1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和六年四月二十四日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十四号
令和六年四月二十四日
午前十時開議
第一 投資の自由化、促進及び保護に関する日
本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結に
ついて承認を求めるの件(衆議院送付)
第二 所得に対する租税に関する二重課税の除
去並びに脱税及び租税回避の防止のための日
本国とギリシャ共和国との間の条約の締結に
ついて承認を求めるの件(衆議院送付)
第三 経済上の連携に関する日本国と欧州連合
との間の協定を改正する議定書の締結につい
て承認を求めるの件(衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のた
めの低炭素水素等の供給及び利用の促進に関
する法律案及び二酸化炭素の貯留事業に関す
る法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/1
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002・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。齋藤健経済産業大臣。
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/2
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003・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼や化学等の脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であり、こうした分野では、その安全性を確保しながら、低炭素水素等の活用を促進することが重要です。本法律案は、昨年七月に閣議決定された脱炭素成長型経済構造移行推進戦略に基づいて、所要の措置を講ずるものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、「低炭素水素等」の定義については、水素等であって、その製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であること等の要件に該当するものと定義します。
第二に、主務大臣は、低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する基本的な方針を定めることとします。また、国、関係地方公共団体、事業者の責務規定を創設します。
第三に、低炭素水素等供給事業者又は低炭素水素等利用事業者は単独で又は共同して計画を作成し、その内容が我が国関連産業の国際競争力の強化に相当程度寄与する等の要件を満たす場合には、主務大臣が認定できることとします。これに加えて、いわゆる価格差に着目した支援等を希望する場合には、供給事業者と利用事業者が共同で作成したものであること等を追加的な要件とします。
第四に、認定を受けた事業者に対する支援措置を講じます。具体的には、いわゆる価格差に着目した支援や拠点整備支援として、供給事業者が低炭素水素等を継続的に供給するために必要となる資金や、認定を受けた事業者が共同で使用する施設の整備に充てるため、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が助成金を交付することとします。また、認定を受けた計画に基づく設備に関する高圧ガス保安法の特例を創設するほか、港湾法や道路占用の特例を創設します。
第五に、経済産業大臣は、事業者の判断の基準となるべき事項を定め、低炭素水素等の供給拡大に向けた事業者の自主的な取組を促します。その上で、必要があると認めるときは、経済産業大臣が事業者に対して必要な指導等を行うことができることとします。
引き続きまして、二酸化炭素の貯留事業に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼や化学等の脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であり、こうした分野において脱炭素化を実現するためには、排出された二酸化炭素を回収し、これを地下の地層に貯留すること、すなわちCCSに関する事業環境を整備することが必要です。本法律案は、昨年七月に閣議決定された脱炭素成長型経済構造移行推進戦略に基づいて、所要の措置を講ずるものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、経済産業大臣が、貯留層が存在する可能性がある区域を特定区域として指定した上で、貯留事業や試掘を最も適切に行うことができると認められる者に対して許可を与えます。そして、経済産業大臣はこれらの許可を受けた者に対して貯留権や試掘権を設定した上で、二酸化炭素の安定的な貯留を確保するため、これらの権利をみなし物権とします。
第二に、貯留事業及び試掘に関する事業規制と保安規制を整備します。具体的には、貯留事業の実施計画については主務大臣、試掘の実施計画については経済産業大臣の認可制とした上で、貯留事業者及び試掘者に対しては、技術基準への適合義務等の保安規制を課します。また、貯留事業者に対しては、二酸化炭素の漏えいの有無等を確認するため、モニタリング義務を課すほか、正当な理由なく、二酸化炭素排出者からの貯留依頼を拒むことを禁止する等の措置を講じます。さらに、二酸化炭素の貯蔵の状況が安定している等の一定の要件を満たす場合には、経済産業大臣の許可を受けて、貯留事業場の管理業務を独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構に移管することを可能とします。
第三に、貯留事業等に起因する損害賠償責任は、事業者の故意、過失によらない無過失責任とします。
第四に、貯留層に貯留することを目的として、二酸化炭素を導管で輸送する導管輸送事業に関する事業規制と保安規制を整備します。具体的には、導管輸送事業を行おうとする者は、経済産業大臣に届け出なければならないこととした上で、正当な理由なく、二酸化炭素排出者からの二酸化炭素の輸送依頼を拒むことを禁止する等の措置を講じます。また、導管輸送事業者に対しても、技術基準への適合義務等の保安規制を課すこととします。
以上が、これらの法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/3
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004・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。村田享子君。
〔村田享子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/4
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005・村田享子
○村田享子君 立憲民主・社民の村田享子です。
冒頭、四月二十日に発生をしました海上自衛隊のヘリコプター墜落事故でお亡くなりになられた方に心より哀悼の意を表しますとともに、今なお行方不明となっている方々の早期発見と御無事をお祈り申し上げます。政府に対し、今回の事故の真相究明と再発防止を求めたいと思います。
それでは、ただいま議題となりました二法案について、会派を代表し、経済産業大臣に質問をいたします。
まず、基金についてお尋ねします。
今週月曜日に政府の行政改革推進会議が開かれ、本来の業務である補助金の交付等を行わず支出が管理費だけとなっている休眠基金について、十一の休眠基金を二〇二四年度末までに廃止することとなりました。廃止される十一基金のうち、九基金は経済産業省が所管するものです。あわせて、経済産業省では、補助金の交付基準の策定や審査を民間に任せていた事例が多くありました。
また、全二百基金を点検した結果、五千四百六十六億円を不用額として国庫返納することになりました。そのうちの約四千億円が経済産業省の所管でありますが、過大な国費が基金に投入されてきたことが明らかになったわけです。
基金については、事業の終了時期が未定なもの、定量的な成果目標がないものもあり、不透明な管理体制を我が党も追及し、税金の無駄遣いであると指摘してきました。一昨年度末時点で全基金の残高は十六・六兆円にも上ります。子ども・子育て支援金、防衛増税等、国民に負担を求める前に、まずは無駄を速やかになくすべきではないでしょうか。
基金の多くは補正予算で計上されていますが、経済産業省においては前年度の補正予算の額が当初予算額を上回ることが続いています。二〇二三年度補正予算は二〇二四年度当初予算の約十倍、二〇二二年度補正予算は二〇二三年度当初予算の約三十一倍であります。
経済産業大臣として多大な無駄遣いの温床となってきた基金に対しどう取り組んでいくおつもりなのかをお聞きし、法案の質問に入ります。
二〇二二年度の日本の温室効果ガスの排出量が発表され、過去を遡ることが可能な一九九〇年度以降で過去最低となりました。この統計では、世界で初めて、昆布やワカメ等によって海洋に吸収された炭素であるブルーカーボンの量も算定をされています。二〇五〇年カーボンニュートラルに向けた取組が進んでいく中、脱炭素化が難しい分野においても脱炭素とともに産業競争力強化を実現していく、そのために重要な法案であると認識をしています。
その上で、まず、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案についてお聞きをします。
法案名にある低炭素水素等について、低炭素の基準や水素等の内容は省令に委任をされています。低炭素水素等の定義は、法案を議論するための前提となるものです。どのような低炭素の基準を考えているのか、水素以外にどのような物質が想定されているのか、より具体的な定義を伺います。
また、国から事業者に対する支援も具体的に明らかになっていません。経済産業大臣の認定を受けた事業計画に基づき、事業者が行う低炭素水素等の供給や共用施設の整備に必要な資金を国が支援するとされていますが、内容については法案に規定されておらず、今後検討することとされています。
事業者への後押しは私も重要と考えておりますが、本来であれば、支援制度の詳細、認定のための評価基準等について明らかにされた上で、国会審議においてその課題や運用に当たっての留意点をあぶり出し、より精緻な制度設計としていくことが望ましかったと考えますが、このような法的枠組みとなった理由を御説明ください。
本法案では、国、事業者の責務とともに、第五条で関係地方公共団体の責務が定めてあります。低炭素水素等の供給、利用において地方公共団体の果たす役割をどのように考えているのか。また、責務が規定されている一方で、地方公共団体への支援は明記されていません。地方公共団体に対して国として支援する必要はないのか、お答え願います。
日本の技術力を生かした世界の脱炭素化についてお聞きします。
日本の温室効果ガスは過去最低となった一方で、世界全体の排出量は増加傾向にあります。日本で幾ら温室効果ガスを減らしても、世界で排出量が増えれば温暖化を止めることはできません。日本が持つ脱炭素技術を他国にも広めることで、世界の脱炭素化とビジネスチャンスにつながると考えます。
低炭素水素等の利用の一つに水素やアンモニアによる発電がありますが、日本が技術的強みを持つ分野です。火力発電の延命ではないかという否定的な意見がありますが、今はガスや石炭との混焼ですが、いずれは専焼を目指しており、インドや東南アジアなど、火力発電を利用する国々も脱炭素につながる技術として注目をしています。
水素、アンモニア発電のような日本の強みである脱炭素技術を世界に広め、脱炭素化に貢献できるよう、どのような戦略を取っていくのか、政府の見解を伺います。
次に、二酸化炭素の貯留事業に関する法律案についてお聞きします。
二酸化炭素を分離回収し、地中に貯留するCCSは、日本のGX戦略においてどのような役割を果たしていくのでしょうか。このCCS事業によって日本の排出量のうち、どの程度貯留する見込みなのか、御答弁願います。
CCSに期待する声がある一方、国民にとってはなじみのある技術ではありません。CCS事業を進めるためには、国民、特に貯留地域の理解が必要であり、CCSの意義や地域への投資効果等を政府は説明していく必要があると考えます。CCSに対する国民理解の醸成に向けて今後どのように取組を進めていくのか、お伺いをします。
安全についてお聞きをします。
私は、物づくり産業の労働組合の出身でございますが、物づくり産業では御安全にという挨拶を物づくりの現場でやっています。これは、危険と隣り合わせの現場の中で、自分と仲間の安全を祈って掛け合う言葉です。CCS事業を実際に実施していくに当たっては、現場で働く皆さん、そして地域住民の安全が確保されることが大前提です。アメリカでは、二酸化炭素を輸送するパイプラインが破断し、高濃度の二酸化炭素が噴出、漏えいし、数十名が病院搬送される事故が起きています。CCSは新しい技術です。安全性を高めるための技術研究を進めるとともに、安全規制についても日々見直し、より良いものとしていく必要があると考えます。
政府は、CCS事業の安全確保に向けてどのような措置を講ずるのか、お伺いをします。
二酸化炭素の地下貯留に当たっては、我が国の領土や領海、EEZ等の地質情報を取り扱うことになります。国防や国益の観点から見ると、外国法人等の参入に一定の制限を課すことも考えられます。今回の法案は、事業者が金属や石油等の資源を採掘する鉱業権を定めた鉱業法を参照したとのことですが、鉱業法第十七条では、「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。」とされています。本法案においては、貯留事業等の許可申請は外国法人であっても特に制限を設けないのか、お答えください。
続いて、両法案にまたがるGX全般についてお聞きします。
我が国経済を支える製造業はCO2排出量が大きく、国内部門別排出量の三分の一を占め、業界別に見ると鉄鋼業がそのうちの三分の一を占めています。日本の企業はもちろん、各国の製鉄会社が製造時のCO2排出量を大幅に削減したいわゆるグリーンスチールの開発にしのぎを削っています。どの国が世界に先駆けて脱炭素化を実現するのか。今後の産業の行く末を決める、まさに今が正念場であり、現場の皆さんの努力を見るに、産業と国がしっかり連携を取りながら取り組んでいくべきであり、政府の役割として、GX製品の市場価値の向上や国際的な取引ルールの確立があると考えます。
グリーンスチールは、従来の製品と見た目や性能は変わりませんが、脱炭素化のコストが反映され、価格が高くなっています。CO2排出量が削減できていますと言っても、なかなかその価値が相手に理解されにくいと聞きます。また、そもそもグリーンスチールの定義について国際ルールが構築されていないのが現状です。GX製品に関する国際的な取引のルール作りに我が国が積極的に参画し、ルール作りを主導していくことは、国際的な市場獲得にとって大変重要と考えます。
GX製品が市場に受け入れられるための制度的措置として政府はどのようなことを検討しているのか、また、GX製品に関するルール作りにどのように取り組んでいく方針か、お伺いをします。
GXに向けた世界各国の状況を見ると、投資競争や他国への規制強化が起きています。中国による自国産業への補助を始め、アメリカではインフレ抑制法によりクリーンエネルギー分野で政府が企業を支援しています。EUでは昨年十月から炭素国境調整措置、CBAMを発動をしました。地球の環境を守ることはもちろん目指すべき目標でございますが、保護主義への批判や自由貿易の推進は影を潜め、経済安全保障というテーマも加わり、自国産業の保護や有志国とのサプライチェーンの強靱化が進んでいます。このような中、日本としてどのようにGXを進めていくのか、政府の見解を求めます。
また、先日の大臣の訪米時には、脱炭素分野での政策協調に向けてポデスタ大統領上級補佐官と会合を行い、水素の供給網整備や浮体式洋上風力の開発等を連携して進めることや、補助金がWTOのルールに触れたり、他国の経済に悪影響を与えたりする内容にならないよう、日米で共通のルールを検討すること等が議論されたとの報道がございました。会合において実際どのような協議がなされたのか、お尋ねをします。
GXに向けた各国の状況を見ていく上で、カーボンニュートラルの目標が国によって異なる点も注視すべきです。日本、アメリカ、EUが二〇五〇年カーボンニュートラルを掲げる一方、現在、世界最大の排出国である中国は二〇六〇年、三番目の排出国であるインドは二〇七〇年としており、目標年の開きがあります。日本のGX製品が中国やインドの製品とどう勝負をしていくのか。また、生産拠点自体が中国やインドに移ることになれば、日本の産業や雇用に大きな影響があります。各国のカーボンニュートラルに向けた目標年が異なることに対し、国としてどのように対処していくのか、見解を求めます。
最後に、公正な移行についてお聞きをします。
GX推進においては、円滑な移行だけでなく、公正な移行も重要です。GXの推進は、我が国の産業、国民生活に大きな変化をもたらします。その移行期には、水素、CCSを始めとするグリーン分野で新しい産業が発展していくことが期待されますが、痛みを伴うことがあることも忘れてはなりません。自動車産業で働く方からは、エンジン部品を作っているけれども、EV化で仕事がなくなるのではないかという不安の声をよくお聞きします。さらに、地域経済への影響も懸念されます。GX推進に当たり、公正な移行を後押しする具体策について政府の説明を求め、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。御安全に。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/5
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006・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 村田議員の御質問にお答えいたします。
基金の取組についてお尋ねがありました。
昨年十二月二十日の行政改革推進会議において策定された基金の点検・見直しの横断的な方針も踏まえ、今般、経済産業省が所管する基金について真摯に点検作業を実施したところです。
具体的には、全ての基金で定量的な成果目標を設定、支出が管理費のみとなっている基金事業は令和六年度までに全て廃止、保有資金規模の精査を踏まえ国庫返納額を算出といった対応を実施いたしました。
複数年度にわたり弾力的な支出を可能とする基金の枠組みは、中長期に支援が必要な事業について重要な意義を有するものでありますが、執行管理に一層の留意が必要であることは言うまでもありません。当省所管の基金について、引き続き不断の点検、検証を行い、適切な執行管理に万全を期してまいります。
水素社会推進法案における水素等の内容や、低炭素の基準、支援内容や支援基準についてお尋ねがありました。
水素等の具体的な内容については、水素のほか、アンモニア、合成メタン、合成燃料とする予定であります。
また、低炭素の基準については、製造に伴うCO2排出量、すなわち炭素集約度に基づき、国際的に遜色のない水準とする予定であります。具体的な基準は、海外の制度も参考にしながら、有識者に御議論いただいておりまして、例えば水素については、一キログラムの水素製造に係るCO2排出量が三・四キログラム以下との案が示されています。
その上で、具体的な支援内容については、価格差に着目した支援措置などを法定しているほか、御指摘の支援基準も、法律上、認定基準として規定しておりますが、詳細は、審議会で取りまとめていただいた内容や国会での御議論を踏まえ、今後具体化してまいります。
地方公共団体の役割と支援についてお尋ねがありました。
水素サプライチェーンの構築に当たっては、それぞれの地域に精通した地方公共団体が中心となって、各地域の水素需要を創出し、拡大させる役割を担うことが極めて重要だと考えています。
経済産業省としては、バスやトラック等のFCVを導入する事業者や地方公共団体等への補助、商用車などの大規模な水素需要が見込むことができる地域への水素ステーションの戦略的な整備など、意欲ある地方公共団体と連携しながら、政策資源を集中的に投下していきます。
世界の脱炭素化に向けた我が国の戦略についてお尋ねがありました。
GXの実現に向けて、GX経済移行債による二十兆円規模の投資支援策などにより、官民で百五十兆円超のGX投資を実現していく方針であります。御指摘の水素、アンモニアを含め、我が国が先行する革新的な技術開発を進め、将来の成長力を有する産業を創出し、国内外に展開していきます。
あわせて、御指摘の国際的な仕組みづくりやその活用を通じて、国内はもちろん、排出削減や経済成長のポテンシャルが大きいアジアも巻き込んだ取組を推進します。
具体的には、AZECにおいて、昨年十二月に首脳会合を開催し、約七十のMOUを含む三百五十件以上のプロジェクトを進めており、脱炭素の実現に向けた世界のルール作りも進めていきます。さらに、IEAやOECD等の国際機関と連携し、グリーンスチールなどの国際評価手法の確立を進めるなど、様々な取組を進めてまいります。
GX戦略におけるCCSの役割や国民理解の増進などについてお尋ねがありました。
御指摘のGX推進戦略では、CCSは二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するための手段として明確に位置付けられています。また、二〇二三年三月に策定したCCS長期ロードマップにおいて、二〇五〇年のCO2貯留量の目安を一・二億トンから二・四億トンと試算しています。これは需要見通しではありませんが、政策的な検討を行うためお示ししたものであり、現排出量の一割から二割に相当します。
また、CCSは国民理解を得ながら進めていくことが重要です。全国各地で説明を行いつつ、貯留場などの立地地域においては、まず事業者が説明を行い、国も自治体や事業者等と連携して説明を行っていきます。
CCS事業の安全確保に向けた措置と外国法人への規制についてお尋ねがありました。
CCS事業の実施に当たって安全確保に万全を期すため、事業者には公共の安全の維持や災害の発生の防止のために必要な措置を講ずることを求めます。また、安全に係る技術基準については、専門家の方々の御意見や国際的な動向も踏まえながら検討してまいります。
その上で、今般のCCS事業法案では、他の一般的な事業法と同様、外国法人が行う貯留事業を一律に制限することとはしておりませんが、仮に外国法人から許可申請があった場合には、その事業者の適格性に加えて、その事業者が行おうとする取組が我が国におけるCCS事業の健全な発達やカーボンニュートラル実現に資するものであるかなど、許可基準に照らしてしっかり審査してまいります。
GX製品に関するルール作りについてお尋ねがありました。
投資促進と需要創出を同時に実現していくため、先行投資支援に加え、規制制度の整備等も一体的に進めることが重要であります。そのため、製品当たりの排出削減を示す価値や指標ともいうべき言わばGX価値について、見える化や評価基準の国際標準化など、GX価値を持つ製品の需要創出、拡大のための市場環境整備に取り組み、GX価値が国内外の市場において適切に認められるよう必要な検討を進めてまいります。
世界情勢の変化の中で我が国がどのようにGXを進めていくのか、また、米国との議論の内容についてお尋ねがありました。
我が国が進めるGXは、エネルギーの安定供給を大前提に、温室効果ガスの排出削減に係る国際約束と産業競争力強化、経済成長を共に実現をしていく取組であります。
GX経済移行債による二十兆円規模の投資支援策などにより官民で百五十兆円超のGX投資を実現し、我が国が先行する革新的技術をアジアにも展開するなど、各国と協調して世界の脱炭素化にも貢献してまいります。
その一環として先日実施した米国のポデスタ大統領上級補佐官との政策対話では、排出削減とエネルギー移行の加速、持続可能なサプライチェーン構築、産業競争力向上のため、GX推進戦略と米国のインフレ削減法のシナジーを高めていくことに合意しました。特に排出削減とエネルギー移行の加速に向けて、日米双方でクリーンエネルギー技術への投資を促す環境整備を進めていきます。次回閣僚級の政策対話もなるべく早期に開催し、具体的な議論を着実に前に進めてまいります。
各国の異なるカーボンニュートラルに向けた目標年に対する我が国の対応についてお尋ねがありました。
気候変動は人類共通の課題であることを認識し、世界全体で取組を加速していく必要があります。
我が国としては、日本が議長を務めた昨年のG7気候・エネルギー・環境大臣会合の閣僚声明において、特に主要経済国に対し、二〇五〇年までのネットゼロ目標にコミットするよう求めました。また、昨年のCOP28においても、一・五度C目標を達成するために、二〇二五年までに温室効果ガス排出量をピークアウトさせることの重要性に合意をしました。
我が国として、二〇三〇年四六%削減に向けた挑戦と主要排出国の野心引上げに向けた働きかけを継続するとともに、改めてGX市場をアジア等国際的に展開していくことで公平な競争環境をつくってまいります。
GX推進に当たっての公正な移行を後押しする具体策についてお尋ねがありました。
昨年成立したGX推進法や閣議決定したGX推進戦略において、公正な移行の推進を明確に位置付けております。
具体的には、GX経済移行債による二十兆円規模の投資支援策などにより、官民で百五十兆円超のGX投資を実現し、世界がカーボンニュートラルに向けて進む中で、技術革新等も活用し、排出削減に対応した強い産業の創出、転換を進め、雇用の創出にもつなげていきます。
あわせて、リスキリング等の人材育成の取組とGX分野を含む成長分野への円滑な労働移動を同時に進めるなど、公正な移行に必要な方策に取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/6
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007・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 東徹君。
〔東徹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/7
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008・東徹
○東徹君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の東徹です。
会派を代表して、内閣提出の水素社会推進法案とCCS事業法案について、経済産業大臣に質問します。
まず、産業政策等についてお伺いします。
経済産業省はこれまで、脱炭素を推進しようと電気自動車や充電器の普及に補助金を出してきましたが、目標達成には程遠い状況です。我が国の自動車産業がEV市場でもリードできるよう取り組まなくてはならないと考えますが、その戦略についてお伺いします。
半導体産業は、経済安全保障において最も重要であり、半導体の供給を拡大しようとTSMCの誘致などに多額の補助金を出してきました。今後は、投資しただけの効果が見込まれるように継続的な需要を生み出していく必要があると思いますが、どのように需要を拡大していくのか、お伺いします。
これまで、経済産業省全体として多くの税金を掛けて各施策に取り組んできましたが、我が国の潜在成長率は一%を切る状態が既に二十年続いており、時間当たりの労働生産性もOECDに加盟する三十八か国のうち三十位で、G7で最も低い状況です。最近の物価上昇も企業業績の改善も円安が一因であり、我が国の国際競争力が取り戻せたわけではなく、安い日本とまで言われています。
今月、総務省が発表した人口推計によれば、昨年は前年と比べて日本人の人口が八十三万七千人減り、一九五〇年以来最大の落ち込みとなりました。将来を見ても、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、二〇五〇年には人口が二千万人減少し、高齢化率は三七・一%まで上昇します。
これから経済産業省はどのような社会をつくっていこうと考えているのか、スケジュールも含めてお伺いします。
大阪・関西万博についてお伺いします。
来年春は、いよいよ大阪・関西万博が開幕します。開幕まで一年を切りました。万博は単なる展示会ではなく、地球温暖化もその一つで、様々な社会的課題を解決する手段をお示しする未来社会の実験場です。我が国の経済の成長と産業の発展を実現していく上でどのような万博を目指しているのか、大臣にお伺いします。
万博が始まると、国内外から多くの方々が会場である大阪夢洲に来られます。この移動手段の一つとして水素船の活用が検討されています。未来社会の実験場である万博にふさわしい、二酸化炭素を排出しない未来の移動手段を世界にお示しすることは非常に意義深いと考えますが、水素船の活用について大臣の見解をお伺いします。
グリーンイノベーション基金についてお伺いします。
二〇五〇年カーボンニュートラル実現を目指して、これまでに二・八兆円規模のグリーンイノベーション基金がつくられています。基金には現在二十プロジェクトが実施中ですが、その中には、大規模水素サプライチェーンの構築に三千億円、製鉄プロセスにおける水素活用に四千四百九十九億円、CO2の分離回収等技術開発に三百八十二億円など、今回の法案に関係する事業も多く含まれています。
これらの事業は、世界がしのぎを削って競争している分野であり、成果を着実に出していくためにも実現に向けた進捗管理が重要です。現在の進捗管理がどうなっているのかお伺いします、進捗状況がどのようになっているのか、お伺いします。
この基金はNEDOが管理をしており、一年間で人件費が十億円、管理費、事務費が九億円掛かっています。これまでも、基金事業について、事務局を務める企業等への業務の丸投げと高額の管理費が問題視されてきました。この基金の多額の経費について、妥当なものと言えるのかどうか、大臣に説明を求めます。
石炭火力発電についてお伺いします。
経済産業省は、エネルギー基本計画で、二〇三〇年度の電源構成として石炭火力発電を一九%活用するとしていますが、二〇五〇年のカーボンニュートラルを実現していく上では石炭火力発電をできるだけ減らしていくことが必要です。
アンモニア混焼は、石炭火力発電から出るCO2の量を減らす方策として注目されていますが、アンモニアの製造プロセスで一トンのアンモニアを製造するのに一・六トンのCO2が排出されるなど、アンモニアの製造過程でCO2の排出をどう抑えるかが課題です。政府の目標では、二〇三〇年の石炭火力発電におけるアンモニアの混焼率は二〇%にとどまっており、CO2の排出を劇的に減らせるまでには至りません。
次期エネルギー基本計画では、二〇四〇年度の電源構成を策定すると言われていますが、二〇四〇年において石炭火力発電をどのように位置付け、どのような電源構成にするのか、お伺いします。
また、技術的課題を克服し、アンモニアの混焼率を上げていき、最終的にはアンモニア専焼までつなげられるのか、それともCCSを活用していくのか、時期も含めて見通しをお伺いします。
我が国の電力需要は二〇五〇年に四割弱増えるという予測もあり、今後拡大していきます。そのような中、コストを抑えつつカーボンニュートラルを実現するためには、SMRも含めた原発の在り方を考える必要があります。
我が国は、米国などと二〇五〇年までに世界の原発の設備容量を三倍に増やす宣言に加わりました。我が国の原発をどうしていくのか、お伺いします。
核融合発電についてお伺いします。
今回の日米首脳会談の共同声明では、核融合の安全規制制度の確立に向けた協力が明記されました。核融合発電はCO2を出さない夢のエネルギーと言われており、ある米国のスタートアップ企業は、二〇三〇年代終わりから二〇四〇年代にかけて四十万キロワットの小型炉を年間百基以上建設する体制であると言われています。我が国でも米国と同じ時期の実用化を目指すべきと考えますが、大臣のお考えをお伺いします。
将来の電気料金についてお伺いします。
クリーンエネルギーの普及やCCSの活用などは、地球環境を守り、脱炭素化社会を実現していくためにも必要ですが、どうしてもお金が掛かります。今後、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って、二〇二二年度の総額が二・七兆円に上る賦課金はどの程度増えると見込まれますか。また、CCSの導入や様々なコスト削減も踏まえた上で、二〇三〇年頃の各家庭の電気代はどの程度になると見込んでいるのか、大臣にお伺いします。
最後に、政官の癒着と天下りについてお伺いします。
エネルギー資源開発連盟という団体があります。この団体は、自民党の政治資金団体である国民政治協会に毎年献金を行っていますが、この団体の前会長や現在の副会長は株式会社INPEXの社長であり、経産省OBです。経済産業大臣はこの会社の大株主であり、取締役の選任について拒否権を持つ唯一の株主でもあるため、経産省OBがこの会社への天下りを大臣が承認していることにもなります。経産省OBの天下りを承認する見返りに、その者が会長を務める団体から献金をもらうという、これは政官の癒着そのものと言われても仕方がありません。
今、自民党の政治と金の問題によって国民の政治への信頼が失われています。大臣におかれては、国民の政治への信頼を取り戻すため、国民政治協会への献金をやめるよう団体に伝え、政官の癒着を断ち切るべきではないですか。大臣の見解をお伺いします。
人口問題、人口減少問題は、我が国存立の危機です。岸田総理の少子化対策では問題の解決になりません。中でも子育て支援金制度は、更に国民負担を増やすものに間違いありません。早急に撤回すべきだと申し上げておきます。
我が会派は、徹底した歳出改革を実行するとともに、時代の変化に応じた規制改革、構造改革によって、国民負担率を上げることなく成長できる経済の実現に向けた具体案を提案し、取り組んでまいります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/8
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009・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 東議員の御質問にお答えします。
EVに関する我が国自動車産業の戦略についてお尋ねがありました。
自動車産業のカーボンニュートラルに向けては、EV、合成燃料、水素など多様な選択肢の追求を基本方針とした上で、EVでも勝つべく取り組んでまいります。
具体的には、全固体電池等のイノベーションの促進やEV等の購入補助や充電インフラ整備を通じた国内市場の立ち上げに加えまして、蓄電池の国内製造基盤強化や上流資源確保などを総合的に講じ、我が国の自動車産業が引き続き世界をリードできるよう取り組んでまいります。
半導体の需要創出についてお尋ねがありました。
半導体は、その利活用を促進することが、半導体のユーザー産業だけではなく半導体関連産業の競争力の強化につながります。
このため、需要促進も重要な課題と認識しており、経済産業省としても、例えば自動車用の先端半導体の設計開発支援を通じて自動車産業における半導体の利活用を促進しているところであります。
今後とも、量産支援等の供給側への支援だけではなく、需要創出や人材育成など幅広い施策に取り組んでまいります。
人口減少下における経済社会の在り方とその実現に向けた進め方についてお尋ねがありました。
一般に人口減少は経済成長のマイナス要因ですが、国内投資とイノベーション創出によって生産性を向上させることで経済成長を達成できると考えています。
このため、現在、経済産業政策の新機軸として、少なくとも五年から十年を目安に、国内投資、イノベーション、所得向上を促す積極的な産業政策を展開し、継続することとしています。
人口動態の変化も踏まえた二〇四〇年頃の将来見通しを策定し、これに沿って今後必要となる施策を検討してまいります。
民間企業の予見性を高め、国内投資等を引き出すことで、国民一人一人が豊かに生活できる社会を実現していきたいと考えています。
大阪・関西万博の意義と水素燃料電池船の活用についてお尋ねがありました。
大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマであり、来場者、特に将来を担う子供たちが、未来社会がもう間近に来ていることを実感し、どういう未来をつくっていくべきかを考える万博にしなければならないと考えております。万博の意義や魅力を関係者一丸となってしっかりと発信してまいります。
また、水素燃料電池船は、水素を燃料とする船舶の脱炭素化の技術の一つであるとともに、騒音や振動も少ない快適性も兼ね備えています。大阪・関西万博において客船として航行することで、こうした水素燃料電池船の魅力を多くの方々にお伝えし、水素を身近に感じていただけることを期待をしています。
グリーンイノベーション基金の進捗状況や、本基金に関するNEDOの人件費、管理費等についてお尋ねがありました。
本基金の執行に当たっては、外部有識者の参画も得て、進捗状況を確認するとともに、事業の加速、拡充や見直し等を行うことで効果的な事業の実施に努めております。
進捗状況については、例えば水素サプライチェーンの構築に向けて液化水素を長距離輸送できる舶用タンクの設計を完了しており、今後、商用サイズの液化水素運搬船の建造に着手するほか、製鉄プロセスでは、高炉を用いた水素還元技術につき、小型試験炉の実証試験を進め、三三%のCO2削減効果を確認しています。
また、基金で推進している二十件のプロジェクトについて、NEDOは、公募や審査、契約といった事務的な業務に加え、現時点で約三百二十者のプロジェクトの進捗管理やモニタリングなどを外部に丸投げせず、自ら実施しています。これらの業務に要する人件費、管理費等は、既存の事業と比較しても過大なものとはなっておりません。
引き続き、経済産業省としても、事業の推進及び管理について着実に取り組むことで成果につなげてまいります。
次期エネルギー基本計画の電源構成と石炭火力の脱炭素化についてお尋ねがありました。
次期エネルギー基本計画については、議論がまだ開始されていないので、予断を持って発言することは控えますが、エネルギーミックスの対象年度を含め、今後十分な議論をしていきたいと考えています。
その上で、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けて使える技術は全て使うというのが政府の方針であり、石炭火力の脱炭素化について、現時点で特定の技術に選択肢を絞ることは困難であります。今後、水素、アンモニアやCCUS等を活用することで脱炭素型の火力への転換を推進してまいります。
世界の原子力発電の設備容量と我が国の原子力政策についてお尋ねがありました。
御指摘の二〇五〇年までに二〇二〇年比で世界全体の原子力発電設備容量を三倍にする目標に向けた協力方針などの宣言について、我が国も、サプライチェーン協力等を通じて世界全体での原子力発電設備容量の増加に貢献する観点から賛同しております。
その上で、我が国においても原子力は再エネとともに脱炭素電源として重要な電源であり、エネルギー安定供給の観点からも安全性の確保を大前提に活用を進めてまいります。
昨年七月に閣議決定いたしましたGX推進戦略では、安全性を最優先とすることを大前提に、原子力発電所の再稼働や運転期間の延長、次世代革新炉の開発、建設、核燃料サイクルの推進、廃炉や最終処分の実現などに取り組む方針をお示ししており、これらを着実に進めてまいります。
核融合発電についてお尋ねがありました。
政府としては、昨年、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を取りまとめ、内閣府、文部科学省を中心に研究開発の支援強化等を実施しています。
核融合発電の実用化にはまだ多くの技術的課題の解決が必要ですが、本戦略においては、核融合による発電実証時期をできるだけ早く明確化するとともに、研究開発の加速により原型炉を早期に実現することが掲げられています。
経済産業省としても、早期の社会実装につながることの重要性を認識した上で、内閣府や文部科学省とも連携し、核融合と共通性のある分野の技術開発等への支援を検討してまいります。
再エネ賦課金及び電気料金の見通しについてお尋ねがありました。
今後の再エネ賦課金の総額は、卸電力市場価格等の影響を受けることから正確に見通すことは困難ですが、FIT制度開始当初に認定を受けた事業用太陽光発電の買取り期間が終了する二〇三二年度頃にピークを迎え、その後減少に転じる蓋然性が高いと考えています。
また、CCSの導入等による電気料金の負担額については、新たな技術の開発、導入の状況ですとか、今後の燃料価格の動向等の様々な要因の影響を受けるものでありますので、予断を持ってお答えすることは困難であります。
エネルギー資源開発連盟の国民政治協会への献金についてお尋ねがありました。
まず、御指摘の企業の社長の人事案については、個人としての経験や見識を基に企業において評価し、適正に選任された上、上場民間企業として株式市場や株主との関係で適切かつ透明な手続を経て役員人事がなされていると承知しております。
同社の株主である経済産業大臣としては、上場企業の経営の自主性を重んじる観点から、これまで適正なプロセスを経て決定された人事を尊重してきました。その上で、エネルギー資源開発連盟は、御指摘の企業を含めた十八社から成る任意団体であり、政治団体への寄附行為は任意団体である連盟自身の判断で行われているため、経済産業大臣として言及する立場にはございません。
なお、国家公務員の再就職につきましては、国家公務員法上、第三者機関である再就職等監視委員会による厳格な監視の下、各府省による再就職のあっせん禁止等の厳格なルールの遵守が求められております。国民の皆様の不信を招くことがないよう、経済産業省として、引き続き再就職等規制の遵守を徹底してまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/9
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010・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 礒崎哲史君。
〔礒崎哲史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/10
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011・礒崎哲史
○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史です。
ただいま議題となりました水素社会推進法案、CCS事業法案に対し、会派を代表して質問いたします。
まず冒頭、二法案を一括審議としたことについて一言申し上げます。
両法案が共にカーボンニュートラルの実現に向け重要な施策であることは理解をします。しかしながら、技術的、社会的課題や具体的施策はそれぞれで異なっており、現に衆議院における審議では二法案に分けて参考人質疑が行われています。様々な不安や疑問の声に対し、丁寧な議論を通して理解を深めることがあるべき姿であり、よもや時間の短縮のみを目的とした一括審議であったならば、それは国会審議の軽視にほかなりません。良識の府、熟議の府である参議院の審議が、国民の理解を深める機会として十分な時間をもって丁寧に行われること、政府には真摯な答弁をもって臨むことを求めます。
日本は、二〇五〇年のカーボンニュートラルを国際公約に掲げ、国家を挙げて取り組むこととしてきました。今やこの目標は単なる環境政策にとどまらず、新たな経済市場における国際競争であるとの認識の下、産業政策として取り組むことが不可欠と考えます。
加えて、新たな市場を創出していく上で新しいルールが必要であり、世界標準化戦略に代表されるように、国際ルールの確立を日本が主導していくことも含め、政府は極めて戦略的に立ち振る舞うことが求められると考えますが、経済産業大臣の認識をお聞かせください。
二〇五〇年目標の達成は大変重要ではありますが、その道のりは長期間となることから、そこに至るまでのCO2削減実態も大変気になるところです。
そこで、様々な省エネ技術や製品がどれだけCO2削減に貢献できるかを見える化するなど、日本が誇る省エネ技術の付加価値を高める取組も重要と考えますが、経済産業大臣のお考えを伺います。
自動車産業においては、EV車の各国販売状況がニュースになるなど、その動向が注目されています。中長期の視点において、EVの市場は拡大をしていくものと考えますが、グローバルの自動車市場において、当面は既存技術の車両が依然として一定程度のシェアを占めることが推定されます。
そこで、自動車市場においても、足下におけるハイブリッド車を始めとした日本車のCO2削減実績が評価されるよう各国へ働きかけを行うべきと考えますが、政府の取組について経産大臣に伺います。
カーボンニュートラル社会を実現していく上で水素は有用な選択肢であり、とりわけ電化が難しい分野においては水素の活用が重要となりますが、水素需要の創出と拡大に向けた課題の一つにコストがあります。コスト低減には生産時のコストを下げる技術的なアプローチと需要を拡大させていく量的なアプローチがあると考えますが、それぞれの実現に向けた国の具体的支援策について経産大臣に伺います。
価格差に注目した支援について、経産省の審議会中間取りまとめでは鉄、化学等といった代替技術が少なく転換困難な分野、用途に関し、新たな設備投資や事業革新を伴う形での原燃料転換も主導するものであることとの記述があります。
需要拡大によるコスト低減を考えるならば、支援対象を絞り込むことは好ましくないと考えますが、経産大臣の認識をお伺いします。
CCS事業法案についてお尋ねします。
CCS事業は、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて政府が主導して推進しようとする全く新しい事業です。
本事業は、事故を含む経験や知見が少ないこともあり、衆議院の参考人質疑では、多額の賠償責任が発生する場合には事業が破綻してしまうおそれがあるとの指摘がありました。政府が主導するカーボンニュートラルに貢献しようとする事業者が、その制度上の問題によって立ち行かなくなることがあってはなりません。
政府として、破綻を未然に防ぐための措置や取組方針等、不確定要素にも耐え得る制度設計を図るべきと考えますが、経産大臣の答弁を求めます。
関連して、当法案では民間事業者の活用を前提としていますが、政府が主導し、万が一問題が起きた場合は政府が最終的な責任を持つという仕組みとすることで事業者や関係者の安心感を高める制度もあり得たのではないでしょうか。
本法案において、CCS事業を民間事業者が行うと規定している理由をお聞かせください。経産大臣の答弁を求めます。
本事業を実施する特定区域の指定に当たっては、鉱業権者や既存の貯留事業者だけでなく、地熱発電事業者や温泉の源泉利用者等への配慮が求められますが、こうした既存の地下資源利用者への配慮と利害調整の取組について政府はどのように考えているのか、経産大臣のお考えをお聞かせください。
衆議院の参考人質疑において、地元関係者などの利害関係人が意見を述べることができるのは貯留事業などの許可に関する公告に限られており、地元へのきめ細やかな情報提供や公告以外に関して意見を聞く機会について何も定めがありませんとの指摘がされています。
なぜ地元関係者などの利害当事者の意見を十全に聞ける規定としなかったのか、経産大臣、その理由をお聞かせください。
環境省の検討会において、二〇二二年十二月二十七日に出された環境と調和したCCS事業のあり方に関する検討会とりまとめでは、廃棄物処理法の目的を踏まえると、CO2が液状になったものは同法における廃棄物として取り扱われるものではないとの見解が示されました。
本CCS事業で取り扱う二酸化炭素は、汚染物質や廃棄物となるのでしょうか、それとも資源になり得るものなのでしょうか、環境大臣の見解を伺います。
一方、経済産業省のCCS長期ロードマップ検討会の最終的な取りまとめでは、CO2が既に有価で取引され、今後も重要なエネルギーや資源の中核原料となること、国際エネルギー機関がCO2を危険物や廃棄物として扱うことよりもCCS上の流通に阻害が起こらないように整理すること、CO2の所有者を明確化する必要性に言及していることなどを踏まえ、CO2を廃棄物とせず、廃棄物として処理せず、有価物として捉えることが適切であるとの見解が示されています。
CO2の法的な位置付けについて、今回の法案では明確に規定されていない理由と、今後どのように明確化していくおつもりか、経産大臣、お答えください。
例えば、福島イノベーション・コースト構想のプロジェクトの一つである福島水素エネルギー研究フィールドとのコラボレーションや、関係する補助金を活用した安価な合成燃料の実現を目指すこともCO2削減につながり、ひいては日本のエネルギー安全保障につながると考えます。
CCS事業のみならず、こうしたCO2活用の実現に向けて関連する法令を見直していく可能性について経産大臣に伺います。
CCSや水素の活用を進めていく上で、人材育成は欠かせません。
二〇二二年五月のJOGMEC法の改正により、JOGMECには水素やCCSに関する事業が追加されました。法改正以後、JOGMECの体制強化や人材育成に向けて、政府やJOGMECの取組方針がどのように変わったのか、経産大臣に伺います。
衆議院における審議において、我が党の鈴木義弘議員の質問に対し、人材育成計画やビジョンについては検討中とのお答えがありましたが、人的資本が経済成長の要である日本にとって、人材育成は待ったなしです。いつまでに検討を終え、行動に移すのか、そのめどをお示しください。経産大臣の答弁を求めます。
今般、私たちが審議する法案は、十年、二十年、それ以上の長期的な政策を方向付けるものです。現在では最善の策と思っていても、予測できないリスクを消し去ることはできません。立法府に身を置く者として、私たちは常に未来に対し強い責任感を持って審議に臨むことを議場におられます皆様と確認し合い、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/11
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012・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 礒崎議員の御質問にお答えします。
脱炭素に向けた国際的なルール作りと、日本が誇る省エネ技術の付加価値を高める取組についてお尋ねがありました。
脱炭素技術の開発、普及促進に向けては、その価値が国際的にも適切に評価される環境の整備が重要です。こうした観点から、昨年のG7会合において、日本が主導し、グリーンスチールなどの国際評価手法の確立に向けた枠組みを立ち上げました。IEAやOECD等の国際機関と連携し、議論を進めてまいります。また、企業の技術や製品を通じた削減貢献を定量化する仕組みの構築に向けて、昨年のG7において重要性を認識するとともに、国際的な民間団体である持続可能な開発のための経済人会議とともに具体化に取り組んでいます。
こうした様々な取組を通じて、GX実現に貢献する技術や企業の取組が社会全体から適切に評価されるための環境整備を国内外問わず進めてまいります。
日本車のCO2排出削減についてお尋ねがありました。
我が国の二〇二二年度の自動車部門のCO2排出量は、二〇〇〇年度と比べて約三〇%の削減となっています。これは、世界に先駆けてハイブリッド車の導入等を進めた効果の表れと認識しており、自動車分野のカーボンニュートラルに向けては、EVやハイブリッド車、水素、合成燃料など多様な選択肢を追求していくことが重要であると考えています。
こうした考え方については、G7やCOPなど、様々な場で各国に対して発信し、国際的な理解も進みつつある状況であります。今後も、世界各国と協調しながら、カーボンニュートラルに向けた取組を進めてまいります。
水素のコスト低減策と価格差に着目した支援の対象についてお尋ねがありました。
水素製造コストを下げるための技術開発については、現在、グリーンイノベーション基金などを活用し、水電解装置のコスト低減や効率の向上に取り組んでいます。
また、水素の需要拡大に向けては、今回の法案による価格差に着目した支援等により、将来的に自立の見込みのある需給一体のサプライチェーン構築に向けた取組、これを支援していきます。
鉄、化学等の転換困難な分野は二〇三〇年時点での需要規模は限定的と見込まれますが、価格差に着目した支援の支援対象はこの分野に限定しておらず、例えば大規模で安定的な水素等の需要が見込まれる発電分野も支援対象に含まれます。
CCS事業法案における事業者の破綻防止措置や民間事業者がCCS事業を行う理由についてお尋ねがありました。
CCS事業は、諸外国においても民間事業者が実施することが想定されています。我が国でも、先進的CCS事業を通じて民間事業者の取組の具体化を進めており、諸外国と同様に民間事業者によってこれが行われることが想定されます。
その上で、CCS事業法案では、貯留事業の許可に係る審査を行う際は、申請者が長期間にわたる貯留事業を安定的に遂行するに足りる十分な経理的基礎を有しているかどうかを審査する予定であり、事業の途中で事業者が破綻することがないよう取り組んでまいります。さらに、万が一、貯留事業者が破綻した場合には、破産管財人に対してモニタリング義務等を課すこととしております。
CCS事業における利害関係者との調整やそのための規定についてお尋ねがありました。
今般のCCS事業法案においては、貯留事業の実施に際し、当該事業が他の産業の利益を損なうものでないと認められない限り許可しないこととしております。また、経済産業大臣が貯留事業に係る許可、不許可の判断を行う際には、関係都道府県知事との協議や利害関係者からの意見募集に係る規定を設けており、利害関係者の意見を踏まえることとしています。
その上で、実際に貯留事業を実施する際には、地元の皆様に対して丁寧な説明を行うなどの取組を事業者に対して求めていくとともに、国としてもCCSの政策的意義や負担、安全性などを丁寧に説明してまいります。
本法案におけるCO2の位置付けやCO2活用の実現に向けた法令見直しの可能性についてお尋ねがありました。
貯留したCO2を利用する事業については、経済性の観点から当面は想定されないため、CCS事業法案では規定は置いておりませんが、今後、環境の変化が生ずれば必要な見直しを行うこととしています。また、CO2は将来的には燃料や化学品などへの活用が期待されており、これらの商用化に際して必要が生ずれば、法令を含め必要な制度整備を行ってまいります。
JOGMECの体制強化や人材育成についてお尋ねがありました。
二〇二二年五月のJOGMEC法改正を受け、経済産業省としては、JOGMECが水素、CCS等に係る幅広い知見を有する組織に転換し、新たな業務を着実に実行できるよう、JOGMECの中期目標において、機動的で柔軟な組織運営や適切な人材確保と戦略的な育成に取り組むよう指示しました。これを受け、JOGMECでは、水素やCCSに係る新たな部署の新設、拡充、専門人材の新規獲得、職員の専門性や特性を生かした研修の充実など、積極的に取り組んでいると承知しています。
人材育成についてお尋ねがありました。
CCSや水素の事業の円滑な操業を支えるためには、人材の育成、確保は重要な課題です。CCSについては、当面は石油や天然ガス分野の人材を活用することが可能ですが、人材育成の環境整備については、今後支援策の一環として検討を進め、早期に必要な措置を講じてまいります。
水素については、現状、水素に特化した専攻分野を設けている大学は僅かです。このため、一月に一回のペースで、企業や大学等の技術者、研究者、学生を対象に水素の基礎講習や最新の技術課題等を学ぶ機会を設け、水素関連技術の担い手の掘り起こし、育成に努めています。(拍手)
〔国務大臣伊藤信太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/12
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013・伊藤信太郎
○国務大臣(伊藤信太郎君) 礒崎哲史議員から、CCS事業で扱う二酸化炭素の位置付けについてのお尋ねがありました。
回収された二酸化炭素そのものは、我が国の廃棄物処理法上の廃棄物や、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等における規制対象に該当するものではありません。
一方で、二酸化炭素の貯留によって環境の保全に影響等が生じないよう、CCS事業法案においては、ロンドン議定書の担保措置として、特に海域に貯留する二酸化炭素について基準を定めることとしております。
貯留した二酸化炭素は、将来的に燃料や化学品の原材料など有価物となる可能性はありますが、一度貯留した二酸化炭素を取り出して利用するニーズについては現状では考えにくいとされています。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/13
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014・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 岩渕友君。
〔岩渕友君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/14
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015・岩渕友
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、CCS事業法案と水素社会推進法案について質問します。
世界気象機関が三月に発表した報告書によれば、二〇二三年は記録的な暑さで、世界の地表付近の平均気温は産業革命前と比べて一・四五度上回りました。さらに、深刻な気候危機は世界で数百万もの人々の日常生活を奪い、莫大な経済的損失をもたらしたとしています。国連のグテレス事務総長は、全ての主な指標でサイレンが鳴り響いている、変化は加速していると警告しています。
気候危機への対策が待ったなしの切迫した事態に対し、日本のエネルギー政策、経済政策はそれに応えたものになっているでしょうか。
環境省は、二〇二二年度の温室効果ガス排出量が過去最低値であり、二〇五〇年ネットゼロに向けて順調に減少する傾向だとしています。しかし、二〇三〇年に一三年度比で四六%削減するという日本の目標は、パリ協定の一・五度目標に対して不十分であり、先進国として六〇%以上の削減が求められています。削減目標の引上げと対策強化に取り組むべきではありませんか。環境大臣に伺います。
以下、齋藤経産大臣に伺います。
日米首脳会談に同行した大臣は、米国のポデスタ大統領上級補佐官と政策対話を行いました。ポデスタ氏は、三月に来日した際のインタビューで、日本でなお依存度が高い石炭火力発電について、温暖化ガス排出をいつ、どのように実質ゼロにするのか明確な計画を示すことが大切だ、米国では石炭火力の規制を強めるとする一方、再生可能エネルギーを増やすと述べています。
米国は、昨年のCOP28で、脱石炭国際連盟に加盟し、G7の中で加盟していないのは日本だけとなりました。さきの政策対話で、化石燃料を使い続けるエネルギー政策に対し賛同が得られたと認識しているのですか。石炭火力発電の廃止期限を決めるべきではありませんか。
CCSは、石炭火力発電など化石燃料を使う事業で排出したCO2を分離回収し地中に埋める事業で、CCS事業法案はそれを推進するための法案です。水素社会推進法案の対象と想定しているのは、当面、CCSの利用を前提に、化石燃料を原料とした水素です。しかも、鉄鋼など脱炭素化が難しい分野が対象であるとしているにもかかわらず、再エネへの転換が容易な発電部門も対象としています。
COP28では化石燃料の扱いが最大の焦点となり、化石燃料からの脱却に決定的に重要な十年に行動を加速させていくことが合意されました。大臣は、両法案について、化石燃料をできるだけ使わないで済むように段階的に取り組んでいくと答弁していますが、両法案で化石燃料の使用を前提に事業を推進しようとしているのに、どうやって減らしていくのでしょうか。
大臣は、COP28の合意文書でもCCSが解決策の一つとして明記されたと言いますが、排出削減が困難な部門における利用が特記されているにすぎません。しかも、CCSも水素も実証事業の段階です。
政府は、二〇二〇年頃のCCS商用化を目指して巨額の予算を注ぎ込んできましたが、現時点でも技術は確立しておらず、目標を十年先延ばしにせざるを得ませんでした。これでは二〇三〇年までの排出削減にとても間に合いません。目標と事業の整合性がないことについてどう説明するのでしょうか。
IPCC第六次評価報告書では、CCSについて、非常にコストが高くポテンシャルが小さいとしています。二〇五〇年における世界全体の発電量に占める水素の割合についても、京都大学の研究グループの分析では僅か一%程度だとしています。
政府は、今後十年間で、GX移行債でCCS事業に四兆円、水素、アンモニアの利用支援として、既存燃料との価格差への補助を含め、三兆円を超える官民投資を見込んでいます。事業の法整備を要望する業界自らが、技術確立に係る不確実性が高い、多額の投資が必要となる一方、リスクも非常に高いと認め、経済支援や規制緩和を強く要望しています。
海外でもCCSは資金不足などから多くの事業が中止、延期に追い込まれ、欧州委員会や米国の会計検査院が公表したレポートでも問題点を指摘しています。
リスクが高く経済合理性がない事業に巨額の国費を投入し、投資を促し、事業が破綻した場合に国民負担にならないと言えるのでしょうか。
安全性、環境影響にも重大な懸念があります。最近でも、米国でCO2輸送のパイプライン破損事故により、数百人が避難し、多数が中毒症状で病院に運ばれました。さらに、CCSは地震を誘発する可能性が指摘されており、米国では国が調査を行っています。こうした可能性について徹底した検証を行うべきではありませんか。
水素の供給、利用促進のためとして、高圧ガス保安法に係る権限を都道府県知事から取り上げて経産大臣に集中し、港湾法上の届出を不要とすることなどは、安全規制を後退させることにほかならないのではありませんか。
CCSの試掘、貯留は、地中深くまで掘削し、CO2を圧入し、百年単位で貯留するなど、環境に大きな負荷を与える事業であるにもかかわらず、環境アセスメントの対象になっておらず、関係住民や自治体が意見を述べる機会は法的に担保されていません。事業化していないので環境への影響が不明、今後検討するといいますが、一方で、工事や事故発生時など影響や被害が甚大と答弁していることからすれば、法整備の段階でアセスの対象とすべきことは明らかではありませんか。
水素社会推進法案で、自治体は国の施策に協力し、低炭素水素等の供給、利用の促進に関する施策を推進するとされています。計画推進義務が課されている下で、地元自治体や住民と対等な協議が行われることになるのでしょうか。答弁を求めます。
政府は、アジア・ゼロエミッション共同体首脳会合で、水素、アンモニア、CCSを積極的に進めるとしています。しかし、財務省は、公正なエネルギー移行を支援する枠組みについて、CCUSなど石炭火力発電の延命につながるような関係国への技術支援は対象外としています。これはダブルスタンダードではありませんか。
大臣は、CCS事業予定地の一つであるマレーシアの住民から、先進国から途上国へのCO2輸出は気候不正義だとの書簡を受け取っているはずです。こうした声にどう応えるのですか。
今年はエネルギー基本計画の改定が予定されています。大臣はかつて、エネ基の策定に係り、複数のシナリオを提示し、国民的議論の下で決定されることが極めて大事と述べています。当然、徹底した国民的議論を行うということですね。答弁を求めます。
未成熟でコストの掛かる石炭と水素、アンモニアの混焼、CCS事業を電力分野で行うということは、石炭火力発電を使い続けるための延命策にほかなりません。
さらに、脱炭素を名目に原発再稼働を強行することは、東京電力福島第一原発事故の経験と教訓を根本から覆すもので、断じて許されません。
原発最優先、火発温存のルールにより、再エネで発電した電気を捨てることになる出力抑制が急増しており、二〇二四年度の抑制見込み量は五十八万世帯分に上り、七百五十億円分もの損失になります。省エネ、再エネの本格的な導入こそ気候危機を打開する道であることを強調して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/15
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016・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 岩渕議員の御質問にお答えいたします。
日米政策対話及び石炭火力発電についてお尋ねがありました。
ポデスタ大統領上級補佐官との対話は、日米の脱炭素に関する政策のシナジーを高めるための枠組みです。本対話で、化石燃料を活用した脱炭素の取組であるカーボンマネジメント技術の開発と展開に係る技術について一致するなど、米国から日本のエネルギー政策に対する理解を得られたと認識しております。
石炭火力につきましては、必要な供給力が十分に確保されていない段階で、直ちに急激な抑制策を講じることになれば、電力の安定供給に支障を及ぼしかねません。
そのため、二〇三〇年に向けて非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めるとともに、二〇五〇年に向けて水素、アンモニアやCCUS等を活用した脱炭素型の火力に置き換える取組を進めていきます。
化石燃料の使用をどのように減らしていくかについてお尋ねがありました。
我が国では、二〇三〇年四六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラルに向け、化石燃料への過度な依存から脱却するため、徹底した省エネや製造業の燃料転換、再エネや原子力などの脱炭素電源への転換を進めていく方針です。その上で、GX経済移行債による二十兆円規模の投資支援策などの活用により、化石燃料からの移行を強力に支援していきます。
現在御審議いただいている両法案は、鉄鋼や化学、商用車、発電といった脱炭素化が難しい分野において、既存原燃料との価格差に着目した支援やCCSの事業環境整備などを通じ、脱炭素化を進めていくものであります。
CCSの目標と事業の整合性、巨額の支援や国民負担についてお尋ねがありました。
CCSは、約五十年の歴史がある石油、ガス、石油、天然ガスの増産技術を気候変動対策に転用したものであり、CCSの専門調査機関によれば、毎年約五千万トンのCO2が回収されています。このため、CCSの技術は基本的に確立しており、我が国でも二〇三〇年までの事業開始を目標として先進的CCS事業を進めています。
経済産業省としては、二〇五〇年のカーボンニュートラルの達成という目標に向けて、CCS事業の円滑な立ち上がりと操業を確保する考えであり、今後、諸外国の支援措置等も参考にしつつ、支援制度の在り方等について検討していきます。
CO2パイプライン事故や地震を誘発する可能性などのCCS事業の安全性や水素事業の安全規制の在り方についてお尋ねがありました。
今後、事業者が実際にCCS事業を行うに当たっては、CO2の安全かつ安定的な貯留を行うことが大前提です。また、導管輸送に当たっても安全確保に万全を期すことが必要です。そのため、国としても、専門家の方々の御意見や国際的な動向も踏まえながら、必要な措置を講じてまいります。
さらに、水素の供給、利用の促進においても、同様に安全の確保を大前提としています。今般の水素社会推進法案に基づき、高圧ガス保安法の許可等の特例措置や港湾法上の届出を不要とする特例措置等を行う際にも、関係自治体と連携しながら、安全の確保に取り組んでまいります。
CCS事業における環境アセスメントについてお尋ねがありました。
経済産業省としては、今般のCCS事業法案における貯留事業の許可制度、貯留事業実施計画の認可制度、貯留事業者に課されるモニタリング義務などの措置を適切に執行することにより、周辺環境に影響を及ぼさないCCS事業を実現してまいります。
なお、環境影響評価法を所管する環境省は、CCS事業を環境影響評価法の対象とするかの必要性については、今後のCCS事業の実態を踏まえた上で検討を深めると答弁されているものと承知しています。
水素社会推進法案における地方公共団体や住民との協議についてお尋ねがありました。
水素社会推進法案における関係地方公共団体の規定は、国の施策に協力して、低炭素水素等の供給及び利用に関する施策を推進するよう努める旨を規定したいわゆる責務規定であり、御指摘のような計画推進義務を課すものではありません。
その上で、事業者による計画が関係地方公共団体や地域住民の御理解を得ながら作成されることは重要であります。そのため、本法案に基づく拠点整備支援を受ける計画の認定に当たっては、地方公共団体等との協調や住民理解の観点も評価項目とした上で総合評価を行うこととしています。
途上国のエネルギー移行支援の在り方と途上国へのCO2輸出についてお尋ねがありました。
御指摘の財務省の発言は、インドネシアの化石燃料からの移行を加速させるための支援策について言及したものと認識しています。様々な脱炭素技術を各国の事情に応じて支援するAZECの支援枠組みと同様に、いずれも化石燃料の延命を目的としたものではなく、ダブルスタンダードとの御指摘は当たりません。
また、御指摘の書簡については、オランダに本部を置く団体の日本支部とマレーシア支部の関係者の連名で作成されたものと認識していますが、我が国からCO2を輸出する場合には、輸入国政府の受入れ意思や規制整備などの事情を踏まえて判断するものと考えています。
次期エネルギー基本計画の議論の進め方についてお尋ねがありました。
これまでも、エネルギー基本計画の策定に当たっては、様々な有識者や団体などへヒアリングを行い、約一か月間のパブリックコメントを実施するなど、様々な立場の国民の皆様から広く御意見をいただいております。
次期エネルギー基本計画については、まだ議論が開始されておりませんが、これまでの取組も踏まえ、幅広い御意見を伺いながら、十分な議論を行ってまいります。(拍手)
〔国務大臣伊藤信太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/16
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017・伊藤信太郎
○国務大臣(伊藤信太郎君) 岩渕友議員から、我が国の温室効果ガス削減目標についてのお尋ねがありました。
我が国は、パリ協定の一・五度目標と整合的な形で、二〇五〇年カーボンニュートラル、二〇三〇年度に二〇一三年度比四六%削減、さらに、五〇%の高みに向けた挑戦を続けるという目標を掲げております。まずは、これらの達成、実現に向け、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、さらに、GX推進戦略等に基づく施策を着実に実施してまいります。
その上で、三年ごとの地球温暖化対策計画の見直しに係る検討や、二〇二五年までの提出が奨励されている次期NDCなどの機会を見据え、目標とそれを実現するための対策、施策について、環境省が中心となって関係省庁と連携しながらしっかりと検討を行ってまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/17
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018・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/18
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019・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第一 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
日程第三 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件
(いずれも衆議院送付)
以上三件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長小野田紀美君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔小野田紀美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/19
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020・小野田紀美
○小野田紀美君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、アンゴラとの投資協定は、投資の自由化、促進及び保護に関する法的枠組みについて定めるものであります。
次に、ギリシャとの租税条約は、二重課税の除去を目的として、投資所得に対する源泉地国課税の減免等について定めるものであります。
最後に、EUとの経済連携協定改正議定書は、情報の電子的手段による国境を越える移転等に関する規定を追加するための改正等について定めるものであります。
委員会におきましては、三件を一括して議題とし、対外投資促進のための政府の取組、ギリシャとの課税権調整の妥当性、他の経済連携協定と比較した改正議定書の特徴等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党の山添委員より三件に反対する旨の意見が述べられました。
次いで、順次採決の結果、三件はいずれも多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/20
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021・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより三件を一括して採決いたします。
三件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/21
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022・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、三件は承認することに決しました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X01420240424/22
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