1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
令和六年五月二十三日(木曜日)
午前十時七分開会
─────────────
委員の異動
五月二十一日
辞任 補欠選任
古庄 玄知君 牧野たかお君
五月二十二日
辞任 補欠選任
牧野たかお君 小林 一大君
五月二十三日
辞任 補欠選任
石井 章君 梅村みずほ君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 森本 真治君
理 事
青山 繁晴君
中田 宏君
長峯 誠君
古賀 之士君
東 徹君
委 員
浅尾慶一郎君
越智 俊之君
小林 一大君
上月 良祐君
丸川 珠代君
渡辺 猛之君
辻元 清美君
村田 享子君
里見 隆治君
三浦 信祐君
石井 章君
梅村みずほ君
礒崎 哲史君
岩渕 友君
平山佐知子君
国務大臣
経済産業大臣 齋藤 健君
副大臣
経済産業副大臣 上月 良祐君
事務局側
常任委員会専門
員 山田 千秀君
政府参考人
文部科学省大臣
官房審議官 伊藤 学司君
厚生労働省大臣
官房医薬産業振
興・医療情報審
議官 内山 博之君
経済産業省大臣
官房商務・サー
ビス審議官 茂木 正君
経済産業省大臣
官房原子力事故
災害対処審議官 湯本 啓市君
経済産業省大臣
官房首席スター
トアップ創出推
進政策統括調整
官 吾郷 進平君
経済産業省大臣
官房審議官 菊川 人吾君
経済産業省大臣
官房審議官 井上誠一郎君
経済産業省大臣
官房審議官 荒井 勝喜君
経済産業省大臣
官房審議官 鋤先 幸浩君
経済産業省大臣
官房審議官 田中 哲也君
経済産業省大臣
官房審議官 田中 一成君
経済産業省大臣
官房審議官 浦田 秀行君
経済産業省大臣
官房審議官 西村 秀隆君
経済産業省大臣
官房調査統計グ
ループ長 殿木 文明君
経済産業省経済
産業政策局長 山下 隆一君
経済産業省通商
政策局通商機構
部長 柏原 恭子君
経済産業省産業
技術環境局長 畠山陽二郎君
資源エネルギー
庁長官官房資源
エネルギー政策
統括調整官 山田 仁君
資源エネルギー
庁省エネルギー
・新エネルギー
部長 井上 博雄君
資源エネルギー
庁電力・ガス事
業部長 久米 孝君
特許庁総務部長 滝澤 豪君
中小企業庁事業
環境部長 山本 和徳君
国土交通省航空
局次長 大沼 俊之君
環境省環境再生
・資源循環局次
長 角倉 一郎君
─────────────
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○新たな事業の創出及び産業への投資を促進する
ための産業競争力強化法等の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/0
-
001・森本真治
○委員長(森本真治君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、古庄玄知君が委員を辞任され、その補欠として小林一大君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/1
-
002・森本真治
○委員長(森本真治君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、文部科学省大臣官房審議官伊藤学司君外二十三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/2
-
003・森本真治
○委員長(森本真治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/3
-
004・森本真治
○委員長(森本真治君) 新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/4
-
005・越智俊之
○越智俊之君 おはようございます。自由民主党の越智俊之です。
本日も質問の機会をくださいまして、ありがとうございます。早速、質疑通告に従って質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日より、産業競争力強化法等一部改正法案の審議となりますが、産業競争力強化法は、平成二十五年の創設以降、その時代時代に沿った改正がなされ、今では、規制の特例措置を活用した新たなビジネスの展開、税制優遇等を活用したスタートアップへの投融資や生産性向上に資する事業再編、支援機関を通じた中小企業の再生など、我が国産業の競争力を強化する上で重要な役割を果たしているものだと認識しております。
今回の改正案についても、まさに新たな事業を創出し、産業への投資を促進することで、今後我が国が世界で勝ち抜いていく、そのために重要な措置が数多く盛り込まれていると考えております。この重要な法案、是非充実した審議をさせていただければと思います。
本日の私の持ち時間では、特に本法律案の背景にある経済情勢の認識、国内投資を促進する戦略分野国内生産促進税制、また、我が国経済の屋台骨である中小企業に対して講ずる本法律案の諸施策による影響と、その効果の波及に向けた対策などの観点から質疑をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
まず、本法律案の背景にある現在の経済情勢について伺っていきたいと思います。
先日の齋藤大臣の提案理由説明において、日本経済には、過去最高水準の国内投資の見通し、三十年ぶりの高水準の賃上げの実現など、潮目の変化が生じているといった言葉がございました。
実際に、国内投資額についてはおよそ三十年ぶりに百兆円規模を達成し、賃上げについても、春闘第五回集計において五%超、中小組合においても四・六六といった高い水準となっております。こういった話は報道でも耳にしております。
私自身、まさにこういった潮目の変化を定着させ、地方の雇用を支える中小企業を含め、日本経済を持続的な成長軌道に乗せていくことが重要であると考えておりますが、改めて、本法案の概要と狙いを政府にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/5
-
006・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) お答え申し上げます。
今委員の方からも、るる幾つか数字もお示しをいただきまして御指摘をいただきました。
足下、我が国経済には、今委員の方からも御指摘ありましたとおり、潮目の変化が生じているのであろうというふうに認識しております。先ほど委員からも御指摘ありましたけれども、国内投資は二年前から拡大が続いておりまして、三十年ぶりの高水準ということになっております。また、春闘の数字につきましても御指摘ございましたけれども、賃上げ率も昨年に引き続きまして高水準ではないかと思っております。
しかし、ここで気を緩めてはいけないと、チャンスを逃して元のもくあみにしてはならないということではないかというふうに認識しております。日本経済はまさにこれから正念場ということでございまして、この変化を確実なものとして、投資も賃金も物価も伸びていく成長型の経済への転換を実現していく必要があるのではないかという認識でございます。
そうした認識の下、将来の飯の種を生み出す社会課題解決型の国内投資、これを後押しをしていくことに加えまして、投資の拡大につながるイノベーション、そしてまた新陳代謝の促進、これが必要であろうというふうに思っております。
こうした認識、考えの下、今回提出、提案させていただいております本法案におきましては、国際競争に対応して内外の市場を獲得することが特に求めています戦略分野への生産、そして販売量に応じた大規模、長期の減税措置、また、研究開発により得られた知的財産から生じる所得を対象に減税措置を講じるいわゆるイノベーション拠点税制、そして、地域経済、これ牽引しまして、良質な雇用を生み出す成長志向の中堅企業、これの設備投資や、MアンドA等による成長を後押しする枠組みの構築、そしてまた、スタートアップの人材確保を後押しするため、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組みの整備、こういったものを講じていく内容ということでしております。
以上のような措置を通じまして、新事業の創出を更に活性化し、また成長が期待される事業への投資をより一層促進することで、日本経済を持続的な成長軌道に乗せていきたいという狙いで提案をさせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/6
-
007・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
国内投資の後押しという観点で答弁いただきましたけれども、今度は海外に目を向けてみると、現在の世界各国においては、世界的な不確実性の拡大、国際秩序の変化、世界規模での社会課題への対応性の、必要性の高まり、中間層の停滞や格差拡大といった様々なマクロ環境の変化が生じており、これらを背景に、欧米を中心として大規模かつ長期的な優遇策による自国内への企業の立地、そして投資を誘致する動きが見られております。
こうした国際情勢の中、本法律案では、戦略的国内投資の拡大ということで、戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制といった施策を講ずることとしておりますが、世界的に活発化している生産拠点の誘致競争の中で、本法律案による施策だけでなく、予算措置も含め政策を総動員していく必要があると思いますが、政府の見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/7
-
008・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 非常に重要な御指摘をいただいたと思っております。まさに国際的な情勢、非常に活発化しております。
まさに、国際的に見ましても、非常に他国、他国においてですね、他国における自国内への戦略分野の投資を促す産業政策が活発化、非常にしております。今朝の報道なんかでもアメリカの状況出ておりましたけれども、我が国でも、世界で競争力を確保できる強い産業を生み出していくために、こうした他国の産業政策との競争に対応できる投資促進策、環境整備のために必要であろうというふうに認識しております。
本法案に基づき実行する戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制、これは、世界で活発化する投資の獲得競争にしっかりと対抗していく、そして、海外と比べて遜色のない事業環境を整備するための過去に例のない大規模、長期の投資やイノベーションを促進するための新たな措置を本法案でしっかりと措置をしていきたいというふうに考えております。
こうした本法案に基づく税制や金融面の措置に加えまして、予算も含めました全ての政策ツール、これを総動員をして、GXを始め我が国の有望な産業分野におきまして積極的な産業政策を展開、継続をして、その強みを生かすことで、国際競争、今委員の方からも御指摘ございました、厳しい国際競争にしっかりと勝ち抜いていく必要があるというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/8
-
009・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
是非、今回の法律案に係る措置に限らず、今後とも、我が国の産業、企業全体に裨益のある力強い産業政策を展開していただいて、世界で勝ち抜ける産業構造に向かっていただきたいと思います。
続いて、戦略分野国内生産促進税制についてお伺いいたします。
本税制は、自動車や鉄鋼といった戦略分野での新規の国内投資を行い、これらの製品を生産、販売する事業者に適用されるもので、そのための認定制度が今回の産業競争力強化法の改正案に含まれています。この税制は、十年の適用期間や生産、販売量に応じた税額控除という、過去に例のない制度となっております。他方で、先日、水素社会推進法も成立したところではありますが、水素といった国際的にも今後活用が見込まれる分野で本税制の対象となっていないというものもあります。
先ほども世界的な政策競争の活発化に言及させていただきましたけれども、本税制がどのように投資を促進し、また産業競争力を強化する効果を発揮するのか、また、本税制の対象となる製品がどのような基準で選定したのか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/9
-
010・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
まず、欧米を始め、戦略分野への投資を自国内で実現するための政策競争が国際的に活発化する中で、委員御指摘のとおり、我が国経済の潮目の変化を持続的な成長軌道につなげていくためには、国内の投資を促進する大胆な政策が必要だと考えております。
本税制はそのための投資促進策の一つであり、戦略分野のうち、特に生産段階のコストが高いことなどから従来の初期投資支援では投資判断が容易でない分野を対象に、生産段階における税額控除措置を講じることにより、事業全体の予見可能性を向上させ、投資判断を強力に引き出していく考えでございます。さらに、こうした措置を生産、販売量に応じて講ずることで、本税制が対象とするグリーンスチール等、世界的にも市場創出が不十分でありながら、今後産業の基盤となることが見込まれる分野について、生産性の向上や需要拡大に向けた企業努力を引き出すことによって産業競争力の強化につなげていきたいというふうに考えております。
なお、投資促進策は様々な手法が考えられ、分野ごとの特徴や、既存の支援策や制度も踏まえて効果的に講じていくことが重要だというふうに考えておりまして、委員御指摘の水素につきましては、大規模なサプライチェーンの構築に向けて、既存原燃料との価格差に着目した支援であるとか、あるいは産業集積につながる供給インフラへの支援を措置することとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/10
-
011・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
こうした税制の効果が、税額控除を直接受ける一部の企業にとどまらず、地域の中堅、そして中小企業にまで波及していくことで、更なる日本全体の産業競争力強化につながっていくことが重要だと考えています。この戦略分野国内生産促進税制の効果をどのように地方の中堅・中小企業を含め国内に広く波及させていくのか、その方法を、政府の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/11
-
012・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
本税制の対象分野であります電気自動車、クリーンスチール、半導体などは、いずれも広範なサプライチェーンを構成する産業によって造られる製品であります。本税制を通じてこうした分野における国内投資を実現し、生産、販売を拡大することで、地域の中堅・中小企業を含め、部素材等の発注や供給の確保、拡大、さらには雇用、所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じるというふうに考えております。
さらに、本税制と併せて、例えば電気自動車の構成部品であります蓄電池や半導体の製造装置、部素材については、昨年度の補正予算や今年度の当初予算などにおいて、初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでいるところでございます。こうした措置は、本税制の効果を、中小を含めたサプライチェーン全体により広く波及させるものだというふうに考えております。
加えて、中小企業向けの賃上げ促進税制や徹底した価格転嫁対策、革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化の投資の支援なども取り組むことによりまして、本税制の効果を波及させるとともに、サプライチェーン上の企業の競争力強化につなげていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/12
-
013・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
今、サプライチェーン全体へ広く効果を普及する観点から、初期投資支援に必要な予算措置、賃上げ促進税制、価格転嫁対策、IT導入補助金、そして省力化投資支援など、幅広い取組の御答弁をいただきました。
この税制によって国内投資を推進し、サプライチェーン全体で経済効果を最大化するためには、そのサプライチェーンの大部分を占めているこの中小企業・小規模事業者に対してもしっかりと利益が分配されて、意欲、やる気を持って活動していただくことが必要不可欠です。
先ほど御答弁いただいた中でも、価格転嫁対策が私は鍵を握っていると思います。この中小企業庁、公正取引委員会が連携し、中小企業が適切な価格転嫁を行えるような施策を進めていくことが重要だと思われますが、政府の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/13
-
014・山本和徳
○政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
中小企業・小規模事業者は我が国の雇用の七割を占めておりまして、その賃上げを実現するためにも、原資確保に必要な価格転嫁対策の推進は極めて重要でございます。
中小企業庁では、価格交渉促進月間に基づく企業名の公表や発注者の経営トップに対する指導、助言等を通じまして、取引先が多く波及効果の高い大企業から取引方針の改善を促してきているところでございます。
加えて、中小企業の賃上げ交渉が本格化している三月下旬以降、発注側である大企業の業界団体、具体的にはエレクトロニクス、自動車、産業機械、流通、情報サービスの業界団体でございますけれども、これらのトップに対しまして、発注者として直接の取引先一社一社と丁寧に価格交渉、価格転嫁に応じていただくこと、直接の取引先だけでなく、サプライチェーンの先にいる企業の取引まで考慮して取引価格を決定することなどを、齋藤大臣や岩田副大臣、吉田政務官から直接要請しております。長く染み付いたコストカットの意識や商慣行の払拭を求めているところでございます。
また、一般に転嫁が難しいと言われております労務費につきましては、昨年、内閣官房、公正取引委員会が労務費の転嫁の指針を公表しております。
中小企業庁としては、関係省庁と連携して、各地域、業界団体向けの説明会を繰り返し実施いたしますとともに、下請中小企業振興法に基づきまして、親事業者と下請事業者の望ましい取引環境を定める振興基準に、この労務費の価格転嫁の指針に沿った取引対価の決定や、原材料費やエネルギーコストについて適切なコスト増加分の全額の転嫁を目指すことなどを新たに定めたところでございます。
下請代金法の執行については、中小企業庁は公正取引委員会と共管をしております。価格転嫁、取引適正化に向け、公正取引委員会と密に連携してまいる所存でございます。引き続き、商工会、商工会議所にも協力を仰ぎながら、サプライチェーンの先まで価格転嫁を行える環境整備に取り組んでまいりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/14
-
015・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
下請法というものがありますけれども、私、やや違和感を、下請と、やや違和感を覚えておりまして、下に請けると書いて下請。私、前職といいますか、建設業を、まあ中小企業ですけどやっておりましたが、下請という言葉はできるだけ使わずに、協力会社ということを使っておりました。一緒に働くという意味ですが、この意味は、これは、企業間の関係性が対等、公正なものであるという文化とか商慣行を日本の経済にしっかりと浸透させていきたいという思いです。
こういった観点からも、繰り返しにはなりますが、我が国経済を下支えする中小企業にも利益がしっかりと分配されるような環境整備が重要であり、このような環境整備が戦略分野国内生産促進税制の経済効果の最大化にも資するものだと考えております。
そのため、引き続き、中小企業庁と公正取引委員会においてもよく連携していただいて、政府一丸となって価格転嫁に向けた施策に取り組んでいただきたいと考えております。
続いて、中堅企業政策に関連して幾つかお伺いさせていただきます。
本法律案では、常用従業員数が二千人以下のものであって中小企業ではないものを新たに中堅企業者と定義し、その中でも特に成長意欲が高いものを特定中堅企業者と定義して様々な支援措置を講ずることとしています。
これまでの政策体系では、中小企業と大企業に二分されたため、中小企業を卒業した瞬間に大企業と同じ環境でいきなり戦わなければいけないことから、中小企業向けの政策支援を受け続けるためにあえて中小企業規模にとどまっている企業も一定数存在すると言われており、一部の企業にとっては、規模をあえて拡大しないインセンティブが働いているという可能性もあります。
こうした状況の中、新たに中堅企業支援を強化する狙いについて、政府にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/15
-
016・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 中堅企業について御指摘いただきました。
中堅企業は、いろいろなデータを見ますと、十年前と比較いたしましても、大企業を上回るような従業員数、そして給与総額の伸び率が確認できております。そうしたことから、国内売上げ、そして国内投資、ここを着実に拡大をして、そして地方における良質な雇用、これを提供していく、そしてさらには、経営資源を集約化等することによりまして、前向きな新陳代謝の担い手としての役割も果たしている重要な企業群であろうと認識をしております。こうした特性から、中堅企業、この成長は、日本経済を成長型へ移行させていくために極めて重要な企業群であろうというふうに認識をしております。
他方、日本における中堅企業から大企業への成長していくこの割合は、国際的に他国と比べてもちょっと低い状況にあるということもデータ上確認をしております。人手不足等の課題に対応しながら、そして国内外の大企業と競争していくための成長投資、そしてMアンドAなどを十分にまだ行えていないのではないかという課題も存在しているのではないかと考えております。
こういった状況認識の下、本法案によりまして、中堅企業のうち特に賃金水準、そして投資意欲が高い中堅企業を対象といたしまして、複数の中小企業をMアンドAした場合の税制措置等を通じまして、中堅企業の更なる成長や、中堅企業そして中小企業によるグループ一体、先ほど委員から協力会社という御指摘もございました、そういった全体での収益力の向上等を促進をしていきたいと考えております。
こうした中堅企業支援の枠組み構築を通じまして、成長意欲のある我が国企業が、中小企業から中堅企業、そしてその先へと段階的、シームレスに成長を目指せるような環境の整備につなげていきたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/16
-
017・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
まさに中堅企業の重要性に鑑みて、本法案でも様々な支援措置が講じられているものと思います。
そういった本法案で措置される中堅企業支援の一つとして、知的財産に関する専門機関であるINPITによる助言及び助成がございます。
技術やブランドの保護に資する知的財産はイノベーションの源泉であり、企業の経営力強化、ひいては我が国産業競争力強化の観点からも極めて重要であります。中堅企業に対してINPITが行う助言、助成業務とは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。支援に当たって、INPITのこれまでの知見や強みを生かしつつどのように実施していくのか、具体的な取組方針をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/17
-
018・滝澤豪
○政府参考人(滝澤豪君) お答え申し上げます。
成長意欲の高い中堅企業は、事業拡大に当たって積極的にMアンドAなどを行うことが想定されますが、その際、自社及び他社が有する知財の価値、リスクについて調査分析、いわゆる知財デューデリジェンスを行った上で、それらを踏まえた経営戦略を策定していくことが求められております。
他方、こうした専門的な調査や知財戦略の企画立案を中堅企業が自ら実施することは困難な場合も想定されることから、本法案におきまして、INPITが外部の専門家と協力しながら助言、助成を行うことができる旨、規定をしたところでございます。
また、INPITはこれまでも、我が国唯一の知的財産の総合支援機関として、地域の商工会、商工会議所など関係機関と連携しながら、中小企業、中堅企業の知財支援に努めてまいりました。
具体的には、全国四十七都道府県に設置されました知財総合支援窓口におきまして、中堅・中小企業等に対する年間約十二万件の相談支援業務を通じた経験、ノウハウを蓄積しているほか、令和四年度には、商工会、商工会議所と協力いたしまして二千件を超える支援を行うなど、関係機関と連携した支援を行ってきております。また、知財や経営企画などの実務経験を有する企業OBなどの人材を知財戦略エキスパートとして十六名採用しているほか、外部専門家との連携を更に強化するなど体制強化にも努めてきております。
引き続き、関係機関としっかり連携しながら、地域の中堅企業、中小企業の知財戦略策定を後押ししてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/18
-
019・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
商工会、商工会議所とも連携していただいているということでしたが、引き続き関係機関と連携して、地域の中小企業、中堅企業の支援を進めていただきたいと思います。
INPITによる助言、助成のほかにも、特定中堅企業者及び中小企業者が複数回中小企業をMアンドAした場合の税額措置、いわゆる中堅・中小グループ化税制を講ずることとしております。
本税制により、成長意欲のある中堅・中小企業が複数の中小企業をMアンドAして経営資源を集約化することで、グループ一体となって成長していくことが期待され、また、売手となる中小企業にとっても、後継者がいない場合などにそのまま廃業するのではなく、別の中堅・中小企業に買収してもらうことで事業継続が可能になるといった効果が期待されておるものと考えます。
他方、MアンドAによって買収される中小企業の雇用が悪化してしまうようなことがあってはいけません。買収される中小企業の雇用や賃上げについても十分に配慮が必要だと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/19
-
020・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) ありがとうございます。極めて重要な御指摘だと思います。
人口減少等によりまして人手不足が深刻化する中で、経営力の高い成長企業に経営資源を集約化することは、MアンドAをする中堅企業等の成長のみならず、MアンドAによりグループの一員となる中小そして小規模事業者の収益力向上や賃上げ等にも資するものであろうと考えております。
御指摘のとおり、こうした取組を推進する上では、売手側の中小そして小規模事業者の雇用に配慮しながら、賃金等の労働条件の向上につなげていきまして、そして、買手だけでなく売手も含めたグループ一体で成長していくこと、これが重要でありまして、買収される側になる例えば中小・小規模事業者の雇用そして賃金、ここにも配慮する要件、これを求めていくことも検討していきたいと考えております。
具体的には、措置の活用に必要な特別事業再編計画、これを作る必要がありまして、それの認定が要件になっておりますが、今後、下位法令において定めるに当たりまして、買収される中小企業も含めた対象事業におきまして、例えば雇用の安定等に十分な配慮を行うことでありましたり、雇用者給与等支給額を引き上げること、こういったことを求めるようなことについても検討してまいりたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/20
-
021・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
繰り返しになりますけど、中堅・中小グループ化税制は、この複数回MアンドAを実施する買手側となる特定中堅企業及び中小企業への税制措置であり、買手側に対する支援強化という意味では大いに進めていくべきだと考えております。
他方、MアンドAを推し進めるためには、買手側の支援だけでは足りません。売手となる中小企業側が事業承継の手段の一つとしてこのMアンドAを選択して、また安心して信頼できる買手側に事業を譲渡できるような環境整備や支援を推し進めることも同時に重要ではないかと考えております。
そこで、今度は、売手となる中小企業側がMアンドAを検討して、また進めやすくなるような、政府が認識している課題と、それに対する支援策について、政府の見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/21
-
022・山本和徳
○政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
近年、MアンドAにより会社を譲渡することにつきましては抵抗感が薄れてきているものの、いまだにMアンドAに悪いイメージを持つ経営者の方がおられることも事実であろうと認識しております。このため、委員御指摘のとおり、売手側が安心して譲渡できるよう、MアンドA市場における環境整備等を推進していくことが極めて重要でございます。
こうした背景も踏まえまして、中小企業庁におきましては、四十七都道府県に設置しております事業承継・引継ぎ支援センターを中心に、よろず支援拠点、中小企業活性化協議会、商工会、商工会議所等とも連携しながら、事業承継やMアンドAに不安を持つ中小企業等に対しまして、事業承継前の経営支援から事業承継時の支援も含めてワンストップで支援できる体制を構築しているところでございます。また、事業承継・引継ぎ補助金による支援も講じてまいりますし、今般、グループ化を支援する措置も強化させていただくところでございます。
さらに、中小企業庁では、本年四月より、中小M&Aガイドラインにおきまして、仲介事業者、フィナンシャルアドバイザー、FAでありますけれども、これらの支援機関に対しまして、仲介契約、FA契約の締結前に、契約内容や手数料等の重要事項につきまして書面により説明を実施することを求めるとともに、その遵守を登録の要件といたしますM&A支援機関登録制度によって実効性の確保を図っているところでございます。
加えて、民間事業者の自主的な努力も重要と認識しております。仲介事業者の自主規制団体でございます一般社団法人M&A仲介協会におきましては、過剰な広告や営業の防止を含む自主規制ルールを策定しておりまして、今年四月から施行されております。
引き続き、中小企業が安心してMアンドAに取り組めるよう、MアンドA市場の健全な環境整備等を進めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/22
-
023・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継時の支援のみならず、事業承継前の経営支援の段階からワンストップで支援できる体制を構築していただいているということでしたが、売手側が良い形で事業を売却する上では、売却する前の段階から事業の磨き上げが大変重要だと考えております。事業承継・引継ぎ支援センターの取組には大変期待しておりますので、是非、引き続き取り組んでいただきますようお願いいたします。
さて、中小企業のMアンドA促進に向けた取組は重要でありますが、厳しい経営環境の中でも中小企業自身が成長していける環境整備も重要です。
二〇二三年度の倒産件数は九千件を超えるなど、近年増加傾向にあり、その多くは中小企業です。その背景には、多くの中小企業において、人手不足、そしてエネルギーコストの上昇、物価高騰等の課題に直面していることが挙げられます。特に、地方は人口減少が進み非常に厳しい環境であり、このままでは地域社会を維持していくことも難しくなることが予想され、影響は甚大になってきます。
このような中でも創意工夫し、地域の経営資源を活用して何とかなりわいを続ける中小企業をしっかり支えると同時に、地元経済を支え、良質な雇用や需要を生み出すような成長企業をつくっていくことも重要だと考えます。守るべきものは守りつつも筋肉質な産業構造に転換していくべきと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/23
-
024・山本和徳
○政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
中小企業・小規模事業者は、企業数全体の九九・七%を占めております。従業者数においては七割、付加価値については過半を占めております。中小企業・小規模事業者は日本経済の屋台骨でありまして、地域経済を支える重要な存在と認識しております。また、委員から今御指摘がございましたけれども、人口減少等の構造的な課題が顕在化する中におきまして、中小企業・小規模事業者は地域課題解決の担い手としても期待されているものと考えてございます。
このため、急激な環境変化に対応するための資金繰り対策、コスト増に対応する価格転嫁対策を講じてまいりますとともに、経営者自らが市場ニーズを捉え、生産性を向上させ、成長することができるよう施策を展開していくことが重要であると考えます。
具体的には、小規模事業者の皆様にとっての新たな販路開拓を御支援申し上げること、人手不足に対応した省力化投資やIT導入等による生産性向上を後押しさせていただくこと、賃上げ促進税制による賃上げ、こちらもしっかりと後押しをさせていただくこと、また、事業承継やMアンドAの推進による経営の革新などの成長支援を行っているところでございます。
引き続き、商工会や商工会議所等とも連携し、地域の中小企業・小規模事業者に寄り添いながら、産業構造改革を進め、日本経済の足腰を強化してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/24
-
025・越智俊之
○越智俊之君 ありがとうございます。
本法律案が地域の雇用と生活を支える中小企業にしっかりと果実となって届くことを心から期待して、私の質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/25
-
026・小林一大
○小林一大君 自由民主党の小林でございます。
質問の機会いただき、ありがとうございます。
早速質問をさせていただきます。
今日は、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案に関する質疑ということで、まず、これまでの産業競争力強化法の変遷も振り返りながら、改正法、改正内容について伺っていきたいと思います。
当法案は、バブル経済崩壊後の長引くデフレの中、アベノミクスの三本の矢の三本目の矢である民間投資を喚起する成長戦略を実行して、過剰供給、過小投資、過当競争の三つのゆがみを是正することを目的として平成二十五年に制定。制定当時は、新たな事業活動の創造につながる規制改革、産業の新陳代謝、地域中小企業の創業、事業再生の支援を促進するための制度などを講じており、企業の自発的な判断による新たな挑戦や積極的な事業活動を後押しすることで産業競争力の強化を図るものだったというふうに理解しています。その後、二回ほど、国内外の競争環境の変化に対応した形で生産性向上や需要拡大に対する支援措置を強化すべく、必要な改正を行ってきたというふうに承知をしています。
そして、今回の法改正では、経済産業の新機軸に基づいて必要な改正を行っているということなんですけれども、これまでの改正では取り組んでこなかったけれども、今回の改正で新たに取り組む内容は何なのか、改めて大臣にお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/26
-
027・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、二〇二一年十一月より、経済産業政策の新機軸ということで、従来の市場の失敗への介入というものを超えまして、民間市場だけでは進みにくい社会課題解決に向けて政府が一歩踏み込んで、産業政策を強化する姿勢に転換をしてまいりました。そして、GX、DXなど社会課題解決分野を成長の源泉と捉えて、国内投資を後押しすべく、政府としても、民間企業の予見性を高められるように、大規模、長期、計画的に取り組むこととしたわけでございます。
これまで産業競争力強化法は、過剰規制、過小投資、過当競争、これらを解消すべく、企業の生産性向上や需要開拓に資する市場環境整備に力点を置いてきたわけであります。これに加えまして、今般の改正案では、経済産業政策の新機軸にのっとりまして、社会課題解決に向けた国内の投資やイノベーションの拡大等を後押しするために、戦略分野に関する国内での新たな設備投資を促進をする、生産、販売量に応じた最大十年間の大規模な減税措置、それから、国内での研究開発により取得した知的財産権から生じる所得を対象にいたしまして、七年を適用期限とする新たな減税措置、あるいは、中堅企業を初めて法律で定義した上で、中堅企業等が複数の中小企業をMアンドAした場合に、株式取得価額の最大一〇〇%、十年間の損失準備金の積立てを可能とする措置など、これまでにない大胆な対策を盛り込ませていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/27
-
028・小林一大
○小林一大君 大臣、ありがとうございます。
今回の改正法案の趣旨として、今までもお話ありましたけれども、我が国経済に生じている潮目の変化を持続させて成長型の経済に移行することが求められている、そのためには国内の投資を更に拡大することが重要と位置付けられていますが、こうした国内への投資の中でも企業におけるイノベーションの活性化に向ける投資促進策についてまず伺います。
イノベーションは、国の将来の成長に関わるとともに、昨今、GXを始めとして、我が国や各国が抱える課題を解決する上で欠かせない事柄であると考えています。このため、企業がイノベーションに向けて積極的に取り組む投資を引き出すために、諸外国でも果敢に検討されているイノベーション拠点税制と同様の制度が既に導入されていると聞いています。
我が国の企業が海外に投資している中には、海外の市場を持続的に獲得していくために、単に生産だけではなく、研究開発に関する投資も含まれており、国内企業にとって、海外の事業拠点の位置付けは変わりつつあるように思います。
こうした環境下で、民間企業が我が国において研究開発に積極的に投資するような魅力ある環境づくりが求められていると考えますが、今回のイノベーション拠点税制を導入する意義と狙いについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/28
-
029・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
近年、アメリカ、ドイツ、フランスなどの主要国における研究開発投資が増加する中で、我が国国内の研究開発投資は、ここ十五年間で横ばいで推移しているところでございます。また、MアンドAなどを通じて企業が海外に研究開発拠点を設ける事例が増加しておりまして、研究開発活動のグローバル化が進展する中で、研究開発拠点の立地選択において、減税措置の有無がその意思決定に影響を及ぼす状況となってきていると認識しております。
こうした中で、企業が自ら国内で研究開発の成果である知的財産権から得られた所得に対する減税措置、すなわち、今回のイノベーション拠点税制のような制度が、欧州のみならずアジア諸国においても導入や検討が進んでいる状況でございます。
こうした状況を踏まえまして、我が国の研究開発拠点としての立地競争力を強化し、国内における将来の飯の種を生み出す研究開発投資を後押しし、イノベーションの創出を促進させていくために、本税制の導入が必要だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/29
-
030・小林一大
○小林一大君 ありがとうございます。
今回導入を予定しているイノベーション拠点税制は、ライセンス所得と譲渡所得のみが対象であって、対象となる所得に知財を組み込んだ製品やサービスの売却益は入っていません。多くの日本企業は、イノベーションを生み出すために研究開発を行って、知財を使った製品やサービスのビジネス展開に取り組んでいます。
諸外国の中にはこうした売却益を対象に入れている国もあると聞いていますが、我が国の今回の拠点税制では入っていないのはなぜなのか。また、イノベーション拠点の立地競争力を強化するには、最初の一歩は小さくても、将来飛躍的に成長させるため、今後対象に含めるべきではないかと思いますけれども、お伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/30
-
031・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
研究開発拠点としての立地競争力を強化し無形資産投資を後押しする観点から、知財を生み出した事業者が自らその知財を活用して事業化した製品やサービスの売却益を今回制度の対象に含めるべきだという声があるのは我々も十分承知しております。
他方で、知財を組み込んだ製品やサービスの売却益を本制度の対象とする場合、売却益の中からその知財由来の所得を客観的に特定するため、国際ルールに沿った計算を税務当局が認める形式で申告者が行う必要がございます。こうした作業負担への対応や、あるいは立証責任の所在等を含めて適切な執行が可能かどうかの検討を要するため、今回、制度創設時においては、対象知財を組み込んだ製品の売却益を対象外というふうにしたところでございます。
まずは、本制度の着実な執行に努め、その上で他の税制と同様に制度の執行状況や効果を検証し、本税制がより良い制度になるよう、委員御指摘の本税制の所得の対象範囲を含めまして、不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/31
-
032・小林一大
○小林一大君 不断の検討は今後も進めていただきたいと思います。
続いて、スタートアップに関してお伺いをします。
二二年の十一月に策定されたスタートアップ育成五か年計画では、スタートアップ投資を二七年には十倍を超える規模とすることを目的に掲げて、官民一体で現在取り組んでいると承知しています。直近十年間で約十倍に増加しているものの、足下では約八千五百億円程度にとどまっており、五か年計画の目標を達成するためには更なる取組の強化が必要だというふうに思います。
スタートアップの投資額の現状に対する政府の評価や、五か年計画で掲げた目標の実現に向けて本法案により期待する効果について、まずは伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/32
-
033・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) お答え申し上げます。
足下では、金利上昇による資金調達環境の悪化等によりまして、米国におけるベンチャーキャピタルの投資額が前年比で約三〇%減少するなど、グローバルで資金調達額が落ち込む状況、こういう状況になってございます。そうした中でも我が国のスタートアップ投資額は相対的には堅調に推移しておりまして、エコシステムの裾野も広がりつつあるのではないかと認識をしております。
先ほど委員の方から、スタートアップ育成五か年計画、御指摘ございました。ここで掲げました目標の実現に向けては、更なる裾野の拡大に加えまして、スタートアップが大きく成長できる環境の整備が必要であるというふうに考えておりまして、特に大きな可能性を秘めたディープテックスタートアップでありますとかグロースステージの成長支援、そして優秀な人材確保でありましたり海外市場の獲得、こういったことについての支援が重要になってきているというふうに認識しております。
このため、本法案御提案している中では、JICの運用期限延長によります、リスクマネーが不足する成長段階のスタートアップへの資金供給の強化でありますとか、NEDOの商用設備、商用の設備投資等の事業開発活動への補助業務の追加、こうしたことによるディープテックスタートアップ支援の強化、そして、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行する仕組みの整備によります優秀な人材の確保の促進、そして投資事業有限責任組合、いわゆるLPSでございますが、の投資上限規制を受ける外国法人の範囲の見直し、こうしたことによるスタートアップの海外展開の促進、こうした措置を講じることでスタートアップの更なる成長を促してまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/33
-
034・小林一大
○小林一大君 今御説明いただいたとおり、JICは、ディープテックやグロースステージなど民間資金が不足する分野を中心に、民間ファンドへのLP出資や、JIC子会社であるJICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社を通じた出資などの投資活動を実施してまいりました。
JICの長期、大規模なリスクマネーの供給が民間資金の呼び水となってスタートアップエコシステムへの資金供給を下支えしてきたと一定の評価をさせていただいておりますが、JICが本格的に投資活動を開始してから約三年が経過した中で、運用期間の延長に当たっては、旧産業革新機構時代の実績も含め、これまでの投資活動を振り返り、しっかり評価することが重要だと思います。
そこで、JIC及びその子会社や旧産業革新機構、INCJのスタートアップ支援実績と評価について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/34
-
035・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) ベンチャーキャピタル等への出資を行う官民ファンドであります産業革新投資機構、JICでございますが、投資活動を本格に始めましたのは、今御指摘ございましたとおり、二〇二〇年の十二月から二〇二三年十二月までの三年間、こういったところの中で、これまで三十五のベンチャーキャピタルに対して約五千億円の出資を約束しているところであります。
このうち、二〇二三年九月末まででございますが、投資先ファンドを通じて国内のスタートアップに対して四百七十五件、約千八百億円の出資が行われておりまして、こうした出資が呼び水となって、投資先において約、合計ですね、約一・一兆円の民間投資を生み出しております。
そしてまた、JICの子会社が運用するファンドの投資先においては、既にIPOの事例でありますとかMアンドAによるエグジット等の成果も現れてきているところでございます。
また、JICは、ディープテック分野やグロースステージ支援など民間資金が不足する分野を中心に投資活動を行うとともに、国内外の機関投資家からの資金を受託するための組織体制の整備、改善など、投資先ファンドの成長支援にも積極的に取り組んでいるところでございます。
さらにもう一つ、委員の方から御指摘ございました旧産業革新機構でございますが、これまで百十六件、約二千五百億円のスタートアップへの投資を行っておりまして、投資活動を開始した二〇〇九年からの十年間における日本全体のスタートアップの資金調達額約二・五兆円の一割程度に当たる規模の投資を行うということで下支えをしてきているものと認識しております。
このうち、エグジット済みのスタートアップにつきましては、約千五百億円の投資額に対しまして約千八百億円の投資回収は実現しております。こうした成果、実績を生みまして、JICそして旧産業革新機構は、民間投資の拡大と産業の競争力強化といった政策目的、そして適切な投資リターンの確保の実現、こういった官民ファンドとして期待される役割を果たしてきているのではないかというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/35
-
036・小林一大
○小林一大君 ありがとうございます。
本法案に含まれるNEDO法の改正によって、NEDOによるスタートアップ支援の幅は、研究開発だけではなくて事業開発にも広がることになると承知をしています。革新的な技術を使って社会に貢献しようとするスタートアップは、我が国の経済をより良くするイノベーションへの意識を刺激するプレーヤーであり、本法案で追加される業務を通じてそのポテンシャルを開花させ、大きく成長する事例づくりにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
その上で、NEDOに期待する役割や、ベンチャーキャピタルや金融機関など、ほかの事業者とどのように協調して支援を実施していくのか、また、スタートアップ支援における課題について見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/36
-
037・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、今回の改正法案が成立した場合には、NEDOは、ディープテックスタートアップに関しまして、技術、人材発掘や起業家育成といった起業段階から研究開発段階のみならず、新たに製品等を生産する設備投資への支援ができるようになります。こうした一貫した支援をNEDOが実施することによりまして、単に技術を確立するだけに終わらせることなく、スタートアップによる革新的な技術開発の成果を着実に事業化につなげることが大いに期待されているところでございます。
その上で、スタートアップの成長に合わせて出資や融資等の必要な支援内容が変化する中で、NEDOが一貫したハンズオン支援をすることを通じましてベンチャーキャピタルや金融機関と適切な情報交換が可能となり、こうした機関との効率的な連携を通じた支援も可能になるというふうに考えております。
また、NEDOは、JICやDBJ、日本政策投資銀行など、スタートアップ支援に取り組む政府の十六機関が連携したプラットフォームの運営事務局を担っておりまして、スタートアップの有する革新的な技術の事業化に関する課題等をこうした機関と共有しつつ、本改正でNEDOに追加される支援機能を有効に活用しながら、他の政府機関とも密接に連携を図り、効果的なスタートアップ支援を行ってまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/37
-
038・小林一大
○小林一大君 ありがとうございます。
最近のスタートアップの中には、ブロックチェーンを使った新たな産業分野に進出している企業も多いというふうに承知をしています。今回の改正によって、スタートアップへの資金供給に重要な役割を果たしている投資事業有限責任組合、いわゆるLPSが暗号資産を取得できるようになるとのことですが、具体的にどのような場面でLPSが暗号資産を取得することを想定しているのか、また、そのような場面における暗号資産の取得を認めることがどのようにスタートアップへの支援につながるのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/38
-
039・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 今委員の方から、ブロックチェーンを利用した事業を行うスタートアップについての御指摘ございました。
いわゆるウェブ3スタートアップということで言われておりますが、ウェブ3スタートアップの資金調達が金額ベースで最近増加をしてきております。そして、そうしたウェブ3スタートアップの間では、暗号資産を利用した新たな形態の資金調達を行っている現状がございます。
もっとも、現行法には、投資事業有限責任事業組合、LPSのなし得る事業といたしましては、暗号資産の取得及び保有が規定されておりません。LPSによるそうした資金調達への参加を困難にしてしまっているのではないかという課題があるということでございます。
そこで、今回の法改正によりまして、LPSについて、事業者のために発行される暗号資産の取得及び保有を認めることとしまして、ウェブ3スタートアップが資金調達を行う出資の対価等として暗号資産を割り当てるという場面におきまして、LPSもLPS以外の形態を取る他の投資家と同様に、これを取得できるようにしたいというふうに考えてございます。
これによりまして、LPSは暗号資産を利用した資金調達への参加が可能となりまして、その結果として、ウェブ3スタートアップの資金調達の選択肢が広がっていくということになります。そうしたことから、今回の法改正の中身につきまして、スタートアップへの有効な支援となるのではないかと期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/39
-
040・小林一大
○小林一大君 ちょっと一問飛ばさせていただいて、またLPSについてもう一問だけ御質問させていただきますが、日本は、世界に先駆けて暗号資産に関する利用者保護を含む規制を導入していますけれども、諸外国の中には、暗号資産についての規制を十分に整備していない国も依然として存在するものと承知をしています。
そうした中で、本法律案によりLPSの投資対象に暗号資産を加えることで弊害が生じるといったことは想定されないのか、お伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/40
-
041・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、諸外国における暗号資産についての規制の状況には様々差がございます。ただ、我が国は、資金決済法の下で、他国と比較しても極めて高い水準で利用者保護が図られているというふうに考えてございます。
今回の改正でLPSの投資対象とする暗号資産は、資金決済法において定義されているものでございます。でありますので、暗号資産交換業者に対する顧客資産の分別管理義務、そしてまた、過剰な広告や勧誘の禁止など、資金決済法の下での規制が及んでおります。利用者保護が図られているのではないかと考えてございます。加えて、LPSを組成して顧客の資産を運用しているのは投資業務に精通した者でありますので、御指摘のような弊害が生じるような可能性は一般的に低いと考えてございます。
ただ、極めて重要な御指摘だと考えておりますので、経済産業省といたしましては、引き続き、変化の非常に速いウェブ3ビジネスのグローバルな動向も注意しながら、金融庁を始めとした関係省庁との緊密な連携の下で、暗号資産業界の健全な発展を促していくこととしたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/41
-
042・小林一大
○小林一大君 しっかり対応をお願いいたします。
ストックオプションについて伺いますが、スタートアップにおける人材確保の観点から極めて重要だというふうに思いますし、経団連や一般社団法人スタートアップ協会など業界関係者からも提言、要望を行われております。我が党においても、環境整備に向けて様々な提言を行ってきました。政府の取組も積極的です。ストックオプションの活用を促進するため、六年度の税制改正においても、ストックオプション税制拡充を行ったものと承知しています。
こうした流れの中で、今回の改正法案において、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組みを整備するとされていますけれども、改めて、本制度の狙いと、どのような効果を期待しているのか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/42
-
043・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 様々な御提言をいただいていることは非常に認識しております。ありがとうございます。
ストックオプションは、特に手元資金に乏しいスタートアップにおきまして、人材獲得の手段として非常に有効であろうと考えております。しかし、現行会社法上、スタートアップを含む非公開会社におきましては、ストックオプションの発行には株主総会決議が必要となってございまして、取締役会に委任できる範囲、期間も限られております。そうしたことから、人材獲得の際、ストックオプションも活用しながら機動的に採用条件を提示することが難しいというような実態があろうかと認識しております。
このため、今般の法改正によりまして、スタートアップがストックオプションを活用いたしまして優秀な人材を確保できるように、特例措置によりまして、取締役会決議による柔軟かつ機動的な発行を可能とすることにしたいと思います。こうした措置を通じまして、ストックオプションを活用した優秀な人材の確保をしやすくすることで、スタートアップの成長に寄与するのではないかと期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/43
-
044・小林一大
○小林一大君 優秀な人材確保のための制度創設ということですけれども、あと、設立の日以降の期間が十五年未満の株式会社を対象として、経産大臣や法務大臣が確認を行った場合に会社法の特例を利用できることとしている理由をまずお聞かせいただきたいのと、スタートアップの成長の後押しする本制度が最大限活用されるためには、確認申請がスタートアップの大きな負担となったり、ストックオプション発行の機動性の欠如につながったりすることがないように確認手続を設計することが必要だと考えますが、お伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/44
-
045・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) お答え申し上げます。
二点御指摘いただいたと思います。
まず、設立以降の期間ということでございますが、今回のストックオプションに係る特例措置は、スタートアップの設立から株式公開までの期間が一般的に十年を超えることを踏まえまして、設立の日以降の期間が十五年未満の株式会社を対象としています。これが一点でございます。
そして、特例措置の利用に当たっては、スタートアップの優秀な人材の確保を通じた成長を後押ししつつ既存株主の利益が確保されるよう、既存の株主の利益が確保されるよう、ストックオプションの発行に関して、産業競争力を強化することに資すること及び既存株主の利益の確保にも配慮していることにつきまして、経済産業大臣と法務大臣の確認を要することとしております。
確認方法の詳細は今検討中でございますが、今の御指摘も踏まえまして、スタートアップが既に有する書類の提出を中心とすることで、書類作成、申請書類の作成のコストが大きくならないようにすることを検討しているところでございます。
スタートアップが申請する際にできるだけ負担が生じないよう、法務省とも連携をしながら検討を進めてまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/45
-
046・小林一大
○小林一大君 是非よろしくお願いします。
最後に、標準化についてお伺いします。
標準化活動は、研究開発成果を社会実装していく上で重要なツールとなっています。世界でも、市場創出に向けた競争を背景としたグローバルな国際標準化活動が活発化していると聞いています。
企業や大学などの研究機関において標準化や知的財産を一体的に活用した戦略、いわゆるオープン・アンド・クローズ戦略が十分に活用されていないと言われている我が国においても、昨年六月の日本産業標準調査会基本政策部会で、日本型標準加速化モデルを提示し、市場の獲得、創出のために戦略的に標準化活動を加速化していく必要性を示すなど、グローバルな国際標準化活動に負けないように取組が進められていると承知しています。
今回の改正法案において、新たに企業と大学などの共同研究開発に関して、標準化と知的財産を活用して市場創出を目指すための特定新需要開拓事業活動計画の認定制度を創設されるとのことですが、この制度の概要と意義、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/46
-
047・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、研究開発成果の市場化に当たりましては、標準化や知的財産を活用した戦略的なルール形成の取組が重要であると考えております。
しかしながら、日本の企業や大学等は、標準化や知的財産を一体的に活用して市場獲得の最大化を狙う、いわゆるオープン・アンド・クローズ戦略を十分に構築できていない状況でございます。
そこで、本認定制度におきましては、企業、大学等における共同研究開発を対象としまして、研究開発の早期の段階からオープン・アンド・クローズ戦略を構築するための計画を認定し、INPIT及びNEDOによる助言を通じまして、当該計画の効果的な実施を支援するものでございます。
これによりまして、研究開発成果の市場化に向けた戦略シナリオ策定への早期着手を強く促し、研究成果の社会実装の確度を向上させる効果があるというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/47
-
048・小林一大
○小林一大君 ありがとうございます。
企業と大学等の共同研究開発に対してオープン・アンド・クローズ戦略を構築する取組を支援するということだというふうに思いますけれども、企業と大学との共同研究開発についても、基礎研究に近いステージもありますし、一方で製品化に近いステージと、いろいろな段階があるんだというふうに思います。
本認定制度を創設することでどのような段階の共同研究開発に対して効果を発揮すると考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/48
-
049・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
基礎研究段階から実用化段階に至るまで、どの段階であっても、オープン・アンド・クローズ戦略をしっかりと検討することは有意義なことであるというふうに考えております。
他方で、研究開発の成果が得られた段階になって初めて市場化に向けたオープン・アンド・クローズ戦略を検討しても、競合他社に先んじられるなど、市場創出効果が限定的になる可能性が高いというふうに考えております。このため、研究開発のプロセスの中で、できるだけ早い段階から市場化を念頭に置いたオープン・アンド・クローズ戦略の準備、展開を進めることが重要だというふうに認識しております。
例えば、研究開発が基礎的な性格を持つ場合に、市場化を意図しないまま研究が進められるケースが多く考えられるところでありますが、本制度は、そのようなケースにおいても、市場化に向けたシナリオ検討への早期着手を促すことで、特に有効に機能するものと想定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/49
-
050・小林一大
○小林一大君 ありがとうございます。
本認定制度創設において、企業と大学等の共同研究開発について、NEDOとINPITが助言を行うことによってオープン・アンド・クローズ戦略を構築する取組を支援することで研究開発成果の社会実装を進めていくということだというふうに思いますけれども、研究開発の社会実装に向けては様々な課題が存在すると思います。
本法案で講ずるINPITとNEDOによる助言等の措置以外にどのような取組を総合的に進めていくことで研究開発成果の社会実装や市場創出を進めていくお考えか、上月副大臣にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/50
-
051・上月良祐
○副大臣(上月良祐君) 我が国の標準化活動には、研究開発段階での標準化戦略の展開に加えまして、標準化人材の育成、確保、あるいは企業の経営戦略における標準化の位置付けといった三つの課題があるというふうに考えております。研究開発の成果を社会に広めていくためには、こうした標準化活動が抱える課題について総合的に取り組んでいく必要があると認識をいたしております。
まず、研究開発段階での標準化戦略の展開につきましては、既にグリーンイノベーション基金等の経産省の研究開発事業におきまして、成果の標準化につきましての戦略策定を企業に求めております。各採択案件の中心的な企業など経産省がヒアリング対象とした百五十四件のうち、これまでに既に約半数が標準化戦略を策定していただいております。加えて、本改正法案で措置する大学等と企業の共同研究開発を対象とした認定制度を通じまして、先ほど来御議論いただいておりますように、研究開発の早期の段階においてもオープン・クローズ戦略の活用を促進することが期待できます。
また、人材に関しましては、研究開発を支える人材の活用、確保や企業の経営戦略の策定においても、現状では標準化の観点が必ずしも十分とは言えませんので、対策に取り組んでおります。
具体的には、日本企業が市場創出戦略の策定に必要な標準化人材を確保できるようにするため、標準化人材のデータベースの構築を進めておりますほか、企業の経営戦略におけます標準化戦略の位置付けを強化しますために、CSO、最高標準化責任者の設置や統合報告書におけます標準化戦略の発信を促してきているところであります。
今回の認定制度の創設に限らず、戦略的な市場創出や産業競争力の強化に向けまして、引き続き標準化活動についての課題をよく把握しながら、必要な施策を総合的に展開してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/51
-
052・小林一大
○小林一大君 今ほどもちょっと触れていただきましたけれども、最後には人材について伺いたいと思います。
市場創出を見据えた戦略的な取組を支えるのは、まさに人材層の確保だというふうに思います。一口に標準化活動と言っても、その活動は、企画の開発段階から経営戦略としての標準化戦略を立案し、実行に移す段階まで実に多岐にわたっており、標準化に関わる人材、いわゆる標準化人材についても様々な素養が求められるのではないかというふうに承知をしています。
我が国における標準化を担う人材についての現状や課題、また経済産業省の取組についてお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/52
-
053・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
我が国の標準人材につきましては、国際標準化機関に人材を供給し続けるなど、高いプレゼンスや知見、ノウハウを蓄積してまいりました。一方で、我が国の標準化人材は高齢化傾向にあり、産業界とアカデミアと連携しつつ、次世代を担う人材の確保が課題となっております。また、市場創出に向けた戦略的活動の重要性が高まっている中で、経営戦略としての標準化戦略を立案、実行できる人材の層も薄い状況にあります。
このため、経済産業省としまして、標準化人材の育成に向けまして、先ほど副大臣からもお答えありましたが、日本の標準化人材を集約したデータベースの構築であるとか、ISOやIEC等の国際標準化交渉の場で活躍できる人材や、標準化を含めたルール形成を経営戦略に組み込むことのできる人材を育成するための研修などを実施、さらには、アカデミアにおいて標準化活動に従事する人材を育成する、育成に向けました学会等による標準化活動の展開等の施策を行っているところであります。
引き続き、標準化人材の育成に取り組むことで、我が国として標準化活動のプレゼンスを維持しつつ、市場創出に向けた戦略的な標準化活動が持続的に展開可能になる環境整備を図っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/53
-
054・小林一大
○小林一大君 ありがとうございました。
政府においては引き続きしっかりと取り組んでいただき、産業競争力の強化、つなげていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/54
-
055・古賀之士
○古賀之士君 立憲民主・社民の古賀之士でございます。
産業競争力強化法、これについてまず大臣にお尋ねをしたいと思いますが、まず大臣にお尋ねする前に、まず資料の一を御覧いただいて、この日本の国際競争力の今立ち位置、こういったものを確認をさせていただこうと思います。
これは、IMD、国際経営開発研究所が出したものでして、上のグラフは、一九八九年から二〇二一年までの各国の国際競争力の世界ランキングをまとめた折れ線グラフでございます。日本企業の国際競争力は、この図を御覧いただいたとおり、一九八九年、世界ランキング一位、そして一九九二年頃まではこの一位が続き、その後、一九九六年まで世界第五位前後、そして、九七年以降がくんと右肩下がり、特に二〇〇〇年から二〇〇二年、この時点では世界ランキング競争力は二十五位前後、そして、新世紀となりましたこの現の二十一世紀、二〇〇二年から二〇〇六年までは一旦十五位程度まで上昇しますけれども、長期的な目線で見ますと、このトレンドというのはやはり右肩下がりで、この資料にあります最新の二〇二一年では、我が国日本は世界競争力ランキング三十一位と出ております。かつて、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代がありましたが、今いずこというような印象を持ったりもいたします。
さらに、この資料の一の左の下の図も御覧いただいてください。
経済産業省さんを始め、政府としても様々な構造改革を一九九〇年以降取り組んでいらっしゃいました。そして、東日本大震災後は六重苦の対応など、必要な政策にも取り組んでこられました。ただ、経済成長や企業の競争力強化というのは、上の図の世界三十一位という現状を見ても不十分と言わざるを得ません。コロナ収束を見据え、世界的な経済成長にも乗り遅れないための大胆な経済政策が必要だということをお互いに共有し合った上で、齋藤健大臣にお尋ねをいたします。
まず、なぜこの失われた三十年というものが起きてしまったのか、そして産業競争力はなぜ低下してしまったのか、この点について、まずお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/55
-
056・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 大変重要な御質問をいただいたと思っています。
これまでの日本経済を振り返りますと、デフレマインドが広がって、これと人口減少による将来悲観、これが重なったことを背景といたしまして、企業の認識する我が国の期待成長率というものも低下をしたのではないかと思っています。これが日本国内における設備や人への投資が諸外国に大きく後れを取った要因の一つではないかなと私は思っています。
こうしたデフレ環境の中で、企業は、生み出した収益を、日本国内ではなくて、主に海外投資に使うことで収益性を高める一方で、国内への還流は残念ながら限定的であったと言わざるを得ないと思っています。政府も、一方で、この市場環境整備を中心としておりまして、結果として国内において新たな付加価値を創出する取組というのが不十分であったのではないかと思います。
こうした反省を踏まえまして、将来の飯の種を生み出して賃金や成長の源泉となり得る社会課題解決型の国内投資を後押しすべく、経済産業政策の新機軸を現在展開をさせていただいているということであります。実際、ここ数年取り組んできた積極的な産業政策の効果もありまして、足下の日本経済は、私は潮目の変化のときを迎えているのではないかと思っています。国内投資は二年前から拡大が続きまして、二〇二三年度は三十年ぶりに百兆円台を実現をいたしました。賃金も今年の春季労使交渉の賃上げ率は、直近の集計でも五・一七%と、昨年に続き高水準であります。
ただ、現時点で、いわゆる失われた三十年を脱出したとまで言うのは楽観的過ぎると私は思っておりまして、まさに今が乗り越えている途上であり、好転の兆しがあるからといってここで気を緩めてはチャンスを逸し、元のもくあみになってしまう可能性があります。三十年間続いたコストカットの縮み志向というものがたった二年間で変えられるものではありませんので、ここからが正念場ではないかと考えています。
今後も積極的な産業政策を更に展開をして継続をすることで、投資も賃金も物価も伸びるこの好循環の成長型経済へ転換できるように努力をしていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/56
-
057・古賀之士
○古賀之士君 御答弁ありがとうございます。
いわゆる最近潮目の変化という言葉をよく伺いますが、この三十年、長期の停滞から決して楽観はしていないという大臣自らの御答弁もありましたし、また、だからこそ新たな成長の糧を、果実をつくっていくということも確認をさせていただいたと思っております。
では、その上で、経済産業政策の新機軸の目標というものを大きく三つの柱としまして、国内投資、そしてイノベーション、所得の向上の好循環ということがされてございますけれども、この三つの点に絞った理由というのは一体どこにおありになるのでしょうか。大臣にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/57
-
058・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) この国内での成長を促すという観点から、この国内投資がまず伸びること、そしてそれを伸ばすネタであるイノベーションが進展すること、そして、その結果として所得の向上につながっていくと、こういう好循環が自律的に回っていくということが、今後再建のキーになるのではないかというふうに考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/58
-
059・古賀之士
○古賀之士君 つまり、これからのやはり日本の投資というものは、後ほどまた伺いますけれども、やはりある程度集中的に国内に振り込んでいかないといけない、振り向けていかないといけない。それには、どうしても新たな技術、そしていわゆるイノベーションが、革新的なものが当然必要になってくる。これからも、世界的には後れを取っている可能性もありますし、実際に後れを取っていると実感される方も多いと思います。以上のようなことからお話を進めさせていただきます。
では、資料の二を御覧ください。
今、国内投資、これが真っ先に上がった三つ目、三つの柱のうちの一つでございますけれども、実際に、この資料を見ますと、これは利益余剰金の推移をグラフにしたものでございます。言ってみれば、企業の内部留保と言い換えても悪くはないかと思いますが、これ、一九八〇年から直近は二〇二二年まで、非常に高い右肩これは上がりを形成していることを確認できると思います。例えば一九八〇年、このグラフの頭は大体五十兆円ぐらいの利益余剰金、そして、どんどんどんどん右肩上がりが続きまして、直近のこの二〇二二年では五百兆円と、つまり、一九八〇年の五十兆円から五百兆円と、桁が一つ増えているぐらい利益剰余金は増えているという推移です。
これ、勘違いをよくされる方がいらっしゃるんですが、じゃ、企業の中には内部留保がいっぱいあって現金があるんだというような方も中にはいらっしゃるんですけれども、実は、この下のグラフを御覧いただいて確認をさせていただきたいんですけれども、かなりの割合が海外に投資向けられているという実態がございます。
そして、なぜ海外に振り向けられているのか、つまり国内投資をしないで海外に向けているかという理由は、これは一言平たく言うと、稼げるからです、高収益が望めるからです。だから、海外に投資を行って、そして海外での高い利益率を持って、そうすることで今まではよかったというのがこれまでの歴史的な背景だということをまず共有させていただきたいと思っています。日本企業の投資先が海外に振り向けられてしまったと。内部留保をそういう形で海外に振り向けたのは、実は収益率が高かったからでございます。
では、そこで質問をさせていただきます。
こういうことをお互いに分かった上で、国内投資は海外投資と何が違って、どのような意味でこの法案にとっては重要なものなのかということをしっかりまず確認をさせていただきたいと思います。そして、企業の内部留保、いわゆる利益剰余金は高収益の対外直接投資に回っていたんですけれども、これについてはどのような印象といいますか、どういう認識を持たれていらっしゃるのか、この点、二点ですけれども、大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/59
-
060・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) これも大変重要な御指摘いただいたと思います。
いわゆる内部留保でありますが、これはすなわち利益剰余金、これは企業が黒字経営を続けている限り増えるというものであります。企業が利益を上げ続けた結果とも言えるんだろうと思っています。そして、企業が積み上げた利益につきましては、バランスシートの拡大に対しまして現預金比率を大幅に増やしたのではなくて、相対的に海外直接投資やMアンドA等を拡大することに活用されてきたのではないかと認識をしています。
その背景には、御指摘のように、これまで企業にとりましては、国内投資は海外投資と比べて収益率の面から魅力的ではなかったことがあるのではないかと私も認識をしています。
しかしながら、国際秩序の不安定化、あるいは技術革新等の不確実性の高まりなどによりまして世界のマクロ環境が変化をしてきている中で、今後は、企業が投資先を選ぶ際に、こうした収益率に加えまして、国際秩序の不安定化等の地政学リスクですとか、あるいは加速化する技術革新の中で重要性を増す技術へのアクセスですとか、技術力を支えるサプライチェーンですとか、あるいは競争力強化に資する政策的支援ですとか、そういった複合的な要因を総合的に評価して投資先をどの国にするかということを判断をしていくことが強まっていくのではないかと考えていまして、こうしたことを考えますと、実は日本は国際的に比較して、不確実性が低く治安がいいといった安定した社会でありますし、例えばGX関連技術の特許スコアが高いなど、優れた技術力も備えておりますし、それから、技術力を支える中堅・中小企業も含めたフルラインナップのサプライチェーンが存在をしていますし、さらに、企業の予見可能性を高めるため、大規模、長期、計画的という方針の下に、予算、税制、規制、標準化等のあらゆる政策を総動員して、戦略分野における国内投資を促進するという政府の強い意思もございますし、そういうことを考えますと、国内外の企業から日本が魅力ある投資家として選ばれるためには、積極的な産業政策をきちんと展開をしていくことが重要かなというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/60
-
061・古賀之士
○古賀之士君 鶏が先か卵が先かという問題にもなってくるかと思いますが。
となると、企業に国内への投資を振り向けてもらうということになりますと、当然それは今までとは、海外に投資していれば一定の高収益の利益を上げることができていた企業も、あえてリスクを取っていかなければならないというケースも当然出てくるかと思います。そこを相当政府から補助していただけるというのが、ある意味この法案の一つの裏テーマだというふうに認識をしておりますが、そのリスクヘッジを企業に求めていくということもある程度は承知をしていただくということも含めて、その認識間違っていないかどうか、御答弁お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/61
-
062・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 経済安全保障が重要になってくるという意味でいきますと、その海外への投資も、そのリスクの高まりということも言えるんだろうと思っていますし、それが、国内での投資が増えてまいりますと国内のリターンも増えてまいりますので、必ずしもそのリスクの回避だけではないと思うんですけれども、いずれにしても、せっかく潮目の変化が来ておりますので、このチャンスを生かすべく、国内での投資がイノベーションを通じて促進されるように努力をしていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/62
-
063・古賀之士
○古賀之士君 ありがとうございます。
それでは、次の大きな柱でありますイノベーションについてお尋ねをいたします。
資料の三を御覧ください。
これは、日本のTOPIX、そして米国のS&Pにおける直近十年間の株式市場のパフォーマンスの推移でございます。
結論から申し上げると、このグラフが伝えているのは、新興企業でありますGAFAMと呼ばれるこの企業たちが米国の経済成長を牽引しているということが言えると思います。逆に、GAFAMを除くと、日米の企業の成長性についてはそんなに大きな、極めて大きな乖離があるわけではないということに皆さん気付かれると思います。ということは、このイノベーションというのは、これからこのGAFAMという巨大なそのデジタルイノベーションを持っている企業とどのような向き合い方をしていくのかというのが一つ大きなテーマになってくるかと思います。
イノベーションは従来の研究開発と、そこでお尋ねなんですが、どのように違っていくのでしょうか。そして、この法案に込められた、イノベーションをあえて柱にするというのはいかなる意味で重要なんでしょうか。そして、経済市場の、特に株式市場のこの推移を見ますと、新興企業のGAFAMを除くとこの大差のない日米の企業の状況、これをどのように感じていらっしゃるのか、御答弁お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/63
-
064・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 今世界では、GXですとか、半導体あるいはAI、量子といった分野の技術革新が、今までにないくらい加速をしてきております。今、こうしたイノベーションの競争におきまして世界に勝てるかどうかというのが、まず今後の日本の経済成長や産業競争力にとって極めて重要な、ある意味転換点に来ているのかもしれないというぐらいに思っています。
社会経済を大きく変えるイノベーションを創出していくためには、担い手となるスタートアップ、これの育成と併せて、研究開発の支援にとどまらず、新しい製品やサービスの事業化を推進するところまで手を広げていくという、そういう環境整備が必要だと思いますし、それらが市場で受け入れられ普及するためのまさに標準化やルール形成、こういった支援も必要だと思っていますので、イノベーションの実現に向けて、各段階での重層的な支援を組み上げていきたいというふうに思っています。
そういう意味では、今回の法案でも、研究開発拠点としての立地競争力を向上させるためのイノベーション拠点税制ですとか、NEDOによるディープテックスタートアップの設備投資への支援ですとか、それから、研究開発段階から社会実装を見据えて知財、標準化を活用するオープン・アンド・クローズ戦略の構築に向けた支援策などの措置を盛り込んでいるところであります。
私は、スタートアップに取り組んでいる日本の若者にも時々会って話を聞くんですけれども、かなり熱意と責任感を持ってやっている方もたくさんいると実感をしておりますので、こうしたスタートアップをしっかり育成していくことや、あるいは研究開発から社会実装までの各段階での支援をしっかり進めていくことによりまして、私は、この社会経済を大きく変えるようなイノベーションの創出につながっていく可能性を大いに感じています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/64
-
065・古賀之士
○古賀之士君 ありがとうございます。
スタートアップのお話でかなり力を込められた大臣の御答弁ありましたが、私も、そのスタートアップの企業をしっかりとこれから成長させていきたい、そして、いわゆるシード、いわゆる種をまくことから、成長をどんどんどんどん大きくしていってGAFAMに肩を並べていくような、そんな企業になってもらえるような種がどこかにあるんじゃないだろうかと思ったりもいたします。
スタートアップのことに関してはまた後ほど伺うことにいたしまして、今は法案提出の背景について三つの柱を主に確認させていただいております。その三つ目というのが、今度は賃金でございます。いわゆる所得の向上というのが柱の三番目になっております。
そこで、資料の四を御覧いただきたいんですが、日本経済の現状でこれは確認をさせてください。実質賃金のこれはグラフでございます。
一九九〇年代以降、アメリカ、米国と比較しまして、日本の実質賃金の伸びは低調であります。このグラフを見ますと、一九九〇年をお互いが、日米両国を一〇〇といたしますと、日本は一〇四と、ほぼ横ばいと言ってもいいような状況です。一方、米国は一四八と、一〇〇から一四八、およそ一・五倍に実質賃金は伸びております。こういったことを踏まえてお尋ねをさせていただきます。
所得の向上というのがその三つ目の大きな柱でございます。日本経済にこの所得の向上というのはどのような意味で重要なんでしょうか。この背景、この法案をあえてされる上での三つ目の所得向上についてのお考えを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/65
-
066・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、大前提といたしまして、実質賃金の上昇は、国民一人一人の豊かさという観点から重要であると思っていますし、加えて、日本経済全体にとっても、個人消費を押し上げてGDP拡大に寄与するという観点からも重要なんだろうと思います。
また、議員御指摘のとおり、過去三十年間、日本の実質賃金は他の先進国に比べて伸び悩んできたわけでありますが、しかし、今年の春季労使交渉において直近の集計では賃上げ率が五%を超えるなど、足下の日本経済は潮目の変化を迎えていますので、ここで物価高に負けない持続的な賃上げというものを何としても実現をして、実質賃金がプラスで推移する状態をつくり上げること、これは我が国がデフレ経済から完全に脱却する上で極めて重要だろうというふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/66
-
067・古賀之士
○古賀之士君 以上のこの法案の三つの大きな柱の背景を確認をさせていただきました。
その上で、その法案の一つ目の柱、国内における投資の拡大について伺ってまいります。
資料の五、御覧ください。一つ目の柱の国内投資促進、そのための新たな生産比例型の投資減税という資料でございます。
簡単にシンプルに言うと、初期投資が割合大きなものに対して今まで補助金を与えてきたものが、今回の法案というのは、生産の製品ですとか、そういったものの個別に対して、生産段階のコストに対して長期的に一定期間減税を行っていくものです。それで、一番この下の赤枠のところでその対象物資というのが定められております。電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、それから、持続可能な航空燃料、いわゆるSAFです、そして半導体というこの五分野でございます。
その上で、お尋ねでございます。こういった五つのものに限定してきた、あえて絞ったと言ってもいいと思いますが、この理由についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/67
-
068・畠山陽二郎
○政府参考人(畠山陽二郎君) お答え申し上げます。
この税制につきましては、欧米を始め、戦略分野の投資を自国内に誘導するための政策が次々と打ち出される中で、我が国としても、戦略分野における新たな国内投資を強力に推進すべく創設したものでございます。
投資促進策、御指摘もございましたけれども、これ実に様々な手法がございます。各分野の特徴などを踏まえまして、予算、税制、規制、制度といった政策を効果的に講じていく、このように考えております。
この税制は、戦略分野のうち、特に、御指摘もありましたように、特に生産段階でのコストが高いことなどから従来の初期投資支援では投資判断が容易でない分野において企業の新たな国内投資を引き出すべく、生産段階における税額控除措置を講じるものでございまして、そのために、御指摘の五分野を対象としているわけでございます。
また、戦略分野のうちほかの分野、例えば電気自動車の構成部品である蓄電池ですとか半導体の製造装置、部素材につきましては、主に初期投資の大きさが課題となってございまして、それを踏まえて、令和五年度補正予算や令和六年度当初予算などに初期投資支援に必要な予算、これ補助金がメインですけれども、これを盛り込んでおりまして、これらも併せてしっかりと取り組んでいきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/68
-
069・古賀之士
○古賀之士君 ありがとうございます。
初期投資もあるし、またそれから生産コストについてもということで、訂正しつつ御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
その分野に絞って、そしてその減税の恩恵とは、十年で一・九兆円、およそ二兆円が想定されてございます。これは、サプライチェーン全体を見渡しますと、いわゆる大企業と言われる一部の企業だけではなく、このサプライチェーン全体にこの減税の恩恵、十年で一・九兆円、二兆円の金額がどのようにこのサプライチェーンに波及し、そして、三つ目の目標、所得の向上にもつながっていくんだろうなという期待を持っての質問なんですけれども、その辺はしっかりと波及をしていくという見込みをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/69
-
070・畠山陽二郎
○政府参考人(畠山陽二郎君) お答え申し上げます。
この税制の対象分野でございます電気自動車、グリーンスチール、半導体などは、いずれも広範なサプライチェーンを構成する業種、産業でございます。この税制を通じまして、こうした分野における国内投資を実現し、生産、販売を拡大することで、地域の中堅・中小企業を含めて、部素材などの発注や供給の確保、拡大など、幅広く経済波及効果が生じると考えてございます。
この税制と併せまして、例えば、先ほども申し上げた電気自動車の構成部品である蓄電池や半導体の製造装置、部素材につきましては、昨年度あるいは今年度の予算で、初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでございます。こうした措置は、この税制の効果を、中小を含めたサプライチェーンにより波及させていく、そういう効果を持つものというふうに考えております。
加えまして、中小企業向けの賃上げ促進税制や徹底した価格転嫁対策、革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資の支援なども取り組んでおりまして、この税制の効果を波及させるとともに、サプライチェーン上の企業の競争力強化につなげていきたいと、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/70
-
071・古賀之士
○古賀之士君 是非、サプライチェーンがそれだけ広範なものをあえて選ばれているわけですから、そこがやっぱりきちんと行き渡っていくように、改めてお願いをしたいと思います。
そして、この法案は、アメリカで言うところのインフレ削減法ということも、随分倣っているところもあると伺っておりますが、これ、財源についてちょっとお尋ねをさせていただきます。
これ、財源について、実は日米には結構違いがありまして、例えば御紹介をいたしますと、歳入、つまり財源ですね、これとして今アメリカがやっているのは、一五%の最低法人税の導入ということをやっています。
実は、この金額だけでも、単位は億ドルなんですが、二千二百二十億ドルの歳入が見込まれております。そして、処方箋の薬価の交渉権というものでいくと、これは更に大きくて、二千八百十億ドル。そして、歳入庁という、この体制を強化しようということによって千十億ドル。それから、これはユニークだなと思ったんですが、自社株買いに対する一%の課税、これによって七百四十億ドル。こういったものが並べられていまして、総額七千三百八十億ドルがこのインフレ削減法の中で、つまり財源として見込まれております。
では一方で、この日本というのはどういう状況なんでしょうか。つまり、我が国の場合はどういう形で財源を出していくのか、あるいは、その財源をどうして、何かどこかから持ってこられると思うんですけれども、その持ってこられる財源のそこを、アメリカとの違いでそうされた理由をお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/71
-
072・畠山陽二郎
○政府参考人(畠山陽二郎君) お答え申し上げます。
この戦略分野国内生産促進税制の財源につきましては、対象分野のうち、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFといったGXの観点から効果の高い戦略分野につきましては、その減収分をGX経済移行債の発行収入で補填することを、昨年末閣議決定しております税制改正大綱において示しているところでございます。
このGX経済移行債は、GX推進法におきまして、化石燃料の輸入事業者等が負担する化石燃料賦課金と、それからもう一つ、発電事業者が負担する特定事業者負担金によって償還をしていくということも法定をされているところでございます。このため、我が国の税制につきましても、財源の確保も織り込んだ制度になってございます。
もう一つ、どうしてそういう財源を選んだのかということでございます。
これは、GXの分野でなるべく早く排出削減、しかも、それが経済成長につながるようなそういう投資を促していきたいと、国内での投資を促していきたいと思っております。したがって、そういうGX分野、すなわちCO2を出さない事業ですとか出さない製品がより競争力を持ち、その分野に投資をすることがむしろ収益性も生むと、そういう世の中、仕組みにしていく必要があると、そこを狙いまして、GX経済移行債の償還財源として、先ほど申し上げたようなカーボンプライシングを適用することにしています。
ただ、経済成長との関係も考えまして、これは、直ちに導入するというよりは、まず支援策によって排出削減、それを行った上で、十分に下がったところで、二〇二八年から具体的には導入いたしますけれども、そのカーボンプライシングは後で来るという、そういう構想にしておりまして、この財源の確保と、それから、特にGX分野での投資を国内で促進をする効果、その両方を狙いまして財源をこういうことにいたしました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/72
-
073・古賀之士
○古賀之士君 日本の場合は、GX移行債という国債を使ってということと、それから、民間から一部をという形で財源をつくっていくということを確認をさせていただきました。こういう形で、日本とそれから米国の違いも少しは共有できたのではないかと思っております。
では、次は、この税制のいわゆる具体的な目標、数値などがもしありましたら教えていただけないでしょうか。つまり、民間から国内投資をどの程度、どんなメカニズムで創出しようかというもので、見込額等が分かりましたら教えていただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/73
-
074・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) この税制は、るる御答弁申し上げておりますが、GX、DX等の世界的な潮流の中で、重要な戦略分野において国内投資を促進しようということを目的としています。特に、生産段階のコストが高い等の理由で投資判断が容易でない分野について、生産、販売量に応じた税額控除措置を講じることで事業全体の採算性を向上をさせるということによりまして、投資判断を引き出していくという効果があるものと考えています。
その投資促進効果につきましては、本税制を始め、予算措置や成長志向型カーボンプライシングなどの規制、制度も含めて政策を効果的に組み合わせるということをさせていただきまして、そのことで、例えばグリーンスチールにつきましては今後十年で三兆円以上の国内投資や、自動車につきましては、蓄電池を含めまして今後十年で三十四兆円以上の国内投資、こういったことを実現をすることを、昨年末に取りまとめたGX分野別投資戦略で明記をさせていただいているところであります。
さらに、本税制の対象分野における国内投資を実現をいたしまして生産を拡大させることで、地域の中堅・中小企業を含め関連分野での投資も拡大されていく効果や、あるいはサプライチェーンを通じた部素材等の発注や供給の確保、拡大といった経済波及効果、こういったものは幅広く生じてくるのではないかと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/74
-
075・古賀之士
○古賀之士君 ありがとうございます。
具体的な、いわゆる鉄鋼業やそれから自動車産業においての具体的な目標というものがもう既に決まっているということですので、それに向けて万全の策を講じていくということになってくるかとは思いますが、正直そのメカニズムというのがまだ私もちょっとしっくりこないところも若干あって、そこもまた深掘りをさせていただければと思っております。
それで、法案の、次に、二つ目の柱、イノベーションについてと、それから新陳代謝促進ということについてお尋ねをさせていただきます。
まず、この資料の六、御覧いただきたいんですが、この日本の経常収支、これの歴史的な変遷を見ていただいております、御覧いただいております。
この経常収支というのは、言ってみれば、牽引して黒字でした、かつては。特に、日本の場合は、先ほどからお話が出ております自動車産業とそれから電気機器、これの輸出によって、エネルギーの分野のいわゆる購入額を相殺するどころかしっかり黒字を出してきておりましたし、かつてはジャパンバッシングと、その経済的な経常黒字が余りにも多いのを国際的にいろいろ言われた時期もありました。
ただ、現状は、自動車は一貫して黒字でございます、この図のとおりですね。ところが、電気機器は黒字が消滅しております。どういう形で消滅しているかというのが、実は下のグラフの各種エレクトロニクス製品に関する日本企業の市場のシェアの推移でございます。
例えば、DRAMと呼ばれるこの赤い折れ線は、かつては八〇%近くあったシェアがもう一桁、それから、その隣のCD―ROMも、一〇〇%近くあったものが今二〇%台、その次の液晶パネルに関しては、一番最初は一〇〇%の国際シェアを誇っていたものが、やはり一〇%あるいは一桁台、そして、CD―RやそれからDVDプレーヤー、そしてリチウムイオン電池に関しても、いずれもがやはり右肩下がりでございます。ニュースでも、液晶パネルなどの撤退などを伝えるのもつい最近ニュースでも出ておりましたけれども、というように、電気機器は一〇〇%ですとか八〇%台の当初シェアを獲得していたにもかかわらず、現状では、一桁あるいは二桁、言っても低い、あるいはもう撤退をせざるを得ないという状況でございます。
その上で、デジタルなどで新領域を持って、新たな国際競争力をつくっていく、国際競争力の再構築、そしてイノベーションというのが急務だと考えておりますけれども、そこを共通の認識としての御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/75
-
076・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 世界的に全ての産業でデジタル化が加速度的に進展をしていますが、特に生成AIにつきましては数十年に一度の技術とも言われておりまして、今後の産業競争力の強化の観点で極めて大きな変革をもたらすことになるのではないかと確信をしています。
生成AIによりまして、データの処理量が圧倒的に増加をします。また、提供されるデジタルサービスの質もこれまでとは比較にならないレベルにまで到達をするのではないかと思います。また、データ処理の爆発的な増大に伴いまして、電力需要も増大していく見込みであります。AI、デジタル技術の高度化と消費電力の削減、これを同時に実現する産業基盤の構築が今後は最も重要な競争力の源泉となっていくのではないかと思います。
こうしたAIの高度化と消費電力の削減を実現するこのキーテクノロジーが先端半導体であります。だからこそ、世界では各国が先端半導体への投資支援を競っているのであると私は認識しています。また、半導体への投資は、地域での雇用や賃金上昇などの効果に加えまして、サプライチェーンに関わる産業全体の活性化など、経済波及効果も極めて大きいという側面も有するわけであります。これは、熊本の例を見れば証明をされているのではないかと思います。そして、AIの開発利活用と先端半導体を軸としたエコシステムづくりこそが、今後の我が国産業の国際競争力の強化に不可欠であります。
我が国は、世界に先駆けて先端半導体支援を開始しておりまして、また、AIについては、開発力の強化と利活用の推進に向けて官民による計算資源の整備や民間によるAIモデルの開発促進に取り組むなど、これまでの取組でその機運が生まれてきていると思います。
こうした投資促進の手を緩めるのではなくて、むしろ投資拡大に必要な政策パッケージを今後も検討していきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/76
-
077・古賀之士
○古賀之士君 ありがとうございます。認識を共有していただいたことを大変有り難く思っております。
今後、そのデジタルなどの新領域で構築していくイノベーションというものと同時に、先ほどから御答弁にもありましたスタートアップ政策のこの動向についても確認をさせていただきます。
資料の七を御覧ください。これは、スタートアップ企業から主にスタートをした、現在の世界のユニコーンと言われる企業のリストでございます。
いわゆるユニコーン企業というのは、十億ドル以上の企業価値を持つ未上場の企業でございます。未上場にもかかわらず、その巨大さや、それから影響力というのはもう御存じのとおりだと思いますが、さらに、最近では十倍規模の、そのユニコーンの十倍規模のデカコーン企業、これは十億ドルではなく百億ドル以上の企業価値を持つ未上場企業があります。
実際に具体的に見ますと、国別ですと一位は米国で、企業数は、ユニコーンの企業数は六百五十六社、評価額は二兆一千百六十億ドル、二位が中国、百六十八社、六千四百十億ドル、三位がインド、七十一社、千九百二十億ドル、以下、イギリス、五位ドイツ、六位フランス、そして、日本ではちょっと、順位が付けられないぐらいちょっと下がってしまいまして、日本の企業は七社、企業価値、評価額は百億ドル。つまり、米国と直接比較すると、日本のユニコーン企業の企業数は米国のおよそ百分の一、評価額では実に二百分の一という結果が出ているわけでございます。
この点を私は非常にこれ危機感を覚えております。スタートアップがなぜこんなに叫ばれているのにここまでうまくいっていないんだろうか。もちろん成功している企業もありますし、今努力している、大きくしようと思って汗をかいている多くの若者たちがいることも、私も重々認識をしております。にもかかわらず、残念ながら、この統計学的なエビデンスで見ると、現状はなかなか厳しい数字が出ているということです。
ですので、大臣に、是非この辺の分析と、そして今後にわたる覚悟といいますか、決意を改めて伺いたいと存じます。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/77
-
078・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、スタートアップは、新しい技術ですとかアイデア等のイノベーションの担い手として、社会課題を成長のエンジンに転換をして日本経済を牽引する重要な存在だと思っています。こうしたスタートアップの創出、育成を支援する取組は、国際競争力の再構築やイノベーション促進において非常に重要であると認識をしています。
御指摘のとおり、日本のユニコーン数は、米国のCBインサイツのデータベースによりますと、足下では七社、デカコーンはゼロ社にとどまっています。
御質問のその要因でありますが、スタートアップが未上場のまま大きく成長をするための大規模な資金や成長人材が残念ながら不足をしていること、あるいは、世界で戦うグローバルスタートアップや成長ポテンシャルの大きいディープテックスタートアップの育成が不十分であるといったことが考えられるというふうに思っております。
こうした状況を踏まえまして、本法案におきましては、JICの運用期限延長によるリスクマネーが不足する成長段階のスタートアップへの資金供給の強化、NEDOの商用設備投資等の事業開発活動への補助業務の追加、これによってディープテックスタートアップの支援を強化しようということ、それからストックオプションを柔軟かつ機動的に発行する仕組みの整備、これによって優秀な人材が確保できないか、それから投資事業有限責任組合、LPSの投資上場規制を受ける外国法人の範囲の見直しによるスタートアップの海外展開の促進などの措置を講じることにしておりまして、これらの取組を通じてスタートアップの更なる成長を促していきたいと思っていますが、やはり一つ一つのスタートアップ企業にしっかりと経済産業省としても着目をいたしまして、それぞれオーダーメードでどういう協力ができるかというところも今後はしっかりやっていかなくちゃいけないのではないかと私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/78
-
079・古賀之士
○古賀之士君 あと、この産業競争力強化法というのは、結びの質問にさせていただきますが、言ってみれば、GAFAMという巨大企業や、それから、例えば最近ではデジタル赤字という言葉も出てきました。例えば、具体名だとあれかもしれませんが、動画サイトあるいは様々活用している通信販売による購入も外国資本のものが多くなってきて、結果的にはなかなか日本の利益に結び付いていない部分もありますし、また、そのおかげで日本が雇用として支えられている部分も当然あるわけなんですが、こういうそのデジタル赤字に関して、また後日になりますけれども深掘りをさせていただこうと思いますが、逆にこの法案に絡めてもし大臣から一言御所見がありましたら、それで結ばせていただこうと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/79
-
080・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 当然のことながら、このDXの分野で日本の企業が成長をしていくことによりまして、デジタル赤字も結果として削減をしていくということになると思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思っておりますし、私は、繰り返しになりますけど、現在スタートアップで、おっしゃるように確かにユニコーン企業少ないですけど、私自身は本当にポテンシャルを感じていますので、そのポテンシャルが実現できるようにしっかり取り組んでいきたいなというふうに思っています。
一点だけ、先ほどの答弁で訂正させていただきたいんですが、投資事業有限責任組合の投資上限規制を受ける外国法人というところを何か投資上場と申し上げたようですので、訂正をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/80
-
081・古賀之士
○古賀之士君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/81
-
082・森本真治
○委員長(森本真治君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午後零時七分休憩
─────・─────
午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/82
-
083・森本真治
○委員長(森本真治君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/83
-
084・村田享子
○村田享子君 それでは、皆さん、御安全に。午後も元気よく質問していきたいと、まいります。立憲民主・社民の村田享子です。
今日から産業競争力強化法等の一部を改正する法律案の審議が始まったわけなんですけど、まず最初に、この法律案についてお聞きをしたいと思います。
今回、産業競争力強化法、LPS法、INPIT法、そしてNEDO法の四本の法案の束ねとなっているということで、この束ね法案については、これまで本委員会でも、やはり束ねになってしまうと充実した国会審議ができないのではないか、また、一本一本の法案に対する国会議員の議決の表明ですよね、それもできないというような課題も指摘をされておりますが、なぜ今回四本の束ね法案としたのかということと、産業競争力強化法につきましては、二〇一八年と二〇二一年にも改正をしております、そのときも束ね法案だったのか、まずその点についてお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/84
-
085・井上誠一郎
○政府参考人(井上誠一郎君) お答え申し上げます。
まずは束ね法案についての御質問でございますけれども、一般に、いわゆる束ね法につきまして、各政策が統一的で、法案の趣旨、目的が一つであること、そして、法案の条項が相互に結び付いていると認められるときは、一つの改正法案として提案できるものとされているというふうに理解をしております。
まず一点目の法案の趣旨、目的の一体性についてでございますけれども、本法案では、産業競争力強化法を始め四つの法律について、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するため、中堅企業者及びスタートアップへの集中支援や経済成長に向けた新たな産業基盤の整備を行うことを目的とした法改正でありまして、趣旨、目的の一体性が担保されているというふうに考えております。
また、二点目の法案の条項の関連性でございますけれども、まず、投資事業有限責任組合契約に関する法律、LPS法についてでございますけれども、このLPSの投資対象を拡大することに伴いまして、産業競争力強化法において同様のこれまで特例措置を設けておったんですけれども、それを削除すること、また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法、独立行政法人工業所有権情報・研修館法において、産競法の新たな規定に基づく計画の認定を受けた事業者に対して、これらの法人、NEDOやINPITが助言業務等を実施できるような措置を講じておりますので、こういった理由から条項の関連性が担保されていると、こういうふうに考えておりまして、束ね法案とさせていただいたところでございます。
また、前回、前々回の改正でございますけれども、いずれも束ね法改正とさせていただいたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/85
-
086・村田享子
○村田享子君 今、政策の趣旨、目的の一体性、そして法案の条項の関連性について御説明をいただきました。また、前回、前々回も、二〇一八年も四法案と、産業競争力強化法に加えて四法案を改正をしたと。また、二〇二一年も同様に、産業競争力強化法に加えて四法案を改正していることで、束ね法案が続いているわけなんですけれども、この前の委員会で審議していました水素社会推進法案、CCS事業法案、これどちらも新法ということで、新法の場合は束ねにはできないということで、でも新法を二本一括審議したということで、これ礒崎委員も御指摘をされていましたけれども、やっぱり国会の充実した審議という上では、ここのところはまず指摘をさせていただきたいなということと、これから皆さんとともにしっかりこの法案についても議論を進めたいと思います。
それで、もう一点、この法案名についてお聞きしたいんですが、今回その産業競争力強化法等の前に、「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための」というふうに、これ冠と呼ばれるんですかね、こちらが付いておりまして、森本委員長もこの長いこれを毎回読まないといけないということで、この二〇一八年、二〇二一年の法案の改正のときにはこうした冠はたしか付いていなかったと思うんですけれども、今内容を見ると、先ほど御説明いただいた政策の趣旨、目的のところがこの冠として付けられているのかなというふうには思うんですが、なぜ今回ここを法案名に付け加えたのか、その理由を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/86
-
087・井上誠一郎
○政府参考人(井上誠一郎君) 委員御指摘のとおりであるんですけれども、一般的にまず申し上げますと、三つ以上の法律の改正を目的とする一部改正法では、一つの法律の題名を挙げまして、あとは等でくくるというふうにされておりまして、その際、改正の目的を明示することにより改正の対象となる法律の範囲をある程度表す趣旨で法律名にその法律の改正目的を加える場合がございまして、本法案におきましても、それに倣いまして、対象となる法律の範囲を表す趣旨で法案名に「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための」という改正目的を加えさせていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/87
-
088・村田享子
○村田享子君 御説明ありがとうございます。
やはりこの産業競争力強化法等というふうにしてしまうと、一般に国民の皆様から、その等にどんな法案があるのかなというのはやはり見えづらいものですので、その解消の一つとして冠を付けるということもあるのかなというふうにも理解をいたしました。
続いて、これもそもそもということでお聞きをしたいんですけれど、この産業競争力の具体的なその産業競争力とは何なのかについてお尋ねをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/88
-
089・井上誠一郎
○政府参考人(井上誠一郎君) 委員御指摘の産業競争力の定義でございますけれども、産業競争力強化法の中で、第二条第一項でございますけれども、定義を置いておりまして、定義を読み上げますが、「産業活動において、高い生産性及び十分な需要を確保することにより、高い収益性を実現する能力」というふうに定義をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/89
-
090・村田享子
○村田享子君 その定義の中の高い生産性というところで、私は、やはり高い生産性を実現するには、人材というものがやはり鍵になってくると思います。
物づくり、製造業ですね、本当に今、現場で働く方というのがなかなか採用できない、若い人が入ったと思ったらすぐ辞めてしまうというような状況が実際に起きています。
経産省の事業の中でも、例えば中小企業省力化投資補助事業のように、カタログにして製品を選びやすくして省力化につなげていこう、そういった事業もあることは承知をしておるんですが、やはりどうしても現場のお仕事って省人化できないものがございます。今回の法案の中でイノベーションの重要性ということも議論されていますが、幾らすばらしい技術ができたとしても、それを製品にすることができる、やっぱり現場のこのたくみの技というか、そういうもので製品化できる皆さんがいないと、私は、やっぱりイノベーションをしてもそれが事業につながっていかないんじゃないかなというふうに思います。
もう一つ、その現状で言わせていただくと、工業高校もあるんですけれども、今、工業高校に入学をしても、卒業の段階でもう全然違う分野に、違う分野に就職される方が多いということで、これも物づくりに人が集まらない要因の一つなんですね。
是非ともこの点を大臣に、どうやってこうした現場で働く人の確保をしていくのか、お考えを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/90
-
091・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 省人化が難しい分野におきましても人材を確保し、我が国製造業が引き続き競争力を維持していくためには、まず、高齢者や女性を含む幅広い人材に活躍いただくための労働環境の魅力の向上とともに、高度な技術系人材の育成を進めていくことが必要だと思います。
このため、経済産業省としては、拡充した賃上げ促進税制の活用促進や労務費の価格転嫁の指針の周知徹底等、あらゆる政策を総動員して、賃金も含めた製造業の労働環境の魅力向上に向けた取組を進めているところであります。
また、半導体や蓄電池、ロボット等の分野におきましては、高度な技術、技能を担う人材を確保するため、経済産業省が橋渡し役となりまして、高専や工業高校と連携をした人材育成コンソーシアム等を分野ごとに設立をしまして、実践的なカリキュラムや教材の開発、産業界からの講師の派遣などを進めています。
さらに、従来はロボットの導入が難しいとされてきた分野でありましても、技術革新による省力化の余地は残されていると思います。経済産業省では、例えば、ロボットによる作業が難しい総菜の盛り付け工程の自動化に向けた研究開発を推進をして、実際に中小企業への実装にもつながってきています。
生産性の向上や国内人材確保のための取組等を行ってもなお人手不足が著しい分野につきましては、特定技能制度を活用して、鋳造、溶接、電子機器組立て等の物づくり技術を有する外国人材の確保も進めているところであります。
経済産業省としては、厚労省等の人材育成の取組とも連動する形でこれらの施策に総合的に取り組むことで、製造業の現場人材の確保、育成をしっかり図ってまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/91
-
092・村田享子
○村田享子君 いろいろな施策に取り組んでいただいているということで、特に大臣の今御答弁の中であった、高専と工業高校と連携しながら産業界の講師を呼ぶというのは非常に重要だと思っていて、やはり工業高校があるその地元の企業と連携をして、あっ、この企業ってこういうものを作っているんだとか、最先端の技術をやっぱり企業で働く方から教えていただくと、その工業高校を卒業した後に地元の企業に就職をするというような意味もございますし、また、これはもう文科省の所管にはなりますけど、工業高校の設備が古いといった話ですね、結局、そこで学んでも現場では技術が生かされないということもございますので、やっぱり物づくりに楽しさを感じてもらって、就職先として選ぶんだと、そうしたような取組をほかの省庁とも連携しながらやってもらえればと思います。
続いて、具体的な法案の中身についてお聞きをします。
今日は、戦略的国内投資の拡大というところでまずお聞きをしたいんですが、今回、戦略分野国内生産促進税制については、今各国が自国産業の投資促進に向けた支援を拡大しているということで、私も重要なものだと思っております。この税制の対象になるものが産業競争力基盤強化商品というふうになっておりまして、その定義に、今後我が国産業の基盤となることが見込まれとありますけれども、この産業の基盤というものの具体的な定義について御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/92
-
093・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
戦略分野国内生産促進税制の対象になっております電気自動車、グリーンスチール、半導体等の産業競争力基盤強化商品は、いずれも当該産業にとどまらず、広範なサプライチェーンを構成し、裾野の広い産業に連なるものであり、こうした特徴を捉えまして、産業の基盤と表現しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/93
-
094・村田享子
○村田享子君 今回の産業競争力基盤強化商品の対象においては、グリーンスチールもございます。鉄鋼業、今回、この中にグリーンスチール入れておりますけれども、やはり研究開発、設備投資にカーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼業全体で十兆円掛かると試算をされておりますので、こうした税額控除がその助けになるというふうに私も思っております。
ここでちょっと教えていただきたいのが、ここでいうグリーンスチールというのが具体的にどういった製品なのか、まず教えてもらえればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/94
-
095・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
今般の税制は、令和八年度末までに具体的な投資案件として主務大臣の認定を受け、新たに国内投資が開始されるものを対象としております。鉄鋼業の脱炭素化に向け、早期に実装可能と見込まれ、かつ大幅な排出削減につながる投資案件を対象として想定をしております。具体的には、鉄鋼業の中でも最大の排出源である高炉を革新的な電炉へと転換することで生産時のCO2排出を大幅に削減した鋼材をグリーンスチールとして本税制の対象とすることを想定してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/95
-
096・村田享子
○村田享子君 今、高炉の中でも電炉に対しての支援ということでお話がございましたが、鉄鋼業には、御承知のとおり、高炉で造るものと、そもそも電炉で既に製品を造っているメーカーもあるわけなんですけれども、既存の電炉においても、グリーンスチール、CO2を出さない製品、グリーンスチール造っていこうという取組が進んでおるわけなんですけれども、既存の電炉で電炉メーカーが製造したグリーンスチールというのは今回の税額控除の対象になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/96
-
097・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
先ほどお答えをいたしましたとおり、今般の税制では、高炉を革新的な電炉へと転換することで生産時のCO2排出を大幅に削減した鋼材をグリーンスチールとして本税制の対象とすることを想定してございまして、御指摘いただきました既存の電炉で製造した鋼材を税制の対象とすることは想定してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/97
-
098・村田享子
○村田享子君 既存の電炉で製造したグリーンスチールは税額控除の対象にならないということなんですけれども、あわせて、じゃ、その電炉メーカーが、もっとグリーンスチール造っていかないといけないよねということで、新たに電炉を建設をしてグリーンスチールを造りましたよといった場合には、税額控除の対象になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/98
-
099・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
これも先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、今般の税制では、高炉を革新的な電炉へと転換することで生産時のCO2排出を大幅に削減した鋼材をグリーンスチールとして対象とすることを想定してございます。
御指摘の電炉メーカーが電炉を新設した場合におけるその電炉で製造された鋼材を税制の対象とすることは想定してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/99
-
100・村田享子
○村田享子君 ちょっと細かいんですが、確認ですけど、高炉が革新的な電炉を建設をしてグリーンスチール造れば対象になりますと。その電炉メーカーが革新的な電炉を新たに製造をして鉄、グリーンスチールを造ったとしても対象にならないという理解でよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/100
-
101・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
御理解のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/101
-
102・村田享子
○村田享子君 となると、高炉の皆さんの製品については税額控除の対象になりますが、今ある電炉メーカーの皆さんが造るグリーンスチールは税額控除の対象にならないということで、私はこの点がちょっと課題があるんじゃないかなというふうに思っております。
ちょっとその話を進めていく前に、今回の制度については米国のインフレ削減法を参考にしたというふうにお聞きをしております。この米国のインフレ削減法の税額控除については、今お話ししているグリーンスチール、グリーンケミカル、半導体というのは対象にはなっておりませんが、日本においてはこの三つの製品を税額控除の対象としたのはなぜなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/102
-
103・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
本税制は、欧米を始めとする各国の戦略分野の投資促進策を次々と打ち出す中で、御指摘のアメリカのインフレ削減法や我が国の産業構造の特徴、強み、さらには既存の制度を踏まえまして、本税制の対象となる分野を含めて制度設計をしているものでございます。
例えば、本税制で対象としているグリーンスチールやグリーンケミカルにつきましては、米国のインフレ削減法では生産比例支援の対象となっておりませんが、これらは、我が国が強みを有する物づくりの基盤となる産業であることや、排出削減と産業競争力強化を同時に実現する上で重要な分野でありながら、特に生産段階でのコストが高いこと等から投資判断が容易でない分野であるということを踏まえまして、本税制では対象にしているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/103
-
104・村田享子
○村田享子君 今回、このグリーンスチールについては、一トン当たり二万円の税額控除をするとしております。幾らがこの税額控除になるのか、この額というのも企業にとっては投資判断の大事なポイントになると思いますが、グリーンスチール、なぜトン当たり二万円としているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/104
-
105・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
先ほど回答がありましたが、今般の税制では、高炉を革新的な電炉へと転換することで生産時のCO2排出を大幅に削減した鋼材をグリーンスチールとして本税制の対象とすることを想定しておりますが、高炉から革新的な電炉への転換に当たっては、大量の電力に加え、鉄スクラップや還元鉄といった鉄鋼原料の確保も必要となるため、その生産コストは上昇するというふうに想定しています。一方で、そうしたコスト差をそのまま税額控除の単価にしていくということではありませんで、需要の開拓や生産性の向上に向けた企業努力を引き出す観点も踏まえまして、各対象物資の控除単価を租税特別措置法において定めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/105
-
106・村田享子
○村田享子君 この税額控除額、グリーンスチールはトン当たり二万円ということで、ほかの商品についてもその商品ごとに税額控除が決まっております。計画が認定されますと、十年間、この税額控除が受けられるということで、結構長い期間になるわけですよね。その間、やっぱり為替というものがどうなっていくのかというのも、企業の国際競争力を考えると重要な点だと思います。円安が続けば、輸出にはいいかもしれないけど原材料が高くなるよね、いや、円高になっちゃったら日本の製品が海外で高くなっちゃうよねという形で、やっぱり、今為替がやっぱり急激にいろいろ変動するリスクというのが昔と比べてもあるというふうに思うんですね。
そういった中で、今回の税額控除額というのは、為替の影響に応じて控除額を変更する、そのような可能性はございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/106
-
107・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
まず、繰り返しでございますけれども、本税制は、御指摘のグリーンスチールなど、特にその生産段階のコストが高いこと等から投資判断が難しい分野について、生産段階における税額控除措置を講じることによって、事業全体の予見可能性を向上し、事業者による国内投資判断を強力に引き出すべく創設するものでございます。
こうした観点から、グリーンスチールについて、税額控除の単価を、御指摘の為替を始め時々の状況に応じてその都度変更される制度とするよりも、その単価を租税特別措置法においてあらかじめ定めることで、事業者が足下において投資判断を行う際の予見可能性を向上し、投資を引き出す制度だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/107
-
108・村田享子
○村田享子君 予見可能性を高めるということで、税額控除額については今回決まったものという、グリーンスチールでいうと一トン二万円ということなんですけれども、先ほどの御答弁で、今回、電炉メーカーの造ったグリーンスチールについては税額控除の対象にはならないということなんですね。
この点、ある電炉のメーカーのやはり会社の方から、何で電炉が外れたのというような御要望を実際にいただきました。一トン二万円というのは、そのメーカーの方が教えていただいたのは、電炉メーカーにすると、電炉で鉄を造るというのは物すごく電力を使うわけなんですけど、トン当たり二万円というのは、もう電気代掛からずに鉄製品造れるよねというぐらいの、やっぱり電炉メーカーにとってはインパクトのある数字みたいなんです。
なので、今回、やっぱり、高炉については税額控除をするけれども電炉についてはしないということで、やっぱり電炉メーカーに何かしら影響が出るんじゃないかということを懸念されている電炉メーカーの方もいらっしゃいますが、この点どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/108
-
109・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
高炉は、大規模な設備や操業体制が必要となる一方、原料となる鉄鉱石の品質に左右されず、高品質製品を大量に生産できるといった特徴がございます。また、電炉につきましては、鉄スクラップの供給制約や不純物除去の技術的制約の観点から、高品質製品の製造に一定の限界がございます。こうした特徴を踏まえまして鉄鋼企業各社が生産方針を選択をしておりまして、求められる品質などに応じて供給する鋼材、すなわちターゲットとなる市場についても一定のすみ分けが行われているものというふうに承知をしております。
加えまして、先ほど申し上げましたとおり、今般の税制では、生産性向上に向けた企業努力なども踏まえて税額控除単価を設定をしておりまして、高炉から電炉への転換に伴う生産コストの差の全額が税額控除されるということにはならないというふうに想定をしております。
こうしたことを踏まえますと、今般の税制によって、高炉メーカーと電炉メーカーとの現状の競争環境において、高炉メーカーを優遇し、電炉メーカーを不利にすることにはならないというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/109
-
110・村田享子
○村田享子君 今の御答弁の中で、今回の税額控除において、税制改正について、高炉だけを優遇して、電炉については不利になるような、そうしたことではないというようなお話でしたので、実際、この税制改正が実際に行われたときに、じゃ、本当に電炉にとって不利な状況になっていかないのかというのは、実際始まった後にしっかり検証をお願いをしたいと思います。
その上で、高炉も電炉になっていくということになりますと、やはり鉄スクラップですね、電炉の原料となりますこの鉄スクラップの需要が高まっていくのではというふうに思っていますが、現在、この日本における鉄スクラップ、ほかの国から輸入をしているのか、又は日本から鉄スクラップ輸出しているのか、どういった国に、じゃ、輸出しているのか、その点も含めてお答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/110
-
111・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
財務省貿易統計によりますと、二〇二三年におきまして、鉄スクラップの輸入量は五万トン、輸出量は六百九十三万トンとなってございます。輸出先の主な内訳でございますが、韓国二百六十三万トン、ベトナム百六十九万トン、台湾九十八万トン、バングラデシュ五十二万トンとなってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/111
-
112・村田享子
○村田享子君 日本においては、二百六十三万トンを韓国に鉄スクラップ輸出しているということで、中国への鉄スクラップの輸出というのはないということでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/112
-
113・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) 中国でございますが、二〇二三年の数値でございますが、二十八万トンの輸出がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/113
-
114・村田享子
○村田享子君 この六百九十三万トンが海外に鉄スクラップが輸出をしているような状況で、ここから高炉メーカーが電炉に転換するとなると、やはり国内での需要量が増えるのではないか。
また、こうした高炉から電炉といった動きはもちろん海外でも行われていまして、ただ、ヨーロッパは元々電炉で鉄を造っている国が多いですし、直接還元鉄を使って鉄を造っていくのではないかと言われておりますが、日本のように高炉の割合が高い国というのが中国なんですね。なので、先ほども中国への輸出量を確認させていただいたんですけど、そうした国が高炉から電炉に変えていくとなると、海外での鉄スクラップの需要が増えていくのではないかと思いますが、その点について御見解お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/114
-
115・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
今御指摘ございましたように、国内外におきまして高炉から電炉への転換を含め電炉の活用が進んだ場合、還元鉄の供給量にもよりますけれども、鉄スクラップの需要は高まっていく可能性があるというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/115
-
116・村田享子
○村田享子君 需要が高まっているという、いくことで、じゃ、どうすればいいかということでいうと、やはり現場の皆さんから言われるのは、やっぱり日本の鉄スクラップはやはり大事な資源だと、やっぱりそれをどう国内で回していくのか、それをもっと国として努力すべきじゃないのではないかということなんですね。
ただ、この点については、先日も私、委員会で、使用済みの自動車向けの鉛バッテリーが国内でリサイクルされずに海外に出ていってしまう、これ資源の流出じゃないかというようなお話もさせていただきましたけれども、やっぱり資源として鉄スクラップの輸出を制限するであるとか、今、経済安全保障推進法で特定重要物資というものを指定することができます。これは、国民の生存に必要不可欠な、又は広く国民生活、経済活動が依拠している重要物資について特定重要物資として指定できるというものでありまして、今回、その鉄スクラップを原料とするその鉄鋼、グリーンスチールが産業競争力基盤強化商品になっているということは、もう基盤なんですから、まさに経済活動が依拠しているそのグリーンスチールの原料ということで、私は特定重要物資に指定することも一つの方法ではないのかなと思うんですね。
もちろん、特定重要物資に指定したことですぐ輸出できなくなるというわけではございませんが、こうした物資に指定することで、やっぱり国として、鉄スクラップはもう廃棄物じゃなくて重要な資源なんだということを、意思を示すこともできるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/116
-
117・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
国内での鉄スクラップの活用を促進していくということは重要でございます。一方で、いわゆるWTO協定との関係では、資源流出の理由だけをもって輸出を制限するということは困難でございます。また、特定重要物資に指定するためには、当該物資の供給を外部に過度に依存している、あるいは供給途絶等の蓋然性が高いといった経済安全保障推進法上の要件に該当する必要がございます。
この点で、鉄スクラップは、国内で発生し、その八割程度が国内で利用されているという状況であることから、外部に過度に依存しているとは言えず、供給途絶の蓋然性も低いということでございます。加えて、仮に鉄スクラップが利用できない場合においても、鉄鉱石や石炭などがあれば鉄鋼を造ることは可能であることも踏まえますと、直ちに特定重要物資として指定する状況にはないのではないかというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/117
-
118・村田享子
○村田享子君 まずはWTOの規定もあって、輸出を制限することはできないということと、供給の途絶の心配がないということで特定重要物資には入れられないということなんですが、この供給はもちろん国内で十分されているというのは私も理解していますけれども、今のこの国内の規制だと、その鉄スクラップがどんどん外に出ていってしまうんじゃないかと、その供給ではなくて、出ていくものに対してどう制限していったらいいのか、そこ、知恵を絞ってやっていくべきではないかなというふうに思うんですね。
最後、今御答弁に、仮に鉄スクラップがなくても鉄鉱石とコークスがあれば造れるじゃないかとありましたが、それ、電炉メーカーはそれ設備的にそんなすぐ鉄鉱石使って、じゃ、鉄造りますねというわけにはいきませんので、そこのところは本当に供給途絶する可能性がないというふうには言い切れないんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/118
-
119・浦田秀行
○政府参考人(浦田秀行君) お答えいたします。
国内で鉄スクラップの供給を確保し、その活用を促進していくということは非常に重要な課題だというふうに考えてございます。
貿易制限的な措置をとるということにつきましては、WTO上の問題があるため困難であるというふうに考えておりますが、それ以外の様々な手法を活用し、国内での流通を促進していくということが大事だというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/119
-
120・村田享子
○村田享子君 国内での流通を促進していくということでいうと、もう鉄スクラップの購入のところでやはり買い負けることがないように、鉄鋼業への支援を行っていくということが重要だと思います。
そうした意味でも、やっぱり電炉メーカーが今回税額控除の対象とならないんですけど、鉄スクラップを購入するためのその資金とするためにも、グリーンスチールのやっぱり今回税額対象に電炉メーカーも入れて、それでちゃんと鉄スクラップ買い負けないぐらいの資金を持って鉄スクラップをちゃんと入手していく。そのためにも、私はやはりグリーンスチール、税額控除の対象に電炉メーカーも入れるべきではないかと思いますし、今回、生産段階のコストが大きいものをこうした税制の対象にしていると言われますが、高炉を革新的な電炉にしたら、同じ電炉を使って物を造るわけですから、スクラップ使います、電気代使います、そこの生産コストは革新的な電炉も、また電炉であってもそう変わるものではないんじゃないかなと、そういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/120
-
121・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 鉄鋼業の脱炭素化、これ進めていかなくてはいけないわけですが、そのためには大幅なCO2削減につながる脱炭素化投資を進めていかなくちゃいけないと。その意味では、今般の戦略分野国内生産促進税制で、鉄鋼業の中でもこの最大の排出源である高炉、これも巨額の設備投資をして造ったものをやめて電炉に転換をしていただくという、そういう決断をしていただく場合にこの税制をお使いをいただこうという発想で講じられるものであります。
御指摘のように、鉄スクラップの需要が拡大をしていくことが想定されるわけですが、その結果、取引価格の上昇というものも生じる場合があるわけで、そういうことが起こっても日本の鉄鋼メーカーが買い負けをしないようにするというためには、やはりその日本の鉄鋼メーカーが造った製品がより高い価値を持つというふうにしていくことが重要で、そのためには、製品単位当たりの排出がどれだけ削減されたのかを示す価値や指標ともいうべき、言わばGX価値をしっかりと見える化をして、GX価値を有する製品に対する需要の創出、拡大が進んでいくような市場環境の整備、これが王道ではないかというふうに思います。
加えて、供給面では、国内で利用可能なスクラップの量を一方で増やしていかなくてはいけないと思っていますので、特に高機能な鉄鋼製品に活用できる品質の高い鉄スクラップは、高炉から電炉への転換が進むにつれて国内で不足していく可能性があるわけです。
こうした問題意識の下で、経済産業省としては、鉄スクラップに混入した不純物を検知をして、より高い精度で品質が高い鉄スクラップを分別するための技術開発支援にも今取り組んでいるところであります。電炉で活用する鉄スクラップの安定的な調達が可能になりますように、引き続きこうした取組を継続していくとともに、鉄スクラップの需要動向等も見極めながら、必要な対応を不断に検討していきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/121
-
122・村田享子
○村田享子君 いろんな政策を通じて鉄スクラップの供給についても是非考えていただきたいということと、今回いろいろ議論させていただきましたけれども、電炉メーカーについてはグリーンスチールの対象にならないということで、その上で、やはり電炉メーカー、一生懸命皆さん頑張っていらっしゃる、何で今回外れたのかなというのもすごくやっぱり御懸念を示していらっしゃいましたので、じゃ、電炉メーカーについて、今現在の支援策、そして今後どうしていくのか、鉄鋼業全体ではなくて、特に電炉メーカーについてはどうなのかについても一点お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/122
-
123・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 質問ありがとうございますという感じなんですが、鉄鋼業全体の脱炭素化に向けては、高炉からCO2排出を大幅に削減することに加えて、当然、電炉におきましても排出削減を進めることも重要でありまして、そのための電炉メーカーによる省エネの取組というものも支援をさせていただいています。
具体的には、省エネ補助金を活用して、電炉メーカーによる効率性の高い設備等への更新を御支援をさせていただいているところであります。この省エネ補助金につきましては、令和五年度補正予算におきまして、今後三年間で七千億円規模で支援をしていくということにしておりますので、こうした予算を活用して、引き続き電炉メーカーによる省エネ投資を御支援させていただきたいと思っています。
また、電炉におけるCO2排出削減を進めるためには、脱炭素電源による電力供給を増やしていくことが重要です、使う方ですね。
昨年七月に閣議決定したGX推進戦略では、再エネや原子力などの脱炭素電源への転換を推進する方針を明確にしておりまして、脱炭素電源の拡大に向けてもしっかり取り組んでいきたいと思っています。
加えて、既に一部の電炉メーカーでは取組が進んでおりまして、余剰太陽光発電を活用するディマンドレスポンスへの対応など、事業者における脱炭素化やコスト低減に資する取組についてもしっかりと促していきたいと考えています。
経済産業省としては、これらの取組によりまして、電炉メーカーの脱炭素化の取組も後押しをしていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/123
-
124・村田享子
○村田享子君 高炉が革新的電炉になっていくと、そして電炉メーカーもこれからも頑張っていくということで、やっぱり、あとはその電気の料金の高さも、これもずっとこの委員会でも言って、地方交付金を通じた特別高圧への支援、それも実現していただきましたけれども、家庭や高圧への電気料金の補助ももう終わりましたし、地方交付金を通じた特高への支援ももう終了している自治体も出てきているということで、これは事業者の皆様からも、こうした電気料金への支援、特に国際競争力、日本はまだまだ他国と比べて電気料金が高いですので、こうしたところもどうしていくのか、その点についても考えていただきたいと思います。
最後に、この戦略分野国内生産促進税制を使っていくということでいいますと、この商品を生産、販売する計画を主務大臣が認定した場合に、その認定から十年間その措置が受けられるとなっているんですけど、まず、この計画の話、ちょっと確認なんですが、計画が認定をされました、その後にその生産のための設備を建設していくということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/124
-
125・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/125
-
126・村田享子
○村田享子君 ということでございますと、じゃ、計画が認定されました、じゃ、新しい工場を造ります、その建設期間はもちろん生産ができないわけですので、その期間も含めて十年間ということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/126
-
127・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/127
-
128・村田享子
○村田享子君 である場合に、当初の計画では一年か二年でできるかなと思っていたけれども、いろんな諸事情で生産設備の建設が思いのほか長く掛かってしまったと、五年、六年になっちゃった、ああ、あと四年しか、生産して税額控除の仕組み使えないな、そうなった場合も、そういった点は特に考慮もされずに、とにかく計画認定されてから十年ですよというようなことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/128
-
129・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
御認識のとおりでございまして、仮にその事業者が認定を受けた後に生産の開始が遅れた場合には、結果的に事業者が生産、販売を通じて税額控除を受けることのできる期間が短くなるということでございます。
ただ、こうしたいわゆる制度設計をした意図は、事業者の予見可能性を確保することで投資判断を引き出すという従来のその観点と、国内投資を加速するという観点を共に踏まえて設計したものでございます。すなわち、事業者が生産設備を建設、導入する期間も踏まえて十年間という極めて長い措置期間を設けつつ、事業計画認定時から十年間の措置とすることで早期の生産開始を促すというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/129
-
130・村田享子
○村田享子君 この制度で、そういった税制であるということでいうと、もちろん企業は、じゃ、計画が認定されました、じゃ、早く設備造って生産したいよね、それは確かに投資を促進するということにはつながると思うんですけど、幾ら企業がそう思っても、生産設備がやっぱり予定どおり建設できるのか、私はここに課題があると思っておりまして、四月に、ある日経の記事で、大型電炉が二〇三〇年に間に合わないといったものが出ておりました。
今、鉄鋼の大手は、二〇三〇年という目標を掲げて大型電炉の研究開発をやっているんですけど、こうした電炉向けの電源設備を手掛けている電機メーカーによると、今、熊本や北海道で半導体工場の建設ラッシュで、電気設備の遮断器とか変圧器の需要が増えて、納期がすごく延びているそうなんですね。もちろん、こうした電気設備、電炉の稼働にも必要になってきます。まず、こうした設備が足りるのかという話、半導体の工場を請けた影響ですね。
もう一つが、皆さん、この鉄鋼会社が、じゃ、この計画認定してもらおうというふうになりますと、その鉄鋼会社が同じタイミングで大型電炉を造っていくということにもなりますので、注文が集中するのではというような危惧もあるんです。その点、この生産設備を建設するための供給力をどう国内で強化していくのかというのが重要になると思います。
この点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/130
-
131・井上誠一郎
○政府参考人(井上誠一郎君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、戦略分野国内生産促進税制の効果を最大限発揮させるためには、税制の対象になっている製品そのものもそうでございますけれども、それに連なるサプライチェーンのところも含めて国内の供給能力強化が進むことが重要だというふうに思っております。
本税制により対象となる戦略分野の国内投資を実現し、生産を拡大することで、サプライチェーンを通じた波及効果として、部素材等への発注ですとか供給の確保、拡大、さらに、そのために関連の設備投資もまた生んでくるというところもあるというふうに思っておりまして、その波及効果を生じさせることがこの税制を通じてできるんじゃないかなというふうに思っております。
そういうことでございますし、あとさらに、この産業競争力強化のためのサプライチェーンを構成する中小企業への対策ということでありますと、経産省としては、革新的な製品、サービスの開発ですとかITの導入、人手不足に対応した省力化投資などについても取り組んでいるところでございまして、こうした取組につきまして、サプライチェーン全体で国内投資の拡大を図りまして、それによって国内の供給能力も強化をし、ということができるように積極的に産業政策を展開してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/131
-
132・村田享子
○村田享子君 今、供給力強化についてはいろいろな取組がされているということなんですけれども、先ほど記事で御紹介した電気設備の話でいうと、やっぱりそこの部分がもう特に今足りないというような話になってきたときに、じゃ、どうやって生産を増やしていくのというのはなかなか簡単にはいかないと思います。今いろんな事業が潮目のときですので、立ち上がっているときに工場を建設したくてもなかなか思うように設備が納入されないよねといったことは起き得ると思うんですね。このような、生産、販売をする事業者の責任ではない事由のために生産が遅れて、想定されていた税額控除が行えないとなると、やっぱり事業に支障が出る可能性も私はあると思います。
今回、今日お話をお聞きしました税額控除の額を為替に影響関係なく十年間同じにしますよというのも、企業の予見可能性を高めるためですと。という意味でいうと、企業は計画を立てて、これぐらいで工場を建設して、残りの期間生産をして、これぐらい税額控除を受けられるだろう。その予見が生産設備の建設の遅れによって崩れる可能性が出てくるわけですよ。
このような生産設備建設の遅れによって、事業者の責めによらない理由によって生産、販売が遅れた場合というのは、私は税額控除の措置の期間を延長するべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/132
-
133・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
先ほども申し上げたとおりなんですが、今の制度設計においては、先生、委員御指摘の点について、この期間を、適用を延長するということについては今のところ考えてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/133
-
134・村田享子
○村田享子君 本当に延長をしなくていいのかなというふうに思うんですけれども、ちょっと大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/134
-
135・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 問題意識はよく分かるんですけど、何か本当に本人の責めによらない重大な出来事が突発的に起こったようなケースにおいてはその都度考慮する必要はあると思うんですけど、通常の範囲内であれば、この制度の趣旨を貫いていきたいなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/135
-
136・村田享子
○村田享子君 今、こういった電気設備が納期がどうなのかというような話が出ている中で、じゃ、日本の供給力が不足しているのであれば、海外のメーカーがもう日本に入ってくるんじゃないかというような懸念があるそうなんです。
今日お話あったように、もう期間が延長できないということであれば、じゃ、とにかく工場を造らないといけないよね、じゃ、日本の製品が納入できないんであれば海外の製品を入れるしかないと、じゃないと税額控除が受けられないというような事態も私は起こり得るのではないかと思います。
この計画を例えば認定をしていく上で、海外の製品を使うのかというようなそういったチェックもされる予定ではあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/136
-
137・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
使用される製品について国内産なのか海外産なのかということについては、現行の制度ではそこは問わないということでありまして、いずれにしましても、申請者から出されるその投資計画の内容を主務大臣が認定するということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/137
-
138・村田享子
○村田享子君 私は、そのサプライチェーンを含めた国内の投資を促進していくという意味では、その生産設備の建設をどこが担うのか、どういった製品を入れていくのかというのも、本当にこの税制を通じて国内の産業が盛り上がっていくのかというのを見ていく上で重要なところだと思います。
なので、今日、いろいろこの税制について深くお聞きをさせていただきましたけれども、やはり日本の産業が成長していく、そのための税制になっていくようにお願いをしまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/138
-
139・森本真治
○委員長(森本真治君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、石井章君が委員を辞任され、その補欠として梅村みずほ君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/139
-
140・里見隆治
○里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
産業競争力強化法等の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。
まず、前提となります産業政策の政府の関わり方、基本的スタンスについて、冒頭、齋藤大臣にお伺いをしたいと思います。
今回の法改正につながりましたのは、その背景として、経済産業省の産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会の議論がございました。私も政務官のときに何度か委員、また有識者の皆様から貴重な御意見をいただき、まさに最先端、新機軸の議論を頂戴してきたところでございます。この部会におきまして一昨年の六月に中間報告を取りまとめられ、それが今回の法律の原型になっているというふうに承知をしております。
この中間報告、中間整理に、私注目をしております。今回のまさに何が新機軸なのかというその考え方が述べられておりまして、ここで、ちょっと長くなるんですけれども、引用させていただきたいと思います。
不確実性が高まる中で、過去の構造改革アプローチでは、民間による成長投資が進まなかった点に鑑み、中長期の社会経済課題の解決を目的とした産業政策、括弧してミッション志向の産業政策、政府が積極的に市場創造に関わり、リスクを負い、ここは括弧して起業型国家とありまして、そして、政府による大規模、長期、計画的な支援により民間投資を呼び込む、ここも括弧してクラウドインとありまして、こうしたアプローチで経済産業政策を見直したというふうに考え方が述べられております。
私なりに言い換えますと、従来の、政府の失敗を懸念して市場機能を重視してきたというそれまでの構造改革路線を転換をして新機軸として打ち出したのは、その裏側として、不確実性への対応に政府の不作為を懸念して政府が市場創造する、政府がリスクを負い投資する起業家国家というふうに受け止めております。何というんですかね、教科書的にといいますか、経済学的にいろいろ勉強しますと、まさに産業政策というのは、この市場と政府のこの間をどう取っていくのかということで、このバランスをどう取るのかということが重要だと思います。
そういう意味で、この近年の様々な産業政策ということを考えますと、この中庸、バランスを取っていくというよりも、最近、近年、お隣の三浦信祐さんも経済安全保障ということで党内で非常に引っ張っていただいている方なんですけれども、この経済安全保障という概念、あるいは政策も進み、また今回の新機軸というような政府の役割に非常にこの重きを置く、そうした傾向が出ているんじゃないかなと。これは日本だけではなくて、まさに国際社会全体の潮流の中で、私たち、政府の産業政策もその方向性を変えてきていると、そういうことだと思います。
そういう意味で、これはまだ何か一時的にこの瞬間ということではなくて、何十年単位の中での潮流だと思います。私なりにこれは、先ほど中庸とかバランスというふうに言いましたけれども、これ別にどっちを取るというものではありませんということだと思います。むしろ、どちらも取ると、両立をしていくという意味合いであろうかと思いますけれども、こうした基本的なスタンスについて、大臣の御認識を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/140
-
141・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 産業政策につきましては、当然ながら、政府が講じる政策だけではなくて、市場機能の活用ということでいえば、双方重要だろうと認識しています。
過去の日本を振り返りますと、一九八〇年代までは伝統的な産業政策、言わば官主導とも言われる政策を展開をしてきておりまして、一方で、一九九〇年代以降は民間主導という考え方の下で市場を重視し、政府としては規制緩和などの市場環境整備策を中心とした政策を進めてきたものの、結果的には政府として新たな価値創造に向けた取組が不十分となってしまったという面があったんだろうと思います。結果として、企業は足下の利益の確保のために賃金や成長の源泉である国内投資を抑制をしてきました。つまり、民間企業、すなわち市場機能だけでは、必ずしも期待していたほどには経済成長できなかったという認識であります。
こうした反省と世界的なマクロ環境変化を踏まえて、経済産業政策の新機軸と称して、産業政策を強化する姿勢に転換をしてきているわけであります。具体的には、政府は、民間市場だけでは進みにくい社会課題の解決に向けて、大規模、長期、計画的に、予算、税制だけでなく、規制・制度改革といった民間市場を活性化させる取組も含めまして、あらゆる政策を総動員していこうとするものであります。
一番分かりやすいのはGXだと思うんですけれども、経済合理性だけ考えれば、なかなか民間企業はその高コストのものを取り組もうとしないわけでありますが、政府が方向性を示し、助成をし、長期的にコミットすることによって、それに乗っかっていこうという機運が出てくるわけでありますので、社会課題解決に向けてというのはそういう趣旨なんだろうと思います。
こうした取組は、市場を軽視しているということではなくて、むしろ政府の取組を呼び水に、民間の予見可能性を高めて、リスクを取って挑戦する企業の取組を生み出していこうということを目的としているわけであります。市場を通じて企業がより成長できるように、政府も一歩前に出て積極的に取り組んでいきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/141
-
142・里見隆治
○里見隆治君 大臣、ありがとうございます。
まさに市場もしっかりと重視しつつ、むしろ政府がしっかりとリスクを取りながら前に出て、そして民間も引っ張り、まあ、引っ張るというよりも官民協調して国際社会に伍していくと、そういう意味で、今回重要な法律案であるというふうに受け止めております。
もう一点、大臣にお伺いしたいんですけれども、この国内の政策と併せて、国際的な視野の中で海外との関係性というふうに見ますと、例えば、アメリカではインフレ削減法、CHIPS法、また欧州ではグリーンディール産業計画など、戦略分野の国内投資を強力に推進する世界的な産業競争政策が活発する中で、日本も世界に伍して競争できる投資促進策が必要だと、これはもう今回も何回も御答弁いただいているとおりでありますが、それに、国益にかなっていると、そういうふうに理解をしております。ただ、これあえて申し上げますと、各国がそれぞれの国益、自分のためだけの利益に走ると社会、国際社会全体としてどうなるのかと、そのこともよく考えておかなければなりません。
自由で公正な貿易秩序という観点でいいますと、その前提となるWTO協定等の国際ルールとの整合ということにも留意する必要があると思います。そもそもWTOには様々な、現時点でも、これだけでなかなか国際的なルールがお約束事として成立しないと、運営できていないという課題もありますけれども、理念的には非常に正しい方向性を目指していると思います。
そうした中で、WTOの補助金協定については留意しておく必要があるんではないかというふうに思います。このWTO協定によりますと、補助金、これ、読み方によって減税措置も含まれるということでありますが、結局これが、この補助金が自由競争を歪曲をし、また輸出先の国内産業に損害を与えるなどということになりますと、先方、輸出先から相殺関税を賦課してもいいですよというのがこれはルールですし、もっとひどい状況になれば提訴されたりといったリスクも考えられます。
このリスクというものも国内政策として考えなければなりませんし、また、国内だけではなくて、この国際ルールをいかに構築していくかということを考えますと、それぞれの主要国がそれぞれの力に応じて過度に補助をするというようなことの、その競争になってしまっては国際経済に非常に大きな影響が、ネガティブな影響が出てしまうのではないかというふうに思います。
この点、齋藤大臣の御認識、お考えを伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/142
-
143・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 補助金は、正当な公共政策目的を達成するためのツールとなるわけでありますが、一方で、貿易歪曲的なものともなり得るということでありますので、WTOでは、補助金について一定の規律を設けているわけであります。例えば、輸入品よりも国産品を優先して使用することを条件とする補助金、こういったものは禁止をされていますし、また、補助金を受けた産品の輸入によって輸入国の産業に損害が生じた場合は、輸入国は一定の手続の上で補助金額の範囲内で関税を引き上げるということを認められているわけであります。
日本におきましては、様々な産業政策に関する制度を設計をする際にはこのWTO整合性にも十分に配慮してきておりまして、日本の投資促進のための補助金につきましても、国際ルール上問題ないものとなっていると考えています。例えば、今回の産業競争力強化法改正で追加された税制上の優遇措置や日本の半導体補助金についてもWTO協定で禁止されている補助金には該当せず、WTO整合的と認識をしています。
また、御指摘のように、他国の市場歪曲的な補助金に対応すべく、日本としても、G7、OECD、WTOなどにおいて問題提起を重ねてきているところであります。例えば、昨年のG7貿易大臣会合では、市場歪曲的な補助金等への対応につきまして、ツールやルールの活用強化を進めることを確認をさせていただきました。引き続き、有志国間の連携強化とより幅広い国への問題意識喚起、こういったものに取り組んでいきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/143
-
144・里見隆治
○里見隆治君 大臣、ありがとうございます。
こうした基本的な認識に立って、あと政府参考人の皆さんに各論について質問していきたいと思います。
まず、戦略分野国内生産促進税制についてお伺いしたいと思います。何度か論点出ておりますので、重なるところもあるかもしれませんが、御容赦ください。
この税制の対象となる、法律上は産業競争力基盤化商品ということで新たに定義がなされております。具体的には、エネルギーの利用による環境への負荷の低減に特に資する半導体ですとか、あるいは、電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFなどを対象としているということで、今後、これは法律上で詳細には決まっておりませんで、今後は政省令で定めるということになっています。
この対象となる商品の考え方をお伺いしたいと思いますが、あわせて、これ当初、蓄電池も入るんじゃないかというようなお話も聞いておりましたが、こちらは対象とならないということ、これは先ほど答弁がありまして、予算措置を昨年度、補正措置をされているということでありますが、こうしてこの予算で措置するもの、また今回の税制で措置するもの、この辺のこの目的とまたその政策手法ですね、これについての関連について、考え方を整理して御答弁をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/144
-
145・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
本税制の対象分野につきましては、欧米を始め各国がGX、DX等の戦略分野における投資促進策を次々と打ち出してきている中、我が国においても、戦略分野の中でも特に生産段階でのコストが高い等の理由から投資判断が難しい分野について、新たに国内投資を強力に推進する観点から選定をしております。
他方で、投資促進策には様々な手法があります。分野ごとの特徴や既存の制度なども踏まえて効果的に講じていくことが重要であるというふうに考えておりまして、委員御指摘の蓄電池につきましては、本税制により対象になっております電気自動車製造の国内投資が進むことでプラスの効果があることに加えまして、蓄電池については、主に初期投資の大きさが課題であるということを踏まえまして、生産向上の初期投資に対する補助金として、令和五年度補正で二千六百五十八億円、令和六年度当初予算で二千三百億円の措置をしているところでございます。こうした投資促進策を講じながら、蓄電池分野における国内投資の拡大にも取り組んでいきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/145
-
146・里見隆治
○里見隆治君 初期に費用が掛かるのか、生産過程での費用についてのリスクをしっかりと政府で抑えていくのかという違いだというふうに理解をいたしました。
この戦略分野国内生産促進税制、その効果は、直接的には最終生産者たる大企業が主に想定されますが、その恩恵を被るものだと考えます。しかし、それでは、サプライチェーン全体を日本に根付かせていくという意味では不十分でありまして、このサプライチェーン全体をこの税制措置によって受けられた恩恵を広く均てんしていくと、広げていくと、そうしたことが重要であろうかと思います。そして、これ午前中も審議にありましたように、この中小・中堅企業を含めて、また地方を含めて広く波及させていくと、そのことがそのサプライチェーン上の事業者のみならず、さらにはこの事業者に連なっている、雇われている労働者の皆さん、またお取引先、そこにいかに波及をさせていくかと、こうした視点が大事だと思います。
したがって、このスタート地点の税制優遇ということだけではなくて、広く事業者また取引先、そして雇用者にどのように広げていくのかと、そうした方策についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/146
-
147・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
まず、本税制の対象分野であります電気自動車、グリーンスチール、半導体などは、いずれも広範なサプライチェーンを構成する産業によって造られた製品でございます。本税制を通じて、こうした分野における国内投資を実施し、生産、販売を拡大することによりまして、地域の中堅・中小企業を含め、部素材等の発注や供給の拡大、確保、さらには雇用、所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じるんではないかというふうに考えております。
本税制と併せまして、例えば電気自動車の構成部品であります、先ほどお答え申し上げました蓄電池であるとか、あるいは半導体の製造装置、部素材については、昨年度の補正予算や今年度の当初予算におきまして、初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでいるところであります。こうした措置は、本税制の効果を、中小を含めたサプライチェーン全体あるいは地域に、より広く波及するものと考えております。
加えて、本税制のみならず、中小企業向けの賃上げ促進税制や徹底した価格転嫁対策、さらには革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資の支援なども取り組むことによりまして、サプライ上の企業のみならず、その他の企業を含めまして競争力強化につなげていきたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/147
-
148・里見隆治
○里見隆治君 次に、イノベーション拠点税制についてお伺いをしたいと思います。
我が国は、これまでも、イノベーションを生み出す事業環境の整備を進めていただいておりますが、先日、我が党公明党の会合で経済産業省から提示をいただきました資料、これは、済みません、今日ちょっと配付はできていないんですが、産業技術環境分科会イノベーション小委員会の資料を拝見いたしまして、これに、国単位の研究開発費については、他の主要先進国が増加しているけれども日本は横ばいであると、さっき類似の資料は配付をいただいておりまして、また、企業単位で研究開発費の売上高に対する割合、これも他国は増加しているものの日本は横ばいという数字でありまして、これは非常に危機感を感じました。
これまで、研究開発税制ということで長年にわたり拡充、拡充を繰り返してき、私としては民間の研究開発を後押ししてきたんだというつもりでいたわけですけれども、それがこの結果だというところに大変残念な思い、また危うさも感じたところであります。その会合の場で経済産業省の幹部に、いや、ここまで研究開発税制後押ししてきたじゃないかと、そういうふうに質問しましたら、逆に、ここまでやったと言うけれども、ここまでしかしていませんと、結局、主要先進国に比べてはまだまだ足りないんですという御回答でありました。そうした中で、今回の税制措置を含めての産業競争力強化という話が出てきたんだと思います。
そういった意味で、この今までの研究開発税制等で後押しをしてきたという中で、今回イノベーション拠点税制を創設することとなる、その趣旨、意義、背景について、改めて御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/148
-
149・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりでございますが、我が国では、これまで民間企業によるイノベーションの促進に向けて研究開発税制を措置してきたところであります。具体的には、研究開発投資を増やした企業を優遇する仕組みであるとか、あるいは自前主義に陥らず、オープンイノベーションを促す仕組みなど、研究開発投資、すなわち研究開発に係るインプットの量と質を高めるという措置を講じてきました。
一方で、産業競争力の強化や社会課題の解決に向けてイノベーションが重視されている中で、イギリスなど諸外国においては、従来の研究開発投資税制に加えまして、研究開発によって生じた知財由来の収益、すなわち研究開発によるアウトプットを継続的に減税する措置、つまり、今回のイノベーション拠点税制のような制度を導入することで、国内での研究開発活動を強力に後押しするための事業環境整備をしてきているところでございます。
近年、国内企業の海外での研究開発費は増加傾向にございまして、企業買収などを通じて海外に研究開発拠点を設ける事例も増えるなど、我が国企業の研究開発活動のグローバル化が進展しており、イノベーション拠点税制の有無を含めた事業環境が研究開発拠点の立地の判断に影響する状況になっております。
こうした背景を踏まえまして、従来の研究開発税制に加えてイノベーション拠点税制を導入することで、我が国の研究開発拠点としての立地競争力を強化し、研究開発の海外への流出を防ぐとともに、企業が国内で投資を行うインセンティブを強化するということで考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/149
-
150・里見隆治
○里見隆治君 今までの研究開発税制の中での今回のイノベーション拠点税制の位置付けということでお話をいただきましたが、ただ、このイノベーション拠点税制、いろいろ御説明をいただいておりますと、既に二〇一〇年以前には、フランス、ベルギー、オランダなどヨーロッパで導入が始まり、アジアでも中国が始めていたようでございます。二〇一五年にOECDでルールを策定したその前後から、それ以降で、アジアの韓国、インド、シンガポールなどで広がってきたということであります。
そうした意味では、ちょっと時間的にタイムラグが生じています。この優遇措置を目当てに、経済合理性から海外に、先ほども海外への拠点移転という話も出ておりましたが、海外に開発拠点を展開する企業も増加してしまったという事実も否定できません。
なぜこの日本で導入に時間が掛かってしまったのか、その理由についても御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/150
-
151・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、欧州を中心に二〇〇〇年代からイノベーション拠点税制のような制度の導入が図られてきました。当初、税制の対象の知的財産権に特段の制約がなかったことなどもありまして、多国籍企業が制度導入国に知的財産権を移転することに伴いまして税収も国際的に移転されるといった性質に留意すべきであるという議論がOECDでございまして、これもまた委員御指摘のとおりでございますが、二〇一五年に国際的なOECDでのルールが整備されたところであります。
我が国としては、国際的なルールを踏まえまして、既にイノベーション拠点税制を導入していた国や、あるいは新たに導入しようとしている国の動向、さらには国際ルールと整合する制度の詳細、さらに、研究開発税制と併せて措置する必要性や研究開発税制に与える影響等も含めまして、慎重に検討する必要があったところでございます。こうした中で、OECDによる国際的なルールの整備を受けまして欧州では制度の見直しが進んだほか、委員御指摘のとおり、近年ではアジア諸国でも導入が進んでおります。
また、繰り返しではございますけれども、我が国企業の研究開発活動のグローバル化に伴いまして、こうした税制があるかないかということによってその研究開発拠点の立地の判断にも影響するというようなことで、この本税制の導入に対する必要性が一層高まってきたということであります。加えて、これまた委員からの御指摘のとおりなんですが、研究開発費を大幅に増加させている国がある一方で、我が国国内の研究開発投資はここ十五年間で横ばいで推移しておりまして、日本として将来の飯の種を生み出す研究開発投資の現状に危機意識を持っていたということ、持つに至ったということでございます。
こうした状況とか、あるいはこういったその機運の高まりなどを踏まえまして、この度、我が国として初めての制度となるイノベーション拠点税制を措置したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/151
-
152・里見隆治
○里見隆治君 ありがとうございます。
先ほど、慎重に検討されてきたと、この点、私、今回の拠点税制導入がどうだったかという検証はできませんけれども、これ、ほかのいろんな行政分野も、満を持して完璧な、完成したものをつくるというのは日本人得意ですけれども、ちょっと完璧性を求め過ぎてどうしても後追いになってしまうという、そのタイムラグで損をしてしまうということも多いと思います。
ほかの条約等でも、これ批准をする、例えばいろんな、これは党派を超えてこの条約は批准するべきだとなっても、慎重に慎重を重ねて、国内法制が整っていませんと。ところが、国内法制が整っていないと思われる他国が、余り言い過ぎると問題ですけれども、もう既に何年も前に批准をしていたなどということも多分にありまして、そうした、何というんでしょうか、もちろん慎重を期すことは重要ですけれども、このタイミング、時期ということもしっかり考えていかなければならないというふうに思います。
じゃ、次に、この拠点税制に関連して、ちょっと地元でお伺いをしてきたことをここで共有し、また政府に確認をしておきたいと思います。
〔委員長退席、理事古賀之士君着席〕
このイノベーション拠点税制については、新たに創設された特許権の譲渡所得等に対する優遇税制、これは多数の特許等を所有する大企業にとっては歓迎されるものである一方で、スタートアップ企業など、自ら研究開発を行って特許権を取得し、それを自社の製品やサービスを販売するような企業にとっての実益は不十分だと、こうした指摘をいただいております。スタートアップ企業等が特許権等の知的財産を生かしてより一層成長するためには、製品やサービスの販売益に対して優遇税制を行い、その優遇分を次の開発資金に振り分け、再投資できるようにしてほしいと、そうしたお声でありました。
もちろん、これ、経済産業省もそうした問題意識、恐らく現場からも届き、またそうした方向性での税制改正要望、昨年夏の時点では要望されていたわけでありますけれども、結局これが、昨年末にはなかなか制度化するまでは至らなかったということでありまして、その販売益については今回の改正では適用対象としないという整理を一旦はしております。
今すぐこれをひっくり返すというわけにはいきませんけれども、実は昨年末の与党税制大綱の、税制改正の大綱において、今引用するように、この点、今後の検討課題として整理をしております。
そのまま引用いたしますと、イノベーションボックス税制、これボックス税制というのは拠点税制と同じ意味だと思います、の対象範囲については、制度の執行状況や効果を十分に検証した上で、国際ルールとの整合性、官民の事務負担の検証、立証責任の所在等、諸外国との違いや体制面を含めた税務当局の執行可能性等の観点から、財源確保の状況も踏まえ、状況に応じ見直しを検討するというふうになっております。
今後、運用面において解決するべき課題ではあるかもしれません、課題はあるかもしれませんが、イノベーション拠点税制の確立のためにも、今回の制度で完結させるものではなく、立地競争力の観点から、製品、サービスの販売時に対する税制優遇の実現に向けて、これは積極的に今後も検討いただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。
〔理事古賀之士君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/152
-
153・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、大変重要な点だと我々も認識しておりまして、スタートアップ企業を始め我が国の多くの企業は、積極的な研究開発により生み出した知財を自らの製品やサービスとして事業化し、そこから収益を次の研究、知財開発に投資するということでイノベーションを継続的に生み出そうとしております。
研究開発拠点としての立地競争力を強化し、無形資産投資を後押しする観点から、こうした知財を生み出した事業者が自らその知財を活用して事業化した製品やサービスの売却益を制度の対象に含めるべきだという声があることは、経産省としても十分に認識をしております。
他方で、知財を組み込んだ製品やサービスの売却益を本制度の対象とする場合には、売却益の中からその知財由来の所得を客観的に特定するため、国際ルールに沿った計算を税務当局が認める形式で申告者が行う必要があります。こうした作業負担への対応や立証責任の所在等を含めて適切な執行が可能かどうかの検討を要するため、今回は、制度創設時においては、対象知財を組み込んだ製品の売却益を対象外としたところでございます。
まずは、諸外国の運用状況や民間の知財管理の状況把握等に取り組みつつ、本制度の着実な執行に努め、その上で、他の税制と同様に制度の執行状況や効果を検証し、本税制がより良い制度になるよう、御指摘の本税制の所得の単位も含めまして、不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/153
-
154・里見隆治
○里見隆治君 よろしくお願いします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/154
-
155・三浦信祐
○三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
我が国の成長戦略を結果に結び付け、更に加速をするためには、国内産業の強靱化、競争力の強化は待ったなしであります。今回、本法案において、成長戦略上欠かすことができない知財、標準化について位置付けの明確化が規定されていることは喜ばしく、これらを軸に今日は質問をさせていただき、また明確化を図っていきたいというふうに思います。
まず、齋藤大臣に質問いたします。
先般の水素社会推進法、CCS法の質疑において大臣と議論させていただきました標準化、規格化、これにつきまして、戦略性を持った推進、取組の方向性を共有いたしました。難しい挑戦だと率直にもおっしゃっていただきましたけれども、官民が力を合わせて能力を構築することが重要であります。
その上で、今回の産業競争力強化法の改正によって、標準化、標準化には産業標準化だったり国際標準化ということはあると思いますけれども、規格化、これが推進できるのでしょうか。より戦略的で具体化が図られるのか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/155
-
156・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先日の水素、CCS法案審議でも申し上げましたとおり、国際標準の獲得や規格の開発は、我が国企業の強みをグローバル市場で反映させるために極めて重要なツールでありまして、我が国の競争力強化に直結する課題であると思います。
国際標準の獲得や規格開発を進めるためには、研究開発のより早い段階から将来の標準化を見据えて、標準化と知的財産権を活用して研究開発成果を市場につなげるという、そういう戦略策定に早い段階から取り組むことが重要であります。本法案では、このような計画を認定をしまして、INPIT、工業所有権情報・研修館及びNEDOからの助言の対象とすることによりまして戦略策定を促進、支援する、そういう措置になるんだろうと思っています。
これらの措置によりまして、研究開発の初期段階から標準化と知財の組合せを核とするオープン・アンド・クローズ戦略に取り組むことを後押しをして、我が国企業が主導する国際標準獲得や規格開発の増加、そして、新たなグローバル需要の開拓につなげていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/156
-
157・三浦信祐
○三浦信祐君 知的財産のオープン・クローズ戦略について、今御答弁もありましたけれども、質問させていただきます。
オープン・クローズ戦略、私もこれまで必要性について訴え、国会質疑でも対外的にもこの言葉を用いてまいりました。社会的にも概念は理解をされていると思います。
ところが、こういう質疑でありますので、改めてですが、明確な定義規定、これを見付けることが、整理ができていない状況でもありますので、改めての確認になるかもしれませんが、政府としてオープン・クローズ戦略をどのように定義付けているのでしょうか。また、本答弁を軸に、今後、定義として引用できるようにお答えをいただきたいというふうに思います。また、そのオープン・クローズ戦略の必要性をどう説明をしているのか、併せて御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/157
-
158・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
いわゆるオープン・クローズ戦略につきましては、様々な捉え方がなされていると承知しておりますが、経済産業省としましては、昨年六月の日本産業標準調査会基本政策部会取りまとめにおいて、その定義につきましては、規制対応、標準化活動、知財管理、ノウハウ秘匿など様々な要素を組み合わせ、適切に使い分けることで市場を創出する戦略というふうにしているところでございます。
こうしたオープン・クローズ戦略は、市場獲得を最大化するに当たって、自社の製品、サービスに含まれる技術について協調領域と競争領域を見極めた上で、どのように公開、秘匿するかについて最適な対応を検討するものであるというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/158
-
159・三浦信祐
○三浦信祐君 定義を付けたという位置付けで、いわゆるということと、捉え方いっぱいあるというふうにいただきましたけれども、これってとても重要なことだと思うんですね。
去年整理ができているという位置付けだと思いますけど、そうしますと、これまで政府としてオープン・クローズ戦略の核となる知財、標準化の政策についてどのように取組をしてきたのかということを、これまず確認をしておきたいというふうに思います。
大臣の所見と現状認識、これについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/159
-
160・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 知財戦略と標準化戦略の組合せがオープン・アンド・クローズ戦略の核だろうと認識をしておりまして、経済産業省としては、企業がこれらの戦略を事業に積極的に取り入れる、これを後押しをしているところです。
具体的には、知財戦略については、知財戦略を経営戦略と一体的に検討するための事業環境分析等を支援しています。加えて、そうした分析や知財戦略構築を支援する専門家の企業への派遣、これも実施をしています。
標準化戦略につきましては、グリーンイノベーション基金等の研究開発事業に参画する企業に対しまして、当該プロジェクトの標準化に向けた戦略の策定やその戦略を推進するための体制整備を個別に働きかけるなど、標準化戦略の活用を促進しています。その結果、グリーンイノベーション基金の参画企業全てに対して標準化戦略の策定を求めるとともに、各採択案件の中心的な企業など、経済産業省がヒアリング対象とした百五十四件中約半数が標準化戦略の策定に至ったところであります。
さらに、知財と標準化の一体的な活用に向けては、例えば弁理士のように技術や知財、標準の実務に通じた社外の人材を活用することも重要でありまして、今後、オープン・アンド・クローズ戦略の策定等の実務に詳しい弁理士をデータベース化するなど、そういったことにも取り組んでいきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/160
-
161・三浦信祐
○三浦信祐君 大変重要な御答弁をいただいたと思います。
この本当に現場をよく知っている方の総力を挙げてやっていくということがこれから大事ですので、これ実現をしっかり後押ししていきたいと思います。
今から五年前の二〇一九年、令和元年の五月の二十八日、当院厚生労働委員会にて、がんゲノム医療についての質問を行いました。
がんゲノム特許戦略、知財のオープン・クローズ戦略を明確化、確立が必要だと、単に調査研究するだけではなく、戦略的に国家として人材育成、知見蓄積、戦略的研究推進、保護に取り組むべき、国として不断の努力をとの質問をさせていただきました。
それに対して厚労省の方からは、がんゲノムの成果を着実に創薬等に結び付けるためには、研究段階から知財管理を行うための体制整備が非常に重要と、AMEDでは、知財ポリシーを策定し、各段階で知財管理をマネジメントし、活用する体制整備がある、関係省庁と連携するとの答弁があります。これ、五年前です。
これ以降、具体的な取組、そして、これまでの経過とともに得られている結果について伺いたいと思います。また、五年が経過し、課題も明確になっていると思いますが、本法案のこの基盤的な位置付けとしての具体例でもありますので、是非この点についても御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/161
-
162・内山博之
○政府参考人(内山博之君) お答えいたします。
我が国で開発した技術が実用化につながるためには知的財産の取得は重要であるというふうに考えてございまして、知的財産を活用するための体制について整備をしてきたところでございます。
具体的には、AMEDにおいて、アカデミアが行う臨床研究等の研究につきまして、AMED知的財産ポリシーにのっとり、知的財産に関する相談支援などを行っているところでございます。
令和五年度の具体的な実績といたしましては、相談支援については百七十件の実績があるというふうに承知をしておりまして、御指摘のありました今後の課題としましては、研究シーズの段階から、出口である医薬品開発までを見据えた知的財産の確保が重要であるというふうに認識をしてございます。
このため、大学に対して、研究の初期段階から現場に直接訪問して特許戦略の相談を行うなどのきめ細かい支援の実施を通じて、引き続き、より多くの研究シーズについて、医薬品開発を見据えた知的財産の支援につながるように努めてまいりたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/162
-
163・三浦信祐
○三浦信祐君 いや、まさに大事な御答弁、これだと思います。最初から入れておいた方がいいということと、出口を見据えてとなったときにどこが狙い目かというところに、最初にその知財人材が入っているということが我が国成長戦略の核になると思います。
是非これも、より伸ばしていただきたいと思いますし、そういう中からベンチャー企業も新しく挑戦する機会が生まれると思いますので、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。
実は、同じ質問の中で、特許庁は産官学連携を更に強化して国益の視点から方向性を見出すべき、今後のゲノム医療知財戦略の取組はどうするのか、受け身で特許が出てくるのを審査するのではなく、特許を取りに行く又は保護していくことに取り組んでいただきたい、明言をと質問もさせていただきました。
これに対し、研究機関や大学は、研究成果について何を公開して何を秘匿しておくのか、特許をどのように取るか、戦略を持った研究開発を進めることが必要と、特に注意すべき分野だと、企業の知的財産や共同研究契約に関する知識を有する専門家を派遣し、知財戦略構築支援をしていると、特許庁職員を大学等に派遣して助言もしていると、日本の最先端の分野の知的財産戦略構築支援をしてまいりたいと、こういう具体的な取組についての御答弁をいただきました。
これ以降、具体的な結果がどうなっているのか、また、取組についてどのように進展して、現状はどのようになっているか伺いたいと思いますし、一番知財のそばにいる特許庁から見たときの課題も併せて伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/163
-
164・滝澤豪
○政府参考人(滝澤豪君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、研究成果の社会実装を進めていくためには、研究開発の初期段階から知財戦略を意識することが必要と認識をしております。しかしながら、大学や研究機関の現場では、研究成果の事業化を見据えた知財戦略の立案を行う専門人材を十分に確保できていない場合もあり、体制の強化が課題となっております。
このため、特許庁は、INPITとともに、革新的な研究開発成果が期待される研究開発プロジェクトの社会実装を後押しするため、研究機関等に対して知財の専門人材を派遣し、知財戦略の策定を支援しております。昨年度におきましても、がんゲノム医療分野を含め、約五十件の研究開発プロジェクトを支援したところでございます。
加えまして、特許庁から大学への職員派遣につきましては、前回御質問いただいた令和元年よりも拡充をしておりまして、令和六年四月現在で十八大学、二十五名を派遣をしております。
本法案におきましても、オープン・クローズ戦略の策定及びその活用による市場獲得に向けまして、INPITの助言事業を規定をさせていただいたところでございます。
こうした取組を通じまして、研究機関や大学等における適切な知財戦略の立案を支援し、研究成果の社会実装につなげていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/164
-
165・三浦信祐
○三浦信祐君 是非これを加速していただきたいと思います。
INPITがなぜこれまで知見があるのにアドバイス機能を持たせてなかったのかという疑問は、これからまた議論をさせていただきたいというふうに思います。
知的財産の活用と本法案との関係について質問いたします。
本法案において、政府が標準化の動向や知的財産の活用状況を調査する規定を整備する、これが位置付けられています。ようやくここまで来たかなという思いもあります。
今回、標準化の動向、知的財産の活用状況を規定したこと、その背景、取組について大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/165
-
166・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) グローバル市場におきまして新たな需要を創造していくためには、標準化や知的財産の活用といったオープン・アンド・クローズ戦略を推進することが必要不可欠であります。にもかかわらず、我が国企業や大学等におきましては、オープン・アンド・クローズ戦略に関する取組が十分に活用されておりません。
こうした問題意識の下、あえて本調査規定を設けまして、オープン・アンド・クローズ戦略に係る動向や、それらが効果的に活用されている事例など、最新の状況を幅広く情報収集することとしています。
さらに、その調査結果につきましては公表することとしておりまして、それにより、オープン・アンド・クローズ戦略の検討に向けた意識を、業種や企業規模を問わず幅広く喚起し自発的な取組を促していくこと、これを大いにやっていきたいと思っています。
また、今回新たに設けるオープン・アンド・クローズ戦略に係る認定制度を運用する上で必要となる情報や知見を蓄積していくためにも意義があるんだろうと考えています。INPITやNEDOにおいても、そうした蓄積を助言に活用することもできるんだろうと思います。
さらに、この調査によりまして、ライセンス取引等で一定の知的財産権を用いていることを確認できた場合には、イノベーション拠点税制を措置することもできるということだと思います。
経済産業省としては、標準化戦略や知的財産戦略はあらゆる業種で活用されるべきものであるとの認識の下に、オープン・アンド・クローズ戦略の更なる活用に向けて取り組んでまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/166
-
167・三浦信祐
○三浦信祐君 是非、このあらゆる分野というところがとても大事ですので、それをリードしていただきたいというふうに思います。
標準化については、一般にデジュールスタンダードとデファクトスタンダードがあります。今回の法律ではどちらを目指す方向でしょうか。デファクトスタンダード、すなわち、市場における実質的な業界標準を構築する取組がこれから日本にとってはより必要になると思います。この挑戦こそが人材育成そのものになります。本法案がデファクトスタンダード化にどう貢献できると考えるか、経産省に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/167
-
168・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
本制度で支援するオープン・アンド・クローズ戦略の本質は、標準化や知的財産の一体的な活用によりましていかに市場を獲得するかといった点にあると考えております。
したがいまして、例えば、必ずISOやIECといった国際デジュール標準を獲得すべきであるといったような、手段を限定する、手段の限定は考えておりません。このため、標準化の活用についても、公的な規格であるデジュール標準を目指すこともありますが、特定企業・団体の合意によるフォーラム標準を活用するとか、あるいはその他の手法によって結果的に市場の支配を狙うなどの手法について、個別の案件により最も適したものを選択し、展開することを目指すものでございます。
本制度の活用によって、研究開発の早期段階で市場を意識した最適な標準化に関する手法を検討する取組が増加することによって、国際的な市場競争が激しくなる中であっても、我が国の研究開発成果を市場につなげる確度を高めることに貢献できるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/168
-
169・三浦信祐
○三浦信祐君 一つ飛ばさせていただきます。
我が国は、標準化を図れる人材、その経験がある人材など、人的リソースが不足をしております。これは、民間も公務員も同じだと思います。また、オープン・クローズを提案、判断されたことを受け止めて、決断する体制や構造が途上にあるとも考えます。
まず、人材を育てる、経験を増やす、同時に、経営者にもオープン・クローズ戦略の理解醸成を図って経営判断に活用されることになっていく、これらを両立して推進することが欠かすことはできません。経済安全保障の実効性にも直結すると考えます。是非これらを推進していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/169
-
170・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
我が国の標準化人材につきましては、国際標準化機関に人材を供給し続けるなど、高いプレゼンスや知見、ノウハウを蓄積してきたというふうに認識しております。
一方で、我が国の標準化人材は高齢化傾向にございまして、次の世代の人材を確保する課題があるというふうに考えております。また、我が国の標準化活動のリーダーシップの一翼を担ってきたアカデミアにおきましても、持続的な標準化人材の確保が課題となっております。同時に、我が国の多くの企業におきまして、標準化戦略を検討する検討体制や経営層への理解醸成は十分ではないというふうに考えております。このため、市場創出に向けて企業経営における標準化活動の位置付けを高めていく必要があるというふうに考えています。
このため、具体的に、まず標準化人材の育成に向けましては、日本の標準化人材を集約したデータベースの構築、あるいはISOやIEC等の国際標準化交渉の場で活躍できる人材や、あるいは標準化を含めたルール形成を経営戦略に組み込むことのできる人材を育成するための研修の実施、さらには、アカデミアにおいて標準化活動に従事する人材育成に向けて、学会等による標準化活動を推進する等の施策を展開しているところであります。
さらに、経営層への理解醸成に向けましては、企業における標準化戦略担当役員、いわゆるCSOの設置であるとか、統合報告書における標準化戦略の発信などの企業への促進、さらには、グリーンイノベーション基金等、国の研究開発事業における標準化戦略策定のフォローアップを実施することにより、採択企業における標準化体制の構築や標準化戦略の立案の促進等の政策を講じているところであります。
引き続き、標準化人材の育成と経営層への理解醸成を両立した取組を進めることで、我が国企業の市場化創出に向けた戦略的な標準化活動を支援していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/170
-
171・三浦信祐
○三浦信祐君 まさに人材を育てるということが大事で、この後の質問は、まさに文科省の方での教育機関におけるこの知財利活用と人材育成の在り方について質問したかったんですが、次回に機会をいただければ、譲らせていただきたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/171
-
172・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
今日は、産業競争力強化法ということで、非常に大事だというふうに思っております。前回も、水素社会の推進、そしてまた二酸化炭素を回収して地中に埋めるという、本当に我が国の産業構造を変えていくという非常に大事なときに重要な法案を審議させていただいているというふうに思っております。
ちょっとその産業競争力強化法に入る前に、ちょっと二点ほどまず質問をさせていただきたいと思いますが、中国の習近平国家主席と、それからロシアのプーチン大統領、五月十六日に署名した共同声明におきまして、福島第一原発の処理水をこれ核汚染水というふうに呼んだ上で、双方は深刻な懸念を表明するというふうに言われております。
これ、我々としては、これ処理水という形で海に流しているわけでありますが、いまだにこんなことを言うのかなというふうに思ったわけでありますが、これ、政府としてしっかりと中国やロシアにこれ抗議すべきだというふうに思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/172
-
173・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本件、個人的には申し上げたいこと山ほどあるんですけど、経済産業大臣としてお答えしたいと思います。
中ロ両国が五月十六日に発出した共同声明におきまして、ALPS処理水の海洋放出につきまして事実に反する言及を行ったことは大変遺憾であります。共同声明発出を受け、日本政府として、外交ルートを通じて、中国側、ロシア側双方に抗議を行いました。
ALPS処理水の海洋放出につきましては、昨年七月に発表されたIAEAの包括報告書でも、関連の国際安全基準に合致しており、人及び環境への影響は無視できる程度であると結論付けられています。また、放出開始後も、モニタリングしたデータを迅速かつ透明性高く公表しておりまして、科学的観点から何ら問題は生じていません。これらの点につきましては、広く国際社会からの理解と支持が得られていると認識をしています。
引き続き、中国及びロシアに対しましては、あらゆる機会を通じ、ALPS処理水に係る科学的知見に基づく理解が進むよう、しっかり取り組んでいきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/173
-
174・東徹
○東徹君 外交ルートを通じてというふうによくおっしゃるんですけれども、本当にちゃんと届いているのかなというふうに思うわけでありまして、経産省としても、どんな対応を外交ルートを通じてやったのかということはしっかりと確認を取っていただきたいなというふうに思います。
それと、中国に対しては、これ、同じ海域で向こうは漁業もやっているわけですよね、日本が漁業しているところの。で、自分のところで、自国で食べているわけですから、こういったこともおかしいじゃないかということもやっぱりしっかりと発言をしていっていただきたいなというふうに思います。
続きまして、台湾についてでありますけれども、日本と台湾の関係というのは私は非常に大事だというふうに思っております。
五月二十日、民進党の頼清徳氏が新しい総統に就任をされました。国会議員の超党派で台湾の方に、就任式の方に行かれたというふうなことも聞いております。
台湾とは、安全保障だけではなくて、産業面、特にやっぱり半導体、TSMCですけれども、台湾の存在というのは我が国にとって非常に重要であるというふうに思っております。
頼清徳総統の誕生をどのように思っているのか、齋藤大臣のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/174
-
175・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) これも、個人的には言いたいことはいろいろあるんですが、経済産業大臣として答弁をさせていただきたいと思います。
台湾は、我が国にとりまして、基本的な価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであります。台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の深化を図っていくということが政府の基本的な方針であります。
こうした日台関係の中で、経済産業省としても様々な経済協力を推進しております。例えば日台の半導体分野の協力については、もう御案内のとおり、グローバルサプライチェーンを強靱化する観点からも重要であるというふうに考えています。
引き続き、相互に積極的な投資を促進することで、こうした協力関係が進展することを期待しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/175
-
176・東徹
○東徹君 齋藤大臣も、たしかTSMCの工場の方へ行かれたというふうなことを記事で見た記憶があります。今回の半導体のサプライチェーンに当たって、台湾というかTSMCの協力って非常に大事だというふうに思いますので、是非そういった台湾との、非常に経済面での重要性も認識していただきながらやっていっていただきたいなと思います。
続いて、今回の産業競争力の関係に入っていくんですけれども、日経新聞でちょっと私見まして、いつの新聞だったか、今日は付けていないんですけれども、四月十四日ですね、非常に男前な、男前と言ったらいいのかどうか分かりませんが、非常にいい顔されて新聞に出ておりましたので、私は大事に取らせていただいておりました。
その日経新聞のインタビュー記事で、齋藤大臣が、GDPが世界で何位になろうとも経済立国でなくてはならないというふうにおっしゃっておられるんですね。GDPが世界で何位であろうとも、ちょっとここは違うんじゃないかなというふうに思ったわけです。下がっていくことをやっぱりよしとするのかというふうに思うわけですけれども、現実的には、二〇二三年度の名目GDPで、日本はドイツに抜かれて世界第四位に落ちて、そして二〇二五年、来年ですけれども、インドに抜かれて世界第五位に落ちるとの推計が、これ、IMF、国際通貨基金がこれ発表しているわけです。
いよいよ来年になったら五位になるのかというふうなことなんだと思いますが、ただ、私は違うというふうに思っているんですけれども、大臣のおっしゃる経済立国であるというのは具体的にどういう経済状況のことを経済立国だというふうに言うのか、これ、数字も含めてお示しいただければ有り難いなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/176
-
177・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私が、GDPが世界で何位になるのかにかかわらずと申し上げた背景の一つは、為替レートで随分今回違っていましたので、それに余り気にしても仕方がない面があるんじゃないかということを申し上げたということですので、やっぱり上位であるにこしたことはないというふうには思っています。
ただ、本質は、やはり経済立国でなければ日本は生きていけないんだろうということでありまして、資源もエネルギーも食料も海外から輸入をしなければ日本人は生きていけないということを考えますと、世界で稼ぐ力、イコール経済力というものがしっかりしていなければ、これは国の存亡に関わるんだろうという意味で申し上げたわけであります。
それで、数字はないわけでありますけれども、そういう意味では、経済が強くなければ恐らく財政再建もできないんだろうと思いますし、社会保障の充実もままならないんだろうと思いますので、そういう意味でも経済立国なのではないかなという趣旨でお話をさせていただきました。
つまり、経済立国とは、様々な地政学的リスクの中でも、経済安全保障の確保を前提に世界各国と安定的に貿易等の交流が行われて、そうした中でグローバルに競争力を持つ産業をしっかりと国内に持って持続的な経済成長を実現をしていくということを意味をしているということであります。
こうした経済立国を実現するためには、海外の国々と貿易をしっかりしていかなくちゃいけない以上、世界が安定して平和であることも重要でありますし、弱肉強食に陥らないように、国際的なルールに基づいて国際経済秩序の形成を推進していくことも日本にとって非常に重要な課題なんだろうと思います。
その上で、世界が大きく転換点を迎える中で、不確実性の高い状況が継続する今だからこそ、官民の強い連携による産業政策を進めていって、同時に、同志国と産業政策を協調させることで世界の技術革新を牽引し、競争力ある産業を国内にしっかり持っておくという必要があるんだろうと。
私は、技術、人材、そして国としての信頼性、様々な面で日本はポテンシャル十分持っているというふうに思いますので、日本が最先端の研究開発事業拠点、これが立地をする世界の創造拠点となるように、積極的な産業政策、経済政策を展開をしていきたいと思っていますし、そうしなければならないというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/177
-
178・東徹
○東徹君 大臣がおっしゃっていることはそのとおりだと思うんですけれども、ただやっぱり、経済立国といっても、本当に経済立国というのは、じゃ、具体的にどういうのなのというふうなところは、僕は大事かなというふうに思っています。
確かに、為替によって日本がドイツに抜かれたというふうな話もありますが、ただやっぱり、ドイツと日本と人口がやっぱり違いますから、これ日本の方が人口多いわけでして、そこはやっぱりちょっと重く受け止めていかないといけないのかなというふうに思っておるわけであります。
続いて、先ほど午前の古賀委員と、質問ともこれかぶるんですけれども、IMDの作成している世界競争力年鑑なんですけれども、二〇二三年版では、我が国の競争力は、これ過去最低の三十五位になったんですね。ちょっとデータ、今日は資料お付けしませんでしたけれども、過去最低は、ちょっとここはもう、何かもう非常に残念に思ったわけですね。三十五位というのは今までなかったランクです。なので、非常にこれ、ちょっともう致命的だなというふうに思っているわけでありますが、それと、一人当たりの労働生産性です。この一人当たりの労働生産性ですけれども、OECD加盟の三十八か国のうち、一九七〇年以降で最も低い、これも最も低い三十一位に落ち込んでいるということなんですね。
国際競争力の強化というものをやっぱりうたうんだったら、やはりこういった競争力ランキングで、いつまでに何位、労働生産性でもいつまでに何位を目指すとか、そういった具体的なやっぱり目標を掲げるべきではないかというふうに思うわけですね。やっぱり、いつまでも何か経済立国だ、ふわっとしたことばっかり言っていても、やっぱり目標に向かってやっていくというものがなかったら私は駄目だと思っていまして、是非やっぱりこの目標を掲げるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/178
-
179・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、私は、経済産業省に勤務していた頃一位だったわけでありまして、それが今こういう状況になったということにつきましては、私にも責任があるのかなと思ったりしましたけれども、いずれにしても劇的な変化が日本に起こってきているわけでありまして、私は、その危機感というものをもっと持っていかなくちゃいけないと思うんですね。
ちょっと話それるんですけど、ちょうど一九八五年の頃だったと思いますが、日本とアメリカの貿易インバランスがすごくありまして、アメリカがそれを、何というんですかね、目の敵にしまして、あらゆる方法で抑え込もうとしてきた時期がありました。その頃まさに渦中にいたわけでありますが。まず、プラザ合意やって、為替レートで力ずくで抑え込もうとしましたし、それから、産業界挙げてヤング・レポートというのを作りまして、日本をやっつけるにはこれがいいというような提言もありましたし、それからアカデミズムでも、MITなんかが、どうして日本のトヨタは強いのかみたいな徹底的な分析をするなどして、政治、官僚、経済、アカデミズム、全てが、何としても日本を、もう一回アメリカを有利に持っていこうというあの緊張感を私は感じていたわけですね。その緊張感が、今追い上げられる立場になっている日本に、あのときのアメリカのようなものが果たしてあるのかと考えますと、私にはあるとは思えないんですよね。
したがって、そういうところが、じりじりと順位を落としていってもさしたる危機感が燃え上がってこないというところにあるんじゃないかなと私は強く思っているので、まあ、だからどうしたらいいかということに関しては特効薬があるわけではないんですけれども。
ただ、今、せっかくこの産業政策上、日本がもう一回浮上するきっかけみたいなものが見えてきたと、半導体もそうですし、それからGXにつきましても、日本がうまくやればリードできる分野が芽生えてきていますので、今緊張感を持ってそういうことに取り組んでいって、結果として順位が上がっていくということにつながるように私としては努力をしていきたいということに思いとしては尽きるということでありますので、目標がないので御満足いただけないかもしれませんが、しかし、やる気だけはたくさんありますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/179
-
180・東徹
○東徹君 大臣の思いはいいんです。そうだと思うんですけれども、まあ確かに一九八九年とか、あの頃世界一位だったわけで、そういった、アメリカからのそういったことで非常に弱体化させられてきたというところもあるんだろうと思いますけれども、もう一回やっぱり反転攻勢を掛けていこうということで、水素だとかCCSだとか、今回もこの産業競争力強化法とかやっていこうとしているわけですから、やっぱりここは、何でこんだけ世界の競争力ランキングが、頑張っているのにまたこれ、また何で下がったんだとか、そしてまた、日本の生産性、これ低いのは何でなんだとか、やっぱりここをしっかり分析して、やっぱり目標を持って、五年後ここを目指そうよと、経済産業省、みんなでちょっと頑張ってこれ目指そうよとかいうような、僕は何か目標が欲しいなというふうに思うんですね。
やっぱり、具体的なやっぱり五年後とか、そういったところでの目標数字を掲げていかないと、なかなか人間って目標に向かって頑張っていこうという気にやっぱりならないんじゃないかなと思うし、それを掲げることによって、産業界も、ああ、よし、今こんなに低いんだったら我々も頑張ろうというふうになっていくんじゃないのかなと、こう思ったりもいたしておりますので、是非そこ考えていただきたいと思います。
大臣の責任でもあるというふうにおっしゃいました。まさしくそうだと思います。大臣は、経済産業省におられて、で、国会議員になられたわけです。ここにおられる方もみんな同じような責任を背負っているわけです。ただ、失われた三十年ってさっきから言われておりましたけれども、政権交代してアベノミクスということで、僕もアベノミクスは反対はしませんけれども、そういう方向でいいんだと思いますけれども、十年たってもやっぱり失われた三十年から脱却できていないわけですよね。だから、やっぱり、そこはやっぱりしっかりと目標を目指して頑張るということがやっぱり大事じゃないかなと思っています。
そんな中で、ちょっとまたくどいようで申し訳ないんですけれども、大阪・関西万博の今日ちょっと資料を付けさせていただいておりまして、いよいよ大阪・関西万博に、電力館のところに核融合の展示ブースが、電事連がこれ検討しているということです。
この核融合というのは、未来のエネルギーというか夢のエネルギーということでいろいろ言ってこさせていただきましたけれども、非常に少ない燃料で、一グラムで、理論上ですけれども、八トンですね、石油の、ぐらいのエネルギーが出るというふうなことで、夢のエネルギーと言われております。
こういった核融合の、電力館にこういったものができるということですけれども、こういったものをやっぱり経済産業省として、もう何かやっぱり核融合は経済産業省も応援しているんだとか、そういったぐらいの何か支援策というのはないのかなと思ったんですけど、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/180
-
181・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 大阪・関西万博における民間パビリオンに関して、電事連が出展するパビリオン、電力館におきまして、核融合も含めた様々な次世代技術に関連する展示を検討しているということを聞いていますと。
その上で、民間パビリオンは、各出展者が様々な創意と工夫を凝らし、感動と共感を与えるパビリオンの実現を目指しており、展示や演出の内容については、各出展者の個性と自主性に委ねることが適切と考えているという答弁が用意をされていたわけでありますが、私は、せっかくの機会なので、これ、やっぱり核融合について、このパビリオンで理解が深まって前進につながることは期待したいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/181
-
182・東徹
○東徹君 経済産業省も支援しますって、大臣も今までこれは言ってきていただいているわけですから、経産省としてもこういった核融合ということについては応援しているんですよと、支援するんですよということぐらいは何か示していっていただければいいんじゃないかなというふうに思っております。
続いて、自動車のことについて質問させていただきたいと思います。これは、我が国にとっては、この自動車産業というのは、これこそ世界で戦える産業だというふうに思っておるわけですけれども。
SDVという、最近よく使われる言葉になってきましたけれども、インターネットを通じてソフトウエアを更新するなどして性能を向上させていこうという車をSDVというふうに言っておりますが、このSDVですけれども、政府としては、次世代車の世界販売で、二〇三〇年に我が国のメーカーのシェアの三割を目指すというふうな方針を言われております。ここでは具体的に、二〇三〇年、メーカーシェアの三割目指す、こういう具体的な目標数字でいいなと思うわけですけれども。
SDVの中心というのはやっぱり電気自動車になってくるわけですけれども、EV市場におけるトヨタなど我が国の自動車産業のシェアはこれ非常に少なくて、数%にとどまっているわけですね。二〇三〇年のシェア三割は非常にこれ高いハードルではないのかというふうに思うんですけれども、どうやって達成していこうとしているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/182
-
183・田中一成
○政府参考人(田中一成君) お答え申し上げます。
委員御指摘のSDV、これすなわちソフトウエア・ディファインド・ビークルのことですけれども、これは外部クラウドとの通信により自動車の機能を継続的にアップデートすることで運転機能の高度化など、従来車にない新たな価値が実現可能な次世代の自動車のことでございます。
このSDVを始めとした自動車のDX分野での国際競争を勝ち抜く観点から、五月二十日に提示した戦略案において、中長期目標として、委員御指摘のように、SDVのグローバル販売台数における日系自動車のメーカーのシェア三割、この実現を掲げたところでございます。
この競争を勝ち抜くためには、従来の自動車産業の枠を超えたITなどの異業種やスタートアップとの連携を進めるとともに、特に競争の鍵を握る領域に政策リソースを集中投入することが重要と考えております。
具体的には、自動車の産業の枠を超えた新たなプレーヤーを巻き込みながら、研究開発や人材育成を進めていくための新たなコミュニティーの立ち上げ、高性能半導体などのSDVの鍵を握る要素技術の共同研究開発、新たに実現する価値として最も期待されている自動運転の社会実装の加速化、企業間のデータ連携促進を通じたサプライチェーン強靱化や新サービス創出、こういった取組を総合的に進めていく考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/183
-
184・東徹
○東徹君 この取組は分かりましたけれども、次世代自動車の販売、先ほどもちょっとお話の中に出たと思うんですけれども、自動車のデジタル化に関連して、経産省が運営主体となって先端人材の育成を図る枠組みをつくる方針というふうなことが報道でも書かれておりました。
自動車産業にとってこれを意味あるものにするためにどのようなこれ枠組みを考えているのか、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/184
-
185・田中一成
○政府参考人(田中一成君) お答え申し上げます。
SDVの開発競争においては、これまでの自動車の物づくりを超えた高いソフトウエア開発力などがこれ必要でございます。これを実現するためには、従来の自動車業界のプレーヤーだけではなく、ITなどの異業種、スタートアップ、こういった新たなプレーヤーとの連携がこれ重要となります。
他方で、現状においては、これらの様々なプレーヤーが定期的に情報共有や議論をする場が存在せず、プレーヤー間の連携が進みにくいという問題がございます。
このような問題意識の下、今般の戦略案において、ソフトウエア人材の確保に関する取組や、企業間の情報共有や連携促進に向けた取組などを行うための新たなコミュニティーとして、モビリティDXプラットフォーム、この立ち上げを盛り込みました。
具体的には、この秋を目途にこのプラットフォームを立ち上げまして、人材獲得、育成に向けた協議会の開催や、リスキル講座の提供、企業間の連携促進のための交流イベントなどの開催、現在取り組んでいる自動運転実証の状況共有などの定期的な情報発信、こういったことを行うことで、様々なプレーヤーの参画を促してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/185
-
186・東徹
○東徹君 モビリティDXプラットフォームということで、新たな枠組みを立ち上げるということでありますけれども、これ、先ほどの齋藤大臣との思いと私もちょっと似ているところがありまして、時々よくEVの話をさせていただいております。
今、世界にEVの台数というのは四千万台ぐらいあって、たしか中国のEVは二千万台をやっぱり超えているというふうに言われておりますけれども。
大臣は私よりちょっと年齢的に上なんですが、私は学生の頃、海外行くと、カメラはニコンかキヤノンか、皆持っているわけですよね。また、当時、また学生時代だったかな、ウォークマンというのもありまして、これもソニーのウォークマンとか、もう世界の皆が持っているような時代があったわけですね。
やっぱり日本の製品ってすごいなと思った時代があって、今でいうと携帯電話ですよね、携帯電話、日本製の携帯電話って、最初出た頃はいろいろあったんですけれども、今はほとんど海外製になってきたじゃないですか。
この自動車にしても、ファーウェイという中国の企業が、ITの企業がありますけれども、あれが今度車を生産するようになっていくというふうな報道も見たりしておって、やっぱり中国は中国でどんどんどんどんとそういった、ここでいうSDVの車にやっぱり特化していこうというふうな戦略なんだろうなというふうにも思ったりもするわけです。
だから、非常に、日本はここで負けたらあかんぞと、こういう思いでいつも質問させていただいておるんですけれども、齋藤大臣も同じ思いではあるんじゃないかなと思うんですが、もし思いがありましたら、お聞きしておきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/186
-
187・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 全く同じ思いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/187
-
188・東徹
○東徹君 ありがとうございます。是非世界の競争力に負けないようにやっていっていただきたいなと思うわけですね。
ただ、残念なのは、ここの永田町で車見ていても、EVってないですよね、何かね。皆さん結構大きな車乗って、エンジン掛けたままですね、これ環境にも悪いんじゃないかなと、こう思ったりもするわけですが、もうちょっとそういったところでも国会議員自身もやっぱり考えていっていくべきじゃないのかなというふうに思ったりもしております。
続いて、太陽光発電に関係するようなところで、ペロブスカイト型の太陽電池について質問させていただきます。
曲がるほど薄いと言われているペロブスカイト型の太陽電池ですけれども、この普及に向けて、国内メーカーのほか、経済産業省とか東京都も含めて協議会を立ち上げるということです。この協議会では、この夏にも二〇四〇年度の導入目標を策定して、二〇四〇年度の電力構成を定める次期エネルギー基本計画ですよね、ここに反映さそうということであります。
従来型の太陽電池、シリコン太陽電池というんだと思いますが、日本勢が、これも世界で、世界シェアで半分以上占めておったときがあったと思うんですけれども、中国勢との価格競争にここで負けてしまって、今、中国の世界シェアは七七・八%、もう圧倒的なんですね。二位はどこかというと、ベトナムで六・四%ということで、圧倒的に中国のシェアが大きいということです。
このペロブスカイト型の太陽電池においても、二〇二二年度から、二〇二二年頃から中国企業による生産がこれ既に始まっているということなんですね。大規模な生産体制の構築も進んでいるというようなことがよく報道で目にするわけです。
このペロブスカイト型の太陽電池ですけれども、今回の法案の産業競争力基盤強化商品の対象とはされていないんですね。支援がこれで十分とは僕は言えないんじゃないかなというふうに思っていまして、このままで、従来型の太陽電池の二の舞になるんじゃないかというふうに思ったりもしているわけですが、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/188
-
189・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 既に汎用品となりましたシリコン型太陽電池は、もう価格競争にさらされ、日本企業が競争力を失ったわけでありますが、このペロブスカイト太陽電池は、国内外の新たな市場を創造し、国際的にも高い競争力を発揮することが可能な分野であるというふうに考えています。
少しその理由を申し上げますと、まず、軽量で柔軟なフィルム型ペロブスカイトは、中国を含む海外と比べまして、耐久性や大型化の技術面で日本企業に強みがあって、今後世界をリードすることが期待ができると。それからもう一つは、現在主流のシリコン型太陽電池で使用されるシリコンが海外に多く依存するのに比べまして、ペロブスカイト太陽電池の原料となるヨウ素は日本が世界第二位の産出量を誇って、原材料の面でも日本に強みがあるという点があるんだろうと思っています。
経産省としては、グリーンイノベーション基金、これを通じまして、ペロブスカイト太陽電池の技術開発から社会実装まで切れ目なく支援を行いたいと思っていますし、別途サプライチェーンの構築を支援する予算措置も講じるということで、民間投資を強力に後押しをしていきたいと思っています。
御指摘がありましたが、今月下旬からは、有識者、メーカー、空港・鉄道、原材料、建設・不動産などの関係業界団体、再エネ導入に積極的に取り組む自治体など、幅広い関係者を集めた官民協議会を開催したいと思っていまして、そこでは、導入目標や価格目標の設定、それから国内サプライチェーンの構築、需要をどうつくっていくか、それから国際標準の策定、海外市場の獲得など、導入拡大と産業競争力の強化に向けて官民で取り組むべき具体的な対応策を検討していきたいと思っています。
官民の英知を結集していくわけですが、やはり世界に引けを取らない規模とスピードの投資、これが重要だと思っていますので、この実現に向けてしっかり取り組んでいきたいと思っております。中国は強敵だと思っていますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/189
-
190・東徹
○東徹君 ペロブスカイトで巻き返しを図るというふうなことで、非常に心強い話でもあるのかなというふうに思っています。
発電効率もだんだんとこれ、ペロブスカイトも上がってきているということでありますから、いいなというふうに思うんですけれども、民間の予測では、これ導入量なんですけれども、二〇四〇年に三千八百三十万キロワット、二〇五〇年に八千四百二十万キロワットまで伸びるということで、今の太陽光発電の導入規模が約七千万キロワットですから、それを超える可能性もあるというふうに言われています。
ただ、やはり気になるのは、やっぱりFITにおいてペロブスカイト型の太陽電池の価格というのは従来型の太陽電池よりも高い。一キロワット時当たり十円以上で調整するというふうなことも聞こえてきたりしておりまして、ペロブスカイト型の太陽電池の導入がこれ進めば進むほど、その分また電気料金が上がるということになるのではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/190
-
191・上月良祐
○副大臣(上月良祐君) 再生可能エネルギーにつきましては、国民負担の抑制を図りつつ最大限導入していくということが政府の基本方針であります。
こうした方針の下で、FIT・FIP制度においては、調達価格等算定委員会の意見を尊重して、まず、入札制度の活用等によりコスト低減を図ると同時に、二〇二三年十月から、屋根設置型の太陽光は地上設置型より高い価格設定を、価格を設定するということなど、再エネ拡大と国民負担抑制の両面からめり張りを付けて支援を行うようにいたしております。
その上で、今後、導入拡大を図るペロブスカイト太陽電池につきましては、調達価格等算定委員会において、新たな区分の創設の検討に着手したところであります。
将来的な自立化も見据えながら、これはFIT、FIPそのものではないんですけれども、技術開発の支援等も含めて取組を進める、まあ価格を下げれるような意味でのですね、そういうふうな技術開発等の支援も、取組も進めつつ、国民負担の抑制にも留意しながら具体的な検討を行っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/191
-
192・東徹
○東徹君 ということで、できるだけコストを下げる努力はしていきますよということなんでしょうけれども、ただ、FITでお金取るということには違いはないということでこれよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/192
-
193・上月良祐
○副大臣(上月良祐君) それは御指摘のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/193
-
194・東徹
○東徹君 これ、私も今までこの委員会でよく質問を、電気代のことについても聞くんですけれども、いつも言うのはいいことしか言わないんですよね。
この電気代については、二〇三二年頃にピークを迎えて、要するに、FIT制度の当初の四十円程度と比べて買取り価格は低下傾向にあって、こういったことで、二〇三二年度頃にピークを迎え、その後、減少に転じる蓋然性が高いというふうに考えていますとか言って、いつもいい話ばっかりしはるんですけれども、やっぱりペロブスカイトではFITだし、またこれから、洋上風力もこれから増えていくというふうになると思うんですね。そうしたときには、やっぱり電気代というのは、やっぱりコストは上がっていくというふうな、そこには乗っていきますよというふうなことで、ここは間違いないということでいいんですかね。再度の質問で申し訳ありませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/194
-
195・上月良祐
○副大臣(上月良祐君) それは将来のことですから、まだきちんと見通して言えるわけではありませんが、先ほど来申し上げておりますように、国民負担の抑制を図りながらやっていくということは大方針でありますので、そのことも考えながら、今長期の見通しも出しておりますけれども、今の委員の御指摘もよく頭に置いてしっかり制度設計ができるように取り組んでいきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/195
-
196・東徹
○東徹君 是非よろしくお願いいたします。
続いて、産業競争力強化法による効果についてお伺いをしたいと思います。
この産業競争力強化法の法律が制定されたのは、二〇〇二、いや、ごめんなさい、平成二十五年です、だから二〇一三年ですかね、ちょうど政権交代があって、翌年になるんだろうと思うんですけれども。我が国の産業を中長期的にわたる低迷から脱却させるために、産業競争力強化法がこれは制定されたわけでありますが、その後も国際競争力ランキング、先ほどからずっと話をさせていただいておるとおり、労働生産性の順位など、これまでの結果を見れば、我が国の経済はこれ成長してこなかったということをこれ言わざるを得ないわけですね。
ここでやっぱりきちんとフィードバックして、そして、何が成功したのか、何が失敗したのかということをしっかりとこれ考える必要性があると思いますが、何が成功して何が失敗したというふうに考えているのか、ここは大臣にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/196
-
197・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の平成二十五年に産業競争力強化法が制定されて以降、各種の施策の効果と相まって、デフレでない状況をつくり、GDPも拡大をして、企業収益も拡大をして雇用を増進するなど、そういった成果はあったんだろうと思っています。
一方で、この間、企業が足下の利益の確保のために賃金や成長の源泉である国内投資を抑制した結果、長期的な日本の成長力、これが低迷をしてきた、これが今最大の課題になっているんだろうというふうに思っています。
その上で、いつも申し上げているように、足下では春季労使交渉の賃上げ率の話、二年連続で企業の賃上げ力が加速をしていますと、それから三十年ぶりに百兆円規模の投資が実現をしてきているということで、この潮目の変化をいかに生かしていくかということが今求められているんだろうと思います。ここで気を緩めてチャンスを逃して元のもくあみにしてはならないということでいえば、これからが正念場で、この改正案において講じる措置によって国内投資を更に促進をさせていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/197
-
198・東徹
○東徹君 先ほど大臣言われたんですけれども、産業競争力強化法によって本当にその効果があったんかなというところは、非常に私は何かそんなふうに、ちょっと今お話聞いていて感じない点が多いなというふうに思ったんです。非常に、例えば具体的に何か成長した産業とかあったのかなというふうにも思ったりもしますし、そういうのも、もう余りこの十年間ではなかったんじゃないかなと思ったりもしております。
そんな中で、産業競争力強化法には、特に日本経済の過剰規制、過小投資、過当競争という三つのゆがみを是正するという役割が求められていたはずですけれども、この法律によってこれらの役割が十分果たされてきたというふうに考えるのかどうか、この点についてもお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/198
-
199・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたけれども、今御指摘のあった過剰規制、過当競争、過小投資、ここについての成果ということの御指摘かと思います。
平成二十五年に策定されました産業競争力強化法でございますが、アベノミクスの三本の矢の一つである成長戦略、これを実行いたしまして、今御指摘があった三つの課題、ゆがみを是正することを目的としてきたということでございます。
我々としては一定の成果を上げてきたのではないかと認識しておりますが、もちろん、議員の方からは、先ほどの競争ランキングも含めて、御指摘ある点については重々承知をした上でお答え申し上げたいと思いますが、例えば過剰規制につきましては、新事業特例制度といったような事業者単位の規制・制度改革によりまして、例えば電動キックボードのシェアリングビジネスといったような新分野のビジネス展開、こういったものを後押ししたような事例ございます。また、グレーゾーンの解消制度によりまして二百八十七件、そして新事業の特例制度により十六件、そして規制のサンドボックス制度というのがございますけれども、これが三十一件、こういった新事業の展開を支援をいたしまして、それらの社会実装を後押しをしてきたのではないかなと思っております。
また、投資の点につきましては、旧の産業革新機構におきましては、スタートアップに対して百十六件、約二千五百億円の投資を行いましたり、また、JIC、産業革新投資機構でございますが、本格的に投資を始めました二〇二〇年十二月から三年程度で約一千八百億円の国内のスタートアップに出資をして、投資先全体において計約一・一兆円もの民間投資を生み出してきているということでございます。
また、過当競争の点につきましては、石油の精製業でありますとか情報通信分野、こういったところにつきまして約百四十社が事業再編計画を作りまして、税制措置を活用いたしまして生産性向上に資する事業再編を実施してきて、一定の我が国産業構造の変革にも影響力をしてきたのではないかと思っております。
その上で、今般の改正案につきましては、先ほど大臣の方から御答弁あったような形で、国内の投資、イノベーションの拡大を更に後押しをしていきたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/199
-
200・東徹
○東徹君 いろいろと説明していただきましたが、何か経済が成長してきたなという実感というのがまだまだだなというふうに思うわけですね。
よく政治は結果責任というふうに言いますけれども、本当に我々もやっぱりその言葉をしっかりかみしめて、日本の経済がしっかり成長できるように我々もしっかりと努力していかなきゃならないなというふうに思っております。
今回の法案で、従業員二千人以下の企業、中堅企業への支援というものが含まれておりますけれども、令和三年度の法改正では、中小企業の足腰の強化として、中小企業は中堅企業へ成長し、海外で競争できる企業を育成していくために、支援施策の対象拡大とか、それからMアンドA税制、こういったものが盛り込まれたわけであります。
これによって何社の中小企業が中堅企業へと成長できたのか、そのために総額で幾らぐらいの予算が使われたのかとか、そしてまた、税の軽減が行われたのか、この点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/200
-
201・山本和徳
○政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
ただいま委員から御指摘がありましたように、前回の産業競争力強化法等の改正におきまして、規模の拡大を目指す中小企業を応援するため、資本金によらず、中小企業の定義よりも従業員基準を引き上げた新たな支援対象類型、特定事業者等でありますけれども、創設したところでございます。
御質問のありました実績でございます。民間調査機関のデータを踏まえまして、各年度に中小企業基本法に基づく中小企業から中堅・大企業に成長した企業数を推計いたしました。前回の法改正、二〇二一年度でありますけれども、その前年度であります二〇二〇年度におきましては、これが三百八社でありました。直近の二〇二三年度におきましては、中小企業から中堅・大企業に成長した企業数は四百四社となっております。
予算事業又は税制措置の主なものとしては、例えば、これは特定事業者等のみに適用するものではなく、幅広く中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援するものでありますけれども、生産性革命推進事業において、二〇二一年度以降、累計で約六千億円の予算を講じてきております。
また、中小企業がMアンドAのリスクに備えるための準備金を積み立てた場合に株式取得価額の七〇%まで損金に算入できる中小企業事業再編投資損失準備金におきまして、二〇二一年度以降、実績が把握できます二〇二二年度までの累計で、百五十二億円が本税制の損金算入の対象となっております。
今般の改正における中堅企業への後押しの強化と併せて、成長意欲のある中小企業が規模の拡大を目指せる環境を適切に整備してまいりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/201
-
202・東徹
○東徹君 今説明のあったとおり、二〇二三年で四百四社とか、そしてまた、二〇二〇年で三百八社とかお話がありました。全体のパイでいうと三百五十万社ぐらいありますからね、その中で三百社とか四百社とか、これがどれだけ日本の経済の成長につながっているのかというところは非常にまだまだこれ小さいのではないのかなというふうに思ったりするわけです。
今回の法案にある中堅企業への支援についてですけれども、地方での雇用確保とか賃金上昇などの効果もこれ見込んでいるということですけれども、経済産業省としては、どれぐらいの予算、税制措置を使ってどの程度効果を見込んでいるのか、この点についてもお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/202
-
203・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 今回の支援ですけれども、税制もございますけれども、まず、中堅企業の省力化の大規模成長投資を後押しするべく、三年間で三千億円の省力化等の大規模成長投資の補助制度をまず創設をさせていただいてございます。
また、今回の提案させていただいております法案におきまして中堅企業者を定義したわけですけれども、特にその中でも、賃金水準そして投資意欲が高い中堅企業、これを特定いたしまして、その複数の中小企業をMアンドAする場合の税制措置を講ずることにしております。この税制の適用につきましては一定の仮定を置かざるを得ませんが、その上で、適用見込みに基づけば、今回の改正による減収額は、平年度ベースで三十億円程度ということになっております。
こうした制度の効果を活用、確保するためにも、税制におきましては、適用を受けるために必要な計画の認定要件として、賃上げや雇用の配慮等を設けることを検討してまいりたいと思いますので、そういった面でも、そういった制度設計をすることによって効果が出ることを期待をしております。
いずれにしましても、事業者から賃上げ等の状況報告も求めて、るる先ほど委員から御指摘あるような効果検証、こういったところについてもしっかりと検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/203
-
204・東徹
○東徹君 今説明がありましたけれども、私が思うのは、今回の法案も従来の延長線上でしかないんじゃないんですかというふうに思うわけですね。MアンドAも何回もできるとか、そういうふうにちょっと変わりましたけれども、従来の延長線上とそう大きくはやっぱり変わっていない。そうすると、またこれ十年後に振り返ったときに、また同じような轍を踏んでしまうんじゃないのかというふうにこれ危惧をしているわけであります。
そういったところで、ちょっともう時間がなくなってまいりましたので、今日の御答弁を踏まえて、また次回、来週金曜日ですかね、にまた質問……(発言する者あり)あっ、ごめんなさい、木曜日に質問させていただきますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/204
-
205・礒崎哲史
○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
午前中から様々委員の皆さんの質問も聞かせていただきました。皆さん本当にすばらしい質問をされていて、ただ時折、あっ、同じ視点だなという質問も多々あったものですから、ちょっとこの後若干かぶるところはあるかもしれませんが、どうぞ御容赦を皆さんいただきたいというふうに思います。
まず、ちょっと村田委員の質問の中で感じた、最初感想だけ、コメントを求めるわけではありません、ちょっと感想を一点だけお話をさせていただきたいんですが。
国内生産促進税制のところで、十年間という期間に対して、設備導入が遅れたら云々というやり取りがあったと思います。実際、つい二年前には、半導体が手に入らなくて物が作れないということで、もう二年前ですよ、本当に現場の人たちが実は苦しんでいました。大きい設備の一枚の基板の一個の半導体が手に入らないだけで設備が造れない、稼働できないということをつい二年前に経験をしていた現場の経営者の皆さんからすると、まさに村田委員おっしゃられたとおり、いや、今回も同じように手に入らなかったら一年間動かせないじゃんという、多分そういうことが想像できると思うんですよね。
今は余りそういうの騒ぎになっていませんが、これは、現場の皆さんの企画ですとか生産計画の段階で、半導体不足が影響出ないようにうまくロット生産してみたり商品絞り込んだり、そういう実は努力があって、あるいは、消費者の皆さん側が例えば発注をするときに早めに発注をしてリードタイム取るとか、ある程度納期に時間が掛かるのはまあしようがないよねという、そういう柔軟な消費者側の対応もあって大きくクローズアップはされていないというところではありますが。
じゃ、コロナ前の状態に完全に戻ったかというと、やっぱりまだそういうわけではないということからすると、先ほどは、まあ、今法案のまだ審議の真っ最中でありますので、それをいきなり方針変えるというのは難しいのは重々私も分かりますけれども、そういう不安はやっぱりあるし、そういうリスクがあるということは、是非、大臣も十分御理解いただいていると思いますので、今後その点には御注意をいただければと思いますので、これは、済みません、感想だけです、感想だけですので。
それでは、実際に私の通告をした質問の方に入らせていただきたいと思います。
まず最初、ちょっと大きな単位での、視点でのお話から入らせていただきたいと思います。
まず、本法律案の提案理由、大きく二つございました。戦略、戦力的国内投資の拡大、それから、国内投資拡大につながるイノベーション及び新陳代謝の促進というふうにございました。
まず、この三十年間の国内投資に対する政府の課題認識についてお伺いをしたいと思います。大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/205
-
206・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) これまでの日本経済を振り返りますと、企業がコストカットに注力をして利益拡大を図る、いわゆるコストカット型経済となっておりまして、国内における設備投資や人への投資が進んでこなかったというふうに認識をしています。
こうした現状に至った背景には、あのバブル崩壊後の不良債権問題もありましたし、リーマン・ショックもありましたし、長引くデフレなど様々な要因があると認識をしています。また、政府も、民間主導という考えの下で、民間の制約を取り除く市場環境整備策が中心で、それ以上のことは余りやるべきではないという空気の中で、新たな価値創造に向けた取組が結果として不十分だったという側面もあったと認識をしています。
ただ一方で、ここ数年取り組んできた積極的な産業政策の効果もありまして、足下の日本経済は潮目の変化を迎えています。国内投資は二年前から拡大が続き、三十年ぶりの高水準となりました。また賃金も、今年の賃上げ率は直近の集計で五・一七%と、昨年に続き高水準となっています。
しかし、三十年間続いたコストカット型の縮み志向は簡単に変えるものではないと思っていますので、ここからが正念場ということで、積極的な産業政策を、今回審議をお願いしている法案を含めまして、しっかり展開をしていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/206
-
207・礒崎哲史
○礒崎哲史君 大臣、ありがとうございます。
今御説明をいただいた、そのコストカット型経済等々ございました。また、政府のその市場環境整備、そちらの方に注力をしていたというようなお話もありました。
その中で、ちょっと二点深掘りをしてお伺いをしたいと思うんですけれども、では、そのコストカット型経済に陥ってしまった理由は何だったのかという点と、そこから、だから脱出できなかったわけですね、三十年間という長きの間。では、脱出できなかった理由は何だったのかということ。
それともう一つ、先ほどのその市場環境整備にということと絡むんですけれども、では、まさに今回の法案と絡みます、新たな価値創造に向けた取組が不十分になってしまった理由は何になるのか、この点について、また大臣の方にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/207
-
208・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) コストカット型経済、あるいは新たな価値創造に向けた取組が不十分という状況に陥った要因、大きく言えば二つあると考えています。
第一に、グローバル化による安価な製造拠点が出現をしてきたということであります。
安定した国際秩序の下でグローバル化が進む中で、企業は生産コスト等が安価な海外拠点を活用して利益拡大を図り、そして、安価な製品を逆輸入する形で国内市場におけるコストカットを進めてきた面があります。これにより、バブル崩壊後に長引いた需要低迷等と相まってしまってデフレ環境が出現をしてきた。これ、第一にそういうことがあったんだろうと思います。
第二に、長引くデフレ環境そのものが要因としてあったんではないかと思います。
価格と賃金が毎年据え置かれるようなデフレ状況の下では、新しい商品に果敢に取り組んでも、既存の商品と大きく違わない値段になってしまいがちであります。こうした状況では、企業は攻めのビジネスで売上げを伸ばすというよりは、生き残りのためにコストカットに全精力を注ぐと、後ろ向きの経営をせざるを得なくなるという、そういうデフレ環境そのものの要因もあったのではないかと思います。
企業は、借金するのは名目でするわけですよね。ところが、もう物価が上がらなければ、なかなか名目での借金というのはきついと思うんですね。まあ、物価が上がっていけば返済がより容易になるんじゃないかと思うんですけど、上がらないわけですから。そういう面でも、それならコストカットだということで向かいがちだったという面は、デフレ環境の下であったのではないかとやっぱり思わざるを得ません。こうして、企業は、新たな価値創造に向けた取組よりも、やむを得ずコストカットに注力し、利益拡大を図る、そういう形になったのではないかと思います。
こうした企業の状況に対しまして、一九九〇年代以降、政府におきましても、新自由主義的な考え方に基づく市場環境整備策が中心でありました。マクロ環境として、国内において民間主導の積極的な取組が難しい状況の中で、結果として民間任せになって、先ほど申し上げたような状況を助長してしまった面もあるんだろうと私は思っています。
こうした反省を踏まえて、将来の飯の種を生み出し、賃金や成長の源泉となり得る社会課題解決型の国内投資、これを後押ししようということで、経済産業政策の新機軸を今展開しているところであります。積極的な産業政策とこのマクロ環境の変化が相まって、足下では潮目の変化が起こってきていますので、何としても、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる好循環な成長型経済への転換をこの機に実現をしたいというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/208
-
209・礒崎哲史
○礒崎哲史君 大臣、詳しくありがとうございます。
今大臣にお話をいただいたその流れ、私も同じ思いを持っているんですが、もう少し、ちょっと一つの産業を例に、実際の過去の動きと照らし合わせて少し検証をしてみたいと思います。
お手元に資料をお配りをしました。自動車産業の視点でもって、今大臣がお話しいただいたものをちょっと振り返ってみたいと思うんですけれども、今大臣がおっしゃられた、まず、コストカット型経済になってしまったその理由としては、グローバル化とコストの安い地域ですね、その地域のグローバルマーケット、そのお話がありました。まさにバブル崩壊からそういった流れということでありました。まさに、一九九〇年ぐらいを見ていただければ、そのポイントになろうかと思います。まさに、自動車産業においてもそこがターニングポイントに一つ実はなっています。
九〇年から以降、まさに、国でいえば中国ですね、中国がグローバルマーケットに参入をしてきた。当時中国は世界の工場と言われ、圧倒的な人件費の安さから、安いものを大量に生産し、世界に送り出すことができるということから、世界がそこを注目をしていくことになり、日本も当然その波にのまれていくんですが、私、ポイントは実はそこの手前にあると思っていまして、八〇年代です。
八〇年代にポイントがあると思っていまして、ここのグラフには何も書いていないんですが、一個、皆さんに御覧、ちょっと注目いただきたいのは、紫色の輸出台数のところなんです。右肩上がりで来ていた輸出台数が、八〇年代にぱたっと止まります。山を迎えるんです。大臣がにこにこされております。もう分かっていただけたと思います。何が起きたのかというと、ここは日米貿易摩擦です。日米貿易摩擦によって、日本は最終的には自動車の自主規制を、輸出の自主規制を引くことによって、輸出台数はここで残念ながら頭打ちになるという判断を、これは政府あるいは産業としてすることになりました。
ただ、その後、日本国内そのものはバブル期を迎えましたので、そこで止まったとしても、国内生産は、海外が厳しくなっても国内でカバーできたんですね。ということで、結果的には国内の生産台数は右肩上がりで上昇することもできましたし、国内販売も右肩上がりになったということで、海外の厳しい状況を国内が実はカバーしてくれたんです。
ところが、その後、バブル景気がはじけたことによって、それががた落ちになっていく。そこで、先ほど大臣がおっしゃっていただきました、新興国、コスト競争力のある地域がグローバルマーケットに参入をしてきたということで、自動車産業は当然、輸出はアメリカ市場に輸出ができませんから現地生産に当然踏み込んでいくということで、この海外生産台数の青がここから右肩上がりで物すごい成長をしていくと、こういう経緯をたどったということであります。
そこで、コストカット型経済になったのは、この緑色の生産台数ですね、一千三百四十九万台を生産する能力を企業が抱えていたんです、国内に。それだけの工場設備と人員を抱えていました。なので、この人たち、あるいはこの工場を潰すわけにはいかないわけです。辞めさせるわけにもいかないんです。じゃ、この人たちを、現状、レベルを維持するためにはどうしたらいいかというと、コストが安い国とコストで競争するしかなくなったということで、ここからコストカット型経済に行かざるを得なくなった、追い込まれたというのが私の認識であります。
そこから、じゃ、どうするかというと、なかなか苦しい状況になるんですけれども、そこで、先ほど政府の関係のところで市場環境整備ということでお話をされたんですが、このコスト競争からもう抜け出せなくなった状況の中で、安いコストで生産できるような体制づくりと言うとちょっとおかしいんですけれども、例えばそこから柔軟な生産が対応できるようなということで、実は派遣労働者が生産工場で働けるような形で適用を拡大したりということで、そういう波に一気に乗っていく。ですから、そこから右肩上がりになっていくことがだんだん難しくなっていく。
当然、先ほど、コストを下げることで利益を確保するというふうに大臣おっしゃられたんですけれども、現場でやられていたことは乾いた雑巾絞ることでしたので、実は利益は増えないんですよね。生産量は確保できるんです。だから、設備も維持できるし雇用も維持できるんですけれども、残念ながら利益は上がらない。利益が上がらないから次なる投資はできない。当然、開発投資にもお金は回らない。ですから、新しいものが生み出せないということで、その後の十年、二十年が至ってしまったというのは私の認識でございます。
今、自動車産業の例で言いましたけれども、実はここに半導体ものっけてもいいというふうに思っています。半導体も、日米半導体協定というものが結ばれたのは八〇年代の後半ということです。半導体に関しては、特に大きな需要先でありました白物家電がほとんど生産、東南アジアとかに移していましたので、ですから、国内で幾ら半導体を作ったとしても、半導体を載っけるお客様は海外で生産している白物家電になっちゃうので、結果的には、半導体は海外で作った方が需要、マーケットにも近いし、最終的にはお客様に近いということで、半導体も国内生産から海外に行っちゃうという、これもだから全く同じ構図だというふうに思います。
ちょっと話が長くなりました。失礼しました。
大臣にちょっとお伺いしたいのは、そうすると、きっかけはやっぱり私は日米貿易摩擦であったり海外との関係性、あるいは海外とのそうした取引の状況というものが私は大きな影響があったのではないかなと思っています。とりわけ、日米で行いましたそういった覚書なりなんなりが、後々の国内の生産体制あるいは輸出の体制、さらには海外での生産体制に足かせをやっぱり掛けてしまったことになるのではないかなと私は思うんですけれども、ちょっとこの点、御所見ございましたらいただければ幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/209
-
210・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) このいただいた資料を見ると様々な光景が思い出されるわけでありますが、確かにおっしゃるとおり、八〇年代の前半は、自主規制といいながら、調整をしながら、もう輸出は年間何台までという、そこまでアメリカとの関係でやらざるを得ないということになったのが八〇年代の前半ぐらいだと思いますし、八〇年代半ばに来ますと、もうプラザ合意で一気に円高で、日本の輸出を止めてやろうという動きも強力にありまして、今でも覚えていますが、あのとき自動車メーカーは本当に鉛筆一本までコストを下げる、円高に適応するためですね、物すごい努力をしていたのを私は記憶にあります。これで一九九四年にまたがくっと輸出が減るわけですが、ああ、これは一ドル七十九円になったときだなとか、全部思い出すわけでありまして、おっしゃるように、海外との関係で海外生産中心の企業行動を取らざるを得なくなったという面も私はあったんだろうと思いますが、それでも自動車メーカーによっては、何とか国内の雇用を維持しようということで、国内生産体制を一定の水準でずっと守ってきているメーカーもあったわけでありまして、様々な対応があったわけでありますが、総じて言えば、八〇年代のそういう国際的な摩擦というのも、私は一つの大きな要因だったんだろうというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/210
-
211・礒崎哲史
○礒崎哲史君 ありがとうございます。さすが大臣、お詳しいところだと思いますので。
ここは一つ改めての問題提起なんですけれども、今は確かに状況は当時と違うのかなというと、私、似たようなところもあると思っていまして、まさに大臣が四月にアメリカに行かれていろいろお話もされてきて、今後の日米のこの経済関係をどうしていくか、お話をされてきたと思います。その中で、例えば半導体についてどうしようか、技術協力であったり生産体制であったり、お話をされてきている。まさに、今後日本が、今回の法案の中で国内生産を頑張っていこうと、私はもう大賛成なんです、これはどんどんやってほしいんです。ただ、その国内の生産体制をしっかりと形作っていこうというときに、やはり海外との関係性というものが、最終的には国内のその生産体制あるいは開発体制、そうしたところに何らかの影響を及ぼしてくるということは過去の経験からするとあるかもしれません。
そうすると、結果的にまた、今度はやっぱり付加価値の高いものをという思いの中で、もう一回実はコスト競争に巻き込まれていってしまうというか、あっ、コスト競争はしなくていいという意味ではなくて、これはやらなきゃいけないんです。でも、それをやらざるを得なくてそれしか勝負ができないような、過去、九〇年代で経験したようなことにはやっぱり戻したくないという思いがありますので、是非こうした点については、今後様々な交渉をまたされていく、経済的な環境整備ということで交渉されていくと思うんですけれども、是非この点は、そうした点も踏まえた交渉をしていただきたいということで、これは問題提起とお願いということになりますので、お願いしたいというふうに思います。
次に、もう一つは環境整備ということで、あっ、そうですね、もう次、次の通告した質問に行きたいと思います。
今回、新たな価値創造に向けた取組というのがございました。ここに関してはちょっとまだイメージが湧きませんので、具体的に誰がどのようなことを行っていくということをイメージしているのか、この点についても大臣にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/211
-
212・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど申し上げましたように、政府としては、市場環境整備策にとどまらずに、国内において企業が新たな付加価値を創造する取組を後押しをしていくと。その上で、主体別に期待を申し上げますと、大企業には、社会課題解決型の設備投資や研究開発を国内で積極的に進めて、日本が世界の創造拠点となるような基盤を築いていくことを期待しますし、中堅企業には、これまで牽引してきた国内投資や賃上げに加えて、MアンドAなどによって成長を加速して日本経済の成長の新たな担い手となってほしいと思っていますし、スタートアップには、優秀な人材を引き付け、新たなビジネスモデルを開拓し、イノベーションの起点となることなどを期待しています。
こうした考えの下、本法案では、大企業も含めて活用可能な、戦略分野における生産、販売量に応じた大規模、長期の減税措置や、研究開発により得られた知的財産から生じる所得を対象とした減税措置、中堅企業に対しましては、まず、中堅企業を定義をして、MアンドA等による成長を後押しする枠組みの構築、スタートアップは、人材確保を後押しするために、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組みの整備など、それぞれのジャンルごとに適用できる政策も用意しているということであります。
中長期的には、成長や変化を牽引する主体として、私は中堅企業やスタートアップの重要性は高まっていくんだろうというふうに思っていまして、まさに成長意欲のある我が国企業が中小、中堅、大企業へとシームレスに成長を目指していけるような環境が徐々に実現をされていくのだろうと思います。これらが刺激となって大企業の方も変革が進んでいくということを期待をしています。
こうした施策を是非、大企業、中堅企業、スタートアップ等に積極的に御活用いただけたらなというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/212
-
213・礒崎哲史
○礒崎哲史君 それぞれの、大企業、中堅企業、スタートアップ、それぞれに対する期待ということでは理解はいたしました。
ただ、大臣、やっぱりこの価値創造ですね、新たな価値創造、やはりこれが日本は苦手なんではないかと。とりわけ、技術がすごい、とある中小企業の方でかなりとんがったことをやられている方なんかの話を聞いても、実はこういう技術を我々は持っている、固有の技術を持っているんだけど、それを使わさせてほしいとか技術の相談に来るのは海外メーカーばっかりなんだよと、日本の大企業の経営者とか、全然俺のところ相談しに来ないんだというふうにおっしゃるんですよね。まさにそこが新たな価値創造に結び付くと思うんです。
そうすると、それぞれへの役割、期待感というのはもちろん理解はできるんですけれども、そのまさに、これはもしかするとこういう市場に使えるんではないか、自分たちのこういう製品にこの技術は、この技術を組み合わせることで新たな付加価値が生まれるんじゃないかという、そのまさに想像力、それを市場というところも絡めて考えていく能力というのを育てていかないといけないと思いますし、その提案ができる体制をつくらないといけないというふうに思うんですけれども、今回のこの施策においてこの新たな価値創造に向けた取組というのは、やはりそこも含めたものというふうに私は理解しているんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/213
-
214・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) そういう理解で結構だと思います。我々もそうしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/214
-
215・礒崎哲史
○礒崎哲史君 そうしますと、それを進めていこうとするときに、やはりどういう部分が肝になるというふうに経産省さんとしては考えておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/215
-
216・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 非常に難しい御質問であると思いますけれども、やはり、先ほど委員の方からも御指摘があったような、そういった経営者の方のイノベーティブな考え方、そういった人材ですね、人材のところについては非常に大事なんであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/216
-
217・礒崎哲史
○礒崎哲史君 人材ですね、私もそう思います。本当に人材が大事だと思います。
その人材という観点でいくと、例えば、これも多分日本が苦手な分野なんだと思うんですけれども、いわゆるマーケティングですね、マーケティングという分野であったり、あるいは行動経済学という言い方もするんだというふうに思いますが、やはりこういう分野、結構マーケティングって、海外とかだと、もうしっかりとした学術的な分野になっていて、人材もそこでしっかりと育てられていて、その人たちが、まさに実体経済と学問的な観点と、そして企業の活動というところでしっかりと入り込んで、実はもう企業経営の経営者の方にそういう人たちが入ってプランを作る、企業の計画を作るというところまで入り込んでいるということでいけば、そのマーケティングですとか行動経済学、そういう人材をやっぱりしっかりと育てていかなければいけないというふうに私は思っています。
また、これはほかのところともいろいろ話絡んでくると思いますので、またこの点では、企業に対する様々な再教育ですとかリスキリングですとか、そういうところと絡んでくると思いますので、ちょっとまた別の機会に更にこれ深掘りさせていただきたいというふうに思っています。
ちょっと次、それと関連してもう一つなんですけれども、今回、これ、この法案、実際に取り組んでいく上では、やはり政府として主導していく部分というのも当然あるというふうに思います。それから、会社側で当然頑張らなきゃいけないところもあります。
会社というと、やはりその中において、労使ですね、それぞれがどういうふうに頑張っていくかという観点もあると思います。それで、最終的にやはりこれを実効性を高めていくという意味では、政労使という三者が、私は、しっかりと同じ方向性といいましょうか、同じ目的を共有をして、それぞれの役割の中で頑張っていくという体制づくりが私は大事ではないかなというふうに思うんですけれども、それぞれ政労使が果たすべき役割であったり、あるいはそれぞれに期待することについて、大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/217
-
218・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 失われた三十年から完全に脱却をして成長型経済への移行を実現するためには、政府、労働者、経営者が中長期的かつ大局的な目線をそろえた上で、それぞれの役割を一丸となって果たしていくことが大事なんだろうと思います。
このため、経済産業省としては、将来の飯の種を生み出す社会課題解決型の国内投資を後押しするために、財政支援も含めて積極的な産業政策を更に展開、継続をしていくこと、これをしっかりやっていきたいと思っていますし、こうしたメッセージを明確に打ち出して、具体的な政策を講じていくことで企業の予見可能性を高めること、これを政府には何よりも求められているんだろうと思います。
こうした政府の予見可能性を高める取組と併せて、今度は、経営者の皆様におかれましては、言うのは簡単なんですが、とにかくコストカット型の縮み志向から脱却をして、アニマルスピリッツに火を付けて、前向きな挑戦に果断に取り組んでいただくことを期待をしています。
また、企業の中で働く方一人一人もその能力を十二分に発揮していただくこと、これを期待しています。今でも社会の一部に根強く残る画一的な雇用システムから個人が解放されて、リスキリングの価値が社会全体としても評価されていく中で、多様な人材がそれぞれの持ち場で活躍をし、失敗してもまたやり直そうと感じていただく、そういったことを期待をしています。
経済産業省として、このような目線を共有して、投資も賃金も物価も伸びる成長型経済の実現に向けて、言わば日本の総力を結集して取り組んでいきたいなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/218
-
219・礒崎哲史
○礒崎哲史君 大臣、ありがとうございます。
今大臣から、経営者に期待するところでアニマルスピリッツなんという言葉も出てきました。まさにそのアニマルスピリッツといいましょうか、開拓者としての気持ちで頑張っていた時代、高度経済成長期というものが日本にもございました。そのときの労使の関係において、考え方、共有の考え方が結ばれたものがあるので、それを最後にちょっと御紹介をしておきたいと思います。
資料をお配りしました二枚目になるんですが、生産性運動に関する三原則というのがありまして、これ、昭和三十年に結ばれたものです。まさに高度経済成長期のこれから迎えるという時代、その中にあって、三つの原則が労使によって確認がされました。
生産性の向上は、究極において雇用を拡大するものだ。当然、雇用が拡大されれば生活が安定をする、経済も大きくなっていく、社会も安定していくということになりますので、まずそれを共通の認識として持ったということです。
二番目に関しては、これを進めていく上には、やはり労使が協力をしてこれを研究し、協議をするという、お互いの立場を尊重しながらしっかりと協議をしていくということですね、一方的に進めるんではないという、こういう考え方。
そして、三番目、ここが大切だと思っています。生産性の向上の諸成果は、公正に分配されるものとするということです。まさに、失われた三十年は、この三番目が私は大きく欠落をしたんだというふうに思います。
労使の関係において、上げた成果は次にどういうふうに生かすべきなのかというステークホルダーの考え方が変わってしまったのかもしれませんけれども、この失われた三十年のそのコストカット型経済、デフレマインドから本当に脱却するということであれば、やっぱり私は、この三番目ですよね、これをやはり経営者の皆さんに大切に持ってもらうということ、やはり、これを意識しながら取り組んできたときにやはり日本は成長してきたわけですから、いま一度、やはりこういった考え方、現代風に新たな状況に合わせて少しこれをリメークするということはあるかもしれませんが、基本的にはこの三つをしっかりと守っていくことが私は大事だと思います。
大臣、最後にもしお答えをいただければと思うんですけれども、今回の法案、投資という、投資を促進するという法律です。その投資の中に設備投資や研究開発投資はあると思います。人への投資というものが入っているというふうに理解をしてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/219
-
220・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 当然入っていますし、スタートアップの支援策なんかは、まさに人への投資につながるようなものだというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/220
-
221・礒崎哲史
○礒崎哲史君 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/221
-
222・岩渕友
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
〔委員長退席、理事古賀之士君着席〕
経済大国と言われて、米国に次いで世界第二位だった日本のGDPは、昨年、ドイツを下回って四位になりました。ドイツの人口が日本の三分の二であることを考えると、国民一人当たりでは、ドイツと日本で一・五倍の経済格差が付いたことになります。このことは、先ほども議論ありましたけれども、この間の日本の経済停滞を象徴するものとして、ショックを持って受け止められています。
この失われた三十年と言われる状況をつくった原因と背景について、昨年六月二十七日の産業構造審議会経済産業政策新機軸部会の第二次中間整理ではどう分析をしているでしょうか、紹介をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/222
-
223・菊川人吾
○政府参考人(菊川人吾君) 委員御指摘の箇所は、先ほど委員とも直接確認をさせていただきまして、どの部分かについて確認をさせていただきましたので、その点を読み上げたいと思います。
〔理事古賀之士君退席、委員長着席〕
これ、昨年度の経済産業政策新機軸部会、第二次中間整理、この中の、「Ⅰ.現状認識」、「(1)「失われた三十年」の振り返りと「新機軸」」という項の第二段落に該当すると考えてございます。これは委員も確認をしていただいた部分でございますので、そのまま読み上げさせていただきたいと思います。「企業経営も雇用維持が重視され、全体として、企業は既存事業のコストカットと海外投資に注力し、国内投資は三十年間、大きく停滞、新事業創出に向けての国内での大胆な投資は行われなかった。」、このように記載されていると認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/223
-
224・岩渕友
○岩渕友君 ありがとうございます。
つまり、企業がそのコストカットと海外投資に注力をして、国内投資は三十年間大きく停滞してきたということなわけですよね。
ここには更に続きがあって、結果としてと、その結果、大企業の経常利益はこの三十年間で大きく上昇しましたが、国内の売上げは横ばいであること、雇用維持が重視をされた結果、失業率は低水準を維持してきた一方で、低賃金での労働確保を可能とした非正規労働の拡大も背景に、平均賃金もこの三十年間一貫して横ばいが続き、それに伴い個人消費も低迷をしてきたというふうに分析をしています。
資料を御覧いただきたいんですけれども、そのことを端的に示しているのがこの一の資料です。いわゆるG5と言われる五つの国における労働生産性と平均実質年収の推移ということですけれども、G5の中で、日本もほかの国と同じように労働生産性上昇しているんですよ。なんだけれども、唯一実質賃金が上がっていないのが日本だということになっているんです。
これ、大臣、何で労働生産性が上昇をしているのに実質賃金が上がっていないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/224
-
225・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 我が国で、過去三十年間のGDP成長率の平均を見てみますと、これ一%を切っているんですね。それから、物価上昇率も、一部の時期を除けば大体ゼロ%近傍を推移をしてこの三十年間来ました。
こうしたマクロ経済環境の中で、企業も消費者もデフレ心理やコストカットの縮み志向に陥りがちになりまして、それを受けて企業行動も更に慎重となるという傾向があったために、労働生産性の伸びに比して賃金が伸び悩んだという面があったのではないかと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/225
-
226・岩渕友
○岩渕友君 足下でどうなっているかということもちょっと見たいと思うんですけど、厚生労働省が五月九日に発表をした三月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比で二・五%減、二十四か月連続の減少となっているんですよね。比較可能な一九九一年以降で過去最長となって、二〇〇八年のリーマン・ショック時の記録を抜く結果となったということなんです。個人消費も四期連続のマイナスということで、リーマン・ショック以来十五年ぶりの異例の事態となっているということなんですね。
大臣、過去最高水準の国内投資の見通し、三十年ぶりの高水準の賃上げなど、潮目の変化が生じているというふうに述べていらっしゃるわけなんですけど、こうした状況で、これ潮目の変化と言えるのか、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/226
-
227・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘のとおり、実質賃金は二十四か月連続でマイナスとなっています。しかしながら、今年の春季労使交渉においては直近の集計では賃上げ率が五%を超えて、また、国内投資は三十年ぶりに百兆円台を実現するなど、我が国経済に明らかな変化が生じております。これを潮目の変化というふうに表現をさせていただいております。ただし、ここからが正念場であるということも併せて申し上げております。
引き続き、積極的な産業政策を更に展開をし、継続をすることで、投資も賃金も物価も伸びる成長型経済に何としても転換をしていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/227
-
228・岩渕友
○岩渕友君 明らかな変化ということなんですけど、なかなかそれ実感できないということだと思うんですよ。経済が停滞したままの状況になっていると。
それで、産業競争力強化法、産競法ですよね、は、その前身である産業活力再生特別措置法、産活法以来、株主資本利益率、ROEの向上を最優先にして、事業の再構築だとして大企業のリストラなどを支援などをしてきました。バブル崩壊後、失われた十年、三つの過剰から脱却するために作られたのが産活法です。これがうまくいかなかったから、二〇一三年に産競法が制定をされました。
産競法の逐条解説というものがあるんですけれども、その逐条解説見てみると、産競法は、日本再興戦略に基づき、戦略の実現を図るために制定されたものと書かれていて、この法制定の背景について、失われた二十年からの脱却のためのものだというふうにしているんですね。
今度は失われた三十年だというふうに言っているわけですよ。結局は、失われた三十年をつくったのは、この産活法であり産競法ではないのかと。この失われた二十年も脱却できないままに、今度は失われた三十年からの脱却といって脱却できるのか、これ検証が必要なんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/228
-
229・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 大事な御指摘をいただいたなというふうに思います。
御指摘の産活法につきましては、バブル経済崩壊後の過剰設備、過剰債務を背景に、中核的事業への選択と集中を促す事業再編支援を始めとした各種支援策を講じたものでありまして、企業の生産性向上には寄与してきたのではないかと思います。
しかしながら、これまでの産活法及び産競法の取組では、企業がコストカットばかりに注力して利益拡大を図ると、そして、設備投資や人への投資が抑制をされがちで、これも経済成長の抑制につながってきた要因ではないかというふうに考えています。
このために、今回の改正案では、経済産業政策の新機軸の考え方の下、社会課題解決に向けた国内投資やイノベーションの拡大等を後押しするために、大規模、長期、計画的といった視点から政策の打ち手を講じているところです。本改正案を含め、予算、税制等のあらゆる政策ツールを組み合わせて、コストカット型経済から、投資も賃金も物価も伸びる成長型経済へ転換できるように取り組んでいきたいと思います。
今回、本当に三十年ぶりに潮目の変化、もうしつこいようですけど、現れていますので、これを何としても生かしていきたいということに尽きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/229
-
230・岩渕友
○岩渕友君 失われた三十年をつくったのは、結局、産活法、産競法だということでいいんでしょうか。大臣、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/230
-
231・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど申しましたように、あえてきつい言葉になるから申し上げなかったんですけれども、産活法の支援によって経済が停滞したとは考えていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/231
-
232・岩渕友
○岩渕友君 実際には、停滞した状況できてきているということなんですよね。検証がやっぱり必要だということだと思うんですよ。
先ほど確認をしたように、この産構審の経済産業政策新機軸部会の第二次中間整理では、この三十年、コストカットと海外投資に注力する一方、国内投資は大きく停滞してきたというふうにしているわけですよね。実際、大企業はROEも配当金も内部留保も増やしていて、産活法、産競法は大企業には効果あったかもしれませんけれども、一方で、日本経済全体と国民には効果がなかったということです。これ、格差と貧困を広げてきたのが産活法だし、産競法ですよね。
海外投資の問題について質問していきたいというふうに思うんですけれども、衆議院のこの法案の審議で、我が党の笠井亮議員が、一九九二年の通商白書の指摘について紹介をしました。多国籍企業の利益と国民の利益が一致しないという指摘です。
アメリカの当時の分析で、国家の産業競争力が当該国企業の産業力と厳密に一致しなくなっているというふうに分析したものなんですけれども、これに対して大臣が、その問題意識ははっきり覚えているというふうに答弁をされているんですね。
大臣、その問題意識というのは何を指しているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/232
-
233・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 当時、衆議院の笠井委員の質問は、突然出てきた質問でありました。そのとき私は申し上げたのは、当時、一九九二年の通商白書ですから、この頃まさに言われていた議論というのは、もうその経済がグローバルに展開する中で国境はなくなったと、もう企業が国境を越えて自由に活動する時代になったと、そういう多国籍、多国に活動する企業にとっては、その一つの企業、国の利益よりも自分たちの会社の利益を重視すると、そういう懸念がこの国境なくなった時代にはあるんだという論調が当時かなりありましたので、それを思い出して申し上げたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/233
-
234・岩渕友
○岩渕友君 白書が指摘しているように、多国籍企業の利益と国民の利益一致しないと、国家の産業競争力が当該国企業の産業競争力と厳密に一致しないと。この三十年前のアメリカの姿ですよね、これが今や日本の姿になっているということだと思うんですよ。
日本企業の海外進出についてどうなっているかということで、海外生産比率について、製造業の合計、自動車、電気、ITについて、一九九〇年と直近の比率、それぞれどうなっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/234
-
235・殿木文明
○政府参考人(殿木文明君) お尋ねの件につきましては、統計上の直近の年は二〇二一年でございまして、一九九〇年と二〇二一年の比較でお答え申し上げます。
なお、現行の分類では、今から御説明申し上げるところの中で、電気機械と情報通信機械の二つのカテゴリーに分かれているものが、一九九〇年当時におきましては、この両者をまとめて電気機械というふうに分類しているところでございますため、一九九〇年と二〇二一年とを比較する場合におきましては、製造業全体、それから電気機械、そして輸送機械の三つのカテゴリーでの比較となりますが、その点でお答え申し上げます。
これを前提に、海外生産比率といたしまして、海外事業活動基本調査と法人企業統計調査を基に、現地法人の売上高を国内法人及び現地法人の両売上高の合計額で除した値の概数を申し上げれば、まず、製造業全体につきましては、一九九〇年におきましては六・〇%なのに対しまして、二〇二一年におきましては二五・八%。次に、電気機械、先ほど申し上げましたとおり、現行の分類で申し上げれば、電気機械と情報通信機械を合わせたものとなるわけでございますが、この電気機械につきましては、一九九〇年におきましては一〇・二%であるのに対しまして、二〇二一年におきましては二三・八%。また、輸送機械につきましては、一九九〇年におきましては一一・二%であるのに対しまして、二〇二一年におきましては四七・〇%となるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/235
-
236・岩渕友
○岩渕友君 いずれも増えているということになるわけですね。海外に生産拠点が移っているということです。
二〇〇九年に導入をされた海外子会社配当益金不算入制度というものがありますけれども、海外子会社からの配当を益金に不算入とする、配当を実質的に非課税とする制度です。この制度を導入した目的、趣旨について、二〇〇九年二月十二日の衆議院の本会議で我が党の佐々木憲昭議員が質問したのに対し、当時の麻生総理が答弁を行っているんですね。該当部分を紹介してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/236
-
237・鋤先幸浩
○政府参考人(鋤先幸浩君) お答え申し上げます。
平成二十一年二月十二日の衆議院本会議における佐々木憲昭議員に対する麻生総理の答弁の該当部分を読み上げます。
「日本の経済の活性化の観点から、日本企業が海外市場で獲得する利益につきまして必要な時期に必要な金額だけ国内に戻せる制度を整備することは、日本のいわゆる経済にとりましても重要なことだと考えております。 このため、今般、外国子会社からの配当を益金不算入とする制度を導入することとしており、本制度が導入されることにより、国内に還流されます利益というものが、日本企業の設備投資、また研究開発、もちろん雇用を含めまして、そういう幅広い分野で多様な利用が図られるものだと期待をしておりまして、我が国の経済の活性化につながるものだと理解をいたしております。」。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/237
-
238・岩渕友
○岩渕友君 制度を導入することで海外子会社の収益が国内に還流をされて、日本企業の設備投資や研究開発、そして雇用など含めて利用されて、経済活性化につながるというふうにしていたわけですね。
では実際に、この海外子会社の利益配当金が国内に還流をしているのかということなんですけれども、資料の二を御覧いただきたいんです。これは対外直接投資収益と配当金等の推移ということなんですけれども、外国子会社配当益金不算入制度が導入された二〇〇九年ですけれども、それ以降、国内還流した配当金も増えているんですけれども、海外での内部留保も増えているんですよね。
資料の三、見ていただきたいんですけれども、これは年度ごとの外国子会社からの配当の益金不算入額なんですが、そうした下で、じゃ、誰が利益を得ているのかというと、外国子会社から受ける配当金等の益金不算入額、すなわち実質的に非課税に相当する金額は増加しているわけですけれども、しかも、この制度を利用している企業の大部分が資本金百億円超の企業と連結会社のグループの巨大企業ばっかりなんですよね。
五月十一日付けの日経新聞が、企業が海外で稼いだ外貨が日本に戻らない状況が続いていると、企業の利益が海外に滞留しているというふうに報道しているんですね。そのとおりになっていると思うんですよ。既に見たとおり、国内投資は制度導入後の十三年間も横ばいになっていると。投資や雇用の拡大に結び付いていないということなんですよね。
大臣に伺うんですが、結局、既に大企業減税ということになっているんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/238
-
239・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、この外国子会社配当益金不算入制度は、外国の子会社が海外で得た利益を必要な時期に必要な金額を日本の親会社に戻すための制度で、企業の配当政策の決定に対する税制の中立性といった観点等を踏まえて、平成二十一年度税制改正によって導入されました。一般的に、企業は国内における資金ニーズ等を踏まえて必要な金額を日本の親会社に還流するために、本制度が内部留保の増加に直ちにつながっているとは一概には言えないと私は思っています。
いずれにいたしましても、この制度は国際的にも一般的な、要するに二重課税を避けるための税制のその公平性の観点からの措置でありまして、海外展開している中堅・中小企業も活用している税制であります。そういう点を考えますと、大企業に限らず、中小企業も含めて海外展開している企業向けの措置であるということを御理解いただきたいなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/239
-
240・岩渕友
○岩渕友君 多くは大企業ですからね。
それで、もう一つ、この海外投資に関わって、税逃れの問題があります。
資料の四を見ていただきたいんですが、多国籍企業が税金逃れのために、オフショア金融センターに対して投資を行っています。日本からも、ケイマン、オランダ、ルクセンブルグ、ベルギー、スイス、シンガポール、香港の七か国・地域への投資額は、二〇二二年末で直接投資が五十七兆円、証券投資は百五十兆円を超えています。全世界に対する投資額の四分の一、約二百兆円が僅か七か国・地域のオフショア金融センターに集中しているわけですね。
大臣、これ、税逃れを見逃すのかと、適正に課税をするべきではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/240
-
241・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) この経済のグローバル化やデジタル化に伴いまして、一部の多国籍企業の租税回避行動が国際的に問題となっておりまして、こうした行動を防ぐことは重要な課題だと考えています。
ただ、こうした問題に対処するためには国際的な連携が必要であります。二〇二一年十月にOECDが主導し、G20の承認を得たBEPS包括的枠組みにおきまして、グローバルミニマム課税を含む国際合意が取りまとめられています。
このグローバルミニマム課税は、一定の規模以上の多国籍企業を対象に、法人税が低い軽課税国に所在する子会社等の実効税率が一五%を下回るような場合には、親会社が所在する国において、親会社に対して一五%に至るまで課税することができるという措置を含む制度であります。我が国でも、令和五年度税制改正において一部法制化が行われたものと承知をしています。この制度は、軽課税国を利用した多国籍企業による税逃れを防ぎ、企業間の公平な競争条件の確保に寄与すると考えています。
また、いわゆる海外のペーパーカンパニーを利用した租税回避行動に関しましては、従来から外国子会社合算税制によりまして、一定の条件に該当する外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税するということで、税逃れの防止を図っているところであります。
いずれにいたしましても、これ、税務当局とも連携をする必要がありますが、租税負担の不当な回避行動に対処していくこと、これは大事だと思っています。
先ほどBEPSのところでBEPS包括的枠組みと申し上げたようですが、包摂的枠組みでありますので、ちょっと訂正させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/241
-
242・岩渕友
○岩渕友君 今話があったように、国際的な税の引下げ競争を阻止しようとするという動きが出てきているわけですね。多国籍企業の税逃れを封じるための税制改革、必要だと思います。
本法案についても伺っていきたいと思うんですが、法案で創設をする戦略分野国内生産促進税制で年間二千百九十億円、計一・九兆円の減税とされています。
制度の趣旨を簡潔に述べていただきたいということと、この二千百九十億円の物資ごとの内訳、どうなっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/242
-
243・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
まず、本税制の制度の概要でありますけれども、これも繰り返しになりますが、欧米を始め、戦略分野への投資を自国内で実現するための政策競争が国際的に活発化する中で、戦略分野のうち、特に生産段階のコストが高いことなどから企業の投資判断が容易でない分野の国内投資を促進するものであります。さらに、本税制では、法案成立後、令和八年度末までに主務大臣の認定を受けた上で、戦略分野で新たな国内投資を決定、開始し、その商品の生産、販売を行った場合に、その生産、販売量に応じた税額控除措置が適用されるものであります。
御指摘の減収見込額でございますが、本税制が今申し上げたような制度でありまして、要は、対象となる具体的な投資案件や金額が現時点では断定できないことに加え、生産、販売量や事業者の課税所得等の様々な要因により決定されることから、正確に見通すことは大変難しいんですが、一定の仮定を置いて機械的に試算した結果、年度当たり最大二千百九十億円と、昨年度末の税制改正大綱において示されているところであります。
その機械的な試算によりますと、その内訳は、電気自動車等は約一千四百九十億円、グリーンスチールは約百四十億円、グリーンケミカルは約二百億円、SAFは約二百七十億円、半導体は約九十億円という試算結果になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/243
-
244・岩渕友
○岩渕友君 従前からの研究開発減税に加えて、生産量、販売量に比例して減税するとなっているわけですけれども、作れば作るほど減税されるということになるのは、これもう異例中の異例のことです。
先ほど、半導体は九十億円ということでしたけれども、減税の一方で、半導体には基金も補助金もあるわけですよね。半導体関連の基金の予算実績は、二〇二三年末時点で三兆九千七百七十七億円に上るんです。二〇二三年三月末時点の半導体関連補助金における予算の実績は千七十五億円で、合わせて四兆八百五十二億円にもなるんですね。このうち、TSMCとラピダスに対する支援額は、二〇二三年三月末時点で、TSMCは一兆二千二百六十九億円、ラピダスは九千二百億円に上るんです。ラピダスとTSMCが占める部分、非常に大きいんですね。
先ほど戦略分野国内生産促進税制で半導体は九十億円の減税と、減税もされるし補助金の対象にもなるのかと。そうだとすれば二重支援になるんじゃないかということで、TSMCは減税の対象になるのかということでレクのときに聞きましたら、対象にならないということだったんですね。それは先端半導体だからということなんです。なんだけれども、この問題について衆議院の財政金融委員会の質疑で我が党の田村貴昭議員が質問したらば、やはり同じような答弁返ってきて、対象になる半導体は二十五ナノメートル以上のマイコン半導体だと、だから、特定半導体はもっと小さい先端ロジック半導体だから二重支援じゃないという答弁あったんですけれども、けれども、TSMCの特定半導体生産施設整備等計画の概要というものがあるんですけれども、その中身を見てみると、四十ナノメートルの半導体も製造するというふうに書いてあるんですよ。そうなってくると、これ、TSMC、減税の対象になるんじゃないでしょうか。結局二重取りになるんじゃないかと思うんですけれども、経産省、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/244
-
245・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
先ほどとの、繰り返しではございますけれども、これは実際にやはりメーカーがきちっと申請をしてきて、さらには大臣が認定をして、それで初めてこの税制の対象になるものですから、現時点で製造しているからといって、直ちにこの税制の対象になるというものではないというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/245
-
246・岩渕友
○岩渕友君 ということは、メーカーが申請をして大臣が認定をすれば対象になり得るということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/246
-
247・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
まず、そのTSMCについては、前回も御回答申し上げたとおりですが、まさに最先端のロジック半導体を製造しているということでありまして、今回対象になっているこの半導体につきましては、いわゆるアナログのマイコンが対象になっておりますので、基本的には対象にならないと我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/247
-
248・岩渕友
○岩渕友君 そうなんだけれども、計画の概要を見てみると、その四十ナノメートルの半導体も製造するというふうにあるわけですよ。そうなってくると、確かに先端ロジック半導体は対象にならないかもしれないけれども、これは対象になるということになるんじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/248
-
249・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
仮にTSMCが今回の対象となる商品を製造する場合には、もちろんその提案された申請書の中身を見てそこで判断することになりますが、もしここに、対象となる製品を製造するということ、設備投資をするということで提案をしてきたら、対象になる場合もあり得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/249
-
250・岩渕友
○岩渕友君 なるほど。つまり、TSMCも対象になり得るということなわけですよね。そうなってくると、減税もされるし基金も補助金も入るということになって、これやっぱり二重支援じゃないかということになるんだと思うんですよね。そこはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/250
-
251・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) 一般的に、いわゆるその研究開発行為をする場合もそうなんですけれども、いわゆる税制と予算措置と、幾つかのその政策で支援するということがありますので、一概に直ちに重複するかどうかというのはちょっと判断するのは難しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/251
-
252・岩渕友
○岩渕友君 時間が来たので終わります。続きはまた次回にしたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/252
-
253・平山佐知子
○平山佐知子君 平山佐知子です。よろしくお願いいたします。
今日は、まず、戦略分野国内生産促進税制について伺ってまいりたいと思います。
これまで企業にとってはコスト増にしかならないと思われていた環境対策ですけれども、グリーン成長戦略の下、経済も環境も両立するんだという、こういうふうに世の中に浸透してきたということは、やはり二〇五〇年カーボンニュートラル実現のためにもこれは重要なことだと思っています。それに加えて、今回の施策を見ますと、経済成長、供給を促していくのはもちろんですが、これから市場形成が行われていくと思われますこのグリーンスチールやグリーンケミカル、SAFなどの市場でも、日本の存在感を示すことにつながる施策が含まれているのかなと期待をしているところでございます。
この戦略分野国内生産促進税制の対象としている自動車、鉄鋼、化学、SAFですけれども、今年の一月に公表されました価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果、これを見ますと、去年九月の価格転嫁率は、化学が五九・七%、金属四八・八%、それから自動車・自動車部品は四四・六%、石油製品・石炭製品製造四二・〇%ということで、これを見ますと、自動車・自動車部品と石油製品・石炭製品製造ですね、これは価格転嫁率に関しては下位に位置しているということになるかと思います。
先ほどまでも度々議論の中で出てきましたけれども、やはり、最終メーカーが恩恵を受けるだけではなくて、二次請け、三次請け企業もしっかりとこのメリットを受けるんだという、そういうものがないと、たとえ売上げが伸びたとしても、下請の企業が疲弊してしまうだけになってはこれは意味がないということで、改めて、今回の戦略分野国内生産促進税制によって各分野を支えているこの中小企業がどのような恩恵を受けてくるのかとお考えなのか、聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/253
-
254・田中哲也
○政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
税制の概要につきましてはもうるる御説明申し上げていますので、本税制の対象分野については、電気自動車、グリーンスチール等、広範なサプライチェーンを構成するものであります。本税制を通じましてこうした分野の国内投資を実現し、生産、販売の拡大していくことで、地域の中堅・中小企業を含めて、部素材等の発注や供給の拡大、確保、さらには雇用所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じるというふうに考えております。
また、本税制と併せまして、例えば電気自動車の構成部品である蓄電池や半導体の製造装置、部素材について、主に初期投資の大きさが課題であることを踏まえまして、昨年度の補正予算、今年度の当初予算において、初期投資の支援に必要な予算措置を盛り込んでいるところです。こうした措置は、本税制の効果とともに、中小を含めたサプライチェーン全体により広く波及させるものだというふうに考えております。
加えまして、これも繰り返しで恐縮でございますけれども、本税制のみならず、中小企業向けの賃上げ促進税制や徹底した価格転嫁対策、さらには革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資の支援などにも取り組むことによって、サプライチェーン上の企業の競争力強化につなげていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/254
-
255・平山佐知子
○平山佐知子君 しっかりとみんながやる気を持ってやっていけるような形にしていただきたいなと思っております。
この制度の中で、EV車、この法案でのEV車は、電気自動車とプラグインハイブリッド車、燃料電池自動車のことを指していますけれども、この一台の生産、販売につき四十万円の税額控除が行われるということです。これは、中国のBYDとかアメリカのテスラの台頭によって、日本の国内メーカー、劣勢を強いられているところでございますので、自動車業界にとっては有り難いものになるのかなということを考えております。
ただ、主要十四か国の自動車市場を見ていきますと、二〇二三年のハイブリッド自動車の販売台数が、前年から三〇%これ増えて電気自動車の伸び率を上回っていますし、さらに、ドイツとか中国では、電気自動車の購入に対する補助金がこれ打ち切られているなど、電気自動車のこの販売台数、陰りが出てきたのかなということも感じているところでございます。
これまで、国内の自動車メーカー、振り返ってみますと、一九九〇年代後半からこのハイブリッド車というものが市場に出てきまして、トヨタだけでも二〇二二年には累計二千万台のハイブリッド車を世界へと送り出してきたわけでございます。ガソリン車と比べて、走行時に排出されるこのCO2およそ四割抑えられて、経済と環境の両面からこのハイブリッド車の貢献度というのは大きかったのかなという認識を持っています。
そこで伺いたいんですが、日本のこの自動車メーカーが元々技術的な強みを持っているハイブリッド車に、さらに今、世界の市場の追い風が吹いているという中、戦略分野国内生産促進税制の対象からこのハイブリッド車、外したのはこれなぜなのか、その理由を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/255
-
256・田中一成
○政府参考人(田中一成君) お答え申し上げます。
委員御指摘のハイブリッド車、これにつきましては、足下ではEVの普及が進むアメリカや欧州におきましてもその販売割合が増加しております。例えば、アメリカの二〇二三年におけるハイブリッド車の販売台数は、前年より五割以上増加しております。さらに、国内でも、二〇二三年の新車販売に占めるハイブリッド車の割合、既に約四〇%に達しております。
このように、ハイブリッド車の市場は既に十分に広がっていると認識しておりまして、ハイブリッド車の生産につきましては、本税制がなくても企業が自ら国内投資の判断を行うことができることから、戦略分野国内生産促進税制の対象としないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/256
-
257・平山佐知子
○平山佐知子君 分かりました。
このEV車とかハイブリッド車の議論で度々これ出てくるのが、果たしてこのEV車が、環境性能、本当の意味でいいのか悪いのかというか、温室効果ガス削減にどれだけ役立っているのかというのがはっきり見えてこないというところもあるのかなと思っています。
言うまでもなく、このEV車そのものは、走行時のCO2の排出量ゼロなんですけれども、日本の現在の電源構成でこのEV車を普及させたときに、温室効果ガスの排出量、どれくらいになるのかと。減るのか増えるのか、それがはっきりなかなか見えてこないので、一概にEV車が環境に対していいんだと言い切ることが難しいということもあるのかなということを考えています。やはり、この総合的なエネルギー政策、電源構成とセットで議論しなければ、グリーン成長戦略の目的からも離れてしまうということになってしまうと思います。
その点でいうと、フランスとかカナダ、ブラジルなど、中には原子力とか再生可能エネルギー、これを中心とした電源構成の国もありますけれども、世界の電源構成を見ますと、まだまだ火力発電、六一・四%を占めていますし、世界には、もちろんこの発電所とか送電網が十分に整備されていない国ということもまだあるわけですね。
例えばEV車を、じゃ、どこの国に輸出するべきなのかということとか、ハイブリッド車を輸出するべき国などをしっかりと示した上で、整理をして示した上で、グリーン成長戦略に基づいたこの自動車造りとか輸出を行っていくのがいいのではないかと思っているのですが、その点について大臣の考えを聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/257
-
258・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 委員御指摘のように、各国ごとに電源構成も異なりますし、インフラ事情も異なりますことから、カーボンニュートラルの実現に向けた自動車に対するニーズというのは多様であるというふうに認識しています。例えば、欧米や中国ではEV市場の拡大がこれからも見込まれる一方で、今後、自動車需要が拡大していく途上国を中心に、ハイブリッド車が相当程度残っていく市場も存在するというふうに見込んでいます。
こうした状況も踏まえまして、我が国は、グリーン成長戦略にも記載していますが、EVだけでなく、ハイブリッド車や合成燃料、水素など、多様な選択肢を追求していく方針であります。
こうした方針の下、経済産業省としては、先ほど参考人からお答えしましたが、ハイブリッド車は普及が相当程度進んでいることから戦略分野国内生産促進税制の対象とはしていませんが、G7やAZEC等を通じて、ハイブリッド車を含めた多様な選択肢の重要性、これはきちんと発信をして、グローバルな市場形成を図っていきたいと思っています。
また、市場が拡大していくEVでも勝つということも追求をしていきたいと思っていまして、戦略分野国内生産促進税制による投資促進、あるいは蓄電池の国内製造基盤強化、購入補助や充電インフラ整備を通じた国内市場の立ち上げといった支援もしっかり行っていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/258
-
259・平山佐知子
○平山佐知子君 しっかりとやはり世界を見ながら、どこの国がどうなのかということも実情を考えながら、やっぱり総合的に世界で勝っていけるような仕組みづくりとか、多様な選択肢をやはり持っていくという話もありましたけれども、まさにそのようにしっかりやっていくべきだなと、そのためには国がリーダーシップを取って方向性も示していただきたいなということを改めてお願いも申し上げさせていただきます。
次に、持続可能な航空燃料、SAFについて伺ってまいります。
SAFは、ここにいらっしゃる皆さんには釈迦に説法かもしれませんけれども、循環型の原料である、例えば植物などのバイオマス由来の原料であったり、また飲食店などから排出される天ぷら油の残りとか、そういう廃食油などから主に製造される燃料のことをいいますけれども、原料となるこの廃食油について見てみますと、家庭から廃棄される使用済みの食用油ですね、これは年間十万トン、レストランなどの事業者からは年間三十八万トンの廃食油が出ています、現状。
その廃食油、どう廃棄されてどういうふうにリサイクルをされているのか。廃食油の発生量に対しての回収割合ですが、事業者から出た廃食油はおよそ九五%回収されています。一方で、家庭から出た廃食油は数%しか回収されていないわけですね。確かに自分の身を振り返ってみても、なかなか家庭から回収するんだという意識はないわけですけれども、その多くが廃棄物として現状処理されているということです。
また、今は産業廃棄物として排水に流されているこの油の中にも回収可能な廃食油が一定量あるということも確認をされているということです。これまでは捨てていたこの廃食油をやはりSAFで有効利用するというのは大変これ重要なことだと思っていますが、一方で、コスト面とか、その回収をどうしていくのかという、そういう課題もあるということが見えてきていると思います。
この数年、航空燃料が化石燃料からこのSAFに置き換わりつつあるということで、廃食油の価格が高騰してきているということです。二〇二一年には廃食油一キロ当たり四十六円だったものが、翌年の二二年にはおよそ二・五倍、一キロ当たり百二十円に高騰したということも聞いています。
やっぱりこのSAFの利用拡大に伴って価格が高騰しているということを考えますと、先ほどほとんど、数%しか回収されていなかったという家庭からの廃食油もしっかりと集めていく必要があるんじゃないか、そういう自治体もこれから現れてくるんじゃないかなということも考えております。
この家庭から出る廃食油、この回収を進めるためには、当然ながら、それぞれの家庭の皆様方の御理解を得ていくということが必要になってくると思いますが、政府としてはそれをどう呼びかけていくのか。やはりこんな、出すことによって大変なやっぱり手間暇掛かりますけどメリットがありますよとか、分かりやすく伝えることが国民の皆さんの理解につながって、それを自分事と捉えて、それならば協力しましょうといったような状況をつくっていかなくてはいけないと思っています。
その点のお考え、それから、あわせて、家庭からの廃食油の回収率高めるためにどのような取組を進めていくのか、環境省来ていただいています、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/259
-
260・角倉一郎
○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
家庭から排出される廃食用油につきましては、現在、分別回収を行っている自治体数は、令和四年度の実績で五百四十九団体でございまして、これは全自治体数の全体の約三割でございます。また、家庭から排出される廃食用油のうち、バイオディーゼル燃料化されている量は約四千三十トン、こういう状況でございます。
こうした状況につきましては、御指摘いただきましたとおり、更にこうした回収を進めていく必要があると私どもとしても強く感じているところでございます。
環境省では、こうした地方自治体の回収の取組、これを後押ししていくため、一般廃棄物の標準的な分別収集区分や適正な循環的利用、適正処分に関する指針の中で、標準的な分別収集区分の一つとして廃食用油等を位置付けさせていただいているところでございまして、この指針に基づきまして、各自治体の取組を最大限後押ししてまいりたいと考えております。
さらに、環境省といたしましては、廃食用油からの持続可能な航空燃料、このSAFの製造など、化石由来資源を再生可能資源に転換するための技術実証等への支援も併せて行っているところでございます。
引き続き、家庭用廃食用油を含む一般廃棄物の再生利用に関する実態把握に努め、その結果も踏まえまして、廃食用油の回収、活用に関する様々な好事例の地方自治体への周知を進めることによりこうした取組が更に広がっていくように、こうした先進的な取組を後押しし、また、各家庭への働きかけもしっかり進むような形で廃食用油の回収が更に進むように、最大限取組を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/260
-
261・平山佐知子
○平山佐知子君 やはりそれを、じゃ、回収したいと思っていても、なかなかどうすればいいか分からないというところもあるかもしれませんので、しっかり、今、横展開という話もありましたけれども、事例を示した上で、国からしっかり分かりやすく示した上で横展開して広げていくということをやっていかなくてはいけないのかなと改めて思わせてもらいました。
この原料の確保という点では、食料と競合してしまうという理由から、欧州を中心には、可食、いわゆる食べることができるこの原料由来のSAFが制限される動きがあるということも聞いています。また、エネルギーセキュリティーの確保ですとかライフサイクルアセスメントでのCO2削減効果の向上といった観点からは、海外から原料を輸入するだけではなくて、国産原料、これを活用していくということもまた重要なテーマなのかなということを思っています。
国内では、廃食用油を回収してSAFを製造して、二〇二五年大阪・関西万博ですね、これで供給を開始する計画が進められているほか、製紙業界では、古紙とか建築廃材からエタノールを生産してSAFの原料とする取組もあると聞いています。
このSAFの普及に向けては、国産かつ非可食である原料を安定的に確保する必要もあると考えていますが、この点について大臣の認識聞かせていただきたいということ、また、今後解決していかなければならない課題などあれば教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/261
-
262・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 将来的なSAFの供給拡大に向けては、国際的に非可食原料の利用促進や原料生産から消費までのライフサイクルにおいて、様々な環境、社会的影響を考慮するなどの持続可能性を遵守することが求められています。このような状況も踏まえつつ、我が国としても、安定的で安価な原料の確保を進めていかなくてはならないと考えています。
その際、御指摘の、国産や非可食の原料の確保も重要であります。我が国では、既にSAFの製造事業者が、国内の飲食チェーン、今御指摘ありましたが、廃棄物処理業者との連携によりまして、廃食用油や都市ごみなどの効率的な回収に向けた取組や、非可食原料を海外で栽培し、原料として利用するための取組が広がってきています。
また、経済産業省としても、二〇二二年四月、国土交通省と共同で立ち上げた官民協議会におきまして、農林水産省や環境省とも連携し、安定的で安価な原料の確保に向けたサプライチェーンの構築に向けた課題解決に取り組んでいます。その中で、国産の非可食原料の利用推進のため、SAFの原料候補を取り扱う関係者を官民協議会に招いてヒアリングを行い、事業化に向けた課題の抽出をしたいと考えています。
引き続き、先行する国内外の取組なども参考にしながら、安定的な原料確保に向けた取組を進めつつ、SAFの供給体制の早期確立に向けて取組を進めていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/262
-
263・平山佐知子
○平山佐知子君 事業化に向けた、今から検討もしっかりしていくというお話もありました。やはりこの環境という観点から、GX、世界でもしっかり競争力アップできるような形をこの段階から進めていくということ、非常に大事かなと思っております。
資源エネルギー庁が作成したこのSAFですね、これの利用量と供給量の見通し、これを見てみますと、SAFの供給が需要量に追い付くというのは二〇二八年ということなんですね。まだまだ現時点では需要に対して供給が追い付いていないということになりますが、こうした中で、GX基本方針には、航空機による燃料使用量の一〇%、これをSAFに置き換えるということを明記をされています。
去年十二月のGX実行会議で示された分野別投資戦略では、このSAFの供給・利用目標を設定することに加えて、SAFの製造設備や原料サプライチェーン整備を支援する方針が示されました。そして、今回の法律案では国内生産促進税制が適用されるということになり、これで生産者側のインセンティブは示されると思っています。
一方で、使う側ですよね、航空側、航空会社側のインセンティブは、これは示されていません。SAFは、この航空燃料に最大五割混合させることができます。航空燃料価格の最大五倍とも言われているこのSAFを義務値一〇%以上導入してもらうということには、やはり何らかのインセンティブが働かなければ導入はなかなか難しいのかなという印象を持っています。
利用者側である航空会社側に対しても、導入目標を設定する以外に、これやっぱり更なるインセンティブを与えるということも検討してもいいのではないでしょうか。この点に関しての見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/263
-
264・大沼俊之
○政府参考人(大沼俊之君) お答え申し上げます。
二〇五〇年までのカーボンニュートラルに向け、また航空の国際競争力や航空ネットワークの維持強化の観点からも、航空の脱炭素化、これは大変重要な喫緊の課題でございます。航空の脱炭素の中心になりますのが、先生御指摘のとおり、CO2の削減効果の高いSAFの導入の促進でございまして、二〇三〇年時点のSAFの使用量について、日本の航空会社による燃料使用量の一〇%をSAFに置き換える目標を掲げて取り組んでいるところでございます。
具体的には、先ほど大臣からも御指摘ございましたように、SAFの導入促進に向けて、私ども、経済産業省さんと一緒に官民協議会を立ち上げてございますが、ここで、エアラインや石油元売とともに、国際競争力のある国産のSAFを安定的に供給できる体制の構築に向けて議論を進めているところでございまして、今般のGX経済移行債を活用したSAFの製造事業者に対する設備投資補助や税額控除、我が国のSAF導入促進にこういったものは大きく貢献するものと考えております。
他方で、ヨーロッパ、EUでございます。こちらでは、空港でのSAFの供給義務といった規制、あるいはアメリカではSAF製造事業者に対する大規模な補助金による支援、こういったことは行っているんですけれども、利用者側であるエアラインに対する財政的な支援というのはいずれにおいても行われていない状況でございます。
利用者側であるエアラインに財政的な支援を導入する場合には、まず、これは航空利用のない方も含めた国民全体での負担になるということ、さらに言えば、日本の航空会社のみならず、日本発着の外国の航空会社も対象にするということになること、あるいは、国産のSAFに加えて海外からの輸入のSAFも対象としていくといったような、こういったことをどう考えるかといった課題も多くて、慎重に考えるものかと認識しているところでございます。
こういった観点から、国際競争力のある国産SAFと既存のジェット燃料の差額につきましては、これ、環境の価値ととらえて航空利用者に御負担いただくことが基本になるものと私どもは考えておりますけれども、引き続き、今私申し上げました海外の動向ですとか、あるいは国産のSAFの製造状況、こういったものは注視してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/264
-
265・平山佐知子
○平山佐知子君 公平性という観点から、補助金を入れるという、税金ですから、これはなかなか難しい問題だというお話、よく分かりました。
ただ、航空業界も、もちろんこれ、各社競争の中で事業を行っていますので、自社の競争力を維持をしていくために、もしかしたらSAFの混合割合を、この義務値ですか、以下、できる限り下げようということを考えることも、やっぱりこれ、あり得ることだと思います。
このSAFですが、今後、このSAFの国内生産体制が想定どおりに整わずにSAF価格が高騰した場合には、航空会社それから利用者の負担が増えてしまうのではないかという、こういった懸念点、それから、結局は現場で働く人の負担が増えてしまうのではないかという心配もあるわけです。
このSAFの導入による航空運賃の影響ですとか空運業界への影響をどのように見込んでいるのか、また、支援メニューの検討などを行われているかどうか含めて、また何か考えがあれば教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/265
-
266・大沼俊之
○政府参考人(大沼俊之君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、航空運賃は、SAFを含めた燃料のみならず、様々な要因で決まるものでございますけれども、SAFにも、さらに言えば様々な原料がありますので、具体的にどういうふうな影響になってくるかというのは、なかなかこの試算、簡単ではございません。ただ、一般論として申し上げれば、SAFの価格が高くなれば、ほかの部分が変わらなければ当然運賃にも影響があると、これは御指摘のとおりでございます。
国土交通省といたしましては、国際競争力のある国産SAFを安定的に供給できる体制をしっかりと構築すると。その上で、国際競争力のある国産SAFと既存のジェット燃料との差額につきましては、先ほど申し上げましたように、これは環境価値ととらえて、そのコストについては航空利用者の方に御負担いただくことが基本的な考え方になるのではないかと。その上で、それをきちんと理解していただくためには、環境価値に対するコストを円滑にその運賃に乗せていくという意味では、航空利用者に理解を得る必要もあると認識しておるところでございます。
こういった観点で、本邦エアラインにおきましては、SAF利用によるCO2の削減量を環境価値として、これを証書にして見える化することで、どれだけCO2排出量の削減に貢献したか、利用者の方が把握できる、こういった取組を始めたところでございます。
国土交通省としても、航空利用者への浸透を図るために、ガイドラインの作成などによりまして、こういったエアラインの皆さんの取組を後押ししているところでございます。
繰り返しになりますけれども、国土交通省といたしましては、エアラインのみならず、航空利用者の皆様がSAFの利用による環境価値を享受し、あわせて、SAFの利用に伴うコストについても御負担いただく、こういうことについての環境の整備をまずは図っていきたいと、ここから始めてまいりたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/266
-
267・平山佐知子
○平山佐知子君 多くの人に環境付加価値というものを見える化してという言葉もありましたけれども、しっかり分かりやすく国としても示していくんだと、みんなに理解してもらって一緒になって前に進めていくんだということで理解をいたしました。
今日、様々な議論の中で、経済の停滞とか失われた三十年とか、厳しい流れの言葉もたくさんありました。これをやっぱり打破していくため、打ち勝っていくには、やっぱり国がしっかりと指針示した上でリーダーシップを取って、みんなが一緒に前に進んでいけるような、世界で戦っていけるような、そんなやる気を持てるような社会をつくっていかなくてはならないと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/267
-
268・森本真治
○委員長(森本真治君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/268
-
269・森本真治
○委員長(森本真治君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案の審査のため、来る二十八日午後一時に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/269
-
270・森本真治
○委員長(森本真治君) 御異議ないと認めます。
なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/270
-
271・森本真治
○委員長(森本真治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314080X01120240523/271
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。