1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和六年五月二十四日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第二十一号
令和六年五月二十四日
午前十時開議
第一 国際復興開発銀行協定の改正の受諾につ
いて承認を求めるの件(衆議院送付)
第二 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正
の受諾について承認を求めるの件(衆議院送
付)
第三 千九百七十二年の廃棄物その他の物の投
棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九
百九十六年の議定書の二千九年の改正の受諾
について承認を求めるの件(衆議院送付)
第四 育児休業、介護休業等育児又は家族介護
を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代
育成支援対策推進法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正
する法律案及び出入国管理及び難民認定法及
び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実
習生の保護に関する法律の一部を改正する法
律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/1
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002・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。小泉龍司法務大臣。
〔国務大臣小泉龍司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/2
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003・小泉龍司
○国務大臣(小泉龍司君) 出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
まず、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
我が国に在留する外国人の数は既に三百万人を超え、その多くが在留カード又は特別永住者証明書のほか、個人番号カードを所持している状況にあります。
しかし、現在、これら個人番号カードを所持する外国人は、在留カード等と個人番号カードに関する手続をそれぞれ別の行政機関において行う必要があり、煩雑な手続を余儀なくされております。
我が国に在留する外国人の数は今後も増加し、更に多くの外国人が個人番号カードを所持することが見込まれるところ、在留カード等と個人番号カードを一体化し、我が国に在留する外国人の利便性を向上させてその生活の質を高め、我が国を外国人に選ばれる国にするとともに、行政運営の効率化を図ることが求められています。
この法律案は、こうした状況に対応することを目的とし、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正するものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
住民基本台帳に記録されている中長期在留者又は特別永住者が、個人番号カードとしての機能を付加するための措置が講じられた在留カード等である特定在留カード等の交付を求める申請を行うことができるようにし、在留カード等と個人番号カードに関する手続を地方出入国在留管理局又は市町村において一元的に処理することを可能とするとともに、在留カード等の記載事項及び有効期間を見直します。
このほか、出入国及び在留の公正な管理に係る電磁的記録の取扱いを明確化するなど、所要の規定の整備を行うこととしております。
続きまして、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
近年の我が国の労働力不足は深刻であり、外国人材が経済社会の重要な担い手になっている一方で、国際的な人材獲得競争は一層激しさを増している状況にあります。
こうした状況や、これまでの技能実習制度及び特定技能制度をめぐる状況を踏まえ、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国になるという観点から、外国人が我が国で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度に改めるとともに、人権侵害等の防止、是正等を図り、我が国の人手不足分野で活躍できる外国人材を確実に育成、確保するための法整備を行うことが必要不可欠です。
この法律案は、以上に述べた状況に鑑み、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正するものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
第一は、技能実習の在留資格に代わるものとして、育成就労産業分野において就労することを内容とする育成就労の在留資格を創設するものであります。この育成就労産業分野とは、特定産業分野のうち、その分野に属する技能を我が国において就労を通じて修得させることが相当な分野というものであります。
第二は、いわゆる技能実習法の題名を外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律に改めるとともに、法律の目的として育成就労産業分野において人材を育成し、確保することを明記するものであります。
第三は、政府は、育成就労産業分野の選定や、その分野において求められる人材に関する基本的な事項等を基本方針として定めることとするものです。この基本方針にのっとり、主務大臣及び育成就労産業分野を所管する関係行政機関の長等は、共同してその分野において求められる人材の基準に関する事項等を分野別運用方針として定めることとするものです。
第四は、外国人ごとに作成する育成就労計画の認定の仕組みを定めるものです。具体的には、業務、技能、日本語能力等の目標や内容、外国人が送り出し機関に支払った費用の額等に関する基準など、適正な受入れのための認定の基準等を定めるものです。
第五は、技能実習制度においては、やむを得ない事情がある場合に限って実習実施者の変更を認めたところでありますが、一定の要件の下で、育成就労外国人の意思による育成就労実施者の変更を可能とするものです。
第六は、監理支援事業を行う監理支援機関を設けるとともに、育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護を図るため、機能を十分に果たしていない機関を適切に排除することができるよう、その基準等を定めるものであります。
第七は、育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護等を図るため、外国人育成就労機構を設けることとするものです。同機構においては、育成就労実施者の変更等を支援するための育成就労外国人と育成就労実施者との間の雇用関係の成立のあっせん等の業務や、一号特定技能外国人に対する相談対応等の業務を行わせることとするものであります。
第八は、将来的に長期にわたり我が国に貢献する人材を確保する観点から、法務大臣が永住許可をする要件を一層明確化するとともに、要件を満たさなくなった場合に、他の在留資格へ変更する措置等を講ずるための規定を設けるものです。
このほか、一号特定技能外国人支援計画の委託先を登録支援機関に限ることとするなど、所要の規定の整備を行うこととしております。
政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、衆議院において附則に一部修正が行われております。
第一は、政府は、育成就労制度の運用に当たっては、育成就労外国人が大都市圏等に集中して、過度に集中して就労することとならないように必要な措置を講ずるものとすることであります。
第二は、政府は、監理支援機関及び育成就労実施者が、育成就労外国人の人権及び労働環境に十分配慮しつつ、育成就労実施者の変更、労働者派遣等監理型育成就労に関する事務を適切かつ円滑に実施できるよう、関係機関の連携強化等の必要な措置を講ずるものとすることであります。
第三は、政府は、監理支援機関が監理型育成就労実施者から独立した中立の立場で監理支援業務を行うことができる体制が確保されていることを確認するために必要な措置を講ずるものとすることであります。
第四は、政府は、本邦に在留する外国人に係る社会保障制度、公租公課の支払に関する事項、永住許可及び在留資格の取消しに関する規定等の趣旨及び内容について、本邦に在留する外国人及び関係者に周知を図るものとすることです。
第五は、永住者の在留資格の取消しに係る規定の適用に当たっては、従前の公租公課の支払状況及び現在の生活状況等に十分配慮するものとすることであります。
第六は、政府は、この法律の施行後三年を目途として、育成就労制度の運用状況の検証等を行い、必要な措置を講ずるものとすることであります。
以上が、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/3
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004・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。和田政宗君。
〔和田政宗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/4
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005・和田政宗
○和田政宗君 自由民主党の和田政宗です。
自民、公明を代表し、ただいま議題となりました法案について質問をいたします。
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的としています。
そのような中、国際貢献を目的とする技能実習制度が特に深刻な人手不足に直面している事業分野での外国人材の確保のために活用され、技能実習生数は昨年約四十万人となりました。
技能実習の制度目的と運用実態が乖離している状況のままにはできません。労働時間や賃金支払に関連する違反行為等が散見されるほか、技能実習生の失踪数も改善されていません。また、この技能実習生失踪の背景の一つとされる技能実習制度での原則三年間の転籍不可は、技能実習の実効性を担保するために行われてきましたが、国際的な批判も浴びています。
そこで、今回、技能実習制度に代わり育成就労制度が導入されることとなりますが、ここまで政府において技能実習制度の評価についてどのような議論が行われ、新たな制度創設に向けた方向性が示されることに至ったのか。人権を踏みにじる不適切な職場や、外国人が送り出し機関に支払った多額の費用、悪質な転職ブローカーの関与等に対する具体的な対処も含めて、法務大臣にお尋ねします。
また、新たに創設される育成就労制度では、やむを得ない事情がある場合の転籍の範囲を明確化し、本人の意向による転籍も認めることとなりますが、農業や漁業などの現場や地方の事業所では、技能を修得しても賃金のより高い都市部に人材が流出してしまう心配が絶えません。
そこで、今回の法案では、どのように転籍の希望と地方や業種からの要望という双方のバランスを取ったのか、この点についても法務大臣にお伺いします。
育成就労制度が成果を上げるには、その枠組みで入国した外国人材が技能等を身に付ける努力ができる環境整備が大切です。例えば、日本に来てまだ間もない外国人材が日本語の能力を向上させたいと考えた場合に、その習得ができる環境が必要で、それが孤独化させないことや日本のマナーを深く知ることにつながります。
そこで、特に地方に少ないと言われる日本語講座の充実や外国人材が悩んだときに相談ができる体制の整備など、孤立化させないためのサポートや、日本文化やマナーの学びの機会構築にしっかりと取り組んでいただきたいと思いますし、国として、関係府省と連携しながら自治体の取組を支えてほしいと考えています。
一方、外国人によるトラブルについては、その懸念を指摘する声があることから、現在の我が国での日本人、外国人の犯罪件数と起訴率を踏まえつつ、外国人犯罪やトラブルの撲滅に向けた取組を進めていくことも大切です。
その上で、我が国の治安の良さを守り抜き、全ての人々が互いに尊重し合い、安全、安心に暮らせる社会の実現を、安全、安心に暮らせる社会を実現していくという決意を総理にお伺いします。
育成就労制度は、指定された特定の産業分野での基本的に三年間の育成期間で人材の育成とその確保を進めるものです。
企業が外国人を正規に雇用する仕組みとして定着している特定技能一号に移行すれば、将来は在留期間の更新回数の制限がなく、永住許可申請も可能となる特定技能二号に移行することも可能ですが、それには実務経験や高い技能を求める試験をクリアしなければなりませんし、育成就労制度の導入でこれらの制度が変更されるわけではありません。
このように、新たな制度は、入国の時点でいわゆる永住権を有することとなる移民の解禁ではありません。国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していく移民政策でもないことは明らかです。この点を総理に確認いたします。
現行制度上、既に永住を許可された外国人に対しては在留期間更新時等の活動状況のチェックがなく、永住許可申請時と明らかにバランスを欠いています。このため、今回の法改正では、永住許可の要件を一層明確化し、その要件を満たさなくなった場合等の取消し事由を追加することで、永住許可制度の適正化を図ることとなります。
今回、在留外国人に常時携帯義務がある在留カードとマイナンバーカードが一体化された特定在留カードが創設されることとなり、行政機関での手続の一元的処理も可能となりますが、最近では在留カード偽造の摘発が相次いでいるほか、偽造マイナンバーカードを悪用した不正利用被害も発覚していることから、これも防がなければなりません。
そこで、永住許可の要件を満たさなくなったと判断される事由として公租公課の不払が挙げられていますが、税金や社会保険料を含めてどのようなケースが含まれるのか、特定在留カードの偽造、悪用なども含まれるのか。これらについて法務大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/5
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006・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 和田政宗議員の御質問にお答えいたします。
安全、安心に暮らせる社会の実現についてお尋ねがありました。
日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行っていくとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要だと考えます。
政府としては、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けた取組を着実に進めてまいります。
就労、失礼、育成就労制度と移民政策の関係についてお尋ねがありました。
政府としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする、いわゆる移民政策を取る考えはありません。
本法案で創設する育成就労制度は、原則として三年間に限って外国人を特定技能一号の技能水準に育成するために受け入れるものであり、特定技能制度と同様に、人手不足分野に限って上限を定めて受け入れることを行うこととし、かつ、家族の帯同を認めないことなどからすれば、いわゆる移民政策には該当しないと認識をしております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小泉龍司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/6
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007・小泉龍司
○国務大臣(小泉龍司君) 和田政宗議員にお答えを申し上げます。
まず、育成就労制度についてお尋ねがありました。
技能実習制度については、不適正な受入れ機関や監理団体の存在、不当に高額な送り出し手数料を徴収する送り出し機関の存在などの課題が指摘をされております。
政府の有識者会議において幅広い論点について議論が行われ、これを踏まえ本法案では、育成就労制度を創設し、監理支援機関の独立性、中立性の確保、外国人が支払う手数料等が不当に高額とならないようにするための仕組みの導入、不法就労助長罪の法定刑の引上げといった方策を講ずることとしております。
その上で、本人意向の転籍については、外国人の権利の適切な保護や受入れ機関の人材流出の不安への対応などを踏まえ、一定の要件を満たす場合に限りこれを認めることとしております。
また、続いて、永住許可制度の適正化などについてのお尋ねがありました。
本法案では、故意に公租公課の支払をしない場合や特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられた場合など、一部の悪質な場合について永住者の在留許可を、資格を取り消すことができることとしております。
また、永住者が特定在留カードを偽造等した場合については、個別の事案に応じ、公文書偽造等により拘禁刑に処せられたときには在留資格を取り消すことができることとしているほか、在留カードの偽造等に当たるときには直ちに退去強制事由に該当することとなります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/7
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008・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 石橋通宏君。
〔石橋通宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/8
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009・石橋通宏
○石橋通宏君 立憲民主党の石橋通宏です。
会派を代表し、ただいま議題となりました法律案につき、岸田総理及び小泉法務大臣に質問します。
初めに、岸田総理に問います。
歴代自民党政権は、なぜ、現代の奴隷制度、人身売買と国際的に強く批判されてきた外国人技能実習制度を今の今まで抜本改革をせず、問題を先送りにし、労働法令違反や人権侵害などの問題を深刻化させてきたのでしょうか。その政府の不作為によってこれまで人権侵害の犠牲になってきた多くの技能実習生に対して、真摯に謝罪する気持ちはあるのでしょうか。あるのであれば、まず謝罪してほしい。御答弁ください。
実際、技能実習制度の下では多くの実習生が人権侵害や労働法令違反の被害に遭ってきました。
二〇一六年の技能実習法審議の際、私たちは既に技能実習制度の制度的、構造的な問題を指摘し、びほう策では問題解決はできず、抜本改革をすべきだと強く訴えました。しかし、自公政権は、適正化を図るから大丈夫だと言い張り、実効性に乏しい改善策の下で技能実習生の受入れ枠を拡大させたのです。案の定、技能実習生に対する深刻な人権侵害はなくならないばかりか拡大し、失踪者は年九千人にまで増え、絶望して自ら命を絶つ実習生まで出てしまいました。
夢と希望を持って日本に来てくれた若者が失望して帰国し、絶望して命を絶つような制度で、日本が選ばれる国になれるはずがありません。外国人労働者を労働者として保護せず、期間限定の使い捨てにするような制度では、深刻な人手不足に苦しむ地方や産業分野を支えてくれる若者たちを受け入れることはできないのです。
総理、今回の法案提出に当たって、政府は技能実習制度の構造的、根源的な問題は何だと分析されたのですか。そして、政府は、育成就労制度によってそれらの問題を完全解決し、失踪者も自殺者ももう決して出さないと約束ができるのでしょうか。お答えください。
しかし、極めて残念ながら、私たちには今回の政府案が現行制度の抜本改革になっているとは到底思えません。以下、政府案の重大な問題点を具体的に指摘し、質問します。
政府案は、制度の名称が育成就労制度に変わるだけで、送り出し国側の送り出し機関が、日本側のこれも名前を変えただけの監理支援機関と連携して育成就労希望者を日本に送り込み、育成就労計画の下で育成するという基本構造は全く変わりません。
総理、育成就労制度は技能実習制度の単なる看板の掛け替えであり、これでは構造的な問題は解決できないとの批判にどう答えるのでしょうか。また、そもそも育成就労制度の下で日本に来る外国人は一体、権利が保障された労働者なのですか、それともこれまでの実習生と変わらない育成就労生なのですか。御説明ください。
政府案は、現行制度の最も根源的な問題とされている送り出し国側及び日本側双方での民間団体、ブローカーの介在をそのまま制度として残しています。民間団体、ブローカーは、必ずもうけを出そうとします。もうけがなければ運営できないし、制度に関わるメリットがないからです。では、総理、育成就労制度の下で、送り出し機関や監理支援機関は一体誰から収入、利益を得るのでしょうか。
先日の参議院厚生労働委員会での私の質問に対し、法務大臣政務官が明確に、送り出し機関や監理支援機関は現行制度と同様に育成就労生や雇主からお金をもらって運営するのだと答弁しました。つまり、技能実習制度と全く変わらない制度であることを政府自身が認めているのです。全く改革になっていないじゃないですか。
政府が労働者保護の責任を放棄し、労働を民間の市場経済、競争原理に委ねれば、労働者からの搾取や権利の侵害が起こることは歴史が私たちに教えてくれています。
しかし、この三十年、歴代自公政権は、技能実習制度を国際貢献策だとごまかして責任を民間に丸投げし、技能実習生の権利侵害や搾取を放置してきたのです。その失敗を真摯に反省しているのであれば、日本での就労を希望する労働者が手数料や事前研修費用などと称して多額の支払を求められ、借金、債務を背負うことを明確に禁止すべきです。総理、御答弁ください。
また、労働者が多額の借金を背負わされて債務奴隷のように扱われることを防止する本気の決意があるのなら、この制度の下で日本で就労する際に掛かる諸費用を全て日本側が負担する制度に改革すべきです。なぜそうしないのか、法務大臣、御答弁ください。
現行制度では、技能実習生が借金、債務に縛られ、実習先も自由に変更できない制約がある中で、待遇改善を求めたり、自らの権利を行使しようとした実習生が監理団体によって強制帰国させられるという最悪の人権侵害が横行してきました。このような強制帰国は明確に禁止すべきだと考えますが、総理の見解をお示しください。
同様に、労働者の当然の権利である恋愛や結婚、出産の自由も侵害され続けてきました。妊娠したら堕胎を強要され、強制帰国になる。それを避けるために、妊娠の事実を誰にも相談できず、黙って一人で赤ちゃんを産み、亡くなってしまった赤ちゃんを自ら弔ったばかりに、不当にも死体遺棄罪で起訴された実習生もいます。最高裁では無罪になりましたが、このような深刻な人権侵害問題が起こってきた不幸な事実を私たちは決して忘れてはなりません。
育成就労法案第四十八条二項には、育成就労関係者は、育成就労外国人等の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならないと規定されていますが、恋愛や妊娠、出産及び育児の自由は当然に保障されるという理解でよいか、法務大臣、確認を願います。
政府がこれまでの反省に立ち、外国人を正しく労働者として受け入れ、保護する制度を構築しようとするのであれば、国内労働者と同等の権利を保障し、制限は極めて限定的にする制度でなければなりません。
ところが、政府案では、特定技能一号も含めると最長八年間もの間、家族帯同の自由が制限され、家族からの切離しが強制されます。総理、これは人権侵害ではないのか、なぜ政府・与党は家族帯同を認めないのか、認めたくないのか、御説明ください。
また、技能実習制度で転籍の自由が制限されていたことが人権侵害だと批判されてきたにもかかわらず、育成就労制度でも、現行制度よりは緩和されているとはいえ、結局は自民党内での法案審査の過程で要件が厳しくなり、分野によっては最長二年まで転籍が認められない制度になっています。
制度上、監理支援機関が労働者の転籍を適切に支援せず、現実的にはほとんど転籍ができない可能性があることも含め、労働者の権利が大きく制限され続ける問題をどう正当化するのか、岸田総理、お答えください。
今回の政府案は、技能実習制度の抜本改革どころか、現行制度から人権尊重の観点でむしろ後退させる深刻な問題が二つも含まれています。その一つが、技能実習制度では認められていなかった派遣労働について、農業、漁業分野で法律ではなく省令で分野を決めて解禁することです。
入管庁によれば、育成就労生を受け入れる事業主が派遣元事業者としての許可を取得し、派遣法上、派遣元事業者に課せられた責務を果たしつつ派遣事業を営む制度だとのことですが、経験のない中小零細事業主に適正な派遣事業の運営など不可能です。
派遣事業を営めば、マージンを取って利潤を得ることになります。派遣労働を可能にすることで育成就労生が二重三重の搾取の犠牲になる可能性があり、派遣元と派遣先の雇用主責任の押し付け合いなど、派遣労働のマイナス影響の実害を受けることになります。派遣期間中の賃金は民民の派遣契約に委ねられ、日払い賃金制すら可能だというのは全くとんでもない話です。
派遣は絶対に認めるべきではなく、撤回すべきです。岸田総理の答弁を求めます。
深刻な問題のもう一つは、永住権の剥奪を可能にするという、国際人権法を踏みにじる暴挙としか言えない条項を盛り込んできたことです。
政府案の永住権剥奪要件がひどいのは、公租公課滞納で取消しされる可能性があることだけでなく、法文上、軽微な義務違反、それが無過失であっても永住権を剥奪できる制度になっていることです。何十年も掛けてようやく得た永住許可が在留カードの不携帯などの軽微な義務違反で取り消されるのは人権侵害としか言いようがありません。
しかも、この暴論はそもそもの有識者会議の提案には含まれておらず、自民党内の審査において、育成就労で永住者が増えたら大変だという一部議員の主張で突如盛り込まれたと伝えられています。極めて深刻な差別主義、排外主義であり、強く非難されてしかるべき暴論です。
公租公課の滞納だろうが、軽微な義務違反だろうが、日本人であろうが、外国人であろうが、同じ法で平等に裁けばいいだけの話です。外国人に対してだけ生活基盤となる永住権を剥奪する正当な理由はどこにもありません。これは、自民党、公明党が、永住外国人を同じ生活者であり、同じ人として見ていない証左であり、所詮、育成就労生を共生社会の担い手、支え手として受け入れるつもりなどないことの証明なのではないでしょうか。
この暴挙によって、永住外国人の安心が奪われるだけでなく、間違いなく差別や偏見を助長します。こんな人権侵害を許せば、育成就労だけではなく、高度人材を含めて、日本はますます選ばれない国に成り下がります。
岸田総理、まずは永住者に謝罪した上で、この永住権剥奪条項は断固削除、撤回すべきです。明確に御答弁ください。
立憲民主党は、衆議院の審議に際し、対案として外国人労働者安心就労法案を提出しました。
私たちは、この議員立法の検討に三年以上掛け、技能実習制度の問題点を徹底的に洗い出し、韓国を始め諸外国の制度を研究して、さらには技能実習制度の被害当事者、弁護団、支援団体の皆さんと真摯な協議を積み重ね、国際人権法に準拠し、外国人労働者を労働者として受け入れて保護し、生活者としての安心を確保する制度を提案しました。
ブローカーの介在を排除するために公的な雇用許可制度とし、労働者が多額の借金を抱えて日本に来るような問題をなくし、就労開始から二年後には転籍、転職の自由や家族帯同の自由も認める、高いレベルで人権を保障した制度であり、担い手不足に悩む地方や産業分野により多くの外国人労働者が中長期に定着し、活躍してくれることを支援する制度です。
総理、私たちの安心就労法案こそ、地方にとっても、産業界にとっても、そして日本の未来にとっても必要な制度だと思われませんか。十年後に政府の育成就労制度は大失敗だったと批判される前に、私たちの案をベースにして制度設計を一からやり直しませんか。御答弁ください。
一九九〇年代以降、この三十年余り、歴代自公政権の失政によって、日本では非正規雇用が拡大し、常態化して、先進国で唯一賃金が上がらない国に成り下がり、直近の岸田政権下でも何と二十四か月連続して実質賃金が下落を続けています。もはや一人当たりGDPは世界三十四位、国際競争力は三十五位、幸福度ランキングは直近で世界五十一位に成り下がってしまったのです。
異常な円安にも岸田政権が無策を続ける中で、日本に来ても稼げない、仕送りもできない、その上、差別や偏見にさらされる。だったら、もっと高賃金で安心して活躍ができる他の国に行きたいと思うアジアの若者が増えていくのは、残念ながら当然のことです。
人口減少が加速し、担い手、支え手不足が深刻化する中で、外国人労働者が日本に来てくれなくなったら、もはや経済も地域社会も福祉も農林漁業も維持できません。それでもなお政府・与党の皆さんは、国際的に間違いなく人権侵害と非難される制度改悪をこのまま進めようとするのですか。
未来への責任を果たすつもりがあるのか、あるのであれば、その具体的なビジョンを含め、総理、説明ください。
最後に、総理、今政治がやるべきは、外国人労働者を労働者として受け入れ、権利を保護し、生活者としての安心と安全を確保することです。日本が好きで、日本に来て長期に滞在して頑張ってみたい、家族を迎え、子供を授かり、日本社会、経済の担い手として活躍したいと思ってくれる外国の若者たちが安心して長期に在留し、希望を持って活躍してもらえる国づくりをしなければ、日本の未来はありません。
自公政権にその責任を、責務を担う気がないのであれば、私たち立憲民主党がその役割を責任持って担っていきますので、さっさと政権から下野していただくことをお願い申し上げ、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/9
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010・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 石橋通宏議員の御質問にお答えいたします。
技能実習制度における労働関係法令違反や人権侵害等についてお尋ねがありました。
現行の技能実習制度の下、制度趣旨を理解していない一部の受入れ機関において、技能実習生に対する労働関係法令違反や人権侵害行為が生じたこと、これを重く受け止めております。
これまでも、平成二十九年十一月に施行された技能実習法の下、外国人技能実習機構が厳格に検査等を実施すること等により技能実習制度の適正化に努めてきましたが、今回、より適正に外国人材の受入れを図るため、技能実習制度に代わる制度として育成就労制度を創設することとしたものであり、労働者としての権利保護をより適切に図ってまいります。
技能実習制度の課題や問題点及びその解決策についてお尋ねがありました。
技能実習制度には、人材育成を通じた国際貢献という制度目的と運用実態の乖離が指摘されてきたことに加えて、本人意向による転籍が認められておらず、労働者の権利保護が不十分である、技能実習生の失踪等の背後に、一部の受入れ機関側の不適正な取扱いや技能実習生側の経済的な事情等の影響が考えられるなど、制度的、構造的な問題が認められてきたところです。
育成就労制度では、人材育成と人材確保を目的とした上で、本人の意向による転籍を認めるなどの転籍制限の緩和や、受入れ機関や送り出し機関の適正化など、制度全体を適正化するための方策をしっかりと講ずることにより、これらの課題を解決してまいります。
育成就労制度と技能実習制度の違いや、育成就労外国人の労働者性についてお尋ねがありました。
育成就労制度は、現行の技能実習制度の課題を踏まえ、人材育成と人材確保を目的とする新たな制度として、受入れの対象となる職種や分野を原則として特定技能制度と一致させるなどにより、育成就労制度と特定技能制度との連続性を高めて適切な育成につなげるとともに、現行の監理団体に代わる監理支援機関について、要件の厳格化、明確化を図るなど、受入れや送り出しを適正化するための方策等を講ずることとしており、技能実習制度の単なる看板の掛け替えにすぎないとの御指摘は当たらないと考えております。
また、育成就労外国人は、技能実習生と同様に労働関係法令上の労働者でありますが、育成就労制度においては、今申し上げた関係機関の要件の厳格化、明確化等のほか、一定の要件の下で本人の意向による転籍を認めるなど、より適切に労働者としての権利を保護することとしております。
送り出し機関及び監理支援機関が徴収する費用についてお尋ねがありました。
現行の技能実習制度において、送り出し機関は、受入れ機関へのあっせん手数料などについて技能実習生から徴取するとともに、技能実習生の送り出しに要した費用について監理団体を通じて実習実施者から徴収しており、また、監理団体は、監理事業に係る経費について実費に限り実習実施者から徴収をしています。
育成就労制度においても基本的に同様となるものと考えているところ、これらの手数料等についても、海外の送り出し機関が外国人本人から徴収する手数料に上限を設ける、監理支援機関が徴収する費用について運用要領等で算出方法の考え方を明確化するなど、一層の適正化を図っていく方針であります。
外国人が負う借金や債務への対応についてお尋ねがありました。
育成就労制度においては、送り出し国との二国間取決めを新たに作成をし、悪質な送り出し機関の排除に向けた取組等を強化するとともに、原則として、当該取決めを作成した国の送り出し機関からのみ受入れを行うこととしております。また、外国人が送り出し機関に支払う手数料の上限に係る基準を設けることとしております。
こうした取組により、悪質な送り出し機関等の排除を徹底し、外国人の負担軽減を図ってまいります。
技能実習生の意に反する帰国についてお尋ねがありました。
技能実習制度では、監理団体や受入れ機関が技能実習生の意に反して技能実習を打ち切り、帰国をさせたような場合、監理許可の取消し等の対象としています。
さらに、出入国在留管理庁では、意に反して帰国を強制させることを防ぐため、空海港において書面により出国の意思確認を行っています。育成就労制度の創設に当たっても、これらの取扱いを踏まえつつ、引き続き、外国人が意に反して帰国を強制されることがないよう、必要な取組を行ってまいります。
育成就労制度における家族帯同と転籍についてお尋ねがありました。
育成就労制度及び特定技能一号の在留資格で在留する外国人については、技能等を身に付けてステップアップしていかない限り帰国していただくこととなる制度であることや、家族の扶養等のための経済的能力の観点、等の観点からも慎重な考慮が必要となることから、家族帯同は認めないものとしております。
また、育成就労制度においては、やむを得ない事情がある場合の転籍の拡大、明確化を図るほか、本人意向の転籍を含め、監理支援機関の支援に加えて、公的機関であるハローワークと外国人育成就労機構も連携して対応することとしております。
育成就労制度における労働者派遣についてお尋ねがありました。
育成就労制度では、季節性のある分野における通年での受入れを可能とするため、農業、漁業分野に限り、労働者派遣を活用した受入れを認めることを予定しています。
具体的には、派遣元が三年間の育成就労期間を通じた雇用契約を締結した上で、派遣元と派遣先が共同で育成就労計画を策定し、季節ごとの就労先もあらかじめ特定して受け入れることとしております。
また、派遣元と派遣先のいずれも外国人の待遇確保を含む育成就労法上の義務を負うこととしており、監理支援機関による監査や外国人育成就労機構による実地検査等と相まって、御指摘のような負の影響を抑止し、制度趣旨に沿った適正な受入れを担保してまいります。
永住許可制度の適正化についてお尋ねがありました。
共生社会の実現のためには、我が国に在留する外国人にも責任ある社会の構成員として最低限必要なルールを守っていただく必要があります。この点、永住者については、永住許可後に在留審査の手続がないため、公的義務を履行しない場合があるといった指摘があり、これを容認することは、適正に公的義務を履行する大多数の永住者や地域住民との間で不公平感を助長するおそれがあることから、本改正は共生社会の実現のためにも必要なものであると考えております。
その上で、取消しの要否等については、個別の事案ごとに悪質性を判断し、仮に在留資格を取り消す場合であっても、原則として定住者の在留資格への変更を行うこととしているところであり、永住者の我が国への定着性にも十分配慮をして適切に制度を運用してまいります。
育成就労制度の再度の制度設計についてお尋ねがありました。
本法案は、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設した上で、転籍制限を緩和し、受入れや送り出しを適正化することなどにより、外国人にとって魅力ある制度を構築するものであり、長期にわたって産業を支える人材を確保するために必要な措置が講じられているものです。様々な分野の関係者等から成る有識者会議において御議論いただいた結果も踏まえた適切な制度設計がなされたものであると考えております。
また、本法案と併せて、ロードマップ等による外国人との共生のための取組を進めることとしており、これらにより、地方を始めとする人手不足分野における人材確保が一層適切に図られるものであると考えております。
外国人の受入れと未来への責任についてお尋ねがありました。
我が国において人手不足が深刻化する状況や外国人材の獲得に係る国際的な競争が激化している状況に鑑みると、外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠であると認識をしています。
そのためには、外国人の人権を適切に保護することはもちろんのこと、賃金を含む適正な労働条件等の下、安全、安心な暮らし、働くことができる環境を整備することが重要であり、今般の育成就労制度はそのような観点からの検討を踏まえた内容になっていると考えております。
また、政府としては、賃金水準の向上等のため、賃上げの促進、イノベーション、また生産性向上に向けた国内投資の拡大、またスタートアップの育成等に関する取組等も行っているところです。
外国人から選ばれる国になるため、引き続き責任を持って外国人の受入れ環境の整備に取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小泉龍司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/10
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011・小泉龍司
○国務大臣(小泉龍司君) 石橋通宏議員にお答えを申し上げます。
まず、育成就労制度における外国人の費用負担についてお尋ねがありました。
この点、育成就労外国人の費用を公費で負担することとした場合には、その受益者が限定的であるといった問題もあり得ることなどから、公費によって負担する仕組みとはしておりません。
その上で、育成就労制度では、原則として、悪質な送り出し機関の排除の取組等を含む二国間取決めを新たに作成した送り出し国の送り出し機関からのみ受入れを行うこととしております。
また、外国人が送り出し機関に支払う手数料、これの上限等に係る基準を設けるほか、監理支援機関が受入れ機関から徴収する監理支援費の透明化等を図り諸費用を適正化することにより、その費用等が外国人に不当に転嫁等されることのないようにしてまいります。
また、育成就労外国人に係る恋愛や妊娠、出産及び育児の自由の保障についてお尋ねがありました。
育成就労外国人に対しては、日本人労働者や技能実習生を含む外国人労働者と同様に、恋愛や妊娠、出産及び育児等の私生活の自由については制限されておらず、妊娠、出産等による不当な取扱いは男女雇用機会均等法により禁止をされております。その上で、育成就労法第四十八条第二項は、私生活の自由を不当に制限してはならないことを明示しております。
このような制度対応については、丁寧な情報提供や周知を徹底してまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/11
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012・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 青島健太君。
〔青島健太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/12
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013・青島健太
○青島健太君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青島健太です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案並びに出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案について、岸田総理大臣に質問します。
一九九〇年、プロ野球を引退した私は、オーストラリアに渡り、ビクトリア州の学校で中学生と高校生に日本語を教えていました。平日の夕方、そして週末は地元の人々に誘われ、実習生のように未体験の様々なスポーツに取り組みました。そうした時間の中で改めてスポーツの価値と多様性を学び、スポーツライターになることを決意し、帰国します。私にとってオーストラリアは第二の故郷であり、自分の原点でもあります。
技能実習の制度は、私が帰国した直後、九三年に始まります。それから三十年、これまで同制度を利用して日本を訪れた外国人は延べ百八十三万人を数えます。彼らはどんな思いで日本での日々を過ごしたのか。彼らにとって日本が第二の故郷になっていることを祈るばかりですが、現状の技能実習はその狙いとは全く違うものになっています。
令和四年に受入先から失踪した実習生は九千六人。一年だけの出来事ではありません。平成三十年からの五年間を数えても、九千五十二人、八千七百九十六人、五千八百八十五人、七千百六十七人。とんでもない数の実習生が失踪しています。一体これは何を意味しているのでしょうか。見解をお示しください。
この失踪者の数だけでも制度の問題点を十分に物語っていますが、令和四年に行われた実習生に対する調査では、実習先でのこんな問題も報告されています。携帯電話やインターネットの使用禁止、外出禁止やほかの実習生との交流禁止、パスポートや預金通帳を取り上げる、母国語の新聞を読むことを禁止、男女交際の禁止、結婚、妊娠、出産を理由とした不利益な扱い。紹介していてもつらくなるばかりです。
技能実習では、原則三年間同じ職場にいなければならない。その上、日々過酷な労働環境や劣悪な住環境の中に置かれる。この制度が海外から現代の奴隷制度と言われるゆえんがここにあります。
技能実習制度の三十年間での人権侵害の要因についてどうお考えですか。政府の責任を問い、説明を求めます。
そこで、この現状を改善すべく、今改正には大きな期待を寄せたいところですが、もっと深刻な事態が発生する懸念が拭えません。最大の問題は、これから我が国はどんな技能を持った外国人をどのくらい受け入れていくのかという基本となる方針が示されていないからです。
こうした基本戦略の策定に当たっては、経済成長への貢献という観点が重要になります。外国人の受入れがどれほどの経済成長につながるのか、人手不足への安易な対策としての受入れではかえって経済成長を阻害するとの意見もありますが、政府の明確な見通しと見解を求めます。
経済成長につなげるには、国や地域の経済成長に資する高い資格や技術を有する高度人材について積極的に受け入れるように推進体制を整えるべきと思いますが、いかがですか。
また、人手不足緩和のための安易な外国人材の受入れは、通常の労働者の賃金水準の上昇を抑制するなどの弊害を生じさせるため、賃金水準を維持、上昇させるためにも、受入れについては慎重であるべきと思いますが、答弁を求めます。
我が会派は、まず基本戦略となる外国人基本法を作るべきだと考えます。外国人に選ばれる国になる前に、我が国としてどのような人材を求めていくか、その戦略なきままに一部の産業界からの要望などに応え、場当たり的な外国人の受入れが続けば、欧米諸国以上に深刻な移民問題に直面する可能性があるからです。移民問題に直面しないという保証はあるのでしょうか。お答えください。
日本社会を構成する一員としての外国人とどう向き合い、どう共存していくのか、受け入れる外国人の技能水準とその受入れ人数、さらには人権保護などについて、根本的な理念や政策を盛り込んだ基本戦略である仮称外国人基本法を早期に制定することを提案しますが、いかがですか。
基本法制定までの間、現行法の改正で対応することは当然ですが、最低限、現行法の問題点、反省点を踏まえた改正でなければなりません。
まず、外国人への不当な待遇についてです。
改正案では、現行法の基本理念にあった、技能実習は労働力の需要の調整の手段として行われてはならないの一文が削除されています。雇用の調整弁として外国人を扱わないようにするためにどのような手だてを取るのか、お答えください。
次に、受け入れる側の企業についてです。実習生を受け入れてきた日本の企業や事業所など、受入先にも大きな問題がありました。学びに来たという立場をいいことに、日本人以下の賃金で過酷な、しかも単純な労働を強いる、それによってブラックな企業が延命される。これでは経済の成長にはつながりません。
今回の育成就労では、外国人を不当な待遇で酷使するような悪質な企業をどうやって排除するのですか。具体的にお答えください。
言語の壁の問題も重要です。
日本で暮らす上で日本語の習得が大切ですが、働きながら日本語の勉強に取り組むことは容易なことではありません。受入先の理解はもちろん、周辺に日本語を学べる機関があることが必要です。
国内の日本語学校や教員の充実、母国を出国前に日本語を学べる海外での日本語教育について、政府はどのような計画を持っているのか、お聞きします。
地域に与える影響にも問題があります。
さきの令和四年の調査では、実習生の六〇・四%が家族と離れて寂しかったと答えています。私もオーストラリアの田舎町にたった一人で乗り込んだので、その不安がよく分かります。不安解消のためには、地域のコミュニティーに溶け込めることが大事になってきます。
働く場所だけでなく、コミュニティーの受入れ態勢も整備しなければなりません。地元への説明や理解促進は誰が進めるのですか。地域の住民や自治体への支援策が必要ではありませんか。外国人を受け入れる地域への対応と環境整備についてお答えください。
最後に、治安対策について伺います。
残念なことに、在留外国人による犯罪がもう既に多発しています。外国人犯罪がなぜ発生するのか、その要因と傾向について見解をお示しください。加えて、今後の犯罪、防犯対策についての所見をお答えください。
また、犯罪に至らないまでも、地域住民と外国人との対立が顕在化している地域もあります。当該の地域では、住民も自治体も対応に苦慮しています。こうした現状を解決するために国としてなすべきことは何か、政府の責任ある答弁を求めます。
この国の未来を見据えて、どのようなバランスで外国から来た人たちと共生していくか、その未来予想図をしっかりと描かなければなりません。外国人を安価な労働力としてだけ受け入れるのであれば、経済成長は見込めないばかりか、この国の秩序と安心は守ることができません。
日本が目指すべき豊かな社会の実現に向けた外国人基本法の早期制定を含めた今後の議論をしっかりと見極めていきたいと思います。会派を超えた真剣な議論を求めて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/13
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014・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 青島健太議員の御質問にお答えいたします。
技能実習生の失踪についてお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、多数の失踪者が発生していること、これを重く受け止めています。失踪の原因について明確に特定することは困難ですが、一部の受入れ機関側の不適正な取扱いや技能実習生側の経済的な事情等が影響しているものと考えています。
この点、育成就労制度では、転籍制限を緩和することにより、労働者としての権利保護をより適切に図るほか、外国人が送り出し機関に支払う手数料等が不当に高額とならないようにするための仕組みを導入するなど、失踪につながり得る要因の解消に資する方策を講ずることとしており、これにより技能実習制度で指摘されてきた失踪問題の解決を図ってまいりたいと考えています。
また、育成就労制度が施行するまでの間も引き続き現行の技能実習制度の適正な運用に努め、失踪防止に努めてまいります。
技能実習制度における人権侵害の要因についてお尋ねがありました。
人権侵害の要因について一概にお答えすることは困難ですが、一部の受入れ機関の遵法意識の欠如や、監理団体による指導監督の不十分さなどが影響しているものと考えております。
現行制度においても、人権侵害等のやむを得ない事情がある場合には実習先の変更を認めるなど、技能実習生の人権保護に努めてきたところですが、今回、様々な指摘を踏まえ、制度自体を抜本的に見直し、技能実習制度に代わる制度として育成就労制度を創設し、外国人、失礼、労働者としての権利保護をより適切に図ることといたしました。
外国人の受入れが我が国の経済に与える影響についてお尋ねがありました。
外国人材の受入れについては、政府としては、専門的、技術的分野の外国人については経済活性化の観点から積極的に受け入れていく一方で、それ以外の外国人については社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ検討する方針としており、必要に応じて関係閣僚会議等、所要の体制も構築しているところです。
また、今般創設する育成就労制度については、国内労働市場への悪影響を生じさせないこと、生じさせることのないように、一定の条件の下で受入れを行うこととしているところです。
いずれにしても、外国人材の受入れについては、引き続き、多様な御意見、御指摘にも耳を傾け、幅広い検討を行っていくことが重要であると考えています。
外国人材の受入れ政策についてお尋ねがありました。
外国人材の受入れについて、政府としては、専門的、技術的分野の外国人については経済活性化の観点から積極的に受け入れていく一方で、それ以外の外国人については社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ検討することを基本的な方針としております。
この点、例えば特定技能制度においては、特定技能一号として入国する外国人について一定の専門性、技能を有することを試験等により確認しているほか、生産性向上及び国内人材の確保の取組を行ってもなお不足する労働者数を受入れ見込み数として設定をしており、場当たり的との御指摘は当たらないと考えています。
また、政府においては、令和四年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現に向け、外国人の受入れ環境整備を着実に進めてきているところです。
このように、外国人基本法に盛り込むべきと御指摘があった事柄についても既に一定の対応を行っているところですが、いずれにしても、今後の外国人材の受入れについては、多様な御意見、御議論にも耳を傾け、幅広い検討を行っていくことが重要であると考えております。
外国人が雇用の調整弁として扱われないようにするための方策についてお尋ねがありました。
育成就労制度は人材育成と人材確保を目的とする制度でありますが、特定技能制度と同様に、受け入れる分野において生産性向上及び国内人材確保に向けた取組が尽くされているかを慎重に確認した上で受入れを行うこととしています。
また、現行の技能実習制度と同様、やむを得ない場合を除き、外国人の意に反して育成就労を中止することは認めないことに加え、受け入れた外国人材の育成や日本人と同等の待遇確保がしっかりとなされるよう、監理支援機関の要件の適正化や外国人育成就労機構の監督機能の強化を行うこととしており、外国人が安価な労働力として使い回されることがないようにしてまいります。
悪質な受入れ企業の排除についてお尋ねがありました。
育成就労制度においては、現行の技能実習制度と同様、受入れ機関の育成就労計画の認定に当たって日本人と同等以上の報酬を含む適正な処遇について確認するとともに、法令違反に対しては改善命令や計画の認定取消しなどの措置を講ずることとしております。
その上で、現行の監理団体に代わる監理支援機関について、外部監査人の設置を義務付けるなど、受入れ機関からの独立性、中立性を担保すること、外国人育成就労機構について、監理支援機関や受入れ機関に対する監督指導機能を強化するための体制を整備し、労働基準監督署との連携を強化することなど現行の技能実習制度からの改善策を講ずることにより、悪質な受入れ機関に厳正に対応してまいります。
そして、育成就労外国人の日本語教育についてお尋ねがありました。
育成就労制度では、適正な人材育成等の観点から、段階的に日本語能力を向上させることとし、政府として日本語学習の環境整備に取り組んでいくこととしています。
具体的には、日本語教育機関認定法の仕組みを活用した教育の質の向上、日本語学習のためのオンライン技術の活用、日本語教室空白地域の解消の推進、教材開発等による母国における日本語学習支援といった取組を推進してまいります。
地域における外国人受入れ環境整備等についてお尋ねがありました。
外国人との共生社会を実現していくためには、政府が地方公共団体等と連携しつつ、地域への理解も促しながら、必要な施策を実施していくことが重要です。育成就労制度では、各自治体が地域協議会にも積極的に参画し、地域産業政策の観点からの受入れ環境整備に取り組むこととしています。
政府としても、引き続き、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、外国人受入環境整備交付金の活用等も行いながら、日本人と外国人がお互いを尊重し、安全、安心に暮らせる社会の実現を目指して取り組んでまいります。
外国人犯罪等についてお尋ねがありました。
在留外国人による犯罪の発生要因やその傾向を一概に申し上げることは困難ですが、一般論として申し上げれば、言語や生活習慣の相違等に起因する日常生活上のトラブル等から外国人が日本社会になじむことができず、孤立し、犯罪に関与してしまうおそれなどは考えられるところです。
こうした犯罪やトラブル等の発生を防止し、日本人と外国人がお互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、多言語での相談対応など適切な支援等を行っていくとともに、ルールに違反する者に対しては取締りを積極的に実施するなど厳正に対応していくこと、これらが重要であると考えています。
政府としては、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けた取組を着実に進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/14
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015・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 川合孝典君。
〔川合孝典君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/15
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016・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
会派を代表して、岸田総理及び関係閣僚に質問をいたします。
生産年齢人口の減少を背景に人材不足が深刻化する中、外国人の受入れは、経済のみならず日本社会の持続的安定性を確保する上で喫緊の課題となっております。
これまで政府は、表向きは移民政策を否定しつつ、日本人に十分な賃金を払って雇用することができない企業や業界の要望に応える形で、技能実習制度の名目でなし崩し的に安価な外国人労働力の受入れを拡大してきました。その結果、劣悪な労働環境に起因した失踪の問題などが多発し、不法在留者による犯罪や地域トラブルなどが社会問題化してしまっています。
今後の日本の姿に大きな影響を及ぼす外国人政策は、中長期的に日本の国益に資するかどうかを判断基準とすべきであり、場当たり的な労働者不足対策であってはなりません。
既に外国人から選ばれない国になりつつある日本の現実と真摯に向き合い、中長期的に日本を経済、社会の両面から豊かな国にするという視点から、単なる受入れ政策ではなく、国益を見据えた誘致へと発想を転換する必要があります。
これから参議院での審議を始めるに当たり、総理並びに関係閣僚の外国人政策に対する基本認識をお伺いします。
まず、岸田総理に質問します。
今回、技能実習制度を改め、育成就労という形で人材確保の目的を明示したことは一定の評価に値しますが、これまでの議論を見る限り、当面の人手不足対策としての法改正の意図が散見され、いまだ外国人労働者政策と正面から向き合っているとは言い難い内容となっています。
岸田総理は外国人との共生社会の実現を掲げておられますが、岸田総理の目指す外国人との共生社会とは一体どういうものなのか、具体的な将来像について御説明をお願いします。
労働基準関係法令と入管法との整合性を図る必要性について御質問します。
特定技能雇用契約については、労働基準法を始めとする労働基準関係法令との整合性が取れているかどうかを出入国在留管理庁の審査において判断することとしていますが、こうした公法規制が労働契約の私法上の権利として実現させる仕組みがないことから、技能実習生の権利保護に不備を生じさせています。技能実習生の権利を確実に保護するためには、出入国在留管理法と労働契約法を始めとする労働基準関係法令との整合性を図る必要があるものと考えます。
外国人の受入れ拡大が見通される中、外国人労働者政策全体を包括した外国人政策に特化した基本法を制定する必要があるものと考えますが、岸田総理の御認識をお伺いします。
景気変動リスクへの対応方針について岸田総理に伺います。
外国人の受入れ拡大に当たっては、今後の景気後退や経済危機が生じる可能性を織り込んでおく必要があります。景気が悪化したときには日本人労働者との雇用の奪い合いが生じることも想定されます。実際に欧米諸国では、景気後退時に移民排斥運動が頻繁に起こっています。したがって、外国人労働者の受入れ拡大に当たっては国内労働市場との調整が極めて重要と考えますが、この点について政府の基本認識と今後の対応方針について岸田総理にお伺いします。
技能実習実施者による労働基準関係法令違反に関して御質問します。
これまでも日本で就労する限り、国籍を問わず、原則として労働基準法、最低賃金法等の労働基準関係法令は適用されることとなっていました。しかし、実習実施者による労働基準関係法令違反は後を絶ちません。令和三年時点で労働基準監督機関が監督指導を行った九千三十六事業所のうち七二・六%、六千五百五十六事業所で法令違反が認められております。
実習実施者による労働基準関係法令違反が後を絶たない理由は何だとお考えになるのか、岸田総理の御認識を伺います。
なお、労働基準関係法令違反の多い事項は、安全基準違反、割増し賃金の未払、労働時間問題などとなっていますが、今回の法改正を通じてどのように労働関係法令違反を解消していくのかを法務大臣並びに厚生労働大臣にお伺いします。
日本語能力を受入れ要件とすることについての御認識を伺います。
技能実習生等が来日後に直面するトラブルや労働災害の多くは、実習実施者と話合いができない、職場の指示が分からないなど、日本語能力の低さに起因しています。
日本の将来の国益を考えたとき、経済、社会の戦力となる一定以上のスキルを有する労働者を受け入れることが本来望まれますが、それだけでは十分な人材の確保が見込めないことから、働きながら学ぶ未熟練労働者の受入れが今後も不可避と考えられます。
したがって、今後受け入れる外国人労働者については、日本で働き、生活する上で最低限の日本語能力を来日のための要件とすることが必要なのではないかと考えますが、この点について岸田総理の御認識を伺います。
また、既に日本で技能実習を行っている者についても、実習実施者が日本語や技能を学ぶ機会を十分に提供しているかどうかチェックする仕組みを構築する必要があるのではないかと考えますが、この点について厚生労働大臣にお伺いします。
悪質な送り出し機関の規制の在り方について御質問します。
技能実習生が母国の送り出し機関に多額の借金をしている問題については、度重なる指摘にもかかわらず、他国のことであるためとして、日本政府の対応はこれまでせいぜい悪質ブローカーからの受入れを停止する程度にとどまっています。
本来、日本がどのような条件で外国人の入国を認めるかは国際慣習法で認められた国家主権に基づき決定されるものであり、相手国の事情に寄り添った結果、トラブルを日本国内に持ち込むようなことがあっては国益に反するものと考えます。
今回も、送り出し機関の規制については、最終報告書や政府方針において、監理団体などがより質の高い送り出し機関を選択できるよう手数料などの情報公開を求めるとされているものの、手数料など、そのものをなくすための取組には全くなっておりません。
悪質な送り出し機関の規制や借金問題を抜本的に解決する意思があるのか、岸田総理に御質問します。
あわせて、具体的に悪質な送り出し機関をどのように規制するのか、法務大臣に御質問します。
監理団体の基盤強化の必要性について認識を問います。
監理団体として許可を受けることができるのは中小企業団体など営利を目的としない法人に限られていますが、非営利であるため組織基盤は脆弱で、運営面で加盟企業に依存することになっています。
最終報告書や政府方針では、受入れ企業と密接な関係にある監理団体役職員が企業の指導監督業務に関与することを制限するとされていますが、中立性を担保するため営利性を縮小した結果、かえって中立性が担保できていないという事態が生じており、これでは厳正中立な監理業務は望めません。高い水準で監理団体の中立性を担保するためには、NPO法人並みの収益事業や内部留保を認めることで経営面での自立を促すことも検討すべきと考えますが、岸田総理及び厚生労働大臣の御認識を伺います。
特定技能産業分野の選定プロセスを透明化する必要性についての御認識を問います。
特定技能制度の改正については、最終報告書でも政府対応の関係閣僚会議決定でも、制度の本質的問題に踏み込んだ改正の議論がなされておりません。
特定技能制度は、今後の国内労働市場に大きな影響をもたらすものであるにもかかわらず、特定技能対象分野の選定プロセスが透明性に欠けております。
最終報告書で提案された有識者などで構成する会議体を選定のプロセスに関与させる、関与させて透明性、公平性を図る必要があるものと考えますが、この点について岸田総理の認識を伺います。
最後に、転籍制限と労働基準関係法令との整合性について質問します。
転籍について、法案では当面の間、受入れ対象分野ごとに一年から二年までの範囲内で設定すると極めて曖昧な表現となっており、これでは経過措置という受入れ側への配慮を理由に更なる転籍制限が可能となるおそれが指摘されております。一年を超えての拘束は労働基準関係法令との整合性を欠いており、人材育成の仕組みとの説明だけでは正当化できないものと考えます。
転籍制限と労働基準関係法令との整合性を取る必要があるものと考えますが、岸田総理並びに厚生労働大臣の認識を伺い、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/16
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017・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 川合孝典議員の御質問にお答えいたします。
外国人との共生社会についてお尋ねがありました。
外国人との共生の在り方は世界各国で様々ではありますが、私は、日本の現実に合った共生社会を考えていくことが重要であると考えており、日本人と外国人がお互い尊重し、安全、安心に暮らせる社会を実現していく、こうしたことを目指していく必要があると考えています。
そして、そのような社会の実現のためには、この外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援を行っていく、そしてルールに違反する者に対しては厳正に対応していく、こうした取組が重要であると考えております。
外国人労働者の受入れの在り方についてお尋ねがありました。
外国人労働者の権利を適切に保護することは、我が国が選ばれる国になるための当然の前提であり、今般創設する育成就労制度では、転籍の緩和等によって労働者としての権利をより適切に保護することとしているところです。また、育成就労制度では、受入れ機関に関する要件の適正化により、労働関係法令がより確実に遵守されるようにしてまいります。
御指摘の外国人政策に特化した基本法の要否については、その具体的内容が明らかでないためお答えすることは困難ですが、いずれにせよ、今後の外国人労働者の受入れの在り方については、多様な御意見、御議論にも耳を傾け、政府全体で幅広い検討を行っていくことが重要であると考えています。
外国人の受入れ拡大による国内労働市場への影響についてお尋ねがありました。
政府においては、我が国経済社会の活性化等の観点から、専門的、技術的分野の外国人材の受入れを積極的に推進していますが、それ以外の外国人については社会的コスト等の幅広い観点から国民的コンセンサスを踏まえつつ検討する方針であり、今般創設する育成就労制度でも、国内労働市場への悪影響を生じないよう、一定の条件の下で受入れを行うこととしています。
いずれにしても、外国人材の受入れについては、引き続き、多様な御意見、御指摘にも耳を傾け、幅広い検討を行っていくことが重要であると考えています。
受入れ機関による労働基準関係法令違反についてお尋ねがありました。
受入れ機関が労働基準関係法令違反に至る理由は様々ですが、一概にお答えすることは困難ですが、一部の受入れ機関の遵法意識の欠如、また監理団体による指導監督の不十分さなどが影響しているものと考えています。
育成就労制度では、監理支援機関の独立性、中立性の確保、やむを得ない事情による転籍の範囲の拡大、明確化などを行い、これによって外国人の適正な待遇が確保されるよう努めてまいります。
外国人の日本語能力についてお尋ねがありました。
育成就労制度においては、適正な人材育成や地域社会との共生といった観点から、外国人が就労を開始する前に一定の日本語能力の試験の合格等を要件とするなど、段階的に日本語能力を向上させるための方策を講じることとしております。また、日本語学習の環境整備の一環として、教材の開発による母国における日本語学習支援などの取組を進めてまいります。
これらによって、我が国に来日する外国人の日本語能力の向上を促進してまいります。
悪質な送り出し機関の規制についてお尋ねがありました。
育成就労制度においては、送り出し国との二国間取決めを新たに作成し、悪質な送り出し機関の排除に向けた取組等を強化するとともに、原則として当該取決めを作成した国の送り出し機関からのみ受け入れる、受入れを行うこととしております。また、外国人が送り出し機関に支払う手数料の上限に係る基準を設けることとしております。
こうした取組により、悪質な送り出し機関等の排除を徹底し、外国人の負担軽減を図ってまいります。
監理団体の基盤強化についてお尋ねがありました。
育成就労制度では、現行の監理団体に代わる監理支援機関について、第三者による中間搾取等が生じないよう営利を目的としない法人としていますが、監理支援が適切に行われるよう、監理支援機関が一定の財政基盤を有することは必要であると考えています。
このため、育成就労制度では、監理支援機関の財政基盤に関する基準について、主務省令においてその要件を厳格化、明確化することを予定しており、十分な体制を有する団体に監理支援を担っていただけるようにしてまいります。
特定技能制度の対象分野の選定プロセスについてお尋ねがありました。
特定技能制度の対象分野の選定については、当該分野を所管する省庁だけでなく、入管庁や厚生労働省等の制度を所管する省庁を含め、政府全体として適切に判断しています。
これに加えて、今後の特定技能制度では、対象分野の選定について、育成就労制度と併せて、有識者、労使団体等で構成する新たな会議体において御議論いただき、その意見を踏まえて判断する方針としています。
このようなプロセスによって、特定技能制度の対象分野の選定について透明性、公平性が更に高まるものと考えております。
転籍制限と労働基準関係法令の整合性についてお尋ねがありました。
育成就労法案において、本人意向の転籍の要件となる就労期間については、受入れ対象分野ごとに一年から二年までの範囲内で主務省令で期間を定めることとしております。この要件は、育成就労制度が育成就労という在留資格によるものであることに鑑み、出入国在留管理の観点から課すこととしているものであります。
その上で、当該就労期間については、本年二月に決定した政府の対応方針において当分の間の取扱いとしているほか、期間の設定に当たっては、人材育成の観点を踏まえた上で一年とすることを目指しつつ、一年を超える期間を設定する分野については、受入れ機関において、就労開始から一年を経過した場合には昇給などの待遇の向上を図るための仕組みを導入することを検討することとしており、労働関係法令とのそごといった問題は生じないものであると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小泉龍司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/17
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018・小泉龍司
○国務大臣(小泉龍司君) 川合孝典議員にお答えを申し上げます。
まず、労働関係法令違反の解消のための取組についてお尋ねがありました。
現行の技能実習制度においては、監理団体の責任者等に対する労働関係法令等に係る講習の受講を義務付けるとともに、監査や実地検査によって法令違反が把握された場合には、労働基準監督署への通報や計画認定の取消しなどの措置を講じております。
これらに加えまして、新たな育成就労制度においては、監理支援機関の独立性、中立性を確保するなどを予定しており、労働行政を所管する厚生労働省とも連携しつつ、労働関係法令違反の防止に努めてまいります。
次に、悪質な送り出し機関への規制についてお尋ねがありました。
新たな育成就労制度では、二国間取決めを新たに作成して悪質な送り出し機関の排除に向けた取組を強化するとともに、原則として当該取決めを作成した国の送り出し機関からのみ受入れを行うこととしております。
また、外国人が送り出し機関に支払う手数料の上限に係る基準を設けた上で、二国間取決めで定める送り出し機関の認定基準として当該基準を遵守することや、監理支援機関等への供応、キックバック等を行わないことなどを新たに盛り込むことを予定しており、これらによりまして悪質な送り出し機関の排除を徹底していく方針としているところでございます。(拍手)
〔国務大臣武見敬三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/18
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019・武見敬三
○国務大臣(武見敬三君) 川合孝典議員の御質問にお答えいたします。
労働基準関係法令違反の解消についてお尋ねがありました。
労働基準関係法令の遵守は、外国人材の受入れ機関に限らず、労働者を雇用する全ての雇主にとって当然の責務です。
現行の技能実習制度においても、監理団体による監査、外国人技能実習機構による実地検査や労働基準監督署への通報を通じて労働基準関係法令違反の防止、是正に努めていますが、育成就労制度では、さらに、外国人技能実習機構を改組して設置する外国人育成就労機構の指導監督機能及び支援・保護機能の強化、外部監査人選任の義務化などによる監理支援機関の独立性、中立性の確保、労働基準監督署との連携の更なる強化などにより労働基準関係法令違反を解消できるよう、更に取組を強化してまいります。
日本語や技能を学ぶ機会のチェックの仕組みについてお尋ねがありました。
現行の技能実習制度においては、入国後の日本語研修を含め、技能実習計画の内容や目標が一定の基準に適合していることを計画認定の要件とするとともに、当該計画と実態にそごがないかについて外国人技能実習機構による実施検査において確認しております。また、技能実習一号から二号への移行など、実習の次の段階への移行に当たっては、技能検定への合格を要件としております。
こうした仕組みにより、技能実習生が日本語や技能を着実に修得できるよう、引き続き取り組んでまいります。
監理団体の基盤強化についてお尋ねがありました。
政府としても、技能就労、あっ、育成就労制度の下で監理支援機関による監理支援が適切に行われるためには、その独立性、中立性の強化と併せて、監理支援機関が一定の財産的基盤を有することが必要と考えています。
このため、育成就労制度においては、監理支援機関の財産的基礎に係る基準について、主務省令においてその要件を厳格化、明確化することとしており、十分な体制を有する団体に監理支援を担っていただけるよう、具体的な基準を検討してまいります。
なお、技能実習制度においては、第三者による中間搾取等が生じないよう、営利を目的としない団体に監理団体の許可を与えることとしており、この点は育成就労制度でも同様としております。
転籍制限と労働基準関係法令との整合性についてお尋ねがありました。
一般に、外国人労働者には、労働関係法令だけでなく、出入国在留管理関係法令も適用され、個々の在留資格の性質を踏まえた規律が定められているものと承知しています。
育成就労制度における本人意向の転籍の要件となる就労期間については、急激な変化を緩和するための措置として、人材育成の観点を踏まえた上で一年とすることを目指しつつ、分野ごとに一年から二年までの範囲内で期間を設定することとしたものです。これは、育成就労という在留資格の性質に鑑み、転籍先での計画認定に当たって出入国在留管理関係法令上の観点から課せられる規制であり、労働関係法令とそごを来すものではないと考えております。
以上であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/19
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020・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 仁比聡平君。
〔仁比聡平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/20
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021・仁比聡平
○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、育成就労の創設、永住資格の取消し拡大など、入管難民法、技能実習法等改定案について、総理及び関係大臣に質問いたします。
まず、我が国の人手不足の実態と政治の責任について、本法案の衆議院代表質問で、自民党議員から我が国における労働力確保策を問われた総理が極めてあっさりと、働き方改革に取り組むこと等により、女性、高齢者などの活躍を促進し、引き続き人材確保に取り組んでまいりますと答弁して済ませたのには驚くほかありませんでした。総理にはその程度の認識しかないのですか。
失われた三十年という長期にわたる経済の停滞、衰退は国民生活に深刻な困難をもたらし、そこに円安、物価高騰の打撃が加わっています。この十年で実質賃金は増えるどころか年間二十四万円も減っている、世界で異様な賃金が上がらない国、日本。その最大の要因は、財界の要求に応えて労働法制の規制緩和を繰り返し、低賃金で不安定な非正規雇用を四割にまで広げてしまったことにあるのではありませんか。
消費税の連続増税、年金、医療、介護など社会保障の負担増と給付削減が繰り返され、世界有数の高い学費や貧しい奨学金によって若者が背負わされている借金は、この三十年間で七倍、総額十兆円に上ります。
総理、その自民党政治に反省はないのですか。政治の責任で抜本賃上げと待遇改善を進める、人間を大切にする働き方への改革こそ焦眉の課題ではありませんか。
農業、農村ではどうか。深刻な後継者不足の下、衆議院の宮城公聴会でもJA宮城中央会の佐野和夫会長が、農業現場の人材がなくなったという一番は、労働に見合う収益がないということ、つまり、生産物の価格が転嫁されていないというのがずっと続いていることが一番である、やはり対価をしっかりと生産物に組み入れていただいて、再生産できる体制づくりを取ることによって、後継者も農村地域も潤って活性化が成り、人材もそこに育っていくというふうに思っておりますと述べられたとおりです。
農水大臣、生産コストを償う価格保障、所得補償こそ農業における人手不足打開の決め手ではありませんか。
建設労働者の減少、高齢化に歯止めが掛からない中、建設業の持続可能性を考えたとき、処遇改善と担い手確保、育成はもはや一刻の猶予もありません。若者の入職を阻んでいる低賃金、長時間労働、完全週休二日の低い割合の打開こそ喫緊の課題ではありませんか。設計労務単価を引き上げても現場で働く労働者に回らない多重下請構造をどう正すのですか。国交大臣にお伺いします。
そうした失われた三十年の当初、労働者であることも労働法も、労働法の適用も認められず、奴隷的な単純労働力としてその酷使が大問題になったのが研修生制度でした。一九九三年、それに接続して技能実習生が創設され、当時数百人だった技能実習生は、労働者としての保護が課題となった二〇一〇年改正、二〇一七年の技能実習法、また二〇一九年の特定技能創設の制度改定を経て急増を続け、令和五年末で四十万四千五百五十六人、特定技能二十万八千四百六十二人、合わせて六十一万三千十八人に上っています。
総理、能登半島地震の被災地で浮き彫りになったように、技能実習生や特定技能労働者は、既に地域経済にとってなくてはならないレギュラーメンバーなのではありませんか。
一方、入管庁の言う失踪者はこの間も急増し、令和四年で九千六人に上ります。その原因をどのように分析し、なくしていくのか。法務大臣、農水大臣、国交大臣にそれぞれお尋ねします。
安価で都合よく働く単純労働力としてのみ受入れ拡大を重ねてきたいびつな在留管理政策によって、人間として当然の家族帯同や永住は認められず、差別的低賃金と不当待遇、転籍の自由を認めない奴隷的労働で、多額の借金を背負わされ、ブローカーの食い物にされる深刻な人権侵害が後を絶ちません。職場での暴力やセクハラ、パワハラ、最低賃金違反や賃金未払などの労働関係法令違反が繰り返され、失踪者も増え続けています。
総理、長年にわたってこの事態が改善されないのはなぜだと考えますか。
経団連は、二〇二二年二月、今日、我が国は国際的な人材獲得競争に劣後しつつあると提言しましたが、労働者としての人権を認めない恥ずべき身勝手の挙げ句、自縄自縛に陥っているというべきです。外国人労働者を使い捨てにしてきた自民党政治を根本から改めるべきです。以上、総理の基本認識を伺います。
ところが、本法案で技能実習に代わるものとされる育成就労は、看板の掛け替えにもならないのではないか。
技能実習制度の人権侵害構造の根本には、移住労働者を食い物にする送り出し機関や監理団体、受入れ企業を排除し切れない仕組みと、労働者自身が生活と権利を守る最後のとりでである転籍の自由を認めないことがあります。
本法案でも本人の意向による転籍を制限する理由について、法務大臣は、労働者として適切に権利保護していく制度として、制度の魅力を向上させる、そういう観点に立てば一年を目指すのが相当と言いながら、人材育成上の懸念、人材流出の不安を強調し、最大で二年までの範囲内で制限を認めることとしたと答弁しています。
結局、日本人が定着しない職場に来てもらって囲い込みたいというのが本音ではありませんか。その制限期間は当該産業分野を所管する省庁が政令で定めるといいますが、どのような基準で定めるというのですか。法務大臣、お答えください。
福島大学の坂本恵教授は衆議院の公聴会で、門戸を開けば外国人労働者が押し寄せる時代は既に終わったということを知るべきです、指摘されました。純粋で黙々と働く途上国の若者に来てほしいなどというのは今や幻想です。
総理、外国人で穴埋めをしようという発想はもう拭い去るべきです。いかがですか。
国境を越えた移住労働は当然です。外国人労働者が自身の意欲に沿い、キャリアアップと将来設計を描ける人間らしい労働を実現するには、求職者と求人企業のニーズのマッチング、すなわち労働条件の事前明示とその履行確保こそ重要だと考えますが、厚生労働大臣、いかがですか。
最後に、永住資格の取消し事由拡大について総理に伺います。
永住者は、日本国内で居住していても、加齢、病気、事故、社会状況の変化など、長年日本で生活していくうちに許可時の条件が満たされなくなることは起こり得ます。税金等の少額未納が発生した場合や、過失犯も含めた軽微な犯罪の場合に在留資格を取り消されることがあり得るという立場に置くこと自体、永住者に対する深刻な差別であると考えます。
これは、在日本大韓民国民団の声明の一節です。横浜華僑総会を始め在日華僑団体は、連名で、日本と中国の交流は長い歴史があります、現在、日本で生まれ日本語しか分からず、日本にのみ生活基盤を有する二世から六世の永住者も多く、全てが日本市民と共に善良なる市民として地域社会の発展に貢献しています、この度の日本政府の入管法改定案は永住者の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めますと声明を上げています。こうした声をどう受け止めますか。
総理は、一部において公的義務を履行しない場合があるといった指摘があると言いますが、具体的にどのような事実があるのですか。こんな抽象的な理由で、有識者会議で話題にもならなかった永住資格取消しを突然持ち出し、押し付けるのは、むき出しの排外主義を世界に発信することにほかならないのではありませんか。こんな人権後進国であっていいはずがない。
本院における徹底審議を求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/21
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022・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 仁比聡平議員の御質問にお答えいたします。
賃金が上がらない要因や、抜本的な賃上げと待遇改善を進めることについてお尋ねがありました。
我が国経済は、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続き、この間、賃金や成長の源泉である投資を抑制せざるを得ず、結果として消費の停滞や経済の体温とも言える物価の低迷、さらには成長の抑制をもたらしたことから、賃金が伸び悩んだと考えています。
政府としては、長年にわたり染み付いたデフレ心理を払拭し、賃金が上がることが当たり前との方向に社会全体の意識を一気呵成に変えていく必要があると考えています。昨年を大きく上回る春季労使交渉での力強い賃上げの流れに加え、来月からは一人四万円の所得税、住民税の定額減税を行い、物価上昇を上回る所得を必ず実現してまいります。
さらに、物価上昇を上回る賃上げの定着に向けて価格転嫁の取組の強化や省力化投資の支援等を進めるほか、持続的に賃金が上がる構造をつくり上げるために、リスキリングによる能力向上支援等による三位一体の労働市場改革を働く人の立場に立って進めるとともに、非正規雇用労働者も含め働く方々が能力を発揮し、公正な待遇を得て働けるよう、働き方改革を推進してまいります。
技能実習制度の改善や外国人労働者の在り方についてお尋ねがありました。
受入れ機関が労働基準関係法令違反に至る理由や、技能実習生が失踪に至る理由は様々であり、一概にお答えすることは困難ですが、一部の受入れ機関の遵法意識の欠如や監理団体による指導監督の不十分さ、技能実習生側の経済的な事情等が影響しているものであると考えております。また、本人意向による転籍が認められておらず、労働者の権利保護が不十分であるなど、制度的な問題も認められたところであります。
政府においては、これまでも技能実習法の制定、運用など、制度の改善や適切な運用に努めてきたところですが、今回、様々な指摘も踏まえ、制度自体を抜本的に見直し、技能実習制度に代わる制度として育成就労制度を創設することとしたものであります。
育成就労制度では、人材育成と人材確保を目的とした上で、本人の意向による転籍を認めるなどの転籍制限の緩和や、受入れ機関や送り出し機関の適正化など、制度全体を適正化するための方策をしっかりと講じているところであり、外国人が使い捨てにされるといったことがないよう、受け入れた外国人材の育成や日本人と同等の待遇確保にしっかりと取り組んでまいります。
外国人材による人材確保の在り方についてお尋ねがありました。
外国人材の獲得に係る国際的な競争が激化している状況等に鑑みると、単純に外国人を受け入れるのではなく、外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠であると認識をしています。
そのためには、外国人の人権を適切に保護することはもちろんのこと、賃金を含む適正な労働条件等の下、安全、安心に暮らし、働くことができる環境を整備することが重要であり、今般の育成就労制度はそのような観点から検討を踏まえた内容になっていると考えています。
また、政府としては、賃金水準の向上等のため、賃上げの促進、イノベーションや生産性向上に向けた国内投資の拡大、スタートアップの育成等に関する取組も行っているところです。
外国人から選ばれる国になるため、引き続き外国人の受入れ環境の整備に取り組んでまいります。
永住許可制度の適正化についてお尋ねがありました。
法務省においては、従前から、永住者の一部について、入管の永住許可の審査において必要とされる期間、税を納付し、許可の取得後に滞納するなどの事案があると指摘を受けており、実際に永住者に関連する審査の中でそのような事例を確認していると承知をしております。
その上で、法務省においては、このような問題に対処するため、有識者からの御意見等を踏まえ、一部の悪質な場合について在留資格を取り消すことができるとするもの、できるとするとしつつ、その場合でも永住者の我が国への定着性に配慮し、原則として他の在留資格に変更することとするなど、慎重に検討して制度を立案したものであると承知をしております。
本改正は、日本で生活する大多数の永住者に影響を及ぼすものではなく、受け入れた外国人と日本人が互いに尊重して生活できる共生社会の実現のためにも必要なものであると考えており、むき出しの排外主義などの批判は当たらないと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小泉龍司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/22
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023・小泉龍司
○国務大臣(小泉龍司君) 仁比聡平議員にお答えを申し上げます。
まず、技能実習生の失踪についてお尋ねがありました。
技能実習生の失踪原因は様々であり、明確に特定することは困難でありますが、一部の受入れ機関側の不適正な取扱いや技能実習生側の経済的な事情などが影響しているものと考えております。
これまで、こうした失踪の問題も含め、技能実習法の下、制度の適正な運用に努めてまいりましたが、さらに、育成就労制度の下では、転籍制限を緩和し、労働者としての権利保護をより適切に図るなどの方策を講じることで失踪の問題の解決を図ってまいりたいと考えております。
次に、育成就労制度における転籍制限についてお尋ねがありました。
本人の意向による転籍を制限する期間については、労働者としての権利保護の観点を踏まえつつ、人材育成上の懸念等への対応として主務省令で定めることとしております。
そして、具体的な期間を定めるに当たっては、有識者等から成る新たな会議体の意見も踏まえて、政府が最終的に判断することを想定しております。また、その際には、同一の育成就労実施者の下でどの程度の期間、育成を継続して行うことが必要と認められるかといった観点等を踏まえつつ、検討を行うことになると考えております。(拍手)
〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/23
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024・坂本哲志
○国務大臣(坂本哲志君) 仁比聡平議員の質問にお答えいたします。
農業における人手不足打開策についてのお尋ねがありました。
今後、農地などの食料の生産基盤を維持し、食料の安定供給を図るためには、次世代の農業人材をしっかりと育成、確保していかなければならないと考えております。
このため、就農に向けた様々な資金メニューでの支援や、機械、施設等の導入支援、サポート体制の充実などに取り組むとともに、農業労働力確保に向けて、労働力調整のための体制構築や魅力ある労働環境確立の取組を支援してまいります。
また、外国人材については、農業知識や科学的素養等の学習機会の提供、技能試験の円滑な実施や相談窓口の設置などの取組を支援し、中長期的に活躍できる人材を確保、育成してまいります。
なお、お尋ねのありました所得補償についてですが、農業人材の確保のために農業者の所得の確保を図ることは重要ですが、そのための方法は所得補償や価格保証ではないと考えています。
農業者や、生産性向上や付加価値向上に取り組むとともに、生産から消費に至る食料システムが共同で合理的な価格の形成を実現することにより収益性を向上することが重要と考えており、政府として、このような農業者の努力を後押ししてまいります。
次に、失踪者の失踪原因と対策についてお尋ねがありました。
農林水産省では、個別経営体からの相談などにより失踪を把握した場合には、可能な限り同じ職場の技能実習生等への聞き取りを行い、失踪理由を把握するように努めています。失踪原因については、明確に特定することが困難な面もありますが、実習実施者の不適切な取扱いや技能実習生側の事情によるものと聞いています。
また、出入国管理庁からは、業種別、国籍別の失踪者数や、失踪防止対策に係る周知啓発のリーフレット等が共有されており、これについては、農業や漁業の業界団体等で構成される技能実習事業協同組合を通じ周知に努めているところです。
その他、失踪防止のため、契約提携時における雇用条件書の提示の周知、技能実習事業協議会を通じた現状、課題の共有、相談窓口の設置や優良事例の収集、周知等の取組を行っているところであり、引き続き外国人材が働きやすい環境の整備に向けて取り組んでまいります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/24
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025・斉藤鉄夫
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 仁比聡平議員にお答えいたします。
まず、建設業の担い手確保についてお尋ねがありました。
建設業がその役割を将来にわたって果たし続けられるようにするためには、担い手の確保対策を強化することが急務であります。
このため、今国会に建設業法等の改正案を提出し、適正な労務費の確保と行き渡りを図るとともに、長時間労働の是正や週休二日の導入拡大に不可欠である適正な工期設定を推進することとしました。これらは重層下請構造の是正にも資するものと考えております。
次に、外国人労働者の失踪についてお尋ねがありました。
失踪の原因としては、一部の受入れ企業側の不適切な取扱いなど、様々なものがあると認識しております。
国土交通省としましては、関係省庁と連携して失踪対策に取り組んでおり、企業の失踪防止対策についてリーフレットの周知を図るほか、建設分野独自の取組として、建設キャリアアップシステムへの登録を義務付けることで、社会保険への加入状況を見える化し、処遇の確保を徹底しているところでございます。
こうした取組を着実に進め、失踪対策に努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣武見敬三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/25
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026・武見敬三
○国務大臣(武見敬三君) 仁比聡平議員の御質問にお答えいたします。
労働条件の明示とその履行確保についてお尋ねがありました。
外国人労働者に対し、適切に労働条件を明示し、その履行を確保することは重要です。
現行の技能実習制度では、技能実習計画の認定申請時に、技能実習生に対し労働条件などを母国語で説明した上で締結した雇用契約書等の提出を求めるとともに、外国人技能実習機構の実地検査等を通じて、適切な処遇が確保されているかを確認、指導等しており、育成就労制度においても同様に労働条件の適切な明示とその履行確保に努めてまいります。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/26
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027・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/27
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028・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第一 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件
日程第二 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件
日程第三 千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書の二千九年の改正の受諾について承認を求めるの件
(いずれも衆議院送付)
以上三件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長小野田紀美君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔小野田紀美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/28
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029・小野田紀美
○小野田紀美君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、国際復興開発銀行協定の改正は、協定上の融資の上限を撤廃することについて定めるものであります。
次に、欧州復興開発銀行設立協定の改正は、協定上の融資の上限を撤廃するとともに、同銀行の業務の地理的範囲を限られた数のサブサハラ・アフリカ諸国に拡大することについて定めるものであります。
最後に、ロンドン条約千九百九十六年議定書二千九年改正は、一定の条件の下で、海底下の地層への処分のため二酸化炭素を含んだガスの輸出を可能とするものであります。
委員会におきましては、三件を一括して議題とし、国際開発金融機関におけるリスク管理の方向性、欧州復興開発銀行の受益国の範囲を拡大する背景、海外の二酸化炭素回収、貯留事業の在り方と気候変動対策への影響等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党の山添委員より開発銀行協定の改正二件に賛成、ロンドン議定書改正に反対する旨の意見が述べられました。
次いで、順次採決の結果、開発銀行協定の改正二件はいずれも全会一致をもって、ロンドン議定書改正は多数をもって、それぞれ承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/29
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030・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
まず、日程第一及び第二の条約を一括して採決いたします。
両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/30
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031・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、両件は承認することに決しました。(拍手)
次に、日程第三の条約の採決をいたします。
本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/31
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032・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本件は承認することに決しました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/32
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033・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第四 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長比嘉奈津美君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔比嘉奈津美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/33
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034・比嘉奈津美
○比嘉奈津美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、男女共に仕事と育児、介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業取得状況の公表義務の対象拡大、個別の労働者への仕事と育児の両立に係る意向の聴取及び仕事と介護の両立支援制度の周知等の義務付け、次世代育成支援対策推進法による行動計画の策定時における数値目標の設定等の義務付け等の措置を講ずるとともに、同法の有効期限を十年間延長しようとするものであります。
委員会におきましては、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の在り方、仕事と育児、介護の両立支援推進に向けた企業への支援策、介護離職を防止するための取組の実効性等について質疑を行うとともに、参考人から意見を聴取しましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/34
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035・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/35
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036・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121315254X02120240524/36
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