1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成三十年六月四日(月曜日)
午前十時六分開議
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○議事日程 第二十五号
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平成三十年六月四日
午前十時 本会議
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第一 働き方改革を推進するための関係法律の
整備に関する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/0
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001・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
日程第一 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。厚生労働大臣加藤勝信君。
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/1
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002・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
急速に少子高齢化が進展する中において、働く方の働き方に関するニーズはますます多様化しており、非正規雇用で働く方の待遇を改善するなど、働く方がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することが重要です。このことは、働く方の就業機会の拡大、職業生活の充実や労働生産性の向上を促進し、働く方の意欲や能力を最大限に発揮できるようにし、ひいては日本経済における成長と分配の好循環につながるものであります。また、過労死を二度と繰り返さないため、長時間労働の是正が急務です。
このような社会を実現する働き方改革を推進するため、この法律案を提出いたしました。
以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、働き方改革を総合的かつ継続的に進めていくため、その基本的な考え方を法律上明らかにするとともに、国が労働に関する施策の基本的な方針を策定することとしています。
第二に、働く方がその健康を確保しつつ、ワーク・ライフ・バランスを図り、能力を有効に発揮できる労働時間制度等を構築します。
具体的には、長時間労働を抑制するため、時間外労働に上限を設け、これに違反した場合には罰則を設けるほか、月六十時間を超える法定時間外労働に係る五割以上の割増し賃金率の中小事業主への適用猶予の廃止や、年五日の年次有給休暇の時季指定の事業主への義務付け等を行うこととしています。
また、高度な専門的知識等を要する対象業務に就き、かつ、一定額以上の年収を有するとともに職務が明確に定められている方を対象として、法令に定める手続を経た上で、労働時間等に関する規定を適用除外とする一方、年間百四日の休日確保等の健康確保措置を義務付ける新たな制度の創設を行うとともに、フレックスタイム制の清算期間の上限について一か月から三か月に延長することとしています。
さらに、勤務間インターバルの努力義務の創設や、産業医、産業保健機能の強化等を行うこととしています。
第三に、雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指します。
具体的には、短時間労働者、有期雇用労働者及び派遣労働者について、不合理な待遇や差別的取扱い等を禁止するとともに、通常の労働者との間の待遇の相違の内容、理由等を説明することを事業主に義務付けるほか、行政による裁判外紛争解決手続の整備等を行うこととしています。
最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成三十一年四月一日としています。
以上が、この法律案の趣旨でございますが、この法律案につきましては、衆議院において、高度プロフェッショナル制度について、本人の同意を撤回できることを明確化するなどの修正が行われたところであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/2
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003・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。石田昌宏君。
〔石田昌宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/3
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004・石田昌宏
○石田昌宏君 自由民主党の石田昌宏です。
私は、自由民主党・こころを代表して、ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について質問いたします。
安倍総理は、今国会冒頭の施政方針演説において、働き方改革法案を戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革とおっしゃいました。
現在の我が国の労働法制では、超過勤務が発生すればその分だけ賃金が増えるため、生産性向上への意識が高まりにくいと言われています。また、正規雇用者と非正規雇用者の格差も生産性の低さの要因であるとも言われています。一方、労働者人口が減る中で、子育て中だからフルタイムでは働けない、経験を生かして働きたいけど、体力的に短時間でないと無理だといった声もよく聞こえます。つまり、我が国の労働環境には、生産性が低いことと画一的な働き方という二つの旧弊があるわけです。
しかし、多様な働き方が可能となれば、女性や高齢者の方々の労働市場参加が期待できます。仕事の仕方の改善やIT等の活用が進めば、短時間で効率よく利益を上げることができるようになり、長時間労働が是正されます。すなわち、働き方改革により生産性の大きな向上が期待できるわけです。
そこで、まず安倍総理にお伺いします。
この七十年ぶりの働き方改革は、一億総活躍社会や生産性革命の推進にとってどのような位置付けがなされるのでしょうか。
長時間労働は、労働者の健康を損ねたり、正社員を選択しにくくしたり、キャリアを中断させてしまったり、出産に踏み切れなかったりするなど、様々な問題につながります。
現行の仕組みでは、労使合意による時間外労働の限度について罰則なしの大臣告示で対応されているため、実質的に上限なく時間外労働が可能となっていました。これまでも労働政策審議会で見直しの議論がなされてきたところですが、合意を見ることができず、長い間の課題となっていました。
今回の働き方改革法案では、労働界、経済界の合意の下、史上初めて、三六協定でも超えてはならない、時間外労働の限度を罰則付きで設けます。長時間労働に対する規制強化をめぐる歴史にとって、画期的な出来事です。これにより、ワーク・ライフ・バランスが進み、生産性向上につながる工夫も進むものと期待しています。
そこで、安倍総理に、改めて、労働界や経済界による合意に至る経緯について詳しくお示し願います。
今回の法案で、時間外労働の罰則付き上限規制を行います。さらに、勤務間インターバル制度の導入への事業主努力義務も加味すれば、大きな前進です。
その上で、大切なことは、これをしっかりと事業主に守らせる、守ることのできる環境を整備することであると思います。しかしながら、人手不足に直面している中小企業にとって、従来の労働集約型のまま、仕事の仕方では、更に人員不足が深刻化する懸念があります。
そこで、中小企業でもしっかりと長時間労働の是正ができるようにどのような支援策を講ずるのか、お伺いします。あわせて、大企業による働き方改革のしわ寄せにより、中小企業が大企業による無理な発注と長時間勤務の板挟みとならないようどのような措置を講ずるつもりでしょうか。安倍総理に伺います。
私の看護師としての勤務経験から申し上げたいと思いますが、医療や介護の現場では、二十四時間ローテーションにより職場を回しています。当然、夜間勤務もありますが、法律上八時間勤務につき一時間認められている休憩すらなかなか取ることができないという実態があります。
経済活動が二十四時間化する中、多くの産業で夜間勤務も増えているのではないかと思います。働き方改革を進める上で、是非とも夜間勤務の方に配慮した施策を進めてほしいと希望しています。
そこで、夜間勤務の方々の健康維持や労働環境の改善のため、勤務間インターバル制度なども含め、休憩時間や仮眠時間の確保、休憩場所の設置などに取り組む意思について、加藤厚生労働大臣にお伺いします。
最後に、高度プロフェッショナル制度についてお尋ねいたします。
ファンドマネジャー、証券アナリスト、エコノミストといった方々の仕事は、最も成果を上げるために、自分の判断で仕事の仕方を決めて、その成果で勝負するというスタイルが世界標準です。したがって、グローバル経済では、国際化に対応した適切な働き方の枠組みを国は提示しなければなりません。労働時間規制の強化だけではなく、働き方の多様化への対応も必要です。
今回法案に盛り込まれた高度プロフェッショナル制度は、さきに述べたような対象業務に就き、かつ、一定額以上の年収を有するとともに職務が明確に定められている方を対象として、自らの希望を確認する手続を経た上で適用されるものです。
ここで大切なのは、過労死を起こさないことはもちろん、さらに、日々の健康を保ちながら働けるための健康管理を進める政策を併せて展開することです。産業医や産業保健師の充実、健康診断の推進、休憩時間やインターバルの確保などを進めなければなりません。
そこで最後に、なぜ高度プロフェッショナル制度を今導入しなければならないのか、また同時に、その健康管理のためにどのような措置が講じられるのか、安倍総理にお伺いして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/4
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005・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 石田昌宏議員にお答えをいたします。
働き方改革の意義についてお尋ねがありました。
働き方改革は、高齢者も若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現のための最大のチャレンジです。働く人の視点に立って、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現していきます。
また、働き方改革により長時間労働を是正すれば、経営者はどのように働いてもらうかに関心を高め、労働生産性が向上します。働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段です。
議員御指摘のように、我が国の労働環境の特徴である画一的な働き方と生産性向上の低迷について、安倍内閣の進める働き方改革を通じて是正していく決意であります。
労働界、経済界との合意についてお尋ねがありました。
今回の法案では、史上初めて、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの上限規制を設けますが、これは長年議論をしてきましたが、残念ながら合意には至らなかったものです。
このため、私自らが議長となり、労使トップにお集まりいただいた働き方改革実現会議を設置し、計十回にわたり徹底した議論を行いました。労使トップの間に当初意見の相違がありましたが、働き方の実態を最もよく知っている両者が、実効性があり、かつ、ぎりぎり実現可能なものとして合意し、働き方改革実行計画を決定したものです。
私としては、是非ともこの法案を成立させ、我が国の長時間労働の慣行を是正し、ワーク・ライフ・バランスの改善を図ってまいりたいと考えています。
中小企業への支援についてお尋ねがありました。
人手不足に直面している中小企業において円滑に働き方改革の取組が進むよう、全国四十七都道府県に設置する働き方改革推進支援センターや労働基準監督署においてきめ細かな個別相談に当たってまいります。
また、取引関係の弱い中小企業・小規模事業者は、発注企業からの短納期要請や顧客からの要求などに応えようとして、長時間労働になりがちです。このため、下請の取引条件を改善するため、下請Gメンの体制を増強して継続的に取引実態の把握を行っていく、主要産業界ごとに自主行動計画を策定いただき、取組を徹底するなど、商慣行の見直しや取引条件の是正化を一層強力に推進し、中小企業・小規模事業者に十分配慮してまいります。
高度プロフェッショナル制度についてお尋ねがありました。
第四次産業革命の出現やグローバル化の下、活力ある日本を維持していくためには、高い付加価値を生み出す経済を追求していかなければなりません。
付加価値の高い革新的な分野で、高度専門職の方であって、希望する方が、仕事の進め方等を自ら決定し、その意欲や能力を有効発揮することによって、新しい産業が発展し、ひいては日本全体の生産性向上につながっていくものと考えます。
このような考え方の下、高い年収の確保や職務範囲の明確化等の要件を設定した上で、自律的に働くことができる高度プロフェッショナル制度を働き方の選択肢として整備することが必要です。
また、高度プロフェッショナル制度においても長時間労働を防止し健康を確保することは重要であり、在社時間等の把握、一定以上の休日の確保などを使用者に義務付けることとしています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/5
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006・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 石田昌宏議員より、夜間勤務への対策についてお尋ねがありました。
経済活動がグローバル化する中で、夜間に勤務する方が増えており、健康確保が重要であります。
このため、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する観点から、勤務間インターバルの制度導入について環境整備を進めてまいります。具体的には、本法案により、事業主に対して勤務間インターバル制度の導入を努力義務として課すとともに、勤務間インターバルを導入する中小企業に対して、就業規則の作成、変更や労務管理用機器の導入などの費用の一部を助成するとともに、好事例の周知にも努めてまいります。
また、労働安全衛生法令においては、労働者の健康保持のため、夜間に労働者に睡眠を与える必要がある場合など一定の場合に、事業場に睡眠、仮眠の設備や休養室を設置することを義務付けており、この規定の遵守を徹底してまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/6
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007・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 三浦信祐君。
〔三浦信祐君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/7
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008・三浦信祐
○三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について質問いたします。
我が国は、今、少子高齢化による急激な人口減少、これに伴う生産年齢人口、労働人口の減少が進んでいます。持続可能な日本の未来をつくるためには、働き過ぎの社会から、健康を確保し、生産性向上による新しい働き方への対策が急務であり、特に若者世代が、将来に希望を持ち、人生設計ができる労働環境、賃金体系への変革が待ったなしの状況です。安倍総理は、一億総活躍社会、人生百年時代構想を推進し、日本が直面する課題に取り組まれております。そして、安倍内閣は、今国会を働き方改革国会として、日本の労働生産性向上に必要不可欠な働き方の大改革へ取り組むべく、本法案を国会へ提出されました。
そこで、働き方改革について、今取組を進めるべき意義と目的、また目指すべき社会について、安倍総理に答弁を求めます。
次に、時間外労働の上限規制について伺います。
現行制度では、労使協定書、いわゆる三六協定の締結により、実質、上限なく時間外労働が可能であるのに対し、本法案では、時間外労働の上限を月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、臨時的な特別な事情の場合でも、年七百二十時間、単月百時間未満、複数月で平均八十時間と、明確に上限を設けております。労使が一致し、罰則付き時間外労働上限規制を創設することは、一九四七年の労働基準法制定以来の大改革であり、未来をつくる歴史的なことです。
労働生産性が高く、時間外労働がなく、定時で就業を終えて、適切な収入が得られていることが本来あるべき健全な労働の在り方です。その上で、時間外労働を是認し、罰則規定を定める以上、残業時間の上限設定水準が妥当でなければなりません。
労働環境の変革をもたらす時間外労働上限規制の設定の根拠、妥当性について、加藤大臣に伺います。
労働者の健康あって、社会や企業の健康があります。そのためにも、労働者の健康確保措置の実効性を確保しなければなりません。公明党の主張により、本法案に、労働時間の状況を省令によって把握する義務が明記されました。具体的には、医師による面接指導の実施とともに、現認や記録を基礎として把握するとしていますが、省令で定める方法が実効性のあるものでなければなりません。
労働時間の状況把握を確実に実施していくための具体的取組を加藤大臣に伺います。
本法案では、前日の終業時刻と翌日の就業時刻との間に一定時間の休息を確保する勤務間インターバル制度の導入について、事業主に努力義務を課すと規定しています。制度普及促進のためには、事業主が責務を実行できる環境整備や、特に中小企業が制度を導入しやすくなる支援が必要であると考えますが、加藤大臣に答弁を求めます。
時間ではなく、成果で評価される働き方を望む方々のニーズに応えるため、職務の範囲が明確で高収入労働者が高度の専門知識を必要とする業務に従事する場合に、年間百四日の休日を確実に取得させる等の健康確保措置を講じること、本人の同意があり、労使委員会の決議を要件として、労働時間、休日、深夜の割増し賃金の規定を適用除外とする高度プロフェッショナル制度が本法案に盛り込んであります。対象業務とその対象者が規定されていますが、対象の解釈やその範囲が不用意に拡大していくのではないかなど、国民に心配が広がっています。
これらを踏まえ、対象業務、対象労働者の明確化と健康確保措置がどのように実施されていくのか、また、不適切に適用させないために指導監督はどのように行っていくのか、国民の不安を払拭するよう、安倍総理に明確な説明を求めます。
次に、中小企業・小規模事業者の働き方改革の実現について伺います。
日本の企業の九九・七%は中小企業・小規模事業者であり、雇用の全ての七割を担っています。中小企業・小規模事業者の元気がそのまま日本の活力になると言えます。公明党は、約三千人の全議員が百万人訪問・調査運動を行っており、全国各地の中小企業を訪ね、中小企業支援メニューを平易にまとめた中小企業ハンドブックをお届けしながら、課題や要望について現場の声を伺っています。その中で、国や地方自治体の支援メニューを知らなかったとの声が多数寄せられています。
経営支援に関する的確な情報を得ることや、各種機関の窓口、専門家へ相談する時間や機会をなかなか取れないのが中小企業経営者の方々が抱える課題の一部です。また、中小企業では、法令に関する知見が十分ではない、労務管理体制が整備されているとは言い難い場合も多いと思います。
事業者の方々に対し、労働時間上限規制の理解促進と働き方改革の確実な実施をしていただくためにどのように取り組むのでしょうか。加藤大臣に答弁を求めます。
中小企業に適用されている月六十時間超の時間外労働に対する割増し賃金率の猶予措置については、二〇二三年四月一日に廃止されることとなっており、大企業と同様、五〇%となります。この間に、経営体力の増加、人手不足の解消、生産性向上なくして猶予措置廃止後に大きなダメージや実現性に不安が生じます。このような事態は避けなければなりません。中小企業での働き方改革は、商慣行、下請取引の改善が不可欠であり、地域の実情に即した対応なしに実現できません。
納期設定、価格設定等について不当な取引環境とならないよう、政府として強力に環境整備すべきだと考えますが、安倍総理、いかがでしょうか。
日本では、働き方の多様化が進み、あらゆる雇用形態が存在します。その中で、全労働者のうち、非正規雇用労働者が約四割を占めています。しかし、非正規労働者の待遇は正社員の時給換算賃金水準の約六割にとどまり、欧州の約八割には及ばず、非正規と正社員との格差が著しい状況です。業務内容が同一でも待遇差があるのが現状であり、不合理な待遇差の解消は社会的課題です。同一労働同一賃金の実現が国民生活の安心、安定につながると考えます。本法案では、同一企業内において有期雇用でも均等待遇、均衡待遇の規定の明確化が図られるとしています。
本法改正によって非正規労働者がどのように処遇改善されるのか、また、雇用主が取り組まなければならないことは何かを国民に対して明確に示すべきです。安倍総理の説明を求めます。
本法案は、国民生活に直結し、将来の日本を形作る重要法案です。国会審議を通じ、政府による丁寧な説明、質疑を求めるとともに、国民の理解が進み、働き方改革が実行できることを願い、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/8
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009・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 三浦信祐議員にお答えいたします。
働き方改革の意義等についてお尋ねがありました。
働き方は、日本の企業文化そのものであり、日本人のライフスタイルに根付いたものです。長時間労働についても、その上に様々な商慣行や労働慣行ができ上がっています。それゆえ、多くの人が働き方改革を進めていくことは、ワーク・ライフ・バランスにとっても生産性にとっても良いと思いながら、実現できなかったものです。もはや先送りは許されません。
人生百年時代においては、新卒で皆が一斉に会社に入り、その会社一社で勤め上げて、定年で一斉に退職して老後の生活を送るという単線型の人生は、時代に適合しなくなっています。それを一斉にみんなで送るということではなく、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択ができるようになるべきと考えます。
私の目指す働き方改革は、誰もが、幾つになっても、学び直しをしながら新たなチャレンジをする選択肢を確保できるようにすることです。日本的雇用慣行には人を大切にするという優れた点があり、これを大切にしながら、時代の変化を踏まえ、働く人々の視点に立って、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現していきます。
高度プロフェッショナル制度についてお尋ねがありました。
この制度の対象者となるには、第一に、年間平均給与額の三倍を相当程度上回る水準、現状では千七十五万円以上の方であること、第二に、専門性があり、通常の労働者と異なり、雇用契約の中で職務の記述が限定されていること、いわゆるジョブディスクリプションがあること、第三に、何より本人が制度を理解して個々に書面等により同意していることが必要です。加えて、対象業務は、企業、市場等の高度な分析業務など、高度な専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果の関連性が高くない業務としています。
これらの要件は本法案に規定されており、法改正することなく要件を変更することは不可能となっています。
また、高度プロフェッショナル制度においても長時間労働を防止し健康を確保することは重要であり、在社時間等の把握、一定以上の休日の確保などを使用者に義務付けることとしています。
仮にこれらの要件に違反すれば、制度の適用は認められないこととなります。また、法定労働時間に違反していれば、罰則の対象となります。制度を導入した事業場に対する指導監督に万全を期してまいります。
働き方改革に伴う取引環境の整備についてお尋ねがありました。
働き方改革を進めるに当たり、現場の中小企業・小規模事業者からは、大企業の働き方改革の影響によって短納期発注などのしわ寄せ、生産性向上やコストダウンといった努力の大企業や親事業者による吸い上げに対する懸念や不安の声も聞こえており、取引条件の改善が重要であると考えます。
大企業と中小企業の間で公正な取引が行われるよう、関係法令の厳格な運用に加え、主要産業界に自主行動計画の策定とその実行を要請し、今後は、策定業種の拡大やフォローアップを行うとともに、下請Gメンの体制を増強し、継続的に取引実態の把握を行い、商慣行の見直しや取引条件の適正化を一層強力に推進してまいります。
二〇二三年四月の割増し賃金率の猶予措置の廃止後も、中小企業が働き方改革に前向きに取り組むことができるよう、ものづくり・商業・サービス補助金やIT導入補助金、固定資産税の減免措置などの生産性の向上に向けた取組と取引適正化の取組を車の両輪として進めてまいります。
非正規雇用労働者の処遇改善についてお尋ねがありました。
まず、正規、非正規という雇用形態によって不合理な待遇差がある場合には、その是正を求める労働者が裁判で争えることを保障する規定を整備します。
また、事業主に説明義務を課すことにより、裁判や労使の話合いにおいて待遇差の是正を求める労働者が不利にならないよう、企業側しか持っていない情報を知ることができ、労働者が待遇の異なる理由の説明を確実に受けられるようにします。
さらに、実際に裁判に訴えるには経済的負担を伴うため、裁判外の紛争解決手段、いわゆる行政ADRを整備し、労働者が身近に無料で利用できるようにします。
こうした措置を講じることで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋め、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/9
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010・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 三浦信祐議員より、時間外労働の上限規制についてまずお尋ねがありました。
今回、史上初めて、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の限度を設けます。これは、戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革になります。
時間外労働の上限規制は、原則として月四十五時間かつ年三百六十時間までとします。
その上で、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意しても、上限は年七百二十時間であり、その範囲内において、複数月の平均では休日労働を含んで八十時間以内、単月では休日労働を含んで百時間未満、原則としての延長時間を超えることができる回数は一年について六か月以内に限るとしており、これらに違反する場合は罰則を科すこととしております。
これは、実効性があり、かつ、ぎりぎり実現可能なものとして労使が合意した内容であり、それに沿って法定するものであります。
また、今回の労使合意は、上限水準までの協定を安易に締結することを認める趣旨ではありません。このため、法案では、可能な限り労働時間の延長を短くするため、労働基準法に根拠規定を設け、新たに定める指針に関して、必要な助言、指導を行うこととし、長時間労働の削減に向けた労使の取組を促してまいります。
労働時間の状況の把握についてお尋ねがありました。
働く方の労働時間の状況を適切に把握することで、健康確保措置がしっかりと行われることが必要であります。
この点について、御党からの申入れなどを踏まえ、労働安全衛生法を改正し、事業者に対し、労働者の労働時間の状況を厚生労働省令で定める方法により把握することを法律によって義務付けることとしました。この厚生労働省令で定める方法については、タイムカード、パソコンの使用時間等の客観的な記録によることなどを定める方向で検討してまいります。
これにより、医師の面接指導及びその意見に基づいて事業者が行った措置が適切に実施されるようにすることを通じて、労働者の健康確保を図ってまいります。
勤務間インターバルについてお尋ねがありました。
勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であります。このため、本法案では、事業主に対して、勤務間インターバル制度の導入を努力義務として課し、制度導入についての環境整備を進めていくこととしております。
さらに、平成二十九年度より、勤務間インターバルを導入する中小企業に対する助成金を創設しており、就業規則の作成、変更や労務管理用機器の導入などを行った中小企業に対して、その費用の一部を助成するとともに、好事例の周知にも努めております。
今回の春闘においても、勤務間インターバル制度を新たに導入する企業が増えており、そうした労使の取組を更に促進してまいります。
中小企業・小規模事業者への対応についてお尋ねがありました。
一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、我が国の雇用の七割を担う中小企業・小規模事業者の皆様にも、長時間労働の是正を始めとした働き方改革に取り組んでいただくことが必要であります。
中小企業・小規模事業者においては、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分ではない場合も多いことから、施行までの十分な準備期間を確保するため、中小企業に対する時間外労働の上限規制の施行期日を、法案要綱よりも一年延期し、平成三十二年四月一日としております。
その上で、今回の法改正の趣旨、内容の理解の促進のため、全国に設置する働き方改革推進センターを中心に、好事例や支援策を提示するなどの対応を行ってまいります。
また、今年度より、全ての労働基準監督署に特別チームを新たに編成しており、専門の労働時間相談・支援班がきめ細かな相談支援を行っていくこととしております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/10
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011・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 小林正夫君。
〔小林正夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/11
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012・小林正夫
○小林正夫君 国民民主党・新緑風会の小林正夫です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について質問いたします。
国民民主党は、党綱領において、自由、共生、未来への責任を基本理念として掲げており、民主主義を守り、現在と未来の課題を着実に解決し、国民全世代の生活を向上させることを目指して、中道改革政党として現実的政策を実行してまいります。政府におかれましても、是非私たちの意見に真摯に耳を傾け、前向きな答弁をお願いをいたします。
さて、本法律案は、衆議院において、我が党同僚議員が質疑を続けるなど、まだ審議が十分に尽くされたとは言えない中、厚生労働委員会において強行採決されたものであります。その手続は、およそ民主主義の理念とは懸け離れており、残念ながら、安倍政権からは国民をおもんばかる姿勢がみじんもうかがえません。
そもそも、本法律案については、労働時間等総合実態調査をめぐる虚偽データ問題が立法事実そのものを揺るがしており、これまでも、膨大な質疑時間が問題の究明に費やされてきました。しかしながら、本法律案の採決が委員会で強行された当日も、朝の理事会においておかしなデータや説明が提示されるなど、森友問題や加計問題と同様、国会ひいては国民に対する説明責任がまともに果たされてはおりません。
こうして安倍政権が引き起こした底なし沼のような問題の数々により、この国会における質疑時間がどのぐらい浪費されたと安倍総理は認識しているのか、また、このような状況を招来させるに至った総理自身の責任の自覚について、まず初めに伺います。
次に、時間外労働規制について伺います。
現在の労働基準法では、特別条項付きの三六協定により、時間外労働が事実上の青天井となってしまっており、これが長時間労働を生み出す大きな要因となっております。こうした状況に対し、政府案において罰則付きで時間外労働の上限が定められたことについては一定の評価をいたします。しかし、中小企業については、時間外労働の上限規制の施行が大企業よりも一年後に先延ばしされており、その間、中小企業で働く労働者が長時間労働を強いられるおそれがあります。
労働者保護の必要性という観点では、大企業も中小企業もその重みに違いはありません。中小企業で働く労働者を保護するため、速やかな時間外労働の上限規制の施行が必要と考えますが、総理の見解を伺います。
また、安全で健康で働ける環境をつくっていくこと、それこそが働き方改革の真の目的であります。そのためには、働く者の働き方にかかわらず、全ての働く者の労働時間管理を使用者に義務付ける、このことが必要ではないかと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、時間外労働の上限規制の適用が猶予されている自動車の運転業務について伺います。
私たちは、どのような業種で働いていようと、どのような規模の会社で働いていようと、またどのような業務に従事しようと、同じ労働者としてひとしく安心して健康に働く権利があると考えます。しかし、時間外労働上限規制の適用猶予業務である自動車運転業務を見ると、労働者の健康がないがしろにされているのではないかと思えてなりません。
道路貨物運送業は、過労死等で長年ワーストワンになるとともに、労働災害に係る死亡災害も平成二十八年の九十三人から平成二十九年には百三十人と四割も増えており、常に危険と隣り合わせの業務であることから、とりわけ長時間労働の是正が喫緊の課題です。しかし、自動車運転業務については、一般の労働者の年七百二十時間よりも緩い九百六十時間以内という規制が施行期日の五年後に適用されることになっています。
過労死を二度と繰り返さないため、長時間労働の是正が急務と言いながら、これで過労死等防止対策の観点から十分だと考えているのか、国交大臣の見解を求めます。
高速道路でのトラックやバスの事故が度々問題になっています。今朝も、残念ながらこのようなニュースが入っておりました。ドライバーの皆さんはぎりぎりのところで昼夜を問わず働いています。ドライバーの命を守るには、法律が最後のとりでです。
国民民主党が対案として提出しております安心労働社会実現法案では、自動車の運転業務について、五年の適用猶予後に、年七百二十時間、単月百時間未満、二か月ないし六か月平均八十時間の一般則を適用することとしています。過労死を繰り返さない、事故を防ぎたいと言うなら、一般則の適用は最低限必要なことではないですか。この問題にどのように対処されるのか、厚労大臣の答弁を求めます。
次に、高度プロフェッショナル制度について伺います。
高度プロフェッショナル制度は、労働時間と賃金との関係を切り離すものであり、対象となる労働者には、労働基準法で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増し賃金に関する規定が全て適用されないこととなります。時間外労働の上限規制を設けることで労働者の保護をうたいながら、一方ではこのように労働者の保護を究極に緩めてしまうという矛盾した内容が含まれており、これでは、長時間労働の抑制に大きな抜け穴をつくることになると考えます。
国力の源は労働にあり、私はこういう政治姿勢で今日まで政治活動を行ってまいりました。まさしく日本の国力をそぐような労働者保護ルールの改悪を許してはなりません。
労働時間規制の適用が一部除外される裁量労働制適用労働者や管理監督者の立場にある者の過労死が生じている中、労働時間規制の適用が全て除外される高度プロフェッショナル制度を創設することは過労死を促進する、そう断言せざるを得ません。
過労死で亡くなられた方の御遺族やその方々を支援する関係者の皆様の御協力もあって、平成二十六年六月に過労死等防止対策推進法が全会一致で可決され、同年十一月一日に施行されました。同法に基づき制定された過労死等の防止のための対策に関する大綱では、「人の生命はかけがえのないものであり、どのような社会であっても、過労死等は、本来あってはならない。過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として、今後、この大綱に基づき、過労死等の防止のための対策を推進する。」とあります。しかし、法律や大綱の制定以降も過労死は発生しており、平成二十八年度に過労死等と認定された労災の支給決定件数は百九十一件に及んでいます。
過労死ゼロを目指すということであれば、労働時間規制の更なる緩和を図るのではなく、より実効的な長時間労働の是正を図るべきであり、高度プロフェッショナル制度の創設は不要です。過労死等防止対策推進法の制定から数年しか経過していない中で、過労死を誘発するような高度プロフェッショナル制度を創設することに一体いかなる意義があるのか、総理の答弁を求めます。
政府は、いわゆる同一労働同一賃金の実現を図るとしておりますが、我が党も、衆議院における対案を通じ、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の待遇格差の是正を求めております。非正規雇用労働者の待遇改善は待ったなしの課題であると総理も述べられておりますが、こうした格差の解消が正規雇用労働者の待遇の低下で実現されるようなことがあってはならない。同一労働同一賃金の実現により、非正規雇用労働者の待遇改善が確実に行われるよう求めますが、政府の取組と総理の決意を伺います。
また、自らの職務が適正に評価されていると実感するためには、非正規雇用労働者が、自身の待遇や正規雇用労働者との待遇差の内容、その理由を明確な形で知ることが重要です。その意味で、待遇の説明義務の強化は同一労働同一賃金の法整備の中で重要な点であると思いますが、閣法では説明方法についての定めが規定されておりません。
説明義務の実効性を確保しなければ、口頭での説明や不十分な資料に基づく説明がなされる懸念もあります。しかし、不十分な説明で果たして非正規雇用労働者の方々の納得が得られるのでしょうか。言った言わないではなく、やはりきちんと書面で説明することが必要なのではないかと考えます。説明の方法についてどのようにお考えなのか、厚労大臣の答弁を求めます。
最後に、職場におけるパワーハラスメント対策について伺います。
近年、パワハラによる健康被害が多発し、それが原因となって自殺に至る事案も生じているなど、大きな問題となっております。
誰でもが安心で健康に働ける労働環境の確保が強く求められているわけですが、今回の働き方改革関連法案には、喫緊の課題である職場におけるパワハラ対策が盛り込まれておりません。そこで、パワーハラスメントに実効的な法律上の対策を講じる必要性について、総理の認識を伺います。
また、このために、私たちは労働安全衛生法改正案、いわゆるパワハラ規制法案を参議院に提出しております。これは、二〇一三年五月、国連の社会権規約委員会の日本への長時間労働及び過労死に対する勧告の中にある、職場におけるあらゆるハラスメントに対する法整備の不備に対応するものです。職場内でのパワハラだけでなく、親会社や取引先からのパワハラ、顧客やユーザーからの過剰クレームなどから働く者を保護するための措置を講じるよう事業者に義務付ける内容です。当然、業務上の優位性を利用したセクハラも対象です。私たちの法案についても政府案とともに充実した議論を行うことを求めますが、総理の見解を伺います。
政府案では、雇用対策法の目的規定に労働生産性の向上という文言が加えられようとしておりますが、これは、安倍政権が経済を優先し、人を大事にする視点が欠けていることの表れではないかと懸念されます。
私たち国民民主党は、働く者の立場に立つ政党であります。今国会においても、安心労働社会実現法案として、本院におけるパワハラ規制法案に加え、衆議院においても個別の法案を提出してきました。あらゆる労働者の環境改善の向上に取り組んでいくことで、労働災害や過重労働がなくなり、それが企業業績の上昇につながっていく、それこそが真の働き方改革ではないでしょうか。誰もが安心して働き、暮らしていける社会を目指すならば、法案から高度プロフェッショナル制度を削除すべきです。
このことを改めて強く申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/12
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013・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小林正夫議員にお答えいたします。
厚生労働省におけるデータ問題により国会における質疑時間がどのくらい浪費されたと認識しているのかとお尋ねがありました。
厚生労働省におけるデータの問題により国会における審議にどれぐらい費やされたかについてお答えすることは困難ですが、国会そして国民の皆様に御迷惑をお掛けしたことについては、行政の長として深くおわびを申し上げます。
国民の皆様から厳しい目線が向けられていることを真摯に受け止めながら、厚生労働省において再発防止に取り組ませるとともに、厚生労働大臣にはその責務をしっかり果たすようにさせてまいりたいと思います。
時間外労働の上限規制についてお尋ねがありました。
中小企業の皆さんにも長時間労働の是正に取り組んでいただくことが重要です。一方で、中小企業においては、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分ではないといった事情を抱えています。十分な準備期間を確保するため、中小企業に対する時間外労働の上限規制の施行期日を大企業よりも一年延期しました。
中小企業における取組が進むよう、全都道府県に設置する働き方改革推進支援センターや労働基準監督署において、きめ細かな相談支援を行ってまいります。
労働時間管理についてお尋ねがありました。
本法案については、労働安全衛生法を改正し、労働者の労働時間の状況を客観的な方法により把握することを事業者に義務付けることとしています。
これにより、労働時間が長時間に及んでいる者に対する医師の面接指導を適切に実施し、労働者の健康確保に遺漏なきを期してまいります。
高度プロフェッショナル制度についてお尋ねがありました。
活力ある日本を維持していくためには、高い付加価値を生み出す経済を追求していかなければなりません。第四次産業革命により、これまでは自動化できなかった仕事の自動化が可能となる中で、研究、開発など創造的に付加価値を生み出していく仕事に、より力を注がなければなりません。時間ではなく成果で評価される働き方を選択できるようにする高度プロフェッショナル制度の導入は、我が国にとって待ったなしの課題であります。
また、高度プロフェッショナル制度においても長時間労働を防止し健康を確保することは重要であり、在社時間等の把握、一定以上の休日の確保などを使用者に義務付けることとしています。
これらの措置を通じて、高度プロフェッショナル制度で働く方々の健康確保に遺漏なきを期してまいります。
非正規雇用労働者の待遇改善についてお尋ねがありました。
同一労働同一賃金の目的は、非正規雇用労働者の待遇改善であります。このため、まず、正規、非正規という雇用形態によって不合理な待遇差がある場合には、その是正を求める労働者が裁判で争えることを保障する規定を整備します。
また、裁判や労使の話合いにおいて待遇差の是正を求める労働者が不利にならないよう、企業側しか持っていない情報を知ることができ、労働者が待遇の異なる理由の説明を確実に受けられるようにします。
さらに、実際に裁判に訴えるには経済的負担を伴うため、裁判外の紛争解決手段、いわゆる行政ADRを整備し、労働者が身近に無料で利用できるようにします。
こうした措置を講じることで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋め、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現してまいります。
パワハラ対策と議員立法についてお尋ねがありました。
職場におけるパワーハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであり、あってはならないことと考えております。そのため、労使双方への周知啓発を進めているところです。
さらに、職場のパワーハラスメント防止対策を強化するため、有識者や労使関係者が参加した検討会において、対策の在り方や論点等に関する報告書を本年三月、取りまとめたところです。今後、この報告書を踏まえて、労働政策審議会において具体的な対策について議論を進めてまいります。
また、御指摘の法案については、議員立法に関するものであることから、国会において御判断いただくべきものと考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/13
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014・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 小林正夫議員より、まず、自動車の運転業務についてお尋ねがありました。
現在、自動車の運転業務については、大臣告示である労働時間の延長の限度等に関する基準の適用除外となっております。今回の法案において、長年の取扱いを改め、罰則付きの上限規制を適用することは、大きな前進と考えております。
一方で、自動車の運転業務については、現に他の産業に比べて労働時間が長い実態があり、その背景には、取引慣行の問題など、個々の事業主の努力だけでは解決できない課題があります。
このため、自動車の運転業務については、施行期日の五年後に年九百六十時間の規制を適用することとしています。これは、労使トップが参画する働き方改革実現会議で取りまとめられ、その後、労働政策審議会で議論し、答申を得た水準であります。
また、五年の猶予期間においても、長時間労働を是正するための環境整備に関係省庁と連携して取り組み、将来的な一般則の適用に向けて努力をしてまいります。
同一労働同一賃金に関する説明義務についてお尋ねがありました。
今回の改正法案では、非正規雇用労働者に求められた場合の正規雇用労働者との待遇差の内容、理由等の説明義務を事業主に課すとともに、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁止することとしております。
待遇差の内容、理由等の説明の方法については、例えば書面では理解しにくい内容を口頭で補足しながら説明した方が非正規雇用労働者の理解や納得感が増す場合も考えられることから、一律に説明の方法を定めず、非正規雇用労働者が求める説明の内容や方法など、個別の事情に応じた対応がなされていくことが適切であると考えております。
いずれにせよ、都道府県労働局において指導等を行い、待遇差に関する説明が確実に受けられるようにしてまいります。(拍手)
〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/14
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015・石井啓一
○国務大臣(石井啓一君) 小林議員にお答えをいたします。
自動車の運転業務への時間外労働の上限規制について、過労死等防止対策の観点からお尋ねがありました。
現在、自動車運転業務につきましては、厚生労働大臣告示である労働時間の延長の限度等に関する基準の適用除外となっており、一般と異なる取扱いがなされておりますが、今回の法案においては、長年のこの取扱いを改め、罰則付きの上限規制を適用することとしており、過労死等防止対策の観点からも大きな前進と考えております。
一方で、自動車の運転業務については、現に他の産業に比べて労働時間が長い実態にあり、その背景には、取引慣行の問題など、個々の事業主の努力だけでは解決できない課題もあります。
運転者不足が深刻な中、実態に即した形で上限規制を適用していくためには、取引慣行上の課題も含めて解決していく時間が必要であるため、自動車の運転業務について、改正法の施行期日の五年後に年九百六十時間の上限規制を適用し、将来的には一般則の適用を目指すこととしております。
このような中、国土交通省といたしましては、過労死等の防止は重要な課題と認識をしておりまして、本年六月から睡眠不足の乗務員の乗務の禁止を明確化したほか、本年七月より、過労運転防止関連違反の行政処分の処分量定の引上げを行う等の対策に取り組んでおります。
さらに、政府全体といたしましても、本年五月三十日に、自動車運転事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議において取りまとめられました自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画におきまして、長時間労働の是正のための環境整備といたしまして、荷待ち時間や荷役時間の削減等の労働生産性の向上、多様な人材の確保、育成、取引環境の適正化等に取り組むこととしております。
国土交通省といたしましては、運転者の過労防止に努めるとともに、将来のできるだけ早い時期に一般則の適用が可能となるよう、関係省庁や産業界の協力を得つつ、必要な環境整備に取り組み、自動車運転者の長時間労働の是正を着実に進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/15
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016・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 石橋通宏君。
〔石橋通宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/16
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017・石橋通宏
○石橋通宏君 立憲民主党・民友会の石橋通宏です。
ただいま議題となりました働き方改革関連法案に対し、会派を代表して質問いたします。
初めに、働く者の命に大きな影響を与えるこの重要法案が、衆議院厚生労働委員会において、たった三十時間余りの審議で、全く議論が尽くされないままに採決が強行されたことに、満身の怒りを込めて抗議します。
そもそも、八本もの法案を一本に束ねて国会に出してきたこと自体、安倍政権の国会軽視、国民無視の体質そのものです。八本分の十分かつ丁寧な審議が必要なのに、採決すべきではない、法案に反対だという圧倒的多数の労働者の声を無視して採決を強行した、一体どこが働く者のための法案なんですか。
大体、この法案の立法事実はとっくに消えうせました。政府が根拠としてきた平成二十五年度労働時間等総合実態調査は、統計上の有意性や信頼性など全くない、いいかげんな代物だったことが明らかになりました。比較してはいけないデータを比較して、裁量労働制の方が労働時間が短く見えるデータを偽造していたとは、開いた口が塞がりません。
まさに、公文書の改ざん、廃棄、隠蔽、国会での虚偽答弁、証人隠し、困ったときの記録なし、記憶なし、責任逃れと言い逃れ、安倍政権の政治のゆがみそのものじゃないですか。
良識の府参議院の見識ある与党議員の皆さん、この法案が本当に働く者のための法案なのか、過労死促進にならないのか、参議院では徹底的に審議して、駄目なら堂々と廃案にする、それぐらいの覚悟でやろうじゃありませんか。
そのことを強く訴えて、以下、法案について質問します。
第一に、労働法制に対する安倍政権の基本姿勢について確認します。
安倍総理は、これまでずっと、民間議員と称する財界や人材ビジネス界のお友達の言い分にのみ耳を傾けて、彼らの利益のために労働者派遣法の大改悪など、労働法制改悪を推し進めてきました。それに対する真摯な反省がなければ、真に働く者のための働き方改革などなし得ないはずです。総理の反省の弁をお願いします。
その上で、先日、過労死を増やすような法案を絶対に成立させてはならないという思いから、過労死家族会の皆さんが安倍総理との面会を求めました。しかし、総理は、何とその申出を断って、財界人との会食に出かけていったと聞いています。何なんですか、それは。総理の説明を求めたいと思います。
第二に、残業時間の上限規制について質問します。
労働時間の大原則は、一日八時間、週四十時間労働です。そして、その時間内で働けば、労基法第一条が規定する、人たるに値する生活を営むための必要を充たす労働条件が保障されなければなりません。その当たり前を実現することこそが真の働き方改革だと考えますが、総理の見解をお示しください。
今回の法案は、残業時間の上限規制を二階建てにしています。原則は、月四十五時間、年三百六十時間以内であって、対象事業者の全てがまずその枠内で協約締結を図ることが要求されるのだと理解しますが、それでよろしいでしょうか。その上で、例外的に年七百二十時間までの特例水準が容認されるわけですが、問題は、単月百時間未満、平均で月八十時間以内という条件が過労死水準を超えていることです。なぜそれを法的に許容するのか、説明をお願いします。
また、本法案では、勤務間インターバル規制が義務化されていません。そのために、上限規制の枠内であっても過労死レベルの連続時間勤務が可能になってしまいます。なぜ休息規制を義務化しないのか、厚労大臣、その理由を教えてください。
加えて、加藤大臣、自動車運転手、建設作業員、医師については五年間の適用猶予となっています。同じ労働者でありながら、なぜ五年もの間、適用を猶予するのか、誰もが納得いく説明をお願いします。
しかも、自動車運転手については、五年後の上限を九百六十時間としています。この水準では、現行の改善基準告示とほとんど変わらず、改善になりません。なぜこんなとんでもないダブルスタンダードを合法化するのか、御答弁ください。
そして、今、学校の先生の深刻な長時間労働の実態が明らかになっておりますが、この法案は全く対策を講じておりません。なぜ給特法の改廃を含む改善策を盛り込まなかったのか、教員の長時間労働撲滅に取り組む気がないのか、林文科大臣、説明をお願いします。
第三に、裁量労働制について確認します。
安倍総理は、今、裁量労働制の適用労働者に過労死や深刻な健康被害が次々と発生している現実を認識しているのでしょうか。認識しているとすれば、その原因は何だと分析しているのかも併せて御答弁ください。
過労死が発生しているということは、現行の裁量労働制に深刻な制度的欠陥があるということです。それなのになぜ、現行制度の適正化、規制強化の部分まで法案から撤回してしまったのか、総理、合理的な説明をお願いします。
第四に、この法案の最大の問題である高度プロフェッショナル労働制について質問します。
そもそも、安倍総理、この高プロ制度の導入をあなたに要請したのは一体誰なのか、是非教えてください。総理は、時間にとらわれない働き方を望んでいる労働者がいると繰り返し答弁しています。総理の御答弁ですから、きっと統計上も有意な調査の結果に基づいておっしゃっているのでしょう。まさか、たった十二人の専門職にのみ聞いた話だなどとは言わないと思いますが、その調査結果を具体的にお示しください。
また、総理によれば、この制度は、時間ではなく成果で評価をするのだそうです。では、条文のどこに企業は対象労働者を成果で評価しなければならないと規定してあるのか、該当条文を示して教えてください。
一方で、その成果で評価をすることは、現行制度の下ではできないんでしょうか。労働時間規制を全面的に適用除外しなければ実現できないこととは一体何なのか、具体的に解説をお願いします。
成果で評価をされるということは、要求された成果を出さなければ評価されないということです。では、その成果は誰が決めるのでしょうか。加えて、その成果を出す期限は誰が決めるのか、併せて答えてください。
例えば、この制度では、理論上は、何と一日二十四時間、それを最長四十八日間連続して働かせること、働き続けることが合法的に可能です。そんなとんでもない働き方をしなければ達成できない成果と期限を課すことは法律上禁止されているんでしょうか。また、そんな業務命令を課した使用者は罰を受け、制度の利用を禁止されるのか、併せて御答弁ください。
労働者が誰であろうと幾らもらっていようと、命と健康、暮らしの安心を守るための労働基準法から適用除外されることなどあってはなりません。それ自体、憲法が保障する基本的人権の無視です。安倍総理、断固、高プロ制度の撤回を求めます。御答弁ください。
第五に、同一労働同一賃金について質問します。
まず、安倍総理は、同一労働同一賃金と同一価値労働同一賃金との違いについてどのように理解をされているのか、御答弁ください。
ILO第百号条約は、男女間の賃金格差を解消するために、同一価値労働同一賃金の実現を批准国に求めています。なぜ同一価値労働が求められているのか、総理、解説を願います。
それなのに、本法案は、同一価値労働同一賃金の実現を目指しておらず、これでは、男女間や業種間の抜本的な格差解消にはつながりません。総理、見解を示してください。
最後に、パワハラ規制の必要性について質問します。
今この瞬間にも、パワハラによって精神的に追い詰められ、苦しんでいる労働者がいます。パワハラ規制なくして、真に労働者のための働き方改革は実現できないはずです。にもかかわらず、政府案にはパワハラ規制がありません。なぜなのか、総理、明確に御答弁ください。
以上、政府案の問題点を中心に質問いたしました。
私たち立憲民主党は、働く者の立場に立った真の働き方改革の実現で真っ当な雇用を取り戻すことこそ、国民の安心、子供たちの未来にとって今最も必要なことであり、政治の責任だと考えています。これからもその実現に向けて全力で闘っていく決意であることを申し上げ、私の代表質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/17
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018・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 労働法制に対する基本姿勢についてお尋ねがありました。
労働法制は、立場の弱い労働者が劣悪な環境で働くことのないよう保護する観点から、契約自由の原則を修正するものであり、その意義は大きいと考えています。加えて、その時代の労働者の働き方の実態に応じて、その労働者をどのように保護することが適当か、見直す必要があります。
人を大切にするという我が国の優れた、慣行の優れた点を大切にしながら、時代の変化を踏まえ、働く人々の視点に立った働き方改革を着実に進めてまいります。
なお、平成二十七年に成立した労働者派遣法改正法については、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図るものです。施行状況についてはしっかりと注視し、その目的が達成されるよう努めてまいります。
全国過労死を考える家族の会からの面会要請についてお尋ねがありました。
御指摘の面会の御要請については、働き方改革法案に対する政策的な御要望であることから、政府としては、法案の担当省庁であり、その内容、経緯等を熟知している厚生労働省において承らせていくとしたものであります。私としては、法案を担当する厚生労働大臣からしっかりと承りたいと考えております。
労働時間の原則についてお尋ねがありました。
今回の働き方改革においては、史上初めて、労働界と産業界のトップの合意の下に、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の上限を設けます。
さらに、労使トップにより、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要とする旨の合意がなされたことに鑑み、政府としては、新たに指針を定め、労使に対して必要な助言、指導を行ってまいります。
本法案は、我が国の長時間労働の慣行を是正し、ワーク・ライフ・バランスの改善を図るものであり、こうした意味で、時間外労働の上限規制は、労働基準法第一条に規定されている労働条件の原則の考え方に沿うものと考えております。
時間外労働の上限規制についてお尋ねがありました。
時間外労働の上限規制は、あくまで、原則として月四十五時間かつ年三百六十時間です。
その上で、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意した場合に限り、上限は年七百二十時間とし、その上限内において、単月では百時間未満、複数月の平均では八十時間以内を限度とするものであります。
これは、私自らが議長となり、労使トップにお集まりをいただいた働き方改革実現会議の場で、計十回にわたり議論を行い、働く方の実態を最もよく知っている労使のトップが、実効性があり、かつぎりぎり実現可能なものとして合意したものであります。その労使合意に従って、法律案として立案したものであります。
裁量労働制についてお尋ねがありました。
裁量労働制についても、長時間労働により健康被害につながっているのではないかとの御指摘があることは承知しています。
一方、政府の裁量労働制に関するデータは国民の皆様に裁量労働制の改正について疑念を抱かせることとなったため、法案から全面削除しました。
今後、厚生労働省において実態をしっかりと把握し直すこととし、その上で、健康確保措置も含め議論をし直してまいります。
高度プロフェッショナル制度の導入についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、産業競争力会議で経済人や学識経験者から制度創設の意見があり、日本再興戦略において取りまとめられたわけであります。その後、労使が参加した労働政策審議会で審議を行い、取りまとめた建議に基づき法制化を行ったものであります。
具体的な対象者は、法律上、次の三つの要件を満たす場合に限定をされております。第一に、年間の賃金が平均的な労働者に対して著しく高いこと、具体的には、年間平均給与額の三倍相当程度上回る水準、現状では千七十五万円以上の方であること。第二に、専門性があり、通常の労働者と異なり、雇用契約の中で職務の記述が限定されていること、いわゆるジョブディスクリプションがあること。第三に、何より本人が制度を理解して個々に書面等により同意していること。
したがって、本制度は、望まない方に適用されることはないため、このような方への影響はありません。このため、適用を望む人が何人いるから導入するというものではなく、多様で柔軟な働き方の選択肢として整備するものであります。
成果の評価等についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度については、高度の専門職の方が従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない業務に就く場合に限って、自律的な働き方を可能とする旨を改正後の労働基準法第四十一条の二に規定することとしています。
現行の労働時間制度では、同じ成果でも、働く時間の長さにより賃金が違ってくる場合があり、純粋に成果に見合った賃金を支払うことにはなりません。
一方、高度プロフェッショナル制度では、時間と賃金の関係を切り離すことによって、事前に明確に定められた職務について、時間ではなく成果で評価することを徹底できることになります。
なお、成果の目標や期限の設定については、それぞれの労使の話合いにおいて決められるものと考えています。
高度プロフェッショナル制度の業務命令についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度については、その対象業務に関し、働く時間帯の選択や時間配分は、労働者自らが決定するものであることを省令に明記する方向で検討しています。
したがって、使用者が、御指摘のような極端に長時間働くような業務命令を出すような場合は、法令の要件を満たさず、高度プロフェッショナル制度の適用は認められないこととなります。また、この場合には、法定労働時間に違反するとともに、割増し賃金の支払義務が発生し、罰則の対象になるものであります。
高度プロフェッショナル制度についてお尋ねがありました。
第四次産業革命の出現やグローバル化の下、活力ある日本を維持していくためには、高い付加価値を生み出す経済を追求していかなければなりません。
付加価値の高い革新的な分野で、高度専門職の方であって、希望する方が、仕事の進め方等を自ら決定し、その意欲や能力を有効発揮することによって、新しい産業が発展し、ひいては日本全体の生産性向上につながっていくものと考えております。
このような考え方の下、高い年収の確保、職務範囲の明確化等の要件を設定した上で、自律的に働くことができる高度プロフェッショナル制度を働き方の選択肢として整備することが必要です。
同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。
同一労働同一賃金と同一価値労働同一賃金は、論者、学者により様々な異なる解釈があると承知しています。
いずれにせよ、大切なことは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋め、どのような雇用形態を選択しても自分の能力が評価されているという納得感が得られ、働くモチベーションが高まる処遇を受けられるようにすることです。今回の法案により、これを実現してまいります。なお、同一労働同一賃金は、労使トップが合意した働き方改革実行計画に基づいて法案化したものです。
また、ILO第百号条約は、加盟国に対し、男女労働者に対する同一報酬の原則の適用を求めているものであり、これは、男女間に賃金について差別のないことを要求するものであると承知しています。
パワハラ対策についてお尋ねがありました。
職場におけるパワーハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであり、あってはならないことと考えています。そのため、労使双方への周知啓発を進めているところです。
さらに、職場のパワーハラスメント防止対策を強化するため、有識者や労使関係者が参加した検討会において、対策の在り方や論点等に関する報告書を本年三月に取りまとめたところです。今後、この報告書を踏まえて、労働政策審議会において具体的な対策について議論を進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/18
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019・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 石橋通宏議員より、まず、勤務間インターバルについてお尋ねがありました。
勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要でありますが、制度の普及状況を見ると、制度を導入している企業は一・四%にとどまっております。
勤務間インターバル制度の導入が進んでいない理由としては、制度導入の予定がない企業の理由を見ると、当該制度を知らなかったためが四〇・二%と最も多くなっており、認知度が低いこと、制度の導入に当たって、突発的な事情で残業が生じ翌日の出勤時刻を遅らせる場合に代替要員の確保が困難であることなどの労務管理上の課題があると考えられます。
こうした状況を踏まえ、まずは制度の周知や導入促進を図ることが重要であることから、法案においては、事業主に対して勤務間インターバル制度の導入を努力義務として課すこととしております。
上限規制の適用猶予についてお尋ねがありました。
現在、自動車の運転業務や建設業については大臣告示による指導の適用除外となっておりますが、今回、この取扱いを改め、新たに設ける罰則付きの時間外労働の限度を適用することにしております。
自動車の運転業務については、他の産業に比べて労働時間が長い実態があり、その背景には、取引慣行の問題など、個々の事業主の努力だけでは解決できない課題もあります。
また、建設業については、施主から工期を厳格に守ることが求められるとともに、天候不順などの自然的条件により作業日程が圧迫されるなど、業務の特性や取引慣行上の課題があります。
また、医師については、求めがあれば診療を拒んではならないという応招義務が課せられているなどの特殊性を踏まえた対応が必要となります。
実態に即した形で上限規制を適用していくためには、こうした取引慣行や法制度上の課題も含めて解決していく時間が必要であり、五年間の猶予期間を設けたところであります。
なお、猶予期間においても、自動車の運転業務、建設業については、長時間労働を是正するための環境整備に関係省庁と連携して取り組んでまいります。医師については、具体的な規制の在り方について、医療界の参加の下で検討の場を設けており、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指してまいります。
自動車の運転業務についてお尋ねがありました。
先ほどの答弁と重なりがありますが、現在、自動車の運転業務については、大臣告示である労働時間の延長の限度等に関する基準の適用除外となっております。この法案において、長年の取扱いを改め、罰則付きの上限規制を適用することは、大きな前進と考えておりますが、一方で、自動車の運転業務については、現に他の産業に比べて労働時間が長い実態があり、その背景には、取引慣行の問題など、個々の事業主の努力だけでは解決できない課題があります。
このため、自動車の運転業務については、施行期日の五年後に年九百六十時間の規制を適用することとしております。これは、労使トップが参画する働き方改革実現会議で取りまとめられ、その後、関係労組を構成員に含む労働政策審議会で議論し、答申を得た水準でもあります。
また、この五年の猶予期間においても、長時間労働を是正するための環境整備に関係省庁と連携して取り組み、将来的な一般則の適用に向け、努力をしてまいります。(拍手)
〔国務大臣林芳正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/19
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020・林芳正
○国務大臣(林芳正君) 石橋先生から、教師の長時間勤務についてのお尋ねがありました。
昨年四月に公表した教員勤務実態調査の速報値では、教師の長時間勤務の実態が明らかになっているところです。これを踏まえ、文部科学省としては、学校における働き方改革に取り組んでおりまして、昨年六月より中央教育審議会において御審議いただき、十二月には中間まとめが取りまとめられました。これを受けまして、文部科学省では、学校や教師の業務の役割分担や適正化を着実に実行するための方策などを盛り込みました緊急対策を取りまとめております。
文科省としては、学校や教師の業務の役割分担の適正化や勤務時間管理等に係る取組の徹底、必要な環境整備等を通じて、教師の長時間勤務の是正に取り組んでまいりたいと考えております。
また、給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については、現在中教審で御審議いただいているところでございまして、その議論を踏まえつつ、慎重に検討してまいりたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/20
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021・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 山下芳生君。
〔山下芳生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/21
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022・山下芳生
○山下芳生君 日本共産党を代表して、働き方改革一括法案について安倍総理に質問します。
政治家にとって言葉は命です。たとえ自らに不都合なことであっても、真実に真摯に向き合う姿勢があるなら、その言葉は国民の心に響くでしょう。ところが、総理、あなたの言葉にはそれがありません。自らに掛けられた疑念に対する誠実で真摯な姿勢が全く伝わってきません。
総理、あなたにとって言葉とは何ですか。あなたの言葉は国民の心に響いているとお考えですか。
過労死の悲劇を二度と繰り返さない、総理の言葉です。しかし、全国過労死を考える家族の会の寺西笑子会長は、衆議院の意見陳述で、過労死防止法に逆行する働き方改革関連法案、強行採決は絶対にやめてくださいと訴えました。
総理、あなたの言葉は過労死遺族に響いていないことをどう受け止めますか。遺族が求めた総理との面会を拒否したのはなぜですか。
法案の根拠である労働時間調査で、捏造や異常値が次々発覚しました。調査自体がずさんで信用性がないということです。加藤厚労大臣は、結論には変わりがないと言いますが、精査の結果、特別条項付き労使協定を結んでいる事業場で、年間の時間外労働が一千時間を超える企業の割合が、三・九%から実に四八・五%に跳ね上がりました。
二〇一五年二月二十日、衆議院予算委員会で我が党の志位委員長が、経団連役員企業の八割が月八十時間の過労死ラインを超える残業協定を結んでいる実態を示し、異常と思わないかとただしたのに対し、総理は、実際はこんなにしょっちゅう残業しているわけではなくて、念のために結んでおくと答弁しましたが、その根拠となったのがこの精査前のデータです。
総理、志位委員長に対する答弁は撤回すべきではありませんか。根拠が崩れた以上、法案を労政審に差し戻すのが当然ではありませんか。
法案は、時間外労働の限度時間として、月四十五時間、年三百六十時間を法定化します。政府は、戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革と自慢しますが、法案は、特別に事情があれば、単月百時間未満、二ないし六か月平均で八十時間の残業を可能にしています。これでは、幾ら罰則付きの時間外労働の限度を設けるといっても、過労死水準の残業に国がお墨付きを与えるだけではありませんか。過労死が大きな社会問題となっているときに、なぜ過労死を合法化するようなことをするのですか。
衆議院の質疑で、月をまたいで業務が集中すれば三十日間で百六十時間の残業もあり得ることが明らかになりましたが、その歯止めはないことを認めますか。
残業時間規制で最も実効性がある措置は、週十五時間、月四十五時間、年三百六十時間という大臣告示を労働基準法に明記し、例外なく全ての労働者に適用することです。
ILOは、労働時間に関して十八本もの条約を採択しています。一本も批准していない先進国は日本と米国だけです。長時間労働をなくすというのなら、ILO条約を批准して国内法を整備すべきです。総理、批准するつもりはありますか。
法案は、残業代ゼロ制度である高度プロフェッショナル制度を導入します。この制度は、労働時間規制を全面的に適用除外にし、八時間労働制を根底から覆すものであり、戦後の労働法制を否定する制度です。
総理は、時間ではなく成果で評価される働き方を選択できるようにすると言います。しかし、既に成果主義が導入された職場の実態は、成果を上げるために際限のない長時間労働となっています。これ以上、政府が成果主義をあおっていいのですか。成果主義で働く労働者にこそ労働時間規制が必要なのではありませんか。
この制度では、二十四時間労働を四十八日連続して行うことも法的に排除されません。しかも、全て自ら選択したものとされ、過労死が自己責任にされてしまいます。実労働時間の把握が義務付けられていないため、労災認定させることが極めて困難になります。総理、高プロを導入して過労死をなくすことはできるのですか。
政府は、企業に健康管理時間を把握させ、一定時間を超えれば医師に面談させて健康を守ると説明します。加藤厚労大臣は、残業相当分が月百時間を超えれば医師が面談すると言いますが、過労死水準を超えてから医師の面談を受けても、労働者の命と健康を守ることはできません。しかも、上限規制がない下では、医師の面談後も残業させることが可能です。残業相当分が月二百時間になっても違法とならないのではありませんか。
高プロ導入をどれだけの人が希望しているのか。政府は、十二人からヒアリングをしたと答弁しました。高プロ導入の根拠が僅か十二人の意見しかないというのは驚きです。
結局、この制度は、企業にとって実労働時間管理も残業代支払もなく、死ぬまで働かせても責任を問われない。過労死とサービス残業を合法化し、促進することにしかならないのではありませんか、はっきりお答えください。
過労死したNHK記者、佐戸未和さんの母、恵美子さんは、午前三時まで働き朝六時に出社、せめてインターバル規制があれば娘は死ななくて済んだと語っています。過労死をなくすというのであれば、連続十一時間の休息時間、勤務間インターバル規制をなぜ法律に明記して義務付けないのですか。
ヨーロッパ諸国は、十一時間の連続休息時間を既に法制化しています。この制度は、一日の労働時間を規制することにつながる大切な制度です。十一時間という時間を明記して法制化すべきです。
政府は、同一労働同一賃金を実現すると言います。しかし、法案には同一労働同一賃金という文言がありません。なぜ法案に明記しないのですか。
また、法案によって均等待遇になるパート労働者と有期労働者はどのくらいになるのですか。
今回、雇用対策法の名称を変え、法律の目的に労働生産性の向上を明記し、国の施策に多様な就業形態の普及を追加しています。
一九六六年に制定された雇用対策法は、完全雇用の達成を国の政策の目標として宣明し、労働者の職業の安定と経済的、社会的地位の向上を図ることを目的としていることを明確にしました。また、不安定な雇用形態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実することを国の措置すべき施策として明記しました。当時の労働大臣は、雇用政策が他の政策の従属的な立場に置かれるということは間違っていると国会で答弁しています。
今回、なぜ異質な労働生産性の向上を法律の目的とするのですか。これでは単なる経済政策になってしまいます。なぜ雇用政策を変質させるのか、答弁を求めます。
日本政府も批准しているILO雇用政策条約は、憲法二十七条が保障する労働権を実現するための施策として、国が雇用対策を講じることを要請しています。この方向での法改正こそ必要です。
最後に、男性も女性も、正社員も非正規雇用労働者も、誰もが八時間働けば普通に暮らせる社会をつくることこそ国民が求める働き方改革であり、日本の経済と社会をまともに発展させる道であることを強く訴えて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/22
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023・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山下議員にお答えをいたします。
私の言葉と面会要請についてお尋ねがありました。
行政をめぐる様々な問題や、この働き方改革を始めとする必要な政策等について、私の言葉で国民の皆様に御説明し、お伝えできるよう常に心掛けています。今後も一層努力してまいります。
過労死の悲劇を二度と繰り返さないという強い決意の下、罰則付きの時間外労働の上限を設けるなどを内容とする働き方改革関連法案を提出しております。
御指摘の面会の御要請については、法案に対する政策的な御意見であることから、法案の担当省庁である、その内容、経緯等を熟知している厚生労働省において承らせていただくこととしたものであります。
労働時間の調査についてお尋ねがありました。
委員御指摘の調査について、一度精査を行った後に更に訂正を行うこととなったことは遺憾であります。
しかし、厚生労働省において調査票の原票の確認等を行い、九千を超えるサンプルを再集計した結果、加藤厚生労働大臣が集計結果に大きな傾向の変化は見られないと答弁していると承知しております。御指摘の平成二十七年の私の答弁の根拠となったデータについても同様であると聞いております。
また、労働政策審議会では、この調査ではなく、様々な資料を確認しながら現場の実情に通じた労使の御意見を踏まえて議論が行われ、おおむね妥当との答申が取りまとめられたところです。答弁の撤回や法案の差戻しの考えはありません。
時間外労働の上限規制についてお尋ねがありました。
時間外労働の上限規制は、あくまで原則として月四十五時間かつ年三百六十時間です。
その上で、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意した場合に限り、上限は年七百二十時間とし、その上限内において、単月では百時間未満、複数月の平均では八十時間以内を限度とするものであります。
他方、単月百時間未満といった特例の時間外労働を安易に認めるということではなく、昨年三月に労使トップにより、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要とする旨の合意がなされました。政府としては、これを受けた指針を新たに定め、労使に対し、必要な助言、指導を行ってまいります。
なお、御指摘のILO条約の批准については、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があることから、慎重な検討が必要であると考えています。
高度プロフェッショナル制度の過労死についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を自ら選択することができる、高い交渉力を有する高度専門職に限って、自律的な働き方を可能とする制度であり、成果主義をあおるとの御指摘は当たりません。
また、高度プロフェッショナル制度においても長時間労働を防止し健康を確保することは重要であり、在社時間等の把握、一定以上の休日の確保などを使用者に義務付けることとしています。
こうした措置を通じて、高度プロフェッショナル制度で働く方々の健康確保に遺漏なきを期してまいります。
なお、労災認定に当たっては、高度プロフェッショナル制度の方であっても、会社への入退館の記録や同僚への聞き取りなど、様々な方法により実態がどうであったかを調査し、認定を行っていくものと承知しております。
高度プロフェッショナル制度と長時間労働についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を自ら選択することができる、高い交渉力を有する高度専門職に限って、自律的な働き方を可能とする制度です。
その対象となった方についても、長時間労働を防止し、健康を確保することは重要であり、在社時間等が一定以上になった場合には、事業者に対し、医師による面接指導を罰則付きで義務付けるとともに、その結果に基づいた医師の意見を踏まえ、職務内容の変更や在社時間等を短くするための措置等の実施を義務付けています。
これらの措置を通じて、高度プロフェッショナル制度で働く方々の健康確保に遺漏なきを期してまいります。
なお、使用者が御指摘のような極端に長時間働くよう業務命令を出すような場合は、法令の要件を満たさず、高度プロフェッショナル制度の適用は認められないこととなります。また、この場合には、法定労働時間に違反するとともに、割増し賃金の支払義務が発生し、罰則の対象にもなるものであります。
高度プロフェッショナル制度の導入根拠と過労死への懸念についてお尋ねがありました。
高プロ制度は、産業競争力会議で経済人や学識経験者から制度創設の意見があり、日本再興戦略において取りまとめられました。その後、労使が参加した労働政策審議会で審議を行い、取りまとめた建議に基づき法制化を行ったものであります。
具体的に対象者は、法律上、次の三つの要件を満たす場合に限定されています。第一に、年間の賃金が平均的な労働者に対して著しく高いこと、具体的には、年間平均給与額の三倍を相当程度上回る水準、現状では千七十五万円以上の方であること。第二に、専門性があり、通常の労働者と異なり、雇用契約の中で職務の記述が限定されていること、いわゆるジョブディスクリプションがあること。第三に、何より本人が制度を理解して個々に書面等により同意していること。
また、健康確保のため、在社時間等を把握した上で、インターバル措置、健康管理時間の上限措置、二週間連続の休日、臨時の健康診断のいずれかを使用者に義務付けることとしており、これらの措置を講じなければ制度の導入はできないこととしております。
さらに、連合からの私への要請を踏まえて、年間百四日の休日確保の義務付けなど、健康確保措置を強化しております。これらの措置を通じて、高度プロフェッショナル制度で働く方々の健康確保に遺漏なきを期してまいります。
勤務間インターバルについてお尋ねがありました。
御指摘の勤務間インターバルについては、日本では少数の企業が導入しているのみであり、まずは制度の普及促進が重要です。
そのため、今回の法案では、その導入を努力義務として規定することとしています。さらに、制度を導入する中小企業に対する助成金の活用や好事例の周知を通じて、労使の自主的な取組を推進し、普及を図ってまいります。
同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。
今回政府が導入しようとしている同一労働同一賃金制は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を埋めるものであります。
今回の法案には、同一労働同一賃金を表すものとして、雇用形態による不合理な待遇差を禁止する規定を明記しており、この規定に基づき、不合理な待遇差がある場合には、その是正を求める労働者が裁判で争えることを保障しています。
現在、我が国においては、パートタイム労働者は千六百万人程度、有期雇用労働者は千六百万人程度であり、これらの方々は、本法案により同一労働同一賃金の保護を受けることになります。
欧州諸国では既に同様の制度が施行されていますが、例えばドイツ、フランス、イギリスでは、パートタイム労働者の賃金水準はフルタイム労働者の七〇%台から八〇%台となっており、いかなる待遇差が不合理とされ、いかなる待遇差が合理的なものとして残るかは、産業構造の違いの影響などにより、国によって異なっています。
このため、本法案により、我が国においてパートタイム労働者と有期雇用労働者について、正規雇用労働者との待遇差がどの程度是正されるかをお答えすることは困難ですが、不合理な待遇差の解消を図ってまいります。
雇用対策法の改正についてお尋ねがありました。
労働力人口が減少していく中で我が国が持続的に成長していくためには、労働生産性の向上を通じた成長と分配の好循環を構築していくことが重要です。今回、雇用対策法の目的に加える労働生産性の向上は、この趣旨を明らかにしたものです。あわせて、一人一人の事情に応じた多様な働き方に対応するため、雇用の安定と職業生活の充実も同じく法の目的に明記をいたします。
これらを、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現などの働き方改革によって推進し、雇用政策の目指す完全雇用の達成と経済社会の発展を図ることとしたものであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/23
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024・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 東徹君。
〔東徹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/24
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025・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹です。
会派を代表して、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案について質問いたします。
まず、現状について伺います。
安倍総理は、今国会を働き方改革国会と称して、本法案を最重要法案として扱われてきました。しかし、裁量労働制についての不適切なデータ問題で、法案から裁量労働制に関わる部分が削除され、厚生労働省からのデータ資料の出し直しが三回もありました。また、厚生労働委員会では、年金の過少支給問題が発覚したことによる集中審議が一回、東京労働局長の特別指導等の問題発言に関する集中審議が二回行われるなど、なかなか法案審議に至ることができませんでした。
大変お粗末であるとしか言いようがありませんが、このような厚生労働省の現状をどのようにお考えなのか、安倍総理の見解をお伺いいたします。
労働生産性について伺います。
総理は、働き方改革は成長戦略そのものであって、労働生産性を改善するための最良の手段と答弁されています。
現在の我が国の労働生産性はOECD諸国の中でも二十位であり、米国の三分の二程度しかないと言われています。長時間労働を是正することによって業務の効率化が促される面はあると思いますが、労働時間制度の変更だけでは労働生産性は向上しません。
むしろ、商品やサービスに付加価値を付け、その価格を上げていかなければなりませんが、我が国では、業務の効率化が行われた場合、逆に価格を下げ、いいものを低価格で顧客に提供することで経済成長を遂げてきた歴史があります。
働き方改革を経済成長につなげる前提である労働生産性の向上についてどのような手段で達成するのか、安倍総理のお考えをお伺いいたします。
学生の新卒一括採用について伺います。
世界でも珍しい我が国の新卒一括採用は、企業内で人材育成することを前提に、若年者のスムーズな就職が可能になる反面、新卒時の就職がうまくいかなかった者との間に格差が生じています。少子高齢化による人手不足やAIの導入など、技術や経済環境の急激な変化に対応するためには、様々な経験を有する幅広い年代の人材が活用されていかなければなりません。
今後、新卒一括採用の在り方や、転職しやすい環境の整備を始めとする雇用の流動化について、安倍総理の見解をお伺いいたします。
働き方改革の効果について伺います。
本法案が成立すれば、時間の制約等があって働くことができていなかった人が働けるようになるなど、多様な働き方が可能となると言われていますが、本法案によって本当にそれが実現できるのか、安倍総理にお伺いいたします。
仮に、多様な働き方が実現でき、子育て世代の就業者が増えたり非正規で働く人の給与水準が上がれば、出生率の改善にもつながり得ると考えられます。
そこで、働き方改革と少子化対策との関係についてどのように考えているのか、安倍総理の見解をお伺いします。
また、高齢化の進展により労働者の平均年齢が上がっていくことから、疾病を抱えながら働く人の割合は拡大していくと見込まれます。高齢者や、さらに、病気の治療をしながら働くことを希望する人が働くことのできる社会をつくるため、働き方改革として具体的にどのような対策を講じていくのか、安倍総理にお伺いいたします。
高度プロフェッショナル制度について伺います。
現実には、会社員として雇用関係に基づく労働時間規制が一律に適用されていても、自分のペースで土曜日、日曜日、祝日や深夜に働いている人もいます。本法案では長時間労働の規制が罰則付きで導入されますが、時間に縛られない働き方を用意しておかないと、罰則を回避するため、雇用から請負に契約形態が移り、働く人にとって社会保障などの面で不利が生じてしまいかねません。
雇用関係の下で安心して働ける選択肢を用意するためにもこの制度は必要であると考えますが、使用者、労働者双方のメリットについてどのように考えているのか、安倍総理にお伺いいたします。
我が会派は、五月二十一日、与党及び希望の党と法案の修正協議を行い、高度プロフェッショナル制度については、労働者がした同意の撤回に関する手続を定めることとしました。これにより、一旦同意した労働者も実施後に高プロから外れるため、労働者にとって出入りが可能な新しい働き方の選択肢を用意することができます。
一方で、同意を拒否したことを理由に不利益に取り扱われることを禁止した規定は、同意を撤回する場合には適用されません。そのため、労働者は、撤回によって会社から不利益に取り扱われることを恐れて、撤回しないことがあり得ます。
労働者に安心して高プロを選択してもらえるよう、撤回によって不利益に取り扱われることがないことを明確に示すべきと考えますが、加藤大臣の見解をお伺いいたします。
また、高プロについては、過大な業務命令により二十四時間働かされることもあり得ると指摘されており、政府は、このような業務命令が出された場合、高プロの要件を満たさなくなると答弁されています。
高プロの趣旨に反するような過大な業務命令がそもそも出されないよう、政省令やガイドラインで示すなどの対策が必要と考えますが、加藤大臣の見解をお伺いいたします。
同一労働同一賃金について伺います。
類似の業務にもかかわらず、雇用形態の違いのために、賃金などに生じている大きな格差を是正することは重要です。しかし、定年までの雇用保障と年功賃金が保障されている現在の正社員制度では、低コストの非正規労働者を雇用の調整弁とすることによって維持されており、このような正規と非正規の労労対立こそ問題の本質です。
正社員制度の見直しがなければ、安倍総理の言う非正規という言葉をなくすことはできないと考えますが、安倍総理の見解をお伺いいたします。
労働基準監督署の業務の民間委託について伺います。
厚生労働省は、本年度の予算措置として、三六協定が未届けの事業所に対する相談指導を民間に委託しようとしています。これは、我が会派の労基署等の業務の民間委託などに関する提案に沿うもので、評価しております。
重要なことは、民間委託によって、労働基準監督官が本来行うべき監督業務に集中し、過労死やサービス残業の撲滅につなげていくことでありますが、今後の取組について加藤大臣の見解を伺います。
最後に、今後の労働政策等について伺います。
本法案にある長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入は、正社員の長期雇用、年功賃金を前提とする我が国の労働法制を大きく転換するものと考えますが、今後のあるべき労働政策についてどのように考えているのか、安倍総理に伺います。
また、現在の我が国では、専業主婦世帯よりも共働き世帯が上回っており、これに対応した制度が求められています。職種や地域を限定した正社員制度の普及や、共働き世帯を前提とする税や社会保障制度への見直しについて、安倍総理の見解を伺います。
我が国は、少子高齢化が更に加速し、人口減少はもちろんのこと、生産年齢人口も減少していきます。経済成長や社会保障制度の持続可能性を考えた場合、より多くの人が働きやすい環境を整えていくことは重要であります。
本法案には、八つの法案を束ねたもので多くの内容が含まれており、また、省令に委任されている事項も多いことから、委員会での審議には十分な時間を確保することが必要であることを指摘申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/25
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026・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 東徹議員にお答えをいたします。
法案審議についてお尋ねがありました。
厚生労働省における種々の問題により、国会、そして国民の皆様に御迷惑をお掛けしたことについては、行政の長として深くおわび申し上げます。
国民の皆様から厳しい目線が向けられていることを真摯に受け止めながら、厚生労働省において再発防止に取り組むとともに、厚生労働大臣にはその責務をしっかりと果たしてもらいたいと思います。
一方で、働き方改革は、誰もがその能力を発揮できる労働制度へと抜本的に改革するものです。戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であり、これを実現する本法案の成立に向けて、安倍政権として全力を傾注してまいります。
労働生産性についてお尋ねがありました。
少子高齢化に立ち向かい、経済成長を実現していくためには、労働生産性を向上させていかなければなりません。
今般の働き方改革により、史上初めて、三六協定でも超えてはならない、罰則付きの時間外労働の限度を労使トップの合意により設けます。長時間労働を是正すれば、経営者はどのように働いてもらうかに関心を高め、労働生産性が向上します。
無論、安倍内閣が取り組む働き方改革は、労働生産性の向上を長時間労働の是正のみで実現しようとするものではありません。
同一労働同一賃金を実現し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋めることで、自分の能力を評価されているという納得感や働くモチベーションを高め、労働生産性を向上させます。
さらに、高度プロフェッショナル制度を導入し、高度専門職の方々が意欲や能力を有効に発揮することによって、新しい産業が発展し、ひいては日本全体の生産性向上につながっていくものと考えます。
働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段です。安倍内閣として、働き方改革の実現に全力を尽くしてまいります。
雇用の流動化についてお尋ねがありました。
人生百年時代においては、新卒で皆が一斉に会社に入り、その会社一社で勤め上げて、定年で一斉に退職して老後の生活を送るという単線型の人生は、時代に適合しなくなっています。
私の目指す働き方改革は、誰もが、幾つになっても、学び直しをしながら新たなチャレンジをする選択肢を確保できるようにすることです。途中で学び直しをし、その学び直しによって更にキャリアアップできる、当然、会社も変わることができる、職種も変わることができる、そういうことが可能な社会を実現していきたいと考えております。
また、第四次産業革命と呼ばれるIT分野における急速な技術革新が進展する中、企業内での人材育成も難しくなっています。
このため、リカレント教育の充実を図るとともに、企業の採用も変わる必要があり、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置し、中途採用の機会を拡大してまいります。
誰もが、幾つになっても新たなチャレンジができる環境整備に取り組んでまいります。
少子化対策との関係についてお尋ねがありました。
我が国の慣行である長時間労働の問題は、健康確保だけでなく、仕事と生活との両立を困難にし、少子化の原因になっています。
長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、子育て中の女性も仕事に就きやすくなり、男性も子育てを行う環境が整備されます。
また、同一労働同一賃金の実現を通じて、正規と非正規の労働者の不合理な待遇差を是正していけば、中間層が厚みを増し、より多くの方が豊かな家庭を持てるようになり、日本の出生率改善にも貢献すると考えています。
高齢者の方や病気の方が働くことについてお尋ねがありました。
働き方改革によって、高齢者や病気を抱える方など、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮できる社会をつくることが必要です。
このため、働き方改革実行計画に基づいて、高齢者については、六十五歳以降の継続雇用の延長等を行う企業への支援、病気を抱える方については、治療と仕事を両立するための総合的な支援を担う人材の育成や企業の受入れ体制の整備等に取り組んでまいります。
高度プロフェッショナル制度のメリットについてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を自ら選択できることができるものです。労働時間に画一的な枠をはめる従来の発想を乗り越え、自らの創造性を発揮できるようにするための制度です。
働く方にとっては、時間や場所にとらわれない、自律的で創造的な自由な働き方の選択が可能となります。
また、今日、活力ある日本を維持していくためには、高い付加価値を生み出す経済を追求していかなければなりません。高度専門職の方々が、その意欲や能力を最大限発揮し、創造的に付加価値を生み出していくことは、企業にとっても我が国の経済にとっても大きなメリットになると考えます。
同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。
御指摘の正社員制度に関する年功序列賃金といった雇用慣行の在り方については、基本的に、各社の労使で話し合い合意して選択すべき事項と考えています。
人生百年時代においては、新卒で皆が一斉に会社に入り、その会社一社で勤め上げて、定年で一斉に退職して老後の生活を送るという単線型の人生は、時代に適合しなくなっていると考えます。それを一斉に皆で送るということではなく、誰もが、幾つになっても、学び直しをしながら新たなチャレンジをする選択肢を確保できるようにすべきと考えています。
こうした中で、どのような雇用形態を選択しても納得が得られるよう、得られる処遇を受けられる、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現していく必要があります。今回の法案を通じて、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋め、非正規という言葉を一掃してまいります。
今後の労働政策についてお尋ねがありました。
私の目指す働き方改革は、働く方一人一人がより良い将来の展望を持ち得るようにすることです。長時間労働を是正すればワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者が仕事に就きやすくなり、労働生産性の向上につながります。同一労働同一賃金を通じて、正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、自分の能力を評価されているという納得感につながります。
年功序列賃金、終身雇用といった日本型雇用慣行には人を大切にするという優れた点があり、これを大切にしながら、先ほど申し上げたように、人生百年時代を迎えているという時代の変化を踏まえ、働く人々の視点に立った労働政策を着実に進めていきます。
多様な正社員や税、社会保障制度についてお尋ねがありました。
正規、非正規という働き方の二極化の解消を図るため、職種や地域を限定した多様な正社員制度を導入する企業への助成等を実施しています。
また、働きたい人が就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築することが重要です。こうした観点から、税制については、平成二十九年度改正において、配偶者控除の見直しを行いました。
さらに、社会保障については、個人の働き方は多様であることから、働き方に中立とし、女性も含め短時間労働者の労働参加を促進するため、被用者保険の適用拡大を進めていくことが重要と考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/26
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027・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 東徹議員より、まず、高度プロフェッショナル制度における同意の撤回についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、希望する方のための選択肢であり、書面等による本人の同意があることを要件としております。この点に関して、衆議院における修正により、労使委員会の決議において同意の撤回手続も定めなければ制度は導入できないこととされました。
その上で、今後、対象労働者の適正な労働条件を確保するため、労使委員会の決議事項に関する指針を策定することとしており、御指摘の同意の撤回によって不利益に取り扱われないことを指針に明確化する方向で検討してまいります。
高度プロフェッショナル制度の趣旨に反する過大な業務命令についてお尋ねがありました。
高度プロフェッショナル制度は、時間や場所にとらわれない自律的で創造的な働き方を可能とする制度であり、その対象となる業務は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省で定める業務となっております。
この趣旨を踏まえ、働く時間帯の選択や時間配分は労働者自らが決定するものであることを省令に明記する方向で検討してまいります。
これにより、時間配分等に関する労働者の裁量を奪うような業務命令が行われる場合には、法令の要件を満たさず、高度プロフェッショナル制度の適用は認められないこととなります。
労働基準監督署の業務の民間委託についてお尋ねがありました。
本年七月から、民間事業者を活用し、三六協定を労働基準監督署に届けていない事業者、事業場に対し自主的な点検を促し、その結果を取りまとめた上で、労務管理の専門家による任意の相談指導を実施し、労使における適切な対応を促進することとしております。
委員の御指摘については、今年度より、働き方改革を通じて、働く方々の労働条件をしっかり守っていくため、全ての労働基準監督署に特別チームを新たに編成し、長時間労働是正のための監督指導の徹底、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない中小企業等に対するきめ細やかな支援を行っております。
今後とも、これらの取組を通じ、労働基準監督行政の効果的、効率的な推進に努めてまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/27
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028・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119615254X02520180604/28
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