1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年六月十日(金曜日)
午後一時開会
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委員の異動
六月八日
辞任 補欠選任
堂故 茂君 山崎 正昭君
六月九日
辞任 補欠選任
山崎 正昭君 宮島 喜文君
石川 博崇君 下野 六太君
六月十日
辞任 補欠選任
福岡 資麿君 羽生田 俊君
宮島 喜文君 足立 敏之君
下野 六太君 山本 博司君
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出席者は左のとおり。
委員長 矢倉 克夫君
理 事
清水 真人君
高橋 克法君
有田 芳生君
安江 伸夫君
川合 孝典君
委 員
足立 敏之君
岡田 広君
加田 裕之君
中川 雅治君
羽生田 俊君
福岡 資麿君
宮島 喜文君
森 まさこ君
山下 雄平君
真山 勇一君
下野 六太君
山本 博司君
東 徹君
山添 拓君
高良 鉄美君
嘉田由紀子君
国務大臣
法務大臣 古川 禎久君
国務大臣
(国家公安委員
会委員長) 二之湯 智君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
警察庁長官官房
総括審議官 近藤 知尚君
警察庁長官官房
審議官 住友 一仁君
警察庁刑事局長 大賀 眞一君
金融庁総合政策
局審議官 有泉 秀君
法務省民事局長 金子 修君
法務省刑事局長 川原 隆司君
法務省矯正局長 佐伯 紀男君
法務省保護局長 宮田 祐良君
出入国在留管理
庁次長 西山 卓爾君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
法律の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○法務及び司法行政等に関する調査
(名古屋出入国在留管理局における被収容者の
死亡事案に関する件)
(入管収容施設における医療体制に関する件)
(インターネット上の誹謗中傷対策に関する件
)
(難民認定制度に関する件)
(技能実習制度に関する件)
(仮放免に関する件)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/0
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001・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、堂故茂君及び石川博崇君が委員を辞任され、その補欠として下野六太君及び宮島喜文君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/1
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002・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑法等の一部を改正する法律案外一案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房審議官住友一仁君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/2
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003・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/3
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004・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/4
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005・山下雄平
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。
私、今回の法改正の審議に合わせて、地元の佐賀少年刑務所を視察してまいりました。出所後に社会に復帰できるように、再犯することがないように様々な取組をされていることを改めて認識させていただきました。
今回の法改正案に含まれている刑事収容施設法改正案には、受刑者に対する社会復帰支援の規定が盛り込まれています。この改正案が施行されると、出所、社会復帰に向けてどういった対応が変わるのでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/5
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006・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 受刑者が円滑に社会復帰をするためには、受刑中から改善更生の意欲を喚起して社会生活に適応する能力の向上を図ることはもとより、釈放後の生活を見据えて関係機関と連携した支援を行うことが重要だというふうに考えています。
刑事施設におきましては、これまでも就労支援や福祉的支援の取組を行ってきたところですけれども、しかし、現行のこの刑事収容施設法には明文での根拠規定は置かれておりませんでした。
そこで、今回の法改正では、刑事収容施設法におきまして、刑事施設の長の責務として社会復帰支援を行うことを明確に規定することによって、関係機関との連携を強化し、受刑者に対する社会復帰支援の取組を一層推進するということとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/6
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007・山下雄平
○山下雄平君 佐賀少年刑務所で大変驚いたのは、少年という名称ながら高齢の受刑者がかなりいたということです。最高齢は七十九歳、七十代が十二人、六十代が十七人ということでした。その中には身体的な機能が低下している人もいると思われます。
懲役刑が科された場合、そうした高齢者にも刑法上の作業義務が課されているというふうな認識でよいのでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/7
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008・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
現行法の懲役は、刑法第十二条第二項におきまして、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせると規定され、全ての懲役受刑者に作業を行わせなければならないものとされております。
したがいまして、御指摘のような受刑者につきましても、刑法上は作業を行わせなければならないと解されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/8
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009・山下雄平
○山下雄平君 では、作業ができないほどの高齢者にはどう対応しているのでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/9
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010・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
高齢受刑者の中には、体力や認知機能の低下などにより他の受刑者と行動を合わせることが困難な方というのも含まれております。このような事情を勘案しまして、例えば、作業時間を一定程度短縮をしたり、実際に実施可能な程度の軽作業を指定するなどの配慮を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/10
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011・山下雄平
○山下雄平君 実際には、全く多分作業ができないような高齢者の方もいらっしゃると思います。体の自由が利かなくなった高齢者には実質的には作業を課すことが難しいという現実を踏まえると、今回の法改正により懲役と禁錮を拘禁刑に一本化するという意義をどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/11
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012・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
懲役において行わせる作業は、改善更生、再犯防止のための重要な処遇方法でありますが、刑法上、御指摘の高齢受刑者を含め、いずれの懲役受刑者に対しましても一定の時間を作業に割かなければならないことから、例えば社会適応に必要な知識、能力を付与する改善指導など、個々の受刑者の特性に応じた指導等の実施に必要な時間を確保することが困難な場合がございます。そのため、より一層改善更生、再犯防止を図るにはその受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を可能とすることが必要であり、このような個々の受刑者の特性に応じた柔軟な処遇は禁錮受刑者の改善更生、再犯防止にも資すると考えられるところでございます。
そこで、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるよう拘禁刑を創設し、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると定めることとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/12
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013・山下雄平
○山下雄平君 私が伺った佐賀少年刑務所においても、決して多くはない人員体制で様々な取組をなさっていました。
社会復帰を促すための教育の充実には教育の専門スタッフ始め職員体制を拡充することが不可欠だというふうに考えますけれども、今後の職員体制充実にどう取り組んでいかれるのか、考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/13
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014・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 今回の法改正は、受刑者の特性を把握し、処遇への動機付けを適切に行うとともに、個々の受刑者の問題性に応じた処遇を進め、受刑早期から円滑な社会復帰を見据えた指導や支援についてこれまで以上にきめ細かに対応していこうとするものでございます。
これまでも主として改善指導、それから教科指導等を担当する教育専門官の配置につきましては順次拡大してきたところではございますが、今後、御指摘のとおり、専門スタッフの確保というのがますます重要になるものと認識してございます。法改正の趣旨を踏まえまして、受刑者の改善指導の充実に向けて、関係機関の理解を得ながら必要な人員、人的体制の整備に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/14
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015・山下雄平
○山下雄平君 受刑者が世をはかなみ、人生は真っ暗闇で楽しいことは何もないと思ってしまっていては、更生する意欲も生まれないというふうに思います。その点で、篤志面接委員と呼ばれる方々が行っていらっしゃるクラブ活動というのは非常に意義があるというふうに思います。
私がお邪魔した佐賀少年刑務所では、地域の方々が篤志面接委員となって、剣道やそろばん、ギター、トランペット、太鼓などを教えているそうです。受刑者にそんなことをやる必要はないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、私は社会復帰に向けて非常に意義のある活動だというふうに思います。
篤志面接委員の活動は基本的にはボランティアだということですけれども、貢献してくださっている方々に、法務省として、政府としてどう報いているのでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/15
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016・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
民間の篤志家であります篤志面接委員、これは矯正施設の被収容者に対して様々な助言を行っていただいたり、あるいは御指摘のようなクラブ活動に御協力いただくなど、多大な御貢献をいただいているところでございます。
このような篤志面接委員としての御功績によりまして、令和三年度で見ますと、三名の方が叙勲を、十四名の方が褒章をそれぞれ受章されております。また、法務省といたしましても、令和三年度に二十五名の方に対しまして法務大臣表彰を行わせていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/16
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017・山下雄平
○山下雄平君 是非とも、そうした方々は、自分たちがやって良かったというふうに思ってもらえるような対応をお願いしたいというふうに思っております。
刑法改正案の審議ではこの侮辱罪というものが度々取り上げられておりますけれども、侮辱罪にならなければ何を言ってもいいというわけではないというふうに思っております。その点で、私が三月の法務委員会で取り上げました交通事故の被害者に対する損害保険会社による精神的な二次被害ということについても、非常に私は大切なことだというふうに思っております。
その際、金融庁は、損保業界に対して被害者やその御家族の心情に寄り添った対応を促してまいりたいというふうに答弁されました。あれから三か月ほどたちましたけれども、金融庁として、交通事故の被害者への二次被害の防止に向けてこの間何を行ってきたのか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/17
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018・有泉秀
○政府参考人(有泉秀君) お答え申し上げます。
委員の御指摘を踏まえまして、金融庁におきましては、精神的な二次被害について交通事故被害者の団体の方から直接意見を伺う機会を設けるなど、実情の把握に努めてきたところでございます。
その上で、日本損害保険協会に対しまして、被害者の方やその御家族の心情面に寄り添った対応を促してきたところでございまして、その結果、協会では今後の取組について議論が進められているものと承知しております。
具体的には、ほかの業態におきます先進的な取組も参考にしつつガイドラインなどを策定しまして、損害保険会社間で目線を共有した上で各社が社員教育の高度化に取り組むと、このように承知しているところでございます。
また、損害保険会社から委託されます弁護士と被害者の方との間のコミュニケーション、この点も重要な点でございまして、既に一部の社では改善に向けた取組が進められていると、このように承知しております。
こうした動きがより一層広がっていきますよう、金融庁としても各社に対して引き続き適切な対応を促してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/18
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019・山下雄平
○山下雄平君 今後、適切な対応を促していくということですけれども、具体的には今後どういったことに取り組んでいかれるつもりでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/19
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020・有泉秀
○政府参考人(有泉秀君) お答え申し上げます。
まずは、日本損害保険協会との意見交換会の場などを通じまして、金融庁の幹部より、協会に加盟している全社の経営陣に対して精神的な二次被害への取組を促していくと、このようにしております。
その上で、損害保険業界とも密に連携いたしまして、協会におけるガイドライン等の策定やそれに基づく取組を促すとともに、その定着、浸透に向けた活動状況をフォローアップしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/20
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021・山下雄平
○山下雄平君 是非とも、そうした精神的な二次被害が二度と起こることがないように、実効性のある対応をお願いしたいというふうに思っております。
これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/21
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022・真山勇一
○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。
今、山下委員の方から佐賀少年刑務所の話が出ましたけれども、実は、今回の刑法改正に当たって、先日、御存じのように、法務委員会のメンバーの皆さんと一緒に、私たちは川越少年刑務所を視察しました。
収容されているのは千人弱ということなんですが、刑期十年未満の男子受刑者が収容されているということです。原則として年齢二十六歳未満というふうなことだそうです。ですから、佐賀少年刑務所、高齢者の方が多いという話でしたけれども、こちらも少年刑務所というよりはむしろ青少年刑務所と呼んだ方が適切というような話もありました。
施設では、日々の作業とともに、社会復帰へ向けてのもう本当に様々な職業訓練も行われているのを私たちは見ることができました。この施設でやっぱり受刑者がどう過ごしているのかということなんですけれども、お配りした資料を見ていただきたいんですが、視察に行かれた方は私と同じこの資料をいただいていると思います。川越少年刑務所からいただいた資料の中にある一ページ、受刑者の一日の生活という表です。
今回の改正で導入されることになります、拘禁ということに変わりますね、懲役が。そして、改善更生のためのことが、様々なことが行われるわけですけれども、そのための施設の整備なども少しずつ準備がもう進められているというようなふうに聞きました。
受刑者の一日の生活、今これが現在ですけれども、平日と矯正指導日というふうにここには出ていますが、こうしたこと、この一日の、どう変わるかということなんですが、これが、現在とこの新たな刑法改正、これがもし導入されるということになりますと、どの辺りがどんなふうに具体的に変わってくるのかということをちょっと伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/22
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023・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
現行法の下では、懲役受刑者は一定の時間を必ず作業に割くこととされております。しかし、今回の拘禁刑の創設によりまして、個々の受刑者の特性に応じて作業や指導などを組み合わせた柔軟な処遇が可能となることになります。
受刑者の日々のスケジュールにつきましては、法改正後も全体的な枠組みを変更することは予定しておりませんけれども、他方で、このスケジュールの中にあります矯正処遇の実施という時間がございますが、この部分につきましては、法改正の趣旨を踏まえて、個々の受刑者の特性に応じて作業や指導などに割り当てる時間を適切に配分して柔軟な処遇ができるよう、内容などの工夫をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/23
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024・真山勇一
○真山勇一君 職業訓練なんかもその一連の流れの中で行うというふうに理解してよろしいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/24
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025・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/25
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026・真山勇一
○真山勇一君 今回の改正で、大臣もお答えになっておりましたけれども、やはりこれまでなかなか被害者本人それから家族などに対するその心情、これについてのやっぱり対応が十分でなかったから、これからは十分にしていきたいというようなお答えもありましたけれども、この中では、どんなところでどんなふうな形でそれが導入されるのか、伺わせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/26
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027・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 被害者の方からの心情伝達云々といったことにつきましても、時間帯としてはこの矯正処遇の実施の中で実施することになろうかと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/27
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028・真山勇一
○真山勇一君 現状より改正によってそういう面に重点が置かれるのかどうか、あるいは同じようなことなのか、その辺りはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/28
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029・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) この矯正処遇に当たりましては、個々の受刑者ごとに刑事施設の長が処遇要領を策定しております。法改正後は、被害者等の心情等を考慮することが刑事施設の長の責務となりますから、この処遇要領上の達成すべき矯正処遇の目標に被害者等の心情等の理解に関する内容を盛り込むこととなります。
この制度の具体的な運用につきましては現在検討中でございますけれども、矯正処遇の目標の達成に向けた取組としましては、例えば、現在も実施しておりますけれども、被害者の視点を取り入れた教育の時間数を増やして受刑期間全体を通じて働きかけを行うことですとか、職員による個別面接を通じて被害者等から聴取した内容を受刑者に伝え、被害者等の心情を考えさせる時間を設けることなどを検討しているところであります。
いずれにしても、受刑者が自身の犯した罪と真摯に向き合って、真の反省につながるよう、これ先日委員にも御答弁申し上げたところですけれども、悔悟の情と改善更生の意欲を持つことができるように各種取組を一層推進していきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/29
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030・真山勇一
○真山勇一君 やはり、この刑務所の中での受刑者の方たちの生活というのは非常に規則的にこれ今現在やられているわけですけれども、お話ですと、多少これが非常に柔軟に対応するようになってくるということで、是非、やはりその更生へ向けて、社会復帰へ向けて、そのときにやはり被害者に対する気持ちというのも持ちながら社会復帰をしていく。そうでないと、また再犯して戻ってきちゃうようなことになるから、二度としてはいけないんだということは、やはり被害者にどれだけ寄り添えるかということに大きく影響されるのではないかというふうに思っております。
是非、この受刑者の一日というのを、やはり受刑者の、入っている人たちにとってはこれは非常に大事な日常生活ですので、是非教育も含めてしっかりとした計画を立てていただきたいと思います。
それから次に、やはり侮辱罪、どう幾らお答えいただいてもなかなか、その表現の自由が本当に脅かされることがないのかという懸念がなかなか消えません。そうしたことについて少し追加の質問をさせていただきたいというふうに思うんです。
まず、その侮辱罪の法定刑引上げについて法制審議会の刑事法部会で議論をされたということですね。その議論が結局二回だけだった、大臣も二回やりましたとお答えになりましたけれども、それで決まってしまったということなんですね。
先日の参考人の皆さんのお話の中からも、この部会、部会の委員たち、委員の皆さんは専門家とか実務者が多いんで非常に議論が充実してできて、もうそれで決まったということをおっしゃっていたんですが、私はやっぱり、これ名簿を見ても、憲法学者が入っていないという点です。やはり、大臣もおっしゃったように、表現の自由というのは憲法でも保障された大事な問題であるというふうにおっしゃっているにもかかわらず、この刑事法部会に憲法学者、専門家とか実務者は入っているのは分かるんですが、憲法学者が入っていない。何で憲法学者を加えなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/30
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031・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
法制審議会の総会は、憲法学者が委員として任命されております。
侮辱罪の法定刑の引上げに関する諮問につきましては、まず総会において調査審議が行われ、後、部会における調査審議を経て、そして改めて総会において部会での議論を紹介した上で調査審議が行われ、そして答申案の採択に至った、こういう経緯でございまして、総会における議論は部会での議論を踏まえて憲法学者も加わった上で行われたというふうに承知をいたしております。
法制審議会の部会におきましては、この部会には憲法学者は加わってはいないのですけれども、この分野に精通をした刑事法研究者も交えて、侮辱罪と表現の自由との関係を中心に集中的な議論が行われております。
具体的には、第一回会議におきましては、憲法の保障する表現の自由の重要性を踏まえて、侮辱罪の法定刑を引き上げることと正当な表現行為との関係について各委員、幹事から様々な御意見が述べられ、第二回会議におきましては、これらの御意見を踏まえ、論点を整理しつつ更なる議論が行われたところでございまして、全体を通じて活発な議論が行われたところであります。このような充実した議論を経た上で、第二回会議におきまして本諮問に対する議論は尽くされたと認められたことから、全ての委員、幹事が同意をした上で部会としての意見の取りまとめが行われたものでございます。
このように、法制審議会におきましては、表現の自由との関係、特にこれ重要ですので、表現の自由との関係に焦点を当てて、刑事罰と憲法上の基本的人権との関係に精通した研究者の方による充実した御議論がなされており、したがいまして、十分な議論が尽くされたものと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/31
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032・真山勇一
○真山勇一君 よくその経過分かりましたけれども、やっぱりそれ、今大臣がおっしゃったようなことでしたら、やはり、その部会でも人選に偏りがないように憲法学者も入れてやはり話をするということも私は必要ではなかったのかというふうに感じております。
やはり、今回のその法改正について表現の自由をどうするのかという点についても、まあ十分な議論はなされたというふうな大臣の御説明でしたけれども、やはり肝腎のその具体的に決めるところで憲法学者が入っていなかったということはちょっと、私はその辺はやり方問題があるんじゃないかなというふうに感じておりますので、是非こういう問題やるときには、やはりその大事な、一番集中的に議論をやるところでやはりそのそれぞれの専門の方を是非入れてやるべきではないかということを申し上げておきたいというふうに思っております。
それから、今回のインターネット上の誹謗中傷対策、これが改正の目的ということなんですけれども、今回のその法定刑を引き上げることでインターネット上の誹謗中傷事案、これは減るというふうに考えておられるでしょうか。減ると考えておられるなら、その根拠はどういうことか、説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/32
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033・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 一般に、刑罰には、犯罪を犯した者を処罰することによって社会の一般人を威嚇し、警戒させて、犯罪から遠ざからせる一般予防の機能があるとされているところであります。
法定刑の引上げに伴う威嚇力を科学的に定量的にお示しするということは事柄の性質上困難でございますけれども、侮辱罪の法定刑を引き上げ、厳正に対処すべき犯罪であるという評価を示すことによって、その威嚇力によって侮辱罪に該当する行為を抑止する効果はあるというふうに考えておりまして、法制審議会の部会におきましても、侮辱罪の法定刑の引上げによる抑止力について事務当局から同様の説明を行い、そのような理解を前提として調査審議が行われ、これに関し、刑法学者である幹事から、法定刑の引上げは、飲酒運転が特にそうであったように、絶大な効果を国民の規範意識に対して持っており、実際に件数を引き下げる具体例がある旨の意見が述べられた、こういう意見が述べられたということを御紹介をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/33
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034・真山勇一
○真山勇一君 それからもう一つ、やっぱり今回の改正で当然やっていくべきかなというふうに思っておりますインターネット上の誹謗中傷の事案の中で、公のものでなくて、一対一、まあ例えばLINEだとかそういうものなんですけれども、そうしたものはやはりかなり今多くなっているわけですけど、その中で、誹謗中傷あるいは侮辱ということが今回の改正案の対象にはなっていない。
これ、なぜなっていないのか、これについてもう一回改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/34
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035・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
侮辱罪は、人の外部的名誉、社会的名誉を保護法益とするものでありまして、公然と人を侮辱することが要件とされておりますため、公然性の要件を満たさない場合には、今回の法改正が行われた後においても侮辱罪の処罰対象とはなりません。一対一で行われる公然性のない誹謗中傷を侮辱罪の処分対象とすることは、ただいま申し上げました侮辱罪の保護法益と整合性を欠くという問題がありまして、適当ではないというふうに考えております。
また、処分対象とならない事案であっても、被害に遭われた方からの人権相談への対応など、行政的な諸施策を推進していくことが重要であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/35
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036・真山勇一
○真山勇一君 今、最後の大臣のおっしゃったこと、大事だと思うんですね。一対一、公然性なくても、やはり被害遭った方、言われた方は、かなりいろいろな意味でダメージを受ける、心理的にも大きな被害を受けるということがあって、実際、公然と行われていなかったけれども、言われた方あるいは誹謗中傷された方は、ダメージというのは公然と行われるのと同じぐらいやはり被害を受けるということだってあるわけですね。
ですから、やっぱりそういう、実際に公然とならないとしても、それを的確につかんでやはり抑止していくということは大事だと思うんで、それは是非大事な点なんでもう一回、是非やっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/36
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037・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) その公然性の要件を満たさない場合には侮辱罪の処罰対象にはなりませんけれども、しかし、この処罰対象とはならない事案であっても、被害に遭われた方を救済するために行政的な諸施策を推進していくことが重要だというふうに考えています。
例えば、法務省におきましては、人権相談への対応ですとかプロバイダー等に対する投稿の削除要請などを行っておりますけれども、これは引き続き関係省庁や関係機関とも連携しながらしっかりと進めていくべき事柄であると、進めていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/37
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038・真山勇一
○真山勇一君 それから、インターネットという性格上、一対一でやっていたものも、ある日突然公然性を持つ形になるわけですよね。これはもう本当に一瞬にしてひっくり返るわけですから、やはりその辺にも十分心してこの対応を是非やっていただきたいということを改めて申し上げたい。この辺がしっかりしないと今回の法改正の意味が私はやっぱりないんじゃないかと、そういう気さえしておりますので、それを申し上げておきたいというふうに思います。
それから、いわゆる公人、つまり政治家とか公務員などですね、こうした公人に対する侮辱というのは、政府の統一見解というのを私、何度読み直してもなかなか分かりにくいんですけれども、どんな場合でも公人に対しては罪に問われないというふうなことでよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/38
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039・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 表現の自由は、これはもう憲法に保障された極めて重要な権利でございまして、これが不当に制限されるということはあってはならないと、これはもう当然のことだというふうに考えております。
公正な論評といった正当な表現行為につきましては、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられます。このことは今回の法改正によって何ら変わることはございません。
犯罪の成否は、それこそこれは収集された証拠に基づいて事案ごとに判断されるべき事柄でありますから、政治家や公務員などの公人に対するものを含めて、いかなる場合が刑法第三十五条の正当行為に該当するかについてこの場で確定的なお答えをするということは、これは難しいということを御理解いただきたいと思います。
その上で、その上で、御指摘に関しましては、法制審議会の部会におきまして、政治家や公職の候補者に対する論評は処罰しない旨の規定を設けることを検討すべし、すべきではないかとの意見もありました。この点につきましては、仮に公務員を保護の客体から外すこととすると、あからさまにうそを前提として公務員を侮辱した場合でも処罰しないこととなり、刑法第二百三十条の二とも矛盾するし、なぜ公務員であれば虚偽の事実を前提として侮辱してよいこととなるのか理解できない、政治家というだけでカテゴリカルに全て侮辱罪の対象外とするのは行き過ぎではないかといった問題が指摘されたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/39
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040・真山勇一
○真山勇一君 よく分かります。やっぱり侮辱罪というのがどういうものかというのは、それはとてもこういうものだと決められないということはよく分かりますけれども。
それでは、その侮辱罪だというふうなことですね、それを誰がどのような状況で決めるということが考えられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/40
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041・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
個別の事案におきまして最終的に侮辱罪が成立するか否かということになりますと、これは刑事手続において決めるものでございますので、基本的には、捜査機関が収集された証拠に基づきまして起訴された事案であるならば、これを、この事件、当該事件を審理する裁判所において最終的に侮辱罪の成否を確定すると、そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/41
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042・真山勇一
○真山勇一君 例えば、集会ですとかデモですとか、そういうものを例に取ると、そこで例えば侮辱罪に該当するような事案があったということもあり得ると思うんですけれども、例えばこの侮辱罪で当人が身柄を確保されたり逮捕されたりということはあり得るんでしょうか。これは国家公安委員長おいでになっているので伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/42
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043・二之湯智
○国務大臣(二之湯智君) その特定の行為が侮辱罪に当たるかどうかや、あるいは侮辱罪に当たってその場で被疑者を逮捕するかどうかについては、非常に個別の事案の具体的な事実関係に即して判断がなされるものでありまして、この場で具体的にお答えすることは非常に困難だと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/43
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044・真山勇一
○真山勇一君 二之湯委員長、先日の委員会で、その辺りの判断をするのは誰かという質問があって、それに対して現場の警察官であるというふうにお答えになったんですが、これはそういう解釈でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/44
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045・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) どのような犯罪でありましても、現行犯逮捕という場合には、判断をするのは逮捕者であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/45
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046・真山勇一
○真山勇一君 そうすると、侮辱罪についてもそういうケースというのは考えられるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/46
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047・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 侮辱罪にあってもそういったことが一般的には妥当するわけでありますけれども、政府統一見解でお示ししたとおりでございまして、侮辱罪の現行犯逮捕につきましては、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/47
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048・真山勇一
○真山勇一君 侮辱罪に当たらないものは逮捕されないということなんですが、その辺りというのは、繰り返しになりますけど、それを現場にいる警察官が判断をするという解釈になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/48
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049・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 現行犯逮捕の場合は現場の警察官、逮捕者が判断することになりますけれども、そもそも侮辱罪の場合はこの違法性を阻却する事由がないかどうかということが明白でないとやっぱり逮捕できない。これは、ほかの犯罪でもそうでございますけれども、侮辱罪につきましては、表現行為という性質上、逮捕時にその場で正当行為でないということが明白と言える場合は実際上は想定されないと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/49
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050・真山勇一
○真山勇一君 そうすると、やっぱりどういう場合に逮捕されたり警察官に身柄を拘束されるのかって大変重要なことだと思うんですけれども、それが全く分からない、私にはどうしてもその辺が理解できないんですが。
それが現場の警察官の判断ということになると、やっぱりどうなんでしょう、例えばやじ一つにしても、ちょっと何か言ったら現場の警備に当たっている警察官ににらまれるんじゃないかとか、そういうような抑止力というのは働かないんでしょうか。その辺どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/50
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051・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、侮辱罪の現行犯逮捕については、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されない、やはり捜査をしてみて、それが正当行為かどうかという判断をする必要があるだろうと。現場ですぐに正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないと、このように考えておりますので、言論の自由を萎縮するということもないだろうと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/51
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052・真山勇一
○真山勇一君 原則は想定していないということですね。でも、万一それは、もしかすれば今回の改正で逮捕されたり拘束されたりすることはあり得るわけですね。で、それが裁判に進むこともあるわけですね。そうすると、その裁判で、いや、これはやはり侮辱罪に当たらないよということになって無罪になったとします。やっぱりなったとしても、やはり一時期そういう、そのように逮捕又は拘束されて、それで裁判にかけられて、無罪にはなったけれども、やっぱりこういうことが頻繁に起きるという、頻繁にというか起きることになり、頻繁は取り消します、起きるということになりますと、やっぱり物を言うのにも発言するのにも多少注意をする、つまり表現の自由という面から気になるということが私は大変心配されるんではないか、自粛するということがやはり出てくるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺りについての考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/52
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053・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今回の法改正は侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでございまして、構成要件を変更するものではございません。処罰の対象となる行為の範囲が変わるわけではなく、侮辱罪が成立する行為の範囲が変わるわけではありません。今まで処罰の対象とならなかったものが法改正によって新たに対象となるということはないわけでございます。また、拘留、科料を存置することとしておりまして、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰するという、そういう趣旨ではございません。
侮辱罪による逮捕に関しまして、今般の法定刑の引上げによりまして、住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますけれども、それ以外の要件に変わりはございません。したがいまして、恣意的な逮捕が可能となるものではございません。
今回の法改正の内容や趣旨、それから侮辱罪による現行犯逮捕につきまして、いわゆる政府統一見解としてお示しをさせていただいたわけですけれども、その考え方、すなわち、侮辱罪の成否が問題となるのは表現行為であることから、その性質上、仮に構成要件に該当したとしても、違法性阻却事由の存否に関して、表現の自由などの憲法上の重要な権利との関係を慎重に考慮しなければ正当行為かどうかを判断できないため、実際上は現行犯逮捕時の状況だけで正当行為でないことが明白とまで言える事案は想定されないという考え方をこれお示しをしてきたところでございますけれども、この考え方を、今後捜査機関に対してこれを周知徹底する、これが周知徹底される予定でございまして、捜査機関におきましてもその内容を踏まえて適切に対処されるものというふうに承知をしております。
したがいまして、この今回の法改正は、言論を不当に萎縮させるような、そういうものではないというふうに考えておりますけれども、委員もう御指摘をいただいておりますように、その萎縮させるのではないかという御懸念、御指摘があることは、やはりこれは真摯に受け止めたいというふうに思っています。
ですから、引き続き、今申し上げましたような法改正の趣旨などについて丁寧な説明や周知に努めていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/53
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054・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/54
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055・真山勇一
○真山勇一君 やっぱり今大臣がおっしゃったように、この政府統一見解、これ非常に大事な内容が記されているというふうに私も思います。それから、この精神を生かすのはやっぱり現場だと思うんですね。それ現場に徹底しないと、幾ら作っても現実に違うことが起きてしまうということが心配されます。
是非、この表現の自由ということは憲法にも保障されている、繰り返しになりますが、これをやはり現場にも徹底させて、これは是非二之湯国家公安委員長にもお願いしたいというふうに、時間がなくなりましたので、それだけお願いして私の質問、じゃ、一言どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/55
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056・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) じゃ、二之湯国家公安委員長、一言、手短にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/56
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057・二之湯智
○国務大臣(二之湯智君) 法務大臣がおっしゃったとおりでございますけれども、侮辱罪に関しては、表現の自由の重要性に配慮しつつ、より慎重な運用を図ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/57
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058・真山勇一
○真山勇一君 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/58
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059・安江伸夫
○安江伸夫君 公明党の安江伸夫です。
まず、更生緊急保護の対象者の拡大について確認をさせていただきます。
今回、更生保護法八十五条一項六号が改正をされ、訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者から、検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者に改められることとなります。
ここで言う検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者の意義と、またその改正の趣旨について確認をさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/59
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060・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 御指摘の改正部分ですけれども、更生緊急保護の対象者の類型に、検察官が罪を犯したと認めた者のうち、公訴を提起する処分も公訴を提起しない処分も受けていない、いわゆる処分保留で釈放された者を追加するというものでございます。
これは、釈放された被疑者の中には、貧困や住居がないなどの事情によりまして緊急的な保護を必要としているものの、公訴を提起しない処分をいまだ受けていないために更生緊急保護を受けることができないなど、公訴を提起しない処分が更生緊急保護の要件としていることが適時適切な保護の実施の阻害要因となっている場合がございます。そのため、公訴を提起しない処分を受けたことを更生緊急保護を受ける要件から除くこととするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/60
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061・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
今御説明いただいたとおりでございまして、いわゆる処分保留者につきましても更生緊急保護の対象者とすることで、より適時適切、また柔軟な改善更生を図ることが期待されるということで、当然積極的にこの点評価をしたいと存じます。
他方ででございますが、今回のその改正につきましては、検察官の影響力を不当に増大させるのではないかとの懸念が日本弁護士連合会から指摘されているところでございます。すなわち、検察官が被疑者を処分保留とした後に、実質的に保護観察所の長に対し働きかけをして、その後の被疑者の態度がその内容に沿わないものである場合には最終的に起訴処分を行うこととなるのではないか、そしてこれは、実質的に検察官の判断で一種の刑罰の性格を帯びる処遇を強要させることになるのではないかとの御指摘であります。また、これは無罪推定の原則にも反するのではないかといった懸念も示されているところでございます。
そこで、確認をさせていただきます。
更生緊急保護の開始とその内容は、形式的又は実質的な意味においても保護観察所の長の判断において決せられるものであり、また、その後の被疑者の態度が検察官による起訴処分の判断資料にされることはないというふうに理解をしておりますけれども、そのような理解でよいか、法務省の御答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/61
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062・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 更生緊急保護は、刑事上の手続等による身体の拘束を解かれた者の改善更生のために必要な限度で行う援助的、福祉的な措置でございまして、遵守事項を設定して指導監督を行うといった保護観察とは異なる制度でございます。
その更生緊急保護の開始は、その対象となる人の申出があった場合において、御指摘いただきましたとおり、保護観察所の長がその必要があると認めたときに行うものです。
保護観察所の長は、更生緊急保護を行う必要があるか否かを判断するに当たりましては、対象となる人の刑事上の手続に関与した検察官等の意見を聞かなければならないこととなっておりますけれども、これは、更生緊急保護の必要性の判断の基礎となる身上関係、身の上関係や財産関係等の情報を有している検察官等から参考となる意見を聴取するというものでございます。
検察官は、処分時までに収集した証拠に基づき終局処分を行うわけですけれども、いわゆる処分保留で釈放された被疑者を含めまして、更生緊急保護の開始の可否や内容を判断するのは、御指摘のとおり、あくまでも保護観察所の長でございます。検察官から意見があったとしましても、保護観察所の長の判断を拘束するものでもございません。
したがいまして、御指摘の検察官の影響力を不当に増大させるのではないかとの指摘、懸念は当たらないものと考えております。今回の法改正後も、更生緊急保護の対象者の速やかな改善更生の保護に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/62
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063・安江伸夫
○安江伸夫君 丁寧に確認をさせていただきました。
加えまして、更生緊急保護につきましては、あくまでも対象となる者の意思に反しない場合に限り行うことができる、今御答弁の中にも含まれておりましたけれども、意思に反しない限り行うことができるとなっておりますが、処分保留者の者を対象とする場合には、先ほどの日弁連からの御懸念等も踏まえまして、その意思に反しないか否かの判断につきましては慎重になされるべきものと考えます。法務省の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/63
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064・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 更生緊急保護は、先ほど申し上げましたとおり、その対象となる人の申出があった場合に、その改善更生のために必要な限度で行う援助的また福祉的な措置でありまして、これまでもその対象となる人の意思を十分に確認をしまして、その意思に反しない場合に限り改善更生の保護を行ってきたところでございます。
今回の改正後も、その制度趣旨、要件に変わりはないのでありまして、いわゆる処分保留で釈放された人につきましても、その人の意思を十分に確認しながら更生緊急保護制度を適切に運用してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/64
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065・安江伸夫
○安江伸夫君 今の御答弁のとおりの運用をお願いしたいと思います。
続きまして、思想信条の自由との関係性についても確認をさせていただきたいと思います。
先般の参考人質疑の中で、今回の法改正によって、思想犯を労働や指導で思想改造することを可能にする法案であるとの指摘がございました。
もとより、思想信条の自由は憲法上保障されたものであり、それが内心の自由にとどまる限り絶対的に自由であり、たとえそれが民主主義を否定する思想であっても、少なくとも内心にとどまる限りは処罰されないと解されております。また、思想についての沈黙の自由も保障されていなければならない、これが思想信条の自由でございます。
参考人の質疑にあった懸念を踏まえて、あえて確認をさせていただきますが、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるとの規定に基づく措置は、決して対象者の思想、良心の自由を侵害するものではないという、この点につきましての法務大臣の御認識をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/65
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066・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今回の法改正で創設する拘禁刑につきましては、作業と指導を、いずれも罪を犯した者の改善更生という特別予防のために課すものと位置付けることとし、刑法第十二条第三項において、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると規定することといたしております。
ここに言う改善更生とは、罪を犯すに至った要因となっている悪い点を改めるとともに、再び犯罪に及ぶことなく社会生活を送ることができるようになることを意味するものでありまして、もとより、思想改造などではありませんし、憲法上保障される思想及び良心の自由を侵害することが許されないということは、これはもう当然のことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/66
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067・安江伸夫
○安江伸夫君 当然のことということで確認をいただいたところであります。
また、関連いたしまして、今回の改正では、被害者等の心情を踏まえた処遇を行うことができることが明確化等されます。かかる法改正の趣旨について確認をさせていただきます。
あわせて、この反省、悔悟の情を深めさせるということは、自分のやったことは正しかったとの言わば信念のようなものに基づいて、それを曲げさせる、あるいは変節させるという意味での思想、信条の自由の侵害ではないかといった見方もあり得るところであります。こうした立論に対して、被害者等の感情を直視させ、反省、悔悟の情を深めさせることは思想、信条の侵害に当たらないとするその理由についても法務省に確認をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/67
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068・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行法の下におきましても、受刑者処遇は、その者の自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うことが法律上明記されてございます。御指摘のようなその被害者等の心情を踏まえた処遇につきましてもこの原則に基づいて行うものでございまして、受刑者等の思想や良心の自由を侵害するものとは考えてございません。
この処遇につきましては、受刑者に被害者等の心情やその置かれている状況を認識させ、被害者等に誠意を持って対応していくことや、再び罪を犯さない決意を固めさせることが重要であるとの認識に基づくものでございまして、これは、刑事施設の長が被害者等から聴取したものを含め、その心情を考慮した処遇を行う旨を明らかにしたものでございます。その意味でも、受刑者等の信条や良心の自由を侵害するものではないと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/68
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069・安江伸夫
○安江伸夫君 続きまして、受刑者等の自発性の尊重についても確認をさせていただきます。
本改正によって、更生の主体である受刑者本人が更生を自ら企図する余地がなくなるとの旨も参考人から指摘されたところであります。確かに、強制されるだけの改善指導にあっては、立ち直りに不可欠な本人の意思が伴わないおそれがないとは言えません。この点、これまでも、改善指導に際しては本人の自主性、自発性を尊重してきたものと理解をしております。もちろん、改正後においてもこの理念は変わらないものと確信をしているところでございます。
更生に当たって本人の自主性、自発性を尊重する意義と認識について法務省に確認をさせていただきます。また、今回新設される刑事収容施設法百六条一項柱書きにおきましてもその意向を尊重しつつと規定されていることもかかる理念の表れではないかというふうに認識をしておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/69
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070・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行の刑事収容施設法三十条におきましても、受刑者の処遇は、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起を図ることを旨として行うと定められてございます。作業、指導については、懲罰の仕組みはございますが、処遇効果を高めるためには、受刑者自身に自らが受ける処遇の意義を理解させ、これらを自発的に受ける気持ちを持たせることが重要であると考えてございまして、そのための働きかけについてはこれまでも行ってきたところでございます。
今回の改正によりまして、刑事収容施設法第百六条に新設されます社会復帰支援におきましても、同様に本人の自発性が重要であることに加え、そもそもこの性質から強制になじまないものと考えてございます。受刑者本人の意向を尊重しつつ行うことを規定したもので、その趣旨でございます。拘禁刑におきましても、本人の自主性、自発性の重要性を踏まえ、作業、指導、社会復帰支援の必要性などにつきましてはこれまで以上に丁寧な説明を行い、受刑者の意向を尊重しながら、円滑な社会復帰のための各種取組に一層推進してまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/70
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071・安江伸夫
○安江伸夫君 やはり更生というものは、本人の生きる力、そういうものを引き出していくということに最重要な力を入れられるべきだというふうに思っておりますので、今の御答弁の実践を何とぞよろしくお願いいたします。
また、立ち直りを支援するに当たりましては、本人の生きがいや、やりがいを見出す取組の強化も重要です。かかる観点から、刑務作業品を社会に発信する全国矯正展は有意義なものと考えます。本年の六月四日、五日と全国矯正展が三年ぶりの開催となったものと承知をしております。
この展示の意義と成果について伺うとともに、今回の法改正も一つの契機といたしまして、全国矯正展の一層の周知、広報、またその機会を更生保護の充実に利活用すべきと考えます。法務省の御所見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/71
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072・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 矯正行政を広報という趣旨で全国矯正展、開催をさせていただいております。
全国矯正展は、刑務作業が再犯防止に資する重要な矯正処遇の一環であることを国民の皆様に広く知っていただくための良い機会だと捉えてございます。また、出品されました製品に対する御来場の皆様方の御意見あるいは販売状況を製作に携わった受刑者に伝達いたしまして、自らが携わった刑務作業製品が広く社会で利用されていることを実感させることで、勤労意欲や更生意欲の喚起につながっているものと認識してございます。
今回の法改正を踏まえまして、拘禁刑の下における刑務作業の意義等につきましても広く国民の皆様に一層御理解いただけるよう、全国矯正展などの周知、広報の場を充実させるとともに、この機会を利用した受刑者の改善更生の意欲の喚起を図る取組も更に進めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/72
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073・安江伸夫
○安江伸夫君 また、刑務作業品をふるさと納税の返礼品とする取組が各所でも行われているものと承知をしております。先ほどの矯正展のようなイベントとも併せまして、刑務作業品が社会的に評価を受ける機会を積極的に設け、社会との接点を実感させる取組を一層強化していくことは受刑者の立ち直りを後押しするものであり、地域との協働という観点も非常に重要であるというふうに考えております。法務省の御見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/73
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074・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) ふるさと納税返礼品につきましては、施設の所在の地方自治体の御理解、御協力を得まして、令和四年五月末現在、全国二十五の施設において合計百十八品目の刑務作業製品が採用されてございます。これらの取組につきましては、受刑者が返礼品の製作に従事する中で、施設が所在する地域社会との関わりを実感できること、あるいは作業のやりがいや自己肯定感を高めることにつながりまして、出所後の再犯防止に資する大変意義あるものだと考えてございます。
今回の法改正を契機といたしまして、全国やそれぞれの地域の中で刑務作業製品の社会的評価を更に高め、あわせて、受刑者の作業に対するやりがいを見出すことができるような取組について一層進めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/74
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075・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間になりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/75
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076・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
時間が来ました。金子民事局長、来ていただいて申し訳ありません。
これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/76
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077・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典です。
刑法の改正の議論に関連して、近年深刻化しております窃盗、特に万引き犯罪の対策の必要性、強化について、現状の認識と今後の対応の必要性について少し大臣と意見交換をさせていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
万引きについては世間でもちょくちょく報道等もされておりますので、皆さんも万引き被害が出ているということについては御認識になられていると思うんですが、実は、国内小売業の万引き被害総額、年間で何と四千六百十五億円という巨額に実は上っております。これは万引き防止官民合同会議の発表の推計値ということでありますので一定の根拠のある数字で、五千億円弱の万引き被害が実は毎年出ているということでございまして、近年では、化粧品や医薬品、衣料品などのいわゆる高額商品を複数の人間で万引きをするという、そういった悪質な窃盗が問題になっております。
また、万引きにつきましては、再犯率の高さもこれまで指摘されておりまして、高齢者、六十五歳以上の高齢者の再犯率は、二〇一二年以降一貫して初犯者を上回っているということで、二〇一九年の時点で初犯者の一・四倍、実は再犯者、高齢者の再犯が多いという、こういう数字が出ております。
こうした状況を踏まえて、平成二十八年には再犯の防止等の推進に関する法律というものが公布、施行されております。この法律では、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、安全で安心に暮らせる社会の実現に寄与することを目的としてこれ法改正が行われました。そして、この法の附則には、施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると規定されております。
そこで、大臣に確認をさせていただきたいと思いますが、この再犯の防止等の推進に関する法律施行後五年余りが経過をいたしておりますが、この法律の施行状況及び検討内容、検討の結果等について大臣に御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/77
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078・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
平成二十八年に成立しました再犯防止推進法を受けまして、政府では平成二十九年十二月に再犯防止推進計画を閣議決定しております。推進計画では、就労・住居の確保や保健医療・福祉サービスの利用の促進などの七つの重点課題の下に百十五の具体的施策を掲げておりまして、これに基づいて政府一丸となって取組を推進してきたところでございます。さらに、令和元年には、政府として再犯防止の取組を加速化するため、満期釈放者対策の充実強化や地方公共団体との連携強化など、より重点的に取り組むべき三つの課題を整理して、これらについて積極的に取り組んできたところでございます。
これらの取組の結果、出所受刑者の二年以内再入率を令和三年までに一六%以下にするという政府目標を令和二年に前倒しで達成するなど、一定の成果が上がっているものと考えております。
このように、これまでも取組をしてきたわけでございますけれども、お尋ねでございますが、今後の取組としまして、この再犯防止推進計画、本年度末を期限としておりますことから、現在、法務省では、関係省庁とともに、これまでの取組状況や成果、今後の課題などについて検討を行っておりまして、次期計画の策定作業を進めているところです。
これまでの取組も踏まえまして、地方公共団体や民間協力者との連携を一層強化するなど、再犯防止の施策をより充実したものにしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/78
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079・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
大臣に、率直に感想としてお聞かせいただきたいんですけど、年間四千六百十五億円の窃盗被害が生じているという、この金額についてどうお感じになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/79
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080・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) それはもう率直に、かなりの金額であるということを改めて感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/80
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081・川合孝典
○川合孝典君 小売業界は非常に利幅の薄い、利益率の少ない業種でもありますし、特に中小や個人の小売店の皆さんは薄利多売で何とかビジネスを成立させていらっしゃるという意味でいくと、一つ窃盗されるだけで大変な損害が生じているという意味でいくと、ただ多い少ないということだけではなく、こういった金額の被害が毎年出続けているということに対して、いわゆる窃盗の件数自体が少しずつ減ってきているという、その取組の効果ということは私自身も承知しておりますし、その取組自体は評価しているんですが、他方で、これだけの金額の被害がそれでも出続けているという、この事実をどう受け止めて、これをどう減らしていくのかということの取組、これを是非今後御検討いただきたいんです。
その上で、現場の皆さんから意見交換をさせていただく中で幾つか出てきたお声がありますので御意見伺いたいと思うんですが、万引きの被害が出たときに警察に通報をするわけでありますが、この通報をした後に、実は調書の作成等の負担に非常に手間が掛かると、時間も取られるということで、個人事業主さんですとか一人でお店を回していらっしゃるコンビニエンスストアさんなんかの場合には、通報を控えるというか、できない状況に置かれている方が実はいらっしゃいます。
同時に、この万引き犯罪については、全件がそうではないかもしれませんが、いわゆる前科主義を重視している側面がありますので、警察が、検挙された場合でも検察に送致せず、犯罪者を処分することなく放免しているという実態も運用面ではあると伺っております。
万引き犯罪の増加や被害金額が増加している状況、また犯罪が悪質化している現状に鑑みて、この前科主義を重視する万引き犯罪に関する運用を見直して、この初犯であることが刑罰を軽くする方向に働く有利な事情とならないような運用に見直していくべきなのではないのかという、こういう御指摘がありますけれど、この点について大臣はどうお考えになりますでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/81
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082・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 委員が御指摘されるとおり、この万引きによる被害というものは、これは金額の大きさのみならず、事業者の方々に与える負担というものは、これはかなりのものだなということを私も感じます。こういう万引き等の窃盗事件への対処というのは、これは重要な課題だというふうに認識をいたしております。また、万引き事案には、若年者や高齢者による事案、組織的に行われる事案といったように、様々な態様があるものというふうに承知をしております。
一般論として申し上げますと、検察官が窃盗事件について起訴、不起訴を決する際には、個々の事件ごとにまず有罪を立証するだけの証拠があるかどうかを判断し、その上で被疑者の前科の有無、今御指摘をいただきましたけれども、そういう前科の有無のほか、犯罪の態様、手口、被害額、犯行の動機、被害弁償の状況、その他の具体的情状や同種事案の処理との均衡、バランスですね、などを総合的に検討して起訴の必要があるかどうかを判断しているものと承知をいたしております。
検察当局におきましては、このような総合的な観点から事案に応じて適切に対処しているものと承知をしておりまして、今後とも適切に対処していくものだというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/82
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083・川合孝典
○川合孝典君 何とも当たり障りのない御答弁をいただきましたけれども。
今、もちろん適切にこれまでも御判断していらっしゃるということを否定するものではないんですけれども、有識者の方なんかの御指摘にもありますとおり、ちょっと商店に行って例えば消しゴムを一つ万引きしちゃったとか、そういう話が結局ゲートウエー犯罪になりがちであるということをよくこの万引きについては指摘されているわけですね。要は犯罪の、より重い犯罪の入口としての犯罪になるということが実は指摘をされております。
したがいまして、もちろん被害額だとかいろいろな要素を勘案した上でその罪をどう判断していくのかということは、これは司法の判断であることは分かるんですけれども、要は、初犯だったら見逃してもらえるかもしれない、警察行かずに親に言って、そこで謝罪した上で弁償してということで許されるかもしれないという、ある意味そこのところに甘えが生じているのもやっぱり事実だと思うんですね。
私もわざわざ犯罪者をどんどんつくりたいわけでは決してないわけでありますけれども、状況によって許されたり許されなかったりするというこの状況こそがある意味グレーゾーンをつくり出して、要は気軽に万引きに手を染めてしまうということにつながっているという事実も否定はできないと思うんです。だから、そのことを実は問題指摘させていただいております。
ちなみに、先週でしたか、新聞の報道で、万引きGメンの方が、裁判のときのいわゆる訴状に住所が書かれていて、それを、いわゆる訴えられて収監された方が仕返しに何かその万引きGメンの方のお宅に嫌がらせでごみか何かを送り付けて、何かまた捕まったという、こういう報道がなされていたんですが、万引きGメンの方が万引き防止のための自らのミッションを果たした結果として、結局報復を受けることになる。あらぬ、何というんでしょうか、犯罪者から、要は見付かったということで恨みを買うという、捕まえたことで恨みを買ってしまうという、そういう状況が生じてしまうというのは、つまりは、状況によって無罪になったり有罪になったりということの判断が分かれている結果としてそういった犯罪者の仕返し行為のようなことにつながっているんだとすると、やはり一定のルールに基づいて判断を行って、この万引きについてきちっと警察に対して連絡を行うといったような対応をまず基準として行うべきなのではないのかなというのを実はちょっと私は思うんですが。
刑事局長で結構です、この万引きGメンの方が報復受けた事例についてどのように検証されていますか。通告していませんけど、御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/83
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084・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
今委員の御指摘の事案については、私どもそういった事案があるということを承知をいたしております。その事案につきましては、その当該行為につきまして捜査機関により適切に対処するということになろうかと思います。
済みません、ちょっと、検証ということでございます。いずれにいたしましても、今回の事件につきましては、その万引きをした者の刑事事件にまさに協力していただいた方をどのようにして保護をするかということでございます。
私どもとして、検察といたしましては、常に、その被害者である、あるいはその被害者、被害を受けた御本人ではないですが、そういった捜査、公判に協力していただいた方をどのように保護するかということは常に考えているところでございまして、御指摘の事案につきましても、検察当局におきまして、そういった事件関係者の保護を十分にしていくという見地から、必要な今後対応を検討していくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/84
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085・川合孝典
○川合孝典君 済みません、突然振りまして失礼しました。
先ほどのところに少し戻りますけれども、例えば、個人商店で万引きの被害があったときに警察に対して通報する、そのときに調書を取るときに、場合によっては数時間、実は警察で調書を取るのに時間が要するということがありまして、そうすると仕事にならないんですね、それが一人でお店やっていらっしゃる場合にはということ、そういったことも結局通報をなかなか積極的にできない理由の一つにもなっている。
そうした場合に、この事業者の被害届提出の手続をもっと簡素化できないのかといったようなことについて現場から声が上がってきているんですけど、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/85
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086・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 万引きの捜査を行うに当たりましては、刑事手続を進める上で様々な書類や証拠が必要となるというところでございまして、委員御指摘のとおり、こうした書類作成の手続等が事業者の方々の負担となっているという御意見があるといったことは承知をいたしております。
警察におきましては、こうした御意見も踏まえまして、被害の届出については万引き専用の簡易な様式を用いることとしているほか、事情聴取等を行う場合にはその時間や場所等について被害者の御都合に配意するなど、被害者の負担軽減に努めているところでございます。
引き続いて、被害者の負担軽減に配意しつつ、必要な捜査を適切に推進するよう、都道府県警察にも指導を徹底してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/86
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087・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
調べたところによりますと、警察で調書を作成するに当たっての手続に要する時間もやっぱり場所によって大分違うようでありまして、一時間弱でさっと御対応いただけるところがある一方で、二時間、三時間と時間を要するところもあるということでありますので、そういった意味では、まあ慣れているという言い方がいいのか分かりませんけれども、手続が非常に円滑にできているところとできていないところでかなりの差が生じているということだと思います。
あわせて、その調書を作るために呼び出されて、事業主の被害者の方が足を運ばれる時間帯だとかということについても、日常の業務の中での対応ということになりますと、やはり仕事に影響が生じない状況の中でそういった御対応をいただけると有り難いですし、さらには、ネットですとか電子申請といったようなもので手続の書類を提出できるといったようなことがもしできるのであれば、そういった意味では、時間的に、時間的余裕がなくて警察に通報できないと、しないという、そこのところの差が生じるということは、ある意味、被害者側の方のこの万引き防止の対応という意味でも余りよろしくないということでもあると思いますので、可能な限り被害者に寄り添った対応を是非していただけると有り難いなということで、申し上げておきたいと思います。
時間の関係が来ておりますので、最後もう一点御質問させていただきたいと思いますが、この集団窃盗、集団万引きした商品、そういったものを、インターネット上で盗品の売買というものが行われているということでありますが、この盗品売買、つまりは集団で窃盗を行うことで盗んできたものを売ることで利益を上げられるということが、ある意味、万引き、集団窃盗を行うことの動機になっているという意味でいくと、要は、ネットで販売、盗品販売ができるというこの状況をどう摘発して抑えていくのかということが求められると思うんですけれども、インターネット上での盗品販売を防止するための取組の現状についてお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/87
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088・住友一仁
○政府参考人(住友一仁君) お答え申し上げます。
いわゆるインターネットオークションについては、盗品等の処分に利用されやすい場所であると、そしてさらに、かつて盗品処分が多発したという経緯に鑑みて、平成十四年に改正された古物営業法において、これを古物競りあっせん業として届出制としており、同法によって、古物の売却をしようとする者の本人確認や取引記録の保存について努力義務を課すなど、必要な規制がなされているところであります。
他方、いわゆるフリーマーケットアプリ等については、こちらについては、大手事業者が先ほど申し上げたインターネットオークション事業者に課せられている努力義務と同等の本人確認を自主的に開始していたという状況も踏まえまして、平成三十年の古物営業法改正に先立ち開催された古物営業の在り方に関する有識者会議というところにおいて、まずは事業者及び業界の自主規制の状況を見守ることとすべきである旨の提言がなされたところでございます。
ですので、こういったフリーマーケットアプリ等については、この有識者会議の提言も踏まえまして、事業者による自主的な取組の実施状況を把握するなどして、今後とも適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/88
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089・川合孝典
○川合孝典君 時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、ここもやはり、インターネット事業者の方の自主的な取組に基づいてという話にやっぱりなるわけでありまして、この高度にインターネット、情報化された社会の中での今後の規制の在り方ということについてはこの問題も絡んでくるということで、是非今後の検討の中でこの問題についても取り扱っていただければと思います。
ということで、私、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/89
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090・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
今日は、刑法の質疑、この後採決ということになるというふうになっております。
本来なら昨日質疑だったというふうに思いますが、衆議院の方で議長不信任案とか、そしてまた内閣不信任案が出たということで、その処理で時間が掛かってしまって、昨日は五時ぐらいには、五時過ぎぐらいには終わったかとは思うんですけれども、その時間から法務委員会を参議院で開催するよりかは今日の方がまあ良かったかなというふうには思います。
その上でお伺いをしていきたいと思いますが、前回、参考人質疑がありました。参考人質疑の中で、今日も質疑を聞いておってやっぱり思うんですけれども、今回の懲役、禁錮を廃止して、そして拘禁刑という新たな刑罰を創設するという法律と、それからまた侮辱罪という法律ですね、これの法定刑を引き上げて厳罰化していくということでありますが、やっぱり全然違う法案だなというふうにやっぱりつくづく思うわけですね。
前回も、参考人の三人のうちお二人の方からは、お二人の方は、やはり密接性はないということと、この期間が限られている中で出すというのはこそくだというふうなお答えもやっぱりありました。私は、関係性があれば、よく束ね法案は駄目だと言う方もおられるんですけれども、僕は、関係性があれば束ね法案も、それはもう短い会期というのが決まっている中で出してくるというのはあり得るというふうには思いますが、今回は、聞けば聞くほどやっぱり全然違う法案だなというふうに思います。
その上で、まず拘禁刑の創設についてお伺いをさせていただきます。
今回の法案では、再犯防止のために刑の名称を変更しようとしております。前回の委員会で、世界の中で再犯防止を目的に刑の名称を変更した国はあるのですかということを質問したところ、政府参考人の方からは、法務省としてはこれを把握していないという御答弁でありました。大臣からは、国によって刑事政策はそれぞれだというふうにおっしゃいますが、国際社会の中で生きていく上で、我が国の事情だけではなくて世界の動きも併せて見ていく必要があるのではないかというふうに思います。
二〇二一年は京都でコングレス会議というのもこれ行われたわけです。これは国連の犯罪防止と刑事司法の会議でありまして、国際社会でどうやって犯罪を予防していく、防止していくとかという観点からやっぱりこういった会議も行われるわけでありまして、私はやっぱり、国内だけではなくてやっぱり世界の動きも見ながら改正というのはやっていくべきだというふうに考えます。
大臣は、そういう必要性も併せて見ていく必要があるのではないかと思いますが、大臣、どのようにお考えなのか、お伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/90
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091・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 世界の動向も見ていく必要があるのではないかという御質問をいただきました。
我が国の法制を検討するに当たりましては、諸外国の法制も参照しながら現行の法制との整合性を見定めて、我が国にふさわしいものとすることが必要だというふうに考えております。今回の法改正を議論した法制審議会の部会におきましては、拘禁刑の内容そのものについては諸外国の法制も参照しながら我が国にふさわしいものが議論されてきたというふうに承知をいたしております。
このように、世界の動向を見ていく、それはもう当然のことだろうと思いますし、今回の改正案の検討に当たってもそのような視点は維持されていると、確保されているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/91
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092・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
前回、ちょっと大臣に質問通告していなかったので、ぽんとこう聞いてしまいまして、ちょっと失礼だったなというふうに思いまして、ちょっと改めてお聞きしたという次第でございます。
法制審議会についてお伺いしたいと思うんですけれども、今回、その法制審議会では、この法案の作成に当たって様々なテーマでこれ議論が行われておりますけれども、自由刑の新たな名称については、これは法務省が新たな名称を決める必要があるという前提に立った上で有権者を集めて意見交換会というのが行われておりました。この意見交換会は昨年九月にこれ一回だけ行われておったわけですけれども、その冒頭で法務省の官房審議官から説明がありました。名称の在り方は社会的な影響が大きいというふうにおっしゃっておりました。私もそのとおりだというふうに思います。
そうであれば、本当に名称を変更する必要があるのかどうかということについては、そこもきちんと法制審議会で議論すべきであったんではないかというふうに思うわけですが、なぜこれ法制審議会ではここの議論がなかったのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/92
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093・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
法制審の部会におきましては、懲役とも禁錮とも異なる内容の新たな自由刑を新自由刑という仮の名称を用いて議論がなされてきたというふうに承知をいたしております。
法制審の部会におきましては、まずは新しい刑をどのように規定すべきかということを中心に議論が行われて、その内容を、刑事施設に拘置する、これに処せられた者には改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるとすることとされたものであります。そして、この新たな刑をそのように規定することが決まり、答申に至った後、名称については、今御紹介いただきましたけれども、意見交換会で、これは法制審の部会の委員の方々を構成員としますけれども、この委員会で御議論いただいて、その結果、拘禁刑の名称を支持する意見が多数を占め、これに対する異論はなかったものというふうに承知をいたしております。
そのような経緯であったというふうに認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/93
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094・東徹
○東徹君 大臣のおっしゃるとおりだと思います。
私は何が言いたいかというと、その新たな自由刑という言い方から始まるわけなんですね。新たな自由刑ということから始まるんです。その名称の変更は当然の前提というところから始まっているんですね。本来は、名称変更の必要性というところについて法制審議会で議論がスタートすべきだったんじゃないのかなというふうに思っていまして、私はそこが非常に引っかかるところなんです。だから何回かこういった質問をさせていただいているわけですけれども。
今回の新たな名称の意見交換会で、法政大学の今井教授からも、拘禁という言葉はインプリズンメントの訳語として定着しているという発言がされておりました。この発言どおりであれば、拘禁刑の英語訳は、これは懲役と同じインプリズンメントのままじゃないのかなと、こう思われるわけです。
前回の法務委員会でも拘禁刑の英語訳について質問しましたら、法案成立後に検討するという答弁がありました。日本語でこれわざわざ懲役を拘禁刑という名称に変えるわけですから、拘禁刑の英語訳は懲役の英語訳であるインプリズンメントにはならないということでよろしいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/94
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095・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) それはもうお答えとしましては、英語訳がいかなるものになるかということについては、改正法の成立後に、諸外国における刑事施設に収容する刑の名称等も踏まえながら、適切なものは何かということを改正法の成立後に検討し、定めていくという流れになります。ここまでしか申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/95
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096・東徹
○東徹君 同じ答弁ですので、改正後にどういう英語訳になるのか、僕は非常に英語訳も大事だと思います。先ほど言いましたように、やっぱり国際社会の中で犯罪防止をやっぱりどう取り組んでいくのかという観点からも、やっぱり日本の新しく、これ拘禁刑という新しく名称を変えるわけですから、それに対しての、じゃ、英語訳というのもこれきちっとやっぱり示していかないと、やはり今ニュースでも、世界のニュースがワールドニュースという形で放送されているわけですから、非常に大事だというふうに私は思います。
あと、先ほどからもほかの委員からもありましたが、この委員会で川越少年刑務所の施設も視察に行かせていただきました。大変勉強になりまして、この視察を組んでいただいた方々に本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。
非常に大事な取組、やっぱり再犯防止というのは私も非常に大事な取組だというふうに思っておりますので、これ見ていて、例えば理容師の、散髪ですね、理容師の資格を取らせたり、実際、中で散髪しているんですね。これ、お金もらえるらしいです。幾らですかと聞いたら六百円でしたんですね。安いなと、こう思いましたけれども、そこの施設の方もそこで散髪してもらったりとかしているとか、あと、自動車整備士の資格を取ったりとか、そういった資格を取って社会復帰を実現する方向へ取り組んでいっている。非常に私も大事だというふうに思います。
非常に気になったのは、刑事施設の収容率なんです。今日お配りさせていただいております刑事施設別の収容定員、それから収容現員、収容率ということで、令和四年四月三十日現在のこれ速報値を出していただきました。こちらの方から、法務省矯正局の方でこれを作っていただきまして、本当にありがとうございます。非常に、これ見させていただいて参考になったわけです。
まず、この刑事施設の収容率なんですけれども、平成十三年頃、未決、既決合わせて一〇〇%を超え、翌平成十四年には一〇六・五%になるなど、過剰収容が問題となっていました。大阪でも、私、当時、平成十五年だったか十六年だったかちょっと忘れましたけれども、大阪の刑務所が非常にいっぱいだというような話もあって、非常に問題になっておりました。ですが、その後、だあっとこれ下がっていくわけなんですね。令和二年には五三・一%までこれ下がってきているわけですね。
これ、このように収容率が下がってきた要因というのは何なのか、まずお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/96
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097・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 刑事施設におけます被収容者数、これは平成十八年頃をピークに減少傾向にございます。令和三年十二月末現在におきまして約四万四千五百人となってございます。
お尋ねのこの収容率は、刑事施設の収容定員と収容人員から算出されるということになりますが、収容定員の方につきましては、これまで過剰収容状況を解消するために、PFI手法を活用した施設の新設であったり収容棟の増改築などにより拡充をしてきた一方で、収容人員が十八年頃をピークに減少傾向となってございますので、収容率については下がってきているということでございます。ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/97
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098・東徹
○東徹君 犯罪件数が下がってきているんですね。ちょっと資料を見させていただきました。これは令和三年の犯罪情勢ということで、資料なんですが、これを見ますと、やはり平成十四年からだあっとこれ下がっていくわけなんですね。例えば、平成十四年で人口千人当たりの刑法犯罪の認知件数が二十二・四だったのが、令和三年では四・五までこれ下がってきているという数字があるわけなんですね。
犯罪件数がこれ減ってきている理由というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/98
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099・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) 犯罪の原因というのは様々なものがございまして、お尋ねのように、現象としては確かに犯罪の認知件数減っているところでございますが、この要因が何かということにつきましては、ちょっと一概にはお答え申し上げにくいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/99
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100・東徹
○東徹君 古川法務大臣、犯罪件数が減ってきているというのは、その要因というのは一概には答えられないということだそうなんですね。
ちょっと、こういう分析も私は非常に大事じゃないのかなと。これ、これだけ減ってきているんですよ。平成十四年は二十二・四だったものが、人口千人当たりの刑法犯の認知件数ですけれども、令和三年になったら四・五まで減ってきているわけなんですね。この要因もきちっとやっぱり分析していくことというのは私は大事だと思いますので、そういった要因について是非調査していただきたいなと思います。
今日は、法務省からいただいた刑事施設の収容率、先ほどお示しした資料でありますが、これ全国の刑事施設ごとに収容率はこれ大きなばらつきがあるんですね。例えば、栃木刑務所八三・四%、長野刑務所八一・三%、収容率が八〇%を超えておりますけれども、札幌刑務所の収容率は三一・九とか、市原刑務所の収容率は二二・二%までと、収容率が低い刑事施設もあるわけです。
まず、このようにこればらつきがある理由は何なのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/100
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101・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 刑事施設の収容率につきましては、各施設、地域性、収容対象の違い、性別、年齢、属性など様々なことで区分して収容しておるということもございまして、収容する対象が異なる施設間での差異というのが一定に生じているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/101
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102・東徹
○東徹君 地域性とか罪種、収容者の年齢、そういったことで区分されているからこれだけばらつきが出てくるということなんですけれども、これもちょっとやっぱりどうなのかなと、こう思うわけですね。
これ、収容率が二〇%台の刑事施設が二つ、三〇%台の刑事施設になると十二もあるんですね。これ、今の犯罪の認知件数が減ってきている、また日本は少子高齢化で人口も減少してきている、そういった状況の中で、これ刑事施設の統廃合というのも何かやっぱり考えていくべきではないのかなというふうに思うわけですね。非常に今、老朽化している施設もやっぱりあるわけですね。だから、こういったことも検討すべきではないのかなと、先日、川越刑務所に行かせていただいてそういったことも感じた次第でございますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/102
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103・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 刑事施設の統廃合ということで今御質問いただいたわけですけれども、先ほどから御指摘をいただいておりますこの収容率が減少傾向にあるということを踏まえながら、施設の老朽化の進行状況、あるいは現下の収容状況などを勘案しながら、効率的な施設整備や組織運営及び再犯防止施策の重点的な取組など、矯正行政の更なる充実強化を図ることを目的としてこの統廃合というのは実施をされてきているところであります。平成元年度以降におきましては、七庁を新設する一方、二十三庁を廃庁などしてきているところであります。
収容人員につきましては、その時々の景気ですとか社会情勢などに左右される面もあると考えられますから、その予測をするというのはなかなか難しいのでございますけれども、将来の人口減少など様々な要因を踏まえながら、引き続き、統廃合を含めて収容定員の見直しというものは検討していかなければならない課題だというふうに受け止めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/103
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104・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/104
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105・東徹
○東徹君 是非、施設の統廃合、やっぱり更にこれ進めていけるんではないのかというふうに思いますので、是非進めていっていただきたいというふうに思います。
以上で質問を終わりにします。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/105
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106・山添拓
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
拘禁刑の創設について伺います。
懲役刑と禁錮刑を一本化し、刑務作業と改善更生の指導を義務付け、しかし、名前は単に拘禁刑としようとするものです。
国連被拘禁者処遇最低基準規則、通称マンデラ・ルールズは、身体を拘束する刑罰は自由を奪うことによって犯罪者に苦痛を与えるものであり、それ以上の強制を刑罰の内容とすることはなるべく避けるべきだとするものです。
大臣に伺います。大臣は、このマンデラ・ルールズは法的拘束力はないと繰り返しておりますけれども、国連でこうした方向性が示されたその意義についてはどのように御認識でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/106
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107・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) この前も御答弁申し上げましたように、この規則は法的拘束力のある国際約束だとは考えておりません。しかし、これは国連総会決議により採択をされた規則であって、被拘禁者の処遇に際して実施するよう努力するべき内容をまとめられたものであるというふうに承知をいたしております。
今回の法改正、拘禁刑を創設をしようとするものでございますが、拘禁刑における処遇はこの規則の趣旨をできる限り尊重したものとなっているというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/107
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108・山添拓
○山添拓君 果たしてそうかどうかというのが問題なのですが、石塚参考人が述べたように、改善更生や社会復帰支援という名の下にいろんなことが強制された時代があったわけです。どんな政府の下でも受刑者に思想を強制することがあってはならない。ですから、刑の内容としては自由を拘束するだけにとどめておくべきだという考え方に立つものです。
法務省に伺います。先ほども少し出てきましたが、刑事収容施設被収容者処遇法三十条は、受刑者の処遇は、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うとしています。また、同法の八十四条四項は、施設における処遇について、受刑者の希望を参酌して定めるものとする、これを変更しようとするときも同様とすると、このように規定しています。刑務作業も改善更生もあくまで受刑者の自覚に基づき、希望を踏まえて行うということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/108
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109・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 今御指摘の刑事収容施設法三十条の規定の内容ぶりについては、御指摘のとおりでございます。
受刑者自身が改善更生の意欲を持って自己の問題性を認識し、行動を自律的に統制していくことができるようになることが重要だと考えてございます。受刑者自身が自らが受ける処遇の意義を十分に理解し、これを自発的に受ける気持ちを持たせるということが重要であるという認識の下に、受刑者の動機付けを高めるための働きかけに努めているところでございまして、拘禁刑の下においても変わらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/109
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110・山添拓
○山添拓君 八十四条四項の、希望を踏まえて行うということについてもそのとおりですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/110
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111・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 御指摘の部分につきましては、やはり本人の希望ということが重要なことであるとは認識してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/111
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112・山添拓
○山添拓君 処遇法の改正案九十三条ですが、受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる場合には、作業を行わせるものとするとあります。本人が望まない場合にも、必要だといって作業させることはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/112
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113・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業あるいは改善指導も同様でございますが、本人の改善更生及び円滑な社会復帰のため必要だという判断をした下で課すものでございますので、本人の希望にこれを委ねるということではなく、言わば懲罰を、懲罰の対象とするという位置付けの下で実施をさせていただくということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/113
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114・山添拓
○山添拓君 ちょっとお待ちください。本人が望まない場合にも、必要と認められる場合だということで作業を行わせるのかどうかということなんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/114
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115・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 個々人の問題性等を調査した結果、その処遇が必要だという判断の下で作業等をさせるということであれば、御本人が望まない場合でもそれは実施していただく対象とするということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/115
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116・山添拓
○山添拓君 つまり、義務だということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/116
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117・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 法律上それを実施していただくものでありますので、まあそういう理解でよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/117
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118・山添拓
○山添拓君 実際の刑務作業というのは、紙を折るような単純作業が割り当てられることも多くあります。こうした作業も改善更生や円滑な社会復帰に必要なものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/118
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119・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業の内容につきましては様々なものがございます。先ほども出ておりましたように、全国矯正展で展示させていただくような優れた商品性があるものもございますし、その人の能力であるとか、あるいは、何をその作業に期待するかということによって作業の内容というのは変わってくるものでございまして、例えば単純作業なんかにつきましても、本人のその作業、何といいますか、改善していただきたい問題性に応じて、いわゆる単純な作業も含めて必要な場合があると理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/119
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120・山添拓
○山添拓君 作業を行うことは遵守事項とされます。正当な理由なく拒否すると懲罰の対象ともなります。単純作業をやっても改善更生や円滑な社会復帰には役立たないからといって受刑者が作業を拒否するという場合には、これは正当な理由にならないということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/120
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121・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 懲罰を具体的に科すかどうかというのは様々な要因に基づいて判断することになりますが、御本人が、この作業は私はやりたくない、あるいは私にはふさわしくないということを主張されたとしても、それが正当事由に当たるとは、まあケース・バイ・ケースではありますが、基本的には当たらないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/121
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122・山添拓
○山添拓君 今のお話は、三十条や八十四条に基づいて、処遇は受刑者の自覚に訴え、その希望を参酌してというこの基本ですね、処遇の基本とは矛盾するんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/122
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123・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業が必要な状態であるという調査結果に基づいて何らかの作業をしていただくということでございますから、その作業の実施を通してこの問題性を改善していただこうということでございます。御本人が、例えば全く作業をやりたくないというような方も少なからずいるのは現実でございますが、だからといって、その作業をしないでよいということにはならないのでございまして、その方の改善更生、円滑な社会復帰のために必要な作業というのはやっていただくということには変わりございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/123
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124・山添拓
○山添拓君 今の御説明は、現在懲役刑では作業が義務付けられている、刑の内容となっているから、そのように説明になるわけです。
本法案の拘禁刑は、刑務作業に加えて改善指導も義務付ける、刑の内容としていくというものだと説明されます。今井参考人の言葉でも、刑の内容として作業と指導を位置付けるということでありました。
法務省に伺いますが、二〇二〇年における作業拒否や指導拒否を理由とする懲罰の件数、お示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/124
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125・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 令和二年、一年間における数字でございますが、懲罰の理由が確認できる範囲でお調べしたところでございますが、作業拒否等、これはいわゆるお尋ねのような作業拒否のみならず、例えばサボっているみたいなものも含めての数字になりますが、作業拒否等が一万二千九百三十七件、それから改善指導の拒否が十九件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/125
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126・山添拓
○山添拓君 改善指導の拒否に対する懲罰が少ないのは、作業は刑の内容ですが、指導はそうではないからということが背景にあると思います。
本法案によって指導を刑の内容として義務化していけば、指導を拒否した場合にも懲罰によって強制していく、こういうことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/126
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127・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行法の下においても改善指導を受けることは義務付けられているものと理解しております。
ただ、新しいその拘禁刑の下ではその作業の位置付けというのも変わってまいるわけでございます。その意味では、より、従来よりもより丁寧に、作業の必要性とかそういったものを御本人に指導していくことにはなろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/127
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128・山添拓
○山添拓君 これは懲罰の在り方についてかなり変わっていく可能性があるということではあろうかと思います。
大臣は、仮に作業や指導を義務付けることができないとすれば、改善更生や再犯防止のための働きかけを行うことが不可能になり、目的が達成できない、だから義務付けることができるようにするのだと、こう説明をしてこられました。
しかし、現場の職員は、懲罰を背景にするのではなく、様々な働きかけを通して改善指導を行ってきたと思うんですね。これは、石塚参考人から、現場の職員は本当にいろいろ苦労しながら、動機付けの面接などカウンセリングの手法も使っていろいろ取り組んでいると、この委員会でも御紹介があったとおりです。
大臣の答弁ですので大臣に伺うのですが、指導を義務付けなければ改善更生を図れなかったという、そういう事例というのは一体幾つあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/128
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129・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) その事例の数ということですが、それはにわかに今ここでたちまちお答えすることはできませんが、この拘禁刑を創設するために今回の法改正でしようとしているわけですけれども、この拘禁刑というのは、委員会でも御説明申し上げておりますとおり、個々の受刑者の特性に応じて、そして作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにするということでありますが、同時にこれは、答弁いたしましたように、この作業や指導を拒むと、それをそのまま尊重するということになりますと、改善更生、再犯防止のための働きかけを行うことができないということになって、この拘禁刑というこの創設の目的そのものが達成できないということになるということを申し上げているのです。
ですから、特性に応じたより効果を期待できるような拘禁刑をつくるという、その拘禁刑の制度の中には、今申し上げたように、それは作業や指導を義務付けるということは当然おのずからそれは前提になっている事柄だろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/129
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130・山添拓
○山添拓君 いや、義務付けなくても働きかけというのはできますよね。現に刑事収容施設で様々な働きかけというのは行われていると思うんですよ。
法務省に伺いますけど、改善指導を拒否した件数、さっきは拒否によって懲罰をした件数は十九件とお示しいただきましたが、そもそも改善指導を拒否した件数というのは把握されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/130
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131・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 改善指導を拒否して、様々な指導を行うわけですが、その上で懲罰に至った件数は先ほどお答えしたとおりでございますが、懲罰に至らなかった件数というのは統計としては取ってございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/131
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132・山添拓
○山添拓君 ですから、大臣、義務付けなければ働きかけを行うことができないと、そう大臣はおっしゃるんですけれども、その根拠となる事実というのはないんですよ。改善更生を拒否した件数というのは把握もされていない。義務付けなければ働きかけることができない、そういう事実はないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/132
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133・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 各種の指導を行う上で全く義務付けをしないこととした場合に、一定の処遇を拒否する人に対して本人の自発性を高めるための働きかけ、これは当然することになりますし、これまでもしてまいりました。
現状でも、再犯リスクが非常に高い人が改善指導を拒否したり説得に応じないということは間々あることでございます。種々の問題性を有する受刑者の改善更生を図っていく上で相当でないというふうに、何もできないという状態というのは相当でないと思いますし、およそ国民の理解を得られるものではないと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/133
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134・山添拓
○山添拓君 何もできないということではないと思うんです。私は、今も現場の皆さんは一生懸命取り組んでおられる、改善更生のために、矯正局の下で様々な手法も駆使しながら、人間的に働きかけながら行われていると思うんですね。それが懲罰を背景に義務付けなければできないというのか、それが問われていると思うんです。
そして、国際的な流れというのは、それを刑の内容として義務付けるのではなく、刑の内容としては身体の拘束にとどめる。もちろん行刑の問題として、現場の処遇の問題としてどのように対応するかというのはありますけれども、刑の内容としては自由を奪うのにとどめるべきだというのが国際的な流れだと、これをさきの参考人質疑でも指摘されてきたんだと思うんですね。
ちょっと次の別の話題に行きたいと思いますが、私、そもそも刑罰はどうあるべきかという問題が根底にはあると思うんです。
今日もお話ありました川越少年刑務所では、今年の秋から、少年院が蓄積してきた矯正教育のノウハウを活用して、二十六歳までの若者も対象にする若年者ユニットを設けると伺いました。参加された委員の方は御記憶のとおりです。
少年院の矯正教育は、少年の立ち直りのために重要な役割を果たしてきたと思います。しかし、少年院でこのように国家がパターナリズムで介入できるのは、それが未成年であって保護の対象だからであります。教育的措置だから許される、必要とされると、こういう理屈だと思うんですね。懲役や禁錮、あるいは拘禁刑は刑罰です。保護処分とは異なります。成人に対しては本人の意思を尊重して関わるべきであって、刑の内容として教育的措置をとることはできないのではないかと思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/134
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135・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お尋ねの若年受刑者ユニット型処遇というものにつきましては、法制審議会から若年の受刑者を対象とする処遇内容の充実を図ることについて御答申をいただいたことを踏まえまして、川越少年刑務所、それから美祢社会復帰促進センター内に小集団を編成したユニットを設置して、そこで特定少年を含むおおむね二十六歳未満の若年の受刑者を対象に、少年院の知見などを活用した趣旨のその処遇を行おうとするものでございます。
あくまで受刑者を刑事施設に収容して刑事収容施設法に基づいて受刑者処遇を行うものでございまして、少年院の処遇そのものを、あるいは少年院法に基づく処遇を行おうとするものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/135
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136・山添拓
○山添拓君 もちろんそうなんですけれども、二十六歳まで若年者の一定の処遇が必要だということであれば、じゃ、何でそもそも少年法の適用年齢下げたのかということも改めて問われなくちゃいけないと思うんですね。
私は、指導の名で義務付け、懲罰を背景に強制するべきではないと考えます。思想改造と言えば大げさに聞こえるかもしれませんが、行き過ぎれば危険な事態を招き得る問題だと思います。
現に日本の刑事施設では、戦前も戦後も受刑者の人間性を否定した歴史があります。刑務官が受刑者の肛門に消防用ホースで放水して傷害を負わせ、直腸破裂で死亡させた事件、腹部を革手錠で締め付け受刑者が死亡した事件など、一連の名古屋刑務所事件を経て、二〇〇三年に行刑改革会議の提言がまとめられました。
ここでは、受刑者が自発的、自律的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切だ、受刑者の処遇も、この誇りや自信、意欲を導き出すことを十分に意識したものでなければならない、これまでの受刑者処遇において、受刑者を管理の対象としてのみ捉え、受刑者の人間性を軽視した処遇がなされてきたことがなかったかを常に省みながら、現在の受刑者処遇の在り方を根底から見直していくことが必要であるとされていました。このことは再確認されるべきだと思うんです。
大臣に改めて伺いますが、作業や指導を義務付けて懲罰を背景に強制することは、受刑者の人間性を軽視することにつながりかねないと、こう思いますけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/136
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137・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今回法改正で創設をしようとする拘禁刑は、作業と指導を、いずれも罪を犯した者の改善更生という特別予防のために課すものと位置付けております。そこで、十二条第三項において、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると規定することといたしております。
これは、ここに言う改善更生といいますのは、罪を犯すに至った要因となっている悪い点を改めるとともに、再び犯罪に及ぶことなく社会生活を送ることができるようになることを意味するものでありまして、これは、憲法上保障される思想及び良心の自由を侵害することが許されないというのは、これはもう当然のことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/137
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138・山添拓
○山添拓君 ちょっと必ずしもかみ合っているようには思いませんでしたが、時間参りましたので終わりますが、我が党はこの後、修正案を提出したいと思っています。拘禁刑は、刑法上、刑事施設に拘置することのみを規定し、受刑者の作業は、受刑者が希望するときはその機会を与えるという位置付けにする、作業を怠った場合に懲罰を科されることがないような規定にするべきだと考えています。
以上申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/138
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139・高良鉄美
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
まず、拘禁刑について伺います。
先ほど山添委員の方からもありましたけれども、確認の意味でちょっとお聞きしたいと思います。
七日の参考人質疑では、今井参考人、石塚参考人から異口同音に、拘禁刑の下では改善更生の作業や指導が刑罰の内容として課されるようになるという指摘がありました。異なる立場の専門家がいずれもこの刑の内容だということですから、そう理解すべきだろうと思います。
他方で、これまでの政府参考人の答弁では、この作業や指導が拘禁刑という刑罰の内容として課されるかどうかについては明言されてきませんでした。
そこで、先ほどのお答えになると思うので、要するに、確認としては、刑罰の内容として課されるかどうかはともかく、新しい刑法十二条三項の下では、課された作業を行い指導を受けることは受刑者の義務であると、こういうことで先ほどお答えになったと思いますので、これだけ確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/139
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140・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
今回の法改正におきましては、より一層の改善更生、再犯防止を図る観点から、懲役及び禁錮を廃止し、これらに代えて拘禁刑を創設することとし、刑法第十二条第三項において、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると規定することとしております。
同項に基づいて受刑者に作業を行わせ、又は指導を行うこととなった場合、刑法上、当該受刑者には作業を行い、又は指導を受ける義務があると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/140
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141・高良鉄美
○高良鉄美君 改めて義務だということで捉えました。
そこで、拘禁刑の受刑者に対しては、改善更生及び円滑な社会復帰に必要と認められる場合には作業を行わせるものとされているわけですけれども、この受刑者の改善更生や社会復帰に役立つ作業と、それを用意することが重要になると思います。
そこで、作業の内容もいろいろあると思いますけれども、他方で、日本の刑務所は受刑者に自営作業、すなわち施設における炊事、清掃、介助、矯正施設の建物の修繕等の作業を行わせています。拘禁刑の創設後も、従来と同様に自営作業を受刑者に行わせる方針なのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/141
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142・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
拘禁刑創設後も、受刑者個々の特性を考慮しながら、改善更生及び円滑な社会復帰を図るために必要な作業を行わせることは可能でございますので、多様な作業を確保するといった観点から、今回の法改正後にも自営作業を廃止することは想定してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/142
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143・高良鉄美
○高良鉄美君 自営作業があるということですけれども、刑事施設を日々運営していくためにこの自営作業は欠かせないということですので。しかし、この拘禁刑が創設された場合に、この自営作業のために受刑者を確保すると、この作業、自営作業のための受刑者というんでしょうかね、を確保しようとすると、改善更生や社会復帰という作業の目的が後退してしまうのではないでしょうかということですね。ただでさえ刑務所では現在高齢化が進んでいるというお話も山下委員の方からありました。
自営作業を担うことのできる人材は限られていると聞きます。例えば、毎日の炊事を担当する受刑者はなかなか休むこともできず大変だとも聞いていますが、そうした作業が本人たちの改善更生や社会復帰にどれだけ効果的なのかについては疑問もあります。自営作業を担う受刑者を確保するためにそうした受刑者の社会復帰がないがしろにされないか懸念されますが、法務省の見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/143
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144・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕
一般的に申し上げまして、その炊事、洗濯、介添え等の自営作業につきましては、社会での労働に質、量共に近似したものであるというふうに考えてございます。受刑者が自らの役割を理解した上で作業工程や手順を考えながら効率的に実行する作業でございますので、出所後の就労に必要不可欠な責任感、主体性、協調性といった能力を身に付け、また伸長させる上で相応の効果が期待できるものと考えてございます。
また、これらの作業により習得が期待されるこの効果につきましては、出所後、雇用する企業からも強く要請されているものでもございますので、自営作業は改善更生や円滑な社会復帰に資するものと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/144
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145・高良鉄美
○高良鉄美君 そこが本人の社会復帰にということで、判断は、一応その作業の過程を見れば、一般の、社会のですね、企業のとか、そういったことから求められるということですが、受刑者の方からすると、この作業、いわゆる自営作業は外部に委託するというようなこともあり得ると思うんですね。
ですから、自営作業の将来的な在り方についてもちょっと見直さないといけない。要するに、今回、刑法のこの拘禁刑の中での本人に合ったというのが、見合うものということですから、特性とかですね、そういうことになると、必ずしも自営作業がこの特性として合っている、合っていないというのはまた問題になるかと思うんですね。
ですから、社会復帰に有用な作業を確保するための具体的な対策というのがないまま、単に作業の目的が今回懲らしめから立ち直りに変わりますとはいっても、看板を掛け替えるだけで国民をだますような感じにならないかと。しかも、その一方で作業や指導を拒否すれば懲罰を科されるというわけですから、前回の参考人質疑で石塚参考人も言われたように、これは真の立ち直りのための制度とは程遠いと言わざるを得ないというような形を言われました。今回の改正は明治四十年以来の大改正ですから、今後もしっかりと見直し作業を続けていく必要があると私は考えます。
そこで、アウトソーシングなどを含めて外部に委託するというようなことは考えているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/145
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146・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 自営作業の在り方については先ほどお答えしたとおりでございますが、現在、刑事施設の一部ではPFI手法あるいは公共サービス改革法の枠組みを用いまして、効率的な施設運営や地域貢献などの観点から、給食、洗濯といった自営作業のうち様々な業務を民間委託して実施している施設がございます。
自営作業は、今も御答弁したとおりでございますが、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図る上で有効な作業であると認識しておりまして、引き続き実施してまいりますが、一方で受刑者の減少であるとか高齢化などにも対処する必要がございます。
こういったことから、施設の構造であるとか必要なスペースの確保といったハード面、あるいは委託できる企業の確保といったソフト面などの課題にも対処しながら、運営の効率性を含め総合的に検討してまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/146
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147・高良鉄美
○高良鉄美君 今回、本人のこの特性、受刑者の特性に応じてということが非常に重要だと私も思っています。その点、やっぱりこの施設の在り方、あるいはそこの運営の在り方等々も含めて今回しっかり見直し作業を続けていくということが大事だと思います。
次に、更生保護法関係について伺います。
七日の参考人質疑においても指摘がありましたが、今回の刑法等の改正案には、性質の異なる、先ほどからずっと出ていますけれども、性質の異なる数多くの改正提案が含まれており、中にはこれまでに実質的な議論が全くなされていないものや極めて重要な論点もあります。更生緊急保護に関する提案もその一つであると考えます。
安江委員の方からもこの更生緊急保護に関する指摘がありましたけれども、今回、この更生保護法の改正案として、検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者に対する更生緊急保護を可能とすることという提案があります。これについては、法制審議会部会で起訴猶予処分前の者に対する更生緊急保護として議論されていたものという理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/147
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148・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 法制審議会においては、諮問事項を検討する上での素案として部会にて配付されました検討のための素案におきまして、御指摘いただきましたとおり、起訴猶予処分前の者に対する更生緊急保護と記載がされて、これを参考に議論が行われた結果、令和二年十月二十九日付けの答申におきまして、検察官において直ちに訴追を必要としないと認める者に対する更生緊急保護として取りまとめられました。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕
今般の改正は、この法制審議会の答申を踏まえて行うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/148
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149・高良鉄美
○高良鉄美君 今言われたような形で、検察官のというようなことがありますけれども、更生保護の関連が今回の法案の中身として十分審議されたかどうかというのがちょっと問題がありまして、そこをお伺いしたいんですけれども。
検察官が直ちに訴追を必要としないと認めた者という規定が、まあ素直にこれを読めば、必ずしもこの起訴猶予処分と決めている被疑者に限らず、将来起訴する可能性も否定できない被疑者も含むように理解できます。これも先ほどとちょっと関連しますが、京都弁護士会が五月二十日付けで出した意見書や、日弁連が五月二十六日付けで出した被疑者に対する社会内処遇制度案に対する会長声明の中でも同じような懸念が示されています。
ところで、ちょっともうこの関連は答弁重なると思いますので、この更生緊急保護に先立って、被疑者がまだ勾留されているうちに生活環境の調整ができるようにする制度も併せて提案されています。刑事手続から離脱した人が速やかに社会復帰を果たせるようになるためには、早い段階からの支援や環境調整が重要であると思い、その点でこの制度の創設には意義があると考えます。
ただ、気になるのは、生活環境の調整に当たっては検察官の意見を聞くものとされ、検察官が捜査に支障を生ずるおそれありと、相当ではないという意見を述べた場合には環境調整を行うことができないとされています。
しかし、客観的に生活環境の調整を行う必要性があって、被疑者本人もそれを望んでいるという場合であっても、検察官が反対すれば環境調整ができないというのはおかしいのではないでしょうか。お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/149
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150・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 生活環境の調整の関係で御質問でございますけれども、この点、捜査に支障を生ずるおそれがあり相当でないという意見があった場合には生活環境の調整はしない、できないということになってございますけれども、そもそも勾留が、勾留中に行われる生活環境の調整でございまして、勾留がそもそも被疑者の逃走や罪証隠滅を防止しながら適正に捜査を行うために認められているというものであることから、勾留中の被疑者について仮に捜査に支障を及ぼすような介入をするということは、これは許されないものというふうに考えております。
他方で、御指摘のとおり、勾留されている被疑者の中にも定まった住居がないなど安定した生活基盤がない者が存在いたしますし、そのような人が釈放された場合に、自ら公的機関等に支援を求めず、結果として生活基盤が整わないまま過ごした場合、再犯に至るおそれが大きいとも言えます。
そのため、捜査への支障の有無を最も適切に判断し得る検察官の意見を聞いた上で、捜査に支障のない限りにおいて、勾留中の段階から住居、就業先その他の生活環境の調整を行うことができることといたしまして、釈放後の生活の安定や、申出があった場合の更生緊急保護の円滑な開始につなげようとするものでございます。
今回の改正後、このような枠組みの中で生活環境の調整を適切に行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/150
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151・高良鉄美
○高良鉄美君 検察官の意見を聞いてということでありますけれども、それに従わないと生活環境の調整ができない、その上、勾留中から生活環境の調整をした上で、処分保留で釈放となり、更生緊急保護を受けてもひょっとすると起訴される可能性があるというふうにすれば、一連の手続は実質的に検察官が中心になってコントロールすることにはならないでしょうかということで。
やっぱり、いずれにしても、検察官が、起訴猶予にしてあげるよとか、この一連の生活指導を受ければとか、いろんな働きかけをして、被疑者にこういった働きかけを行うことにならないだろうかということと、それから、仮に起訴猶予になるんだとしても、被疑者には弁護人が選任されていない場合も多いでしょうから、起訴猶予にしてもらいたい一心で検察官の勧めるまま更生緊急保護を受けることに同意してしまうということにならないでしょうか。
今なぜこういうことを言うかと、こういう質問をするかというと、法制審議会部会では、検察官が被疑者に対して改善更生に向けた働きかけをするという制度案についても議論されていたという経緯があるからです。この制度案は、日弁連を始め各方面からの反対などもあり、部会での議論の結果、見送りになったと理解しています。
しかし、今回の提案によって、見送りになった制度案と同じような検察官による働きかけが実質的に可能になってしまうのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/151
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152・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、まず勾留中の被疑者に対する生活環境の調整は、捜査に支障のない範囲で勾留中の段階から生活環境の調整を行い、釈放後の生活の安定等を図ろうとするものでございますし、また釈放後の更生緊急保護は、対象となる人が申出、保護してほしいという手を挙げた方、その場合において、保護観察所の長がその必要があると認めた場合に行うものでございます。
委員が御指摘いただいている、その一連の手続が実質的に検察官がコントロールすることとなるといったような趣旨が明らかでございませんので、どのように受け止めていいかちょっと戸惑っておるんですけれども、今般の改正は、対象となる人の円滑な社会復帰又は改善更生を保護するため、検察官とは独立した保護観察所の長が判断主体となりまして、勾留中の被疑者に対する生活環境の調整、それといわゆる処分保留で釈放された人に対する更生緊急保護を行うことができるようにして、適切な支援をより拡充しようとするものでございます。
今回の改正後は、勾留中の被疑者に対する生活環境の調整、いわゆる処分保留で釈放された人に対する更生緊急保護を適切に行ってまいりたいと考えてございます。
委員が後段でおっしゃられた、検察官が被疑者に対して改善更生に向けた働きかけをするという制度案というのが、確かに法制審議会少年法・刑事法部会第三分科会の配付資料で、起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方(考えられる制度の概要)というものの第一に記載がございます。
その記載された、検察官が働きかけを行う制度の導入というのを指していらっしゃるんだろうというふうに思うわけですけれども、今回改正によりまして導入したいという制度は、その資料の第二でありまして、第二に、起訴猶予となる者等に対する就労支援、生活環境調整の規定等の整備として記載されたものについて、先ほどお答え申し上げましたとおりの議論を踏まえて立案したものでございます。
この二つですけれども、検察官が働きかけを行う制度におきましては、これは検察官が守るべき事項を設定して、この措置をとるかどうかも検察官が判断するということでありましたのに対しまして、今回の改正で導入したいとする制度において行いたい支援の措置は、検察官が守るべき事項を設定することもなく、検察官とは独立した保護観察所の長が勾留中の被疑者に対する生活環境の調整や更生緊急保護を行うかどうかを判断する、また判断して本人同意の下で実施をしていくというものでございますので、御懸念の点は当たらないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/152
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153・高良鉄美
○高良鉄美君 客観的に見てというんでしょうか、一般的に見て、この法制審議会の中で、部会の中で真剣な議論を経て、一旦見送られたような形の制度なんですけれども、これが復活するように見える側面もあってということで、今懸念で少し申しましたけれども、是非とも現場で適正な運用がなされるように強く希望します。
最後に大臣の方にお聞きしたいんですけれども、この拘禁刑の創設と侮辱罪の重罰化の法改正を同時に行うということについては、もう何度もずっと聞いていますけれども、参考人の質疑でも、これはこそくだとか、出来の悪い法案だというような厳しい指摘がありました。これ、真摯に受け止める必要があると思いますけれども、古川大臣の受け止めについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/153
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154・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今回の刑法等一部改正法案は、罪を犯した者の改善更生、再犯防止に向けた施設内、社会内処遇をより一層充実させるための法整備と、侮辱行為の抑止及び悪質な侮辱行為への厳正な対処を可能とするための侮辱罪の法定刑の引上げという刑事法における喫緊の課題に対処しようとするものであって、新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するために必要かつ重要なものであると考えております。
本法案に対しましては、先日の当委員会での参考人質疑におきまして、参考人の皆様から、拘禁刑の内容や再度の執行猶予の適用範囲の拡大に関する改正は適切なものであり、侮辱罪の法定刑の引上げも時宜を得たものであるという賛成の立場からの御意見だけでなく、反対の立場から、侮辱罪は処罰範囲が曖昧であり、法定刑を引き上げると表現の自由を萎縮させるおそれがある、拘禁刑で作業、指導を義務付けることは国際的な潮流に反するなどといった様々な御意見や御指摘をいただいたものと承知しております。
こうした御指摘、御意見は真摯に受け止める必要があると考えておりまして、今後とも本法案の趣旨、内容を広く国民の皆様に御理解いただけるよう丁寧な説明を心掛けていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/154
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155・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間が来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/155
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156・高良鉄美
○高良鉄美君 時間が来ましたので終わりますが、一点だけ、聞くわけじゃなくて、刑法学会を揺るがすような根本的な問題があるというふうに参考人がおっしゃって、刑法学会に問合せなかったということがかなり大きな手続の問題になっていたようなんです。是非とも適正な手続も踏んでやっていただきたいと思います。
じゃ、これで終わりたいと思います。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/156
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157・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
刑法改正に関して、前半お願いいたします。また、後半は子供の離婚後共同親権に関してお伺いいたします。
まず、先日、川越の少年刑務所見学させていただきました。ありがとうございました。お世話になりました。そこで、関連するお話ではあるんですけれども、あそこでいろいろな資格を取るために勉強しているという方もおられました。
今日、資料一として出させていただきましたけれども、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律あるいは訓令がございまして、まず一点目なんですが、日本語が不自由な外国人受刑者に対して、再犯防止あるいは円滑な社会復帰促す観点から、日本語教育の実施など、どのように対応なさっておられるでしょうか。法務省さんにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/157
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158・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
外国人受刑者のうち日本語を十分に理解できない人に対しましては、日本人受刑者と同様の処遇を実施するため、原則としまして府中刑務所など一部の刑事施設に集めて収容いたしまして、外国人受刑者に関する通訳、翻訳業務などを行う国際対策室を設置するなどして対応してございます。
こうした方々に対しまして、その文化であったり生活習慣等の違いに配慮した処遇を行うとともに、円滑な受刑生活や出所後の改善更生のために、外国人受刑者専用の日本語指導用ワークブックであったり、日本語教育の視聴覚教材などを用いた日本語教育、日本語会話に関するグループワークあるいはロールプレー等を実施しているところでございます。
また、欧州評議会の刑を言い渡された者の移送に関する条約、あるいは、タイ、ブラジル、イラン、ベトナムとの二国間条約に基づきまして、外国人受刑者をその本国に移送し、母国において受刑、服役させることによりまして改善更生や円滑な社会復帰を促進する取組を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/158
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159・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。丁寧に対応していただいているということでございますが。
次に、受刑者の処遇の中で教科指導に関して、単なる教科指導ではなく学力向上あるいは上位の学位、資格を取得することができる可能性、どの程度認められているでしょうか。手短にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/159
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160・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 学力を欠くことにより、社会生活の基盤となる学力を欠く方に対しましては補習教科指導を行っておりますが、学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に資すると認められる受刑者に対しましても特別教科指導というものを行ってございます。そのほかに、教科指導以外にも、その被収容者の知的、教育的活動について援助をするという趣旨での取組も行っております。
これらの学力向上を図るための実施している取組といたしましては、盛岡少年刑務所それから松本少年刑務所におきまして、近隣の高等学校の協力の下、高等学校の教育を受けさせるための通信教育課程への編入、あるいは、文部科学省と連携した、全国の刑事施設を試験会場といたしまして高等学校卒業程度認定試験の受験機会の付与、こういったことのほか、希望する受刑者に対しましては大学レベルの通信教育の受講も認めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/160
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161・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実はこの問題は次の子供の養育あるいは教育条件ともつながってくるんですけれども、先日、滋賀県内東近江市内で三十六歳の藤井篤さんという方からかなり強い訴えをいただきました。それで、藤井さん自身は、自分のような子供を減らしてほしいので法務委員会で実名で紹介してもらって結構だということで、具体的に紹介させていただきます。
子供時代に親からの虐待を受け、家族の地獄から抜け出したんだけど、今度は社会の地獄に。それが、職場をいろいろ非正規で転々として大変だったと。その後半のことはこの場のテーマではないんですけど、その家族の地獄というのは、自分が物心付いたときに既に実の父親はコンタクトがなく、母親が同居していた義理の父親から大変な暴力、虐待を受け、そこから逃げ出すのが大変だったと。母親は自分と弟を守ってくれなかった。義理の父親に全く抵抗できず、そして、あと、小学校高学年では、義理の父親が母と離婚したそのときには、母が今度は食べ物を作ってくれず、本当にひもじい思いをしたと。これはずっと大阪での子供時代だった。
最近、滋賀県に引っ越しをしてきて、滋賀は御飯もおいしいし、うれしいということも言ってくださっていたんですけれども、その実の父親はとっても優しい人だったと後から彼が亡くなったときに知った。結婚していた妻という人から、息子に渡してとかなり大金を送ってもらって、ようやく専門学校に行けたと。父親も自分のことを気にしてくれていた。死後、父親が死んでから知ってつらかったと。
藤井さんがこう訴えてくれたんですけど、ただ、それは、藤井さん、実の父親とコンタクトできないのは、日本が片親親権ということで、元々の父親とやり取りできないのは本当に日本だけなのよと言ったら、えっ、そんなこと考えたこともなかった、私の周りには親が離婚して苦労した人がいっぱいいるということで、是非自分のことを紹介してほしいということでした。
今日、資料を、資料二のところに、離婚の後、子供が父親と過ごした一か月当たりの養育時間の量と青年期での父親との情緒的安定性というのを、これはアリゾナの州立大学のファブリシャス先生という方が千二百人を対象に調査したものがあります。資料二です。
ここ、資料一と二併せて法務大臣にお伺いしたいんですが、親とのやり取りの高い子供は情緒的安定性が高いんだということがこれほどきちんとデータで出されている。日本でももちろんあります。二〇一九年の十一月二十八日に、私、小田切先生の例をもって御質問させていただいたんですけど、このようなことに対して、法務大臣、どうお考えでしょうか。短くて結構ですので、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/161
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162・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今委員からお示しいただきました資料二についてお答えを申し上げますと、父母の離婚後の父親による養育時間と子供の健全な成長との間に一定の関連性があるのではないかという、このような御意見があるということは承知をいたしております。
一般論として申し上げますと、子供が実の父あるいは実の母の愛情を受けて養育されるということは、その子の生活の安定ですとか心身の成長にとって大変重要なことであるのは、これはもう当然のことだと思うんですけれども、しかし、子供の養育をめぐる環境というのは各家庭様々な事情もあり得るところであって、例えばその御紹介をいただいたような虐待みたいなこともあるわけですね。ですから、一概に、その距離感を取ればいいのか悪いのか、一概になかなか難しい世の中にはケースもあろうかと思います。
いずれにしましても、こういう問題を考える上で、子の最善の利益を確保する観点から物事を考えていくということが一番大事なことではないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/162
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163・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 多様であり一概に言えないと。ただ、これは児童心理学者が因果関係を示したものですので、多様なものがあるというだけで逃げられない。まして、法律あるいは社会の仕組みというのは最大多数の最大幸福を求めるわけですから、例外的なところあるいは一部だけを誇張するのは問題ではないかと思います。
実は、資料の三、四について、お時間もないので紹介させていただきますと、資料三は、既に五月のこの委員会でも御指摘させていただきましたが、昨年の二月に上川大臣が諮問をした法制審議会の中間報告、それがこの夏にまとまるということですけれども、ここでの部会資料の問題点ということを私、十項目に分けて質問させていただきました。
この資料三は前回五月にお出ししたものと一緒ですが、ここでは、もし今法制審でやっているような方向になると、本当に、男女共同参画ということではなく、性別による役割分業が固定化される、そして、別居、離婚後、夫婦間の対立がむしろ激しくなる、海外の国際的潮流にも逆行し、そして子どもの権利条約違反ではないかと、それから日本国憲法における両性の合意というところにも触れるのではないかという懸念を示させていただきました。
その後、最近同じような懸念を持つ方がおられて、資料の四ですけれども、民間法制審というところが、聞き知ることによりますと、資料四ですが、民間法制審が中間試案というのを出されたようでございます。これ、全体二十三ページほどで、読ませていただいて、私は、コンパクトですけれども、今の子供たちが抱えている問題、家族が抱えている問題に大変重要な試案ではないかと思います。
そして、そのことについて、資料五ですが、これも最近ですが、六月六日に櫻井よしこさんが、今法制審のまま進むと家族が解体するおそれがある、だから逆にこの民間法制審のような意見が大変重要ではないかということで、新聞記事を出されておりました。これもかなり驚いたんですけれども、本当に子供のためを、将来的に、また国際的にも日本が、家族を解体せずに、男女共同参画で、そして子供のための法制度改革をするには、櫻井よしこさんは民間法制審の案を大変積極的に紹介をしておられました。
ということで、通告の三と四、一緒なんですが、法務大臣、これを読まれて、ちょっと事前に資料は提示させていただいたと思うんですけれども、これを読まれて、民間法制審への意見、あるいは櫻井よしこさんのこの記事に対する意見、聞かせていただけたら幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/163
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164・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 父母の離婚後の子の養育の在り方につきましては、ただいま委員から御紹介いただいた団体の御意見のように離婚後の共同親権制度の導入を求める意見もある一方で、そのような法改正に慎重な意見もあるなど、様々な意見があるものと承知をいたしております。
この課題について幅広く今調査中の法制審議会におきましては、本年夏頃に中間試案を取りまとめることを目指しているというように聞いております。この取りまとめのそのためには、法制審議会におきまして、これまでの議論の結果を踏まえて考え方を整理した上で更に議論を詰めるなどの作業が必要となって、この議論の先行きというのは、現時点で確定的な方向性が何か定まっているというような段階ではないというように聞いておりますけれども、今後パブリックコメントの手続によって、御紹介をいただいた団体の御意見に限らず、国民各層からの様々な御意見を幅広く聴取する機会が設けられることになろうというふうに存じます。
引き続き、子の最善の利益を確保するという観点から、充実した調査審議が行われていくことを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/164
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165・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 想定していたとおりの答弁でございました。つまり、様々な意見をということでございます。
それから、子供の最善の利益、その子供の最善の利益というときに、先ほど藤井篤さんの例をあえて出させていただきましたけど、本当に子供たちは自分が置かれている状態に対して、日本だけが単独親権なんだと。私は藤井さんに、あなたがフランスで生まれたら、こんなにお父さんと引き離されて、そして食べる物もなく、苦労はなかったのよ、スウェーデンで生まれたらってお話ししたんですけど、えっ、そんなこと考えたことない、僕は自分が日本に生まれたいとか思わなくてももう生まれていたんだからということで、本当に、子どもの権利条約もそうです。それから、ハーグ条約もそうです。それから、既にEUあるいは海外からも日本が拉致国家と言われているその根本は、単独親権制度の問題なんですね。
そこのところを変えられるのはもうこの立法府しかないんです。こうやっている間にも、法制審、去年の二月に諮問して、三月からもう一年半、その間に片親を奪われる子供、毎年二十万人ですから、三十万人ほどがこの一年半で片親を奪われているんです。という意味で、大変時間は迫っております。子供は日々生まれ、育っておりますので、この法制審の中間報告及びその後のパブリックコメント、最終報告のスケジュール、特にそこで多様な意見を聞くということでしたら、例えばこの民間法制審、この意見は既に自民党の法制部会に議論していただいているということですけれども、こういう意見も対等に扱っていただけるんでしょうか。最後にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/165
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166・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 法制審議会におきましては、そのパブコメ等を通じまして、あるいは様々なその審議の過程において幅広く国民の御意見を聞くということでございます。特定の団体に限らず、幅広く様々な国民の声を集めた上で調査審議を進めていくということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/166
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167・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 幅広くということでございますので、何よりも当事者の子供たちがなかなか声を上げられない。既に去年調査はしていただき、また、今インタビュー調査もしていただいているということでございますけれども、そこを是非、子供たちの声を前向きにリアルに聞いていただいて、そして、国際的に、二十四か国調査でも、単独親権はもう日本しかないんだと、海外ではインドあるいはトルコはありますけど、宗教的にも違いますので、先進国では日本しか単独親権がないと。しかも、アジア地域でも、台湾、韓国、中国も共同親権を基本にしております。
この辺り、国際基準、そして、日本の子供たちが何よりも今自己肯定感を失い、そして、少年刑務所の皆さん、日本では余りデータ取っていないんですけど、アメリカでは片親を失った状態で犯罪に手を染めざるを得ない子供の比率が大変高くなっております。前半の刑法の話とこの共同親権の話はつながっているんだと、社会の根本で。そこのところを是非、法務大臣始め、また政治の皆さんにも理解していただきたいと思います。
以上です。私の方、時間来ましたので終わります。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/167
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168・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、福岡資麿君及び下野六太君が委員を辞任され、その補欠として羽生田俊君及び山本博司君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/168
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169・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
刑法等の一部を改正する法律案の修正について山添君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山添拓君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/169
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170・山添拓
○山添拓君 刑法等の一部を改正する法律案に対し、日本共産党を代表して、修正の動議を提出いたします。
その趣旨を御説明します。
本法律案は、侮辱罪の法定刑に懲役、禁錮を追加する等の厳罰化をするものです。インターネット上などでの悪質な誹謗中傷対策として提案されたものですが、言論、表現を処罰の対象としながら、具体的にどのような表現が侮辱に当たるのかは、審議を通じても全く明らかになっておりません。
また、本法律案は、逮捕の可能性を広げ、教唆や幇助をした人の処罰を可能としています。例えば不起訴になったとしても、現行犯逮捕のインパクトは自由な言論、表現に対する脅威となり、萎縮効果をもたらします。
衆議院で政府が示した統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ慎重な運用がなされる、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないとしています。しかし、北海道警察やじ排除事件に見られるように、捜査当局の判断で政治的な表現の自由が現に脅かされています。侮辱罪の恣意的な運用の懸念は依然として払拭できません。誹謗中傷への対策は民事的救済を充実すべきであり、侮辱罪の法定刑引上げは行うべきではないと考えます。
また、本法律案は、現行の懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに拘禁刑を創設します。現行法は、懲役については作業を義務付けていますが、禁錮については作業を義務付けておりません。ところが、本法律案は、刑の内容として全ての受刑者に対して作業と指導を義務付けます。
国連が被拘禁者処遇の最低基準を示したネルソン・マンデラ・ルールズは、犯罪をした人が社会に再統合されるようにすることが必要であると、刑務当局に対して、受刑者に適切かつ利用可能な教育そして職業訓練、作業その他援助を提供する義務を課しています。そのため、日本における作業の強制に対して、国連社会権規約委員会は、矯正の手段又は刑としての強制労働を廃止し、関係規定を修正、廃棄するよう勧告しています。
拘禁刑の下で、受刑者の自発性、自律性、尊厳を尊重せず、懲罰の威嚇の下に改善更生を強いることになれば、国際的に求められる受刑者への処遇水準からますます懸け離れてしまいます。そこで、拘禁刑については、刑法上は刑事施設に拘置することのみを規定することとし、受刑者の作業は、受刑者にその機会を与えるものとして位置付けるべきだと考えます。
以下、主な内容について御説明申し上げます。
第一に、侮辱の罪の法定刑を引き上げる改正を行わないこととしております。
第二に、拘禁刑及び拘留について、これらに処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとする規定を刑法から削除しております。
第三に、作業を怠った場合に懲罰を科されることがないよう、受刑者の遵守事項として定める事項のうち、正当な理由なく作業を怠ってはならないことを削るとともに、刑事施設の長は、受刑者が希望するときは、原則として、その受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる作業を行う機会を与えるものとすることとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしています。
以上が修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/170
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171・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) これより両案及び修正案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/171
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172・山添拓
○山添拓君 日本共産党を代表し、我が党提出の刑法等改正案修正案に賛成、内閣提出の二法案に反対の討論を行います。
内閣提出法案は、SNSなどインターネット上の誹謗中傷が社会問題化する中、侮辱罪の法定刑に一年以下の懲役、禁錮、三十万円以下の罰金を追加しようとするものです。しかし、ネット上の誹謗中傷に対しては、発信者情報の特定や保存の義務付けなど、民事的な救済手段を充実させることこそ必要であり、法定刑引上げによる実効性には疑問があります。一方で、侮辱罪の法定刑引上げは、逮捕、勾留できる場合を拡大し、教唆犯や幇助犯も処罰対象とします。
政府統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ慎重な運用がなされるとしていますが、逮捕の最終的な判断は現場の捜査官次第であり、担保となりません。現に北海道警やじ排除事件のように、トラブル防止を名目に時の首相や政権への異論、批判を封じた事実があります。
大臣は刑法三十五条の正当行為として違法性が否定され得ると言いますが、侮辱罪が正当行為を理由に無罪となった裁判例は確認できず、いかなる場合が正当行為に当たるかの確定的な説明もなく、懸念は拭えません。仮に現行犯逮捕などが起きれば、起訴されなくても自由な言論、表現への重大な脅威となり、回復し難い萎縮効果が生じます。侮辱罪の法定刑引上げはやめるべきです。
また、本法案は、現行の懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに拘禁刑を創設します。
国連が被拘禁者処遇の最低基準を示したマンデラ・ルールズは、拘禁刑とは自由の剥奪であり、原則としてそれ以上に苦痛を増大させてはならないとしています。改善更生や社会復帰という名で様々に受刑者に強制した時代があったからにほかなりません。作業や指導を義務付け、懲罰を背景に強制することは、受刑者の人間性を軽視することにつながりかねません。
日本共産党の修正案は、以上に述べた反対理由を踏まえ、侮辱罪の法定刑引上げを行わず、拘禁刑は文字どおり自由の剥奪のみを内容とすること、刑務作業は受刑者の希望によることとし、刑事施設にはその機会を提供する責任があることなどを定めるものです。
委員各位の御賛同を重ねて求め、討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/172
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173・高良鉄美
○高良鉄美君 私は、沖縄の風を代表して、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案についての反対の立場から討論いたします。
第一の問題点は、侮辱罪の法定刑引上げです。
そもそも、侮辱罪の法定刑は、明治四十年に現行刑法が制定されて以来、一度も引き上げられることなく、拘留又は科料にとどまってきました。時代や社会情勢が変わっても、このように極力軽い法定刑が維持され、かつかなり謙抑的に運用されてきたのはなぜでしょうか。それは、日本国憲法二十一条が表現の自由を保障しているからです。
国民が自由に意見を表明できることは民主主義の根幹です。当然ながら悪質な誹謗中傷は到底許されるものではありませんが、それは民事上の救済手段の充実など、別の手段によって対応すべきです。侮辱罪の法定刑を引き上げれば、憲法上保障された権利である、保障された権利である表現の自由を萎縮させるおそれがあることは明らかであり、こうした重大な犠牲を払ってでも引上げが必要なのか、特に慎重に時間を掛けた検討が必要だったはずです。
ところが、法制審議会部会の開催は僅か二回、諮問から答申まで僅か一か月余りと異例の短期間で終わっています。反対意見や慎重意見が出されていた中で、議論も尽くさずにこのような極めて短い期間で終わらせたのでは、結論ありきで進められたと言われても仕方がないのではないでしょうか。また、本来こうした重要な法改正の際に行われるパブリックコメントの募集が実施されなかったという問題もあります。
一連の拙速な進め方は公正、適正な手続とは到底言えず、法制審議会の在り方自体も問われる大問題だと考えます。
第二点目は、拘禁刑の創設です。
新たに創設される拘禁刑は、作業と指導を組み合わせて課すほか、作業を大幅に減らして指導を増やすことも可能であると承知しています。しかしながら、こうした作業を行い、指導を受けることは受刑者の義務であり、最終的には意に反してでも強制することが可能とされています。
国連のネルソン・マンデラ・ルールズは、受刑者に処遇を強制するのではなく提供することを国家に求めていますし、国連の社会権規約委員会は日本に対し、たとえ矯正の手段であっても労働を強制しないよう求めており、国際人権基準にも逆行します。
なお、意に反した処遇の強制という懸念は、本法律案のうち更生保護法が規定する社会内処遇に対しても同様に生じます。
最後に、今回の法改正は、処遇を充実させるための諸制度の導入と侮辱罪の法定刑の引上げを内容としていますが、これらの課題は別々に諮問がなされ、別々の部会で議論されてきたにもかかわらず、単に刑事法の改正だからという理由で一つの法案として提出され、同時に審議が進められました。民事訴訟法改正案の審議においても多くの問題点が指摘されたように、このようなやり方は国会における法案審議を軽んじるものであり、極めて不当です。
以上のように、両法律案は、国民の表現の自由を萎縮させるおそれがあることや、受刑者の意に反してでも作業、指導が強制され得るという問題があること、さらには、法案提出に至る手続が適正でない上、全く別の問題を一つの法案としたことから、国会における審議も十分でないということを申し上げ、私の反対討論としたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/173
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174・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
刑法等の一部を改正する法律案について採決を行います。
まず、山添君提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/174
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175・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 少数と認めます。よって、山添君提出の修正案は否決されました。
それでは、次に原案全部の採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/175
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176・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、有田君から発言を求められておりますので、これを許します。有田芳生君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/176
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177・有田芳生
○有田芳生君 私は、ただいま可決されました刑法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会、沖縄の風及び碧水会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 インターネット上の誹謗中傷による被害が多数発生し人権を著しく侵害する等の問題が深刻化している現状を踏まえ、インターネット上の誹謗中傷の防止及び誹謗中傷による被害が生じた場合の迅速かつ確実な救済を図るための施策を総合的に推進すること。
二 前項の施策を推進するに当たっては、インターネット上の匿名での誹謗中傷による侮辱罪に関し、被疑者の特定に係る被害者の負担を軽減すること。
三 第一項の施策を推進するに当たって、発信者情報開示請求制度に関し、迅速的確な被害者救済とともに、民主主義の根幹である表現の自由、通信の秘密が確保されるよう特に留意の上、開示請求の要件や開示される情報の範囲など、プロバイダ責任制限法の見直しも含めた検討を同法の施行状況を見極めつつ行うこと。
四 第一項の施策を推進するに当たって、損害賠償命令制度の対象事件を拡大するなど簡易で迅速な損害賠償の実現に資する制度のほか、インターネット上の誹謗中傷に係る損害賠償の在り方や裁判費用の支援など、適正な被害回復のための方策を速やかに検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
五 侮辱罪の法定刑を引き上げても処罰範囲に変更はないこと及び侮辱罪による現行犯逮捕に係る制限が法定刑の引上げにより外れたとしても当該現行犯逮捕が可能な場合は実際上は想定されないとする政府統一見解を捜査機関に周知徹底すること。
六 侮辱罪による私人逮捕は逮捕罪等の刑事責任が問われることや民事上の不法行為責任を負うことがあることを前項の政府統一見解と合わせて広く国民に周知・広報すること。
七 公共の利害に関する事項に係る意見・論評は表現の自由の根幹を構成するものであることを踏まえ、本法の附則に基づく三年経過後の検討に当たっては、侮辱罪への厳正な対処が図られることにより自由な表現活動が妨げられることのないよう、当該罪に係る公共の利害に関する場合の特例の創設についても検討すること。
八 拘禁刑が創設されることにより刑務作業が減る場合があることも踏まえ、受刑者の社会復帰の原資となる作業報奨金の水準について検討すること。
九 本法の施行により、犯罪をした者の特性に応じた処遇を充実させて再犯防止を図るため、拘禁刑の導入、刑の執行猶予制度の拡充、更生緊急保護の充実化等が行われることを踏まえ、その実務に携わる矯正施設及び更生保護官署の人的・物的体制の充実強化を図るとともに、施設内処遇と社会内処遇の緊密な連携を強化すること。
十 犯罪をした者に対する処遇の充実及び保護司の負担軽減を図るため、関係機関等のデータ連携も強化しつつ、矯正行政及び保護司活動を含む更生保護行政のデジタル化の推進・AI技術の活用により、矯正施設及び更生保護官署における対象者のデータの収集・分析、効果的な処遇等の実施及びその効果検証等の施策を推進すること。
十一 拘禁刑の創設を踏まえ、刑事施設における処遇調査を充実させるとともに、必要に応じて少年鑑別所の調査機能を有効活用することで、個々の受刑者の特性をこれまで以上に的確に把握し、その特性に応じた柔軟な処遇を推進すること。
十二 満期釈放者等の再犯防止を図る上で更生保護施設が果たす役割が重要であることを踏まえ、更生保護施設における充実したプログラムの実施や施設退所者等への訪問支援事業の全国展開、老朽化する施設の整備の促進等を図るための十分な財政的措置を講ずること。
十三 犯罪をした者の円滑な社会復帰を図るためには、刑事司法手続終了後を含めた切れ目のない息の長い支援を行うことが不可欠であることに鑑み、地方公共団体による地方再犯防止推進計画の策定や保護司活動の支援を含めた再犯防止のための施策が一層推進されるよう、地方公共団体に対する財政的支援を行うとともに、更生保護地域連携拠点事業の充実を図ること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/177
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178・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ただいま有田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/178
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179・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 多数と認めます。よって、有田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、古川法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。古川法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/179
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180・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) ただいま可決されました刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきまして、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/180
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181・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 次に、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/181
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182・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/182
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183・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/183
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184・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 引き続き、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房総括審議官近藤知尚君外五名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんでしょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/184
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185・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/185
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186・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/186
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187・有田芳生
○有田芳生君 立憲民主党の有田芳生です。
今日は、ウィシュマ・サンダマリさん死亡と名古屋入管の責任についてお聞きをしていきます。
去年の三月六日に名古屋入管でウィシュマさんがお亡くなりになって、もう一年以上がたちました。入管としては大部の最終報告書を出されましたけれども、その中の記述について、これおかしいんじゃないかということが複数の委員から指摘がされました。どういう問題点が指摘されたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/187
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188・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 名古屋局における死亡事案のこの調査報告書につきまして、令和三年三月三日の記載について、ウィシュマさんが自ら発言していないことを自ら発言したかのような虚偽の記載があるのではないかとの御指摘などをいただいたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/188
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189・有田芳生
○有田芳生君 発言していないことを発言したというのは、これは、例えばルポとかノンフィクションとか、あるいは新聞記事においても虚偽、捏造なんですが、そういう認識はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/189
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190・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) ただいま申し上げました御指摘につきましてですけれども、この箇所につきましては、この報告書の記載は、ウィシュマさんが看護師に訴えていた症状等を特定するため、三月三日の看護師との面談においてウィシュマさんが発言し、又は看護師から指摘されて肯定した症状等を明らかにすることを主眼とし、確認した内容を、旨を述べたとして一括して記載したものでございます。
したがいまして、私どもとしてはこのような記載が虚偽あるいは不正確であるとまでは考えてございませんけれども、さきに法務大臣からも発言がございましたように、このような御指摘があることは理解できるところであり、真摯に受け止めたいと私どもも考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/190
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191・有田芳生
○有田芳生君 文章の世界では虚偽なんですよ、明らかな。それが最終報告書なんですよ。
具体的に指摘をします。
補足説明の文書の中では、三月三日、ウィシュマさんは、看護師から、精神科医師に話すべき症状として、頭の中が電気工事をしているみたいに騒がしい、耳の奥で波の音がして聞こえづらい、食事が少ししか食べられないとの症状を指摘されて、うなずくなどした。うなずくなどしたのを述べたというのが最終報告書ですよね。
具体的にお聞きしますけれども、三月一日の最終報告書には、今お伝えをした、頭の中が電気工事をしているみたいに騒がしい、あるいは目がぼんやりしている。三月一日の最終報告書に書かれているんですよ。それを何で三月三日にもまた書いているんですか、しゃべってないことを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/191
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192・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 繰り返しになりますけれども、報告書においては、三月三日の記載につきまして、ウィシュマさんが看護師に訴えていた症状等を特定するため、その症状等を明らかにすることを主眼としたものでございまして、それで旨を述べたとして一括して記載したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/192
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193・有田芳生
○有田芳生君 違う。三月三日にしゃべってないことを述べたと最終報告書を書いたわけでしょう。だけど、三月一日の最終報告書に、しゃべっているんですよ。だったら、何で三月一日にしゃべったものを三月三日にしゃべってないのに入れたんですか。おかしいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/193
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194・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 御質問の趣旨が理解できていないかもしれませんけれども、三月一日のウィシュマさんが実際に発言をしたというところについては、それはそれで報告書に、今委員が御指摘のように報告書で記載があるところでございます。
その上で、先ほど申し上げたように、三月三日の記載については症状を、訴えていた症状等を特定するという、そういったことを主眼とするため、一括して旨を述べたという形でまとめて記載をさせていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/194
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195・有田芳生
○有田芳生君 補足説明について伺います。
頭の中が電気工事をしているみたいに騒がしいなどなどで、指摘されてうなずくなどした。うなずくなどした、うなずいたことを述べたに最終報告書が書いている虚偽があるんだけれども、このうなずくなどしたの、などというのは一体どういうことを示すんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/195
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196・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 看護師が確認した症状について、ウィシュマさんがうんと返答したことを指しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/196
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197・有田芳生
○有田芳生君 うんと返答したことはどうやって確認できるんですか、私たちは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/197
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198・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 閲覧いただいたビデオでも確認ができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/198
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199・有田芳生
○有田芳生君 そうしたら、とにかく原点に戻って、語っていないことを述べたとしたんだから、これは最終報告書、欠陥があるとお認めになるんだったら、もう一度改訂版作るべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/199
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200・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員の今の御指摘も含め、調査報告書につきまして様々な御指摘をいただいておりまして、その点は私どもとしても真摯に受け止めてまいりたいとは考えておりますが、本件の調査は、可能な限り客観的な資料に基づき、医師、弁護士を含む外部有識者による中立かつ公正な立場からの御意見、御指摘も踏まえながら行われたものでありまして、その結果をまとめた調査報告書の内容に修正を要する誤りがあるとは考えておりませんので、したがいまして、再調査や最終報告書の作成し直しが必要であるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/200
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201・有田芳生
○有田芳生君 何言っているんですか。誤っているから補足しているわけでしょう。間違っているでしょうが。しゃべっていないことを述べたと言っているのは間違いでしょう、大きな。違うんですか。だからこういう文書を出したんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/201
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202・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 理事会に提出した資料は、報告書で旨を述べたと一括記載した経緯とその趣旨について御説明を補足的にしたものでございまして、私どもとしては誤りを認めたとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/202
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203・有田芳生
○有田芳生君 三月三日にそんなことしゃべっていないじゃないか。何言っているんですか。間違ったから訂正しているんでしょう、あなた方は。違うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/203
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204・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 六月七日に理事会に提出いたしました資料は、繰り返しですけれども、旨を述べたとして一括して記載したその前提となる事実の特定経緯、それからその記載の趣旨について御説明をしたものでありまして、誤りを訂正したということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/204
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205・有田芳生
○有田芳生君 日本語じゃないんですよ。こんなの世間では通用しないんですよ、文章の世界では。それを、天下の入管がこんなのを最終報告書だって何で言えるんですか。
じゃ、聞きましょう。ほかにそういうことがないかどうかというのは、全部ビデオを明らかにしてくださいよ。照合しましょうよ、これと正しいのかを。違いますか。出してください、全部のビデオを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/205
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206・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) ビデオ映像につきましては、死亡当日までの約二週間の起居寝食の状況等の一部始終が撮影されたものであり、開示により、食事や着替えのほか、生活上のあらゆる様子などがつまびらかとなるなど、亡くなられたウィシュマさんの名誉、尊厳の問題があると考えております。
また、施設の設備や形状、職員による巡回の体制や頻度、被収容者の個々の状況に応じた対応体制、監視カメラの撮影範囲や解像度などの具体的な状況が公となり、逃走防止や施設内の秩序維持といった保安上の対応にも支障を及ぼしかねないと考えております。
とりわけ、職員による巡回の体制や頻度、被収容者の個々の状況に応じた対応体制等が公となることによる保安上の支障はマスキング等の措置によっても解消することができないため、全面開示に応じた場合これらが全てつまびらかとなってしまうと考えております。
これらの点から、ビデオ映像については、情報公開法第五条第一号、四号、六号柱書きの不開示情報に該当するため、全面開示は適当でないと考えております。
さらに、本件につきましては、先日、国家賠償請求訴訟が提起されており、訴訟係属中の事案に関する事柄の詳細を国会で明らかにすることは、司法への影響に鑑み、基本的には差し控えるのが適切であると考えております。
このような理由からも全面開示は適当でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/206
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207・有田芳生
○有田芳生君 そうしたら、私たちは有り難く評価をしているんですけれども、プライバシーの問題云々というのを今おっしゃいましたけれども、じゃ何で六時間半以上私たちに見せてくれたんですか。そこにはプライバシーはないんですか。はっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/207
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208・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) ただいま申し上げたのは行政機関としての対応につき御答弁申し上げたところでございまして、先般閲覧いただいたビデオに関しましては国会のお求めに応じて対応させていただいたというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/208
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209・有田芳生
○有田芳生君 今語られました国家賠償請求訴訟が提起されている、事実です。
入管と、大臣にもお聞きをしますけれども、ウィシュマさんの二人の妹さんが意見陳述をされました。その全文を読まれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/209
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210・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 私は、まだつまびらかに全文を読んではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/210
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211・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) この個別の、原告はですね、訴状において……(発言する者あり)読んだかどうかというお尋ねでございますね。読んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/211
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212・有田芳生
○有田芳生君 なぜ私はこういう気持ちが高ぶるかというと、深刻な問題なんですよ。日本が問われているんですよ。入管だけじゃないんですよ。
ウィシュマさんの二人の妹さん、意見陳述の全文はNHKもネットで報じておりますので、是非委員の方もお読みください。
ワヨミさん、もう簡潔に言います、こう言っている。
若く健康な姉が簡単に亡くなるはずがないと私たちは思ったんです。中略します。姉の遺体と対面したときの気持ちは、つら過ぎてとてもお話しできません。遺体は、姉に似ていましたが、やつれ切って別人のようでした。本当は母も姉の遺体と会いたかったし、今日この場にも来たかったのです。けれども、彼女は姉の死を聞かされてから体調を崩しました。中略。母は今も毎日姉のことを思って泣いています。亡くなってから、私たちは姉の大きな写真を家に飾りましたが、母はそれを裏返しにしてしまいました。そういう気持ちなんです。
もう少し御紹介しましょう。母は、日本なら安全な国だから大丈夫だよ。日本に行って勉強したいという留学の気持ちを伝えて、反対したんだけれども、姉がどうしても勉強したい、外国語の教師になりたいということで日本に行く。そのとき、繰り返します、母は日本なら安全な国だから大丈夫だねと言いました。私たちは、自宅を担保にお金を借りて姉の学費をつくり、姉を日本に送り出しました。
私とポールニマは、つまり妹さんですけれども、中略、姉がとても苦しんでいる映像を見ました。二時間見る予定でしたが、ショックで途中吐いてしまって、その日、最後まで見られませんでした。その中で、姉はずっと助けを求めていたのに、点滴も病院も求めていたのに、姉は死にたくなかったのに、そういう気持ちを語っている。これ、皆さん、見られましたでしょう。担当さん、担当さんと、入管の職員に助けを求める姉の声がいつも聞こえてきました。
中略します。裁判官と全ての日本市民は少しでも早く姉のビデオを見てください。中略。特に日本の入管収容制度には完全に変わってほしい。変わってほしいという切実な願いなんですよ。中略します。この訴訟で正しい判決が出て、日本が人間を大切にする国に必ず変わってくれると信じています。それが母とポールニマとウィシュマの願いでもあります。
もう一人、ポールニマさん、妹さん、これも簡単に御紹介します。
昨年三月、地元の警察から姉の死を伝えられても、私たち家族はそれを信じませんでした。五月一日に来日し、待機期間が明けた十六日に、年を取った別人のように見える姉の遺体と対面しました。ワヨミも私もそれが姉だとは認めたくありません。物すごく健康だった人ですよ。
そして、中略、姉は何度も点滴を求めていましたが、職員はそれを聞き入れませんでした。ベッドから落ちてしまった姉を職員が放置していた場面も見ました。私も見ましたよ。皆さんも見ましたよ。
三月五日、姉はああと叫んで最後の助けを求めていました。六日、亡くなった日、六日はほとんど動かず、何も話せませんでした。私は、姉は見殺しにされたと思いました。救急車を呼べば姉を助けられたのに、入管職員は救急車を呼ばなかったのです。マニュアルあるでしょう、あったでしょう、この亡くなったときも。大変なときには救急車呼んでいいというマニュアルあるでしょう。何で呼ばなかったんですか。
七月二十日の次の口頭弁論までには必ずビデオの提出をしてください。これが御家族の切実な思いなんです。
そして、入管の皆さん、本当に努力して様々なことをこれまでなさってきたけれども、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことによって、それまで入管問題に関心がなかった若い人たちが全国で、入管施設でそんなことが起きているのという高い関心が去年からずっと続いているんです。だから変えましょうよ、入管を、こんなことが二度とないように。
もうだんだん時間が来てしまいますので、入管に伺います。二月十五日の尿検査、ケトン体三プラス、どういう意味ですか。二月十五日ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/212
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213・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 報告書に記載のありますとおり、飢餓状態を示すというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/213
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214・有田芳生
○有田芳生君 飢餓状態、飢餓状態なのに救急車も呼ばない。精神科に見せている。どうして救急車を呼んだり点滴をしたりしなかったんですか、飢餓状態なのに。入管ですよ、名古屋入管。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/214
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215・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 二月十五日の尿検査結果を踏まえた追加的な検査等が行われなかったことにつきましては、医師である二名の外部有識者から、振り返ってみれば、尿検査結果からは既に何らかの腎障害が存在したと考えられるが、制約された診療体制の中での判断であったことも考慮する必要がある、また、庁内医師は週二回各二時間という限られた時間で、診療を申し出た被収容者に受動的に対応していたのであり、こうした制約された医療体制にこそ問題があったと指摘されているところでございます。
このような指摘を踏まえまして、調査報告書では、尿検査結果を踏まえた内科的な追加の検査等が行われることが望ましかったものの、それが行われなかった原因は医療体制の制約にあり、医療体制の抜本的強化に取り組む必要があるとして、問題点、要改善点を指摘しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/215
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216・有田芳生
○有田芳生君 一人の三十三歳の女性が希望を持って日本に来て、入管に入って亡くなられて、命を失って、飢餓状態にあるのに、マニュアルに沿ったら救急車呼べるのに、何で呼ばなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/216
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217・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 救急搬送が行われなかった点につきましてでございますけれども、この尿検査結果を踏まえて救急搬送が行われなかった点につきまして、調査報告書では指摘はございません。
ただ、亡くなる当日の点につきましては、救急搬送が遅かったという指摘はございます。それにつきましても、休日等の医療相談体制の構築に努めることや、緊急時の対応について、過去の収容施設における被収容者死亡事案の再発防止策としても掲げられていたものの、名古屋局でその実施が徹底されていなかった、あるいは教育や意識の涵養が十分に行われていなかった、休日、医療従事者が不在であり、外部の医療従事者へのアクセスも確立されていなかった、バイタルチェックについての基準やマニュアルも作成されていなかったなどの問題点が指摘されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/217
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218・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間になりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/218
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219・有田芳生
○有田芳生君 最後に一点だけございます。
死因も特定できていませんけれども、死因が特定できないという判断をしたのは何人の医師ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/219
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220・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間になっておりますが、簡潔に答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/220
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221・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 調査チームに加わりました専門医、医師、二名おられますけれども、その方々の御意見で、特定できて、特定できなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/221
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222・有田芳生
○有田芳生君 今日はこれで終わります。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/222
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223・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 傍聴席からの発言はお控えください。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/223
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224・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、宮島喜文君が委員を辞任され、その補欠として足立敏之君が選任をされました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/224
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225・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典です。
今、有田委員から御指摘がありましたことにつきましては、私はおととしの春からずっとこの問題について指摘をさせていただいております。
本来であれば、もろもろの御質問させていただきたいところですが、一昨日、既に裁判、一回目の口頭弁論に入ったということでありますので、係争中の案件について踏み込んだ発言を求めてもこの場では現状できないという制約条件の中、私としては残念ではありますが、再発防止という観点から、今できることが何なのかという点から、医療提供体制の整備状況について確認をさせていただきたいと思います。
この一連の名古屋入管のウィシュマさんがお亡くなりになられた事案を受けて、入管の医療提供体制の在り方についてはこの間ずっと指摘をさせていただいてまいりました。医師の、いわゆる常勤医師がいないという状況が慢性的にあるということ、同時に、医療従事者が、医師以外、薬剤師や看護師、准看護師についての配備も極めて手薄い状況の中で、この間、今も入管が運営をされているという、こういう状況の中、令和四年二月、本年の二月に報告書で、入管収容施設における医療提供体制の強化に関する提言というのが有識者会議の中で出されました。
この有識者会議の中で二月に出された提言に基づいて、その後、入管施設における医療提供体制の整備状況がどうなっているのかということについて、まず常勤医師の充足状況について入管に確認をしたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/225
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226・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 当庁におきましては、名古屋事案を受けまして、医療体制強化の取組を進め、調査報告書を公表した令和三年八月当時、常勤医師定員一名が欠員となっておりました東日本センター及び大村センターについては、現在までに常勤医師各一名を確保いたしております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/226
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227・川合孝典
○川合孝典君 名古屋と大村については常勤医師が今一名ずつ配備されたということですか。ほかの入管も含めてどんな感じでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/227
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228・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 令和三年八月当時、欠員となっていた東日本センターと大村センターについては常勤医師一名を確保、現在までにしているということでございます。
他方、同じく常勤医師定員一名を持っています横浜支局、名古屋局、それから大阪局につきましては、現在まで確保できていない状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/228
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229・川合孝典
○川合孝典君 それもそこまでちゃんと言ってくださいよ。都合のいいところだけ切り出して言って、それでごまかそうとしているように聞こえるじゃないですか。不誠実ですよ、今の答弁は。
ということは、常勤医師がいまだに、要は確保し切れていないということですよね。なぜ常勤医師が配備できないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/229
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230・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 常勤医師がなかなか確保できない原因として、先ほど委員から御指摘もいただきました医療体制の強化に関する有識者会議におきましては、常勤医師の場合、国家公務員であるということから兼業が禁止されるという点、それから民間に比べると給与が低くなるといった点の弊害が指摘されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/230
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231・川合孝典
○川合孝典君 で、どうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/231
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232・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) まず、先ほど指摘したうち、兼業の禁止、制限につきましては、国家公務員法等の特例の創設によって兼業許可を柔軟に可能にすることなどの待遇の改善について現在検討をいたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/232
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233・川合孝典
○川合孝典君 兼業規定を見直すことによって働ける状態をつくろうということ、それは分かりました。待遇面はどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/233
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234・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 私が今、先ほど申し上げた給与の面につきましては、やはり国家公務員との並びがございまして、なかなかそこを直ちに変えるというのは困難かと存じますけれども、他方で、その兼業の制限を緩めることによって、兼業を基本的には有償で行う、あるいは、医療研修という形で他の院で医療に従事するという場合にも有償というふうに伺っておりますので、そういった面で、収入面につきましても改善が図られるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/234
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235・川合孝典
○川合孝典君 大臣、お聞きいただいて、いろいろ問題があること、存在していることですね、常勤医師を配備しようにも配備、配置し切れない制約条件があるということなんです。ルールの中だけでやろうと思うと今次長がおっしゃったような話になってしまうわけでありまして、ここをきちんとクリアしていかないと常勤医師を入管に配置、配備し切れないんですよ。
ここは政治的に判断をしていただいて、大臣のリーダーシップでこの問題クリアしていく必要があると思いますが、御所見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/235
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236・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) この名古屋での本当に悔やんでも悔やみ切れないこの出来事に対する強烈な反省の下に、二度とこのようなことを起こしてはならないという決意の下に、この調査報告書において指摘されている項目が幾つかございます。それは、医療体制の制度、体制としての不備に対する指摘であるとか、運用が十分でないというような指摘であるとか、あるいは職員の意識が不十分であるというような、そういう観点からの指摘があり、かつ具体的な改善策として十二項目が挙げられております。その中で、私どもは、これをもう可能な限り速やかに着実に実行するということをまず第一の課題だというふうに受け止めておりまして、鋭意それを実施しているところでございます。
今委員お尋ねのその常勤医師、制度上なかなか難しいということはおっしゃるとおりでございます。しかし、この医療体制を強化するのは、これは私どもの責務だというふうに考えておりますから、引き続き、常勤医師はもちろん、非常勤医師や医師以外の医療従事者の確保にも努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/236
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237・川合孝典
○川合孝典君 取組をこの間、反省に基づいて進めているということで大臣から御答弁いただきましたが、この有識者のいわゆる提言に基づいて、具体的に現在までの間に、取組として十二項目ある中で済んだ取組というのがどれなのか、次長で結構ですので御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/237
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238・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 十二項目中、例えばですけれども、使命と心得の策定であるとか、あるいは名古屋局の組織・運用改革であるとか通訳の活用等々ございますけれども、十二項目のうち十一項目については、指針等の作成も含めて、そういったものも含めまして実施をしたというところでございます。
一つ、被仮放免者に関する民間団体との連携につきましては、今鋭意、情報収集等を含めて作業中で、取組中でございまして、これはまだ取組中というふうに整理をさせていただいています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/238
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239・川合孝典
○川合孝典君 具体的にと申し上げましたよ。じゃ、取組はさせていただいたという御説明でしたが、常勤医師はまだ要は欠員状態であるということは分かりました。
看護師、准看護師、薬剤師等の確保はもうできているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/239
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240・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 看護師、それから薬剤師といった医療従事者の確保につきましては、先ほどと同様のお示しの仕方をいたしますと、令和三年八月以降、大村センター、東京局、名古屋局、それから大阪局において新たに常勤の看護師を確保し、そのほか、大村センター及び東京局において薬剤師を確保したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/240
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241・川合孝典
○川合孝典君 名古屋入管では、点滴施設、点滴をする設備すらなかったということが明らかになっていますが、そうしたものも含めて医療提供、初期医療提供体制というのは整備できたということでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/241
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242・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘のその名古屋局の関係につきましてはまだちょっと、まだいまだできておりませんが、医療用機器の整備につきましては、例えばですが、東日本センターに携帯用心電計、あるいは東京局に薬剤の分包機を配備したほか、名古屋局ではレントゲン機器の更新を行うなど、取組を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/242
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243・川合孝典
○川合孝典君 断片的にやったことだけ説明していただいているんですけれども、現実問題として、長期収容者が大勢、各地の収容施設にいらっしゃる状況の中で、その体制をどう整備するのかということ、これ今の次長の説明だけだと全容が全く分からない。したがって、今御質問させていただいた常勤医師、非常勤医師、そして医療従事者のいわゆる確保状況並びに医療提供体制としてのいわゆる設備の整備状況等について各入管ごとに教えていただけますか。資料として提出していただくようお願いしたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/243
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244・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 整理の上、御説明させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/244
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245・川合孝典
○川合孝典君 私がこの問題にこだわりますのは、今後、来年以降、入管法の改正も含めてもろもろの議論しなければいけないわけです。もちろん、それぞれお立場によって御説明、立場があるでしょうけれども、医療提供体制がきちっとしていなかったこと、結果から見て、入管の対応のミスからこういう問題が起こっていること自体もう紛れもない事実であります。したがって、長期収容者、収容者の方々に対する適切な医療提供体制がきちっと整っているということが前提とならないと、当然、今後入管法の改正の議論を行うに当たって必ずそれが障害になるんですよ。そのことぐらい分かりますよね。だから、私はしつこく医療提供体制をどうするのかということの指摘をさせていただいています。
あわせて、要は、非常勤医師ということについてもおっしゃっていますけど、私も親族、医者が多いですし、父も医者ですけれども、非常勤で週に単発で二時間とか週二回二時間とか、そういう形でアルバイトで診療に来られているドクターの方に、一人一人の患者さんのその時点での体調は分かっても、通常状態がどういう御体調なのかという健康状態が分からない状況の中で、その場だけで診ても分からないんですよ。だから、要は、症状を見続けることで初めてその方がどういった症状になっていらっしゃるのかということが分かるわけでありまして、だから、常勤じゃなくて、非常勤だけれども一応格好だけ週に何日かだけ非常勤いますからそれでという、そういう対応をしていたことがこういう問題を起こしているんです。
だから、常勤の医師を、若しくは専任で、要は収容者の方の健康管理をできる方というのが専門職でいらっしゃらないといけないんですよ、長期収容するのであれば。だから、その体制まできちっと整えるということが今後入管法をあるべき形にどう改正していくのかということの議論にその先つながっていくということだと思いますよ。だから、そのことを私は、先ほど大臣、指摘させていただいたんです。
大臣が前向きにこの問題に取り組もうとしていらっしゃることについては私も理解しています。が、しかしながら、常勤のお医者さん、そしていわゆるパラメディカルの皆さん方々が必要に応じて、必要なときには速やかに収容者の方の要は健康管理だとか医療的な処置だとかということができる体制をどうすればつくれるのかということ、このことが前提としてなければ長期収容しちゃいけないんですよ、そこで。そういう整理でこの問題を要は解決に、改善に向けて議論を進めていただきたいと思うんです。
是非、常勤医師を、処遇の面だとかいろいろな障害があってなかなか常勤医師が今配置できないということをおっしゃっていますけれど、是非そういったことも含めて、大臣、すぐにこの問題については議論して、問題解決に向けて話を進めていただけませんか。四か月たっています、有識者会議の報告が出てから既に。でも、こんなものなんです、今お話聞いている限りは。
だから、これは法務省、入管の権限の枠内、予算の枠内でやろうと思ったらこれしかできないということなんですけれども、そこから先は、さっき申し上げましたように、大臣、政治の判断でこの問題をどう整理していくのかということが問われています。
御決意だけお伺いして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/245
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246・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) まず、先ほど申し上げましたように、今回の事案を受けまして、二度とこのようなことを起こしてはならないということで申し上げた十二項目、これを確実にまず実行すると、これがまず第一だと思っております。しかし、それをやり終えたからもうこれでいいのだということは決して思っておりません。
私は、今回のこの名古屋の悲しい出来事に限らずですけれども、入管行政の全般を見るときに、やはりこれはどこか足らざるものがあると、欠けているものがあるという意識を持って点検をする必要があるというふうに思っています。
それはどのような制度も、どのような法律も、それをつくった当初においては最善のものだということで物事はスタートするのだと思います。しかし、運用する中において不具合が明らかになってくることもあるでしょうし、時代の流れの中で新たな事情の変更もあるでしょう。そのようなときに、やはり改めるべきものがあれば改めるという、そういう誠実な姿勢というものが行政においては、特にこの入管の場合は、この入管収容施設の場合には命を預かるということでありますから、より一段のそういうこの真摯な姿勢というものが大事だというふうに思っております。
したがいまして、この十二項目の着実な迅速な実行、これはまず第一でありますが、同時並行として、この収容施設の在り方を含め全般的な話についても不断の、改めるべきものは改めるという不断の努力、そういうことを続けていきたいと思っております。
そのような観点であらゆる分野に対して点検をしていこうと、そういう気持ちで臨んでいるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/246
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247・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/247
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248・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
先ほどの刑法の一部を改正する法律案、これは成立いたしましたけれども、実はちょっと確認したいことがまだ何点かありまして、三点ちょっと確認をさせていただきたいと思いますので、お願いをいたします。
再度の執行猶予についてお伺いをさせていただきます。
今回の法改正で、保護観察付きの執行猶予中に再び罪を犯した場合でもまた執行猶予を付けることが可能となりました。保護観察付きの執行猶予中の再犯者の割合、これは令和二年で二三・六%でありまして、保護観察が付いていない執行猶予を受けている者よりも再犯率が高いということなんですね。
今回の改正によって再犯率の高い者に更に執行猶予を付けられるようにすれば、また新たな犯罪が生まれてしまうのではないかというふうな思いもありますが、この点はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/248
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249・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
現行法上、保護観察付執行猶予中の再犯につきましては、再度の執行猶予を言い渡すことができず、いわゆる実刑に処さなければならないこととされております。その理由といたしましては、保護観察付執行猶予の仕組みが設けられた当時、裁判所の認定により、再犯のおそれがあり、適当な指導監督、補導援護を加える必要があるということで保護観察に付された者に、再び犯罪を犯した場合には重ねて執行猶予はできないこととするなどと説明されていたものと承知をしております。
しかしながら、保護観察付執行猶予中に再犯に及ぶ事案には様々なものがございまして、再犯に及んだというだけで社会内処遇によることがおよそ不適当であるとは言えず、実刑に処するよりも改めて保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資する場合もあると考えられるところでございます。
そこで、今回の法改正におきましては、実刑に処するよりも社会内処遇を継続する方が改善更生、再犯防止に資するという場合に限って、裁判所の判断により再度の保護観察付執行猶予を言い渡す余地を残す趣旨で、保護観察付執行猶予中の再犯についても再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにするものでございます。
その上で、今回の法改正におきましては、再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者に対する保護観察につきましては、再犯に結び付いた要因の的確な把握に留意して実施しなければならず、保護観察所の長は、保護観察の開始に際し、再犯に結び付いた要因を的確に把握するため、少年鑑別所の長に対し、再保護観察付執行猶予者の鑑別を求めることとするなどの特則を設け、その改善更生、再犯防止に万全を期することとしているものでございます。
したがいまして、保護観察付執行猶予中の再犯につき、再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにしたからといって、実際に再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者が再犯に及ぶおそれが更に増大するものとは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/249
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250・東徹
○東徹君 次、現在の仕組みでなんですけれども、単純な執行猶予中に再び罪を犯した場合に、更にこれ執行猶予が付けることができますね。二度目の執行猶予の際にまた罪を犯してしまった人の割合、これ法務省は何か把握していないというふうに聞いておるんです。二度目の執行猶予の制度が新たな犯罪を生んでいないのかどうか、これ検証するためにはこの数字というのは把握しておく必要があるんではないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/250
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251・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) お答え申し上げます。
現在、保護観察付全部執行猶予者の成り行きを見るということで、再処分率、保護観察を終えた者の中で刑事処分に付された者、起訴猶予の処分も含みますけれども、そういった者の占める比率を再処分率ということで把握しておりまして、毎年把握しておりますものを毎年公表しているところでございます。
今回新たな制度になりますと、保護観察付全部執行猶予中の者の再犯によって再度の保護観察付執行猶予も付されると、保護観察付全部執行猶予が二つ持つような新たなケースも生まれるということもございますので、施策の有効性を確認する観点から、どのようなデータを把握するかも含めまして、効果検証の在り方についてはしっかり検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/251
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252・東徹
○東徹君 そこは必要なんじゃないですかねというふうに思うんですね。
単純な執行猶予中に再び罪を犯した場合にこれ執行猶予を付けることができる。二度目の執行猶予の際にまたこれ罪を犯してしまった人の割合、僕はやっぱりここもきちっとデータとして把握しておかないと、今回のことも含めてやっぱり議論しづらいなと、こう思ったので、これを聞かせていただいたということです。
もう一点、法務省から事前にこれ確認したところでは、例えば窃盗などで保護観察付きの執行猶予中の者が自動車の運転中、過って人をはねてけがをさせてしまった場合、これ業務上過失傷害罪に問われる可能性がありますが、過失犯なのに執行猶予を付けられないのはどうしたものかと。まあ、判断があるというふうに聞いております。であるならば、過失犯だけに限定して二回目の執行猶予を付けるようにしたらどうなのかなと思うんですけれども、その点についてはいかがだったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/252
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253・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) 委員御指摘の改正は、保護観察付執行猶予中の再犯については実刑に処すべきものとされてきたことを踏まえた上で、保護観察付執行猶予中に再犯に及ぶ事案には様々なものがあり、実刑に処するよりも保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資する場合があることから、こうした場合に限り裁判所の判断により再度の保護観察付執行猶予を言い渡す余地を残そうとするものでございます。このような趣旨は、再犯が過失犯である場合だけでなく、故意犯である場合にも妥当し得ると考えられるところでございます。
もとより、個別の事案ごとの裁判所の判断によることとなるところでございますが、例えば法制審議会の部会における議論では、故意犯である薬物使用の罪で保護観察付執行猶予中の者が薬物再乱用防止プログラムを熱心に受講し、薬物の使用を絶っていたものの、プログラム修了前に衝動的に薬物を使用してしまい、その直後に真摯に反省して自首した事案が挙げられているところ、このような事案において、保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資すると判断される場合には裁判所が再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことを可能にすることが必要であると考えられるところでございます。そのため、本制度の対象犯罪を過失犯に限定することとはしていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/253
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254・東徹
○東徹君 そういう話がありましたので、それだったら過失犯に限ってはどうかなというふうに思ったわけであります。
では、予定しておりました質問の方も続けてさせていただきたいと思います。
まず、入管行政についてでありますが、前回委員会の後、ウィシュマさんのお亡くなりになられた件に関して補足説明が行われました。入管行政の信頼を取り戻すためにもこのような事例をなくしていく必要がありますが、ウィシュマさんのように、全国の収容施設において体調の悪化等を理由に継続的に医師の診察を受けている外国人の方、現在どの程度おられるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/254
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255・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 本庁におきましては、全国の入管収容施設における日々の診療件数全てを把握しているものではございません。
ただ、ちょっと御参考までに御紹介いたしますと、前提として、その名古屋事案を踏まえた改善策の一つでございますけれども、入管庁で体調不良者等に係る仮放免運用指針を昨年十二月二十八日策定、発出しておりまして、この運用指針は、医師の所見を踏まえ、各官署の幹部による被収容者の的確な体調把握や体調不良者等に関する本庁への報告を義務付けるなどの方策を定めているものでございます。この報告に基づいて当庁が体調不良者として把握している被収容者の人数につきましては、令和四年六月一日現在で十六人になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/255
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256・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
では次に、性犯罪の厳罰化についてお伺いさせていただきます。
先日も質問させていただきましたけれども、性犯罪の厳罰化に向けて、心神喪失、抗拒不能の要件の見直しなど、様々な観点から法制審議会で議論が行われております。そこには、実際に被害者、性被害を受けられた当事者の方も審議会のメンバーとなって議論を行っているということで、当事者の声を反映した形で法改正が進んでいくことが望ましいというふうに思いますが、大臣、これ、性犯罪の被害をなくすためにはどのような改正が必要とお考えなのか、お伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/256
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257・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 性犯罪、性暴力は、もうこれは被害者の尊厳を著しく傷つけて、その心身に長年にわたって重大な苦痛を与え続けるものであります。決して許されるものではないと考えています。
性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方につきましては、刑事法の諸原則にも留意しつつ、様々な立場にある方々のお声に耳を傾けながら検討を行うことが重要だというふうに考えています。
現在、法制審議会の部会におきまして調査審議が、この刑事法、性犯罪に対処するための刑事法の整備について調査審議が進められているところでございますけれども、この部会におきましては、刑事法研究者、実務家のほかに、性犯罪被害者当事者や被害者心理の専門家、被害者支援関係者にも委員、幹事として御参加をいただき、性犯罪の実態等に関するヒアリングを実施するなどして多様な意見を踏まえた御議論が行われていると、このように承知をしております。今後もこうした充実した議論が行われていくことを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/257
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258・東徹
○東徹君 続いて、インターネット上の誹謗中傷対策についてお聞きしたいと思います。
今回の刑法の改正で侮辱罪が厳罰化されますけれども、木村花さんの事例もあったように、インターネット上の誹謗中傷対策、これは待ったなしの課題となっておりますが、我が党が出した法案がありまして、深刻な人権侵害への対策を進めて被害の救済を図るため、インターネット誹謗中傷対策の推進に関する法律案というのをこれ提出したんですけれども、その内容には、インターネット上の誹謗中傷による被害の救済を図るために、被害者の救済、経済的負担の軽減のための給付金の支給、被害者の実効的な救済を図るための損害賠償制度の導入などの検討を政府に対して求めました。
是非前向きに検討していただきたいと思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/258
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259・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 委員の今の御指摘は、誹謗中傷に対する損害賠償額が低過ぎるため、被害者は裁判費用さえ賄えないとの問題意識から、誹謗中傷の被害者への給付金支給や損害賠償額についての特別な制度の導入を検討すべきだという、そういう御趣旨の下でのお尋ねというふうに受け止めました。
侮辱罪に限らず、被害に遭われた方々への援助につきましては、例えば弁護士費用等の援助として、資力の乏しい者に対する法テラスによる民事法律扶助制度がございますが、委員が御指摘のような特別な制度を設けることについては、今般の法整備や様々な行政的な諸施策による効果なども踏まえながら検討する必要があると思いますが、その際、特定の類型の被害のみを対象として被害者への給付金支給や損害賠償額についての特別な制度を設けることの要否又は当否、あるいは我が国の損害賠償制度の趣旨、目的との整合性など、様々な観点から慎重に検討する必要があるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/259
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260・東徹
○東徹君 もう一点。多くの人に使われているこのSNSなんですけれども、海外の事業者によるものが多くて、インターネット上の誹謗中傷によって被害を受けている人が急いで対策をしようとしても、その海外の事業者が日本で登記をしていなければ費用も時間も掛かってしまいます。
これ、前、清水委員も質問を、ちょっと触れておりましたけれども、本来、外国会社というのは日本で登記をしなければならないのにやっていない現状があって、法務省と総務省が連携して登記をするよう四十八社に対してこれを要請したということですけれども、登記済みが四社で、五社が準備中、残りの三十九社が何もしていないという回答なんですね。
これ、登記をしなければならないのにしていない外国会社に対して、会社法に定められた過料が適用されたケース、これは一件もないということですけれども、これは法律に定められている以上、過料を適用も含めて急ぎこれ対処すべきというふうに考えますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/260
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261・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
外国会社に対する発信者情報開示請求などの民事裁判手続が円滑に行われるためにも、外国会社が早期に外国会社の登記をすることは重要です、御指摘のとおりですね。
まずは、対象となる未登記の外国会社に対して個別に登記を促しておるところですけれども、なお登記がなされない場合には、過料の裁判を行う裁判所に対して義務違反の事実の通知を行うことも含め、関係省庁と連携して、外国会社の登記義務の履行に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/261
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262・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) お時間になりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/262
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263・東徹
○東徹君 是非やるべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/263
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264・山添拓
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
名古屋入管でウィシュマさんが亡くなった事件について伺います。
六月七日付けで理事懇談会に示された補足説明資料は、名古屋入管の看守勤務日誌、被収容者診療簿、拒食者報告について、いずれも情報公開法上の不開示情報に該当すること、訴訟係属中であることを理由に開示できないとしております。
しかし、これらの事情は、私がこの委員会で提出を求めた三月二十九日の時点でも同じだったはずです。
入管庁に伺いますけれども、二か月間、何の準備をされていたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/264
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265・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 当委員会での法務大臣の発言を踏まえまして、委員の皆様の御指摘にお応えするべく、当庁において改めて検討を重ねるなどの準備を進めた結果として、六月七日の提出に至ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/265
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266・山添拓
○山添拓君 いや、お答えいただいていないんですが。
二か月待って二枚のペーパーで、中身は同じなんですよ。見せていただきたいと言ったものは一切出てこなかったと。そして、いかなる検討がされたかということもこのペーパーからは見えません。どんな準備をされていたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/266
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267・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 検討を重ねたということでございますけれども、検討の内容の子細につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/267
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268・山添拓
○山添拓君 国会の求めに対して何ら応じないということですよね。
尿検査について伺いますけれども、先ほども有田委員からありました二月十五日のケトン体三プラス、飢餓状態がうかがわれる、疑われる数字です。一月二十六日の検査でも、これは陽性と出ておりました。さらに、二月十五日はウロビリノーゲン三プラス、急性肝炎などが疑われる数値です。
ところが、報告書を作成した調査チームでは、これらの点について有識者から問題点は指摘されていないということでありました。調査で重大な点が見過ごされている以上、これは調査そのものをやり直す必要があるんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/268
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269・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) この調査報告書は、可能な限り客観的な資料に基づきまして、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がなされたものでございまして、本件については十分に調査が尽くされているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/269
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270・山添拓
○山添拓君 尿検査で表れている数値について重大な点が見過ごされていたという認識もお持ちでないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/270
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271・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) その点につきましての報告書において特段の指摘は、問題点としての指摘はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/271
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272・山添拓
○山添拓君 いや、調査チームではなく入管庁として、今こうして国会審議の中で指摘をされて、その上で問題意識はお持ちでないのかと伺っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/272
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273・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 調査報告書におきましても、御指摘の二度の尿検査を含めた経緯を前提としまして、二月十五日の尿検査結果を踏まえた内科的な追加の検査等がなされることが望ましかったものの、それが行われなかった原因は名古屋局の医療体制の制約にあったと考えられ、医療体制の抜本的な強化に取り組む必要があるとしているところでございまして、この指摘については私どもとしても受け止めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/273
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274・山添拓
○山添拓君 死因が不明だという報告書なんですよね。そして、それに関わるような新たな問題点について様々な指摘がされてきているわけですから、改めて調査を行うべきだと思うんです。医療体制の問題じゃないですよ。詐病を疑っていたという疑念さえあるわけです。私がこの間求めてきました書類、資料の開示については改めて求めたいと思います。
今日は難民認定の問題について伺います。
大臣は、ウクライナからの避難者受入れ対策に関わって、難民条約上の理由以外により迫害を受けるおそれのある方を適切に保護するため、難民に準じて保護する仕組みの検討を進めていると述べてきております。昨年廃案となった入管法改定案に言ういわゆる補完的保護者の認定制度を念頭に置いた言葉だと、発言だと、この委員会でも議論がされてきました。
入管庁に伺いますが、迫害を受けるおそれとはどのような場合を言うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/274
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275・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 迫害を受けるおそれの有無につきましては、申請者本人の供述や提出資料、出身国等に係る客観的情報等に基づき、個々の具体的な事情を考慮して申請者ごとに判断しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/275
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276・山添拓
○山添拓君 今、個々の具体的な事情に基づきと答弁がありましたが、従来、入管庁はこの迫害を受けるおそれを極めて狭く解釈をしてきました。民主化運動のリーダーのように、迫害主体から個別に把握され標的とされているようなことを求めて、その立証を申請者に求めてきました。
昨年廃案になった入管法案の二条三の二、ここに言う迫害を受けるおそれというのも同じような定義の下に認定するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/276
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277・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 迫害のおそれにつきましては、条約難民の定義と同じというふうに原案ではしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/277
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278・山添拓
○山添拓君 同じなんですね。ですから、ウクライナの例でいいますと、ロシア軍の空爆から逃れてきたというだけでは駄目なんですよね。ロシア軍から具体的にターゲットとされていることが必要とされることになるでしょう。
補完的保護者を法律に書き込んだとしても、迫害を受けるおそれの認定の考え方を改めなければ保護は進まないんじゃないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/278
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279・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほども申し上げました、さきの通常国会で提出をいたしました改正法案におけます補完的保護対象者でございますけれども、これについては、例えば内戦や戦争で戦闘に巻き込まれて命を落とすおそれがある者などは難民条約上の理由には必ずしも該当せずに、条約上の難民に該当しない場合があるということを前提といたしまして、その点から、それをよりよく確実に保護するための制度上の、法律上の制度が必要だということでございまして、それで補完的保護対象者というものを考えたというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/279
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280・山添拓
○山添拓君 お考えになったんですけれども、しかし、迫害を受けるおそれの認定の仕方が変わらなければ保護は進まないということを指摘いたしました。
難民認定手続に時間が掛かり過ぎることも重大です。一次審査に掛かる平均処理期間、不服申立ての平均処理期間、それぞれどのぐらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/280
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281・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 令和三年における難民認定申請の一次審査の平均処理期間は約三十二・二月、それから、審査請求、不服申立ての平均処理期間は約二十・九月でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/281
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282・山添拓
○山添拓君 三十二・二月、約二年八か月ですよ。一次審査の標準処理期間は六か月とされているのですが、その五倍です。これは、二〇二〇年は一次審査、約二十五・四か月でした。七か月延びているんですね。補完的保護対象者の認定も同じ難民認定の手続が予定されておりますから、ウクライナの避難者がこの手続を仮に使ったとしてもこれだけの時間が掛かるということなんですね。
私は、四月の当委員会で、ウクライナ避難民は補完的保護者の制度がなくとも難民として保護できる、それがUNHCRのガイドラインに沿う運用だと指摘しました。手続を迅速かつ適切に進めることが求められているのであって、ウクライナ危機に乗じて昨年廃案になった入管法改定案を持ち出すというのは、これは筋違いだと私は思います。
政府は、現在、ウクライナ避難者を特定活動という在留資格で受け入れています。特定活動というのは、告示によって認められているものが五十ぐらいあります。例えば、東京オリンピック関係者の在留資格まで告示によって認められています。
法改正などしなくても、告示によって在留資格を認めていくことは可能ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/282
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283・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のその特定活動との関連で申し上げますと、さきの通常国会で提出した改正法案で考えていたところではございますけれども、裁量により特定活動の在留資格を付与するのではなく、羈束的に定住者の在留資格を付与することができ、より安定的に在留を認めることが可能になるというふうに考えていたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/283
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284・山添拓
○山添拓君 いや、今でも告示によって在留資格を認めるという運用はされているわけですよ。それは法改正でお考えだったことはあるかもしれませんが、今でもかなり柔軟に、対応する必要がある場合には、オリンピック関係者のように在留資格認めるということをやっているわけですね。
もう一点、難民認定について伺います。
札幌高裁は、五月二十日、トルコ国籍のクルド人男性が難民認定を求めた裁判で、入管の難民不認定処分を違法として取り消しました。入管側は上告せず、確定したと報じられております。この判決は、クルド人というだけで難民と認めることはしませんでしたが、この男性がクルド労働者党、PKKを支援した際に暴力を加えられ、その後、警察に暴行され、逮捕され、情報機関と考えられる組織に実家を破壊され、父親が暴力を受けて重傷を負ったことなどなど、事実に基づいて、生命の危険が生じる可能性があることは否定できない、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する、こういう認定をしています。
上告を断念された以上、直ちに難民認定するのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/284
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285・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 個別事案の対応につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として、難民不認定処分の取消しを命じる判決が確定した場合、当該判決の確定をもって当該処分時における外国人の難民該当性については既に公権的に確認されていることを前提として、処分時以後に難民該当性が否定される事情変更がないかどうか検討し、そうでない場合には速やかに難民として認定することといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/285
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286・山添拓
○山添拓君 申請時に戻ってしまうと、申請中の状態に戻ってしまって、直ちに認定するということではないという意味ですか、今おっしゃったのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/286
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287・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 当該判決が確定した場合に、処分時においては難民該当性については公権的に確認されている、それを前提として、それ以後、処分時以降に難民該当性を否定するような事情変更、新たな事情変更がない限りにおいては難民認定をするということとしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/287
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288・山添拓
○山添拓君 そういうことであれば、直ちにその処分時以降の事情について判断をし、かつ公権的に認められた難民該当性、速やかに認めていくべきだと思うんですが、しかし、クルド人でこれまでにも二件、難民不認定が取り消された判決が確定しているのですが、いずれもその後不認定となっています。判決で難民であることがほとんど認められているにもかかわらず、従わないというなら大問題です。
私、先ほどウィシュマさんの問題で、国会から求められても資料を出さないという対応ありました。判決で認められていても、難民認定その後しないという運用もあると、そういう実態が入管行政あるわけですね。
私は、しかも、その今述べたような状態、実態について、政府が予定していた入管法改定案は何ら手を着けるものではないわけです。廃案となった法案をこの秋の臨時国会で提出するなどということが言われておりますが、これ言語道断だと思います。入管難民行政を抜本的に転換するために、野党の五会派はこの国会にも当院に改正法案出しております。その審議を行って、速やかに転換するよう求めまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/288
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289・高良鉄美
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
本日は、外国人技能実習機構について質問いたします。
妊娠、出産等に対する相談体制について伺います。
三月の当委員会において、技能実習生の子供の在留資格について質問させていただきましたが、その後も広島での保護責任者遺棄致死罪、これは広島地裁判決です。それから、熊本での死体遺棄罪、現在上告中です。そういった事件など、刑事事件となっている事案が続いています。
また、外国人支援団体などに伺うと、妊娠したら帰国しないといけないと思っている技能実習生はまだまだ多いとのことです。したがって、技能実習生が妊娠、出産等しても、こうした悲劇とならないよう手厚い対応が必要だと思います。とりわけ、技能実習制度の管理及び技能実習生の保護に当たっている外国人技能実習機構の相談体制が重要になってきます。
まず、現状を明らかにするために、同機構における技能実習生の妊娠、出産等に関する相談件数及び主な相談内容について法務省に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/289
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290・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員からお尋ねがありました外国人技能実習機構における母国語相談における妊娠又は出産に関する相談の件数あるいは相談内容につきましては、当庁で集約を行っていないためお答えすることが困難でございます。
その上で、一般論として、妊娠又は出産に関する相談があった場合には、それらを理由とした解雇等の不利益取扱いは労働関係法令により禁じられており、技能実習生が希望すれば実習を継続できること、それから強制帰国は許されないことなどをお伝えすることといたしております。また、妊娠、出産に関する各種制度の利用に関する相談であれば適切な行政窓口を案内するなど、相談内容に応じた対応を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/290
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291・高良鉄美
○高良鉄美君 ということは、今、妊娠、出産等に関する相談があれば、それはずっと案内をしているということでいいんですか。はい、そういうふうに聞きました。
実は、先ほどの事件の紹介もやりましたけれども、この妊娠、出産の問題は労働問題だけにとどまらず、母体や胎児の保護を始め医療の問題、社会保険の関連など、複数の領域にまたがるものであり、専門性が要求される分野です。したがって、女性相談員の配置や専門性を持った担当官の配置が不可欠であると思います。こうした妊娠、出産等に関する相談体制の充実についてどのように検討されているか、法務省に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/291
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292・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘のとおり、妊娠、出産等に対する相談体制の構築は重要であると認識しております。
そのため、外国人技能実習機構において、技能実習生から妊娠、出産等に関する相談を受けた場合には、相談内容に応じて女性担当者が対応できるよう配慮をいたしております。また、妊娠、出産等に関する相談に適切に対応できるよう、関係法令の習熟に努めるとともに、妊娠、出産等に関連する諸制度等について随時の情報共有を行うなど、担当者の相談スキルの向上を図っているところでございます。
入管庁としましては、制度を共管する厚生労働省や外国人技能実習機構と連携し、技能実習生の妊娠、出産等に対する相談体制の更なる充実に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/292
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293・高良鉄美
○高良鉄美君 今、連携をするということでしたので、幅広い問題に関わってきますので、是非ともそういうふうな体制を取るということを今後も続けていただきたいと思います。それから、やはり女性の相談員の配置ですね、それは十分配慮をして体制も整えていただきたいなと思います。
それから、労働組合に関する相談について伺います。
これ、労働組合に関する相談というのは、実は、技能実習生が受け入れられたところ、あるいは実習実施者のところでいろんな相談があるときに、労働に関して、あるいは今のような場合もあると思いますが、この技能実習生を保護、支援している労働組合に対する外国人技能実習機構の対応に問題のあるケースが報告されています。
北海道では、労働組合活動への介入と受け取られかねないケースがありました。また、東北地方でも、技能実習生の労働組合からの脱退を促すような対応が見られたと伺っています。こうした対応は、外国人技能実習機構における労働組合活動への理解、ひいては労働組合法に対する理解のなさが原因になっていると思われます。
そこで、外国人技能実習機構において労働組合法や労働組合活動に対する研修がどのようになっているか、具体的に御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/293
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294・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 議員御指摘のような、外国人技能実習機構の職員が技能実習生に対して、労働組合からの脱退を促すものと捉えられかねないメールを送信した事案が発生いたしております。
このようなことを踏まえまして、入管庁としましては、厚生労働省とともに、外国人技能実習機構に対しまして、機構職員に対する労働組合法を含めた労働関係法令の周知徹底等を指示したところでございます。それを踏まえて、機構におきましては、職員が相談に適切に対応できるよう、全国の援助担当職員を対象に、労働組合法を含む労働関係法令について、外部講師を招いて研修を実施しているものと承知をいたしております。
入管庁としましては、制度を共管する厚労省とともに、機構に対する指導監督を通じて技能実習制度の適正な運用に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/294
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295・高良鉄美
○高良鉄美君 研修を行うということですけれども、この技能実習機構が行政機構として中間的な、中立的な立場でないといけないということもあるので、労働組合との関係では非常に、どちらに立つとかいうようなこと、労使の関係ですね、難しいところもあるとは思うんですけれども、やはりこれ、外国人技能実習生を含めてそういった制度に対応する機構であるということを考えると、これは中立でもいいんですけれども、無関心であってはいけないと思うんですね。だから、どういう問題があるのかということに常に目を配っていかないといけないと思います。
そういった面で、情報を集めるなり、例えば先ほど一番最初に出産の話をしましたけれども、妊娠、出産の話、こういったことも、どういう問題が起こっているんだということをやっぱり情報を共有していかないといけないと。常に、実習実施者あるいは監理団体の方と常に情報交換をしていないと、ただ単に機構としてあるだけではいけないだろうと思うんですね。そういうことで、情報共有をしていると防げたような、先ほどの裁判の例とかですね、そういったのがあるということで、是非とも連携を取れるような体制というのをしっかり築いていただきたいなと思います。
もう時間、ありますけれども、技能実習制度の見直しについて伺いたいと思います。
これ、見直しというのは前回も少しこの委員会でお話をしましたが、技能実習制度の廃止を訴えるキャラバンというのが今、日本全国回っているところなんですけれども、これは先ほどのウィシュマさんの件と同じで、結局、日本に希望を持って来たと。だから、この問題というのは、有田委員も言われましたけど、日本が問われているんだと、日本の外国人法制がですね。だから、その受入れの問題、あるいは保護の問題というんでしょうかね、この支援の体制ということが非常に重要になってくると思うんです。
そこで、外国人技能実習機構における母国語相談あるいは地方事務所等における相談は、十分とは言えないでしょうけれども、一定の役割を果たしていると私は評価します。
他方、現在、技能実習制度の廃止を訴える声も大きくなっているというのは先ほど御紹介したとおりです。仮に同制度を廃止ないしは変更することを想定した場合、同機構を、言わば外国人技能実習ではなくて外国人労働者機構というふうに、外国人労働者全般に対する権利保護を使命とする組織に拡充することがあってもよいのではないかと思います。
こういった制度見直しの議論の中で、いろんな外国人法制を含めて想定しながら検討していただければと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/295
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296・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 技能実習制度につきましては、もうそれこそ、もう賛否を含め様々な御意見、御指摘があるのはよく承知をいたしております。その中には、今御紹介いただいたような制度自体を廃止せよというものもあるでしょうし、あるいは実習機構の在り方についての御指摘もあるものと思います。
現在、技能実習、あるいは特定技能もそうなんですけれども、見直し規定のちょうどその見直しの時期に当たっているということもありまして、特定技能、技能実習に係る法務大臣勉強会ということで、今、検討を精力的に今進めておるところでございます。
ここでは、やはり大事なことは、外国人のこの権利擁護ということはこれは大事だと、この観点はもう揺るぎないものを持っておりますけれども、この制度全般の在り方について様々な御意見をもう虚心坦懐にお聞きをして、実態にできるだけ迫る中で、その上で、もし改めるところがあるのであれば、そこは勇気を持って誠実に改めるべきだと、そういう姿勢の下に、今精力的に勉強会を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/296
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297・高良鉄美
○高良鉄美君 大臣の今、力強いお言葉もいただきました。
この技能実習制度というのは、基本的に男性で単身で来るんじゃないかということを想定していたようなんですが、もう女性も当然多くなってくるだろうということは想定されていたわけなんですね。だから、その問題で、妊娠、出産の問題が出てきたということもありますので、やはりそういった問題の傾向とかも含めて対応しなきゃいけないだろうと。つまり、単身男性だけではないんだということの実態と、それから、今、この外国人技能実習生を含めて、外国人労働者がいないと日本の労働環境、随分厳しいものになってくるということも含めまして、是非とも今後も今の見直しの件も含めて頑張っていただきたいと思います。
ありがとうございました。時間前ですが、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/297
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298・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
入管に関する、特にウィシュマ・サンダマリさんのような事件を二度と起こさないということで、私は、少し遠回りのようですが、上官命令の抗弁、その組織なりあるいは施設で上官の命令にどう対応しなきゃいけないのかということの質問をさせていただきます。
その前に一言、これは通告していませんので感想だけ述べさせていただきます。
先ほど来、刑法の問題やってきたんですけれども、私たちの社会の目的というのは、いかに犯罪に手を染める国民なり人々を減らすかということが社会の大事な方向だろうと思います。
私がここまで子供時代の言わば家庭の育ち方を問題としておりますのは、日本ではなかなかここまで因果関係取れていないんですけど、アメリカやヨーロッパでは、随分児童心理学、家族心理学で調査研究がなされております。
例えば、これはアメリカの例ですけれども、離婚後、父母一方の単独監護下で育った子供は、そうでない子供に比べ、不登校になる確率が二倍、感情や行動に問題が生じる確率が四倍、結果、そのような子が、若者の自殺者の六三%、服役する若者の八五%、高校中退者の七一%を占めているとのアメリカのデータです。日本では類似の調査はしているんですが、ここまではっきりと因果関係は出しておりません。
先ほど父親との面会交流の図を出しましたけど、あれは、多様なことがあるというのではなくて、因果関係なりあるいは相関関係を出したときに、やはり親との交流がきちんとある方が自己肯定感なりあるいは信頼性が高まるということなので、多様なものがあるから、だからいろいろ考えなきゃいけないと法務大臣のおっしゃることは一見正しそうですが、社会科学あるいはいろいろなサイエンスというのは、そこの関係性を問うて、そして研究がなされているわけです。そのことを是非御理解いただけたらと思います。それで私は単独親権の問題を、本当に子供たちが苦しんでいるんだということを知っていただきたいと思います。今のは意見です。
質問としては、上官命令の抗弁についてということで、ウクライナ侵攻でも、凄惨な戦争犯罪が日々報道されて、非人道的な行為を行った兵士がウクライナの国内法廷で裁かれている様子も報じられています。ロシア軍による国際法を無視したような軍事戦略は厳しく非難されるべきだと思います。前線の兵士による非人道的な行為を止めさせるためにも、国際社会はあらゆる措置を講じなければならないのは当然です。
そういう中で、自己の意思に反して過酷な状況に置かれてしまった善良な兵士の立場についても冷静に考えなければなりません。そこには上官命令の抗弁というテーマが出てきます。上官命令の抗弁は、ニュルンベルク憲章や、あるいは極東国際軍事裁判所憲章、あるいは旧ユーゴ国際刑事裁判所規程などで議論されております。
今日、資料一として幾つか事例を出させていただいておりますけれども、国際法上、上官命令の抗弁は集団殺人罪や人道に対する罪については認められないと解釈でき、また、平成十六年の五月二十八日の参議院のイラク人道復興支援活動武力攻撃事態対処特別委員会での林政府参考人の御答弁でも、上官命令の抗弁の効力には相当制限があるのが国際的な流れだと答弁されておられます。
しかし、例えば、命令に従わなければ生命の危険にさらされていた、非人道的な命令を撤回させたために抵抗したというような事実が証明された場合であっても、そのような事情を考慮し、上官の命令に従って集団殺人罪やあるいは人道に対する罪の実行に関与してしまった兵士の刑罰を軽くすることは認められないと解釈することは、正義に反することは一切ないとお考えになりますでしょうか。ちょっと、大変持って回った言い方で申し訳ないんですが、法務大臣の御意見を聞かせていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/298
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299・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 大変恐縮でございますが、国際法の解釈や適用に関わる事柄でございますから、お尋ねに法務大臣としてお答えをすることは差し控えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/299
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300・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 今日、外務省さんにお願いしたらよかったんですけれども、そういう状況ではなかったので法務大臣にお伺いしました。
ただ一方で、今回、ウィシュマさんの問題、そしてビデオを見せていただいておりまして、あそこの入管施設で勤務する職員さん、先日も川越の少年刑務所を見せていただきましたけれども、刑事施設などで、戦場のような過酷な状況には置かれていませんが、上司が非人道的な指示や振る舞いを行った場合には部下である職員は、収容者の個人の尊厳を守り普遍的人権を尊重することが求められ、事後に問題が明るみになって責任追及がなされた際に、上官命令の抗弁によって責任が阻却される余地はないと考えます。
つまり、ウィシュマさんのあの大変状態悪い中であそこにおられた勤務する職員が何もできなかったのかということも含めて、法務大臣の御認識をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/300
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301・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) ただいま御質問をいただきましたが、委員からは、その先立って引かれました、引用されました上官命令の抗弁の考え方を引いた上でただいまの御質問をいただいたというふうに受け止めさせていただいた上でお答えをするのですが、そもそも入管収容施設におきまして職員が上司から何か非人道的な指示を受けるということは、これはおよそ考え難いことでありまして、また同時に、その部下がこれに従うということも想定し難いことだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/301
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302・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 となると、ウィシュマさんが置かれたあの状態というのを、本当にもう命からがら訴えていらっしゃるわけですよね。そこのことを入管職員は何も感じず、手を出せずということになってしまうんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/302
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303・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えします。
あの名古屋事案を受けましてこの調査報告書というものがございます。その中では、この医療体制の体制整備に欠けている点でありますとか、その運用において不十分であることですとか、あるいは職員の意識の問題ですね、意識が不十分であるというようなことを指摘を受けております。
そういう指摘を受けた入管においては、これを重く受け止めておりまして、外部の方の御意見も踏まえた上で、伺いながら、使命と心得というものを策定をいたしております。こういう職員自身が自ら意識を高めると、改めるべきは改めるというような意識改革を進めていくこと、こういうことが非常に重要だというふうに思っております。
あの名古屋事案という決してあってはならないこの出来事を踏まえて、強烈な反省の下に、やはり、改める、あるべき姿に近づけていくという不断の努力が必要だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/303
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304・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 十二項目の改善項目、着手していただいているということですけれども、ここは本当に命に関わる問題ですので、是非一日も早く最善の努力をしていただけたらと思います。
警察庁さんに質問をお出ししていたんですが、ちょっと今のような流れですと不適切ですので、飛ばさせていただきます。
実は、次に資料二として、ウィシュマさんが仮放免を求めていらしたということですが、この仮放免の許可及び不許可についての決裁プロセスについて資料二を見ていただけたら有り難いんですが、この審査は、審判部門担当者から主任審査官まで出入国管理当局内部で完結しております。
そこで、仮放免の許可及び不許可についての決裁プロセスの中に、出入国管理当局から中立の立場にある司法府や、あるいは出入国管理当局から独立した行政機関による審査を導入することを検討するべきではないかと考えますが、法務大臣の御見解、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/304
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305・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
入管法上、仮放免の請求があったときは、収容を執行する入国警備官ではなく、別の官職であります主任審査官等において審査をすることとされております。
実際の運用に当たりましては、個別の事案ごとに様々な事情を総合的に考慮して仮放免の許否を適切に判断をしておりますが、その判断の適正さを確保するために、入管庁では仮放免取扱要領等の各種運用に係る指針を定めておりまして、統一的な運用を図っているところです。また、主任審査官等の仮放免に関する処分に不服があれば、行政訴訟を提起して、事後的に司法審査を受けることも可能であります。
このように、現行法下でも仮放免の判断については適正性を確保する仕組みが十分に設けられており、司法府あるいは入管庁から独立した行政機関による審査の導入は必要ないと考えてきたところでございます。
現在、法務省では、長期収容問題及びその根本的な原因である送還忌避問題等の現行入管法下の課題を一体的に解決するための法整備を検討しておりますけれども、いずれにしても、適正な運用が図られるべく努力をしてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/305
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306・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 外部からの中立の立場の判断は不要だという御答弁だと思いますけれども、やはり組織というのは内部論理の中で動きがちなんですね。ですから、それが今回のウィシュマさんの悲劇につながっているわけですから、ここのところはより中立そして第三者性を持った方々が意思決定に関わっていただくこと、これは大変大事な方向だろうと思います。今日はここで答弁はもう求めませんが、御検討いただけたらと思います。
次なんですが、仮に仮放免が適用対象となったとしても、資料を出させていただきましたけれども、本当に社会的に生活ができないんですね。そこのところを、事実を私たちは押さえる必要があると思います。
仮放免者が利用することができる社会保障制度はかなり限られております。仮に人道上の観点などから仮放免が許可されたとしても、幸運にも支援してくださる方が見付からなければ、たとえ短期間であっても日本で人間としての尊厳を保ちながら生活できる状況にはないのではないかと。ウィシュマさんのような不幸な出来事を繰り返さないためには、仮放免された方々の状況について実態を把握し、そして適切な対応を行うことが重要だと思います。
資料三に、在留資格のない方はこういう状態で、生活保護も健康保険も本当に何もないと。先ほど来高良議員が技能実習生のことを質問しておられますけれども、かなり同じような状態ではないでしょうか。法務大臣の御認識をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/306
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307・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 時間ですので、お答えは簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/307
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308・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 法令に従い手続を進めた結果、退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することが原則であり、仮放免中の外国人については、退去強制手続中という立場に鑑み、基本的に就労を認めておりませんで、また、入管行政の一環として、国費による支援を行うことも困難だというふうに考えております。
もっとも、生活や健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援というのは必要であるということはもう当然のことでありますので、仮放免中の方から連絡や相談があった場合に個別に対応をしてきているところでございます。
いずれにしても、仮放免の在り方につきましては、現行法下で生じております送還忌避、長期収容問題と一体的に検討することが不可欠であると思っておりまして、そういう全体的な姿に対しても目配り、気配りをしながらその在り方というものを考えていかなければならないし、より良い行政にするためには、その視点を忘れずに着実に不断の努力をするということが肝腎だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/308
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309・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 時間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/309
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310・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 お時間ですので、ありがとうございました。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/310
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311・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後五時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01720220610/311
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