1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和六年四月十七日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十二号
令和六年四月十七日
午前十時開議
第一 日本電信電話株式会社等に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
第二 生活困窮者自立支援法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、元議員真鍋賢二君逝去につき哀悼の件
一、重要経済安保情報の保護及び活用に関する
法律案及び経済施策を一体的に講ずることに
よる安全保障の確保の推進に関する法律の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員真鍋賢二君は、去る三月二日逝去されました。誠に痛惜の極みであり、哀悼の念に堪えません。
つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞をささげることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/1
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002・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。
弔詞を朗読いたします。
〔総員起立〕
参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられ さきに予算委員長 金融問題及び経済活性化に関する特別委員長等の要職に就かれ また国務大臣としての重任にあたられました 元議員従三位旭日大綬章真鍋賢二君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/2
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003・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) この際、日程に追加して、
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/3
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004・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。高市早苗国務大臣。
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/4
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005・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
まず、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大している中で、重要経済基盤に関する情報であって我が国の安全保障を確保するために特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護及び活用に関し、重要経済安保情報の指定、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供、重要経済安保情報の取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを重要経済安保情報として指定することとしております。
第二に、重要経済安保情報を保有する行政機関の長は、我が国の安全保障の確保に資する活動の促進を図るために、一定の基準に適合する事業者に当該重要経済安保情報を利用させる必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき、当該重要経済安保情報を提供することができることとしております。
第三に、重要経済安保情報の取扱いの業務は、原則として、適性評価において重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者でなければ行ってはならないこととしております。
第四に、適性評価は、行政機関の長が、当該行政機関の職員等について、当該者の同意を得て、適性評価調査の結果に基づき実施することとし、適性評価調査は、原則として、適性評価を実施する行政機関の長の求めにより内閣総理大臣が一元的に行うこととしております。
第五に、この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならないこととしております。
第六に、重要経済安保情報の取扱いの業務により知り得た重要経済安保情報を漏らした者や、重要経済安保情報を保有する者の管理を害する行為により重要経済安保情報を取得した者等に対する所要の罰則を設けることとしております。
以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。
政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でございますが、この法律案は衆議院において一部修正が行われております。
第一に、重要経済安保情報の指定等の運用状況の報告等についてであります。
内閣総理大臣は、毎年、重要経済安保情報の指定等の状況を有識者に報告し、その意見を聴かなければならないものとすることとしております。
第二に、国会への報告等についてであります。
政府は、毎年、有識者の意見を付して、重要経済安保情報の指定等の状況について国会に報告するとともに、公表するものとすることとしております。
第三に、指定及び解除の適正の確保についてであります。
政府は、重要経済安保情報の指定及びその解除の適正を確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることとしております。
第四に、国会に対する重要経済安保情報の提供及び国会におけるその保護措置の在り方についてであります。
国会に対する重要経済安保情報の提供については、政府は、国会が国権の最高機関であり各議院がその会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定める権能を有することを定める日本国憲法及びこれに基づく国会法等の精神にのっとり、この法律を運用するものとし、重要経済安保情報の提供を受ける国会におけるその保護に関する方策については、国会において、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることとしております。
これらのほか、所要の規定を整理することとしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
続きまして、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為が多様化し、安全保障を取り巻く環境が変化していることを踏まえ、特定社会基盤事業として定めることができる事業に一般港湾運送事業を追加することで、特定社会基盤役務の安定的な提供を確保することを目的とするものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
特定社会基盤事業として定めることができる事業に一般港湾運送事業を追加することとしております。
なお、この法律案の施行期日は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/5
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006・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。磯崎仁彦君。
〔磯崎仁彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/6
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007・磯崎仁彦
○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦です。
自民、公明を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問します。
質問に先立ちまして、能登半島地震により犠牲となられた方々の御霊に衷心より哀悼の誠をささげます。被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。復旧復興に向けて引き続き全力で対処してまいります。
台湾東部沖地震でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。また、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などで台湾の皆様からいただいた心温まる御支援を忘れることはありません。互いに助け合ってきた深いきずなの下、必要な支援をできる限り行ってまいります。
それでは、法案について質問します。
近年、安全保障の概念は、防衛や外交という伝統的な領域から経済、技術の分野にも拡大し、国家安全保障のための情報に関する能力の強化は一層重要になっています。
同時に、安全保障環境が地球規模で劇的に変化している中、民生レベルにおいても、我が国の経済安全保障を国際的な水準に合わせて、より一層強固にしなければなりません。
日本を除くG7各国やオーストラリアなどの先進国は、経済安保上の機微に触れる情報へのアクセスを官民の有資格者に限り、経済安保情報を保護する制度、いわゆるセキュリティークリアランス制度を保持しています。
片や日本は、平成二十六年十二月に特定秘密保護法が施行されましたが、特定秘密として指定できる情報の範囲が防衛、外交、特定有害活動の防止、テロの防止の四分野に限られており、経済安全保障に関する情報が必ずしも明示的に保全の対象とはなっておりません。
今回の法律により、ようやく我が国は同盟国、同志国と並ぶセキュリティークリアランス制度を有することとなりますが、情報保全の強化にとってどのような意義があるのでしょうか。また、今回の制度により、我が国の経済活動や技術開発においてどのような進展が期待できることとなるのでしょうか。総理にお伺いします。
重要経済安保情報の範囲は、スモールヤード・ハイフェンス、つまり、真に守るべき分野に限定して厳密に管理すべきです。
そこで、本法案においては、重要経済安保情報の範囲をどのような考え方の下で限定していくこととなるのでしょうか。
また、国家及び国民の安全を支える我が国の経済的な基盤の保護に関する情報として、有識者会議の最終とりまとめの中で示されたサイバー関連情報や規制制度関連情報、調査・分析・研究開発関連情報、国際協力関連情報が含まれるものと想定しているのでしょうか。担当大臣にお伺いします。
さらに、その指定は、日進月歩の先端技術の開発状況に対応できるよう臨機応変さが求められますが、情報指定の際限ない拡張や恣意的な指定により民間の事業への支障など不都合を来すことがないようにしなければなりません。この点について、担当大臣のお考えをお聞かせください。
本法案で、重要経済安保情報の取扱業務は、適性評価により漏えいのおそれがないと認められた者に制限されます。そして、適性評価については、行政機関の長が本人の同意を得た上で調査が行われることになりますが、その実施は本人同意が前提です。
仮に適性評価で重要経済安保情報の取扱業務が認められないこととなっても、不合理な配置転換や昇進への遅れなど、調査対象者への不利益な取扱いをしてはならないこととなっています。
そこで、本人同意が任意かつ真摯なものであることをどのように担保していくのか、さらに、適性評価により不利益な取扱いが生ずることがないよう、どのように実効性を持たせ、防止に努めていくお考えでしょうか。担当大臣にお伺いします。
重要経済安保情報の漏えい時等の罰則ですが、これについては五年以下の禁錮等、拘禁等の罰則が規定されております。また、法人の両罰規定も設けられています。一方、特定秘密保護法は十年以下で、法人の両罰規定がありません。
そこで、現行の特定秘密保護法と今回の法案において、このような違いがあることについてどのような理由があるのか、担当大臣にお伺いをいたします。
今回の法案により、我が国における経済安全保障上重要な情報の保護は大きく前進することとなります。
ただ、今回のセキュリティークリアランス制度の射程外ではありますが、情報の機微度は重要経済安保情報に指定するほどではないものの、厳密に管理した方がよいと考えられる政府情報や、民間事業者等が保有している情報であって国として保全が必要と考えられる情報の取扱いをどうするか、あるいは、重要経済安保情報の提供を受けたり、保有できる企業に外資が入り、実質的な外国支配となったような事態にどう対処するかなど、更に検討すべきところがございます。このような事項についても検討を進めるべきと考えますが、担当大臣の御所見をお伺いします。
経済安全保障推進法の基幹インフラ制度について伺います。
現行の法律に定める電気、ガス、石油、水道、鉄道、航空など十四の分野に加え、今回、港湾運送が追加されます。これは、昨年七月の名古屋港統一ターミナルシステムへの大規模なサイバー攻撃を踏まえたものと考えます。
片や、令和四年十月には、大阪府の急性期・総合医療センターへのランサムウエア攻撃など、様々な社会インフラへのサイバー攻撃が散見されますが、今回、基幹インフラ制度の対象分野の拡大が港湾運送のみとなっていることや、今後の更なる対象分野の追加に当たっての考え方について、担当大臣にお伺いします。
最後に、岸田総理の訪米に関連をしてお伺いをいたします。
今回の首脳会談では、米国、英国、オーストラリアによる安全保障の枠組み、AUKUSによる先端技術分野での日本との協力の検討、日米間での防衛装備品の共同生産、開発、半導体やAI、量子などの最先端技術の研究開発など、数多くの協力、協働が合意されました。
この背景には、特定秘密保護法の制定、施行以降、我が国においてセキュリティークリアランスへの社会での理解が深まり、国会においても本法案の審議が進んでいることとは無関係ではないと考えます。
この点について総理の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/7
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008・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 磯崎仁彦議員の御質問にお答えいたします。
セキュリティークリアランス制度の意義についてお尋ねがありました。
本法案により経済安全保障上重要な情報の保全が強化されることによって、外国政府との間の情報の共有が一層円滑になり、同盟国、同志国などとの経済安全保障分野の協力が一層拡大、深化するほか、国際共同研究などの進展も期待できます。
なお、諸外国においては、セキュリティークリアランス制度の存在が言わば信頼のあかしと認識されている事例もあることから、今後、我が国の民間事業者と外国の民間事業者との間で一定の情報のやり取りが円滑になることも期待されます。
本法案の審議の進展と今般の日米首脳会談での成果との関係についてお尋ねがありました。
本法案は、我が国の経済安全保障を確保する上で重要なものであるとともに、もって同盟国である米国や同志国との一層の連携、協力にも資するものです。
本法案の審議を進めていただいている中で行われた今回の日米首脳会談においては、安全保障・防衛協力の強化、AI、量子、半導体等の先端技術分野における協力など幅広い議論が行われ、多くの点で見解の一致を見ました。
今後とも、それらの取組を進めるとともに、本法案も踏まえ、我が国の情報収集・分析能力の向上や情報保全に一層取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/8
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009・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 磯崎仁彦議員から、まずは、重要経済安保情報の範囲と有識者会議の最終とりまとめで示された情報との関係についてお尋ねがありました。
重要経済安保情報については、本法案三条一項で、重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものという三要件に該当するものを指定すると規定しています。
ここで言う重要経済基盤保護情報については、二条三項において我が国にとって重要なインフラと重要な物資のサプライチェーンの二つを重要経済基盤と定義した上で、同条四項でその保護に関わる四つの情報類型を明示し、対象を絞り込んでいます。
お尋ねのあった有識者会議の最終とりまとめにおいて示した四つの候補類型も、例えば、基幹インフラなどへのサイバー攻撃の脅威情報やそれに対応する政府の対応策、経済安保推進法の基幹インフラ制度の審査の蓄積を通じて得られた規制当局としての判断に関する情報、重要物資のサプライチェーンを調査分析して得た脆弱性情報、半導体などの重要物資の国際共同研究などで海外政府からもたらされた情報などが重要経済基盤保護情報に該当し得ると考えられます。
対象になる情報については、法案成立後、有識者に意見を聴いた上で作成し閣議決定する運用基準において、一層の明確化に努めてまいりたいと思います。
次に、情報指定の際限ない拡張や恣意的な指定についてお尋ねがありました。
重要経済安保情報として指定するのは、ただいま申し上げた三つの要件に該当する場合に限られ、この要件に該当しない情報は指定することができません。
情報の指定及び解除については、先ほど申し上げた運用基準を定めることに加え、制度を所管する内閣府において各行政機関が運用基準に従って適切に指定や解除を行っているかをチェックし、必要があれば内閣総理大臣が勧告などを行うこととしています。また、重要経済安保情報の指定や解除が適切になされているかは、独立公文書管理監が独立した立場で検証、監察することとなります。
以上のような重層的なチェック体制により、法の要件を満たさない指定がなされないよう徹底してまいります。
次に、任意かつ真摯な本人同意、また適性評価における不利益取扱いの防止についてお尋ねがありました。
本法案における適性評価の同意については、事業者などにおいて上司が適性評価を受けることを求めた場合においても、それに同意しないことが許される状況が実質的に確保されるということが重要だと考えます。そのため、事業者の場合には、適性評価を受けることの同意をしなかった事実の目的外使用を禁止する十六条二項の実効性を担保することが重要であります。
禁止の趣旨を事業者及び本人の双方に十分説明して理解を得るとともに、行政機関が十二条三項による同意の確認をする際に、同意は任意であることを説明し、強要などを受けていないか確認することなどが考えられます。さらに、同意をしなかった方が、その後これを理由として不利益な措置を受けることがないよう、今後策定する運用基準などにおいて、目的外利用禁止に違反する行為となる不利益な措置を具体的に明示するとともに、各行政機関がこの規定の遵守を適合事業者との契約などでも求めることなどの措置を検討してまいります。
こうした措置を通じて、目的外利用の禁止に違反する不利益な取扱いの防止を徹底してまいります。
次に、特定秘密保護法と今回の法案における法定刑や法人の両罰規定の有無に関する違いについてお尋ねがありました。
本法案における漏えい罪の法定刑は、特定秘密保護法の法定刑の半分の五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金又はこれらの併科としており、罰金刑のみの選択も可能としております。これは、特定秘密がその漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある情報であるのに対し、本法案の重要経済安保情報は、著しい支障まで至らないその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがある情報を念頭に置いていることから、結果の重大性の程度などに鑑みて差を設けたものです。
また、本法案にいわゆる法人両罰規定を置いたのは、本法案では、特定秘密保護法に比べ事業者への情報提供の要件を緩和しており、事業者が対象情報を取り扱うケースがより広く想定される上、重要経済安保情報には企業の事業活動に関連するものも多くなると考えられ、その結果、法人がその業務に関して重要経済安保情報を不正に取得しようとする場合や、適合事業者がその業務に関して漏えいする場合も想定し得ると考えられるからです。
次に、本法案の射程外である情報の取扱いや、適合事業者が実質的な外国支配となった事態への対処など、更に検討すべき課題についてお尋ねがありました。
重要経済安保情報の指定要件を満たさない機微度の情報については、まず、政府においては公文書管理法等に基づき厳格に管理することになります。また、民間が保有する情報の保全については、本法案のような政府の情報保全制度ではなく、不正競争防止法や外為法による保護、管理を含め、別途検討していくべき課題であると考えております。
その上で、民間事業者等が保有している情報であって国として保全が必要と考えられる情報の取扱いについては、有識者会議の最終とりまとめにおいて、政府として民間事業者等が真に必要な情報保全措置を講じられる環境を整えていけるよう、明確な指針等を示していくことの妥当性も含め検討を進める必要がある旨の御指摘をいただいているところであり、こうした御指摘も踏まえて今後検討を行ってまいります。
また、お尋ねのように、適合事業者が買収などにより実質的な外国支配となった場合は、その時点で適合事業者の基準を満たすかどうか、政府との契約関係を続けることが適当かどうか、個別具体的に判断していくことが想定されます。
その上で、適合事業者の組織的要件については、有識者会議の最終とりまとめにおいて、主要国の例も参照しつつ、我が国の企業の実情や関係法令との整合性も踏まえながら実効的かつ現実的な制度を整備していくべきとされていることを踏まえて、今後検討してまいります。
最後に、経済安全保障推進法の改正法案の内容や基幹インフラ制度への追加の考え方についてお尋ねがありました。
今回の改正法案については、推進法の制定以降に名古屋港や大阪の病院において大規模サイバー攻撃事案が発生したことも踏まえ、港湾分野と医療分野について基幹インフラ制度の対象事業に追加するかどうか検討いたしました。
港湾分野につきましては、港湾における物流機能の安定的な提供の確保を図る観点から、今回の改正法案において基幹インフラ制度の対象事業に一般港湾運送事業を追加することといたしました。
一方、医療分野については、厚生労働省における検討によれば、仮にシステム障害が生じても周辺医療機関との連携により必要な医療提供が可能であることなどから、今回の改正法案では基幹インフラ制度の対象としないこととなりました。
基幹インフラ制度の対象事業については、事案を受けてから後追い的に議論するのみではなく、平時から安定的な提供を阻害する要因となり得るリスクなど脆弱性を幅広く点検、把握し、その対応策の検討を行うなどの取組を通じて不断の見直しを行ってまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/9
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010・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 杉尾秀哉君。
〔杉尾秀哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/10
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011・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉です。
ただいま議題となりました重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案等について、会派を代表して質問いたします。
その前に、まず総理、訪米お疲れさまでした。裏金問題とともに沈み行く岸田総理にとって、アメリカ・バイデン政権の破格とも言える厚遇が干天の慈雨とも思えたであろうことは、大統領専用車ビースト車内での破顔一笑の大統領とのツーショット写真を見ればよく分かります。
しかし、幾ら総理が日米同盟は前例のない高みに到達したと胸を張っても、もはや指導力を欠いた岸田総理の下ではいつ深みにはまるか分かりません。そもそも支持率僅か一六%そこそこでは、政権の正統性に欠けると言わざるを得ません。
こうした文脈で考えますと、今回の訪米前に政府・与党が本法案を駆け込みで衆院通過させようとした意図が透けて見えるようです。つまり、衆議院で本会議の審議を急いだのはバイデン大統領への手土産にするつもりだったのではないか、また、セキュリティークリアランス制度の導入について日米首脳会談で総理から何らかの言及があったのではないか。これらの疑問に対して、岸田総理、明確にお答えください。
訪米から帰った岸田総理を待ち受けていたのは、自民党裏金問題というアリ地獄でした。これも、訪米前に総理が駆け込みで行った裏金議員への処分、これが実に評判が悪い。自民党内には怒りや恨みが渦巻いていると聞いています。その象徴がスケープゴート役にされた塩谷元文科大臣で、再審査請求をした塩谷議員は、岸田総理の責任も問われるべきだと至極真っ当な主張をされています。
また、総理訪米の間に、安倍派の裏金作りは森元総理の派閥会長時代に始まり、問題のキックバックの再開にも森氏が関与していたことを示唆する下村元文科大臣が発言したとされる音声データがメディアで報じられました。総理はこの内容を把握していますか。もし把握しているなら、再々調査が必要なのではないでしょうか。
そもそも本件のキーマンである森元総理に、岸田総理が電話で事情聴取するなんてあり得ません。しかも、この電話も僅か三分から五分程度で、森氏は御機嫌伺いのような話だったと言っているそうじゃありませんか。
総理、もしそうでないと言うのなら、何分程度、どこまで突っ込んで事情聴取をしたのか、明らかにしてください。それができないなら、単なるアリバイづくりだったと断定します。
通常の会社や組織であれば、これだけ世間を揺るがす事件を起こせば、トップが責任を取るのは当然のこと。しかも、世論の六割超が岸田総理の処分を要求しているのに全くおとがめなしでは、自民党という組織はもはや末期的としか言いようがありません。
そこで、岸田総理に伺います。
今回の件で、一度でも自らの処分を考えたことはありますか。また、それをしなかったのはなぜなんでしょう。さらに、責任を取って総裁を辞めても、当面、総理大臣ではいられます。今からでも遅くありません。自民党総裁を辞任する考えはありませんか。
私は、今回の一件は、ただ総理・総裁の座に居続けたいだけという岸田総理の本性の現れと理解しています。また、それと同時に、総理は総裁再選に向けて着々と布石を打っているようにも見えます。それをうかがわせるのが、裏金議員の処分を発表した後の取材で自らの責任を問われて、最終的には国民、党員に判断いただくと発言したことです。国民が判断することとは、つまり解散・総選挙を意味します。
そこで、総理、今国会の会期中に解散を行う考えはありますか。また、党員の判断といえば自民党総裁選挙です。一部に流れているような秋の総裁選を前倒し実施する考えはないでしょうか。逃げずにお答えください。
いずれにしても、金と利権まみれの自民党政治はもう限界です。岸田総理が言うように、もはや今国会中に国民の信を問うしかないのではないでしょうか。
それでは、本法案の中身に入ります。
第二次安倍政権以降の政府・与党は、特定秘密保護法に始まり、共謀罪、安保法制など、ひたすら強い国づくりを目指してきました。そこにあるのは、国会での議論を軽視し、何でも閣議決定で決めたり、政省令や運用基準、規則等に丸投げする、言わば行政独裁とも言える手法でした。本法案もそうした流れの中にあります。
一方、米中の対立激化に象徴される国際情勢の変化は産業分野にも及び、重要な経済情報を保全する必要性が高まっているのもまた事実です。
こうした現実に対応するため、私たちも二年前の経済安保推進法には賛成し、その際に附帯決議で付けられたのが適性評価、今回のセキュリティークリアランス制度でした。
あれから二年の歳月を経て、今回、外交、安保など四分野のトップシークレット、機密と、シークレット、極秘情報は、従来どおり特定秘密保護法でカバーする一方、本法案では重要インフラやサプライチェーン等に関するコンフィデンシャル、秘密級の経済安保情報のみを対象とし、一体的に運用することとされました。
しかし、肝腎要の法案の中身は全てが曖昧なままで、衆議院では出来の悪い法律、このように酷評される始末です。このため、我が党が中心となって、恣意的な情報指定に一定の歯止めなどを掛けるため、国会による情報監視等を盛り込んだ修正案を可決させました。
そこで、総理に伺います。
衆院段階で法案修正がなされたことへの評価と、なお機密の範囲と対象や、プライバシー侵害のおそれなど、数多く残る懸念点について今後どのように払拭していくのか、考えをお聞かせください。
本法案について、経済界はおおむね歓迎する一方、企業の中には今後の見通しの不透明さや人事への影響などについて戸惑いの声も聞かれます。
そこで、セキュリティークリアランス制度導入に対してどれほどのニーズがあるのか、また民間企業のビジネスチャンスがどれだけ広がるのか、数字や具体例を示して説明してください。
また、今回の法整備は経済安保情報に限られるため、期待されているような同盟国との防衛産業協力の進展とは基本的に関係がない、こういう解説があります。事実でしょうか。高市大臣、お答えください。
今回の法案で導入されるセキュリティークリアランス制度の適性評価の対象となる人数について、政府は具体的な説明を拒み続けてきました。ところが、衆院審議の最終段階になって高市大臣がようやく、多く見積もって数千人程度で、数万人という単位にはならない、このように答弁しました。
ここで言う数千人とは初年度の見積数でしょうか。それから、適性評価の対象の人数は制度の根幹に関わるものですが、なぜ黙っていたのでしょうか。
ちなみに、アメリカでは、身上調査を行う機関、DCSAは三千人規模で、認定を得た人は四百万人以上に上ると言われています。一方、日本で適性評価のためにこれから内閣府につくられる新たな組織は二十人規模と桁違いに少ない。
先行する特定秘密保護法の評価保有者数は十三万人と言われておりますけれども、新制度では最終的にどれだけの規模を想定しているのでしょうか。併せて高市大臣の答弁を求めます。
先ほども指摘したように、今回の法案では、民間人が調査されることによるプライバシー侵害のおそれがなお拭えないままです。
政府の説明では、調査は本人の同意が前提というふうにされておりますけれども、会社内での処遇などを考えると、事実上の強制となる可能性が否定できない上、調査項目が配偶者や家族の国籍はもとより、飲酒の節度や渡航歴、さらには経済状況にまで及んでいて、民間のプライバシーが、民間人のプライバシーが身ぐるみ剥がされるおそれがないとは言えません。
そこで、適性評価を行う調査機関による権限の濫用を防ぎ人権を最大限保障するとともに、収集した個人情報の管理の厳格化と、調査拒否を理由とする配置転換など労働者への不利益な取扱いの禁止など、重要事項を今後定める運用基準に委ねるのではなく、法案審議の過程で明確な歯止めのためのルールを示すよう総理の見解を求めます。
適性評価制度と並ぶ最大の問題は、本法案で保護される機密の範囲や具体的な対象などの重要事項がこれまた運用基準に委ねられていることです。
例えば、対象となる情報の範囲ですが、条文上は規定されていないものの、政府保有に限るということでいいのか。具体的には、民間保有の情報が勝手に指定される可能性がないことや、政府がコンフィデンシャルと認定し、その後、文書等において明確に表示されたもの以外は保護対象ではないということでよろしいか、高市大臣、お答えください。
この情報指定の件数についても、やはり衆議院審議の最終段階になって、初年度でも数十件程度、多くても三桁の件数と見積もられるという高市大臣の答弁がありました。これも驚きです。なぜ法案審議の最後まで言わなかったのか、全く理解できません。
そこで、今度は岸田総理に伺います。こんな秘密主義のような姿勢で法案を成立させようとしていいんでしょうか。そもそも当初の指定が数十件から数百件レベルしか想定されていないということは、目下保護対象となるべきコンフィデンシャル級の重要経済安保情報がさほどないことを意味するのではありませんか。これは、私が冒頭指摘した本法案の立法事実にも関わる重要な問題です。
このほか、秘密指定が違法性のあるものも含めて恣意的にならないようにすることや、指定すべき情報を正しく取捨選択するための具体的な方策についても、政府からいまだ明確な回答はありません。併せて岸田総理の答弁を求めます。
さらに、衆議院段階では、特定秘密保護法と本法案とのシームレスな運用には隙間があり、凸凹ではないかという指摘がありました。これは本法案が特定秘密保護法の改正ではなく、新法として提出されたこととも密接に関連します。
本法案により改めてトップシークレット、シークレット、コンフィデンシャルの関係が整理をされ、それに伴い特定秘密保護法の運用基準も見直されることになりますけれども、これまでの説明では、何か付け加えるとか書きぶりを改めるなどといった抽象的な説明ばかりで、特定秘密の際限なき拡大の懸念はいまだに残ったままです。
仮に本法案が成立したら、特定秘密保護法についても今後どのように見直すべきか、方向性くらいは示す必要があるのではないかと思いますけれども、総理の考えをお聞かせください。
ちなみに、特定秘密保護法は施行後十年が経過をしましたが、これまでに立件されたのは海上自衛隊の元一等海佐だけで、このケースも刑事事件としては不起訴処分となり、真相は闇の中です。
今回、秘密保護法制が新たな段階を迎えるに当たり、こうした特定秘密保護法十年を総括するとともに、引き続き、ジャーナリストや一般庶民が処罰されるなど国民の知る権利が侵害されるおそれがないことを総理、明言してください。
また、今回の法案提出に至る議論の過程では、労働者の権利利益保護のため、労使協定の締結など労働組合の関与を求める意見が出されています。
これについて、高市大臣は衆議院での質疑で、労使協定の義務付けまでは難しいという認識を示しつつも、前向きな答弁をされています。
そこで、高市大臣に伺います。更に一歩踏み込んで、労働組合の関与に関して運用基準の案文を示す考えはありませんか。
さらに、今回の法改正では、経済安保推進法の審査対象とする基幹インフラに一般港湾運送事業を追加する内容が盛り込まれました。これは元々、二年前の法案審議の段階で私も含めて必要性を強く主張したものですが、政府がこうした意見に耳を貸さず放置した結果、去年、名古屋港が深刻なサイバー攻撃に遭うという大失態を犯しました。
一方、事案の性格は異にしますけれども、これも私が何度か国会質疑でも取り上げた大川原化工機の冤罪事件に象徴されるように、安全保障関連法制をめぐっては、捜査当局による暴走の危険性が常に付きまといます。
こうした経緯に鑑み、岸田総理には、国会軽視と行政独裁の姿勢を改め、権力を常に抑制的に行使すべきことについての見解を求めます。
締めくくりに、参議院では抽象的な議論ではなく、でき得る限り具体的に、そして政府には条文の棒読みやごまかし、はぐらかしのオンパレードではなく、これもでき得る限り真摯に質問に答えていただきたい。これが国民の不安を払拭する最大の近道であることを信じて疑いません。
良識の府である参議院らしい議論が展開されることを期待して、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/11
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012・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 杉尾秀哉議員の御質問にお答えいたします。
本法案の審議と日米首脳会談の関連についてお尋ねがありました。
本法案は、我が国自身の経済安全保障を確保する上で重要な法案であります。また、審議の日程は国会においてお決めいただいており、米国への手土産にするために衆議院での審議を急いだとの御指摘は全く当たりません。
日米首脳会談における発言の逐一については、外交上のやり取りであり、お答えを控えさせていただきますが、今般の米国公式訪問においては、日米安全保障・防衛協力を一層強化していくこと、日米でAI、量子、半導体等の先端技術の分野における国際的な取組を主導していくことなどを含め、幅広い分野における新たな日米間の協力について一致をいたしました。
下村議員や森元総理の言動についてお尋ねがありました。
報道された議員等の言動の、言動等の一つ一つについてコメントすることは差し控えますが、御指摘の下村議員のものとされる音声データの内容を含め、推測の域を超えて森元総理の関与を具体的に指摘するような発言は把握しておりません。
また、私の森元総理への聴取については、最大限の協力を得る観点から、やり取りの内容等を明らかにすることはしないという前提で行ったものであり、詳細をお答えすることは差し控えますが、結論として、森元総理の具体的関与は確認できなかったところであります。
いずれにしても、引き続き、できる限りの事実確認や原因究明の努力を行うことは大切であり、今後の公判の状況等を注視してまいります。
派閥の政治資金の問題に関する私の責任についてお尋ねがありました。
今回の事案については、検察による捜査が尽くされた結果、既に法と証拠に基づく厳正な刑事判断がなされているところですが、こうした刑事責任とは別に、深刻な政治不信を招いた政治責任を明らかにするため、党として所定の手続にのっとり、役職等の議員歴、不記載の金額や程度などの状況を総合的に勘案して厳正かつ公正に処分を行ったところです。
このような中で、私自身については、収支報告書の不記載がなかったことなどから処分の対象とはしないと党として判断されたものでありますが、党全体として政治不信を招いたことは事実であり、自民党総裁としての責任、これは重く受け止めております。
今回の一連の事案は政党とは異なる団体である派閥で起きたものですが、このような団体を含めて党のガバナンス改革を進めるとともに、政治資金規正法改正を含めた再発防止対策、政治改革、覚悟を持って断行することが総裁の責任の在り方です。これまでも、これからも私が先頭に立ってこの責任を果たしていくことしか考えておりません。
衆議院解散及び自民党総裁選の時期についてお尋ねがありました。
議員御指摘の私の発言は、最終責任者たる総理大臣、自民党総裁は、その仕事ぶりを日々国民、党員に厳しく判断される立場にあるという趣旨を申し上げたものであり、衆議院解散、総裁選など、特定の政治日程を念頭に置いたものではありません。国民の信頼回復のほか、内外に山積する先送りできない政策課題で結果を出すべく全力で日々の仕事に取り組んでいるところであり、今はそのことしか考えておりません。
衆議院でのこの法案修正及び種々の懸念点への対応についてお尋ねがありました。
まず、衆議院における政府法律案への修正については、与野党間で合意した内容を盛り込んだものであり、国会でお認めいただいた暁には適切に運用してまいります。
また、重要経済安保情報として指定する範囲については、本法案において三つの具体的な要件を明確に規定しており、それに加えて、法案成立後、有識者に意見を聴いた上で作成し閣議決定する運用基準において、一層の明確化を行っていくこととしております。
プライバシーとの関係については、適性評価の実施に当たって調査項目を七項目に限定をすること、調査の項目や方法について事前に本人に告知し、その同意を得るということ、適性評価の結果や個人情報の目的外利用を禁止すること、これらを規定するなど、必要な配慮を行っております。これらが本法案の運用においてもきちんと担保されるよう、政府全体でしっかりと対応してまいります。
適性評価におけるプライバシー侵害のおそれについてお尋ねがありました。
適性評価の実施に当たっては、先ほども述べたとおり、調査項目の限定や本人の事前同意、個人情報の目的外利用の禁止など、プライバシーへの配慮を法案上で明確に規定しており、適性評価及びそのための調査を行う行政機関や内閣府においてその遵守を徹底いたします。
また、労働者への不利益取扱いに関しては、適性評価の結果の目的外利用の禁止についても、今後、有識者の意見も聴き、定める運用基準において明確に定めることを検討していく旨お示ししてきているところであります。
なお、本法案では、この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことはあってはならないという規定も置いており、これらが運用においても政府全体できちんと担保されるよう、しっかり対応してまいります。
対象情報の指定件数、指定の方策等についてお尋ねがありました。
指定件数については、具体的な見通しを現時点で申し上げることが難しいことに変わりはありませんが、御指摘の高市大臣の答弁では、公表されている秘密文書ファイルの統計数値を起点に、あくまで大胆な仮定を重ねながら試算をさせていただいたものとして説明させていただいたものです。なお、その指定件数は情報の件数であり、文書の数を示すものではありません。
また、重要経済安保情報の指定については、まずは各行政機関において指定を行った後、内閣府において指定が適切に行われているかをチェックをし、必要であれば内閣総理大臣が勧告などを行うこととしております。
さらに、特定秘密の検証、監察を行っている独立公文書管理監が本法案の重要経済安保情報についてもその指定や解除が適切になされているかを検証、監察することを想定しています。
こうした重層的なチェック機能を通じて、情報の指定が各行政機関の長により恣意的な情報指定とならぬよう徹底をしてまいります。
特定秘密保護法についてお尋ねがありました。
現在、特定秘密保護法の改正を検討すべき具体的な事情は承知しておらず、法定事項である秘密の範囲を見直す予定はありませんが、経済安全保障に関する重要な情報が特定秘密に該当するかどうかを各行政機関がより的確に判断できるようにするため、法の授権の範囲内で運用基準の見直しを検討することとしております。
特定秘密保護法は、平成二十六年から約十年間、効果的かつ適正に施行されてきました。これにより我が国の情報保全水準が向上するとともに、同盟国、同志国との情報共有が一層円滑となり、また、知る権利を侵害する制度ではないとの理解も得られてきたものであると認識をしております。
さらに、経済安保行政における対応の在り方についてお尋ねがありました。
経済安全保障推進法の制定時、国土交通省において、港湾ターミナルオペレーションシステムの機能が停止してもその影響は限定的であると評価していたため、規制対象には当たらないと考えていたところですが、結果として、当時の検討が必ずしも十分ではなかったとの御指摘は真摯に受け止めさせていただきます。
また、大川原化工機の事件については、現在、国家賠償請求訴訟が係争中であると承知していることから、現時点で所感を述べることは差し控えますが、捜査が法と証拠に基づき緻密かつ適正に行われるべきこと、これは当然のことであり、捜査機関においては引き続き適正な職務執行に努めてもらいたいと考えております。
いずれにいたしましても、行政府の長として、引き続き、国会における議員各位の御指摘を真摯に受け止め、誠実に対応するとともに、適正な行政運営に努めてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/12
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013・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 杉尾秀哉議員から、まずは、制度導入に対するニーズ及び民間企業のビジネスチャンスの広がりについてお尋ねがございました。
本制度を検討するに当たり昨年二月に立ち上げた有識者会議には、日本経済団体連合会や経済同友会、日本商工会議所、日本労働組合総連合会といった団体からも委員として参加をいただき、事業者、就労者双方の視点から御議論をお願いしてまいりましたほか、同会議におけるヒアリングでは個別の企業の方々からもお話を伺いました。
その中で、企業の皆様からは、海外企業から協力依頼があったが機微に触れるということで十分に情報が得られなかった、宇宙分野の海外政府からの入札の際にセキュリティークリアランスを保有していることが説明会の参加要件になっており、詳細が分からず不利な状況が生じているといった声が聞かれました。
また、本法案が閣議決定されて以降、経済界から出された意見書におきましては、セキュリティークリアランスは企業が国際共同研究開発等に参加する機会を拡大することにも資することから、我が国の戦略的優位性、不可欠性の維持、確保にもつながり得る、法案は国内既存制度との整合性の確保、適性評価に当たってのプライバシーへの配慮等、経済界が主張してきた考え方を反映していることからも評価できる内容であり、同法案の早期成立を求めるといったことが言及されており、一定の評価をいただけているものと承知しております。
次に、同盟国などとの防衛産業協力の進展についてお尋ねがありました。
本法案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンといった重要経済基盤の保護に関する情報です。重要経済基盤に関するいわゆるデュアルユース技術などが本法案に定める重要経済安保情報として指定される可能性はありますが、本法案は、防衛装備品の開発などを目的としたいわゆる防衛産業協力を想定して提出したものではございません。
次に、最終的に想定される適性評価の対象人数についてお尋ねがありました。
お尋ねの適性評価の対象となる人数については、衆議院における審議の中で度々御指摘をいただいたことを受け止め、大胆な仮定を重ねながら試算したものでございます。お示しした試算は、秘密文書を含む行政文書ファイルの数を起点に、まず初年度に想定される指定件数を見積もり、これを前提に、例えば既に特定秘密保護法に基づく適性評価を受けた者との重複の可能性など、様々に考慮すべき諸要件を捨象するなど大胆な仮定を重ねて推計した結果として、数千人程度であり、数万人という単位にはならないと見積もられる旨を現時点における一つの目安としてお答えしたものでございます。
さらに、経済安全保障分野は変化が速く、重要経済安全情報の、重要経済安保情報の数も時の経過に伴って増減することも想定されることから、将来想定される適性評価の対象人数について具体的に現時点でお答えすることは困難であるということには変わりはございませんが、今申し上げた目安となる数字から大きく変動することはないものと認識をしております。
次に、対象情報の範囲についてお尋ねがございました。
本法案は、政府が保有する情報を保全するための制度を整備するものであり、民間事業者の保有する情報を政府が一方的に指定して本法案に基づく保護措置等を強いることはございません。また、重要経済安保情報に指定された情報には、重要経済安保情報である旨を表示し、それが困難な場合にはその情報を取り扱う者に当該情報について指定が行われた旨の通知をすることとしており、行政機関から適合事業者及びその従業者に対して対象情報の範囲を明示する仕組みとなっております。
最後に、労働組合の関与についてお尋ねがありました。
労使協定につきましては、有識者会議における議論を踏まえ、一律に義務付けることには慎重でなければならないと考えています。他方で、適性評価の拒否や結果を理由とする不利益取扱いを防止する観点からも、良好な労使関係の下で労使間でしっかり話し合っていただくことは望ましいと考えております。義務付けまではしないにせよ、運用基準などで労働組合の関与などの可能性について何かしら言及ができないかを検討をしてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/13
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014・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 柴田巧君。
〔柴田巧君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/14
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015・柴田巧
○柴田巧君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の柴田巧です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、岸田総理に質問をいたします。
改めて言うまでもなく、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等により、安全保障の裾野が経済分野に急速に拡大する中、国家国民の安全を経済面から確保するための取組を強化、推進することは極めて重要です。
しかし、我が国では外国政府の工作員等が諜報活動をしており、実質的にそれを取り締まる法整備が遅れているため、スパイ天国とやゆされております。そのため、外国政府の工作員等から政府保有の重要情報を保全するための対策を講じていく必要があります。
また、日本の情報管理体制が脆弱であり、同盟国、同志国からの情報共有がなされにくい現状があります。情報管理体制において同盟国、同志国と同レベルの制度を整備することで、同じスタートラインに立って日本企業がビジネスを展開をしたり、政府間で経済や科学技術に関する貴重な情報を交換できたりする環境を一刻も早くつくっていかなければなりません。
こういった問題意識から、我が会派は、G7で唯一未整備であることも鑑み、セキュリティークリアランス制度の導入に対して、令和四年に成立した経済安全保障推進法の議論の頃からその必要性を強く訴えてまいりました。
今般、同制度の導入を図る法案が国会に提出をされ、加えて、我が会派の主張も取り入れた形で法案が修正されて、本日、参議院でもこの本会議質疑を迎えたことは喜ばしいと思います。その反面、随分と遅きに失したとの感が否めません。
まず、お尋ねをします。
一昨年の経済安全保障推進法の法案審査を通じた衆参の内閣委員会で、セキュリティークリアランス制度の構築を検討した上で、法制上の措置を含めて必要な措置を講ずる旨の附帯決議が付されたにもかかわらず、法案の提出が令和五年の常会ではなく、令和六年の常会までずれ込んだ理由は何なのでしょうか。
また、総理御自身が衆議院での答弁の中で、セキュリティークリアランス制度と国の国際競争力の関係は無関係ではないことを認めていらっしゃいます。この制度の導入にちゅうちょし、不備がある状態を続けてきたことは、国際競争における機会損失を生じさせたということではないでしょうか。この点についての認識もお伺いをします。
次に、本年一月十九日に公表された有識者会議の最終とりまとめでは、セキュリティークリアランス制度の整備を検討するに当たり、主要な同盟国や同志国に通用するものとしなければならないとされていますが、秘密指定する情報の範囲や罰則による抑止力などを指すのでしょうか。具体的な要件を御教示ください。
また、主要な同盟国、同志国に通用するセキュリティークリアランス制度を我が国が整備することにより、どのような効果が期待されるのでしょうか。以上についても見解をお伺いをいたします。
さて、本年一月三十日に開催された経済安全保障推進会議で総理は、新たな制度と既存の特定秘密保護法をシームレスに運用する方針を定めましたが、衆議院の審議でもシームレスではなく凸凹ではないかという批判的な意見が多数あったと承知をしております。
やはり本来、特定秘密保護法の運用基準の見直しではなく、経済安保を四分野、すなわち防衛、外交、スパイ活動防止及びテロ防止に追加するなど、同法の改正が分かりやすいと考えます。
シームレスな運用の意義と、なぜ特定秘密保護法の改正という形を取らなかったのか、分かりやすく納得できる答弁を求めます。
また、重要経済安保情報保護活用法案では、法人へのいわゆる両罰規定を創設することとしていますが、その罰金額を見ると漏えい罪で五百万円と、抑止力として十分なのかと思う水準です。国際的に見ても、この水準は果たして妥当なのでしょうか。見解をお伺いをします。
さらに、今回の新法よりも、より機微度が高い情報を対象とし、三%程度とはいえ、民間の事業者も適性評価の対象となっている特定秘密保護法に両罰規定がないまま放置しているのは、どう考えてもおかしいと言わざるを得ません。
よほど総理は特定秘密保護法を改正するのが嫌なのかと勘ぐりたくもなりますが、国会での議論や附帯決議も踏まえ、両罰規定を特定秘密保護法にも導入する必要性について検討すべきですが、見解を求めます。
どのような情報を重要経済安保情報と指定し、その範囲を定めるのはこの各省庁の職員なので、これらの職員のリテラシー向上が不可欠であります。
リテラシー向上のためにどんな具体的なアクションが想定をされているのか、また、行政側の専門家のリテラシー向上に任せるだけでなく、対象情報の決定プロセスを第三者の目にさらすといった手だてを講じないのか、お伺いをいたします。
次に、能動的サイバー防御についてお尋ねをします。
令和四年十二月に閣議決定された国家安全保障戦略では、能動的サイバー防御を導入する旨が明記をされました。
能動的防御、サイバー防御の実施にセキュリティークリアランス制度が不可欠と思われますが、その両者の関係についてどう考えているのでしょうか、率直な見解を求めます。
総理は、本件について検討するばかりを繰り返し、まさに検討使状態がずっと続いています。
能動的サイバー防御については、今月八日に読売新聞の世論調査結果が公表されましたが、サイバー攻撃を受けた民間企業などと政府機関が情報を共有することに賛成は八九%、攻撃者が使うサーバーを把握をして被害を防ぐため、政府機関が通信事業者から情報提供を受けることに賛成八八%、さらに、攻撃元のシステムに侵入し無力化することに賛成八二%でした。
多くの国民、企業は、サイバー攻撃に不安を感じ、能動的サイバー防御への理解が十分醸成されてきているのではないでしょうか。本来であれば、昨年一月に内閣官房にサイバー安全保障体制整備準備室を設置した後、速やかに有識者会議を立ち上げ、今年の常会で法案を成立させるスピード感が求められるところですが、一向に動きが見えません。
総理、検討するとか検討を加速するというのはもう聞き飽きました。一日も早く有識者会議を立ち上げ、早急に法案提出が必須であると思いますが、総理のお考えのスケジュール感、そして能動的サイバー防御の必要性について答弁をお願いをいたします。
スパイ防止法について伺います。
国民の生命、財産を守ることが国家の最も大事な仕事であるにもかかわらず、国家の重要な情報や企業等の技術が不法に盗まれたとしても、日本はその行為をスパイ罪で罰することができない大変珍しい国であります。
我が国では、出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法などの刑の軽い特別法や一般刑法でしか取締りができません。また、法整備が進めば、外国で不当なスパイの容疑で拘束、逮捕された日本人に対し、スパイ交換による奪還という外交手法も可能になるかもしれません。
今回のセキュリティークリアランス制度の創設で満足をせず、我が国のインテリジェンスに関する法制度を充実させる意味ではスパイ防止法の制定は喫緊の課題と考えますが、政府の検討状況はいかがでしょうか。お伺いします。
経済安全保障推進法改正案について伺います。
今回の改正は、名古屋港におけるサイバー事案を契機に対象を拡大したものと承知をしていますが、インシデントが発生し被害が生ずる都度、法改正をするべきなのでしょうか。
内閣サイバーセキュリティセンター、NISCや警察庁等が連携をして、海外でのサイバー攻撃での事例を適宜モニターし、基幹インフラの対象になっていない事業の設備へのサイバー攻撃を認知した場合には、我が国においても基幹インフラの対象を追加すべきか早急に検討するような仕組みを構築すべきではないかと考えますが、御所見をお伺いをいたします。
最後に申し上げます。
経済安全保障は、日々刻々変化する国際情勢や技術革新に即座に対応しなければなりません。我が会派は、国民の生命と財産を守るため、現実を直視した安全保障政策を一層推進すべく、タブーなき議論をいとわず、引き続き積極的に提言、提案していくことを申し上げ、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/15
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016・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 柴田巧委員の御質問にお答えいたします。
本法案の提出時期と国際競争力についてお尋ねがありました。
安全保障の裾野が経済・技術分野に拡大する中、セキュリティークリアランスは重要かつ喫緊の課題です。
他方、セキュリティークリアランス制度は個人に対する調査を含むものであり、プライバシーへの配慮など慎重に検討すべき課題も多く含まれていることから、政府としては、昨年二月から有識者会議を開催し、約一年掛けて十回の審議を重ね、丁寧に検討を行っていただきました。
この間に機会の喪失が生じたかについて一概に申し上げることは困難ですが、制度の在り方やその対象となる個人や企業等との関係など、拙速を避け、熟慮を重ねて検討を進め、その上で今国会への法案提出を判断したものであります。
セキュリティークリアランス制度の条件及び効果についてお尋ねがありました。
同制度については、国によってその態様が様々であり、互いに通用するための具体的要件が一義的に定められているものではありませんが、一般に、秘密情報の保護措置、信頼性の確認を含む情報を取り扱う者の制限、そして漏えい時の罰則などが必要とされています。
さらに、諸外国から実質的に自国と同等の保護が与えられていると認められるためには、制度の在り方に加え、実際の運用状況も重要になると考えています。制度整備の効果としては、外国政府との間での情報共有がこれまで以上に円滑になり、同盟国、同志国などとの経済安全保障分野の協力が一層拡大、深化することが期待されます。
シームレスな運用の意義と特定秘密保護法の改正という形を取らない理由についてお尋ねがありました。
経済活動の担い手は民間事業者であり、政府と民間事業者の協働、連携が重要となる経済安全保障という分野の特色を踏まえると、重要な情報を政府内で秘匿するのみならず、情報保全に関し信頼できる民間事業者にその情報を共有して活用することが重要です。
この点に関し、特定秘密保護法においては、特定秘密を適合事業者に保有させなければ行政機関の所掌事務の遂行が立ち行かないような、言わば非代替性が認められるときに情報提供が可能とされております。先ほど述べたように、経済安全保障の特色に照らせば、より広く、かつ効率的な運用を可能とするため、本法案において、各行政機関の長が安全保障の確保に資する活動の促進を図るために必要があると認めたときに事業者への情報提供を行うことができることとする、このようにいたしました。
その上で、特定秘密保護法は、その別表の四分野に該当する情報であって、漏えい時に安全保障に著しい支障を与えるものを保護する制度であり、経済安全保障上の重要情報も含まれ得ると考えています。これに対し、本法案は、漏えい時に安全保障に支障を与えるけれども、特定秘密保護法が対象とするものより一段低い機微度の安全保障上の重要情報を保護する、こうした制度であります。
政府としては、経済安全保障上の重要情報を二つの制度で保護していくに当たり、これを確実なものとする観点から、二つの制度をシームレスに運用していくことが重要であると考えている次第であります。
罰金額の水準についてお尋ねがありました。
諸外国の制度との比較につきましては、各国の刑事法制が異なることから、一概に比較することはできません。
両罰規定は、その犯罪行為が法人等の業務に関して行われた場合に、行為者である自然人を罰するほか、その法人等にも罰金刑を科すというものであり、お尋ねの抑止力の観点からも、一定の意義があると考えています。
本法案における両罰規定の罰金刑は、両罰規定を有する他の国内法令とのバランスを踏まえて定められたものであり、制度の在り方については、運用の状況等も見ながら、不断の検討を行ってまいります。
特定秘密保護法における両罰規定の要否についてお尋ねがありました。
特定秘密保護法の制定時に秘密の提供先として想定されたのは主に防衛関連の事業者であったところ、同法制定前にも秘密保全措置が厳格に実施されてきた実績があることなどから、特定秘密保護法においては、新たに両罰規定を置いてまで組織ぐるみの秘密漏えいを防止する必要性に乏しいと判断されたものと承知をしております。
両罰規定の要否については、行為者のみを処罰するだけでは取締りの実効性を確保し難い事情があるかという観点から、立法事実に即して判断すべきであるところ、特定秘密保護法は、経済安保関連の情報を幅広く官民で共有するという考え方に基づく新法とは事情が異なるものと考えておりますが、引き続き、特定秘密保護法の運用状況、これ注視してまいりたいと思います。
職員のリテラシー向上及び対象情報の決定プロセスについてお尋ねがありました。
各行政機関においては、所掌事項の最新の情勢や動向を把握するとともに、民間事業者とのコミュニケーションにより一層緊密、コミュニケーションをより一層緊密に取るなど、情報の指定等の要否を判断する能力を不断に高める努力を行うことが必要となります。
また、本法を所管することとなる内閣府においても、情報の指定、解除などに関する運用基準の案を策定するなど、関連の事務処理全般を担うこととなります。
こうしたことから、内閣府を含めた行政機関における適材適所の人材配置や職員に対する教育、研修の実施など、担当職員のリテラシー向上のための取組、これを鋭意進めてまいります。
対象情報の指定、解除については、統一的な運用を図るために、運用基準の作成、変更やその指定、解除の状況について有識者の意見を聴くこととするほか、必要に応じ内閣総理大臣が勧告を行うなど、運用の改善に不断に取り組んでいくこととしております。
そして、能動的サイバー防御とセキュリティークリアランス制度の関係についてお尋ねがありました。
現在、能動的サイバー防御については、国家安全保障戦略に掲げられた目標を実現するため、様々な観点から検討を進めているところです。能動的サイバー防御の実現に当たっては官と民の連携が重要であると認識をしており、サイバー安全保障分野におけるセキュリティークリアランス制度の活用も含めて検討を進めてまいります。
能動的サイバー防御の必要性等についてお尋ねがありました。
我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境を鑑みると、ますます急を要する重要な課題と認識をしております。
国家安全保障戦略においても、NISCを発展的に改組し、サイバー安全保障分野の政策を一元的に統合調整する新たな組織を設置し、能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために法制度の整備、運用の強化を図る、このようにうたっています。本年度は、その第一段階として、サイバーセキュリティー対策の強化のためにNISCの予算や要員の大幅な増額、増員を行ったところです。
能動的サイバー防御の実現に向けた法案については、現行法令との関係等を含め、様々な角度から検討を要する事項が多岐にわたっておりますが、可能な限り早期に法案を提出できるよう検討を加速をしてまいります。
いわゆるスパイ防止法についてお尋ねがありました。
政府としては、我が国において外国情報機関による情報収集活動等が行われているとの認識に立ってカウンターインテリジェンスに関する取組を強化するなど、必要な対策、講じているところです。また、関係当局においては、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしているものと承知をしています。
その上で、いわゆるスパイ防止法の必要性等については様々な議論があると承知しておりますが、国の重要な情報等の保護を図ることは極めて重要であり、引き続き様々な観点から必要な取組の充実強化に努めてまいります。
経済安全保障推進法の基幹インフラ制度に関するお尋ねがありました。
基幹インフラ制度の対象事業については、事案を受けてから後追い的に追加するかを議論するのみではなく、内閣府を始め関係省庁において、技術の進展や社会経済構造の変化などを踏まえ、平時からリスクなどを幅広く点検、把握し、その対応策などの検討を行うなどの取組を通じて不断の見直しを行ってまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/16
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017・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 竹詰仁君。
〔竹詰仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/17
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018・竹詰仁
○竹詰仁君 国民民主党・新緑風会の竹詰仁です。
会派を代表し、ただいま議題となりました両法案について質問をいたします。
政府が提出したいわゆるセキュリティークリアランス法案について、国民民主党は、令和四年に行われた経済安全保障推進法の審議当時から、経済安全保障分野にセキュリティークリアランス制度を導入すべきであると主張してきたことから、その必要性については賛同しております。
一方で、今回、新法の制定を必要とした理由が明確になっていないと思っています。岸田総理は、特定秘密保護法と新法とでシームレスな運用を図ると述べておられますが、特定秘密保護法の改正とした方がまさにシームレスな運用となり得ると考えられます。また、高市大臣も衆議院内閣委員会において、経済安全保障推進法に一章追加できないかという検討を行っていた時期もあった旨の答弁を行っておりますが、経済安全保障推進法の改正としなかった理由が判然といたしません。
特定秘密保護法の改正あるいは経済安全保障推進法の改正という形を取らずに新法制定とした理由、また、特定秘密保護法の改正よりも新法制定の方がシームレスな運用ができるという点について、岸田総理から明快な答弁を求めます。
次に、民間事業者やその従業者が重要経済安全保障、重要経済安全情報を扱えるようになることで、適合事業者にとってはどのような効果が期待できるのか、そして、それが我が国の産業競争力の強化にどのように結び付けていくのかについて、岸田総理に説明を求めます。
重要経済安全情報の指定の件数や適性評価を受けると見込まれる対象者数について伺います。
どのくらいの民間人が対象になるのか、国民は関心を持っていますし、その対象人数が分かれば、内閣府を始めとする事務局体制が適切な体制となり得るのかを判断する重要な目安になります。衆議院内閣委員会における審議で、高市大臣から、指定が集中すると思われる初年度でも数十件程度、多くても三桁の件数だろうと見積もられる、また、この数値を前提に、適性評価を受ける人数の数も多く見積もって数千人程度で、数万人という単位にはならないとの答弁がありました。
改めて、指定件数、対象者の見積り及びその根拠について、高市大臣の答弁を求めます。
加えて、調査機能を一元的に担うとされる内閣府の職務や業務量の増大が予想されます。調査を行うための機関はどの程度の規模で、いつ頃までに発足させるのかについて、高市大臣に答弁を求めます。
次に、適性評価の評価項目について伺います。
他国では認められている性的行動の節度の調査について、本法案では適性評価の調査項目に明示されておらず、考慮事項にとどまっていることは、制度の実効性確保の観点から不十分であると考えています。
国民民主党は、ハニートラップなどのリスク評価の必要性があることを踏まえ、適性評価の調査項目に性的行動も追加すべきと考えており、衆議院ではそのことを追加した修正法案を提出しました。
ハニートラップをリスクと捉えているのか否か、そして、調査項目には明示はなくとも調査全体として性的行動も包含され得るのか、高市大臣の答弁を求めます。
大臣、副大臣、政務官の政務三役についても適性評価を実施すべきであるというのが国民民主党の考えです。そのことを衆議院で訴えました。岸田総理は、内閣総理大臣がその任命に当たり必要な考慮を行っていることから適性評価の対象外としている、また、高市大臣からも、より機密度の高い情報を保護の対象とする現行の特定秘密保護法においても適性評価の対象としておらず、本法による適性評価は必要ない旨の答弁がありました。
岸田政権発足以降、問題の発覚や疑義が生じたことで、官房長官、大臣、副大臣、大臣政務官など合計で二十人ほどいるのではないかというくらい相当な人数が替わりました。旧統一教会問題、死刑判この失言、家賃や公設秘書に関わる政治資金、人種差別発言、女性関係、選挙違反、税金滞納、そして裏金問題と、理由は様々です。自民党派閥の裏金問題で政治倫理審査会に出席要求されたのは、衆参合わせて八十三名います。この対象者の中には政務三役経験者もいます。そして、裏金問題は全容の解明もされていませんし、国民も納得していません。
こうした方の中から将来、政務三役に任命されることもあり得ます。過去に理由があって辞任した人、更迭された人、あるいは疑義を持たれている人を政務三役に任命する場合も全くのノーチェックで重要情報を扱ってよいのでしょうか。改めて、政務三役に対する適性評価の考えについて岸田総理に伺います。
内閣府の再エネタスクフォースの問題について伺います。
タスクフォースの構成員が中国国家電網公司のロゴが入った資料を会議の資料として提出したことに端を発し、疑義が生じています。私は、内閣委員会で二回、この問題を取り上げました。
この問題は、経済産業委員会や環境委員会などでも議論になっています。高市大臣は衆議院内閣委員会で、審議会のメンバーを選ぶときにしっかりと留意をすることだと思います、そういった書類が出てきたら私の場合は切れますと答弁しておりますが、政府の会議が外国政府や外国企業の影響を受けているとなれば、場合によっては国益を大きく損なう事態も考えられ、大問題だと考えます。政府の審議会やタスクフォースの構成員のバックグラウンド調査もより丁寧にしっかりと行うべきではないでしょうか。この点について、高市大臣の考えを伺います。
そもそも再エネタスクフォースは、設置そのもの、タスクフォースでの議論の扱い、そして構成員の人選、任命、任期に問題があるのではないでしょうか。内閣府本府組織令第三十一条に、内閣府に規制改革推進会議を設置するとあります。そして、規制改革推進会議令や運営規則が定められていて、委員の選出やワーキンググループの設置などが明記されています。規制改革推進会議の委員やワーキンググループの専門委員は内閣総理大臣が任命しますが、再エネタスクフォースは河野大臣が主宰し、構成員は河野大臣が任命しています。再エネタスクフォースはワーキンググループとは全く別物で、つまり規制改革推進会議とは別組織です。全く別組織であるにもかかわらず、再エネタスクフォースの議論が規制改革推進会議の答申に参考として盛り込まれており、あたかも答申の一部と受け止められかねません。重要経済安保情報の保護が重要と政府が主張している中で、重要情報を扱う政府の会議でいいかげんなことをされてしまっては、国民にセキュリティークリアランスの示しが付きません。
疑義が生じている再エネタスクフォースについては解散、少なくとも中止すべきと考えますが、岸田総理の見解を求めます。
経済安全保障推進法改正案について質問いたします。
令和四年当時の国会議論で港湾を基幹インフラに加えるべきとの指摘がされましたが、政府は受け入れませんでした。令和五年七月の名古屋港のサイバー攻撃事案が起きてしまったことは深刻に受け止めなければなりません。
当時、港湾運送の事業を含めなかった理由、そして今回追加する理由、それぞれについて高市大臣の答弁を求めます。
サイバー攻撃に対して政府は万全に備えているでしょうか。サイバー攻撃は、新たな戦闘領域であるとともに、国民生活や社会経済活動に深刻な影響を与えることから、速やかに万全な対策を講じていく必要があります。平時からサイバー空間で巧妙さを増す攻撃者の動向を探り、対処を行うアクティブサイバーディフェンスが必要ではないでしょうか。
先週の日米首脳共同声明、未来のためのグローバル・パートナーの中では、「増大するサイバー脅威に先んじ、情報・コミュニケーション技術分野における強じん性を構築することを確保するため、情報保全及びサイバーセキュリティに関する協力を引き続き深化させる。我々はまた、重要インフラの防護に関する協力を強化していく計画である。」とされました。
アクティブサイバーディフェンスは待ったなしで、すぐにでも法整備を必要と考えますが、アクティブサイバーディフェンスに関する総理の決意を伺い、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/18
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019・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 竹詰仁議員の御質問にお答えいたします。
新法制定の理由及び特定秘密保護法等との関連についてお尋ねがありました。
特定秘密保護法は、漏えい時に安全保障に著しい支障を与える情報を保護するものであり、経済安全保障分野においても、こうした機微度の高い情報は同法の対象として保護されています。
一方、本法案については、特定秘密保護法では対象とされていない機微度ではあるものの、漏えい時には安全保障に支障を与える情報を保護することが適切との考えの下、官民で協働、連携が重要となる経済安全保障という分野の特色を踏まえ、重要な情報を保全しつつも、これを民間事業者にも提供することによって情報を活用することが重要であるということ、また、その際、調査の一元化機能を設けることが効率的であるということ、さらには、情報漏えい時にその支障に応じた異なる水準の罰則を設ける必要があるということ、こういった考慮に基づいて特定秘密保護法とは別の法律によることとしたものであります。
また、経済安全保障推進法は、事業者の活動を安全保障の観点から支援し又は規制することによって安全保障の確保に関する経済施策を効果的に推進することを目的とした法律であり、これに対し、本法案は政府の情報保全措置について定めるものであって、経済安全保障推進法が目的とする経済施策には該当しないため、新法によることとしたものであります。
本法案が既存の情報保全制度とシームレスに運用されるよう、特定秘密保護法の運用基準の見直しの検討を含め、必要な措置を講じてまいります。
適合事業者となる効果及び国の産業競争力の強化についてお尋ねがありました。
産業界において重要経済安保情報を取り扱える方が増えれば、適合事業者である企業にとっては国際共同研究開発や他国の政府調達に参加する機会が増えること、また、我が国の適合事業者と外国の民間事業者との間で自国政府のクリアランスを保有する者同士として一定の情報のやり取りが円滑になることなどが期待され、企業の国際的な活躍の機会が拡大し、ひいては我が国の産業の国際競争力の強化につながる、このように期待されます。
政務三役に対する適性評価についてお尋ねがありました。
この点については、従来から説明をさせていただいておりますように、国務大臣、副大臣、政務官などについては、内閣総理大臣がその任命に当たり必要とされる考慮を行う、このようにされております。こういったことから、本法案の適性評価の対象外としていることであります。
そして、この点については、本法案よりも機微度の高い情報を対象としている特定秘密保護法でも同様であること、こういったことも踏まえた対応であると御説明をさせていただいております。
そして、内閣府の再エネタスクフォースについてお尋ねがありました。
このエネルギーセキュリティーは、国の安全保障の中核の一つであり、関連政策の検討に当たっては他国から干渉されない体制を確保しなければならないこと、これは当然のことであります。
御指摘のタスクフォースについては、規制改革担当大臣の主宰の下、再エネに関する規制の見直しや見直しの迅速化を促すことを目的に開催されたものであり、ここでの取組が直ちに規制見直しに反映されるものではないものの、一つの意見として、同じく規制改革担当大臣が担当する規制改革推進会議の答申において参考として紹介をされてきたものと承知をしています。
現在は、まずは内閣府において、元構成員等が外国の政府、企業から不当な影響力を行使され得る関係性を有していたか等について、人選の経緯等と併せて詳細な事実関係の確認などの調査を行っているところであり、再エネタスクフォースの今後の在り方についても、調査の結果を踏まえて規制改革担当大臣において適切に判断されるものであると認識をしております。
そして、能動的サイバー防御等についてお尋ねがありました。
政府としては、これまでNISCの予算や人員の大幅な増額、増員を行うなどサイバーセキュリティー対策の強化に取り組んできたところですが、これに加えて、先般、私とバイデン大統領との間で発出した日米首脳共同声明では、増大するサイバー脅威に先んじ、サイバーセキュリティーに関する協力を引き続き深化させることや、重要インフラの防護に関する協力を強化していくこと、これらで一致をいたしました。
我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境に鑑みますと、ますます急を要する重要な課題です。能動的サイバー防御の実現に向けた法案については、現行法令との関係等を含め、様々な角度から検討を要する事項ですが、事項が多岐にわたっておりますが、可能な限り早期に法案をお示しできるよう検討を加速してまいります。
そして、残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/19
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020・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 竹詰仁議員からは、まず重要経済安保情報の指定件数及び評価対象者数の見積り及びその根拠についてお尋ねがございました。
こうした件数や人数について具体的な見通しを現時点で申し上げるのが難しいことに変わりはございませんが、衆議院における審議の中で度々御指摘をいただいたことを受け止め、大胆な仮定を重ねながら試算したものでございます。
情報指定の件数は、内閣府を含む主要経済官庁から公表されている秘密文書を含む行政文書ファイルの数を起点に大胆な仮定を重ねながら試算し、指定が集中すると思われる初年度でも数十件程度、多くても三桁の件数であろうと見積もったものです。
適性評価を受ける人の人数につきましては、この数値を前提に、例えば既に特定秘密保護法に基づく適性評価を受けた者との重複の可能性など様々考慮すべき諸条件を捨象するなど、大胆な仮定を重ねて推計した結果として、数千人程度であり、数万人という単位にはならないと見積もられる旨を現時点における一つの目安としてお答えしたものでございます。
次に、一元的調査機関の規模や発足までの見通しについてお尋ねがございました。
本法案をお認めいただいた暁には、内閣府は、適性評価のための調査のほか、法制度を所管する立場から、制度の政府統一的な運用の確保などを担当することとなります。そのため、令和六年度の政府予算において、内閣府として、一元的な調査を含め、セキュリティークリアランス制度の施行のための準備作業への対応として合計二十名の増員を計上しております。
その上で、調査業務に関する施行後の体制につきましては、公布後一年以内としている法施行までの間に整備することとなります。具体的には、制度の詳細設計を踏まえ、各行政機関が指定する重要経済安保情報の件数の見込みや適性評価の調査件数の見込みなどを精査し、必要な体制の整備の検討を進めてまいります。
次に、適性評価における性的行動の節度の調査についてお尋ねがありました。
一般的に、ハニートラップとは性的関係を利用して対象者から情報、利益、弱みを引き出すスパイ活動のことを指すと認識しています。
このため、御指摘が現在又は過去の性的な交友関係を契機に外国の情報機関などから重要経済安保情報の漏えいの働きかけを指したものであれば、これはまさに重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項に該当し得るため、調査の対象であると考えます。このため、いわゆるハニートラップの疑いが認められた場合には、当該事項に関連する事実として適性評価において考慮され得ることとなります。
次に、政府の審議会など、構成員のバックグラウンド調査についてお尋ねがございました。
大臣等が開催する会議の構成員の人選については、当該会議の設置の趣旨、目的、個々の政策課題に応じ検討するべきものであり、会議を開催する各大臣等が委員の識見などを総合的に判断し、その責任において行うべきものと認識をしております。
最後に、港湾を基幹インフラの対象としていなかった理由と今回対象とした理由についてお尋ねがございました。
経済安全保障推進法の制定時に、物流に影響を与える港湾に関する設備として、航路標識は国等の機関が調達するものであること、荷役機械は他の機械による代替が可能であると評価していたことのほか、一般港湾運送事業者が利用するターミナルオペレーションシステムについては、国土交通省において、その機能が停止しても影響は限定的であると評価していたことから対象としなかったと聞いております。
昨年七月の名古屋港におけるサイバー攻撃事案を受け、改めて国土交通省及び内閣府において全般的に検討を行ったところ、一般港湾運送事業者及びそのターミナルオペレーションシステムが港湾の機能の安定的な提供に重要な役割を果たしていると考えられたことから、今般、一般港湾運送事業を基幹インフラ制度の対象事業に追加する改正法案を提出させていただいたところでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/20
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021・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 井上哲士君。
〔井上哲士君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/21
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022・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
会派を代表して、重要経済安保情報法案、すなわち経済秘密保護法案等について質問いたします。
まず、自民党の裏金問題です。
岸田総理は、裏金議員の一部について自民党内の処分を行ったことで問題の幕引きを図ろうとしています。しかし、共同通信の世論調査では、裏金事件の実態が十分解明されていないは実に九三・三%に達しています。
衆参に政治改革特別委員会が設置されましたが、求められる政治資金規正法の改正を行うには、裏金をめぐる事実の徹底解明が必要です。総理の認識をお聞きします。
先週土曜日のテレビ番組「報道特集」で、安倍派の元事務総長、下村博文氏が板橋区の支持者の会合で話したとされる音声が放映をされました。その中で、今回の一連の中で、少なくとも二〇〇五年から一九九九年、森会長のときにそういうスキームをやっていたんだなということは、今そういうふうに認識していますと述べ、さらに、こうしたことを政倫審で話さなかったのは、野党に良い材料を与えるようなもの、検察に話したことと違うことを言えば再聴取されると述べたとしています。総理による再聴取は一体何だったんでしょうか。
事実解明のために森元総理、下村氏を含む安倍派元幹部らの証人喚問が不可欠です。自民党総裁としてその実現に責任を果たすべきです。答弁を求めます。
本法案は、米国などの同盟国、同志国と兵器の共同開発を進めるためにセキュリティークリアランス制度を導入するものです。
米国はかねてから、武器等の技術情報、軍の運用情報を迅速に交換するために、米国と同レベルの情報管理体制を日本にも要求してきました。セキュリティークリアランスに関する有識者会議では、産業界から米国防省の調達に参加するために必要との発言もされています。
こうした本法案の狙いは、岸田総理とバイデン米大統領との日米共同声明で一層明らかになりました。
共同声明は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させると明記をいたしました。
日米間の相互運用性を強化するために、指揮統制機能の連携強化や、共通する装備の保有と連携した運用の一層の強化を米側から求められたのではないですか。日本はどのように対応するのですか。
その下で、共同声明では、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASを開催し、ミサイルの共同開発、共同生産を強めることを宣言しました。
更に重大なのは、米英豪による対中国の軍事的抑止を図る事実上の軍事同盟であるAUKUSと日本が先端軍事技術での協力の検討を宣言したことです。AUKUSの第二の柱であるサイバー、AI、量子技術、海洋戦力、極超音速兵器などの先端軍事技術での協力をしようというものです。今後、いつまでに、どのように協力の検討を進めるのですか。
本法案で経済分野を含めて幅広く情報を秘密指定し、その情報を扱う者にセキュリティークリアランスを義務付けるのは、こうした諸外国との先端軍事技術での協力に対応するためなのではありませんか。以上、総理にお聞きします。
国家安全保障戦略は、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、抑止力向上のための国際協力の四分野で各省の取組を推進するとしました。それを受けて開かれた昨年八月の関係閣僚会議は、各省の民生利用目的の研究を軍事に動員するため、特定重要技術を指定しました。
高市大臣はこの会議で、情報セキュリティーの強化の必要性について発言をしています。これが本法案のセキュリティークリアランスなのですか。
各省の民生利用目的の研究を軍事目的に転用するプロセスの中で、研究を担う民間の研究者等にセキュリティークリアランスが必要になるということですか。以上、高市大臣の答弁を求めます。
総理は衆議院で、本法案は軍事分野を念頭に置いたものではないとし、特定秘密の範囲は拡大しないとしています。一方、特定秘密保護法と本法案のシームレスな運用を行うと答弁しています。それが何を意味するのか。
政府は質疑で、特定秘密保護法の審議の際に経済安全保障が特定秘密に入っているとは答弁していないこと、これまで特定秘密に指定した例がないことを認めました。しかし、本法案で経済分野にまで秘密の範囲を幅広く拡大し、その中から機微度が上がり要件を満たした情報を特定秘密に指定するシームレスな運用をすれば、結果として、これまで四分野に限定されていた特定秘密の範囲が大幅に拡大し、罰則の対象が広がるのではありませんか。
政府は、本法案でセキュリティークリアランスの対象となる民間人は初年度で数千人程度と答弁しています。しかし、今後、日米の武器共同開発やAUKUSとの先端軍事技術での協力が進めば、将来的に対象は更に大規模になるのは避けられないと考えます。答弁を求めます。
国民には何が秘密かも知らされないまま、政府の一存で秘密を指定し、その漏えい等を厳罰に処するのが特定秘密保護法です。それと同様の仕組みで、本法案が秘密を扱う人に課す適性評価の調査は、政治思想、海外渡航歴、精神疾患などの治療歴、犯歴、借金や家賃の滞納、家族や同居人の過去の国籍まで三十ページに及ぶ調査票に記入させるものです。さらに、評価対象者の知人や職場の上司にまで質問し、公務所に照会まで掛けるとしています。
この公務所には、警察や公安調査庁が含まれますね。いつ、どのような内容の確認のために警察や公安調査庁に照会を掛けるのか、本人には知らされるのですか。
岐阜県大垣警察署警備課の警察官が、中部電力の子会社に対し、同社の進める風力発電施設建設に反対する大垣市民四人の個人情報を提供した事件で、四人の住民は、公安警察により個人情報の収集、保有、利用、第三者提供は違憲だとして、国家賠償請求と警察が保有している個人情報の抹消を求め提訴しました。岐阜地裁は、大垣警察の違法性を認め、損害賠償を認める判決を下しました。
驚くべきことに、警察はこの裁判の中で、個人情報の収集や第三者への提供は通常の警察業務の一環であると主張しています。本法案により警察による国民監視と個人情報の収集が一層拡大することになる大きな懸念についていかがお考えですか。
無罪判決が確定した男性が、警察が捜査の中で採取した指紋やDNAなどの個人情報の削除を求めた訴訟の名古屋地裁判決は、データの抹消を命じる判決を出しました。しかし、警察はデータを削除していません。
本法案により警察や公安調査庁に収集された個人情報は削除されるのですか。一生監視の対象になるのではありませんか。
適性評価は本人同意が前提という建前ですが、労働者は調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあり、事実上の強制ではないですか。しかも、法案には不利益取扱いをした場合の罰則もありません。なぜ罰則を設けないのですか。
米国と一体の軍事力増強と軍需産業の利益拡大のために憲法の国民主権と平和主義を壊し、適性評価によってプライバシー権を侵害し、基本的人権を踏みにじる本法案は断じて認められません。徹底審議の上、廃案にすることを求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/22
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023・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 井上哲士議員の御質問にお答えいたします。
政治資金収支報告書の不記載に関する事実の解明についてお尋ねがありました。
報道された議員の言動等の一つ一つについてコメントすることは差し控えますが、御指摘の事実解明については、これまでも、我が党による外部の弁護士も交えた聞き取り調査や国会における政倫審の開催など、様々な関係者によって取組、様々な取組が行われてきたところです。また、これらの結果、事実関係の整理が一定程度進むとともに、一定の場合には、会計責任者のみならず議員本人の責任も強化するべきなど、具体的な政策課題も明らかになってきたところです。
引き続き、できる限りの事実確認等に努めること、これは大切ですが、今回の事案の概要を踏まえ、政治資金規正法の改正を含む再発防止策に早期に取り組むことも大変重要であると考えております。
なお、お尋ねの証人喚問については、これまでの関係者による取組の状況等も踏まえつつ、国会で御判断いただくべき事柄であると考えております。
日米の指揮統制機能の連携強化、AUKUSとの協力及び防衛技術協力と本法案の目的についてお尋ねがありました。
まず、日米共同声明で発表した日米それぞれの指揮統制の枠組みの向上については、国家防衛戦略等に基づく自衛隊のこの統合作戦司令部の新設を踏まえ議論を進めているものであり、米側から求められたものではありません。
また、AUKUSが示した先進能力分野における協力については、米英豪との連携強化に向け、今後具体的に検討を進めていく考えです。
その上で、本法案の保護対象は、重要経済基盤の保護に関する情報であり、防衛装備に係る諸外国との技術協力への対応を想定したものではありません。
本法案と特定秘密保護法のシームレスな運用についてお尋ねがありました。
今回、特定秘密保護法の改正は行わないため、特定秘密の範囲が拡大するとの御指摘は当たりません。
特定秘密保護法は、その別表の四分野に該当する情報であって、漏えい時に安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるものを保護する制度です。また、現行の特定秘密保護法の運用基準には、経済安全保障分野の情報でもあるサイバー攻撃の防止を別表四分野のうちの特定有害活動の防止に関する事項ないしテロリズムの防止に関する事項の細目として掲げており、特定秘密には経済安保分野は含まれないわけではないと考えております。
これに対し、本法案は、漏えい時に安全保障に支障を与えるおそれがあるものの、特定秘密保護法が対象とするものより一段低い機微度の経済安全保障上の重要情報を保護する制度です。
政府としては、経済安全保障上の重要情報を二つの制度で保護していくに当たり、これを確実なものとする観点から、二つの制度をシームレスに運用していくことが重要であると考えている次第です。
適性評価対象者数の規模についてお尋ねがありました。
適性評価を受ける人の数については、公表されている秘密文書を含む行政文書ファイルの数を起点に大胆な仮定を重ねて、まず初年度に想定される指定件数を見積もり、さらに、例えば特定秘密を取り扱う者との重複の可能性など種々の諸要件を捨象して推計した結果として、数千人程度であり、数万人という単位にはならないだろうということを説明したものであって、あくまでも現時点における一つの目安としてお答えしたものであります。
議員はこの法案を軍事に結び付けるかのような御質問をされていますが、本法案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーン保護に関する情報です。そのため、議員が指摘したことを理由として、本法案の適性評価対象者が大幅に増加するようなことはないと認識をしております。
そして、適性評価における調査についてお尋ねがありました。
本法案に定めのある本人以外の者への質問や公務所等への照会について、その具体的な手続等は、特定秘密保護法の例を参考にしつつ運用基準の中で明確にすることを想定しており、有識者の意見をお聴きしつつ今後検討してまいります。
この点、特定秘密保護法では、公務所等に照会することがあることは告知書で本人にあらかじめ知らせて、書面により同意を得ることとしております。
警察や公安調査庁に対する照会も、一般論としてではありますが、実際に照会しているかどうか、何を照会しているかは、調査に支障を及ぼすおそれがあるため、お答えは差し控えます。
また、その上で、一般的に申し上げれば、照会が行われた場合には、回答後、当該情報が記録された文書は関係法令に基づき適切に廃棄されることとなります。
なお、企業において、上司が適性評価を受けることを求めた場合においても、それに同意しないことが許される状況が実質的に確保されることが重要であると考えており、そのための本人への事前説明の内容や段取りについて対応の在り方を検討しているところです。
また、同意しなかった者が、その後、これを理由として不利益な措置を受けることがないよう、今後策定する運用基準などにおいても具体的な禁止行為を明示することなどの措置を検討していく予定としており、これらの措置を通じて実効性を担保できると判断しており、罰則を設ける必要はないと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/23
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024・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 井上哲士議員からは、まず、閣僚会議における発言と本法案の関係についてお尋ねがございました。
第一回総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議における私の発言は、その前々月に発生した産総研の中国籍研究員逮捕を受けて、研究インテグリティーや情報セキュリティーの強化について発言したものでございます。政府が保有する経済安全保障分野における重要な情報の保全を目的とする本法案とは関係がございません。
次に、民間の研究者などに対するセキュリティークリアランスの要否についてお尋ねがございました。
本法案により民間において適性評価の対象となる方は、政府から重要経済安保情報の提供を受けることについて自ら意思を示し、政府と合意して契約に至った事業者において、その情報を取り扱う業務を行うと見込まれる又は現に行っている一定の要件を満たす従業者です。
御指摘の民間の研究者などがこれに該当すれば、本法案の適性評価を受けていただくこととなります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/24
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025・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/25
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026・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第一 日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。総務委員長新妻秀規君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔新妻秀規君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/26
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027・新妻秀規
○新妻秀規君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、近年における日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社を取り巻く社会経済情勢の変化に鑑み、これらの会社について、電気通信技術に関する研究に係る責務を廃止するとともに、商号の変更を可能とするほか、日本の国籍を有しない人が取締役又は監査役に就くことを禁止する規制を緩和する等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、本法律案提出の経緯と今後の検討の方向性、NTTの研究に係る責務を廃止する趣旨、電話のユニバーサルサービス確保の在り方、NTTの外資規制等の見直しによる経済安全保障上の課題等について質疑が行われました。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して伊藤岳委員より反対する旨の意見が述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/27
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028・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/28
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029・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/29
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030・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第二 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長比嘉奈津美君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔比嘉奈津美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/30
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031・比嘉奈津美
○比嘉奈津美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、単身高齢者世帯の増加等を踏まえた安定的な居住の確保の支援、被保護世帯の子供への支援の充実等を通じて、生活困窮者等の自立の更なる促進を図るため、生活困窮者住居確保給付金及び進学準備給付金の支給対象者の追加、一部の被保護者を対象とした生活困窮者就労準備支援事業等の実施、社会福祉住居施設の適正な運営を図るための規定の整備等の措置を講じようとするものであります。
なお、衆議院において、この法律による改正後の各法律の規定の検討について、生活困窮者に対する支援等が公正で分かりやすいものであることを確保する観点も含めて行うことを明記する修正が行われております。
委員会におきましては、居住支援の在り方、子供の貧困対策の強化の必要性、生活困窮者就労準備支援事業等の全国的な実施に向けた取組等について質疑を行うとともに、参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して倉林明子委員より反対、れいわ新選組を代表して天畠大輔委員より反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/31
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032・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/32
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033・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01220240417/33
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