1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年十二月三日(金曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 武部 勤君
理事 笹川 堯君 理事 杉浦 正健君
理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君
理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君
理事 上田 勇君 理事 西村 眞悟君
岩永 峯一君 大石 秀政君
太田 誠一君 奥野 誠亮君
鯨岡 兵輔君 熊谷 市雄君
熊代 昭彦君 左藤 恵君
坂本 剛二君 菅 義偉君
高市 早苗君 中谷 元君
藤井 孝男君 保岡 興治君
山口 泰明君 山本 有二君
渡辺 喜美君 枝野 幸男君
坂上 富男君 福岡 宗也君
漆原 良夫君 安倍 基雄君
菅原喜重郎君 木島日出夫君
保坂 展人君
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法務大臣 臼井日出男君
法務政務次官 山本 有二君
最高裁判所事務総局民事局
長
兼最高裁判所事務総局行政
局長 千葉 勝美君
政府参考人
(法務大臣官房長) 但木 敬一君
政府参考人
(法務省民事局長) 細川 清君
政府参考人
(労働省労政局長) 澤田陽太郎君
参考人
(駿河台大学学長) 竹下 守夫君
参考人
(東京商工会議所常任顧問
経済法規委員会副委員長) 久保利英明君
参考人
(日本労働組合総連合会労
働法制対策局長) 熊谷 謙一君
法務委員会専門員 井上 隆久君
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委員の異動
十二月三日
辞任 補欠選任
加藤 紘一君 岩永 峯一君
鯨岡 兵輔君 熊代 昭彦君
左藤 恵君 坂本 剛二君
高市 早苗君 山口 泰明君
保岡 興治君 大石 秀政君
権藤 恒夫君 菅原喜重郎君
同日
辞任 補欠選任
岩永 峯一君 中谷 元君
大石 秀政君 保岡 興治君
熊代 昭彦君 鯨岡 兵輔君
坂本 剛二君 左藤 恵君
山口 泰明君 高市 早苗君
菅原喜重郎君 権藤 恒夫君
同日
辞任 補欠選任
中谷 元君 加藤 紘一君
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十二月二日
特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律案(亀井久興君外六名提出、衆法第五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
民事再生法案(内閣提出第六四号)
午前十時一分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/0
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001・武部勤
○武部委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民事再生法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、駿河台大学学長竹下守夫君、東京商工会議所常任顧問経済法規委員会副委員長久保利英明君、日本労働組合総連合会労働法制対策局長熊谷謙一君、以上三名の方々に御出席いただいております。
この際、参考人各位に、委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。
参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、竹下参考人、久保利参考人、熊谷参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
それでは、まず竹下参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/1
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002・竹下守夫
○竹下参考人 駿河台大学の竹下でございます。
倒産法の研究者であるという立場と、法制審議会倒産法部会の部会長をお引き受けしているという立場から、民事再生法案に対する私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。
今般、法制審議会におきまして倒産法改正作業に着手するに至りましたのは、平成八年十月八日、当時の長尾法務大臣の諮問に基づきまして倒産法部会が設置され、今後おおむね五年間に倒産法制全般についての改正要綱案を作成するという方針を決定いたしたことに基づくものでございます。
この時期に御諮問を受け、倒産法改正作業を行うに至りました社会経済的背景ということを申し上げますと、先進諸国における市場経済原理の優位、あるいはボーダーレス経済の発展、消費者信用の拡大等社会経済構造が大きく変革されてきたということが一つ。それから、特に我が国におきましては、長期不況に伴う企業倒産の増大、それからまた個人破産事件の急増ということがございました。
現在の倒産法制は、御承知のとおり、制定時期と適用対象とをそれぞれ異にいたします破産、和議、会社整理、特別清算、会社更生という五本立てになってございますが、このような現行法制につきましては、次のような問題点があるということが指摘されてきておりました。
第一は、中小企業等のための実効的な再建型倒産手続が欠けているという点でございまして、本来は和議法に基づく和議手続がこの役割を担うべきところでございますが、いろいろ欠点がございまして有効なものになっていないということでございます。
それから第二は、経済の国際化との不調和ということでございまして、御案内のように、我が国の倒産法制では、属地主義と申しますが、わかりやすく申し上げれば地域孤立主義と申しますか、我が国の倒産手続は債務者の我が国にある財産にしか効力を及ぼさないし、また外国で開始された倒産手続は我が国にある債務者の財産には効力を及ぼさない、それぞれの国ごとに倒産手続というものを考えるという考え方に立っているという点でございます。
それから第三は、消費者倒産への対応が不十分であるということ。
そして、さらに第四として、一般的に手続相互の調整あるいは現代の経済社会状況への適合が必要である。とりわけ大規模倒産事件というものが多くなっておりますので、そういうものに対する対応、それからまた時代の流れが非常に急激になっておりますので、それに見合うような手続の迅速化あるいは透明化というものが必要だというようなことが問題点として指摘されてまいりました。
そこで、倒産法部会におきましては、このような問題点を解決するために、経済団体、労働団体から推薦をいただいた方々、また関係各省庁、それから民法、商法等の他の分野の研究者にも委員、幹事として審議に参加をしていただき、社会各層の意見を幅広く反映できる体制というものを整備いたしました。その上で、倒産法部会全体は相当の人数になりますので、分科会方式ということで、第一分科会は主として個人の倒産手続、第二分科会は法人を対象とする倒産手続の改正問題を取り上げるということで審議を始めたわけでございます。
ところが、御案内のように、昨年四月、政府の経済対策閣僚会議におかれまして総合経済対策というものを作成されましたが、その中で、倒産法制の早期整備というものがその施策の一つに位置づけられたわけでございます。さらに続いて、昨年九月、当時の中村法務大臣より、中小企業等の利用しやすい新しい再建型倒産手続の創設について緊急に対応するようにという御指示をいただきました。
そこで、私ども倒産法部会といたしましては、急遽、それまで採用してまいりました分科会方式という二段の審議方式を改めまして、すべて倒産法部会で審議を進めるという体制に切りかえまして、本年七月二十三日開催の第十五回倒産法部会におきまして、民事再生手続、この当時は仮称でございましたが、民事再生手続に関する要綱案を決定し、さらに八月二十六日開催の第百二十七回法制審議会総会におきまして民事再生手続に関する要綱を、いずれも全会一致で決定したわけでございます。
その後、これを基礎といたしまして政府において立案なさったのが、今回の民事再生法案ということになるわけでございます。
民事再生法案の倒産法としての性格について一言申し上げますと、民事再生手続は、中小企業や個人事業者にとって利用しやすく、かつ実効性の高い再建型手続として構想されたものでございますが、しかし、手続の対象はこれらに限定されるわけではなくて、会社以外の公益法人、医療法人、学校法人等の中間法人にも及び、さらに大企業も排除するわけではございません。その意味で、民事再生法は再建型倒産手続の一般法だというふうに申し上げることができるわけでございます。
次に、この民事再生法案の内容として決められております民事再生手続の特色を申し上げて、私どもとしてどのような内容の法律をつくろうとしたのであるかということを御理解いただきたいと思います。
民事再生手続の特色といたしまして、私は四点を指摘させていただきたいと思っております。
まず第一は、中小企業等多様な債務者が利用しやすく、かつ柔軟で実効的な再建型倒産手続にするということでございます。それから第二は、債権者その他の利害関係人の側から見まして、それらの者の権利を十分に擁護し、公平かつ透明な手続にするという点が第二点。それから第三点は、迅速かつ機能的な手続をつくるということ。それから第四点は、経済社会の国際化に対応した手続にするということでございます。
それぞれの特色について簡単に御説明申し上げます。
まず、中小企業等多様な債務者が利用しやすく、柔軟でかつ実効的な再建型倒産手続という点でございます。
先ほども申し上げましたとおり、この手続は多様な債務者を対象としておりますので、それらの債務者の多様性に対応できるような柔軟な手続ということにいたしました。特に、債務者自身が従来どおり財産管理、事業経営を続けながら再建を図るということを基本型といたしておりますけれども、必要に応じ、またその対象の性格に応じまして多様な手続機関を用意して、必要であれば監督委員を裁判所が選任をして、いわゆる監督型の手続にする。あるいはさらに、債務者の手から財産管理、事業経営も奪う必要があるという場合には、管財人を選任する管理命令というものを裁判所が出して管理型手続にするということも可能なようにしているわけでございます。
それからまた、従来の和議は破産原因がある場合に初めて開始できるということでございましたために、手続を開始したときにはもう既にいわば病人は危篤状態にあるというようなことでございましたために、これをまた蘇生させる、あるいは元気にするということが非常に難しいということが言われておりましたので、この民事再生手続におきましては、破産原因たる事実の生ずるおそれがあれば手続を開始できる、あるいはまた、事業の継続に著しい支障を生ずることなしに弁済期にある債務を弁済できないという事情があれば手続を開始できるということにいたしまして、早期に手続を始めることを可能にしたわけでございます。
また、手続開始前の保全処分を充実させまして、事業の再建に必要な資産を確保できるようにいたしました。
また、手続開始申し立て後の融資等に係る債権を共益債権という形で優遇をいたしまして、融資等を得やすくして債務者が運転資金等に窮することがないようにするというような手配をいたしております。
そのほか、親子会社であるとか法人と代表者の倒産手続を一体的に処理するようにしたというような工夫も取り入れたところでございます。
第二の特色でございますが、債権者あるいは企業で労働に従事する労働者等の利害関係人の権利を守り、かつ公平で透明な手続という点でございます。
まず第一に、再建計画の履行を確保する制度を整備いたしました。従来の和議は、せっかく再建計画ができても、それが実際に実行されることが非常に少ないというふうに言われておりました。そのために再建の実を上げられないということであったために、今般の民事再生手続では、監督委員あるいは管財人による計画の履行の監督をすることができるようにする、あるいは債権者表に基づく強制執行を可能なようにするというような形で再建計画の履行の確保を図ったわけでございます。
また、債権者のために債務者の資産を確保しあるいは債権者相互間の平等を確保するために否認権という制度を取り入れまして、へんぱ弁済とか債権者を害する行為を債務者がやっているという場合には手続後それを取り消せるということにしたわけでございます。
さらに、債権者委員会制度というものを設けて、債権者の意思を手続によりよく反映できるような方法をつくりました。
また、労働組合等につきましては、手続関与の機会を保障するという考え方をとりまして、労働組合等の意見を聴取するというような機会を手続の各段階に設けることにする一方、そのような組合等の意見陳述権あるいは意見聴取をしてもらえる権利というものを実質的に保障するために、これも主要な場面で組合等に通知をするということをいろいろと定めたわけでございます。
それから、これまでとかく倒産手続は管財人と裁判所だけで進められて、債権者を初め手続の外部にいる者にはなかなか実態がわからない、そういう意味で透明性にやや難点があるということが言われてまいりましたので、この手続では事件関係文書の閲覧に関する規定を整備いたしまして、その透明化を図ったわけでございます。
そのほか、法人たる債務者の役員のモラルハザード防止のためにその責任追及手続というものを整備したのも、債権者等の利益を守る、その権利を守るという考え方に基づくものでございます。
第三に、迅速かつ機能的な手続ということでございますが、これは、これまで必要的に開かれておりました債権者集会というものを任意的なものといたしまして、かつ書面決議制度というものを導入して手続の簡易迅速化を図ったという点、あるいは、債権調査手続というものをこのたびの民事再生手続では新しく設けましたけれども、それが手続全体の遅延につながらないように、調査手続を書面手続化し、また債権確定手続を第一次的には決定手続にする等の工夫をいたしてございます。
また、近年、倒産処理の方法といたしまして営業譲渡というものが注目されるに至っていることは議員の皆様も御承知のとおりだと思いますが、裁判所の許可によってこの営業譲渡ができるようにし、また債務者会社が債務超過の場合には株主総会決議を省略することもできるということにいたしまして、現代の経済社会の状況に対応できる迅速処理を図っております。
また、債権者の多数の同意を要件といたしまして、手続の一部を省略し、迅速に再建計画を成立させることができるような特例手続、実際には簡易再生あるいは同意再生というふうに呼ばれる手続でございますが、そういう手続を併設いたしました。これによりまして、これまで実際に裁判上の手続よりも私的整理が多いというふうに言われていたわけですけれども、その私的整理を公正かつ透明な公的手続に取り込むということをも可能になるようにしたわけでございます。
第四は、経済社会の国際化に対応した手続という点でございますが、この点では二つのことだけ申し上げておきたいと思います。
一つは、内外人平等原則というものをとりました。これまでは外国人あるいは外国法人も、倒産手続上我が国の自然人あるいは法人と同じであるということにしましたけれども、それにはいわゆる相互主義という枠がかかってございました。先方の国も日本人、日本法人に対して同様の処遇をする場合に限って、こちらも日本人、日本法人並みにするという考え方でございましたけれども、そういう相互主義の枠を廃棄することにいたしました。
それからまた、同じ債務者について、我が国と外国と双方で倒産手続が始まるという場合がございますが、そういう場合には、お互いの管財人等が連絡をとりながら調和的に手続が進められるようにいたしました。それからなお、先ほど現行法の問題点として申し上げました地域孤立主義という考え方を改めるようにいたしております。
以上、述べましたとおり、民事再生法案の定める再生手続は、債権者等の権利に適切な保護を与えながら、中小企業等多様な債務者の事業または経済生活の再生を実現し得る、現代経済社会における実効的な再建型倒産手続であるというふうに評価できると思うわけでございます。
慎重な御審議を経て、一日も早く法律として成立することを希望したいと思う次第でございます。
以上で、私の意見陳述を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/2
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003・武部勤
○武部委員長 ありがとうございました。
次に、久保利参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/3
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004・久保利英明
○久保利参考人 ただいま御紹介いただきました東京商工会議所の常任顧問で経済法規委員会副委員長を務めております久保利英明でございます。本職は弁護士でもありますけれども、きょうはそういう立場も含めて意見を申し上げたいというふうに思っております。
本日御出席の先生方におかれましては、商工会議所の事業活動に対しまして、日ごろより深い御理解と御支援を賜っておりまして、この場をおかりいたしまして厚く御礼申し上げます。また、意見陳述の機会を設けていただきましたことに対し、重ねて御礼申し上げたいと思います。
以下、民事再生法についての意見を申し上げます。
御高承のとおり、バブル経済崩壊以後、日本経済は深刻な不況に陥りました。一部改善傾向はうかがえるものの、依然として本格的な景気回復へのはっきりとした足取りは見えていないように思われます。民間信用調査機関の帝国データバンクによりますと、平成九年度、十年度と二年連続で負債額一千万円以上の倒産件数は一万七千件台と高水準にありまして、負債総額に至っては戦後最悪を更新しております。
貸し渋り対策としては、昨年十月より、信用保証協会の特別保証枠が設けられたことにより、おかげをもちまして、その後中小企業を中心として倒産件数は大幅に減少しておりますが、景気の本格的な回復や企業の財務体質の抜本的な改善が進まなければ、今後再び企業倒産が激増する可能性があると思います。
特に、中小企業を中心とする事業者につきましては、従来のさまざまな法的整理あるいは再建型の手続というものが煩雑な手続のために利用しづらい、必ずしも公正公平が担保されない任意整理による処理をやむを得ず行うというケースが極めて多いのが現状でございます。
私が弁護士になりましたのが昭和四十六年でございました。このころから約十年間は、私は倒産法の弁護士をやっておりました。会社更生の神様と言われた早川種三さんと一緒にやってまいりましたけれども、会社更生という手続は大変重たくて、よほどの超大企業でないとなかなか使いこなせないというところがあったように思います。
最近十年間、バブル崩壊後の十年間は、またもとの倒産弁護士の部分をいたしておるわけでございますが、これもヤクザ・リセッションと言われるように、暴力団等々が介入してきたときに私的整理で本当にきっちりとした整理ができるのか、大変悩ましい問題がございました。そういう経験を踏まえまして考えますに、この民事再生法という法的な処理が比較的軽い形で、円滑に経済活動を支える形で機能できるのであれば大変に喜ばしいというふうに考えているところでございます。
特に、最近のシリコンバレーにおける経営者の活躍等々を見ましても、失敗ということが、あるいは倒産ということが本当におしまいなのか、もうその会社、その経営者にとって死亡につながるのかということになりますと、そうではないのではないか。アメリカなどではフェーリアー・イズ・エブリホエアというふうに言われておりまして、倒産、失敗、これはどこにもあるのだという原則が確立しております。日本の場合には、もうフェーリアーがあったらおしまいだということがありますが、この再生法によって、この違った文化、アメリカ的な失敗を恐れないベンチャーという考え方が日本の経済界の中にも根づくのではないかというふうに期待している次第でございます。
そうした意味から、企業組織の再編というものを円滑に進めて有用な経営資源を有効に活用する、失敗した者にそれを経験として与えて、次なるチャレンジにおいては失敗をしないようにする、経験としてプラスに転化する、そういう産業政策的な観点からも新たな制度の整備が必要である。その意味で、今回の民事再生法の制定は、主に中小企業を会員とする私ども商工会議所としての希望にかなったものでありまして、ぜひとも一日も早い成立を強く望む次第でございます。
以下、再生法制度の基本的な考え方と運用に関しまして、七点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、包括的禁止命令等の幅広い活用についてであります。
倒産事件、特に再生型の倒産事件において何が大事かといいますと、事業継続、操業の継続、これが最大のポイントであります。操業がストップしてしまったのでは再生することはほとんど不可能であります。その点から考えますと、申し立て段階において再生債務者に対する債権回収が殺到する、こういう場合に、余りにも厳しい法的な取り立て等々を許す、あるいは回収を中心に考えるということになってまいりますと、再生債務者の再建を阻害することになる、こう考えます。
民事再生法においては、こういう問題に対応するために、保全処分などとともに、包括的禁止命令、二十七条でございますが、これが設けられております。この制度は極めて強力な制度ですから、債権者間の公平を図り、再生債務者の再建を可能とするということに大いに資するものでありまして、これが非常に柔軟に運用されて幅広く発令されるように望みたい。
また、再生債務者の再建という観点からは、三十一条に定めました担保権実行中止命令ということについてもぜひ活発な運用がされますように期待をいたしたい、かように考えます。立法については、大変に時宜を得たものだと考えます。
二番目に、この種の再生手続を行うときに大事な問題として、情報開示の問題があると思います。
倒産手続全般について、現在までのところ情報開示が十分進められているとは言えない現状にあります。これは、もちろんさまざまな事情がありまして、裁判所における都合の問題、あるいは倒産債務者にひっかかった債権者が余り情報開示されますと、逆に自分自身に対する銀行、金融機関等からの融資の引き締めに遭うということで望まないというようなさまざまな問題があるわけでありますけれども、ぜひ十七条、十八条に定められた裁判所における文書の閲覧については、広く認める方向で運用されたいと思います。
裁判所への報告、百二十五条でございますが、これについても、裁判所の適正な判断によって、場合によっては広範な情報が裁判所へ報告され、こういう情報が利害関係人に対して適切に開示されるような運用を望む次第であります。
三番目といたしましては、再生手続開始原因の認定に関する柔軟な運用でございます。
この二十一条における手続開始原因の認定を厳格に行いますと、開始決定までに時間がかかります。先ほども申し上げましたような操業の継続、事業の継続ということが何よりも大事でございますので、できるだけスムーズに進行させていただきたいというふうに思う次第であります。それから、そのためには、裁判所でしかるべきガイドラインというものをつくっていただくということも必要ではないかというふうに考えます。
四番目は、手続の迅速化の問題でありまして、迅速な処理、これも非常に重要であります。そのためには、申し立て後、迅速に開始決定がなされることのみならず、開始決定後も、再生計画認可に至るまで迅速に手続が処理されるように、これを望みたいと思います。そのためにも、ある程度手続の基本的な流れといいますか、標準的な処理期間が設定されることが望ましいと考えます。
五番目には、再生に当たってファイナンスをどうするかという、DIPファイナンスというふうに言われますけれども、このDIPファイナンスを導入することについて申し上げます。
いかに裁判所の監督のもとでどのような手続が進められても、裁判所はお金を用意することができません。したがって、DIP、すなわちデター・イン・ポゼッションというふうに言いますけれども、業務運用をやっていく債務者でございますね、経営者、これは必ずどこからかスポンサーか融資元を引っ張ってこなければいけない。しかし、これは大変難しいことでありまして、努力をしてもなかなかファイナンスがつきません。融資リスクが非常に高くなるということから利率が高くなることも予想されます。現在のように、共益債権とするという許可は大変ありがたいことでありますけれども、それにしても、金利の点ではかなり特殊事情があるかもしれません。そういう点で、DIPファイナンスによる融資を活発に行うのについて、金融監督庁の検査マニュアルでは第四分類とされるというようなことも仄聞しておりますので、ぜひこのあたりを変えることによって、運用上、ファイナンスが比較的容易にできるようにお願いをしたいという点がございます。
第六番目は、営業譲渡の許可に関する裁判所の迅速、適正な判断をお願いしたいと思います。
近年の倒産処理においてはMアンドAが極めて重要視されております。今回の民事再生法においても、裁判所の許可によって再生債務者は営業譲渡を行うことができます。株主総会にかわる裁判所の許可を得ることができるわけです。ぜひ、この場合、営業譲渡の必要性について、裁判所が適正かつ柔軟な運用を迅速に行っていただきたい。こういう運用がなされなければ、法律は結局死んでしまうというふうに思います。
最後に七番目、専門家の活用であります。
従来の倒産手続においては、事業管財人を含めて、弁護士がかなりの程度就任しておりますけれども、管財人の経済的インセンティブというのは全くありません。これはボランティアであります。適正な報酬は全く受けられない。そういう中で、多くの債権者に取り囲まれる中で再建をしていく。そういう中で、多くの専門家が関与しなければこの種の再生手続はうまくいきません。経営の専門家、公認会計士その他の専門家がこの手続において活発に活用されるような運用が必要だと思います。具体的には、民事再生手続における監督委員などにこれらの者を充てるとか、あるいは、経営コンサルタント、MアンドA仲介業者等の知恵をかりる必要もあるわけでありますが、ぜひ、裁判所の許可、監督委員の同意がなされるようにお願いをしたいと思います。
最後になりましたけれども、東京地方裁判所判事の菅原雄二さんが、「金融・商事判例」というところに、消えていこうとする和議法について、こう書いています。「いざその寿命が限られてみると、使いやすいよいところもあったなあとか、育て方が悪かったのかなあ」、これは運用のことでありますが、「複雑な思いもするのが正直なところである」とおっしゃっています。
いかなる法律であっても、育て方がよくなければ十分機能を上げることはできない、その育て方の根本においては立法の精神ということを十分考える必要があるだろうというふうに考えて、この七点を意見陳述申し上げました。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/4
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005・武部勤
○武部委員長 ありがとうございました。
次に、熊谷参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/5
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006・熊谷謙一
○熊谷参考人 連合、労働団体の日本労働組合総連合会で労働法制対策局長をしております熊谷でございます。
法務委員会の諸先生におかれましては、連日の真摯な御討議に心から敬意を表したいと思います。また、私ども連合の諸活動に日ごろから御理解、御協力をいただいておりますことに御礼を申し上げたいと思います。本日は、このような発言の機会を与えていただきましたことに心より感謝申し上げます。
民事再生法案、それからこの法案に関連する現在の倒産の問題等について、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。
まず最初に、現在の職場の倒産の状況について簡単に御報告を申し上げたいと思います。
現在、大変長期にわたる不況の中で、企業倒産はかつてない規模となっておりまして、多くの働く勤労者と家族にこれまでにない大変強い不安を与えております。いろいろな現場を預かっている組織でございますけれども、先日、製造業の下請の中小企業の労働組合のリーダーから、大変深刻な話を受けたところでございます。会社の残業後の職場集会で、若い組合員からこのような質問があった、最近の職場が大変暗くなっている、この前、先輩たちが、親会社のリストラがあって来年は我が社は阿鼻叫喚だというような話を聞いたけれども、うちの会社はどうなるのか、これに対してそのリーダーは大丈夫とは答えられなかったというものであります。
マスコミにおきましては連日大企業のリストラが大きく報道されておりますけれども、政府の統計を見ましても、企業倒産や展望のない離職を伴う深刻なリストラは中小企業に集中をしております。また、昨年より、我が国の自殺者が激増して年間三万人を超えたこと、そしてそれが我が国の男性の平均寿命を引き下げたことが大きく報道されました。マスコミの解説は、このような事態の原因は、中高年の男性が多いことから見て、最近の解雇の激増等にあるとしております。我が国の社会は、かつて経済成長と長期雇用のシステムが世界から注目された時代がありましたけれども、今日、企業の倒産やリストラが国民の寿命さえ縮める状態へと転落しつつございます。
連合は、こういう事態の中で、政府や経営者の方々に対して、我が国の長期安定雇用の慣行を守るべきこと、そして倒産の防止と企業の再建のための施策が必要である、その強化が必要であることを訴えてまいりました。その中で、特に重要な課題が倒産の防止と企業再建に関する法制の整備であると考えております。
この倒産法制の整備に関しまして、連合、私どもは、一九九六年にヨーロッパ、欧州に倒産法制に関する調査団を派遣いたしました。これは、欧州各国におきましては倒産法制の整備が進められている、こういう話を聞きまして、我が国にとってこれが大変重要な参考になると考えたからでございます。
そこで我々が見ましたものは、倒産法制は企業の再建を図るものに大きく動いている、労働者の未払い賃金などの労働債権に十分な配慮が行われている場合が多い、倒産法制の運用において労働者代表の参加が確保されている、その他の新しい法制度の姿でございました。
これに対して我が国の状況は、御案内のとおり、破産法、和議法という基本法が七十五年前の大正時代に策定された当時の骨格を残すという大変異常な状況が続いております。特に、企業再建の法制の中心であるべき和議法が活用状況が非常に低い、再建計画の実効性が低い、労働組合の関与が全くない、それらの重大な問題がある、これが国際比較の中でも明らかになったわけでございます。
このため、現在、いわゆる倒産五法の中で破産法の利用のみが目立つ形となっておりまして、企業再建型の法制を適用した場合にも、職場に事実上の倒産というニュースが伝えられるような状況でございます。さらに、基本的な問題として、実際の倒産の八割以上が法的手続すら経ない私的整理で行われている。このような状況に対して、私どもは、第一線のオルガナイザーを含めた検討を続けまして、倒産法制全体の改革に関する基本的な改革の考え方をまとめ、その早急な実現を求めてきたわけであります。
さて、民事再生法案の内容についての意見を申し上げたいと思います。
私どもはまず、この法案についてはその提出に至る経緯に問題があると考えております。それは、我が国の倒産法制は、現在破産法等を含めた全体を改革するべき時期を迎えているにもかかわらず、また、その方向で検討が進められていたにもかかわらず、和議法の改正のみが先行したことであります。このため、本来であれば同時に審議されるべき破産法の全面見直しや賃金債権などにかかわる実体法の改正などが先送りされております。このような状況は倒産法制の改正について先進国にふさわしいものとは言えない、このような思いを強くしております。
改正法案の内容につきまして、その方向自体は国際的な倒産法制改革の流れに沿ったものである、そして、後に述べますような問題点が解消されるのであれば、基本的には支持できるものと私どもは考えております。
我々がこの法案の中で評価できると考えておりますものは、賃金債権について、破産移行時の問題を除いて優先権が確保されている、再建計画案の作成、許可その他の手続面で労働組合、労働者代表の関与が増大している、企業再建のネックとなってきた担保権についての消滅の規定が行われている、手続の執行力を強める規定が含まれている、また情報開示等についての規定が盛り込まれたことなどであります。
これらの内容につきましては、次に述べます問題点を解決し、法が適切に運用される場合には中小企業の再建に資するものになると期待をしているわけでございます。
しかしながら、今回の法案には二つの重大な問題があると考えております。
一つは、賃金債権の問題であります。
本法案において賃金債権は一般優先債権とされていますが、それは企業再建の場合のことであって、やむを得ず破産に移行する場合には優先債権とならないこととなっております。すなわち、会社更生法では賃金債権は共益債権とされているため破産移行時に優先的な財団債権となりますが、この法案ではそのように扱われておりません。
連合は、本法案において適切な配慮が行われ、かつ、破産法が同時に見直されることにより賃金債権の扱いが改善されることを求めてまいりました。本委員会におかれましては、賃金債権の問題について十分審議されるとともに、本法案に続いて直ちに破産法の改正を行うよう行政当局に指示をしていただきたい、そのように強くお願いを申し上げたいと思います。そのようなことがなければ、破産法改正までの空白期間が生じ、民事再生法の適用を受けた後に破産に移行した会社で賃金債権が失われる事態となるおそれがございます。
また、本来、本法案と同時に解決されるべき課題として、租税債権との順位の問題を指摘させていただきたいと思います。
欧州先進諸国では、倒産法制において労働者の賃金債権が租税債権に優先すること、あるいは少なくとも同格であることは常識であります。連合の調査団におきましても、ドイツ、フランス等の労働組合から、日本で賃金債権が租税債権に劣後することを知り、大いに驚いたという声を聞きました。このような事態は先進国としての我が国の体面にかかわることでもあるとの思いを強くしたわけでございます。ぜひ、本法案の審議に関連して、国会として、今後の我が国におきまして、職場で営々と努力し、まじめに働いてきた労働者の賃金債権が租税債権より優先するという方向を明確にしていただきたいと思うものでございます。
本法案に関する二つ目の重大な問題は、営業譲渡の問題でございます。
本法案の作成に至る経緯の中で、当初、行政から各界に送付された意見照会の中にはこの問題は扱われておりませんでした。その後、この法案をめぐり、営業譲渡の活用、我々の目からいえばその悪用を促進しよう、そう考えられる提案があると知り、大いに驚き、怒りを覚えたわけでございます。その提案は、一言で言えば、会社再建の途上で会社のいわば切り張りを行って、売れる部分のみを売り、残る部分は清算する、そのために使える法案にしてはどうか、このような提案としか受けとめられない内容でありました。
これは、我々のみならず、再建型の倒産法制の確立、和議法の適切な全面改正を求めてきたすべての人々から反対される内容である、それ以外の何物でもないと考えております。冒頭に述べましたように、現在、職場では過度なリストラが進行する中で、多くの職場から悲鳴に似た声が漏れてきておりますが、その中でこのような提案が行われたことに対して、真摯に倒産法制の改革を求めてきた我々の仲間は憤激をしたわけでございます。
現在審議が行われております法案では、法制審議会の議論を経て、営業譲渡について一定の規制が規定されております。すなわち、裁判所の許可と、労働組合あるいは労働者代表の意見聴取が規定されております。
しかしながら、私は、この規定では不十分であると考えます。少なくとも、裁判所の許可は民事再生法が適用される企業、事業の再生に資する場合にのみ行われることを法で明確にしていただきたいと思うわけでございます。このような規定が明確にされることがなければ、民事再生法について、これはもしかすると悪用に歯どめのきかない法ではないかという不安が広がり、法の適正な運用に重大な支障を招くことになりかねないと思うわけでございます。ぜひぜひよろしくお願い申し上げる次第でございます。
営業譲渡に関して、労働組合あるいは労働者代表への意見聴取規定を設けられておりまして、これにより、労働組合のきちんと組織されている職場ではこの規定が力を持ち得ると受けとめております。しかし、中小企業では労働組合のない職場が多く、かつ、そのような職場は営業譲渡に関する体力が非常に乏しいということが考えられますので、営業譲渡に関する許可基準の法による明確化をぜひお願い申し上げたいと思うところでございます。
民事再生法については、今二つの大きな問題点を申し上げましたけれども、これ以外にも幾つかの課題があると考えております。
その一つは、労働組合等の関与の規定の実効性の確保であります。
本法案では、手続の六つの節目において労働組合の関与が新たに規定されたことについて、私どもは高く評価しているところでございますが、この規定の確実な実効性を担保するためには、法の運用において、裁判所がその趣旨を十分に踏まえた運用をされることが必要であると考えます。
また、下請企業の労働者の労働債権確保の問題も大変重要であります。本法案では、会社更生法に準ずる牽連倒産防止に関する一定の規定が盛り込まれておりますが、その運用に当たり、下請関連労働者の労働債権にも十分な配慮がされるよう要望いたしたいと思います。
さらに、法の実効性を確保するために、担保権消滅の規定、監督委員の規定などについての適切な運用が不可欠であると考えます。
また、この法案は、条文数が二百十五に上る大きな法案でございまして、施行後にさまざまな課題が生ずることもまた大いに考えられるところでございます。その場合には、労働組合や各関係者の意見を聞きながら、法とその運営の適切な見直しを図るべきことをぜひ国会としてお示しいただければと思っております。
さて、最後になりますけれども、倒産法制の全面改正に際して、労働者保護法制の確立があわせて必要であることをお訴え申し上げたいと思います。
倒産法制の整備、そして企業再編の法制の整備が進む欧州では、一九七七年の欧州連合、EUの指令に見られるとおり、企業の合併、営業譲渡、分割等の再編に際して雇用と労働条件を保護する法制が整備されております。私は、本来、このような民事再生法を含め、企業組織の変動をもたらす法律の制定はあわせてこのような労働者保護法制が必要であると考えておりますし、私どもは、特に企業分割に関する商法に関して、これが必ず同時に制定されるべきものと現在訴えているところでございます。ぜひこの問題についても適切な御配慮をお願い申し上げたいと思います。
今回の民事再生法案の審議に関しまして、ぜひ、我が国の長期安定雇用の役割を守りながら経済の活性を図る、そして企業の倒産の防止と再建を図る制度の役割を強化していただきたい、そのように思うわけでございまして、本法案が、さらに適切な配慮と十分な審議が行われるとともに、労働者保護法案の整備が図られ、我が国の社会制度の前進に大きく寄与するもの、そういうものになることを心より念願しております。
失礼いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/6
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007・武部勤
○武部委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/7
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008・武部勤
○武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/8
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009・横内正明
○横内委員 自民党の横内正明でございます。
きょうは、参考人の先生方には、ただいま大変に貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。
早速質問をさせていただくわけでございますが、竹下参考人、竹下先生は、法制審議会の倒産法部会の部会長としてこの法案の取りまとめに中心的に携わってこられたわけでございます。しかも、本来は五年ぐらいでやるところを三年でまとめるという社会的な要請があって、大変に忙しい取りまとめだったと思うのですけれども、そういう中で中心的に御尽力を賜ったことに対しまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。
先生から今、この民事再生法の、必要とする背景だとか審議経過だとか概要について大変わかりやすい御説明をいただきました。
先生にまず御質問したいのは、しかし、この民事再生法というのは、倒産法部会として、倒産法の整備のまだ一部ということでございます。これからさらに破産法の問題、いろいろあるわけでございますし、今熊谷参考人からも、破産法の整備は早急にやるべきだという御意見がありました。その倒産法部会長として、今後の倒産法制の整備、今後、どういうスケジュールでどのようなタイミングでやっていかれるおつもりか。これは法務省の意向もあると思うんですけれども、部会長として、どういう手順で、どのくらいのスケジュールで、どんなことをこれからおやりになりたいと考えておられるのか、それをまずお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/9
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010・竹下守夫
○竹下参考人 それでは、私の考えているところを申し上げたいと思います。
御承知のように、倒産法改正作業はまだかなりの部分を残しているわけでございますけれども、恐らく次に緊急性のある問題といたしましては、いわゆる消費者倒産、つまり個人倒産の問題でございます。
現在の法制では、破産法に免責という制度がございまして、一たん破産宣告を受けた後に、すべての財産を投げ出して、残った債務は免除してもらえるということになっておりますけれども、破産に至る前に分割弁済をしてできるだけの支払いをしたら残りは免除してもらえるというような、そういう制度が必要になるのではないか。とりわけ、住宅ローンなどを抱えている中産階級については必要があるのではないかと考えておりますので、まずこの問題、この手続に関する改正をできれば来年中にでもやりたいと思っております。
それから、できますれば、先ほどもちょっと触れましたけれども、こういう国際化された経済社会でございますから、より一層国際協調的な倒産法制というものをつくり上げる必要があるだろうと考えておりまして、これも、それほど時間がかかるわけではございませんから、なるべく早い機会にやりたい。それから本体の破産ということになるわけでございますが、これは御案内のように、今の権利関係の優先問題を初めといたします実体法の問題と手続の問題と両方ございますので、それを仕上げるにはやはり一年ちょっと時間がかかるのではないかというふうに考えております。
そういう次第で、消費者倒産の問題は来年じゅうに何とかめどをつけたい、引き続き国際倒産の問題、それと破産の問題を処理したい、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/10
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011・横内正明
○横内委員 ありがとうございました。引き続き先生には御指導いただくわけでございますが、ぜひともよろしくお願いを申し上げます。
次に、久保利参考人でございますけれども、先生には、以前「法化社会へ日本が変わる」という本がありまして、数年前それをお書きになって、私も読ませていただいて、大変啓発を受けたわけであります。今司法制度改革が行われておりますが、それに先鞭をつけた先生の御意見だった、そういうふうに思います。
一点だけお聞きしますけれども、参考人は長年、企業法務の専門家として活躍をしてこられたわけですけれども、この民事再生法の手続を運用するのは、主としてはやはり弁護士だということになると思うのです。そういう意味で、この法律をスムーズに、仏に魂を入れるのも、やはり弁護士さんというのが、有能な弁護士さんが運用して初めてこの法律というものが効果を発揮するわけでありますけれども、この法律を運用する、そういう企業再建に携わる弁護士の心構えというようなものを、どういう才能を持った弁護士が望ましいのかとか、そんなことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/11
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012・久保利英明
○久保利参考人 参考人の久保利でございます。
大変難しい御質問でございまして、とても弁護士の心構えを言うほど、私、経験も力量もあるわけではありませんが、基本的に、再生法の本意は、やはり経済に活性化を与えるといいますか、つぶれたら、それは企業が死亡したわけではないんだ、入院加療をして、あるいはその個人はもう一遍やり直しがきくんだということに資するための法的手続だろう。
そういう意味で、これは弁護士もそうでございますし、裁判所もそうだと思いますけれども、とにかく前向きに、再生できるようにやっていくためにはどうしたらよいか。要するに、後始末という、お葬式というふうな整理で倒産はしばしば思われるわけでございますが、再生型のものは、むしろ再生してこれからもう一遍やり直していくんだという、よみがえっていく方向にいかに法律というものが経済に資することができるか、その観点を裁判所も弁護士も関係者も皆、腹の中にしっかり置いた上でこの手続を運用していく、これが心構えといえばそうではないのかな。
したがって、後をどう始末する、整理をするというのではなくて、活力を与えて、もう一遍やり直すということをポイントに考えたい、私自身の自戒も含めてかように考えておるところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/12
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013・横内正明
○横内委員 次に、熊谷参考人に伺いたいんですが、ただいま御意見を承りまして、連合としてもこの倒産法制について大変に勉強しておられて、かつ、労働者の立場からしっかりした見解を持っておられるということで、敬服をしたわけであります。
ただ、鷲尾さんが法制審の委員をしておられ、それから熊谷参考人は倒産法部会の委員もしておられた。当然、そういう場で大いに今のようなことはおっしゃったんだろうと思うんですね。その結果として、この民事再生法の答申について賛成をされたというふうに聞いているわけでございますが、今のお話を聞くと、評価はするんだけれども、しかし非常に重大な問題があるということを言われるものですから、やはり重大な問題がある、何か欠陥があるとすればそれは賛成はできないはずなんであって、ちょっと言い方がうまくないんですが、だから結局、いろいろ問題はあるけれども、しかし基本的にはこれは評価できるんだ、そういうスタンスで賛成をされたのかということですね。どうも、法制審議会におけるスタンスと今おっしゃっていることとの、説明を多少していただく必要があるんじゃないかという気がするんです。うまく説明できませんが、ぜひひとつよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/13
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014・熊谷謙一
○熊谷参考人 御質問、どうもありがとうございました。
連合は、法制審議会の審議に参加いたしまして、特に破産法、和議法の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、会社が清算をする代表の破産法は年間約三千近く使われている、しかし、和議法は数百のレベルにとどまっている、本来は、欧州の動向等を見ても、再建型の新しい基本法が必要である、これは向こう五十年、百年の問題である、こういうふうに考えまして、鷲尾会長が法制審議会の委員として、私が倒産法部会の委員として審議に参加をしてまいりました。審議には、各界の経験の豊富な方、あるいは各弁護士の方、学識経験者の第一人者の方、あるいは各省庁の方が参加されまして、それぞれ大変な意見をお持ちでございました。
したがいまして、我々としては、最後までこの問題の問題点に反対だからこの法案は全く反対であるという態度をとるということは非常に後ろ向きの態度ではないのか、この法案がこういう形で動き出したこと自体については前向きの方向であるというのが、きょう資料でお渡しを申し上げております法案要綱についての評価でございます。
しかし同時に、現場では、先ほど申し上げたように、連日解雇、リストラその他の問題が発生しておりまして、その討議の中で、この二つの重要問題については、これは極めて重要な問題であるということで、法制審議会の八月二十六日の確認のときにも、鷲尾会長・委員の方から、この二つの問題は残されているということをきちんと表明いたしました。
しかし、これだけ各界の方々が大正時代以来の法律をつくろうということに対して、つくることに反対であるというような対応はとらない。そして、法律というのは、あるいは法案要綱というのは、各界の、そしてまさにこういう審議の場を通じて、諸先生の御見識でいろいろな形の配慮がしていただけるものだ、このように考えておりまして、そういう意味で法制審議会あるいはその部会の審議に積極的に参加をいたしまして、同時に、先ほど申し上げたような現場の声をお伝えしてきたというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/14
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015・横内正明
○横内委員 ありがとうございました。
では、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/15
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016・武部勤
○武部委員長 坂上富男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/16
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017・坂上富男
○坂上委員 まず最初に、竹下先生にお伺いをしたいのでございますが、これは全く素人といいましょうか、普通の中小の企業者等に説明をするのにどういう説明が一番的確なのでございましょうか。これは本来、倒産したものを再建させるという法律なのでしょうか。それとも、倒産はしない、しかしこのまま放置をすれば倒産になる、よってもって、何らかの対応を裁判所の手によってやりたい、こういうふうに理解した方がいいのでしょうか。どちらでございましょうか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/17
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018・竹下守夫
○竹下参考人 ただいまの御質問でございますが、倒産という言葉をどう理解するかでございますね。議員おっしゃられましたように、倒産という言葉を非常に強い意味にといいますか厳格な意味で、企業がどうにも立ち行かなくなって、例えれば危篤状態に陥ってしまったということを倒産というふうに考えるのだとすると、そうなってしまうとなかなか立ち直りは難しいということになりますから、倒産一歩手前で、この手続でまた健康体に戻すのであるという説明の仕方になるかと思いますが、そもそも、健康状態に病院へ行かなきゃならぬという程度の問題が出てきているということは間違いないわけでございますから、この法案の目的規定に沿って申しますと、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得て債務の調整をするということでございますので、経済的に苦しい状況になってきている、普通に、ノーマルに経営を続けていくことはできない、しかも、裁判所の門前をたたいて、債権者の権利行使をとめてもらって、それで再建をしようというわけでございますから、広い意味で倒産という言葉を使えばやはり倒産状態とでもいいましょうか、そういう状態になった事業を再生させるということになるかと思います。
一般の方にどちらの説明の仕方の方がわかりいいのかということになると、あるいは、倒産一歩手前で救うのであるというふうに申し上げる方がよろしいのかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/18
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019・坂上富男
○坂上委員 久保利先生、ちょっと全くの素人の質問ですから。さっき病院に入院する、こうおっしゃったが、私は、入院の前の通院程度なんじゃないか、こんなふうに思っていますが、どっちがいいでしょうか、素人に言うには。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/19
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020・久保利英明
○久保利参考人 御質問ありがとうございます。
これも大変難しい質問でございまして、要するに、その病気の状態というのがかなり危ない状態でも、今通院で治るケースもありますよね。そういう意味で、入院か通院かの問題ではなくて、病状が、ほっておけば死に至る病なのか、あるいは、ほっておいたって別に死には至らないけれども通院した方がいいですよということなのかということでいえば、入院しようとしまいと、とにかくほっておくと死に至る病であれば、通院する程度のことであったって、やはり再生法の対象というふうに考えてよろしいのではないか。
ただ、一般の人にわかりやすくするためには、通院している程度のことで再生法だということになりますと、それは逆に、債務者が、余り悪くもないのに債権者の債権をカットしたりさまざまなことをやるというのは、むしろ債権者に迷惑をかけ過ぎるのではないかという批判も出てくるだろうということで、わかりやすく言うと、ほっておくと危ないという意味で入院という表現を私は使ったわけであります。
そういう観点からいいますと、ただいま竹下先生がおっしゃったように、死亡には至っていない、あるいは危篤には至っていないが、このまま放置すればそうなる可能性のある状況、この人をどうするかというのがこの法律の目的だ、こう理解をいただければよろしいのではないかなというふうに考えますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/20
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021・坂上富男
○坂上委員 実は、この間私が質問を、法務省を中心にしてさせてもらいました。やはり、結構聞いている人がいるのですね。私の質問にこうだといって連絡が来ました。
と申し上げますのは、もしもこれが申し立てをすると、帝国データバンクはどう対応するか。これはもう倒産だ、こういう発表をするそうです。そこで、本当に我々が倒産一歩手前で再建をさせてくださるならば、帝国データバンク——これは私は又聞きですからあるいはそうならぬのかもしれませんが、一応私に連絡をしてきた人はそう言っているのです。したがって、私は、まさかそこまで話が進んでいるとは思わなかったのです。
それで私は、民事局長さんに、倒産という概念はどうなんだと。どうもあなたたちを見ると再建再建と言うけれども、もう倒産だ、倒産のを再建しようとするようなやり方はちょっとおかしいんじゃないか。これはやはり倒産しない、一歩前なんだというような概念が正しいんじゃなかろうか。そうだとするならば、あなた方は不用意に倒産という言葉を使い過ぎているんじゃなかろうかという趣旨のことを私は申し上げたわけでございます。
それを聞いた人が私にそういうような話をして、申し立てをしたら、例えば、会社更生法の申し立てをして事実上倒産した、こういう新聞です。それから、会社整理の申し立てをして事実上倒産した、こういう記事が載るわけでございます。そういたしますと、事実上倒産したということが新聞にあるいは報道されますと、これを再建するというのはなかなか、致命傷になるのじゃなかろうかと実は思っておるわけでございます。
そこで、法務省の答弁といたしましては、中には破産原因があった場合にこの申し立てもすることができるので、これは倒産だ、しかし、あるいはおそれだけだったら倒産ではないだろうというのでなかなか難しいという話なんです。
やはりこれは、竹下先生、今そういう連絡が来ていたのですが、先生方は確かに御専門家でございますから、倒産法制はどうあるべきかという議論で、それほど意識されないで、実務の形の中では大変影響が大きいのじゃなかろうか、せっかく先生方がつくってくれても、本当に使うに使われないのじゃなかろうかと私は実は心配をしているわけです。
だものでございまするから、まず久保利先生、今私が言ったのは、全く私らの実務の、いわゆる町の話です。しかし、これはまた極めて重要なことで、こうやって片っ端から倒産だ倒産だといって書かれたら、果たして利用する人がいるのだろうか、再建可能なんだろうかと大変危惧をいたしますが、先生、まずこの点はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/21
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022・久保利英明
○久保利参考人 本日、私は東京商工会議所の推薦を受けて出てまいっておりまして、まさに町の中小企業の方々の気持ちというのはよくわかるつもりでございまして、私は、この手続に入った会社を一口に倒産というふうに、もしデータバンク等々の信用調査機関が倒産だというふうに言うのであれば、それはいささか違うのではないかなと。まさに再生を目指して再生手続に入ったわけでございます。
そういう意味でいいますと、やはり倒産というイメージは、事業所閉鎖とか事業継続不可能ということで、どうしても清算型、もう会社がなくなるというふうにいくと思いますけれども、また再生をしていく、しかも再生していくときにゼロになってしまうのではなくて、債務者が社長を続けながらやっていく手続が十分認められるわけでございまして、管財人はいないケースを十分想定しています。ということになりますと、前の人がそのまま社長を続けながらまた会社を再生していくというのを倒産というのだろうかというふうに考えれば、私はむしろ、一般のこれを利用する経営者たちにとっては、倒産ではないと言ってもらった方が利用しやすいということにはなると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/22
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023・坂上富男
○坂上委員 まさにそのとおりでございます。
私はそのとき悪口を言いました。盗聴法のときは盗聴法を使うなといって新聞社に文句をつけたのだから、ついでに、もしそういうような事態があったら、法務省は責任を持って、これは間違いであると片っ端からひとつやりなさいよ、こう民事局長に私は申しました。そんなようなことでございますものですから、実際は先生おっしゃるとおりだろうと私は思うのです。
そこで、竹下先生、確かに先生おっしゃるように、まかり間違えますと倒産一歩手前になっているかもしれない、こういうことでございますから、私はやはり倒産と認定すべきじゃない、書いていただくべきではない、こう思っているのでございますが、先生は法制審議会の立場においてその点はどのようなお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/23
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024・竹下守夫
○竹下参考人 それでは、お答えいたします。
先生おっしゃるように、この手続は事業の再生を目的としているわけでございますから、そういう意味では、通常言われておりますような、倒産でもう全部事業は解体、清算をするというのとは違っております。
しかし、再生をするための手段でございますが、じゃ、どうやって事業を再生させるかと申しますと、結局は、債権者の権利を一〇〇%認めておいたのではなかなか再生は難しい。結局、債権者の権利を部分的にカットしてもらう、あるいは支払いを延期してもらうということにはなる、大部分の場合はそうならざるを得ないというふうに思いますので、そのことをもって事実上倒産というのであれば、それをあながち間違いだというふうに言い切るわけにもまいらないだろうというふうに思います。
しかし、先生が御指摘のように、この手続が開始されたらもう事業は成り立ち得なくなるんだというようなイメージで受け取られるということは、この審議に関与した者としては甚だ不本意でございまして、これは本当に事業を立ち直らせるための手続でございますから、そういうことは十分に周知を図ってまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/24
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025・坂上富男
○坂上委員 法務省が、再生法の概要と題する書面を僕らに配付していただいております。この「立法の目的」の中に、「和議法に代わる新たな再建型倒産処理手続の基本」だ、こうあるのですね。
和議の申し立てをしても、事実上倒産したと報道されます。したがって、和議にかわるべきものだというから倒産手続になるのじゃなかろうか、そして倒産だと。そして、一般の報道や経済界の認識は倒産だ、こうなるのじゃなかろうかと私は実は大変気にしております。
いま一つ、「法律案の概要」というところに、「現代の経済社会に適合した迅速かつ機能的な再建型倒産処理手続を新設する。」こうあるのですね。私は、どうもこの再建型倒産処理手続というのは矛盾する言葉だろうと思うのです。
そんなような意味からも、法制審議会はそういうことを本当にお考えになった上でこのことについて対応しておられたのか、いわゆる倒産法制をどうすべきかという議論の方が立って、一般の経済運営の形、経済生活の中ではそれほど御配慮なかったのじゃなかろうかと実は、失礼ですが、この法律を見て私は感じたことなんでございます。
率直な御意見を賜りまして、私は、ぜひこれは、特に商工会議所の弁護士先生がお出かけですから心強いことなんですが、もうこの法律成立前に、新聞報道その他の報道で倒産と言わないでくれ、こういうふうにやはりやらなければ、やるとやらぬでは大違いじゃないか、こう実は思っているわけでございますが、先生、その点、法制審議会での意見は、いわゆる経済生活、経済運営状態を見て、これはやはり倒産手続なんだというふうに御理解になったのか、いや、それほどまでに考えなかったとおっしゃるのか、大変失礼ですが、お答えいただければと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/25
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026・竹下守夫
○竹下参考人 それでは、申し上げます。
法制審議会では、通常の事業経営が行き詰まった、それをどうやったら実効的な事業の再建ができるか、そのために、従来の和議では立ち行かない、和議では実効的な再建ができない、したがって和議にかわるもっと実効的な手続をどのように工夫するかということを主として念頭に置いていたわけでございます。もちろん、民間のデータバンク等がこれをどのように評価するかというようなところまではとても法制審議会のメンバーが考えていたわけではございません。
和議にかわる倒産処理手続という表現が使われたということでございますが、これはこの法案の附則で、和議法は廃止するということになっておりますので、そういう意味では、やはり和議法にかわるという役割を持つことは間違いないというふうに思います。
ただ、それを先生おっしゃるような意味で倒産手続だというふうに一般の人に説明をするのがいいのかどうかというのは、これはおのずから別の問題だろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/26
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027・坂上富男
○坂上委員 久保利先生のお話で、まことに素人の話で恐縮ですが、どちらでもいいというわけにもいかないんですが、できたらこれは、病院だったら通院程度だと。入院しますと、あいつはがんだとかもう再生不能だとか、そういうのは出るんですよ。やはり私は、これは商工会議所も、通院程度なんだ、一週間か十日も行けば治るんじゃないかというところが先生のお仕事なんじゃなかろうかと思っています。大変失礼な提言でございますが、お願いをしたい。
私の言っている帝国データバンクが、あるいはそこには失礼かもしれません、電話してきた人は、その人が言ってきたわけじゃありませんので、そうだそうですがきちっとしてください、こういうお話が実は来ていたものですから、本日取り上げさせていただいて、私も、実はそこまで準備もしないで民事局長さんに質問を続けていたんですが、やはり聞いている人は聞いておって、私に知恵をつけていただいて、非常に勉強になったなと思ったわけでございます。
どうぞ、東京商工会議所を中心にして、商工連合会でもひとつお力添えをいただければありがたいな、こう思っておるわけでございます。私も、法務省の方に、できるだけおしりをたたいて、実効性を上げるように、こう思っておりますので、お願いしたいと思っております。
それから、熊谷さんに質問いたします。
租税公課、租税関係といわゆる賃金債権の劣後性についてでございますが、これはILO条約を日本が批准していなくて、ILO条約がこういうことをしちゃならぬというふうになっておるんですが、この点についての御見解をひとついただきたい。
いま一つ、これから起きてくる問題ですが、営業譲渡、あるいは会社を分社したとか、こういうことになりますと、今までありました労働協約が効力があるとかないとかということが今裁判所でしょっちゅう争われて、積極説、消極説、二つ出ているわけでございます。これでは労働者はたまったものじゃありません。営業譲渡ばかりされて、身分がそのまま継続するとか労働協約はそのまま継続するなんというのは当たり前だと私らは思っているんですが、これがまた裁判で争わなければならぬほど我々は不便を感じているわけでございますし、また、労働者にとっては大変な負担になっておるわけでございます。
こういうのはこの中に明記しなさい、私はこう言っているんですが、また次の通常国会になりますと商法改正になって、分社とかいろいろ、分割とかまた出てくるんだそうでございます。これはもう大変な問題が含まれていると私は実は思っているわけでございます。
この際、私は、その第一歩として、営業譲渡の場合においては労働関係は従前どおりというような条文を入れたいなとも思ってはいたのでございますが、なかなか容易ではありません。労働省にこの間来てもらったけれども、その辺明確な答弁もできないという状態なのでございます。これは、今までであるならば自分らは当然の権利として協約に基づいて権利を守れたのに、営業譲渡されたらどうなるかわからぬなんて、こんなばかなことはあってはいけないと私は思っているわけですが、その二点だけお話しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/27
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028・熊谷謙一
○熊谷参考人 御質問ありがとうございました。
まず、ILO条約のことでございますけれども、これはILOの百七十三号条約、一九九二年の使用者の支払い不能のときの賃金債権の確保の条約のことをおっしゃったと思います。
ILO、国際労働機構の本部には、連合から伊藤顧問を理事に出している関係で、条約の制定に十分責任ある立場で参加をしておりますけれども、この条約は大変な論議になった条約でございます。
特に問題になりましたのは、一つは賃金の優先権をどういうふうに位置づけるかという問題、それから賃金の支払い保証の保険制度をどのように考えるかという、この二つがこの国際条約で大変大きな問題になってまいりました。
この中で連合は、アメリカあるいはイギリス、ドイツの労働組合の仲間と連携をいたしまして、賃金債権について最大限高い地位を与える国際条約にするようにという努力をいたしまして、租税を、あるいは社会的な公租公課を上回る位置にあるべきだという国際条約を実現いたしました。
なおかつ、各国、特に先進諸国では、先ほど申し上げましたように、会社がおかしくなって税金を取り立てたら後は労働者の賃金がないというようなことはあり得ないことでありますので、この問題について改善をすることを通じて、このILOの賃金債権条約を一刻も早く批准していただきたい、これは例年、政府あるいは各党にお願いを申し上げている点でございます。
それから、営業譲渡の問題については全く先生のおっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、特に、判例で守られている分野が幾つかあります。解雇の場合には、最高裁で解雇の合理性要件あるいは整理解雇の要件の確定判例がありますので、我々それを使って各地で取り組みを進めておりますけれども、これが営業譲渡になりますと、まだ確定した最高裁判例がございませんし、下級審の判例は、営業譲渡について、ある程度の契約があれば雇用あるいは労働条件は維持しなくてもいいという判例が幾つか出ておりまして、大変現場は心配しております。これはやはり、法律上の手当てがなければ雇用は守れない。あるいは、ある会社は雇用を労使で努力して守りながら営業譲渡をしたけれども、大変無責任に、そういうことを全く配慮しないところがかえって事業が活性化するようでは、社会的公正が守れない。そういう意味で、この営業譲渡は判例がカバーしておりませんので、これについては法律で担保していただきたいというふうにお願いをしているところであります。
また、来年商法改正が行われると聞いております会社の株式を伴う分社については、全く経験のない新しい法律でありますから、判例は当然ございません。したがって、これについては法律で確実な労働保護の担保がなければ、こういう法律については、やはりこれのみで認めるわけにはいかないし、恐らく国会の諸先生もそのような御判断をしていただけるものというふうに思っておりますので、そういう意味で、労働者保護法制の整備がいよいよ確実に必要ではないか、ぜひこの点についても、先ほど申し上げましたけれども、格段の御配慮を諸先生にお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/28
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029・坂上富男
○坂上委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/29
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030・武部勤
○武部委員長 木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/30
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031・木島日出夫
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。三人の参考人の先生方、大変ありがとうございました。
実は、私自身、長野で弁護士をしているんですが、今からちょうど二十五年前、一九七四年の十二月に、私の地元の、従業員百人ぐらいの、紳士服、子供服、婦人服をつくっている縫製会社、これが四億円の債務をつくって倒産をいたしまして、裁判所から任命をされまして会社更生管財人をやりました。十五年やりました。
日本の社会で中小企業が、こういう中で再建をして生き抜くというのがどんなに大変なものであるか、十五年間私は、もちろん法律管財人じゃありません、業務管財人、兼務する管財人として身をもって体験してまいりましたので、そんな経験も踏まえまして、三人の参考人の皆さんに幾つか御質問させていただきたいと思います。
竹下参考人にお聞かせ願いたいんですが、再建型の倒産手続の一般法として、今回、民事再生法が他の倒産法制に先行して立案され、この国会に出されてきたわけです。もちろん、他の再建型倒産法制は会社更生法と商法上の整理でありますが、本来これらの倒産法制は、法律の概念、債権の概念も含めて整合性をきっちり持って出されてこなければならない性質のものではないかと思います。労働債権をどう扱うかについて、どの倒産法制を利用するかによって労働債権の扱いが違う、租税債権の扱いが違うなんということがあったのでは法律社会としてふさわしくないと思うのです。
そこで、まずお伺いしたいのです。今回、民事再生法が先行して立案され、提案されてきているんですが、他の倒産法制との整合性を竹下先生どうお考えか、あるいはまた法制審議会としてどう考えているのか。そしてまた、すみ分けという問題、こういう型の破綻の場合にはこっちの方の法律を使い、こういう型の破綻の場合はこっちの手続を使うというようにすみ分けを法制審は考えているのか、あるいは竹下先生は考えておられるのか。その根本問題について、率直なる御意見なり今の法制審の討議状況をお聞かせ願いたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/31
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032・竹下守夫
○竹下参考人 どうも御質問ありがとうございました。
ただいま御指摘の他の再建型倒産手続、とりわけ会社更生それから会社整理と今回の民事再生手続との整合性ないしはすみ分けをどう考えているかという御質問でございますが、御承知のように、会社更生手続は株式会社だけを対象にしており、しかもその手続の構造から見ましてかなり大きな規模の会社ということになるかと思います。
会社整理も株式会社でございますが、これは御案内のように、非常に当事者の自主性と申しますか、手続外で当事者間でいろいろ話をする、裁判所がいろいろな当事者間の話し合いを進めるに当たって必要な枠組みだけをいろいろ決めるというようなタイプの手続でございます。
今回の民事再生手続は、先ほど申しましたように、対象といたしましては主として中小の事業、それから会社以外の法人、この場合にはかなり規模の大きな、学校法人とか医療法人とかいうようなものも対象になると思います。それを対象というふうに考えておりますので、対象の面では一応すみ分けといいますか、もちろん、境界線の問題になってくるとどちらへ行くかというのは申し立てをする債務者なり債権者なりの選択に任せられることになりますけれども、手続のあり方としては一応対象を異にしているというふうに申し上げることができるのではないかと思います。
ただ、会社整理は非常にそこらは漠然としておりますのでこの手続とダブってくる面があると思いますが、私どもといたしましては、民事再生手続が十分機能するようになれば会社整理手続は余り利用されなくなるのではないか、そういう見通しを持っております。
差し当たり、それだけお答えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/32
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033・木島日出夫
○木島委員 現状でも会社整理というのはほとんど利用されない状況です。そうすると、民事再生法と会社更生法と二つ残るわけですが、率直に言って、今竹下先生お話しのように、今の日本の裁判所の運用ですと、会社更生法というのは中小企業にはほとんど適用されない、してもらえないわけです。私は、二十五年前でしたし、本当に小さな縫製会社でしたが、農村のその地域にとっては従業員百人というのは大変大事な企業だったので、辛うじて会社更生が適用になって悪戦苦闘したわけなんですが、今の日本の裁判所だったら絶対この程度の破綻では会社更生なんか認められない運用だと思うんです。
そうすると、会社更生法というのはほとんど一部上場のような大きな企業しか日本の裁判所は適用しないというような現状を考えますと、日本の中小企業が救われる道は、もう基本的にはこの法案である民事再生法しか頼りにならぬということになると思うんですね。恐らく中小企業に利用されるのではないかという御答弁はそういうことを想定しているかと思うんです。
そうしますと、私一番苦労したのはやはり抵当権ですよ。抵当権者の競売申し立てを法的に抑えることなしに一日たりとも事業なんかやっていけません。それともう一つ私苦労したのは、租税債権、公租公課です。これを待ってもらえなきゃ中小企業は再建などできません。金がないんですから、融資を受けられないんですから。そういう中で、本当に、抵当権者と公租公課の国や地方自治体なり社会保険事務所、この圧力を法の力で抑えなければ、事実上中小企業の再建なんというのはあり得ないと考えていいと思うんです。
そういうことを考えますと、辛うじて会社更生法はそういう債権も取り込んで更生計画の中でしっかり抑え込むということはできていますが、この法律、民事再生法は、一部、中止、包括的禁止というような形でとめることは法の仕組みがありますけれども、非常に弱いんじゃないかなと思うんですが、率直に竹下参考人の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/33
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034・竹下守夫
○竹下参考人 御指摘のように、担保権の実行、とりわけ抵当権の実行でございますが、これをとめられなければ企業の再建はあり得ないというのは、もう私どもも十分認識しているところでございます。
今回の民事再生法では、ただいま御指摘になりましたように、開始前の保全処分といたしましては抵当権の実行をとめられるということにいたしましたし、それから事業の再生に不可欠であるという場合には抵当権消滅請求ということもできるようになりまして、抵当権を抹消することができるということにいたしております。
確かに、会社更生法のように全面的に担保権も手続の中に取り込んでくるというのに比べますと抵当権に対する制約は弱いかと思いますけれども、しかし、事業の再建という観点から見ますと、私どもとしましては、かなり大きな前進をしたのではないかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/34
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035・木島日出夫
○木島委員 もう一点だけ。やはり、租税債権、滞納社会保険料等の公租公課の徴収との関係というのは非常に大事なんですね。私は、この倒産法制で、まず国税徴収法の公租公課最優先という明治以来の日本の確固たる原則、これに修正を加えることが必要じゃないかなと思っているんです。その辺、大蔵省の圧力というのはすさまじいものであって、国税徴収法の大原則、もう公租公課最優先なんだという、これを変えようとする姿勢は全く見当たらないんですが、ここはひとつ法務省なり法制審としては本当に、中小企業再建のために公租公課ちょっと待てという仕組みをつくり出す絶好の機会じゃないかなと思うんですよ。まさにそれをこの民事再生法でやってほしかったなと思うんですが、公租公課最優先の原則と中小企業の立て直し、法の優先順位の問題、その辺どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/35
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036・竹下守夫
○竹下参考人 確かに、公租公課の問題も企業の再建にとっては大変重要な、ある意味では死活問題という要素があることは御指摘のとおりだというふうに私どもも十分認識しております。
ただ、この法案では手続の骨格は余り複雑なものにしないというために、この手続上の広い意味で当事者と申しますか、再建計画に従って手続に入ってきて弁済を受ける、これは一般債権者ということにいたしまして、担保権を持っている債権者あるいは実体法上優先権のある債権者は手続外で権利行使をすることを認めるということにいたしました。この点は、御承知のように労働債権も同様でございます。そのために、租税債権もまた実体法上優先権のある債権でございますので、この手続から外れているわけでございます。
しかし、倒産法制における租税債権の債権者相互間での順位の問題というのは、労働債権の同様の問題とともに非常に重要な問題でございまして、これから倒産法部会の方でも十分検討する重要な課題という位置づけになっておりますので、改めて今の御指摘も踏まえて十分検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/36
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037・木島日出夫
○木島委員 ありがとうございます。
実は、私が会社更生管財人をやっていたときには消費税がまだなくて、消費税の重圧はなかったから救われたんです。今、日本の租税債権の方の仕組みは、租税債権の中でも消費税最優先でしょう。今真っ先に滞納するのは消費税なんですよ。ですから、消費税の滞納を法の力で抑えられなかったら、どんな立派な倒産法制をつくったって、税務署によって倒産させられますよ。しかも消費税率が五%で滞納額も非常に大きくなっているそういうときだけに、本当に中小企業を消費税の重圧から守るというためにも、ぜひ、そういう根本問題についてもこれからさらに法制審で論議を深めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
次に、久保利英明参考人にお聞きしたいと思うんです。
今、日本の倒産件数は非常な数でありますが、実際の倒産件数の中で裁判手続に乗る件数は、会社更生、和議あるいは整理、ほんの微々たる数字なんですね。弁護士である久保利参考人御承知のとおりでありますが、ほとんどが任意整理、いわゆる内整理で処理されている。これはなぜか。そういう姿があるべき日本の社会の姿としていいか。その辺、実務の経験をされている参考人から率直にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/37
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038・久保利英明
○久保利参考人 私も、現在、倒産弁護士という部分がないわけではないのでございますけれども、最近の状況として見ますと、先生御指摘のとおり、確かに法的整理のものは非常に少ないことは少ないんでございますが、従来からの比率でいいますと、ここ九年間で法的整理の占める割合というのは二・六一倍になったというデータがあります。これをどう見るかということでありまして、それになったって大して多くないということはそのとおりでございます。
ただ、基本的には、大きな流れとしては、やはりあいまいもこたる私的整理よりは法的整理にいくべきだという考え方はふえてきているのではないだろうか。そのときに、余りにも使いづらい制度と、それからインフラとしての弁護士あるいは裁判所、こういうものが使いづらい、見つからない、高い、遅い、こういうさまざまなネックがございまして、スムーズに法的整理に入ってこられないということがあったんだろう、現にあるんだろうというふうに思っております。
したがいまして、この再生法についての期待は二つあります。
一つは、この法律が運用のよろしきを得て非常に使いやすい制度になってくることによって、今まで私的整理に潜っていたものがこの法的整理に浮かび上がってくるという問題。すなわち、和議法が十分機能し得なかった分を再生法がきっちりとした法律としてすくい上げるということがあるでしょう。
もう一つは、仮に私的整理でいくにしても、実は、私的整理のうちのある程度の部分は私的法的整理といいますか、法的整理になったときにどうなるのか、法的な手続に乗ったときにどうなるのかを事前に予測をして、裁判所に持っていかないで弁護士同士、あるいは債権者、債務者間で協議をして進めていく、そういう私的整理の方法もございます。
そうなってまいりますと、再生法がきっちりとしたモデルを提供できますと、裁判所に行かないまでも、かなりなところ、再生法的な手続としての私的整理というものが出てくる可能性がある。もちろん、抵当権の始末であるとか保全処分の云々だというあたりについてはそうはいきませんけれども、解決の方策としては一つのモデルとなってくるということもあって、私的整理の水準を、わけのわからぬいいかげんな私的整理からもう少しリーガルに近いものに引き上げるという副次的な効果もあるのではないかというふうに考えております。
その両面を含めて私としてはこの再生手続をぜひ活用してほしいというふうに思って、先ほども運用についての意見をいろいろ申し上げたわけでございます。したがって、そのためにもインフラとしての弁護士、裁判所の拡充、迅速適正化、これが絶対必要だというふうに、私も、弁護士としても思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/38
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039・木島日出夫
○木島委員 ありがとうございます。
熊谷謙一参考人にお尋ねしたいんですが、私も、営業譲渡が仮にこれでしやすくなって、その際に、いわゆるリストラとして大量な労働者が首を切られる、そういうのに利用されることはないだろうかなという、そこが一番心配なところなんですね。
そこで、そういうことをさせないということが非常に大事だと考えておるわけなんで、お聞きしたいんですが、現下の日本経済の状況で営業譲渡の際にリストラ、首切りというのがどんな状況になっているのか、実態をお聞かせ願いたいということと、それを抑えるにここをこういう法制度にしてもらいたいという一番のポイント、もしずばりと言っていただければ幸いですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/39
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040・熊谷謙一
○熊谷参考人 御質問、どうもありがとうございます。
営業譲渡の実態のお話ですけれども、現在連合では、何でもダイヤル相談ということで、全国の四十七の都道府県支部において労働相談その他を進めておりますけれども、営業譲渡に伴う不当な解雇あるいは事実上の解雇の裁判例の抜け道による激しいリストラ、このようなものがかなり増加をしている、こういう報告が来ております。
また同時に、営業譲渡の形も大変複雑になってきて、あるところから次のところに営業譲渡をして、さらに営業譲渡をする、事実上はその最初と最後のところに営業譲渡をするんだけれども、そこにいろいろな形をとるというようなことが、また最近、新しい動きとして出てきております。こうなりますと、営業譲渡一般に対していろいろな保護あるいは運動もなかなか難しい面がありますので、営業譲渡を続けた形の営業譲渡といいますか、このような問題に大変苦労をしているところでございます。
そういう今までの運動の中で我々としてぜひお願いを申し上げたい点は、この営業譲渡については二点ございます。
一つは、それぞれの法案、今回はこの民事再生法案の中で営業譲渡について、本来の法律は企業を再生するための法律でありますから、これが間違っても企業を解体し、労働者が路頭に迷うような方向に悪用されないように、こういう激しい時代でありますので、何とか悪用できないかという動きは必ず起きるというふうに残念ながら考えなくてはいけません。その点で、特に体力の弱い小規模事業場の場合には、営業譲渡をしてなおかつもとの企業は生き残るという体力が不十分なところは圧倒的に多くございます。こういうようなところについて、営業譲渡については企業の再生が目的であるという点について、この許可基準を法律にぜひ明示していただきたい。それによって、この法律を労働組合あるいは勤労者が使う場合にここがよりどころになるというふうに思っております。
また同時に、営業譲渡というのはいろいろな形で行われますし、また、この法律とも関連して、あるいはそれ以外の場面でもさまざまな形で動いてまいりますので、この修正とあわせて、先ほどお願い申し上げました労働者保護法制、このようなもの、解雇の規制の法律をぜひ国会で御議論をいただいて、特に企業の分割あるいは激しい営業譲渡に対してきちんとした国の法律をつくっていただきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/40
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041・木島日出夫
○木島委員 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/41
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042・武部勤
○武部委員長 保坂展人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/42
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043・保坂展人
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
きょうは三人の参考人の先生、ありがとうございます。
まず久保利参考人に伺いたいんですけれども、これは、従前の裁判所のリズムというか、時間の尺度といいますか、こういうことをそのままいったんじゃ余り意味がない、二十一条に関して柔軟かつ迅速にやっていただきたい、こうおっしゃったわけなんですけれども、ちょっと私、危惧をいたしますのは、つまり、厳格にやると時間がかかると。柔軟かつ迅速にというときに、やはり厳格かつ迅速ということが本来求められるのではないかと思うのですね。そうした裁判所の認定などが、やはり時間、資料など不足していてほとんど表層をなでるだけの認定になってはならないと思います。
ここはやはり難しいところだと思います。確かに、裁判所のリズムに任せておいたんじゃこういう法制をつくっても意味がないじゃないか、そのとおりだと思うのですが、具体的なイメージとして、現在どの程度の時間がかかっていて、久保利参考人がこのぐらいのリズムでというのは一体どれぐらいの期日なのかも含めてお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/43
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044・久保利英明
○久保利参考人 御質問にお答えいたします。
私としては、特に二十一条の関係でいいますと、厳格に一体何を審査するのかという対象の問題があると思うのですね。二十一条の対象というのは、要するに、一つは破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるかないか、そのことについて開始決定をしていこうというときについても、弁済期にある債務を弁済することができるかどうか、こういうような問題ですね。
そうすると、特に現在の場合一番問題なのは、会社更生の場合には、会社再建の見込みがないとは言えないという状況を証明するために一生懸命立証しているうちに事業継続ができなくなってポシャってしまう。結局、そのことを厳格に証明せよというがゆえに、そのときだったら実はそういう事実があったのにもかかわらず見込みがなくなってしまうというマイナス面が私の経験からしてもあるのでございます。
したがって、この民事再生法そのものについて、先ほども申し上げましたように、できるだけ柔軟で、かつ手続開始の原因の一つである破産の原因である事実の生ずるおそれのあるときというものを、メルクマールをいろいろなものを出していただいて、こういうメルクマールがあったらもういいんだというふうに処理をしていただくと非常にスムーズにいくのではないかな、こう思ったわけでございます。
そこで、そういう裁判所のガイドライン等々がある程度つくられてまいりますと、タイムリーな開始ができるのではないか。そのときの時間の問題でございますが、正直申し上げて、私も、この手続が例えば従来の和議法の概念と大分違う概念でございまして、むしろミニ会社更生みたいな考え方が相当入っておりますので、和議法との比較ではなかなか考えられない。
従来の会社更生でいいますと、実は私は、一番早い開始決定をとったのは申し立て以後二週間というのが私のスピード記録でございまして、保全管理人も置かないで二週間で開始ができた。これは物すごくうまくいきました。先生おっしゃるとおり厳格ではなかったかもしれませんけれども、かなり柔軟にしてかつ迅速な御判断をいただきました。
ということは、先ほどのこの御審議の中でも明らかなとおり、倒産だというよりも、むしろ再生手続なんだというところにウエートがあるとすれば、その手続に乗ってくる人はなるべくその手続に入れてあげる、その上で、早くやってみて、だめなものは早くもう破産なりなんなり処理をするしかないわけですが、少なくとも入り口から手続に乗っけるまでは二、三週間でやっていただきたいというふうに実は私は個人的には思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/44
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045・保坂展人
○保坂委員 続いて久保利参考人に伺いますけれども、手続に入って、今まで経営を縛ってきたおもしが一時的にストップして再生過程に入っていくというときに、やはり資金をどうやって調達するのかというのは大変な苦労だと思うのですね。
例えば、今問題になっている商工ローンの厳しい取り立て、あれで宮城県だけで、私の郷里なんですけれども、わかっているだけで十人ぐらいの方が、一カ月ですか、非常に短い間に自殺されているなんという大変な被害が広がっているわけです。それもやはり、融資してくれるところが中小企業の場合非常に限られている、つまり、こういう手続ということがなくてもですね。
したがって、手続があって、先ほどからの質問にもあるように、日本には倒産という概念があって、久保利先生が言われるようなアメリカ型の、一回失敗した、しかしもう一回つくるんだというところを見込んで、では貸そうじゃないかという金融機関の社会性、公共性というか、そういうものは残念ながら今の日本の金融機関はまだまだ脱却し切れていない。こういう現状の中でどういった資金調達の道をお考えになっているのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/45
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046・久保利英明
○久保利参考人 御質問ありがとうございます。
この再生法がうまく機能できるかどうかのポイントだろうというふうにも実は思っております。
私といたしましては、まず、この手続というのは私的整理ではないわけですね。裁判所の一定のコントロールのもとに入るという手続である。このことを金融機関等々がどう評価するかという問題が一つ。
もう一つは、共益債権化できるという、この許可の百二十条の問題がありますが、開始前の借入金をどう考えるか。それは、開始になってしまえば、ある意味では共益債権化ということは当然でありますので、したがって、一つ問題は、先ほど申し上げたように開始前の運営をどうするかというのが大問題でありまして、開始が早く出るということになりますと、このファイナンスの部分がかなり楽になってくるということが言えると思います。
開始になってもまだ大変なところはあるんですが、そのときに、では金融機関等々のビヘービアとしてどうするか。ある意味では、これは私の全く個人的な考えでございますが、やはり一定のリスクをしょわなければお金は貸せないということなんだと思います。しかも、抵当権についても実行できなくなる危険もあるような、そういうものであるとすれば、ますます金融機関としては一定の高金利というものは必要になってくるんだろう。それが商工ローンほどのものであるかどうかは別でございますが。
そういう意味では、先ほどもDIPファイナンスということを申し上げましたけれども、この再生債務者に対するファイナンスシステムというものをいかにバックアップしていくか。これをベンチャーキャピタルのようなものをイメージするのか、公的な資金ということをイメージするのか、あるいは新しいタイプの、商工ローンというのが適切かどうかわかりませんが、企業金融ということを考えるのか。そういう道をつくらなければ、とても、先生がおっしゃるとおりうまく資金面では回っていかないだろう。
これだけは、どんなに裁判所が御尽力いただいても、裁判所が保証するわけにはいきませんので、これは全く自力でやらなければいけない、そういう意味でのシステム。場合によれば増資をして、アメリカにおける、シリコンバレーにおけるエンゼルのような、出資という形で仰ぐとか、いろいろな方法があるだろうと思いますが、ここは大いに知恵を出す部分ではないだろうか。実務をやりながら考えていきたいと私も考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/46
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047・保坂展人
○保坂委員 そこのところは、制度をつくっても、さらにその制度の実効性を担保するための政策もまた制度も必要かと思います。
それでは、熊谷参考人にお願いしたいと思います。
先ほど、御意見の中で、いわゆる営業譲渡という問題がことしになってから突如として入ってきた、いろいろ吟味していくと、本来の和議法を世界的なレベルに少なくとも改善していこうという本筋の議論と、どうもそこに乗っかる形でこの営業譲渡問題が出てきたんじゃないかということで、憤激という声もあったというお話をいただきました。
これは週刊誌なんですけれども、三月二十九日に連合の勉強会で、これは通産省の担当課長がいらっしゃって、中小企業のサラリーマンの雇用の問題どうなんだというようなことに対して、そんなこと考えていたらこんな法制度は提案できませんよという言葉があって、これは通産省は否定されているみたいなんですけれども、そういうやりとりもあったというような、これは記事で読んで、この点に関して、どういう経過をたどったのかというあたりをもう少しお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/47
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048・熊谷謙一
○熊谷参考人 御質問、どうもありがとうございました。
営業譲渡につきましては、先ほど何回か申し上げましたように、我々としてぜひお願いしたい点がございます。
まず、営業譲渡全体についての取り組みの経緯を申し上げますと、営業譲渡の場合に雇用がどういうふうになるかということについては、先ほど申し上げましたように、我々のいろいろな取り組みもありまして、裁判所、特に最高裁判所の判例として、合理性のない解雇は許さない、それから、会社が厳しい場合も、整理解雇の場合にも、四つの基本的な要件をくぐらなければこれは認めないということが社会的にも確立の方向であるというふうに考えておりました。
したがって、営業譲渡についてもそういう方向で判断がされるものというふうに期待しておりましたし、初めの下級審の判例はそういう方向であったと考えております。しかしながら、最近の営業譲渡に対しての判例は、幾つかのものは、雇用に関しては、労働に関しては特約がついている場合には承継しなくてもよろしいという判決があらわれて、それで我々は大変警戒を始めたわけであります。
また、先ほどお答えの中で申し上げたように、複雑な営業譲渡もふえてきまして、複雑になればなるほど、最初から最後に行く雇用が、労働問題が尊重されないという例が裁判所で認められるという経緯が出てきました。これが大変大きな流れになってきたのは最近のことでございますので、営業譲渡に対しては判例に頼るという方向では対応が全くできそうもない、やはり新しい法律を国会できちんと、営業譲渡を認めるのであれば、労働問題についても、それに対応するきちんとした立法をお願いしようということになりまして、同時に、それよりさらに激しい会社分割の動きがありますので、現在、先ほど申し上げたようなお願いをしているところであります。
また、倒産法制の問題につきましては、先ほど週刊誌のお話がありましたけれども、そのような営業譲渡をなぜ急に持ち込もうとしているのかという問いに対して、雇用については特に今まで考えていない、そういう方向のお話があったことは事実でありまして、そういう趣旨であったのかということで、それであえて、こういう場ではございますけれども、憤激があったというふうにお伝え申し上げたのはそういうことであります。
したがって、そういうことであるならば、当初我々は、この再生手続は和議法を全面的に見直して企業の再生を図るものであるということで、最初に申し上げましたように、いろいろな検討をすべきという行政から送られてきているものに対しては、全国的な会議、あるいは中小を組織している労働組合の担当者に、何回も会議を招集いたしまして真摯に検討をしてきたわけでありますが、その途中でこの営業譲渡の問題がにわかにあらわれて、その趣旨を尋ねたところそういうことであったということで、これは、一般的な労働保護法とは別に、この法案で的確な対応をしていただかなくてはいけない、こういうふうな判断に至ったものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/48
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049・保坂展人
○保坂委員 それでは、竹下参考人に伺いますが、今熊谷参考人にお話を伺った部分について、これは前倒し前倒しでやってきて、ことしに入ってから営業譲渡という問題が出てきて、まさに労働者の雇用の問題などはそれほど配慮した提案じゃないというようなことが通産省サイドから聞かれたというやりとりが今紹介されたわけですけれども、このあたり少し詰めが足りないのではないかと私は思うんですけれども、それが一点ですね。では、簡潔にその点だけお願いできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/49
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050・竹下守夫
○竹下参考人 時日の経過といたしましては、おっしゃるように、一九九六年末ですか、私どもが一般に意見照会をしました倒産法改正に関する検討事項では営業譲渡の問題は取り上げていなかったというのはそのとおりでございまして、それからまた、本年になりましてから法制審議会の場で検討項目として取り上げたというのもそのとおりでございます。
しかし、実は倒産処理の技法として営業譲渡というものが注目されるようになったのがごく最近のことでございまして、御案内のように大倉商事の事件とか日本リースの事件とか、その前に日債銀系統のクラウン・リーシングの事件がございましたけれども、それはそれほど注目されておりませんで、昨年中に起こった倒産処理事件でこういう手法が非常にうまく利用できるということが認識されるようになりましたし、また、日本におけるMアンドAの市場というのもどんどん急速に広がってきているというところから、事務当局と私との間でも、その前から、営業譲渡を何とかこの手続の中に組み込むことを考えた方がいいのではないかという話をしておりまして、それで三月になりましてから取り上げるようになった、そういう経緯でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/50
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051・保坂展人
○保坂委員 ありがとうございました。
もう一点竹下参考人に伺いたいのですが、今熊谷参考人からもあった、再生手続をしている間は優先債権ということで労働債権は心配ない、やはり再生は無理ですねということになって破産に至る空白のときにこれがどうなってしまうのだろうか、ここのところの空白を埋めるための破産法の見直しなどをするべきじゃないかという御意見がありました。それについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/51
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052・竹下守夫
○竹下参考人 済みません、その前にただいまの営業譲渡の点で、労働債権、労働者のことは余り念頭になかったのではないかという御指摘ですけれども、そうではございませんで、これは四十二条にもございますように労働組合の意見を聞くということで配慮しておりますので、決してその点をないがしろにしていたわけではございませんので、ちょっと補足をさせていただきます。
それから、破産になった場合、再生手続が挫折をして破産に移ったという場合は、確かにこれは一般の先取特権が認められている限りにおいて優先破産債権ということになりまして、財団債権ではございません。その点では、会社更生手続を経て破産になった場合との違いというのはおっしゃるとおりでございます。ただ、破産手続の中で一体どういう取り扱いをしたらいいかというのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、これから検討すべきことでございますので、その場で検討をいたしたいというふうに考えております。
それから、会社更生を経た場合と申しますけれども、会社更生と今回の民事再生とではやはり手続の仕組みが違っておりまして、会社更生の場合には、一般の先取特権のある債権者の手続に関与して一般的には更生計画に従って弁済を受けるほかない、そういう枠組みでございますので、単純に比較するのは適当ではないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/52
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053・保坂展人
○保坂委員 この法務委員会で債権譲渡にかかわる法案が採決をされたのですけれども、そういう意味でいうと、今言われたように、やはり世の中逆さに見ている方がたくさんいらっしゃいまして、そういう空白があるのだな、そしたら空白をついて一言仕掛けてやるかというようなことがこれだけの景気の悪化の中で起こらないとは限らない、そこのところは徹底的に今後審議して詰めていきたいと思います。
きょうはどうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/53
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054・武部勤
○武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/54
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055・武部勤
○武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、民事再生法案の審査を続行いたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として法務大臣官房長但木敬一君、法務省民事局長細川清君、労働省労政局長澤田陽太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/55
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056・武部勤
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/56
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057・武部勤
○武部委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所千葉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/57
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058・武部勤
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/58
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059・武部勤
○武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保坂展人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/59
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060・保坂展人
○保坂委員 本案の審議に先立ちまして一点だけ、委員長の許可を得て、十一月十七日のある一点のやりとりについてだけ、但木官房長に答弁をお願いしたいと思います。
実はこのときに、法務省の中で、中村元大臣が、検察行政に対して、国会への説明責任、アカウンタビリティーを負うべきであるというようなことも内容として含んだ文書、これは一月の年頭に読売新聞で報道されたんですが、このやりとりがございました。そこで、法務省の見解としては、法務省の方針としてこういうものを決定した文書ではありません、いろいろな指摘があるので、想定した文書ですというような御説明があったんですが、この点について再度確認をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/60
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061・但木敬一
○但木政府参考人 委員御指摘の、本年一月四日付の新聞に報道されましたペーパーがございます。このペーパーは、当時の中村大臣の御指導のもとに、司法改革に関する各界の提言等を参考といたしまして、検討に値すると思われる事項を法務省において取りまとめたものでございます。
ただし、司法制度改革審議会での審議事項は審議会において自由にお決めいただくべきであるとするのが政府の方針であったものですから、そのペーパーの公表は今日まで差し控えてきたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/61
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062・保坂展人
○保坂委員 そうすると、正式な法務省の文書として、これは内閣総理大臣にも御提出されているというふうにとらえてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/62
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063・但木敬一
○但木政府参考人 このペーパーにつきましては、当時、この司法制度改革審議会を内閣で担当しておりました内政審議室に法務省から提出しております。内政審議室から総理に行ったかどうかは、それは私個人はわかりませんけれども、内閣全体の問題でございますので、あるいはそうなっているかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/63
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064・保坂展人
○保坂委員 では、法務大臣、ぜひ、そういう性格の文書だということで、司法制度改革に別に法務省が枠づけをするような、そういう性格ではなくて、しかし、法務省としての問題意識をまとめられたものだという経緯だったので、よろしゅうございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/64
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065・臼井日出男
○臼井国務大臣 ただいま官房長から申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/65
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066・保坂展人
○保坂委員 それでは、民事再生法、これは大変な分厚い法律でありまして、まず基本的な立法目的のところから、まずは大臣に伺っていきたいんですけれども、今回、民事再生法は中小企業を対象にする、こういうふうに言われています。どのような規模の中小企業をお考えになっているのか。学校法人や協同組合なども利用できるのかどうか。さらに、中小企業向けというふうに言われていますけれども、大企業は利用できるのかどうか。よろしいでしょうか、その基本的な枠について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/66
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067・臼井日出男
○臼井国務大臣 再生手続は中小企業に利用しやすい手続として構想されたものでございまして、業種や規模を問わず幅広く利用されるものと考えております。
また、再生手続は再生債務者となるべき者につきまして法律上何らの限定を設けておりませんので、個人、法人を問わず、すべての者が再生手続を利用することができるのでございます。したがいまして、学校法人あるいは協同組合も再生手続を利用することはできまして、また、大企業も再生手続を利用することはできるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/67
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068・保坂展人
○保坂委員 そうすると、中小企業国会でこの法律が出てきたというと、中小企業専用の法律かと思う向きもあるかもしれませんが、決してそうではない、幅広く影響があるんだと思います。
それでは、法務省の民事局長においでいただいていますので、細かくいろいろと聞いていきたいと思いますけれども、私ども心配するのは、賃金の問題ですね。これがどうなるんだろうかということであります。
企業を再建するには、いわゆる人員整理や労働条件を以前よりは悪くするというか、いわば労働条件をカットしていく部分の手法が常識的によく使われるわけですけれども、銀行等に債権の一部放棄や弁済繰り延べを迫るということと同時に、労働者には賃金カットなしで支払い続けるという形で再建されていくのが理想なんでしょうけれども、なかなかそれが難しいのではないか。
このあたりの、いわゆる再生計画がつくられて賃金が十分支払われない、人員整理や賃金カットということを再生計画の中でつくられれば賃金のカットというのが起きてしまうのではないか、こういう心配があるんですが、この点に関してはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/68
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069・細川清
○細川政府参考人 御指摘の労働債権の問題でございますが、再生計画による債務の減免、期限の猶予その他の権利変更の対象となる債権は再生債権に限られておるわけでございます。
賃金、退職金等につきましては、商法、有限会社法等によりまして一般先取特権が認められておりますので、この再生手続上は一般優先債権という取り扱いでございます。したがいまして、これは、再生計画によって権利の変更がなされることはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/69
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070・保坂展人
○保坂委員 そうすると、ちょっと個々具体的に聞いていきたいんですけれども、まず、退職金の問題を聞いていきたいと思います。
再生手続申し立て後に退職する労働者が出てきた場合、その退職金は一体どうなるんだろうか。退職金が一般優先債権として就業規則や労働協約どおりに全額支払われる、労働者の手に渡るのかどうか、ここについては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/70
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071・細川清
○細川政府参考人 株式会社や有限会社の従業員である労働者につきましては、商法、有限会社法によりまして、会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権ということになりますので、これは一般先取特権があるわけでございます。
そういう前提でお答え申し上げますと、退職金請求権の再生手続上の取り扱いは、退職の時期や理由、先取特権の有無によって違ってまいります。
まず、再生手続の開始後に使用者側の都合によって退職があった場合、その場合には、退職金請求権の全額が共益債権となりまして、随時弁済を受けられるということになります。一般の再生債権よりも、当然優先して弁済を受けられることになります。
次に、再生手続開始後に、被用者つまり労働者側の自己都合によって退職された場合には、その場合の退職金請求権のうち、再生手続開始後の従業に対応する部分は共益債権、その余の部分については、株式会社、有限会社の従業員につきましてはすべてについて一般先取特権がありますので、これは一般優先債権ということになるわけです。
株式会社、有限会社以外の組織の労働者につきましては、これは民法の三百八条で六カ月間の給与に相当する部分に優先性が与えられておりますので、その部分が一般優先債権になりまして、その余の部分は再生債権になるということでございます。
それから、再生手続開始前に退職があった場合には、退職金請求権のうち、先ほど申し上げました一般先取特権がある部分は一般優先債権で、そうでない部分は再生債権になるということでございます。
この手続の対象として想定しているものは株式会社または有限会社等の中小企業でございますので、そういう会社におきましては、退職金は共益債権または一般優先債権として保護されているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/71
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072・保坂展人
○保坂委員 関連していると思うんですが、就業規則や労働協約で、あるいは希望退職の応募条件として退職金の割り増し条項などが定められている場合、この割り増し条項部分も一般優先債権として扱われるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/72
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073・細川清
○細川政府参考人 これは割り増しの対象となる退職金の性質と同じでございまして、先ほど申し上げたところがすべて該当するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/73
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074・保坂展人
○保坂委員 次に、これは企業の規模の大小を問わないわけですから、社内預金という制度がございますね。この社内預金というのは大変扱いが難しいとも聞いているんですけれども、働いた側のまさに実感からいえば、毎月一万円、二万円と積んできた、まとまって百万とか二百万、こういう社内預金の扱い、これは一体どうなるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/74
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075・細川清
○細川政府参考人 社内預金につきましては、先ほど申し上げました商法、有限会社法の規定にある、会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権に当たるかどうかということが問題になるわけでございます。
これは、労働契約に付随して義務的に社内預金がされている、あるいは事実上強制されているということであれば、これは雇用関係に基づき生じたる債権だということになりまして、そこは先ほど申しました一般先取特権がございますので、この手続上は一般優先債権として取り扱われるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/75
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076・保坂展人
○保坂委員 日本の企業の場合、みんな社内預金しているんだよ、あなたも入社したからしなさいといってするというケースです。みんなしているからするんであって、これが強制と言われれば自発的なような気もするし、このあたりはどうなんでしょう。つまり、労働の対価としての賃金の中から一部天引きで積んでいくという形での社内預金が大変多いと思うんです。一たん給料をもらってから、封筒に入れて、はい、社内預金ですよという、一般金融機関に預けるのとはまた違う意識で社内預金があると思うんです。極力そういう部分を保護する視点でお考えいただきたいと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/76
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077・細川清
○細川政府参考人 これは先ほど申し上げました法律の解釈でございまして、個々の事案の具体的事実関係で裁判官が御判断されるということになります。私どもとしては、そういう際に裁判官が英知をもって判断していただくことを期待いたしたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/77
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078・保坂展人
○保坂委員 ちょっとお答えが難しいようで、この場では、やはり給料の中から一定額積み上げてきたという部分についても十分保護されるように裁判所の方も考えていただきたいし、そういった法律の趣旨からいって、労働者の労働債権そのものについて、これをはねつけるものではないというふうに私どもも理解したいと思っていますので、ぜひそこはお願いしたいと思います。
それで、続けて、解雇予告手当、これは一般優先債権として取り扱われるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/78
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079・細川清
○細川政府参考人 解雇予告手当は、その性質上、賃金の一部というふうに理解すべきものでございます。ですから、先ほど来御説明申し上げております、賃金と同様の扱いになるべきものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/79
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080・保坂展人
○保坂委員 先ほども参考人質疑でも多々出ました営業譲渡の問題、少し時間をかけて考えてみたいと思うんですけれども、私自身は、営業譲渡が行われると、つまり譲渡できるパーツ、部門というのは、それなりに商品価値というか、買う側にとって魅力、メリットがあるものだと思いますから、そうすると、その売った企業自体が時間の問題で破産していく心配があるのではないかというふうに思うんですね。営業譲渡したことによって優良な事業部門や資産がほかになくなってしまった、そうなると、残った事業部門だけでは債務超過、はっきり転落をしていくということがあるんじゃないか。
もしそういうことがあるとするならば、この営業譲渡という規定が、今回の法律は中小企業向けの新たな再建法なんだという立法目的と反する結果になりはしないだろうか、こういうふうに思うんですが、この大枠で考えてみていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/80
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081・細川清
○細川政府参考人 これは御議論の前提としてぜひ御理解いただきたいんですが、営業譲渡という制度は、別に民事再生法で決めた制度ではありません。これは、株式会社でしたら商法に規定があるわけです。ですから、営業譲渡は、どの分野におきましても、それは経営者が自由にできるのが原則でございます。
それで、本民事再生法案におきましては、その営業譲渡が再生の目的のためにならない場合に行われることを防ぐという意味で四十二条という規定を設けて、これを裁判所の許可に係らしめたわけです。ですから、営業譲渡はこの法律でできるようになったと言われても、それは事実として違うわけでございますので、そこをまず申し上げたいと思っています。
そういうことでございまして、四十二条で、営業譲渡は裁判所の許可に係らしめましたので、裁判所は、明文の規定はございませんけれども、民事再生法の立法の目的が事業の維持、再生でございますので、その目的に従うものかどうかということを判断して、営業譲渡を許可するかどうかということをお決めになるということになります。そういう趣旨の規定であることをぜひ御理解賜りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/81
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082・保坂展人
○保坂委員 今の民事局長の御説明ですと、もちろん営業譲渡はこの民事再生法で初めて出てくるわけではなくて、ただ、民事再生手続の中で営業譲渡ということが起きたときに、例えば私が何か二つの事業部門を経営していたとします。それが、採算の悪いゴルフ場と、大変採算の上がっている、お菓子を製造している工場。そのお菓子の方を売っちゃうと、ゴルフ場の方はもともと悪いわけですから、これは早晩破産するしかない。そういうようなやり方というのはそもそも認定されない。つまり、営業譲渡も、企業再生に資するために譲渡するんだというところが担保されないとそもそも認定されない、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/82
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083・細川清
○細川政府参考人 この四十二条を置きました理由は、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。ですから、優良部門を譲渡するということは普通の経営者ならしない場合が多いと思いますけれども、仮にそういうことが問題になった場合には、裁判所は再生債務者の事業全体を見て、このことが事業の再生に役立つかどうかということを御判断されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/83
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084・保坂展人
○保坂委員 単純に言いますと、民事局長、やはり世の中いろいろな人がいますので、法の目的というのは中小企業、会社の再生なんですね。再生であり再建であり、あるいは苦しい時期からの脱出なんですね。そのとおりですよね。そうだとすると、その一番いいところを譲渡しちゃって、どう考えてももうお客の来ないゴルフ場だけを持っているというふうになった場合には、この会社は再生しない。つまり、会社整理やいわば倒産を目的とした本音の中で優良な部分を売り飛ばしてしまうということはそもそもこの法の趣旨に照らしておかしな手続なので、そういう手続は裁判所はうんと言わないというふうに理解してよろしいのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/84
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085・細川清
○細川政府参考人 再生事業者の事業全体を見ましてこれが再生できるかどうかということを裁判所が御判断されるわけですから、全体がうまくいくようにということを御判断になるということでございまして、結論的には、保坂委員が御指摘のような方向になるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/85
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086・保坂展人
○保坂委員 今言ったような心配は多分ないというふうな御答弁だったと思うんですけれども、営業譲渡の際に、この企業は再生するんだ、つまり、保坂工務店だとすれば、保坂工務店は、厳しいけれどもある部分を営業譲渡して、そして事業をきちっと存続しますよという意図を、意図というか事業存続の姿勢をきちっとはかっていただくというか審査していただくという担保はございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/86
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087・細川清
○細川政府参考人 四十二条では明文の規定は置いておりませんけれども、裁判所の許可が必要な場合にどういう基準で判断するかというのは、例えばその前の四十一条についても許可の基準は置いていない、あるいは四十一条と同じような趣旨の規定が会社更生法の五十四条にもございますが、そこでも書いていないわけで、大体倒産法制というのは、要するに、裁判所の許可が必要になる場合には法律の目的に従って許可を与えるかどうかは判断しろ、こういう枠組みになっておりますので、四十二条もそうなっておるわけでございます。したがいまして、繰り返しになりますが、四十二条につきましては、当然、事業の再生に資するという場合に限ってこれは裁判所の許可が与えられるというふうになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/87
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088・保坂展人
○保坂委員 では、ちょっとここで具体的な、これは想定事例なんですけれども、出してみたいと思うんですが、先ほど保坂工務店と言いましたから、これは仮想の会社ですが、三つの事業部門をやっていたとします。一つはバブル時代の末期に新規に始めたマンション事業部門で、これは都心の一等地に十階建てのマンションを所有していて、賃料も入っているので黒字。二番目は本業の建設業部門で、これはゼネコン数社の下請をいろいろやっているけれども、収益は余り上がらないで収支とんとんの状態である。三つ目は不動産部門で、これはもう本当に全く赤字。購入したものの、買い手がつかず塩漬け状態、赤字部門だ。この三つをやっているとする。この三つをあわせると、今は債務超過にはなっていないけれども、建設事業部門が来期以降は赤字転落が見込まれるし、ほぼそうなるだろう。見通しが暗い、銀行からの融資などが出てこない、このままだと危ないというところでこの民事再生法の成立を知って、これは朗報だということで、この手続を開始しようとしたとします。
そうすると、重荷になっている不動産部門の債務など、銀行の債務を一定程度は減免してもらうなり弁済条件を緩和して毎月の返済額を圧縮してもらえる、事業継続の可能性が出てきた。
ところが、手続を開始したところ、一番目のマンション部門の方は、都心に持っている十階建ての方は高値で買い手がついた。同時に、マンションと共同担保に入っていた第三の不良採算部門の不動産も時価で担保を消滅させることができたとします。しかし、営業譲渡に応じてくれた買い主はマンション事業部門の従業員の雇用を引き継いでくれなかった。なので、五十人の労働者全員が会社に残って、そして唯一の事業部門として残った建設部門はもともと体力がない。ここの体力がないから民事再生手続のこれを選んだわけです。
そうすると、優良な事業部門を売却してしまったので、この保坂工務店はもう将来性がないという見方がゼネコンや取引業者に広がって、保坂工務店はだめだという、信用は一挙に収縮して、事業としてはもう見通しが立たなくなった、会社はもう清算しなきゃいけない、労働者も全部退職しなきゃけいけないという事態になった。こういう想定があり得るのかどうかですね。
この場合、マンションを買い取った事業家は得な買い物をしただろうし、あるいはマンション経営という事業はその事業家は続けていく。その限りではマンションの事業は問題ない。しかし、企業の再生ということにならないんじゃないか。ましてや、企業の経営者に悪意があれば、破産という厳しい手続のもとでの経営者責任、事業者責任の追及を恐れて会社を整理する手段としてこういう手法をとる、あるいは労働組合との争議を回避するためにこの手段をとるというような、逆立ちした悪用というようなことも考え得るんじゃないか。どうでしょう、こういう事例。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/88
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089・細川清
○細川政府参考人 まず、後段の方の悪意のある経営者の例でございますが、これは先ほど申し上げましたように、民事再生手続は本来自由である営業譲渡を裁判所の許可に係らしめているわけです。ですから、そういう悪い経営者が営業譲渡しようとする場合は、民事再生手続を使ったらかえって不自由になるわけです、裁判所の許可を得なきゃなりませんから。そういうことで、そういうことのために再生手続申し立てをするということは普通は考えられない、まず考えられないことだと思っております。仮に、そういう申し立てをしたとした場合でも、これは再生手続の開始の条件は二十五条が定めておりますが、二号とか四号がございますので、そういうことが明らかになれば当然申し立てが棄却されるということになるはずであります。
それから次に、事業の一部を営業譲渡した場合どう考えるかというわけですが、要するに、営業譲渡を一切しないで事業を継続した方がいいかどうか、再生に役立つかどうか、あるいは一部譲渡した方がいいかどうかということは、それは具体的な収支見込みや事業継続の可能性、営業譲渡をすることにより得られる対価との兼ね合い、こういったものを総合判断して裁判所が許可するかどうかを決定するわけでありますので、そういう裁判所の運用が適正にされれば再生債務者の営業の譲渡が利害関係人にとって非常に不利益になるということにはならないというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/89
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090・保坂展人
○保坂委員 それでは、営業譲渡について大変心配なのでもう少しお聞きします。
四十三条では、株式会社である企業が行う営業譲渡は「事業の継続のために必要である場合に限る。」としていますけれども、この事業というのは譲渡される事業だけを指しているのかどうか、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/90
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091・細川清
○細川政府参考人 これは、先ほどの御設例のような場合ですと、全体の事業が再生に資するかどうかということを判断されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/91
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092・保坂展人
○保坂委員 「事業の継続のために必要である場合に限る。」という事業は、譲渡される事業だけを指すということではないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/92
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093・細川清
○細川政府参考人 四十三条においてはそうなんですが、四十二条で全体の評価がかかっていますから、全体も四十二条の方で判断される。つまり、四十三条では、その事業をそこの企業体に残しておいたのではその事業もだめになってしまう、ほかのものも全部だめになってしまう、そういう場合を想定しているものですから、その譲渡される事業ということを四十三条は対象にしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/93
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094・保坂展人
○保坂委員 それで、営業譲渡に際して、譲渡される事業部門の労働者の雇用、さっきちょっと例に出しましたけれども、あるいは労働条件の継承の問題は一体どうなるのかということはやはり大変気がかりなんですね。学説や判例の多数が譲り受け人は当然継承すべきであると言われていますけれども、しかし実際には、譲り受け人が買い手として雇用は引き継がない、あるいは、引き継ぐ場合でも退職金や勤続年数は認めませんよ、つまり継承しませんよ、ゼロでリセットされてもう一回そこからですよというような、いろいろそういうことが考えられるわけですけれども、このあたりはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/94
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095・細川清
○細川政府参考人 午前中の参考人質疑で連合の熊谷労働法制対策局長が言われておりましたが、この点につきましては最高裁の判例がまだなくて、下級審の判例も分かれているという状況でございます。それから、学説についてもさまざまなものがございます。
ただ、実際、私どもが判例等であらわれた事案を見てみますと、結局、営業譲渡に伴い通常承継される雇用関係の対象から特定の従業員を排除することができるかどうかというところで事が争われた事案のように見受けまして、このような場合には、いろいろな考え方でも、合理的な理由もなく特定の従業員だけを排除するというのは許されないという考え方が一般的ではないかというふうに私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/95
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096・保坂展人
○保坂委員 そうすると、民事局長、いろいろな極端なケースというか厳し過ぎるケースを考えて、心配し過ぎているのでしょうかね。そういう営業譲渡ががんがん起こって従業員がどんどん路頭に迷うような状況は、基本的には想定しないというふうに考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/96
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097・細川清
○細川政府参考人 大変難しい問題でございます。
世の中にはさまざまな人がおられるわけですから、私どもが想定できないような方もおられると思います。繰り返しになって恐縮でございますが、そういう問題があるものですから、四十二条を設けて、もともと事業であったものを再生手続開始になってからする場合には、この手続が従前の経営者が経営を続行するいわゆるDIP型であるにしても、そこのところだけは裁判所の許可を得なければならないというのが四十二条の趣旨でございます。そこのところを御理解いただきたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/97
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098・保坂展人
○保坂委員 それでは、営業譲渡から労使協議の問題に移りたいと思うのです。
今民事局長もお答えになったように、想定外の人々、やはりいろいろいらっしゃるわけで、しかもこれは難しい大部の法律でございます。先日も、児童買春、ポルノ禁止法案で、全く違った理解でコミックを全部店から引き揚げちゃった。これはちょっと見てみると、そういうことだというふうに誤って伝わっているなんということもありまして、これはゆゆしきことだなと思っているのです。
再生手続が始まりました、したがって、今までいろいろやっていたけれども、労働組合との団体交渉は再生手続だからだめですよ、やりませんよ、こういう可能性があるのではないかという声もこれありなんですね。現在も倒産を理由に労働組合との団体交渉拒否という事例も多数あるようでございますから。こういうことはこの法律に照らすとどう考えられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/98
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099・細川清
○細川政府参考人 民事再生法は、再生債権者と再生債務者との間の民事上の権利関係を適切に調整するというための手続でございます。したがいまして、再生手続が開始した場合でありましても、これは労働組合の団体交渉権に対して何ら制約や変更を加えるものではございません。この二百十五条全体の条文を見ていただければ、そのような趣旨の規定は一切ないということはおわかりいただけると思うのです。
ですから、そういうような場合には、通常の労働法制の保護が受けられるわけでございまして、理由のない団体交渉の拒絶は労働法制の上において不当労働行為でございますから、労働委員会で救済が受けられるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/99
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100・保坂展人
○保坂委員 労働法制もまた今日の複雑な社会のルールかと思います。この手続を理由に団体交渉拒否というようなことはないんだという御答弁だったと思うのです。
今度は、逆に、民事再生手続を申し立てた事業主が団体交渉はしないと拒否している場合には、これはそもそも、そういうルールはきちっと守りなさいよ、労使関係もきっちりやって、それでこそ会社を再生できるのですよという考え方かと私は理解したいと思っているのですが、こういう事業者は申し立てそのものを認められないということになるんじゃないかと思うのですけれども、そこはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/100
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101・細川清
○細川政府参考人 まず、申し立て開始前の状態を考えてみますと、そういう場合に、経営者側が正当な理由もなく団体交渉を拒んでいるというような場合、先ほど申し上げましたような不当労働行為制度による救済があるわけですが、再生手続法上一つ考えられますのは、例えば労働組合の協力が得られませんと通常は再生が円滑にまいりません。ですから、場合によっては、再生債務者の事業の継続のために特に必要であるという場合には、この法案にあります保全管理命令を発しまして、保全管理人で事業を経営させるということも考えられるわけでございます。
また、申し立てた後、団体交渉に応じないという状態が続いている、そういうことがある場合には、他の事情等も総合勘案して、履行可能な再生計画の作成の見込みがないというふうに判断されれば、これは申し立て自体が棄却されるなり、あるいは、要するに決議に付されないというようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/101
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102・保坂展人
○保坂委員 そうすると、これは確認的な質問になりますけれども、既に以前に出た質問でもありますけれども、この民事再生法というのは労働者、労働組合を基本的にはこの手続の中には置いていないわけですね。会社更生法と極めて近い、それよりは非常に使いやすいという仕組みになっていて、更生法は労働者や労働組合を手続の当事者としているのに対して、これはそうではないというのは指摘されたところなんですけれども、しかし、そこは労働者、労働組合をなしでやろうということではないということを、たびたびになりますが、もう一度確認したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/102
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103・細川清
○細川政府参考人 会社更生手続におきましては、担保権者や一般先取特権等の優先的な権利がある債権者あるいは株主等もすべてこの手続内に取り込んで、権利の調整の対象にしております。ですから、一般優先債権についても減免とか期限の猶予とかいうのは可能性があるわけです。
ところが、民事再生手続では、これは中小企業等に利用しやすい手続とすべく、優先権のある債権を手続内の権利調整の対象にしておりません。手続外で自由に弁済を受けられるということにしてあるわけです。ですから、そういうことで手続の当事者となりませんものですから、手続上は決議等に参加しないということになっているわけです。
ただ、かといって、いろいろな再生の場面においては労働組合が大きな利害関係があるということが大変指摘されておりますので、この法律上は、一定の場合に労働組合等に通知をし、意見を聞くという規定を整備したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/103
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104・保坂展人
○保坂委員 それで、再生計画は、先ほど冒頭にも触れたように、人員整理の問題や労働条件の変更あるいは希望退職者を募っていくというようなことを当然内に含むだろうと思うのですが、これはやはり労使協議で決めなければならないと思うのです。
この手続を利用した企業で、これらの重要事項について労使協議を行う立場から外されたり、今の人員整理の問題や労働条件の問題について意見を聞くだけの存在というふうに、つまり聞きおくだけにとどまって、いわゆる団体交渉そのものを阻害するということにはなってはならないというふうに思うのですが、その点は全く分けて考えていいということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/104
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105・細川清
○細川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、民事再生法におきましては、再生計画によって人員整理や再生債権でない賃金債権等の減免等あるいは期限の猶予等を行うことができないわけでございます。
したがいまして、御指摘のような人員整理とか賃金のカットをしたりという場合には、これはもともと労働契約なり就業規則で決まっているものですから、これについて変更を加えようとする場合でありますから、これについては、当然のことながら、再生手続開始前後のいかんを問わず、労働組合と経営者との間に団体交渉等が行われるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/105
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106・保坂展人
○保坂委員 先ほど再三、この手続をやっているからといって労働法制で保障された諸権利がいささかも制約を受けるわけでもないという答弁だったと思いますが、いろいろな想定外の方がいらっしゃるということで、今後この手続を行うから団体交渉できませんよとか、あるいは申し立て中だから団体交渉できない、これは不当労働行為に該当するというふうに考えるわけですが、労働省、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/106
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107・澤田陽太郎
○澤田政府参考人 法務省の答弁でも明らかなように、団体交渉さらにはそれの対象になります例えば人員整理だとか労働条件変更の問題、これは民事再生手続外のことでありまして、確認的に申し上げますと、労働組合法上、労働者の労働条件その他労働に直接関係する事項につきましては団体交渉の対象となり得まして、使用者が正当な理由なくこれを拒否すれば、それは不当労働行為になるということでございます。
したがいまして、今先生御質問のケースについて申し上げますと、交渉事項が労働条件その他労働に直接関係する事項である限り、一般的に申し上げて、再生手続を申請している、進行中であるということをもって団交を拒否すれば、それは不当労働行為に当たると解されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/107
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108・保坂展人
○保坂委員 今労働省、そしてその前に何回も法務省の立法上の視点というか原則の御答弁があったわけですが、裁判所の方ではこれらの趣旨を十分踏まえてこの運用に当たっていただきたいと私ども要望したいのですが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/108
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109・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 各裁判所におきましては、事案における具体的な諸事情を踏まえまして、法の趣旨に沿った適切な手続の運用をしていくということになるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/109
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110・保坂展人
○保坂委員 それはそのとおりなんですけれども、もうちょっと答弁してもらえないですか。
趣旨に沿ったというところが、今私お聞きしたのは、この民事再生手続があるからといって、労働法制で保障されているような諸権利、ここは変更ないんだよということを法務省民事局からも今御答弁いただいているのですが、そこらを踏まえてきっちりやっていただきたいということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/110
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111・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 最高裁といたしましては、各裁判所でこの手続の適切な運用が図れるように、法の趣旨の周知に努めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/111
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112・保坂展人
○保坂委員 これは余り繰り返しているとあれなので、もちろんそれはそうなんですよ。ですから、その中でもここについてもちゃんとやっていただきたい。ここというのは、繰り返しになりますが、労働法制で保障されている諸権利にいささかの変更があるものでないという趣旨、そこも趣旨の一部だと思うのです。そこも踏まえていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/112
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113・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 労働法制の趣旨それから民事再生法の趣旨、それぞれこの趣旨が適正に実現されるように運用に努めていくことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/113
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114・保坂展人
○保坂委員 わかりやすい答弁をありがとうございました。
次に、下請業者の問題に入りたいと思うのです。
ことしの初めだったか、大分前ですけれども、我々衆議院の国会内テレビというのがございますね、工事をしているわけですけれども、その国会内テレビの元請さんが倒産してしまったようなんですね。その結果、我々衆議院の工事をされてきた工務店、工務店といっても二人三人で経営しているような方たちが、いわば工事代金を受け取れない状態になってしまったのです。
いわゆる元請の会社の従業員は、労働債権ですから優先的に支払われる。しかし、国会の工事を実際にやったところの、事業者といっても一人親方もいますし、あるいは兄弟で工務店をやっている方もいる。そういう方たち、職人さんを出してきて、結局は大銀行と並ぶ権利しかない。
こういう実態があるのですけれども、ここらについて、労働債権ということで、実質上汗を流して働いて、それは個人事業者あるいは本当に小さい工務店であっても優先的に支払っていただきたいという声も強いわけです。このあたり、民事局長いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/114
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115・細川清
○細川政府参考人 御指摘の問題は、労務提供型の下請個人事業主について、その債権がどうなるかという御質問だと理解しておりますが、こういうような労働者性の強い方の有する債権の再生手続上の取り扱いにつきましては、個別の事案ごとに、当該の下請個人事業主と再生債務者との間の契約の形式に必ずしもとらわれる必要はないわけで、やはり労務提供の実態を見て、これは労働雇用関係に基づくものと同じように扱うことができるかどうかという判断になろうかと思うのです。
ですから、再度申し上げますと、契約の形態が請負契約だからといって、すべてこれは一般の優先債権としての扱いができないというわけではないということを申し上げているわけです。その場合に、判断の基準としては、やはりそういったただいまの例のような場合には、再生債務者との間の指揮命令関係の有無とか、継続性とかあるいは専属性といったようなことをメルクマールとして、裁判所によって判断されるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/115
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116・保坂展人
○保坂委員 個々具体的な事例では、これは先取特権があるなということもあるわけですよね。ただ、それが認められない場合もあろうかと思うのですね。先取特権が認められていない場合に、これは少額債権あるいは中小企業債権として計画成立前に弁済されたり、あるいは再生計画によって優先弁済されるという道もあるのでしょうか。そのあたり、ちょっと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/116
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117・細川清
○細川政府参考人 先ほどの御答弁で今御指摘の点を申し上げるべきでございました。
御指摘のような場合には、まず、この民事再生法上に中小企業者が有する債権についての特別の扱いの規定がございます。再生債務者を主たる取引先とする中小企業者が、その債権が支払われない場合には事業の継続に著しい障害があるという場合には、再生計画の中で、あるいはその時期の前にも有利な扱いをすることができるという規定を置いているわけでございます。
それから、小口の債権、つまり中小企業者ではなくても小さい小口の債権については、やはり同じように特別の扱いをすることができるということがそれぞれの箇所に規定されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/117
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118・保坂展人
○保坂委員 これは本当に死活問題だと思うのですね。三人とか五人とか十人とか、そのぐらいの本当に小さな、大変な数があるわけですよね、建築業界の工務店というのは。そういうところが、親会社というか元請が倒産してしまって、気がついてみたら負債を背負って、職人さんには払わなければいけない。しかし、権利としたら大銀行と一緒に並んで同等の権利しかない。それは、大きな銀行はそういうことで回収もしていけるでしょうけれども、それをやられてはもううちはつぶれてしまうよ。そうすると、また民事再生手続という悪循環にならないように、労働債権とみなせない場合でも、中小企業については、大銀行と比べて明らかに零細で、つまり今言われましたけれども、著しい悪影響あるいはこの企業がだめになってしまうかもしれないという心配すらあるような部分については、弁済期間の圧縮なども検討されてよいのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/118
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119・細川清
○細川政府参考人 民事再生法のもとにおきましては、中小企業者の有する債権につきましても、これは原則は再生計画によって弁済を受けることになります。これは、債権者平等の原則がありますのでやむを得ないわけですが、ただ、先ほど申し上げましたけれども、再生計画による弁済を受ける場合であっても、実質的な公平を害しない限り少額の再生債権を有利に扱うことは法案の百五十五条の第一項ただし書きで明定しております。そういう点で、大口の銀行等の債権者に比べて金額や弁済時期の点で、特に弁済時期が大事かもしれませんが、そういう点で有利に扱うことも可能であるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/119
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120・保坂展人
○保坂委員 それでは、また確認的に伺います。
これは中企業の倒産の場合も大いにあり得るのですけれども、中企業が零細なところにたくさん仕事を出していて、その職人さんの手間賃、こういうものが実質的には労働債権に限りなく近いというか労働債権だと我々は思うのですけれども、形では事業者ということで、事業者である限りにおいては大きな金融機関などと同等のテーブルに並ぶ、同等の権利しか主張できないということになると、やはり抵当権を持つ銀行やあるいは税務署はきっちり押さえていくけれども、債権の地位、あるいは発言力も弱いですよね、実際。数人の工務店の社長といっても発言力は大変弱い。そうすると、汗水垂らして働いて実際の建物をつくったり、そういう工事をされた方たちが、あるいはそういう工事をされた方をまとめている町場の工務店などが一番泣きを見るようなことがあってはならないと思うのですね。
そういう部分で、運用に当たっても配慮できるような、幾つか聞きましたけれども、そういう意図も込められたかどうか。つまり、そういう中小零細業者をつぶしてはならないという、この再生の過程でそういう意識がおありになったかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/120
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121・細川清
○細川政府参考人 再生計画は、すべての再生債権者を平等に扱う、公平に扱うというのが原則でございますが、ただいま御指摘のような問題がございますので、中小企業者あるいは小口の債権者については例外的な扱いをすることは可能とする規定を設けるのが適当であるという判断に達したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/121
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122・保坂展人
○保坂委員 残り時間がほとんどなくなりましたので、大臣に、今までの議論をお聞きになって二点だけ伺いたいと思うのですね。
一つは、これは企業を再生させるための法案であって、失業者あるいは労働者がどんどん路頭に迷うための法案では断じてないのだという点であります。やはり労働法制によって遵守されるべきさまざまな諸権利はきちっとありますよ、それとは別にこの民事再生手続はあるのですよ、この点はもう何度となく局長からも労働省からも裁判所からも御答弁いただきましたが、この点についての法務大臣の一つの力強い決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/122
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123・臼井日出男
○臼井国務大臣 委員のお話のとおりでございまして、委員が先ほど来から御質問しておられました譲渡の問題等につきましても、あくまでもそれは再生に資するためということでもございます。
また、御心配をいただいております中小企業、零細企業の下請等に対する配慮等についても方途を弁じておりまして、そういった意味で、この再生法案によりまして多くの中小企業が破産することなく再生できる、そういう道を確実に開けるものと期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/123
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124・保坂展人
○保坂委員 大臣がちょっとお触れになったのですけれども、本当に下請の方たちの苦境というのはやはり聞きしにまさるものがありますね。
それで、実際に、これは口頭で契約なんか交わして、もう工事が始まって、あしたから来てくれというので始めてしまうようなケースも多いですよね。本当に、働いた人たちが一番不利になるような、あるいは事業者といっても、従業員は息子、社長はお父さん、こういう工務店も多々ございます。そういう人たちがいわゆる市場の一種のジャングルルールという、強い者は強くなるのだ、弱い人たちは声も小さいし、聞けませんよというふうにならないように、本当に下請の方たち、あるいは下請に工事を出しているような中規模の人たちも含めて、まさに中小企業の再生という視点をこの法案にも配意してあるようですから、しかし、これは実行の段階で、運用の段階で相当にきめ細かく押さえないと大変なことにもなるのかなと思います。その点について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/124
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125・臼井日出男
○臼井国務大臣 今委員御指摘のとおり、この再生手続というものが始まりまして、万が一にもその経営者に能力に欠けるというようなことがあった場合には、それにかわるべき管理者というものも選任できるわけでございます。そういう意味におきまして、この法案というものが、委員御指摘をいただいたいろいろな面にできる限りの配慮をいたしているものと信じておりまして、この法律が成立することによりまして、多くの意欲ある中小企業者が救われる、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/125
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126・保坂展人
○保坂委員 最後に、一問お聞きします。
先ほど参考人からもお話がありましたが、法制審の中で、企業の倒産回避、再建の手法の中で、営業譲渡自体が話題になってきたのがつい最近なのですよという話です。ですから、それは時間がない中で圧縮して検討が加えられたとはいえ、やはりそこのところで、やってみてわかってくるいろいろな問題が起こらないとも限らない。そこのところは十分見守って、おかしなことがあればすぐ手を打っていただきたい、こうお願いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/126
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127・臼井日出男
○臼井国務大臣 この法案が施行されまして、その成果が出てくるというのはしばらく時間がかかるだろうと思いますけれども、委員御指摘のとおり、運営に当たりまして、当初の我々の目的から外れるというところがあれば、それを変更していくということにはやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/127
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128・保坂展人
○保坂委員 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/128
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129・武部勤
○武部委員長 木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/129
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130・木島日出夫
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
今審議されている民事再生法案は、我が国の再建型倒産法制の基本法をつくろうという大変大事な審議であります。中小企業にとっても死活にかかわる法案であり、労働者の権利、地位にとっても非常に重要なかかわりのある法案であり、日本経済にも大変大きな影響を与える重要法案であります。
しかし、今この委員会場には定足数が満たされていない。こういう状況では到底審議できませんので、委員長、時計をとめて定足数を満たしていただきたい。要請いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/130
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131・武部勤
○武部委員長 事務局に申し上げますが、委員の確保に努めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/131
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132・木島日出夫
○木島委員 時計をとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/132
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133・武部勤
○武部委員長 いや、そのままお続けください。今、至急……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/133
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134・木島日出夫
○木島委員 いや、定足数ですから、審議の基本ですから。委員長、とめてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/134
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135・武部勤
○武部委員長 どうぞ審議を進めて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/135
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136・木島日出夫
○木島委員 いや、定足数ですから、審議の基本です。定足数を満たしてなければ審議できない。基本です。大事な法案だから言っているんです。定足数を満たしてください。当然じゃないですか。委員長の責務です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/136
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137・武部勤
○武部委員長 それはおっしゃるとおりですが、今至急指示いたしましたので、木島君に申し上げますけれども、質疑をお続けいただきたいと思います。委員長に御協力ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/137
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138・木島日出夫
○木島委員 できません。重要法案だ。時計をとめてください。理事の皆さんの責任も問われる事態だと思いますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/138
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139・武部勤
○武部委員長 質疑を続行いただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/139
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140・木島日出夫
○木島委員 定足数を満たしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/140
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141・武部勤
○武部委員長 では、速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/141
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142・武部勤
○武部委員長 速記を起こして。
それでは、木島日出夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/142
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143・木島日出夫
○木島委員 質問をいたします。
我が国の倒産法制は、今、再建型が三つあります。会社更生法と商法の整理、和議法。そして清算型が二つあります。破産法と商法の特別清算であります。倒産五法と言われております。
まず法務大臣に伺いますが、一九九六年十月に、法務大臣が法制審議会に倒産法制の見直しに関する諮問をいたしました。それ以来、我が国の倒産法制全体についての見直し作業が始まっておりますが、その中の和議法だけが、他の法制度に先行して、他の倒産法制と切り離された形で、今回、民事再生法案として提出されてきたわけであります。せっかく我が国の全体の倒産法制について論議が始まったのに、今回他と切り離して和議法の全面改正という形でこの民事再生法案だけを突出して先に出してきた理由、背景、これはどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/143
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144・臼井日出男
○臼井国務大臣 法務省では、平成八年十月に倒産法制の見直し作業を開始いたしまして、倒産法制全体についての統一的な見直しを図るべく作業を進めてまいったわけでございます。
しかしながら、昨年九月に、経済情勢、中小企業等の倒産がどんどんふえている、そういった状況にかんがみまして、中小企業等に利用しやすい再建型の倒産処理手続を整備することは特に緊急の対応が必要であるというふうに判断をいたしまして、他の検討課題とは切り離しをいたしまして、最優先の課題として検討するということにいたしました。
それ以降、法制審議会におきましてこの課題について集中的に討議を進めていただきまして、本年八月二十六日の答申に基づきまして民事再生法案の提出に至った次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/144
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145・木島日出夫
○木島委員 再建型倒産法制は、これが成立いたしますと民事再生法、会社更生法、商法の整理の三つになるわけですが、会社更生法と商法の整理は、株式会社だけが適用対象ということですね。これに対してこの民事再生法は、すべての形態の法人、株式会社、有限会社、その他の法人、それと個人にまで適用される一般法という形で法律が組み立てられていると思います。こういう一般法ができますと、逆に、では会社更生法や商法の整理との関係はどうなるのだということが議論の対象になると思うのです。
そこで、改めて、こういう一般法を今回つくるのだという中で、では会社更生法や商法の整理を引き続き存続させておこうとするのでしょうか。そうだとすれば、そちらの方の再建型倒産法制の存在理由は何か、特にすみ分けを考えているのかどうか、その辺の法務省としての基本的な考え、あるいは法制審議会の基本的な議論の状況を法務大臣からお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/145
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146・臼井日出男
○臼井国務大臣 この再生手続は、中小企業に利用しやすい手続とすべく手続構造を簡素化しているために、原則として、担保権あるいは優先権がある債権や株主の権利を制約せず、企業の組織法的な事項にも変更を加えないものといたしております。
これに対しまして会社更生手続は、株式会社のみを対象とした手続でございまして、担保権や優先権がある債権及び株主の権利すべてを手続に取り込みまして、組織法的な事項についてもこの手続によらなければ変更等ができないものといたしているわけであります。
このように、会社更生手続には再生手続とは異なる独自の存在意義がございますので、これを存続させるということにいたしているのでございます。そして、担保権や優先権がある債権も権利変更を行わなければ企業の再建を達成できないような事案でございますとか、企業の組織法的な事項をも再構築する必要がある事案等については、会社更生手続が利用されるものと考えております。
次に、商法が定める会社整理手続でございますが、この手続につきましては、再生手続が導入されれば不要になるとの意見がある一方で、独自の存在意義があり、存続をさせるべきだという意見もございます。そこで、この手続を廃止するか否かにつきましては、今後の倒産法制の見直しの作業の中で引き続き慎重に検討することにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/146
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147・木島日出夫
○木島委員 会社の整理についてはいろいろ、廃止すべきかどうか議論があるとお聞きをいたしました。しかし、会社更生法は必要だし、独自の存在理由がある、私もそう思います。
そうしますと、会社更生法と民事再生法が並び立つということになるわけでありますが、そうしますと、同一の性質を持った債権、例えば労働債権あるいは租税債権、このような債権が、どの倒産法制が適用されるかによって、権利関係が同一であるというのは当然必要になるのではないかと思いますが、実際上はそうではなくなる部分もある。
あるいは、民事再生法と破産でも、労働債権なんかの取り扱いが変わってしまうということは法律上出てくるわけなんですが、そういうことが果たして法体系としていいのかどうなのか問われるところだと思うんですね。労働者の未払い退職金、未払い賃金が、民事再生法だったらこういう権利関係になるんだけれども、破産に移行してしまったら変わってしまうというようなことがありますと、法的安定性という面では非常に問題が生ずるんじゃないかと思うんです。
これは細かい議論ですから民事局長にお伺いしたいんですが、この民事再生法が仮に成立した場合に、ほかの倒産法制と同一の性質を持った債権が、適用される倒産法制によって違ってしまうというようなものがいろいろあるんじゃないかと思うので、まず事実関係として、どんな債権がそういう状況になると把握されているのか、お尋ねしておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/147
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148・細川清
○細川政府参考人 まず、一般の先取特権があるような債権についてでございますが、これは、民事再生手続のもとにおきましては、一般優先債権として手続外で自由に行使することができるということにしているわけでございます。これに対して、会社更生手続におきましては、これは優先更生債権として取り扱われているわけでございます。
また、担保権についても同様でございまして、担保つきの債権は、会社更生手続におきましては更生担保権として手続の内部に取り込まれておりますが、民事再生手続では、破産法と同様、担保権を別除権としての地位を与え、手続外で執行することができるということになっております。そのような差異があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/148
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149・木島日出夫
○木島委員 それで、そういう違いが出てくるというのは、逆に言うと、倒産法制の特質になると思うんですね。それはいいことだと私は思うんですね。
担保権なんかの実行をどのぐらい抑えるか。会社更生法なんというのは、強烈に銀行の担保権を抑えるわけですね。それで会社の再建を図るんですが、この民事再生法ですと若干それは緩い、銀行にもかなり配慮しているということになるわけですが、そういう、当然のことであり、必要な権利の性質の違いというのは認められるかと思うんです。
例えば労働債権なんかが、この民事再生手続上だとこういう権利関係だが、破産になると変わってしまう、こういうものについては同一の権利関係でずっと貫くということが求められるんじゃないかと思うんですが、その辺、法務省はどんなお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/149
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150・細川清
○細川政府参考人 御指摘のとおり、同じく倒産法制でありましても、債権の種類によって取り扱いが異なっている部分もあります。このような取り扱いの差異は、各手続の目的や構造が異なることによるものでございます。
会社更生手続が担保権や株主権なども取り込んでいるのは、株式会社の事業の維持更生を強力に進めるためでございまして、会社をめぐるすべての権利関係を計画により変更するという手続構造をとるからでございます。
これに対して、再生手続は、主として中小企業や個人事業者に利用しやすいものとするために、無担保の一般債権のみを再生計画による権利変更の対象とすることとして、できるだけ簡素な手続構造とすることを意図しているものでございます。
このように、各手続における各種の権利の取り扱いは、各手続の目的や構造に応じて合理的に定められるべきものでございまして、その間の整合を図ることは、事柄の性質上、限度があるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/150
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151・木島日出夫
○木島委員 ですから、私は、未払い労働債権について絞って聞くんですよ。未払い労働債権、労働者が労働した対価、それが、民事再生法ですと比較的優先的に弁済が受けられる、しかし破産になりますとちょっとおくれるというのは、これは担保権と違っておかしいんじゃないか。むしろ、民事再生法で事業体が生き残っても、仮に再建が成らず破産に移行しても、未払い労働債権というのは一貫して優先的な弁済を受けられるような法的地位を労働債権に与えてもいいんじゃなかろうか。それがいわゆるILOの国際条約の趣旨でもないのかなと思うんですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/151
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152・細川清
○細川政府参考人 そこのところは、これからも、破産法を含んだ残余の倒産法制全体の見直しの中で最もと言っていいぐらい重要な問題であるというふうに認識しております。
また、会社更生では、開始前の賃金債権につきましては、これは優先的な更生債権というふうに取り扱っておりまして、計画によらなければ弁済できないことが原則でございます。ですから、その点では非常に困った点もあるわけで、そこで、わざわざその一部を共益債権として随時弁済できるようにしたというのが会社更生法の考え方ですね。
民事再生手続におきましては、これはすべて手続外としましたから、随時に弁済を受けられるということで、会社更生法よりも手続上有利な扱いになっているわけです。それはそれなりに理屈があるんだろうと思っていますが、残りが破産法の問題で、破産法上は一般先取特権がある債権は優先破産債権ということになっているので、そこのところをどう見直すかというのが今後の課題でございます。
これは、法制審議会で検討事項を公表されたときでも、そこにさまざまな意見がございまして、どういう扱いにするかということがございましたので、今後、見直しの中で重要な問題として検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/152
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153・木島日出夫
○木島委員 権利の性質によっては、どの類型の倒産手続を使うかによって、優先順位が前になったり後になったりするのが当然の権利もあるだろうと思うんです。しかし、私が指摘したように、労働債権なんというのは、ある面では、どんな倒産法制になろうともその優先権をしっかり与えていくというのが必要なんじゃないか、そういう整理が必要じゃないかと思うんです。
それで、本来なら、五つの倒産法が一遍に整理されて法案として出てくるのであれば、そういう整理がきちっと出されて今国会に出されてくるのでいいんですが、たまたま民事再生法だけが突出して出てきてしまっているので、そういう問題が今見えてこないということだと思うんです。
今、民事局長おっしゃったように、破産手続の見直しを今やっておりますので、その見直しの中で未払い労働債権についても優先権が一歩前進するように、ひとつこれから法制審と法務省でも論議をしていただきたいということ、これは法務大臣にもお願いをして、次の質問に移らせていただきたいと思うんです。
こういう議論もあるんですね。倒産法制が五つにばらばらに分かれている。今の日本の法制ですと、どの倒産法制を使うかは申立人の選択にかかっているというわけです。しかし、それが裁判所によって認められるかどうかはまた別問題という状況なんです。会社更生法なんというのは、裁判所によって今日は原則として大企業にしか適用してもらえません。中小弱小の企業は更生の見込みなしということで、頭からはねられてしまうというのが現状であります。
考え方によっては、入り口は非常に広くしておく。要するに、どの倒産法制を使うかを絞らずに、選択せずに、経済的窮境にある債務者が裁判所に申し立てをする。そして、会社の経営状態、労使間の状況、取引状況、抵当権者の意向、租税債務の状況、その他もろもろのその企業の環境を見て、そこで裁判所が申し立てを受けて、これは会社更生法でやるべきだ、これは民事再生法に行くべきだ、これは無理だから破産に行くべきだ、会社整理を使うべきだというふうに、申し立ては一本化にして、それから裁判所が公権的に選択をするというのも一つの倒産法制の考え方としてはあり得るという意見もあるんですが、こういう問題について、突然の質問でありますが、法務省民事局長の考えなり、全体としての法制審や法務省の意向はどんなところにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/153
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154・細川清
○細川政府参考人 申し立てを一本化しまして、木島先生が言われたように、その後は裁判所がすべて決めるという考え方も当然あるわけで、これは民事再生法の再三の検討の冒頭のときに議論された問題でございます。ただ、今回の再生手続が、そういう意見も踏まえまして、この手続を大変柔軟な手続にするというのが一つの眼目になっております。
これを見ていただきますと、まずアメリカのチャプターイレブンのように、DIP型、従前の経営者が経営を継続できるというのが原則になっておりますが、その経営が失当で、従前の経営者が続けたのでは再生ができないという場合には管財人を選べるということになりますから、DIP型から分かれることができます。
それからもう一つ、この法案の最後の方に、簡易再生、同意再生という手続が整っていまして、簡易再生の場合には債権の調査・確定の手続を経ないで決議をするということになっています。そういうことになりますと、これは実は従来の和議と基本的には同じ形になるわけですね。さらに、同意再生になれば、これはいわば全員の同意があるということですから、会社整理的な感じになってくるわけでございます。ですから、今回の改正作業におきましても、手続構造全体を柔軟なものにするというのは一つの眼目でございました。
ただ、一本の申し立てですべて裁判所が判断するということは、やはりある意味では、当事者、申し立てる側にとっては予測可能性がないという場合がありまして、よく会社更生手続の申し立てをちゅうちょする理由として、これを申し立てると当然経営者が退陣しなきゃならぬということがあるものですから、それで頑張って逆にかえって悪くなるということもあるんです。ですから、申し立てる側の予測可能性というのも一つ考えておかなきゃならない重要なポイントだと思っておりまして、そういう意味では、やはり従来型のように申立人が選択できるというのがいいかなと。
ただ、必要がある場合は他の手続に乗りかえられるというのも整備しておく必要があるというふうに考えているわけで、この手続、例えば破産の申し立てがあった、あるいは会社整理の申し立てがあった場合でもこの民事再生の手続や申し立てはできますので、そういうことにすれば、他の手続からこっちの民事再生に変わることもできるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/154
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155・木島日出夫
○木島委員 そこで、本法の民事再生手続開始の問題についてお聞きしたいと思うんです。
法務大臣にお聞きしますが、二十一条の民事再生手続開始の申し立ての条文を読んでみますと、「破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるとき」、こう規定して、現行和議法の破産の原因たる事実のあるときというよりも、おそれという段階から申し立てができる、非常に間口を広げているということがありますし、また、会社更生法とこの民事再生法を比較しますと、会社更生法は更生の見込みがないときは申し立て棄却なんですね。この法案ですと、民事再生法は、再生計画案の作成、可決の見込み、再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるときは棄却ということで、この文を見ても、会社更生法は非常にきつい、民事再生法の方が要件は非常に広く緩和されている、こう私は読み取るんですが、そのとおりかどうか。
そして、二つの面を挙げましたが、申し立ての要件を非常に緩和して広げているという点は、私は是とするんです。非常にいいことだと思うんですが、広げた本意、趣旨、これはどんなところにあるのか、大臣からの御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/155
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156・臼井日出男
○臼井国務大臣 初めに、和議手続の開始原因は、破産原因と同一とされております。これに対しまして、手続開始の時点では既に事業の継続は困難となっているという場合がございまして、再建型の手続としての実効性を損なっているとの指摘がされておりました。そこで、今般の再生手続におきましては、事業等の再生をより効果的に行うことができるように、破産の原因たる事実の生ずるおそれがある場合等に手続を開始することができるものといたしたわけでございます。
会社更生法につきましては、更生の見込みがないというときには手続の開始の申し立てを棄却しなければならないということにされております。これに対しまして、更生の見込みの有無という実体的な事項についての判断は容易でないことから、裁判所の手続開始決定がおくれる要因になっているとの指摘がなされてまいりました。そこで、民事再生法案におきましては、より迅速に手続が開始されるようにするために、裁判所は再生計画が成立する見込みがあるかどうかという手続的な事項について判断するものとした上で、その見込みがないことが明らかである場合を申し立ての棄却の事由としたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/156
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157・木島日出夫
○木島委員 それで、これは法律の非常に微妙な運用解釈の問題になるので民事局長にお聞きしたいんですが、会社更生法の更生の見込みがないときは棄却、本法は認可の見込みがないことが明らかであるときは棄却というので、明らかという言葉が入ることによってどのくらい窓口が広がるのか、あるいは、明らかというものの適用基準というのを、これは裁判所が運用するんでしょうけれども、どんなことをお考えになっているのか、ちょっと聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/157
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158・細川清
○細川政府参考人 従来の会社更生法の開始の条件のところが実体的要件になっていて、余りにも証明するのが難しいというので開始まで時間がかかる、そこでうまくいかないことがあるんだというのは、これは法制審議会でも倒産の手続を専門にしている弁護士さん等から多々意見があったわけで、そこでこれを緩和しようということになったわけでございます。
それで、実体的な事柄を要件としますと立証が難しくなるということになりますので、手続的に見る。ですから、再生計画の作成もしくは可決の見込みがないことが明らかだということは客観的事実でございまして、要するに、多数の債権者、計画案の採決に必要な議決権の総額の半分以上の債権者の賛成が得られる見込みがないというのは、そういう事態は明らかで、わかるわけですね。だからそういうことを言っているわけなので、前に比べてこれは運用がずっと楽になるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/158
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159・木島日出夫
○木島委員 一定の例示をしていただきましてありがとうございました。裁判所がさらに広く受理だけはしっかりする、そして保全処分なんかも比較的迅速に出すということが再生のためには大事だと思いますので、そのようにこの法律が動き出すということは非常にいいことだと思います。
そこで、もう一点、この民事再生手続の開始の要件に、二十五条四号ですが、「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。」こういう文言があります。
具体的にどんな場合を想定してこういう一般条項をつくったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/159
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160・細川清
○細川政府参考人 法案二十五条第四号の、不当な目的で申し立てがされたとき、その他申し立てが誠実にされたものでないときの意味でございますが、これは要するに、真に再生手続の開始を求める意思や真に再生手続を進める意思がないような場合を指すものでございまして、具体的な例といたしましては、専ら債権者からの取り立てに対して時間稼ぎを図るために申し立てをしたような場合が当たります。
従来、和議の手続において和議の乱用事例としてよく言われたものですが、和議を申し立て、保全処分を得ますと不渡り処分を免れますので、それをしておいた上で、今度は和議の手続は進めないで取り下げてしまうという事例があったというふうに言われています。そういうことが典型的な事例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/160
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161・木島日出夫
○木島委員 では、具体的に事例を挙げたいと思うのです。
午前中の参考人の方も大変懸念されていたのは、この法案が労働者の解雇、リストラに乱用されたら大変だ、特に営業譲渡の際に労働者が大量に解雇されるということにこの法律が使われると大変だ、それに裁判所の許可ということでお墨がついたら大変だというようなことだと思うのです。
今日本の経済の状況を見ますと、特に大手会社がいろいろな会社法制を駆使して、分社をして営業譲渡して、そのついでに大量労働者の首切り、解雇、これが吹き荒れているように思うのですね。
そこで、例えば、親会社と事実上その支配下にある子会社の経営者が共謀して、親会社の支配介入によって子会社の労働者を大量解雇するというような目的でこの会社再生手続を使おうなんという、そして一面では、株主総会の特別決議がなくても営業譲渡が裁判所の代替許可でできるというようなああいう条文を利用して、裁判所のお墨つきをもらって営業譲渡をやって大量解雇をしよう、本当にその事業体を生かそうというのじゃなくて、労働者の首を切る、あるいは権利主張をする労働組合を大量パージしよう、そういう目的があらわになったような場合は、私は、この二十五条の四号の不当な目的を適用して、そういうのはだめだよということを言うことができるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/161
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162・細川清
○細川政府参考人 御指摘のような事情があらわになっているということでは真に再生のために申し立てることになりませんから、御指摘のように、これは誠実に申し立てされたものではない、あるいは不当な目的で申し立てられたというふうに解釈されると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/162
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163・木島日出夫
○木島委員 そこで、その民事再生手続の申し立てが本当に不当な目的なのかどうか、誠実にされているかどうか、当然債権者や外部の者も注目をし、よく見守って意見を言うと思うのです。しかし、それが不当な目的かどうかがよりわかるのは内部にいる人間なんですね。もっと言うと勤労者、労働者だと思うのです。
そこで、民事再生手続開始の申し立てがあるかどうかというのはそこで働く労働者にとって決定的に重要なことですから、開始手続の申し立てに当たって事前に、当該会社で雇用される労働者で構成している労働組合あるいは過半数の労働者の意見を聞くということが、この不当な目的かどうかを裁判官が認定するのに非常に有益だと私は思うのですね。
しかし、この法案をずっと読んでみますと、申し立て段階では当該労働組合や労働者に通知すらされない。もちろん、通知もないわけですから意見も聴取しないという形で組み立てられているのです。
では、これは大臣に聞きましょうか。
ですから、ぜひこの法案で、六カ所にわたって労働者の意見を聞く、労働組合の意見を聞くという大変前進している法案でもありますので、出発点のところ、民事再生手続に踏み込むその段階で、裁判所は通知を労働者にしてやる、労働組合等にしてやる、そして労働組合等の意見を聞くという手続を入れてもいいのではないかと私は思うのです。入れてほしいと思っているのですが、法務大臣、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/163
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164・臼井日出男
○臼井国務大臣 今委員御心配の問題でございますが、裁判所は再生手続開始の申し立ての諾否の判断に当たっては再生手続の開始原因や申し立て棄却事由の有無を審理することになるわけでございますけれども、この場合は職権で必要な調査をすることができることといたしておりまして、この調査の方法には何ら限定はございません。したがいまして、裁判所は、労働者や労働組合等の意見を聴取することも含めて、必要と認める方法を用いることができるのでございます。このように、裁判所は必要と認める調査を行った上で再生手続を開始するか否かを決定するのでございますから、委員御指摘のような規定を改めて設ける必要はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/164
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165・木島日出夫
○木島委員 確かに、法案第八条の第二項で、裁判所は職権で必要な調査ができるとあるので、これが的確に裁判官によって運用されればいいのですが、職権発動をしようとしても、全然内部状況がわからなければ発動しようがない。
特に、開始決定をもらおうとする事業体はもう破綻寸前、破綻している、そういう企業の命がけの申し立てですね。そうすると、きれいごとを書くと思うのですよ。実際の経営状態なんかもありのままに書いたらちょっとこれは棄却されるだろう、あるいは、労働者の首切りが本音なんだけれども、そんなことを書いたらとてもじゃないけれども棄却されますからということできれいごとしか書かないだろうということで、職権発動を促すためにも、事前に労働組合等へ通知をする、そして労働組合の意見も聞くという手続を一本差し込むということは、そんなに無理なことじゃないし、非常に合理的じゃないかと思いますので、私はそういう修正案を出したいと思っているのです。御賛同いただきたいと思いますが、時間の関係で次に移らせていただきます。
同僚委員からも再三指摘されたのが、営業譲渡と労働者の地位保全の問題であります。法案の第四十一条以降の問題です。
会社更生法と民事再生法を比較いたしましたところ、民事再生法案の四十一条の条文は全部会社更生法と同じです。会社更生法では、既にここでも質問と答弁があったのですが、五十四条の第一号、財産の処分という文言の中に営業譲渡が含まれるという解釈運用がされている。そこで、営業譲渡については裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。営業譲渡するときには裁判所の許可をとりなさいよということをすることができるという建前ですね。この法案は、その中から営業譲渡だけをえり出して四十二条と四十三条を新たにつくり出したと思われます。
そこで、これは民事局長に聞きますか。
会社更生法と違って、特段、財産の処分で解釈できるのにもかかわらず、営業譲渡だけを引っ張り出して四十二条、四十三条という特別の規定をつくり出して、裁判所の許可を、無条件の条件といいますか、前提抜きの許可を条件としたその根本的理由は何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/165
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166・細川清
○細川政府参考人 御指摘のように、法案の四十一条は、会社更生法のたしか五十四条だったと思いますが、これと全く同じでございます。営業譲渡は財産の処分の中に入るので、裁判所が許可を得るものとすることはできます。するかどうかは裁判所の裁量的判断でございます。しかし、この法案では、営業譲渡というものは再生の大きな枠組みを決め、影響が非常に大きいということから、そういうものだから必ず裁判所の許可を得なければならないものとして、営業譲渡に対して規制を強めたという意味でございます。
そうした理由でございますが、営業譲渡することにより、譲渡先において事業の存続を図るとともに、倒産した企業等の債権者に対する弁済率の向上が可能となる場合が少なくないわけですが、その反面、必要性や相当性を欠くような営業の譲渡がされるときには、結果的には、債権者等の利益が害され、あるいは雇用の維持確保が図れなくなることになるわけでございます。
このような意味で、営業の譲渡をするかどうか、どの範囲で営業等を譲渡するか、譲渡の対価やその譲渡契約の内容をどうするかが再生債権者等の利害にかかわる重大な問題でございます。また事業の再生の基本的枠組みを決定するものでございます。そこで、こういった手続に関して行われる営業の譲渡の必要性及び相当性を担保するために、四十一条のほかに四十二条を設けて、営業譲渡をするには必ず裁判所の許可を得なければならないということにしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/166
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167・木島日出夫
○木島委員 大変前進だと私は思うのです。影響が非常に大きいから、営業譲渡だけは特別に会社更生法の規定の仕方から抜き出して、絶対的に裁判所の許可がなけりゃならぬのだというふうにした。
そこで聞くのですが、影響が大きいという、だれの権利、身分、地位に影響が大きいと法務省は考えているのでしょうか。
当然、私は、一つは債権者だと思うのですよ。営業譲渡で安売りされたら全然配当原資がなくなってしまうわけですから、恐らく根本的にそこだと思うのですが、債権者だけが視野にあるのでしょうか。それとも、そこで働く労働者の地位にも非常に大きな影響を営業譲渡というのは与えるんだというようなことも念頭に置いてこの条文をつくり出したのでしょうか。その点、端的にお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/167
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168・細川清
○細川政府参考人 再生計画に関係するすべての利害関係人に対して影響が大きいわけですが、なかんずく再生債権者とその企業で働く労働者の地位に大きな影響があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/168
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169・木島日出夫
○木島委員 そういう観点から、四十二条第三項で新たに、そういう場合には労働組合等の意見を聞かなければならないという条文を置いたんだと思うのです。非常に前進だ、今までの日本の法体系にない新しい枠組みだと思うのです。
そこで、改めて整理したいのですが、こういう法体系の前提問題ですが、日本の営業譲渡は、原則会社はできる、その際は商法の二百四十五条一項の特別決議が必要だ。逆に言うと、商法の株主総会での特別決議さえあれば、それだけで営業譲渡というのはできるというのが日本の現行商法の基本体系である。民事局長、そう伺っていいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/169
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170・細川清
○細川政府参考人 行政法規等の規制は別にいたしますれば、商法につきましては御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/170
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171・木島日出夫
○木島委員 そうしますと、本法第四十二条は、当然ですが、商法二百四十五条一項の株主総会の特別決議があり、さらに裁判所の許可が必要だというので、営業譲渡の要件を加重したものだというふうに聞いていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/171
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172・細川清
○細川政府参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、私ども、それを誤解がないようにいたしたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/172
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173・木島日出夫
○木島委員 そこでもう一つ、債権者だけじゃなくて、労働者の地位にとっても大事だという先ほどの御答弁がありました。
そこで私は、労働組合等の意見を聞かなきゃならぬという条文が入ったので大変前進だと言ったのですが、さらに、現下の日本の経済状況、労働状況、雇用状況を見ますと、営業譲渡に名をかりて、大量労働者の解雇、リストラが吹き荒れているときだけに、営業譲渡を悪用させないという意味をも込めて、もっと厳しい縛りをかけたらいいんじゃないかというふうに思うのです。ですから、営業譲渡が労働者のリストラ、解雇を伴うような場合、そして、労働組合がこの四十二条三項で反対だという意見を表明しているときは裁判所は許可してはならないというような縛りをかけることはできないのかなと思うのですね。
運用でも解釈でも結構ですが、営業譲渡の許可の基準をどう考えているのか。特に今のような場合、大量解雇を伴うような営業譲渡で、労働組合が反対の意見表明をこの条文でした場合、そういうときは許可しない、そう運用されるべきだと私は考えるのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/173
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174・細川清
○細川政府参考人 四十二条には、裁判所の許可に際して考慮すべき事項が明文では定められていないわけでございます。しかし、そういう場合は他の規定にも多々あるわけでございまして、四十一条にも、裁判所の許可を得なければならないと書いてありますが、その許可の基準は書いてございません。それから、会社更生法五十四条を御指摘になりましたが、そこでも同じでございまして、これは倒産法制一般の規定の仕方に倣ったのでございます。
これはどうしてかと申しますと、各手続でその手続の目的があるわけでございます。民事再生法におきましては、窮境にある債務者の権利を調整してその事業の再生を図るという目的があるからでございまして、裁判所が許可を与えるかどうかは、その目的に照らして適当かどうかということを判断することになるわけです。そういう趣旨でこの規定ができているわけでございます。
御指摘のような具体的な事案でございますが、これは最終的には裁判所が個々具体的事案に応じてすべての事項を考慮した上で御判断になるわけですから、私がああしろこうしろと言うことができないことは当然でございますが、そういう性質のものとして考えてみますと、やはり事業の継続を前提として再生を図るということになりますと、当然、労働組合あるいは労働者の多数の人の協力がないとできないのが一般でございます。特に、申し立て直後、そういうことをよく労働者の理解を得ておかなければ困難が大きくなるというのも事実でございます。
ですから、よく意見を聞くことは当然でございますが、最終的な判断権は裁判所にある。ですから、再生の目的が本当に、ぎりぎり考えてみますと、論理的には、一部の労働組合が反対しても裁判所が違う判断をするということはあり得るわけでございまして、それは否定できないのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/174
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175・木島日出夫
○木島委員 そこで、この民事再生法の根本目的が問われてくるのですね。これは事業体を生かそうというための法律でしょう。破産にして、解体、清算するための法律じゃないわけでしょう。事業体を生かすというためにこの民事再生法、それがいわゆる再建型倒産法制なんですが、根本ですね。
そうすると、営業譲渡して、一定の金額で、十億円なら十億円で売って、売上代金を抵当権者にばらまいておしまい、労働者を全部首を切ったというようなことは民事再生法の根本目的に反するわけですよ。それならそれは破産なんですよ。破産のやり方でしょう。売っ払って、金を抵当権者、銀行に払って、労働者を全員首を切って事業経営は終わり、それは破産ですよ。
この法律はそうじゃないわけでしょう。まさに事業体を生かすためにこそこの再生法体系があるんだから、営業譲渡がされようとしている、労働者が全部首を切られようとしている、労働者が反対しているというような場合には、やはりこの法の根本目的からいって、そんなものは裁判所は許可できないはずだと思わざるを得ないのですね。それはいいんでしょう。だからこそ私は、四十三条の方にただし書きがついていて、「ただし、当該営業の全部又は重要な一部の譲渡が事業の継続のために必要である場合に限る。」という条文が入ってきていると思うのです。
そうだとすれば、この当該営業譲渡が事業の継続のために必要な場合ということは、四十二条の方だってそういう精神でこの法律はつくられているんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/175
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176・細川清
○細川政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、この許可の条件は、法律の第一条の目的に照らして判断されるべきものでございます。第一条の目的は、再生債務者の事業の再生、維持でございますから、その目的によって判断されるということになるわけでございます。
四十三条の方にわざわざ書いてございますのは、これは本来株主総会の特別決議を経るべきものを、経ないままで裁判所の許可でこれを代替するものですから、そこのところは、経済的にそれがぜひ必要なんだという厳格な要件を課さなければならないということで縛りをかけた、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/176
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177・木島日出夫
○木島委員 大事な答弁だと思うのです。四十三条というのは、営業譲渡の一般原則の上に立って、なお債務超過である場合のみの規定ですよね。債務超過の場合にのみ、そのときは株主総会を開いて特別決議はしなくてもいいですよ、裁判所の許可でかえていいですよという条文ですね。そういうときに、わざわざ、ただし、営業譲渡というのが事業の継続のために必要な場合に限るんだという、非常に縛りをかけたのですね。この縛りの精神というのは四十二条の方にも生きているんだという答弁だと思うのですね。四十二条というのは債務超過じゃない場合なんですよ。この四十二条と四十三条は何が違うかといったら、四十二条は債務超過でない場合、四十三条は債務超過の場合なんですよ。そういうすみ分けをしているんじゃないですか。そうじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/177
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178・細川清
○細川政府参考人 四十二条は、すべからく営業譲渡に適用される規定でございます。ですから、債務超過にあろうとなかろうと、両方とも適用になる。ですから、四十三条が適用されるためには、四十二条の許可もなくちゃいけないのです。四十二条と四十三条の両方の許可が必要なのです。それから、債務超過でない場合は四十三条は適用ありませんから、四十二条の裁判所の許可のほかに株主総会の特別決議が要るということになります。また、ほかの、例えばいろいろな協同組合法等では社員総会の決議が必要だとか、そういう根拠法による決議がさらに必要になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/178
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179・木島日出夫
○木島委員 そうだとすれば、四十二条の方にも、ただし、当該営業の譲渡が事業の継続のために必要である場合に限るんだという、その文言を入れてもいいわけですね。この法律はないから誤解されるんですよ。そういう修正も用意されているようですが、入れて当然なんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/179
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180・細川清
○細川政府参考人 私どもが立案の際に四十二条に許可の基準を入れなかったのは、私どもから見れば、先ほど来申し上げていることは当然のことであるということでございます。
それからもう一つは、他の規定にそういう基準がないのに四十二条だけに入れると、では他の規定は、例えば四十一条はどう解釈したらいいのかということがすぐ問題になるのではないかという、法律家としての整合性、均衡性を考えた観点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/180
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181・木島日出夫
○木島委員 大体はっきりしてまいったと思うのです。
そこで、改めて、労働組合や労働者がいわゆる意見を陳述する機会がこの法案で与えられるということが出てくるわけなので、労働者や労働組合には民事再生手続に関するいろいろな情報がきちっと提供されなければならぬと思うのです。
そこで、これは法務大臣にお聞きしますが、法案第十七条に、利害関係人は裁判所書記官に対して、裁判所に提出されたり裁判所が作成した文書その他の物件の閲覧請求ができるとあるのです。そこで、当該事業体で働く労働者や労働組合は、当然、十七条の利害関係人としてそういう諸文書を閲覧請求ができるのだ、こう解釈してよろしいですか。法務大臣、大事なところですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/181
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182・臼井日出男
○臼井国務大臣 委員御指摘いただきました法案第十七条第一項に言う利害関係人とは、法律上の利害関係を有する者を意味しておるわけでございますけれども、再生手続によりまして直ちにその者の法律関係に影響を持つほどの直接的な利害関係を有する必要はございません。間接的なものでよいと解されているところでございます。したがいまして、再生債務者の労働組合や労働者などは、通常は利害関係人に該当するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/182
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183・木島日出夫
○木島委員 次に、この法体系の債権者の地位に関して幾つかお聞きしたいと思うのです。
従前の同僚委員の質問によって、労働債権の法的地位、退職金はどうか、未払い賃金はどうか、しかも、手続開始の申し立て前の未払いはどうか、申し立て後、再生手続開始決定の間に発生した労働債権の未払い賃金はどうか、退職金はどうか、あるいは開始決定後の未払い賃金はどうか、退職金はどうか、いろいろ場面を分ければ労働債権の地位がどうかという細かい論議があろうかと思うのですが、時間も迫っておりますから、私は、租税債権の法的地位と労働債権の法的地位に関する質問をしたいと思うのです。
国税徴収法の八条には、「国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。」こういう規定があるんですね。要するに、これは日本の法体系の根本なんです。あらゆる債権の上に国税の徴収権があるという組み立て方をされているんですね。
これが吹き荒れておりまして、事実上、労働者の権利なども税務署の権利の下にあって、労働者がこういう経済的窮境にある場合にはなかなか未払い労働賃金が回収できない、支払われないということがあるんです。
そこで、この民事再生法上、国税債権、地方税債権、要するに租税債権はどういう位置に置かれているんですか、御答弁ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/183
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184・細川清
○細川政府参考人 国税債権は、御指摘のように、国税徴収法八条で最優先の債権とされております。それから、地方税も国税徴収法を準用しておりますし、いわゆる公課も国税徴収法の例によるということになっておりまして、これらの債権は、いずれも実体法上の優先権がある債権でございますので、民事再生法上は、手続上は、一般優先債権として手続外において自由に行使することができるという扱いになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/184
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185・木島日出夫
○木島委員 そうなんですよね。実際、ですから、中小企業をこの民事再生手続で何とか生き残りを図って守っていこう、そして労働者の首切りを防いで雇用を守ろうとするときに、本当に、国税がのこのこ出てきて全部自由に共益債権だといって取り上げていったら、再生できないのですよ。
そこで、民事局長にさらにお聞きしますが、この法体系では、国税債権については保全処分で支払いをとめる。一時でもいいです、包括的禁止条項なんかがあるわけですから、抵当権なんかも一時とめる権限をこの法律でつくったのですから、国税債権なんかも一時とめる。特に、消費税滞納なんというのは非常にふえていますから。消費税は、国税の中でも最優先なんですよ、取り上げる優先順位が。そんなものがのこのこ出てきて財産を持っていかれたら、これはもう再生なんかできっこないですから。どうでしょうか。この法律によると、国税債権、地方税債権を一時保全処分で支払いをとめるという体系になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/185
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186・細川清
○細川政府参考人 国税債権、地方税債権は、他の一般先取特権等のある優先債権と同様再生債権ではございませんので、開始決定の効果をさかのぼらせるという意味の保全処分をこの対象とすることはしていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/186
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187・木島日出夫
○木島委員 していないんですよね。ですから、非常に弱点であり、盲点だ。これは、大蔵省をひとつ説得して、本当に多いんですよ、国税滞納。消費税、源泉徴収税、あるいは、公租でないけれども、公課としたら社会保険料その他。金額も多いし、すぐ滞納するのは社会保険なんです。そういう権利をきちっと保全処分でとめないと、非常にいい法律だとは思うのですが、会社再生はできないし、事業体は守れないし、労働者の権利も地位も守れない。ましてや、労働債権の上に国税債権があるなどという法体系を根本から変えないと労働者の未払い賃金が確保できない、そういうことが今問われていると思うのです。
これは非常に根本問題なので、法務大臣、ひとつ大蔵大臣を説得して、この民事再生手続上国税債権はちょっと一歩退く、労働債権の後ろにある、あるいは再生のために支払いを一時停止できる、それがなければ画竜点睛を欠くということになると私は思うのです。
私は、十五年間小さな企業の更生管財人をやって、本当に今、日本の経済社会の中で中小零細企業が会社更生で立ち直るというのはどんなに大変かということを身をもって体験してきておりますので、特に租税債権とのかかわりが非常に大事なので、それが必要なんだということを感じているので、法務大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/187
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188・臼井日出男
○臼井国務大臣 今委員の御指摘、お気持ちは実際大変よくわかるところでございます。しかしながら、この一般優先債権の中でいずれの債権を優先するかという問題は、国税徴収法でございますとか地方税法でございますとか国民健康保険法でございますとか民法、商法の実体法、大変多くかかわりを持っておりまして、今後それらのことをよく考えながら研究、勉強していく必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/188
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189・木島日出夫
○木島委員 では、民事局長に聞きます。
今の法体系でいきますとこうなんですよ。抵当権者の方が国税より強いんですよ、担保権者の方が。その抵当権ですら、この法体系によって一時停止できるんですよ。そうでしょう。それだったら国税債権をとめることができるじゃないですか。答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/189
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190・細川清
○細川政府参考人 国税と抵当権の関係は、法定納期限等の関係でいろいろ難しいルールがございます。それが一つでございます。
それで、まず、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、これは国税徴収法を初めとする実体法で決まっておりまして、その多くが当省所管の法律ではないという問題が実はございますが、それを抜きましても、手続は実体法上の優先権を前提としてその手続的取り扱いを決めるということになりますので、手続法だけでできることには限度があるということになります。
繰り返しになりますが、一般優先債権は再生債権ではないから自由に行使ができるんだ、開始決定後もできるという原則をとりましたので、したがって、優先債権はすべて保全処分ではとめられないということになったわけでございまして、それは一続きの手続的な構造から由来する問題でございます。
もう一つは、国税徴収法のことですので、私からお答えすることがいいのかどうか、ちょっとちゅうちょいたしますが、条文にあることだけを申し上げますと、国税徴収法の百五十一条で、「税務署長は、滞納者が次の各号の一に該当すると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、その納付すべき国税につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。」云々というような規定がございまして、一応、国税徴収法には猶予というような規定はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/190
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191・木島日出夫
○木島委員 私が言うのは、日本の法体系で一番強いのはやはり抵当権者なんですよ。抵当権者が、銀行が金を貸して土地や建物を担保にとった、そしてそれが破綻状態になって返済できなくなった。競売できて、まず先に抵当権で守られている被担保債権から取り上げていくんですよね。そういう物権に対して、のこのこ後から国税債権が未払いが発生したといって入っていっても、まず抵当権者が取っていくんですよね。たしかそうだと思うんですよ。それまでは、国税といえども、抵当権者を追い抜いておれたちが先だというわけにいかぬと思うんですよ。そうでしょう。その抵当権者ですらこの法で辛うじて、会社更生法よりは弱いけれども、ちょっと待てよといって支払い弁済を中止できるというんでしょう、抵当権の実行を。そのぐらい頑張ったんだから、抵当権者の権利をとめたんだから、それはもう法務省の権限内だからとめた、しかし国税債権は大蔵省に遠慮しなくちゃとまらないというような感じだと思うんですよ、率直に言って。
法務大臣、どうでしょうか。せっかくだから、これで中小企業を守るというなら、国税債権も抵当権者並みに、ちょっと待てよ、ちょっと支払いをとめる法律をつくるけれどもいいじゃないかという態度にぜひ立ってもらって頑張ってもらいたいと思うわけで、意見を聞いて終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/191
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192・臼井日出男
○臼井国務大臣 御意見は伺いました。今後慎重に検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/192
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193・木島日出夫
○木島委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/193
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194・武部勤
○武部委員長 福岡宗也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/194
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195・福岡宗也
○福岡委員 民事再生法案について御質問を申し上げたいと存じます。
この法案につきましては、既に同僚議員の方からいろいろな問題点の御指摘がありまして、私の予定しておりました質問も大部分もう質問をされておるという状況でありますので、なるべく重複をしないような形で確認をしたいというふうに思っております。
そこで、ちょっと順番を飛ばしまして、先ほど論議のありました四十二条と四十三条、営業譲渡の関係でございますけれども、この関係からまずお伺いをしたいわけであります。
先ほど民事局の方から御説明がありましたような回答で基本的にはいいだろうというふうに思うわけであります。しかしこれは、よく見ますと、四十二条の方は、いわゆる営業譲渡は会社でなければ自由にできるわけですね。法的な株主総会、四分の三の議決ということも必要がないわけでありますし、買い取り請求権の問題もないわけであります。したがって、これは一般的な原則を定めて、そういうフリーな場合であっても、民事再生法を適用する場合には、営業譲渡する場合には裁判所の許可が必要なんですよという原則を定めた。
そして、四十三条の方は、会社というものを中心にして考えまして、そしてもちろん債務超過等の別の要件はございますけれども、結局、そういう場合に、本来なら株主総会を開いて議決を経なきゃいけないわけです、特別決議を。それを省略して、それにかえるところの決議ができる。ここの点に最も重要な点があるんじゃないかなというふうに私は理解をしたわけでありますけれども、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/195
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196・山本有二
○山本(有)政務次官 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/196
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197・福岡宗也
○福岡委員 そうしますと、四十二条が基本原則だということになるので、労働組合とか従業員の代表者の方たち、こういう人たちの意見を聴取するという要件も当然に入るということもよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/197
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198・山本有二
○山本(有)政務次官 そのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/198
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199・福岡宗也
○福岡委員 それから、きょうぜひとも確認をしておきたいことはもう一点あります。
我が国では、企業倒産の制度については、いわゆる清算型の倒産制度のほかに、幾多の種類の再生型の倒産制度を従来次から次へと生み出してきて、実際にはこれらが競合しておるという状況であるわけであります。
この制度が生み出されます背景なり必要性というものは、ある程度特殊性はございますけれども、やはり基本的には、その必要性、それからそれを運用するための仕組み、理念というものは普遍的、共通なものがあるというふうに考えているわけですね。また、そうでなければ困ると思うのです。それぞれの制度ごとにばらばらで、継ぎはぎだらけのものであっては困るというふうに思うのであります。
そこで、従来の制度、今度の民事再生法も含めまして、この再生型の倒産制度というもの自体の生まれてきた理由というものと、その普遍的な目的、理念というのはどういうところにあるんだというふうに考えておられるか、また、法制審議会においてどういう議論がなされたか、まずこれを御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/199
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200・山本有二
○山本(有)政務次官 法人または個人の債務者が経済的に窮境にある場合に、これを放置いたしますと、その経済状態がますます悪化し、最終的には破産手続による清算を余儀なくされます。しかしながら、破産手続により事業または財産の解体、清算がされますと、これに伴って事業は消滅し、雇用の場の喪失、資産の減価等が生じることとなります。しかしながら、このような事態は、債務者自身及び債権者の利益の観点のみならず、国民経済的観点からも損失が大きいものと考えられます。
そこで、このような事態を回避し、債務者の事業や経済生活の再建を図り、雇用を維持するために再建型の倒産法制が設けられているわけでございます。
そして、今次の民事再生法は、我が国の企業のほとんどが中小企業と言われる小さな個人経営を主体とした企業であり、個人事業者及び株式会社の形態をとっておりましても個人の経営者の資質、能力に経営のノウハウが負われているという実態にかんがみますと、再建型でできるだけそうした社会的な利益を保持していこうという考えに基づくものであろうというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/200
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201・福岡宗也
○福岡委員 どうもありがとうございました。
基本的にはそういうことだろうと思うのです。そういう社会的な有機体としての価値の企業を存続せしめて、産業発達、我が国の経済界の発展にもつながってくるというのがその目的だろうと思いますけれども、それは同時に、やはりそのためにまず債務者、債権者、さらには株主並びに従業員というもろもろの利害関係人の利害が公正、適正に調整をされるということが最も重要な理念としてうたわれなければならぬというふうに考えておりまして、実際に、会社更生法の条文の一条にもそういったところが明確に規定されておるわけであります。
それから、実際の規定にはございませんけれども、従来の和議法の関係の実際の裁判所の運営の理念というものも、幾多の決定の中において判断がされておりますけれども、そういった利害関係者の適正な調整というのが最も大切だということがうたわれているわけであります。
今回の民事再生法もそれに近いような条文が一条にありますけれども、これと会社法との相違があれば述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/201
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202・山本有二
○山本(有)政務次官 民事再生法案は、第一条に規定されているとおり、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、債務者と債権者との間の民事上の権利関係を調整し、当該債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的とするものでございます。
民事再生法案と会社更生法とは、ともに再建型の倒産処理手続を定めることにより、経済的に窮境にある債務者の経済的再生、更生を図るという点では共通の目的を有するものでございます。
しかしながら、会社更生法の目的は経済的に窮境にある株式会社の事業の維持更生を図ることにあるのに対して、民事再生法案の目的は、経済的に窮境にあるすべての法人及び個人の事業または経済生活の再生を図ることにあり、この点におきまして両者の目的には差異がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/202
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203・福岡宗也
○福岡委員 ということですと、結局、対象者が違うという形で差異はあるけれども、その他の点については同じだということですね。
条文を見ますと、こうなっているのですね。更生法の方は、「この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図る」、こういうふうに書いてあるんですね。ということはどういうことかというと、具体的に、債権者とか株主とその他の利害関係人との利害調整ということが目的に明確に明記してあるんですよ。
今回の民事再生法の方の目的を見ますと、やはり窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得て、かつ、裁判所の認可を得た再生計画を定めることなどによって、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整するということで、いわゆる債権者と債務者との間の権利関係だけを調整するというようにも読めるのです、これを見ますと。
ところが、本来の目的からしますと、適切な企業再生をできるという目的からしますと、そうじゃなくて、あらゆる利害関係、きょうも論議されましたいろいろな下請会社の問題とか従業員の問題とか関係者の保護の問題、そういった人たちの利害関係をすべて総合的に調整をしていく、これが会社更生法の目的にうたわれているんですけれども、やはりそういうような考え方をとるべきじゃないかというふうに思います。この規定には、債権者と債務者というだけで限定するのではなくて、会社更生と同じように、その他の利害関係というのが含まれているかどうか、特に従業員なんかもこの中に入っているかどうか、その辺のところをちょっと御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/203
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204・山本有二
○山本(有)政務次官 再生法は再生のみに目的を置く法律でございまして、会社更生法はすべての株主権や債権者の利害を調整する、そういう意味が含まれておりまして、若干手続対象の範囲に差を設けているという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/204
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205・福岡宗也
○福岡委員 次に、申し立ての原因についてお伺いをいたしたいわけであります。
和議の原因は破産原因と同じということであります。それからさらに、先ほどもちょっと読み上げましたように、更生会社の場合はやはりおそれという要件が入っておりまして、若干の広い要件になっているわけであります。民事再生法と会社更生法との関係ですけれども、要件的にはどちらがより広いのかというのがどうも私わからないわけですけれども、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/205
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206・山本有二
○山本(有)政務次官 会社更生法と民事再生法では開始原因は全く同一だ、こう理解していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/206
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207・福岡宗也
○福岡委員 若干表現は違うけれども、そういうふうに読めぬこともないだろうというふうに私自身も思っているわけであります。
そこで、このおそれ、いわゆる破産原因を生ずるおそれということの要件が一番基本的な要件になろうかというふうに思うわけであります。このおそれというのはいろいろな法律に使われておりますけれども、それぞれの法律の中で、極めてあいまいな解釈、広く、ある場合には無限と言ってもいいように使われておるわけであります。実際は、この蓋然性の程度というのは、従来の会社更生の具体的な手続の中ではかなり厳格に行われていたんじゃないかというふうに思うのですけれども、これはどの程度のものだというふうに理解をされているのか、お伺いしたいのが一点。
それからさらに、申し立ての棄却の理由として、一から四までの事由が列記されています。いわゆる障害事由があるわけですけれども、これらの具体的な手続のそれぞれのイメージするところというのがどういう要件なのかというと、私もよく読みましたけれども、文言的にはわかります、だけれども、どういうものを想定しているのかというのが非常にわかりにくいというわけであります。
したがって、それぞれの開始の障害事由というものの要件はどういうものを想定しているか。それから、先ほど言いましたおそれというものとの関連はどういうふうに考えたらいいのか。ちょっと説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/207
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208・山本有二
○山本(有)政務次官 まず、開始原因についてでございますが、これは、御承知おきのとおり、手続の開始原因を緩和し、より早期に手続の開始を可能にすることにより、債務者の経済的再生をより行いやすくするためでございます。
ここに言う破産原因の生ずるおそれがある場合とは、破産原因たる事実が現に生じている必要はないが、事態がそのまま推移すれば破産原因が生ずることが客観的に予想される状態を意味するものでございます。
具体的には、債務者がどのような経済的状態にある場合に破産原因の生ずるおそれがあると言えるかについて、個々の事案ごとにさまざまであり、一概に申し上げることは困難でございますが、例えば、現在は支払い不能に陥っていないが、今後の資金繰りの見通しが立たず、早晩支払い不能に陥ることが予想される場合などが典型例と考えられております。
後段につきましては、民事局長から答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/208
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209・細川清
○細川政府参考人 法案の第二十五条は、御指摘のとおり再生手続開始の障害事由を定めたものでございます。
第一号は、「再生手続の費用の予納がない」ということでございますが、これは、再生手続に必要な費用、すなわち送達、公告の費用、あるいは監督委員、調査委員、場合によっては管財人等の機関の報酬に相当する費用の予納がないとき、そういう意味でございます。
二番目の「破産手続、整理手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。」という意味でございますが、これは、既に破産手続が係属していて、その後に民事再生手続が申し立てられた、こういう場合でございます。破産手続が既に相当進行しており、既に会社を再建する見込みがないというような場合には破産手続によることになりますし、また、破産手続による方が配当が多くて、再生手続をしても配当率が高くならないという場合には、これは破産手続によるべきだということになりますので、二号があるということになるわけでございます。特別清算手続も同じような意味でございます。
ですから、債権者の一般の利益に適合するときかどうかは、清算的な整理の場合と比べて再生の方が配当率等が最終的には高くなるということも、一般的な事柄でございます。
それで、三番目の「再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。」ということでございますが、これは、会社更生法ではこのところは更生の見込みがあるということが、そういう実体的要件が課されているわけですが、民事再生法におきましては、その実体的要件を証明することは非常に困難がある場合があるということから、これは手続的な見込みを要件としたものでございます。
つまり、「作成」というのは、要するに弁済計画をつくれないという意味では障害事由になる。あるいは、「可決の見込み」というのは、多くの債権者の賛成を得ることができるような再生計画を作成する見込みがない。「認可の見込みがない」という点も同じような意味でございます。
四番目の「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき」というのは、要するに、再生手続を申し立て、保全処分を得たらば、後は再生手続を実行する意思がなくて、よく巷間言われているような仮処分の食い逃げ的な申し立てのようなことが例として挙げられるかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/209
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210・福岡宗也
○福岡委員 今御答弁のありました第二号の方の破産等その他の手続によることが債権者の利益になるということの内容としまして、そういう破産等の手続によった方が配当率が高いんだということが一つの要件になるとおっしゃいましたが、今回の民事再生手続の申し立てのときには、計画案というのを示していませんね、和議と同じような。そうすると、これはどちらが高いか安いかということが非常にわかりにくいのじゃないかなという気がするんですけれども、その辺はどういうことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/210
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211・細川清
○細川政府参考人 ですから、このところは、そういうことが明らかにある場合には障害事由になるということですから、その点がまだ明らかになっていないということであれば障害事由がないということになろうかと思います。
先ほど申し上げたような破産的清算よりも配当率が高くなるという要件は、また後の方でも、例えば認可の要件にもなってくるわけでございまして、常に考えておかなければならない要件だということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/211
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212・福岡宗也
○福岡委員 そうしますと、開始の障害があるかどうかということを判断するためには、ある程度、配当もどういうふうにしていく、そのためにどういうところをリストラしてある程度経費を節減してどうしていくんだとかというかなり詳しい計画を申し立ての段階で出さないと、実際は開始決定が出しようがないと僕は思うんですね。
そこで、手続をお伺いするんですけれども、そこのところがよく、これを読んでいて、実際にこの民事再生法の裁判所の手続がどういうふうになされるかというのがどうもイメージがわかないので、実際上の申し立ての審理というのがどのような形で行われるのかということをお伺いいたしたいわけであります。
私のつたない経験からいいますと、和議、会社更生におきましては、実務では、口頭弁論を開く、審尋による手続を開く、それとまた書面審理によって行われる、さらには、債務者のほかに会社の場合は会社の役員、債権者、労働組合の代表者、専業的な下請業者、それから支援銀行なんかの事情聴取というようなことを事実上とり行った上で判断をする。そして、通常の裁判所の場合は、まあまあの規模の会社の場合なんかでしたら、ほとんどがやはり和議の場合では整理委員、会社更生では調査委員を選任して、全財産の状況を調べてその評価もする、それに営業状況等も調査をする、売り上げ、それからさらには利益率なんかの計算もきちっと専門的にさせた、その調査報告書を出させて、それによって、再建の見込みあり、なし、さらには債権者の利益も害することがないだろうというような判断もしていたというふうな理解なんですけれども、この民事再生法の関係では具体的にどのような手続を予測しておるのか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/212
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213・千葉勝美
○千葉最高裁判所長官代理者 民事再生手続の申し立て原因、それから手続開始の障害事由、これについての審理をどういうふうなやり方でやっていくかということでございますが、この点につきましては、会社更生や和議手続と大差ない方法になろうかと思われます。
まず、破産原因が生ずるおそれがあるかどうかという判断、これは支払い不能または債務超過が生ずるおそれの有無ということが問題になりますので、裁判所におきましては、再生債務者の財産状況を把握することが必要になるわけでございます。そのために、財産目録とか最近の貸借対照表、損益計算書、資金繰りの実績、それから過去のものだけではなく将来の資金繰りの見込みなどを明らかにする書面を出してもらう、そういうようなことで、再生債務者の財産状況を明らかにする資料で判断をしていく。もちろん債務者の審尋というのもされることになろうかと思います。さらに、労働組合などから意見を聞く、あるいは主要な債権者、金融機関などからも審尋をしながら意見を聞く、取引先からも意見を聞くということも必要に応じてされるものと思われます。
手続開始の障害事由についても、基本的には同じようなやり方をするというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/213
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214・福岡宗也
○福岡委員 それから次に、再生手続におきましては、監督委員と調査委員と管財人という制度が職権的に選任できるということになっているわけであります。和議は、直接管理処分権はありませんけれども、管財人がやはり監督権的な立場で選任をされておりますし、それから会社更生においては、管財人が完全な管理処分権を持つという形になっているわけですが、こういうような任意的なものにしたということについての必要性の問題です。これは、どういう場合にどの人を選任するんだということが実際の問題になるとどうも見えてこないんですけれども、どういう形で実際にこれは運営されるということなのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/214
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215・山本有二
○山本(有)政務次官 調査委員や検査役あるいは保全管財人等々を選任いたすならば、当然、予納金等が大きくなるわけでございます。その意味におきますと、すべての法人及び個人の事業または経済生活の再生を図ることというものが目的でございます本法案からすると、余りにも幅が広くて、いわば同意再生、簡易再生まで含んで、会社更生手続的なものまで包摂する、こういうことになりますならば、いわば会社更生の基準以下のところを予定しつつ、会社更生では資本金の区分によりこの予納金が最低三百五十万円要るわけでございますが、それ以下の部分であるならば本法案が機能し、かつ、簡易や同意であるならば五十万以下の予納金で足りますけれども、再生において、もし予納金をたくさんふやすことができて、正確にしようとするならば、調査委員も選任でき、公認会計士も雇うことができるというようなことからしますと、その会社規模や債務の額あるいは再生の能力等に応じて、この範囲の中で調整ができようというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/215
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216・福岡宗也
○福岡委員 そうすると、ここでいいます調査委員というのは、再生の申し立てがあった段階で、開始決定をするまでの間のいわば調査ということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/216
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217・細川清
○細川政府参考人 調査委員は、裁判所の選任によりましてその会社の実情を調査するための機関でございまして、特に、財務状況がどうなっているか、事業の状況がどうなっているか等について調査の上、裁判所に報告する機関でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/217
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218・福岡宗也
○福岡委員 そうしますと、その点については、ほとんどは既存の和議とか会社更生と同じような手続で行われるというふうに理解してよろしいんですね。
それから次に、和議と会社更生、民事再生手続、この三つについて、それぞれ債権者集会、関係者集会の議決要件というものについてまず簡単に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/218
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219・細川清
○細川政府参考人 和議は、議決権の四分の三ということになっております。会社更生につきましては、通常の更生債権については三分の二でございます。今度の民事再生法におきましては、これは出席債権者の過半数であって、議決権の総額の半数ということにいたしたわけでございます。
実は、この要件をどうするかということは法制審議会の検討の過程でも非常に大きな問題であったわけなんですが、今までのいろいろな経験に照らすと、現在の要件が重過ぎるということ、かつ、その過半数にいたしましても、後に裁判所の認可という手続がありますので、最終的な担保は裁判所の判断によってなされているということが一つあること。それからもう一つは、最近の外国の立法例で見ましても、非常に要件を緩和しているものがあるということから、このようなことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/219
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220・福岡宗也
○福岡委員 実は私、この要件の緩和がこの法律の中で最も重要な点の一つじゃないかなというふうに思っているんですね。
といいますのは、入り口のところで、まだ現実の倒産でもないというところに広げて、おそれという形で幅広く導入をするということによって、手続が始まった場合に、いわゆる再生というけれども、債権者の方からすれば、既に既存の権利というものはそこによって制限されるんですね。実際に和議とか会社更生で我々がやった手続の中では、ほとんどが五割はいっていないんですよ。もう七割カットの三割支払いぐらいで五年ぐらいというのが多いんですよ。そういう大胆なカットをするのに、一挙に過半数というところまでこれを下げていいのかどうなのか。そうすると、本当に債権者の権利というものを害し、やはりまた一部の人たちが結託をして、そこに協力をして再生しようというのは結構ですけれども、同時に半数の人たちを切り捨ててしまうということで、本当に公正な再生倒産と言えるのかという、ここのところだろうというふうに思うのであります。
確かに会社更生は、更生債権、これは一般債権は三分の二以上ということですけれども、これは担保権を制限しますので、担保権の方が四分の三と結構厳しいんですよ。和議の場合は四分の三ですね。そうすると、せめて、会社更生の一般債権みたいな三分の二ぐらいにするというならわかるんですけれども、過半数とすることによって適正さが担保されるかというのは極めて疑問であるし、乱用のおそれもある。うまく、早目にやって上手に整理すれば、営々と本業で稼ぐよりも債権のカットができるということにもつながりかねないなという気がするわけであります、それを実質的に監督をするのは裁判所というわけでありますけれども。
そういう意味で、この三分の二という案は出なかったんでしょうか、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/220
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221・細川清
○細川政府参考人 法制審議会のメンバーには、多数の倒産法の専門家の弁護士さん方がおられたわけですが、この方々の一致した意見は、現行の和議の要件が重過ぎる、三分の二でも重過ぎるという御意見だったんです。
なぜかと申しますと、実は債権者の中で去就をはっきりしない人が結構いるものですから、名指しはできませんが、そこで賛否を明らかにして、後で責任を問われたくないという種類の人たちもいるわけなんです。そういう人がいるもので、反対ではないと言いながらなかなか決議が成立しにくいという意見が多数出されたんです。
ですから、これは緩和しろという方の意見が非常に強くて、アメリカのように議決権額が出席者の半分とか三分の二でもいいんじゃないか、そういう意見までもあったんですが、やはり原案の届け出ある債権の総額の半分以上は少なくともなくちゃいけないんじゃないかということになったわけです。そして、最後の担保として、裁判所がその計画を認可するかどうかということで最終的な公正さは担保されるだろうというのが結論であったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/221
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222・福岡宗也
○福岡委員 そういうことになりますと、裁判所の責任は極めて重大だというふうに思うのですね。従来どおりのいわゆる七割カットの三割配当ぐらいが当たり前というようなことではおかしいのであって、やはり厳格に、破産の場合に配当をやればどの程度の配当率があるんだということを厳しくチェックして、財産評価もきちんと専門家の手によってなされた厳しいものでなければならぬというふうに思うわけであります。
そのチェックをできるのは、いわゆる議決権が法定数を通過していても、認可決定をしなきゃいいわけですね、認可することを不認可とすると。この不認可事由としまして四つぐらいあるのですけれども、これについて簡単に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/222
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223・山本有二
○山本(有)政務次官 再生手続においては、再生計画案が可決された場合に、法案第百七十四条第二項各号に掲げられている不認可事由に該当する事実があるときは、裁判所は再生計画不認可の決定をし、それ以外の場合には再生計画認可の決定をするものとされております。
具体的な不認可事由は次の四点でございます。
第一に、再生手続または再生計画が法律に違反し、その不備が補正できない場合であります。もっとも、再生手続の過程で生じた法律違反が軽微なものである場合は、この不認可事由からは除かれております。
第二に、再生計画が遂行される見込みがない場合でございます。このような場合には、再生計画により再生債権者の権利を変更して再生債務者の再生を目指す必要性に乏しいからでございます。
第三に、再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至った場合でございます。このような場合には、再生計画案の可決は再生債権者の多数の意思を真に反映していることにならないためでございます。
第四に、再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反する場合でございます。具体的には、再生計画による弁済率が債務者の総財産の清算価値と比較して過小である場合のように、再生手続によるよりも、むしろ破産手続によった方が再生債権者の一般的利益に合致するような場合などがこれに当たります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/223
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224・福岡宗也
○福岡委員 そうしますと、最後に述べられましたような、破産手続に移行した方がむしろ一般債権者の利益になるというような場合は、ここで厳しくチェックをして不認可になるという可能性があるということでございますね。
そういうような形の中で、実際に私、今見まして、基本的に目指す方向はいいと思うのでありますけれども、結局、具体的手続の中でよほど厳格にこれを運用していかないと、けさほどの参考人のお話の中には、厳格じゃなくて緩やかに、なるべくスムーズにということを非常に強調された先生がお見えになりましたが、確かに再生をする側としてはそれは必要だろうとは思いますけれども、やはり公正に適正に、それから利害の調整が本当に公正なものであるということがこの手続を成功させることの一番ポイントであろうということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/224
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225・武部勤
○武部委員長 午後四時十五分から再開することとし、この際、およそ二十分間休憩いたします。
午後三時五十四分休憩
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午後四時二十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/225
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226・武部勤
○武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これにて民事再生法案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/226
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227・武部勤
○武部委員長 この際、本案に対し、横内正明君外四名及び木島日出夫君から、それぞれ修正案が提出されております。
提出者から順次趣旨の説明を求めます。上田勇君。
—————————————
民事再生法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/227
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228・上田勇
○上田(勇)委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の各会派共同提案に係る民事再生法案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
政府提出の本法律案は、第四十二条第一項において「営業等の譲渡」として「再生手続開始後において、再生債務者等が再生債務者の営業又は事業の全部又は重要な一部の譲渡をするには、裁判所の許可を得なければならない。」と規定するものでありますが、本修正案は、裁判所がこの許可を与えるに当たっては、当該営業または事業の全部または重要な一部の譲渡が再生債務者の事業の再生に資する場合にのみ行われるものであることを明確にするため、「この場合において、裁判所は、当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合に限り、許可をすることができる。」との文言を加えて修正を行おうとするものであります。
以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。
委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/228
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229・武部勤
○武部委員長 木島日出夫君。
—————————————
民事再生法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/229
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230・木島日出夫
○木島委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました民事再生法案について、日本共産党の修正案の提案理由を説明いたします。
修正案は、お手元に配付したとおりでありますので、案文の朗読は省略いたします。
修正の趣旨は、民事再生手続において、労働者、労働組合等の関与を強化し、権利の保護と地位保全に資するものとするため、まず第一に、再生手続開始の決定に当たっての労働組合等の関与を規定しております。第二に、裁判所に営業譲渡の許可を申請しようとする者は、あらかじめ労働組合等との協議をすることとする規定を設けるものであります。そして第三に、手続の中で、労働組合の意見聴取をした場合には、裁判所はその意見を尊重するものとする規定を設けるものであります。
何とぞ御賛同くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/230
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231・武部勤
○武部委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/231
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232・武部勤
○武部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
民事再生法案及び両修正案について採決いたします。
まず、木島日出夫君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/232
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233・武部勤
○武部委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、横内正明君外四名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/233
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234・武部勤
○武部委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いて原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/234
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235・武部勤
○武部委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/235
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236・武部勤
○武部委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、横内正明君外五名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。西村眞悟君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/236
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237・西村眞悟
○西村(眞)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
民事再生法案に対する附帯決議(案)
この法律の施行に伴い、関係者は、次の点につき格段の配慮をされたい。
一 再生債務者の経済的・社会的評価並びに債権者の利益及び従業員の地位・利益が不当に害されないよう、新制度の趣旨・内容について、経済団体、労働団体、司法関係者等に十分周知徹底がなされるよう努めること。
二 迅速かつ機能的な手続とする法の趣旨にかんがみ、再生手続の開始決定があった場合は、再生債権の調査・確定、再生計画案の作成等の一連の手続が速やかにされるべきであることが周知徹底されるよう努めるべきこと。
三 第四十二条の規定による営業譲渡について、再生債務者の事業の再生に資する場合にのみ行われるものであることを周知徹底し、この制度が適正に運用されるよう配慮すること。
四 企業組織の再編に伴う労働関係上の問題への対応について、法的措置を含め検討を行うこと。
五 倒産手続における賃金債権・退職金債権・社内預金債権を含めた労働債権、担保付債権、租税債権、公課債権等の各種の債権の優先順位について、更に諸外国の法令等を勘案するなど検討をし、所要の見直しを行うこと。
六 破産法等いわゆる倒産法を改正するに当たっては、労働債権について、特に再生手続から破産手続等に移行した場合にその優先性が維持されるようにするなど、格別の配慮をすること。
七 第八十五条に規定する中小企業者の有する再生債権の弁済等に関し、再生債務者を主要な取引先とする中小企業者の事業の継続とその従業員の労働債権の確保に配慮がされるよう周知徹底がなされるよう努めること。
八 新しい再生手続について、その運用状況、中小企業等の倒産をめぐる経済・社会の状況等を勘案し、必要に応じて制度の見直しを行うこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/237
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238・武部勤
○武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
横内正明君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/238
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239・武部勤
○武部委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。臼井法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/239
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240・臼井日出男
○臼井国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/240
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241・武部勤
○武部委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/241
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242・武部勤
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/242
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243・武部勤
○武部委員長 次回は、来る七日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605206X01119991203/243
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