金あるいは社会保険料負担を全く考慮に入れていません。来年から発足する介護保険料も高齢者は年金から差し引かれるわけであります。それ以外にも、高齢者の税金なり社会保険料負担がふえていくということは避けられないというふうに考えています。
以上の考え方を金額で示したのが配付させていただいた資料の図であります。資料では平成六年価格で示していますが、平成十一年度価格も含めて若干説明をいたしたいと思います。
まず、厚生省は、現行制度の保障する水準を六年価格で二十三万二千円、十一年価格で二十三万八千円というふうに言っているわけでありますが、この金額そのものが既に過去のものになっているのではないか。なぜなら、前回改正で賃金スライドの方式を手取り賃金によるもの、可処分所得スライドへ変更した効果を無視しているからであります。
こういった計算をいたしますと、国民負担率五〇%という枠内で将来の現役労働者の税金なり社会保険料の増加を勘案すれば、二十三万円ではなくて約二十一万一千円、平成十一年価格では二十一万八千円ということになるわけであります。
しかも、この金額は額面の金額であります。将来、年金生活者が負担する税金なり社会保険料が現在の一〇%から二〇二五年段階では一五%にふえるとすれば、手取りでは約十八万円、平成十一年価格でも十八万五千円ということになってしまいます。しかも、これはモデルケースであります。実態はさらに一割程度低くなる。
加えて、今回の改正について言えば、さらに一割削り込もうとしているわけでありますから、フル加入でも額面で十九万円、手取りでは約十六万円という水準になってしまうのではないか。
こういった水準は、特に都市生活者の生活実態からすれば生活そのものが脅かされてしまう水準になるわけでありまして、公的年金の意義そのものを否定するものになるというふうに言わざるを得ないわけであります。
第四には、支給開始年齢の引き上げについてであります。
言うまでもなく、賃金生活者は雇用が切れれば収入の道が閉ざされるということになるわけであります。したがって、雇用と年金の接続ということは欠くことのできない極めて重要な条件になります。幸いに六十歳定年法が施行されたわけでありますけれども、この段階でさらに支給開始年齢を六十五歳へ引き上げようとしている、このことが雇用労働者に大きな不安を呼んでいるということになっているわけであります。
前回改正で、六十歳からの厚生年金の特別支給の中で、定額部分については二〇〇一年から引き上げて、二〇一三年には報酬比例部分だけが別個の給付という形で残ることになったわけであります。しかし、その改正では高齢者の雇用就業条件の改善を図るということが前提となっていたはずであります。
だが、それから五年経過をしたわけでありますけれども、むしろ雇用情勢は厳しい状況になっているわけでありまして、このことを放置いたしますと、六十歳から六十五歳までの高齢者の生活をどうしていくのかということが問われるわけでありますし、逆に言えば全く無視をしてしまうということになるわけでありまして、余りにも乱暴であると言わざるを得ないというふうに思います。
第五には、減額率改定の先送りについてであります。
もちろん、諸外国ではフル年金の支給開始年齢が六十五歳という国も少なくないわけであります。だが、それらの国では多くの労働者が六十二歳から六十三歳という年齢で引退をしています。これは年金を前倒しで受給する場合の減額率が適正に決められているからであります。
資料の表に載せていますように、日本の減額率は四二%という高い減額率になっているわけであります。これは旧国民年金が発足した昭和三十六年当時の事情で決まっているわけでありまして、それから約四十年たっているという中で、高齢化が進み、人口構造も変わっているわけでありますから、この減額率をドイツ並みに圧縮するということは極めて合理的だというふうに思っています。ぜひこの問題も検討いただきたいと思います。
時間が来ましたので最後にまとめますが、ほかにも幾つかの問題点があるというふうに思っていますが、特に障害年金なり女性と年金、特に異論の多い第三号被保険者の是正等についても、先送りするということではなくて、今回の改正で解決をしていただいて、年金、社会保障の将来に対する不安と不信を解消するということが重要であります。
日本が社会保障制度のお手本としてきましたドイツでは、社会保障制度の変更は多数決によらず、与野党の粘り強い協議によって合意形成がされ、決定するということがルールになっています。こうした合意形成を重視する姿勢こそ社会保障に対する信頼を確立する基礎になるわけであります。
以上述べました改正法案の問題点について、ぜひ衆議院厚生委員会がさらに審議を深めていただきまして、国民が納得のいく合意を図られるよう強く要請して、意見とさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/109
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110・江口一雄
○江口座長 ありがとうございました。
次に、木村陽子さんにお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/110
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111・木村陽子
○木村陽子君 奈良女子大学の木村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
きょうは、意見発表の場を与えられましたことを非常に感謝しております。
私は、この年金改革案につきましては、方向としては賛成しておりますけれども、個別には反対意見もございますし、全体としては構造改革の視点が足りないのではないかと考えております。
一九八〇年代から九〇年代にかけて先進諸国では年金の構造改革というのが進んできたのですけれども、その背景としましては、年金の負担感が上限に達したことと、改正しなければならない問題点がはっきりしてきたということがあります。
どういった問題点があるかと申し上げますと、一つは高齢化のリスクといったものを世代間でどうシェアしていくのか、経済成長の成果を世代間でどう分け合うのか、経済の活力と年金の関係、それから所得の低い人に対してどういったことに配慮すればいいのか、解決すべき問題が今申し上げました四点ほどに絞ることが可能になってきました。
日本でこれまで議論されたこととあわせますと、よく言われますように、世代間の不公平の問題をどうするか、世代内の不公平の問題をどうするか、労働力人口の減少に対して年金制度はどういったものであればよいのか、それから二十一世紀の生き方の多様化という時代に対して選択の幅を制度にどう持たせるのか、そういったことに絞られてくるかと思います。
そういった視点から見ますと、今回の改革案は、財政上のバランスというものを非常にうまく考えてはおられますが、先ほど申し上げましたような構造改革の視点から見ると、余りにも財政のバランスを意識し過ぎたのではないかという気がいたします。
ただ、二〇二五年における負担の割合というものを、一応上限を二割程度にするというものをはっきりさせたということは評価してよろしいかと思いますけれども、私が問題としたいのは、むしろ負担の質の問題であります。
まず年金改革案本体について意見を申し上げ、それから、残りの時間では本体以外について意見を申し上げたいと思います。
まず給付の面でございますが、年金支給開始年齢をだんだんに引き上げていくということは、これはもう国民の生活設計の中に入り込んでおります。年金改革という点では、そんなに早急な改革をしないという点では評価しておりますし、現在先進諸国で見られますように、それを引き上げることが高齢者の雇用にどういう影響を及ぼすのか、むしろ高齢者の雇用が悪化しているときにマイナスではないかという意見と、年金財政の方を重視してそういった早期の年金を廃止するという動きがありますが、私は、むしろ年金財政の方を重視する方が年金を維持するという観点からは重要だと思っていまして、この方向には賛成です。
ただし、減額年金はありますけれども、もっとフレキシブルな引退年齢を年金制度が支えるんだという観点に立ちますと、年金全体のうちの例えば三割なら三割は六十歳からもらえます、あとの七〇%は六十五歳からもらえますという代替案があってもよろしいのではないかというふうに考えます。
二番目の、年金の伸びを原則は物価スライドにする、余りにも物価スライドと賃金スライドが乖離するときには賃金スライドの方に戻るということですが、私は、個人的には全部物価スライドでするのは反対です。高齢者も、五年ごとでなくても、十年に一度でも経済成長の成果を年金で分かち合ってもいいのではないかというふうに考えております。現在、改革案では、余りにも開き過ぎた場合に修正するという案がありますので、この点では賛成をしております。
あと、在職老齢年金でございますが、在職老齢年金はもう廃止すればいいのではないかというふうに考えております。その理由は、高齢者の労働供給がこれから必要になるということと、かなり修正されてきたとはいえ、在職老齢年金は高齢者の就労意欲を阻害してしまう要因がございますので、働いてもらって、賃金と年金を合わせた上で税金を払ってもらう方がずっと国全体のためにはなるのではないかと思います。そのときには、公的年金等控除を廃止するということもあわせて考えられてよろしいのではないかと思います。
今度は負担のことですけれども、今回は保険料の引き上げはしませんでした。私は、これは残念なことであるというふうに思っております。年金制度の維持可能性ということを考えるときには、負担を先送りするということは、言うまでもなく後の世代の負担になってしまいます。
それでは、残された時間は本体以外について申し上げます。
まず、女性の年金について扱われていないことを非常に残念に思います。女性の年金の第三号被保険者問題とか、遺族年金の受給者がほとんど共働きの女性か専業主婦に限られていて、シングルの女性あるいは共働きの女性、そういった人たちが年金を残せないというふうな、性について、ジェンダーについてバイアスがあるということも是正しなければいけないというふうに思っております。
女性の年金の問題は、ややもすれば専業主婦対キャリアウーマンの戦いというふうに言われますが、絶対そういったことではなくて、個人の生き方を支援することからも大切なのだということと、女子労働力をふやすということ、それから年金自体につきましては、上限が大体二割程度ということを決めた場合には、タックスベースが広い方がずっと財源の確保がしやすいということがあります。それから、井口先生がおっしゃったように、パートの待遇改善に伴う社会保険への加入というのは非常に重要だと思っております。
次に、世代間の不公平をなくすために、例えばスウェーデンの年金改革にありますように、寿命が延びたといったことにつきましては各世代でその分を負担するんだというルールを明確化する、こういったことが必要ではないかというふうに思います。
次の問題ですが、基礎年金部分の財源につきましては、私は、第三号被保険者問題とか無年金者の問題を解決するためには目的税型の消費税で全額やってしまう方がいいと思っております。そのときに新規の財源をどうするかという議論がありますが、保険料と代替するという考えに立ちますと、それはそんなに無理のないことだと思っております。
最後に申し上げたいことは、これから年金制度というのは、どうしても構造改革とともに負担の引き上げと給付水準の低下というのは避けられないと思いますが、中小企業の方たちにとりましては、企業年金のないところも一〇%ぐらいはありますし、租税優遇措置のある老後の貯蓄というのは利用できる機会が余りないです、今確定拠出型の年金も考えられておりますが。私は、そういうことよりはむしろ老後のための貯蓄税制というものを、企業年金も公的年金も全部ひっくるめて、例えば一人当たり何千万円までは老後のための貯蓄枠を利用することが可能であるというふうな制度をつくることは、こういう年金改革とともに重要なことだと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/111
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112・江口一雄
○江口座長 ありがとうございました。
次に、向山平八郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/112
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113・向山平八郎
○向山平八郎君 御指名をいただきました関西経営者協会社会保障基金制度専門委員会の委員長をいたしております向山と申します。
私どもは、平成七年度に加盟千九百社の有志を募りまして社会保障基金制度の専門委員会を組織したわけでありますが、今までに年金問題、医療保険問題、児童手当問題等々について議論を進め、そして、これらの問題については既に提言をいたしております。さらに、医療保険につきましては与党公聴会で発言の機会をいただきました。その当時はたしか政調会長は山崎さんだったと思いますが、お見えになりましたときに発言もさせていただきました。さらに、年金問題につきましては、これも二年ほど前でございますが、年金審議会におきまして意見発表の機会を得ました。
したがって、これから発言します内容は、ある意味では既に提言としてまとめ、あるいは年金審議会等で発言した内容と重複するわけでございますけれども、せっかくの機会でございますので、繰り返しになることが多いわけでございますが、発言をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
今の年金問題を取り巻く情勢というのは、現役世代の人は、これから先何ぼでも年金の掛金がふえるのではないか、にもかかわらず、老齢化したときに年金がもらえないのではないかという不安というものがあるだろうと思います。お年寄りの方はお年寄りで、厚生省五案が発表されたことを契機といたしまして、私の年金は一体どうなるのかと。
実は、厚生省の五案が発表された直後から、当時私は企業の年金基金の理事長をいたしておりまして、事務局への問い合わせ状況というのは、私の年金は減るんですか、減るんですかと。もちろん、いや、減らないという返事をして安心はしてもらうわけです、絶対額は減りませんよと。今後伸びていくのはもちろん減るでしょう。けれども、絶対額は、例えば現在二十万もらっている人は、その二十万が十八万になったり十九万になったりということにはなりません。施策を見ますとすべて相対的には減りますが、物価スライドをやめますとか賃金スライドをやめますとかいうふうなことになっても絶対額そのものは一応キープされるわけです。
にもかかわらず、不安の要因となっておりますのは、私の二十万が十八万になるんですか、十六万になるんですかということに対する不安であります。これについて言いますと、年金が本来目的といたしております、第一条にございます国民の生活の安定に資するという問題、つまり、年金問題そのものが、今、皮肉なことに国民生活の不安をかき立てておる。
先ほど申し上げましたように、年金審議会で発言させていただいたのは二年前でございます。はっきり申し上げて、まだやっておるのかと。国民のいらいらというのは、その辺にもあるのではないか。できるだけ早く結論を出していただきたい。
今回の与党を中心といたします政府の案につきましては、基本的には賛成でございます。早くやってほしい。というのは、毎日のようにテレビでいろいろ問題が指摘され、議論されております。けれども、いらいらが募っていくばかり。それとともに不安というのは増幅されてきておるというのが今の実態ではないかというふうに思うわけでございます。だから、この臨時国会中にできるだけ早く可決、成立をお願いしたいということをお願いいたしまして、その前提に立って具体的な部分について申し述べたいというふうに思います。
まず第一点は、もらう方の削減の問題であります。
報酬比例部分の五%の調整と賃金スライドの廃止は、当然のことだと私は思います。何となれば、これは労組の意見とは多少違うところがございますけれども、現在受給しておる年金の水準というのは、ワーカーでいいますと、三十歳前後のワーカーの年収にほぼ匹敵いたします。これは手取りの話です。というのは、年金から引かれるのは税金とかわずかのものです。ところが、サラリーマンはそこから税金以外に掛金や何やかやといっぱい引かれておる。したがって、手取りで対比いたしますと、この年金水準というのはそこそこの金額になっておるというふうに思うわけでございます。
さらに、老後世代、つまり年金受給世代と現役世代とを対比いたしますと、私は、基本的には現役世代が非常に苦しい目に遭っておるというふうな気がいたしております。国民貯蓄は千三百兆円と言われますが、このうちの七五%以上、つまり大部分は老人世代と言われる人たちが保有いたしております。一方の現役世代は、リストラの不安、雇用不安の問題、さらに公務員の世界でも六十歳を超えるとそういうふうになっていくというような話もこの間出ていましたけれども、要するに労働条件低下の問題であります。私どもの業界でも、既に二社は賃金カットを実施いたしております。期末一時金に至っては惨たんたるものであります。そういった労働条件切り下げの問題がある。さらに老後の不安、掛金増額の不安。三重苦の中にある。
したがって、限られたお金の中でどこに重点を置いて年金改革をやるのかといえば、受け取る側の部分でございますが、そちらの分についてやはり控えていただかなくてはならないというふうに考えるものですから、先ほど申し上げましたように、報酬比例部分の調整の問題、賃金スライド廃止の問題等々は当然のことだと思う。関西経営者協会の提言の中では、単に賃金スライドにとどまらず、物価スライドにまで踏み込んでも仕方がないのではないかというふうな提言をいたしておるところでございます。
二点目は、報酬比例部分の支給開始年齢の問題でございます六十歳から六十五歳。
これは先ほどどなたかもおっしゃいましたように、簡単に考えればいい。現役世代以上の収入のある人は、年金を受給するのを遠慮してもらうということでいいのではないか。六十五歳になりまして年金をもらう、その年金が高い、低いと言っておるわけでございますけれども、六十五歳になってなおかつ現役世代以上の収入があるというのは極めて恵まれた人で、極めて恵まれた人は少しは遠慮してもらうということの意味からいいますと、これは当然のことだというふうにも思います。
年金審議会で実は申し上げたことをもう一度繰り返しますと、厚生省五案というのはけしからぬと私はその席上でも申し上げたわけです。つまり、今の世の中は六十歳定年なんですね、六十五歳支給と言われたら、現役のサラリーマンは、例えば四十五歳の人は、定年は六十歳なのに六十五歳からでないと年金はくれないということになりますと、その五年間の貯蓄をしなきゃいかぬ、財布のひもは一遍にぎゅっと締まってしまう、消費不況の原因である。これは年金問題について緊急提言として第二次提案のときにも書き連ねたところでございますけれども、そういった言い方がまずい。まず、絶対額は減らさないよと。老人世代も現在の額はキープするけれども、相対的に見れば減っていく。
在職老齢年金の問題に入らせていただきますけれども、在職老齢年金につきましても、飛ばしてしまう、六十五歳で現役世代以上の収入のある人は御遠慮いただくということ。さらに、関経協ではもう一点突っ込んで提言をいたしております。それは、現在の六十五歳以上の人たちの支給倍率の問題であります。
御承知のとおりでございますが、六十五歳で年金を受け取り始めますと一二%増しになります。七十歳から年金を受け取りますと年金が一・八倍。この人たちは極めて恵まれた層、七十歳まで現役でいてたくさんの収入を得るという人たちは極めて恵まれた層、そこに何で二倍近い年金を払わなきゃいけないのだ。この辺のことについてもお考えいただければありがたいなというふうに考えております。
今後の課題について申し上げます。
基礎年金の費用負担、これはもう言われましたとおりでございます、目的税ですね、間接税。先進諸国の税の直間比率を考えますと、欧米先進国並みに一四、五%まで上がってもやむを得ないというふうに私は考えます。その分直接税は減らしてよというのがもちろん裏側についていますけれども。
しかし、いずれにいたしましても、この財源問題を考えましたときに、諸先生方も言われましたように、国庫負担とすることによって、三号被保険者の問題がごちゃごちゃもめておる、それから保険料の未納者の問題もごちゃごちゃ言うておる、そういうものが一挙に解決してしまいます。保険料の半額免除の問題やら学生の保険料負担の問題やら、そんなものも全部吹っ飛んでしまいます。したがって、国庫補助でやるべきだ。
ただ、この財源問題については、お国のやり方には多少異論があるわけでございます。民間の今の現役のサラリーマンが苦しんでおるのは、リストラ問題、雇用不安であります。今このことのためにお金が要るとわかっておるとすれば、少子化、高齢化するわけですが、しかし、そのときにどうしても問題点として出てきます財源の問題については、できるだけ国庫負担にし、消費目的税にしてやっていただきたいということを考えるところでございます。
時間がないそうですので、あとの点は簡単に申し上げたいというふうに思いますけれども、一つは厚生年金基金の問題でございます。代行部分の返上と確定拠出型年金はできるだけ早く実施をしていただきたいというふうに思います。こういう点についてお願いいたしまして、それが国民の安心を取り戻すための方策ではないかということを申し述べまして、終わらせていただきます。
時間が超過いたしまして、済みませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/113
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114・江口一雄
○江口座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/114
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115・江口一雄
○江口座長 これより委員からの発言を行います。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/115
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116・安倍晋三
○安倍(晋)委員 衆議院議員の安倍晋三でございます。
まず、意見陳述人の皆様方におかれましては、大変短期間のお願いにもかかわらず、大変お忙しい中御出席をいただきましたこと、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
それでは、時間もございませんので、早速質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に、向山さんがおっしゃったように、今回の年金改革につきまして、大きな誤解というのは、まるで年金が将来減っていくのではないかという誤解なんだろうと思います。私も、地元に帰りましていろいろな集会で意見を言われるわけでありますが、私の年金は減るんですか、特にもう既にお年寄りの皆さんからもそういう意見がございます。そしてまた、若い人たちからは、将来私たちは果たして本当に年金がもらえるんだろうか、そういう不安でございます。
そうした不安はどこから来るかというと、一つは、もちろん報道ぶりもあるんですが、少子・高齢社会が進んでいる中にあって、若い人たちにとっては自分の年金が将来もらえるかどうかというのは、そのときに負担する人たちがたえ得る負担の額になっているかどうかということに尽きるんだろうと私は思います。
年金というのは給付と負担のバランスですから、負担する方が負担できる限り給付が確保されるわけでありますが、負担が過大になっていけば、もらう方も、そのときに負担してもらえないのではないか、であるならば私の給付も難しいということで、年金制度は崩壊していくのではないかという漠然たる不安なんだろう、こういうふうに私は思うわけであります。
そうした不安を払拭するためには、二〇二五年、かなり高齢化が進んで事実上ピークになるときに、負担はこうですよ、ですから、給付はこれぐらいであるということをはっきりと明示する必要があるんだろうと私は思います。その意味では、私ども、この国会でぜひともこの年金改革法案を仕上げて、国民の前にそういう姿を明示していくことが必要なんだろうというふうに私は思っているわけであります。
その中で、先ほど井口先生から、二〇二五年の段階で年収ベースで大体二〇%を少し切るということでございますから、労使折半でございますから個人では大体一割程度ということになっているわけであります。そのほかにも、もちろん医療制度の改革を今行っておりますし、また介護保険制度も始まるわけでありまして、社会保障全体で果たしてどれぐらいが限界であるか、あるいはどの程度が適当であるかということでございますが、その辺についてまず井口先生にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/116
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117・井口泰
○井口泰君 御質問いただきました点につきましては、現在、いろいろな専門家、私も含めましていろいろな研究をやっている最中でありますので、まだ確定的なことを言うのは非常に難しいだろうと思いますが、何度も出てまいりますドイツのたしか一九九六年ごろの政労使合意で、保険料は四〇%を超えないというのができているんですが、これは明らかに産業立地問題を意識したものなんです。しかし、私の目から見ますと、年収に対して社会保険料が四〇%というのはもう既に過大であるという印象を持っています。
ドイツの立地問題が顕在化してきたのは確かに九〇年代になってからなんですけれども、年金保険料はその時点で既に一九%近くに達しておりまして、医療でもほかの分野でもいろいろな節減をし、付加価値税の方に保険料率の引き上げを回しながら何とかしのいできている。
そんな観点からいいますと、結論を出すのは非常にまだ早いのでございますけれども、三〇%台の半ばくらいまで何とか抑えられればベターであろうというくらいに、ちょっと現時点ではそれだけしか申し上げられない状況かと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/117
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118・安倍晋三
○安倍(晋)委員 最初に申し上げましたように、今度の年金改革におきましては経過措置がございますので、年金の絶対額は減らないということになっておりまして、むしろこれはふえていくわけでありまして、そのふえ方の適正化ということになっているわけであります。また、物価スライドはしていくわけでありますから、安心できる額は確保していくことができるということであります。
ただしかし、経済成長していく中で、賃金が上がっていく中で社会全体が豊かになっていく、そういう果実については年金受給者の皆様には遠慮していただく形になっているわけでありますが、しかし、その乖離があればまたそれをスタートするということになっているんだと思います。
そして、もう一つのポイントは緩やかな制度改革、極めて長い時間をかけて、六十五歳への支給開始年齢の引き上げにつきましても二〇二五年の段階で完成をするということであります。例えば、私は今現在四十五歳なんですが、私の場合では六十一歳からもらえることになっているわけなんだろうと思います。そういう意味では、極めて緩やかな改正案だと私は思っております。
他方、連合の案を見ますと、そうではなくて、手取りで書いてあるということもありますが——二〇二五年の段階で、私どもの案では、そのときにもらい始める人は四十一万八千円もらえるということになっておりまして、現行制度でありますと四十二万八千円のところが四十一万八千円に下がるということになっているわけでありますが、連合の出したモデルによりますと、これは男性のモデル年金を男女平均の年金と対照しているということもあるんだと思いますし、また、賃金が名目でも二十五年間一切上昇しないという極めて極端な前提のもとにこれを推計している結果が平均手取りで十四・五、こういうふうになっているわけでありまして、これは国民にとっては極めてショッキングな数字だったんだろうというふうに思うわけでございます。
ここで連合の伊東さんにお伺いをしたいわけでございます。
支給開始年齢の六十五歳への引き上げは行うべきではないというお考えでございますが、そうしますと、もちろんそれによっての負担はふえなければいけないわけでありますが、将来にわたっても、私どもの案でも二〇二五年で完成するわけでありますが、六十歳支給開始ということはずっと維持するべきであるというお考えかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/118
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119・伊東文生
○伊東文生君 先ほど申し上げましたように、私ども、やはり年金と雇用を接続するということが最大の条件であるというふうに思っています。
今、特に雇用情勢が厳しい中で、中身を見ても、中高年齢層の失業率というのは二けたに達しているんですね。労働省も確かに六十五歳現役社会という施策を推進しているわけでありますが、遅々として進んでいないという現状から見れば、このことを抜きに六十五歳への支給年齢の引き上げということについては大きな問題があるのではないか。
据え置いた場合でも、お渡しをしています資料の保険料試算、二〇二五年の姿というものを示しているわけでありますけれども、私どもの試算からすれば、厚生年金の保険料は年収ベースでは一九・五、これは基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げた場合でこの程度におさまるという試算をしていますから、十分将来世代の負担にもたえられるというふうに判断をしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/119
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120・安倍晋三
○安倍(晋)委員 ありがとうございました。
もう時間がなくなりましたが、もう一つの論点として、今、年福が運用しているわけでありますが、改正案では今後百四十兆円を全額自主運用するということについていろいろな不安の声が出ているわけであります。まるでこの百四十兆円すべて株式市場に入っていくかのごとき議論がなされているわけでありますが、実際は、この中の八割は大体国債、財投債を初めとした債券に振り向けられるわけでありまして、国内の株式市場には大体一割ぐらい、十四兆円ぐらいであろうと言われているわけであります。それも、十四兆円のうち既に七兆円は年福が運用しておりまして、その残りの七兆円を徐々に十五年かけて、大体毎年五千億円ずつぐらい新しい株式を買っていくということでございまして、一年間に五千億というスケールであれば、私は、ほとんど大きな影響はないのだろうというように思っておる次第でございます。
今までの議論の中で誇張されたそうした疑問は早く払拭をしながら、一日も早く国民の前に、こういう制度で大丈夫ですよということを私どもは示していきたいというように思います。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/120
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121・江口一雄
○江口座長 この際、議事の途中ではありますが、ただいま現地参加議員として、民主党の中野寛成君がお見えになりましたので、御紹介いたします。
それでは、議事を続行いたします。久保哲司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/121
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122・久保哲司
○久保委員 公明党・改革クラブの久保哲司でございます。きょうは、陳述人の皆さん、お忙しい中お越しをいただきましてありがとうございます。
先ほどお伺いをしまして、お三方が、個別の問題はあるけれども基本的にはこの改正に賛成だ、しかも、向山さんにあっては、とにかく早くやれ、でないと国民の不安をかき立てる、こういう御意見でございました。一方、伊東さんの方は、今回のものはちょっと許せぬよ、こういうお話だったというふうに受けとめております。
いずれにしろ、だれもが、この急激な少子・高齢化が進む中で、安心、安全な社会をどうすれば構築できるんやというのが共通の悩みでございます。そんな中で、いわゆる自助、公助、共助、こういったことを模索しながら、知恵を寄せ合いながら、二十一世紀、本当に国民のお一人お一人が安心できる社会をつくらなければならない。だけれども、一方で、平べったく言いますと、人間だれでも、もらうのは多い方がいい、出すのは少ない方がいい、こういう話になるわけで、それをそのまま踏襲すれば、当然、その穴をだれがどない埋めるねん、こんな話になってまいります。
そこで、先ほど伊東さんのお話の中で、保険方式と皆年金というのは両立しませんよという御意見がたしかあったかと思いますけれども、そういう意味では税方式でやるべきだという御意見かと思います。ただ、一方で、税方式ということにした場合には、一つは家計負担がふえる、あるいは所得制限の導入につながりかねない、また、生活保護と類似したものになるのではないか、こういった意味で、これまた皆年金とはかけ離れていくのではないかという見方がございます。
いずれもそれぞれに問題点があるんだろうと思うのですけれども、確かに、税というもので埋めていけばいくほどに、ある意味で個人の掛金というのは減るかもわかりません、また、ある意味では安定するかもわかりません。だけれども、その財源をどこに求めるかということにもこれまたつながってまいります。
先ほど向山陳述人の話では、消費税に関して一四、五%でもいいではないかというお話もございましたけれども、一つは、全額税方式へという議論が大きな底流としてございますし、今回の改正案の附則の中でも、財政方式を二〇〇四年までの間に再度検討する、こういうことを書いておるわけでございますけれども、全額税方式への変化と同時にむしろ国民皆年金制度が崩れかねないという点について、井口陳述人、向山陳述人に、それから、伊東さんには、全額税方式といった場合に消費税のアップもあり得るのかということについて端的に御見解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/122
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123・井口泰
○井口泰君 お答えいたしたいと思います。
非常に難しい問題であることは皆さんもよく御存じでありますので、一言でなかなか御回答はいたしかねますが、まず、私の考え方は、やはり社会保険の原理というのは維持していくべきだというのが基本にございます。
社会保険で特に年金などを健全に維持するためには、社会保険原理に合わない部分というのはその社会保険制度に余り負わせるのではなくて、別の財源で年金保険の中に補てんしてやるというような仕組みをつくっておきませんと、合理的な計算ができない。そういう不合理な部分をできるだけ取り出しまして整理をしていくということが非常に大事ではないかと思うのです。
そういうことをやっていった場合に、一体どれだけ現在の年金保険から税負担の方に移行していくのかということは、残念ながら詳細には余りよくわからないというところがあります。消費税などを含めて、基礎年金の国庫負担を引き上げるという問題と、先ほど申しました社会保険の原理に合わないようないろいろな給付を整理するという問題、この二つを同時にやりながら、結果的には、私は、やはり現行の消費税率ではとても賄えないであろうというふうには推測をいたしているところでございます。
一%上げれば何兆円入ってくるかというのはおおよそめどがつくのでありますけれども、ただ、私は先ほどもちょっと申し上げたのですが、例えば育児休業期間中の保険料負担なんかの問題は、将来介護とかほかの問題についても波及してくるおそれがあるわけでありまして、こういった問題については、やはり家庭内のことにいろいろ従事した方々について社会としてしっかり認知していくという観点から、非常に大事になってまいりますので、それなりに税の手当てをしながら年金保険の中にも組み込んでいくということが必要であろう。
結果的には、つかみでは非常に申しわけないのでありますけれども、現在の保険料率の倍近い料率が将来必要ではないかというふうに個人的には思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/123
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124・向山平八郎
○向山平八郎君 この財源問題につきましては、極めて簡単に言いますと、今、毎日のように新聞紙上をにぎわしております脱税問題等々から見ますと、結局、直接税だからそこのところでごまかしが起こる。高い収入を得ている人が高い水準の生活をキープするためにお金を払う、そのときには高い税率をかけるということによって、公平性というのはさらに増していくのではないかということが基本的な考え方としてあります。
それから、現役世代の人たちの不安の問題、苦しんでいる状態ということを考えますと、これを三分の一にしていただくだけで四%ほど年金の掛金は減るわけです。つまり、その分給料袋の中身がふえるわけですよ。そのことをよくPRされたらわかるのではないか。国の借金、何やたくさんの借金があるそうですけれども、これから先、そういったものを満たしていくときに、やはり国民がそれはそうだと納得するためには、年金のためにこれだけお金が要るんだということを明示されたら、それは納得されるのではないか。しかも、現役世代は、給料袋の中身も、それから一万三千三百円という月掛けの金も要らないんだよ、こっちを大きくPRされて納得を求めていかれたらどうだろうなというふうな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/124
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125・伊東文生
○伊東文生君 私ども、率は何%ということは別にいたしまして、間接税で考えざるを得ないというふうに思っています。
ただ、その場合、現在の消費税の欠陥でありますとか保険料の労使負担の問題あるいは生活対策、このことをやはり見直していくということと、将来の就労条件あるいは雇用労働慣行、こういうものが変わっていくわけでありますから、そういうものを踏まえてどうしていくのかということを判断していくべきだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/125
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126・久保哲司
○久保委員 時間がなくなりましたので、あと一点だけ伊東さんにお伺いをしたい。
先ほど、原則として年金と雇用は接続すべきであるというお言葉がございました。年金の仕組みの中で、働く人が少なくなる、ということはイコール掛金の総額が少なくなる。だから、中学を卒業して働かれる方というのは最近は非常に少ないですけれども、十五歳、十六歳から働き始められれば六十歳でもって四十五年間掛けられる、その四十五年間掛けるということを原則にしていわゆる掛金のパイを大きくする。それで、四十五年間掛けた方は六十歳からもらえる、あるいは高卒で働き始められて四十五年となれば六十二歳ないし三歳からいただく。こういうことをやってもいいのではないかという説をおっしゃる学者さんがおいででございますけれども、こういう点については、一気に六十五歳ということとは別に、先ほど伊東陳述人がおっしゃったことにある意味で近づく話ではないのかなと思うのですが、これについてのコメントがあれば一言お願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/126
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127・伊東文生
○伊東文生君 私どもは、やはり六十歳以降も希望する者が働ける制度というものをつくらなければいかぬというふうに思っているわけです。
恵まれた人はどうでもいいのです。生活が苦しい層、モデルよりも下、平均よりも下の層というのは大阪の場合特に多いわけですから、中小零細企業に働いておる労働者がどういう実態に置かれているのかということを考えれば、六十歳以降の雇用と年金の接続ということは極めて重要な地域課題であるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/127
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128・久保哲司
○久保委員 ありがとうございました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/128
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129・江口一雄
○江口座長 次に、吉田幸弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/129
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130・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。
本日は、急な公聴会ということで、大変貴重な御意見を伺うことができました。ありがとうございます。
早速ですが、木村先生にお伺いをしたいと思います。
先生は資金運用審議会のメンバーでもいらっしゃるというふうに承知しているのですが、九年の十一月に財政投融資の抜本的改革の方針を打ち出して、その中で、現在全額資金運用部に委託されている年金積立金、郵便貯金について、委託義務を廃止し、そして自主運用をするという方針を打ち出したわけです。その財投改革の基本方針について、またその基本的な理念について、どのような趣旨で打ち出されたのか、このことを確認させていただく意味で御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/130
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131・木村陽子
○木村陽子君 申し上げます。
財投改革のまず一番目の趣旨は、公的金融は日本経済にとって必要なのだけれども、今のような財投という形をとることが最も望ましいのかどうか、今後の少子・高齢化の日本経済を考える上でどうかということが主要な論点でございました。
簡潔に申し上げますと、現在の状況のもとでは資源配分上のむだが生じているのではないかということが結論でございます。資源配分上のむだと申しますのは、一つは、財政規律がこのままでは失われるのではないか、入り口から入ってきたものをそのまま配分するという形は財政規律を失わせ、また、市場では民間との競合があり得ても、そのまま温存してしまうようなことになるのではないかということが中心的なことでございました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/131
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132・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 ありがとうございます。
次に、向山さんにお伺いいたします。
先ほど、医療のことを少しおっしゃいました。僕は、年金を考えるに当たって社会保障全般を考えた上で話を進めていかなきゃいけない、昔の年金と今の年金に対しての考え方は大きく変わってきたと思うのです。このことに対して国がどこまでサポートしていくのか、この考え方が異なると引き続きの意見というのも異なってくる。では、果たして医療はどうなのか、社会保障全般はどうなのか。
要は、これは委員会でも聞きましたけれども、まさかのときの、もしものときの年金なのか、豊かさのための年金なのか。このことについて向山さんと伊東さんに、年金のあり方というのを簡単にお示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/132
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133・向山平八郎
○向山平八郎君 社会保障制度は総合的に考えられるべきものだということはよくわかります。ただ、その社会保障制度の根本を探りますと、結局強者が弱者を支援するというか、そういう仕組みになっておるんじゃないか。
さっきから申し上げております国庫負担の問題にしましても、これは、個人の税金であり、あるいは企業の税金であり、すべて最後は個人にはね返る。個人にはね返ってくるときに、強者の方はたくさんの税負担をするのは当たり前ではないかということは前提といたしまして、お聞きになりましたように、豊かさのためか、まさかのためか、これはどっちかというて割り切ることはできないんじゃないか。両面ともにあると私は思うのですね。
まず、まさかのために確保されなきゃいけません。その上に、欲を言えば豊かさというものも、こういった社会保障制度そのものによってキープされ、あるいは向上していくという方向を最終的には目指すべきだ。だから、二者択一と言われると非常に難しい。ただ、こっちだけは確保しなきゃいけないというふうな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/133
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134・伊東文生
○伊東文生君 私ども、年金というのは現役のときの賃金に匹敵するわけでありまして、賃金の原則の中に生活保障の原則というのはきちっと重要な基準といいますか理念としてあるわけでありますから、少なくとも年金についても生活保障の原則というものが貫かれた水準でなければならないというふうに判断しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/134
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135・吉田幸弘
○吉田(幸)委員 以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/135
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136・江口一雄
○江口座長 次に、山本孝史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/136
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137・山本孝史
○山本(孝)委員 皆様方、きょうはありがとうございます。
まず最初に、井口先生と木村先生にお伺いをしたいと思います。
支給開始年齢の引き上げの問題についてなんですけれども、井口先生のお話の中で少しわかりにくかった部分がありますので、今回の六十五歳支給というものをどう評価しておられるのかという点が一つ。それと、減額率、現在四二%。この間三五%程度という答弁が出てきたわけですが、三五%でも私はまだ大きいと思うのですけれども、先生はこの点はどういうふうにお考えになっておられるか。
木村先生には、六十五歳支給は評価というふうに先ほどおっしゃいました、これは財政維持の観点から賛成するとおっしゃいまして、しかし、冒頭、構造改革の視点がないというふうにもおっしゃったわけで、バランスだけを考えているのでは構造改革の視点にはならないのであって、そういう点からいけば六十五歳をどう評価しておられるのか、もう一度お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/137
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138・井口泰
○井口泰君 お答えいたします。
ちょっと私の説明が正確でなくて、余りよく御理解いただけなかったことについては反省いたします。
厚生年金の報酬比例部分に係る六十歳代前半層の給付、現在残っておりますその部分の給付の支給開始年齢を引き上げる点については、私は、幾つかの基本的な考え方に基づいて引き上げるべきだということを申し上げております。
一つは、この部分につきましては、確かに六十歳代前半層の雇用問題というのは非常に大事な問題であり、これが一つの勤労者の不安の種であるということはわかっているわけであります。しかし、これは欧米諸国の早期引退給付の例を見るまでもなく、年金制度が雇用対策のかわりのようなことをしていくことによって年金制度そのものが揺らいでくる、そのことを「基本的な考え方」のところで申し上げたわけであります。
同時に、その場合に一切給付が要らないかというと、そうではなくて、年金数理に基づいて、仮に早期にもらっても年金に影響が出ないような形にする。まさにそこが先ほどの減額率の問題になるわけであります。
その減額率が、三五%が高いか四二%が高いかというのは、はっきり申しまして、そのときそのときの年金数理の計算にどのような変数といいますかデータを使うかということによって決まってくるわけでありまして、結果的に、仮にその部分の前倒し受給者がふえたとしても年金保険に何らの悪い影響を与えないのであれば、その給付は適切だということであります。もちろん低過ぎるのであれば、それは減額率自体が大き過ぎるということになります。
ですから、その三五%が正しいかどうかというのは別途専門的にもうちょっと議論すべき問題であって、厚生省の推計というのは前提になる数字がよくわからないので、私は、わからないままその点についていいとか悪いとか申し上げるのは非常に難しゅうございます。
先ほど言いましたように、六十歳代前半層についての支給開始年齢引き上げそのものについては賛成しておりますが、他方で、この部分の雇用対策は別に雇用政策なり雇用保険が出動するべき問題で、そこがなければ政府としての政策に不整合が生じるのだということも強調させていただいたつもりでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/138
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139・木村陽子
○木村陽子君 私が申し上げましたのは、六十五歳までの年金支給開始年齢のタイムスケジュールに賛成だと。その一つの理由は、先ほど申し上げましたように、財政収支上もプラスである。あと一つは、私たちのような長寿社会で六十五歳現役社会をつくるという観点からも重要である。
私は先ほど構造改革が重要だと申し上げましたが、その構造改革との関連から申し上げれば、例えば在職老齢年金を廃止するとか、先ほど申し上げましたような、一〇〇%減額じゃなくて部分的に減額を入れるということなんです。
雇用対策として年金を使うのは私も賛成はしておりません。それはむしろ別の政策、あるいは日本全体とすれば年齢差別を禁止するとか、そういったことの方が重要だと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/139
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140・山本孝史
○山本(孝)委員 井口先生、再びの質問で恐縮でございますが、先ほどの御発言を聞いておりまして、今、実は基礎年金の積立金を児童手当の財源に使ったらどうだという案が出てきているわけですが、年金財政で違うことをやるのはいかぬというのが先ほどの先生の御主張だったかと思いますけれども、この点についてはどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/140
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141・井口泰
○井口泰君 今の点についてお答えいたします。
私が年金の財源をほかのことに使うのはどうかと言ったのは、厳密に申しますと、社会保険システム、社会保険の原理を適用している部分に社会保険の原理では説明できないような事項まで全部負わせるのはよくないという意味で申しましたので、ぎりぎりのことを言いますと、今おっしゃったような部分が、基礎年金部分が仮に税で賄われているというようなことが議論の前提になるのであれば、私の議論には全く抵触はいたしません。
ただし、児童手当というのを導入する理由について、将来の被保険者、要するに支える人たちをふやすのだから年金制度で取り組むのはいいんだというふうにおっしゃるのですけれども、少子化には幾つか原因があるわけです。
子育てのコストがかかるという直接的な部分と、間接的な、いわゆる機会費用と言っていますけれども、子育てに入ったために特に女性の方が生涯にわたって物すごく多くの、私はよく逸失利益と言っているのですが、所得を失ってしまう、そういう部分がありまして、直接的な部分だけ取り上げて補てんしたからといってそれだけで出生率が上がるという証拠はなく、欧米諸国のいろいろなことも研究しているのですけれども、その効果がないのであればかえって年金制度に対して負担を負わせる結果にもなりかねないということは、申し上げておかないといけないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/141
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142・山本孝史
○山本(孝)委員 ありがとうございました。
もう一度井口先生と向山さんにお伺いをしたいのですが、パートタイム労働者の加入適用という部分、木村先生が先ほどお触れになったかと思いますが、この話をしますと、厚生省は必ずパート労働者が加入すると年金財政が苦しくなるから余りいいことではないんだというふうに言うわけですけれども、井口先生と経営者側であります向山先生、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/142
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143・井口泰
○井口泰君 お答えいたします。
実は、我が国のパートタイマーというのは非常に特殊なもので、外国でパートタイマーと言っているのとは全然違う。要するに、ある種の身分的な違いになってしまっている。ですから、同じ仕事をしていながら非常に低い労働コストで雇ってしまっているわけですね。
ですから、私が申し上げておりますのは、基本的には、パートタイマーと言われている人たちが時間給的にはフルタイマーと全く変わらないという前提をまず労働政策として確立した上で保険料を取るのでありませんと、これは単純に負担増になりまして、さらに苦しいことになってしまうわけですね。実は、先進国の中でこれほどまで格差のある国というのは非常に珍しゅうございます。
それから、御存じのオランダでは社会保険制度と雇用政策を組み合わせて雇用拡大に成功し、しかも保険財政も好転したという例があるのですけれども、それは、先ほどジョブシェアリングと申し上げたのですが、まさにパートもフルも同じ待遇であるからパートタイム雇用に移行する人たちもふえまして、結果的に社会全体として雇用の分かち合いができてくるということですね。
ですから、基本前提としてパートとフルの均等待遇を置きませんと、そもそもこの議論ができない。現在の状況だけでやっていきますと、低所得の人たちから取るだけで、しかも、厚生省の方の議論を正確に私も存じ上げないのですが、恐らく、非常に手間ばかりかかって、では給付が発生するのかというようなことになってくると疑問であるとか、いろいろな問題があるのだろうと思いますけれども、基本的に私の申し上げている前提がちょっと違っている点を御理解いただきたいなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/143
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144・向山平八郎
○向山平八郎君 パートの年金問題というのは今後は拡充の方向へ向かうべきだ、結論としてはそう思います。
ところが、パートで就労されている方というのは、現実はそう長期に勤務される人というのはほとんどおりません。短い人であれば数カ月、長いとしても数年単位のものでございますね。だから、それでも何らかのメリットがあるというふうな状態になってきますと、そのときには前向きに考えていかれるべきでしょうが、ただ現実は、厚生年金基金なんかに加入期間が数カ月あるいは数年単位のものであれば、もらえる額そのものが少ないのではないか。
だから、今後の就労のあり方そのものが変化を来して、あるいは財源問題もこういうふうに変わってという段階では、基本的には拡充の方向へ進むべきではなかろうか。ただ、現段階でやってみてもそれほどの効果はないだろうというふうな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/144
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145・山本孝史
○山本(孝)委員 向山先生、もう一つ質問なんですが、今年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げていく——六十歳代前半で年金を受けている部分は、雇用者側からすれば一種そこで給与の一部を年金で払っている部分なわけですね。そうすると、年金支給が六十五歳に動いていくということになりますと、雇用の現場で経営者側として六十歳代前半の雇用をどういうふうに見ていかれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/145
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146・向山平八郎
○向山平八郎君 六十歳代前半の雇用の問題ですね。これもまたちょっと言いかけて途中で切ったのですけれども。年金審議会で申し上げましたのは、今世の中は少子化少子化と騒いでおるじゃないですか、ということになりますと、日本の必要労働力は——六十五歳にするのは十五年も先、必ずそれは労働力不足を来しますよ、労働力不足を来せば、あとはどうするかということになりますと、企業が考えるのはシルバー世代であり主婦労働力の活用の問題だと。この二点しかありません、外国からでも持ってこない限り。
ということになりますと、勢い六十歳定年制というのは——そのときに年金審議会の委員の方から質問があったのは、十五年先に六十五歳定年になりますかということを言われたのですが、私は、ならないでしょう、ただ、働く年代は六十五歳まで延びる可能性は十分ありますと。つまり、定年まで年功序列で賃金が上がり続けるというカーブはとれない。これは海外との競争の問題からいいましても、総労務費抑制の問題からいっても、それはとれない。
けれども、六十歳になって定年で退職金ももらって清算して、その後働く層というのは今後確実にふえていかないといけない。外国から労働力を持ってくるなら別ですが、日本の国内で考えた場合に、必然的に、働く年代というのは今後ふえていかなければならない。また、企業もそういったことは既にやり始めております。
弊社のことを申し上げてあれでございますが、五年ぐらい前から既に六十歳シルバー社員制度。それからハーフシルバー、どこかの組合が提案されていました、ハーフシルバーというのは半月働くというもの。新語でございますけれども、要するに、シルバー社員で半分働く人たちの問題もそれなりのことをやっていく、企業としてもそれだけのことをやっていくということは覚悟しておられる企業が多いのではないかなという気もいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/146
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147・山本孝史
○山本(孝)委員 井口先生、きょう大変お立場が悪いかなと思いましたのは、右におられるお三方は、きょうのお話の中では基礎年金については税方式なんですね。先生は社会保険原理とおっしゃっていますが、私は、基礎年金と二階の部分の話は別個に考えないといけないのではないかと思うのですね。
きょうは基礎年金については皆さん税方式を主張されたのですけれども、先生は基礎年金の税方式ということについてはどうお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/147
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148・井口泰
○井口泰君 お答えいたします。
私のまた舌足らずだったかと思いますけれども、私は、厚生年金の部分については社会保険原理をもうちょっときかせていかないと、今幾ら払って幾らもらえるのかということについて非常に不明確になるので、そこはむしろもう少し純化させた方がいいし、しかも、その維持のためには社会保険原理に合わない部分は、むしろ年金制度を外から支援すべきだというふうに考えているのです。
しかし、基礎年金の部分につきましては、私の紙をもうちょっとよく読んでいただくとどこかに書いてあると思いますが、基本的には、まず国庫負担率の引き上げ自体は段階的に引き上げることは必要だという考え方をしております。
ただ、現実の財源の問題があるので一挙にいくのは難しいし、私の主張は、高齢層への財政移転ばかりが大きくて子育て層に対する財源が出てこない、まさにそこのところを非常に気にしておりまして、そういう意味では、一挙に基礎年金を消費税で賄ってしまったときに一体ほかのことができるのかという点を、実は私は疑問に思っているのです。
ただ、前も申しました、基礎年金のいろいろな構造的な問題を解決するのに税方式の方が解決しやすいという点について、私も同意いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/148
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149・山本孝史
○山本(孝)委員 きょうは四方おられる中で、木村先生は年金審議会の委員をしておられましたので、そういう点でお伺いをさせていただくのですが……(木村陽子君「私は年金審議会の委員ではないのです」と呼ぶ)失礼しました。
今までの話の中で、全体的な部分としまして、税制改革なりあるいは財政全体の議論なしに年金制度の話だけしているとどうも議論が進まないのではないか。向山先生がおっしゃいました、高額所得者に対しそんなに払っていいのかという話や、今度日本版の確定拠出型年金でまた公的年金の控除のあり方が議論になると思いますけれども、そういう意味で、その辺かなり不足しているのではないかという気がするのですが、木村先生、ごらんになっておられてどんな感じでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/149
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150・木村陽子
○木村陽子君 いろいろなことと関連していまして、全体としての見通しを立てながら個別には議論していかなければならないというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/150
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151・山本孝史
○山本(孝)委員 時間になりますので、最後に伊東先生にお伺いをしたいというふうに思います。
先ほどお話の中で、無理やり押し通していくのではなくて、議論を通じて年金というものに対しての合意を形成していくということが必要だというふうにおっしゃいました。私も全くそのとおりだというふうに思います。
民主党として、厚生委員会の中に年金小委員会でもつくってじっくり党派を超えた議論をした方がいいのじゃないかというふうに申し上げたのですが、法律が出てきますと、与党の皆さんは通すことだけに力を入れて、力ずくでも通そうという形になられるので議論が深まらないと思うのです。これは、外で見ておられて、国会審議を通じて年金に対する国民の信頼感は取り戻せたのだろうか、あるいは議論は深まって年金をどうしたらいいかという議論につながっていっているのだろうかというところを、働いておられる皆さんのお気持ち等も含めてお話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/151
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152・伊東文生
○伊東文生君 率直に申し上げて、労働者、生活者からするとわかりにくいと思うのですね。年金制度というのは専門性が高い制度でありますから、今回の改正が、今あるいは将来にわたって具体的に自分の生活とどうかかわりを持っていくのかということが非常にわかりにくいのじゃないか。
それからもう一つは、今回の改正案というのは、特に今でいえば三十歳代前半層の労働者ぐらいが将来大きく影響を受けてくるわけですね。極論すれば、こういう世代というのは今の年金に対するある意味では無関心層とも言えるわけでありますから、もっと国会論議を通じて、国民に具体的にこうなるんですよというメッセージを送っていかなければ、国民の合意形成ということにはつながっていかないのではないかと思っていまして、そういう意味では、ぜひ従来以上に国民がわかる制度改正、あるいは各政党の考え方というものをより明確にしていただいて、あるべき年金制度に改革をしていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/152
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153・山本孝史
○山本(孝)委員 時間になりました。
終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/153
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154・江口一雄
○江口座長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/154
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155・児玉健次
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
広い国民が大変強い関心を持っていらっしゃるこの年金法の問題で、審議を徹底的に続けていこう、そして深くやっていこうという私たちの意思が実りまして、大阪で地方公聴会を開催することになり、お四方の御意見を聞かせていただいたことをとても喜んでいます。
最初に、伊東さんにお伺いしたいと思います。
支給開始年齢繰り延べの問題というのは、かなりさかのぼりまして、十年前の論議のときに私は衆議院本会議でこの問題を取り上げました。当時の海部首相は私にこう答えました、六十歳代前半層の雇用の場の確保を図りつつ、支給開始年齢を時間をかけて段階的に引き上げていくと。
さて、その六十歳代前半の雇用の確保について、今度の国会審議でも私たちは取り上げたわけですが、何歳の定年が設定されているかも非常に重要ですが、その定年が守られているかどうかがもっと重要だと考えます。
労働省がこれが一番新しいといって届けてきた一九九六年の資料によれば、従業員五千人以上、以上ですからかなりの大企業ですが、そこで定年前の退職者が四三・三%です。百人のうちの四十三人が定年になる前にその職場をやめていかなきゃいけない。
こういった現状を見ると、海部さんが言った六十歳代前半の雇用の確保、それが繰り延べの前提ですから、この前提が崩れたというふうに私は見るわけですが、この点についての伊東さんの御意見。それが一つです。
もう一つは、今全国の職場の労働者の中から、逃げ水年金という言葉が噴き出ています。そろそろもらえると思ったらどんどん向こうへ行っちゃうし、影もどんどん薄れていく。実際に汗を流して働いていらっしゃる職場の皆さんにとって、雇用への不安と年金がかすむことによって生まれる老後への不安が重なり合っているんじゃないかと思いますけれども、そのあたりは大阪の職場ではいかがでしょうか。
その二点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/155
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156・伊東文生
○伊東文生君 まず一点の、六十歳代前半層の雇用の問題について申し上げたいと思いますが、経営者の方もいろいろな考え方を持った方がおられるわけですけれども、私が知っているある経済団体の幹部の方が言っているのは、労働省の六十五歳現役社会を論議する場で、政治のツケをなぜ経営者が負わなければいけないのかということをおっしゃるわけです。
今の経営実態からそういうことが出てくるんでしょうけれども、ということは、私は、近未来に六十歳代前半層の雇用というものが多く生まれてくるのかということからいえば、ノーと言わざるを得ないと思っています。もちろん、労働力人口が減少するとかいう時代背景はありますが、だからといって、すぐ高齢者の雇用構造、雇用創出に結びついていくのかということにはならないというふうに思っています。もっともっと、短時間勤務の問題なり、その短時間勤務であっても年金の有資格にするとかいう基準も見直して、やはり働きやすいシステムを総合的につくるということがなければ進んでいかないというのが第一点の私の考えであります。
それから第二点の問題は、おっしゃるように、今労働者が抱えておる大きな不安というのは、まず雇用であり、社会保障制度であり、さらには将来所得に対する不安、三大不安というふうに私どもは呼んでいます。特に大阪の場合は中小零細企業の町という地域特性がありまして、そういう企業に働く労働者は余計そういう不安を大きく抱えて生活をしておるわけでありますから、結果的に、個人消費が伸びず景気回復につながっていかないという、社会が悪い循環になっているのではないかというふうに思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/156
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157・児玉健次
○児玉委員 井口さんにお伺いしたいと思います。
お配りいただいた貴重な発言の要旨の一枚目のところに、先生は、「最近における厚生年金保険の被保険者の減少は衝撃的である。」こういうふうにお書きになっております。
この問題を私たちが国会で審議いたしましたときに、厚生省が最近届けてきた資料ですが、九七年四月の段階で厚生年金保険の被保険者は三千四百十七万人でした。それが、二十四カ月後、九九年の三月、ことしの三月ですが、三千二百九十六万人。わずか二十四カ月で百二十一万四千人減少しております。私たちの試算では、保険料の収入減もこれで八千億を超している。
そこで先生にお伺いしたいんですが、今問題になるのは、これだけのパーセンテージで厚生年金の被保険者が減るというのは、恐らく解雇、リストラがほぼ全年齢に達しているというふうに見なければ、これだけの衝撃的な減少というのは余り考えられない。それで、研究者でいらっしゃる井口先生にとって、数年前に年金のことをいろいろ構想なさった段階で、リストラ、解雇が現在のように進むということを予測されていらっしゃったかどうか、そこのところをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/157
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158・井口泰
○井口泰君 お答えいたします。
皆様にお配りしましたものに、「厚生年金保険の被保険者の減少は衝撃的である。」というのは私の偽らざるところでありまして、まさにそういう意味ではここまでは予想しておりませんでした。
もうちょっとつぶさに見ますと、九八年の一月ごろからは、特に中小企業でいわゆる貸し渋り現象もありまして倒産が物すごくふえて、九八年の春はそちらの方で物すごい雇用減少が起きまして、もう既に一年前と比べて一時期七十万人くらいの就業者減がありました。これが一年以上も続きまして、ようやくことしの半ばになって、これがせいぜい十万人とかそのくらいの小幅になってきた。九九年の春になりましてからは、中小よりも今度は大企業の方のリストラクチャリングの影響が大きくなってきているということで、このような現象は非常に異常な現象でして、未来永劫続くということがあってはならないし、早く雇用をプラスに転じるということがまず年金の安定のために非常に大事であるというふうに私は思っております。
いずれにしても、事前に予測することはとてもできなかったということを白状しなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/158
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159・児玉健次
○児玉委員 木村さんにお伺いしたいと思います。
今、国会審議の一つの焦点になってきているのが百四十兆円を超す積立金の運用のあり方でございます。よく御承知のように、一部の部分的な運用で、この間簿価で一兆八千億円の損失が生まれている。だれも責任をとろうとしない。そして、この委託料自身がもう三千億円を超している。三千億円を超す手数料を払って一兆八千億のマイナスじゃたまらないという声がぐっと盛り上がっております。
そこで、これだけの巨額の金額が金融市場、株式市場などに投入されるときの影響というものについて、これは日本経済の観点からもきちっと見ていかなきゃいけないとも考えますし、御承知のアメリカにおける最近の論議、クリントン大統領が運用の対象に株式を提案したのに対してグリーンスパン氏がそれを拒否する、このアメリカの議論からも学ぶ必要があるんじゃないか、私などはそのように考えておりますが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/159
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160・木村陽子
○木村陽子君 今先生がおっしゃったことは、まさに年金積立金の自主運用問題のことと存じます。資金運用審議会でもさまざまな議論がなされました。私の個人的な見解を述べさせていただきます。
年金の自主運用論議は、もう三十年ほど、別に財投改革とは関係なしにずっとあったことなんですが、現在損失が出ているということの理解は、それをそのままマイナスと見るよりも、私はむしろ、まず金利を使って財投から借り入れてこなければならない、それとの差額であるというふうに見ております。前にこの分野の研究をしたことがございますが、昭和四十年代ごろまでは、むしろ財投に預けることによって年金の積立金が、ほかに回したらもっと高い利回りを得たであろうということもあったわけですね。
あとは百四十兆円という額が市場に出回ったらどうなるかということですが、これは投入のされ方によると思います。丸々投げ込むのであれば大きなことになると思いますが、聞いているところでは大体五千億円程度ということでございますので、私は市場にはそれほど影響はないというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/160
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161・児玉健次
○児玉委員 木村先生に重ねてお伺いしたいんですが、政府や与党の皆さんの予定どおりにいけば、二〇〇一年四月から財投の見直しにより年金の積み立てともう一つの郵貯の全面運用が同時に始まります。先生はそのことをずっと担当なさってきたからよく御承知だと思いますが、郵貯の場合は、そのわずかのパーセンテージを簡保を通して自主運用するだけで、株式は運用の対象にすることはしないというふうに既に表明しています。
そして、五千億という金額をおっしゃいましたけれども、厚生省自身が、最初から百四十兆全部をというふうには考えていない、徐々に運用部から引き出していって将来的には全額の自主運用、こういうふうに申しておりますので、郵貯で関係者が議論しているその議論の慎重さと、厚生省の場合の大胆さと言ったら、ちょっと言葉が、評価が過ぎるんですが、これだけしくじってなおかつ恬として恥じないというか、その辺のところの食い違いは私はどうも理解ができませんので、先生の御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/161
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162・木村陽子
○木村陽子君 先ほど先生が質問してくださったのに、株式のところを忘れまして申しわけございません。
私は、今出ておりますマイナスは、しくじったとはむしろ考えていない方なんです。先ほど申し上げましたように、まず、借りてきた利回りとの差であるというふうに考えております。あとは、丸々全額が株式運用に回るとは到底どなたも考えておられないと思うんですね。現在の財投でも、考えますと、全部をある意味で国債に投入していったのと同じでございます。ですから、リスクをとりながらなおかつ安定的な運用を図っていくんだということに終始して、あと、ディスクロージャーとか責任の明確化とか、そういった点に注意すればよろしいのではないのかな。
例えばスウェーデンでも、労働者の基金のうち幾つかは株式で運用するとか、アメリカとは、まず全然規模が違います。その点で、私は、日本の自主運用は注意するところもございますけれども、やはり一つのところに、大きな資金をそこだけに投入するというのはむしろ異常じゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/162
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163・児玉健次
○児玉委員 向山さんにお伺いします。
年金の絶対額が減らないというふうに常におっしゃっているそうですが、国会で私たちがこういう質問をいたしました。夫、妻は専業主婦、二〇二五年度に退職する場合、夫婦に対する影響額はどうなるかと。現行制度では五千三百万円の受給が予定されているが、改悪後は四千三百万円となりますと。明確に絶対額で一千万円減っていますね。そこのところをどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/163
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164・向山平八郎
○向山平八郎君 二十五年後の話ですね。今当面考えておられる施策というのは、絶対額は減らさない、伸びのピッチを緩めるということです。しかしながら、これはやがて見直すと言っておられるじゃないですか。ということは、伸びていくけれども、先生は二十五年後を対比すると絶対額でも一千万減っておるではないかと。しかし、二十五年先のことを、諸先生方を含めて大蔵大臣でも厚生大臣でも予測せいと言う方が無理じゃないですか。
これは、経済が盛んになって活性化が行われてくれば、厚生年金の支給額そのもの、また物価スライドはもちろんのこと、賃スラだって復活というふうなことは十分に考えられる先の話ではないかということで、私は、当面絶対額は減らないということを政府・与党が言っておられることを信じたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/164
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165・児玉健次
○児玉委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/165
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166・江口一雄
○江口座長 中川智子さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/166
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167・中川智子
○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
きょうは、四人の先生方、本当にありがとうございます。夢に見た地方公聴会という感じで感無量でございますけれども、質問が最後ですのでほとんど聞かれてしまって、少数政党のつらいところでございますが、最初に木村先生に伺いたいと思います。
私もついこの間までは三号被保険者ということで、三号の問題というのは女性にとっては、働く女性、そして専業主婦、いろいろ複雑なところがございますけれども、これからは女性が働きたいという労働意欲は六割を超えていて、でも非常に労働条件が悪い、パートタイムで働くことによってメリットもあるけれども、それ以上頑張るような労働条件ではないという基本的な問題があると思うんですね。ですから、三号の問題を解決するために、ぜひともこういうところはしっかり施策として必要だと思うところをお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/167
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168・木村陽子
○木村陽子君 第三号被保険者問題を解決する方法としては、先生が今おっしゃった意味を私なりにとらえますと、むしろ年金制度外のことと考えました。
年金制度外のことと考えますと、一つは、先ほどありましたように、パートタイマーの待遇改善ということは避けて通れないことですし、それから働きやすい施策ということでは、男女共同参画社会でよく提案されていますような家族生活と就労の両立を図る、例えば保育サービスとか就労時間の短縮とか、そういったことまで中長期的には全部含んでくると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/168
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169・中川智子
○中川(智)委員 年金制度内の問題として答えていただきたかったんですが、結構です。
続きまして、今の木村さんに、先ほどの児玉委員の質問のいわゆる自主運用の問題と、年福事業団の問題がございまして、今回、国会で主に議論になりましたことは、焦げついたり、年金を投入して大きな損失を生んだ責任というのがどこにあるのか、結局、国民は一生懸命年金を積み立てて将来に備えようと思っても、一方でおふろの栓が抜かれていて水がたまっていなければ、それに対する安心も信頼も生まれてこないのではないかということが議論になりました。これは、大きな損失を出したら一体だれの責任になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/169
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170・木村陽子
○木村陽子君 大きな損失という場合は、多分先生がおっしゃっておられるのは、責任の所在をどこにするかということだと思います。
責任の所在というのは、厚生年金基金の運用のところでも議論されておりますし、アメリカの企業年金のところでも議論されておりますけれども、考えられるあるいは予測される状況で最善の努力をしたということが判明すれば責任を問うことはできない、逆に、最善の努力をしていないということが判明していれば責任を問うことができるというふうに私は解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/170
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171・中川智子
○中川(智)委員 そこの最後の部分の結論のところがないんですが、最善の努力をしたらとらないのは当たり前、努力をしないときに責任はどこかという質問なんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/171
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172・木村陽子
○木村陽子君 努力をしないことがあらゆる状況から証拠として認められる場合ということは、私は制度そのものは詳しく立案はしておりませんし、自分が考えられる場合でしかありませんけれども、一つは、法律的なことは細かくわかりませんが、今銀行等でやっているようなことはできるんじゃないでしょうか。明らかな背任行為があった場合とかに損害賠償を求めるとか、そういうことはできると思いますけれども、それが可能になるためには、もし制度的にそうなれば、安い給料ではだれもしませんので、かなりの額を責任者に報酬として支払うようなシステムも必要じゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/172
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173・中川智子
○中川(智)委員 続いて、伊東さんに伺いたいと思います。
今回、年金を一生懸命払い続けている現役世代もそうですが、非常に怒りとして噴出したのは、決まったことを、約束を守らないという政府の姿勢だと思います。基礎年金の二分の一国庫負担の問題、これは財源論でかわされて、財源の確保と経済の動向が上向きになれば二〇〇四年までの早い時期にというふうな答えなのですが、伊東さんの感想として、早い時期にこれはなされると思うか、それとも、本当にぎりぎり最後まで持っていかれてまた先にと、この辺は政府が約束を守らないことに対する労働者の怒りみたいなものがきっとおありですので、そこの部分をもう少し感想としてお話しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/173
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174・伊東文生
○伊東文生君 感想といいますか、一度約束をしたことが実現されない、一度あることは二度あるという、ことわざにあるわけですから、やはり信用できないわけです。
社会情勢が今のままで推移をすれば余計に変わらない可能性が強くなるということで私どもは強い怒りを感じているということと、若干リピートの話になりますが、国民の将来をどう社会保障として考えていくのか、そのことをきちっと押さえずして財政論だけに終始をしているというのは極めて大きな問題だと思うのです。
したがって、この機会をかりて言いますが、先ほど明確に言いませんでしたのでつけ加えますけれども、私は今回の改正法案は反対であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/174
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175・中川智子
○中川(智)委員 問題はあるけれども基本的に賛成という人ばかりだったので非常に不安だったのですが、今のはっきりしたお言葉はとても心強く思います。ありがとうございます。
向山さんにちょっと伺いますけれども、六十代前後の雇用不安というのが議論の中でたびたび出てまいりましたが、雇用者から見て、経営者の方から見て、若い人たちの雇用というのはもっともっと深刻ではないかという思いもいたします。関西圏におきまして、若い人たちの働き方と雇用の問題について御意見を伺いたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/175
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176・向山平八郎
○向山平八郎君 雇用不安が若い人たちにもある、あるいはもっとひどいのではないか、そのとおりだと思います。あらゆる世代が今雇用不安に陥っております。
私は、某大学の法学部で講義を少し受け持っておるのですが、その席上でも申し上げたのですが、学生諸君はちょっと甘えておりはせぬか、企業というのは学校を出て知識を持っておるから採用するのではありませんよ、その人が潜在的に持っている能力が企業に入ってきてきちっと貢献してくれると思うから三億円もかけて一人の人間を買うんですよ、あなた方はそれだけの修行を、今の大学生活の中で本当に勉強されていますか。その後、外国語の問題だとかコンピューターの問題だとか具体的な話を挙げまして、本当に社会へ出て役に立ちたい、そういう人は絶対に企業はほっておきませんよ、金のわらじを履いてでも探しに行きたい。
確かに、私、人事本部長をしておりましたので、学生は次から次から面接を求めて参ります。そういう席上で思ったことは、本当に自信のある人、私はこういうことをやって会社のために働きますという人には、言葉だけじゃないですね、要するに態度にも自信があふれています。要するに、レジャー大学、クラブ活動大学、そして遊んできた人たちが、今までの感覚で社会へ出て企業へ入って仕事を与えられる、つまり総合職として雇われると思ったら大間違いだということを大学の講義の中で申し上げるわけですが、その人たちは仕方がないです、ブルーカラーになりなさいよ、何も大学を出たからといったってそういうことにはなりませんよというふうな話をします。
あらゆる世代に雇用不安がある。もちろん六十歳代の人の失業率、よく存じ上げておりますけれども、要するにこれから先の就業というのは、すべての人が就業できるように国家なり企業なりが保障できますかと。海外の失業率の問題を見ていただいたらおわかりのように、日本も今最悪の状態ではあります、欧米諸国の失業率の問題を見てもらったらおわかりのように、競争社会になっていくに従って、その社会で働く人は成果を上げなきゃならないということで競争がますます激しくなってくる。
だから、言葉は非常にきついですけれども、きちっと準備されている方は総合職としての、あるいはもっと上の人たちの職種につかれるでしょうし、知識を得なかった人たちはブルーカラーとして働いていただくより仕方がない。そのときに、少子化現象が今後進むにしたって、そういう職場は減らない、あるいは高齢者の人たちもそういうふうになっていくのではないかというふうな気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/176
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177・中川智子
○中川(智)委員 私、今ちょっと質問が言葉足らずで、空洞化の問題を聞きたかったのです。私も二人とも子供が大学生なので、何か今の発言はとても困るあれであったのですが。
先ほどの御意見の中で、大丈夫大丈夫、手取り額は減らないんだよ、年金に対して信頼は持てるんだというふうな意見をお述べになったことに関連してちょっと伺ったのですが、東海村でも安全だ安全だと言われて結局安全でない、年金も大丈夫大丈夫と言いながら中身を見せない、そのことによる不安だと思うのです。特に若い世代が年金に対する不安を払拭できない、それで空洞化が起きていく、その根は深いんだと思うのです。
だから、大丈夫と言うならば情報公開をして、しっかり未来のビジョンが持てるような年金制度を確立していかなきゃいけないということで、関西の状況とあわせて空洞化の原因が根が深いんじゃないかということを伺いたかったのですが、もういっぱいお話しくださいましたので、質問を井口さんの方に振ります。
この空洞化の問題の根の深さ、これを解決していくために何かお知恵を持っていらっしゃったらその御意見を伺いたいのと、きょうの先生のペーパーの中に、いわゆる家族支援基金などを設置してと、家族支援基金ということを一つの政策の具体例としてお示しになっていましたけれども、結局児童手当とかをふやしても少子化の波はとめどがない、お金を個人的に渡していっても。そういうものじゃなくて、もっともっと子供を産んで育てたいという社会環境、社会保障に対する基本的な信頼、そのようなものが欠けているのではないかと私は常々思っているのですが、空洞化の問題と、家族支援基金がこんなふうに有効だと考えるというのを手短にお答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/177
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178・井口泰
○井口泰君 お答えいたします、非常に大きな問題なので手短にうまくいくかどうかわかりませんが。
まず、空洞化の問題について、おっしゃっているのは国民年金の空洞化のことだろうと思うのですけれども、今回の、例えば学生の加入の問題につきましていろいろ特例を設けて、例えば障害が発生してもいろいろな形で救済していこうというような、非常にきめ細かい対策はまだいろいろとり得るのではないかというふうには思うのです。
しかしながら、根本的に国民年金の保険料がかなり高額になってきておりますので、一回ため込んでしまいますと、後で遡及払いをするといいましても非常に抵抗があるということも事実でありまして、今回いろいろ出されておりますような対策だけで空洞化がだんだん是正されていくというふうには私は余り考えておりません。
ですから、基本的な対策は、前々から出ておりますように、やはり税方式を中心とした基礎年金の立て直しということをベースに置きながら、しかし、過去から払っていらっしゃる方がいるわけですから、そういう方々に対してそれなりの配慮をするということを加味して御検討いただくべきではないかというのが私の意見でございます。
それから、もう一つの問題なんですけれども、私がそこに家族支援基金というふうに書きましたのは、実は、きょうは少子化問題を全体として議論する場ではないので短時間で申し上げるのはなかなか大変なんでございますけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、少子化の要因には、一つは、二重負担というふうに言っているわけですけれども、子供を育てながら仕事をするという二重負担の問題、これはかなり直接的な問題ですが、それからもう一つは、家族のために働くことによって生涯の中で具体的に物すごく大きな所得の損失が発生する、これは経済学ではオポチュニティーコスト、機会費用と言っているものなんですけれども、この二つがあります。ですから、その両面にわたっての対策を総合的に講じるということが必要なのでありまして、これはある種のポリシーミックスが必要である。しかも、直接コスト、間接コストの組み合わせだけではありませんで、社会保障のみならず、雇用のシステムの方でかなりこの問題について対応できるのではないか。
私どもは、実はこれについてのいろいろな研究プロジェクトを持っておりますけれども、具体的には、きょうの提案にもあるのですけれども、パートタイム労働の地位を引き上げることによって、人生長いわけでありますから、フルタイム労働者でも、ある一定時期はパートタイム労働に移行してまた戻ってくる、そういう転換のシステムを入れるためには、どうしても社会保障の上でパートの方々もしっかり押さえていかなくちゃいけないわけなんです。
そういうことをいろいろ仕組んでいく際に、どうしてもいろいろな形で社会保険のシステムを支援しなくちゃいけない。これは単に育児休暇についての保険料を補てんするだけではありません。ですから、そういう部分については、ここに言いましたような家族の支援というための別途の財源を設けて、これを積極的に拡充していくということを政治のお立場でもぜひ考えていただきたいという提案をさせていただいているわけでございます。
どうも長くなりまして申しわけございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/178
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179・中川智子
○中川(智)委員 ありがとうございました。
時間が来ましたが、向山さん、きょうはいらしていただいて本当に申しわけないのですが、先ほどの発言の中に、能力がなければブルーカラーにというふうな発言がございました。これは訂正してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/179
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180・向山平八郎
○向山平八郎君 申しわけございません。不用意でした。おわびいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/180
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181・中川智子
○中川(智)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/181
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182・江口一雄
○江口座長 これにて委員からの発言は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しましては、深甚なる謝意を表する次第であります。
これにて散会いたします。
午前十一時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114604237X01219991207/182
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