1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年三月四日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第六号
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令和四年三月四日
午前十時 本会議
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第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/0
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001・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
日程第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。鈴木俊一財務大臣。
〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/1
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002・鈴木俊一
○国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、成長と分配の好循環の実現に向けた積極的な賃上げ等の促進、カーボンニュートラルの実現等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げ等を促す観点からの賃上げに係る税制措置の拡充等及びオープンイノベーション促進税制の拡充等を行うこととしております。
第二に、カーボンニュートラルを実現する等の観点から、住宅ローン控除制度の見直しを行うこととしております。
このほか、住宅用家屋の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。
以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/2
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003・山東昭子
○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。古賀之士さん。
〔古賀之士君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/3
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004・古賀之士
○古賀之士君 立憲民主・社民の古賀之士です。
ただいま議題となりました所得税法等改正案について、会派を代表して質問いたします。
所得税法の前に、ウクライナ情勢です。
総理の著書「岸田ビジョン」の中で、外交・安全保障の分野では、私以上に経験豊かな政治家は余り見当たらないと自負している総理に伺います。
ロシアの行動は言語道断であり、決して許されません。そこでまず、今回のロシアの行動は侵略に当たるかどうかについて、岸田総理の御見解を、理由とともに改めてお示しください。その際、侵略の定義はないとした過去の政府答弁との整合性についても御留意いただければ幸いです。
なお、中国は、ロシアの行為を侵略と認めず、制裁にも反対しています。それどころか、中国独自の銀行決済網をロシアに広げて、金融制裁の効果を軽減させる可能性すらあると指摘されています。中国に対しては、国際協調の列に加わるよう日本政府からも強く呼びかける必要があると思われますが、この点に関する岸田総理の御意見をお聞かせください。
以後は、所得税法について質問いたします。
第二次世界大戦中のアメリカ軍に、帰還した爆撃機という有名な話があります。爆撃機の損害を抑えるため、当初は、作戦から戻ってきた機体の被弾箇所を調べて、その場所の装甲を厚くしようとしました。ところが、統計学者はそれに異を唱え、弾が当たっていないところを強化すべきと提案しました。重要なのは撃墜された機体の方であり、戻ってきた機体のダメージがない場所こそ、被弾すれば墜落する原因となる要因となるので改良が必要だというのです。
所得税法と何の関係があるのかといぶかしく思う方もいらっしゃるでしょうが、これは賃上げ促進税制の話につながります。
政府は、法人税の控除によって賃上げ余力が生まれた実績があり、この制度を更に強化したいと考えているようです。しかし、これは帰還した爆撃機の話と同じであり、元々賃上げ余力がある企業が更に法人税の控除を受けているのが現状ではないでしょうか。
今回の賃上げ促進税制に関しては、企業間やそこに勤める人たちの格差を更に拡大させるのではないかとの疑問が浮かびます。岸田総理の御見解をお聞かせください。
さて、賃金に関して、賃上げに関しては、一義的にはそれぞれの企業が決めるべきと考えます。経済同友会の櫻田代表幹事も、官製によって新しい資本主義が出てくるものではない、賃上げは企業の自主的な判断に委ねられるべきと述べています。ただ、同時に、各経営者が株主など利害関係者に責任を持って説明できるものであるべきとも語りました。この点、例えば、日本銀行とGPIFだけでも、合わせるとおよそ百兆円規模の巨大な株主となっていることは非常に重要です。
国家予算一年分の株主のその議決権はどうでしょうか。日本銀行の議決権行使の基準やGPIFの議決権行使原則を見ても、賃金に関する事項は見当たりません。つまり、公的セクターが保有する株式について、企業経営への牽制機能が損なわれているのではないかという疑問を元々私は持っておりました。
岸田総理は、文芸春秋に寄稿した論文の中で、人的資本を大切にしない経営では、長期的に企業価値を最大化することが困難となり、かえって長期的に株主に還元を行うことが困難となると述べています。
ならば今こそ、人的資本に関する考え方、とりわけ賃金の在り方について各企業が明示するよう、公的セクターが持つ株式の議決権行使の基準、スタンダードを定めるべきと考えます。これにより、公的セクターとしての株主責任を果たし、賃上げに関する企業経営者の説明責任を求めることができるからです。
以上の点について、総理大臣の見解をお伺いいたします。
この公的な株主の議決権行使の基準を定めていく方法を、まあ古賀ビジョンとでも呼んでいただければ幸いです。国民の、あなたの賃金を上げる古賀ビジョンです。
次に、金融所得課税についてです。
いわゆる一億円の壁は、突き詰めれば金融所得が分離課税となっていることに尽きるでしょう。
総理にお伺いします。金融所得はなぜ分離課税なのでしょうか。その意義と目的について端的にお答え願います。
この問題を国会で質問すると、総理は、与党税制調査会で議論していくと答弁されます。しかし、考えてみると、やや違和感が残ります。政党の長である自民党総裁ではなく行政府の長である総理大臣に質問しているのに、なぜ議論の場を、政府の機関である政府税制調査会でなく党の機関である与党税制調査会と答弁されるのでしょうか。
政府税調と与党税調には、透明性や説明責任に大きな違いがあります。政府税調は、議事録や会議資料、記者会見のやり取りなどが公表されており、各委員がどのような意見を持ち、どのような議論を経て、どのような結論に至ったかを知ることができます。しかし、総理のおっしゃる与党税調では、最終形の報告書が明らかになるだけで、議論の中身はブラックボックスです。透明性と説明責任は、全くと言っていいほど果たしていません。
そこで、政府税調と与党税調とは、その役割にどのような違いがあるのか、そして金融所得課税について、政府税調ではなく与党税調で議論していくのか、総理大臣としての御説明をお願いいたします。なお、その際、与党税調における与党とはどのような枠組みを考えているのか、自民党と公明党以外の政党を加えることが念頭にあるのかも併せてお示し願います。
分離課税が行われているのは金融所得だけではありません。土地、建物の譲渡所得も分離課税となっていることは忘れてはならない点でしょう。金融所得課税の強化を安易に行えば、そこから逃れた資金が不動産に流れ込み、バブルのような価格形成のゆがみをもたらすのではないかと危惧しております。その心配は既に現実となっています。
不動産価格の上昇は、特にマンションにおいて既に顕著に見ることができます。国土交通省の発表する不動産価格指数によれば、全国における去年十一月のマンション価格は、二〇一〇年を一〇〇とすると、一七〇・六となっています。しかも、一昨年、おととしの数値は一五五・五です。一年で一五ポイント強も上がったことになります。それは東京だけだろうという声も聞こえてきそうですが、実は東京都の数字は一六九・二と、全国平均を僅かですが下回っています。これに対して、北海道が二四二・六、東北は二二九・三、九州・沖縄も二一一・六など、かつての桂三枝さん、今の桂文枝師匠のように、椅子から転げ落ちるほどの数字が各地に並んでおります。しかも、新婚さんいらっしゃいと言われても、価格が高過ぎて、とてもマイホームの夢を実現できません。
こうした異常な状況を見て喜ぶのは、もしかすると物価上昇を悲願とする日銀の黒田総裁ぐらいではないでしょうか。いや、これは笑い話ではありません。このマンション価格の暴騰は、明らかに二〇一三年前半から始まっているからです。すなわち、アベノミクス、クロダノミクスでは物価を上げることができなかった代わりに、マンション価格が上がりに上がってしまったのです。
議場の皆様、これらの数字を見てどのようにお考えでしょうか。正社員の共働きであるいわゆるパワーカップルのみがマンションを購入することができる、買うのを諦めて賃貸マンションに住む選択をしても、家賃の大幅な上昇で生活を圧迫してしまう、これが都市に住む方々の今の状況です。これでも、これでは個人消費が伸びるはずもありません。子供さんたちを産み育てようというカップルもおのずと減ってまいります。仮に今後において金利の上昇があれば、既にその兆候は見られておりますが、マンション、一戸建てを問わず、住宅ローン返済額の急激な増加によって、家計が破綻するおそれもあります。
そこで、マンション価格をここまで上昇させた原因と対策について国土交通大臣の見解をお聞かせ願います。
マンション価格の上昇は、金融政策と大きく関わっております。この点、日本銀行の総裁の任期は来年までとなっていることも重要です。「岸田ビジョン」では、今後、日本の金融政策はどの方向に向かうべきでしょうかという問いに対し、誰が日銀総裁を務めても難しい局面ですとしか書かれておらず、これが新しい資本主義の答えなのかと、正直がっかりいたしました。
そこで、やや気が早いですが、岸田総理の考える日本銀行総裁に期待する金融政策及び日本銀行総裁に求める資質について、黒田総裁以降も念頭に置きながら、ここでお示しください。
さて、令和四年度の税制改正において注目すべきは、現段階では余り目立たないものの、将来的に大きな議論を呼ぶ可能性がある政策が盛り込まれていることでしょう。それは、財産債務調書制度の見直しです。
今までは、所得二千万円を超え、かつ財産の合計が三億円以上という要件が課せられていたのに対して、財産の合計が十億円以上の者は全て対象となります。この制度、国税庁による現行のQアンドAを改めて見ると結構細かく書かれており、土地、建物、預貯金や有価証券はもとより、リゾートの会員権や満期返戻金付生命保険、そして指輪やネックレスに至るまで、ほとんど網羅的に記載が必要となっています。
先ほど将来的に大きく議論を呼ぶ可能性があると述べたのは、これまでの課税の前提であった保有資産が生み出す所得、すなわちフローに加えて、保有資産そのもの、ストックに課税を行うことができる条件が整いつつあるのではないかと考えるためです。もちろん、技術的に乗り越えなければならない課題は山のようにあるかと思われますが、格差の拡大が見逃せないほどになっていることから、今後の大きな検討課題であることは間違いありません。
そこで、この点に関して岸田総理の御見解を述べていただければ幸いです。
なお、税の在り方は、私たち国会議員が決定いたします。また、各種の通達などは、財務省主税局や国税庁本庁で作成されるでしょう。しかし、それだけでは税収にはつながりません。税を支えているのは、最前線で納税者に向かい合っている一人一人の国税職員の努力です。あらゆる政策の基礎となる税収を確保するため、国税職員の処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備が重要となってきていますし、ここ数年、定数は少し増えていますが、この点に関する総理の御見解をお示しください。
質問の最後に、再びウクライナについてです。
今この瞬間もウクライナの人々は理不尽な暴力にさらされ、明日が見えない中で懸命に生きています。圧倒的な力の差にもかかわらず、祖国のために命懸けで戦っている兵士たちもいます。総理は「岸田ビジョン」で、宏池会の伝統を、言うべきことは言い、正すべきは正すと紹介しています。ならば、今その伝統にのっとり、ロシアによる侵略への非難とウクライナに対する連帯をこの参議院本会議場でいま一度表明していただきますよう岸田総理に強くお願いを申し上げまして、質問を終わります。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/4
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005・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 古賀之士議員の御質問にお答えいたします。
今回のロシアの行動が侵略に当たるかについて御質問がありました。
これまで政府が答弁しているとおり、侵略の定義については国際場裏において様々な議論が行われてきており、その内容が十分明確になっているわけではありませんが、一例として申し上げれば、一九七四年に国連総会において侵略の定義に関連する決議が採択されたと承知をしています。そして、二月二十五日に発出されたG7のウクライナ情勢に関する首脳声明でも軍事的侵略とするなど、G7各国を始め多くの国も今般のロシアの行動を侵略としています。
こうしたことに照らせば、今般のロシアの行動は、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反であって、侵略に当たると考えています。
今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会が結束して毅然と対応することが重要です。そして、中国に対しても、関係国と連携し、責任ある行動を呼びかけてまいります。
賃上げ税制についてお尋ねがありました。
今般、民間企業の賃上げを支援するための環境整備として、より積極的な賃上げを促す観点から、賃上げ税制について、税額控除率を大胆に引き上げるなど、抜本的に拡充をいたします。
あわせて、赤字企業など賃上げ余力のない企業も賃上げを促すべく、事業再構築補助金など各種企業向け補助金における賃上げを行う企業への優先的な取扱い、年間四兆円を超える公共事業やビルメンテナンスなどの委託事業、ITなどの公共調達における賃上げに積極的な企業の優遇などの各種施策によって、生産性向上に取り組み、賃上げにつなげていく企業を支援してまいります。
こうした取組を通じて、格差を拡大させることなく賃上げを実現してまいりたいと考えます。
公的機関が保有する株式の議決権行使についてお尋ねがありました。
日本銀行やGPIFなどの公的機関が保有する株式については、株式を保有する目的を踏まえつつ、それぞれの機関が議決権行使の方針を定めており、これに沿ってそれぞれの機関において適切に議決権行使されているものと承知をしています。
個別の投資先企業に対して議決権行使を含む運用の実務を担っているのは信託銀行などの機関投資家であり、こうした運用機関が議決権行使の方針に基づいて適切に受託者責任を果たすことで、投資先企業のガバナンスの実効性確保や企業価値の向上に向けた取組を行うことを期待しています。
金融所得課税についてお尋ねがありました。
我が国の所得税制は、総合課税を基本として構築されていますが、金融所得課税については、税制の中立性、簡素性、そして適正執行の確保などの観点から分離課税が導入されてきたと承知をしています。
また、現在は、基本的に、政府税制調査会においては、政府の諮問機関として、理論的、専門的な観点から中長期的なあるべき税制について議論を行う一方、毎年度の具体的な税制改正の内容については、与党の税制調査会において議論を行った上で、最終的に政府として決定することとしております。
なお、これまで与党と申し上げてきたのは、自由民主党及び公明党の税制調査会における議論を指して申し上げてきたところであります。
金融政策に対する考え方と、日銀総裁に求められる資質についてお尋ねがありました。
岸田内閣においては、昨年、鈴木大臣、山際大臣、黒田総裁の三者の間で、平成二十五年の政府、日銀の共同声明について再確認が行われ、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向け、今後とも緊密に連携していく、連携して取り組んでいくこととしております。この共同声明の考え方に沿って、日銀には、引き続き、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、二%の物価安定目標の実現に向けて努力されることを期待しております。
日銀総裁にはこうした考え方に理解のある方が望ましいと考えておりますが、黒田総裁の任期は令和五年四月八日までとなっており、その後任人事については、その時点で日銀総裁に最もふさわしいと判断する方を任命することが基本であると考えております。
資本課税、資本への課税についてお尋ねがありました。
今般の財産債務調書制度の見直しについては、提出義務者の事務負担の軽減や適正な課税の確保の観点から行うこととしているものです。
資産への課税については、再分配機能の回復を図る観点から、これまで相続税の最高税率の引上げなどの改正を行ってきたところですが、ストックに対する課税の在り方についても、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続きよく考えてまいります。
国税職員の処遇改善についてお尋ねがありました。
税務行政は、国際化やICT化により複雑化するとともに、申告件数も増加している中で、引き続き適正、公平な課税を実現していくことが重要な課題であると考えています。
こうした税務の複雑性、困難性を踏まえ、引き続き、国税庁において、国税職員の処遇改善を図るとともに、必要な機構、定員や職場環境の整備に努めてまいります。
そして、ロシアにおけるウクライナ侵略についてお尋ねがありました。
ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反の暴挙であり、改めて厳しく非難をいたします。
今回のような力による一方的な現状変更を決して許すことはできません。国際秩序の根幹であるこの原則を守り抜くことは、東アジアの安全保障環境が急速に厳しさを増す中、我が国の今後の外交・安全保障の観点からも極めて重要です。我が国は、国際社会と結束して毅然と行動してまいります。
我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共にあります。困難に直面するウクライナの皆さんを支えるため、一億ドルの緊急人道支援を行うとともに、ウクライナから第三国に避難された方々の我が国への受入れも進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/5
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006・斉藤鉄夫
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 古賀議員から、マンション価格の上昇についてお尋ねがございました。
近年、マンション価格が上昇傾向にあることは認識しております。この背景には、世界的な建設資材の値上がり、技能者の高齢化や人手不足による労務費等の上昇による建設コストの高騰など、様々な要因があるものと承知しております。こうした状況も踏まえ、住宅ローン減税や新築住宅に係る固定資産税の減額措置、住宅金融支援機構による長期固定型のローン等により、その取得に係る負担の軽減を図っているところでございます。
引き続き、人々が安心して住宅を確保できる環境整備に取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/6
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007・山東昭子
○議長(山東昭子君) 宮崎勝さん。
〔宮崎勝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/7
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008・宮崎勝
○宮崎勝君 公明党の宮崎勝です。
私は、自民、公明を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
冒頭、ロシアによるウクライナ侵略について、岸田総理は、国際社会と結束してロシアの行動を厳しく非難するとともに、強力な制裁措置への参加と、ウクライナに対する人道支援をしっかり行っていく意思を明確に表明されました。さらに、核による威嚇を続けるプーチン大統領に対して、唯一の戦争被爆国であり、被爆地広島出身の総理として厳しく非難されております。与党として、こうした岸田総理の姿勢を支持し、しっかりお支えしていくことを申し上げ、質問に入ります。
新型コロナウイルス感染症については、オミクロン株が全国で猛威を振るっており、依然として予断を許さない状況が続いています。我が国で初めて感染の確認がなされたのが令和二年一月。それ以来、二年以上が経過する中で、経済社会の様々な局面で格差が拡大し、これまで余り認識されてこなかったひずみが顕在化しています。政府には、国民に寄り添った丁寧な対応が求められており、税制においても、困っている方々に手を差し伸べる施策を講じていかなければなりません。
令和四年度税制改正では、緊急小口資金等の債務免除益に対する所得税の非課税措置などが導入されますが、こうした支援策が困っている方々にきちんと届くようにすることが重要です。本法律案における困窮者支援のための税制上の措置と法案が成立した後の周知徹底などについて、鈴木財務大臣の御説明をお願いいたします。
いわゆる賃上げ促進税制について伺います。
本法律案では、現行制度を抜本的に見直し、継続雇用者の給与等支給額及び教育訓練費を増加させた企業に対し、給与等支給額の増加額の最大三〇%を控除する措置を設けます。その際、従業員や取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、資本金十億円以上かつ常時使用する従業員数千人以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを要件にしています。これにより、大企業と中小企業との取引適正化を図ることなどを通じて、中小企業の持続的な賃上げにつながるものと期待されます。
このマルチステークホルダーに配慮した経営宣言を公表する企業をどこまで増やせるか、また、宣言が適正に行われているかというフォローアップが重要だと考えます。マルチステークホルダー配慮宣言の拡大とフォローアップについて、岸田総理の御認識を伺います。
コロナ禍においても法人税収が伸びていますが、企業の業績はまだら模様であり、業績が改善している企業と苦境に立たされている企業との間で収益の格差が拡大しているとも言えるのではないでしょうか。収益の格差は賃上げを行う体力の格差にもつながりますが、政府としてこのような状況にどう対処していこうと考えているのでしょうか。
また、賃上げ促進税制は、支払うべき法人税が発生しない赤字企業には何ら直接的な恩恵はない制度です。しかし、我が国企業の約六割が赤字企業であり、赤字企業においても積極的な賃上げが行われなければ、全体として成長と分配の好循環を実現することは難しくなります。
そこで、赤字企業が黒字企業へと転換できるよう企業の成長を促し、収益を上げられるような施策を強力に推進していくことや、仮に赤字であっても企業に賃上げのインセンティブが働くような施策を併せて講じていく必要があると考えます。企業間の格差への対応、赤字企業の賃上げを促す具体的な施策について、総理の御見解を伺います。
次に、住宅ローン減税について伺います。
本法律案では、住宅ローン控除の適用期限を四年延長するとともに、控除率を一%から〇・七%に引き下げる、新築住宅の控除期間を原則十年間から原則十三年間とする、住宅の省エネ性能に応じて借入限度額に差を設ける、適用対象者の所得上限を三千万円から二千万円に引き下げるなどの見直しを行います。
控除率の引下げと同時に控除期間の延長を行うことで中間所得層に恩恵が及びやすくなるとされていますが、斉藤国土交通大臣に具体的な試算を示し御説明をお願いします。
さらに、本法律案では、住宅ローン控除について、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえた見直しを行うこととしております。省エネ性能等の高い住宅の取得促進や既存の住宅ストックの有効活用及び優良化を図ることは、住宅分野における脱炭素化を推進する観点から極めて重要な取組であると評価できます。
一方、住宅分野は非常に裾野が広い産業で、一人親方やごく少人数で経営している工務店も数多くあるのが特徴です。住宅ローン控除の適用を受けるために求められる住宅の省エネ性能等が高度になればなるほど、一人親方や小規模工務店が対応できなくなり、取引から排除される結果となることは避けなければなりません。そのような事態となる懸念はないか、国土交通大臣の御見解を伺います。
納税環境の整備を図る一環として、本法律案では、公明党の提案により、登録免許税及び自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度が創設されます。登録免許税及び自動車重量税はオンライン申請の場合に限りインターネットバンキング等による納付が可能とされていましたが、申請者の利便性の更なる向上を図るため、書面申請の場合も含め、クレジットカード等による納付も可能とするものです。この制度を創設する意義や具体的な効果について、財務大臣の御説明をお願いいたします。
コロナ禍で経済が傷んでいるにもかかわらず、直近二年の税収を見ると、令和二年度の決算税収は六十・八兆円、令和三年度の補正後税収は六十三・九兆円で、いずれも過去最高を更新しています。
このように税収が伸びている背景の一つとして、株式譲渡益の増加が指摘されています。そして、株式等の譲渡所得については、いわゆる一億円の壁の存在が指摘されてきました。一億円の壁とは、金融所得の多くが分離課税で一律の税率が適用され、また、高所得者ほど所得に占める株式等譲渡所得の割合が高いことから、一億円を境に合計所得金額が増加するほど税負担率が減少するという逆転現象のことで、税の重要な役割である所得再配分機能が正しく働いていないとして問題視されています。
令和四年度の与党税制改正大綱では、金融所得に対する課税の在り方について検討課題としていますが、政府税制調査会においても、与党での検討に資するよう専門的見地から検討を行い、論点を取りまとめることなどをしてはいかがかと考えますが、この点について岸田総理大臣の御見解を伺い、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/8
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009・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮崎勝議員の御質問にお答えいたします。
賃上げ税制の要件についてお尋ねがありました。
今般、より多くの企業に賃上げ税制を活用いただけるよう、税額控除率を大胆に引き上げるなど、抜本拡充をしております。これにより、新たに適用要件に加えたマルチステークホルダーへの配慮に関する方針の公表もより多くの企業に行っていただけるものと考えております。
また、こうした方針の公表を適正に行っていただくことも重要です。方針の内容を広く公表させることにより、企業がそれに反する行動を取ってはならないという社会的責任も生じると考えておりますが、こうした内容を、どのような形で公表を求めるのかなどのこの制度設計の詳細について、引き続き検討してまいりたいと考えます。
企業間の収益格差への対応や、赤字企業の賃上げを促す施策についてお尋ねがありました。
新型コロナの影響が長引く中で、経営環境が厳しい企業も含めて、稼ぐ力を強化することで分配の原資を生み出すことが不可欠です。
このため、賃上げ税制に加えて、事業再構築補助金による新規事業創出や、ものづくり補助金による新商品開発などを通じた生産性向上のための支援、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などの取組を通じた収益向上を後押ししてまいります。
さらに、赤字企業にも賃上げを促すべく、事業再構築補助金など各種企業向け補助金における賃上げを行う企業への優先的な取扱い、年間四兆円を超える公共事業やビルメンテナンスなどの委託事業、ITなどの公共調達における賃上げに積極的な企業の優遇などの各種施策によって、赤字であっても生産性向上に取り組み、賃上げにつなげていく企業を支援してまいります。
金融所得課税についてお尋ねがありました。
政府税制調査会におきましても、かねてから金融所得課税の議論を行ってきており、令和元年の中期答申において、勤労所得との間での負担の公平感や所得再分配に配慮する観点から、諸外国の税制も参考にしつつ、総合的に検討していくべきであるとされています。
こうした考え方は、令和四年度の与党税制改正大綱の記載と整合的であると考えており、この政府税調、政府税制調査会の答申や、今後の与党税制調査会の議論に基づき、政府としても適切に対応してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/9
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010・鈴木俊一
○国務大臣(鈴木俊一君) 宮崎勝議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、困窮者支援のための税制上の措置についてお尋ねがありました。
令和四年度の税制改正においては、新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少等により生活に困窮される方を対象として行われた緊急小口資金の特例貸付事業等による金銭の貸付けに係る債務の免除により受ける経済的な利益の価額につきましては、所得税を課さないこととするなど、困窮者支援のための税制上の措置を講じることとしております。
法案が成立した後の周知徹底につきましては、財務省としても税制改正の内容を広報するとともに、関係省庁において制度の利用者等に対して分かりやすく説明するなどにより適切に対応していくと承知をいたしております。
最後に、キャッシュレス納付制度についてお尋ねがありました。
登録免許税や自動車重量税は、これまでオンライン申請の場合に限ってインターネットバンキング等による納付が可能とされていましたが、本法案では、書面申請の場合も含め、印紙によることなくクレジットカード等によりキャッシュレスでの納付も可能とすることとしております。これにより、申請者利便の更なる向上やデジタルガバメントの実現が図られるものと考えております。(拍手)
〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/10
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011・斉藤鉄夫
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 宮崎議員から、住宅ローン控除の見直しについてお尋ねがございました。
今般の税制改正における住宅ローン控除の見直しにおいては、控除率の見直し、一%から〇・七%へを行う一方で、新築住宅等について、控除期間を十年から十三年に延長する措置を講ずることとしております。この結果、従来の制度では満額控除できていなかった中所得者層以下の納税者にとっては、控除期間が延長されることにより総控除額が増えるといった支援の充実につながるものと考えています。
具体的には、年収六百万円の納税者について、当該年収層の平均借入額である四千二百三十万円、返済期間を三十五年と仮定して見直し前後の総控除額を試算した結果、総控除額が約十五万円増えるという試算になっております。
次に、住宅ローン控除の見直しが一人親方や小規模工務店に与える影響についてお尋ねがございました。
令和四年度の税制改正における住宅ローン控除の見直しについては、省エネ性能等の優れた住宅に対して控除限度額を優遇する仕組みとなっております。
中小工務店が主に供給する戸建て住宅については、新築全体の約九割が省エネ基準に適合しており、控除限度額の優遇を受けられる省エネ基準適合住宅が一般化していると思います。一方、中小工務店の中には省エネ技術に未習熟な事業者もいることから、来年度予算案において、省エネ基準適合住宅の供給にしっかりと対応できるよう、体制整備の取組を支援するための予算を計上しております。
さらに、国土交通省では、従来から、地域型住宅グリーン化事業により、地域の中小工務店が行うZEHなどの省エネ性能等に優れた木造住宅の整備を支援しております。
国土交通省としては、引き続き、こうした取組を通じて、中小工務店においても大手事業者と同様に省エネ性能の高い住宅を供給できる環境の整備に努めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/11
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012・山東昭子
○議長(山東昭子君) 大塚耕平さん。
〔大塚耕平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/12
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013・大塚耕平
○大塚耕平君 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。
会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
冒頭、コロナ対策に御尽力いただいている全ての皆様に敬意を表しますとともに、ロシアの軍事侵攻にさらされているウクライナ国民に連帯の意を表します。
そして、ただいまロシア軍が欧州最大級の原発を攻撃し、火災が発生、放射線量が上昇しているとの報道が流れています。ロシアの暴挙を強く非難します。本会議の運営を含め、国会日程等にも適切に対応いただくことを議員各位に希望します。
本題の質問に先立ち、ロシアに対する経済制裁に関して伺います。
SWIFTからのロシア排除の検討が進んでいますが、中国のCIPS経由で決済することも可能です。SWIFT及びCIPS経由の決済の実情、SWIFTとCIPSの構造的な違い、とりわけ資金決済が実際にできるCIPSと電文情報授受のみのSWIFTとの構造的な違い、並びに日本の金融機関の参加行数等について、総理に伺います。
各国がロシアからの資源輸入を止められず、決済にCIPSを利用すると、結果的に中国の影響力及び人民元の決済通貨に占める比率を高めることになります。こうした展開に関する総理の認識を伺うとともに、当面のCIPS利用に関して日本の金融機関にどのような指導、要請を行うのか、金融担当大臣に伺います。
また、仮想通貨決済におけるロシアのウエートは高く、仮想通貨決済が経済制裁の抜け穴となる可能性があります。ロシア及び世界の貿易における仮想通貨決済の実情とともに、ロシア独自のSWIFT代替インフラであるSPFSの実情等を金融担当大臣に伺います。
昨年の総選挙で給料が上がる経済の実現を掲げた国民民主党としては、総理が日本の賃金が上がっていないことを認め、日本経済の深刻な構造問題であるという認識を共有したこと、及び賃上げ税制を盛り込んだことは評価したいと思います。しかし、その効果は未知数です。
二月九日の衆議院財務金融委員会において、二〇一三年に創設された賃上げ税制の利用件数、減税額は、過去八年間で延べ七十六万件、減税額二兆円との政府答弁がありました。しかし、昨年九月公表の財務省法人企業統計によれば、付加価値に占める人件費は、コロナ前の二〇一八年の二百九兆円から二〇二〇年には百九十五兆円と、十四兆円も減少しています。コロナ禍の影響とはいえ、人件費は八年前とほぼ同水準に戻っています。
これまでの賃上げ税制に対する評価をどのように考え、不十分な点があったとすれば、それは何か、また、それを是正するために今回どのような工夫をしたのか、及び今回の税制が有効に機能すると考える根拠について、総理の認識を伺います。
今回付加された大企業向けの継続雇用者給与等支給額が前年度比で四%以上の基準における四%という数字は評価しますが、継続の意味を総理に伺います。
全体の給与水準を上げるためには、初任給や新規雇用者の雇用時給与水準を上げることも重要です。今回の税制はその点にどのように機能するのか、また、正規、非正規双方に効果があるのか否か、総理の認識を伺います。
給与等支給額は、基本給に加え賞与等を合算した概念と考えられます。今回の税制が基本給水準を上げることに寄与するか否か、総理の認識を伺います。
一方、中小企業に関する基準は、雇用者給与等支給額が前年度比で二・五%以上となっています。継続という冠は付いていません。大企業には継続を冠し、中小企業には継続を冠しなかった理由、並びに大企業は四%、中小企業は二・五%を基準とした理由を総理に伺います。
この手法では、低賃金の非正規雇用を増やして人件費総額は増加しても、一人当たり賃金は低下したというアベノミクス下の傾向を再現することになりかねません。今回はそうなるのか、ならないのか、また、ならないようにどのような工夫をしているのか、総理の予想と所見を伺います。
また、大企業は四%、中小企業は二・五%という基準では、大企業と中小企業の給与水準格差がますます広がり、若い人たちを中心に中小企業に就職するインセンティブが低下します。中小企業の賃上げ率基準を大企業より高くし、それでもなお中小企業の賃上げインセンティブを低下させない、あるいは賃上げ原資を確保させるような税制改革こそ目指すべき姿ではないでしょうか。総理の認識を伺います。
今国会に提出された租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書を見ると、資本金一億円以下の黒字法人数は百三万五千五百二十五社で、全法人の三八%です。つまり、残る六二%、百六十八万千六十二社の賃上げインセンティブにはなっていません。
黒字法人のうち、この租特を利用したのは九万八千四十三社、黒字法人の僅か九・四%です。資本金一億円以下の中堅・中小企業全体に占める割合は三・六%にすぎません。なぜこれほど利用率が低いのか、総理の認識を伺います。
さらに、今回の賃上げ税制で最も是正が必要な点は、大企業、中小企業とも控除限度額が従来と同水準、すなわち法人税額又は所得税額の二〇%に据え置かれていることです。既存の賃上げ税制を利用している企業は既に上限に達している先が多く、今回の見直しでは更に賃上げを行うインセンティブにはならないケースが多いと聞き及びます。
この点の実情及び控除限度額を据え置いた理由について、総理の認識を伺います。
赤字企業にも賃上げインセンティブを提供できるよう、国民民主党は法人事業税、固定資産税を対象にした法案を参議院に提出済みです。もちろん、地方の歳入に配慮することも付加しての制度設計です。さらに、消費税も対象にしています。
過日、税理士の先生方と議論した際、賃上げ税制の中で一番効果的だと評価されたのは消費税減税です。それは、消費税の納税義務は事業者にあり、消費税を消費者に転嫁するか否かの判断は事業者に委ねられている売上税的な性格が強い上、適用対象企業のカバレッジが一番広くなるからです。
法人税よりも法人事業税、固定資産税、消費税の方が賃上げ税制を利用するインセンティブが高くなる、とりわけ消費税減税が一番効果的という考え方について、総理の認識とその根拠を伺います。
次に、ガソリン価格高騰について伺います。
高騰対策の現在の実施状況、トリガー条項凍結解除を含む更なる対策についての検討進捗状況を総理に伺います。
そもそも、ガソリン税等に上乗せされ続けている当分の間税率及びガソリン税に消費税が課税されているタックス・オン・タックスという不可解な仕組みを解消することが必要です。一九七四年から始まった暫定措置であったはずの上乗せ分二十五・一円が五十年近くたった今も続いている当面の間税率そのものを撤廃すべきです。総理の認識を伺います。
一リットル当たり五十三・八円も上乗せされているガソリン税に更に一〇%の消費税を課税するタックス・オン・タックスをやめるべきです。やめれば直ちに五・三八円のガソリン価格引下げになります。総理の認識を伺います。
速やかに当分の間の暫定措置及びタックス・オン・タックスという不合理な対応をやめることが、自動車保有台数の多い地方の景気対策であるとともに、究極のガソリン価格引下げ対策と考えますが、総理の認識を伺います。
自動車産業が百年に一度の大変革に直面している中で、時代錯誤の自動車税制を放置するようでは、日本経済の屋台骨である自動車関連の産業及び技術が世界の潮流からますます後れを取ります。総理の認識と危機感を伺います。
エコカー減税が終了する二〇二三年度に自動車税制の抜本改革を行うことを提案し、総理の決意を伺うとともに、重ねてウクライナ国民に連帯の意を表し、戦争の早期終結を願って、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/13
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014・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 大塚耕平議員の御質問にお答えいたします。
ロシアに対する経済制裁についてお尋ねがありました。
まず、SWIFTとCIPSのこの違いについてですが、SWIFTは、決済機能を持たず、様々な通貨の送金等に関するメッセージを伝達するサービスとして多国間で利用されるグローバルな金融インフラであるのに対し、CIPSは、人民元のみを対象として、クロスボーダー送金や決済を担うシステムです。
日本におけるSWIFT会員数は百九十機関、CIPSへの直接参加している日本の金融機関は三機関と把握しています。
そして、ロシア制裁の副次的効果についてですが、経済制裁を行うに当たっては、制裁の実効性を最大限に高めつつ、制裁が実施されていない国や機関等へ資金が流れることなどの副次的な効果をどう最小化するかを踏まえることが重要であると考えます。
こうした観点から、今般のSWIFTに係る措置について、日本国内では、SWIFTから排除される金融機関を資産凍結の対象とすることで、CIPSなどSWIFT以外の手段を利用した取引も禁じております。
同時に、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、ロシアに対する国際的な経済制裁の実効性確保に努めてまいります。
賃上げ税制についてお尋ねがありました。
賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを定量的に測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で二%程度の賃上げを達成してきており、税制も一定の寄与をしてきたものと考えております。
今般、民間企業の賃上げを支援するための環境整備として、賃上げ税制について、大企業は継続して雇用される従業員の賃上げを評価するとともに、より積極的な賃上げを促す観点から、税額控除率を大胆に引き上げるなどの工夫をしております。
加えて、公的価格の引上げ、補助金による中小企業の生産性向上のための支援、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などを行っており、こうした施策と相まって、賃上げ税制の効果が発揮されると考えています。あらゆる施策を総動員して、企業が賃上げしようと思える雰囲気を醸成してまいります。
そして、賃上げ税制の要件についてお尋ねがありました。
大企業向けの税制について、一人一人の積極的な賃上げを促す観点から、前年度から継続して雇用される従業員、つまり継続雇用者の賃上げを要件としており、非正規雇用者も対象となり得るため、正規、非正規の双方の賃上げに効果があると考えております。
また、賞与等の一時金を除いた基本給の増加を要件とすべきとの御指摘もありますが、各企業の多様な給与体系を対象にすることや、より多くの企業に賃上げを行っていただける制度設計とするといった観点から、賞与を含めた給与総額を対象として要件を設定しております。
一方で、中小企業向けの税制については、中小企業が雇用の受皿として重要な役割を担っていることを踏まえ、一人一人の賃上げを行う場合に加え、雇用を拡大することによる賃上げであっても税制を活用できるよう、全雇用者を要件とすることとしております。
また、税制の上乗せ要件としての給与総額の増加率は、中小企業向けは二・五%以上の増加としており、これは大企業に比べ賃上げ余力が小さい中小企業の実態なども配慮して、大企業向けの税制の四%よりも低い要件としております。実際に賃上げをする事業者には、できる限り大幅な賃上げに取り組んでいただけるよう、税額控除率を大胆に引き上げ、賃上げのインセンティブを強化しております。
賃上げ税制の中小企業の利用率、そして控除上限額についてお尋ねがありました。
賃上げは、税制だけでなく企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものでありますが、アベノミクスの取組の中で二%程度の賃上げを達成してきており、賃上げ税制も令和二年度で約十万件活用していただくなど、賃上げに寄与してきたと考えております。
その上で、中小企業は既に労働分配率が高い事業者が多く、賃上げを行う黒字企業であっても給与等支給額の増加率を大幅に引き上げることができない場合もあるため、賃上げ税制を利用していない事業者が存在することも認識をしております。
このため、賃上げ税制に加えて、補助金による中小企業の生産性向上のための支援、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などの施策を実施していくことで、中小企業が賃上げを行う環境整備を進めてまいります。
また、御指摘の控除上限については、他の税、他の租税特別措置についても設けられております。業績の拡大により上限額の増加が期待される、こうしたことも踏まえながら、今回の税制措置においては、まずはしっかりと用意した措置を執行していく中で、どのような課題があり、それに対してどう対応していくのが適切なのか、検討をしてまいりたいと思います。
赤字企業の賃上げについてお尋ねがありました。
赤字法人であっても賃上げを前向きに考えることができるようなインセンティブ措置を講ずることは重要であると認識をいたします。
法人事業税についても、赤字法人でも課税される外形標準課税の対象法人に対して、三%以上の賃上げを行った場合に税負担を軽減する措置を講ずることとしております。
さらに、赤字企業にも賃上げを促すべく、税制の拡充に加えて、事業再構築補助金など各種企業向け補助金における賃上げを行う企業への優先的な取扱い、年間四兆円を超える公共事業やビルメンテナンスなどの委託事業、ITなどの公共調達における賃上げに積極的な企業の優遇などの各種施策によって、赤字であっても生産性向上に取り組み、賃上げにつなげていく企業を支援していきます。
なお、固定資産税については、資産の価格に応じて負担する税であり、固定資産の所有者の企業活動によってその負担が左右されるものではなく、賃上げに応じた対応は困難であると考えます。
また、消費税を減税することについては、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置付けられていることを踏まえれば、適切ではないと考えております。
そして、ガソリン価格高騰対策の現状とガソリン税の在り方についてお尋ねがありました。
エネルギー価格の急騰による国民生活や企業活動への悪影響を最小化するため、今朝、燃油価格の激変緩和措置の支給上限を最大二十五円に大幅拡充するなどの緊急対策を取りまとめました。
ウクライナ情勢を踏まえつつ、来年度も引き続き原油価格が上昇し続ける場合については、何が効果的で有効な措置なのかという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し、対応してまいります。
その上で、いわゆるガソリン税の当面の間税率の廃止については、国、地方の財政への多大な影響が恒久的に生じるなどの問題があり、困難であると考えています。
また、ガソリン税はタックス・オン・タックスとの指摘については、消費税の課税標準である価格に個別間接税を含むという取扱いは国際的に確立したルールであることを踏まえれば、このこと自体に特段の問題があるとは考えておりません。
そして、自動車税制の抜本改革についてお尋ねがありました。
自動車関連税制については、与党税制改正大綱において、カーボンニュートラル目標の実現への貢献、自動車を取り巻く環境変化の動向、インフラの維持管理の必要性、国、地方を通じた財源の安定的な確保、受益と負担の関係等を踏まえつつ、中長期的な視点に立って検討を行うとされているところであり、政府としても検討していくべき課題であると考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/14
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015・鈴木俊一
○国務大臣(鈴木俊一君) 大塚耕平議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、中国のCIPS利用に関して、日本の金融機関への対応についてお尋ねがありました。
我が国としては、国際社会と連携し、日本の金融機関が制裁の抜け穴となることのないよう、SWIFTからの排除されるロシアの七行全てを資産凍結の対象といたしました。
これにより、日本の金融機関は、CIPSを利用した決済を含め、ロシアの七行との取引が禁じられることになります。このため、資産凍結対象の七行については、日本の金融機関を通じ、貿易等の決済がCIPSで迂回されることはないと考えております。
金融庁としては、こうした措置が日本の金融機関において適切に実施されるよう注視をして、必要があればしっかりと対応していきたいと考えております。
最後に、貿易における仮想通貨での決済と、ロシアのSPFSの実情についてお尋ねがありました。
貿易における暗号資産決済の実情については、定量的なデータがないため確たることを申し上げることは困難でありますが、現在、ロシアも含め、暗号資産が貿易決済に使われている割合は大きくないと考えています。
また、SPFSについては、主にロシア国内の金融機関によって利用されていると承知しており、国際的な資金決済における利用は限定的であると考えております。
いずれにいたしましても、我が国としては、ロシアに対する制裁の実効性を確保するため、暗号資産やSPFS等の決済に関する動向を注視し、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をして対応してまいりたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/15
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016・山東昭子
○議長(山東昭子君) 浅田均さん。
〔浅田均君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/16
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017・浅田均
○浅田均君 日本維新の会、浅田均でございます。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
国際決済銀行、BISが公表する実質実効為替レートは、相対的な通貨の実力を測るための指標と言われております。日本円の実質実効為替レートは、一九七〇年から一九九五年にかけて約六〇から一五〇まで上昇しましたが、その後、下落傾向に転じ、二〇二二年一月には六七・五五と、一九七二年六月以来、およそ五十年ぶりの低い水準になりました。
通貨の対外的な購買力の低下は、輸入物価の上昇を招き、家計への逆風となりますが、この実質実効為替レート水準の下落について総理はどのように受け止めておられるのか、感想をお尋ねいたします。
円の実力が五十年ぶりの低水準になったことが伝えられて間もなく、二十四日にはロシアがウクライナに侵攻したことで原油が更に急騰しています。二十四日のニューヨーク商品取引所の米国産WTI原油の先物価格は一時一バレル百ドルを上回り、既に七週連続で上昇しているガソリン代の更なる上昇は必至です。エネルギー価格の高騰も様々な物価高を引き起こし、国民生活に大きな影響を与えます。
ここで二点質問いたします。
一点目は、原油不足に対応するため、安全性を確認された原発の再稼働は選択肢の一つと考えられますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
二点目は、トリガー条項の凍結解除です。凍結解除を行う場合には、法改正のみならず、更なる予算措置が必要と考えますが、予備費で対応可能とお考えでしょうか。予算の修正を行うことは可能です。いつでも解除ができるよう予算措置をしておくことが肝要と考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
経済成長を実現していくためには、簡素、公平、中立というよりは、むしろ簡素、公平、活力の税制が必要です。総理は、新しい資本主義のグランドデザイン、実行計画の取りまとめに当たり、円の実力が極めて弱くなっている現状も踏まえ、経済成長を実現するために税制が果たす役割、また、今後目指すべき税制体系についてどのようにお考えか、お伺いいたします。
日銀は、先月十四日には約三年半ぶりとなる指し値オペを実施し、長期金利の上限を堅持する姿勢を明確にしました。日銀は、物価目標二%の達成に向けてバランスシートの拡大策を続けています。しかしながら、二%の物価上昇が達成されると、実質賃金はその分下がることになります。したがって、総理の掲げる三%の賃上げという目標は低過ぎるのではないかとも思えます。
総理にお尋ねします。賃上げ三%超えという目標で、どれだけ消費を押し上げ、需給ギャップ解消に効果があるのか、答弁を求めます。
また、一時的な賃上げではなく、持続可能な賃上げを実現していくには、賃上げ促進税制を少しばかり改正するのではなく、例えば企業の内部留保、現預金に対して課税し財源とすべきだという議論を展開する人たちがいます。そうした議論に対する総理の見解をお聞かせください。
二〇一〇年に、租税特別措置に関して、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜適切な見直しを推進することを目的として租特透明化法が成立しましたが、現在に至るまでの約十年で廃止されたのは特別措置総数三百六十七件のうち六十件程度にとどまっています。
そもそも、租税特別措置は税負担のゆがみを生じさせ、簡素、公平原則に反するものです。透明化法は、透明化、公平化を目的とするものですので、大事なのは、その調査結果から、必要性、有効性といった政策効果をしっかりと精査することと考えます。
経済活性化という観点から、租税特別措置の必要性、有効性の検証を具体的にどのように行っているのか、総理にお伺いいたします。
現在の各種税制特別措置や補助金制度などが、本来であれば市場から退場されるべき企業、いわゆるゾンビ企業の延命策になっていないかをしっかりと検証する必要があります。政府として、ICTの発展により可能となってきたEBPM、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングの手法を、こうした税制特別措置や補助金制度の効果検証に導入していくことが必要だと考えますが、総理はどのようにお考えか、お尋ねいたします。
補助金や特別措置のメニューは今や膨大かつ複雑化し、専門知識を有する税理士や会計士等を雇わなければ使いこなせず、専門家を雇う余力のない中小企業にとっては不公平なものになっています。そもそも、これだけのメニューを全事業者に周知することは至難の業であり、税の三原則の一つである公平性と大きく乖離していると考えます。万人に使いやすく、アクセスしやすい税制を目指すべきと考えますが、総理のお考えを伺います。
住宅ローン控除制度の見直しについてお尋ねします。
政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた措置として、省エネ性能等の高い認定住宅等について借入限度額を上乗せする等の措置を講ずることとしています。少子高齢化が進み、空き家率が増加し続けているなど、社会構造が大きく変化している現在、この施策がカーボンニュートラル実現にどのぐらい貢献するのか、その効果試算を具体的にお答えください。
成長戦略についてお尋ねします。
総理は施政方針演説において、大規模なスタートアップ創出に取り組み、日本の第二創業期を実現するとおっしゃいました。成長分野でスタートアップを支援、育成していくという方針には全く異論はありません。しかしながら、少子高齢化による労働力の減少という現実を考えれば、新しい企業の参入だけでなく、退出も考えなければなりません。企業の新陳代謝に対する考え方、取組につき、総理にお尋ねいたします。
長引くコロナ禍でK字回復の状況が鮮明となり、企業間、業種間格差が増大しています。各種制度、措置などの効果検証をきちんと行った上で、成長分野に重点的に資源配分を行うという、いわゆるワイズスペンディングという考え方に、考えに基づく政策立案が必要と考えますが、総理の見解を伺います。
デジタル社会の進展により、とりわけブロックチェーンで発行される代替通貨、トークンは、現実空間における貨幣経済とは異なる新たな経済行為、経済圏、トークンエコノミーを可能にします。すなわち、一、マイクロペイメント、二番、即時的支払、三番、取引の見える化、四番、スマートコントラクト等です。トークンのうち、NFT、ノンファンジブルトークンは、ブロックチェーンにデジタル資産を保存する仕組みで、メタバースと呼ばれる仮想空間内で交換等の行為が可能ですが、現行の法制度は現実空間における行為を前提にしており、仮想空間における新たな経済社会は法規制の対象外になっています。こうしたトークンエコノミーにどう向き合っていくのか、新しい資本主義の中に含め、発展を促すべきと考えますが、総理のお考えを伺います。
また、メタバースと言われる仮想空間内での付加価値の生産、交換等の経済的行為に、どのような原則でどのような税制を適用していくのか、お示しください。
これまで想定もしなかった新たな産業が次々と創出されていく中で、規制の在り方も時代に合ったものにしていかなければなりません。特に、トークンエコノミーに見られるように、展開にスピードが求められる産業は、従来の事前規制、裁量規制という考えでは発展がありません。原則として事後規制という考え方に大きく発想の転換を図っていくことが必要と考えますが、総理の認識をお伺いして、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/17
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018・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 浅田均議員の御質問にお答えいたします。
実質実効為替レートについてお尋ねがありました。
実質実効為替レートは、名目為替レートの変動に加えて、国内外の物価上昇率の差が反映されるものです。日本の場合、とりわけ海外と比較して国内の物価上昇率が低いことが実質実効為替レートの下落の背景にあると承知をしています。
為替相場については、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要であるということに尽きますが、政府として、経済・市場動向をしっかりと注視しながら経済財政運営に万全を期してまいります。
原発の再稼働とトリガー条項についてお尋ねがありました。
原油については、我が国は国、民間合わせて約二百四十日分の備蓄を有しておりますが、今後、IEAで合意された石油備蓄の協調放出に向けた対応を進めるとともに、産油国に対する増産の働きかけや調達先の多角化にも取り組んでまいります。
その上で、原子力については、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
原油価格高騰対策としては、エネルギー価格の急騰から国民生活や日本経済を守るため、まずは、今年度の一般予備費を三千五百億円活用して、緊急避難的にガソリン、軽油、灯油、重油を対象とする激変緩和措置の支給上限を最大二十五円に拡充することで小売価格の急騰を抑制してまいります。
今後、更に原油価格が上昇し続けた場合の対応については、何が実効的で有効な措置なのかという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し、対応してまいります。
今後の税制についてお尋ねがありました。
岸田内閣では、新型コロナ危機を乗り越えた上で、新しい資本主義の下、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出し、社会課題を解決しながら持続可能な経済成長を目指してまいります。
このため、税制も活用して、デジタルや気候変動などの社会課題を投資分野として企業の積極的な設備投資を促すとともに、令和四年度税制改正における賃上げ税制の抜本的強化などにより、国民お一人お一人の所得を引き上げ、次の成長につなげていく考えです。
今後の税制については、こうした新しい資本主義の在り方にふさわしいものとするべく、経済社会の構造変化も踏まえながら総合的に検討してまいります。
賃上げについてお尋ねがありました。
委員御指摘のとおり、物価だけが上がる状態ではなく、成長の果実が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、消費の拡大を通じて更に次の成長に結び付くという好循環が実現することが重要です。
議員御指摘の三%の賃上げ目標については、本年の春闘に向けた議論の中で、私から、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい三%を超える賃上げを期待するとともに、今回の春闘においては、二〇二一年一・八六%と低下している賃上げの水準を思い切って一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げの実現を期待している、こうした趣旨で発言させていただいたものであります。
所得の向上につながる賃上げにより、成長の果実を広く国民お一人お一人に分配することで、可処分所得の増加が期待され、一定程度消費が拡大し、次の成長につなげてまいります。こうした成長を通じて、需給ギャップの解消に努めてまいります。
政府としても、賃上げ税制の拡充、適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員して、企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成していきます。
なお、議員御指摘の内部留保への課税については、二重課税に当たるという指摘もあることから、慎重な検討が必要になると考えております。
租税特別措置等とEBPMについてお尋ねがありました。
租税特別措置については、政策を所管する各省庁において、政策評価の点検結果や租税特別措置の適用実態調査などEBPMの観点も踏まえ、その必要性や政策効果について評価を行い、毎年度の税制改正プロセス等で精査を行ってきたところです。
また、補助金についても、各々の制度設計が適切か、効果的、効率的な執行がなされているかなど、EBPMの手法も活用しつつ、毎年度の予算編成のプロセス等において精査をしているところです。
租税特別措置を含む今後の税制の在り方については、公平、中立、簡素の三原則を踏まえつつ、不断の検討を行ってまいります。
住宅の省エネ対策の効果についてお尋ねがありました。
令和四年度の税制改正における住宅ローン控除の見直しについては、省エネ性能等が高くなるほど控除限度額が大きくなる仕組みとし、年間最大五十万戸の高性能省エネ住宅の取得を推進し、原油換算で年間最大約十二万キロリットルのエネルギー消費量の削減を図っていきたいと考えています。
その際、税による取組だけでなく、省エネ基準への適合義務化などを含め、税、予算、そして規制などの政策により総合的に取り組んでいくこととしております。
企業の新陳代謝とワイズスペンディングに基づく政策立案についてお尋ねがありました。
日本企業のイノベーションを後押しするために、従来の業種の枠を超えて、経営不振の事業から撤退し、経営資源を成長性、収益性の見込める事業に振り向けていき、その中で産業の新陳代謝を活性化させていく、こうした考え方が重要であると考えます。
このため、イノベーションの新たな担い手であるスタートアップの創出のみならず、現存の企業についても、デジタル、企業、気候変動などの成長分野への積極的な投資や事業再構築を促進し、新しい取組を後押ししてまいります。
こうした取組も含め、成長戦略を大胆に進めるに当たり、政府として、閣僚や専門家から成る会議でプライオリティー付けを行ったり、EBPMの手法を取り入れるなど、重点分野に選択と集中を行い、費用に対し最大の効果を発揮できるようめり張りの利いた予算とするほか、税制、規制・制度改革などあらゆる施策を総動員していきたいと考えております。
トークンエコノミーについてお尋ねがありました。
トークンエコノミーの基盤となるブロックチェーン技術については、様々な分野で利活用の可能性があり、こうしたイノベーションが従来のインターネットの在り方を変え、さらに社会変革につながる可能性を秘めているものと承知をしております。
政府としては、日々変化するこうしたデジタル技術の進展をしっかりと把握した上で、利用者の利便性と保護のバランス等の観点も踏まえながら、成長戦略として、規制や課税の在り方を含め、利活用の促進に向けた環境整備を図ってまいります。
その際、デジタル分野の極めて早い進展を踏まえ、データを活用してスピーディーに政策サイクルを回し、柔軟に見直しを図っていくアジャイル型の政策手法を取ることも有効であると考えます。
現在、行政改革推進会議の下でこうした新しい政策形成の在り方について検討を行っているところであり、こうした取組と併せて、デジタル社会の実現に向けた議論を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/18
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019・山東昭子
○議長(山東昭子君) 大門実紀史さん。
〔大門実紀史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/19
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020・大門実紀史
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
会派を代表し、所得税法等改正案に関連して、総理に質問をいたします。
まず、先ほどNHKが報道したロシアのウクライナ・ザポリージャ原発への攻撃に厳重に抗議をいたします。現在、火災が発生しており、もし爆発したらチェルノブイリの十倍の被害が及ぶと言われております。即時攻撃を中止させるべきです。政府としても早急に厳重な対応をされるように申し入れておきたいと思います。
こういうロシアの無法で野蛮なウクライナ侵略をやめさせるには、即時撤退を求める大きな国際世論で包囲するとともに、各国と連携した強力な経済制裁が必要です。政府は、昨日、SWIFTからロシアを排除する措置、また一定の資産凍結について発表されましたが、今後の取組について、抜け道を防ぐことも含めて、総理の考えをお聞きします。
同時に、現在、多くの中小企業は、コロナ禍に加え、ウクライナ情勢による原油、原材料などの高騰で更に苦境に追い込まれています。ガソリン補助金の引上げや無利子融資の延長などにとどまらず、事業者への直接支援、給付金の思い切った拡大など、従来の枠を超えた大規模な中小企業支援策が必要だと考えますが、総理の認識を伺います。
次に、日本経済の現状と税制の在り方について質問します。
この二十年、日本は成長できない国になってしまいました。
二〇〇一年から二〇二〇年の年平均GDP成長率は、アメリカは三・六五%、EUは二・五九%、それに対し日本は僅か〇・〇六%です。なぜ日本の成長率だけがこんなに落ち込んだのか、総理の見解を伺います。
日本が成長できない国になってしまったのは、二十年以上にわたる新自由主義政策の結果です。
二〇〇一年に開始された小泉・竹中構造改革は、非正規雇用を拡大し、低賃金構造を固定化しました。アベノミクスは、株価をつり上げて大企業や大株主、富裕層を大もうけさせた上に、法人税減税まで行いました。一方で、国民には消費税増税が押し付けられました。
企業がもうかれば個人の所得も増え、経済が良くなるというトリクルダウンは起こらず、大企業の内部留保は巨額に膨らみ、富裕層の資産は二倍、三倍に急増しました。富が一部の大企業や富裕層に集中し、世の中全体にお金が回らなくなった。だから、内需が低迷し、経済は長期停滞に陥り、日本は成長できない国になってしまったのです。総理にそういう認識はありますか。
さらに、日本は競争力の弱い国になってしまいました。
スイスのシンクタンク、IMDが発表している各国の競争力ランキングで、日本は一九九〇年代初めの世界第一位から、直近では三十四位に落ち込んでいます。また、日本の半導体は、一九八〇年代には世界一の市場シェアを有していましたが、今や韓国や中国に圧倒され、電気自動車の生産、販売台数も中国に追い付けない状況です。なぜ日本はこんなに競争力の弱い国になってしまったのか。総理の見解を伺います。
日本の競争力が落ちていった最大の理由は、人を大事にせず使い捨てにしてきたからです。
二〇〇〇年以降、大手の半導体や電機メーカーは、目先の利益ばかりを追求し、リストラを繰り返して、優秀な人材を海外に追いやりました。日経新聞によれば、二〇〇〇年代半ばには、既に数千人の日本人技術者が中国や韓国のIT企業に採用され、新しい技術開発に取り組んでいたとのことです。その後、中国の通信大手ファーウェイや韓国のサムスン電子など中韓のメーカーが急成長したことは周知のとおりです。一方、日本の大企業は賃金を抑え込んで利益を確保し、巨額の内部留保をため込んだものの、競争力は地に落ちてしまいました。
目先の利益、株主の利益ばかりを追いかける、人間をコストとしか考えないような新自由主義的な経営が日本の競争力を低下させた元凶ではないでしょうか。総理の見解を伺います。
こういう新自由主義の結果、大企業の内部留保は四百六十六兆円にも膨らみました。一般に、内部留保は企業にとって大事な貯蓄です。設備投資や、いざというときに備えて蓄積するのは当然です。財務省の法人企業統計によれば、九〇年代までは、大企業は売上げを伸ばし、利益を伸ばし、その結果として内部留保も増加させています。この頃は賃金も設備投資も一定伸びていたので、言わば健全な内部留保の蓄積と言えます。
ところが、二〇〇〇年以降は、売上げは伸びないのに内部留保がどんどん膨らんでいきます。なぜそうなったのか。政府の新しい資本主義実現会議の資料によれば、この点について、大企業が人件費と設備投資を抑えて利益を拡大し、株主への配当と内部留保を増やした。同時に、余剰資金である現預金も倍増させたと指摘しております。
総理は、分配を重視すると言いながら、結局、分配の原資をつくるためにはまず成長だと、従来のトリクルダウン論を答弁で繰り返しておられます。しかし、分配の原資は既にたっぷりため込まれています。今重要なことは、成長から分配ではなく、大企業に偏在する富を国民に還元する、分配から成長への好循環をつくり出すことです。総理の認識を伺います。
また、安倍政権以降の法人税減税も大企業の内部留保の拡大に大きく貢献したのは間違いありません。減税額を試算すると三十兆円を超えます。政府の説明では、賃上げや設備投資の促進が減税の目的でしたが、そのようにはならず、結果的にその多くが内部留保の積み上げに回ったのです。
二月の二十四日、我が党は、大企業の内部留保に課税する新しい案を発表いたしました。安倍政権以降、内部留保の積み増しに回された減税分は、言わば減税する必要のなかった減税です。その一部を返してもらおうというのが基本的な考え方です。過去に課税しなかった分を追徴するという意味であり、いわゆる二重課税には当たりません。
具体的には、二〇一二年度から二〇年度までに増えた内部留保の額から、その間の設備投資の増加額、人件費の増加額、環境対策、いわゆるグリーン投資額を控除した残りの額に税率二%を掛けます。期間は、ストックとしての内部留保への課税ですので、五年間に限定をします。五年で約十兆円の財源が生まれますが、これは最低賃金を大幅に一気に引き上げるための中小企業等への支援に使います。この課税は、賃上げ効果だけでなく、不公平な税制を正し、同時にグリーン投資を促進する効果もあります。
岸田総理は、二月二十五日の参議院予算委員会で、この提案に対し、一つの手法と否定はされませんでした。総理は、賃金抑制と減税のおかげで増え続ける大企業の巨額の内部留保をこのまま放置していいとお考えでしょうか。総理の見解を求めます。
我が党は、分配だけでなく、成長も、成長戦略も重要だと考えております。
賃金を引き上げ、社会保障を立て直す。応能負担の税制を取り戻し、消費税を減税し、内需を活性化していい投資を呼び込む。気候危機打開の取組、ジェンダー平等社会の実現も経済成長につながります。そういう、人を大事にする、人を優しい経済こそ、本当の意味で強い経済であり、国民本位の成長戦略だということを申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/20
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021・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 大門実紀史議員の御質問にお答えをいたします。
ロシアに対する経済制裁についてお尋ねがありました。
ロシアのウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、国際社会が結束して毅然と対応することが重要です。
今般、EUがロシアの七つの銀行をSWIFTから排除する決定を発表しました。この取組に参加してきた日本として、決定を支持いたします。この措置を他のG7諸国とともにしっかり履行するため、日本として、昨日、既に資産凍結を決めている三銀行に加え、新たに四つのロシアの銀行に対し資産凍結措置を講じました。これにより、SWIFTから排除される七行全てが資産凍結の対象となりました。
引き続き、国際社会への影響を見極めつつ、ロシアに対して今回のウクライナ侵略のような暴挙には高い代償が伴うことを示すべく、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、ロシアに対する経済制裁の実効性を確保するべく努めてまいります。
原油等の高騰で苦しむ中小企業への支援策についてお尋ねがありました。
原油価格高騰対策としては、エネルギー価格の狂騰、高騰から、あっ、急騰から国民生活や日本経済を守るため、まずは、今年度の一般予備費を三千五百億円活用し、緊急避難的にガソリン、軽油、灯油、重油を対象とする激変緩和措置の支給上限を最大二十五円に拡充することで小売価格の急騰を抑制してまいります。
さらに、ウクライナ情勢や原油価格高騰の影響を受けている中小企業の資金繰りに万全を期すため、全国千か所に特別相談窓口を設けるとともに、日本公庫のセーフティーネット貸付けの金利を引き下げることにより支援をしてまいります。
また、新型コロナの影響が長引く中で、中小企業の事業継続を支援するため、固定費の約半分を目安として、五か月分を一括給付する事業復活支援金の支給も行っています。
今後、更に原油価格が上昇した場合の対応については、何が実効的で有効な措置なのかという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し、対応していきます。
そして、我が国のこの経済成長の低迷と競争力の低下についてお尋ねがありました。
我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降の低い経済成長と長引くデフレにより、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷し、デフレが加速し、企業に賃上げを行う余力が生まれにくい悪循環であったと承知をしています。
この中で、我が国では、企業収益が国内投資に十分向かわず、現預金が増加している状況が続いている一方で、人的投資の対GDP比やIT投資を含む設備投資の伸びは主要先進国に対して劣後してきました。
岸田政権では、新型コロナ危機を乗り越えた上で、新しい資本主義の下、市場や競争に全て任せるのではなく、官と民が協働して、賃上げ、人材投資といった人への投資や、デジタル化など、我が国の課題を投資分野とすることで、課題を克服しながら、競争力を回復し、持続可能な経済成長を実現してまいります。
成長と分配についてお尋ねがありました。
岸田政権では、成長か分配かではなく、成長も分配もが基本的なスタンスです。まずはしっかりと成長を実現し、その成長の果実を国民お一人お一人に官民協働で分配することで成長を支える新たな需要を創出し、次の成長につなげてまいります。
その際、成長の果実が内部留保だけではなく賃金や人材投資といった人への投資、設備投資、取引価格などに適切に分配されることが持続可能な経済を実現する上で重要であると考えています。このため、デジタル化や気候変動問題への対応などの方向性を示す中で、呼び水となる予算や、規制改革、将来の市場規模を示すことなどにより、民間の投資を促すインセンティブを与えられるよう工夫をし、官と民が協働して、あるべき成長を実現してまいります。
また、賃上げ税制の拡充、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員し、企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成してまいります。
内部留保への課税等についてお尋ねがありました。
内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることなどから、慎重な検討が必要であると考えております。一方で、成長の果実が内部留保だけでなく賃金や設備投資に向けられることで、次の成長につなげ、持続可能な経済をつくり上げていくことが重要であると考えています。
このため、賃上げ税制の抜本強化に加え、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員して企業の賃上げを促進してまいります。同時に、デジタルや気候変動などの社会課題を投資分野として、官と民が協働して、デジタル投資やカーボンニュートラルに向けた投資を促進するための税制も活用し、企業の積極的な設備投資を促してまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/21
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022・山東昭子
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X00620220304/22
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