1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和六年五月七日(火曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 阿達 雅志君
理 事
磯崎 仁彦君
酒井 庸行君
広瀬めぐみ君
石垣のりこ君
宮崎 勝君
委 員
衛藤 晟一君
太田 房江君
加藤 明良君
古賀友一郎君
高橋はるみ君
森屋 宏君
山谷えり子君
鬼木 誠君
塩村あやか君
杉尾 秀哉君
窪田 哲也君
片山 大介君
柴田 巧君
竹詰 仁君
井上 哲士君
大島九州男君
事務局側
常任委員会専門
員 岩波 祐子君
参考人
一般社団法人日
本経済団体連合
会常務理事 原 一郎君
弁護士 齋藤 裕君
東北大学名誉教
授 井原 聰君
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本日の会議に付した案件
○重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○経済施策を一体的に講ずることによる安全保障
の確保の推進に関する法律の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/0
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001・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、一般社団法人日本経済団体連合会常務理事原一郎君、弁護士齋藤裕君及び東北大学名誉教授井原聰君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、原参考人、齋藤参考人、井原参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず原参考人からお願いいたします。原参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/1
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002・原一郎
○参考人(原一郎君) 原でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
早速ですが、説明に入りたいと思います。
私の方から、資料三点、お手元にお配りをしておりますが、本日はこの横長のパワーポイントの資料に基づきまして御説明をさせていただきます。
まず、一ページを御覧ください。
経団連は、二〇二二年二月の経済安全保障推進法に関する提言におきまして、相手国から信頼されるに足る実効性のある情報保全制度の導入を要望いたしました。その後、経済安全保障推進法成立時の附帯決議あるいは二〇二二年年末に改定されました国家安全保障戦略を踏まえまして、政府は二〇二三年二月にセキュリティークリアランス制度に関する有識者会議を立ち上げました。私もそのメンバーとして参加をしてまいりました。有識者会議は今年一月に最終とりまとめを公表いたしましたが、経団連はそれを踏まえまして、法制化に当たり留意すべき点などをまとめた提言を、これお手元にお配りしてあるものですが、二月二十日に公表するとともに、三月十九日には日本商工会議所とともに法案の早期成立を求める提言を公表いたしました。これも併せて配付させていただいております。本日は、それらに基づきまして、今次法案について我々の考えを説明させていただきます。
二ページは法案の目次でございますので省略をさせていただきまして、三ページを御覧いただきたいと存じます。
制度設計に当たっての経団連の基本的な考え方をこの一枚で示してございます。
まず、一番上にございます特定秘密制度を始めとする既存の制度との整合性や、その次のプライバシーへの配慮につきましては法文上も配慮されていると考えております。
三つ目の保全の対象となる情報につきましては、これまでの国会審議におきまして政府は政府保有情報が対象であると明言をされていると承知をしております。あとは、どこまでこの対象情報が限定されるのかということを注目していきたいと思います。
四つ目の情報の共有を受ける事業者につきましては、行政機関の長は当該事業者との契約に基づいて情報を提供することになっておりますので、共有を受ける意思のない者まで対象とすることはないものと考えております。
五つ目の企業のニーズにつきましては、法案の名称及び目的に使用されている活用という表現から明らかであると思いますが、実際に企業ニーズの受皿として有効に機能するか否かは法案成立後の下位法令あるいは運用基準などを見させていただきたいと思います。
また、相手国から信頼されるに足る実効性のある制度にしなければならないことは当然のことでありますが、この点につきましても実際の運用を見させていただく必要があると考えてございます。
全体としては以上のとおりでございますが、以降、法案の順番に沿いましてもう少し詳しく説明をさせていただきます。
四ページを飛ばしていただきまして五ページでございますが、五ページからの保全の対象となる情報につきましては、基本的に有識者会議及び経団連の意見に沿っていると考えておりますが、慎重を期して申し上げれば、六ページにございますとおり、対象が広がり過ぎないよう下位法令等を注視する必要があると考えております。
六ページを御覧ください。
米国では、一番左にありますように、セキュリティークリアランス制度の対象となるクラシファイドインフォメーションをトップシークレット、シークレット、コンフィデンシャルの三つに区分していると承知をしております。一方、我が国の特定秘密制度は、トップシークレット、シークレット級の情報はカバーしている一方で、コンフィデンシャル級の情報はカバーしていないと承知をしてございます。
この点に関しまして有識者会議では、新たな制度においてはコンフィデンシャル級の情報を含めて制度の対象といたしましてクリアランスを実施すべきというふうにいたしました。経団連も同じ意見でございますけれども、政府は有識者会議の最終とりまとめの後、七ページの上の囲みの二番目の黒丸にございますように、新たな制度ではコンフィデンシャル級のみを対象とする方針が示されました。
そこで、国際共同研究開発等に参加する際にトップシークレット、シークレット級のクリアランスを求められた場合であっても対応が可能となるように、新制度と特定秘密制度とがシームレスに運用されるよう必要な措置を講じる必要があると考えております。岸田総理もそのような指示を出しておられるものと承知をしておりますが、経団連としてもそのような形で企業のニーズに対応していただきたいと考えております。
八ページからは、保全対象となる情報の提供を受ける事業者についてでございます。
そこにございますように、情報を提供する事業者とはまず契約を締結することになっておりまして、そのような契約を締結する意思のない者はクリアランスの対象にならないという意味で妥当であると考えております。
国会審議におきましても、岸田総理から、適合事業者として選定され、情報提供を受けるのは事業者自らが意思を示した場合に限るという御答弁がございましたし、高市大臣からは、契約関係に入る前の段階で、提供される可能性がある情報の概略や当該情報の活用方法などについて可能な範囲で伝えることになり、そのやり取りの中で事業者としてその情報の提供を受けるかどうかについて判断することになるという御答弁もございましたので、この点は満たされるものと考えております。
九ページは、保全情報の提供を受ける意思を示した者のクリアランス、適性評価についてでございます。
有識者会議の最終とりまとめでは、現行制度の運用や主要国の例も参照しつつ、我が国の企業等の実情や特定秘密保護法等の整合性も踏まえながら、実効的かつ現実的な制度を整備していくべきとされております。
経団連といたしましても、国内既存制度との整合性を踏まえて現実的な制度とするとともに、国際的にも通用する実効的な制度となるよう諸外国の理解を得ていくことを求めております。この点、法案では、事業者の保全体制について、法案成立後に策定される運用基準で適合事業者の認定等に関し定めることとしておりますので、そちらを注視させていただきたいと考えております。
十ページは取扱者の制限でございますけれども、ここは飛ばしていただきまして、十一ページからは共有された情報を取り扱う者のクリアランス、適性評価についてでございます。十三ページを具体的には御覧いただければと思います。
取扱者個人の信頼性の確認につきましては、法案では、調査は一元的に行う一方、評価は各省庁が実施することになっております。調査のみならず、評価結果も含めてポータビリティーを確保してほしいという企業の当初の要望からすれば、経団連としては調査、評価共に一元化が望ましいと考えておりましたけれども、保全すべき情報の指定が各行政機関において行われるという法案の立て付けに鑑みれば、評価については各行政機関が行うことに一定の合理性があると考えております。
いずれにいたしましても、信頼性の確認を受ける保全情報の取扱者個人の負担を減らしていくことが重要と考えてございます。
十四ページを御覧いただければと思います。
適性評価調査に同意しなかったことや、適性評価の結果及び取得した個人情報につきましては、不利益取扱いを含めて目的外の利用を禁止することは当然と考えております。法案におきましてもそのように規定されており、妥当な内容であると考えております。
十五ページの雑則は飛ばしていただきまして、十六ページからの保全情報の漏えい等に対する罰則につきまして考え方を述べさせていただきます。
十七ページにありますとおり、既存制度との整合性を取るべきと考えており、基本的には法案もそのようになっておると考えております。法人に対する罰則につきましては、法案では業務に関して違反行為をした際に罰するとなっておりますので、いわゆる組織ぐるみの違反の場合にのみ法人も罰則の対象となるものと理解しておりまして、その限りにおいてこの両罰規定もやむを得ないと考えてございます。
十八ページの附則は飛ばしていただきまして、十九ページを御覧ください。
これは法案の対象事項ではございませんが、経団連として、制度の分かりやすい説明、あるいは他国との情報共有をスムーズにする政府間協定の締結などを併せて求めてございます。いずれも衆議院内閣委員会の附帯決議に同趣旨が盛り込まれていると理解をしてございます。
最後、二十ページはクラシファイドインフォメーション以外の重要な情報の取扱いについてでございます。
これも法案の対象ではございませんが、有識者会議は、一定の保全措置を講ずる必要性について今後検討を進めていくべきとしております。この点も先ほどの附帯決議に同趣旨が含まれていたと理解をしておりますが、経団連としては、クラシファイドインフォメーション以外の重要な情報につきましても、民間事業者などが保有している情報までをも対象といたしますと、民間の自由な活動を阻害し、国力の重要な要素である経済力、技術力を毀損しかねないというおそれも抱いておりまして、仮に今後政府としてその取扱いを検討していく場合には改めて経団連としての意見を申し述べていきたいと考えております。
私からの説明は以上となります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/2
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003・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。
次に、齋藤参考人にお願いいたします。齋藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/3
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004・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) 弁護士の齋藤裕でございます。
それでは、重要経済安保情報保護法案についての意見を資料一を基に説明させていただきます。
最初に、重要経済安保情報保護法案の主要な問題点と衆議院での修正についてということが資料に書いてございますが、これはお読みいただければと思います。
続きまして、二の秘密指定の適正化が果たされるのかということでございますけれども、本法案修正により指定状況等の国会への報告が規定されましたけれども、これでは秘密保護法と同じであります。秘密保護法でも秘密指定の適正化は図られておりません。
二〇一五年にアメリカで強制秘密解除制度により全体として秘密指定解除されたのは二十四万ページ以上、対して日本では、秘密指定要件を満たしていないということで独立公文書管理監や審査会が秘密指定を解除した事例というのはないわけでございます。重要経済安保情報を情報監視審査会がチェックすることになったことはいいことですけれども、だからといって秘密指定の適正が担保されるわけではありません。
情報監視審査会について、積極的に活動されておられることは理解しております。しかし、メンバーが専従でそれだけをしているわけではないこと、行政庁が必ずしも情報監視審査会にきちんと説明しているわけではないこと、特定秘密の提出要請について過半数で決することになっていることからして、その機能には限界がございます。高市大臣も参議院で、審査会での経験談として、限られた時間中で対処するには扱う情報が多過ぎた、十分に理解できなかった、審査会に提供される情報が不十分であったということを率直におっしゃっていたところでございます。
審査会で行政庁がきちんと説明をしていないことについては、衆議院情報監視審査会令和四年年次報告書に、指定等の適正性を説明するに当たっては、指定の三要件に該当するものを指定するといった説明に終始し、要件の充足性を十分に示さないなど、丁寧な説明とは言い難いケースもあったとされているところです。
特定秘密の提出要請について過半数を求めているというのが現行制度ですが、政府・与党側のメンバーが審査会の過半数を占めているため、政府・与党に批判的な観点から提出要請を活用することにはなりにくいことになってしまいます。結局、行政庁の方で見せてもよい特定秘密しか見ないでチェックするということになりがちだというふうに考えます。国会に報告がされ、仮に情報監視審査会がチェックをするようになったとしても、秘密指定について十分なチェックは不可能であります。
さらに、アメリカと日本における秘密概念の根本的な違いにも留意が必要です。日本においては、秘密指定が抽象的になされ、チェックも同様に抽象的になされるため、独立公文書管理監にしても情報監視審査会にしても十分なチェックが期待できません。アメリカでは、秘密指定は文書レベルでなされ、秘密指定解除も文書レベルでなされます。
ISOOの添付一の資料、添付二の資料を御覧いただければと思いますが、これはその資料一の添付資料ですね、資料一の添付資料ということでお付けしています。添付一と添付二というのをお付けしていますけれども、かいつまんで言いますと、秘密指定解除の請求をする場合には文書等を特定し、それを受けた機関はライン・バイ・ライン、一行ずつ秘密の要件を満たすかどうかチェックするというふうにしております。
他方、日本では秘密と文書とは厳密に区別されております。例えば国家安全保障会議の議事録については、例えば令和四年の国家安全保障会議の議事録の結論部分という形で包括的に秘密指定されるわけであります。何月、一月一日の議事録という単位では秘密指定されません。よって、例えばですが、一月一日の議事録に公知の情報が記載されていて秘密とするようなものでなかったとしても、一月一日の議事録の秘密指定は解除されないことになります。これでは具体的な内容に即して実効的に秘密指定をチェックすることはできません。
参議院情報監視審査会は、この点ですけれども、特定秘密の指定が適切であっても、対象情報の拡大解釈等により過剰に特定秘密文書とされていないかといった懸念があることを踏まえ、独立公文書管理監は検証・監察において、実際に当該特定秘密文書の提示を受け、特定秘密とされる情報が妥当な範囲に収まっているか確認することとの指摘を独立公文書管理監に対して行っておられます。
それに対し独立公文書管理監は、指定の検証・監察は、文書ではなく情報の問題ではあるが、審査会における御指摘も踏まえ、文書の確認を行うことにより特定秘密の指定の適否の判断がより的確になるような場合等には、実地調査を通じた積極的な文書の確認を行うこととしていると回答しています。これは要するに、文書はチェックはするけれども、文書単位で見た場合に秘密として保護すべきでないものが記載されている文書があったとしても、それを秘密解除すべきだということは言わないということであります。
秘密指定の適正化をするためには、大前提として、指定、解除される秘密を文書単位にするなど、具体的に秘密をチェックし、解除するという扱いにする必要があります。この点ですが、参議院の情報監視審査会は非常に鋭い御意見を述べられておられるわけです。ところが、独立公文書管理監はこの情報監視審査会の指摘を全く受け入れていない状況です。それにもかかわらず、この参議院においてこの法案を通すのでしょうか。私は大変懸念を持っているところであります。
さらに、運用基準などで指定範囲が適正化されるからよいという答弁が政府からされておりますけれども、人権に関わることは国会で決めるというのが法治主義であります。運用基準で決めればよいというわけではありません。
三つ目、適性評価による人権侵害を防ぐ対策について述べさせていただきます。
無辜で違法行為を行う危険性があるとも想定されていない、多くの民間人の機微情報を収集する戦後日本で初めての国家機関をつくろうと、この法案を作ろうとしているわけです。それにもかかわらず、どのようにその権限濫用を防ぐのか、全く規定がありません。情報監視審査会も、適性評価の対象人数など概況的な聞き取りはしていますけれども、具体的にどのような調査が適性評価のためになされているのか等について突っ込んだ調査はしていません。そもそも法律上権限がなく、やろうとしてもできないわけであります。
さらに、独立公文書管理監には適性評価についての権限がそもそもありません。法律に基づき適性評価についてチェックする第三者機関を設けて、立入り、報告聴取、資料提出要求権限を与える必要があります。このような権限を与えるには法律に書き込む必要があります。
さらに、適性評価の関係ですけれども、附帯決議四項で労使の意思疎通のためのガイドラインということが言われていますけれども、それでも労使協定などが適性評価導入の前提として法律で位置付けられておりません。労働者の権利を守る措置が不十分であります。参議院でも、労働者は上司から適性評価を受けるよう言われても拒否できないのではないかということがさんざん言われているわけです。
個々の労働者は弱いものであります。だからこそ、憲法は団体交渉権や団体行動権を保障しているわけです。個々の労働者は弱くて、労働組合など集団になることでやっと使用者と対等に近づけるというのが日本国憲法の思想であり、世界共通の認識であります。そこから考えると、適性評価を受ける受けないを単純に個人の選択の問題とするのでは不十分であります。労働協約や労使協定の問題にしなければなりません。そうしないと、労働者の自由な選択などというのは絵に描いた餅でしかありません。
次に、四番目、中小企業など民間にとっての負担感について述べさせていただきます。
現行の法案では、誰が適性評価を受けるのか、範囲が曖昧であります。代表者まで適性評価をしないといけないのかどうか有識者会議で議論していましたが、そこら辺が決して詰められているわけではありません。このまま法律が通ってしまいますと、企業としては予測もしていなかった社長さんの適性評価を求められるなど、不測の事態が生ずる可能性があるというふうに考えます。
そして、企業がこの制度で苦労する割には、企業にとってのメリットが見えにくいということもあります。アメリカでは、ISOOがコンフィデンシャル級の秘密の廃止を勧告し、原機密指定権者は二〇二一年度では三人しかいなくなっています。ほかの秘密区分でいえば数百人いるわけです。それが、コンフィデンシャル、三人しかいないというのは、ほぼコンフィデンシャル級というのは廃止に向かっているということなわけです。アメリカの行政機関もコンフィデンシャル級を廃止しつつある。それにもかかわらず、日本でコンフィデンシャル級に特化した法律を作る意味がどこにあるのか、大変疑問であります。
高市大臣は、ほかの国では秘密の三層構造を持っているということをおっしゃるわけです。しかし、そもそも有識者会議は、アメリカは非常に公開される資料が多いのでアメリカを参考に議論しましょうと言っていて、ほかの国を余り参考にしていないんですね。それを今更、ほかの国が三層構造だと言うのは非常に矛盾した話だというふうに思っております。
さらに、有識者会議では適性評価の参考として六つの国が挙げられているわけでございますけれども、イギリス、フランスは三層構造を廃止している。アメリカも三層構造の廃止に向けて大きく動いている。そして、カナダでございますけれども、カナダ、有識者会議の資料を見ましても、少なくとも人的管理については二層構造なんですね、有識者会議の資料を見ても。そうしますと、純粋な三層構造を持っている国というのは、有識者会議の資料を見てもオーストラリアとドイツだけなんです。
そうすると、なぜ、六か国中アメリカを含む四か国が二層構造に向かっているにもかかわらず、六か国中のドイツ、オーストラリアというマイナーな国の三層構造に合わせた法律を作らなければならないのか、これは全く理解できないところであります。
さらに、アメリカではFOCIという外国による所有権の調査という制度がございますけれども、FOCIが秘密を共有する上で重視されますけれども、今回の法案については附帯決議十五項で検討するということにしかなっておりません。この点からも、法律を作ったら秘密をもらうことができるというのは非常に甘いと言わなくてはならないと思います。アメリカより規制が甘いわけですから、制度をつくったけれども情報がもらえないということは十分あり得るわけでございます。そうすると、企業のメリットはないということになりかねません。
なお、G7では経済安全保障のセキュリティー制度がないのは日本だけとも言われますけれども、政府の説明では秘密保護法は経済安保情報も取り扱うということでございますので、そうであれば、今でもG7で日本だけ経済安全保障のセキュリティー制度がないということにはなりません。
高市大臣は、本法案では秘密の範囲は適合事業者に示されるので、大川原化工機事件のような冤罪は発生しないというふうに言っています。しかし、ちょっと先生方お持ちかどうか分かりませんけど、青表紙の参考資料の二十三ページに図がありまして、それを基に言いますけれども、A社という会社があって、A社という会社がXという技術情報を持っていて、それを政府に提供したとします。で、政府がそれに少しだけ情報を加味して、そのA社が提供したXという情報に少し情報を加味してYという情報にして、それをほかの会社に、B社とかC社に提供したとします。で、A社にも提供したとします、Yという情報をA社にも提供して秘密指定したとします。そのA社は、元々持っていたXという技術情報はどう使うかは縛られないわけですけれども、Yという秘密指定された情報を提供すると犯罪になるわけです。そのA社がXという情報をD社というほかの会社と共同研究するために提供した場合、元々技術情報YというのはXに多少情報を加味したものなのですごく似ているわけです。それで、経済安保の領域で手柄を立てたい警察が、よく調査もしないで、政府からの情報であるYを漏えいしたということで業者を逮捕するということもあり得るというふうに思っています。
経済安保という名目が立つと起訴のハードルが下がるというのは、大川原化工機事件の教訓であります。政府は、国会においても大川原化工機事件について反省を示していません。外事警察の暴走を止める方策も検討していません。同じことが起こる危険性はあります。
なお、大川原化工機事件に比べても、本法案で逮捕などされた事件の方が逮捕された人は大変であります。それは、どのような秘密に関わる件で逮捕等をされたのか、弁護人が知り得ないからであります。まともな弁護はできません。なぜそうなるかというと、捕まった人が弁護人に秘密について話すと、それ自体、本法で懲役五年になってしまうということです。
そのほか、関連する点でございますが、一つは、陸自、海自での特定秘密漏えい事案というものが、令和六年四月、明らかになりました。再発防止検討委員会で検討するということになっています。その結果、秘密保護法の仕組みでは秘密漏えいを防止できないということになったらどうするんでしょうか。法律を作ったばかりでまた改正するんでしょうか。今この法案を成立させる時期ではないと思います。
次に、シームレスなのかどうかということです。
政府は、秘密保護法と本法案がシームレスだというふうに主張します。その上で、重要経済基盤保護情報のうち、漏えいが安全保障に支障を与えるおそれがあるものが重要経済安保情報、著しい支障を与えるものが特定秘密に該当するかのような説明をしますが、誤りです。その理由は、両方において安全保障という言葉の意味が違うからです。
内閣官房のホームページに秘密保護法の注釈がありますが、そこでは、安全保障とは国家及び国民の安全を守ることとされています。そして、国民の安全に関して言うと、国民の生命が守られることが安全保障だというふうにホームページでは言っているんですね、政府の。他方、そうしますと、国民の生命が害されないけれども国民生活や経済活動が害される場合については、秘密保護法では安全保障の問題ではありません。他方、本法案では、どうも国民生活や経済活動が害されるような場面も安全保障の問題と捉えているようであります。
そうしますと、例えば国民の生命に関わらない半導体のサプライチェーンに係るような情報は、本法案では経済活動に関わるものなので対象情報となるかもしれません。しかし、国民の生命には関わらないので、政府のホームページの記載からすると、秘密保護法で言うところの安全保障の問題ではないことになります。
ですから、政府の説明というのは間違っていて、重要経済基盤情報で漏えいが著しいものが特定秘密になるかのような説明は誤りです。そうしますと、法律の穴があることになりますので、この法律をそのまま通していいのかということを非常に心配しているところです。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/4
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005・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。
次に、井原参考人にお願いいたします。井原参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/5
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006・井原聰
○参考人(井原聰君) 御紹介にあずかりました井原聰と申します。
この度、本法案に対する意見を申し述べる機会を与えていただき、感謝申し上げます。
私は、科学とは何か、技術とは何かを問うために科学史、技術史を研究してまいりました。科学者が戦争に協力した歴史を振り返ると、二度と過ちを繰り返さないために、科学者は常にいかにあり、いかになすべきかを問わなければなりません。
先端分野の革新的技術、AI、量子、宇宙航空、海洋、生命科学分野は、欧米ではデュアルではありますが、れっきとした軍事用として位置付けられています。しかし、日本ではデュアルと称して民生用技術の側面があえて強調されてきました。無論、民生用として機能しないわけではありませんから、軍事に転用される危険性のあることを認識していないと危険です。とりわけ、憲法に戦争権限が定められた軍隊を持つ米国で発達してきた軍事制度の一部とも言えるセキュリティークリアランス制度を日本では軍事には関係ないと殊更に強調されるので、私は警戒心を持たざるを得ません。
これまでの衆参内閣委員会の御議論では、法案成立以降、有識者に意見を聴いた上で運用基準を策定し、閣議決定するというフレーズが政府側答弁で多出しました。参院内閣委員会のこれまでの審議時間二十数時間のうちに、政府と議員の間で運用基準という文言が実に二百二十回を超えて飛び交いました。本法案の肝ともいうべき重要な内容が具体的に示されず、運用基準や政省令が決めていくという議会制民主主義を形骸化するような法案審議に驚きを禁じ得ません。政府に丸投げの法案ではありませんかと詰問する議員もおられました。
本法案は、法案の枠組みだけが示され、政府の恣意的な運用を可能にする立て付けになっています。十年前の特定秘密保護法、以下、特秘法と呼びます、の折には、それでも、曲がりなりにも法案の概要が事前に公表され、僅か二週間ではありましたけれども、パブリックコメントにかけられてから国会へ法案が提出されましたが、本法案にはそうした手続もなく、批判の声が上がるいとまも与えないスピード感があります。
さて、政府に秘密情報があることを私も否定するものではありません。安全保障とはレベルが違いますが、学術分野でも秘密があります。研究のプライオリティーを確保したり、各種共同研究実施に関わって秘密保持契約が結ばれることがあります。また、利益相反を管理したり、研究の公正性、透明性を確保するために研究インテグリティーを自律的に確保していく取組がなされています。内外の共同研究や研究交流にあっては、大学や研究機関がガイドラインを作っています。そのために、秘密保持契約、共同研究か否かにかかわらず、成果有体物移転契約、宣誓書、誓約書などが作られたりしますが、違約すれば損害賠償の対象になり、研究者生命が絶たれることもあります。
大学や研究機関にとって、どのような内容を秘密保持に盛り込むのかは個別具体的です。研究機関名、予算額、研究計画、研究課題名、研究成果の発表、博士論文の審査、ノウハウ情報、契約情報などが検討の対象となります。安全保障とレベルが違うとはいえ、ガイドラインに具体的な基準もなく手を突っ込むことになるセキュリティークリアランス制度は、学術研究体制に大いなる攪乱をもたらすことになるでしょう。大学や研究機関の当事者の意見を聴取しないまま本法案を成立させては、禍根を残すことになります。
ところで、国が機微情報を提供する適合事業者はどのようにピックアップするのでしょうか。また、どのように研究者をピックアップし、あなたは適性評価の対象者になりましたと告知するのでしょうか。シンクタンクによって集約、選別がなされ、政府がより取り見取りで指定するとでも言うのでしょうか。その手続や基準も示されておらず、一部の研究目利きにげたを預けるとすれば、先端分野の食い散らかしが起き、結果としてますます日本の研究力の劣化が進行するでしょう。加えて、特許非公開や研究を機密の中に囲い込んでしまえば、健全な産業の発達にも重大な影響が出てくるものと考えられます。
また、適合事業者となるには管理運営のどのレベルの承認が必要となるのでしょうか。ある程度上意下達のある企業と違って、大学ではどこまでがセキュリティークリアランスを必要とするのか、研究の自由や種々のガイドラインとも関わり問題が少なくありません。政府による大学のガバナンス強化とも関わり、学長、副学長、担当理事、部局長なのか、それ自体が大学運営を変質させるものとなるでしょう。
これまで度々指摘されてきましたが、適性評価に不同意の場合、不利益にならない保証はなく、適性評価を受けた研究者が研究遂行途中で研究の方針を変えるような場合、離脱の自由があるとはいえ、大学と政府、研究者と政府との間の秘密保持契約の内容に規制されてしまうおそれが危惧されます。秘密保持契約の内容、その枠組みさえ示されていません。当事者任せだとすれば、情報を提供する政府側の要請が強く働き、受ける側が不利になることも考えられ、政府の恣意的な運用を規制する仕組みが不可欠です。
ところで、提供される経済安保秘密情報は明示されるのでしょうか。その定義は極めて抽象的でしかなく、自衛隊で起きた秘密漏えい事件では、当事者たちは何が秘密であったのかが分からなかったとさえ言われていますので、自覚のないままに漏えいする危険性が排除できないつくりとなっています。
適性評価を得られなかった事業者所属の研究者を受入れ可能な研究機関に移籍することもあり得るとまで有識者会議では語られています。先端科学技術分野で起きるこうした制度的攪乱は、日本の学術研究体制に大きな影響を及ぼすことになりかねません。機微情報を受け入れた先端科学技術分野は、閉鎖的研究環境となり、研究交流を遮断され、研究の批判者がなく、独善的な研究の迷宮に入り込む危険性があり、かつての核兵器のようなモンスターを先端分野で出現させないとも限りません。
先頃話題になった映画「オッペンハイマー」は、そうそうたる現代史家が書いた「アメリカン・プロメテウス」が基になっていますので、史実としては確かな部分も多いものです。この映画にはたくさんの方の批評がなされています。朝日新聞デジタル版に竹田ダニエルさんが、科学者がいかに政治に絡め取られ、自分の意図とは懸け離れた形でいかに政治が冷酷に、者がいかに政治に絡め取られ、自分の意図とは懸け離れた形でいかに政治が冷酷に進んでいくかをこの映画が描いている点も興味深かった、今の科学分野におけるアカデミアと軍事の密接なつながりの問題にも通底していると述べています。これに呼応して増田ユリヤさんが、私が一番恐ろしいと思ったのは竹田氏も指摘している政治と研究との関係だ、研究成果を生かすも殺すも、それを決めるのは研究者ではなく政治家なのだと言い、さらに、毎日新聞社の映画情報サイトで記者千葉紀和さんは、映画「オッペンハイマー」は、科学者の倫理とともに、科学と政治のありようも問いかけている、あの時代の米国の話ではなく、現代を生きる私たちの問題として受け止めたいとも述べて、今日の研究者の在り方に言及しています。真摯に受け止めなければと改めて感じました。
五十年ほど前になりますが、マンハッタン計画資料が解禁されるとすぐに関係資料を取り寄せて調査したことがあります。竹田さんや増田さんが鋭く洞察されたように、マンハッタン計画の研究者たちは軍部と一部の権限を持った政治家の統治の下にあり、それから一歩も外に出ることができませんでした。マンハッタン計画では、厳しい情報管理と秘密保全体制が取られ、機微情報に関わる内容が含まれていると判明した書籍だと知られると、秘密全体、秘密保全体制、あっ、その書籍は図書館から姿を消したばかりか、過去に誰が借り出したか、閲覧履歴まで調査されました。今日の日本でいえば、図書館の自由宣言を侵し、知る権利の剥奪の見本のようなものでした。歯止めのない本法案では、適性評価で時にはどのような書籍を読んでいたのかまで調査されないとも限りません。何しろ、事件をでっち上げて冤罪事件を起こしても、大川原化工機事件のように関係者の処罰さえ行わない現状があるからです。
さて、本法案は軍事研究とは関係がないと政府は述べていますが、米国重要・新興技術国家戦略二〇二〇に示された重要技術分野をそっくり取り込んだ日本の特定重要技術開発はまさに日米の国家戦略の線上にあり、岸田・バイデン共同声明による日米共同研究開発はそのことを明瞭に示すものとなりました。シームレスな共同研究のためにも、それに参入しようとするスタートアップ企業や軍需工業部門にとってセキュリティークリアランスが不可欠となっていると言えます。
ちなみに、有識者会議に報告された企業側の二社の声です。一社目、相手国の国防調達に相手国企業の下請として参加しようとしたが、セキュリティークリアランスを保有していなかったため詳細な情報が渡されずに苦労した。もう一社は、相手国の国防省関係のビジネスは増加傾向であり、更なる業務獲得、円滑化のためにはクリアランスが必要とする。軍事産業への参入を希望する企業の声なのです。
ところが、特秘法とシームレスに運用することが語られ、運用基準も特秘法を参考にして作ると言われています。その運用基準は、当時の世論に配慮してか、まず、拡張解釈の禁止並びに基本的人権及び報道、取材の自由の尊重などるる述べられていますが、しかしこれを担保する仕掛けはありません。行政文書の書換え、捏造、消去はおろか、憲法すら閣議決定で踏みにじってしまう政権があるとすれば、恣意的運用に待ったを掛け、違反者を罰する権限を持った仕組みが不可欠で、これを欠落させた法律は危険極まりなく、廃案にすべきです。
適性評価では、プライバシーの保護、目的外利用の禁止の項目が挙げられています。本法案の第十二条二項では七項目の調査項目が示されていますが、内心の自由を調査する究極のプライバシー侵害、基本的人権の侵害のおそれがあり、侵害を監査する権限を持った機関が欠落しています。個人情報保護法では要配慮個人情報とされている項目です。その上、適性評価を希望する本人の承諾が得られれば、家族、親族、同僚、隣人その他の承諾は必要なく個人情報を申告させるという、戦前の密告社会をほうふつとさせる仕組みになっています。
本法案は、コンフィデンシャル、取扱注意、マル秘級まで秘密情報にしてしまう一方、経済安保情報でもトップシークレット、シークレットに相当するものは特秘法の運用基準を改定して特秘、特定秘密として扱うとしています。
本法案は特秘法の大幅な拡大版と言えるもので、研究者が引き返せないような危険な仕掛けと、学術体制を攪乱し、研究力は言うに及ばず、産業の健全な発展をも阻害することが危惧されます。また、多くの事業者の経営情報を報告させ、内閣府に一手集約する前代未聞の仕組みは、経済の国家統制への仕掛けともなり得る危険をはらんだもので、廃案を強く求めるものです。
以上で私の発言を終わります。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/6
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007・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/7
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008・高橋はるみ
○高橋はるみ君 自由民主党の高橋はるみと申します。
本日は、質問の時間をいただきまして、誠にありがとうございます。各参考人からはそれぞれ意義深い御発言いただき、心から御礼をいたします。
それでは、それぞれの参考人に御質問してまいりたいと思います。
まず、原参考人によろしくお願いをいたします。
日本を取り巻く国際情勢が一層複雑化、不透明化していく中、十年前に整備された特定秘密保護法に加え、経済活動に関する分野でも情報保全に国として万全を期していく必要があると、私自身このように考える立場であります。また、こうした制度創設によりまして、同盟国等との連携の強化や他国政府調達への参加、あるいは国際共同研究にも道が開かれてくると、このようなことも期待するところであります。
そういった中で、原参考人は、法案の閣議決定に先立ち行われた政府の有識者会議の委員を務められて、経済界の立場から本法案の制定に推進の方向で議論に参加されたと理解をいたします。
今回の法案が成立した場合、私は、実はむしろ今後の運用面が大変だろうなというふうに考えるところであります。すなわち、制度の必要性については理解をするところでありますが、我が国においてこういった制度を初めて施行し、運用するわけでありますので、運用基準を民間の方々、今多様な御意見もいただきました、民間の方々にどう分かりやすいものとするかという工夫であるとか、あるいは民間の事業者、従業員の方々に対する適性評価のやり方、時間も掛かるでしょうし、どれぐらいの対象者かということもあります。また、この適性評価の対象企業がスタートアップなど中小規模な企業の場合には、技術力はあっても資金力は乏しいと思われますので、支援も必要かなとなどなど、本当にこれからの、法律ができた場合ですけれども、運用面の課題が多々あるかと思うわけでありますが、原参考人の今後の本法案、運用面へのお考えをお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/8
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009・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
それでは、ただいま御指摘の点につきまして、先ほど御参照いただいた資料三ページを御覧いただければと思います。
今、高橋先生の方から御指摘のあった点ですね、私も全く異存ございません。この表を見ていただきましても、一番右側、法案等への我々の意見の反映状況、丸あるいは注釈が付してありますけれども、丸のところは基本的には今の法案の段階で問題ないだろうというふうに考えているものでございまして、法案の枠組みとしては問題がないと考えておりますけれども、今先生が御指摘のとおり、運用が大事であるというところに我々も着目をいたしまして、例えば対象となる、その保全の対象となる情報につきましては、政府保有情報であることはもう明確になってきておりますけれども、どのような情報が対象になるのか、全てがこの種の情報ですから明らかにならないとは思いますけれども、一定の運用基準の中で類型が示されるものというふうに考えておりますので、それを見させていただく必要があるかなということで引き続き下位法令等を注視と書かせていただいている次第でございます。
また、企業側のニーズにつきましても、まさに法案の名称、目的に活用と書いてありますように、企業側と共有をするということは明確なわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、既存の制度、特に特定秘密保護制度とのシームレスな運用というところにつきましては引き続き下位法令等を注視していかなければいけないなというふうに考えております。
また、これ、諸外国から信頼をされ、あるいはされませんと実効のあるものになりませんので、これはまさに公式的には、法案が成立した後、諸外国とこのような制度を導入するということでコミュニケーションを取るものと考えておりますので、その結果としてこの法案が、法律が企業のニーズにとって非常に受皿となるものと、十分な受皿となるものかどうかは今後の運用を見させていただく必要があるというふうに考えておりまして、総体におきまして先生の御指摘と同感でございます。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/9
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010・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) 発言は委員長の指示の後でお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/10
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011・高橋はるみ
○高橋はるみ君 ありがとうございました。
それでは、引き続き齋藤参考人にお話をお伺いしたいと思います。
齋藤参考人におかれましては、衆議院に引き続き参議院でも意見をお述べいただき、誠にありがとうございます。国民のプライバシーの保護、知る権利など、大変重要なテーマについて御指摘をいただきました。
私は、先ほど申しましたとおり、現在の激動し不透明感が高まっていく我が国を取り巻く国際情勢を考えた場合には、本法案は必要との立場ではありますが、参考人御指摘の点の重要性について、この法案が成立した場合においても今後の運用面への対応を注視していかなければならないと思う立場であります。
参考人は意見陳述の中で、国会における情報監視の在り方、そしてその役割についても言及をされました。全く同感であります。こういった国会における情報監視、法律ができた場合の話でありますが、どのような点を目指していくべきとお考えかということ。それからもう一つは、衆議院における修正項目の一つとして、重要経済安保情報の提供を受ける国会における、我々国会議員における、その保護に関する方策については国会が必要な措置を講ずるとあるところであります。このこともその情報監視の在り方と同様に重要だと思うわけでありますが、参考人におかれては、この国会における情報保全のため、どのような仕組みづくりが必要かについて御意見をいただきたいと思います。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/11
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012・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) 御質問ありがとうございます。
まず一点目でございますが、国会による情報監視をどうするかということでございますが、先ほど申し上げたところとも重なるんですけれども、参議院の情報監視審査会においては、秘密指定、独立公文書管理監による秘密指定のチェックについてもうちょっときめ細かくやってくれという指摘をされているわけですね。
要するに、今の法律の運用の下では、秘密というのは言わば箱のようなものなんですね。秘密という箱がある、その箱が要件を満たしているかどうかというのを独立公文書管理監がチェックしているだけということなんです。ただ、その箱の中に現実にはいろんなボールが入っている。例えば、国家安全保障会議の議事録でいえば一年分包括して指定されますけど、そういう箱の中にその日その日の議事録というボールが入るようなものだと思うんですよね。今の運用というのは、箱が秘密の要件を満たしているかどうかだけをチェックしているんですが、そうじゃなくて、箱の中に本来は入るべきボールじゃないものが入っているんじゃないかというのが参議院の審査会の指摘だと思うんです。
非常にこれ重要な問題だと思うんですよね。箱を審査するだけじゃなくて、その一つ一つのボールについて秘密の要件を満たしているのかどうか、そしてそれが、本来箱に入っちゃいけないものが入っているんじゃないか、そこをきちんと審査してくれということを情報監視審査会、情報監視審査会の方はおっしゃっています。
そういう監視ができるようになる、独立公文書管理監もそういう監視をするようにするし、独立公文書管理監だけじゃなくて情報監視審査会もそういう観点で個々の秘密について監視できるようにする、これが非常に大事なんだと思います。これは法律を変えなくても、運用によって可能なレベルの話だと思っていますので、そこは情報監視審査会の努力だけではいかんともし難いので、政府とも一体となってそこはきちんと変えていっていただければと思っています。
あと、保全の対策につきましては、これは、私の方は、申し訳ないんですが、特に特段今の段階で申し上げられるところはなくて、この点に関しては秘密保護法の運用においても適切に、非常に厳密になされているというふうに思っておりますので、今回、その議院における保全の措置ですね、は非常に適切に、厳格になされているというふうには理解していますので、今回の法案についても同じように厳格にされるということが重要だろうと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/12
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013・高橋はるみ
○高橋はるみ君 ありがとうございました。
それでは、井原参考人、お伺いをいたします。
井原参考人のお話、科学と技術、そして政治との関係など、歴史も踏まえてのお話、大変勉強になりました。ありがとうございました。
事前に参考人からいただいた論文を拝読をさせていただきまして、私は北海道を選挙区とする議員なんでありますが、若干感じたことを申し上げさせていただければと思う次第であります。
一つは、ロシア・ウクライナ事案であります。
二年前の二月から始まったロシアのウクライナ侵略に、私たちどさんこは衝撃を受けました。まさに、あり得ないと思ったことがあり得るのだなと、あらゆることが起こり得るのだなということを感じました。また、時としてロシアの高官が核兵器の使用に言及するという現実にも恐ろしさを感じているところであります。地図で見ていただければお分かりになるとおり、ロシアの西側に位置するのはウクライナであります。そして、私たち北海道はロシアの東側に隣り合っているという現実であります。
また、北朝鮮のミサイル発射も我々北海道民にとっては現実の脅威であります。たしか七年前、私がまだ道庁で仕事をしておりました頃、早朝だったと思います、未明だったと思いますが、北朝鮮のミサイルが道南の渡島半島の上空を通過し、そして日高の襟裳岬を越えて落下したということがありました。北海道内へのミサイル本体の落下、あるいはそのパーツの一部でも渡島地方に落下したらと考えると、本当に背筋が凍る思いを感じたところでありました。こうした最近の我が国を取り巻く国際環境の激変が今回の法案提出の背景にあると私自身は思う次第であります。
そうした中、井原参考人におかれては、本法案が成立した場合、運用面において特にどういった点に留意すべきとお考えか、御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/13
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014・井原聰
○参考人(井原聰君) 井原でございます。ありがとうございます。
これまでも政府は、まさにウクライナ、好機と言わんばかりに危機をあおり立ててきたというふうに私は見ております。心配な、住民が心配な点は十分理解できますが、だからといって武力を、軍事力を強化すればそれを防ぐことができるかというと、現実には、ウクライナもそうですし、あちこちで起きている紛争で必ずしも軍事力を増大させれば止めることができるというふうにはなっていません。
私はやっぱり、国際協調主義といいますかね、まさに民主的外交を展開するということが非常に重要で、危機感をあおるような政策を避けるべきだというふうに考えております。特にやっぱり、これは北海道だけじゃなくて日本のあちこちにそういう危険なところがあるとすれば、市民と連帯する形でどう対応していくかというのをやっぱりこれから考えなきゃいけない、そういう問題だろうというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/14
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015・高橋はるみ
○高橋はるみ君 ありがとうございました。
時間も参りましたので、これで質問を終えます。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/15
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016・石垣のりこ
○石垣のりこ君 立憲民主・社民の石垣のりこでございます。
三人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見、誠にありがとうございました。
まずは原参考人からお伺いしたいと思いますが、経団連の、今日は経団連の原参考人にまずは伺います。
セキュリティークリアランス制度が導入されることによって、運用を注視するという条件はございましたけれども、例えば他国の政府調達への参加ですとか国際共同開発への参加が進むようになると、各企業にとってみると、社員の中にクリアランスホルダーの社員がいることによって更に契約がしやすくなっていくというように考えてよいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/16
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017・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
基本的にはそのような方向になることを期待しているということでございまして、それには、先ほど申し上げましたように、下位法令あるいは運用基準、それからそれに基づく運用ですね、実際の、それから、相手のある話でございますので、相手国にこの日本がつくった新たな制度が非常に実効的なものであるということを認めていただくことが大事なので、そういう条件が満たされれば、そういう形で新たなビジネスにつながっていくことを期待していると、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/17
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018・石垣のりこ
○石垣のりこ君 ありがとうございます。
続いても原参考人に伺いますけれども、適性評価で信頼性を確認できなかった社員、いわゆるノーの評価が出た社員に関して、不利益な扱いを受けないかという懸念がやはりございます。企業の立場で考えますと、国が重要経済安保情報と定めた情報以外の情報でも、もちろん企業にとって重要な情報はたくさんあるわけですから、そういう漏えいがあったら困るわけです。
政府によってこの重要経済安保情報でさえ漏えいのおそれがあると評価されてしまった社員を重要な役職に就かせるわけにはいかないというふうに考えるのが結構自然なように思うんですが、経済界として、適性評価でノーとなった社員をどのように処遇していこうとお考えなのか、また、不利益取扱いをしないと言い切れるのか、見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/18
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019・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
不利益な処分はこの法案では禁止されておりますので、企業としては当然、決まった法律に対してコンプライアンスしていくのは当然でありまして、禁止されているものは禁止されているものとして対応していくということだと思います。
企業としては、具体的には配置転換ですとか、あるいは同じ部署でありましてもセキュリティークリアランスを受けずに取扱いができる業務というのは多分あるはずですので、そういった形で対応していくということになるんではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/19
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020・石垣のりこ
○石垣のりこ君 続いては、齋藤参考人に伺います。
今の原参考人の回答を受けて、不利益扱いなどが起こったときに、その社員の相談に乗ったり、実際に訴訟を請け負うことになる可能性があるという、日弁連の齋藤参考人ということで、経団連の回答について、これ実効性があるというふうにお考えになるかどうか、また懸念すべきところ、あとは政府が行うべきことについてお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/20
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021・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
実効性につきましては、もちろん、経団連さんは大きい会社の集まりですのでこういう答えになるんだろうなと思っていますけれども、今回の法案というのはベンチャーも含めて対象になりますので、適性評価が通らなかったら働く場がない、配置転換のしようのない会社というのはあると思うんですよね。そういう場合は、じゃ、整理解雇にせざるを得ない。けれども、整理解雇をしてしまうとこの法律に反することになるのかと。かといって、じゃ、働かせることもできないのに賃金を払い続ける、あるいは労働者の首を切る、もう非常に厳しい二律背反に陥る可能性というのはあるというふうに思っております。特に、中小企業についてはその懸念はあると思っています。
政府がどういうふうにすべきかということなんですけれども、やはり不利益取扱いについて、この法案がこのままで通ってしまうとなかなか厳しいなとは思っていますけど、ただ、やはり本来は不利益取扱いについて罰則を設けるとか、あるいは適性評価についてきちんと不利益取扱いがなされないかどうかということも含めてチェックする第三者機関というものをつくる、ちゃんと調査権限を、法律で与えられた第三者機関をつくるというのが本来はなすべきことなんだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/21
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022・石垣のりこ
○石垣のりこ君 これまでの質疑を通して、政府は、評価対象者やその家族などについても重要経済基盤毀損活動に関係することであれば調査を行うことができるというふうに、私自身も受け止めているわけなんですけれども、同意を取らない家族などに関してはプライバシーの侵害に当たるのではないかと考えています。
今回、本人の同意は、本人の同意は取るけれども、家族の同意を得る必要はないということで、重要経済基盤毀損活動に関する範囲での調査対象になり得るのであればやはり家族の同意も取る必要があると考えるんですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/22
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023・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。全くおっしゃるとおりだというふうに思っております。
政府の方は、その適合事業者で働く従業員などの同意を取ればいいというふうに言っていますけれども、昔の家父長制ではございませんので、家族のメンバーはそれぞれ独立した人格でありますので、ほかの人の同意を勝手に誰かがするということはできません。もちろん、同意があればプライバシー権を放棄することができると考える余地はありますけど、特に家族については全く同意を求められていない。それにもかかわらず、可能性としては結構機微な調査もされる可能性はあると思っておりますので、そういう意味ではプライバシー侵害の可能性が非常に高いんだろうなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/23
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024・石垣のりこ
○石垣のりこ君 ありがとうございます。
続いて、ちょっと一点、また原参考人に伺いますが、適性評価の審査期間、いつまでにというこの期間ですね、が定められていないということで、国会での答弁でも政府は、個々の事情が違うので一概に期間を定めることはできないと答弁しています。
適性評価の結果がなかなか出ない社員がいる場合、契約ができないなど企業にとっての不利益があると考えますが、いかがでしょうか。あとまた、標準審査期間というのを定める必要があると考えますが、その場合どの程度が合理的だというふうにお考えになるか、見解をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/24
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025・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
ただいまの件ですけれども、いろんなケースがあり得て標準処理期間みたいなものを設けるのはなかなか難しいという政府の御答弁、これは理解できるところであります。
ただ、企業の立場としては、全くいたずらに長い期間掛かったりしますと、これは当然、国際共同研究開発、いつ答えを出してくれるのかということに、相手にも求められることになりますし、あるいは競争入札であればこれ期間が当然決まっておりますので、そういう意味ではなるべく早く速やかに処理をしていただきたいと、結論を出していただきたいと、そういう希望になるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/25
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026・石垣のりこ
○石垣のりこ君 なるべく早くということですけど、もし目安として期間を提案していただくとしたら、何となくありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/26
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027・原一郎
○参考人(原一郎君) ケース・バイ・ケースということですので、私からこの期間というのはないと思いますけど、これは恐らく年単位ではなくて月単位になろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/27
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028・石垣のりこ
○石垣のりこ君 ありがとうございます。
その人の信頼に関わる重要な調査でございますので、中途半端な結果を出すわけにもいかないということも重々承知はしておるんですが、適性評価の結果がなかなか出ない社員はやはり不利益な取扱いを受ける可能性が高いのではないかと考えます。
そこで、齋藤参考人に見解を伺いますが、この結果が出ないというような場合、どのような問題が生じ得るでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/28
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029・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
結果が出ないということは、結果については、差別扱いというか、利用、目的外利用しちゃいけないわけですけど、結果が出ないということで、じゃ、不利益扱いしていけないのかどうかというのが法案でははっきりしていないんだろうと思うんですよね。
ですから、そういう意味ではそこら辺は、余りにも長くて企業として現実的にはなかなかその従業員をちゃんと配置できないみたいな話になっちゃうと、ああ、やっぱりこの人はちょっと怪しげなところがあるんじゃないかみたいに見られて合法的に不利益扱いされてしまうとか、そういうことは十分あり得るんだろうと思っています。そこは法律の穴だなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/29
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030・石垣のりこ
○石垣のりこ君 ありがとうございます。
今、法案でははっきりしないであるとか、先ほど原参考人もありましたけど、引き続き下位法令等を注視していくということで、国会のこれまでの審議の中でも、やはり運用に、この後、決めていく中で分かっている、分かるとか、いろいろなことが決められるということで、私自身もこの法案の審議の冒頭でそのことに関して問題を指摘したところでございます。
井原参考人に伺います。
井原参考人のお話の中にもございました。適性評価の運用に関して想定される具体例を挙げて今お話を伺ってきたわけなんですが、この法案では、重要経済安保情報の指定、解除、適性評価の実施、適合事業者の認定に関して、第七章の雑則では、統一的な運用を図るための基準を定めるものとすると規定されています。また、第二十条には、この法律の実施のための手続、法律の施行に関して必要な事項は政令で定めるとございます。
このように、細目的事項を具体的に示さずに実施命令の根拠規定を法律に設けようとするいわゆる包括的委任規定でございます。これ、例えば第二十一条の基本的人権又は報道の自由などの権利侵害があってはならないという規定があったとしても、それが実際に担保されるかどうか、これ唯一の立法機関である国会の場で、まさに本当に今でございますが、この議論を深める妨げになっているのではないかと私自身も強く懸念をしているところなんですが、その点に関して井原参考人に改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/30
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031・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
全く私、同感です。現実には、これは立法の府でどういうことをするのかというのを具体的に決めないと、これは対応のしようがない。つまり、意見求められても、示されていないのに言えというのに等しいわけですね。
例えば、適性評価で仮に合格したとして、多分それは政府と関係者との秘密保護協定みたいなものを結ぶことになるわけで、秘密保全協定みたいな契約を結ぶときのその契約内容はどうなっているのかということで、そもそもそこで縛りが掛けられてしまえば動きが取れなくなる。つまり、適合者としても、将来自分はどういうふうに位置付いていくのかというのが見通せないような状況も出てくるだろうと。
私の場合は、特に今回の議論の中でほとんど、研究者あるいは大学人、そういうレベルでの議論がほとんどなされていなくて、深刻な内容が僕は一つ一つ存在しているように思うんですね。だから、本当はその辺のことを深めていっていただきたい。特に、参議院のような議論の場ではそこを深めていただくのがお仕事ではないかというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/31
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032・石垣のりこ
○石垣のりこ君 ありがとうございます。
こうした国会の議論を空洞化させるような包括的委任規定、非常に今法案としては多く出てきます。これは、与野党問わず、行政府に対して厳に慎むべきであると私はこれ申し上げなくてはならないと考えております。お三方からいただきました御意見参考に、今後の議論も深めてまいりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/32
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033・窪田哲也
○窪田哲也君 公明党の窪田哲也です。
今日は、三人の参考人の皆様に委員会お越しいただきまして、大変に貴重な御意見を賜りました。大変ありがとうございました。
初めに、原参考人にお伺いしたいと思います。
同盟国、同志国との互換性ということですけれども、この今回の制度が十分国際的に通用するものなのかどうかということをどのように認識を持たれているのか。経済界からの大変な要望もあって今回実現するわけです。これまでビジネスチャンスを失っていた、そういった面はたくさんあったと思います。経済においての情報の大切さ、それも大変に今回大きな議論になったと思います。せっかく今回の制度をつくるわけですので、これからの国際共同開発研究において十分日本のこの制度が通用するということが私は大事だと思っております。その観点から、今回のセキュリティークリアランス制度、十分通用するというふうな御認識をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/33
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034・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
一言で申し上げれば、そうなることを期待しているということになりますけれども、先ほど来出ておりますように、特定秘密保護制度ができてもう十年たっておるわけでございまして、その間、これは私、知る由もありませんが、推測でありますけれども、その外国との、外国の政府との間でその制度ができたことによって共有される情報は多分それ以前と比べて相当増えているんだろうと思いますので、そのコミュニケーションの中で一定の、この制度であれば、相手国も、これは十分な制度であると、自国の制度と比べても遜色がないという判断というか、に至るその感触は多分つかんでおられるんではないかなというふうに思いますので、そういった感触を基に政府としては案を作成しているというふうに思いますので、今後の運用基準などを見させていただく必要はあると思っていますし、その上で運用も、先ほど来申し上げていますように、見させていただく必要があるんですが、そのような期待に十分沿ったものになるんではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/34
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035・窪田哲也
○窪田哲也君 次に、同じく原参考人、伺いたいと思います。
企業にとっては非常に従業員の皆様の大切な情報を今回政府に対し提供する、クリアランスホルダーになって働いていただく。やはり従業員の皆さんの、労働者の皆さんの人権を、プライバシーを最大限企業としても守っていける、そのような見解に、立場に立っていかなきゃならないと思っております。
従業員の皆様の権利を守っていくという立場からどのようなお考えをお持ちなのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/35
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036・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
冒頭の説明でも申し上げましたとおり、不利益処分を含めた目的外利用、これ禁止されているのは当然だと思っておりますし、この法案が成立をいたしますと、当然、先ほども申し上げましたが、企業として、決まった法律については遵守をするというのは当然だと思っておりますので、今先生が御指摘になられた人権ですとか個人のプライバシー、これは当然尊重しながらやっていくということだと思います。
それから、特に先ほど罰則云々というお話もほかの参考人からございましたけれども、それ以前に、やはり企業として、経済主体として、経済活動の一環としてこのセキュリティークリアランスを受けるわけでございますので、当然、企業として従業員との十分なコミュニケーションがあってやりませんと当然それは持続的なビジネスとはなりませんので、その段階で、既にクリアランスを受ける前の段階で相当程度のコミュニケーションが図られないとこれはうまくいかないだろうと思います。
また、本人の同意、最後の出口のところが今問題になっておりますけれども、入口の段階から、この人が今回セキュリティークリアランスを受ける対象者の名簿ですというものを多分企業として行政庁に提出をするものと思いますので、その名簿を作る段階で、これは法律には書いてありませんが、当然コミュニケーションを取って、あなたはこういう名簿に入れますよということを言わずして名簿を作ることは多分あり得ないんだろうと思います。
そういうことをやれば、その後、仮にうまくクリアを受けた、クリアランスを受けたとしても、ビジネスとしてどこかで支障が生じるものと思いますので、入口の段階から、先生御指摘のような人権あるいはプライバシーに十分尊重した形で企業が行動する、そういうことが期待されているんだろうと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/36
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037・窪田哲也
○窪田哲也君 この点については、齋藤参考人は御意見おありだと思っております。
今回、衆院の附帯決議には、不合理な配置転換、解雇など労働者の不利益な取扱いの防止のために、事業者の実情や事業の実態に応じた、労使間の協議も含めた適切な意思疎通のガイドライン等を作成することなど検討すると盛り込まれましたけれども、この附帯決議に対しての評価、そして、これだけでは目的外利用というのは不十分だとお考えなのでしょうか、目的外利用の抑止にはなり得ないという、そういうお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/37
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038・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
附帯決議との関係でございますけれども、そもそも労働者個々人というのは非常に弱い立場でございますので、やはり労使協定とか労働協約というものが本来は、今回の適合事業者になって、適性評価の、個々の労働者が適性評価の対象になる前提としては、やはり労使協定、労働協約というのが必須とされるべきなんだろうと思っています。そこら辺が法律では明らかになっていませんので、せめて、その法律施行後、行政機関の方と適合事業者の方が契約を締結するわけですので、その中で労使協定を前提とするというような契約条項にするとか、やはり集団的な合意というものが担保される方策というのが非常に望ましいというふうに思っております。
目的外利用との関係については、目的外利用というふうに、もうそれが違法だというふうにされれば守るんだというふうなことかもしれませんけれども、ただ、私、労働事件非常に多くやっていますけれども、やはり多くの企業さんは余り、労働法を守っていない企業大変多いです。残念ながら、法律でこうだと言ったからといって守るという理想的な職場というのは余り多くないというのが実情でございますので、残念ながら、刑罰で担保しないとなかなか守られないのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/38
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039・窪田哲也
○窪田哲也君 再び原参考人に伺いたいと思います。
今回、官需として必要になるわけですけれども、共同研究、共同開発ですね、当然ベンチャーもいらっしゃるでしょうし、中小企業もいらっしゃいますので、同じようなスタートラインに立っていくというのはなかなか難しいと思います。しっかり中小企業も含めた企業支援が必要だと思いますし、政府の方もこれにつきましては合理的な範囲内で支援をしていくという立場を示しております。そのことについての原参考人の御期待を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/39
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040・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
合理的な範囲内で検討するというのは、これは有識者会議の最終とりまとめでも入っておりまして、私もそのメンバーでありましたので、その結論においては全く同感でございます。
ただ、具体的にどうするかということでございますが、まず、公正な競争ということの観点からしますと、誰にどういう形で支援をするのかということは結構これは重要な点でありまして、そのことによって公正な競争がゆがめられるようなことになるとこれは問題があると思います。
他方で、最終的には契約という形で適合事業者が決まるわけでございますけれども、適合事業者が政府の要請を受けて契約を結ぶような場合、当然それは政府の要請があっても拒否はできるものと考えておりますけれども、そういった場合はおのずとこの状況が違ってくると思っておりまして、政府の要請を受けてやることでございますので、当然何らかの、当然と言えるのかどうか分かりませんが、何らかの支援措置があってもこれはしかるべきなんだろうというふうに思います。そこは分けて考える必要があるかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/40
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041・窪田哲也
○窪田哲也君 もう一つは原参考人に伺います。
企業に対しては、何らかのそれは支援についてしっかり検討していかなきゃならないと思うんですけれども、クリアランスホルダーになられる方についても、やはりこのインセンティブを高めていく、そしてまたそれが成り立っていくと、仕事としてというのはとても大事だと思います。従業員、労働者、クリアランスホルダーの方に対しての支援ということでは何か見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/41
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042・原一郎
○参考人(原一郎君) 私、そこは余り考えたことがなくて、すぐのお答えはないんですけれども、インセンティブ、何をもってインセンティブと感じるかということでありまして、人によっては、そういったクリアランスホルダーになることによって自分のその仕事の範囲が拡大する、あるいはやりがいが増えるということでインセンティブを感じる人もいるでしょうし、あるいはそれは給料でないとということになりますと、多分、これ給料でクリアランスホルダーに、ホルダーであることをもって給料に格差を付けるということは、恐らく今までの審議からしますと目的外利用ということになるんだろうと思いますので、これはできませんが、クリアランスを受けることによって会社全体のそれが、利益が、新しいビジネスにつながって利益が出て、それの分配を受ける形でクリアランスホルダーが一定のその報酬を得る、これは多分目的外利用に当たらないというふうに思いますので、その辺りは区別して考える必要があると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/42
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043・窪田哲也
○窪田哲也君 ありがとうございます。
最後に、井原参考人に伺いたいと思います。
先ほどのお話では、学術分野での秘密保持の必要性ということについてもお話を伺いました。今回の法律については慎重に考えなきゃならないということでございましたけれども、この学術分野の日本の研究力の劣化ということについても言及されました。
それで、この日本の研究力の劣化なんですけれども、この背景について様々あると思います。もちろん、研究そのものの様々抱える課題もありますし、頭脳流出、研究成果の流出ということも私はあると思うんですけれども、この研究の流出、我が国の大切な研究成果の海外への流出問題について御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/43
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044・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
研究力の低下の背景というのは、それこそ文科省も含めていろんな形で今議論が進んでいて、少なくても一般の研究者が自分の思った研究を自由にやれるようなお金を出せというのがまず共通した見解ですね。ですから、大学の場合でいえば運営費交付金をもう少し柔軟な形でというふうなことで増やせということになっています。
もう一つは、何といいますかね、必ずしも日本の、何といいますかね、知識が外国に流出しちゃって損しているという、そこを測定するのはすごく難しい。一般論としてそういうふうに見ることは可能だと思うんですが、必ずしも、私はそうじゃなくて、関係者がノウハウ含めてしっかりガードしている。
多分おっしゃるところは、スパイのような方がいて持っていかれたらどうするんだというような話なんだろうと思うんですが、これも現在オープンな、グローバルなサイエンスというのが基本になっているわけで、各国の人たちと共同しながら研究してその研究力高めていくというのが国際的な流れなんですが、そこを抑えてしまうと。いや、もう何か情報漏れたら大変だということで抑えてしまう。
例えば、ある国の研究者が情報持っていっちゃったよというふうな話で、もう少し詳しくチェックすると、十年も一緒にやってきた研究者の方もいるわけですよね。その人がもう情報を外に持っていって日本はこれだけ損失したって、それはやっぱりためにする議論に私には思えるわけで、余りまとまった回答ではありませんけれども、少なくても私は、囲い込むことによって研究力、逆に縮めてしまうと。
先ほども申し上げたんですが、やっぱり、何といいますかね、いろんな人がいろんな考え方でその裾野、よく言われるのは富士山の裾野のようにして頂点にはいいものが生まれてくるというのが、やっぱりこれを実践していくことが最も必要な、今こそ必要な時代だというふうに思うんですね。そのことによってやっぱり外国から、何といいますかね、いろんな形で、ああ、日本はいい国だなというふうに思ってもらうことが基本だというふうに私は思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/44
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045・窪田哲也
○窪田哲也君 各国との共同研究の必要性ということについて伺いました。ありがとうございました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/45
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046・柴田巧
○柴田巧君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の柴田巧です。
今日は、お忙しい中、この参考人質疑に三人の参考人の方、御出席をいただき、また大変示唆に富むお話をそれぞれしていただいたことに、私からも感謝を申し上げたいと思います。
私どもは、二年前のこの経済安保推進法の議論をしていたときからセキュリティークリアランスは必要だということをずっと申し上げてきたわけで、今般、それを柱とする法案が提出をされて一歩前進というふうには受け止めていますが、いろんな問題もあるし、また、この成立した後の課題というのも幾つも残っていると思っておりまして、そういう認識の下にお聞きをしてまいりたいと思います。
初め、原参考人に幾つか続けて御見解をお聞きをしていきたいと思っておりますが、先ほども、この法案が成立すればいわゆる国際共同研究が進んだり、あるいは他国との政府調達の参加が進むことになるという期待感を示しておられたところでありますが、やはりこの国際的な枠組みは、やっぱりこれからしっかりとこれを機につくっていくというのが大事なんだろうと思っています。
その情報指定の範囲であったり適性評価の手法など、やっぱり具体的な仕組みを国家間で互換性のあるものにしていくというのは肝要かなと思っておりますが、急には無理としても、やはり近い将来、ファイブアイズと呼ばれているところに、レベルに、あるいはそこに加盟できるような、そういう水準を目指した制度設計にしていく必要があるのではないかと考えますが、この点どういうふうに思っていらっしゃるか、まずお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/46
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047・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
私どもも国際枠組みの重要性というのは意見の中でも指摘をしてございまして、そういうものがあった方が、具体的に、セキュリティークリアランス制度ができて、その上で情報共有するに当たっても、そういう大枠があること自体非常に重要だろうと思いますし、この新しい制度の円滑な運用にも資するものだというふうに思っております。
他方で、その上で申し上げますと、その互換性ですとかあるいはファイブアイズ加入を目指してというところは、実際各国の制度がどのような形なのか。先ほど来御指摘があるように、各国で今制度が若干、全て同じというわけではありませんので、総体において我が国と同じような制度保全が期待できるというときに初めて情報が共有されるんだろうと思いますので、私の理解では、全く制度として同じである必要はなくて、それはそれぞれの国情において制度を組み立てればいいと思いますが、その制度が諸外国の中で大体、保全の程度として一定のレベルが保たれるということをもっていろんな情報共有が行われることが大事だろうと思いますので、先生のその互換性という言葉がどのようなことを意味されているのかということでありますけれども、私は制度として全く同じである必要はないというふうに思っております。
また、ファイブアイズにつきましては、私も実態を、ファイブアイズ、よく引用されますけれども、どういう形でそのファイブアイズの中で了解事項があるのか、その辺りは私も存じ上げませんので、それについてはちょっと申し上げにくいなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/47
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048・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
一方で、先ほど齋藤参考人も言及をされましたが、アメリカなどではちょっと事態が、我々が思っているのと状況が違うようなところもあって、今回の法律で他の国で受け入れられるような制度になるとは言えないのではないかという御指摘がありましたが、この点について原参考人はどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/48
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049・原一郎
○参考人(原一郎君) 先ほども申し上げたことの繰り返しになりますけれども、私としては、政府として、いろんな諸外国との関係において、あるいは特定秘密保護制度の下においての情報共有、いろんなやり取りにおいて、一定の、諸外国が日本の制度をどう見ているか、あるいは、今回の法案どこまでコミュニケーション取れているのか、私、存じ上げませんけれども、一定の感触というものを我が国の政府として持った上で今回の法案作成に臨んでおられると思いますので、これがもちろん下位法令あるいは運用基準、それからそれに基づく運用を見ていかないと何とも言えないところはありますけれども、一定の感触を持ってこの法案作っているという前提に立てば、今回この法案が認められて、下位法令あるいは運用基準が我々の意向に沿ったものとなれば、十分各国においても実効ある制度だというふうに認めていただけるのではないかなというふうに思います。
繰り返しになりますが、同じ制度である必要はなくて、機能において同等であればよろしいのではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/49
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050・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
続いて、原参考人にお聞きをしますけれども、この重要経済安保情報を指定する、そのまた範囲を決めていくのは各省庁の職員ということになります。改めて言うまでもありませんが、この技術とかそういったものはもうどんどん日々刻々、いろんなもの変わっていくわけですね。そうなると、やっぱりその職員のリテラシーの向上というのは非常に不可欠だと思いますし、これは経済界とのいろんなコミュニケーションも取っていく必要があると思っていますが、この点どういうふうに考えていらっしゃるか、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/50
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051・原一郎
○参考人(原一郎君) 先生の御指摘に全く同感でございます。個々人のリテラシーによってこれ差が出るようなことがあっては、これは国の保全制度としてそもそも問題があると思いますので、ポイントはリテラシーをいかに高めていくかということだと思いますが、これ、経団連として繰り返し申し上げていることですし、有識者会議その他の政府の審議会等でも私、申し上げていることですが、インテリジェンスという言葉がありますけれども、これ軽率に使うなというふうにお叱りを受けることあるわけでございますけれども、ほかに適当な言葉が見付かりませんので使わせていただきますが、経済インテリジェンスといいましょうか、あるいは技術インテリジェンスといいましょうか、その点、国として高めていく必要があると思います。
二年前の年末に決まりました国家安全保障戦略におきましても、国力の重要な要素の一つとして情報力というものが挙げられているわけでございまして、外交、防衛、経済、技術に加えてこの情報力の強化というのは日本の課題の一つだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/51
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052・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございます。
今回、このセキュリティークリアランスを柱とする法案が成立するとして、残された課題幾つもあると思いますが、まだいろいろ整備をしていく必要が経済安全保障を確保しているためにあると思っていまして、その一つは能動的サイバー防御の必要性、非常に高いと、この国は、思っています。
総理もやるやるとはおっしゃってはきましたが、なかなか腰が上がってこないというのが現状ですが、報道によれば、今月にも有識者会議が立ち上がるやの報道もあったところですけれども、やはりこの能動的サイバー防御というのをこの国もしっかりやれるようなことにしていかないと、今でさえいろんなサイバー攻撃などを受けて大きなこの被害を受けているわけですから、これ、やっぱり政府としてもしっかり早期に関連法案を出して推進をして、この経済安全保障をしっかり図っていくべきだと思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/52
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053・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
まず、経団連の立場ということになりますと、これは、この能動的サイバー防御について具体的な意見を今まで申し述べたことございませんので、経団連としては、政府がどのような制度を提案されるかによって、その中身を見て判断をしていきたいというふうに思います。
ただ、個人的な意見といたしましては、安全保障というのは恐らく一番弱いところをついてくるのが相手の立場だと思いますので、そういう弱いところを防ぐという意味で一定のその能動的な防御の姿勢というものは必要だと思いますので、一般論としては、サイバー空間におきましても能動的な防御というものは必要になってこようかと思います。
ただ、経団連としてどうかと問われますと、その制度の中身がまだ、外延もはっきりしておりませんので、政府の方の御検討を受けて、中身が一定程度つまびらかになった時点で経団連としてどのように考えるかを検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/53
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054・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
次に、齋藤参考人にお聞きをしていきたいと思いますが、まず最初に、先ほどの意見表明、意見陳述の中で、結論のところで、中小企業と民間にとっての負担感があるとの懸念をほとんど払拭されない、この今回の衆議院での修正もあってもですね、そういうところを指摘をされていたと、ありますが、では、どういうところが盛り込まれるとその負担感の払拭というのは可能になるのか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/54
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055・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
負担感というのは、まず、メリットがあれば多少負担があっても我慢できるかなというところはあると思いますので、まず、この法律を作ると本当に情報を得られるんだろうかというところがはっきりする必要があるんだろうと思うんですよね。
アメリカが二層構造に向かっているということは申し上げました。アメリカは二層構造に向かっていて、カナダも人的セキュリティークリアランスについては二層構造で、フランスもイギリスも二層構造であると。有識者会議で出てきた国の中でドイツとオーストラリアだけがはっきりと三層構造という中で、それで日本はなぜか三層構造、マイナーなグループの制度に合わせようとしているわけですね。
有識者会議の最終報告書、この青の法案参考資料の四十九ページに最終報告書の記載があるんですけど、諸外国にも通用する制度を目指していく観点からは、情報指定の範囲に経済分野を対象としていくとともに、複層構造にすべきである云々かんぬんというふうにしていて、結局、その秘密をどういう層、単層構造なのか複層構造にするのかみたいなところが諸外国に通用する上で非常に重要なものだと有識者会議では言っているんですよね。
ところが、国会になってくると、何かいきなり、いや、そんなことは余り大した話じゃないんだみたいに、いきなり政府の説明がころっと変わっちゃっているんですよ。有識者会議で言っていたことは何なんだという話になると思うんですね。本当にこんな議論をしていて諸外国に通用する情報が得られるような制度になるのか。これでほとんど利益も得られないのに負担だけ課すということになると、やはり負担感が増すだろうということは一つあるんだろうと思うんです。
あとは、例えば適性評価についてどこまで適性評価の対象になるのかという、その社長さんまで適性評価の対象になるのかどうかというのは、有識者会議では議論していたけれども、結局国会の審議でもよく分からないままになっていると。そこら辺の予測可能性も余りないんだろうと思うんですよね。
あとは、例えば刑事事件になった場合に、じゃ、中小企業の、大川原化工機事件みたいに中小企業の経営者さんたちが不当に捜査されるんじゃないかという懸念について政府はほとんど考慮していない、対策も全く示していないということでございます。
そういうことをやはり改善していかないと、なかなかこれが中小企業にとってメリットがあるとは言えない、負担感ばかりという制度にならざるを得ないんだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/55
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056・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
続いて、齋藤参考人にお聞きをしますが、この衆参の審議の中でいろいろあった、疑義が呈された問題の一つがいわゆる政務三役がこの適性評価の例外となっているということ。私も正直、いかがなものかと。やはり、この重要な情報に接する立場にありながら、まあ立派な人ばっかりならいいんですが、最近余りそうじゃない人がたくさん三役に就いていらっしゃって、いろんな事件が起きているのは御承知のとおりで、やはりこの政務三役が適性評価のやっぱり例外になっているというのは、やっぱりこの運用状況も見極めながらしっかりこれ対応していく必要があるのではないかと思いますが、この点についての御見解をお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/56
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057・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
やはりそこも非常にバランスを欠いた部分だろうと思っています。アメリカでも、対応する職の人については、ほかの職種の人とは違うやり方ですけれども、適性評価はなされているというわけでございますので、日本のように政務三役について一律に適性評価の対象から外すということになると、本当に日本から情報が漏れないのかという信頼性の欠如にもつながっていく可能性はあるんだろうと思うんですよね。
そうしますと、先ほどの話とも重なりますけど、民間企業も従業員もすごく苦労するんだけれども、政務三役から情報が漏れる可能性があるということで結局アメリカとかから情報がもらえないということにもなりかねないので、そういう意味では非常に問題のある部分だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/57
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058・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
井原参考人にもお聞きをしようと思いましたが、時間が参りましたのでこれで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/58
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059・竹詰仁
○竹詰仁君 国民民主党・新緑風会の竹詰仁です。
本日は、三人の参考人の皆様、ありがとうございました。
初めに、井原参考人にお尋ねしたいんですけれども、私、今回のこのセキュリティー法案の理解は、あくまでも政府が保有している情報がその対象になるというふうに理解しているんですけれども、井原参考人のお話の中で、例えば自由な研究が阻害されるとか、あるいは研究の裾野に対する心配がおありだということだったんですけれども、今回のこの法律とその研究が、自由な研究が阻害されるとか、その研究に対するデメリットがあるというのがちょっと私すぐに理解できなかったんですが、何が研究者にとってこの法案が非常に阻害要因になるかというのを、ちょっともう一度教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/59
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060・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
二点あると思うんですが、一つは、日本の科学研究の土台がかなり厳しい状況になっていくだろうというふうに思って、先ほどもちょっと指摘したんですけれども、目利きの方がこの研究面白い、あの研究が面白い、その面白いという内容はどういうのかというのはさておきまして、これ使えるぞというふうなことでピックアップしていくと研究分野が食い荒らされてしまう。特に先端分野はかなりいろいろ競っていますから、そこのところだけ、一個だけ引き抜いて、これはこっちに囲い込んで予算も付けてというふうな形になると、そこは秘密になっちゃいますから、そこで得られた成果というのは外に出てこないんですね。本当は、研究そのものは相互に批判し合いながら育っていくものですが、それなくなっちゃうと採用されなかった人たちの研究も非常に厳しくなると、そういうような意味合いが一つあります。
それからもう一つは、研究者にどれだけの情報が機微情報として与えられるのか。私は、その機微情報、機微情報と言っている大半は軍事情報だというふうに理解しているんですよね。そこのところをどなたも御指摘なさらずに、一般的な情報というふうにおっしゃっているけれども、私はもう非常に明確に軍事情報というふうに考えていまして、そういうふうなところで実は研究者が絡め取られていくということで、個人の研究者としては、予算がないし、情報もそういうのをもらえるといいねと。でも、その情報というのはどの程度の情報なのか。実験データのデータだけなのか、もっとひっくるめてこういうもの、それはもう行政官庁だけが知っているという話になっているわけでね。
アメリカの場合は、どういうことを規定するかという枠組みがちゃんとあるわけですよね。ところが、日本はそういうのないですから、もう任せっ放しになるわけで、そんなことを考えると、基本的には、研究者が食い荒らされる形で放り出されるということもあって、特に日本の場合は研究者というのは集団で研究していますから、しかもその大半は任期制の若手の研究者で、一人だけ、二人だけがそのリーダーになっていて、でも、そのリーダーがそういう研究の中に取り込まれていったらこの人たちどうするのというそういう問題が、実際にはドクター論文なんか書くときにどこまで書いていいのという話に当然なるわけですよね。それはいろいろと機微な問題があるのでここでは触れませんけれども、だから、そういう研究者の仲間もできるだけ離れていく。
例えば、セキュリティークリアランスを取ったというのは、人だけじゃなくて研究施設そのものがクリアランスされないといけないので、そういうクリアランスを持っていない研究機関、大学というのはどうするのというときに、先ほどもちょっと触れたんですけれども、そういう人は、そのセキュリティークリアランス取って、面白い研究できるところはできるところで、移籍したらいいじゃないですか。これ、有識者会議でそう語られていますよね。それは、もうまさに今言ったような研究範囲の中でいうと、本当に攪乱されてしまうような内容になってくるというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/60
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061・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
情報のその指定の範囲がまだ曖昧だというか、はっきりしていないということが今の御懸念にもつながっているんじゃないかと私は理解いたしました。
齋藤参考人にお尋ねしたいんですが、事前にいただいた資料の中で、齋藤参考人から、この法案は拡大秘密保護法案であると、日本経済の国家による統制が強化されるという、こういった御懸念を示されているんですけれども、ちょっと今の井原参考人と少し重複するかもしれませんが、この法案がなぜ日本経済が国家による統制が強化されるとお考えなのか、ちょっともう少し具体的に教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/61
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062・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
多分それは私の意見じゃなくて、日弁連の意見か何かかなという気もしますけれども、今参考人からお話があったところとも若干重なるかもしれませんけれども、たしか有識者会議の中で経産省の方がおっしゃっていたのが、民間から情報を吸い上げる仕組みというのを検討しているような発言をたしかされていた箇所があったと思うんですけれども、そういう制度をつくるかつくらないかともかくとして、何となく省庁の方で民間の方に情報をこれくれと言ったら、なかなか、出さざるを得ないケースというのは結構あるんだろうと思うんですよね。
そういうような形の中で、じゃ、省庁の方で何らかの情報を上げさせる、上げさせた上で、多少の風味を加えて秘密指定をして、適合事業者の方に秘密として与えるみたいなことはあり得るんだろうと思うんですよね。そうすると、それは、政府から与えられた情報ではあるんだけれども、実質的にはその会社が元々持っていた情報とほぼ変わらないみたいな、ただ、形として一旦召し上げられて戻されたので秘密になっているみたいなことは起こり得るんだろうと思うんですよね。
だから、今回の法案だけで、単独でなかなか経済の国家統制みたいな話にはならないかもしれませんけど、経産省の方で有識者会議で言っていたような仕組みもいろいろ併せて考えていくと、そういう形で、民間が持っている情報を一応政府があげたんだよという形を取ることで実質的に民間にある秘密を幅広く秘密指定しちゃう。で、秘密指定されるということになると、共同開発も制限されますから、共同開発で情報をほかの会社に提供することもできませんし、なかなか自由には、そういう形で国家統制という形はあり得るんではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/62
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063・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
続いて、労使の関係について、参考人と、原参考人に、順でお尋ねします。
まず、齋藤参考人に、労使の関係で先ほど、労使の意思疎通のガイドラインが作成されても、労使の協定等が適性評価導入の前提として法律で位置付けられていないと、こういった御意見がありまして、労働者は立場が弱いので、だからこそ団結権、団体交渉権、団体行動権があるということだと私も理解しているんですが、この労働者の権利を守る措置が不十分ということは、先ほどおっしゃった労使協定とか労働協約が締結されるということが前提であればそれはいいんじゃないかというお考えなのか、あるいは、労使協定あるいは労働協約でも不十分なのか。
例えば、三六協定なんかも、結局三六協定結ばないとそもそも時間外労働ができないわけですけれども、そのような関係で、労使協定を結ばない限りそもそもこれは適合事業者になれないとか手を挙げられないとか、そこまでやはりやるべきだとお考えなのか。
何かこの労働者の権利を守る措置、この労使関係についてもう少し具体的に教えていただければ有り難いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/63
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064・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
私としては、やはり労働者の権利というのは、個人の同意というのも大事ですけれども、集団的な同意というのがやはり労働者の真意を確保する上で重要だと思っていますので、ケースによっては、労使協定や労働協約がなければ適合事業者にもなれないというケースはあってしかるべきだと思っております。
ただ、そこは、じゃ、それで経営が成り立たないという場合に、労働組合が、じゃ、自分たちが会社が倒産して路頭に迷うというリスクを冒して、労使協定、全面拒否するのかということもあるとは思いますので、例えば部分的に、ここの部署については認めるとか、ここの部署については認めないということもあるんだろうと思います。
その上で、じゃ、労使協定、労働協約が締結されればいいのかという話については、やはり労使協定、労働協約があったら、ほかの労働法の分野でいっても、それで、じゃ、権利が全部守られるのかというと、そんなことはないわけですね。先生今おっしゃった三六協定についても、じゃ、三六協定結んでいたら三六協定違反がないのかというと、普通にあるわけですから、やっぱり労使協定、労働協約結んだとしても労働者の権利が侵害されるリスクというのはありますので、それはそれで、目的外利用の刑事罰による規制とか、そういう労働者の権利を守る立法というのは別途必要なんだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/64
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065・竹詰仁
○竹詰仁君 続いて、齋藤参考人に、公務員の場合で、要は、民間企業ですと労使というのがはっきりしているんですけれども、公務員の場合は使がはっきりしていないので、公務員はその場合どうしたらいいとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/65
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066・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
確かに、なかなか難しい部分はあるわけでございます。民間の労使関係とは違うわけですので、そこは難しいかなとは思っております。むしろ、公務員については、労働協約、労使協定というよりは、個々の規制、目的外利用禁止の刑罰法令とか、そういう個々の規制によって権利を守っていくということが中心になるべきだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/66
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067・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
原参考人に今の点で、この労使のコミュニケーションが非常に重要だというふうに御意見いただいたんですけれども、原参考人がおっしゃるコミュニケーションというのはあくまでも対話であって、協定とか協約じゃないというお考えなのか。このコミュニケーションってどのようにお考えなのか、教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/67
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068・原一郎
○参考人(原一郎君) 今先生が御指摘のとおりでありまして、コミュニケーションといった場合に労使協定を義務付けるとかそういうことは入っておりません。入れないで考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/68
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069・竹詰仁
○竹詰仁君 もう一つ、原参考人の御意見の中に、過度に企業に求められてしまうと、それがむしろ使い勝手が悪くなって拒否してしまうと、過度な要件を重ねてはいけないということだったんですが、この過度な要件というのは具体的に、どこまで行っちゃうともう、それはもう、ちょっとやらされ過ぎだというか、無理だよという、どんな具合なんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/69
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070・原一郎
○参考人(原一郎君) ありがとうございます。
先ほどのお答えと重複いたしますけれども、コミュニケーションを取るという中で、企業によっては、労働、従業員との関係で協定を結ぶこと、これはあってもいいと思います。それまでも経団連として否定するものではありません。
ただ、コミュニケーションの取り方自体は企業によって様々だと思いますので、どれをもって十分なコミュニケーションと言えるかというのは多分企業によっても違うと思いますし、また規模によっても違うと思いますので、あくまでもコミュニケーションという言葉を使った場合に労使協定の締結を一律義務付けるようなことは、これは過度であるというふうに思っております。ただ、一企業としてそれを締結してコミュニケーションのあかしとすると、結果のあかしとするということはあり得るんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/70
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071・竹詰仁
○竹詰仁君 ちょっともう一度確認ですが、それは、ですので、運用基準とかにがっちり定めるとかそういうことをお望みではなく、コミュニケーションはしっかり図るけれども、あとはそれぞれの企業、労使関係で任せるべきだという、そういったことでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/71
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072・原一郎
○参考人(原一郎君) そのとおりでございます。
ただ、運用基準の中で、この労使関係、大分国会審議の中でも問題になっておりますので、何らかの記述がなされることは多分今までの答弁からすると明らかだと思いますので、その中身を見させていただく必要があるなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/72
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073・竹詰仁
○竹詰仁君 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/73
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074・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、三人の参考人、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
まず、原参考人にお聞きをいたします。
井原参考人の陳述の中で、有識者会議に報告された企業の声が紹介をされました。相手国の国防調達や関係ビジネスへの参入のためにこのセキュリティークリアランスが必要だという声でありますが、資料で配られた経団連の三月十九日の本案の早期成立を求める提言の冒頭でも、軍事転用可能な民生技術の獲得競争の激化や企業の国際共同研究開発等に参加する機会を拡大することに資するということで早期成立を求めていらっしゃるわけですね。
そこでお聞きしますけれども、経団連として、このセキュリティークリアランスが必要とされる国際的な共同研究、共同開発の中には軍需産業への参入ということも想定をされているということでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/74
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075・原一郎
○参考人(原一郎君) 私どもは、特にどの分野においてという限定を置いておりません。また、企業から一定のヒアリングを行っておりますけれども、また有識者会議でもそういうヒアリングをやっていただきましたが、その中において個別具体的な、こういう共同研究において今まで支障があったということでつまびらかにされてはおりませんので、我々としてはこの分野でという限定は特に置いておりませんので、そういう意味では今先生が御指摘の点も含まれ得るというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/75
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076・井上哲士
○井上哲士君 そうしますと、確認ですが、この有識者会議で報告をされた、例えば相手国の国防省関係のビジネスは増加傾向であって、更なる業務獲得、円滑化のためにはクリアランスが必要だと、こういうような企業の声というのは本法案で生かされていると、こういう認識でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/76
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077・原一郎
○参考人(原一郎君) そのように考えております。
法案のこの名称、中に活用ということが書いてあるのと、目的の条項にも活用ということが書かれておりますので、それを念頭に置いた法律案だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/77
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078・井上哲士
○井上哲士君 続いて、井原参考人にお聞きいたしますが、今のこの本法案と軍需産業との関係ですが、政府は、本法案は軍事分野を念頭に置いたものではなく、武器輸出を進めるものではないと繰り返し答弁をしてきました。
参考人は先日の日米の首脳の共同声明にも陳述で触れられましたけれども、参考資料として事前に配付をされた雑誌「経済」の昨年の論文では、二〇一一年の2プラス2以来、アメリカが、このセキュリティークリアランス制度を求められてきて、ずっとこの導入の圧力があったということを詳しく述べられておりますけれども、そこの流れとポイントを御説明いただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/78
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079・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
日本の政府あるいはメディアも、どちらかというと、やっぱりレピュテーションリスクというのが気になって軍事というのをなかなか表に出さない。そういう流れの中で、でも現実には、これ、特定重要技術というふうな、日本が指定しているような、二十項目あるんですよね。その二十項目は、今触れられたように、アメリカの国家戦略の中の、二〇二〇なんですが、これ毎年出てきます。でも、余り変わらないんです。何を軍事技術として、国家戦略としてこれ取り組んでいくかと。もちろん経済戦略も含まれるわけですけれども、内容的には軍事研究が基本になるような、そういう配置になっているんですね。
私は、その意味でかなり、この日米共同研究開発というのは非常に明確な形で軍事研究に日本の研究力を取り込もうと、もうここは非常にはっきりしているわけで、その意味で、何かただで持っていかれちゃう危険な、アメリカの場合には持っていかれちゃっていいんですかという話にもなるわけで、我々はかなりそこのところは注意しないといけないなと思うんです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/79
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080・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございます。
そこで、特定秘密保護法との関係なんですが、引き続き井原参考人にお聞きしますが、今回、政府は、特定秘密保護法の運用基準を改定して本法案とのシームレスな運用を行うとしまして、重要経済安保情報に指定、秘密指定されたもののうち、この情報の機微度が上がった場合は特定秘密保護法の指定に移行していく場合があると、こういう答弁がされているわけですが、事実上、特定秘密の範囲を法改正をせずに拡大をしようとするやり方だと思うんですけれども、こういうやり方についての御見解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/80
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081・井原聰
○参考人(井原聰君) 特定秘密保護法のときにかなりこの問題議論されて、経済まで取り込まない形で決めたんですよね、四つの項目を。にもかかわらず、今回、コンフィデンシャルといいながら、大事なものはシームレスで特秘法と一緒に運用しよう。だから、外国から見たら全然問題ないんですよ。コンフィデンシャルでいいんですね、だって重要なときは特秘法が入っていますから。そういう意味では、余り外国は心配しないでこれ見ているだろうと。だから、アメリカなんかはもう喜んでいますね。
だから、その意味で、私は、何といいますかね、特秘法の中に経済分野を潜り込ませようと、特に入りやすいのは軍事のところで、大抵のものはそこに入っちゃうんですよね、読み替えると。だから、そういう危険が実は隠されているというふうに私は考えているんですね。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/81
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082・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございます。
続いて、齋藤参考人にお聞きしますけど、今のとも関連をするんですが、特定秘密の範囲が法改正なしに拡大をしようということに加えて、本法案自身がどういう秘密が指定されるのかが非常に不明確で、今後、運用基準とか政省令ということで示されると言いますが、それ自身も極めて抽象的という場合もあるわけで、罪刑法定主義からこうしたことが問題だと繰り返し指摘されておりますが、具体的にどういう問題が起きていくというふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/82
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083・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
秘密保護法について言いますと、別表形式になっていまして、かなり、どういうものが秘密になるのかというのははっきりしていましたけれども、今回は別表がない。三要件ということを言いますけれども、三要件といってもかなり抽象的ですので、非常に何が秘密になるのかというのがつかみづらいものになっていると思います。
もう一つ、これ、先ほども言ったところですけど、非常に分かりにくいのが、秘密保護法と今回の法案で安全保障という言葉を使っていますけど、この安全保障という言葉の範囲が違うのに、そこがよく分からないまま議論されているということだろうと思うんですね。
秘密保護法について言っている安全保障というのは、内閣府のホームページの注釈からすると、国民、国家と国民の安全が害される場合なんですけど、国民の安全に関して言うと、国民の生命が害される場合に安全保障の問題になって、国民の生活が害される場合というのは安全保障の問題ではないんですよね。というふうに政府の方は注釈しているわけです。
今回の法案は、政府の今までの説明を考えると、どう考えたってAIとか半導体とか生命には関わらないものも射程範囲に置いていると思うんですけど、そうすると、そこでいう安全保障というのは、国民の安全ということに関して言うと、国民の生命だけじゃなくて国民生活、国民経済も射程に置いているんだろうと思うんですよね。そうしますと、安全保障の概念が全然、全然とは言わないけれども、かなり違うわけですよね。かなり違うんだけど、そこの安全保障の、秘密保護法は一応政府のホームページで意味を明らかにしていますけど、今回の法律での安全保障という意味が何なのかというのが余りちゃんと書いていない。ちゃんと書いていないままに何となくそのまま進めようとしているので、ますます、どこまでの情報を射程範囲として、秘密として射程範囲に置いているのかというのが全く分からない状況になっているんだと思います。
そういう意味では、罪刑法定主義の重要な機能というのは予測可能性、何をすれば処罰されるのかというのが分かるということですけど、その予測可能性が著しく弱い法律で非常に問題があるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/83
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084・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございました。
続いて、齋藤参考人に適性評価の問題についてお聞きいたします。
これ、本人からの、適性評価の対象になる本人からの調査票に基づいて役所が公務所に照会をする場合があって、そこには警察や公安調査庁も含まれているという答弁がありました。ただ、照会した内容も照会したかどうかも本人には基本的に知らされないということになっているんですね。一方、警察は、治安維持のためとして日常業務として様々な情報を収集しますし、それを第三者提供するということも行われてきております。ですから、その情報は廃棄をされないという場合もあるわけですね。
適性評価のために本人が知らないうちに警察などへの照会が行われて、本人が知らないうちに情報収集がされて、言わば生涯監視の対象にもなりかねないというこの仕組みについてどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/84
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085・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
適性評価については目的外利用が禁止されているわけですけれども、そこでいう目的というのは経済安全保障の目的なんですよね。ということは、適性評価の目的じゃないので、例えば警察が、じゃ、この捜査は、こいつを監視するのは経済安全保障に資するのでこの情報を使っちゃえというのは、法律上は禁止されないということなんだろうと思うんですよね。
そういう意味では非常に、警察や公安調査庁が適性評価に関して得た情報を利用するたがが緩いと思います。本来であれば、適性評価以外に適性評価の情報は使ってはいけない、例外はこれこれというふうにすべきなんだけれども、経済安全保障の目的以外に使ってはいけないというふうになっているので警察が結構自由に使えるのではないかと。
捜査ですから、本当ちょっとした疑いがある場合でも警察は捜査とか調査とかするわけですので、そういう意味では、結構警察がいつまでも情報を持っているとか、まだ捜査の必要性があるよといっていつまでも情報を持っているとか、いろんな人の監視に使うとか、悪用されるリスクというのは条文上も排除されていない、非常に危険性は高いというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/85
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086・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございました。
井原参考人に、研究、学術研究との関係でお聞きしますが、学術分野での秘密保持のために大学や研究機関が具体的、個別的なガイドラインを既に作っているということがお話がありました。それに対してこのセキュリティークリアランス制度が手を突っ込むことによって学術研究体制に大いに攪乱をもたらすのではないかという御指摘があったんですけど、今あるその具体的ガイドラインとの関係でどういうことが起こるのか、具体的にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/86
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087・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
実態としてほとんど示されていないので推測を言う以外にないんですが、例えば秘密保持契約という、大学なんかで契約するときには非常にガイドラインなんかで定められていて、それに違反しないように契約するわけですけれども、それは、今ここでいう秘密保持契約というのは、セキュリティークリアランスを確保した人と政府との秘密保持契約、その秘密保持契約にどういうことが盛り込まれるかということと、大学で行っていることと整合が取れるんだろうかという、私はもう取れないというふうに踏んでいるわけですけれどもね。
それは私の考えですけれども、非常にそういう意味で具体的対応が、大学の中で混乱が起きるだろうというふうに思って、それは一つの大学だけじゃなくて、大抵、先端分野の技術者があちこちにいてリンク張って研究しているわけですから、あるいはグループつくってやっているわけですから、ほかの大学でもそういう問題が起きてくるわけで、その意味で、今ここでほとんどその内容について提起もされていないし、第一そういう研究者をどうやって選ぶのという、ピックアップどうやってしているのということでいえば、これは多分、シンクタンクみたいなところで目利きを探してきて、その人たちが、ここの研究面白い、あの研究面白いよというのを国際的なレベルで調査するんだろうと思うんですが、そういう中でも、取り組まれている過程で秘密保持契約みたいなことが利いてくるわけですから、それと、ここでいう秘密保持契約とはレベルがちょっと違っていれば整合的な対応ができなくなるので、非常な混乱があちこちで起きるんじゃないかというふうに私は見ているんですがね。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/87
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088・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/88
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089・大島九州男
○大島九州男君 大島九州男でございます。
今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず最初に、原参考人にお聞きをしたいと思いますが、この法案がもたらす経済界の一番のメリットというのは何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/89
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090・原一郎
○参考人(原一郎君) 先ほど来何人かの先生にうちの提言に言及をいただいておりますけれども、国際共同研究開発あるいは国際的な競争入札、それに、そもそもこの制度がないがために排除されていた、あるいは与えられる情報が限られていたというデメリット、これ制度がありませんので推測でしかありませんけれども、そういうものが解消されていくというメリットがあるんだろうと思います。その結果として、我々の期待としては、ビジネスの拡大につながっていくことを期待しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/90
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091・大島九州男
○大島九州男君 私も、この質疑の中で高市大臣なんかも、そういったことが副次的にあるというふうにおっしゃっていらっしゃいましたが、今回、経団連の基本的な考え方の法案への反映状況という表をいただきましたが、経済界の中で要望して反映されなかったことってあるんですか、今回。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/91
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092・原一郎
○参考人(原一郎君) 基本的には、一〇〇%とは申し上げませんけど、この総括表を見ていただくように、丸ないしは注釈が付いているように、基本的には反映していただいているということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/92
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093・大島九州男
○大島九州男君 ここの中にもありますけれども、原参考人、国家として厳格に保全すべき情報にやっぱり限定しないと、いろんなことを言われると経済活動が非常に困ると。まさしく私もそのとおりだと思うんですよね。
経済界が国に、いや、この情報は欲しいんだと、今までは与えてもらえなかったけれど、そういう情報があるから私たちは経済的に活動がしやすいんだということよりも、逆に、私はよく言うんですけど、宮内庁御用達の信用のある会社ですと、うちは、だから、この印籠を出せばいろんな企業や国が、ああ、あなたの会社は信用があるところですねというパスポートになる非常に有効な法案じゃないのというふうな認識なんですが、見解どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/93
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094・原一郎
○参考人(原一郎君) そのような形の、何というんでしょうか、適切な表現が浮かびませんが、エコシステムみたいなものがこの日本においてでき上がってくれば、これ時間掛かると思いますけど、そういうことがあり得ればこれは企業にとっても一つのメリットとなると思いますが、当面のことを考えますと、恐らくそこまでは今回の法案は想定をしていないんだろうと思います。
場合によっては、先生が言われたところの細かいところで細分化していきますと、場合によっては目的外利用に当たってしまう場合もあるのではないかなというふうに思います。例えば、企業の看板として、我が社はこれだけのセキュリティーホルダーを抱えていますみたいなことをホームページなりあるいは営業活動において使ったとすると、恐らくこれは目的外利用だということで、今、少なくとも現時点ではそういう解釈がなされるんではないかなと今までの政府側の答弁から推測をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/94
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095・大島九州男
○大島九州男君 時とともにいろいろ変化をしていく形になっていくんだろうというふうに思うんですが、まずやっぱり経済界の思いは第一歩クリアしたというふうな認識なんですが。
齋藤参考人にお伺いしたいんですが、特定秘密保護法があるからあえてこの法案を別建てで作る必要性はないんじゃないかと思うんですが、そこら辺の見解、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/95
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096・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
そのとおりだと思っています。というのは、政府の方は重要経済基盤情報も特定秘密保護法でカバーすると言っているんですよね。先ほど申しましたけど、穴はあるんですけど、半導体のサプライチェーンとかは多分穴だと思うんですけれども、ただ、かなりカバーしていることは間違いないんですよね。コンフィデンシャル情報はそもそも外国で余り使われなくなっているので、そんな法律作る必要もないだろうということになると、多分、秘密保護法があれば十分なんだろうと。
先ほどの宮内庁御用達というお話ですけれども、これ有識者会議の中の資料に出てきましたけれども、たしか経済産業省の方でその情報保全を各企業がきちんとやっているかどうかというのを認証する制度があるということが資料の中で紹介されていたんですけど、そこでは人的クリアランスはやっていないようですけれども、そういう制度はあるんですよね。
だから、今回みたいな法律作らなくても、いや、この会社はちゃんとクリアランスやっているんだよという、その経産省の制度使って入札に参加できるように政府の方で便宜を計らうみたいなことはあってもいいと思うんですよ。それは別に罰則付きのこういう法律作らなくても、別に作ればいいだけの話であって、基本的には秘密保護法があれば十分なんだろうというふうには思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/96
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097・大島九州男
○大島九州男君 齋藤参考人、今の御意見でいけば、なぜこの法案を今ここで作ろうとしているかと、個人的な見解で結構ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/97
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098・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
率直に言うと、もう全然分からないというのが率直なところでして、秘密保護法でかなりカバーできて、半導体とかのサプライチェーンも真面目に解釈詰めていくと多分難しいんだろうと、コンフィデンシャルも海外では余り通用しないしということで。あと、クリアランス、そのクリアランスがないからいろんな会議に参加できなかったみたいな話もあるんですけど、ただ、じゃ、それってどの層の、例えばトップシークレットのクリアランスがなかったのか、あるいはコンフィデンシャルのクリアランスがなかったのか、あるいはCUIの保護体制が不十分だと思われたのか、全然具体的な話がよく分からなくて、何か会議に参加できなかったみたいなすごく抽象的な話しかないんですよね。
本当にこれ経済界の役に立つんだろうかというのも私そもそも疑問ですし、政府の安全保障の関係でいっても秘密保護法でほぼカバーできるはずなので、ちょっと謎だと思っています。ただ、経済安全保障をやっているぞということを言うと、何か割と評価が高まるような雰囲気があるのかもしれないなとは想像していますがというぐらいだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/98
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099・大島九州男
○大島九州男君 私もよく質問するんですけど、なかなかよく分からないと。すっきりするのは、経済界から要望されてこういうことをやろうと。なおかつ、今、適性を各省庁とかいろんなところが独自に判断していくと言うけれども、そんなの、いや、いろんな仕事がたくさんあってやっていけないと。そうしたら、段階的にこういう何か財団みたいなのをつくって、それでそういうところが適性検査を見ていくと。将来的には、天下りとは今言いませんけれども、回り回ってそういう違う仕事をつくれることもあるから、こういう仕組みを入れておくのもいいのかなとか思う考え方もあるのかなというのは私が個人的に思うことでありまして、だから、そういうのを複合的にして、じゃ、こういった一つの制度をつくるのもいいかなというぐらいの感覚なら自分は理解できるなという考え方なんですね。
井原参考人にお伺いしたいと思うんですけど、政府がやはりこれはもう絶対に守らなきゃいけないというのはやっぱり国家安全に関する軍事だとかそういったものだというふうに私も思うんですね。だから、今回のこのセキュリティークリアランスの中でそういうものをという話聞くと、いやいや、それは特定秘密がありますからという話になるので、いや、もうそれだったら必要ないんじゃないのというふうに私は個人的に思うんですが、参考人の御意見を改めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/99
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100・井原聰
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
特定秘密保護法自体、問題がたくさん含まれているので、私はそれ自体なくすべきだというふうな立場に立っていることが前提です。
ただ、今御質問のように、何といいますかね、ちょっと、今、済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/100
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101・大島九州男
○大島九州男君 いえいえ、ありがとうございます。済みません、ちょっと質問の聞き方が悪くて済みません。
考え方はそれぞれいろいろあると思うので、これ、私はこの法案に対しては経済界の強い意向があったんだというふうに思って今まで質問してきたんですけど、最後に原参考人にお伺いをしますと、経済界のいろんな考え方をこの法案はしっかり反映をしてくれているという意味においては、経済界からはこの法案はウエルカムだという認識でいいんですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/101
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102・原一郎
○参考人(原一郎君) 結構でございます。
それに加えまして、先ほど言及をいただいた早期成立を求めるという三月十九日付けの私どもと日本商工会議所の提言、要望書の一行目に明らかなんですけれども、軍事転用可能な民生技術の獲得競争が激化するとともに、国家を背景としたサイバー攻撃の頻度が増す中ということが書いてありますように、企業のニーズのみだけではなくて、我が国の情報保全体制自体を強化する必要というのが増してきているというのが今の国際情勢だと思いますので、もちろん企業のニーズを満たしていただく、その受皿として今回の新しい制度が機能することを期待しているわけでございますけれども、今のこの厳しい国際情勢の中で、国の構えとしてその情報保全体制を強化していかなければいけないという状況にあるのではないかなということで、今回の法案は、目的を読みますと、法律案の名称もそうですけど、保護と活用、それから目的も同様に二本立てになっているわけでございまして、企業ニーズはもちろん満たしていただきたいんですけれども、国家の在り方として必要な制度ではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/102
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103・大島九州男
○大島九州男君 ありがとうございました。
最後に、齋藤参考人、今の経済界の要望が、これからうまく企業の活動に活用されて発展するようにというそういう願い、当然だと思うんですが、齋藤参考人の見解は、この法案に対して個人的な意見があれば最後に一言どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/103
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104・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
繰り返しにはなりますけれども、率直に言うと、この法律が作られたから企業が外国から情報を得られるようになるという関係があるかどうかはよく分からないと思っております。
政府の方で感触がある、それが諸外国から受け入れてもらえる感触があるであろうということかもしれませんけど、それはもう全く誰も検証できない話でありまして、かなり不確かな話なんですよね。やはりFOCIであるとか、あるいは秘密の三層構造か二層構造かという話もあって、諸外国とはかなり違う制度になっていますし、そういうことも含めて言うと、もちろん経済界がおっしゃるように、経済界が外国から情報が得られればいいねとは思っていますけれども、なかなかそうはいかない可能性は結構あるのではないかなというふうに心配はしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/104
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105・大島九州男
○大島九州男君 ありがとうございました。
いろいろ参考になる意見をいただきまして、今日はありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/105
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106・阿達雅志
○委員長(阿達雅志君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121314889X01120240507/106
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