1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和六年五月七日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
友納 理緒君 田中 昌史君
五月二日
辞任 補欠選任
山崎 正昭君 臼井 正一君
福島みずほ君 大椿ゆうこ君
五月七日
辞任 補欠選任
臼井 正一君 山崎 正昭君
大椿ゆうこ君 福島みずほ君
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出席者は左のとおり。
委員長 佐々木さやか君
理 事
古庄 玄知君
和田 政宗君
牧山ひろえ君
伊藤 孝江君
川合 孝典君
委 員
臼井 正一君
岡田 直樹君
北村 経夫君
山東 昭子君
田中 昌史君
森 まさこ君
山崎 正昭君
石川 大我君
大椿ゆうこ君
福島みずほ君
石川 博崇君
清水 貴之君
仁比 聡平君
鈴木 宗男君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
参考人
東京大学大学院
法学政治学研究
科教授 沖野 眞已君
弁護士 熊谷信太郎君
東京都立大学教
授 木村 草太君
特定非営利活動
法人女のスペー
ス・おん代表理
事 山崎 菊乃君
白鴎大学教授 水野 紀子君
浜田・木村法律
事務所弁護士 浜田 真樹君
中央大学法学部
兼任講師
共同養育支援法
全国連絡会母の
会アドバイザー
兼共同責任者 鈴木 明子君
和光大学現代人
間学部心理教育
学科教授 熊上 崇君
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本日の会議に付した案件
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/0
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001・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、友納理緒さん、山崎正昭さん及び福島みずほさんが委員を辞任され、その補欠として田中昌史さん、臼井正一さん及び大椿ゆうこさんが選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/1
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002・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、八名の参考人から御意見を伺います。
午前に御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授沖野眞已さん、弁護士熊谷信太郎さん、東京都立大学教授木村草太さん及び特定非営利活動法人女のスペース・おん代表理事山崎菊乃さんでございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、沖野参考人、熊谷参考人、木村参考人、山崎参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず沖野参考人からお願いいたします。沖野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/2
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003・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
東京大学法学部法学政治学研究科で民法を担当しております沖野眞已でございます。
本日は、このように貴重な機会を与えてくださいまして、誠にありがとうございます。
提示されております本法律案につきましては、法務大臣の諮問を受けて設置されました法制審議会家族法制部会におきまして、約三年間にわたり様々な立場を踏まえて審議、検討が行われ、要綱案として取りまとめがされました。それが法制審議会総会における議論と承認を経て要綱となり、法務大臣への答申がされました。本法律案は、この答申を踏まえたものであると理解しております。
私は、この法制審議会家族法制部会の委員を務めさせていただいておりました。本日は、その経験を踏まえつつ、民法の一研究者としてお話をさせていただきたいと思います。
本法律案は、民法のみならず人事訴訟法、家事事件手続法を改正するものですが、専ら民法の改正についてお話をさせていただきます。
本改正法案と申しますが、それによる民法の改正は、子の養育の在り方の多様化等の社会の情勢に鑑み、離婚に伴う子の養育への影響を踏まえ、子の利益の確保の観点から離婚関連制度の見直しを図るものであり、一、親子関係に関する基本的な規律、二、親権、三、養育費、四、親子交流、五、養子縁組、六、財産分与に関する改正を柱といたします。
以下では、親子関係に関する基本的な規律と親権を中心にお話をし、養育費、親子交流について簡単に取り上げ、最後に民法の改正の意義について一言いたします。いささか大上段のお話をすることをお許しください。
本改正法案の中核の課題は、子の養育、特に離婚後の子の養育の法制度として基本法たる民法がどのような制度や枠組み、規律を用意すべきかというものです。
子は、出生と同時に民法を基礎とする民事法の世界におきまして権利能力を当然に付与され、一個の独立した人格として存在することになります。しかし、生まれてすぐはもちろん、一定の時期までは一人で立つことができない、保護や支援を要する存在です。そのため、子の心身の生育、そして社会的な生育をどのように図り、行っていくか、その制度が必要であり、民法は、法律上の親子関係を基礎として、子に対して親たる地位の者に子の養育のための責任を担わせ、必要な権限を与え、またその妨害に対してそれを排除するなどの権利を与えています。そのような総合的な地位を表すのが親権です。
昭和二十二年、一九四七年の民法改正前の明治民法は、このような親権は基本的に父が有するものとしていたところを、昭和二十二年改正により、婚姻夫婦にあっては父と母の双方が親権を有し、双方が共同でそれを行使すると定めました。父と母が共に親権者として子の養育を担うことがその任務の実現のために適切であるという判断を示すものと考えられます。
同時に、離婚後は親権者の一方のみが親権を有し、他方は親権を失うという仕組みを設けました。その理由は事実上の困難と言われたりしておりますけれども、必ずしもはっきりしておりません。
このような昭和二十二年民法の在り方につきましては、一、離婚に伴い当然に一方が親権者たる地位を失うという制度が適切なのか、また、二、親権を有しないことになる親が子供の養育に対する責務を負わないわけではなく、しかしその基礎付けが示されていないのではないか、さらに、三、婚姻中の共同での親権行使もそう定めるだけであって、親の間で意見が対立するような場合の解決方法が用意されていないのは法律として無責任ではないかといった問題があり、議論がされてきました。
本改正法案は、これらの問題に次のような形で解決を与えています。
第一は、親子関係に関する基本的な規律を明らかにしたことです。
父母は、親権の有無にかかわらず、子の養育に関して一定の責務を負っていると考えられますが、現行民法ではこの点が必ずしも明らかではなく、そのため、親権者でない親は子の養育に何ら責任を負わないかのような誤解がされることもあるという指摘もあります。
本改正法案は、親権の有無にかかわらない父母の責務等を明確化しています。具体的には八百十七条の十二ですけれども、一、子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮して子を養育しなければならないこと、かつ、二、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと、また、三、父母が子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明文化しています。
子の人格の尊重に関しましては、子の意思の尊重との関係が問題となり、かなりの議論がありました。しかし、人格の尊重において、その意思の尊重はむしろ当然のことです。これを例示することも考えられなくはありませんが、理論的な問題に加え、子の利益の確保の観点からの緊張関係や弊害も懸念されるため、意思の尊重は人格の尊重に当然含まれるという言わば当然の理解の下に法文が作成されており、適切なことであると考えます。
また、父母の間の相互の人格の尊重は、虐待が許されるものではないことや、それへの対応の基礎を民法そのものに明文で設ける意味をも有するものです。
第二は、離婚後の当然単独親権の見直しです。
父母の子の養育への関わり方、在り方は様々であり、昭和二十二年当時に比し、一層多様化しています。夫婦としての法律婚は解消するものの子の養育については協力して当たるという場合もありますが、現行法では離婚後も夫婦双方が共に親権者という立場で子の養育に関わる道は全く閉ざされています。父母の婚姻中はその双方が親権者となり親権を共同して行使することとされていますが、父母の離婚後は一切の例外なく必ずその一方のみを親権者と定めなければならないこととされているからです。
このような制度は、およそその余地がないという点において、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を持ち、子に関する重要な事項が父母双方の熟慮の上で決定されることを法制度として支えるということがされていない点で問題であると考えられます。改正法案が離婚後の父母双方を親権者とすることを可能とするとしているのは、このような考慮に基づくものであると理解しております。
これに対し、離婚後の父母双方を親権とすることに対しては、子に関する意思決定を適時に行うことができないおそれがあるのではないかとの懸念や、DVや虐待等がある事案において、父母の一方から他方に対する支配、被支配の関係が離婚後も継続するおそれがあるのではないかという懸念があります。
本改正法案では、父母が協議上の離婚をする場合には、父母の協議によって父母の双方又は一方を親権者と定め、裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めるということを基本とした上で、裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関して、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととし、かつ、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないとなっています。
さらに、子の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときについては、DVや虐待等がある事案を念頭に置いた例示列挙がされています。これらの規律は、こうした事案に対する懸念を踏まえ、それに対処できる規律としたものと言えます。
もっとも、協議上の離婚の場合に完全に父母に委ねてしまうという現行法を維持することには、父母の合意について子の利益の保護の観点からの適切性が確保されないという問題もあります。協議離婚の際に、DVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされたという場合には、子にとって不利益となるおそれがあるからです。協議離婚の成立にチェックを掛けるという事前確認型の規律も考えられますが、そうしますと、速やかな離婚が困難になるなどの問題もあります。
そこで、改正法案では、事後の対応の手法を取り、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、家庭裁判所が変更が子の利益のために必要であるか否かを判断するに当たり、父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきこととし、DV等の有無がその考慮要素の一つとして明示されています。
第三は、双方が親権を有し、それを共同で行使する場合の規律です。
改正法案では、親権の共同行使の場合の規律を設け、まず、監護又は教育に関する日常の行為をするときは一方の親権者が単独で行使できることを明らかにし、また、それに該当しない、したがって共同で親権を行うべき重要な事項について父母の意見対立がある場合には、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権の行使者と定めることができる手続が新設されています。また、日常の行為に当たらない重要な事項であっても、協議や家庭裁判所による手続を経ていたのでは子の利益を図ることのできない場合、これを子の利益のため急迫の事情があるときとして、単独での行使が認められる場合であることが明らかにされています。
このように親権の行使の規律が整備されることは、単独行使の認められる余地や範囲の規定を欠き、意見対立の調整手続を欠くという現行法の不備を補うとともに、父母の双方が親権者である場合に子に関する意思決定を適時に行えなくなるという懸念に対処するものと言えます。
続きまして、親子交流及び養育費について簡単に申し上げます。
まず、親子交流でございますが、親子交流については、親権の所在にかかわらず、子が父母の一方とのみ同居する場合に、別居親との交流は子の成長のために重要な意義を有するものですが、その一方で、親子の交流の実施が子の危害へつながる場合もあり得ることも否定できません。そのため、親子交流については、子や同居親の安全、安心を確保した上で、適切な形での親子交流を実現できるような仕組みを設けることが重要となります。
また、親子の交流は別居に伴うものであって、必ずしも離婚後に限定されません。むしろ、離婚前の婚姻中の別居においても重要となります。しかし、現行法はこの局面での規律を置いておりません。また、別居親と交流をしてきており、その中で祖父母等との親族と交流をしていたのだけれども、その別居親が死亡した場合に、それまでの祖父母等との交流を継続することが望まれるといった場合もあります。
改正法案は、これらについて規律を設け、また、それとともに、手続法関係になりますが、裁判手続過程において、家庭裁判所が事実の調査として親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律が設けられています。いずれにおきましても、子の利益の観点からの要件設定が明示された、適切な親子交流を実現できる仕組みの構築のための改正であると理解しております。
次に、養育費でございますが、これは子の養育を経済的に支えるものであり、その取決めや支払の確保が重要であることは異論がありません。問題は、それをいかに実現するかです。
本改正法案では、取決めがされないときへの対応として法定養育費の制度が設けられ、また、支払の確保への対応として、養育費債権につきまして一般先取特権を付与することで、他の一般の債権者に優先して弁済を受けられる地位、かつ債務名義を取得していなくても民事執行手続の申立てができるという地位が付与されています。
また、手続面では、裁判手続における収入等の情報の開示命令の仕組みや、また、民事執行手続におきまして、一回の申立てにより複数の手続を連続的に行うことができることとされ、債権者の負担を軽減する仕組みが設けられています。
最後に、民法の改正の意義について一言申し上げます。
民法の制度は社会における基本設計として非常に重要であると考えられますが、父母の離婚後の子の利益を確保するためには、民法等の民事基本法制を整備するだけで足りるわけではなく、その円滑な施行についても必要と思われる環境の整備を図ることが重要であり、何よりまた、子の利益の確保のためには、総合的に各種の支援等の取組を充実させることが重要です。
法制審議会家族法制部会において、民法等の改正内容を示す要綱案の取りまとめに加えて附帯決議がされ、総会でもこれが認められております。この附帯決議には、改正法の内容の適切な周知を求めること、各種支援についての充実した取組を求めること、家庭裁判所における適切な審理を期待すること、改正法の施行状況や各種支援等に関する情報発信を求めること、これらの事項の実現のため、関係府省庁等が子の利益の確保を目指して協力することなどが盛り込まれております。
民法等の改正の実現が重要であることはもちろんですが、それのみで目的を達成するものではないこと、環境整備や各種支援のための総合的な取組があってこそであることにつきましても改めて指摘させていただきます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/3
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004・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、熊谷参考人にお願いいたします。熊谷参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/4
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005・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 弁護士の熊谷でございます。
私は、昭和六十二年から東京で弁護士をしておりまして、来年で約四十年の実務経験ございますが、養育費に関しまして、今お話がありました法制審議会で答申が出るまでの間にどういう検討がなされたのか、その辺を振り返りながらお話をしたいと思っております。
資料、お手元資料の横のA4の養育費の不払解消に向けた検討についてという法務省民事局の資料を御覧いただけますでしょうか。左から右に向かって時系列に沿って説明をしておりますA4横の資料であります。
左側にあります法務大臣養育費勉強会、これが、当時の森法務大臣の御指示でこのような勉強会が立ち上がりまして、令和二年から、令和二年一月から令和二年五月まで、勉強会が七回にわたって行われました。ここでは、重要な論点整理、いろんな養育費の現状について認識するとともに、どういう対策が必要かといった論点整理を行いました。
御存じのとおり、先進国の中で我が国は、残念ながら養育費の支払が三〇%を切っているという非常に低い状況でございます。それに対してどう対応したらいいのかということで様々な論点整理を行いました。養育費の取決め率の低さをどう対応するのか、一旦取り決められたものについての支払確保をどうするのか、そもそもDV被害などで話合いすらできないような場合の養育費どうするのかといった様々な問題について検討をし、令和二年五月二十九日に取りまとめを行いました。
それに基づきまして、その真ん中にあります養育費不払い解消に向けた検討会議というものが大臣の指示で立ち上がりまして、私、これの議長をさせていただきましたが、ここでより具体的な政策についての提言を行うということで、令和二年十二月の二十四日に取りまとめを行い、大臣に提出をいたしました。そういった経緯を受けて法制審議会での御議論をいただいたという、こういった流れになってくるわけであります。
私は、今回の法案に関しまして基本的には賛成の、前向きの評価をしている立場の者でございます。今、沖野参考人からも御説明がありました、養育費についての取決めをした場合の履行の確保の問題、それから、それについては先取特権が付与されたわけですが、それ以外に取決めがない場合についての法定養育費の設定ということで、大きな前進ではあると思っております。
ただ、今回の法案に関しましても、更にもっとこうしてほしいという点についての意見を述べたいと思いますので、私が関与してきました養育費の問題に限りまして、今回の民法の改正についての意見を述べたいと思います。このような機会を与えていただきまして、本当に有り難く思っております。
まず、今後、先生方に是非御認識いただいて御議論いただきたいと思う点が五点ございます。
まず一点目は、養育費の取決め率の向上のためにはどうしたらいいのかということでございまして、養育費の取決めに関しまして、今回の法案では、協議離婚に関して公的な関与の手続を取ることは見送られています。これは今後の検討課題かと思います。
例えば、これ勉強会での議論でも出てきたんでありますが、離婚届を出すときに、そこに今、現行は養育費の欄というのがないんですね。養育費に関しての取決めをどうするという欄を設けておくと。そして、それについて、その記載を必要的なものとすると、その養育費の同意が離婚、協議離婚の要件という形になるわけですけれど、そこまで一足飛びにいかなくても、任意的なものとしてでもそういった記載欄を設けておくということは必要ではないだろうかと思いますし、それから、もちろん諸外国ではその養育費の合意があることが離婚、協議離婚の条件になっている国もあるというふうに聞いておりますので、これは将来的にはそういう方向を目指していただきたいなというふうに思うところであります。
ただ、DV被害の方などの御意見を聞くと、そういう養育費の支払合意を協議離婚の成立要件にしてしまうと、DV被害の方の場合にはもう離婚ができなくなってしまうということもあるようですので、そこの点に関してのDV被害の方に関する対策、DV被害の方が離婚するための対策ですね、それは別途必要、手当てが必要だろうと思いますけれども、子供のやはり養育費を確保するという大きな目的の上では、将来的には協議離婚の成立に養育費の合意を必要とするということも考えていいのではないかなというふうに思っております。
二点目は、離婚に関する支援体制の充実ということでありまして、これ、法律はできても、結局、支援体制が十分でないとうまくワークしないということでありまして、地方自治体の相談体制、民間の相談団体の支援、こういったものも必要でありますし、一番痛感しているのは、弁護士会がやっている法テラスというのがございますけれども、これはいろんな相談機関なんですけれども、法テラスの相談案件が非常に多くて、この離婚の、協議離婚をしている養育費の問題だとか、そういった離婚していく場合の子供の対応、こういったものへの支援が十分でない、必ずしも十分でない。一生懸命やっているんですけれども、費用も予算も人員も足りないということで、この法テラスへの支援を是非先生方に御議論いただきたい、御検討いただきたいというふうに思いますし。
それから、その養育費の算定表というのがございまして、我々法律家はその養育費の算定表を用いて養育費を、家庭裁判所での離婚だとか協議離婚の場合でもそれを使うんですが、これはやはり一般の方が見てもなかなか分かりづらいという批判がございます。ですので、一人親の方でも簡単に利用できる養育費算定表を作成をしたり、もっと言えば、自動計算ツールですね、そういうものをつくって、そこに条件さえ入れればもう養育費の額も出てくるというような自動計算ツールが望ましいのではないかなと思います。
残念ながら、我が国ではそういったことへの行政の支援が非常に受け身でありまして、もっと積極的に、例えば、これ勉強会で出てきたものとしましては、フィンランドなどではそういう行政サービスはプッシュ型で行っていると。つまり、あなた、どういうニーズがありますかということを行政の側からネット上で聞いてくるということですね。自分の条件を入力すれば、こういうものは要りませんか、養育費どうですかといったものを聞いてくるような、そういうような仕組みも御検討いただきたいテーマだなというふうに考えております。
三番目は、今回の改正で盛り込まれました先取特権、それから法定養育費についてですけれども、これ大変いいことで、私は非常にこれ喜ばしいと思っておりますが、留意していただきたい点としましては、これの金額ですね、法定養育費の金額、それから先取特権の被担保債権の範囲、これについては、法令に書き込まれてはおりませんで、法務省令で決めるということになっております。その法務省令で決める際に、子供の食費とか教育費など、子供の健やかな成長のために必要不可欠なものが、現実に必要な額が支払われるような配慮を是非お願いしたいと思っております。
法務省令で決めるということで、その金額が非常に低額になってしまうのではないかという懸念を、これ杞憂だといいんですけれども、若干持っておりまして、というのは、制度として法定養育費などは非常に補充的であるというような御説明がされることがあるものですから、そういう意味で、この点に関して現実的に生活できる金額を設定していただくように先生方からも是非御検討いただきたいなと思っております。
四番目が、養育費の不払率が、余りにもその不払の率が高いものですから、これを減少するための更なる措置としまして、悪質な不払者に対するペナルティー、ないしは支払っていく者に対するインセンティブというものを導入していただくことを御検討いただきたいと思っております。
この考え方は、悪質なと申し上げたのは、支払能力があるのにということです。養育費の不払というのは、本来的にはこれは不作為による子供への経済的虐待であるというふうに捉えることができると思います。そうであるなら、不作為によって子供に対して経済的な虐待を与えるようなケースに対してはペナルティーを与えるということも十分検討に値するのではないかというふうに思います。
諸外国の例では、氏名を公表する、不払者のですね、氏名を公表する、あるいは運転免許とかパスポートの資格を停止するというようなすごいことをやる国もあるわけです。
また、賃金を不払、賃金不払の場合には付加金制度というのがございますけれども、この付加金制度を養育費にも導入をするであるとか、あるいは遅延損害金を法定利息を上回る形で養育費については設定するとか、養育費債権に関して、もう諦めてしまう親も多いんですけれども、これを、消滅時効の期間を延長するとか、かなり思い切った踏み込んだ措置もとっていかないと、先進国で最低というような恥ずかしい状況を改善することがなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。一方で、つまり、これらは、養育費の不払を許さないぞという国としてのメッセージ、これを打ち出していっていただきたいというふうに思うわけであります。
一方で、支払った人へのインセンティブ、御褒美として、例えば養育費を支払った場合の控除ですね、控除制度、いろんな、扶養控除などありますけど、その控除制度の中に養育費の支払を位置付けていくということも一つの方法ではないだろうかと思っております。
そして、その不払解消への国の積極的な関与としまして、いわゆる代理強制徴収制度、お給料の源泉徴収などと同じように、養育費の給料からの天引きなどの法律的な強制徴収といったものも御検討いただければというふうに思います。これは将来的なものだと思いますけれども、そういった御検討をいただきたいと思います。
そして最後に、これは非常にハードル高いかもしれませんけれども、国による立替払制度の導入、これも是非御検討いただきたいところだと思います。
北欧諸国などでは現実にこれ導入されて、非常に支援対象も広く、期間も長期にわたっておりますし、韓国でも同様の制度が、少し規模は小さいですけれども、あるわけであります。これは要するに、DV被害その他もあるでしょうし、合意が残念ながらできないという場合に、今日の御飯、あしたの子供の御飯を確保するために国が立て替えてまず養育費を払って、それを債務者から、義務者から徴収していくという考え方であります。
これができれば非常に養育費不払に対してのその解消への大きな進歩になると思いますが、問題点ももちろんあるわけでありまして、立て替えた金額の回収をどういうふうにやるのか。サービサーを仮に使うにしても、サービサー法の改正で特定債権の範囲を変える必要ありますし、そういった問題がありますし、それから、養育費だけをそういうふうな特別扱いといいますか、ほかにもいろいろ犯罪被害者その他いる中でこういうものを導入していくということになりますと、やはりなぜ養育費を特別扱いするのかの国民のコンセンサスを得ながら進めていく必要があると思いますので、是非、あしたの日本を支える子供たちの生きる基盤になる制度として御検討いただければと思います。
私からのお話は以上でございます。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/5
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006・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、木村参考人にお願いいたします。木村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/6
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007・木村草太
○参考人(木村草太君) 私の専攻は憲法学です。私は、子供の権利と家庭内アビューズの被害者の権利の観点から共同親権の問題を研究しています。
現在審議中の民法改正案には非合意強制型の共同親権が含まれています。この点について意見を述べます。
共同親権の話をすると、別居親が子に会う会わないの話を始める人がいます。しかし、これから議論する親権とは、子供の医療や教育、引っ越しなどの決定権のことであり、面会交流とは別の制度です。面会交流と混同せずに話を聞いてください。
また、これまで説明されてきた離婚後共同親権のメリットは、父母が前向きに話し合える関係にある場合、つまり合意型共同親権のメリットです。非合意強制型のメリットではありません。合意型と非合意強制型は全く別の制度ですから、両者を分けて議論をしてください。
民法改正法案第八百十九条七項は、父母の一方あるいは双方が共同親権を拒否しても、裁判所が強制的に共同親権を命じ得る内容です。衆議院では、合意がある場合に限定する修正案が検討されました。しかし、衆議院多数派は非合意強制型が必要だと言って譲りませんでした。この法案には余りにも多くの問題があります。
第一に、父母の一方が共同親権に合意しない場合とは、現に父母に協力関係がなく、話合いができない関係です。こうした父母に共同親権を命じれば、子供の医療や教育の決定が停滞します。つまり、非合意強制型の共同親権は、子供から適時の決定を受ける権利を奪います。
第二に、法務省は、法案八百二十四条の二第一項によって、共同親権下でも日常行為、急迫の場合であれば父母がそれぞれ単独で親権を行使できるから適時の決定ができると説明してきました。しかし、この条文によれば、学校のプールや修学旅行、病院でのワクチン接種や手術の予約などの決定をいつでももう一方の父母がキャンセルできます。結果、いつまでも最終決定できない状態が生まれます。病院や学校は、どちらの要求を拒否しても損害賠償を請求される危険にさらされます。条文の狙いとは裏腹に、病院や学校がトラブル回避のため、日常行為についても一律に父母双方のサインを要求するようになる可能性もあるでしょう。
この問題は、日常行為、急迫の決定について優先する側を指定しない限り解決しません。ところが、この問題を指摘された法務省の回答は、こうすれば解決できるではありませんでした。驚くべきことに、その問題は婚姻中の父母について現行法の下でも生じ得ますと答えたのです。
私は、この回答を聞いたとき耳を疑いました。婚姻中にも問題が生じているなら婚姻中の問題を解決する手段をつくるべきです。離婚する人の中には、子供をめぐる決定への困難が離婚原因となっている人もいます。離婚をしてもなお同じ問題が継続するような、場合によってはより悪化するような制度をつくるのは言語道断です。
そもそも、婚姻は非合意で強制される関係ではありません。合意に基づく父母の強い信頼と協力があってこそ成立する関係です。原因は様々あれど、信頼や協力が失われた場合に離婚するのです。法務省は、婚姻中でも起こり得る問題だから離婚後にそれが継続してもいいと本気で考えているのでしょうか。
第三に、法務省は、法案八百十七条の十二第二項に父母の互いの人格尊重義務が定められているから、適時の決定を邪魔する共同親権の行使はできないと言い続けています。しかし、義務違反があったとき、誰が、どうやって、どのぐらいの時間で是正するのでしょうか。法務省は、相互尊重義務違反の場合、何時間、何日以内に是正されるのかを説明していません。その是正の際には弁護士に依頼するなど、経済的コストも大きな負担となることでしょう。子供の適時の決定を得る権利に興味がないと評価せざるを得ません。
実は、政府自身、過去に、安倍首相や山下法務大臣の国会答弁で、離婚後共同親権には子が適時適切な決定を得られなくなる危険があると指摘してきました。今回の法案の非合意強制型の共同親権には、政府自身が指摘してきた課題すらクリアできていないという問題があります。
第四に、法案八百十九条七項は、共同親権を強制した方が子供の利益になる場合とはどのような場合なのかを全く規定していません。適時適切な決定のための信頼、協力関係がある場合という文言すらありません。これでは、裁判所が法律から指針を得られるはずがありません。場合によっては、適時の決定が得られなくなるケースで共同親権を命じかねないでしょう。
法務省は、法制審議会で共同親権を強制すべき具体例が挙がったと主張しています。しかし、法制審議会で挙げられた具体例は、小粥太郎委員が示した別居親が子育てに無関心である場合と、佐野みゆき幹事が示した同居親に親権行使に支障を来すほどの精神疾患がある場合だけです。
無関心親に共同親権を持たせる小粥ケースが、なぜ子供の利益になるのでしょうか。日々子育てに奮闘しているであろう一方の親に、無関心親との調整という著しい負担を課すことになるだけです。また、親権行使に支障を来すほどの病がある佐野ケースなら、もう一方の親の単独親権とするのが適切でしょう。さらに、佐野幹事の発言の中には、今回の参議院法務委員会でも話題となった精神疾患の方への差別が表れているようにも感じます。
法制審議会の非合意強制型の共同親権の議論は極めて粗雑です。もう一度、離婚家庭の現実を適切に理解している専門家を交えて審議会をやり直すべきでしょう。
理論的に考えても、同居親に親権を奪うほどの問題がなく、かつ話合いは無理と判断して共同親権を拒否している場合に別居親との話合いを強制することは、問題のない同居親に無意味にストレスを与え、子供のために使えるはずの時間と気力を奪う結果になるはずです。
第五に、法務省は、DV、虐待ケースは除外する条文になっていると言い続けています。しかし、法案八百十九条七項の条文は、将来のDV、虐待のおそれがある場合を除外するだけです。過去にDV、虐待があったことが明白で、被害者がその事実に恐怖を感じ、あるいは許せないという気持ちで共同親権に合意しない場合でも、もう止まった、反省していると認定されれば共同親権になり得る内容です。
実際、同じような内容を持つアメリカのニューヨーク州には、父が十五歳だった母に不同意性交の罪を働いた事案で、母側が拒否しているのに、もう反省しているという理由で共同親権を命じた例があります。
今回の法案の条文でも、夫婦間の殺人未遂や子供への性虐待があり、それを理由に共同親権を拒否している場合ですら、裁判所が反省や加害行為の停止を認めれば共同親権を命じ得る内容です。そうしたくないなら、はっきりと、過去にDV、虐待があった場合は被害者の同意がない限り絶対に共同親権にしてはいけないと書くべきでしょう。
相手の反省を受け入れるかどうかを判断できるのは被害者だけです。その人が話合いや共同行為の相手として安心できるかを判断できるのも、その人だけです。しかし、今回の法案では、被害者が自分の意思で共同親権を拒否できないのです。だから、被害者たちは恐怖を感じているのです。
DV、虐待をめぐっては、家庭内のことで証拠の確保が困難であること、当人が多大な苦痛を感じていても第三者の理解を得られにくいことなどから、DV、虐待の認定そのものが困難であるという深刻な問題もあります。今回の法案は、DV、虐待を軽視し、被害者を置き去りにするものです。
以上が、非合意強制型の共同親権を廃案にすべき理由です。
そのほかにも、今回の法案には、DVや虐待を主張すること自体が相互の人格尊重義務違反として扱われる危険、被害者やその代理人、支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないこと、家裁のリソース不足に対する具体的改善策の不在など、たくさんの問題があります。
今回の民法改正法案には、子供たち自身を含む家庭内アビューズの被害者から、この条文では安心できない、再び加害者との関係を強制されるという不安と恐怖の声が上がり続けてきました。被害者の方を安心させるのは簡単です。合意型の共同親権に限定すればよいのです。共同親権のメリットとされてきたものも、それで実現できます。
しかし、被害者の声は切り捨てられ続けてきました。法制審議会では、DV保護法を専門とする戒能民江委員が、この要綱では被害者を守れないという理由で反対しました。しかし、DV保護を専門としていない委員の多数決で要綱は押し切られました。
衆議院では、DV被害の当事者が、この法案が可決されれば再び加害者と対峙しなければならず、場合によっては共同親権を強制されるという恐怖を涙声で訴えました。衆議院はこの方が安心を得られるよう努力したでしょうか。そうは思えません。
なぜ、恐怖を訴える声が届かないのでしょうか。法務省や衆議院多数派は、DV被害の訴えを極端な被害妄想と見て、その主張をまた始まったと嘲笑しているように見えます。
そもそも、法務省は、父母が共に関わるべきだ、どんな親でも子の利益のために行動できると強調し続けてきました。父母の関わりは良いものと留保なく断言する裏側には、シングルの子育てはまともではないという蔑みの感情すら見て取れます。
被害者の訴えを退け続ける態度もシングル家庭への差別に由来しているのではないでしょうか。シングルでも一生懸命、子供を幸せにしようと努力している親たちがいます。加害的な親と離れて、やっと安心できる生活を手に入れた離婚家庭の子供たちもいます。シングル家庭への差別をやめ、彼ら、彼女らの声に耳を傾けるべきです。
声を切り捨てられているのは日本の被害者だけではありません。
イギリスのブリストル大学のヘスター教授も次のように指摘します。離婚後の親子コンタクトを推奨する専門家たちは、DVを解決済みの問題、既に過去のものと見て、DV被害をまるで違う惑星のもののように扱っていると。
アメリカのジョージ・ワシントン大学のマイヤー教授は、アメリカの裁判所で、子供が別居親との関わりを拒否する場合、別居親の加害行為ではなく同居親の悪口を疑うべきだという理論が蔓延しているという統計研究を発表しています。マイヤー教授は、アメリカ家族法学でDV、虐待が周縁部に追いやられている、アビューズの問題を中心に置かなくてはならないとも指摘しています。
ドイツやフランスでは、DV、虐待があっても、特別な手続を取って裁判所が認めない限り共同親権です。ヨーロッパのDVの専門家や支援者からは、DV事案を除去できるような法改正の必要が指摘され続けていますが、立法は対応しません。
オーストラリアでは、薬物依存の父親から逃れようと子連れで転居した母親が無断転居を責められ、共同親権を命じられた事案があります。オーストラリアの家族法の専門家の間では、性虐待の過去を持つ親と子供とのコンタクトをどうやって実現すべきかが検討すべき論点として扱われていました。オーストラリア法にも、被害者の声を軽視してきたという批判があります。
欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしていますが、どの国でもDV被害者の声はかき消され、あるいは虐待の被害者の声はかき消され、その支援者は嘲笑されているのです。日本の家族法の教科書でも、DV、虐待の問題が中心に置かれているとは到底言えません。日本の民法学、家族法学が、どこまで欧米の、そして日本の被害者たちの声に向き合ってきたでしょうか。
このように検討してみると、なぜ日本の現行法はそんなにまともなのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか。その答えは、憲法二十四条と、それによる戦後家族法の大改正にあります。
日本の法律家の中には、欧米に比べ日本の法律は遅れていると考える人が多くいます。例えば、同性婚の問題に関わっている人は、日本の取組は余りに遅いと感じているでしょう。そうした分野があるのは事実です。
しかし、男女平等の親権法の実現はヨーロッパのよりも長い歴史を持っています。フランスやドイツでは、父権に基づく男性優位の制度が二十世紀後半まで続きました。これに対し、日本は、新憲法を制定した一九四〇年代に、憲法二十四条の男女平等の理念に基づく親権法を実現しました。婚姻中の共同親権を導入し、離婚後は女性であっても子供の親権を持てるようにしたのです。
日本の新しい憲法、民法が重視したのは、共同行為は合意がない限り強制できないという当事者の意思を尊重する姿勢です。民法の旧規定の下では、戸主の同意がないと婚姻ができず、父母や夫になる男性が女性に婚姻を強要することもありました。新憲法はこれを反省し、両者の合意のみで婚姻の成立を認め、また、婚姻の効果を合意なしに強制することを禁じました。
憲法二十四条は、合意なしに強制してはいけない婚姻の効果があることを前提としています。合意なしに強制してはいけない婚姻の効果の範囲をどう理解すべきか。その中に、子供の医療や教育についての話合いの義務付けが入っていないのか。政府は真面目に検討すべきです。
この点、政府は、同性婚訴訟の書面で、憲法二十四条に言う婚姻とは共同で子育てをする関係なのだと言い続けています。子供の共同親権を婚姻の中核的効果と考えていることは明らかです。これを前提にすると、合意もなしに共同の子育てを強制することは憲法二十四条の理念に反しています。
戦後の民法改正をリードした我妻栄先生は、父母が離婚するときは子を監護すべき温床が破れると言っています。父母が共につくる温床は、父母の真摯な合意によってのみつくられるのです。
我妻先生は、ある最高裁判決について、夫婦の力関係の差が現にあることを強調した上で、夫婦を形式的に平等に扱えば、その争いはとかく力の強い夫の勝利となり、夫婦の平等は実現されないと批判しました。もちろん、夫は常に強く、妻が常に弱いということはなく、逆のケースもあるでしょう。しかし、協力関係が築けない背景に、力関係の大きな格差があることは少なくありません。そして、その格差は、当事者の一緒にいることのつらさとしてしか表現できないこともしばしばあるのです。
我妻先生は、形式論や理想論だけでなく、それがどんな現実をもたらすのかを含めて、豊かな想像力を持って家族法を考えました。先人は、子供の利益と男女の実質的平等への深い洞察の上で現在の民法を作り上げました。私たちがなすべきは、憲法の当事者の合意の尊重の理念と、戦後民法を作り上げた先人の遺産を受け継ぐことです。大事な遺産を台なしにすることではありません。
参議院議員の皆様は、被害者の声を無視して、差別し嘲笑する側に付くのか、子供が適時に決定を得られる権利と被害者が安心できる環境を得られる権利を守る側に付くのか、重大な岐路に立っています。是非このことを自覚して法案の審議に臨んでください。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/7
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008・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、山崎参考人にお願いいたします。山崎参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/8
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009・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 山崎菊乃です。
本日は、私のお話を聞いていただける機会をいただき、本当にありがとうございます。
私は、DV防止法が施行される前の一九九七年に、三人の子供とともにシェルターに避難した経験があります。その後、二十年以上、DV被害者支援現場でシェルター活動や自立支援活動を行っております。現在、全国女性シェルターネットの共同代表であり、ふだんは北海道でシェルターの運営をしています。
まず、私の被害者としての体験談をお話しさせていただきます。
大学時代に知り合い、対等に付き合っていたはずの夫は、結婚式の日から変わり始めました。私の行動が自分の思いどおりでないと機嫌が悪くなるようになったのです。私の実家に対しては非常に攻撃的になりました。私の両親が遊びに来ると不機嫌になりました。初めてのお産は里帰り出産でした。自宅に帰るとき、実家の母がお米を十キロ私に持たせてくれました。これに対し、夫は、俺をばかにしていると実家に米を送り返した上、新生児のそばで寝ている私の顔を殴りました。掛け布団が鼻血で真っ赤になりました。翌日、私は夫に、暴力を振るうのであれば離婚すると言いました。すると、彼は、土下座をして涙を流し、離婚するくらいなら死んだ方がいいなどと言うので、私は、これほど反省しているならと離婚を思いとどまりました。
しかし、一度暴力を振るわれてしまうと夫婦の関係が全く変わるのです。夫の顔色を見て、怒らせないようにと振る舞う癖が私に付いてしまいました。彼が暴力を振るうのは自分のせいと感じ、努力しましたが、何をしても収まることはありませんでした。人格を否定され、人間扱いされないような言動が絶えずある生活は身体的暴力よりつらく、私はいつも落ち込んでいました。子供たちもいつもぴりぴりしていました。
多くの人はDV被害者になぜ逃げないのと言いますが、これまで生活してきた全てを捨てて、将来的な保証も住む場所もない未知の世界に人は簡単には飛び込んでいけません。
ところが、ある日、どなり、馬乗りになって私の首を絞める夫に向かって、長女が泣き叫びながら、父さんやめてと包丁を持って向かっていったのです。子供たちのためにと思っていた私の我慢が子供たちを大きく傷つけていたことを思い知らされ、避難するしかないと決断し、DV防止法がまだない中、民間団体が運営しているシェルターに避難しました。
先日、私は勇気を出して、当時中学三年生だった娘に包丁を持ち出したことを覚えているか聞きました。娘は、はっきり覚えている、いつもカッターを持っていて、何かあったらお母さんを助けようと思っていた、朝は泣きながら登校していたと話してくれました。何十年もたっていたんですが、ショックでした。
お手元の資料一、二〇二二年にシングルマザーサポート団体全国協議会が行ったアンケート調査の結果、一ページを御覧ください。離婚を決断した理由で一番多いのが、子供に良くない影響があったというものです。次のページ、その子供への悪影響とは何か。具体的な内容では、夫婦が対立、口論したり、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないが最多です。司法統計で性格の不一致とされてきた中身がこれらです。
大きな決断をして避難した先に一体何があるのか。シングルマザーの平均年収は二百万円ぐらいと言われています。ダブルワーク、トリプルワークをして、自分の健康を顧みずに働いているお母さんがたくさんいます。子供に一日三食食べさせても、自分は二食で我慢している人もたくさんいます。私も、三人の子供を抱えて生活に困窮し、生活保護を受給しました。このような大変な生活を強いられるのに逃げざるを得ないことを、どうか皆様に御理解していただきたいと思います。
日本社会のDV被害に対する認識はまだまだ薄く、暴力から逃れることも難しく、相談機関からさえ理解のない対応を受け続けています。この状況を改善することなく共同親権にすることは、逃げることしか許されない日本の被害者が更に逃げられなくなることが目に見えています。
配付資料二、ここがおかしい日本の被害者支援を見ていただくと現状が分かっていただけると思いますが、DV被害者が相談や支援を求めたときにどんな対応があるのかを時系列的に挙げてみたいと思います。
まず、一番初めの相談は、実家や友達が多いのですが、そのくらい我慢しなさい、子供がいるんだから離婚なんかしちゃ駄目といった反応は全く珍しくありません。身近な人から否定されたことで、逃げられない、DV被害を受けた自覚が持てない状況になっているわけです。
そして次、勇気を出して相談機関に行くと、あざがないから、殴られていないからDVじゃないですよね、身体的暴力に比べると大したことないよねと言われるのは本当にあるあるです。日本のDV法では、DVを身体的暴力だけではないとしています。しかし、日本中で、身体的暴力以外はDVじゃないとする運用が残念ながら行われてきました。
相談の次は一時保護になります。シェルターに避難することです。
全国の都道府県に公営のシェルターがあり、DV被害者を保護することになっていますが、資料の三を見ていただくと、婦人相談所、今は女性相談支援センターとなっていますけれども、なかなか一時保護してくれないというのが全国共通の悩みです。身体的暴力がないからシェルターは入れない、集団生活ができなければ無理、たばこ、お酒、携帯使用は駄目、こうしたチェックに合格して初めてシェルターに入れます。DV被害者一時保護は十分に機能しているものではないということも知っていただきたいと思います。
その次のハードルは生活保護受給です。着のみ着のままで避難した方も多く、生活保護を希望することは少なくないです。しかし、同居中に受けた精神的DVの後遺症であるPTSDなどが理解されず就労を強要される、扶養照会で加害者である配偶者に照会されてしまった例もあります。
そのような中、心ある行政担当者と民間の支援者とで力を合わせてやっとの思いで被害者の安全を守ってきました。民間の支援者は、手弁当で、持ち出しで、全国で何千、何万件と支援してきました。DV被害については私たちが専門家です。共同親権が導入されたら何が起こるのか知っているのは当事者と私たちです。
共同親権が導入されたら何が起こるのか、懸念をしていることをお話しします。
二〇〇一年にDV防止法ができるまでは、家庭の中の暴力は社会に容認されていました。DV防止法は、私たち当事者がこのままでは殺されてしまうと議員の皆様に実情を訴え、議員立法で制定された法律です。共同親権制度は、私たちDV被害者が命懸けで勝ち取ったDV防止法を無力化するものです。この法律が成立してしまったら現場はどうなるのでしょうか。
まず、たくさんある事例なんですけれども、加害者の行動の予測についてお話しします。
加害者の中には、加害者意識は全くなく、自分を被害者だと心から思っていて、自分の下から逃げ出したパートナーに対する報復感情を強く抱く人が多いことを皆さんに知っていただきたいです。彼らはこう考えます。自分は何も悪いことをしていないのに、妻が子供を連れて出ていってしまった。自分に逆らわなかった妻がなぜ出ていったのか本当に理解できない。支援者や弁護士が唆したのではないか。自分こそ妻からの精神的暴力を受けた被害者だ。これではメンツが立たない。絶対に妻の思いどおりにはさせない。自分をこんな目に遭わせた妻に報復してやる。たとえ離婚しても、共同親権を取って妻の思いどおりにならないことを思い知らせてやると考える人も多くいると思います。この法案は加害者に加勢する法律です。
次に、現場の最大な懸念をお話しします。
被害者を支援したら、加害者からの大量の訴訟が起こされ、敗訴するかもしれません。急迫な事情という条文は、婚姻中の共同親権にも適用される規定だからです。被害者の相談に乗って、それはDVですね、避難する必要がありますと言ったら、加害者の共同親権行為の侵害だという損害賠償の訴訟が相談員や支援団体をターゲットに起こされるかもしれない。被害者の一時保護を都道府県が決定したら、同様の訴訟が都道府県、市町村に起こされるかもしれない。訴訟対応で支援機関はストップするだろうし、訴訟というリスクを負ってまで行政は被害者を支援してくれるでしょうか。賠償金の支払を命じる判決が出たら、地方自治体はそれでも被害者を守り続けるでしょうか。発言力の小さい被害者が我慢を強いられるのは目に見えています。
法案では、双方の合意で親権が決まらない場合、裁判所が親権者を決める際に、DVや虐待がある場合は単独親権と決めるとありますが、DVや虐待の証明をどのようにしたらよいのでしょうか。
今年四月一日に改正DV防止法が施行され、精神的暴力、性的暴力も接近禁止命令の対象となりました。内閣府のパンフレットでは次のようなことをDVですと広報しています。資料四になります。
大声でどなる、誰のおかげで生活できるんだなどと言う、実家や友人との付き合いを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする、何を言っても無視して口を利かない、大切にしているものを壊したり捨てたりする、土下座を強要する、悪評をネットに流して攻撃すると告げる、キャッシュカードや通帳を取り上げると告げるということが挙げられています。こういうことが本当によく相談されます。精神的、性的DVは、DV関係では必ず起きています。
内閣府が精神的DVと見ているものを被害者が主張しただけで単独親権になるのでしょうか。相手が争ってきたら、どのような証拠で立証しなければならないのでしょうか。例えば、長時間の説教、通帳取上げということを家裁がどのように認定するというのでしょうか。
以上、当事者支援現場からの様々な懸念をお話しさせていただきました。これから考えられるのは、もしもこの法案が成立したとしても、施行までの二年間で必要な制度が整うとはとても考えられません。国会におかれましては、拙速な判断をしないように切にお願いしたいと思います。
最後に、被害当事者からのメールを御紹介します。
衆議院通過してしまいましたね。何でそんなに共同親権にしたいんでしょう。既に離婚している父母も申請すれば共同親権にできるとの一文を見ました。きっと私の元夫は申請してくるでしょう。政治家はようやく立ち直りかけた私たちにまた闘えと言うのですね。平穏を手に入れたと思っていたたくさんの被害者たちをまた崖から突き落とすのですね。私のように、身体的暴力の証拠は残っていなく、既に何年も経過している者は、どうすれば被害者だと認めてくれるんですかね。非常に落胆しています。
私と娘と息子は、元夫と一緒にいる間は常にびくびくと機嫌をうかがいながら生活し、逃げてからは、これまでの生活のほぼ全てを捨て生きていかなければならない現実を受け入れることに必死で、心身のバランスを崩しました。長い時間を掛けて、それでもまだ全員が回復したとは言えないまでも、日々笑って過ごせるようになった一因に、私が親権を持っているからがあるのは間違いありません。
どうか本当に子供が幸せになる道を見極めてください。子供が心から愛され、守られて、穏やかに安心して暮らすために法律を使ってください。ほかの国がどうかとは関係ありません。解決しなければならない日本の家族の問題は決してそこではないことに本当は皆さん気付いているのではないでしょうか。問題のすり替えで命を脅かさないでください。
以上が、うちに来た被害者からのメールです。
これで終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/9
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010・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/10
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011・古庄玄知
○古庄玄知君 参考人の皆様、御苦労さまでした。自民党の古庄玄知と申します。
私、昭和六十年から大分で弁護士活動をしております。今回、参議院というこういう席をいただきまして、質問させてもらうことになりました。
それで、時間が限られていますので、まず四名の、四人の方に質問をしたいと思います。同じ質問です。で、済みません、時間があるので、二分以内に何とか回答いただければと思います。
まず、本件は、共同親権、これを導入するかどうかということが一番大きな問題点ですけれども、この本法案が通った場合、離婚した夫婦間の争いは減ると思うのか、増えると思うのか、また、そういうふうに考える根拠についてお答えください。
それと、仮に増えるというふうに考えた方、増えても共同親権は導入すべきだというのか、やめるべきだというのか、また、その理由についてもお答えください。
済みません、沖野先生からよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/11
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012・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 御質問ありがとうございます。
今回の法案によって紛争が増えるかどうかということについては、様々な局面がありますので直ちには言えないと思います。むしろ、子供の利益のためにどういうことが可能になるかという点から考えるべきではないかと思いますし、それから、紛争が増えること自体を悪いことだと評価するのかというと、そうではない、今まで泣き寝入りであったものが法的な解決の道を与えられるという面もございますので、そのような評価も十分あり得ると考えております。
以上です。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/12
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013・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 済みません、指名を受けてから御発言を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/13
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014・古庄玄知
○古庄玄知君 そうすると、済みません、今の御回答は、増えるかどうか分からないけれども導入すべきであると、まとめればそういうお答えでよろしいんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/14
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015・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 大変失礼しました。
ありがとうございます。
数値がどうなるかどうかは確かに分からないけれども、法案全体として導入には十分意味があるというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/15
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016・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 私も、増えるかどうかは何とも言い難いと思うんですが、今回の法案自体は共同親権について選択制というふうに理解しておりますので、単独も選択できるというふうに考えますので、そういう意味で、法案全体としてはこれは問題ないのではないかというふうに、導入すべきではないかというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/16
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017・木村草太
○参考人(木村草太君) これは増えるに決まっているというふうに考えてよろしいかと思います。
先ほど山崎参考人の御意見にもありましたけれども、今、単独親権しか選択肢がないわけですけれども、共同親権に強制的にできるという内容を入れれば、強制的に共同親権にしてほしいという申立てが、これまでなかったタイプの申立てがありますので、行われるようになるので、それは増えるに決まっているというふうに言ってよろしいかと思います。
また、数値的な問題ですが、本日の資料二十二ページ、付録二に付けてきたんですけれども、例えばフランスやアメリカの例を見てみますと、フランス、アメリカ、両方とも共同親権導入国で、共同親権の問題だけではないので単純に比較はできないんですが、例えば、日本は、令和四年中に全国の裁判所が受理した子の監護関係の受理数が二万件だそうですけれども、日本の人口の約半分のフランスでは、二〇二二年の父母の別離後の未成年に関する申立てが十七万件、アメリカのニューヨーク州では、人口の二千万人ということで日本のおよそ六分の一ですけれども、案件十四万件を家裁が扱っているというふうな数値もありますので、共同親権にして紛争が減るということはまずないだろうと。また、諸外国の数値を見てもかなりの数の紛争が裁判所で争われるのではないかというふうに考えるのが自然ではないかと思います。
また、紛争は増えるというふうになりますけれども、もちろん父母が合意した場合に、一緒にやっていこうというときに裁判所の調整を求めるということはあり得るかもしれませんが、強制型の共同親権で、無理やり、シングルで子育てをされている方々に、裁判所に引きずり出して時間や労力を奪う、経済力も奪うということは、これは非常にまずいことですので、強制型の共同親権、これはやめるべき、共同親権の要件には必ず父母の合意を要求するとすべきだと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/17
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018・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
増えると思います、私も。たくさん、今、日本の離婚ってほとんど協議離婚なんですけれども、先ほど資料でお話ししました、資料、お手元の資料一ですよね、性格の不一致で離婚する内容が、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないからというのが多いんですね。これはつまりどういうことかというと、夫婦の間がもう対等ではない、ばかにする側とばかにされる側がいるということなんですね。
それは協議離婚のときに何をもたらすかというと、力の強い方の要求に応じざるを得なくなってくる。そして、自分が不本意で共同親権になってしまった場合に、後からいろいろな元配偶者から要求が来たときに、こんなはずじゃなかったと思って親権変更などの申立てをしても、もう大変なことになってしまうということで、紛争は多くなると思います。
私は、この法案は廃案にするべきだと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/18
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019・古庄玄知
○古庄玄知君 沖野先生、じゃ、短く、短く。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/19
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020・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) まず、共同親権が入ることによって申立てが増えるという話ですけれども、現在でも単独親権を争う場合には申し立てるということになりますので、当然そうなるということにはならないだろうというふうに思いますのと、それから、例えば、虐待などの問題について裁判所が介入が非常に低いのが問題であるというふうにも言われているわけでございまして、裁判所における申立てが増えるということが当然悪い状況になるということではないということでございます。
補足させていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/20
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021・古庄玄知
○古庄玄知君 じゃ、熊谷先生にお聞きしたいんですけれども、先生も長いこと弁護士されていますので実務の状況は分かっていると思うんですけれども、今回の法案で、争いが発生した場合には裁判所に決めてもらうという立て付けが多いんですけれども、今の裁判所、体制的に十分整っていて、その本来果たすべき役割を十二分に果たせるような体制になっているかどうか、この点について弁護士の立場で率直に御意見いただきたいんですけど。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/21
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022・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 共同親権の話だけではなくて、養育費も含めて、全般の家庭裁判所の関与の仕方がどうなのかということと理解してよろしいですかね。
裁判所ももちろん限られた人員、組織、予算の中でやっている、一生懸命やっているわけですが、やはり、例えば養育費に関して言えば、申立てをしてからの手続が煩雑過ぎる。これ、弁護士付けないととても無理だというケースがやはり多いですよね。シングルマザーとかファーザーが簡単な手続、ワンストップでできるような工夫がもっと必要だろうと思います。例えば、昼間でなければもちろん開いていないわけですよね。だけれども、そういった養育費の問題などに、家庭の問題に関しては夜間でも受け付けるとか休日でも受け付けるとか、そういった工夫もやはり必要になってくるだろうと思いますし。
それから、設備面での非常にプアな設備という印象を弁護士としては受けるわけですよね。IT系のいろんな機器も足りませんし、それから、ウェブ会議も、最近、民事事件、一般民事事件では多く行われていますけれども、家事ではなかなかそういうことできないということもありますので、人員面、組織面、設備面、いろんな面でやや不足が目立つかなと。特に劣化が激しい分野ではないだろうかというふうに感じるのが、大変失礼ながら率直なところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/22
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023・古庄玄知
○古庄玄知君 ありがとうございました。
恐らく、実務担当している弁護士はみんな同じような感覚を持っていて、何でもかんでも裁判所に決めてくれ、決めてくれと言っても時間が掛かり過ぎる、また、弁護士を付けないと無理だと、手続がややこしくて、法的な判断も難しくて。そうすると、弁護士をまず探さなければならない、弁護士を探しても弁護士費用を払わなければならない。また、裁判所に行って、長いこと調停委員だ、調査官だという人たちと対応してようやく結論が出ると。家庭裁判所の裁判官も少ないと。時間が掛かると。
私なんかも、やっぱり、相談に来る方は、まずどのくらい掛かりますかと聞いて、いや、このくらい掛かりますと言ったら、はあって、そこでため息を漏らして、じゃ、お金はどのくらい掛かりますかと聞かれて、このくらい掛かりますと言うと、えっ、そんなに掛かるんですかと。二度そういうふうなため息を漏らして、そういう人はもう二度と弁護士事務所の訪問しないという、それが実態であるというふうに私は思っていますので、裁判所に頼むから裁判所が適切に判断してくれるんだ、してくれるんだというのは、その現場を知らない、机上の上の、机の上だけしか知らない人の発想ではないかなというふうに私は個人的には思っております。
それで、済みません、熊谷先生、続きまして、先ほど養育費の話で相当御尽力されたということなんですけれども、やっぱりこれも同じように、やっぱり払ってくれない人に対しては法的な手続を取らなければならないと。そうすると、先ほど言ったのと同じような問題が出て、ああ、そんなに時間と金が掛かるんならもういいかと。例えば、二百万しか収入のない人が最後まで行ったときに、百万近い着手金から報酬から全部入れて弁護士に払うということになると、年収の半分を払って弁護士頼むかというと、頼まないんですよね。
そうすると、もう諦めるというのが多くて、その辺りもかなり大きな問題となっていますので、そういうふうな債務名義に基づいて強制執行するとかせぬとかというよりも、そもそもそういう払わなければペナルティーがあるんだと。同じような検討もされたというふうに先生言われていましたけれども、そういうふうに、やっぱり子供というのは国全体で育てていくというそういう考えに立てば、刑罰を科すとか何らかのペナルティーを科すという考え方もいいのかなという感じはするんですけれども、まあ同じことになるかも分かりませんけど、先生のお考えをもう一度聞かせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/23
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024・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 今先生おっしゃるとおり、そういう今の制度を前提にすると絵に描いた餅的なところがやっぱり発生してきてしまっていますので、そこを何とかしなきゃならないという問題意識で勉強会その他やったわけでありますが、先ほど申し上げたとおり、養育費、子供のこの養育費の問題というのは、支払わないということは子供に対する不作為による経済的虐待に当たるんだということをしっかりと共通認識として持つべきだと思うんですね。
その上で、そうであるならば、例えば養育費に関して、今先生おっしゃっているようなペナルティーを設ける、あるいはインセンティブを設ける、それから国が立替払をしていくとか、そういう制度を導入することが養育費を特別扱いしているという御批判も時々聞くんですけれども、特別扱いしていい話だと思うんですね、これは。
そういう子供に対する経済的虐待をしているようなケースはやはり救わなければならないわけですし、例えば、ほかにもひどい目に遭っている、犯罪被害でひどい目に遭っている人いるじゃないかというような御批判もあるわけですけれども、それとこれとはちょっと違っていまして、将来の日本を支えていく基盤になる子供、これの生活費、教育費、そういったものなわけですから、そこをきちんと確保しないで将来の日本はないのではないかというふうに思いますので、特別扱いだから余り踏み込んだことはすべきでないという議論ではなくて、まさに特別扱いをしていい話なんだというふうなことを共有をしていただければなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/24
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025・古庄玄知
○古庄玄知君 ありがとうございます。
済みません、沖野先生にお尋ねしたいんですけれども、先生は法制審議会の委員をされていたということですけれども、先ほど私が熊谷先生に質問したように、裁判所に持ち込んだら時間が掛かる、それから費用が掛かる、そういうマイナス面というか、そういうのについては法制審議会のときに議論に出たんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/25
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026・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 御質問ありがとうございます。
家庭裁判所あるいは裁判所に委ねることで十分なのかという点はまさに議論がございました。
結論としてですけれども、一つは、では放置していいのかという問題もございます。先ほど、先生の下に相談に行かれた方は二つのため息をついて、そして全く諦められたんでしょうか、それでいいんでしょうかという問題があります。家庭裁判所以外に一体より適切な機関があるのかという問題がございます。
そして、家庭裁判所がその任を果たせるための土壌づくりというのは非常に重要ですので、適切な審理とその体制を整えるということが大変大事だと考えております。
もちろん、それ以外の相談体制ですとか情報提供ですとか、そういったことが重要であるということは附帯決議にも表れているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/26
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027・古庄玄知
○古庄玄知君 済みません、最後の質問。
いや、私の質問は、そういう法制審議会のときに、時間が掛かる、お金が掛かるというのが議題に上がったかどうかというのを質問したいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/27
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028・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 申合せの時間を過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/28
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029・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 検討されました。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/29
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030・古庄玄知
○古庄玄知君 済みません。
終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/30
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031・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。
参考人の皆様、本日は大変ためになる御講話ありがとうございました。また、日程の都合上、ゴールデンウイーク中にも本日の御準備の御負担をお掛けしましたこと、おわび申し上げます。
さて、山崎参考人から、行政や家裁にDV被害を訴えてもなかなか理解されない、認められないというお話がございました。これが被害の自覚のない被害者であった場合、いわゆる隠れDVのケースでは、DVがあるかもしれないと気付かれることはなおさら難しいのではないでしょうか。
一方で、加害者側については、DV加害者にその自覚がなく、自分こそ被害者だと思っている認知のゆがみと言われているケースの御指摘がございました。ゆがみが生じている場合、後ろめたさや罪悪感が全くなく、自信に満ちている、DVの認定がされづらい傾向が指摘されております。
被害者そして加害者の双方について、正確にDVを認定することの困難さが指摘されているわけですけれども、現在の家裁を始めとする司法システムは、このようなケースにおいて、DVの有無についての正しいジャッジが現在のところできているんでしょうか。
山崎参考人には、現場の実感を御陳述いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/31
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032・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
シェルターに逃げてこられる方は暴力で非常に疲弊されていて、正確に時系列に何があったかとか物を言えないんですよね。感情が先に走ってしまったりとか、そういう状態で家庭裁判所に行く。片や、加害者は外ではとてもいい人とか理路整然としているということで、なかなか、調停委員ですとか裁判官に、どっちがおかしいのとなったら、取り乱している方に、やはりこっちの方がおかしいよね、こっちがうそついているんじゃないのというふうになってしまうケースが非常に多いです。
だから、必ず調停でも私たちは弁護士さんを付けて、できるだけ私たちも一緒に裁判所に同行してというふうにやっているんですけれども、当事者だけでの裁判所の争いでは、家庭裁判所では本当にDVがあったのかどうかというのは見抜くことは難しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/32
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033・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 では、改正法の施行までの二年間で、家裁がDV加害者を正確に見抜けるようにこの二年間でなると思いますか。
木村参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/33
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034・木村草太
○参考人(木村草太君) DVを見抜くかどうかということは、仮に見抜ける能力ができたとしても問題であるというのが私の立場ですということですけれども。
どうでしょうね、認定ができないケースというのはたくさんあると思います、どんなに裁判所が認定能力を持ったとしても。ですから、非合意の場合には強制しないという形でしか被害者が救われる方法はないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/34
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035・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 今でさえできてないというものを、現在より事件の数が激増すると見込まれる僅かこの二年間の間に解決できると判断すること自体、無理があるかと思うんですね。
木村参考人は、共同親権賛成派のパブコメ、開示請求によって取得して、それを分析されたと伺っているんですけれども、別居親が共同親権を求める動機は何か、親権を獲得してどう使おうとしているのか。特に、離婚、別居当事者と思われる者のコメントをどのように分析されたのでしょうか。また、そこからどのようなリスクをお感じになられたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/35
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036・木村草太
○参考人(木村草太君) 法務省が全てを公開してくれているわけではございませんので、その御質問については是非、恐らく法制審議会であれば全てを閲覧することができたはずでしょうから、審議会の委員をされた沖野委員に伺うことがよいかと思いますけれども、私が見た限りでは、非合意でも強制した方がいいケースについて具体的に挙げている意見はありませんでした。
いずれも合意した場合に、離婚しても父母が仲がいいという、そういうケースで共同親権にできるといいよね、あるいは、何らかの介入によって父母が協力関係になった場合には共同親権を選べた方がいいよねという、そういう説明がほとんど、ほとんどというか、という説明しかなくて、強制してでも医療や教育について強制的に決定すべきであると、別居親の同意がない限り医療や教育の決定ができないような状態を非合意の場合でも強制すべきであるというようなことを説得的に事例を挙げて説明した要望書は、私の分析ではまだ見ていないということです。
もっとも、全部が公開されておりませんので、それはまた公開された後に分析をしてみたいなと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/36
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037・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 木村参考人は、いわゆる無限ループ問題を指摘されております。学校のプールですとか病院でのワクチン接種などの日常行為については同居親も別居親も親権単独行使ができるとされているため、いつでも一方の親がキャンセルすることができるわけです。その結果、いつまでも最終決定ができないというのではないかという懸念がございます。
もし、この問題についての防止策が法務省が想定している協力義務違反などしかないのであれば、医療、教育、保育など子供に関わる業界にどのような事態が生じることが想定されますでしょうか、木村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/37
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038・木村草太
○参考人(木村草太君) 先ほど指摘しましたように、いつまでも医療や教育に関する決定ができないということになります。
今回の法案は、不思議なことに、どちらかが優先するではなくて、それぞれ単独で行使ができるということになっておりまして、そうすると、一方が習い事を申し込んでもう一方がキャンセルする、いずれもキャンセルも申込みも単独でできるという信じられない条文になっておりまして、これは賛否を問わず、条文の作り方として粗雑過ぎると言ってよろしいのではないかと思います。
例えば、例えばですね、ドイツ法では日常行為については同居している親の側が一人で決定できるとなっておりますし、フランス法では、親権の行使があった場合に、同意がないということを知っていない限りは、その相手には同意を得て行使をしているとみなしてよいというような規定がありまして、いずれもこの問題については調整のための規定を置いております。ですから、今回の法案がなぜこのような粗雑な作り方になったのかというのは私は非常に疑問に思っているところです。
これを放置しますと、あらゆる子供に関する日常決定が、紛争性の高い父母の場合に、キャンセルと実行の両方が入力されることによって学校や病院で大変なことが起きるということが想定されます。そして、学校の側からすると、例えば、プールに入れてくださいと父が言い、プールに入れないでくださいと母が言った場合に、どちらを拒否しても親権者の意向に逆らったということで損害賠償の対象になるということになるので、大変なことになるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/38
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039・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 今の御意見お聞きすると、いろんなところで問題が生じるんだなというふうに痛感いたします。当事者間にとどまらないというわけですよね、学校側ですとか病院側ですとか。
この問題は、法文を父母から現に監護する親に修正すればそれで解決する問題だと思うんですね。
法務省はなぜこの簡潔で効果のある解決策を取らないと思われますでしょうか、木村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/39
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040・木村草太
○参考人(木村草太君) それは法務省に聞いていただきたいところでありますけれども、混乱を甘く見ているということかと思います。
やはり、加害性の強い方というのは親権を幾らでも濫用するということが先ほどの山崎参考人の御指摘にもあったことですし、熊谷参考人からは、ずっと経済虐待が日本でたくさん起きているんだということを訴えておられます。そういう状況の中で、加害行為に幾らでも使えるような一方的なキャンセル権を付与する、しかも、それを合意ではなくて強制によって、裁判所の命令によって付与するということが何を生じるのかということは具体的に想像していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/40
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041・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 親権者変更手続の話をよく法務省されますけれども、これが容認されるケースであっても、同居親と子にとって更なる負担と消耗になると思うんですね。このような対応は救済策の名に値しないと思うんです。
日本の離婚の九割を占める協議離婚において、強いられて、又はやむを得ず、あるいは誘導されて共同親権に合意してしまうということが特にDV被害者について懸念されていますけれども、山崎参考人、お伺いしたいんですけれども、現場の実感として、このリスクをどのぐらい感じておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/41
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042・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
先ほども申し上げたように、力の差のあるところというのはもう逆らえないんですよね。それで、例えば協議離婚、私たちのシェルターに逃げてきて、弁護士さんお願いして、じゃ調停でやりましょうというケースはまだいいんですけれども、そうじゃなくて、これってDVでしょうかというような段階で、よく分からなくて、つらくて、それで協議離婚をしてしまう。パートナーが怖いから、離婚してくれるんだったら共同親権でもいいわとなってしまったときに、また先ほど木村参考人がおっしゃっていたように、何かあると訴訟だとかそういったループになっていくというのは非常に懸念しているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/42
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043・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 また、法務省は親権者変更の申立てが救済策になると答弁しているんですけれども、木村参考人、この親権者意思という、済みません、この救済策としての御評価をお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/43
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044・木村草太
○参考人(木村草太君) 親権者変更のためには、先ほどから問題となっておりますように、非常に長くの時間と労力が必要になります。
したがって、トラブルが起きそうなものは事前に除去しておくにこしたことはないと思いますし、それが救済策であるというふうに考えること自体、訴訟コストがゼロであるという非現実的な想定を置いていると言わざるを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/44
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045・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 私は、やはりお互いの共同親権への意思、これが大事だと思いますし、これをしっかり確認するプロの第三者が必要かと思うんですね。それが裁判所になるのかと思うんですけれども、結局、裁判離婚でも親権者変更の審判でも、父母双方の合意がなく共同親権となり得ることが最大の問題であり、合意が必須となればここまでの懸念は相当程度解消すると思うんですけれども、山崎参考人、そして木村参考人はいかがお考えでしょうか。まずは木村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/45
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046・木村草太
○参考人(木村草太君) もちろん非合意強制型がまずいというのはここまで申し上げてきたとおりです。
また、合意型については、是非考えていただきたいのは、これまでは子供の面倒を見るから親権を持つという選択肢しかなかったわけですけれども、これからは、子供の面倒は見たくない、しかし口だけは出したい、だから別居親になった上で親権者となる、共同親権を持つという選択肢が生まれます。
これは、非常に、共同親権にしなければ何々をしないぞというような取引に使われる可能性がありますので、合意の誠実性の担保というのは是非しっかりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/46
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047・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 合意ができないから離婚するのであって、合意ができないからシェルターに逃げてくるわけですよね。そうすると、やはりその合意が必要というのが付与されても、不本意な合意、先ほども申し上げたように、共同親権にするんだったら離婚してやるということで不本意な合意というのもあり得るので、本当の合意って何なのかというのがなかなか、どこがどうやって見抜くのかなというのはあります。その辺は、合意があったとしてもちょっと怖いなとは思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/47
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048・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 その合意を確認する意味でも、やはり第三者、プロの第三者が必要だと思われますか、山崎参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/48
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049・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) プロの第三者、テレパシーとか使えればいいですけれども、なかなか、幾らプロでも、本当にその人の本心とか、ここまで夫婦が来たバックグラウンドとか、全部把握するのって大変だと思うんですよね。だから、なかなかそれも難しいのかなと、プロの第三者でも見抜くのは難しいのかなとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/49
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050・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 最後に、木村参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/50
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051・木村草太
○参考人(木村草太君) ですから、合意型に限定をするのであれば、離婚時は必ず単独親権とした上で、二人で共同親権届を出すというような仕組みにすればよろしいのではないかと思います。また、合意が失われたら、いつでも同居親の単独親権に移行できると、届出だけで単独親権に移行できるという仕組みを備えれば、合意型の共同親権は十分に実現ができるのではないかと思います。
このような案を検討していない法制審議会は、はっきり言って仕事をしていないなというふうに感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/51
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052・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 時間ですので、終わります。
本日得られた知見は、今後の政策策定の参考にさせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/52
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053・伊藤孝江
○伊藤孝江君 公明党の伊藤孝江です。
四人の参考人の先生方、今日は本当にお忙しい中、貴重な御見解を賜り、誠にありがとうございます。
では、私の方から、まず沖野参考人に御質問をさせていただきます。
今回の法制審での検討におきましては、子供の利益を最大限に確保をするというところにポイントをというのか、重点をしっかり置いて検討をするという方向でなされてきたというふうに承知をしておりますけれども、この法制審での議論の中で、子供の利益というものをどのように定義付けたであるとか、また定義付けということでないのであれば、どういうことが子供の利益であるというふうにして議論が進められてきたのかということについてまずお伺いをさせていただきたいのと、もう一点、この子供の利益の確保に関して、子供の意思の確認や、あるいは尊重という要素をどのように位置付けているのかという点についてお話しいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/53
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054・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
子供の利益という概念自体について、定義というのはございません。しかし、今回は、子の養育にとって子供の利益ということですから、子供が心身あるいは社会的に健全な状態で生育していけるその環境を整えるということが子供の利益という観点において重要だと考えられております。そして、その際に、親の責務として書かれている点に明らかなように、親がそれぞれ親の地位において子供の養育に責任を持って関わっていくと、その下で養育されていくということは非常に重要な利益であると考えられているわけでございます。
意思の問題でございますけれども、子の人格の尊重ということが最も重要であるというわけで、それを親が受け止めるということが大事でございますけれども、子供の意思というのももちろん重要です。ただ、子供の存在ということから考えますと、子供の利益と時に対立するということがあります。子供の判断能力という問題もございます。
それから、子供の意思というのを偏重するというような懸念も出てくるわけで、偏重と申しますのは、子供の利益が万能であるかのように意思を無理やりに表明させるとか、親の間の選択をさせるとか、それは子供の精神ですとか心身の今後の発達にとっても決して良くない影響を残すということも懸念されておりまして、子供の意思を正面から打ち出すということに対しては非常な懸念もあるところでございます。
なお、現在も、家事事件手続法においては、子供の意見を聴取する、あるいはそれに適切な配慮をするということは設けられているのですけれども、やはりそれが子の利益と対立する可能性もありますので、子の意思、万能ではないということは現在でも了解になっており、それが非常に重要であって尊重されるべきということは、子の人格の利益、その点の考慮というところは十分担われるだろうということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/54
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055・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
引き続き、沖野参考人にお伺いをいたします。
先ほどの最初の意見陳述の場でも多様化というところについても言及をされておりましたけれども、今、家族の在り方であったり、もちろん夫婦間であったり、離婚後の元夫婦の間であったり、子供との関係であったり、またどういう家庭を望むのかというところについて、以前とは比べ物にならないぐらいいろんな形が今は想定もされて、想定をしていかなければならない状況にあるかと思います。
この子供や親の一種の家庭に対しての思いだったり求めるものの変化だったり、また社会における家族観というのも多様化しているという中にあって、これまで以上にその子供の最善の利益ということを確保をしていくんだと、子供養育の重要性というのはこれまで以上にやっぱり訴えていかなければならないというのか、理解を求めていかなければならない面もむしろ強くなっているのかなということも感じますけれども、その点、沖野参考人はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/55
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056・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
御指摘のとおりだと存じます。この点は、恐らく昭和二十二年の時点とはかなり違ってきているのではないかということでもございます。
それから、まさに子の最善の利益のための在り方は個々の状況に応じて非常に多様であるという、現在においてどういう在り方が模索されるかということでございます。
先ほど来DVの問題が取り上げられておりまして、大変重要なことで、これはもう急務であると考えられますけれども、私ども法制審議会では、各種の参考人の方のヒアリング、パブリックコメント、それから弁護士の御経験などに基づいて様々な御意見を伺ってきましたが、その感想を一言で言うならば、多様であるということでございます。子供から引き離されてしまって非常に困惑している母親の方のお話であったり、これまで一緒に当たってきたのに、しかし自分が疎外されてしまう父親の話であったり、あるいは、協力関係にはあるんだけれども、単独で親権にしてしまうと、その後、一方の心変わりによってどうなるかが不安なので離婚に踏み切れないなど、そういったケースもございまして、そういう多様な在り方というのは実感しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/56
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057・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
もう一点、法制審での議論についてお伺いしたいんですけれども、先ほど来議論に出ておりますけれども、当事者間で合意がない場合であっても、今回、共同親権になる可能性が、裁判所の判断ですね、ある。この仕組みを導入をするというふうにされた議論の中で、どういう点を重視をしてこの仕組みを取り入れられたのかということについて御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/57
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058・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
今御指摘いただきました多様な在り方ということを考えたときには、個々の状況によって、子供のために何がベストであるかということはいろいろな形があります。そのための選択肢を一つ用意するというのが非常に重要だと考えられます。
当事者、父母が合意したときに限るということに対しましては、これは子供の利益の確保のために何が必要かということが適切に判断されることが大事であって、親の意思の実現のための制度ではないわけです。
そして、実際どのような場合があり得るかということにつきまして、これは弁護士の方からあった点でございますけれども、同居する親だけではなかなか不十分であるというような場合に、もちろん親子の交流を充実させていくという手法はあるわけでございますけれども、そこに共同の親権という可能性があれば、それは選択肢としてより柔軟な対応、より適切な選択肢というのが可能になると言われておりますし、また、案件によりましては、合意はしたくない、しかし裁判所の決定であればそれでよいと言われるような方もいらっしゃるということでございますので、様々な面があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/58
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059・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
もう一点、沖野参考人に、法制審での議論か、ないしは沖野参考人の御意見でお伺いできればと思うんですけれども、親権者の変更という点についてお伺いをしたいと思います。
離婚後共同親権である状況から単独親権にするということが先ほど救済法というような形での取り上げられ方もされておりましたけれども、実際にいろんな場面でとにかく全て反対をする、何一つまとまることができない、あるいは、訴訟なり調停の申立てなり司法の利用というのがとにかく相次いでいくというような状況というような場合であれば、子供のためにもちろん良くない状況であることは、もう誰が見てもそうなのかなというところは納得するところでもあるでしょうし、親としての責務としては、意見が違うことというのは当然婚姻中でもあると思うんですね、いろんな場面で。
でも、その中で何かしらの結論を出していく、あるいは、子供に負担を掛けさせないということを考えながら議論をしていくことができるのかどうかというようなことが大事な中で、それができない状況であれば、離婚後共同親権となっていたとしても単独親権に、親権者の変更あるいは親権の停止というような形で、裁判所として、これまで以上にこの親権者の変更に対しては積極的に私は介入をしていくべきだというふうに考えています。
また、今やはり心配されている一つは、せっかく、先ほどの方の、メールの方もありましたけれども、単独親権で平穏な生活を何とかつくり上げてきた中で、共同親権を求められることになって、また巻き込まれるんじゃないか、ましてや共同親権になるのではないかという懸念をなされている。
こういう方にとって、今の平穏な状況を維持するということは何よりも最大限大事なことだと思いますし、離婚に至る事情、離婚後の親子関係だったり、元夫婦の関係であったり、また、どのように関わってきたのかというようなことも含めて、そして何より、その子供がもう大きくなっているのであれば、子供の意思、これまでの思いというのは、やっぱりここは大事にされるべきところの中で、申立てをされれば簡単に共同親権が認められるということにはすべきではないというふうに考えています。
この親権者の変更という点について、裁判所に求めること、あるいは、こういうところをしっかりと見ていかなければならないというふうにお考えになられていることがあれば御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/59
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060・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
御指摘のとおりというふうに考えておりますし、それ自体、法案の立場であるというふうに考えております。裁判所における親権の変更という制度は、やはり適切な子供の利益の確保の点から、一旦決めたらそれで終わりであるということではないという、そこに更に制度の用意をするものでございます。
もちろん、適切な親権の行使でないということに対しては、親権の停止もございますし、親権の喪失もございますけれども、これがなかなかハードルが高いという状況がある中で、もう少し柔軟に対応できるものということも期待されて設けられていることでございますけれども、そこは、子の利益のために必要かという観点から裁判所が判断することになっておりまして、その中で、これまでの経緯というのも十分に考慮するということで明示されているところでございます。
また、濫訴に対しましては、頻繁に申立てをして、理由もないのにということについては、適切に却下をすると、早期に却下をするということが想定されているというふうに承知しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/60
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061・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございました。
では、次に、熊谷参考人にお伺いをさせていただきます。
先ほど養育費に関して中心に御見解を披露いただきまして、その中で、法定養育費というものに対しての期待と、なおかつ、まだまだ課題があるという点についても御指摘をいただいたかと思います。
今回のその法定養育費というのは、補充的な位置付けの中で、金額的には、先ほど御懸念として挙げられていた、養育費としてきっちりと定めるものよりも金額としては下になる可能性が高いというようなことも含めて今言われているところでもありますけれども、この法定養育費という、養育費が発生しない時間をつくらないであるとか、とにかくまずしっかりと子供の生活を経済的にサポートしていかないといけないんだということをメッセージとして発信するというようなことも含めて、法定養育費に求められる機能としてどういうことをお考えなのかという点について御見解をお伺いできますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/61
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062・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 法定養育費は、結局、本来取り決めるべき養育費についての取決めがないという場合ですね。取決めがあれば、先ほどのような先取特権その他で履行の確保の道がありますが、そういったことができない場合に、取決めがない場合に、法定債権としてこのような法定養育費というものを認めようというところには大変意義があると思います。
とはいえ、先ほど申し上げたように、法務省令で定めることになっていますので、結局、現行の養育費の算定表の、懸念としては、その補充的な制度であるというのが一般的な説明としてされますから、その養育費算定表の一番下限辺りに設定されるのではないかという懸念を持っているわけですね。
ただ、実際に子供が生活をしていく基盤を支えるものですので、現実にその用に足りるものでなければならないわけなので、そのところを十分に考慮して法務省令で決定していただきたいと。率直に言えば、余り安過ぎるようにしないでもらいたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/62
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063・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
次に、山崎参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
先ほど来、様々な事例というのか、いろんな形の皆さんの御苦労等もされながらお話をいただいていた中で、力関係に、当事者間ですね、力関係に違いがあるので、幾ら何をどうしたとしても、やっぱり合意をする、本心からの合意をするというところ、また、それに向けて本心からの協議をしていくというのも難しいというお話もいただいたかと思います。
今回、養育費であったり、例えば離婚の要件にする云々というような話も先ほど来出ていましたけれども、この協議離婚というのが、今、日本の中ではやっぱりほとんどが協議離婚という在り方な中で、協議離婚の在り方、制度について、何か山崎参考人のお立場から御意見ありましたら是非お伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/63
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064・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
協議離婚するに当たって、やはり養育費ってすごく大きな問題だと思うんですね。もう離婚したいから、もう養育費も何も要らないからという方がすごく多いんですよね。もう関わりたくないから離婚してくれればいいという方が非常に多いんですけれども、でも、養育費というのは子供にとって大切なものなので絶対に必要なことだと思うんです。
なので、協議離婚するときも養育費の確保というのは重大なことで、それにはどうしたらいいのかというと、たとえ法定養育費を決められたとしても、もしかして一万円、二万円とかで決められてしまったら、先ほど熊谷参考人もおっしゃっていましたけれども、とてもとても大変ですし、法定養育費について、例えば生活保護を受けている場合、法定養育費もらえるんだから差押えの手続しなさいよと保護課の職員から必ず言われるんですよ。そうすると、非常に、当事者は弁護士頼まなきゃいけない。執行の手続ってとても素人にできないんですよね。弁護士さんにお願いして、いっぱい目録作ってみたいなことを、自分ではできないけれども、本人がやらなきゃいけない制度なので。
であるならば、先ほども熊谷参考人もおっしゃっていたように、国が取り立てる、当事者が何もしないでもいいように国が取り立てて、そして当事者に渡して、国がその支払うべき人に請求をするという制度を付けた形での協議離婚というのがあればいいなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/64
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065・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/65
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066・清水貴之
○清水貴之君 日本維新の会の清水と申します。
今日は、大変貴重なお話をありがとうございます。
まず、木村参考人にお伺いをしたいと思います。
コメントいただきました中で、欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしているというお話があったかと思います。確かに、こう見ていますと、やっぱりこれは時代の流れだと、欧米の流れに合わせてというような、こういったアナウンスメントをよく聞くように感じるところであります。
この考え、この認識自体が、そもそも欧米では共同親権が主流ということ自体が違っているのか。それとも、主流ではあることは間違いないんだけれども、やはりDVであるとか虐待であるとか、こういった問題をはらみながら、含みながらその共同親権というのを各国進めているものなのか。この辺りは、まず、いかがなものなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/66
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067・木村草太
○参考人(木村草太君) 大変すばらしい質問をありがとうございます。
付録の一に付けてきたのですけれども、欧米で共同親権が主流かどうかというのは非常に難しい問題です。
まず、日本の共同親権というか、共同親権の率を計算するときに、婚姻中は共同親権、日本でもそうであるわけですから、どの国の共同親権率が高いのかというのは、離婚後の共同親権の率だけではなくて、婚姻中の共同親権率と合わせた数字を見ないといけません。
日本の場合には、嫡出子の比率というのが非常に高くて、子供が生まれた場合、九七・六%がお父さん、お母さんは婚姻しているということで、父母の共同親権率一〇〇%からゼロ歳児は始まるということです。私の試算ですと、成人するまでに父母が離婚する確率は二三%ぐらいが日本ということで、日本は七五%ぐらいが出生時から成年時まで父母が婚姻中に共同親権を継続するということになっております。
この数値は非常に高いものでありまして、例えばアメリカですと、そもそも事実婚も多いので、同居や事実婚を婚姻と数えたとしても、一歳未満の子供が父母と一緒に住んでいる割合というのは七七・八%ぐらいだそうでありまして、生まれた時点でシングル家庭というのがアメリカの場合、一八%ぐらいということであります。ここから離婚家庭が増えていくということになりますので、十五歳から十七歳時点でカップルと住んでいる、大人のカップルと住んでいるという子供は六四・三%。この中には相当数のステップファミリーが含まれると思われます。
そうすると、アメリカでは離婚後の共同親権率が、いろんな計算がありますが、二割から三割ぐらいだろうと言われているので、離婚後の共同親権率を合わせても、共同親権下で育つ子供の率というのは日本に及ばないということになります。
フランスでも同じような数値がありまして、例えば二〇一六年のフランスの三歳未満児の家族構造を見ますと、カップルと子供が一緒に住んでいる、三歳未満児段階で八七・二%しかカップルと住んでいなくて、母子家庭一一・七%、父子家庭一・一%ということでありまして、要するに、欧米では婚姻率が非常に低いので、非婚、離婚後の共同親権という制度を導入していかないと共同親権率が上がっていかないというようなことかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/67
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068・清水貴之
○清水貴之君 確かに、おっしゃるとおり、婚姻の形が違うというのはそのとおりだなというふうに思います。
今のお話、とはいえ、率が低いにしろ、共同親権を取っている場合は、当然といえば当然だと思うんですが、DVや虐待の問題というのはやっぱり各国発生しているという認識でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/68
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069・木村草太
○参考人(木村草太君) ありがとうございます。
その点も非常に重要な問題でして、DV、虐待を除去しませんというふうに堂々と言っている国はもちろんありません。しかし、実際に現地のDV保護の団体とかの声明を見ていると、非常に被害者にとって酷な状況になっているということがうかがわれます。アメリカの研究もありますし、イギリスの研究もありますし、ドイツの研究もあります。それらの研究を見ると、共同親権を拒否すること自体が子の福祉に反する行動をしているとみなされがちで、この結果、DVや虐待を裁判所で訴えるということ自体を被害者が忌避するというような現象が起きているという指摘も非常に多くあります。
こうした指摘は、各国、一生懸命、被害者団体等しているんですけれども、なかなか立法に届かないという現実がありまして、是非、参議院議員の皆さんは、その各国のDV被害者たち、虐待の被害者たちの声も酌み上げて比較をしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/69
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070・清水貴之
○清水貴之君 木村参考人、もう一点お願いいたします。
非合意強制型の話がありまして、これを言うと恐らく法務省や裁判所は、まあ裁判所が判断するという意味では非合意なんでしょうが、いや、ちゃんと状況をいろいろ見ましたと、状況を見て判断した結果がこうですというような答弁になってくるんだと思うんですよね。これについてはどのように考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/70
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071・木村草太
○参考人(木村草太君) どういう場合に非合意において強制すべきかということについて、法律というのは、皆さんが作っておられる法律というのは、いつでも典型的な適用例というのを示せるはずです。窃盗とはどういう例ですかと言われれば、これが窃盗ですというふうに示せるわけです。今回の審議を見ていると、どういう場合に非合意でも強制しなきゃいけないかということについての具体的な指摘が非常に乏しいわけです。
例えば、先ほど沖野参考人からありました、命令されると共同親権をやってもいいかなと思う人たちがいるのではないかと。この想定は非常に非現実的でありまして、何というか、本心ではやりたいんだけれども命令してくれないとできないみたいな、私がツンデレケースと呼んでいるケースですが、このようなケースのために法律を作るというのは、これはおかしい。やはり合意が積極的にある場合に限るべきです。
また、同居親の監護が不十分であるケースというのが指摘されましたけれども、共同親権というのは、医療や教育についての決定を別居親にわざわざ同意を取らないと決定ができない状態ということになるので、監護のための時間あるいは監護のための労力というものを奪っていくわけですね。そういうようなことを監護不十分なケースでやれば、更に監護の状態が不十分になるということが想定されます。
もしも監護の状況が不十分ということであれば、それはシングル家庭の方に対して、そうですね、資金援助であるとかヘルパーさんを派遣するとか、そうした形で改善すべきであって、別居親の同意がないと教育やあるいは病院についての決定ができなくなる状態にすることが監護不十分ケースの援助になりますという発想は、ちょっと驚きを禁じ得ないところがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/71
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072・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、山崎参考人、お願いをいたします。
いろいろ議論となっていますDVの話で、それをどう証明していくかというのは本当に難しい、被害者側からして難しい話だなというふうに認識します。もちろん、殴られてあざがありましたと、そういう分かりやすい例ばかりではなくて、精神的なものというのが非常に大きいというお話もありまして、そういったものを、じゃ、どう被害者側が自己、自分を守っていくために、防御していくために、これはDVですというのを訴える場合に、例えば録音ができたりとか何か証拠が残せたらいいけれども、こういったのもなかなか簡単ではないと思うんですね。
でも、そんな中で、例えばこういったケース、例えばこういった場合とかをこれはDVとして認めてもらえたら有り難いとか、認めてくれたら非常に被害者側からしたら証明をしやすくなるとか訴えやすくなるとか、そういった何かケースとか具体例みたいなものがあったら教えていただけたらと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/72
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073・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 私、二十年以上この仕事やっているんですけれども、パートナーを怖いと思ったらそれはDVなんですよね。怖くて、例えばパートナーが車で帰ってくる、車が砂利を踏む音でもって心臓がどきどきしちゃってもう何もできなくなるとか、そういったその御本人が一番怖いと思っているということがDVであることなので、こういったケース、ああいったケースということではなくて、御本人がどれだけ恐怖に思っているのか。
恐怖に思うということはどういうことかというと、パートナーに支配されているから恐怖に思うんですよね、自分の思ったこともできない。なので、御本人が怖いと思っているというのがDVですし、それと、うちのシェルターに逃げてこられる方で、よく偽DVとかなんとかという話ありますけれども、お子さん連れて、自分のもう仕事辞めなきゃいけない、子供も転校させなきゃいけない、そして生活保護も受けなきゃいけないという中に飛び込んでくるお母さんたちに、そういうDVじゃないのに逃げてくるという人は一人も今までいなかったので、その辺は当事者の方の怖いと思っている気持ちというところが指針だと思っています、私は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/73
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074・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、熊谷参考人にお願いをいたします。
養育費の問題、私も非常に重要な問題だと思っております。お話の中で、まず最初の段階ですよね、協議離婚などの場合に養育費の取決め自体が今もうちゃんと制度化されていないという話で、公的機関の関与があった方がいいんじゃないかという話がいただけたかと思うんですけれども、具体的にどういった関与がいいのかなという話と、そういったものも、関与も、関与してそういった養育費の取決めを作ったとしても、これが公式な公正証書みたいな形になっていたらいいのかもしれませんが、しっかりした書面であるとか、後々、最初は決めて、最初は支払うか、数年は支払うかもしれませんが、ぱっと逃げてしまったりとか、たどり着けなかったりというケースも多々あるというふうに思いますので、どうしたらその最初の段階でしっかり取り決めてそれを履行させることができるようになるというふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/74
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075・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 大変重要なことでして、取決め率の向上というのは各国いろんな工夫がされているかと思います。また、例えば先ほど申し上げた例としましては、離婚届の提出の際の、離婚の、その協議離婚の成立要件として養育費債権に関しての合意があって、それを証することというようなやり方が考えられると思いますね。例えば、それは法テラスだとかと連携して、公正証書化した書面の添付を要求するとかいうことがあると思います。
ただ、手続がちょっと重たくなるものですから、協議離婚がしにくくなるというのは、そういう側面ももちろん出てきてしまいますし、欠点として、先ほどのDVなんかの場合はとてもじゃないけどそんなことをやっていたら離婚なんかできないというような御意見もあるところではありますが、そういう方式も考えられるし、そこまで行かなくてももっと手前の段階で、例えばQRコードを付けて、それをガイダンス、養育費に関してこういう支払義務があってこうしなさいというガイダンスを受講することを義務付けるとか、そういったものも、もうちょっと軽いところでは、最初のステップとしてはあるのかなというふうに思います。
そのDV被害者、離婚したいけどなかなか話合いができないという問題と、一方で、養育費を確保するためにはある程度手続を重たくする必要があるということとのバランスをどう取るかということかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/75
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076・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
沖野参考人、お願いをいたします。
法制審議会の中で、子の意思の尊重、これかなりの議論があったというふうにお話がありました。先ほども質問にあったところで、意思を尊重するとなかなか偏重みたいなことも起きてしまうというお話もあったかと思います。非常に、この子供の意思をどう正確につかまえるのかというのは、本当に子供というのは親の影響を多分に受けるものですし、非常に難しいと。
先日の法務委員会でこの辺りを法務省などに聞いた場合には、いろいろ専門家が、調停委員の方とかですね、専門家がいて、そういった方々が判断をする、聞き取りを、子供にも聞き取りをするとか、いろいろ、例えばゲームなどを使いながら子の本当の本心を見るような工夫をするとか、いろいろ法務省も考えているんでしょう。それでもやっぱり難しい話かなというふうには思っております。
この辺りについてかなりの議論があったということで、法制審の中での議論であるとか、その辺り、お聞かせいただけたら幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/76
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077・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
まさに、子供の意思をどう捉えるかというのは本当に難しいことです。やはり影響を非常に受けやすいということがございますので、そうしますと、御指摘のように専門家の関わりということが大事になってまいります。
裁判所におきましては、例えば離婚の際の親子の交流について試行的な実施を促すことが可能になっているというか、今回提案されておりますけれども、家庭裁判所の調査官というのは心理学についての専門ということございますので、そういった法律以外の各種の分野の専門の知見を使って子供がどういうふうに考えているのかというのを、無理強いすることなく、かつ自分が選択してしまったというようなことではなく、いかに把握していくかというのが工夫されていくということであり、そのための人的体制というのが家庭裁判所で整えられるべきだというふうな議論がされていたところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/77
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078・清水貴之
○清水貴之君 もう一点、DVのその証明ですね、判断、証明。この辺りも、今もここでも話が出ているぐらいやっぱり難しい話かなと思いますが、この辺りの法制審の中での議論というのもお聞かせいただけたらというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/78
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079・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
御指摘のとおりでして、DV対策というのは本当に大変重要なことです。それから、この局面だけの問題ではない問題ですので、それ自体もより一般的な問題であると。DV被害防止法自体が裁判所が保護命令とかそういう話になっておりますので、そこでいかに確保していくかということになるかと思います。それまでの経緯ですとか当事者からの聞き取りですとか、そういったものを駆使していくということになると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/79
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080・清水貴之
○清水貴之君 時間ですので、以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/80
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081・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合でございます。
本日は、貴重なお話を頂戴しまして、ありがとうございました。
まず、山崎参考人に御質問させていただきたいと思いますが、今回の法改正で法定養育費が導入をされることになりましたが、今回のこの法律の立て付けで実際に子育て支援に役立つかどうかということについて、どのような御認識なのかをまずお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/81
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082・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
法定養育費なんですけれども、先ほどもお話に出てきたように、非常に低い金額で設定されるのではないかという懸念があります。そういう低い金額で設定してしまった法定養育費を変えようというふうになると、また、元々養育費の取決めがなかった中で養育費のちゃんとした養育費請求を家裁に申請をしようとしても、なかなかハードルが高くなってくるのではないかなというふうにまず感じています。
かえって正式な養育費の請求がしづらくなるということと、あと、裁判所でたとえ養育費が決まったとしても払わない別居親もおりますし、あと多いのが、養育費が決まって払いますよとなって払うんだけれども、今月は払われたけどその次の月は来ないとか、それとか、一日遅れて払われたとか一週間遅れて払われたとかというのが非常に多いんですよね。払っていないわけだから、差押えもできないんですけれども。
そういった中で、法定養育費が決まって、やっぱり子供を育てているから当てにしなきゃならないですよね。当てにしていたら今月は来なかった、先月は来たけれども今月どうなんだろうと、いつも重い気持ちになっていくということにはなっていくんじゃないかと私は思っていて、そういうのがかえって子供の養育に対して悪い影響を与えるんじゃないかなと思っています。同居親にとってはもうその養育費が払われないというのは死活問題ですから、そのたびにうちのシェルターに電話が掛かってきて、じゃ、裁判所に履行勧告出そうかといって電話したりとか、すごく多いんですよね。
なので、法定養育費が決まったからといって子供さんが健やかに育つ、その養育費が決まるまでの間とはいいながらも、そういう保証にはならないというふうには感じています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/82
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083・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
沖野参考人に御質問したいんですが、今、山崎参考人のお話の中にありましたとおり、裁判所で養育費が決まっても支払わない別居親がいらっしゃるということなんですが、この点について、前回の法務委員会で民事局の方に、いわゆる罰則を設けるべきなのではないのかと、裁判所決定に対して従わない場合には罰則を設けるべきなのではないのかということを海外の事例を引き合いに質問をさせていただいたところ、民事の事案にいわゆる刑事罰というものが前例としてないからということで、非常に後ろ向きな実は答弁がそのときございました。
沖野参考人は、裁判所決定に反する行為を行った場合の罰則規定を設けるということについてどうお考えになるのかということをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/83
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084・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
その点は非常に難しい問題であると考えております。と申しますのも、裁判所がどういう権能を持つかというのが各国によって違っているからです。
例えば英米ですと、裁判所は非常に強大な権限を持っており、その命令に反した者に対してのサンクションというのを与えられる、そういう権能を持っておるわけでございますけれども、日本では裁判所自体がそういう権能を持っているということではございません。そうしますと、刑事罰ということになりますと、それをどういう場合に導入できるのかというのは刑事法の問題ということになりますので、恐らく他の例があるからそのまま横に持ってこれるというものではなかろうというふうには思います。
ただ、他方で、いかにサンクションを確保するかというのは非常に重要なことでございますので、一定の行為に対して、まさに熊谷委員も御指摘になったところですけれども、どのような形で実効性確保を図るかというのは、民事だけではない形で図っていくというのは十分考えられることだろうとは思います。
ただ、一般的には、民事の規定の中で罰則というのはそう例は多くない。例えば法人の場合ですとか幾つかございますけれども、やはりそう例は多くないので、越えるべきハードルは結構あるのかなというふうに印象は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/84
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085・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
もう一点、山崎参考人に御質問させていただきたいと思いますが、今回、共同親権が導入されて面会交流というものも今後進むであろうということを想定したときに、お子さんに会いに別居親の方がお越しになるということになったときに、そのことに対して、いわゆる同居親の方から御懸念されている点等がもしあればお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/85
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086・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
うちのシェルターに入ってくる方、又は協議離婚しても夫が怖いということでDVの相談を受けている方なんですけれども、ほとんどのお母さんたちは、子供たちが会いたいなら会わせたいとおっしゃっているんですね。ただ、会わせられないのはなぜかというと、やっぱり危険が伴う。特に、住所を、住民票を閲覧制限をして秘匿して、逃げ隠れして暮らしている場合、面会交流をきっかけに居場所が分かってしまって押しかけてくるんじゃないかという懸念があるというのと、あと、実際に、離婚が成立してお母さんの単独親権になって、面会交流を第三者機関というか民間の支援機関にお願いしたケースがあるんですよね。支援機関で面会している最中に、スタッフの目を盗んで父親が子供を連れ去ってしまって、警察が動いたというケースもあります。
それと、あと、面会交流を通して復縁を迫るというケースも非常に多いんですよね。シェルターに逃げてくると、まずもうたくさんのLINEやメールが来て、もう二度としないから、ごめんなさい、愛しているというのがばあっと来て、何とか戻ってきてほしい、弁護士に唆されているのかどうなのかというようなメールがいっぱい来て、いや、自分の意思なんだということがやっと分かると、今度は、何とかもう一回やり直せないかというケースが非常に多いんですよね。そういったときに、子供さんを使って、お父さんはもう一回お母さんに結婚申し込むから一緒に暮らそうねみたいなことを言って、また自分の生活が脅かされるんじゃないかという、そういうふうな懸念をしている人もたくさんいます。
そういうことがないように、安心して別居親に会わせることができる制度設計というのをまず備えてもらいたい、それで安心した面会交流というのをさせたいというふうに思っているお母さんは非常に多いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/86
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087・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
そうしたこの実際法律が改正された以降、具体的にどのような枠組みでこの共同親権だとかいわゆる面会交流の取組を行っていくのかということについて、細かいところが実は何も決まっていないということがこの間の議論の中で、今後、詳しくは今後詰めていきますといったようなお話にどうしてもなってきますので、結果、いわゆる今回の民法改正に積極的な方、反対をされている方、双方の方がやはりこの法律改正に対して不満をお持ちになっているということなんですよね。
私自身は、いわゆる親権の在り方がどうなのかということ以前の問題として、いわゆる離婚することによって子供が貧困に陥ってしまうようなことを防ぐということ、子のいわゆる利益、最大の利益のために、どう親、元親というのですかね、監護に関わっていくのかということという意味でいくと、私は子供に対する義務だと思っているので、そういうスタンスからいきますと、やはりこれから実際法律が改正されて施行されるまでの間に相当詰めていかなければいけない課題があるんだろうなということは今感じているところです。
その上で、熊谷参考人に御質問させていただきたいと思いますが、養育費のことをこの間御議論されてきたということで、共同養育計画というものをいわゆる離婚時、特に協議離婚は、九割以上がいわゆる協議や調停離婚だということでありますので、特に協議離婚のときには共同養育計画書策定ということを義務化をすることによって確実な養育費の支払というものにつなげていくという考え方があろうかと思いますけれど、この点について熊谷参考人はどのように御認識されていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/87
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088・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) おっしゃるとおり、共同養育計画ができれば養育費支払の確保のためには有効であるというふうに思います。
問題は、なかなかそれができていないということと、離婚のときに養育費取決めをする者自体が少ない。先ほどの離婚の成立要件とするべきかどうかという議論とそこは関係をしてくる話だと思います。
それから、そういった計画、養育に関する計画を作りましたかという質問が離婚届の用紙の中にあるだけでも若干の啓蒙効果はあるのかなというふうにも思いますが、先ほどのDV被害者などとの関係で、どうしても話合いをすること自体もできない、そういった夫婦においては、共同養育計画を作成することが離婚の条件というふうにしてしまう、ハードルを上げてしまいますと、そもそも離婚ができないで困るという問題があって、そのバランスの問題かなというふうに考えております。おっしゃるとおり、共同養育計画があれば養育費の支払確保の上では有効であることは間違いないというふうに思います。
もっと言えば、これは日本では余りありませんけど、婚前契約ですね、そこで別れたときにはどうするということを婚前契約で決めておく例も外国ではあるわけですね。そこで養育費についての決定も行っておくとこれはもうベストなわけですけれども、なかなか我が国の風土になじむかどうかという問題はあろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/88
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089・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
木村参考人に御質問させていただきたいと思いますが、いわゆる面会、海外の事例ということなんですけど、面会交流を行ういわゆる頻度、いわゆる監護の分掌が進んでいるケースでは養育費の支払率というものが断然上がるという、そういう傾向、数値が出ているというデータがあること先生も御存じかと思うんですけれど、いわゆるそのことを、養育費を確実に支払率を上げていくということを考えた上で、面会交流を、いわゆる監護の分掌という考え方に基づいて、養育費の支払率をそのことによって上げていくということの考え方について先生のお考えをお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/89
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090・木村草太
○参考人(木村草太君) よくぞ聞いてくださいましたという感じの御質問なんですけれども、おっしゃるとおり、養育費の支払を法的に強化、養育費の支払担保を法的に強化するということになりますと、特にDV加害等を行っていた人が無関心になっていたところで、養育費の支払を義務付け、強制されることによって再び加害的な執着を取り戻すというケースもあるというふうに指摘をされております。
今回、養育費の確保の強化というのは非常に重要で良いことだと私も思うんですけれども、それをやりますと、今先生がまさに御指摘いただいたように、無関心でいてくれた人が面会交流を求めて加害的な行為を、また再び加害的な行為をした人と被害者が関わらなければいけないという状況も生まれてくる可能性が出てくる、このようにアメリカのDV支援の専門家から聞いたことがございます。
ですので、御指摘の点は、これは、面会交流を増やせば養育費の支払率が上がるから面会交流を増やそうという発想は非常に危険でありまして、養育費の支払と面会交流はきちんと分けて支払の確保をしなければいけないということだというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/90
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091・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、今の先生の御発言の中で、要は、会いたいのに会わせてもらえないというところをどのように見極めていくのかということですね。そこの部分というところもやっぱり同時に、双方の立場に立って、視点に立って考えるという意味では必要なんじゃないのかなと私自身は思いました。じゃ、一言だけでお願いできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/91
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092・木村草太
○参考人(木村草太君) じゃ、一言だけ。
面会交流を申し立てる制度は日本にもございます。現在、例えば令和二年に終結した面会交流事件は一万件ありますけれども、うち却下されたケースは一・七%にとどまるということで、面会交流の申立てを利用していただくのがよろしいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/92
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093・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/93
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094・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
皆さん、本当にありがとうございます。
まず、子連れ別居の適法性について実情を山崎参考人にお尋ねしたいなと思うんですが、二〇二一年の女性プラザ祭の講演録を読ませていただきました。別居する、子供を連れて別居するというのはなかなか決断できないことだということが御本人のお言葉で、まるで夜の海に飛び込むような感じという表現もされているんですが、山崎参考人御自身のこと、あるいはシェルターでの活動を通じて、この決断、なかなか決断できるものじゃないという、そうした状況、実情を教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/94
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095・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
まさにそうで、今まで普通に生活をしていて、PTAもやり、学校も行かせということをやっていたんだけれども、もういよいよ夫からの暴力で耐えられなくなって出ざるを得ない。だけれども、逡巡するんですよね。修学旅行終わってからとか、あとこの行事終わってからとか、もうちょっと私が我慢すれば何とかなるんじゃないかというふうにずっと逡巡しているんだけれども、何かが起こって、私のときは娘が包丁を持ち出したという事件がきっかけだったんですけれども、それでもう出ざるを得なくなった。
だけれども、出ると決めても、これから生活どうするんだろうか、経済的にやっていけるんだろうか、片親にしちゃっていいんだろうかと思いました、私は本当に。私一人でやっていけるんだろうかと、ずっともういろんなありとあらゆる、どこに住めばいいんだろう、住んだところで見付かっちゃうんじゃないだろうかと、もういろいろいろいろな逡巡があって、それでもやっぱり逃げざるを得ないというふうな、それで皆さん、お子さんを連れてシェルターに逃げてくる。
だけれども、シェルターに入っても、まだ、私が悪かったんじゃないかと、もう一回戻って一緒にやった方がいいんじゃないかとか、そういうお母さんたちがすごくたくさんいらっしゃいます。そのぐらい逡巡して、皆さん迷って、中には夫のところに帰っちゃう人もいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/95
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096・仁比聡平
○仁比聡平君 そうした実情をこれまで裁判所はちゃんと分かってくれてきたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/96
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097・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 裁判所では調停の席でいろいろお話をするんですけれども、調停委員の方は結構いろいろお話を聞いてくれて、分かっていただけるということはありますけれども、うちのシェルターに来た場合には、必ず弁護士さん付けますので、弁護士さんがきちんとお話をしてくれるというのはありますが、自分一人で調停を申し立てて、それでやったという方はなかなか、それ本当なのみたいな扱いをされて信じてもらえなかったというケースは非常にたくさん聞いています。なかなか当事者一人では難しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/97
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098・仁比聡平
○仁比聡平君 木村参考人に、その問題で、「世界」の論文を拝見をいたしまして、こうした子連れ別居に対して、違法な実子誘拐だ、あるいは不当な連れ去りであるというような裁判上の申立てがされた場合に、裁判所はどのような審査をすべきなのか。そして、今、今日、どんな基準が裁判所にあるのか。そして、かつ、この今回の法案によって、そうしたこれまでの取組、積み重ねというのは変わるものと考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/98
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099・木村草太
○参考人(木村草太君) まず、現在の裁判所では、主たる監護者による別居かどうかということが重視されるとされておりまして、婚姻中から主たる監護者で面倒を見てきたという人が子連れ別居をした場合には特に違法性は問わない。一方、主たる監護者でない人であるとか、あるいは主たる監護者が子連れ別居を選択したのに、それを連れ戻すような行為については誘拐罪等が適用されるケースがあるというのが教科書的な説明かと思います。
やはりDVというのは逃げる瞬間というのが一番危険だという指摘もありますので、この逃げる瞬間にどれだけ逃げやすい状態をつくっておくかというのが法律上非常に重要だというふうに思いますし、日本の現行法はやはり主たる監護者の子連れ別居については刑罰等は使わないということですから、この点は非常に諸外国に比べると逃げやすいのではないかと思います。
諸外国ですと、こうしたことも誘拐罪で取り締まるということをする結果、逃げにくくなるというケースもありますし、日本のDV対策、先ほどから遅れているということばかりが指摘されるのですけれども、ただ一方で、このDV殺人で女性が殺される率というのは日本は非常に低いんですよね。フランスにしてもアメリカにしても、日本よりもはるかに高い数値が出ておりますので、いろんな原因があると思いますけれども、その一端は現在の家裁実務があるというふうに思います、家裁実務じゃなくて、誘拐罪の適用があるというふうに思います。
その上で、今回の法律ですが、今回の法律では、要するに、急迫の事情がない限りは子連れ別居ができないという条文にすることによって、子連れ別居がしにくくなるのではないかということを皆さん指摘されています。
法務省は、家裁に相談する暇がなければ急迫ですということをずっと言い続けていますけれども、裁判所は、法務省の答弁ですとかここでの議論というのは基本的には見ずに、条文だけを見ますので、指摘されている危険は決して大げさではないというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/99
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100・仁比聡平
○仁比聡平君 先生の論文で、ちょっと引用しますと、「裁判所は、離婚までの監護者・離婚後の親権者を指定する際に、監護の継続性・監護態勢・監護環境・監護能力・監護開始の違法性・子の意思などを総合的に考慮して判断する。ここでは、同居中に子を監護してきた実績(主たる監護者がどちらだったか)も重視される。」とされていますが、今の家裁の実務とおっしゃったのは、こうしたことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/100
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101・木村草太
○参考人(木村草太君) 御指摘のとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/101
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102・仁比聡平
○仁比聡平君 そこで、沖野参考人にこの点についてお尋ねしたいと思うんですけれども、民法の、あるいは家族法の議論の中で、裁判所の実務というのが、今、木村参考人に御紹介いただいたように、私は積み重なってきているんじゃないかと思っているんですけれども、これが今回の法案で変わってしまうのかと。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/102
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103・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
家裁の実務そのもの、これまでに積み重ねてこられた判断を大きく変更するということではむしろないというふうに考えております。事情を総合判断して、子の利益の観点から考慮するということは強く打ち出されておりますので、その中にはこれまでの経緯というのは十分に考慮されるということは、むしろ明文をもって明らかにされていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/103
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104・仁比聡平
○仁比聡平君 ということは、むしろ子の利益のためにということが強調される法改正であることによって、一層真に子の利益になるために積み重ねが続くはずであるという、そういう趣旨でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/104
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105・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) そのように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/105
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106・仁比聡平
○仁比聡平君 もう一点、山崎参考人に、リーガルハラスメントと呼ばれる不安や危険への実情や恐怖について、先ほど冒頭の陳述の中でもお話しいただいたんですけれども、改めて、この法案が成立した場合の申立て権の濫用や、あるいは親権の共同行使に当たっての拒否権的な別居親からの関わりと、こういうことに対して、リーガルハラスメントに対する恐怖というのはどのように感じていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/106
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107・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) これ、皆さんが感じていらっしゃることで、本当にやる人って徹底的にリーガルハラスメントするんですよね。
私が経験したのは、私のところに逃げてきた方のパートナーが、その逃げてきた方を保護した警察官を公安委員会に訴え、代理人になった弁護士を懲戒請求し、私に対しては刑事告訴をし、行政に対しても違法行為だということで訴えた、ありとあらゆる手を使ってやってきたケースがあるんですよね。
逃げてきて、共同親権になってどうなるかというと、学校で自分の拒否権が尊重されなかったとか、自分の思いがこういかなかったといったら学校を訴えるだろうし、そういう人って本当にびっくりするぐらい訴えてくるんですよ。学校も訴えるだろうし、いろんなところに対して訴訟を起こすというのは、もう本当に目に見えているなと思います。やる人はやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/107
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108・仁比聡平
○仁比聡平君 今の点について、つまり濫用という問題についてなんですけれども、沖野参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほどの質疑で、濫用については早期適切に却下することが想定されているという御発言だったと思うんですが、どんな場合に、どのような手続においてといいますか、却下することが想定されているというお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/108
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109・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
リーガルハラスメントの問題というのは非常に深刻であるということがヒアリングの中でも明らかになっております。その対策というのは非常に重要な課題でございますけれども、他方で、法的な救済を受けられる、あるいはまさに司法サービスを受けられるということも非常に重要なものでございますので、この間の調整をどう図るかという点が大事になってまいります。
そして、濫用であるというのは、例えば親権の変更ということに、親権者の変更になりますと、それを基礎付ける事実が必要ですけれども、そういった事実が想定されないのにもう繰り返し繰り返し短期間で申立てをするというようなものというのは、基本的には濫用という推測が立つのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/109
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110・仁比聡平
○仁比聡平君 蒸し返しは許されないというような趣旨でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/110
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111・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 蒸し返しというのが、事実の変更も全くないのに、それが客観的にも明らかであるような場合に申立てをするということであれば、それは許されないわけですけれども、しかしながら、一度決めれば全て終わりではないということもまた確かであると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/111
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112・仁比聡平
○仁比聡平君 今の点で木村参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほどの意見陳述の中で、被害者やその代理人、支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないということを具体的にはお語りにはならなかったんですけれども、指摘がありました。どんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/112
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113・木村草太
○参考人(木村草太君) まず、合意に限定、合意がある場合に限定するというのが一番の対策です。
濫訴については、訴訟や申立ての提起自体が違法であると認定される基準は極めてハードルが高いので、これは濫訴自体が不法行為であるというふうにされることはほとんどないだろうと考えていいと思います。ですので、濫訴の不当訴訟の枠組みで、訴訟の提起自体が不法行為になるというようなことが抑止力になるというのはほぼ現実的な想定ではないというふうに思われますし、また、共同親権になった場合に様々なやり方で口を出すということができるわけです。
例えば、ニューヨーク州で裁判になった事案では、父母が、両方が親権を持っているので、両方が合意しないと旅行が行けない。このために子供のサマーキャンプに行く合意ができなくて、キャンプの機会が失われたケースなどが報告されています。
あるいは、日本でも、非親権者の別居親である父親が、娘に標準服、制服ですね、の着用を義務付けるのは違法だとして中学校を訴えた事案が現行法でもございます。現行法では、親権者ではなかったということでこの訴訟は棄却されているんですけれども、このような訴訟が共同親権ということになれば法的根拠を持って主張され得るということになりますので、濫訴というのは、親権者変更だけではなくて、共同親権になった場合にその親権の行使についても今言ったようなケースが起きるということであります。
そのほか、医療系の学会も、このままでは病院が非常に意思決定が困難になるのではないかという要望書を提出している、法務大臣に提出したという報道もあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/113
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114・仁比聡平
○仁比聡平君 そういう状況の下で、本参議院の法務委員会に求められている役割、審議のありようというのはどのようなものだと思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/114
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115・木村草太
○参考人(木村草太君) まず、合意がある場合に限定して本当にいけないのかどうかということを是非真剣に検討していただきたいと思います。また、どうしても非合意強制型が必要だというのであれば、非合意でも強制すべき場合の要件について明確に規定をしていただきたいと思います。
DV、虐待のおそれがある場合は除外するのはそれはもう当然のことでして、何ら要件を設定したことにはなりませんし、また、DV認定についても、おそれというのは、先ほど指摘したように、おそれがある場合を除外するという形ですと、過去にDVがあっても共同親権になり得るわけです。
アメリカの文献でもいろんなことが紹介されておりまして、例えばノースダコタ州最高裁は、重傷をもたらさなかった訴訟、重傷のなかったようなDVは、しかも、それは三年以上前であるから余りにも遠過ぎるとか、あるいは顔面を殴ったという過去があったとしても、それはもう随分前のことであるからということで共同親権にするというようなケースがアメリカの裁判例で報告をされております。
そうすると、やっぱりおそれがある場合を除外するというのは余りにも狭過ぎて、過去にDVがあった場合ですら除外できない、今そういう危険な条文を扱っているという自覚を持っていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/115
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116・仁比聡平
○仁比聡平君 最後に、熊谷参考人に、一問になると思うんですが、先ほど御紹介いただいた令和二年十二月の検討会議の取りまとめ、拝見いたしまして、立替払ですね、養育費の、この制度などについて、選択肢や課題等を整理しつつ引き続き検討を続けていくべきであると提言をしておられますよね。
ですが、私、その後、法務省がそのような検討に応えている、求めに応えているのかというと、そうじゃないというふうに思うんですけれども、子の養育費の確保のための今の状況ということについてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/116
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117・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 検討会議については法務大臣に提出を、取りまとめを提出をさせていただきました。その後、この今回の法案の中にはこの立替払に関する規定は含まれておりませんが、法務省においてこれについては検討しているものというふうに承知をしております。具体的な報告はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/117
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118・仁比聡平
○仁比聡平君 具体的な報告はない。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/118
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119・鈴木宗男
○鈴木宗男君 参考人の皆さん、本日は貴重な御意見ありがとうございます。
鈴木宗男と申します。私が最後ですから、よろしくお願いいたします。
最初に、沖野参考人にお尋ねをいたします。
私は、この民法の一部改正する法律案について、一つうれしく思っているのは七百六十六条なんです。今まで面会交流という表現でした。今回から親子交流へと明文化されました。五年前から私は、超党派の議員連盟で共同養育支援議員連盟というのがあるんです、今の馳石川県知事が会長をやっておられまして、今、その後は柴山議員が会長で後を継いでおられるんですけれども、ここで私は五年前から、親と子が会うのに面会はないだろうと。面会という表現だけでも、何か刑事施設に会いに行くような、これも想定したりして、かけがえのない血の通った親と子が会うことについて面会はふさわしくない、交流ということが私は必要でないかと強く法務省に、今日は委員会に北村参事官も来ておられますけど、言ってきたものなんです。
今回、これが明文化されたことを私は高く評価しているんですけれども、この面会から交流に変わることについて、法制審議会の家族法制部会ではどんな意見というか、があったのか、反対等の声もあったのかどうか、その点、教えていただければ幸いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/119
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120・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 面会交流という言葉を親子の交流に変えることについては反対があったとは承知しておりません。むしろ、交流の在り方は様々でございますので、そういったものを受け止めるには面会というだけでは狭過ぎるという考え方であると理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/120
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121・鈴木宗男
○鈴木宗男君 ありがとうございます。
私は、この点、法務省民事局の関係者の皆さん方の尽力にも敬意を表したいと、こう思っております。
あわせて、先ほど熊谷参考人から、養育費の不払について悪質なものについてはペナルティーをという声もありました。私も、そういう考えがあって当然でないかと、こう思うんですけれども、この法制審議会の家族部会では、この点についてはどういうようなやり取りというか議論があったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/121
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122・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) 養育費の確保措置には様々なものがあるということは当初より言われておりました。しかしながら、一方で、民事法制の基本法制としての民法や手続法の改正ということで、どういうものを受けられるかという問題がございます。
先ほど御質問があった点につきまして、私、罰則が入っているのを法人というふうに申し上げましたが、過ち料と誤解しているかもしれません。破産ですとか消費者ですとか、そういったことを申し上げるべきでした。
ですので、ペナルティーとしてどういうものを入れるかというのは、多様な点がありますけれども、それは民事法制でできるかという問題は一つ大きな点としてあろうと思います。単純な債務の不履行に対して罰則を掛けるというのは、それは難しかろうと思いますけれども、熊谷参考人がおっしゃったような、これは虐待そのものであるというふうに考えるとすると罰則ということも考えられるかもしれませんし、その際には要件をどうするかということが非常に重要な問題になってまいりますが、これは刑事法の問題ということになりますので、なかなか今回の法制ではそもそも受けられるものではないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/122
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123・鈴木宗男
○鈴木宗男君 ありがとうございます。
山崎参考人にお尋ねしますが、先ほどの山崎参考人のお話の中で、この法案について、これは廃案にすべきだというお話がありました。今日、皆さん方の意見も聞きながら、これから更にこの委員会での審議は進められていくと思うんです。
そこで、山崎委員からして、この表現、この文言、これだけは是非とも法案に入れていただきたい、あるいはその附則等に書き加えていただきたい等という何か希望があるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/123
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124・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 私たちDV被害者にとっては、もうこの法律は恐怖でしかないんですよね。それで先ほど廃案という言葉を申し上げたわけです。
なので、この法案ありきでこういうのを入れてほしいという質問は非常に難しい質問なんですけれども、ただ、やはりきちんとDVですとか虐待について、たった二年間でどこまで制度が整うか分かりませんけれども、そこを完璧にやっていただきたい、それに類する条文を入れていただきたいというふうに思っています、附則ではなく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/124
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125・鈴木宗男
○鈴木宗男君 山崎さんのその思いというのもしっかり受け止めたいと、こう思いますので、また何か御意見あればお知らせをいただきたいなと、こう思っております。
先ほど来、子の利益についてお話がありました。私も、これは四月二十五日の委員会で小泉大臣に質問しております。私は、この子の利益について、これはいろんな受け止めありますから、ならば明文化した方がいいというのが私の考えなんです、子の利益は何か。法務大臣は、子の利益という観点でありますけれども、子供が尊重され、またその年齢にふさわしい養育を受け、そして健やかに成長していく、そういうことを通じて子供の幸せが増えていく、子供の不幸せが減っていく、そういう人間の情に根差した価値だと思いますというふうに答弁されているんです。
私は、これ是非とも明文化してはっきりさせた方が逆に理解が得られるんでないかなと、こう思いますけれども、各参考人、子の利益についてどう考えるか、お知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/125
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126・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) では、沖野参考人から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/126
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127・沖野眞已
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
子の利益の明確化というのは非常に重要なことだと考えておりますけれども、それを法律における定義として置くということについては、かなりハードルが高いのではないかというふうに考えております。
と申しますのは、どういう字句を選ぶかによって解釈の余地というのが出てまいりますし、それから、法制全体での、あるところではこの用語を使いながら別のところで用語を使っているときに、違う意味なのかどうなのかということが問題になったりします。
そうしますと、むしろ現在の在り方のように、改正法案がそうですけれども、子が人格を尊重されるといった点ですとか、今まさに議員御指摘になったような考え方は既に盛り込まれていると思いますので、それを定義の形で明確化するのは難しいし、かえって弊害というか困難も予想されるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/127
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128・熊谷信太郎
○参考人(熊谷信太郎君) 私も同じ意見でして、子の利益を一義的に定義規定に置いていくのは実態にそぐわないだろうと、むしろケース・バイ・ケースで判断した方がいいだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/128
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129・木村草太
○参考人(木村草太君) 何が子の利益かということについては、問題となっている制度ごとに違うのではないかと思います。
例えば、養育費の徴収については、確実に徴収して経済的に困窮しないこと、これは子の利益ですし、親権、医療や教育についての決定については、その決定が適切にかつ滞らずに行われること、これが子の利益ということになるでしょう。
先生が御指摘になった親子交流についても、やはりそこでは、またその交流の中身というものが重要になりますし、子供が恐怖や不安を覚えないような面会が行われるということが子の利益となるということになるかと思います。
ですので、場面ごと、制度ごとに子の利益の内容は違ってくるし、その制度ごとに実現しようとしている子の利益は違ってくる。一つ一つの制度ごとに細かく見ていっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/129
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130・山崎菊乃
○参考人(山崎菊乃君) 私たちからすると、最後に意見陳述で申し上げて、メールで引用させていただいたお母さんからの言葉をもう一度お話しさせていただきます。子供が心から愛され、守られて、穏やかに安心して暮らせるということが子供の一番の利益だと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/130
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131・鈴木宗男
○鈴木宗男君 ありがとうございます。
私は団塊の世代で育ってきました。当時、子はかすがいとよく言われました。だから、私の親なんかも、よく夫婦げんかしたとき、おふくろが言ったことあります、おまえたちがいるから別れるわけにはいかないと、これは私が今でも頭に残っている大事な親の姿だと思っているんです。
同時に、子供は親を選べませんから、子供のことをやっぱり一番に考える、このことが私は極めてこれは大事なことだなという感じもいたします。やっぱり親の果たす役割を我々、今生きる者としてしっかり考えながら、改めて夫婦だとか家族とは何かということを今求められている時代でないかと思っているんです。
そういった意味では、今日御出席いただいた参考人の皆さん方はそれぞれの道での専門家でありますから今後とも御指導をいただきたいなと、このことをお願いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/131
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132・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 以上をもちまして午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)
午後二時に再開することとし、休憩いたします。
午後零時四十五分休憩
─────・─────
午後二時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/132
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133・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、臼井正一さん及び大椿ゆうこさんが委員を辞任され、その補欠として山崎正昭さん及び福島みずほさんが選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/133
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134・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 休憩前に引き続き、民法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
午後に御出席いただいております参考人は、白鴎大学教授水野紀子さん、浜田・木村法律事務所弁護士浜田真樹さん、中央大学法学部兼任講師・共同養育支援法全国連絡会母の会アドバイザー兼共同責任者鈴木明子さん及び和光大学現代人間学部心理教育学科教授熊上崇さんでございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、水野参考人、浜田参考人、鈴木参考人、熊上参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず水野参考人からお願いいたします。水野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/134
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135・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 白鴎大学で民法を担当しております水野紀子と申します。
本日は、このような機会をお与えくださいまして、本当にありがとうございました。
今日は、法制審議会家族法制部会の審議に参加した一研究者としての立場から、今回の法案についての個人的な意見を申し上げさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
家族法制部会では、令和三年二月の法務大臣からの説明を受けてから、約三年間を掛けて、子の利益を確保する観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定などの見直しについて調査審議を行ってまいりました。私は、三十年ほど前の民法部会身分法小委員会の頃から法制審議会の家族法改正を審議する部会に多く参加してまいりましたが、激しい熱のこもった、かつ慎重な調査審議が行われた点では、この部会が筆頭であったように思います。
この部会では、家族法領域の最大の難問と言われる離婚時の子の奪い合いという問題を審議対象に含んでおりましたから、子の立場、同居親、別居親、それぞれの立場で痛切な経験と意見をお持ちの方も多く、これまでにない多量の、八千件を超えるパブリックコメントが寄せられました。参考人ヒアリングも、それぞれの当事者の立場だけではなく、DVや児童虐待の支援者や専門家など、非常に多くのヒアリングを実施してお話を伺いました。パブリックコメントに寄せられた御意見も、事務当局がまとめて資料としたほか、各会議の際には意見の元本が会議室に備え置かれて委員たちが閲覧しており、参加した委員は、とりわけ離婚後の子をめぐる紛争について、国民から寄せられた意見の痛切さを踏まえて議論をしてまいりました。
そして、これらの御意見は、それぞれに真摯で痛切なものではありましたが、同時に、多様に分かれておりました。暴力のある生活からようやく逃げて離婚できて、貧しいながらも平和な母子家庭を営んでいるのに、共同親権を申し立てられたらとても立ち向かえないという恐怖を語られる御意見がありましたし、逆に、夫としゅうとめに子供を奪われて家を追い出されてしまい、子供の環境が不安で、つらい焦燥感に駆られているという御意見もありました。今挙げましたお母さんの例のみならず、最近は、共働きで夫も育児に実質的に参加していたのに、意に反して子供との接触を断たれるつらさを言われるお父さんの例もありました。
また一方では、夫婦としては失敗したけれども、両親としては協力してやっていきたいと二人とも思うけれども、単独親権では親権者の心変わりを恐れて離婚の話合いが進まない、是非共同親権の道を開いてほしいという御意見もありました。
この問題は、子供の福祉の根幹に関わるもので、かつ、どの国でも非常に難しい問題となっています。しかし、日本では殊のほか難しさが深刻です。つまり、DV対策や児童虐待対策が非常に遅れているからです。
婚姻中の共同親権の段階から、社会によって救出されるべき子供たちが暴力のある家庭の中で生きています。資本主義の進展によって家庭が孤立するようになった時代以降、西欧諸外国では、積極的なアウトリーチを含めて家族への社会福祉的介入を強めてまいりました。急速に近代化した日本は、このような介入を構築することなく、家族法においても家族の自治を最大限に認めてきました。つまり、当事者たちが自分たちだけで決定し、自分だけで相手と闘うしかない家族法でした。そこには、救われるべき当事者や子が守られる保証はありません。
本改正案は法制審議会の答申を踏まえたものであると認識しておりますが、答申には附帯決議が付いております。この附帯決議は、改正法の内容の適切な周知を求めること、各種支援についての充実した取組を求めること、家庭裁判所における適切な審理を期待すること、改正法の施行状況や各種支援などに関する情報発信を求めること、これらの事項の実現のため関係府省庁などが子の利益の確保を目指して協力することなどが盛り込まれています。民法などの改正が実現した際には、こうした附帯決議の趣旨に沿って、政府及び裁判所において適切な環境整備に向けた取組が行われることを期待しております。
さて、本改正案の改正項目としては、親子関係に関する基本的な規律、親権、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与などがございます。これらについて詳しくお話ししますと許された時間を超過してしまいますので、特に強調したい点のみ簡単にお話しいたします。
まず、親子関係に関する基本的な規律ですが、本改正案では八百十七条の十二において、親権の有無にかかわらず父母が負うべき責務などを明確化しました。ここには子の人格を尊重する責務が挙げられており、子の意見の尊重も含まれると解釈されるべきであると考えております。
ただし、離婚後の親権者の決定の場面において子の意見の尊重を直接的に特に書き込むかどうかは、法制審で議論になり、私は一貫して反対いたしました。親を選ばせるのは残酷な選択を強要することになりますし、親は他方の親を悪者にする働きかけをするでしょう。子供の人格を尊重することにむしろ反する結果を招くと考えます。もちろん、子の心情や状況は丁寧に調べる必要があり、子供が自分を尊重されたと感じられるように適切に説明する必要性は言うまでもありませんが、君の意見で決めるとか決まったとか言ってはならないことだと思います。
次に、親権に関する規律の見直しです。
離婚後の単独親権を改め、共同親権も選択できるようにしてあります。先ほどパブコメの話などでも申しましたように、これが最大の争点でした。
裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関しては、裁判所が、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととした上で、父母の双方を親権者として定めることにより子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととされております。
この父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときについては、DVや虐待などがある事案を念頭に置いた例示列挙がされており、こうした事案に対する懸念に対処できる規律になっています。
ただ、個人的には、この例示列挙にこだわらず、一切の事情を重視した実務の運用に期待したいと思っております。余り育児に関与してこなかったから、本音では親権にはそれほどこだわらないが、DVだと評価されたくないという理由で共同親権を主張する当事者がおられることを心配します。
共同親権では、一方の親が他方の親権行使に妨害的に同意せず、教育や医療の場面などで困るのではないかという危惧が言われます。もっとも、現行民法でも、父母双方が親権者である場合における親権行使のルールなどが必ずしも明確ではありません。
本改正案では、父母双方が親権者である場合においても、子の利益のため、急迫の事情があるときや監護及び教育に関する日常の行為については単独で親権を行使できることとした上で、親権行使について父母の意見が対立した場合の解決手続を整備することとしています。
この急迫の事情については、適時の親権行使をしないと子の利益を害するおそれがあるような場合と解釈されるべきであり、必ずしも狭い概念ではないと考えております。常識的な線で運営されるのではないかと思います。
むしろ、教育や医療の場面で本当に必要な親権行使が行われない場合については、現状でも現場は子供のために努力しています。医療ネグレクトに対しては、親権停止という手続も利用されますが、重過ぎて利用しにくいため、医師が推定的同意や事務管理の法理で子供を救おうという動きがあります。
文科省と厚労省は、児童養護施設に入所中の子が高校進学について親の同意を得られないときに柔軟に対応して進学させるように通達を出しています。子供を不当な親権行使から救うこのような現場の努力と整備にこそ、政府や関係官庁が一丸となって取り組んでいただきたいと思います。
次に、養育費に関する規律の見直しです。
養育費の確保が重要であることは異論のないところです。西欧諸外国では、刑事罰の制裁を科したり、直接税取立て手続にのせたりしております。本改正案では一般の先取特権を付与しています。この改正により、養育費の債権者は、一定額の範囲で一般の債権者に優先して弁済を受けられるほか、債務名義を取得していなくても民事執行手続の申立てをすることができるようになります。また、養育費の定めをすることなく協議離婚をした場合に対応するため、法定養育費の仕組みを設けています。このほか、裁判手続における収入などの情報の開示命令の仕組みや、民事執行手続に関し、一回の申立てにより複数の手続を連続的に行うことができることとするなど、債権者の負担を軽減する仕組みを設けることにしています。このような改正により、養育費の支払確保の実効性を高めることができると考えております。
次は、親子交流に関する規律の見直しです。
親子交流については、子や同居親の安心、安全を確保した上で、適切な形での親子交流を実現できるような仕組みを設けることが重要です。本改正案では、現行民法において父母が婚姻中に別居している場面における親子交流に関する規律がないことから、八百十七条の十三で明文の規律を設けています。また、家庭裁判所が事実の調査として親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律を設けることにしております。試行的実施の結果については、その後の家庭裁判所の判断や調整の資料とされ、適切な親子交流の実現に資することになると考えております。このほか、七百六十六条の二で、家庭裁判所が祖父母等の親族と子との交流に関する定めをすることができることとしております。
養子縁組に関する規律の見直しにつきましては、養子縁組については、養子縁組がされた後にその子の親権者が誰になるのかを明確化し、また、親権者である父母間で十五歳未満の子の養子縁組の代諾に関する意見対立が生じた場合の調整のルールを整備するものです。
最後に、財産分与に関する規律の見直しです。
財産分与については、財産分与を請求することができる期間を現行法の二年から五年に伸長することとしております。また、財産分与において考慮されるべき要素を明確化することとしているほか、裁判手続における財産情報の開示命令の仕組みを設けることとしています。周知のように、日本の母子家庭の貧困率は非常に高いものとなっています。この改正によって、幾らかでも是正できることを期待しております。
以上でございます。御清聴くださいまして、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/135
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136・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、浜田参考人にお願いいたします。浜田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/136
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137・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 浜田でございます。着席のままで失礼いたします。
お手元に資料をお配りしておりますので、御参照くださいますようにお願いをいたします。
大阪で弁護士をしておりまして、今で二十二年目になっております。この間、多く子供に関わる事案を扱ってまいりました。今日は、そのような立場からこの今回の家族法改正について意見を述べたいと思います。
資料三ページを御覧ください。
親権には、権利の側面と義務の側面があると言われております。ただ、親と子の関係について言えば、親は子の養育等に関する義務を負っているという側面こそが重視されるべきと考えております。
今回の改正法案でも、八百十七条の二で子の人格を尊重するとの文言が入るとともに、八百十八条では従前の子供は親の親権に服するという表現がなくなっておりまして、こういった点からも、子供の利益、権利を重視すべき方向性が打ち出されるものと理解をしております。
資料四ページを御覧ください。
一般の通常のときにおいても子供の利益というのは大切なものでありますが、親と親との紛争が生じたときにはその要請は一層強まるものであります。言うまでもなく、父母間の紛争は子供にとっては全く望まないものであるからであります。
父母間の紛争について、多くの子供さんが悲しかったとかショックだったと思っていたということが今までの数々の調査でも確認をされております。加えて、親同士の紛争はあくまで親同士のものであって、子供はただ巻き込まれる立場なんだということを強調して申し上げておきたいと思います。
親権の義務性という観点に着目をいたしますと、離婚によって親権が一方のみになるということは、子供にとってみれば義務を果たす人が一人減るということでもあります。共に暮らすことがなくなるというのは致し方ないといたしましても、親は二人とも引き続き子供のことを考え、養育に対して責任を負担する人であってほしいと考えます。
つまり、私の意見では、離婚後の非監護、監護していない方の親御さんは、養育をして、失礼、養育費を支払い、お子さんと面会交流を行うだけでは足りないんであります。これらに加えて、子供にとっての重要な決定に責任を持って関与し、お子さんから相談があれば真摯に応じ、お子さんから説明を求められれば丁寧に回答しというような作業を離婚後であっても行ってほしいと考えております。
資料五ページを御覧ください。
このような発想に基づけば、離婚後の親権についてはできるだけ共同親権が広く認められるべきということになるものと思います。今回の法案では離婚後の共同親権が原則だというわけではないと理解をしておりますが、離婚後の共同親権はお子さんの利益のために必要なものであると考えます。
加えて、親権制限審判などと比較をいたしますと、協議離婚によって簡単に一方の親が親権を失うことの方がむしろ奇異にも見えるところであります。
私は、児童相談所の仕事などで親権停止審判や親権喪失審判も取り扱ってまいりました。いずれも、裁判所に認容を受けるためのハードルはかなり高いところがございます。それは、子供にとって親権者の存在が重要であるからであろうと思います。そうであれば、子供の利益のために共同親権ということが考えられるべきではないかということであります。
もちろん、単独親権を望む声があることや、実際問題として単独親権の方が良いと思われるケースがあることも承知をしております。この観点で改正法案を見ますと、裁判離婚において裁判所がいかなる基準に基づいて共同親権か単独親権かを決めるのか、条文から直ちには読み取れないということを若干心配をしております。
弁護士として相談を受ける立場からいいますと、このままでは、裁判所がそのケースについてどういった判断をしそうかといういわゆる予測可能性の観点がまだまだ低く、したがいまして、離婚するかどうか、そしてまた、その場合にどのような手続を選択すべきかについて十分な法的アドバイスができないおそれがあるものと考えます。これは、法曹、法律家にとっての問題というよりか、離婚を考える当事者にとって大きな問題となり得るところだと危惧をしております。
そこで、国におかれては、この改正法の施行に先立って、裁判所がいかなる基準に基づいて、またいかなる考え方に基づいて判断をするのか、その指針などを明確にしていただくよう希望したいところでございます。
資料六ページを御覧ください。
共同親権の場合、日常の行為であれば単独行使が可能とされております。この日常の行為の範囲については、ある程度広くなるものと解釈をいたしませんと、子供さんの利益が害されるおそれがあるものと思います。
このような場面において、このような場面について、児童福祉法では、例えば子供さんが児童養護施設などに入所しているときには、監護及び教育に関して施設長が必要な措置をとることができるという条文がございます。そして、親権者はこれを不当に妨げてはならないとされております。これは、実際に子供を監護している側にある程度の裁量がないと子供のためになる判断や活動ができないという発想の下に作られているものと評価できると思います。これと同様に考えられるべきではないかと考えます。
日常行為以外で親権行使者について協議が調わない場合、家庭裁判所が親権行使者を決定するとされております。まず、この決定は迅速に行われる必要が極めて高いところです。例えばどの学校を受験するのか、例えば第二志望に先に合格しちゃったけれども入学手続をするのかどうか、入学金を払うのかどうかといったところ、例えばですが、判断すべき時間が極めて限定的になるということが多いと考えております。
こういった場面で急迫の事情ありと言えれば親権の単独行使ができることとされておりますが、ここでの課題は、この急迫の事情ありと当たるか否かをまず判断するのは親御さん本人だということであります。無論、裁判になるかもしれませんが、それは事後的な話であります。そうしますと、この急迫の事情ありと言えるかどうかについて、一般の市民にとっても分かりやすい明確な判断基準が示される必要が極めて高いものと考えます。
資料七ページを御覧ください。
ここまで親と親の意見が合致しない場面を見てまいりましたが、その際に子供の意見がどう扱われるかについてであります。
親権行使も離婚後の親権者の指定もすべからく子供のためであると考えますと、その内容を決するに当たっては子供自身が意見を言う機会が与えられるべきと考えます。これは、子どもの権利条約で定められました意見表明権の発現場面であり、家事事件手続法でも、子の意思を把握して、子の意思を考慮すべきものと定めているところであります。
児童福祉法でいいますと、令和四年の改正で意見聴取等措置、意見表明等支援事業という規定が入りました。いずれも、児童相談所等が行う措置に当たって子供が意見を言う機会をきちんと保障しようというものであります。
また、意見を聞くためには、その前提として、子供さんに対して十分な説明がなされなければなりません。これがないと、お子さんも意見表明のしようがありません。しかし、実際のところ、特に家庭裁判所の手続に入ってからは、子供さんに十分な説明を行って、その上で子供の意見を十分に聞くということはそんなに簡単なことではありません。
そこで、そのために利用できる制度として、子供の手続代理人について御紹介を差し上げます。
資料八ページを御覧ください。
定義と制度概要はそこに書いたとおりでございます。離婚や親権者の指定、面会交流など子供に影響のある事件類型において利用が可能でございます。これらの手続に子供が関与する場合に弁護士が子供の手続代理人としてサポートを行うという制度です。
資料九ページを御覧ください。
具体的なサポートのありようもそこに書いたとおりでございますが、子供のために主張、立証を行うとか、子供に情報を提供してその意思決定を援助し、子供の利益にかなう解決がなされるような働きかけも行います。
日弁連では、最高裁判所と協議を行った上で、子供の手続代理人が有用と思われる事案の類型というペーパーをまとめております。平成二十七年のことでございまして、ここに記載された類型は裁判所の目から見ても有用と言えるものであるということをまず指摘しておきたいと思います。
資料十ページを御覧ください。
この制度に対しては、よく、家庭裁判所には調査官がいるので子供の意思等はそこで十分把握できているんだというような指摘もなされるところです。ただ、それでは十分ではないと思います。子供の手続代理人は、家庭裁判所調査官と対立したり役割が重複するような存在ではなくて、役割を分担しながら、協働、共に働く協働を築くことができるものであると考えます。
特に私が強調したいのは、子供の手続代理人であれば子供に対して十分な説明を行うことができるという点であります。先ほども触れましたとおり、十分な説明は子供さんの意思形成、意思表明の前提として大変重要でありますが、家庭裁判所調査官は中立のお立場であり、また職責上もこういった観点の活動は困難であります。実際の事例でも、弁護士は、放課後とか週末とかを含めてお子さんと会ったり、またLINEなどのSNSでやり取りをして何度も交流を持ち、その中で信頼関係を形成して、その上で意思決定、意見表明などの支援を行っております。
資料十一ページを御覧ください。
この制度の課題は、利用件数が極めて少ないというところであります。家事事件手続法制定から十年以上が経過をしておりますが、今もなお、そもそも制度の存在すら広く知られているとは言い難いところがございます。
加えて、報酬の問題もあります。裁判所が選任する、その意味で国選と言ってよろしいかと思いますが、そういう方法もありますが、子供の手続代理人の報酬が公費、公から支出されることはありません。実際には、お父さん、お母さんの双方で分担をいただくということが多くなっております。
さらに、お子さん自らが自分に代理人を付けたいんだという場合でも、法テラスの民事法律扶助制度は利用することができません。このため、お父さん、お母さんから報酬支払の協力が得られない場合には、日弁連が行っている法律援助事業を利用することになります。
しかし、お子さんにとって大変重要な制度であり、結局は離婚等の家族紛争の解決全体にとっても有益な活動であるものですので、この手続代理人についても民事法律扶助制度を利用できるような制度改正を期待しております。
続けて、十二ページを御覧ください。
裁判所側の体制整備も大変重要だと考えます。家庭裁判所の事件数や業務は大きく増えておりますが、裁判官は余り増えておらず、調査官に至ってはほぼ増員がありません。また、全国の裁判所の支部や出張所では、裁判官や調査官が常駐していないところも多数ございます。
そうなると、その地域の住民は、仕事を休み、小さな子を連れて遠方の裁判所まで出向かないとというような事態も生じます。住まいからなるべく近い裁判所で裁判を受けることができる、このことは、裁判を受ける権利の実質的保障の観点からも重要なことであると考えます。
さらに、お子さんに関することでいいますと、お子さんに関する調査を行ったり試行面会を行ったりする児童室などと呼ばれる施設がありますが、家庭裁判所支部の約半数には設けられておりません。こういった点も充実させることが不可欠であると考えます。
資料十三ページを御覧ください。
裁判所の問題だけではなくて、私どもを始めといたします弁護士の関与も一層広がっていくべきものだと考えます。今でもその関与は十分ではないと言わざるを得ませんが、今回の改正法によって親権行使者の指定の事件などが新設されることになりまして、こういった中では、弁護士がその専門的知見を生かして活動することが必要不可欠であるものと考えます。
資料十四ページを御覧ください。
私の意見は、父母の紛争と親子関係とは一旦切り離して別のものだと考えてくださいということであります。ただ、これは、実はそれなりに大きな意識の変革を求めることになるやもしれません。
また、その点以外のところでも、離婚をするに当たって考えなければならないことはたくさんあります。そうであるのに、私どもを始め、私ども弁護士を始めとするような専門家へのアクセスは必ずしも十分とは言えません。
そこで、離婚を考える全ての当事者に対して情報提供をする機会が設けられるべきと考えます。これは、親ガイダンスとか離婚後養育講座などと言われるものでありまして、法制審家族法制部会でも一時期導入が議論をされておりました。今回、それを受講すべきことが義務になるというようなことにはなりませんでしたが、子供を持つ親御さん双方にとって有益なツールとなるものだと考えますので、是非広まってほしいと考えております。
最後に、資料十五ページを御覧ください。
今日触れてきたような考え方からいたしますと、そもそもこの親権という用語そのものを変えてしまってはいかがかという御提案でございます。ここに記載をいたしました六つほど、新たな用語として御提示を差し上げております。これは、法制審議会家族法制部会の中間試案に対するパブリックコメントの際に、私も所属いたします日弁連の子どもの権利委員会の有志で新たな用語として考えてみたものでございます。今回の改正法案には入ることはなかったですけれども、これから先、将来に向けての議論の参考になればと思ってあえて記載をさせていただきました。
私からは以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/137
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138・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/138
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139・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 中央大学法学部で兼任講師を務めております鈴木明子と申します。
共同養育支援法全国連絡会母の会においてはアドバイザー兼共同責任者を務めさせていただいており、我が子に会えない母親たちの存在についてお話しする機会をいただいております。今回、この貴重なお時間をいただき、大変有り難く思っております。
私、法学部で兼任講師をしておりますけれども、法学や法律の専門家でないということはお伝えしておきます。私の専門は民俗学であり、日本の家制度あるいは地域社会を研究対象としております。
少し前の日本社会におきまして見られた親子の断絶というのは、離婚によって生き別れた母親が我が子の姿を遠くから見詰めるという切ない話がありました。時代が移り変わり、性別役割分業が進み、母性優先という現象が登場し、現代の日本では母親単独親権者が多数となり、母親に引き取られる子供たちが増えております。
かつては父親の再婚によっていじめられる子供たちの話がたくさんあり、シンデレラや白雪姫といった話が分かりやすいと思いますけれども、そうしたお話、同じお話が日本にもたくさんありました。一方、現代では、母親の再婚相手による子供たちの虐待という悲しい事件が後を絶ちません。
日本文化を研究している身としては、祭りや行事といった伝承母体としての家というのは揺らいでいるのに、なぜか、現代社会においては、一人親という問題に関して家由来の縁切りという文化が残っているのに愕然としております。
母親単独親権者が増えている一方で、我が子に会えない母親が増えているとも言われております。従前の監護状況によって監護者が決められているのであれば、母親による面会交流の申立ては増えるはずはなく、減るはずではないかという仮説を立て研究をしております。今回は、我が子と引き離される母親についての話を取り上げていきたいと思います。
現在、家裁を利用している人々からは、家裁はうそが通る、証拠を出しても考慮してもらえないなど、様々な悪評を聞きます。国会での答弁におきましては適切に審理されていると繰り返されておりますが、ブラックボックスな家裁と言われることがありますとおり、密室の審理であるため客観的な検証が難しく、誰かが声を上げても個別の事案として一蹴されてしまう現状があります。
しかし、個別の当事者の話も研究の蓄積によって客観的なデータになり得るということはこれまでの他の当事者研究からも明らかであり、日本の近現代史における歴史的な観点も踏まえていくという点で私の専門分野は親和性が高いと考えております。
我が子と引き離される母親たちというのは、アンコンシャスバイアスによって同じ立場の父親たちからも偏見の目を向けられることもあり、弱い立場に置かれております。産後すぐに追い出された、専業主婦で追い出された、共働きの家庭で、お父さんたち同様に仕事から帰ったら家がもぬけの殻であったなどなど、従前の監護者であった子供たちを連れ去られたお母さんたちは、精神的にも肉体的にも、また金銭的にも追い詰められていることも多く、話を集めることは難しく、研究としてはなかなか進めるのが難しい現状もあります。
しかし、断片的ではありますが、現在進行形で起きている我が子と会えない母親の存在を浮き彫りにすることによって、その背景にある単独親権による子供の奪い合いと面会交流の現状、関与する司法の現状についての一端を明らかにし、今後への手掛かりにしていただきたく存じます。母親の現状を明らかにすることは、また、母親より何倍も多いお父さんたちの現状の理解にも通じると考えております。
今回の民法改正に関しては、まだまだ不十分であり、改善していただきたい点は多々あります。しかし、日本的な縁切り文化の意識を変える第一歩にはなるものと信じております。
まず、資料の方、一から見ていただきたいと思いますけれども、資料一の一、グラフ一、二に関しましては、既によく知られている離婚件数に関しての統計データをグラフ化したものですので、そこは飛ばさせていただきます。
今回使いたいのは資料一の二からになりますが、ブラックボックスな家裁と言いましたけれども、家裁というのは、プライバシーの問題ということで、情報はほとんど公開されておりません。司法統計のデータはありますが、大枠しか見えていないため、数字などのデータだけはもっと公開してほしいと研究する立場から思っております。また、是非利用者アンケートなど行っていただきたいとも思っております。今回用いた数字も、実は一般公開されているものではありません。仮説を基に様々な資料を探し、最高裁判所に問い合わせて入手することができた資料になります。元の資料に関しては資料一の四として添付しておりますので、そちらを御覧ください。
こちらの資料を基に作ったのがグラフ三、四になります。私の方では母親についての言及が中心となりますが、我が子に会えない母親が増えているのではないかというふうに言われておりますけれども、このグラフを見ていただきますと、母親による面会交流の申立て数は実は増えておりまして、現在、母親親権者数が増えており、父親親権者が減っている中で、減少していないという現状が浮かび上がってまいりました。すなわち、我が子に会えない、父親親権者が減っているにもかかわらず、我が子に会えない母親たちは増えていることになります。
じゃ、こうしたことがなぜ起きているのかということに関しましては、背景について三以降でお話ししたいと思っておりますけれども、一番大きな理由といたしましては、資料、グラフの四のところに丸で囲みましたけれども、二〇〇九年以降数字が増えております。これを微々たるものと捉えるのかどうかは人によって違うかもしれませんが、それまでの毎年一%程度の増えだったんですけれども、二〇一〇年から約二%ずつ、約倍増えていくことになっております。
なぜ、じゃ、そういうことになったのかということを、私の方で歴史的な状況どうだったのかということで調べてみたところ、資料二、三などにありますとおり、増加が見られる背景としては、日弁連が日弁連六十年誌というものを公開しまして、そこで単独親権による子供の奪い合いですね、それから親権を奪われたら子供に会えなくなるというようなことを公開した、これが大きいのではないかというふうに思っています。
逆に言えば、父親でも先に連れ去ったら親権を獲得できるということで、父親による連れ去りが行われるようになり、こうした数字にその結果が表れているというふうに思っております。更に言えば、連れ去り勝ちによって親権を獲得する裁判所の運用実務、これが可視化されたということになってくるのではないかなというふうに思っております。このように、従前の監護者であった母親であっても、一たび連れ去られてしまいますと、男女平等によって監護者になれないだけでなく、会うことさえもままならない状況に陥ります。
本来は話合いの場のはずであった調停が、司法制度改革によって、二〇〇四年以降、家庭裁判所へ人事訴訟、すなわち離婚裁判が移管されました。そういたしますと、訴訟を見据える対立の場に家庭裁判所が変わったと、これも司法制度改革の影響として言われるところでございます。さらに、民事から家裁ということで、地方裁判所から家裁ということで、全く客観的な検証ができない密室の審理の場に変わってしまったということもあるかと思います。さらにもう一つ、これも言われていることなんですけれども、代理人弁護士が付く事例が増えたことによって、そこがまた更に追い打ちを掛けたのではないかと、そういうようなことも言われております。
ただ、家庭裁判所の調査官や調停委員、弁護士の方などと話をしますと、真摯に対応されている方たちがいるというのもよく分かっております。しかし一方で、子供のためになっているとはどうしても思えないような話も多数聞こえてきます。
代理人が付くということは、やはりそこには勝ち負け、勝負というものになってまいります。そうすると、依頼人を勝たせるという勝負になってしまうので、依頼人を勝たせるためにはどうしたらいいのか、相手をおとしめる、そうした状況が出てまいります。そうしたことによって一層親子の断絶が進んでしまっているということが母親の立場においても見られるようになったと思います。
更に言えば、単独親権以外に葛藤を高める要因の一つとなっていますのが民法七百七十条のその他婚姻を継続し難い重大な事由、有責主義などとも言われておりますが、離婚に際し親権者指定を獲得するため、悪質な場合には子の連れ去りや追い出しを行い、親権者としての優位性を手にするために相手を悪者にし、相手をおとしめて自分を有利にするということで使われております。
是非、今回、そうした葛藤を低めるために、今回の民法改正では取り上げられませんでしたけれども、一九九六年の民法改正要綱案で提案されていた破綻主義などに対しても今後議論として考えていただきたいなというふうに思っております。
では、そうした我が子と離されている母親の面会交流の現状について、次に資料からお話をしていきたいと思います。
資料五に関しては、母親が審判で決まっても会えなかった事例ということで、これは「家庭の法と裁判」に挙げられている資料です。御覧ください。
そして、資料六に関しましては、従前の監護者であり共同親権中の母親が監護権を取り戻せないだけでなく、我が子に会えない現状について挙げております。こちらの方もお読みいただければというふうに思います。
家裁での調停や審判が決まっても交流ができない状況に関しまして、続いてお話を少し挙げていきたいと思います。
親権を父親、監護権を母親に分属して離婚後に面会交流をしていたが、ある日、親権者の父親に子供たちを連れ去られ、その後会えなくなってしまった。何が起こったのか、どうしていいか分からないうちに元夫の再婚相手と養子縁組されてしまった。こういう人たちが何人もおります。日本人男性と日本で結婚し、子供を連れ去られ、子供と会えなくなってしまった外国籍のお母さんたちも何人もおります。
目の前で子供たちを車に押し込められ、連れ去られ、しばらくしてやっと試行面会で子供たちに会えたときにママのこと大嫌いと言われるも、そう言わないとママに会えなくなっちゃうからと練習してきたという幼い子供たちの悲痛な声なども聞こえてまいります。連れ去られた直後、子供たちは、ママに会いたい、そういうことを言う子供たちは多いです。しかし、連れ去られてしばらくたってくると、ママ大嫌いというような言葉を発するようになります。
資料六のAさん、資料七の一にも詳しくあるので見ていただきたいですが、幼い子供がママをくそばばあと言うような、そういう状態に陥っております。これは監護者が子供にそうさせているということは明らかであり、家庭裁判所がこの状態を問題ないとみなしている現状は異常ですし、こんな状況を放置している家庭裁判所自体が児童虐待に加担していると言っても過言ではない状況にあります。Aさんの場合、夫自身が不貞している有責配偶者です。まだ離婚していない共同親権下ですが、子供たちと五年会えていません。ママのことを嫌いと言っていた子供たちがいつしか引きこもりとなり、不登校になるといった悲しい事例もたくさんあります。子供の奪い合いが子供たちに影響を及ぼしているという話がたくさんございます。
資料七の一から七の三に関しましては、こうした母親でさえも我が子たちに会えない状況に関しまして海外のメディアで取り上げられているという事例です。
今お話ししましたとおり、家裁で決まっても会うことができません。すなわち、面会交流の権利性がない。更に言えば、法の支配がないという状況にあります。今回の法改正がそうした状況に対してどの程度寄与するのかというのは分かりませんけれども、是非そうした問題に対して何らかの制度設計やガイドラインの方をお願いしたいというふうに思っております。
最後に、もう時間ありませんけれども、制度設計を考えるための仕組みの基礎資料として幾つか挙げておりました。家庭裁判所の充実や行政の支援など様々に提言されていますが、法律を業としていない立場だからこそ、少し忌憚なく、思い付くままに述べさせていただきます。
家裁の充実が問われておりますが、資料十は、一九八〇年、事件が少なかった時代に家裁調査官が後見的機能を果たしていた記録です。家裁の充実には、裁判所定員法など他の法改正が必要になってきますし、また、ただ増やせばいいというものではなく、後見的役割が重要です。増大した事件数からいって、同じことを期待するのは難しいため、家裁以外の機関や職種との連携が必要になってくると考えます。
子供手続代理人の活用も言われていますが、子供の意思を適切に聴取するためには心理職などの関与も求めたいところですが、家事事件手続法に子供の意思とあることにより法律事務とされてしまうため、弁護士にしか関与が許されないのでしょうか。心理職や支援機関や第三者の関与といったときに問題になってくるのは非弁行為であります。また、ADRの利用などもありますが、このことに関しても、別の法制審を立ち上げないと利用することができないのかなどなど考えていただきたいことはたくさんあります。
親教育や共同養育計画の作成などが重要な課題となってくると存じますが、行政や支援機関を始めとして関与する体制について、改めて非弁行為などの問題を踏まえて捉えていただく必要があると考えています。
最後に、今回の民法改正は子供のためと言われております。その一方で、親権は親による選択という視点でしか語られておりません。法によって強制的に親権を剥奪されてきた現行の強制単独親権制度下においても、親に捨てられたと捉える子供たちがいます。民法改正で最終的にどうなっていくのかは分かりませんけれども、親に捨てられる、子供たちにとってこれ以上残酷なことはないと私は思っております。是非、そうならないように、きちんと判断できるように、そして子供の意思、子供の涙を減らすようにということで、改めて子供たちの未来のための法改正としていただくようにお願い申し上げて、終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/139
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140・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
次に、熊上参考人にお願いいたします。熊上参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/140
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141・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 和光大学の熊上と申します。
一九九四年から二〇一三年まで十九年間、家庭裁判所調査官として、北海道、東北、関東の五か所の家庭裁判所で勤務し、少年事件、家事事件、従事してまいりました。大庁でも支部でも勤務しておりました。困難な状況にある子供たちのために仕事をしてきたつもりではございます。二〇一三年から大学研究者をしております。
本法案での共同親権は、子の転居、教育や医療について、双方の合意がないと子供は希望する進学や医療を受けることができない、父母の合意が必要ということは、一方の共同親権者が拒否すれば、急迫の場合以外は子供が進学や医療を受けることができず、言わば一方に拒否権を与えるものであり、子供にとって不利益なものではないでしょうか。
そもそも、合意のないケースで共同親権を家庭裁判所決定にすることが子の利益になるのかという説明は政府からなされていないことも重大な問題です。また、本法案について、離婚後もパパもママも関与できることが子の利益と政府は説明していますが、現行法の民法七百六十六条でも別居親の子供への関与は可能であります。子の監護に関しては父母の協議で定め、協議ができなければ家庭裁判所が決定するということができるということになっております。
そもそも、本法案の共同親権は子の利益となるのでしょうか。まずは子供たちの声を聞くべきです。子供自身の意見や意思を抜きにした子の利益は成り立ちません。子供たちのことを子供抜きで決めるべきではありません。ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことを私たち抜きで決めないで。この言葉は国連障害者権利条約の障害者の人々のスローガンでしたが、同じことが子供に関する法制度にも言えます。そもそも、離婚家庭の子供たちは共同親権を望んでいるのでしょうか。
配付資料一ですが、これは、二〇二四年三月二十九日、国会議員会館内で院内集会における子供たちの声です。子供たちの声、幾つか紹介します。
十六歳。これ、僕たちにデメリットしかないのでは。何かにつけて両親の許可が必要って、面倒なだけ。何か提出するのに期限に間に合わなかったら国は責任取れますか。今は一人の親権者のサインでいいのに、共同親権になったら面倒だし、誰も得しないじゃないですか。
九歳。共同親権に反対です。お父さんとお母さんが離婚前の別居中に僕の手術が必要になったとき、お父さんが嫌がらせでサインしてくれなかったと聞きました。病院にお願いしても、両親のサインがないと駄目だと言われて、数か月手術が延びたそうです。
十六歳。離婚時に、兄の私立高校をやめさせろと父から児童相談所に要請がありました。理由は養育費が掛かるからだそうです。共同親権になったら、今の高校も続けて通うことができるか分かりません。どうか助けてください。
子供たちの声として、私の知る限りでは、進学や医療、転居で双方の合意が必要な共同親権を望むという声はありませんでした。離婚家庭の子供たちは、進学などで双方の許可が要るという共同親権は望んでいないのではないでしょうか。本法案に子供の意見表明権や意思の尊重が含まれていないことも問題です。
資料二の英国、イギリス司法省、二〇二〇年文献レビューでは、子供の声を聞くことは子供の権利であり、子供にとって本質的な価値と利益であり、法的な評価システムに子供が参加することで子供の自尊心が高まり、子供がエンパワーメントされ、子供が自分をコントロールできる感覚を持つことができ、逆境への対処力が高まると、子供への参加を認めることは子供の重荷とは対立しない、子供は決定権ではなく意見を尊重されることを求めていると記されています。
配付資料三です。
私、熊上は、面会交流をしていた子供、十五歳から二十九歳、二百九十九人、していなかった子供二百五十人への調査をしました。子供たちは、面会交流の有無にかかわらず、子供の意思が尊重されないと、つらさ、苦しさ、怒り、憎しみなど心理的負荷が多く回答され、書きたくない、思い出したくないという拒否的な記述も多く見られています。子の意思の尊重は必須なのです。なぜなら、子供たちのことを決める法案だからです。
次に、本法案では、家庭裁判所が単独親権とする条件として、DVやそのおそれを、双方話合いが困難であるときとしています。家庭裁判所がDVやそのおそれを判断できるのかという問題があります。残念ながら、家庭裁判所はDVを完全には認定、除外することはできていません。
資料四です。
法制審第二十回に提出された、最高裁判所宛て、家庭裁判所の手続を利用した人への調査結果です。これは家庭裁判所の手続を利用した千百四十七人の調査結果です。その一部を紹介します。
家裁の調査官によく話を聞いてもらったという声もある一方で、家庭裁判所の調停において、元配偶者はDVをしていないと言っているから、していないんでしょう、それはDVは二、三回だったんでしょう、年に四回ほどの暴力は大したことではない、暴力は一回だからやり直してみたらと言われたり、面会交流との関係では、DVは子供にはなかったから、養育費払ってほしければ面会交流しなさい、子供は両親が好きなものと言われたという経験が記されています。
こうしたケースで、面会交流が家庭裁判所でDVが完全に除外せずに実施され、結果的に子供が体調を崩したり、おねしょや自傷行為、夜驚などをするケースもあります。私の知るケースでは、自分の存在に自信がなくなり、他人を信頼できず、他人と接するのがもう怖くなったという子供もいました。このように、DVが除外できず、家庭裁判所が決定すれば子供の心身に深刻な負の影響を及ぼすのです。
次に、DVが家庭裁判所で除外されず、四歳の子供が命を落とした家庭裁判所伊丹支部のケース、配付資料五、六の新聞記事です。
面会交流は、DVや子供の虐待ケースについては面会交流しない、除外することになっていますが、このケースでは、同居親、母親は、物や家具を投げられたり、部屋の壁に穴が空けられたり、夜中にたたき起こされ、おまえが悪いからやと言われていました。こうした状況の写真を家庭裁判所で示しても、元夫から写真は合成と言われて、否定されていたそうです。
調停委員から、父母なんだから子供のことを考えたら連絡を取らないといけないのではないかと言われ、それまで直接連絡していませんでしたが、父母が直接連絡していませんでしたが、調停委員に言われてそうしなければならないと思ったとLINEを交換し、翌日から長文のメッセージが毎日届き、元夫がいつ来るか気が気でない状態になり、調停後初めての面会交流の日に子供が殺害された。
このように、家庭裁判所でDVを完全にしっかりと除外することができず、悲劇が起きている。しかし、まだその検証もなされていません。
家庭裁判所の実務では中立的な立場で双方の陳述を聞きますが、伊丹のケースのように、ほとんどのケースでは、一方がDVを訴え、一方が否定します。例えば、長時間説教されたとの主張に対して、じっくり話し合っただけだとか、投げ飛ばされたという主張に対して、興奮していたから止めようとしただけだなどと述べ、お互いの世界から見える景色が違う、これがDVのケースの特徴です。二つの世界があるので、家庭裁判所がDVを認定、除外するというのは非常に困難になります。
そして、DVを除外できず、子供の命が犠牲になったり子供への負の影響が出ることは、日本だけでなく海外の家庭裁判所でも共通の課題となっております。
資料七は、米国、センター・フォー・ジュディシャル・エクセレンスの報告。この資料は、子の監護紛争で子供が亡くなった十二ケースの分析ですが、こちらの五ページに、家庭裁判所がDVや子供への虐待のサインを軽視したというふうに記載されています。
資料八は、イギリスのウーマンズエード二〇一六年。十九人の子供が裁判所の子の監護紛争で亡くなったケース分析ですが、同じく家庭裁判所がDVを除外せずに面会交流を決定したことと分析してあり、これは世界的な課題でもあります。
面会交流と親権は別問題ではありますけれども、こういった問題が起きないか懸念されるところです。
養育費についてです。
本法案では、法定養育費については、金額は明示されていませんが低額というふうに見込まれています。先取特権があると言いますが、そもそも差し押さえできる給与や財産がない人もいます。
私は、家庭裁判所の調査官の在職時に養育費の履行勧告を担当していたことありますけれども、そもそも養育費を払いたくない人が多く、また、決まっても履行しない、払わないなどと言い、その背景には元配偶者への感情的なもつれがあります。結果として子供が困窮します。
少年事件、これは、養育費の支払がなく、同居親、多くは母親が生活苦のために昼も夜も働いて、結果的に子供が放任されて非行に至るという、そういう少年事件も多いです。
海外では、面会交流を促進すれば養育費の支払率が高いと紹介されていますが、例えば米国では養育費の支払率は約七〇%とされていますが、その理由として、養育費を支払わないと運転免許証やパスポートの停止など、そういった制度があるからであって、諸外国の養育費制度を考慮せず、面会交流の下、養育費支払率を関連付けることはできません。
海外で行われている養育費の立替え、徴収などの制度はなぜ取り入れられないのか、同居親が別居親の合意を得る制度としての共同親権だけがつくられ、なぜ別居親の養育費不払はそのままなのか、非対称性が著しい、不平等性がある、子供及び同居親が困窮のままになってしまうというふうに考えております。
共同監護についてです。
父母が互いにリスペクトし、子供の意向を踏まえて協議できれば、子供にとって双方から愛されていると感じ、子供に好影響です。しかし、父母が対立し話合いができないケースで家庭裁判所が共同での親権や共同監護を命じると子供は幸せになるんでしょうか。また、スケジュールどおりに子供が父母間を行き来する共同監護計画は子供の利益になるんでしょうか。
これについて、米国の離婚家庭の子供を二十五年間長期にわたって追跡したワラースタイン博士の古典的研究があります。資料九のワラースタイン博士の「それでも僕らは生きていく」、以下のように述べられています。
ポーラの父親は、月に二度、週末の金曜日の放課後から日曜日の六時まで子供たちを預かることになった。長い休暇は毎年代わりばんこに過ごすことになった。その後、三年間、ポーラとジョーンはまるでタイムカードを打つ工場労働者さながらにこのスケジュールを遵守させられた。ジョーンは友人との付き合いや学校の活動が犠牲になることにいら立ちを感じ、父親と自分の生活に干渉してくる裁判所に激しい怒りを感じていた。姉のポーラは、幾つになったら父さんとの面会は拒絶できるのと。だって、行かなくちゃいけないんですもの。ばかな判事がそう言ったのよ。月に二回と、七月は丸一か月よ。七月なんか大嫌い。最悪だわ。去年の七月はずっと泣き通しで、何でこんな罰を受けるんだろうと考えたわ。私がどんな罪を犯したっていうの。
そして、ワラースタイン博士は、研究対象の離婚家庭出身の男児は一人残らず自分たちの子供に同じ経験をさせたくないと語っていました、自分の子供には二つの家を行き来させたいと言った者はいませんでしたと指摘し、離婚していない家庭の友達が週末や休日の過ごし方を自分で決定できるのに比べ、いや応なしに行くべき場所を決められ、存在を軽んじているような気分になることだったと述べています。
子供たちは安心した環境で育ち、子供は自由に生きてよい、同居親とあるいは別居親との信頼、愛着関係の中で、子供は行きたい学校に行く、行きたい病院に行く、やりたいことをやりたいと言い、嫌なことを嫌だと言うことができ、会いたいとき、子供が会いたいときに会えることができ、会いたくないとき、会いたくないときや友達との都合を優先したいときにはそれが尊重される、そのような子供が安心して過ごせる環境整備が子の利益であります。進学や医療で合意がもらえないかもしれない、家裁にその都度行かなければいけないかもしれないと、子供を不安にさせたり諦めさせることがあってはならないのです。
これまで述べてきたように、非合意ケースにおいて、対立する父母の下で意思決定ができないことが生じれば子供の利益にならず、家裁がDVを除外することは困難であることから、共同親権を導入するにしても、子供の意見を尊重することを前提に、父母が対等に合意したケースに限って認めるべきでしょう。
本法案は、以下のとおり修正しなければ廃案にするべきと考えます。
非合意ケースは原則的に単独親権にする。子供の意思の尊重を明記する。共同親権の場合も、子供の進学や医療のために別居親の合意を得る必要がないように監護者指定を必須にする。これによって子供が安心して生活でき、子の利益にかなうのではないでしょうか。法案が子供を泣かせるようなことがあってはならないと考えます。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/141
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142・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/142
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143・田中昌史
○田中昌史君 自由民主党の田中昌史です。
四名の参考人の皆様方、今日は大変ありがとうございます。
今お話を聞いていて、DV、虐待、それから子供の強奪、こういった事例はできるだけ早くなくしていかなきゃいけないと、心の痛む事例をお聞かせいただいてそう思った、強く思った次第であります。
今回の改正案の中で、社会一般あるいは国民全体のやっぱり共通理解とかいうのは非常に大事だというふうに私は思っております。
今回の附則、改正案の附則でも、親権の決め方ですとか、あるいは急迫な事情の在り方、あるいは監護や教育の在り方等については、法の趣旨も含めて国民への周知を図るというふうになっているんですが、その前提として、家族の在り方ですとか、子の権利あるいは親の義務、こういったことについて、現状、日本社会での理解というのはどうなっているのかというのは、それぞれ四名の参考人、どうお感じになっていらっしゃるかというのをまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/143
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144・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) それでは、水野参考人から順番でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/144
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145・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 日本社会の理解でございますけれども、伝統的には非常に優しい育児をする民族であったというふうに言われております。ですから、幕末などにやってきた西洋人たちが日本人の優しい育児の仕方について非常に感動して残している記録が幾つもございます。
今度、体罰の禁止を民法の条文に入れましたけれども、どうして体罰の禁止が入れられたのか、そんなことが可能だったのかと私は台湾の専門家から質問を受けました、とても入れられないだろうと思うと。私は、そのような背景には日本人のそういう優しい育児の伝統があるというふうに考えております。ただ、体罰が日本の社会に広まってしまったのは、やっぱりファシズム期に軍隊の中の暴力的なものが学校教育を通じて広がったのではないかという仮説がありまして、少しそんな気がしております。それでも、まだそういう伝統は底流では残っていると思います。
そして、子供のために両親が、今度の改正案の条文、きちんとその辺りについては文言に書いたはずでございますけれども、子供の健康な成長を図るために両親ができるだけのことをするという意味では、大きなコンセンサスは日本の社会の中にあるのだと思います。
ただ、問題事例が生じた、そういうことが冷静にできない親があったときに、その子供を救う体制が日本は非常に脆弱である、ここが問題だと考えております。
短く答えなくてはならないんですが、例えば同じフランスです。私、フランス法の調査にも参りましたけれども、アウトリーチで幼稚園に児童精神科医が定期的に参ります。子供たちの様子を保母さんたちと、先生たちと話し合って、この子はちょっと問題があるということ、その子について調査が入ります。そして、調査が入り、親に、あなたの育て方はちょっと問題があるのだけれど、私たちがケースワーカーを派遣するから協力しないかというふうに言いますと、もちろん、そうなんです、つい私、手を上げてしまうんです、だから教えてもらえればと言えば、そこで契約ベースで結構です。しかし、ほっといてくれと言ったら途端に検察官に連絡が行きます。そして、児童親権制限判決が申し立てられます。そして、それが約年間九万以上ございます。日本の親権制限判決というのは実はございませんで、親権喪失判決が二桁、親権停止判決がやっと三桁に上ったところです。
こういうふうに背景の事情が全く違っております。そのことについて御理解をいただいた上で、しかし、一朝一夕に変わるものではございませんので、どういうふうに子供たちの福祉を図っていくかということをまさに議員の先生方には幅広い視野でお考えいただければと思います、日本の社会に欠落しているものを。
私は、言葉や理念をいじることによって、もちろんそれも、概念も言葉も理念も非常に大きな力を持っておりますけれども、我々の社会は約百年余り前にやっと権利とか義務とかいう言葉を作って、民法典を作ったばかりでございます。そこで作られたばかりの言葉をいじることによって我々の社会が簡単に変わるとは残念ながら思っておりません。もっと、社会の変化は、社会が持っていた安全弁は急速に、村社会、かつての村社会が持っていた安全弁は急速に失われていって、我々の社会に必要なそれに代わる安全弁を組み立てなくてはならないのだと思っております。
済みません、長くなりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/145
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146・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
家族像とかその子供の権利といったところについて、実務に携わっておりますと二つ思うところがございます。
まず一つ、考え方としてその質問をすると、そうだよねと、子供の権利大切だよね、夫婦は平等にきちんと話し合わなくちゃいけないよねという答えが結構返ってまいります。ところが、例えば離婚の紛争でも児童相談所が絡む案件でもそうですが、実際にどういう生活をなさっていましたか、今この先どうしたいですかと聞くと、結構そこまでに行っていらっしゃらない方というのは結構出てくる。
その背景には、ここからは推測ですけれども、やはり御自身がどのような環境で生活なさってきたかというところの生活、いわゆる生活歴とかに基づく影響というのがかなり大きいのではないのかなと思います。その意味でいいますと、その必要な変革というものにはそれなりな時間を要するのではないかというところであります。
その変革のためにも、こういった国会等でこういったことが真っ正面から議論をされる、この議論については社会の注目も大きく集めているというところだと認識をしております。そういったことの一つ一つが市民の全般の認識を変えていくきっかけになっていくんだろうなと、このように考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/146
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147・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 私、日本の歴史の中で見ていったときに、家族の在り方というのは本当にその時代時代で変わってきていると思います。
先ほども少しお話ししましたけれども、かつて日本は家父長制、明治期にありました家制度の下に家父長制による父親単独親権でしたけれども、それが戦後の民法改正におきまして母親も親権者となることができるとなり、その中で、昭和二十二年でしたか、そこから母親親権者が多くなっていくのは一九六〇年代です。つまり、そこまでまた意識が変わるのに時間が掛かっております。
ですので、そうした時代の流れの中で、法律があることによって意識が変わっていく。これまでは、単独親権の下、親子の縁切りというような意識が続いておりましたけれども、今回の改正によってそうした意識がまた変わっていくのではないかと、子供のためにそうあってほしいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/147
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148・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 本法案が国民に周知されているかということなんですけれども、三月に署名を内閣府に、この法案の、やめてほしいという、六万通ぐらい出しに行きました。衆議院の議論があって二十三万人に増えました。ようやく国民も、えっ、こういう法案なんだと。つまり、どういうことかというと、例えば、双方の合意がないと子供と一緒に転居できないんだとか、特別支援学校入るのに事前の許可が、双方の許可が要るんだとか、そういうことをやっとつい最近になって、衆院の議論があって増えてきた、国民の周知もやや高まってきた。まだまだ十分ではないです。
国会議員の方ともお話ししますが、地方議員の方にレクチャーすることがあります。地方議員の方も知らない方が多いです。えっ、離婚後もパパもママも関与できるからいいよね、選択できるからいいよね、それは間違いではない、選択もできるわけなんですけれども、合意していなくても家庭裁判所が決定することもあるんですよとか、先ほど言いましたように、双方の合意がないと子供と転居できませんよということを言いますと、地方議員の方も非常に驚かれます。
まだまだ国民への周知というのは十分ではないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/148
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149・田中昌史
○田中昌史君 ありがとうございました。
周知も含めて今後しっかりとやっていかなきゃいけないんですが、こういったDVや虐待、あるいはこの強奪といった、こういった不幸な事例を起こさないような法律あるいは社会のシステムというものをどう考えていくのかということは非常に大きな課題。先ほど水野参考人もおっしゃいました村社会の代替、壊れていった状況の中で、それに代わるシステム、地域の中で多くの皆さん方が支えていく仕組みというのをこれ今後どうやってつくっていくのかという部分は、多分周知だけではそう簡単に変わっていくものではないんだろうというふうに思います。
それに寄与するような法制度の在り方というものを今後も考えていかなきゃいけないというのはありますし、今後、法施行の、二年後の施行までに、そういった部分で対応できるところがあればしっかり対応していかなきゃいけないなというふうに思ったところであります。ありがとうございます。
続きまして、水野参考人に伺います。
先ほど、DVとかのおそれがある場合については裁判所が単独親権に決定すると。これ、午前中の審議でもあったんですが、おそれというのをどうやって客観的に判断するのかということも取り上げられて、先ほどの御意見の中では、やっぱり総合的な部分で全般的に判断すべきだというふうに主張されたという話、意味だったというふうに思います。
その上で、であるならば、やっぱりこの裁判所の裁判官の判断のばらつきをどうやって最小限にするかということというのは、私は極めて大事なんだろうというふうに思います。これ、総合的に広げて、なおかつ裁判官の判断のばらつきも広かったら、これ、どこに行くか分からないという部分では当事者は非常に不安に思うんじゃないかなと思うんですが、この裁判官の判断のばらつきを極力抑えていくためにはどのようなことが必要かということを、お考えをお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/149
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150・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
非常に重要な御指摘をいただいたと思っております。
私の報告の中でも申し上げましたように、日本は個人がいきなり家庭裁判所で闘わなくてはならない、そこがいきなりの闘争の場になって、そのこと自体が非常に問題なことなのだと思います。
DV被害者は、ともかく助けてくれと手を挙げれば、それは社会がいろんな形で助けてあげるという体制が組まれていなくてはなりません。しかし、それが裁判という、対等な当事者が法という武器を用いて闘うという場面にいきなり行かなくてはならないわけですが、それは、弱者がそういう場でいきなり闘えるかという問題がございます。
そして、裁判官のばらつきと申しますけれども、それも、やはり日本の場合には裁判官の数も限られておりますし、司法が万能だとは思っておりません。しかし、家庭裁判所以外が、じゃ、そういう判断を最終的にできるにふさわしい場所があるかというと、それはやっぱり最終的には家庭裁判所でならなければならないのだと思いますけれども、それ以前にたくさんの行政的な支援がDV被害者やあるいは被虐待児童のために提供されている必要があると思います。
そこの部分が手厚ければ、行政の支援が手厚ければ、その問題はおのずから、委員、議員が御危惧なされた部分の大きな部分は解消されていくものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/150
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151・田中昌史
○田中昌史君 ありがとうございます。
やはり行政の支援というのはしっかりと拡充していく必要があるというのは、先ほど来お話を伺っておりますと強く思ったところであります。
次に、浜田参考人に伺います。
先ほど家裁の判断が何じゃこれというようなケースもあるというのをお聞きになって、実際に実務に携わっていらっしゃる浜田参考人はどう思っていらっしゃるのかということと、それからもう一つは、この監護をしていくに当たっては、この親権を定めることについてもそうですし、監護、日常的な監護と急迫の監護というのはこれから具体的に決まっていくものと思うんですが、御意見の中でおっしゃっていたとおり、やはり具体的な基準を定めていく必要があるということであると思うんですが、先ほどの実態的に判断がどう考えてもちょっとおかしいのではないかというような事例が浜田参考人の経験からもあるのかということと、それを具体的にこの基準に落とし込んでいったときに、基準に落とし込むということは逆に狭まるという話なので、多様性があったときにその柔軟性がなくなるというデメリットも私はあるんじゃないのかなというふうに思うんですが、その辺りのお考え、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/151
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152・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
まず、裁判と申しますのは、もう御承知のとおり、証拠に基づいて裁判官が自由な心証の下に判断をするというところがございます。ですので、全てのケースにかちんと予想どおりになるものでもなく、ましてやその基準を当てはめるわけにもいかないという限界がまずもってございます。
私もいろいろ事件をやってまいりまして、びっくりするような負けの判決をいただいたようなこと、これ家庭裁判所にとどまらずございます。そのときには、ただ、やはりその証拠をどういうふうにこちらがお示しすることができていたのかといったところがむしろ私どもの反省ポイントとして残るところ、もちろん、そういったときには、上訴審において再度その判断を求めるということでリカバーを図るしかないというところがございます。びっくりすることは率直に言ってございます。
日常のことでありますとか、その急迫の事情ありやなしやといったところについて、その基準とか考え方をというふうに申し上げました。これは、法施行からある程度の日数がたちますと、その間の裁判例の蓄積が出てまいります。そういたしますと、大体裁判所の考えることはこうだよねというところ、ある程度分かってくるようになるんだと思います。
問題は施行直後で、例えば裁判例等が公表されない中でどのように判断をできるのか、そういったところについて、先ほど申しましたような、国の方である程度こういった考え方をベースにしているんだよということをなるべく詳しめにまずはお示しいただくことによって、それは後々の定立された裁判基準で変わってくるやもしれませんが、まず最初数年間をこれで過ごしてみようぜというところをお示しいただけると有り難いなと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/152
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153・田中昌史
○田中昌史君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/153
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154・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民共同会派、社民党の福島みずほです。
今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、午前中でもあったんですが、非合意型共同親権の問題で、合意できないというのは、もう基本的にやっぱり話をするのが難しいのではないかと思っています。子供の教育方針めぐって二人が言い争いをする、紛争が起きている、離婚して、それがうまくいくというのは本当に考えられない。
そこで、熊上参考人にお聞きをいたします。合意できないケースで共同を命ぜられた場合の子供の心理や問題点、あるいは、なかなか、それが本当に紛争を激化していくということについていかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/154
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155・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 合意できないケースで家庭裁判所が共同親権を決定した場合、子供はどうなるかというと、ああ、僕はこの高校行けるのかなとか、俺、これ別居をしている親の許可を得なきゃいけないんじゃないかとか、許可得られなかったら高校とか行きたい学校へ行けないんじゃないかとか、手術もそうですけど、この病院で手術受けたいんだけど大丈夫なんだろうかと、物すごく不安になると思います。
じゃ、それは家裁でその単独行使が可能かどうか決定できると、こういう立て付けになっているんですけれども、家庭裁判所の調停はやはり申し立ててから何か月も掛かりますし、合意がそこでできなければ審判ということで更に時間が掛かると。子供にとって宙ぶらりんな状態が数か月、一年近く続く。高校へ行けるのかどうかとか手術するのかどうかと、すごく子供は諦めちゃうと思います。ああ、もう僕は、私は自分の好きな勉強できないんだなとか、好きな手術できないんだなとか。
海外の研究でも同じこと言われています。常に卵の殻を歩いている状態だなんていうふうに言われますね、殻の上を歩いている状態だと。自分が何を、自分の勉強ができるのかとか、そういった対立している合意のないケースで共同親権を認めることで、子供が宙ぶらりんになり不安になり諦めてしまう、これを非常に危惧していますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/155
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156・福島みずほ
○福島みずほ君 単独行使できる場合と共同親権で共同でやらなくちゃいけない場合の区分けって実はなかなか難しいと思います。両方に問題がある。
単独行使だと、例えばよく言われる、お母さんはプールに入れていいよ、お父さんは駄目と。キャンセル権を例えば別居親が行使する。
共同でやらなければならないケース、例えばパスポートの申告や、それから中絶をする場合の同意ですよね。でも、御存じ、今は余り、共同親権ではあるものの余り社会的には意識されておらず、中絶の場合の親の同意や、それからパスポートの申告もどっちかの親が書けばいい、スマホの契約とか、どっちかの親が書けばオーケーだったのが、これから変わってしまうんじゃないか。
病院側も、いや、これは共同の合意事項が必要だから一人の合意では駄目だと紛争を恐れたらなってしまうので時間が掛かってしまう。一緒に住んでいたらまだ話ができる。でも、離れていて、離婚していて、電話やメールや様々なことで合意を取る、同意を取る、むしろ許可を取るというのはすごく大変で、ストレスだろうと思うんですね。
昔じゃないけど、お父様に聞いてみないと分からないですからみたいな、何か戦前かという話で、結局、家父長制に基づく父権介入、一緒に監護で、あるいは養育費をちゃんと払って子供のことを愛情を持って見守るというよりも、共同親権がむしろ介入権として登場するんじゃないか、それを大変恐れるのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/156
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157・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 今までも、別れても子供のことを二人で相談できる制度にはなっています。
今回の法案では、双方の合意が要るという制度ですから、非常に拒否権になっていると思いますし、また、日常の問題に対しても、プールを入る入らないとかでも、僕はプールに入れるのか、私は入れないのかと、そういった非常に日常生活でも不安定な状況になるということで、子供のメンタルヘルスに及ぼす負の影響というのは大きいものではないかなというふうに思いますので、やはり一定程度のことは監護者がきちんと自分で、監護者が決定することができるというふうにしないと、あらゆる生活場面で、これ許可を得なきゃいけないとか、争いにしなきゃいけない、家庭裁判所に行かなきゃいけないという、そういう子供たちをつくってはいけないと。きちんと監護者がある程度決められるという形にする、監護者指定を必須とするということは非常に重要かなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/157
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158・福島みずほ
○福島みずほ君 結局、共同でやらなくちゃいけないのに単独でやったら、それを後で訴えられたり裁判になる可能性もあると。あるいは、共同でやらなくちゃいけない場合、なかなか進まない。子の氏の変更や、それから例えば同居親が新たなパートナーができて養子縁組を子供とやるなんというのも、これ共同で合意でないといけないので、別居親が同意をしてくれない限りできないんですよね。
おっしゃるとおり、子供の未来をやっぱり狭めちゃうと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/158
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159・熊上崇
○参考人(熊上崇君) これ、子連れ養子縁組で、新しい親と養子縁組するときに、十五歳未満の場合は別居親の合意が必要というふうになっています。でも、対立ケースだったら、もう合意してくれないと諦めちゃうケースも増えると思います、わざわざ家裁に行ってもめているよりもですね。そうすると、新しい再婚家庭においても、進学や医療で別居親の許可が、合意が必要ということになってしまいます。
つまり、再婚家庭に対する、再婚家庭の子供への操作が可能になるということになるんですね。こんな再婚家庭の子供を縛るようなことがあってもいいのかと、こういうふうに思いますね。再婚家庭の子供が新たな家庭で安心して勉強したい、学校行きたいなんというのを考えても、別居親の許可を得なければいけない。非常に再婚家庭の子供たちが不安定になる、そういう問題があるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/159
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160・福島みずほ
○福島みずほ君 家庭裁判所がDV、虐待を除外できるかというのは、今日もすごくそれぞれ話をしていただきました。
DVはやっぱり立証が難しい。私も弁護士でやってきましたが、あざがあったり精神的な疾患がある、いろんな診断書を取ったとしても、それが、じゃ、夫のDVの結果かどうか因果関係が分からないとか、たまたま録音していればいいけれど、殴られたりどなられたりしているときにちょっと録音みたいな、なかなかそういうのないし、その瞬間をビデオで撮るなんというのはあり得ないので、ないんですよ、基本的に。しかも、すごくショックを受けているし、いろんな、DVの本質はやっぱり支配とコントロールに基づく相手の力を奪うことだから、できないんですよね。基本的に証拠はないんですよ。
だから、そういう状態でやはりDVは認定してもらえないケースもあるし、もうそもそも諦めてしまうという場合もある。離婚できればいいから、もうDV主張しないという場合も本当にありました。そうすると、いやいや、DVなどがある場合は単独親権にしますから大丈夫ですよというのは物すごく危ういというふうに思いますが、熊上参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/160
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161・熊上崇
○参考人(熊上崇君) そうですね、やはり写真とかLINEとかがあったとしても、それは、LINEはただ連絡しただけだとか、例えば毎回レシートをチェックしてこれは何に使ったと聞かれるともう耐えられないというような場合が、じゃ、DVのおそれというふうになるのかというと、これは非常に微妙なところかなと思うんですね。
そういった微妙なケースで、DVかどうか、また、そのおそれがあるかちょっと分からないし、共同で話合いも多少可能なんじゃないかなんというふうに裁判所が認定したりすると、共同親権が決定されて、先ほど言ったような子供のその後の進学、医療などの成長場面でそのたびごとに不安になり、あるいは家裁の紛争に持ち込まなければいけないということになりますので、やはりDVあるいはそのおそれというのを要件とするのではなくて、合意ができないと、もう話合いが不可能であると、そういったことを条件にする方が家庭裁判所としても明確になりやすいのではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/161
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162・福島みずほ
○福島みずほ君 諸外国で、非合意の共同監護の家庭裁判所命令というのはうまくいっているんでしょうか。熊上参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/162
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163・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 非合意の、諸外国での非合意型の共同監護ですね、もちろん一〇〇%ではないんですけれども、非常にいろんな問題点は指摘されています。
やはり、子供が嫌だと、子供が行きたくないと言って、イギリスの報告書だとこういうのがあります。子供が行きたくないと言います、週末ごとにとか。行きなさいと言うんですよ、同居親が。行かないとお金を払わなきゃいけない、制裁金を払わなきゃいけないと泣きながら言うんだそうです。それで泣く泣く子供が訪問したりします。そうすると子供はどうなるか。別居親だけでなくて、行かせた同居親も憎むようになる。非常に子供にとってつらいです。両親も憎むことにもなりかねないですね。
ですので、非合意型の共同監護というのは、そういった子供たちを傷つけ、親に対するネガティブな感情も、双方の親に対するネガティブな感情も生じさせてしまう、こういった大きな精神的な負荷があるということがあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/163
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164・福島みずほ
○福島みずほ君 離婚事件をやって、例えば新婚に近い、新婚の頃に殴られたと、その後は殴られていないんだけれども、彼女はいつも寝るときに洋服着て寝ると言っていたんですね。だから、やっぱり一発殴って大したことないというわけではなくて、とにかく一度でも暴力振るわれたらもうアウトで、やっぱり怖いんですよね。ですから、急迫の事情とかDVのおそれといっても、やっぱりそれは怖いんですよ。だから、夫がいないときに家を出るとか子供を連れて出ようとかいうふうに思うわけで、そういうことについて、熊上参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/164
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165・熊上崇
○参考人(熊上崇君) DV、暴力、一度のみならず、回数はともかくとして、やはり非常にトラウマというものが生じてくると、これはなかなか消えない。戦争とかあるいは犯罪被害とかのトラウマも時代とともに軽減するわけではなく続くわけですよね、その場面がどこかに来たりすると。
家庭内のDVにおいてもトラウマが生じ、それで、例えば会ったりするごとにまたトラウマが生じてしまうと。その結果、うつ状態になってしまったり、精神的に参ってしまったりと。そして、もう寝込んでしまったり、仕事に行けなくなってしまったり、そういった非常にメンタルヘルスへの影響がトラウマによって生じてくるということはあるかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/165
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166・福島みずほ
○福島みずほ君 浜田参考人にお聞きをいたします。
親権というのを親の権利とするのを捉え直すべきだとか、子供の手続代理人制度をもっと本当に子供の意思を尊重するような制度やるべきだというのは、それは本当にそのとおりだと思います。
子供の意見表明権、あなたはお父さん取るの、お母さんが好きなのというのではなく、子供がやっぱり、あなたはどう思う、どうしたい、どう、どっちの学校行きたい、どういう未来を考えていると、それはカウンセリングというか、きっちり聞けば子供は自分の意見をちゃんと言ってくれるというふうに思うんですね。
その点、やっぱり私は、子どもの権利に関する条約が子供の意見表明権と書いているから、あなたはどっちだと詰め寄るのではなく、子供を本当に尊重して、あなたのことをみんなが尊重しているよという、それは必要だと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/166
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167・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。今大変重要な御指摘をいただいたと思っております。
まさに御指摘のとおり、子供に詰め寄る、子供を追い込む、子供に決めさせるといったものを私としても考えているものではございません。だから、今委員もまさにおっしゃったように、丁寧な説明をして、君は自由に意見を言っていいんだ、言わなくてもいいし言ってもいいし、君が言ったことについては大人は一生懸命考えるんだよ、なので君の意見を教えてくれないかということを十分な信頼関係の下にお子さんに質問をする。お子さんが言ってくれたらば、それを大人側は一生懸命ちゃんと真っ正面から捉えてきちんと検討する、こういったものが大きな枠組みとして考えられるべきであろうと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/167
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168・福島みずほ
○福島みずほ君 私も、実はその子供の親権、共同親権と思ったり、面接交渉をもっとやるようにと思ったり、今の話の延長線でいえば、子供を見守る、本当に愛情を持って、子供が安心できるという環境をちゃんと見守っているよという大人の数を増やすことだというふうに思っています。
家裁の今のキャパというのは、もう日程、二か月後とか三か月後とかいうので、このキャパなどについて、浜田参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/168
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169・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおりでして、家庭裁判所の混雑状況というのはもう本当に、実務をやっていると、ちょっとどうにかならぬかなと思うところでございます。裁判所の裁判官が増えることも大事ですけれども、それ以外の例えば調査官、それ以外の事務的な役職のところ、その辺りも大幅な増員というのは不可欠だろうと思います。
加えまして、子供に関わる大人を増やすという意味でいいますと、私ども弁護士ももっと積極的に子供に関わることにきちんと手を差し伸べていかないといけないと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/169
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170・福島みずほ
○福島みずほ君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/170
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171・伊藤孝江
○伊藤孝江君 公明党の伊藤孝江です。今日は本当にありがとうございます。
では、質問をさせていただきます。
まず、水野参考人にお伺いをいたします。
先ほどの陳述の中でも、今回の法改正に向けての議論の中で、子供の利益というのを最重要のポイントでというお話があったかと思いますけれども、共同親権を導入すること、特に制度設計の中で、必ずしも同意が当事者間でできていない場合であっても共同親権になり得る可能性がある仕組みを導入をすることについて、子供の利益との関係でどのような整理がなされたのかということについて御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/171
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172・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
部会では、もちろんこの点についても議論はいたしました。法制審議会の部会でかなり議論はされましたが、ともかく全体としては何より子供の利益のための養育の在り方というのが大きな最大の観点でございまして、そうすると、その夫婦の合意というのは必須ではないと考えられました。
部会では、弁護士の委員の方から、両親の合意はないんだけれども、双方の親権、共同の行使が適切であると考えられるような場面が実際にもあり得るというふうなことが指摘されておりました。
例えば、同居親と子供との関係性が必ずしも良好ではないとか、あるいは、同居親の養育にやや不安があるので、別居親の関与もあった方が子の福祉にかなうと予想されるようなケースもあるというふうに指摘されておりまして、現行法では、同居親を単独親権者として、別居親との親子交流をできるだけ充実させるというふうな方策が考えられますけれども、そこに共同の親権という選択肢が入ってきますと、子供の福祉という観点から、より充実した検討が可能になるというふうなことを弁護士の委員が指摘されておられました。
夫婦、父母の協議が調わない理由にはいろんなものが考えられます。したがいまして、裁判所では、父母の協議が調わない理由などの事情を考慮して、そして父母が共同して親権を行うことが困難であるかというふうなことの観点を含めて、その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に判断するということになっておりますので、また、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときというのは、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならないというふうにされておりますので、大丈夫なのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/172
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173・伊藤孝江
○伊藤孝江君 もう一点、水野参考人にお伺いをいたします。
先ほども少しフランスの事例との比較がありましたけれども、参考人が書かれた資料の方も読ませていただいて私もかなり驚いた部分もあるんですが、フランスだと、親権行使への公的介入が日本とは比較にならないぐらいの規模で積極的に行われていると。
フランス民法の育成扶助が、判事とケースワーカーが親権行使を監督する制度で、年間約十万件の育成扶助判決が下され、年間約二十万人の児童が対象となっているということも含めて、もちろんその社会資源をどんなふうに使うのかとか様々な支援制度の違いがあってのこういう結論なので、日本がそのまま今そんなふうにできるのかどうかというと、また全く違うということは理解をしておりますけれども。
今回、その親権の行使というのが、子供のために、子供の利益を考えながら適切に行使をしていくことができるかというところでの様々な立場からの不安がある中で、これから、日本の司法の介入であったり行政の支援であったり等を含めて、この親権行使への介入という点について日本としてはどういうことを課題として考えていくべきではないかというふうにお考えなこと、もしありましたら教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/173
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174・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
議員がおっしゃるとおり、なかなかこの日本でフランス並みの制度を直ちに構築するというのは私も非常に難しいと思っております。
まず、児童事件担当判事というのがフランスの場合には親権制限を担当いたしますけれども、親権制限を受けた子供たちは、自分のことを決めるのは、例えば、僕のことを決めるのはマクロン判事なんだというふうに固有名詞で認識しているというふうに聞きますけれども、日本の家庭裁判所の判事、年間扱っている件数から考えまして、とてもそんなことは無理でございます。
ですから、本来の近代法の構造からいいますと、行政がプライベートなところへ言わば手を突っ込んで、親の意思に反して介入をするわけですから、そのときには司法チェックが要るというのが本来的な近代法の在り方だとは思いますけれども、日本は何しろ余りにも急速な近代化を遂げた国です。
その限界を考えますと、私は、当分は行政を活用して、児童相談所などの人員と、そしてその携わる人々の訓練、予算をできるだけこの子供たちの福祉のために、行政的な支援を手厚くすることによって、そして、弁護士の先生方も児童相談所に随分協力してくださっておられますけれども、司法的なチェックというものを不可欠にするという形ではなく、まず行政的な支援を手厚くすることによってしのいでいくという、あるべき姿に近づけていくということが必要なのだろうと思います。
先ほどから本当に非常に悲惨な事例というのがいろいろと参考人の方から、ほかの、熊上参考人の方などから御指摘されまして、確かにそのとおりなんですけれども、でも、これは、単独親権を維持すればそういう事件が起きないかということは全くございません。むしろ、共同親権下にある婚姻中の、特に夫婦仲が悪くなって離婚を前にした頃というのが一番熾烈な状況だったりいたします。
そして、夫婦が仲よくといいますか、共同して暮らしていても、その両夫婦共に子供の福祉は図れないような親である場合もございます。社会がそういう場合には子供を守らざるを得ず、これはもう今様々なボランティア、子供食堂とか、そういう民間のボランティアも少しずつ広がっておりますけれども、ありものを全て活用するとともに、行政の支援を手厚くすることによって子供たちを守る。その上でも、民法という共存のルールをどちらの方向に向けて、理想の方向へ向けて動かしていくかということなのだと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/174
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175・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
続きまして、浜田参考人にお伺いをいたします。
先ほど陳述をいただいた中で、特に子供の手続代理人についてまずお伺いをいたします。
先ほど資料の中でも、役割ですね、子供の手続代理人に関しての役割として示していただいて、家庭裁判所の調査官とは全く立場も役割も違うという分かりやすい御説明もいただいたところです。
実際、現状、浜田先生、弁護士として代理人をされていたり、また家庭裁判所で調停委員もされているという立場の中で、現状のその親が、両親が紛争状態にある、離婚の紛争状態にある子供に対して適切な現状の説明であったり、今後どんなことが話し合われて、どんなことを決めていくことになってというような、その説明自体をまず子供にきちんとなされている、もちろん年齢によっても全く違うかと思うんですけれども、そういう事案というのはよく見受けられるというイメージでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/175
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176・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
今の御質問は、その子供へ対する説明というのは親御さんからという御趣旨でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/176
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177・伊藤孝江
○伊藤孝江君 親御さんからという場合もあるでしょうし、もしかしたら調停委員なのか裁判官なのか、あるいはまた別の弁護士という立場の方なのか、どなたかから子供に対してそういうきちんとした情報が適切に提供されているのかという点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/177
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178・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) ありがとうございます。
御指摘の点は、私の実務的な経験に基づいたもので申しますと、甚だ不十分であるということではなかろうかと思います。特に、裁判官、調停委員等が子供さんに直接会うという機会はほぼほぼございませんし、調査官は調査官面接の中では会いますけれども、その中でも、その状況の説明を問うということよりかは調査を、命じられた事項についての調査ということになりますので、そこはどうしても十分ではない。
親御さんも、これは良くも悪くもですけれども、どうしてもやはり御自身がその利害対立当事者の一方でいらっしゃるわけですから、そこでの冷静な説明、客観的な説明として、これはもうどうしてもやりにくい。これは、制度上のといいますか、もう立場上の限界だと思います。そういたしますと、例えばそこで弁護士が関与させていただくことができれば、我々から説明しますけどという御案内が差し上げられますが、そういったケースはまだまだ少ないのが現状と理解をしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/178
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179・伊藤孝江
○伊藤孝江君 この子供の手続代理人が子供に付いた場合、子供に対してのそういうケアの部分と併せて、そもそもの離婚紛争に対して何かしらの影響を与えることができるということは想定できるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/179
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180・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) それはできるものだと思っております。
といいますのも、もちろん、先ほど福島委員からもございましたけれども、子供に決めさせるとかそういったものではなくて、適切に子供の立場を説明した上で意見が出てきた、その意見を両方の親御さんにフィードバックすることで親御さんの考え方とか行動の変容を促すことができる。もちろん全てがそうなるわけではありませんけれども、そういったことができるケースというのはたくさんあるものと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/180
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181・伊藤孝江
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
ただ、先ほども課題の中で、この子供の手続代理人が利用件数としてはもう極めて少ないという現実があるという御説明をいただきました。その中で、一つの原因としては報酬の観点というふうにあったんですけれども、報酬以外のところで、じゃ、何かしらの課題があるのか、そして取組が必要じゃないかという観点でお聞きできればとは思うんですが。
例えば中学生、高校生ぐらいであれば、自らアクションを起こして弁護士とかに聞いてみるというのもできるかも分からないというか、理屈上はもちろんできるんですけれども、なかなか現実には難しいというところもあるでしょうし、また、先ほどもありましたけれども、そもそもその子供の手続代理人が付くのが望ましい事案かどうかというところの判断であったり、じゃ、子供に誰がどのようにその説明をして、どういうふうに子供に考えてもらうのかというところも、なかなか周りの大人の意識というのがまだ共有できていないのではないかというのも考えられるというふうに思います。
紛争当事者であったり関係者の間で子供の手続代理人を付けるのがいいかどうかというところも含めて考えていくような、そういうイメージを共有しなければならないというようなところも個人的には思うんですけれども、実際に、その報酬以外の部分でこういうところも課題だと、そしてこういう取組が必要だというところありましたら、是非御見解をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/181
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182・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) ありがとうございます。
まず一つ、一番やはり大きいのは、裁判所の御理解をもっと得ていかなければならない。裁判所がその参加を認めてくださらないと、裁判所手続上は先に進まないというところがございます。ここが一つ大きなところ。あともう一つは、やはり制度の周知。これは親御さんに向けてもそうなんですが、子供さんに対する直接周知というのも今は取り組んでいるところであります。
御承知いただいておりますとおり、各地の弁護士会で、今、いじめ予防授業などの形で弁護士が学校に出向いて、例えば自分の持っている権利とか、そういったことについて授業を行うという取組がございます。それ以外にも、法教育全般でございますが、そういったところで、君たちが困ったときには君たち自身が弁護士に相談できるんだよというメッセージもお子さんたちに直接伝えるという作業を行っております、小学校高学年以上ぐらいが主だと思いますけれども。そういった中で、現にお子さんから直接例えば弁護士会にコンタクトを取ってくださるというケースも、もちろん数は少ないんですけれども、あるわけですね。そういったところを一層広めていくことが大事ではないかなと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/182
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183・伊藤孝江
○伊藤孝江君 浜田参考人にお伺いをいたします。
今回、離婚を考える、あるいは離婚に直面しているお二人、当事者の方への親ガイダンスというようなところの充実の必要性というのもまた改めて議論がなされているところというか、進めていこうというところではあるんですけれども、実際、今の参考人の御説明であれば、親ガイダンスと併せて、そこに当事者として、本来であれば、巻き込まれてしまっている子供に対しても、ガイダンスという言い方が正確かどうかは別として、そういう情報提供であったり、こんなことを考えていくというようなことにもっと当事者、自分のこととして触れていく機会というのをつくっていかなければならないんじゃないかというのも支援策の一つとして考えるんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/183
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184・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御指摘ありがとうございます。
その親ガイダンスというものは、どうしても、例えば役所の離婚届の用紙をもらいに来た方とか、どうしても大人向けという発想が頭にありましたが、まさにお子さんにとって、君たち自身の権利主体性というものを意識してもらいたいという点では本当にもう委員御指摘のとおりだと思いますので、先ほどの学校に出向いていくことを含めまして、私どもでも引き続きできることをしっかりやっていきたいなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/184
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185・伊藤孝江
○伊藤孝江君 時間ですので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/185
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186・清水貴之
○清水貴之君 日本維新の会の清水と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
まず初めに、熊上参考人、どうぞよろしくお願いをいたします。
実際に家裁で調査官をされていらっしゃったということです。今回の法案の審議にも参議院の方でも入っておりまして、法務省や裁判所と議論を様々していますと、最終的にやっぱり、なかなかぴしっと決めるのが難しいでしょうから、様々なその事情に合わせて、ケースに合わせて裁判所で適切に判断をしますみたいな答弁が多いわけですよね。
実際にはそうなるだろうなというのはもちろん想像するわけなんですが、ただ、じゃ、そこに至るまでの過程で、例えばDVがあったかなかったのか、どういう状況だったのかとか、これが本当に適切に判断できるのかどうか。若しくは、子供の意見をしっかり聞いて、子供の判断、意見を聞く、聞くのがいいのかどうかという議論もありましたけれども、子供の利益を考えてみたいな話があった場合に、じゃ、それをどうやって、例えば子供から話を聞く場合に、どう適切に聞いて、それをどう判断していくのかとか、こういったことが、じゃ、果たして具体的に、しかも適切に裁判所として可能なものかどうかという、そういった不安がきっと残っているなというのを、なので全てを任せ切れないといいますか、何ですかね、賛成されている方も反対されている方も非常に不安が残ったまま進んでいるような気がしているんですけれども。
実際に現場にいらっしゃって、その辺りというのはどう考えられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/186
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187・熊上崇
○参考人(熊上崇君) どうしても、家庭裁判所の調査官、双方の話も聞くわけなんですけれども、一方の方と一方の方と言っていることがまるきり違うということになります。それはそれで二つの違う世界があるんだなと、これだけ隔たりがあるんだなということは、きちんとまとめることはできるのかなと思います。
ただ、不安な点として思うのは、例えばなんですけれども、例えばDVがあったと片方が言ったときに、いや、それは違うんじゃないかとか、そういう話になったときに、そのDVが認められるのかという不安を、DVを受けた側の方々は非常に心配になるんじゃないかなというふうに思っていると思います。
その結果、例えば親権とか監護の問題で何か負担のある決定をさせるとなると、その後が問題なんですね。家庭裁判所で決定して終わりじゃなくて、その後、例えば面会交流とかであれば、子供が三歳のときに、面会交流というのはあと十年以上続くわけなんですね。不安を抱えたまま続けなければいけない。裁判手続の中の不安というのを考えるんじゃなくて、その後、例えば子供三歳だったら、その後十数年の不安まで裁判所は分かってくれるのかということなんですね。
例えば、面会交流支援団体、幾つか訪問させていただいて、家庭裁判所で決まったんですと、もうつらかったんですけど決まっちゃいましたと、すごい不安な顔で子供を連れてきて、もう顔も見ない、車も見ないようにと言って、置いていってという、そういうことが続くわけなんですね、五年、十年と。これが消えないんですよ、なかなか。
なので、不安というのは一時的な、紛争時とか調停時だけの不安だけではなく、その子供が成人するまでの不安、ここまできちんと考えなければいけないかなというふうに思っていますので、家裁の調査官あるいは家裁の職員としても、ただ決定時だけではなくて、その後の子供たちあるいは関係者が不安に思わないような、不安を軽減できるような、そういったことをしなければいけないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/187
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188・清水貴之
○清水貴之君 そこで必ず、やっぱり家裁の体制はどうなんだという、人員は足りているのかとか、この話が必ず出てくるんですが、その辺りについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/188
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189・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 小規模な裁判所に勤めていたこともあるんですけれども、そういうところでは裁判官が刑事、民事、家事、少年と全部担当していますし、調査官ももちろん両方やっていますし、なかなか家事の調停ができないということもあります。だから、本当に増員というのは常に求めているんですけれども、例えば成年後見なんていう制度ができたときもほとんど増えていないですね。
ですので、未配置のところもありますので、そこはしっかり手当てをしなきゃいけないと思っているんですけれども、何か本当に今までのこと考えると、できるのかなという不安は非常に強いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/189
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190・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、鈴木参考人、お願いをいたします。
今回のいただいた資料でも、テーマが我が子と引き裂かれる母親たちということで、女性の側に視点を当てて、特に女性の側に視点を当てて資料を作ってお話をいただいてということなんですけれども、まず、何というんですかね、思いといいますか、女性をクローズアップしてというのはなぜ今、鈴木参考人が特に重要視して取り組んでいらっしゃるのかというのをまずお話しいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/190
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191・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 御質問ありがとうございます。
私、女性の暮らしについて民俗学的に研究をしてきたという、そういう経緯もございます。
さらに、我が子と引き離される母親というのは、子供と会えない人たちの中でもより弱い立場に置かれております。子供と同居している母親の場合であれば、子供がいることによって精神的に、DVを受けていても安定することができると思いますけれども、より困難な状況に置かれている人たちの研究が、全体として男性の方の研究もないんですけれども、その中で私は特に女性の問題について改めて捉えたいと思いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/191
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192・清水貴之
○清水貴之君 あと、言及いただいた中で、共同養育計画の重要性というのをお話をいただきました。
実際、やはりこれは協議離婚、裁判離婚になってしまうとなかなか協議していくって難しいのかもしれませんが、協議離婚なんかの場合でしたらしっかりと計画を立ててというのは重要だと思うんですけれども、実際にどこまでこれが、じゃ、できていくのかというのも考えなきゃいけないかなとも思いますし、どういった形でこれを作っていくのが一番有効性が高いというふうに思われているかなというところをお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/192
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193・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) ありがとうございます。
どのように作っていくのか、恐らく本来であれば、裁判の中できちんと決めていくということの方が、立会いがいるのでやりやすいのではないかなというふうに思っております。
逆に言えば、協議の場合ですと、どこでそれをまたちゃんとチェックしてくれるのかという、そういう、義務ではないので、そういう点でやはり難しい点はあると思いますけれども、今まで皆さんのお話もありますように、できればそういう点で行政に関わって、きちんと何かガイドライン的なものであったり、そういうものを作る体制をつくっていただけたらいいのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/193
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194・清水貴之
○清水貴之君 浜田参考人、お願いいたします。
今の点、関連してなんですが、共同養育計画ですね、実際に裁判などの現場で、これがあること若しくはない場合との、その後の面会交流であったり、親子交流であったりとか養育費の話であったりとか、どう変わってくるかどうかという。また、今お話、鈴木参考人からもありましたとおり、じゃ、どう作っていくのか、行政がどう関わってというところも、実際に作るだけでは駄目で、しっかりそれがやっぱり機能しなければいけないと思うんですけれども、機能させていくためにはどうしたらいいかとか、その辺りもお聞かせいただけたらというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/194
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195・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
現状では、その共同養育計画なるものがなかなか難しい。これは、やっぱりその紛争当事者である親御さん双方が、そうでありながら、でも子供のことは別だよねと申しますか、子供の方の話はこれとは切り離してやろうという最低限のそこについての合意がなければなかなか難しいというところだと思います。
そこを一層推し進めていくためには、もちろん裁判所からの投げかけもあり得ますけれども、その親御さんそれぞれに付いた代理人弁護士が、その共同養育計画の重要性ということをきちんと理解をした上で、自らの依頼者に、これちゃんとやろうよと、大事なことじゃんと言っていくということが多分我々に課せられた使命なんだろうなと。こういったところで少しずつ広げられていけるといいのではないのかなと考えます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/195
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196・清水貴之
○清水貴之君 あと、鈴木参考人、家庭裁判所に対しまして、透明化といいますか、中で決められていることなどをもう少しクリアにしてもらえたらなという御意見もあったかというふうに思いますが、その辺りについてお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/196
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197・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) ありがとうございます。
家庭裁判所は元々調停の場で、その中でブラックボックスということが言われておりまして、さらに、それが二〇〇四年の司法制度改革で、人事訴訟、離婚訴訟が地裁から家裁になったことによって、より不透明になっていったというふうに私は感じております。ですので、今、私たちが知ることができるのは、当事者の証言若しくは司法統計に出ている数字だけになります。でも、それだけではやはり分からないことが多い。なので、こうした民法改正につながるような不満であるとかそういったものが噴き出てきたのではないかと思っております。
ですので、プライベートな場であるということでなかなか情報は得ることはできないんですけれども、今回、私がこの父母別の統計を最高裁からいただけたように、より詳細な、数字だけでもいいので出していただけるような、そういう状態を何とかつくり出していただけないかなというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/197
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198・清水貴之
○清水貴之君 浜田参考人、この辺り、予測可能性というお言葉でお話しされていたかなとも思うんですけれども、これもやっぱり、実務されていまして、やっぱりその辺りが明確になっていった方が当然やりやすいといいますか、いろいろ依頼者の方とでお話ししながら進めていかれると思うんですけれども、やりやすいなという思いがあってということでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/198
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199・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりでございまして、もちろん、最終的に一切の事情を踏まえて判断するというのは、もうそれはもちろんそのとおりだと思うわけです。ただ、こういったときにはおおむねこうなりそうだよねというところまでが何の予測も付きませんと、裁判所に持ち込んだ方がいいのか、ちょっと無理してでも協議、当事者協議でやった方がいいのかといったところの戦略を立てるところにも影響してくるわけでございます。
ですので、そういった意味でいうと、裁判所がきっとこう考える、この法律の趣旨はこういうところにあるんだよというところを明確にお示しいただくことが、こちら、私の申し上げた希望のところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/199
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200・清水貴之
○清水貴之君 浜田参考人、もう一点お願いします。
例えば、そういった場合で今度は親権の回復みたいな、今は単独親権ですけれども、今度は共同親権可能となって、単独親権で別居親の方が今度共同親権を希望するということで裁判所にという話が出てくるかと思います。そうした場合に、じゃ、どうしたら回復できるのか、どうしたら共同親権になれるのかというのが、この辺りもある程度やっぱり指針があった方が、例えばですけれども、一生懸命、面会交流の回数をしっかり守って、例えば養育費はしっかり払い続けてとか、真面目にちゃんとやっている人と、そうでない、もう残念ながらそういった履行をちゃんとできていない人とでこれは差が付くべきかなとも思うんですけれども、この辺りの基準とかいうことに関してはどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/200
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201・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 大変難しいところだということでございましょう。
結局のところ、まずは親としてなすべきこと、それは親権者としてではなくて親としてなすべきこと、今委員御指摘の養育費や面会交流もそうでしょうし、子供の養育にできる限りのところできちんと関わるといったところ、今までの実績ももちろん考慮されることになるんだろうと思います。
家庭裁判所の判断というのは、良くも悪くもその将来を予測するもの、今まであったものを見て、この先どうするのがよいのかという難しい判断を迫られるところがございますので、ここはもう必ずしも明確にはならないのかもしれません。
ただ、そういったときにも、おおむねこんなのだったら、だから基本的には共同と考えましょうとか、基本的には単独と考えましょうとか、大枠が分かっていると戦略も立てやすいということは、繰り返しになりますが、申し上げておきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/201
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202・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
水野参考人、お願いをいたします。
子の意見の尊重のお話をいただきまして、先ほど熊上参考人にもお聞きしたんですけれども、水野参考人御自身は、なかなか、例えば親を選ばせるとか、そういうぴしっとした非常に深刻な判断を子供に求めるのはなかなか厳しいんじゃないかという御意見だったのをお伺いしました。
ただ、これは、先ほどお話もありましたけれども、やっぱり子供の傾向とか思いとかというのは尊重してもいいのかなとも思います。
ただ、これも難しいなと思うんですが、子供ですから親の意見に非常に左右をされてしまうでしょうし、じゃ、本心をどうつかんでいくかというのが本当に難しいなとも思うんですが、この辺り、法制審、水野参考人の御意見もそうですし、法制審などでどういった議論があったかなど、もしあれば教えていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/202
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203・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
子供の意見表明権につきましては、確かに大分激論をいたしました。反対する、つまり子供に決めさせるということについて反対をした者は私だけではございませんでしたが、日弁連の委員で、やはり先ほど議員の方からも御指摘のありました児童の権利条約などを根拠に、やはり子供の意見を聞くべきではないかということを強く主張される委員もいらっしゃいました。ですから、そこは大きな対立点であったことは確かでございます。
でも、私、フランス法の文献などを読んでおりますけれども、児童の権利条約の子供の意見表明権をこの場面で使うこと、つまり両親のどちらを選ばせるかということについては絶対に反対であると、ここでそれを用いるのはとんでもない残酷なことであるという点では、フランス法の議論はほぼ一致しております。
たださえ非常に難しい判断でございます、家庭裁判所にとって。裁判官たちが慣れておりますのは過去の裁断ですが、子供の将来を決めるのは将来の予測になります。これ、非常に難しい判断だと思います。そこでもし子供の意見表明権みたいなことが条文に書き込まれてしまいますと、一番簡単な結論に飛び付くのではないかと。あなたはどちらの親がいいですか、ああ、そうですかということになってしまいかねないと思います。それは物すごく危険なことだと私は思いました。
子供の福祉というのが、もうきっと議員もそうお思われでしょうけれども、一番大切な法益でございます。そのためには、子供の状況を、先ほどからいろんな御意見がありますように、注意深く見なくてはならないし、虐待をされているような子供についてはやはり社会が介入して救出しなくてはならない。
そして、そのような領域に掛けている日本の予算が、国家予算が先進諸国の中では非常に少ないということも確かだと思います。高齢者の方はかなり行き届いてまいりましたけれども、育児支援に掛ける予算は非常に少ない。
そういうところで、司法の場に条文を一つ書いて解決するという問題ではないのだと私は思っております。周囲を固め、そして何か単純な原則をつくるということではこの問題は解決しないのだと考えております。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/203
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204・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございました。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/204
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205・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
貴重なお話ありがとうございました。
まず、水野参考人から御質問させていただきたいと思います。
法制審の中でどういった御議論されてきたのかということについて、今後の委員会審議に生かしていきたいと思いますので是非御指導いただければと思うんですが、まず、子の監護をすべき者、監護者について、今回の法改正で共同親権に仮になったとしても、監護者を別途指定できるという立て付けに今回の法律はなっておりますけれども、この子の監護をすべき者の選定に当たっての具体的な選定要件というものについて、審議会の中ではどういったものがイメージされてこの条文が書き込まれたのかということについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/205
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206・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
ちょっとメモを取ってきたんですけれども、にわかに、また追加でもしお許しいただければ加筆、議事録に加筆をさせていただきますけれども、監護者指定を必須とすべきではないかという点についてかなり、つまり、共同親権、父母双方を親権者とするときは監護者指定を必須とすべきでないかということについては、やはりちょっとかなり議論をした記憶がございます。ただ、議員御質問の監護者の概念につきましては、申し訳ございません、私、にわかに記憶が呼び起こせずにおります。
そして、監護者指定を必須とすべきではないかという点につきましては、父母の離婚後に子の身上監護をどのように分担するかというのはそれぞれの事情によってやはりいろいろな場合があるだろうということで、離婚後の父母の一方を監護者と定めることを必須とするのは相当ではないだろうという結論になったことは記憶してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/206
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207・川合孝典
○川合孝典君 突然の質問で大変失礼いたしました。
監護者をどう選ぶのかということについて、その要件、選定要件が曖昧であるということに対して不安の声が双方の当事者の方からやっぱり上がっているということでありますので、どういう基準に基づいて監護者を選定するのかということについては今後ある程度明示的に示せるような形を取らなければいけないのではないのかというのが私自身の問題意識としてございましたので、ちょっと質問させていただきました。
もう一点、これも水野参考人に御質問したいんですが、今回、七百七十六条の二で、祖父母がいわゆる親子交流の申立て権が付与されるということがございますが、この件に関しては、慎重派の方々からしてみれば、余計な負担が掛かる、当事者でない人が申立てができるということについて不安の声が上がっております。
そこで、確認なんですが、今回のこの七百六十六条の二の親子交流について、どのようなケースを想定してこの七百六十六条の二が書き込まれたのかということについて確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/207
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208・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
この点については、法制審議会でも、申立て権者を父母以外の者に拡大することについては相当な懸念を共有した上で議論をいたしました。そういう形で父母以外の親族に子との交流の申立て権認めると、子供が多数の紛争に巻き込まれてしまうのではないかという懸念でございます。議員御指摘のとおりでございます。
一応、今度の法制審議会の案では、こういう懸念に対応するために、子との交流に関する審判の申立て権者を基本的には父母だけに限っております。そして、祖父母などの親族からの申立ては、ほかに適当な手段がないときに限って認めるということにしております。
そして、やはり祖父母とずっと例えば同居していてひどく強い愛着を持っているような場合に、一定の認められる、子供の利益のために特に必要であると認められる場合があるのではないかということで、相当制限的ではございますけれども、書き込んでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/208
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209・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
さきの法務委員会の質疑の中で民事局長に同じ質問を実はさせていただきまして、いわゆる同居親の方がお亡くなりになられたような場合に祖父母の方が申立てができるといったようなことをイメージしているという言い方をされたものですから、審議会の方でもそういった議論されたのかなということで今確認をさせていただいたということです。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/209
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210・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ほかにその他適当な手段がないときという意味で、典型的にはそのような場合を念頭に置いておりました。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/210
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211・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
続いて、鈴木参考人に御質問させていただきたいと思いますが、先ほど時間の関係ではしょられたんだと思うんですけれど、裁判上の離婚事由について、たしか九六年の法制審で方向性が出されたことを受けて、有責主義から破綻主義に移行するべきではないのかということについて少しだけ触れられましたけれど、このことについて補足で御説明をいただければ有り難いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/211
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212・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 御質問ありがとうございます。
九六年の民法改正要綱案、国会には上程されなかった案ですけれども、そこでは破綻主義ということで、今は有責主義がそのまま残っているんですけれども、離婚に当たって、もう夫婦の関係が破綻していれば、それでもう争わないで離婚ができるというそういうような要件が、資料にも挙げているかと思います、提出されました。それが通れば、恐らく、離婚に当たって相手を悪く言う、相手を責める、そうしたことが減るのではないかなというふうに思っています。
今、有責主義が、裁判離婚になりますと実質的には破綻主義と言われていて、申立てから三年程度たてば実際には離婚できるとは言われておりますけれども、実際の申立てに当たって、相手をやはり責めるような、そういう状態が今残っておりまして、更に言えば、親権、単独親権での親権を獲得するために子を連れ去って、そして離婚を申し立てる、その中で相手を悪く言う、そのことによってまた高葛藤になっていくということで、今回法改正でその辺りが単独親権から変わるのであれば、その点は一つ葛藤が低まるのではないかと思っておりますけれど、併せてその破綻主義についても改めて考えていただきたいなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/212
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213・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
続いて、浜田参考人に御質問させていただきたいと思いますが、私自身、代表質問のときに浜田参考人と同趣旨の実は発言をさせていただいておりまして、子供に対するやっぱり義務ということが最優先されるべきであろうというのが私の基本的なスタンスということで、非常に共感を覚えながらお話を聞かせていただきました。
その上で、あえて弁護士である浜田参考人に御質問させていただきたいんですが、いわゆる子供の手続代理人制度のことを少しお話をされました。弁護士など専門家にアクセスしている比率がまだまだ低いということも問題意識としておっしゃったんですが、一方で、実際、当事者の方が裁判の申立てを行おうとしたときに、時間が掛かるからということもそうなんですが、同時に、お金が掛かるからというのもこれも深刻な実は事情ということでありまして、したがって、海外などではいわゆる離婚訴訟に成功報酬を認めないという国も実はあるということを資料で知りました。
成功報酬、つまりは離婚訴訟でたくさん養育費を取ってきたら、その分、取ってきたお金の一割から二割のお金が成功報酬として弁護士の方に入ると。それって、考え方によっては、子供の権利である養育費の一部とはいえ、成功報酬として第三者が受け取るということについて国がお墨付きを与えているのと同じことなんじゃないのかなというふうにも実は思っております。
よって、離婚裁判訴訟に成功報酬を認めないという考え方自体には一定の合理性があるんだろうというふうに思うんですが、私も、こうした事例を倣って、日本でも成功報酬ではなくて国が費用を負担するといったような形に最終的には移行させていくべきなのではないのかと思っているんですけど、この辺りのところについて浜田参考人はどのようにお考えか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/213
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214・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
弁護士は、御承知のとおり自営業者でございまして、報酬を頂戴しないことにはというところもございますが、今委員御指摘のとおりでして、余りお金がない方からもちゃんといただかなくちゃいけないというところは、これは実は別に離婚事件に限りませんけれども、弁護士としての葛藤があるところではございます。
ただ、その離婚案件ということについて見ますと、一般の方で、特に女性の貧困などの問題もございますので、費用を賄えないという方が多数いらっしゃる類型であるということは私も認識をしております。
委員御指摘の、例えば国費などを入れてということになりますと、法テラスの民事法律扶助制度というのがありますが、あれはあれで実は弁護士側としてはなかなかに使いにくいところがございまして、まず一つにはその基本の報酬が低いということ。
逆のこと申しますけれども、その離婚紛争って離婚紛争だけで終わらないんですよね。例えば、婚姻費用の請求をして、いや、何なら養育費の請求をして、無理だったらその執行も申し立ててみたいなことで事件数が増えていきますと、今度は物すごい金額が増えちゃうわけです。そういたしますと、それって当事者の方から後々償還をずっと受けていかなくちゃいけない。結局、だから、せっかく確保したやつの中から、ごめんやけど、こっちにちょっとくれへんという話をせねばならないということで、これまた葛藤が深まるところがございます。
ですので、もう本当に、類型は絞ってということになるんだろうと思いますけれども、国費でこの辺りについてはきちんとサポートするよという制度が一層、今法テラスがあるのでもうゼロだとは言いませんけれども、その制度がもっと広がっていくと、一層弁護士としても関与しやすくなるのではないのかなと期待するところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/214
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215・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
私も今の質問をする、まあ両脇、弁護士の先生でいらっしゃいますので、なかなか度胸の要る質問ではあったんですけれども。
とはいいながらも、やっぱりそのお金、そして裁判にはお金が掛かるという日本の司法制度自体の根源的な問題もやっぱりここには絡んできているということだと思いますので、やっぱり婚姻制度、婚姻に対する考え方だとか、家族、家というものに対する考え方がやはりこれだけ変容してきている状況の中で、今後自分たちの子供や孫の時代にどういう家族法制というものを残していくのかということをやっぱり考えるとなると、今のうちからやっぱりそのことをイメージして議論しないといけないんじゃないのかなということを問題意識として私も持っております。ありがとうございます。
時間の関係がありますので次の質問に移らせていただきたいと思いますが、水野参考人にもう一点御質問させていただきたいと思いますが、先ほど御発言の中で、いわゆるDVの被害者への対策や児童虐待に対する対策が日本は決定的に遅れているということを冒頭におっしゃいました。私もそう思っているんですけど、この今回の民法改正に伴って、DV被害者対策と児童虐待対策として速やかに執り行うべき優先順位の高い事項は何だと先生は思っていらっしゃるでしょうか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/215
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216・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
どちらもというところでございますが、具体的には児童相談所が今ほとんどパンク状態でございます。そこでの人員、かつ今は素人の新入の役員が今一番きついところだというふうなことで児童相談所へ回されたりしておりますけれども、やっぱり対応する職員自身の心を守るためにもそれなりの訓練が必要でございます。そういう訓練をした人間を多量に児童相談所などに配置をする、ここにお金を掛けるということが急務だろうと考えております。
DV対策ももちろんでございますけれども、DV対策もSOSを、今辛うじてそういうSOSの駆け込み寺になっておりますのが地方公共団体の相談窓口であったりいたします。そういうところの人員と対策をやはり拡充するということが行政的に手厚くなれば、それが一番即効性があるかなというふうに思っております。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/216
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217・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
DV対策のことについて加えて御質問させていただきたいと思いますが、今、例えば日本の場合には、DVシェルターは民間の取組を支援するといったような形で民間依存の体制になってしまっているんですけれども、こうしたことも含めて、いわゆる共同親権というものが導入されることによって、やっぱり守られるべきは、深刻なDVから逃げていらっしゃる方々を守るということが大切だという意味でいけば、DV被害者の方々を確実に守れるような枠組みというものをもっと国が主導して進めていかなければいけないんじゃないのかというふうに思っているんですけど、この点について、済みません、時間が来ましたので端的にお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/217
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218・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
端的に、議員のおっしゃるとおりだと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/218
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219・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/219
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220・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本法案で果たして子供の利益を見出していけるのかということについてまず熊上参考人にお尋ねをしたいと思うんですけれども、私がこの参議院の審議に入りましてしばしば引用させていただいています日本乳幼児精神保健学会の声明がございます。その中でこういう引用、記述があります。
主たる養育者を始めとする周囲の人とやり取りし、優しく温かい声や浮き浮きするリズム、心地よい身体的刺激などの肯定的な交流を得て脳や神経が成長し、心と体を発達させていく、子供にとって主たる養育者とこうした幸せなやり取りができることは生存と発達の重要な要素であると。それゆえ、子供の成長発達にとって最も重要なのは、安全、安心を与えてくれる養育者との安定した関係と環境が守られることである。
こうした指摘について、熊上参考人はどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/220
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221・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 特に乳幼児については、子供が安心して過ごすことができる、安心して寝られる、安心して甘えられる、遊ぶことができる、こういう環境が絶対に必要であるというのは、その乳幼児学会のとおりだと思います。
しかし、例えばこれが共同親権というふうに非合意ケースで決定されて、共同にするか単独親権にするかの争い、あるいは監護者をどちらにするかの争い、監護者が決まらなくて監護の分掌をどうするかの争い、これは日常行為なのかどうかの争い、急迫かどうかの争いと、常に親が争いに巻き込まれると、当然、親が、監護親が子供、乳幼児などを安心して育てるということが難しくなるのではないかというふうに懸念するんですね。
安心して子供と遊んだり、寝かし付けたり、おむつ替えたり、保育園連れていったり、保育園連れていっても子供たちを見守れると、そういったことが必要であるかと思いますので、常に双方の合意が要る状態になったり、それで争いが繰り返されるような状態に置くということは、そうした監護親と子供との関係に不安定な要素というのは非常に残るのではないかと、やっぱり安定した養育者との関係というのは第一に考えなければいけないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/221
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222・仁比聡平
○仁比聡平君 そうしたことからだと思うんですけれども、冒頭の意見陳述の中で、共同監護につきまして、父母が互いにリスペクトし、子供の意向を踏まえて協議できれば、子供にとって双方から愛されていると感じ、子に好影響ですというふうにおっしゃったと思うんですが、ちょっと別の角度で言うと、そうした子供のペースや意思が尊重されるような関係、父母間に、たとえ夫婦としては別れても、子供の育てていくということに関してはそういう関係性というのが存在するということがこの共同監護を子の利益のために実らせていく上での言わば条件といいますか、前提のように思うんですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/222
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223・熊上崇
○参考人(熊上崇君) お互いが、夫婦が別れても、父母が別れても、今日、子供体調悪いからちょっと、面会交流でいえばちょっと行かせられないなとか、そういうふうにお互いが子供の体調とか都合、例えば野球の試合があるからちょっと今週は週末は行けないなとか、そういうふうにすれば子供は両親から愛されていると、関心を持たれているというふうに思うわけなんですね。これを目指さなきゃいけないんですね。そうすると、長期的に子供は両方の親を信頼できるようになると。
一方で、そうではないと。野球に行きたい、少年野球の試合があっても来なさい、こっちの家に来なさいとか、ピアノレッスン、ピアノ発表会があっても来なさいとか、そういう、決まったことだから、裁判所で決まったから、法的義務があるからやりなさいと、こういうことは子供の心に深い傷を残すし、そういうふうに決めてはいけない。非合意なことで決めると、そういった子供の心に深い悪影響を起こすというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/223
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224・仁比聡平
○仁比聡平君 実際、子供のペースってすごく速いというか、大人とサイクルが違って、新しい何々ちゃんという友達ができたのよと、誕生パーティーに呼ばれたんだけど今度の週末おうちに行っていいというような、そういうやり取りの中で育まれていくものだなというふうに思うんですけれども。
ちょっとそれに関わって、浜田参考人が先ほどもおっしゃっていただいたんですけれども、日常の養育に関する決定は原則として監護親が行い、非監護親は監護親の権限行使を不当に妨げてはならないものとしてはどうか、あるいはすべきではないか、あるいは、今後のこの改正案を前提にしたときの問題としては、監護者の指定を定めれば参考人がおっしゃっていることと同じような効果をもたらすことができると思いますし、部会でもそうした議論があったと思うんですけれども、そうした提案をされるのは、今、熊上参考人に伺ったような意味で、子の利益あるいは児童の最善の利益に沿うものだからという、そういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/224
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225・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
大きな意味でいうと、おっしゃるとおりでございまして、やはり子供の日々の養育の環境というのが安定するということは極めて大きな利益になるものと考えております。ですので、それのやり方として、その日常養育のところを広く捉えるとか、その反対、非監護親は不当に妨げてはならないとかいうのが参考になるのではないかなということで申し上げました。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/225
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226・仁比聡平
○仁比聡平君 そこで、葛藤の高い父母、しかも、皆さんから、お立場それぞれ違うんですけれども、極めて厳しい批判が寄せられている裁判所によってその子の最善の利益を見出していくことができるんでしょうかということが大問題なんだと思うんですよ。
その点で、まず熊上参考人に、DV、虐待について現在の裁判所が認定できていないという厳しい批判がありました。これが一体なぜなのかということ、なぜ裁判官はあるいは調停委員会はそうした深刻な権利侵害を見出せないケースがあるのかという、そこはどうお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/226
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227・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 家庭裁判所も様々努力はもちろんしているとは思うんですけれども、どうしても、双方の言い分が対立してしまったときに、立場の弱い方を説得してしまうというような構造もあることも否めないのかなと。
例えば、子供が会いたくないとか会いたいとか言ったときに、会いたいと言う場合であればすんなり決まることが多いんですけど、会いたくないと言ったときに、じゃ、一回ぐらいはどうかなとか、じゃ、もうちょっと何回かできるかなとか、そうすると、うん、まあ何とか応じようというような、仮に不安や恐怖を持っていてもですね、そういったことがしばしば行われていて、DVや虐待をあえて無視しているわけではないんだけれども、結果的に家庭裁判所も事件を処理するために調停などでそういった働きかけが行われてしまったり、また、どうしても、子供と会うということは良いことなんだというような考え方、これはプロコンタクトカルチャーなどというふうにも言われていますけれども、そういったことで促すというような文化も今まであったのかなというふうには思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/227
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228・仁比聡平
○仁比聡平君 そうした文化の一つといいますか、そのプロコンタクトカルチャーというようなことでもあるかと思うんですが、ちょっと今資料が手元からなくなりましたが、先生がお書きになられた論文の中で、今日も御紹介がありましたけれども、面会交流を実施してきた子供、それからそうでない子供の実態調査をされたと。その報告の論文の中で、こうした調査は我が国ではこれまで行われていないのではないかという指摘があります。これ自体、深刻に受け止めるべきことだと思うんですよ。
みんなが子の利益が大事だと言い、二〇一一年にはそうした趣旨の法改正もされている。以来、様々な子供の心理についての危惧が指摘をされながら、我が国においてはそうした検証がなされていないという、そのことについてどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/228
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229・熊上崇
○参考人(熊上崇君) どうしても、家庭裁判所は司法機関ということで、決定した後、なかなかその後の追跡というのが制度上なかったという問題があるわけなんですけれども、ただ、現実に、その後、面会交流支援団体などを見てみますと、非常な不安と恐怖の中で子供を連れていく親がいたりとか、そういうことを見たり、また、時々子供が犠牲になるような事件も起きているということなんですね。
しかしながら、家庭裁判所は司法機関だからその後の追跡調査ができないというのは、一面それはあるとは思うんですけれども、現実にその後の子供への悪影響がある、あるいは好影響もある場合もあるかもしれません。そういった調査というのは今後必ず必要だと思っていますし、それがない中での拙速な、例えば祖父母との面会交流なんというものは本当に有効なのかとか、そういったことを検証する必要はあるかなというふうに思っています。
親との面会交流でさえもすごくもめているのに、祖父母との面会交流というのが例えば出てきて、じゃ、子供がそのおじいちゃん、おばあちゃんと面会することを法的に義務付けられるということが本当に子の利益になるのかとか、そういったこともきちんと検証、考えていかなければいけないというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/229
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230・仁比聡平
○仁比聡平君 関わって、水野参考人、お尋ねしてよろしいでしょうか。
先ほどのお話の中で、これからの八百十九条の適用場面において、DVと評価されたくなくて共同親権を求める例が起こるのではないかと危惧しておられるという御発言があったかと思います。
二〇二二年の「法学教室」の論文を拝見したんですけれども、DVや児童虐待のように家族間に暴力や支配があるケースにおいては、親権行使を口実に加害者が付きまとい、極端な言い方をすれば、公認ストーカーを承認することになりかねないという厳しい御指摘もされているわけですが、この改正案がそうならない保証といいますか、ここはどう考えておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/230
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231・水野紀子
○参考人(水野紀子君) 御質問ありがとうございます。
本当にそういう危険はどうしても残ると思います。それをできるだけ最小限にするしかない。これが全くないようなケースというのは、それは、もし共同親権を認めなければそういう事態がない、なくなるかといいますと、私は決してそうではないと思います。
といいますのは、そこにも、御覧いただいてありがとうございます、私の論文にも書きましたように、現実にそういう事態がたくさん起こっております。そして、そういう現実にたくさん起こっている事態で、日本の社会は、DVというのは児童虐待環境でもあるわけですけれども、そこから被害者たち、子供たちをきちんと救えていない。よりましな形でどうやって制度設計できるかということで、日本はそこのところが非常に遅れているので、そういうリスクはあるということを書いたまででございます。
でも、単独親権にしておけばそのようなリスクは失われるとは私は思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/231
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232・仁比聡平
○仁比聡平君 この改正が、改正案はもちろんなんですけれども、現行の家族法と裁判所において、典型的にはDV、虐待の問題が言われているわけですけれども、これが解決されているのかというと、そうではないということを先生もおっしゃっているのかなというふうに思うんですね。
ちょっと本当に時間がなくなって申し訳ないんですが、鈴木参考人、ちょっと一点だけお尋ねしたいんですが、面会交流の判断が裁判所によってされたケースであるにもかかわらず会えないという点を突き出していただいたんですが、そうした父母の場合に親権を共同に行使するというのはちょっとあり得ないように思うんですけど、そこはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/232
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233・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 御質問ありがとうございます。
今現在の時点でいくと難しい点もあろうかと思うんですけれども、その前提として、やはり親権を奪い合うというような前提が今あるので、そうなっている人たちも多いと思います。
ですので、文化としてその点を変えていただくことによって親権を争わないで済む、そうなれば、場合によっては面会交流というよりは共同養育、共同親権になっていく人たちも増えていくのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/233
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234・仁比聡平
○仁比聡平君 果たしてそうなのかということだと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/234
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235・鈴木宗男
○鈴木宗男君 参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
私で最後ですので、十五分間よろしくお願いをいたします。
各参考人にお尋ねします。
三月八日、閣議決定され、この改正案が出された際、小泉法務大臣は記者会見で、本改正案は子供の利益を中心に組み立てられたと述べておられます。
参考人の皆さんは、この小泉さん、法相の言う、この子供の利益を中心に組み立てられたということについてどのような認識を持たれておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/235
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236・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) では、水野参考人から順番にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/236
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237・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
親権の規定におきましても、これが子供のためのものであるということがきちんと書き込まれました。それから、親権を持たない親にも子供をきちんと養育する責務があるというふうな条文も書き込まれております。
それ以上の、子供の本当にためになるためには、附帯決議に書きましたように、様々な場面での支援が必要だと思いますけれども、民法という我々の共存のルールの中にそういうことを書き込んだ、子供のために親権の問題を、家族法の問題を改正していくのだという方向を書き込んだという意味では、間違いなくその説明は外れてはいないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/237
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238・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
私も、今回の法改正が子供の利益を中心に組み立てられたものとする評価は少なくとも間違いではないというふうに考えます。
今、先ほど水野参考人がおっしゃったことに加えまして、例えば法定養育費の規定でありますとか、民事執行手続での、ちょっとそこでの変更でその執行をしやすくなるでありますとか、そういったことの種々の改正がその子供の利益をどう守るかということに目を向けたものであるということは間違いないのではないかと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/238
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239・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) 御質問ありがとうございます。
私も、子供の利益を中心に組み立てられたという点に関しては、そのとおりだと思っております。
今回、この法改正が通ることによって、日本文化における縁切りの文化、そうしたものが少しでも改善されていくようになっていただければというふうに願っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/239
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240・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 本法案が子供の利益に全くならないと思っています。
進学、子供は行きたい学校とか行きたい病院とか行きたい職業に就けるように社会が努力するのが必要であって、本法案だったら、子供が進学したいとか医療を受けたいとかというときに双方の合意が必要なわけですから、これは縛る方向に行っているわけですよね。やっぱり子供の望む進路や医療に逆行しているんじゃないでしょうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/240
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241・鈴木宗男
○鈴木宗男君 参考人から今貴重な認識を賜りましたので、これからのまた審議にも生かしていきたいと、こう思っています。
私は、午前の委員会、参考人質疑でも聞いたんですけれども、私は、この改正案、少なくとも、七百六十六条で、今までは親子面会という表現でした。私はここは厳しく言ってきたんです。この委員会にも民事局の北村参事官もおられますけど、法務省等に、血のつながった親と子が、何か面会といったら事務的であって人間的でない、これが私の考えでした。だから、ここは是非とも、交流、親子交流にすれということを四年前から言ってきまして、これが成文化されて、私はこれは良かったと、これだけでも私は評価するところです。
また、八百十七条でも親の責務が新設されておりますし、八百十八条でも親権が付されておりますから、これも私は前進だと、こう思っているんですね。そういったことを考えると、私は、この法案に対して現時点では大きな前進であると、こう思っているんですけれども、参考人の皆さん方はどういうお受け止めでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/241
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242・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 水野参考人から順番にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/242
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243・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
私も、親子交流という言葉の方が好きでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/243
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244・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 私が弁護士になった頃には面接交渉等と言っておりまして、何のこっちゃ分からぬということがございまして、今、議員、委員御指摘のとおり、いい形になってきているなと認識をしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/244
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245・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) ありがとうございます。
私も、言葉が変わるということは人の認識を変えることに大変寄与すると思っておりますので、言葉が変わったことに対しては大変有り難く思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/245
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246・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 親子交流という、言葉が変わったことはいいことだと思うんですけれども、やはり親子交流にしても、子供の意見とか子供の都合とか、そういうものを優先するというふうにしていかないと、親子交流にしたという、名前にしたかいがないと思うんですよね。子供の利益実現するための親子交流だと思いますので、子供の意見を尊重すると。
家庭裁判所の実務は、何も子供に決定せよと言っていることはありません、数十年にわたって。子供にどっちか選べとか、そんなことやっていませんので、どんな気持ちか聞かせてほしいとか、そういった実務やっていますので、親子交流という名前をなったことを契機に、子供の望むといいますか、そういった方向に、配慮する方向にあってほしいなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/246
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247・鈴木宗男
○鈴木宗男君 先ほどの意見陳述の中で鈴木参考人は、子供の未来を考えてほしいという非常に胸を打つ言葉がありました。鈴木参考人が考える、その子供の未来を考えてほしい、何かイメージなり、具体的にこういう方向でやってほしいとか希望がおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/247
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248・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) ありがとうございます。
これまでの日本社会というのが、やはり単独親権により親子断絶文化であった、縁切り文化であったということがありますので、やはりそうした状況を変えていただくために今回の法改正があると思っておりますので、是非、それを実現していただくための制度、仕組み、そういったものをきちんと考えていただきたいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/248
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249・鈴木宗男
○鈴木宗男君 ありがとうございます。しっかり肝に銘じていきたいなと、こう思っております。
よく、この法改正案の質疑の中で子供の利益という言葉が出てまいります。四人の参考人にそれぞれ、子供の利益というのは何か、具体的にまた我々に何か指示なり、あるいはこの政策に反映していただきたいというものがありますればお知らせをいただきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/249
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250・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 水野参考人から順番にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/250
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251・水野紀子
○参考人(水野紀子君) ありがとうございます。
子供たちが安心、安全に生育できる環境を整えるために、できる限りの御支援をいただきたいと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/251
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252・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
今の委員の御指摘、大変難しい質問だなと思います。これは難しいところがある意味肝でございまして、例えば子供が意見をこう言った、だからそうするのが子供の利益なんだというふうに単純には考えられないものだと思います。
ですので、じゃ、我々大人は何ができるかというと、繰り返しになりますが、子供の意見をしっかり聞くということ、それをもって大人側も一生懸命考えるということ、その中でみんなが試行錯誤しながら追い求めていくものが、ぱちんとした形ではないんですけれども、それこそが子供の利益ではないかなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/252
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253・鈴木明子
○参考人(鈴木明子君) ありがとうございます。
おっしゃるとおり、子供の利益というのは大変難しいところであると思いますけれども、やはり子供が周りの目を気にすることがなく、安心、安全に暮らしていけるというのが一番だと思っておりますし、大人がそれをやはり保障していく社会をつくるということではないかというふうに思っておりますので、やはり先生方にはきちんとした制度等をつくっていただきたいというふうに思っております。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/253
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254・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 子供の利益って、やっぱり伸び伸びと生活したり、行きたい学校に行ったり、行きたい病院に行ったりという、病院、医療を受けたりとか、行きたい学校に行くというのを応援するということだと思いますので、何かそれを、合意がないときに常に父母の合意が要るような、そういう合意ができないケースで共同親権にして父母の合意が必要な状態にすると。
そうすると、子供は常に学校行けるのかなとか宙ぶらりんになりますので、それは子供の利益にならないというふうに思いますので、やはり非合意のケースの場合はそういった共同親権にしないこととか、あるいは、仮に共同親権になったとしてもきちんと監護者がしっかりと決められるようにすること、これが必要かなと、子供の利益のために必要かなと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/254
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255・鈴木宗男
○鈴木宗男君 熊上参考人にお尋ねしますけれども、子供が例えばお母さんと一緒にいます、お父さんは子供に会いたいと言っても会えない場合がありますね。これ、単独親権ですとそれが通ってしまいますね。ですから、子供のやっぱり希望というか、子供の意思が十分私は伝わるという意味では、もっとこの家庭裁判所の取組だとかやり方が柔軟であったりだとか、あるいは適切な判断をするだとか、これもスピードアップを持って、スピード感を持ってやるのが必要でないかと、こう思うんですね。
そういった意味で、家庭裁判所に長く関わってきた熊上さんとしては、今の仕組み、制度は十分だと思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/255
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256・熊上崇
○参考人(熊上崇君) 今の制度は、どちらかが単独親権、婚姻中共同親権ですけれども、婚姻中の共同親権であっても離婚後共同親権であっても、会いたいときに協議、あるいは家裁に申立てをして、家裁が決定して、月一回とか月二回とかと会う、決めているケースがかなり多いので、今の現行法でも、会えないと思っても、家庭裁判所に申立てをすれば会えることが非常に多いと思います。
ですので、会えないケースというのは、子への虐待とかDVとかという子への非常に福祉に反するケースですので、現行法で十分、会えない、いわゆる面会交流を求めるケースについて対応できているのかなというふうに思います。共同親権になったからといって、会えない人が必ず会えるというわけではありません。現実に、離婚前の別居状態での面会交流事件もありますので、現行法でも十分対応できているのかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/256
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257・鈴木宗男
○鈴木宗男君 同じ質問に対して浜田参考人はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/257
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258・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
面会交流が認められるかどうかというところは、現行法上も親権と直接絡むかというと、そうではないものだと理解をしております。
今日、鈴木参考人から大変いいお話を伺ったなと思ったんですけど、やっぱり制度が変わるとその認識が変わるんだということ、これはとても大事な御指摘だったんじゃないのかなと、参考人で来ておきながら勉強をさせていただいたなと思っております。
まさにこういった新しいところを広げていくための制度改正ではないかなというふうに認識をしておりまして、ですので、私としてはそういったところに期待したいなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/258
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259・鈴木宗男
○鈴木宗男君 参考人の皆さん、ありがとうございました。これで質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/259
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260・佐々木さやか
○委員長(佐々木さやか君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315206X00920240507/260
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