1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十一年十二月十日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十三号
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平成十一年十二月十日
午前十時 本会議
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第一 国民年金法等の一部を改正する法律案、
年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の
解散及び業務の承継等に関する法律案(趣旨
説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
日程第一 国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案(趣旨説明)
三案について、提出者の趣旨説明を求めます。丹羽厚生大臣。
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/1
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002・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) ただいま議題となりました三法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
国民の老後の生活設計の柱である公的年金制度について、将来にわたり揺るぎのない信頼されるものとするため、今回の財政再計算に当たって、二十一世紀を展望し、年金制度における給付と負担の均衡を図り、将来世代の負担を過重なものとしないよう、制度全般にわたって見直しを行うものであります。
以下、この法律案の主な内容について御説明を申し上げます。
第一に、基礎年金の額につきましては、来年度から、年額八十万四千二百円を物価の変動に応じて改定した額とすることとしております。また、厚生年金の報酬比例部分については、五%の適正化を図ることとしておりますが、従前の算定方式を物価スライドした額は保証することとしております。さらに、厚生年金及び基礎年金については、その支給を受ける者が六十五歳に到達した以後は、物価の変動のみに応じた年金額の改定を行うこととしております。
第二に、老齢厚生年金の支給開始年齢について、一般男子については平成二十五年度から三十七年度にかけて、女子については平成三十年度から四十二年度にかけて、段階的に六十五歳に引き上げることとしております。
第三に、厚生年金について、平成十四年度から、六十歳代後半の者を被保険者とし、年金額と賃金との合計額が一定以上の者について、支給を制限することとしております。
第四に、学生である国民年金の被保険者について、来年度から、本人の所得が一定以上の場合を除いて保険料の納付を要しないこととする保険料の納付特例などの措置を導入することといたしております。
第五に、基礎年金については、「財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るもの」とすることとしております。
第六に、厚生年金基金などの資産運用や事業運営の規制を緩和するとともに、上場株式を一定の条件のもとに掛金として拠出することを認めることとし、公布の日から三カ月以内に実施することとしております。
第七に、厚生年金保険及び国民年金の積立金について、財政投融資制度の抜本的改革に合わせて、厚生大臣が安全かつ効率的に自主運用を行うこととしております。
以上のほか、育児休業期間中の厚生年金保険の被保険者の保険料について事業主負担分を免除すること、厚生年金について月給と賞与を合わせた総報酬制を導入することなどの措置を講ずることとしております。
次に、年金資金運用基金法案について申し上げます。
この法律案は、年金積立金の自主運用に当たり、厚生大臣から寄託された資金の管理及び運用を行う専門機関として、年金資金運用基金を設立するものであります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、年金資金運用基金は、厚生大臣が定める運用に関する基本方針に沿って資金の管理及び運用を行うことなどを目的としております。
第二に、年金資金運用基金は、資金の管理運用方針を策定し、民間運用機関への運用委託などにより資金の管理及び運用を行うこととしております。
第三に、年金資金運用基金の役員などに対し、注意義務及び忠実義務などを課すとともに、年金資金運用基金は、適切な情報の公開により透明性を確保し、毎事業年度、詳細な業務概況書などを公表することとしております。
このほか、財務会計など所要の規定を設けることといたしております。
この法律の施行期日は、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日としております。
最後に、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案について御説明を申し上げます。
年金福祉事業団は、これまで、厚生年金保険、国民年金の被保険者などの福祉の増進に重要な役割を果たしてきたところでありますが、行政改革の一環として、平成九年六月六日の閣議決定において、これを廃止するとともに、大規模年金保養基地業務からは撤退し、被保険者向け融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退することとしたものであります。
この法律案は、この閣議決定に基づき、年金福祉事業団を解散し、被保険者、地域経済、雇用などへの影響を考慮しつつ、同事業団が行ってきた業務について、住宅資金の貸し付けを別に定める日までの間年金資金運用基金が行うとともに、年金福祉事業団からの権利及び義務の承継を行うなどの所要の規定を設けることとし、関係法律の改正を行うものであります。
この法律の施行期日は、年金資金運用基金法の施行の日と同じく、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日としております。
政府といたしましては、以上を内容とする三法案を提出した次第でありますが、国民年金法等の一部を改正する法律案については、衆議院におきまして、基礎年金については、財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討することとしていたところを、給付水準を含めて検討することを明示する修正が行われたところでございます。
以上がこの三法案の趣旨でございます。何とぞ速やかに御審議、御成立のほどお願いを申し上げます。
以上でございます。よろしくお願いします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/2
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003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。勝木健司君。
〔勝木健司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/3
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004・勝木健司
○勝木健司君 私は、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案外二件に対し、民主党・新緑風会を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
私ども民主党は、さきの第百四十五回国会におきまして、政府案に対する対案とも言うべき我が党の年金改革法案を既に提出いたしております。ここでその内容を簡潔に御紹介しておきます。
民主党案では、まず、基礎年金の財源を二〇〇四年、平成十六年の次期財政再計算時までに全額国庫負担の税方式とすることとし、当面、国庫負担について、必要な措置が講じられるまでの間、基礎年金の国庫負担の割合を現行三分の一から二分の一に引き上げることとしております。また、国民年金の保険料につきましては、平成十一年度以降の保険料額を現行の月額一万三千三百円から一万三百円に引き下げること、厚生年金の保険料につきましては、平成十一年度以後の保険料率を現行の一七・三五%から一%引き下げることといたしております。
ところが、小渕総理を初め与党の皆さんは民主党が対案を国会に提出していた事実も御存じなかったのでありましょうか。政府案の衆議院審議中、民主党に対して対案を示せと言われたのであります。余りにも不勉強だと言うほかはなく、責任野党である民主党に対する冒涜ですらあります。
まず最初に、小渕総理の認識誤認を正しておきたいと思います。政府は、民主党が政府案に対する対案を提出していたこと、そして与党は民主党案の審議に応じず廃案にしたことを承知しておられるのか、総理に確認をいたします。
さて、小渕総理、国民の老後に対する不安はますます大きくなってきております。その要因の一つに公的年金制度に対する不信感の増大が挙げられます。若い世代の多くは、自分たちが老後を迎えるころには年金を当てにできなくなっていると考えております。厚生省の調査によりますと、公的年金の未加入者、保険料未納者、免除者を合わせて既に七百万人にも上り、これは国民年金の三分の一に相当いたします。公的年金は国民の支持と信頼があってこそ初めて成り立つ制度でありますから、このような傾向は大変憂慮すべき事態であると思います。
そこで、総理にお伺いいたしますが、国民の公的年金に対する不信感はどのような原因に基づくものと分析しておられるのか、総理の認識をお尋ねいたします。
私どもは、国民の公的年金に対する不信感は、政府がここ二十年来、年金改革のたびごとに保険料の引き上げと給付水準の引き下げをセットとし、さらに支給開始年齢を先延ばしする、そういう意味で、まさに逃げ水のように年金が国民の手の届かないところに行ってしまいそうな改革案を繰り返し提案してきたことにも大きな原因があると考えております。政府の責任はまことに重大であります。
急激な少子高齢化が進行しているにもかかわらず、政府はこの現実を見誤り、将来人口の推計を甘く見積もってきました。これまでの人口推計のあり方について真摯な反省が必要であります。政府は老後の安心を保障すべき公的年金の給付引き下げをいつまで繰り返そうとするのか、小渕総理並びに厚生大臣の見解をお伺いいたします。
次に、国民共通の基礎年金のあり方につきまして、小渕総理の見解をお尋ねいたします。
基礎年金の国庫負担割合につきましては、前回の法律改正時に国会の法案修正並びに両院の委員会決議によりまして、今回の財政再計算時までに政府において二分の一への引き上げを検討することが確認をされておりました。ところが、この国会との約束は財政構造改革の閣議決定により一方的に破棄され、政府内部で検討することすら封じられてしまったのであります。
しかし、財政構造改革法は現在凍結されております。国庫負担の二分の一への引き上げを妨げる根拠は今や何もないのであります。にもかかわらず、政府・与党は基礎年金の国庫負担の引き上げを平成十六年度まで引き延ばそうと画策をしております。
基礎年金の財源につきましては、国民年金の空洞化問題、無年金障害者の問題、第三号被保険者の問題を解消するためにも、民主党が提出した対案のように直ちに国庫負担の割合を二分の一に引き上げ、その後、速やかに税方式への転換を図るべきであると考えますが、小渕総理の見解をお伺いいたします。
なお、政府案の提出が大幅におくれた背景には自自協議が難航したことが報じられておりますが、その経緯と、今回の政府案における国庫負担引き上げの検討を定めた国民年金法改正案附則第二条の規定に関する政府としての具体的な取り組みにつきましてもあわせて御説明願います。
さて、従来、社会保障の分野では、年金は年金、医療は医療、介護は介護、少子化対策は少子化対策といったように、それぞれの制度が縦割りでばらばらに論議をされてきました。しかし、社会保障に基づく給付やサービスは国民に対し総合的に提供されるべきであります。また、社会保障制度を支える負担のあり方につきましても社会保障全体で論議すべきものであります。
そこで民主党は、年金、医療、介護、少子化対策といった、いわゆる福祉問題を一つの土俵の上で議論することを提案いたします。政府は、まず社会保障全体で負担と給付の関係を明示した福祉のトータルビジョンを国民の前に明らかにすべきであります。国民の将来不安の解消に、今こそ与野党の垣根を越えて福祉全体の将来像を構築する作業に取り組むべきであります。小渕総理の見解をお伺いいたします。
この点に関連して、国民共通の基礎年金に関し、そのあるべき給付水準につきまして、お尋ねいたします。
来年四月からは、介護保険法施行に伴い、介護保険料が年金から天引きされることとなっております。また、今後は医療保険、介護保険などにおける利用者負担の増大が予想されております。私どもは、社会保障全般にわたる高齢者の負担増を踏まえて、基礎年金の給付水準についてはその考え方を抜本的に見直す必要があると考えます。すなわち、国民共通の基礎年金をあらゆる社会保障の基盤に位置づけ直す必要があるということであります。
そこで、政府は現行の基礎年金の給付水準をどのような考え方に基づいて設定しておられるのか、また、実際に給付されている平均額は幾らなのかを御説明願いたいと存じます。
さらに、政府案は衆議院におきまして、附則第二条が「基礎年金については、給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、」云々と修正され、参議院に送付されてきました。政府は、この衆議院修正を踏まえて、基礎年金の給付水準についてどのような方向で検討されようとしているのか、厚生大臣にお伺いをいたします。
次に、サラリーマンを初め労働者の老後を支えている厚生年金につきまして、政府案の問題点を明らかにしながらお尋ねをいたします。
まず、厚生年金等の年金給付額を、いわゆる適正化と称して五%カットしようとしていることであります。
厚生年金の給付額は、理想的なモデル年金でこそ月額二十三万円と説明されておりますが、実際の給付平均はこれに遠く及ばず、たかだか月額十七万円にすぎません。これは生活保護基準額と同じでありまして、これで果たして公的年金と言えるのでありましょうか。このような現実と照らし合わせてみますと、給付水準の五%カット案は余りにも無謀だと言わざるを得ません。厚生大臣の見解をお伺いいたします。
また、給付水準の五%カットが年金財政に及ぼす効果が小さいのであれば五%カットする意味はなく、当然再検討すべきでありましょう。厚生大臣は、五%カットの財政効果がどの程度なのか、その試算を明らかにしていただきたいと思います。
次に、厚生年金の支給開始年齢を六十五歳に引き上げようとしている点についてであります。
景気低迷が続く中にありまして、申し上げるまでもなく中高年の雇用は大変厳しい状況にあります。リストラによる解雇、早期退職の勧奨など、雇用情勢は悪化の一途をたどっております。ところが政府は、中高年の雇用を確保する有効な施策を持ち合わせておりません。政府は、六十五歳への定年延長の見通しがないまま、年金の支給開始年齢だけ六十五歳に引き上げようとしているのであります。このような政府の態度は、全く無責任だと言わざるを得ません。総理並びに厚生大臣の真摯なる答弁を求めます。
あわせて、高齢者雇用の実態がどのようなものとなっているのか、また、高齢者雇用の今後の見通しと政府の対策につきまして、労働大臣にお伺いをいたします。
次に、百四十兆円にも上る年金積立金の自主運用の問題についてお尋ねをいたします。
年金福祉事業団解散後、厚生大臣が年金資金運用基金により巨額の年金資金を全額自主運用することについては、衆議院段階におきましてもさまざまな問題点が指摘をされております。
資金運用の基本方針が明らかになっていないこと、一兆円を超す大幅な累積赤字を出した年金福祉事業団の責任すら問われないような状況で、基金における運用責任がどのようにとられるのか明確でないこと、年金資金の運用等について十分に情報の開示がなされるのかどうか不明であることなどであります。
丹羽厚生大臣は、衆議院の審議の中で、私ども民主党の質疑に対し、これらの疑問について十分な答弁を行うことができませんでした。このようなことでは、厚生大臣は国民に対する説明責任を果たしているとは到底申せません。参議院の審議におきましても、当然のこととして厳しく追及をしていく所存でありますが、厚生大臣に国民が納得できる答弁をお願いいたします。
最後に、政府・与党に対して年金法案の審議のあり方について申し上げます。
年金改革は、国民生活に直結する問題だけに、国民的コンセンサスを形成する必要があると考えます。年金改革関連法案の国会審議は特に慎重に行い、いやしくもその採決を強行することがあってはならないのであります。衆議院においては厚生委員会の採決が強行され、衆議院議長に裁定を仰ぐといった事態を招いたことは、まことに残念であります。
当参議院におきましては、私ども野党はもちろんのこと、与党の方々におかれましても、参議院が良識の府であることをわきまえられまして、正々堂々粛々と十二分に審議を尽くすべきであることを申し添えまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/4
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005・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 勝木健司議員にお答え申し上げます。
まず、民主党の対案についてのお尋ねがありました。
前国会におきまして、政府が二月九日に提出をいたしましたのは、国民年金保険料凍結法案でございました。これに対しまして、民主党が三月五日に基礎年金の国庫負担の引き上げと保険料の引き下げを内容とする対案を提出され、衆議院厚生委員会で審議されましたが、八月十三日の常会閉会とともに廃案になったことは承知をいたしております。
なお、今回の年金改革法案は、この民主党案よりも約五カ月後の七月末に国会に提出されたものであり、国民年金及び厚生年金の給付と負担のあり方を全般的に見直すことを内容としたものでございました。
公的年金に対する不信についてのお尋ねであります。
少子高齢化の進展や経済基調の変化の中で、国民の一部に将来年金がもらえなくなるのではないかとの不安があることは事実でありますが、国民の老後を支える年金制度につきましては、将来にわたって安心して信頼できるものにしていかなければならないと考えております。
こうした観点から、今回の改正におきまして、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するとの考え方に立ち制度全般を見直すこととしており、今回の改正により国民の年金に対する信頼を揺るぎないものとすることができるものと考えております。
公的年金の給付適正化が繰り返されるのかとのお尋ねでございました。
今回の改正は、予想を上回る少子高齢化の進行や経済基調の変化などを踏まえ、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するとの考え方に立ちまして必要な措置を講ずるものであり、この改正を行うことによって、将来にわたり安心して信頼のできる年金制度の構築が図られるものと考えております。
基礎年金の財政方式についてのお尋ねでありましたが、国庫負担割合を二分の一に引き上げることにつきましては、前回改正時におきまして財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況などにかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えております。
今回の年金改正法案におきまして、「基礎年金については、給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との附則が設けられたところであり、安定した財源確保のための具体的方法と一体として検討する必要があると考えております。
なお、基礎年金につきましては多くの検討事項が指摘されておりますが、その一つとして負担のあり方の問題もあるものと承知をいたしており、そうした問題も含め、基礎年金のあり方について幅広く検討してまいりたいと考えております。
また、年金改正法案の国会提出時期について御指摘いただきましたが、与党であった自自両党間で今後の基礎年金制度のあり方について慎重な検討が行われた結果、七月に法案が国会に提出されたものであることを御理解いただきたいと存じます。
社会保障のトータルビジョンについてのお尋ねでありましたが、今後、少子高齢化が進行する中で、国民が安心できる社会を築くため、国民に信頼され、将来にわたって安定的に運営できる社会保障制度を構築していくことが重要であります。
従来の改革論議の中でも、年金、医療、介護などの制度ごとに縦割りの議論がなされてきたのではないかとの御指摘もありまして、政府としては、有識者の皆さんに御参加もいただき、給付と負担のあり方も含め、社会保障について制度横断的な議論の場を設け、総合的な議論を進めてまいりたいと考えております。
最後に、厚生年金の支給開始年齢の引き上げに関してでありましたが、今回の改正におきまして、十分な準備期間をとって二〇一三年から段階的に引き上げるものであり、将来の保険料負担の増大を抑えるため必要な措置であると考えております。
また、高齢者が意欲と能力に応じ年齢にかかわりなく働き続けられる社会の実現を目指し、当面、六十五歳までの雇用機会の確保のための対策の充実を図るため、高年齢者雇用安定法の改正案を次期通常国会に提出する方針であり、今後とも高齢者雇用の確保に努力してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/5
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006・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 勝木議員の御質問にお答えいたします。
まず、公的年金の給付水準の見直しについてお尋ねがございました。
前回の平成六年改正以降、出生率が大きく低下するなど、予想を上回る少子高齢化が進行しておるわけでございます。今回の人口推計は、こうした教訓を踏まえまして、少子化傾向をできるだけ厳しく織り込んで推計したものでございます。
将来世代の負担について過重なものとならないよう、年収の二割程度に抑えるとともに、現役世代の手取り年収のおおむね六割程度の給付水準を確保することをねらいといたして、この改正案を提出させていただいておるわけでございますが、これによって、将来にわたり安心して信頼できる年金制度の構築が図られるものと確信をいたしておるような次第でございます。
次に、基礎年金の給付水準についてお尋ねでございますが、基礎年金の水準は衣食住などの老後生活の基礎的な部分を賄うという考え方に基づき設定しているものでございます。なお、老齢基礎年金受給者の平均年金月額は、過去に保険料を免除された方なども含めますことなどから、平成九年度現在で五万二千六百七十四円となっております。
それから次が、衆議院修正を踏まえた基礎年金の給付水準の検討についてでございますが、基礎年金につきましては、与党三党の合意に基づきまして、今後財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討することといたしておりますが、今回の修正につきましては、基礎年金のあり方についてはその水準を含めて幅広く検討する、こういうことを定めたものでございますし、政府といたしましても、この修正の趣旨を踏まえまして審議会の場で御議論をいただきたい、このように考えているような次第でございます。
さらに、年金水準の適正化に関するお尋ねがございましたが、まず、御指摘の平均額十七万円は受給者一人分の平均年金額と考えられますが、これは世帯で設計されているモデル年金や世帯で見た生活保護基準額と比較するのはそもそもなじまないものと考えております。
今回の改正では、現役世代の負担を年収の、先ほど申し上げましたけれども、二割程度に抑えるとともに、将来の給付水準についてその適正化を図りながら、現役世代の年収のおおむね六割程度の給付水準を確保することにしたものでございます。
それから、報酬比例部分の給付水準を五%適正化した場合の厚生年金の財政への影響についてのお尋ねでございますが、これを平成三十七年度の支出総額で見れば二兆円程度、現在の価値で見ましても一兆円程度の軽減になると見込まれております。
さらに、六十五歳への引き上げについてでございます。
今回の支給開始年齢の引き上げは、我が国の平均寿命は世界で今や最も長寿が進んでおるわけでございます。さらに、欧米を見ましても六十五歳以上の支給が一般的であることなどを勘案したものであり、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するためには必要な改正であると考えておるような次第でございます。
雇用との関係については、六十歳定年制が定着しつつあり、少子高齢化が進む中において、今後定年延長であるとか、あるいは雇用の場の確保がさらに進むと確信をいたしておるような次第でございます。
いずれにいたしましても、今回の厚生年金の支給開始年齢の引き上げは十分な準備期間をとって二〇一三年から行うものであり、今後労働省と十分に連携を図りながら高齢者雇用の確保に全力を挙げてまいりたいと考えておるような次第でございます。
最後に、年金の積立金の自主運用についてのお尋ねがございました。
これは議員御指摘のように、衆議院段階でも議論をさせていただきました。民主党さんの考え方とそもそも認識の違いがあるわけでございますし、これにつきまして菅議員からも対案が示されなかったことも事実でございます。
まず、年金の自主運用でございますけれども、運用に関する基本方針につきましては、厚生大臣が保険料拠出者の代表や、金融、経済の専門家などの意見を聞いて定めることとされておりますが、法律上、経済の動向や民間活動に及ぼす影響を考慮するとともに、安全かつ確実を基本とし分散投資することとされており、運用のあり方の基本は既に明らかにされているものと考えております。
次に、年金資金運用基金の責任体制でございますが、新しい自主運用においては、厚生省の運用関係職員や基金の役職員に慎重な運用の専門家としての高度の注意義務などを課し、運用に関する意思決定に当たっての注意義務違反や手続違反があった場合には懲戒処分を行うことなどにより責任体制を明確化していきたい、こう考えているような次第でございます。
積立金の運用に当たりましての情報公開でございますけれども、運用の基本方針や毎年度の運用状況などを詳細に公表することなどとしているほか、外部監査を導入するなど、外部からの十分なチェックができるよう情報公開の徹底化を図っていく次第でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣牧野隆守君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/6
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007・牧野隆守
○国務大臣(牧野隆守君) 高齢者雇用の実態及び今後の見通しと対策についてのお尋ねがございました。
六十歳定年制につきましては、昨年四月から法的義務化が施行され、ほぼ完全に定着したところであります。定年後の継続雇用制度を有している企業の割合も約七割となっておりますが、厳しい経済情勢を反映し、高年齢者の雇用失業情勢は、本年十月の六十ないし六十四歳の完全失業率は七・六%の高率となっております。有効求人倍率が〇・〇六倍と、これも非常に厳しい状況にあります。
今後においては、急速な高齢化の進展により、高齢者で雇用就業を希望する者が一層増加することが予想されます。
こうした中で、労働省としては、少なくとも六十五歳までは現役として働くことができる社会の実現を目指し、六十歳代前半層の多様な雇用就業ニーズに対応すべくさまざまな施策を現在実施しているところであります。
さらに、将来的には、意欲と能力のある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を実現していく、このことが非常に重要であると考えておりまして、向こう十年程度の間においては、意欲と能力のある高齢者が何らかの形で六十五歳まで働き続けることができることを確保するため、所要の法改正を含め高齢者雇用対策の充実を図ってまいる所存でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/7
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008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 小池晃君。
〔小池晃君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/8
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009・小池晃
○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等三法案について、総理並びに厚生大臣に質問を行います。
公的年金は、老後の生活を保障するため、国と国民が結ぶ約束です。当然、本法案の審議には十分な民意の反映と徹底した討論が必要であります。ところが、衆議院厚生委員会では、短時間の審議で公聴会開催を決め、公聴会の実施前に採決の日取りを決め、あげくの果ては強行採決というたび重なる暴挙が行われました。本院では、法案への賛否はどうあれ、中央・地方公聴会の開催、参考人質疑はもちろん、徹底した討論を尽くすことが国民から負託された責務です。そのことを最初に指摘をして、以下、法案の中身に即して質問します。
第一は、厚生年金報酬比例部分の支給開始を六十五歳におくらせる問題です。
政府は、九四年の制度改悪で定額部分の支給開始を六十五歳に引き上げました。今回の改悪はそれに追い打ちをかけ、六十歳代前半の年金をゼロにするというものです。
政府・与党は、この間、六十歳代前半の雇用確保を年金支給をおくらせる前提としてきました。ところが、現在、定年制が六十五歳以上の企業は全体の六・六%しかなく、大企業では労働者の四三%が定年前に退職させられています。求人年齢の上限の平均は三十七・三歳、六十から六十四歳の有効求人倍率は〇・〇六です。衆議院の地方公聴会でも労働組合の代表から、近未来に六十歳前半の雇用が多く生まれるとは思えない、支給開始の繰り延べは余りにも乱暴だという怒りの声が上がりました。
総理、政府が唱えてきた支給開始繰り延べの前提はもはや崩れているのではないですか。それは、勤労者の退職後の生活を困難にし、将来不安を増幅するだけではないでしょうか。そうではないというなら、国民にどのような約束をするのか、答弁をしてください。
第二は、賃金スライド凍結と厚生年金報酬比例部分の五%削減についてです。
厚生省は、賃金スライド制を導入するとき、これは年金受給者と現役世代の乖離を防ぎ、真の老後保障となる年金にするための制度だと説明しました。その政府自身の説明に照らしても、賃金スライド凍結は年金受給者と現役世代の乖離を広げる制度改悪ではないですか。報酬比例部分の五%削減とあわせ、まさに国民の老後を脅かすものであります。
賃金スライド凍結は、将来世代だけでなく、現在、年金を受けている人の暮らしも直撃します。厚生省の説明でも、ことし六十五歳で二十四万円を受給している人の場合、二十年後の年金は、現行制度では三十八万円のはずが、今回の改悪で三十二万円に、六万円も減らされます。給付の切り下げは高齢者のささやかな希望をも奪うものではないでしょうか。厚生大臣の答弁を求めます。
第三は、基礎年金への国庫負担についてです。
基礎年金国庫負担への二分の一への増額は、九四年に全会一致で決議され、法附則にも明記されたことです。それを実現しなかったのは、国民に対する重大な約束違反であります。それをさらに五年間も先送りする本法案に、支給先延ばしや給付カットで国民には痛みを押しつけながら、政府はまた責任逃れかと怒りの声が上がるのは当然ではありませんか。
今、国民年金の空洞化は深刻です。自営業者、学生など第一号被保険者の対象者二千百万人のうち、厚生省が保険料の確実な納付を見込んでいるのは千二百四十八万人、五九%にすぎません。二分の一国庫負担の先送りは、この空洞化をさらに進行させるだけです。
政府はこの間、二分の一国庫負担は法案の附則に明記したから必ず実行すると弁明しています。しかし、五年前の約束をほごにしたのは政府自身です。五年前の附則と決議を守らなかった政府が、また附則に書いても信用できないという衆議院中央公聴会での全労連鈴木副議長の指摘は当然です。総理、直ちに国庫負担を二分の一に引き上げることこそ国民の年金不安を払拭する第一歩だと思われませんか。
第四は、百四十兆円の積立金とその運用についてです。
年金支給額五・五年分という我が国の積立金は、アメリカの一・五年分、イギリスの一・二カ月分、ドイツの一カ月分などと比較して異常な額です。
政府は、財政再計算のたびに、まともな理由もなく積立金の目標を膨張させてきました。高齢化のピークとされる二〇五〇年の積み立ては、八九年試算では一・四年分でしたが、九四年は二・四年分、今回は三・三年分となっています。積立金をふやせば保険料が上がるのは当然ではないですか。
しかも本法案は、この積立金を、厚生省が監督する年金資金運用基金にゆだね、市場で全面運用するとしています。既に、厚生省所管の年金福祉事業団が二十七兆円の資金運用に失敗し、簿価で一兆八千億円の赤字を出しています。二十七兆円の運用に失敗し、その責任を一切とろうとしない厚生省に、百四十兆円の全額運用などどうして任せることができるでしょうか。
連合の桝本生活福祉局長は、保険料という形で民間から資金を吸い上げ、積立金をふやして金融市場に投資するよりも、個人、法人に還元して経済の成長を図るべきだと指摘しています。
アメリカでも、クリントン大統領がことし一月、公的年金の株式運用を提案したとき、FRBのグリーンスパン議長から、株価が下落すれば年金財政が不安定になる、政府による市場介入は好ましくないなど、厳しい批判が出され、大統領は提案を撤回しました。
総理、国民の財産である年金資金を金融市場にゆだね、巨額の損失を出した場合、だれがどのように責任をとるのですか。将来世代の負担を減らすための積立金だと言われますが、運用に失敗したら逆に負担がふえるだけではないですか。
結局、はっきりしていることは、これまでの十二年間で三千億円もの運用手数料を得た金融機関だけは今後も確実にもうけ続けるということではないですか。明確な答弁を求めるものです。
第五は、無年金障害者についてです。
障害者団体によれば、そもそも障害年金の受給者は障害者全体の三割。受給できている人も、その八割は生活保護基準以下の年金額。結局、就労が困難な障害者は生活保護に頼らざるを得ないのが現状です。当面、少なくとも、九四年の附帯決議に沿って福祉的措置を含め速やかに検討することは、政府の責任で緊急に行われるべきではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
本法案の施行は、将来のことで現在の問題ではないという政府の言い分は、事実を二重にねじ曲げるものです。
第一に、今回の改悪は、賃金スライド凍結などで現在の年金受給者の暮らしを直撃します。
第二に、現役子育て世代の将来不安をかき立てることであります。
今回の制度改悪が完成するのは二〇二五年です。私は二〇二五年に六十五歳になります。三月の委員会で、私以降の世代の改悪の影響はどうなるのか質問したところ、厚生省は、二〇二五年に夫が退職する夫婦の場合、厚生年金で平均五千三百万円の生涯給付が四千三百万円に、一千万円減ると答えました。遺族年金の削減分と九四年改悪での定額部分の支給開始繰り延べを加えれば、優に一千五百万円を超える支給が減らされます。
総理、このような改悪が、年金生活者に打撃を与えるとともに、現役世代、子育て世代の将来不安をあおり、一層の少子化へと悪循環を加速させることは明らかではありませんか。
基礎年金に対する国庫負担を直ちに二分の一に引き上げ、巨額の年金積立金を計画的に取り崩し、高齢者や女性が働きやすい環境づくりを進めれば、今回のような年金の負担増も給付の削減も全く必要ありません。
元東大医学部長の黒川清氏は日経新聞で、「高齢化社会を迎えた日本で、いま国民が求めるのは安心して住める社会づくりである。それは医療・福祉の充実であって、決して国土のコンクリート化ではない。」と述べておられます。
日本共産党は、国民年金法等三法案の廃案を要求し、公共事業偏重の財政構造を転換して、すべての国民が安心して老後を送れる年金制度の確立のために全力を挙げることを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/9
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010・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 小池晃議員にお答え申し上げます。
厚生年金の支給開始年齢の引き上げにつきまして、今回の改正におきまして、十分な準備期間をとりまして、二〇一三年から段階的に引き上げるものであり、将来の保険料負担の増大を抑えるため必要な措置であると考えております。
また、高齢者が意欲と能力に応じ年齢にかかわりなく働き続けられる社会の実現を目指し、当面、六十五歳までの雇用機会の確保のための対策の充実を図るため、高年齢者雇用安定法の改正案を次期通常国会に提出する方針でありまして、今後とも高齢者雇用の確保に努力してまいりたいと考えております。
基礎年金の国庫負担についてお尋ねがありました。
国庫負担の割合の引き上げにつきましては、前回改正時において、財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況等にかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えております。
今回の年金改正法案におきまして、「基礎年金については、給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との附則が設けられたところであり、安定した財源確保のための具体的な方法と一体として検討する必要があると考えております。
年金積立金の自主運用についてのお尋ねでありますが、今回の法律では運用関係者の責任体制を明確にするとともに、運用方針や運用実績等の情報公開を徹底することにより外部からのチェックが働く仕組みにしているところであり、運用関係者が事業実施に当たり法律的に必要な手続をとらなかったことなどがあれば、その関係者は懲戒処分等を受けることになります。
なお、国債等の債券を中心とした運用になることから、長期にわたり多額の損失が生じることは考えにくく、また、運用手数料につきましては今後とも低減に努めるとともに、コスト控除後の運用実績で年金財政に貢献のできるよう、効率的な運用に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、無年金障害者についてのお尋ねでありました。
年金制度において何らかの給付を行うことは、制度加入者に対し保険料の負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹に触れるものであること、制度に加入し保険料を納めてきた人々の間で公平の問題が生じること等の問題があり、現在の年金制度の仕組みのもとでは極めて困難であると考えております。
また、障害者施策の中で福祉的措置をとることについては、障害者福祉施策は障害の内容等に応じて必要なサービスや手当を給付することを基本としており、無年金障害者に着目した施策を講じることは極めて困難であること、追加的財源を確保する必要があることなどの問題があると考えております。
このように、この問題につきまして、解決に向けてなお難しい論点が残されているところではありますが、今後とも、関係方面の御意見も十分伺いながら、幅広い視点から検討を行ってまいりたいと考えております。
今回の年金改正が年金制度への信頼を危うくさせるとの御指摘でありますが、今回の改正案では、将来世代の過重な負担を防ぐという見地から、制度全般にわたる見直しを行い、将来最も負担が重くなる時点においても、年収の二割程度に抑えることとしているところであります。
一方、給付につきましては、確実な給付を約束するとの考え方に立ち、改正後も現役世代の手取り年収のおおむね六割の年金水準を確保することができるものとしており、高齢者の方々の生活費をほぼ賄えるものと考えております。
本改正を実現することによりまして、年金制度に対する国民の信頼を揺るぎないものにすることができるものと考えております。
以上お答え申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/10
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011・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 小池議員の御質問に御答弁申し上げます。
まず、賃金スライドについてお尋ねがございました。
今回の改正におきましては、六十五歳以降は物価のみで年金額を改定することにいたしておるわけでございます。これは、少子高齢化が進み現役世代の負担が重くなっていく中で、現役世代の賃金の上昇に合わせて高齢者の年金額を引き上げるような状況にない、このようなことでございます。それから、物価スライドを行うことによりまして購買力を確保することなどによって、年金の基本的な役割は果たせるものと考えております。
こういうことから、将来世代の負担を過重なものにしないための方策の一つとして今回の年金法の改正案を提出させていただいたような次第でございます。
それから次に、年金の積立金についてのお尋ねがございました。
我が国は、かつて諸外国に比較いたしまして高齢化の進行が遅かったこともありまして、年金の積立金も比較的多く保有いたしておりますが、実は今五・五年とおっしゃいましたが、今がピークでございまして、少子高齢化社会を迎えましてこれから年々減っていくわけでございます。この積立金は、その運用収入によって将来世代の負担を軽減するものであり必要なものである、このように考えているような次第でございます。
また、年福事業団の赤字についてでございますが、年金福祉事業団は、ほかの年金資金を運用する機関投資家と、例えば信託なんかと比較いたしましても遜色のない運用収益を確保いたしておりますが、資金運用部から長期固定金利で資金を借り入れて市場運用を行っており、近年の低金利、株価の低迷などによって運用収益が資金運用部への利払いを下回り、平成十年度末で時価ベースで一兆二千億円の累積欠損が生じているものでございます。
しかし、今年度に入りましてからは、国内株式などの収益が貢献いたしておりまして、十月末現在で累積欠損は利払いを払ってもおよそ四千億円に縮小いたしております。今後、低金利に伴う資金運用部からの借入コストの低下も見込まれておりますから、早期に累積欠損が解消されますように最大の努力を行っていくような次第でございます。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/11
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012・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 渕上貞雄君。
〔渕上貞雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/12
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013・渕上貞雄
○渕上貞雄君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案など三案に対して、小渕総理大臣及び丹羽厚生大臣に質問を行います。
世界に例を見ない少子社会、高齢社会を迎える日本では、社会保障費の増大は避けられません。それゆえに、増大する社会保障費用を安定的に確保するための公平、公正な負担のあり方を検討し、年金、医療、福祉の分野の総合的な改革を実現しなければなりません。
さきの衆議院本会議で小渕総理は、与党と緊密に連携をとりながら、社会保障のあり方について検討したいとおっしゃいました。しかし、給付水準を削減する今回の年金制度改悪を初め、理念を根底から覆す介護保険見直し、抜本改革にほど遠い医療制度の改革など、日本の社会保障制度全体がまさに与党である自自公三党の党利党略、密室議論によりゆがめられ、将来不安をあおり、国民生活に重大な影響を与えています。
一体、総理は総合的な社会保障構造改革のビジョンをお持ちなのでしょうか。まずお伺いをいたします。
五年に一度の見直しに当たる今年、年金法の審議がこれほどまでにおくれたのは、そもそも自由、自民両党の責任です。与党なれ合いのもと、法案を通常国会末に提出、かつ一度も審議されないという異常事態を招いたのであります。
その上、今臨時国会では、自民、自由、公明の与党三党は、数の暴力により、社民党を初め野党各党が反対する中採決を強行するなど、十分な委員会審議が行われず、国会を混乱に陥れたのであります。この間の政府・与党、そして小渕総理の責任は重大であると言わなければなりません。
さて、今回の制度の最大の課題は基礎年金の空洞化の問題です。空洞化やさまざまな不公平の解消のためには、基礎年金の税方式への移行を行わなければなりません。このため、今回の改正で国庫負担を二分の一に引き上げることが、前回、九四年の年金改正における国民への約束であったはずです。
小渕総理は、膨大な財源を必要とするから困難と答弁をされました。他方では、総理は、制度を根底から覆す介護保険見直しには一兆円、経済新生政策と称して十八兆円もばらまきを行おうとしているのであります。片や国民に痛みを押しつけ、将来不安をあおり、片や選挙目当てで場当たり的な施策を行おうとするのでは到底国民の理解を得ることはできません。総理の真摯なる答弁を求めます。
さらに、今回の法案では給付水準の削減を提案しています。賃金スライドの凍結や支給開始年齢の六十五歳引き上げなど、この未曾有の不況のもと、提案すべきではありません。これらは高齢者の生活不安を増幅させる高齢者いじめの制度改悪そのものであり、全面撤回を求めます。厚生大臣の御見解を伺います。
年金福祉事業団の運営の失敗について、総理並びに厚生大臣はいかにお考えでしょうか。その責任を問いたいと思います。
また、年金福祉事業団の解散及び事業の継承に当たっては、現在雇用されている方々について、労使関係に配慮するとともに雇用継続に万全を期すべきと考えますが、厚生大臣の御所見を求めます。
今回の法案は、解決すべき多くの課題は先送りし、長期不況と先行き不安を一層助長するものであり、加えて自自公三党による強引な国会運営と不十分な委員会審議は、国民の年金制度への、そして政治への信頼を失うことになっています。
社民党は、参議院において十分な審議時間の保証を求めます。徹底した審議を行う中で問題点を明らかにし、高水準の福祉を国民の納得できる負担により実現するために全力を挙げることを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/13
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014・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 渕上貞雄議員にお答え申し上げます。
まず、社会保障構造改革のビジョンについてのお尋ねがございました。
高齢化の進展に伴いまして給付の増大が見込まれる中で、社会保障制度を国民の新たなニーズにも的確に対応しつつ、経済との調和がとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが必要であり、国民に信頼され、将来にわたって安定的、効率的に運営のできる社会保障制度を構築するため、年金、医療、介護等の制度全体の改革を進めてまいりたいと考えております。
また、政府としては、有識者の皆様に御参加をいただき、社会保障のあり方につきまして、制度横断的な議論の場を設け、総合的な議論を進めてまいりたいと考えております。
基礎年金の国庫負担の引き上げと介護保険の特別対策や経済新生対策の関係についてのお尋ねがありました。
基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることにつきましては、前回改正時におきまして、財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況などにかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難と考えております。
今回の年金改正法案におきまして、基礎年金につきましては、「給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との附則が設けられたところであり、安定した財源確保のための具体的な方法と一体として検討する必要があると考えております。
一方、介護保険につきましては、与党三党の合意を重く受けとめ、来年四月からの介護保険法を円滑に実施するため、国民の皆様に新しい制度になれていただくまでの間の経過的な激変緩和措置として、政府として特別対策を取りまとめたところであります。
また、経済新生対策は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、我が国経済を本格的回復軌道に乗せるとともに、構造改革を強力に推進するものであり、その取りまとめに当たりましては、新たな構想と目標を策定し、投資効率と利用者の使いやすさに最大限配慮いたしておると考えております。
以上、ともにばらまきといった御指摘は当たらず、国民の皆様の御理解をいただけるものと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/14
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015・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、今回の改正法案を撤回すべきではないか、こういう御指摘でございますが、今回の法案は、将来の少子高齢化の進行や経済情勢などの変化を踏まえ、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、適正な水準の給付を約束するという考え方に立つものであり、制度に対する国民の信頼を揺るぎないものにするための必要な改正であると考えております。
具体的には、今回の改正案では、高齢化のピーク時にも保険料を二割程度とし、無理のない負担に抑えるとともに、現役世代の手取り年収のおおむね六割程度の給付水準を確保することができるものと確信しているものでございますし、先生の御主張に賛同することはできません。
それから、次の質問でございますが、まず年福事業団の赤字でございますが、先ほどもちょっとお答えを申し上げましたけれども、資金運用部から長期固定金利で借り入れえ市場運用を行っております関係上、近年の経済情勢によって累積欠損が生じましたけれども、国内株式が上昇いたしまして累積欠損赤字は大幅に改善をいたしておるような次第でございます。
それから、年福事業団の解散及び業務の承継に当たりまして雇用の継続に万全を期すべきだ、こういうお尋ねでございますが、職員の雇用問題は年金福祉事業団の解散と事業の整理に当たっての最重要課題である、こう考えております。雇用不安を招来することがないように、十分配慮しながら対応していく決意でございます。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 入澤肇君。
〔入澤肇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/16
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017・入澤肇
○入澤肇君 私は、自由民主党、公明党及び自由党を代表して、国民年金法の一部を改正する法律案など年金三法案について質問いたします。
二十一世紀を目前に控え、我が国においては、諸外国に例のない急速なスピードで少子高齢化が進展しており、働き手が減少すると同時に高齢者が増加しております。現役世代と高齢者世代の人口比率で見ますと、現在四人の現役で一人の高齢者を支えておりますが、二〇二五年には二人で一人、二〇五〇年には一・五人で一人を支えるという厳しい状況が予想されます。現在、我が国の税金と保険料を合わせた国民負担率は約三七%と主要先進諸国と比べますと低い水準にありますが、今後このような少子高齢化の進展に伴い、この割合は急速に増大すると見込まれております。
このような状況のもとで、将来における社会保障の全体像が見えないことが、昨今の国民の不安の根底にあると多くの識者が指摘しております。国民生活の安定を図り、活力ある社会を形成するため、年金、医療、介護を包括的、一体的に議論し、相互の間のむだを省くとともに、世代間の給付と負担の差を縮めることなど、社会保障制度全般にわたる抜本的な構造改革を進めることが喫緊の課題であると考えます。
とりわけ、ただいま議題となっております年金制度は、高齢者に安定した老後の所得を保障する基礎的な役割を担っているだけでなく、国民一般にとっても国家への信頼感を醸成するために不可欠な役割を担っているものであります。この意味において、将来にわたり安定した運営が可能となる信頼される年金制度の確立が急務であります。
そこで、年金制度にかかわる基本的問題について、総理大臣及び厚生大臣に所見をお伺いいたします。
まず第一に、今後来るべき二十一世紀においても、日本経済の活力を維持するためには、年金、医療、介護の社会保障制度全般にわたる抜本的な見直しを行い、その構造改革を進めるとともに、国民負担の増大はできる限り抑制することが必要であると考えておりますが、総理の所見をお伺いいたします。
第二に、基礎年金の財政方式のあり方についてお伺いいたします。
基礎年金は、国民の老後の基礎的な生活を支えるものであり、この部分について国は責任を持って給付を行う必要があると考えております。しかしながら、現行の社会保険方式のもとで未納、未加入の問題は深刻であり、また、現行の定額保険料の仕組みのもとでは今後の保険料のさらなる引き上げはなかなか難しく、決して安定的な財源が確保されているとは言いがたいのではないでしょうか。したがって、財源の安定化を図るとともに、保険料を軽減して国民の直接負担を軽くするためには、基礎年金の財源について、今回改正法附則に盛り込まれた国庫負担の割合を二分の一へ引き上げることにとどまらず、将来的には税も含め財源のあり方を幅広く検討することについて、厚生大臣の所見を伺います。
第三に、女性と年金の問題についてお伺いいたします。
昨今、女性を取り巻く社会状況は、雇用者の増大、平均寿命の伸長、家事労働への関与のあり方などの面で大きく変わりつつあります。現行の年金制度では、伝統的な働く夫と専業主婦という世帯類型に基づき、一般的に男性に比べて賃金の低い女性に対して年金給付を保障するという視点からさまざまな仕組みが設けられております。例えば、負担能力のない専業主婦も、第三号被保険者として、みずから保険料を負担することなしに年金を受給できる仕組みがとられております。
しかしながら、男女共同参画社会基本法が制定され、社会経済情勢の移り変わる中で、この類型にそぐわない方々からの不満、不信の声が高まりつつあることも事実であります。今後、女性の就業が当たり前のこととなることを踏まえて、就労条件の改善と相まって、将来的には年金制度において、世帯単位から個人単位への移行を図ることが必要であると考えておりますが、厚生大臣の所見を伺います。
第四に、無年金障害者の所得保障をめぐる問題についてお伺いいたします。
前回の財政再計算の行われた平成六年の改正法案において、「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること。」との附帯決議がつきました。しかしながら、今回の改正においても具体的な対応は行われておらず、いまだ結論が得られておりません。
現行の年金制度は、社会保険方式をとっており、このままでは保険料を納めることなく障害者となり無年金となった方に年金制度から給付を行うことは困難であります。したがって、この問題の検討に当たって、年金制度の中で特別な取り扱いが困難であるならば、年金制度と十分対応し得る救済策を福祉的措置によって対処するという方針を国民の前に明確にすべきであると考えておりますが、厚生大臣の所見をお伺いいたします。
第五に、支給開始年齢の引き上げと高齢者雇用についてお伺いいたします。
冒頭で申し上げましたとおり、今後高齢化が進む中で、我が国の経済の活力を維持し、安定した経済成長を図るためには、高齢者の労働力率を可能な限り高めることが必要であります。すなわち、働く意欲と能力のある高齢者には、できる限り経済社会の担い手として活躍していただくようにすべきであると考えております。
今回改正には、厚生年金の支給開始年齢の六十五歳への引き上げなどの措置が盛り込まれておりますが、この改正はこの理念に沿ったものであり、また、支える側から支えられる側に移行する時期を遅くすることによって、全体として必要な給付を余り減らさずに年金財政の改善に資することにつながると考えております。
しかし、この制度の改正に当たっては、高齢者の熟達した知識と経験を生かし、我が国経済の発展のために一層貢献していただくための雇用環境をめぐる基礎的条件の整備など、高齢者の雇用を高めるための諸施策の確立が必要であると考えます。この点について、総理大臣の所見をお伺いいたします。
最後に、今回の改正で年金福祉事業団が年金資金運用基金に改組されますが、特殊法人としての実態には何らの変化がありません。グリーンピアなど不良資産を十分に処理しないままそれを継承して、新法人が発足するわけであります。これにとどまらず、一般に特殊法人など政府の代行機関の見直しはいまだ不十分であると考えます。
今後、特殊法人等のあり方については、さらなる見直しが徹底して行われるべきであると考えますが、この点についての総理大臣の所見をお伺いして、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/17
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018・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 入澤肇議員にお答え申し上げます。
社会保障制度について、将来を見据えた問題意識のもと、構造改革についてのお尋ねがありました。
高齢化の進展に伴い給付の増大が見込まれる中で、社会保障制度を、国民の新たなニーズにも的確に対応しつつ、経済と調和がとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが重要であることは申すまでもありません。
このような観点から、国民に信頼され、将来にわたって安定的、効率的に運営のできます社会保障制度を構築するために、年金、医療、介護等の制度全体の改革を進めてまいりたいと考えておりまして、議員御指摘のとおり、これらを包括的、一体的に議論することが重要であると考えます。このため、政府としては、有識者の皆様に御参加をいただき、社会保障のあり方について、制度横断的な議論の場を設け、総合的な議論を進めてまいりたいと考えております。
議員より、今後、高齢化が進む中で、我が国の経済の活力を維持し、安定した経済成長を図るためには、働く意欲と能力のある高齢者にはできる限り経済社会の担い手として活躍していただくようにすべきであるとの御指摘がありました。
政府としては、六十歳代前半層の多様な雇用就業ニーズに対応した諸施策等、高齢者雇用対策の推進に努めてきたところであります。今後とも、高齢者が意欲と能力に応じ年齢にかかわりなく働き続けられる社会の実現を目指しつつ、当面対応すべき課題として、六十五歳まで働き続けることができる雇用就業環境を確保するため、所要の法改正を含め、高齢者雇用対策の充実にさらに努めてまいります。
特殊法人の見直しについてのお尋ねでありました。
政府としては、累次の閣議決定等を踏まえつつ、徹底して見直し、民営化、事業の整理縮小、廃止等を進めるとともに、存続が必要なものについては、独立行政法人化等の可否も含め、ふさわしい組織形態及び業務内容となるよう検討してまいる所存であります。
また、年金福祉事業団の解散に当たりましての事業の整理につきましては、年金資金運用業務を行う年金資金運用基金を設立することから、別に清算法人を設立するのではなく、同基金の附帯業務としてグリーンピア等の処理を被保険者、雇用等への影響を考慮しながら行うこととしたものであり、行政改革の趣旨に沿って対応してまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/18
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019・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 入澤議員にお答えいたします。
まず、基礎年金の財源のあり方についての御指摘でございますが、今回の改正法案におきまして、基礎年金については、「財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との附則が設けられたところであり、基礎年金のあり方については御指摘の問題を含め幅広く検討していく必要があると考えております。
かねてより、自由党さんから基礎年金を税方式とすることを御主張されておることは十分認識いたしております。今後、与党三党間での協議を尊重してまいりたい、このように考えているような次第でございます。
それから、年金制度において世帯単位から個人単位への移行を図るべきとの御指摘でございます。
自立して働く女性という視点で年金制度のあり方を考え、年金制度を世帯単位中心から個人単位へ組みかえることが望ましい方向であるということを十分に承知いたしております。
しかしながら、実際に個人単位化を進めるとした場合には、一千二百万人と言われますサラリーマンの専業主婦にも負担を求めることになるわけでございますし、遺族年金の廃止であるとか、あるいは給付水準の引き下げなどの制度の変更を行うことになるわけでございます。現実の女性の就労実態などを踏まえながら、専門家の方々の意見を幅広くお聞きしながら、慎重に検討してまいりたい、このように考える次第でございます。
それから最後に、福祉的な措置によって無年金障害者に対応すべきであるという御指摘でございますが、現行の障害者福祉政策は、障害の内容や程度に応じてホームヘルプなどの各種福祉サービスや、特に重度の障害をお持ちの方の負担を軽減するための特別障害者手当を給付することを基本としております。
なお、無年金障害者であるということだけに着目した施策を講ずることは極めて困難であることをつけ加えておきます。
この問題につきましては、なお大変難しい論点が残されているところでございますが、いずれにいたしましても、解決に向けて具体的にどのような方策がとれるのか、今後とも関係方面の御意見を十分に伺いながら、幅広い観点から検討を行ってまいりたいと考えている次第でございます。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/19
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020・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 岩本荘太君。
〔岩本荘太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/20
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021・岩本荘太
○岩本荘太君 ただいま議題となりました公的年金改革関連法案につきまして、参議院の会を代表して、小渕総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
今回の法改正は昭和六十年改革以来の大改革でありますから、国民全体に与える影響は大変大きなものでありますが、とりわけこの先間もなく給付の対象となる中高年齢層の皆様にとっては、期待した給付額が得られないことになり、その心のうちは察するに余りあるところであります。
その中高年齢層の皆様といえば、小渕総理も含めて、戦後の荒廃した我が国経済を立て直すために、身を粉にして働き、我慢を重ねて今の経済大国を築き上げた人たちであります。その人たちが今や老後を迎えるに当たって、今までの苦労が報われてそれなりの快適な生活ができると期待していたわけでありますが、いざ現実にその年齢を迎えてみたらさにあらず、今まで積み立てていたと思い込んできた年金はすべて給付に回されて既に跡形もなし。自分たちは、後継者である子供たちの負担に頼る賦課方式に支えられなければならないのであります。
そして、その負担も少子高齢化社会では子供の数が少なくなるから余り多くは期待できない。給付額も値切られてしまう。これでは、またぞろ老後に向かって我慢を続けなければならないということになるわけであります。
まさに受難の連続です。やるせない気持ちに陥っているのが今の中高年齢層の人たちの心境であろうと思います。
しかし、そんな感傷に浸っておれる経済環境でもなければ社会環境でもないことはしっかりと受けとめなければなりません。その利子を年金給付の一部に回している積立金の元本をどんどん食いつぶさなければならない状況が目の前に来ていることがわかれば、何らかの手を打たなければなりません。そのために協力を惜しまない気持ちは日本国民として当然共有しているのも事実であります。
しかし、そのためには、将来の社会の姿に対する正しい理解と認識の上に立って、平等に富を、あるいは痛みを分かち合っているという相互認識が大前提であります。今回の改正に当たって、そのための努力がなされたかどうか、大きな問題となるところであります。
そこでお伺いします。
まず、将来の我が国の経済規模、言いかえればGDPをどのように予想しているのかであります。
少子化による労働力不足で現在より減少すると考えているのか、あるいは少なくとも現状を維持すると考えているのか。もし現在と同規模を維持するとするならば、人口が横ばいであることを考慮すれば、年金を値切った分は年金受給者以外に回されることになり、今より不平等になると思われますし、もしGDPが減少するならば、景気回復によって国債の累積債務を減少させるという今の政府の言は信用できないことになると思われますが、将来の経済規模、GDPについてどのようにとらえているのか、経済企画庁長官にお伺いいたします。
次に、年金制度を改革しなければならないことは将来の少子高齢化社会を念頭に置けば当然のことでありますが、このように賛否両論が出されてもめるという事態は、将来の少子高齢化社会なるもののイメージが明確に示されていないからであります。
年金は値切られても他の社会保障で補うとか、今申し上げた経済規模がどのようになるのか等を踏まえて、どのような社会になるのか、したいのかを示すことが政府当局の果たすべき使命であります。また、審議に当たっての大変重要な要素でもあります。
総理はよく、皆様のお話を聞いた上でと申されますが、法律を出しておいてそのような逃げ口上は許されないのであります。将来の少子高齢化社会のイメージについて、総理御自身のお考えを総理御自身のお言葉でお話しいただくようお願いいたします。
次に、今回の改正は、公的年金の将来の財政危機を見越した改革であることは紛れもありません。さきに凍結された財革法も、政府は、次期財政再計算時に、厚生年金法、国民年金法その他の法律に基づく年金制度について、給付と負担の適正化等の抜本的改革を行うため必要な措置を講ずるものとする旨の趣旨が組み込まれております。まさに財政改革の一つであります。
厚生省事務当局が危機感を持って取り組む真摯な態度は評価するものでありますが、片や財政改革法を凍結して節操のない赤字国債を発行し続けているときに、年金制度のみをいじくり回して、社会的弱者である受給者と多くの勤労者に負担を強いる制度を先行させる神経は疑わざるを得ないのであります。総理並びに厚生大臣に御所見をお伺いします。
最後に、今回の改正によって、受給者、負担者双方とも将来の自己負担が増加することに不安を抱いて消費を抑制し貯蓄に走る傾向が懸念されるのでありますが、今回の改正が景気に及ぼす影響をどのようにとらえておられるか、経済企画庁長官にお伺いいたします。
女性の年金問題についても準備をいたしましたが、さきの入澤議員に対する御答弁がありましたので、これ以上の答弁は期待いたさないことにいたします。
我が会派は、国会審議に上った法律案については、国民に見えやすい審議がなされ、参議院らしい独自性のある議論が展開された上で、参議院としての判断を下すことを本旨としております。したがって、本会議、委員会等の議論を通じて賛否の態度を決定していくつもりでありますので、そのための一歩としてただいまの質問に対して明確な答弁をいただきますようお願いして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/21
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022・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 岩本荘太議員にお答え申し上げます。
将来の少子高齢化社会のイメージについてのお尋ねでありました。
少子高齢化が一層進行する中で、経済の活力を維持しつつ、一人一人が人生全般にわたりまして自立した個人として健康で生きがいを持って充実した生活を送ることができる社会を構築していくことが重要であると考えております。
このため、高齢化の進展に伴い給付の増大が見込まれる中で、社会保障制度を、国民の新たなニーズにも的確に対応しつつ、経済との調和がとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが必要であり、制度の効率化、合理化等を図るため、制度全体の総合的な改革を進めてまいりたいと考えております。
財政構造改革法の凍結と年金改革についてのお尋ねがございました。
財政構造改革法につきましては、極めて厳しい経済情勢にかんがみ、まずは景気回復に全力を尽くすためその施行を停止したところでありますが、平成十一年度末の国、地方の長期債務残高が六百八兆円にも達する見込みであるなど、我が国財政が極めて厳しい状況にあることは十分これを認識し、将来世代のことを考えましたとき、財政構造改革という大きな重い課題を背負っていると常に痛感いたしております。
他方、今回の年金改革案につきましては、長期的に安定した制度を維持していくという観点から、将来世代の過重な負担を防ぐとともに確実な給付を約束するとの考え方に立ったものであり、早期に実現することが必要であると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/22
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023・丹羽雄哉
○国務大臣(丹羽雄哉君) 財政構造改革法の凍結と年金改革につきまして、今、基本的な考え方につきまして総理から御答弁があったところでございますが、財政構造改革法につきましては、まずは景気回復に全力を尽くすという観点から凍結されたものでございます。一方で、年金制度でございますが、財政構造改革という次元でとらえるのではなく、将来にわたって長期的に安定したものにしていかなければならないものでございます。
今回の改正におきましては、将来世代の負担を年収の二割程度と無理のない範囲に抑えるとともに、現役世代の手取り年収のおおむね六割程度の給付水準にすることにより、国民の年金に対する信頼を揺るぎないものにすることができるものと考えており、早急に改正を実現することが必要と考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣堺屋太一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/23
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024・堺屋太一
○国務大臣(堺屋太一君) 将来の経済規模、GDPが現在より落ち込むようになれば、年金給付が値切られることによって国民の所得の配分の不公平が拡大するのではないか、我が国の将来の経済規模、GDPをどう見ているかという御質問がございました。
二十一世紀の初頭に日本の人口が減少し出すことは避けがたい点でございますが、総体といたしましての日本の経済規模はやはり発展するようにしなければならないと思っております。人口が減りましても、生産性、これは技術の進歩、資本の投下、あるいはより効率的な産業構造の形成等によって維持できるわけでございまして、全体としての経済成長は、二〇一〇年ごろを中心といたしまして約二%程度の実質経済成長が維持できるものと考えております。
公的年金制度のあり方に関しては、ことしの七月に閣議で決定いたしました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」におきまして、世代間の負担の公平を図るという観点からも将来世代の負担が過重にならないこととされておるところであります。将来にわたって安定した信頼される制度としていくことが要請されているところでございまして、二十一世紀を展望して、活力ある長寿社会の実現に資するものと考えております。
また、今回の年金改正が給付額を値切ったことによりまして、これが買い控え、貯蓄志向を増長いたしまして景気を悪化させるのではないか、この年金改正の景気に及ぼす影響はどうかという御質問がございました。
経済新生対策において盛り込まれております年金改正は、御指摘のとおり、支給額の将来の伸びを抑制する部分を含んでおります。少子高齢化の急速な進展の中で、国民がそれぞれの夢を追求しつつ、経済活動、社会活動に積極的に参画するためには、安心できる効率的な社会保障制度が必要であります。そのためには、公的年金は長期的に安定した制度であること、将来世代の保険負担が過剰なものにならないことなどが不可欠であります。
今日、年金に対する国民が抱いております不安の最大のものは、将来この年金支給が不確実になるのではないかという点にあると考えております。したがって、今般の年金制度の改革によりまして、将来の保険料の負担が可能な範囲内に抑えられて、その範囲内で将来の年金支給を確実にすることになりますれば、人々の安心感が高まりまして、貯蓄志向による買い控えはむしろなくなるのではないかと考えております。
今、必要なことは、すべての人々に信頼される長期的に安定した年金制度の確立でございます。今回の改革は、国民の老後に対する不安を払拭することができれば、消費マインドを高めて、消費の拡大につながり得ると考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/24
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025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114615254X01219991210/25
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