1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年十一月十六日(火曜日)
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平成十一年十一月十六日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
中小企業基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)、年金資金運用基金法案(第百四十五回国会、内閣提出)及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑
原子力災害対策特別措置法案(内閣提出)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/0
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001・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/1
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002・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。
永年在職議員として表彰された元議員高田富之君は、去る十月十四日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
高田富之君に対する弔詞は、議長において去る九日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに決算委員長災害対策特別委員長の要職にあたられた従三位勲一等高田富之君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/2
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003・野田聖子
○野田聖子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
内閣提出、中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/3
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004・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 野田聖子君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/4
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005・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。
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中小企業基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/5
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006・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。商工委員長中山成彬君。
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中小企業基本法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中山成彬君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/6
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007・中山成彬
○中山成彬君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、経済活動の多様化等、中小企業をめぐる経済情勢が変化していることにかんがみ、中小企業に関する施策の総合的な推進を図るため、第一に、中小企業基本法を改正し、基本理念を格差の是正から独立した中小企業の多様で活力ある成長発展へと転換し、中小企業の創意工夫と自主的な努力を助長するため、中小企業の経営の革新や創業の促進、経営基盤の強化、経済的、社会的環境の変化への適応の円滑化を基本方針とし、政策体系の再構築を図るとともに、中小企業者の範囲の拡大を行うこととしております。
第二に、これにあわせ、中小企業等協同組合法、中小企業信用保険法等の関係三十二法律においても、施策の対象となる中小企業者の範囲を拡大することを主な内容とするものであります。
本案は、去る十一月五日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。同月九日深谷通商産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、同月十一日には参考人から意見を聴取するなど慎重な審議を行いました。
本日、本案に対する質疑を終局し、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
なお、本案に対し、既存の中小企業者、特に小規模企業に十分配慮すべきであること等を内容とする附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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008・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/8
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009・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)、年金資金運用基金法案(第百四十五回国会、内閣提出)及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/9
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010・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) この際、第百四十五回国会、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣丹羽雄哉君。
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/10
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011・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) ただいま議題となりました三法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
国民の老後の生活設計の柱である公的年金制度について、将来にわたり揺るぎのない信頼されるものとするため、今回の財政再計算に当たって、二十一世紀を展望し、年金制度における給付と負担の均衡を図り、将来世代の負担を過重なものとしないよう、制度全般にわたって見直しを行うこととした次第であります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、基礎年金の額については、来年度から、年額八十万四千二百円を物価の変動に応じて改定した額とすることとしております。また、厚生年金の報酬比例部分については、五%の適正化を図ることとしておりますが、従前の算定方式を物価スライドした額は保証することとしております。さらに、厚生年金及び基礎年金については、その支給を受ける者が六十五歳に到達した以後は、物価の変動のみに応じた年金額の改定を行うことにしております。
第二に、老齢厚生年金の支給開始年齢について、一般男子については平成二十五年度から三十七年度にかけて、女子については平成三十年度から四十二年度にかけて、段階的に六十五歳に引き上げることにしております。
第三に、厚生年金について、平成十四年度から、六十歳代後半の者を被保険者とし、年金額と賃金との合計額が一定以上の者について支給を制限することにしております。
第四に、学生である国民年金の被保険者について、来年度から、本人の所得が一定以上の場合を除いて保険料の納付を要しないこととする保険料の納付特例等の措置を導入することにいたしております。
第五に、基礎年金については、財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとすることにいたしております。
第六に、厚生年金基金などの資産運用や事業運営の規制を緩和するとともに、上場株式を一定の条件のもとに掛金として拠出することを認めることとし、公布の日から三カ月以内に実施することにいたしております。
第七に、厚生年金保険及び国民年金の積立金について、財政投融資制度の抜本的改革にあわせて、厚生大臣が安全かつ効率的に自主運用を行うことにいたしております。
以上のほか、育児休業期間中の厚生年金保険の被保険者の保険料について事業主負担分を免除すること、厚生年金について月給と賞与を合わせた総報酬制を導入することなどの措置を講ずることにいたしております。
次に、年金資金運用基金法案について申し上げます。
この法律案は、年金積立金の自主運用に当たり、厚生大臣から寄託された資金の管理及び運用を行う専門機関として、年金資金運用基金を設立するものであります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、年金資金運用基金は、厚生大臣が定める運用に関する基本方針に沿って資金の管理及び運用を行うことなどを目的とすることといたしております。
第二に、年金資金運用基金は、資金の管理運用方針を策定し、民間運用機関への運用委託などにより資金の管理及び運用を行うことにいたしております。
第三に、年金資金運用基金の役員などに対し、注意義務及び忠実義務などを課すとともに、年金資金運用基金は、適切な情報の公開により透明性を確保し、毎事業年度、詳細な業務概況書等を公表することにいたしております。
このほか、財務会計など所要の規定を設けることにいたしております。
この法律の施行期日は、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日といたしております。
最後に、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について御説明を申し上げます。
年金福祉事業団は、これまで、厚生年金保険、国民年金の被保険者などの福祉の増進に重要な役割を果たしてきたところでありますが、行政改革の一環として、平成九年六月六日の閣議決定において、これを廃止するとともに、大規模年金保養基地業務からは撤退し、被保険者向け融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退することとしたものであります。
この法律案は、この閣議決定に基づき、年金福祉事業団を解散し、被保険者、地域経済、雇用等への影響を考慮しつつ、同事業団が行ってきた業務について、住宅資金の貸し付けを別に定める日までの間年金資金運用基金が行うとともに、年金福祉事業団からの権利及び義務の承継を行うなどの所要の規定を設けることとし、関係法律の改正を行うものであります。
この法律の施行期日は、年金資金運用基金法の施行の日と同じく、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日といたしております。
以上が、この三法案の趣旨でございます。
何とぞ速やかに御審議賜りますよう、お願いを申し上げる次第でございます。
以上でございます。(拍手)
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国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)、年金資金運用基金法案(第百四十五回国会、内閣提出)及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案(第百四十五回国会、内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/11
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012・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。衛藤晟一君。
〔衛藤晟一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/12
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013・衛藤晟一
○衛藤晟一君 私は、自由民主党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案等年金三法について質問いたします。
現在、我が国においては、将来にわたり国民の皆さんが安心して暮らせる活力ある社会を築くため、社会保障制度の構造改革を進め、安定的に運営できる制度を構築することが強く求められています。とりわけ、公的年金制度は、高齢者の所得保障の柱として国民生活に欠くことのできない重要な役割を担っておりますが、一方で、近年これを取り巻く環境は急速に変化していることも事実であります。
特に少子高齢化の進展は著しく、現在は四人の現役で一人の高齢者を支えているのが、平成三十七年、二〇二五年には二人で一人、平成六十二年、二〇五〇年には一・五人で一人を支えることになると予想されております。さらに、経済の低成長化やグローバル化の中で現役世代の負担感が高まっているとともに、企業の負担感も増しております。
このような中で、年金制度の将来像を考えるときに、今後負担がもっと大きくなっていき払い切れないほどになってしまうのではないか、その結果、将来年金がもらえなくなるのではないかといったことで、国民の皆さんの間に漠然とした不安があることも事実であります。制度全体にわたって見直しを行い、長期的に安定した、信頼される年金制度を維持していくことが政治に課せられている重大な責務であります。
さて、議題となっております今回の年金改正法案ですが、このたびの改正は、厚生年金の給付の伸びを抑制すること、年金を受給している方の今後の上げ幅を変更すること、支給開始年齢を段階的に六十五歳へ引き上げていくことなどに加え、半額免除制度の創設、学生納付特例の創設、総報酬制の導入などきめ細かい対応を図るとともに、厚生年金基金の規制緩和や年金積立金の自主運用等を内容とするもので、長期的に安定した、信頼できる年金制度を維持していくために必要な改正として評価をするものであります。
そこで、まず、現在提案されている年金改正法案の基本的な考え方についての総理大臣の所見をまずお伺いいたします。
次に、改正案に関し、次の諸点に関し所見をお伺いいたします。
第一に、負担の水準についてであります。
厚生省の計算によれば、現行制度を維持した場合、少子高齢化の進展に伴い、厚生年金の保険料率は将来は約三五%にまで達するとのことであります。現在の二倍にも上るような年金負担は、負担の限界を超えていると言わざるを得ません。年金制度を長期的に安定したものとするためには、それを支える負担が将来世代の納得を得られないほど重くなることは避けなければならないと考えますが、今回改正案における負担の水準の考え方について、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
第二は、給付水準についてであります。
現在の制度は、全国民に共通する基礎年金を老後生活の基礎的部分を賄うものとして支給するとともに、サラリーマンについては、これに加えて、厚生年金の報酬比例部分を支給することとなっております。
年金額を見ても、サラリーマンOB世帯のモデル年金額は夫婦で二十三万八千円、自営業者の場合は夫婦で十三万四千円と、世界的にも決して遜色のない、誇るべき制度になっております。
年金は老後の所得保障の中核ですから、安心して暮らせる給付水準を確保することが必要です。一方で、保険料が過重にならないようにするためには、給付についても抑制が必要になってまいります。
そこで、今回改正案における給付水準の考え方について、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
第三に、支給開始年齢についてお伺いいたします。
今回の改正案では、厚生年金の報酬比例部分について、支給開始年齢を六十五歳へ段階的に引き上げていくことが提案されておりますが、高齢化が進展する中で、我が国経済社会の活力を維持するためには、高齢者の方々に、長年培った知識や経験を生かし、できるだけ社会を支える側に回っていただくことが必要になっております。こうした活力ある高齢化の実現という発想の転換は、国際的な潮流でもあります。
現に、我が国においても、六十歳代前半でも雇用を通じて収入を得ている方は五七%に及び、世界的にも極めて高い水準となっております。六十五歳前後で雇用と年金の役割分担を明確にするとともに、将来の保険料負担の増大を抑えるためには、平成三十七年、二〇二五年までかけて支給開始年齢を徐々に引き上げていくことは、やむを得ないものと理解できるものであります。
一方で、六十五歳まで現役として働き続けられる社会を実現し、年金の支給開始年齢が雇用と連動するようにすべきだとの指摘もありますが、この点についての厚生大臣の見解をお伺いいたします。
第四に、基礎年金の国庫負担についてお伺いいたします。
現行制度においては、国庫負担の割合は三分の一となっております。これを二分の一に引き上げることで、将来の保険料負担の上昇を抑え、年金制度の長期的安定を図ることができると考えます。また、若年世代の不安を解消するという観点からも、国庫負担割合を二分の一にまで引き上げるべきだと考えますが、この点についての大臣の考え方をお聞かせいただければありがたいと思います。
第五に、年金積立金の自主運用と年金福祉事業団の廃止の問題であります。
現在、百四十兆円に上る年金積立金が全額資金運用部に預託され、財政投融資の原資になっています。これについては、今回の法案では、厚生大臣が責任を持って自主運用を行う仕組みに改めることとしています。
しかし、現在、年金福祉事業団が資金運用部から運用資金を借り入れて行っている資金運用事業では、平成十年度までの累積欠損が時価ベースで一・二兆円に上っています。このような状態で、今後、厚生大臣が巨額な積立金を自主運用して大丈夫なのかという意見もありますが、このような見方に対しては、これまでの赤字の原因を明らかにするとともに、厚生省職員みずからが株式の売買等の運用を行うのではなく、民間の専門運用機関を通じて自主運用が行われるという制度の基本的仕組みを明らかにする必要があります。
また、積立金が将来の年金給付の貴重な財源であることを考えると、自主運用の仕組みにすることは、国民の利益にかない、これからの年金制度にとって非常に意義深いものであると思います。その実施に当たっては、運用の責任体制の明確化、国民に対する情報公開の徹底を図ることが必要だと思いますが、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
また、年金自主運用の実施に伴い、これまで被保険者のための還元融資を一元的に実施してきた年金福祉事業団を今回廃止することとしています。しかし、住宅融資を初め各種事業についてはニーズも高く、また経済的に大きな役割を果たしてきました。
年金福祉事業団の廃止とその事業からの撤退に当たっては、被保険者、地域経済・雇用等への影響を考慮して十分な期間をとって必要な措置を講じる必要があると思いますが、厚生大臣の見解をお伺いいたします。
以上、幾つかの質問をいたしましたが、年金制度は介護、医療と並んで社会保障制度の柱であります。今回の改正案により見直しを行うことが、長期的に安定した信頼される年金制度に対する国民の皆さんの期待にこたえることになると考えます。
このような期待にこたえるためにも、国会においては、国民生活の長期的な展望に立って、責任ある態度で決断していくべきであります。たとえ痛みを伴う改革であろうとも、将来の国家国民のために断行しなければならない改革である以上、政治は勇気を持ってその実現に取り組まなければなりません。社会保障の根幹である年金制度の改革に先延ばしは決して許されるものではないことを強調し、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/13
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014・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 衛藤晟一議員にお答えいたします。
議員は、これまで専門的、精力的に社会保障制度改革に取り組んでまいっておられます。そのような立場から、今回の改正案につきまして、重要な改正点を具体的に挙げつつ、長期的に安定した年金制度を維持していくことに必要であるものと評価した上で、年金改正法案の基本的考え方についてのお尋ねでありました。
議員御指摘のとおり、国民の老後を支える年金制度につきましては、将来にわたって安心して信頼できるものにしていかなければならないことは当然と考えております。
こうした観点から、今回の改正におきましては、将来の少子高齢化の進展や経済の基調の変化を踏まえながら、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するとの立場に立ちまして制度全般を見直すことといたしておる次第であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/14
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015・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 衛藤議員にお答えいたします。
まず、今回の改正案の負担水準の考え方についてのお尋ねがございました。
今回の改正案では、今後の少子高齢化社会や経済の低成長化を踏まえまして、将来の世代の負担が過重にならないように、保険料については年収の二割程度に負担を抑制することにいたしたものでございます。
それから次に、給付水準についてのお尋ねでございました。
今回の年金の改正では、将来世代の負担が過重なものにならないように配慮し、厚生年金の給付水準については現役世代の手取り年収のおおむね六割程度を確保することができるものといたしており、この水準は、高齢者の方々の生活費をほぼ賄うことができるものと考えております。
また、基礎年金につきましては、物価上昇に応じて、今回は月額六万十七円とすることにいたしております。これは高齢夫婦世帯の生活の基礎的な部分を賄える水準でございます。
それから、支給開始年齢の引き上げでございますが、厚生年金のいわゆる二階部分につきましては、二〇二五年までに段階的に支給開始年齢を引き上げることにいたしております。これは御案内のように、今我が国は平均寿命が世界一でございます。男性は七十七・一六歳、女性の場合は八十四・〇一歳でございますけれども、今や最も長寿化が進んだ国であり、さらに、欧米を見ましても六十五歳以上の支給が一般的である、このようなことを勘案したものでございます。
私といたしましては、さらに今後、労働省と連携を図りながら、高齢者雇用の充実に努力をしてまいりたいと思っております。
第四の質問は、基礎年金の国庫負担の割合の二分の一への引き上げについてのお尋ねでございます。
私は、若年世代の年金に対する不安を解消するという観点から、基礎年金の国庫負担は二分の一まで引き上げるべきだとの考え方に立つものでございます。今回の年金改正法案において、「当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」という附則が設けられております。
いずれにいたしましても、長期的、安定的な年金制度の確立が必要なわけでございます。できるだけその実現に向けて努めてまいりたいと考えております。
それから、第五の質問でございます年金積立金の自主運用についてのお尋ねでございますが、年金福祉事業団は、ほかの民間の運用機関などに比較いたしまして遜色のない運用収益を上げてまいりましたが、近年の低金利、株価の低迷などにより、資金運用部への利払いを下回ったために累積欠損が生じたものであり、今後、その解消に努めてまいる決意でございます。
自主運用に当たりましては、厚生大臣が定める基本方針に従って、年金資金運用基金が、信託銀行などの民間運用機関などを活用して市場運営を行うという仕組みになっておりますが、運用関係者の責任体制を明確化するとともに、国民の皆さん方に対する情報公開を徹底していきたい、このように考えているような次第でございます。
最後でございますが、年福事業団の廃止とその事業からの撤退に当たっては、それぞれの事業につき経過措置を設けております。被保険者、地域経済、雇用などに悪影響が出ないよう最大限配慮したいと思っております。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/15
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016・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 山本孝史君。
〔山本孝史君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/16
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017・山本孝史
○山本孝史君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案外二法案について、民主党を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
本論に入ります前に、続発する警察の不祥事について、総理にお伺いをします。
神奈川県警覚せい剤事件で、元本部長を含む九名もの幹部が書類送検をされ、その同じ日に、今度は同僚警官を恐喝しようとしたとして現職警官が逮捕されました。どこまでも続く警察の不祥事に、国民は怒りと不安を覚えております。そのような警察に、さきの通常国会で政府・与党は、いわゆる盗聴法を強行採決することで大きな権限を与えたのです。本当によかったのでしょうか。
一線で頑張っておられる警察官には、まことにお気の毒と申し上げるほかありませんけれども、この警察の信じられないような体質を見せつけられた国民としては、警察の権限行使に大きな危惧を抱いております。
総理は、今回の事件を含めて、続発する警察の不祥事をどのように受けとめておられるのか。また、今後、どのようにして警察への信頼を取り戻されるのか、お考えをお聞きいたします。
さて、年金への不安、不信が強まっておりますけれども、年金は、その将来像を議論するとき、単に年金制度だけを議論していても国民の老後への不安感の解消にはつながりません。介護や高齢者医療に係る負担がどのようになるのか、これからの職場がどのように変わっていくのか、それらもあわせて提示されなければ、安心感は生まれてこないと考えております。そこで、年金法案の審議ではありますが、広く介護や医療保険制度の問題についても質問をさせていただきます。
まず、介護保険制度について質問をいたします。
自民党の亀井静香政調会長の、介護保険は家族介護の美風を損ねるとの発言から始まった介護保険の見直し騒動は、与党三党の協議を経て政府が見直し案を作成し、予算措置を講ずることになりました。
我々民主党は、今回の見直し案には反対です。きのうの医療保険福祉審議会も、見直し案に対して批判が相次ぎ、決定は遺憾との談話を発表しました。見直し内容をめぐってのさらなる国会での論戦が必要だと痛感をいたしております。
そして、亀井発言は、公的な社会保障制度と私的な家族の福祉機能との関連についての貴重な問題提起であると私は受けとめております。亀井代議士には、ぜひ厚生委員会に御出席をいただいて持論をお聞かせいただき、そして議論を深めさせていただきたいと願っております。
ところで、自由党は、みずからも協議に加わって作成された介護保険の見直し案に賛成ではなく、関連する経費が盛り込まれた補正予算に反対するかもしれないと報じられています。ところが、その一方で自由党は、自民党に合流することを模索しているとも報じられています。
政策の違いから補正予算という重要法案に反対し、連立を離脱するかもしれないとしつつ、同時に、自民党への合流を模索される自由党の姿勢からは、介護保険を政局の道具に使っておられるかの印象を受けます。もしそうであるならば、社会保障や社会福祉を政局の道具に使うことはやめていただきたいとお願いをします。
総理、総理はこのような自由党の姿勢をどのように受けとめておられるのですか。私は、自由党の行く末がどうであるということではなく、日本の政治の行く末を大変に心配をしております。連立離脱か合流かという自由党の動きは、政治や政治家全体への国民の不信を募らせています。政権構想や政策の一致もないままに、無節操に議席の数だけを追い求めた結果、政局の安定のため連立したと説明される小渕連立内閣が、連立そのものが原因となって大揺れをしております。この際、自民党の側から自由党との連立を解消されたらどうですか。見直し案への率直な御見解も含めて、総理のお考えをお聞かせください。(拍手)
また、自由党は、介護保険関連予算が盛り込まれた補正予算に反対されるのですか。かつて、この年金法案が国会に提出されるときも、当時の野田自治大臣は、宮下厚生大臣の発言をとらまえて閣議での署名を留保されました。二階運輸大臣も、補正予算の閣議の決定に当たって署名をされないというお考えもあるのでしょうか、お伺いをします。
丹羽厚生大臣にお伺いをします。
私は、厚生行政に精通され、社会保障や福祉のあり方について確固たる信念をお持ちである丹羽厚生大臣が、今回の介護保険制度の見直し案を認められたことに大変ショックを受けております。丹羽大臣は、今回の見直し案を心底から評価されているのですか。大臣は、今回の見直し案が将来に大きな禍根を残すことを見逃しておられるはずがありません。小泉厚生大臣であれば、大臣のいすをかけても私は反対されていたと思います。(拍手)丹羽大臣、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
大蔵大臣にもお伺いをします。
今回の介護保険の見直しに当たって、大蔵大臣は、見直しの財源を国債の増発によることに当初は否定的でしたが、その後、容認の姿勢に転換されたように見受けられます。そして、介護保険料が減免されれば、そういう人たちにとっての経済的効果を勘定していいと思うと記者会見で述べられたと聞いております。
しかし、その財源は一兆円もの赤字国債です。しかも、保険料徴収を凍結や軽減したことで、参議院や衆議院選挙の時期なども勘案すれば、今後とも保険料の引き上げは容易ではなく、財政面での手当てを要することになり、さらなる赤字国債の発行に追い込まれる可能性もあります。
国債増発に寛容な大蔵大臣の姿勢は大変気がかりでございまして、大蔵大臣としては、今回の介護保険の見直し案には反対されるべきではないかと思いますが、御見解をお聞かせください。
高齢者にとって、年金収入と医療費は不可分の関係にあります。そこで、医療制度の改革についてお伺いをします。
平成九年秋に健康保険制度の改正案を審議した折、自己負担割合の引き上げや薬剤費の別途負担は、医療保険制度の抜本改革までの緊急避難的措置だと政府は説明をしました。そして、この負担増に対応する措置として、当時の自社さ連立政権は、丹羽厚生大臣を座長とする与党協をつくられ、具体案にまとめて、その中で二〇〇〇年度抜本改革実施を明記されておられます。さらに、平成十年の通常国会における改正国保法等の附則にそのことが明記されています。二〇〇〇年度の医療制度の抜本改革実施は、政府の公約であり、国会の意思でもあるのです。
橋本総理や小渕総理は、二〇〇〇年度には改革を行うとの答弁を繰り返してこられました。しかし、医療制度の改革案はいまだに提出されておりません。提出される気配さえありません。先日の厚生委員会で、丹羽厚生大臣は、医療保険制度の平成十二年度での改革はもはや不可能と受けとめられるような答弁をされました。結局、国民に負担がのしかかっただけではありませんか。
それだけではありません。抜本改革が進まぬ結果、医療費の膨張は歯どめなく続き、また次なる負担増が追い打ちをかけようとしています。
これは、自民党内閣の重大な約束違反です。総理並びに厚生大臣は、国民に陳謝し、いつまでにどのような医療制度の改革案を国会に提出するかを明らかにすべきです。(拍手)
また、一たん求められた七十歳以上の薬剤費の別途負担が予算措置によって免除された上に、平成十二年度から薬剤費の別途負担そのものを廃止することを自民党が決定したと伝えられています。このことによって医療費は新たに八千百億円増加すると試算されていますが、この財源をどのように手当てされるのか、厚生大臣に明確な答弁を求めます。
次に、年金についてお伺いをします。
まずお答えいただきたいのは、本法案の提出時期についてであります。
年金法案の取りまとめにおいて、政府は、三月の年金審議会で、そして、その後に続く社会保障制度審議会で、連合などの委員が出席しない中、強引に取りまとめを行いました。しかしながら、年金法案の通常国会への提出は、会期が大幅に延びた後の、会期末に近い七月二十七日でした。なぜ法案の国会提出がこのようにおくれたのか、総理に釈明を求めます。
基礎年金の水準と財源問題についてお伺いをします。
法案では、附則第二条において、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」とされています。
基礎年金の国庫負担割合の引き上げについては、前回の年金法案の審議の折に決着済みの問題であると考えておりますけれども、この附則の条文は、遅くとも平成十六年までには基礎年金の国庫負担割合は二分の一に引き上げると解釈してよろしいのでしょうか、総理に御確認をお願いをいたします。
以下、厚生大臣にお尋ねをします。
今回の改正で、国民年金保険料の半額免除制度が導入をされます。保険料全額を払えなくても、半分払えば年金額がその分充実するという説明は、一見もっともらしく聞こえますけれども、もとはといえば、所得に関係なく一律の定額制になっている国民年金保険料が高過ぎることが問題です。国民年金の未納、未加入者の増大や女性の年金権の問題も考えれば、国民皆年金を真に確立するためには、基礎年金の財源を全額税で賄う新たな国民基本年金制度を創設すべきと考えますが、御見解をお伺いをします。
また、基礎年金の水準と生活保護の水準について、両者の関係はどのようにあるべきとお考えですか。その理由もあわせてお考えをお聞かせください。
サラリーマンOBの給付水準について、報酬比例部分の給付乗率が五%引き下げられることになっています。現役世代の賃金の六二%の水準を五九%に引き下げることになるわけですが、このことを政府・自民党は、おおむね六割を維持すると説明しているが、説明不足ではないでしょうか。
確かに、年金の受給開始時には六割が維持されても、その後は賃金スライドが長期間にわたって見送られることから、この比率は年をとるとともに次第に低くなります。また、介護保険料を初め、高齢者の負担は今後ますますふえていくことを考えれば、実際の生活を支える手取り額では、さらにこの比率は低くなるはずです。今後とも引き下げられた水準で推移するのでしょうか。給付乗率のさらなる引き下げはないと断言できるのでしょうか。厚生大臣にお伺いをします。
年金福祉事業団の解散と年金資金の自主運用についてもお伺いをします。
年金福祉事業団の解散に伴って、大規模年金保養基地グリーンピアは地元自治体に譲渡される計画です。しかし、実際には、地元自治体では受け入れができません。きのうは、岐阜県にあるグリーンピア恵那が来年四月末で営業を停止し、管理権を事業団に返上することを決めたと報じられています。事業からの撤退ではなくて、高齢化社会に対応した健康づくりの事業を推進する施設として活用策を検討することの方が現実的との意見もありますけれども、厚生大臣は、大規模年金保養基地をどのように扱っていかれるお考えか、お聞かせください。
また、百四十兆円もの年金積立金の自主運用が始まるわけですが、貴重な年金積立金の運用で損失を生じさせるおそれはないのか、どのような対応策を講じておられるのか、お示しください。
家屋などの資産がありながら、金融資産がないため苦しい生活を強いられている高齢者がおられます。住居等を抵当として生活資金を借り入れ、本人の死後、それらの資産を処分して返済するリバースモーゲージという制度があります。多くの高齢者が受け取った年金を使い切らないようでもありますけれども、子孫に美田を残さずという格言もあります。全国的なリバースモーゲージ制度の展開を検討されてはいかがでしょうか。
最後に、大蔵大臣にお伺いをします。
確定拠出型年金の創設が検討されておりますけれども、税制での対応が決め手と考えます。税控除の恩典はどのように、どの程度まで与えてもよいとお考えなのでしょうか、お示しください。
また、税制面での優遇措置としては、高齢期に会社で働くだけではなくて、社会貢献活動やボランティア活動に生きがいを見出す人もふえております。いわゆるNPO法人、特定非営利活動法人への寄附金に対する支援税制について創設が熱望されておりますが、いつごろになれば実現するのでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
安心して老後生活を送りたい、国民のすべてがそう願っています。
私は、二十一世紀の日本社会においては、医職住の充実が大変重要だと考えています。量的な拡大を国是にしておりました時代のイショクジュウは、着るものがあって、食べるものがあって、住むところがあればいいという衣食住でしたけれども、二十一世紀の日本社会、質的な充実を目指していく中でのイショクジュウというのは、安心できる医療提供体制の医と、そして自己実現できる、NPOも含めての働く場所としての職と、そしてケアつきの住まいという意味での住との医職住の充実が大変に重要だと思っております。
政治は、そのような国民の願いにこたえていかなければいけませんし、与野党を超えて、国民生活の向上、暮らしの安心保障に取り組みたいものだという私の願いを申し添えて、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/17
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018・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 山本孝史議員にお答えいたします。
まず、続発する警察の不祥事についてお尋ねがありました。
法を厳正に執行すべき立場にある警察で不祥事が相次いで発生していることは、まことに遺憾であります。中でも、今回の神奈川県警察の犯人隠避事件等の事案は、当時の警察本部長を初めとする複数の幹部が関与したものであり、言語道断であります。
警察にあっては、今回の事態を厳しく受けとめ、不祥事案の再発防止対策と厳正な措置を徹底するとともに、公安委員会による管理機能の充実を図るなど、国民の信頼の回復に全力を挙げるべきであり、本日の閣議におきましてもその旨強く申し述べたところであります。
次に、自由党との連立について、種々御指摘の上でお尋ねがありました。
これまで繰り返し申し述べてきたところでありますが、自由民主党、自由党、公明党の三党連立内閣は、三党が相協力してよりよい政策を実行していくことが国民や国家のためであると確信して連立内閣を樹立したものであり、今後ともそうした考え方に立ち、努力をいたしてまいりたいと考えております。
今般の介護保険法の円滑な実施のための特別対策に関する御質問でありましたが、これは、与党三党による申し入れを重く受けとめ、検討いたしました結果、十一月五日に政府として決定したものでありまして、この方針に沿って、介護保険法の円滑な実施に向けて万全を期してまいりたいと考えております。
次に、医療制度の抜本改革に関するお尋ねでありましたが、安定した医療制度を確立するためには、医療制度におけるむだや非効率な点を見直し、質のよいサービスを効率的に提供できる仕組みづくりが必要であります。
このため、政府では現在、医療制度の全般にわたり見直しを行っているところでありまして、個別具体的に制度改正の検討を急ぎ、改革の実現に向けて最大限努力いたしてまいる決意であります。
年金改正法案の国会提出時期についての御質問でありました。
与党間で今後の基礎年金制度のあり方について慎重な検討が行われた結果、七月に法案が国会に提出されたものでありました。
基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げについてのお尋ねでありましたが、今回の年金改正法案におきまして、基礎年金については、財源方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとするとの附則が設けられたところであります。これにつきましては、今後、安定した財源確保のための具体的な方法と一体として検討する必要があると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/18
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019・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 山本孝史議員にお答えをいたします。
まず、今般の介護保険法の円滑な実施のための特別対策に対する御質問でございますが、これはただいま総理からもお話がございましたけれども、与党三党による申し入れを重く受けとめ、制度スタートの際、国民の皆様方に、これまではいわゆる措置制度でございましたが、これからは契約による、要するに変更になるわけでございます。こういったサービスの利用方法や保険料の負担について十分に御理解をいただきながら、混乱なく新しい制度について移行させるためのいわゆる措置だと御理解をいただきたいと思っております。
それから、今回の特別対策は介護保険制度の理念、基本的枠組みを揺るがすものではなく、私といたしましては、来年の四月から、介護保険法の円滑な実施に向けて現場で御努力をなさっていらっしゃる市町村長さんを初めとする関係者の皆さん方と手を携えて、円滑な実施に向けて全力で取り組んでいく決意でございます。
それから次が、医療制度の抜本改革に関するお尋ねでございますが、今後の急速な高齢化などによる医療費の増大、平成十一年度でも国民医療費は三%、老人医療費は六%伸びておるわけでございますけれども、こういった観点から避けて通れない課題と認識をいたしております。
現在、薬価制度の見直しなど鋭意検討しており、今後、平成十二年度からの段階的な抜本改革の実現に向けて最大限の努力をいたしていく決意でございます。
それから、薬剤の一部負担に関するお尋ねでございますが、薬剤の一部負担の取り扱いについては、与党の方針も踏まえ、今後、年末の予算編成に向けて、そのあり方や、仮に廃止した場合における財源確保の観点も踏まえた、それにかわる制度改正の内容などを検討してまいりたい、このように考えているような次第でございます。
それから、基礎年金の財源を全額税で賄う制度を創設すべきだとの御指摘でございますが、基礎年金につきましては多くの検討事項が指摘されており、御指摘の意見もその一つと考えております。今後、与党三党で基礎年金のあり方について幅広く検討していただき、政府として対応してまいりたい、このような考えでございます。
それから、第五番目でございます。
基礎年金と生活保護の水準の比較についての御質問でございましたが、そもそも生活保護は国民の最低限度の生活を保障する制度であり、資産などあらゆるものを用いてもなお最低生活を営めないときに保護を受けるものであります。それから一方で、基礎年金は、所得の多寡にかかわらず、全国民に共通する、国民の基礎的な生活部分を賄うものでございます。このように、その制度としての位置づけは異なるものと認識しており、単純な比較を行うことは適当ではない、こう考えておるような次第であります。
それから、年金額のスライド方式の変更のお尋ねでございますが、年金の給付水準につきましては、今回の改正案におきまして、受給開始時には現役世代の手取り年収のおおむね六割を確保し、その後は物価スライドで受給者の生活水準を確保するとの認識に立っておるものでございます。なお、現役世代の賃金と年金との乖離が過大にならないように、将来において必要に応じて賃金スライドなどを行うことにいたしております。
それから、厚生年金の将来の給付水準についてのお尋ねでございますが、当然のことながら、山本議員御承知のとおり、人口構成の変化や景気動向などによって左右されることは言うまでもありませんが、今後とも、現役世代の手取り年収のおおむね六割という水準を極力維持できますように努めてまいりたい考えでございます。
それから、グリーンピア業務からの撤退についてのお尋ねでございますが、円滑な撤退のためには、地元自治体などで活用していただくことが私も最善の方法だと考えております。自治体などへの譲渡を促進するため、一定の条件のもとで減額措置などを講じていきたい、このように考えているような次第でございます。
それから、年金積立金の自主運用についてのお尋ねでございますが、年金積立金の自主運用に当たりましては、国債などの債券を中心に、いわゆる分散投資を行うことにいたしております。安全かつ確実、効率的な運用に努めたいと思っております。
それから、最後のお尋ねでございますが、リバースモーゲージ制度についてでございますが、これは土地価格の下落に伴う担保不足の問題も指摘されております。引き続き、私は検討する事項ではないかと思っております。
それから、最後に、衛藤議員への答弁の中で、基礎年金の額について、私に大野総括政務次官の方から、ちょっと額が聞きづらかったんじゃないか、こういう御指摘がございました。基礎年金の額でございますが、月額六万七千十七円とすることにいたしております。改めて申し上げさせていただきます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/19
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020・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 介護対策の財源を国債の増発によることについてお尋ねがございました。
今回の対策は、介護制度についての与党三党による申し入れを踏まえまして、介護保険法の円滑な施行を図るために、政府の方針として総合的な対策を講ずるものでございますが、その財源は、おっしゃいますように、自然、公債による以外にないと思います。急速な高齢化が進展する中で、老後の最大の不安要因である介護問題に対処するという観点から、新たな制度を円滑に発足させるためにはやむを得ない措置であるというふうに判断をいたしております。
もとより、厳しい財政の現状は十分認識しておりますので、かねがね申し上げておりますとおり、経済が回復軌道に乗りました段階において、改めて二十一世紀の初頭における財政、税制の課題として、根本的な視点から必要な措置をとらなければならないと考えております。
それから、確定拠出型年金制度についてお尋ねがございましたが、現行の年金課税のあり方について、いわば入り口から出口まで、実質非課税になっているのではないかという批判がございます。すなわち、入り口のところでは所得控除がございますし、また中途では運用益が課税の繰り延べになっておりますし、出口のところでは公的年金控除、非常に大きな控除があるというのがこの批判のあるゆえんだと思いますけれども、いずれにしましても、確定拠出型年金について具体的にどのような制度が導入されることになりますかをよく見ながら、拠出、運用、給付の各段階を通じて公平適正な課税ができるような方法を工夫しなければなりませんで、その点は平成十二年度税制改正の中で検討いたしてまいりたいと考えております。
それから、NPO課税、寄附金課税につきましての問題は、たしか前回もお答えを申し上げたと存じますけれども、この法律が両院を通過いたしましたときに附帯決議が付されておりますが、その御趣旨は、今後どのような団体がどのような活動をするか、そういうことをよく考えて二年以内になるべく早く実態を見きわめろということでございます。現に、実際にどのようなのが誕生して、どのような活動が展開されるかを現在注意して見ております。やがて、それを見きわめました上で、どこにどういう税制上の恩典を与えるか等々につきまして結論を出したいと思っております。(拍手)
〔国務大臣二階俊博君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/20
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021・二階俊博
○国務大臣(二階俊博君) 山本孝史議員にお答えをいたします。
自由党は介護保険関連の予算案が盛り込まれた補正予算に反対するのか、運輸大臣は補正予算の閣議決定に当たって署名をしないこともあるのかとのお尋ねでありますが、この介護に係る社会福祉の問題については、与党間において、さらに政府及び自自公の与党間において合意を目指し努力をされておる最中であり、私は、必ず決着がなされるものと信じて、その成り行きを見守っておるのであります。
補正予算案については、政府部内において国会提出に向け目下調整中であり、閣議決定の際の対応に今は言及する段階にはないものと考えております。
私は、自自公連立政権の中における自由党の国会議員であり、同時に小渕内閣の一員であります。したがって、いかなる事態に直面しようとも、政治家として責任ある判断をすることは当然のことと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/21
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022・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 児玉健次君。
〔児玉健次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/22
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023・児玉健次
○児玉健次君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等三法案に対する質問を行います。
政府は、高齢者の年金から介護保険料を天引きし、さらに高齢者医療保険制度の創設で、医療保険料まで年金から取り立てようと計画しています。このたびの改正案は、その肝心の年金を現在より減額しようというのですから、まさに国民の老後の生活を直撃するものです。現役の労働者も、高い保険料を掛け続けて、六十歳代前半の年金がゼロとなり、支給額も大幅に減じられます。これでは逃げ水年金ではないかとの厳しい怒りが全国の職場から噴出するのは当然のことであります。
現在、高齢者の平均所得に占める公的年金の割合は七八・九%であり、年金のみで生活する世帯も五八・〇%に達しています。年金は老後の支え、命綱です。五年前の改悪に続く今回の年金改悪は、介護保険における過重な保険料、利用料、高齢者医療での大幅な負担増の計画とあわせて三重苦となって迫り、老後への不安から国民の消費を一層冷え込ませるものです。
日本が本格的な高齢化社会に向かう今、公的年金制度を守り、社会保障を充実させることこそ不況の打開、日本経済の再建に直結する大道であります。今回の年金改悪案は、この大道に逆行するものではありませんか。このことについて、まず小渕首相の答弁を求めます。(拍手)
法案の具体的内容について質問します。
その第一は、基礎年金に対する国庫負担の問題です。
本法案では、基礎年金のあり方について「当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」として、国庫負担の引き上げを先送りしようとしています。現在、国民年金の第一号被保険者の対象者は約二千百万人ですが、実質の保険料納付者を示す基礎年金算定対象者は千二百四十八万人であり、保険料納付率は五八・九%にまで落ち込んでいます。国民年金の空洞化は、すべての公的年金の基礎を危うくするものです。
この問題を解決し、国民の暮らしを確かなものにするためには、我が党が提案しているように、基礎年金への国庫負担を段階的にふやし、全額国庫負担による最低保障年金制度へ移行させることが必要です。
前回の改正時に、法の附則で、「平成七年以降において初めて行われる財政再計算の時期を目途として、」「必要な措置を講ずるものとする。」とし、附帯決議では、「二分の一を目途に引き上げることを検討すること。」と明記しております。今回これを行わないことは、国民に対する重大な約束不履行ではありませんか。小渕首相の責任ある答弁を求めます。(拍手)
質問の第二は、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢を六十五歳に引き上げることについてです。
支給開始年齢の引き上げは、今日の異常なリストラ、解雇の横行による高齢者の深刻な雇用状況を全く無視したものです。一九九四年に、我が党の反対を押し切って厚生年金の定額部分の支給開始年齢が六十五歳に引き上げられ、その実施は二〇〇一年からです。いまだ実施されてはおりません。これに追い打ちをかける今回の報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げは、国民の生存権に対する許すことのできない暴挙であります。
政府は、欧米の支給年齢が六十五歳であるということを根拠にしています。欧米では、退職と年金受給の間に空白期間を置かないことが一つの原則として確立しています。最近、ドイツでは、年金の支給開始を六十五歳から六十歳に早めることが労働大臣と労働団体との間で基本的に合意されました。今回の引き上げは、日本の高齢者の深刻な雇用状況を無視し、世界の趨勢にも反するものではありませんか。厚生大臣の答弁を求めます。
第三は、賃金スライドの凍結及び厚生年金報酬比例部分の五%削減についてです。
自明のことですが、物価スライドは年金の実質価値を維持するにとどまり、賃金スライドは経済成長の成果、国民の生活水準の上昇を年金受給者に及ぼすものです。このことがあるからこそ、これまで年金再計算時には必ず賃金スライドが実施されてきました。賃金スライド凍結に加えて、厚生年金報酬比例部分の五%支給削減がダブルパンチとなって、国民の老後の生活を脅かします。公的年金で保障しているのは、年金で実際に支えられる生活の中身です。このことが失われたら、民間の私的年金と何ら変わりがなくなるではありませんか。厚生大臣の答弁を求めます。
第四は、現在百三十兆円を大きく上回る積立金及びその運用に関する問題です。
現在、積立金は、年金支給額の五・五年分に相当いたします。アメリカ一・五年分、イギリス一・二カ月分、ドイツ一カ月分。「そんなに必要なのかという疑問は残る。」「厚生省は積立金算定の明確な根拠を示さなかった。」とマスコミからも批判が提起されています。積立金のあり方を抜本的に見直すべきではありませんか。
積立金の運用について、本法案は、被保険者の利益のために長期的な観点から安全かつ効率的に行うことを提起しているだけです。損害が生じた場合の責任や株価の買い支えのための運用等を規制する確かな保障がありません。
企業年金に関して言えば、企業が保有上場株式を一定の条件のもとに厚生年金基金の掛金として拠出することを認めることとしています。これは、持ち合い株解消の売りで株式市場が冷え込むのを防ぎ、積立金不足の基金の穴埋めを目的としたもので、親企業の利益が優先して不良株だけが預けられることになる危険性が大いにあります。これでは労働者に不利益を及ぼすことになるではありませんか。これらの重要な問題点について、厚生大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)
質問の第五は、無年金障害者への年金給付についてであります。
前回の改正時、衆議院厚生委員会の附帯決議において、無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すると明記されました。一九九八年二月、参議院本会議における我が党の上田耕一郎参議院議員の質問に、当時の橋本首相は、各方面の御意見も十分に伺いながら検討を行うと約束いたしました。ところが、今回の改正案では、無年金障害者の年金について全く触れられていません。全国の障害者の切なる期待を裏切るものです。小渕首相、答えてください。
日本共産党は、年金に対する国庫負担の増額と巨額の年金積立金のあり方を見直す、そして、安心して子育てができる社会、女性や高齢者が働きやすい環境をつくり上げて、年金の支え手をふやすなどの改革に着手することを具体的に提案しています。これを実施するなら、年金給付引き下げの改悪を行う必要はありません。
このたびの年金改悪案により、二〇二五年度時点の年金給付額が二割カットされます。我が党の質問に厚生省は、夫が二〇二五年度に退職する夫婦の場合への影響額として、現行制度では五千三百万円受給できるものが、改悪後は四千三百万円となり、一千万円の減額になると答弁いたしました。今厳しく問われているのは、小渕首相が負うべき国民生活に対する責任です。みずからの責任に対してあなたが真剣に思いをいたすのなら、この年金改悪案を撤回すべきではありませんか。首相の答弁を求めます。(拍手)
安定した財源の確保のためとして、消費税率を引き上げ、消費税を福祉目的税とすることは決して許されません。消費税の福祉目的税化は、大企業の社会保障負担を免れさせ、福祉のためといって大幅な税率引き上げを選ぶか、それとも福祉水準の切り下げを選ぶか、国民を選びようのない選択に追い込みます。公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円という、世界に例を見ない我が国の逆立ちした財政構造を正していくことが、社会保障の前進と国家財政の再建を両立させる確かな展望を切り開くものです。
日本共産党は、政府案の撤回を要求するとともに、すべての国民が安心して老後を送ることができる年金制度を確立するために、引き続き全力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/23
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024・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 児玉健次議員にお答え申し上げます。
まず、公的年金と経済との関係についてお尋ねがありました。
国民が安心して暮らせる活力ある社会を築くためには、公的年金制度について、将来とも確実に年金を受給できるものとすることが不可欠であります。
今回の改正案は、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するとの考え方に立ったものであり、改正を実現することにより、年金制度に対する国民の信頼を得ることができると考えております。
基礎年金の国庫負担についてお尋ねがありました。
国庫負担の割合の引き上げについては、前回改正時において、財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況等にかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えております。
今回の年金改正法案におきましては、基礎年金については、財源方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとするとの附則が設けられたところでありまして、安定した財源確保のための具体的方法と一体として検討する必要があると考えております。
無年金障害者についてお尋ねでありましたが、年金制度において何らかの給付を行うことは、一つ、制度加入者に対し保険料の負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹に触れるものであること、二、制度に加入し保険料を納めてきた人々との間で公平の問題が生じること等の問題があり、現在の年金制度の仕組みのもとでは極めて困難であると考えております。
また、障害者施策の中で福祉的措置をとることについては、障害者福祉施策は障害の内容等に応じて必要なサービスや手当を給付することを基本といたしておりまして、無年金障害者に着目した施策を講じることは極めて困難であること、追加的財源を確保する必要があることなどの問題があると考えております。
このように、この問題につきましては、解決に向けてなお難しい論点が残されているところでありますが、今後とも、関係方面の御意見も十分伺いながら、幅広い観点から検討を行ってまいりたいと考えております。
最後に、年金改正案を撤回すべきとの御指摘でありますが、今回の改正案では、将来世代の過重な負担を防ぐという見地から制度全般にわたる見直しを行い、将来最も負担が重くなる時点においても年収の二割程度に抑えることといたしているところであります。
一方、給付につきましては、確実な給付を約束するとの考え方に立ち、改正後も現役世代の手取り年収のおおむね六割の年金水準を確保することができるものとしており、高齢者の方々の生活費をほぼ賄えるものと考えております。
本改正を実現することによりまして、年金制度に対する国民の信頼を揺るぎないものとすることができると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/24
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025・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 児玉議員にお答えいたします。
まず、今回の厚生年金の支給開始の年齢の引き上げでございますが、今や我が国は世界で最も長寿国でございます。そして、しかも今回の措置は十分な準備期間をとっており、将来の現役世代の保険料の負担の増大を抑えるという観点から必要なことであると考えております。
また、今後とも、労働省と連携を図りながら高齢者雇用の充実に努力していきたいと考えております。
それから、賃金スライドと五%適正化についてのお尋ねでございますが、将来の世代の負担が過重なものにならないよう、世代間のバランスを考え、総合的な見直しに取り組んできたところであり、これによって年金制度の公平と安定の確保に役立つものと考えているような次第でございます。
それから第三問目でございます。公的年金制度が保有する積立金の目的についてのお尋ねでございます。
今仮に積立金を取り崩すようなことをすると、将来の積立金が減って利子収入が減少して、負担を将来世代に先送りすることにつながることは先生も十分に御承知のことだと思います。今後とも年金制度に対する信頼を確保していくためには、将来世代の負担を過重なものにしないことが重要であり、積立金を取り崩すことは適当でないと考えております。
それから、企業が厚生年金基金に対する株式での拠出を認めることについてのお尋ねでございますが、これは、御案内のように、厚生年金基金の積み立てが不足いたしております。この積み立て不足の解消を促し、従業員の年金のさらなる安定を目指すものでございます。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/25
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026・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) 中川智子君。
〔中川智子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/26
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027・中川智子
○中川智子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案など三法案に対しまして、小渕総理大臣及び丹羽厚生大臣に質問をいたします。
秋が深まり、木々の紅葉がとても美しいです。春夏秋冬に恵まれ、四季折々の自然の恵みを受けるとき、ああ、この日本の国に生まれてよかったとつくづく思うわけでございます。
しかし、日々の生活に暗い影を落としている政治状況は深刻の度合いを深め、つくづくこの国に生まれた不幸を思います。数合わせの野合としか言いようのない自自公連立体制は、国民生活の基本である社会保障構造そのものに対してさえも一致していないではありませんか。この間の介護保険制度をめぐるごたごたを初めとして、遅々として進まない医療制度改革、そして国民の不安をあおり立てている今般の年金問題、これらはばらばらで議論すべきではなく、今こそ総合的な改革を行うときが来ています。
自民、自由、公明の社会保障に対する基本合意はできているのか、また、異なるところがあればどこが違うのか、明確に小渕総理に御説明をいただきたいと思います。
さて、年金改革関連法案は、これまで、五年に一度の見直し時期において必ず通常国会に提出されてきました。ところが今回は、当時の与党である自民、自由両党のなれ合いにより、会期末迫る七月下旬になってようやく提出され、通常国会では与党の都合で一度も審議をされないという異常な事態を招きました。年金保険料は既に四月から凍結されており、年金財政の悪化が進む中で会期末まで法案の提出を怠った政府・与党の責任は重大であるというべきです。
生きていくということは、年をとっていくということです。人々が生きる上で基本的な不安をなくすのがこの年金制度です。年金制度への不信感は、この国で生きることへの不安につながります。保険料を負担しない、負担できない人がふえているという、いわゆる基礎年金の空洞化問題について、総理はどのようにお考えでしょうか。保険料を負担しない人の責任であるのか、それとも、制度自体に無理があるのではないでしょうか。
不況のために退職を余儀なくされ、みずから大切な命を絶つ中高年が大変ふえています。つらくてつらくてやりきれない思いがいたします。
サラリーマンであるうちは厚生年金で自動的に報酬に比例した保険料を納めている人も、退職すれば国民年金の第一号被保険者、失業保険から無職の妻の分も保険料を支払わなければなりません。サラリーマンとその被扶養配偶者をセットで考え、それ以外の人々をすべて一くくりにして定額の保険料を徴収する現在の制度には、限界が来ていると考えます。
国民の老後の最低の生活保障としての基礎年金を、将来的には全額、税で負担するという方向をしっかりと定め、現行の国庫負担割合の三分の一から二分の一に引き上げることが早急に必要です。
前回の改正では、当時の社会党の主張により、基礎年金の国庫負担割合の引き上げが確認されています。次期財政再計算期を目途に、つまり今回の年金改正において、基礎年金の国庫負担引き上げについては附則修正に明記されており、さらに、自民党も含め全会一致で確認された附帯決議において、国庫負担を二分の一に引き上げる、そのことが確認されているのです。
これは国会の意思であり、国民への約束です。既に九九年度予算案で、賃金スライド制が凍結されただけではなく、国庫負担の二分の一に引き上げも見送られてしまいました。こんな暴挙は許すことができません。国民への約束を果たすためには、第二次補正予算で国庫負担の引き上げが行われなければならなかったはずです。
この点については、総理は、さきの所信に対する我が党の土井党首の質問に答え、基礎年金の国庫負担引き上げについて、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政事情にかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えていますという、たった今もそのように答弁されていましたが、このように答弁されました。しかし、一方で経済新生政策と称して十八兆円以上のばらまきを行いながら、現下の厳しい財政事情で年金に回すお金がないというのは、余りにも説得力がないではありませんか。
政府は、年金改正において国民に痛みを強い、基礎年金の国庫負担増を怠り、給付水準を切り下げようとしているにもかかわらず、介護保険制度に対しては、一転して、一兆円強もの財政をばらまくという場当たり的な対策を行おうとしています。片や国民に痛みを求め、片や選挙目当てで保険制度すら崩壊させようとするのでは、国民の理解を全く得ることはできません。総理の御見解をしっかりと求めます。
今回の法案では、賃金スライドが廃止され、これまでの総合的な勘案方式も放棄されようとしています。総理、あなたは自民党総裁に就任する際、年金の給付水準は現状を維持するとの年金改革案を発表されましたね。まさかお忘れにはなっていないでしょう。それとも、総理になるための方便だったのでしょうか。明確に答えていただきたいと思います。
また、今回の改革では、障害無年金の問題は放棄されています。障害者年金については、経過的措置がとられてこなかったため、当時の学生や定住外国人を初めとした方々に多くの無年金者を生み出しました。所得保障、生活保障に全くなり得ていない現状があります。市町村では特別給付を支給しているところも多くありますが、国として救済措置を早急に行うべきと考えますが、丹羽厚生大臣の御見解を伺います。
次に、ことし六月に成立した男女共同参画社会基本法と、年金における男女が不平等な実態の矛盾についてお伺いをしたいと思います。
男性と同じ期間働き続けても、女性が得る年金は男性のたった半分しかありません。また、男性と違って、女性労働者の多くがパートタイマーとして働いています。パートタイマーには厚生年金が適用されていないことが多いのです。男女共同参画社会を実現すると約束しておられる総理大臣が老後の男女の格差をどのようにお考えなのか、ぜひともお伺いしたいと思います。
さらに、第三号被保険者の問題がございます。今の制度では、子供を育てながらパートタイマーとして働き続け、少ない収入の中から自分で年金保険料を払い続けた女性と、サラリーマンの妻として暮らし、保険料を負担したことがない女性とで、受け取る年金は同じです。サラリーマンに扶養される妻の保険料は、夫だけではなく、独身の男女や共働きの夫婦が現在は負担しています。
これでは、結婚したら女性は本気で働くなと言っているのも同じではありませんか。この点に対する女性の不満の高まりを、総理はどのように受けとめておられるのでしょうか。しっかりとしたお答えをお願いしたいと思います。
女性は、結婚したら退職し、サラリーマンの妻として育児や介護をするものという想定でつくられている現在の公的年金制度は、男女共同参画社会と適合しているとは思えません。矛盾した点を是正するために厚生省が積極的な取り組みを進めることを求めますが、厚生大臣の御所見をぜひとも伺いたいと思います。
また、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢六十歳の引き上げについても、雇用と年金の接続がなされなければ検討に値しない課題であります。年金を受給するまでの雇用を保障し、六十歳以降においては年金と雇用との弾力的な組み合わせが選択できるようにしなければ、安心してリタイアできないのです。国民に将来不安を与えるべきではなく、当面は特別給付の六十歳支給開始を堅持すべきではないでしょうか。また、在職老齢年金の適用拡大については安易に行うべきではない、そのように思います。総理の御英断を強く求めます。
最後に、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案についてお尋ねいたします。
新法人に承継される還元融資事業等については、被保険者に不利益を生じさせないように十分な経過措置が必要であると考えます。また、年金資金の自主運用については危険性を指摘する声も少なくありませんが、厚生大臣のお考えはいかがでしょうか。
一生懸命人生を生きてきた人々が疲れをいやす日々を国として保障していくことが国民が安心して生活することになり、それが年金制度の理念であると思います。
年金改革関連法案には十分な審議が必要です。社会民主党は、今次年金改革のさまざまな問題点について明らかにしてまいりましたが、審議を通じ、さらに国民的論議に資するものとしていきたいと考えます。国民の理解と納得を得る年金制度の確立を図るべきであることを表明いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/27
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028・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 中川智子議員にお答え申し上げます。
まず、介護、医療、年金の総合的な改革についてのお尋ねであります。
政府といたしましては、三党合意を踏まえ、今後の具体的な議論の進め方をも含め、与党と緊密に連携をとりながら、将来にわたる社会保障制度の安定的な財源の確保と二十一世紀の少子高齢社会にふさわしい社会保障のあり方について検討いたしてまいりたいと考えております。
現在の年金制度が限界に来ているのではないかという御指摘であります。
国民の老後を支える年金制度につきましては、長期的に安定した制度を確立していくことが重要な課題であり、今回の改正により、国民の年金に対する信頼を揺るぎないものとすることができると考えております。
自営業者等の加入する国民年金制度におきましては、定額保険料、定額給付となっております。これは、国民年金の被保険者の所得のあり方が多種多様であるという特徴を考慮し、制度発足当初から定額保険料としておるものであります。
基礎年金の国庫負担割合についてのお尋ねですが、国庫負担割合を二分の一に引き上げることにつきましては、前回改正時において、財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況にかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えております。
今回の年金改正法案におきましては、基礎年金については、財源方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとするとの附則が設けられているところでありまして、安定した財源確保のための具体的方法と一体として検討する必要があると考えております。
年金の給付水準についてのお尋ねですが、かねてから、揺るぎない老後生活の支えとして頼ることのできる年金制度を確立することが重要であるとの考え方を持っております。今回の制度改正におきまして、将来世代の過重な負担を防ぐため、厚生年金について、受給開始時には現役世代の手取り年収のおおむね六割の給付水準を将来にわたり確保することとしたところであります。また、裁定後も物価上昇に応じた年金額を保証することとしており、実質価値は維持されていると考えております。
女性の年金問題についてのお尋ねがありました。
一般に賃金が低く、就労期間等も短い女性の平均年金受給額は、男性に比べて低いものとなっておりますが、今後女性の就労期間等が伸びることにより男女差は縮小していくものと考えられます。
また、専業主婦はみずから保険料を払わないこととしている現行の制度は、これらの方々に自分の年金権を確保するためのものですが、働く女性と専業主婦との間で負担が不公平であるとの考え方がある一方、所得のない者に負担させるべきではないという考え方もあります。この問題につきましては、女性の年金問題の一環として、専門家の御意見を伺いつつ検討していきたいと考えております。
最後に、厚生年金の支給開始年齢の引き上げに関してでありますが、今回の改正におきましては、十分な準備期間をとって二〇一三年から段階的に引き上げるものでありまして、将来の保険料負担の増大を抑えるため必要な措置であると考えております。
なお、今後厚生省と労働省の連携を進めながら、高齢者雇用の充実に努力してまいりたいと考えております。
六十五歳以上の者が在職している場合には厚生年金の一部を支給停止する制度の創設につきましては、賃金のある高齢者には、なお現役として年金制度を支える側に立っていただくことが望ましいこと等を考慮して導入するものでありまして、世代間の公平と年金制度の安定化に役立つものと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/28
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029・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 中川智子議員にお答えいたします。
まず、障害無年金についてのお尋ねでございますが、いわゆる無年金障害者につきましては、年金制度において何らかの給付を行うことは、保険料の負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹そのものに触れるものであり、現在の年金制度の仕組みのもとでは極めて困難であります。このような問題につきまして、解決に向けてなお難しい問題が残されておりますことは事実でございますが、今後とも関係方面の御意見も十分にお伺いしながら幅広い観点から検討を行ってまいりたい、このように考えているような次第でございます。
それから、女性の年金権の問題でございます。
ただいま総理から詳しく御答弁がございましたけれども、もう先生御承知のように、女性の社会進出や家族、就労形態の多様化を踏まえまして、年金制度全般にわたる検討が必要になっておるということは十分認識をいたしております。
しかしながら、具体的な検討を行う際には、就労状況、賃金水準といった現実に女性が置かれている社会実態というものを踏まえながら、関連諸制度との整合性に留意する必要があると思います。率直に申し上げて大変難しい問題で、さまざまな御意見がございますけれども、総理からも御答弁がございましたように、今後、これらの問題につきまして幅広い分野の専門家の御意見を聞きながら検討していきたい、このように考えているような次第でございます。
それから最後の、年福事業団の融資事業、貸付事業の経過措置についてでございますが、被保険者や年金受給者に悪影響が出ないように、できるだけ配慮した措置を設けることにいたしております。
年金積立金の自主運用に当たりましては、国債などの債券を中心にいたしまして、分散投資を行うことによりまして、安全、確実かつ効率的な運用に努めたいと思っております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/29
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030・伊藤宗一郎
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
〔議長退席、副議長着席〕
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原子力災害対策特別措置法案(内閣提出)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/30
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031・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、原子力災害対策特別措置法案及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣中曽根弘文君。
〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/31
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032・中曽根弘文
○国務大臣(中曽根弘文君) 原子力災害対策特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明いたしますが、これに先立ち、昨日のHIIロケット八号機の打ち上げの失敗について申し述べさせていただきます。
昨日夕刻、宇宙開発事業団による種子島宇宙センターからのHIIロケット八号機の打ち上げに際し、第一段エンジンの燃焼の異常停止により、運輸多目的衛星を予定の軌道に投入することに失敗し、指令破壊信号を送信せざるを得ないという事故が発生いたしました。
宇宙開発事業団を所管する科学技術庁としては、運輸多目的衛星の計画を進めてこられた運輸省はもとより、国民の方々に対して、その期待にこたえることができず、今回の事態に至ったことを深刻かつ厳しく受けとめております。
今後、今回の失敗の徹底的な原因究明とその対策に取り組み、宇宙開発体制の立て直しを図るための抜本的な対策を講じてまいる所存であります。
それでは、原子力災害対策特別措置法案の趣旨の御説明をさせていただきます。
本年九月三十日に発生した株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工施設における臨界事故は、安全確保を大前提に原子力の開発利用を進めてきた我が国にとって、初めて住民の避難や屋内退避が要請された極めて重大な事故でありました。
事故対応の教訓として、我が国における原子力災害に対する対策について、迅速な初期動作、国と地方公共団体との有機的な連携、原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、原因者である原子力事業者の責務の明確化等の必要性が明らかとなりました。
本法案は、このような現状にかんがみ、原子力災害に対する対策の抜本的な強化を図ることとし、原子力災害の予防に関する原子力事業者の義務、原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の設置その他原子力災害に関する事項について特別の措置を講ずるものであります。
次に、本法案の要旨を御説明いたします。
第一に、本法案は、原子力災害の特殊性にかんがみ、関係法律と相まって原子力災害に対する対策の強化を図り、もって原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的としております。
第二に、原子力事業者に対し、原子力事業者防災業務計画の作成、原子力防災組織の設置、原子力防災管理者の選任、放射線測定設備の設置、原子力防災資機材の備えつけ等を義務づけることとしております。
第三に、主務大臣は、原子力事業所ごとに緊急事態応急対策拠点施設を指定するとともに、国、地方公共団体、原子力事業者等が共同して行う防災訓練の実施のための計画を作成することとしております。
第四に、原子力防災管理者に対し、一定の事象の発生についての通報を義務づけるとともに、主務大臣は、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、内閣総理大臣に必要な情報の報告等を行うこととしております。
第五に、内閣総理大臣は、原子力緊急事態の発生についての報告等があった場合には、原子力緊急事態宣言を行うとともに、原子力災害対策本部及び原子力災害現地対策本部を設置することとしております。
第六に、原子力災害対策本部長は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長、原子力事業者等に対する必要な指示、防衛庁長官に対する自衛隊の部隊等の派遣要請、原子力安全委員会に対する技術的事項についての助言の要求等をすることができることとしております。
第七に、原子力災害現地対策本部及び地方公共団体の災害対策本部は、原子力緊急事態に関する情報を交換するとともに、緊急事態応急対策について相互に協力するため、緊急事態応急対策拠点施設において原子力災害合同対策協議会を組織することとしております。
第八に、指定行政機関の長、地方公共団体の長、原子力事業者等は、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策を実施しなければならないものとするとともに、原子力事業者は、指定行政機関の長、地方公共団体の長等の実施する緊急事態応急対策が的確かつ円滑に行われるよう、原子力防災要員の派遣等必要な措置を講じなければならないこととしております。
第九に、科学技術庁及び通商産業省に原子力防災専門官を置くこととするとともに、この法律の施行に必要な限度において、原子力事業者に対し、報告の徴収または立入検査ができることとしております。
以上が、原子力災害対策特別措置法案の趣旨でございます。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
本年九月三十日に発生した株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工施設における我が国初の臨界事故は、安全確保を大前提に原子力の開発利用を進めてきた我が国にとって、これまでの原子力安全についての規制に対する信頼を損なう極めて重大な事故でありました。
従来、加工施設については、国による定期的な検査の受検が義務づけられておりませんでしたが、これまでの事故原因の究明により、ジェー・シー・オー社の加工施設においては法令に違反した危険な作業が行われていたこと、今回の事故は高濃度の核燃料を製造する際に同様の危険な作業を行ったことにより生じたこと等の事実が明らかにされております。
本法律案は、このような重大な事故から得られた教訓を踏まえ、原子力安全についての規制体系全体を見直し、加工の事業についての保安対策の強化、製錬、加工等の事業等についての保安教育及び保安規定の遵守の状況に関する検査等に関する規定を整備するものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明いたします。
第一に、加工施設についての定期検査等に関する制度の新設であります。
加工の事業の保安対策の強化につきましては、これまで国による施設の性能に関する検査の受検が義務づけられていなかった加工施設において事故が生じたこと、近年、加工の事業の形態が変化していること等にかんがみ、施設の使用前にその性能について検査することとするとともに、使用開始後も国による毎年一回の施設定期検査の受検を義務づけることとしております。また、加工施設の解体についても国への届け出等を義務づけることとしております。
第二に、保安教育、保安規定の遵守の状況に関する検査等に関する規定の整備であります。
事業者等及び従業者が遵守すべき保安規定において、核燃料物質の取り扱い等に関する保安教育についての規定が含まれることとし、事業者等は従業者に対して保安教育を行う義務を有することを明らかにしております。
さらに、事業者等に対して主務大臣が定期的に行う保安規定の遵守の状況に関する検査を受検することを義務づけるとともに、これを実効性あるものとするため、科学技術庁及び通商産業省に当該検査に関する事務に従事する原子力保安検査官を置くものとしております。
第三に、主務大臣に対する申告に関する制度の新設であります。
事業者等がこの法律に違反する事実がある場合には、その従業者は、かかる事実を主務大臣に申告することができることとし、事業者等は、当該申告がなされたことを理由として、当該従業者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないものとしております。
以上が、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
両法案とも、原子力の安全及び防災体制の抜本的強化に必要なものでありますので、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
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原子力災害対策特別措置法案(内閣提出)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/32
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033・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。辻一彦君。
〔辻一彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/33
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034・辻一彦
○辻一彦君 私は、民主党を代表して、ただいま議題になりました原子力災害対策特別措置法、原子炉等規制法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問します。
本論に入る前に、きのうの国産ロケットHII打ち上げの失敗はまことに残念であります。今回の事故は、巨大科学技術になお未知の分野が少なくないことを示しております。宇宙開発の今後に与える影響も大きく、政府は今後どう対処するかについて、総理に一言お聞きをいたしたい。
あわせて、今回の打ち上げ失敗により、気象、航空保安業務について大きな支障が出ると思うが、具体的にどのような支障が出るのか、また、それに対してどう対応するつもりかをお伺いいたしたい。
さて、経済の発展とともに増大するエネルギーの需要に対し、地球環境を考えるときに、私は、まず強力な省エネ対策をとること、風力などの自然エネルギーを生かしながら、徹底した太陽光発電を初めとする新エネルギーの開発に全力を注ぐとともに、火力、水力、原子力エネルギーの調和ある開発を図ることが大切と思います。
かつて我が国は、第一次、第二次石油ショックのとき、あれだけの経済発展を遂げながら、一億キロリッターの原油輸入を節約し、世界に誇る省エネ政策を打ち出したことがあります。この経験をいま一度生かし、強力な省エネ政策をとる考えがないかをまずお伺いします。
国内において最大の電力を消費する日は、夏の甲子園で各家庭がクーラーを全開するときであります。もし、このとき、各家庭の屋根にパネルを張り、太陽光発電をクーラーに直結すれば、夏の電力のピークを抑えることができます。学校、市役所、公共施設の屋根にパネルをつけることを義務づければ、パネルの大量生産により太陽光発電のコストを大きく下げることができます。
総理、原子力開発にかける予算に比べまして、太陽光発電の研究開発費、助成費はまことに微々たるものであります。太陽光発電を初めとする新エネ開発のため全力を注ぐ政策をとる考えはありませんか。お尋ねをいたします。
私は、今日の原子力が電力の三分の一を占めることを肯定し、原子力を生かすには、安全性を最優先し、万一に備えた原子力防災対策を確立することが不可欠と思っております。
しかるに、ここ数年における「もんじゅ」以来の打ち続く原子力事故、すなわち東海再処理工場の火災爆発事故、東海低廃棄物のずさん管理、輸送キャスク容器データ改ざん、核燃料データの捏造、日本原電の小配管冷却水漏れ、今回の東海臨界事故等は、原子力の安全性に対する信頼を著しく揺るがし、国民は大きな不安を持っているのではないでしょうか。
今後ともこのような事故が続くと、長年にわたり築いた原子力の安全行政は、国民の信頼を失い、根本から崩れる懸念があります。事は極めて深刻でありますが、総理はどのように認識をされているか、これをお尋ねいたしたいと思います。
特に、今回の臨界事故を見ると、事業者のずさんさは問題にならないものがあります。事故の第一義的責任が追及されるのは当然であります。しかし、これを長年にわたり見過ごしてきた国の責任は一体どうなのか。国の専門官をせっかく配置しながら、ほとんど検査らしい検査、点検らしい点検もしていない。安全性につき目配りができなかった監督官庁、科学技術庁の責任をどう考えているかを伺います。
さきに私は六つの事故を指摘しましたが、これらに共通することは、いずれも安全上最重要視される一次系ではなく、二次系や周辺部に事故が起こり、日本の原子力安全行政を揺るがしているという事実であります。
まず、一番基本の安全審査がこれでよいのか。二次系や周辺部に安全審査の目配りがされているのか。さきの科学委員会で、原子力安全委員長は、現在の陣容ではとても手が回らないと答えておりますが、安全審査指針を初め、人員の拡充を含めた安全審査体制の見直しが必要なのではないでしょうか。この点をまずお伺いいたしたい。
第二は、安全審査に基づく、実際に運用する保安規定が守られ、実行をされておるのか。現場の教育指導がなされているのか。これらの検査や点検が臨界事故のようにずさんでは、事故はこの後も後を絶たないと思うのであります。科学技術庁、通産省という監督官庁、行政庁に二次系や周辺部をちゃんと検査、点検をやる体制が整っているのかどうかをお尋ねいたしたい。
第三に、日本の原子力の安全規制で一番問題があるのは、科学技術庁や通産省の一つの役所の中に、政策の推進と規制部門が同居していることでないでしょうか。
我が国は、アメリカに次ぎ、フランスと並ぶ原子力大国になっております。アメリカは、二十年前から政策推進と規制部門を明確に分離し、三千名のスタッフを持つ強力な行政委員会として米原子力規制委員会を独立させ、民間における原子力の安全審査、調査、規制を一括して、強力な原子力安全規制制度を打ち立てております。フランスも、私も見てまいりましたが、推進の原子力庁と規制の原子力施設安全局を行政上明確に分離いたしております。
我が国においても、現在の原子力安全委員会の審査機関、科学技術庁、通産省、運輸省の原子力安全審査と規制部門を統合し、現在の原子力安全委員会を国家行政組織法の八条諮問委員会から三条行政委員会に改組し、米原子力規制委員会、いわゆるNRC並みの権限を与え、安全規制部門を独立さす考えはないのか、このことをお尋ねいたしたい。民主党は、このことを強く提言するものであります。
さて、民主党は、九月三十日、東海村核燃料加工施設ジェー・シー・オーで発生しました我が国原子力史上初の臨界事故に関して、他党に先立ち、翌十月一日午前、鳩山代表を団長に現地視察を実施、党内に東海原子力事故対策本部を設置し、対策を講じてきました。同じく党内に原子力防災プロジェクトチームを設置し、原子力防災大綱をまとめてまいりました。これを念頭に置いて、以下質問します。
まず、今回の事故は、臨界事故を全く想定せずに、中性子防護対策を全く欠いて多くの人々を被曝させたことは、まことに遺憾と言わざるを得ないのであります。科技庁、原子力安全委員会の責任は免れないが、どう考えているかを総理にお伺いいたしたい。(拍手)
私は、政府法案の提出は、事故が起こってからで遅きに失した感はあるが、一つの前進と見たい。平成三年二月、衆議院予算委員会で、私は、スリーマイルとチェルノブイリ以降の日本の原子力防災対策について論議をしましたが、以来、機会あるごとに国会で原子力防災法の必要性を力説してまいりましたが、残念ながら、政府は極めて消極的であったのであります。現にこの四月、原子力損害賠償法の改正案審議においてもなお、現行法で実効性ある防災訓練を積み上げるのが先決との態度でありました。しかるに、にわかに原子力防災法の提出となりましたが、この態度急変の理由は何なのかをお伺いいたしたい。
第二は、民主党は、以前から、原子力安全防災対策委員会、原子力防災問題研究会を積み重ね、私も有志議員とともに、防災専門官の配置を初めとする原子力防災特別措置法要綱試案をまとめ、広く与野党議員の皆さんに原子力防災法制定を呼びかけてまいりました。このような試案が今回の政府提出の原子力災害対策特別措置法の中に生かされているのかどうかをお伺いいたしたい。
第三は、民主党は、さきの原子力防災PTの原子力防災大綱で、原子力防災における道府県の役割を大きく見て、原子力防災の中心と考えています。政府原案では、国の姿はかなり見えてまいったのでありますが、県の役割が明確でありません。住民の避難、退避、現地対策本部のあり方として、実際の原子力防災組織を持つ道府県の役割を明らかにすべきであると考えます。
第四は、原子力防災において初期対応が極めて大事であり、当初の二、三時間で事が決する場合があります。今回の場合、政府の現地対策本部が設けられたのは四時間半後、東京での対策本部設置は十時間後であったのであります。現地対策本部が設置される間に初期対応を迫られた場合に市町村長はいかなる基準に基づき判断すべきか、このことを明確にしておく必要があり、どのように考えているかをお伺いいたしたい。
第五は、レスキュー隊の設置であります。
原案では、総理が自衛隊の出動を直接要請するとありますが、これは、自衛隊の化学防護部隊の中に、原子力施設の事故により放射線の拡散した現場の偵察行為あるいは救助活動のできる装備と訓練を常時行える特殊隊を設置する考えであるかどうかをお伺いしたい。
第六に、原子力施設の周辺、排水溝、排気筒、煙突から放出される放射線をリアルタイムで常時市町村に知らすことを義務づけることは、平時においては安心、緊急のときは速やかに異常を知るため必要と思えるが、政府案ではどこで保証しているかをお伺いいたしたい。
第七に、防災専門官は安全運転専門官と兼務すべきではないと思います。防災専門官は原子力防災に専念するため専属配置すべきでありますが、これを確認できるかどうかを明らかにされたい。
第八に、今回の初の臨界事故の経験を生かして、中性子防護対策を確立することができるかどうかをお伺いしたい。
最後に、今回の臨界事故で、被曝者、住民の今後の健康への懸念、風評被害の対策など、事後対策に十分対応すべきであるが、どう対処しているのかを伺って、民主党を代表しての私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/34
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035・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 辻一彦議員にお答え申し上げます。
まず、今回のHIIロケットの打ち上げ失敗についてお尋ねがございました。
国民の皆様の期待にこたえることができず、深刻に、また厳しく受けとめております。直ちに今回の失敗の徹底的な原因究明とその対策に取り組むこととし、その旨を科学技術庁に指示したところであります。今後、宇宙開発体制の立て直しを図るための抜本的な対策を講じてまいりたいと考えております。
今回の打ち上げ失敗によりまして、気象庁の静止気象衛星業務の継続に大きな影響を与えることとなるとともに、運輸多目的衛星を利用した管制保安業務の実施がおくれることと承知しております。このため、代替衛星の再打ち上げに鋭意取り組んでまいります。
省エネについての御質問がありました。
エネルギー安定供給の確保、環境保全、経済成長の同時達成のためには、省エネの推進は極めて重要と考えております。このため、本年四月から改正省エネ法を施行し、自動車、電気機器の省エネ基準の抜本的強化、産業界における対策の徹底を図るとともに、引き続き技術開発、導入の促進等、最大限の省エネ対策を強力に推進いたしておるところであります。
新エネルギーの開発に関するお尋ねでありましたが、太陽光発電など新エネルギーは、二〇一〇年度において、現在の導入量の約三倍、一次エネルギー総供給の約三%の導入を目標としており、その開発と導入に積極的に取り組んでいるところであります。
新エネルギーにつきましては、経済性や安定性などの難しい課題も伴いますが、今後とも、その開発と導入に積極的に取り組み、最大限の努力を行ってまいりたいと考えております。
原子力安全への信頼に関する御指摘であります。
原子力の研究開発利用については、安全確保を大前提にするべきものと認識をいたしております。一連の事故等により国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をおかけしたことを厳粛に受けとめ、御指摘の点も含め、今回の事故の原因の徹底究明を行うとともに、今回の法整備を含め、原子力安全対策の徹底的見直しと防災対策強化を図ることといたしております。同時に、情報公開をさらに進め、一刻も早く国民の信頼を回復すべく努めてまいります。
安全審査体制について御指摘がありました。
原子力施設の安全確保に当たりましては、二次系も含め、その重要度に応じた安全性の確認が行われております。また、原子力安全委員会においては、今回の臨界事故の原因究明等を踏まえ、安全審査指針の見直しの検討とともに、建設や運転の段階におきまして随時現地調査を行うなどにより、行政庁の安全規制をチェックする機能の強化を図ることといたしております。
原子力安全行政について御指摘でありました。
我が国は、原子力の規制と推進の機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁及び通商産業省が法令に基づく安全審査等を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行う仕組みとなっており、安全審査等に厳正に臨んできたところであります。しかしながら、今回の事故を重く受けとめ、安全確保の抜本的強化を図ることといたしております。
また、原子力安全委員会につきましては、建設や運転の段階において随時現地調査を行うなどの機能強化を図ることとしております。
なお、省庁再編成後は、内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置するなど、一層の体制の整備、規制部局の充実を図ってまいります。
今回の臨界事故による行政庁等の責任に関するお尋ねでありました。
当該施設の安全審査におきまして、適切な臨界防止策が講じられていることが確認されたことから、臨界事故が発生するおそれがないものと判断がなされたものです。
今回の事故は、事業者において、この安全審査で確認された条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因でありますが、現実に事故が起こってしまったことにつきましては、厳しく受けとめております。
現在、重篤な三名の方の治療、住民の皆様の健康管理等に万全を期するとともに、御指摘の点も含め、原因の徹底究明を行っているところであります。その結果を踏まえ、二度とこのような事故の起こることのないよう適切に対処してまいります。
原子力災害対策特別措置法案において規定された自衛隊の派遣要請に関してでありますが、同法案におきましては、原子力災害の特殊性にかんがみ、緊急事態応急対策の実施に際し、国による一体的な取り組みを実施する一環として、原子力災害対策本部長たる内閣総理大臣から自衛隊の派遣要請を行い得るよう措置しております。
その際、自衛隊では、既存の化学防護部隊については装備面で充実強化を図ること等により、汚染された地域での情報収集や除染活動等、今後の原子力災害の対処に万全を期してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/35
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036・中曽根弘文
○国務大臣(中曽根弘文君) 辻一彦議員にお答えをいたします。
安全性に目配りができなかった監督官庁の責任に関するお尋ねでありますが、今回の事故が、通常考えられないような、法令等に違反した危険な作業によるものであったとはいえ、結果的に事故が起こったことは厳しく受けとめており、これまでの対応について謙虚に反省をしております。
事故の原因究明と再発防止策については、原子力安全委員会の事故調査委員会において、引き続き徹底した調査審議が進められており、安全規制のあり方についての審議結果も踏まえ、二度とこのような事故が起きないよう、御指摘の点も含め、最善の努力をしてまいります。
次に、原子力施設の安全確保に当たっては、その安全上の重要度に応じた安全性の確認が行われておりますけれども、二次系も含め、安全上軽視されるものではないと認識をしております。
これまで、原子炉等規制法に基づき、施設検査、保安規定遵守状況調査、運転管理専門官による巡視を適宜実施し、施設や運転状況の把握に努めてきたところであります。
しかしながら、今回の臨界事故が発生したことを踏まえ、原子炉等規制法を改正し、加工施設に定期検査等の規制項目を追加し、保安規定遵守状況について定期的にソフト検査を行うとともに、科学技術庁及び通商産業省に原子力保安検査官を置き、ソフト検査に係る事務を行わせることとしております。今後さらに体制を強化しつつ、一層の原子力の安全確保に努めてまいります。
これまで政府は原子力防災法の制定に極めて消極的であったが、本法案の提出というように態度が激変した理由はいかがか、そういう御質問でございますが、政府としては、これまでも、原子力防災については、防護資機材の整備など所要の取り組みを行ってきておりましたが、今回の事故により、国の緊急時対応体制等、各種の課題が顕在化したことから、原子力防災対策の抜本的強化を図ることとし、これらについて法的な措置を講じることとしたものであります。
民主党において検討が進められてきた試案についての御質問でありますけれども、今回の法律案の検討に当たっては、事故の教訓はもとより、災害対策基本法など既存の災害に関する法律、地元自治体を初めとする関係者の御要望、御意見等を踏まえて作成しているものであり、御指摘の試案につきましても、検討の際に参考とさせていただいております。
原子力防災における道府県の役割についての御質問でありますが、市町村の区域を超える広域的な事務を処理する地方公共団体として、道府県の果たす役割は重要なものであります。このため、本法案においては、地域防災計画の作成、災害発生時の災害対策本部の設置等、国、市町村及び原子力事業者等と連携を図りながら各種の対策を講じる道府県の役割を位置づけているところであります。
市町村長が初期対応を図る基準についてのお尋ねでございますけれども、今回の法案において、原子力緊急事態宣言が発せられた場合、政府に直ちに原子力災害対策本部が設置されることとなっております。法案第十五条第一項に規定する政令において初期対応に関する基準が定められることとされており、具体的には、施設の敷地境界における放射線レベルの異常な上昇等が定められます。
この基準に該当する事象の発生については市町村にも通報されることとなっており、この通報を受けて以降、的確な初期対応を図ることが可能になるものと考えております。
原子力施設から放出される放射線をリアルタイムで常時公表すべきとのお尋ねでございますが、本法案第十一条第七項におきましては、原子力事業者は、事業所内に設置した放射線測定設備により検出された放射線量の数値を記録し、公表しなければならないこととしており、市町村等の地方自治体や地域住民の方々が監視できるような体制を整備することとしております。
次に、原子力防災専門官の配置についてのお尋ねでございますが、本法案第三十条において、当該専門官は、平時には原子力事業者を指導するとともに、緊急時には情報収集等原子力災害対策の円滑な実施に必要な業務を行うこととしております。したがいまして、原子力防災専門官は常に原子力防災に関する業務を行いますが、防災に関する業務を的確に実施するためには施設の安全管理等についても熟知していることが肝要であり、防災業務とあわせて安全確保に関する業務を行うこともあろうかと考えます。
中性子防護策についてのお尋ねですが、今回の事故の経験を踏まえ、これから御審議いただく関連二法案において、原子力事業者に対し施設内の放射線測定機器の設置を義務づけるなどの措置を講じております。さらに、今回の補正予算で、原子力施設周辺において中性子を計測できるモニタリングポストや測定機材の整備等を行うために必要な経費の要求を検討しているところであります。今後、このように施設内外の中性子の計測に万全を期し、万一の事故により中性子が発生するような場合に備えて適切な対策が講じられるよう対処することといたしております。
今回の臨界事故に関する事後対策についてのお尋ねでございますが、周辺住民の健康管理については、原子力安全委員会の健康管理検討委員会において検討されている基本方針を踏まえつつ、地元自治体の御協力もいただいて、最善の努力を行っております。
また、風評被害対策につきましては、既に関係省庁において、風評被害防止のための広報、融資制度上の措置等の対策が講じられてきております。科学技術庁でも、茨城県等が行う観光PR等に対して協力を行うべく、準備を進めております。
今後とも、関係省庁及び地元自治体との連携協力のもと、必要な事後対策に努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣深谷隆司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/36
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037・深谷隆司
○国務大臣(深谷隆司君) 辻議員にお答えいたします。
燃料加工工場の事故から、原子力発電所の信頼性を失うような、そんな状態が生まれたことをまことに残念に思っています。原子力発電所は、多重防護で万全を期しているというのが現状であります。
原子力発電所についての検査等のお尋ねでございますが、原子力発電所については、現在、運転管理専門官を全プラントに派遣しておりまして、そして、十分な保安規定の遵守の状況についての確認を行っているところであります。機器の検査、点検等については、二次系や周辺部を含めて、電気工作物検査官が定期検査等を厳正に行っているところでございます。
今回御審議いただく原子炉等規制法の改正案では、国が保安規定の遵守状況について法的に位置づけられた検査を行うこととし、さらに厳しくチェックを行うことにし、現場の教育指導についても、この中の重要な柱の一つと考えています。
いずれにいたしましても、事業者に対しまして、常に緊張感を持って万全を期するように指導してまいりたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/37
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038・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 一川保夫君。
〔一川保夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/38
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039・一川保夫
○一川保夫君 私は、自由民主党、公明党・改革クラブ並びに自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました原子力関連二法案に関して質問いたしたいと思います。
本論に入る前に、昨日は、国産大型ロケットHIIの打ち上げが失敗し、新しい時代に向けて宇宙の平和的開発に期待を持つ国民にとってまことに残念な報道がなされました。政府といたしまして、HIIロケットが二回続けて失敗したことに対し、現在どのような対応措置を講じているのか、また、今後の宇宙開発への取り組み方針をこの際見直す必要があると思いますけれども、小渕総理大臣の御所見を伺いたいと思います。
さて、本論の質問に入らせていただきます。
茨城県東海村に我が国初めての原子の灯がともってから四十年、日本は安定した電力の供給を受けながら、経済を発展させ、幸福を享受してまいりました。この原子力の聖地ともいうべき東海村で本年九月三十日に発生した国内初の臨界事故は、原子力発電への国民の信頼を一瞬のうちに大きく失墜させました。一民間企業の著しく常軌を逸した違法行為とはいえ、これまで積み重ねてきた官民挙げての安全対策への努力に大きく水を差したのであります。
今回のこの事故を重く受けとめ、国際的にも失われた信頼の回復に向け、新たな努力を進めていかなければなりません。何が起きたのか、どうして起きたのかをあらゆる角度から検証し、反省し、今後に生かさなければなりません。初動体制の不備を含め、政府としての対応のおくれも指摘されましたが、何が足りなかったのか、今後、原子力災害対策をどのように進めていくおつもりなのか、まず小渕総理に総括的な御所見をお尋ねしたいと思います。
株式会社ジェー・シー・オーの引き起こした事故と対応は、ずさん、手抜きという程度を超え、にわかには信じがたいほどお粗末でありました。企業活動として、到底許されることのできぬ驚くべきものがありました。核燃料物質を扱うのに、バケツに入れてひしゃくでかきまぜて簡単に溶解できると、会社ぐるみで裏マニュアルをつくり、それすら無視してウラン溶液を決められた量の七倍近くも注いだ作業は、到底信じられるものではありません。
また、事故後の通報のおくれ、あいまいな発表データ、二転三転する事実関係の説明、このような組織ぐるみの違法作業をするずさんな企業を見過ごしていたことに対し、政府は責任をしっかりと自覚しなければならないと思います。科学技術庁長官に、その反省の意を込めた御所見をお伺いしたいと思います。
このたびの事故を契機といたしまして、この関連二法案が今国会に提出されたことは、私はまことに意義深いものがあると思います。これに関連しまして、数点の質問をしてまいります。
まず、危機管理の面でございます。
臨界事故では、事故の全容把握や住民避難に手間取り、国と地方公共団体の連携の不十分さが露呈いたしました。遺憾ながら、国が十分な役割を果たすことができなかったのであります。
この反省に立ちまして、国主導の防災対策がとれるような法整備を図ろうとしております。原子力緊急事態が発生した場合、総理は直ちに原子力緊急事態宣言を発令し、総理を本部長とした原子力災害対策本部を設置し、地方自治体や原子力事業者が実施する応急対策の総合調整を行い、必要なときには、総理が直接対応策を指示できることになります。また、必要と判断したときは、地方自治体の要請を待たずに住民避難の支援や情報収集に自衛隊が出動できるようにするなど、総理大臣の強いリーダーシップが発揮できることになります。
万々一のときには全責任を負う権限を持って陣頭指揮に当たられることになるわけであります総理大臣に対し、御自身の御決意を賜りたいと思います。
国と地元自治体、事業者間の連絡体制が不十分だったこともあり、臨界が継続していると認定するのに時間がかかり、政府の対策本部の設置も大幅におくれるなど、対応が後手後手に回ったという点も指摘されました。例えば、外に出ないようにとの生徒への指示が養護学校には漏れていたなど、縦割り行政の欠陥も表面化したのであります。
法案では、基本的な対策を国に一元化することで迅速に対応できるようにするとともに、情報の共有や連絡調整など、関係機関の連携が一層強化されることになります。これをいざというとき有効に機能させるためには、関係機関への周知徹底と十分な訓練を心がけることが大切であります。
これまで行われてこなかった国レベルにおける原子力防災訓練が行われることになりますが、どのような訓練を想定しておられるのか、防護資機材の整備は十分に行われるのか、科学技術庁長官の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、事業者に対する対応措置について伺います。
今回の事故で、国が、ジェー・シー・オーを含むすべての主要な核燃料関連施設に対して、平成八年一月を最後に、保安規定の遵守状況調査を三年半以上も実施していなかったことが明るみに出ました。ジェー・シー・オーの事故を起こした施設については、それが使われている期間が短く、巡視が実施されたときには操業されていなかったために違法作業を見過ごすなど、検査体制が不十分であったことも指摘されました。
今回、ジェー・シー・オーのような加工事業に関する施設についても、安全規制の抜本的な強化が図られるわけでございますけれども、肝心の体制は整備されながら、当の事業者にその責任感なり緊張感がなければ意味がありません。現に、これまでジェー・シー・オーの東海事業所では、年に二回、一日をかけて社員に安全教育を実施してきたことになっております。制度改正とともに、業者自身のモラルの向上、責任感、緊張感が強く求められると思いますけれども、今後どのようにされていくのか、科学技術庁長官にお伺いしたいと思います。
また、電力業界にも、このたびの事故を原子力全体の信頼失墜につながる問題であると重く受けとめ、これを契機に、民間レベルの安全管理を徹底するための新組織をつくることが検討されております。チェルノブイリ原発事故発生に際し、一九八九年に発足した世界原子力発電事業者協会をモデルにした日本版のWANOをつくる構想などについても、政府が積極的に支援していくべきであると考えますけれども、通産大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、地元の住民への対応についてお伺いいたします。
中曽根長官は、就任後の記者会見で、現地住民に多大な迷惑をかけた、原因究明と住民への支援に全力を尽くしたいと語っておられます。今回の事故では、農作物や商品が汚染されたりしたという事実はなかったようでありますが、風評被害、事業所の休業等の経済被害が発生しております。また、この事故では、外出禁止を指示したため休業する企業が多く出たほか、事故直後に一時、農産物の出荷停止指導をするなど、公的措置に伴う経済的な影響も発生しております。
一義的には事業者が責任を負うべきでありますけれども、事業者の能力を超えた費用に関する国の手当て、公的資金での補てんがどこまで実施されるべきなのか、科学技術庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。
エネルギー資源が極端に少ない日本にとって、原子力発電の必要性はいささかも衰えることはないと思います。
政府は、二〇一〇年度末までに十六基から二十基の原子力発電所の新設を見込んで計画を立てておりますし、核燃料サイクルの柱であるプルサーマル計画がことしから開始されます。使用済み核燃料を発電所の外で一時的に保管する中間貯蔵についても、さきの通常国会でその枠組みがつくられ、長年の懸案だった高レベル放射性廃棄物処理についても、次期国会に推進法案が提出される予定となっております。
深谷通産大臣も、事故を教訓として、さらに深いエネルギー政策を練り上げていくのは当然だと述べられておりますけれども、今後の原子力行政を推進するに当たっての決意を深谷通産大臣にお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/39
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040・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 一川保夫議員にお答え申し上げます。
まず、今回のHIIロケットの打ち上げ失敗についてお尋ねがございました。
国民の皆様の期待にこたえ得ず、深刻に、また厳しく受けとめております。直ちに今回の失敗の徹底的原因究明とその対策に取り組むこととし、その旨を科学技術庁に指示したところであり、既に、宇宙開発委員会におきまして、原因究明作業に着手したところであります。今後、原因究明の結果を踏まえつつ、宇宙開発体制の立て直しを図るための抜本的対策を講じてまいりたいと考えております。
冒頭、今回の事故と政府の対応について具体例を挙げられ、厳しい御指摘をされた上で、今回の事故と今後の原子力災害対策について総括的なお尋ねがありました。
今回の事故で、初期動作における国と自治体の連携の強化、原子力災害の特殊性を踏まえた国の緊急時対応体制の強化、事業者の責務の明確化等の課題が顕在化したものと認識しております。今般の本法案によりまして、こうした課題を解決し、原子力防災体制の抜本的強化を図ることとしております。
万々が一の際の決意を問う、こういうことでありました。
まず、原子力災害が発生しないよう、今回の原子炉等規制法の改正と検査体制の充実、さらに原子力安全委員会の機能の強化、事務局体制の充実等によりまして、安全対策に万全を期することといたしております。その上で、議員御指摘のとおり、緊急事態において総理の強いリーダーシップが求められていることを十分踏まえつつ、常日ごろから、万々が一に対する備えを万全にし、緊急事態に対して迅速かつ的確に対応できるよう努めてまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣深谷隆司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/40
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041・深谷隆司
○国務大臣(深谷隆司君) 一川議員の私に対する御質問は二つございました。
一つは、今回の事故が原子力全体の信頼を失うということから、民間レベルの安全管理を徹底するための新しい組織を民間の力でつくろうということについて、一川議員は、政府も積極的に応援しろという意見も含めての御質問でございました。
全く同感でございまして、このような、電気事業者を含む幅広い原子力事業者が結集して、原子力の産業界全体で安全意識の高揚とか安全文化の共有化を図るための取り組みとして組織をつくるということは、まことに結構なことでありまして、本活動を通商産業省は全面的に応援してまいりたい、そのように思います。
第二の問題は、今回の事故を踏まえて、今後の原子力行政に対する通産大臣の考えはいかがかということでありました。
申し上げるまでもなく、原子力エネルギーというのは、エネルギー供給を常に安定的に継続させるということと経済の成長ということと環境の保全ということ、この三つの目的を一緒に達成する方向として私たちは原子力政策というものを持っているわけでございます。その重要性は少しも変わっていないと私どもは思います。
しかし、安全性が確保されなければならないということはもう絶対条件でございまして、このたびの事故から学ぶべきものはしっかりと学んで、二度とあのような形が起こらないように、国民の皆さんの信頼を回復させるためのあらゆる手だてを講じていかなければならないと思っています。
その安全確保を前提として、今後も、プルサーマル計画、使用済み燃料の中間貯蔵対策、高レベル放射性廃棄物処分対策等、それらを含めまして原子力政策を進めてまいりたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/41
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042・中曽根弘文
○国務大臣(中曽根弘文君) 一川保夫議員にお答え申し上げます。
事故への責任の自覚と反省を求めるとの御指摘でございますけれども、今回の事故が、通常考えられないような法令等に違反した危険な作業によるものであったとはいえ、結果的に事故が起こったことは非常に厳しく受けとめておりまして、これまでの対応についても、謙虚に、深く反省をしております。
事故の原因究明と再発防止策につきましては、原子力安全委員会の事故調査委員会において引き続き徹底した調査審議が進められており、安全規制のあり方についての審議結果も踏まえ、二度とこのような事故が起きないよう最善の努力をしてまいります。
原子力防災訓練に関する御質問でございますが、本法案第十三条において、原子力防災訓練について、国が作成する計画に基づき、国、地方公共団体、事業者等による合同訓練を実施することとしております。
また、防護資機材の整備に関する御質問でございますが、本法案第十一条において、原子力事業者に対し、原子力防災業務を行うために必要な放射線障害防護用器具、非常用通信機器などの原子力防災資機材の備えつけ、点検を義務づけ、実施させることとしています。
次に、事業者のモラル、責任感の向上についてのお尋ねでございますが、安全の確保は原子力開発利用の大前提であり、そのためには、事業者がみずからの責務として継続して努力していくことが不可欠と考えております。
原子力安全委員会事故調査委員会の「緊急提言・中間報告」では、原子力関連事業者に対し、企業内部における有効な監査体制の確立、従業員への安全教育の実施等、安全確保の徹底を図るべきことを指摘しております。
さらに、同報告書では、「現場における従業者・技術者・経営者が、基本的な倫理観を保持することを前提に、安全確保に関する緊張感・使命感、それを支える十分な知識・経験を有することが重要である。」旨指摘しているところでございます。
このような指摘も踏まえ、このたびの原子炉等規制法の改正法案では、事業者による安全確保への取り組みを強化するため、事業者による従業員教育の義務の明確化を図るとともに、従業者の安全確保改善提案制度を創設し、事業者のモラル向上を図ることとしております。また、保安規定の遵守状況に関する定期的な検査制度を導入することなどを通じ、事業者が厳しい緊張感を持続させるための枠組みを整備することとしております。
次に、事業者の能力を超えた賠償費用に対する公的資金での補てんに関するお尋ねでございますが、原子力損害の賠償に関する法律に定められた国の援助は、同法律の目的である被害者保護に万全を期すための最後の手段であり、科学技術庁といたしましては、ジェー・シー・オー側に最大限の努力を求めつつ、被害者救済に遺漏なきよう、制度の適切な運用を図ってまいります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/42
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043・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 吉井英勝君。
〔吉井英勝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/43
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044・吉井英勝
○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
政府は、今回のジェー・シー・オー東海事業所における臨界事故を契機に、原子力防災に関する二つの法案を出してきました。
それは、原子炉規制法改正案の方で、核燃料加工事業にも国の定期検査を行おうとすること、原子力施設従事者が安全に関する内部告発をできるようにしようというものであります。
また、原子力災害対策特別措置法案の方では、国が原子力災害対策本部をつくり、自治体とは合同協議会をつくること、防災専門官を原子力施設に配置するなどの体制の強化、そして事業者に放射線測定設備を設置することを義務づけることなどとしています。
しかし、今回の事故で明らかになったことは、政府は、臨界事故が発生しても、事業所から臨界事故の可能性ありというファクスが送られてきても、臨界事故は起こり得ない、想定外のことなどと、安全神話に立って、確認するための中性子線測定を指示することも、避難勧告を出すように助言することもしなかったことであります。
当時の科学技術庁長官は、午後一時四十二分に、青い光を見たという報告を受けたとき身震いしたと語っていますが、文部大臣引き継ぎ前の書類整理を続けただけでした。科学技術庁が臨界事故と判断したのは午後四時のこと、事故発生から五時間半もたっていました。政府の判断のおくれによって被曝者をふやしてしまったことは重大です。
小渕総理、政府の対策本部長として、国民に対する謝罪と厳しい反省の言葉が要るのではありませんか。(拍手)
先日の科学技術委員会では、二〇%濃縮のウラン溶液の臨界体積は十六・五リットルであり、一方、臨界事故を起こした沈殿槽の容積は百リットルであったことが明らかになりました。沈殿槽の設計値は臨界体積をはるかに超えており、安全審査指針十に定める、単一ユニットは、技術的に見て想定されるいかなる場合でも、容積の制限等により臨界を防止する対策が講じられていることという、この基準に反していたことは明白です。今回の事故発生施設は、もともと臨界事故が起こり得るものであったのです。
この点で、十六年前、ジェー・シー・オーから提出された変更許可申請書の安全審査に当たって、原子力安全委員会が定めた基本指針と審査指針十に違反している上に、さらに、指針十二で、誤操作等により臨界事故の発生するおそれのある施設においては、万一の臨界事故に対する適切な対策が講じられていることと示しているのに、この指針十二にも違反していました。二重に違反していたものを許可したことは極めて重大であります。
ところが、驚くべきことに、原子力安全委員会の事務局を担当している現職の原子力安全調査室担当審議官は、今日でも、この容積の沈殿槽で御審議いただくんだと答弁し、原子力安全委員長も同様の答弁をしました。昔も今も安全神話に浸っているこの状況で、どうして住民の生命や安全を守ることができますか。今、防災対策を論じるならば、検査体制の強化や事故発生時の災害対策本部の設置を考える以前の問題として、原子力から国民の安全を守る最大の原則として、このような安全神話を一掃することであります。総理の答弁を求めます。(拍手)
原子力防災で一番肝心なことは、第一に、事故の発生を未然に防ぐ徹底した科学的な安全審査の実施とそれを実現できる体制の確立、第二に、万一事故が発生しても住民の生命と健康を守れる安全距離を確保し、住民の暮らしに見合った防災対策を進めること、第三に、原子力施設が立地する周辺自治体の、関係自治体の防災対策と防災能力の強化を図るために、国が必要な財政や技術の面での支援を強めるということであります。
そこで、具体的に質問します。
これまで政府は、原発の安全審査については、国際原子力機関、IAEAの設置した国際原子力安全諮問委員会、INSAGが八八年に出した報告書「原子力発電所の基本安全原則」を適用することに反対して、我が国の原子力施設におきましてはシビアアクシデントが起こることは現実には考えられない、したがいまして、シビアアクシデント対策の見地から安全規制を改める必要はないと国会で答弁してきました。
アメリカ、ドイツを初めどこの国でも、過酷事故を想定して、原子炉の炉心が溶融して溶岩の流れのように圧力容器を破壊して格納容器に達する場合の対策まで設計の中に入れています。さらに、アメリカの原子力規制委員会、NRCでは、燃料溶融で圧力容器が壊れた場合に、格納容器が破壊する確率は五〇%だとする研究まで行って議論をしています。総理が本気で原子力防災を考えるなら、安全審査の中に、国際原則となっている過酷事故を想定した審査基準を取り入れるべきであります。答弁を求めます。
どんな審査指針をつくっても、今回の事故が示したように、規制の立場にある者がその指針に基づいて厳格に審査しないならば意味がありません。阪神大震災などの経験や新しい知見を常に積極的に取り入れて、原子力安全審査基本指針を根本的に見直し、その指針を厳格に適用するべきであります。総理の答弁を求めます。
科学技術庁長官、指針に反する書類は原子力安全委員会に上げないという厳格さが必要ではありませんか。
政府は、経済協力開発機構、OECDに対して、日本における原子力規制部門とその職員の数は四百五十人と報告していることがOECDのレポートで示されています。この四百五十人という数は、科学技術庁原子力局と原子力安全局に通産省資源エネルギー庁を加えた数です。しかし、この科学技術庁と通産省資源エネルギー庁といえば、先日のクエスチョンタイムでも明らかになったように、開発、推進側の機関に属するものです。外務大臣、日本政府は国際機関に対してうその報告をしていたのではありませんか。
不破委員長が明らかにしたように、原子力の安全に関する条約第八条第二項では、「締約国は、規制機関の任務と原子力の利用又はその促進に関することをつかさどるその他の機関又は組織の任務との間の効果的な分離を確保するため、適当な措置をとる。」と定めています。
現在の日本の原子力安全委員会は、諮問にこたえて答申するだけで、許認可権限を持った規制機関ではありません。日本では、科学技術庁と通産省が原子力の推進機関であるとともに、許認可権限を持つ規制機関を兼務しています。
総理、アメリカのNRCのような、推進側の政府機関から完全に独立した原子力規制組織をつくることが条約上の義務であります。日本共産党は、そこに少なくとも数百名規模の十分な数の専任の常勤スタッフを置くべきであると考えるものです。総理の答弁を求めます。(拍手)
これまで原子力施設で事故があるたびに、建設を請け負ったメーカーが親会社となっている試験研究機関に分析と事故原因調査を委託したり、今回のジェー・シー・オーの事故の場合のように、安全審査が問われている原子力安全委員会の中に事故調査委員会を設置してきました。これでは、本当に後に生きる教訓を生み出すことも、国民から信頼され得る報告書もできません。スリーマイル島原発事故の後のケメニー委員会のように、電力会社やメーカーはもとより、原発推進官庁からも規制機関からも完全に独立した事故調査委員会をつくって徹底した調査を行うべきであります。総理の答弁を求めます。(拍手)
今回の東海事故では、中性子線測定器も、臨界事故時の制御抑制装置も、臨界対策も何もない工場が、民家に隣接して二十六年間も操業していたことが明らかになりました。総理、安全審査の入り口の問題として、原子力施設と住民の居住地との間に十分な安全距離を確保することを義務づけるべきではありませんか。また、国民のライフラインを構成する水道水源などからも必要な安全距離を確保することを義務づけるべきではありませんか。
政府はこれまで、原発所在地自治体の要望にもかかわらず、事故想定に基づく防災を考えませんでした。しかし、原子力防災法をつくるなら、具体的な事故想定とそれに対応する実効性ある原子力防災対策を検討することです。
今から四十年前に、科学技術庁の委託を受けて日本原子力産業会議が、大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算という研究を行いました。これによると、電気出力十六万キロワットの原発が炉心溶融を起こした場合の想定で、原発の敷地境界から八百メートル、さらに二十キロメートル、百二十キロメートルのところに人口十万人、六百万人の都市があるというモデルを考えています。前科学技術庁長官は、科学的な技法で正確に検討されていると、分析手法が有効であることを認めました。
現在、原発事故時の住民の避難距離は、原子力施設から八キロないし十キロメートルという基準に固定して、その外では対策を考えていません。これを、事故に応じて十キロメートル以上、二十キロ以上、三十キロメートル以上と、必要な安全距離をとることを初めから考えた防災対策に改めるべきではありませんか。
アメリカでは、防災対策実施区域を十六キロ圏、八十キロ圏、スイスでは三ないし五キロの第一ゾーン、二十キロメートルの第二ゾーン、さらに広い第三ゾーンを考え、イギリスでも三・五キロの圏内のほかに四十キロメートル圏での食料と水の管理を定めています。答弁を求めます。(拍手)
原発事故発生時には、放射性沃素などが拡散してくる前に沃素剤を飲んでおく必要があります。そのためには、地域住民の生活実態に合わせて緊急に服用できるよう、あらかじめ沃素剤を各戸に配付しておくことと、早期に対応できる地域公共施設への配備を行うことが必要です。また、放射線医療機関の配置、放射線医療専門スタッフの養成と関係地域への配置など、実態に見合った取り組みが必要です。
こうした取り組みを効果的に実施する上で、関係する自治体では、各戸に防災無線施設を設け、住民の経験に基づく緊急時の避難道路と避難施設を整備しておくことも必要です。こうした取り組みに、総理は財政負担を含めて責任を持ちますか。伺います。
事故発生時に最初に事故と向き合って対応する機関は、現場の地方自治体と公設消防と地域の消防団ということになります。これらの人たちの安全を守り、防災活動を支援する上で、放射線防護服と呼吸器、放射線線量計の配備、また消防署に除染施設を設置することは最小限の基準となりますが、総理、国と原子力企業の財政負担で整備しますか。
関係地方自治体には原子力関係分野の専門職員が配置できるように支援することはもとより、自治体に日常的に原子力施設の査察ができる権限を与えること、緊急時に設置される自治体の原子力防災に当たる対策本部を国が責任を持ってバックアップすることが重要ですが、総理はそれを行いますか。
東海村臨界事故の後、国民の多数が原発は危険だと思い、何とかしなければならないと考えています。安全神話に立って原発増設。しかも、本格的な実験もせず、データもないまま通常の商業炉でプルトニウムを燃やすという極めて危険なもくろみも強行しようとしています。これでは国民の期待にこたえることはできません。
電力の三分の一は原発という原発依存のエネルギー構造を改めること、原発推進が生み出したプルトニウム循環方式の行き詰まりを根本的に見直して、世界からも信頼される核政策に転換すること、そのためにも、省エネルギー、省資源循環型社会への転換を進め……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/44
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045・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 吉井英勝君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/45
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046・吉井英勝
○吉井英勝君(続) 自然エネルギーの研究開発などに全力を尽くす方向への根本的な切りかえを行うべきであります。総理の答弁を求めます。
日本共産党は、原子力防災はもとより、今日の原発の危険から住民の安全を守る立場で国民的共同を進める決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/46
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047・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 吉井英勝議員にお答え申し上げます。
まず、今回の事故に対しまして、事故現場の状況等について得られた情報をもとに、政府として可能な限りの判断と対応を行ってきたところであります。
今回の事故によりまして、周辺住民を初めとする国民の皆さんに多大な御心配、御迷惑をおかけしたことを厳粛に受けとめ、住民の皆様の健康管理等に万全を期すとともに、現在行っております原因の徹底究明の結果を踏まえ、二度とこのような事故の起こることのないよう適切に対処してまいります。また、今回の政府の事故対応につきましては、謙虚に点検し、さらなる万全を期してまいりたいと考えております。
安全神話について御指摘ありましたが、原子力の開発利用に当たりまして、安全確保に細心の注意を払い万全を期すことを大前提に、これまでも最新の科学的知見に基づき安全審査を行ってきたところであります。
今回の事故は、認められた条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因ではありますが、事故調査委員会の緊急提言を踏まえ、安全審査についても見直しを行うことといたしております。
原子力発電に関し、設計で考えられた以上の過酷な事故の可能性についてお尋ねでありました。
我が国では、さまざまな安全対策によりまして、そのような事故が起こる可能性は非常に低いと評価されております。しかし、念のため、リスクをより一層低減すべく、事業者においておおむね二〇〇〇年を目途に過酷事故に関する対策が進められているところであります。
また、原子力安全対策への新しい知見の取り入れについてでありますが、耐震を含め、常に新しい知見を収集、評価し、安全対策に組み込むよう努めているところであります。
原子力安全行政について御指摘でありますが、我が国は、原子力の規制と推進の機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁及び通商産業省が法令に基づく安全審査等を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行う仕組みとなっており、安全審査等に厳正に臨んできたところであります。
しかしながら、今回の事故を重く受けとめ、安全確保の抜本的強化を図ることといたしておりまして、また、原子力安全委員会につきましては、建設や運転の段階におきましても随時現地調査を行うなど、機能強化を図ることといたしております。
なお、省庁再編成後は、内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置するなど、一層の体制整備、規制部局の充実強化を図ってまいります。
また、今回の事故につきまして、原子力安全委員会に、吉川日本学術会議会長を委員長とし、広く第三者から成る外部の有識者の参加を得て事故調査委員会を特別に設置し、公開のもとで原因の徹底究明及び再発防止策について調査審議が進められているところであります。これにより、国民の信頼が得られるよう努めてまいります。
安全審査についての御指摘でありましたが、今回、臨界事故が実際に発生したことを厳しく受けとめ、原子力安全委員会の事故調査委員会による緊急提言を踏まえ、安全審査のあり方についても十分に検討いたしてまいります。
また、防災対策の重点範囲についての御指摘につきましては、防災指針に示された範囲は一般的な目安であり、地域、施設の個別の特性を踏まえ、総合的に検討されるものと認識しております。
事故発生を想定した地方自治体の準備、取り組みについて、政府の負担についてお尋ねでありますが、政府といたしましては、既に原子力発電施設等の周辺の自治体につきまして、沃素剤の配備等各種の財政措置をしているところであり、今後とも適切に対応してまいります。
地方自治体の防災活動の支援についてでありますが、地方自治体等の防災業務関係者の安全を守るため、防護服など資機材等の整備につきましては、国は財政措置を含めた支援を行っており、今後とも適切に対応してまいります。
また、本法案におきましては、地方自治体に対し、原子力安全委員会による協力、原子力事業者に対する報告徴収や立入検査の権限の付与等を規定しておりまして、地方自治体の防災対応機能の向上を図ることといたしております。
最後に、エネルギーの構造転換についてのお尋ねがありました。
我が国のエネルギー政策の基本的目標であるエネルギー安定供給の確保、環境保全及び経済成長の三者の同時達成を図るためには、最大限の省エネルギー対策とともに、原子力や新エネルギーの研究開発、導入等が必要であります。今後とも、こうした需給両面の対策に最大限努力いたしてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/47
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048・中曽根弘文
○国務大臣(中曽根弘文君) 私に対しましては、安全審査指針に反するものを安全委員会に上げない厳格さが必要ではないかとのお尋ねでございましたけれども、行政庁といたしましては、これまでも、許可を受けようとする者からの申請を受け、安全規制の斉一化を図るために、整備された指針類を用い、最新の科学技術的知見に基づき、厳格に審査を行ってきたところであります。
その結果、許可の基準に適合すると認めた場合に、申請者に事業を遂行するに足りる技術的能力があること、それから、設置しようとする施設の位置、構造及び設備が核燃料物質による災害防止上支障がないことという許可の基準について、原子力安全委員会に諮問してきたところであります。
今後とも、引き続き行政庁として指針類を用いるなどにより、適切に許可の基準への適合性を判断してまいる所存であります。(拍手)
〔国務大臣河野洋平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/48
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049・河野洋平
○国務大臣(河野洋平君) 一九九七年のOECD原子力機関のレポートにおきまして、我が国の原子力規制当局の職員数は四百五十人とされていることは御指摘のとおりでございます。
改めてチェックをいたしました結果、我が国の原子力規制当局の職員数は、同レポートが作成された一九九六年現在ではおよそ二百九十人でありまして、これをOECD原子力機関に改めて伝達をいたしたいと考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/49
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050・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 辻元清美君。
〔辻元清美君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/50
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051・辻元清美
○辻元清美君 余りにもひど過ぎる。安全だと言って全くうそで固められていた。こんなことってあるのか。四十代男性。
においも色もなく、子供たちは保育園の外で楽しく遊んでいました。これから先の、十年後、二十年後の子供たちのそのまた子供たちへの健康はどうなるのか心配です。三十代女性。
今回、屋内退避をしても、何の対策になったのでしょうか。放射能の流れを防げません。五十代女性。
村の緊急放送が、ヘリコプターの音がうるさくて何もわからなかった。六十代女性。
パンフ「原子力防災のしおり—万が一に備えて」をもらっているが、原子力防災対策が絵にかいたもちで、現実的でなかったことがよくわかった。五十代女性。
自分がどれだけ中性子線を浴びたか教えてほしい。将来がんになっても今回の事故のためと立証するのは困難で、何の補償もしてもらえないのではないか。四十代男性。
原子力は安全という神話は完全に崩れた。これで安全というのであれば、東京に施設を移転せよ。原子力に頼っていたのでは、必ず再発する。四十代男性。
九月三十日、東海村のジェー・シー・オー東海事業所で発生した臨界事故後の住民アンケートや、土井たか子党首を団長にした社民党調査団に直接寄せられたこのような声を受けながら、私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の原子力災害対策特別措置法案などについて、小渕内閣総理大臣並びに中曽根科学技術庁長官に質問をいたします。
事故当日、ジェー・シー・オーの通報から一時間以内に災害対策本部を立ち上げた東海村に比べて、科学技術庁は三時間以上かかっています。県の屋内退避の決定時に助言を求められた国は、回答に二時間を要しました。また、十一月十日に開催された科学技術委員会で、佐藤原子力安全委員会委員長は、現地に行ってみないととにかくわからなかったという答弁を繰り返しました。
これらの事故対応は、現場に一番近く、地域の実情に精通している自治体を緊急対策の中心に据えない限り、現実的かつ迅速な判断が下せないことを実証したのではないでしょうか。
事故現場から遠く離れて、そしてそのときの政治状況によって政治的思惑にも左右されかねない国の判断を自治体が仰がないと動けないようなシステムでは、今回の事故の教訓を生かしているとは言えず、むしろ逆方向を向いていると言わざるを得ないと思います。
実際、今回の事故当日、小渕総理は、あなたは私を追い落とそうとしたとかいう電話までおかけになって、新内閣の組閣に御熱心であったという報道を目にしました。決死隊と言われる人たちが命がけで作業をしようとし、何十万という住民が不安にさらされている真っ最中のことです。
総理が視察に来たが、試食をしておいしいなどという子供だましはどういうつもりか、総理は対策本部長として責任を感じていない、このような住民の声にどのようにお答えになるつもりなのでしょうか。私は真空総理、というお得意の言い逃れは、ここでは通用しないと思います。
さて、本法案では、事故時の避難、退避などの指示を政府が一元的に行おうという方向性を持っています。私は、緊急時、住民の被曝をできるだけ防ぐには、各自治体の専門能力を高め、自立した緊急時対処能力の強化が最も重要と考えますが、いかがでしょうか。
次に、何点か具体的内容について質問をいたします。
原子力事業者が作成する原子力事業者防災計画は公表されるのでしょうか。
オフサイトセンターは、だれが、いつ、何を、どこで行うことを想定しているのでしょうか。
原子力緊急事態宣言時の内閣総理大臣への異常な水準の放射線量などの報告における「異常な水準」の具体的な数値は、どのように設定されるのでしょうか。
原子力災害合同対策協議会の構成員の任に当たる者は、日常から決めておいて、そのメンバーを公表するのでしょうか。
災害対策基本法における都道府県及び市町村の防災会議が持っている資料や情報は、市民に公表されるのでしょうか。
指定行政機関の長が要請される職員の派遣では、どのような専門知識や特殊技能を持った職員がいるのか、当該自治体や市民に事前に明らかにしておくのでしょうか。科学技術庁長官の答弁を求めます。
次に、本法案には、実効性を十分に担保するために刑罰規定を設けるべきと考えます。これが抜け落ちています。この点について、非常に重要な点だと思いますので、基本的認識をまず総理にお伺いしたいと思います。
事業者に、小さな事故や異常でも直ちに自治体に通報するよう、刑罰もつけて義務づけるべきであるというように考えますが、いかがでしょうか。
そしてまた、重大事故を起こした責任者に対しては、刑法の業務上過失致死あるいは致傷より一段と重い刑罰をもって臨むという刑罰規定が考えられないでしょうか。
本法案に想定される事故は、場合によっては死者は数千、数万に上り、その何十倍、何百倍もの人が遺伝的後遺症に悩まされる、時には一つの町、市、県全体が人間の住めない土地になるという可能性を否定できないという性質を持っています。ほかの事故と性質の異なる重大事故であり、現行の刑法の規定の想定外だと思いますが、いかがでしょうか。
さてまた、事業所が許容被曝線量以上の放射線を放出しても罰則規定がありません。今回も、被曝者が民事で訴えない限り、あれだけ放射線を出し、放射能をまき散らしても刑罰がないというのはおかしいと思いませんか、皆さん。これでは何のために許容量を決めているのでしょうか。ここにも刑罰規定を設けるべきと考えますが、これらの点については科学技術庁長官にお答えいただきたいと思います。
また、このような原子力重大災害に際し、出動を要請された自衛官は、被曝を伴うという、ほかの災害の場合と異なる性質上、生命の危機に直面していることが明らかなとき、それを理由として要請を拒否できるのでしょうか。総理、いかがでしょうか。
私は、事故の当事者であるにもかかわらずその責任をいまだにはっきり認めていない科学技術庁と、原子力開発利用の先頭に立つ通産省がイニシアチブをとって原子力行政を進めてきた結果が、今回の事故につながったと言わざるを得ないと思います。にもかかわらず、今回のこの法案づくりをこの二つの省庁が進めてきたこと自体、盗人縄をなうという言葉がありますが、そういう状況であると言わざるを得ないと思います。各界から意見を聞き、もう一度法案を皆でつくり直すくらいの十分な慎重審議を求めていきたいと思っています。
そして、まず政府は今回の事故の責任を認めた上で、原子力開発利用の先頭に立つ省庁が握る安全規制の権限をそれらの省庁から完全に切り離し、独立機関をつくる決断をすべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。
最後に、皆さんに思い出していただきたいことがあります。三年前、「もんじゅ」事故が起こったとき、当時の大臣はこの本会議場のこの場所で、「調査を進め、万全の安全対策を講ずるとともに、節目節目には必ず積極的かつ速やかな情報の提供に努め、」と発言しています。二年前の東海村のアスファルト固化施設爆発事故のときは、「安全の確保に万全を期すとともに、地元の方々や国民の皆様の原子力に対する不安を解消し、」と答弁されています。きょうもまた小渕総理初め関係大臣はこのような答弁を繰り返すばかりだったと言わざるを得ないと思います。
今や科学技術委員会は、私はそこに所属していますが、事故処理委員会に名前を変えた方がよいくらいの状況になっています。ここにきのうもまたHIIロケットの事故がつけ加わったじゃないでしょうか。
さて、今回の事故が教えてくれた最も重要なこと、それは、これだけ、一年に一回程度原子力の関係の大事故を起こしている現状を今考えるならば、まず「もんじゅ」を含む核燃料サイクルの放棄とプルサーマルの停止を検討すべきじゃないでしょうか。そして、最も重要なことは、二〇〇〇年代は脱原発のミレニアムにしていかなければならないということを皆が真剣に考えなければならないということを今回の事故は示していると私は思います。
そのことを最後に強く主張させていただきまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/51
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052・小渕恵三
○内閣総理大臣(小渕恵三君) 辻元清美議員にお答え申し上げます。
まず、自治体の専門能力を高めることにより判断権限を強化すべきとのお尋ねでありますが、原子力災害の特殊性にかんがみれば、国が果たすべき役割と責任は、自然災害と比較して大きいものと認識しております。このため、本法案においては、国の緊急時対応体制の強化を図りつつ、地方自治体の機能もあわせ、一体的かつ迅速に対策を講じることができるようにしてまいりたいと考えております。
罰則についての御質問ですが、本法案は、一定基準以上の放射線量の検出等があったときに主務大臣及び自治体への通報を怠った場合等には、事業者に罰則を適用することといたしております。
重大事故を起こした責任者に対する刑罰につきましては、刑法は、業務上過失致死傷罪について、多数の死傷者が出たような重大事故等の場合をも想定して法定刑を定めているものでありますので、これに加えて重い罰則を設ける必要はないものと考えております。
出動を要請された自衛官等は、生命の危険に直面していることを理由に要請を拒否することができるかということでありますが、原子力災害対策本部長たる内閣総理大臣より部隊等の派遣を要請された場合、防衛庁長官は、原子力災害の状況、自衛隊の装備及び能力等を踏まえ、部隊等を派遣するか否かを適切に判断することとなります。したがって、部隊等が能力を超える任務を命ぜられることは想定されません。
原子力の開発利用と安全規制の分離について御指摘であり、先ほど来しばしば御答弁申し上げておりますが、我が国では、原子力の規制と推進の機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁及び通商産業省が法令に基づく安全審査等を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行う仕組みとなっており、安全審査等に厳正に臨んできたところであります。
しかしながら、今回の事故を重く受けとめ、安全確保の抜本的強化を図ってまいります。また、原子力安全委員会については、建設や運転の段階においても随時現地調査を行うなど、機能強化を図ることといたしております。
なお、省庁再編後は、内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置することとなっておりますが、一層の体制の整備、規制部局の充実強化を図り、安全確保を図ってまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/52
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053・中曽根弘文
○国務大臣(中曽根弘文君) まず、私に対しまして、原子力事業者の防災計画の公表に関する御質問でございましたけれども、本法案第七条において、原子力事業者は原子力事業者防災業務計画を作成または修正したときはその要旨を公表する旨規定しております。
次に、オフサイトセンターに関する御質問でございますが、本法案第十二条及び第二十三条に、緊急事態応急対策拠点施設、いわゆるオフサイトセンターに関する規定を設けています。
拠点施設は、緊急事態が発生した際に、国の現地対策本部や都道府県、市町村の関係者が一堂に会し、情報の交換や相互の協力を実施する原子力災害合同対策協議会が設置される場として、各原子力事業所ごとに主務大臣が指定するものであります。
原子力緊急事態宣言に関する御質問でございますけれども、かかる部分の放射線量の基準については、今後、政令によってその詳細を定めることとなっております。この政令の制定に当たりましては、今回の事故等も参考にしつつ、原子力安全委員会の意見を聞きまして、早急に検討を進めたいと考えております。
次に、原子力災害合同対策協議会の構成員についての御質問でございますが、本法案第二十三条において基本的な構成者を規定しております。より具体的な構成員につきましては、地域の実情等に応じ、今後、関係する防災計画の整備等により定められるものと考えております。
防災会議が所持する資料や情報の公表についてのお尋ねでございますが、本法案の規定により、都道府県防災会議及び市町村防災会議が作成する地域防災計画については、その要旨が公表されます。また、これらの会議が収集した原子力災害に関する情報も原則として公表されるものと考えております。
指定行政機関の長が要請を受けて派遣する職員の専門分野等の事前公表についてのお尋ねでございますが、派遣する職員については、原子力施設に関する構造、放射線障害の防止等、原子力災害に関する相当の知見と経験を有する者の中から、要請の内容や状況に応じて最適な職員を派遣することが可能となるよう、派遣する者の所属、専門分野等をあらかじめ指定し、公表してまいりたいと考えております。
次に、自治体に対する罰則つきの通報義務についての御質問でございますが、総理からも御答弁ございましたけれども、法案第十条によりまして、一定基準以上の放射線量の検出等があった場合には、事業者が主務大臣及び自治体に通報することが義務づけられておりまして、通報を怠った場合は罰則が適用されます。
この通報の対象となる事象としてどのようなものを定めるかにつきましては、諸外国における規定等も参考に、原子力安全委員会の御意見を聞いて、早急に検討を進めたいと考えております。
重大事故を起こした責任者に対する刑罰についての御質問でございますが、刑法は、業務上過失致死傷罪につきまして、多数の死傷者が出たような重大事故等の場合をも想定して法定刑を定めているものでありますので、これに加えて重い罰則を設ける必要はないものと考えております。
許容被曝線量以上の放射線を放出した際の罰則についての御質問でございますが、既に原子炉等規制法におきましては、特定核燃料物質をみだりに取り扱い、故意に人の生命等に危険を生じさせた者について、重い罰則を設けております。また、過失により放射線を放出させた場合、人を死傷させることとなると思われますが、そのような事案においては、業務上過失致死傷罪が成立することとなり、これ以上の罰則規定を設ける必要はないものと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/53
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054・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/54
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055・渡部恒三
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十八分散会
————◇—————
出席国務大臣
内閣総理大臣 小渕 恵三君
外務大臣 河野 洋平君
大蔵大臣 宮澤 喜一君
厚生大臣 丹羽 雄哉君
通商産業大臣 深谷 隆司君
運輸大臣 二階 俊博君
国務大臣 中曽根弘文君
出席政務次官
厚生政務次官 大野由利子君
科学技術政務次官 斉藤 鉄夫君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114605254X00419991116/55
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