1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和三年三月十日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
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令和三年三月十日
午前十時 本会議
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第一 所得税法等の一部を改正する法律案及び
財政運営に必要な財源の確保を図るための公
債の発行の特例に関する法律の一部を改正す
る法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/0
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001・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
日程第一 所得税法等の一部を改正する法律案及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以上両案について提出者の趣旨説明を求めます。麻生太郎財務大臣。
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/1
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002・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、所得税法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
本法律案は、ポストコロナに向けた経済構造の転換及び好循環の実現、家計の暮らしと民需の下支え等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、ポストコロナに向けた経済構造の転換及び好循環の実現を図るため、デジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例を設けることといたしております。中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促すための準備金制度の創設等を行うこととしております。
第二に、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除制度の特例の延長等を行うことといたしております。
このほか、土地の売買等に係る登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。
次に、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案について御説明を申し上げます。
日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあります。政府といたしましては、令和三年度予算等により、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国民の命と生活を守るため、感染拡大の防止に万全を期すとともに、将来を切り開いていくため、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めてまいります。
少子高齢化に伴う構造的な課題に直面している日本の財政は、新型コロナウイルス感染症に対応する中で、より厳しい状況にあります。引き続き、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化等の達成に向けて、これまでの歳出運営の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。
こうした中、最近における国の財政収支が著しく不均衡な状況にあることに鑑み、令和三年度から令和七年までの間の財政運営に必要な財源の確保を図るため、これらの年度における公債発行の特例措置を定めることとし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明を申し上げます。
令和三年度から令和七年度までの間の各年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書の規定による公債のほか、当該各年度の予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとする等の規定を整備することとしております。
以上、所得税法等の一部を改正する法律案及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/2
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003・山東昭子
○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。宮島喜文さん。
〔宮島喜文君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/3
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004・宮島喜文
○宮島喜文君 自由民主党の宮島喜文です。
まず、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられました方々に御冥福をお祈り申し上げます。また、病院やホテルで、自宅などで療養されている皆様の一日も早い御回復を願ってやみません。
さらに、病院や保健所など現場で取り組んでおられる皆様、感染防止にたゆまぬ注意を払い、介護や保育の仕事に当たっておられる方々、そして活動自粛の要請に御協力いただいている国民の皆様に深く感謝申し上げます。
それでは、自民、公明を代表して、ただいま議題となりました所得税法等及び特例公債法の一部を改正する法律案について質問します。
新型コロナウイルス感染症については、先日、一都三県に対する緊急事態宣言が三月二十一日まで延長されました。感染力の強い変異株の拡大も懸念されております。
このような中、経営環境が厳しいところには、雇用を守り、賃金水準の維持に努めるよう支援することが大切です。また、コロナ禍にあっても、影響が少なく、新規の雇用や賃上げの余地があるところには後押しを行うべきです。
今回の改正を含めて、政府は、自らの改善により事業継続に取り組む事業者、そして雇用の促進や賃金の改善に取り組む事業者をどのように支えていくのでしょうか。菅総理にお伺いします。
感染拡大は思わぬところにも影響を及ぼし、出生数や婚姻数も減少しており、ますます少子化の進行が危惧されます。
政府は、新子育て安心プランに基づく保育所の受皿づくりの整備や不妊治療費の助成などを大幅に拡充するなど、施策を進めてきました。
しかし、国や地方自治体が行うベビーシッターや認可外保育所の利用料の助成などは、原則として所得税法上の雑所得として課税対象とされてきました。これでは子育て世代への支援を拡大しても、少子化対策へのインセンティブにはならないとの声がありました。そこで、今回、改正案では、国や地方から子育て支援に係る助成等については所得税を非課税とすることになり、一歩前進したものと言えます。
政府には、今後も、静かなる国難と言うべき少子化に対応するため、予算のみならず税制面も含めて総合的な観点から施策を講じてほしいと思いますが、この点について菅総理から御所見をお聞かせください。
また、今回の感染症の拡大により、我が国のデジタル化は社会に浸透していないという事実が明らかになりました。省庁や自治体はそれぞれのデータをデジタル化していますが、行政の縦割りなどによりデータの集約や共有化等ができておらず、感染拡大の状況の把握や給付金の支給などで不都合を生じました。
政府は、今後五年間でデジタルシステムの統一化、標準化を図るとしています。また、地球規模でデジタル化に向けた市場競争も激化しています。我が国においては、民間部門も政府の動きと合わせて、新たな技術や発想等を取り入れたデジタルトランスフォーメーションを加速していくことが重要です。
政府は、今回の改正でどのように民間における取組を支援していくのでしょうか。同時に、民間の納税環境の電子化を進めることが不可欠と思いますが、どのように改善されるのでしょうか。麻生財務大臣に併せてお伺いします。
総理は、二〇五〇年カーボンニュートラルという高い目標を掲げ、環境は経済の制約でないと語っています。今や経済と環境の好循環に向けて先進各国も脱炭素化社会へ実現へと政策のかじを切っています。
今後、我が国の企業においても、脱炭素化を目指した生産プロセスの変革や優れた製品開発を進めなければいけません。そのためには新たな技術開発とともに、生産現場においては脱炭素化や省エネ化を進める最新設備の導入が必要となります。政府はどのようにこれを支援していくのか、麻生財務大臣にお伺いします。
カーボンニュートラルという観点では、世界的な脱炭素の動きを受け、電気自動車や燃料電池自動車というエコカーの開発が注目されています。今から五年前の伊勢志摩サミットや、同じ年の九月に長野県軽井沢町で開催されたG7交通大臣会合でも、自動運転化された燃料電池自動車や電気自動車が会場までの送迎を行い、世界に向けて我が国の先進性をアピールしましたが、今や世界各国で官民を挙げてエコカーの開発競争にしのぎを削っています。
自動車産業が経済や雇用において大きな比重を占める我が国では、この分野での出遅れはあってはなりません。まずは国内でエコカーを普及させ、生産規模を拡大し、諸外国との競争力を高めていく必要があります。
そこで、政府は、環境性能のより優れたエコカーの普及に向けて税制面ではどのような施策を講じていくのでしょうか、麻生財務大臣にお伺いします。
来年度も新型コロナ感染症との闘いが続くと予想され、当面、我が国は厳しい財政状況が続くと思われます。感染拡大防止や雇用、生活、事業への支援を講じるため、令和三年度予算案では新規国債発行額が増加し、普通国債残高は令和三年度末で九百九十兆円になると見込まれています。
今回、特例公債法を改正し、令和三年度から五年間延長することになりますが、参議院は決算の院として、どのような使い方をしていくかという点をしっかり毎年チェックしていかなければなりません。
また、国債には市場からの目もあります。先月、アメリカでは、景気回復に弾みが付くとの見方からアメリカ国債の売りが膨らみ、長期金利が上昇しました。我が国でも、感染拡大の収束が見えて経済が回復基調に入ると長期金利が上昇するとの見方もあります。
そこで、仮に景気回復の局面を迎え、長期金利が上昇した場合、経済再生と財政健全化の双方を実現させる中で、どのように国債市場の安定化を図って、つもりでしょうか。麻生財務大臣に御所見をお伺いしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/4
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005・菅義偉
○内閣総理大臣(菅義偉君) 宮島喜文議員にお答えをいたします。
事業継続などに取り組む事業者の支援についてお尋ねがありました。
新型コロナの中で事業の継続と雇用の維持に取り組む事業者を支援するために、雇用調整助成金や資金繰りの支援を続けていきます。
また、今回の税制改正においては、いわゆる賃上げ促進税制によって、大企業においては新規雇用を、中小企業においては現在の雇用者も含めた給与総額の増加を促すこととしております。雇用の促進や賃金の改善に取り組む事業者を支援をしてまいります。
総合的な少子化対策についてお尋ねがありました。
長年にわたり我が国の最大の課題と言われてきた少子化対策に真っ正面から取り組み、思い切って前に進めてまいります。
このため、国や地方公共団体の実施する子育てに係る助成について、所得税を非課税とする措置等のほかに、不妊治療の保険適用を来年四月からスタートし、それまでの間は現行の助成措置の所得制限を撤廃するなど、大幅に拡充をいたします。
また、待機児童の解消に向けて保育の受皿整備を進めるとともに、全ての企業に対し、男性が育休取得しやすい職場環境を整備することを義務付け、希望に応じて一か月以上の休業を取得できるようにしてまいります。
今後とも、結婚や出産、子育てを希望する方々の声に丁寧に耳を傾け、予算、税制などを通じて総合的な対策を進めてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/5
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006・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 宮島議員から、民間におけるデジタル化の支援や納税環境の電子化、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制、自動車に関する税制、国債市場の安定化について、計四問お尋ねがあっております。
まず、民間におけるデジタル化の支援や納税環境の電子化についてのお尋ねがあっております。
企業のデジタル技術を活用した企業変革を後押ししていくため、令和三年度の税制改正においてデジタルトランスフォーメーション促進税制を創設するといたしております。
納税環境の電子化につきましては、経理の電子化による生産性の向上やテレワークの推進に資するため、帳簿書類を電子的に保存する際の手続などを抜本的に見直します。
また、国税納付の更なるキャッシュレス、非対面化を推進するという観点から、令和四年よりスマートフォンを使用した決済サービスによる納付をすることを可能といたしております。
次に、カーボンニュートラルに向けた取組についてのお尋ねがありました。
気候変動問題に対しては、日本としても、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力をし、二〇五〇年カーボンニュートラルを目指していくということといたしております。
この高い目標に向け、令和三年度税制改正では、脱炭素化を加速する製品を生産する設備や生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備について、税額控除などを認める制度を設けることといたしております。これによって、企業による積極的な脱炭素化投資を促すことで、産業構造や経済社会の変革、ひいては大きな成長につながるというように考えておるところであります。
次に、自動車に関する税制についてのお尋ねがあっておりました。
令和三年度税制改正では、自動車重量税のエコカー減税につきましては、電気自動車や燃費性能が非常に優れたハイブリッド車などを引き続き二回免税の対象とするほか、二〇二〇年度燃費基準を達成していることを条件に、新しい二〇三〇年度燃費基準の達成度に応じて減免する仕組みに切り替えることとし、環境性能により優れた自動車の普及を後押しすることといたしたいと思っております。
最後に、国債市場の安定化についてのお尋ねがありました。
足下では、三次補正予算等による雇用、生活の支援など、新型コロナへの対応に万全を期していくとともに、中長期的な成長力の強化を進めております。
一方で、経済が成長していくにつれて金利が上昇し、国債費が増加していく可能性があります。
このため、経済再生と同時に財政健全化に取り組むことが重要であり、最近では、団塊の世代が後期高齢化入りをいたします二〇二二年を控え、毎年の薬価改定の実現や後期高齢者の窓口負担の見直しなどの努力を積み重ねているところであります。
歳出歳入両面の改革の取組を続け、日本国債への市場の信認を確保するとともに、市場関係者との緊密な対話に努め、国債市場の安定化を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/6
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007・山東昭子
○議長(山東昭子君) 牧山ひろえさん。
〔牧山ひろえ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/7
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008・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主党の牧山ひろえです。
私は、立憲民主・社民を代表して、ただいま議題となりました法律案について質問させていただきます。
冒頭、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、現在治療、療養されている方々にお見舞いを申し上げます。
また、医療従事者の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様に心から感謝と敬意を表します。
明日、東日本大震災からちょうど十年になります。被災により命を落とされた方々に改めて哀悼の意をささげます。
被災地の復興は今なお道半ばです。私たち立憲民主党は、復興を更に本格化させるため、東日本大震災復興に対する三十四項目の提言をまとめました。あの悲劇を風化させず、最後まで取り組み続けます。
さて、三月五日に政府は緊急事態宣言の再延長を決定しました。
一月の宣言発令時、総理は、一か月後に必ず事態を改善させると表明したものの、二月に一か月延長を決定。その際も、一か月で全ての都府県で解除できるようにすると述べましたが、今回もその約束を果たせませんでした。延長自体は是とするにせよ、十分な説明もないまま二度も延長し、国民の期待を裏切った政府の責任について、総理はどうお考えですか。
また、収束が想定よりも長引いている原因、加えて、第三波の感染拡大が起こったそもそもの原因について、GoToキャンペーンや入国制限緩和の影響の詳細も含め、どのように分析されていますか。もし分析がされていなければ、今後の感染拡大を防ぐためにも、科学的な分析を確実に行うべきではないでしょうか。
変異株も拡散の兆しを見せている中、何よりも警戒しなければならないのはリバウンドです。政府が進めてきたウイズコロナでは、感染抑制と拡大の波が繰り返され、国民生活や社会経済活動に深く深刻な影響を与えるでしょう。
感染防止対策と医療支援、そして生活者、事業者支援を集中的に展開し、感染拡大の波を十分に収束させるべきです。それにより感染を封じ込め、早期に通常に近い生活、経済活動を取り戻すゼロコロナの道を私たちは主張しています。
そして、この考えに基づいた本予算組替え動議を衆議院において共同提案しました。そこでは、病床、療養施設を確保するために医療機関や医療従事者への支援を拡大することや、感染を徹底的に封じ込めるための施策が盛り込まれています。
例えば、ワクチン接種体制の整備充実、エッセンシャルワーカーや感染者の周囲をより広範囲に無料検査すること、感染ルートの把握のためのゲノム解析の強化、保健所の体制強化、出入国管理の徹底、治療薬の創薬支援などです。ですが、私たちの組替え動議に対し、与党は一顧だにせず、否決をしています。
そもそも、安倍内閣以来の政府・与党には、形式的に審議を進めるだけで、熟議により国民のためになる政策にしていく意欲が全く見受けられません。総理は、この国難と言えるべき状況を克服するために、立場の違いを超えて国民の英知を結集するおつもりはないのでしょうか。自らの考えに固執する対応ですと、昨年同様、本予算成立後すぐに補正予算の編成に掛からなければならないことになるのではないでしょうか。
ゼロコロナを推進し、封じ込めに成功しているニュージーランドや台湾には共通点があります。国民に政府に対する強い信頼感があることです。政府の新型コロナ対応が高い実効性を確保するためには、この信頼感は必須です。
コロナ対策の切り札ともされながら対応の遅れが際立つワクチン接種に関しても、属性や地域による差異が不可避です。かつ、副反応の懸念も払拭し得ない以上、円滑に進めるために信頼は欠かせないのです。この信頼が今の政治にあると総理はお考えでしょうか。
総理の身内も関係している総務省や農水省の違法接待、与党議員による緊急事態宣言中の相次ぐ夜の遊興、そして、河井元法相夫妻による大規模な選挙違反、あきもと衆議院議員のカジノIR収賄など、政府・与党のスキャンダルの連鎖は明らかに信頼を裏切るものです。
コロナ禍による辛抱を国民にお願いする側は、より厳しく身を律するべきです。国民に寄り添う意識を持っていれば、自然に身を慎むのではないかと考えますが、総理の認識をお伺いしたいです。また、そうならずに、与党議員や高級官僚にコロナ禍にふさわしくない行動が相次いでいるのは、どのような原因からと総理はお考えでしょうか。
このような不祥事は、安倍政権から引き継ぐ宿痾であり、長く官房長官を務め、安倍路線継承を公言する総理の責任は大きいと言わざるを得ません。内閣人事局の強過ぎる人事権が権力者と官僚の間に構造的なゆがみをもたらし、結果、一部の高級官僚が、国民ではなく権力の側を向いてしまっている。このような不祥事に対し、安倍、菅の両総理とも、口では責任を認めても、実際に責任を取ることはしない。実効性のある再発防止も知らないふり。
森友学園問題で、公文書の書換えを命じられた経緯をつづったいわゆる赤木ファイルを隠し続けていることに象徴されているように、真相究明にも消極的です。
総理、隗より始めよとも申します。赤木ファイルの公開を御指示されるおつもりはございませんか。
また、真相究明という点でいえば、違法接待が複数の省庁と案件に広がりを見せ、国家公務員倫理規程が形骸化しているのではないかと懸念されます。総務省による内部調査の不徹底さは自浄作用の喪失を示しており、単に検事経験のある方をメンバーに入れるだけでは不十分です。外部有識者から成る独立性の高い第三者調査組織を立ち上げ、行政の公平性を損なう行為がなかったか、全省庁を対象に調査すべきと考えますが、総理はいかがでしょうか。
本日の主題である税、国債等の歳入に関しても、直接的そして間接的に国民に負担をお願いする性質のものですので、政治に対する信頼が必要不可欠です。
まず、所得税法等の一部を改正する法律案について質問したいと思います。
税制の果たす最も重要な役割に所得再分配機能があります。しかし、平成に入ってから所得再分配機能は低下してきています。そして、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、我が国の格差問題は一層深刻になっています。中小企業の休廃業等や失業及び実質的失業が増加する一方で、株式市場の経済実態とは異なる株高によって膨大な利益を得た者も多かったでしょう。このように、格差の拡大が懸念される今こそ、税制の所得再分配機能を強化し、格差是正に向けた税体系の抜本的な見直しに取り組むべきです。
総理、現下の状況において、税制の所得再分配機能の回復が強く求められているという認識を共有していただけますでしょうか。また、認識を共有していただけるのであれば、政府の税制調査会に所得再分配機能の回復に向けた税制の在り方について新たな諮問をするなどのお考えはございますでしょうか。
このように、税制を通じた格差是正が強く求められる状況であるにもかかわらず、本法律案は従来の大企業・高所得者優遇の税体系を温存するものとなっており、所得再分配に向けた抜本改革に取り組む姿勢が見受けられません。
その最たる例が、金融所得課税です。我が国では金融所得課税の大半が税率二〇%の分離課税となっているため、年間所得一億円を超えると所得税の負担率が低下する傾向があります。立憲民主党は、所得再分配機能の強化を図るために、これを総合課税化するべきだと再三主張してまいりました。しかし、本法律案においても何ら見直しが行われませんでした。
総理、本法律案において金融所得課税の見直しを行わない理由を、どこにあるのでしょうか。
また、消費税については、コロナ禍の影響を踏まえた低所得者支援策、そして、ポストコロナに向けた消費喚起策として、時限的な消費税減税を実施するのも一案ではないかと考えます。総理の見解を求めます。
また、令和五年十月から、適格請求書等保存方式の導入が予定されていますが、このいわゆるインボイス制度については、過重な事務負担を事業者に強いることになるばかりか、免税事業者が取引過程から排除されるリスクもあることから、現行方式の当面維持も含めて、制度の見直し、そして柔軟運用を図るべきだと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
コロナ禍において住宅投資が低迷する中、住宅ローン控除の特例を当面延長することについては理解します。しかし、人口減少等によって空き家問題が深刻化する中、持家に対する支援だけではなく、家賃補助制度を創設するなど、賃貸住宅向けの支援策も重要なのではないかなと思います。
今後、住宅政策の在り方を総合的に検討し、家賃補助制度などに取り組まれますか。総理のお考えをお聞かせください。
立憲民主党は、大企業・高所得者優遇の税制を見直し、所得再分配機能の強化に向けた抜本的な税制改革を行うよう繰り返し主張してまいりました。しかし、改革は先送りされてきました。現下の格差の拡大は、そうした政府・与党の怠慢が引き起こしたものと言えます。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、拡大した格差の問題に真摯に向き合い、そして抜本的な税制改革に着手することを求めます。
次に、いわゆる特例公債法改正案について質問します。
本法律案は、五年間にわたり特例公債の発行を可能とする根拠規定などを設けるものです。
当初、昭和五十年に財政法四条の例外として特例公債法が立法された際、年度限りの単年度立法として制定されています。特例公債法が当初単年度立法とされたことの意義について、歴史的経緯も含め財務大臣はどのように認識されておられますか。
その後、平成二十四年度改正において、特例公債の発行期間が複数年度とされました。これは、ねじれ国会という特殊な事情を踏まえた政治的合意を背景に実施されたものであり、衆参のねじれが解消しているのであれば、特例公債の発行を複数年度とする理由はないのではありませんか。財務大臣の見解を求めます。
平成二十八年の法改正時に麻生財務大臣は、不退転の決意で二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化に取り組むと国会で答弁しています。言わば複数年度化の条件だったわけですが、その約束を果たさないまま、ほぼ同じ内容の法案を今回平気で提出しておられる。今回の改正案にも財政の健全化に向けて特例公債の発行の抑制に努める旨規定されているわけですが、私たちはどのような根拠で大臣を信じればよろしいのでしょうか。また、この財政の健全化が達成されているとは、どのような状態のことを指すのでしょうか。
そもそも、国家が行う財政活動は、財政民主主義の観点から国会で審議、議決されなければならないのが原則です。憲法は予算について単年度主義を採用している以上、予算、税制、国債発行を同じタイミングでその都度議論することが本来あるべき姿ではないかと考えます。
コロナ禍において、国民の生命や生活を守るため、特例公債を発行することは必要ですが、際限のない赤字国債の発行を抑制するためにも国会の監視機能をむしろ高めるべきと主張して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/8
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009・菅義偉
○内閣総理大臣(菅義偉君) 牧山ひろえ議員にお答えをいたします。
緊急事態宣言についてお尋ねがありました。
今回の感染拡大については、専門家の分析によれば、気温の低下の影響に加え、飲食の場面が主な感染拡大の要因とされております。
また、今回の緊急事態宣言においては、国民の皆さんの御協力により新規感染者数は八割以上減少しましたが、病床の逼迫状況など一部に厳しい状況もあり、結果的に、国民の皆さんの命と暮らしを守るためとはいえ、宣言を解除することができなかったことは大変申し訳ない思いであります。
今後、感染拡大を抑え、一日も早く収束をさせるべく全力を尽くすことが私に課せられている責任であると考えております。まずはこの二週間で宣言を解除できるよう対策を徹底してまいります。
その上で、専門家とともに、これまでの経過を踏まえ、医療や検査の体制をしっかりと構築する必要があると考えます。
政府の対応姿勢についてお尋ねがありました。
新型コロナ対応については、三次補正において、資金繰り支援や雇用調整助成金、緊急小口資金など当面必要な対策を盛り込んでおり、これと来年度予算を一体として切れ目なく執行していくことで、事業と雇用、暮らしを支えてまいります。
その上で、野党の御意見を含め様々な意見を伺って難題を解決していくとの姿勢が重要であります。特措法の改正に当たっても、政府・与野党協議会において野党の御意見を伺い、共同して対応してきたところであります。
政府等に対する国民の信頼についてお尋ねがありました。
政府としては、行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態になったことは深く反省するべきであり、国民の信頼を回復できるように努めてまいります。関係省庁においては検証委員会を立ち上げ、第三者も入れて客観性も担保した上で事実関係の確認を徹底をし、国家公務員倫理審査会の指導も受けながらしっかりと対応してまいります。
私からも、改めて全閣僚に対し、各省庁において倫理法などのルールの遵守を徹底するよう指示いたしました。
また、閣僚経験者等により国民の政治不信を招いたという批判があることは重く受け止めております。政治家は、その責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう常に襟を正していかなければならないと考えます。
森友学園問題についてお尋ねがありました。
御指摘のファイルについては、亡くなられた近畿財務局の職員の御遺族が国に対して提起された国家賠償請求訴訟において、御遺族が提出を求められているものを指していると思われますが、訴訟に関わる事柄であるため、財務省が回答を差し控えているものと理解をしております。
税制の所得再分配機能についてお尋ねがありました。
これまでの税制改正においても、所得税の最高税率引上げを行うなど、税制における所得の再分配は重要な課題であります。政府の税制調査会においては、所得再分配機能の強化についても論点の一つとして議論が行われており、今後とも、経済社会の情勢の変化を丁寧に見極めた上で、あるべき税制の姿について検討してまいります。
金融所得課税についてお尋ねがありました。
御指摘の総合課税化については、株式等の損失を意図的に生じさせることにより、全体の税負担を軽減させることが可能となるなどの課題があります。こうした課題も含め、金融所得課税の在り方については、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があると考えています。
消費税についてお尋ねがありました。
消費税は、社会保障のために必要な財源と考えております。インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために導入するものであり、その円滑な導入を図る観点から、免税事業者も含めた事業者の準備のために、軽減税率の実施から十年間の十分な経過措置を設けております。今後とも、制度の円滑な導入に向けて、周知、広報など必要な取組を進めてまいります。
住宅政策についてお尋ねがありました。
住まいは生活の基盤であり、様々なニーズに応じた住まいの確保を支援しております。こうした考え方に基づいて、ローン減税等による持家取得の支援だけでなく賃貸住宅についても家賃の消費税が非課税となっているほか、低所得者の家賃負担の軽減、高齢者向けのサービス付き住宅の供給などの支援を行っております。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/9
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010・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 牧山議員から、特例公債法の経緯、複数年度の特例公債発行を可能とする理由、特例公債の発行の抑制に努めるとの規定を信用できる根拠、財政の健全化という表現の趣旨等について、計四問お尋ねがあっております。
まず、特例公債法の経緯についてお尋ねがありました。
昭和五十年以降、平成二十四年度までに複数年度の枠組みが設けられるまで、特例公債を発行する場合は毎年度法律を定めてきたところであります。これは、特例公債は財政法第四条の特例であり、できる限り発行を抑制することが望ましいことなどを踏まえた対応であったと私どもとしては認識をいたしております。
次に、複数年度の特例公債発行を可能とする理由についてのお尋ねがありました。
現在の厳しい財政状況を見れば、当面、特例公債を全く発行せずに財政運営を行うことは困難と見込まれております。このため、今回の特例公債法の改正案では、安定的な財政運営を確保する観点から、平成二十四年度に議員修正によって定められた枠組みを引き継ぎ、現行法と同様に今後五年間の特例公債の発行根拠を設けることといたしております。
次に、特例公債の発行の抑制に努めるとの規定を信用できる根拠についてのお尋ねがあっております。
二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化につきましては、国民の信を得て消費税率引上げ分の使い道を見直し、子育て世代への投資と社会保障の安定化にバランスよく充当したことと併せて達成時期を変更したところであります。
今回の改正に当たっては、本法案に規定されておりますように、財政の健全化に向けて経済・財政一体改革を推進し、特例公債の発行額の抑制に努めるといたしておるところであります。政府として、引き続き二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化の達成に向けて、これまでの歳出改革の取組を継続しつつ、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいりたいと考えております。
最後に、財政の健全化という表現の趣旨についてのお尋ねがあっております。
政府は、財政健全化の当面の具体的目標として、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化及び債務残高対GDP比の安定的な引下げを掲げております。本法案における財政の健全化は、これらの目標を含みまして持続可能な財政の構築などを図ろうとするものであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/10
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011・山東昭子
○議長(山東昭子君) 音喜多駿さん。
〔音喜多駿君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/11
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012・音喜多駿
○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。
本日は三月十日、東京大空襲から七十六年がたちました。改めて犠牲になられた方々に哀悼の意をささげますとともに、不戦の誓いを新たにしてまいりたいと存じます。
それでは、会派を代表して、所得税法等の一部改正案及び特例公債法案に対して質問いたします。
法案質疑に先立ち、まず初めに現下のコロナ対応について伺います。
先週、一都三県の緊急事態宣言の延長が決定されました。非常に難しい判断であったことは理解をする反面、この延長判断に先立っては、東京都の重症病床使用率が突如、大幅に変更されるという事態が発生しました。地域を預かる知事の判断は尊重したい反面、重要な指標の変更がなされたにもかかわらず、その理由、背景について東京都及び都知事は十分な説明を果たしているとは到底考えられず、このような不信感が残る状況で延長の要請、決断が行われたことは、誠に遺憾であると言わざるを得ません。
昨年からずっと問題になっていた政府と東京都の数字のずれが、なぜ二月になって突然、修正がなされたのか。重要な指標の一つが変更され、問題は生じないのか。政府は、この検証を東京都と協力して再度行うとともに、二週間延長された緊急事態宣言については、客観的な基準が明確な出口戦略を責任を持って構築すべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
さて、大手シンクタンクの試算によると、この二週間の延長決定による経済損失は七千億円、失業者も三万人増加するということであり、中長期的な我が国経済への影響が懸念されます。今回の所得税法等の一部改正案は、ポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現を図ることを目的としておりますが、目下のところは更なる減税による財政出動が急務です。我が党は消費税を二年間五%に減税をする消費税減税プログラム法案を議員立法で提出をしております。今こそ期限を定めた消費税の減税を決断すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
続いて、特例公債法案についてお伺いいたします。
昭和の時代から特例公債の発行は常態化してきたものの、毎年、国会の審査に服してきました。複数年度の特例公債を認める法案が提出されたのは平成二十四年になってからであり、この主な理由は、ねじれ国会による政治的な駆け引きを背景とするものです。
そもそも、我が国の財政規律を定めている財政法は四条一項において建設公債以外の赤字国債の発行を禁じています。こうした財政法の趣旨、国会の機能及び歴史的経緯に鑑みれば、特例公債は毎年度ごとに法案提出するべきであるのは当然のことではないでしょうか。現状における積極財政の必要性を否定するものではありませんが、経済、財政の状況は刻一刻と変化するものであり、国会審議を経て毎年その都度必要な財政出動を行うことは十分に可能なはずであります。
複数年度の特例公債を認めることは国会軽視であり、不合理であると考えますが、財務大臣の見解をお伺いいたします。
次に、所得税法等の一部改正案の各論についてお伺いいたします。
東京都のベビーシッター助成金が課税対象となる問題に端を発した保育に関する助成金の課税については、国会の場で私が一昨年に初めて取り上げ、非課税化を求めてまいりました。今回の改正案において、国や地方自治体の実施する子育てに係る助成などに非課税措置がとられたことは高く評価をいたします。
一方で、保育の重要性と少子化対策を考えれば、保育については更に踏み込んで、教育と同様に保育に係るものをできる限り広く非課税とするべきではないでしょうか。提出法案では、所得税法九条で学資金が非課税となっていることと同様に、九条に保育の規定が置かれることとなっていますが、その対象は限定されないよう、保育全体が幅広く対象となることが望ましいと考えますが、財務大臣の見解をお伺いいたします。
政府は希望出生率一・八を掲げ、少子化対策に取り組んできましたが、二〇一九年には日本で生まれた子供の数が史上最低の八十六万人台となる八十六万ショックに見舞われるなど、少子化の勢いは止まりません。加えて、今般のコロナ下では、少子化は一層加速する可能性が高くなっています。より抜本的な少子化対策が求められており、税制でも子育て世帯の経済的負担を軽減させる政策を強く打ち出していく必要があります。
そこで、フランスで導入され、出生率向上に成果が出たとされる、子供の数が多いほど税負担が軽減される世帯単位課税、いわゆるN分N乗方式を再度検討し、導入するべきと考えますが、総理の見解を伺います。
菅政権は、国際金融センターの実現を政策の目玉に掲げています。今回の税制改正においても、キャリードインタレストの課税取扱いの明確化など、国際金融センター実現を念頭にした改正が入っていますが、国際金融拠点の確立には心もとないものです。そもそも、現状、日本の各都市が国際金融都市として魅力的ではないと考えられている理由をどのように分析されているのか、金融担当大臣にお伺いいたします。
国際金融センターの拠点確立に向けては、外国の金融都市に比べて大きい税負担があることが一つの課題であり、実際に国際金融都市を目指す大阪府などからも、是正、引下げの要望が出されています。今、政府が考えている税制緩和だけでは全く不十分であり、対象地域では法人税はシンガポール、香港並みに、所得税は非課税とするなど、よりダイナミックな税体系の導入を検討すべきと考えますが、財務大臣の見解を伺います。
また、証券取引の一極集中による弊害も国際競争力を備えた金融拠点が確立されない理由の一つです。私設取引所に総量規制があることで、PTS、私設取引システムが広がらず、東京証券取引所などの優遇になっているという指摘がございます。この点の緩和を検討すべきと考えますが、金融担当大臣の見解を伺います。
加えて、国際金融センターの拠点を国内で確立するには特区を用いるなど、地域にピンポイントで適用される機動的な政策が必要です。より具体的に都市を限定し、期限のある数値目標を明確に定めるべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
今回の改正案には、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制、DX減税が創設されています。テレワーク率の低迷やDX人材不足など、国内ビジネスのデジタル化の遅れはもとより、政府の各種支援策の不足や接触アプリの機能不全といった行政のデジタル化の不調も浮き彫りになっています。
今回の所得税法の改正案にはDX減税が入ったことは評価をいたしますが、一方で、企業だけではなく、霞が関、永田町のDXを進めるべきであり、とりわけ、民間企業には言い訳は許されないと担当大臣が厳しい目標を強いながら、事前告知をした甘い調査ですら約六割と低迷する中央省庁のテレワーク環境をしっかりと推進するべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
なお、国会においてもいまだにオンライン出席、オンライン審議が全く進まない現状は極めて遺憾であり、世間との乖離が激しく、改善に向けた議論を早急に行うことを改めて提言をいたします。
行政のDXは、ブラックと言われる霞が関の職場環境改善にも直結します。翻って総理は先日の記者会見で、若手官僚退職の増加、そして、その一番の理由であるブラック霞が関の指摘を受けたところ、労働力の流動化、そうしたことがやはり大事かなというふうに思いますと回答されました。ブラック霞が関に対する現状認識、解決手段の回答としては余りにも心もとないものであり、この回答に失望した若手官僚も多くいるのではないかと聞き及びます。
先週には、新型コロナ感染症対策室の職員の一月の時間外在庁時間が平均百二十四時間、最も長かった職員は三百九十一時間という驚くべき数値も発表されました。これほどの残業常態化は尋常ではなく、組織として破綻状態だと思えます。行政のDXはもとより、一人一人のジョブディスクリプションとその実態を精査し、抜本的な業務の見直しと削減を断行するなど、ブラック霞が関の環境改善を政府主導で取り組むべきと考えますが、改めて総理の御見解をお伺いいたします。
日本維新の会は、社会の情勢変化を正面から受け止め、変えるべきは大胆に変えていくために、引き続き具体的な政策提言をしていくことを申し上げまして、私からの質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/12
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013・菅義偉
○内閣総理大臣(菅義偉君) 音喜多駿議員にお答えをいたします。
東京都の重症病床使用率及び緊急事態宣言についてお尋ねがありました。
御指摘の東京都の重症病床使用率については、従来、東京都は独自の基準に基づいて算出をしておりましたが、緊急事態宣言の解除等の判断に当たって、医療提供体制の状況を全国統一の基準で把握することが重要であるため、東京都が改めて国の基準に基づき各医療機関への調査を行い、二月下旬に報告をいただいたものであります。
緊急事態宣言については、新規感染者数、病床の利用率などの指標を総合的に勘案し、専門家の意見も踏まえた上で判断することにしております。政府としては、この二週間で宣言を解除できるよう、自治体とも緊密に連携しつつ、これまでの対策を徹底をしてまいります。
消費税の減税についてお尋ねがありました。
新型コロナの影響については、事業と雇用、暮らしを守るため、資金繰り支援や雇用調整助成金、緊急小口資金などによる支援に全力を挙げております。その上で、ポストコロナを見据えて、成長志向の経済政策を進め、経済再生に取り組んでいく考えであり、今般の税制改正法案にも、企業のグリーンやデジタル化への投資を促進するための特例を盛り込んでおります。
消費税は、社会保障のために必要な財源と考えております。
子育て支援のための税制についてお尋ねがありました。
政権として、長年にわたる最大の課題である少子化対策に真っ正面から取り組み、前に進めていきたいと考えております。不妊治療の助成制度の大幅拡充など、様々な対策を講じております。
いわゆるN分N乗方式については、共働き世帯に比べて片働き世帯が有利になることや、高額所得者に税制上大きな利益を与えることなど、様々な課題があると承知をしております。
今後も、結婚や出産、子育てを希望する方々の声に丁寧に耳を傾け、効果的な対策を実施をしてまいります。
国際金融センターの実現についてお尋ねがありました。
我が国において国際金融センターを実現するには、まずは我が国自体がビジネスを行う場として魅力的な国家になるべく改革を進めることが大事だと思います。
そのために、特に金融関係者から要望が強い税制について、外国人の国外財産を相続税の対象外とするなど、抜本的な見直しを行うこととしております。さらに、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和も含めた総合的な環境整備を行ってまいります。この中で、国際金融センターに向けた取組を行う地域については、政府として積極的に連携して実現に向けて取り組んでまいります。
テレワーク環境整備の推進についてお尋ねがありました。
緊急事態宣言の下に、感染症対策に万全を期し、必要な行政機能を維持することを前提として、各府省庁は、民間企業と同等の七割を目指して引き続き取り組んでまいります。
その上で、テレワークは働き方改革の観点からも重要であり、この三月中に国家公務員に関するテレワークのロードマップを改定し、通信環境や業務分担などの環境整備を着実に進めてまいります。
霞が関の職場環境改善についてお尋ねがありました。
長時間労働は、国家公務員の志望者の減少や中途退職者の増加の理由としても挙げられており、霞が関の職員の士気の低下や能力の発揮を妨げる問題であり、その是正が急務であると考えております。
このため、組織を挙げて業務の見直しやデジタル化による効率化を進めるとともに、人事評価などによるマネジメントの改善を行うなど、政府全体で働き方改革を行い、職場環境の改善に取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/13
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014・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 音喜多議員から、特例公債法の在り方、子育て助成の非課税措置、国際金融都市として魅力的でないと考えられている理由、国際金融センターを念頭に置いた税制措置、私設取引所システム、いわゆるTPSですけれども、取引所の関係について、計五問お尋ねがあっております。
まず、特例公債法の在り方についてお尋ねがありました。
現在の厳しい財政状況を見ますと、当面、特例公債を全く発行せずに財政運営を行うことは困難と見込まれております。このため、今回の特例公債法の改正案では、安定的な財政運営を確保するという観点から、平成二十四年に議員修正によって定められた枠組みを引き継ぎまして、現行法と同様に、今後五年間の特例公債の発行根拠を設けることといたしております。
なお、本法案では、現行法と同様に、各年度の特例公債の発行限度額について、毎年度の予算により国会の議決をいただくことといたしており、国会軽視との御指摘は当たらないものと考えております。
次に、子育て助成の非課税措置についてのお尋ねがあっておりました。
今回の改正案は、幼児教育、保育無償化により国から受ける援助について非課税とされていることなどを踏まえまして、子育て支援の観点から、保育を主とする国や自治体からの子育て助成について所得税を非課税とすることとし、学資金と同様に所得税法第九条に規定をいたしております改正案として、法案を提出したところであります。
所得税法第九条に関するというか、規定する際に当たりまして、御指摘のように保育全体を対象として規定をさせていただいた場合は、対象範囲がこれ明確ではありませんし、例えば保育と一体として行われております子育て家庭への家事支援などの助成が非課税とならない可能性があるものと考えております。
次に、日本の都市が国際金融都市として魅力的でないと考えている理由についてのお尋ねがあっております。
日本には、確固たる民主主義、法治主義に支えられた安定した政治、また良好な治安、また生活環境等々という強みがありますほか、大きな実体経済、また開かれた株式市場、約一千九百兆円というようないわゆる個人家計金融資産などなどがありまして、資産運用ビジネスにとって大きなポテンシャル、可能性が存在していると思っております。
一方で、日本の魅力を高める上での課題としては、税制、英語対応、在留資格といった点が挙げられているものと承知をいたしております。
こうした点を改善するため、国際金融センターの確立に向けて、税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和などの諸課題に取り組んでいるところであります。
次に、金融センターを念頭にした税制措置についてのお尋ねがありました。
今般の税制措置につきましては、法人税に関して、資産運用業を主業とする非同族会社などにつきましては、一定の要件を満たせば、役員に対する業績連動給与の損金算入を可能にする、また、所得税に関しましては、ファンドマネジャーがファンドから運用成果に応じ出資割合を超えて受け取る利益について、一定の場合には、海外と遜色ない二〇%の分離課税の対象とすることなどを明確化するなど、海外事業者や高度金融人材を呼び込む環境を整備して、日本が国際金融センターとしての地位を確立するための措置を盛り込んでおるところであります。
今後、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和といった税制以外の施策と併せまして、国際金融センターの確立に向けた取組を引き続き進めてまいりたいと考えております。
最後に、私設取引システム、いわゆるプロプライエタリー・トレーディング・システム、TPSについての取引所関係についてのお尋ねがありました。
取引所につきましては、公正な取引の確保とか投資家保護の観点から、これは免許制となっておりますが、自主規制業務の義務付け、議決権保有や兼業の制限などの厳格な規制が設けられておりますのは御存じのとおりです。
他方、PTSは、これは取引所ごとの高度な価格形成機能は有しておりませんので、許可制といたしておりまして、取引所と比べ、むしろ緩やかな規制となっておるのが現状です。
その上で、PTSにつきましては、取引量が拡大をし、一定の価格形成機能を有することとなったという場合には、取引所免許の取得を求めることといたしております。
PTSの制度の在り方につきましては、こうした点を踏まえまして、公正な取引の確保や投資家保護を前提に、取引所とPTSの間の適切な競争の確保の観点から検討する必要があると考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/14
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015・山東昭子
○議長(山東昭子君) 上田清司さん。
〔上田清司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/15
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016・上田清司
○上田清司君 国民民主党・新緑風会の上田清司です。
ただいま議題となりました法律案について、会派を代表して、菅総理を始め関係大臣に質問させていただきます。
まず、日本の現実からです。
安倍前総理も菅総理も、コロナ禍以前のアベノミクスの成果を誇っておられました。いわく、円高が修正され企業収益が増大した、株高が実現した、有効求人倍率が四十七都道府県全て一・〇を超え雇用が好調、インバウンドが一千万人から三千万人まで超えたなど強調されました。
しかし、企業の収益は所得再分配や投資に回らず、企業の内部留保が史上最大になりました。雇用拡大の多くは非正規雇用であり、平均賃金の中央値が大きく下がったのもこの時期です。
インバウンドの推進と成果は評価するものですが、外国人旅行者の平均滞在日数は五日間であり、消費平均は約十五万円と聞いております。インバウンドの一千万人のGDPは約一・五兆円、二千万人増のインバウンド効果はGDP約三兆円です。GDP五百五十兆円の中では決して大きくありません。日本国内の内需を五%動かすだけで、十六兆、十七兆のGDPが増えます。
ここで、改めて平成元年から平成三十年までを世界と比較します。
平成元年から平成四年まで産業競争力は四年連続世界一でした。ところが、一昨年は三十四位、昨年は三十七位に落ちています。世界企業ランキングについても目を覆うばかりです。平成元年は、世界の時価総額上位五十社のうち日本は三十二社、上位十社の中で六社を占めておりました。今は二十六位のトヨタのみになっています。
GDP総額は中国に抜かれ第三位ですが、一人当たりのGDPを見ると、平成七年までスイス、ルクセンブルクに次いで三位だったものが、為替によって順位は変わりますが、現在は二十七位になっています。
賃金を見ても、名目でも実質賃金でも平成七年、一九九五年がピークで、二十五年を過ぎた現在においてもそれを超えていません。何よりも、外国と比較すれば、日本の賃金が異常に上がっていません。日本のピークの平成七年、一九九五年を一〇〇とすると、平成三十年、二〇一八年には日本は九〇、アメリカは二〇〇、ユーロ圏は一六〇となっています。
この三十年間の現実について、総理並びに財務大臣に率直な所感を伺いたいと思います。
以上のような現実を踏まえ、所得税法の一部改正等、産業競争力に絞って伺います。
まず、デジタルトランスフォーメーション促進税制の創設についてです。
先ほど申し上げました世界競争力三十七位は総合順位ですが、六十三か国の参加で日本が六十三位が二分野あります。一つは起業家マインド、もう一つはDXです。その意味では、菅総理の炯眼はすばらしいものです。事実、コロナ禍の対応でもデジタル化の遅れは明らかになりました。
産業競争力強化法に定める認定された事業適応計画に基づいて行う設備投資について、税額控除も三%と五%、特別償却も三〇%となっており、話が小さいと思います。一定のデジタル投資に対し、取得額以上の減価償却を認めるハイパー償却税制を導入すべきではないかと思います。
DXを進めるための設備投資やソフトウエアの研究開発に係る費用について、最大一〇〇%を法人税から控除する税制を五年間の時限措置とするダイナミックな案にすべきではないかと提案いたします。財務大臣の見解を伺います。
次に、カーボンニュートラルに向けた投資推進税制の創設です。
今や気候変動というより気候危機という認識で自然環境悪化に人類の知恵を結集すべきだと思います。菅総理が二〇五〇年までにカーボンニュートラルの実現を政策の柱に掲げたことは正しく、評価できます。
技術革新と環境適応を目指し、温暖化ガス削減やエネルギー消費削減につながる設備、製品、サービスへの投資に大胆な税制優遇を導入すべきです。
そこで、提案です。
提案一、政府案は事業適応計画の水準が高く、参入企業が限定されるので、中小企業が参入できるような計画にすべきではないかと思います。
提案二、仮に大きな投資が赤字決算につながる場合、翌期以降の黒字と相殺する繰越欠損金控除制度を拡充すべきではないでしょうか。
提案三、投資額の五〇%か一〇〇%を法人税から差し引ける仕組みとして、投資額上限を一千億円、期間は五年間とするぐらい大胆な政策を出すべきだと思います。
政府案は小出しの政策で、今こそチャンスという思いを企業家に感じさせられないものです。以上三点、財務大臣の御答弁をお願いいたします。
ちなみに、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案についても少し小ぶりです。
経済産業大臣、毎年のようにこうした政策を打ち出されておられますが、日本の競争力は、昨年、三十四位から三十七位になっています。この政策によって順位はどのように上がるんでしょうか。
また、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の効果について、二酸化炭素の削減予定量はどのように試算されているのでしょうか。
産業競争力強化は、かつて日本が展開したように選択と集中が必要です。リスクの高い技術、製品、開発には思い切った税制や補助金などで支援をする。一方、公正な競争を通じて企業の競争力や消費者への受益も拡大することが重要です。
今は、GoToキャンペーンの中抜き、ぼったくり、あるいは国民が全く使用しないアベノマスクについても四百六十億円も公開入札もない随意契約で支出を行い、また、総務省高官の接待漬けに見られるように、コネが産業競争力をむしばんでいます。ヒラメ官僚、お調子者官僚がばっこする霞が関であれば、日本全体が劣化するのは当然です。
国会の委員会で平気でうそをつき、そのうその報告を大臣が国会で報告するという二重の失態。もし証人喚問であれば、総務省の高官は偽証罪で罪を問われることになります。なぜうその報告を取りまとめた事務次官が厳重注意なのですか。国会の審議でうそをつくのがそんなに軽い話なのか。事務次官は更迭すべきではないでしょうか。武田総務大臣に伺います。
一連の不祥事の原因は、菅総理の人事の在り方、つまり、正論であろうがなかろうが、逆らうやつは左遷と言われることにあるとよく報道されています。本当のところはどうなのか、大変恐縮ですが、菅総理に伺います。
最後に、いつの間にかプライマリーバランスの黒字化が後退し、一年ごとに国家国民のため、まさにこんなことをいつまでも認めるべきではないと心に刻み込むために特例公債をやっているのに、五年間はフリーパスという仕組みをつくられました。ずるずると財政健全化の道が後退していませんか。
菅総理、特例公債発行について一年ごとの仕組みに戻すというリーダーシップを発揮する気持ちはありませんか。御答弁願います。
菅総理には、頭の痛い問題続出の中でありますが、日本国、日本国民のため日夜御尽力いただいていることに感謝を申し上げ、質問を終えます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/16
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017・菅義偉
○内閣総理大臣(菅義偉君) 上田清司議員にお答えをいたします。
過去三十年間の我が国経済についてお尋ねがありました。
バブル崩壊後、我が国では少子化、高齢化が進む中でデフレが顕在化し、その下で企業は投資を控え、競争力や賃金が低迷しておりました。政権交代以降八年間、経済最優先で取り組んできた結果として、GDPや株価は大幅に上昇し、国民の稼ぎに当たる総雇用者所得は増加が続くなど、大きな成果を上げてきたと思っています。まずは新型コロナを収束させ、グリーン、デジタルなどの成長志向の経済政策を進めることで、経済を再び成長をさせてまいります。
総務省の事案の原因と人事の在り方についてお尋ねがありました。
人事は常に適材適所の観点から、その人の能力、経験などを総合的に考慮し、法令に基づいて適切に行っております。
また、お尋ねの事案については、総務省において、第三者も入れて客観性も担保した上で検証を徹底をし、国家公務員倫理審査会の指導も受けるなどしながら、ルールにのっとり、しっかりと対応してまいります。
特例公債の発行等についてお尋ねがありました。
私の内閣では、経済あっての財政、この考え方の下に、当面は感染症対策に全力を挙げつつ、経済を強くする政策に全力で取り組むとともに、財政健全化についてもその旗を下ろさず、プライマリーバランスの黒字化目標に向け改革を進めてまいります。
特例公債法については、引き続き複数年度の枠組みとする法案を御審議いただいておりますが、各年度の発行限度額は毎年度の予算により国会の決議をいただくこととしており、後退をしているということはありません。
残余の質問については、関係大臣に答えさせます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/17
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018・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 上田議員からは、日本経済の現状認識、デジタルトランスフォーメーションの投資促進税制、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制について、計三問お尋ねがあっております。
まず、日本経済の現状認識についてのお尋ねがありました。
日本経済は、御存じのように、これ一九九〇年代から、バブル崩壊という言葉が使われましたけれども、低い経済成長と長引くデフレーションによります停滞を経験をしてきております。二〇一二年十二月の政権交代以降、長引くデフレからの脱却、日本経済を力強く成長させていくため、金融政策、財政政策、成長戦略を一体として進めてきたところであります。
こうした取組によって、極めて短い期間でデフレーションではないという状況をつくり出すとともに、新型コロナの流行前には、GDPは名目、実質共に過去最高水準となり、高水準の企業収益、雇用・所得環境の改善を背景に経済の好循環は着実に進んできていたと考えております。
足下の日本経済は、新型コロナウイルスの影響により今でも依然として厳しい状況にありますけれども、総合経済対策等に盛り込まれた施策を着実に実行することで、民需主導の経済成長を早期に実現していくことが重要であると私どもは考えております。
次に、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制についてのお尋ねがあっております。
まず、法人税に係る租税特別措置について、投資額の全額又は投資金額を超えて税制上の支援を行うということは、その必要性、有効性、減価償却等々を考えて、財政的な影響といった観点も踏まえて、これはちょっと慎重に検討すべき問題だろうと考えております。常識じゃちょっと考えられぬところでありますけれども、なかなか、意見としてそういう御意見もあるというのは参考になりました。
今般の税制改正において、新型コロナを受けまして企業がデジタル技術を活用して新たな日常に対応した事業再構築を進めていく取組を後押ししていくため、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制を創設することといたしております。本税制によって企業変革に向けたシステム投資が活発に行われることにより、世界的なデジタル化の波に乗り遅れることがなく、日本の国際競争力の確保、国民の利便性の向上を促してまいりたいと考えております。
最後に、カーボンニュートラルに向けました投資促進税制についてのお尋ねがあっております。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制で求めております事業適応計画の水準というものは、二〇五〇年カーボンニュートラルという高い目標の実現に向けて必要となる水準と考えておりまして、この税制により、中小企業を含め企業の意欲的な取組を税制上強力に支援をしてまいりたいと考えております。
また、この改正におきまして、大法人の繰越欠損金の控除上限について、カーボンニュートラル等の適格投資の範囲内で所得の最大一〇〇%まで繰越控除を可能とする特例を創設することとしております。これにより、企業赤字を含め厳しい経営環境の中でも果敢に投資を行い、事業等々に積極的に取り組んでいく企業というものを支援してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣梶山弘志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/18
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019・梶山弘志
○国務大臣(梶山弘志君) 上田議員からの御質問にお答えをいたします。
産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案の効果に関するお尋ねがありました。
委員御指摘の国際競争力の低迷の一因として、成長投資が不十分で新しい稼ぐ力を生み出せていないことがあるものと認識をしております。
日本企業が付加価値の高い新たな製品、サービスを生み出すためには、長期的視点を経営に取り戻し、利益を研究開発、設備投資、スタートアップ等の企業買収など未来への投資に積極的に回すことが必要であります。このような認識の下で、長期視点に立った企業の変革を後押しするため、今通常国会に産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案を提出させていただきました。
御指摘の競争力ランキングにつきましては、本法案以外の政策も含め様々な要因で左右されるため、この法案による効果をお答えすることは困難ですが、法案のみならず、予算、税制による措置を総動員することで日本企業のイノベーションを後押しし、ウイズコロナ、ポストコロナ時代における日本企業の国際競争力の向上を実現するとともに、我が国経済が再び力強く成長できるよう全力を尽くしてまいります。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制による二酸化炭素の排出削減効果についてお尋ねがありました。
この税制では、例えば、化合物パワー半導体や高性能のリチウムイオン蓄電池など、大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備を対象と想定をしております。
これらの製品の普及が一定程度実現をし、既存製品からの転換が進んだと仮定すると、二〇三〇年時点で年間約三千六百万トンのCO2排出量を押し下げる効果が得られるものと試算をしているところであります。これは、日本全体のエネルギー起源のCO2の年間排出量と比較すると約四%に相当をいたします。
加えて、本税制により、事業者や工場などにおいて、よりCO2を排出せずに収益を伸ばすことを表す指標である炭素生産性の向上につながる設備投資も促進することで、更なる効果も期待をできます。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、この税制のみならず、あらゆる政策を総動員して取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣武田良太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/19
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020・武田良太
○国務大臣(武田良太君) 上田議員からの御質問にお答えをいたします。
総務省職員の国家公務員倫理規程違反の事案について御質問をいただきました。
この度は、度重なる総務省幹部職員の会食に関わる事案により国民の疑念を招く事態となったことにつきまして、改めて深くおわび申し上げます。
一連の事案に関する国会への御報告に際しましては、調査においてそのときそのとき本人に確認できたことを前提として答弁をしてきております。しかしながら、新たに倫理法に違反する疑いがある会食が判明したことは事実であり、深刻に受け止めております。
これまでのコンプライアンス対応で相談に乗っていただいている弁護士の方に加え、検事経験のある弁護士の方にも新たに参加していただき、調査対象、調査手法まで御指導を仰ぎつつ、ヒアリングにもできる限り御同席していただくなど、常に第三者のチェックをいただきながら、改めて徹底した調査を進めることといたしております。
いずれにせよ、こうした疑念を招くことが二度と起こらないよう、私が先頭に立って、コンプライアンスを徹底的に確保し、国民の信頼回復に努めてまいります。総務事務次官には、信頼回復に力を尽くすことで責任を果たしてもらいたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/20
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021・山東昭子
○議長(山東昭子君) 大門実紀史さん。
〔大門実紀史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/21
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022・大門実紀史
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
会派を代表し、質問をいたします。議題となりました法案に関連して、特にコロナ禍で苦しむ中小企業への支援と税制について質問します。
この間、商工会議所など中小企業団体と懇談を重ねてまいりました。異口同音に出されたのは、政府の支援策が後手後手、右往左往、継ぎはぎだらけだという厳しい意見でした。
例えば、各団体の一番の要望は持続化給付金の継続でした。しかし、菅内閣は、コロナ第三波が襲来していたにもかかわらず、昨年のうちに打切りを決定してしまいました。
ところが、年が明け、再び緊急事態が出されるようになると、持続化給付金を打ち切ったままというわけにはいかなくなり、慌てて法人は上限六十万円、個人は三十万円の一時支援金を急ごしらえで打ち出しました。
この一時支援金は、現場の評判が大変悪い。給付金額も少ない上に、事前に商工会議所や税理士などの登録確認機関の認定を受けてからでないと申請できないなど手続も煩雑です。こんな面倒な制度を新たにつくるくらいなら、持続化給付金を継続、拡充すればよかったのではありませんか。総理の考えをお聞きします。
これでは、中小企業の皆さんから、後手後手、右往左往、継ぎはぎだと言われても仕方がありません。
しかも、一時支援金の実施要項が発表されたのは、先週の三月一日です。これから持続化給付金以上の面倒な手続を行うとしたら、実際に給付されるのは一体いつ頃になるのですか。早くても四月半ば、ほとんどは五月以降になるのではありませんか。それまで現場の事業者が持ちこたえられると総理はお考えですか。お答えください。
菅内閣の打ち出した新たな給付金は、内容が不十分なだけでなく、事業者の間に深刻な分断を生んでいます。
一日六万円の時短協力金は、助かる飲食店がある一方で、六万円では固定費にもならない中規模以上の飲食店がたくさんあります。また、対象となる飲食店は、例えば二十日で百二十万円の給付が受けられますが、その飲食店に納入する酒屋さんなどの事業者は、売上げが半減していても一時支援金の六十万円か三十万円しか給付されません。
先週訪問した中小企業の経営者団体の事務局長さんは、今回の時短協力金や一時協力金について、私にこう言われました。なぜあそこは助けてうちは助けてくれないのか、そういう不公平感が会員の間に分断を生んでいる。それがこの苦境を一緒に乗り切ろうと頑張ってきた連帯感を失わせ、会議にも人が集まらなくなった。組織にとって、お金の問題より深刻だ。こういう亀裂や分断を生まないためにも、一律の金額ではなく、売上高など事業規模に応じた公平な支援を検討すべきではありませんか。総理の考えをお聞きします。
持続化給付金が打ち切られた背景には、昨年十一月末、財務省の財政制度等審議会が提出した来年度予算編成に向けた建議がありました。この建議は、持続化給付金などの支援はモラルハザードを生み、中小企業の新陳代謝を阻害するから終了すべきだという、現場の苦境を知らないとんでもない主張をしています。
この建議の背景には、総理のブレーンと言われてきた経済評論家のデービッド・アトキンソンさんの中小企業の淘汰・新陳代謝論があります。アトキンソンさんは、日本の中小企業は数が多過ぎる、生産性が低い、規模を大きくして半分の数にすべきだと提言してきた方です。
総理が創設した成長戦略会議のメンバーにも登用され、昨年十二月に出された成長戦略会議の実行計画には、中小企業の生産性が低い、規模の拡大を促進すべきだなど、アトキンソンさんの主張が採用されています。
しかし、生産性や規模の大きさが全てでしょうか。日本の中小企業は、小さくてもきらりと光る優秀な技術を持ち、それが技術立国日本を支えてきたのではないでしょうか。単に規模の拡大だけを追求すれば、中小企業の淘汰を後押しすることになりかねません。総理の考えを伺います。
こういう考え方に基づいて、今回、中小企業のMアンドA促進税制が提案されています。生産性の引上げを目指し、中小企業の合併、買収の促進、つまり大が小をのみ込む形での規模の拡大を促進するための税制です。
麻生財務大臣は、一昨日の予算委員会で、アメリカの有名なデパート、メーシーズは、人が少なくて生産性は高いがサービスは悪いという分かりやすい例を引いて、世の中、生産性だけが全てではないという見識のある発言をされました。
それならば、今回の中小企業のMアンドA促進税制のような筋の悪い改正は見送るべきではないでしょうか。
次に、コロナ禍による中小企業の過剰債務問題についてお聞きします。
コロナ対応の特別融資は、中小企業、中小事業者のまさに命綱の役割を果たしてきました。民間金融機関のコロナ特別融資の残高は一月末現在で十七・五兆円、日本公庫で十二兆円にも達しており、従来の年の二倍以上の巨額の融資がコロナ対応として実施されております。長引くコロナ禍の下で、当面は返済の据置き、猶予がどうしても必要になりますが、その後のことも政治の責任として考える必要があります。
コロナ特別融資は、平時における借入金とは性格が異なります。コロナ禍での営業損失の穴埋めに使われた借入金であり、言わばコロナ債務とでも呼ぶべきものです。コロナが収束し、仕事が動き始めると、事業者は仕入れのための運転資金や設備資金が必要になってきます。これは言わば前向きな借入金ですが、コロナ債務が残っているために、金融機関が新たな融資に応じてくれるかどうかは分かりません。過剰債務にある事業者への融資は、金融機関にとってもリスクを伴うからです。新たな融資が実行されなければ、中小企業、中小事業者は倒産、廃業するしかありません。このまま個々の金融機関と事業者に任せて放置すれば、今年の秋以降にも倒産が急増していく危険性があります。
コロナ債務と新しい債務との二重債務問題をどう解決していくか、コロナ後の日本経済を立て直す上でも避けて通れない課題ではないでしょうか。総理の認識を伺います。
二重債務の解決は、過去の経験からしても、コロナ債務を削減、縮減、整理するしか方法はありません。東日本大震災のときは、与野党を超えて二重債務、二重ローン問題を議論し、債権買取り機構や中小企業再生スキーム、私的整理ガイドラインなどを含め、過去の債務の削減、縮減、整理の仕組みが打ち出されました。
一月末の財政金融委員会では、これらのことも参考にしながら、私はコロナ債務の縮減、整理について検討されるよう麻生大臣に求めたところ、今後検討すべき課題だとの答弁をいただきました。先日、自民党の金融調査会からも、債務の返済猶予などの提言が出されたと聞いております。
麻生金融担当大臣、頑張る中小企業を支援することは国の責務です。中小企業の過剰債務をどう解決すべきか、金融庁としても具体的な検討に入るべきではないでしょうか。この点での早急な対応を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/22
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023・菅義偉
○内閣総理大臣(菅義偉君) 大門実紀史議員にお答えをいたします。
一時金についてお尋ねがありました。
飲食店の営業時間短縮などの影響により、売上げが大幅に減少した事業者には、一時金を支給することとしております。その申請手続については、不正防止と負担軽減の両面に配慮しており、例えば、所属する商工会や取引のある金融機関などの確認があれば簡素化するなど、できるだけ事業者の御負担にならないようにしております。
全国に緊急事態宣言を行い、幅広い業種に休業要請を行った昨年とは状況が異なることから、昨年のように一律の持続化給付金を再度支給することは考えておりませんが、一時金に加え、資金繰り支援や雇用調整助成金など様々な支援によって雇用と事業をしっかり支えてまいります。
一時金の給付時期についてお尋ねがありました。
一時金は、三月八日より申請の受付を開始しています。給付までの期間は申請書類不備の有無などによって異なることとなりますが、厳しい経営環境に置かれている事業者に配慮し、可能な限り早くお手元にお届けできるようしっかり対応してまいります。
事業者への支援についてお尋ねがありました。
今回の緊急事態宣言では飲食店の時間短縮を中心に対策を行っており、その影響を受ける飲食店などに対して協力金や一時金を支給することとしております。これらは簡易な申請で迅速に支給するために、協力金は一律の金額、一時金は最大六十万円で売上げ減に応じた金額となっていますが、さらに一日最大一万五千円の雇用調整助成金による人件費の支援や事業規模に応じた資金繰り支援なども行っており、これらの支援で事業と雇用を支えてまいります。
中小企業政策についてお尋ねがありました。
人口減少、国際化が進む中であって、私は、中小企業政策については中小企業を淘汰することが目的ではなく、優秀な技術を持つ中小企業の経営基盤を強化することで中堅企業へ成長し、海外で競争できるような企業を増やしていくことが重要だと考えております。こうした問題意識は、私が経済産業大臣政務官であった二十年前からのことであります。
あわせて、規模の大きさにかかわらず、地域の経済や雇用を支える小規模事業者が持続的に発展できるようにすることも重要だと思います。そのため、中小企業のデジタル化など、中小企業の生産性を向上させ足腰を強くする仕組みを構築し、創意工夫する企業を応援してまいります。
中小企業が抱える債務についてお尋ねがありました。
多くの中小企業が厳しい経済環境にある中、事業を継続していただくため、資金繰り支援に万全を期してまいります。更なる資金需要については、中小企業に対する新規融資の積極的な実施を金融機関に求めるなど、環境整備に努めてまいります。今週月曜日にも、財務大臣から、政府系・民間金融機関に対して、改めて要請を行ったところです。また、既に有している債務のカットも含め、事業再生に向けた支援も行ってまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/23
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024・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 大門議員から、中小企業のMアンドA促進税制、中小企業が抱える債務について、二問お尋ねがあっています。
まず、中小企業のMアンドA促進税制につきましてのお尋ねであります。
中小企業の経営資源の集約化による事業の再構築などによって、生産性を向上させ足腰を強くするという仕組みを再構築すること、これは重要だと思っておりまして、こうした観点から、今般創設をいたします準備金制度は、MアンドAを実施する中小企業が投資リスクに備えるためのものであり、必要な改正であると考えております。こうした改正によりまして、中小企業の生産性の向上や経営基盤の強化を支援してまいりたいと考えております。
もう一点いただきました。中小企業が抱える負債についての話であります。
フローではなくてストックの話だと思いますが、新型コロナウイルスによる事業者への影響が継続をする中で、資金繰り支援の徹底を図ることは極めて重要と考えておりまして、おととい、一昨日でしたか、私の方からも、官民の金融機関団体等々の代表に対して、新規融資を含む最大限柔軟な対応を改めて要請をさせていただいたところであります。
加えて、政府として、コロナ禍で増大をする債務が原因で債務超過になるなど、将来的な事業運営の足かせになるといったことがないように適切に対応することが重要と考えておりまして、日本政策金融公庫等による資本性の劣後ローンとか、REVIC、地域経済活性化支援機構等々によるファンド等々を活用して、事業者の本業支援を進めているところでもあります。
引き続き、事業者の実態を踏まえて、中小企業への支援の徹底を図ってまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/24
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025・山東昭子
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415254X00820210310/25
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